98/03/18 第17回年金審議会全員懇談会議事録 第17回年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成10年3月18日(水) 10:00〜12:30 場 所 厚生省特別第一会議室  1 開 会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事   ・ 給付と負担の水準について   ・ 女性の年金について  4 閉 会 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  国 広 委 員 神 代 委 員  坂 巻 委 員  高 山 委 員  都 村 委 員 桝 本 委 員  山 田 委 員  吉 原 委 員  若 杉 委 員   渡 邊 委 員  貝 塚 委 員 船 後 委 員  ○会長 本日は全員懇談会でございますが、記者クラブから冒頭にカメラ撮りをしたいという 申し出がございます。議事に入るまでの間、これを許可してはと思いますが、いかがで ございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  許可します。                 (カメラ撮り) ○会長  ただいまから、第17回年金審議会全員懇談会を開催いたします。まず、委員の出席状 況について、事務局から御報告をお願いします。 ○事務局  本日は、木原委員、久保田委員、富田委員、福岡委員、目黒委員、山根委員が御欠席 でございます。その他の委員は御出席のご予定でございますが、山田委員がおくれてお られるようでございます。 ○会長  ありがとうございました。  それでは、次期年金制度改正に向けての審議に入ります。本日は、まず給付と負担の 水準につき、前回に引き続いて大体の目安で約40分くらい審議をお願いします。その後 女性の年金につき、約80分くらい審議をお願いします。  最初に給付と負担の水準の問題につきまして、前回の継続でございますが、審議を行 いますので、事務局から資料の御説明をお願いします。 ○事務局  それでは、資料1に基づきまして御説明をさせていただきます。1枚だけの紙でござ いますけれども、左側が昨年暮れにいただきました論点整理の考え方、そして右の欄に その関係部分について、これは審議会で既にお出しした資料等も含めまして、年金白 書でもう一度整理し直しました該当部分を紹介しております。  まず1つ目のところでありますが、給付と負担の水準を考える場合、両者を関連づけ て考えていくことが必要であるという考え方、これについて、「5つの選択肢」という ものを暮れに厚生省として提示しておりましたが、その関係については、年金白書の中 で再度説明しております。  2つ目でありますが、給付と負担について、個人単位の考え方を拡大するということ についてどう考えるかということであります。これは世帯単位と個人単位の設計という ことで、やはり白書で関連部分を説明しておりますが、きょう後半で、「女性の年金」 ということで資料を準備しておりますので、できれば、そちらの方であわせて御検討い ただければありがたいと思います。  それから、3つ目の「給付水準」でありますが、高齢者、現役世帯の消費支出や可処 分所得、貯蓄等の状況から見て、現行の給付水準をどう考えるか。それに関する分析、 資料等については白書に入れているところでございます。  それから、次のところでありますけれども、今の厚生年金の考え方というものが、1 つのモデルとして、給付設計は、夫が40年間平均的な給与でお勤めになった方で、奥様 が給与所得者としての期間がないという世帯を想定している。こういった考え方につい てどう考えていくかということでございます。例えば、奥様がそれなりに厚生年金の加 入期間をだんだん持つようになられれば、世帯の合計額としての年金額は大きくなって いくわけでありますが、そういったことをどう考えるかということであります。  最後が「負担の水準」でありまして、これも中身は「5つの選択肢」のA、B、C、 Dの考え方に述べたような形でありますけれども、今後限界というものをどう考えるか ということです。また、年金保険料に限らず税や他の社会保険料の負担も念頭に置いて その限界を考えるということで、そういったことについての御議論を賜りたいというと ころでございます。  説明は以上でございます。 ○会長  ありがとうございました。ただいま御説明のありました事柄につきまして、御質問、 御意見など御自由にどなたからでもお願いします。 ○A委員  まず「負担の水準」につきまして申し上げたいと思いますが、民間企業の国際競争力 の維持あるいは公私の役割分担の見直しなどを考えますと、さらにほかの税あるいは社 会保障負担、例えば健康保険料、介護保険、自己負担増とか、そういう税、社会保障負 担の増加を考えますと、今後の年金保険料の水準というのは、月収の20%を超えると企 業も従業員も保険料負担としては大変苦しくなるのではないか、そういうふうに考えて おります。  今日御存知のように、日本の民間企業のベースアップの相場を決めるといいますか、 IMFJCの回答があるわけですけど、昨年をさらに下回る水準となっておりますし、 これからの経済成長率の推移を考えますと、給与はそんなに増えない、負担はいろいろ 増えてくるということでございますから、一応月収の20%というのは、年金保険料とし ては限度ではないかと思います。  それから、「給付水準」につきましては、この月収の20%ということを考えますと、 現在の23万1,000円というのは、今後の負担能力を考えますと高過ぎるのではないかと どれぐらいかということはいろんな組み合わせがありますから何とも言えませんけれど も、国民負担率を50%以下に抑えるとすれば、社会保障の水準は2割は抑えなければな らないという厚生省の計算も前にあったようですから、相当な抑制を考えざるを得ない と思います。以上です。 ○B委員  A委員の御発言を、以前から使用者側の御見解として承っておりますが、私どもの考 え方としては、幾つかの点で非常に大きく違いますので、違う点だけとりあえず申し上 げておきたいと思います。  まず企業の税、社会保険負担がコストアップになるのは、これは言うまでもないこと なんで、これについては、他の欧米先進国の企業がどの程度の負担をしょっているのか ということとの見合いで考えるべき要素が非常に強いだろうと思います。そうでありま せんと、我が国の企業が、他の先進国企業に対してそういった負担を低くすることによ って国際競争力を回復するという場合には、それはおそらく今日の、例えばWTOその 他の場面で、必ずこれは不公正競争という議論をまた招くのではないだろうか。かつて は我が国は低賃金だということで不公正だというふうに言われた。その後は、長時間労 働だというので不公正だと言われた。  低賃金のときは貿易制限を食らったりしたわけですが、労働時間で不公正だと言われ たときは、既に為替レートがフロートになっていました。その後の貿易収支は絶えず円 の切上げで調整をされる。つまり労使でもって努力した生産性の向上だとか、そういっ た成果は、国民生活の向上に還元されずに、為替レートの切上げによる交易条件の変更 で海外へ流出するという形で調整されてきたわけで、これは例えば私どもの労働組合の 中での調査では、職場は忙しい、会社はもうからない、外国からはたたかれる。要する にトリレンマだという議論がよく生じてまいりました。  社会保障の問題までもこういった、次のダンピング輸出みたいな批判を招かないよう にするということは今後の国際協調に当たって非常に大事な点なのではないか。これが 競争力をめぐる問題についての私どもの見解でございます。  それから、これはきょうのレジュメにもありますが、負担の限界というものをどのよ うに定めることができるのか、これは非常に難しい問題で、例えば社会保障費の負担よ りも、この20年間ぐらい急激に上がってきたものに1つは教育費の負担がございます。 あるいは、もう少し前からの射程で言えば、特に第1次石油危機後の負担増ということ から言えば、住宅費の負担がございます。こういったものを非常に急激な負担をしなが ら、それは確かに我々は非常に高いと感じておりますし、改善も必要だと思っておりま すが、必要とあれば、それは負担せざるを得ないのが生活者の立場であって、必要性と の兼ね合いで負担の意識というのもまた変わってくるわけで、絶対的な負担限界という のは賃金そのものでありますし、心理的な限界というのは、これ以上、払いたくないと いうところにあるわけで、負担の限界というのは一義的には非常に定めにくい性質のも のなんだろう。そのことは翻ってみれば、将来の給付がどのくらいなのかということに 対応して、その程度の給付が保障されるのであれば、このくらいの負担はやむを得ない 将来の給付との相関関係で認識は相当大きく動いてくるのではないだろうか、そのよう に思います。  最後に国民負担率のお話がございました。国民負担率という数字については、これは 非常に注意して扱うべきものだと私どもは考えてまいりました。例えば、これは家計の 負担ということとは一致いたしません。例えば年金水準が切り下げられるということに なって、高齢世帯の生計費をかなり大幅に下回るようなことになれば、その分はおそら く子供たちが仕送りその他の形で支えざるを得ない。つまり、それは先ほどのA委員の お言葉をかりれば、公私の役割分担の中で、公の部分が減れば、私的な負担が増えると いう、このバランスが変わっていくだけのことであって、政策論としては、そこの負担 割合をどのように決めていくのが合理的かということによるのだろうと思いますから、 国民負担率そのものの数字でその内容を示すというのは、いわゆる公的な負担の部分の 多さを間接的にあらわすだけだろうというふうに思います。例えば今後間接税が増える かもしれませんが、間接税は家計の負担ではありますけれども、直接家計の負担の中に あわられてくるのは物価の上昇という形であらわれてくるだけで、マクロではカウント されますが、うまくあらわれてまいりません。我々にとって重要なのは、国民負担率と いう数字よりは、実際の家計の負担でございます。  なおかつ年金、社会保険料の負担は、同一給付水準であれば、これは低いに越したこ とはないのであって、現行制度並びに現在の年金の財政方式の中でも、この保険料負担 率を引き下げるための工夫を別途してまいるべきかと、そのように思います。以上です ○A委員  別に反論するわけではないんですけれども、特に日本の場合は海外諸国と比較して大 変問題があるのは、少子高齢化の進行の速度の速さということでございまして、例えば 今の高齢化率程度で推移するとか、徐々に上がっていくというふうなことでしたら、 企業もあるいは勤労者もかなりの負担増に耐えられると思いますけれども、例の人口の 将来推計によりますと、推計のたびにスピードアップされているような状況でして、こ の高齢化の急激な進行ということが海外と日本を比較する場合の非常に大きな相違点で はないかと思っておりまして、この点が企業としても勤労者としても、将来の負担能力 ということではやはりある程度のところで限界を考えざるを得ない、そう思います。 ○B委員  若干、観点が違うかもしれないのですが、申しわけございません。今のA委員のお話 に直接お答えすることにならないんですが、将来世代の負担ということがしばしば話題 になるのですが、これは時どき若い世代の諸君と意見交換することがあって、それぞれ 意見はもちろん違いますが、若い世代の年金に対する不信とか不満とかというものの議 論は、大きく言って3つあると思うんですね。  1つは、負担そのものが大きいという問題。もう一つは、負担したものに対して、つ まり払った保険料に対して、受け取る年金額が前の世代に比べると著しく小さい。例え ば現在の70代の人たちは払った保険料の十数倍の年金を受け取っているのに対して、自 分たちは1倍になるかどうかぐらいという不公平感。それから、3番目には、自分たち が年をとったときに、国の年金というのは果たしてまともな年金を払ってくれるのか、 どうもそうではないらしいということがないまぜになっているように思います。  私たちが、将来の世代に残されなければいけないものというのは何なのかということ を考えますときに、彼らが60になり70になったときに、それなりのまともな年金を約束 するということがベースではないのか。それを切り下げていけばいくほど彼らの年金不 信はつのるでしょうし、彼らの負担に対する意欲も低くなるのではないだろうか、その ように思います。  どうもこの間の世代間議論といわれるものを、いろんな形で表現されるものを見てお りますと、若者は将来、どうせ払ってくれないんじゃないかという意識がある一方で、 例えば当審議会の平均年齢に相当するようなジェネレーションでございますとか、労働 組合でも、実際政策決定にかかわるのは50代でございますから、そういうようなジェネ レーションの人たちがそういうふうに思って議論に参加する。それは一種の若者不信だ と思うんですよね。大体おやじが息子を信用していなければ、息子がおやじを信用する わけがないので、それは逆に若い世代の不信をさらにつのらせることになるのではない か。  もし、こういう世代間の信頼が崩壊していくのであれば、今のような世代間の助け合 いなんていうものは、そもそも基盤を失うわけで、そうであれば、完全個人別私的年金 にでもしてしまう以外にない。それは社会保障としての年金保険制度のいわば否定だと 思います。  だから、私どもが、この当審議会の課題として意識しておりますのは、公的年金制度 を守ることで、それが今の若い諸君にとって、将来の給付において、信頼に値するもの であるということをきちんと示すこと、これがまず責任なのではないだろうか、そのよ うに思っております。 ○C委員  負担の問題というのは、絶対的にどこまで負担できるかというのはなかなか難しい、 はっきり断定できない問題だろうと思うんですね。今、A委員の御意見で、企業の負担 は20%が限度だというのは、それは企業のサイドから見ますと1つの御意見といいます か、御主張としてわからないわけではないんですが、長い間の年金の議論の積み重ねの 中で、少なくとも今までは30%弱といいますか、29%台までは何とか負担できるんじゃ ないか、また負担していこうという、前回の改正までは、いわばそういうコンセンサス があったわけですね。  