98/04/22 第3回 21世紀のたばこ対策検討会 第3回 21世紀のたばこ対策検討会 日時:平成10年4月22日(水)    10:00〜12:00 場所:厚生省共用第6会議室 出席委員(敬称略):  内山充  大河喜彦  幸田正孝  五島雄一郎 櫻井秀也 島尾忠男  富永祐民  仲村英一 坂東眞理子  ビル・トッテン  水野肇  柳田知司  山崎正和 (開会:10時0分) 島尾座長  皆様、おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから、第3回目の 「21世紀のたばこ対策検討会」を開催いたしたいと存じます。  議題に入ります前に、事務局から、本日の出欠と資料の確認をお願いいたします。 事務局(高原)  おはようございます。  本日は、委員総数17名中、出席13名ということの予定でございます。川口委員、 松本委員、矢崎委員、野中委員は、所用により欠席でございます。  なお、日本医師会の公衆衛生担当理事の交代に伴いまして、小池委員に代わり櫻井委 員がご出席でございます。  本日初めてご出席の委員は、トッテン委員、坂東委員でございます。  次に、配布資料についてご確認願います。  本日ご用意いたしました資料は、前回、山崎委員から事務局に対して要求されました 資料、大河委員、五島委員、富永委員からの補足資料、その他の参考資料でございます  さらに幾つかの団体から検討会あてに情報提供、要望書等が届いております。座長に ご提出申し上げておきます。  第1回、第2回の議事録につきまして、既に委員の先生方には未定稿をお配りし、修 正等のお申し出を受け付けてございますが、ご了承をいただければ第1回の議事録は確 定稿として公開させていただきます。第2回の議事録につきましても同様に順次公開す る予定でございますが、修正、追加等はご自身の発言についてのみお申し出いただくこ とといたしまして、他の委員や事務局の発言内容に対する修正等につきましては、お手 数でございますが、別途資料を用意して配布願いたいと思います。  以上でございます。 島尾座長  どうもありがとうございました。それでは、議題に入ってまいりたいと思いますが、 前回まで私のほうの座長の不手際もございまして、各委員の皆様方からご意見をいただ く時間が短うございましたので、本日は、ぜひ各委員の皆様方からのご意見をいただく ことを中心に会を進めてまいりたいと考えております。  なお、資料につきましては、非常にわかりやすいものをご用意いただいておりますの で、ご一読いただきまして、また特に問題があれば会議の中で検討していただくという ことにお願いいたしまして、各委員の間の議論を中心に本日の討議を進めてまいりたい と考えております。  本日は、初めてご出席の委員もございますので、自己紹介を兼ねて、たばこと健康の 問題について日ごろからのお考えを、まずご紹介いただければと存じますが。  櫻井委員、最初で恐れ入りますが、お願いいたします。 櫻井委員 本日は、初めて出席させていただきました。日本医師会の櫻井と申します。今まで小 池委員が出席しておりましたが、日本医師会の役員の交代に伴って、私、今回から出席 させていただくことになりましたので、よろしくお願い申し上げます。  何か意見もというお話でしたけれども、追々また場面に応じていろいろ述べさせてい ただきたいと思いますので、それは後にさせていただきます。よろしくお願いいたしま す。 島尾座長  よろしくお願いいたします。それでは、トッテン委員、お願いします。 トッテン委員  トッテンでございます。はじめまして。  私は、700名の会社を経営しています、きょうは初めて参加させていただきます。 現在、社内で喫煙者をなくしていく方針を進めています。昨年9月から、たばこを吸う 人を一切採用しないことを決断し、今年の4月から、たばこを吸っている人の昇格も保 留して、来年の3月末までに全社員がたばこを吸わないようにしたいと考えています。  なぜかというと、社員がたばこを吸って自殺することに会社が口を出す必要はないけ れども、たばこの煙が周りの人に害を与えるのは悪いことだと思いますし、たばこの害 によって喫煙社員が非喫煙社員を殺すことは経営者として許せないと思うからです。医 学的にたばこは周りの人を殺しているという証拠は十分出ているのですから、経営者と して社員を保護するために全面的に禁煙にしようと決断しました。よろしくお願いしま す。 島尾座長  どうもありがとうございました。それでは、坂東委員、お願いいたします。 坂東委員  坂東でございます。この委員を拝命いたしましたときには埼玉県で副知事をしており まして、地方財収にはたばこの売上も貢献しているということで、もしかしたら委員に 任命されたのかもしれないんですけれども。3月の末で副知事を退任いたしまして、今 総理府におります。  私自身は、子どもが2人おりまして、次の世代への影響ということを考えますと、た ばこ、特に女性がたばこを吸うのはよくないという方が多数おられます。  一方では、男の人がたばこを吸っているのに、なぜ女はしてはいけないのか、という ような議論をなさる方もいらっしゃいますけれども、別に男の人のする悪いことを女性 も悪いことを見習わないで、いいところをずっと続けていくほうが私は社会がよくなる のではないかなと思いますので、今、男性の喫煙率が減って女性の喫煙率が上がってい るというのは、あまり好ましいことではないのではないかと考えております。  ただ、例えば、やせ願望、ダイエット、体重をコントロールするためには、たばこが 有益であるというような誤った情報等もありますし、女性とたばこの関係については、 今後ともより正確な情報提供が必要なのではないかなという気がいたします。  また、さらに、いろいろな調査から、たばこを吸わない人たちが長生きをする、ある いは周りに対する害を与えることが少ないということが明らかであるにもかかわらず、 例えば、もっと生命保険料が格差を設けられてしかるべきではなかろうかとか、社会的 にたばこを吸わない人を奨励するような仕組みを作るべきではないかなというふうに考 えております。どうも失礼いたしました。 島尾座長  どうもありがとうございました。水野委員も前回ご発言いただいておりませんので。 水野委員  私自身のたばこに対する行動というのは、実は僕は50年たばこを吸っていましたけ れども、ちょっとやめて、きょうで600日ぐらいやめたことになる。  そういう立場なんですが、私は、世の中がいかにいいかげんかというのは、いろんな お医者さんが僕に、たばこをやめたらこういうことがあるということをいろいろおっし ゃっておられましたけれども、私はあまりそれは感じなかった。例えば、腹が減ってか なわんぞとか、それから、何かそこらへんのものをいっぱいつまみたくなる。これは腹 が減るということかもわかりません。それから、そのうち人が吸うのが嫌になるという ようなことも皆さんおっしゃったわけです。しかし、僕はどうも自分がやめてみて、あ まり何とも思わない。それから、「やめるのは、おまえきっとつらいだろう」と言われ たですけれど、僕はあまりつらくはなくて、「えい」とばかりにやめましたら、それだ けのことでございました。それが僕の現在のたばこに対する心境ですがね。  私は、役所にちょっと言いたいのは、私は、役所というのは一体なにをするところか と、このたばこについて。僕は、何か物を売ったりするのをあまり売れないように規制 をかけるとかいうふうなことを考える前に、たばこを吸う人を減らすということについ てぜひお考えいただきたいと思うんです。  たとえて言えば、私は、健康保険でたばこを吸わない人というのは少し負けてあげる とか、何かそういうことを考えてもいいんだということが一つです。  それから、ただ、これは高原課長はどうおっしゃるか知らないけれども、僕は役所と いうところは、あまり人にこういう行為をやれとか、やるなとかということは、あまり 言えないんじゃないかと思うんです。百歩譲って言えるとしましても、国民にたばこは 吸うなということをおっしゃるのなら、私は、まず厚生省の中でたばこを吸うやつは誰 もいないということにされるべきではないかと思うんです。技官の局長だってばかばか 吸うのがいるし、技官の課長だって2〜3人はよく吸うし、事務官だっていっぱい吸う わけですよ。それでいて国民に対して吸うなと言えるのかということについては、僕は 若干疑問に思う。いや、それは、たばこを吸っている局長は7月には異動になるとかい うことをおっしゃられても、それは僕はちょっとよくわからないと思いますけれどもね  だから、私は、そういう人たちに「やめろ」と言えと言っているのとは違うんですよ そこは誤解しないようにしてください。僕は、たばこというのは、本人がやめようと思 ったら僕みたいにやめたらいいと思う。しかし、やめないで吸うなら吸えばいいと思う んですね。ただ、役所が提供すべきことは、私はちょっと肺がんに偏っていると思う。 本当は、肺気腫なんかは、もっとたばこが大きなウエイトを持っているのではないかな ということです。  それから、3番目に、これは前の委員会のときに僕が言ってだいぶバカにされたんで すけれども、私はいまだにそれは疑問に思っておりますことの一つは、たばこというの は本当に百害あって一利なしなのかと。毒の缶詰なのかということなんですね。  私が一番これだけはぜひご説明をいただきたいと思うのは、イギリスあたりで出てき ている、たばこを吸っているやつはアルツハイマーが少ないというふうなことについて やはり納得のできる答えをいただきたいと思うんですよ。これは役所でも誰でも結構で すけれども、何かペーパーにして、次回でも結構ですから出していただきたいと思うん です。前回、僕がそれを質問しましたら、今回は委員ではありませんが、ある先生が、 それはろくでもないやつの研究だって言われたんです。私は、研究者というのはお互い にろくでもないとか何とかいうことを言っていいのかどうかということも思いましたけ れども、ろくでもないのならろくでもないということをご証明いただけないと、我々は みんな偉い人だと思って拝読しておるわけですから、そこのところは僕はあると思うん ですね。  第一たばこ肺がんというのを最初に言ったときには、今でこそこういうふうになって いますけれども、誰も本当にした人はいなかったのではないかと僕は思うんですね。そ れはずっと昔なんですね。大正時代ぐらいだろうと思うんですが。だから、そういうこ とを考えますと、私はやはり、それは例えば僕が聞いたというか読んだのでは、たばこ を吸っている人、1日20本吸っているやつは、たばこを吸っていないののアルツハイ マーの発生率を1.0とすると、大体0.7〜8だと。それから、40本以上吸ってい るやつは0.5だというのがイギリスから出ておるわけですね。それは違うとおっしゃ るのなら、僕はその違うということでいいと思うんですが、違うデータをぜひこの会で 教えていただきたいと。僕は、それは正しいかどうかを判定するだけの力はありません から、ぜひそれは役所で何か出していただければ。  僕は、たばこについては大体そんなことを感じているわけでございまして、たばこは 吸えとも吸うなとも言わないというのが私の基本的な立場でございます。どうもありが とうございました。 島尾座長  どうもありがとうございました。五島委員も前回ご発言いただいていないと思います ので。 五島委員  私は、現在、東海大学の名誉教授で、また、久我山病院の名誉院長として、また、禁 煙推進医師歯科医師連盟の会長もさせていただいております。そういうことで、本日、 資料の中に一応、禁煙医師連盟としての要望を出してございますので、これをちょっと 説明をさせていただきたいと思います。  私どもは、今いろいろとご意見がございますが、21世紀を担う若い世代の人たちか らたばこの害を守るべきであると考えます。