98/04/23 第19回年金審議会全員懇談会議事録 第19回年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成10年4月23日(木) 14:00〜17:17 場 所 厚生省特別第一会議室  1 開会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事   ・ 高齢在職者・高額所得者等の年金について   ・ 少子化への対応について ・ 公的年金の一元化について  4 閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員  神 代 委 員 高 山 委 員 福 岡 委 員  桝 本 委 員  山 田 委 員 山 根 委 員  吉 原 委 員  若 杉 委 員 渡 邊 委 員  貝 塚 委 員 船 後 委 員  ○会長 ただいまから、第19回年金審議会全員懇談会を開催します。委員の出席状況について 事務局から御報告をお願いします。 ○事務局 本日は、砂子田委員、国広委員、久保田委員、坂巻委員、都村委員、富田委員、目黒 委員が御欠席でございます。なお、貝塚委員出席の御予定でございますが、ちょっとお くれておるようでございます。以上でございます。 ○会長 次期年金制度改正に向けての審議に入ります。本日は、まず高齢在職者・高額所得者 等の年金について審議を行い、次に、少子化への対応について審議を行い、その後で、 公的年金の一元化について審議を行います。本日は審議事項が多くありますので、途中 休憩を挟みまして審議を進めます。よろしくお願いします。  まず、高齢在職者・高額所得者等の年金につきまして、審議をお願いします。事務局 から資料のご説明をお願いします。 ○事務局 それでは、まず資料1に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。 今回、特段、高齢在職者・高額所得者に対する新しい資料を準備してございませんので 白書の関係部分を利用しながら御説明をさせていただきます。  まず、1つ目の項目ですが、現在の制度は60歳から64歳までの在職者につきましては 保険料を徴収させていただいて、また、年金額と賃金額に応じて、年金額の一部または 全部が支給停止されるという形になっております。こういった考え方を65歳以上の在職 者についても取り入れるということをどう考えるか。  その具体的な絵は、白書の213ページに図解とあわせて書いてありますが、報酬比例部 分、いわゆる2階部分について、65歳以上でも現役の方については、賃金に応じて支給 額は停止していく。一方、現役で活躍いただいているということで保険料は徴収させて いただいて、要は支える側に回っていただくということです。  2つ目のマルでありますが、今度は厚生年金の在職というような要件よりももっと広 げまして、現在受給者は所得等にかかわらず、年金が全額支給されているけれども、一 定以上の収入を有する方に対して年金の支給を抑える。あるいは全額抑えないまでも、 例えばということで、1階部分の国庫負担が3分の1ついておりますが、こういったも のは税金によって賄われているという考え方から、収入の多い方について、3分の1相 当の税金で支給されている部分をとめるということはどうかということについての考え 方であります。  これにつきましても、214ページ、特に考え方については217ページに詳細に説明させ ていただいておりますが、これを支持する考え方は一定の収入等のある人は稼得能力を 喪失していないという立場とか将来の世代の負担軽減という立場もある。反対に、望ま しくないという立場としては、社会保険の原則というか、基本にかかわるのではないか ということ。あるいは年金に対する信頼を失わせるのではないか。特に前回御説明しま したような年金の加入を進めていく立場から、こういったことを導入した場合に3分の 1の国庫負担がないということで、加入促進に大いに障害になりはしないかという心配 等があるわけです。むしろ適切な課税によって対応すべきではないかとか、事務的にも 膨大な負担になる、こういったことについても記述しているところです。  以上、よろしくお願いいたします。 ○会長  ありがとうございました。ただいま御説明のありました高齢在職者・高額所得者等の 年金の問題につきまして、御質問、御意見などございましたら、どなたからでも御自由 に御発言をお願いします。 ○A委員  ちょっと教えていただきたいのですが、65歳以上の人たちにかかわる在職老齢年金制 度、いわゆる「高在老」と言われてきたものは、昭和60年改正以前にあったものが、昭 和60年の改正で廃止されたわけですね。今回それを形はちょっと違うかもしれないけど 復活をさせようという御提案だと思うのですが、そもそも旧高在老があった理由、それ を廃止した理由、そして、今度復活させようとする理由について教えていただけますか ○事務局  始めたときは、65歳以上の方々は非常に所得が低かったという状況に鑑みまして、年 金もお出しして生活を支えるということで始まりましたが、基礎年金をつくるときに、 自営業者のグループは、65歳から満額支給されるということで、65歳以上は年金の世界 では卒業というか、収入があっても、65歳以上は保険料を徴収されないという制度であ りますので、足並みをそろえて高在老を廃止しということであろうと思います。しかし 今後の給付と負担の水準のバランスを考えるときに、高在老を復活させることが世代間 の合意を得やすいということで提案があるということであろうと思います。 ○B委員  その10年前の改正は、実は私が関係していたのですが、年金制度の一元化というか、 制度による違いをできるだけならそうと、同じようなものにしようという考え方が強か ったんですね。被用者年金と国民年金、また被用者年金の中でも共済組合と民間の厚生 年金で、在職している場合の扱いや支給開始年齢がばらばらだったものですから、でき るだけ、それを合わすということが非常に強い要望というか、要請がありまして、それ なら年齢については65歳で合わせようではないかということで国民年金が65歳、厚生年 金は、そのときはまだ60歳だったんですが、65までは被用者については、それは原則雇 用で責任を持つと。65歳以降は年金で責任を持つというふうに割り切っていこうではな いか、それでそろえようではないかということで、多少そういうことになるまでいろい ろ議論があったのですが、65歳過ぎた人については、働いていても年金を出すことにし ようと。  先ほど説明ありましたように、年金の世界では保険料も取らない、年金は全部出すと いうことでそろえていこうという整理をしたわけです。それで、在職老齢という制度も やめたということです。そのときは、それなりに、みんなが、それで行こうじゃないか と、非常にきれいな形になるのではないかということだったわけです。 ○A委員  在職老齢年金というのは、理屈がどういうふうに立っていたのかということと、今の 在職老齢年金がどういう問題を抱えているのか、2つの問題を少し検討しないと、65歳 以上に延ばすとか延ばさないとかということを、ただ財政上の問題で取れるところから 取ってしまえという議論をやるのは余りにも乱暴な話だと思います。  きょうの資料1を見ますと、「賃金額に応じて年金額の一部又は全部が支給停止され ている」と。これは本来出るものに対して減額措置がとられていると読めますが、もと もとの制度の発足は、旧厚生年金法ですと、受給要件として被保険者資格を喪失すると いうことが入っていて、つまり被保険者資格を持っている限りは年金は出ないと。出な いはずのものに部分的な年金を支給する、こういう組み立てだったように思います。こ れは出るものを減らすというのと、出ないはずのものを、収入が足らないから幾らか出 してやろうというのでは全然発想が違うと思うのですが、これは60年改正のとき変わっ たのでしょうか。 ○事務局  その思想は変わっていないと思います。 ○A委員  共済の側については、今日、O委員御欠席ですが、やはり退職が要件で、60歳以上に ついて、引き続き共済年金の被保険者である場合に、一部または全部の支給停止という ような年金は一切出ないように聞いておりますが、それは事実ですか。 ○事務局  おっしゃるとおりです。 ○A委員  我々労働者の場合は、個人的に大分違いはありますが、一般的に言うと、自営業者の 方とは違って、退職してしまえば、資産収入というふうなものは、あるにしても極めて わずか、原則的に言えばない。古典的に言う無産階級でございますから。ですから退職 と同時に年金がきちんと出るというのは非常に大事なことで、年金と雇用の接続という 問題には給付水準以上に強い関心を持たざるを得ないのですが、現在の在職老齢年金と いうのは、そもそもこれを65歳以上にも適用するとか、しないとかという前に非常にた くさんの問題があるので、その辺を一通り検討していただければありがたいと思います  私どもは結論的に言うと、現在の在職老齢年金全体をやはり見直すべきではないかと このように考えております。 ○C委員  今、A委員おっしゃったように、在老の効果といいますか、機能に関しては、特に労 働経済学者の間でかなり問題があるという意見が多いと思うんですね。具体的な名前を 挙げていいと思うけど、例えば慶應の清家さんが最近書いた本にもそういう意見が書い てありますが、高齢者の就労をある程度促進しなければいけない時代的な推移の中で、 就労抑制的な効果があると、廃止しろという意見がかなりはっきり書いてあります。A 委員はそのことを念頭に置いておられるのかどうかよくわからないけれども、確かにそ ういう一面がないことはないですね。ただ、清家さんが言うほどはっきり証明できるか ということになると、私は多少疑問もあるのですけれども、逆に今の日本のように、年 功賃金で高齢者の賃金が非常に高いときに、在老で34万以下であれば一種の賃金補助が 出るわけですね。一種のそういう賃金補助的な格好で、就労が促進されている効果も理 屈上はあるはずではないかと思うんですけれども、その辺はきちんとマイクロデータで 実証してみないと本当はいけないんですが、余りそう明白なエビデンスは出てないので はないか。私が勉強不足かもしれないので、違っていたら御指摘いただければと思いま す。  もう一つは、現行制度ではボーナスからは1%しか取っていませんから、しばしば在 老年金で8割もらえるようにするために、月給はうんと低くしておいて、ボーナスで足 りない分出すというところも確かにあることはあるんですね。そういうやり方は、実は 低賃金労働を普及させているという批判もあるのかもしれないけど、ある意味では高齢 者の就労促進的な機能もあるだろうと思うんですね。それが一般論で、少なくとも現行 の65歳までの在老については、就労を促進しているから、大いに奨励すべしというほど の意見は余り確かにないですが、就労を抑制しているからやめろという意見はかなり学 者の中であることは事実ですね。学者の言っていることがいいかどうかは別の話だとは 思いますけれども、そのことはある程度念頭に置いて、きちんと判断をした上で決定を しなければいけないことは確かですね。  ただ、今、問題になっているのは、たまたま65歳までのやつを70歳までとか、あるい は70歳以上にもという意味なのか、この辺はよくわかりませんが、私はとりあえず70歳 ぐらいまでの方がよかろうかと思いますが、70歳まで在老を延長するというのは、仮に 清家さんたちが言うような、就労抑制効果が一般論としてあったとしても、少し意味が 違ってくるのではないかという気もするんですね。高額所得者の年金給付制限という非 常に政治的な要請が出ているときに、ある程度妥協的にそういうものを交わすというこ とも考えなければいけないとすれば、一律に所得で切るのは、まさに社会保険のプリン シプルに反することなので、それよりは在老の延長という格好でやる方がベターではな いかという気がします。  例えば、私たまたまちょうど4月1日から、そういう身分になっているわけですが、 退職後も就労もして、大分差がありましたけれども、月給はいただいており、年金もも らえる身分になっています。そういう状況で、自分のことで考えてみると、本当に国民 経済が困っているなら少し遠慮してもしょうがないかな、どうせ、税金で調整されるで しょうから、そう実害はないかなという気もしますけれども、ただ、あくまでこれは政 治的な妥協措置でしかない。本当は社会保険制度としてはおかしいことだと思いますが やむを得なければ、そういうこともあり得るかなとは思います。  ただ、その場合に、就労抑制論という批判に対して応えるためにも、34万円というの はちょっと低過ぎるのではないかという気がするんです。今の標準報酬の上限が少し低 過ぎるのではないかと私は思いますけれども、上限をもっと上げる方がいいのではない かと思いますが、それとは一応切り離してでも、50万ぐらいのところまでは、賃金が2 増えたら年金は1減らす。そういう格好で在老を延長するのはやむを得ないのかなとい う感じですけど、A委員どうでしょうか。 ○A委員  今、委員から御指摘があった就労抑制だという議論は、私どもの感じには非常に合っ てないんですね。これは第3号被保険者問題でも、女子の就労抑制だからけしからんと いう議論があったりして、年金制度が高齢者にしろ女子にしろそうですが、就労を促進 したり抑制したりというような政策的な目的に使われるべきではないのだろうと思いま す。それ自体は労働市場に対してニュートラルであるべきなんではないか。ただ、今の 在職老齢年金の問題を数え上げればきりがないほど大きな問題があります。  今、C委員、ボーナスの御指摘ございましたけれども、たくさん払いたいのにたくさ ん払うと年金カットされるからボーナスの方で払おうというような、こういうケースは ないことはありませんが、これは非常にレアケースです。むしろ、それよりも年金半分 出るのだから賃金半分でいいだろうという形になっているのが60歳代前半層の現在の労 働市場で、そのことは考えてみれば、賃金の半分を年金で補填している。つまり、それ でなくても年金財政が将来どうかと言われているときに、年金財政が賃金補填に使われ ているのが今の在老で持っている構造的に大きな問題だろうというのが私どもの関心で す。これは例えば不況時の雇用調整助成金という制度が雇用保険にありますが、あれは はっきりと政策的な目的のある賃金助成ですが、それをはるかに上回るような金額が年 金財政から支出されるというのは、「年金」としては目的外使用ではないのかという感 じがいたします。  もう一つ、実際の高齢者の就労意欲について言えば、就労希望の中で、短時間就労の 希望は非常に多いわけですね。これは労働省の高齢者就労調査などでも出てきますし、 私どもの組合員アンケートでもはっきりと出ていますが、十数年前から高齢者雇用の問 題が重視されていながら、この方面で高齢者の短時間雇用を促進するような手だてはほ とんどとられていません。これは被保険者資格にかかわる問題ですが、労働時間につい て言えば、通常労働者の4分の3未満であれば、被保険者資格が外れてしまう。今後の 短時間就労あるいは短日数就労の拡大を展望するということから言えば、これを例えば 2分の1なら2分の1ぐらいに引き下げるという措置がとられていいのではないか。こ れは恐らくパートタイマーの適用の問題とも関連してくると思いますが、高齢者にも共 通すると思います。 ですから、今、短時間就労している人がいるとすれば、例えば1週間に2日か3日出て いる人がいても、これは全く減額の対象にならない。  それから、賃金以外の所得が幾らあっても関係ない。例えば庭先に退職金でアパート を建ててアパート収入が1カ月50万ある人は、正確に言えば、厚生年金の被保険者にな っていなければ何のカットもない。そういう資産を持っていない人が、賃貸のアパート かなんかで一生懸命働いていると年金がカットされる。しかも前回改正以後、無条件で まず2割カットされる。こういうのは非常にめちゃくちゃなのではないかという感じが いたします。  それから、60歳まで共済年金にいた人と厚生年金にいた人で明らかに違うわけですね これは“官民格差”だと申し上げているのではなくて、私は在老の矛盾だと思いますが 厚生年金の場合には引き続き被保険者資格の延長と扱われる。したがって、雇用の対象 になる。