98/04/23 第3回精神保健福祉法に関する専門委員会議事録           公衆衛生審議会精神保健福祉部会          第3回精神保健福祉法に関する専門委員会               議  事  録 厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課 議 事 次 第   日  時  平成10年4月23日(木)16:00〜19:06   場  所  厚生省別館特別第1会議室   会議次第    1.開 会    2.議 題     (1)医療保護入院について     (2)保護者について     (3)その他    3.閉 会   出席委員  吉川座長 池原委員  伊藤委員  金子委員  後藤委員  佐藤委員 新保委員  高柳委員  竹島委員  長尾委員  乳井委員         守屋委員  山本委員 ○吉川座長 それでは、予定された委員の方々は御出席ということでございますので、これから、 第3回の精神保健福祉法に関する専門委員会を開かせていただきたいと思います。  各先生方におかれましては、お忙しいところを御出席いただきましてありがとうござ います。何人かの先生は多少早目にという御意見もいただいておりますので、早速に議 事を始めたいと思いますが、まず、その前に、はっきりと欠席と分かっている方々につ きまして御報告いただけますか。 ○杉中補佐 本日ですけれども、佐伯委員、佐々木委員、西山委員が欠席の御連絡をいただいてお ります。新保委員と山本委員につきましては、遅れて御出席なさるということでござい ます。 以上でございます。 ○吉川座長 ありがとうございました。 それで、ちょっと議事に入る前に御相談でございますけれども、この専門委員会の中 で配られていますさまざまな資料がございますが、この資料の扱いについて皆様方の御 意見もお伺いしておいた方がいいのではないかということが、今ちょっと問題になって おりますので、先に、このことについてお話し合いをしたいと思っています。 問題として、守屋先生の方からちょっと出していただけますか。 ○守屋委員 本日、精神神経学会の事務局長から電話がございまして、本委員会での資料が自分の ところにある方から送られ、この土曜日に開かれる精神科医療従事者懇談会に配付して ほしいという依頼があったんだけれども、精従懇に配付していいかどうか、先生の判断 を求めたいという話がありました。たまたま今日この委員会があるので、配付していい かどうかはこの委員会で皆さんの御意見を聞いた上にしたいと思うので、それまで留保 してもらいたいと伝えました。今日皆さんの御意見をお聞きしたいというふうに思って います。 ○吉川座長 そうですか。ほかにそのような問題を抱えたといいますか、何かほかの方から御相談 を受けた委員の先生方おられますでしょうか。もしあれば、御一緒に議論していきたい と思っています。特にないようでございましたら、今の守屋先生からのお話を承ったと ころで、この資料の扱いをどうするかということについて少しお考えいただければと思 います。 守屋先生自身は、何かお考えありますか。 ○守屋委員 非常に難しい問題もあるのですが、この会が公開の原則であるということ、それで、 議事録等について公開をしていくということになっておりますので、その原則に立て ば、資料が公開をされていくということも仕方ないと思うのですが、出来ればここの委 員会である程度の結論が出てまとめておいた方が誤解が出ないかなという感想は持って います。 ○吉川座長 いかがでしょう。課の方から何か御意見ございますか。 ○田中課長 特にありません。 ○吉川座長 この資料の問題に関しましては、前々から田中課長の方から原則資料は公開するとい うふうにおっしゃっておりました。議事そのものを公開するかどうかはその都度決めな ければいけないし、議事録の公開ということは出来るだけ公明性を高めるという意味で はその方向に進みたいということは、この会の冒頭にも話し合われたことだったと思い ますが、その際にも、資料に関しては田中課長の方から出してもいいというふうにお話 を承っていたような気がするんです。 ただ、私がちょっと気になっていますのは、資料として出されている検討メモという 名前のものがございますね。それぞれ討議の柱にするメモでありますけれども、このメ モを資料と考えるのか、討議のメモとして別建てに考えるかによって、かなり今の意見 が違うのではないか。すなわち、討議の柱としてメモが出てきている訳ですけれども、 このメモを資料の中に取り入れていくと、このメモがだれがつくったのかとか、どうし てこういうものがまとまっているのかというようなことが逆に言うと問題になるかもし れませんし、本当に純粋に資料ということだけであるならば、むしろ、今回のこの資料 で言えば7つ目か8つ目ぐらいからのところですね、それが本来の資料と言われている ものかなという気はするんです。その辺のところで、どこかでもう一本線を引かなくて はいけないのかなと。それとも、この検討メモも含めて全部流れていってもよろしいと 考えるかどうかだと思いますけれども、ちょっとその辺のところで何か御意見がいただ ければと思いますが。 ○高柳委員 私は、既に日精協の医療政策委員会で、さきの資料はもう配付してしまったんです。 だから、恐らく外部へ流れていると思いますけれども、今の吉川先生がおっしゃること はある意味で分かるんですが、私は、この基本的な考え方も含めて、やはり議論をして いくという上では公開してもいいんじゃないかと思うんです。また、プライバシーにか かわる部分はやはりまずい、内部資料でとどめておくべぎたというふうに思いますけれ ども。 ○吉川座長 分かりました。ほかに何か御意見ありますか。 ○後藤委員 私は、前回の覚醒剤にかかわることのときに、センター長会の法改正検討委員会とい う委員がいる訳ですけれども、そこに前回のメモも含めてその部分に関しては渡してお りますので、基本的に私は公開の原則があるとすればメモも含めて流してもいいのでは ないかと思っています。 ○乳井委員 念のためなんですけれども、これは記者クラブではどの範囲で、例えば、今日の資料 でしたらどの範囲で公開するんですか。 ○田中課長 求めがあれば出しますが、求められていません。 ○乳井委員 1回目、2回目もですか。 ○田中課長 出していません。 ○乳井委員 そうですか。 ○竹島委員 資料の討議メモとして見た場合、話し合いをしている中で、ここの記載についてはこ ういうふうに変えたらどうだろうという意見が途中で出てくる。そういうケースもあっ たと思うんですけれども、その場合に、受け取った側の方がどこまでの段階ものだとい うふうに理解されるかですね。討議メモの、討議される前のものを、そうなったんだと いうふうに受け取って理解されてしまうと、少し具合が悪い面もあるのではないか。も し、その検討メモの分を出すとしたら、その討議が終わった後の段階でのものでいくの か、それとも、その前の段階のものでも遅くなるよりは早い方がいいということなら ば、あくまでこれは検討メモですということを分かるようにすることが出来るか。そこ の部分でまた、受け取り方も変わってくるんじゃないかなという気がしますけれども。 吉川座長 ○ 恐らく私も含めて、自分だけでこの問題に取り組んでいる方はおられないと思います し、その周辺の人たちによく理解してもらったり、自分の意見をつくる上でその人たち の御意見を伺うということをいろいろやっておられると思うんです。そのときに、全く 資料なしで議論をすることはほとんど考えられません。私たちも、かなり研究所の中の 職員に対しては、これを広げながら議論をしてもらっています。ですから、私はこのす べての資料を出してもよろしいと思っているんです。 ただ、今のように竹島さんが言われたように、やはりどの時点の資料なのかというこ とを少し明確にしないと誤解を招く危険はあるなと。そんな気持ちは特に、メモと書い てある部分に大きいと思うんです。その扱いをどうするかということになるかもしれま せんが、その点ではどうでしょうか。例えば、全体の日付を幾らつけても、各メモのと ころに日付がついていないと分からないということがありますね。ですから、それはも う日付をきちんと入れておいていただいて、そして、それが出ていく分には構わぬ、事 前資料だからということで。そして、検討した結果については、当然議事録の公開があ る訳ですから、それを見ていただくということで済ませていけば、全部公開することは 可能だと思います。その点ではどうでしょうか。何か課の方で。 ○田中課長 お決めになったことをそのままやります。 ○吉川座長 そうですか。私の方で今案として考えているのはそんなことでございますけれども、 いかかでございましょうか。それでは、まだちょっと危ないとか、何か問題があるとい うようなことがあれば。 守屋先生が出された問題点は、大体それでクリアされますか。 ○守屋委員 結構です。私も、基本的には前回の公開するという問題を踏まえれば、当然、また各 団体でいろいろな議論をいただきながら、各委員はきっとそれをまた検討結果として、 ここで持ち寄っている場合もあり得ると思いますので、ここでそうであるということで あれば、私もそのとおりだと思っています。 ○吉川座長 分かりました。それでは、議事として御相談をしている訳ではございませんでしたけ れども、この問題については今後も今申しましたように、検討メモも含めて実際に外へ 出してもよろしいということで進ませていただきます。ただし、今後に関しましては、 検討メモに日付をきちんと入れていただいて、それを一つの歯止めにするというか、内 容がその後に変更されているんだということをちゃんと明確にするような形で出るよう にしたいと思います。よろしゅうございますか。それでは、そういうふうにさせていた だきます。 それでは、議事に入らせていただきます。 事務局の方から、それでは、御説明いただけますでしょうか。その前に、この前のと きのやり残しを私の方からやらなければいけませんか。 ○杉中補佐 今回の分、第3回ということで配付資料を確認させていただきます。 (配付資料確認) 不足している資料等がございましたら、事務局までお知らせください。 ○吉川座長 いかがでございましょうか。特に今、ばっと見ることも出来ないかもしれませんが、 落ちている資料がございましたら、また後ほどでもお知らせいただきたいと思います。 それでは、直接議題に入りますが、先ほどちょっとお話が出ましたように、前回少し 積み残した問題がありまして、精神障害者の定義とはちょっと違いますが、精神障害者 の問題について福祉の側面からどういうふうに考えるかという、そんな考え方のところ を少し整理しておかなくてはいけないような気がするので、この点につきまして杉中補 佐の方から資料の御説明があると思います。 ○杉中補佐 それでは、説明をさせていただきます。 今、紹介がありました福祉面から見た精神障害者についてということでございます。 精神障害者の意味といたしましては、いわゆる精神疾患を有するもの、メンタリディス オーダードという意味の医療的な側面から見た意味と、生活面での能力障害、メンタリ ディスエイブルドに着目した両方の意味でございますけれども、精神保健福祉法では両 者から見た定義がなされているところでございます。 しかしながら、精神保健福祉法による福祉施策というものは後者に着目して行われる ものであって、また、障害者基本法におきましては、生活面での障害というものに着目 した定義が行われていて、両者を明確に区分すべきだというような意見がかなり多くの 団体から出されております。 考え方に入る前に、現在の両者の関係ということで資料15というもので若干説明させ ていただきます。下の楕円形のものというのが、基本的に精神保健福祉法のいう施策の 対象でございます。一番広い部分が、健常者も含めていわゆる精神保健の予防的なメン タルヘルス的な側面から見た対象。更に、その中、それが一番広い部分でございます。 中には精神疾患を有する者。これは主として、精神障害者の医療の対象となっていると ころ。更に、その中に疾患ということを併せ持ちながら、更に、能力的な障害があると いうことで、精神障害者の福祉に関する対象という感じでとらえております。主に、医 療の対象という観点からは、いわゆる精神保健福祉法第5条に規定しております「精神 障害者とは精神疾患を有する者をいう」ということで、逆に、生活面、能力面での障害 に着目した言い方では、障害者基本法第2条に規定されておりますように障害者という のは、「精神障害があるために長期にわたり日常生活または社会生活に相当な制限を受 ける者をいう」という両者の使い分けがなされております。 精神保健福祉法では両者 を含む者ということですけれども、同じ法律で2つの定義を用いるのは難しいというこ とで、より広い概念ということで精神疾患を有する者ということで、両者を統合した概 念として前者の方を使っているという説明になっております。  次に、資料4の方に移らせていただきます。 検討メモということですけれども、今説明したようなことで、まず、医療面から見た 精神障害者というものは、精神疾患を有する者をいうといった観点からの定義となって いる。この精神疾患というものは、国際疾病分類による精神疾患というものに示される というのは前回御説明したところでございます。 次に、福祉面から見た精神障害者でございますけれども、精神障害者については精神 障害があることにより、能力障害またはディスアビリティーがあるために、日常生活ま たは社会生活を営む上でのハンディキャップを有している。そのハンディキャップを軽 減克服するためのさまざまな福祉施策の対象として、精神障害者をとらえることも可能 である。精神保健福祉法の第1条の目的規定においても、いろいろ福祉的部分に着目し た社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助といった福 祉的理念が掲げられておりまして、また、具体的な施策としても社会復帰施設や精神障 害者保健福祉手帳といったような、さまざまな施策が講じられているところでございま す。 なお、障害者全部をとらえた障害者基本法の中では、先ほど説明したとおり、主に生 活能力障害というものに着目した観点からの定義がなされております。 両者の関係でございますけれども、先ほど説明したとおり、疾患に着目した精神障害 と障害に着目した精神障害の2つという中で、両方とも精神障害者と日本語で言えばそ ういう言い方になってしまうので非常に混同が生じていた訳ですけれども、平成7年の 改正に当たっての整理で、先ほど説明したような両者の区分というのがなされました。 ただし、1つの法律で1つの用語で2つの定義を置くことは出来ないということで、 また、この2つの精神障害というものは全く別物ではなくて、障害を有する精神障害者 というもののすべてのものというのは精神疾患を何らか有しているのではないか。精神 疾患に着目した概念の方が能力障害に着目した概念よりも、ごく軽度の精神疾患や短期 的な精神疾患というものを含んで対象者の範囲が広いということで、法律上の定義とし ては従来の精神疾患に着目した定義をそのまま残しているといった考え方の整理がなさ れているところでございます。 