青少年の喫煙対策ということを大きく一つ のキャンペーンにしております。  未成年者喫煙禁止法によって未成年者の喫煙が禁止されているにもかかわらず、多く の喫煙者は遅くとも中学生時代に喫煙を開始している。未成年者における喫煙の実態調 査においても、喫煙は小学生のうちからみられ、また、中学生で急増し、高校生では定 着することが示されている。  胎児、乳幼児、小児、青少年、若年成年を含む21世紀を担う世代を守るためには次 のような対策が必要であるということで、この委員会に私は提案をしたいのであります  第1が、未成年者に対するたばこ販売の禁止であります。  未成年者に対するたばこ販売は、未成年者喫煙禁止法第4条で禁じられておりますが 現実には店頭においても未成年者に対してたばこの販売が行われているという現実があ ります。たばこ小売業者に対しても、未成年者と思われる顧客に対しては年齢を聞くこ と、そして未成年者であったなら誰がそのたばこを吸うのかを聞くということを徹底さ せる必要があります。そして、第4条違反者にはもっと積極的に法を適用することが必 要であります。  第2は、自動販売機の廃止であります。  未成年者がたばこを入手する最も手近な方法として、1つとしては自動販売機です。 自動販売機によるたばこの販売が未成年者喫煙禁止法第4条の趣旨にそぐわないことは 明らかでありまして、直ちに廃止すべきであります。  第3は、たばこ税の引上げであります。  たばこの相対的な価格は戦後次第に低下しており、これが未成年者によるたばこ入手 を容易にしております。たばこ税を大幅に引き上げ、たばこの小売価格を高くすること は、特に、小遣いが少なく、ニコチン依存になっていない未成年者の喫煙開始を防止す る上で大いに効果があります。このために成人によるたばこ消費も抑えられるかもしれ ませんが、たばこからの税収総収を減らすものではありません。未成年によるたばこ入 手を困難にするために、たばこ税を大幅に引き上げるべきであります。  第4が、学校の禁煙化であります。  子どもたちがその人生における長時間を過ごし、かつ子どもたちに極めて大きな影響 を与える学校を完全禁煙とすべきであります。このことによって、子どもたちに対する 環境たばこ煙を防ぐと同時に、大人というものはたばこを吸うものだという考えを持た ないようにさせることができます。また、教師たちは自信をもって子どもたちに対する 喫煙防止教育を行うことができます。  第5に、若者をたばこの害から守るための教育であります。  喫煙は喫煙者自身の健康を阻害するだけでなく、1つには、家庭内における喫煙は、 子どもたちの喫煙に対する容認的な態度を養うことによって子どもたちの喫煙を促進し 2つには、子どもたちを含む家庭に受動喫煙の害をもたらし、3つには、妊娠女性がお ればその胎児に悪影響を及ぼすことが明らかになっております。したがって、家庭内に おいても、家族と同室中には喫煙をしないよう、一般の成人に対する教育を徹底すべき であります。これには、保健所をはじめとし、社会教育部門および青少年対策部門およ び婦人対策部門の協力が必要であります。  第6に、喫煙防止教育の普及であります。  以上のような対策と同時に、児童生徒たちに対する喫煙防止教育も必要であります。 しかし、喫煙防止教育には自信のない教師も多いことも知られており、地元の保健所に よる支援と同時に教師たちに対する講習も必要であります。子どもたちに知識を与えた だけで喫煙を防止するものではありませんが、高校入試には必ず喫煙に関する問題を1 題、理科・社会などに設けるということでもすれば、教師も生徒も熱心になるに違いあ りません。  第7に、研究の推進。  1994年アメリカ合衆国の公衆衛生総監報告にみられるように、合衆国では未成年 者に喫煙を防止するために、系統的かつ広範囲な研究を推進しております。わが国にお いても、この分野において十分な研究費を準備し、調査研究を推進すべきであります。  以上のごとく、私どもは、青少年の喫煙対策ということを、厚生省としても、もっと もっと徹底してやるべきです。この委員会においても、21世紀のたばこ対策というこ とで、青少年の禁煙対策をまず取り上げる必要があると、このように考えております。 以上です。 島尾座長  どうもありがとうございました。ただいま、五島委員からは、具体的な未成年者対策 中心のご提案がございましたが、各委員の先生方から、少し具体的な対策についてご意 見がございましたらお伺いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。仲村委員 どうぞ。 仲村委員  前回、きょうご欠席ですが、野中委員からもお話が出ましたように、昨年の厚生白書 で喫煙問題は健康問題だということははっきり書かれておりますし、これは閣議決定を されたうえで発表されたものですから、たばこ対策は健康問題だという前提を我々の間 でもはっきり持つべきではないか。  一方、WHOのことに関して1回目にもちょっと申し上げましたけれども、1970 年から今までの間に15回、WHOの総会で決議がされております。このことは、問題 の重要性を示すと同時に、やはり各国ともそのようなたばこ対策に関して包括的な対策 をやっている国は少ないと繰り返し指摘されておるんですけれども、そういう困難性を も同時に示しているのではないかと思いますが。おととしの49回の総会におきまして は、たばこ対策に関して、いわゆる枠組み条約というものを作るようにしたらどうだと いうことで事務局長に勧告がなされております。ご承知だと思いますが、枠組み条約と いうのは、個別の対策そのものを条約の中に入れるのではなくて、非常に広義の目標を 定義したうえで、各対策については議定書みたいなもので各国が決めていくというふう な条約だそうでありますが、これはWHOの憲章19条に規定されておりますけれど、 今までその19条に基づいてできた条約あるいは協定というのはまだないので、たばこ はおそらく初めてになるだろうと思いますが、これはまだ現在作業中でございます。  したがって、私どもとして、喫煙問題は健康の問題であるということを十分認識した うえで、今後のたばこ対策を、今、我々にとって何ができるかを、先ほどご意見が出た ような角度で、いろいろな角度から検討すべきではないかというふうに考えております  水野先生もちょっとおっしゃいましたが、たしか局長の中にもたばこを吸う人もおり ますが、これはまた個人の問題ですから、私がその人にやめろという立場でもないわけ ですけれども、せめて厚生省の事務室の中ぐらいは禁煙にすべきではないかと。まず隗 より始めよということもありますので。それは一つの提案としてお受け取りいただけれ ばと思います。以上です。 島尾座長  どうもありがとうございました。どうぞ、幸田委員。 幸田委員  前回及び前々回の議事から鑑みまして、議事進行も兼ねて提案を申し上げたいと思う わけでございますが。  今、五島先生から非常にまとまったお話がございました。私はやはり、未成年者の喫 煙というのは、現在日本でも法律で禁止をされているわけでありますから、まず、各委 員の合意は、未成年者はたばこを吸うべきでないという合意は比較的容易に得られるの ではないだろうかと。そのへんを取りかかりにしまして、それにご異議がなければ、私 は、未成年者ができるだけたばこを吸わないような環境づくりをやっていくべきではな いかと、そのためには。  ここにご提案がございましたような、五島先生の、たばこ販売の未成年者への禁止、 あるいは自動販売機の廃止、たばこ税の引上げ等がございますが、こういうことを少し 具体的に議論をしていただいたらどうだろうかと私は思います。そうでないと非常に議 論が右へ行ったり左へ行ったりする可能性があると思いますので、できましたならば、 きょうは例えば、もう10時半になりますけれども、前半は、あるいはきょうの1回は 未成年者に対するたばこをどう防いでいくか、できるだけ喫煙習慣を植え付けないよう にするにはどうしたらいいかということを、未成年者のたばこは害がないというのなら 別でありますが、害であるということをご確認をしていただいたうえで、少し話を進め ていただければと私は思います。  私は、やはり、五島先生のお話の中で、自動販売機というのは、これは日本の風土、 文化なのかもしれませんが、非常に、たばこに限らず、酒の問題もございますけれども このへんも一回実態をきちっと洗って、少なくとも、例えばたばこについては、未成年 者が目の届かないところで自動販売機を利用するということがないように、そのぐらい のことは最低限すべきではないだろうかというようなことを提案をいたしたいと思いま す。そういうことも含めて、ひとつご議論をいただければということでございます。 島尾座長  どうもありがとうございました。どうぞ、内山委員。 内山委員  私は、私の考えを申し上げるというよりも、お隣におられる大河委員のお出しになっ た資料、一番上にあるものですから読ませていただいて、これまで大河委員が何回もお っしゃったことをまとめて書いておられて、今日お話のありました先生方のお話に非常 に合っているといいましょうか、その方向を向いたご意見を大河委員がお出しになって いらっしゃるような気がしたもんですから、今、幸田委員から検討課題の一つのお話が ございましたし、五島先生から具体的なご提案がございましたが、大河委員の資料の中 をご覧いただきますと、協調ある共存というのを強調しておられます。私は、前回も申 し上げましたけれども、協調ある共存というのは、ここに書いてある程度のことではあ りません。  協調ある共存の1つ目が、きょう実際に話題になっている未成年者に対する喫煙防止 ということであります。これは、未成年者に絶対に喫煙してはならないということは言 うまでもないというふうにお書きいただいていますので、これに対して、今までどうだ ったか。これは、五島先生のお話にもありましたように、今までもそうなっていたわけ です。しかしそれが一向に効果が上がっていない。したがって、より効果の上がる対策 を考えるのが、この対策の委員会の仕事ではないかということを一つ考えます。  それから、2番目に書いてあります、これはモラルの問題ですけれども、これが大事 であるということは誰でも言うんですけれども、じゃあ、どうやって実行するか。大人 には強制できないという議論がまた出てくるかもしれませんけれども、こういった問題 はどういう対策を立てればいいかということは具体的に考えるべきであろうと思います ただし、この委員会は健康問題の委員会ですから、この委員会の話題とは多少外れるか もしれません。  あとは、因果関係等のことがここに書かれておりますが、これは、また別途のご意見 があると思いますけれども、今までわかっていないということから何も言えないという ことではないということは、前回も私は申し上げました。といいますのは、今、私たち が頭の中に健康問題で何が一番心配かといいますと、環境ホルモンであるとかダイオキ シンであるとかいうことであります。それから、昔は特異体質でよくわからなかったこ とが、今はアトピー性皮膚炎という名前が付いて、かなりはっきりと原因も、それから 治療法まで研究されるようになりました。わからない時代には、それをもっともっとわ かるように研究するのは当然大切なことではありますけれども、わからないうちにしか るべき、最もいいと思われる手を打っておくということが、これはやはり、まずは文明 国のやるべきことであるし、しかももう一つは、こういう厚生省の責任でもあるし、そ れからもう一つは、我々科学者の義務でもあるというふうに考えているわけでございま すから、この上のほうにお書きいただいたことも、それに別に反するわけではないとい うふうに私は思います。  