98/04/08 第2回精神保健福祉法に関する専門委員会議事録            公衆衛生審議会精神保健福祉部会          第2回精神保健福祉法に関する専門委員会                議  事  録         厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課 議 事 次 第   日  時  平成10年4月8日(水)16:00〜19:15   場  所  厚生省別館5階第2会議室   会議次第    1.開 会    2.議 題     (1)精神障害者の定義について     (2)その他    3.閉 会   出席委員 吉川座長 池原委員  伊藤委員  金子委員  後藤委員  佐伯委員        佐々木委員 佐藤委員  新保委員  高柳委員  竹島委員        長尾委員  西山委員  乳井委員  守屋委員  山本委員 ○吉川座長 定刻となりましたので、これから第2回の精神保健福祉法に関する専門 委員会を開かせていただきます。  本日は、実質審議の第1回ということになりますが、各委員、先生方には本当に御 多忙の中御出席いただきましてありがとうございました。  本日の出欠状況ということで、事務局の方から一応御報告いただけませんでしょう か。 ○杉中補佐 それでは御説明させていただきます。本日は委員全員御出席という返事 をいただいております。池原委員、後藤委員、山本委員は遅れておりますけれども、 後ほど来られることと思います。お忙しい中、まことに申し訳ございません。会場は 非常に狭いところで申し訳ないのですけれども、よろしくお願いします。  なお、4月1日付で事務局の方に人事異動がございましたので、この機会に御紹介 させていただきたいと思います。  まず、社会復帰対策指導官の内藤でございます。 ○内藤指導官 内藤でございます、よろしくお願いします。 ○杉中補佐 次に、課長補佐の中村でございます。 ○中村補佐 中村でございます、よろしくお願いします。 ○杉中補佐 同じく課長補佐の関谷でございます。 ○関谷補佐 関谷でございます、よろしくお願いします。 ○杉中補佐 以上です。よろしくお願いいたします。 ○吉川座長 ありがとうございました。早速ですが、これから議事に入らせていただ きます。  本日は、ほぼ7時までの時間を考えています。議題としては、後ほど話が出ると思 いますけれども、精神障害者の定義その他でございますけれども、とりあえずこれぐ らいの時間をかけてお話をいただいた方が、後にも大変効果的ではないかと考えまし て、とりあえずやはり3時間ぐらいの時間を予定させていただいております。  それでは、資料を先に説明していただきましょうか。 ○杉中補佐 それでは、お手元に配付いたしました資料の確認をさせていただきたい と思います。本日の議事次第と座席表がございますが、そのほかに配付資料というこ とで配付しております。  まず資料1でございますけれども、「精神障害者の定義に関する論点について」。  次に資料2−1ということで「てんかんの扱いについて(検討メモ)」。  資料2−2「精神薄弱者の扱いについて(検討メモ)」。  資料2−3「精神病質者の扱いについて(検討メモ)」。  資料2−4「覚せい剤慢性中毒者の扱いについて(検討メモ)」。  資料3「用語について(検討メモ)」。  資料4「福祉面から見た精神障害者の定義について(検討メモ)」。  資料5「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の構成」。  資料6「精神保健福祉法における精神障害者の定義について」。  資料7「過去の見直しの経緯について」。  資料8「精神疾患の具体的内容」。  資料9「国際疾病分類について」。  資料10「DSM−IV」の分類でございます。  資料11「諸外国の精神病質の規定について」。  資料12「覚せい剤慢性中毒者についてみなし規定が設けられた経緯」。  資料13「薬物対策に関する対応について」。  資料14「『精神薄弱』の用語の見直しについて」。  資料15「精神障害者の二つの概念と精神保健、精神障害者福祉の関係について」。  資料16、これは高柳委員の方から御提出していただいたもので、どうもありがとう ございました、「各国の精神保健法−定義,民事収容に関して−」。  資料17「他の法令等における障害者の定義について」。  資料18「成年後見問題研究会報告書」ということになっております。  以上、皆さんおそろいでしょうか。不足している資料等ございましたら、事務局の 方にお申し出ください。1点、成年後見の問題(「成年後見問題研究会報告書」)で すけれども、来週に成年後見に関する要綱案が法務省の方から出されることになって おりますので、今回は間に合わなかったのですけれども、次回の委員会には委員の皆 様方に配付したいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○吉川座長 いかがでございましょうか。大体資料はおそろいでしょうか。資料を確 認していただきましたけれども、もしおそろいであれば、議事に入りたいと思います。  本日の議事に関しましては、議事録公開ということで進めさせていただこうと思い ます。各先生方におきましては、それぞれの御発言を氏名入りで公開されることにな りますので、そのところをよろしくお願いいたします。  それでは本日の議題は、先ほど申しましたように、「精神障害者の定義について」 という大きなところで進ませていただきますが、まず、それでは事務局の方から、そ の問題についてどんなことがあるのかを御説明いただきたいと思います。 ○杉中補佐 それでは個別の議論に入る前に、現在の精神障害者の定義の規定につい ての説明をさせていただきます。資料5、6、7、8ぐらいを使用いたしますので、 まず資料5をお手元にお出しください。定義の前に、現在の精神保健福祉法の簡単な 構成を最初に説明させていただきたいと思います。  これは法律の構成でございます。精神保健福祉法の章立てといたしまして、第1章 といたしまして「総則」、これは基本的な理念であるとか、今回議題にする精神障害 者の定義を含むようなものでございます。  第2章、第3章で、「精神保健福祉センター」「地方精神保健福祉審議会及び精神 医療審査会」、これは地方の行政機関、審議会等について規定したものでございます。  第4章は、「精神保健指定医及び精神病院」、医療施設、これは精神病院及び医師 等について規定したものでございます。  第5章が「医療及び保護」ということで、精神病院内における医療のあり方等につ いて規定したものが第5章でございます。  第6章は「保健及び福祉」ということで、精神障害者の独自施策及び地域における 保健活動等について規定したものでございます。  第7章は「精神障害者社会復帰促進センター」ということで、これは指定法人にな っております全家連です。社会復帰促進センターの活動について規定したものでござ います。  大体このような構成になっておりまして、今回扱う規定というのは総則に関すると ころについて議論をさせていただきたいと思います。  資料6に移ります。「精神保健福祉法における精神障害者の定義について」という ことで、実は精神保健福祉法における精神障害者の定義というのは平成5年の精神保健 法改正の中で改正が加えられております。資料6、7、8以降は、基本的にはその当 時以降の対外的に説明している資料を用いたものでございます。そういうことで、基 本的な考え方ということで説明をさせていただきます。  現在の規定ですけれども、現在の精神保健福祉法の第5条におきまして規定されて おりますが、「精神障害者」を「精神分裂病、中毒性精神病、精神薄弱、精神病質そ の他の精神疾患を有する者」という形で定義しております。これは精神障害者を基本 的には精神疾患を有する者と定義して、その具体的な疾患名として、その前にありま すような4つの疾患を挙げている。精神疾患というものが何かという問題ですけれど も、ここに書いてありますように、「精神上、心理上及び行動上の異常や機能障害に よって、生活を送る上での能力が相当程度影響を受けている状態を包括的に表す用語 として、医学上定着しており、精神疾患に該当するかどうかの実際の判断は、思考、 現実認識、意志疎通、記憶、感情表出、問題対処等の機能が損なわれているかどうか を診断することによって行われる。精神疾患の範疇に入る個々の疾病名は、WHOに よる国際疾病分類においても詳細に分類されており、国際疾病分類上の該当項目(精 神障害の章)全体が、『精神疾患』の範囲であるとされている」ということで、基本 的には国際的に精神疾患であると分類されているものが精神疾患、それを有するもの が精神障害者であるという定義をされているところでございます。  「このように、精神疾患を生活上の不適応現象(障害)によってとらえている等の ことから、『精神疾患』と『精神障害』は一般的に同一の概念として理解されている 」「しかしながら、精神保健福祉法における精神障害者は、完全に国際疾病分類にお ける『精神疾患』と合致したものではなく」、これは後ほど説明させていただきます けれども、「現行の定義規定を設けた平成5年改正の付帯決議においても、『精神障 害者の定義については、国際的な疾病分類に準拠したものであることを周知徹底する とともに引き続き検討を行うこと。』という付帯決議が行われている」「また、精神 疾患の多くは原因が不明なこともあり、急性期の精神症状は抑えられても、なかなか 完治まで達しないという特性があり、軽症の神経症患者等を除き、症状が軽快して退 院しても、能力障害をもったまま社会で生活していくこととになり、精神障害者につ いては、医療を必要とする『傷病者』という側面と、福祉を必要とする『障害者』と いう側面の両方をもっていることが特徴である」ということでございます。  そして、その5年の改正のときの経緯も一応御承知していただいた方がいいと思う ので、それをつけたものが資料7でございます。「過去の見直しの経緯について」と いうことでございますけれども、まず最近の改正などで、昭和62年の改正でございま すけれども、精神衛生法改正の中で、定義についても大きな1つの議論の項目であっ たと。「特に精神薄弱者及び精神病質者を精神障害者に含めることの是非や覚醒剤慢 性中毒者の扱いについて種々の議論があったが、定義の見直しにはなお検討を重ねる 必要があるということになり、昭和62年の法改正においては、精神障害者の定義につ いての改正を行わず、引き続き研究を行うこととした」ということで、当時の公衆衛 生審議会における答申としてはこの「参考」に載っているような引き続き検討を行う ということで検討にゆだねられたということでございます。  5年時において改正が行われた訳ですけれども、その5年改正の前までは、「精神 障害者」というのはいわゆる「精神病者(中毒性精神病者を含む。)、精神薄弱者及 び精神病質者」という大きな3つのカテゴリーでゆだねられていた、それを「精神疾 患を有する者」ということで、ひとくくりにして全体を統括するようになったという 改正を行ったところでございます。  その考え方でございますけれども、精神衛生法の制定当初、要するに5年以前の法 律で「一般に、精神に生じた異常を後天的に生じる精神の異常」、これを「精神病」 として包括的に表現する。「先天的な精神の異常」、知能に着目したものとして「精 神薄弱」、性格等に着目したものとして「精神病質」と分類し、これら3者を列記す ることによって精神の異常を包括的に表現し、「精神障害者」としていた。  「一方、かつて精神病とされてきた疾患のうち、原因の解明、治療法の開発、医薬 品の研究開発等により、症状の安定化や回復が可能となってきたもの(神経症等)に ついては、これら一群の疾患を、医学上、心因性精神障害として分類整理するように なっており、従来の精神病からこれらを除いたものが、医学上は『精神病』と称され ていたため、現場で実際に制度の運用に当たる医師等の間で、用語上の不明確さに伴 う混乱が起こりがちであった」、これは当時の文章をそのまま書いたものなので、恐 らく趣旨としては、特に神経症等については、平成5年当時に至るときに当たっては 神経症というものについては、狭義の精神病として扱わないというような扱いが一般 的になってきたので、精神病ということで包括的に後天的な精神疾患を表現すること が難しくなったということで、現場の混乱が生じてきた、そういうことではないかと 。当時の議論の経過も知ってる方もおられると思うので、間違っていたら後で追って 指摘等いただければと思います。  医学上の概念は時々の医学上の観点によって揺れ動くということもありますので、 そういうことを是正するために、とりあえず医学上の概念が対象になるということで 、精神疾患という一般的な用語を用いて、その医学上の時々の進歩等に適応するよう にしようといった趣旨が平成5年の改正だと思います。  その後ろに、今説明したことと同じものを、当時の資料、「平成5年改正前」「改 正後」というところは我々が書いたものでございますけれども、それをつけさせてい ただいております。  それで「精神疾患の具体的内容」として、どういった分類がされているのかという ことを書いたものが資料8でございます。  委員には国際疾病分類に非常に詳しい方もおられるのですけれども、御存じない方 もおられると思いますので、それを簡単に説明させていただきます。  基本的には、1番で書いたのは「国際疾病分類(ICD)は、世界保健機構(WH O)により死亡及び疾病統計を国際比較するための基準として定められ、各加盟国に その使用が勧告されている。1900年に初版が示され、以後、医学の進歩に合わせるた め、ほぼ10年ごとに改定されてきた。現在の最新の版は、第10回修正国際疾病分類( ICD−10)で、1984年から改定準備が開始され、1990年5月17日にWHO総会にお いて決議され」たというものでございます。そのICD−10の分類に沿った形で分類 されているものはどういうものがあるかというのが2番、3番でございます。  次の表を、2ページを追っていただいた方がいいかと思うのですけれども、そのI CD−10の基本的な形に沿って分類されているということで、例えば右から2つ目に ある措置入院のとき判定基準というものも、基本的にはICD−10に沿った形で疾病 の状態とかそういうものが分類されている。  また「手帳判定基準告示」ということも、基本的にはICD−10に沿った形で分類 されているということで、基本的には今の精神保健福祉法の言っている精神疾患とい うものは、ICD−10に沿った形で入っている。ただ、手帳は精神薄弱については別 の福祉施策がございますので、それは除外しているということでございます。  ただ、若干何点か問題があると申しましたけれども、あらかじめ言っておきます、 手帳のところの「てんかん」ですけれども、てんかんについては後ほど説明しますけ れども、基本的にはICD−10上ではF分類、いわゆる精神疾患をあらわした章では なくて、いわゆる神経性の疾患ということで扱われている。  また大きな2つ目のものとしては、いわゆる薬物等の依存がICD−10上はF1の 中に、中毒性精神障害だけではなくて依存も入っている。ただ、精神保健福祉法上は いわゆる依存、慢性中毒にある人が法の対象から原則除外されている、こういう違い 等がございます。  以上、簡単ですが、あと資料9、10という形で、ICD−10及びそれに類するよう な国際的な分類法のDSM−IVというものの簡単な構成ですが、これは目次の部分で すけれども、つけさせていただきましたので、参考にしていただきたいと思います。  以上でございます。 ○吉川座長 ありがとうございました。豊富な資料をたくさん出していただきました し、今日これから議論するに当たりましても、出来るだけ集約された議論をしていき たいと思っています。  今、とりあえず定義の問題について資料の方から御説明をいただきましたけれども 、さて、その次をどうしましょうか。やはり皆様方から、とりあえず今の御説明に対 して御質問をいただきましょうか。それで特にないようでしたら先へ進ませていただ きますけれども、今の杉中補佐の御説明に何か御質問がおありでしょうか。あるいは 資料にちょっと目を通していただいて、こういうものが欠けているということがある ようでしたら、御指摘いただければまたつくりたいと思います。  もし、今すぐにここで出てこないようでしたら、次へ進ませていただいて、各団体 からいろいろな定義に関しても御注文が来ていますので、それについてやはり御説明 をいただきましょうか。 ○杉中補佐 それでは資料1に戻っていただきます。資料1ということで、基本的に は今座長から御説明がありましたとおり、各団体からの要望に沿った形で、今回の定 義に関する主要な論点ということで取り上げさせていただいたものが資料1でござい ます。大きく分けて1、2、3に分けてあります。  