基本的な考え方でございますけれども、保健面から見た精神障害者と福祉面から見た 精神障害者の関係については、7年のときにそういった概念上の整理がなされている。 また、1つの法律の中で精神障害者に2つ定義を設けることはなかなか難しいだろうと いうことがあって、今回改めて定義の変更というものを行う必要はないのではないかと いうふうに考えます。 しかしながら、別途議論としては精神障害者の保健と精神障害者の福祉といった観点 からに分けたらどうだというような提案も出されているところなんですけれども、それ に関しては身体障害者、知的障害者を含めた総合的な障害者福祉法制というものの創設 というのが非常に幅広い意見として伺っておりまして、障害部の中でも中・長期的な課 題となっていることで、法の中で3障害の共通性として、長期にわたり日常生活または 社会生活に相当な制限を分けるということに着目する必要があるため、その中で福祉面 に着目した精神障害者の定義についても検討していくということが適切ではないかとい うふうに考えております。 以上でございます。 ○吉川座長 ありがとうございました。 以上のような考え方、精神保健福祉課の方でまとめてくださっていますけれども、少 し議論をしてみたいと思っています。いかがでございましょうか。結論だけで言えば、 1つの法律の中に精神障害という定義を2つ置く訳にはいかないということ、そのもの ではあるんですけれども、希望としては疾患としての定義の問題と、それから、障害者 としての定義の問題と問題として出されているところはかなりあるんです。それをどう いうふうに組み込むかということになると思っております。 ただ、今回の法改正の中でそこがどこまで出来るかということもあると思いますが。 ○佐藤委員 1人の人が病気を持ち、かつ、生活面の障害を持っているということで、それがある ときは病気の部分が大きくなったり、病気の部分が収まっても生活の障害があったりと いうことで状況が変わっていく、それが、1人の人の上に起こっているということで、 定義を厳密に分けるということが難しいということは一方では分かるんですが、ただ、 実際の施策の中では、やはり障害者としての福祉の施策を充実していかなければいけな いというふうには思いまして、そういう意味では、障害としての位置づけというのを明 確にした方がいいのかなと思ったりするんです。 今まで福祉施策が十分でなかったために、医療が福祉の部分をカバーしてきたという 歴史があって、一方で、地域の生活の支援の仕組みを拡充していけば、それによって全 体の在院日数を短縮していくことが出来るというような、具体的な実践の成果も出てき ていたりしますので、出来れば障害の概念規定、それから、疾病としての概念規定を分 けるべきではないかというふうには思うんです。 ただ、そう言いながら何ですが、合同企画分科会で検討が進んでいて障害者福祉法の 制定が行われるとすれば、そのときの議論ということもあり得るのかなと思ったりして いて、ちょっとどっちつかずなんですが、障害者福祉法制定についての見通しというよ うなものは。 ○杉中補佐 中・長期的な課題となっております。 ○佐藤委員 中・長期的といいますと、どのくらいなんでしょうか。 ○杉中補佐 それは分かりません。 ○吉川座長 確かに、精神障害の場合は精神疾患というものがベースになって障害を持つ、しか し、その障害も精神疾患がある程度回復してもなおかつ生活障害が残るということがあ りますね。ただ、原因疾患がまとめてみて精神疾患という1つのジャンルに落ちつくか らちょっと難しいのであって、例えば、脳障害というのはいろいろな障害によって脳障 害が起こりますね、原因疾患は違いますよね。だけれども、障害者としてのサービスと いうものからいえば、それは同一サービスに落ちついていくんだろうと思います。そう いうふうに考えるとどうなんでしょうか。精神疾患というものがあって、やはり精神障 害の場合には障害に陥っていくと考えると、精神疾患抜きには言えないのかもしれませ ん。そこは身体障害などと多少の違いの問題があるのかという気もしますけれども、い かがでしょうか。何かほかに御意見ありますか。 ○金子委員 ディスオーダーという言葉に対して障害という文字を当てはめている訳ですが、1つ の言葉に2つの定義はあり得ないというのは非常によく分かる理屈です、法制度上は当 たり前のことだと思うんですけれども、ディスオーダーイコール障害という言葉が当て はまるという前提を少し変更すれば、別な言葉を使うのであれば可能なのではないかと も考えるのですが、先回の各団体からの意見の中には、ほかの言葉を使うというような 御意見が余りなかったようにも思うのですが、それらに関して出てきていないのでしょ うか。例えば、別な精神障害者ではなくというようなことは、希望としては出てきてい ないのでしょうか。 ○杉中補佐 変えるというよりは、やはり福祉は福祉法制で別にしろとか、あとは、両方で明確に 書き分けろというどちらかの意見が多かったと思います。 ○吉川座長 新しい言葉を提案しているのはなかったような気がします。ですから、書き分けろと いうこととか内容的に分けろということはあったような気がしますけれども。 ○杉中補佐 あと、法律上の問題になると、前回も何回か言ったんですけれども、今までと事情が 変わらないのに変えるというのは、なかなか実際上の問題としてはよほどの不適切な用 語であるといったような事情があれば話は別なんでしょうけれども。精神障害というこ とで定着している用語でもございますし、精神疾患を有する者ということで、実際上考 えると非常に難しいのかなという感じがいたします。 ○伊藤委員 今の問題は、精神保健福祉法の在り方の根幹にかかわっていまして、私は最終的には 医療が大切な時期には医療法に規定された医療を受けて、日常的に福祉の問題があれ ば、一方で福祉の法律に基づいた支援を受けているとなるのが本来だと思っていますの で、現在の法律が両方含めて規定している法律だということが続く間は、今現在、説明 されている考え方でやらざるを得ないのではないかと。ですから、先ほど言いました障 害者の福祉法がきちんと出来るまでは当分はこの解釈といいましょうか、説明を生かす やり方しかないのではないかというふうに考えて、自治体病院協議会などでも協議した んですが、今、触れても現在の法律を生かすのであれば現在の解釈がよろしいのではな いかと、個人的にもそう思いますし、それで、定義については自治体病院協議会では触 れなかったんです。 ○吉川座長 いかがでございましょうか。 ○長尾委員 私も一応やはり疾患をベースにして、障害というのは固定的になっている部分とそう でない部分というのが混ざっていますので、これを分けて考えていくというのは、今の 時点ではちょっと難しいのではないか。今は、この形でやむを得ないかなと。 ただ、ちょっと余談なんですが、精神保健福祉法の第1条には本当は国民の精神保健 の向上を図ることというのが実際は入っている訳なんですが、実は、精神保健課が障害 福祉部になって精神保健福祉課に移行するときに、メンタルヘルス事業が精神保健福祉 課から外れてしまったんです。これは、私はナンセンスだと思っているんです。健康増 進栄養課の方へ移ってしまったのは、非常におかしいなと思います。これはちょっと別 なことですけれども。 ○吉川座長 分かりました。 今回の法改正の中での議論とはちょっと違う今の後半のお話でございましたけれど も、これについて、もし、また時間があれば話をしていきたいと思っていますが、で は、とりあえず、精神障害の定義、福祉面における定義に関しましては、課の方から一 応基本的な考え方として出されたものをお受けすることでよろしゅうございますでしょ うか。 ○佐藤委員 今の点についてはそれでよろしいと思いますが、ちょっと前回の病名の議論のところ で資料の確認が出来ずに申し上げられなかった点があるので、追加して発言させていた だいてよろしいでしょうか。 昭和25年に精神衛生法になったときに、対象が精神病者から精神障害者に広げられた という点なんですが、当時の国会のこれは議員立法によって出来ておりますが、提案の 趣旨として提案趣旨説明の中で、精神病者に精神薄弱者と精神病質者を加えて精神障害 者というふうに対象を広げた理由として、1つには、正常な社会生活を破壊する危険の ある者をその対象とするということで、その点は明らかに社会防衛的な発想によってい るように読めるんです。 ところが、もう一つ精神衛生法の特徴として公衆衛生の観点を取り入れたということ が言われておりますが、その中で、発生予防ということが法律目的に挙げられておりま す。その発生予防の中身の1つとして、優生手術による方法というようなことが説明と して言われておりまして、その優生手術については、昭和23年に従来の国民優生法(昭 和18年)が改正されて優生保護法になった訳ですが、その優生保護法の中で優生保護 法が対象とする疾患を列記しております。これが遺伝性精神病、それから、遺伝性精神 薄弱、それから、遺伝性精神変質症というふうになっておりますが、それと、病的性 格。そのほかには、あと身体疾患が加わっております。 そうしますと、かなり推測にはなるんですが、この優生保護法で取り上げた精神疾患 の3つ、精神病と精神薄弱と精神変質を精神病質というふうに言ってしまっていいかど うか分かりませんけれども、それが一つの精神障害のイメージになっていたのか。優生 保護法では国民優生法のときには精神病院の医師が優生手術、不妊手術を家族の同意で 行うことが出来るというふうになっていて、優生保護法では「精神病院の」というのが 削除されて、単に「医師は」というふうになっております。優生保護法については、平 成8年に優生思想というものが一掃されて母体保護法になった訳で、どうもやはり精神 衛生法から引きずっている精神病者、精神病者の部分だけは精神疾患、精神分裂病云々 というふうに変わりましたけれども、精神薄弱、それから、精神病質者については何か 古い思想が残っているというような感じがしまして、優生保護法が廃止をされたといい ますか、母体保護法に代わって優生思想が排除されて、これは障害者を含めたノーマラ イゼーションというふうな理念に変わってきている訳ですので、その古い名残のように 見える病名の例示については、やはり新しい時代に即して変えていった方がいいのでは ないかというふうに思うんです。 ○吉川座長 分かりました。今、お話が出ましたことに関しましては、議事録の中に追加させてい ただく形で処理をさせていただきたいと思います。 それでは、引き続きまして、本日のメーンのテーマにいきますが、それでは、杉中さ んの方からお願いします。 ○杉中補佐 その前に、定義のところの確認なんですけれども、変更の箇所といたしましては竹島 先生から言われた覚醒剤のところで言い方を若干変えるということと、あと、個別の疾 患名を挙げることについて、あるいはそれは検討すべきではないかといったような御意 見だったので、そういうことを追加させていただくという、私の認識ではその2点ぐら いは変更する箇所かと思うんですけれども、それでよろしいですか。 それでは、本日の議題の医療保護入院に関することということで、その前にまず、現 行の入院制度及び医療保護入院等について御説明をさせていただきます。資料の8番を ごらんください。 先生方もう既に御存じだと思いますけれども、一応復習ということで精神保健福祉法 に基づく入院制度の概要について御説明をさせていただきます。 精神保健福祉法に基づく入院制度といたしましては、2ページにわたって6つの入院 制度がございます。一番基本となる入院制度としましては、任意入院ということで、こ れは自らの同意に基づく入院制度ということでございます。 あと、行政庁の処分による入院ということで措置入院と緊急措置入院がございます。 措置入院につきましては、医療及び保護のために入院させなければ、その精神障害者の ために自分を傷つけ、または他人に害を及ぼすおそれがあるということで、いわゆる自 傷他害のおそれがあるということで、それに関して行政庁が2名以上の精神保健指定医 の診察によって一致して必要があるといった場合には、入院するといったことになって おります。その手続が間に合わない、緊急の必要性があるといった場合に若干簡便な手 続で入院させることが出来るというのが、緊急措置入院でございます。 ただ、これは72時間以内と時間が限定されております。 措置入院と緊急措置入院でございますけれども、これは基本的に国公立病院もしくは それに代わる民間の指定病院にしか入院させることが出来ないということになっており ます。 次のページにいきまして、医療保護入院、今日のテーマでございますが、措置入院と 任意入院の間にある入院ということで、医療及び保護のために入院の必要があると認め られた精神障害者については、指定医の判定と保護者の同意という手続を経て入院させ ることが出来る。詳しくは後ほど説明させていただきます。 このほか、保護者の同意を得ることが出来ない、いわゆる緊急的な措置としての応急 入院、または診断に時間を要する場合の仮入院といったような制度がございます。 この6つの制度がございますけれども、基本となる入院というのは任意入院と措置入 院と医療保護入院と、この3つが基本となる入院制度であるということでございます。 次に、資料9に移らせていただきます。医療保護入院制度について簡単に説明させて いただきます。 医療保護入院でございますけれども、精神保健指定医が診察、判定した結果、その者 が精神障害者であり、医療及び保護のために入院の必要があると認められる場合には、 保護者の同意があるときには本人の同意がなくても精神病院に入院させることが出来る という制度でございます。 また、保護者につきましては、いわゆる親権者、後見人、あとは配偶者、この者につ きましては後見人、配偶者、親権者の順番で当然保護者となることになっておりますけ れども、その者がいない場合には、扶養義務者から家庭裁判所が選任するということに なっておりまして、その時間がある程度必要なので、その期間に限りましては4週間に 限って扶養義務者の同意によって入院させることが出来るという手続も設けられており ます。 医療保護入院につきましては、本人の同意に基づかない入院ということでございます ので、いろいろ人権上の手続といったことがなされております。入院に際しての告知及 び届け出の規定があり、精神病院の管理者は入院させてから10日間以内に、ここに書い てあるようなものに関する事項を書いたペーパー及び入院の保護者の同意書を最寄りの 保健所長を経て都道府県知事に届け出るということになっております。また、退院時に ついても届け出を行うということになっております。 入院時に告知をしなければならない事項につきましては、当該入院措置を取ることと いうことと、法第38条の4の規定による退院請求に関する事項といったようなことにつ いても入院時に告知をするということになっております。入院時の告知文書の例という ものを次のページにつけております。 引き続き、資料10について説明させていただきます。 医療保護入院の経緯でございますけれども、医療保護入院というものが制度化された のは昭和62年の精神衛生法改正のときでございまして、それ以前の精神衛生法につきま しては、いわゆる同意入院という形の手続を取っておりました。