それから、すべての世の中にある物質は、100%悪の、先ほど、悪の何とかという お話がありましたけれども、100%悪いというのは、そうめったにあるものではあり ません。例えば、重金属なんかの問題がよくありますけれども、今、実は、水銀と鉛と アンチモンは100%悪というふうに思っていらっしゃる方もおられるし、そういうふ うに教科書には書いてあるところが非常に多いわけですけれども、必ずしもそうとは言 えない。これは、どんどんさかのぼりますと、カラスが黒いというのは本当かというこ とにもなりかねないわけです。「すべてのカラスを見たわけじゃないのに、なぜカラス が黒いと言うのだ」というような議論になりますと、これは、いいところがあるものは 必ずあるでしょう。しかしながら、そのいいところと、それから不安なところ、マイナ スのデメリットというもの、両方を持っている場合に、いいところだけを取り上げて、 いいからといってこれを進めるわけにはいきません。  たばこに対して注意を喚起するのがいいか悪いかというお話になってきたときに、こ のたばこに対して、注意ではなくて、どんどん吸ったほうがいいんだよという進め方が できるのかということを翻って考えてみれば、これはすぐにわかることだろうと思いま す。 したがって、大河委員のお出しになったこの資料を見まして、先程来、先生方のお話 から出ております、きょうのあるいは今後の討論の進め方というのに非常によくマッチ した筋をお書きくだすったかなという感じがしております。以上です。 島尾座長  どうもありがとうございました。大河委員、どうぞ。 大河委員  たまたま私の資料が俎上に上がっておりますので、少し説明を加えてよろしければ。 資料の説明はこの時間にしてよろしいのでしょうか。それとも一般的なほうの。 島尾座長  手短にしていただければ。 大河委員  今、未成年者喫煙防止が非常に大事だというようなご指摘が何人かの先生からござい ましたけれども、この点に関しては私も全く賛成でございます。  ただ、どういう手段で未成年者喫煙防止をしていくかという点になりますと、かなり 私自身は意見を異にしております。  私自身がきょう提出させていただいた資料、お手元の資料の3ページ、通しページの 3ページから5ページまであると思いますので、手短に若干補足説明をさせていただき たいと思います。  今、内山先生のほうから少しポイントをご紹介いただきましたが、要は、たばこに関 する基本的考え方というのが最初に書かれております。これは、会社の考え方を中心と しまして、私見も交えてとりまとめたものでございますが、ひとつは、たばこは大人の 嗜好品でございますということでございます。最初のところに歴史的な経緯などありま すけれど、世界で500年以上の長い間にわたって生活に定着している大人の嗜好品と いうことで、シガレット以外のいろいろな形態で楽しまれているということでございま す。  わが国では、現在3400万人の愛煙家がおりまして、皆さんいろいろな効用を感じ ながら、いろいろな道具として活用されているということでございます。  それから、喫煙と健康の関係についての認識の問題ですが、実は、もう既に有害は明 らかであるから対策論、あるいはリスクが明らかであるから対策の検討に早く入るべき ではないかというご指摘ですけれども、前回、松本委員からもご発言ありましたように どの程度有害かということで、その対策の強弱というのは当然違ってくると思いますの で、やはり、この喫煙と健康の関係の学問的な認識というのは重要なのではないかと思 っております。そういう意味では、まだこの検討会では、このへんの議論は必ずしも十 分ではないと思っております。ただ、いつまでもその議論をやっていると対策を立てら れないというご心配もあると思いますので、ある程度並行的な議論になるのはやむを得 ないかとは思いますが、この喫煙と健康の関係の認識というのは非常に重要ではないか と。  そこにありますように、既にいろいろな報告でありますように、身体的健康に対して のリスクの可能性というのはもちろんあると思いますが、一方で効用もいろいろ認めら れております。先ほどアルツハイマーのようなお話もございましたけれども。したがい まして、まだまだ総合的な研究が継続される必要があるのではないかと。  それから、先ほど受動喫煙の健康影響、家庭なんかでも明らかだというお話ですが、 現段階では、いろいろなデータを総合しても明確にされておらないと思います。  それから、協調ある共存。ひとつは大人の嗜好品だということで、当然未成年者は喫 煙してはいけないということです。一方で、最近、愛煙家のマナーもなかなかよくない ということで、私どもかなりマナーキャンペーンもやっておりますけれど、そこにある ような観点でやっております。  それから、分煙は当然、施設管理者がそれぞれの立場で自主的に措置されることが望 ましいと思いますし、喫煙環境改善のための新しい空調技術の研究開発というものも、 かなり今、行われております。当社でもやっております。  ということで、たばこを吸う方と吸わない方の協調ある共存というのは大切ではない かと思っております。  アルツハイマーだとかパーキンソンにつきましては、そこに参考文献の4と5に、こ れは疫学データですが、最近これ以外の基礎医学、臨床医学のほうでもこれをサポート する報告も出ております。事務局の資料に後でちょっと出てきそうですが。  同じく事務局資料にも出てきそうですが、IARCが最近やったマルチセンタースタ ディーで、ETSと肺がんの関係、これは統計的に有意な関連がないと。これは、95 %信頼限界を見ても、どれひとつとして下限が1を超えてないということで、有意な関 連がないということです。  それから、その次のページに、第2回資料について若干コメントを加えておりまして これはどうやら後で、いろいろリスクファクターと原因というのを同義であるという趣 旨で先回ご説明があったものですから、私としては、いろいろ調べさせていただきまし たけれども、こういうふうに定義するのはむしろ一般的ではなく、疫学の分野におきま しても、リスクファクターと原因というのは同一概念でないというふうに示唆されてい ると思います。  国立がんセンターで特別に出された文書でも、趣旨としてはそういうことではないか と理解しました。  前回の資料で、私がいろいろお話ししましたところ、本来委員同士で議論をすべきだ というご発言をいただいたんですけれども、時間の関係で前回発言を留保したこともご ざいますので、申し訳ないのですが、もうちょっと時間をいただいて、あと何点か、委 員として申し上げたいんですが。  たばこのリスクと他のリスクの比較ということで、前回の資料の3ページに重要な テーブルが載っておりました。表1というものなんですが。そこで、能動喫煙の年間死 亡率というのが、100万人あたり7000人というのが出ております。これは、オリ ジナルのリポートを取り寄せて調べてみましたけれど、要は、1965年以前に喫煙し ていた喫煙者100万人あたりの死亡者数の意味でございまして、ですから、喫煙者が 100万人いて7000人の方がその年に亡くなったということでございます。  一方で、非常に厚生省はいいデータを付け加えていただいているんですが、全死因に よる年間死亡率というのが、同じ年でジェネラルポピュレーション100万人あたりで 8748人となっておりまして、ですから、能動喫煙者群のほうが100万人あたりで 1748人ほど死亡率が低いというふうに読むことができるのではないかと。  いずれにしても、じゃあ、たばこを完全に吸わなくしたらどのぐらいリスクが低くな るかということですが、リスクのオーダーとして、相変わらず10のマイナス3乗の オーダーではないかと思います。今までの疫学データがそれを示しております。  それから、この同じページの表2なんですけれど、各数字の出典が極めて不明であり まして、信頼性に欠ける論文でございますけれども、例えば、このページの3行目に、 年間死亡リスクのオーダーについて、生涯リスクにするとその数字は数十倍の大きさに なるというふうに書いてございますけれども、年間死亡リスクを示しております表1の 受動喫煙のほうの数字が、100万人あたり19人となっておりますが、一方、生涯死 亡リスクを示している表2の受動喫煙の肺がんの死亡が、10万人あたりで1000人 ということでございますので、比較しますと500倍以上の差がございまして、明らか に記載と一致しておりません。  などなどいろいろあるわけでございますけれども、同じページに、公衆衛生上のリス ク管理というのは、生涯リスクが10のマイナス5乗〜10のマイナス7乗となるよう に規制する方向にある。これは一般論としてはご指摘のとおりだと思いますけれども、 たばこというのは、要は嗜好品でございますので、表1の数値を前提に生涯リスクを考 えますと、例えば、たばこだけでなくて酒であるとか、あるいは仕事をすることである とか、水泳を楽しむというようなことも管理対象になってしまう、規制対象になってし まうということで、大変大きな疑問が残りますので、やはり嗜好品として定着している たばこと、それから、いわゆる有害大気汚染物質、あるいは食品添加物等とは、いわゆ るリスク科学の観点で同列に扱うのはいかがかというふうに思います。  それからあと、喫煙と脳卒中の関係で、前回、資料の28ページに指摘があったんで すけれども、厚生省が数年前に出しておりますたばこ白書の改訂版におきましても、現 状では喫煙は脳卒中発生を高める可能性はあるが、そのことの立証は疫学的にはまだ十 分でないというのが結論であるというような記述もありますし、それから、朝倉書店で 出している内科学におきましても、ほぼ同様の指摘がございます。  どうやら、厚生省の事務局として、NIPPON DATA という非常に重要な新しい喫煙と脳 卒中の関係の報告が追加されているということでございますけれども、これを加えても 今までの結論を簡単に変えられるかどうかというのは疑問があると思います。  それから、最後もう一つ、医療費の関係で、第2回資料の37ページにございました けれども、たばこによる罹患率とか死亡率の増加というのは最良の推定値であるという 根拠としてあげているのが、いわゆる平山先生のコホート研究ですけれども、これにつ きまして、前回富永委員からも、これは立派な研究であるということで、たしかライフ スタイル・アンド・モータリティという1990年の英文の報告書もございますが、そ れ以外のリポートも含めて十分オーソライズされているのだというご趣旨の発言があり ましたけれども、あの本をもう一度改めて見させていただきましたが、やはり、喫煙者 と非喫煙者ごとの肺がん死亡者数であるとか肺がん発症年齢とか、あるいは、いま問題 になっているような死亡率を見るための死亡年齢、そういうような具体的なデータは一 切示されておりませんで、要するに原データは公表されていないということでございま す。  いわゆる長期間の調査でも、喫煙習慣につきましては、いろいろほかの生活習慣も含 めてですが、いろいろ途中で変化するわけですけれど、平山先生のコホート研究では、 途中で一度だけ、ごく一部の調査対象で再調査をやっていますけれど、基本的には19 65年秋の調査結果だけで17年間不変であるという仮定でやっておりまして、やはり ちょっと問題もあるのではないかと。あるいはあと、死因調査も死亡診断書だけでやっ ているというようなことであるとか、いろいろあります。 次に、私が、喫煙者の医療費が非喫煙者及び過去喫煙者より低いとして引用した山本 らの論文があるんですけれども、これは対象集団が日本における一般的な集団と言えな いんじゃないかというご指摘がございましたけれども、山本ら自身が、本研究の対象者 と非対象者の医療費関連指標には特に有意差は認めなかったため、傾向性や普遍性は保 たれていると考えられたと記述しておりますし、それからまた、彼らは、喫煙者の医療 費が低値である理由を、喫煙者と非喫煙者の意識の差として説明しておりますけれども だからといって喫煙者のほうが医療費が低かったという結果が変わるということではな いと思います。  