第10回中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会議事要旨
1.日時: |
平成10年4月24日(金)15:00〜 |
2.場所: |
ロフォス湘南研修室「大楠」 |
3.出席委員 |
(五十音順) |
阿部、天野、有馬、石井、板山、上村、喜多、木村、永松、橋本、福武、 桝本、三浦、村田、山口、吉村の各委員 |
4.議事
(1)第9回の議事要旨について確認
(2)福祉人材確保対策室長による資料説明
5.審議の概要
(発言1)
- ○ 社会福祉の理念をはっきりさせよ、との意見が前回にもあったが、お年寄りや障害者、経済的に困難な状況にある人といった社会的弱者に上から何かしてあげるという福祉から、国民すべてにとっての福祉へというのが出発点であったはずである。
- ○ 19世紀半ばから1960年代又は1970年代前半までは、技術の発展が人に幸せを与えるという構図があった。今は世界的に見ても、人に幸せを与える技術が出現しなくなった。こういう時代が今後少なくとも30年は続きそうであり、そういう意味で歴史の大きな転換期である。
- ○ そこで、新たに、人々が幸せとは何かを求め始めている。第一に、現在のように思想や理念で将来を占うことができない時代には、気持ちも不安定でじっとしていられず、常に幸せを求めて動くこととなる。
- ○ また、孤独感や未来への不安感の結果として、今までの地域や家族といったものを超えて、人間共通の痛みや苦しみに関わる者に関心を覚え、国境を越えるような愛情、つながりを意識し始めている。これが、ボランティアや海外青年協力隊などの活動につながっている。
- ○ このように技術が人々を幸せにしない時代においては、障害者であっても、動き、移動することが幸せである。
今までの社会福祉は、施設や地域に限定される傾向があったのではないか。例えば、いろんな人とお互いに助けあいながら種を蒔き生み育てることは、福祉施設の入所者にとって大きな喜びになると思う。
また、病気を持っていても、健康に自由に動きまわれるならば幸せなことであり、病歴などがカード化され、どこでも医療が受けられるようなネットワークが構築されれば、とても安心である。こういった意味で福祉施設の内外について大変革が必要である。
- ○ 第二に、これまでは今日を辛抱すれば明日は良くなると信じられたし、将来の議論に口角泡を飛ばした。明日の見えない現在は、みな今日一日を大切にし、今を輝こうとする時代である。そこで、お洒落感覚や美意識が重要である。
施設や車椅子は、美しさなどが考えられておらず、福祉分野ではおしゃれはぜい沢という意識があったのではないか。これからは福祉の利用者を能動的に捉え、個性を生かすべきである。
- ○ 第三に、明日の不安の中で、みなさびしく、人恋しい思いで生きており、友達をつくり心の支えとすることが今ほど求められているときはない。家族や地域の中でもいいが、旅行で知り合った同士や、趣味の仲間から心の友ができることもある。
- ○ 福祉は日常性・安心の世界であるべきである。子どもが親元を離れて入院するのはつらいことであるので、ある外資系企業は、病院のそばに親子で過ごせる施設を社会貢献で作っている。また、老人には畳が安心であるし、「デイサービス」といったカタカナ言葉はわかりにくい。社会福祉の日本化を進めることはできないか。
- ○ 以上、動きの要素、美しさないし知恵の要素、友達になりあえる要素の3つが私たちが幸せに生きるための3要素である。
(発言2)
- ○ 豊かになりすぎて悩みが生まれているという問題はあるが、福祉の向上には経済の発展は不可欠である。その意味で、福祉の充実のため、民間活力を活用することが重要である。
- ○ 「競争」にはマイナスイメージもあるようだが、自由競争を前提にすれば、自ずから安価で良質なサービスと財が供給され、競争が不完全である場合にそうでないものが出てくる。そこで、市場での自由競争を前提にしつつ、福祉の充実を図っていくことが大切である。
- ○ 利用者の選択の幅を広げ、サービス供給を促進する意味でバウチャー制度の導入が重要と考える。
- ○ 市場を通して利用者の利便性の向上を進めるのだと考えると、行政はルールづくりや監督に徹すべきではないか。
