98/04/07 第18回年金審議会全員懇談会議事録 第18回年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成10年4月7日(火) 15:00〜18:06 場 所 厚生省特別第一会議室  1 開会の辞  2 委員出席状況報告  3 幹部紹介  4 議 事   ・ スライド方式、支給開始年齢等について   ・ 基礎年金、年金業務の運営について  5 閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員   国 広 委 員  神 代 委 員  高 山 委 員  都 村 委 員   富 田 委 員  福 岡 委 員  桝 本 委 員  山 田 委 員   山 根 委 員  吉 原 委 員  渡 邊 委 員  貝 塚 委 員   船 後 委 員  ○会長  ただいまから、第18回の年金審議会全員懇談会を開催いたします。初めに委員の出席 状況などにつき事務局から御報告をお願いします。 ○事務局  本日は久保田委員、坂巻委員、目黒委員、若杉委員が御欠席でございます。なお、お 手元に委員の名簿を配付させていただいておりますが、神代委員が放送大学教授、都村 委員が中京大学経済学部教授に御就任になっておられます。以上でございます。 ○会長  先般厚生省幹部の人事異動がございました。議事に入ります前に、御紹介と御挨拶を お願いします。 ○事務局  それでは、4月1日付の人事異動がございましたので、交代いたしました幹部を御紹 介させていただきます。  まず、社会保険庁年金指導課長・片野課長でございます。  次に社会保険庁国民年金都市対策室長・竹田室長でございます。  次に社会保険業務センター副所長・増田副所長でございます。  最後に社会保険庁業務センター情報管理部長・原田部長でございます。  以上でございます。 ○会長  それでは、次期年金制度改正に向けて審議に入りたいと思います。本日はまず、スラ イド方式及び支給開始年齢等について審議を行い、次に基礎年金及び年金業務の運営に ついて、相互に関連がありますので、あわせて審議をお願いしたいと考えております。 また、本日は審議事項が多いため、予定の時間をこえた延長もあり得ることをあらか じめ御了承願います。  まず、スライド方式及び支給開始年齢等につき審議を行いたいと存じます。事務局か ら資料の御説明をお願いします。 ○事務局  それでは、資料1と2を並行的に使わせていただきまして御説明をさせていただきま す。まず資料1でございますが、これは論点整理に沿いました整理でございまして、ま ずスライド方式について、きょう御審議をお願いしたいと思います。ポイントとしては 1つ目のマルでありますが、裁定後の年金については、賃金スライドを行わない、物 価スライドのみとする、こういったことについてどう考えるか。これにつきましては、 白書の関係部分をごらんいただければということでございます。  2つ目のマルでありますが、物価スライドについて、一定幅以下の物価変動の場合は 行わない。いわゆる平成8年度のときの改正の際、物価が0.1%下がりましたときに、年 金の額を下げなかったときに御議論いただいたときの宿題ともいうべき部分でございま すが、当時「ゾーン制」という言い方もいたしましたけれども、小幅の物価変動につい て、年金額の対応をどうするか、1つのルールが要るのではないかということについて の御議論でございました。 資料を1つ用意しておりまして、資料2の1ページをごらんいただきたいと思います が、これはそのときの議論にも出た話でありますが、小幅な変動の場合でも、事務費が それなりにかかるわけですが、多額な事務費がかかり、給付費には余り影響がない。そ ういうことでどう考えるかという御議論がありました。1の1人当たりの額で書いてい ますが、改定しました場合に1人当たりの事務費としては、国民年金及び厚生年金とも に、約62円かかるということでありますが、例えば下の(2)でありますが、物価上昇 が0.1%であったというケース、これは上昇の場合も、下落の場合もありますが、国民年 金の月額で見ますと、月額45円の変動、厚生年金で約 170円の変動で、年額にすれば、 この12倍ですが、それをどう見るか。これが0.5%のケースまで拡大いたしますと国民年 金で約225円、厚生年金では約850円といった対比になります。  今度は総額コストということで見ますと、今物価スライドをいたしますと、事務費が 約17億5,000万円かかるわけでありますが、それに対する給付費ということで比べますと それぞれのケースについて、約281億円であるとか、約1,405億円、こういったバランス になるということであります。 また、こういった費用バランスとは別に、ゾーンを設けて、小幅な変動の場合には改 定しないというふうなルールをつくりますと、以前は5%というルールで運営しておっ たのですが、例えば小幅な物価上昇であれば、年金額は上がらないということですから そういった場合には支給総額において抑制的な働きをすることになる。下落時であれば 今度は下げないことになりますから、それは逆に維持するという効果がありますが、そ ういった効果をあわせて御検討いただきたいと思います。  3つ目のマルですが、これは前回の改正で、いわゆる「ネット所得スライド」という ことで導入させていただきましたが、そのときにも可処分所得の変動の範囲あるいは指 標をどうとらえるか、年金保険料だけでいいのか、税その他も含めて考えるかというこ とについて、まだ検討の課題が残っておりまして、そのくだりについては、白書の200 ページにも掲載しているところであります。 それから、受給者側の可処分所得も配慮するべきではないかと、ネットネットスライ ドということで、この審議会でも2回ほど資料で御説明させていただいたことがありま すが、これについても202ページにそのときの同じような資料が掲げてございます。 以上がスライド方式の関係でございます。 次に今度は3)の「支給開始年齢等」ということで、4つの論点、マルがあります。  1つ目ですが、年金の支給開始年齢を議論する際に、平均余命の延びを考慮して見直 すべきということで、例えば年金のリスクを「長寿リスク」というふうに考えますと、 例えば79とか80の寿命の場合に、本当のリスクは平均を超えたところからリスクが発生 すると。あるいは平均余命が延びれば、支給期間がどんどん長くなるわけで、これは年 金財政にとって、1年寿命が延びれば、1年分支給期間は延びるわけでありますが、そ ういった見地から、支給開始年齢を考えるということになるか。それとも雇用との接続 ということで考えていくか。基本的な支給開始年齢の考え方について御議論をいただき たいと思います。  2つ目のマルは、これは前回改正で厚生年金の定額部分を65歳にまで引き上げたわけ でありますけれども、さらなる引上げについてどう考えるかという点でございます。  次のマルでありますが、これは前回の改正のときのスケジュールで、2001年から12年 かけて、65歳にまで引上げていくというスケジュールで、1歳引上げるのに3年かけて やっていこうというやり方ですが、これを前倒しをするかどうかということ。  次のページ、最後のマルですが、これは前回改正のときに、60歳から64歳までの部分 年金の支給について制度化したわけですが、この部分年金の支給開始年齢の引上げや繰 上げ減額年金についてどう考えるか。これについては資料を用意してございます。資料 2の2ページ、3ページです。  3ページを先にごらんいただきますと、これは改正案のイメージを絵に書いておりま すが、上は現行の制度でありまして、2階部分について、部分年金が60歳から65歳まで は支給される。しかし、それについては現在在職老齢年金制度ということで調節がきい ている。1階部分については繰上げした老齢基礎年金が希望があれば支給されるという 形になっております。これを変化させまして、そういった別個の給付、部分年金をなし にして、必要な場合に繰上げした老齢厚生年金、繰上げした老齢基礎年金で対応すると いう形にできないかという考え方であります。  ちょっとお戻りいただきまして、2ページであります。支給開始年齢について、現行 制度でよいという立場では、これは前回改正を行うときの基本的な考え方でありますが 60歳定年制というものが今定着してきつつあるということで、完全な65歳からの支給に することは、雇用と年金の接続において問題はありはしないか、あるいは60歳代の前半 において、賃金のみで生活を支えるのは難しいのではないかと指摘されています。  3つ目に、繰上げ受給をすれば、65歳以前といわず、最後まで低い額の年金でいって しまう、それでよいか。こういったことから現行制度が導入されたと思われますが、一 方、これに対して、新たに考えなおそうという立場からは、やはり年金は65歳からとい うことで、65歳までは基本的に雇用で整理して考えていくべきではないか。また、その 場合に2.でありますが、年金数理上適正な減額率により繰上げ減額年金を受給できる ことにすれば、高齢者の所得保障としては、それはそれで中立だという考え方。  3つ目でありますが、これは今回の制度改正の流れにも大きく関係のある部分であり ますけれども、例えば、負担の限界ということをある程度意識しながら、支給総額を抑 制するということとした場合に、給付水準の引下げだけでそれを達成するか、あるいは こういった支給開始年齢、特に別個の給付もあわせて調整することがよいのか、そうい うことで組み合わせて議論する必要はありはしないかという見地であります。  4つ目が現在のやり方を実際に実施いたしますと、中途半端な就労と部分的な年金で ある意味で年金が賃金の一部を肩がわりすることにはなりはしないか。あるいは「モラ ル・ハザード」と書いておりますが、例えばそういう制度で10万円分、2階部分がある ならば、それに応じた10万円程度の就労でいいのではないかというふうに高齢者自身も 企業も判断していくのではないか。そういった意味で、高齢者の本格的な就労が阻害さ れることになりはしないか。今後高齢者の就労の参加を年金制度の中でも期待する中で この制度がどう機能していくかということを検討する必要がある、こういった論点でご ざいます。 以上、資料の説明にさせていただきます。 ○会長  どうもありがとうございました。ただいま御説明のありました事項につき、御質問、 御意見などございましたら、どなたからでもお願いします。 ○A委員  一番最後に御説明のあった項目の中の減額率にかかわるものですが、これは前回改正 のときに見直しということがテーマになっていたことの1つではないかと思います。 現在の減額率は5年前倒して65歳フル支給を60歳からということにすると、42%ぐら い減るわけですね。これは国民年金が発足した昭和36年当時の生命表によったもののは ずで、減額率は単純に言えば、寿命が短ければ、当然のことながら減額率は大きくなる し寿命が長くなれば小さくなる、そういう形で計算するのだと思うのですが、これを現 在の生命表に置き直して見直すというのが前回の改正措置の非常に大事なテーマの1つ だったのではないかと思うんです。  それとの関連で、現在外国でも前倒しの減額支給制度はどこでもあると思うのですが それぞれの国で平均年齢、フル支給開始年齢、適用されている減額率。これは数理的に 考えた場合の減額率と政策判断を加えて実際に行われている減額率と違うと思うんです が、こういったものをデータとしてお示しいただいて、今回の改正論議の中で、これは 整理をしてしまった方がいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○事務局  ただいまの繰上げ減額率の関係でありますけれども、資料といたしましては、白書の 208、209ページに外国の制度の実情を紹介しておりまして、各国において、減額の率な どもそれぞれ違う数字がいろいろ使われているところです。 また、この取り扱いの関係ですが、繰上げ減額率の見直しということで、これは重要 なテーマと考えておりますが、今回、少子・高齢化ということで、社会経済状態の変化 を踏まえて、支給開始年齢、給付水準といった見直しを今議論しているところですので その中であわせて検討させていただきたいと考えております。 ○B委員 この減額率、増額率ですが、年金が生活費として本当に必要なグループと豊かでそれ ほど必要のないグループとがあると思います。そういうことを考えますと、現在の60歳 からの場合、42%の減額率、70歳以上の場合には88%の加算率で、1.88倍になるという のは検討の余地があると思います。70歳まで延ばしている人はそれほど必要のない、あ るいはほかの収入があるというような場合が多いと思います。60歳からの受給を希望し ている人はそれだけ生活ニーズが大きいともいえます。ですから減額率も増額率も、私 はちょっと高いと思います。  60歳から受給した場合についてですが、平均寿命が長くなっているわけですけれども 生涯この率でいくのではなくて、もう少し平均余命等を考えて、65歳からは少し回復す るとか、そういうことも考えられていいのではないかと思います。また、70歳以上の 88%の増額率はどう見ても高いので、もっとこれは引下げてもいいのではないかという ふうに思います。本当の生活ニーズということを考えると、ここは早急に見直した方が いいのではないかと思います。 ○A委員  白書のデータは、これは実態としてこうだということですが、要するに数理的に考え た場合にどのくらいになり、実際に政策判断をやってどういうことになっているのかと いう対比がこれではわからないわけですね。我が国の場合、現在の生命表に合わせたと きにどうなるかというデータはここではないので、データを御用意いただいて、次回に でもきちんと結論をそれなりにつけたらどうでしょうか。  私は少なくともこのことについては見直すということを、きょう確認をいただければ それで結構です。 ○会長  データをつくれますか。 ○事務局  データにつきましては努力をしてみたいと思いますが、確かに繰上げ減額率につきま しては、保険数理的に中立な率が望ましいと考えておりますけれども、いずれにせよ、 減額率の改定の扱いを含めまして、今度の制度改正の議論の中で御議論いただきたいと 思いますし、資料も準備してみたいと思います。 ○C委員  前回もこれは主張した点なんですけれども、そういうややこしいことを考えないで、 65歳のところでフル年金の金額を確定して、その人が65歳の時点で、理論値で面積を一 定にして、それで60歳からもらいたい人は60歳からもらえばいいし、63歳からもらいた い人は63歳からもらえばいいし、68歳からもらいたい人はそれからもらえばいいという のが私どもの一貫した主張です。理論値を65歳で確定して、あとは面積一定で個人の自 由な選択に任せるというやり方をした方がすっきりして非常にいいと思うんです。余計 なことを考えない方がいいと思います。以上です。 ○D委員  数理的な値が正しいというふうに事務局の方でおっしゃったんですけれども、実態を 伺うと、60歳から受給している人が意外に多いという事実を考えますと、かなり逆選択 の可能性があるのではないか。つまり体の弱い人は60歳からもらうというようなことが 現実に起きているのだろうと思います。したがいまして、数理的には確かにある率は計 算すればすぐ出てくるのですが、A委員がおっしゃったのはその意味でおっしゃったの かもしれませんが、政策的に若干それを向上するような形の数字をやはり考えるべきで はないか、そのように思います。 ○E委員  1つは賃金スライドの件ですが、私のところに数百枚「賃金スライド廃止反対」のハ ガキをいただいていますが、賃金決定論につきまして、前回も随分議論があったんです けれども、賃金というのは、我々民間の事業者は、賃金は支払い能力に応じて支払われ るという立場ですね。これはA委員は違うと言いますけれども。ただ、その場合でも組 合も生産性の向上についての配分を要求するというふうに考えていますね。  ところが賃金スライド廃止反対の方々は大半が公務員の共済組合なんですが、公務員 の賃金は、それではどういう生産性が向上して支払われているのか。行政サービスが向 上しているから払えるというならよろしいんですが、そういう意味で日本の経済全体が 右肩上がりで、みんなが全員で成長する時代はよろしいのですが、今後の時代はそうい う時代でないということを考えますと、賃金スライドは私はもってのほかと考えます。  