98/03/16 第8回成人病難病対策部会臓器移植専門委員会議事録 第8回公衆衛生審議会成人病難病対策部会 臓器移植専門委員会議事録 平成10年3月16日(月) 10:30〜12:30 場所:霞が関ビル33階 東海大学校友会館「阿蘇の間」 出席者  (○:委員長 敬称略)    井形 昭弘  大久保 通方 大島 伸一  大塚 敏文  桐野 高明  ○黒川  清  小柳  仁  座間 幸子  田中 紘一  谷川 久一   藤村 重文  町野  朔  眞鍋 禮三  森岡 恭彦  山谷 えり子  議事次第  1.開 会  2.議 題     (1)前回の専門委員会開催後の臓器移植をめぐる動きについて     (2)平成10年度予算(案)について     (3)臓器提供意思表示カードの配付について     (4)臓器提供施設について     (5)その他         ・小児における脳死判定基準について         ・臍帯血移植検討会について         ・腎臓移植による感染症発生とその対応について  3.閉 会 ○成瀬補佐  定刻になりましたので、ただいまより第8回公衆衛生審議会成人病難病対策部会・臓 器移植専門委員会を開催いたします。  最初に、本日の委員の出欠の状況でございますけれども、野本委員、矢崎委員が欠席 また、井形委員より少し遅れる旨のご連絡が入っておりますことをご報告いたします。  続きまして、事務局からのご連絡を申し上げます。今年の1月9日付けで臓器移植対 策室長が代わりましたので、ここでご紹介させていただきたいと思います。 ○朝浦室長  1月9日付で、前貝谷室長のあとに臓器移植対策室長を拝命しました朝浦と申します 今後ともよろしくお願い申し上げます。 ○成瀬補佐  では、会議の始まる前に資料等の確認をさせていただきたいと思います。  最初に、第8回の臓器移植専門委員会の議事次第でございます。その後ろに委員会の 名簿が載っております。そのあとに座席表でございます。続きまして、資料の一覧表で ございます。次に資料1−1「臓器移植をめぐる動き」、資料1−2「社団法人日本臓 器移植ネットワークの定款」、資料1−3「平成9年10月16日付け保健医療局長通知」 でございます。資料1−4「登録料及び会費の引き上げについて」、資料1−5「移植 希望者(レシピエント)の登録者数」、資料1−6「腎臓移植の実績」、資料2「平成 10年度臓器移植対策予算(案)について」、資料3−1「臓器提供意思表示カードの様 式」、資料3−2「臓器提供意思表示カード配付状況」、資料4−1「臓器の移植に関 する法律の運用に関する指針(ガイドライン)」、資料4−2「大学附属病院(本院) 及び日本救急医学会指導医指定施設一覧」、賞5−1「小児における脳死判定基準に関 する研究班の概要」、資料5−2「臍帯血移植検討会の概要」、資料5−3「腎移植に よる感染症発生 記者発表資料」、資料5−4「感染症検査暫定実施基準」。以上でご ざいます。  何か不備等がございましたら、事務局のほうにお申しつけ願いたいと思います。  それでは、黒川委員長よろしくお願いいたします。 ○黒川委員長  おはうようございます。久しぶりの専門委員会ですが、先生方、お忙しいところをあ りがとうございました。  その後、移植をめぐる問題については、大なり小なりいろいろな問題があるのは当た り前ですけれども、先生方にもその都度ご相談したり、行政当局あるいは現臓器移植ネ ットワークのほうで対応させていただきまして、きょうの委員会でそのような経過報告 も含めて先生方のご意見を伺いたいと思っております。  その後いろんなことがあったということで、きょうの議題にも出ていますが、カード の問題、ネットワークをめぐる問題、カードの普及、その広報を含めて、これはマスコ ミのほうにもお願いしたいわけですけれども、マスコミとしてはいいニュースはあまり 出ないけれども悪いニュースは出すということがありますので、一般の認識が悪い、や はり悪いことをしているなと思ってしまいますし、いいことはあまりニュースにならな いのであまり出ないというところもありまして、このへんが問題ではないかと思ってお ります。  もうひとつは、ドナーが発生したときにどのように対応するか。ネットワークをやっ ていますとしょっちゅうマスコミの人はもちろん来られるわけですが、最初のドナーが 出たときにはやはりカバーしなければならないということはよくわかるのですが、それ で夜討ち朝駆けみたいにならざるを得ないところもあります。行政のほうもその対応に は苦慮していると思います。  しかし、よく考えてみると最初のレシピエントはニュースになるかもしれないけれど も、最初のドナーのところにドッと押しかけられてしまうと、ドナーの遺族の方から病 院の方が非常に大変だと思います。マスコミに聞いてみますと、我々もサラリーマンだ から上から言われると抜かれてはたまらんということがありまして、その事情もよくわ かるのですが、節度がないといえばまことに節度がない、ディス・イズ・ジャパンかな と思っているんですが、そのへんもよく考えてほしいと思っています。  きのう、一昨日、たまたまヨーロッパの人たちと会議があって、2日間合宿みたいな ことをしていたのですが、ヨーロッパでもドイツとかイギリスとかオランダとかフラン スでそれぞれ対応が違うわけです。死というものに対する考えとか、腎移植のプライオ リティーをどうするか、心臓移植もそうですが、そのへんは社会の成熟度と歴史的な背 景でかなり違うわけです。  そういう意味では、イギリスなどはEUになってかなり成熟した、ある意味では非常 に厳しいというか冷たい反応も社会がサポートしてくれますけれども、ドイツなどは少 しヒステリックになるところもあるみたいで、日本もどちらかというとそれに似ている なという気がします。  一方で、最後の専門委員会以来、実はネットワークが腎臓から臓器移植ネットワーク になってまだ1例も行われていないわけです。とは言え、一番大事なことは、従来の脳 死ではなくてできる腎移植の数が増えないと社会一般に移植医療が根づくということに はならないのではないかということを強く感じています。  腎移植が年間に300、400あるいは500、600というふうにやられるようになると移植医 療はかなり定着して、その中から心臓あるいは肝臓、その他の移植が出ても社会的にも 別に驚くことではなくなってきますし、マスコミとしてもそれほどニュースバリューが なくなってくるので、マスコミの方々もほかのことにももう少し努力していただけるの ではないかと思います。  腎臓移植ネットワークができて初年度に161の死体からの腎移植が行われました。その うち60%以上がドナーが発生したところの県境を越えているわけで、マッチングは従来 よりはるかにいいわけです。2年度の平成8年度に180の腎移植が行われました。ところ が、平成9年度は、例の脳死のことがあったのかもしれませんが、ペースがその前の年 より落ちまして現在、7年度の161に届くかなというところだと思います。現在2月 いっぱいで154ぐらいやられているので、何とか3月いっぱいに初年度をクリアでき ればいいというような感じで、日夜ブロックセンターその他の方々が頑張っておられる わけです。  一時減りましたけれども、またこれから伸ばしていきたいと思いますので、ぜひド ナー情報をうんと出していただきたいということと、死体腎移植についてはぜんぜん抵 抗がないわけですので、そのへんのいいニュースもマスコミもよく配慮していただけれ ばと思っております。それは私の感想でございます。 去年の10月16日に脳死の法律が施行され、その後いろいろなことがありました。その へんについて事務局から整理して報告していただきたいと思います。 ○重藤補佐  事務局よりご説明を申し上げます。  資料1−1の「臓器移植をめぐる動き」でございます。前回、第7回の臓器移植専門 委員会は9月29日でございました。したがいまして、先生方には臓器移植法施行、その 後のいろいろな経過について正式にお話する機会がございませんでした。法律施行後半 年を経過しようとしている現在までのところで、臓器移植関係でどんな事柄が起こって いまどういう形で動いているのか、それについて先生方にご意見をいただきたいという ことで、今回、臓器移植専門委員会を開かせていただきました。  それでは、「臓器移植をめぐる動き」の資料に基づきましてご報告させていただきま す。平成9年10月8日、臓器移植に関する法律施行規則並びに臓器移植に関する法律の 運用に関する指針(ガイドライン)等を通知いたしました。この両方の施行規則、ガイ ドラインとも、この委員会で先生方にご議論をいただいてつくり上げていったというも のでございます。  10月16日、臓器移植に関する法律の施行。社団法人日本腎臓移植ネットワークの定款 変更認可により社団法人日本臓器移植が誕生いたしました。厚生省は心臓、肝臓のあっ せん業について許可をいたしました。  10月の下旬でございますけれども、臓器提供意思表示カードの配付開始。  12月15日、郵便局で臓器提供意思表示カードの配付を開始。  12月19日、感染症検査暫定実施基準作成。これは腎臓移植によりまして成人型T細胞 白血病の感染をしたという事例がございまして、その取り扱いについてきちんと対応す るためにネットワークで基準を作成しました。現在、委員会をつくって感染症の対策を しております。これはその他のところで詳しくご説明させていただきます。  12月25日、平成10年度予算案の決定をいたしました。  