98/04/28 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会議事録 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会 議事録 日 時:平成10年4月28日(火) 13:00〜15:00 場 所:中央合同庁舎5号館2階共用第6会議室 出席者:青山博昭、阿部薫、井口泰泉、伊東信行、井上達、岩本晃明、     押尾茂、紫芝良昌、鈴木勝士、鈴木継美、田中勝、津金昌一郎、 寺尾允男、寺田雅昭、西原力、安田峯生、山崎幹夫、和田正江 (各委員) 厚生省:黒川食品化学課長、内田生活化学安全対策室長、堺食品保健課長、    他課長補佐以下8名 オブザーバー:農林水産省、通産省、環境庁、文部省、科学技術庁 ○黒川食品化学課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第1回内分泌かく乱化学物質の健康 影響に関する検討会を開催いたします。 本日は、御多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。 国立がんセンター総長の阿部先生にもこの検討会にお力添えをいただけることになり まして御出席をいただいております。 阿部先生を加えました委員、25名中、ただいま17名の御参加をいただいております。 このほか、岩本先生が遅れて御到着という御連絡をいただいております。座長の選出ま での間、私が議事を進めさせていただきます。 また、速記の都合上、御発言をいただきますときはマイクを使って御発言いただけれ ばと考えております。 開催に当たりまして、小野生活衛生局長からごあいさつを申し上げますべきところで ございますが、生活衛生局長はただいま国会の審議でどうしてもこちらの方へ参ること が出来ません。したがいまして、私が替わって代読をさせていただきます。 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会の開催に当たり、一言ごあいさつ申 し上げます。 本日は、委員の先生方にはお忙しい中、本検討会に御出席いただき、また平素は各専 門分野におきまして生活衛生行政に関し御尽力いただき誠にありがとうございます。 昨今、先生方も御承知のとおり、一部の有機塩素系農薬、プラスチック容器の可塑剤 洗浄剤の界面活性剤等の内分泌かく乱作用による健康への影響が懸念されております。 本件につきましては、人の健康への影響の有無、種類、程度などについて国際的に調査 研究が進められております。また、我が国では国会においても本件に関する議論がなさ れている状況です。 更に、3月13日に開催されました食品衛生調査会毒性・器具容器包装合同部会におい て御議論をいただいたところでもございます。食品及び食品容器等からの暴露のみでな く、水、大気などを介しました暴露も考えられることから、より広い立場から検討を進 めるべきということをこの合同部会において意見を賜ったところでございます。 以上のような状況を踏まえまして、これらの化学物質の健康影響について、今後の検 討課題の整理等について総合的に御議論をいただくため、新たに本検討会を設置するこ とといたしました。国民の健康確保という生活衛生行政の所期の目的を達成するため、 先生方の忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げます。 以上、代読申し上げました。 引き続きまして、本日は第1回の検討会でございますので、委員及び事務局を紹介さ せていただきます。 私、食品化学課長をしております黒川と申します。 それから、私の右は食品保健課長の堺宣道課長でございます。 それから、委員の御紹介を申し上げます。 まず、残留農薬研究所水海道研究所主任の青山博昭先生でございます。 次に、国立がんセンター総長の阿部薫先生でございます。 横浜市立大学理学部教授の井口泰泉先生でございます。 名古屋市立大学学長の伊東信行先生でございます。 国立医薬品食品衛生研究所毒性部長の井上達先生でございます。 公衆衛生院廃棄物工学部長の田中勝先生でございます。 聖マリアンナ医科大学泌尿器科教授の岩本晃明先生でございます。 帝京大学医学部泌尿器科講師の押尾茂先生でございます。 虎ノ門病院副院長・分院院長の紫芝良昌先生でございます。 日本獣医畜産大学教授の鈴木勝士先生でございます。 元国立環境研究所所長の鈴木継美先生でございます。 国立がんセンター研究所支所臨床疫学研究部長の津金昌一郎先生でございます。 大阪大学大学院薬学研究科教授の西原力先生でございます。 国立医薬品食品衛生研究所所長の寺尾允男先生でございます。 国立がんセンター研究所所長の寺田雅昭先生でございます。 広島大学医学部教授の安田峯生先生でございます。 千葉大学名誉教授の山崎幹夫先生でございます。 主婦連合会副会長の和田正江先生でございます。 引き続きまして、座長の選出に移りたいと思います。本検討会の座長でございますが どなたか御推薦いただけませんでしょうか。 ○寺尾委員 化学物質の特性に詳しい伊東先生にお願い出来たらと思いますけれども、いかがでし ょうか。 ○黒川食品化学課長 ただいま、寺尾先生から伊東信行先生の御推薦がございました。皆様、よろしゅうご ざいますでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○黒川食品化学課長 ありがとうございました。それでは、伊東先生、座長をお願いいたしたいと思います 以下の進行につきまして、伊東先生どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○伊東座長 座長を賜りました伊東でございます。よろしくお願いいたします。 それでは、早速会議に入りたいと思います。まず、事務局から配布資料の確認をお願 いいたします。 ○中垣補佐 それでは、事務局から配布資料の確認をさせていただきます。 あらかじめお配りさせていただいた資料と一部差替えがございまして、その差替えを 含め御説明申し上げます。あらかじめお送りさせていただいた資料は、資料の一覧にご ざいますとおり資料1から資料5まで、更に参考資料として参考1、参考2とございま す。本日お手元にお配りしております資料の5というのがございますが、これは先日送 付させていただいた資料の差替えでございます。 また、資料の5−1についてもお手元にございますけれども、これは乱丁がございま したので、これも差し替えさせていただいております。 以上でございますが、乱丁あるいはお手元に資料がうまくいっていないというものが ございますればお申出いただければと思います。よろしゅうございますでしょうか。 ○伊東座長 それでは議事に入りたいと思いますが、本検討会が開催されるということに至りまし た経緯などにつきまして、事務局から御説明いただきたいと思います。 ○黒川食品化学課長 それでは、お手元の資料1、右肩に四角い枠で資料1と書いた「内分泌かく乱化学物 質の健康影響に関する検討会の開催について」という資料をごらんいただきたいと存じ ます。 まず開催の趣旨でございますが、先ほど局長からのごあいさつの中でも申し上げまし たとおり、一部の有機塩素系農薬等につきまして内分泌かく乱作用を有することが指摘 されておりまして、健康への影響が懸念されております。これらにつきましては、人へ の影響の有無、種類、程度等が未解明で、国際的に調査研究が進められておる状況でご ざいますが、これについて食品、更に水、大気等を介しました暴露による健康影響の懸 念に適切に対処するため、国際的な動向も踏まえ、今後の検討課題の整理、個別物質の 具体的な調査、検討など、総合的な検討を行ことが必要である、というような御指摘を いただいております。このため、生活衛生局長の私的検討会といたしまして本内分泌か く乱化学物質の健康影響に関する検討会を開催したところでございます。 本検討会の検討結果につきましては、食品衛生調査会あるいは生活環境審議会等、関 係の審議会に報告いたしまして必要な措置を講ずると、このように考えております。 次に、本検討会の検討すべき課題でございますが、中ほどの(1)(2)に御紹介い たしておりますとおりでございます。 まず、今後行うべき検討課題の整理、更に検討というところでございまして、1)から 6)まで書かれてございます。内分泌かく乱化学物質及びその健康影響に関する現状の把 握、それから内分泌かく乱作用の検査、評価方法、化学物質の優先順位付け、それから 調査研究の進め方、国際的取り組みへの対応、健康影響発生の未然防止に関し検討すべ き事項の策定と、このように考えております。 以上、(1)に記載してございます論点の検討結果に基づきまして、(2)にござい ますような個別物質のデータ収集、更には定量評価、暴露評価等に基づく総合的な安全 性の評価、これによりましていわゆるリスクアセスメント、こういったところまで進ん でいきたいと考えております。 本検討会の議事運営の方法並びに公開についてでございますが、3に記載のとおりで ございまして、この検討会につきましては開催場所等について決定後、速やかに公開い たします。 また、会議は原則として公開といたします。「ただし」以下でございますけれども、 公開によりまして委員の御自由な御発言が制限されるようなおそれがある場合等につき ましては、これは座長の御判断によりまして非公開とすることが出来ます。 更に、議事録につきましても発言者の氏名を記載いたしました上で公開するというこ とになってございますが、この非公開の条件につきましては同様でございます。 5につきましては御報告申し上げましたとおりでございます。 以上が、資料1に関しましての説明でございます。 引き続きまして、資料2の方に入らせていただきます。「エンドクリン問題につい て」という表題の付きました、右肩に資料2と記載しましたペーパーでございます。先 生方には既に御案内のことがほとんどかと思いますが、ポイントだけを申し上げます。 化学物質の中に内分泌機能を中心に影響を及ぼすものがあり、人の健康への影響が懸 念されている。これらにつきましてはここに記載しております『奪われし未来』等の啓 発的な書物がございまして、大変な反響を呼んでおるところでございます。この化学物 質の中にはDDT、プラスチック可塑剤、ダイオキシン等がございます。 最近の、世界における主な取り組みでございますが、年表に記載しておりますとおり 1996年くらいからかなり顕著な取り組みがなされております。我が国におきましては、 やはり1996年から、次のページに入っておりますけれども、記載のとおりの取り組みが 各省においてなされておりまして、例えば環境、厚生、通産、農水、労働省などによる 情報連絡会等が複数回開催されております。 また、一番下でございますけれども、ポリカーボネート樹脂製の食器等につきまして 去る3月13日にこの合同部会が開催され、これらについて内分泌かく乱作用を持つ化学 物質に対する評価という観点から御議論をいただいたところでございます。 ○伊東座長 ありがとうございました。 それでは、ただいまの御説明につきまして何か御質問ございませんでしょうか。井上 先生、追加はよろしゅうございますか。 