いろいろ、ちょっと長くなって恐縮ですが、もうやめますけれども、未成年者喫煙防 止は大変大切なことだと思いますけれども、自動販売機につきましては、非常に、たば こという商品が最寄り商品だということで、日本でたばこの自販機は非常に普及してお りまして、ほかの国と基本的に違う文化構造になっておりますし、それから、たばこ税 の引き上げのお話がございましたけれども、既にたばこは、ほかの日本での酒類の税率 などと比較しても大変高率の担税物品になっているということもございます。というこ ともありますので、ここの場で、そう簡単にこういうたばこ税の引き上げの議論が馴染 むのかどうかというようなことも若干疑問に思いますが、いずれにしても、そう短兵急 な結論というのは得られないのではないかというふうに思います。以上です。 山崎委員  本日お配りいただいたご案内によると、きょうは今後の進め方についてというのが第 1の議題になっております。実は、この委員会の構成を考えたときに、もしこの委員会 が多数決をとるということであれば、もう何の議論も必要がないのでありまして、多数 意見は既に明らかなのであります。したがって、この点についてどういうふうに座長と してお進めになるのかということが、一つの最初の質問であります。  それから、ただいまご議論を拝聴しておりますと、この委員会は、たばこと健康の問 題を考える。健康の観点からのみたばこを考えるというようなご趣旨が散見されました しかし、そのご議論の中身に踏み込んでいきますと、実はそうではなくて、たばこと教 育問題もご議論なさるようであります。  確かに健康問題については、ここにそうそうたる医学の専門家がお揃いでありますか ら、十分な陣容だと言えるわけでありますが、果たして教育についてはそういう専門家 がこの席にいらっしゃるのかどうか。これは大変進め方について疑念が浮かびます。  例えば、年少者、未成年者の喫煙を防止する。この問題について、私は医学的根拠を 知りませんが、これは法律もあることですし、現在の多数意見でありますから、私はそ れを承認いたします。しかし、一体未成年者とは何歳であるのか。これについては、各 法律によって違っております。例えば、結婚の年齢、犯罪の年齢、その他によって未成 年の定義というのはわが国に複数存在いたします。たばこについては、現在の年齢制限 というのは、私は何歳だったかちょっと失念しておりますが、あるのでありましょう。 しかし、それは果たして、その年齢が正しいのかどうかという議論はどこでするのか。  あるいは、未成年者の喫煙防止を進めるうえで環境を整備するというのはどいうこと であるのか。つまり、教育的観点から考えたときに、目の前にあるたばこをなくすこと が果たして防止につながるのか。これは、教育的観点から見ると全く別の議論が成り立 ちます。  この席でしばしば比喩が出てきますので、私もそれに倣わせていただきますが、現在 ほとんどのわが国の公立学校は男女共学であります。その結果、性的事件がときどき起 こります。今の議論を聞いていますと、性的事件を、犯罪を、この場合は大人の犯罪は 別ですが、いわゆる不純異性交遊というものを防ぐために男女共学を廃止すべきである かと。昔は実際そう考えていたわけですから、全く私は暴論を言っているわけではない のであります。男女7歳にして席を同じうすべからずと言っているのが、果たして不純 異性交遊を防ぐ道であるのか。こういうことにつては、実はちゃんとした議論をしなけ ればいけませんし、そのためには教育の専門家が必要になります。  さらにここで、たばこの税率の引き上げの問題が出てまいりました。私は、目的がし っかりしていれば、あるいは、その精神が筋が通っていれば、たばこ税が引き上げられ ても結構だと。これは私個人の意見で、製造者とは何の関係もないのでありますが。し かし、そもそも税金というものを国の収益を上げること以外の目的で集める。つまり禁 止税という考え方ですが、そういう形が正しいのかどうかということについては、税法 上の専門家を呼んで聞くべきであろうと私は思います。そもそも、兼ねてからたばこの 税金は極めて高い。酒についてもそうでありますが。これほど高い税金がかかっている のは、例えば自動車重量税であるとか道路税であるとか等々、目的税に限られている。 そういう目的税は必ずその税金を払った当の人間に還元される仕組みになっています。 自動車重量税は当然道路に使われますから、自動車の運転者並びに経営者は還元される わけです。しかし、従来のたばこ税は喫煙者にいささかも還元されていない。果たして そういう税金を禁止的に使うということはいいことかどうか。国際的に見て、いわゆる 奢侈税の思想はだんだんと後退しまして、一般消費税の考え方に変わっているのはご存 じのとおりで、このくらいのことは素人でもわかるわけでありますが、税金というもの を、ある他の目的、つまり例えば健康上の目的、国民の生活態度を善導する目的に禁止 的に使うということが果たして正しいかどうかについては、私は専門委員を招聘して議 論を徴すべきであるというふうに考えます。  しかし、一方で、ここで延々とこの議論を繰り返していても多分実りがないだろう。 私が多分、ここにいらっしゃる大多数の皆さんを説得することも不可能でしょうし、私 も多分、皆さんに説得されないでしょう。  そうしますと、私はもう少し現実的に、現在までの議論の過程でほぼ意見が一致して いる部分について、さらに一歩進められるかどうか検討すべきである。それは分煙であ ります。これについては、私も、ここで理由を特に重ねて申しませんが、分煙は賛成で 進めるべきだと。しかし、分煙をするための環境づくりというのが必要になのでありま して、私はそれは、トッテン委員といささか意見を異にしていますが、ある企業内ある いは公共的空間を全面禁煙にすることではないと考える。もっと効率的に分煙を進める 諸方策があるものと思われますので、むしろ私は、これから議論を始めて、もうそのへ んで終わりにするのが大人の委員会の議論ではなかろうかというふうに思うのでありま すが、いかがでしょうか。 島尾座長  まず最初に、座長へのご質問がございましたので、お答えいたします。できるだけ議 論を尽くして、まとまった意見にしたいとは考えておりますけれども、どうしても合意 が得られない場合、それを多数決で決めるつもりはございません。それは、初めからそ のつもりだったらこういう委員会の構成自体がひとつ問題になると思いますから、その つもりはございません。できるだけ議論を尽くしてご納得を得たいというのが基本的な 考えでございます。  それから、だんだんお話を伺っていますと幾つか共通の問題、議論すべき点はあるよ うにわかって見えてきたと思うんですが、今ご指摘の分煙も一つの問題だと思います。 それから、未成年者の問題、これも、進め方の具体的な内容は別として、各委員とも重 要性は認めておられるということだと思いますので、そういった問題を中心に少し具体 的な議論を進めてまいりたいと考えておりますが、トッテン委員、何か。 トッテン委員  私は、単純な質問があるのですが。下準備がなくて申し訳ありませんが、日本は何歳 以下は、たばこを吸ってはいけないという具体的な法律があるのですか。 島尾座長  ございます。20歳未満。 トッテン委員  そうすると、売っている人、売っている会社は犯罪ではないですか。これは厚生の問 題ではなくて警察の問題ではないですか。これは警察と話す問題だと思いますけれども 今までの法律が無視されているのであれば、新しい規制を作っても、あまり意味がない と思います。  次に、100%たばこが悪いという証拠は出ていないかもしれませんが、100%酔 っぱらい運転が悪いという証拠はありますか。酔っぱらって運転する人が全員人を殺す のではないと思いますから、その屁理屈で酔っぱらい運転を禁止する法律をなくすとい うのはちょっとおかしいと思いますし、拳銃を持っている人が100%全員人を殺すわ けではないのでその屁理屈で日本の銃規制か法律を緩めるようなこともないと思います から、この話は少しバランスが欠けていると思います。  もう一つは、ほかの麻薬、例えば薬品会社が薬を売るとき、それが絶対人体に害がな いという証拠を見つけるのは、国民の責任ではありません。人間に害があるかもしれな い商品を出そうと思ったら、売り手が許可をもらうために害がないことを示さなければ なりません。しかし、たばこは逆に、勝手に売って、国民が一生懸命たばこは100% 害があるという証拠を出さない限りいつまでも売っていいというような考え方ではない でしょうか。それはほかの分野と比べて、たばこにだけ甘すぎるのではないかと思いま す。 山崎委員  トッテン委員のただいまの後半の意見は、大変示唆に富んでいるので若干申し上げま す。  ご存じのようにアメリカでは銃の所持は自由であります。私は正確な統計を知りませ んが、アメリカの殺人事件の90%以上は銃によるものであると思われます。にもかか わらず、銃の所有禁止についてアメリカがこれだけ長い間、要するにためらっていると いうことはなぜなのか。それは、アメリカに一つの伝統があって、個人が個人の財産及 び生命を守る権利を持っている。その象徴として銃を持つことを認めるという議論が一 方にあるから、これだけ論議が尽くされているわけです。 トッテン委員  それだけではないです。売り手はすごくお金を使って、その法律を厳しくできないよ うにしている。売り手主導の業界だからです。 山崎委員  もし、それだけのことがはっきりわかっていて、なおかつ業界を抑えられないとした ら、アメリカ国民はバカだということになりますが、私はそれは信じられない。  ですから、私が申し上げたいことは、ある問題点を取り上げて、それの悪を裁く、ま ず悪を裁くことの中身が問題です。銃とたばこが果たして同じような問題であるかどう か自体が問題ですが、それは、今、仮に問わないとしても、広い社会の風俗習慣・文化 というものを地盤にして考えなければならないというのが私の従来の自説であります。 しかし、何度も申し上げるように、これをやっていても、多分この委員会は、皆さん は、ただ私の意見はうるさいとお思いになるだけのことでしょうし、議論は実りがない お互いに時間の無駄であるとすれば、今、座長がおっしゃったように、早く地点を見つ けて、そこで建設的な議論ができるかどうか、絞っていただいたらどうだろうかと思い ます。 幸田委員  大体いまのお話で、未成年者対策と、それから分煙対策を議題にするということにつ いてはおおよそのお話の合意があったんじゃないかと思いますが、私はそれに加えて、 具体的な問題として、やはりたばこと健康の関係に関する表示の問題。日本は、私もた ばこをやめて20何年になりますからはっきり記憶しておりませんが、「吸いすぎに注 意しましょう」でしたか。そういう問題について、できれば議題として合意をいただけ ればと思います。  それから、もう一つは、たばこの価格の問題でありますが、これは、第1回のときに も私が申し上げたのでありますが、どうも日本のたばこというのは安すぎるんじゃない だろうかと。第1回目の資料を、今、配っていただきましたので、31ページでござい ますけれども、第1回資料の31ページをご覧いただきますと、事務局の用意した資料 でございますし、どのくらいのレートで換算をしているのかわかりませんが、日本は、 マルボロレギュラーが260円、たばこ税は60%と、こうなっております。