もう一点、支給年齢開始の引上げに関する2ページの現行制度を改める立場のことで すが、1番の、今後の少子・高齢化等、「高齢者の就労を促進する観点」とありますが 事業者の立場からすれば、今後、少子・高齢化が進むということで、企業の就労者が減 ってくることは当然考えられるので対処の必要がありますが、人為的な制度の改正によ って逆に高齢者の就労を強制させられると、こういうことは事業者としては必ずしも好 ましいと思っておりません。その意味で、この問題を厚生年金の制度を改正することに よって促進をするというふうに言われると、これはちょっといかがなものかというふう に言わざるを得ないと思います。  ここに書いてある2番、3番、4番はそれぞれ事業者としては問題あるんですけれど も、ただ、これにつきましては、現行制度もこれから行われていくので、その辺は様子 を見ながらということと、もう一点は、給付と負担のバランスをとる中で、実際には 我々事業者からしますと負担の水準がどのぐらいのところにおさまるのか。その結果と して、給付がどうなるかによって、議論することはよろしいのですが、最初から、これ を議論するのはちょっとどうかなというふうに思われます。議論すること自身を否定す るものではありません。  そういう意味では、C委員が言われましたように、面積一定ということであるならば 公平ではないかと考えます。 ○C委員  1つは、いつも前提として、高齢者の生活の問題と現役世代の生活のバランスの問題 をいつも頭に置いておかなければいかんと思うんです、あらゆる場合に。そういう前提 で考えていきますと、高度成熟社会を今前提にして考えた場合に、果たして今からの勤 労者の生活の在り方がどうなるか。もちろん賃金というのはいろんな形で、伸びる人は 伸びるし、伸びない人は伸びない、下がる人は下がる、こういうことには、諸外国の賃 金統計をごらんになれば、A委員もよく御存じですが、年齢と全然相関のない姿になっ てきているわけですね。  日本だけは年齢別の賃金統計がありますが、諸外国の賃金統計をとるときに、何とか 年齢別の賃金統計はとれないかと思って随分苦労するのですが、随分苦労してとったイ ギリスだけが年齢別の賃金がありましたけれども、25歳ぐらいから50歳ぐらいまで全く 真横に寝ている。ということは、例えば35歳の人の賃金が全部一緒ということはあり得 ませんから、物すごく差が開いているはずなんで、ということは年齢と賃金は相関がな いということです。  したがって、そういう成熟社会における賃金というものは、統計的に処理すると、年 齢と相関がない賃金の払い方をされており、オール横にべたっと年齢別に寝てしまう統 計になるということですから、賃金スライドというものの考え方が成熟社会においては 出てくる余地がなくなっているのではないかというふうに判断します。  絶えず我々が考えておかなければいかんのは、現役世代の人たちの生活と高齢者の生 活のバランスなんですが、現役世代の生活というものも、もちろん憲法で保障された最 低生活から始まって、たくさん賃金をとる人はいい生活をするという問題がありますが 日本の場合、相対的に世界で最も上下の差が少ない国だと思うんです。諸外国の場合は もっと落差がありますが、いずれにしても年齢と関係ないということでありまして、そ ういう意味では、個人別には上がったり下がったりしますけれども、年齢とは相関がな い。  そういう意味では、賃金スライドを持ち込む理由がなくなっているのではないかと判 断します。 ○A委員  賃金のことは余り議論する場所ではないと思うんですが、ちょっとお断りしておきま すと、年齢別賃金統計はヨーロッパに関してはルクセンブルクにある欧州統計研究所・ ユーロスタットではとれるようになっているんですね。そしてヨーロッパでもホワイト カラーはかなり年功的なプロフィールを持っている。これは年功で決まっているという 意味でなくて、年功的なプロフィール持っていて、ブルーカラーはかなりフラット。  恐らくC委員のおっしゃっているフラットというのは、ブルーカラーグループについ ての御観測ではないかと思うのですが、そのことは別にして、年金の賃金スライドをや るかどうかという場合の賃金スライドと、賃金プロフィールが年功型であるかどうかと いうのは全く別の問題ではないでしょうか。つまり平均の名目賃金が傾いていようとフ ラットであろうと、それが上がったことを年金の給付額に反映させるのかどうかという 問題で、したがって、諸外国でもフラットであっても賃金スライドはあるところはある し、ないところはないわけですね。年功型かどうかという問題とは違うと思うんです。  その上ででございますが、スライドの問題を今後どう考えるのかというのはいろいろ な議論があって、厚生省がここでお出しになっている問題点の整理は、調整機能の問題 として言われているのか、制度そのものの本則にかかわる問題として言われているのか よくわからないんですね。この間、審議会の席ではそういう資料も出てこないし御発言 もありませんが、国会の委員会での御答弁や厚生省の内部の会議で公表されている限り の御発言や、あるいはその他のところで、この白書にも載っておりますが、どうも調整 手段としてお考えになっているのかなと。それが厚生省の用語で言うと、全部ストップ してしまうところの「従前額保障」というやつですね。 今、一番深刻な問題は、これはもしやるのだったら、既裁定者に手をつける話ですね 制度改正で改正後の裁定者についての制度を議論しているのか、現在の既裁定者の問題 を議論しているのか、これは重要なことなので、まずそこを整理していただけませんか ○事務局  その2つにつきましては、できるだけ区別して、これまでも御説明してきたように思 うんですが、例えば選択肢の手法の中でスライドを説明しているくだり、白書では 196ページでございますけど、ここではいわば既裁定の年金、一たん年金を受けたら、そ の方についての実質賃金の伸びをとめるという形でやっていますから、これは制度の本 体としての考え方であります。 それから、従前額保障といった場合は経過措置の考え方でありまして、例えばこれに つきましては、白書の187ページのところなどに、経過措置の考え方として、一たん給付 の水準を下げても、既にもらった人はしばらくとめておいて、新しい給付額が追いつい てくるまで待つという経過措置で使っている場合もありますが、これはあくまで経過措 置の話であります。今、まず正面から御議論いただきたいのは、制度として一たん支給 された年金額をどう扱うかという本体の形で御議論いただければというふうに思います ○A委員  先ほどE委員からいっぱいハガキ来ているというお話、私どもの方にももちろん来て おりまして、私どもの自治体の組合の退職者組織らしいので大変御迷惑をかけた。おわ びする立場でもないんですが、それで言っていること、かなり議論の多いところはある ので、これはこれで議論しておりますが、既裁定者に手をつけるような話を我々がここ で議論するのかどうかはかなり重大なことで、もし従前額保障みたいな考え方をするの だったならば、過去の例えば昭和60年の改正のときですね。昭和60年から20年かかって 乗率を下げる、あるいは単価を下げるという格好で、今引下げつつあるところなわけで すが、この場合にはそういう議論があったんですか。公務員の一部や国鉄年金で一部部 分的にあったことは知っていますが。 ○事務局  今言いましたのは具体的な給付のレベルを下げるといったことにつきましては、既裁 定に及ぼす場合には経過措置でとめて追いつかせるといった形のものはありますけれど も、そこの議論とここで言うスライドを一たん受給した人が物価については年金額は上 がっていくけれども、実質賃金のアップは反映しないというのは、別の議論なので、今 おっしゃったのは経過措置の関係だと思うんです。ですから経過措置ではなくて、今こ れから受給される方も結構ですし、あるいは既に受給されている方でも結構ですが、例 えばある一定の制度改正をしまして、そこから賃金スライドはしないと決めれば、それ は決め方ですけれども、全員に及ぼすこともできますし、ある一定時点から先の人だけ ということもできますけれども、これはまた経過措置で決めればいいことです。年金水 準を変えたときに経過措置をどうするかというのは全く別の議論として御議論いただい た方がいいと思うんです。 ○A委員  経過措置の問題はきょうやらないんだというなら、それはそれで整理は結構ですが、 いろんなところで事務局の方々がしゃべったり書いたりしておられることの、現実の今 の受給者に対して及ぼしている不安感は非常に大きいんだということだけはこの際申し 上げておきたいと思います。  スライドをどうするかということですか、C委員が先ほどおっしゃったように、現役 の労働者の生活水準と年金受給者の生活水準とのバランスをどう考えるのかという御指 摘、ここが一番キーだと思うんですね。その意味で言えば、先ほど事務局がちょっと触 れられましたように、高齢者もいろんな負担をしているわけですから、水準の議論は手 取りの賃金と手取りの年金とこの間でバランスをどう見るのかということなのではない か。  前回改正で手取り賃金の変動によってスライドをさせた。賃金スライドといっても、 そういうふうに変えた、これは大変大きな前進だったのだと私どもは思っています。た だ、その場合に、相手の年金の方は手取りで見られていないわけで、これはぜひ手取り の現役賃金に対して、手取りの年金水準の間でどのくらいの比率がバランスとして望ま しいか、こういう枠組みをまず議論として踏まえておくべきではないかと思うんですね ここである程度経済成長があって、賃金も物価も上昇するという中で当然成長率がゼロ でなければ、物価上昇率よりも名目賃金上昇率が高いと思いますから、そこで賃金スラ イドをストップすることになった場合には、先ほど言いました手取り賃金に対する手取 り年金の比率が傾向的に下がっていくことになりますね。そういう給付設計にするのか どうかという選択の問題なんだと。私は現役の労働者の生活に対して、年金受給者の生 活レベルが傾向的に下がっていくようなシステムは望ましいとは思いません。  それから、物価スライドだけにしてしまって、賃金スライドをなくすというのは、あ る場合には逆転現象を起こすんですね。つまり物価は上がっているけれども、賃金は余 り上がらず、負担が増えるから手取り賃金が下がってしまった場合に、余り考えたくな いケースですけれども、そのときに物価スライドだけだと年金の方はマイナススライド できなくなります。その意味でも賃金スライドをきちんと組み込んでおくことは公平の 観点から大事なのではないか、そのように思います。 ○C委員  前回ちょっと申し上げたと思うんですが、もう一つ、今までは年金を考えるときの、 特に公的年金を考えるときの最大のファクターは物価だった。だけど、今後年金を考え るときの最大のファクターは少子・高齢化、要するに人口構成の極端な変化である。今 までのピラミッドがずんどうになり、場合によっては逆三角形になる。つまり負担する 側と負担される側との関係が物すごく大きく変化する。そういうことを踏まえた上での 物価論であり賃金論でなければならないということ、と同時に、高齢者の生活の問題で あり、現役の生活の問題であるというふうに考えていかないと、単純な在来型ピラミッ ド型の中での高齢者の生活と現役の生活の問題ではなくなってきたというところが最大 の問題であろうと思うんです。  そうすると場合によっては、高齢者の方々は、現役の余りのつらさを考えると自分も がまんしなければいかん。しかし負担する方も負担する方で相当努力して、これはがま んという言葉が当たるのかどうか知りませんが、努力しなければいかん。そういう努力 とがまんの調和を、人口構成がピラミッドからずんどうになり、逆ピラミッドになって いく過程で、どういう分け方をするかということをかませて、この物価スライドや賃金 スライドの問題を考えるべきではないかというのが私の正確な提言なんですね。  それを考えていくと、まず賃金スライドはやれない、物価スライドをどうするのか。 確かに今御指摘のように物価スライドの場合は逆転もあり得るかもしれないけど、公的 年金をもしも放棄するのであれば、全部私的年金にしてしまえという議論になってしま うので、いくら人口構成がこれからの最大のリスクで、そのことによって高齢者のがま んと負担する方の努力とのお互いのバランスの問題になってくると言いながら、物価ス ライドはもうやめるのかということになってしまうと、今度はむしろ公的年金とはそも そもなんぞやという話まで展開することになってしまう。余りファクターを多くすると 議論が混乱してしまいますので、とりあえず私は賃金スライドの問題だけ申し上げてお きたい。  高山委員がどこかに書いておられたけど、天から年金は降ってくるわけではないとい う、その大前提で、財源の問題をいつも頭に置きながら考えていくとすれば、そういう ことになるのではないかということを申し上げておきたい。 ○F委員  基調として私も手取り賃金と手取り年金の対比、そこでどうバランスをとるのかとい うことを考えていくことで妥当なんだと思うのです。どっちかのスライドがよくてどっ ちかのスライドが悪いという考え方ではなしに、いろんな社会情勢の変化もあるはず ですから、オール・オア・ナッシングではなしに両方私はファクターとしては持ってい て、この際はこっちを適用する、この際は適用されないというケースも今後の展開によ ってはあり得るのではないかと思いますから、私は両方残しておいて差し支えないので はないかというように思っています。それが1つ。  賃金スライドを停止して物価スライドだけにするという意見もあるのですけれども、 この方式を採用しますと、将来の年金は、現役賃金に対して下がり続けることに結果的 になってしまいますから、実際厚生年金の受給額にかなりの格差が今ある中で、賃金ス ライドというのを例えば停止してしまえば、金額の高い人も低い人も結果的に切り下げ られることになるので、今の議論の中に参加するとすれば、賃金スライド停止というの は明らかに不適切ではないかと思います。  しかし、前段申し上げましたように、そういう水準の調節機能としては2つを用意し ておいても、別に私は問題ではないというように思っております。以上です。 ○E委員  今の御意見で、給付は現役に比べて下がり続けると。賃金がどのぐらい上がり続ける か、わからないところですが、しかし賃金をもらう側の現役は負担がどんどん増えると いうことですから、そういう意味ではこの負担を抑えるという観点からは賃金スライド ということはあり得ないのではないかと私は思います。 ○G委員  ちょっと話を変えたいと思うんですけれども、きょう問題提起された中で、ある一定 以下しか物価が上がらない場合の処理をどうするか、今自動物価スライドで0.1%物価が 上がっても、制度はスライドを実施しているのですが、きょうの新しい資料は大変参考 になったんですけれども、物価スライド制をやっている国は日本だけでなくて諸外国も 結構あるはずなんですが、0.1%でも物価スライドをやっている国はほかにあるのかとい うことを今後の参考のためにぜひ調べていただきたいと思います。 私はある程度ゾーンというのはあって、ある一定額以下だったら、この程度の物価上 昇は別に生活に大きな影響を及ぼさないという考え方は当然あるのではないかと思うん ですね。今のように自動的に0.1%でも物価スライドするというのはやりすぎのような感 じがしますので、諸外国の例を少し調べていただきたいと思います。 可処分所得スライドは、私はスライドの考え方としては最も適切なものだと思ってお りますが、前回は国民経済計算ベースでは実はこの考え方を具体的に適用しなかったわ けですね。ドイツがこの制度を最初に実施した国なんですけれども、ドイツは国民経済 計算ベースでやっています。受給者についても手取りということを念頭に置いてやって おりまして、やはりそちらに切り換える方向で今後議論を深めていただきたいと思って おります。 それから、白書で取り上げているので、今回の論点整理の中に落ちているのですけれ ども、今後とも消費税の税率を上げていくというのは、短期的にはしないかもしれませ んけれども、将来として大いに考えられるわけです。今回も3%から5%に上げまして 物価は1.5%ぐらい上がったということになっておりまして、これはみんな物価スライド の対象になっておりまして、受給者はコストを余り引受けない体制になっているんです ね。間接税は今後もう引上げないということであれば、この議論は余りしても意味がな いんですが、将来にわたって、例えば10%、15%というような話が具体的になったとき に、ここをやはりもう一度整理しておく必要があるのではないかと思います。 