平成10年1月7日、小児における脳死判定基準に関する研究班第1回会合。2月19日 小児における脳死判定基準に関する研究班第2回会合。これもその他のところで詳しく ご報告させていただきます。  3月中旬、国立病院で臓器提供意思表示カードを配付開始する予定でございます。  以上、概略ですけれども、これまでに起こった事柄についてご説明させていただきま した。  引き続き、詳しく説明をしたいと思います。資料1−2でございますが、臓器移植ネ ットワークの定款でございます。旧の腎臓移植ネットワークとの対照表にしてございま す。左側が新しい日本臓器移植ネットワークの定款、右側が古い日本腎臓移植ネット ワークの定款でございます。  大きく変わった点でございますが、1ページの法人の名称が社団法人日本臓器移植ネ ットワークに変わったということでございます。続きまして3ページの理事の人数でご ざいますが、これまで腎臓移植ネットワークということで進めてまいりましたけれども 心臓、肝臓と脳死の移植が始まるということで、そうした関係者を理事にお願いすると いうことで人数を40人以上60人以内ということに改めさせていただきました。監事につ きましても3人以内ということにさせていただいております。  常任理事でございます。従来、理事会が意思決定機関でございましたけれども、60人 に人数を増やした関係で、細かい事柄について社団としての意思決定をするためには理 事会を頻繁に開催できないということから、常任理事会を開くことにしてございます。 常任理事会では付託を受けた社団の運営に関する事柄を決定するということにしており ます。  4ページでございますが、別表ということで各ブロックセンターについて記載をして おります。もちろん腎臓移植ネットワークと変わるところではございませんけれども、 新たに定款の中にブロックセンターの事項を入れたということです。  以上が、大きく腎臓移植ネットワークから臓器移植ネットワークに変わったところで ございます。  資料1−3でございます。「日本腎臓移植ネットワークの定款変更の認可の通知」で ございます。これには特に厚生省より新しくできる臓器移植ネットワークの運営につい ての指導ということで、1ページ目の「記」のところから下については通知してござい ます。  まず、総会等の議事録の公開についてということで、公平、公正な移植を行うための 組織でございますので、何よりも透明性を重んじるということから議事録等の公開につ ていはぜひしていただきたいということでございます。  2ページの財政構造の改善についてでございます。公益性の高い公平、公正な臓器移 植の推進を図るための組織でございますので、そうした財政構造についても一特定の個 人や企業による寄付金に依存して意見が重く反映されるような組織であってはいけない ということで、財政構造については見直しをしていただきたいという通知をしておりま す。  3番の常任理事会は、先ほどの定款の変更のところでも申し上げましたけれども、常 任理事会の構成については、公平、公正な観点で構成員を選定していただきたいという ことでございます。  以上、臓器移植ネットワークの定款変更の許可についての通知でございます。  資料1−4でございます。これは臓器移植ネットワークの「登録料及び会費の値上げ について」ということで、平成10年2月25日の日本臓器移植ネットワークの臨時理事会 の資料の抜粋でございます。  主な改正点といたしましては、移植希望登録者の登録料、現行1万円でございました ものを3万円に変えるということでございます。先ほどご説明しました財政構造等の見 直し、政府のこうした団体への補助金、財政状況が苦しい中で予算の増額がなかなか難 しいという状況を反映しまして、健全な臓器移植ネットワークの財政運営という点から やはり受益者負担のお願いもしないといけないということで、1万円から3万円という ことになっております。  2ページ目でございますが、同じく会費等についても値上げを決めてございます。こ れは平成10年3月26日から施行するということでございます。ネットワークの運営につ きましては、出席の委員の先生方の多くの方がネットワークの理事も兼ねておりますの で、この事情についてはよくご存じかと思います。そうしたこともご意見等ございまし たらお聞かせいただければ幸いでございます。  資料1−5でございます。平成10年2月末現在までのところで、日本臓器移植ネッ トワークに移植を希望して登録された方の人数でございます。心臓につきましては9人 肝臓につきましては24人、腎臓につきましては1万5,245人、角膜は臓器移植ネット ワークは関係ございません。いまアイバンクで角膜は移植を行っておりますが、参考ま でに5,699人の希望登録者がいるということでございます。  心臓、肝臓につきましては、登録するまでにはそれぞれの学会でつくります登録の評 価委員会がございまして、その審査を受けて移植が必要だという審査をされた方が登録 をされているということでございます。  資料1−6でございます。腎臓移植の実績でございます。一番下の(3)に各月別腎 臓移植実績がございます。それぞれ7年度、8年度、9年度の月ごとの件数、上の段が その月に提供いただいた腎臓の数、下の段が累計となってございます。平成9年度でご ざいますけれども、先ほど黒川委員長よりお話がございましたとおり、2月末現在で154 件でございます。7年度の同時期では150件、8年度の同時期では162件というこ とで、初年度よりは多少多いということでございますが、昨年度に比べて若干少なくな っているという状況でございます。  特に月ごとで見ていただきたいのですが、5月、7月、11月というところが一桁でご ざいます。4月に衆議院で臓器移植法案が通過いたしました。6月16日に法案が成立い たしました。10月16日に法律が施行されました。ということで、必ず移植、脳死臓器移 植という問題がかなり大きく国民に意識されますと、その次の月は減っているという分 析でございます。 腎臓移植につきましては心臓停止後の移植でございますので、特に脳死とは直接関係 はありませんけれども、報道等で脳死臓器移植の問題になりますと腎臓移植についても 脳死でないとだめなのかとご懸念される患者の方、医療関係者の方もいらっしゃるので はないかということで、そうした問題になる次の月がかなり減少しているのではないか と考えております。  したがいまして、今後、脳死臓器移植が定着化してきますと安定をしてくるのではな いかと思っておりますが、ただ、300、500ともっていくのはいまのところまだまだとい う状況ではないかと考えております。  以上、臓器移植ネットワーク及び臓器移植関係の現状ということで事務局よりご報告 いたしました。ご議論いただければと思います。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。  このような経過報告でございますが、何かご質問あるいはコメントをいただければと 思いますので、よろしくお願いいたします。  腎臓のほうのネットワークをずっとやっていると、情報の提供ということが一番大事 で、現場のお医者さんは実際にはあまりそういうことはよく存じていない方が多いとい う感じです。こういう患者さんがいて、この患者さんは家族ももしかしたら希望するの かもしれないなという話を、ネットワークにまず電話をしていただくとよく対応できる のです。これはそういうのに当てはまらないとか、これは違いますとかいろんなことが あると、次のときからわかっていただいてすごく協力してくれるのですけれども。  確かに臓器移植とまったく関係ないような、極端な例でいうと、どこかの病院で皮膚 科の先生が当直の日にそういう人が駆け込んで来たときに何を考えるかというと、患者 さんの救命で精いっぱいだと思うんです。それから患者さんがだんだんダウンヒルにな ってきたときに、そんなこと考えている余裕もないのではないかという気は確かにしま す。このシステム、あるいは患者さんがドナーカードを持っていれば、そうか、こうい うこともあるのかなということをちょっと考えていただいて、あらかじめ電話をいただ けると対応が始まっていいのかもしれないけれども、情報をいただくことが一番大事で はないかと思っております。 ○山谷委員  日本臓器移植ネットワークの理事さんが40人以上60人以内という、私から見たらすご く数が多いんですが、これはスリム化できなかったのでしょうか。 ○重藤補佐 事務局より説明させていただきます。  従来の腎臓ネットワークの時代から腎臓移植に関係ある方々を理事にお迎えしていた というように考えています。例えば、移植でございますと搬送が必要となります。搬送 にかかわりますとそれぞれ運輸関係の会社の会長さんなり社長さんなりということでお 願いをしたり、社団でございますので寄付もいただかなければいけないということでご 理解のある財界の方に入っていただいたり、もちろん医学的なことでございますので腎 臓移植の内科の先生方、外科の先生方に入っていただくというように、臓器移植全体を 進めるにあたっていろいろな協力をいただかなければいけない分野が多くありまして、 それぞれの分野から数人ずつということになりますと非常に多くなったということでご ざいます。  今回、臓器移植ネットワークにするときも新たに脳死というものが加わると、心臓、 腎臓、膵臓という臓器が加わるということで、それぞれの関係の方にも入っていただき ませんと議論になりませんので、そうした方にも入っていただく。