98/04/13 第9回厚生科学審議会研究企画部会議事録      第9回厚生科学審議会研究企画部会議事録 1.日 時:平成10年4月13日 (月) 14:00〜16:00 2.場 所:厚生省特別第1会議室 3.議  事:(1)平成10年度厚生科学研究費補助金公募研究事業について (2)今後の厚生科学研究の在り方について        (3)その他 4.出席委員:矢崎部会長 (委員:五十音順:敬称略)     柴田鐵治 寺田雅昭   (専門委員:五十音順:敬称略)         杉田秀夫 高久史麿 寺尾允男 初山泰弘 眞柄泰基 真崎知生          宮本昭正 U澤信夫 山崎修道 ○事務局 それでは、定刻でございますので、ただいまから第9回の厚生科学審議会研究企画部 会を開催いたします。 本日は、土屋委員と大石委員が御欠席でございます。 それから、事務局の方といたしまして審議官、それから厚生科学課長が国会の審議等 の関係でちょっと遅れますので御了承いただきたいと思います。 まず、配布資料の確認をいたします。お手元に議事次第ということで1枚紙が配って ございます。 それから、資料1といたしまして、「平成10年度における厚生科学研究費補助金公募 研究事業について(答申書)」という資料でございます。 資料2といたしまして、3月9日に開催されました第8回の厚生科学審議会研究企画 部会におきます意見の概要という2枚の資料でございます。 それから、3月13日に開催されました第4回厚生科学審議会総会における意見の概要 という資料3、2枚紙の資料でございます。 それから、資料4といたしまして「平成10年度厚生省科学技術関係予算の概要」とい う3枚の資料でございます。 それから、資料5といたしまして「厚生科学研究の基盤確立とブレイクスルーのため に」、昭和63年9月の厚生科学会議の意見書でございます。 資料6といたしまして、「厚生科学研究の大いなる飛躍をめざして」、平成7年8月 の厚生科学会議の意見書でございます。 以上、資料の確認をお願いをいたします。 それでは、部会長よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。 本日は、年度初めで大変御多用のところを委員の先生方に御出席いただきましてあり がとうございました。平成10年度におけます厚生科学研究費の補助金公募研究事業の新 規事業に関する方針につきましては、お手元の資料1のとおり4月9日付で厚生科学審 議会より答申されたことを報告申し上げます。答申を受け、現在事務局において平成10 年度における厚生科学研究費補助金の交付の対象となる研究課題及び研究計画書の提出 期間あるいは提出先の具体的内容についての官報告示の手続が進められております。そ の内容につきましては、もうこの部会及び審議会で御確認をいただきましたので、あと は手続上の問題でございますので事務局に官報告示の手続をお任せしたいと思います。 本日のこの会の目的は、前回に引き続いて今後の厚生科学研究の在り方について自由 に御議論いただきたいということで、大変御多忙のところをまたお集まりいただきまし て恐縮に存じます。今までの議論のまとめについて、事務局に幾つか用意していただき ましたので、まずその説明をよろしくお願いいたします。 ○事務局 それでは御説明申し上げます。資料2、資料3でございます。まず、資料2の方から 御説明申し上げます。 前回のこの部会、第8回の研究企画部会でございますけれども、それにおきます議論 の概要ということで事務局の方で取りまとめさせていただいたものでございます。 表紙をめくっていただきますと、幾つかの丸で記載してございます。意見の概要とい うことで、主な意見ということになっておりますが、「厚生行政に直接反映できるよう な臨床研究、薬の開発・有効性の評価に関する研究などの他省庁の研究と異なる厚生省 らしい研究が重要ではないか」という意見でございました。 また、「社会保障、福祉等に関する政策立案に必要な情報を収集、把握できるような 5〜10年に渡る長期縦断疫学研究が必要ではないか。その際には、指定研究として行う べきではないか。また、そのような研究については、研究の評価の在り方についても別 途議論が必要ではないか」という意見でございました。 それから、「国際的な共同研究の枠組みが必要ではないか」ということ。 そのほかには、「重点研究分野の中でも、特に重要な最重点項目を選んで重点的に研 究費を配分することができないか。また、重点研究項目に関する研究を推進していくた めに、また、研究費を有効に使うためには、研究のスクラップ・アンド・ビルドが重要 ではないか」。 それから、「厚生科学と科学技術の架け橋的な存在としての技術面、社会面、倫理面 からの研究が必要ではないか」。 「研究成果を具体化していくため、厚生省の試験研究機関も含め、総合的に、情報化 に取り組む必要があるのではないか」。 それから、最後の「研究の推進のために、研究補助員の養成・確保の問題が重要では ないか」というような御意見が出されておりました。 続きまして、資料3でございます。3月13日に開催されました厚生科学審議会の総会 におきます意見の概要ということでございまして、表紙をめくっていただきますと概要 が出てまいります。 まず、「治療研究の重要性をもっと強調すべきではないか」という意見。 それに対して「基礎的な研究もやはり重要ではないか」ということでございます。 それから、「原因究明に係る研究だけでなく、リスク・アセスメント(危険度の評 価)、エフェクティブネス・アセスメント(効果の評価)等を行う研究も必要ではない か」という御意見でございました。 それから、「測定方法、測定機器の開発も推進する必要があるのではないか」。 「医療面に関する技術の進歩に対し、社会的、倫理的側面からの研究の充実が必要で はないか」。 また、「近年進歩の著しい基礎研究の成果を厚生科学研究に十分取り入れていくシス テム作りが必要ではないか」という御意見。 それから、「厚生科学研究の推進のためには、研究者の養成・確保が重要ではない か」。 また、「近年変化の速い社会事情、医療事情に対応した研究を行っていく上で 5年ごとに重点研究分野を見直すべきではないか」という御意見でございました。一部 部会それから総会の中で同様の意見が出ておりますけれども、あえてそれは両方に記載 をさせていただいております。以上でございます。 それから、参考までに資料4、資料5、資料6ということで前回もお示しをしました 研究企画の在り方についての厚生科学審議会の前身でございます厚生科学会議からの意 見書、それと平成10年度の厚生省の科学技術関係予算の概要ということで参考に付けさ せていただいております。以上でございます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 前回の部会の議論では、重点領域の設定については平成7年の8月に出されました 「厚生科学研究の大いなる飛躍をめざして」の中に大体網羅されているので、これをど ういうふうに実現していったらいいかということと、それからもう一つは厚生省として のリーダーシップの下でどのように厚生科学研究を進めていったらいいかというような ことを中心に今、事務局から説明がございましたように、幾つかの論点にまとめて先生 方に議論の基礎となる資料としてお配り申し上げた訳であります。 本日は御自由にいろいろ御討論いただきたいということで会を催しましたので、どの ような点からでも結構でございます。もし御意見を賜れればありがたく思います。前回 御欠席でおられました山崎先生を始め、委員の先生方に御意見を賜れれば大変ありがた いと思います。 ○山崎委員 早速ですが、前回欠席いたしまして失礼いたしました。 私の話は当然感染症に関する問題でございますが、21世紀を見つめた感染症に対応す るために、伝染病予防部会で伝染病予防法の改正を100年ぶりにやった訳ですけれども わざわざ法律をつくった以上、それに沿った厚生科学研究の推進が非常に大事だと思い ます。 そこで非常に大きな問題になったのは、やはり感染症対策の基本は何かという 議論でして、感染症に関する限り、コストエフェクティブネスとか、いろいろな面から 考えて、治療ではなくてやはり予防であるということが全員のコンセンサスだったと思 うんです。ですから、伝染病予防法は新しい時代に対応した感染症予防法でなければい けないというのが皆さんの一致した意見でしたけれども、いろいろな事情がありまして 治療という言葉をそこに入れることになった訳です。 当然治療は大事なんですけれども、出来れば病気が起こる前に予防をしてしまうのが やはり社会的に非常に大事なことであるということから考えますと今、見せていただき ました資料の3の中の治療研究の重要性をもっと強調すべきではないかということにパ ラレルに、予防研究の重要性をもっと強調すべきではないかということを是非加えてい ただきたいと思います。 これは特にアメリカが何でも進んでいる訳ではありませんけれども、アメリカでは御 存じのように科学アカデミーが最も21世紀の医療の中心は感染症に置くべきだというこ とを盛んに言っておりますし、それに対する膨大な資金等を考えている訳ですので、我 が国もやはり予防研究の重要性をもっとしっかりやって、今まで200年の間に開発された ワクチンというものは全体的に見直さなければならない時代が来ておりまして、やはり そういう研究は日本は大変遅れているということもございまして、是非その点を強調し ていただきたいと思います。以上です。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。その他に何かございますでしょうか。 ○寺田委員 今の山崎先生の御発言は全く賛成でありまして、やはり慢性、いわゆる非感染性疾患 と言われたがんでも予防ということが大変大事でありまして、特にウイルスとかバクテ リアが原因の一つになっているようながんがたくさんございますし、そういうことに関 してよほど力を入れて予防ということを考える必要があるのではないかというふうに考 えております。現にヘパタイティスBウイルス(B型肝炎ウイルス)のワクチンがアフ リカのガンビアで成功してつい1週間ほど前にIARC(国際がん研究機関)でリリー スされました。