その後、人口推計がああいうふうに老齢化が予想以上に進むということで、今の給付 水準のままだと34%になる。それはだれが見ても高過ぎるんで、30%以下に抑えなくち ゃいかんという点については、そう皆さん御異論ないと思うんですが、今、ここで20% と言われますと、これは一体、今の給付水準を維持するのに30%をはるかに超えるのに 今度また企業の方で20%が限度だと言われますと乖離がいかにも大き過ぎて、一体今ま での議論は何だったんだろうかというふうな気もするんです。もちろんここ数年間に経 済の状況も変わりましたので、今までの30%弱というのが、ちょっとそういうわけにい かんというのはわからないわけではないんですけれども、いきなりここで20%が精いっ ぱいだというふうに言われますと、もちろん給付との関係があるんですが、この前の5 つの選択肢で言いますと、D案といいますか、現行の6割程度の給付水準にもなります から、これはなかなか大変だというのが、私の御意見を伺った感じでございます。 ○A委員  言葉のあやで、20%が限界と申し上げましたが、20%を大幅に超えるような保険料負 担は耐えがたいというふうなニュアンスでございまして、別に20%ジャストということ を申し上げたわけではございません。  確かに5年前の改正では29.何%とかというところまでは覚悟しなければならんとい うような一般的な理解であったわけでして、これは私どもも特にそれに異論はなかった わけですけれども、やはりその後の高齢化の速度が、今年の1月の人口推計でさらに上 がったことと、経済界の沈滞、これから先の成長率が非常に低迷するのではないか、そ ういうふうなことも加えて、前回よりはやや厳しくなっているかなという感じでござい ます。以上です。 ○D委員  「給付水準」の2番目のところのマル、これまでの標準的な年金は、いわゆる標準世 帯を想定しているという点についてですけれども、ここの問題については、論点整理の ときもいろいろ議論がありましたが、今回は家族責任と職業生活の両立という点から一 言申し上げたいと思います。家族責任、特に介護に関して、介護と職業生活が両立でき なくて、雇用が中断されるというケースが増えております。平成4年の総務庁の調査に よりますと、年間8万人以上の方が介護、主として親等の家族の介護のために途中で退 職しなければいけなくなったという調査結果が出ています。  これから6年たっておりますから、今はもっと増えているでしょうし、厚生省の推計 にありますように、要介護者がこれから増えてくるわけですから、それにつれて、家族 が仕事をやめて介護をしなければいけないという数が8万人以上、さらに増えることが 予想されるわけです。例えば親がいて、娘がいて働いている場合は、寝たきりであれば 障害年金と稼得所得とで2人の生活をしているわけです。それが介護のために仕事を退 職してしまうと、1人分の年金で2人が生活しなければいけないわけです。介護保険が 創設されるわけですけれども、そこの中でも、家族の介護のために仕事をやめた場合の 機会費用の保障というか、所得保障については考えないということになっているわけで す。  そうしますと、結局、それは後で議論されるかもしれませんけれども、女性がそうい うケースに当てはまる場合が多いと思うのですけれども、将来の老齢年金が低くなるわ けですね、雇用が中断されるために。結局、家族責任を年金制度の中でどういうふうに 位置づけるか、特に介護のように社会的に承認された機能を果たす場合はどう位置づけ るかという問題とも関連してくると思います。標準世帯を想定したモデルだけを考える というのではなくて、親の介護のために仕事をやめなければいけなくなったというケー スも増えてくると思いますので、1人で生活をしているケースの年金も想定しなければ いけない。あるところまでは働いているわけですから、厚生年金の資格はあるでしょう けれども、家族責任のある場合の年金制度上のとり扱いをやはり考慮する必要があるの ではないかと思います。  それ以外のケース、母子家庭とか、そのほかのケースもいろいろあるでしょうけれど も、やはり家族責任と雇用の両立というのはこれからの大きなテーマだと思います。そ れを年金制度の中でどうとらえていくかを考えたときに、標準モデルだけで1つの標準 的な年金だけを示すということでいいのかどうかという点については問題があると思い ます。 ○E委員  負担の限界の問題ですが、C委員がおっしゃったように、絶対的な限度というのがど こにあるかというのは非常に難しいので、いろいろな見方からバランスをとる以外にな いと思うんですが、自分で調べればいいようなものなんですが、時間もないし専門を外 れる分野が多いので、ちょっと資料をできたら事務局で集めていただけないかと思うの が2つあります。1つは、我々はドイツやフランスの年金のことをもう20年以上前から 気にしていて、行くたんびに話としてはいろいろ聞いているんですけれども、我々の会 うようなドイツやフランスの友人ですから、平均より上の人かもしれませんが、退職後 の年金の額の方がひょっとすると自分の現役中の可処分所得よりも多いという人がかな り多いんですよね。正確に統計で私は確かめたことがないんで、ヨーロッパの主な国、 直接経験しているのはドイツ、フランスなんですが、ドイツ、フランスほど社会保障の 負担を多くすることは国民経済的によくないというふうに個人的には思っているんです あそこよりはもうちょっと手前でとめないとまずいなと。将来的に雇用に、特に新規の 雇用を抑える効果が非常にあるので、今の2桁失業の問題とも絡みます。できれば、年 金と現役の可処分所得との比較、実態がどれくらいになっているのか、それと年金保険 料の負担率を調べてほしい。  それは平均の数字はもちろん必要ですが、できれば4分位とか5分位の数値もないか なということなんです。また、広義のいわゆる税負担、中でも特に年金保険料の負担が どれぐらいになっているか。英、米、独、仏ぐらいの比較がどこかにあるのかもしれま せんが、ちょっと不勉強で、私自身正確な資料を見たことがないので。労使の意見とい うのはどうしても対立しがちなので、できるだけ少し客観的なデータで判断するように お願いできないかと思います。 ○F委員  A委員の御心配もわからなくはないんですけれども、高齢化で年金の負担が増えるか ら、日本の企業は国際競争力がなくなってだめになるんだという形で、高齢化イコール 企業の国際競争力がなくなるというような結論に聞こえないこともないんですけれども 国際競争力がなくなるというのは何も高齢化だけではないだろうと思うんですね。いろ んな企業の今の在り方、規制緩和の問題、あるいは国際競争力に耐えるような商品開発 ができないとか、企業間でも足の引っ張り合いをしているだとか、企業努力の問題とい うのも私はかなりあるだろうと思っておりまして、そういう意味ではやや年金の負担が 増えれば、企業は負けて経済が苦しくなるんだというような考えは短絡的過ぎる。もっ と企業としてやるべきことがあるのではないかなと感じられるのが1点でございます。  それから、若い人の間に負担が大き過ぎて、自分の掛けた保険料にふさわしいものが とれないじゃないかということで不満があるというんですが、年金というのは貯金とは 基本的に違うわけでして、そこのところをやはりもっときちんと国民教育をしていかな ければならない部分が私はあるだろうというふうに考えるわけです。そこのところを間 違えて、民間の保険と同じような発想でもって国の保険を考えれば、これは当然幾ら出 したから幾ら戻せという議論になるわけですけれども、余りその部分に私はとらわれる べきではないというふうに個人的には思っております。  それから、負担が何%になっていくと耐えられないというのも、これもまた1つの国 民の選択であろうというふうに思います。やはりそれは世論調査とかそういうことでも って、あるいは選挙でもってきちんとそういうものを反映していくシステムをつくるべ きであって、例えば幾ら負担をしても、年金だけではなく、介護とかその他も含めて、 自分の老後が心配ないならば、もっと出していいという、選択肢も十分にあり得るわけ ですから、もっと年金だけではなく、マクロの老後の保障ということの中でこの年金を 考えるべきだろうというふうに私は思っております。  それから、今の高齢者がたくさんもらい過ぎているということも確かにあるだろうと 思いますけれども、現実にもらっている人たちが、それを全部使い果たしていくわけで はないわけですし、それが次の世代にさまざまな形でもって伝えられていくわけであり ますし、あるいは、また社会全体のインフラの整備なども、前の世代の働いた果実であ りますから、そういうことを考えますと、今の高齢者がもらい過ぎであって、若い人が かわいそうだというような議論もいささか抵抗を感じております。 ○G委員  負担の限界はなかなか一義的に議論するのが難しい問題だと思います。従来、30%が 限界ではないかというのが多数派説としてあったと思うんですが、その当時の想定し たような将来像というのが今実現しているかということを踏まえてやはり見直す必要が あるわけで、前回までで30%という上限が確認されたからといって、現在の段階でまた 同じように、もう議論しなくて想定するということはいかがなものかというふうに思い ます。  私は基本的には、負担の限界というのは、今後の生産性の上昇をどう考えるかという ことだけで大体決められるのではないかと思っております。日本経済全体として、どの くらいの成長余力があるか、あるいは個々のサラリーマンの月給がどういうふうに上が っていくかということの見通しによるところが大きいわけでありまして、従来と比べる と今は悲観論がさらに強まっているのではないかというふうなのが、私の率直な認識で ございます。  若い人の不満というものを考える場合に、いずれにしても、老後の所得安定、老後生 活の安定を図る上で、今の負担のままで将来うまくいくかというと、これはどうにもな らないだろうということはわかっているわけです。何らかの形で負担を引き上げていく ことは考えざるを得ないんですけれども、それを公の制度の中で、公的年金という器の 中で負担増を図るのか、それともそれとは別に私的な努力での、実質的な負担増で対応 するのかというのは、これは制度設計にかかわる大事な問題のはずなんですね。  前回の負担の限界は30%論が有識者調査の多数派説ということになっているのですが 私から見たら、データの示し方に若干問題があり、結論はどうも誘導的だったのではな いかとさえ、私は思っているんですけれども、そういう点から言うと、公と民の役割を どう見るのか。  負担増が必要であるという場合に、どういう形で負担増を引き受けるのならいいとこ れからの世代が考えるかということと、負担増に伴って、公の方でやったら、どういう ふうなゆがみが生じるのかとか、どういうふうな不公平感が高まるのかということをや っぱりあわせて議論しなければいけない。公の世界でなければ、自らの判断と責任にお いてやる話ですから、あるいは税制でインセンティブをかけるとかいろいろあると思う んですけれども、また全然違った理解の仕方になると思うんです。同じ負担増でも、公 の世界でやるのと民の世界でやるので全然理解の仕方なりゆがみとか、公平感とか、そ ういうのは全部変わってくるわけです。  ですから公的年金として、どういうものを将来像として浮かべるかということで、こ の負担の限界というのは決まってくるので、30%が限界ですよというような議論は、私 は基本的におかしいというふうに思っておりまして、そこのところをもうちょっと議論 しないと、この問題の結論は出ないんじゃないかというふうに思っております。  いずれにしても、そうは言っても、どうも負担が30%では高過ぎるのではないかとい うふうに思わざるを得ないわけでありまして、現在の公的年金の水準については、見直 していくことは避けられないわけですけれども、従来、単一のモデル、専業主婦世帯モ デルしか給付水準については例示がなかったわけなんですけれども、今後、生活設計等 あるいは人生そのものが非常に多様化しておりますので、例えば共働きの場合どうなる のか、専業主婦の場合どうなのかとか、あるいは先ほどD委員がおっしゃったような、 家族責任の問題ですね。介護だとか子育て等、いろいろな仮定で組み込んだ場合にどう いうふうな年金になるのか、それぞれ複数示して、総合的に判断する必要があるのでは ないかと思うんです。  今後、共働き世帯が一般化した時に、少なくとも現在の給付設計で行くかぎり、共働 き世帯の給付水準は予想以上に高くなるのではないかというのが私の認識でありまして そうすると、どこをどうやって手直しするかという議論をせざるを得ないのではないか というふうに思っております。以上です。 ○H委員  2点ばかりです。負担の話というのは、平たく言うと、普通は負担できるかできない かという話になるのですが、エコノミストの議論としては、保険料が高いということは 何らかの意味でどこかでマイナスを経済の構造の中で出していることを示します。フラ ンスのケースというのは、私は余りよくは知らないんですが、恐らく55歳ぐらいで退職 しちゃう。それはなぜかというと、単純に言えば、負担と給付の関係で有利であるから です。フランス、ドイツはそうだと思うんですね。  ですから選択肢としては、G委員も言われたんですが、全体として、一体どういう保 険のシステムを考えるかということにある程度は依存しているということです。他方、 例えばスウェーデンとかはどうかというと、これも私はそんなにはよく知らないんです が、文献を読んでいる限りにおいては、北欧はサービスの給付に非常にウエートをかけ る。もちろん年金もかなりありますけれども。したがって、社会保障といっても、年金 でやるのか、サービスでやるのかという選択が当然あり得て、ある意味では高福祉でス ウェーデン経済はつぶれたと言われましたが、最近は何とかなっているという感じで、 それはともかくも、やっぱりスウェーデンはサービス中心の社会保障がかなり強いです  日本はこれからどうするかというのは、ここである程度議論しなければいけないんで すが、アングロサクソンは、私は大分違うと思います。