共済年金の場合には、そこのところで共済年金としては切れて、民間の年金に 移るために共済年金の側から出てくるものは、これは退職要件を満たしておりますので 原則、全額支給。これが前回余りその格差がひどいので1年後に調整をするという手だ てがとられたことは聞いておりますが、依然としてその不均衡は残っています。逆に60 歳まで厚生年金の被保険者でいた人が、60歳以上になってから共済年金の方へ移ってい てもまた同じことになりますが、そんなことは実際にはあり得ないわけですね。  というようなさまざまな問題を、私らは非常に大きな深刻な矛盾だと思いますが、こ れをどうするのかという議論をせずに、65歳以上にも適用しようとか、しないとかとい うところへ話がいくのは余りにも飛躍ではないだろうか、こういう感じを強く持ってお ることを申し上げたいと思います。 ○B委員  在職老齢年金が、雇用に中立的であるべきかどうかはいろいろ意見が分かれるところ だと思います。雇用に中立的だったら、よく定年との関係とか雇用との接続という議論 が出てこないので、それは両論あると思うのですが、在職老齢年金にいろんな矛盾とか 問題が昔から指摘されていることは事実です。今までよく言われていたのは、A委員が おっしゃるように、年金が出るから賃金を減らそうと、退職させなくても低い賃金で年 金が出るではないかと。あわせて今までぐらいの賃金でいいのではないかというのが大 体事業主サイドがとってこられた施策だったようなんですが、そういったことで賃金を 抑制すると。  それはそれでやむを得ないといいますか、当然だという議論もあるかもしれませんが そういうことが言われていたのと、また賃金と年金との額の関係が非常に難しいんです ね。 複雑にすればするほど公平なようですけれども、逆に事務的に非常に複雑になってきて どこかで階段みたいのができまして、昔は3段階だった、その段階の階段のところがお かしいと。ちょっと年金をもらったら、逆に合計額でいうと下がるとか、そんな議論が 随分ありまして、もうこんな厄介な制度はやめたらどうだという議論が強かったんです けれども、そういったことで、昔は低在老とか高在老両方ありましたけれども、低在老 みたいのは60から65歳まで残ったんですね。  今度、これを65歳以上まで延ばすのは、私は簡単に今おっしゃったように延長という 性質のものではない。大体同じ在職中の年金といっても性質が違うので、さっき言いま したように、65歳までの、本来賃金とか雇用の分担であるべき人に年金を出すのと、65 歳を過ぎて賃金なり雇用市場から離れて、年金で責任を持つべき人に対する年金の在り 方は全然違うので、私は仮に入れるにしても、今までの65歳までのやつを単純に70歳ま で延ばすのは、私はよくないと思っております。非常に性質が違うのではないか。  もし、65から70歳までの人についてまで、つまり本来の支給開始年齢を過ぎた人にま で年金を制限するというのであれば、65歳以下の人の在職老齢は、理屈の上から言うと これまた反対の御意見あるかもしれませんが、私は本来廃止すべきではないかと。原則 の考え方としては。65歳までは賃金で全額丸々責任を持つようにすると。65歳を過ぎた 場合に、本来、年金なんだけれども、賃金が出て、それなりの収入のある人については 一遠慮してもらうという考え方なら仕方がないという感じはしますけれども、今までの やつを単純な同じ要件でそのまま上に延ばすのは、いかにも財政だけを考えた、年金の 制度としてはおかしいというふうな感じを持っています。 ○D委員  年金そのもののモノの考え方は前回お話し申し上げたように、65歳のところで面積を 確定して、欲しい人は60歳からでも63歳からでも、67歳からでも受給すればいいという ことですっきりさせた方がいいということなんですが、それはそれで一貫しておけばい いと思うのですが、いわゆる勤労との関係をどう考えるか。理論的に言えば、年金と勤 労とは別だというふうに割り切るのが筋だというのが1つの考え方としては私はあると 思うんです。ただ、問題は、例えば一種のボランタリーみたいな仕事を年金をもらいな がらやる人が最近随分増えてきておりまして、その人たちにしてみれば、給料は非常に 少ないんだけれども、しかし年金をもらっているからということでやっている。  そういうことを考えていくと、もちろんそれは年金が基本で、もらっている賃金は抑 制というよりも、もともとボランタリーなんだからという意味で割り切っている人も随 分いて、通常労働との関係で言えば、確かに年金と労働とは関係ないというふうにきっ ぱり整理してしまった方がすっきりするような気もするのです。  それから通常労働でも体力との関係で、例えば3日労働で4日休む、そういういろん な就労の選び方が出てくると思うのですが、そういうところで、その間をどっちを主人 に考えるかというところは少し整理しておく必要があるのかなという感じはします。い ずれにしても年金そのものについては、きっちり権利を確定しておいて、それは何歳か らでも面積同一でもらえばいいというふうに割り切るべきだろう。  そういう考え方からいけば、例えば65歳以上で一定の収入がある場合は年金は支給し ないというようなモノの考え方は年金の基本から考えてどうも理屈に合わないなと。し たがって、そういう制限はするべきではない。ましてや、ここにあるように、「国庫負 担分」云々とか、それでなくても今の年金は結構ややこしいのに、余り人にわからない ような仕組みにしないですっきりさせてもらいたい。  ですから、在老の問題は、65歳以上の話が出てくるのであれば、整理しておく必要が ある。ただし、年金というものと勤労、ボランティアといういろんな世界があるのです から、そういう世界をどう考えるのか。これはいろんなケースが出てきますから、何を 主人にモノを考えていくのかという整理をしておく必要が多分あるのだろう。  私の言うようなモノの考え方でいけば、別個の給付は自動的に消滅するし、また、A 委員の言うような考え方でいけば、在老は年金サイドからは自動的に財源は消滅します から、あとはどうするかという問題だけになっている。財政的には非常にすっきりして くるし、モノの考え方も非常にすっきりしてくるわけですね。ただ、現実が、私の方の やつは非常にすっきりしているから余り異論はないと思うんだけど、在老については少 し議論しておく必要があるのではないか。  それから、ある収入以上は年金をカットするというようなモノの考え方は、社会保険 の性格からおかしい。そういうことをいちいち当時の為政者が何か入れるような政策的 なことをやるようなことでいじり回すようなことを続けていると不信感を増すだけとい うのが私の実感です。 ○E委員  今、D委員がおっしゃった考え方とほぼ一緒なんですが、やはりリタイアする思いと 就労したいという思い、どちらも選択できる自由が制度の仕組みとしてあるべきだと思 います。一定の年齢になりますと、いろいろ人によって差が出てきますから。今、ボラ ンタリーの話もありましたけど、いろんな生き方があると思うんです。1つのレールに 乗せなければいかんというようなものではなく、支給開始年齢をむしろ大事にして、そ こから前倒しもよし、後ろ倒しもよしということにした方がよい。先ほど面積の話ござ いましたけど、そういうことを大事にして、個人に選択肢をきっちり持たせるやり方が 私は一番妥当なのではないかと思っています。  もう一つは、将来の労働力人口の減少という大きな命題があるわけですから、就労抑 制という話がさっきありましたが、そういうことにならないように社会全体が大きく包 んでいくというようなシステムをどうつくるかということが大事なのではないかと思っ ています。  60歳定年という問題が、企業内労使関係に結果的に委ねられて、これだけ時間かけて たどり着いてきたわけです。これに年金制度とそういうものを結び合わせて考えたとき に、働き方や定年延長の問題は皆セットになっていると思います。むしろ行政サイドか ら、一定の軸になる定年という問題については、むしろ法律できちんと押さえていくや り方にしないと、自主的にとなると、規模間格差なり、力のある企業、ない企業、様々 に就職しているわけですから、それを自主性に任せて、年金は後からついてくるような やり方は私はまずいのではないかと思います。基本的にはそういう制度を行政が主導し てかっちり決めていき、それに年金が乗っていくというシステムにしないとうまくいか ないのではないかと思っています。 ○F委員  年齢のところをB委員も言われましたが、65歳までのところを70歳までに延ばすとい うのは反対と言われました。私も年金の専門家ではないのですが、国民のわかりやすさ からすると、これを延ばしていくと非常にわかりにくくなるのではないかと思います。  それから、事業主の立場から少し言わせていただきますと、年金と就労の関係は、事 業主からすると、現時点では中立であってほしい。今の制度が中立かどうかということ がありますので、これが変わるのが中立でないとかあるのですが、少なくとも現状の制 度を前提と考えている立場からすると、これを変えることによって、高齢者の就労を抑 制するとか促進するとかという議論を年金で議論をするのは今の段階でいかがなものか なというふうに思います。  ましてや定年延長の問題について、E委員は法律でと言われましたけど、これは違う 場で議論をされるべきことだろうと思っております。といいますのは、年金の制度が変 わることによって、将来の労働人口がどうなるかということがもちろんあるわけですが 今の現時点において企業が定年の延長をせざるを得なくなるとか、高齢者の雇用をせざ るを得なくなる、こういうことは今の時点では強制されたくない。ましてや年金の制度 によってそういうことはされたくないというのが事業主の現時点での立場です。もちろ ん10年後、20年後にお願いして制度を変えてもらうことがあるかもしれませんが、現時 点ではそうではないということです。 ○G委員  この問題は、基本的には日本の場合、かつては支給開始年齢が60歳で、企業の慣行と しては定年といいますか、60歳前半の雇用の問題はある意味で微妙な問題で、そこへ年 金が65歳としたときに、年金は年金として原則はそのとおりですが、そこへ何か中途の 期間は何とかならないかというのが、そこはある種の制度的な原則でやったというより は、経過期間として年金のサイドで何か工夫してもらえないかというのが今までの考え 方で、それはそのとおりだったと思います。しかし、これから先、先ほどから皆さんお っしゃっておりますが、やはり年金は65歳というのははっきりしておいて、その間の制 度のやり方はいろんな工夫があり得るわけですが、年金制度で最低限やることは必要あ るんですが、そこのところは、年金制度の影を少しずつ小さくしていくのが年金制度と しては望ましい姿だと思います。ある種の経過的なものではないかというのが私の基本 的な意見です。 ○A委員  G委員のおっしゃっている経過的とおっしゃることは、将来は65歳まで働く人が相当 な割合を占めるということを展望してというお話でございますね。そのこと自体はある 意味で望ましいことなんで否定いたしませんが、さっきE委員からも発言がありました ように、我々は非常に長い間かけて60歳定年という運動をやってまいりました。これは 年金が60歳にならないと出ない、だけど企業定年は55歳だと、その間、労働者は年金出 ないわけですから、どこかで働いているわけです。大企業にいれば、中小企業へ移って かなり賃金ダウンしても、そこのところを退職金取崩したりなんかしながら、何とか保 たせるということをやってきた。「終身雇用」という言葉をどう見るかは別にして、お かしいではないかということで、年金の支給開始年齢まで雇用を保障してくれという運 動をやってきたわけで、何も生涯労働時間を延ばせと言ったわけでは全然ないのですが 外国ではそういうふうに理解されているようですけれども、これは「定年」という言葉 の訳語が悪かったというのは、昔から私は主張しておりました。  ただ、60から65歳になっても同じことが言えるかというと、これは違うのだと思うの です。確かに学歴上がっていますから、就労年齢も上がっています。そういう意味でス ライドをさせたらどうなんだという考え方はもちろん成り立つわけですが、実際には60 歳を過ぎた後の労働者個々の体力については非常な差があります。装置産業で交替制勤 務についている人、運輸などで長時間ハンドルを緊張して握っている人等々、組立産業 でもかなりの程度そうなんですが、もう60歳になったら勘弁してくれという労働者は特 にブルーカラーの場合。圧倒的に多いわけです。  他方で、いや、65歳までピンシャンして全然遜色なく働ける人もホワイトカラーなど にはいっぱいいるわけで、しかし、日本の雇用慣行はなかなかそういう人たちに対応す るようにできてない。だから就労意欲があって能力がある人たちが就労できる機会は、 60歳以上に対して非常にまだ未開発だろう。そういう就労条件のところの開発が、例え ば短時間就労も含めてできていく結果として、みんなが65歳まで働くようになる。結果 として65歳まで年金をみんな受け取らないようになるという意味でG委員がおっしゃっ ているように、年金の影がだんだん薄くなるというのは非常に結構なことで、我々は歓 迎したいと思いますが、年金の方を絞っていって、働かざるを得ないようにするのは勘 弁してもらいたい、こういうことでございます。 ○G委員  一言だけ、今、私の発言が言い過ぎたかもしれません。私もどこかで研究会やりまし て、メーカーの方のお話を伺うと、随分職種によって違いますから、60歳でやる気がな いという方もかなりおられることは間違いないので、その辺のところは非常に微妙で、 そこを年金制度の中でどういう形でうまくカバーできるのか、ある意味では難しいとい うか、なかなかきっちり分けてというわけにもいきませんので、やはり一律になります ので、その辺のところをどう仕組むか、制度的には難しい問題だという気はしますとい うことを申し上げておきます。 ○会長  これまで在職老齢年金についてご議論が30分以上ありました。高額所得者の年金をカ ットするという方面のご議論について、どなたか御発言ございませんでしょうか。 どうぞ、H委員。 ○H委員  その前に一言だけ前半の問題について触れさせていただきたいのですが、事務局のこ の問題提起は、60代前半の在老の問題をどうするかという議論を改めてしてくださいと いうことではないような気がするんですね。それは確かに大問題なんですが、きょうの 段階は、65歳以上のところをどうするのですかという問題なんですね。本来サラリーマ ンの年金は退職要件つきで始まった。これは大体どこの国もそうなんです。退職要件つ きで始めて、日本もそうだったんですが、昭和61年4月から実施した制度で哲学を変えた んですね。65歳というラインを引いて退職とは関係なく年齢で、退職年金ではなくて老 齢年金という形でやったわけです。哲学の変更が事実上あったわけです。  その哲学について、今この段階で、あの60年改正をやったときの哲学を今後とも引き 継ぐのでしょうかという問題提起なんです。例えば共済グループは今もって老齢年金で はなくて退職年金だという形で、退職要件つきの年金なんです。なぜ、民間サラリーマ ンだけ年齢65歳で線を引くのか、そこの哲学の整理をもう一回する必要があると私は受 けとめています。  65歳で線を引くのは当時の関係者の1つの合意だったのですが、今この時点で、将来 を長期的に展望した場合に、果たしてよかったかどうかというのは改めて議論する価値 があるテーマだと思うんです。私は個人的にはサラリーマンの年金は退職要件つきとい うのは基本的に当然だと思っています。だから、昭和60年改正のときの合意については もう一回検討する必要があるのではないかと思っています。これはみんながどう考える かによって結論は変わってくる問題だと思います。当然60代前半と後半で同じ在老の仕 組みでいいかどうかはまた別の話だと思います。  その次に、高額所得者の支給制限は、ある意味では財政が将来的に非常にきつい。確 かに所得の高い人に、所得の低い若い人から、ある意味では所得を再分配するというこ とが社会的に是認されるかどうかというのは大問題なんです。若い人に、おまえたちか らいただいている保険料は、実はああいう人たちにも行っているんだよと言ったときに それでいいというふうにみんなが言うかどうかの問題なんです。拠出と給付の関係が1 対1に切り結んでいく私保険の世界だったら、だれも文句は言わないわけですが、公的 年金は必ずしもそうなっていない。  