まずは「精神障害者の範囲について」と、この精神障害者というのはいわゆる精神 保健福祉法で取り扱うべき精神障害者の範囲ということでございますけれども、まず ( 1)ということで、先ほど言いましたように、「精神保健福祉法に規定される精神障害 者は、精神疾患を有する者とされているが、必ずしも国際疾病分類でいう精神疾患に 合致したものではなく、その範囲について見直すべきである」という、これは日本児 童青年精神医学会から要望が来ています。また、先ほど言いましたように、5年の法 改正のときの付帯決議等でも付帯されております。各論としては、この中で主要なも のとして、てんかんに関することを取り上げさせていただいております。   (2)ですが、「以下の対象者について、精神保健福祉法の対象から除外すべきであ るという要望がある」、1つ目は「精神薄弱」、これは要望団体としてはここに書い てあります全日本手をつなぐ育成会等から要望が挙がっています。2つ目は「精神病 質」を対象から除外すべきという要望が挙がっています。3つ目は「覚せい剤慢性中 毒者」を除外すべきである。これは後ほど説明しますけれども、総則ではなくて、精 神保健福祉法の第44条によって精神障害者とみなすという規定がございますけれども 、その取り扱いをやめるべきだと。  2は「用語について」でございます。精神保健福祉法の精神障害者の定義の中で、 個別具体的な疾患名の例示というものがなされておりますけれども、その用語につい て不適切ではないかという要望が出ています。1つは「精神分裂病」、2つ目は「精 神薄弱」、3つ目は「精神病質」等でございます。  3でございますけれども、「福祉面からみた精神障害者について」と、精神障害者 の意味としては、先ほども若干説明させていただきました、いわゆる精神疾患を有す る者(Mentally Disordered)と言われる保健・医療的側面から見た意味、それから生 活面での能力障害(Mentally Disabled)という、能力障害に着目した意味があります けれども、精神保健福祉法では、これを統合する意味で前者から見た定義が置かれて おります。しかしながら精神保健福祉法による福祉施策は後者に着目してなされるも のであって、また障害者基本法の中では生活面での障害に着目した定義がなされてお りますので、この両者を明記しろ、もしくは明確に区別するような法律体系にすべき だという要望がございます。  これに関する要望団体というのはここに書かれている団体等でございます。  以上でございます。 ○吉川座長 ありがとうございました。以上、資料5以下で説明させていただきまし たものと、それから後の方で説明させていただきました資料1のところで、どのよう な団体からどういう希望が出ているか、考え方が示されているかということを勘案し まして、皆様方のとりあえず議論をしていただきたいと思います。  今日、実はこうして今の定義の大まかなところをお話をしていますけれども、その 次のところから、実は少し個別の問題として、今もちょっと話が出ましたように、て んかんであるとか精神病質であるとか、あるいは精神薄弱を個別にどういうふうにす るかということについてこれからは議論させていただきますけれども、その前に、こ の全体の包括的なところで何か御意見をいただけるならば、それで進みたいと思いま す。 ○伊藤委員 定義する前提条件として、この法の性質が医療を規定する面と、それか ら福祉を規定する面と、もう1つは強制入院に関連する規定と、その3つについて従 来、包括的な訳ですけれども、この法の大枠が従来のままのものを含みながらいくと いう前提があるかどうかによって定義も随分変わってくると思うんですね。包括的な 定義をしなければならないのか、医療の対象としての定義だけで済むのかというよう なことにもかかわってきますので、そこのところがある程度道筋を明確にしておかな いと、定義自体も具体的な論議に入れないのではないかということがあります。 ○吉川座長 それは今、杉中補佐が読んでくださいましたものも、資料1の3に「福 祉面からみた精神障害者について」というところで議論するだけではちょっと足りな いということでしょうか。もう法そのものの問題ということですね。 ○田中精神保健福祉課長 鶏が先か卵が先かの話になってしまうと思うのですけれど も、とりあえず大きな変更はないという前提で、定義の問題をとりあえず御議論いた だいて、後でもし、例えば福祉と医療は別の法律体系にするとか、そういう話になっ てくれば、またそのときにもう一度戻って定義をさらに見直すということになるので はないかと思います。 ○吉川座長 やはり原則としては現行法をベースにして考えていくということで、そ れの改正をどうするかということですね。 ○高柳委員 やはり基本的に私は網羅的にいくべきだろうというふうに思うんです。 なるべく多くの疾患をこの法に組み込んでいくとべきだろうと思うので、方向性とし てはそういう方向をとりたいと思っております。 ○金子委員 後ほど御説明があるのだと思うのですが、精神障害者という1つの言葉 で、ある意味では2種類の方々をあらわしているというところにやはり無理があるの ではないかなと思います。  すべて、いわゆる傷病者である、疾患を持っておられる方と、いわゆる障害を持っ ている方を、やはり明確に区分すべきであるというのは、関連諸団体のほぼコンセン サスを得た要求でもありますし、ぜひそれを前提とした形で議論を進めていただきた いと重います。それから、もう1つは、事務局の方々で考えていただいた中で、いわ ゆる医療の対象者というのが、何を医療として考えておられるかというのが余り明確 ではないように思います。  例えば強制的な非自発的な入院医療を前提として考えておられるのか、外来通院を 考えておられるのかということです。入院医療というのがどうも頭の中にあるように 私は感じるのですが、それ以外の当然医療的なサービスも必要な訳ですので、その医 療のサービスを幾つかに分類して、その対象を分けていくという考え方も必要なのか なと思っております。 ○吉川座長 先ほど課長から卵が先か鶏が先かという話がありましたけれども、本当 に議論はひっくり返ったりする訳ですけれども、今のところ全体的なことを少し御意 見をいただいておいて、今、金子委員が言われたのは、恐らくこれからお話が出てく る、個別の問題のところで医療という言葉を何回も使っていますので、その辺のとこ ろでまた議論をさせていただくことになるかもしれません。 ○池原委員 個別のところの議論、あるいは先の方で議論されることになるのかもし れないのですけれども、精神障害という概念に2つの側面がある。ただ、1つの法の 中で同じ1つの言葉を2つの定義をつけるというのはおかしいので、同じ精神障害者 という言葉を使いながら別々のことを指しているということは難しいだろうと思うん です。  ただ、これは半ば思いつき的なことなので、また後に議論をしていただきたいので すけれども、例えば総則のところでは、かなり包括的な定義規定を置いて、例えば福 祉面では精神障害であってこれこれのものとか、あるいは医療の面については精神障 害であってこれこれのものという、別のファクターをもう1つそこに要件的につけ加 えていくことによって、章ごとに恐らく対象者が若干異なると思いますので、そんな ような技術的な工夫は出来ないのかなという気もちょっとするんです。 ○杉中補佐 基本的には非常に法律的なものなので、現状が変わらないのであれば変 える必要はないのではないかというのがまず1点と、2つ目はその見直しの、この中 にも書いておりますけれども、中で別の大きな要因として、障害者の総合福祉法制み たいな話が既に出ておりますので、今、その精神障害者の福祉という分野に限定して 突っ込んだ議論をする意味というのがどれぐらいあるのかというようなことで、もし そういう議論がされるのであれば、その長・中期的な課題として障害者の総合福祉法 制みたいなものがありますので、その中でしていくべきことなのかなというふうに我 々は考えております。そういうことをする必要がないのであれば、保健と福祉を今改 めて分けるということのメリットがどれだけあるのかということと、逆にその保健と 福祉の連携というのが断たれてしまうと弊害の方がもしかしたら多いのかもしれない。  そういう点から考えると、そういった議論の中で考えるべきことなのかなというの が、これも資料4の中で議論させてもらうことなので、そこで個別に議論させていた だきたいと考えますけれども。 ○吉川座長 それでは一応、全体的なところはこの辺のところにしまして、実は2番 目の問題として個別的なというふうに申し上げてきましたけれども、この個別的な問 題と実は用語の問題というのはまた議論しなければいけないことがあります。これも やはりお互いに行ったり来たりするところだと思いますけれども、とりあえず、まず 個別の問題に入ってみて、そして少しずつみんなで考えを深めていければと思ってい ます。  では、個別の問題に入りますけれども、また事務局の方から問題点を少し提起して いただきます。 ○杉中補佐 資料2の方からということでよろしいでしょうか。では資料2−1とい うことで、先ほどの議論の1で「精神障害者の範囲」ということについてですけれど も、これを大きく4つに我々、個別の問題として考えまして、この精神障害者の範囲 ということに入るかどうかということで、1つはICD−10との関係からてんかんの 扱いについて、それから各団体との要望ということ等を含めまして、精神薄弱、精神 病質、あと覚せい剤の慢性中毒者ということで書かせていただきました。  まず資料2−1の「てんかんの扱いについて」ということで説明をさせていただき ます。まず、検討メモとして出している資料はあくまでも議論のたたき台とするため の検討メモという扱いでございますので、我々としての基本的な考え方は示しており ますけれども、それをもって厚生省の方針であるとか、そういうものではございませ んので、そのことはあらかじめ御了承ください。  まず資料2−1ということで「てんかんの扱いについて」ということでございます 。まず「精神保健福祉法におけるてんかんの扱い」を説明させていただきます。  まずてんかんでございますけれども、精神衛生法の発足当時より精神障害者の対象 に入っております。現行の精神保健福祉法においてもてんかんは精神障害者の対象に 含まれているということで、例えば手帳判定基準について定めました「精神障害者保 健福祉手帳の障害等級の判定基準について」においても、「精神障害の判定基準にな る精神疾患(機能障害)の状態の一つとして、『てんかんによるものにあっては、ひ んぱんに繰り返す発作又は知能障害その他の精神神経症状がある者(3級)』」、こ れは3級という軽い症状についての部分だけ引っ張ったのですが、掲げられておりま す。  次に「国際疾病分類上の扱い」ですけれども、先ほど言いましたように、国際疾病 分類上はてんかんは実はG分類の神経系の疾患というものに含まれておりまして、「 精神疾患の対象となっていない。ただし、てんかんによって分裂病を示唆するような 症状が認められる」と、これはてんかんによって精神症状が発生するときには、「F0 6の『てんかんにおける分裂病様精神病』として」、いわゆる器質性精神障害の一種と して精神疾患の対象となっております。ICD−10の該当部分等を写したものがこのG 40というところとF06.2という該当部分でございます。  次に2ページの「問題点」でございますけれども、先ほど言いましたように、精神 保健福祉法の精神障害者は精神疾患を有する者を基本的に指すこととされております 。したがって精神疾患とは、「国際疾病分類上の精神障害の章に該当する項目のこと である」という基本的な説明をしているところでございます。  「しかしながらてんかんについては国際疾病分類上、一部を除き精神疾患とは分類 されず、精神保健福祉法上の精神障害者に該当するかどうか不明である」。てんかん 協会等からは、てんかんを精神保健福祉法の対象に該当するということを明記してく れという要望がございます。  また、これは非常に広範な声なのかもしれません。逆にてんかんが精神疾患に分類 されることについては反対である、精神障害でないということを明記してほしいとい った逆の立場からの要望もございます。  基本的な考え方として決めさせていただきますのは、てんかんについては精神神経 症状等を伴う場合も非常に多い、またてんかん患者と言われる方々の多くは、日常生 活上または社会生活上の障害を有しておりますので、こういう人たちに対する何らか の支援は必要であると考えられますので、直ちにこれを精神保健福祉法上の対象から 除外することは、逆にこれらのてんかん患者に対する福祉的支援の道を閉ざすことに なるのではないかというふうに考えております。  これがてんかんを除外することについての考え方でございますが、逆に明記すると いうことでございますけれども、既に運用上に精神障害者の対象になっているという ことであれば、あえてこれをわざわざ改定して明記するというまでの必要はないので はないかというふうに考えております。  根本的な問題ですけれども、てんかんが精神障害として扱われるべきなのかについ ての議論をそれほどされた訳ではないので、こういう医学界の議論が行われていない ので、それについて若干学会等で議論をしていただいて、それに関する議論を深めて いただく。それを待ってから考えるということでもいいのではないかというのが我々 の基本的な考え方です。  以上です。 ○吉川座長 ありがとうございました。  さて、先ほどからお話し申し上げていますように、個別的な問題に入りながら、そ こでいろいろ議論しているうちにまた前の方に戻ることもあるかもしれません。そし て、先ほど申しましたような、その次にお話ししようとしている用語の問題ともまた 絡んでくるかもしれませんが、とりあえず今、てんかんを1つの題材にして少し考え てみたいと思います。  どうでしょうか、事務局の方で整理をしていただいた1と2、これについて何か問 題点はありますでしょうか。  1の前半のところ、すなわち精神衛生法当時から実際的にはてんかんというのが当 時の精神衛生法の中で処遇をされてきた、そういうことがまず大前提です。それがあ るから、3のところの基本的な考え方の中にそれを手を特別加えることもないだろう し、また省くということはないのではないかという議論になっていると思います。  1の (2)は、国際分類や何かが書いてあることでございまして、これを楯にとって といいますか、ICD−10を重視しながら進んでいこうとすれば、ここのところが逆 にネックになる訳で、その辺がここから問題点としては出てくるだろうと思います。  いかがでしょう、皆様、何か御意見は。 ○長尾委員 もともとてんかんは3大内因性精神病の1つということに位置づけられ ていたのが、だんだんと神経疾患の方へ移っていったという経過がありますし、その 中でやはりてんかんを、先ほども言われたように、精神保健福祉法から省いてしまう と、法の谷間になってしまいますね。そういったことからいって、かえって明記する のも問題があるということがありますから、基本的な考えとしては私はこれは適正か なという感じを今の段階では持ちますが。 ○吉川座長 ほかにどなたか。精神科のドクターから何かおありになれば。 ○高柳委員 お伺いしたいのですが、今、大学ではてんかんはどこで教えているので しょうか。 ○吉川座長 それは精神科で教えているのではないですか、小児科でもやっています。 ○高柳委員 小児科でもやっていますかね。 ○吉川座長 神経内科でもやっていますね。 ○後藤委員 脳外科でもやってます。 ○新保委員 今のお話を聞いていますと、松本(てんかん協会)さんの話を思い出し たのですけれども、松本さんが、我々は一体どこへ行けばいいかというようなことを 言っていまして、ともかく疾病上の分類についてはお任せするけど、何とか福祉施策 を充実してほしいということを何年か前におっしゃっていたことがあるんです。その 福祉施策の対象にもちっともなり得ないんだと、精神もそういう状況にはありました けれども、精神保健福祉法が成立したときにそんなお話をしていたのですが、今の事 務局の話からいけば、運用上という言い方をちょっとされたと思うんです。  ですから、運用上その精神障害者の対象となっているから、とりあえずそうしてお いた方が精神保健福祉法の対象にも準用出来るからよろしいだろうというような部分 もあるのは間違いないと思うんです。というのは、明確に規定されておりませんので 。ですからその辺を考えると、てんかんの方々に対する運用上の現行のままでいいの かどうかということについては、少し論議をしてあげることが必要かなという思いは いたしますし、このまま運用上、てんかんの方々に精神保健福祉法における福祉施策 を準用させていくことでいいのかどうかということですね、その辺をちょっと御確認 いただければありがたいなという気がいたします。 ○吉川座長 今も医学教育の中でどこでやっているのかという話が出ましたように、 確かに今、実際の医学教育の中でもかなりそこはばらついているのだろうと思います。  