アメリカもイギリスも、場合に よっては、公的年金の範囲を縮小してもいいし、場合によっては、まさに積立方式に移 行するというんですか、あるいは民営化を考えろという意向はアメリカではかなり強い んですが、それはもともと社会保障に対する考え方が違って、イギリスもかなりその方 向で、ですから負担が上がるとか、そういう話については非常に警戒的ですね。  したがって、そこのところは非常に簡単ではないんですが、私はちょっとどこかにも 書いたんですが、日本の社会保障というのは全体としてどこをねらうのか。必ずしも年 金だけの話ではなくて、介護保険、医療保険、その他もありまして、全体として、我々 は一体何を選択するのか。前から修正しなくちゃいかんということも含めて、経済の状 況がよくないということも全くそのとおりですが、それも考慮に入れて、システムとし て、従来型を完全に維持していくと考えて、日本の官僚機構が局ベースになっておりま すので、隣の局がやっている話とこっちの局がやっている話と必ずしもうまく連携して おらず、大蔵省と厚生省とかが分立しており、非常にある意味で複雑怪奇になっており ますが、そこのところをできる限り、ほかのやっていることとも関係させないと非常に 妙なことになりますし、最終的には社会保障というのはどういうシステムを日本は今後 選ぶのか、特にその中で年金はどういう方向で選ぶべきか、きちんと考える。そこのあ たりがかなり重要だろう。  ですから、いろいろ反作用があるし、先ほど申しましたように、保険料それ自身、高 い水準はどこかでマイナスを及ぼしているということは否定しがたいんですが、そのマ イナスの大きさと、もちろんプラスが当然あるわけですから、マイナスだけあるという ことは絶対あり得ない話であって、大体経済の議論はプラスもあれば、マイナスもある というので、経済学者というのは何を言っているかわからんと言われることもあります けれども。しかし、そのプラス、マイナスの大きさの問題でもあるし、プラス、マイナ スが時代が変わると、プラス、マイナスのウエートが変わるということが多分重要で、 大分話が大きくなりましたけれども。保険料というのは引き上げたときに、基本的には 余り高くすると、どこかに問題が発生しているということで、やっぱり目に見える形で 発生してくるはずで、日本はまだそうはなっていない。  日本は60歳台の人がいて、どういうふうにするかというと、日本人は今もって働く人 もいるし、その辺もカウントに入れて、全体としてどういうシステムにするのか。どこ かおかしなことが起きてきて、それが顕在化するかどうか、今、潜在的に起きていると 思いますが、どこかで顕在化してきたときに、そのときになって急に変えるというのも システムが割と長い目で考えなくちゃいけないんですが、5年に1回ぐらいは変えても いいということであれば、今回はその辺あたりの基本的なところを少し考慮に入れて見 直したらどうか。そして、保険料の問題も、給付との関係が当然あるわけですが、私的 な年金とか、いろんな年金を含めて考える。給付と負担の関係というのは、経済計算と して出てくるので、それと比べてどうかという話も当然議論にはなる。その辺のところ が率直な感想です。 ○A委員  F委員の御質問に答える責任がありますので。日本の企業の国際競争力が昨今非常に 弱体化している原因は、おっしゃるように、特に厚生年金保険料にあるわけではなくて やはり例えば土地、原材料、電力などのエネルギー、こういうものが諸外国と比べて何 %ではなくて、数倍違うぐらいの価格差です。それから人件費、これも日本は世界最高 の人件費の国になっております。それから法人税も高い。こういう高い原因の1つが規 制が多いとか、市場開放が十分でないというようなところにもよる点がありますが、そ れで経済界としては、例えば法人税の切下げとか、あるいは規制緩和による原材料ある いはエネルギーコストのダウンというふうなことを要望しているわけですけれども、そ の中で社会保険料というものも、これからの高齢化を考えますと相当な負担増となるだ ろう。これがさらに国際競争力が弱体化しているのに、また重荷になってくるというこ とでございまして、厚生年金保険料オンリーということではございません。 ○I委員  前にも申し上げたかと思うんですけれども、私、個人で感じていることなんですが、 今の厚生年金保険の給付額というのは少し高いというのが受給してみての実感で、これ をもう一度申し上げたいと思います。年額で300万円超しますので、ちょっと高過ぎるな という感じは今でも持っております。 E委員のおっしゃったドイツやらフランスの例で非常に高いのがあるのではないかと いうお話がございましたけれども、これは実態はどういうことなのか、私も知りたいな と思っております。ぜひ、事務局の方でその辺をお調べいただけるならば、ありがたい というふうに考えております。 ということで、やはり給付が少し高いということは事実ですから、これは何か抑える 方向というものを考えなければいけない。そうでない限り、保険料は幾らでも上がって いくというのは、いろいろな計算の結果から言えるわけでございますから。ただ、将来 の給付だけを視野に入れて計算していっても、前にありました計算結果のように、過去 の債務がトータルで350兆円ですか、この分というのは、将来の給付をなんぼ抑えていっ ても減らない部分でございます。 ということを考えますと、やはり既得権を絶対守らなければいけないということでは 必ずしもないのではないか。例えば月額で25万円を超える年金をもらっている人は、若 干のダウンはやむを得ないというようなことも考える必要があるのではないかというふ うに思っております。 それから、さっきからA委員やらC委員からも、20%、30%という数字が出ておりま すが、これに関しましては、前回議論がありましたボーナスを含む総報酬での数字なの か、現在の標準報酬制での率なのか、いずれかによってかなり違うわけでございますか ら、そこは明確にして議論していきたいとそのように思っております。C案のように、 総報酬の20%というのは、標準報酬の26%ということに換算される、そう書かれており ます。26%ということになると、また少しそこで議論の質が変わってくるのではないか という感じがしております。 ○J委員 いろんな御意見を承って考えたことがあるんですが、1つは、この委員会の議論はも う差し迫って、ことしの9月に報告を出すという非常に短期的なために議論しているわ けですが、長期的な議論を余りここでやると、かえって、その後じゃまになるかと思い ますけれど、基本的には公的年金というものの役割についての議論が必要だと思います  1つ、ここにある中では、「給付水準」の2番目のマルですが、将来は日本の場合に も、女性がフルに働く人が増えると思いますので、むしろ、そちらを標準にして、妻が 全く働かないというケースを特殊だと、あるいは全く結婚しない人も特殊だと、こうい うふうにして、夫婦で両方とも共働きになるというケースを標準にしたものを示す方が いいのではないかなと1つは思います。  もう一つは、日本の場合がヨーロッパと違うのは、非常に高齢になっても働きたいと いう意識の人が今多くて、将来も多いのではないかと思うし、先ほどから出ております 人口推計から言うと、やっぱり男性も70歳ぐらいまでは働ける場合は働く、もっと高齢 になっても、働ける場合は働くような雇用政策あるいは雇用市場が展開される方がいい し、女性も働く方がいいと思います。この点はヨーロッパのモデルを日本に適用するの は余り適当でないんで、ヨーロッパの年金は前に聞いたところでは、失業問題を解決す るために、なるべく高齢者を市場から退去させるために、スウェーデンの年金ができた というようなことを聞いたこともありますので、これは日本の将来の考えとはかなり違 う点だと思います。  それから、最近非常にたくさんハガキが舞い込んでくるのですが、不思議なことに共 済組合の方なんですね。しかも、その方々が、今の年金では食えないというふうに言っ ておられるので、これはやや不思議に私自身は思っております。そういう点について、 公的年金というのは、老後の所得を全額保障するものとお考えになって、それでいいの かどうか。我々の考え方として、公的年金の役割は、私が前に申しました半分でいいん じゃないか。自分が欲しいと思う所得の半分を保障するというぐらいでいいのではない かという考えがやっぱり必要じゃないかと思います。  もう一つ、最後に、公的年金の重要な役割は、高齢者の最低生活を保障するための部 分と、上積みの部分、その2つの部分に分かれて設計されているべきものではないかと 思います。基礎的な部分がそうだろうと思いますが、それについて負担が重くなるかど うかという問題は、ヨーロッパへ行ったりするとしばしば考えるんですが、間接税が向 こうは非常に高いですね。15%、17%ぐらいの間接税をとっておりますから、日本の場 合も、ある意味ではもう少し税を取っていくというふうに、今、なかなか政治的にそん なことはできないと思いますが、非常に幅の広い経済政策とかみ合わせた年金制度を考 える必要があると、こういうふうに思います。 ○K委員  今のJ委員の御発言で、共稼ぎをベースにした方がいいんじゃないかというのは私も 基本的には賛成です。それで、今までH委員やG委員から、基本的に公的年金制度をど ういうふうに設計していくかという大きな枠が必要で、そこでまた負担率の問題になっ てくるだろうというのは、私も基本的に賛成なんです。先ほどから、例えば共働き世帯 の年金が高くなり過ぎるというような問題とか、このままで行くと、企業は月収の30% だと負担が大き過ぎるというA委員からの御指摘がありましたけれども、公的年金制度 を、共働きというのは個人単位にするということと私はパラレルだと思うんです。企業 自体が、厚生年金のモデルと同じような専業主婦、専業働き夫をモデルとしているよう ないろいろな雇用政策を今とっていらっしゃると思うんですね。ですから、例えば妻の 配偶者手当、そういったものを賃金の中に入れていらっしゃる。  つまり、大企業なんですけど、大企業のそういった在り方と、厚生年金のモデルとい うのが重なっている面がありますよね。そうすると、J委員がおっしゃったような共働 き世帯というものをベースにするような設計となると、そこで企業の在り方といいます か、そういうものとのいろいろな矛盾というか、設計の問題が出てくると思うんです。 私はもちろん共働きで、両方がやっていって、家族責任も両方持てるようなシステムが 日本の社会システムとしては望ましいと思っているわけですが、その辺、企業はどうい うふうにお考えになるのかということをぜひ伺いたいと思います。  それから、今、共働き世帯が高くなりすぎるというおっしゃり方というのは、要する に、今の年金のモデルが片働き世帯をモデルとしているからそうなるのであるというこ とも指摘しておきたいと思います。 ○A委員  I委員の御質問に答える義務があると思いますので、何の20%か、月収か、ボーナス 込みの収入かというふうな御質問がありまして、これで6%ぐらい違ってくるというこ とでして、ただいま私が申し上げたのは月収の20%ということで申し上げております。 ただ、20%、びた一文というふうなことを申し上げているわけではございません。以上 です。 ○B委員  I委員のおっしゃった1点だけ、今、受給されている年金との兼ね合いで、現行水準 が高過ぎるから引き下げろという御意見は大変誤解を呼び兼ねないと思います。60年改 正以降、ずっと今切り下げられつつあるところで、我々がさらに引下げということを制 度論として議論するならば、着地点のところの水準を議論すべきで、現在の新規裁定者 の今の時点の水準を高過ぎると言えば、それは自動的に下がるわけですから。審議会で 議論すべきところは、今、I委員が受け取っておられる年金が高いか低いかではなくて 2006年時点での年金が高いか、低いかと、こういうことだと思います。 ○I委員  ですから、トータルの将来残される負担として、350兆円というものがあるんだから それを少しでも減らすようなことを考えるならば、現在、年金を受給している人、ある いは近々裁定を受ける人、そこまでは行かないにしても、ある年金額を目指して積み立 てている人たちの債務をトータルとして削ることを考えるべきではないかということか ら、そういうふうに申し上げているんです。 ○会長 女性の年金の問題に御議論を移したいと存じますが、よろしゅうございますか。事務 局から資料の御説明をお願いします。資料も大変長い大きなものですが、どうぞ。 ○事務局 それでは大変込み入ったテーマを短時間で御説明しますので、失礼があるかもしれま せんが、御容赦をいただきたいと思います。 資料2、「女性の年金について」というものについて御説明申し上げます。これは大 きく分けまして、中身は、女性の年金の個々の問題に入る前に、基本的にどういう考え 方で、女性の年金にアプローチするかという理論的な部分を最初に整理いたしまして、 その後、3号の問題、パート、遺族年金、それから離婚等の年金の分割、こういった4 つのポイントについて、いろいろな改革の意見についての分析なり試算を行ったもので ございます。まず前半、一番最初の理論のところでありますが、1ページは、先ほども 御議論がありましたように、今の年金制度が想定している、特に女性のライフサイクル の姿も大分変わってきておりまして、真ん中のマル等でありますけれども、例えば単身 者が増えているとか、晩婚化、若年離婚の問題、それから、共働きの世帯が増加してい るとか、あるいは離婚が増える、そういったことで、現行の年金の制度について、さま ざまな不満とか不公平感、あるいは変更を求める意見が出てきているわけであります。  一番下の四角に書いておりますとおり、そういったことで、こういった生活形態の変 化にももっと対応できるような年金制度にすべきではないか、そういう意見があるわけ で、これが今回の今後のペーパーのもとになる問題意識であります。  2ページに参りますが、女性の年金問題についても、実はどうしてこういう問題が特 に今般大きくクローズアップされているのか。先ほど申しましたこと以外の切り口とし て、例えば世代間の負担の不公平感といった議論がありますが、それとこの問題はちょ っと違う。特に真ん中の四角のところでぜひ御留意いただきたいのでありますけれども 女性の年金の問題は、むしろ世代内の給付と負担の均衡についての不公平感の高まりに 基づくものである。いわば分配の問題として考えております。