ありがとうございました。次に、現在までの国内外の調査研究の動向などにつきまし て事務局の方から御説明をいただきたいと思います。 ○黒川食品化学課長 それでは、資料3、4、5につきまして御説明申し上げます。 まず資料3でございます。「内分泌かく乱作用に関する報告書等について」というこ とで、これまでの政府等によります取り組みについてその要点が記載されてございます まず一番最初の丸でございますけれども、これは化学物質のクライシスマネジメント に関する研究ということで、主任研究者瀬高守夫先生により行われております。3−1 ということで更に詳しい資料が付されてございますが、要点はエストロゲン作用に注目 いたしまして欧米における検討の状況、こういったものを整理してございます。文献調 査が中心になっております。 若干これにつきまして更にポイントを申し上げますと、このすぐ後ろだと思いますけ れども、資料3−1となっておりまして、「健康地球研究計画推進研究事業」という ペーパーが付されているかと思います。そこを1枚めくっていただきまして研究方法で ございますが、エストロゲン作用物質、これにはどのようなものがあるか、特性はいか なるものかというような観点から調べまして、次のページにはタモキシフェン、クロミ フェン等かなり知られているもの、DESなどがございます。 大別してというところで2ページの一番下でございますけれども、調査の結果、植物 エストロゲン、植物由来でございます。それから生体エストロゲン、化学物質エストロ ゲンといったようなものがあるということが明らかにされております。 更に、その知見でございますが、4ページでございます。人に関する影響についてと いうことで、中ほどの(1)にその研究結果が記載されてございまして、例えば人に関 する影響については男性と女性ではあらわれ方が異なり、男性では精子数の減少、質の 低下等が、女性では乳がん等が報告されている。それから、流産防止のために高濃度の ジエチルスチルベストロールを投与した母親から生まれた、ジエチルスチルベストロー ルに高度に暴露した子どもにおける異常等が紹介されております。 5ページでございますが、さまざまな文献のレビュー等が行われている訳でございま すけれども、上から3行目ほどでございますが、特に発生しつつある胚子、胎児、新生 児、これらについては成人とは感受性が異なり、暴露により傷付きやすいため留意する 必要があるとされていることが報告されております。 また、本問題の複雑さといたしまして、その最後のパラグラフの中ほどでございます けれども、暴露の複雑さ、結果の微妙さなどの故に、暴露の結果を特定の影響と直接結 び付けることは困難であると、このような紹介が行われているところでございます。以 上が資料3−1でございます。 同様に、外因性内分泌かく乱化学物質問題に関する研究、環境庁が行ったものでござ いますが、更に内分泌系に作用する化学物質に関する調査研究結果、通産省による委託 研究でございます。こういったものが3−2、それから3−3で紹介されております。 時間の関係もございますので、詳細につきましては省略させていただきます。 それから、資料の4でございます。「内分泌かく乱化学物質に関する国際機関の動 き」ということで、右肩に小さく資料4と四角に囲ったペーパーがお手元にあるかと思 います。1998年3月16日から18日まで、これはOECD、それからWHOの国際化学物 質安全計画の主催によりましてワシントンで開催されたものでございます。議事の概要 につきましては後半の部分に記載のとおりでございまして、我が国からは本日の会議に 出席されております井上毒性部長が委員として参加していただいております。あるいは 井上先生の御説明をいただけるかとも考えております。 それから、1枚めくっていただきましてーと書いてございまして「OECD内分泌か く乱化学物質検査及び評価ワーキンググループ会合」というものがほぼ同様のタイミン グでパリで開かれております。議事の内容等は後半に記載のとおりでございますが、こ ちらの会議につきましても本日この検討会に御出席いただいております青山先生、井口 先生、井上先生らが御参加いただいておりまして、あるいは直接御説明を賜れるものと 考えております。 次に、資料5でございますけれども、これは米国環境保護庁における最近までの本問 題に対する取り組みの概要でございます。課長補佐の中垣の方から説明をさせます。 ○中垣補佐 引き続きまして、資料の5について御説明申し上げます。資料の5は本日一部差し替 えさせていただいておりますので、差し替えさせていただいた方に基づいて御説明申し 上げます。 資料の5には資料の5−1と5−2が添附されておりますけれども、まず最初に資料 の5の1ページでございますが、平成9年2月にアメリカの環境保護庁が出しました 「環境内分泌かく乱作用に関する特別報告」というものでございまして、これについて 御説明を申し上げます。 まずその目的でございますけれども、科学的な報告をまとめる、また、それについて 暫定的な評価と分析を行うことが目的とされております。 2番の人への影響というので、大きく分けますと女性生殖系への影響、男性生殖系へ の影響、視床下部と下垂体への影響、甲状腺への影響という形に分かれておりますが、 まず1)の女性生殖系への影響のところをごらんいただきますと、ジエチルスチルベスト ロールなどで実験動物と人で女性生殖材能を一生を通してかく乱することが示されてい ること。成人では機能する多くのフィードバックがなく、成人より低い用量で有害影響 を示することがあるため、発生途中の暴露による影響は懸念されるというようなことが 書かれております。 具体的には子宮内膜症と乳がんが挙がっておりますが、子宮内膜症については少数の アカゲザルを用いた研究でダイオキシン暴露と子宮内膜症の関連が示唆されている。 一方、小規模あるいはパイロットスタディーということでありますけれども、人で見 ますと人の血清中のダイオキシン等の濃度と子宮内膜症の程度との間に相関関係は認め られないということでございます。また、乳がんについてはその仮説を証明する十分な 証拠はないというふうに書いております。 2)が男性生殖器への影響でございますが、げっ歯類においては精子生成能力が低下し 雄性生殖系の異常が引き起こされるという証拠がある。 人においては、先ほどごらんいただきましたDESに子宮内暴露した男性を見ると、 げっ歯類と比較してそのかく乱作用というのは弱いということが実証されている。 また、同じDESに暴露した人から見ると、男性生殖系、がんの発生率の増加は見ら れていないということで、具体的には精子と前立腺がんについて述べておりますが、精 子の項を見てみますと、過去50年にわたり精子生成量が減少したという説について論争 が続いている。勿論、先生方御承知のとおり変わらないというようなこともありますし 減少したというようなものも出ておる訳でございます。 それで、これにつきまして精巣がんが増加している、あるいは、ほかの信頼出来そう な健康影響が発生しているというようなことを考えると、有害影響があった、あるいは 続いているというような考え方は支持されるのではないかというのがこの報告書のスタ ンスでございます。 ただし、人でのこの影響が化学物質の内分泌かく乱作用によるものかどうかというこ とは現時点で不明だ、したがって、研究が必要だというようなことが述べられておりま す。 また、前立腺がんについてでございますが、除草剤が散布された土地と前立腺がん死 との間に、弱いが統計学的に有意な関連がある、また、コークス炉従業員のデータもあ ることが述べられています。 ただし、これらの多環芳香族炭化水素の暴露が人前立腺 がんの増加に寄与しているかどうか、あるいはそのメカニズムというものが内分泌かく 乱によるかどうかというのは確認されていないというようなことが述べられております 下から5、6行目の(2)のデータの評価でございますが、この項は2つに分かれて おります。 まず最初のパラグラフでございますが、人における発生、生殖への影響及びがんの発 生率の増加が内分泌かく乱作用を持つ化学物質に起因するという作業仮説というのは水 生あるいは野生動物種において同じような影響が観察されるということを見ると支持さ れる。 しかしながら、この仮説、あくまで仮説でございますが、次の1)2)3)によって問題と なる、逆に申し上げますと、この仮説は支持されないというようなことを言っておりま して、1)でまず言っておりますのがホルモンの分泌、排せつが高度に体内で調節されて おり、更にフィードバックも掛かっている。 そのため、食事からの吸収と肝臓での解毒後の環境ホルモンが少し増加しても恒常性 をかく乱するには至らないというふうに考えられるというようなことを述べております また、3ページの2)でございますが、いろいろなものについて例えばエストロゲンの レセプターとのバインディング、結合親和性が報告されておりますが、それらを見ると その結合親和性というのは非常に低いこと、また、環境中の濃度も低いということを考 えると、生体で有害反応を引き起こすには恐らく不十分だろうということが述べられて おります。 ただ、胎児と子どもがその変化を調節する能力があるかどうかというのは確かではな いということが述べられております。 また3)でございますが、内分泌機能に影響を与える可能性がある化学物質の混合物で のデータ、すなわち相加とか、相乗とか、そういう複合的な暴露を言っているんだろう と思いますけれども、それは現時点では利用出来ない。 ただ、拮抗作用があるというようなこともまた知られておるので、エストロゲン作用 が弱まる可能性があるというのも知られておるということでございます。 次に、資料の(3)の結論の項でございますが、資料の5−1は社団法人日本化学物 質安全・情報センターが訳された本、のコピーでございます。最初の1ページから10 ページまでがいわゆる要約の部分で、人の健康問題のところだけ結論部分を79ページか らコピーをお配りしております。79ページをごらんいただきますと、最初に御報告した とおりわずかな例外はあるが、内分泌かく乱メカニズムを介した人の健康への有害影響 との間の因果関係は確立されていないということで最初に結論が述べられておりまして 第3パラグラフの上から5行目の「例えば」というところがございますけれども、エス トロゲン作用を持つアルキルフェノールの暴露濃度はppm 、ppb オーダーであること、 一方では、排水中の濃度というのは0.1ppmであること、更に、ラットにおいて血清中の エストラジオールの100 分の1が遊離型で作用を持っていること。 そういうことを考えると、アレキルフェノールのエストロゲンレセプターの50%に結 合する濃度というのが、エストラジオールの1,000 倍から1万倍必要だというような報 告でございますから、それらを合わせて考えると1,000 倍に100 を掛けた10万、あるい は100 万、これぐらいの多量の化合物が活性を持つには必要となるだろうというような 考察をいたしております。 その下には、正常な人の女性ではppb 濃度のエストラジオールは制御出来るんだ。