98/05/08 第4回 21世紀のたばこ対策検討会 第4回 21世紀のたばこ対策検討会 日時:平成10年5月8日(金)    14:00〜16:00 場所:厚生省別館共用第23会議室 出席委員(敬称略):  内山充  大河喜彦  川口順子  幸田正孝  五島雄一郎 櫻井秀也 島尾忠男  富永祐民  仲村英一 坂東眞理子  松本恒雄  水野肇  矢崎義雄  柳田知司  山崎正和 (開会:14時0分) 島尾座長  それでは定刻となりましたので、ただいまから第4回「21世紀のたばこ対策検討会」 を開催いたしたいと存じます。  それでは議題に入ります前に事務局より本日の出欠と資料の説明をお願いいたします 事務局(原)  本日は委員総数17名中、出席のご連絡をいただいていらっしゃる方は15名でございま す。野中委員、ビルトッテン委員が所用により欠席でございます。川口委員、仲村委員 は少々遅れて到着するというご連絡をいただいております。その他の委員の方につきま してはそのうちお見えになると思われます。  次に本日の資料をご説明いたします。本日、ご用意いたしました資料は1枚目がこれ までのまとめということでキーワードだけを抜き書きにしたもの。事務局資料の要約と キーワードの抜き書きをしたもの。それから、委員の方々からご提出になった資料、参 考という4点でございます。審議用メモ、3回検討会までの宿題、委員からの資料、参 考ということでございます。  この他、委員の先生方には第1回から第3回までの議事録をお配りしております。第 1回、第2回の議事録はご了承いただければ、確定稿とさせていただきまして公開させ ていただきたいと考えております。第3回につきましても同様に順次、公開を予定して おります。以上でございます。 島尾座長  どうもありがとうございました。それでは本日は前回、お約束いたしましたが、まず 最初に未成年者、たばこを吸わせない問題についていろいろご意見をいただきまして、 その後、さらにできれば分煙、あるいは喫煙に関する情報の周知、どういう格好でやる か、そういう問題についてご意見をいただきまして、できれば今回までいただきました ご意見を少しまとめまして事務局の方に整理していただくということをしていただきた いと考えております。  それでは、本日の審議に入る前に富永委員と大河委員から資料をいただいております ので、何かご説明、ございましょうか。 富永委員  それでは、まず私の方から資料に従って簡単に説明させていただきます。  資料3でございますが、2頁を開けていただきますとアルツハイマー病がございます これは前回の検討会で水野委員がたばこを吸う人の方がアルツハイマー病にかかりにく いという研究成果が出ているというお話がございました。厚生省の「喫煙と健康」の報 告書の改訂版の145 頁から146 頁にかけてアルツハイマー病と喫煙の関係の報告がまと められています。これまでたばこを吸った人の方がアルツハイマー病にかかりにくいの ではないかというのは大部分、症例対照研究と言いましてアルツハイマーにかかった人 とそうでない人の喫煙歴を過去に振り返って調査するものでございますけれども、アル ツハイマー病ではもう過去のことをよく記憶しておりませんので、どうしても家族から 情報を得ないといけないという問題などがございまして、前向きの大規模な研究でない といけないという指摘もございました。  145 頁、2頁の図にございますように、平山先生らが行われた計画調査の結果により ますと、これは必ずしもアルツハイマー病とは言えないのですけれども、痴呆のうち、 脳血管障害を伴わない痴呆の死亡率で見ると、このように喫煙本数の多い人ほど、脳血 管障害を伴わない死亡の確率が高いということがわかっています。これのすべてがアル ツハイマー病とは限りませんが、まだアルツハイマー病についてはいろいろ研究の余地 があるということでございます。  それから、本日は防煙が主なテーマになろうと思いますが、4頁をご覧いただきます と、上の図はアメリカのデータでございますけれども、1日の本数が少ない人、多い人 それなりに喫煙開始年齢が早いほど、肺がんのリスクは高くなっています。  下の図は平山先生らによる計画調査の結果でございまして、やはり喫煙開始年齢が若 い者ほど、肺がんの死亡率が高くなっています。この図から見ますと何歳で切ったらい いのかはわかりませんが、ここでは未成年者を19歳以下、20歳未満としますとやはり一 番リスクが高くなっています。  平成7年の10月に日本癌学会が開催されまして、そのときに平山先生が20歳未満をさ らに2歳間隔で細かく分けたデータを発表しておられますが、先生自身はそのときもう 既に入院しておられまして、他の人が代わりに発表をしています。やはり20歳以下でも さらに若い者ほど、リスクが高くなる結果が得られています。  前回の検討会で、たばこの害というのは最近、言われだしたのではないか、以前はた ばこは単なる文化、風習のひとつではないかというお話もございました。皆様、ご承知 の貝原益軒の『養生訓』。これは正徳3年、1713年に表されておりまして、数行ですか ら読みますと、益軒はこう申しております。  「烟草(たばこ)は性毒あり。烟をふくみて、眩い倒るる事あり。習へば大なる害な く、少しは益ありといへ共、損多し。病をなす事あり。又火災のうれいあり。習へばく せになり、むさぼりて、後には止めがたし。事多くなり、いたつがはしく家僕を労す。 初めよりふくまざるにしかず。貧民は費多し。」  そういうふうにきちんと書いています。貝原益軒ですから、かなり健康の方に関心の ある方でございまして、当時からそのような立場の人はきちんと防煙、最初から吸わな い方がいいということを指摘しています。  それから、防煙と申しますと何と言っても明治33年、西暦1900年に制定、公布された 「未成年者喫煙禁止法」がございます。6〜7頁にあたりにこの法律の制定の経緯が書 いてございますが、時間の関係で説明を省略します。  継いで8頁へ移りますと、これは日本キリスト教婦人矯風会が編集した「禁煙運動の 歴史」というものでございますけれども、私は以前にこれを読んでおりまして、前回の 検討会のときに未成年者喫煙禁止法はもう既に健康問題が根拠になっている。一酸化炭 素の害などが書かれていると申しましたが、あれは私の記憶違いでございまして、一酸 化炭素ではなくて、明治のその当時、既にニコチンの害、ニコチン中毒のことが指摘さ れておりました。そのことは一部訂正させていただきます。  この資料も時間の関係で簡単に説明いたします。傍線を引いたのは私でございます。 9頁の最初に、わが国に紙巻きたばこが入ってきたのは明治初年。それから、2〜3行 飛びまして1894年、明治27年、日清戦争が始まるとたばこの売れ行きは急増し、喫煙の 風習は子どもたちの間にも広がってきた。そういうことで、大河委員がご指摘のように 街角でもたばこを吸っている子どもが多いというようなこともございまして、未成年者 喫煙禁止法が制定されたと思われます。  最後の2行、この当時、小学生の喫煙はかなり酷かったようで、華族の師弟を教育す る学習院では1893年、明治26年に学習院長田中光顕子爵の名で禁煙令が出ています。  10頁の中程には、さらに1894年、明治27年には文部大臣井上毅の名前で「小学校ニ於 テ生徒は喫烟スルコト及烟器ヲ夾帯スルコトヲ禁スベシ」と、喫煙器を持ってはいけな いという訓令が出されています。  それから、未成年者喫煙禁止法の方に入りまして、このような現状を憂えた根本正衆 議院議員は他4名の議員とともに1899年、明治32年に帝国議会衆議院に議員立法として このときは「幼年喫煙禁止法」という名で提出しました。  その次の行に大河委員、ご指摘のように、当時、町を歩いていた子どもの喫煙がいか に目立ったかということが書かれております。  さらに、11頁の傍線のところ、最後の方です。未成年者喫煙禁止法が出された当時の 社会情勢、これは最後の3行にありますように、当時、急激に増えていたたばこの消費 に目をつけ、1898年、明治31年に「葉煙草専売法」を施行して税の増収を図っていまし て、継いで1904年、明治37年にたばこの製造販売が専売制に変わっています。  そして、12頁の最初の3行目から1899年、明治32年12月12日、この法案の提案理由が 衆議院に提出され、次いで12月19日法案名が「幼者喫煙禁止法」から「未成年者喫煙禁 止法」と改められ、年齢が当初は18歳で出ていましたけれども、これが20歳に引き上げ られ、罰則も少し変わって貴族院に送られ、貴族院でも審議の結果、これが可決されて います。以下はご承知のとおりでございます。  14頁、傍線が引いてある部分でございますけれども、この法律ができてから矯風会で は喫煙が青少年の心身に悪影響を及ぼすから禁煙運動をするのであるが、もうひとつの 理由として喫煙による大気汚染、即ち公共の場での喫煙を禁止しようという主張を『婦 人新報』で論調しています。つまり、もう当時、公共の場での禁煙を指摘しています。  15頁、私がこれを未成年者喫煙禁止法の根拠と勘違いしておりました北里柴三郎医学 博士の文章でございまして、これは明治43年10月号の『婦人新報』に出ている文章であ りまして、ここは読みませんが、北里博士はタイトルでありますように「生命を重んず るものは宜しく禁煙すべし」と言っておりますし、ニコチンが心臓を刺激、あるいはニ コチン中毒に浸りやすい、あるいは心臓に対する毒性があるということを述べています  18頁にいきますと大熊重信伯爵が「児童の禁酒禁煙に付て」という文章を同じ『婦人 新報』、明治43年10月号に掲載しています。これは大変重要ですので読まさせていただ きます。19頁の3行目から。  「第二の社會を造るべき少年青年の人格を造るのは今日の急務である。アルコールや ニコチン中毒に既にかゝって居る人は打ち捨てゝ置くがよい。これから社會を造らふと 云う若い人々には充分禁煙禁酒させねばならぬ。立派な人格を造る上から云ってもどう しても禁酒の必要がある。禁煙させねばならない。長命を保って社會に大いに貢献せん とするには、健康に害なるものを絶対に打ち捨てねばならぬ。それには手近な處から矯 めて行かねばならぬ。されば一家の家長たるものもまた學校の教師も此點にかんがみて 未成年者の禁酒禁煙に骨を折って欲しい。學校と家庭と連絡を付けて、飲酒喫煙の害を とき、内外共に力を盡して之の為めに盡力する事は実に大切の事で、また此の如き事を 励行せんとする人々には社會は充分に同情を表して、好結果を見るやうに助くべきであ る。」  これは(文責記者にあり)とありますので、喋られたことを記者が記載したかと思わ れますが、こういうふうに大熊重信、明治のリーダーが現在でも通用することをきちん と述べておりますので紹介させていただきます。  あと資料4のところに国会の速記録がございます。私もこれ一応、目を通してきまし たけれども、なかにはやはり未成年者はたばこを吸うと、例えば、書籍購入の費用をた ばこに当ててしまったりするかもしれないし、あるいはまた、肺を害して兵役の検査に 合格する者が少なくなってはいけないからというような健康面を憂えているところも2 3、見られます。