ですから、あるところに 手厚く配慮すれば、その分あるところが、だれか持たなければいけないということで、 言ってみれば、単純な損得から言えば、そういう不公平感が生じるわけでありますから 分配をどうするかということが基本だと考えております。ですから世代内分配として整 理しておりまして、いわゆる「5つの選択肢」に示しましたような、世代間の給付と負 担の公平とはちょっと違う切り口で考えて見ております。  3ページでありますが、そうしますと、現在の特に年金に対する一般の感覚、特に女 性の年金についての御意見等でも、よく見られる部分であろうかと思うんですが、保険 原理というところが随分強調されているような感じがするわけであります。そこの部分 としては、むしろ左側の保険原理のマルの中にあります、例えば「私保険的」な原理が 随分強く意識されているのではないか。給付と負担の間に密接な、厳密な関連性を求め ていく感覚が見られるのではないか。例えば自分の払ったものが返ってこないとか、自 分の払った保険料が自分以外の人のところに行く、これは問題である、こういったよう な議論になるわけであります。現在の社会保険というものは、そうではなくて、必要な 方に給付をするということと、また能力に応じて負担をしていくという大きな原理で社 会保障として構成されている制度でありまして、そのあたりをよく分けていかないと、 年金は保険だからこうだという断定が入り過ぎるのではないか。  最終的に右側の全体の所得保障と組み合わせて、社会保障として考えていく考え方が 必要であるというふうに考えております。下の囲みでありますけれども、今の社会保障 として行っている年金の長所を書いていますが、保険集団で必要に応じた再分配をして いく。ですから、これは貯蓄とも違う。出したものは全部返ってくるという貯蓄でもあ りません。  それから、現在の制度は比較的女性の多様なライフサイクル、生活の変化に対しては 特に3号なんかの問題でもおわかりいただけるかと思いますが、そういった変化に対応 する内容にはなっているというふうに考えております。  また、もう一つのポイントとして、これも今御議論があったところでございますが、 世帯単位で見て、給付と負担がバランスがとれるようにつくられているというのも事実 であろうかというふうに思います。  そこで、4ページでありますが、年金制度を世帯か個人かという議論でありますが、 個人単位化していくということは1つの流れとしてお考えの方、今も御意見いただいた ところであります。これを最終的な姿ということで、もっと理念的に突き詰めてみます とどういうことかなというふうに考えたのが、この4ページであります。最初の四角で ありますが、女性が、未婚であるか、既婚であるか、就労について、フルタイムである か、パートであるか、あるいは夫の収入が少ないとか、そういったいろんな環境や条件 が違えば、給付と負担に今は違いがあるわけですが、それがないように、みんな同じに していこうということになるのかなと。これをずっと進めていきますと、考え方として は、個人単位の私的保険原理というものが相当濃厚に入ってくる考え方につながってい くのではないか。  具体的にはもちろん3号の方々にも個々に負担を求めていくというふうに、当然の帰 結としてなるわけでありますし、全部が個人として構成するわけでありますから、世帯 として夫の収入に対して老後を期待する。遺族年金のようなものは突き詰めれば考えら れないことになるわけです。今の例えば23万円という額で、夫婦で老後を送っていこう という給付設計というものも、これはもう一遍、個人単位に見直していくということで あれば、今の給付水準は下がっていくこともあり得るということであろうかと思います  そういうことがありますけれども、そういう姿を目指すのか、当面それを目指すにし ても、現状に当てはめてみると、例えば女性の置かれている社会実態を勘案して、今の 女性が、フルタイムで男子と同等の賃金を持って働いているという前提に立てば、そう いった仕掛けもこれは機能すると思うのでありますけれども、今の特に中高齢者の実態 等に当てはめて、そういう方にそういうモデルを適用しますと、老後の必要に応じた所 得保障が失われていくことはないかということで、時代認識も兼ね合わせて、こういっ た個人単位化の方向を考えていくということであろうかと、そういうふうに整理をした 上で、以下の個々のポイントに入っていきたいと考えております。  まず5ページ、「第3号被保険者」の問題でございます。これについては、上の四角 で、今、被用者全体で保険料を拠出して基礎年金の受給権は確保しておると。その間、 出産、育児、介護等で、家庭に入って無収入な時代があっても、その間は全体で支え合 って、年金が確保されると、こういったような形がとられているわけであります。こう いった制度になりましたいきさつについては、例えば年金白書であれば、229ページ〜 230ページで、昭和60年の制度改正のときに、そういったことが検討されて、今の姿にな っているという経緯を書いているところであります。きょうは詳しくは説明しませんけ れども、資料3の中にも、1ページ目に、諸外国のこういった被扶養配偶者の扱いを書 いておりますが、我が国のやっておる制度が、世界でもまれなものではなくて、特にそ う変わったものではなく、割と一般的な姿であろうかと思います。ただ、これについて は、やはり現行制度に対していろいろ御意見がございまして、2つのマルがありますが 例えば専業主婦の保険料を専業主婦以外の世帯、共働き、あるいは独身、単身の世帯が 負担させられているけれども、それはおかしいのではないかとか、所得がないから、賦 課しないといいながら学生には賦課しているではないか、こういったような批判もある わけであります。  したがいまして、これについてどう考えていくかということで、3つほど並べており ます。現行制度を維持するという考え方に立ちますと、ここでは、負担能力がある方に 負担も求める、必要性を考慮をして給付をするという原則からみて、現状で問題がない  それから、6ページに書いておる図をちょっとごらんいただきたい。6ページは単な る給付のモデルでありまして、これは社会実態をあらわしているものではありませんの で、誤解がなきようにお願いしたいんですが、要するに上の四角でありますが、所得が 同じであれば、共働きでも専業主婦世帯でも同じ保険料をいただいておる。ですから左 でありますが、夫50万で妻0の世帯であっても、あるいは夫30万、妻20万という共働き 世帯であっても、同じ所得であれば、同じ保険料が賦課されておる。  それから、右側でありますが、その50万に見合った厚生年金、これは生涯の平均50万 ということではございませんので、注をつけているところでありますが、50万と評価さ れた所得に対しての、要は年金額へのはね返りというものは、夫婦で50万でも、お一人 で50万でも同じだというのが今の制度の考え方だということを図示しておるわけであり ます。  これが現在の制度の説明でありますが、5ページに戻ります。これに対して修正すべ きであるという意見にも大きく2つぐらいに分けますと、2のaと2のbというものが あろうかと思います。2のaという考え方は、要するに3号を廃止して、もとへ戻す形 になりますがやはり専業主婦も保険料を本人が納めるというふうに変えるべきだという 考え方であります。  これを具体的に示した試算が7ページであります。行ったり戻ったりで恐縮ですが、 ごらんいただきたいと思います。これは専業主婦の方に、今4月から国民年金の保険料 を月額1万3,300円になるわけでありますが、これを払っていただく。そうしますと、そ の方々が払われた分については、今の2号が、みんなで拠出しているところが軽減され るわけでありますから、その差引きがどうなったかということでありまして、4つの家 庭のモデルを書いておりますが、夫50万、妻0、その下、夫25万、妻は専業主婦で収入 0、左が夫30万、妻20万、夫15万、妻10万、こういった世帯を見ますと、これは奥様は 1万3,300円を払うようになり、そして一方で、御主人の方のサラリーマンとしての負担 は軽くなるという差引きになるわけでありますから、括弧のプラスマイナスを見ますと はっきりわかることは、左の下の角、夫25万、妻専業主婦という世帯の負担増が1万 1,612円。収入の高い世帯はそれほどはなく、夫の方にはね返りがあって、負担が楽にな る部分が差引きされますから、9.925円の負担増になる。右の方の世帯は当然負担が軽く なるという形になるわけでありますから、こういった世帯の負担が厚くなるというふう なでき上がりになるということでございます。逆に言えば、現行制度はこういった世帯 が比較的守られているということの裏返しであります。 そして、2つ目のマル、四角の中のマルでありますが、1,200万人いる第3号がみんな 保険料を払えば、年金制度は非常に財政的に改善されるはずであるという、むしろ財政 対策としての御主張もあるわけでありますが、その効果を試算いたしますと、厚生年金 保険料率の1.35%に相当しておりますということでありまして、この1.35%というもの を大きいと見るか、小さいと見るか、御判断を賜りたいと思うわけであります。 それから、ちょっと小さく書いておりますが、専業主婦からいただいても、ほかの人 は下げないというやり方ももちろんあります。これから保険料が上がっていくわけであ りますから、財政対策として下げないというやり方もありますので、そこは前提という ことで、2つ目のマルで掲げているところでありまして、必ず下げるか、財政対策とい うなら下げないというやり方もこれはあるということであります。  こういったことで、5ページにお戻りいただきますと、2のaの考え方の利害得失、 メリット、デメリットでありますけれども、1)として、「無年金・低年金の高齢女性が 発生することが予想される」。負担ができない、あるいは一時負担をしなかったという 方が出る可能性はある。特に昭和60年ごろの国民年金の保険料は6,740円ということであ りましたが、それが1万3,300円になり、将来2万を超す金額が想定されているわけであ りますから、この無年金とか低年金が生じる可能性というのは、60年当時よりもなお強 まるのではないか。  それから、2つ目のマルでありますが、「多様な女性の生活形態(ライフスタイル) に対する配慮に欠ける」等の問題点はないとは言えないというのが考え方であります。 それを考慮の上で取り組むかどうかということでございます。  それから、次なる考え方は、bでありますが、専業主婦が自分で負担するのではなく て、現在の3号という枠組みは維持いたしますけれども、被用者の間で専業主婦、もち ろん逆のケースもあって、夫が家にいて、奥さんが働いているケースがありますが、そ ういう方をお持ちの夫が保険料を追加的に負担をするということで、例えば専業主婦等 を持たない共働きとか単身世帯の人はその部分は負担しない。ですから、保険料として 専業主婦を持つ夫にだけ賦課してやり取りをするという形をとったらどうなるかという のを計算したのが、次の8ページでございます。こういった考え方があって、ちょっと 試算をしてみました。  これは結果の方の、右肩の下に点線で囲んだ括弧がありますが、保険料率の変化とい うところを先にごらんいただくとわかりやすいと思うんですが、今、17.35%の保険料率 であります。これは本人負担分が8.675%ですが、専業主婦を持っておられる世帯の世帯 主は、今後17.35%から約1.9ポイントアップして、19.3%の保険料をいただく。そして それ以外の方々は、相対的に負担をする必要がなくなるわけですから、1.35%下がり、 16%になるということで、専業主婦を持っている世帯主とそうでない世帯で、サラリー マンの間で3.3%保険料率に差をつけるという形になるわけであります。これは本人負担 分で見ますと、右の括弧のとおりであります。 これを適用して、各サラリーマン、いろんな世帯がどうなるかというのを、4つの類 型で見たわけでありますけれども、例えば、これで見ますと、先ほどみたいに一番左肩 の隅、夫25万、妻専業主婦というところが持つ負担は、先ほどとは違ってそう多くはな い。むしろ、給与の多い専業主婦を持つ夫の方に負担の方が動いているわけであります 右の方が軽くなる、こういったでき上がりでありますけれども、これは逆に違う見方を いたしますと、上の四角のマルでありますが、専業主婦を持っている世帯は、共働きの 世帯に比べて、同じ収入でも負担はその分だけ大きい。同一所得、同一負担という原則 は崩すということになります。 5ページにもう一遍お戻りください。これをもう少し 評価してみたのが、2のbの1)、2)、3)、4)、5)です。事業主が1.9%の追加分について これはいわば明快に専業主婦の年金分でありますが、そこについて、事業主負担を賦課 することができるか、事業主の責任がありやという議論があります。  2)としては、3.3%ほど保険料負担の高いサラリーマンとそうでないサラリーマンを加 えた場合に労働コストが違うわけでありますから、雇用に影響はしないかということ。 3)、これは事務的な問題ですが、事業主は、使用している人の配偶者が1号か、2号 か、3号か、確認していかなければならなくなるということであります。  4)、特に今後の給付と負担のバランスに影響するところでありますが、1.9%ほど負担 が重くなるグループがかなり大きな層で出るわけでありますから、今言っている、例え ば30%が限界とか、20%が限界というときには、この人たちの限界感がまずくるわけで ありますので、負担感の天井は低くなります。今よりも1.9%ぐらい、これが限界という ような限界感は低くなっていくということで、議論があろうかと思います。  5)、これもなかなか言うは難しいポイントでありますが、例えば結婚退職とか、出産 退職とか、そういう形で、奥様が従来の2号から3号に変化しますと、夫の方の保険料 が今の17.35%から19.3%にはね上がるわけでありますから、そういう形で人生を設計し た場合には、その途端に保険料が重くなるということになります。それが今後の出生率 を含めて、少子化にどういう影響を与えるかということは考えていかなければならない のではないか。 こういったことで、現在の制度について、それから改革について、それぞれ一長一短 あって、どれも全く完璧無比みたいなものではないかと思いますけれども、それぞれの 利害得失の中で御判断をいただかなければならないのではないかと思います。 