更 に、天然の生体フラボノイドのエストロジェン等価量と比較すると、食事を通じて暴露 される外因性エストロゲンの暴露は非常にわずかだというようなことも述べております し、拮抗作用あるいはダウンレギュレーション、そのようなことを考えてみると、79 ページの下から2行目が結論でございますが、これらを総合すると技術パネル、このパ ネルでございますが、利用出来る証拠に基づく現在の環境濃度で単一のエスロジェン化 学物質に暴露するだけでは、生体において有害影響を引き起こすには恐らく不十分であ ろうという結論に達したということが述べられております。 それから後に懸念される点を述べておりますが、1つ最初に述べておりますのが胎児 新生児の問題、次に述べておりますのがエストロゲンレセプター部位以外での部位での 作用の問題、あるいは相加、相乗の問題、あるいはそれにちなみますアンタゴニスト拮 抗作用の問題、あるいは80ページの2番目の「もう一つ」から始まるパラグラフでござ いますが、ガイドライン、試験プロトコールの策定が必要だというような問題を述べて おりますし、その次のパラグラフでは2世代生殖試験、これによって生殖発生毒性試験 と2年のがんのバイオアッセイで多くの有害影響が検出されるはずだと述べております ただ、問題となってくるのは経胎盤発がん、これが確認出来るようにはデザインされ ていないというようなことも述べております。 80ページの下から4行目でございますが、リスクアセスメント、有害性あるいは危険 性の評価という形で御理解いただければと思いますけれども、リスクアセスメントにつ いて例えば食事中の植物エストロゲンの問題、あるいは有害影響の相加、相乗、アンタ ゴニストの問題等について述べておるところでございます。 次に、資料の5の4ページに入らせていただきますが、これもアメリカのEPAが行 っておりますEDSTACと通常呼ばれておりますけれども、それの報告書の案でござ います。平成10年3月版ということです。 4ページの1の「背景と目的」のところでございますが、この第2パラグラフ、アメ リカでは96年8月に食品品質保護法と安全飲料水法が制定された。この中で、アメリカ の環境保護庁がこの内分泌かく乱化学物質についていわゆるスクリーニングプログラム を開発するということなどが定められた。この中身として、99年の8月までにそのプロ グラムを実施して、2000年8月までにその進行状況を議会に報告するということが定め られております。 このような動きがあったことから、EDSTACと通常呼んでおりますが、エンドク リンディスラプター・スクリーニング・アンド・テスティング・アドバイザリー・コミ ッティという諮問委員会でございますが、96年5月に設置されております。これは39名 の委員から成っておりまして、4つの作業ワーキンググループが設けられている。これ から御説明する内容は平成10年3月に公表されたものでございますが、現在インターネ ットを見てみますと10年4月版が既に載っております。ちょっと資料の作成上、間に合 わなかったので10年3月版を基に御説明し、我々が気づいた点で10年4月版について言 及させていただきたいと思います。 アメリカの取り組みについては紹介しましたので省略します。 5ページでございますが、まず定義の項でございますけれども、エンドクリンディス ラプターの定義で一応仮の訳といたしましては、内分泌系の機能に影響を与え、それに よって個体、あるいはその子孫、あるいは集団に有害影響を引き起こす外因性の化学物 質、またはその混合物という形で載っておりますが、これが4月版では若干変更になっ ております。 そこを御紹介申し上げますと英文版の2行目、アンド・ゼアバイ・コージズ・アド バース・エフェクツというのがありますけれども、このエフェクツの後にアット・ザ・ レベル・オブが加えられてオーガニズムに続くという形になっておりますし、最後のポ ピュレーションの後にベースド・オン・サイエンティフィック・プリンシプル・デー タ・ウェート・オブ・エビデンス・アンド・プリコーショナリー・プリンシプルという のが載っております。すなわち科学的な原則、データ、ウェート・オブ・エビデンスを どう訳すかは難しいんだろうと思いますが、証拠の重みづけ、それとプリコーショナ リー・プリンシプル、これに基づいてというような文章が付け加えられております。 また、(2)にポテンシャル・エンドクリンディスラプターというのがあるんですが これは4月版では削除になっておりますので説明を省略させていただきます。 4番の「スクリーニング及び検査計画案の概要」でございますが、簡単に申し上げま すとスクリーニングが3つに分かれております。具体的には、(1)の事前スクリーニ ングというものと、(2)の第1段階のスクリーニング、ティアワンスクリーニング、 その次の6ページをごらんいただきますと(3)のティアツーテスティング、これはス クリーニングじゃなくてテスティングというふうに分かれておりまして、この3段階か ら成っております。 最初の(1)のハイスループット事前スクリーニングというのを御説明したいと思い ますが、この目的は比較的短期間に予備的な情報を得ること。何に使うかということで ございますが、潜在的な内分泌かく乱物質の検出、あるいは第1段階のスクリーニング にいくかどうかというところをチェックをするということでございまして、具体的には エストロゲン、アンドロゲン、甲状腺ホルモンのレセプターに対する作用を検出するも のであります。 どういう作用かと申し上げますと、転写活性とレセプターバインディングの2つを見 るというようなことが提案されております。また、具体的には年間1万ポンド、約4.5 トンでございますが、これ以上製造されている物質、1万5,000 物質を対象にこのハイ スループットの事前スクリーニングに掛けていくということが提案されております。 (2)がティアワンスクリーニングでございますが、これはインビボとインビトロに 分かれておりまして、6ページをごらんいただきますとインビトロとインビボの2つに 分けられております。インビトロのERというのがエストロゲンレセプター、2)のAR というのがアンドロゲンのレセプター、3)がステロイド合成酵素系に関するものでござ いまして、1)と2)については結合親和性とレポーター遺伝子の発現、これを指標とする というようなことが提案されております。 またインビボ、生体内でございますが、生体内の方につきましては1)が卵巣を摘出し たラット、あるいは未熟のラットで3日間投与して子宮が肥大するかどうかを指標とす るような試験、その他の試験が5番まで提案されております。 (3)がティアツーのテスティング、これは最終的なテストということで、ここはス クリーニングじゃなくてテストという表現になっておる訳でございますが、これが提案 されておりまして、この目的というのは人と野生動物における内分泌かく乱の性質、可 能性、特に用量反応関係、これを明らかにすることだということが述べられております 具体的にはどういうものかと申し上げますと、テスティングというところをごらんい ただきますと1)で挙げられておりますのはいわゆる2世代の繁殖試験でございます。勿 論、2世代の繁殖試験の評価項目と申しますかエンドポイント、これらについてはいろ いろな議論がありますし、改正しなければならないだろうというふうに言われておりま すが、基本は1)の2世代繁殖試験を中心とするものでございます。また、2)はウズラ、 マガモなど鳥を用いた生殖試験、3)が魚のライフサイクル、4)がアミ類、5)がカエルの オタマジャクシでございますが、この詳細については別紙の2に付けておりますが、今 は省略させていただきます。 (4)の危害分析、いわゆるハザードアセスメントと言われているものでございます が、このハザードアセスメントを最終的にここに持ってくる訳でございますけれども、 1)がいわゆる定性的な問題、2)が定量的な問題、この2つをやる必要があるんだという ことが述べられております。 (5)は具体的にどのような形で進めていくかということでございますけれども、ア メリカにはTSCAと呼ばれる法律がありまして、日本で言うと化審法に相当するよう な法律ではないかと思いますけれども、この法律、毒性物質規制法と訳させていただい ておりますが、それを見ると8万6,000 の物質が載っておる。これを4つに分類すると いうことが提案されております。 その次のページでございますが、1)から4)までの4つに分けることが提案されておる 訳でございますが、1)がポリマー、これが約2万5,000 物質載っておる。それで、この うち分子量が1,000 より小さいものを対象にするとされています。それで、これを優先 順位、プライオリティーを付けて、先ほど御説明したT1S、T2T、ハザードアセス メントという順で進めていくことが述べられています。 2)が一番大きなグループでございまして、8万6,000 のうちの約6万がこれに入るだ ろうと言われている訳でございますが、先ほど御説明したようにこのうちの1万ポンド 4.5 トン相当以上製造されているものについてHTPS、ハイスループットの事前スク リーニングの対象にしていくというようなことが述べられております。それで、勿論そ こで優先順位付けをした後、T1S、T2Tへいくというようなパターンでございます 3)が現在既にデータがあるもの、あるいは4)もそうでございますが、データがあるも のについてはHTPSということではなくてT1Sあるいはハザードアセスメントから いくということでございます。 それを御説明したのが別紙1でございますが、別紙1をごらんいただきますと、一番 最初に初期分類となっておりますけれども、先ほど御説明したようにTSCA、アメリ カの毒性物質規制法には8万6,000 の物質がある。これを4つのグループに分ける。そ れで、中心になりますのは右から2番目の6万の物質でございますが、このうち製造量 が多いものについてハイスループット、ロボットを用いた自動化されたインビトロの試 験系でまず試験をする。その上で優先順位付けをした後、T1S、先ほど申し上げまし たインビトロ系とインビボ系の2つに分かれている訳でございますが、これを試験する 更に、それでも情報がプラスのもの、ポジティブのもの、これについてはT2T、先ほ ど申し上げました2世代繁殖試験を中心とする試験をやる。その結果として、最終的に ハザードアセスメントをやるというのがアメリカの現在の提案でございます。 前のページに戻らせていただいて、それではスケジュールがどうなっておるかという ことでございますが、5番目に今後の予定というものを載せておりますのでこれを御説 明したいと思います。先ほど御説明しましたアメリカの96年の法律におきまして、アメ リカの環境保護庁は98年8月までにスクリーニング計画をつくらなければならないとい うことが決められておりますので、それを目標に作業が進められておるということでご ざいます。したがいまして1)でございますが、EDSTACの報告書、最終報告書とい うのは98年8月がめどにされております。 それで、飛びますけれども3)の「EPAの内分泌かく乱化学物質スクリーニング及び 検査計画の策定」のアでございますが「食品品質保護法、安全飲料水法に基づく提案」 これが98年8月になっておりますが、これがイコールで結ばれるものでございます。