その内容につきまして は、『「精神病院の管理者は、診察の結果精神障害者であると診断した者につき、医療 及び保護のため入院の必要があると認める場合において保護義務者の同意があるとき は、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。」といい、保護者の同意 があることを要件として精神障害者を入院させることができることとしていた』。 基本的に、この資料10のペーパーというのは、昭和62年の考え方をそのまま出させて もらったものなんですけれども、「しかしながら、(1)国民皆保険化及び精神病床の増大 等により入院が容易になったこと、(2)核家族化、都市化の進行により精神障害者を家族 で支え切れなくなってきたこと等から、同意入院が極めて安直に利用され、それに伴っ て本来入院する必要のない精神障害者が入院させられ、あるいは退院すべき入院患者が 退院を許されず、甚だしいものとしては精神病院で労働を強制されていたというような ケースが現れた。そして、昭和59年の宇都宮病院事件を契機に、精神病院における人権 侵害の実態が明らかになっていく中で、同意入院についても見直しが必要であるという 意見が強くなった」というふうに言われれております。 その結果、「昭和62年の精神衛生法改正時に、入院形態の見直しを行った結果(1)同意 入院を医療保護入院と改名すること。(2)精神保健指定医の判定を入院のための積極的要 因とし、保護者の同意は指定医による判定があった場合に、その入院契約を補完するた めの消極的要因となったこと。(3)人権擁護を図るための入退院時の届け出義務や、入院 時の告知義務を設けたこと等の改正を行ったところである」というような改正がなされ ました。もう一度説明いたしますと、積極的な入院の要件が精神保健指定医の判定とい う、入院の必要性を指定医が判定をしていく必要があるということになったというの が、最大の改正点であるというふうに言われております。 次、資料11について説明させていただきます。 ただ、医療保護入院につきましては、その性格がはっきりしていないということで、 この法的性格というものは事務局としての考え方をまとめたものでございまして、果た してこのような内容が正しいのかどうかということについては、必ずしも自信が持てな いところがありますが、その辺は山本先生や池原先生に今日も御意見を伺いたいなと 思っているところでございますけれども、一応、法的性格というものについてまとめさ せていただいたものが、このペーパーでございます。一応読ませていただきます。 同意入院の時代には、同意入院が強制入院なのかどうなのかというものがはっきりし ていなかった。ただ、医療保護入院となって強制入院というか、本人の同意に基づかな い入院であるという形に明確に整理されました。しかしながら、これは精神病院の管理 者に措置入院のような処分権を与えたものではなく、管理者はあくまでも一般の契約を 行っているにすぎないというふうにされております。その中では、医療保護入院という ものの性格を判断するための2つのものとして、ここに書いてあるように八王子裁判、 これは市町村長の同意等に当たって国が敗訴しているものでございます。あと、昭和62 年の改正時につきまして、非常にいろいろ御活躍をいただいて御意見等をいただいて、 基本的な精神保健福祉法の考え方にも非常に強い影響を与えていた人で、当時の委員で 東大の総長をやられていた平野氏、この2つの考え方というのを書いております。 まず、八王子の判決の話ですけれども、これは昭和60年、改正前の判例でございます けれども「同意入院の制度は、一般の疾病と同様に治療のための任意の入院……契約が 成立していること、又は、精神障害者に意思能力がないなどの入院契約の効力に疑問が ある場合においては、精神障害者本人又はその扶養義務者等、治療を求める者との間に 任意の入院契約の外形があることを前提とするものであって、……精神障害の特質に鑑 み、保護義務者の同意がある場合には、本人の同意を要しないで入院させることを認め たのにとどまり、有効な入院契約又は入院契約の外形のいずれもないにもかかわらず、 精神障害者本人の意思に反して拘束し、入院させる権限を医師に与えるものではない。 ……同意入院につき、本人の同意ではなくて、保護義務者の同意を有することとした 法の趣旨は、他の疾病と異なり、精神障害においては、本人に病気であることの認識が ないなどのため、入院の必要性について本人が適切な判断をすることができず、自己の 利益を守ることができない場合があることを考慮し、保護義務者の同意の手続きを通じ て精神障害者本人の利益をより厚く保護しようとしたことにあるとするのが相当であ る」といったような判例がなされております。 この判決が出たときは、既に医療保護 入院といった形に変わっておりますが、この考え方というのは非常に現在の運用にも影 響を与えておるところでございます。 また、当時の平野委員でございますけれども、 精神衛生法改正に当たって、著書の中でこのように述べております。『(同意)入院に ついての、保護義務者の同意は、患者に代わって承諾するもの、すなわち「代諾」であ り、その入院は、任意入院だと解されてきた。今回の改正にあたって意見を求められた 法律学者の中にも、そのような意見を述べたものもあった。そこには親族は一体である という親族観と、精神障害者は「全体的に無能力」であるという精神障害者観があった といってよいであろう。 しかし、現在ではこのような親族観は理念的にも実際上も維 持できなくなっている。……他方、精神障害者が「全体的に無能力」であるという考え ももはや維持できない。したがって、同意入院も強制入院の一種だとせざるを得な い。」というふうに述べております。 また、『「同意入院は、保護義務者の同意が、 患者の意思によらない入院を正当化する根拠でした。そして、「保護義務者は、精神障 害者に治療を受けさせなければならない」という規定から、この保護義務者の入院させ る権限と義務とが出てくるのだという解釈もされていました。しかし、保護義務者にこ のような権限を認めるのが無理であることは、まえにも申したとおりです。この規定か らは、せいぜい保護義務者には、患者が入院するように説得に努めなければならないと いう程度の義務しか認めがたいでしょう。「医療保護入院」を正当化する根拠は、医師 の判断です。入院しなければ病気が恢復しない、あるいは病気が悪化するであろう、し たがって、強制的にでも入院させて治療あるいは保護する必要がある、それが結局は本 人のためにもよいことである、という判断です。保護義務者の同意は、そういう場合で も、保護義務者があくまで自宅で治療したいというのであれば無理に入院させることは できないという、いわば消極的な要件に過ぎないと思われます。』と述べています。こ れらのものを分析しまして、今の考え方等も併せて医療保護入院の性格について要約し たものが以下のものでございます。 まず、1つ目は医療保護入院というものは、保護者と管理者の間に有効な契約または 入院規約の外形と言われる、先ほど言いましたが、結ばれていることを前提とした、本 人の意思によらない強制的な入院の措置である。 医療保護入院というものは、精神病院の管理者に対して、措置入院と同様の処分権限 を与えたものではない。あくまで病院管理者の行う法律行為というものは契約であるこ と。このような強制入院というものが認められる理由というものは、精神障害者本人が 入院の必要性について適切な判断をすることができず、自己の利益を守ることができな い場合であるためであり、言い換えれば、医療保護入院に当たっては、本人に病識がな いといった入院の必要性について本人が適切な判断をすることが出来ない状態であるこ とが必要である。 また、そういった入院の必要性というものを判定するものは、精神保健指定医であり 保護者の同意というものは消極的な要件にすぎない。 以上、この4つのようにまとめることが出来るのではないかというふうに考えており ます。 以上でございます。 ○吉川座長 ありがとうございました。とりあえず、課の方から今までの資料その他につきまして こんな形でまとめていただいていますけれども、いろいろと御意見もおありの方もおい でになると思いますので、基本的な考え方の議論に移る前に、ここまでのところで少し 議論したいと思います。 御意見いかがでございましょうか。精神科医でおられる多くの方々は、この同意入院 から医療保護入院へという変化の昭和62年のときの議論は大体御存じですよね。 た だ、法律関係の方々もこんなふうなまとめで本当によろしいのかどうか、ちょっとお聞 きしたいところもありますけれども。どうですか。 ○池原委員 山本先生の御意見も是非伺いたいんですけれども、確かに、非常に医療保護入院の法 的性格というのは理解しにくいといいますか、現実的な必要性というのは非常によく分 かるんですけれども、法的性格をどう考えたらいいかということは非常に難しい問題だ なというふうに思っています。 それで、今、最終的におまとめいただいた資料11の整理ですけれども、私自身もこう だということを最初にはまだ整理しきれていないので、とりあえずちょっと問題点とし て思われるところを申し上げたいと思うんです。 まず、1つは、一番目に法的性格は要するに保護者と管理者の間の契約が前提である ということになる訳です。ただ、保護者と管理者の契約から、結果として治療を受ける 精神障害者本人を強制的に治療したりあるいは閉鎖的な施設に収容しておくという、強 制的な権限の根拠はどうして発生してくるのかというのは非常に難しいところだと思う んです。通常は民事上の契約であれば、人をそういう強制的に身体を拘束するというこ とは原則は出来ない訳ですから、恐らく一般の理論との兼ね合いで考えれば、例えば、 交通事故で完全に意識を失った状態にあるような患者さんが、契約はその段階では出来 ませんけれども、緊急の事務管理というか緊急措置的な方法、緊急避難的なあるいは事 務管理的な発想に基づいて、一定の治療行為を合理的な必要の範囲で行うということは 許されるんでしょうけれども、医療保護入院の実態を見ると、どうも意識を失っている のと同程度に能力を失っているという状態とは、ちょっとまだ落差がありそうだという ことになります。そうすると、どうしてそこで強制が出来るのかというのが、やはり非 常に説明が難しいだろうなというふうに思うんです。 それから、契約との関係で言えることは、平野先生の御意見でもそうですけれども、 (4)のところで「保護者の同意は、消極的な要件に過ぎない」というまとめになっていま すけれども、もし、契約が前提であるということになると、むしろ積極的な要件になら なければいけない訳で、それがなければ出来ないという前提に、勿論、消極的な要件で も要件ですから1つでも欠ければいけないという結論になる訳ですけれども、むしろ保 護者と管理者の契約を前提にして、いろいろな法的な効果が発生してくるんだという理 論構成をするのだとすれば、消極的な要件だというのはちょっととらえ方として、むし ろ大前提となる積極的な要素を含まされることになるのではないかということがあっ て、この辺が法的性質の問題としては非常に難しいなという、とりあえず問題提起的な ところで申し上げると、そんなようなふうに思います。 ○吉川座長 ありがとうございました。山本先生、何か。 ○山本委員 同じような感想を私も持っておるんですけれども、やはり、問題は保護者の同意がな ぜ患者を強制的に入院させる正当な根拠になり得るのかというのが、ちょっとはっきり 分からない、その正当化根拠はどこにあるのかというのが、やはりこの説明ではどうも よく分からないと思います。 ○吉川座長 精神科医の先生方で、いかがでございましょうか。そこを山本先生に少しまず、御説 明していただくことは出来ませんか。 ○高柳委員 私が説明出来ることは限られているんですが、結局やはりこれは、家族制度を背景に した日本のシステムといいましょうか家族の感情そのものだというふうに思うんです。 非常に曖昧模糊としているんですが、やはり、いかに家族の法機能を認めていくかとい うことだろうと。多分そういうことが発想の原点だろうというふうに思うんです。だか ら、あくまでやはりパターナルな側面がどうしても出てくるということだろうというふ うに思います。 ただ、家族が機能しなくなったという前提に立ちますと、やはり法律家の先生方の おっしゃるような、非常に問題だというふうなことになろうかと思います。そういう曖 昧さは引きずっていますけれども、極めて日本的な私はいい制度だというふうに思いま すが。 ○吉川座長 お話は恐らく、それはそれでお話をいただいていることはお分かりいただけたと思い ます。ただ、精神科医として、なぜ本人との契約ではない入院をさせようとするのかと いうことが、恐らく山本先生の御質問じゃないかと思うんです。ですから、それで私は 精神科医の先生にというふうにボールを今ちょっと投げたんですけれども、いかがで しょうか。なかなか答えにくいですか。後藤先生お願いします。 ○後藤委員 基本的には、やはり放っておくとちょっとまずいというか、このまま見ていて果たし て治療しないで済むかどうか。あくまでも、それは本人の同意に基づいてやりたい。け れども、どうもそこのところでという微妙なところが多分あるのではないかというふう に私は思っているんですが、法律上のこの問題からいうと、今、山本委員がおっしゃっ たように突き詰めていくと、やはり措置入院のような形で、どうしても必要なこととい う要件をつくっていく必要が出てくるのでなはいかというふうに思うんです。 ○吉川座長 入院の要件を。 ○後藤委員 はい。医療保護入院の要件を措置入院のような形で、もし、このまま残すとすれば、 そこはどうしても必要なものになるのではないかというふうに思います。今の現状で言 いますと、さっきパターナルと言いましたけれども、医者のパターナリズムというのが 非常に強い入院形態になっているようなんです。そうではなくて、やはりもう少し厳密 に、きちんと家族も本人も周囲も理解出来るような基準に基づいて行われるということ が必要なのではないかというふうに思います。 それともう一つは、これはここに出ていないんですけれども、それが適正に行われて いるかどうか、いわゆる審査会の機能はきちんと機能することが、もう一つ絶対条件に なるのではないか。その2つがあれば、私はこの医療保護入院という形は有効に機能す るというふうに思っています。 ○吉川座長 山本先生、それで少しお分かりいただけますか。 ○山本委員 それは要するに、ちょっとまずいなということなんですけれども、その辺が一体どう いうことなのかという。措置入院みたいに自傷他害のおそれが要らないということです よね。だから、その辺がどういう基準で制度化されるのか。まずいなということの内容 ですと、そこがどうもはっきりしない。今どっちかというと、自己決定ということが必 要だというのが法律家においては普通の考え方なので、その辺のことがちょっとはっき りしないと。 ○後藤委員 だから、そこを医療保護入院にする要件というふうな形で、もうちょっと明確に出来 れば。 ○吉川座長 逆に言うと、医療保護入院をまず必要としているという前提で今、話をされています よね。 ○後藤委員 そういうふうに考えております。 ○吉川座長 どうでしょうか。