(発言3)
- ○ 市場原理の導入と競争促進というのは別の議論ではないか。市場は価格メカニズムにより調整する仕組みであり、福祉はそもそも市場になじまないところから始まり、その後の発展によって市場的なものが入る余地ができたものと考える。
(発言4)
- ○ 社会福祉分野において市場原理がすべての問題を解決するとは考えていない。例えば、離島や山間僻地のようなところでのサービス提供の問題などマーケットメカニズムを補完する仕組みが必ず必要と考える。
(発言5)
- ○ 競争原理の導入は確かに必要だ。民間企業は儲かるところはきちんとやる。離島や問題を抱え特に関与を要するような人に対してもかかわっていく必要がある。本来、社会福祉とはこういった人に積極的に関わる必要があるのではないか。
- ○ 今までの福祉は待つ姿勢があったが、視察した横須賀基督教社会館には必要に即応する点に感銘を受けた。これからの福祉は積極的に動いていくことが必要ではないか。
(発言6)
- ○ 市場原理とは、事業者と利用者の両者を調整し、資源を効率的に配分するものであり、公正な市場原理が働く限りもうけすぎるということは起こらない。
また、良いサービスが選ばれることを通して質の向上につながる。
- ○ 公的な負担に頼りすぎれば、財政事情により福祉のための財源が削減されるなど不安定さが発生するが、市場原理を導入すれば利用者の財源も利用することができ、その組み合わせにより利用者にとっても都合よく運営できる。
- ○ 市場原理を導入する場合、サービスの供給が十分にあることが重要であり、並行してサービス供給が進むような仕組みを作ることが必要ではないか。まだ市場が成立していないので、いろいろ議論があるだろう。
- ○ 市場原理の導入にあたっては、市場原理が公正に働くよう、監視機能を構築することも重要である。
(発言7)
- ○ 競争原理については、独占が良くない以上、いろいろな場面で働いてもいいと思う。利用者の立場に立つものでもあり、これまでいろいろ議論してきたが、あまり異論がないのではないか。
- ○ 市場原理については、サービスの不足や過剰が価格に反映し需給を調整するという価格メカニズムを意味するが、福祉の世界で価格メカニズムは自由にならない。市場原理ということになれば、福祉のどの分野で機能し、どの分野で機能しないか、整理が必要だと思う。
(発言8)
- ○ これまでの事業者に権利を渡す考えを改めて、利用者に権利を渡せば、個人の尊厳、自立などの問題が解決されると思う。公的介護保険制度やケアプランはそのための制度であると思うが、変化への対応力が弱いなど硬直化の問題があり、それを解決するために、権利を利用者に渡す証としてバウチャーを持たせてはどうか考えている。バウチャーに私費の上乗せを認めれば、民間も参入しやすいと思う。
- ○ 介護保険制度は「公助」に頼りすぎている。多様なサービスを実現するためにも、「自助」を前提にして、「公助」がいかにそれを下支えしていくかという発想が必要である。現物給付でなく、バウチャーかケアプランかを利用者が選べるようにし、自助努力で私費を上乗せする途も開き、選択性を高めればいいのではないか。
(発言9)
- ○ 例えば、利用者により施設入所と在宅利用の間で移動する場合がある。施設入所の場合であってもバウチャーで原資を渡し、施設も民間と同様に、上乗せサービス、横出しサービスを提供できることとするが、その基礎部分は要介護の認定の証と権利であるバウチャーとして個人に渡すのがいいのではないか。
- ○ 施設におけるケアプランも施設にいるケアマネージャーが作るということだと理解している。
(発言10)
- ○ バウチャー制度については、利用しやすくなるというメリットは分かるが、ブラックマーケットができて現金化されるのではないか。また、買い集めて使う者が出てくるなら、ニーズに応じて公平かつ適正にサービスを利用する仕組みを構築できるかどうか疑問がある。さらに、バウチャーの導入により選択の幅が広がるという点については、バウチャーでなくてもサービスの選択は可能であり、関連が理解できない。バウチャー制度については十分な検討が必要と考える。