そのときにいろいろやり方はありますが、例えば一たん給付は全部払って、ちゃんと 給付から税金を納めてもらいましょうという形で調整するとか、いろいろあるのですが ここは、ある意味では一部所得制限的な発想を入れることについてどうかという提案だ と思うんですね。これは多分税務資料を使わないとなかなか実施が難しい問題でして、 例えば、社会保険庁と税務署が合体するようなことが行政改革で政治決断でバーンとで きれば、これは簡単にできるんですね。ところが今のような体制のもとでこれをやろう とすると、関係者は本当に大変なのではないかと思うのです。  私はアイディアとしては考慮する必要があると思うのですが、ほかに代替的に高い所 得の人からこれと似たような形で協力をしてもらう余地はあるわけでして、これを今の 段階で強くやらなければいけないかどうかということについてはやはり慎重に検討した 方がいいと思っています。  ただ、先ほど言いました社会保険庁と国税庁が合体したら、これは簡単にできるんで す。そこまで踏み込めばいいのですが、そこをやる気があるのでしょうかという問題で す。 ○I委員  私も在老と高額所得者の問題は大体H委員と同じ意見でございます。在老の問題は、 やはり60年改正の際のいきさつがあるわけです。もともと共済年金は退職年金でござい まして、厚生年金も老齢退職年金と言っておりまして、全企業の従業員を対象にします から、どうしても退職要件だけでは構成できないということで、老齢という縛りと退職 という縛りできたわけなんですが、それが60年改正のときには、一方では老齢年金であ る国民年金とのバランス、一方では、先ほどからA委員のお話がございましたが、共済 の方は理屈はともあれ、天下りはあるけれども、天上がりはないというような問題から 60年改正の際に厚生年金がああいう踏み切り方をされたのは、私は理屈としては大分問 題を残したと思うんですけれども、現実問題としては、あのときの合意は、やむを得な い合意だろうと理解しておりました。  それが現在非常に財政が詰まってきたという中で、あの制度をもう一度蒸し返すかと その方向としては、例えばイギリスやアメリカの年金のように、アーニングテストとい うやり方があるわけでして、老齢退職年金の支給開始年齢である65歳を過ぎて、なおか つ所得があった場合には、2ドル収入があったら1ドル年金削るとか、3ドルあったら 1ドル削るとか、そういう非常に単純なルールがあるわけです。これでも実は就労阻害 だとか何とかかんとか言って非常に評判の悪い制度に今なりつつあります。しかし、ま だ日本の制度よりは比較的簡単な制度なんですけれども、ここらあたりを考えるかとい うのが1つの問題。  それから、高額所得者の方は、財政困難を理由にする以外は高額所得制限は理由は余 りないと思うんです。確かに職域年金ということで、退職要件のみを考えて年金を支給 してきたならばいいんですけれども、現在はそうではないわけです。そうしますと高額 所得のつかまえ方がどうしても企業所得だけになってしまう。厚生省がおやりになりま したら、標準報酬の調査をもとにしておやりになる。どんなに不動産所得があろうと配 当所得があろうとお構いなしという制度ですから、高額所得制限という問題は、一方に おいては不公平を直すようで、実は新たな不公平をさらにつくり出すという問題がある  また、現在の厚生年金の拠出原則にやはり反する。拠出意欲というものに関係してく るという点から、高額所得制限の問題は、前段の在老の問題よりは、私ははっきり否定 できる。 ○D委員  いわゆる共済の方は退職年金で、一方で厚生年金の方は老齢年金だと。いわゆる共済 の方の退職年金というモノの考え方に対して地方では物すごく批判があります。これは 強烈な批判でして一種の公務員に対する怨嗟の声になっている。ですから日本の場合は この急速な人口構造変化がよその国に比べてはるかに大きく、かつてのピラミッド型が ずんどうになり、さらに逆ピラミッドになろうという、よその国が経験してない世界を 今経験しようとしている場合に、これははっきり老齢年金で割り切らなければならない 断固として共済の方に割り切ってもらいたいというのが我々の強い要望です。これは公 務員を除いて全国民的要望と思います。公務員の人も良識のある人は賛成していただい ていると思いますけど。 ○I委員  共済年金の弁護をしているようにお受けとりになったかと思いますが、全く逆でござ います。私も結論的にはD委員のような意見でございます。共済年金は現在は少なくと も1階と2階の部分は公的年金として考えていかねばならないという段階に来ておりま すから、もし職域年金的なものがあるならば、これはやはり3階に純化すべきであると こういう意見の方が強くなりつつある。  なお、怨嗟の声があるかどうかは別といたしまして、世界各国どこでも年金制度とい うのは、公務員の年金から出発いたしまして、どこの国でも、今、D委員が御指摘のよ うな官民格差と申しますか、アンバランスといいますか、そういうものはいまだに完全 に解決した国はございません。解決したのはアメリカぐらいかもしれませんね。 ○D委員  それから、2番目の後半の問題ですが、さっき私が申し上げたとおりなんですが、実 は私もこの点はややH委員の意見に近いところもあるのです。というのは、所得といっ ているものの意味が、例えば65歳とか70歳の方の所得は安定的所得なのかどうかという 問題が1つある。もう一つは、所得にはフローの所得とフローでない所得とがあるとい う問題もあります。そういう意味で私もH委員がおっしゃるように、まさに税金と保険 とが同一機関で取り扱われるべく、早く行革をやってもらいたいと。それを実現したあ かつきにはこういう問題はわりかし簡単にできるだろうという気がしますから、それは 同意見です。  もう一つは、日本の場合に考えておかなければならない、世界と決定的に違うところ は、世界の賃金は年功賃金ではございません。今、新聞では毎日毎日新しい賃金制度を 入れるとか何とかということが出ていますが、実際はそんなに簡単に変わるものではあ りませんから、依然として右肩上がりに、形としては少なくともなっています。少しず つは変わってきているかもしれません。ところが世界の賃金は、年齢とか勤続と無関係 に賃金ができていますから、年齢別に割った場合にはまるきりばらばらで、そこに相関 関係は全然ない。 極端に言うと、30歳から65歳まで全部ベタ賃金と。したがって、雇用との関係だとか何 とかという問題のとり方が全然違ってくるわけでして、一言で言うと全部職務給だと考 えていただければわかりやすいわけです。全部職務給ですから、職務価値に応じて上が りもすれば下がりもするのが世界の賃金ですから、そういう世界と日本のこういう形に なっているものをどう引き継ぐか、高齢者雇用の問題にも関係してくるのですが。  きょうここでそういう議論をするつもりは毛頭ありませんが、ちょっとM委員おっし ゃったから、明確に言っておかなければいけないのですが、日本をここまで支えてきた のは労使自治だと私は思っていますので、余計な法律が出てくることは私は反対でござ いますので、一言念を押しておきたいと思います。よろしくお願いします。 ○B委員  高額所得者の年金支給制限という場合に、恐らくそういう意見は、大蔵省といいます か、財政当局とか財界の一部、銀行や会社の会長とか相談役やって相当年齢が高くて何 千万という収入のある人がそういうことを割合おっしゃっているというふうに聞いてい ます。それはそれでわからないわけでもないのですが、老齢年金だけそうやるのか、遺 族年金や障害年金でも、それは非常にケースは少ないかもしれませんが、所得を幾ら以 上にするかによりますが、かなり所得の高い人がいないわけではないので、制度として 導入するなら、私は年金制度全部について、そういう考え方を入れなくてはいけないと 思うんですね。それから、自営業者、医者、弁護士などで年齢が高くて相当収入のある 人もおられるわけで、国民年金にも当然そういうのを入れなくてはいかん。  所得という場合には、今、少し御意見出ていましたけれども、給与所得だけではなし にいろんな不動産所得、利子所得、そういうものを入れないと、それこそ新たな不公平 が発生する。そんなことを考えていますと、仮に入れるにしても、果たして公平な制度 ができるのかということが大変心配なんですね。ですから実際問題としてできないだろ うし、もし、そういう制度を入れるなら、前回、大変議論になりましたが、国民年金で 保険料を払わない人は将来とも所得が高い人か、あるいはうんと今所得が低くて保険料 が払えない人が保険料を払ってないのでして、その人たちに保険料を払えということは 所得が高ければもらえないよという制度を導入したら、私は払えという強制はできなく なるだろう、こういうふうに思います。  ですから高額所得者というのは非常に安易に問題が提起されていますが、考え方とし ても、実際やるにしても問題が多いので、これは私は無理ではないかと思います。また 一方、税の方で、今、高所得者に対する上限の所得税率が非常に高い。所得税と地方税 合わせて65%を下げなくてはいかんと、あるいはそういう議論がされているときに、高 額所得者には年金を出さないというのは、国全体の税制との整合性で一体どういうふう に考えたらいいのかというのは大変な問題で、そういうことも考えて結論を出す必要が あるのではないかと思います。 ○J委員  今のいろんな御意見は、1つは年金の支給額が幾らかということと非常に関係がある と私は思うんですね。だから年金の支給額に余り大きな差がなければ、大金持ちの人が もらうのと、うんと貧乏な人がもらうのとではその受けとり方が随分違いますけれど、 しかし、それはそれでいいのであって、私の考えでは、支給額の方に余り差をつけない 方がいいので、受け取る側が金持ちかどうかということは余り関係ない。そういうふう にしておいた方が公的年金の役割としてはいいのであって、もう一つは、早くからその ことをアナウンスしておけば、将来自分たちの生活のために、公的年金はこれぐらいも らえるはずだから、うんと頑張って老後も稼げるようにしておこうとか、そのぐらいも らえるのだったら、それで十分だから、老後は勝手に自分で楽隠居するというふうに決 めるので、今の議論は高額所得者に出すか出さないかということを随分議論されていま すが、それは関係ないと、私には思えるのです。公的年金のレベル、絶対額そのものが 非常に問題で、これが非常に低過ぎて生活保護以下であれば、大変問題だと。しかしほ ぼ平等な金額がみんなに出るのだったら、その話は割と簡単だと思います。 ○A委員  本来、高額所得者問題は税で対応するのが基本だということについて、大方の方はそ んなに御異論ないと思うんですね。私どももそう思います。ちゃんと収入があれば収入 に応じたものを払っていただくということが成り立つのであれば、例えば年収3,000万あ る方に300万の公的年金が出ていると、そんなもの要らないとおっしゃろうとおっしゃる まいと余り関係ないと思うんですが、今、問題の1つは、年金の財政問題がもちろんあ りますが、他方では税自体が相変わらず極めて公平でない。  1つは捕捉率の問題があって、いわゆるトーゴーサンピンとかクロヨンだとかという 問題が当面解決する見込みがないわけですね。それから、いわゆるキャタルゲインなる ものについては分離課税。こういうような自体が放置されたまま、本来は税であるべき だという筋論だけで、現実問題に対する回答になるかと言えば、これは全然ならないの だろうというのが私どもの非常に強い印象です。私どもは税の公正化を強く要求してい ますし、今後とも要求いたしますが、それが実現するまでの間の次善の策としては、高 額所得者に対する年金の給付制限はどこかで考えられてしかるべきではないか。余り筋 のいい話でないことは承知しています。筋悪い話、ほかにもいっぱいあるのではないか ということもこの際申し上げます。  筋いいわけではないんだけど、それにしても、例えば他方で、毎日働いて30万そこら の賃金をもらったら、今の在職老齢年金でほぼ全額カットでしょう。これは労働の正当 な対価として入ったものに対して、たかだか30万ぐらいで全額カットされておいて、他 方で家賃収入があろうが、株いっぱい持っていようが、そんなことはまるきりお構いな しだなんていうことは余り納得できる話ではない。  この問題について、前回、去年の5月でしたか、この席で事務局からお話が出たのが これの議論の最初だったと記憶していますが、そのときのお話は、国庫負担分だけ、こ こは保険料ではないからいいのではないか、こういうお話でした。これはあくまでも国 の財政論でしかないので、年金のあるべき姿という観点から言えば、そういう半端なこ とはどうかというふうに当時申し上げたと思いますが、この考え方は今でも変わりませ ん。  私どもは大ざっぱに言いますと、年収600万超えたぐらいからちょっとずつカットして 行って、1,000万ぐらいになったら全額支給停止。そのかわり、その支給停止の要件にな っている所得を喪失することはあるわけですね。例えば、国会議員が今歳費2,600万ぐら いだと思いますが、あの人たち、選挙を落ちてしまえばただの人で、私どもの先輩の議 員なんていうのは、本当にただの人になっちゃうのですから、それはただちに年金を復 活していただいて、かつ参議院1期6年だったら、その間、がまんしてもらった分だけ ちょっと上乗せするぐらいのことはしてもいいのかなと、そんなふうに考えます。 ○G委員  税制の関係で、私も実を言うと、基本的には年金の話も最終的には高額の年金が出て も、それは所得税を取ればいいんですね。今の段階では平たく言えば、以前はある意味 では年金は聖域に近くて、年金の給付については税金をかけないぐらいのところでセッ トしてありますが、私、今、税制調査会は専門委員しかやっておりませんが、次の税制 改正でやはり年金をどういうふうに税制上取り扱うか、課題になっている。  それから、所得税について、今おっしゃったとおり、九六四とか、それが克服できな いという点がありまして、正直言ってうまく把握ができない。残念ながら、そういう状 況であって、確実に把握できるところで、それなりの高額の人にはある種の税制上の措 置をつけて公平を図る、それで何とかやっている。問題はあるかもしれないけど、高額 所得者の年金を抑えるよりは税制上うまく処理するのがいいのではないか。 ○事務局  高額所得者の年金カットの問題ですが、これは仮に導入されたらどういうことになる のだろうかということを考えてみますと、これはあくまで日本の今の行政の実態という 点から考えますと、1,000万とか、そういうラインでそれ以上がカットされるということ では絶対おさまらないと思うんです。ごく一部の方だけカットしても、これは財源的に 微々たるものですから。 それから、ほかのいろんな手当がございます。これは全額国庫負担、公費負担で例え ば児童扶養手当、障害者の手当とかいろいろございます。そういったものとのバランス が必ず問題になりますので、こういったほかの手当の所得制限は、300万とか、4〜500 万とかそういうところなんですね。したがって、もし年金について、こういう高額所得 者のカットという制度を導入すると、4〜500万ぐらいまでは必ずいくだろうと、こう見 なければいけないと思うんです。 それから、最近非常に顕著なんですが、ない袖は振れぬということでございまして、 国の財政が厳しい中でこういう制度を導入したら、ごく普通の方の平均から上は影響が くるとこう思わなければいけないのではないか。それほどこの問題は大きな問題ではな いかと思います。 また、こういった制度を導入した結果として、先ほどB委員がおっしゃったような、 高額所得者の国民年金離れということも当然起きてくるでしょうし、社会保険庁などは 大変な事務処理で事務的にも大変だと、そういう問題もございます。いろいろ影響を与 えるところが非常に大きいと思いますので、いろんな方から既に御意見いただいている わけですけれども、慎重に御議論をお願いしたいと思います。 ○A委員 すいません。G委員と事務局にちょっと伺いたいんですが、まず税制の方でやった方 がうまくいくというお話ですが、うまくいくのであれば、私らは、もともとこんなもの は筋のいい話だと思っていませんので余り主張したいと思わないのですが、所得税法が 完璧にとは言わなくても、それなりに公平に機能して、さて、それは年金財政の方に、 所得税収入の一部を還流させるというスキームを考えることは、これはできるのでしょ うか。