ですから、ある意味での症状を持ったてんかんというものは、精神症状として何ら かのものを持っているということであれば、それはもちろん精神保健福祉法上の施策 の対象となる訳でしょうし、それそのものは私は運用上というだけではなくて、精神 疾患として症状を持っているならばそれはそれで入るだろうと思うんです、それはい いんですね。ですから、そんなふうに考えることで出来るのではないでしょうか。 ○杉中補佐 あえて定義ということで書かなかったので、福祉施策の話というのは、 やはり独自の要望というのはございます。障害部全体として検討している合同企画分 科会等でもてんかんの関係団体から要望がありました。  例えば、てんかん患者に対する補装具、ヘッドギアみたいなものの支給が、精神薄 弱でてんかんをあわせ持つ人であれば福祉施策として支給される。ところが精神保健 福祉法上はそういう用具の支給がございません。ただ、それはそれで福祉施策のあり 方というところで考えるべきであって、だから対象から外すというよりは、その中で 、てんかんの人といっても非常にマイノリティーではなくてかなりの数が、全国で20 万人以上がてんかんの人だという調査等もありますから、福祉施策として考えるべき 問題かなというふうに我々は考えております。逆に単に対象外とすると、どこにも入 らなくなって、必要な医療施策までも受け入れられなくなってしまうみたいな話もご ざいます。 ○吉川座長 ということは、合同企画部会あたりでこれからまだまだ議論されるでし ょうけれども。 ○杉中補佐 議論したいと思いますけれども。 ○吉川座長 いずれにしても福祉法の大きな見直しがあるでしょうが、そういうもの が、そういうものの中でというのでしょうか、検討されて、そしてある検討が終わっ たところではまたこちらの精神保健福祉法の方の問題に返ってくるかもしれませんけ れども、今のところはこのままでいくということでいかがでしょうか。 ○金子委員 運用上という面で二通りの側面があると思うのですが、1つは、例えば 今ほど出ましたように、福祉施策の対象者として除いてしまうと確かにどこでも取り 扱いが出来ないということになる訳ですが、逆に言えば、「てんかん=精神障害者」 であるというふうな解釈も成り立つ訳で、それを楯にとられて、いわゆる人権上の問 題としてとらえられる場合もあると思います。  ですから、同じてんかんの関係の団体から、対象ときちんと明記してくれという意 見も出れば、外してくれという意見も出るという、現実はそこにあると思いますので 、ある意味では一部はそういうような、例えば入院治療とか福祉の対象者であるけれ ども、という感じのニュアンスが少しあればよろしいと思います。非常に難しいと思 うのですが、法文上載せられると、てんかんで悩んでおられる方々のメリットにもつ ながると思うのですが、困難でしょうか。 ○守屋委員 金子委員がおっしゃることは非常によく分かるのですけれども、その論 理でいくと、例えば精神分裂病でも全く普通に生活されている方と、強い障害を持っ ている方がいらっしゃる。従って金子委員が言ったような形で残していくと混乱が生 じて、非常に分かりにくくなってしまわないかという印象を私は思います。 ○吉川座長 どうもありがとうございました。私がまとめるのが早過ぎたのかもしれ ませんが。 ○竹島委員 とらえ方について確認したいのですが、精神保健福祉法におけるこの精 神障害というのは、基本的にはICD−10に準拠するのですが、そのてんかんも含め た、ぴったり一緒ではないというとらえ方でまずいいのかという部分が1つと、ここ で精神障害者の定義は後ほど福祉とか医療とかいろいろ出てきますけれども、総じて そのサービスの対象者であるというものを広くとらえるという理解の仕方でいいのか という、そこのことろをちょっと確認のみで教えていただきたいのですけれども。  例えば精神障害、1つの精神障害者として今の状況でいれば、その中に、福祉の対 象もいれば医療の対象もいる、両方の対象もいると。とにかくその人たちの全体を広 く取り上げるのだというところで理解してよろしいのですね。 ○杉中補佐 そういうことだと思います。福祉と医療のところでまた後ほど説明しま すけれども、実は医療の方が福祉の全貌を覆い囲うような状態だというのが基本的な 考え方ですけれども、ただ、その人の状態に応じて必要なサービスが与えられる、そ の全体の対象が精神障害者ということでやるしかない。  精神疾患については、ICD−10に沿ったものなんだという説明はしますけれども 、必ずしも全く合致している必要というのは全然なくて、いわゆる我が国の通念で言 っている精神疾患というもので対処するということで、それはよろしいのではないか と私は逆に思うのですけれども、本当にぎりぎりがちがちにそこに合わさないでとい うことだと、全部を対象にしているのか・・・・・・。 ○竹島委員 この法律で精神障害者とはとか、この法律で精神疾患を有する者とは、 これこれを言うという形で理解していい訳ですね。 ○杉中補佐 そういうことですね。 ○吉川座長 なるべく大きな声で共有出来るようにお願いいたします。それではいか がでしょうか。これはてんかんを1番先にお出ししましたのは、皆さんの頭のトレー ニングだと思って、ここでこんなふうに考えているうちに、もっと後でいろいろな問 題が出てまいりますので、この辺でこれはこのまま残すということで進ませていただ きます。  それでは次をお願いします。精神薄弱の扱いにつきまして。 ○杉中補佐 それでは、次に資料2−2ということで説明をさせていただきます。  「精神薄弱者の扱いについて」でございますけれども、「精神保健福祉法における 精神薄弱者の位置づけ」ということでございまして、読ませていただきます。「精神 保健福祉法においては、精神障害者を『精神疾患』に着目した医学的な観点から定義 付けているものであるため、国際疾病分類において精神遅滞に分類されている精神薄 弱者は、『精神疾患を有する者』として、精神保健福祉法においても精神障害者の範 疇に整理されている。実際、精神発達遅滞そのものが医学的治療で改善されるもので はないが、精神発達遅滞に伴う異常行動等の緩和や、身体疾患などの合併症の治療が 行われているものであり、措置入院や医療保護入院など、行動制限を行うことができ る場において保護し、適切な精神医療の対象者とすることは必要であるため、精神薄 弱者を医療及び保護の対象としている」ということでございます。  次に、「精神薄弱者福祉法における福祉施策について」ということで、「精神薄弱 者の福祉施策については、昭和35年に精神薄弱者福祉法が制定されて以来、独自の施 策分野として確立している。第1条の法律の目的の中においても『精神薄弱者に対し 、その更生を援助するとともに必要な保護を行ない、もって精神薄弱者の福祉を図る ことを目的とする。』と明確に精神薄弱者に対する福祉施策の理念を規定していると ともに、第3章(援護を行う者及び福祉の措置)においては、ホームヘルプ事業や日 常生活用具の給付等種々の施策を掲げている。一方、精神保健福祉法第6章(保健及 び福祉)及び第7章(精神障害者社会復帰促進センター)の規定においては、精神障 害者から精神薄弱者を除くものと規定しており、精神薄弱者を精神障害者の福祉施策 の対象からは除外している」ということで、一応精神障害者というものの中に精神薄 弱者というものは入っているけれども、精神保健福祉法上の福祉施策というものから は精神薄弱者は対象から除外されている。それに対する福祉施策は、独自の精神薄弱 者福祉法に基づく施策においてやっているということがございます。  最初、医療及び保護ということで、医療保護入院みたいな形に限定したような書き 方をしておりますけれども、必ずしもそれだけではなくて、いわゆる通院医療まで含 めた全般的な医療等の対象であるということだと思います。  次にその問題点でございますけれども、実はこの検討メモについては62年のときに も同様の検討がされておって、それをベースにしてつくっているものですけれども、 「精神保健福祉法の保健医療に関する規定のうち、特に本人の意思に反して精神病院 に入院させ、行動を制限し自由を拘束する場合、それに見合うだけの“患者の利益= 医学的治療の有効性”が担保されていることが不可欠となる。精神薄弱者については 、精神発達遅滞の症状は固定化されているため、精神発達遅滞そのものが医学的治療 で改善されるものではない。このため、精神薄弱については、精神保健福祉法の対象 にするのは不適切である」という指摘が、これは62年の議論の中でもなされましたし 、今もそういう意見がございます。  「しかしながら、精神薄弱者については精神発達遅滞に伴う異常行動が顕著な場合 や、他の精神疾患(てんかん、分裂病等)等を有し精神症状が著しい場合等もあり、 このような場合には、措置入院や医療保護入院など、行動制限を行うことができる場 において保護し、適切な精神医療の対象者とすることは必要である」というふうに考 えております。  次に、これに対する基本的な考えですけれども、「知的障害に関する症状について は基本的に固定化されていることから、精神薄弱者は基本的に福祉施策によって処遇 することが望ましく、その施策も精神障害者の福祉施策とは全く異なる観点から行う べきではないか。一方で、精神薄弱者は精神疾患を有する者であるため、場合によっ ては、精神病院における医療が精神症状の緩和等に寄与することから、引き続き精神 保健福祉法に基づく医療及び保護の対象とするべきではないか」ということで、原則 としては現状の医療と福祉部分を分けるといった形がいいのではないかといった考え でございます。 ○吉川座長 以上、杉中補佐の方からの御説明でありますけれども、先ほどのてんか んと同じように、またここで少し議論していただこうと思います。  1のところに挙げましたのは、精神保健福祉法上どうかということを総括的に述べ たもの、そして精神保健福祉法ではなくて、精神薄弱が精神薄弱者福祉法という昭和3 5年に出来ました法律、それに基づいて福祉施策が行われているということ。その関係 から精神保健福祉法の中では、福祉施策の部分は除外されてきたという経過です。そ れを踏まえて、今の基本的な姿勢といいますか、考え方を提示していただきました。 どうでしょうか。 ○高柳委員 各論的なことで申し訳ないですが、御質問したいのですが、3の問題点 の3行目「患者の利益=医学的治療の有効性」、これは精神病質にも出てくるのです が、これの基本的なお考えを少しお伺いしたいのですが、どこからこれを引っ張って こられたのか。 ○杉中補佐 これは措置入院や医療保護入院といって強制入院をするときの関係です けれども、これは強制をすることは、基本的な考えとして、本人の意思に反するとい う点では本人にとっては、不利益な処分等にあたると思っているんですけれども、治 療が与えられるということで、本人の治療に寄与するということで結局は本人の利益 になる、だから強制的に入院させて治療を与えることが許されるというのが精神保健 福祉法上の措置入院なり医療保護入院の基本的な考え方であるんです。要するに本人 の利益に寄与するような行為であるから、本人の意思に反するというような強制的な ことをやることが許されるということでございます。ここの利益があるということは 、精神保健福祉法上の特に強制入院の部分に関するところは大原則となっています。 ○高柳委員 措置入院でもそうですか。 ○杉中補佐 措置入院でもそうです。 ○吉川座長 高柳委員、何かそこから先、ないでしょうか、おっしゃりたいことが。 ○高柳委員 いいです。とりあえずはこれは保留しておきます。 ○杉中補佐 精神保健福祉法は保健医療に関する法律ですから、治療のために入院さ せるのであって、行った行為に関する刑罰的な観念から入院させるのであれば、もは や精神保健福祉法という観点ではなくなってくると思います。 ○吉川座長 金子委員、さっきこれに近いことを、何をもって医療的と言うのかとい う。 ○金子委員 これに書いていらっしゃるとおりだと私は解釈いたします。医学的に見 て治療が有効でない場合の、例えば隔離などというのをこの法律上の対象とすべきで はないというふうに思います。そのとおりで、全く質問等はありませんが。 ○守屋委員 私も、今言われた患者の利益=医学的治療の有効姓が担保されるという 基本的な考え方、これが一番重要なことだというふうに認識しています。これを読ん だときなるほどと思いました。  それで精神薄弱の問題ですが、精神薄弱は国際分類の中に位置づけられてはいます 。ただ、精神薄弱そのものには医療行為が行われない、医療行為によってよくなるこ とはないと考えるのが普通でしょう。  しかしそれに様々な精神病状は伴います。例えば接枝分裂病と言われるような分裂 病の症状が併発する人もいるだろうし、異常行動、衝動的な行動を伴う患者さんもい らっしゃいます。後で用語の変更もあると思うんですが、法に精神薄弱者を残すのは どうかなと思います。精神神経医学会の委員会研究で、市区町村長同意で入院してい る患者さんが現在、全国で 3,500人から 5,000人いる。その中の 1,200名について調 査できたのですが、そのうちの 800名が分裂病、 100名が精神発達遅滞という病名で 入院しているんです。しかもその人たちは長期の入院になっている。精神発達遅滞を 福祉的に処遇するならば、精神薄弱者をわざわざ対象にしなくても、例えば精神分裂 病とかてんかんとか、そのほかの精神疾患名でやっていけないかなという気もしてい ます。 ○吉川座長 守屋委員のおっしゃるのは、後の用語の問題と関係しているというとこ ろですね。 ○杉中補佐 要するに精神薄弱に着目しなくても、精神分裂病とかそういった疾患を 併せもっているということですか。 ○守屋委員 用語と関係しているというよりも、いわゆる精神薄弱ということであっ たがゆえに、そういう患者さんがそのまま精神病院に入院させられ、そしてずっと精 神病院で処遇されてきていることが我々の調査で明らかになっている。だとすれば精 神薄弱者が、何らかの精神症状を示さなければ精神科的入院治療は必要でない。そう する精神薄弱者であって分裂病とかてんかんとか、そのほかの精神的な問題や疾患名 がついている場合に入院という形をとればいいのではないかというのが私の意見です。 ○吉川座長 私の方が取り違いをしているみたいでした。 ○杉中補佐 問題意識としては我々とかなり近いのではないかということで、基本的 な考えの1番目のマルで書いたのはそういったことであって、基本的に特に入院医療 、急な精神症興奮状態にあるとかそういったことでなくて、落ち着いているのであれ ば福祉施策によって処遇されるのが望ましい。特に長期入院みたいな形で病院内で処 遇されるべきではないということについては、そういうべきだというふうに考えてお りますので、そういう意味で基本的な考え方の1つ目のマルというのを。  ただ、今ここに入っているものを、これも何か役人的な言葉になってしまって嫌な のですが、ここをあえて除外するのは、法律改正のときに対象から除外するという積 極的な意思を示さないとこれをあえて除外することになっていかないので、そこはち ょっと難しいところかなと思います。やはり入院医療がそういった人が対象になって くる場合は、これは逆に精神科の現場で治療をなさっている先生方にお聞きしたいと ころで、必要があるのであれば残して、ただし我々の専門委員会なら専門委員会の意 見として出すけれども、そういう人は出来る限り福祉施策で処遇すべきだという提言 をしていくということでいいのかなというふうに考えたところです。 ○竹島委員 2つあるのですけれども、1つは読む人がどう読むかという問題です。 「患者利益=医学的治療の有効性」と言った場合に狭く理解されてしまって、要する に治らないということは病院から出ろと言われているのかという誤解も生じます。例 えばがんの末期で治らないけれどもということになった場合に、もう治らないからそ れは福祉だと。確かにそういう面もあるんですけれども、非常に高度な医療が併存し た福祉でないと間に合わないという場合もあり得ると思うのです。  そういった意味で、その辺の治療の有効性云々を言ったときに、その治療の有効性 ということをどういう範囲でとらえるのかということのついて、もう少し言葉がつい ていた方がよい面がありはしないかということがあります。  もう1つは精神薄弱のことですが、私が今回の中で感じるのは、何で精神薄弱が例 示されなければいけないかという問題があって、圧倒的に福祉の中で処遇されている 人が多くて、ごく一部で、しかも守屋委員のお話にあったような、かなり以前に入院 された方が長期入院になっているという状況がある訳ですから、やはり例示するとし ても、ごく少数の、しかも混乱した時期に、一時精神科の医療が必要であるというこ とが主な人であるとしたら、例示する中からは外してもいいのではないかというのが あります。これはまた、座長の方で後の議論に引き取っていただけたらと思っており ます。 ○長尾委員 この基本的な考えでいいかと思うのですが、これも精神保健福祉法で論 ずるべきかどうかも分かりませんが、出口の部分、先ほど守屋委員の長期入院という 方たちが多いということもあるんですが、実際引き取ってもらえない。家族もいわゆ る興奮したり、時に衝動行動とかそういったことがあって、転々とあちこちの施設を 回って結局出されて出されてという形で、その上で精神病院に入院している。ある程 度おさまっても次に行き場を求められないということもあるんですね。家族に幾ら言 っても、もう置いてください、どこへも行き場がないですという、そういう人たちが あるのも事実です。  我々も出てもらいたいというのも事実です。その中で出てもらって、ある程度違う 新しい患者さんを受け入れたいというのは我々は思っているのですが、その辺の出口 部分も、是非やはりこれは受入先をもう少し考えていただくということも必要ではな いかなと思います。 ○高柳委員 守屋委員のお話に少し私の経験をお話ししたいのですが、実は最近、成 年の重度の精神発達遅滞の患者さんを見に行ったんです。その方は、今、長尾委員が おっしゃったように、長いこと精神病院に入院していて、その精神病床がクローズド になって返されてしまったんです。今は福祉施設と国立の精神療養所で押しつけっこ をしているので、どちらも取ってくれないんです。在宅で家族は泣き暮れていると言 いましょうか、自宅監置です。かぎを二重にしてあるんです。そういったケースはた くさんあるということをこれはやはり御承知いただきたいというふうに思います。 ○新保委員 お尋ねしたいこともあるのですが、いわゆる知的障害の施設と精神病院 とを常時行ったり来たりしている方がおりますね。それは行ったり来たりして、病院 へ来るときは疾患名がつくのでしょうか。そのことが1つ。  それで、行ったり来たりしながら、それでも何とかなっている方というのは結構お られるんですね。それと一方で守屋委員等おっしゃられたように、私もかなりクロー ズドの病院に行ったことがありますので、そこで見ていると、保護室を独占している とかという方たちがおられる。この方たちは精神薄弱者福祉法が制定される前後の方 たちが多くて、いわゆる法的整備がなされないときに精神病院がこの法律に基づいて 受け入れて、そしてその方の対処方法が他の疾患の方と別にきちんとやるということ も出来なかったという理由もあって、施設の方で受け入れがたい生活状況に陥ってい るという問題もある訳です。  ですからそういう意味では、この方々が今、クローズドの病院、あるいは病院の中 で閉鎖的な処遇をされつつも、実態としてはだんだんと減っていく方向にあると思う んです。今はそれを放置することがいいということではないのですが、何とかしてあ げなければいけないのですが、しかし現状ではやむを得ないのかなと思うと、先ほど の話に戻りますが、今病院を行ったり来たりしている人たちの処遇について、医療と 施設間の処遇についてきちんとそれぞれの連携が図れる方向性が保てるのであれば、 私は精神薄弱者は精神薄弱者福祉法において処遇すべきだという言い方をしていいの かなと思うのですが、その辺は実際にはどうでしょうか。 ○吉川座長 新保委員が実態を知りたいという話もありましたので、いろいろと今実 態を話していただいています。 ○高柳委員 実際は精神病院に預かっている重度精神発達遅滞の人たちは、長尾委員 がおっしゃったように出したいんです。けれども受け皿がない、これが現実なので、 これはみんなが困っているんですね。だから、逆にいうと精神薄弱者保護法でもつく っていただいて、そしてそちらで1本でやっていただければ、精神科医としても非常 に楽だと思います。それは守屋委員がおっしゃることが私は首尾一貫していると思い ます。そうであればそれが筋が通っているはずだと思います。 ○吉川座長 それでもなおかつ精神薄弱者が示す精神症状の中で、精神保健福祉法に 該当するような症状があることもあり得ますね。 ○高柳委員 あり得ます。そこでやはり医学的治療の有効性というのが問題になって くるんです。だからこれを言われると、私たちはそういう人たちを預かっている根拠 がなくなる訳です。だから逆にそれを出してもいいかと。 ○吉川座長 これはそうではありません。知的障害の部分に関して医療的手段では効 果がないという、そういう意味です。 ○杉中補佐 そういったところにも本人の利益に資する部分はあり得るのではないか と、この精神薄弱者部分ではそういった意味で書いてあります。 ○高柳委員 それは、広い意味ですね。 ○後藤委員 32条のところで出てくる精神薄弱の場合と、年金の診断書を私も見てい るのですけれども、入院されている方の大部分は精神薄弱プラス何かなんですね。反 応性精神病であったり、あるいは分裂病と合併しているという部分なので、その部分 に関しては多分治療が必要ですから、それに関してはどこかで診られる形は残してお かないといけないだろうと思うのです。  私としてはこの基本線に大体賛成ですけれども、これはこの法律の問題にかかわっ てくるんですけれども、結局は1つの障害名を2つの法律でやっている訳ですね。だ から、これは後で障害の医療保健の部分と福祉の部分のところで出てくると思うので すけれども、精神薄弱に関してはそれが出来ている訳ですね。医療保健の部分はこの 法律でやって、福祉の部分は別ということでやれている訳ですから、ここでそれを一 応認めると、ほかの精神障害の部分に関しても保健医療が必要な部分はここで、福祉 の部分はというふうに2本立てにするという可能性が後の論議になると出てくると思 うんです。  ですから私としては基本的に、さっき伊藤委員がおっしゃったみたいに、出来れば 明確に分けてほしいという考えがあるものですから、こういう形で医療の部分は診れ ます、福祉の部分は福祉で診ますよというふうに精神薄弱を規定しておいてもらう方 がいいかなというのが私の意見です。 ○山本委員 私も同じ疑問ですが、精神保健福祉法は一体どういう根本的性格なのか というので、医療法に限っていくのか、それとも福祉法の面もあわせ持っていくとい いますか、そういう根本問題につながると思うんです。その辺は厚生省はどのように 、もし医療法ではなくて福祉法の面も含んでいる、目的を見ますと福祉の面もかなり 含んでいるので。 ○杉中補佐 福祉の法律も含んでおります。 ○山本委員 先ほど言われたようにバックアップの問題ですね。こっちから除いてし まった場合のバックアップの問題もあるので、簡単に除いていいのかという問題が出 てくるのではないかと思うのですけれども。 ○杉中補佐 精神保健福祉法で1本にしたのはいろいろな過去の経緯等もあると思う のですけれども、基本的な方針として、いわゆる精神障害者が障害者たるゆえんとい うのは、精神疾患を有している。それが非常に長期にわたってその疾患を抱えたまま 、ある程度よくなった後生活していかなければならないということで、それに対して 、その疾患を有していることによって、福祉的な生活上の支援も必要になってくると いうことで1本にしているのだと思います。だからその原因というのは、医療を受け るところとある意味では同じな訳です。  薄弱の方は、ただ、その精神障害者の全般の中で、薄弱者に対するのを特別に切り 出しを分けているのはやはり薄弱者というのは基本的なところを固定化されているの で、精神障害者の福祉施策というのは病院を出た後に元の生活に戻っていく、元どお りに戻っていくというところに関する支援ということですけれども、精神薄弱者福祉 法の方は更生という言葉を使っていますように、知的障害に対する更生を逆に目的と した観点で、ある程度違う観点から物を見ているんです。片や経緯等もあって、そこ でやはり特別に切り分けてやったということだと思うんです。 ○吉川座長 従来からの考え方でいくと、やはり精神障害というか精神症状は浮動す る、しかし精神薄弱の知的障害の部分は動かない、そこのところで片一方は要するに 保健医療の施策の中に入ったし、そして片一方は福祉施策でやってきた。ただし、精 神薄弱であっても精神症状がかなり時には燃え上がるようなときもありますから、そ れは精神衛生法という法律でやろう。そういうことはずっと過去から一貫して議論さ れてきたと思います。  今、まとめていただいたところがとりあえず精神薄弱について具体的な施策の問題 とすれば、精神薄弱に関する福祉施策は現行の精神薄弱者福祉法でやれる。だとすれ ば、この精神保健福祉法が対象にする精神薄弱というのは精神症状を示すある時期の 問題かもしれない。そういうことで、現行の内容を特別変えることはないのではない だろうか。これがどうも結論みたいですけれども、いかがでしょうか。 ○守屋委員 ただそのときに、例示として「精神分裂病、精神薄弱」と書いてありま すね、そこからは外していくべきだろうなと思います。 ○吉川座長 それに関しては後で少し議論したいと思います。今は精神薄弱というも のについてだけ考えて、それとさっきのてんかんをどうするかというのは同じことで ございます。てんかんと精神薄弱をやる、そして精神病質をやっていただくところで 今のことがまた出てくると思いますので。 ○伊藤委員 精神薄弱の問題で、全部調べ切れなかったのですが、外国も調べてみた のです。カリフォルニア州の法律では一応精神遅滞は定義の対象からは除いている。 それから英国は、私が知っている範囲では95年に改正されているんですが、その前の 段階、高柳委員にお聞きした方がいいのですが、83年ですか、そこでは入っているん です。ただ、そのとき家族会の反対があって、名称を変えて、特に治療の対象となる ような精神薄弱だけにしてということで、ちょっと言葉は忘れましたけれども、メン タリーディスエーブルド(Mentallydisabled)だったのをインペアード( Impaired) にした、そういうふうに変えるという家族会の運動があって用語を変えています。  それでお聞きしたいのは、家族会というか精神薄弱の団体から精神保健福祉法の中 にこれを含めることについて意見はないのですか。 ○杉中補佐 それは対象から除外してくれという要望があります。 ○吉川座長 全部除外してくれと、一言ぱっと入っている訳です。 ○伊藤委員 そうすると、イギリスの場合はそれでも入れてしまったんですね、対象 になる例があるからということで。カナダあたりは州によっては入れているところと 入れていないところがあるようです。大体そんなことしか分からなかったのですけれ ども。 ○吉川座長 ありがとうございました。  いずれまた戻って御意見をいただくことは一向に構いませんので、とりあえず私の 方がまとめさせていただいたところで先へ進ませていただこうと思います。いかがで しょう。              (「異議なし」と声あり) ○吉川座長 よろしければちょっとお休みしましょうか。  その次の精神病質者の問題がやはりいろいろと議論があると思いますし、その後に 覚せい剤中毒も控えておりますので、ちょっとお休みをいただきます。 (休 憩) ○吉川座長 後半に入らせていただきます。  次に、精神病質者の問題について考えていきたいと思いますので、それではまた杉 中補佐の方から説明してください。 ○杉中補佐 精神病質者の扱いでございますけれども、まず精神保健福祉法における 精神病質者の位置づけですけれども、従前から説明しましたように、精神障害者とい うものは精神疾患を有する者とし、その具体的な疾患名の1つに精神病質が入ってお ります。ただ、精神病質者と、これも精神病質だけではないのですけれども、具体的 な疾患についての定義というものは法の中ではなくて、医学上の定義については専門 書に説くことが期待されております。  精神保健福祉法の細かい新たな告示等でも、精神病質というものを規定したものは ないのですけれども、一番近いものとして、いわゆる措置入院の基準の中で、「人格 の病的状態として、『知能にほとんど欠陥はないが、人格構成要素の不均衡又は人格 全体の異常等のために、本人が悩み又は他人が悩まされ、そのため個人あるいは社会 に対し対立するに至るような人格の病的状態がみられ、このような病状又は状態像に ある精神障害者は、周囲の意志の疎通や外界に対する感情の表出又は内的葛藤の処理 が障害されやすいことに起因する適応障害が顕著な場合、自傷行為又は他害行為を行 うことがある』」という説明がなされております。  ただ、ここで言っている人格の病的状態というものは、必ずしも精神病質者だけを 指したものではございません。ICD−10上も精神病質の類似の概念といたしましてF 06の「成人の人格及び行動の障害」というものが掲げられておりまして、精神病質は その中の非社会的人格障害に一番近いものであるというふうに考えられますけれども 、両者は必ずしも同一のものであるかについては十分な検証がなされていないという ふうに我々は考えています。  問題点でございますけれども、先ほどの精神薄弱のところと同じですけれども、ま ず、特に強制入院をするときには「患者の利益=医学的治療の有効性」が担保されて いるかどうかということが問題になってきますけれども、精神病質については、「精 神医学の領域では精神病質者の定義及びその診断基準が確立されているとはいいがた く、併せて医学的にその有効性を認知された治療法及び治療システムも開発されてい ない」のではないか。  近年、精神障害の診断技術が開発されるにつれ、精神病質と昔言われていた人たち の数が基本的に漸減していっているのではないか、ここ10年ぐらいは一定程度で落ち 着いているのですけれども、「一方、医学上の定義のあいまいさ(他の精神障害との 境界の不明瞭さ)故に、副次的に、実際には他の精神障害であっても明確に診断でき ない者までが精神病質者とされている可能性も残されている」。  「精神病質者が、その性格的偏りの故に周囲の環境と摩擦を生じ、そのための相互 の感情状態の緊張をきたし、ときには問題行動を起こすことから、精神病状態のため に緊急避難的に入院し病的状態が消退した場合であっても、家族等は性格的偏りが残 遺することを理由として入院継続を希望し、そのために入院の長期化をもたらしてき た」といったこともあるのではないか。  また反対に、精神病院での不祥事件(不当拘禁等の人権侵害を含めて)、中には入 院中の精神病質者等が当事者でかかわっているものも少なくないというふうに聞いて おります。「そしてこの場合、純粋医学的な問題が原因となっていることよりも、も っぱら入院処遇に関する問題が原因となっていることが多い」と考えられております。  基本的な考え方として、一番ここは歯切れの悪いところですけれども、精神病質者 については、国際疾病分類でも一応精神疾患には分類されておりますので、あえて現 在対象外とする必要はないのではないか。ただし、それについて有効な治療がなされ るか、対象とすべきかということについては書いておりませんけれども、医学的な観 点からも検討するのが必要なのではないか。  また、特に代表的な精神疾患の例示といった形で、分裂病と並ぶような形で精神病 質を掲げることが適切かどうかについては、引き続き検討をする必要があるのではな いかといった感じで書かせていただいております。  以上です。 ○吉川座長 ありがとうございました。  これに関しましては、特に精神科のドクターたちにとってはいろいろな思いがおあ りになるかと思います。昭和40年代の精神神経学会の議論もありましたし、そしてそ れから20年経た今日、どういう考え方をまとめていくかということで、非常に大きな 問題だと思うんです。  どうぞ、どなたでも結構でございますので、精神病質についてどんなふうに考えら れるか、少し議論していただきたいと思います。 ○長尾委員 国際分類上はこれは06ですか。 ○杉中補佐 すみません、60です。 ○長尾委員 ちょっと教えてほしいのですが、この (4)と (5)、精神病質者の入院が 長期化してきているということと、それから入院中の精神病質者が当事者として不祥 事件にかかわっているのが少なくないと、この辺がよく分からないので、具体的にそ の状況をお教えいただければ。 ○杉中補佐 この辺は、実は過去の62年とかその後の研究で書かれているところを書 き写した形なので、基本的に (4)で書いているのは、私の理解するところでは、病的 という当面の症状が消失した後でも、基本的な性格的偏りというものが原因で、地域 なり家族なりがなかなか引き受けてくれてないということが問題としてまだあるので はないか。  また、このようなことが問題になって、いわゆる基本的な性格の偏り等を原因とし て病院内で問題行動等を起こして、その問題行動がかえって病院なりほかの患者なり に対して悪い影響を与えているような事例があるのではないかということを書いたも のが (5)でございます。この辺のことについて間違いだという御指摘があるのであれ ばしていただければありがたいのですけれども。 ○長尾委員 (4)の精神病質者が入院の長期化しているという実際の数はどの程度で すか。 ○田中精神保健福祉課長 疾病ごとに入院期間はとられていましたか。 ○竹島委員 出そうと思えば出せます。 ○田中精神保健福祉課長 もうちょっとお時間をいただければ、入院期間のデータも 出ると思いますけれども。 ○杉中補佐 精神保健福祉課調べでは、人格障害ということで 1,600人ぐらいの方が 入院されている。これは過去10年ぐらいを調べてみたのですが、大体そのあたり、 1,6 00人程度で推移していると。 ○長尾委員 私の感覚では、出来れば早く退院していただきたいという形になる。実 際にそんなに長期化しているのかなと。これは次の覚せい剤の問題とも、また次回論 議される措置入院の問題とも関連してくると思うのですが、精神病質者そのものとい うことだけの入院は少なくて、どちらかというとアンタイソーシャルな行為によって 入院してきているという場合が多いと思うのです。  その場合はやはり触法問題としてかかわって出てきたものが多いのではないかと思 うのですが、その辺は精神科にどういう形で入院しているかは私も分からないのです が、精神病質者ないし覚せい剤中毒を医療保護入院なり措置入院なりという形でいわ ゆる触法問題が起こったときに、精神保健福祉法だけですべてまかなおうとするのは やはり間違っているということが言えると思うのです。その辺の論議はいずれされる と思うのですけれども、その辺を抜きにしてはこれはちょっと語れない部分もあるの ではないかと思うのです。 ○吉川座長 長尾委員がおっしゃるのは、厚生行政だけではないということですね。 ○長尾委員 そういうことですね。 ○杉中補佐 我々として一番聞きたいのは、こういったいわゆる病質と言われる人に 対して、何らかの治療というものをなす余地があるのか、それとも個人の性格の問題 なのかという、そこは一応疾病上入っておりますので、こういう歯切れの悪い文章に なっていても、何らかの可能性的には秘めているという認識もある意味では入ってい るのかなということであれば、やはりそこを切り捨ててしまう訳にもいかないのかな というのが結論になっています。 ○後藤委員 ここに出ているのは、結局は疾病概念として入っているかどうかという ことですね。要するに精神保健福祉法というのは2段構えな訳ですよね、医療保健の 部分と福祉というふうに。では、精神病質者に対しての福祉施策というものは、この 精神保健福祉法の中で、ほかの精神障害者と同じように定義づけられるものかどうか というのが出てくるのではないかと思うのです。  先ほど、精神薄弱者の場合には、疾病の分類の中にあるから残す方向で、でも福祉 施策の部分は精神薄弱者は福祉法である。では、この精神病質者の場合に、精神病質 者に対しての福祉施策というものをこの法律の中で規定出来るのかどうか。 ○杉中補佐 福祉的な観点からの支援が必要かどうかということだと思うんですね。 その必要がないのであれば、そんな規定を設けることはないと思うんです。だから、 それは別にほうっておいてもいいと。  ただ、精神障害者の福祉施策というのは、基本的には精神疾患を持ったことによる 能力障害です。能力が低下するので、それに関して生活訓練をしてやって日常生活機 能を回復させていこうということがメーンになると思うのですけれども、精薄に関し ては別途の観点から明らかに福祉的な援助が必要な人たちな訳です。だからあえて分 けて法律化しているのですけれども、精神病質の人が本当にどういう方なのかという ところにもよってくると思うのですけれども、基本的にはある程度になったら生活能 力に関しての障害は精神病質によることだけではないのかなというふうに考えるので すが。 ○吉川座長 難しいところですね。それが次の覚せい剤中毒の問題とかなり関係して くる訳ですけれども。 ○後藤委員 私の言いたいのは、能力障害の部分は多分精神病質の場合には考慮され ないのではないかと思うのです。そうすると単に法的な部分、入院かどうかという部 分だけでここの中に残しておくということになりますね。 ○杉中補佐 空振りになったらそれでいいのではないかと。 ○後藤委員 そういうことでいいかどうか。 ○吉川座長 そうですね、それは。今、ここまで来たのはそういうことです。 ○西山委員 私は精神病質の概念は大分変わってきていると思うんです。ですから、 今日紹介されたのはシュナイダーが最後にまとめた中の、特にアンタイソーシャール なところを中心にしてやられた訳ですが、もう1つは精神病との近さといいますか、 精神病者と健常者との中間にあるという、クレッチマーが言うような精神病質があり ますね。そういうものも今は別の形で、ICD−10なりあるいはDSM−IVなりに残 されている訳でしょう。それから境界例や境界性の人格障害という形で、治療の対象 としてどうこうしようという形で人格障害の概念が昔の精神病質とはちょっと違って きている訳ですから、現在皆さんが熱心に人格障害をどうこうしようというのは、そ れはやはり治療なり何なり教育なり、あるいはもうちょっと広い意味で治療的な教育 の対象として人格障害は考えている訳です。 ですから昔の精神病質で特にアンタイソーシャルとか反社会性精神病質を、精神科 医療で引き受ける必要は私はないのではないかと思っています。ですから、法の対象 にする必要がないということと、それから仮に百歩譲って対象にするとしても、あえ て例示する必要はないと思っています。 ○守屋委員 私も西山委員と基本的な考え方は大体一緒です。私が調べたイギリスで は、いわゆるサイコパスという言葉がイギリスの精神保健法の中にありまして、イギ リスの精神保健法の中では、治療可能な精神病質を強制入院の対象にしているという 現実があります。ただ、サイコパスという考え方は、いわゆるシュナイダーの精神病 質とは違う、いわゆるソシオパスという社会病質という考え方で、いわゆる非行とか 犯罪と絡んだ、今おっしゃったような反社会性人格障害にあたると思います。ただ、 今ここで問題になっているのが、それが本当に治療可能なのかどうかという点がまだ 十分な検討されていないという側面があります。私の考えでは精神病質を代表的疾患 という形から取ってしまっても実際上大きな問題はないと思います。 ○佐伯委員 あらかじめいただいた資料だと思いますけれども、精神病質という概念 を精神医学ではもう使われていないという記述が・・・・・・。 ○杉中補佐 医学上の用語としては精神病質という言葉は余り使わないと聞いており ます。 ○佐伯委員 先ほど触れられた統計も、精神病質という分類ではなくて人格障害とい う言葉を使われているんですけれども、そうだとすると、精神病質というものは法律 にも定義がないし、医学上も使われていない概念であるということになるかと思うの ですけれども、そういう概念を残すのが適切かというのはかなり疑わしいと思います。 ○杉中補佐 用語の問題については確かにありますけれども、ただ、人格障害とする ことがいいのかどうかということについては、やはり議論されていませんし、人格障 害ということで法的にも規程されてしまうと、それこそ全人格を否定されるような感 じになってしまう。なかなかこの言葉を容易に使っていいのかどうかというのは慎重 に対応する必要があります。 ○吉川座長 法律の用語としては、やはり一般用語とかなり共通したところで使わな ければいけないとすると、今の人格障害というのは、確かに医学用語としては今浮か び上がってきている言葉ではありますけれども、法律用語の中に使うことがふさわし いかどうかはまたちょっと別だと思います。 ○杉中補佐 用語の問題で特に精神病質については問題があるということは確かだと 思うのですけれども。 ○佐伯委員 対象の問題も含めて、そういう意味でも例示から除くというのは適切で はないかと思います。  ただ、実質的な問題と、あるいは定義の問題も絡むのですけれども、国際疾病分類 に基本的に従うということであれば、例示から除いても残るということです。ですか ら、排除するためには積極的に含まれないという形の規定を設ける必要が出てくる訳 ですけれども、それはちょっと難しいのではないかという感じもします。 ○杉中補佐 積極的に変えるという意思がなくて、法律改正までというのはなかなか そうはならないんですね。非常に歯切れの悪い言葉で申し訳ないです。  積極的に対象から除外するという意思を持って精神病質という言葉を除外するので あれば・・・・・・。 ○佐伯委員 しかしそれは精神病質という概念がもう既に使われていないからという 説明でよろしいのではないでしょうか。 ○杉中補佐 では、例示から除外するなり検討すべきではないかといった感じで書き たいと思います。  同じような用語の話で、今、精神薄弱については見直しの方向で進んでおるのです けれども、かなりやはり広範に社会的な認知を得た上で変えるということになります ので、用語の定義を変えるとなると精神保健福祉法独自でやるという訳にもいきませ んので、やはりこれを変えるとなるともうちょっと広範な政府全体での何か要るので はないかというふうに思うのです。  とりあえず、もうちょっと積極的な感じで変えさせていただくということでよろし いでしょうか。 ○吉川座長 事前に杉中補佐との話をしてきまして、佐伯委員の方からお話が出たよ うなことも大分話し合ってきました。それで、杉中補佐が歯切れが悪いですがと2度 も3度も言っていますように、それぞれ法改正を担当する側から言うと、やはりよほ どの根拠がないとそこまでなかなか踏み切れないという実務的なことがあるのだろう と思います。  それで、今度は例示の問題にだんだんと移っていく訳ですけれども、後でもまとめ ていきますが、そのときに本当にその例示を外していいのかどうか、外すためにはど れだけの議論が必要なのかとまた考えていかなくてはいけないこともあります。  とりあえず今のこの精神病質者の問題は最終的に、先ほどの話が出ましたような形 で、今のところは精神保健福祉法上の処遇をするということで、あとは少々学会とも 詰めていかなければいけないでしょうし、それから先ほどお話が出ましたように、人 格障害との関連も少し明らかにしていかなければいけない。これはもう行政的に出来 ることではございませんので、恐らく精神科医の先生方に御協力をいただいた上でこ のところを考えていかなければいけなくなると思うのです。その辺を含めたところで 、今議論していただいた結果でよろしゅうございますでしょうか。 ○守屋委員 結論としてどういうことになるのでしょうか。精神病質者ということに ついて、または人格障害ということについて、今後、精神保健福祉法改正をするに当 たっては、もっと学問的な検討が必要なのだと、したがってそういう学問的研究検討 をまだ十分にされていないので、今回はこのままでというのがこの委員会の結論です というのが座長の御意見と考えてよいのでしょうか。 ○吉川座長 そうです。病質者の2ページに基本的な考え方でマル2つがありますね 。それを今、私は一緒にお話をしたような訳です。 ○守屋委員 それでは幾つかの意見は、例えば佐伯委員の意見にしても座長のおっし ゃった意見も、私も必ずしもそうではなくて、せめてこの例示からは、いわゆる精神 障害者の代表的な疾患として精神分裂病、躁うつ病、または精神病質と、しかもその 精神病質という言葉は今までの説明の中から見て本当に死語になっている。そういう 言葉自身は、だけれどもいわゆる国際疾患分類の中にはいわゆる人格障害という形で 、しかも非常に近いものが反社会的な人格障害という形で残っているので、これは決 して取るということではなくて、ただ、代表的な例示として外していくという意見が 私はかなりあったと思うんです。それについてはどういうふうに。 ○吉川座長 したがってそれはまた、今日始めて第1の問題に戻ることでございまし て、精神薄弱についても同じことで、その問題については積み残して話しています。  ですからこの精神薄弱の問題も精神病質の問題も、個々の問題としてはこれでいい かということです。 ○金子委員 そうすると、例えば例示の問題に含めて後ほど総合的に検討なさるとい うことですね。 ○吉川座長 そうです。 ○竹島委員 先ほど出てきた意見の中で、精神病質については、既存の精神医療では なしに別の枠組みでとらえらえるべきではないかという意見があったと思うのですけ れども、そこの部分は今後どういう形で整理されていくことになるのですか。 ○吉川座長 それで厚生行政ですかとお聞きしたのはそこなんです。厚生行政である のならば厚生省内でまず検討しなければいけないこともあるでしょうけれども、厚生 省外の御発言としてあるのだったら、今、ちょっとここでは無理があると思って私は お聞きしました。 ○杉中補佐 そこはその定義で話すことではないと思いますので、必ずしも一致する かどうか分かりませんけれども、やはり触法精神障害者というところもあって、一部 は重なってくると思いますので。 ○吉川座長 それでは、先ほど私がぐにゃぐにゃ言ったのは、今回の精神病質者の問 題はどうしても定義の問題にはね返ってきますので、それを後にしようと思って、と りあえずこの部分だけで、個別の話としては厚生省がつくってくださったこれでいい だろうかということでございますが、よろしゅうございますでしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○吉川座長 それでは、その次に進ませていただきます。  覚せい剤慢性中毒の扱いについてでございますが、それではちょっとお願いします。 ○杉中補佐 「覚せい剤慢性中毒の扱いについて」、資料2−4を話させていただき ます。 まず精神保健福祉法上の位置づけで、これは多少複雑ですけれども、まず「中毒性 精神病者は、精神保健福祉法第5条により、精神障害者とされており、精神保健福祉 法により保健・医療・福祉施策の対象」となっております。  ただ、「覚せい剤の慢性中毒者については、本来は精神障害者ではなく、精神保健 福祉法の対象とならないが」、多少これはちょっと書き過ぎなのかもしれませんが、 「法第44条により保健・医療施策に関してのみ精神障害者に準じた扱いとすること」 とされております。第44条を若干読ませていただきますけれども、「法第19条の4、 第20条から前条まで及び第47条第1項の規定は覚せい剤の慢性中毒者(精神障害者を除 く)またはその疑いのある者について準用する」と書かれております。ということは 「覚せい剤の慢性中毒者(精神障害者を除く)」と書いておりますので、覚せい剤の 慢性中毒者ということは一部に精神障害者を含んでいる、この一部というのは、中毒 性精神病患者のことだろう。だから中毒性精神病患者に至らない覚せい剤慢性中毒者 については本来精神障害者ではない、こういう整理をしているということでございま す。  そこで戻って、「保健・医療施策に関してのみ精神障害者に準じた扱いとすること とし、措置入院や医療保護入院の対象となっている」、ここで言う覚せい剤の慢性中 毒者はどういうものかということで、これは昭和29年の精神衛生法の改正で、この今 説明しましたようなみなし規定が追加されたのですけれども、それの施行通知の中で 、「『慢性中毒者』とは、『自発的には薬物の使用をやめることができないようなも の』」という説明がされておりますので、これは医学的にはいわゆる薬物依存者を指 すものというふうに理解いたします。「従って、精神保健福祉法の医療又は福祉施策 の対象となっているのは、中毒性精神病者」がすべての対象であり、覚せい剤の慢性 中毒者については保健医療施策のみが対象になっているということで、その他の薬物 依存者及び中毒者、依存者については対象外だということで、国民の精神保健の向上 といったいわゆるメンタルヘルス的な予防的な観点においてのみ、精神保健福祉法上 で言う施策の対象となっている。かっこ内は蛇足ですけれども、「従って、現在の精 神保健福祉法において、薬物依存脱却のための社会復帰策は講じていない」というこ とでございます。この関係を簡単にあらわしたものがその下の絵でございます。  次に、国際疾病分類上の位置づけですけれども、ICD−10上は薬物依存全般が「 『精神活性物質およびその他の物質による精神・行動障害』として、F1に分類され ている。この中で、症状による分類がされており、その中には急性中毒及び依存症、 離脱状態、精神病性障害その他の慢性中毒」と、この次のページにICD−10上の、 これは物質名だけ書いておりますので、参考になりませんけれども、されております ので、ICD−10上は症状的には依存も含んだような形で精神疾患の中に入っている という、こういうそごは一部生じております。  まず問題点ですけれども、「覚せい剤の依存については、精神依存の除去のために 入院して精神療法、運動療法、作業療法等により医療が行われる場合があるが、あく まで対症的治療法にとどまっており、精神依存を医学的に完全に除去する根治的治療 法は確立されておらず、医療のみによって完全な除去を期待することは現段階におい て困難であり、医療以外にも、本人の強い断薬の意思はもとより、家族・友人の説得 、矯正処遇、環境の調整等があって初めて断薬が可能となる」とされている。「従っ て、覚せい剤依存の場合は患者本人の意思を考慮に入れない(同意がない)医学的治 療についてはその効果を期待することはできない」のではないか。  