98/03/06 第16回年金審議会総会・全員懇談会議事録 第16回年金審議会総会・全員懇談会議事録 日 時 平成10年3月6日(金) 15:00〜17:35 場 所 厚生省特別第1会議室 I 総会  1 開 会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事 ・ 日・独社会保障協定(仮称)の実施に伴う厚生年金保険制度及び国民年金制度の特  例措置について II 全員懇談会  1 議 事   ・総報酬制について   ・制度改正に係る総括的事項、公的年金の在り方について  2 閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員    国 広 委 員  久保田 委 員  神 代 委 員  坂 巻 委 員   高 山 委 員  都 村 委 員  富 田 委 員  福 岡 委 員   桝 本 委 員  山 田 委 員  山 根 委 員  吉 原 委 員   若 杉 委 員  渡 邊 委 員  貝 塚 委 員  船 後 委 員  ○京極会長  時間でございますので始めさせていただきます。本日は御多忙のところお集まりいた だきありがとうございます。ただいまから第16回年金審議会総会を開催いたします。  まず委員の出席状況について事務局から御報告をお願いします。 ○事務局  本日は目黒委員が御欠席でございます。木原委員、吉原委員、貝塚委員は少し遅れて おられるようでございます。以上でございます。 ○京極会長  それでは、議事に入りたいと存じます。お手元にお配りしてありますとおり、本日、 日・独社会保障協定(仮称)の実施に伴う厚生年金保険制度及び国民年金制度の特例措 置についての諮問がございましたので、これについて御審議をお願いしたいと存じます まず事務局から諮問書の朗読をお願いします。 ○事務局  それではお手元にございます諮問書及び要綱について朗読いたします。                                厚生省発年第8号                                  平成10年3月6日 年 金 審 議 会  会長 京極 純一 殿                   厚生大臣    小泉 純一郎               諮    問    書  日・独社会保障協定(仮称)の実施に伴う厚生年金保険制度及び国民年金制度の特例 措置を別添のとおり設けることについて、厚生年金保険法(昭和29年法律第115 号)第5条及び国民年金法(昭和34年法律第141号)第6条の規定に基づき、貴会 の意見を求めます。  日・独社会保障協定(仮称)の実施に伴う厚生年金保険制度及び国民年金制度      の特例措置案要綱 第1 特例措置の目的  日・独社会保障協定(以下「協定」という.)を実施するため、厚生年金保険制度及 び国民年金制度について、被保険者の資格、給付の支給要件、給付の額等に関する特例 を設けること。 第2 被保険者の資格に関する特例  1 共通事項    現行の厚生年金保険又は国民年金の被保険者となる者であっても、次のいずれか に該当するものは被保険者としないこと。   (1) 日本国の領域内で就労する者であってドイツの年金制度への強制加入に関する ドイツの年金法令の適用を受けるもの(原則として滞在が5年以内の者)   (2) ドイツの領域内で就労する者であってドイツの年金制度への強制加入に関する ドイツの年金法令の適用を受けるもの(協定の規定によりドイツの年金法令の適 用を免除することとされた者を除く。) 2 国民年金に関する事項 (1) 1の(1)に該当する者に随伴する配偶者及び子は、国民年金の被保険者としない こと。 (2) ドイツに通常居住するドイツ国民等であって日本の年金制度に60月以上保険料 を納付した者は、国民年金の任意加入被保険者となることができることとすること 第3 給付の支給要件に関する特例  ドイツの年金制度へ保険料を納付した期間(以下「ドイツ保険料納付期間」とい う。)を有する者であって、厚生年金保険又は国民年金の給付の受給資格要件を満たさ ないものについて、以下の特例を設ける。  1 ドイツ保険料納付期間等の算入    老齢厚生年金等の受給資格要件たる期間を満たさない者について、その者のドイ ツ保険料納付期間等を厚生年金保険の被保険者期間等に算入すること。  2 納付要件におけるドイツ保険料納付期間の考慮    障害厚生年金等の納付要件を満たさない者について納付要件に関する規定を適用 する場合においては、その者のドイツ保険料納付期間を国民年金の保険料納付済期 間とみなすこと。  3 障害厚生年金等の支給要件の特例    ドイツ保険料納付期間中に初診日又は死亡日がある者について、障害厚生年金等 の支給要件に関する規定を適用する場合においては、当該初診日又は死亡日におい て厚生年金保険又は国民年金の被保険者であったものとみなすこと。 第4 給付の額に関する特例  第3の特例により給付の受給資格要件を満たした者に支給する額について、以下の特  例を設ける。  1 給付の額に関する期間比例計算    老齢厚生年金の加給等、厚生年金保険の被保険者期間が一定期間を満たす場合に 定額が支給される額は、当該定額に厚生年金保険の被保険者期間を当該一定期間で 除して得た率を乗じて得た額とする。  2 給付の額に関する按分計算   (1) 障害厚生年金の配偶者加給等、被保険者期間に関わらず定額が支給される給付 の額は、当該定額をドイツ保険料納付期間と日本の被用者年金制度に加入した期間 等とで按分した額とする。   (2) 厚生年金保険の被保険者期間が300月に満たないときに支給される障害厚生 年金又は遺族厚生年金の額は、日本の被用者年金制度に加入した期間に応じた額と   被保険者期間が300月あるものとして計算した額と当該加入した期間に応じた額   との差額をドイツ保険料納付期間と日本の被用者年金制度に加入した期間とで按分   した額とを合算した額とする。  3 従前額の保障    1及び2の特例によりその額が計算された給付を受給することにより、従前から 受給していた額よりも少ない額を受給することとならないよう、所要の措置を講ずる。 第5 施行期日   この特例措置は、協定の発効日から実施すること。 第6 その他   ドイツ年金の申請書を社会保険庁長官が受理すること等、協定を実施するため必要 な措置を設けること。」  以上でございます。 ○京極会長  それでは、年金局長から諮問内容について趣旨説明をお願いいたします。 ○年金局長  それでは、私の方から、本日、諮問申し上げました「日・独社会保障協定の実施に伴 う厚生年金保険制度及び国民年金制度の特例措置」について、趣旨を説明させていただ きます。  近年、国際化が進展する中で、日本の方が外国に一時的に派遣されると、日本の年金 と外国の年金に二重に加入しなければいけない。その結果、保険料が掛け捨てになる場 合もあると、こういう問題が生じておる訳でございます。このような問題を解決するた めに、ドイツとの間で、仕事で相手国に一時派遣される者等につきまして、いずれかの 国の年金制度にのみ加入すればよいこととするとともに、両国の年金加入期間を通算い たしまして、年金受給権に結びつけることを内容とします日・独社会保障協定を締結す ることといたしまして、今国会に協定案を提出する準備を進めておる訳でございます。  諮問いたします特例措置でございますけれども、これはこのような日・独社会保障協 定を実施に移すために、厚生年金保険制度、それから国民年金制度につきまして、被保 険者の資格あるいは給付の支給要件、給付の額、こういったものにつきまして特例を設 けると、こういうものでございます。  以下、主な内容について御説明申し上げます。  まず「被保険者の資格に関する特例」でございますけれども、現行制度におきまして 厚生年金保険あるいは国民年金の被保険者となる者でございましても、協定によりドイ ツの年金の適用を受ける場合には被保険者としないこととするものでございます。  協定の結果といたしまして、日本からドイツに一時的に派遣されて就労する方の大半 は、日本で就労していたときと同じように、厚生年金保険法等の日本の年金制度にのみ 加入すればよいことになるわけでございます。  次に、「給付の支給要件に関する特例」でございますけれども、現行制度のもとで、 給付の受給資格要件を満たさない者につきまして、ドイツの年金制度に保険料を納付い たしました期間を日本の年金制度の被保険者期間と同等とみなす、という考え方に基づ きまして、両国の年金加入期間を通算する、という特例を設けることとしております。  また、「給付の額に関する特例」につきましては、ただいま申し上げました支給要件 の特例により受給資格要件を満たした者に支給する額につきまして、日本の年金制度に 加入した期間に応じた額とするとの考え方に基づき、所要のケースの特例を設けること といたしております。  なお、諮問する特例措置は協定を実施するために必要な日本側の措置でございまして ドイツ側におきましても協定を受けて同様の措置がとられるものでございます。  以上、御説明申し上げました特例措置を本日諮問するものでございます。速やかに御 審議、御答申を賜りますようお願い申し上げます。 ○京極会長  どうもありがとうございました。続きまして、改正案の内容等について、事務局が資 料を用意しておりますので、御説明をお願いします。 ○事務局  それでは、まず、本日の諮問の特例措置の前提となります日・独社会保障協定の概要 につきまして、本日の資料1−2に沿いまして御説明をさせていただきたいと思います 資料1−2をごらんいただきたいと思います。  国際化の進展に伴いまして、年金の二重加入などの問題が生じておるわけでございま すが、日本とドイツの人的交流について申し上げますと、日本からドイツへ平成8年、 2万 4,000人ほど行っております。一方、ドイツから日本へは4,000人ほどと、こういう 交流になっておるところでございまして、こういった状況にかんがみまして、ドイツと の間で二重加入の防止、年金加入期間の通算等を内容とする日・独社会保障協定を締結 することといたしたものでございます。 対象といたします制度は、資料1−2の下の方にございますが、日本は国民年金と厚 生年金保険のほか、4つの共済でございます。  一方、ドイツの方では、ごらんいただきますような3つの被用者保険が対象になって おるわけでございます。  今回の措置は、「日・独社会保障協定」と称しておりますが、1ページの一番のなお 書きに書いておりますように、医療保険などの短期の保険につきましては、基本的にこ の協定の対象といたしておりません。ただし、雇用保険につきましては、協定によりま して、ドイツの年金保険が適用されない場合にはドイツの雇用保険も適用しない、こう いう扱いにしたところでございます。  2ページ、「協定の主な内容」について書いておるわけでございますが、日独双方に おきまして、いわゆる相互主義の考え方に基づきまして、今、申し上げました二重加入 の防止などの措置をそれぞれで講じていくということでございまして、本日、御諮問申 し上げたのは、この協定に基づきまして、日本において講ずる措置のうち、厚生年金保 険及び国民年金に係る部分につきまして諮問の形をとらせていただいたところでござい ます。  以下、協定の主な内容につきましては、資料1−1で御説明させていただきたいと思 いますが、その他ちょっと付言をさせていただきたいと思います。二重加入の防止、年 金加入期間の通算、計算の特例のほかに、その他といたしまして、申請手続等の便宜措 置を講じるということで、ここに挙げておりますように、自国の保険者等に出した年金 の申請書については、その提出日に相手国の保険者等に提出したものをみなすなどの便 宜を図ると、こういう扱いをあわせてすることにしておるところでございます。  それでは諮問書の別添の要綱、それから、資料1−1をごらんをいただきたいと思い ます。 資料1−1は、要綱の別添の事項に沿いまして、事例などを用いまして、今回の特例措 置の内容について説明をさせていただいたものでございます。まず、「被保険者の資格 に関する特例」でございます。要綱第2の1の(1)関係でございますが、これは端的に申 し上げまして、日本で就労されるドイツ年金に加入しておられる方、ドイツ人の方であ りますが、ドイツ年金が継続適用されるこの網かけの場合につきまして、日本の厚生年 金を適用しないと、こういう扱いをするというものでございます。  