もしできなければ、これは代替措置にはなりにくいなという点が1つ。 事務局に伺いたいんですが、1,000万ぐらいで切って、それ以上のところを給付制限し ても財政的には微々たるものだというお話でしたが、それでしたらば、去年5月2,000万 円というところで、国庫負担分、つまり基礎年金の3分の1分だけカットすると、こう いう御提案が出てきたのは、それ以上にはるかに、2桁ぐらい下の微々たるものになる のではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○G委員  税制上も今も見ている年金の部分は実をいうと国民年金の給付の部分です。別に所得 税という意味ではありませんが、一般税収で税収がある部分を出しておりますから、そ ういう意味では税金がある部分は関係していることはそうです。今のお話は、それ以上 もう少し別の形で、これは建前論ですので、税金は公平に取って、そこから得た収入を どこへ配分するか、直接的に受益者負担的に配分する。時々変なことが起きていますけ ど、大蔵省も元来反対の部分が多いはずなんですが、いろいろ政治的な問題、そういう ことにしますとますますおかしくなってくる。単純に言うとどうにもならなくなるとい うことで、その辺のところは御理解いただきたいと思っています。 ○事務局  私が今申し上げたのは、こういう制度が導入された場合の長期的な見通し、これは私 の全く個人的な見通しですが、それを申し上げたわけです。昨年年金審で申し上げまし たのは、高額所得者の年金を制限すべしという意見についてはどうお考えでしょうか、 これについて年金審として御議論してくださいということで御紹介したわけでして、厚 生省が積極的にこういう制度を導入したいということで申し上げたわけではございませ ん。 ○A委員  違ったんですか。 ○E委員  いろいろ御意見出ているんですが、私は、A委員と意見が少し違うかもしれませんが この件について、昨年の5月でしたか、御説明があったときにもちょっと申し上げた記 憶があるのですが、私は極めて姑息な手段であり、王道ではないと思うんです、年金制 度全体を考えたときに。  それから、先ほど事務局からも御答弁ございましたけど、あらゆるものに関連してき ます。どこに線を引くというときの線引きは何を根拠に引くのかという問題も出てくる し、ほかの制度とも全部連関してきて、大きなエネルギーを使わないと1つのまとめ方 ができないと思うんです。  したがって、先ほどからお話がございますように、税制面で配慮するというのがそう いう人たちには、一番王道なのかもしれません。対象者がやはり社会に一定の還元をし てもらっているのだということをむしろわかる方が大事なのであって、こんなことを切 り口に、制度全体をゆがめたり、あるいは高所得者も低所得者も世代間で支え合ってで きている制度を、どこかの人たちだけは別枠ですよみたいなことをやること自体、私は 制度の根幹がおかしくなる問題だというように認識しております。これは時期尚早とい うことで、検討項目から外すぐらいの方がいいのではないかということを申し上げたい と思います。 ○K委員  大体大勢は落ちつくところに落ちつきそうであえて申し上げるまでもないんですが、 G委員、B委員、今のE委員の意見に賛成です。 ○L委員  私も余りつけ加えることないんですけれども、先ほどI委員がおっしゃったアーニン グテストに加えて、高額所得者の問題を議論する場合にはミーンズテストの導入という ことをまじめに考えなければだめだろうと思うんです。ミーンズテストを現実に導入し てどういうふうに運営していったらいいのか、私さっぱり検討もつきませんけれども、 非常に大変で金がかかって、なおかつ効果の薄い結果になるのではないか、そのように 考えております。 ○会長  「少子化への対応について」、お手元にかなり行き届いた資料が配付されております また、「公的年金の一元化」問題の資料もございます。皆様も大体御発言くださいまし たので、高齢在職者の扱いの問題、また高額所得者の年金の問題のご議論をこの辺で一 応終わりにしてよろしゅうございましょうか。「少子化への対応について」という問題 に審議を移したいと思いますが、よろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり)                ○会長  それでは、資料の説明を事務局からお願いします。 ○事務局  それでは資料の説明をさせていただきます。先ほどの資料1という1枚紙のところに 趣旨が書いてございますが、「少子化への対応」。「年金制度において少子化への対応 を考慮することについてどう考えるか。その場合の給付や負担の仕組みについてどう考 えるか」ということで、白書にも関係記述がございますが、そこを幾つか詳しくした資 料を資料2で準備いたしました。  資料2をごらんいただきたいと思いますが、まず1ページですが、これは白書で整理 されたものをもう一度左右にわかりやすく分類したものです。左の方では、出生率の回 復が年金にとってプラスではないかとか、次世代を産み育てた者について、年金制度で もその貢献を評価する。  育児をした者、しない者の間での実質的公平を年金でも図るべきではないかといった 考え方。  子供を育てるということについても、これを社会的な扶養という見地で評価するとい う考え方。  5)「年金制度においても」と書いていますが、少子化を考えた場合に女性の就労、育 児といったことについて支援をするということで、年金制度でもこういったものに貢献 すべきではないか。  特にコメ印に書いていますように、財政が厳しい中で、年金でも何らかの協力をとい う指摘がございます。  一方、右の方では、こういった個人の選択というものについて、年金という制度でコ ミットするのか。  現金を配る、負担を軽くするという金銭的なことで少子化について効果があるのか、 そういったような問題がございます。  最後のマルのところについても、こういった保険料を納めて、それによって高齢期に 年金を受け取るといった制度について、育児によって差をつけることがいいのか、こう いった主張があります。制度を施策として考えたものが2ページでございます。  今のやるべしという立場から、幾つかの切り口がありますが、それについてどういう 施策の提案があるかということをこの2ページの真ん中の欄に幾つか整理いたしました 上の2つの四角というか楕円のものが、これは負担で配慮をしようというものでありま して、1つ目のものは、今、育児休業期間中に、本人の年金の保険料を減免しているわ けでありますが、事業主の負担についてもあわせて免除するべきだという意見。あるい は期間をさらに、現在の1年から延長するという考え方。あるいはこれはサラリーマン という被用者が育児休業という期間を持っているわけですが、国民年金についても同様 なものができないのかということ。  2つ目の囲みでは、もっと広げまして、育児期間に着目して、その期間について保険 料を免除する。あるいはもっと詳しく、子供の人数に応じて減免に差をつけようとか、 あるいは児童の扶養控除制度に類するものを年金の中にも入れようという考え方。以上 が負担による調整であります。  一方、給付的なもので調整しようというのが下の2つでありまして、例えば一時金を 出そうと、出産あるいは結婚に着目して、後の試算では30万という例示をつけておりま すが、1回に一定額のお金を年金で支給する。  2つ目のマルですが、育児に対する給付、例えば児童手当に類するものを年金に取り 込むというアイディアもありますが、出生率については、保育サービスの充実が重要だ という指摘があるわけですが、そういう保育サービスの利用について年金で何らかの支 援ができないか。  次のポイントは、年金積立金を活用して、こういった保育サービスの基盤整備に貢献 するといったアイディアです。  それから、最後の四角は最もわかりやすいというか、直接的な方法でありますが、子 供を育てた人に対して年金給付額の割り増しをせよといった考え方。それについては右 に問題点として、先ほどの原理的な批判もありますが、自営業者についてそういう概念 があるか、あるいは実務的な問題。また、年金積立金のむしろ基本論からの批判、老後 の必要年金額というのは、子供をたくさん育てた人がさらに老後お金が要るのか、こう いった実質の議論、こんなものがあります。  特に留意点ということで真ん中の下に書いておりますが、私どもが考えましたのは、 負担を軽減するなり、給付を増額するなりという方法をとるにしても、いずれにせよそ のかかる費用を将来の若い人にツケを回すのでは、少子化対策という意味から見た趣旨 に違反すると。少なくとも今育てた人に対して、今、育てていない人がその分を負担す るという形で、現役の世代でこれは埋め合わせをしなければおかしいのではないかとい うことを考えているわけです。単なる給付拡大をして、その負担は段階保険料の最後の 世代が持つということでは成り立つまいと、そういうことをあわせまして、幾つか試算 もしたところです。  代表的なものについて試算をいたしておりますが、例えば3ページにおいては、今の 事業主負担というものが育児休業中は免除されておりませんが、それについて免除した らどうなるかということでケースは2つに分けております。現在の実績ベース、全員が 育児休業をとった場合というふうに2つの試算をしておりますが、そこを軽減すること によって全員で負担が増える分は、ここに書いておりますように、試算1.の場合であ れば、 0.007%の保険料アップ、こういった形になると思います。  4ページにまいりますと、これは育児期間中に保険料免除をしようと。国民年金、厚 生年金ともにやってみたらどうなるかということで、試算1.であれば、出生後1年、 保険料を免除してみようということになりますと、国民年金に対する保険料の影響は、 もちろん子供を産んで育てる方はその間保険料はゼロになるわけですが、一方で、それ でない方については、+240円という負担増。厚生年金保険料について言いますと、 +0.43%という負担増につながると。  試算2.で、3年間免除しようということであれば、これは国民年金であれば、そう でない人については660円の負担増。厚生年金保険料はそうでない人については1.28%の 負担増ということで負担をわかち合うことになります。例えば子供が3人いて、3年刻 みで出生された場合には長期間免除を受けられるとか、いろんな技術的な問題がありま すので、すべて細かい詰めをした結果のものではありませんが、単純試算として受けと めていただきたいと思います。  5ページは、より細かく育児の評価をしようということで子供の人数に応じて保険料 を減免してはどうかというアイディアです。これは試算で、18歳未満の子供を有する期 間保険料を減免するとした場合ということで、ここでやっておりますのは、国年であれ ば 1,000円減免、厚年であれば、1,000円減免と1%減免というケースで書いております が、これは 2,000円とか 3,000円、あるいはもっと何%やるという場合にはこの数をそ のまま増やしていただければわかると思いますので、1つのメジャーです。1,000円の減 免をした場合に国年であれば、他の被保険者に対しては410円の負担増、厚生年金であれ ば、0.14%、厚年で1%減免すれば、他の人に対しては0.59%の負担増、こういったは ね返りです。以下では、子供の数に応じてもう少し計算してみると、例えば子供1人、 2人、3人の場合、それぞれ軽減の額が大きくなるということでして、子供0の人はそ の分、負担増という形になります。  6ページは、今度は給付面の代表例ですが、出産時に一時金を30万円支給するとした 場合。出産につきましては、現在の医療保険制度についても同様のものがありますが、 ここでは年金でこれを取り組んだ場合にはこのような効果がある。国民年金保険料につ いての影響は月額で300円の負担増、厚年であれば、0.12%の負担増ということになりま す。 また、結婚時ということで、特に少子化につきましては、今、結婚をしないとか、晩婚 が1つの出生率を下げる理由になっているという着眼点から、結婚を評価して、例えば 30万円を支給するとか、こういったふうに計算いたしますと、このような効果になると いうことで、それぞれ個々の制度を詰めたわけではありませんが、代表的な例について 試算を行ったところでございます。以上でございます。 ○会長  ありがとうございました。ちょうど3時半でございます。今、休憩を少しとったらど うかという提案がございますが、よろしゅうございましょうか。では、10分ほどお手洗 い、その他、どうぞ。                 ・・休 憩・・ ○会長  再開いたします。ただいま御説明をいただきました「少子化への対応」の問題につき まして、どなたからでも御自由に御発言をお願いします。 ○H委員  今回いろいろとまた計算をしていただきまして、制度を具体化するとどういうことに なるのかというイメージが少し具体的になったという意味では非常にありがたい資料な んですが、この問題の議論の仕方の問題のところを少しお話ししたいんです。  前回の年金改正で、育児休業期間中のものについては、本人負担の保険料を免除する ということをやって、この問題へのきっかけというか、走りだしをしたわけですね。従 来、年金は子育て、出産、そういうこととは無縁の世界ですべて考え方が整理されて走 ってきたわけです。出生率低下だとか賦課方式の問題をめぐっていろいろ議論があって それで年金、あるいはほかの制度もそうですが、出生率低下なり人口減少だとか、そう いうことにどういうふうにこれから日本は対応するか、これは年金制度を離れても大問 題なはずなんです。  ただ、年金制度で協力できるところはあるはずであって、それを幾つか議論しようと いうことなんです。枠組みとして、年金制度の中だけで議論するのがいいかどうかとい う問題があるわけです。きょうの試算結果もみんな保険料を使ったらどのぐらいになる かという試算になっているのですが、財源をどうして保険料だけに固定しなければいけ ないかというのはやはり議論しなければいけない。  現にドイツでの最近の年金改革、スウェーデンの年金改革は、子育て支援、出産支援 は、特別の理由があるのだと。これは保険料で支援するという立場に必ずしもこだわら なくていいと。むしろ一般財源を年金制度の中に特別に入れて支援していいのだという 割り切りをしたわけです。  ですから、ここの試算はあくまでも保険料を使ってやるとしたら、どういう効果があ るかということですが、出産支援、子育て支援というものがどういうことかということ の整理をした上で、それの財源手当として保険料でやるべきなのか、一般財源でやるべ きなのかということをやはり議論した上でこういう試算をやった方がいい。その辺の整 理がまだ済んでいない段階の話だと思うんです。  例えば現役世代の中だけでやるというふうに留意点のところに書いてあるんですが、 現在の年金受給世代は関係なくていいのかという問題が別途あるわけです。例えば年金 保険料を意識すれば、現役世代になってしまうんですが、そうでない財源もいっぱいあ るわけです。年金受給者だって、それに拠出していけないというふうに考える理由はな いわけでして、もっと枠組みは広がるわけです。あるいは年金制度はもともと現金給付 の制度ですけれども、厚生省さんの管轄の中では、他の局でやっているいろいろな現金 給付の制度があるわけです。世代間の所得移転という問題で、厚生省の例えば局を超え て、既存の制度を整理・統合するといった発想もあっていいわけです。  例えば、子供が産まれるときに、出産時の一時金みたいなのもありますし、産休に伴 う手当の問題、これはみんな医療保険から出ているわけですが、そのお金は全部現金な んですが、これを一本化して年金制度の方へ取り込んでくるとか、そういう大問題の整 理を今するべきときだと思うんですね。年金の制度の中で、保険料だけで財源をやりく りするという話ではなくて、将来、50年とか100年先を展望して、日本の社会保障制度の 中で世代間の所得分配問題をどういうふうに位置づけるかという問題を議論しなければ いけないときなんです。ここでの整理は余りにも問題が小さ過ぎるのです。 今はたまたま局が違うためにその議論をしないというのは、役所の皆様は、ある時間 がたてば、ほかの局へ行くわけですから、今までどこかにいて、またここへ来ているわ けですから、余りにも問題の立て方が小さ過ぎると思うんです。 