なおかつ、これまで の関係者の方も必要ということで、こうした人数になったということでございます。 ○朝浦室長  理事会はかなり大きくなっていますが、先ほど説明しましたように機動的な運営がで きるように常任理事会というものを設けていただきまして、そこでいろんな議論をして いただくという仕組みも一緒に導入させていただいております。 ○黒川委員長  確かに、おっしゃるとおり普通の法人ですとこんなことはないですね。町野先生、何 かご意見ありますか。それは構わないんですか。 ○町野委員  ええ、構わないと思います。 ○黒川委員長  いくらいてもいいんですか。要するに、許認可するお役所がうんと言えばいいわけで すか。 ○町野委員  はい。 ○黒川委員長  確かに一般的にはおかしな格好だとは思うんですが、それぞれにいろいろやっていた だかなくてはならない人に入っていただかないと動かないと思うんですよ。ものすごく 数が多くて、例えば商売になるとかそういう多くの国民のニードがあれば、こんなこと をしなくても自然にできると思うんですけれども、極めて一部の方で、極めて技術的に 難しく、パブリックサポートがいるとなると、いろんなところの人が入らないと立ち上 げが難しいのではないでしょうか。  例えばそちらで何かできますか。おかしいというのはよくわかるんだけど。 ○山谷委員  数人ずつというのを1人にするとかですね。2段構えで……。結局、通常の理解して いる理事会がいまの常任理事会ふうなわけですよね。動いていけばだんだんスリム化は していくんでしょうか。 ○黒川委員長  そうです。 ○山谷委員  結構でございます。 ○黒川委員長  そのほか、どうぞ。 ○眞鍋委員  角膜移植のほうは脳死とは関係ありませんので影響がないのかなという感じがしてい たのですが、各月別の腎臓移植の成績とまったく同じようなことが起こりました。臓器 移植法案の審議会でも問題になったような月の翌月は減って、また増えてということに なっています。実際、腎臓が起こった11、12、1、2と少し増えてきておりますが、起 こったすぐ翌月はうんと減っているんですね。ですから、角膜でも脳死での摘出がある のではないかということで、申し出ないとだめなのかという問い合わせが相当あります ので、そのへんの十分な普及啓発が必要ではないかと思いました。  11月以降のことですけれども、座間委員などもに非常にご迷惑をおかけしましたが、 ネットワークのほうに角膜も提供したいというところに丸をつけた人が何人かおられま して、そちらのほうから提供いただきました。ありがたいと思いますが、そのときにい ろいろな問題がありまして、我々の受け入れ態勢が十分整っていなくて大いに反省して いますが、我々のほうでも一生懸命ネットワークをつくりつつありますので、今後とも よろしくお願いします。 ○黒川委員長  ありがとうございました。  この資料1−6の一番下を見ていただくとそうなんですが、いままでの過去2年間、 7年度、8年度に比べて臓器移植法案が通った4月の終わりの5月は4ですから極端に 少ないですね。ドナーが2件あったということです。7月が6、10月の次の11月が6と 極端に減っています。この年は偶数月はいい月だという話をしていたんですが、奇数月 は全滅のような感じです。しかし、1月とか9月の奇数月も14となると全国で7ですか ら、7つのドナーをしてくださった方がいたということですから、経済企画庁ではあり ませんが基調としては上向き。足を引っ張るような変なことがなければ、もう少し理解 していただけるということと、いくつかの施設がとにかく連絡していただくとすごくよ くなってくるという気がします。  特にございませんでしたら、次の議題に入りたいと思います。議題2「平成10年度の 予算(案)について」ご説明したいと思います。 ○重藤補佐  資料2でございます。「平成10年度臓器移植対策予算(案)について」でございます  そこの2番のところをご覧ください。臓器移植対策事業予算額(案)でございます。 平成9年度の予算額は5億7,000万円ということでございましたけれども、平成10年度予 算額としては約7億という予算を計上しているところでございます。対前年比のパーセ ンテージは122.4%でございます。それだけ臓器移植対策ということで大蔵省も認めてい ただいたということでございます。  3の主な事項でございますけれども、社団法人日本臓器移植ネットワークには平成9 年度、5億6,000万円という補助金でございましたけれども、10年度予算は4億9,000万 円ということでございます。ただ、額面は減少しておりますが、(2)の都道府県コー ディネーターはいままで日本臓器移植ネットワークを経由して補助をしておりましたが 都道府県に対する補助ということで、ネットワークが間に入らない形になりましたので その分9年度予算から外れました。  法律の中にあります地方公共団体の責務ということで、コーディネーターの普及啓発 業務の重要性を鑑みまして、補助先を指定して都道府県2分の1、国2分の1という補 助で事業を組ませていただきました。  (1)に戻りますが、社団法人日本臓器移植ネットワークの補助金は額面的には減っ ておりますけれども、実質的には増加しているところでございます。その中身ですが、 意思表示カード、ドナーカードをはじめ普及啓発の充実ということで、法律は本人の書 面による意思表示が必要でございますので、ドナーカードは非常に重要な位置を占めて おります。したがいまして、10年度は1,000万枚の予定をしております。心臓・肝臓移植 連絡調整者(コーディネーター)の設置ですけれども、チーフコーディネーター、サブ コーディネーターそれぞれ2人ずつ増やすということでございます。  (2)は先ほど申し上げましたけれども、コーディネーターにはネットワークのブロ ックセンターにいるネットワーク所属のコーディネーターと、各都道府県にいます都道 府県コーディネーターと2つの種類のコーディネーターがいます。そのうち都道府県の コーディネーターにつきましては、先ほど申し上げましたように従来ネットワークを経 由して補助をしていたものを都道府県に補助をして、都道府県も応分の負担をいただく という形にしております。それぞれコーディネーターの設置費、巡回活動費等の予算と なっております。  以上が平成10年度臓器移植関係の予算額(案)でございます。 ○黒川委員長  ありがとうございました。これについて何かご意見、ご質問ございますでしょうか。 ○大久保委員  都道府県のコーディネーターの場合、積算の内訳に書かれていますコーディネーター 設置費というのは、設置される費用と給料等だと思いますが、その下に巡回活動費とあ りまして779万いくらですね。当然これは2倍になるということです。そうすると1,500 万ほどで、それを47で割ると約30万ぐらいですが、年間30万で実際巡回活動費として成 り立つような金額かというのが疑問だったのですが。 ○重藤補佐  これについては、補助の要綱を現在作成しております。コーディネーター設置費等と いう項目の中で、どういう業務をどういうふうに読み込んで、どういうふうに補助して いくかということを詰めております。どういう費目を巡回活動費でみて、コーディネー ター設置費で見るか、これから詰めていきますので、なるべく活動できるようにという ことで要綱上工夫はさせていただきたいと思っております。 ○山谷委員  意思表示カードが100万枚から1,000万枚に増えるということですが、これは毎年1,000 万枚ずつ出すという意味なのか、それともとりあえず10年度という意味なのか。それと 郵便局と国立病院ですけれども、それぞれいま何万枚ぐらい。 ○朝浦室長  来年度予算で1,000万枚ということでございまして、再来年度以降はまだ決まっており ません。配付状況を見てお願いするということになろうかと思います。  意思表示カードの配付状況ですが、資料3−2にございますけれども、現在のところ 90万枚を郵便局にお願いして置いていただいている状況です。これからも増刷して置か していただきたいと思っております。国立病院は3月5日付けで国立病院部から国立病 院に対してドナーカードを置いていただきたいというお願いの通知を出しております。 実際に国立病院に置かれるのは今月の下旬ぐらいからだろうと思います。国立病院は病 床数を合わせて8万ぐらいございますけれども、目安として病床数の3倍程度を配付さ せていただきたいということで、現在のところ25万枚ぐらいの予定をしております。 ○山谷委員  そうすると、1,000万枚となると新しい配付の先はどういうところ。 ○朝浦室長  配付するのはかなり多くなりますから、配付先の拡大をお願いしないとなかなかうま く伸びないのではないかと思っております。厚生省関係で申し上げますと、社会保険関 係の事務所ですとか、環境衛生のところとか、薬局ですとか、いろんなところに声をお かけしてご協力をいただけるような働きかけをしたいと思っております。 ○黒川委員長  ドナーカードの場合はあとからも出てきますが、3−1の資料にあるカードですけれ ども、これはあくまでも臓器移植ネットワークのカードですよね。 ○重藤補佐  厚生省と臓器移植ネットワークのカードです。 ○黒川委員長  これでなくてもいいわけですよね。意思表示さえして持っていればいいわけだから。 遺言でもいいし、そういう書いたものを置いていてもいいし。これはひとつのモデルで すからこれに限らないということになると、さあどうするかということだと思います。  