以下、基本的に被用者保険を例に挙げておりますが、今回の特例措置におきましては 自営業者などの国民年金につきましても特例を講ずるところでございます。その全体に つきましては、この資料1−1の最後のページ、7ページに厚生年金保険及び国民年金 において関係があるのかというのを一覧表にまとめておるところでございます。  被保険者の資格に関する特例の話に戻らせていただきまして、もう一つの加入資格に 関する特例は、ドイツで就労する者であって、ドイツの年金に加入する者ということで ございまして、これは基本的にドイツ滞在が長期間になって、ドイツ年金の適用の対象 になる。資料1-1の要綱第2の1の(2)関係の網かけの場合につきましては、日本の厚 生年金の適用をしないという扱いをするものでございます。  それから、これらに関連をいたしまして、国民年金に関する事項といたしまして、要 綱第2の2の(1)でございますが、先ほど申し上げましたドイツの、通常サラリーマンの 方が日本に来られた場合に、その方に随伴する配偶者と子、これも国民年金の被保険者 としないという特例を講じるものでございます。  それから、最後にもう一つ国民年金の関係では、相互主義に基づきまして、ドイツに 居住するドイツ国民で、日本の制度に60カ月、5年以上保険料を納めた方につきまして は、国民年金の任意加入の継続ができるという扱いをするものでございます。これは我 が国の国民が外国に行った場合に、国民年金の任意加入を継続できますので、相互主義 の考え方に基づきまして、ドイツの国民にもこのような措置を講ずるということにする ものでございます。 2ページに進ませていただきます。期間の通算の関係に入ったわけでございまして、要 綱第3の1の関係で支給要件、すなわち「ドイツ保険料納入期間等の算入」でございま す。老齢年金等は一定の被保険者期間を要件としておるわけでございますが、日本の被 保険者期間等では足りないという場合につきまして、ドイツの保険料納付期間等を日本 の期間としてみなして算入をするというものでございます。老齢厚生年金の場合を例に 挙げておりますが、今回の措置によりまして、この網かけのドイツ年金加入期間につき まして、保険料納付済期間とカウントいたしまして、この協定発効後、老齢厚生年金を 支給していくということになるわけでございます。  もう一つは、「納付要件におけるドイツ保険料納付期間の考慮」ということでございま して、障害年金等におきまして、いわゆる納付要件というのがあるわけでございまして この要件につきましても、ドイツ保険料納付期間を考慮するというものでございます。 資料1−1の要綱第3の2関係でこの例を挙げております。障害厚生年金の場合でござ いまして、網かけのドイツ制度加入15年間を考慮して、障害厚生年金を支給するという 扱いとするものでございます。  次に要綱第3の3でございますが、「障害厚生年金等の支給要件の特例」に関するも のでございます。これは両国協議におきまして、課題の1つとされたところでございま して、現在我が国の年金制度におきましては、初診日や死亡日において被保険者である ということが障害年金などを支給する基本的な要件でございます。したがいまして、現 在3ページの例に挙げてありますように、過去に厚生年金保険に加入したことがある者 がドイツの制度に入った場合に、日本の方からは、障害年金を支給するということはで きなかったわけでございますが、このようなドイツの制度に加入しておるという場合に つきまして、こういった過去の厚生年金加入に着目をいたしまして、我が国の障害厚生 年金を支給する扱いをするというものでございます。国際協定におきまして、年金通算 を考える場合に、この障害年金の扱いが一番課題になるわけでございまして、国際的に このような扱いがなされたことにかんがみまして、今回このような措置を講ずることと したものでございます。  次に、「給付の額に関する特例」でございます。今、申し上げましたような、受給要 件等の特別要件を満たしたものにつきまして支給する額についてでございますが、まず 要綱第4の1関係でございます。「給付の額に関する期間比例計算」ということで、こ こでは厚生年金等の一定の期間を満たすことを条件に定額が支給される給付の額につき ましては、この一定の期間に対する日本の制度加入期間をもって、その乗率でその給付 を行っていくということでございます。例といたしまして、老齢厚生年金の配偶者加給 の場合を挙げておるところでございます。この場合、一定の期間を20年としております ので、20年を分母といたしまして、この場合の日本制度加入期間15年を分子とし、この 乗率を掛けて老齢厚生年金の配偶者加給額を決めるというふうにするものでございます  次に要綱第4の2の(1)でございますが、これは被保険者期間にかかわらず定額が支給 されるという場合でございます。この場合には、日本とドイツの期間を足し合わせたも のを分母として、分子に日本側の期間をもってその乗率を掛けるということでございま して、例といたしまして障害厚生年金の配偶者加給の例を挙げております。  次に要綱第4の2の(2)でございますが、障害厚生年金は300月(25年)未満の場合、 300月の最低保障をしておるわけでございます。この最低保障との関係におきまして25 年に満たない場合につきましては、例に挙げておりますように、日本の加入期間に応じ た額、それに最低保障のための嵩上げ部分につきまして、ドイツ期間と日本期間を合算 したものを分母とし、日本期間分を分子として掛けたものを足し上げるという形で特例 措置を講じていこうということでございます。 以上、申し上げましたのは、期間通算をいたしまして、我が国の年金制度から出す給 付の額でございまして、一方のドイツの期間につきましてはドイツの年金制度から支給 されるのは当然のことでございます。 最後に要綱第4の3でございますが、「従前額の保障」ということで、今、申し上げ ましたような特例計算によりまして、従前から受給した額よりも少ない額を受給すると いうようになることも予想されますので、このような場合につきましては、従前額保障 の措置を講じるというものでございます。  「施行期日」でございますが、協定発効日からということで、これは最終的にはドイ ツとの調整になりますが、日本側といたしましては、できるだけ早く施行を行っていき たいということで準備をしていきたいと考えております。 ○京極会長  どうもありがとうございました。ただいまの御説明を基礎といたしまして、本日の諮 問事項について、どなたからでも御自由に御意見など御発言いただきたいと存じます。 ○福岡委員  随分長い時間をかけてやっていただいたと思うんですね。私、この話を聞いてからも う17、8年になるのではないかという気がするんですが、かつ、また大変な御苦労があ ったのだろうという気がいたします。ドイツの年金と日本の年金とは比較的似ているの かなと思ったんだけど、やっぱりそうでもなくて、なかなか大変な御苦労があったんだ ろうと思いますが、細かい内容は正直のところわからないんですけれども、こういう形 で早くやってもらいたいという強い要望があるわけでございまして、それを実現してい ただいたことについては感謝したいというふうに思いますし、ぜひ、早く推進していた だきたいというふうに思います。  と同時に、今回、答申するに当たって、実は英国、米国の関係もあるわけでして、私 どもがたまたま2年前だったと思うんですが、日経連のトップミッションが出たときに 私どもが福利厚生担当大臣に会うという話を在英の日本人の商工会議所の方々がお知り になって、陳情書が出たわけです。そんなこともありますので、年金協定を国家間で結 んでいる国は、例えばアメリカなどは聞くところによりますと18カ国だとかと、年金通 算協定を結んでいるというような話も聞きますので、ドイツについては随分御苦労あっ たと思うんですけれども、これを契機にいたしまして、できるだけ日本の人が、いわゆ る先進国で働いておる例がたくさん増えているわけですから、年金通算の問題について はぜひ早急に対応してもらうようなことを附帯意見として付けていただきたいというこ とをお願いしたいと思います。 ○京極会長  ほかにどなたか御意見ございますでしょうか。どうぞ、桝本さん。 ○桝本委員  私どももこの問題は、従来から大変重視してまいった問題の1つで、ようやくドイツ についてだけこういう具体的な形にたどり着いたことについては基本的に歓迎したいと 思います。先ほど局長の冒頭の御説明の中で、「掛け捨て防止」というお言葉がござい ましたけれども、社会保障ですから、通常の私保険と違って掛け捨てかどうかというこ とを議論するのはどうなのかという議論もあると思いますが、少なくとも年金制度につ いての二重加入が持っている不合理というのは明らかなので、二重加入を防止するとい う観点で大変大きな一歩だろうと思います。  福岡委員からも御発言がございましたように、現状我が国の人たちが海外で働いてい るケースはもちろんドイツだけではございませんし、またヨーロッパに関してはヨーロ ッパの域内での社会保障の域内統合の問題が85年の社会憲章の後の行動計画の重要な1 項目として挙がっておるところですので、今後も引き続きこういう二国間協定という形 をとっていくことになるのか。ヨーロッパについては、EU統合の進展で一括対EU協 定ということでできることになるのか、その辺についても大変関心を持っております。 もし事情がわかれば教えていただきたいと思います。  それから、幾つか細かいケースになると思いますが、特に老齢年金を念頭においての 話ですけれども、これはあくまでも我が国の企業にベースを置いた人の派遣という形を とった場合だけの適用ですね。つまり我が国の企業の現地法人があるわけですが、そこ での現地採用というのは、これは日本人であっても、これの適用にはならないわけです ね。 ○事務局  ただいま桝本委員からの御質問の2点につきまして御説明を申し上げたいと思います  まず、今後とも二国間協定という形でやっていくのかどうかという点でございます。 桝本委員御指摘のとおりEUの中では、EUの加盟国の間で条約を一本つくりまして、 それでこういう二国間の整理をしておるということでございます。これはEUの中では 全体で国境だとか税だとか、国の境を低くしておるという事情も背景にあるわけでござ いまして、EU以外の国、例えばアメリカですとかカナダですとか、そういう国がEU の国とこの種の協定を結ぶときには、やはり1つ1つ二国間協定という形でやっており ます。したがいまして、基本的には二国間で今後とも日本としては進めていこうではな いかというように考えております。  質問の第2点、派遣者に限られるのかどうかということでございます。この協定の考 え方は、基本的に本国に基盤を置いて、本国の企業から一時的に派遣される方、こうい う方はいずれ一定期間たったら戻ってくるのがはっきりしているので、お互いに親元の 年金制度だけに入るということを相互に認め合おうという考え方でございますので、今 御指摘のありました現地採用というケースにつきましては、それは現地の国の年金制度 にお入りいただくというのが基本的な考えと理解しております。 ○桝本委員  引き続き申しわけありません。既にかなりの期間、現地で働いていて、この要件を満 たしているけれども、こういう制度が発足する前からいた人たちについては遡及扱いは なしですね。 ○事務局  一時派遣の期間につきましては、資料1−1でお示ししましたように原則5年以内と いうことで考えていくことにしておるわけですけれど、既にこの協定発効以前から働い ておられた方につきましては、この協定におきましては経過措置として、協定発効の日 から5年間の起算をするという形で整理いたしております。 ○桝本委員  遡及はなしですね。 ○事務局  遡及はございません。 ○桝本委員  すいません、1個1個になって恐縮なんですが、派遣されている日本人の社員ともと の日本企業との間の、これは雇用契約ですから、中途での雇用契約の解約を含む雇用契 約そのものの変更ということがあり得るわけですよね。一般的に言えば、解雇権という のは経営権の一部というふうに主張されている。そのことは乱用されては困るけれども 原則で否定できるものでもないというふうに我々は理解しておるんですが、そういう現 地へ行ってからの中途での雇用関係の変更に伴って、後で帰国した場合に、帰国以後、 特に老齢年金の受給開始年齢以降に、実際の給付において不利を生ずることはないでし ょうか。 ○事務局  まず個別の雇用関係にこの協定がどういうふうに影響するかという点でございますが この協定は現在の雇用関係に基本的には影響しないというように考えておるわけでござ います。すなわち日本の企業から、今、協定がない現状におきましても、海外の支店な り現地法人に派遣されている方については、日本の親元の企業との間で成立した雇用関 係、これに着目して厚生年金を継続適用しておるわけでございます。したがいまして、 それは協定ができましてもそのような雇用関係に全く影響はないと考えております。  ただ、桝本委員の御指摘がございましたような、途中で雇用関係が切り替わってしま うとか、どこか別のドイツの企業に採用されてしまうというようなケースにつきまして は、それは先ほど申し上げましたような現地採用と同様、雇用契約が切り替わった段階 でこの協定の適用も変わってくる。すなわち先ほどのケースで言えば、ドイツの法令の 適用になるものと理解しております。 ○桝本委員  わかりました。 ○八木委員  ドイツとの関係はもう20年経過しておりまして、今回ようやく実現した点については 御努力を多としたいと思います。アメリカについて、ある時期かなり話が進んでいたよ うでございますので、特にアメリカの問題について、ドイツより対象も多いですから、 できるだけ早く急がれたいという点を御要望したいと思います。 ○京極会長  ほかにどなたか御意見ございませんでしょうか。皆様方の御感触としては結構な協定 だというふうな御感触かと思いますが、その方向で答申の取りまとめに入ってよろしゅ うございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○京極会長  それでは、私の方で答申案を用意させていただいておりますので、お手元に配付いた します。お手元に届きましたでしょうか。  それでは、事務局から朗読をお願いいたします。 ○事務局  それでは、答申書(案)を朗読いたします。                  「(案)                             年金審発第 4 号                                 平成10年3月6日 厚生大臣  小泉 純一郎 殿                           年 金 審 議 会                           会 長 京極 純一       日・独社会保障協定(仮称)の実施に伴う厚生年金保険制度       及び国民年金制度の特例措置について(答申)  平成10年3月6日厚生省発年第8号をもって諮問のあった標記については、年金制 度を国際化時代に対応させ、日独両国の国民の便益を実質的に増進するものであり、こ れを了承する。  なお、今後、英国、米国等との間についても、関係省庁との連携の下、協定の締結に 向けた取組みを鋭意進められたい。」  以上でございます。 ○京極会長  こういう案文でございますが、いかがでございましょうか。特に御異論がございませ んでしたら、この案文で答申を行いたいと存じますが、よろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○京極会長  それでは、答申の準備をいたします。  ただいまから答申を行うことといたします。本日は厚生大臣が所用のため欠席されて おりますので、年金局長に対してお渡しすることといたします。            (答申書を京極会長から年金局長へ) ○京極会長  ここで年金局長から一言御挨拶をお願いいたします。 ○年金局長  本日は、この日・独社会保障協定に基づきます厚生年金保険法等の特例措置につきま して御答申いただきましてありがとうございます。  先ほどお話にございましたように、ドイツとの年金通算協定の交渉は二十数年にわた りまして非常に難航したわけでございます。ドイツと日本の年金制度の基本的な考え方 が相当違うということもございまして、非常に難航したわけでございますけれども、外 務省あるいはドイツ当局等の御協力を得ましてようやくここまでこぎ着けたということ でございます。現在、協定の署名につきまして最終的な詰めを行っている段階でござい まして、署名が行われ次第、協定案、今回の年金の特例法案、こういったものを今国会 に提出をいたしまして、ぜひ、今国会で成立させていただきたいと、こういうことで努 力してまいりたいと思っております。  それから、また、先ほど来、お話が出ましたように、何といいましてもアメリカある いはイギリス、こういったところに在留邦人の方が非常に多いわけでございまして、こ ういった国ともできるだけ早く通算協定を結びたいということで引き続き努力していき たいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。 ○京極会長  どうもありがとうございました。それでは、日・独社会保障協定実施特例措置に関す る審議はこれで終わりでございます。総会を終了いたします。 ○会長  総会を終了いたしまして、ただいまから年金審議会全員懇談会を開催いたします。  次期年金制度改正に向けての審議に入りたいと存じます。本日は大体4時半前後まで まず総報酬制の導入につき審議をお願いします。次に昨年末にこの審議会で取りまとめ ました論点整理の項目のうち、制度改正に係る総括的事項、公的年金の基本的在り方に ついて審議をお願いしたいと存じます。  まず総報酬制の導入につき審議を行いたいと存じます。事務局から資料の説明をお願 いします。 ○A委員  会長、ちょっと恐れ入ります。ちょっとお願いがあるんですが、よろしゅうございま すか。議事の進行についてですが、もし、できれば時間を明示した上で、総括的事項あ るいは在り方の問題の方を先にやっていただければというふうに希望いたします。と申 しますのも、総報酬制の議論自身が全体の制度の枠組みによってかなり規定されてくる 面が当然のことながらあると思うからでございます。御配慮いただければありがたいと 思います。 ○会長  A委員のお考えもございますので、ただいま3時44分ですが、4時20分くらいまで、 制度改正に係る総括的事項の資料の説明と議論というふうに順序を変えたいと思います よろしゅうございますか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  それでは、順序を変えまして、まず制度改正に係る総括的事項の資料の説明をお願い します。 ○事務局  それでは、資料3を用いまして御説明をさせていただきたいと思います。資料3は、 2ページ組みのものでございますけれども、これは左の行が昨年12月におまとめいた だきました論点整理の関連部分でございまして、1の「制度改正に係る総括的事項」、 2の「公的年金の基本的在り方について」と2つでございます。そして、マルでそのと きの内容が書いてございます。それから、その次のところで、前回のこの審議会で御提 出申し上げましたけれども、いわゆる『年金白書』でそれぞれの項目につきまして、い ろいろと考え方や資料等を整理しておりますので、その該当部分をずっと拾っておるわ けでありますが、ここではちょっとそこのところをざっと御説明申し上げまして、むし ろ御審議の時間を長くいただいた方がよろしいと思いますので、余り長くならないよう に御説明いたしたいと思います。  まず1の総括的事項のところでありますけれども、まず1つ目のマルはこれについて の考え方でございます。  2つ目につきましては、白書で関係部分、ちょっとごらんいただければありがたいと 思いますが、65ページから72ページというところで、例えば年金のこれまでの歴史、現 在に至った経緯、そういったものを御説明して、そういった過去の役割なり、経緯を踏 まえた上で、また将来の若い世代を含めて国民に幅広く御理解いただきたい、こういう ふうなことで記述をしておるわけであります。  3つ目のマルのところでありますけれども、これは少子高齢化の進展、経済の低成長 女性の社会進出、こういった問題について、年金がどう対応していくかということであ りますけれども、年金に少子高齢化がどんな影響を及ぼしているか。これは白書の該当 部分であれば、第2部第1章、122ページから132ページのところで、年金に対してどう いう影響があるか。あるいは将来の保険料に対してどうはね返る。あるいは労働力人口 をどう見て、年金に対する位置づけをどう考えるか。それから、国民負担率の関係も書 いておりまして、将来50%になる、そういったことについて年金という視点から見てど う考えるか。特にその最後のところでは、財政構造改革という政府全体の動きについて も紹介したところでございます。 それから、4つ目のマルのところでは、こういった経済や個人の人生設計が多様化し ている、あるいは家族や就業の形態変化、男女共同参画社会をめざした取り組み、こう いった変化について、年金制度の見直しを行っていくということでありますが、これに つきましては、白書の関係部分につきまして、133ページから138ページで、今の高齢者 の方々の収入、貯蓄あるいは消費、経済を含めた意識について、白書で資料、統計等を 御説明申し上げているところであります。  また、2つ目の、男女共同参画社会をめざした取組みという関係で、第3号被保険者 遺族、世帯の関係、これにつきましても、白書の関係ページを229ページから238ページ に挙げておるところでありますが、これは後ほどスケジュールでまた御説明申し上げる ことになると思いますが、近々これについて、もうちょっと具体的に資料等を増強して 御説明なり提案する機会があると思いますので、ここでは余り説明申し上げません。  それから、次のページに参りますけれども、あとは世代間で年金の給付と負担の不均 衡をどう考えていくかということについても重要な論点でありまして、将来の世代の負 担を過重なものにしないということが1つの重要なポイントであります。これにつきま しては、白書の143ページから145ページで、これは当審議会にもお示しして御説明した 資料等もあるわけでありますが、本来、年金というものが世代と世代の支え合いという 社会的な制度でありまして、単純な損得論というものにはなじまないわけでありますけ れども、実際に経済的にはどういう分析になるか、もっと私的な扶養とか、あるいは親 から子に対する養育、相続とか、もっと幅広く見てどう考えていくかということについ ても総合的な視野で検討するべきであるということを説明しておるところでございます それから、次の他の社会保障制度等との連携をどう考えるか。 それから、次のマル、公的年金と企業年金を含めた私的年金との関係、こういった重 要なポイントもございます。これにつきまして、企業年金の役割等につきましては、250 ページから251ページで簡単に説明しておるところでございます。  それから、2の「公的年金の基本的在り方について」というポイントでございますが これにつきまして、まず1つ目のところで、公的年金の役割、機能ということにつきま して、特に1階、2階とそれぞれに考えるわけでありますけれども、ここにつきまして は、白書の該当部分ということで12ページから15ページあるいは140ページから141ペー ジで挙げておりますけれども、世代間で扶養していこうという現在の年金制度の考え方 を述べたり、あるいは私的年金と公的年金はどう違うか。その考え方、機能、そういっ たものについて関係ページで御説明をしているところでございます。  次は、いわゆる公的年金の民営化あるいは廃止論。 次は世代間の給付と負担の均衡。 それから、最後のマル、財政方式、賦課方式か積立方式か、こういったことにつきま しても、あわせて御説明を申し上げますが、これにつきましても、特に民営化あるいは 廃止といったことを考える場合には、そのプロセスとして、積立方式に移行するという ことが不可避的に生じるわけでありますが、まず積立方式についてどう考えるか、こう いった議論が避けられないわけであります。それについて、二重の負担の問題等々白書 でも論じておるところでございますが、例えば大阪での年金審議会で八田教授からも1 つの考え方が示されたわけでありますけれども、結局、民営化に移行するという考え方 の立場に立ちましても、そのためにはまず過去債務を小さくすることが大きな前提にな っている。また、それに移行するとしても、将来世代とともに過去債務を長期間にかけ て分散して負担していくという仕組みが不可避になる。