日本と税 金がより安いという国はアメリカだけでございまして、この資料を見る限りでは、イギ リス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス、欧州連合、オーストラリア、すべて日本 よりもたばこの税金が税率は高いという資料になっておりますが、標準価格、マルボロ レギュラー1箱をご覧いただきますと、アメリカを除きますと日本よりもすべて高いわ けであります。大体オーストラリアあたりですと2倍以上でありますし、ヨーロッパの ここに書いてある国は大体1.5倍と考えていいんじゃないかと思います。  こういった問題は、やはりもう少し議論をしていいんじゃないだろうかと。下手な言 い方であるいは誤解を招くおそれがあるかもしれませんが、日本でマルボロレギュラー が60%の税率で260円で売れていて、なぜ同じような税率のオーストラリアで63 %のたばこ税で610円、クィーンズランドでは523円ですか。あるいはドイツ、フ ランスで360円とか400円の値段で売られるのであろうかと。逆な意味で、マルボ ロ社は非常に日本に安売りで大量に売っているんじゃないかと、こういう疑惑も招きか ねない。これは日本しか書いておりませんけれども、東南アジアあるいは中国に対する 輸出関係がどうなっているのかということは、やはり私どもとしても関心を持って吟味 すべき問題じゃないだろうかと。  そういう意味合いを込めまして、たばこの価格、税金を含めてということになると思 いますが、それも一つ議論の素材にあげていただきたいと思います。 トッテン委員  今、アメリカでいろいろ証拠が出ており、アメリカ政府は、たばこはすごく人間のか らだに悪いと思っています。そして、たばこ業界はものすごく金銭的に強いので、国の 方針は、アメリカ国内では売らないようにして、他の国の人たちを殺すような方針に変 わりつつあります。その証拠が数多く出ています。東南アジアや日本は、アメリカが国 内に許さない害毒を、簡単に自分の国に輸出させていることを、おかしいと思うべきで す。 櫻井委員  先ほど申し上げましたように、本日初めて出席しました。今までの資料は読ませてい ただきましたけれども、最初、また追々意見を述べさせていただくと申し上げましたの で。  幾つかの意見の中で、幸田先生からも、五島先生からもご提案があった未成年者の喫 煙問題。これは、おっしゃるとおりなんですが、ただ、これは、法律で決まっていると すれば、法律を守りなさいという話であって、もちろん、むしろ今まで守られていない ことがおかしいということはあるんでしょうけれども、ちょっと議論が違う部分がある かなと思います。法律を守れということを言うのはそれでいいわけですけれども、法律 が守られていないことに問題があるとすれば、この委員会でそれをどうしようといって も、法律が守れないことはちょっと別の問題かなという感想を持ちました。  ということは、成人にも、全員にたばこを吸うことを禁止する法律を作るという話を もしするのであれば、おそらくここにいるどんな先生も、「それは無理だろう」とおっ しゃるんじゃないかなと私は思うんです。そういう意見の方があれば、また話は別なん ですけれども、おそらくそれはないだろうと私は思うんですね。つまり、本当に悪いこ とで害であれば、青少年だけでなくて全員に法律で禁止すればいいわけですね。麻薬で あれば禁止しているわけですから、ちゃんとした法律でね。それはできないだろうとい うのは、おそらく、幸田先生だろうと五島先生だろうとそうだと思うし、私もそうだと 思います。たばこの害をおっしゃるどんな方も、おそらくそれは無理だろうと思ってい ると思います。  そう考えれば、未成年の問題は一応別個のもの。この法律を変えようという議論をす るのなら、また別ですけれども、一応ある以上は法治国家である以上はそれを守る。守 るべきだということを言うのはもちろんだけれども、それに何か対策をというのは、ち ょっと別の議論のような気がします。  それを踏まえまして、そうすると、法律で禁止できない部分についてのたばこについ ての議論ということになるんだと思います。問題を健康についてということに絞れば、 これもいろいろ山崎先生その他ご意見があるようですけれど、健康について害であると いうこと、益である部分はあるかどうかは一応除いて、害であることがあるのは確かだ ろうというふうに思うんです。ですから、健康には害である。そこで、じゃあ、どうす るか。その害である部分にちょっと問題点があるのは、本人に害であるというだけであ れば、大人に法律で禁止することはできないけれども、害であるよということを教えて それを承知のうえでどうしようと、それは本人の自由であろうというふうな考え方もあ るので、それはいいんですが、問題は間接的な問題が出てくるので、そこでそれをどう するのか。ただ、その議論は、先ほどそちらからあったように、間接喫煙の害は、おそ らく本人に対する害よりも、これはなかなか証明は難しいでしょうけれども、低いだろ うということはあるわけですから、それについては対策としては、前から言われている 分煙対策があるわけです。分煙をすればある程度防げるけれども、全くゼロにはならな いでしょうから、トッテンさんみたいなやや極端な意見が出てきて、会社中吸わすなと いうことに、これもちょっとおかしいかなと私は思いますけれども、なっちゃうと思う んです。ある程度危険が低いことを考えれば、分煙でいくのが、まさにどなたかおっし ゃった大人の議論だろうと思います。  それから、もう一つ、たばこに対する価格の問題で、税金としてたばこの価格を増や せというご意見があって、山崎先生は、それはおかしいというご意見がありましたけれ ども、私は、価格を上げることの提案を持っています。その価格はどういう価格で上げ るかというと、医療費として上げて欲しいという意見です。  というのは、たばこ1本1円値上げすると2600億円になるということで、国鉄の 債務処理にあてるとかで、何でたばこと国鉄と関係があるんだと言ったら、昔は国鉄も 煙を出して走っていたから関係があるんだということかどうか知りませんけれども、全 くこれは関係のない話だろうと思うのです。私は一つの考えとして、今、医療保険の、 財源がなくて、非常に問題があるんですが、現実には日本の医療費というのは、国際的 には世界で一番安い医療費で世界一の長寿国を作ったわけですから、それを減らそうと いうのはおかしいので、何とか財源を確保したいと思うわけです。医療保険というのは 財源確保のためには保険料を上げれば一番いいわけです。保険というのは、リスクの多 い人から保険料をたくさん取りましょうというのが当然の理屈で、自動車保険であろう と火災保険であろうと、リスクの高い人から高い保険料を取っています。ところが医療 保険は、高齢者という病気のリスクの高い人から取れない。これはやはり社会保障とい うか、お年寄りを守る面で取れない。リスクのある人から取れないのなら、リスクのあ るモノから医療費を取るべきだというのが私の理論です。  いわゆるたばこによる過医療費が1兆2000億ぐらいの数字が出されていますので ちょうどたばこを、1本5円、1箱20本100円上げると1兆3000億になります ので、過医療費分が大体補えることになります。したがって、たばこを1箱100円上 げてもらって、それを全部医療費に回してもらう。そうすると、過医療費分を補えるん ですから、山崎先生はじめたばこを吸う人は、自分の医療費は俺は十分払っているんだ と威張って、分煙はしなきゃいけないでしょうけれども、そのことに関しては俺は医療 費には迷惑をかけていないと大威張りで吸っていただくといいと思います。逆にそれが 禁止の方向に働くかどうかわかりませんが、それでやめる人がいれば医療費が減る理屈 ですから、それで相殺されればそれでも結構だということです。税金として上げたり、 禁止のために上げるのではなくて、リスクファクターとしてモノという意味で、そこに 医療費を乗せていただくというのが、価格を上げる理論としての、価格を上げるという ことについては私も賛成ですが、その理論としての私の提案です。以上です。 柳田委員  この会議で、喫煙と健康の問題についての方策をいろいろと議論するときに、その結 果を何に使うにせよ、たばこの価格の問題を議論するというのは、少し見当違いのよう に思います。  なぜならば、たばこを上げることが防止のためというならば、タクシーの値上げのと きのように、一時的には減るとしても、また元に戻るということで防止効果はないと思 いますし、それから、医療費の財源の問題というような見地からでしたら、この会の議 論とはちょっと噛み合わないのではないかと、そのように思いますので、私の提案とし ては、たばこの価格の問題をここで議論することは適切ではないというふうに皆さんに 認識していただいたらどうかなという提案でございます。  それから、2つ目の青少年の禁煙の問題でございますが、これは、確かに法律で禁止 されている。そして、私もそのことについては何の異議もございません。ただ、大事な のは、その規則をなるべく守ってもらうためのそういうような理解をしてもらう必要が あると思います。  とするならば、やはり一番大事なポイントは、なぜ未成年者はたばこを吸うと健康に よくないかと、そういう点をわかりやすくひとつ説明して啓発することが大事なのじゃ ないかなというふうに思いますので、むしろ法律自身が悪いと私は思っておりませんの で、それがなるべく守ってもらえるような、そういう方策をここでいろいろと議論し、 啓発の方法を検討していくということが大事ではないかというふうに思いますので、発 言いたします。 山崎委員  ただいまの櫻井委員のご発言の前半部分は、大変穏当なご意見で私は敬服いたしまし た。最後の、たばこの値上げあるいは課税分の増加と医療費の問題でありますが、これ は少し筋が違うのではないかと思う点が2つあります。  まず第1に、今、第2次喫煙者のことは別として、喫煙者本人が病気になりやすいと いうことが仮に事実だとしますと、確かにその人間は健康保険に多くの負担をかけてい るかもしれません。しかし、もしこの説が正しいとしますと、喫煙者は早く死ぬのであ りますから、高齢者年金のほうでは大いに貢献するはずです。この間、相殺していただ かなければならない。  第2に、この問題が出てくると当然、他の嗜好品、あるいは他の遊技的行動、つまり いわゆる効用の点で疑いのある行動一切について医学的検討を加えて、これが医療保険 に負担をかけているかどうか確かめなければなりません。  私は、この2点がありますので、健康あるいは医療費問題とたばことを特定して結び つけることには疑念があります。  それよりも、とにかく第2次喫煙ということが問題になって、これが有害かどうか私 は知りませんが、迷惑だという人がたくさんいるのは事実で、私はその人たちの気持ち を尊重するのはやぶさかではありませんから、分煙を徹底する技術的かつ法律的な整備 を進める。そのためにその金を使うということであれば、大河委員はお困りかもしれま せんが、私個人としては、値上げがあっても致し方なしというふうに考えております。 水野委員  これはたばこの話ではないんですけれども、1977年にパリへ行っていたときに、 フランスの保険省でアルコールに起因する疾病になった者は80%の自己負担を取ると いうのはほとんど決めかかったことがある。しかしこれは決まらなかったんです。何で 決まらなかったかというと、担当局長が大酒のみだったからです。しかし、これ、僕は 非常に面白いと思いましてね。そのときの資料はまだ家に置いておりますけれどもね。 今おっしゃっておられる話、それは例えば岡山の医師会長、ナガヤマさんなんかも、た ばこ1箱を1000円にしたら、これは10本1000円なんですよ、激しいんだけれ ど、にすれば大体医療費は全部出るという意見なんですね。それは、計算上はそうでし ょうけれど、僕はこれは非常に難しいと思うんですね。ご意見としては僕も拝聴したい けれども、なかなかこれはちょっと難しいんじゃないかと。  