98/04/14 第2回ヒト組織を用いた研究開発の在り方専門委員会 第2回ヒト組織を用いた研究開発の在り方に関する専門委員会議事録 1.日時 :平成10年4月14日(火) 10:00〜13:45 2.場所 :厚生省共用第9会議室 3.議事 :(1) 手術等で摘出されたヒト組織を用いた研究開発の在り方に関する 意見聴取について        (2) 手術等で摘出されたヒト組織を用いた研究開発の在り方について        (3) その他 4.出席委員:黒川委員長        (委員:五十音順:敬称略)         梅田 誠  遠藤 仁  柏木 哲夫  木村 利人  澤井 仁  寺尾 允男 西山正彦  廣部 雅昭  丸山 英二  溝口 秀昭  山岡 義生 5.意見聴取団体:        (敬称略)        日本製薬工業協会         奥田 秀毅  小池 正博  関根 豊  宮城島 利一  吉田 彪         HAB協議会         宍戸 亮  佐藤 哲男  重松 昭世 (開会・10時00分) ○事務局  おはようございます。はじめに傍聴者の皆様へお願い申し上げます。本日は日本製 薬工業協会、HAB協議会からの意見聴取を予定しております。この部分につきまし て議事の公開をさせていただくということで執り行わさせていただいております。 したがいまして、その間、ご静粛にお願い申し上げます。また、審議の円滑な進行 にご協力をお願いを申し上げます。  なお、会議自体はヒアリング終了後、先生方にお昼を取っていただきまして、その 後、また、審議をさせていただきますが、この部分については後日、議事録を公開さ せていただくということでご協力の程、よろしくお願いを申し上げます。  なお、先生方に事務的なことを申し上げますが、ご発言をされるに際しては、 各先生方の前にございます機械のマイクのスイッチを入れていただきまして、 発言終了後、お切りをいただければというふうにお願い申し上げます。それでは 黒川先生、よろしくお願いいたします。 ○黒川委員長  おはようございます。それでは第2回の「ヒト組織を用いた研究開発の在り方に 関する専門委員会」を開催させていただきます。本日は前回の予定でありましたが、 議論がありましたように関係機関からの意見を伺わせていただくということでありま して、こちらに専門の委員に来ていただいております。  ひとつは日本製薬工業協会の方からご紹介しますが、研究開発委員長として塩野義 製薬(株)の薬事情報室部長の奥田秀毅様。よろしくお願いします。それから、研究 開発委員の方ですが、大日本製薬(株)の常務取締役研究開発部門担当の関根豊様。 どうもご苦労様です。それから、同じく研究開発委員の中外製薬(株)常務取締役医 薬研究開発所管の吉田彪様です。それから、研究開発委員会の専門委員として田辺製 薬(株)の薬事部長の宮城島利一様。それから、同じく専門委員として塩野義製薬 (株)新薬研究所薬物動態研究部門長の小池正博様です。どうもご苦労様でござい ます。  それから、前回、ちょっと議論というか、資料がありましたが、HAB協議会の方 から会長の宍戸亮先生。それから、副会長の佐藤哲男様でございます。それから、 理事の重松昭世様でございます。 ○HAB協議会・重松氏  重松でございます。よろしくお願いいたします。 ○黒川委員長  ありがとうございます。ということで今日はご意見を伺わせていただきまして、 さきほど言いましたようにこの部分は公開をさせていただきたいというふうに思って おります。  本日、こちらの委員会の方は廣橋委員がご欠席ですが、その他、全員、ご出席の 予定でございます。遅れている先生もおられますが、そういうことでございます。  それでは、早速ですけれども、製薬協の方から、製薬工業協会、製薬協と言われる のですか、からご意見をまず伺いたいと思いますが、一応、20分ぐらいでお願いいた したいと思います。お手元の資料、これでしょうか。 ○日本製薬工業協会・奥田氏  製薬工業協会の袋に入っています。 ○黒川委員長  それから、今日、ちょっとまだ暑いですので、上着を取られましてください。 どうぞご遠慮なく。 ○日本製薬工業協会・奥田氏  それでは日本製薬工業協会より意見を陳述させていただきます。  本協会は86社が加盟する研究開発志向の製薬企業の団体です。お手元の資料の中に 協会の紹介を入れておりますので何かの折りにご覧になってください。本日は「厚生 科学審議会先端医療技術評価部会ヒト組織を用いた研究開発の在り方に関する専門 委員会」において製薬企業の立場で意見を述べさせていただく機会を与えられました ことに対して黒川委員長を始め、専門委員会の皆様に厚く御礼を申し上げます。  このヒト組織を用いた研究につきましては、製薬協としても長年、強い関心を 持っておりました。欧米先進国ではヒト組織を用いて新薬の安全性、有効性を評価 するための研究を実施していることは既にご承知のとおりでございます。  一方、日本におきましては創薬研究でのヒト組織の活用はほとんどできない状況 ですが、欧米と同様の環境が整えば国際的な医薬品の研究開発競争において日本の 創薬研究に良い影響を与えることになると考えておりました。  このような状況の中で、昨年末、厚生大臣から「手術等で摘出されたヒト組織を用 いた研究開発の在り方について」が諮問され、この専門委員会が設置されることとな り、業界としても検討の行く末を大きな関心をもって見守っているところでございま す。  申し上げるまでもなく、有効な新薬品の創製は社会に大きく貢献してまいりまし た。ペニシリンを始め、優れた医薬品の開発が人類に大きな福音をもたらしましたこ とは誰もが認めるところです。しかし、まだ、癌や難病疾患等、薬の開発を期待され ている分野は数多いわけでございます。  WHOのデータによれば、疾患の4分の3以上はまだ治療薬がないとのことです。 新薬の開発はその意味からも社会的に期待されているわけでございます。いかに効率 的に待ち望まれている医薬品を開発していくかが医薬品産業に課せられた使命でも あります。すなわち医薬品は人類の健康の維持、及び人類の福祉に貢献しており、 有用な医薬品を1日も早く患者さんに提供することが製薬企業の使命であります。  新薬の研究開発の過程には新薬の候補化合物の選択と、その候補物質の評価があり ますが、動物試験では臨床試験の予測が困難な場合も多く、ヒト組織の活用が期待さ れているところであります。  このあたりのところについて少しOHPを用いて説明させていただきます。これは お手元の資料1の表1ですが、製薬協が毎年、発行しております 『DATA BOOK』に載っている新医薬品の開発成功率の日本企業17社の最近 5か年のデータです。この期間に合成、あるいは抽出された化合物数は約32万個、 一番上の欄でございます。32万個のうち承認取得までたどり着いた化合物は下から 3つめの赤字の数字ですが、88個です。そのうち導入品の数が35個あります。  ちなみに、導入品の35個は合成、あるいは抽出化合物数の中には含まれておりませ ん。そのため日本の企業の自社開発品は53個です。この期間のオリジナル化合物の 開発成功率は従って一番右下の赤字の数字ですが、約6000分の1の確率で承認取得 まで至ることができたということになっております。  この表で臨床試験を開始した化合物数が167 で、承認申請できたものが106 と なっています。この差の約60の化合物が臨床試験中に開発中止されたわけであり、 承認取得できた自社開発化合物数53個を上回っています。  臨床試験中に開発中止になる化合物は非臨床試験でのヒトでの予測が十分で なかったものとも言え、企業の開発志向が類似新薬の開発からオリジナリティの 高い新薬の開発へ移行する過程の中で近年、急激に増えており、現状の開発中止率は もっと高いものと予測されます。  その次のオーバーヘッドをお願いします。次も同様に製薬協の会員会社への アンケートに基づく調査資料ですが、お手元の資料1の表2です。これは少し古い データなのですけれども、1983年から92年の10年間に臨床開発の段階で開発を中止 した150 の事例について開発中止理由を調査し、まとめたものです。  開発中止の理由として、複数の理由が挙げられた事例も多く、集計Aは延べ理由数 でまとめたもので、この集計では臨床試験における安全性が理由で中止になったもの の数は150 事例中、70事例。約47%。同様に臨床試験における有効性が理由で中止に なったものが91例。150 分の91で約61%となっておりまして、下の欄にあります 動物試験で新規毒性発現とか、物性や生産の問題、市場性、特許などが理由で中止に なったものの数と比べまして圧倒的に多くなっております。  また、その次の右の欄の集計Bですけれども、これは単一の理由で中止になったも のを集めたものでございます。やはり臨床試験における安全性が理由で中止になった ものが28、有効性が理由で中止になったものが39、やはりこちらも他の理由に比べて 圧倒的にこの2つの理由で中止になったものが多いという結果が得られています。 それぞれの中止になった臨床試験中のフェーズでどのフェーズに当たるかということ は、その右の方の表に書いているとおりでございます。  次のオーバーヘッドをお願いします。また、同じく製薬協の調査でお手元の資料の 表3でありますけれども、これは臨床試験実施後に開発中止をした64化合物91所見で 臨床データと動物試験データの関連性を見たものであります。  そうしますと明確に動物試験と関連性ありと認められた所見が15所見。%にしまし て16%であります。それから、弱いながらも関連性ありと認められた所見が25所見、 27%。それから、関係があるのかないのかわからないと判断されたものが15所見、 16%。明確に関連性なしと判断されたものが36所見、40%でございます。  副作用の臓器毎に分類したもので、関連性ありなし、不明、なしという関係で まとめておりますけれども、例えば、皮膚・付属器官障害では不明となしを併せてい まして100 %。その他の臓器関係についても動物試験と臨床所見との関連が薄いとい う結果が得られております。この結果は動物試験による臨床予測の難しさを示すもの であり、ヒト組織を用いた試験の重要性を示唆するものと考えております。  このように化合物のスクリーニングから非臨床試験の過程で、実際に臨床試験を 実施する新薬候補化合物の絞り込みが行われるわけですが、その際、動物試験の成績 からヒトでの安全性、有効性の推定を行っているのが現状です。この非臨床試験の中 でヒト組織を活用することによって安全性、有効性に関するより的確な評価が可能に なるものと考えます。  例えば、安全性評価の上からは動物試験の成績から臨床上の安全性を予測すること は必ずしも容易ではありません。臨床試験において動物における試験では予測のでき ない代謝物が生成され、その結果、副作用が発現する場合がまたヒトと動物の組織で 受容体やチャネルの発現・分布が異なり、その結果、臨床で副作用が発現する場合も あります。  また、薬物相互作用の問題もあります。薬物相互作用は多様な機構によって惹起さ れますが、最も頻度が高く臨床上、問題となるのは肝薬物代謝酵素チトクローム P450 を介した相互作用であり、この代謝酵素やヒト組織を用いた試験を実施する ことで薬物相互作用をかなり明確に予測することができます。  また、臨床試験において併用が考えられる全ての薬剤との相互作用を検討すること は事実上、困難であり、ヒト組織を活用した薬物相互作用の検討はその意味でも有用 な手段です。  次に有効性の評価に関しては、例えば、初回通過効果を強く受け薬物では代謝に大 きな種の差、種差があるため、ヒトでどの程度の血中濃度が得られるかを動物試験か ら予測することは極めて困難であります。また、代謝酵素、受容体、チャネルなどの 種類や各種臓器における分布・発現にも種差が認められる場合が少なくありません。  ここで実際の事例を少し紹介させていただきます。他の数多くの事例はお手元の 資料の中に記載しております。これは安全性評価の点から見た事例であります。海外 からの導入品の第I相試験を実施したところ、単回投与と反復投与における血中濃度 の間に大きな相違が認められ、ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro試験を行ったと ころ、当該品では特定のヒト薬物代謝酵素を強く阻害するということがわかって、 安全性に大きな問題を感じたために開発を断念したと、このような事例でございます  化合物Aは、その次ですけれども、その構造から類推すると、QT延長作用を示す 可能性が考えられたが、動物試験では明確な結論が得られなかった。そのため外国で ヒト心筋を使った試験を実施しまして、薬効を示すと考えられる用量でQT延長作用 があるということがわかりましたので、臨床試験直前に開発を中止いたしました。  次、お願いします。これは薬物相互作用の面からの事例でありますけれども、ヒト 肝ミクロソームを用いたin vitro試験の結果からヒトに特異な肝薬物代謝酵素を強力 に阻害することがわかりましたために薬物相互作用の発生を危惧して臨床試験への 導入を中止しました。  また、化合物Cは臨床試験においてトルブタミドやワーファリン等と薬物相互作用 が発現しました。これは肝薬物代謝酵素阻害によるものと推察され、ラット等の 動物実験ではこれを予測されるデータは全くありませんでしたが、 ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro試験で薬物代謝酵素に対する阻害のレスポンス に種差があることがわかりました。  次、お願いします。次は有効性とスクリーニングのところでの事例でありますが、 開発候補品の選定する段階で最も有望と思われていた化合物が薬効・毒性を評価して きたマウス、イヌに比較して、ヒトで著しく早く代謝されることが ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro試験でわかりました。その結果、ヒトにおいて 薬効発現に至らないことが予測され、他の誘導体に変更いたしまして、そして開発を 進めることで効率的に研究開発を実施できたという例でございます。  化合物Hはプロドラッグであります。スクリーニング段階においてヒトの消化管壁 S9、および肝S9を用いて検討することによりまして、消化管腔内では安定に存在 し、吸収過程で効率よく活性体に変換されることが明らかになり、このものを候補化 合物として選択することができました。  もう1枚、お願いします。これも同じく有効性とスクリーニングの段階での事例で ありますが、前立腺肥大症治療薬の研究においてTestosterone5α-reductaseの阻害 薬のスクリーニングを行っていましたときに、ラットとヒト精巣由来のものとの活性 に大きな差がございました。  同じことがβ3受容体拮抗薬、GPIIb/IIIa受容体拮抗薬、chymase 阻害薬等 の研究においても同様なことが知られております。  最後ですが、バソプレッシンV1拮抗剤のスクリーニングをラット、またはウシの 臓器を用いて行っておりましたが、そこで選択された候補化合物はヒトの受容体では 全く活性がありませんでした。このためヒト血小板を用いてスクリーニングを実施い たしました。いくつか他にも事例がございますが、代表的な事例を集めてご紹介をい たしました。  次に研究開発の国際化について申し述べます。医薬品の研究開発力は米国が他を 圧倒していますが、遅れてスタートした我が国の研究開発力も欧州先進国の水準と肩 を並べる程となり、国際的に評価される新薬を創出するため、研究開発の質と効率化 の向上のために努力しているところです。  研究開発のボーダレス化は日米欧3極の新医薬品の承認審査資料に関する規制の 調和を図る、いわゆるICHの活動を通じてより促進されつつあります。ICHでは 研究開発に関連する多くのガイドラインの整合化が図られており、今後、試験データ の国際的な相互受入が一層、進むものと考えられます。このような状況の中で国際的 に通用する新薬の研究開発をいかに効率的に進めていくかが製薬産業にとっての 大きな命題であります。  研究開発の効率化を考えるとき、薬の安全性、有効性に関する評価を的確に行う ためのレギュラトリーサイエンスの促進と、それに即応した研究基盤作りが重要で あります。現在、我が国において入手できるヒト組織関連の研究資材は外国から輸入 されているヒト肝ミクロソーム等です。承認審査上の要求がないことや入手が困難で あること等から、それ以外の安全性、有効性評価のための利用はほとんどできないの が現状です。ヒト組織を用いた試験が必要な際には、外国の研究所で実施している 場合があります。  このヒト組織を利用した研究の日本の空洞化が今後も続くことになれば、日本の 製薬産業の国際競争力の推進を大きく減じることにもつながるのではないかと大きな 懸念を持っております。また、このことは日本の医学、薬学等の発展や、ひいては 将来の国民保健にも影響しかねないのではないかと懸念を持っております。国際的に は、今後、広くヒト組織を用いた試験データが必要となるのは間違いないと思います  以上、述べてきましたように、また、私どもの要求とその根拠については提出させ ていただいております資料の中で縷々述べておりますが、最後にここでまとめさせて いただきます。  研究開発の過程でヒト組織の活用ができれば、安全性、有効性についてより的確な 評価が可能となり、また、無駄な動物試験や臨床試験の削減につながることになりま す。動物愛護の観点からも動物試験が減ることは私どもにとりましても歓迎すべきこ とであります。  また、今よりも安全性や有効性についての科学的外挿の確度が上がることによって 臨床試験を削減することができるとともに、より安全な臨床試験を実施することがで きるようになると考えられます。  一方、国際化が進み、研究開発のボーダレス化が著しく進んでおり、ICH活動に よる国際的調和も進む中、より研究基盤整備が進んだ国ヘ研究の流出が見られます。 研究基盤整備が遅れた国は研究の空洞化が進み、取り残されることが危惧されます。  FDA等では既にヒト組織を用いた試験データの提出が求められており、米国や 英国ではヒト組織を活用するための供給体制、各種ガイドラインも確立されており ます。今や、国際的な医薬品の研究開発においてヒト組織を用いた研究は必須である と言えると思います。  したがいまして、日本においても欧米と同じレベルのヒト組織の研究利用ができる ように環境整備を行っていただきたいというのが製薬業界の希望でございます。その 環境整備としては社会的コンセンサスが得られるための倫理、法律、科学的な面から の検討、倫理上、技術上の指針やヒト組織バンク、供給医療機関のネットワークなど 供給体制の整備、研究する側のヒト組織を取り扱う際の技術的基準や安全基準などの 整備を考えております。  環境整備が整った暁には、私ども製薬企業は決められたルールに従って、その範囲 内で医薬品の研究開発に利用させていただく所存です。以上で業界からの意見陳述を 終わらせていただきます。貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。 ○黒川委員長  ありがとうございました。ここでご質問、いくつかあると思うのですが、ちょっと 今日のそちらの専門委員のHAB協議会の方からも20分程、伺わせていただいて、 それから両方について先生方のご意見をいろいろとしたいと思いますのでよろしく お願いします。それではどうぞHABの方からお願いいたします。 ○HAB協議会・宍戸氏  HAB協議会の会長の宍戸でございます。この度、図らずもこの「ヒト組織を用い た研究開発の在り方に関する専門委員会」より私どもHAB協議会に対してその 在り方に関連してHAB協議会の現状と、それを踏まえた意見を開陳せよとのお話 でございまして、私ども、大変光栄だと思っております。  実際、また、後に述べますように、HAB協議会の設立の始めから、ぜひ、こうい う機会、委員会などがあって、私どもの考え方を聞いていただきたいと、こう思って いたわけでございますので、本日の機会を与えていただいたこと、大変嬉しく思う 次第であります。  本日は話の順序といたしまして、まず、始めに、HAB協議会の成立とその活動の 大要を述べまして、次にさきほどございましたけれども、現状における我が国の 医薬品開発におけるヒト組織の必要について概説的に私どもの意見を述べさせていた だきます。  継いで、ヒト組織の有効利用に関する国際的現状にも触れまして、最後に、これら の現状を踏まえまして、かつ私どものHAB協議会の過去4年間の活動に根ざしまし て、ヒト組織を用いた研究の在り方に対する私たちの将来、望まれる仕組みについて の要望を述べさせていただきたいと思います。  なお、本日は委員各位の命題に基づいて私たちHAB協議会にこれまでの活動の 実績や今後の方向などについていろいろご意見なり、ご質問があろうかと思いまして 当会の副会長である佐藤哲男さん、元千葉大の薬学部の教授でございます。それから 同じくHAB協議会の理事であります重松昭世さん。財団法人生体科学研究会の 理事長でございますが、のお2人を同伴いたしまして、専門的な問題などについて、 もし、必要によっては私に代わってお二方のどちらかにお答えをお願いいたすかもし れませんので予めご了承ください。  お手元の資料2が私どもに関する資料でございます。はじめに、まず、さきほど HABと委員長はご紹介いただいたのですが、私たちはこれはヒューマン・ アニマル・ブリッジの略でHAB協議会と申しておりますので、ちょっと訂正させて いただきます。  はじめに、HAB協議会の設立とその活動について申し上げます。まず、1994年の 2月に発足しました協議会設立の目的を簡単に申し上げます。  