仮にそういう方法をとれば、例 えば八田教授の考え方では、GNPの1%、5兆円ぐらいのものを150年ぐらいかけて埋 めて、そういった移行ができるという考え方も示されておるところでありますが、こう いうことを考えまして、一挙に民営化するというシナリオは今のところ、まだどこから も示されていないのではないかということで、そういったことについても御審議を賜り たいと思います。 以上、簡単でございますけれども、説明にかえさせていただきます。 ○会長 ありがとうございました。ただいま御説明のありました事柄につきまして、御意見な どございましたら、どなたからでも御自由に御発言いただきたいと存じます。 ○A委員  3つだけちょっと申し上げておきたいと思います。まず、2ページの方の基本的在り 方の問題について、積立方式をどう考えるかというふうに、今、事務局から御提起があ ったわけですが、これにつきましては、昨年のかなり早い時期の議論で、私の記憶で恐 縮でございますが、多分、C委員の方から、一体積立方式への転換なるものは、議論は されているけど、本当にできるのかどうか。できないのであれば、議論してもせんない ことではないかという御提起があり、それに対して、事務局からは、現実には大変困難 だろうという御答弁があったというふうに記憶をしておりますので、そこの経緯の再確 認をもしされれば、改めてどっちがどっちという議論に時間を費やさなくても済むので はないだろうかというふうに感じます。  なお、民営化に触れて、いずれにしろ一挙の民営化という説はどこにもないというお 話でございましたけれども、八田教授の御提起が150年かかっての移行ということにもか かわらず、保険料水準そのものがかなり一挙に高い水準に引き上げるという内容であっ たことも、現状を考える場合には大変困難なテーマではないのかという感想を個人的に は持っております。それが第1点です。  同じく2ページの上の方で、真ん中のところに「他の社会保障制度等関連施策との連 携」という項目がここで挙げられておりますが、これはいろんな意味があると思います が、年金制度を年金制度としてだけ議論することは、できる範囲とできない範囲があっ て、その意味で先年社会保障関係の審議会の会長会議で今後の社会保障制度全体につい ての在り方について協議がなされたところでもありますが、その後、その議論について 厚生省ではどのような検討がされているのか。将来の社会保障についての包括的な問題 が提起され、その中での公的年金の在り方という議論をきちんとしておくべきではない か、そのように思うのです。 それがないまま関連制度との連携というと、制度間調整という、これまた非常に寂しい 話へ落っこっていってしまいかねない。そのことを懸念いたします。  それから、順序が逆ですいません。1ページの一番下のところ、第3号被保険者問題 というのが提起をされてございます。ここの検討項目については、後ほどお話があると 思いますが、順序といたしましても、恐らく女性と年金という議論のテーマの中にこれ は入ることになると思うんですが、実は現在の第3号被保険者というのは言うまでもな く基礎年金のところでございまして、白書で言えば、何ページでしたか、60年改正にお ける図がございましたが、もともとは現状で言う第1号の、つまり旧国民年金の任意加 入だった部分を制度上変更したということです。これは旧国民年金と被用者年金とのい わば統合という中で起こったことですので、特に現状の公的年金の大きな問題は基礎年 金の方にむしろ深刻な問題があるのではないか、そういうふうに私どもは認識をしてお りますので、できれば、基礎年金制度全体の議論の中で、3号については位置づけるよ うな議論をしていただけたらありがたい、そのように考えております。以上です。 ○会長  何かありますか。 ○事務局  社会保障関係の会長会議、その後、特段の動きはございません。 ○B委員  今のA委員の御意見ですが、確かに最初の方の積立方式の問題の議論というのは、現 実的な移行のプロセスということを考えると決してこのようなことが考えられないわけ でないと思うんですけれども、私は審議会の意味といいますか、あるいは社会的な役割 というか、そういうことを考えた場合には、特に専門的な年金の研究者の間で非常に積 立方式への切替え論というのは強いわけですね。将来的に人口成長率がマイナスになる というのはほぼ確実な見通しを前提として考えた場合に、理論的には非常にすっきりし た1つの意見であるわけです。  どうしてそれにしないのかということに対する審議会としての答えをやはりパブリッ クにするという意味では、大阪の八田先生の御意見は、私も非常に勉強になったし、そ れはそれでよかったと思いますけれども、東京にもいろんな先生がいらっしゃるわけで A委員の御意見に必ずしも反対ではないけれども、もうちょっとパブリックにそういう 議論をきちんとしないと、最終的な答申の説得力といいますか、そういうものを損なう おそれがあるのではないかと思うので、我々自身も、理屈の問題と現実的な実現可能性 の問題で悩んでいるわけなので、もうちょっと議論をした方がいいのではないかと私は 思います。  それと女性の問題、3号被保険者の問題は、そういう御指摘の点もあると思うんだけ れども、遺族年金の問題とか、年金保険の分割の問題とかも絡んでいますから、御指摘 のような議論の仕方をすることに別に反対ではありませんけれども、私は提案されたス ケジュールで一応やることが必要ではないかというふうに思います。 ○C委員  A委員に言及しておきますが、私としてはB委員と同じように、民営化問題といいま すか、特に「5つの選択肢」のE案につきまして、積立方式にかかわる議論を一度徹底 的にやっていただければありがたいと思います。事務局のお話、あるいは年金白書を見 ましても、現段階ではかなり踏み込んだところまで御提示いただいていると思いますか ら、もう一つ踏み込んでいただければ大変ありがたいと思います。  私は個人的には、例えば選択肢につきましては、A、B、C、Dについて、よくDま で選択肢で御提示いただいたなと。事業主として負担する側からすれば、少なくとも負 担に関して言いますと、負担については今以上広がるのは私としては反対でありますが そういう意味ではよくDまで出していただいたと。これはどういう負担になるかよく御 議論いただければいいんですが、Eは構造的な問題でありますから、そういう意味では 世間一般でEの議論がある中で選択肢としてよく出してあります。ただ、文言そのもの は、何となく誤解を生むといいますか、Eでいきますと、もらいが少なくなっちゃうよ うな、そういうふうに受けとる表現になっているのと、プロセスが、ただいま事務局で 御説明があったように、民営化をする前に、あるいは廃止という前に積立方式に移れる かどうかということをきちんと議論した上でないと本当はEの評価ができないだろう。 その辺がおわかりになって、白書についてはかなり詳しく書いているので、もう一歩踏 み込んでいただければと思います。  それで否定の証明というのは非常に難しいんだろうと思いますが、少なくとも理論的 にはあり得ても、現実的なこういう点で難しいということを明確に出していただければ 非常にありがたい、こう思います。 ○D委員  A委員の第3点についてなんですけれども、そういうお考えもあろうかと思いますけ れども、私もスケジュールどおり、給付と負担という大きな項目の中で3号の被保険者 の問題を取り上げた方がいいのではないかというふうに思うわけです。と申しますのは 3号被保険者には全く就労していない収入がゼロの方とパートタイマーで就労している 人といるわけですね。ですから税制の所得控除あるいは社会保険の被扶養者認定基準と いう関連で3号というところに位置づけられているんですけれども、そこをどういうふ うに位置づけるかということいかんによっては、例えば被用者年金の被保険者になるわ けですね、今3号に入っている人も。そうしますと、その場合は基礎年金の保険料とい うのではなくて、例えば、それは労使折半で従来の被用者年金の被保険者と同じような 位置づけにするのか、あるいは家族保険料というような、そういう保険料の扱いにする のかというような問題も出てきますので、特に基礎年金に限定して議論をするというの ではなくて、こちらの厚生省で出されておりますスケジュール表のような形で取り上げ ていくのが望ましいのではないかというふうに思います。 ○E委員  賦課方式か積立方式かということについて、A委員とC委員から御意見があったと思 うんですけれども、財政方式について、完全賦課方式と完全積立方式、これをイメージ して議論いたしますと、私はA委員のおっしゃることは非常にごもっともだと思うんで すが、ただ、最近議論になっておりますのは、むしろ部分積立という考え方だろうと思 うんですね。 賦課方式の基本構造を維持しながら、その中でどう積立の要素を強化していくか。例え ばスウェーデンが行った年金制度の改正は、私はそういう方向だと思いますし、それか ら、アメリカの昨年の諮問委員会の答申が3つの案に分かれましたのも、やはりそうい う点をめぐる意見の対立というものがあったわけで、恐らくこれはただいま委員が一番 よく御存じの話ですが、イギリスの労働党内閣が今いろいろやっておりますが、それも そういった方向での改革ではないかと思うわけでして、私は年金白書はよくできている と思うんですが、そういった最近の新しい年金改革についての各国の動向が余り紹介さ れてない。  例えばイギリスの動向なんかは、昨年の春の保守党内閣が残していった基礎年金部分 まで含めた民営化ということしか触れてなくて、最近の労働党内閣が考えておられるス テーク・ホルダー・ペンションですか、これは日本語では、まだだれも訳しておりませ んので、英語のままで言わせていただきますが、そういった動きは全然触れておられな い。やはりこういった問題はもう少し掘り下げて議論してはどうかと、こういうふうに 思います。 ○F委員  賦課方式と積立方式ということに関しまして、今、E委員がおっしゃったとおりだと 思います。完全な賦課方式と完全な積立方式と2つを比較してどちらかということを議 論するのはそれ自体非常にナンセンスに近いことだというふうに考えております。現に 現在の厚生年金保険も決して完全な賦課方式になっているわけではなくて、やはり5年 分とか6年分の積立金を持っておる。また、一部取り崩しがあるにしても、将来的には 恐らく完全な賦課方式になる格好ではないというふうに思っておりますし、完全な積立 方式というのは、もし何か定義するといたしますと、いわゆる平準保険料よりも上回る 水準の積立をなしていくのが完全積立と考えております。これは一般の企業年金は全部 そういう形になっております。平準的な掛金よりは必ず高い。低くてもイコールである という形で掛金を積んでいくというのが一般の企業年金でございますし、それが我々が 考えております完全積立になるわけです。  したがいまして、この完全な賦課方式と完全な積立方式のいずれかを選ぶということ は、実際問題として全く相入れないものを2つ並べて、その専一を図るという、全くあ り得ない話だろうと思うんです。前々から申し上げておりますように、段階保険料の カーブをもう少し手前に持ってくるということで、少しでも世代間の負担の公平化を図 ることは考えられるのではないかということは、私も発言したつもりでおりますが、そ ういう形をとることによって、今、E委員がおっしゃった部分的な積立がそれをもって 図ることができるということになるのではないかということになります。したがいまし て、本件につきまして、どういうふうに考えるべきなのかということは検討を加えてい く必要はあるような気がいたします。 ○G委員  財政方式については、基本的に私はE委員と同じ意見なんですけれども、ただ、財政 方式を単純比較しても仕方がないわけでありまして、例えば今の現状からどういうふう に変えていくかという議論をしますと、従来からいろいろな方がおっしゃっているよう にもうちょっと保険料の引上げスピードを早めたらどうかという意見があるんですが、 これはまた経済全体の影響を考える必要があるわけですね。当然事業主にとっては経営 に直結する問題ですし、個々の保険料を納付している現役のサラリーマンにとっては、 手取り所得がもしかしたら減っちゃうかもしれないという問題があるわけでして、年金 制度だけで議論することが必ずしも適切でないわけですね。  