この予算はあくまでも国の予算からくる予算の分で、臓器移植ネットワーク全体の運 営事業費としてはこれでは足りないので、そのへんが先ほど出てきた会員からの値上げ とか登録費の値上げとかいろんなことでなっているわけです。  コーディネーターの人が24時間運動しているわけですから毎日情報が出るたびに駆け ずり回ったり、そのほかにドナーカードの説明とか配付、提供可能性のある病院に説明 に行ったりとか、そういう意味ではコーディネーターの労働というのはものすごく多い わけです。通常の時間に勤務しているほかにいろんなことがあったときは24時間対処す ると。しかもものすごく遠いところでも夜中でも行かなければならないし、そのあとマ ッチングしたりとか、ものすごい量があるわけです。  ところが、いつ起こるかわからないし何件あるかわからない。ほとんどないときもあ るわけです。そういうのにどれだけお金を出すのかというだけの話なのかなと思ってい るんですけれども。そういうことから言うと、国民全体の中にこういうことがどのくら い浸透しているかということが大事なのではないかと思います。 ○大島委員  ドナーカードの件に関しましては、もちろん絶対数をいかに多く配るかということは 重要なことだと思っていますけれども、どこに行けば確実にあるのかということが非常 に曖昧になっていると思います。郵便局に配ってあると言われていますけれども、実際 に郵便局に行ってもない。中央の大きなところにはあるようですけれども、市町村の一 番末端の郵便局に行っても必ずあるという状況になっているかというと、必ずしもそう ではない。  現場で対応するときには非常にそれが問題でして、ここに行けば必ずありますという ことをきちんと指導していただくと同時に置いてあるという状況をつくっていただくの は、混乱を少なくするし、地道なことでありますけれども効果を持続して上げていくと いう意味では価値のあることではないかと思います。 ○朝浦室長  おっしゃるとおりだと思います。厚生省から各地方公共団体に対して都道府県を通じ てドナーカードをお配りしておりますけれども、どういうところに置いたのかというこ とについて現在調査を行っているところでございまして近々まとまると思います。そう いった実態を把握しながら、いまご指摘のあった件について確実にここに置いてあると いうことが言える配付場所の一覧表みたいなものをまとめて備えつけるということも考 えていきたいと思っています。 ○黒川委員長  一般的な先生方のご経験とか感想でもいいんですが、このカードを実際に受け取った とか持っている人のうち実際に書いて持っている人は何人ぐらいだと思いますか。チラ シと一緒で、1,000万枚配っても実際にはどのくらいかなと思っているんですけれども ○大久保委員  読売新聞がこの前出書いたと思いますが、非常に比率が高いです。3,000人ほど調べて 1.7%が所持しているということで、だいたい160万ぐらいが所持されていると推定され ます。そうすると、配ったのは400万枚ですけれども、実際はどこかで止まっているもの がありますからせいぜい300万枚ぐらいだと思うので、ほぼ半数ぐらいが所持されている という可能性があるので、私たちが予測したよりはかなり高いという感じがしています  実際に街頭で配っていても、受け取る人はほとんど捨てないんですね。チラシはだい たい捨てますけれども、カードの場合は、いらない人はいらないと、いるとおっしゃっ た方は必ずそれを持って帰られますので、そういう意味では、自分が受け取ることに関 してはそのときの意思が働いて受け取っていらっしゃる。普通のダイレクトメールとか そういったものに比べると所持率が高いのではないかと思っています。 ○小柳委員  少し趣が違うのですが、レシピエントを抱えている立場からドナーカードがどのよう に見られているかということをお話ししたいと思います。レシピエントは移植希望者と いう言葉にだんだんなっていくのでしょうか。心臓の現在の登録数は現在9人と書いて ありますが、皆様の予想からすると非常に少ないと思います。そのレシピエントの気持 ちの中には、現在の普及の数で、カードの所持率で、日本でどのくらいウェイティング したらドナーが出るかということに対して非常に冷めた見方がありまして、日本のネッ トワークに登録しても多分やってもらえないだろうと。渡航移植と二股をかけたいとい うレシピエントが非常に多くて、インフォームドコンセントがなかなか先に進んでいか ないという事情があります。  これが肝臓なんかですと多少環境が違うと思いますが、心臓ですとこれにかけるしか ありませんので、そうしますとそれほどゆっくり施策を進めていっていいものか。非常 に緊急を要する事態ではないかと移植希望者を抱える側としては思っております。4月 1日の1,000万枚というのをずっとお待ちしていたわけですけれども実費が1枚1円な にがしといたしますとこの程度の予算では何とかならないかと思いますのと、所持率を 高くするようにもっと考えていかなければいけないと考えています。  ウェイティングのリストの中の人間たちも、ドナーカードの普及と意思表示カードの 普及とドナーの出現について非常に冷めた見方をしていることをお伝えしておきます。 ○森岡委員  ドナーカードの配付の件ですが、末端の医療機関でもあるかないかという問い合わせ が結構あります。ほとんどの医療機関がある程度保持しているというのは必要だと思い ます。ただ、カード数が少ないとまた問題ですけれども。日本医師会は医師会長の名前 で各都道府県の会長に対して、配付に関して協力を依頼する文書を既に出しております ので、都道府県の医師会長に接触されれば配付の方法もあると思います。  もうひとつは、運転免許証とか健康保険証にくっつけるという問題があると思います 厚生省の人に聞きますと、運転免許証は警察庁で、そこに話を持っていくと健康保険証 につけるのが先じゃないかと言われているとか聞いてます。健康保険証につけるという ことはどこで審議するのかよくわからないんですけれども、厚生省としてはどういうお 考えですか。 ○朝浦室長  いまご指摘のあったご要望については、臓器移植対策室として警察庁、厚生省の保険 局のほうにいまお願いをしているところでございます。非常に紋切り型の答弁で申し訳 ないんですけれども、現在そちらのほうでご検討いただいているという状況でございま す。 ○森岡委員  行政のレベルで検討すればいいということですか。 ○重藤補佐  いえ、いろいろな関係者の方のご意見を聞きながらお願いをしていくということで、 いまいろいろなところで手を出して進めているということでございます。 ○森岡委員  そういう方策というものをとらないとなかなか難しいと思います。 ○谷川委員  いま肝臓学会で年間5回ばかり市民公開講座をやっています。そのとき必ず1人は移 植の話をしてもらうことにしていますが、そこに集まってくる500人ぐらいの人のアン ケートを見ますと、意識のちょっと違う人たちかもしれませんけれども、約半数近くの 人が自分が脳死だったら提供すると。 NHKでごく最近、内部のアンケート調査をやっても、やはり半数は脳死になったら 自分の肝臓あるいは心臓を提供するという人が多いですね。数は多すぎるかもしれませ んけれども、相当な人が臓器提供をしようという意思があるのではないかと思います。  ところが一方、黒川先生がおっしゃったように死体腎移植がこんなに少ないというこ とが別にあるわけです。そのギャップがどこにあるか私はよくわかりませんけれども、 黒川先生がおっしゃったように、努力のかいもなく患者が亡くなった場合、腎臓ぐらい は提供していただくようにしようかという意識が僕たちにあまりないかもしれませんね 心臓、肝臓はもちろんですけれども、亡くなった時点で死体腎移植を考えるということ が医者の間で少ないのではないか。医者に移植医療に対する理解があまりない。  そのへんのところから始めていかなければいけないと思います。この委員会、あるい は腎臓のほうからでも説明をしていくのが一番いいのではないかと思います。 ○大島委員  いま腎臓のことが出ましたので、私は腎臓のほうをやっているものですから少しお話 しさせていただきたいと思います。  地域を限ってみますと、1,000回(500人)の臓器提供を実際に達成するためには人口 比10万に1人ぐらいで達成できます。愛媛県だとか愛知県だとか沖縄はそれを現状でク リアしている状況にあります。単純に考えてそれを日本全国に広げれば、1,000件ぐらい いくのは決して難しい話ではないという計算が机上の上では成り立つと思います。その 原因が一体なんなのかということを考えてみますと、先生がおっしゃいましたように医 者の理解が少ないとか、あるいは黒川先生が最初におっしゃられましたように、とにか く情報を入れてほしいということなどが非常に大きな問題だと私たちも思っています。  現場から実際に亡くなられる方にどういうアプローチをされるかという方法の問題も あるかと思いますけれども、少なくとも実際に臓器提供、腎臓提供に協力してくださっ ている救急医の先生方のお話を聞きますと、3分の1ないしはそれ以上についてはOK がもらえるということは私がつかんでいる実感であります。  ですから、この問題というのは、いかに現場での情報をうまくくみ上げることではな いかと思います。そういうことをもう少し真剣に考えて、それには実際に亡くなられる 患者さんに直接接触する先生方の意識に触れざるを得ない部分があるかと思いますけれ ども、それをどうシステム化して考えていくかということが大きな鍵ではないかと考え ております。 ○黒川委員長  そのほかに、先ほど言ったようにこのドナーカードはあくまでも厚生省と臓器移植ネ ットワークのオフィシャルカードですが、実際に何でもいいわけです。自分でフォーマ ットに4つの要綱を満たした意思表示をしていればいいわけなので。  極端な話だけれども、日本の4大紙と言われている新聞社が毎日のように刷り込んで くれてもいいわけです。これを破って書き込めばいいですよということでもいいわけで すよね。 ○重藤補佐  それでも結構です。 ○黒川委員長  それも悪くはないかもしれないね。別に公共の報道機関ということだからいいことで はないかという気もしますから、そういうことを考えてもいいんじゃないかな。選択す るのはそれぞれの患者さんというかそれぞれの国民ですから、一般の啓蒙というのはす ごく大事なわけで、それを行政がやると言っているだけでもしょうがないし。 そういう全体の意識レベルが上がってこないと、ドクターのほうがそういうふうに患 者さんにアプローチをしても、脳死の場合というのは比較的事故とか救急のことを考え ていますから、そういうこともいいのかという話は両方とも思いつかないと思うんです そういうような全体の意識レベルを上げる努力はお互いにしなければいけないと思いま す。  よろしいでしょうか。それではまた次に進めさせていただきたいと思います。その次 の議題は「意思表示カードの配付状況」ということで、少し話がダブっていますが、そ れについて事務局からお願いします。 ○重藤補佐  ドナーカードにつきまして詳しくご説明させていただきます。  資料3−1でございます。臓器提供意思表示カード、ドナーカードの様式でございま す。一番最初に配ったタイプのドナーカードにかなり記入漏れがありそうだと、書くの が非常に難しいというご指摘がございました。したがいまして、厚生省とネットワーク が10月16日から配っているタイプのドナーカードにつきましては現行というところで、 「該当する1、2、3の番号を丸で囲んだ上で提供したい臓器を丸で囲んでください」 というように書いてございます。  しかしながら、わかりにくいという御指摘、また番号のところに丸をしていない方が 多いのではないかというご指摘がございましたので、また新たに該当する1、2、3の 番号を丸で囲んだうえでというところの1、2、3の数字を赤で表記するということ。 左上に赤い矢印を設けるということで、必ず1、2、3に番号をつけやすくするという ことの改定をさせていただいて、今後ドナーカードの様式はこれに基づいて行うという ことでございます。  資料3−2でございます。「臓器提供意思表示カード配付状況」でございます。これ までの配付枚数は3月2日現在、合計で380万。電話・ファックスの問い合わせで18万。 病院・学校・団体にまいたのが53万。インターネットを通じてまいたのが3,500枚。ネッ トワークのブロックセンターを通じてが33万枚。行政・腎臓バンクを通じてというもの が186万枚。郵政省、つまり郵便局に置かせていただいているものが90万枚ということで ございます。  表1はネットワーク、ブロックセンターに置いているものの配付状況の詳細な表でご ざいます。それぞれブロックセンターを通じて配らせていただいたものが32万枚。表2 は都道府県、政令市、中核市、腎バンク、それぞれの枚数をお配りしたということでご ざいます。どの程度の枚数が都道府県、ブロックセンターを通じて各個人に渡ったのか ということは調査をしてございませんので、そこまではまだつかんでおりません。以上 でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。ご質問、コメントその他いかがでしょうか。  確かに、先ほどのお話からカードがどういうふうに普及していくか、そのへんは大変 技術的な問題もあると思います。意思表示カードはどういうフォーマットでもいいんだ ということをもう少し計画するといいのではないかと思うんですけれども。  またご意見を伺うとして、なければ次にいってもよろしいですか。  では、「臓器提供施設について」を説明いただきましょうか。 ○重藤補佐  それでは、「臓器提供施設について」のご説明をさせていただきます。  資料4−1でございます。臓器提供施設につきましては、この委員会でご議論いただ きました臓器移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)というところで記 載をさせていただいております。そのガイドライン上の第3、臓器提供施設に関する事 項ということで、「法に基づく脳死した者の身体からの臓器提供については、当面、次 のいずれかの条件を満たす施設に限定をすること」となっておりまして、倫理委員会等 で承認が行われているとか、脳死判定を行う体制があるとか、なおかつ、救急医学等の 関連分野において高度の医療を行う次のいずれかの施設であることということで、4つ のカテゴリーに分かれております。  大学附属病院、日本救急医学会の指導医指定施設、脳神経外科学会の専門医訓練施設 救命救急センターとして認定された施設ということでございます。なお、上記3の「最 初の数例」については、なおかつ大学附属病院、日本救急医学会の指導医指定施設とい うことにさせていただいているところでございます。  こうした臓器提供施設については、ご議論をいただいてこうして載せたわけでござい ますけれども、背景は、臓器移植法の旧法案が提出される以前から国会の各党協議会の 中で、臓器提供はどういう施設からいただくのかということでご議論をいただいて、そ うしたことを検討する場として、平成5年に、ここにいらっしゃいます大塚先生を座長 にしたワーキンググループで、臓器移植法を運用するにあたっての指針骨子案を策定い ただいて、その中で決められた中身がそのままガイドラインで載せております。  これにつきましては平成6年ワーキンググループの答申、報告からずっとこういう形 できておりまして、先の臓器移植法案の審議のときにも指針骨子案を尊重してというよ うなことでご議論がなされて、ガイドラインに盛り込まれたということでございます。  資料4−2は、大学の附属病院、日本救急医学会指導医指定施設の一覧でございます 若干追加がございましたので、それも含めて平成10年1月1日現在の施設一覧でござい ます。全体で96ということでございます。以上でございます。 ○黒川委員長  ありがとうございました。  この間の専門委員会で先生方のご意見を伺って、省令、ガイドラインその他で出した ときに決まったままですよね。それから1例も出ていないわけだから、変えようという 議論をしてもしょうがないなという気もしないでもないけれども、それにはいろいろ背 景があってということなんでしょうね。 ○重藤補佐  資料でお出しいたしましたのは、報道で臓器提供施設以外の施設でドナーカードをお 持ちの方がいらっしゃって、結果的には腎臓と角膜の提供をいただいたというような事 例がございます。そのご意見等もいただいておりますので、先生方のご意見をいただけ ればということで資料として出させていただきました。 ○大塚委員  臓器提供施設につきましては、いま説明があったとおりでございますけれども、私個 人といたしましては、これに限定することなく出していただいて結構だと思います。た だし、ここに書いてございますように1から3までのことが十分に満足できる病院であ るならばいいのではないかと思います。  具体的に申しますと、体制がまずできていること、病院の中で合意が得られているこ と、倫理委員会があること、場合によっては脳死判定委員会があること、脳死の判定を 確実にできる人であること。3番目に「救急医療等の分野において高度の医療を」と書 いてございますけれども、日ごろ高度の医療を行っている病院であるなら出していただ いてもいいのではないかと思っております。その病院に自信があるならということでご ざいます。 ○黒川委員長  最初に議論いただいたように、大塚先生の言うことが正論だと思うんですが、それで 構わないけれども世の中がどう見るかと格好をつけているだけなのかなと私は内心は思 っているんですけれども。  というのは、指定していない病院を認めるのはいいんだけど、実際にドナーが出たと きにドッとマスコミが行くと思うんです。僕は行ってほしくないと思っていますけれど も、多分自粛はできないと思うんです。そうすると、病院は認められていなかったのか という話で、残念だったけど出なかったという話がひとつ出る可能性がありますよね。 何かあったときにその病院は大丈夫かという話をマスコミにさらされると、我々職業人 として見るときには差し支えなかったのではないかということをああだこうだといろい ろあら探しをされるかなという話と、報道の仕方によっては、あの病院は認められなか ったから二流だと書かれる感じがして非常に不愉快だなと思いますね。  いまは臓器の症例が何例か出るまでは、差し当たりこれでやっていただこうかという ことをこの委員会で決めていただいたのですが、実際に症例が出てしまうと、あそこは できないんだから二流だという調子で書かれると非常に……。書かれなくても多分、社 会はそういうふうに思ってしまうのではないかということを、十分気をつけて報道して いただきたいと思っております。といってすぐに広げてしまうと、何かを考えているの かとまた言いかねないなと思っているんですけれども。 ○大島委員  私は移植をする側なものですから、移植する側の考え方としては、何とか移植をとい う方向に偏らざるを得ないと思うんですけれども、少なくとも法案ができたということ は、社会が移植医療を医療として認知したと考えているわけです。そのためにはいろん な壁があったり問題があるけれども、それを何とかクリアしてやる方向に考える責務が 社会にはあるのではないかと思います。  特にドナーの問題は大きな問題で議論されてきたわけですけれども、その中の一番大 きな問題は、ご本人の臓器提供をしたいという意思の問題と、いかに確実に脳死判定が 行われるかというその2つの問題が合わさっていまのような厳しい状況が生まれてきた と理解しているのですけれども、これで半年近くたって1例も出てこないということに ついては、まったく私の理解を越えた状況であります。  この状況がいつまで続けばいいのかという話になってきますと、本当にこんなことで いいのだろうかと率直に感じているところであります。東海地区でもそうですが、実際 に臓器提供の意思が明快な人で施設認定がうまくいかなかったためにだめになったとい うケースがありまして、ほかの地区でもそういうことがあるというお話を聞いています と、例外的にいまのこういう状況を考えますと、その1例1例を例外だと考えるのは問 題があるのではないかと思っています。  何を言いたいかといいますと、一番尊重されるべきは臓器を提供したいという人の意 思だと。次にどう確実にきちんと行われるかというようなことは、まだほかに模索をす れば方法があるのではないかと私は思いますので、意思が明快であれば脳死の診断も含 めてより確実に臓器提供にその意思を生かすということが、医療側の確実性をきちんと 保障することでやれるのではないか。ほかに方法があるのではないか。いままでの状況 を考えればそれを考えてもいいのではないかと思います。 ○黒川委員長  大塚先生もそうだと思うんだけど、私が一番心配しているのは、広げるのは賛成すべ きだとは思うんですが、それであれば認定するなりのある程度の手続きをしたほうがい いと思うんです。だけど、半年出なかったから広げるというのはまずいと思うんです。 実際にそういう症例が出たけれども認定されている施設ではなかったからできなかった という事例があるのは確かなので、それはいいと思います。  ただ、話を聞いてみると、提供側の病院でそういう問題が起こりかかったときにマス コミがドッと来るんです。病院は、二度とこんなのは嫌だとなってしまうと思うんです 写真とかいろんな人たちが入ってきて、しかも患者さんの善意にドカドカと入ってきて マスコミの権利だみたいなことを言われたら、病院はたまったものではないんじゃない か。ほかの患者さんもそうだし、ドナーの家族のプライバシーなんていうのはほとんど なくなってしまうのではないかと思います。  それを自粛してくれないとうまくいかないのではないかと危惧しているので、マスコ ミの方とも個別に話してみると、それが正論ですと、だけど他に抜かれたら私は首にな ると。みんなサラリーマンのことを言っていると思って、マスコミとしてのプロ意識は 結構低いなと思ったんですが。  そういうことがある程度ギャランティーしてもらえないと、少なくともドナー側のフ ァミリーには1週間ぐらいしたら厚生省なり然るべきところが記者会見して、こういう 方の遺族がしていただけましたのでという話をするか。そのへんのドナーの意思と家族 の権利がプロテクトされないと、いろんな病院がやるというのは極めて難しいのではな いかという気がして、病院は断れなくなってしまうと思うんです。もちろん意思が大事 だから。  そのときにどんなことが起こるかということをもし知っていれば、これは大変なこと ではないかと思って、私は内心マスコミは自粛するべきだと思っています。1社が抜く とみんながドッといくというのはみっともないなと思っていますけれども、それについ ては何かありますか。 ○大久保委員  これは前にも出てきたと思います。実際に起こったときにどういう形で厚生省なりネ ットワークが対応するかと。先ほどの話ですけれども、最初の段階でマスコミに対して 知らせるのか。大阪の近畿ブロックの会議のときも議論がありまして、実際に止めたと しても来るのではないかとか、そのへんのところは非常に難しいと思います。だから、 ここで我々としては1週間後に発表しましょうという話をしたところで、どこかで聞い てきて情報が入り1社が行きますと全部が来ますから、そこをどう止めるのか。この問 題というのは簡単に我々がこうしようと決めたからといって決められるものではないと 思うんです。 ○黒川委員長  もちろん決められないと思います。報道管制でそんなことはできないわけなので、自 粛というものを取材する側がつくらないと、そんなのは規則になってしまってまずいん じゃないですかね。そのへんにどうしても引っかかってくると思うんですけれども、大 塚先生、何かご意見ありますか。 ○大塚委員  報道ということにつきましては、厚生省が盛んに考えていただきまして、私どもと各 社の方々とお話し合いをもったことがございますけれども、どの段階で記者会見をやっ てもまったく私は同じだと思うんです。最初にやろうが後にやろうが来るものはまず来 ると思うんです。そうしますと病院はまずパンクです。電話は鳴りっぱなしでだめ。そ ういうことになってしまうと日常の診療に大変差し障りが出てくるということを懸念す るわけです。  報道のことではありませんが、なぜ出ないかということの問題ですが、実は先生方が おっしゃっているほどそんなにたくさんの人が、脳死になったら臓器を取ってください という人はいません。先生は先ほど3分の1いると言いましたけれども、そんなこと考 えられません。私のところの救命センターで過去3年間ぐらいでは、脳死の患者さんは 月でいいますと60例から80例ぐらいの間で出るんですけれども、脳死の患者さんでド ナーカードを持っていた人は1例もいない。そういう状況ですから取れるわけがない。 先生方が考えておられるほど簡単なものではないということをお話し申し上げておきた いと思います。 ○大島委員  ドナーカードを持っておられる方は、確かに大塚先生のおっしゃるように極めて少な い。ただ、どういうお話のされ方をされるのかというのは、最初のアプローチの仕方が どうで、次にコーディネーターが入ってどうなのかという詳細については私はわかりま せんけれども、結果として出てきている数値だけを見ますと、ある一定の数値がはっき り出ていますし、直接その先生にもお話を伺いましたけれども、亡くなられるときにお 話をすれば3分の1ないしはそれ以上の方が承諾をしてくれるというお話は直接に伺っ ております。 ○大塚委員  座間委員、どうですか、そのへん。あなたが一番よくご存じだと思うけど。そんなに いますか。 ○座間委員  法律施行後、施設によっては脳死判定が済んだ時点で必ずご家族にコーディネーター に会いますかというオプション提示をしてくださる施設がいくつかあります。そこでい きますと、その時点でイエス・ノーが分かれるわけです。その数としては大島先生のお っしゃるように3分の1ぐらいの方が説明を受けたいというご返事をされるみたいです さらにそれからコーディネーターが会って臓器提供についての説明をしてイエス・ノー が返ってくるわけです。  ですから、全体として提供していただけるという状況になりますと4分の1ぐらいに なってしまうのかなという感じです。数字をきちっと出していないのでわかりませんけ れども。  意思表示カードに対しては、大塚先生のおっしゃるように救命救急センターに運ばれ るような方たちの中であまり多くないのは感じとしてあります。ただ、一般病院で入ら れた方の中に意思表示カードとかドナーカードをお持ちの方は以前に比べて多くなって きたのかなという感じはします。  もうひとつ、カードを持っていらっしゃるということで、以前だったら先生が受け取 ったけれどもどうしたらいいかわからないという状況があったのかなと思いますけれど も、最近は癌の方でもカードを持っているからということでネットワークにご連絡をく ださる状況は増えてきております。 ○黒川委員長  そういういろんな状況があるわけですが、この議題は、いまのところの96施設とい うことでよろしいかということですが。 ○大久保委員  基本的にはこの前にガイドラインで示したのでいますぐどうのこうのということはな いんですけれども、先ほど大塚先生がおっしゃったように必ずしもこれでなければいけ ないということではないんだということを、きちっと他の病院の方々にもお知らせいた だく必要はあると思います。  先ほど大塚先生がおっしゃったように、それだけのことができるのであれば、またそ れだけのことをしてでも提供者の意思を生かしたいという病院があるのであれば、ぜひ その病院からも提供できるということはお知らせいただきたいと思います。 ○黒川委員長  そういうことが起こった場合には行政としては構わないわけですか。 ○重藤補佐  これは局長通知でございますので、必ずしも法律に違反しているということではあり ません。ただ、法律の立法の経過なり主旨なりを反映して、こういう法律の運営をする ための指針として議論の場として公式に公衆衛生審議会にも報告をした約束事でござい ますので尊重していただきたいと思います。ただ、これを踏まえなかったからといって 法律違反では問われないということだと思います。 ○黒川委員長  よろしいですか。もちろん情報の公開とか、あとでカルテその他のことがありますか ら、それできちんとされればいいのかなと。