第1に、我が国における医薬品の適正な使用と安全性の確保を目指してヒト試料を 有効利用する研究の推進を図ること、第2に、具体的に新鮮ヒト組織を使用のため、 手術等で摘出した組織の授受、保存、譲渡に関する国内ネットワークを成立すると。 第3が、ヒト組織を使用に関する情報を収集して、それを配布すると。  以上でありまして、この結成設立にあたっては、我が国における産、官、学におけ る医学、薬学、獣医学の領域の、この方面の専門の方々にお集まりいただき、さらに いろいろ法律的な問題もございますから、法曹界におけるこの方面の専門家の方も ご参加をいただいてスタートしたわけでございます。  その活動の経過を簡単に申しますと、第一年度(1994年)はまず、我が国の現状と 諸外国の事情等を比較分析して、同時に、この活動に対する社会的同意が得られるか どうか、そういう検討を行いました。この資料の4で簡単に書いてございます。  そして、1995年には主として我が国における具体的な研究の推進をどうしたらよい かというのを行っております。この時点で、ヒト組織を学術的な研究のために、さき ほどお話した公的に提供しているアメリカのNDRI−ナショナル・ディジーズ・ リサーチ・インターチェンジの略でございます−という機関の、資料3ですか、 資料2の中の資料3。 ○黒川委員長  今、ご説明されているのはお手元に今日、配布されている資料2ですね。 ○HAB協議会・宍戸氏  全体資料2でございます。その資料2の中の資料3でございます。 ○黒川委員長  今日の資料の2の中の。 ○HAB協議会・宍戸氏  そのNDRIの研究部長のシュルツ博士に実際にHAB協議会の学術年会に招待い たしまして、アメリカの現状とか、その組織についてのご講演をお願いしたわけであ ります。そして、それはそのNDRIのような臓器配布システムを我が国で構築する ということを目的にいたしました最初のスタートであります。そしてそういうことを 考え、1996年からHAB協議会とNDRIの間にインターナショナル・ パートナーシップというのを締結することにしました。  そのために米国法によって定められた倫理委員会の設置もこの研究会の中で行いま して、いろいろ必要な規則も完備いたしました。この取決めは2年毎に今のところ、 更新することになっておりまして、その結果、このHAB協議会は研究のための 合法的にヒト新鮮組織の提供を受けるようになりました。  1996年には実際に、そういうヒトの細胞を手に入手して研究をスタートすることに なりましたから、またそれに対応して実務を担当する霊長類機能研究所というのを 設置いたしました。引き続いて1997年には研究所を中心にして具体的にヒト臓器、 主に肝臓でございますが、臓器の保存、輸送等に必要な基礎的研究を会員共同で行っ ております。その結果、現在までに臓器の保存条件等の基礎データが積み重ねられて おりますし、一応、薬物相互作用のデータベースの研究が会員共同で進めている次第 でございます。  以上が非常に概略的なHAB協議会の今日までの研究の進行状況です。以上、はじ めに関連事項を申し上げました上で、改めて、さきほどもご質問ありましたが、 医薬品開発におけるヒト組織の必要性についての私たちの現在、考え方を申し上げた いと思います。  資料2の中の資料5をちょっとご参考にしていただきたいのですが、ご承知のよう に、医薬品の開発の始めには、まず、さきほど申したように候補薬物について 理化学的試験を行い、次に薬効薬理、並びに安全性についての各種の動物試験を 行い、それからヒトの臨床試験を行うわけであります。動物を用いた非臨床試験と 臨床試験の間には、その成績がよく一致する場合もありますし、また、時には非常に 違うという場合もあります。  その原因については、さきほどいろいろ分析がございましたが、多くの問題の中で 動物とヒトとの間の種の差というのが非常に重要であると思います。その意味は、 その原因としての具体的に動物とヒトとの間の薬物代謝の差が原因であると、 こういうふうに一応、考えております。  この問題を解決するひとつの方法といたしまして、動物試験と臨床試験の間に予め 少量のヒト組織、特に、我々の場合は肝臓成分でございますが、肝臓成分を使用した 試験を挿入して、ヒトと動物の間を仲立ちするというふうに考えたいと、それが私ど もの協議会が、HAB、即ちヒューマン・アニマル・ブリッジの名前をつけた理由で ございます。  ご承知のように肝臓は生体のひとつの代謝器官でありまして、薬を含めて生体に入 ってくる外来異物に必要によっては代謝したり、あるいは解毒したりと、こういう働 きがあるわけであります。このことから各種動物試験からヒト試験に移行するときに その間にヒトの肝組織を用いて薬物とヒトの体内に移行する状況を予測するというこ とが、その後のヒト臨床試験の安全性とか、あるいは有効性の試験の効率を高めるた めに極めて有効であると思います。これによって動物試験の規模をある程度、少なく することも可能でありますし、臨床試験をより合理的に実施することができるわけで あります。  あとで述べますように、アメリカではもう既に動物試験の早い時期にヒト試験を 行ったりしておるわけでございます。一般的に言いますと、これによってより良質な 薬剤の開発が可能になりますし、一方では、さきほどからいろいろ出ております薬の 副作用の予測をしたり、あるいは回避に役立てることもできるわけでございます。  今や、薬剤のヒトに対する実際的な基礎開発の研究、あるいはまた医薬学的に見た ヒトに通した場合の薬の相互作用の基礎的研究、さらに一般的に言いますと薬の 副作用の原因探索の基礎的研究にはヒト組織の一部を使用することは必要不可欠なも のと考えられるようになったと思います。これによりまして、一般に広く言いますと ヒト組織の使用というのは、最終的には、ヒトの福利厚生の向上に大きな貢献をする のではないかと考えております。  さきほどちょっと触れられましたが、ヒト組織の有効利用に関する国際的現状につ いて一言触れますと、医薬品の開発に使うことにつきまして、まず、さきほど米国が 非常に進んでおるとおっしゃいましたが、そのとおりでありまして、米国ではもう 約10年以上前から米国の食品医薬品庁(FDA)のガイドラインに基づきまして 新薬の承認審査の際にはヒトの肝臓成分を用いた薬物の代謝が要求されておりますし ヒト組織の薬効薬理の基礎的研究、並びにヒトに対する安全性の調査研究の中にヒト 組織を用いることは公認されているわけであります。それによって疾病の治療のため に必要な医薬品の開発研究には従来に比べて使用実験動物の数は非常に最小限になり ますし、より安全性の高い医薬品が社会に供給されることになるわけです。  ヨーロッパの現状はどうかと言いますと、あまり詳しいことはわかりませんけれど も、英国では1996年に国家機関にある医学研究会議の支援の下にファルマジーン社と いうのが設立されまして、医薬品の開発にヒト組織を用いた広範な試験が開始されて おります。英国以外の国でも同様な傾向がございます。  以上がアメリカを含む世界のヒト組織の利用状況でございまして、HAB協議会は このような状況の下でスタートしたのでございます。次に、具体的に私たちの立場か ら見て我が国におけるヒト組織の活用の在り方についての、まず要望というか、ある いは意見具申というべきものを申したいと思います。  第1に、ヒト組織の使用についてのインフォームド・コンセントでございますが、 患者さん達の善意からのヒト組織の提供を可能にする道としては、さきほどからあり ましたようにインフォームド・コンセントの実行が第一条件だと考えています。  我が国ではヒト組織材料の提供を受ける場合には、第1段階としては患者さん達の 善意による手術材料の有効利用があります。この場合、法制度的には問題があまり少 ないと思いますけれども、専らインフォームド・コンセントの成立が大切であると考 えられます。  私どもはインフォームド・コンセントについて臓器摘出手術に関する同意書、並び に、それを踏まえて手術で摘出された臓器の処理についての同意書と、2つの形の 同意書をいただくという形式を取りまして、ドナーの方々の善意にお願いするという ふうにしたいと考えております。(資料1−2、様式1、2)  それから、ヒト組織に関する第2段階としては、脳死提供からのヒト組織の利用と いうことがございますが、この場合には我が国においては、まず、いろいろ法制度的 な見直しが必要でありますし、これには特に、世論の一般的な信頼が必要であると 考えております。  従いまして、脳死材料については、生前の提供者に対するインフォームド・ コンセントとは別な形の何か承諾書みたいなものが必要でありましょうし、場合によ っては家族の方のご同意とか、そういうのが必要になるのではないかと思います。  それから、ヒト組織を用いた研究開発の範囲の問題でございますが、今、現在、 医薬品の適正の開発、使用についての安全性の確保を目途にいたしまして研究開発を 考えておりますが、一般的に言いますと、ヒト組織を用いた研究開発について、"実施 すべきでない研究範囲"を予め決めるということが必ずしも研究という本質から言いま すとなかなか難しい問題だと思いますが、私はむしろヒト組織を用いるという本質か ら言えば、"一般的に倫理にもとることのない研究範囲"とそういうふうにきめること が基本方針だと思います。  個々の研究の適宜と判断についてはむしろ、後でも言いますけれども、ヒト組織の 材料を配布する、そういう機関と言いますか、そこで負うべきではないかと考えてい ます。後で述べますように、供給体制は公的性格を持っておりまして、供給について は、その体制に属する倫理委員会の組織によって監視しなければならないと、こうい うふうに考えております。  供給体制の問題でございますが、組織を提供する、組織が提供者の善意によって 提供されるということでありますし、それにはどうしても医療機関の協力が不可欠で あること、従いまして、我が国では、厚生省監督下にある非営利法人が供給体制とし て必要であると、こういうふうに思います。  例えば、アメリカでは中央の政府の機関の中にFDAに属します研究資源課、 オフィス・オブ・リサーチ・リソーシスというのがございますが、その指導下で実際 に供給をNDRIとかIIAMでそういうものを非営利の法人がそれを使っていると こういうことでございます。そういうような形が望ましいと思います。  この組織は、私見としましては、むしろヒト組織の材料の申込みの受け付けから、 末端研究利用者への配布に至るまでのコンピューター・ネットワークの構築と、 こういうことを含めまして一括する管理法人が望ましいし、この法人の経営には 公明、公正、透明性を厳守する条件で、設備投資を除いては経営的にはむしろ 独立採算の法人が望ましいと、こういうふうに考えています。  この供給体制は、単なる臓器配布機関ではなくて、日進月歩の科学の進歩に対応 して臓器の輸送など、実際的問題を解決するための研究資源センター的な機関に保持 させることが望ましいと思います。このことはまた貴重な組織の有効な利用のために はぜひ必要ではないかと思います。HAB協議会に霊長類機能研を付属させて今、 活動しておるのは、そのためでございます。  従いまして、供給体制の整備についてはコンピューター・ネットワークを中心とし た管理業務と、実務を担当する研究資源センターみたいなものが必要でございますか ら、それを併せますとかなり高額な資金が必要ではないかと考えております。  供給者に対する謝礼の問題ですが、提供者、もしくは摘出者のお医者さんに対して の謝礼については、摘出手術材料の場合は、提供者の術後の治療に役立つという特殊 検査を無料で提供するというような形で、提供者および摘出者の善意に報いるべきで あると思います。 摘出に必要ないろいろ実費を除いては、やはりそれ以上の謝礼を考えない方がいい と、こういうふうに考えるものであります。  最後に、ヒト組織の情報の取り方についてでございますが、臓器提供者、ないし 提供者の個人のプライバシーの保護については万全の方策を取るべきであります。 その前に医療機関からの漏出の制限ということが最重要点であると思います。 なぜならば、医療機関というのは、個人に特定する情報、特定できない情報というも のを明瞭に持っているわけでございますから、その立場で十分、情報の取り扱いは慎 重になるべきだと思います。  同時にまた、そういう個人のプライバシーを守られるという範囲内では、その貴重 な資源でありますから、その情報は、公正、かつ公平に有効に活用されることが必要 であると、こういうふうに思います。  最後に、扱う研究者の安全性の確保の方策でございますが、研究に用いるヒト臓器 というのは、原則としては正常臓器を扱うわけであります。しかし、臓器によっては 未確認な微生物の汚染とか、そういう場合もありますから、研究者の安全確保の方策 は大変重要であると考えております。  我々が扱っております肝臓臓器の場合は、ご存じのように、肝炎ウィルスの汚染と いうのが当然、可能性があるわけでございますが、そういうふうな臓器の取り扱いに ついては汚染防止のために十分、注意しなければなりませんし、その取り扱う者に対 する教育訓練と臓器輸送の場合の梱包の問題とか、そういうものについて十分、規制 が必要だと、こういうふうに思います。  最後の問題は、知的財産権の帰属についてでございますが、新鮮ヒト組織を用いた 研究開発をやって得られた知的財産というのは、研究開発の範囲に密着して関係して おります。したがいまして、例えば、提供者本人の術後治療に役立つ代謝機能の検査 などは無償提供するという前提であるべきであると思います。  また、新鮮ヒト組織の細胞培養とか遺伝子操作の目的で、それを使うというような ことは、別途の法的規制が必要でありますし、社会的合意が必要ではないかと、こう いうふうに考えております。  大変長い時間をかけてお話しして申し訳ありませんでしたが、最後に、まとめまし て、我が国に求められるこのヒト組織の扱いについての将来像について提言を申し上 げたいと思います。  まず、第1は、それは一番その表の資料の5の12頁のところにこの表題の提言につ いてまとめて書いてございますが、まず、ヒト臓器材料の供給体制についてでござい ますが、それについては国は民間との密接の連携の下に、医薬品開発において手術材 料を有効利用するために全国的ネットワークと研究資源センター的な非営利機関を早 急に成立して国際協調に和することを目指すべきであること。第2に、上記の機構を 円滑に運営するには財政的な援助が不可欠であり、さらにそれの活動を支援するため の施策も検討が必要であること。第3に、機構では臨床諸団体との協力を要請して、 全国的な供給ネットワークの確立に努めなければならないこと、以上であります。  それからインフォームド・コンセントについてもう一度申し上げますと、手術材料 の有効利用を推進するためには、インフォームド・コンセントを確実に実施するとい うことが大切であります。それには患者と医師との間の信頼関係の確保が大切である と考えております。  また、社会的環境の整備については、第1に、医薬品開発にヒト試料の有効利用に ついての広報活動を通じて世論の支持を得ることに努めなければならないと、第2は 将来は具体的にヒト臓器移植の不適当な臓器が、善意によって提供された場合を考え て、それに対する法体制とその貴重な材料を受ける体制について十分な検討が必要で あると、以上であります。どうもご静聴ありがとうございました。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。この両方からのいろいろご意見と資料に沿った 説明をいただいたわけですが、どうぞ、先生方の方からいろいろご質問があると思い ますけれども、よろしくお願いします。どうぞ。 ○木村委員  大変に貴重なご報告をお伺いすることができまして、いろいろ教えられたわけです が、今日、2つの団体からお伺いした中で、先進諸外国の状況と日本における状況と のギャップがあるということが非常に明確になってきたと思うのです。  質問なのですが、製薬工業協会の方からのご報告の第1頁目に、日本におきまして は創薬研究でのヒト組織の活用がほとんどできない状況であるということで、 一番最後の方で基盤整備が必要であるというふうにお話をいただいたわけですが、 ほとんどできない状況であることの理由がその基盤整備ということに表れているかと 思うのですが、今、HABのご報告にもございましたが、日本製薬工業協会としては この状況をどういうふうな理由によってこれが出てきているのかということをちょっ とお伺いしたい。どこにその問題があるかということをちょっとお伺いしたいのがひ とつなのです。  それとHABの方にも質問がございますけれども、HABの方は何回も繰り返して ご報告いただいたように、倫理にもとることのない研究開発をすると。これは 日本製薬工業協会の方も同じことだと思うのですが。それはいろいろHABの 資料の3のところで94年の第1回の学術大会とか、あるいは第2回の95年の大会とか でいろいろ社会、世論、研究、その他ということで、我が国における独自の方法での 今後の在り方を検討しているようなのですが、我が国独自の道として手術材料に着目 ということなのですが、そこのところがちょっと我が国独自の道として手術材料に着 目するということの背景がちょっとわからないので、ご指摘いただいて、なお、それ に関連してお答えを聞いた上でまた質問がございますけれども、いかがでしょうか。 2つばかり。 ○日本製薬工業協会・奥田氏  最初のご質問ですけれども、我々の認識では日本ではヒト組織を研究開発に用いら れないという認識をしています。ですから、今、使っていますのはアメリカから試薬 として輸入していますヒト肝ミクロソームエキスですね。これを吸収、代謝、排泄等 の実験には使っておりますけれども、それ以外には使っておりません。ですから、 欧米と同じ創薬研究開発ができるような環境整備をしていただきたいというのが我々 の主張でございます。 ○HAB協議会・宍戸氏  我が国ではご存じのように臓器移植法がございまして、臓器移植法で臓器を取り 扱った場合、その後については厚生省令によって、これは処分することになっており まして、絶対使えないようになっております。  そういうことでございますから、こういう状態がやはり日本ではまずスタートとし ては手術材料を使っていろいろやりたいと、こういうことで学術会議あたりでもそれ に対する手術材料の取り扱いについていろいろご報告も出しておりますが、そういう 形で私たちとしては、まず、そういうことが可能な手術提供者が善意でもって提供 されるならば、それは利用できると、こういうことでHAB協議会としてはスタート していると、こういうわけでございます。 ○木村委員  続いて。大変明確なお答えをいただいたのですが、私もアメリカの生活が長かった わけですけれども、アメリカではアナトミカル・ドナー・アクトというのがあって、 これは臓器移植だけではなくて、研究開発のために提供も可能な形に、今、なってい るわけです。  製薬工業協会の方のご指摘によりますと法的、および科学的な面の検討もお願いい たしますというふうにここに書いてあるわけですが、将来、移植法の改正その他によ って人体の臓器の一部を研究開発に使えるようにというような法的な提案も含めて 製薬工業協会としては対応していただきたいというふうに考えておられるのでしょうか。 ○日本製薬工業協会・奥田氏  委員長、お答えしてよろしゅうございますか。 ○黒川委員長  どうぞ。 ○日本製薬工業協会・奥田氏  まだ、我々の考え方がそう深く詰まってるわけではございませんけれども、基本的 には製薬企業は医薬品というのは本来、もともと国際的な商品でございますから、 日本だけということではありませんので、やはりヨーロッパ、アメリカと同時に開発 すべき商品だと考えておりますので、そのときのやはり欧米の製薬企業と対等の 研究開発をやるためには同じ土俵がほしいと考えています。  ただ、欧米と日本とやはり文化も違いますし、宗教観と言いますか、それに派生 する死生観なんかも違いますから、日本の風土の中である程度、日本だけに制限が つくというふうなことがあっても、それは仕方がないのかなというふうには考えて おりますけれども、今の段階でこの範囲に限定するというふうなことは考えておりません。 ○木村委員  関連の最後の質問ですけれども、大変恐縮ですが、今、HAB協議会の方の資料の 4というのを見ますと、ちょっとこれを見てみたのですが、オランダで、ユトレヒト で会議をやった記録なのですけれども、ヒト組織の入手方法のところで、これはヒト 肝組織の入手に関してなのですが、ヒト組織の供給源も重要な問題であると、2頁に 記してあります。  まず、死体からの材料はほとんど価値がないと書いてあるのですね。これ一般の人 が読みますと、それでは生きている体からの材料ということになるのでしょうかとい うふうになるのですが、その先を読んでみますと、ヒト組織は可能な限り、新鮮であ り、また適切な方法で保存されていなければならないと。医薬品の開発に使われる ヒト組織は基本的には移植用として不適合な肝臓であるというふうに書いてあるので これを続けて読んでいきますと、なるほど、脳死体からというふうに思うわけですが 原文が死体からの材料はほとんど価値がないと。これはおそらく心臓死ということだ と思うのですか、こういう表現ひとつが日本の文化の中で訳されて出てきたときに、 いろいろな誤解を招くと思うのですね。この点に関してやはりきちんとした対応を 翻訳においてもすることが大事だと思います。  今日、たまたま私、ここにアメリカのドライビング・ライセンスを持っているの ですが、自動車の運転免許証には臓器の移植だけではなくて、いろいろな献体のため のアナトミカルなドナーのこういう記載がありまして、非常にきちんと各項目が明確 になっているわけです。  