7年間か8年間フォローしてB型肝炎ウイルスの感染がほとんどなくな ってしまいました。三種混合の中に入れたらどうかというレコメンデーションをもうす ぐWHOから出すと聞いています。B型肝炎ウイルスがなくなりますと、C型肝炎が日 本は多うございますが、B型の多い東南アジアの肝がんは激減するものだと思いますし やはり厚生科学の面から大事だと思います。それが1つです。 もう一つは、ちょっと気になりましたのはこれを今さっと読んでいまして、治療研究 という場合に治療研究は非常に大事なんですけれども、治験という言葉だけが治療研究 でないということを明確にしておく必要があると思います。製薬会社からの受託薬が効 くか、効かないか、これも非常にシステムとして大事なんですけれども、それだけでは なくて臨床研究という広く言えば診断も治療のためにあるという意味で診断も含めた臨 床の現場で医師・研究者が問題点を見つけ、新しく解決法をみつけるという研究が非常 に大事だというふうに解釈いたします。 それから、何度も言っているんですが、基礎研究から臨床研究へ持っていくインフラ ストラクチュアが必要です。危険度あるいは安全性をどこかの機関、必ずしも国でなく ても結構なんですけれども、それをある程度評価する機関がないものですから、基礎研 究は基礎研究で研究室の中で終わってしまって、臨床の方へはなかなか結び付かないと いうことで、先端的な臨床研究はなかなか日本では難しい状態ではないか。そういうと ころに、やはり厚生科学としてシステムをつくる必要があるのではないかというふうに 思っております。以上です。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。その他、いかがでしょうか。 ○杉田委員 2でも3でもいいんですけれども、いわゆる疾患研究をやっていくときに極めて重要 なのがリサーチリソースですね。患者材料、RRB(リサーチリソースバンク;研究材 料のバンク)が大変重要でありまして、特に脳研究では疾患の脳が大変重要であります けれども、日本ではものすごく手に入りにくい訳です。それで、どうしても病気の研究 を行いますには材料のバンクが必要でありますので、これはやはり国として、あるいは 厚生省としてやる必要があるのではないかというふうな感じがいたします。したがって 補助員の養成確保が大事でありますけれども、同時にリサーチリソースを是非確保する 必要がある。 もう一つは、それと当然相前後しますが疾患モデル動物、これもやはり個々の研究所 だけでやっていくのには相当のお金が掛かりますので、出来たら厚生省としてやる、あ るいは国としてやっていただけると非常に研究の能率が上がるのではないかと、こんな ふうに思います。以上です。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。真崎先生、どうぞ。 ○真崎委員 先ほどの予防ということに関して、まさに非常に大事な問題で、要するにクオリテ ィー・オブ・ライフをよくするという観点から非常に大事で、循環器系の疾患でも大事 な訳であります。 ただ、疾病を対象とした、特に循環器系みたいな疾病を考えてみると、その予防の方 に重点が移ったとしても研究の方法はそんなに変わる訳ではないんです。基本的には同 じなんです。だから、確かに循環器系の研究というのはものすごく変わってきている訳 ですけれども、それは何で変わったかというと、要する方法論が変わったためにがらり と変わってしまった訳ですね。それで、その結果としてまた新しい見方が出て、また新 しい診断治療、それから予防という見方が出てくる訳です。したがって、やはり基礎的 な研究というのは是非平行して走らせるべきで、他の分野での進歩というものを常に取 り入れて、基礎的な研究を無視しては新しい診断治療、予防という見方が出来ないと思 いますので、その辺を御配慮いただければありがたいと思います。 ○矢崎部会長 どうぞ。 ○眞柄委員 感染症のことに関しては、水とか廃棄物とか生活環境、生活衛生にかかわる部門に働 いている者として非常に重要な視点だと私自身も思います。それで、それはある意味で は水道の施設だとか、廃棄物の施設だとか、そういうものを一般的な社会インフラとど の程度の水準まで上げるか、上げたときにどういう手段があるかというような基礎的な 研究も必要だろうと思いますが、厚生省としてやはり一番重要な問題は、保健所という ようないわゆる国民の健康状態を把握出来る場からの情報をいかにして厚生科学にフ ィードバックするかというシステムの構築が今後非常に重要な問題だろうと思います。 それで、非常に例示的なことで申し訳ございませんが、アメリカやヨーロッパでは原 虫による感染症のモニタリングにいわゆる一般薬局の止瀉薬の販売量が公衆衛生の管理 するベースに入ってくるようなシステムまで構築をされている訳でございまして、臨床 で出来ない部分はそのような情報のネットワークをつくるということも重要だと思いま すので、いわゆる情報の部門についても重要性が指摘されておりますが、そういうもの を扱う厚生省としての組織というものを何らかの形で整備をすべきじゃないだろうかと いうふうに思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。その他、いかがでしょうか。どうぞ。 ○寺尾委員 これは研究に当たるかどうか分からないんですけれども、いろいろ世の中の状況を見 ていますと医薬品、ワクチンを含めてですが、そういうようなもの、それからあるいは 例えば遺伝子組換え食品などのあれを見ましても、やたらに害だけが非常に世の中強調 されておりますね。それで、これはやはり厚生省として一回といいましょうか、常にち ゃんとした説明といいましょうか、そういう対応というのは必要ではないかなという気 がいたします。 私はたまたま食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会組換えDNA技術応用食品等の 安全性評価に関する分科会の座長をやっているんですけれども、非常にたくさんこれは 危ないんだ、危ないんだという意見があちこちに出てくるんですが、それを読んでいま すと根拠が全くないんですね。それで、これは一度ちゃんと説明をする必要があるので はないかなというような気がします。どこまで世の中に通じるかというのはまた別問題 だろうと思いますけれども、そういう余り根拠がないようないろいろな意見に対する反 論とまではいかないまでも、ちゃんとした説明というのは世の中に常にしていないとい けないのではないかという気がいたします。ですから、これはあるいは研究ということ ではないかもしれませんけれども、そういう対応というのは常に心掛ける必要があるの ではないかなというふうに思います。 ○山崎委員 もう一つだけよろしいですか。 3月13日の方の下から2番目に「厚生科学研究の推進のためには、研究者の養成・確 保が重要ではないか」と、これは言わば当たり前のことで、殊更今、言うことではない ように私は思うんですけれども、もし言うとすれば、これからの厚生科学研究でどうい う分野の研究者の養成・確保が重要であるということを言わなければインパクトがない ような気がするんです。 例えば感染症分野で言えば、その感染症のグローバリゼーションに対応して動ける、 研究を出せる、調査を出来るフィールド・エピデミオロジスト(現地疫学調査員 (者))というのが全く日本には皆無です。そういうような、例えばフィールド・エピ デミオロジストを新しく養成することが必要であるというような具体性を持った表現の 方がいいのではないか。ほかの分野にもきっとそういう今は余りにも弱くて強化しなけ ればならない養成分野があると思いますので、そういう表現の方がいいんじゃないかと いうことを1つ思います。 それからもう一つは、3月9日のまとめの中の上から3番目に「国際的な共同研究の 枠組みが必要ではないか」、これは全くそうだと私は思うんですけれども、この内容の 中に、これは研究の在り方ですからそういうことがどういう形でやれるか私は知りませ んが、例えば共同研究のための会議の打合せに行く予算はこの頃かなり出てきたんです ね。例えば新興・再興感染症で言えばかなり昔では考えられないぐらいです。 しかし、そのお金を使って国際会議に出席してはならないというような条件が付いて いるんです。私はその考え方の基本がどこから出てくるのかと聞くんですが、厚生科学 課から出てくるという話なんですけれども、私は国際会議の場こそ、こういう共同研究 を推進していくための一番必要な情報交換の場だと思うのに、なぜそのために使っては いけないのか。そういうところは、せっかく枠組みが必要ではないかということであれ ば、内容ももう少し具体的に突っ込んだ議論がされていなければいけないと思うのが1 つ。 それから、これと関連して日本は世界でも冠たるODA予算をたくさん出している国 とは言いながら、実際問題としてWHOなどのいろいろな国際的な事業を進める上にお いて予算は絶対的に不足しているというのもまた現に事実だと思うんです。したがって 経済的な大国に対してはWHOは常にいわゆるエキストラ・バジェッタリー・コントリ ビューション(通常予算以外の貢献)の必要性を要望している訳です。それで、勿論日 本も例えば国際課を通じてそういうコントリビューションをやっていることは存じ上げ ておりますが、これがODA予算で出ているからそれ以上やる必要はないとか、そうい う考えではなくて、そういう新しい世界的な要望にこたえられるような厚生科学研究の 在り方を考えなければいけないのではないかなと思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 そのほか、いかがでしょうか。どうぞ。 ○真崎委員 今のことに関連して、国際的な共同研究の内容が余りはっきり分からないんですけれ ども、その辺はどういうふうにお考えになっているのか、お考えを聞かせていただけれ ばありがたいと思います。 ○矢崎部会長 国際研究の内容というよりは今、山崎先生のおっしゃられた枠組みをどういうふうに つくっていくかということをこの間、御指摘いただいたので、国際的な共同研究がいい いいと言っても実際にシステムとして、あるいは枠組みとしてどういうものが重要であ るかということをここで御議論いただきたいということです。 今、寺尾先生から、遺伝子組換えのいろいろな新しい研究について学問の発達がどん どん進んで世の中の人の理解がそれに追いついていかないということがあって、その乖 離といいますか、齟齬があるということと、それから杉田先生のおっしゃられたリサー チリソースの確保ということについて、これはたしか高久先生が掌握しておられます公 衆衛生審議会の方で臓器移植並びにこの厚生科学審議会先端医療技術評価部会で御議論 があったと思うんですけれども、杉田先生、寺尾先生の今のお話について、先生の方で コメントいただければ大変ありがたいと思います。 あるいは、先生は厚生科学としてこういうふうに取り組んだらよろしいのではないか というようなお考えもあったらコメントいただければと思います。 ○高久委員 いわゆるリサーチリソースの問題、特に人の細胞、臓器を研究にどのように使うかと いう問題については、胎児を含めて今、先端医療技術評価部会のヒト組織を用いた研究 開発の在り方に関する専門委員会で検討をしている最中で、まだ結論は出ていません。 しかし、いずれ結論が出てくると思っています。 他の問題ですが、9日、13日の概要で大体言うべきことはほとんど全部言われている と思います。この会議でも何回も言われましたし、言う必要もないかもしれませんが、 文書として出す場合にやはり評価ということの重要性、評価に基づくリストラクチュア リングを常に行うということを強調しておく必要があるのではないか。最近、NHKス ペシャルでも、研究費のバブルがあるのではないかというような事を言っておりますの で、研究費を使った場合にそれが成果として表れているかどうかということを正しく評 価して、その結果を次の研究に反映するということを強調しておく必要があるのではな いかと思います。 それから、研究者の養成・確保の件は重要だと思います。山崎先生、寺尾先生、杉田 先生もおられるし、私も以前国立国際医療センターにおりましたのでなかなか言いにく いことですが、国立試験研究機関の活性化ということを常に念頭に置く必要があるので はないか。国立試験研究機関に限らず大学でも同じことが言えると思いますが、人材の 交流とか、そういうことをして国立試験研究機関が厚生科学の遂行に柔軟に対応出来る ような体制になっている必要があるのではないか。これは言うのは簡単で難しい点が数 多くあると思いますが、常に頭の中に入れておく必要があるのではないかと思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。どうぞ。 ○真崎委員 今の高久先生のお話はまさに私はいつも感じていることでありまして、いわゆる国研 の活性化で一番大きいのは人ですね。人の資源をどういうふうに動かすかという問題で それは一研究所だけで考えてもどうしようもないんですね。本当にふん詰まり状態です から、それを少なくとも厚生省の研究機関だとか、あるいはもっと広く国全体の研究機 関、あるいは大学を含めてもうちょっと交流を盛んにするようなシステムづくりをやっ ていただかないと、これは一研究所だけではどうしようもないところがありますので、 その辺を今後考えていただければありがたいと思います。 ○眞柄委員 私も国立公衆衛生院に去年の7月までおりまして、大学に移って国立公衆衛生院の方 は私がいなくなったので人事の刷新が出来たというので大変喜んでいるようでございま すが、大学に行きまして私は大学院の重点化の新設講座でございますので、割と自由に 研究室では出来る訳ですが、ほかの研究室を見ていますとやはり国研よりも大学の方が 研究室の硬直化というのは大変厳しい。3人か4人の研究員しかございませんので、そ ういう意味では今、先生がおっしゃられたように国立試験研究機関と大学というものの 交流をもう少しスムーズに出来るようにしていただきたいと思います。 それで、これは私だけのことではなくて、大学の方から国立試験研究機関に来るにも あるいは国立試験研究機関から大学の方に行くにも、必ずしも研究費なり、あるいは俸 給の面でプラスになることばかりではございませんので、少なくとも国家公務員の研究 職あるいは教育職との処遇、あるいは研究費の手当、あるいは研究費の申請の部分辺り は科学技術庁辺りと何とか統一化して、本当にスムーズに動けるような体制をつくって いただきたいなというふうに思っています。 それから、私がいましたのは国立公衆衛生院でございますので、地方の技術者あるい は医師の方が研修にいらっしゃる訳で、そういうプログラムの中に大学の修士なり、博 士の課程の人間をお願いしたときに、単位の認定のようなシステムも今後ないと、やは り若手の研究者はなかなか育っていかないだろうというふうに思いますので、すぐとは 申しませんが、そういうようなことも全体としてスコープの中に入れていただきたいと 思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございます。 この人事の交流というのは国立試験研究機関だけではなくて、大学でも眞柄先生がお っしゃったように非常に大きな問題です。それで今、任期制の問題ということが出てい ます。また、私は大学にいており説得力がないんですが、任用時にやはり外部の経験を 必要とするような何か、岡崎の共同研究機構もそうですね。ですから、その場合に有能 な人はむしろ人事の交流がどんどん行われていくんですけれども、そうでない場合をど うしたらいいかということが一つの大きな問題だと思うんです。 それで、採用時に1つは外部に経験を必要とするというようなことを要件に入れると 例えばお互いに国立試験研究機関同士で室長からワンランク上げるときにはどこか1年 なり、2年なり、余り事務局の官僚の方々みたいに全然違う畑のところをぐるぐる回っ て勉強するという訳にも研究はいきませんので、ある程度類似性のあるところを回って ステップアップ、キャリアパス(経歴)としてそういうことを要求するようなことが必 要ではないかと思って大学ではそういうことを検討しています。我が国で人事の交流と いうのはなかなか難しいし、逆にそうしませんと若い人を思い切って抜擢して人事を行 うことも難しい。これはどこでも今、大きな問題で、恐らく我が国のこういうシステム の枠組みが崩れ始めているところもありますので、研究の在り方の一つの大きな柱とし て人事の交流をいかにすべきかということを少し検討していきたいというふうに思って おります。 その他、いかがですか。 ○U澤委員 今、研究者の養成ということに関して人事の交流ということが問題になりましたので 私の意見を申し上げますが、私自身は大学にずっと二十数年おりまして、昨年厚生省の 方に移りましたけれども、やはり厚生省の研究所、私たちのところはまだ国立試験研究 機関というほどには育っていないかもしれませんが、非常にアクティビティーが高いと いうことは大学と比べて痛切に感じています。 そこで研究をしている人達と大学との間で研究者の交流をするのは、これからの我が 国の研究を発展させる上でどうしても必要なことだろうと思います。しかし、これは実 力を付けたからといってそれでポストがあるという訳ではないという現在の状況のもと では、リサーチレジデントとか流動研究員などで非常にいい仕事をしている人たちが行 く先について非常に焦りを持っているということがありまして、一方で大学を見てみま すと、自分自身が所属していた大学のいろいろな状況を考えてみましても、一たんそこ にいるとそれこそ何もしなくても定年までいられるというような、とても現代社会では 考えられないような状況が依然としてあります。今、問題になっているポストの任期制 は、助手だけではなくて、教授まで含めてすべてのポストの任期制ということは早急に 我が国においてはしなければ、恐らく研究界の活性のための基盤づくりは不可能ではな いか。 それは勿論、厚生省の研究所あるいは他の省庁の研究所についても同じことでありま して、やはり5年ならば5年ということで再任は勿論よろしい訳ですけれども、これだ け研究費がたくさん重点的に配分されるような状況が出てきたにもかかわらず、依然と して人の交流の問題というのは旧態依然たる状況ということが続ければ、必ず将来難し い問題が出てくるでしょう。研究費をこれだけ増やすということに対する国民の期待に どれだけ添えるという点で制度そのもののあり方が深刻な問題になるというふうに思い ます。 ですから、ただいまいろいろ議論されましたような問題については、是非、厚生省の 側としても国全体の制度についていろいろと提言をしていかなければというふうに思い ます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。その他に、いかがでしょうか。 ○寺尾委員 今、人事の交流という話で、確かに人事の交流というのは盛んにしないといけないと いうことはよく分かるんですけれども、なかなか難しいところがあるということですが 例えば私どものある人間に、どこかに行ってある技術を習わせたいと思いましても、こ れはなかなか実際にやろうと思うと難しいんです。例えば3か月なり、半年なり、どこ かの研究室、国内の研究室でいいんですけれども、行って習って来いと言われましても このシステムというのは意外にないんです。 それで、これは行けと言いましてもかなりお金の掛かるものですから、やはりそれな りの補助をしてやらないといけないということがあります。ですから、人事の交流より ももう少しそういうどこかに習いに行くシステムを可能にする方がまだ楽ではないか、 実現の可能性が高いのではないかなというふうな感じがいたしますので、これはそうい うシステムをもう少し活発に、確かに今あることはあるんですけれども、そんなに枠が 大きくはないということがありますので、もっとうんと枠を広げて、若い人が中心にな ると思うんですけれども、そういう人が簡単に他の研究室に行っていろいろな研究が出 来るというシステムを取ることが必要ではないかなというふうに感じます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 人事の交流をどうしたらいいかというのは大学全体でも今、議論がありますので、こ れについては厚生科学だけの問題ではないので、きちんと指摘しながら議論を詰めてい きたいと思います。 