以上が3号の関係であります。ちょっと3号を手厚く時間をとらせていただきました ので、あと、時間の関係で短くなります。  「パートタイム」でありますが、パートタイムにつきましても、特に3号の被保険者 が存在するので、特に女性の年金の重要な切り口になるわけであります。現行制度に対 して、パートタイム労働者の地位を向上し、あるいは福祉の向上、特に老後2階部分を 主婦も持てるようにするべきだということであれば、パートの2号の適用を拡大するべ きだという考え方。あるいはパートである程度今稼いでいる人には保険料を払ってもら って、3号でなくて、将来の給付を支える側に回ってもらいたいと。あるいは企業間の 不公平。また、130万とか、4分の3という線引きがあるので、就労調整が起きているの ではないか、こういったような指摘があります。まず1つ目は、労働時間が正職員の4 分の3以上は厚生年金を適用いたしますが、それよりも労働時間が短い方は適用しない という現在の4分の3という時間の線引きをもっと拡大していくべきではないかという 意見があるわけであります。  それについて検討を要する課題として、小さな字で細々書きまして申しわけありませ ん。1.2.3.4.5.6.と書いておりますが、こういう形でパートを正面から拡 大していくと、今の世帯単位の給付設計というものは、奥さんもこれから2階部分が大 きくなってくる中で、設計変更をすべきではないかとか、医療保険等、ほかの保険制度 との整合性をどう考えるか。年金だけがそういったことができるかどうか。 4つ目にありますけれども、事業主あるいはパートタイムの労働者御自身、特に3号 の方々自身がそれを望んでいるのかどうか。特に下の箱でちょっと書いておりますけれ ども、今3号の方が2号に移りますと、今は保険料が0のところが、一挙に17.35%の保 険料になりますから、10万の収入の方は、今は3号で保険料が0でも、これが適用にな ると、そこの時点で保険料が1万7,000円ほどかかってくる。こういうことは御理解いた だけるかどうか。その他、書いておるところであります。 そして、10ページの下に絵をかいておりますが、これは一番分布をわかりやすくして いる絵かと思うんですが、時間と収入で、縦軸、横軸線を引きまして、時間をずらして いきまして、左にずらしますと、2号が増えて、1号、3号が減ります。また、130万円 という今の線を上に上げますと3号が増えて1号が減る。  一方、これをぐっと下げますと、3号の数が減っていきます。こういう相関になるわ けでありまして、4分の3という軸を動かすとどういう影響があるかというのを1号の 方、2号の方、3号の方それぞれに変化を説明した資料であります。1点少し御説明し ますと、2号の方を増やすと保険料負担されるようになるわけで、それは将来の年金財 政にとって、いわば保険料収入が入るからプラスだということが一般的に言われていま すが、これはどういう所得階層の方がどれぐらい入ってくるかで効果が違いまして、例 えば9万2,000円に近いような方々がほとんどで、ある程度収入のある方が新しく参入し てこないのであれば、これはむしろ財政負担は、将来的な給付が発生するので増という ことになります。パートを2号に取り込んだら、年金財政が豊かになるかということは いちがいにいえないと、検証してみなければいけないということも付言させていただき たいと思います。  次が11ページ、「就労調整」であります。これは今の130万円のラインを動かして、今 の3号の方をもっと1号にするのか、むしろ逆にもっと1号になりやすくするのか、そ このところを議論しているところであります。それぞれ利害得失を説明させていただい ておりますが、時間の都合上省略させていただきまして、12ページに参ります。  「遺族年金」でございます。遺族年金も現在は被保険者が死亡した時点で、生計を維 持されていた遺族が所得保障を受けるということですが、これについては、例えば単身 の世帯や共働きの世帯は、遺族年金というものが発生しないはずだから、それを負担し ているのは不公平ではないか、そういった意見、ですから廃止論もあるわけであります  それから、ちょっと込み入った形でありますが、今の制度を前提としても、専業主婦 世帯と共働き世帯の間に遺族年金に損得がありはしないかという指摘がありまして、2 つのケースを書いております。  修正の意見としましては、aとbとありまして、廃止するということについてどう考 えるか。あるいは廃止ではなくて、aの2つ目の黒ポツですけれども、遺族年金はオプ ションにしてはどうか。遺族年金が欲しい人は別途追加で保険料を払ってはどうかとい うような案もあるわけであります。これはちょっと逆選択の問題が起きまして、早く亡 くなりそうな配偶者を持った人ばかりが入ってくるということであれば、これは公的保 険で本当にいいのか、むしろ、これは民間保険の世界かもしれませんが、そういった評 価もあろう。 bは、ちょっと込み入っていますので、次の13ページに図解したところ でありますが、今の年金が仮に世帯で同じ収入で同じ保険料、そして、同じ給付を前提 にしても、そこは是としても、専業主婦世帯の方が遺族年金だけは有利ではないかとい う指摘がされております。  それはどういうことかといいますと、今、夫の厚生年金が10万円の方について、妻が 特に2階部分をお持ちでなければ、4分の3の遺族年金が出ますから、7.5万円の年金が 出る。ところが夫婦で厚生年金を10万円持っているケースで、これは特に下に書いてい ますが、奥さんの厚生年金が7.5万円以下のケースであります。普通そうだと思うんです 夫の方がほんの少しの年金で奥さんが物すごく大きいケースというのはレアであります このケースでは、夫の死亡後、妻が自分の厚生年金を選択した場合には、恐らく全額で いけば、5〜7.5円ぐらいだろう。真ん中のケースで、奥さんの年金が3.3万円から5万 円の間であれば、恐らく夫の厚生年金の半分と自分のを半分ということで選択されるで ありましょうから、5万円の年金になるであろう。奥さんの年金が3.3万円以下であれば これは夫の年金の4分の3を選択されるであろうから、5〜7.5万円の年金ということに なる。これではいずれのケースも共働き世帯の方が、専業主婦世帯よりも遺族年金が少 なくなるのではないかという指摘があって、むしろ年金額を合算して、一定率を掛けた 方がいいという意見も表明されているわけであります。これについても、12ページで、 これはこれでそういう損得がありますけれども、今の共働き世帯の年金給付設計自体、 まず考えていくことが先決ではないかということ。あるいは給付改善になりますから、 また、給付費の増大をもたらしますので、そのときに、4分の3という遺族年金の給付 率を維持できるかどうか、こういった議論も不可避になるのかなということであります  最後、14ページが「年金分割」であります。年金分割につきましては、特に離婚時に 女性の年金を確保するというような考え方や、それから、離婚時と言わないで最初から 分割するとかいった御指摘がありまして、途中の説明は省略いたしますけれども、2の 「現行制度の修正を求める意見」というところは、離婚分割、それから、賃金分割、2 つの意見が出ておるところでありますけれども、これについてどう考えるか。  次のページでは、現行の民法制度について、資料をお付けしているところであります けれども、民法の世界では、夫婦別産制をとっておりまして、両方、当事者間の財産に ついては、それぞれお互いの財産分与請求権で、話し合ってけりをつけていくわけであ りますが、年金のところで、そこを真っ二つに割るような考え方がうまくいくかどうか  2のaのところに、「または」以下を書いておりますが、真っ二つに法律で割るので はなくて、例えば希望するケースについて、分割を認める、御夫婦話し合って分割すべ しということであれば、それを認めるというやり方についてもどうかと、こういった指 摘もいただいているところであります。  こういったことについて、どう考えるかをざっと整理いたしたところであります。以 上、はしょりまして恐縮ですが、資料の説明を終わらせていただきます。 ○会長  ありがとうございました。「女性の年金について」の資料について御質問、また、こ こに取り上げられている問題について御意見など、御自由にお願いします。  なお、当初12時に閉会という予定でしたが、大分時間を超過しました。お昼が出ます ので、この御議論も12時を越して、1時くらいまでゆっくり御議論いただいてと思いま す。 ○K委員  まず時間なんですけれども、内容が豊富過ぎて、とても、これをきょう1日でという ことは、私は不可能かと思いますので、できれば、もう一回、機会を設けてもう少し時 間をとってほしいと思います。  基本的には、今まで個別の課題とされてきたそれぞれが、「女性の年金」という形で まとめて論じられることによって、問題点とか方向がはっきりしたのはすごくいいなと 私は思っています。ただし、どうもいろんなことが、出していただいたことなどでちょ っと気にかかることがありますので、1つまず言っておきたいことは、女性というのは 被保険者の半数を占めていることと、受給者の半数以上を占めているということですね だから、すごく重要だということをもう一回強調しておきたいと思うんですね。  それから、多様なライフスタイルということを考えていただいて、標準家庭のモデル ではなくて、いろいろなモデルを出していただいたことはとてもいいと思うんですけれ ども、そのときに資料をつくってくださる方々の頭の中から抜けていないことがたくさ んあると思うんですね。例えばですけれども、資料の7ページですけれども、夫・月収 50万、妻・専業主婦の世帯ですね。それから、夫・月収30万、妻・月収20万の世帯とい うのを一応比較の対象にして出してくださっていますよね。夫・月収50万で妻・専業主 婦の世帯というのは、これはすごく現実的だと思うんですね。夫・月収30万、妻・月収 20万という世帯は、公務員の方であれば、あると思うんですが、現実の日本の夫婦では 非常に非現実的といいますか、ごく少ないと思います。それから夫・月収25万、妻・専 業主婦ですけれども、これは夫が25万の方はたくさんいらっしゃると思うんですけど、 若い世代ですよね。そして、もし、私ぐらいの世代で、夫の月収が25万であれば必ず共 働きですよね。ですから、この場合は、恐らく若い世代で、子供さんがいて、育児があ って働けない世代ですね。ですから、この妻が第3号のような状況であるということに ついて異議を言う人は余りいないと思います。そういうふうに現実的に考えてほしいと 思うんですね。いくら計算上こうなるといってもですね。それから、夫が月収15万、 妻・月収10万というのも、割に現実的であるかと思います。これも非常に若い世帯だと 思います。子供がいるようなですね。  ですから、どういうライフステージにいる人が、どういう収入構造になっているかと いうことをもう少し頭に入れて、計算していただきたい。そうでないと、非常におかし なことを言うことになってしまうのではないかと思うんです。  ちなみに所得統計、そういうのを見ますと、日本のサラリーマンの平均的な年齢は40 歳ぐらいですよね、たしか。女の人はもっと若いわけですけれども、40代ぐらいだと思 うんですけれども、平均所得は月で60万ぐらいですか、全部の総収入で。そして、配偶 者の寄与率は1割というふうに出ています。つまり、60万だったならば、6万ですね、 女性は。そういうのが日本の平均的な家庭であると、共働きといっても。そういう一番 平均的とか、一番多いところをこういうときには1つは出していただけると、もっとこ のことについて現実的に論じられるというふうに思います。  そのほか、いろいろありますが、とりあえずそういうことを申し上げたいと思います ○D委員  今の厚生省の御説明を伺っていまして、公平、不公平という名のもとに、損得という ことで、女性の年金が語られている部分が多いのですけれども、私は損得論議ではなく て、やはり経済の担い手としての女性の新しい視点ということを前面に出して、その場 合に、では年金制度としてはどのように枠組みを変えるなり、制度の改正ができるのか ということを考えるべきだと思います。基本的に経済の担い手としての、女性の新しい 視点を導入する必要があるというのは、これから労働力人口が減少していきますし、当 然国民負担率の問題にもはね返ってくるし、また、年金財政についても、年金財政全体 の総支出と総収入のバランスという点から見てもそうですし、また、自立して生活する ことを望む女性が多いというような点から見ても、非常に望ましいわけで、そういう視 点からこの問題も取り上げた方がいいのではないかと思います。個別の損得論議よりも もう少し広い視野から見た方がいいのではないかと思うわけです。そうしますと、例え ば遺族厚生年金でも労働年齢にある女性等を優遇しすぎています。今の制度というのは 女性は、主として夫でしょうか、だれかに扶養されて生きていくものだというような位 置づけなので、若いときに夫と死別した場合でも、遺族厚生年金を支給するというよう な形になっているわけですが検討の余地があると思います。そのためにはもちろん年金 制度だけではなくて、雇用対策等を変える必要があって、年金だけでは無理な部分があ るかもしれませんけれども、いろいろな事態になった場合に、女性が自立して働きたい と思う人が、働きながら生活でき、それをもとにして、今度また高齢期も老齢年金で生 活できるというような形にしていった方が、女性にとっても男性にとってもいいのでは ないか。だから、遺族年金についても、夫が死亡してしまったら、すぐ2階部分の厚生 年金を支給するというのではなくて、しばらくの間、就職が難しいと思いますので、雇 用機会を得るための職業訓練とか、職業技術を身につけるために、例えば数年間に限っ て年金を支給して、就職できれば遺族年金は支給しないとか、いろんなことが可能だと 思います。