次は何回も繰り返し言っていることですけれども、特に強制入院については医学治 療の有効性というものが担保されていることが必要である。しかしながら覚せい剤に ついては、特にその本人の自発的な意思がないことによる場合には、医学的治療効果 というものが期待出来ない現状にある。  また、次の問題点ですけれども、覚せい剤を使用すること自体が犯罪行為である訳 で、覚せい剤慢性中毒者については、その依存に至る社会的環境等に問題があるもの が非常に多いと言われている。時には問題行動を起こすようなことがありますから、 民間の精神病院といった場合でも、その引き取りを嫌がる場合が多い。「反対に家族 等は入院継続を希望する場合が多い。精神病院に措置等を行い短期的には依存を脱却 しても、本人の意思に基づかない断薬についてはそれが定着することはなく、退院後 に再び薬物を使用する可能性が大きい。また、精神病院にかかる不祥事件(不当拘禁 等の人権侵害を含めて)には、入院中の覚せい剤依存者が当事者としてかかわってい るものが少なくないといわれている。そしてこの場合」、先ほども同じことですけれ ども、「入院処遇に関する問題が原因となっていることが多い」。  また、法を犯した者である覚せい剤の慢性中毒者と薬物中毒者を精神障害者と同列 に扱っていることが精神障害者全般に関するイメージを悪くして、精神障害者に対す る差別偏見を助長すると、これは当事者家族会等の意見もあることから、これを理由 として覚せい剤の慢性中毒者に関する扱いについては、いわゆる覚せい剤慢性中毒者 を精神障害者とみなす精神保健福祉法第44条の規定を削除すべきである、これは関係 者からの強い意見で、最初にも述べましたけれども、医療関係団体、家族関係団体等 も含めた強い意見がある。  次に基本的な考え方でございますけれども、覚せい剤依存については、「麻薬中毒 にみられるような身体依存がない」か少ないということから、「患者自身の同意と関 係なしに行動を制限し・身体的な治療を強制的に行う程の医学的緊急性はなく、麻薬 取締法並の入院措置を行う必要はない」のではないかと。「一方、覚せい剤依存にお いては覚せい剤急性中毒及び覚せい剤精神病にみられるような顕著な精神症状」を持 つにまで至っていないということから、「実際には、精神保健福祉法に規定する自傷 他害を要件とした入院措置を行う必要はなく、また、覚せい剤依存の治療は、患者本 人に断薬の意思があることを前提としていることから、医療保護入院」による強制的 な入院の対象にも該当しないのではないか。  「従って以下のことについて検討してはどうか」ということで、具体的な提案でご ざいます。1つは、「精神保健福祉法第44条を削除する」。第44条の解説を加えさせ ていただきますと、恐らく精神症状を持つに至って自傷他害の状態に至るとか、精神 症状を持つことによって、医療及び保護が必要という状態ではなくて入院させること は出来るということを本当の目的にしていると思うので、そういうことは今まで説明 したような形で望ましくないと考えられますので、この規定を削除してはどうか。  また、社会的状況まで難しいというのであれば、少なくともみなし規定で該当する 部分から措置入院及び医療保護入院に関する規定を除外してはどうかというのが(2)で ございます。  また、(3)は法律的なことではございませんけれども、薬物依存に関して、従来それ に着目した対策が十分に講じられていないというのが残念ながら現状でございますの で、それに薬物依存を脱却するということにもっと着目して検討を行って、例えば精 神保健福祉センターにおいて覚せい剤依存に対する相談事業を行うことを義務づける こと。今、アルコール等に関しては義務づけられているのですけれども、覚せい剤に ついてはされていない。  また、覚せい剤を含む薬物全体の依存対策について、独自の依存を取るということ についての医療制度、もしくは医療以外のアフターケア制度等について検討を行い、 そういった必要な措置を講ずることの検討を行うという提言をするといったことを検 討してはどうかというのが基本的な考えでございます。  以上でございます。 ○吉川座長 いよいよ核心に入ってきたところでございますけれども、覚せい剤中毒 、慢性中毒に関しては、恐らく現に病院で医療に従事されておられる先生方にはかな りの御負担があるのではないかなと思っています。  まずはそちらの方から、この考え方でどうかという御批判なり御意見なりをいただ ければと思います。それから法律関係の先生方もかなりおられますので、そちらの方 からまた御意見をいただきたいと思います。  医療の関係からいかがでしょう。 ○高柳委員 一番最後の(2)は、法の文言上は確かにこうなるのですが、しかしもし万 一、入院させる目的が離脱にあるとすれば実に奇妙な書き方だというふうに思います。  確かに任意入院でなければ意味がないという主張は分かるのですが、しかし、もし 急性症状からの離脱を目的とするならば、やはりちゃんと入院形態を担保しないとな かなか難しいことであろうというふうに・・・・・・。 ○杉中補佐 精神症状に対する対応ではなくて。 ○高柳委員 そうです。精神症状と言うとまたちょっとそこらが問題。 ○杉中補佐 実はかなり多くの部分というのは幻覚、妄想をあわせ持つと聞いており ますので、実際は中毒性精神病者というのでほとんどが含まれるのかなと思うんです 。それをあえて除外して書いているのは、覚せい剤を常習的に使っているような人が あれば、家族の同意があれば病院に入れることが出来る。恐らくこの条項は当初はそ ういった目的で使われてきたのかなと思います。  これは昭和29年にキョウコちゃん事件という殺人事件が起こって、それを契機に加 えられたことでございますけれども、そこで精神保健福祉法の基本的な考え方から考 えると、隔離をすることを目的で精神保健福祉法の規定を使うというのであれば、そ れはやはり最もあってはならないことかなと考えます。医療ではなくて、閉じ込めて 薬物からの環境を断つということしか効果がないのであれば、そういったことで強制 入院の予防を使うのは精神保健福祉法の趣旨に合っていないのかというのが我々の考 えでありまして、薬物は犯罪行為ですから、それを断ってやるのであれば、それはそ れなりの、本来は司法なりの手でやるのが自然かなというふうに考えます。 ○高柳委員 (1)でいくのならばそれでいいので、(2)までいってしまうと非常に奇妙な 印象を与えますね。そういうことを私は申し上げたかったのです。 ○杉中補佐 あと、5年改正のときから多少混乱が生じているのは、精神疾患に入っ ておりますので、あえて44条を維持する必要があるのかという意見も、除いてしまっ ても精神疾患に入っているのだから、これで読めば自発的な医療の入院の対象にはな ってくる訳です。ただ、あえてこれを除外してしまうと対象からそのまま外れてしま うみたいに思われて、外部の方からの反発はもしかしたらあるのかなということもあ って、それで(2)は現行みたいな形で本来やるべきことではないというふうに思うので すけれども、こういう書き方もした訳です。 ○吉川座長 杉中補佐が心配している外部というのはどういうものですか。 ○杉中補佐 警察とか一般国民の要請にこたえるような形でみなし条項ある意味では 出来た訳ですから、やはり不安に感じるのでは。 ○守屋委員 私は厚生省案に基本的に賛成です。ただ、覚せい剤の「従って以下のこ とについて検討してはどうか」という点については、私の病院にも覚せい剤の患者が 非常にたくさん入院してくるのですけれども、覚せい剤の患者さんたちの中で自分か ら治したいという人もいる訳で、そういう意味においてもそういう方たちに対しての 道を開いていく必要があると思います。確かにアルコール依存症にしても薬物依存に しても、自分から治療を求めてくるということが治療の原点になってくるというふう にも考えていきますと、この(2)と(3)のこれは非常に重要なことだろうというふうに理 解出来ますので、(2)と(3)が私はいいかなというのが私の意見です。  それからもう1点は「覚せい剤慢性中毒者」という言葉ですけれども、今はいわゆ る急性中毒か依存症という言葉でしか使われないので、ここはやはり「覚せい剤慢性 依存症者」という言葉に変えていかないといけないなという気はしています。 ○杉中補佐 慢性中毒者という用語は広範に使われているんです。精神保健福祉法だ けではなくて麻薬取締法では麻薬中毒者という言葉が使われておりまして、麻薬中毒 者とは何かということが、「麻薬の慢性中毒者のことを言う」という定義がされてお りますし、あと酒によって公衆に迷惑をかけることを防止する法律というのも、アル コールの慢性中毒者という用語も使用しておりますので、慢性中毒という言葉をやめ るにしてもそれなりの、先ほどの話にまた戻りますけれども、広い社会的なコンセン サスが得られた上でないとそうそうに変えられないかなという気はいたします。  別の話ですけれども、(1)の削除することというのも、全く対象から除外してしまう ということではなくて、44条の目的が強制入院の対象にするということであればこれ を除外してしまって、いわゆる通常の精神疾患で、ICD−10に沿ったような形で読 むのであれば恐らくこういう方は任意入院の対象になってくるのだろうということで いいのかなと。ただ、そういうことをすることで納得出来るかどうかということです ね。 ○吉川座長 世間が、といいますか。 ○伊藤委員 医療をする側から言えば、期待にこたえられないことを、今までの条項 の中で受けざるを得ない条項になっている訳ですね、期待にこたえらない。そして臨 床の実際では覚せい剤の慢性中毒だけで警察から依頼されても入院させることは現実 には私どもありません。この条項自体が基本的に生かされているかどうかということ を考えましても、条項があるだけで、現実には精神病状態になって運ばれて入院させ ることはあっても、この条項自体は現実に生きていないということも削除していい根 拠に挙げておくことは出来るのではないかと思うのです。 ○杉中補佐 立派な病院であればそうですけれども、昨年問題になった大和川病院に おいて、覚せい剤の人を警察がそのまま連れていくという例がございましたが、普通 の病院で断られた結果そういうのを受けるのを専門にしている余りよくない病院にそ ういう患者が集められて、その中で非常によくない処遇をするという事例もございま した。しかもそういう人たちが病院の中でいろいろ問題を起こして、ほかの患者さん 方にも迷惑をかけるという実態があったと聞いております。 ○池原委員 大和川病院に警察が連れてきたというのは、刑事処分を受けた後で連れ てきたんですか。 ○杉中補佐 いや、警察で保護されて、そこから直行で行ったという例が多かったで す。 ○乳井委員 調べの段階でも連れていっている訳ですか。 ○佐藤委員 それは警察から依頼を受けることがしばしばありますけれども、本来、 覚せい剤の使用・所持は犯罪行為になる訳ですが、売買に関係しているような場合は 別ですけれども、末端使用者の場合にはほとんどそれを犯罪行為としては立件せずに 医療の方に持ってくる場合が多いですね。  それで医療の方に持ってこられても、本人に治療の意思がなければ医療機関として は受けられないということで結局返してしまう。そして法律的にも何ら処罰はされな いで終わってしまうことが多いので、それはこういう形で44条を削除すると、警察に 対して基本的にそれは犯罪行為として対処してほしいという姿勢は、医療の側からは 必要ではないかと思われる訳です。 ○竹島委員 大和川に関係するかもしれませんけれども、警察の方から見たら、とに かく交通整理をちゃんとしてくれということが1番の意見でして、現実に病院を探し 回らなければいけない状況では、自分たちはやはり受け取ってくれるところへ連れて いくしかしようがないということになってくる。やはり精神科救急のことにまた返っ てくる部分もあるのかなと思っています。  私今ちょっと考えたのは、私自身が実は不勉強なのかもしれませんが、(3)の最後の 、独自の医療制度とかアフターケアとかいったものがどれぐらい担保として可能性が あるのかという問題をもう少し実感として持ちたいというのが1つです。それからそ の上の (4)ですが、ここの部分は、文章として外向きにもう少し整理するときに使う のか使わないのかということで、出来れば使わないでいただきたいなという私の個人 的な感じがあります。先ほど障害者間の差別という問題がありましたけれども、薬物 依存症の人で回復を志している人と、いわゆる分裂病系の精神障害者の間に変な溝を つくらないという意味では、この言葉を使わないで文章化出来たらという気がいたし ました。 ○佐伯委員 私も同感です。しかも検討事項の(3)では、福祉の面ではむしろ同じよう に積極的に扱っていこうという、同じところでというふうにいおうとする訳ですね。 ○杉中補佐 同じところかどうかは別だと思うのですけれども、特に医療とか依存を 脱却するための程度はやはり厚生省だけでは難しいのかなという感じがありますので 、そこは外部とも連携して、それに着目した薬物等の依存だけでも重要な社会的な問 題なので、精神保健福祉法は精神障害の疾病からの回復という基本的なスタンスです けれども、別のスタンスに着目をして政策をやってもいいような話なのかなというこ とです。この専門委員会を基点として訴えていこうかなと思います。 ○佐伯委員 先ほどの44条の削除の件ですけれども、先ほどの精神病質とも絡むと思 うのですが、44条だけを削除すると何か特別な意味が出てき得るかと思います。持論 を繰り返して恐縮ですけれども、精神病質も例示から外すと、あるいは精神薄弱も議 論に出ておりましたけれども、そういう形で、基本的に精神障害者の定義は国際疾病 分類に従うということを改正の趣旨として明示すれば、44条を削除したからといって 覚せい剤依存症が精神障害者の定義から漏れてくる、あるいはそれが特別の意味を持 たされるということはないのではないかと思います。 ○後藤委員 精神保健福祉センターの相談事業ということで出ているので、資料を月 曜日にもらってセンター長にファックスしまして、どう思いますかということをやっ てみたのですが、6割ぐらいの回答が来たのですけれども、おおむねこの案には賛成 であるということです。  ただ、このアとイはどうしても順序は逆になるべきではないだろうか。もともと薬 物依存という体制がしっかりした中で精神保健福祉センターの相談業務が位置づけら れるべきであって、精神保健福祉センターに相談が来たからといって、警察や医療と の連携がない中ではほとんど意味がないだろう。  以前、アルコールの対策問題窓口と一応なっているのですが、各県はほとんどがア ルコールの相談事業はばらばらです。ですからそれの二の舞にならないためには、や はり先ほど言われたように、イの部分がどう担保されるかということが多分条件とし て必要になるかなと、そういうことが大部分です。 ○新保委員 後藤委員がおっしゃられた部分と関連しますが、要するにこの(2)につい ては、2の問題点の (1)の傍線部分のところと整合性を保った文章になっているわけ ですが、そういう意味ではこういうことでいいのかなと私は考えておりますが、1の ( 1)の図のちょっと上の方で、かっこの中に「従って、現在の精神保健福祉法において 、薬物依存脱却のための社会復帰施策は講じていない」と書いてある訳ですね。とい うことは、講じる意思もないというふうにとれるとすれば、先ほどの後藤委員がおっ しゃったようなイの部分を一体どこでどうするのかという部分が当然出てくると思い ます。 ○杉中補佐 そういう論議はやはりやらないとだめだといった問題意識が(3)だと思い ます。 ○新保委員 それともう1つ、そのことに付随して確認事項ですが、社会復帰施設の 中に薬物依存の施設が現在ゼロではないですね。それとダルクというのがございまし て、このことについてもこれにちょっと関与する施設になってまいりますので、その ことについては講じないということで了解してよろしいのかどうか。 ○杉中補佐 社会復帰施策の中で、例えばアルコールも含めて中毒性精神病の中で精 神症状という形で、その中で依存とあと精神疾患による能力低下と両方引き起こして いるような人たちもいると思うので、そういった人たちを社会復帰の対策にするとい うことはあり得ると思います。  ただ、依存をとるということであれば、それは社会復帰とはちょっと違うものなの ではないか。ダルクも今の施策の要は宙ぶらりんの状態に置かれて、果たしてダルク 自身がどれだけ有効性があるのかといったことに関しては十分検証はされていません し、妙に精神病院に行って引き受けた状態になっていることは、逆に悪い効果をもた らして、依存といった別の重要な問題が検討されないといったことになっているのか なという気もしますので、そこはそれだけで考える必要があるのかなと。それがどう いう形でやるのかということは、またほかの問題だと思います。  