長尾先生。 ○長尾委員 これは、後でのまた議論になると思うんですが、1つは、先ほどの山本先生の疑問 点、なぜ強制的な入院が必要なのか。やはり、精神症状というものの中で患者さん自身 にはやはり病識がないと言いまして、いわゆる自分が病気であると思っていないという 側面が1つあるんです。その中で幻覚、妄想であるとか、また、昏迷的な状態であると かさまざまな精神症状によって、患者さん自身だけでは治療を受け切れないというこ と、そういう状態が生まれてくるのを治療を受けて患者さん自身をよくするための条件 として入院をさせざるを得ないということが生まれてきます。そのためには、やはり保 護者の同意による医療保護入院の形というものが必要になるというふうに理解していた だきたいと思うんです。 ただ、その中で、先ほど後藤先生言われたような、措置入院のような要件というのを 自傷他害のような要件がある訳ですけれども、私自身は、この医療保護入院の要件とい うのは若干やはり相対的なものだと思っているんです。余り絶対的なものとすると問題 がある。というのは、やはり、家族の方の許容度といいますか、家庭で見れるか見れな いかというようなことも含めて、いろいろな要件が絡まっての入院ということが出てく る訳なので、それを余り絶対的なものとしてしまうと、これはちょっと問題になってく るのではないかということも考えております。 ○吉川座長 分かりました。ちょっと分かり掛けてきた。ただし、恐らく法的には納得はしかねま すね、それは間違いないですよね。その辺のところをもう少し進めていただきたいと思 います。どうでしょう。 ○乳井委員 そのところを言うと、また、元へ戻すことになると思うんですけれども、同意入院の 時代に比べて改善されて、また、実態としては必要な制度だとは思うんですが、ただ、 池原先生とか山本先生が提起した、なぜ拘束出来るのかというところがもうちょっと はっきりしないと、実態としては措置入院であって措置入院よりも人権の配慮という面 では弱くなってしまうのではないかという気が非常にするんです。やはり根拠のところ をもう少し、どうすればいいか私はちょっと分からないんですけれども、説明する必要 があるんじゃないかなと思うんです。 ○金子委員 これは、特に団体からの意見というよりは、私の個人的な意見として聞いていただき たいのですが、うちは総合病院の精神科で精神科の救急をやっています。年間で350件ぐ らいの入院があって、実に医療保護入院のパーセンテージは70%ぐらいです。そうしま すと、大体200 人強の人をいわゆる医療保護入院にする診察をする精神保健指定医とい うのは私なんですが、実際にその200 人の方を1年間でそういう診察を行ってきて、本 人及び家族に説明をする場合に、非常にやはり法的な根拠が乏しいなというふうに感じ ております。というのは、結局は、本人さんへの説明もいわゆる自傷他害の可能性があ るというようなことを中心に説明をせざるを得ないということです。 ということになれば、措置入院制度とどこが違うのかということがはっきりとしなく なってくるということです。それから、もう一つの問題点は、1人の精神保健指定医が そこで診察をして判断を下して告知まで行ったりすることがあるということです。法文 上であれば、病院の管理者と家族の契約に基づくというふうに書いてある訳ですが、実 際には例えば、総合病院精神科の管理者である院長が、現場でそういうふうな契約が行 われている認識というのはほとんどありません。何か問題が起きたときにどうなるのか という認識をきちんと持っておられる、いわゆる精神科医でない院長はほとんどいらっ しゃらないんじゃないかと思います。そういう意味で言えば、出来ましたら公的な何か 機関が、法的な強制力を行使出来得る根拠を持って、強制的な医療が必要であるという 制度に移行した方が、むしろいいのではないかなというふうに考えておりますので、私 個人的には医療保護入院は強制入院制度として純化すべきというか、3種類ではなく原 則2種類、強制入院と自発的な入院の二本立てで構わないのではないかと思っておりま す。 ○吉川座長 かなり御意見が割れてきたような感じがいたしますけれども、竹島先生何か。 ○竹島委員 私の保健所などの経験で話をさせていただきますと、どんな場合に困るかということ になると思うんです。例えば、子どもさんと一緒に住んでいるんだけれども、子どもさ んを最近外へ全然出さなくなった。以前にもそういうことがあって、その後かなり病気 の状態が悪いということが分かって長期に治療を要した。このままでいくと、子どもさ んも家族全体も更に悪化した状態で社会生活に復帰しなければいけないとか、あるいは 前回との経過で考えると、このままもう少し放っておくと多分また御近所に行って怒っ たり物を壊したりして、更に、そこでの地域の生活が維持しがたくなるという状況が見 えている。恐らく、高い頻度でそれが予想されるといった場合に、やはり私どもの方と しては、本人の退院した後の生活の安定といったことも視野に入れながら行動したいと いう気持ちになるときがあります。 その場合にでも、既存の措置入院というところの枠組みでいくかというと、そこには どうも掛かってこないという感じがするんです。ですから、例えて言うと、首まで水が 来ている状態を措置入院だとしたら、腹の周りからちょっと越したぐらいのところと、 それから、首まで来ているところの間で、少し水の増し方が増えてきたという状態。そ の場合に、どういうふうに対処するかという仕組みが要るのであって、そこのところが やはり積極的要件と書かれていますけれども、その場で診査していただく医師と、それ から、同時にこういう状況であるということを報告する周りの者の責任は非常に重いの ではなかろうか。その辺のところの位置づけを、もう少しすっきりさせることが大事 じゃないかなという気はするんです。 ただ、では、今のままで水が体の半分を越して、急に増えてきたという場合を放って おいていいのかと言われると、私は何となくすっきりしない、非常に気の毒ではない か、それでいいのかという感じはいたします。 ○吉川座長 今の議論をちょっとお聞きいただいて、おへそからのどまでのその間は法的にどうい うふうにすればいいとお考えでしょうか。 ○山本委員 難しいところだと思うんです。 ○高柳委員 よろしいですか。結局、患者さんの治療導入を人権侵害と見るかあるいは人権を擁護 する1つのプロセスと見るか、そこら辺の違いだと思うんです。ですから、法律家と私 たちが基本的にスタンスが違うのは、私たちはあくまでプロバビリティーでいくんです よ。メディカルにこういうトリートメントすれば多分こうなるだろうというプロバビリ ティーでいく訳です。ところが、法律家の先生はともかくカジュアルといいましょう か、カウザルといいましょうか、因果律でいらっしゃる。だから、なかなかそこら辺が 分かってもらえないです。いつも私はそう思うんです。だから、これはあくまでやはり 患者さんの利益をまず第一に考えて、当面治療を確保することが医者はいいだろうとい うふうに思うんです。そこら辺の違いだろうというふうに思いますが、なかなかだから 理解していただくのは非常に難しいと思います。 ○池原委員 余り断定的に言うのも何なんですけれども、多分、一つの法律的な基準として考えら れ得るのは、自分の病気の状態とか治療についてのインフォームド・コンセントを受け る同意能力があるかないかというのが、一つのある種の基準になるだろうと思います。 多分、国連の原則などに従っても、その辺りが基準として出てきそうだと思うんです。 だから、その方の精神疾患について説明を受けても全くいわゆる病識がなくて理解出来 ないとか、あるいは治療の必要性について説明をしても、それを理解するだけの力がな くなっているというような状態を下回っていれば、恐らく何らかその方の医療サービス へのアクセスをむしろパターナリスティックな観点から保証してあげなくてはいけない だろうという配慮で、何かしらの強制的な治療を決断しなければいけないという事実は あるんじゃないかと一つは思うんです。 ただ、私はちょっと家族会の傾向も受け過ぎているかもしれませんけれども、実際の 実態とするとどうも同意能力があるかないかということですぱんと切ってしまうのでは なくて、もうちょっとやわらかくてもいいのではないかと。同意能力がそこそこありそ うだけれども、ちょっとその辺に疑問がある。灰色部分まで少し医療保護入院的なパ ターナリスティックな発想を膨らませてもいいのではないかというふうに、私は個人的 には思っています。本来、理論的にきっちりしようとすれば、同意能力が欠けていると きからパターナリズムが発動するというふうに考えるべきではないかと思うんですけれ ども、そこをもう少し膨らませてもいいのかなという気が一つはするんです。 精神障害の人がどういう実態に陥ったときに、そういうパターナリスティックな観点 から医療へのアクセスを保証してあげるかという問題が1つあると思います。 それから、もう一つは、そういうパターナリスティックな強制権限の発動をだれが責 任を持ってやるのかという問題も1つあると思います。それは、先ほどの契約と考える のか、むしろ措置入院的な法的な権限での強制入院と考えるのかということによるんだ ろうと思うんですけれども、契約というふうに考えれば、結局は保護者が契約をしてい る訳ですから、保護者と病院の管理者が責任を負うということになるんだろうと思いま す。そういう強制的な権限を発動する人が一体だれなのかという問題と、どういう場合 に強制的な権限を発動すべきなのかという、そういう2つの問題があるのではないかな というふうに思います。 ○吉川座長 分かりました。伊藤先生、何か現場の方で今の議論に参加していただけますか。 ○伊藤委員 非常に困っているんです。実際、医療保護入院をするときに、精神科医の権限といい ましょうか、こんな権限を持っていいんだろうかという疑問を持ちながらも、今の法律 では許されているということでやっている訳です。パターナリスティックな役割という ものも時代とともに変わりまして、医師のパターナリスティックな役割を果たす領域と いうのは非常に狭くなってきている。やはり、本人の意思による治療意欲というものを 尊重していくという時代になってきていますので、医師として強制権まで付与されて医 療をするということが、いつまでもこのままで本当にいいだろうかという疑問を持ちな がらやっています。ただ、現実的にはこうしなければ今の段階では現場では成り立たな いのではないかという感じでやっていますので、法的に矛盾があるといいましょうか、 説明出来ない部分があるのは、私もどこかで何らか改善して適正なものにすべきだとい うふうには思っています。 ○吉川座長 守屋先生、同じように。 ○守屋委員 医療の現場で考えたときに、パターナリズムとかパターナリスティックな考え方は精 神医療にとってとても重要であると考えています。 先ほど、先生がおっしゃったような意味で、この患者を治療していくときに入院治療 ということを無理にでもしていくということが、この患者さんに対していいとどこかで 思うしか治療は成り立たないんですよ。 だけれども、私は池原先生のおっしゃった点 で、どういう状態になったときにパターナリスティックなことが発動出来るかというこ とと、だれが責任を持つのか、ここのところが非常に重要な御指摘なのかなという気が しました。 ただ、池原先生がおっしゃったような側面について少し整理していくと、この問題が もうちょっと明らかになるかなという気はして聞いていました。 ○山本委員 パターナリスティックという説明は非常によく分かるんですけれども、パターナリス ティックで患者の利益を図るのは保護者なのかと。保護者は常に患者の利益のために、 一種の悪しき家族主義という面が強く出てきてしまって、常に家族というのは患者の利 益を本当に図ってくれるのかというところに少し私などは疑問を持っているので、それ だけ同意でいいと、それでもうパターナリスティックなものが果たされるんだというの が、必ずしもそれで正当な根拠になり得るのかなというのは、私は納得出来ない。 ○伊藤委員 守屋先生がどこに疑問を感じているかというふうに投げかけましたけれども、それを 一番感ずるのは、一市民の感覚として自分の行為が今の時代にきっと分かってもらえな いだろうなと。精神科医だけに付与されている特別な権限といいましょうか、恐らく同 じ医師でも特殊な存在として位置づけがある訳です。その辺が、どうもやはり自分の中 で整理出来ない点はあります。市民感覚から言ったら、恐らく精神科医も一市民ですか ら、一市民が自分の判断で他人を治療のためと言いながら拘束するということは、恐ら く一市民から離れた存在だと思いますね。そういう意味では、やはり違和感を感じなが ら現実にはやっているし、やむを得ないと思っていますけれども、そういう感覚という のは、やはり医師としても持ち続けるべきだという気持ちがありまして。 ○守屋委員 先生、その場合に、私はちょっと現実的なことを言うんですが、やむを得ないとして やっているというようになりますね。そして、一般市民の感覚として少し離れていると いうことを常に頭に置きながら、やむを得ないとしてやっている。だとすれば、どうし たらいいのかという問題は次に出てくるんだろうと思うんです。国家が保証した入院と いうのは我々は責任を逃れられるし、家族も逃れられるし、強制入院ということを我々 がしている限り常にその問題は取りつくわけでしょう。 ○伊藤委員 ただ、今の精神保健指定医というのは、資格として一律だれに対しても強制権を発揮 出来る資格ですね、そうではなくて、Aさんという患者さんに対して強制入院を発揮す る権限を1例ごとに指定医に第三者機関から保証してもらうというようなことであれ ば、患者の方が納得出来る面があると思うんです。だから、一例一例について強制権を 発揮する要件を満たしているかどうかということを何らかの形で第三者にもう少し、 ちょっと具体的にはどうしたらいいか分からないんですけれども、そういう制度がない と。だれに対しても、ある意味では強制権を発揮出来るという指定医の資格が今ありま すね。そういう全般的な権限の付与はいいんですけれども、個々の例については、今は 医療保護入院については精神医療審査会で、後で一応書類審査という形でやられていま すけれども、もう少しきちんとした形で法的に保証されなければ。 ○守屋委員 だから、私は、そこで医療審査会の機能という問題が非常に重要な問題になってくる というふうに医療保護入院の問題について常々思うんです。これは、後でまた医療審査 会で議論が出ると思うんですが。 ○吉川座長 ちょっといいですか。今のお2人の議論を聞かれて、特に伊藤先生からお話が出たよ うに、第三者機関が仮にあって、第三者機関から付与された形で強制入院に関する判断 を指定医がするというようなやり方で、この医療保護入院というのが成り立つとお思い ですか。それでもやはりおかしい。 ○山本委員 それは、1つ考えられることだと思うんです。もう少し考えないといけないかもしれ ないですね、そこは。 ○後藤委員 ですから、今の論議で言いますと、どうしても医療保護入院というものの要件という か、要するに精神科医がそう決定した、それを一市民として隣の一市民に説明出来ると いうか、患者さんも当然一市民ですから、患者さんに説明出来るバックグラウンドとい うかバックボーンがどうしても必要になるのではないかと思うんですよ。