政治家の皆さんにこの点を説明するのは大変難しい話なんですけれども、年金審議会 としてどう考えるかというのはきちんと整理をしておくべきことではないかと私は思い ます。 ○H委員 物価スライドのやり方については、今、G委員がおっしゃったことに私も賛成で、 0.1%で上げるなんていうのはどうかということは、昔から言っているんですけれども 前回わずかに物価が下がったときにやらなかったときも、上げるときもわずかなのはや めろという意味で賛成したんですけれども、ですから1%がいいのか、2%がいいのか 3%がいいのか、その辺はここで議論した方がいいと思いますが、少なくとも0.何%で 多額の行政費用をかけてスライドする必要はないのではないかと思います。  A委員に御質問させていただきたいのですが、賃金スライドを維持しろという前提で お話しになっていらっしゃるんですが、その場合の世代間の負担の不平等を是正する手 段としては何をお考えなんですか。 ○A委員  まず賃金スライドを導入したら世代間の不公平が生まれるというふうには思ってない んですが、ネット賃金スライドをやることは、既に現役が負担した分は差し引かれてい るわけですね。ですからC委員御指摘の年齢構成の動きは極めて急激で非常に大きな問 題ですが、それによる現役の負担の問題がまずそこでは既に勘案されているのだと思う んです。そのことが可処分所得スライドに移行したことの決定的な意義なのではないか このように考えていますので、その意味では、ネットスライド方式のもとでは、いわゆ る人口構成の変動に伴う負担、給付のアンバランスの拡大という問題は、既に内部的に 解決をされている、このように定性的に理解しているのですが、G委員、お教えいただ けましたら。 ○G委員  新規裁定をするときに、従来の賃金の見直しといいますか、かさ上げをするときにネ ットスライドをやるということでは前回改正で合意ができたんですね。今ここで問題提 起を受けているのは、一たん裁定された後の年金をここでは「賃金スライド」と言って いるのですが、新しい考えでいえば、可処分所得スライドといいますか、ネットスライ ドで続けていくのか、それとも物価スライドにするのかという問題ではないかと思うん です。  ですから、今いろいろな方から問題が出てきておりますけれども、既裁定の年金につ いて、さらに賃金スライドで走るとすれば、将来とも負担増がかなりのレベルに達して しまう。そういう形でいいのかどうかというのが今問題なのではないでしょうか。 ○H委員  今、G委員が答えてくれたからそれでもいいですけれども、私、類推していたのは、 給付率の方を下げる格好で世代間の負担のアンバランスを是正すればいいという御趣旨 かなと思ったんですけれども。 ○A委員  給付水準の切下げ。 ○H委員  給付率の。 ○A委員  率とおっしゃいますと? ○H委員  5つの案を出したときにかかっている係数があるんです。標準報酬に掛ける部分。 ○A委員  係数ですか、今、経過措置をとっているような。 ○H委員  つまり、A委員もC委員がおっしゃっているような、年金受給者の方が結構豊かにな っちゃって、働く方の可処分所得が伸びないで負担ばかり増えるという状況はよくない と思っていらっしゃるわけでしょう。そうでもないんですか。 ○A委員  そういうふうに問い詰められると困っちゃうんですけれども、まず、私らが非常に気 にしているのは、今の、特に厚生年金の受給者の中に、現役時代の賃金格差だとかいろ んなことが反映して、実際の受給者の格差が非常に大きいということなんですね。その 下の部分の人たちについても、一律に率で切下げがくるような制度は、これは現実の老 齢年金の機能からして望ましくない。むしろ、そのことをやるくらいであれば、先ほど お話が出ていた年金なんて余り必要ないような年金以外の所得がある人たちについて適 切な給付制限なり、そういうものをとることの方がよほど公平という観点からいってい いのではないかと思っています。 ○H委員  直接の質問に対するお答えをここでしてくれなくてもいいですけれども、今お話にな った点で、私は基本的な認識が違うのではないかと思うんです。日本は御承知のように 為替レートを前提にすれば、特にブルーカラーの人たちを含めて賃金水準は世界一の水 準ですよね。それに対して公的な年金のリプレースメントレートは低所得層ほど高く、 6割を超しているわけです。我々くらいになると公的年金だけだったら2割です。もち ろんリプレースメントレートを本当に議論しようと思ったら、前回申し上げたように、 退職一時金から企業年金から私的な年金から、すべて含めて計算しなければいけないの で、ただちに、だから低所得層が過大に保護されているというつもりはないのですけれ ども、国際的に客観的に見た場合に、日本の低賃金層の年金水準が低いなんていうのは あり得ない話ですよ。決して生活が豊かだなんて言ってないですよ。それはPBPの問 題もあるし、いろいろ問題がありますから、生活水準がいいとか悪いとかという話では なくて、やはり年金というのは社会保険方式でやる以上は、働いたときの賃金収入を ベースにして、その何割を公的年金で見るべきかという厳密な意味でのリプレースメン トレートというものを前提にしないと議論は成り立たないはずなんですね。  したがって、リプレースメントレートで見れば、所得再分配をやっているのだから、 高所得層のリプレースメントレートが相当低くなるというのは、これはある意味で当然 だと思いますけれども、6割を超すようなリプレースメントレートを取っていて、それ で低所得層、低年金層の水準が低過ぎるということを議論の出発点にしたら、将来の改 革は議論できないと私は思いますけれどもね。  その点で、先ほどのB委員の御意見も関連があると思うんですけれども、繰下げの場 合の割増率をどうするかというのはテクニカルにはどうしたらいいか、私は必ずしもわ からない点があるけれども、現行の所得階層別のリプレースメントレートをとった場合 に、高額所得層は国際的に見て異常に低いんですね。私はそういう認識をしているんで す。ですから他の所得源泉によってトータルに見なければいけないということをあくま で前提にしておきますけれども、88%が単純に高いという議論はそんなに簡単にできる 議論ではないだろうというふうに思いますね。  もう一つ、すいませんが、資料の2ページで、65歳までの就労との関係で、先ほども ちょっとどなたか御指摘になっていましたが、年金で就労をコントロールするのはよく ないと。退職金とか企業年金というものと、60歳、65歳の間の境目の生活維持の手段と の関係をどう考えるか。  今までの一般的な議論は、60歳までは賃金、65歳からは年金と。その年金といった場 合に、公的年金だけではなくて企業年金も全部含めて65歳以降の生活を考えているよう に思うんですけど、アメリカなどの企業年金は、いいか悪いか、評価はいろいろ分かれ るかもしれないけれども、アメリカの401Kなんていうのはほとんど公的年金が支給 される前にもらって使っちゃっているわけです。そういう状態がいいとは私は必ずしも 思わないけれども、本来は戦後アメリカの労働組合が労働協約で企業年金を取り出した ときは、公的年金が65歳にならないともらえないけど、その前に早くやめたいので、そ のつなぎとして企業年金を出してくれというので、団体交渉をやって取り出したのがそ もそもの始めだと思うんですね。国情によってモノの使い方は違いますから、アメリカ どおりにやれと言っているわけでもないんだけれども、定年制との関係で、60歳から65 歳の間も、労働省なども言っているんだけれども、できるだけ就労できる人がした方が いいに決まっているのですけれども、就労させないと全部それは公的年金で見なければ いけないというとそうではなくて、そこのブランクこそ、つなぐ手段として退職一時金 があり、企業年金があったし、現にあるのではないか。その辺の認識が、今までの議論 でははっきりしてないように思うんですね。  それと実際に60歳前後でやめている人が、65歳までの継続就業とか、企業によっては 65歳定年をオッファーされた場合にどの程度実際に応じているかというのは、私が見た 限りでは、大体3分の1ぐらいしか応募しないんです。3分の2の人は引退しちゃうん ですね。非常に引退志向が強いわけですね。そういう引退の自由というのは認めなけれ ばいかんという議論ももちろんあります。これは同時決定の問題ですから、現行の失業 保険や年金制度や退職一時金が前提になっていて、そういう就労構造をとっているとい う問題がありますから、どっちがどっちというふうに単純な因果関係ではないんですけ れども、どうもその辺はかなり面倒な問題で、年金制度をいじれば、どっちが動くとい う、それほど単純な問題ではないのではないかと思います。 ○会長  時間がかなりたちました。お差し支えなければ、基礎年金及び年金業務の運営につい ての審議に移っていただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○A委員  1点だけ。 ○会長  どうぞ。 ○A委員  1つだけ申し上げておきたいんですが、私どもは年金制度の側から高齢者の就労を促 進するような、そんなシステムは全然よろしくないと考えます。これはどんな場合もそ うなんで、そのことだけは立場としてはっきり申し上げておきたいと思います。 ○I委員  賃金スライドなんですけれども、私はこれからは賃金スライドはあり得ないという考 え方には賛成できないです。ただ、実際問題として、これからも既裁定者に賃金スライ ドをしていけるかどうかというと、これはなかなか難しい面があると思うんですね。し かし、少子・高齢化が進むから、これからはあり得ないというのは、私は言い過ぎなの ではないか。実際問題非常に難しくなるから、ある程度賃金スライドは遠慮してもらう とか、がまんしてもらうというような考え方ではないかと思うんですね。  そうでないと、年金の給付水準というのは、今までいろいろ御議論が出ましたように あくまでも賃金水準との関係もあり、リプレースメントレートというのがいいかどうか は別にして、年金の水準と賃金の水準はある程度一定に保たなくてはいかん。それは既 裁定者についてもそうなんだというのが少なくとも今までの考え方だったんですね。し かし、これからどんどん今までの給付水準が維持できないとなれば、新規裁定者につい ては下げていかなければいけないわけです。しかし、既裁定者については、既得権の関 係もありまして年金額を下に下げるわけにはいかない。ですから賃金スライドぐらいは ひとつ辛抱してくださいよということでないかと思います。 ○C委員  あり得ないというのは強過ぎると思いますから、取り消させていただきます。やりた くてもできないということです。 ○D委員  先ほどG委員とH委員がおっしゃった0.1%のゾーンのことですが、確かに私も0.1% で、変わるごとに年金額を変えるのはつまんないことをやっているなという感じはする んですけれども、それでは0.1%ではなくて、幾らのゾーンを設けたらいいかということ になると非常に難しいような気がするんですね。これはかなり前にあったと思うんです が、政令で5%の幅でやっているときに、5%にいかなかったけれども、何%だったで すか、はっきり記憶しておりませんけれども、やはりやるべきだということで、年金額 を変えたというような事実があったと思うんですが、そういうことを考えると、例えば 0.5%あるいは1%というような数字を決めてもなかなか守るのは難しいのではないかと いう感じがするんです。0.5%と決めた場合に、それでは0.4%の場合もやらないのかと いう議論が必ず出てくるような気がするんですね。 それを考えると、つまらないことかもしれないけれども、0.1%刻みでもやるというふ うに決める方がいいのではないか、そんなふうに思っております。以上です。 ○C委員 今の問題についてですが、前回0.1%下がったときにはやらないというようなことが何 となく、これは日本特有かもしれませんが、出てしまうことがあるんですね。そうは言 っても実感からしまして1%というのは大き過ぎる。そうするとやっぱり 0.5%というの が出てくる。0.5%とはそもそも何ぞやと。0.444%、要するにやっぱり0.5%なら 0.5% で厳密に決めておくべきだと思うんです。厳密に決めておいて、上でも下でもだめとい うふうにきちんとしないといけない。1%というのは、生活実感からしてちょっと大き 過ぎるのではないか。例えば物価が1%上がったとか、1%下がったとかということを 言う場合はかなりの変動がありますから、やはり0.5%ぐらいがちょうどいいかと思うの ですが、ただ、0.5%の意味を、今おっしゃったような問題が起こるから、厳密に決めて おく必要があるし、運用するときは厳密にそれをやるということ、政治的にふらふらし ないということを決めておく必要があるかと思います。 ○F委員 すみません、時間をとりまして、私、今、D委員がおっしゃったように、どんなに小 さい幅であろうとやった方がいいのではないかという考えています。今、C委員がおっ しゃったように、どういうゾーンにしろ、ある種のランクを設けた場合に、必ずしも今 までの政治家を悪く言うつもりはありませんが、このような取り扱いがどうも政争の道 具に使われたりすると思います。物価スライドについて、例えばあるゾーンに決めたと したら、その幅だとやらないというように決めておいても、やるべきだというようなこ とが出たり、本質が何かがねじ曲げられる、そういう危険性もあるように思うんです。 したがって、経費がかかるということになります。本当はコストをかけないやり方の 方がこれからの流れだとは思いますけれども、やはりきちんとフォローしていくのだと いうようにして、これも年金受給者に対する安心料というのか、そういうものを文化と してつくり出すという意味もあって、そちらの方が私は適切ではないかという意見を持 っています。 ○M委員 補足といいますか、前回デフレーションになって、−0.1%ですか、その部分は無視し た。なぜ無視したかというと、基本的には年金については大体物価が少しずつ上昇する ことがいつも念頭にあって、それでスライドを考えていたのが、余り予想できないこと として物価が下がったという事態が発生したというやや特殊なケースがあったからです これからは物価が下がるとか、実際今も本当は下がっている可能性もあるのですが、要 するに物価スライドというときに、前の話は物価スライドというのは、基本的に物価が 上昇するという前提が暗黙のうちにとられているケースが多いのですが、そうでないこ とが発生したときにどうするかという問題があり得る。それは余り考えたことがなくて 私、たしか年金審議会の委員のときに、−0.1%、単純に困ったなと、下がることを予想 してなくて、その分は0.1%だから、私のそのときの意見は非常に妥協的ですが、それは 無視するというふうに処理した。実を言うとマイナスのケースですから、そういう状況 であったことを念のために申し上げておきます。 ○J委員 私は賃金スライド及び物価スライドの問題は、先ほどF委員がおっしゃったように、 制度としては残しておくべきだと思っております。物価変動も、実は変動するかしない かというときに、年金審議会を開いてどうするかを決めるわけですから、そのとき0.1% がいいのか悪いのか、0.5%がいいのか悪いのかというのは当然議論されるわけですから そこで議論すればいいのでして、今すぐだめだとか、いいとかという議論をしない方が いいのではないかと思います。 ○K委員 今までの議論がすごく現実的なことなので、私の言うことはどうなのか、自分でも自 信がないんですが、物価だけではなくて賃金も下がることはあり得ると思うんですね。 というのは、今の平均名目賃金は、男性が多く働く、フルタイムのことを想定した賃金 の平均だと思うのですけど、これからパートをどうするかとか、あるいは働き方が若い 人などでもフリーターのような形がだんだん増えていますよね。それから転職もどんど ん増えるという形、また高齢者が低い賃金で働くということもあるわけですから、どの 辺にどういうものを平均賃金として考えるかによって、賃金の水準のとらえ方や社会が 変わってくるわけなので、基本的な考え方として私は下がることも考えて賃金スライド を残した方がいいのではないかと思います。 ただ、可処分所得であるとか平均賃金という考え方自体が今までのものとは変わる社 会なのではないかというふうに漠然と考えております。ちょっと議論がかみ合ってない かもしれませんけれども。 ○会長 委員の皆様に一通り御発言をいただけたと思います。