当時はまだ現在ほど、未成年者に対する喫煙の健康への影響が明らか にされておりませんでしたので、その程度ではないかと思います。以上、ちょっと長く なりましたが、説明終わります。 島尾座長  はい。どうもありがとうございました。大河委員。どうぞ。 大河委員  資料の頁でいきますと資料3の20頁から23頁にかけてでございます。前回の検討会で 未成年者喫煙防止に関する業界の取り組み等についてご紹介していいというようなこと でございましたので、今回、用意させていただきました。  かい摘んでちょっとご紹介させていただきますと、未成年者喫煙防止、これは大変重 要な問題でございますけれども、基本的にどう考えたらいいかということが最初のとこ ろに述べられております。未成年者は心身の発達過程にあって、かつ判断力も十分でな い。加えて今、富永委員から縷々ご説明があったとおり、法律によって未成年者の喫煙 が禁止されているというようなことから、未成年者の喫煙は当然、回避されるべきもの であると。  それから、未成年者の喫煙防止については、基本的には家庭教育を始めとする関係各 方面による努力によって解決しなければならない問題。業界としては、関係諸団体と連 携しながら諸対策を行っておりますが、その社会的な要請に対応して今後とも一層の充 実を図っていきたいということでございます。  次に、業界の取り組みの全体の流れを模式図的に示しております。真ん中に未成年者 喫煙防止・マナー向上等に関するたばこ業界の取り組みというのが四角で囲んでござい ますが、根拠法令としましてはさきほどの未成年者喫煙禁止法もございますが、たばこ 事業法の40条で広告に関する勧告等というのがございまして、要は、たばこの広告を行 う者は、その広告が過度にわたることがないように努めなければならないと。それは未 成年者の喫煙防止に配慮しながらということでございます。  併せて、大蔵大臣が政令で定める審議会、これは「たばこ事業等審議会」でございま すが、その意見を聞いて広告を行う際の指針を示すことができるということで、平成元 年の10月に大蔵省告示で大蔵大臣の指針が出ております。これを受けましてたばこメー カーで構成する業界団体はTIOJというのがございますけれども、これは日本たばこ 協会でございますが、そこで自主規準を改定いたしまして、要は「製造たばこに係る広 告及び販売促進活動に関する規準」というのを定めております。  一方、小売店の団体でございます全国たばこ販売共同組合連合会、ここが屋外のたば こ自動販売機の深夜稼働、前回、若干のご批判もございましたけれども、この深夜稼働 の停止というものをやっております。更に、さきほどの業界団体による未成年者喫煙防 止とかマナー向上の呼びかけ活動。JTとしてはその取り組みに加えまして独自の諸活 動を行っております。  次の頁に大蔵大臣の広告に係る指針が出ておりますが、長いですけれども最初の左側 の全体的指針というところの1に未成年者への配慮、即ち未成年者を対象としたたばこ 広告は行わないこととするとともに、広告を行う際は未成年者の喫煙が禁止されている ことについて注意を喚起するよう積極的に努めることというものがございます。  次の頁にいきまして、未成年者喫煙防止に関する業界の具体的な取り組みですが、こ れも時間の関係で全部は説明いたしませんが、一番重要だと思われるのは一番上です。 TIOJの自主規準によりまして、この4月からテレビ、ラジオ、シネマ、インターネ ットによる製品広告は行わない。製品広告は廃止してございます。これはいわゆる電波 媒体を中心としてということです。  それから、もともとございましたが、未成年者向けの新聞、雑誌においては製品広告 を行わない。それからビルボードです。屋外広告看板は小・中・高校周辺100 m以内に は行わない等々がございます。  これらの自主規準でございますけれども、実は、専売公社時代の昭和44年に未成年者 とか、あるいは女性に喫煙を奨励するよう広告宣伝を行わないというような内容の自主 規準は既にございまして、その後、昭和60年の専売改革以降もこのTIOJが自主規準 を設定して何回かの改定を経て、今日に至っております。  それから、自動販売機、さきほどご紹介しましたとおり、深夜稼働の停止ですが、午 後11時から午前5時までということで、これは平成8年の4月からですけれども、小売 店に大変な負担が強いられているところでございますけれども、かなりの実施率の高さ で行われているところでございます。  それから、未成年者喫煙防止ということで周知、呼びかけというのは、そこにありま すようにポスター、ステッカーの作成、貼付ということで、関係機関、これは大蔵省、 総務庁、警察庁、青少年育成国民会議等の協力で行っております。 もちろんTIOJ やJTや組合としての独自な活動も行っておりますが、例えば、販売組合では未成年者 と思われる場合は一声かけるという、いわゆる「愛の一声運動」というようなものも行 っております。  販売店への協力要請ということで、委員の先生だけだとは思いますが、販売店向け リーフレットというもので、TIOJが作成したもので、これでございます。「SAY  NO!」という未成年者には売りませんという、これは約30万部作成され、配付され ていると思います。  あと関係官庁等との連携活動ということで、これは主としてJTが「未成年者喫煙防 止対策協議会」というのを各地域毎に警察や自治体等、あるいは販売組合等と連携して 開催しております。  次の頁にマナー向上のことが書かれていると思いますが、マナー向上は直接は未成年 者喫煙問題とは関わりはないかと思いますが、前回、五島委員からもご指摘がございま したので、改めて少し詳しくここに紹介をしております。  ポイントは昭和49年から「スモーキンクリーン・キャンペーン」というところで、投 げ捨て防止以外に吸わない人への思いやりも含めましていろいろな活動をそこに掲げて いるとおりやっていると。その一環として委員の先生のお手元にありますこの「Smokin Clean」という小冊子。これは約50万部作成して配付しております。なお、来月は環境月 間でございますが、喫煙マナー向上月間としても集中的にこの活動は実施していきたい と思っております。  それはJTがやっていることでございますが、業界団体のTIOJにおきましてもた ばこのパッケージ、これは注意表示が刷記されておりますし、タール、ニコチン量も刷 記されておりますが、そこに併せて自主的な喫煙マナーを守りましょうということも刷 記してございます。その他、携帯灰皿の配付なども行っております。  分煙につきましては、そこにありますように公共の場所等において施設管理者が吸う 人、吸わない人双方の立場を配慮して措置されることが望ましいわけでございますが、 メーカーといたしましてもそういう吸う人、吸わない人の協調ある共存の一助として空 調技術等の研究開発を、そこに掲げているようなJR東日本との共同研究という形で行 っております。  以上のポイントを整理いたしますと、未成年者喫煙防止のため業界の自主的取り組み というのは非常に重要でございますが、ポイントの1は本年4月からのテレビ、ラジオ 等での製品広告の廃止。ポイント2は平成8年4月からのたばこ自動販売機の深夜稼働 の停止。これは関係者の大変な努力によって行われているところでございます。  本件につきまして島尾先生が座長でやられた「たばこ行動計画検討会」の報告書にお きましても、こういう業界の自主的な取り組みの強化ということがうたわれておりまし たので、あの報告書が出た後にこういう2つの重要な施策が行われたということでござ います。  さきほどの富永先生からもちょっとご指摘がありましたので、少し前回の資料に関連 して、ここもちょっと追加説明させていただきたいと思いますが、第3回資料というの がお手元に配付されていると思いますが、第3回資料の54頁に「環境中たばこ煙(ET S)に関する国際がん研究機構(IARC)の疫学研究」の紹介があったかと思います が、このIARCの報道発表が引用されまして、その報道発表に至る経緯とか、受動喫 煙による肺がんリスクの増加、あるいは報告書が一般に入手できない等々が示されてお りますけれども、このIARCの報告書によりますと本研究結果は肺がんリスクは、要 は、ETS曝露群でコントロールと比較いたしまして非有意であるというようなことが 趣旨でございまして、前回のこの資料の4頁で私の紹介しましたとおり、ETS曝露と 肺がんの間には統計的に関係が認められなかったというのがポイントではないかという ふうに解釈しております。ですから、報道発表に至る経緯等の周辺事情を示すことは真 の結論を曖昧にするものではないかと考えております。  さきほど、富永先生からご紹介のありました喫煙とアルツハイマー病等の関係でござ いますが、第3回資料の58頁ですが、さきほどもご紹介ありましたけれども、喫煙はア ルツハイマー病のリスクを低下させるというケースコントロールスタディ、これは確か に存在しますけれども、コホート研究では逆にリスクを増加させるという趣旨であった と思いますが、根拠となっております平山研究では、脳血管障害を伴わない痴呆の死亡 リスクとされておりまして、このリスクの増加というのも非常に少ない例をもとに結論 が出されております上に、当時、このコホート研究でアルツハイマー病の診断が的確に 行われたかどうか疑わしいというようなこともございます。したがいまして、この結果 を以て喫煙がアルツハイマー病の罹患リスクを低下させないということはまだ言えない のではないかと考えております。  あとその同じ頁にDuijinらの報告をいろいろ批判しておりますけれども、要は、家族 歴のあるアルツハイマー病については喫煙によりリスクの低下が認められたということ でございまして、このことは、例えば、最近、水野先生からもちょっとご指摘があった かもしれませんが、脳内にニコチン性アセチルコリンレセプターが存在し、そのアルツ ハイマー病の患者さんではアセチルコリンの放出が減少しているというような報告もご ざいますので、ニコチンがこのレセプターを活性化しているのではないかとされており ます。  そういうこともございますので、いずれにせよ、社会的関心が持たれているアルツハ イマー病と喫煙の関連につきましても疫学だけでなくて、例えば、神経内科学等、いろ いろな分野の総合的な調査研究を進めて、それの知見について国民に対して的確な情報 提供を行っていくという、そういうようなことが必要なのではないかというふうに考え ております。ちょっと長くなりましたが、以上でございます。 島尾座長  はい。どうもありがとうございました。それでは、まず、未成年者喫煙防止をめぐる 問題についてご自由に各委員からご意見をいただきたいと思いますけれども、いかがで ございましょうか。どうぞ。松本委員。 松本委員  今の大河委員の基本的考え方というところについて少し質問をしたいのですけれども その前に前回の第3回、私、欠席しましたので、議論の流れがどういうふうに進んだの かちょっとわかりませんので、あるいはやや的外れになるかもしれませんが、それは1 回、2回の議論の段階ではたばこの有害性、リスクについてはこの検討会として一定の 共通の見解にはまだ立っていなかったと思うのです。