アカウンタビ リティーだと思うんですけれども。 それともう一つは、それは第三者機関からの要請であってもいいし、あるいはきちん とした条件ということでもいいと思うんですけれども、それは御家族に対してあるいは ほかの科のお医者さんに対してでも同じような形で説明出来る条件というのが、どうし ても必要。お2人の先生がおっしゃっていた、ちょっと疑問なんだけれどもやらなくて はというところは、結局、精神科医のブラックボックスになっている訳ですね。そこが ちょっとブラックボックスじゃないような形になってほしいというのが、私の考えで す。 それともう一つは、保護者の問題ですけれども、これは山本先生は保護者イコール家 族というふうにどうもお考えのところがあるんだけれども、保護者の同意というのを条 件にしてしまうと、後でやはりよく経験するんですが、おまえが入院させたんだろうと 後で言われるんじゃないかということで、非常に家族の方がそのときに苦悩するみたい なことというのは起きてくるので、保護者の条件というのをもう少し公的な形に出来な いだろうかというところに、私は2つ両方かかわってくるという気がしています。 ○吉川座長 後段のところのお話、それは山本先生の方からかなり言われたことで、私が精神科医 の先生方と言ってボールを投げたのは、医療の現場の中でやはりどういうような苦労と か苦衷があるかということをまずは出してみたかったのと、それともう一つは、山本先 生が言われたように、本当に保護者が患者の代弁が出来るのか、出来るような保護者で あるのかということ、家族というものを言われたのは高柳先生がちょっと家族に最初に こだわられたものですから、そこへちょっと話がいったんだと思いますけれども、いず れにしても選任された保護者が、本当に本人の代弁が出来る人になるのかどうかという ことも、やはりこの医療保護入院に関しては非常に大きな視点だと思います。その辺で どうですか。 ○竹島委員 ちょっと追加させていただきたいんですけれども、1つは、地域の側に見続ける保証 がどれくらいあるかということが大事な問題ではないかと思うんです。例えば、毎日訪 問出来ますとか、場合によっては、例えば半日一緒にいられますということならば、更 に医療保護入院ということを減らすということが可能かもしれません。実際に、だれが どれくらいどういう担保を出せるかということが1つのポイントではないかという気が するんです。山の奥の1軒の家ということで、そんなに行くことも出来ないという場合 にどうするかということと、町の中のアパートとか全部やはり判断の状況が違ってくる んだろうと思うんです。だから、そういう意味では、医療というだけではなしにその状 況をきちんと把握して、それから、こういう状況であってこうなのだということを一緒 に責任を持つ体制がもう少し要るんだろうなというふうに思います、必要な場合に。 それからもう一つは、医療保護入院で20年、30年といった入院のケースと、それから 今、入院した人と同じように扱うことが出来るかという。それ2つは性格がかなり違う 面もあるかもしれない。そこが今、同じその中に入って話されているから余計ややこし くなってしまう面もありはしないか。ですから、今日のあとの議題で、保護者の仕組み のことが少し議論されますが、そ中でも少しすっきりしてくることがあるんじゃないか なというふうに思ってはいます。 ○吉川座長 高柳先生、そろそろお時間でございますので、是非。 ○高柳委員 今の御意見を伺っていて皆さんもっともなことをおっしゃっていますので、少なくと も医療保護入院がなくならないようにひとつお願いしたいと思います。 ○吉川座長 分かりました。このままもう少し議論は続けさせていただきますけれども、ちょっと 高柳先生は御退席になりますので、よろしくお願いいたします。 いかがでしょうか。 ○長尾委員 事務局の方でまとめていただいた最後の説明のところの、先ほどもちょっと出てまし たが「保護者の同意は、消極的な要件に過ぎない」ということは、私はやはり逆ではな いかなと思っておるんです。確かに、保護者の同意がなければ入院は出来ない訳ですの で、保護者の同意の方が積極的なものであって指定医の方が逆にその要件を満たして入 院させる。積極的と言うとちょっとおかしいですけれども、保護者の同意がなければ入 院はさせられない訳ですから、この辺の消極的というのは、そういう面でいいのかどう かというのはちょっとどうなんでしょうか。 ○吉川座長 提案のところではありませんので、今までの流れを分析するとこういうことだという ことだと思いますけれども、その分析もちょっと違っているんじゃないかということで すか。 ○長尾委員 若干、私はそういうふうに感じるんです。実際の入院に当たって。 ○吉川座長 医療の必要性を判断している訳ですね。 ○長尾委員 入院が必要ですよという話があっても、家族が同意されなければ入院はさせられない 訳ですからね。入院させるか入院させない。その判断はやはり保護者の方に委ねられて いる部分が大きいと思います。 ○杉中補佐 積極的、消極的の話の書き方がよくなかったのかもしれないですけれども、積極的と いうのは要するに、家族が望むから入院させることが出来るのか、それとも、指定医が 判定して入院の必要性があるから入院する必要があるのかという、まず大前提がやはり 違うだろうと思います。従来、契約いわゆる代理権を持つものが本人に代わって意思決 定をして入院させることが出来るというような学説が同意入院時代にはあって、それで あれば、保護者が本人に代わって同意するというのが積極的な要因だと当時言われてい たんですけれども、昭和62年の改正に当たっては、それはそうではないだろうと。保護 者が望むからといって入院させることが出来るということではないのではないかという ふうな当時は結論になっていました。やはり一番の必要性というのは、精神保健指定医 という精神科を担当する医師の中でも、特に信頼するに足るような方に医療上の入院の 必要性があるという判定をしてもらうことが大前提なのではないか。家族の同意という のは、大前提があった上で、それでも入院させるかどうかという判断をする権限が家族 にあるといった意味で、消極的ということなのではないかという意味で使っているの で。 ○長尾委員 分かりました。 ○吉川座長 それでは、どういたしましょうか。特に疑問点がこれ以上出てこないようであれば、 一応、課の方からのここまでの考え方をまとめて、基本的な考え方をちょっと御説明い ただけますか。 (休 憩) ○吉川座長 それでは、再開したいと思います。 先ほどちょっとまとめに入ろうかと思いましたけれども、少しまだしゃべり足りな かったというようなところも含めて、お話し合いを少し続けたいと思います。 乳井先生からどうぞ。 ○乳井委員 先生方のお話を伺って、特に、現場の先生方のお医者さんのじくじたる気持ちといい ますか、そういうものが非常によく伝わってきました。  一方で、契約の当事者として家族がいる訳ですね。その家族というのは、先ほど山本 先生がおっしゃったように、よき保護者であるかどうかというのは問題ありますけれど も、私の周囲で知っているわずかな例でいくと、やはり送り出す家族もじくじたる気持 ちを持っている。そこに、その方たちは契約に基づいた医療保護入院、医療保護入院と いうのは契約に基づいたものであるという認識が、私の知っているところではない訳で す。だからこそ、そこでもって医療保護入院というのは契約に基づいてこういう根拠で もってやっているんですよということを家族の方にも説明してやらなければ、気持ちが 楽にならないというか、そういうことの根拠をどうつくるかというのはあれでしょうけ れども、その根拠をきちんと説明してサポートしてやることが、またよき保護者、家族 を進める手だてにもなるんじゃないか。じくじたる思い、お医者さんの思いは非常によ く分かりましたけれども、家族の分にも非常に強くあるんだということを強調しておき たいと思います。 ○吉川座長 どうもありがとうございました。 御家族の方から見た問題というのを少しお話をいただいたような訳ですけれども、言 わば医療保護入院に際して、家族との間で精神病院が契約を結ぶとしても、その契約の 意味をきちんと家族に説明するところから家族の教育が始まるんじゃないだろうかとい うふうに今伺った訳です。それは、それなりに現在の医療保護入院の意味があるのかも しれません。そんなこともちょっと話として出てきました。 ほかに何かございますでしょうか。 ○佐藤委員 私は、日本精神医学ソーシャルワーカー協会という立場では、要望書に極めて簡単に 書いているんですが、入院形態としては強制入院と任意入院の二本立てでよいというふ うに書いております。ただ、現実いろいろ難しい問題があるということも現場でいろい ろ経験はしております。 現状の問題の中、いろいろあると思いますけれども、家族が保護者となっても現状で はなかなかその場で家族についての病気の説明であるとか同意をすることの意味という ことが十分に説明されていない問題とか、それから、病院に患者さんを連れてくるまで の家族が抱えたさまざまな葛藤であるとか不安であるとか、もろもろの病院にたどり着 いたときの患者さんも大変な思いをしながら病院に来るし、家族は家族で大変な思いを しながら病院に来ている。そこで、診察で入院が決まるというときに、やはりプロセス の中でもう少し御本人の自己決定を促すようなあるいは支えるような病院の体制、ある いは家族の問題を受け止めながら家族に理解を促すような体制といったものが必要では ないかと思ったりはするんです。 措置入院に比べて医療保護入院の方が入院の要件を定めるとしても、措置入院のよう に自傷他害というようなことでは切れないいろいろな問題があって、その状況を判断す るのに勿論、医学的な診断というのは大前提ですが、その問題が起こっている周辺の社 会的な問題、全体的な状況をとらえながら、その中で起こっている患者さんの状況につ いての総合的な判断が出来るような体制といったものがあって、その中でやむを得ず医 療を強制するという、先ほど、医療保護入院の要件ということが言われましたけれど も、それが何か現状では不十分ではないか。その不十分さが保護者とされる家族の肩に だけ掛かってしまう。 それから、その家族がいない場合に市町村長同意ということで実態のない保護者、医 療保護入院になってしまうというような問題とかが出てくるので、ちょっと手前みそに なってしまいますが、精神保健福祉士を含む病院のチーム医療の体制というものがあっ て、その中で総合的な状況の判断がなされて、患者さん本人、家族へのサービスを伴い ながら決定されていくプロセスというのが必要ではないかというように思うんです。 ○新保委員 途中からで申し訳ないんですが、今のお話を聞いておりまして、資料11の1ページの 下から5行目以下の「現在では」という文章がございますけれども、この部分、すなわ ち現況では『精神障害者が「全体的に無能力」であるという考え方ももはや維持できな い』という文章がございますが、これは基本的には、現況医療がすべての疾患を持つ人 に対して、いわゆるインフォームド・コンセントを大事にするという事柄が主流になっ ておりますので、そういうことをこれは意味しているんだということです。そういう時 点に立ったときに、同意能力がない患者さんと契約をするという、その契約が成り立つ 要件ということについて、後藤先生もじくじたる思いがするとか市民として違和感があ るというお話をされましたけれども、こういったものを払拭していく1つの方法を考え るという立場から見た場合に、竹島先生がおっしゃったことにちょっと気がついたんで すが、竹島先生が地域への担保というお話をされましたけれども、契約時点で当然御本 人が同意能力がないとすれば、そこで何らかの判断をして入院をさせた方が、その患者 さんにとってベターであるという意思が働く前提が一体何かということになると思うん です。その決定をするときに、医療内容に比例するのではないかという気持ちも多少持 つんです。要するに、この人を今、入院させれば、間違いなくこの方は同意能力がなく ても、入院をすることによってその方が入院してよかったと思える医療を提供している かどうかということも、大事な要素なのかなというふうに思います。指定医の先生たち が、そういう気持ちを持って決定を出来るだけの医療内容であって、その医療内容を家 族にも入院時点で伝えることが出来るのであれば、双方が納得のいくような形になるの かなというような思いが今、ちょっとお話を聞いていて途中からなんですが、いたしま した。感想ですが。 ○守屋委員 今のお話を聞いていまして、私は平野先生がお書きになった『「医療保護入院」を正 当化する根拠は、医師の判断です。入院しなければ病気が恢復しない』云々というとこ ろ、この医師の判断だということが、私は医療審査会に出てみまして極めてあいまいに なっていると感じました。そして、医療保護入院ということが医師の判断として本当に 妥当なんだということを何らかの形で保証していかないと、患者さんの人権というのは 守られないというのが私の考えです。ただ、山本先生がおっしゃった、なぜ家族が入院 の同意をさせることが出来るかという法的根拠については私には十分説明できないので すが、それでも、そのことが現実的に必要だとすれば、少なくとも指定医がしている行 為が患者の人権を守っているということを、医療審査会そのほかできちんとしていく必 要があると思います。 ○池原委員 先ほどの休み時間に入る前の議論の中で、保護者の同意が消極的な要件だというのは むしろ変で、積極的な要件というのが実情ではないかというお話が長尾先生の方からあ りましたけれども、これはなかなか面白い御指摘だと思うんです。実は、同意入院から 医療保護入院へ変わってきたときの保護者の同意の位置づけというのが、今、御指摘が あった平野先生の説明もそうなんですけれども、もともとは同意入院のときはまさに保 護者の同意というのが積極的要件であって、法文上もむしろ保護者の、当時は保護義務 者ですけれども、保護義務者の同意によって入院がさせられるというふうになってい た。 しかし、それはよく考えてみると、本人の意思に反してあるいは意思に基づかずに入 院をさせている訳ですから、実態は強制入院だというふうに考えざるを得ないので、そ ういう強制が出来る根拠というのは、要するに、メディカルパターナリズムだろうと。 そうすると、医師の判断というのがむしろ根本的な要件であって、保護者の同意という のはせいぜい消極的な要件、その消極的な要件の具体的な中身というのは、まさに平野 先生がおっしゃっているように、お医者さんは入院させた方がいいと言っているけれど も、自宅で治療したいという保護者の特別な意向があれば、無理に入院させることは出 来ないというような消極的な要件である。あるいは、強制というものは常に人権侵害と いう要素を発生させてしまうので、その人権侵害を起こさせないような、つまり入院に 対してはむしろ逆方向に引っ張っていく、入院させない方向での判断ということを一回 考えさせるという意味で、保護者というものの法的な役割があるというものが、恐らく この医療保護入院の位置づけ、保護者の位置づけだったと思うんです。