次に用意した事柄、基礎年金及 び年金業務の運営に審議を移してよろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  それでは、事務局から資料の御説明をお願いします。 ○事務局  引き続きまして、次の項目に入りたいのですが、先ほどの議論の中で、資料の関係で 補足だけさせていただきたいと思います。G委員から外国の物価の幅についてどう扱っ ているかという資料のことの御発言がありましたが、白書の315ページに諸外国の例を挙 げておりまして、スウェーデンがある意味では1.5%というゾーンをとっておりますけれ ども、ほかの諸国については、特段0.1%がどうとかというのはなさそうでありますので 物価の変動に応じて年金額も動かしておるというふうに理解しております。 それから、これは資料でなくて別件かもしれませんけれども、先ほどの賃金スライド 物価スライドも現行、今マルで書いておりますのは、裁定後の扱いでありますので、裁 定前については残ることには違いございませんで、仮に裁定後の物価、賃金スライドに ついて調整しても、制度から賃金スライドは消えるわけではございません。ちょっとそ こも補足させていただきたいと思います。 それでは、すいません、本題に入りたいと思いますが、資料1と2を併用して御説明 したいと思いますが、まず資料1をごらんいただきたいと思います。  資料1の2ページ目でございますが、「(5)基礎年金について」ということで、 「基礎年金の給付水準についてどう考えるか。」  2つ目、「負担の限界についてどう考えるか。国民年金の最終的な保険料負担水準は どの程度までとすべきと考えるか。」  その次、「国民年金の保険料免除制度の見直しについてどう考えるか。段階的な保険 料免除制度を設けることについてはどうか。」このあたりにつきまして、白書でここに 書いてあるようなページで資料等をお付けしているわけでありますが、あわせまして、 今回作成しました資料についても御説明をさせていただきたいと思います。  まず資料2の4ページをお開きいただきたいのですが、基礎年金の議論を概括いたし ましたのがこの絵でありまして、まず左側にありますが、問題提起として「将来世代の 負担増」、これは今1万3,300円の月額の保険料が将来例えば2万4,300円までいくとい うこと。 それから、「国民年金の未納・未加入の増加」ということで、この下の四角の中のさ まざまな不信、不安、負担感の高まりとかいろんな問題につながっていくということ。 それに対する提言として、真ん中の列ですが、例えば支給総額、6万5,000円という基 礎年金の水準を抑制することによって、将来の負担増に対応すべきである。これも白書 で対応する数字等が掲げてあるところでありますが、その次は、国民年金保険料の引上 げ計画の前倒し。将来にできるだけ先送りしないように早く上げていくことによって、 最終的な負担を軽くしてはどうか。 あるいは3つ目、適用・収納対策の強化。次に国庫負担率を引き上げることによって 対応する。それをより突き詰めますと、税方式への変換をして、制度を社会保険方式か ら変えるという考え方。所得に応じた段階的な保険料の免除。こういうふうないろんな 方法が提起されているところであります。  そして、右側になりますが、まず「給付水準を考える視点」ということで、これも白 書と繰り返しになりますが、特に白書のページを指摘させていただきますと、179ページ でございますけれども、ここに文書でちょっと書いてあって見にくうございますが、例 えば今の6万5,000円の水準でありますが、2人暮らしの基礎的な消費支出を勘案しては どうか。その場合夫婦で11万6,509円ぐらいで賄えるという考え方も出てきますし、後段 で、消費額には地域差があるということで、65歳以上の夫婦の全国的な消費の中央値と いうのは10万ぐらいだが、地域差のばらつきが、1人当たり3万4,933円から6万4,165 円までばらついている。こういったことで、6万5,000円の水準をどう考えるかというこ とを文章で書いておるくだりがございます。 それから、こういった金額そのものをどう考えるかということ以外に幾つかの視点が ございますので、資料に基づいて説明させていただきたいと思います。5ページから13 ページまで、これは「老齢年金受給者実態調査の調査結果」ということで、前回も高齢 者のいわゆるミクロのデータが非常に乏しいという御指摘をいただきまして、急ぎ取り まとめた調査結果であります。直接基礎年金だけの資料ではありませんけれども、この 中にも自営業者の年金の実態等が入っておるところでありますが、説明は省略させてい ただきまして14ページに参りたいと思います。  14ページは、6万5,000円の水準が高いか低いかという議論とはまた別に、特に今回厚 生年金の給付水準、夫婦で40年加入の方々の23万円という水準を、例えば私どもの選択 肢で言いますと、20万円にしてはとか18万円とかという議論をするときに、1階部分と 2階部分との関係をどう考えるかという見地から6万5,000円についても議論の必要があ りはしないかという資料でございます。  現在の厚生年金の計算式は最初に数字で書いておりますが、6万5,000円+6万5,000 円=13万円、これが1階部分であります。その上に2階部分として、これは平均の標準 報酬の数式に当てはめますと、約10万円ぐらいの年金が乗りまして、合計23万円であり ますから、1階部分が56%で2階部分が44%というのが、1階部分と2階部分のこうい うモデルにおける割合であります。  これにつきまして、これはあくまで平均値でございまして、先ほどH委員から御指摘 ありましたように、これは所得が違えば随分受け取る年金と生涯の給与との関係は違っ てまいります。例えば生涯の平均標準報酬月額24万円の方であれば、今の年金モデルで 計算しますと、2階部分が4.2万円で、20万1,000円というモデルでありますから、いわ ば生涯24万円の平均賃金の方は20万円の年金というものが現在制度化されておりまして 年金が平均賃金に占める比率は84%であります。 一方、44万円という平均で言えば非常に高い生涯賃金だった方でありますが、こうい う方は2階部分が7.8万円で、年金合計は26万円ということでありますから、退職時の給 与から考えますと、年金額はかなり小さいものに感じられるであろう。年金が平均賃金 に占める比率は、59%ということで、いわば今の年金制度そのものがかなり所得再分配 の効いた形になっているわけですが、これをさらに進めるかどうかということも検討課 題です。 そこで、下に2つの箱がありますが、一番下が現行水準でありますが、手取りで言え ば、手取り年収の62%が現在の年金水準でありまして、このモデルが23万円でございま す。これを幾つか段階ごとに引下げていった場合、1階と2階のバランスがどうなるか というふうに考えますと、左側の箱では、先ほど言いましたように56対44という1階、 2階のバランスを変えないでやってみれば、例えばケース1で、23万のモデルを20万ぐ らいに引下げた場合に、1階部分を5万8,000円×2として、2階部分を9万円とすれば 両者の1階、2階のバランスは変わらない。  同じように、例えば62%の手取りを50%まで下げたケース2であれば、18万 8,000円 のモデルになりますが、この場合、同じように割合を変えないで操作いたしますと、 6万5,000円のものを5.3万円×2として、2階部分は8.2万円とする。これであれば、両 者の関係は変わらない。こういったような変化になるわけですが、もし1階部分の基礎 年金水準は変えないで、6万5,000円という水準は維持するという原則に立ちますと、こ れは右の表になります。  そうしますと、例えばケース1の場合であれば、2階部分は先ほどの9万円が7.7万円 になります。ケース2の場合でいけば、2階部分は8.2万円のはずのものが5.8万円まで 下がるということで、基礎年金のレベルを固定いたしますと、2階部分がさらにやせて 所得再分配が強まる結果になるということから6万5,000円の水準をどう考えるかという ことが1つの議論の切り口になるのではないかと思います。  御参考までに申し上げますと、ケース1とか2で、6万5,000円を5万8,000円にする とか、5万3,000円にするとかいいましても、ここは先ほどの例の経過措置の議論になる わけでありますけれども、制度改正のあるところで6万5,000円をもらっておられた方が 突如5万8,000円とか5万3,000円に下がるのではなくて、ここは例えば従前額保障で 6万5,000円にとめ置くとか、あるいは物価スライドだけで引き上げるとか、それはいろ んなやり方があるということでして、突然減額されることはないやり方が想定されてお るということでございます。  こういった6万5,000円の水準を1階、2階全体の中ではどう考えるかという議論がこ の14ページでございます。  それから、15ページ以下は、今度は国庫負担の見直しとも関係してまいるわけですが 年金制度を突き詰めていって、全額国庫、いわば税方式で運営してはどうかという指摘 がございます。そこの問題意識として箱に書いておりますが、未納・未加入問題、3号 の問題、学生の問題、こういったような問題は全部税で処理してしまえば解消してしま う。あるいは、今の現在の未納・未加入を考えた場合に税方式でやれば、将来の未納・ 未加入の問題を免れるのではないか、いろんなことから、こういうやり方も提唱されて いますが、それについてしばらく資料をごらんいただきたいと思います。 まず16ページでありますが、これは前回の女性の年金のときにも登場したような表で すが、今の年金制度は保険原理と所得保障、その両者を組み合わせて、必要な方が能力 に応じて負担するというふうにしておるのが社会保険であります。税方式ということに なりますと、これは保険原理が外れていきまして、必要に応じた所得保障というふうに なりますから、全部税で行う以上、所得保障の考え方になりますと、必要な方に支給す るということでありますから、必要でない方には支給しないということに必然的になっ てまいります。従って所得の高い方については、税でもって手当てする必要はないとい う議論が生じてくるのではないか。こういったことを絵にかいておるわけでして、以下 17ページ以下で文章で細々書いております。 左が税方式を導入すべきという立場。それから、右が導入すると問題があるという立 場、小さな字でいろいろ書いておりますけれども、例えば基本的な役割として、左側で あれば、今申しましたように、無年金、低年金、あるいは3号問題等を解決するという 考え方がありますが、導入すべきでない立場からはいろいろ論点ございますけれども、 拠出と給付の関係が明確でないと。したがいまして、自己責任という考え方からだんだ ん離れていくと。老後は特に自分で備える必要はない形になってくると。あるいは所得 制限とかミーンズテスト、そういうものが不可避的に導入されていくのではないかとい うことが税方式の帰結ではなかろうか。  そういたしますと、国民皆年金というような考え方から税方式という立場もあるわけ でありますけれども、恐らく実施の段階で対象者が絞られていくようなことになれば、 これは違う意味で皆年金は達成できないのではないかという考え方もございます。  それから、次のページになりますが、財源につきましても、どういう財源がいいのか 巨額の税負担に耐えられるかどうかという議論がありますし、税に頼った場合に、経済 が不安定なときに安定した財源が本当に得られるのかどうかという議論がございます。  積立金の保有につきましても、もし予算が単年度主義を貫くとするならば、積立金を 持つことがなかなか難しいという構成にした場合には、世代間の負担の調整が非常にし にくくなるという考え方があります。  19ページでありますが、これも多々書いておりますけれども、確かに高齢者に真ん中 の「世代間の公平性」ということで御負担いただければ、世代間の不公平はかなり解消 されますが、その反対の意見もある。  また、財源の安定性として右の方に書いておりますが、例えば年金目的消費税で賄う とした場合給付の増大に伴って頻繁に税制改正して税率を引上げていくということにつ いて本当に国民に御理解がいただけるかどうか。また、そうやって税率を高めることで 総需要の抑制といった御批判をまたいただくことになりはしないか。  あるいは徴税につきましても、右下に書いておりますが、今のようなやり方の徴税で 済むかどうか。特に税率が大きくなった場合に、インボイスとか、そういったような格 好で、正式な徴税の方法を導入して、それなりに行政コストがかかることになりはしな いかという問題がございます。  それから、20ページであれば、移行の問題も無視はできない。これまで社会保険方式 でやっていったものを、あるところから税で、これは居住年数に基づいて支給すること になった場合に、その移行前、移行後のバランス、いろんな不公平感というものについ て処理が必要になってくるであろう、こんなことでございます。  次の21ページですが、これについては、今は定性的な説明を申し上げましたけれども 仮に税方式を導入した場合には、負担の持ち合いが変わってくるわけですから、その姿 がどうなるかということを図解し、また、最終的な税率がどんなふうになるかというこ とも一定の前提のもとに試算してみたわけです。文章で上に書いておりますように、事 業主からは現在事業主負担をいただいていますが、それがなくなるために負担減になる 一方、それは家計部門を考えますと負担増になるであろう。ただし、絵でごらんいただ きますと、家計部門でも年金受給者等の世帯、これは今保険料をちょうだいしておりま せんが、それが消費税を御負担いただきますので、これは追加負担になります。  あと現役の世帯の負担がどうなるかということで、これはいちがいには言えないよう な分析でございます。負担が実際に増えるか減るか、これについては、世帯の構成であ るとか、就業形態、消費支出がどうか、さまざまな要素によって異なってくる。一律に はちょっと言えない面がございまして、こういう表現にいたしているところであります 特にこの関係につきましては、G委員が御専門でございますので、ぜひ、また御指導い ただきたいと思います。  それから、税率につきましては、四角の中に書いておりますが、仮に今ある制度をそ のまま平成12年で切り換えて、必要な差額を全部目的消費税でいただくというふうに仮 定しますと、3.2%ほどそのための消費税率をセットしていただかなければいけなくなる 今5%ベースといたしておりますので、合計して8.2%になる。その場合には国民年金の 保険料はゼロになりますし、厚生年金の保険料率はこのように 4.3%ほど下がる。 先ほどの3.2%と申しましたが、以後、ピーク時までずっと増やし続けた場合には、 6.1%必要になりまして、いわば全部目的消費税で仮に賄ったとするならば、1%当たり 2.7兆円という仮定でありますが、9.3%まで消費税を年金だけのために、これはいただ くことになるのではないかと、ちょっと乱暴でありますが、試算をしたところでござい ます。 それ以下は、ミーンズ・テストつきの年金の長所と短所あるいは各国の例ということ についてニュージーランドの例、最後25ページには、オーストラリア、ニュージーラン ド、ナダのミーンズ・テストや給付額等について、関係の資料をお付けしたところでご ざいます。 最後、もう一遍資料1にお戻りいただきたいと思いますが、国庫負担率の引上げ、財 源について、あわせて御議論をちょうだいしたいと思います。以上でございます。 ○事務局  続きまして、資料3でございますけれども、年金業務につきまして御説明させていた だきます。業務につきましては、昨年秋に一度説明をさせていただいておりますので、 国民年金の未加入・未納問題に焦点を絞って、現在の業務の状況及び実務者としての御 要望等も含めてお話しをさせていただきたいと思います。  我が国は、皆保険、皆年金ということで、法律で適用対象の範囲は決まっております が、現実にその方を把握する、そして、また保険料をいただくことによって成り立って おります。したがいまして、把握漏れというのが未加入でありますし、把握はしたけれ ども、保険料をいただいていないのが未納ということであります。したがって、適用対 策、収納対策をあわせて進める必要があると思っております。  時間の都合もありますので、要点をかいつまんで説明させていただきますが、4ペー ジをごらんいただきたいと思います。