害があるとかないとかという、分 かれていたと思うのです。  その議論が3回目ではあるところ落ちついて、一定の危害があるのだという共通見解 に達した上で今日の未成年者喫煙防止の議論になっているのでしたらよろしいのですけ れども、もし、未だに3回目の議論も1回、2回と同じような平行線を辿っているのだ としますと、今、大河委員の20頁の括弧書きのところに書かれている未成年者について の基本的考えというようなところで未成年者は判断力も十分でないということ、それか ら法律があるからと、この2点が喫煙防止対策の根拠とされているわけですが、判断力 が十分でないということの意味が、もしも、3回までの議論でたばこの有害性について の一定の共通見解があり、大人であればその有害性についての判断が自分で可能である から、それは自己責任だと。自分でリスクを判断して行動しなさい。しかし、子どもは その判断、有害性についての十分な判断ができないから、国家がパターナリスティック に保護しているのだという趣旨なのかどうかという点なのです。  つまり、有害性がないのだという前提に立てば、あるいはそれはわからないのだとい う前提に立てば、判断力が十分であるかないかは多分、関係がないのではないかと思う わけです。判断力が十分でないということの前提に一定のリスクについてのたばこ業界 としてやはりそれを考えられた上でこういう立場に立たれているのか。  確かに法律がありますから違反するといろいろな罰則があると思うので大変なのです けれども、そもそも健康に害がなくむしろ効用の方が大きいのだとすれば、未成年者に のみ喫煙を禁止する根拠はむしろないわけで、この法律の廃止運動を起こされても業界 側としてはおかしくないと思うのです。  例えば、チョコレートなんかですと食べすぎれば多分、糖尿病になるのだろうから、 食べすぎたら駄目だと思うのですけれども、だからと言って子どもにチョコレートを食 べさせないというような法律はあり得ないわけで、たばこについて、酒もそうですけれ ども、特別にそういう国家がパターナリスティックな介入をしてくるということについ て、たばこ業界としては嫌々だけれども止むを得ない、国家のエゴだというふうに判断 されているのか、やはり一定の根拠があるとされいるのか。一定の根拠があるのだすれ ば、大人についてはそれを外すということの合理性はどうなのか。どういうふうにお考 えなのかをちょっとお伺いしたいのですが。 大河委員  松本先生から未成年者の判断力と有害性の認識の関係についてご指摘がありましたの でお答えしたいと思うのですが、基本的には今までの議論でどの程度、喫煙が有害であ るかということについてはまだはっきり、この場では議論が終わってないとは思うので す。  例えば、象徴的な例で今回も、死亡リスクをアメリカの「サージェン・ジェネラルレ ポート」から引用した数字が示されています。今回、一部訂正を事務局がされているよ うですけれども。では、日本人でそういう喫煙による死亡リスクがどのぐらいであるの か。あるいは未成年者に対してそれはどうなのかというところは必ずしもはっきりして いないのではないかと思いますので、まだ、そういう意味では決着がついてないと思い ます。  判断力云々との関連でいきますと、実は、この文章自体は平成元年の「たばこ事業等 審議会」の答申をほぼ踏襲したものでございまして、当時、社会学者であるとか、医学 者であるとか、文化人の方、いろいろな方が議論した結果で未成年者はこういうような ことであるのでやはり吸うべきではないというような結論だったので、それをそのまま 実は引用させていただきました。  判断力が本当にどのぐらいあるかどうか。これはなかなか今、総理大臣の諮問機関で もいろいろご検討されたようですけれども、なかなか難しいところがあると思います。 一概に十分な判断力があるとかというわけでもないと思いますので、なかなか議論しだ すと難しい点があるのではないかと思っております。 松本委員  いや、私の聞きたいのは未成年者の判断力が大人に比べてどれだけ劣っているかとい う意味ではなくて、判断力がない未成年者だから禁止をするということの中身なのです  全く危険のないものであれば禁止する必要はないではないかと。判断力不十分だから 禁止するということの前提にはやはりリスクファクターか何かがあって、十分な判断力 のある人であれば、それは自分が自ら負うべきものとして行動すればいいのだから、国 家としては関与しないのだという、しかし、未成年者はそうではないのだという何か前 提がないと未成年者についてのみ、特に、たばこと酒についてのみというのが出てこな いのではないかと思うのです。  それ以外の食品について未成年者について特に禁止はしていないわけですから、そう いう意味でなぜ、判断力というのが出てくるのかと。大人であれば判断に耐えるだけの データが出されているのかどうか。そして、これは子どもにとって判断不可能なものな のか。そういう意味です。 山崎委員  議論のというか、この会議の経過に関わるご質問なので、私の理解を申し上げます。  第1回、第2回を通じて、第3回までを通じてたばこが総合的に悪であるか、あるい は狭く見て医学的に害毒であるかということについて、この委員会では結論を見ていな いというのが私の議論です。  そこで座長のご苦心では、取り合えずこの委員会はこのままいくと、多数決の原則を お取りにならないというのがこの前、お約束になりましたので結論は出ません。そこで 取り合えず、この委員会が一致できる点を探す。そうするとひとつが分煙で、ひとつが 未成年者喫煙防止法であると。それについては実はこの法の精神、並びに内容について は立ち入っていないわけです。  そもそも松本委員は法律のご専門ですが、この法律が制定された明治何年という時代 にはたばこと健康に関する現在のような議論は起こっていない。非常に常識的な議論が あったに過ぎません。  察するに、この法律ができたのは当時、富国強兵を進めていた日本が健康なる壮丁を 養うために、つまり兵隊さんです。養うために禁煙令を作ったのだと。同時に禁酒も進 めた。ですから、もともと私はこの法律自体の根拠というものを知らないのです。むし ろそれを疑っています。  松本委員がご指摘のとおり、たばこに私は害が全くないとは言いません。他のものと 比べて特段の害があるという結論には達していないのですから、例えば、新たに未成年 者の喫煙を防止する論理的根拠を探さなければならない。早い話が青年に達する年齢を 見ても各法律毎にばらばらです。ご専門ですからご存じのとおりです。  そうするといったい、もしも、たばこの害を生理学的、あるいは医学的に決めるので あるとすれば、私としては医学的、生理学的な成人年齢というものをご提示いただきた いという、実は、前回、そのご質問を申し上げてあります。そこで終わっているわけで す。  その他の理由。つまり、社会慣習であるとか、文化人類学的なイニシエーションの観 点とか、いろいろな観点があるでしょう。そういう観点であるものを禁止しておいて、 その代わり保護も加えるという、未成年という文化概念は守るべきであるということな らば、それはそれで結構だと。  現実に、なぜ、殺人の能力もあるような少年を少年法で裁くのかと。これだって実は 明快な法哲学的な議論を私は聞いたことがないです。同様に、未成年者喫煙禁止法も極 めて常識的な社会通念によってできあがった経過があって、これまであると。あるもの は守るというのですか、この委員会で法律を改めて基礎から検討しなおして廃止も議論 しようということであれば喜んでいたします。それをやっていたらこの委員会、結論を 見ないだろうというので、取り合えず、現行法というものはあるのだから、その範囲内 で我々は議論をしようというのが前提だと思います。 松本委員  わかりました。今の山崎委員のご発言ですと首尾一貫してますから私は理解できます が、ただ、もし、そういうたばこのリスクについての議論は一応、棚上げをして、法律 があるから、これは守らなければならないので守るのだという形でこれから議論しよう とすると、ではどういう方策が適当なのかという、施策を評価するに当たって評価でき なくなってくるのではないかと思うのです。  つまり、リスクが非常に高いので、大人にとってもリスクが高いし、子どもにとって もリスクが高いのだけれども、子どもにとっては判断力が劣っているから国家が介入す るのだという前提に立てば、そのためにどういう施策がいいかという施策の妥当性につ いての評価ができると思うのですが、法律が駄目だと言っているだけだということです と、どのような禁止策が具体的に一番いいのかということの判断の仕方ができなくなっ てくるのではないかと思うのです。 山崎委員  今の議論の経過を申し上げると、確か櫻井委員だったと思いますが、現状の法律以上 のことは何もできないと。何もできないというのも、要するに、この法律を厳密に施行 するように各方面にお願いする、あるいは周知徹底させるということよりないのではな かろうかというご議論もありました。  私は皆さんのご意向に応じてそれを今、松本委員がおっしゃったように法の根本から 法の精神から議論しようとおっしゃるなら、その準備をして議論をいたしますし、もし それは面倒だということであれば現状の法をどういうふうにより徹底させるか、インプ リメントの問題になるだけだと思います。 島尾座長  櫻井委員。 櫻井委員  山崎委員から名前が出ましたから発言させていただきます。  私はたばこに害があることを、前提にこの会が進まなければ進まないと思っています そのところを議論してもしょうがないと。また益があるかどうかという話は、これもあ ると言う人はあるのでしょうから、とにかく害があるのだから、それをどうするかとい う話だけにしぼる。法律については未成年者を禁じているからということで話を進めな いと会が進まないと思います。  松本先生にお聞きしたいのは、成年にも禁じる禁煙法というのはないわけですから、 なくて大人は判断ができるから法律がいらないということで決まっているのだったら、 判断ができるものをこの委員会で検討してどうしたらいいという大人の禁煙問題を検討 する理由がなくなっちゃうわけです。  法律がないのは、それは判断ができるからないのだという、そういう話になったら、 大人は判断ができるのだから放っておけばいいですよという話かしようがなくなってし まうのだろうと思うのです。今の松本先生の話を持ち出すと却って混乱するように私は 思うのですけれども、いかがですか。 松本委員  私、今のご意見と同じ結論になると思うのですが、すなわち大人は判断ができるのだ という前提には、大人の判断に十分な情報が出されているということが前提になるので すが、日本の現在において、例えば、たばこの警告表示が十分かどうかとか、学校教育 等、政府による情報提供が十分かどうかと。あるいはメーカーによる情報提供が十分か どうかというところを考えれば、大人の判断にとっても十分なデータが出されていない のだという結論になる可能性があります。  