そこのところの問題がクリアされないと、この数字の評価はうまくできないと思って います。例えばイギリスの例で言いますと、所得税とか住民税で子供がいると課税所得 のところを控除して少なくして、税をまけてやる扶養控除の制度があるんですが、それ をやめて、結果的には、所得税とか住民税は増税になるのですが、そこで上がってくる 増税増収分を全部児童手当の財源にひもつきで回しています。その財源を使って、出産 支援とか育児支援をやるという手もありまして、日本は今枠組みをどうするかというこ とをまだ議論すべき段階であって、年金制度の枠内で保険料を使ってやりくりするとい う話ではないのではないか。 今、まさに時代が変わって哲学を変えようとしているわけで、前回改正のときにその はしりをやったわけです。ただ、本人負担分だけ変えたと。私はそちらに向けて、まさ に今シンボリックにいろいろやらなければいけないときだと思っています。今回の改正 は、前回敷かれた路線に対してさらに追加する方向でいくのかどうかが議論の対象にな っていると思うんです。これはそういう意味では非常に大きな問題の中であって、厚生 省の中でどういう議論が全体として行われているか、私は承知しておりませんが、そう いうような中で議論をぜひしていただきたいと思っています。 育児休業期間中の事業主の負担を残しているのは極めて不自然だと思いますが、これ を外すなんて、私から見れば当然のことだと思うんですけれども、それ以外にシンボリ ックにやるべきことがいっぱいあるのではないか。そういうふうに枠組みを広げて議論 した方がいいのではないかと私は考えています。以上です。 ○D委員 私も今のおっしゃったことに全面的に賛成でして、こういう狭い世界で議論するのは 間違い。もっと大きな形の中できっちりした議論を本当にベーシックな基本からやらな ければいかんことだと思います。ただ、非常に狭い世界で書いてあることだけ、一言だ け言っておきますと、事業主負担についても免除というのは、前回の取りこぼしですか ら、これは断固やるべしと、当たり前の話です。 最後のところで、「育児に対する給付の創設又は保育サービス利用の支援」とか、 「年金積立金を活用した保育サービス基盤の整備」、これはそうでなくても積立金その ものの金利が増えないで往生しているときに、またぞろ、こういうところで、何かお金 があるから使わなけれはいけないというような発想になっているのではないかという気 がして仕方がない。これはやるならば、きちんと税金でやるべしという問題でありまし て、こういうところで金を使って目減りさせるというやり方は、ちょうど年福が失敗し たと同じようなことをやろうとしているわけですから、これはとんでもない話で、これ は、基本問題は、今、H委員が御指摘のとおりなんですが、非常に狭い世界でも間違っ ている点を2点だけ指摘しておきます。以上です。 ○事務局  随分誤解があるようですので、もう一度こういうのをつくった趣旨を御説明申し上げ たいと思います。これは厚生省がこういうものをやりたいとか、やるべきだとか、その 場合も保険料財源でやるべきだとか、税でやるべきだとか、そういう何らかの政策的な 意図を持って、こういう資料をつくったわけでございません。これは年金における少子 化対策としてこういう議論があるというのを客観的に御紹介をしたものです。その場合 に、もし仮に保険料財源でということになると、保険料はこのくらいになりますよとい うことで、これは皆さん方の御議論の参考になるように御紹介したわけでございます。 非常に狭い世界だとかという御指摘でございますけれども、そもそもこの資料をつくっ た趣旨はそういうことですので、そこはぜひ御理解いただきたいと思います。 ○G委員  話は大分違う話ですが、少子化の話というのは、日本についてということよりも世界 各国の中の比較研究で、例えばの話、ヨーロッパでもフランス、ドイツ、イタリーは断 然出生率が落ちたわけです。他方、スウェーデンとか北欧の国は、一回出生率は落ちま したけれども、最近大分回復しました。  そこで学者が書いている話に、きょう女性の方がおられないのですが、女性の就労形 態と関係していて、平たく言えば、日本は多分ドイツとかフランスに近いです。基本的 には女性が割と家庭に入って、家族は御主人がいて、いわゆる普通の世帯です。そこで は女性が外に出るようになると途端に出生率が落ちる。ところがスウェーデンとか北欧 の諸国は、元来、女性は外へ出ていまして、それプラス、物すごいここで言う社会サー ビス、育児が物すごいお金がかかっているのですが、もう少しサービスの方にお金をか けて、それで出生率がまた回復した。  平たく言うと、日本の少子化に対する対策は一体どうするのか。私は多分北欧的なや り方は無理だろうと、単純に言うとそう思いますが、そうなれば、出生率が落ちたとき に、実際落ちているわけですが、一体どうするか。その辺のところは、年金だけの話で はなくて、いろんな問題と社会的な慣行とか制度が物すごく関係していまして、そこの ところの話が重要で、年金はその一部にすぎないということはある意味ではおっしゃっ たんですが、話の範囲としてはかなり大きな社会の在り方というか、そういうものが含 まれていて、今の状況になっているという感じを持っていまして、話はそれほど簡単な 話ではないと思っています。 ○D委員  今のお話は全くそのとおりだと思うんですが、簡単な話ではないから、本当は国民世 論をどう形成するのかということで、実は私どもとしては、内閣に少子化対策本部とい うのをつくって欲しいと申し上げている。少子化対策というのは、国の方向をどういう 方向に持っていくのか、いろんな意見があります。いろんな意見を調整して、およそ国 としてはどういう方向を選択するのかをきちんとしてもらう。そうすれば、施策も年金 という狭い世界の話ではなくて、税の問題から全部出てくるはずです。財政だって、公 共投資を一部やめて、そっちに金を使った方がいいという話も出てくるはずです。そう いうことを含めて抜本的にやってもらいたいということを提言しています。その辺は、 これはG委員個人にちょっと申し上げたいのだけれども、ぜひ財政審にも御関係だし、 いろんなこともあるものですから、今、委員がおっしゃったような意見をいろんなとこ ろでおっしゃって、しかもコンセンサスを得る努力をお願いしたいと思います。 ○G委員  きょうは女性の方が出ておられないので本当にまずいと思うんですが、女性の地位の 問題と非常に関係しています。女性の地位が安定しているならば、出生率が上がるとい うのは私の基本的な意見です。ところが日本は多分そうでないというあたりが難しいと ころで、その点は重要な社会的な形を変える、単純に言えば、そういう話ではないかと いう気がするんです。私の意見です。 ○D委員  ドイツとかイタリーも女性の地位が低いとおっしゃるんだけど、本当にそうなのかど うか。もしそうでなければドイツ、イタリアに対して失礼な話になるかもしれない話な んです。そう簡単な問題では私はないと思う。そういうところについていろんな御意見 があるのはいいのですが、意見の言いっぱなしでちっとも収れんした話にならない。時 間はだんだん、だんだん経過していく、こういう問題ですから、先生方もひとつよろし くお願いしたい、こういうことです。 ○J委員  私は少子化問題がこの審議会の昨年冒頭に出て、人口推計がこう変わったということ がいかに大きなインパクトがあるかということを事務局から言われて、まいっちゃって 余りこっちは発言する気がしないほどショックを受けているのですが、確かに少子化が こんなに進むというのは極めて異常なことで、今、D委員がおっしゃったように、何と か内閣にも進言していろんな手を打ってもらえというのは正しいと思うんです。  ただ、私、少子化がなぜ起こっておるかという原因は非常に深いところにあると思い ます。日本は世界でも唯一の男尊女卑的な国なんですね。結局、口ではうまいこと言っ ていますけど、あるいは憲法や民法には男女平等だと書いてありますが、決して世間一 般にはそう思ってないんですね。女性はうちにいて子供を育てるのが本当だと。男性が 外で働いてくるからと、この考えが全然直っておりません。  ドイツ、イタリアがなぜとおっしゃったんですが、ドイツもややそれに近いんですね ドイツの憲法にも「家族」ということは非常に重んじているし、女性の本来の仕事は家 事、育児だというのはドイツの信念だそうですね。イタリアは男が威張っている南欧の 独特の国なので、それはそれでやっぱり出生率が余り上がらない。  ただ、日本はもっと悪いことには、制度的に、あるいは社会慣習的に男尊女卑的であ って、きょう3人の女性の委員の方が愛想つかして出てこないんだろうと思うんですけ れども、私はひそかにあの3人の委員には応援すると言ってあるんですけれども、そう いう点が最大の点だと思います。  もう一つは、実務的なことですが、北欧諸国に比べるとはるかに子育てのための支援 とか、育児休業のとり方とか、そういうことについては、一応法律に書いてあるけど、 実際ではほとんど実行されてないというふうに女性の方は言っておりますから、この点 制度的にもまだまだ十分にやるべき点があると思います。  ですから、この少子化の問題は、先ほどH委員から、年金制度だけで議論するのでは 狭過ぎるとおっしゃったけど、私はもっと広い意味で非常に幅広く議論をしないとなか なかおさまらないので、最近はやけくそを起こして、もっと少子化になって、そのとき に人々が気がついたら、やがて次の世代のときには直ってくるかもしれないなという感 じがします。  年金制度についての少子化のインパクトは非常に大きいんですが、賦課方式でやる限 りは決して年金は破たんしないですね。つまり、話は簡単で、少なくなった子供たちに うんと保険料を掛けるか、あるいは老人の方ががまんするか、この2つの選択しかない だから、それでやれば、何とかなると思いますから、年金制度としては割と話は簡単で はないかと常々思っています。  きょう少子化の議論がここに出るというので、本当は大学で講義あったんですが、そ っちを休講にしてここへ来たような次第ですが、大変重要な問題ではありますが、おっ しゃるとおり、大変幅の広い問題です。 ○F委員  女性の就労機会とか、女性の社会的地位と人口問題は非常に関係があるだろうと思い ます。私、いろんなところで労働省女性局長からも呼びつけられていろいろ御指導受け ていますけれども、あるいは経団連でも「女性の社会進出に関する部会」がありまして 女性のエグゼクティブの中でしょっちゅう怒られているのですが、お役所の審議会で、 これだけ大勢の方がいて、ほとんど男だというのはアメリカでは信じられないことです ね。そういう意味では、おっしゃっているように、現実は相当男尊女卑だということは、 国としてもそうなっているし、民間の会社でも、私どもの会社でも、例えば女性の課長 は数人おりますが、女性の部長は当分出ないと。これで経団連の女性のエグゼクティブ にさんざん怒られていますが、それが恐らく日本の実態なんだろうと思います。  私どもの会社は装置産業ですから、3交替で夜中も作業しますけど、もちろん女性も 現場で働く人も若干おりますが、数万人は全部男です。外国の素材産業は必ずしもそう ではないという実態ですから、そういう意味では、人口問題は非常に関係があろうかと 思いますが、そういう中で、事業主の立場というか、国民の一人の立場としても、人口 が減るのは日本にとって大問題だということをどこまでみんなが意識しているか。その 意識がはっきり国として方向がかたまってないときに、保険料で負担するというのは非 常に違和感がある。したがいまして、H委員が言われましたように、まず国としての方 向が決まる中で、手段として年金制度を使う。そのために財源は別なところから来ると いうのであれば納得しますが、取り上げる保険料の中から回せよというのでは、現時点 では相当違和感が日本の社会では個人においても事業主においてもあるのではないかと 思います。 ○L委員  H委員、ほかの皆さんがおっしゃったことと重複するだけなんですが、私は少子化問 題というのは、確かに年金制度には非常に大きく影響する問題ではあるけれども、年金 だけで解決すべき問題ではないとかねがねこのように思っております。やはり社会全体 としてこの問題をどう取り上げていくかということだろうと思います。  さらに年金の中でいろんなことを考えても、現実にそれが効果に結びつくのだろうか この資料を拝見いたしておりまして、こういうことをやって、本当に少子化に若干なり とも歯どめがかかるという効果を期待できるのだろうかというふうに思っております。 こういうことをやると、先ほどD委員がおっしゃったことにさらに上乗せされて、制度 の複雑化というのが激しくなって、一体厚生年金保険、国民年金というのはどんなもの かと。わけがわからない給付体系ができてしまって、なおかつそのための保険料負担が 一部で増えていると。  今、我々が今回の法改正に当たって一番議論しなければいけない論点は、将来の保険 料の負担と給付のトータルをどう考えていくかという問題で、保険料を上げることで解 決するような方法はぜひ避けたいと思っております。以上です。 ○A委員  賦課方式を基本に置いた制度が、人口構造の影響を受けるのは当然のことだし、それ について無関心でいることができないのも当然のことです。白書の後ろの方に外国の年 金制度の幾つかの事例が紹介されていて、それぞれこの点についてのいろいろな対策、 興味深いものもありますし、我が国でも具体的にそれは検討していいのだと思いますが 検討する際には、冒頭、H委員から御提起があったような、議論の枠組みを全体として 整理をした上で1つ1つの措置の是非を考える。そうでないと1つ1つ取り上げて、こ れはいい、あれはいいという議論をいくらしても少しも政策としての組み立てになって いかないのではないかという気がします。  具体的なこの議論を継続することは大事だと思いますので、その意味ではもう一度、 冒頭のH委員のお話を踏まえた枠組みの提起を事務局からもう一度いただいてやってみ たらどうかというのが私の個人的な提案でございます。  なお、出された問題について2、3私見を申し上げますと、例えば保険料財源という 考え方をここに試算として示されていて、特段の政策的意図はないと事務局はおっしゃ いましたけれども、やはり出された以上、それはそういうものを客観的に持つわけであ って、これは結局第3号被保険者のときに、配偶者が第3号被保険者であるような2号 に付加保険料をつけるというふうな考え方とある意味では共通しているところがあって これは保険料率がダブルスタンダードになるわけですね。むしろ社会保険制度をとる以 上は、同一収入、同一負担、同一給付ということをまずきちんとストレートに貫徹すべ きなのではないか。その上で、例えば減免措置みたいなものについては、私は十分に検 討する必要があると思いますが、それが保険料率について複数のレートが導入されてく るようなことは決して好ましいと思いません。  もう一つ、これは現金給付に類することが出てきておりますが、例えば出産に対して 30万円なんていうのは、まさに今医療保険がやっていることで、医療保険財政がきつい から年金保険の方へ回せという感じがどうしてもしてしまうわけですね。現実に医療保 険の中で、出産手当金だとか埋葬料みたいなものは医療給付でないので外したいという 意向が保険局にあるわけです。そういう説明を私ども受けております。  だから、厚生省全体としての検討というお声がありましたが、実は全体としての検討 はひそかにおやりになっていて、そして個別にこういう格好で出てくるのではあるまい か、こういう疑念もぬぐいきれないものが、たまたま30万円が額で一致していたという こともあるんだけど、これはあるわけでして、いや、そういうことは決してないとどう せおっしゃるでしょうが、疑念は消えないということを申し上げておきたいと思います  これは保育問題に関してもそうで、昨年の国会で通過いたしました児童福祉法の50年 ぶりの改正ということでしたが、あのバックグラウンドにあるのは、保育に関する公的 支出の明らかな削減というモチーフが強く働いていたわけで、これまた年金の場合には 保険料の積立金がまだ詰み上がっている状態だから、金あるじゃないかみたいな話だと すると、そういうレベルで厚生省が全体として協議してつけ回しを考えていただいても ちっとも建設的な感じがいたしません。  現在の少子化現象は異常だというふうに私どもも考えます。