- ○ 競争というが、悪貨が良貨を駆逐するということもある。質の担保についても、バウチャーによる利用者の選択というだけでは如何かと思う。
(発言11)
- ○ バウチャーは一種の現物給付に近いものと考える。
例えば、モーターボートに乗って爽快感を味わうような極端な使い方とか、ブラックマーケットの問題については、不正利用、不正流通を排除する仕組みが必要と考える。また、消費者保護という観点から複数の第三者評価機関が競い合ってよりよく評価する仕組みが必要と考える。
(発言12)
- ○ ブラックマーケットでの不正流通の問題については憂慮しており、これを排除する仕組みは必要と考えている。
- ○ 利用者が使いやすい制度を作ることが重要だが、ケアプランに基づくサービス提供では、柔軟性に欠ける可能性がある。ケアプランでヘルパーの来る日が具体的に決まり、事業者が派遣予定を立ててしまうと、例えば計画の期間中に孫の家に行こうとしたときに、プランを作り直す必要が生じないか。また、保険だけ(上乗せなし)で利用する日が決まってしまい、好きな日に自費で上乗せや延長してサービスの提供を受けることが難しくなる。
(発言13)
- ○ ケアプランに対する理解が硬すぎるのではないか。ケアプランは、上乗せや家族介護の活用も含めて作成するのであり、バウチャーにすれば柔軟な対応ができるという説明が理解できない。
- ○ サービスの内容がよくわからないお年寄りのような利用者にとって、サービスの選択を助けるのがケアプランであり、作成しなくてもよい。サービスをよく知らない利用者にバウチャーを渡してもサービスをうまく使えるか疑問である。
(発言14)
- ○ ケアプランを作成する場合には、公的介護保険で支払う部分を具体的に明示しなければいけない。バウチャーならば明確であるが、ケアプランでは、公的介護保険による部分をどのように示すことができるだろうか。
(発言15)
- ○ 市場原理や競争原理が議論されているが、福祉は、市場原理から取り残され、脱落してきた失業者や障害者、高齢者、低所得者などに対応する必要がある。社会福祉が対象とする者を念頭に、公的に見る部分はどこか、自助にまかすべき部分あるいは社会連帯とする部分はどこかを議論する必要がある。
(発言16)
- ○ 日本の介護保険制度はドイツと違って2分の1の公費負担が入っているのが大きな特色である。また、ドイツの制度では現金給付が行われており、我が国でもいずれ現金給付が必要となるのではないか。
- ○ 現在、施設の規模は通常最低50人以上となっているが、介護保険制度で市町村が保険者となるので、小規模施設で高齢者も障害者も対象となるという施設がたくさんあってよいのではないか。地域に身近となるし、相互交流もうまくいくと思う。
- 〇 介護機器が高額なのは、小規模の企業が少数の利用者を対象に生産しているからである。大企業が社会貢献という形で安価な機器を生産できないものか。
- ○ 社会福祉法人について、施設は年々価値が減少するため、措置費に減価償却の考え方を認めてもらいたい。
- ○ 理事・監事の定数や評議員会の設置については、社会福祉法人の規模も大きく異なることから、運用基準を緩和する必要があるのではないか。
(発言17)
- ○ 良質の福祉サービスを提供する体制を整備するには時間がかかり、企業が参入したとしても直ちに良質のものが潤沢に提供できるとは思えない。社会福祉サービスはあらゆる階層の人に対応するシステムが必要であり、そのために供給主体を多様にすることは必要であるが、多種多様なサービスの提供に社会福祉施設関係者も苦心している。介護保険の導入でサービスが幅広く利用されることにより、社会福祉施設も大きなインパクトを受けることになるが、競争をあおりすぎてもまちがいが起きるので、自然に競争させる必要がある。
- ○ あらゆるサービスについて、質を担保することが重要であり、ここから自づ と適正な価格というものが決まってくるのではないか。現実には、保険点数により価格が決まるというよりも、人がどう生きているか、人が何を望みどう感じているかを受け止めながら、社会の中で自然に価格が決まる方が、一番いい結果が生まれると思う。