それが、消極的 だということになるんです。ただ、実態としてはほとんどが保護者は家族ですので、実 際にはむしろ保護者というのはお医者さんに診てもらう前に、まずは、この人を何とか 入院させてほしいということで四苦八苦して病院へ連れていく訳です。だから、実際に 保護者をやっている人が入院をさせない方向で、あるいは入院させないで何か事柄を済 ませるようなことが出来ないんだろうかというふうに考える余地はほとんど現実にはな い訳です。ですから、長尾先生がおっしゃるように、現実に医療保護入院がされている 中では、多分保護者というのは決して権利擁護者でもなければ、入院をむしろさせない 方向で問題を一回考え直してみようというふうな立場で動いている人たちではなくて、 むしろお医者さんがちょっと待ちなさいと言っても、何とか入院させてくださいという ふうに頼み込んでくる役割を果たしているのが実態だと思うんです。 ですから、そこに同意入院から医療保護入院へ変えた法律の考え方の変化と、現実の 同意能力がすごく乏しくなっている精神障害の人を抱えた家族とか、それにかかわる保 護者の人の置かれている状況というのは、すごく大きいギャップが発生してしまって、 法が期待している保護者の役割というのは結局保護者が果たしていない、むしろ、保護 者は積極的に入院を何とかしてさせられないだろうかという役割を果たしているという のが実態です。だから、実態を見ると保護者の同意というのは、むしろ積極的な要件の ように見えてくるし、法の建前から考えると、メディカルパターナリズムが根拠だとす れば、むしろ根本的な入院強制権発動の前提は、お医者さんの判断でなければいけない というところに何かギャップが出ているように思います。 ですから、そういう意味で言うと、むしろ同意入院から医療保護入院へ流れてきた法 の流れをもう一歩、今回の改正で進めていこうかなというふうに、もし考えるのであれ ば、再度家族という枠組みにこだわらずに、例えば、保護者をもっと純粋に権利擁護者 的な立場に純化していくような段取りというか、方法を考えるか、あるいはいっそのこ と保護者という要件は外してしまって、純粋にメディカルパターナリズムに基づく入院 システムというのが出来ていくような方向で考えるのかというのが、恐らく法改正の流 れからすると、同意入院から医療保護入院へ変わってきたという流れをそのまま進めて いくとすれば、そういう方向で問題を考えるべきなのではないかなというふうに思いま した。 ○吉川座長 かなり具体的な話も出てまいりましたし、先ほど、佐藤委員の方からお話がありまし たように、PSWといいますか精神保健福祉士がどういう役割を取ればいいのかという ことも含めて、この医療保護入院の問題を考えていかなければいけないのかもしれませ んが、とりあえず先ほど申しました、杉中補佐の方からまとめていただいていますこと をちょっと御報告いただきながら、もう一度そのことについて膨らませて、また議論を させていただきたいと思います。 それでは、お願いします。 ○杉中補佐 それではまず、個別の議論に入る前に前回と同様に、医療保護入院と保護者制度に関 する論点というものをまず説明させていただいて、それから、個別の論点、資料1と2 というものを引き続いて説明させていただきます。 「医療保護入院及び保護者制度に関する論点について」ということで、資料1でござ いますけれども、医療保護入院については大きく2つに分けられるのではないか。 1つ目でございますけれども「医療保護入院の廃止、見直しについて」ということ で、医療保護入院につきましては、患者の意思に反した入院でございますけれども、措 置入院と比べて簡便な手続で行われているものであるため、患者の人権を侵害するおそ れがある。また、保護者に過度の負担を課している制度であり、行政が責任を持って行 う制度に見直す、もしくは廃止すべきではないか。要望団体、下記のような団体からの 要望を統合したら、このような感じになるのではないか。 次に、2つ目「医療保護入院のための判定基準について」ということで、医療保護入 院の要件というのは、非常に不明確で分かりにくいということで、特に、任意入院から 医療保護入院に切り換えるといった場合に混乱が生じている。したがって、医療保護入 院の要件というものを明確にする必要があるのではないかということでございます。 引き続いて、保護者の論点でございますけれども、1つ目といたしましては「保護者 の義務の軽減について」ということで、保護者に過度の負担を掛けないように自傷他害 の防止責任義務や措置入院患者の引き取り義務等の義務規定を廃止するとともに、保護 者と行政の役割分担等について検討を行う必要があるのではないか。 続きまして、「保護者の任期及び保護者の対象の明確化について」ということで、保 護者については任期を定めていないというために、一旦保護者になるとその精神障害者 が回復するか、または死亡するまで保護者であり続けることになる。また、保護の対象 というものが明確にされていないということで、これらの問題点について検討を行う必 要があるのではないか。 続きまして「市町村長同意の見直しについて」ということで、市町村長同意、市町村 長がなる保護者というものについては形骸化しており、保護者としての機能がほとんど 果たされていないということで、必要な見直しを行う必要があるのではないか。 最後に「保護者となるべき者の見直しについて」ということで、保護者の高齢化等の 進行によって保護者としての責務を十分に果たせないような場合に対応するため、ま た、現在、法務省の方で成年後見人制度というものが議論されておりますので、このよ うな議論も視野に入れつつ、保護者となることの出来る者の範囲の見直しというものを 行う必要があるのではないかという、以上6つの形にまとめさせていただきました。 引き続きまして、時間もありますので1つ目の論点といたしまして「強制入院として の医療保護入院について」というものに移らせていただきたいと思います。 まず、強制入院としての医療保護入院の問題点でございますが、先ほど説明しました ように、医療保護入院というものの性格についても非常に議論がある。国際的に見まし ても、行政庁による処分としての強制入院、あと、精神障害者と病院の管理者等の契約 による入院、これは任意入院に相当します。2つの入院形態に分けているところが多 い。 医療保護入院のような入院形態を設けているというのはほとんどない。イギリスが似 たようなモデルがあるんですけれども、それ以外にはないのではないか。 医療保護入院については、簡便な方式での強制入院を許容するものであり、これを廃 止し、措置入院に統一するべきだという意見もございます。その意見の代表的なものの といたしまして、国際法律家委員会の第3次調査団というものの勧告がございます。そ の勧告について書いております。中身は『33条では、ある患者の「保護義務者は、本人 の同意がなくとも、29条に基づく措置入院で要求されるよりも緩和された要件で、収容 させることができる。混乱の発生、ならびに、より厳格な29条の要件の回避に加えて、 強制入院に二つの別な方式が存在していることによって、入院させられる本人とその家 族との間に痛ましい利益衝突が生まれている。患者を収容させるという家族の役割は、 患者の治療を著しく阻害している。したがって、33条に基づく入院の廃止を推奨す る』。 それから、強制入院といたしまして「33条の精神保健法からの削除に関連して、29条 に基づく患者の入院に、危険性を根拠とするものだけでなく、治療の必要性のみが根拠 となりうるような規定を制定すべきである。また、全国精神障害者家族会連合会等も、 現在の医療保護入院に代え、保健所が入院の必要性を判定し、行政処分として入院を行 う医療導入入院を提唱している。」 次に、別の論点として「入院の判定を行う指定医の数について」ということを挙げさ せていただいております。先ほど簡便な手続ということがありましたけれども、医療保 護の入院の必要性の際には、指定医というものが判定を行うことになっているけれど も、それについても措置入院と同じく2名の指定医による診察が必要ではないかという ような意見もございます。 例えば、先ほど紹介しました平野先生ですけれども、昭和62年当時に以下のように 言っております。「我が国でも、今回の改正にあたっては、医療保護入院をさせるため には、2人の医師の判断が必要であろうとすべきであったろうと思います。しかし、わ が国ではまだ、医師が他の病院のこと、あるいは他の医師の判断に介入することに、か なり躊躇があるようです」と述べています。 しかしながら、現在、精神病院における常勤の指定医数というのは平均約3.3 人とい うことで、医療保護入院に備え24時間体制常時2人の指定医を配置するというのは、実 質上かなり難しいのではないかというふうに医師の数を見ると思われます。その辺につ いて資料20の後ろの方の資料集の19ページに書いておりますとおり、下の方の円グラフ でございますけれども、半分程度の病院というのは精神保健指定医2名ということで、 常時いる者というのは恐らくそういった病院では1名いるかいないかといったところで はないかというふうに考えられます。 それから、資料2の方に戻らせていただきまして、基本的な考え方というものを述べ させていただきます。 まず、措置入院を医療保護入院と一本化するということについてでございますけれど も、それについては、措置入院を出来るだけ限定的に運用するということが望ましいの ではないかということで、自傷他害のおそれのない精神障害者についてまで措置入院を 拡大するということは望ましくないのではないかというふうに思います。 また、ICJが言っているように、治療の必要性に着目した行政処分による入院とい うものよりも、出来るだけ契約による入院の方がいいのではないか。少なくとも行政処 分の方がいいということを今、結論づけるのは難しいのではないか。したがって、現行 制度をベースに、これを適性に運用していくという方針で望むことというのは現実的で はないのではないかというふうに考えています。 また、判定を行う指定医数については、現在の状況でこれを直ちに2名とするという ことは困難ではないか。しかし、その必要性については、引き続き検討していく必要が あるのではないかというふうに考えております。 以上でございます。 ○吉川座長 ありがとうございました。ここまで議論してきていただいたこととそれほどずれた基 本的な姿勢ではないのではないかと思います。いかがでしょう。今までの流れを踏まえ ながら、基本的な考え方というところを少し検討していただけませんでしょうか。 ○池原委員 それでは、問題提起的に。こちらのレジュメの方でもメモの方でも御紹介いただいて いますように、全国精神障害者家族会連合会では、医療導入入院というのをつくってい ただいたらどうかという提案をしているんです。それで、それは各団体の意見書の中 に、全家連の中で一応法文案みたいな形で少し御提示いたしましたけれども、幾つもい ろいろな問題があると思いますけれども、一番一つの大きい問題になりそうなのは、こ の基本的な考え方の第2点目の、要するに契約という入院の方が望ましいのか、あるい は行政処分による入院制度というような形に、法的性質としてはどちらかというと措置 入院に近いものになって、要件が措置入院とは違って、つまり自傷他害の危険性はない けれども、治療の必要性はあるというような方を対象にした一種の強制入院というのを 別枠で、医療保護入院に代わるものとして考えた方がいいのかという辺りも1つの問題 点になると思います。 全家連の提案としましては、こちらでは簡単に御説明いただいているのは保健所が入 院の必要を認めた場合という形になっていますけれども、必ずしもそうではなくて、入 院については入院の必要性、要件はちょっとまた別の論点として議論していただく必要 があると思うんですけれども、おおむね病識がなくて入院の必要性が理解出来ないけれ ども、治療しないと重大な結果になってしまうというような人を指定医2名の判断に基 づいて入院をさせるというような制度にする。 ただ、この保健所の判断というのが入っていますのは、実のところ医療保護入院が あっても搬送の問題というのでしょうか、病院まで連れていくというか治療の窓口まで 結びつけることに難しい患者さんが、むしろ医療保護入院の対象者ではいるというふう に私たちは考えているものですから、その部分についてもある程度資格を持った判断の 出来る、例えば、精神保健福祉相談員の方とかそういう方の判断で、極めて短時間に 限って診察まで結びつける。そして、指定医の方が診察をして、確かに、これは入院治 療の必要性があるということになれば、入院へ持ち込んでいく。更に、その入院自体も ある一定程度の期間の限定をするなどというような工夫をしてみたんですけれども、そ の辺りについて、むしろ御意見とか御批判をいただけるとありがたいと思います。 ○吉川座長 いかがでしょうか。医療導入入院という提案がまとめ集の中にもあったと思います が、こうした考え方が出てきた背景の中には、今日、議論しています医療保護入院とい うのがある訳で、医療保護入院というものを一旦なくした上で、こうした医療導入入院 みたいなものを立ててみたらどうだろうかという御提案として、ちょっと受けてみよう と思いますけれども、その前の医療保護入院そのものに対する議論というのは、先ほど まとめていただいた辺りのところで落着きそうでしょうか。 ただ、幾つか条件という訳ではないですけれども、基本的な考え方の中で、先ほどの 議論を少しこの中に加えるとすると、やはり精神保健福祉士をいかにこの判断の中に導 入するかということが出てくるかもしれません。そのほかは、やはり医療保護入院の中 に要件として、何らかの形でもう少しはっきりしたものを書入れなければいけないん じゃないか、これは法の中に書き入れるとは限りませんけれども、そういうものを決め ていかなければいけないんじゃないかという議論もあったと思います。 そこまでですと、大体今までの議論の流れに沿うと思いますけれども、山本先生から 出されました本当に根本にわたる法的な組み立てあるいは解釈の問題については、 ちょっとそこでは抜けてしまっている訳で、少し山本先生の御意見を伺った方がいいの かなと思っていますが、先生何か。こんな形で、やはり医療保護入院というものは残し ながらやるしかないというような全体のまとめみたいになってきてしまったんですけれ ども、その辺のところでどうでしょうか。 ○山本委員 もし、その残すといたしますと、きちんと要件をもう少し厳格化するというのと、そ れから、もう一つの論点は、保護者の同意という要件を残すかどうかということです。 そこが、先ほどもちょっと御意見があったように、正当化出来ないんだけれども残すん だというので、ちょっとやはりおかしいのではないだろうかというふうには思うんで す。ですから、一つの方向としては医療パターナリスティックにも純化して、あとは人 権については、第三者機関の判断に任せるというような方法を取るかどうかというよう なことかなとは思うんですけれども、ちょっと私もまだ案を持っていないものですか ら。 ○金子委員 総合病院精神医学会の立場として、実は医療保護入院ということではなくて応急入院 の適用を拡大してくださいというお願いを厚生省の方にはさせていただいたのですが、 それはどうしてかというと、一般科救急とリンクした形で精神科の救急を行っています と、いわゆる家族がいない、保護者たり得る方が一緒にいらっしゃらないという場合が 非常に多い訳なんです。そういった形で、今の法制度上で適用出来る入院形態は応急入 院ということになるのですが、皆さんも御存じのように、応急入院の出来る施設が各都 道府県幾つかしかありませんので、実際には例えば、東京都のように緊急措置入院が勢 い多くなったりというような現状が出てきてしまいます。 そこで、今のような例えば、医療導入入院がもし現実のものとなるのであれば、入口 の部分からいわゆる保護者の問題というのは逆に言えば解決出来得る問題になりますの で、むしろ、その観点からすれば、私どもの学会としては後押ししたいなというような ところではないでしょうか。 ○池原委員 ちょっと1点。途中で済みません。実は、応急入院のこと、この検討メモの中で医療 導入入院は指定医2名の方の判断というのを一応要件として提示しているんですけれど も、その指定医数からすると、直ちに2名を準備して日常的に判断を求めることが難し いということになるとすれば、やはりその前提としては応急入院みたいな辺りを少し拡 大して、とりあえず3日間ぐらい様子を見る中でその間に指定医2名の判断を備えると いうような、そんなやり方も出来るかなという気がいたしまして、大変賛成でございま す。 ○杉中補佐 ただ、国の役割を拡大することが本当にいいのかどうかということについては、我々 は多少疑問に思っております。国によるパターナリズムみたいな、いわゆる福祉的な措 置制度というもの、それがいいのかということで、どちらかというと契約方式という流 れが世の中の流れでございますので、家族の方といたしましても、いわゆる入院をした というのと措置に近いような形で入院させられたという形では、相当受けとめ方等も違 うのではないかというのが、今のところの我々の判断であって、なかなか今の段階で全 員が、しかも、そういう導入入院みたいなものが出来ると乱用されるおそれがあるんで す。現実のニーズには即しているのかもしれないんですけれども、例えば、うるさいと いったようなことで保健所なりに電話して導入入院をさせてくれといったようなことが 起こったら、それがいいのかどうかというところで非常に躊躇するところがあって、 今、医療保護入院というものに変えられるのかどうかということについては、なかなか 早急に結論を出すのは難しいのかなというのが、正直言って我々の考えなんです。 それについて、そういう意見で集約出来るのかどうかということについて、逆に家族 会の、当事者の意見というのはあると思うんです。要は、家族にお世話になって入院し たというのと、行政によって入院させられたというのでは、本人にとってみればかなり 違うのかなという気も、当事者になってみないと分からないので何とも言いようがない ですけれども、そういった感じが素朴に感じられるんですけれども、その辺についての コメントを。 ○池原委員 これは、一応家族会としての発案です。ただ、勿論、全家連と言っても全家連に加入 されていない家族の方の方がむしろ実態としては多いと思いますので、すべての家族を 代表していると言うことは出来ないんですけれども。ただ、全家連の内部、そういう家 族会に参加していらっしゃる方の御意見としては、ほぼ異論のないところです。 あともう一つ、当事者、障害者御本人の方の意見については恐らくまたヒアリングで も開かれるのであれば、そういうところでまたお聞きいただくか、あるいは全精連等の 意見を伺うかということになるのかもしれませんが、その辺の全家連としての意見の統 一という点では御心配は要らないと思います。 ただ、もう一つ、確かに御指摘のように、国家権力というような形になるんでしょう か、そういう行政処分として行われる形態と契約として行われる形態というのは、確か に言葉のイメージとして感じますと、契約の方が穏当だなというような感じもいたしま すので、その辺については、いろいろな方の御意見も伺うべきだろうなとは思っており ます。だた、その契約が先ほど申し上げましたように、実際に契約として果たして拘束 出来るのかという問題が出てきたり、それ自体にもそれぞれいろいろな難点があって、 そういうところは皆さんにちょっとお考えいただければなと思っております。 ○新保委員 要するに、必要な医療をどう担保するかという問題と、それから、もう一方では、医 療受給権という問題がある訳ですね、御本人からの。その双方の問題に今絡み合ってい るように聞こえたんですが、例えば、総合病院での救急救命に精神疾患の方が行かれた ことはたくさんあります。そして、総合病院の救急救命で多くの国立病院の場合に、精 神科のベッドを持っていることはほとんどないんです。ですから、とりあえず他疾患、 例えば自殺をはかったとすれば警察の方の疾患で入院をさせる。そして、現状で救急の 対応をして、結果的には他へ転院させるというのが現状でございます。 そういうことを考えていくと、そのときに本当に患者さんにとって必要な医療が担 保出来ているのかということはちょっと疑問に思います。また、転院をさせるときに本 人が望む医療機関を受給出来るのか出来ないのかという課題もあります。いわゆる医療 受給権の問題です。それは当然のように、インフォームド・コンセントを伴う医療受給 権でなければいけない訳ですが、それも現況ではちょっと難しさがあるような気がして なりません。そういうことを考えていきますと、全家連さんがちょっとおっしゃられた 保健所の現況の精神保健福祉相談員が精神保健福祉士に読み替えられるかどうかは別と しまして、仮に読み替えられたとしても、この方に導入入院という形で医療まで導入し ていただくんだということ、これは確かに悪いことではないんです、いいことだとは思 うんです。しかし、もしそうだとすると、精神保健福祉士にそれなりの言わば業務上の 力というか行為を行う権限が付与されることになりますし、その権限がもし間違った形 で実施された場合には、家族もマイナスになりますし、状況によっては精神保健福祉士 そのものが地域で病者を管理する可能性も出てまいります。そうすると、まさに今度 は、一市民として病気を持つ患者さんが、自ら調子が悪いなと思って医療を受けたいと きに受ける権利を阻害する可能性も出てまいります。本当はそれが上手にいかなければ いけない訳です。それを精神保健福祉士が、おいおまえ、今ちょっと調子悪そうだから 連れていくよということになって導入されても困るという問題も出てまいります。 いずれにしましても、そういうことを考え合わせていきますと、いわゆる導入をする ということをある職種に任せますと、これは基本的に保護者ないしは保護者の意思も、 現況では確かに先ほどお話がありましたように、多くの保護者は入院させたいと思って 医療機関を訪ねるのは事実ではございます。しかし、本当に初発の御家族のことなどを 考えた場合に、その方たちはほかに手立てがないんだろうかという思いを当然持ってい る訳です。そうしますと、そういった方々にも十分こたえられる体制というのが必要だ というふうに思うんです。そのようなことを併せ考えていきますと、今、早急に医療導 入入院という形を考えるのは勿論一つのモデルとしては重要なことだと思いますが、現 行法と照らして早急に変えられるかどうかというと、さまざまな問題点があるのではな いかなというのが感想でございます。 ○池原委員 そうですね、2段階でこのシステムが出来ていて、受診の導入という保健所レベルで 見たときに、この方は実際には極めて精神障害があることが疑われるのにもかかわら ず、全く未治療のまま放置されているというような状態のときに、とりあえず病院の窓 口までお連れして診察を受けてもらうという段階と、それから、その診察を受けても らったときに、明らかにやはり今で言えばちょうど医療保護入院に該当する程度の状態 にあるということになれば、では、医療の導入入院をさせましょうという2段階になっ ている訳です。 今、御指摘いただいた保健所の精神保健福祉相談員なり将来的な精神 保健福祉士なりがそういう市民の生活に目を光らせて、もしかしたら精神障害じゃない かという人を連れていくということになると、なかば警察国家的になってしまうという ようなことであるとすれば、場合によれば、ここの受診の導入という部分は、言わば今 ほとんど法的には規制されていない形態で搬送とかが全国でやられていると。例えば、 家族の方が警備保障会社を頼んで連れていってしまうとか、そういうような実態がある ので、むしろそこを法的にはっきり要件化して目に見える形にした方が、かえって現場 でのやり過ぎとかあるいは放置という問題が解決出来るのではないかという発想で、こ の受診の導入というところがつくられたものですから、この受診の導入という部分が必 ず医療導入入院とペアでなければいけないとは考えてはいないんです。ですから、医療 導入入院はむしろ医療導入入院として、要するに保護者の同意要件というのは外してし まって、精神保健指定医2名の判断によって入院がさせられるという形態として別建て でお考えいただいてもいいのかなというふうに私としては思っていますけれども。 ○守屋委員 今、大変面白い考え方だなというふうにお聞きしていたんですが、この医療導入入院 についても、都道府県知事は指定医2名の判断で入院させることが出来るということに なると、先ほどのように、なぜ家族が入院の同意をさせることが出来るかという根拠が 非常に乏しいということと全く同じことが出るような気がするんです。措置入院の場合 には、いわゆる他害という非常に社会的な問題、自傷という非常に本人の保護、こうい うかなりはっきりした案件があるから、行政がそういうことを認めることが出来るとい うことに私はなるんだろうと思うんです。そうすると、さっき言われた意味での家族が なぜ入院に同意出来るか、都道府県知事がさせることが出来るかという点について同じ 問題が出てこないのかなというのをちょっと思ったんですが、いかがでしょう。 ○池原委員 それは、むしろ山本先生に教えていただきたいんですけれども、つまり、医療導入入 院にしても医療保護入院にしても、実質的な根拠はメディカルパターナリズムだと思う んです。そうすると、そのメディカルパターナリズムのパターナリスティックな権力を だれが行使できるのかという問題になると思うんです。そのときに、私どもの考えで は、平等な立場にある私人同士が、家族であれ何であれ片方に対して強制権を行使する というのは、どうも理論的にはなじまないだろうと思うんです。そのパターナリス ティックな権限というのは恐らくやはり国民に対するある種の国親思想というのか、 ちょうど少年法の思想にもそういうものがありますけれども、そういう国という私人か ら離れた公的な立場のものが、そのパターナリスティックの権限をもし行使するんだと すれば、そこに根拠があるのではないかなというふうに私は考えているんです。だか ら、私人同士の問題と公的な権力の問題と、これはちょっと違うのではないかなと思い ますけれども、その辺はちょっと学問的にもし山本先生に教えていただければと思いま す。 ○山本委員 恐らくそういう考え方だと思うんです、理論的には。 ○守屋委員 そうすると、私と私だと根拠にならなくて国と私だとなるんですか。 ○池原委員 要するに、どんな例で申し上げたらいいんでしょう。 ○守屋委員 さっきのは、いわゆる契約が成り立つかどうかという問題だったですね。今度の場合 は、契約ということよりも、これは強制入院ということになるのでしょうけれども、そ の場合に、行政がそこまで介入出来る根拠とは何なのかというのが私には分からないん です。 ○吉川座長 ちょっと待ってくださいね。今の議論は、医療保護入院をどうするかという問題と無 関係ではありませんけれども、今、全家連が提案している医療導入入院ということの問 題点でございますので、ちょっと本題の方に移させていただきます。 医療導入入院そのものは、また別な形で今回のこの専門委員会で議論出来るかどうか 分かりませんけれども、今後もやはり新しい意味での入院形態として、こういうものを 議論していかなければいけなくなるときがあるかもしれませんが、今はちょっとここで ストップさせていただきます。 その上で、先ほども申しましたように、医療保護入院そのもののこうした制度そのも のを、やはり今の現状の中では残さざるを得ないのではないだろうかというのが、先ほ どから皆様方がお話しになられている大体の結論みたいな気はしますけれども、金子先 生は2つに分けてしまえということはおっしゃっいましたけれども、ほかの方々は大体 この制度を今のところうまく使っていくのが現実的ではないかなという御意見のように 承りました。その上で、では、どうしたらいいのか。もっと適切な運営はないだろうか ということで、少しこの専門委員会が報告書や何かをつくる段階のことを考えますと、 そこに加えていくべきことがもしあるようであれば、今、基本的な考え方の中に少し置 いておきたいなと思っているのですけれども、いかがでしょうか。 ○竹島委員 この契約という考え方で確かに今の流れでいうと、それぞれの個人のそれぞれの主体 性ということを考えていった場合に、契約という方法が妥当であるということはそのと おりだと思います。 けれども、今の医療導入入院の話にしても、多分、家族会の家族の方は、今、自分が 70から80になった意識の上において、自分に出来ない分をどこかに託したいという気持 ちもそこに入ってくるのではないかという気がするのです。いわゆる持ちこたえられに くくなってこれからどうするかという部分が1つ出てくる。それから、もう一つは例え ば、具合が悪くなってきたと。医療機関を探さなければいけない。そうした場合に、そ ういう契約を結ぶための適切な情報を得るという大きな問題が1つ。情報にアクセス出 来る、情報が市民の前に提供されているのかという部分が、契約ということになれば大 事な条件になってきやしないかなというふうに思うんですけれども。 ○佐藤委員 今、池原委員から言われた2つのうちの1つ、搬送の問題ですね。警備会社がどうい う根拠で搬送出来るんだろうかという疑問がありますし、一方で行政機関が一般申請を 使って、しかも、搬送を業者を使って積極的にやった事例があったりしていますが、い ずれにしても、現状ではやはり法的な根拠が乏しいというしかない。それは、検討の課 題の中で精神科救急についての検討をする項目があるようですので、出来ればその中で 搬送の問題を含めて、もう一度御議論いただければと思います。 ○吉川座長 分かりました。 ○杉中補佐 そこのところは、やはり地域における公的機関の役割、特に保健所の役割が一番問わ れるところだと思いますので、市町村なり都道府県保健所なりの役割というところがあ りますので、そこで取り上げる考えではおります。 ○吉川座長 どうでしょうか。 ○守屋委員 ちょっと先生のおまとめをもう少し、私の考えでは、医療保護入院というものについ ての要件を少しきちんと検討しておく必要があるだろうと思います。 それから、これはまた医療審査会等で議論されることだと思うんですが、そういうこ とをきちんと審査する機能が必要ではないかと思います。 ○吉川座長 分かりました。