ただ、少子化とは何かと いう議論をここでやり始めると大変なので、むしろ、今ある少子化現象に対して、社会 保障制度全体としては何ができるかということを考える場合にどういう枠組みで考える かということを出発点にして、これは仕切り直しをやっていただくのがいいのではない でしょうか。 ○事務局  議論の枠組みを整理してほしい、こういうことでございますけれども、これは昨年こ の少子化対策をめぐるいろんな問題につきましては、人口審の報告書なども御紹介した かと思います。今回は、もし仮に年金サイドで少子化対策をやるとすると、こういうこ とが具体的にあちこちから指摘されている、こういうことを言われているということで 機械的な試算をお示ししたということです。何しろこの場は年金審でございまして、人 口問題審議会とか少子化対策懇談会ではないわけですので、おのずから制約があるとい うことはせひ御理解いただきたいと思うわけです。  もう一つ、少子化対策は一般財源でやるべきだというのは、これもまた正論でござい まして、おっしゃるとおりだと思いますけれども、今役所は、いかに一般財源を減らす かということで四苦八苦しているという状況でございまして、国の財政が厳しいという ことは皆さん十分御承知のとおりでして、だからこそ年金に対する期待もあるわけです ね。これはきょうの1ページの資料にも記述がございますけれども。したがって、一般 財源でやるべきだ、税でやるべきだと、それは確かにそのとおりですが、それではここ 当分は見通しが全くない。これは客観的な事実ではなかろうか、こう思うわけでござい まして、そういった点も踏まえた上でどうするか。本当に年金サイドでやるのか、やら ないのか。やるとしたらどうやるのかということについて御議論をお願いしたいと思う わけです。 ○C委員  ちょっと使用者の方に質問なんですが、育児休業中の事業主の保険料負担を免除する のは当然だという御議論が2、3の方から出ていたと思うんですが、私は必ずしもそう 思えないんですよね。雇用関係は継続しているんでしょう。そこら辺はどうなんですか ○D委員  継続しています。 ○C委員  継続しているんでしょう。そうしたら使用者の責任は残るんじゃないですか。 それがまた社会的責任を果たすゆえんではないのかと思いますので、そういう議論もち ゃんと検討した上で一定の結論を出すのはいいですけれども、当然であるかのような考 え方は私は疑問があります。 ○D委員  雇用関係は継続して、一時休業の状態にあるわけです。一時休業の状態にある国の保 障の免除措置があるとすれば、それは個人も会社も一緒ではないかというのは当たり前 の話だと思います。 ○C委員  当たり前なんでしょうかね。 ○D委員  それは考え方かもしれませんけど、要するに一時の休業状態に対してある免除措置が 講ぜられるとすれば表裏一体のものであるから、表裏一体のものは表裏一体で扱っても らうということです。 ○C委員  もうちょっと法的な角度からの検討をした方がいいのではないかと思いますけれども ね。 ○D委員  というのはどういうことですか。 ○C委員  雇用関係が継続しているということとのかかわりで、賃金はもちろん払わなくていい んですけど、つまり育児休業法を定めた法的な趣旨というのは何なのかということにか かわると思うんですね。その辺の整理は、私は余り今まで考えたことなかったものだか ら、にわかに当然であるかのごとく言われるとちょっとひっかかるんですよね。もうち ょっと吟味した方がよくないか。 ○D委員  雇用関係は継続しますということは堅持すべきだと私は思っていますけど、ですから その中での手当の扱いについては、本人と企業とが同等であって何ら差し支えない。表 裏一体のものだというふうに考えて何ら差し支えない。そこは輪切りにすればいいじゃ ないかと。ただし雇用関係は継続している。  それから、個別企業の労使の話し合いの中で、プラスアルファの措置が行われること について何ら問題はないというふうに考えます。 ○A委員  今の議論、大変大事なところなんで、我々はなるべく使用者側にいっぱい負担をして いただきたいという立場ですから、当然かどうか別にして、出してちょうだいよと言い たいところですが、外国でどうなんですか。例えばドイツ保険方式ですね。白書の317 ページのところに表が載っていて、ドイツの場合には今度の改革法で、出生後3年間は 平均労働報酬の、今まで75%だったのが100%の収入があったものとみなされると。みな されるという場合のこの保険料は、ここのところではどういうふうになっているのでし ょうか。イギリスは基礎年金の部分だから、これは保険料ではないですね。 ○会長 事務局のどなたか今のところについてご説明をお願いします。 ○事務局 後ほどまた調べて御返事したいと思います。 ○F委員 事業主の立場で質問しますけれども、この案で財源は現在の現役世代の負担となりま すが、これはゼロサムなのか、負担数が増えるのか。あるいはゼロサムということは負 担の全体のマクロの数字が変わらないのであれば、給付の水準がこちらを免除すること によって逆に基本の数字が下がる人が出てくるのか、その辺はどうお考えなんですか。 ○事務局 全体の保険料総額は一定として、ある人が免除受けた分をある人がカバーするという ことなんでゼロサムになると思います。給付には影響いたしません。 ○E委員 少子化の問題は、先ほどから諸先生方がいろいろおっしゃっていますが、男尊女卑の 日本人の国民性みたいなことがベースにあり、それが徐々にではあっても壊れつつある のかもしれませんが、そういう根底的なところの意識改革がなかなか進まない中で、き ょう資料としてお出しになった施策を打ったところで、余り大きなインパクトを与える 少子化対策にはならないのではないかと基本的に思います。やや消極的なお話で恐縮で すが、先ほどちょっと話題になりました育児休業期間中の年金保険料免除のところの手 直しぐらいがせめての施策かなというように思います。 それから、大阪での公聴会の後、A委員から大分揶揄されましたけれども、私はやは り基本的に女性にやさしい社会をどうつくるのかという根本問題が、先ほどの意識の問 題とセットで進められないとだめだと思うんです。女性に限らず社会参加をどういうふ うにして進めていくのか、そういう促進行動の方がむしろ大事なのではないか。女性に やさしい職場とは一体何なのか、あるいは女性にやさしい企業とはどういうことなのか 女性の職域拡大をどういうように進めるのかという施策をまじめにコツコツ積み上げて いくことの方が環境整備につながるのではないか。それが結果として少子化対策につな がるだろうと思います。 先ほど定年延長の話でいろいろ御意見がありましたが、私は日本人の国民性みたいな ものがあり、行政がある意味で、枠組みというか、指導というか、ある程度枠をはめて でも、国策としてこれが必要なら、また国益としてぜひ何とかしなければならないとい う位置づけがあるなら、そういう施策を行政がリードをして一定の形をつくることも大 切だ。そしてあとはじわっと手を引いていくというようなやり方もある。そういうシス テムを持ちながら、この問題の解決への切り口をつけていくというようなやり方をしな いと、待っておったのでは、どれだけ期間がかかるかわからないのではないかと私は思 っています。 ○A委員 それからすいません、さっき聞き忘れたのですが、F委員御質問のゼロサムというと ころなんですが、もしゼロサムだとすると、事実ゼロサムの試算になっていて、今度の 5ページなんかを見ると、子供ゼロの場合には負担が増えると。子供が増えると負担は 減るというふうになっていて、全体でプラス・マイナス・ゼロだということなんでしょ うが、これを逆に言うと、子なしの人に対するペナルティーみたいに受けとられません か。 実はうちの中で議論したときに、そういうペナルティーを課せという議論がありまして 女性から大変評判が悪くて、引っ込めた人がいるんですが、私ではないですが、そうい うペナルティー型の発想だというふうに受けとられるとすると、これは大変同意を得に くいことになるのではないか。  先ほどダブルスタンダードだと申しましたが、むしろペナルティーと優遇措置とがワ ンセットでゼロサムだということになるとどうしてもそういう理解を誘発しがちなよう に思うんです。そこはいかがでしょう。 ○事務局  ペナルティーという考え方の尺度の問題だと思うんですけれども、ある者を優遇する ことがある者にとってペナルティーと見えるような制度の仕切り方はありますし、ただ つけ足すだけであれば、つけ足してもらえなかった人はペナルティーはないという見方 もありますけど、ここでは負担についてはゼロサムで処理したと。  ただ、最後のページにありますように、30万をオンするというやり方について、これ はみんなで負担して、ある人の場合は給付が乗るかということですから、余りペナルテ ィー的な色彩は少ないと思いますけれども、それぞれどう受けとるかではないでしょう か。 ○F委員  ゼロサムですと、結局構成員がだれかが得すれば損する、非常に明確になりますから そういう意味では、保険者の負担は非常に難しくなるのではないかと思います。したが って、国として産めよ増やせということが政策として税金の中から出すと。ツールとし ては年金制度を使うというならばいいのだと思いますが、この中だけでいったりすると 1対1の関係になりますから、非常に論議を呼ぶのではないかと思います。 ○M委員  皆さんの大変専門的な御意見に比べてまことに単純なことを申し上げて、流れを変え てはいかんというふうに思いますが、学生や若い人からとってみますと、年金制度につ いての認識に欠けるということは、前から議論がたくさんあったわけでありまして、未 納であったり未加入だったりするという部分があるわけです。  この現金給付30万円ということでありまして、30万円がいいか悪いかといろいろ議論 がありますし、その程度の金額で何が変わるかと言われれば、何も変わらないことかも しれませんが、年金を給付してもらうということがない若いときに、この部分がそれな りにあるということは、そういう意味では、年金制度に加入していて、この部分がある のだという認識はやはり相当違ってくるのではないかとも思うんですね。先ほど医療保 険制度のこともありましたが、医療保険についても、あれは病気がありますから若い人 ももらえるわけですが、年金はそうではありませんでして、年取ってからという話です ので、そういう部分も認識してもらってもいいのではないかと思います。 ○B委員  私も少子化対策を本格的に年金制度の中に取り入れることができるかどうか、あるい はそれがいいかどうかというのは大変疑問があると思うんですが、ただ、これだけ少子 化が大きな問題になっているときに、もちろん今御意見ありましたように、国全体とし てどう取り組むかというグラウンドデザインみたいのができて、その中で税制はこうす る、年金はこうする、雇用ではこうするというような総合的なものができれば、私はそ れは大変結構だし、そういうものを早く政府全体というか、国全体として政府が少子化 対策をいきなり出すのはなかなか議論があるところなので、国民的な議論をして、そう いうものができれば大変いいと思うのですが、ただ、そう言って、少子化対策は年金で はだめなんだということで全部を蹴ってしまっていいかどうか。  ここに書いてあることがいろんな人が言うことをみんな網羅的に書いていますので、 これはとてもつき合い切れないという感じがするんですけれども、しかし、そうは言っ ても、年金と少子化の問題は大きな関連があるので、何か少しでもできないかというの はまじめに考える必要があるのではないか。私はそういう意見なんですけれども、その 中でもう少し具体的に考えてみますと、給付の面ではなかなか差をつけられない、特別 なことはできないと思うんですね。何か手当を出すとか、子供の年金を出すとか、それ はできないのですが、保険料負担の面では、私は若干差をつけてというか、何か特別に 子供のある人とない人と差をつけるといいますか、子供のある人の負担をない人に比べ て多少違いをつけるということは全くおかしな話でもないのではないかと。  ただ、そういうことをしますと、年金だけではないよと。医療保険でもそういう考え 方が出てくるので、それはどうなんだというのは確かにあるのですが、それが議論の結 果、社会保障全体の問題だということになれば、それはポシャるわけですが、私は多少 保険料負担で、子供を1人、2人、3人持って、一生懸命育児にもお金をかけている人 とそうでない単身者あるいは子供がなくて比較的楽というと言い過ぎかもしれませんが そういう人との保険料負担は多少の違いがあってもいいのではないか。その辺は少し考 えてもいいのではないか。育児休業の部分のお話は出ておりますが、それよりさらに踏 み込んで、これは実は専業主婦の夫婦の場合はどうなんだということとも実は関連があ る問題で大変難しいと思いますが、そういう所帯タイプで保険料負担に若干の少子化対 策的な性格というか、色彩が入れられないかということは少しまじめにやはり考えてい いのではないかという気がしております。 ○C委員  今のB委員の意見に私も賛成なんですが、前からそういう趣旨のことを申し上げてい たと思いますが、きょう出ているのは、主として女性で働いている人を対象にして保険 料を免除するとどれくらいの負担増になるか。実際はそういうことになるのでしょうね やはり3号被保険者の扱いの問題と一緒にして議論してくれた方が、私はよりバランス がとれるのではないかと思うので、3号被保険者もこの前の議論で宙ぶらりんになって 終わってないと思いますけれども、3号被保険者を分類すると大体3つに分かれるわけ ですね。本当に子供も老人も何も面倒見てないで有閑マダム的と言ったらちょっと語弊 があるけれども、本当に楽をしている3号被保険者もいらっしゃるし、育児に追われて 大変な人もいるし、介護までいかなくても老人を抱えて四苦八苦している専業主婦もい らっしゃる。  そういう中で一律の扱いがいいのか、私は非常に疑問なので、配偶者控除と不可分の 関係だとは思いますが、私は単純に言うと、括弧つき「有閑マダム的」な3号被保険者 からは、国民年金とのバランスを考えた上でのある程度の定額を取るくらいのことをす れば、ここでかかると言われている費用が若干は浮いてくるはずだと思うんです。 ○I委員  議事進行にも関係するんですが、まだ、あと議題残っておりまして、この問題は、き ょう女性の委員が皆御欠席でして、欠席裁判のような格好で議論するのはどうかと思い ますので、次回に回されたらいかがでしょうか。 ○会長  はい。今の御提案のように、この問題のご議論をとりあえず中断いたします。もう一 つ、公的年金の一元化問題の資料が残っておりますので、そちらに移ってよろしゅうご ざいましょうか。 ○事務局  先ほどA委員から育児の扱いについて、事実関係だけ御説明を申し上げます。 ドイツの制度におきましては、3年間の育児について、保険料を納付しなくても給付に 結びつくという制度になっておるのはA委員御指摘のとおりでございます。この保険料 部分につきましては、労使双方とも支払いの義務はないという事実関係になっておりま す。以上でございます。 ○会長  A委員よろしいですか。 ○A委員  ありがとうございました。 ○会長  公的年金の一元化問題が残っておりますので、そちらへ移ります。時間も4時半を過 ぎております。事務局から資料の御説明をお願いします。 ○事務局  お手元の資料に沿いまして御説明させていただきます。まず資料1でございますが、 年金制度の一元化につきましては、論点といたしまして、「一元化については共済年金 制度と関連する問題であるが、本審議会としても平成8年3月の閣議決定『公的年金制 度の再編成の推進について』を踏まえ検討を行っていくことが必要ではないか」という ことが挙げられております。白書におきましては、50ページ〜52ページにつきまして、 これまでの再編成の経緯の記述がございます。  それから資料2の7ページですが、7ページ以下が一元化関係の資料になってござい ます。7ページ以下の資料につきましては、一元化のこれまでの取り組み、公的年金各 制度の財政の現状及び財政計画についての資料を用意させていただいております。  まず7ページの「公的年金制度の一元化のこれまでの取組み」というところですが、 ます一番上の箱ですが、昭和59年の2月、これはちょうど基礎年金導入の法案が準備さ れておるころでして、同時に鉄道共済等3つの公共企業体の共済組合を国家公務員共済 組合に統合する法案が成立したというころの時期です。