- ○ このためには、保険から対価を得て営まれるサービスだけではだめで、人間性に由来する共助がどれだけ地域の中で育つかが重要である。そのための第一歩として、地域の中での仲間づくりと信頼関係づくりが急務と考える。
(発言18)
- ○ これまではハンディキャップを補うのが福祉、という考え方であったと思うが、今日では大きく変化した。現在の地方自治体の行政は福祉を除いては考えられないというのが実態であり、介護保険の導入をはじめ公的責任はしっかり果たしていかねばならない。
- ○ それぞれの市町村で、既に自主的に介護サービスを実施しているほか、社協、民生委員、ボランティアが機能訓練、給食、入浴サービス等を実施している。
今後は、これらと介護保険制度との整合性をどう図っていくか、地域とどのように関わりをもったものにするかが大きな課題となると考える。
また、公的介護保険における介護サービスをどのような形で整備し、民間の福祉に委託できるものにどのようなものがあるかを明確にしていかなければならない。民間は、行政と異なり、不採算部門を抱えて経営を続けていくことは難しいので、棲み分けをしていくことが必要であろう。
- ○ 特養は希望者のわりに施設数が少なくもっと設置すべきであると言われるが、今後は、自治体として、家庭介護に重点を置くかそれとも施設介護に重点を置くかということを考えた上で、介護保険制度の導入に向けて取り組んでいく必要がある。
(発言19)
- ○ 社会福祉法人のあり方の議論の前提として社会福祉事業の議論する必要があるのではないか。社会福祉法人が行う事業、例えば特別養護老人ホームや保育所と、民間企業の行う介護付き有料老人ホームや保育施設とはどこが違うのかを考えることがポイントになると思う。
(発言20)
- ○ 特養が契約制になった場合、本人や家族に様々な問題がある等契約になじまない者の介護や相談援助にしっかり対応できるのは社会福祉法人しかないであろう。こうした観点から今後とも社会福祉法人に対し税制の優遇措置を講じていく必要がある。
(発言21)
- ○ そのような考え方では、結局企業が対応できない人に対する事業だけが社会 福祉事業ということにならないのか。
(発言22)
- ○ 手を差しのべるべき人に手を差しのばすのが福祉の原点である。たくさんの人ができるだけ幸せになるようにしていくことが必要と考えており、これは企業も社会福祉法人も同じ立場であるが、社会福祉法人が企業が面倒を見ないような人についても面倒を見るので、この点で税制上の優遇措置を行っていかないといけないと思う。
(発言23)
- ○ 人間は物的なものがいくら満たされても幸せにならない。人間は社会的存在であり、寝たきりであっても、他人に役立っているということに幸福を感じる。福祉施設での作業は、市場に通用する水準に達していることは少ないと思うが、高い水準となり人の役に立てるなら、これほど大きな喜びはない。
(発言24)
- ○ 価値観は時代、国、地域、個人によって異なる。社会福祉の議論であれば、福祉の発展を妨げている社会的要因から取り組む必要がある。
- ○ 議論を進めるに当たり、まず、社会福祉の理念や目的を整理する必要がある。社会福祉、社会福祉サービス、社会福祉事業を整理すると、社会福祉サービスとは、先の発言での幸せや欲求の充足を目指すもの、社会福祉とは、自立や社会的統合等の目標を、法制度やボランタリーな対応で実現していくこと、社会福祉事業は、規制や支援という公的関与がある事業である。
- ○ 社会福祉の供給主体について考えると、社会福祉サービスについては、供給主体を多様化し、マーケットの良さを活用してもよいと思う。社会福祉については、社会福祉の価値観や目標を堅持した上で事業を行う場合なら、ボランタリーなものとして参入することには賛成する。さらに社会福祉事業については、法的な関与の下での民間活動やボランタリーな諸活動のこととなる。
- ○ 自立や社会的統合、社会的構成という概念は変化してきているので、自らの責任においてこれらを確保できない人をどのように支援するかという問題を考える必要がある。
(発言25)