先ほど真崎先生から、国際研究の枠組みづくりというのは具体的にどうするんだとい う御指摘があったことと、それから山崎先生から国際共同研究を推進した方がいいとい うふうなことであるけれども、国際会議に出席出来ない仕組みになっているのはどうい うことかということがございました。国際会議に出席出来ないということがどのように 起因するかは事務局でお分かりになりますでしょうか。 文部省の科学研究費は最近は海外出張は認められているんですが、厚生省の方では海 外出張はいかがでしょうか。杉田先生、何かそういうことは。 ○杉田委員 私は委託費のことについてちょっと申し上げさせていただきますと、班員に外国在住 日本人あるいは外国人を入れてもいいんですけれども、やはり旅費は出ないように書い てあります。それで、具体的にはそういうことになりますと、実際にそういう方を班員 に入れることが出来なくなる訳です。私はちょっとその理由を承れれば大変ありがたい と思います。 ○山崎委員 私の言った意見は国際会議出席旅費が全然ない訳ではなくて、そのソースによっては がんじがらめになっておりまして、国際会議にそれを使って出席してはならないという ような枠が自動的にはめられてしまうんです。 それは多分、しかし厚生科学課は基本的に問題の重要性を認識すれば変え得ることじ ゃないか、人間が決めたことじゃないか、というのが私の意見なんですけれども、どう しようもないんですよという答えが返ってくる訳です。そんなことはないんじゃないか と思うんです。基本的に国際会議に出ることがその共同研究を進める上において絶対に 重要なことであれば、やはりそれを運用するのが本来、厚生科学研究費の使い方の在り 方じゃないかと私は思うんです。 ですから、そういう意味のことを言っただけで、すべてないという訳ではなくて大変 この頃はそういう意味ではいろいろなソースがございまして、使わせていただいている ありがたい面もたくさんあることはよく知っておりますが、なおそれを21世紀に向けて 評価していただきたいというか、国際会議にも出席出来るような体制をつくっていただ きたいという希望でございます。 ○矢崎部会長 そうしますと、先生のお話は今の交流費ということではなくて、リサーチソースから の規定ですか。 ○山崎委員 いろいろな国際共同研究を推進する事業費みたいなものがございますけれども、それ が実際にはさっきおっしゃったように旅費に使えないとか、国際会議に出てはいけない とか、他の研究打合せならばいいとか、そういう条件があり過ぎると思うんです。もっ と本当に国際共同研究の在り方がどうあるべきかということを考えれば、そういう国際 会議についでに出てはいけないとかというような考え方は、私はおかしいと思うんです それで、それを堂々と言えないというのはおかしいです。こっそりならばいいとか、そ ういうやり方をやはりちゃんと変えていかなきゃいけないんじゃないかなと私は思いま す。 ○寺田委員 それはこういうことなんです。学会に出るという人は本人にとって非常に名誉なこと で本人のためで、本人が払うべきものである。共同研究とは別であると、そういう昔か ら情けない考えがあるんです。 勿論、それはおかしいと思います。だから、そういうことはやはり会計法とか、そう いうことはよく分かりませんけれども、出来れば許される範囲内で徐々にでもいいです から変えていただければありがたいと思います。 ○厚生科学課長 厚生科学研究費で海外出張云々につきましては、厚生大臣が特別に認めたもの以外は 海外出張旅費は含まないというふうになっていることは事実でございます。 ただ、厚 生大臣が認める場合はその限りにあらずということでございますから、その研究にとっ て絶対に必要であるということを御説明いただければ、それはそれなりに対処のしよう があるというふうに考えております。 また、新興・再興感染症等につきましては別途の形で比較的出やすいような格好の仕 組みをとっている訳でありまして、徐々にではありますけれども厚生科学研究の中でも 本当に必要なものにつきましては認める方向でいっています。 ただし、その研究に本当に必要なのか。そうでない学会に行っているのか。その仕分 けがはっきりつくかどうかという点について、やや疑問に思っておるということでござ います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 ○山崎委員 今のお答えは明快で私はよく分かるんですけれども、それならばそこの判定はどうす るかということですね。確かに、寺田先生が言われたようなファクターは今でも多いと 思うんです。私は個人の名誉のために行っている人はいると思うんです。それに行った からと言って、それではどれだけ厚生科学にそれが役立つんですかと私はよくその行く 本人に質問するんです。 ですから、そういうような条件とかシチュエーションでやるならば、もう研究機関長 とかだれかに責任を持たせて、その人が、「いやこれは同じ国際会議でも絶対に厚生科 学研究に必要なんだ」ということを言えばそれを認めていただくというような自由度、 フレキシビリティー、そういうものを私はお願いしたいと思います。 ○矢崎部会長 この問題は非常に複雑で、例えば学会は学会から旅費が出るんですね。それで、その 時に別のここにも行きたいというときにはやはり文部省でも規定で行かせてくれないん です。自分でお金を出すのならば行っていいのですけれども、学会の出張の中では認め られません。そうすると全体の枠組みが学会出張ではなくて全然違う目的の観光に等し い出張になってしまうという仕組みがどうしてもあるんですね。 ですから、それを抜本的に変えないといけないんですが、その交通整理は今、課長が おっしゃったように厚生大臣に一々諮問する訳にはいかない。一方、これは野放しには 出来ないと思うんです。ですから、例えば研究所長とか、部局長から申請して研究所長 が認めたら厚生省も何とか認めていただきたいと、そういうような方向で将来検討出来 れば検討していただくということでよろしいでしょうか。 ○U澤委員 ただいまの問題は、国際学会に出席するための費用のことにかかわることですけれど も、私がここでもう一つ申し上げたいのは、国際学会に出席するときの取扱いについて なんです。取扱いといいますのは、大学におきましては勿論その費用を自己が負担する とか、あるいは一部分学会が負担する場合にも海外渡航というのは研修という形で行き ます。 厚生省の場合も大学の場合の海外研修と同じような制度を適用することを是非厚生省 としてはお考えいただきたいと思います。 ○高久委員 私はもうすぐ失礼するものですから。 先ほど寺尾委員がおっしゃった、遺伝子組換え食品の危険性の問題、どうもメディア にかなりの責任があると思うのですが、科学的に考えて納得のいかないようなことが随 分強調されている。ある一部の方々の意見が非常に強くメディアに出てきているという 事は、将来のことを考えると重要な問題だと思います。勿論、厚生省の方でも記者クラ ブを通じてとか、いろいろな広報は流していると思いますが、厚生科学について、ある いは医療や医学についての正しい情報を一般の方に知ってもらう努力をもっとする必要 があるのではないか。 文部省では科学研究費を出している研究の中で社会的に関心のある問題を取り上げて 大学と科学シンポジウムという公開シンポジウムを年に7回ぐらい全国各地でやってい ます。それが10年以上続いていると思います。大変かもしれませんが、厚生科学研究費 で得られた成果を一般の方々によく理解をしてもらう努力が必要ではないか。そういう 方法を少し考える必要があると思いましたので申し上げました。 ○矢崎部会長 どうも貴重な御意見をありがとうございました。どうぞ。 ○柴田委員 今の問題についてちょっと。メディアのことも含めてなんですけれども、私はメディ アの問題よりももう一つ前に、例えば遺伝子組換えによる食品の問題だけではなくて、 厚生省の中で安全性の問題というのはものすごく大事だと思うんです。 それで、安全性について社会的に大きな問題が起こってきたときに、それこそ厚生研 究の重要な柱として、世界中から学者を集めて一つのはっきりした結論を出すような方 向づけをやる。そういうことに厚生科学研究の費用を使っていくことは大事なんじゃな いかと思うんです。過去にも幾つか、例えば食品添加物などでサッカリンとかズルチン とかの安全性の規準が国によって随分違ったり、揺れ動いたことがありましたよね。そ ういうのを見ていたときも感じたんですけれども、一方には、ずっと長い間放置されて きている問題もある訳ですね。 例えば、虫歯予防のフッ素などの安全性というのはずっと放置されてきた訳です。こ ういうものについて、勿論メディアが非常に過剰反応をしたり、あるいは逆の方向にい ったりというようなことがあることは十分認めますけれども、それとは別にもう少し科 学的にはっきりした結論が出せないものか。これらはいずれも日本人だけの問題ではな いのですから、世界的にそういう安全性の問題にきちんとした結論を出す、その先導役 として日本がそういう研究にお金を出してもいいんじゃないかと私は思うんです。 安全性の問題というのは確かに過剰反応をし過ぎている部分もあると思うんです。危 険性というものは基本的には量の問題であったり、少なくとも量との関係で決まるな訳 ですね。だから、危険が全くないということを言うのは科学的に難しいことは分かりま すけれども、やはり社会的生活を続けていくには安全性についての基準がきちんとあっ た方がいい訳ですし、そういうことにもっと研究費を投入していくべきです。 その上で、一般へのパブリック・アクセプタンス(社会的容認)のためのシンポジウ ムやその他の方法を検討するのも勿論それはそれで大いに結構だと思うんですけれども そのもう一つ前の段階への努力に厚生科学研究というのが大事な役割を持っているんじ ゃないかと私は思います。 ○高久委員 おっしゃるとおりだと思います。