スウェーデンでもやはりそういうことがあるんですね。とにかくあそこは確かにたば こは、ここには書いてありませんけれども、大体ケントの20本入りが550円ですよ 日本の金にして。一番高いんじゃないですかね、世界で。それで、国民はどう言うかと いったら、わしらはたばこにはたくさん金を払い、それからアルコールはもっとすごい ですね。水割り1杯飲んで2500円ぐらいになる。安物のウイスキーでですよ。そう いうのをやっていて国民はどう言うかといったら、「我々は一番国に協力して、そして 結果、早う死ぬ。これは一体どういうことか」という意見はあるんですよ。僕は、これ はやはり、「そんなものは、おまえ、手前勝手じゃないか」と言われるのかもしれない けれども、ちょっとそういう気もしないではないわけでして。  たばことかアルコールとかいうのを医療費に回すというのは、非常にアイディアのよ うに思うんだけれども、実際にはものすごい難しい問題があって、それから、皆さんが よくおっしゃるように、それは当委員会のテーマではないということに結局は僕はなる ので、これは、おやりになるのなら中医協でおやりになるべき話なんじゃないかなと、 そう思うんですけれど。ご異論はあるかもしれませんけれども、実際にはなかなか難し いです。 櫻井委員  おっしゃるとおりだと思いますけれど、私が申し上げたかったのは、先ほど申し上げ たように、未成年のほうは法律で決まっているのだからそれでやるしかない。成年の部 分は、法律で決められないということはおそらく皆さんの合意だろうと。そうすると、 健康に害があるということをどうやって広めて、それに防煙を進めるということは一つ 大きなテーマになるわけです。幸田先生がおっしゃったように、一つは表示をはっきり 「健康に害がある」と書くというようなのも大きなテーマだと思いますけれども、そう いう意味で、「健康に害があるからあなたは医療費をたくさん払う必要がある」という のは大きなPR効果だと思っていることがあるわけです。そういう意味で提案している わけです。その結果として医療費も助かって、国民全体が幸せになるということで提案 したのであって、私は、たばこと健康ということであるから医療費のことを持ち出した ので、単なる税金として上げるということの議論とは違うことを言いたかったわけで。  ですから、確かにここで価格問題を議論することはおかしいとおっしゃるのはわかり ますけれども、関係のない議論を私は申し上げたつもりはないんです。健康問題に限っ たからこそ申し上げたんです。そのへんをよくご理解いただきたいと思います。  そういう意味では、山崎先生がおっしゃるように、私は持論としては、たばこだけじ ゃなくてアルコールにも当然医療費を乗せるべきだと思うし、ガソリンにもそうだし、 場合によっては砂糖とか塩にも医療費を乗せることによって医療費の確保ができると思 っています。それは、それこそここで議論することじゃありませんから、別で議論しま す。ただ、ここではたばこと健康の問題としてそのことを申し上げたということだけご 理解いただきたい。 水野委員  ご意見はよくわかるんですけれども、もしそれなら、僕は、たばこを吸わない人の医 療費を減らすほうが、保険の掛け金を減らすほうが、より合理的なのではないかと思う んですよね。 櫻井委員  減らせるのなら減らしてあげたらいいと思います。しかし、とても減らせるような財 政ではないわけですから。減らせるのなら減らして。たばこを吸う人だけ据え置きにす れば同じことですから。どちらでも結構です。でも、全体の財源でそれは無理だと思い ますから。 水野委員  それは、いずれ無理かもわからないですけれども、医療費が多い少ないという話をこ こでやり出したら切りがないということを僕は言っておるわけで。 櫻井委員  それを言っているのではないんです。PR効果としてこういうものもあるよという意 味です。健康に害があることを国民に知らせる一つの方法です。 大河委員  今、医療費のお話がございましたけれども、それぞれのお立場でいろいろお考えがあ るのはわかりましたけれども、アメリカあたりでも、確かにたばこに着目して医療費を 取ろうというのは、今、議論されていると思いますけれども、問題は、その根拠となる 数字自体がかなり薄弱だと。じゃあ、例えば、日本人でどのぐらい本当にたばこで医療 費が余計かかっているか。その仮定の数字は出ておりますけれども、相当根拠が薄弱で あるということもございますし、それから、今、議論が出ていたように、ほかの嗜好品 あるいはリスクに関係するような製品との不公平感みたいなものも当然あると思います それはあまりここで議論をしても私は不毛の議論になるのではないかと思いますが。  税の問題でちょっとありましたけれども、先ほど幸田委員からご指摘がありましたよ うに、国際比較すると日本のたばこ税というのはやや低めじゃないかというご指摘です が、税制自体は、いずれ専門家にお話ししていただいても構いませんけれども、各国の いろいろな歴史的な背景であるとか、直間比率とか、いろいろな事情があって決まって おりまして、日本の場合も長年にわたるこういった物品についての税制の歴史があるわ けでございます。  例えば、日本の場合、たばこを酒類と比較するとどういうことかということですが、 マイルドセブンとか、先ほどのマルボロもそうですが、たばこの場合は約60%の税負 担率ですが、ビールの大瓶で47%、ウイスキーが20%強、清酒で20%弱というよ うなことで、酒類に比べてもかなり日本の場合、たばこ税というのは高率になっており ます。そういうようなことで、単純にたばこ税だけで国際比較してもナンセンスではな いかというふうに思います。  それから、表示の問題もご指摘ありましたけれど、表示もなかなか、アメリカの場合 なんか特にそうですけれども、やたらといろんな製品に警告表示をしまくっておりまし て、これでいわばメーカーの免罪符になっているなんていうような指摘もあるぐらいで ございまして、やたらと表示をしまくると。日本の場合は、やはり消費者に対する正し い情報提供というふうなこともありまして、例えば、アメリカの表示と決定的に違うと ころは、タール、ニコチン量の表示を法律に基づいてさせている点でございまして、ア メリカはやたらいろんなおっかない文句をいっぱい並べていますけれど、タール、ニコ チン量の表示はされておりません。つまり、消費者に対する客観的な情報提供というこ とは我々も大事だと思いますので、先ほどの櫻井委員のお話に関連して言えば、もっと 国民に対して喫煙と健康の正しい情報提供というのはあってもいいのではないかなとは 思います。  ただ、いろいろご議論あると思いますが、これだけたばこと健康の関係が言われてい る中で、世界広しと言えども製造販売そのものを禁止している国は一切ございません。 ということを最後に申し上げたいと思います。 幸田委員  先ほど柳田委員から、たばこの値段の問題というご発言がありましたので、それにつ いてちょっと申し上げたいと思いますが。  やはり、たばこの問題を考える場合に、健康との関係がこの検討会のポイントになる と思いますけれども、どういう方向でたばこの問題を考えていくかというときに、価格 政策は私は非常に大きな要素だと思っております。  先ほどトッテン委員からお話のありましたように、アメリカが国内ではむしろ比較的 いろんな世論に押されて消費が伸びない。それを外国への輸出で補っているというよう なことが仮にあるとすれば、それはやはりこの検討会で十分に吟味をしていいことじゃ ないだろうかと。どうもたばこの値段がどう決まるのか、たばこ専売法で大蔵大臣の権 限ということになっているわけで、原価がどうであるかとか、そういう点の吟味が少し あまりにもなさすぎるんじゃないだろうかと。仮にトッテン委員のお話のようなことで あるとすれば、日本の国民はもう少し考えてもいいんじゃないだろうかと。そういうこ とで、たばこの価格の問題も、ぜひ取り上げていただきたいと思います。 内山委員  櫻井先生のお話に関連いたしまして、私の考えをお聞きいただきたいのですが。法律 で決まっていることはここで議論しても仕方がないという表現でよろしいのかどうか。 といいますのは、法律というのは、これは政治のレベルで作る。法律で決められている ことを正しく適切に運用するというのが行政の務めであります。と思います、私は。し たがって、法律で守られないものは、どうやったら法律の趣旨が生かされるか、どうや ったら法律が一番効果的に運用できるかということを、対策を考えるのが行政の務めだ というふうに私は思っておりますから、行政はそれを我々に諮問しているのではないか なと実は考えておりましたので、法律で決められているものは、ここで対策の議論をし ないでそのまま放っておけばいいということにはならないんじゃないかなという気がい たします。そういう意味で、法律がなぜ、未成年者に対する決められた法律がなぜ守ら れていないのかなということをよく考え、それが守られるようにする対策があれば、そ れは十分に議論をすべきだという感じがいたします。 島尾座長  ほかの委員の方々からご発言ございませんでしょうか。きょうは既にかなり具体的な 未成年者の対策の問題に入っておりますけれども。私は、議論としてはここでは、今の 価格の問題を含め、また、どうして守られないのか、守らせるのにはどうしたらいいん だというようなことを含めて議論をするのは、どこまでまとめるかは別として、一向に 構わないと思っておりますけれども。何かほかにご意見は。富永委員、どうぞ。 富永委員  本日、幸田委員のご提案で、いろいろ総論的に議論をするよりも一つひとつ各論的に 議論をしたほうがいいのではないかというご提案がありまして、まず、防煙、未成年者 の喫煙防止対策、これについて議論を始めたらいいんじゃないかというお話がありまし た。  それから、柳田委員から、また、分煙の重要性を強調されまして、これもしかりでご ざいまして、1日に幾つもできませんので、とりあえず今後防煙を中心にして、それか ら分煙、次いで禁煙、節煙、こういったふうに進んでいいのではないかと思います。  それから、未成年者の喫煙がどうしてよくないのかということは、これは、未成年者 喫煙禁止法、明治33年、西暦で1900年に制定されておりまして、それの法律の根 拠として、当時は既にたばこの煙には高濃度の一酸化炭素も含まれている。一酸化炭素 は酸素と結びついて、特に子どもの場合には健全な身体の成長を阻害する、こういうこ とがわかっておりました。そういうことを根拠にして未成年者喫煙禁止法ができており ます。  その後だんだん研究が進みまして、喫煙開始年齢が早い人ほど肺がん、あるいはその ほかのたばこに関係のある疾患のリスクが高いということが疫学的研究で続々と明らか にされてまいりました。これは喫煙に限らず放射線の影響もしかりでありまして、細胞 分裂の盛んな若い人ほど有害物質の影響を受けやすいのであります。そういうことがそ の後わかってきましたので、当時の未成年者喫煙禁止法よりも、もう少し医学的な根拠 がはっきりしてきたと思います。  したがいまして、今回、本来ですと、特に学校保健、あるいは学校での指導、監視な どが大変重要でございますから、そういう観点を代表されるような方もこの検討会の委 員として入っておられましたらもっとよかったと思いますけれども、とりあえずこの検 討会では大枠を決めていきまして、防煙については、またその種の専門委員会などを設 置しまして、学校保健の関係者にも参加していただく形で詰めていけばいいのではない かと思います。以上です。 山崎委員  その問題をもし議論されるのでしたら、まず、先ほど私が提起した問題点を明瞭にす るために、未成年の年齢をどう設定するのか。例えば、性的行為ですと12歳で線が引 かれている。これから下は、いかなる合意があっても強姦とみなされるという法律があ ります。