日本のはもうはっきりと移植のためのみであって、これは厚生省の指導で作ってい るわけですが、日本のは臓器しか使えないわけですので、今、ご指摘いただいたよう に他目的使用になるわけですから、他の目的のために使うということは許されないわ けですが、おそらく今後、倫理的な問題点も含めてこの問題を取り上げていかなけれ ばいけないと思うのですが、その点についてHAB協議会の方はこの法律の改正をも 提案したいのかどうかということ含めてちょっと最後にお伺いしたいと思うのですけ れども。 ○黒川委員長  どうぞ。 ○HAB協議会・宍戸氏  いくつかの会議については佐藤教授が実際、出席されておいでになりますので。 ○HAB協議会・佐藤氏  佐藤でございます。ただ今、ご指摘のユトレヒトの会議の翻訳というのは、あるい はそういう誤解を招くかもしれません。アメリカの出席者がそのときに発表された 内容の中で使われた肝臓はほとんど移植肝の不適合のものであります。それは非常に フレッシュな形で材料が提供されているものです。ですから、米国ではそれを十分に 有効活用をしているというような発表が多かったです。  それともうひとつ後半のご質問ですが、我が国における法的規制については、昨年 臓器移植法が通りましたが、不適合のものをどうするかというのはこれからの問題に なるだろうと思います。これについては、やはり法整備がきちんと整いませんと、 我々としては、その患者さんの善意があったとしても使うことはできないということ で、法整備が前提になろうかと思います。 ○HAB協議会・重松氏  少しだけ補足してよろしゅうございましょうか。 ○黒川委員長  はい。どうぞ。 ○HAB協議会・重松氏  大変貴重なご質問だと思うのですね。私ども、何でアメリカから脳死の移植不適の ものを改めていただかなければいけなかったかと言いますと、非常に貴重なヒト 新鮮材料であるという理由によります。おっしゃったとおり、時事刻々とヒト新鮮組 織は劣化してまいります。組織、細胞、細胞成分等の各レベルで劣化の程度は異なり ます。新鮮ヒト組織の入手が法的にも可能なるまでは、日本での入手は大変難しい 問題があるのではないかと。国民感情もございますので。では、どうしたらいいのだ と。手術は結構なことではないかと。一応、インフォームド・コンセントが取れれば の話です。一応、日本では許されるのではないかと思っております。  ただし、さきほどのご指摘の、では使えるのですかという、はっきり言えば使える のですかというご意見ですね。ユトレヒトでは使えませんと。手術というのは大変 虚血を起こしますので難しいわけです。ですが、日本においてはどこまでは使える。 どんなぐらい劣化が進んでも使える。どこまでならもうちょっと使える。そういう 判断基準が日本では今はないわけです。世界でもそういうふうに丹念にやったものは ないと思います。そのためには米国からどうしても冷蔵の状態で提供して頂き、 しっかりとしたvalidation studyをすることが必要なわけです。それが熱意でござい ます。補足させていただきました。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。溝口委員、どうぞ。 ○溝口委員  いろいろ話を伺っていると、臨床試験入る前の段階である程度、有効性であるとか 安全性が予測できるということで、かなりなかなか有用な方法ではないかというふう に感じたわけですが。  HAB協議会の今までの活動を少し知りたいと思いまして、御質問させていただき ます。この19頁の協議会の組織図というのを見ましたのですが、アメリカNDRIか らの、ヒト組織の流れというのが斜線の入った矢印で書いてありまして、日本の国内 医療機関からのヒト組織の流れの矢印も同じぐらいの太さで書いてありますが、現実 にはこれはほとんどないということでございますか。今までは。 ○HAB協議会・佐藤氏  全然ございません。 ○溝口委員  ございませんですね。 ○HAB協議会・佐藤氏  ちょっと補足させていただきます。この矢印の太さで言いますと日本国内の医療機 関からもアメリカと同じぐらい入っているというふうにお読みになるかもしれません が、これは私どもが、例えば、外科手術、あるいは医学部の先生との共同研究とか、 そういう形で手に入れたものでございます。ですから、矢印は同じでありますけれど も、NDRIから入ってくる肝臓とこれとは質が違うというふうにご理解いただきた いと思います。 ○溝口委員  量的にはほとんどNDRIのものということですか。 ○HAB協議会・佐藤氏  はい。そうであります。 ○溝口委員  もうひとつは、さきほどお返事があったように思うのですが、このNDRIの現状 をもう少し知りたいのですが、ヒト組織の由来が脳死、あるいは心臓死、あるいは 手術材料とあるかと思いますが、その割合は現実にはもうほとんど脳死由来のものな のでございましょうか。 ○HAB協議会・佐藤氏  はい。現在まで私どもには15体入っておりますけれども、すべてが脳死でございま す。その原因はいろいろございまして、例えば、事故死とか、あるいはショットガン で死亡したとか、いろいろございますが、最終的には脳死の人の肝臓です。 ○溝口委員  どうもありがとうございました。 ○黒川委員長  どうぞ。 ○柏木委員  少し方向が違う質問なのですが、私、臨床の現場で仕事をおりまして、インフォー ムド・コンセントの場合に日本において家族の位置づけというのが非常に大きいと思 うのですね。患者さんとうまく話し合いがついても、家族の反対でいろいろなことが うまくいかなくなる。特に、ポッと出症候群という勝手な名前をつけているのですが 新潟県の人たちが長男がポッと出てきて、全部引っ繰り返してしまうというようなこ と、やはり起こるのですね。  おそらく今後、こういうことが進んでいったときに、実際に家族とのインフォーム ド・コンセントが、私もアメリカでしばらくおりましたけれども、ほとんどアメリカ では問題にならないようなことが非常に大きな問題になる場合が日本にはあると思う のですね。  製薬工業協会とHAB両方の方にお伺いしたいのですが、家族のインフォームド・ コンセントというようなこと、どういうふうに考えておられるのか。私はこれは日本 において非常に重要だと思うのです。  具体的に言えば、HABの12頁のところのインフォームド・コンセントの2行目に そのためには患者と医師との信頼関係という言葉が、ここに家族が抜けているわけで すね。そこへ意識的に入れないといけないほど、私は家族の問題というのは非常に 日本においては大きいと思うのです。これはちょっと基本的にはおかしい。本当は 患者のコンセンサスだけでいいのだということは基本なのですけれども、現実に臨床 の場で仕事をしていると、この家族というのが本当に大きな比重を占めるのですね。 その辺をどういうふうに考えておられるか、お聞きしたいと思います。 ○HAB協議会・宍戸氏  さきほど私も家族のことということでちょっと触れましたけれども、確かにそれが 非常に大事なことでありまして、アメリカの場合では、ご存じのように、本人のが ちゃんとあればそれで十分行えるわけですけれども、これについては私たちは日本の 風土を考えますと、具体的には非常に難しい問題があると認識しております。  どういうふうにしていいかちょっとまだそれについてはこういう委員会の皆様方の ご意見も伺って、それをとにかく実際的にあとで問題が起こらないような形に インフォームド・コンセントが必要だと、こういうふうに考えております。 ○日本製薬工業協会・吉田氏  特別なご返答はないのですけれども、今、宍戸先生もおっしゃったように製薬協、 我々としましてもやはり患者と医師だけではなくて、日本においては家族の状況とい うのは非常に大切です。柏木先生、ご指摘になったようなことは認識していますけれ ども、それに対してどういうふうに対応したらいいか、またインフォームド・ コンセントを取るときにやはり家族の同意ですとか、あるいは家族に対する説明です とか、そういうのが多分必要になるだろうと、思っています。 ○黒川委員長  どうぞ。梅田先生。 ○梅田委員  今までのインフォームド・コンセントは米国で得られたもので、その試料を製薬 協会もHABもいただいてやっているということ、それはわかりますけれども、 これだとあくまでもまた日本はお金で解決しているのではないかと批判が出ると想像 するわけです。移植でも同じことですね。  今、また同じような話で、日本の風土があって患者、家族のインフォームド・ コンセントが得難いと言われているわけですけれども、それを避けているからいつま で経っても、またお金で解決しようとしているという非難をされるのではないでしょ うか。  やはりHABなりがもう3年ぐらいですか、活動している。その中で、日本の状況 をどう改善しようしているか。ひとつひとつかなりの強い意思を持って取り組む必要 があるのではないでしょうか。手術材料ではほんの少量しか取れない。さきほども ご説明ありましたように虚血状態で使えないというのを使おうとしているわけですよ ね。  それではどうしようもないので、やはり皆で努力して、患者、家族から同意が得ら れるよう、そのことを日本で定着させるようにしなければ、これどうしようもならな い。日本の移植の患者がアメリカに行っちゃうのと、アメリカだけではないですけれ ども、行くのと同じことを、これからここでもまたやろうとしているというような感 じがしてならないのです。  やはり日本の風土があると言いながら、その風土を乗り越えて、この問題を解決す る努力をしないとこれはいつまで経っても、どうしようもないというような気がしな いではないのです。私の意見です。 ○HAB協議会・宍戸氏  全くおっしゃるとおりでございまして、今、日本の風土をすぐにどうするわけにも いきません。結局、臓器をこういうふうに使用することが本人だけではなくて、いろ いろな一般の病気の原因やら治療に役立つというようなことを専門家がPRする。即 ち、こんなに役に立つのだという具体的なデータを日本で積み重ねていくのが我々の ひとつの方法であると考えます。  そういたしますと、こういうデータがあるし、ぜひ、これは世界の情報を見てこう だということを、私たちは『ニュースレター』という広報雑誌を出しています。そう いうところでもいろいろな人にものを書いてもらったりしながらPRしておりまして そういう学会も公開しておりまして、それでその学会の席上でもそういう問題につい ても毎回、議論しております。そういう形でだんだん皆様方のご理解を得てやはり スタートしていくと。  それにはやはり技術的な面ではまだ日本の在り方、多少、遅れているという点につ いてはやはりこれを変えて、さらにむしろもっと世界の技術を、もうちょっといい 技術が開発されれば、それは大いに役に立つと、そういうようなことで具体的にした いと思いますが。 ○HAB協議会・佐藤氏  ちょっと追加させていただきます。只今、ご指摘の件はまさにそのとおりでありま して、私どもが1996年にHABができて、ごめんなさい、94年にできて96年から肝臓 が入っているわけです。その94年のときにNDRIとのインターナショナル・ パートナーシップを結んだときの条件としまして、日本にそういうネットワークがで きるまで暫定的に供給するということが書いてございます。  ですから、96年から肝臓が入って、私どもがそれを使いはじめてまだ2年でござい ます。アメリカでは聞くところによりますと、ネットワークを作るのに10年かかった ということでございます。ですから、私どもは2年、僅か2年でございますが、 やはりアメリカのシチュエーションに向けて進みたいと。現在、行っているのが現状 でございます。  そのためには、国内で一番大きな問題は、さきほどお話が出ました法改正、法整備 の問題であります。それから、もうひとつは倫理的な問題でありまして、これはどこ でこの話をしても必ず言われることでありますが、倫理的な問題ということが言えま す。  この倫理的というのは私、個人的には感情的な部分がかなり入っているのではない かと思います。倫理の中には感情が含まれるのかどうか知りませんけれども、倫理的 および感情的と言った方が正確かもしれませんが、そういう形で特殊な風土の中で 社会的なコンセンサスを得るように努めるべきであると考えます。それが私どもの 仕事のひとつでございます。  それから、さきほどご指摘がありましたところの、手術材料が役に立たないという ことについて、若干補足させていただきます。手術のときにその執刀医が肝臓を取り まして、その辺に置いて、それが温阻血で2時間も3時間も5時間もたったものは役 に立たないということであります。手術中に取り出した肝臓をすぐ凍らせたものにつ いては大いに役に立つわけであります。ですから、そういう形のネットワークを国内 で作りましたら、それは十分に役に立つというふうに考えております。 ○黒川委員長  ちょっと伺いたいのですけれども、今までの話はフレッシュな肝臓の細胞を代謝に 使うというのが主だったのですが、HAB協議会は今まで肝臓以外はどれぐらい輸入 しているのか。主なのは肝臓なのかということがひとつと。  それから、製薬協、両方に伺いたいのですけれども、肝臓のヒトの細胞はHep G2と かいろいろなのがありますよね。セルライン化されているもの。それとフレッシュで はどれだけ違うというサイエンティフィックなエビデンスがあってフレッシュな 肝細胞でなくてはいけないという議論を展開されているのでしょうか。 ○HAB協議会・佐藤氏  よろしいですか。 ○黒川委員長  はい。どうぞ。 ○HAB協議会・佐藤氏  只今ご指摘のセルラインというのは、例えば、1つのP450分子種でしたら 1種類のセルラインでございます。ですから、10種類のP450が関係しているとき は10種類のセルラインを使わなければならないということです。  それから、最近では、P450の発現系も市販されておりますが、それも各分子種 別であります。ですから、肝ミクロソームはそれはすべての分子種を含んでいるわけ でございまして、一度に結果がわかるというメリットがございます。それから、 P450だけではなくて、さらに進んでの抱合反応の酵素もすべて肝臓の中に含まれ ておりますので、それも肝臓を使うひとつのメリットになるということでございます ○黒川委員長  そうするとサイエンティフィックに取りたい情報から言うと、フレッシュな肝細胞 でなければ圧倒的に不利だというお話ですか。要するに、セルライン、肝臓由来の 人間の肝臓由来のセルライン、いくつもありますよね。そのコンビネーションを 使って、同等近いデータは得られるか得られないかということをどれだけ サイエンティフィックにあれできるかという話を。 ○HAB協議会・佐藤氏  私は得られないと思います。 ○黒川委員長  データがあるのですか。もうひとつ伺いたいのは、HAB資料の14頁ですが、 薬物の代謝、15頁、ごめんなさい。ヒト肝薬物代謝酵素活性の個人差というのがあり ますよね。例えば、4A1、全然ないのとかなり活性があるやつだと酵素活性で バラツキがありますよね。例えば、一番後ろの4A1は5番の人と9番の人では だいぶ違うわけですが、こういう差があるのにあるひとつのある人の肝臓由来の 肝細胞、フレッシュを取ったときにどれだけのことがこれでいくとできるかというの は何かわかっているのでしょうか。 ○HAB協議会・佐藤氏  よろしいですか。 ○黒川委員長  はい。どうぞ。 ○HAB協議会・佐藤氏  2つのメリットがあります。1つは、例えば、患者でしたら患者の手術材料を1g なり2gなり取りまして、そのP450分子種を全部測定することにより、患者固有 のデータが出てきます。それを参考にして治療に使うというのが1つのメリットがあ ります。  それから、もう1つは、医薬品の開発に使う場合には、現在は多くの場合、複数の ミクロソームをプールして使っております。ですから、10種類のものをプールして 試験に使うというような使い方をしております。これはアメリカでもそうですし、 私どもも今後そういう形でやりたいと思っております。 ○黒川委員長  今の前半のお話はある患者さんの何かをするのに、その患者さんの1gの肝臓をと おっしゃったけれども、この目的とはちょっと違うのではないかと思うのですけれど も、いかがでしょうか。 ○HAB協議会・佐藤氏  それは手術材料が手に入りましたときには、やはりその患者に貢献するような形の 使い方がひとつ必要かと思います。 ○黒川委員長  それはある程度、治療診断的な目的だから患者さんのインフォームド・コンセント があって、その検査のウエイトさえあればバイオプシーと同じじゃないかと思うの ですが。 ○HAB協議会・佐藤氏  目的としてはバイオプシーと同じだと思います。 ○黒川委員長  そうするとそれはちょっとこの議論には当てはまらないのではないかと思うのです が、どうでしょうか。 ○HAB協議会・佐藤氏  では、後半だけ申しますと、プールドミクロソームを使うのが主流でございます。 ○黒川委員長  私が考えているのは、いろいろなセルラインをそうすると混ぜるとどうなるかとい うのはどうでしょうか。 ○HAB協議会・佐藤氏  セルラインというのはご存じのように、まさに酵素あるいは遺伝子そのものであり まして、発現系の場合も同じであります。それとミクロソームとの違いは複数の セルラインを混ぜて使ったらミクロソームと同じになるというものではございません でして、やはりそこにはリピッドの存在もありますし、いろいろなものが混在してお りますので、酵素そのものを混ぜたから全部ミクロソームと同じ組成になるというこ とは言えないと思います。 ○黒川委員長  それはそうですけれどもね。 ○梅田委員  肝臓のセルラインは限られてはいるのですけれども、例えば、東京慈恵会医科大学 の永森先生が出しているのはお使いになっているのですか。 ○HAB協議会・佐藤氏  永森先生は実は昨年の学術会議の毒科学研連主催の会議のときにご講演をお願いし まして、いろいろお話を承ったのですが、私どもは使っておりません。 ○梅田委員  永森先生はあまり出しておられないと思うのですが、永森先生のところは非常にい いセルラインを持っているはずです。ですから、そういう細胞を使ってみるといった 研究はしないと具合悪いと思うのです。やはり、我々も永森先生にそれを出すように 促すとか、そこら辺は少し協調しないとうまくいかないのではないかと思います。 ○HAB協議会・佐藤氏  そうですね。去年の学会でお話を承りましてそのとおりでございます。やはり今、 委員長、ご指摘のようにセルラインとミクロソームというのは使う目的が違いますし それから、関与するP450分子種を特定するというように限られた目的には セルラインは有効だと思います。それから、一般的に使う場合にはやはり ミクロソームが有効だと思います。 ○黒川委員長  いや、だけれども、さっきアメリカではいろいろなものを混ぜるとおっしゃった けれども、混ぜるほど、たくさんのソースからの肝臓があればいいけれども、日本 ではひとつ出るかどうかの瀬戸際だということで臓器移植法以来やっているわけです から、かなり遠い将来の話では可能だと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○HAB協議会・佐藤氏  動物とヒトのギャップよりは個々のヒトのバラツキの方がまだ小さいと思います。 ○黒川委員長  そうすると、それはある程度、ストアされたものなのですか。 ○HAB協議会・佐藤氏  そうです。 ○黒川委員長  ストアされたものがプールされているということですね。 ○HAB協議会・佐藤氏  そうです。 ○日本製薬工業協会・小池氏  委員長、いいですか。 ○黒川委員長  今の返事?どうぞ。 ○日本製薬工業協会・小池氏  佐藤先生の方からだいたいお答え出たと思うのですけれども、永森先生のお話が ありましたが、それ以外のものにつきましては、やはり培養途中に活性が劣化したり あるいは培養条件というもの、あるいは培養のための成分によっての アーティフィシャアルな変化等々、先生、すでにご存じのことと存じますが、 非常に難しい部分があります。  それと、やはりこれはあくまでもモデルですので、例えば、スクリーニング的には 使えるかもしれませんが、最終的にヒト生体でどうであるかというのを外挿するため の手段として、やはりフレッシュなものを決め手として、全部に使う必要はないかも しれないですけれども、決め手としてはやはり、ぜひ、必要なものではないでしょう か。 ○黒川委員長  それはわかるのですけれども、ちょっとHABの資料の10頁の一番下の段から 5行目に、ヨーロッパ連合の薬物相互作用試験ガイドラインでは、ヒト肝臓成分を 用いた代謝試験が要求されていると書いてありますよね。10頁下。  これを読んでいるとそういうふうに要求されているとちょっとわからないのですが まだ、ちょっと時間がなくてずっとは見ていませんが、要求しているわけではないの じゃないかと思うのですけれども、どうでしょうか。 ○HAB協議会・佐藤氏  この相互作用に関する試験全体がヒト試料を使ったということを指しているわけで して、個々の項目でヒト試料を要求するというような書き方はしておりません。です から、例えば、EUとFDAの違い、これは相互作用に関してですが、違いというの はFDAのガイドラインというのは非常にin vitroの系を重視して書いております。 それから、EUは臨床における、例えば、その薬物の血中濃度とin vitro試験で使用 した濃度との相関をかなり重要視しております。 ○黒川委員長  ただ、これにはヒト肝臓成分を用いた代謝試験が要求されているというような ニュアンスのことは資料11、12には書いてないのではないかと。 ○HAB協議会・佐藤氏  要求されているという文言はないかもしれませんが、それを使いませんと 臨床データとの整合性がうまく取れないというようなことになるわけです。 ○黒川委員長  理論的にはそうですけれども、今、ないよりはまだいいのではないかという話を私 はちょっと言って、そのセルラインの話とかいろいろ言っているわけで、そちらの方 ももちろんできないのだけれども、セルラインではやらないよりは今までよりは進歩 ではないかと思うのですけれども、さて、どのぐらい、それでは合わないのがあるの かという話はもっと知見というか、経験を増やせば出るのではないかと思うのですが それはどうでしょうか。