それで、「3月9日の概要」中に「長期縦断疫学研 究が必要ではないか」と書いてあるから良いのかもしれませんが、例えば安全性の問題 とか、そういう問題についても長期にわたる疫学的研究が必要ではないか。日本の問題 点は臨床疫学のわかる疫学者の数が非常に少ない。それはスクールオブパブリックヘル ス(公衆衛生大学院)がないからというふうに言われていますが、重要な臨床的研究を する場合にきっちりした疫学的プランを立ててくださる疫学者が少ないという問題があ るようです。例えば電磁波の生体影響などについてもアメリカのNCI(国立がN研究 所)が最近、非常に立派な報告を白血病に関して出していますが、そのときでも専門の 3人の疫学者が初めから研究に参加して、広範囲な、しかもきっちりした仕事をしてい る。そういう研究が必要だと思いますので、長期縦断的疫学研究は必ずしも社会保障福 祉の面だけではなくて、厚生科学の推進に必要な情報を集めるために必要だと考えた方 が良いのではないかと思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 ○寺田委員 ちょっと話が元へ戻ってよかったんですけれども、「厚生科学」というときに厚生省 の国立試験研究機関の研究というものじゃなくて、やはりもっと大きな国民の健康を守 るとか、そういう大きな話を私共はしているんだろうというふうに認識してこの話をし ているんです。その意味で今、高久先生がおっしゃった日本の中で疫学者、特に臨床の 疫学、それから公衆衛生的な疫学が少なく、あるいはそれらの対象となる群をどういう ふうにしてつかまえるかということがなかなか出来ません。これは治験も含めまして全 ての面で非常にこれから人間を扱う場合に問題になってくると思いますので、そういう 人をどなたかおっしゃいましたけれども、研究者の養成というときにこれらの問題を意 識してやはり金を出してもいいのではないかと考えます。10年、20年後の話だと思いま すけれども、それが大事じゃないかなというふうに考えておりまして、高久先生が指摘 された部分の福祉だけじゃなくて、それは厚生科学・健康科学全ての面を含めてそうで あるというふうに思っております。ただ、ちょっと今、柴田先生がおっしゃった安全性 のことですね。これは大事ですし、国民の健康を守る自衛隊としての厚生科学という面 からやるべきだと思います。これは予算の問題・体制の問題が絡みますが、FDA(米 食品医薬品庁)とかCDC(米疾病管理予防庁)とかEPA(米環境保護庁)、それを 全部含めてアメリカの場合は国民の安全性を守っているという立場になる訳です。それ に加えて、基礎的だけれども病気を対象とした研究のNIH(米国立保健研究所)があ る。そういう構造が殆どなくて、あっても400人とか500人ぐらいの国立感染症研究所 (以下、感染研)とか国立医薬品食品衛生研究所の一部でのみやっていくのは大変難し いですから、日本独特の何か別の組織を例えばつくるとか、大学などでこの方面の研究 をしている人にどういうふうにしてお金を出していくかが問題です。これは私案なんで すけれども、どこどこの細菌研究室は国立感染症研究所に一部属しているという形で、 例えば感染研から庁費みたいなものを出しておくというぐらいのことをやらないと、と てもじゃないけれども本当の意味では米国並のシステムには追いつかないんだろうとい うふうな感じがします。 研究費は5年、5年、5年というような輪切りでやるのではなくて、例えば東京大学 の細菌学教室は感染研の一部門であるというぐらいの考えでお金を出したらいいのでは ないかというぐらいは思っております。御存じのようにCDCで2,000人、FDAが 2,500か3,000人ぐらいですね。EPAは人数は知りませんけれども、それだけの規制を して、サイエンティストだけではございませんけれども、そういう方が見張っている訳 です。それにアメリカは軍隊が感染症に関しては完全に世界中に散らばってやっている という体制の中では、なかなか日本で米国並に安全性チェックをやれと言われても今の ままでは大変だろうと察するんです。 ○柴田委員 大変なのはよく分かります。 でも、逆に言えば世界には日本だけでなくアメリカもあるんだし、他の国もある訳で すね。ですから、そういう研究は言わば地球上、全人類の役に立っていく訳で、それこ そさっきの研究スタッフの流動性の問題とも絡むのですが、強力なプロジェクトチーム というんでしょうか、大学からも厚生省の研究所からも、あるいは外国からも専門家が 集まるような強力なプロジェクトチームを作るとか、ある期限を切った研究というのは 出来るだろうと思うんです。 そのときに核になるところが必要です。何々研究所のどこどこ教室を核にして、そこ へわっと人と金を集中し、海外からも研究者を集めるというような、そういうプロジェ クトチームのつくり方があってもいいと思うんです。 さっきは世間の方が過剰反応をしている例が幾つか挙げられましたけれども、過去の 例から言うと逆に危険を放置したケースというのも幾つかある訳です。薬害エイズだけ でなく、かつての水俣病とか、サリドマイドなどもそうでしたけれども、危険性を集中 的に研究しなかったために、結果として放置した形になったテーマがたくさんあったと 思うんですね。ですから、どちらになるにせよそういう研究をきちんとやることによっ て、危険がある場合には社会防衛になりますし、国民意識の方が過剰反応をしているの ならばそういう誤解を解くというんでしょうか、今、考えられる中でこれ以上ないとい う形の研究によってきちんとした結論を出していくことが大事です。厚生科学の重要な テーマの一つである安全性の問題が宙ぶらりんというのはよくないと思うんです。結論 を出していくことが難しいことは分かりますけれども、やれば出来ないことはないはず ですし、やっとお金がこれだけ出るようになった時代なんですから、国民の一人として もそういう期待をしたいと思います。 ○矢崎部会長 どうぞ。 ○眞柄委員 今のことに関してですが、国立試験研究機関の多くの部なり研究室がWHO(世界保 健機関)のコラボレーティングセンター(協力センター)になっておられる訳です。私 も国立公衆衛生院のときにはその役を務めさせていただいたことがあるんですが、コラ ボレーティングセンターになりましても、WHOから特別に資金が来る訳ではございま せんし、厚生科学課から特に予算が来る訳ではなくて、ある意味ではWHOへのサービ スという形になっている訳です。 それで、ごく最近、飲料水の関係のWHOの会議に出てきた訳ですが、その会議には みんな他の国のコラボレーティングセンターが挙がってきていまして、それの資金がそ れぞれの国の政府なり、あるいは特別拠出金が出ていってまた戻ってくるという形で、 それなりに機能出来るような枠組みを皆さん整えていらっしゃる訳です。 それで、残念ながら日本ではそういうことが非常に行いにくいようなことになってお りますので、先ほどの国際共同研究の枠組みの一つの考えとしてコラボレーティングセ ンターには何とか厚生科学の予算の中で手当をしていただきたい。それで、予算も来て いませんから、国立試験研究機関にいたときに若い研究者に、「おまえがやれよ」と言 うと、「これは仕事ですか、サービスですか、研究費の手当もないんですね」というこ とにもなって苦労をしたことがありますけれども、その辺りは是非お考えを願いたいと いうふうに思います。 それで、それは国際的なフレームな訳ですが、国内的に国立試験研究機関と大学との 共同研究のようなものを考えたときに、厚生省の厚生科学のある意味ではコラボレーテ ィングセンターのようなものを大学なり、都道府県の衛生研究所なり、そういう仕組み をつくっていただいて、その仕組みの中で例えばコラボレーティングセンターになって いる機関、あるいは研究者には厚生科学の公募研究のときにそれなりに目をかけていた だくとか、あるいはそういうようなことをして全体として厚生科学の底上げと、それか ら大学や都道府県の研究者が厚生科学に参加しやすいような制度をつくっていただきた いと思います。都道府県の方が厚生科学の公募に応募しようと思ったとき、それは何の ためにやるんだというのが都道府県レベルでもお話があるということを私は承知してお りますので、何か仕組みをつくっていただきたいなというふうに思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございます。 ○寺田委員 ちょっと補足ですが、柴田先生は誤解なさっていないと思うんですけれども、非常に 大事だからやるべきだと思いますし、それから必ずしもマスメディアの方が間違ってい るということはございませんし、警鐘を出している場合もあります。 ただ、やるのには今のシステムでは難しいと思うんです。ですから、今おっしゃった ようなことも一つの案ですし、もう少し人数的に、あるいは考え方を安全性のチェック に関しては別のもうちょっとふくらませないととてもじゃないけれども無理だろうとい っているわけです。そうじゃなくてアメリカの言ったシステム結果を、アメリカでこう いう評価をした、だから日本ではこうでありますよということを、アメリカの報告書を 読んでそのままそれが日本にも正しいだろうというんだったら今でも出来ます。しかし 日本で実際に問題点をみつけ、解決するのはなかなか難しい。例えば水俣で何か変なこ とが起きている、これをどうしようといったときに、多くの人が集まってきてその情報 をキャッチして、それから実験まで持っていくようなシステムはなかなか出来ていない というのが現状だろうと思います。それで、こういうことがこれから何回も繰り返され るだろうという気はしております。そういう意味です。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 ○柴田委員 是非そういうシステムをつくっていただきたいと思いますし、その上で先ほどの人間 の研究者の確保と同時に流動性ですね。それをさっき矢崎さんもおっしゃっていたよう に、特に厚生省の研究機関などではやりやすいと思うんですね。今、一方、大学の方が 任期制とか何とかかなり流動性を高めようという動きがある訳ですけれども、恐らく研 究者というのは日本全国に流動性を高めないと、結局どこかだけ流動性を高めようとし ても無理な訳ですね。 