昭和59年の2月におきまして、 公的年金制度の一元化に関する閣議決定が行われまして、平成7年を目途に公的年金制 度全体の一元化を完了させるという閣議決定が行われたところでございます。  続きまして、昭和60年の改正におきまして、基礎年金が導入されまして、1階部分が 一元化されたということでございます。それから2階部分につきましては、共済年金の 算定方法を厚生年金と同じ算定方法に変えるということで、給付の公平化が図られたと ころでございます。これによりまして、厚生年金と共済年金の違いがほとんどなくなっ たわけです。  昭和62年9月ですが、これはちょうど60年改正と元年改正の中間の時期でございまし たけれども、このときに「公的年金制度に関する関係閣僚懇談会」が開かれまして、残 された課題といたしましての、負担の公平化に向けまして、平成元年再計算期に地なら し措置を行うということを申し合わせたところでございます。  その申し合わせに基づきまして、平成元年12月に「被用者年金制度間の費用負担の調 整に関する特別措置法」、いわゆる「制度間調整法」と呼ばれているものが成立いたし まして、年齢構成が比較的若く財政的に余裕のある制度が成熟化している制度を暫定的 に助ける仕組みをここで導入したわけでございます。公的年金制度の一元化が完了する までの地ならし措置と位置づけられたところでして、この結果、鉄道共済組合とたばこ 共済組合の年金が助けられたところでございます。  それから、平成4年11月及び平成5年4月につきましては省略させていただきます。  次に平成6年2月ですが、「公的年金制度に関する関係閣僚会議」が開かれまして、 ここで公的年金制度の一元化について公的年金各制度を通じて論議いたしまして、関係 者の合意形成を図るために「公的年金制度の一元化に関する懇談会」を開催することを 申し合わせたところでございます。  次の平成6年12月は省略させていただきます。  平成7年7月に、この「公的年金制度の一元化に関する懇談会」が報告書をまとめま した。そして、平成7年8月に「公的年金制度に関する関係閣僚会議」が開催されまし て、ここでその報告書が報告されまして、その趣旨を最大限に尊重した具体案づくりに 着手することということが事務方に命じられたところでございます。  続きまして、平成8年3月に「公的年金制度の再編成の推進について」という閣議決 定がなされまして、あわせまして、被用者年金制度の再編成の第一段階として、JR共 済、JT共済及びNTT共済の3つの旧三公社の共済組合を平成9年度に厚生年金保険 に統合するという法案が国会に提出されたわけでございます。昨年の4月から、鉄道共 済、たばこ共済、NTT共済の3つが厚生年金に統合されたというところでございます  続きまして、8ページは、平成8年3月の閣議決定を掲げてございます。説明は省略 させていただきます。  9ページ以下は、各共済年金の現在の財政の状況につきまして見てまいりたいと思い ますが、まず9ページにつきましては、「公的年金制度一覧」ということで、各共済年 金の基本的な情報をここで掲げております。被用者年金制度の欄を見ていただきますと 厚生年金保険は3,300万人の被保険者がおりまして、老齢年金受給権者数は693万人、成 熟度は21%になっている。そして老齢年金の平均年金月額は17万円になっているという ことでございます。 国家公務員等共済組合連合会は、成熟度が50.7%、老齢年金の平均年金月額は21万 6,000円となっているということでございます。以下、各共済組合についての状態が示さ れております。なお、この共済組合につきましては、3階の職域年金部分を含んだ平均 年金額が掲げてございます。  次に10ページですが、10ページにおきましては、各公的年金制度の給付状況・被保険 者状況を記してございます。詳しく書いてありますが、上の給付状況の下から2つ目の 欄に、老齢退職年金受給権者についての状況が書いてございます。厚生年金は17万円、 平均加入期間が28.4年となってございます。  以下、共済組合につきましても同じ数字が載っておりますが、共済年金が高いのは職 域年金部分があるということと、標準報酬月額が高く、また加入の期間が長いというこ とが原因となっておりまして、年金額の算定方法そのものは厚生年金と同じになってご ざいます。  また、下の「被保険者状況」におきましては、平均年齢、標準報酬の平均というもの が掲げてございます。  次の11ページですが、これはこれまでの被保険者の推移を記したものでございます。  それから、12ページすが、これは「公的年金各制度の収支状況」を記したものでして 「7年度」ということが落ちておりますが、7年度の状況でございまして、各制度の収 支状況を示してございます。  13ページでございますが、この絵は、12ページの状況をもとにいたしまして、給付を 1とした場合に保険料・運用収入、積立金からの運用収入がどれぐらいになるかという ことを示しておりまして、各制度におきましては、給付が保険料の収入の範囲内でなさ れているかどうか、あるいは運用収入を使わないといけないかどうかということが見れ るように図示したものです。  14ページは、数理部会におきましては、種々の指標をつくりまして、各公的年金制度 の財政の現状を分析しております。そのうち、ここでは総合費用率と積立比率について 見ていきたいと思います。まず「総合費用率」ということで、これはここにございます ように、被用者年金制度について、ある年度の実質的な支出のうち、保険料拠出によっ て賄わなければならない部分(国庫負担あるいは公経済負担を除いたもの)が、その年 度の保険料拠出の基礎となる標準報酬総額に対してどれくらいの割合になっているかを 示す指標でございまして、国庫負担を除いた部分に関する賦課保険料率ということです  下のグラフにございますように、平成7年度は厚生年金では13.75%、国共済、地共済 私学、農林以下の数値が記されてございます。  15ページには「積立比率」を記してございます。積立比率といいますのは、ここにご ざいますように、ある年度の実質的な支出のうち、保険料拠出によって賄わなければな らない部分に対しまして、前年度末に保有する積立金がその何年分に相当しているかを あらわす指標です。厚生年金は平成7年度末におきましては、6.26年分に相当する積立 金を持っている。以下、各共済におきましても状況が記されてございます。 16ページですが、これはこれまでの総合費用率と積立比率の推移を掲げたものでござ います。 最後に17ページ、18ページにおきましては、各公的年金制度の財政計画の比較を掲げ てございます。17ページでございますが、これは平成6年の財政再計算におきまして、 各制度が策定いたしました財政計画でございます。例えば厚生年金ですが、厚生年金は この平成6年の再計算前の保険料率は14.5%でしたが、5年ごとに2.5%ずつ引上げ、平 成37年度に29.8%に到達するという計画を立てたところですが、それをここで掲げてご ざいます。国共済、地共済、私学、農林につきましても同様でございます。 なお、7年から11年につきましては、14.5から2.5を引き上げました17.0ではなくて、 このときの景気の状況等を勘案いたしまして、2段階で引き上げるということで、まず は14.5から16.5に引き上げまして、8年の10月にさらに0.85引上げ17.35という現在の保 険料になっているということでございます。 それから、18ページですが、ここでは年金数理部会が各制度の実行保険料につきまし て評価を行ってございます。まず「保険料率B」という欄ですが、これは各制度の平成 6年の財政再計算におきまして策定されました実行保険料率です。例えば厚生年金17.0 となってございますが、これは先ほど申し上げましたように、17.35 という保険料率の もとになった保険料率です。  もう一方で、数理部会では「数理部会方式」という方法で保険料率を算定いたしまし て、それと比較することによって評価を行っているということでございます。この年金 数理部会方式と言いますのは、各制度の実行保険料率がそれぞれの制度の独自の考え方 のもとに決められてきておったわけですが、基礎年金の導入とか一元化が検討課題とい うことになる中で、財政の健全性という観点から、各制度の実行保険料率を共通の尺度 で評価する方法が求められているということから、公的年金制度は世代間扶養の仕組み に着目をして財政運営が行われておりますけれども、そういう段階保険料方式におきま す保険料設定の指標を数理部会が提案したところでございます。その算定方式に基づき まして、数理部会が計算しました保険料率がA欄に掲げてございます。  この各保険者の実行保険料率が数理部会の保険料率よりも小さいという場合でもただ ちに問題があるわけではございませんけれども、それだけ負担を多く先送りしていると いうことで、例えば被保険者数が減少する場合にそういう変化に脆弱であるということ が言えるわけでございます。そういう観点から見ますと、国共済連合会と農林年金が数 理部会方式よりも下回っている。その分、先ほどの変化に対して脆弱であるということ が言えるわけです。このような評価を行っております。  それから、19ページには、59年の閣議決定を参考のために掲げさせていただきました  20ページは、各公的年金制度におきまして、制度の検討を行う機関を掲げさせていた だいたところでございます。以上でございます。 ○会長  ありがとうございました。ただいま御説明のありました「公的年金一元化」の問題に つきまして、御質問、御意見などございましたら、どなたからでも、ご自由にご発言く ださい。 ○K委員  公的年金制度の一元化についての懇談会に参画しておりましたので、ちょっと感触を 申し上げますと、鉄道共済とたばこ共済が成り立たなくなったというふうなことから厚 生年金への統合の問題が出たわけですが、そのときの話では、被用者年金制度の統一的 な枠組みの形成を目指すと。要するに一元化を目指して21世紀にかけて漸進的に対応す るというふうな方向が出されました。  まず公共企業体の3つの共済は、とても自立不可能ということで、すぐに厚生年金に 統合しようということになりまして、その次に漸進的に対応するというスケジュールで いきますと、次は農林漁業と私立学校、この2つの共済が考えられるわけでして、国家 公務員と地方公務員は公務員共済というやや別の制度でもありますので、これは最後の 段階というふうな受けとり方を私どもしておったわけですが、その後、特に農林漁業に つきましては、今の資料の13ページを見ると、保険料では賄えなくなっておるという状 態になっております。また、今後の農協の分野のリストラを考えていきますと、新規加 入者が増えていくような状況ではありませんので、早晩、農林漁業は財政面で大変困難 な状況に陥るのではないかと思われます。  私学の方は今はまだ余裕は十分にあるようですけれども、これも少子化が急速に進ん でいきますと、早晩行き詰まってくるのではないか。そういう意味では、厚生年金とし て別に歓迎するわけではないのですけれども、いずれ農林漁業、私学、この2つは21世 紀の初頭ぐらいでは、厚生年金に統合していかないといけないのではないか。  そういうふうに考えますけれども、共済の方では余り統合を歓迎されていないようで して、それでは将来本当に自立していけるのかという危惧を私どもは外野席で持ってお るのですが、いずれにしても財政単位を拡大していくことにしないと就業構造あるいは 産業構造の変化に対応していけないということは明らかでありまして、どうも共済の方 から厚生年金への統合を余り進んで発言されないような雰囲気でありますけれども、き ょうは共済年金の代表の方もおられませんので、申しわけありませんが、やはり将来の ことを考えますと、本当に行き詰まって、国鉄のようにどうしようもなくなるところま でほっとおかないでそろそろ考えていくべきではないかと思います。以上です。 ○M委員  実は私自身は多分この年金審議会の委員になっておりますのは、1号被保険者の国民 年金の立場かなというふうに考えますが、実は農林漁業団体共済組合、農林年金の方の 組合員でも実はありまして、その立場から、今、御意見がございましたので若干申し上 げたいと思います。御案内のとおり農林年金は厚生年金から分離独立したわけでありま すが、当時は厚生年金加入の事業所の最低人員が5人以上ということでありまして、農 林漁業団体は御案内のとおり、職員5人未満の小規模団体がたくさんあったということ もありまして、当時どうしても独自の組織をつくっていきたいということがあったかと いうふうに思っております。  ところで今御指摘ありましたように、農林漁業団体も産業構造全体の変化の例に漏れ ませんでして、農林漁業全体の置かれた状況からしましても組織の再編が求められてお ります。実は、例えば農協の組織であれば、昨年の全国農協大会におきまして、21世紀 に向けて大きなスリム化を進めようということで決めておるわけでありまして、2000年 を目標に職員5万人を削減しようという目標で、それなりに進んでおります。皮肉なこ とに、これら再編によりまして、分離ないしは子会社化したところの従業員は厚生年金 に入っていくことになっています。農林年金の組合員はそういう面で減っていくという ことになってきているわけでして、そういう意味合いにおきましては、平成8年3月の 閣議決定があるわけでありますが、閣議決定の方向といいますか、政策の方向に沿いま して粛々といいますか、きちんと検討を深めていくことなんだろうと思っておりますの で、ひとつどうぞよろしくお願いしたいと思います。 ○H委員  先ほどK委員もおっしゃったんですが、かつての旧国鉄共済への対応が、どちらかと いうとツーレートで傷も深く年金不安も非常に大きなものになってしまったという反省 が我々はあるわけです。今後、どの共済もうまくということであれば、別にどうという ことないのですが、ここできょうお示しいただいた資料を見てもやはり早めに対応した 方がいいというふうに私自身は考えます。  ただ、年金審議会でこの議論を深く議論するのが適切であるかどうかは一度お考えい ただきたいと思うんです。従来からのいきさつで言いますと、一元化懇がありまして、 そこで何か1つの方向性みたいなものを出していただきましたし、制度審の数理部会で もしかるべきいろいろな検討をすることになっておりますので、そういうものを踏まえ て年金審で議論すればいいのではないかと思います。  それで、とりあえず一元化懇を今開催は中止しているのでしょうか。早急に開いてい ただいて検討していただければ幸いだと思っています。以上です。 ○A委員  「一元化、一元化」というふうに我々はわかったように言ってきたのですが、確かに “被用者年金の全的統合”というのは、これは4団体時代から労働組合が一貫して追求 してきたテーマでありまして、その意味で、「連合」になってからもそのことを追求は してきたつもりです。ただ、こうやって資料を拝見しますと、昭和59年の閣議決定、平 成7年の一元化懇の報告は確かに「一元化」という言葉が使われておりますが、8年の 閣議決定になると「一元化」という言葉はよく見ると消えているんですね。「再編成」 だと言われている。  59年の閣議決定では、当時は昭和70年、今から振り返れば、「平成7年を目的に公的 年金制度全体の一元化を完了させる」と、約10年かかってこういうことが確認された。 この目標年次の前の年の6年から始まった検討が7年の一元化懇になり、ここで「一元 化」という言葉は残っているけれども、要するにJR、NTT、JTの民営化に伴う統 合をやった以外には、あとは要するに先送りした。つまり59年閣議決定の目標の平成7 年度完了という目標を21世紀へ放り投げちゃったという印象がありますし、8年の閣議 決定では「一元化」という言葉そのものが消えてしまっている。  ということを踏まえますと、59年の閣議決定の基本的な方向性は、結局のところ徐々 に徐々に後退をして棚上げされて先送りをされているという印象を否めないわけで、一 体全体をどう評価するのかということなしに一元化、一元化と言ってみても非常にむな しいという感じが1つはいたします。  もう一つは、今、H委員お触れになったこの年金審でこの問題がどこまで議論できる のか、するのかという審議会としての検討に当たってのスタンスを確認しておく必要が あるのではないだろうか。