しかし、これは科学的にどうかという議論がある程度、一致点を見ないことには我々 の政策判断する法律学の立場から進めない問題ですから、共通の一定のリスクについて の理解の下にこういうリスクがある。それが今の社会において十分大人にとってであれ ば周知されているものであり、あとは個人の嗜好と危険判断の問題だというふうに割り 切れるのかどうかということの前提として、どの程度の客観的なリスクなのかというこ とがわからないと話が進まないというわけです。 島尾座長  喫煙する本人の健康に対するリスクについては、これはもう医学的にある程度、かな り確立したデータがあると思います。それをお認めになるならないは別として、私たち はそれがあるからこそ、こういうことをやっている。  ただし、それは今、櫻井委員からお話があったように、成人全部に一律に禁煙を強い る程、大きなリスクかと言われるとそこまではちょっと割り切れない。しかし、喫煙開 始年齢が若ければ、その方が危険が多いというのは、今日もさきほど富永委員、お話の ような事実がありますので、なるべくならば若いときはさせたくない。そういったこと があるので未成年者は禁煙についてはある程度の皆さんのコンセンサスはあると考えて 議論しているというのが現段階だと思います。 ただ、それがいったい18歳でいいのか 20歳でいいのかということになると、これはまたひとつの議論の種になると思うのです が、今、さきほど富永委員からご紹介がありました資料でも、最初に提案されたときに は幼者喫煙防止法ですか、対象が18歳未満。  ところが議論の中でそれが結局、私も一応、議事録、少し勉強させていただいたので すけれども、見ているとひとつは18歳で縛って、あと学生は吸わせるなという意見がか なり国会の議論の中でも出たと思います。学生だけに何で区別するのだというところか ら議論がいろいろ出てきて、結局、学生はある程度、ひとつは親がかりのせいもあるの でしょうが、もうひとつは、判断力の問題が出ている。  その当時はもう既に18歳以上になるともうほとんどの人は働いている、社会人になっ ているというような条件もあり、それで学生と区別したという点もあると思うのですが 最終的にはちょうど当時は徴兵検査、20歳、そこで兵隊になるというような点も含めて 20歳、未成年者喫煙防止法で整理したというのがどうも法律制定の経過、議事録など、 勉強させていただいた結果では、そのように理解しております。  私どもの基本的な考えで言えば、やはり、もし害があり、それが若い程、害が強いの ならばなるべくスタートは遅くさせたいと。今の限界が法律で20歳となっていれば、そ れを積極的に変える事由はないのではないだろうかというような理解が現在、議論して いる段階だと考えております。水野委員。どうぞ。 水野委員  ひとつだけ、僕は疑問に思うのは、18歳であろうが20歳であろうがそこまでは吸わな ければいいと。そこから先は吸ってもいいのだというふうに皆さん、そう思っていられ るのかどうかという点なのです。もし、そうなのなら、僕はもの凄い矛盾があるような 気がするのです。  翻ってみて、僕は非常に早くから吸いましたけれども、我々はなぜ、たばこを吸うと 怖かったかというと、旧制中学のときには停学になるというのがあったのたです。これ もし、停学にならないのなら皆、吸っていたと思うのです。僕は。今、振り返ってみる と。  だから、強制的な枠でやはりだいたい吸わなかったと。吸うやつでもだいたい1日に 20本も吸うようなのはそれは中学生ではいなかったですから。せいぜいいても1日に2 本とか3本とかというような実態だったと。僕は悪名高き昭和一桁生まれですから、と にかく軍隊に行けばもう吸うのだから、その前の話だというような受け止め方を皆、し ていたと思うのです。  しかし、僕はそれではいけないのではないかと思うのです。ただ、私はここの議論を 聞いていまして、あるいは読ましていただいて非常に思うことのもうひとつの点は、い ったい役所というところが、お前ら、たばこ吸うなというふうなことを言うだけのあれ があるのかということなのです。  これは僕、前回も言いましたけれども、よしんばあるとしたら厚生省の中で誰も吸う やつはいないというところをまず始めて、そこから後、皆に吸うなというのをおっしゃ るのならわかるけれども、どこ行ったってばかばか吸っているわけでしょう。偉い人が 皆。いや、全員ではありませんよ。吸ってない方もたくさんいらっしゃるけれども。そ ういうのを見ていると僕は本当は何でこれやっているのかなというのを僕は非常に疑問 に思うのです。  元来、たばこというのは吸おうが吸うまいが、それは手前勝手に考えてやれと。それ で自分が病気になればそれはお前が悪いのだから、責任は持てという話なら、こんなも のはやらないでもいいわけです。せいぜいやるとしたら未成年者の喫煙をどうしたらい いかという、まさに、山崎先生のおっしゃったところへ僕は来ると思うのです。  だから、そこをはっきりせずにやっていって、1回、2回、3回では確かにコンセン サスみたいなものは僕はやはりないのではないかという山崎先生のご意見と同じような 印象を持っているわけなのです。ただ、たばこというのは健康にいいのか、悪いのかと いう二者択一的な発想をすれば、それは僕はいいというのはなかなか言えないのではな いかと、私もそう思う。  最後に、1点言いたい、僕は自分がやめたから言うわけではありませんけれども、た ばこというのは自分がやめようと思わなければ人に言われてやめるものと違うのです。 そこを僕は厚生省では皆さん、どう考えているのかと。厚生省がおっしゃればたばこを やめるとでも思っているとしたら、これは僕は非常に役所の僣越な考えではないかと思 うわけです。その辺をもう少し釈然とした気分であと議論をした方がいいのではないか と思いますので、これはしかし、僕の勝手な意見かもしれませんけれども。 内山委員  ここはなかなか本格的な議論に入るところでつまづいているようですが、松本先生の お考えは私は非常によくわかるのです。松本先生とは前からお話をお伺いしていたこと もありますし、当然、これをお読みになって松本先生がおっしゃったような疑問を持た れるのは当然なのです。私も同じような感じを受けました。  ただ、私は松本先生と違うのは質問をしないというだけの話で、なぜかと言うと、こ こに書いてあることを素直に受け取ったということ。素直に受け取るということは、業 界の取り組みなのです。これは。ですから、業界の意見がこうやってまとまっていると いうふうに私は素直に理解しました。  もうひとつは、基本的な考え方なのです。ですから、業界はこれを基本的な考え方と して外に発表している。こういう公開の場で皆が見ているところではっきり字になって いるわけですから、これを読んだとおりに理解すれば一番いいのではないかと判断しま す。  その判断は何かと言うと、さきほどまさに松本先生がおっしゃったように判断力が十 分でない人に対しては手を打つべきだということは判断力がないと危険だよということ を言っているわけです。だから、それはそれでいいのではないのですか。極めて自然な 考え方であろうというふうに思って、そういうところから今まで始まってから今までの 議論というのはちょっと回り道をしましたけれども、そういう判断でいいのではないか と。  それから、もうひとつ、成人が18歳か20歳かというような話も出てきますけれども、 これは今、座長がおっしゃいましたが、座長がお預かりいただいて、では、こういう理 由で18歳にしようと、こういう理由で20歳にしようということのご提案をいただいて、 ここでそれならそうしましょうと皆さんが納得されればそれで済むことで、18歳か20歳 かが決まらないと、あるいは17.5歳か19歳かということが決まらないとその先の議論が できないといったようなものではなかろうという感じがいたします。 島尾座長  はい。五島委員。 五島委員  今、水野委員から厚生省がこういうような運動に対していろいろ指導、条件のような ものを出すというのはおかしいではないかというお話がございましたけれども、アメリ カでは1994年に公衆衛生局の長官の報告として「子どものたばこ使用を防ぐために」と いう「プレベンティング・タバコ・ユーサ・ノン・ヤング・ピープル」という、国とし ての報告書が出ております。  この報告書は喫煙と健康をテーマとした23番目のものでありまして、子どものたばこ 使用に焦点を絞った初めての報告書でありまして、既に、いろいろご覧になっている方 もいらっしゃると思いますが、この報告書の中で子どもに対するたばこの健康被害、ア メリカの子どもたちのたばこ使用の現実、たばこ使用を促進する社会心理学的な因子、 たばこの宣伝と販売促進活動、子どものたばこ使用を防ぐ働きかけといったような内容 が詳しく出ております。  特に、最後に子どものたばこ使用がもたらす健康被害として、子どものときからたば こを吸うようになると大人になってからとても病気が多くなると。子ども時代にたばこ を吸うと肺の発達が遅れ、たばこを吸わない人に比べ肺の働きが悪くなる。たばこを吸 う子どもはたばこを吸わない子どもよりも体力が劣ってくる。また、たばこをたくさん 長い間、吸っているほど、フィットネスが劣ってくる。アンケートを取るとたばこを吸 う子どもは吸わない大人より息切れ、咳の発作、痰、喘鳴が多く、体力がないと感じて いる者が非常に多いことがわかっていると。  子どものときにたばこを吸うと肺や気管支の不調が多くなり、大人になってから慢性 の肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎にかかる恐れが非常に強くなる。アメリカ人で一番多 い死亡としては心臓病である。しかし、動脈硬化が子どものときに既に始まっており、 大人になってからもその症状が出始めると。喫煙は冠状動脈疾患、末梢動脈閉塞症、脳 卒中の直接の原因である。したがって、子どものときからたばこを吸うと動脈硬化が早 く進むだけでなく、心臓病の危険因子が増えると。喫煙がLDLコレステロール、すな わち悪玉のコレステロールとか、あるいは中性脂肪を増やして、善玉のHDLコレステ ロールを減らしてくると。こういう状態が大人になるまで続くと心臓病が非常に早く発 病すると。  こういうような結論を出しており、そういうことから政府として子どものうちからた ばこの被害を防いで、そして健康を保つようにというキャンペーンを行っているという ことは、これは私は政府として当然なことだろうと思うのです。  したがいまして、こういうことをこの委員会もできればやはり未成年のたばこ使用を 防ぐということをもっともっと一般の国民に徹底させるということを取り上げて議論す べきではないかと、このように思います。 島尾座長  はい。水野委員。 水野委員  ちょっと僕の言ったことは誤解があったのかもわからないと思いますけれども、私は 役所が情報提供をするということは大変必要だし、ぜひ、やっていただきたいと、むし ろそう思っているわけなのです。 