だから、それにはかなり呼応すべき時期というんでしょうか、そういう時期なんだろ うと思うんです。それには厚生省の研究所というのはかなりのレベルと、勿論大学と交 流が十分出来るレベルにある訳ですから、ある意味でのそういう任期制に当たるような ものをつくってもいいんだと思うんです。ある研究の機関と、5年間同じ研究をしたら そこで必ず区切りをつける、ないしは別の研究機関に移ることを義務づけなくてもいい んですけれども、恐らくほかの研究所に移ったり、あるいは大学に一たん出てまた戻っ たりした方が、より有利だという状況をつくり出すことは出来るんじゃないかと思うん です。 日本の場合は、やはりじっとしている人が一番得だというのが一番まずいんだという ふうに私は思うんです。それはさっきキャリアパスというようなことも出ましたけれど も、動いたほど有利なんだと。だから、さっき言われましたけれども、例えば研究所の 所長になるには1か所にいた人では絶対だめというようなシステムをつくるとか、部長 までそうやれたらなおいいんでしょうけれども、そういうシステムをつくることによっ て刺激をしていく以外に、なかなか難しさというのは壊れていかないという気がします ○寺田委員 人事はやはりシテスムで、私などはあちこちに移っていますから先生の立場に当たる んですけれども、そうじゃなくて一般的な規則を作るのではなくて、ずっといる人でも いいですし、やはり所長にある人事の権限を与えると同時に外から評価を受けて、その 所長がちゃんとやっているかやっていないか、あるいは部長の人事のやり方がおかしい かどうかと、そういう外からの力を持つ研究のシステムが学者の間であり、それが大き な力を持てば私はいいと思うんです。だから、そこはシステムをそっくりそこで余り硬 直化しない方がかえっていいのではないか。 それから、任期制の問題につきましても日本の社会で、これは研究者だけではなく全 体の問題も含まれておりますから、やはり35歳ぐらいになってからうちのお父さんはま たあっちに行く、こっちに行くでは若いいい人は来ないんです。そうしますと、やはり 35歳ぐらいまではアメリカのシステムと同じくするのはいいかもしれない。5年、7年 のテニュア(永久就職制度)を取るまでは仕方がありません。しかし、その後はやはり きちんとした地位にある程度永続していけることが必要です。それでいい人は引っ張ら れて動くと思うんです。 だから、私は余り部長でも何でも任期制にやってしまえというのは今の状態では乱暴 過ぎるのではないかと思います。やはり、ある程度若い人は先輩とか、年を取った人の 見方、あるいは生き方などを見ていますから、いつになってもあっちをうろうろこっち をうろうろでローンも払えないんじゃないかというようなことでは若い優秀な方は来な いと思うのです。やはり研究はどんな研究であれ人で決まりますから、良い人を入れる ための制度を是非御理解をお願いしたいと思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 ○山崎委員 1つよろしゅうございますか。先ほど眞柄先生が言われたことで私も非常に賛成なん ですが、国際的な共同研究といった場合にどうしても従来の古い考えはベーシックリ サーチ(基礎研究)のことばかり我々は頭に最初考えてしまうんですが、確かにベーシ ックリサーチの国際的な共同というのは非常に大事ですが、やはり分野によっては、例 えば感染症などではそれだけではとても厚生科学に役立つ共同研究の実は上がらない。 ベーシックリサーチだけではですね。 それで、さっき御提案になった、例えばWHOコラボレーティングセンターの活動の 活性化にもう少し厚生科学研究費を当てるとかというような道が開ければ、私は大変こ れは益するところが大きいと思うんです。 事実、我々の研究所で言えば、例えばポリオのコラボレーティングセンターをやって います。インフルエンザのコラボレーティングセンターをやっております。エイズのコ ラボレーティングセンターをやっています。こういうものに対して、実は厚生科学課に なってから国際研修等のお金とか共同研究を推進するための導火線になるような、そう いう国際的な研修まで含めて予算を付けていただいているのが現状なんです。これはも のすごい大きな変化だろうと思うんですが、一歩進めてコラボレーティングセンターで やっているラボラトリーワークの質をもっと高めるためのお金は、確かにWHOは一切 出してくれないんです。これが本当は必要でどうやっているかというと、いろいろない ただいている厚生科学研究費の中から少しずつひねり出してはそういうことにお金を分 けるというようなことを研究所としては苦労をしている訳です。 だから、これがもうちょっとはっきりその枠組みの中で、ここで書いてある共同研究 の枠組みの中にそういうような目的を明示したものがあれば、もっとちゃんとそれがや っていけるんじゃないかというふうに思いますので、補足です。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 なかなか生命科学あるいは厚生科学の理想像と現実の社会との間のギャップが大きく て、事務局の方がこれをどういうふうに消化していくか、困惑されていると思います。 今日はフリートーキングでここで言ったら、例えば先ほどの会議の出張の問題でも、所 長の認可制にしたらどうかとか、そういうことを事務局がすぐに実現すべしということ ではありません。ここで議論して、ともかくそういう方向でいかがなものかということ など、ある程度今の社会の仕組みから少し離れての御議論でも、やはり2、3年でこれ をやってしまおうということではなくて10年後の、先ほど寺田先生は厚生科学というの は国民の健康を守る自衛隊なんだから、それだけの体制とバックボーンを整備しなけれ ばいけないのではないかとおっしゃいましたので、そういう意味で少し長期間で実現す るお話でも結構だと思いますので。 ○審議官 眞柄先生、山崎先生からWHOのコラボレーティングセンターのことが今、問題にな っていましたので、ちょっとそのことについて申し上げます。 実は、今年の5月の総会で新しい事務局長の承認という議題があるんですが、ブルン トラント次期事務局長は政権移行チームをつくっていろいろ検討を開始しているんです それで、WHOのコラボレーティングセンターの在り方も一つの検討課題になっており ます。そもそもコラボレーティングセンターは存在する理由があるのか、ただこの指定 をするだけで本当に制度本来の機能を果たしているのか、全くお金を出していないとい うことも事実ですし、特に途上国の研究所などではステータスシンボルのために膨大な 書類をつくって出し、あとは終わりという研究所もあると聞いています。 そういうこともございますので、コラボレーティングセンターに関連する事項につい ては、既存の制度を前提にして考えるというよりは、新しいWHOの動きなどもにらみ ながら国際的な協力関係なり、共同研究の枠組みというのはどうなくてはいけないのか という視点で検討していったらどうかなと思っています。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 ○寺田委員 国際共同研究の場合にもう一つよく外人に言われるのは、ヒューマン・フロンティ ア・サイエンス・プログラム、あれは非常にいいと言うんです。それは向こうにとって はフランスに本部があって、日本の金が外国の大学に出て、それは外国の学者には大変 いいんでしょう。私はやはりあのような機構を日本の中に置いて日本人がコントロール する形でこういう厚生科学の面で、そういうシステムが出来るようであれば、実際の感 染症にしましても私どもがんをやっている者にとりましても大変良いと思います。ちょ っとしたシードマネーで、例えば今のダイオキシンの問題にしても一緒に共同研究をち ょっとやりましょうかと声を掛けたいと思っても共同研究は出来ません。あくまでも今 のところはワークショップとかセミナーで、あとは別の金でやるという形になります。 それはそれでいいんですけれども、共同研究のための根本となる金が僅かでもあれば大 変ありがたいなという感じがしています。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。その他、いかがでしょうか。 ○柴田委員 先ほど過激なことを申し上げましたけれども、現状の壁が厚いことを知らなくて言っ ているのではなくて、余りにも壁が厚いからこそかなり思い切ったことをやらないと動 かないと思うんです。先ほどから話が出ていること1つ取っても、今、真柄委員が提案 されたようなことも、なぜ出来ないのか不思議なぐらいな話です。この機会に是非そう いう部分がどんどん動いていけばいいと思います。 それとは別の話ですが、厚生科学研究の中で安全性のほかに今、一番大事なテーマの 一つは生命倫理、先端医療の倫理の問題だと思います。これはむしろ先端医療技術評価 部会の方のテーマかもしれませんが、そういう生命倫理、バイオエシックスの研究とな りますと、これは自然科学者だけの問題ではないと思うんです。そういう、言うなれば 社会全体で考えなければいけないようなテーマを、厚生科学研究が主導的な役割を果た しながらつとめていかなければいけないと思うんです。 厚生科学が主導的役割を果たしながら社会全体でというか、いろいろな分野がかかわ らなければいけない研究をどうコーディネートしていくか。そのことについては、まず 研究の仕方の研究から始めるべきことかもしれませんね。厚生科学審議会そのものがそ れを研究するための一つのシステムだと言われればそうだとは思うんですけれども、や はりそれだけではなく、もっといろいろな形を研究すべきだと思うんです。 このバイオエシックスの問題は、この前もちょっと申し上げましたけれども、これか ら21世紀に掛けて一番大きなテーマになっていく問題だと思いますので、是非、厚生科 学研究が主導権を持ちながら社会全体をリードしていくべき「倫理研究の構築の仕方の 研究」というのを是非テーマの一つに加えていただきたいと思います。一言だけ付け加 えさせていただきました。