出ないから駄目だと言ってやらないというのはおかしいよう な気もするけれども、どうでしょう。 ○日本製薬工業協会・小池氏  現状で日本でそういう研究というのは当然、こういう背景がありますのでやられて おります。 ○黒川委員長  いや、セルラインの場合。 ○日本製薬工業協会・小池氏  セルラインも癌化細胞ですね。それでもってさきほど言ったような培養条件等々で 特に我々が今、問題としておりますような薬物相互作用を惹起するような酵素阻害 ですが、こういったものにつきましては、その対象となる酵素の特性がもう変わって しまっておりますので、そういう意味での。 ○黒川委員長  変わってないかもしれないのもあるのではないですか。 ○日本製薬工業協会・小池氏  肝臓薬物代謝酵素、だいたい10種類ぐらいと言っていいと思いますけれども、その 中の主なものにつきまして、我々が本当に知りたいという情報を提示する分子種につ きまして、変わってしまっているというペーパーが既に出ておりますので、そういう 意味では弱いということになると思います。 ○黒川委員長  そうじゃない場合もありますよね。多分ね。 ○日本製薬工業協会・小池氏  はい。そうです。 ○廣部委員  今までお話を伺っておりまして、とにかく医薬開発の我が国における空洞化を避け るためにも、これは前向きに検討していかなければいかん問題であり、その必要性も 重要性も私は薬物代謝は専門としておりますのでよく理解できますし、佐藤先生の おっしゃっていることもサイエンティフィックによく理解できるわけですが、 2つ程、ご質問したいと思います。ICHなど国際的な流れ、枠組みの中で、 いわゆるデータを共有化しようというときに、やはり欧米、その他先進国でやってい る実験の方法、あるいは試料等を共通、規格化したものにしないとデータが意味を持 たないということになりかねない。日本的な倫理問題をクリアする中でそういった 重要な部分は、欧米先進国で既にやられているものと統一を取るような方向に持って いかなければいかんだろうと思うわけですが、この点についてのお考えをうかがいた い。  それからもう1点、さきほど種差の問題がありましたね。動物とヒト、これはもう 非常に違うわけで、だからヒトでやろうということになるわけですが、さっきの 固体差という問題もさることながら、今までお話の中に触れられてなかった人種差と いう問題があると思うのですね。つまり日本人にはやはり日本人のヒト組織、あるい は細胞を使った開発研究が必要で、欧米から得られた細胞組織を使って行うよりも 確度の高いデータが得られるに違いない。ただし、これからは日本だけではなく、 国際的に通用する医薬を開発しなければいけないわけですから、そういう点でいわゆ る人種差という問題をどういうふうに捉えておられるのか。  つまり、これからも欧米からそういった組織を輸入する必要があるのか。それから もちろん日本でのシェアを考えたときには、日本人の組織が絶対的に必要なのだとい うように考えておられるのか。その2点をご質問したい。 ○日本製薬工業協会・関根氏  製薬協の方からお答えさせていただきますけれども、第1点のICHの問題に関連 してでございますけれども、これはやはり国際的に同一な試験をやって、そういう データを扱っていきたいという方向ですので、私たちもやはり同じようなヨーロッパ とアメリカ、同じような実験をしていきたいというふうに考えております。  アメリカではさきほどの最初の説明にもありましたように、ヒトでの試料を使って の実験が推進されているのが現状でございます。  それから、後半にございました種差、主として人種差の問題でございますけれども ヨーロッパ人とヒトの場合では薬物代謝酵素の場合に遺伝多型とか、違いが既に知ら れているものがいくつかございます。そういうような観点から言いましても、やはり 私たちは日本人でのデータを出して違いがあるという点をはっきりさせていくという ことがこれからの場合に必要であろうというふうに考えています。 ○HAB協議会・佐藤氏  只今の製薬協の方のお答えと私は全く同じ答えを持っているわけでありまして、 人種差というのはやはり日本では日本人の材料を使ったデータが必要であろうと 思っております。 ○西山委員  よろしいですか。ちょっと話題が変わるのですが、今までと。 ○黒川委員長  今のちょっと。それでは今の話題についてどうですか。他に。今の話題でちょっと もういいですか。  それでは人種差の話は。人種差の場合、アメリカの場合は東洋系もブラックも ホワイトもいるわけで、そこにどれだけの担保されているかということについて何か コメントありますか。  つまりアメリカの場合はある程度、ミックスされているのに日本は比較的 ホモジニアスだという話からすると、そういう配慮をした上でデータが解釈されてい るのかなというのがちょっとわからないので伺いたいのですが。つまりアメリカの 場合というのはかなりミックスしたデータがもともと出ているということですよね。 どうぞ。吉田さん。 ○日本製薬工業協会・吉田氏  実際にまだはっきりわからないのですけれども、今のICHでの話し合いでは、 臨床試験の場合に外国データをどこまで使えるかどうかということが、今、盛んに 議論されているわけですけれども、そのときに当然、人種差が問題になっているわけ ですが、今、臓器につきましても、個体差が大きいのか、それとも人種差が大きいの かというところが非常に問題だと思います。いろいろな薬理反応でもある、酵素の 反応でも違うと思うわけです。  先生が今、おっしゃったように、アメリカでは人種差ということは逆の意味で言え ないところですから、アメリカ人ですけれども、アメリカ人の中にひいて言えば、 もし、ある製薬企業が日本で欧米データを使いたいとすれば、ある程度いろいろな 人種を含めた集団で試験をすれば使いやすいのではないかということは当然、考えられております。 ○黒川委員長  ありがとうございます。では、話題を変えて西山委員、どうぞ。 ○西山委員  今までの議論の中で出てこなかったのは、ヒト組織を摘出することに関する補償と 責任の項目です。HAB協議会の方にお聞かせ願いたいのは、もし、これで手術摘出 標本をほしいというふうに医療機関に言った場合、その責任体系はいったいどこがど ういうふうにやって取るか、そういうふうなことをご準備なされていますでしょうか そういうふうなバックグラウンドをもう作られて協議会として走っていらっしゃるの か。これをまずお聞きしたい。 ○HAB協議会・宍戸氏  ちょっとご質問の意味がちょっと。 ○西山委員  平たく言いますと、例えば、そちら側と共同研究をしたい医療組織、医療施設です ね。患者さんから切除標本、取ります。そのときに何か事故が起きたとき、その責任 は医者が取るのですか、HAB協議会が取るのですか。そうしたバックグラウンドが 予めもう解られて、こういうふうな形なものでヒト組織を使うというふうな形態が 作られているのですか。 ○HAB協議会・宍戸氏  なるほど。大変難しい問題ですが、まだ具体的にHAB協議会としてははっきりそ ういう体制を整えてやったわけではございませんけれども、具体的にはそういう中に 起きた場合の責任は一応、HAB協議会が取るということでスタートしました。 法制的なことについては具体的に何も決めておりませんけれども。 ○HAB協議会・重松氏  すみません。ちょっと補足説明させていただきます。西山先生の御意見はご尤もだ と思うのですが、私どもは様式1と様式2、それぞれ元来が医療関係の摘出医が お書きになる、従って担当医にお願いをするというのが筋だと思っております。  元来、手術はしなければいけないものなのですね。それが前提でございまして、 それによってたくさん取ろうというような、大変大それたことは考えていないわけで あります。 元来、手術をしなければいけない。患者さんは、ああ、もうわかったと 十分なインフォームド・コンセントがあったと。では仕方がないと。取ろうと。 覚悟を決めたと。そこからスタートしているわけです。でありますからして、 それは全部、摘出医、あるいは医療機関のご責任だと思います。 ○西山委員  よろしいでしょうか。インフォームド・コンセントが成り立つためには様々な情報 の提供とともに、その人に、もし、何かあった場合、提供者に何かあった場合、誰が どう責任を取るかを明確に示さなければなりません。ですから、腫瘍の摘出に関して は研究は研究、取ったあとは取った医者が責任を取るということで考えてよろしいで すか。  それから、医者側とするとインフォームド・コンセントを取るときに、誰がどう 責任を取るか。緊急の場合にどのような形で連絡するかということなしでは インフォームド・コンセントは成り立ちません。  ですから、今までの話を聞きますと一番肝心な部分が欠落しているために、 これから先、大きな問題になってくるだろうということが考えられるのですね。 それでどこまでのものを取るか。それから、正常組織を敢えて取らなければならない かという問題は別個の問題として、そういうふうな、例え僅か、手術の摘出標本の 一部を使うことですら、その辺のところは明確にしておかなければならないところだ とは思うのですけれども。  それで、今後のことを考えると、そういうところがインフォームド・コンセントの 中に確実に欠落している部分ですので、これは新GCPで求められておりますし、 このところはやがて問題になる場所だと。それに対する整理についてお聞きしました  それから、製薬工業協会の方にお聞きしたいのですが、そちらの方で求められてい るヒト組織の利用ですけれども、それはこういうふうなあるところでプールをすると いうふうな公的な機関を要求するものですか。それとも法的な整備の下に、あるいは 法令、あるいはガイドラインでヒト組織を使うというふうなことができたから、 ダイレクトに医療機関と提携をして一部分の腫瘍を自分たちの適した方法でキープを しようとする方向に進まれるのでしょうか。その辺のところ、どちらを重点にされて いるか。 ○日本製薬工業協会・奥田氏  非営利的な公的機関というふうに考えております。 ○黒川委員長  はい。どうぞ。 ○遠藤委員  今まで話題に出てなかったことにつきまして製薬工業協会とHAB協議会の方に 伺いたいと思います。今までのお話は、ほとんど現状ではヒトの肝臓の代謝というこ とが中心であったわけですが、このヒトの情報というのは現在、日進月歩でありまし て、世界中がいろいろ何故にヒトかということについてはそれぞれの観点から研究さ れております。さきほど梅田先生の方から永森先生のセルラインの問題が出てまいり ましたけれども、ゆくゆくはそのようなより非常にすっきりした材料になっていくだ ろうとは思うのですが、その間にいろいろな問題がヒトということについて多々出て くるものと思います。  そういう観点からヒトの現在の肝ミクローソムを中心にした臓器の研究というもの を将来的にどのような方向に拡大して、医薬品の開発に役立てようとしているかとい うことについてもう少し具体的にお話いただけますでしょうか。例えば、吸収、 代謝、分布、排泄という薬物動態の中で、その最初の薬物吸収のところでCaCo-2とい う、細胞はよく使われておるのですが、これが黒川委員長もおっしゃったように、 セルラインとしてはひとつ有用なセルラインだと思いますが、いかんせん、 実際の話を伺いますと、いろいろな意味で形質が変化をしているという問題があるわ けです。私の質問は、今までは肝臓が中心に語られたのですけれども、それ以外につ いても医薬品の開発にとって必要だと思います。そういう意味で将来の展望とか、 希望とか、期待とか、そういうことについてお話を伺えればありがたいと思います。 ○日本製薬工業協会・吉田氏  今、実例でいくつかお示ししましたように、もちろんご指摘のように肝 ミクロソーム、あるいは肝の組織の利用が非常に多ございますけれども、それ以外に もいくつか消化器ですとか、あるいは皮膚ですとか、ありますし、将来はおっしゃる ようにセルラインと言いますか、そういう人工的に作ったセルライン化されたものが 完全に生体内を反映するようになれば、それは理想的だと思います。それまでのとこ ろはやはり我々、生体を使わざるを得ない。要するに、プライマリー・カルチャーを 使わざるを得ないだろうと思うわけです。  使う価値があるものは、今はいくつか限られた臓器なのは事実ですが、将来はいろ いろなフィジオロジーがわかってきますと、使い道が他の臓器にもあると期待され、 将来的には全ての組織が利用できることをやはりターゲットにするべきではないかと 思います。 ○HAB協議会・佐藤氏  私どもの考えを申し上げますと、今、遠藤先生がご指摘なったように、現在は肝臓 の薬物代謝酵素、特に、ミクロソームの酵素を中心に行っております。  ただ、ご存じのようにトラスポーターとかレセプターも種差が非常に大きいのであ りまして、これに関しては多くのペーパーがございます。ですから、そういうものも 将来はやはり取り上げなければならないだろうと考えております。それから、臓器に 関して申しますと、肝臓の他に皮膚とか腸管とか腎臓とか、そういうものも同じ理由 でやはり必要であろうかと思います。  それから、さきほどお話が出ましたCaCo-2とかHepG2というのは私も使ったことが ありますけれども、これらは酵素活性が非常に低いので、1回、2回、使うのには いいのですが、これをルーチンに使うというのはちょっと適していないと考えており ます。 ○丸山委員  HABの方の資料の中に入っております書式なのですけれども、様式なのですけれ ども、実際にこれでなされているのかどうか。あるいはなされているとすると 医師、医療機関、どれぐらいの数、さきほど溝口先生の矢印の太さにも関係すること なのですけれども、日本の医療機関のどのあたり、どのぐらいの数、あるいは医師の どのぐらいの数に行き渡っているか、ちょっと教えてほしいのですが。 ○HAB協議会・宍戸氏  矢印が必ずしも大きさ、太さ、ただ、モデルとして書いたわけでございますから。 ○丸山委員  むしろ様式の方が現実にこれ案と書かれていますね。インフォームド・コンセント の様式。案が取られて、どこかで病院で用いられているかどうか。用いられていると すると、どれぐらいの規模で用いられているかということですね。 ○HAB協議会・宍戸氏  これはまだ案と書いてございますから、これまた同意書として決定したわけでは、 案として今、これは内田教授が中心になって最終的にこういう形にしろということに なる、行政が決めたなら、あくまでもこれは現在やっておりません。 ○黒川委員長  内部でも案なのですね。はい。わかりました。 ○HAB協議会・宍戸氏  ええ、内部として最終的には案、まだ案でございます。 ○澤井委員  最近、製薬協の方にお伺いしたいのですけれども、皮膚なんかの場合にキット化 されて販売されている例があるのですけれども、例えば、血管内細胞とか、平滑筋の 細胞なんかを培養キットとして売られているというような場合があるのですけれども こういうものというのは医薬品開発にとってどのぐらい利用されているのか。  それからもうひとつは、大学病院なんかと製薬企業の方々は非常に密接な関係が あると思うので、手術材料について提供を受けるというようなことがほとんど多分、 なかなか難しいのではないかと思いますけれども、本当にないのかどうか。その辺に ついてちょっとお伺いしたいのですけれども。 ○黒川委員長  今、参考資料、澤井委員よりということのお手元の資料の参考資料3というのがあ ります。これが今、『日経バイオ年鑑』から出ているヒト由来のいろいろな カルチャーした細胞ということですね。はい。吉田委員。 ○日本製薬工業協会・吉田氏  キット化されたようなものについては、我々も聞いていますけれども、充分調査が されてないので各社で果たしてどの程度、使われているかはわかりません。 おっしゃったようにエンドセリアルセルのものだとかは、いろいろ血管をターゲット にしたような研究がたくさんございますので、多分、ある程度は購入されて使われて いると思います。  大学からのものについては、これは全く表面に出てきませんので、我々、何とも 協会としては申し上げられません。 ○黒川委員長  誰かご返事ありますか。HABの方から。大学の先生が摘出したので何かやってい るかなという話は。あまり知らない。どうぞ。 ○HAB協議会・佐藤氏  今のご質問は大学や病院から直接製薬会社の方にヒト試料が流れているかどうかと いうご質問ですね。それは私どもでは全くわかりません。 ○寺尾委員  一番最初の製薬協のご説明の中にありましたけれども、欧米と同様の環境を整える 必要があるというお話だったのですけれども、具体的に今、日本でこういうことを 始めるヒト組織を使っていろいろな研究ができるというには、どういう環境を整える ことが必要かという何かお考えがございましたら。  つまり、いろいろあるのだろうと思いますけれども、どこまでやったら実際にこれ 動きだすことが可能かということ、もし、お考えがございましたらお聞かせいただけ ればと。これは製薬協とHAB両方、お考えが違う、同じかもしれませんけれども、 違うか もしれませんので、もし、できましたら教えていただきたいのですけれども。 ○HAB協議会・宍戸氏  私の方から申しましょうか。一例としては今、私、説明したようにこういう供給体 制がしっかりして、それから、インフォームド・コンセント、そういう情報がまとま ったら私は可能ではないかと。そういうことを狙っていましてやっておるわけでござ いますから、そういうことでやるべきであると、こういうふうに思っています。 ○寺尾委員  ガイドラインが必要ではないかというような、非常に一番最初に出てきているので すけれども、それは必要ない。 ○HAB協議会・宍戸氏  いや、そんなことはございません。やはりガイドライン、それは必要な、厚生省の 今まであるガイドラインについてもある程度、改正しなければならない場合があると 思います。法制的にいろいろ問題がありますから。 ○日本製薬工業協会・奥田氏  私のプレゼンテーションの一番最後に1枚、OHPを出しましたけれども、あれだ と思うのですけれども、結局、ヒト組織を使ってもいいという社会的コンセンサスが できることが一番大事だと思っています。  そのためには先程来、話が出ていますけれども、法律面、倫理面、最後に サイエンティフィックな面からの検討をして、要するに、日本の社会の中でも 創薬研究の中でヒト組織の一部を使用しても許容しようではないかという コンセンサスが得られることがまず一番だと思います。その上で供給体制が整備でき ること。  私どもの方の考えはさきほど西山先生からのご質問もありましたように、企業と 病院とが直接に直取引するということではなくて、非営利な公的機関でそういうもの をプールしていただいて、それを我々が使わせていただくというふうなことかなとい うふうに考えていますので、そういう供給体制の整備がされること。  それから、我々、使う側の倫理面も折り込んだ上でのガイドライン、ルール作り、 SOPができるということが、その3つが早くできないものかなというふうに考えて おります。 ○梅田委員  今のご質問とご返答ですけれども、そうだから日本がうまくいかないと私は思うの です。やはり地道に各医師と患者と各医療機関がインフォームド・コンセントをちゃ んと行って、コンタクトを取る体制をとらなければならない。製薬協会はどうしても 欲しいのだということを中央に頼むのではなくて、自分たちが足で稼ぐという努力を する必要があるのではないか。そういう体制が今までないから日本がこういうことに なっているのだろうと思うのです。  我々、組織培養学会のことを話しますけれども、組織培養学会ではそういう人間の 材料を培養で使いたいと。それを、国が使っていいですよというガイドラインができ るまで、待っているかということです。待っていられないわけです。ですから、医師 と患者とコーディネーターとか、そういうのを全部整えて、我々は整えるというか、 整っていないからそれをいかにして整えるかも含めてそれをいかにして乗り越えるか ということを今、真剣に考えているのです。  そういう試みを日本全体でしない限り、うまくいかないと思うのです。お上が作っ てくれればすべてうまくいくという、供給体制がHABでできれば製薬協会は使わせ ていただくという態度では、いつまでたっても解決しない。今の難しい状況はよくわ かって発言しているのですけれども、それを皆で解決していく方向を少しでも 一歩一歩、進めなければうまくいかないのではないかというのが、私の意見です。 ○日本製薬工業協会・奥田氏  おっしゃる趣旨はわかりますけれども、企業の団体としての製薬協としては、 そうしたら個々の先生方と相談した上で使いますとはやはり言い切れないと思います ですけれども、私の趣旨は必ずしも後ろ向きで、とにかく体制を整えていただくのを 待っているというふうな消極的なものではもちろんございません。  それから、企業としては日本の社会の中で許されないとすれば、外国へ持っていく と。結局、やむにやまれずとなったらそういう手段を取らざるを得ない。ですけれど も、そういうことはやはり日本国の企業としてはしてはいけないのだろうと。 なるべく避けるべきだろうということで長年、こういう問題の顕在化と言いますか、 こういう問題が真剣に議論されて何とか対策が講じられるように我々、長年、活動し てきたつもりでございます。 ○梅田委員  おっしゃるとおりなのですけれども、要は、同時に日本でも根づくような発想をし ないと駄目だということを言っているわけです。  ですから、さきほどから言っているように、今、やっていることはしょうがないと いう感じを私も持っていますけれども、製薬協のご返答の中で中央でやってくれれば 私たち使う、という態度では駄目なのではないか。