あとで検証がされるということになると思 いますが、そういうことでよろしいですか。どうもありがとうございました。  そういうことを議論させていただいたということでこれを確認したわけですが、その 次に議題5のその他というところにいきたいと思います。それについて重藤さんのほう からお願いします。 ○重藤補佐  資料5−1でございます。「小児における脳死判定基準に関する研究班の概要」とい うことでございます。脳死判定につきましては、先生方ご存じのように法律の中で昭和 60年度厚生科学研究、いわゆる竹内基準というものに基づいて脳死判定を行うというこ とになっております。竹内基準は調査を行うときに症例をつぶさに検証して基準を作成 したわけでございますけれども、しかしながら小児の症例数が少なかったということで 6歳未満の脳死判定基準については除外項目とされているところでございます。  症例数が少なかったということもございまして除外項目とされましたので、小児の症 例を集めて小児の特性を踏まえた基準をつくっていただき、全年齢層に脳死判定ができ る基準策定を再び竹内先生にお願いしたところでございます。  ただし、法律には、脳死に基づく臓器移植をするためには本人の意思表示が必要とい うことになってございますので、ガイドラインでこれまでもご議論いただきましたが、 本人の意思表示は15歳以上ということで決めさせていただいておりますので、6歳未満 の脳死判定の基準ができましてもそれがそのまま小児の臓器移植につながるということ はございません。わが国の脳死判定が全年齢層でできるという条件整備をするというこ とで研究班を立ち上げました。  研究班員は、先ほど申しましたように主任研究者を竹内先生、そのほか鴨下先生、佐 藤先生等、小児の脳神経の先生、脳外科の先生等を中心として、小児の特性を踏まえた 判定基準を策定していただこうということで、1月7日に第1回研究班、2月19日に第 2回の研究班会議を行いました。できましたら来年度に小児の脳死判定基準が策定され ればと考えているところでございます。 ○黒川委員長  ありがとうございました。それは15歳未満の人については法律の改定が必要なわけで すね。 ○朝浦室長  15歳未満につきましては、本人の意思表示ができないということでガイドライン上 15歳以上の方に限っているということでございまして、必ずしも法律事項というふうに は考えていません。 ○黒川委員長  例えば、15歳以下の人がドナーの提供になりうるためには親権者の同意がいるという ふうにするには、法律を直さなくてはいけないということですね。 ○朝浦室長  そういう意味でございます。 ○大久保委員  それをガイドラインで10歳までというふうに下げれば10歳までできるということです ね。 ○朝浦室長  本人の意思を10歳まで認めるということであれば、現行制度でも可能と。 ○黒川委員長  法律は15歳になっているんじゃなかったっけ。 ○朝浦室長  通常は本人の意思。 ○大久保委員  本人の意思ですから、本人の意思がいままでのところで15歳ですから、これを10歳ま でが本人の意思として認めるとなれば、法律は変わらなくても10歳までになる可能性は あるということです。 ○町野委員  それはそうならないと思います。やはり、ちゃんとした意思表示ができるということ の解釈として15歳にしているわけですから、それを10歳に下げたり8歳に下げたりどん どん下げていくということはできないと思います。 ○黒川委員長  15歳にしたのは、社会通念上、遺言やなんかのことが15歳と言っているから、ほかの 法律と整合性をあわせて本人が判断できるというのは15歳としているわけだから15歳な んでしょうね。親権者がうんぬんかんぬんと言わないかぎりは下げられないという解釈 じゃないんでしょうか。  そうすると、法律を変えるのは本人の意思と言っているわけだから、本人あるいはそ のほかの法律からいうと、15歳未満にあっては親権者の同意があればというふうに上の 法律を変えないとだめだということですね。 ○朝浦室長  そうです。親権者の承諾という要件を書き込むとすれば法律事項になると思います。 ○黒川委員長  法律が変わらないとまずいということですね。  もしよろしければ、その次の「臍帯血の移植検討会」について事務局からお願いしま す。 ○重藤補佐  臍帯血につきましては、臓器移植とは直接的には関係はしませんけれども、関係が深 いということでご報告させていただきます。  資料5−2の2枚目ですが、臍帯血は分娩時に胎盤及び臍帯にある臍帯血を採取しま して、その中には非常に幼弱な造血の幹細胞が含まれておりますので、それを分離保存 をして白血病等の血液疾患の治療に使えないかということでございます。世界的にも既 に500例、日本でも32例行われておりまして、骨髄移植相当の成績が期待できるのではな いかということで、こうしたものの運営体制でありますとか医学的なガイドライン等を きちっと整備しようということで、1枚目に戻りますけれども臍帯血移植検討会という ものを設置いたしました。  (2)の検討課題でございますけれども、医学的な課題や技術的な課題、運営上の課 題がございまして、それについて議論をしております。平成10年1月19日に第1回の臍 帯血検討会を開きまして、2月13日に第2回臍帯血検討会、3月6日に第3回検討会を 行ったところでございます。委員につきましては、座長が斎藤先生、そのほか臍帯血関 係の方、ボランティアの方、骨髄バンク関係者、学識経験者等からなる委員構成にして 現在議論を行っているところでございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。  臍帯血の場合は造血幹細胞の骨髄移植と同じですけれども、骨髄移植は現在HLAが 完全にマッチするドナーの骨髄血をとってこなくてはいけないわけですが、臍帯血につ いてはどちらにしてもいまいらないと言えばいらないので、それをためてやると。ただ 細胞数が十分ないのでどうしても小児が対象にはなりますが、臍帯血の幹細胞を分化さ せないで増殖させるというところが研究のテーマでかなり進んできていますので、そう なると恐らく大人にも使えるようになる。なると骨髄移植よりも定着性がはるかにいい んですね。そういうことからいうと相当いいのではないか。  アメリカなどではものすごく進んでいて、臍帯血のバンクが随分できていますので、 これからひょっとすると生まれた赤ちゃんは自分の臍帯血を自分の将来のためにとって おいて人には使わせないということもあり得る話なんです。  臍帯血をどういうふうに増殖させながら分化させないかという話もだんだんできるよ うになってきますので、そうなるとかなり素晴らしいバイオテクノロジーの進歩が見ら れるという可能性が出てきたということだと思います。ぜひよろしくお願いしたいと思 います。  その次の議題3は先生方もご存じだと思いますが、腎移植による感染症の発生という ことで事務局からお願いします。 ○重藤補佐  資料5−3でございます。腎移植による感染症発生ということでございます。昨年行 われました死体腎移植のドナーの血液検査におきまして、検査結果の解釈というところ で判断が難しい事例がありました。検査の精度の限界でヒトT型細胞白血病ウイルスの 判定が擬陽性のところを陰性という報告がありまして、そして腎臓移植が行われた結果 患者さんが成人T細胞白血病に感染するという事例がございました。  成人型T細胞白血病を若干ご説明申し上げますと、感染しても潜在期間が長くて50年 程度とも言われております。感染してからの発症率もかなり低くて1%以下ということ も聞いております。そうしたことで、感染が直接病気の発病とは現在のところ何とも申 し上げられないのですけれども、移植によってヒトT細胞白血病ウイルスに感染したと いうことがございました。  したがいまして、こうした事例を非常に重くみまして、資料5−4のような感染症検 査暫定実施基準を臓器移植ネットワークが設けまして、現在厳しい検査の判定基準を用 いて検査を行う、疑わしいものについては臓器移植を行わないという取り扱いにしてい るところでございます。現在の臓器移植ネットワークにおきまして、次の資料の5−4 の2ページにあります感染症対策特別委員会を設けて、今後の対策を現在ご議論いただ いているところでございます。  この問題につきましては、検査精度と判定が非常に微妙なところでございますので、 専門家の先生方で今後の対策がご提言されるのではないかと考えております。 ○黒川委員長  ありがとうございました。いろんな事例が出るたびにできる限りのことはしていると いうことのひとつの証でございますが、これについてはいかがでしょうか。 ○田中委員  黒川委員長からいろんな事例が出てその対応ということですが、資料5−4の3です が、感染症基準でHBsで抗原を調べているだけというのがドナーに関しては実情なんで すが、生体肝移植をやる中で抗体についても調べるべきである、また、その対策をする ことによって受ける人に不利益にならないような対策もできるので、事前に知っておく ことが大切であるということで、感染症対策委員会でこういうことを検討してほしいと いうことを出しているところでございます。いろんな事例が出て、それにきちんと対応 するということが重要であると思います。 ○大島委員  決まってしまったことをゴチャゴチャするつもりはないんですけれども、こういう考 え方もあるということだけは言っておいたほうがいいと思いますので、あえて言わせて いただきます。  