つまり、ここの審議会は国民年金と厚生年金を扱うもので、 ほかの制度についてはほかのところの審議会が、全部が審議会ではないかもしれません が、それぞれあるのであって、それぞれの場で検討するべきでここがやるのはやりすぎ だと。ないしはそういう権限がないと、こういう議論もあるわけですね。そうであれば ここでそんな議論してもむなしいだけでやめておいた方がいいと思います。  しかし、一元化懇の報告の中では、今後のいろんな再編・統合のことを考えると、我 が国被用者年金制度の一般的な制度であり、かつ最大規模の厚生年金が中心的役割を果 たすとこういうふうに書いてあるのだとすれば、我々は制度が違うからといって、それ は当審議会の議論の埒外であるとこういうふうに考えるわけにもいきにくいのかなと。 一体どっちなんだろうと。ちょっとそこの最初の議論のスタンスを決定しておかないと ここは財政状態よさそうだとか、悪そうだとか言ってみたところで、ただのうわさ話に しかならないような気がいたします。まずその点を明らかにしていただくようにお願い したいと思います。 ○事務局  私ども内閣の一員という立場と、厚生年金、国民年金を所管している立場と2つの立 場ありますけれども、現在この場で申し上げられることは、平成8年3月の閣議決定に 書いていることが、いま私どものもたされている責任のすべてであろうかと。そうなり ますと、今おっしゃった各制度の例えば状況の判断ということになりますと、8ページ でごらんいただきますと、3のところにございます閣議決定の内容ですが、まずは「社 会保障制度審議会年金数理部会に要請し、制度の安定性、公平性の確保に関し、財政再 計算時ごとに検証を行うものとする」というところがございますので、そこの検証によ って、各制度の状況を客観的と申しますか、第三者的に御判断いただいて、そして、そ のうちにまた判断が続くのではないか、こういうふうに考えております。 ○事務局  ちょっと追加して御説明申し上げたいと思うんですが、この問題は、I委員とG委員 が裏の裏まで御承知で、私が申し上げるのは適当でないかもしれませんけれども、今お 話がございました「一元化」が「再編成」という言葉になって先送りされたということ ですが、一元化につきましては、これは文字どおり制度を一本化する、統合すると、こ ういうことから、制度は分離したままで財政調整する、その中間的なもの、いろいろな 幅広い考え方がございまして、非常に長い間、議論が行われてきたわけでございまして 「再編成」という言葉に変わったから、目指すべき理念、方向が途中で変わってしまっ たということではないと思っております。  もう一つ申し上げたいのは、年金制度は、分立しておりますけれども、それぞれ歴史 があり、背景があり、これまでの長い経緯があるわけですね。したがって、関係者の利 害が対立していてはいつまでも進まないわけでございまして、関係者間の合意形成を図 るというのが大変難しゅうございまして、非常に時間がかかった。関係者の合意が得ら れなければ、これは一歩も前に進まないわけでして、非常に難しい問題がある。特にJ Rをめぐっては、昔、非常に景気のいいときには大盤振る舞いをして、苦しくなったか ら助けてくれというのは筋が通らないと、そういう感情論を含めていろんな問題がござ いまして、合意形成に非常に時間がかかったということかと思います。 ○E委員  この件に関して、先ほどK委員がおっしゃったことで基本的にはいいと思うんですが 少し私なりに過去のJR、NTT絡みのところで「連合」の内部で話をしたときのいき さつと、最近の動きをからめて申し上げたいのですが、要するに一元化の方向へ向かっ て進めるためにターゲットになるところの労使間で、事前に統一的な対応をしておいて いただく必要があるのではないか。  ここにいらっしゃる委員さんのところにもハガキ戦略でいろいろ来ていると思うんで すが、ハガキで一元化に反対する動きが、連合傘下の関係団体から来るわけです。それ は事前に労使間できちんと対話してもらわないと、我々の厚生年金サイドから見れば、 中で意見が食い違っているものをなぜ包含しなければならないんだとかという感情論に 発展しかねない。少なくとも厚生年金側で労使がそんなに齟齬を来す意見の対立はない と思うんですね。ばらばらの状態で、問題を解決しなければなりませんというようなこ とになります。 入口論のところで感情の方が先に立つ話になるのではないかと思うんです。そういうこ とを御注文申し上げておきたいと思います。 ○G委員  一元化については、多少、私かかわりがありまして、結構過去の教訓で言えば、物す ごい懇談会で、要するに私一人で何かやっているような感じで、最後何とかなったと。 最大の問題は、今、私そこに所属しておりますが、私学なんですね。要するにお金のあ るところは反対するわけです。それはわからないわけでもないのですが、結局、最後私 学共済に何とか応分の負担をしてほしいということでスキームは成り立った。  今後も基本的にはその傾向があるのではないか。実際には財政が少し、先ほど来、将 来ちょっと大変だということになりかけたところで真剣に考えられるが、長い目で見る 必要がある。基本的には、先ほどの8ページのところは、その前提として、いろんな共 済がありますが、共通の計算方式で財政状態がもともと、単純に申し上げれば、今から 10年前は全く要領を得ないという状況がありまして、財政再計算を少なくともちゃんと やってくださいと。そこである程度の将来の見通しが立てば、そのときにある意味で客 観的に個々の財政状態はどうですということが判断できて、それで話がそこである意味 では進むと。 幸いにして、あるところまで今進んでおりますので、財政見通しを客観的な、厚生年金 とは違ういろんな試算がありますが、少なくともそれに比較できるようなことでやって もらって、状況判断してと。  ですから、恐らくI委員がやっておられる数理部会は、横断的に別の算定方式でやっ ておられて、私もある意味で、ほかの算定方式と食い違っているので、どうして食い違 っているんだということをそれぞれ確かめてやる必要があると思います。大体そういう 状況だろうと思います。 ○会長  ほかにどなたかございませんか。A委員どうぞ。 ○A委員  要するに今回、当審議会でこの一元化問題についてどういう結論をどういうスタンス で出すのか、これをまずどこかで決めておかないと、一元化問題もテーマの1つで、た だ、おしゃべりしましたと、こんなのではやらない方がいいと思っているんですけれど もね。 ○G委員  お役所的に答えると、先ほどお話がありまして、厚生年金がある意味で、ありていに 申し上げれば、こう言うと厚生年金に非常に怒られるかと思いますが、厚生年金は一番 大きな団体で、差し障りがありますが、ほかの小さい集団が財政的におかしくなったと きに、最後は厚生年金の方を向く。それは間違いないんですね。そういうことがありま すから、多少は基金の運営についても何か言えればいいというのは、本当のところは、 私はそうじゃないかと思うんですが、そこまでは、実を言うとそれぞれ別のあれですが できれば、多少その辺について御感想で、それがそれぞれフィードバックする。私は個 人的にはそう思える。そう言うと怒られるかもしれないんですが、多分フィードバック して、大丈夫かと。単純に言えば、大丈夫かと。そこでどうにもならなかったら、もし そういう御感想があれば、それは最終的にはそれぞれの基金の運営の仕方にプラスにな れば、それなりに意味があると思います。  これは全く個人的な見解です。 ○N委員  一元化懇は、結局それぞれの制度が別ですから、ああいう場でなければ議論できない ということでG委員中心になって、あれだけまとめたわけですし、基本的にはそれぞれ の制度が別ですし、それぞれの審議会があるから、その場では議論しなければならない わけですが、この8年度の閣議決定の方向もあります。  それから、今までの議論の過程で「論点整理」の中で、当審議会でも議論しようじゃ ないかということになりましたので、基本的には最終的にどうするかというのはああい うような場、その途中過程におきますI委員のやっておる年金数理部会とか、そういう 場があると思いますけど、ただ、ここで全然無視するというわけにもいかないし、「論 点整理」の中でも出ましたので、被用者年金制度の一番中心ですから、G委員おっしゃ ったような議論は一応しておく必要があるのではないでしょうか。 ○A委員  そういうことであれば、ここできちんとした議論をこの問題はすべきで、きょうは時 間がないですからあれですが、少なくともその場合に、8年3月の閣議決定が責任持つ べき単位だというふうに事務局からのお話ですが、その場合は、その前提になっていた 前回の一元化懇の報告書も、この閣議決定とワンセットのものとして考えていいんです か。それとも、あれはお役済みで、すべての出発点は閣議決定だけだと、こういう考え 方でしょうか。 ○事務局  ちょっとその両者の比較する法律的な根拠が違いますので非常にお答えしにくいので すけれども、懇談会の御意見ももちろん尊重しながら、そして、内閣としては、この閣 議決定に従って進めてまいりたいということではなかろうかと思いますが。 ○A委員  この一元化懇の取りまとめは物すごく注意した表現にはなっているとは思うんですが かなりいろんなことを書いておられるんですね。それが閣議決定になると、みんなきれ いさっぱり枝葉取り払われたようなふうになっているというのが読んだ印象なので、む しろここでの一元化問題を議論するのであれば、公式文書というか、行政機関に対する 拘束力を持っているのはもちろん閣議決定だというのはわかりますが、むしろ一元化懇 の報告書を幸い実際それに携わっておられた委員の方々がここにいてくださるわけです から、少しここの一元化懇の報告書について、全体で認識を共有するところから出発を した方が中身のある議論になるのではないかと思います。  厚生省の皆さん、そういう議論なるべくお避けになりたいような雰囲気があるようで 大変遺憾でございます。私の誤解であれば、幸いです。 ○会長  I委員、お願いします。 ○I委員  私も逃げたいと思っておりましたのですが、そういうわけにはまいらんようでござい まして、A委員がおっしゃいますように、一元化懇のときに考えた一元化と、8年3月 の閣議決定の再編成と、これはどういう関係にあって、今後どういうふうに持っていく のかということについて詰めた議論はないんですね、正直言いまして。  黙ってますと、年金数理部会で何か検証するからというあたりへしわが寄ってくるお それがございますので、数理部会というのは、これは各制度が行った財政検証を受けて アクションを開始するという性格のもので、自分でもって資料を収集したり自分でもっ て計算するという能力はまずないわけです。そういう点がありますので、タイミングの 問題を考えますと、この年金審の意見書は9月あたりが目標としておられるので、果た してそれまでの段階に、この8年3月の閣議決定に基づくいろんな動きがある程度この タイミングに合うようにいくのかどうか、私は恐らくその見込みの方がむしろないので はないかという気がいたしておるのでございますが、いずれにせよ、この審議会で一元 化を議題として取り上げた以上は、これに対して何らかのやはり答えは出さなければな らないわけですから、きょうは恐らく無理でしょうから、もう一度時間をとっていただ いて、余り中身の議論は非常に難しいと思いますが、持って行き方の議論はせめて決め ておいていただきたいというような気がいたします。 ○会長  A委員、よろしいですか。 ○A委員  はい。 ○会長  最後に、若い世代を対象に年金改革について意識調査を行う、ということがもう一つ ございます。事務局から御説明をお願いします。 ○事務局  資料3をごらんいただきたいと思います。「若い世代の年金改革についての意識調査 の実施について」ということで、今、有識者調査、世論調査の集計に入っておりますけ れども、若い世代の意識を把握するという意味におきまして、十分ではないのではない かということで、下にございますような、日本社会事業学校連盟所属の大学及び本審議 会の大学の先生方の御協力を得まして、全国十数校におきまして、(3)にございます ように、アンケート用紙を配布いたしまして、現状制度につきまして説明を行い、その 場でアンケートを開始するというやり方によりまして、3にございますような「年金に ついての関心度合い」を初めといたしまして、有識者調査あるいは世論調査のように突 っ込んだ形はなかなか難しいかと思っておりますけれども、年金に対する若い世代の意 識、考え方を把握をしたいということで調査を実施させていただきたい、こんなふうに 考えているところでございます。 ○会長  こういう計画があるという話でございます。  それから、資料の4ですが、ついでに御説明をお願いしましょうか。 ○事務局  資料4は、前回の議事要旨(案)でございまして、あらかじめ各委員の方に配布させ ていただいております。御意見を踏まえて修正をさせていただいたものでございまして お目通しいただけたらと思います。 ○会長  もう一つ、「社会保険業務センター等の視察について」という計画書が、皆様のお手 元に届いていると思います。ご説明をお願いします。 ○事務局  恐縮でございますが、今、会長御指摘ございました当初の予定で5月の29日に高井戸 にございます社会保険業務センターの御視察をいただくことになっております。 あわせて、前回、京都におきまして、社会保険事務所の視察をいただいたわけでござい ますが、御参加いただかなかった委員もいらっしゃいますので、その前に武蔵野社会保 険事務所の御視察をお願いできたらということで、29日1時15分、吉祥寺駅に御集合い ただきまして、御視察をお願いしたいという案でございます。  それから、もう一つ、6月16日、年金審議会、東京におきます公聴会をお願いしたい と思っておりまして、16日の午後2時から大久保のペアーレ新宿におきまして、基本的 には、前回、大阪で行いました公聴会の形式に基づきまして、今回、(4)に挙げてお りますような学識経験者、有識者の方から御意見をお聞きいただきまして、意見交換を お願いさせていただいてはどうかというものでございます。以上でございます。 ○会長  本日用意しました、予定の議事は以上で終わりでございます。本日の資料は、いつも のようにすべて公開をすることとしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  そのようにさせていただきます。  今後の日程について、事務局から御確認をお願いします。 ○事務局  もう一つ、半裁の「今後のスケジュールと検討項目(案)」というのを入れさせてい ただいておりますが、今、申し上げました6月16日の次に6月30日、前回日程をお決め をいただいております。2時からということで、22回を予定させていただいております が、さらに各委員の御都合もございまして、23回、24回につきまして、きょうの時点で 各委員の御都合をお伺いいたしまして御相談をさせていただきたいと思います。23回に つきましては、7月10日金曜日でございますが、午後お願いできたらと考えております また24回でございますが、7月30日木曜日の午後にお願いをさせていただいたらどうか ということで、改めて詳しくは御案内させていただきますが、7月10日と30日につきま して、あわせてお願いさせていただいたらどうかということでございます。 ○会長  ほかにどなたか御発言ございましょうか。どうぞ。 ○A委員  結構なんですが、この間、3号も中途半端だし、そういう御指摘もありまして、私も そう思いますし、基礎年金の問題も同様だと思いますし、そういったいわば積み残しに なってきたやつは、今後のこのスケジュールでは、もう積み残しのまま行くようにも見 えないこともないですが、そういうことですか。それでは困るんですけど。 ○事務局  ただいまのA委員の御意見、今後の進め方につきまして、また各委員と御相談させて いただきましてお諮りさせていただきたいと思います。 ○会長  本日は不手際で予定の時間を大分超過いたしました。これで閉会いたします。長時間 ありがとうございました。                                                              年金局 企画課                               須田(3316)