ガイドラインを作るということも 賛成ですけれども、でもガイドラインの作り方がやはり自分たちがやるという ガイドラインを作ってもらわないと、中央で作るガイドラインだったら、また、 コンセンサスがいろいろな世論というのでついてこない可能性があると言いたいので す。今まで全部、歴史的にそうですから。ですから、一緒にやりましょうということ です。 ○日本製薬工業協会・奥田氏  ありがとうございます。 ○HAB協議会・佐藤氏  今、梅田先生のお話は部分的には正しいと思います。アメリカではその様なことが 許されるわけでして、アメリカでは新しいことをやるときは、例えそれが法律に違反 するかもしれなくても、取り合えずやってみて、訴訟を起されたらそのときに考える というようなやり方ですが、日本ではなかなかそれが馴染まないと思います。  特に、製薬協で、もし、使うようなことになりますと、やはり企業を抱えておりま すので、自分の後ろには企業がありますのでなかなかそこまで決断はできないのでは ないかと思います。  それから病院と企業が直接個々にコンタクトして進めるというのは、これもいろい ろな問題がありますので、その可能性は少ないわけです。したがって、これは最終的 には官と民が一体になってそういう機構を作って、そこが中心になっていろいろ物事 を進めるというのが一番日本的な発想ではないかと私は考えております。 ○黒川委員長  梅田先生のおっしゃりたいことも確かそうだろうと思うのだけれども、やはり両方 でやらないと誰も責任を取らないということを言っているだけの話であって、今の 責任を取ることははっきりしていれば、どんどんやればいいわけで、やはり取りたく ないという話が後ろであるというのがひとつと、それから、最終的には、だから、 行政がやってくれれば行政は責任取らないだろうから、まあ、いいやという話の 馴れ合いではないかと私は思いますけれども。そうすると皆、安心しているというの があれだし。  もうひとつは、製薬企業がこれがないから非常に困るというのであれば、 グローバルな流れはもう今、かなり資金の、開発力の勝負になりますから、そうする と開発にはお金がかかると。ノバルティスにしてもそういう大きいところは多分、 1千億ぐらいの開発をかけてとても適わないなと言っているのであれば、当然、 そちらでは合併や何かどんどんあっていいわけですよね。  だから、それが起こらないというのは何かと言うとやはりドメスティックな横並び やっていると安心かなというところなのではないかなと。このシステムができないか ら駄目になっちゃうではなくて、やはりもう企業体の全体、これは企業体ではなくて これはジャパンであるという話がうまくいかないというところではないかなというこ とは認識しておく必要があるのではないかなと思いますけれどもね。どうぞ。 ○木村委員  今のご指摘、そのとおりで大変に大事なことだと思うのですが、やはり国の行政の 中枢、特に、薬事行政の中枢にある厚生省、そしてまた製薬業界、あるいは研究当事 者、この言わば三者プラス、何と言っても一般の国民の役割が極めて重要だと思いま す。一般の国民の間に開かれた公開の論議の蓄積があってアメリカも変わったのです ね。ヨーロッパもアメリカもそういうやはり経緯があるわけですので、そういう意味 でこういうところで公開された論議を蓄積するということは審議会の部会、あるいは 学会でも大変に重要なことになってくるというふうに思うわけですね。  ですから、それがバイオエシックスの基本原理のひとつになってくるわけですけれ ども、そういう中で一体、それがどういう目的で何に使われるのかということが非常 に大事なことになってくるわけです。その論議も含めて公開をしていかなければいけ ないわけです。  私の質問は、製薬業界の方の資料の4頁を見ますと、現在、我が国において入手で きるものは外国から輸入されているヒト肝ミクロソーム等と。他のものはどうなって いるかはっきりわかりませんけれども、外国から輸入されているというのは輸入を求 めて輸入されていることになるわけですね。輸入を求めるところがあるからだと思う のですが、それはお金が絡んでくることになると思います。  2つばかり質問があるのですけれども、ひとつは、輸入されたものというのは、 要するに商品として輸入されるわけですから、日本のみならず諸外国でもやはり人間 の体の一部が商品化されると。あるいは部品化して扱われるようになるということに 対する、これは日本における臓器移植の論議見ててもそうですが、そういうことへの 一種の嫌悪感というのがあるわけです。ですから、そこら辺はこれは相当、きちんと した対応をやはり公開された論議の中で、単なる部品、あるいは商品化というよりも 人間の知識を総合した新しい薬品の開発に使うことになるという意義ある目的のため であるというようなことも含めた論議が必要になってくるのですね。公開されたとこ ろで。  実際問題として、輸入された、私の質問は輸入されたものを使って研究した場合に 輸入ということによって輸出されて本体から離れて、例えば、製薬協会がそれによっ て開発された何らかの新しい薬品については、そこが自動的にパテントを持っていい のかどうか。本体の方にもさかのぼるのかどうかということですね。  それはさきほどのHABの方のお話をお伺いしていますと、NDRIと協力をする に伴って条件があったということで、私も大変に問題に感じたことのひとつなのです が、将来、日本でこれが行われるようになった場合にはアメリカ側に提供するという ことなのですけれども、これについては研究の結果、得られた情報については、これ を許容する、あるいはこれによって得られた利益についてはこれを許容するというよ うな条件が何かそこについてるのかどうかについて、おうかがいしたいと思います。  さきほどの書類によりますと、これもいろいろな問題があるわけですけれども、 インフォームド・コンセントの2の方については得られた情報については一切、 提供者は権利を放棄するということが書かれてありますが、この点に関してアメリカ ではがんの患者の治療を巡って、特定の人の脾臓の組織の一部を用いて薬品を開発し て特許をとり、30億ドルという巨額の利益をあげていたことが明らかになり、大変に 大きい訴訟になりました。ジョンモアケースと言うのですけれども、言わば提供者が そのことを全く知らされていなかったということで訴訟を起こしたというケースがあ るのですけれども、そういうことも巡ってNDRIとの関係はどうなっているのか。  それから、日本製薬工業協会としては現在のところ、輸入されたものについては 製薬工業協会にプールしているのか。それとも各個の会社が全く独自に個別に輸入し てやっていて、パテントについてはそれぞれの会社がそれぞれの提供団体との関係で 内容について異なるということになるのかどうか。そこら辺についてはいかがでしょ うか。 ○HAB協議会・宍戸氏  HABの方からちょっと申し上げますと、NDRIから私たちに研究材料としてい ただいております、それに対して向こうとの協定はその研究団体によって得られた データについては公表してよいこと、しかし同時に、その情報、公表した情報の中に これを使った肝臓はNDRIから提供されたということを明記してほしいと。そして そういう形で中の情報を公開してやる。そういう条件でいつも貰っておりました。 それ以上のことは何も、具体的に貰った肝臓の所有権、そういうことは全然、 関係ない状態になっております。 ○日本製薬工業協会・小池氏  製薬協の方からお答えいたします。まず、結論的にはさきほどおっしゃられた入手 並びにパテントの問題というのは各個の企業の問題であります。全体としてどういう ふうにプールしてというか、レギュレートしてとか、そういうことでは今のところご ざいません。  それから、ご指摘のとおりの商品、部品に対する使用に関わる嫌悪感というのは当 然、認識しておりまして、先刻の梅田先生のご指摘とも関連するかと思いますが、 これをやって何に役立つのかというところを提示する唯一のオプションであるかと 思います。  ですから、現状では些か我々自身もジレンマを持っておりますけれども、使用可能 なものを使用可能なチャンネルから入れて、「これを使うとこういうふうにいいこと があるのです」あるいは「こういうふうに事故を未然に防げました」という事例を 蓄えて、こういう問題のブレークスルーに役立てたいと考えている状況だと思います ○遠藤委員  これからの専門委員会の議論の参考のために、せっかく今日はこういう機会でござ いますのでアメリカの、いわゆる先進国のアメリカの実情について、もし、行政との 関係が現在どのようになっているかということをお聞きしたいと思います。  と言いますのは、さきほどNDRIからの提供を受けるということにHAB協議会 の方のご説明の中でやはりアメリカは日本の実情を憂慮しているというニュアンスに 受け取れたわけです。特に、HAB協議会は非営利組織としてやはりヒト組織を用い た研究開発の日本における不十分性というものを憂慮した人たちの集まりだというふ うに私は見ておるわけですが、そういう意味においてアメリカではそういう非政府組 織というか、非営利組織が10年ぐらいの運動があって、その後、現在の状態になった という現状と理解しました。特に、現状でアメリカの行政との関係においてヒト組織 の問題はどんな経緯を経て、現実に至ったのか。あるいは現在どのような関係にある のかということについてかい摘んでお話しいただけたらありがたいと思います。 ○HAB協議会・重松氏  私が代わってお答えいたします。まず、ヒト組織というものを安易に使うべきでは ないだろうというのが原則です。ただ単に病院からちょっといただけたと。そういう ものはバリデーション・スタディは全くないわけですから、これがいったいどんな エンザイムアクティビティを持っているかというのは全く未知のところでございます  そういう意味でやはりレギュラトリー・アフェアーの方がきちんとされた基準をお 持ちになって、それでこういう研究資源についてはこういう使い方をするべきではな いかと。もちろん日進月歩でございますから、事実はどんどん進みますが、そういう お考えの下でこちらの図3を見ていただきますと、NDRIの関係、どこに属してい るかというのもわかっていただけるのではないかと思います。  これを見ていただきますと、18頁、これによりますと、やはりアメリカの フェデラル・ガバメントとしてのヘルス・アンド・ヒューマン・サービスというのが 十分にタッチしております。もちろんユーノス、これは移植を専門としていらっしゃ るわけですが、ここでもネットワークでつながっておりますが、一番大事なのは パブリック・ヘルス・サービスというのがございまして、これはもうご存じだと思い ますが、FDAがその中に属しております。  そのFDAの中にCDERというのがございまして、センター・フォア・ ドラッグ・エバリュエーション・アンド・リサーチいわゆる医薬品評価研究センター でございます。さらにその下部組織に研究資源課みたいなものが、さらにCDERの 中にございます。これをオフィス・オブ・リサーチ・リソーシスと言います。これは まさに、レギュラトリー・アフェアーの中の極めて重要なセクションでございます。 ヒト材料のみならず、動物資源、もちろん霊長類も含めますが、それすべてについて こういう研究はこういうバリデーション・スタディが必要だよというところの基礎的 なデータを集めていらっしゃいます。  私どもはとてもとてもそんな大きな組織にはできませんので、敢えて ノンプロフィットのオーガナイゼーションぐらいです。もし、このような組織が 医薬品評価研究センターに構成されますと大変有り難いことと存じます。特に NDRIは非常にアメリカでも代表的なnon-profitの団体であります。お子さんが 非常に身体不自由な方の奥様がこれを運動をされたものと聞いておりますが、 こういうところで最初は幾分か、相当程度の助成金が出たそうです。しかし、 大統領が代わる度に費用が減ってまいりまして、最近は極めて微々たるものだという ことでございました。そういう意味で病院などにもなかなか費用を差し上げられない という困った状態もあったということを聞いております。  これが公的機関でございまして、その下にさらに民間機関があると聞いております 民間機関、これをちょっとほんの短い時間でご説明いたしますが、ほぼ ユニバーシティーの中にございます。例えば、バルチモア、例えば、スタンフォード などの大学の中に古参の教授がいらっしゃいまして、そこでプライベートの活動をさ れます。そういうところでは半分はノンプロフィットのオーガナイゼーションのため に労力を提供するわけでございます。  それで目的は移植でございますから一生懸命働きます。無料サービスもあります。 しかし、運が悪く移植に適さないものがありますと、これは下げ渡されるというのは おかしいのですが、これはオープンで公開というのはアメリカは非常にはっきりして いますから、ガラス張りでやらさせていただくと。費用はかかります。相当かかりま す。病院でもかかります。運搬もかかります。ですから、しっかりと確か厚生省の 資料にございましたと思いますが、結構なお金をお取りになります。しかし、これが いわゆる日進月歩の技術を保持するためにはこれだけはいるのだとはっきり おっしゃっている。  そういう意味で経済的なものにあまり蓋をしないというところに良さがあるのでは ないかと思っておりますが、そういうことは日本では、もし、民間がそんなに オープンにすればいいのですけれども、できるかできないか。できた場合にどれだけ の反対意見の方もいらっしゃるかと。そういう方が悪用される場合、ぽしゃる場合も あるのです。その辺を懸念いたしますと、ちょっとアメリカシステムとは違うところ があると存じます。日本は日本独自でやらざるを得ないというところもご理解いただ きたいと思います。以上です。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。まだ、たくさんご意見があるのではないかと思い ますが、一応、時間も来ましたので、今日のヒアリング、大変貴重なご意見を聞かせ ていただきましたが、製薬協とHABのご意見、活動、その他について皆さんと行っ たわけでございます。  大変有意義な意見の交換だったと思います。本当にありがとうございました。それ から、また、この意見を聞いていただいた今日、来ていただいたいろいろな方々、 本当にありがとうございました。一応、ここで今日のヒアリングのセッションについ ては終わらせていただきまして、これから休憩というふうに、委員の先生方とはちょ っと休憩して、さらに続けたいと思いますのでよろしくどうぞお願いします。どうも ありがとうございました。 ○事務局  傍聴の方々に申し上げます。これから30分間程、昼食休憩をさせていただきますが この後、議事は非公開にさせていただきますので、申し訳ありません。ここでご退席 をお願いをいたします。なお、最初に申し上げましたように議事録につきましては 後日、公開、公表をさせていただく予定です。よろしくお願いいたします。 ありがとうございました。                (休憩・12時10分)                (再開・12時25分) ○研究開発振興課長  お食事中ですが、資料3として前回の会議の論点とそれに対する主な意見という ことで資料を作っています。ちょっとうちの事務局の方から読み上げますので、 前回の議論を思い出していただいて、ちょっと論点が違うのではないかということで あれば、後ほどコメントいただければと思っております。どうぞ手は休めないで結構 ですのでよろしくお願いいたします。 ○事務局  それでは、お手元の資料3に沿いまして読まさせていただきます。ここで論点と書 いてございますのは、前回、机上で配布させていただきました、私どもの考える論点 ということをまとめたものでございまして、右側にございますのはそれに関連して 前回のご議論の中で出てきたものをピックアップしたものでございます。  まず、一番目の論点といたしまして、ヒト組織を用いた研究を行うことが許される のかという問題でございます。全般的な問題といたしましては、人体の組織とか器官 などに対する日本人の心性というか、日本人自身の体の一部というものをどういうふ うに捉えるのかという感覚の問題を押さえておく必要がある。また、医療不信という 感覚についても押さえておく必要がある。  別のご意見ですが、日本人のヒトの組織について外国に全部おんぶしているという ことを日本人自身が全然自分の問題として捉えていない。ヒト組織の研究応用につい ては真っ正面から捉えていくということが必要。  別のご意見ですが、医薬品の国際ハーモナイゼーションの枠組みの中で日本も 国際的な流れに乗っていかないと日本での医薬品開発ができなくなり、医薬産業の 空洞化が起こる。そこでヒト組織の利用というテーマをあくまで前向きな姿勢で検討 し、その中で日本的な倫理の問題をどうクリアしていくかということを考えていく 必要がある。  それから、ヒト組織そのものを材料として用いる場合と新薬開発のテストの材料に 使う場合についてご意見がございました。  まず、ひとつのご意見は、培養などをしていると亡くなった方のものでも利用でき る。死体皮膚等の死体からの組織の利用についても議論していただきたい。組織を新 薬開発のテストの材料に使うという場合と、組織そのものを新薬への材料として用い る場合は別に検討が必要であると。  次のご意見は、ヒトの正常組織そのものが薬剤に代わり得ると。あるいはそれが 組織培養によって新しいものができる。21世紀はそういう時代が来ると確信しており この検討会はそのためのものと理解している。  次のご意見ですが、拡げようと思えばきりがないので、ひとつずつ埋めていくより 仕方がない。医薬品を新しく探すというわけではなくて、医薬品の研究開発のために 使うのはどうかというふうに絞っていった方がいいと思う。  次ですが、組織を利用して医療に還元していくのも大切で、その中で具体的に薬は どうかということではないかと。あるいは少し拡げておいた方がよい。また、両方の 視点が必要だが、ひとつに絞らないと訳がわからなくなる。絞りながら全体を捉える ことが必要というご意見がございました。  次に、病変組織を利用することについてでございますが、病変組織を使う場合は、 それに対する医薬の開発に直接的に役に立つ研究ができる。病変組織についてはそも そも手術で摘出することから、それを使うことについて患者はそれほど抵抗がないだ ろう。  次ですが、病変組織の解析は既存の薬物の中のどの薬物に対して薬理学的に感受性 を持っているかについて個々の患者にフィードバックできるのか、しているのかが問 題。  次ですが、病理学的検査は、治療方針を決定するためになされているものであり、 手術標本の扱いに関しては、まず病理学的な検査が正しく行われるということが絶対 的な前提である。  次ですが、腫瘍組織の場合は治療や診断目的で摘出するから大きな倫理的な問題は 起こらない。  次に、正常組織の利用についてでございますが、癌の場合、癌だけを取ることは 不可能であり、必ず正常組織がついてくる。倫理的な問題も含めて正常組織をどう 処理するかが患者にとって社会的、医学的にいいのかを考える必要がある。  次ですが、正常組織に関しては薬物代謝試験においては既に必要とされているのが 日本以外の国の実情である。  次ですが、手術で摘出した正常組織を利用するというときは、正常組織も含めて 必要以上に摘出されるのではないかという危惧を抱かせることはあり得る。  次ですが、手術によって切除される標本について正常の部分を使うということはも ちろん可能であるが、患者さんの治療のためであることから、間違っても標本を使う がために少しでも手術の方法が変わるというようなことが絶対起こらないようにすべ きである。  次ですが、正常組織の利用も含めて考えていかなければならない。それは臨床試験 の精度をあげる、臨床試験を絞りこむことに通じるので、クリアしなければならない 関門と理解している。  次ですが、正常組織を用いることは将来の医療の経済性につながるという何か 基本的なラインがあると思う。正常組織を使うということを倫理性に問題がないとの コンセンサスを得ておかないと今後、いくら議論しても難しい。  次の論点につきましては、特にご意見がございませんでした。  その次でございますけれども、許されるとした場合、どのような条件で許されるか ということでございますけれども、まず、対象とするヒト組織の範囲につきましては 全般的なご意見といたしまして、病理解析についてもどこまで検査か、または研究か が明確でない。胎盤、胎児、正常組織も全部ひっくるめて、ある程度のコンセンサス を出すというのがこの会に求められていると思う。  次に、胎児の問題につきしては、ヒト組織の対象中に胎児を含むのかどうかという こともきちんと討議するべきと考える。  次に生検組織につきましては、生検細胞、あるいは生検組織の利用については、 そこから余分な部分を見いだして研究開発に使うのはなかなか難しいと。余分という ものがあればむしろ減らした方がいいというのが医療行為としての立場である。  その他といたしまして、対象を医薬品に限らず、農薬、食品添加物、一般化学物質 などの物質にも拡げて議論した方がよいと。  次の論点でございますが、インフォームド・コンセントの在り方でございますけれ ども、まず、インフォームド・コンセントの重要性につきましては説明をしてきちん と承諾を得るということをやれば、それほど大きい問題ではない。そういう意味では オープンにしてきちんとインフォームド・コンセントを取るということが非常に重要 となる。  次の、同意の要否については、目的が正当であるという条件がつくが、なくても済 む場合があるという可能性はあると思う。例えば、病変部分の切除切片については、 アンリンクト・アノニマスで使う場合であれば同意なしに使うことができるという、 少なくとも主張はある。また、胎盤、尿などが廃棄物だとすると同意なく使えそうで 特に、アンリンクト・アノニマスだとさらにそうだと。