僕が言っているのは、役所がお前ら、たばこを吸うなというふうな、あるいは吸えと いうのでもいいのですけれども、そういうことを言うあれがあるのかということを僕は 言っているわけでして、そこがちょっと僕は五島先生と僕の理解の仕方が違うのかどう かは知りませんけれども、僕の言っているのはそういう意味なのです。 内山委員  第1回のときに、既に私、その辺につきまして食べ物との対比で先生方に申し上げた 覚えがあります。  これは水野委員が言われるように、こうしろ、ああしろということを言おうと思って やっている会ではないと私は思うし、食品でも、例えば食べるなとか、食べろというこ とは絶対に言わない。しかし、今、五島先生、言われたように、脂の多いカロリーの多 いものを食べると糖尿病になりますよ、血圧上がりますよということは、これは情報提 供で言うわけです。それをやらないのは行政の怠慢だということを私は1回目に言いま した。  したがって、たばこにつきましても、これは五島先生も吸うな、吸えということを言 えとおっしゃっているのではなくて、それに対してもたらされる恐れのあるリスクとい うものをはっきりとわかってもらい、その上で判断力のある人は自分の責任で判断すれ ばいいでしょうということをおっしゃっているので、水野先生がおっしゃったことと五 島先生がおっしゃったことは決して食い違ってないと思います。 島尾座長  川口委員、どうぞ。 川口委員  松本委員を始め、皆様のご意見、それぞれ真剣に伺わせていただきましてよく理解で きるのですけれども、今日のテーマは未成年の喫煙についてということでございますし 私も子どもが中高生であった頃から見ていますと、多くの未成年者がたばこを吸ってい るという現実がございまして、それをそのまま看過していいのだろうかという単純なス タートラインから議論を始めたらいいのではないかなという気がいたしております。  リスクの問題というのは今までも出ておりましたし、今後もずっと折りに触れ、戻っ ていかなければいけない問題、あるいは戻っていかざるを得ない問題だと思いますけれ ども、それはそうとして未成年が今、実際にたばこを吸っているということにどう対応 するのかということを現実的に少し議論をしたらいいのではないかと思うのです。  情報の話が出ておりますけれども、未成年者については多分、情報が与えられている ということだけではなくて、ピアプレッシャーなどの他の要素も考えなければいけない と思います。 島尾座長  どうもありがとうございました。松本委員、どうぞ。 松本委員  今のご意見もわかるのですけれども、では単純に議論を始めるとして、例えば、今、 法律が守られていないという現状があると。法律は守らなければならない、根拠は別に してという議論でいきますと、それでは法律が守られていない、未成年者がいっぱいた ばこを吸っているという状況に対してどうアプローチするか。施策を考えるに当たって 例えば、未成年者にたばこの害についてもう少し深刻な教育とか、あるいは警告をした 方がいいのではないかという議論が出てくる可能性があります。  そうすると、具体的に小さな段階からたばこを吸うことはあなたにとってこういう具 体的なリスクがあるのですよということを言えば、今よりは少しは抑止力があるかもし れないです。しかし、それをやろうと思うと、さきほどからお預けになっているのかは っきりしませんけれども、たばこというのはこういう害があるのだと。例えば、なるべ く吸い始めるのは遅ければ遅い方がいいし、できたら吸わない方がいいのだという前提 でいけば、かなり厳しい恐ろしい警告の方が効果があるだろうということになるかもし れないです。  単に法律が禁止していますからということだと、抑止力としてはあまりないと思うの です。停学になるからとさきほどおっしゃいましたが、そういう外在的な部分がちょっ と働くかもしれないですけれども、あまり厳しくするとむしろドラッグの方に逃げるの ではないかということを第1回目のときに野中委員がおっしゃいましたけれども、そう いう単純な脅しだけですと駄目だと思います。  そういう意味で単純に法律があるからどうしましょうかというだけだと、あまり効果 的な対策を論じにくいのではないかというのが私の印象なのです。 島尾座長  今、成人の場合には確かに情報提供して自主的に判断してもらうというのが基本にな ると思うのですけれども、学校の子どもたちの場合、情報提供は大事だと思うのですけ れども、それをどういう格好で一種の学校で教育をやっている、それとどう結びつけて やるかというあたりがひとつの問題になってくると思いますので、その辺も含めていろ いろご意見いただければと思いますけれども。どうぞ、山崎委員。 山崎委員  未成年者喫煙防止についての現在の法律があると。その精神について問わないという のはこの委員会の妥協の産物なのです。ですから、なぜ、禁止されいるかという議論を ここですると1回、2回、3回で結論の出なかったことに全部立ち戻らなければならな くなります。  その議論を延々とやろうとおっしゃるなら、まだまだもちろん議論いたしますが、そ れをやっていると切りがないという座長のご判断で、取り合えず法律があるものについ てこれが完全に執行されるように、遵守されるように考えようと。こういうお話だろう と、私はそう理解しております。  そうなりますと、子どもに対しては理由なく禁止さぜるを得ない。理由なく禁止され ているもの、たくさんあります。例えば、12歳未満の女性の場合、性的行為は禁止され ています。これは理由はない。やった方はこれは強姦になります。しかし、そういうも のは現在の法律の中にたくさんあるので、それは多分、論理的な背景というよりはむし ろ文化人類学的な現象だろうと私は思っています。  成人というものにある区切りを認めて、大人はいろいろなことができるが、子どもは いろいろなことができないものだと。その代わり、犯罪についても免責される部分があ るというのが現在の法の思想なので、そこで止めておく他ないだろうと。  さて、私は、ではこの法の完全な施行については、完全ということは言えませんが、 十全な施行については教育の預かるところは大きいだろうと。したがって、この委員会 に、例えば、教育に関する専門家というものを特別の委員というか、証人という形でお 呼びいただいてご意見を聞くと。そういう機会を与えてくださるように座長に前回、私 はお願いしている。  というのは、例えば、私は多少とも中央教育審議会などに関わってきましたので、そ ういう問題を仄聞しておりますけれども、目の前からものをなくす、あるいは犯罪の対 象になるものをなくすというだけで教育が成り立つものでもないのです。もし、たばこ を見えないところに置けば吸わなくなるだろうというふうに考えるならば、万引きを避 けるためにスーパーマーケットとか、コンビニエンスストアをやめさせなければいけな いし、不純異性交遊を避けるために男女共学も廃止しなければいけないというような議 論になるので、真に、つまり子どもの教育というものを総合的にどう考えたらいいのか  もっと言うならば、なぜ、子どもが法を犯してたばこを吸うのかという一般社会状況 これはストレスの高い社会であったり、いろいろ規制が厳しい社会の中でどこかに穴を 求める心理が一般的にあるかもしれません。そういうのがさしあたって一番簡便な罪の 軽いたばこのところに現れているというふうに見られなくもありません。これは全部仮 説ですけれども、そういうことを我々はきちんと議論しなければならないから、専門家 の招致をお願いするというのが前回の委員会の最後の私の発言だったと。 松本委員  今、おっしゃった教育の重要性は非常にわかるのですけれども、結局、私はさきほど の疑問に戻りまして、教育の場で法律があるのだから守らなければならないのだという ことだけを教えてもあまり効果がないのではないかと。 なぜ、喫煙しない方がいいの かというところまで踏み込んだ教育でないと効果がないのではないかと思うのです。そ の点でその部分について括弧に入れたまま教育の専門家を呼んできても、あるいは教育 の重要性を議論してもあまり進まないという印象です。 島尾座長  いや、だから、その点について、私、さきほど少なくとも喫煙本人の健康に対するリ スクについては医学界ではおそらく認めていない方はいないと思います。そして、その リスクは早く始めた程、より多くなるということについては、これはもう医学界の意見 はほとんど一致していると思います。  ですから、学校教育の中で喫煙をすればこれだけの健康に対する影響があるのだとい うことは教育できると思います。反対される方いるかもしれませんけれども、それは 我々の基本的な認識だと思います。どうぞ、五島委員。 五島委員  学校教育においては、健康教育ということで学校医や、養護訓導からそういうことが 行われております。その中にやはり喫煙に対する害についても教えるべきだと思います 最も大事なことは、子どもに対して、未成年者に対してたばこを売らせないようなやり 方を作る必要があると。  例えば、先だって小学校の教師がナイフで刺されて殺された事件がある。その事件の 後、バタフライナイフを店で売らないということですべてのナイフを回収したという実 際があるわけです。  ですから、やはり子どもたちにはたばこを売らせない、買わせないと。そういうよう なことをまずやる。それには小売店でもちろんやることも大事だろうし、あるいはやは り何と言っても自動販売機があるために子どもがそういうところで未成年者が勝手に今 買うわけですから、これをどうしてもやはり町から撤去していくということが重要な問 題だろうと思います。 島尾座長  富永委員、どうぞ。 富永委員  本日は、防煙を中心に議論するはずだったのですけれども、何か未成年者喫煙禁止法 あるいは未成年者の喫煙というところへ論争がいっているみたいです。  私は確かに最初、説明しました資料で喫煙開始年齢が若いほど、健康へのリスクが大 きいということを申しましたけれども、これは言わば2番目に重要なことで、最も重要 なことは防煙で喫煙習慣を身につけさせないようにするということなのです。だから、 これは別に未成年者の段階であれ、あるいは20歳以上になって吸い始める人でもその習 慣を防止するというのが一番大事な点です。 なぜ、大事かと言いますと、よくわかっ ていますように喫煙者の多く、6割、7割、調査によって違いますけれども、喫煙者の 多くはやめられることならたばこをやめたいと思っているのですけれども、心理的な習 慣、あるいはニコチンの薬理作用、習慣性、依存性などのためになかなかやめられない のです。ですから、喫煙対策というのは大変難しゅうございまして、それならもっと抜 本的に発生源対策のような形で喫煙習慣を身につけさせないようにすることが非常に重 要でございます。  そういう意味では大河委員が最初、ご説明になりました未成年者は十分判断ができな いということを言われまして、この判断ができないという根拠、裏には十分な知識がな いことがあげられます。知識があれば判断ができるはずです。やっと小学、中学、ある いは高校での喫煙の健康への害に対する教育が始まったばかりでございまして、第1回 のときにも副読本が配付されましたけれども、どうも法律があるから学校では未成年者 の喫煙は法律違反、反社会的な行為であるという見地でとらえていましたが、やっと最 近になって健康問題として取り上げています。  