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 先生方の御議論で、1つは研究者の養成をいかに効率的に、しかも厚生科学の視野で 行うかということには人事の交流も含めたお話があり、それにはいろいろな御意見があ りました。ともかく任期制を含めてもう少し流動性を高める仕組みを考えたらいいので はないかというお話をいただきました。 それからもう一つは、厚生科学としての国民の健康を守るという立場に立った場合に は、もう少し安全性の問題、あるいは予防、診断治療を含めた広い領域にわたった、し かも長期にわたる疫学的な視野から見た研究を行うべきであるというお話を2番目にい ただいたと思います。 そのときに今、厚生科学でやっているような公募システムでこれが出来るかどうかと いう問題が一つ加わって、大きな予算をどういうふうにそれに動かすべきかという問題 があるのではないかと思います。寺田先生は比較的早い時期からそういう指定研究的な 仕組みを厚生科学で考えるべきではないかというお話をいただいていたと思いますが、 先生がそういうことを言われていたお気持ちを、またここで繰り返しになるかもしれま せんが、簡単にお話いただければ大変ありがたいと思います。 ○寺田委員 がんと、それから循環器のことですけれども、これはいわゆる特別会計のがん研究助 成金の枠の中に入ってやっておりますが、1億5,000万円です。ずっと日本人の北海道か ら沖縄までいる人々の血液、健康チェックを十何万人かにわたってずっとやっていく訳 で、それでその方達の食事生活とか、いわゆる生活習慣、そういうものを継続しながら 病気との関係をやっています。非常にお金が掛かって研究者は論文も長い間苦労されて います。何度も申し上げますけれども、それに関わっている方は年に何回か村の保健所 とかお医者さんと村の人と一緒に、不謹慎な言い方ですが、それこそ接待を自分の懐か ら出してやりながら人間関係を保つ努力をずっとやっている。 これは日本には余りないんですが、諸外国では割合がんなどではありますし、循環器 でもありますので、それは結果としてはネガティブになってもポジティブになってもや はりこのような研究は大事と思っております。このような研究はやはり指定で機関とし てやるべき研究で、ある人が定年退職になってそれで終わるというのでは困ります。こ れは大学等では難しいのではないかと考えます。それから、国立試験研究機関でもある 部長に任せるのではなくて、そこの機関に機関として任せるというようなものだと思っ ております。 それから、がんの例えば治験にしましてもプロトコールスタディーをやるときの統計 学者とか、やはりこれは助成金でオールジャパンで全国でいろいろな方に入ってやって もらっておりますが、先ほど高久先生などはおっしゃっていましたけれども、そのとき のプロトコールの前もっての疫学的な素養のある方などが加わってプロトコールをつく ってやるというシステムがやっと普通に動くようになってきました。 それもやはりどこか政府機関があって、それは研究でないと言ったら怒られてしまい ますけれども、かなり組織としてやるべきことであるということです。会社がどのよう な目的のために設立されてやるようになってきましたけれども、国としてやるべきこと が先導的な働きをしたんだろうというふうに思っています。矢崎部会長も前におっしゃ いましたけれども、証拠に基づく医学という流行の言葉で言いますと、やはりある人口 での効果判定、あるいは危険度判定というのはどうしても必要なので、それこそそれは 厚生省の国の機関として何かやるべきことがいっぱいあるのではないかというふうに考 えております。以上です。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。 ○杉田委員 今の指定研究の件でございますが、私たちは精神・神経疾患を扱っていますと、特に 国立病院療養所が慢性の患者さんの臨床経過、予後などを扱っているんですが、そうい う課題は指定研究課題として行う必要があります。公募ではやはり新しいブレイクス ルーがないとまず採用されない。 しかし、現在病床で悩む患者さんをどうするかということは極めて重要な訳で、そう いう課題こそ私は指定にすべきであると。 それで、よく評価のときに問題になるんですが、そういう方は必ずしも評価の点数は 高くないんです。例えば筋ジストロフィーの療養所が27か所ありますが、そういうとこ ろで患者さんのQOLを高めるにはどうしたらいいかと、非常に苦慮をしてやっておら れるんですけれども、そう目覚ましい仕事は出てこない。 しかし、私は評価の点数はそう高くなくても、そういうことこそ厚生省がやるべきだ と思っていまして、1つは患者さんのため、もう一つはやはり国立病院療養所のドク ターというのは非常に臨床のデューティーが多い割には研究する時間も余りないし、む しろそういう方が活性化に私はつながっていると思いますので、私は厚生省の研究では 指定研究はかなり大事だろうという印象は持っています。 ○真崎委員 今の指定研究の件は確かに非常に重要で、私どももそれを考えている訳ですけれども 今、杉田先生がおっしゃったように公募でそういうものを出すと大抵落ちるんですね。 しかも、そういう研究に携った人というのは一流のジャーナルになかなか出しにくいで すね。 だから、別の研究者が本当はやるべきだと私は思うんです。トップジャーナルをねら う本当の研究者と言ったらしかられますけれども、そういう先生はこういうのをやりた がらないです。ですから、その辺を考えて区分けをしていただきたいと思います。 ○矢崎部会長 その他にいかがですか。 ○山崎委員 もう一つだけよろしいですか。 前回あるいは議論があったのかもしれませんが、私は休みましたので、感染症だけで はなくて国民の健康危機管理調整会議というのが厚生科学課にありますね。だけど、そ れはやはり本当は普段いろいろなそれに関する研究が動いていないと、いざというとき にやはり対応出来ない。先ほどネットワークの話もありましたけれども、健康危機管理 に対応する全国的な機構を構築する、そのことに役立つような研究、何かそういうもの を別途に私は考える必要があるんじゃないかと思うんです。漫然と考えていても、やは りそれに集中的に考えないとなかなかいいアイデアは浮かんでこないんです。それで、 普段研究をやっていればいいというものでは全くなくて、あの場合は対策研究になりま すけれども、そういう健康危機管理に役立つような対策研究にもっと力を入れるべきで あるとか何とかという表現が1か所あってもいいんじゃないかなと、この前の議事録を 見てちょっと思いました。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。その他、いかがでしょうか。 ○寺田委員 この文章をつくるという上では是非、最初に申し上げましたように基礎から臨床へい くところの安全性のチェックを何らかの形で、何度も申し上げますけれどもアメリカの 会社の支店でもよろしいから引っ張ってくるとか、そういうことを考えて、私が申し上 げているのは例えばの話、今のところはあまり効かない遺伝子治療とか、あるいは細胞 治療とか、免疫治療とかといった場合、医者が一人で医者の責任でやるということだけ でいいのか。 そうじゃなくて、そういうチェックシステムがやはり世の中は必要ではないか。それ から、それに従いまして民間と一緒にやる場合に厚生行政というのは現場に近いところ ですから、やはり特許の問題をはっきりした形でシステムとしてつくらなくては民間も なかなか乗ってきてくれないし、国あるいは大学でも企業と一緒にやる場合にそこはネ ックになるのではないかというふうに考えています。 その2つ、もし文章のことであるならば是非そこを入れていただきたいと思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございます。 特許については今、各省庁で合同で対策を練っておられると思いますが、それについ て何かインフォメーションされますでしょうか。 ○事務局 それでは、事務局の方から若干御説明をさせていただきます。 特許については新たな規定を整備する等で国有特許等の扱いを変えたところでありま して、例えば職務発明規定では、特許権等を研究者個人にも帰属できるようにした等、 そういうものに便宜が図られているということになっているかと思います。その辺りに つきましては、出来る限りまた検討してまいりたいというふうに思っております。 ○寺田委員 しつこいようですけれども、この問題は私は十年来言っているんです。それで、いつ もこのようなふわふわっとしたことで、これはだれが悪いという訳ではなくて、これは 厚生省だけではなくて文部省も同じだと思います。これだけの研究費が増えてきた場合 に絶対特許のことをきちんとやらないと変な仕返しが来ると思うんです。殆どの場合特 許を取ってもほとんどは金になりません。しかし、それでも基礎研究で例えあっても実 際に役立つという姿勢さえ示していなかった、国にそのシステムが全然なかった、これ はどう考えてもおかしいと思いますので、是非早急につくっていただくようにお願いし たいと思います。 ○矢崎部会長 研究評価のところで知的所有権で特許ということを大分強調していたんですが、今は 各省庁で知的所有権で、特に外国の特許システムと我が国の特許システムの相違によっ てどんどん知的所有権が外国に流れてしまっているというところがあって、政府として も今回は本腰を入れて検討していただけることになっているんじゃないかというふうに 感じますけれども、どうでしょうか。 ○事務局 特許の問題につきましては、特にある分野につきまして非常に海外に特許が抑えられ ていて、それが厚生科学を含めて国の科学技術全体の在り方について問題があるんじゃ ないかという指摘も受けている訳でございまして、部会長が御指摘のとおり政府と申し ますか、国としてどうあるべきかということも考えていかなければいけない。 それは、先ほど申しましたように規定の整備や特許法の改正作業の中で少し手当がさ れていく訳でございますが、引き続き厚生省だけでやれる問題ではございませんので、 全体の中で考えてまいりたいと思います。 ○審議官 要するに、一番困っている問題は人がいないということです。