現にヨーロッパの主要国等を見ておりますと、部分積立はしたいんだけれども、なか なかできないという国が少なくないわけです。積立の制度も公的年金という器の中で積 み立てていくのか、あるいは積立はもう公的年金の外の私的年金のところでやるのかと かいろいろ選択肢はあるわけでして、ただ、単に積立か賦課かという議論を単純にする のは適切でないので、今ある厚生年金を前提にして、積立の要素を強めるとしたら、そ れこそおっしゃるように保険料の引上げスピードをあげなければいけないんですけれど も、それが年金と関係する日本経済全体とか、そういうところとの整合性、政策目的と 本当に合致しているのかということを改めて議論する必要がある。それはやっぱり年金 審議会としてやらなければいけないことではないかというふうに私は思っています。  それから別の件でちょっと確認をしたいのですが、財政構造改革に関しては既に法律 が制定されまして、年金あるいは社会保障関係のところも踏み込んだ形でいろいろな記 述があるわけです。年金審議会は財政改革法案には何ら関与しなかったと私は理解をし ているのですが、今いろいろ景気が悪くて財政構造改革をどうするんだと、あの法案ど おりでいいのかというのが議論になっているようなんですけれども、年金審議会として は、この財政改革法との関連はどう考えたらいいかということなんです。あれに関係な く年金審議会は年金審議会独自で議論していいのか、あれは縛りとして絶対動かすこと のできないものであるのか。  財政改革法は私が読んだ限りで言いますと、社会保障への国庫負担を切り詰めていく 方向をはっきり明示しておりまして、これは今、例えば年金について言えば、国庫負担 を今の予定よりは下げていく方向を議論しなさいというふうに書いてあるわけですね。 それを前提としてやるのかどうかというのは大問題と思うんです。年金審議会として、 財政改革法との関連はどう考えたらいいかということについての確認を一回しておかな いと、どっちに議論が行くのかということは、そこを無視する人と、いや、あれは絶対 の縛りだという人では最初から意見が違っちゃって、議論が収れんしないのではないか と思うんです。その辺はどう考えたらいいかということを確認していただきたいです。 ○事務局  G委員がいらっしゃらないお留守の間に実はこの議論が年金審でも随分ございまして そのとき申し上げたのを思い出しますと、1つは財政構造改革法というのはいろんな検 討課題は書いてありますけれども、具体的にこうしなさいということは書いてないとい うことですね。我々はあくまでこれは検討課題として受けとめればいいのではないかと いうことが1つあるのではないか。それから、政府としては、これは法案を出したわけ ですから、厚生省としては法案を出して成立したわけですから、これに縛られるという のは当然でございますけれども、年金審はこれは政府でない別の存在ですから、それは 法律に縛られて、そのとおり、そういう方向で議論するとか、それを所与のものとして 受けとめる必要はないのではないか。  それから、もう一つ、特に国庫負担の問題につきましては、あるいは基礎年金の税方 式というような御意見があるわけですけれども、こういった問題につきましては、政府 として、今非常に財政が厳しいということで、この引上げ問題は財政構造改革の目標達 成後に、改めて検討するんだということで、そういう閣議決定をしたと、こういうこと でございますから、それに縛られるのは政府としては当然なんですけれども、私どもと しては、この年金審におきまして、もっと中長期的観点といいますか、将来の課題とし て、こういった税方式の問題なり国庫負担の引上げの問題なりは御議論をお願いします ということでお願いをしたと。そういったことをこの場で申し上げてきたかと思います ○H委員  私はさっきの積立方式か賦課方式かの話ですが、私の考えでは、結論的にはミックス がいいというわけですけれども、賦課方式というのは非常におもしろい意味を持ってお りまして、高齢世代を若い現役世代が支えると、こういう格好になっているんですね。 したがって、そのような仕組みを維持しながら年金制度は保たれていく方がはるかに情 緒的に受け入れやすい。つまり積立方式に変わったら、勝手に自分のことは自分でとこ ういうようになります。  今、問題は、これからひょっとしたら年金の給付額を下げていかなければならないと いうふうなことになるときに、なぜそうなるのかというときに、子供たちの負担が重く なるじゃないかというふうな議論にはね返ってくることです。そういうふうな仕組みに しておいて、年金制度の改革をやっていくというために、部分的に賦課方式、半分積立 方式というものをミックスしていくというのが一番賢明な方法ではないかと思います。 だから、どっちかに切り替えろという意見に先ほどからも余り賛成が得られなかったこ ともありますし、私は積極的にミックスの方がいいということを申し上げたいわけです ○I委員  今、委員の方々がおっしゃっているとおりだろうと思うんですが、1つ、ある程度理 論整理が要るだろうと思っているのは、世間一般から、かつては年金の一番最大の課題 は物価であったと言われましたが、今は少子高齢化、人口構成の変化、これが最大の課 題であると考えるべきだという意見が経済学者を含めてあるわけですね。そういうこと と賦課方式なり積立方式というものをどういうふうに、少なくとも理論的にどういう形 でリンクさせながら、我々はこの新しい年金制度を考えたんですよという説明がどうし ても1つ要るんだというふうに思いますから、そこの整理はだれの口からも、意見は違 ってもいいんですが、少なくともどこの外部の学者に対しても対抗できる理論整理を私 はしておく必要があると思います。  それから、もう一つは、実践論として、G委員がおっしゃったような、現行からの移 行という場合に、現実にどういうことになるのか、その2点が非常に大事なことではな いかというふうに申し上げておきたいと思います。 ○A委員  2つだけ。1つはG委員御指摘の財政構造改革法の問題の議論は、私の記憶では極め て不十分であり、特に現状最近になってから起こっている議論はかなり状況が変わって いるというふうに思いますので、御指摘の点については、改めてここで取り上げるのに 十分値するテーマではないかというふうに思います。  2つ目、積立金の問題につきましては、これは我が国の政策目的と申しますか、経済 構造からして資本蓄積が必要な構造かどうかといえば、それはかなり違うので、そうい う中で、あれだけの膨大な積立金が本当に必要なのか。そして、それを持つために前倒 しで保険料を引き上げる。そのために労使の負担を前倒しで引き上げることが果たして 妥当なのか、これについて、私ども非常に強い疑念を持っておるということを申し上げ たいと思います。 ○会長  先ほど申し上げましたように、4時20分というところで、制度改正に係る総括的事項 の御議論を一応終わりにして、総報酬制の問題について御議論をお願いしたいと存じま すが、よろしゅうございましょうか。                (「はい」と声あり) ○会長  それでは、そちらの方の資料説明をお願いします。 ○事務局  それでは、資料2に基づきまして、総報酬制の導入に伴う負担と給付の在り方がどう 変化するかということを御説明申し上げたいと思います。総報酬制につきましては、当 審議会にも二度ほど資料をお出しいたしまして、また白書でも記述しておりますが、た だ抽象的に書いておりまして、具体的にどういう数字を当てはめてどういう給付設計を するかということがまだお示しできておりませんでした。そういうことで、これまで今 回の総報酬制については、財政中立だと、いわば増収対策ではないということは口頭で は申し上げておったのですが、以下のような方法でやってみた場合にいかがかというこ とを今日お示ししてみたいと思います。  まず1枚目の説明になりますが、「総報酬制導入の必要性」ということで、これは負 担の不公平の是正を考えている。現在の社会の給与の平均値で見ますと、月給が高い方 ほどボーナスの支給割合が平均で高い。また月給の低い方は平均的にボーナスの割合が 低い。そういう中でボーナスに現在保険料が1%しかかかっていないという状況であれ ば、負担能力の高いグループがむしろ負担が軽くなっている、相対的にはそういう傾向 にある。  ちょっと図表でも示しておりますが、ボーナスの支給割合が月給の何倍かという幾つ かの区分に応じて、年収から保険料がどれぐらい徴収されているかという割合を見ます と、例えばボーナスの一番低い、2.4カ月というような方があった場合には、年収の14.6 %が保険料として徴収されているわけでありますが、4.8カ月の方であれば、年収に対し ては保険料は12.7%ということになっているわけでございます。例えば同じ年収1,000万 という方を考えました場合に、月給800万、ボーナス200万という方と、月給500万、ボー ナス500万という方であれば、これは実際の徴収が全く違う額になっておるわけでござい ます。  2つ目の点は、以下に計算方式をつくりましたやり方は、増収対策ではございません ということをちょっと書いておりまして、次の2は、こういう総報酬制導入の必要性と して、ボーナス支給が定着してきていること。それから、給与の支払形態が例えば年俸 制などに見られますように、非常に変化、多様化しておりまして、そういった中でボー ナスに幾らシフトするかということで年金の負担や給付が変わることはできるだけない ような制度設計ができないかということを考えているわけであります。  まず負担についてどのように考えているか御説明を申し上げますが、これは資料の4 ページをごらんいただきたいと思います。上の四角に書いておりますけれども、保険料 率の決め方は13.58%で、現在17.35%のものをこのように下げるというふうに書いてお るわけであります。これは下のところに書いていますが、保険料収入総額を変えないも のとして仮定いたしました。要するにボーナスにまで、賦課ベースを広げて、同じ保険 料率を掛けておれば、これは1.3倍ぐらいの大増収になるわけでありますが、そこはそう しないで、保険料率は全体に下げるということで、収入の額は増やしません。そういう 前提で計算いたしました結果、各標準報酬の方々の負担はどう変化するかというものを 見てみたものがこの図でございまして、例えば、今9.2万円という標準報酬で見て一番低 い方の負担であれば、現状のボーナス支給等の実態もあわせて見ますと1.6万円ぐらい保 険料をお払いいただいておる。これがこの方法を導入いたしますと、保険料率が下がり まして、また、この方は平均的にボーナスが少ないわけでありますから、ボーナスに対 する保険料は余りないということで、トータルでは1.3万、約3,000円ぐらい保険料が下 がる計算になる。 一方で、真ん中辺の、例えば34万をごらんいただきますと、これは平均的にこのクラ スの方は、ボーナスの支給割合もほぼ平均的な値になっておるというのが実態のようで ございまして、そうなるとボーナスが平均的に出ている方でありますから負担は変わら ない。 そして、一番右端の59万円という上限の方をちょっと調べてみますと、この方々は ボーナスの支給割合が平均よりはかなり高いようでございまして、そういう意味で保険 料率が下がりましてもボーナスに対する負担がかかりますので、今、10万5,000円程度の 御負担のものが5,000円ぐらいアップして11万円ぐらいになる。これが保険料の変化でご ざいます。 総額を変えないとすれば、こういう変化になるということでございます。 次に給付をどう考えるかでありますが、これも先ほど保険料総額を変えないという前 提でありますから、同じように給付総額は変えないということで制度設計をしたもので ございます。これは資料につきましては、先ほどのページから2枚飛んでいただきまし て、6ページをごらんいただきたいと思います。これも考え方として、ボーナスについ て、例えば今の給付の方法を変えなければ、1.3倍のものに賦課しますから、年金額は平 均で23万のものが3割アップすることになりますが、これはそういうことのないように しようということで、総額は変えないことにする。ということになりますと、これは給 付の乗率を変化させることになりまして、下の方の四角で小さい字で書いておりますが 今、給付乗率は1000分の7.5という数字で一律掛けておるわけでありますが、これを一律 ボーナスにも月給にも同じ乗率で給付させていただくならば、1000分の5.8になるわけで あります。 