ですから、20歳が正しいのか、21歳が正しいのか、あるいは18歳という のは、現在の少年犯罪法では18歳が限度だと。そうすると、この2年間のギャップを どうするのかというような問題が当然出てきますので、私は、医学的な見地で、これは この中の委員のどなたかからお話を伺えればそれで済むことだと思いますが、医学的見 地で何歳が正しいのか。  それからもう一つは、法律がなぜ現在よく守られていないかということについて、警 察ないしは法務省の専門家の証言を求める。  もう一つ、学校現場はどうなっているか、家庭教育はどうなっているかということに 関して、教育関係者の専門家のご意見を聞きたい。  以上3点。これは実は、含意としては、法律というのはもちろん守られるためにある わけですけれども、杓子定規な徹底的な強制が果たしていいのかどうかということも、 もちろん含まれます。あまり具体例はたくさんあげませんけれども、例えば交通違反な どについても、警察は適宜締めたり緩めたりしているわけで、そのへんのことについて 専門家の意見を聞くということが、もし少年喫煙防止問題を先行させるのであれば、そ ういうご配慮をいただきたいと思います。 幸田委員  未成年者の問題をもし議論をされるのであれば、私は、やはり自販機の問題が一つ大 きな問題だと思います。日本の風土か文化かということもあるかと思いますが、このへ んはひとつ事務局のほうでお調べをいただいて、次回で結構でございますから、お酒あ るいは清涼飲料水とのあれがどうなっているのか、自販機の設置台数でございますとか あるいは諸外国の、ヨーロッパ、アメリカとかになると思いますが、それの自販機の設 置状況との比較等を少し、これはたばこについてでありますが、出していただいて、具 体的な議論をできるような形にしていただきたいと思います。 島尾座長  今、幸田委員から、自販機についての現状を資料でということで、次回あるいはその 次までにまとめていただければと思います。五島委員、どうぞ。 五島委員 私の大学病院には、救命救急センターがございまして、いろいろな急性疾患の患者が 救急車で運ばれてきますが、私どもは循環器の専門で、心筋梗塞の患者が大変最近多く なっております。その人たちを年代別に調べますと、最近、30代、40代の、中には 20代もございますが、いわゆる若い人の心筋梗塞で発作を起こしてかつぎ込んでくる 者が大変増えております。  私どもの統計を示しますと、大体20代〜40代の人たちが、この約十数年の間で 200例以上、それから40代〜60代が400例ぐらい、60代以上が200例ぐら いと、こういうふうに、これは救急車で運んできた初発の心筋梗塞ですが、そのうち 20代〜40代の心筋梗塞の患者の9割までが20本以上のヘビースモーカーでありま す。その人たちが幾つから吸い出したかを調べると、大体30代で心筋梗塞になった人 たちは12〜3歳から吸い出している。そして、20年間で従って心筋梗塞にかかって きている。こういうような事例が、私ども現実に見ているわけであります。そういった 成績は、学会にも発表しておりますが、こういうような事実から、やはり子どものうち から喫煙対策をとらないと、30代、40代の働き盛りで心筋梗塞で倒れる例が益々ふ える。こういうような事例が、また医療費を押し上げることになる。そういうようなこ とから、日本人の場合は、外国ではコレステロール値が大変問題になっていますが、日 本人の心筋梗塞の最大のリスクは、私どもの成績で喫煙であると考えております。 大河委員  ただいま、自動販売機の問題もございました。次回に詳しい資料が出るかと思います けれども、自動販売機は、日本の場合、たばこの自販機、非常に普及しておりまして、 全体の売上の約40%ぐらいが自販機によっておるわけでございまして、普及台数も 50万台ぐらいありますので、かなり自販機としては多くなっているわけですが。  今のたばこの小売の団体で、未成年者喫煙防止の見地で平成8年の4月から深夜稼働 の停止というのをやっていまして、これは、例えば繁華街で自動販売機を置いている小 売店の方からすれば死活問題になるわけで、本当は夜中の11時から朝の5時まで止め ちゃいますと、その間、お客さんに逃げられちゃうというようなことで、売上が大幅に 減っちゃうというリスクがあるわけでございますが、それを、いま一所懸命、深夜稼働 停止をしていただくということで、かなり全国的に業界の自主的な規制ということで取 り組んでいるところでございますので、もし必要であれば、そのへんの具体的な内容も もう少し詳しく次回説明してもよろしいかと思います。  未成年者の喫煙禁止法ですが、先ほどちょっと、誤解があるといけないと思うので私 なりに付け加えさせていただきますと、1900年、明治33年に制定されております が、当時の国会議事録を見させていただきましたが、いわゆる喫煙と健康の関係ですね 未成年者の喫煙が健康にどのくらい影響を及ぼすかという見地での議論は、実はほとん どありませんで、当時、街角で、非常に幼い子どもでも日本の街角でたばこを吸ってい る子どもがいるということで、非常に社会的な問題になって、むしろしつけですね。子 どもに対するしつけというようなことでかなり中心的な議論が行われたということでご ざいます。したがいまして、あまり健康上の観点というような議論は十分に行われてお らなかったというふうに理解しております。 櫻井委員  自動販売機の問題は、私は個人的には、ある意味では大きな問題ですけれども、ちょ っと筋が違う問題のように私は理解しております。特に、今おっしゃったのは、11時 過ぎになると自動販売機が停止するというのも本当におかしな話です。11時過ぎの夜 中から深夜に、未成年がたばこを吸わないようにして、そういう言い方をしてよければ 昼間はどうぞお買いくださいとやっているということだったら、こんなナンセンスな話 はないので、11時から朝までたばこを売って昼間は売らないというのならわかるんで すよね。夜の11時から早朝は未成年は外へ出なさんなと言っているというのならまだ わかるんですけれども、全く逆のことをしているようなことで、そのへんのナンセンス さを私は非常に感じているんですね。  特に繁華街が非常に致命傷だということで、繁華街に夜中の11時から明け方まで未 成年がいることを前提に議論をしているというのは非常に面白い話だなと思いますので この問題は、よく議論をしたうえで考えるべきだと思います。 トッテン委員  30年前から日本に住んでいますから、アメリカの最近の状況はわかりませんが、私 が子どものときに、子どもにはたばこを売ってくれなかった。酒も売ってくれなかった どうしてかというと、法律がすごく厳しくて、たばこを売る側に罰、逮捕されるか罰金 を取られる。だから日本も、未成年者にたばこを売ってはいけないという法律があるな ら、その法律をやぶった場合、厳しい罰を売り手に与るようにすれば、その問題はすぐ 解決する。販売機で売るなどというのはそれだけで違反だと思います。  もう一つの例は、ニューヨークに駐車違反はない。東京に行ったら、道路は駐車違反 だらけ。ところが、ニューヨークでは、歩いている人はみんな赤信号を無視して勝手に 歩いている。東京に来ると赤信号を無視する人はごくわずか。つまり、ニューヨークの 警察は駐車違反についてすごく厳しいけれど、信号を無視して歩くことには、何も言わ ない。東京に来たら警察は、駐車違反の取り締まりを、年に1回しかやらないのではと 思ってしまう。でも、赤信号を無視して渡ったらお巡りさんに注意されるからほとんど の人はしない。法律があるのなら違反を取り締まらなければ意味がないと思いますし、 たばこの自動販売機を廃止すれば法律違反は少なくなるんじゃないかと思います。 大河委員  ちょっと誤解があったのではいけないのでもう一回申し上げますけれども、未成年者 喫煙防止というのは、やはり家庭教育であるとか学校教育であるとか、あるいは、その ほかのいろいろな場面で啓蒙されていかないといけないことでして、自動販売機を止め ればそれで済むとかと、そういう問題では決してないと思います。  確かに法律が存在しているんですけれど、必ずしも守られていないという実態がある ので、今、問題になっているわけですから、そこは、一歩前進の対策でも、もちろん十 分評価されなければいけないんじゃないかと。その一歩前進の対策をするときに、関係 の方々というのは本当に大変な努力をなさるわけでございまして、ですから、それで全 部解決されるとか、そういう問題ではないんですけれど、やはりそういう少しの努力で も評価するという姿勢もないと、この問題というのはなかなか簡単に解決しないのでは ないかというふうに思っております。 山崎委員  もう一つ、今後、児童の喫煙防止について議論をする際に、この問題を大人に広げな いでいただきたい。これは大変大事な問題なんです。児童の喫煙を禁止するということ は、広い文明的な視野から見ますと、子どもは大人ではないという考え方が後ろにある わけです。子どもと大人というのは同じ人間で、人権は共有していますが、様々な点で 社会的な処遇は違うものだという近代的な思想に立っています。もしそうでなければ、 少年法などというものはいらないので、犯罪を起こした子どもは、たとえ10歳であろ うと死刑にすればいいわけですから、そんなことを言わないのが近代です。私たちは、 子どもにたばこを吸うなと。そのためには大人も吸うなと。教師のたばこを禁止する、 親のたばこを禁止する、というふうに広がっていくと、結局これは、要するにたばこの 全面禁止ということなので、もしそうなら、そういう議論を真正面からしていただきた い。  したがって、私は、教育の特に専門家ではありませんが、多年中央教育審議会の席を 汚してきた人間として多少申し上げれば、大人が子どもに範を垂れるということと、そ れから、子どもに大人のまねをさせないということとは、これは並行して成立すること だと。つまり要するに、大人が吸っていたら子どもに吸うなと言えないよ、という議論 は成り立たない。特に、これは、たばこは健康の問題だとして、今、考えているわけで 道徳問題として考えているわけではないわけでありますから、そこは特にご留意いただ きたいと思います。 坂東委員  青少年にたばこを吸うという習慣を身につけさせないためにあらゆる手段をとるべき である。売る側のほうに自動販売機の問題、あるいは買いに来たときに年齢を誰何する といったような形で、売る側の働きかけと同時に、買う側といいますか、喫煙する側に 十分な情報を提供する。たばこを小さいうちからのめばのむほど健康に悪いんだという 部分についての情報が十分には子どもたち、あるいは学校保健の関係者に提供されてい るかどうか。いろいろなアプローチがあるんだということを皆さん方それぞれおっしゃ っているわけですから、どちらにより重きを置くかとか、これは効果があってこれが効 果がないとかという話ではなしに、少しでも効果があることを積み重ねていかなければ 青少年の健康のためにたばこを吸う習慣を付けさせないという目的を達することができ ないと思います。  続けてで申し訳ありません。埼玉県の場合は、さわやか県民運動というのを県民運動 として取り組んでおりまして、その中で禁煙、防煙というのを一つの大きなテーマにし ております。県の場合は、教育委員会経由でそうした情報を提供するというふうなこと をやっておりますが、おそらく国レベルになりますと、なかなかクッションがたくさん あって、すぐストレートにはできないと思いますけれども、特に管理というような意味 それこそ、今、山崎先生がおっしゃいましたように、道徳教育的な感覚ではなしに、健 康の問題なんだということで、学校保健の分野からアプローチしていただければ、より いいのではないかなというふうに思います。 