- ○ シュバイツアーに「人間が戦争を起こし文化が退廃したのではなく、人間の文化が衰退したから戦争になった」という言葉があり、非常な感銘を受けた。科学技術など文明は起こったが、人間は文化を作ることを怠った。福祉は、文明と文化のギャップを埋めるという新しい視点から出てきた。現在物的には豊かになったが、孤独、不安や不確実性の問題がある。こうした社会的孤立から人間を守り、新しい文化を創造する営みが福祉であると考える。
- ○ 福祉は憲法で保障され、公的制度の下で水準を高めてきたが、その上に民間が提供する分野ができ、さらには市場原理という考え方が出てきた。昔は福祉は虚業であると言われたが、今や福祉は経済を支えると言われている。新しい市場原理や競争というのは福祉に対するチャレンジであり、ある程度のリスクが伴うのでしばらく混迷が続くが、そこに踏み出すしかない。
- ○ 分権化は地方公共団体の自主性、自立性を確保するという意味で進めなければならない。その一方、都道府県の役割が曖昧になった。都道府県の存在をどのように考えるかが重要である。私は市町村の広域連合への協力がその役割だと思う。
- ○ 社会福祉事業法上の社会福祉施設は、無料低額であること、措置施設であることの二類型がある。今回改正で措置を契約にするが、養護施設や乳児院、教護院など直ちにそれができない施設もある。契約に変わっても要援護性は変わらないという点は確認しなければならない。
- ○ 今回の改革と児童福祉審議会との関係はどうなっているのか。児童福祉を少子高齢化の中でどういう形で今回改正の視野におさめるかが課題である。
- ○ 社会福祉事業者の協議体である県社協の位置づけはともかく、市町村社協はボランティア、小規模作業所、住民福祉グループなどの団体が参加できるようにする必要がある。
- ○ 市町村社協がホームヘルプサービス等を実施したことは住民参加を促し、社協への信頼を高めるという意味で評価できる。地域の実情に応じてこうした事業を育てる途をひらいてはどうかと思う。
- ○ 社協の人材の質を高めるため、社会福祉主事の資格の取得、より長期的には社会福祉士の資格を目標とする必要がある。また、社協での相談援助の経験を有する職員や専門員に対して社会福祉士の受験資格を弾力化する必要がある。
(発言26)
- ○ 時代の推移とともに幸福に対する価値観も変遷しており、現在では福祉の措置を受けることについて当然のこと、権利であると考える人も多いが、福祉サービスの利用に当たっては権利のみでなく義務も考慮する必要がある。
- ○ 行政も生活保護行政でもっとテクニックを講じて制度の悪用を防止できるのではないか。また、保育所行政では、かなり遅くまで預からないと上乗せ負担を取れないし、利用者負担を滞納しても、保育所を退所させられない。士族の商法的な福祉行政のつけが回ってきているのではないか。
- ○ 今回の構造改革においては、改革の理念にある、公助と自助の役割分担がポイントではないか。
(発言27)
- ○ 社会福祉制度では、専門性や人材を育てる面が不十分で、第一線で厳しさと暖かさを兼ね備えた運用ができないところに、不十分な点がある。
- ○ 改革の制度論と具体的にどのようにサービスを提供するかという実践論は分けて考えねばならない。社会福祉主事は評判は悪いが、社会福祉士や介護福祉士と同様、社会福祉従事者の目標として信頼されている。だめだからやめるというのでなく改善するべきではないか。
- ○ 介護保険制度の下で、特別養護老人ホームは社会福祉施設として存在すべきか、また存在しうるのかが問題である。重度の要介護者は介護保険の対象となるが、現状ではそれ以上に県や市が単独で上乗せ、横出ししている。これらを福祉活動としてどう位置づけ、公的責任を認めるか否かを整理する必要がある。
- ○ 現在の1種、2種の社会福祉事業の整理、要援護性への対応に社会福祉関係者が深く関心を持っている。また措置費や保育所の委託費が継続するのかという点について整理する必要がある。
- ○ 障害者問題についても、別の観点からの議論が必要である。 障害保健福祉審議会の議論の進め方との調整をを考える必要がある。
- ○ 受給者(国民)の権利と義務については、この審議会が提言すべきではないか。
(発言28)
- ○ 社会福祉法人が経営する特別養護老人ホームは利用者の期待にますます応えられるよう努力するつもりである。
- ○ 今回の改革のきっかけは、措置制度では利用者に応えられなくなった点にあると思う。