これに基づいて、今度受給されておる方のモデルではなくて、実態に合わせてどうい う変化が起きるかということを見てみたわけでありますが、例えば一番左端の方、生涯 の平均が9.2万円の標準報酬の方であれば、現在は平均で7万円の年金額が出ておるとこ ろでありますけれども、平均的にこの方々はボーナスの支給割合が低いわけであります 保険料も先ほど下がったわけでありますが、支給額が約1,000円ほどダウンしておるとい うことでございます。 一方、高い方を見たわけでありますが、59万という方が右端にありますが、実際には 生涯59万という平均値をお持ちの方というのは、折れ線グラフの分布があるようにほと んどゼロに近いわけでありますので、ここで議論するのは、生涯非常に収入が高かった 方の実態として、44万のところを見たわけであります。こういう方であった場合には、 これは平均加入期間でとっているわけでありますが、自分の基礎年金プラス報酬比例の 年金で18万の年金を現在受けとっておられますが、ボーナスについても乗率を掛けてい ただくことになりますと、5,000円ほど増えて18万5,000円になるというのが変化でござ います。 ちょっとこの表は後で説明するところを残しておりますが、先に参りまして、こうい った変化をもうちょっとわかりやすく見たのが8ページの図表3でございます。図表3 では、標準報酬の額によってどう変化するか、3つのケースで、24万の月額の方、34万 の方、44万の方、3つの方に対しまして、現在平均的にどれぐらいのボーナスが出てい るかというものを調べて、それぞれ今回の方式を当てはめると、どう負担と給付が変化 するかということを計算して、下の棒グラフにしてみたわけであります。左側の方が負 担の変化、保険料の変化でありますけれども、これも予想されたとおりでありますけれ ども、ボーナスの比較的少ないグループである24万円の方々は約2%負担が軽減。真ん 中の方が−1%、右の44万の方は負担が3%アップであります。  そして、給付はどうはね返るかといいますと、24万円の方は1%給付減となり、負担 が2%減ったけれども、給付は1%減にとどまる。真ん中の方、34万の方が1%負担が 減で、給付は変わらない。それから44万の方は、左で見るように、負担が3%アップ、 給付は2%アップということであります。したがいまして、現在の年金制度自身が、こ の表でごらんいただきますように、御夫婦のこのモデルであれば、13万円という1階部 分がかなりの厚みがあるので、報酬比例で変化するところの割合が小さいものですから 給付に対するはね返りというのは、負担の変化ほど大きくないということでございます  今度は次の9ページをごらんいただきますと、企業の規模別でどういう変化があるか ということを見てみたものでございます。企業規模ごとにそれぞれきまって支給されて いる現金給与額、また賞与の割合とを割りつけまして、今のやり方で計算したらどうい う変化があるかということで同じようにやってみたわけでありますが、10人から99人規 模というような企業のケースであれば、左の端下でありますけれども、負担は 6.3%下 がる。そして、右の表に行きまして、給付は 2.7%の減ということでございます。真ん 中のグループは、負担が0.2%上がり、給付が1.1%増える。そして、大企業を中心に給 与が高い、ボーナス比率も高いというのが平均値でありますが、負担が6.2%上がり、給 付は6.2%ほどははね返らず5.3%の上がりというのが計算した姿でございます。 これが今の保険料率、給付の乗率を当てはめてつくってみた総報酬制の姿であります が、これにつきましては、もう一点、実は重要な補足がございまして、これはこれまで の資料や白書でもこういう総報酬を導入した場合に、年収のばらつきの結果、支給額も ばらつきが広がるということで、例えば格差が広がった場合に低い方々の給付を持ち上 げる、あるいは上の方を押さえるというような調整をして、その乖離を減らすというこ とも方法としてはあるということを書いておったわけでありますが、これをやったらど うなるかということも1つの例で計算をいたしました。 それは6ページを再度お開きいただきたいと思います。だんだん話が細かくなって恐縮 でありますが、ここでやってみたやり方は、一番左端の、例えばさっき9万2,000円の平 均標準報酬であった方は1,000円ほど給付が下がるというふうに申しましたが、この方を 下げないというふうにここを持ち上げることを考えまして、それ以上の方にまた同じ乗 率を適用して、ここに1点、ベンドポイント、乗率の変化の点をおきまして計算をし直 してみたらどうなるかということであります。そして、数字も書いておりますが、9万 2,000円のところまでは、実際に乗率を今の1000分の7.5に対して6.97という数字を使う そして9万2,000円以上の部分については乗率をぐっと下げて、1000分の5.41を使う。 こういうふうに計算いたしますと、給付総額は現在と変わらないというふうになるわけ でいわば下が持ち上がって、上の方が若干押さえられた形になるわけでありますが、そ の結果を見ますと、先ほどの左端の部分、9万2,000円のところは給付は7万円は7万円 である。しかし、一方で、その結果、全体の上を押さえたことになるわけでありますか らさっきの44万円の方のケースを見ますと、給付は18.5万円になるはずのところが、そ れほど伸びなくて18.2万円でとどまる。給付はそれほど伸びないということで、格差は そんなに広がらない結果になるわけであります。 こういったやり方に基づきまして、先ほどの8ページの図表3、図表4につきましても 同じように計算してみて、それぞれこういう方法を入れるとどういうはね返りがあるか ということを見ました。例えば9ページにつきまして、給付額のはね返りをごらんいた だきます。 左端の10人〜99人という方は、2.7%給付が減るところが2.6%の減、若干の改善がある 一方、1,000人以上規模の場合には、こういう逓減乗率といいますか、段階をつけるやり 方を使いますと、5.3%伸びるところが4.1%の伸びに止まると、こういった効果はある わけでございます。 これを全体を案として考えましたときに、先ほどのように、例えば賃金の低い層でも保 険料が下がる割合の方が給付が落ちる割合よりも大分大きいというのが実態でございま す。今の年金制度は1階部分がそれなりの厚みがあって、2階部分が小さいということ で給付はばらつきが非常に小さいことに既になっておるということであります。 したがいまして、ここで3ページをちょっとごらんいただきますと、ずっと今私が御説 明申し上げましたことを文章で書いたわけでありますけれども、3ページの参考のマル 1個目が今のベンドポイント(逓減給付乗率)を導入する場合の変化ということで、2 つめのマルでありますが、一律の給付乗率と逓減給付乗率の比較・評価を我々なりにし てみたわけでありますが、今、申し上げましたような理由から、これは一律の給付乗率 で差し支えないのではないかということを考えたところでございます。したがいまして 計算はベンドポイントということで下を持ち上げるようなやり方もしてみたわけであり ますけれども、事務局の考え方としては、それをあえてとる必要はないのではないかと いうことを考えております。 その他、上下限の設定につきましては、この3ページの下の四角に書いておりますが、 これは今回の制度改正に合わせて、単に上下限を上げたり下げたりするのと違う要素が 混入いたしますので、できるだけ現状に中立的に定めておこうというふうに考えており まして、この決め方は、59万の方であれば、今59万の方々がどれぐらいのボーナスをも らっておられるかという平均値を探してまいりまして、そこのところが上限だというこ とで、年収で見ますと990万のところを上限にして考えております。ですから余り意図的 に今回上下限のところはいじっておりません。約990万弱になると思いますが、そのあた りを上限にして、その内側であれば、ボーナス0で月給990万の方も、あるいは半々の方 も同じ保険料率で同じ給付になるような考え方をとることができないかということであ ります。 ただし、その次、3ページの下にもうちょっと書いておりますが、実際に制度を施行 いたすことになりますと、実務上いろんな制約なり考え方が出てまいりますので、今言 ったモデル的な形を実務にどう落としていくか。例えば月々のとり方であるとか、いろ んなことについては、今後まだ検討を続けたいと思いますので、そこは今回の資料では 含んでおらないところでございます。 以上、事務局で考えてみました総報酬制の給付と負担の変化ということについて御説明 を申し上げました。 ○会長  ありがとうございました。ただいま御説明のありました事項につきまして、御意見が ございましたら、どなたからでも御自由に御発言お願いします。 ○J委員  質問させてもらってもいいですか。もう既に当たり前のことなのかもしれませんがお 聞きしたいんですけれど、前提として、月給が高ければ、ボーナスの支給割合も高いの が現状だということで整理されておりまして、8ページにも統計値が出されております ので、こういうことなのかなというふうに思いますが、産業によって、また会社によっ ては、月給は低いけれども、ボーナスが高いからみたいなことが以前は相当あったのか というふうに思いますが、最近はこういうことで、8ページの統計値の数字で前提をお いていいんですか。 ○事務局  その根拠につきましては、今、説明を省略しましたが、社会保険では完全なデータが ないんですけれども、幾つかの統計を組み合わせまして、実態としてこれは標準報酬月 額ごとにどれぐらいのボーナス支給割合かというものを計算いたしまして、それが10 ページに簡単に折れ線グラフで書いていますが、こういう実態にあるということで、こ の平均の姿を用いて計算いたしました。今おっしゃいましたように、例外的に非常に月 給が高いけど、ボーナスが少ないとか、逆のケースはありますので、そういう個別な ケースの方を当てはめますと、これは平均値どおりにもちろんならない。ですから逆の はね返りになるということはあるわけでございます。 ○D委員  今、御説明にありました図1と図2で、棒線の分布ですけれども、最低と最高のとこ ろは表示されているんですけれども、真ん中あたりで、現行と変化のそれぞれの額が表 示されている。これは平均値のところですか、中位数ですか、分布として見た場合には ○事務局  まず図の1の方は、標準報酬が平均的な34万円の人について負担を計算してみた姿は 6.0万円で変化がないという方でございます。 それから、図の2の方は、総報酬制の導入による年金月額の変化ですが、ここに書いて おりますのは、さっき言いましたように、実態的に非常に多いところでどうなるかを見 たということで、これはモデルではないものですから、一番多いところをちょっと参考 までに表示してみたということです。例えば、標準報酬59万の方については、表示して みても、実際はほとんどおられませんので、あえてそういうところは書いておらないわ けでございます。 ただ、表2のバックデータには全部のケースについて、各階層ごとに出入りを示してお りますので、そこをごらんいただければ、おわかりになるかと思います。 ○K委員  質問なんですけれど、これをモデルで計算なさるのはすごく大変なんだと思うんです けれども、9ページの年金額の変化がありますが、2の(2)の「40年加入・制度成熟時・ 専業主婦世帯モデル」なんですけど、特に女の人の場合、10人〜99人のような小さいと ころで働いている人がすごく多いということがありますね。女性の占める割合が多いと いうことですね。 それから、平均標準報酬月額が9万円というような、そういう世帯を考えたときに、そ ういう家庭が片働き世帯であるというのはちょっと考えらないと思うんですね。両方働 いていると思うんですよ。そういう現実とこのモデルでの計算との整合性というのが、 実態としてよくわからないので、もうちょっとわかるように説明していただきたい。 ○事務局  これはいろんなケースごとに表をつくっていまして、話を混乱させて申しわけなかっ たんですが、例えば平均9万の方はどうなのかというふうに見るのであれば、最初の6 ページの図の2でごらんいただきまして、確かに生涯9万2,000円であったという方の場 合はどうだったかというのは、恐らく普通のフルタイムのサラリーマンが一生過ごした 例ではないだろうというふうに思われます。