冒頭申し上げましたように、我が国の社会保険は 皆保険、皆年金ということでありますが、年金で申し上げますと2号及び3号でない方 が1号ということになっておるわけであります。また医療保険の世界では健康保険の本 人及び被扶養者を除き、共済も除きますと、これが国民健康保険ということであろうと 思います。そこで、国保情報を活用して適用対策を進めております。しかしながら、な お漏れている方につきまして、その中でかなりの方は国民健康保険には入っていらっし ゃるということでありますので、ここで図解しておりますように、国民健康保険での資 格の取得というものがありますと、2号ではなくなったけれども、1号の届け出が出て いないことが判明するので、そういった情報がありますと、これはその後の適用対策が 大変やりやすくなるということであります。  また逆に、国民健康保険サイドからは2号でなくなったという情報があると、国民健 康保険の適用が大変楽になるというような御要望もいただいておるわけです。そういっ た情報の交換といったようなことの対策が是非とも必要ではなかろうかと思っておりま すが、その場合には制度が違うものですから、法的な手当てというものも要るのかなと 思っているわけであります。  次の5ページですが、これは第3号被保険者の届出漏れについては、届け出の勧奨を 行いまして、かなり減っておりますが、今後とも届出を忘れますと、せっかくの年金に つながらないということになります。これにつきましても医療保険との間での情報の交 換といったようなものが必要ではないかということであります。  次に6ページでありますが、ここから保険料の収納の状況であります。近年、大変申 しわけないことでありますが、低下傾向であります。8年度は基礎年金番号の付番等で 大変忙しかったということもありますが、新制度に切り替わった昭和61年度レベルにな っておるわけでありまして、これ以上、下がらないように、反転させて上げていく必要 があろうと思っております。  そこで下の図をごらんいただきたいのでありますが、市町村の規模別で大体人口規模 が大きいと検認率は低いということになっているわけでありますが、市町村別に見ます とこれが大変な格差があります。非常に低いところでは55%、56%というようなところ もあるわけでして、これをどうやって引き上げるかということが問題になります。  8ページでありますが、近年低下傾向にあると申しましても、これはすべての市町村 でそうだということではありません。例えば8年度で申し上げましても、前年度に比べ て下がったところと上がったところが相半ばしておりまして、ここで幾つかの例を挙げ ましたが、上の図にあるように、個別訪問等をやっていただいた結果、数年間で10ポイ ントぐらい上がっております。  次に、10ページでありますが、講じている対策についてですが、一番上にありますよ うに、特に都市部に対して個別に御相談しながら指導を申し上げておりますが、一番下 にありますように、市町村の方ではいろいろな仕事をしていただいておりまして、新し く来られた方はなかなか大変だということで、新任の管理者への研修を開始しておりま す。  次に、11ページでありますが、保険料の未納の理由であります。分析しますと、大き く2つになっておりまして、下の方に書いてありますが、1つは「保険料が高く、経済 的に困難」であるということでありまして、国民年金の保険料のいわゆる上限といいま すか、そういうこととの関連もあろうかと思います。  もう一つは、「国民年金をあてにしていない」ということでありますが、これは幾つ かに分かれており、自分で働くからいいとか、個人年金に入っているからいいとかとい うのがありますが、大変憂慮しておりますのは、制度の将来が不安だと、崩壊するので はないかということであります。  そこで12ページですが、上の方のグラフは、未納者のうちで生命保険等に入っている 人の比率でありますけれども、全体では約3分の2、66%になっておりますが、国民年 金の保険料の2倍の掛金を払っておられるということですから、これについては是非と も国民年金の方に先に払っていただく対策が必要だろうということであります。  それから、下の方は専任徴収員の皆さんへの研修の中の討議で出てきた生の声です。 いろんな声が挙げられておりますが、その中に「あなたの老後のために年金に入りまし ょう」というような言い方ではもうだめではないか、「国民の義務である。したがって 払わない人は悪い」とはっきり言わないと難しいというような意見であります。また、 公的年金で損得計算というのはそもそもおかしいというような意見もありますし、公的 年金が破たんするというプロパガンダに反論が必要ではないかという意見もあります。 それから、13ページですが、上の方は折線グラフが検認率で、棒グラフが保険料の額 ですが、保険料はかなり近年高くなっています。下の方は、保険料免除の比率が伸びて いる状況です。 次の14ページですが、免除率を都道府県別にとってみると、かなりの格差があり、そ の理由の1つとしては、免除の認定方法がかなり複雑な仕組みになっておるのではなか ろうかということです。すなわち住民税の非課税所帯が免除、所得税が課税されますと 非免除でありますが、その中間ラインは、生命保険料を幾ら払っておるとか世帯員の生 活状況がどうかとか、いろんなものを入れながら点数で判定をしまして、真ん中の個別 認定(3)というものがあります。  また、非免除でも、昨年に比べて著しく所得が減ったということになりますと、「特 例免除」(4)というようなことがありますので、このあたりはもっと明確な基準が必 要であろうと思っております。  15ページでありますが、検認率は、市町村で集めている保険料でありまして、これは その年度が属する当年度に集まったものの率です。下の図にありますが、ある年度未納 のまま翌年度にまいりますと、未納部分は社会保険事務所で徴収することになります。 これは、「過年度分」と申しておりますが、これにつきましては社会保険事務所、当年 度分は市町村ということでかなり複雑で、事務的にも重複をしており、このあたりをど う考えるかもこれからの課題であると思っております。  そこで16ページの下でありますが、先ほど申し上げました社会保険事務所で徴収して いる過年度分は、上の部分であり、毎年、4、5%ありますが、これについても、今後 はより一層の対策の強化・充実が必要であると考えております。  次は、20ページです。公的年金の趣旨を正しく理解していただくため年金教育を実施 しておりますが、10年度は全県実施をするということで準備を進めております。下にあ りますように、実は「国民年金委員」という仕組みがあり、現在7万人ほどいらっしゃ います。ただ、その普及行動の状況につきましては必ずしも判然としていないので、今 後こういういわばボランタリー的な方の草の根的な広報活動が重要でありますので、こ れにつきましても対策の充実ということを考えていく必要があると考えております。  それから21ページですが、納付しやすい方法については、例えば、保険料の納付場所 として、コンビニエンスストアに広げてほしいというのが実態調査でもありましたが、 会計法との関係で、どうやったら実現できるかが課題ということであります。下の方は 例えば今国民年金事務組合というのがありますが、これは、現在、届出の代行だけであ りますが、こういったところに保険料の代理納付というようなことができるような手当 てができないだろうか、あるいはその下ですが、国民年金基金などで代理納付というよ うなことができないだろうか、という提案であります。  そういたしますと、国民年金は個人個人が相手なので大変複雑ではないかと言われて おりますが、ある程度の効率化はできるのではないかと考えております。  23ページですが、それでも払っていただけない方に対しては、規定上、滞納処分でき ることになっています。しかしながら、現在までの実績は、62年度、平成2年度で合わ せて5件であります。これにつきましてはなかなかそういう状況になかったということ あるいは対象者から「なぜ自分だけが」というようなことで問題になったということで ありますが、昨今のような保険料も上がってくる中で、やはり義務として払っていただ く必要がありますので、周知、あるいはいろいろな対策を講ずる中でどうしてもという 方につきましては、積極的に実施したいと考えております。  それから、24ページでありますが、今のような国民年金の保険料を払うのは国民の義 務であるという考えからいきますと、年金の中だけで考えていてもなかなか大変ではな いかということで関連する問題、分野につきましても、これを連動させてはどうかとい う有識者の御意見であります。山泰彦先生が、「生命保険料控除の適用を外す」とか 「運転免許証の更新の際に、社会保険料納付済みを証明させる」と提言されていらっし ゃいます。高山委員、それから先般大阪での当審議会での意見を述べられました「連 合」の真場先生の意見も載せております。この他、例えば他の社会保険給付との関連で もそういったことができないだろうかというのは1つの検討課題であり、是非御検討い ただければと思います。  27ページですが、これも昨年御説明したことですが、地方分権推進委員会第3次勧告 の中で、地方事務官問題とあわせまして、国民年金につきましても指摘がされておりま す。その詳細は省きますが、保険者は国であるということで、国が保険者としての責任 を果たせということです。  それから、28ページですが、公的年金の経費及び職員についての比較をしてみました とり方が難しいのですが、日本では社会保険庁をとりまして、それぞれ他の国では代表 的な機関をとったものであります。一番左に事業運営の規模ということで、被保険者・ 受給者数を載せておりますが、いわゆるお客様ということです。その右に運営費、職員 数を載せております。内数として、国民年金を示しておりますが、しかもその中の括弧 書というのが市町村へお払いしておる交付金の内数であります。また、職員では市町村 で国民年金に従事していただいている方ということでありますから、これを引いた五千 数百人が当庁の職員ということであります。  そこで、お客様1人当たりどのくらい経費がかかっておるかというのがその次の欄で ありまして、お客様1万人当たりどのくらいの職員がかかっているかというのがその次 です。ただ、右にありますように、若干の他の事業が入っておるというようなこともあ りましてその辺は区分できませんのでそのまま載せております。例えば我々ですと、政 府管掌健康保険もそのまま載っております。  その次のページは、国内で民間生命保険、簡易保険と比較したものですが、これらに つきましては、契約件数ということで同様の計算をいたしました。  それから30ページでありますけれども、私ども大変な情報を持っておりまして、被保 険者の過去の記録からずっと保管しており、他の分野の情報とつなぐことはしていない わけであります。またデータ保護の観点からガイドラインというものを設けております これからの時代、これだけで十分だろうかということで、私どもの気持ちといたしまし て、情報保護の観点からこの際、次期改正では規定が要るのではないかと考えておりま す。  以上です。 ○会長  どうもありがとうございました。ただいま御説明をいただきました2つの事柄につき 御質問、御意見など、どなたからでもお願いします。 ○L委員  年金業務を直接私ども扱っている市町村という立場から1つ、2つ申し上げてみたい と思うのでありますが、会計法上の制約ですか、国民年金は国民年金印紙で処理をされ ているはずなんですが、これは形骸化いたしておりまして、その辺につきましての今後 のお考えを教えて下さい。  もう一つは、国民年金委員の制度があるのでありますけれども、これは実質は生きて おりませんで、国民年金が発足した当時は各家庭等を回りまして集金業務までやってい ただいたという事実があるのでありますが、現在制度としてはあるのですけれども、活 用されていない。先ほどボランティア活動というような御説明もあったわけなんであり ますが、受給者が督促をするというようなことはちょっと難しいのかと思いますが、ま さにボランティア活動的な面においては、やったらおもしろいなという部門でもありま すので、その辺につきまして、さらにどんなお考えを持たれていらっしゃいますか、ち ょっと御説明願えたらと思います。 ○事務局  最初の国民年金印紙の問題であります。これは御指摘のように、当初は手帳に一回の 納付ごとにぺたぺた張っておったわけです。しかし、これは余りに非効率だということ で、市町村に印紙を買っていただくという方式に変え、今最大200万円の印紙もあります しかしながら、先ほど申し上げました地方分権委員会の報告の中でも、これはもうやめ なさいということになっているわけです。  方向としては、端的に申し上げますと、1つは、市町村ですべて最後の滞納処分まで 含めた過年度も行っていただくという整理をするというのがありますが、これは会計法 等その他の問題で、市町村が国の歳入を扱うというのは難しいということがずっと言わ れておりまして、今も変わってないわけであります。  もう一つは、当年度分につきましても、私どもの方で直接行うのかということであり ます。今後、どういう方向に持っていくかということにつきましては、そのほかの国民 年金業務の問題も含めながら真剣に考える必要があろうと考えております。  それから、2つ目の国民年金委員の問題でありますが、御指摘のように、制定当初こ れを大いに活用しようという発想でありました。しかしながら現実に個別訪問して保険 料を集めてくるということにつきましては、数年来、嘱託職員である専任徴収員という のが市町村で置かれているようになっております。国民年金委員の活用も必要ではなか ろうかと考えておりますが、正規の職員のほかに専任徴収員ということもあろうと思い ます。  国民年金委員もボランティアとして活用してはどうかと御指摘いただいたわけであり ますが、大勢の受給者がいるとの御指摘もございましたが、受給者が、例えば自分たち の年金は若い人たちの社会連帯でいただいていると地域での会合でも言っていただけれ ば、公的年金の正しい趣旨の普及広報ということで、大変効果的ではなかろうかと考え ております。いわば「歩く宣伝塔」と申しますか、一方では厳しく徴収対策を進めなが ら、一方では理解を求めていく、それを両方相まって対策の充実を図っていくことが必 要ではないかと考えております。 ○B委員  国民年金の未納・未加入に対するいろいろな対策があると思うのですけれども、やは り国民に義務意識を持たせるということは大事だと思うんです。基本的には公的年金は 所得再分配機能を持つという理念を貫徹させるというか、はっきりさせることが重要だ と思います。所得再分配によって人々が共存していけるという、そういうビジョンを国 として明確に出すということが大事ではないかと思います。 ○A委員  今、事務局から、業務問題ということで御報告いただいたのですが、これは単なる業 務問題をはるかに超えた深刻な問題なのではないか。伺っていて慄然といたしました。 我が国の公的年金は制度的に言っても、いわば基礎年金が土台で、我々の被用者年金 の2階というのはその上の建屋みたいなものだとすれば、むしろ土台が腐っちゃってい るというのが今御報告を伺っての率直な印象なので、その土台そのものの問題をどうす るのかということを抜きにして、2階の建屋の柱を外すだとか、高さをちょっと低める とか、そのときに床面積をどうするかといったような議論しかしてないのが例の5つの 選択肢というのが率直な印象なので、この際、土台の腐れ方についてきちんと認識を統 一し、次期改正についてできることは一体何なのか、その先の課題は何なのか、少なく ともこういう認識について、本審議会としてきちんと整理して、国民に対して明示すべ きではないか、そのように思います。 ○M委員  この問題はかなり複雑で、私は財政学もやっておりますが、税金を課税するときに、 多分この階層の人々は課税最低限以下の人がかなりいます。もともと税金を取ること自 身もかなり難しい問題なんですが、課税最低限以下の人からどういうふうにして保険 料を取るかというのは行政的にも難しい問題を含んでいるんですね。単純に言えば、私 はこの辺は非常にクールに考えているのですが、要するに税金を払ってない人に税金に 近いものを払ってもらうにはどうすればいいか。平たく言えば、税金というのは罰則も 非常にはっきりあるし、徴税というのは、ある意味では国家権力的な強い部分ですが、 保険料のケースはややそのものは弱いんです。  