性 格的には同じものでございます。 2)でございますがHTPS、ハイスループットの自動化されたインビドロの試験系、 これについてはアでございますが実施可能性、あるいはバリデーション、スタディーを 今年の2月から7月にかけてやる。 ウでございますが、その結果に基づいて来年の2月から4月に実際に試験をするとい うことでございます。 3)のイでございますけれども、2)のウでHTPSの実施を受けてその試験結果を3)の イの99年11月に公表をする。また、HTPSの試験結果を受けてT1S、T2Tのプラ イオリティーリストの案でございますが、その案を99年の11月に公表ということになっ ております。 また、ウでございますがT1S、あるいはT2Tのバリデーションのスタディーの結 果、これを2000年11月に公表するということになっております。 と申しますのも4)でございますが、T1S、T2Tを見てみますと、T1Sというの は第1段階のスクリーニングでインビトロとインビボがあるんですが、この試験法の開 発あるいはそのバリデーション、検証活動に98年の8月から2000年の7月までかかるだ ろう。すなわち約2年かかるということが述べられておりまして、そのために先ほど申 し上げましたとおりT1S、T2Tのバリデーションスタディの結果の公表は2000年の 11月に予定されておるということでございます。 では、具体的な試験はいつやるかというのが4)のイからオまででございますけれども T1Sの最初の試験が2000年の11月から2001年の11月に1年かけてやる。また、エでご ざいますけれども、2世代繁殖試験を中心とするT2Tでございますが、2000年の11月 から2002年にかけてやる。すなわち、アメリカにおきましても試験系の開発に2年ちょ っとぐらいかかるだろうというようなことがこのエンドクリンのEDSTACと呼ばれ る報告書には今のところそういう報告がなされております。以上でございます。 ○伊東座長 ありがとうございました。随分たくさんの新しい資料を御提示いただいた訳でありま すけれども、ちょっと論議に入ります前に内田室長を御紹介申し上げます。 ○内田生活化学安全対策室長 生活化学安全対策室長の内田でございます。生活化学では一般的な化学物質の毒性評 価を担当しております。よろしくお願いいたします。 ○伊東座長 それから、寺田先生は1時50分ということで間もなく御退席ということですが、何か この際、一言御発言いただきたいと思います。 ○寺田委員 ありがとうございます。2時ぐらいまでいられるんですけれども、最初の会から途中 退席ということで大変失礼いたします。やむを得ない仕事がありまして退席をいたしま す。 特別な質問はございませんけれども、これだけの資料をよく集められたなと大変感心 しております。どうもありがとうございました。 ○伊東座長 それでは、ただいまの黒川課長、それから中垣補佐からいろいろ御説明がございまし たけれども、これに関係してずっと検討されたり、あるいは国外の会議に御出席いただ いておりました先生方からの御意見があれば御発言いただきたいと思います。 まず井上先生、何かこれに関係したことがございましたら御発言いただきたいと思い ます。 ○井上委員 特に補足することはございませんのですが、先ほど御説明がありましたようにOEC D、これは資料はちょっと前後しておりましてOECDの会議が先に開催されまして、 その後WHO、IPCSの会議が開催された訳でありますが、OECDの会議では御存 じのとおり、OECDでは既存のさまざまなテストガイドラインを持っておりますので この既存のガイドラインの中でどれだけこうした内分泌障害性の化学物質がカバーされ ているか、また、それからこぼれているものがどのぐらいあるのかというようなことを 視点に、先ほど御説明があったようなさまざまなテストを並行して検討していく。また OECDのガイドラインにないカエルですね、両生類のようなものについてはEPAが それに先立ってゼノパス、アフリカツメガエルに関する実験を進めておりますので、そ ういった情報を取り入れて新たに付け加えて進めていくというような形でもって会議が 進められました。 その中での特徴は2点ございまして、人への影響と環境への影響をそれぞれ別々の視 点から調べていく、そして、これはその会議で出た訳ではありませんので言い過ぎにな るといけませんけれども、それぞれに対して手だてを打っていくというようなことが念 頭に置かれているように私は受け止めました。 それから、引き続きましてWHO、IPCSの会議はこのメモの中にも既に記載され ておりますように、ちょうど地球温暖化に関してWHOがパブリケーションをかつて出 しましたが、あのようなスタイルでこのエンドクラインディスラプターの問題に関する ポジションペーパーを各国の学識経験者の意見を集めてサイエンティフィック・パブリ ケーションとして出すということ、そしてまた、そのために各国の情報をリサーチイン ベントリーと称しておりますけれども、研究目録ですか、そういったものを収集すると いうような2つの方針がこのメモにありますように決まりました。 それで、2年ほどの計画でもってポジションペーパーをパブリケーションする。それ に沿って各国、あるいはOECD、あるいはEPA等がそれに並行して進めている現在 のリスクアセスメントに向けての検査であるとか、そういったものへの科学的な基礎づ くり、サポートをする、そういうような視点で話し合いが行われました。 それで、これについての会議は引き続いて次回イタリアでそのステアリング・コミッ ティが開かれる準備が行われていると聞いております。以上です。 ○伊東座長 ありがとうございました。何か井上先生の御説明に御質問、コメントなどございませ んか。 それでは、同じように国内外の動向、調査に御関係のありました井口先生、何か御発 言いただけませんでしょうか。 ○井口委員 井上先生のお話に付け加えることは特にありませんけれども、環境中の生物としては 魚類と、それから両性類、カエルの類、それから鳥類、その3つを中心にしてこれから 実際の試験法が詰められていくと思います。以上です。 ○伊東座長 何か御質問ございませんか。特にないようでしたら、同じようにいろいろの調査に関 係されております青山先生、何かございますか。 ○青山委員 基本的に井上先生の御説明どおりだと思うんですが、OECDの会議でEPAの代表 がその場の発言の中でHTPSがどうして重要かということを説明してくれましたので 少し補足させていただきます。 これはQSARと申しましてクオンタテイティブ・ストラクチュア・アクティビテ ィー・リレーションシップという構造活性相関を見るのに従来の毒性物質ですとおおむ ねデータベースがあるんですが、特にエンドクラインディスラプターの場合、エストロ ゲンと似ても似つかないような構造のものが意外とレセプターにくっ付いたり、あるい はエストロゲンの作用を模倣するようなことがあるので、このデータベースをつくるた めにもレセプターにバインドするかどうかをなるべくたくさんの化合物についてなるべ く早い時期につくりたい。そのためには、この方法が非常に有効であるというような説 明がありました。 それだけ補足させていただきます。 ○伊東座長 ありがとうございました。何か御質問ございますでしょうか。 膨大な資料をお出しいただいた訳でございますので、今日は非常に重要な第1回の会 議でありますし、今後の我が国の対応についても影響するところは大きいと思いますの で、御出席の委員の先生方から御発言をお願いしたいというふうに思います。それで、 今日は国立がんセンターの阿部総長も先ほど特に御参加いただいたということですが、 阿部先生何かございますか。 では、ほかの方からいきましょうか。そうしたら、山崎先生いかがですか。山崎先生 は毒性の特にナチュラルな物質についてのいろいろの御意見、御経験をお持ちでござい ますから。 ○山崎委員 座長の御指名でございますけれども、もう少し勉強してからというふうに思っており ます。 ただ、今いろいろ御説明を伺って自然の中に確かにエストロゲン作用を持つものが、 例えば植物成分等に含まれてございまして、そういう生活環境の中で人類がずっと生活 を続けるうちに、そういう環境に生理作用が順応するということは今まであったと思う んです。ですから、この報告の中にもありますように、そういう環境の中でのエストロ ゲン作用物質による危害作用はある程度は生体内でこなしてきたという事実はあると思 うんです。 ただ、いろいろな化学物質が環境中に排出されていくという現代的な環境の変化が、 果たしてそういう生理機能の範囲に収まるかどうかというのが現在非常に大きな問題に なってきていると思います。そこをやはり突き詰めていかなければいけないだろう。で すから、井上先生のお話にあった人の問題と、それから環境の問題というのを分けて、 環境の中でのそういう物質のレベルをしっかりと押さえるということと、それからそれ が生物に対してどういうような影響を与えていくか。究極的には人の安全性です。 もう一つ、いろいろな両生類とか、魚類とか、鳥類を含めて動物のレベル、これは実 験動物と言っていいのかどうか分かりませんが、そのレベルで影響が出るということと それから人への影響が出るということは、この間にはかなり大きな種差というか、ギャ ップがあると思うんですが、そういう動物に影響が見られるけれども人は出ないからこ れが安全なんだという言い方は私は出来ないんじゃないかというふうに思っております やはり、いろいろな生物に囲まれて調和された自然の中での人類の生活というのがある 訳ですから、こういう動物で影響が得られたけれども人には影響はないという結論は、 我々にとって安心の出来る結論には結び付かないだろうというのが、私の今のところで の率直な感想でございます。 まだ最初に申しましたようにこれから勉強して意見をいろいろ申し上げさせていただ こうという矢先でございますので、御指名でしたので率直な意見というか、感想を申し 述べさせていただきました。 ○伊東座長 山崎先生の御意見に対して、阿部先生どうぞ。 ○阿部委員 すみません、山崎先生に先にやらせてしまって。 いろいろなことがあるんじゃないかと思うんですが、先生が今おっしゃったように、 人と動物というのは作用が違うということは一つ重要なことだと思うんです。タモキシ フェンという抗がん剤、乳がんで一番使われている薬がありますけれども、あれは避妊 薬として開発されたものなんですが、動物に女性ホルモン活性がある訳ですね。それが ほとんど最初はなおざりにされていたところ、何かの機会に気がついて、人にはほとん ど女性ホルモン作用がないということで使われている。ですから、エストロゲンレセプ ターに結合するということと女性ホルモン作用ということとは別ではないかというふう に思いますので、やはり最終的には人に対する影響ということを考えますと種差がある ということを忘れてはいけないんじゃないか。 それから、非常に女性ホルモンばかり言われていますけれども、私は昔こういう患者 をアメリカで診たことがあるんです。実に見事なストリッパーなんですが、やって来た のが非常に具合が悪いと言うんです。