ですから、これはあくまで出た結果で見た ものでございます。 それから、例えば9ページであれば、それをあえて企業別につくりかえたわけですが、 実は委員からも御教授がありまして、100人から999人と幅が広過ぎると。実際に多いの はその辺の真ん中か下の方じゃないかということで、同じ統計のベースがなかったもの でありますが、やはり300人前後、100人から500人ぐらいのところの企業について、ちょ っと別の資料をつくって検証もしてみたんですが、傾向としてそういう企業の平均値は こうなりますから、個人で見るか、企業で見るか、いろんな切り口で見ておりますけれ ども、それぞれ意味が違っております。 ○D委員 世帯単位から個人単位というのも1つの大きな論点になっているわけですけれども、 これは世帯モデルとされていますけれども、今のお話ですと、計算する場合には、男子 女子の働いている人についても計算は出されているのでしょうか。それとも、すべて世 帯単位で出されているのでしょうか。例えば図2なんかは山が2つあって、低いところ は女性が働いている、シングルの場合も多いかと思いますけれども、そういうところは ずっと低いわけですね。平均標準報酬も低いし、当然年金を受給する場合も低いという 両方あるわけですけれども、モデルをつくられる場合、これは何度も議論されたことで すけれども、果たして専業主婦世帯モデルだけでいいのか、あるいは裏の方ではそれぞ れの男子、女子についても、シングルについても計算されているのかどうか、ちょっと お尋ねしたいと思います。 ○事務局  これは統計上の制約もございまして、あらゆるケースに適合しているわけではないの でありますが、6ページの方は、基礎年金分は1人分で、その上に報酬比例分がどれぐ らい乗っているかということで計算しましたので、これは夫婦という考え方ではない実 態で見ました。 例えば企業について、こういったことができるかということになりますと、それぞれの 企業の平均値をとっているだけでありますので、そこにお勤めの方のいわば夫婦の対応 とかを盛り込んだりするのはなかなかできなかったので、これは従来いろんなモデルが あるわけではありますけれども、ほかの例えば奥様が働いているといういろんなモデル がありましたが、典型的に23万円といっているあの40年間加入の専業主婦のケースとい うことで、1つの例だけでここは示しておりますので、ここもいろんなモデルごとに、 例えば9ページの給付額等は変化いたします。一番表に出ている単純なモデル1つでや ってみた結果でございます。 ○B委員  7ページなんですけれども、表の2で、59万円という一番下のところの右半分の数字 は実際には余り該当者はいないと。年金月額が現在の数字も改正後の数字も9万台で非 常に少ないんで、これは多分加入期間が6.7年という非常に短いことが響いているのだろ うと思うんですが、報酬が非常に高いのにかかわらず、どうしてこんな低くなるのか。 特に加入期間のところを見ると、44万円ぐらいのところが35.2年で一番長くて、そこか ら急速に上へいくほど加入期間が短くなりますね。これはどういうわけでしょう。 ○事務局 これは実態に即して集めたデータでありますので、世の中の動きがそのまま出てしま ったわけでありますが、例えば59万円という方が期間が6.7年で短いということは、恐ら く人生のかなり前の給料の低かった時期は、ほかの制度におられて、厚生年金に加入さ れたときに、例えば59万ぐらいのときに会社に入られて、定年まで、最後数年間、6.7年 おられたというようなケースの方しかない。逆のケースは、最初若いころの59万円ない ということは、そういう移りわたった結果、そういうことになってくるのではないか。 非常に高給グループでも同じキャリアの中で一本でいかれた方では一番多いのは44万円 ぐらいのところであると思うんですけど、そこから先はちょっと年数がずっと下がって きておるというのは、通算しておりますので、厚生年金に25年とか40年いる必要はない ものですから、実際に厚年にいた期間は短かった。むしろ50年代の後半か、最後の高い ころに厚年におられたという意味かなというふうに思います。 ○L委員  総報酬を入れたときに、今度は年金の給付のときの計算の根拠はどうなるわけですか 今、普通言っている標準報酬月額に応じて年金の計算がされる。その辺は今どうなって いるんですか。そこが全部変わっちゃうわけですか。 ○事務局  今、ここは現状の制度を前提にして、標準報酬制度について、それを年収に換算して 計算しておるところでありまして、現行を前提にやっておりますけれども、標準報酬と いうのを前提にいくかどうか、実務につきましては、まだちょっと決めあぐねていると ころがありましたので、現状を前提にこれは計算したということであります。ただ、そ こは標準報酬を使う、使わないとか、あるいは年収をどう見るか、事務的に年収を12ヶ 月に分けて保険料を徴収する、あるいはボーナス分を別々に徴収するとか、いろんなや り方があると思いますけれども、そこについては今回は現在の制度、現状に当てはめて 年収に換算して、それに現行に対し財政的に中立になる率を設定して掛けたらどうなっ たか、かなり割り切って計算をしております。 ○L委員  平たく言えば、ボーナスの部分も平均的に見て保険料を算定しているのですね。 ○事務局  おっしゃるとおりでございます。 ○C委員  以前の総報酬制の議論のときに、高齢者の再就職あるいは再雇用に際して、なるべく 賞与の部分を大きくする、そういうことがかいま見られるということで、これは問題だ という話がありましたが、今回はその議論はここには出てないんですけれども、それは どうなったのですか。 ○事務局  かつての資料で、現在の月給だけに賦課しているというやり方がどういう問題を起こ しているかということで書いたわけでありますけれども、今回、特にそこは、そういう 問題事例の発生という表現はしておらないわけでありまして、同じ年収の人は同じ保険 料、そして同じ給付のはね返りという原則で計算してみたという計算式でございます。 ○C委員  今おっしゃったような問題事例ですね。これは私も仕事柄、そういうことは何件か聞 くことがあるんですが、日本全体の中でそれがどのぐらいの事例かというと、全体とし ては一般的だといえる比率ではまだないだろうと思われます。それは御意見が違う方が あるかもしれませんが。 それから、もう一点、財政中立ということで、総額は変わらないと、こういうことなん ですが、1つ非常に疑問なのは、これは保険でありますから、負担の少ない人は給付も 少ない、負担の多い人は給付も多いと、こういうことで、今でもそこのところは公平が 担保されているとすれば、なぜ、これを変える必要があるのかというのがよく理解でき ない点があります。 ○事務局  確かに御指摘のように、現在でも報酬比例部分に関する限りは少なく負担された方は 少なく給付を受ける、多い方はその分多いということでありますが、現在の年金制度は 1階部分ということで、再分配する大きな部分を持っておりますから、それをセットに いたしますと、現在の月収基準でいけば、1階部分の共通負担を免れた分だけは負担能 力の高い人が再分配のところから逃れておるということになりますので、負担という面 から見たらやはり不公平は残るのではないかというふうに考えております。 ○C委員  確かにおっしゃるところはあるのかもしれませんが、この問題の事業主にとってのイ ンパクトというのをちょっと御紹介したいと思いますけれども、給料をもらっている社 員からすれば、特に大手企業のところがインパクトがあるわけなんですけれども、先ほ ど言いましたように今の御説明をきちんとしないと納得できない人がありますね。 もう一点は、事業主からすれば、大手企業、例えば私どもの会社でありますが、これで 年間10億負担が増えるわけですね。私どもの会社は世間の1,000人以上の規模の中で、必 ずしも一時金の比率は高くありません。それから、月例賃金のレベルも必ずしもそう高 い方ではない。非常に国際競争にさらされまして、この10年、5年と厳しい状況にあり ますので、そういう中でもそうでありますから、恐らくこれはボーナスが対月給比で0.3 を超えるところは負担が増えるだろうと思うんですね。従業員も事業主も増える。 そうしますと、「連合」の傘下の企業及び組合員等の負担は、どうでしょうか。官公労 の方は問題ないんだと思いますね。ですから連合傘下800万のうち、恐らく官公労を除け ば、連合傘下の組合員の、あるいは連合にかかわる1,000人以上の企業の増える負担とい うのはかなりの規模でなかろうかというふうに思います。そういうインパクトがあると いうことですが、もう一点、御理解いただきたいのは、これはほかの税制にも関係ある んですけれども、先ほどありました財政改革に関係するんですが、あらゆるところで国 庫負担を節約しようという動きがあるわけですね。結局、社会保障のレベルを維持しよ うとすれば、だれかが負担をしなくちゃいけないんです。その分は税制も含めまして、 大企業にどんどん、どんどんかかっていますね。例えば退職金の優遇税制措置、私ども 制度が変わると数百億のレベルで負担が出るという中で、事業主としては、何が公平だ といって、10億増えるのは納得できないものがある、こういうことを御理解いただきた い。 ○M委員 今、C委員からの件は、恐らく連合の見解もあるでしょうから、A委員の方から言っ ていただくとして、その前に私が手を挙げましたのは、一律乗率と逓減乗率の問題でご ざいまして、3ページ目の「以上のような理由から、一律の給付乗率で差し支えないの ではないか」と書かれていることについてです。よくわかります。思った以上に再配分 機能が働いて、標準報酬月額の低いところがもっと給付で下がるのではないかと思って いたんですが、その部分がそれほどでもないというのはこのグラフでよくわかります。 ただ、今後の年金全体の検討の中で、給付と負担の問題、とりわけ給付水準をどうする かということなど、さまざまなことがこれから始まっていくのだろうというふうに思い ます。 ですから、その中の1つの部品だけを取り出して、はい、これはこれで終わりというの は、絶対水準的にはよく理解はするんですが、やはりいろいろこれから議論を積み重ね ていく上で、トータルの水準というのは、これからどうなるのか、あるいは負担と給付 の関係はどうなのか。恐らく負担と給付の関係においての公平性という考え方と、適切 なニーズの充足をきちっとするという公平性の考え方というのは、恐らく違いが出てく るんだろうと思いますけれども、ぜひトータルの設計図の中で、大きく俯瞰して見るべ きだと思います。労働組合の立場からすると、先ほど大企業あるいは大企業で働く組合 ということはありますけれども、圧倒的に中小企業で働く組合員の方が多いわけでござ いまして、プラスアルファをどう配分していくかのときはいいんですが、やっぱりみん なでマイナスをどうお互いにカバーしていくか、配分をしていくかというときにはどう しても所得の低い層、あるいはぎりぎりのところで生活をしている家庭や層ということ も絶対水準ということを前提に考えるべきではないかと思います。 これはそうなると所得再配分が行き過ぎではないかという議論がまたあるのかもしれま せんけれども、組合としてはそういう視点を常に持たなければならないということがあ ります。 したがいまして、やはりほかとの関連の中で、トータルで俯瞰した中でベンドポイント みたいなものを持つのか持たないのか、その辺はもう一度トータルの中で議論をさせて いただけないかというふうに思います。 ○N委員  今、M委員がおっしゃった意見とほぼ同意見なんですが、日本だけ考えるということ ではなく、世界各国の対応も考えると、前回改正のときのボーナス負担の1%導入とい うのは、ある意味での切り口であったというような考え方にたてば、大勢としてこうい う流れをつくるということについて、私は基本的にはいいのではないかと思います。そ して、先ほどM委員がおっしゃったように、改革全体のメニューをどうするのかという ところで、これが是か非かというところの論議は再度するにしても、大勢としてこうい う流れをつくることは大変見えやすくていいのではないかと思います。 それから、御説明のポイントにありました増収対策ではないというところは大変大切な 要件であり理解を得るための1つの要件ではないかというふうに思っています。 