そうなったときに、どういうふうに払ってもらうかというのは非常に頭の痛い問題で 正直言ってすぐに解決策があるとは思えませんが、ですから、ここのところは、税方式 とかいろんなことを言っておられますが、税方式に移るというのは、これは役所間の縄 張りで大変厄介な話なんですが、ある部分は徴税義務に類した部分にした方がいいとい う可能性もあり得るし、その辺の部分が非常に難しい問題で、なかなか自発的にうまく 負担してもらうというのがうまくいくのか。自発的では決してないんですが、自発性が 税に比べれば強い部分ですから。 ○A委員  自主の部分。 ○M委員  その部分は元来的にかなり難しい部分があるような気がするということを、やや評論 家的で恐縮ですが、そういう感想を持つ。 ○N委員  この未納・未加入問題から第3号被保険者、この資料の15ページにまとめてあります ことについて、今まさに徴収の問題についての御議論はM委員のおっしゃったとおりな んだろうと思っておりまして、今、委員もおっしゃいましたように、この見直しを図る ことになりますと、ただちに社会保険方式を廃止して税方式に移管しなければいかんと いうふうに考えざるを得ないのかどうか。税方式負担という形で考えるのはもちろんい いと考えましても、そこへ行き着くまでの全体の理解や仕組みの仕方は物すごく難しい のだろうと思います。  もう一点、従来から言っておりまして、まことに恐縮なんですが、もう一回どうして も言いたいんですけれど、前回の見直しの際の法改正の附則にまで、税負担といいます か、負担割合の引上げについて検討するということがあるわけですね。それがありなが ら、もちろん今のこうした財政の難しい事情がありますから、簡単にモノは言えないと いう事情はよくわかりますが、ただちにその場合に、財源をどこから求めるかという話 に行き着かざるを得ないのかどうかと常に思うわけであります。  もちろんそうなりますと、今議論が出ております財政改革の論議の状況をどんなふう に把握するかということになるわけなんでしょうけれど、前回の経緯を踏まえれば、こ の負担割合の引上げの問題をこの審議会としてどんなふうに考えていくのかがやはり明 らかにされないと次になかなか移っていけない。今回の大きな見直しは、当然さっきか ら議論が出ていますけれども、負担の引上げであったり、給付の見直しであったりする わけですから、それを全体としてやはり理解してもらうためには、この問題についてど う考えるのかということについてぜひ方向を出していく必要があるのではないかと思っ ている次第です。大変難しい問題だと思いますが、年金制度見直しへの信頼性のことと か国民理解ということからしますと、そういうことを一回やらなければいかんのではな いかと思います。  それから、まことにこれは細かい問題でして、この場で必ずしもふさわしいかどうか という部分があるのですが、若干私の立場から一点申し上げておきますと、実は基礎年 金の拠出金の分担方式がありまして、御案内のとおり、加入者数の割合で負担するとい う仕組みになっておりますが、全体として制度の不公平感の議論がどうしても出ており まして、その点についてもぜひ論議の課題に上げていただいたらというふうに考えてお ります。以上です。 ○J委員  今、国民年金のお話をお聞きしまして、厚生省は厚生省なりにいろいろ御努力を願っ ているのだと思いますが、どっちにしましても、免除者の数ぐらい滞納者や未納者がお るわけですから、これはやはりある程度解決をしてやらないといかんのだと思います。 ただ、私たちがいろいろお聞きしていますと、市町村で徴収に関しては限界にきている というのが現場の人の話なんですね。ですから、もう少し市町村が取りやすい方法でや らなければいかんのだと思っております。  例えば、この中にもありますが、山先生なり高山委員なり、真場さんがおっしゃっ ているようなことを、要するに指導してやるということではなくて、法律にちゃんと所 管庁があるのでしょうけれども、またがっているのだと思いますが、法律ではっきり決 めてやってもらうということをしないと、いくらやっても前に進まないと思います。そ うしないと、いつまでたっても結局、厚生年金なり、共済年金なりの負担増加につなが ってしまうわけですから、そこをやはり厚生省としても、これから広報なり啓発活動な どを強化しながらやらなければいかんのですが、1つは現行法の加入手続きに関して届 出主義をとっているわけですね。これは未加入者の増加の一因に当然なるわけですから 職権による加入を認めるということも考える方がいいし、あるいは郵送による届け出を 認めるというようなことも考えなければいかんのではないかという気もいたします。  さらに大変高額の所得者で滞納している人があるということを聞きますけれども、こ の人たちは、先ほどお示しのように、個人でそれぞれ民間の保険に入っている方が大変 多いのですね。そういう人たちに個人保険で間に合うから、自分は納めないんだという ことではなくて、やはりそこは強制的にちゃんと取るものは取るということをしてやら ないと、これ以上の徴収は進まないと思います。  また、空洞化の話について、結局免除者も非常に多いのですが、そのためにある程度 国庫から負担をしてやらなければならない事態はあると思うのです。ですから国会の決 議2分の1というふうに基礎年金にもう少しつぎ込めという話をしていますが、やはり 少し国庫で踏み込むかどうかという議論もしてみなければならないという感じもいたし ます。  それから、学生が非常に多いのですね。学生の未納者がなかなか多いということがあ りますが、この場合は、本当に取るつもりなら、やはり学生は無収入ですから取れない ですから、親から取るか、あるいは高山委員がおっしゃっているように、障害年金との かかわり合いは非常に強いわけですから、障害の部分だけ取るとか、何かそういうやり 方は私はあるような気がするのです。だから、そこは工夫をしてやるということを考え られた方がいいのではないかという感じがいたしております。 ○H委員  今の御質問というのか、御意見と重複するかもしれませんが、M委員がおっしゃった ことは非常に、いなくなっちゃった。お帰りですか。 ○会長  お帰りです。 ○H委員 事務局に聞きますが、確かに課税最低限以下の人から保険料をどうやって取るかとい うのは理論的には大変おもしろい問題だと思うんですけれども、資料の12ページに、さ っき御指摘があったように、実際は未納者の7割が生命保険や個人年金に加入している というような事実もあるということになると、未納者のうちのどれくらいの人が、M委 員のおっしゃる課税最低限以下の人なのかということですね。あるいは免除基準のこと が後ろの方に書いてありますが、不勉強でちょっとよくわからないんですけど、免除基 準と課税最低限との関係はどういうふうになっているのか。  それから、M委員がああいう御意見をおっしゃるインプリケーションとしては、だか ら、消費税方式でやれということをおっしゃりたいのかなということを聞きたかったん ですけれども、次回でも結構です。 ○事務局  免除につきまして、少し説明が至らなかったのかもしれませんので改めて説明いたし ます。14ページをごらん下さい。真ん中の図の左ですが、市町村民税非課税の所帯は免 除であります。もちろん手続きは必要ですが、非課税の方から保険料をいただくこと はございません。逆に、右の方で、住民税は課税になっているけれども、いろいろな理 由で免除になっている方がいらっしゃいまして、それが上のグラフにありますような都 道府県における差にもなっております。概念的には、本当はかなりの所得があるけれど も、特別な理由で免除になっていらっしゃる方がいるのではないかと推察しているわけ でありまこれらの方について、さらに適正に審査していきたいと考えております。  それから、J委員から大変ありがたいお言葉をいただいたと思っております。資料に も若干有識者のものを掲げさせていただきましたが、徴収をする場合に、運転免許証と かの他制度と連動させなければ、本当の義務として動かないのではないかという御指摘 ですが私ども実務者としては、まさにそういうものをお願いできればと考えております また、届出につきましても、簡素化を進める観点から、郵送などの方法について検討し てまいりたいと考えております。  学生の保険料につきまして、親から徴収することについては、実は既にやっておりま す。あと、いろいろ検討しておりますこととしては、国民年金事務組合の法定化がござ います。現実性はどうかということがあるかもしれませんが、例えば大学に事務組合に なっていただき、まとめて授業料と一緒にお集めいただくとか、あるいは商店街とか同 業組合とか、自営業者の方もいろんな組織がありますが、そういうところで会費収入と 一緒にお集めいただくようなことはできないのだろうかと考える必要があろうと思って いるわけであります。  N委員から、拠出金の分担方式というお話があり、A委員からも御指摘がありました が、以前のように、自営業者だけの年金ではなく、1号、2号、3号皆さんが均等に負 担をして、基礎年金を運営をしているということですので、1号の方で、本当は所得が あるにもかかわらず、先ほどのお言葉をかりますと、生命保険には加入するけれども、 年金保険料は支払わないというような方がありますと、これはほかの方々から見れば許 せないことであると思います。そういう意味で、基礎年金制度が国民共通のものになっ たということでありますから、我々一層努力をしたいと思います。  そういたしましても、保険料の額が大きく影響してきているのかなと考えております が、れは国庫負担とも関係し、制度問題でございます。それから、A委員から、土台が 腐っう話がありましたけれども、私どもはそうは思っておりません。傷みかけてはいる とは思いますけれども、これを補修をして、建物をしっかりするのが、私ども実務担当 者の任務だと思っておりますので、ぜひ、御指導、御支援をお願いしたいと思います。 ○O委員  私、よくわかりませんけど、一番不思議に思うのは、社会保険制度というのは共通の ものだと思うんですね。ですから制度は違うという御説明があったけど、1つのものだ から、健康保険、国民年金、それから介護保険もそうでしょうけど、そういう社会保険 というものを一本化するという考え方であわせて取るというのが一番手っとり早い方法 ではないかと思います。コンピュータも発達していることですから。特に健康保険は、 の聞いたところでは、自分が病気になったとき困るから必ず加入しているんですね。年 金の方は、何だかわけわかんないというので掛けない。だから、社会保険だから、一括 して取るというのが一番すっきりすると私は思います。 ○E委員  別のところで恐縮ですけれども、最初の事務局が御説明になった資料の14ページ、報 酬比例部分との割合の関係なんですが、14ページの表の下段の、同じ割合で抑制した場 合と、基礎年金を抑制しない場合の2つのケースが書いてございますけれども、先ほど ありました国庫負担の関係からすると、左側のケースの方が国庫負担が少ないと。右の 方は、個人あるいは事業主の負担が少ないとそういうふうに読んでよろしいのでしょう か。 ○事務局  これは現在のシェアのままで行けばというのが左でありますから、仮に右の方に動か しますと、これは1階部分を固定して、2階部分を減らせば、トータルの給付費に占め る国庫負担の額は実額としては確かに相対的に多い形になると思います。 ○E委員  それで、個人事業主の負担が少なければ少ない方がいいということでは必ずしもない んですけれども、基礎年金の部分について、国庫負担の割合を増やそうという考え方が あったと。ただ、現在財政上苦しいということはわかるんですけれども、今回国庫負担 の率をフロアで下げるのが果たしていいのかどうかというふうに思います。  事業主の立場からしますと、負担は少なければ少ないほどいいのは当然なんですが、 今よりも減らしていくというのではなくて、今よりも増えていくだろうということにつ いて、負担の適正化をお願いしている立場なんでありまして、そういう意味では、考え 方としては、左方の考え方を従来の考え方であれば、足元の財政の問題を除けばあるの ではないかと思います。  続いて、税方式と社会保険方式についてでございますけれども、21ページですが、消 費税でとりますと、足元で3.2%、将来は9.3%も増えると。したがって、ここのところ は税方式が現実的でないというふうに詳細に説明があるように思われますけれども、逆 に言いますと、9%も消費税を取らざるを得ないような負担を、税方式でなければ、結 局個人と事業主が負担をするというのが現状なわけですね。したがいまして、これは給 付のレベル等を変えれば、この消費税の率も変わるのだろうと思いますが、現実には消 費税を上げるということは政治的には短期的には難しいと思いますけれども、10年後、 20年後でも結構ですけど、こういった問題は十分可能性としては議論しうる余地を残し ておかれた方がいいのではなかろうかというふうに思います。足元はいかに税方式は非 現実的なふうに書いてあるのですが。それから、公平、不公平のことにつきましては、 当然この制度を変えれば変わるわけですが、あるときには低所得層から見て不公平、あ るときには中高所得層から不公平と。当然変われば、どちらかが不公平になるわけです がこれも足元ではそう見えますけれども、10年、20年後は本当にどちらが公平かという ことはまた議論があろうかと思いますので、今回無理でもこの議論の種は国民的な議論 としては残すべきではないかというふうに私は思います。 ○P委員  A委員から、土台が腐っているのではないかというお話がありましたけれども、未加 入・未納問題、これの難しさというのは確かに制度問題がそのまま反映しているという ことは言えると思いますし、その一番大きいのは保険料の高さだと思うんです。  先ほどの資料の説明の中でも、かなり保険料が高くなっているということが言われて おりますけれども、たしか60年の最初の5万円年金のときの国民年金の保険料は6,700円 か6,800円じゃなかったかと思います。それが今1万3,000円を超すということで当時考 えておった成熟期の保険料まできているということは、それだけ国民年金の保険料の引 上げのスピードが速いということで、それは何に起因するかというと、やはり1つは、 この前の改正で、国民年金の給付水準については、物価スライドはやっていますけれど も、賃金スライドのルールがないわけです。今までの改定におきまして、政策改定でか なり高い、賃金改定と同じようなレベルで改定が行われてきたということから見て、国 民年金の保険料というものは当初考えていた以上のスピードできているのではないか。 ですから1つは給付水準の問題で、先ほど議論になった中で、さっきスライド問題で 物価スライドと賃金スライドの問題がありましたけれど、国民年金の政策スライドをど うするかという議論もやはり研究する1つの課題だというふうに考えられます。 それから、もう一つの、国民年金の保険料が非常に高いのでどうするかと。前回の改 定の際に2万円以内におさめようと。しかし、現実問題としては非常に大きな問題があ ると。そこで出てきたのが国庫負担の問題ということで将来課題に残したわけです。そ こで、今の情勢から見ると国庫負担問題に取り組める情勢ではありません。消費税の引 上げというのも非常に難しい問題でありますけれども、やはり国庫負担問題、しかも一 遍に社会保険から全額税に移行するということじゃなしに、その中間段階で国庫負担の 引上げもあろうと思いますし、それから、今若い人にだけ負担をかけるということです けど、消費税ということであれば、老人もそれだけ負担するので、やはり選択肢として 国庫負担の増、それから、将来、その財源を消費税に求めるという選択肢も将来問題と して考える必要があるのではないか。  ただ、現実問題として、今の財政構造改革法なり、最近の経済情勢から見て、国庫負 担の引上げということができないという段階だと、現実に未納あるいは滞納がどんどん 増えるということを考えると、当面の策として、ある程度払えるだけの保険料に見合う 段階的な給付というのも当面考えていいのではないかというのを1つ提言したいと思い ます。  それから、もう一つ、最後に実務上の問題で、これはどうしても住民に直結する、市 町村でいろいろ御苦労いただいてやっていかなければいけないと思いますし、社会保険 庁でもいろいろ努力していると思います。ただ、現実に国民健康保険の徴収率と比べる と国民年金の場合にはどうしても低いわけです。