それで、実際によく調べてみますと男なんです。 男でテストステロン、デハイドロテストステロンに変換する酵素が欠損している。そう いたしますとフェノタイプとしては女になってしまう訳ですね。ですから、女性ホルモ ンが作用すると女になるんじゃなくて、男性ホルモンをブロックするとフェノタイプが 人間の場合は女になってしまう訳ですね。ですから、非常に表現系とその作用の仕方が 違うんじゃないか。ということは、アンドロゲンレセプターに結合するものでもそれを 抑制すれば十分女性ホルモンとしての影響が出ると思われます。 それからもう一つ、間脳で産生され、下垂体のLH、FSHの分泌をおこすLH−R Hというホルモンがあります。それを合成したLH−RHのアナログがあるんです。こ れは最近、前立腺がんの治療に使われているんですけれども、これは1回打てば1か月 間効いている訳です。そして、これはレセプターに結合するアゴニストなんです。 ところが、余りにも結合が強いので、分かりやすく言うと離れないためにレセプター がなくなってしまう。そして、結局ブロッカーになってしまいますね。そうするとアン ドロゲン作用が出なくなります。 ですから、いろいろな視点から果たしてそういうふうなペプタイド類似のようなもの が自然界にあるかどうかということが一つ問題かもしれませんけれども、エストロゲン レセプターだけではなくていろいろなホルモンもまとめて考えないといけないんじゃな いかという気がしております。 最初ですから何を言ってもいいという座長のお話なので勝手なことを言わせていただ きました。 ○伊東座長 ありがとうございました。 阿部先生、山崎先生、いろいろとお考えのところを御発言いただきました。それから 皆様方、このたくさんの膨大な資料を、今日しばらくの間にこれだけ出していただきま したので、これを今日のディスカッションを踏まえてお考えいただく。そして、次回の 会議に有用に使っていただくということもこの第1回の会の目的でもあろうかと思いま すので、なお御意見のある方、私が御発言がなければ指名させていただきますが、出し ていただきたい。 それで、座長が余り言うのはおかしいと思うんですけれども、1つだけ感じますのは その昔というか、今も続いておりますけれども、発がん物質の規制のときに発がん性が どんどんいろいろなところから見つかってきたときに、その強さと人に対するリスクア セスメントというような立場で非常に詳しく検討されるようになってきた。それで、初 期のあるころは例えばエームステストで陽性であれば発がん性があるのではないかとい うディスカッションで非常に大きな社会問題を引き起こしましたけれども、それをずっ と検討していくうちに必ずしもそうではない。そして、もっと進んでまいりまして、発 がん物質の中には非常に強いものと、余り問題にする必要のないものとがあるというこ とも分かってまいりました。それで、この内分泌かく乱物質についてもそのような立場 での検討がこれからも必要であろうというふうに思うんですけれども、この用量相関、 用量反応ということについて何か御意見がございましたら是非御発言いただきたいと思 うんですが、いかがでございますか。 ○寺尾委員 用量相関でないといけないですか。 ○伊東座長 それは構いません。用量相関も私は一つ提案させていただいただけでありまして。 ○寺尾委員 そうですか。では、ほかのことでちょっと発言させていただきます。 というのは、資料1で検討課題というのがございますね。1)から6)までございます。 それで、確かにこれ全部をやるのが必要なんですけれども今、資料5でアメリカの計画 の説明を受けたんですが、これはまた非常にばっちりあらゆることを網羅してやってい るということもありますけれども、日本でこれからやるに当たりましてアメリカの計画 というのはどういうふうに取り入れるのかということをまず決める必要があるのではな いかなという気がします。 というのは、同じことをやるのが本当にいいことなのか。あるいは、確かに2つの国 あるいはもっとたくさんいろいろな国が出てくるかもしれませんけれども、やってデー タを突き合わせるというのも必要かもしれませんが、何となく同じ結果になると無駄な ことがありますので、アメリカの計画をよく検討して、アメリカに依存するところは依 存して、日本は日本独自の問題というのがあるかもしれませんので、そこだけを集中的 にやるのか、あるいは、試験法にしましても国によって試験法が違うと、結果をまた突 き合わせるときに非常に解釈が難しくなりますので、あるいは統一するのかとか、そう いう問題を最初に議論する必要があるのではないかという気がしているんです。 ○伊東座長 それについてはいかがでしょうか。 ○黒川食品化学課長 御指摘の点でございますが、御案内のとおりこの内分泌かく乱化学物質の問題につき ましては米国のEPAが中でも一歩進んだ取り組みを展開しつつあるというところは、 恐らく各国とも同様の認識だと思います。それで、こういったことを一つのベースにW HOあるいはOECDが情報交換等の場を提供いたしまして、それでどこまで研究が進 んだか、あるいは関連する情報について各国から提供を求めているというような状況と 理解しております。 それで、これを踏まえまして先ほど井上先生ほか数人の先生からのお話もございまし たとおり、我が国からも研究者中心に参画をいたしまして、私どもで行っております研 究等について発表するとともに、将来の環境づくりを行っているという状況がございま す。 具体的には、お手元の資料で申し上げますと「エンドクリン問題について」という資 料2でございまして、若干御説明いたしましたが、「厚生省における内分泌かく乱物質 に関する研究について」という3枚目の部分でございます。平成8、9年度、それから 2の今後の研究課題というようになっておる訳でございますが、厚生科学研究費補助金 の生活安全総合研究費、これは平成10年度でございますけれども予算案が決定されたと ころでございまして、例えばこの検討会におきます議論に基づきまして、資料の1に戻 りますが、各国の進捗状況を横に置いて、例えば優先順位付け、あるいは我が国が最も 得意としている分野での貢献といったことについて御議論あるいは方向付け等をいただ ければと考えております。 ○伊東座長 寺尾先生よろしゅうございますか。何か先生御自身の御意見とかはございますか。 ○寺尾委員 差し当たってはないのでございますけれども、とにかくこれは非常に国民の皆様が非 常に心配している問題でありますし、急速に短期間のうちにある程度の結論を出さない といけないと思いますので、やはり効率よく研究を進めるということが必要だろうと思 います。具体的に云々という話は、私は今すぐには出てこないんですけれども。 ○伊東座長 先生方に厚生省から御連絡がいったと思いますけれども、来月の終わりにまたこの会 をやるというようなことを計画しておられる訳でありまして、それまでにどういった関 係の方々とそれぞれ相談しながら、どのものについてどこを重点的に出していくかとい うことになろうかと思います。 ○寺尾委員 例えば米国の例ですと6万5,000 と書いてありましたけれども、莫大な数があります ね。それで、果たしてアメリカはアメリカで選ぶんでしょうけれども、あのリストで漏 れるようなもので日本で重要な問題、化合物があるのかどうかということもちゃんと検 討する必要があるのではないかなという気がしますけれども、もしかしたら完全にオー バーラップしているかもしれませんし、あるいはずれているかもしれないというような ことも必要ではないかと思います。 ○中垣補佐 今、寺尾委員から御指摘がありましたのは資料5の別紙の1、資料5の8ページに当 たるんですけれども、最初にアメリカのTSCAという法律に8万6,000の物質 と載っ ておりまして、一番中心になるのが左から2番目のところで約6万、これが青山委員か ら御紹介のあったHTPS、ハイスループット、簡単に申し上げますとロボットを用い てインビトロの検出系を用いて自動的に分析をするというような機械、あるいはその一 連の測定器を言うんだそうでございますけれども、これに掛けていく。 その理由の一つとして、構造活性相関的なものが見られないからというような御紹介 があった訳でございますが、勿論この対象となるのがアメリカで大体4.5 トン製造され ているものでございますから、そういう意味では日本と若干違うというのもありましょ うし、またこういった全体的な枠組みがいいのかどうか、あるいは、このEDSTAC の報告書というのは資料の5−2に一部チャプター3だけ付けておりますが、全体で申 し上げますと300 ページを超えるような非常に詳細な議論をやっておる訳でございます 先ほど御紹介申し上げましたように、HTPSだとエストロゲン、アンドロゲン、それ と甲状腺、これを考えるというようなことも載っておりますし、また阿部委員からはそ れ以外のホルモン系をどう考えるのかというような御指摘もありますし、またT1Sに つきましてもインビトロとインビボ系でバインディングアッセイでありますとか、転写 活性であるとか、そういうような詳細な議論が展開されていっている訳でございます。 そういう意味から申し上げますと、先生方の今までの御経験を踏まえ、こういったレ ポートをレビューしていただいてどういう枠組みがいいのかというのは、寺尾委員御指 摘のとおり議論をしていただく必要があるのかなと思います。 ○伊東座長 どうぞ。 ○青山委員 第1回目ということで、今の方向性の問題の少しヒントになればと思って御紹介した いんですが、特に欧米、アメリカとかヨーロッパの方では内分泌かく乱物質の影響を野 生生物に対する影響と、それから人に対する影響と、2つに分けて考えております。こ のところは井上先生が今、御説明くださったとおりでありますが、一方、我々の感覚で ありますと、最終的には人への影響というのが最も関心が高いのではないかと思います ですから、今回の検討会の性格上も考えますと、EPAは恐らく、例えばですが鳥の繁 殖試験をやるのは人への影響を類推したいからやるのではなくて鳥への影響を直接見た いということだと私は理解しております。ですから、そういう点でいきますと力点を人 への健康影響に絞り込んで方向を探っていくというようなこともストラテジーの一つに なるのではないかというふうに感じます。 ○伊東座長 何かございますか。どうぞ。 ○鈴木(継)委員 環境のリスクの問題を考えるときに、人の健康と生態系及び生態系を構成している各 種野生生物というのは実は恐らく価値から言うと同じようなもので、この内分泌かく乱 化学物質問題というのはその2つを別々に扱うのでは多分だめで、全部を全体としてな がめながら仕事を進めないといかぬのではないかということを示唆している問題だと私 は理解しているんです。 ですから、勿論、人の健康に力点があってというのは、それはそれで結構なんですけ れども、そのときにいつでもパラレルに野生動物及び生態系に対する影響は何であった かということを見落とさないようにやっていかないといかぬということになるんじゃな いでしょうか。 ○伊東座長 もうお一人どうぞ。 ○柴芝委員 私は医師としての立場からなんですけれども、やはり人ということが一番関心はある 訳ですが、勿論それとパラレルに環境とか、それから野生生物が大事であるということ も十分認識した上でやはり人というふうな考え方をしたいと思っておりますけれども、 最初にまず資料の中でほかの方が御指摘になったら言うまでもないなと思っておりまし たが、資料の5の真ん中辺に「成人では機能する多くのフィードバックメカニズムがな く、成人より低い用量で有害影響が示されることがありうるため」云々の、この成人と いうのは新生児とか胎児に置き換えないと文章が成り立たないんですが、これはそのよ うに訂正させていただいてよろしゅうございますでしょうか。 ○中垣補佐 申し訳ございません。おっしゃられるとおりで、具体的に申し上げますと資料5の 1ページ、2番の「人の健康への影響」の(1)の1)の4行目の末尾でございますが、 「成人」となっておりますけれども「新生児または胎児では」というのを入れていただ けるとありがたいと思います。 それと、ついでに誠に申し訳ありません。先ほど気がつけばよかったんですが、同じ く資料2の別紙の2でございまして、1の2)にARバインディングアッセイ、アンドロ ゲンのバインディングアッセイがございますけれども、読んでいただけば分かると思い ますが、この2行目の末尾の「未結合のエストラジオール」というのは「未結合のアン ドロゲン」でございますので訂正をさせていただきます。 ○柴芝委員 それから、私ども内分泌学会でもこの問題に非常に興味を持っておりまして、昨年内 分泌学会でEPAの専門家を呼びましてアンチアンドロゲンの話をしてもらいました。 そのときに、資料の5−1の8ページにありますアーノルドらの相乗性という問題が ございますけれども、この相乗性というのは『サイエンス』に論文が出まして数千倍の 相乗性があるという話でみんな非常に驚いたのでございますが、その時点で既に否定の 論文がかなりあって、正式にこれは撤回されたというふうに聞いております。それで、 今のところその相乗性ではなくて相加性までのデータが得られているというふうに聞い ております。 それで、私が発言させていただきたいと思っておりますのは、いずれにしてもこれは 具体的にどういう形になるかということを考えますと、いろいろな候補物質についてこ こまでは食品の中で安全だとか、ここまでは飲料水の中で安全だとか、ここから先は危 険だとか、そういうガイドラインが将来示されることになる可能性がある訳だと思うん ですけれども、そういうときに放射能のような非常に簡単な問題でも、例えばどこから どこまでが安全だということを言うためには大変な年月が要る訳で、しかもそのエクス ポージャーというか、どこからどこまで人に作用したかという暴露データがないことに は何も言えないということになると思うんです。 ですから、私はいろいろなメカニズムを探って、そのメカニズムの中でいろいろな新 しいバイオロジカルな意味を見出していくというのも非常に面白いことだとは思うんで すけれども、一番この問題で大事なのは、本当に人がどういう化学物質にどこまで暴露 されているんだというあらゆる考え方の分母になる部分、非常にこれは地味な作業の積 み重ねでしかないんですが、そういうことをやはりしっかり押さえていかないと、結局 随分長いこと研究したけれども、人の問題については何も言えないということになって しまう可能性があるのではないかというふうに思っております。 それで、例えば放射線暴露によって人間で固形がんが増えてくるということが示され るまでにも広島、長崎、ABCCの50年の症例の積み重ねというのがあって初めて可能 になった訳でありますし、短期的になかなかその暴露データを収集するというのは難し いことだと思うんですけれども、そういうことをやらないとなかなか人間にどこまで安 全だということについてサイエンティフィックな裏づけが出来ないんじゃないかという ことを心配しております。 ○伊東座長 そのほか、どうぞ。 ○西原委員 方向性ということで、国際的にアメリカと日本のというふうに話をしましたが、もっ と卑近な例でいきますと、厚生省とほかの省庁との連絡はどうなっていますか。どうい うふうにするおつもりでしょうか。 ○黒川食品化学課長 先ほど資料の2の「エンドクリン問題について」というところで、4に「我が国にお ける主な取組」ということで、1997年1月に情報連絡会を設けたというような記載がご ざいます。それで、具体的にはこれが一つの場になりまして、これまで記憶では3回開 催されていると考えております。こういったところで情報の交換が行われております。 それから、必要に応じまして私ども例えば環境庁、通産省、あるいは農水省、そうい った省庁の例えば農薬とか、あるいは化学品とか、そういったことを担当するような部 門と、平素から電話連絡その他の方法で情報交換をし、間に取り落とすような問題がな いよう考えております。 更に国際的な場におきましては、例えばOECD等でございますけれども、関係する 省庁からそれぞれの立場で出席者、出張者が参って、一つの代表団のようなものを形成 し、そこで議論をしながら対処方針を執行するというようなことが行われておりまして 以上かなり機能しているのではないかと思っております。 ○伊東座長 どうぞ。 ○鈴木(勝)委員 先ほどの環境の問題のところとの関連で1、2発言をさせていただきたいと思います この内分泌かく乱物質の問題で私が非常に大事だと思っているところというのは、や はり発生分化への影響が非常に微量な物質によって引き起こされているんじゃないかと いう恐れが非常に高いことでございまして、しかもそれらがエコシステムを通じて生物 濃縮されていくような部分というものを考えるときに、やはり環境の問題というのは捨 て置く訳にいかない部分というのがかなり大きいだろう。そういう意味では、確かに最 終的に人の健康影響というところで問題になるんだというふうには思いますけれども、 やはりこの環境問題を捨て置く訳にはいかないというふうに思っています。 それから、この問題の中で資料1の課題の中に6項目ほど書かれているんですけれど も、実はこうした発生分化というような、言うなればおなかの中で発生しているときの 子どもに対して何かの影響があって奇形が出るであるとか、機能不全があるであるとか あるいは後になって発がん性があるとか、母体レベルでの影響以外に、遺伝子に対する 影響というのがあるはずだというふうに私は前々から思っておりまして、その中で一番 見過ごされてきた問題が生殖細胞、つまり精子とか卵子ですね。そこで劣性の突然変異 が起こっていたらどうするのという問題がかなり大きい。これについては、現状では有 効に検出する方法がないんじゃないかというふうに思うんですけれども、こういった問 題も一つのエンドクライン問題の延長線上としてにらんでおく必要があるんじゃないか それから2つ目は、このテーマの中にとりあえず現状を見ようというようなことから 勿論、暴露の問題も含めてのことになるんでしょうけれども、事実関係を集める、更に ひいてはメカニズムを追求するという形になっているんですが、現状として捨て置けな いような化学物質が確かに既にあって、それが刻々生物濃縮されているというようなこ ともある訳です。そうなったときに、微量拡散してしまったような有害なものをどのよ うにして生物系によらずに集めて処理をしていくのか。 これが私は既に二十数年来言い続けてはいるんですけれども、なかなかよいアイデア もなくてうまくいかないことの代表例みたいなものになっているんですが、多分関係省 庁の中にはそれらのことについてお詳しい部分もあると思うので、更にこの範囲の中で 委員を拡大するなり何なりの話として将来的な問題として検討するような課題にしてお いた方がいいのではないだろうか。若干散漫になる嫌いはあるんですけれども、問題の とらえ方としてはそういうところまでにらんでおく必要があるんじゃないかというふう に思います。以上です。 ○伊東座長 安田先生、このことについていろいろとデータをお持ちだろうと思いますけれども。 ○安田委員 データを持っているという視点からではありませんけれども、やはり発生分化への影 響というのは大事だと思いますが、特に今、挙げられておりました資料の中でも胎児あ るいは新生児への影響というのは成人と違うということが強調されておりました。この 辺の基礎的なデータを集めるということも大変大事な作業になろうかと思います。 それから、合わせまして先ほど座長の方から御質問がありましたけれども、直接それ へのコメントはありませんでしたドースレスポンス、用量反応関係に関しましても、内 分泌かく乱物質に関しては必ずしも通常の毒物のように量が増していけば反応が増す、 毒性が増すと、必ずしもそういう関係ではないかもしれないというふうな報告がござい ますね。逆U字型の反応であるとかですが、そうしますと高濃度での反応から低濃度で の変化を類推するということが難しくなってまいりますが、こういうことに関する基礎 的な検討というのもやはりリスクアセスメントには必要になってこようかと思います。 ○伊東座長 ありがとうございました。 ○青山委員 先ほどの私の発言に対して両鈴木先生から御意見をいただきましてありがとうござい ました。私は先生方に基本的に全く賛成であります。 ただ、一つ申し上げたかったのは、例えば環境庁の方でも検討会がありますし、いろ いろなところで似たようなエンドクラインの問題を話している場で、この場では例えば どこかに問題を絞って、それで大事なことなんだけれども、すべてを同じ中でやるとち ょっと散漫になる嫌いがあるという点を少し危惧したものですから、そういう点につい ては他の委員会なり、検討会なり、調査会なりとリンクを強く持ってというような進め 方で性格づけをしたらどうかというようなつもりだったんですが、先生いかがお考えで しょうか。 ○鈴木(継)委員 具体的な話になりますと、例えば人の健康に関してのリスクアセスメントを掛けてい ったらあるレベルの濃度は問題ですよというのが出てきた。 ところが、ほかの野生生物に関するリスクアセスメントを掛けていったら、それより はるかに2けたも低いところで問題になりますよという話になった。こんな話で、それ ぞれ別々に勝手にやっていれば、人の健康に関する限りこれは大丈夫なんだから大丈夫 なんだという議論になってしまいますね。それはやはりとるべきではなくて、いろいろ なものについて目配りをした上で、なおかつ我々はどこに線を引く。引かなければいけ ないとすれば、その線を引いて何かやるやり方がいいかどうかは別問題でありますが、 そういうことが総体をまとめて進めていかないとまずいよという私の根拠なんです。 ○伊東座長 何かこの辺りのことを含めて、津金先生何かございますか。 ○津金委員 がん疫学の立場から言わせていただきますと、まず欧米では例えば、精巣がんの上昇 と今回の問題をリンクしているようなんですが、果たして日本における現状はどうなの かというようなこともまず一つ押さえておかなければいけないだろうというふうに考え ます。 それから、日本と米国において、例えばエストロゲン作用を持つ物質として植物性の エストロゲンの問題がありましたけれども、欧米や何かに比べて日本人は植物性由来の エストロゲンの量が圧倒的に高いはずで、実際にそういうデータもあります。