しかし、そこから遺伝子解析 して個人データが出てくるとなるとよくわからない。  次に、話せばわかるのではないかということも含めて、インフォームド・ コンセントを取るための基盤として、その周辺を整備していくことが必要。  次に、インフォームド・コンセントを取るということは議論の前提に置くべきであ る。  次に、対象でございますけれども、子どもの場合どうするかの問題がある。 ボランティアの場合は対等なのであまり大きな倫理的も問題は起こらない。患者の 組織を取ったときに、周辺にある正常組織をどう使うかという方が医師と患者との 関係は決して対等ではないので問題が大きい。  次に、生検組織の場合、ボランティアであっても骨髄移植のときと違って病気かも しれないという、ある意味で人質に取られている状況での標本の採取なので、かなり 倫理的な配慮が必要になる。  次は、子ども、無能力者とか、死者からの組織摘出の場合の同意の問題というのは 非常に難しい問題であるが、現実には必要で、欧米のガイドラインでも危険が非常に 小さければ他の条件を厳しくつけて認めている。  次、インフォームド・コンセントの様式とか内容についてのご意見ですが、倫理的 にも法律的にも基本はドキュメントでの同意が必要である。また、倫理委員会に医学 の専門家でない素人も入れて、インフォームド・コンセントの内容がこれでわかるの かどうかというところまで議論することが重要。  次に、インフォームド・コンセントというと書面が強調されるが、むしろ口頭でも フランクに十分に説明してもらうことの方が重要であると。また、病変部分を摘出し た後に気づいてセルラインを開発するという場合については、 後からインフォームド・コンセントなどの様式を整えればよい。  次に、インフォームド・コンセントをそれを行う本人である医者が利益誘導のよう な形でやるのではなく、患者の立場に立って説明する人が間に入るということも考え ていかなければならない。  その他でございますが、取り出した細胞から作った株が特許が取れるような有用な 株になった場合に患者さんにお金が返るのか返らないのか、そういうようなことも含 めたインフォームド・コンセントの検討が必要であると。  次の論点でございますが、ヒト組織を用いた研究開発の範囲、また研究の事前評価 の必要性についてでございますけれども、研究の妥当性につきましては正常組織、 病変組織それぞれについても利用する科学的根拠を示すことが倫理上の問題とともに 重要なポイントになる。  次にインフォームド・コンセントをやれば、患者側から見ればある程度、研究に枷 をはめることになり、患者からの監視という面は強くなる。  倫理委員会の問題でございますが、倫理委員会を各機関で作るべきだと思うが、 作れない場合について倫理審査をどこでするべきか。例えば、学会、中央の機関など の検討が必要である。  次に、インフォームド・コンセントだけではなくてIRBなどでの十分な監視が必 要。 それから次に、ヒト組織の供給体制のあり方につきましては、4番目にござい ます供給するにあたっての検討すべき点はというところでご意見がございました。 ヒト組織の輸入が野放しということになると、国内との整合性が必要になってくると  以上でございますが、これは論点に沿ってご議論をいただいたわけではございませ ん。出ましたご意見を敢えて当てはめたものでございますので、当然、空欄のところ もあるということでございます。以上でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。時間もありませんので、また、先生方の審議を 再開したいと思いますが、ここの前回の主な意見に対するご意見を、また、まとめて いただいたわけですが、この分野についていくつかの資料と今日、コメントをいただ こうと思っておりますので、最初にインフォームド・コンセントの具体例について 山岡先生の方からお願いいたします。 ○山岡委員  これは組織をいただいて将来、人工肝臓を作りたいという意図で患者さんに正常組 織、良性であれ悪性であれ、肝切除をするときの正常部分をいただくと。そういう 意図でインフォームド・コンセントを取っております。  参考資料1です。患者さんへの説明文書というのがございます。私どもが人工肝臓 を作るために患者さんの肝臓からヒトの細胞を培養していって、将来、肝再生をした 上でマトリックスを入れて肝臓を作ろうという意図でヒトの肝細胞の培養したいとい うところが視点で、我々の今までの実績とそのことを説明した上でこれを許可してい ただきたいということで、患者さんの対象は良性、悪性腫瘍で肝臓の摘出をする人で す。  そういうときにこういうやり方をしているのですが、こういうやり方が妥当である かどうかということについて議論の対象になると思って、提出させていただきました  確かに、インフォームド・コンセントの大きな問題は、この文でもって全部が網羅 されているかどうかというところがたくさんあるのですけれども、我々の考え方はこ こに至るまでの患者さんとの関係が一番大事であって、そういうお話をしたときに、 ほとんど100 %全部OKしていただきますが、そこに至るまでの患者と主治医との 関係がいかにきっちりしているかどうかで決まると。  ですから、この文書が妥当であるかということについては問題があるかもしれない けれども、ここへ至るまで、結果的にほぼ、滅多にノーと言われることはございませ んので、そのことから見ると我々の患者さんとの対応としては文書上ではなくできて いるというふうに自信を持っています。  そのプロセスは生体肝移植をするときに何度にも何度にもわたってきた インフォームド・コンセントの取り方から文書をあげまして、読んできて、また、 説明して、何回も何回もそうしたプロセスがありましたので、そういう練習、それが 練習になっていると思うのですが、そういうことから現在、これで進めています。 これが先生方の議論の対象にしていただけたらと思って提出しました。 ○黒川委員長  はい。ありがとうございました。今、すぐにコメントと言われてもちょっと困るで しょうから、もしありましたらいただきますが、その次に西山委員の方から臨床の 立場からヒト組織の研究の在り方について参考資料がございますので、その方につい て西山先生からお願いします。 ○西山委員  これは昨年の日本学術会議の。 ○黒川委員長  参考資料、言ってください。参考資料の2です。 ○西山委員  参考資料2です。そのときのスライド原稿でちょっとお見苦しい点があるかもしれ ませんけれども。なぜ、必要か、それで今、何が足りないか。そして、これからどう すべきかというふうな点について一覧表としてまとめてあります。  さきほどいろいろな種差、その他の問題点がありましたので、そちらについては スキップいたします。4枚目になりますが、ヒト組織を用いた研究というふうなとこ ろの項目があります。今日、もうヒト組織を用いた研究が進んでいるのか否かという ふうな話がありましたけれども、現実には使われております。  これはどの学術雑誌を見ていただいても結構ですが、フレッシュ・ヒューマン・ チューモア、あるいはノーマル・ティッシュというふうな形で日本から パブリケーションされた論文は山の如くあります。ですから、現実の問題として ヒト組織をもう用いているのであります。ただ、問題なのは、そこへいく倫理、 方法論、その科学性、そういったものに非常にばらばらな状態だというふうな問題が ありまして、こういうふうな形にしていきますと後から大きな問題になるというふう な現状を認識していただいた方が正しいのではないかと思います。  ですから、各施設によってこういうふうないろいろな研究をされていますけれども その研究の質にバラツキがあって、それが確実に裏付けられる何かひとつの ガイドラインのようなものがないというのが現状だと考えていただいた方がすっきり するのではないでしょうか。  現実に、日本外科学会総会で臨床研究の66.4%、それ以外はヒト組織をほとんど用 いております。この臨床研究というのも一部分、ピックアップしてきて、それの 遺伝子発現を調べるとかということを含めますとかなりの数にのぼります。ですから どこまでが研究でどこからが臨床か、どこから検査というふうなことが非常に曖昧に なっているのが現実です。現実にはヒト組織は使われています。  私自身の経験からしても、さきほどの薬品評価と薬剤の安全性評価という点でいく つかの検体を、実は患者さんにインフォームド・コンセントを取って、患者さんから 切除した標本を渡した経験がございます。そういうふうなのが現状だということです  では、さきほどの議論になりましたが、いわゆるセルラインで何とか対応できるか という点ですが、大半のものがノーマルセルのセルラインでございませんので、 腫瘍細胞での結果は出ますが、ノーマルセルでは出ません。いかにノーマルセルを 使うかということが問題になってまいりまして、それでヒト組織の必要性というふう なものが認識されてきたというふうに受け止められています。ですから、ヒト組織を 使うことで今まで、現在までにクリアできなかった点が新しく新たになってくる可能 性があるというふうなものだと認識しております。  インフォームド・コンセントですが、ずっとスキップしていただいて、かなりの 枚数になるので頁数がわかりませんけれども、途中からインフォームド・コンセント の現状という点がありますけれども、この頁になります。  まず、では今、現在、研究に使うための切除ではなくて、何か他にあると。今、 実際に手術で取った標本はどうなっているのかということなのですが、最初の頁にあ ります「手術・麻酔・検査・その他承諾書」というところで、もう既に最初の段階で 患者さんが入院してきた時点で病状、手術、その他、治療の説明をするときに臓器、 あるいは組織が摘出された場合は適切な検査の後、保存されること、及び一定の期間 の後、病院の規定に従って処理されることを承諾しますという項目があって、これに ついても必ず説明をするようにしております。  ですから、今、現在はもちろん医療そのものがインフォームド・コンセントなしに は始まりませんし、摘出した標本の処理でさえ、予め患者さんの承諾を得ておかなけ れば進んでいかないという現状です。  その次が、これをヒト組織と言うかどうか問題ですけれども、お腹の中を洗って、 その中から細胞診を行い、その中でいくつか特別なCEAというふうなものを測ると いうふうなことによって化学療法が抗癌剤の治療を振り分けるという臨床研究があっ たのですけれども、そのお腹の中を洗った液を取るということに関してもこれだけの インフォームド・コンセントをしています。  ただし、これは新GCPが適用される以前でしたので、本来ここに書かれなければ ならないのは誰が責任を取るか、もし何かあった場合にどこへ連絡するかというふう なことが明記をされている。ただし、ここではこの研究を行う側が医師であるという こと、自分の所属の病院がはっきりとしているということで、患者さんと医師との間 に暗黙の了解があって、何かあった場合には担当の医師、あるいはそこの研究の 責任者のところへ持っていけばいいというふうなところは確実に話が通っています。 この文章としてはなっていない。だから、研究の主体は誰であるかということが、 これからヒト組織を取る上で非常に重要な問題になってくるのだろうと思います。  安全性、その他、自由意思による決定等が書かれておりまして、これらの文章を説 明して渡して、その後で治療同意書で今まで言った内容をもう一度確認をするという 形で取っております。  ですから、さらにこれよりも今、厳しい自粛の状況があるわけで、こういうふうな 臨床研究というのはそれに基づいて行われるべきものだと理解しておりますので、 さらに、そういう面でインフォームド・コンセントはしっかりとしたものがあるべき だと。患者さんがその中から選択をしていく状態が出てきているのだと考えておりま す。以上です。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。これについてもまたご意見をいただきたいのです が、この2つについて何かちょっとご意見ありましたら伺いましょうか。 インフォームド・コンセント、そのあり方。 ○柏木委員  ちょっと質問があるのですが、私はこの前、この会議に出席して帰って、家内に今 日、こんな話をしたのだと言ったときに、一番、家内が素人として言ったのは手術の ときにかなり余計に組織を取られるという恐れを皆が一番抱くのではないかという、 そういう非常にこれは平凡な反応で、正しい反応だと思うのですね。  それに対してインフォームド・コンセントを取るときに、特に、配慮をされている のかどうかだけちょっと。 ○西山委員  今、私は基礎にいるわけで、当時、外科医でございましたから、そのときには腫瘍 からの何cmというふうな形で話をしたわけです。これは癌の手術を説明するときに、 当然、そこから何cmはなすというふうなのが安全圏だということを患者さんに話さな ければ、その手術は承諾していただけませんので、余分な組織を取るということはご ざいません。  ただし、その前に抗癌剤の感受性試験という、何の抗癌剤が効くかというふうな 臨床研究が進んだときには、正常組織の一部分もおおよそ1cm角で取りますというふ うな形での話はいたしました。  ひとつは、治療のための切除とそうでない切除とはまたインフォームド・ コンセントが違いますけれども、不必要な部分を手術をして取られるのではないかと いうふうな心配はそれはないと申し上げていいと思います。 ○柏木委員  もちろんそうですけれども、患者さんにそれをどう。 ○西山委員  それは説明しなければならない今は現状だと思います。それを説明しないのは 外科医としての怠慢だろうと思いますけれども。 ○山岡委員  我々の方はもう20年ぐらい前から癌の部分と正常の部分を離れた場所で取って比べ たことがあるのです。そのときにはあなたのこの部分と本来、残すべきここを取りま すということをやりました。そうしないと、前にも言いましたけれどもペーパーにな りませんので、それがひとつですね。  それから、より多く取られないかどうかということについては今の西山先生と同じ 意見で、手術そのものの説明の中にどの範囲を取るということが説明入りますので、 その中のここを貰うと。そういうふうに指定していますので、余分なものを取られる というふうには思われていないと思います。もし余分なところまで採取するとすると 別にその説明をする必要があります。 ○黒川委員長  木村先生。 ○木村委員  今の関連の質問なのですが、要するに、外科医が手術して、そして病理で見て、 そして研究する人もまた別にいるわけですね。そこら辺のところに関連して、例えば これですと保存についてのとりきめはありますよね。一定期間保存して処理すると。 研究の内容についてこうこうこういう研究がするということも含めて患者さんの コンセントはあるのでしょうか。 ○西山委員  研究の場合にはさきほどお見せしましたように、別紙で必ず研究となった場合には インフォームド・コンセントを取って、もう一度確認をして患者さんの署名を。  それから、さきほどから言っていますように問題になるのは研究の主体者です。 例えば、外科医がそういうふうな摘出標本を研究するのであれば、外科医が必ず 責任担当者として名前を入れて、まず、病理をやります。  今、ここで大まかなディスカッションになっているのは、製薬会社が要求をする 研究を医者が切り取って、患者さんから切り取って渡すということは誰が研究の主体 なのかということがずれているということで、実際に医療の現場にいて、要するに 医療行為と研究担当者が一致している場合には非常にインフォームド・コンセントは しやすいのです。それは確実に明記されるものであります。それは当然、責任体系も 明確になるものがございます。だから、そういうふうな現状で今の医療は走っている と私は考えておりますけれども。  あとは、インフォームド・コンセントが十分かというふうなことの問題になってき て、これは個々の医師、施設の問題になってくるだろうと思います。 ○木村委員  関連しているのですけれども、そうしますとこれは日本の場合、私は、詳しくは 病院での研究の状況を知りませんが、いろいろな病院があって病院で独自に研究して いると思うのですが、IRBみたいので大学にしろ何にしろきちんと一応、対応して やっているかと思うのですが、インフォームド・コンセントを含めて。病院なんかの 場合にもそういうIRBみたいな施設を持ってきちんと対応しているというのが一応 日本では現状なのでしょうか。 ○西山委員  私どもの大学にIRBございまして、これは要するに、医者、看護婦と医療担当 スタッフ以外の人も入ったIRBです。それはこういうふうな臨床研究をやるときに は必ずIRBの審査を受けて、それから走ります。ですから、ちょっと昔と雰囲気が 違う。  ただ、それもさらにもっと今度の4月からのGCPで厳しいものになってきていま すので、さらにもっとクオリティは上がっているのではないかと思います。 ○木村委員  いや、その大学研究機関等はわかるのですが、一般の病院でも、例えば、私立の 相当大手の大きい病院でそういう審査委員会みたいなものも持っているところもござ いますよね。  しかし、そこら辺のところはないところもあるわけですよね。そうすると研究の 主体が非常に恣意的に勝手に自分でインフォームド・コンセントを取って、勝手に 患者の了解の上でやったということでペーパーを書いてどんどん報告出せるというふ うになっているのですか。 ○西山委員  現実の問題と申しますとIRBがないような病院では研究が成り立ちませんので。 そこでは研究を行いませんし。 ○黒川委員長  多分、ペーパー出せないと思います。 ○西山委員  ペーパー出ないです。はい。IRBの承認がない限りにおいてはペーパー、 サブミットした段階でリジェクトされます。 ○木村委員  ああ、そうですか。 ○西山委員  現実の問題としてIRBがないような小さい病院では自主研究が行われるような状 況はまず整備が整ってないと思います。 ○山岡委員  京都大学の話をします。京都大学はメディカルが3分の1。メディカル以外の学部 の代表、法学部、経済学部、これが3分の1。全く学外者、政治家とか、そういう方 が3分の1。それで倫理委員会を成立します。だから、そこで全部、通さないとあら ゆるヒト、動物、使うに関係してくるような実験、ないし治療はアクセプトされない  それがもうひとつと、それから、市中病院ですね。これについては我々の関連施設 でずっと以前から脳死からの移植を考えていたものですから、ネットワークとして 関連病院から臓器が来るということを考えた場合の倫理委員会の設置を要請したので すけれども、大病院の半分ぐらいしか作れませんでした。中小病院では作れません。 それが現状です。 ○木村委員  京都大学のケースですけれども、これは広島大学もそうですけれども、倫理委員会 自体が確かにそういう職業的にも多くの異なった分野の人々から構成されている、 その上に公開で行っているのかどうかということもちょっとお伺いしたいのですが。 ○山岡委員  公開と言いますか、倫理委員会での内容は公開しませんが、後で全部、記者会見が ありまして、倫理委員長が全部それに公開する義務があります。 ○丸山委員  今の承諾書のフォーム、広島大学のと京都大学のを比べてみますと、決して広島 大学が問題だというわけではないのですが、様式の第2号の方ですね。スライドの 起こしてあるやつの。さきほどお読みになったところなのですが、臓器、あるいは 組織が摘出された場合は適切な検査の後、保存されること、及び、一定期間の後、 病院の規定に従って処理されることを承諾しますと、こういうふうに書かれていると 広島大学で手術を受けるのには、これをのまないとやってもらえないのではないかと  それに対して山岡先生からお配りになったものでは、3番目に同意していただかな くても特に不利益は受けませんというふうに書かれておりますので、今、申しました ような懸念を感じるのですが、いかがなものですか。 ○西山委員  実は、このフォームは3年前のフォームで、今は変わっております。これは患者さ んの同意の下に成り立つということですので、中には臓器は自分で何とか見て、 その後、処理をしたいという方もいらっしゃいますので、このフォームは古いもので す。  これはあくまでも承諾依頼書であって、それ以前にまた別なフォームの文書の説明 がございます。これは直っていますので、古いタイプです。 ○丸山委員  ああ、そうですか。それから、さきほどの意見聴取の際にもおっしゃったことなの ですが、事故の場合の責任の取り方について説明が必要ではないかということを おっしゃったのですね。  それを伺っておりまして、治験の場合とか研究の場合でしたら責任の取り方を説明 の中に収めることが必要であるというのは広く言われていることではないかと思うの ですが、治療のために成される場合、ですから、この山岡先生からお配りになったよ うな場合ですと、治療で肝癌の切除を行うと。研究はその得られたものを二次利用す るというのであれば、通常の医療過誤の原則を適用するだけで済む。それなら改めて 説明しなくてもいいのではないかなというふうに思ったのですが、どんなものですか ね。 ○西山委員  それはいけないと私は理解しております。 ○丸山委員  ああ、そうですか。 ○西山委員  医療行為以外の目的で用いた場合には、やはりそれは患者さんに、責任を取るのは 一緒ですけれども、やはり予めはっきりと主たる目的を伝えない限りは行ってはなら ないと思います。 ○丸山委員  その関係なのですが、事故が起こるということなのですが、具体的にどういう事故 がこういう手術で取らなければならないものを取った、その後、その有用部分を利用 して研究を行う。そういうときに事故が起こるという具体的な例としてどういうもの が考えたらよろしいのかちょっと教えていただきたいのですが。 ○西山委員  私が、だから、さきほど来、申していますのは、どこまでをどういうふうな研究と するか、研究としないかの問題で随分違ってくると思うのですが、いわゆる癌の手術 に付随されて取れる正常細胞を使う場合には、それは責任体系として起こってくる、 付随してくる問題は癌の手術に伴うものですから問題ないと思うのですけれども、 例えば、肝臓のバイオプシーというふうなところで、この程度の1cm角のものを取っ たときに、後からあそこから、しっかり閉じるわけですけれども、胆汁が漏れてきた りして一部分、局所的な腹膜炎を起こすとかというふうなことがあり得ることなので す。  それから、そういうふうな周辺の部分を一部分取るというふうなことで起きてきた のが、これはもう明らかにそれを取ったためによる問題ですから、そこら辺のところ は明確にしなければならない。 ○丸山委員  その生検の目的というのは、患者の治療方針、診断なり治療方針を決めるために成 されるのですね。研究のためではなくて。 ○西山委員  両方だと思います。 ○丸山委員  最初から両方なのですか。そうはっきりは分けられるものではないというのが。 ○西山委員  そうじゃなくて、論点が先生が言われるのが治療範囲を逸脱しない範囲での切除、 腫瘍の利用ということを問題にされているのか、そうではなくてもっと大きく ヒト腫瘍を用いると。正常細胞まで用いなければならないというふうなことで言われ ているのかで話は変わってくると思いますけれども。 ○丸山委員  私が言っておりますのは、患者の治療の際のミスによる損害、あるいは責任の問題 であれば、説明しようがしまいが過失責任の原則は被りますから、敢えて必要ないの ではないかというふうに感じたのです。  それに対して治験、ないし広く臨床研究の場合であれば、ちょっと責任の在り方が どこの国でもそうですが、はっきりしないところがございますですね。ですから、 研究者がどこまで引き受けますよというのを明確に示した上でないと被験者側の同意 が本当の同意にならなくなる。だから、その必要性が高い。だから、通常の治療の 場合とちょっと違うのではないかなというのを感じたもので。 ○西山委員  そうですね。先生の言われたとおりだと思います。 ○黒川委員長  ちょっといいですか。日本の場合の問題は、例えば、外科の手術をするかどうかと いうディシジョンは外科の先生がするわけではなくて、その患者さん、最初見た内科 なり何なりのその専門医が見ているわけですよ。その人と外科の先生と相談して 手術をして何cm取るかという話も、患者側には主治医が常にいるわけですよ。  例えば、アメリカ、ヨーロッパの場合。直接、専門医のところに患者さんが行くと いうフローはないですから、つまりリファーラルがつまりできているのですね。そう するとお医者さんの評価は誰がするかというと、他のお医者さんがしているわけです よ。だけれども、日本の場合は講座制とか村社会とか教授が怖いとか、いろいろなこ とがありますから、そこの情報はオープンに出ないというところがひとつ問題がある わけですね。  何cm回り切りますよということは、セカンドオピニオン、常に持たされるか。 患者さんがリクエストできるかというとなかなかそれは難しい。そこのところにいわ ゆる医療不信という何となく秘密だということがあるわけで、では、何cm取ったから と言って後で見せてくれるというのと言ったときにどうなるかという話があるわけで すよ。  だけれども、アメリカ、ヨーロッパの場合、直接、サイレントのところに患者さん 行くというわけではなくて、リファーラルのただの取っていますから、その主治医が それを常に見ることができる。後でもレコードを見ることができるということが担保 されているというところがひとつあるわけですね。  それからもうひとつは、日本と他の国の際立った特徴は、お医者さん同士が方々で 混ざるということが必ずあります。向こうは。日本は大学から卒業したらそこの大学 のどこかの医局にいるわけだから、例えば、一内、二内、三内とか、一ビンにいると 言ったときに、もうそこでさえも縦になっているのですね。お互いの交流は極めて限 られている。  しかも、他の大学の人が入るということは極めて例外的だということになると、も ちろん関連病院には出ますけれども、それはあくまでも自分たちの手足の一部ですか ら、常に他流試合をしないである王国を築いているというところに患者さんから見た 医療不信というのが常にあるわけで、木村先生がそれをどうしてと言われるのは、 もう向こうの場合は常にお医者さんもいろいろなところで混ざっていますし、常にあ る程度、オープンにしていますから、患者さんがいくらインフォームしたって、 ジャッジする根拠がないわけですよ。プロじゃないのだから。  だから、その患者は誰に意見を聞くかというと主治医である、今、言ったような 手術をするかどうかというときの主治医はそのときはお医者さん、外科なのですけれ ども、実は、患者さんのバックにいる主治医というのは別にいるわけですよ。普通は だから、セカンドオピニオンをもちろん取れますよ。この先生はこんなに切ると言っ たけれども、他の先生、紹介してくれませんかというときに主治医がしますからね。  それはいくらでもできるし、お医者さん同士ですから、その人がどのぐらいの腕か という情報は別のところからたくさん持っていますから、そういうシステムができて いるのが西洋の個人主義なのだけれども、日本のはまだ残念ながら民主主義とは言い ながら村社会ですから、その辺の情報は一方通行だというところに常に問題がある。  常にやはりセカンドオピニオン、いかがでしょうかと。誰に聞くのですかと言うと その先生が紹介しているのでは全然意味がない。だから、その相対立する力の バランスというか、それが健康、健全な社会を生むのだと私は思っているのだけれど も、その辺が木村先生が言っている心配のネタはそこにあるのではないか。  それから、柏木先生のおっしゃった余分に取られちゃうのではないかという心配は 誰でも思いますよ。そのときそうじゃないのだという保証するのは患者さんとの ファミリーでもないし、手術をする術者でもないし、術者が紹介するお医者さんでも あってはいけないわけで、患者さん側に立つ主治医がいるということが凄く大事なこ とだと思います。その主治医が立ち会ったっていいわけだから。当然。  それから、今の丸山先生の意見はやはり患者さんの治療の目的でやっていることに ついてはというのは確かにそうで、それはあくまでも患者さんのベネフィットが プライオリティーやプライマリィーの目的でやっているわけだから、そのときはいい けれども、その他の研究と言ったらこれは患者さんに必ずしもベネフィットないわけ で、患者さんを含んだディシジョンンについて将来はベネフィットあるかもしれない けれども、患者さんのその場、その場のディシジョンというか、ベネフィットは明ら かにないと思われるので、そのダイアグノスティック、それよって治療方針がかなり 患者さんのベネフィットにあるかないかということを決めるというのであれば、もち ろんしなければいけないけれども、説明する必要がありますけれども。  その場合は責任というのは十分、インフォームされているからリスクの問題であっ て、先生がおっしゃったのとちょっと違いますよね。と僕は思います。どうでしょう か。  その辺がだから、医者の密室性というのはやはり村社会だから、その辺が常に一般 の国民から言うとそうだという疑念が、柏木先生がおっしゃったように消えない。 いくらお医者さんの方がそうじゃないと言っても消えない。それはなぜかと言うと、 西山先生でさえも広島大学じゃないところの人といろいろ混ざって、これがよりいい のだと言っておかしいと思ったら広島大学の教授にがんがん言うかというと、多分で きないのではないかと思う。それはどうでしょうか。 ○山岡委員  ちょっといいですか。 ○黒川委員長  どうぞ。 ○山岡委員  基本的には黒川先生の今の解説には同意しますが、世の中がもう少しそのままでは 動かなくなってきていると思います。だから、少なくとも各病院、縦社会ではいけな くなりつつあって、京都大学に限って言うと、移植ということのために世界中の医者 が入ってくるわけ。そうすると今の密室性というのはもう明らかになくなっています 今のことは少なくとも我々の世界ではもうだんだん消えつつあると。 ○黒川委員長  先生のところではね。 ○山岡委員  ええ。だから、日本人はそうなのかと言うとまだまだ時間がかかる。 ○黒川委員長  そうそう。 ○山岡委員  それから、治療に対する行為ということについて一番私が悩んだのは、リビングド ナーからあげるときのリビングドナーは正常人なのですね。だから、正常人に傷をつ けるということによって起こる不利益はやはり納得していただくとは言いながら、 執刀医に責任があるのです。  だから、そこのところで一度、あらゆる種類の合併症からいろいろなことを説明は しながら、もし、患者さんに死ぬようなことになった場合にはこの企画は中止すべき であるという決心で始めた。幸い、ずっと今までないですけれども、ドイツで1人、 死んでいます。我々も1人、死にかけました。  ですから、そういうふうな、やはりけじめというのはやる側がいつも持っていない と、知らないうちに拡張していって接待を受けても平気で食べるというようになると いうふうに僕は思っていますけれども。やはり始めのときにけじめをつけておかない と、ドナーが死んだらこの企画はやめるというふうな、それが我々の出発だったです これは今も続いていると思います。 ○黒川委員長  それから、そうなるとちょっと議論が一般的な研究のところから、新しい研究の 開発まで入っちゃうので、いつまでもきりがないから、この間の論点から言うと、 新薬の開発に関わる欧米で、必ずしもあるかということになってるとはちょっと思い ませんが、そういうのを扱ったらどうですかという話について日本ではどうするかと いう話にちょっとやはり議論を絞っておいた方がいいのではないかなと思うのですけ れども、いかがでしょうか。 ○溝口委員  いいと思います。 ○黒川委員長  よろしいでしょうか。 ○溝口委員  さっきのHAB協議会の方の話を聞いててもやはり将来的には脳死の流れが妥当で あって、やはり生きている人、あるいは患者さんを対象にするのはかなり辛いものが ありますね。  やはりこれは脳死由来の組織へ行く中間段階ではないかと思われます。血縁者から の生体臓器移植と同じような状況にあるわけだと思うのですね。この山岡先生の 説明文書を眺めてて、これのどこを変えていったら、ヒト組織の提供を得るのにいい のかなと思ったら、やはり公的機関に臓器を提供するということの同意を求める格好 になるのだと思うのですね。  そうなると山岡先生と患者さんの信頼よりもう少し薄くなるのですね。先生のため に協力してあげようという気持ちと、公的機関に寄付して、さらにその組織が 臨床試験を受ける人たちの安全性、有効性を予見するためにというようなことはすぐ 理解してもらうことは難しいですね。  そうなると、さっき柏木先生のおっしゃったような多く取られるのではないかとい う心配に対する担保がもっと必要になってくる。例えば、先生がおっしゃったように 主治医がいつでも希望すれば手術場に参加しても結構ですというようなことが必要か なと思います。 ○黒川委員長  そこでさっき言った今回のテーマを、もちろんそこから先、議論は続けるとして、 新薬を研究開発ということになると私は開発というところがやはり大事だと思うので すね。  今、山岡先生のあくまでも研究であって、これはクリエイティブな研究をしている ので、それは研究者が自分の責任でやる分のところの文書を見ていてもそう思うので すよ。だけれども、今、僕等がやっているひとつは、今日の話を聞いているとあくま でもあるプロトコールが決まっていて、ある方法をする、これはあくまでも開発だか ら。だから、クリエイティブな開発ではなくて、開発をするプールとしてどうするか ということになると、ちょっと論点が違ってくるのではないかなと思うのですよね。  ひとつはアメリカの場合は年間に7,000 も8,000 も1,000 のオーダーでの肝移植が されてますから、当然、その中に駄目な肝臓があれば、年間に多分、数10から100 の オーダーの使われない、アンユーズのリバーは出てくる。それを使ってミクロソーム を作ることはできる。しかもそれは混ぜてフリーズしておけばいつでも使えるという ことで、それはある程度、公的機関が監督していればある程度、サービスとして買い たい人には売ってもいいのかもと言っていいと思うのですけれども、そういうことは 多分できると思うのですよ。  だけれども、日本の場合は脳死の肝移植でさえもドナーが出ないような状況で、 そんなことあるかというと、たまにひとつ出たのを皆、群がって取り合うようでは全 然、話にならないわけで、やはりある程度、そういう公的なところに委託するか何か で配布してもらうと。それを皆にサービスしてあげようというのがいいのではないか なという気はしますが。  向こうの立場、今、見ていると、それができないから新薬ができないような言い訳 している。そんなことはないのです。梅田先生がおっしゃったように。本人たちの力 がないせいじゃないかと思うのだけれども。  そうじゃなくて、そうであればやはり脳死の肝臓を取って使えなかったからという ようなことが十分サプライができるとはとても今、思えないわけですよ。そうなると 山岡先生の話じゃないけれども、どうしてもやむを得ず肝臓の切除をするという行為 は日常の医療行為でされているわけで、例えば、今、ヘパタイティスするのはCの 肝炎がなっていても、例えば、メタじゃなくて、肝臓癌が出たときにまわりもある程 度、取りますよね。取ったときに、それを集めて、これは非常に姑息的で生体肝移植 みたいな気がしないでもないけれども、そこを取って全部集めれば、生体、死体の 肝臓を待っているよりははるかに早く集まるのではないかなと、それはしますけれど もね。混ぜてしまう。それはリアリスティックな、プラティカルな回答のひとつかも しれないです。 ○山岡委員  全く先生の意見に僕、賛成なのです。これは可能だと思うのです。ただ、医療行為 が非常に正当であるということを誰かが、先生おっしゃったように、リファーラルな 人が見てあれば、そうした上でどこかに供給するということが少なくとも私の責任の 範囲でオフィシャルなところへ、この3分の1を提供する、毎回提供すると。そうい うことは可能ですし、それが日本の医療をもう少しよくするチャンスだとは僕は思い ます。  ですから、ぜひ、そういうふうなシステムをこの会で作れたら一番いいのではない かと思います。 ○黒川委員長  そうですね。しかも、そのときは術者である先生に全くインセンティブがないわけ ですよ。だから、余分に取る理由も全くないし、もし、余ったらくださいねと言って いるだけの話だから、それはもう全然、先生のリスクはないのではないかなと。 メディカルなジャッジメントでやっていただくということ。 ○山岡委員  はい。もともとそういうのを含めてインフォームド・コンセント取っていますから 場合には2g、3gは取りますので、そのうち1gを提供するとか、それはもう極め て簡単に、私はできると思っています。 ○黒川委員長  そうですね。 ○廣部委員  よろしい? ○黒川委員長  どうぞ。 ○廣部委員  これから医薬開発の国際化が進んでくると、各国共通、開発データを共有する時代 が来るわけで、そうなったときに非常に貴重な生体組織を使って意味のないデータを 出すような実験をやったってしょうがないわけです。意味のあるデータを出すために はどういったことが必要なのかという中で検討していかないと、結局、世界に認めら れないようなデータを出したって、それを無駄にするだけですから。  ですから、各国で行われている方法は何なのだろうかということで、日本でも外国 に依存しないでやる、あるいは日本でなければできないような人種差のことも考えま すと日本でなければできないようなこともやらなければならない。それにはどうする かというようなことから考えていく必要がある。確かに日本の技術は低いというけれ ども、低いというままでは、これから国際的な競争に勝っていけないわけで、やはり そういったことをどうクリアしていくかということで前向きに考えていくべきだろう と思います。 ○黒川委員長  よろしいですか。ひとつは、そのオーガニゼーションのサプライをするときに、 このアメリカのNDRIがそういうふうなのか知らないけれども、サプライを リクエストしたときにどういう実験でどういう目的でどういうふうにしたいのかとい う話のプロトコールは出してもらってもよろしいのではないですか。外側の アドバイザーリー・ボードか何かやって。 ○廣部委員  これは日本だけの問題じゃなくて、要するに、国際ハーモナイゼーション になってきたときに、例えば、アメリカあたりではそういったものが商品化されてい て、しかも、それが非常に標準化されている試料であって、それを世界中で使えば 共通したデータが出ると。そういう方向でこれからプロトコール、決められていくと いうのだったら、その方向で行くのがいいのかもしれませんけれども。  ですから、これからICHではこの問題をどのように考えていこうとしているのか 私としては、これ厚生省当局に聞きたいことでもあるわけですけれども。 ○黒川委員長  実はちょっと明日、私もICHの方と話に行かなければならないのでちょっと補足 させていただきますと、ICHのガイドラインはこういうふうにしなさいということ は書いてありますよね。それから、こういう実験もしたらどうか。このヨーロッパの も見てもそうだけれども、生体にやる前に、もし、できればin vitroでやって、そこ から推測してin vivo に持っていくという科学的根拠が必要だと。  ICHのガイドラインはあくまでもこういうスタディをやることがいいのだけれど も、サイエンティフィックにやりなさいということを言っているだけで、どういうふ うにやるかというのはもう皆、何も書いてないですよ。自分たちで考えろと言ってい ることを言っているわけですから、それがいかにサイエンティフィックに インターナショナル・コミュニティにアクセプタブルな実験をしているかどうかだけ でいいじゃないかなと思いますけれども。 ○廣部委員  将来的にはやはりある種の国際的なガイドライン、決められてくるのでしょうね。 ○黒川委員長  いや、ガイドラインもできていますが、ガイドラインはどういうことをやって、 その次にこういうことやりなさいということは書いてませんよ。どうやってやるかは サイエンティフィックなベースによって自分たちで考えろというのが基本だと僕は思 うので、今、僕、ジェネラル・ガイドラインやっていますけれども、あれで2日間、 わいわいブラッセルでやって結局、今、森さん、ICHの担当している森君が考えた 森のモジュールというのが、これが一番いいやということになったのですが、 それぞれのフェーズで必要だと。最適な、必要だと思われたスタディをそれぞれ入れ ないというのが基本的な姿勢だと思うので。 ○廣部委員  だから、日本でそういった生体試料を使ってやったデータが国際的に認められない ようなレベルの低いようなものであるとしたら、そのために貴重な生体組織を使うの は空しいことですね。 ○黒川委員長  それはまずいですね。 ○廣部委員  まずいですね。そのためにはどうするかという。 ○黒川委員長  そうするとそういうのを2つ、3つ出した会社、もう駄目ですね。うちのそれを 使ってやって、ろくでもないのを使ったらもうサプライしてあげないよということに なるでしょう。 ○柏木委員  ひとつちょっと総論的なことなのですけれども、いろいろなこういう議論をすると きに、進んでいる、遅れているという議論になるのが非常に危ないと思うのですね。 確かに世界的なスタンダードでものが言えるようにするということは非常に重要だと 思うのですけれども、その仕方というは国によって違って当然だと思うのです。  だから、例えば、アメリカで脳死の移植でうまくいかなかった臓器を使ってやって いると。それが進んでいるというふうに捉えることが非常に危険だと私は思うのです  ですから、今、山岡先生が言われたように、例えば、肝臓の腫瘍の手術のときに、 当然、切り取るべき範囲のものの中から正常な部分を提供するという、これが凄く、 例えばいいということであれば、それは何も姑息的なことではなくて一番いい方法か もわからないと思うのですね。  ですから、これは例えば、癌の告知というようなことを考える場合でも、100 % 告知することが進んでいて、半分ぐらいしか告知しないのが遅れているという、そう いう捉え方ではなくて、それは違いとして捉えるべきで、いつも何か日本が遅れてい るという捉え方をするのが非常に危険性をはらんでいるということをちょっとやはり 踏まえておくべきではないかという、凄く思うのです。それだけちょっと。 ○溝口委員  さっきの話を聞いていて臨床の試験に入る前に有効性とか、副作用がある程度、 予測できるということは、実際にフェーズIなんかに入る生きている患者にとっては 非常に大きなメリットですね。やはり患者中心にやはり考えていくと、この形は進ん でいるように思いますけれども。 ○黒川委員長  いや、だから、その材料のもとが脳死で取った肝移植で使えなかったものを使うと いうのもそれはアメリカでは可能かもしれないけれども、日本では正常な治療で取っ たやつの、ちまちまかどうか知りませんけれども、集めて、それの方が健全かもしれ ないという話は柏木先生、おっしゃったけれども、アメリカはそんなことする必要が ないのだと。サプライがあるからということだと。 ○溝口委員  進んでいる、進んでいないの問題ではなく、可能な道を探っているということで しょう。 ○黒川委員長  そうですね。 ○溝口委員  でも、脳死の場合と比べて、生きている人が対象の場合は、さっき言ったような 倫理的な問題がむしろ大きく、監視者がやはり大事になってくる。 ○黒川委員長  だから、ピュアに医学的な理由で取られた組織の正常な部分をユーティライズして も、それはいいのではないかということですよね。 ○遠藤委員  やはり世の中は確実に変わってきておりまして、患者さんの意識、医療とか医薬に 対する期待とか不安とかというのは凄く動いていると私は感じております。  その中でやはり今日は、あまり具体的に出なかったのですけれども、新しい薬品と いうことに対する新規性をどういうところにセットポイントを置くかという、即ち、 何でもかんでも薬の開発に対してヒューマン・マテリアルを使った方がいいというこ とではないのだということをやはりはっきりと、押さえておく必要があるのだろうと 思います。それが、姿勢としては大事だと考えます。  それから、もうひとつは、現在、あまりにもミクロソームでの薬物代謝の問題だけ が中心になってきているわけなのですけれども、実際問題としては現在の実情を肯定 して、それに日本は遅れないようにしようというようなスタンスではなくて、 ちょっと昼休みの時に梅田先生ともお話したのですが、やはりまだ巷にはないような システムを日本ではできる体制にあるのではないかという期待を込めて、その場合に マテリアルがなければそういうものも具現化できないという、そういう状況に私は 現在きていると思います。  ですから、今日は、日本製薬工業協会の人たちは環境整備の必要性を言ったわけで すけれども、実際にはミクロソームを買って使うのと、患者さんから期待を込められ て、提供されたものを使うというのでは、創薬への姿勢が違うと思うのです。  ですから、若干、精神主義的になりますけれども、そういうような状況を期待を込 めて作っていくべきだと思いますと。製薬業界の方もそれをやはり自分たちが期待を 込められているのだということを受けて、よりましなものをシステムとして確立し、 新薬の開発に結びつけていくべきです。口で言うのは簡単ですが、具体的にはどうす るかということになってくるわけですけれども、やはりヒトの材料なしに、新薬開発 を頑張れ、頑張れということは今のところは困難だと思います。  ですから、そういう意味で、できるところからというのが、「ちまちま」という 委員長のお話にもありましたけれども、そういうところが妥当なところではないかと 私は思います。ちまちまで結構じゃないかというふうに思っております。 ○黒川委員長  だけど、日本人の死生観とか宗教観から言うと、いらなくなって取ってくれたもの を使ってもいいのではないのということはかなりアクセプタブルでないものかね。 役に立つことに。 ○丸山委員  ちょっとよろしいですか。いつまでも説明文書にこだわっているようなのですが。 ○黒川委員長  それは直しますから。 ○丸山委員  山岡先生の方の5番目なのですが、守秘の保護、名前や病気についての秘密は厳重 に守られますとありますが、どのぐらいの覚悟でこの守秘を貫くか、貫こうという 体制にございますのでしょうか。具体的に言いますと、行政から病院の実地調査が 来た場合とか、警察から犯罪捜査が来た場合にも体を張ってこれはちょっと駄目だと いうところまで守秘は貫くという。 ○山岡委員  いえ、それはございません。ひとつは、全国調査という疾病によっては全国調査が ありますので、名前までは出せませんが、こういうものはここから来たということは 出しますし、もうひとつ、この細胞はどういう患者から出たというときに、病名は出 てくると思います。ただ、患者のID番号までは出ません。  ただ、それは守秘に入ると思います。それは法律的にと言うとおかしいですよ。 我々の感覚ではこういう疾病の患者から出た組織が現在、最終的にここに来ていると いうことは出しますが、そのお名前まではID番号は出ません。 ○丸山委員  となりますと、重箱の隅をつつくようなのですが、あなたのお名前は守秘しますけ れども、病気についてはちょっとリンクされることも、サンプルとリンクされること はあるということ。 ○山岡委員  むしろリンクしないと意味がないと思います。 ○丸山委員  研究にですね。だから、そのあたり、後で提供者、サンプルの提供者がわかって、 あれ、秘密が守られるといってもこれぐらいしか守られないのかなというので文句と いうか、後悔を感じるということはないですかね。 ○山岡委員  僕は一切ないぐらいに思っています。 ○丸山委員  ああ、そうですか。 ○山岡委員  と言いますのは、症例報告として極めて典型的な症例を報告するわけですね。 その場合、名前が出なくても、誰の某かまで見ればわかるところもありますが、 それが守秘を破ったとまでは考えてないのが医者の立場なのです。 ○丸山委員  そこが一般人の立場でこの文書を見て、ああ、これは秘密はもう完全に守ってくれ るのだなと思って同意書に署名したのに、自分が、あるいは自分の兄弟が学会報告の 症例のスライドを見ていたら、ああ、自分の名前もイニシャルで示されていて細部は 消えているけれども、これは知っている人ならわかるのではないかというふうなとこ ろですね。 ○山岡委員  それは否定できない。もうはっきりとわかります。顔写真までは出しませんけれど も、これはあの人の病気というのはもう特定できるほどまでになっています。  ですから、それを研究的、学問的、治療的という面でアクセプトされているという ふうに私は医者として思っていますが、それ以上、言われると法律的にそれが問題だ と言われたら、これはもう受けて立たざるを得ないと思っています。 ○黒川委員長  事前に弁護士さんに相談してください。ちょっと時間もありますので、その次に ちょっといってみましょう。 ○寺尾委員  ちょっといいですか。 ○黒川委員長  はい。どうぞ。 ○寺尾委員  結局、この委員会で対象とする研究というのは医薬品、新薬の開発ということで、 さきほどの説明を聞きましても、結局は動物実験からフェーズIに移る間で人間の組織 を使ってやっているのが中心になるようなお話だったですね。 ○黒川委員長  そうじゃなくて。 ○寺尾委員  違うのですか。 ○黒川委員長  そういうことをすることによってフェーズIに行く前にある程度、患者さんに対する リスクを下げることができるという場合がしばしばあるので、そういうことを使える ようにしてもらった方がいいのではないかという趣旨です。もちろん使わなくてもい いのですよ。 ○寺尾委員  一方でティッシュ・エンジニアリングにヒト組織を使うという議論が一方ではある のですね。それとの関係をどうする、どういうふうにするのかということを明確にし ておかないといけないのではないかなという気がしますので、そこをちょっとご議論 いただきたいのですけれども。 ○黒川委員長  その前に、それに関係あるのでちょっとその次に進んでみたいと思うのですが、 ヒト組織供給体制に関連して動物実験代替システムの現状ということに今度、 ちょっといこうと思うのですが。澤井先生の方から何でしょうか。 ○澤井委員  参考資料の3番ですね。 ○黒川委員長  3番です。 ○澤井委員  これはヒトの組織が企業によって販売されているということ、少し調べた資料で ございます。組織については非常に限られておりまして、主に細胞培養のキットなの ですけれども、最も需要があるのは血管内皮細胞の培養キットだそうです。さらに、 平滑筋の細胞培養キットなどが動脈硬化とか、心筋梗塞などの循環器の疾患領域での 医薬品開発に使われているということが見られます。  ですから、こういう企業がこういう分野に出てきていること。それを含めて今後、 どう全体的な体制を組んでいくかということを考えていく必要があるのではないかと いうことで資料として提供しました。 ○黒川委員長  これに関連して、それでは梅田先生の方からの資料がございますので、それについ てちょっと梅田先生の方からお願いします。 ○梅田委員  資料の参考資料の4の1)、4の2)ですけれども、これは組織培養学会でだいぶ前か ら倫理委員会を設けて検討してきた結果の中間報告と、まだ現在では最終報告になっ てませんけれども、そのドラフトをお示ししたものです。  この背景にはいろいろあったと思うのですけれども、ひとつは、セルバンクができ て細胞が行き渡るようになったのですが、ヒトの細胞を使っていろいろな利用価値か 出てきた場合にどうなるかということがございます。それで企業なんかがそれを使っ てお金が儲かるようなことになった場合、どうするかとか、そんなようなことがあり ました。それから、今の流れのインフォームド・コンセントがないまま、昔は全部 使っていたという現実がありますので、それをどうしたらいいかということ。  そういうようなことを含めて4、5年前から組織培養学会で検討を始め、 「組織・細胞培養におけるヒト組織・細胞の取扱いについて」という基本的事項の 中間報告を、これは1995年、もう3年前に出しました。これは中間報告ですので、 さらに本論ということで検討を重ねています。もうひとつのぶ厚いものの方ですが、 まだドラフトですが、中身は今回の審議にかなり似た部分をずっと討議してまいりま した。  これはぜひ、ご参考までに見ていただきいということで今日、持ってきたわけです けれども、もう時間もないので説明しませんけれども、学会では真剣に受け止めて、 さきほどから申しているように、ヒト材料を使うのにやはり医者とかが勝手に 医療材料を使うのではなくて、各研究者がもっと真剣に考えて地道に積み重ねでやら なければいけないというアピールをするということが趣旨です。以上です。 ○黒川委員長  ありがとうございました。そうするとさきほど事務局から前回の先生方のいろいろ なご意見をいくつかのカテゴリー別に分けていただいて整理していただいたのですが もうちょっと残りの時間あまりないのですが、ちょっと伺ってみたいのですが、 例えば、世界中で一番使われているヒトのセルラインというと、例えば、 HeLa細胞なんかそうですね。ヒーラの遺族に何かお金がいっているのですか。 そんなことないですよね。だから、やはり善意のドネーションで役に立たない細胞の 場合はそういうこともあり得るわけですよね。ということを予めインフォームしてお くことが大事ではないかという話ですか。 ○梅田委員  いや、今まではそれで済んでいたと思うのですけれども、これからは患者のそうい う意識が高まっていますから、インフォームド・コンセントしておかないといろいろ 問題があるということも含めましてですね。 ○黒川委員長  ヒーラさんの遺族からの訴訟問題なんかないのかなと思って。 ○梅田委員  いや、ヒーラはもうないと思いますけれども。 ○黒川委員長  アメリカでもないのだから、それはかなりアクセプタブルな事項かもしれない。 あれは子宮癌か何か。確かね。取られるべきで取ったものということですか。 ○梅田委員  外科材料、産婦人科材料を培養したということだろうと思いますけれども。 ○木村委員  はい。 ○黒川委員長  はい。どうぞ。 ○木村委員  ですから、学問的な研究、これが人類のやはり医学の知識の増進のために役に立つ ということでご了解いただいたケースは多いのですが、先程申し上げましたように、 これがコマーシャルベースになりますと、そういうこと告げられてなかったというこ とで訴訟が起きたケースがもうアメリカにあるわけです。  基本的にはやはりこういう今日、日本製薬工業協会の方々からお話をお伺いしたり これは言わば企業の方ですね。それから、HABの方からお話をお伺いしたりしたわ けですが、この機会に事務当局の方でまた我々、委員会の方でどう考えていくかは 問題になるかと思いますけれども、やはり日本の中にはこういう組織の問題を巡って 非常に関心をお持ちの方々、そういう組織体を形成している方もいらっしゃいますし 動物実験も含めて。  何かそういうオープンなセッション、生殖医療の方では婦人問題が関係してくるも のですから、いろいろな公開のセッション、何回かやっておりますけれども、やはり そういうところでの論議の積み重ねということが非常に意味があるので、今日、 もしこれがこの製薬協会の方々だけのヒアリングでこれが終わってしまうとなると、 これは将来にかけて非常に大きい問題になってくると思うのです。教育の現場でどう なのか。学会の方からのお話もお伺いしていない。もちろんこの中には学会の委員の 方々もいらっしゃるわけで、組織培養学会の梅田先生からもお話いただいたわけです が、そういうことはやはり何回か積み重ねる必要が出てくるのではないかと思います  それを踏まえたガイドライン、あるいは私はもっと積極的に、法的な言わば 臓器移植法、できたばかりですけれども、その中に3年を目処にこれを改定するとい うようなことも入っていますけれども、新しい立法、あるいは移植法の改正、これも 視野に入れた、これは非常に重要なテーマがこの背景にはあるのではないかというふ うに思っているのです。  今日、ご配布いただいた資料3の1の論点とそれに対応する主な意見についてとい うことで言えば、確かに我々はヒト組織を用いた研究の論議ではありますが、やはり 論議の前に当たって、これは公開であるのかないかということについて大変時間を割 いたという経過がありますので、我々の委員会としては議事録を公開する。それから 会議の一部公開については同意に達しているということはどこかに入れておく必要が あるのではないかと考えております。  ご参考までに申し上げたいと思うのですが、この3枚目の資料の3の論点とそれに 対応する主な意見についての3枚目のところで、これもご論議いただいた線に沿って 多分、おまとめいただいたのでこうなっているかと思うのですが、真ん中の インフォームド・コンセントの重要性のところの下から3段目ぐらいに話せばわかる のではないかということも含めてインフォームド・コンセントを取るための基盤とし て、その次の次の行も、インフォームド・コンセントを取るということは議論の前提 に置くべき、その「取る」というのは、これは医療側からの発想の言わば表現なので す。  ですから、これは話せばわかるというのではないかということも含めて、 インフォームド・コンセントが必要不可欠であるということを入れておいた方が、 取るとか取らないとかということとはまた違う、これは基本的な問題ですので、 そういうふうに表現を変えていただいた方がいいのではないか。最後のところの丸の ところも、インフォームド・コンセントを取るということは議論の前提に置くべきで あるというのではなくて、インフォームド・コンセントが必要不可欠であるというこ とを議論の前提に置くべきであると。ちょっとその表現をおそらく変えておいた方が いいのではないかというふうにも感じました。 ○黒川委員長  ありがとうございます。 ○丸山委員  自分の発言だろうと思うところをちょっと訂正してほしいのですが、同じ頁の最後 の行なのですが、「子ども、無能力者」、ここまでいいのですが、「とか、死者」、 これはいらない。死者の場合は比較的問題少のうございますので、「とか、死者」を 削除していただければありがたいと思います。 ○梅田委員  死者は私が発言したのだろうと思いますから。 ○丸山委員  ああ、そうなのですか。では、権限ない。申し訳ございません。 ○黒川委員長  脳死者の場合というのが。 ○丸山委員  脳死者はもちろん。 ○黒川委員長  さっき言った臓器移植で取って使えなかった場合。 ○丸山委員  日本ではそれ問題ありますね。 ○梅田委員  いや、死者で皮膚とか、そういうのはいただける場合もあるということで、議論の 対象にしてくださいという意味ですから。 ○黒川委員長  それはありますね。 ○丸山委員  では、そのまま。ごめんなさい。失礼しました。 ○黒川委員長  そういうことから言うと、やはり今日のヒアリングの結果から言うと、前回のいろ いろなまとめた議論がありますが、先生方のご自分でやられるクリエイティブな研究 プロトコール出して病院の中でIRB取ってというところよりは、むしろ今、FDA とかヨーロッパでやっているような新薬の開発に関わる分をどうするかというふうに やはり絞っていった後で残りの積み残しはやるとして、そこのところにやはり次回、 絞らせていただいて、具体的な先生方の意見をいただくというのが多分、一番いいの ではないか。それでないとやはりこれフォーカスされないからという話をして。 ○丸山委員  確認なのですけれども、少し前のNHKの3回連続ものの最後の組織利用の放映さ れましたけれども、親知らずを抜いた肉を使って皮膚を培養して作るというようなの は一次的には入れないという趣旨ですか。 ○黒川委員長  だから、新薬の開発に関わる分ということでやると、今、一番必要でコモンに使わ れたのは、さっきのFDAといろいろ見てみると肝臓のミクロソームフラクションか なという気はしますから、その供給の体制をまず作ってみると。そうするとその次、 皮膚どうするか、同じシステムに乗せていけるのではないかと思いますけれどもね。  ただ、こんなところから取ったやつを作るというサイエンティフィックな ジャスティフィケーションは何かというと、開発ではなくて、もし、研究であれば、 それはご自分でやってくださいということになりはしないかなと思いますけれどもね 要するに、やる人が責任を持つシステムにするというふうにしたらどうかなと思った ○丸山委員  できたものは人工皮膚ですよね。ですから、医薬品と共通した面があるのではない かなと思って。 ○黒川委員長  だけれども、その先生が人工皮膚として大学の研究室でやっている分にはこれの 対象にならない。製薬会社が開発して製品にする場合はまたこれちょっと別だと思う のですがね。 ○丸山委員  まだそこまでいってないということですか。現実には。 ○黒川委員長  どうですか。それは。大学の中でやっているのじゃないのかな。主に。どうぞ。 ○山岡委員  今の丸山先生のご指摘はさっきティッシュ・エンジニアリングというのをどうする かというご質問と共通のことですね。やはり視野を大きくしておいて、その細かい 部分としての薬開発としておく方が将来的な拡がりがあって、例えば、脳死法案がで きてしまったために非常にいろいろなところで制約ができたと同じことを、我々がこ こで変にひとつだけに絞ったために他はできないというふうな縛りを作らないこと。 そういう危険を感じるので、逆に、広くしておいて今回の焦点はここであるとすべき ではないかと思います。 ○黒川委員長  そうですね。ひとつひとつやっていかないとちっとも終わらないのではないかとい うことだけで、他のことはエクスクルーズするわけではなくて、どうもさっきの FDAもいつでもそうですが、さきほど廣部先生に伺うと最近、チトクロムP450 なんていうのがかなりの酵素がもうクローニングされていて、エクスプレスされると たんぱくで機能、もう解析できますから、近い将来にはもう肝臓のいろいろな ファクターはあると思うのですけれども、チトクロムの代謝だけ見るのであれば、 リコンビナントてやつでできちゃうシステムがもうかなり近いうちにできるのではな いかという気はしますよね。  だから、差し当たり、システムはひとつ作るとして、これだけでなくてもっと広い インプリケーションは、ぜひ、先生方のウィズダムをいただくというのが一番いいの ではないかなと思いますが。公開した上でいろいろな人に意見を聞くということをし ながらやるのがいいのではないかなと思いますけれども、どうでしょうか。  そういうことですので、引き続き検討したいとは思いますが、具体的なやはり プロポーザルを出さないと行政の方も非常に困りますし、ある程度、こういうこと 検討してくれと言われているわけですから、エンドレスにやっているわけにもいかな いので、その辺について何か事務局の方でありますか。あるいは岩尾課長の方からど うぞ。 ○研究開発振興課長  今日はありがとうございました。一番最初の会でもご議論いただきましたが、幅広 く議論をしていただいて、できれば私ども、その医薬品開発、創薬という切り口で 報告書をまとめたいということで申し上げておったかと思います。  今日のヒアリング、その他も含めまして次回以降、どうするかということですが、 ちょっと事務的な説明をさせていただきます。 ○事務局  ありがとうございます。前回、まず先にスケジュールの点を申し上げますけれども お忙しい先生方ばかりでございますので、予め日程を決めさせて、先生方のご都合を 伺いして一番ご出席いただける日ということで、この先、2回まで会議の予定を決め させていただいています。具体的には5月19日の3時から6時まで、それから、その 1週間後でございますが5月26日、やはり3時から6時までということでよろしく お願いをしたいと思います。  今のところ私どもとしましては次回以降は今日の後半の方でお願いをいたしました ようなフリーのディスカッションを前回、ご確認をいただきました論点に沿って お願いできればというふうに考えております。  それから、今、課長から申し上げましたけれども、議論の中身といたしましては 前回も申し上げましたけれども、幅広くご議論いただくとしても、ある程度、時間の 問題もございますので、私どもとして非常に関心のあります問題について取り合えず 中間報告のような形をいただけるものと期待しております。  つまり、全部の問題を限られた時間の中でご議論いただけるのであれば、もちろん それに越したことはございませんけれども、今日のお話を伺っていてもかなり全体の 問題ということになりますと時間を必要とするようにも思いますので、比較的問題が はっきりしております医薬品の開発に使うと。そのものを医薬品にするということで はなくて、医薬品の開発に使うというものについては少なくとも何か中間的なご報告 をいただければと。その後も引き続き今、ご議論いただくということでご了解をいた だければというふうに考えております。よろしくお願いいたします。 ○黒川委員長  それでは今日は長い間、ありがとうございました。また次回、よろしくお願いいた します。                (閉会・13時45分)  問い合わせ先   厚生省健康政策局研究開発振興課    担当 白神、中井(内線2542、2544)       (代表)03−3503−1711       (直通)03−3595−2430