100%パーフェクトの状況で何かをやるということは医療の場では非常に難しいと思っ ています。常にそのときにおかれた状況の中で、いまを乗り切らないと当然明日はない わけですし、いまを乗り切るためのチャンスは、1年待ってあるのか10年待ってあるの かわからないというチャンスもありますし、そういうことを考えますと、常にそのとき におかれた状況でその患者さんにとってプラスなのかマイナスなのかという比較考量が 当然なされると思います。そういう意味でいいますと、例えばアトラの問題につきまし ても発症率が極めて小さくて、しかも潜伏期間が数十年という長さである。50歳で腎不 全で、何とか腎臓が欲しいという状況になったときに、十分に比較考量になる話だと私 自身は思います。そういう考え方もあるということは、一律にスパッと切ってしまうこ とに私自身は非常に抵抗を感じています。そういう意見もあるということだけを言って おきたいと思います。 ○黒川委員長  私も確かにそのとおりだと思います。  きょう久しぶりに専門委員会を開催させていただきました。実を言いますと、確かに 10月16日から脳死による臓器移植法が成立してからまだ1件も成立していないし、未解 決の問題もまだまだあるわけで、この専門委員会が最後に終わってから課題もいくつか あるわけで、それについては事務局を中心にしながら事務連絡をしていただいているつ もりでございます。そのうちの一部が小児における脳死判定基準の問題、腎臓移植にお ける感染症について何が起こったかという話でございます。  最近、ご存じのように、沖縄でドナーの遺族が担当者を告訴するという話も出ていま すけれども、そのときも専門委員会で先生方とお話ししたように、全ての事例を予測し て全てガイドラインとか省令に書き込むというのはむしろ不適切であって、いま大島先 生がおっしゃったように、そのときのベストだという判断が、お医者さんの判断と社会 的な判断とが一致していなければいけないわけですが、それは全部予測してガイドライ ンに書くのは不可能である。むしろ、もしそういうことがあれば判例によってまた次が 変わってくるという話も多分したと思うので、そういうことが実際に起こるのは全体の 社会の認識と医療の進歩ということには避けられないバリアかなというふうにも思って おります。  そういうことからいうと、この間随分いろんな関連学会で公開シンポジウムをされて いろんな人にアプローチをしているし、ご意見も伺っているわけですので、そういうこ とからいうと国民の理解も広がっているとは思いますが、日常自分に起こるかなという ことは、患者さんを持っているファミリー以外はなかなか考えないと思うんです。ド ナーカードを持って自分が本当に脳死になると思って書いている人はほとんどいないと 思うんです。そのへんのディスクレパンシーがあるわけで、これは人間の心理としては 当たり前です。そのへんを広報的な活動、あるいは国民の理解を上げるためには、先ほ どから言っているようにマスコミあたりのスタンスはどうなのかといつも気にしていま すが、そのへんをお願いしていきたいと思います。  最近、共同通信でずっと連載で「和田移植の現場を検証する」というシリーズがあり まして、これは全部手を入れてまとめて1冊の本にして出すそうなので、出るのは夏ご ろではないかと思います。和田移植は夏に行われたわけだから、ちょうど丸30年目で その本が出ることになると思います。  その時代とはかなり変わっていますので、大島先生が先ほどおっしゃったように、確 かに医療の現場にかかわっていない人は理屈ではいろんなことが言えるんです。やれP CRをやったかとかやらなかったとか、その検査がどうだとみんな言えるけれども、医 療の現場というのはリアルタイムで実際に動いているので、本当にそんなことができな い場合がすごく多いんですね。もう少しお医者さんのことを信用してくれと言っても、 いままでの積み重ねから信用できないんだと言われるとつらいところもあるわけですが これからの世の中は情報の公開、いつでもいらっしゃいという話が一番筋であって、で きるだけマスコミはニュートラルに報道していただきたいというのが私の希望でござい ます。  もうひとつ臍帯血輸血のことが出ましたけれども、専門委員会でも出たのではないか と思いますが、遺伝子の技術がものすごく進んできましてクローン羊ができました。あ れも280回ぐらいトライアルして初めて成功したわけなので、すぐに人間にいくとは思え ませんが、生まれて1年したらそのクローンをつくっておいて、年違いの双子、三子と いうことも可能なわけです。誰かが病気になったらお互いに助け合おうというパート ナーをどんどんつくってしまうということは実際に可能です。  そんなことになってくると、先ほど言いましたように臍帯血の輸血は非常に素晴らし い可能性を秘めているわけですので、自分がガンになったときに自分の臍帯血があれば いいという話が可能になってきます。そうすると人にあげないということになって、こ のへんがどうなのかなということを考えると思いますが、そういうことも可能です。臍 帯血をどんどん増やせる技術が出てくればいいわけですが。  そういうわけでクローンの技術というのは非常に大きなインパクトが将来的にありま して、マスコミあるいは一部の学会は書いていますけれども、一般の人にわかるような 格好で学術団体があまり議論していないのはまずいのではないかと思っていまして、た またま今度学術会議の委員になりましたので、『学術の動向』というのが学術会のオフ ィシャルジャーナルであるんですが、「クローン羊ドリーのインパクト」という特集を 組ませていただきました。  学術会議だと法学の先生とか哲学とかいろんな人がいますので、横断的に皆さんに読 んでもらおうと思ってやさしく書いたのですか、学術会議をやるいろんなところを中心 にしてクローン技術の将来へのインパクトをほかのディシプリンの先生方、あるいは一 般の人にももっともっと知っていただかないと、学術審議会その他でクローン人間の技 術の実験はやめというのはそれはそれでいいような気もしますけれども、実際アメリカ ではそれを使って子供をつくってあげようという名乗りを上げる人もいるぐらいの世の 中ですから、そういうわけで一般の人にもう少し議論を喚起してもらいたいという話で しばらく学術会議でもいくつか特集でどんどんやろうという話が進んでいますので、そ ういうふうな技術的な革新からいうと将来的には移植の問題はもっともっと違った局面 でとらえられるようになるのではないかとという可能性もございます。  つまらない話をしてすいません。 ○大久保委員  議論が出ていないのですが、前回9月に終わってそのあと心臓、肝臓に関してはきち っと決まっているので、それ以外の肺とか膵臓、小腸に関してはどうなっているかご報 告いただきたいと思います。 ○重藤補佐  臓器移植希望登録者として登録した人がどういう基準で選ばれるかというレシピエン トの選択基準につきましては、この委員会で全ての臓器を決めていただきまして、心・ 肝・腎とあわせて10月8日に通知をさせていただきました。  それはいいのですが、施設ということにつきましては現在の移植関係学会合同委員会 という場で議論をいただくべき項目になっておりまして、それにつきましては専門委員 会をつくってそれぞれ肺と膵と小腸につきましてはご議論をいただいていると聞いてお ります。新聞報道によりますと、肺については既に施設特定が終わっているというふう に聞いておりまして、森亘世話人に何かの機会で会ったときに、肺・膵・小腸全て一緒 にやるのか、それぞれ分けてできたところからやるのか考えていらっしゃるという情報 を得ておりますので、移植関係学会が次に開かれればそういった施設特定もされること になると思っております。 ○黒川委員長  それに関連しては、そこで積み残した課題がいくつかありますが、いくつかは移植学 会のほうにお願いしているところもあるわけで、それは野本先生にフォローアップはし ていただいております。また適宜この専門委員会の進捗状況があるたびに開催させてい ただければと思います。 ○井形委員  先ほどから臓器提供施設とかいまのATLの話が出ましたけれども、ガイドラインを この委員会でつくったわけですから、とりあえずはこれを守ろうという姿勢をはっきり しておいていただきたい。もし問題があるのならば、いまのような問題はここで出して 議論してルールに従ってやりませんと、刻々の判断というニュアンスで全国がそういう ことで動くのは、せっかく培った移植の信頼を妨げるようになると思います。  ですから、やはり問題は起こっているわけですから、それをここにご提案いただいて するほうが先で、問題があるから少し広げましょうと、自分で自由に広げましょうとい うことはやらないほうがいいと思います。 ○黒川委員長 基本的にはそうだと思います。そうじゃないと何をやっているんですかという話と目 的が違ってしまうから。先ほど言ったみたいに私が確認したいのは、ガイドラインに外 れたことをやったときにはどういう処罰があるのか、ネットで話を確認させていただい たということであります。では、よろしいでしょうか。ございませんようでしたら、ど うもありがとうございました。 (以上) 問い合わせ先 厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当 重藤(内2361)、眞鍋(内2364)    電 話 (代)03-3503-1711