五島委員  私は、ひとつJTにお願いをしたいと思うんですが、大河委員が本日、たばこに関す る基本的な考え方というところで、協調ある共存ということを言っておられます。そう いうことで、「法律で禁止されているので、未成年者は絶対に喫煙してはならないとい うことは言うまでもない」というふうに言っておられます。そういうわけですから、J Tがやはり、小売店などで未成年者がたばこを買いに来た場合には、それを売らないと いうことを積極的に進めてほしい。もしもそういったような事実が、認められるような 事実があったら、これは小売店の販売を停止するとか、そういったような積極的な姿勢 をとっていただきたい。  それから、その後に、やはりこのモラルの問題をいろいろと言っておられます。「ポ イ捨てはしない」とか、「周囲の人へ心配をかけない」とかといろいろとモラルの問題 を言っておられますが、これをぜひひとつ、もっと積極的にキャンペーンをやっていた だきたい。そういうことによって、JTが積極的にこういったような協調運動をやって いただくということをやれば、これはやはり私は非常に評価できると思います。 大河委員  せっかくご指名いただきましたので、一言だけお答えさせていただきますと、今の協 調ある共存という一環で、昭和49年からJTは、スモーキンクリーンキャンペーンと いうのをやっていまして、これは、最初はポイ捨てをしないなどの街の美化運動的なも ので始まりましたけれど、途中から、吸わない人への心遣いというようなことなども入 れて、かなりキャンペーン経費としても増加させながらやっております。今後ともそこ は充実させたいと思いますし、それから、小売店で何をやっているのかということでご ざいますが、やはり未成年者と思われる人には、要するに一声運動というようなことで 声を掛ける運動を小売店がやったりと、あるいはいろいろなポスターを掲示したりとか いろいろやっているんですけれども、なかなか十分じゃないというようなこともあろう かと思いますが、いろいろな関係団体と協力しながら未成年者喫煙防止キャンペーンと いうのもやっておりまして、もしよろしければ、次回もう少しそのへん詳しい資料は提 出させていただきたいと思っております。 島尾座長  今のキャンペーンに絡んで、私からも、できれば、ポイ捨てだけじゃなくて、歩きな がらの喫煙だけやめる指導をうんと強化していただきたい。これは、街なかで後ろをつ いて歩くのは本当に、まだ水野先生はその心境に達していないとおっしゃいましたけれ ど、私もかつては吸っていましたので、ある時期は平気だったのが、やはりこれだけ時 間がたってくると、前で吸いながら歩かれると、後の臭いを嗅がされて歩くのは、あま り感じのいいあれじゃない。そのへんのキャンペーンは、ぜひ強化していただきたいな と思います。 大河委員  特に、人混みでは、やはり吸われると私も迷惑に感じることもあるぐらいですので、 そういうようなことのマナーの強化というのは、これからも心掛けたいと思いますので もしよろしければ、次回もう少し詳しくご紹介いたします。 柳田委員  ポイ捨てキャンペーンをやっているけれど、まだ効果は不十分ですね。虎ノ門の地下 鉄の入り口のあたり、すごいですね。私も喫煙者だけれど、非常に恥ずかしく思います 自分で掃除しようかと思うぐらいです。 山崎委員  私もマナーに関しては完全に同意見ですが、一つだけ事情を付け加えておきたいのは 現在の分煙の施設が十分でないんですね。例えば、この建物の中はほとんど禁煙です。 そうしますと、外へ出て吸うと、今までになかった現象が見られるようになりました。 特に、女性が歩きながら吸うということは、かつてはほとんど、ヨーロッパやアメリカ でもなかったんですが、最近非常に増えている。それは吸うところがないからなんです ね。ですから、それは車の両輪でありまして、私はもちろん、それにもかかわらず、そ ういうマナーの悪い行為に対して批判的でありますけれども、ぜひ、私が先ほどから分 煙の制度的、同時に設備的な充実を図るべきだと申し上げたことの背景にはそういうこ ともあることをご理解ください。 トッテン委員  キャンペーンのことでしたら、年に1日だけでも、JTの全社員が駅に行って、自分 が売ったもののポイ捨てを拾ってくれたら、JTについての考え方も変わってくるんじ ゃないかと思います。おたくは売るだけ、我々は拾わなければならない。JTとそのお 客さんは平気で、我々が始末をしていますからね。社員自らがぽい捨てを拾うキャン ペーンをすれば、結構発展するんじゃないかと思います。 大河委員  社員自らきちんとマナーを守りなさいというご指摘で、そこは全くご指摘のとおりだ と思いますが、駅頭に立って全部モクを拾えというわけにはちょっといかないとは思い ますけれども、マナーを遵守しなさいというのはご指摘のとおりだと思います。  最近、アメリカと日本と、とかくこのたばこ対策は比較されておりますけれども、ア メリカの場合は、今、あまりにも厳しい喫煙規制をしているために、例えばニューヨー クあたりのビルの外でどういう現象が起きているかというと、建物の中で吸えないもの ですから、みんな外側に出て、そこで、大地が灰皿であると言って、そこへポイポイ、 ポイ捨てをしたりするということで、ビルの周りがえらい汚れるというようなこともあ りますし、それから、アメリカは何でも私はすごいとは思っておりませんで、例えば、 未成年者喫煙禁止の法律に関して言えば、アメリカは1970年代あたりは、まだ州法 で、しかも年齢も16歳とか18歳未満あたりを規制していたと思いますけれども、か なりバラバラな規制で、簡単に言うと、未成年者が吸っていてもいい州が結構ありまし て、高校でも結構吸われていたということでございまして、日本では、じゃあ、どうか ということですが、日本は、やはり、一応法律があるものですから、建前上は非常に吸 いづらくなっているということで、若干ザル法化していて問題だという話はあるかもし れませんが、抑止力には少なくともなっているということで、別にアメリカだけがそん なすばらしいことをやっているということでは決してないと思います。 島尾座長  だいぶ時間も迫ってまいりましたので、今までの議論の中から一つ大きな問題になっ たのが因果関係の問題だったと思うのですが、富永委員、疫学の専門でございますので 最後に疫学的な因果関係、どう考えたらいいかということについて、ちょっとお考えを お示しいただければと思います。 富永委員  本日、第3回の検討会の配布資料の17ページから数ページにわたりまして、名古屋 大学予防医学の教授の大野良之先生らが編集された、公衆衛生・予防医学に関するテキ ストの中で、因果関係をどういうふうに考えるか、解明していくかという議論がござい ます。  この発端は、前回、第2回の検討会で山崎委員から、因果関係について山崎委員なり のお考えをご披露になりましたが、我々疫学者の立場で因果関係は世界的な常識として こういうふうに見ているんだということを、簡単にご説明いたします。  18ページのところに枠がありまして、その下のほうに統計的関連の因果性の判断基 準、それから、因果性の実践的判断基準というのがございます。  20ページには、感染症における因果関係の判断、これは有名な判断基準でありまし て、Henle-Kochの3条件または4条件といいまして、感染症と、その感染症による疾患 の因果関係を判断する基準です。これは非常に明快でございます。  ところが、がん、心臓病のような非感染性の慢性疾患の場合には、こういうふうにき れいに証明することは大変難しゅうございまして、そのために、21ページ左側中ほど 3)非感染症における因果性の判断基準のところの最初の数行に書いてございますけれ ども、アメリカの政府、米国公衆衛生局長諮問委員会の喫煙と健康に関する膨大な報告 書の中で、この委員会として、喫煙と肺がんなどの因果関係を、結論づけるに際して使 った判断基準を示しています。  これは、a、b、c、d、eまでの5つの判断基準でございまして、これは医師の国 家試験にもよく出るような、全く常識的なものでございまして、単に2つの事象が並行 するから因果関係あり、あるいは、原因のほうが先で結果が後だから因果関係あり、な どとは決して考えておりません。疫学的にみた因果関係というのは、関連の一致度、つ まり、だれが、どこで、どのようにやっても、ほぼ同じ結果がでる。関連の強固性、た ばこを吸う人は吸わない人に比べて疾患にかかりやすいリスクが何倍高いか。数倍とか いう大きな倍率になりますと、ほかの原因のバイアスなどでは説明ができないといった こと。あるいは、関連の特異性、これは多少問題があります。といいますのは、たばこ を吸っている人が100%肺がんになるわけでもないし、肺がんにかかった人は100 %たばこが原因で肺がんになっているわけではありません。しかし、男の場合には、肺 がんの原因の約7割がたばこが原因であるというようなことがわかっています。関連の 時間性、これは単純でありまして、原因が先行している。もちろん、たばこを吸い始め てから肺がんにかかるまでには20年あるいは50年といった潜伏期間がありますので そういったことも考慮する必要がありますし、また、やめた場合には、潜伏期間がござ います。  それから、eの関連の整合性も大事な問題でありまして、ほかの生物学的事象とよく 合う、あるいは、たばこをやめればやはりリスクが低下する、いろいろ辻褄が合うとい うのが関連の整合性です。  その後、翌年でございますけれども、Hillという先生が、f、g、h、iを追加して おります。こういうのも参考にするのですが、特に最初に述べましたa、b、c、d、 eの5つの判断基準が骨格的な基準になっております。  以上、因果関係の判断については、こういったことが我々の常識になっておりますの で、ご披露させていただきます。  なお、本日の配布資料の2ページに、疾病の原因に関する私見、原因とリスクファク ターの関係など、大河委員も議論されておりますので、高原課長も私見というふうに書 いておられますが、これは、後ほど読ませていただこうと思っています。  きょうは、非常に常識的な我々の考え方を、私のではございませんで、世界の疫学者 の常識をご披露させていただきました。 島尾座長  どうもありがとうございました。時間がまいりましたので、これで終了したいと思い ますが、事務局のほうから連絡事項ございますでしょうか。 事務局(高原)  次回の検討会のスケジュールでございますが、ご欠席の委員の最も少ない5月8日の 14時〜16時とさせていただきたいと思います。  本日ご指示のありました件、水野委員から、アルツハイマーについて事務局はどう考 えるんだというふうな話でございますが、きょうの資料の中に、58ページにそれにつ いてのとりあえずの事務局としての見解が入っておりますので、ご一読ください。  大河委員の事務局へのコメントに関する資料ないしは幸田委員からの自動販売機に関 する資料、できるだけ努力して揃えたいと考えております。  ありがとうございました。 島尾座長  それでは、次回は、きょう話題になりました、結局、未成年者の問題、それから分煙 の問題、2つ大きなテーマだと思うんですが、未成年者について、まず年齢の基準を一 体どこで絞るのかというのは、ひとつ大事なことになると思いますから、まず年齢を、 未成年というのはどこで定義するかというあたりの考え方。  そして、あと、自販機とか広告の問題、警告表示、それから情報提供をどうするか、 こういったいろいろな問題があると思いますので、少し未成年者の問題について総合的 な討論をさせていただければと考えております。  本日は、どうもありがとうございました。 問い合わせ先   厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課 望月,大石   電話:03-3503-1711 内(2397,2394)