精神保健福祉センターの方は、やはり精神保健福祉センターがいろいろな機関の中 心になるべきだという声が実は結構多いんです。警察なりが中心になってやるととて も相談にだれも来ないというような話もありまして。 ○後藤委員 やるべきだろうと思います。現実に東京、中部あるいは大阪のセンター では既にダルクなどと連携しながら覚せい剤相談事業をやっています。。そういう事 情もありますので、やるべきだろうという意見が大勢ですが、ここに義務づけるとい うのが、法律上の問題ですけれども。 ○杉中補佐 義務づけるというのは非常に技術的な話になりますけれども、精神保健 福祉センターもいつか取り上げることがあると思いますので、その中でもやりますけ れども、今、特定相談事業というのがありますね。いわゆる国がお金を出して県でや ることを義務づけているものという中に、覚せい剤等を含めて薬物に対する依存の相 談も入れてはどうかという案もあります。思春期、アルコール、社会復帰のほかに薬 物依存ですね。 ○後藤委員 昭和62年だと思うのですけれども、薬務局からの通達で、覚せい剤の相 談窓口を保健所がやるという通達がたしか出ていたと思うのですが。 ○杉中補佐 通知上は精神保健福祉センターでもやる業務の対象には入っているので すが、ただ、専門的なやはり取り組みがなされていないので、そこはセンターでやる べきではないかと考えますけれども。 ○後藤委員 繰り返しになりますけれども、そういったほかとのネットワークがちゃ んと出来るかどうか、それからその体制が組めるかどうかというのがやはり問題になる かなと思うんです。 ○高柳委員 日精協ではこの問題は非常に重要な問題になる訳ですが、基本的にこれ は精神医療からは外していただきたいというのが基本的な立場です。ですから、3の アとかイで周辺で何か施策を盛り込まれると、どうしても精神医療にかかわらざるを 得ないような格好になってくるんですね。だから、むしろ44条は削除ではっきりして しまって、もし精神医療にかかわらせるのならばこんなあいまいなことではなくてき ちんと治療処分、禁絶処分まで視野に入れていただかないとこれはだめなので、そう ではないからこういうことになるんです、あいまいもことしているから。だから麻取 は麻取でもしやっていただくならば、それで1本で走っていただきたいというふうに 私は思うのですが。  もし精神医療に乗っけるのだったら、むしろ司法が関係して、そしてそこに治療処 分、それから禁絶処分をもう一遍俎上にのせてやらないと、これはもうまた同じこと になりそうですね。だから日精協、七者懇でもこれはみんな一致しましたけれども、 私は削除ということでお願いしたいというふうに思います。 ○杉中補佐 ただ、任意の人であればそれなりの治療は出来る訳ですね、実績を上げ ているような下総とか一部の病院もございますし。 ○高柳委員 しかしあくまで違法行為ですから、それは触法行為ですから。 ○杉中補佐 触法でも、法律の刑罰の処罰を終えた後でも依存が残っているような方 は考えられますよね。そういう人に対して、やはり何らかの助けを求めてきて自分で も意識があるとしたら、何らかのケアを与えてあげるということまで否定することは ないと思います。 ○高柳委員 広い意味の予防措置としてはそれはあるでしょうけれども、再発予防と いう意味では。 ○金子委員 高柳委員と杉中補佐の御意見は、実は余り食い違っていないのではない かと思うのですけれども。44条を削除しても、自発的な意思を持った方の入院治療を 否定している訳ではないですよね。  だから、先ほどの例示として挙げるかどうかの部分にかかわってはきますが、例示 から削除するかどうかは、全般的にそれこそ国際分類に従ったものが精神疾患として この法律で認めるのだというふうに変わってくれば、自発的な入院治療というのは今 後も、また覚せい剤中毒に関しても開発されるべきであると思います。ただ、今のよ うに44条があると、それこそ覚せい剤の使用者はすべからく精神病院へ行かなければ ならないというような運用のされ方をされかねないということですから、私はすっき りと44条を外した方がよろしいかと思います。それは治療を否定するものではないと 思うのですが。 ○後藤委員 本当にその任意の治療を否定されてしまうと、相談だけされていても私 たちも困ることになると思いますので。 ○竹島委員 ちょっと追加させていただくと、先ほど何かの担保がないと大変ではな いかとお話ししたんですけれども、薬物の方はまだ社会復帰に1歩目を踏み出すのが なかなか大変という状態ではないかと思っているんです。ですからその1歩目のとこ ろで、しかも司法が絡んだりいろいろなものが絡むから1歩の足取りが余計重くなっ てにっちもさっちもいかなくなっているという面がある。1歩でも先へ進めて、しか も今の医療側の妙な負担をもう少し変えていくとしたら、いわゆる精神病の状態のと きの医療があって、その後に依存症の脱却のためには別個のものが利用出来る、その ためには既存のものに何かちょっと積めばそういう可能性が開けてくるというふうな 、そういうモデルづくりみたいなことが可能ならば十分意味があるのではないかなと いう意味で、その担保にするものも、これぐらい担保を積まないと絶対だめだという ことではないかなと思っています。  それともし可能であれば、薬物についての若干の文献なりをもう少し資料として、 ここから先の部分では場合によってある時期から進まなくなれば、何か資料を追加し た上でまた話題を戻していただいてもいいのかなというふうに思ったのですが、いか がなものでしょうか。 ○吉川座長 いかがでしょうか。今の担保の話はこれからの政策の問題にかかること で、今ここで法改正の中身ではないかもしれません。いずれにしてもその先にどうい うものをつくるかということだと思いますが、結論めいた形で書いてある、すなわち ここの意見の一つの集約としてこういうことになるかなと思って書いてあることです けれども、まずもって44条を全面削除した方がいいのではないかという御意見も随分 いただきました。  ただ、44条を削除するというのは、自由に自分自身がその希望を持っていれば、当 然精神保健医療といいますか、福祉法の範囲の中で医療を受ける可能性も残されてい る。そういうことであるのならば、(2)をわざわざ入れることもないのではないかとい う一押しした意見もいただきました。  (3)は先ほども言いましたように、ちょっと法そのものの問題とは言えませんで、(1) ないしは(2)のところを議論するには(3)がなければちょっと議論にならないだろうと思 ってこの(3)が出来ているわけです。ただ、後藤委員から話がありましたように、アと イを入れかえた方がいいのではないだろうかという御意見は、やはり精神保健福祉セ ンター所長でおられるから余計気になられるのだと思いますが、それはまた考えたい と思います。 ○西山委員 (2)の「覚せい剤慢性中毒者」という言葉は44条以外にもありましたか。 ○杉中補佐 覚せい剤の慢性中毒者というのは44条だけです。 ○西山委員 44条だけですね。それを削除すれば、覚せい剤慢性中毒者という言葉も この法律からなくなるということですね、非常に結構だと思います。 ○高柳委員 この課題はずっと引きずっているんです。だから、今回これを外さなけ れば恐らくまた同じことになって、集まるところにまたこういう患者さんが集まって しまって実態はほとんど変わらないと思います。だから、外すなら外してしまう。余 計な留保条件をつけない方がいい。非難は一切精神保健課がかぶっていただく、と。 ○杉中補佐 竹島委員が先ほど言われたような感じで除外してしまうのは、やはり何 か問題があるのかなという気もしますので、そういったことも検討しなければならな いのかなと思います。  高柳委員が言われたように、この話は62年のときにも同じような議論がなされてお りまして、このときにも同じような周囲からの反対でつぶれているという経緯がある ことも一応コメントさせていただきます。 ○佐伯委員 3を合わせて法律を修正することによって、44条を削除することによっ て法の対象外になる訳ではないということもあわせて明確になると思います。 ○杉中補佐 対象外にする訳ではないです。 ○吉川座長 それはそうですね。 ○佐伯委員 もちろん症状がある場合には、薬物依存の患者も措置入院の対象ともな るということは当然として。 ○杉中補佐 そうです、中毒性精神病と書いてありますので。 ○乳井委員 私は質問といいますか、さっき事務局の方から説明のあった警察と一般 国民の反応といいますか、そこのとこをもうちょっと具体的に知りたいのですけれど も。それは無理にしなくてもいいのですが。その慮っているところを知りたいんです 。それでまたもとへ戻ってしまうのかもしれませんが。 ○杉中補佐 特に個別の何かがある訳ではないのですけれども、いろいろ言われるに は、一定期間薬物から隔離すること自身によってある程度の効果はあるのではないか というような御意見もあるんです。  それで精神保健福祉法ではないですけれども、麻薬、大麻等についてはそういった 感じで入院措置が別途講じられたりということはありますので、逆に取締部局などから 44条による精神病院の強制隔離はそういう人たちに対して効果ゼロではなかったとい う認識でとらえられているのですが、要は医療を与えるきっかけになる場合もあると いう感じで、逆に依存している人たちが自発的な医療を望むとか、かわりのアフター ケアを望むようなきっかけを別途担保しないと、それを一方的に取り外してしまうの は覚せい剤の依存者の対策はなくなってしまうのではないかという心配をなされてい るのだと思います。 ○池原委員 法律畑の実務家の感覚としますと、覚せい剤の単純使用であっても、最 近というかここ10年間ぐらいですけれども、つまり第3期の覚せい剤乱用時期に入っ てからはかなり積極的に起訴されている方向が強いのではないかという印象を持って いるんです。むしろこちらの方で、検察官に本人も病院に入院すると言っているし、 入院させるから起訴をしないでくださいという上申をしても起訴をしてしまうという 取り扱いの方が多いように実感としては思うのですけれども、その辺のルートの実数 としてどれぐらいかというのは把握されていますでしょうか。犯罪白書でも覚せい剤 対策について法務総合研究所で出していますけれども、この44条ルートは白書では覚 せい剤対策としてはそんなに触れていないと思うのです。 ○杉中補佐 実数としてはかなり少ないと思います。覚せい剤中毒等によって精神病 院に入院している人は 700人とか 800人ぐらいしかいないようです。犯罪白書等によ ると覚せい剤の常用者は2万人ぐらいとかいうふうに言われていますから、その対象 としてはごく一部の方というふうに、現実としてもなっていると思います。  ただ、我々が言っているのは、その一部の 700人によって対応済みみたいになって いることが逆に2万人の人たちに適正な施策が行われていないという原因になってい るのではないかということです。 ○池原委員 ですから44条自体は覚せい剤犯罪者に対する対策としては実際上余り機 能していないのではないかなと、私は法律の実務の方ではそんな印象を受けています けれども、ただ、規定をいざなくしますということになったときに、何か1つの施策 をやめてしまうのかという批判が何となく法務当局から来そうだなという気はします。 ○杉中補佐 そういう形の反応は来るのではないかと思います。 ○乳井委員 一般国民というのは、私も一般国民ですけれども、覚せい剤の場合は、 いわゆる幻覚が引き起こす惨事といいますか、そういうものに対する一般国民の恐れ という感情はあると思うんです。  今の議論の中で44条の削除その他、私は基本的に流れとしてはいいと思うのですけ れども、報告書などを書く場合に、覚せい剤に対して持っている一般国民の幻覚に対 する恐れというものに何か説明をしてあげないと不親切なものになると思います。 ○杉中補佐 中毒性精神病が対象になるということは分かります。  そういった論調は確かにおっしゃるように一般的国民の意識というのがあって、い ろいろなものの本にも、覚せい剤を使っていると精神症状が出てきて、精神症状が出 てくるとキョウコちゃん事件みたいな凶悪犯罪が起こりますよというようなトーンで 書かれているものはかなりあって、一般の人たちもそういった認識をかなり持ってい るのかなと、それが逆に、精神症状があらわれるから犯罪を犯すみたいな三段論法で 悪いイメージを与える点があるのが問題だなというふうには思っています。  ただ、実数的に言うと、さっき言ったように、覚せい剤の精神症状で入院している 人というのは、覚せい剤を使用していらっしゃる方の中で検挙されている方が1万と か2万とか言われていますから、それに比べてほんの一部分であります。 ○乳井委員 私はここへ来て勉強させてもらいながら発言しているんですけれども、 原稿を書く立場とすると、記者というのは報告書を見た段階ではそれほど勉強してい ない訳ですから、一般国民とほぼ同じ反応をすると思うんです。そこはうまく説明す れば済むのでしょうけれども。 ○守屋委員 いわゆる44条は、今おっしゃったような意味での幻覚、妄想状態が全く なくなっていても、その患者をどうしても精神病院が出さないというか、あの条項の ゆえに出せない、出すことに非常にちゅうちょしてしまうということがあります。  そのため精神病状態が治ったとしても、ずっと精神病院に置いておくことになる。 そういうことはやはりおかしいかなと思います。 ○乳井委員 流れとしては私もそのとおりでいいと思いますけれども。 ○吉川座長 少し時間が押してきましたので、そろそろこの慢性覚せい剤中毒のとこ ろを卒業していきたいと思いますが。  大方の御意見をまとめますと、どうも(1)の精神保健福祉法第44条を削除してはどう かということのようでした。  その理由は、まず、これを削除しても精神疾患を有する者としての治療あるいは保 健の対象になることは間違いない。ですから、その点ではこれを削除してもいいので はないだろうか。そして精神疾患あるいは精神症状を全く持たない覚せい剤慢性中毒 の者がいたとして、その者に対しては医療的な働きかけが優先すべきものではないだ ろう。だからこれに関しては、他の部局なり何なりが考えていかなければいけないこ とではないだろうか。まず以下のことを検討するという基本的な考え方の2つ目の(1) 、(2)をまとめるとそんなふうに考えました。そして(3)のところに当たることは、それ を何らかの形で支えていかなければいけないという点では、精神保健福祉センターに 大きな役割をお願いをしなければいけないのではないだろうか。  それで先ほども申しましたように、後藤委員が言われたアとイを入れかえた形で報 告書には記載していったらどうだろうかと、こんなふうにまとめさせていただきます けれども、いかがでございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○吉川座長 では、この問題はそこで終わらせていただきます。  続きまして「用語について(検討メモ)」を読みたいと思います。そんなに問題は ないですね。 ○杉中補佐 具体的な例示の話も後でやっていただけるということでよろしいでしょ うか。  では「用語について」ということで、とりあえずその用語の適正さということに限 定して説明させていただきます。  精神分裂病、精神薄弱、精神疾患の用語については、具体的な精神疾患例として列 挙されていますけれども、要はこれらの用語のあり方というものが、精神障害者に対 する差別や偏見を助長する恐れがあると、これらの用語についての見直しについての 要望が挙げられております。そして、精神分裂病と精神薄弱、精神病質、このすべて が人格すべてを否定的にとらえるような用語に使われるといった指摘がなされており ます。  基本的な精神分裂病、精神薄弱、精神病質ということについての用語が使用されて いる経緯ということについて、我々で分かる限りのことを書いたものがこれです。  まず精神分裂病ですけれども、最初にクレペリンという早発性痴呆ということで、19 11年ブロイラーという方がSchizophrenie として使った。以下簡単に言いますけれど も、1919年にそれが邦訳された後、精神神経学会で用語が統一されて分裂病というこ とをお使いになっている。  次に精神薄弱の経緯ですけれども、かつては低能、劣等といったことを主に使われ ていたのが、これが差別用語ではないかということで、精神薄弱という用語が使われ るようになった。さらに精神薄弱という言葉自体が差別用語ではないかということで 、現在知的障害といった用語で見直すべく見直しを進めるための検討をしているとこ ろでございます。  精神病質については、シュナイダーがサイコパシーという言葉を使って、基本的に はそれが邦訳された形で精神病質という言葉が使われ、それが現在そのままの形で残 っているという経緯でございます。  基本的な考え方でございますけれども、まず精神分裂病ですけれども、精神分裂病 という言葉自体は、医学用語としても分裂病として定着しておりまして、国際疾病分 類等でも使われておりますので、今回見直す必要はないのではというふうに考えてお ります。