ですから、今回は未成年者喫煙禁止法の存在はあまり私は議論する必要はないと思い ます。むしろどういうふうにすれば未成年者の喫煙習慣を防止できるかという点を中心 に議論をしたらいいのではないかと思います。  そういう点では五島委員が第3回目の検討会できちんと何項目か防煙対策を、具体的 に挙げておられますので、そういったことを中心に、今後議論したらいいのではないか と思います。 島尾座長  大河委員、どうぞ。 大河委員  未成年者の喫煙の防止の問題についてはかなりこの会でもコンセンサスが得られつつ あると思うのですけれども、そのやり方についてはなかなか難しい点がもちろんあると 思います。業界もかなりさきほど言ったようなことでぎりぎり一生懸命やっております が、もっとやれということで今後もやっていかないといけないと思いますけれども。  この未成年者喫煙問題というのはやはり青少年の健全育成というか、そういう問題の 全体の中で位置づけて、家庭であるとか、学校教育であるとか、あるいは地域社会とか 行政とか、関係団体等々、社会全体として取り組んでいくという、そういうようなこと が必要なのではないかなというふうに思っております。  さきほどの五島委員からアメリカの紹介がありましたので、敢えてちょっとご紹介さ せていただきたいと思いますけれども、日本の場合、法律としてはさきほどご紹介のあ ったような明治33年、1900年の未成年者喫煙禁止法、非常に古くからあったわけです。 アメリカの場合、現在、クリントン大統領以下で盛んに積極的なキャンペーンが行われ ておりますが、1970年代までは未成年者の喫煙禁止というのは州法で決められておった のですが、何と17州しか決められておらなかった。数字で若干、1、2ずれる可能性が ありますが、調べた限りでそのぐらいでして、かなり大部分の州ではまだ州法で未成年 者の喫煙は禁じられていなかったというようなことがありまして、現在は約31州ぐらい になっていると思いますけれども、いずれにしてもアメリカの場合、連邦法で未成年者 の喫煙禁止が設定されたことがないということもあって、そういう意味では日本の法律 はザル法化しているというご批判もありますけれども、一定の抑止力にはなっているの ではないかと思います。  向こうの場合、昔は親子でたばこを吸いながら歩いていたというようなことも聞いた ことがあります。やはり日本の場合はまだ必ずしも守られていないというところがあり ますので、さきほど言ったような社会全体として取り組みを強化する必要はもちろんあ ると思いますけれども、単純に事例比較というのはできないのではないかというふうに 思っております。 島尾座長  柳田委員、どうぞ。 柳田委員  さきほどからいろいろ議論がありますが、やはり未成年者の問題はひとつは今、吸っ てない人にどうやって防煙するかということと、既に吸っている未成年者にどうアプ ローチするかという問題。この2つあると思うのですが、しかし、リスクの問題、若年 者で開始する程、リスクが高いという、それはひとつの具体的な説得材料になると思い ますので、この委員会として、例えばですけれども、富永先生と五島先生でご相談いた だいて一応、そういう事例と言いますか、データをリストアップしていただくと。この 委員会がそれを最終的にどこまで利用するかどうかわかりませんけれども、そういう事 例を挙げていただくというのはいかがかと思います。  それから、山崎委員がさきほど言っていましたように、問題はそういう材料をどう処 理するか、どう教えていくかということで、これは教育の専門家にやはり教えを請うと いう形を取らざるを得ないと思います。  既に吸っている未成年者に対する対策としては、一番大事なのはどのような理由でど のような層がそういうことをしているかということの事実を把握し、理由を把握すると その上での対策をここで議論するということが大事なので、しかし、この委員会がそう いう調査機能までも持つのかどうか、あるいは資料としてそれが手に入るものかどうか それにもよりますけれども、対策を立てるなら実態をやはり把握しないとできないだろ うというふうに思います。そういうことで少し問題点をいくつか具体的に絞って、そし て議論を進めたらばいかがかというふうに思います。  なお、リスクという問題は確かに若年層程高いと。しかし、20歳を過ぎればそういう リスクが全部なくなるのだというようなことはあり得ないわけですから、しかし、それ については今度は成人に対しての情報提供という形の方に話は移行していくだろうと思 います。 島尾座長  どうもありがとうございました。幸田委員、それでは。 幸田委員  未成年者の喫煙防止で一番必要なことはやはり未成年者ができる限り、たばこが手に 入らないようにするということが私は必要ではないかと思います。そういった意味で自 動販売機によるたばこの販売について、少なくともたばこの自動販売機は店の人が十分 に目が行き届く範囲に限定をしておくというようなことをやるということが私は非常に 実効性がある問題ではないかと思っておりますので、そういった意味ではやはり自動販 売機というものの利用というものはどうするかということを、未成年者にできる限り、 買わせなくするような方策との関係でご議論いただきたいと思います。 島尾座長  川口委員、どうぞ。 川口委員  さきほどの教育の話にちょっと戻りますけれども、大河委員がおっしゃった家庭、あ るいは地域といった社会ぐるみでの教育が重要だということはおっしゃるとおりだと思 います。  中教審で最近、家庭と地域と学校の連携というようなことで昨年、報告を出しました けれども、たばこのみならず他の分野でも非常に重要なテーマとなっているわけですし たばこの分野ではまた非常に重要なことだと思っております。  それから、教育について言いますと、たばこの害についての情報を与えるということ を超えて、一人ひとりの子どもが物事を自主的に判断できるような態度を身につけると いう教育が非常に大事ではないかという気がいたします。この会合の第1回目に自主的 な判断ということを多くの方がおっしゃいまして、私もそう思いますけれども、その根 幹は教育に始まります。ですから、教育のところでもたばことの関連、これは他の分野 でもそうですが、自分でピアプレッシャーに負けないで自分の判断を自分で貫くことが できる力を持つ子どもを育てることが大事ではないかと思います。  それから、さきほど専門家を呼んでというお話がございましたけれども、確かに第1 回目の配付資料でたばこの教材をいただいてちらりちらりと拝見いたしましたけれども 現場でそれを使って教えるときに、実際、いろいろ思っていることと現場の苦労とはま た違うものがあるだろうという気もいたしますし、時間的に十分に取れるかとか、先生 方が教える内容を十分に理解をしているだろうかとか、そこのところが十分だろうかと か、その辺を議論をしてみる必要があるのではないかという気がいたします。以上です 島尾座長  大河委員、どうぞ。 大河委員  さきほどの幸田委員からのたばこの自動販売機の店舗併設でないものについては、そ れらを禁じるようにしたらどうかというご提案でございましたので、少しその周辺の状 況をご紹介したいと思うのですが。 厚生省が用意された資料でも今、現在、たばこの自動販売機50万台強あるということ で、たばこの売上の40%ぐらいが自販機だというような紹介がありますけれども、店舗 併設か否かということなのですが、平成元年のたばこ事業法に基づく小売店の設置規準 が改正されまして、既に管理が行き届かない自動販売機を設置する小売店というのは許 可されないということで、平成元年以降は店舗併設型でない自販機を設置する小売店は 不許可になっておりますので、一応、それ以降のものはそういうものはないはずである と思っております。  したがって、今あるたばこの自動販売機というのは基本的には店舗併設型でないと新 規許可は下りないということですが、問題はそれ以前のものがどのぐらいあるか。ちょ っと今日はその資料を用意しておりませんけれども、若干、その問題は残っていると思 います。  酒類の自動販売機でも似たような話が確かあったと記憶しております。 幸田委員  ちょっとよろしゅうございますか。今の質問に。厚生省が用意したのだと思いますが 資料の2で今、お話がありましたので、これは説明がまだないのかどうかわかりません が、これを見てみますと日本は50万台の自動販売機で、全体の40%。たばこの総量の40 %は自動販売機であると。  文化が違うのだとは思いますが、アメリカの場合が2頁目に書いてありますけれども アメリカもかつては1965年代には90万台あったものが、2頁目の米国の状況ですが、最 近では約3分の1の30万台でたばこの売上は14億ドルと、こういうことで非常に減少し てきているということでやはり日本もこういうことぐらいは少し考えた方がいいのでは ないかと。  それから、自販機について深夜の状況は今、平成元年云々というお話がございました が、1頁目の1996年、総務庁の調査では20時から23時、23時以降、ここに書いてござい ますように非常に比較的少ないわけでありまして、この自販機の利用時間というのをも うちょっとやはり早めてもいいのではないかと。11時という夜中ではなしに、この区分 も20時から23時ということになっておりますが、ここはたばこは37%、3分の1以上あ るわけですから、例えば、8時からとか、こういう少し具体的な点についての提言をこ の検討会としてはしたらどうかというのが私の意見であります。 坂東委員  もし、自動販売機についてお話なさるのでしたら、お先に。 川口委員  自動販売機について。ご参考までにということだけなのですが、今、大河委員からお 酒の話が出まして、私、ちょっと記憶が違うかもしれませんけれども、お酒の今の自動 販売機というのは年齢を問わずに、要するに年齢でチェックできないようになっていま すけれども、そういう形の自動販売機については2000年に、屋外に置いてあるものにつ いては撤廃をするという目標で小売業界では一応、決まっているようだと聞いています お酒の話です。  ご参考までに。 坂東委員  それでは私の方はまた教育の方に戻ってしまって恐縮なのですけれども、教育の場で の未成年のたばこの防止ということになりますと、どうしても持ち物の検査ですとか、 あるいは教室で座学でたばこの害を教えるというふうな形でのストレートなと言いまし ょうか、管理教育を考えられているようですけれども、おそらくこのたばこの害につい てはそうした形での座学、ストレートな、ある一定の時間だけの情報提供ではなしに、 むしろいろいろなルート、いろいろなツールを使った情報提供というものを積極的に行 わなければいけないのではないか。  