具体的に来年の改正ということになりますと、今、御説明がありましたよう に、3号被保険者に保険料を求める場合に、保険料負担の在り方はどうするかとか、あ るいはパートタイマーを年金制度の中でどう位置づけるか、実際の保険料を今徴収して いない人から徴収する場合に、徴収方法はどうなるかとか、そういう点について、労働 側はどう考えるか、また事業主はどう考えるか、行政当局としてはどう考え、どういう 問題があるか、具体的に問題点もあると思いますので、それを整理して、完全な改正と いうのは、次回までには無理だけれども、前から見送っている部分もあるわけですから 今度の改正では、第1段階としては、ここまでできるんじゃないかという、年金審議会 で合意できる線をある程度議論して固めるというのが実効性のある論議ではないかと思 います。考え方としては、今までにも何度も議論されてきていますし、コンセンサスが 得られている部分があると思います。具体的に一歩を踏み出す場合に、どういう方法で 保険料はどうなのか、実際のパートタイマーを位置づけた場合にどうなるのかというこ とについて、それが具体化できるのかどうかということについて、何かもう少しそれぞ れの意見を整理して、実効可能性のある改正案にするためには、どこまでが可能なのか ということをもう少しまとめていくことが必要ではないかと思います。 ○B委員  まずK委員が言われた、これだけの問題をきょう1日でもって片づけちゃうのは難し いのではないかという感じは私も共有いたします。今回の改正に当たって、女性と年金 という問題について、具体的な改正に踏み込むのかどうか、このことをまずきちんと確 認をすべきだろうと思います。厚生省が今日出された資料は大変興味深い内容ではあり ますが、具体的な制度改正についての問題提起は一切ありません。 私個人の意見を言いますと、前回の経過は前回の経過でちょっとまとめて教えていた だきたいのですが、従来の議論からすれば、前回見送られたテーマの中に、第3号を中 心にしたこの問題があるわけで、少なくとも遺族年金については大変いろんな問題が残 るにしても、前回一定の修正は施したわけですが、そういうことから考えると、今回こ れについての一定の制度改正は前向きに取り組むべきだというふうに考えます。 その場合のプライオリティーは、第3号問題にあるのではないだろうか。そこにきち んと射程を置いた議論をすべきではないか。その前提として、前回、私はこの審議会に は参加していなかったので、前回の女性と年金あるいは3号をめぐる議論というのは、 どういう内容で、どこの水準まで来たのか、これは審議会としての継続上、またゼロか ら出発するようなことがないように、前回の論議の少なくとも到達した段階を踏まえて そこを出発点にした議論をすべきではないだろうか。ここはぜひお教えをいただきたい と思います。 もう一つ、特に女性の委員の方からしばしば強調される、世帯単位か個人単位かとい う議論がございます。私は大変不勉強で申しわけないんですが、ここはどうもよくわか りません。例えば個人単位を主張される女子というのは、私どもの組織内におるんです が、これが第3号分の負担は亭主におっかぶせろとこう言うんですね。これは世帯単位 じゃないかというんですけれども、その辺のところの、世帯単位か個人単位かという問 題は大変大事な問題で提起されているのだというふうに私は思うんですが、そこがきち んと整理されて、理解され、最低限必要な部分が共有されるように、この審議会で論議 されるようにお願いをしたい、以上でございます。 ○H委員  原則論みたいな話ですが、要するにこの辺の議論はかなり税制の所得税の取り扱いと も非常に関係があります。所得税は一応個人単位を前提にして、それで、多分御存知で しょうが、1人の場合でも完全に定額がありますが、また、家族の扶養その他ですから 個人単位でも、生活単位としての世帯をながめて、個人単位の負担を修正するというス タイルで、もちろん共稼ぎの場合ですと、扶養控除はなくなっちゃうわけです。だから 世帯としては両方合わせたものが所得税の負担になるということですね。ですから、社 会保障の、年金の場合も原則論として、税制の取り扱いと年金の取り扱いというのは、 かなりここのところも密接に関係している。多分給付のところも大問題になるはずです が、その問題はともかくとして、一番基本的な原則で、所得税制と社会保障の保険との 制度の一番基本的な考え方のところが非常に食い違っていると相当やっかい。やっかい というのは、非常に生涯全体を比較した場合とかいろいろなことですごく複雑なことが 起きてくるので、原則論として、その辺のところがかなり重要なポイントで、そこが非 常に食い違っていると話が相当やっかいなことになるということだけちょっと申し上げ ておきたい。 あとは、いろいろ議論がございますが、要するに日本で一体、先ほどたしかK委員が 言われましたが、よく起きているケースがどういうケースかというのはやはり重要で、 余り起きてないケースをここで議論しちゃうと後で変なことになる。ということが1つ もう一つ、この問題は非常に複雑で、何が望ましいかというポイントがありまして、こ れは結局議論するとどうしようもなくなるというところがあって、離婚の問題、出産。 出産は子供を増やした方がいいとか、そういう話。それから、もう一つ、公平の問題と か、ここにもちょっと出てきましたが、現在女性の方が多分お年寄りが相対的に高いで すね。その人たちは多くの場合、御主人が死んでいるとしたら、要するにそういう人が 今の社会保障上かなり重要な問題になるわけで、高齢の女性は一体どういうふうに処遇 すべきかという話もありまして、どうあるべきかという話にも関係して、そういう点の かかわりがいろいろあって、単純に申すと、非常に複雑な側面があることは間違いない のでというふうに思いますが、その点をいろいろ考慮して議論をしていただきたい。 ○L委員  私は3号問題についての意見がございますが、これは後で申し上げます。私、申し上 げたいのは、最後に取り上げられた年金分割の問題でございます。私はかつて一度年金 分割のことを申し上げたことがありますが、その場合は、決して14ページに書いてある ような観点から申し上げたつもりはなかったはずなんです。私は決してカナダのような 制度をイメージして、年金分割制度を導入してはどうかといったようなことを申し上げ ているつもりはございません。 私がここで聞きたいことは、年金法の規定では、年金というのは、譲渡、差し押さえ 担保が禁止になっているわけですね。つまり一身専属の権利になっておりまして、分割 は不可能なんです、現行法では。これは日本で考えた制度ではなくて、明治の初年に恩 給制度が入ってきたときからそうなっておりますし、現に西欧の恩給も年金もすべて一 身専属の権利として構成されておる。このこと自体は私はいいと思うんです。年金権の 保護という点で非常に重要な規定だと思っておりますが、ただ、離婚のケースが最近増 えてきた。それから、婚姻期間中に形成された財産として、年金が非常に大きくなって きた。住宅に次ぐ財産だと言われておるわけなんですが、そういう中で、不幸にして離 婚という事態が発生した場合に、年金を分けたくても現行制度においては法律上不可能 なんです。この問題はヨーロッパでは大きな問題になりまして、スウェーデンのような 立法もございますし、ドイツのような立法もございます。 また、イギリスでは、前回も申し上げましたが、グード委員会でこの問題を取り上げ ました。グード委員会は専門委員会に委嘱いたしまして、この問題の検討をしたわけな んですけれども、答えが4つ出てまいりまして、1つは、“バランシング”と言ってお りますが、要するに離婚の際に、財産の分与に際しては、年金を考慮に入れねばならな いという選択肢。 2番目は、これは“イアーマーグ”と言っておりますけれども、年金がいよいよ支給 開始する段階になれば、これは別れた奥さんのために、ある部分をとっておいて、奥さ んの方にそれを渡すという制度。 3番目は、これは受給権がまだ確定しない前、というのは、離婚というのは、65歳以 降に発生するケースも少なくはありませんけれども、大部分は65歳前に離婚が生ずるわ けでして、年金権がまだはっきりしないときにどういう分け方をするかということで、 3番目の選択肢というのは、その制度に、いわば据置年金の形で奥さんの分を残してお くという選択肢。 4番目は、これは“クリーンブレーク”と言っておりまして、完全に別れちゃって、 奥さんに分けた年金は奥さんのものにしちゃう。いわば制度間の移動と同じような調子 に取り扱うという提案をしたわけなんです。 いずれも問題がございまして、イギリスの場合には政府は決定できなかったんですけれ ども、国会の審議過程の中で、実は第1案と第2案だけが議員修正で入っちゃったんで すね。そういういきさつがあるほど、これは難しい問題です。裁判官が年金権を分割し た方がいいという判断をしましても今できない。しようと思っても、受給権が発生して ない場合、まだ受給権が発生してないといいますか、支給開始になっていない段階では 分け方が非常に難しい。そこで、イギリスの場合には、これはやはりいわば継続審議で すね。さらに専門的に詰めると、こういう扱いに政府はしたわけなんです。 私は、この問題はいずれ、一番大きいのはむしろ企業年金ではないかと思うんです。 公的年金の場合は、先ほど問題になった3号被保険者の問題がありますので、公的年金 の大部分は既に制度的に二分割されているような状態になっているわけですね。ところ が2階部分並びに将来の企業年金、この部分については全く手がつけられない。これを 一体どう考えるのかという問題は日本でも早急に検討を開始しなければならない段階で はないか。そのためには、これは非常に専門的な事項です。1つ民法の知識が要ります もう一つは、今度は数理の知識が要ります。そういうことで、どこか適当なところで この問題は継続的に審議していただくのがいいのではないか。恐らく次の改正には、こ れは間に合うはずがございません。しかし、間に合うはずがないというので、いつもこ の問題を見送っておったら、いつまでたってもめどがつかない。ですから早く本格的な 検討を開始していただきたい。これが私の提案です。それに対して、14ページ、15ペー ジのペーパーは何も答えていただいていないわけなんですね。以上、申し上げておきま す。 ○E委員  先ほどH委員が言われたように、特に3号被保険者の問題になると、私は税制、特に H委員ははっきりおっしゃらなかったけれども、配偶者控除制度等の関係が非常にあっ て、実際には130万円の問題で議論されていることの大部分は配偶者控除制度から派生し ていると言ってもいいのではないかと私は個人的には思っているんですね。配偶者控除 制度というのは、私が前に調べて記憶が薄らいじゃっているんですが、たしか大正年間 に扶養控除ができたときはそんなものはなくて、昭和15年ぐらい、戦争中になってから 配偶者控除というのが入ってきて、シャウプ勧告のときにどうして直さなかったのかよ くわからないんだけど、そのまま来ているような感じで、不正確な記憶なんですが、要 するに日本が立派だった時代にはなかった制度で、変なふうになってから入ってきた制 度だと記憶しているんですが、それがそのまま引きずられているような感じを持ってい るんですね。私はこの選択ということで、5ページに書かれている範囲のことで言えば 結論的には、2のa案、要するにもとへある程度戻す、85年改正前に戻すような感じに なるのかもしれませんが、そっちの方がbよりはベターかなというふうに思うんです。 ただ、先ほどK委員が御指摘になったように、前にも私もちょっと申し上げておるはず ですが、育児とか、老人の単に介護に限らず、広い意味で同居して面倒見ているという ような、老人のケアをしている、そういうのは非常に社会的に重要な、もし放置したら 社会的なコストになるものを家庭内で負担してやってくれてるわけです。専業主婦とい っても、高級官僚と言ったら悪いかもしれないけれども、大企業の社長さんの夫人とか ゴルフ場やテニス場へ行って昼間から遊んでいる専業主婦というのはたくさんおるんで すよね。あの人たちはみんな配偶者控除を受けておるんです。ああいうのは本当におか しいと、たくさん取ってやれというふうにいつでも思います。ただ、先ほどK委員が指 摘されたように、亭主が若くて、子供を育て学校へやっている時期、老人が一緒に住ん でいる、大変な苦労して、奥さんが面倒見てやっている、こういう所帯と、有閑マダム の専業主婦と同一に論ずるのは非常におかしい。そこでやっぱり線を引くべきではない か。 ですから、やはり15歳未満の子供を持っている世帯とか、あるいは老人と同居して面 倒見ているとか、そういうものに対しては、税制上ももちろん控除はあるわけですが、 現在の税制上の控除以上に手厚い保護をしてもいいですから、税制の方と合わせてやら ないと、年金だけやってもバランスがとれないと思うんですね。ただ、これは税調でや ってくれないとだめなんですが、税調の委員というのは大体専業主婦を持っている人が 多いと思うんですけれども、どの程度この声が届くかわかりませんが、私は基本的には そういうふうに思います。それと、実は先ほどの議論とも関係して発言したかったんで すが、給付の問題を議論するときに、公的な年金だけの給付水準を議論しているのはお かしいわけですね。やはりG委員がおっしゃったように、全体の老後所得なり退職所得 の中で公的な年金による給付がどれくらいかということを全体として考えないと。共済 組合の話が出ましたけれども、公務員は片方で退職一時金をたくさんもらっているわけ ですよね。私も今度もらうんですけれども、民間企業で言うと、厚生年金でもらう分と 年金原価にすると同じくらい退職一時金でもらっているわけですよね。民間の大商社あ たりの例を見ると大体そうですよね。共済組合も大体そんな感じになっているのではな いかと、逆かもしれませんけれども。いずれにしても、その辺は、特にアメリカなんか は、個人の、要するにマイクロデータですね。マイクロデータをいろんな形でもっと正 確に早くから収集して、きちんと分析ができるようにしてあるわけですね。日本はリプ レースメントレートなんていう非常に重要な問題がいつでも平均の標準報酬のところで どんぶり勘定の議論しかほとんどしてない。ところが実際には、私の場合ですと、年金 でもらうのは、公的年金だけで見ると、民間で言えば、企業年金を合わせた部分ですけ れども、今もらっている月給の5分の1ぐらいですよね。多分、退職金を入れたら2倍 になりますよね。4割のリプレースメントレートというのは、果たして低いのか高いの かという、ほかの国に比べてどうかと。ただ、常識的に言うと、多分企業年金まで入れ ると、外国の方がもうちょっとリプレースメントレートとしては高いだろう。