万が一また用語として不適正かどうかということであれば、それは学会等で そういう形での議論がされていくことを期待すべきではないか。  次に精神薄弱ですけれども、これについては知的障害といった適切な用語に改正す る方向で検討が行われるべきではないかといった感じで、既に検討が行われておりま して、後ろの資料で示させていただいていますので、後ほどまたごらんになってくだ さい。  精神病質については一番問題だと思うんですけれども、精神衛生法当初から使われ ており、現在必ずしもこれにかわる適切な用語がないということなので、これについ てもまた学会等で議論が行われることを期待したいと思います。人格障害という言葉 が一番有力な候補としてあるのですけれども、これは必ずしも先ほど言った精神病質 とイコールのものではない。イコールでなくてもいいという問題もあるかもしれない ですけれども、またかえって精神障害者の人格を全面的に否定するような印象を与え かねないので、こういう人格障害というのも1つの案だと思うのですけれども、それ についてやるということについても学会等で十分な議論を行っていただくべきではな いかというふうに考えます。  以上です。 ○吉川座長 それで少なくとも、杉中補佐に補足していただきたいのは、法文上はこ の言葉が使われているのは第5条以外はない。 ○杉中補佐 精神病質はないです。 ○吉川座長 確かにないですね。ですから、第5条のところでこの言葉を使うかどう かということを今ここで考えればいいということになりますよね。 ○杉中補佐 第5条を前提として。ただ、他の法令等で使われているかどうかはちょ っと検討していないので。精神薄弱というのは非常に多くの法律で使われております ので、精神保健福祉法だけではないと思います。  精神病質はないと思うのですが、分裂病というのはもしかしたら何かがあるかもし れないので、それは調べてみる必要があると思います。 ○吉川座長 では、いかがでございましょうか。今の杉中補佐の御説明について、そ して一つ一つについてこれでよろしいということになったら、先ほどから後へ戻って とお話し申し上げてきました第5条の精神障害者の定義のところで、例示として挙げ てある診断名をどういうふうに扱ったらいいのか、そこへ話を進めていきたいと思い ます。  どうでしょう、ここで挙げられた3つの用語についてはこれはこれでよろしゅうご ざいますでしょうか。  例えば精神分裂病という言葉を使わないと決められても、今ちょっと現実的ではな いですね。ですから、法律用語として使うかどうかではなくて、とにかく精神医学用 語として使われている言葉でございます。それは精神医学会にお任せするしかないか もしれません。そういう点でも精神分裂病に手を染めることはこの専門委員会として ちょっと出来ないのかなという気はしています。 ○守屋委員 確かに座長のおっしゃるように、精神分裂病という呼称がいいかどうか ということを今学会の委員会で検討し、シンポジウムでもいろいろと議論しているの ですが、結論は出ていません。なので、今、変えようがないかなという思いです。 ○乳井委員 参考までに知りたいのですけれども、用語の見直しについての要望も幾 つかの団体から挙げられていること、具体的にどういう要望ですか。こういうふうに 変えてほしいとか、それまではないんですね。 ○杉中補佐 それはないですね、用語の見直しだけだったと思います。1回目にお配 りしものの中に、個別の具体的な提案まではなかったということでした。 ○高柳委員 精神薄弱について、数年前にこれはどこの課だったか、障害福祉課です か、あとは精神保健課と私と三者で話し合ったことがあるのですが、どうもICD−1 0から考えますと、知的障害という置きかえはちょっとまずいんです。ICD−10に倣 うとすると精神発達遅滞ということしかないので、この知的障害という用語の出てき た背景を聞きますと、専門家がその委員会に入っていらっしゃらなかったという気配 がどうもあるらしいのです。マスコミなどで先行して使われているものが実態として 使われてしまっているというきらいがあるみたいなので、これは少々問題ですなとい う話をしたんですが、そのときには精神薄弱という用語も同時に使えますので問題ご ざいませんというエクスキューズだったんです。どうしましょうか。 ○吉川座長 私が知っている限りでは、精神薄弱福祉連盟の方でこの検討委員会を設 けたのが今から7、8年ぐらい前でしょうか。そしてある結論が出た訳ですが、その ときに、障害名としては知的障害を使う、疾患名としては精神遅滞を使う、こういう 二重構造を出してきたんです。それが今、障害名としての知的障害という言葉だけが 少し1人歩きをしているみたいです。精神遅滞と知的障害という言葉は二重構造の中 で使おうとしてきたことは確かだと思うのです。ただ、その後やはり知的障害という 言葉が広がりました。 ○田中精神保健福祉課長 後ほどご説明申し上げますけれども、昨年の暮れぐらいで したか、関係医学会、医師会、日精協も含めてですけれども、知的障害という用語を 使うことについてよろしいでしょうかということで、一応了解は得られておりますの で。 ○高柳委員 それは精神薄弱という言葉が残るという上での了解ですか。 ○田中精神保健福祉課長 それは法律用語としての知的障害でございまして、医学用 語としてはもちろん私どもが左右することは出来ないということでございます。 ○吉川座長 ここで出された問題は皆様にお認めいただけたとして、先ほどからずっ と積み残しておりました問題、いかがでございましょうか。第5条のところで、かつ てはカテゴリーとして精神病者、精神薄弱者、精神病質者というふうに挙げてあった ものを、平成5年の法改正のときにこれを定義としてそれぞれ疾患名の羅列型という ことに直してしまった。そのときに精神病質もそれから精神薄弱も病名としてそこへ 登場してきた訳です。 ですから、病名として登場してきたものをそのまま今受けている訳ですけれども、 これを先ほどからお話しのように、精神薄弱という言葉を使わないとしても、例えば それを知的障害で言いかえるにしても、それを病名としてこういう羅列の中に入れて おくのが適当かどうか、てんかんはもともと入ってはいませんけれども、精神病質者 というのはこのまま残しておいてもいいのかどうかということを、先ほどからさまざ まお話しいただきました。この辺でまとめの議論をしたいと思います。  杉中補佐の方から何かお考えがありますか。 ○杉中補佐 考えはないんですけれども、先ほどから言っていますように、法律を担 当する者としては改正するのでなければなかなか説明は難しいかなといった感じで、 あえていじる必要がないのではないでしょうか。  先ほど佐伯委員が言われたのは、積極的にICD−10に合わせるからそれだけでい いというふうに言ってしまうと、若干またそごが出てくるところも、てんかんみたい な話が出てきますので。 ○吉川座長 少なくともそれは法の中に明記することではありませんけれども、原則 的にICD−10に準拠するとかなんとかということはあってもいいと思うんです。け れども、それだけではやはりだめでしょうかね。大体何かそういう御意見みたいです けれども。 ○杉中補佐 ただ、5年時にこういう形で一度国会も通ったものをもう一回、実質的 な変更はなしに変えるというのは厳しいかなと思うのです。 ○佐伯委員 44条を削除するというのも、私流の理解ですと、平成5年の改正時に44 条も当然要らない規定で削除すべきであったというふうに思うのですけれども。 ○杉中補佐 44条が多分生きているという意味は、要するに本来の措置入院なり医療 保護入院と、精神障害によって自傷他害の要件があるとか、精神障害によって医療及 び保護が必要な状態になったというものでなくても、覚せい剤依存者については強制 的に入院させられるということを恐らく担保するのが1番の目的だったのかなと思い ます。 ○佐伯委員 そういう積極的な判断を平成5年の段階でしたんでしょうか。むしろ精 神疾患という広い定義をとっていない状態のときに44条がつくられて、平成5年で一 般的な形で精神疾患という形で定義して、あとはもう例示にしてしまったにもかかわ らず、要らなくなったものを残してしまったというのが本当のところではないかと思 うのです。  つまり平成5年のときに、精神疾患には薬物依存は入っていないのだけれども、そ こまで含めると準じてみなすという積極的な意味を持たすということで44条を残した のではないのではないかと思います。  そうだとすると、本来平成5年の改正で削除されるべきであった44条を今回削除す るというのであれば、あわせて精神病質も使われなくなった概念、基本的に医学的な 概念に従うという判断が精神障害の定義について平成5年になされた。したがって医 学的な概念として用いられていない精神病質については、今回あわせて削除する。む しろ削除というよりも整理するという言葉が正確かと思いますけれども。  そういう観点から言いますと、精神薄弱の用語についても、知的障害という言葉が 医学上の概念として用いられていないのであれば、精神障害の定義に知的障害という 言葉を用いるのは適切でないように思われますし、医学上はむしろ精神遅滞というの が一般化しているのであれば、変えるのであれば精神遅滞という言葉が適切かと思い ます。むしろ例示にすぎないのであるから除いてしまった方がいいということであれ ば精神病質とあわせて一緒に整理してしまうことも考えられるのではないかと思いま すが。 ○杉中補佐 専門委員会の意見ですから、そういう形でまとめていただければと思い ます。 ○吉川座長 さっき精神保健福祉課が責任を持つという話がちらっと出ましたけれど も、それはちょっと別にしまして、この委員会としてどういう意見を持つかというこ とで御検討いただいて結構でございます。 ○伊藤委員 前回の改正のときから、自治体病院協議会としてもこの例示は要らない のではないかという意見を出している訳ですけれども、先ほどの議論からいきますと 、仮に例示を出すという前提に立ちましても、その例示が、例えば精神薄弱は福祉が 主なのに例示として挙がるのは不適切である。精神病質も先ほどからいわれているよ うに治療の対象としては非常に分かりにくい疾患だと。  例示として挙げるにしても、残るのは精神分裂病、せいぜい中毒性精神病というこ とでしょうから、そうすると、奇妙な印象を与えることになってしまうんですね。や はり時代とともに診断名も変わりますし、それから精神保健が扱う領域も変わる訳で すから、この定義が長い間生き残るためにも、ある程度は大きな枠組みの中で対象を 定義した方がいいのではないかというふうに思います。 ○竹島委員 一般の人のアンケートを見ますと、精神病と精神障害と精神疾患、心の 病という4つのカテゴリーで見ますと、1番軽い印象を受けるというのは心の病です 。そのかわり非常にあいまいな印象を受けるということですが、精神病というのが1 番重くて介護負担が大きいという印象をつくっている訳です。それにまして後ろに質 がつくということになりましたら、国民の偏見といいましょうか、偏見という言葉は よくないのですけれども、いわゆるそれを助長する表現でありはしないかという面に おいて、精神病質という言葉を使っていいのかどうか。  それから法自体が、精神保健福祉法という中で一般国民の心の精神保健の増進とい う面をうたっていますので、そういう意味でいったら、精神疾患で後で例示されると しても、一般の国民から見て、こういうものを精神疾患あるいは精神障害として見て いるんだなということがイメージとして通りやすい例示という方向に変えた方がいい のではないか。薬物のところでもちょっと思ったのですけれども、薬物の場合も、よ くPRで使われるのは「人間やめますか、薬やめますか」で、薬をやめなかったらも うだめだ、廃人だみたいな形になっていく。啓発的な意味においてこの第5条という のがかなり顔になる部分ではないかなという意識を持っているんですけれども。 ○守屋委員 私は佐伯委員の御意見に全面的賛成です。国際疾患分類だけにしていく ということは、今の流れの中で通っていかないなと。そうなると先ほど44条の問題か らの論理立てをしながらこうなんだというふうに持っていかれる、そして精神病質と 精神薄弱を整理するという考え方だとかなり通っていきやすいなという感じがします。 ○吉川座長 その先は例示を一切やめるというところまでいく。 ○守屋委員 そうではなくて。 ○吉川座長 そうすると残る例示というのは、さっき伊藤委員が言われたのですけれ ども、精神分裂病、中毒性精神症、それはちょっとどうでしょうね。 ○長尾委員 余りに分裂病だけが強調されて残っていけば、余り好ましいことではな いかなと。ですから、そうであるならやはり全体的な例示を外していくということで はどうかなと思いますけれども。 ○高柳委員 国民の1人として発言させていただきたいのですが、平成5年の改正の ときにも、定義まで変えることはないのではないかと私は思ったんですが、今回また 定義が変わって、法律がころころ変わってしまうという軽い印象を与えるんですね。 それは非常によくないのではなかろうかと、国民の1人としては思います。 ○佐藤委員 法律が変わることについては、昭和40年改正から次の改正まで実に22年 という長い月日があって、それから5年ごとに見直される。社会の状況に応じて法律 が変わっていくのはむしろいいことかなという印象は私は持っているのですが、やは り精神病質とか精神薄弱を代表例として出すことには、現状では違和感があるように 思います。 ○杉中補佐 改正のときに例示を残した理由は私も調べてよく分からなかったという のが本当ですけれども、話を聞くと、恐らく精神疾患というふうに変えてしまうこと によって、精神薄弱といわゆる精神病質という前にあったものが対象になるかどうか が非常に不明確になる。精神病=精神疾患という感じもありますから、そこで対象に なるということを明記するために入れたのが初めで、それだけを例示すると全体を例 示する代表例としては余りにもおかしいので、そこで代表的な疾患名である精神分裂 病が後に来たというのが多分本当のところではなかろうかなという気がするんです。 ○吉川座長 余り説得力がない話ですけれども。  当時、私は直接関係ないのですが、藤縄先生がよくこれに関係しておられて、私の 方も仄聞いたしましたけれども、今言われたようなことも含めて、最後バタバタバタ ッとなってしまったのが実際のところなんですね。  基本的カテゴリーだったものを病名羅列にしたということの意識が余りなかったの ではないかという気がするんです。ですから精神病質者もそれから精神薄弱者も、そ れはそれで精神病者、その三者の中を精神病者の代表例として精神分裂病を出しただ けみたいな話でして、それで羅列型に直してしまったというような気がしたんですね 。それには私も随分反対をしました。しかし残念ながら、そのとき私は外にいた人間 でちょっと分からないのですけれども。 ○杉中補佐 御意見として何らかの形にまとめることにしたいと思います。 ○田中精神保健福祉課長 今日の結果はまとめさせていただいて、次回もまたもう1 回続きを議論していただくということで。 ○吉川座長 私の方から、最終的にこの例示の問題についてはまとめないでおきます けれども、今、課長が言われましたように、それを少しペンディングにして、また機 会を得てやりたいと思っています。  今日、もう1つありましたのは、精神障害というものを医療の側面から見るのと福 祉の側面から見るのとどういう組み合わせにしたらいいのかということを、これはま たほかのところでも議論が出てくるかもしれませんので、これもあわせて残させてい ただきます。 それでは、ここまでのところお話をしていただきましたけれども、この辺で終わら せていただきますが、次回は4月23日に予定しておりますけれども、ぜひお願いした いと、4時からの予定でございます。  そしてその後も少し決めておきたいので、ちょっと御意見をいただきたいのですが。 ( 日 程 調 整 ) ○田中精神保健福祉課長 もう1つは、本部会の方でこの会の運営について御議論が ありまして、当事者の意見を聞くべきではないかという話がありました。その当事者 以外にも、例えば家族会、あるいは事件の被害者の意見を聞くようにという御指示と いうか意見もございましたので、その辺は座長と御相談させていただいて、会の冒頭2 0分ぐらい御意見をいただくという設定も考えてみたいと思いますけれども、いかがで しょうか。 ○吉川座長 もしよろしいようでしたら、課の方と私で相談させていただいて、問題 によっていろいろな方に来ていただく、そんなふうに道を開いておきたいと思います。               (「異議なし」と声あり) ○吉川座長 それでは、どうも本日はお忙しいところ、また、熱心に御討議いただき ましてありがとうございました。 厚生省大臣官房障害保健福祉部 精神保健福祉課医療第一係 高橋(内線3057)