例えば、全く例えばの話ですけれども、投げ捨て禁止のスモーキン・クリーン運動に ついては日本たばこ産業会社の方が大変熱心にキャンペーンしておられますけれども、 たばこがどれだけ健康に対するリスクがあるのかといったような情報提供についても真 剣に広報という媒体を通してやっていただくとか、あるいはまたこれはおそらく厚生省 あるいは委員会としてもやるべきなのかもしれませんけれども、いろいろな広報で書く よりは記事に書いていただくように、雑誌、あるいは新聞社の関係の記者の方たちに対 する定期的な、1回限りではなしに定期的な情報提供。そういったようなかなり組織的 な情報提供のルートを整備しない限りにおいては学校教育のある一部分だけの情報提供 では効果がないだろうと思います。 島尾座長  どうもありがとうございました。今日はあまり課題を狭い課題に絞らないで、できる だけご自由にご意見を承って整理したいと考えておりますので、あまり制限されずにど うぞ。矢崎委員。 矢崎委員  富永委員が防煙というお話をされて、私はこれはそれが根本ではないかと思います。  私は実際に患者さんの健康を守るという立場におりますので、例えば、喫煙によって さっき松本委員が科学的な根拠でどういうふうかということで、これは座長がお話にな ったように喫煙によって、例えば肺の弾性の低下とか、五島先生が言った動脈硬化の促 進というのはエビデンスとしてあるわけです。ただ、山崎委員が言われています疾患と の関連というのは、それが疾患に結びついて発症するという確率の問題ですから、どう しても平行関係の議論があって、日本での死因の危険因子は畳であるとか、さっきの スーパーマーケットの問題にも話が発展しちゃうと思うのです。  これはやはりこの審議会というのは国民の健康をいかに守っていくかと。あまりそれ が表に立つと、おそらく厚生省が独善的な責任感で何をやるかという、さきほどの議論 になってしまうと思うのです。しかし、本当に私どもは国民の皆さんが健康で健やかな 人生を送るためにはどうしたらいいかということをいつも考えているわけです。  例えばの話ですけれども、最初にたばこは文化であって、食塩と同じようなものだと いうふうに話がありました。食塩の問題もこれは極端に言えば、食塩は全然取らない人 間でもちゃんと生きていけます。食塩を取る習慣のない、例えばパプアニューギニアの 原住民とか、あるいは南アメリカの食塩を取らないところでは年齢とともに血圧が上が るという現象がなくて、ほとんど高血圧の人がいないわけです。  日本はずっと1日20gぐらいの食塩を取っていたので、内科の教科書、インターナシ ョナルの教科書を見ますと日本の脳卒中が断然高いと言われています。ですけれども、 最近は食塩の摂取量が11gに減少して、それだけではありませんが、脳卒中で死亡する 率は欧米とほとんど変わらなくなった。ただ、高齢化ですから病気に罹患する方は依然 多いのですが、死亡率は非常に減っているのです。重症の脳卒中がなくなってきている ということが非常に大きいと。 最近、私どもが危惧しているのは食塩の摂取量の平均 がせっかく11gになったのに13gぐらいに増えているのです。また。これはどういうこ とかと言うと、やはりファーストフードが今、できてきまして、例えば、ポテトチップ スとか、ファーストフードにはもの凄く食塩が含まれています。私どもは梅干しは1日 半分しか食べてはいけない、みそ汁はこのぐらいで1杯という教育していますけれども 意外とファーストフードで子どもたちがどんどん食塩を取っているのです。  さきほど、原住民のお話をしましたが、その人たちは宣教師が入ってきて教育をする ために塩を皆さん、持ってきたので、塩を食べる習慣になるともう全く文明人と同じよ うな比率で血圧が高くなり、年齢とともに高血圧になるという現象が起こっているわけ です。  ですから、ぜひ、私はたばこも重要だし、食塩の問題もこれも何とかしないと、せっ かく脳卒中で悪名高い日本が本当に先進国並になったのが、また増えてくる可能性もあ るので、ぜひ、食生活からもやはり国民の健康を守る立場でキャンペーンしていかない といけないと思います。  キャンペーンをするにあたっての科学的に立証された事実というのはいつも議論にな りますが、発症した疾患との関連に関してはやはり確率の問題になりますから、そうで はなくて、実際にたばこを吸うことによってこういう病気の準備状態が確実に起こって いるということは科学的に立証されていますし、一度、発症した疾患が喫煙によってど う変わるかという確実な論文がたくさんあります。  ですから、私どもは患者さんにすべてたばこをやめなさいというふうにお話している のではなくて、例えば、呼吸器の疾患、あるいは動脈硬化による疾患を持っていた方は 確実に次のイベントを発症する、二次予防に禁煙は欠かせない要因ですから、これは何 とも説得してたばこをやめていただくようにするわけです。最初のプライマリープリベ ンション、一次予防にどういうふうにこれが生かされるかというのは、これはやはり国 民の意識レベルではないかと思うのです。  ですから、これは教育の問題もありますし、皆さんが健康についてどう考えるかとい うのが私は一番重要なところであって、この審議会はいろいろな立場の方が法律の立場 あるいは文化論の立場からお話になるのはいいのですけれども、ただ、どうしたら国民 の健康に一番いいかという原点に立ってお話を進めていただければと思います。それに はやはり富永委員がおっしゃった防煙、なるべくたばこを吸わないように工夫する。  今、自動販売機のお話、大変素晴らしいことであります。例えば、病院に自動販売機 置いてあるのです。どういう問題かと私はいつも議論するのですけれども、そういう点 でもの凄く難しい点がここにあるのだというのは私、身の回りでわかりますので、一刀 両断でこうだということではなかなかいかないところもあって、少なくとも自動販売機 を何とか対応するとか、そういう話を、ぜひ、していただければと思います。  病院の場合は、これは山崎委員の意見が非常に強く働いていると思うのですが、病院 の中で自動販売機をなくそうといった場合に、長期に入院している患者さんから突然、 自己判断で買わないということがあればいいのですけれども、強制的に手に入らない状 態にするのはいかがなものかという議論がありまして、少なくとも、例えば白血病とか その他の患者さんまですべて押し並べてたばこを取り上げるのはいかがなものかという 病院の中でもそういう常識的な議論がされています。山崎委員も十分その辺はご了解い ただきたいと思います。  やはり二次予防には禁煙が大事で、一次予防には防煙がこれは今までの科学的に立証 された事実で、もう食塩でもそうですし、ぜひ、その対策として自分の意思で買うよう な場所の購入方法について今、ご提案されたことは私、最も賛成ですので、ぜひ、先生 方にご協力をお願いできればということ、切に思っております。 島尾座長  本日、またこの後、少し議論、ご意見いただきますけれども、今までいただいた議論 いろいろ整理して、事務局の方に整理してもらって、この次からはできれば項目ひとつ ずつもう少し具体的な議論をやってまいりたいというふうに考えております。  何か他に。分煙の問題も含めてご自由にご意見いただければと思いますが、いかがで しょうか。どうぞ、山崎委員。 山崎委員  今、私の名前が引用されましたので度々ですが申し上げます。  厚生省が国民の健康について配慮すると、あるいは様々な施策を取るというのは、こ れは本来の役割だと思います。その一環としてたばこの吸いすぎに害があるかもしれな いと、あるいはあるという強いご意見が、あるという事実を広報されることはこれは本 務であろうと思います。  しかし、今、矢崎委員がおっしゃったように、世の中にはまず2つの問題があります ひとつは、論理的に特定化の誤謬というのがありまして、あるものを特定してそれにつ いて議論をすれば、つまりその害悪がクローズアップされるのは当然なので、今、塩の 話が出ましたが、当然、砂糖などというものも生理的に人間にとって必要のないもので す。白砂糖。糖質はいるでしょうけれども、砂糖はいるはずがない。これは単に甘味を 楽しむ嗜好品です。  そういうものひとつずつ取り上げていけば、必ずそこに悪が発見されますから、特に 過剰にわたれば悪だと。これはひとつずつやっていきますと必ずそれは有罪判決が下り ます。  松本委員の前ですが、町を歩いている人間、一人、先に捕まえまして、そいつに法律 違反がないか徹底的に調べたら必ず出てきますから、日本人全部罪人ということになら ないとも限らない。  ですから、私の申し上げているのは、厚生省が健康に害のありそうなものを列挙して 健康全体の維持を進めるというのは、これは本務だからおやりになったらいい。その場 合に特定化の矛盾を犯さないでいただきたい。  もうひとつは、たばこというものは単に健康という観点からのみ考えられるものでは ないという別の尺度です。これは砂糖についても塩についても言えるでしょう。これは 嗜好品であると同時に文化であるという議論が長きに渡りますのでちょっと省きますけ れども、ともかくも厚生省所管の問題ではないのです。つまり、健康は厚生省所管です しかし、たばこは厚生省所管の問題でないのみならず、これを所管している官庁などと いうものは存在しないです。  大蔵省は確かに税金取っているだけですし、農林省は多分、葉たばこの管理をしてい るかもしれません。およそたばこという総合的な人間の営みについて管理すべき省庁が あるはずがない。そういうものについて厚生省がどこまで踏み込めるのかというのが次 の疑問なので、私は実はこの委員会に非常に不本意な気分で始めからいます。いろいろ 議論を根本的にやるのであれば、もちろんそれは厭いませんけれども、なるべくお互い に大人として紳士としての議論がしたいと。  早い話が私は疫学に疑いを持つわけではありませんが、言うところの平山疫学という ものについては、医学は知りませんが論理学的に非常な疑いを持っています。しかし、 そういうものを今、ここで持ち出してその議論を1からやるというのは社会通念に反し ますので控えています。  その辺のことを十分ご配慮いただいた上で合意のできるところ、今、防煙ということ をおっしゃいましたけれども、私に言わせれば、それは分煙でいいのだろうと思います そういうあたりで結論が出るように次回以降、アジェンダの整理をお願いしたいという ふうに思います。 島尾座長  矢崎委員、どうぞ。 矢崎委員  これからの医療は、病気になった方をいかに治療して社会に復帰させるかということ が今まで医療の中では一番大きな問題だったのです。21世紀のこういう高齢化社会にな りますと、やはり疾病をまず予防の段階で対処していこうと。それがやはりコストベネ フィットと言いますか、社会資源の消費の点でもやはり一次予防、ファーストプレベン ションというのが21世紀のこれからの大きな課題だと思います。  厚生省は医療、健康の保持ということを所管しているわけです。医療に関して厚生省 は一番大きな役割をしています。私は21世紀の厚生省のこれからの大きなタスクフォー スと言いますか、それはやはり予防医学ではないかと思います。  我が国ではこの予防医学という観点がなくて、ないと言うと怒られるかもしれません が、比較的少ない領域ではなかったかと思います。