私が今、言おうと思っていたことをちょうど言っていただきましたけ れども、要件の問題は先ほどお話をしたとおりで、もう一つは、医療審査会の方の役割 が、中に何かもっとこの医療保護入院に関して審議すべき力、あるいはそういうような 役割を持ってもらうということも、恐らく今日ここで話し合われたことの中身ではない かなと思っています。それらを含めて一応、今日の結論とさせていただいてよろしゅう ございますでしょうか。 ○池原委員 ちょっと一点よろしいでしょうか。今の問題点の2点目の、最初私が申し上げたの は、医療導入入院について直接御議論いただきたいということよりは、契約方式という ことを基本に置いて進めていくべきなのか、あるいは行政処分あるいはその他何か方法 があるのかもしれませんが、その辺のところを少し煮詰めた方がいいのではないかとい うふうに思って、まず、ちょっと皮切りに申し上げたんです。 そういう意味では、例えば、なかなか行政処分ということまで踏み切れないというこ とで仮にあるとするならば、せめてここを契約による入院の方が望ましいというふうに 言っても、その契約というのは一体どういう契約なんだということ自体の中身が非常に 不明確な状況にありますので、せめて、契約方式を取るのであればどのような契約内容 というか、どういう法的性質の制約なのかということを、もう少し検討を進める必要が あるという辺りの御指摘をいただいた方がよろしいのではないかと思います。 ○吉川座長 その辺はよろしいですか。 ○山本委員 そうですね。その分、やはり保護者の同意という問題とかかわって非常に難しい問題 だと思うので、今後それをやはり根本的に考えるという方向でまとめていただければと 思うのでございますが。 ○吉川座長 分かりました。そうすると、3の「基本的な考え方」の○の2つ目のところの考え方 で、少し今のことをつけ加えながらまとめていこうと思います。 ○杉中補佐 では、どちらの方がいいかということも含めて将来的な検証課題だというような感じ がします。現状としては現行制度をベースにやっていかざるを得ない。今年の来年です から、そういった感じでここを直させていただくということでよろしいでしょうか。 ○吉川座長 これと、医療保護入院のことは当然、保護者の問題と非常に深い関係がありますし、 保護者の問題は次回検討させていただきます。したがって、また少し議論が戻ることが あるかもしれません。というのは、今日の議論の中でも保護者の問題を踏み込んで発言 された方もおられましたので、当然、それは少し行ったり来たりするかもしれません が、本日は医療保護入院というものの制度をどうするかということで議論していただき ました ○吉川座長 先ほどから少し話が中から出ていましたけれども、それでは、入院の判定基準の問題 までこなして、そして、本日は終わりたいと思います。 それでは、お願いします。 ○杉中補佐 それでは、資料3について説明させていただきたいと思います。 医療保護入院の要 件につきましては、対象者が精神障害であり、医療及び保護のために入院が必要な者と いうことになっているが、医療及び保護については明確な基準が示されていないのが現 状であり、その判断というのは精神保健指定医の判定に一任されております。そのこと が医療保護入院の性格を極めて不明確なものとしているのではないだろうか。特に、任 意入院との関係で両者の明確な区分が示されていない。精神病院において治療を受けて いる患者については、すべて医療が必要である。任意入院患者についても、隔離等の保 護が必要な場合もある。したがって、任意入院患者に対しても医療及び保護が必要な場 合もあり得る。 この結果、客観的に見て任意入院相当と考えられる場合でも、周囲の環境によって医 療保護入院とされているような問題事例が発生しているということで、問題事例につい てなんですが、我々去年、大和川病院事件という中で直接病院に立ち入って調査をする というような機会が得られまして、その中で、かなりこの両者が混同しているような事 例というのがありました。 このような問題事例が発生しておりますけれども、一応、法律上は指定医の判定とい うものがあって、この医療保護入院形態にしたりもしくは任意入院形態にしているとい うことに関する問題ということには、直ちにはなってこないというような感じになって おります。 こういうような問題事例が実際発見されたというようなことです。 次に、2番、判 定基準についてということで挙げさせてもらいました。判定基準について任意入院の要 件というものが本人の同意であることを考えれば、一般的には医療保護入院というのは 同意能力が不十分であり、自ら入院の必要性について判断が出来ない場合と考えられ る。しかしながら、任意入院患者の同意とは必ずしも積極的な同意ではなくて、患者が 自らの入院について積極的に拒んではいない状態であればいいとされている。 また、これは同意入院時代の公衆衛生局長通知なんですけれども、当時は同意入院が 必要な場合として、入院医療が必要である精神障害について患者の病識の欠如、入院医 療に対する非協力・拒否等の態度がある場合に、精神病院の長に許された権限として、 患者本人の同意がなくても保護義務者の同意を得て入院をさせる入院形式を言うもので あるという感じで、入院に対する非協力・拒否等も昔は含めて運用していた。ただ、こ の通知というものは現在廃止されております。 ということで、医療保護入院になったときに、公衆衛生審議会でも「医療保護入院に ついては、その入院が本人の意思によらないものであることにかんがみ、運用上その基 準をできる限り明確にするように努めるべきである」という答申がなされておりました けれども、現在までのところ医療保護入院についての明確な基準なり、それに対する考 え方というものは示されておりません。 基本的な考え方についてでございますけれども、医療保護入院というのは本人の意思 によらない強制入院の一種であるということを考えれば、その運用は限定的になされる べきではないか。現在のように他の入院形態、特に措置と任意入院というものから控除 された残りを医療保護入院といったような形にするのは適切ではないのではないか。し たがって、その入院の基準というものを明確にする必要があるのではないかというふう に考えます。医療保護入院の基準について明確にするために、法文上、医療保護の対象 を精神疾患により入院の同意が行えないというものに限定して、例えば、医療及び保護 のために入院が必要であるが精神疾患により入院の同意を行うことが出来ないものにつ き、保護者の同意があるときは本人の同意がなくても、その者を入院させることが出来 るといった規定にすることが必要なのではないか。 更に、本人の同意が出来ない場合 といった場合であっても、いろいろな医学上のケースというものが考えられる場合等も ありますので、医療保護入院の対象として病状による個別の基準というものが必要であ るのであれば、措置入院と同様に入院の判定基準というものを更に詳しく作成すること が必要なのではないか。 以上でございます。 ○吉川座長 いかがでしょうか。先ほどの中でも幾つか議論はされてきたことだと思いますけれど も、改めてここで今ちょっと整理をしていただいてある訳で、お聞きいただいて何か御 意見いただけますでしょうか。 ○長尾委員 今の3番目の2つ目の○ですか。これの例えば「医療及び保護のために入院が必要で あるが、精神疾患により入院の同意を行うことができない者につき」ということで、こ れはいいのではないかと思うのですが、その下の病状による個別の基準が必要かどうか ということにつきましては、症状を細かく規定するということについては、非常に困難 が生じる部分が出るのではないかなと思うんですが、これについてどういうふうにお考 えなのか。 ○杉中補佐 多分、同意が出来ない場合と一概に言ってもいろいろなケースがあるのではないか と。特に、一番我々が悩んだのは、総体的に見ると判断能力があるんだけれども、病識 だけが例えば欠如しているようなときはどうするかといった、措置入院と同様に病気の 症状によってやるという方向もあって、昭和36年通知などはそんな感じなんですけれど も、必ずしもそれにこだわらなくて、もうちょっと個別なケースというものが考えられ て、それに対する基準が必要なのか、必要でないのかというところが、必要なのであれ ば何らかのもうちょっと詳しい判定基準を示すべきなのではないかということを提案さ せていただいたんです。それが必要ないということになるのであれば、要らないという ことにもなるんですけれども。 ○吉川座長 私どもの研究所の中でも、これは議論をさせていただきましたし、本人が病識がない という言葉が余り横行するのはよくないのかもしれません。通常で言う病識がないとい う、その言い方が出来るかと思います。妄想、幻覚があっても本人は社会的な事象を的 確に判断をしながら、妄想、幻覚に基づくところ以外はかなり判断が的確に出来る人は たくさんいます。そうした判断と、それから、妄想、幻覚に基づく判断の間違いという のをどんなふうに考えていかなければいけないのか、かなり具体的なことも話し合って きました。 その中で、やはり総体として病識の程度ということを考えながら、このことは少し判 断しなければいけないのではないかというふうにまとめることが出来たような気がしま すけれども。長尾先生どうでしょうか。 ○長尾委員 ですから、その上のそういう形でまとめられるんだったらいいと思うんですが、病状 による個別の基準というのは余り厳格にやり過ぎると非常に問題を生じてくる。 逆に、運用出来なくなる。さっきも言いましたように、ある程度、入院というのは相対 的な部分というのがあると思うんです、基準というものは。ですから、そういうものを ある程度、ファジーと言えばおかしいですけれども、若干融通をきかす部分を残してお かないと、逆に運用が非常に出来にくくなることが生じるのではないかと。ちょっとそ ういう懸念を私は持ちます。 ○吉川座長 もし、そういうふうにお考えであるなら、もう既にこの特に○の2のところを通過し て、○の3のところでございますので、○の3のところにいきますと、それはもう何ら かの形で個別性の高いケーススタディーをやるとか、あるいはケースをそこで記入した ある種の判定基準をつくるという話になるのであって、1つ前のところではここはよろ しいということですね。 ○長屋委員 私は、これはこれでいいのではないかと思います。 ○吉川座長 分かりました。 ○竹島委員 ちょっと話が、大和川のことが出たのでそこに関係してなんですが、こういうふうに いくと、例えば、任意入院の方に回ってくる人が増加してくるということになると思う んです。大和川では任意入院だけれども、現実には強制入院だったという事例が出てく る訳でして、そうすると、資料8の中の入院制度の概要の中で、精神医療審査会への請 求について任意入院の場合はそれがない。ここの部分がどうするのかという問題があ る。現実に任意入院とはいえ実際には、例えば本人が退院したいと言ったら、あなたは 病状が悪いからということがありうる訳ですから、この部分の任意入院の人の人権と いった問題をどんなふうに考えていくかという問題が出てくるのかなという気がするん ですけれども。 ○杉中補佐 逆に、医療保護入院の病態像というものがラフなものであっても示されていないとい うところが、本来、医療保護入院の人が現実にその手続の煩雑さをきらって任意になっ ているという事例などがあるときというのは、その原因の1つにもなっているのかなと いうのが我々の考えなんです。そこは、個別にきちきちやるのは難しいと思うんですけ れども、ある程度、医療保護というのはこういう人が対象になるんだということを示し てやることによって、逆に病状の任意でいっぱい入っているということになると、それ はそれでおかしいという話になってくるのかなと。 ただ、その辺についての相対的なコンセンサスというのが、実は余りなくて、実際は 個々の今の医師に任されているというのが。そうすると、判断というのが非常に難しい のかなという。 ○吉川座長 いかかでございましょうか。そろそろ時間が来ているところでございますけれども、 ほかに御意見がないようであれば、とりあえずこれで終わらせていただきます。 ○池原委員 一点よろしいですか。これは、単純に言葉だけの問題ですけれども、つまり2つ目の のところで「入院の同意を行うことができない」という表現、これがちょっと意地悪 ○に解釈すると、任意入院の方は自ら入院について積極的に拒んでいない状況で同意をし たということになる訳ですから、同意が出来ないというのは、この表現だと何か極端に 言うと、先ほどの大和川病院の最後の患者さんCの事例で、声を出さない、問い掛けに も首を振るだけみたいな、つまり積極的に余り意思表示をしない人でも一応同意をして いるんだというふうに解釈される余地がないかなということをちょっと心配しまして、 むしろ、直接的にいっそ入院の必要性について判断出来ないという表現にするのはまず いのでしょうか。 ○杉中補佐 そこについては、単に1つの例として示しただけなので、これでということは全然な くて、議論の余地はあるところだと思います。 ○吉川座長 まだこれは検討出来ますよね。 ○池原委員 それから、もう一点、これは33条の条文の言葉を変えるという趣旨でお書きになって いるのか、それとも運用上の厚生省令とか通達とかでこういう基準を書くということな んでしょうか。 ○杉中補佐 一応、法文を変えるということも含めて。 ○吉川座長 よろしゅうございますか。 それでは、本当に長い時間御議論いただきましたけれども、本日の専門委員会をこれ で終わらせていただきます。 次回は先ほど申しましたように、本日のテーマと無関係ではございません、保護者の 問題について皆さん方の御意見をいただきたいと思っています。もう既に資料は全部皆 様方のお手元に渡っていることになりますので、その資料をお目通しいただければと思 います。それから、本日お配りしましたものの中で、冒頭に申し上げましたように、個 人にかかわるものをこのテーブルの上に置いておいていただければと思います。 ○杉中補佐 次回なんですけれども、次回の冒頭に、実際に保護者の方のお話を聞こうかというふ うに考えているんですけれども。 ○吉川座長 これにつきましては、課の方々とも相談をしましたし、それから、今日の会ではなく て専門委員会の初めの方にも議論が出ましたように、当事者の方々の御意見を伺おうか と、そんなお話を申し上げたと思いますが、次回の保護者のときには御家族の方々に来 ていただいて、そして、最初の20分ぐらいお話をいただいて、そして、実際の審議に入 りたいと思います。事前に御家族の方の御意見を承るというような手順にしてきたいと 思っています。 ○吉川座長 皆様方本当にお忙しい中ですから、御都合をつけてくださるのは大変難しいことだと 思いますけれども、出来るだけ御協力いただきまして、スピードアップして審議してい きたいと思っています。 ○吉川座長 そうですね。確認をさせていただきます。5月の日程は13日と26日。13日が水曜日、 26日が火曜日です。そして、今お話が出ました6月の日程が10日、水曜日と25日の木曜 日です。 それでは、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。 厚生省大臣官房障害保健福祉部 精神保健福祉課医療第一係 高橋(内線3057)