国民健康保険の場合は経営責任が市町 村の場合ありますけど、国民年金の場合、経営責任がありませんから、どうしても徴収 の方は国保の方が重点になるわけで、国民年金は後回しになるということもありますの で、先ほどいろいろ出ました問題を含めて、保険者という立場でさらに一層の御努力を お願いする必要があるのではないか。以上でございます。 ○F委員  先ほどE委員、今のP委員もおっしゃいましたけれども、今回の改正で、基礎年金部 分のところに関係することですが、先ほどからお話が出ていますように、土台論もあり ました。私はそれをしっかりさせるために、国庫負担問題を現在の3分の1からどうす るのかという点についてはいろいろ閣議決定の話もあり、前回改正のことも重なり合っ ています。ゆくゆくは税制全体の見直しを図って、直間バランスを変えて、消費税で取 っていくというスタイルに変えてでも、国庫負担という問題については安定的なものに し、さっきの土台論の方に結びつくようなことにしていく必要があるのだろうと思って います今回の改正で一挙にそこまでといかなくとも、今、P委員のお話もございました けれども、少なくともそれの切り口みたいなものは、今回の全体情勢的なもの、あるい は結末のところに盛り込んでおくべきではないかというように考えております。  それから、もう一つは、先ほど事務局からお話がございました、年金業務に関して、 国民年金委員ということで少し現状の報告もございましたけれども、やはりボランタ リーというか、そういうものをもっともっと社会全体で活用していくようなことで、再 活性化を図るということも大変重要なことではないかというように思っています。それ こそ年金受給者で、そういうボランタリー精神を持った人を、もっと社会的に有益な形 で活用するというのも1つの策ではないかというように思っています。O委員の意見も 大変貴重だと思いますけど、一方でそういう努力をなおやってみるという必要もあるの ではないかというように思っています。 ○G委員  先ほど最後に事務局から、物価スライドのゾーン制についてスウェーデンの例が紹介 されまして、スウェーデンは1.5%という基準があるという御説明だった。全くピント外 れな答えなんですね。スウェーデンは特殊なスライドをしておりまして、給付を決める ときに、賃金が1.5%上がっていくということを仮定して給付を決めているんで、これは 日本と全然違う異質なやり方なんですね。だから1.5%というのが問題になるわけです。 私がお願いしたのは、1.5%を超えて、例えば0.1%賃金が上がった場合どうするかと か、あるいはアメリカとかイギリスとかドイツだとか、そういう国で、0.1%上がったと きに本当にスライドしているのかということを調べてほしいということをお願いしたわ けでありまして、全くピント外れな答えだったというふうに申し上げざるを得ません。 それから、基礎年金についてはいろいろ議論があるのですが、先ほどN委員から意見 があったんですけれども、頭割りでやるというのは、被用者として非被用者の間のバラ ンスをとるためにはそういう考え方だった。被用者内部では頭割りでなくていいという のがもともと財政調整をやったフランスで導入された考え方でありまして、これは厚生 省の皆さん御存じのはずなんです。 当時、この制度を導入したときの厚生省の年金局の関係者のいろんなメッセージとい うのは残っているんですけれども、これは大チョンボであったということを述べている 方がいるんですよね。ずっとそれを訂正してない。それで今日まで来ているということ でありまして、これは全くおかしなことだと思うんです。N委員の説はそういう意味で は全くそのとおりだと思います。 それから、前回の年金審議会は午前中にあったんですけれども、午後、日経の夕刊に 女性の年金問題の記事があったんですけれども、審議会の意見とは全く別の紹介の仕方 になっていたというのが私の理解です。あるいは東京新聞は、全く審議会の意向とは全 然無関係の記事をその後発信しているんですね。恐らく記者クラブにみんな詰めている 人たちですから、厚生省から情報をとって記事を書いていると思うんですが、広報の仕 方についてもう少し工夫をしていただきたいと思うんです。年金審議会ではどういう意 見が展開されているかと。これは今でも議事概要が1回後に発表されているんですが、 マスコミはもっと走っているんですね。今何が行われているかすぐ発表しちゃう。  きょうの日経の朝刊によりますと、きょうの議論が先取りされて紹介されているわけ です。日経の朝刊によりますと、基礎年金を仮に全額税方式でした場合どうなるか。サ ラリーマンについては、保険料率の低下より消費税率の上昇の方が高いと聞いていると だから、実質的には負担増になるんだということを書いているわけです。ここには括弧 書きで、年金局の情報だと書いてあるんですね。年金局はきょうお示しになった資料で はそんなこと全然書いてないわけです。  どうもマスコミとの関係で、厚生省年金局全体としてたがが外れているのではないか というふうに思わざるを得ません。資料の示し方もそうですし、広報の仕方について、 もう少し工夫をしていただきたい。せめて嘘の情報は流さない。おかしなことは言わな いということに注意をしてほしいと思います。これは年金局長に改めて申し上げたいと 思いますけれども、たがが外れているのではないかという印象を私は最近深めておりま すので、その点、御注意いただきたいと思います。  現在、基礎年金について、税方式への転換は、財政構造改革法のしばりでなかなかで きないんですけれども、財政構造改革法自体が今見直しの対象になっておりまして、ど うするかという議論が同時進行しているわけですね。この税方式への影響のところも書 きっぷりは非常に消極的なニュアンスが私は強いというふうに拝見しているんですが、 もうちょっと国民にオープンな議論をしていただくための資料という工夫をしていただ きたいと思うんです。ちょっと評価のところというか、書きっぷりがやや偏っていると いう印象ですね。消費税についてもこんなに負担があると書いてあるんですけれども、 では社会保険料だったら負担にならないのかという問題。全く同じ金額を国民年金保険 料で取っているわけですから、一方的に書きすぎるのではないかというのが率直な印象 なんですね。気持ちはわかるんですけれども、資料の示し方として、残念ながらバラン スを欠いているというふうに申し上げざるを得ないということであります。 ○事務局  マスコミ関係でたがが外れているというお話ですけれども、これは対マスコミにつき ましては注意しなければいかんというのはそれは当然でございまして、私どもも重々注 意しているつもりでございます。ただ、マスコミというのは役所でないわけでございま して、独自の独立した主体ですし、独自の取材はあちこちやっているわけでございます ので、マスコミについて、私どもがコントロールできるわけはないわけでございますし マスコミが書いたことについて、役所が責任をとれとか、おかしいとか、そういうこと は、私どもとしてはできない相談ですので、そこは御理解いただきたいと思います。 ○B委員  最初のことでもよろしいでしょうか。最初の基礎年金の給付水準についてどう考える かというところですけれども、政策というのは、生活実態の上に策定されなければいけ ないと思うのです。そういう意味では、きょうお示しいただきました老齢年金受給者実 態調査の結果というのは大変貴重な資料だと思います。  それで、高齢期に夫婦2人の世帯と、それから1人暮らしになった世帯の年金をどう 考えるかという問題が1つあるのではないかと思います。年金白書では179ページのとこ ろ衣食住にかかわる消費額は、1人の場合は7万2,000円で、2人の場合は11万6,000円 ということで、1 人の場合は半分にはならないわけで、もう少し生活費がかかるわけで すこの実態調査によりますと、女性の受給者の約半数が配偶者がいないわけですね。配 偶者がいくても子供と住んでいるとかということがありますから、必ずしも1人暮らし ではないのですけれども、配偶者がいないという、恐らく単身が多いであろうというこ とが想像できるわけですね。  年齢分布としては、65歳〜74歳が多いということで、その65歳〜74歳の年金額がどの くらいかというと、100万円未満のところが約7割となっています。非常に年金が低いわ けで、高齢世帯の中での所得格差というのはかなりあると思います。  これは先ほどの国民年金の繰上げ減額率が、高過ぎるのではないかということもそう いうところに関連するのです。女性で働けないとか、病気であるとか、障害があるとか そういうような場合の減額率の議論にもかかわってくるのですけれども、果たして夫婦 2人の年金の2分の1で1人の年金が十分なのかどうか。生活実態に応じて調整をする というような視点が考えられてもいいのではないかというふうに思いますので、給付水 準について、少し戻りましたけれども、意見を述べさせていただきました。 ○C委員  いわゆる社会保険と税金の関係なんですが、税には再配分機能があるわけで、社会保 険でも再配分機能は部分的に持つことは構わないと思いますが、限度があると思うんで すね。14ページの表を見ますと、60%というのが出ているのですが、それ以上にもしや るとすれば、税でやった方がいいのではないかということに、私はなるのではないかい う気がします。したがって、社会保険で富の再分配機能を果たしながら、しかし社会保 険料を掛けている人にとっても、自分で掛けている魅力を感ずる限度というのがおのず とあると思うんですが、6割というところは私はぎりぎりのところではないかという感 じがします。もし、これ以上進むという話ならば、思い切って税金でやってくれという のが常識的なモノの考え方ではないか。  一方、先ほど来、土台が腐っているという話が出るほど、相当深刻な状態であること は間違いないし、それに対して、先ほど来、P委員だとか、あるいは健康保険と一緒に してやったらいい、いろんな御意見は出ています。ただ、私はさっき御説明のあった、 例えば親から取るなんていうのはとんでもないと思っているんですよ。大学のお金だっ て出すのはおかしいと私思っているんですが、ましてや年金まで親が出してやるなんて それこそ自立しない人間をつくることになりますから、これは男であろうと女性であろ うと、日本人としてなってない。例えばアメリカなんかそんなこと考えられもしないと いうことでございますから、そういうようなことは、親がかりはやめてもらいたいと思 いますし、そういうことをずっと詰めていきますと、と同時にさっき私もM委員にもお 聞きをしようと思っているんですが、なぜ日本の課税最低限がそんなに高いのか。この 辺も1つ問題がある。  もう一つは、今、日本で大きな課題となっていますが、恐らくどなたも反論がないと 思うんですが、法人税の改定の問題、所得税の改定の問題、国際的に高過ぎるという問 題はあるわけで、そういういろんな財源の問題をずっと考えていきますと、もう一つは 取られる御苦労、これを徴収していかれる御苦労、それから、本来の税の再分配の公平 性の観点、そういうものをずっと突き詰めていきますと、直間比率の問題にぶつかって いくと思いますし、そういう問題をのけて議論することはなかなか難しくなるのではな いか。一番冒頭にG委員がおっしゃったような問題に私はいくような気がして仕方がな いんですが、ただ、今いろいろなしばりがありますから、どこまでその議論をするかと いうことですが、そういう展望を描きながら1つの構想を描いておかないと、後々これ は非常に大きな失敗をするような気がして仕方がないんです。  そういう意味で、少しフランクな議論をやらせていただきたいなというのが私の希望 でございます。 ○A委員  土台が腐っていると申しましたら、各方面から御批判やら何やらちょうだいしている ようなのでちょっと申し上げます。今の1号被保険者ないしは1号被保険者たるべきグ ループの実際の未加入・未納という問題は、この白書の中でさりげなく数字で示されて いますけれども、極めて深刻な水準です。先ほど事務局から御報告があったように、収 納率は傾向的に低下しているわけですね。この傾向的な低下といっても、今の社会保険 庁や各自治体の徴収担当者の大変な苦労によってかろうじてそれが支えられて現状程度 である。恐らくそこには大変なコストがかかっているのだろう。伝えられるところによ ると、1,000 円を集めるのに100円以上かかっている。つまり、これは収納率が仮に上 がったとしても、こういうような高いコストでもって集められているということになれ ば、それ自体が問題なんだと思います。 今、私どもの年金白書からざくっとした数字を拾って少し自分なりに計算してみたの ですが、結局、未納している人たちの分を保険料を払っている1号と2号とで負担して いるわけですから、未納者の分だけ余計な負担をさせられているわけですね。この未納 ということによってどのくらい負担が多いのかというと、もし全員がきちんと納めてい たらという場合に比べて8分の1ぐらい、12、3%高い。このことは逆に言えば、我々 は現在17.35%ですが、ちゃんと納められていれば、2ポイントぐらい保険料はそのこと だけで引き下げられるはずのものを余計に取られているということになるわけで、その ための金額も全体で概算で見ると880億円ぐらいだし、その中の650億円ぐらいが2号の グループから払われているもので、こういったものが、今後もっと妥当なところへ近づ いていく、つまり徴収コストを上げないでも適度にこれは回復していくのだということ があれば、事務局が言っていたようにいろいろ傷んでいるけれども補修してという話に なるのでしょうけれども私は、そういう見通しは現状からは立ちそうもない。これを腐 っているというふうに申し上げたわけであります。  こういうような事態が、つまり650億円もの余計な保険料をこういう現象のために取ら れるということであれば、現在の基礎年金制度そのものをもう一回チャラにして、国民 年金は国民年金、被用者年金は被用者年金というふうにもう一回分割してもらうことを 我々は考えざるを得ないところへ行くだろう。このことはこの機会にはっきり申し上げ ておきたいと思います。 そういうことを避ける道があるとすれば、どういう道があるのか。このことこそ選択 ということに値する問題なので、先ほどG委員から御紹介ありましたが、現在の基礎年 金制度の導入にそもそも非常に大きな問題があったというお説を、もし当時の関係者が 述懐しておられるのであるとすれば、当審議会にとって重大な検討材料であるべきでは ないのだろうか。一方で、皆年金、皆年金と言いながら、皆年金なんて一遍も実現して いない。一方では徴収係の人たちの労働に対する意欲すら削り取るような望みのない仕 事に多くの人が追われている。他方で、我々の方から、先ほども言ったように、650億円 もの過剰な負担がこのために生じている。こういう事態を放置した上で、2階の建屋部 分の高さだとか広さだとか体積だとか、あるいはそれとのバランスでもって、基礎年金 の給付水準をどのくらいにしたらばいいだとかという数字遊びにこれ以上つき合って議 論する気はないというふうに思っています。 ○事務局  未納・未加入者のために2号が犠牲になっていると、これについて、前、この審議会 でも資料をお出しして御説明したことがあるわけですけれども、もう一度事務局の方か ら御説明します。 ○A委員  2号だけと言っていませんよ。1号の納めている人もですよ。 ○事務局  はい。そういう未納・未加入のために、2号とかちゃんと納めている人が犠牲になっ ているというお話ですけれども、そういうことはないわけですから。 ○A委員  ないわけではないです。そんな乱暴な論議ではしょうがありません。 ○事務局  先ほど国民年金の方の未納者が被用者年金の方のサイドにどういう影響を及ぼすかと いうことですが、もともと基礎年金の拠出金の算定に当たっては、各制度が拠出金算定 対象者の割合で案分するという仕組みで制度が発足したわけで、拠出金算定対象者とい うのは、将来、給付に結びつく、いわゆる保険料拠出者をベースにして基礎年金の拠出 金を算定するという仕組みになっております。  保険料未納者が存在することによって、当年度では1人当たり拠出金算定対象額は増 大することになりますけれども、そういう未納者は将来給付が受けられないということ で、将来における1人当たりの拠出金算定対象額は減少するということになります。こ のことは、国民年金の保険料未納者の存在によって、被用者年金制度の拠出金が当該年 度において増大するという関係にはなりますが、もともと基礎年金制度というのは、20 歳〜59歳までの全国民によって支える制度でありますし、未納者の存在によって1人当 たりの負担の増大を1号被保険者だけに帰属させるという、ある意味では制度を分割す るということは合理的ではないのではないかという面がありますし、また、繰り返しに なりますけれども未納者は給付は受けられないということで、結果として将来における 拠出金の相対的な減少につながる。