治療に関してはいろいろ研究されて いますけれども、今、前からお話がありますように予防に関する疫学的なアプローチと いうのが我が国の一番サイエンスとしても遅れている領域ではないかと思います。  そういう意味で官庁としてそういうものをどこがやるかというと、私は厚生省以外に はそれを推進するところがないのではないかと。これは21世紀の次の国民のQOL、生 活の質、あるいは社会資源をどういうふうに保っていくかということの重大な問題であ りますので、これは私は厚生省がそういう一次予防の視点から活動、活躍されるのは私 は当然ではないかというふうに考えています。 島尾座長  では、坂東委員。 坂東委員  今、矢崎委員がおっしゃったことにも共通するのですが、いろいろな情報が、自分た ちの健康に関わる情報が十分に手に入っていないという状況が大前提としてあると思う のです。その情報を十分に手に入れた上で敢えて自分はたばこを吸う、吸いたいとおっ しゃる方が何人か残られるのはそれは当然、止むを得ないことだと思うのですけれども 知らないで、あるいは大したことないのだろう程度の気持ちで自分の健康を損ねてしま うことがないような努力をする義務というのはあるのではないか。  例えば、さっき食塩の話、砂糖の話、あるいは今、女性たち、大変、体脂肪について の情報は豊かになりまして、それを防ぐための努力を必死でしております。そういう形 でのたばこが健康に影響があるかもしれないという情報でしょう。その可能性が高いと いう情報についても十分提供すれば、それをその情報を見て判断をするのはあくまで個 人なのだということで、今、ぜひ、やらなければならないことは情報提供の部分だろう と懸念いたします。  だから、極端なことを言いますと、販売機をもし、置きたいのだったら販売機のとこ ろにこういうような健康に対する影響がありますというようなビラを必ずそこのところ に置いておくとか、あるいはたばこを買ったらやはりそういうのをひとつ一緒に手渡し てあげるとか、そういうような形での情報の一般的な普及というようなことが必要で、 飲んではいけない、飲むなとかというふうな強圧的にするというのは山崎委員もおっし ゃるとおり、なかなか難しいのだろうと思います。 島尾座長  山崎委員。 山崎委員  矢崎委員が今、非常に重要なことをおっしゃったのでどうしても申し上げます。  予防医学という考え方は一方では大変重要な、つまり益のある思想ですが、一線を踏 み越えると非常に危険な思想なのです。ご存じのように健康というのを国策として取り 上げて、これを大々的に打ち出したのはナチスなのです。ナチスは単に衛生学に手を出 しただけではなくて、最後に優生学まで踏み込みました。これは優生学というのは当然 ながら彼らの観点では予防医学であったわけです。  予防という観点から国民の生活習慣の細々にまで政府が手を出すということは非常に 危険な問題なので、お医者さんとしてはさぞ歯がゆいでしょうが、病気になった人間だ けの面倒を見ていただきたい。それは本当なのです。  道を歩いている人間を追っ掛けて、お前、病気の危険があるからちょっと病院へ来い ということはどのお医者さんもおやりにならない。それは同時に国家もやってはいけな いことなのです。 それではどこで線を引くかと。大変難しい問題ですけれども、やはり啓発、広報以外 にはないだろう。啓発、広報であればこれは学説の段階でもやれるわけで、お互いに異 論があってもいいだろう。しかし、その場合はひとつ条件が付きます。たばこが有害で ないという情報を発信する自由も認めなければならないだろう。  それはいったいどういう方法を取るのか。一方は国家ですから、国家がいろいろな税 金による広報手段を持っています。内閣広報室という巨大な予算を持った部門があり、 それに対して、ではたばこ会社は広告をどんどん撤退しているわけですから、多分、広 報の場所がないだろう。  私は実はJTの味方でも何でもないので、たばこの広告を自粛するということは実に ナンセンスだと予てから思っています。正しいものを売るのになぜ、自粛するのだ。そ の点は松本委員がおっしゃるとおり。しかし、これはおそらく世の中の常識というか、 争いを起こしたくないという日本的体質の結果なのだろうと私は思っています。  長々申しません。とにかく情報を各種発信して、国民の自由選択に委ねるということ が私はこの委員会の最終結論だろうと思っています。 島尾座長  今までの議論を承っていると確かに情報も十分提供する。それをどうやるかという問 題、残っていますけれども、その必要性についてはほとんど全会一致しているような印 象を持っておりますが、内山委員、どうぞ。 内山委員  予防医学が危険思想というご意見は、それは表現方法によってはそこにいく、どんな ことでもどうやっても説明がきくというのが詭弁論ですから、それはもう容易なことだ と思いますが、しかし、矢崎先生のお話は2回に渡って非常に説得力のある、ほとんど 問題のない個々の、おそらくはコンセンサスと思われる話をいただきましたので、実は その後で発言をしようと思ったのを控えたのです。そういうお話の後でまた似たような ことを申し上げると薄まると思ったものですから発言を控えておりましたが、矢崎先生 のおっしゃったことに尽きると私は思っております。  これは何が尽きるのかと言いますと、この委員会は何をやるべきかというところの話 に尽きる。もうひとつ言えば、各省庁の役割分担というものがあって、各省庁のやらな ければならないこと、私、何回も申し上げますように、各省庁のやらなければならない ことをやらないというのは犯罪なのだという時代になってきているのだから、やらなけ ればならないことはやりなさいというふうに言いたいわけです。  さきほど来、いろいろなご意見が出ているのは当然で、そういうご意見の中から行政 が規制、あるいは指導、勧告、要望、情報提供。こういったようなものに分類をいたし まして、それをやることによって国民の健康をより良い方向に導いていくという方策を 導き出すように考えていただきたい。それがさきほど座長の言われた論点を整理してと いうお話になっているのだろうというふうに思います。  この委員会はそういったことを目標にして集まっているものである。確かに情報の中 には確実な情報、恐れのある情報、こういうふうに多く言われているという情報、その 中にいいという論評も、あるいは悪いという論評もあるでしょう。だんだんと根拠の薄 い方になってくればいいというお話もだんだんたくさん出てくると思います。それらは 十分に分け隔てなく情報として提供するべきだというふうに考えます。  もうひとつ最後に、この委員会でどこまで議論をするのかということ、大変大きな問 題だと思いますが、お話を伺っておりますとこの委員会はオールマイティの委員会のよ うな感じがしてならないです。ここで何か決めれば法律も作れ、法律の改廃もできる。 教育問題まで左右できる。ここはそんな学校の教え方までここでもってくちばしを入れ てこうしろといったようなことは言えるところではないと私は思います。これはあくま でも勧告であり、要望である。勧告とか要望とかという声が多かったか少なかったとい うことを結論とすればいいと私は思っております。  したがって、教育専門家を呼んできてお話を伺うといったようなことまでやるとすれ ば、例えば、販売の専門家を呼んで、流通の専門家を呼んできて、製造の専門家を呼ん できて、すべての専門家を呼んできていろいろなことをやって、たばこに関する一切合 切をここでオールマイティに決めるといったようなことまで、そんなことをここでやれ とおっしゃられたら、私はもう勘弁していただきたいというふうに考えておりますので 座長がさきほどおまとめになったような方向で今後、進めていただけると大変ありがた いと思います。 島尾座長  はい。柳田委員。 柳田委員  ただいまの教育の専門家を呼ぶというお話は内山委員のお話のとおりで少し手を広げ すぎて、確かに広げすぎているように思います。  この議論の中でたばこ問題を白か黒かという旗幟鮮明に分けられるものではないとい うことをひとつ認識しておいていただきたいのですけれども、それは砂糖の例でも塩の 例でも脂肪分の例でも同じですが、それは適量というのと取りすぎというのがございま して、たばこについては誰にも頼まれないのに、ある喫煙家はそれをお金を出して満足 を買っているということがあります。その裏には薬理作用という問題が控えていて、そ れはお酒もコーヒーも同じような性質でございます。  それによって何らかの満足を得ているという人にお前、それは良くないと言える、他 人がそういうことは言えないと思います。ただ、量が過ぎるとやはりそれは危険性は生 じてまいりますので、そこでやはりすべての嗜好品は量との関係が大事ということにな るという、その危惧的なポイントをひとつ認識しておく必要があるのではないかという ことで、私はたばこ寛容派の方ですから、少しでも駄目という形ではなくて、やはりこ れは量の問題で考えるべきだというふうに思っております。 松本委員  今の議論、どうも1回目の議論に逆戻りしたような印象を受けるのですけれども、す なわち塩とか砂糖とかと同じ次元のものであればこんな委員会いらないと思うのです。  ただし、塩の場合でもさきほど矢崎委員がおっしゃったように、何gぐらいがいいと か悪いとかという線、一応出しています。もっと避けた方がいいとか。たばこについて 適量というのが果してあるのですかというのが、私、そもそもわからなくて、血中ニコ チン濃度とかが何%であれば適量で、私もむしろリラックスするために吸った方がいい という程度のものなのか。それともやはりゼロの方がいいのだけれども、いろいろな文 化的な要素等があってすぐにはできないから、むしろ新たに吸う人をなるべく減らすと いう方向でやっていこうということなのか。これぐらいまでならいいという線が引ける ようなものなのかどうかが。いかがなのですか。その辺。 島尾座長  私どもは基本的には松本委員のおっしゃった後者の方と考えて、この委員会をさせて いただいているつもりでおりますけれども、やらないで済めばそれに越したことはない しかし、やっている人をそれでは今すぐ強引にやめさせる程の凄い害があるものではな いと。ある面ではプラスが全くないとは言わないというような認識で具体的な対策をい ろいろ考えているという段階と思うのですが。  本日、ちょうど時間となってまいりましたので、今までの過去の間に、3回の間いろ いろ議論をいただきましたので、その中の出されたいろいろいな問題点、殊に具体的な 対策に関してはなるべく早く何か措置を取った方がいいと思われるような、もうちょっ と具体的に検討した方がいいだろうと、問題を取り上げるのは時期尚早だというような 少し内容に分けて、具体的な対策、次回まで事務局にまとめていただきまして、その 各々の項目について次回から少し具体的に議論を進めるというような形で進めさせてい ただければと考えています。  本日はどうもありがとうございました。 問い合わせ先   厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課 望月,大石   電話:03-3503-1711 内(2397,2394)