そういう 重要な情報が、マイクロデータがとれないために、つまり社会保険庁で持っているデー タに、所得の統計を一緒にドッキングしてくれないとできないわけですね。  そういうのがないものだから、G委員たちは苦労して、消費動向実態調査とか、ああ いうのから、苦労して推計をいろいろやってはいらっしゃるけれども、もうこういう大 事な議論しているときに、頼るべきマイクロデータがないというのは、先進国として私 は恥辱だと思うんですね。ぜひ、厚生省当局の力を持って、統計局が悪いのかどこが悪 いのか、私はよくわからないんですけれども、ぜひマイクロデータを早期に開発しろと いうことを、この審議会で勧告をしていただけないかというふうに思います。 ○M委員  B委員の方から、先ほど、前回この問題についてどういう議論があったかというので 前回の審議会におりましたので申し上げたいと思います。前回改正のやはり最大のポ イントは、今回と同じように人口推計が変わってきたということで、21世紀の負担が月 収の30%を超すと。これを何とか30%にとどめたいという負担の問題。将来の保険料負 担の問題というのは最大の眼目であったことは間違いありません。 ただ、やはり今回と同じように、多くの検討項目というのを出して議論しました。女 性の年金問題も議論されましたけど、率直に言って、余りにも難しいということでさっ とやっただけで、こういうような踏み込んだ議論というのは前回はやっておりません。 余りにも問題が多過ぎるということでやったということで、したがいまして、今回どこ まで踏み込むかというのは、むしろ今度初めて取り組むというくらいのお気持ちでこれ は取り組むべき問題ではないかというふうに思います。 前回、問題意識としては皆さん持っておりましたけど、どこまでやるかという踏み込 みまでは到底行けなかった。そういう面で、今回初めてこれだけの資料が出たのではな いかと思います。 せっかく発言したので申し上げたいと思いますが、ここで出てなかった問題で、社会 保障制度で今の年金制度は行っておりますので、日本の社会保障制度というのは、あく まで世帯単位で伝統的に来ておったということですし、したがいまして、所得のないと ころに保険料徴収するという問題については、1つの大きな革命になるわけですから、 その辺は基本的に社会保険制度をどう考えるかという取り組みが必要だと思います。 それから、年金だけでこの議論が出ているんですけど、医療保険制度でも同じ問題が あるので、何でそれならば、医療保険で妻の家族の保険料の問題、あるいは子供の保険 料の問題が出なくて、年金制度だけこの問題が出ているか。この問題は年金制度で取り 上げるなら、医療保険制度でも同じような横並びの議論が必要だという点だけ申し上げ ておきたいと思います。 ○G委員  女性の年金は、今回の資料でもいろいろ紹介されているようになかなか錯綜しており まして、議論をまとめるというのは非常に難しい、容易でないものだというふうに私自 身は理解しております。ただ、明らかに不満が強くて、どう見ても制度的に不公平だと いう問題はあるわけです。それについて、年金審で議論はしたけれども、具体的には何 もしませんと、次回送りですと言って、皆さんに納得していただける状況にはないので はないかと思うんですね。やっぱり何らかの形で着手するということは今回どうしても 必要なのではないかというふうに私自身は考えております。 ただ、コンセンサスがどこにあるかというのは、もういろんな意味でコンセンサスは あるというふうにおっしゃる方もいるかもしれませんが、私は実はコンセンサスという のはなかなか難しい問題だと、個人的には思っていますね。どこをやるかというのは、 個人的におそらく判断の違う問題だと思うんですけれども、資料でお示しになったよう に、世帯ベースで見れば、老齢年金というのは実は余り差がないんだという議論、これ はもうちょっと強く主張していい問題だと思うんですが、遺族年金のところは明らかに 差があるわけですね。世帯ベースで見ても明らかに差があるわけです。 前回改正で1つ選択肢が増えたんですが、それでもまだ問題が残っているわけですね そこを今後どうするかということはやはり早急に詰める必要があるのではないか。私は 優先順位としてはそこが高いのではないかと思っております。 今回の資料の後ろの方に、世帯ベースの夫と妻の年金を合計して対応すれば可能だと いう話が出ておりまして、1つのアイディアは出ているわけです。ただし、これだと全 体として給付水準が高くなってしまうという問題がありますので、給付水準を下げるこ ととセットで、こちらの方向で解決することはどうかというようなことはもっと議論を 深めてほしいなというふうに思っております。それが1点ですね。  それから、今回、離婚時の所得分割の話をやっぱり本格的に議論するということで、 こういう形で資料を用意されておりますが、L委員がおっしゃったように、この問題も 非常に私は重要だと思っております。どういう結論になるかは別として、年金審として 議論を重ねていく必要が大いにあると思っておりまして、数理の専門家ないし民法ある いは年金とかいろんな形の専門家が議論する必要性は極めて大きい問題だと思っており ます。それから、今回の資料の中で説明はないんですが、老齢年金受給後に新たに結婚 した人とか、あるいは再婚するというケースはあるのですが、その人に対して遺族年金 の受給権を現在の制度は認めておりますが、老齢年金受給前に結婚して、ある程度の生 活を共にしたときの人と、年金受給後に結婚した配偶者に対して遺族年金を支給するこ とについてどうかということを議論する必要があるのではないかと思います。基本的に は私は必要ないという立場なんですけれども、その点に対する配慮ですね。 あるいは母子については、遺族年金が出るんですが、父子については出ないんですね これは現在の両性の平等という観点からいって父子を鞭打っているんですが、それでい いのかとか、優先順位をつけて議論するときに、すぐにできることとできないことがあ って、少なくとも今回やろうとしている改正でやることを示す必要が私はあると思いま す。何もやらないというわけにはいかないんじゃないかと思うんですね。何か優先順位 をつけてそこをやるということが必要だと私は思っております。 それから、マイクロデータの話が出ましたが、実は社会保険庁はマイクロデータでは なくてパネルデータを持っているんですね。個人のライフヒストリーについて、どうい う変化があったか、月給がどういうふうに変わってきたとか、結婚したとか、子供がで きたとか、子供が独立したとか、離婚したとか、そういうデータを社会保険庁が医療と 年金で全部持っているわけです。持っているけれども、これを分析とか解析とか、それ にほとんど使ってないんですね。ただ、持っているだけです。これは利用の面で予算を 配分しない、人を配分しない、人をつけない、お金もつけないということで持っている だけなんです。今、世界の流れは実はパネルデータを使った解析なんですね。1点のマ イクロデータだけではなくて、個人のライフヒストリーに沿ってどういう変化があるか ということを見た上で分析するのがむしろアメリカとかヨーロッパの主要国では主流な んですね。ところが、パネルデータは社会保険庁で持っているにもかかわらず公開され てないというか、公開はなかなか難しいんですけれども、利用さえしていないんですね 現行制度の枠組みの中で、もうちょっと利用に関して予算をつけていただくとか、人員 を配置していただくとか、あるいは社会保険庁の類似の組織でそういうようなことをも っとやる必要があるのではないかというふうに思います。社会保障人口問題研究所があ りますし、その他いろんなところがあるわけですから、分析が社会保険庁でできなけれ ば、そういう利用をするのはもっと別の器で用意できると思いまして、そういうことを やった方がいいのではないか。 マイクロデータでも、国民生活基礎調査を厚生省は大調査を3年に1回やっているわ けです。ここも調査するだけで、利用の面では極めておくれています。要するに結果報 告書をつくるだけで、解析をする人がほとんどいないわけです。これではやっぱり宝の 持ちぐされなんですね。実態もよくわからない。ところが実態はそういうデータを見れ ばわかるんですけれども、要するにお金と人をつけないためにそこが何も出ていないと いうような状況でありまして、そこをこれから何らかの形で工夫をしていただきたいと 思っております。以上です。 ○F委員  今までずっとこの年金全体について議論をしているわけですけれども、9月にある一 定の意見書を出さなければならないということになりますと、もうそろそろ議題を絞り 込んでいった方がいいのではないかと個人的には思うのですが、女性の年金権もその1 つだろうと思いますけれども、今、財政構造改革というところと絡んで、政治の世界か ら公的年金の在り方についてかなりボールが投げられているわけですね。高額所得者に 対してカットをしろとか、あるいは厚生年金の部分は民営化したらどうかとか、そうい う投げられたボールをこの審議会として少なくとも9月の段階でもってきっちりと回答 していく必要があるのではないか。女性の年金権とか個々の水準も非常に大事だと思い ますけれども、そういった政治の世界から流れを変えようしてきているときに、年金審 議会として、それに対してどう考えるのかということについても、もう一度きちんと意 見をまとめていただきたいというふうに考えております。 ○B委員  今のF委員の御指摘、まさにそのとおりだと思うんですが、私どもスケジュールは、 一応事務局から示されておりまして、確かに9月に報告書がまとまればそれに越したこ とはないと思いますが、しかし審議不十分なまま、責任も持てないようなものをまとめ ることについては反対でございます。 それから、今日提起されております「女性と年金」というかなり包括的な問題の切り 口の重要性というのは、これはやはりきちんと全体で確認すべきことだろうと思います そこの中でプライオリティーを決めて、次回改正について、何か少なくともこの点につ いては、一歩でも二歩でも踏み込んだ制度の手直しをすべきだというG委員の御意見に 全く同感でございます。遺族年金の問題に関するプライオリティーについては、先ほど の御発言から大変多くを教わったところでございます。 私どもは組織内で、つい女性の同僚たちからは、3号問題を極めて強く言われますの で、その点、私の認識の方が少し3号問題に偏り過ぎていたのかもしれません。 それから、前回の審議会でのこの問題の扱いについては、M委員からお話をいただき ましてありがとうございました。そのことを踏まえまして、問題の取り扱いの枠組みと いいますか、結論の合意の前に、扱いのための方法的な合意を少し確認していくことが 必要ではないかというふうに考えますので、その点に関して3つほど意見を申し上げた いと思います。 まず1つは、冒頭の資料説明で事務局から強調されました社会保険と私保険の原理的 な違いをきちんと踏まえるという点は大変大事なところだろうと思います。遺族年金に 関して、掛け捨てになるからというような議論がございますが、掛け捨てになるのは、 私保険ですらあるのであって、例えば火災保険などそうですね。ですから掛け捨てなる ものが一切ないようなものは、煎じ詰めれば貯蓄ということになってしまうのではない だろうか。社会保険制度というのは、再配分機能が中に組み込まれているということが 私保険とは非常に大きな違いであって、その意味では単なるリスク分散ではない。最近 は社会保険も保険であるから、これはリスク分散に純化すべきで、所得再配分は税でや るべきだという議論が、大変御意見として強いようですけれども、私どもは社会保険は その中に再配分機能を持っているということを非常に強く評価をしておりますし、むし ろ、その機能を場合によっては高めるべきではないか。その観点から言えば、第3号被 保険者というものは非常にゆがみを持ってはいるけれども、この機能の拡大という意味 では評価しうるものだというふうに思っております。2番目に、年金制度だけではあり ません。医療もそうなんですが、社会保険制度を考えたときに、いわゆる自営業の方々 の世界と被用者の世界というものは、これはやはり質的に区別されるべきなのではない だろうか。例えば定額保険料というのは、所得そのものを正確にはどうしても捕捉でき ない自営業の方々に対してやむを得ざる1つの便法として出ている定額保険料というこ とであって、その収入を捕捉できる被用者の世界に関しては、これは収入に応じた負担 ということで、原則的に定率での保険料負担を要請すべきもので、そこのところでの負 担を課する方式が基本的には違うのだろうというふうに思っております。 その意味で、先ほど事務局から出された2つの改革案、厚生省の御報告はいずれも否 定的です。私も否定的ですが、a案の方に関して言えば、1号と同じように扱うという のは、私どもの組織の中でも、女性軍からはそういう議論が強いのですが、これは自営 業と被用者の原理的な区別を無視した、ある意味では混乱した議論ではないかと思いま す。 3番目の原則、これは無収入に対しては無負担であるべきである。これは現在の学生 の扱いについては、その点からきて、極めて不合理でありますし、3号被保険者という のも、これは妻の座ということに付随して、そういう扱いがされているのであって、妻 と同じような、いわゆる家事労働といいますか、介護等々で家庭内に拘束されてはいる けれども、妻という座を持たない女性は1号として自営業者並みに扱われると。むしろ この落差の問題を強く意識すべきではないだろうか、そのように考える次第でございま す。結論から言いますと、私どもは現在の第3号と言われる中で、一定以上の収入にあ る人に対しては、収入に応じた負担を求めるべきであり、かつ妻の座ということに限定 されない第2号被保険者の世界における扶養者について、一定の適用の拡大を図るのが 妥当ではないだろうか。また、扶養者についても、夫が2号資格を失うと3号資格が自 動的に失われるという、こういう従属的な制度なんですが、例えば亭主の方が年上だと いうことを考えれば、亭主の方が定年退職してしまえば、それまでは3号であった人た ちが1号へ移動してしまう。収入が減ったと思ったら負担が増えるという、この逆転現 象があるわけで、その意味では、むしろ夫が退職しても、2号としての年金の来歴を持 ってた人の年金受給者では、それに扶養される人は引き続き3号でおれるように、扶養 者の側を2号だけではなくて、もと2号へ拡大すべきである、以上のように考えます。 ○K委員  今のはちょっと私は反対ですが。余りにも問題が多いのでいろいろなことが本当に錯 綜しまう。ただし、1つはっきり申し上げておきたいのは、いろんな各審議会などから の、既にこの問題についてのいろいろなものが出ていますね。この審議会はそれをやっ ぱり視野に入れて3号問題なども扱うべきだと思います。社会保障制度審議会では、 95年に妻を被扶養者と位置づけて、世帯単位でつくってきた社会保険制度を個人単位に ということが出ておりますね。このときに重要なのは、世帯単位でということでもあり ますけれども、妻を被扶養者と位置づけて世帯単位でと、ここだと思うんですね。そこ のところを、先ほどB委員から、世帯単位か個人単位かで、世帯単位が理屈に合わない じゃないかというのがありましたけど、そのことが重要なのではなくて、妻を被扶養者 とあくまでも位置づけられ、妻が被扶養者であることが当たり前である制度が現実には 合わなくなっているということだということです。 それから、男女共同参画審議会では、97年に被扶養者の妻の世帯に有利な年金制度や 医療保険の見直しというふうに言っています。これも、いわゆる3号ですね。3号の妻 の世帯に有利な年金制度になっているという見方なんですね。だから、そこを単なる世 帯主義、個人主義で分けないでほしいと思うんです。 経済審議会では、既に配偶者控除の廃止、主婦優遇の社会保険の見直し、配偶者手当 の廃止ということを打ち出していますよね。このあたりを視野に入れて、余りこの年金 審議会が、全然こういうことを視野に入れないような論議をするというのは、ちょっと 私はまずいのではないかというふうに思います。 それから、優先順位なんですが、何が緊急かということを現実に考えるべきだと思い ます。私はL委員の意見にすごく賛成なんですけど、離婚したいのにできない女性たち の問題というのは緊急だと思います。特に今女性に対する暴力の問題が非常に国際的及 び国内的な関心になっていますけれども、夫の暴力を受けながら離婚できないでいる女 性の多くが、年金がないからですよね。そういう問題をやはり緊急の課題と考えるべき だと思います。 それから、3号の問題は、損得ではなくて、男女共同参画社会という意味で、原理的 にも社会の仕組みとして非常に重要な問題だと思うんです、損得問題というよりも。そ ういう視点から、先ほどの各審議会から出されていることを視野に入れて当審議会でも 取り組むべきだというふうに考えます。 ですから遺族年金の損得の問題とか、第3号でも損得という視点からの論議は、それ ほど緊急の課題とは、私自身は思っていません。もちろん重要なんですけれども、やは り緊急のことはとにかくやるべきだというふうに考えています。 ○H委員  これは全体的な感想ですが、やはり年金の問題は、積極的にこうあるべきだという議 論はいろんな意見が食い違うケースもありますが、非常に裏側からいきますと、例えば 離婚、出産、共働き、高齢者の就業とか、そういういろんな問題があるときに、これは 経済学者の単純に言えば逃げの打つ手ですが、そういう問題に関してやっぱり中立的に どっちかが不利になるとか有利になるというのは、いろんなことで錯綜して意見が分か れるときに、そこに関して制度が中立的であるというのは割合と重要なことで、こうし たら得になるとか損になるとか、それがない状況にしておく方が制度としてはいいので はないか。ですから議論が分かれるのはある意味では当然ですが、それから先どうする かというのは、私はどちらかといえば、できたら中立的な制度にした方がいいというの は、これは原則論的なことで申し上げました。 ○D委員  今のH委員に私も賛成で、前の改正のときの大きなテーマが、「65歳現役社会」でし た。社会全体が望んでいるのは、60歳前半は働きながら、一部年金を受けるにしても雇 用も継続していくという65歳現役社会というのが1つのテーマでした。今度の改正では 「働きたいと考える女性が働けるような社会に」を一つの課題にすべきです。年金制度 とか税制とかが、女性の就労を阻害する、あるいは抑制するということがないようにす るということを重要な課題にしていけばいいと思います。パート就労者についても被用 者年金制度で位置づける、年金の2階部分の受給権を得ることができるようにするとい うことがそこからおのずから出てくると思います。 働きたいと思う女性が非常に増えてきていますが、いろいろな状況で働けない状況は あると思いますので、育児とか介護を社会保険の中でどのように位置づけるかという問 題として扱えばいいわけです。働きたいと思っている女性が、みんなできるだけ長い期 間働けるような社会にというのを1つの新しい視点にしたらいいのではないかと思いま す。 ○G委員  先ほどK委員から、他の審議会における答申等は尊重して、年金審議会としてもそれ に沿うような形の整理をした方がいいのではないかという御主張があったと思うんです が、年金のプロから見ると、他の審議会の提言だとか答申は間違っていることも多々あ るわけです。というのは、彼らは一方的な情報に基づいて結論を出しちゃっているケー スもよくあるんですね。年金審議会もおそらく他の分野について言えば、同じことをや りかねないんですけれども、だから、他の審議会がこういう結論を出しているから、年 金審議会もそれに合わせてという話はやはりちょっとおかしいわけでありまして、年金 審議会としてどういうふうに問題を整理するかということの方が重要で、他の審議会が 言っている提言にもしおかしなところがあれば、やっぱりちゃんと指摘をしておくとい うことは、年金審議会として非常に重要なことだと思うんです。例えば一部の論者は、 現在の年金制度は専業主婦を極めて優遇しているということを一方的に主張しているん ですが、確かに優遇されている専業主婦もいるんですが、他方で現行制度のもとでかえ って大きなメリットを受けている共働きの人たちもいるわけです。共働きが本当にすべ て専業主婦より冷遇されているかというと、この認識は間違っているんですね。少なく とも私の理解ではそうです。そういう点の整理をていねいにするのが年金審議会の1つ の役割だというふうに私は思っております。 もう一点ですが、現在確かに個人単位化の流れというのは強いんですけれども、年金 の世界でこれを完全にやったのはスウェーデンだけなんですね。他の国はいろいろな意 味で躊躇しているのが実態なんです。スウェーデンも実は完全個人単位化をやった後、 一部修正をしようとしているわけです。94年に一応合意を見て、具体的に1999年か2001 年からかよくわかりませんけれども、新しい制度に移ろうとしているんですけれども、 その制度の中では、夫婦間の賃金分割といいますか、所得分割の制度を認めようと言っ ているわけですね。個人単位化をして、負担と給付の関係を強める制度を持っていくと やっぱり賃金の低かった人は老後をそれを引きずっていくわけです。 残念ながら女性の多数は、そういう制度に切り換えるとかえって不利益をこうむるおそ れが結構大きいんですね。スウェーデンではそういう反省があって、所得分割を認めよ うという形に変わったわけです。個人単位化は行き過ぎである、問題であるというふう に一番先に走ったところが、もうそういう整理をしているわけです。ですから個人単位 化が望ましいというふうに簡単に言えない問題があるということをやっぱり年金審議会 として1回確認していただきたいというふうに思います。 ○B委員  その個人単位か世帯単位かという議論について、明確な御説明をいただけないので困 っているんですが、私どもはこういうふうに非常に単純な整理をしました。年金受給権 というのは個人に属する。その点で、第3号被保険者というのは非常にゆがんだ姿では あるけれども、1つの前進だったと。しかし年金の給付水準というのは、これは生計費 ベースであるから、単身者も含めて世帯の生計費をベースに決められるべきものだと。  こういう整理の仕方をすると、世帯原理になお片足を突っ込んでいるということで批 判されるのでしょうか。例えば分割という問題がございます。2人で暮らすということ は、1人1人で暮らすのに倍かかるわけではないわけですね。あるいは2人で暮らして いた人が、別々に暮らすということになると、半分の生活費で暮らせるわけではないわ けですね。生計費原則というのはそういうことなので、公的年金というのは生計費全部 をカバーするというふうに私どもは考えておりません。生計費の中の基本的な部分をカ バーすべきだというふうに考えております。 そういう意味から言って、余裕がない水準であるとすれば、いよいよこの生計費原則 をはっきりさせなければいけない。その上で単純に二分割するというのは、権利の問題 としてわかりますが、受給権という問題と給付水準という問題をどこかで切りわけるべ きものが一緒くたにされるような議論は避けていきたいなと、このように思っています ○L委員  B委員の御議論は、イギリスやアメリカの制度は、そういう立場から理解すれば、非 常に理解しやすいのではないかと思うんですね。御承知のように、イギリスでもアメリ カでも、夫の拠出に基づく妻の年金権というモノの考え方があるわけなんですね。とこ ろが夫の年金の決して100%ではないわけです。イギリスの場合でございますと、これが 60%、アメリカの場合ですと、これが50%。ですから2人所帯ならば、単身所帯の150% ないし、160%という1つの所帯単位の生活を想定しておるわけですね。あるいはそう いう制度は外国にあるわけですから、日本の場合も、夫の拠出に基づく妻の年金に100% の給付をしちゃったところに実は問題があったわけでして、もしもこれが50%とか65% だったら、私は現在ほど第3号被保険者問題は大きな問題にもならなかったのではない かという気もしないわけではございません。しかし、今となってはそういうことは不可 能ですから、現行制度を前提として考えておかないと思っております。 ○B委員  大陸ヨーロッパの方はいかがですか。 ○ L委員  よそはないですね。ドイツなんかは全然考えませんから、そういう問題は。 ○K委員  私、ほかの審議会のとおりにというふうに申し上げたつもりは全くなくて、視野に入 れてというふうに言ったつもりでして、そこのところをお間違いないようにいただきた いと思うんですね。 それから、第3号の問題なんですが、ここにいただいた資料などにも出ていますが、 第3号自身の調査ですが、若い人ほど払いたくない、このままでいい。ある程度以上の 方ほど、払ってもいい、あるいは払うべきだという結果が出ているんですね、第3号自 身の意見を聞くと。これはどういうことかといいますと、60年改正で、それまで7割の 人が払っていて払わなくなった。それは50代以降の世代ですよね、40代か、ちょっとわ かりませんが。だから、当然払っていた経験があるし、今、払うべきだというふうにな りやすいですよね。 この改正の見直しがおくれればおくれるほど、若い世代、1回も第3号で払ったこと のない世代が増えてくるわけですよね。ですから、もし第3号について、何か見直しを 行うのであれば、私は早い方がいいというふうに考えます。 それから、パネル調査、先ほど社会保険庁のパネル調査ではないんですが、家計経済 研究所というところのやっているパネル調査によりますと、いわゆる専業主婦の80%以 上が、今も払っていると思っている。そういう誤解が生じているわけです。つまり7割 払っていたということがあると思いますけれども、ですから、そういう状況を考えて、 払っているんじゃないという、この第3号ということに対する誤解を極力解くというこ とを並行してやりつつ、なるべく早い時期に見直しをするならばしないといけないので はないか。そういう意味で、第3号制度というのは、割に急いだ方がいいのではないか と思います。 ○B委員  前回も申し上げましたように、3号問題というのは、これは基礎年金の一部であって 基礎年金制度の60年改正のときに導入されたものですから、次回のテーマは基礎年金と いうことになりますが、その中での位置づけをもう一度次回に議論をさせていただけれ ばと思います。よろしくお願いいたします。 ○会長  女性の年金の在り方につき、いろいろ行き届いた御議論をいただきました。審議会と しては今後とも議論を深めていきたいと考えております。よろしくお願いします。 本日予定の議事は以上でございます。本日の資料につきましては、これをすべて公開 してよろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  そのように公開させていただきます。今後の日程について、事務局から確認をお願い します。 ○事務局  本日、お手元に参考資料ということで、今後のスケジュールと検討項目(案)という ことで配付をさせていただいております。前回の審議会において、5月29日までの日程 につきましてお諮りさせていただいております。それを確認的に記入をいたしておりま すので、開始時刻などにつきまして御確認をいただければ幸いでございます。 6月の公聴会以降につきましては、各委員の御都合、あるいは学識経験者の御日程な どを調整いたしまして、今後お諮りをさせていただきたいと思います。 それから、もう一つ、有識者調査の調査票を既に有識者の方にお送りさせていただい ておりますので御参考までに配付をさせていただいております。 ○B委員  すいません。最後にこの有識者調査ですが、有識者と目された人たちの方には行きな がら、私どもの方には全く送られてこないために組織内では大変混乱をいたしました。 問い合わせがあったにもかかわらず、どういう調査票なのか、私どもは見えないので 答えられないと。こういうことが、今後ないように、有識者に対する発送と同時にお送 りいただくように強くお願いをしておきます。抗議です。 ○事務局  今後十分注意いたします。 ○会長  今の点は、まことにもって不行き届きでございますので、後ほど厳重に注意します。 本日はこれで閉会したいと存じますが、よろしゅうございましょうか。                (「はい」と声あり) ○会長  長時間ありがとうございました。                             年金局 企画課                             須田(3316)