そういう 状況において、果たして日本人にはどのような健康影響をもたらすのかというようなこ とも、やはり日本の立場として考えていく必要があるんじゃないかと考えています。 それから、最近アメリカでタモキシフェンを使って乳がんの予防をしようという臨床 試験が行われていて、無作為比較試験でやっていたんですけれども、タモキシフェンは やはりエストロゲンレセプターとの関連の物質なんですが、タモキシフェンを投与した グループは偽薬を投与したグループに比べて浸潤性乳がんになる確率が下がった。全体 で69人の乳がんを予防出来た。 その一方、子宮体がんのリスクが逆に増加し19人余分に発症した。同じようなホル モンの関連するがんなんですけれども、片方では予防出来て片方ではリスクが上がった それで、全体的なリスクとベネフィットのバランスを考えると、アメリカ人で問題であ る乳がんの予防効果というのは大きかったから、将来的には子宮体がんのリスクも増加 させないようなタモキシフェン様の物質を開発するということは念頭に置いておいても 現在においてはタモキシフェンを予防投与するということは乳がんのハイリスクグルー プの人たちにとってはベネフィットがあるであろうという結論を出したんです。 そういう意味で、こういう問題もリスクは勿論あるかもしれないけれども、ベネフィ ットの問題というのももしかしたらあるんじゃないかなというようなことも考えなけれ ばいけないんじゃないかと思います。以上です。 ○伊東座長 どうぞ。 ○岩本委員 泌尿器科医の立場で今回参加させていただきました岩本です。私たちは人の精子につ いて調査、特に何ら不妊症治療をしていない正常カップルの男性側の生殖機能について 国際調査に参加しております。私は男子不妊症外来を診ておりますのでここで少し内容 を述べさせていただきます。 昔は女性側の原因が多いと言われていましたが、最近では不妊の原因は男性が 3分の1、女性が3分の1、それから双方の原因が3分の1すなわち男性も半分は責任 を問わなければいけないと言われております。男性不妊症の患者さんの中で精液中に精 子の存在しない 無精子症が20%ぐらいも含まれており、また精子数が少ないあるいは精子の運動性 が不良でお子さんが出来にくい方も多く、それらの原因は現在のところ不明であります このような不妊症外来を行っている中で正常男性の生殖機能は現状でどのようになって いるのか非常に関心を持っておりました。しかし男性生殖機能の調査は精液検査一つと っても難しさがあります。精液の採取に病院内の静かなトイレを探して取っていただい ているのが現状です。また同一人の検査で日によって精子濃度の変動があることも知ら れています。 1人について2週間ごとに1年間ずっと調べた有名なポールセンという方のデータで は精液1mlあたり1億数千万から数十万位まで変動が見られています。しかし正常男 子の調査で何回も調べるわけにもいきませんのでスカケベック教授とも相談しましてと もかく1回の精液検査で調査数を多くするということで年内に計300カップルを目指 して現在調査を行っております。  この調査を現在私どもの1ヶ所で行っていますが日本の正常男性の調査が1ヶ所で良 いのか、またこのデータから話題になっている内分泌かく乱化学物質との関連をどのよ うに導くのか、気にしながら調査を行っております。簡単ですが発言させていただきま した。 ○伊東座長 ただいまの話は非常にデリケートなところがあると思うんですが、安田先生、何かも う少しこの件についての御意見はございませんか。 ○安田委員 今の精子の検査に関しましては私自身は特別な意見もございませんけれども、多少関 連するかもしれないことといたしまして、私は疫学者ではありませんが、外表奇形の統 計などを見ますとどうも尿道下裂は増えつつあるのではないかというようなデータを見 たことがございます。この辺も本当に頻度として増えているのか、あるいは統計に表れ てきた数字が増えているのかというふうな問題はございますけれども、これは日本母性 保護産婦人科医会の調査データでございます。 それから、今お話の中にも出ましたスカケベック先生がされたことで、日本では精巣 がんというのは非常に少なかったと聞いておるけれども、最近の状況はどうかというふ うな御質問を受けたことがありますが、恐らく津金先生の方ではある程度そういうこと もお調べかとは思いますけれども、こういう既存のデータの検討も場合によってはかな り価値があるのではないかというふうに思います。 余りお答えにはならなかったと思いますが。 ○伊東座長 阿部先生、どうぞ。 ○阿部委員 今後の一つのやり方として、実際にエストロゲンレセプターが一番使いやすいと思う んですが、そういうものを使った測定方法の確立ですね。こういうふうなものが我々の 身の周りにどれだけあるのかということが一番必要なんじゃないか。アメリカで確かに ヒトの乳がん細胞株であるMCF−7とか、そういうものを使ってやっていることはや っていると思うんですが、我々の身の周りについてもそういうことを知る必要があると いうことにしますと、これは黒川さん辺りからお金でも出していただいて、班とか何と かという研究グループをつくって、目をつけたところからそういうものを使って実際に どうなっているかというのを見ていくということが私は今後必要だと。その上で、いろ いろ仮説というものが出来てくるんじゃないかなという気がするんですが、いかがでし ょうか。 ○伊東座長 押尾先生、何か。 ○押尾委員 話が戻ってしまうんですが、精子のことで先ほど岩本先生の方で正常なお子さんの出 来ているカップルについての調査を進めていらっしゃるということで御紹介があったん ですが、私どもでは一般の20代の若い人を対象にしてボランティアについて精液性状を 検査したりするというのを行いました。 その結果を見てみますと、20年ぐらいの前の我が国での報告があるんですが、そこで は精子の数は1億ぐらいであるという報告が出ておりましたが、それと比べると平均す ると精子の数は半分ぐらいになっている。単純に比較した場合はそういうような感じの 結果も出ておりまして、更に20年前の20代の人というのが今の中年になっている方なの で、その方についても四十数例の御協力を得て検討すると、その方たちの精子の濃度自 体は七千数百万というような平均値が出てきたので、かなり中年の方と今の若い人の間 には精子の数に差がある可能性がある。 ただ、勿論数も少ないですし、東京地区に限った検討ですので、今後まだ場所を広げ たり、国内におけるいろいろな地域差とか、あるいは勿論、数を増やしたりとかという ようなことで検討を加えていかなければいけないと思うんですけれども、精子のことに 関しては諸外国で言われている傾向と我が国の間に、私どもの見る限りは同じような印 象を受けたものですから、その辺は特にこの検討会の中でも御注意いただいて、次世代 に対する非常に大きな影響が考えられる可能性があるので、その辺も御検討いただきた いと思います。○伊東座長 先ほど阿部委員から、出来るところからきちんとしたデー タを出していこうというような話で、それについては厚生省からも研究費をしっかりし てという話がありましたので。 ○黒川食品化学課長 恐れ入ります。直接予算関係のお話をここでというのは現在難しいと思うんですが、 事務局の方でこの問題についてどういうようなところで実は困っているか、あるいは 先生方のお知恵を是非お借りしたいと思っているかということについて御披露申し上げ たいと思います。 いみじくも本日、複数の委員の先生から御指摘、御紹介がございましたとおり、例え ば人の精子数の質とかカウントの低下というようなもの、あるいは試験管レベルでのエ ストロゲンレセプターに対する幾つかの科学物質の作用といったようなものがある訳で ございますけれども、厚生省が最も関心を持って対応してきております人の健康という 問題を考えますとき、一つ一つの事象を化学的に結び付けるリンクが非常に今のところ 乏しいといいますか、あるいは見えてこない。 例えば、私ども食品衛生調査会という審議会にお願いをいたしまして、つい先日プラ スチック製品から漏れ出してまいりますビスフェノールAなどを代表といたします内分 泌かく乱作用があるという化学物質について、その見地から御検討いただいた訳でござ いますけれども、こういったようなものの物に絡まる部分での非常に試験管レベルでの エストロゲン作用、こういったようなものと、最終的なエンドポイントでございます、 例えば人の不妊とか、外表奇形とか、精子数のカウントの低下とか、こういったような ものがさまざまな、例えば書物等の御指摘がある訳でございますけれども、その間をつ なぐサイエンティフィックなブリッジがなかなか見えない。 私ども、さまざまな行政施策を行うに当たりまして、きちんとした科学的な立場とい いますか、足場といいますか、蓋然性にのっとって行うことが基本でございます。そう いう点で、この問題については国際的に取り組みがなされているということもあります ことから、本日御紹介申し上げましたような世界的な取り組みの中でそのミッシングリ ンクといいますか、そういったものを克服するためにはどのような仕事がベストである のか、我が国として例えば貢献出来るのか、あるいは、ひいては国民の健康確保、結果 的には環境保護に結び付くものかとも思いますけれども、そういうものになるのかとい うことが非常に悩ましく感じているところなのでございます。 その意味で、阿部先生の御提案というのは大変私も深刻に考えるところでございまし て、むしろそういったことについてこういうような手順でアプローチしていけば国際的 な枠組みの中でも応分の貢献が出来るし、あるいは最も短距離、短時間で、現在の問題 に対して回答が得られるのではないかと、このようなことで御助言、御指摘等をいただ ければと思っている次第でございます。どうもありがとうございました。 ○伊東座長 大分時間が詰まってまいりましたけれども、あとお2人の方に是非御発言いただきた いと思います。1人は田中先生でございます。 ○田中委員 私は、市民が身近に感じている廃棄物問題を研究あるいは教育、訓練をしております それで、今回はこの問題にエクスポージャーという暴露の観点から出席させていただい ております。 ごみあるいは廃棄物の焼却に伴ってダイオキシンの排出が一般に心配されて、ダイオ キシンについてはTDIが出され、安全性の評価の基準として考えられて、それからダ イオキシンそのものの大幅な削減プログラムが出されて実行しているところなんですけ れども、現状から見て市民はそれでまだ安心だという状態でない。それは今回の課題で ある環境ホルモン、化学物質の心配からなんです。そういう意味では、ドーズレスポン スが非常に大事でその情報が欲しい。それから現状の廃棄物、焼却施設がなくて自然の バックグラウンドとしてどれぐらい摂取、ドーズがあるのかということで、その情報を 一般の市民は必要としている。 それから、OECDやアメリカのEPAでもかなり組織的に検討され、調査されてい る。その情報を一般の市民に分かりやすく、早く提供することが大事かなと思っており ます。 それで、廃棄物の焼却についてはどう考えるのか。