こういうことから被用者年金各制度が一方的な持ち 出しというふうに見るのは適当ではないと考えております。 ○A委員  そういう議論をされるのだったら少し申し上げますけれども、一方で未納者がいるた めに、我々は先ほど言ったような過剰な負担を強制されている。他方で未納者は将来無 年金者になる。あいつらは、どうせ先行き不幸せになるんだから、おまえらも多少不幸 せでがまんしろと、こういう理屈でしょう。  国民皆年金という議論というのは、国民全体に安全・安心をもたらすという制度のは ずなんですね。片方で未納で無年金者が出る。これは皆年金制度なんていうのは成り立 っていないということをまさにお認めになった。他方でそういうことによって生ずる負 担が実際にちゃんと納めている連中の肩の上にかかってくる。両方とも不幸じゃないで すか。片方の不幸のために片方が不幸を負う。こういうのはシステムそのものが間違っ ているのであって、せめて、あんたらは過剰な負担を負っているけど、そのことによっ て得している人もいるんだから泣いてくれというんなら、同意できるかどうかというこ とはともかくとして、それはそれで1つの理屈かもしれないけど、あんたらは余計に負 担しているけれども、あいつらも不幸なんだからあきらめろ、そういう話は非常に間違 っているので、これは今の事務局のお話が間違っているというのではありませんよ。こ ういう現実が出てくるような制度そのものが間違っている。土台が腐っているというふ うに申し上げたのはそういうことですし、ただいまのような御説明で、将来、あいつら が不幸せになるから、今の過剰負担はがまんしてくれというのはお断りいたします。 ○J委員  これは話は全然違いますが、地方分権推進委員会から第3次の勧告がございまして、 地方事務官制度が廃止になって、これから市町村に対する機関委任事務が全部廃止にな りますが、そこで結局これからの年金業務をやるときに、個人の情報の保護とか、さっ きお話がございましたが、あるいはそういうことを土台にしながら、市町村の事務をも っと簡素効率化するような方向にやはり御指導していただかなければならないのではな いかと思います。  実は厚生省は大変嫌がるのですけれども、もう少し、年金の一元化のときにもお話は 申し上げましたが、市町村にある住民基本台帳をお使いになることの方が本当は市町村 としては大変助かることにもなりますから、そのことは少し明記をしておいていただき たいと思います。  もう一つは、前から申し上げていて、税のことが問題になりましたが、私は今の国の 政策も転換期にきておるし、公共投資の議論も非常に変わってまいりました。私はこれ から高齢化なり少子化に対する政策は非常に大事になると思っておりますから、そうい う点で、今の消費税のようなものを目的税化していくということはある程度必要なので はないかというふうに思います。  もう一つは、先ほどC委員から大変お叱りを受けましたが、親が支払うのはけしから ん。そんな学生はという話がございましたが、私はそういうふうに申し上げているので はなくて、要するに無収入の学生から1万円を超える額を取るというのはもともと無理 な話であると思います。だから、どうしても取るというなら、親が払う以外、手がない ではないかということを申し上げているのであって、そういう学生がけしからんとおっ しゃるのであれば、そういう学生に対するC委員と私の見識の話ですから、これはこれ 以上の話はしません。 ○C委員  最後のところだけ、ちょっと一言。私は、親がけしからんというのも、仕組みがおか しいといっているので、奨学金みたいな格好で、学生が自分が収入を得る時期になって 払うような制度をつくったらいいのではないかということでございまして、とにかく親 に払わせることはやめてくださいという意味でございます。 ○事務局  学生の保険料を親から徴収していると申し上げましたが、勝手に不当に取っているの ではなく、現行法では負担義務者は世帯主となっており、世帯分離をされていなければ 世帯主は親でありますので、保険料をいただいています。学生から徴収するかどうかと いう制度問題とは別であろうと思います。  それから、J委員から、また市町村の事務簡素化を改めて御指摘いただきました。地 方分権推進委員会第3次勧告の指摘でもそのとおりでありまして、市町村の負担もでき るだけ軽減ということになっております。私どもの制度は冒頭申し上げましたように、 2号、3号でない1号の方が市町村から、2号の方は特に事業主からそれぞれ情報が社 会保険事務所に出てくるという、複雑な構造になっております。そういう意味で、皆保 険、皆年金で健康保険といわゆる2号、それから国民健康保険と1号というのがほぼ対 置しているということにおきまして、保険料をどういうふうに取るかということも含め て考えますと、もっと即効性があるものとして冒頭申し上げましたような医療保険との 情報交換、これが最もいいものではないかと考えております。市町村の事務を軽減する ということでは、先ほど御指摘ありました届け出の郵送化もあわせて、さらに事務の簡 素化が進むようにしていきたいと思います。  また、A委員から、収納コストの問題も御指摘を受けました。御指摘の点もあり、先 ほど事務組合ということも申し上げさせていただきましたが、少しでもグループ化しな がら、徴収コストを下げつつ実績を上げていこうということを検討しております。これ も御説明いたしましたが、収納率が8年度は82.9になっております。これは新制度に切 り替わった61年度が82.5でありますから、ほぼ同水準であります。これをどこまで上げ ればいいのか。これはもちろん100に近ければ近いほど当然いいわけでありますけれども 82.9をどうやって上げるかということを日夜考えておるわけであります。 ○K委員 時間がないので急いで言います。まず最初にマスコミの話が出ましたけれども、私も 当日の新聞と翌日の新聞を一応いろいろ見比べましたのですけれども、つまり新聞によ ってすごく今回の女性と年金の問題について報道が違ったと思うんですね。それは恐ら く各新聞社にどのような年金担当の記者がいて、どういう解釈をしたかというむしろ厚 生省の情報は1つだったかもしれないんですけれども、それの解釈があれだけ違うとい うことで非常にびっくりしたんですね。ということが1つあります。 もちろん厚生省にもしっかりと情報を流していただきたいんですけれども、恐らくそ れぞれの新聞社に担当者がいるにもかかわらず解釈が変わってくるということで、国民 自体は、どの新聞を読んでいるかによって全然解釈が違ってしまうというようなものに なったなあと思って、これはいかがなものかというふうに思いました。 それから、今の皆さんの議論を聞いていると、いずれは税方式というか、そういう方 向に私は審議会としては意見が出ていて、そうじゃないという意見が余り聞こえてこな いように思うんですけれども、今、厚生省から出していただいているのは、どうも税方 式を変える方がまず左側にあって、変えない方について面々と詳しくいろいろ出ている という構成になっております。このすべきでないという立場に対して、さらにもう一回 すべきであるという立場の意見をやはり何かの形で出すなり、情報としていただかない といけないのではないかと思います。 特に、例えば19ページの法人負担というところがありますね。税方式にすると全然法 人負担がないかのように、法人は喜ぶけれども、国民は困るでしょうという書き方なわ けですが、当然今E委員もおっしゃったように、法人は全然負担したくないなんていう ことは言ってないということでしたよね。これまでの負担ぐらいは何とかするだろう。 私はその辺はわからないんですが、税金か何かの形で、今まで負担していた分は何とか 基金みたいな形にして、そこで何かするとか、当然法人の負担も考えた上で移行してい くというようなことは考えられるわけなのに、全くこれだとゼロサムという感じになっ ているのは非常におかしい資料だなというふうに思いました。  それで、先ほどの、私はA委員にちょっと伺いたかったんですけど、A委員も、いず れは税負担というような感じを考えていらっしゃるというふうに伺っておいてよろしい わけですか。 ○A委員 はい。 ○H委員 簡単な質問なんですけど、基礎年金の給付水準の改正との関係で伺いたいんですが、 ちょっと数字を忘れてしまったので教えてほしいんですが、現行で夫婦2人の生活保護 基準、生活扶助ですか、幾らぐらいになっていたでしょうか。 ○J委員  地域によって違いますが、標準世帯別にみると、16万円ぐらいのところがあるはずで す。 ○H委員  16万円、そんな高いですか。 ○A委員  そろそろ終わりだと思いますので、ちょっと今後の進め方についてお願いしたいんで すが、これは会長へのお願いでございますが、基礎年金の問題は、きょうの議論が出ま したように、これは構造問題としての基礎年金制度についての議論と、現行制度を前提 にしたときの給付水準の議論とこれは全然違うわけですね。厚生省はもっぱら後者につ いてのデータを説明されている。私どもの関心はもっぱら前者の方の構造問題でありま す。土台が腐っているという大変品の悪い言い方をさせていただいたのはそういうこと によっております。  それから、実際の制度問題に関して言えば、例えば学生を含めて、そもそも収入のな い人から保険料を取るなんていう制度はうまくいきっこないですね。学生の場合、例え ば前回改正で適用になっちゃったけど、あれはもっぱら障害を起こした場合ということ なんですから、それは障害年金相当分、こんなものは1,000円ぐらいだというふうに伺っ ていますので、そのくらいだったらトータルでどうということはない。そのかわりにき ちんとした被保険者資格を取るのは卒業してからと、こういうことにして自分で払うよ うにすればいい。ということは、今の20歳と60歳という両端を決めた40年というのは、 仮に40年という期間を前提にするにしたって全然不合理だということなんですね。半分 の人は高卒で18歳で働いており、あと一部20歳ぐらいで働く人もいるかもしれないけど 大卒が増えてきて、みんな22、3歳。今の制度のままいったら、38年しか入りたくたって 基礎年金は入れない。こういうような制度欠陥をきちんと正して、収入のない人から取 らない。収入のある人にはちゃんと適用して払ってもらう。これは第3号被保険者問題 でも非常に重要な問題なので、前回、第3号被保険者問題は完結していないので、次回 にまたという話でしたけれども、きょうはそんなことやる時間もなかった。  結論から言いまして、3号の問題を含めて、この基礎年金問題についてもう一度時間 をとっていただくようにお願いをしたいと思います。以上です。 ○事務局  このまま黙っておりますと誤解されるといけませんので一言釈明させていただきたい と思うんですけれども、この年金目的消費税の導入について、きょうこういう資料をお 示ししましたけれども、これは私どもとして何か結論が先にありきで、それで意図的に こういう資料をつくったということでは全くございません。ただ税方式につきましては 一挙にいろいろな問題を解決するということで、税方式を導入すべきだという御議論が 強いのは十分承知しておりますけれども、一方でまた否定論、反対論もあるわけでござ います。税方式ということになりますと、問題点についても議論をしていただかなけれ ばいけませんし、反対論に対して考え方を出していただかなければいけないということ でございます。私どもとしては税方式をめぐる問題について、ありとあらゆる議論を網 羅したということでございまして、そういう趣旨でこの資料をつくったということでご ざいます。  国民年金、基礎年金の構造問題というのは、これは私ども前から全くそのとおりだと 思っておるわけでございまして、これは国民年金をつくるときに税方式か社会保険方式 か大議論があったのは皆さん御存じのとおりであります。それで最終的に社会保険方式 でやるということになったわけですが、社会保険方式で国民皆年金をやっている国は世 界じゅうどこもないわけです。社会保険というのは所得があり保険料納付ができる、こ れを前提として成り立っている制度ですので、自営業とか農業とかそういう方は所得が 非常に不安定ですし失業することも少なくない。そういう方に対して年金を社会保険方 式でやるというのは至難の技なんですね。そこで免除制度というのをつくりまして、や ったわけですね。国民皆年金というのは、日本のような同質性の高い国では絶対やらな ければいけないということでやったわけですけれども、社会保険方式をとっている国は ドイツが典型ですが、自営業の方は最初から対象にしてないわけですね。したがって、 年金の空洞化、未納・未加入問題は最初からないわけですね。  税方式でいく場合には、国民皆年金がもちろんできますけれども、ただ、所得制限を 導入している国もあるということでございまして、税収が少なければ所得制限が厳しく ならざるを得ない。日本の社会保険方式で、国民皆年金というのは最初から非常に厳し い道だったんですけれども、日本の国情を考えると、それしかないということで、私ど もとしては、未納、未加入問題についてありとあらゆる手を尽くして、努力をしている ということでございます。 ○K委員  きょう出していただいた資料2の方なんですが、先ほどB委員もおっしゃったように 特に現役世代のときの働き方とか収入別にいろいろ詳しいのを出していただいてすごく 貴重な資料だと思うんですね。9ページ、10ページあたりずっとですが、ただ、この読 み方がまだ時間がなくてわからないので、この読み方をいずれもう少し何か、どうすれ ばいいのか、レクチャーしていただくというか、どういうふうに解釈していらっしゃる のかというようなことをぜひ一度伺いたいと思っております。 ○A委員  基礎年金にまつわる問題は税方式を含めて洗いざらい全部出したというふうに事務局 はおっしゃっている。私はそうは思いません。つまり完全税方式は、完全な普遍原理に 立ったユニバーサル・ペンションというものをつくるということを意味しているわけで その議論自体が日本の実情の上に立って検証されるべきものなんだろうというふうに思 うんですね。保険方式をとってきたことにはそれなりの理由があるわけなので、私個人 は、将来この基礎年金を税方式に移行すべき、それしかないと思いますが、しかし我が 国の社会保障制度が社会保険方式をとってきたことの歴史というものはきちんと踏まえ るべきで、税方式に切り換えてしまえば、全部よくなるのだというふうな軽々しい意味 で税方式を主張することはできない。  そういうことを含めて、考え方の議論をやろうとすれば、一方における北欧型のユニ バーサル・ペンションという考え方と我が国の実情等がどうなのかということの検証が 必要なはずで、その検証の資料はきょうは提出されているとは思いません。  いずれにしても基礎年金の問題に関してもっと構造の根幹にわたるものから細かい問 題まで非常にたくさんの問題が残っているのであって、ぜひとも引き続き議論の時間を いただくように繰り返しお願いしたいと思います。 ○会長  今の点よろしいですか。また、議論の機会を持ちたいと思います。  もし、御発言がなければ、きょうはこれで終わりにしたいと思いますが、よろしゅう ございますか。  本日の資料については、今までどおりすべて公開したいと思いますが、よろしゅうご ざいましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  それから、今後の日程でございますが、事務局の方から御確認をお願いします。 ○事務局  お手元に審議会の今後のスケジュール案ということで入れさせていただいております が、各委員の御都合を伺いまして、6月の日程につきまして、6月16日と30日を予定さ せていただきたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。以上で ございます。 ○A委員  16日と30日。 ○事務局  はい。 ○A委員  火曜日ですね。時間はこれからですか。 ○事務局  時間、場所は追って御連絡させていただきます。 ○会長  よろしゅうございましょうか。本日は予定を1時間もこえて長時間御苦労さまでした。 ありがとうございました。                                年金局 企画課                                須田(3316)