(発言29)
- ○ 改革の理念について今までの発言をただ羅列するだけではなく、きちんとおさえる必要があると思う。
- ○ 介護保険への関心が高いので老人保健福祉審議会など他の審議会の情報をこの場で提供してほしい。今回の改正と介護保険制度の導入の整合性の必要性について盛り込む必要がある。
- ○ 市町村主義に移行しつつあるとはいえ、国や都道府県の役割は依然として重要であり、地域保健法や介護保険法のようにその役割を明記すべきである。公助、自助、共助の位置づけも大切である。
(発言30)
- ○ 本日訪問した老人福祉センターでは元気な老人が昼間から囲碁将棋をやっていた。遊ばしてあげるというのが今の福祉の問題点を象徴している。利用者の生きがいという点でも公費の使い方という点でも問題がある。これは国の政策の問題のみならず、国民の選択の問題でもある。キーワードは自己決定の保証であり、そこには今までには抜け落ちていた自己責任が伴うものであるという点を打ち出す必要がある。
- ○ 福祉が雇用を生み出すという視点が重要である。超高齢社会では福祉産業は有望株であり、福祉が地域社会を活性化させるという視点を盛り込むべきである。
(発言31)
- ○ 構造改革は単なる財政問題から必要なのではない。供給と需要のアンバランス、それもミスマッチというのではなく構造的な歪みがあり、それが非効率性や受給者の倫理の崩壊という問題を引き出している。措置制度を典型とする供給者と需要者の分離を改め、利用者が供給にどう関わるかという点が重要である。受け手を受け手のままとしてきた我が国の産業社会の反映であり、それがかわらない限り無駄を再生産し続けることとなる。そういう意味で消費者保護という観点で議論することには違和感を感じる。受け手が如何に供給側に関わるか福祉の世界で実現すべきである。
- ○ 本日見学した社会館は官民共同で、しかも住民を取り込んでおり、この点で参考となる。
(発言32)
- ○ 自立支援と自己決定という概念を盛り込むべきである。自己責任による解決が適当でないため支援するときも、その方法として、個人を信頼し自己責任のもとで選択させるべきである。これらをいくら言葉で言ってもだめで、具体的なものを提示しないと納得できないと思う。
- ○ 本来の福祉である慈善事業と普遍的な福祉サービスはきっちり分けて議論しなければならない。施設整備についても公民同一のサービスを提供しないと、国民は選択できないのではないか。
- ○ 民間企業と社会福祉法人とのイコールフィッティングについては、成果配分や税制や拠点展開についてイコールフィッティングすべきであり、サービス部分については差をつけてはいけないし、補助金についても差をつけるべきではない。現在は、社会福祉法人と民間企業が同じサービスを行っても、民間企業のサービスは利用者に負担をかけており、この構造を改めなければならない。
- ○ 社会福祉事業法という名称を改め、社会福祉基本法というようなくくりで福祉のベースを規定してはどうか。
(発言33)
- ○ 生活指導員、寮母、授産施設、精神薄弱者等の言葉遣いを見直すべきである。
- ○ 小さなセンターに児童から高齢者まで、医療も取り込み官民も統合して横断的なプログラムを効率的に提供するということが大切であると思った。
(発言34)
- ○ 自己決定は権利であると同時に義務として迫られるものでもある。社会福祉の典型的な対象者である老人や障害者にこうした義務を迫るのは、つらい一面もある。
- ○ 昼間から囲碁を打っている老人については、地域行政や家族としては、何とか受け止めていかなければならない。実に様々な要素が含まれており、この点を複眼的に見ていく必要がある。
(発言35)
- ○ 先の福祉八法改正時には関係三審議会の合同部会で審議を深めていった。今回も、委員レベルで、または委員長レベルでもいいので、そのような機会を与えてもらえれば議論が深まるのではないか。
6.日程等
中間報告のとりまとめに向けてたたき台の作成のため起草委員会を設置することについて了承。
今後の日程については、調整の上連絡することで閉会。
以上
問い合わせ先
厚生省社会・援護局企画課
電話 (直)03-3591-9867