そういう手続なり、民 間企業との橋渡しをしようにも、そういうノウハウを持った人がいないということです その点については、今国会で法律が提出されており、そういうものを中継ぎをする仕組 みをつくろうというのが今回の法律改正だというふうに理解をしております。  具体的に厚生科学課の方でフォローいたします。 ○寺田委員 是非よろしくお願いします。 ○矢崎部会長 寺田先生の10年来の主張が、ようやく実現しますでしょうか。 ○寺田委員 例えばがんセンターならばがんセンターの中で特許になりそうだと考えた場合システ ムがありません。企業の方が来られて一緒に特許を取りましょうということを待つわけ です。 しかしこの場合、企業の方は何もやっておられない訳ですね。だけど、特許を取るた めに企業と共同研究をした形を取るのが、それは日本から外国へ出るよりましだと考え ます。 それから最近では、今度は企業をやめてというので国でやってみたらどうかと科学技 術庁の新技術事業団の助けを借りようと思うといろんな問題なのです。是非、審議官が おっしゃったように国内だけでも結構ですからシステムとしてつくっていただければ大 変ありがたいんじゃないかと思っています。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございます。その他、何かございますでしょうか。 予防治療のベースになるデータを集める疫学的な長期にわたる研究がサポートを受け にくいという今の公募システムですね。それを何とかしてほしいというお話が寺田先生 杉田先生、真崎先生からございました。これは厚生科学として厚生省らしい研究として は最も重要な点であるということは委員の先生方は皆さん認識をしておられると思いま すが、先ほどの国際共同研究の枠組みづくりをどうするかというのと同じように、これ は大変人とお金の掛かるテーマでございますので、これをどういうふうに枠組みをつく っていくかということも重要な課題ではないかと思います。 今日、幾つかのポイントをお話いただきましたけれども、何かそれに追加するような 御意見、お話はいただけますでしょうか。 ○寺尾委員 1つ伺いたいんですけれども、最近、連合大学院制度という制度がたしかございます ね。あれは今、厚生省の機関というのは全然やっていないんでしょうかということと、 それをやるにはどういうふうな手続が必要なのかということなんです。うちも何かある 大学からそういうものに一枚加わってくれないかと言われまして、どうやってやってい いんだろうなという話をしているところなんですけれども、お分かりになりましたら。 ○事務局 私も知る範囲で答えさせていただきたいと思いますが、たしかがんセンターの研究所 が既にその仕組みの中に入っているというふうにお伺いしておりますし、それから国立 精神・神経センターの方も今、何か検討中だというようなお話を伺っておりますが、全 体を通してこの施設がどこの大学院と協力をしているかというところまで現時点では把 握をしておりませんので、必要がございましたらまた次回以降にでも資料を提出させて いただきたいというふうに思います。 ○寺尾委員 これを推し進めますと、先ほどの人間の交流というのが非常に進むと思いますし、寺 田先生だったと思いますけれども、例えばある大学の研究所が感染研の一部になるとか そういうことまでだんだん進んでいく道が開けるのではないかと思いまして、ああいう ものを積極的に利用するというのが非常にこれから重要になるのではないかなという気 がいたします。 ○山崎委員 現実に、たしか筑波大学と、それから霊長類センターはやっておりますので、それは 機関長同士がそういう話し合いをやって、それでいいだろうということになれば厚生省 に届けるという形でいくと思うんです。 だけど、何と何の条件がそろわなければだめとか、そういう細かい規定は多分、現実 にはないんじゃないでしょうか。 ○寺尾委員 そうすると、届けるだけでよろしいんですか。 ○山崎委員 我々の場合は、それで実行されてしまったと思います。 ○矢崎部会長 これは、届出だけではうまくいかないんじゃないかと思うんです。大学院で協力講座 ということで大学院の中の枠組みに入るので、先ほど寺田先生が言われたように大学の 細菌学教室が感染研と協力講座で大講座の中へ入る訳ですけれども、ただ、そのときに やはり大学として協力講座でどのぐらいお金を出しているか分かりませんが、これは概 算要求を伴った要求ですので、私どもの大学ではどこどこの部分に協力講座が幾つかあ って、それを決めるのはそれぞれに関係する専攻の主任教授がいかに売り込むかによっ て違ってくるので、自由にそうは出来ないシステムで、それで私どもは非常にフラスト レーションがあるんです。 ですから、これは文部省マターだと思うんですけれども、文部省の方でもう少しフレ キシブルに考えて、必要であればどんどん交流の意味で協力講座を開設出来るようにし ていただきたい。これは文部省には常にお話ししています。ですから、お互いに合意に 達したからというところまではまだいっていないのではないかと思います。 ○山崎委員 私が届出と申し上げのは本省への届出で、国立試験研究機関の場合、感染研の場合は 本省にこういうことをやりますよということで、本省がOKを出さなければやってはい けない。つまり、機関長同士の話し合いだけでやってはいけない。そういう意味の届出 だったんです。 先生がおっしゃるように、実際上は大学側がオープンにしているという、そこが一番 問題でして、必ずしもやりたくても出来ないところはたくさんございます。それで、こ の霊長類センターの場合は筑波大学の方からそういう申入れがございまして、是非とい うことで始まった訳でございます。 ○真崎委員 ちょっと余計なことですけれども今おっしゃったとおりであって、これは一方的なん ですね。文部省側から来る循環器病センターでは大阪大学とか京都大学でやっておりま す。 だから、逆にこちら側から文部省側の大学にアプローチする、そういうシステムがあ ればもっといいというふうに思います。 ○矢崎部会長 その他、いかがでしょうか。 ○眞柄委員 13日の厚生科学審議会の総会の4番目の意見のところで「測定方法、測定機器の開発 も推進する必要があるのではないか」という御指摘があった訳ですが、これは昨今のダ イオキシンの問題も含めてまさにそのとおりではあるんですが、測定されたデータのバ リディーションについてやはり国研として、先ほどからお話があるようにインスティテ ューショナルな仕組みがどうしても必要だと思いますので、そういう側面については公 募というよりは指定研究的な性格がございますし、あるいは公衆衛生、環境衛生の分野 でいろいろなところで測定されたデータが、場合によれば国の統計として残るというこ ともございますので、その意味では測定データのバリディエーションをどうするかとい うやり方の問題で、バリディエーションをする訳ではございませんが、そういうことも 是非指定研究の枠の中でお考えいただきたいと思います。 ○矢崎部会長 本日は自由に御意見をいただくということで会議を進めてまいりました。3月13日に おける研究企画部会、そして13日厚生科学審議会総会での御議論を踏まえて、更に本日 はもう少し突っ込んだ点で具体的なお話を伺えたと思います。 それで、幾つかの大きなポイントがあったと思いますし、今グローバリゼーションと いうキーワードで研究あるいは臨床の方でも進んでいますので、それに対応出来るよう な体制を整えるということももう少し具体的なことでお話を賜れたと思います。 厚生科学でも将来の国民の健康に役立つ研究をどういうふうに進めるべきかというの はやはり10年掛かってある到達目標に達するような考えで、短期的な公募課題とともに 10年先に可能になるかもしれないシステムづくりをここで議論していただいて提言して 実現にいくように努力していかなければいけない。 特に厚生省の切り口からの研究では臨床に役立つ、あるいは国民の健康に役立つとと もに、先ほど安全性の問題が強調されましたが、これから医学医療はますます社会との 接点が多くなりますし、そういう倫理的な問題あるいは安全性の評価ということもます ます重要になってきますので、「厚生科学研究の大いなる飛躍をめざして」という答申 がございますが、今日の先生方の御意見を踏まえて、もう少し方向性の重点の絞られた ような答申をこれから時間を掛けてつくって、先生方のサポートを得ながら何とか実現 したいというふうに思っております。 今日は長時間にわたって御議論いただきました。何か事務局あるいは審議官からお話 がございますでしょうか。よろしいですか。 先生方、何かよろしいでしょうか。また今日の議論を踏まえて先生方に要点をピック アップして、それを土台にまた更に議論を進めていきたいと思います。それで、思い切 った意見をいただいて、これがすぐ実現する訳ではありませんが、それを十分踏まえた 上で発言していただいていると思いますし、私もそう思っていますから、直近の話題で ないので事務局の方が余り深刻にとらえられなくてもいいと思います。 ただ、是非とも実現したいという私どもの情熱をくみ取っていただいて、少しでも実 現の方向に向かっていただければ大変ありがたいと思います。よろしいでしょうか。 それでは、本日長時間にわたりまして御討論いただきましてありがとうございました 大変貴重な御意見を伺ったと思います。本日はこれで終了させていただきます。どうも ありがとうございました。 ○事務局 事務局から若干補足をさせていただきます。 次回の日程につきましては、委員の皆様方の御都合をお伺いしておりますので、事務 局と部会長の方で調整の上、決めさせていただきまして、後日連絡をさせていただきま す。 それから、前回の議事録が完成いたしておりますのでお手元にお配りをいたして おります。これは既にホームページにも掲載してございますが、本日御参考までにお持 ち帰りいただきたいと思います。以上でございます。 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 岡本(内線3806) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171