そして、個人個人はどうし たらいいんだと、こういうようなことを示すことを、この結果が生活環境審議会で検討 されるということで、そちらに生かされるということですが、そういう形で今、困って いる廃棄物問題の解決につながればいいなと思っております。 ○伊東座長 それでは最後に真打ち登場という訳ではないんですけれども、ひとつ和田先生から御 意見をお願いします。 ○和田委員 全く素人の立場で、消費者の一人として参加しております。一生懸命勉強をして参加 していきたいと考えております。 この問題につきましては、やはり消費者団体の中でということではなく、一般の人た ちから非常に関心、それから不安の声が出ております。毎日、新聞を開きますと、新聞 のどこかに必ず環境ホルモンというような言葉の場合もありますけれども、記事になっ ている。雑誌であれ何であれ、テレビの番組、ラジオ、すべてのところで日々いろいろ な情報が提供されているということで、私どもの団体というだけでなく、一般の方から いろいろな発言やら質問やらございますけれども、私は今とても答えるという立場では ございません。 ただ、非常に多くの化学物質に囲まれておりまして、それの一つ一つ についても私どもはそれぞれ消費者運動の中で取り組んでもまいりました。そして、結 論としては私は素人ですから科学的な論争をする訳にはいきませんが、出来るだけ勉強 はするけれども本当の科学者としての立場ではないのでありますが、やはり量にしても 種類にしてもここまで増えてしまってその相乗的な影響、これは人に対しても環境に対 してもどうなのかなということが常に私どもの運動の一つの大きなポイントにもなって おります。そして、これはやはり今すぐの問題ではなくて、将来取り返しのつかないこ とになっては、今の時代を生きている消費者の一人として責任があるということを痛切 に感じております。特に、既にお話が出ましたような生物濃縮の問題、あるいは新生児 や胎児への影響というようなことにつきましては、やはり非常に深く受け止めておりま す。 それで、今日は1回目で何でもというお話を伺いましたので、やはりいろいろなもの の私たちの使用実態、暴露の状況というんでしょうか、専門の立場、こういうものはこ ういう使われ方をしているはずだというのがなかなかそうではなくて、いろいろな使わ れ方をしてしまっているというようなことも、例えば器具、容器のような場合にはあり 得るのではないか、いろいろなことを消費者の実態というようなところをきちんととら えていく必要があるのではないかということを感じております。 それで、先ほどから国際機関のいろいろな研究なり、調査なりというお話も出ており ますが、それはそれとして同じ時間を掛け、お金を掛けてということもございますけれ ども、やはり日本独自の調査なり、研究なりということも並行していくことが必要なの ではないか。これは私ども素人が今までどんな問題でもですけれども、お立場の違う方 からいろいろ違う御意見を伺う、それから、同じような結果につきましてもその読み取 り方というのもいろいろあるというような経験をしておりますので、やはりそういうこ とを感じております。それで、じっくりとということも必要だと思うんですが、拙速は 避けなければいけないけれども、出来れば手をつけて早く出来ることは早く一つの指標 を示していくことが必要ではないかということを痛感しております。 それともう一つは既にお話が出ておりますけれども、私どもはいろいろな問題につい てやはり各省庁間の連絡、それがなぜ両方でダブっているのかなというときもあります し、何かについていきますと、それは自分のところではないという両方から落ちてしま っているというような経験も過去に何度かしておりますので、是非各省庁間で一つのこ とに向かって、この検討会で一番主眼としてやらなければならないことというのがある ということは承知しておりますけれども、是非各省庁間で十分な連絡を取り合って進め ていく必要があるのではないかなということを感じております。 私どものところに寄せられる声としますと、例えば今まではカップラーメンを余り気 にしないで食べていたけれども、カップラーメンそのものに熱湯を注ぐのはやめておな べで食べるようにして、少しはましかなというような声とか、それから特定のものを出 しますのはちょっと懸念いたしますけれども、例えばほ乳瓶につきまして、これはこの 間の器具、容器のところでも出されておりますが、私どもの年代の者にしますと煮沸消 毒でいいのではないかと考えておりますけれども、今はいろいろな消毒法というのが出 されて商品として売られております。例えば、各家庭にあります電子レンジを使った、 袋の中に入れて水を少しだけ入れて何分間電子レンジで掛けるというようなことが出さ れておりまして、ほ乳瓶そのものには心配ないのかもしれないけれども、電子レンジで こういうことをやって大丈夫なのかというような若いお母さんからの質問なども寄せら れているような状況でございます。 まとまりませんけれども、1回目の感想を含めて申し上げました。 ○山崎委員 最初に発言させていただいたので、最後に一言だけいいですか。 最初の発言は、座長からの御指名で無理やりというところがありましたが、それから 勉強させていただいたので一言申し上げたいと思います。 私は、資料2に『奪われし未来』というセンセーショナルな問題提起というのがあっ て、それでこういう認識が深まったということはよろしいかと思うんです。 ただ、この検討会はこういうさまざまな生物現象はございますけれども、これはいろ いろなファクターが入っていてこういうエンドクリン物質との関係というのはまだ分か らない部分がたくさんある訳です。したがって、我々に課せられた使命というのは、そ の間をサイエンスで結ぶということで、こういうセンセーショナルな問題提起に対して これをサイエンスで説明出来るかどうかということだと思うんです。 毒性物質の研究には、常法があると思うんです。それは、個々の危険物質を同定する ということがまず第1で、それらが生体内での作用性を確認する。メカニズムを見極め る。これは阿部先生が御指摘になったように地道な研究というものが必要なんですが、 一番最初に座長が御指摘になった非常に強い作用性を持った物質と、実際に我々に危害 を加えるかどうかという間のギャップですね。これは、暴露量というのがあります。で すから、そういうことをきちんと見極めていって、それでこの問題という中にどれだけ の危険性があり、言われているようなセンセーショナルな表現の中で、我々が安心出来 る部分と危険な部分について、その見極めをしていくステップが必要なんだというふう に思うんです。これにはお金と人が必要になるかと思うんですが、きちんとした科学的 な研究が基にならなければいかぬということになっていくかと考えます。 そういう意味で、このセンセーショナルな『奪われし未来』から話が始まったという ところに私はちょっと不満があります。この資料自体にけちをつける訳ではないんです が、それだけ一言申し上げておきます。 ○伊東座長 ありがとうございました。 いいコンクルージョンを、私が申し上げたいと思っていたことを大部分おっしゃって いただいたというふうに思います。確かにそういうセンセーショナルな一般の方に対す る警告という意味でもあるんですけれども、我々は科学者として本当にどういうことが 問題なのかということを突き詰めていく。この会はそういう会でなければなりませんし それをなるべく早く出来る限りサイエンティフィックなバックグラウンドに基づいた形 で一般の方に出していく、報告していく、情報を発信していくということが必要ではな いか。いたずらに不安をあおるというようなことのないようにしないといけない。その ためには世界の各国、先進国、あるいはいろいろこの問題で悩んでいる方々との情報交 換、データの入手ということを図りながらこの検討会を進めていきたいと思っておりま す。 今日はもう時間がまいりましたので、本日の論議はこれで終了いたしたいと存じます けれども、次回の会合その他につきまして事務局から御発言ください。 ○内田生活化学安全対策室長 本日は、いろいろな御観点から貴重なお話をいただきましてどうもありがとうござい ました。 本日の先生方の御議論を受けて、今後具体的にどう会議を進めていくかは恐らく座長 の方からお考えを示されると思います。1つ資料の関係で補足しておきますと、資料1 の2枚目に4の上に5)というのがございまして、「本検討会は、当面、今後の検討課題 の整理検討について検討を進めることとし、今秋を目途に報告をとりまとめることとす る」ということを事務局の方から提案させていただいておりますのでよろしくお願いい たします。 したがいまして、そういうどちらかというとハードなスケジュールをかんがみまして 先生方には既に日程の調整をさせていただいていますが、5月27日水曜日午前10時から 次回の検討会を開催したいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。 次回の議題でございますが、平成9年度に厚生省で幾つかエンドクリンに関して研究 を行っていただいておりますので、この研究の結果の概要を御紹介をさせていただけれ ばというのが提案でございます。 それから、本日の討議の中で幾つか話題が出ておりましたが、精子数の問題とか、そ れからがんの問題についていろいろお話を伺えればと思います。 それから、今日はたまたま先生がおられなかったので話題になりませんでしたが、産 婦人科の関係で子宮内膜症等についても研究の動向についてお話が伺えればと思います 従いまして、精子数につきましては御専門の岩本先生と押尾先生、それから子宮内膜 症、産婦人科の問題につきましては本日御欠席でございますが武谷先生、それからがん の問題につきましては津金先生、内分泌かく乱物質との関連を含めて御紹介していただ けないだろうかというのが事務局の提案でございます。 ○伊東座長 ありがとうございました。 ただいま御説明いただいたようなことで、次回は5月27日の10時から御議論いただき たいと思うのでございますけれども、特に岩本先生、押尾先生、津金先生、それぞれの 御専門の立場で深く切り下げたすばらしいコンクルージョンと申しますか、現状を御発 表いただきたいというふうに思っております。何かそのほか御意見ございませんでしょ うか。 今後の進め方でございますけれども、今日は第1回ということで委員の先生方にいろ いろの立場での御意見を賜りましたが、話題と申しますか、課題、検討すべき問題は非 常に多岐にわたっておりますので、御専門の先生方、そういった方のほかにも適宜専門 の方々にお加わりいただきまして、その結果を本検討会に報告していただくというよう な方法をとりたいというふうに思っておりますが、いかがでございましょうか。 そういうふうにいたしまして、この問題をなるべく早く、一番最後に和田先生がおっ しゃいましたようにいろいろな方が心配になっておる、不安があるということにつきま して、我々専門家としての立場で対応していく。これが我々に課せられた責任であろう というふうに思っております。 今日はお忙しいところ御協力賜りましてありがとうございました。本日の検討会はこ れで終了させていただきます。御協力に感謝申し上げます。 問い合わせ先 厚生省 生活衛生局 食品化学課 TEL:03−3503−1711