それと、M委員が今おっしゃったことにダブりますけれども、やっぱり所得の大変少な い人、標準報酬月額の少ない人、あるいは先ほど丁寧に御説明いただきましたけれども 小さな企業規模でも検証してみる必要があるのではないかと思っております。政府統計 からの規模だけではないところについて検証作業をやってみた上で、この評価をすれば いいのではないかと思います。こういう流れをつくるということについては、白書の132 ページの財政構造改革のことに引っ張られるつもりもありませんが、そういう流れを作 る一環でもあるのだろうとは思い、懸念はありますが、大勢としてはいいのではないか と思います。 ○I委員 まず最初に、これは今もお話がありましたプラスマイナスはないという前提でつくっ たということなんですが、現実にこの率が非常に低く見えるわけですね。これは後々率 を上げるときに上げやすいということが、見えかくれしているわけでありまして、そう いう意味では、これは国民的な納得を得るために、率を一見下げたようにすることによ って、毎回の再計算のたびに人口構成は悪化してきていることは歴然としていますから そのときに、さっき私が申し上げたように、今後いろんなものを考えるときに、どうい うウエートで人口構成の問題と物価の問題、その他の問題のバランスを考えていくかと いうことが非常に重要な問題になってくるということを申し上げたことと絡んでくるん ですが、そのときに上げやすい仕組みをつくるということは間違いない。それが1点。 それから、もう一つ、これはボーナスを中心にウエートを置くのか、月例賃金にウエー トを置くのかというのはいろんな考え方があろうかと思いますが、日本は今大きく制度 が変革してきているわけですけれども、ただボーナスに関しては、やっぱり月例賃金と いうのはどっちかというと下方硬直性を持っておりますから、そんなに上げたり、下げ たりということは現実問題、幾ら私どもが成果主義ということを申し上げても、現実に はなかなか動かないものであります。しかし、ボーナスは間違いなく国際競争の中で、 企業業績にリンクし、かつ個人の成果に応じて上下する。上がりもすれば、下がりもす るという形が歴然と出てきているのが現状でありまして、そういう形で今後大きくボー ナスというものの在り方は変わっていく。いわば日本的な動きの中で、日本的年俸とい ってもいいかもしれませんが、どっちかというと、それが出てくるのはボーナスのとこ ろで、だから大企業といえども、例えば2カ月しか出ないとか、護送船団に守られてき たとがめが出たのかもしれませんが、銀行では今度ボーナスをやめちゃうとか、こうい うことが今後起こる可能性は十分あるわけでありまして、そういう意味で安定的な1つ のものを設計するときには、ボーナスを込み込みにするというのは非常に問題のあると ころだということをひとつ理解しておいていただきたい。 それからもう一つ、加えて問題なのは退職金であります。今、問題になっている国家公 務員の退職金の問題なんですが、これは私もびっくりして調べてみましたら、人事院勧 告と関係ないんですね。人事院勧告の中に退職金が入っていないんです。人事院勧告に 入れば、当然に民間準拠でありますから、民間とのバランスが必ずとられるはずなんで すが。その問題はちょっと置きまして、今、御承知のように、例えば松下電器だとかい ろんなところでもう始まっておりますけれども、退職金を分割して賞与に乗っけて払う という仕組みがあります。 今までは退職金をめぐっては、労働組合と企業の間にそれは賃金の後払いなのか、功労 報奨なのかいろいろ議論はあったところなんですけれども、結果として、労働力が移動 してくる人がだんだん増えてきますと、そういう分割払いというのは進んでいくわけで すね。そういうものが込み込みで払われた総報酬に対して、例えばこの年金の掛金がか かってくる。個人も大変ですが、退職金そのものも企業負担で、さらにフィフティ・フ ィフティで倍額をまた企業は負担しろというような話は、現実論として成り立たないと 私は思います。 そういう意味で考えていきますと、これからの労働力の流動化、また退職金の在り方が 根っこから問われてきている。これは当然年金基金との関係だとかいろんなところでま た問題になるかもしれませんが、そういう背景の中で、私は安定的な1つの前提でおく 国の年金、公的年金という性格からいうと、総報酬制というのは現実論足りえないので はないかという意見を申し上げておきたいと思います。 ○C委員  続いて同じことを申しますけど、もう一点は、年俸制ということに、事務局は言及さ れました。確かに、「年俸制」という言葉を使っている企業は一部出てきておりますが 現実にはやはり一時金と月例給与ということでほとんどの企業では行われているわけで ありまして、この年俸ということが一般的かどうかについては別の形で、これはきちん と調べてみれば、それほど10年前、5年前と今と大きくは変わってないというのが実態 ではないかと私は思います。 そういう中で、年金という視点から、月例給与と一時金について総報酬でやるというの は、今、I委員が言われたのと同じように、非常に事業主の立場から問題が起こってい ます。そして、この数年の動きは非常に国際競争にさらされている事業は、一時金は相 当振らしても、月例給はせめて安定しようと、こういうことでやっております。ですか ら私どもの会社でいいますと、この4年間、月例賃金については、不況の中でも、本来 なら賃下げすればいいような状況の中でも賃下げをしない。しかしながら、この4年間 は月例給は 1,000円アップ、その次は0と、その次は1,000円、1,000円です。賞与につ いては、一挙に4年前は20万下げる、こういう状況であります。それを一部、これは 徐々に戻しつつあるところでありますけれども、今後の国際市場も非常に短い期間に大 きく変動するという中で、賞与はどうしても振れざるを得ないという状況です。そうい う中で、総報酬制を導入されるというのは非常に従業員に対する説得性、あるいは事業 主としても、今、なぜそこまでしなくてはいけないのかというのが非常に疑問だと思い ます。 それから、もう一点、一時金と月例給与の考え方については、むしろ、N委員、M委員 あるいは連合のA委員はどう言うかわかりませんが、経営者側と組合で十分議論せずに やりますと、これはそういう意味では非常に問題があろうかと思います。 ○A委員  この問題は、今、C委員から、今なぜというお話でございましたが、私も当審議会委 員に就任してからまだ短いので、よく経緯を知らなかったのですが、前回の改正のとき にこれは論議をされた1つのテーマで、持ち越しの課題であった。持ち越しの課題を、 もちろんどうしても解決がつかなければやむを得ないことかと思いますが、第3号被保 険者の問題も含めて、今回の改正で二度とも先送りというのは、余りにも審議会として その責任を問われるだろうという気がいたしますし、特に労働側委員、当時も3名おり まして、N委員はその当時からずっといらっしゃるわけですが、当時の3名の労働側委 員では、連名で当審議会に対して、総報酬制への移行の導入を要請するという文書の意 向表明をさせていただいた経緯もございます。もちろん、個別の労使の中で、十分にこ のことが議論されてきたかといえば、必ずしもそうではないわけですが、問題の性質と しては、今回改正で初めて持ち上がった問題ではないと、そのように私どもは認識して おります。 しばしば、ここで指摘される不公平という問題ですが、いろいろな切り口があると思う んですが、単に大企業と中小企業という例がここへ挙げられておりますけれども、これ は1つの切り口であって、例えば同じ企業に働いている人であっても、一時金の割合と いうのは違うわけですよね、当然のことながら。それで、どちらかといえば、長期勤続 の賃金水準の高い男子の場合にしばしば一時金比率が、単に額だけではなくて支給月数 でも高いのに対して、若年女子の場合に、これは総体的に一時金の割合が少ないという ことはよく看取されるわけで、同じ大企業の中に勤めていても、年間収入に対して、払 っている保険料額の割合が非常に違ってくる。こういう不公平もまたあるわけですね。 これは低賃金者に対する配慮かというと、必ずしもそうではないので、先ほど労働力の 流動化というお話もありまして、労働政策を言い出すときりがないのでやめますけど、 恐らく今後、たとえ一部とはいえ、日経連がお出しになった新時代の労使関係のスキー ムの中の第2グループに当たるようなところでは、かなり年俸制という要素の強い、な いしは契約社員的な要素の強い人が、かなりの高給のグループの中で出てくる可能性が ある。これも数は少ないかもしれません。しかし、新しい傾向であり、そういう人たち の場合に、年間収入が同じであるにもかかわらず長期勤続者よりも、実効負担率といい ますか、そういうものが高いというのは、やはりこれは是正されるべき不均衡ではない のだろうか。 それから、3番目に、パートタイマー、派遣労働者の社会保険適用というのは非常に大 きなテーマになっております。派遣労働者に関しては、先年の会計検査院の調査以来、 大変大きな話題になりました。私どもは前からパートタイマーの組織化ということを労 働組合のテーマにしておりますが、そういうボーナスのほとんどないパートタイマーの 人たちに、もし仮に社会保険が適用された場合に、正社員に比べてもともと賃金が低い のに、その年間収入に対して払うべき社会保険料の割合は、ボーナスがない分だけ逆に 高い。こういったことでパートタイマーの人が、それでなくても労働組合なんか入りた くない、社会保険なんか適用されたくないという人たちの参加やなんかのインセンティ ブを、むしろディス・インセンティブするのではないか。制度上、そういうディス・イ ンセンティブというのはなくしておくべきではあるまいか、そのように考えております もちろん、大企業における、これによって生ずる負担増という問題は、我々の中でもも ちろん重要な問題であって、これについてどう考えるかということは、先ほど言いまし たように、この点だけを取り上げて議論するべきテーマではなく、今後の年金の全体の 負担の在り方、給付の在り方というものとの関連の中で、例えばああいった前倒しの保 険料の引上げというふうなことが本当に必要なんだろうか。あるいは国会の附帯決議ま でついた前回改正のときの基礎年金の国庫負担率の2分の1の引上げというのは、これ は財政構造改革法との関係で、どういうふうに当審議会としては考えるのか、こういっ た問題もあわせて議論すべきではないか、そのように思っております。 ○会長  かなり時間も過ぎました。ほかにこの機会に御発言の方、…… O委員どうぞ。 ○O委員  私、いろいろな御意見を伺っていまして、ごもっともだと思う点も多いですが、やは り今賃金形態といいますか、雇用形態が非常に大きく変化していっている。ですから、 恐らくC委員なんかの、今の時期になぜという御疑問もわからないわけではないんです が、私は方向としては、従来のような、決まった賃金よりか、一時的な賞与・ボーナス 退職金の変形やあるいは株を持たせるとか、いろんな形で企業の収益というものを従業 員にどう還元をしていくか、あるいは配分をしていくかという形態が出てくると思うん ですね。ですから、それに対して、どういうふうに年金の掛金というものを賦課してい くかというのを、これからいろいろまた変化をしていく要素が非常に多いと思うんです ね。 しかし、そういうことも頭に入れながら、今までどおり決まった月例の賃金だけに保険 料を掛けておいていいかどうかということを考えてみますと、事務当局の説明にありま したように、負担の公平から言うと、やはりちょっと問題ではないか。今の時点で、ど ういう形であれ、賞与も単に1%ということじゃなしに、月給と同じような考え方に立 って賦課をしていくという考え方を基本的には、私はこの機会に導入するのがいいので はないかというのが私の考え方でございます。 ○P委員  O委員と同じ意見なんですが、大企業の負担が増えるというのもわかりますけれども 現実にいろんな企業で企業の負担を軽くするために、給料からボーナスの方へシフトし ていくという事例が時々新聞などのニュースで出ることを考えますと、やはり総収入で もって保険料を取るということが、私はいいのではないかと思うんですね。保険料収入 の総額を変えないというような計算は非常にうまいぐあいに負担がほとんど変わらない という数字が出ているわけですし、やはり基本的にはこれからの方向としては、両方一 緒にして計算すべきだというふうに考えております。 ○G委員  財政中立という考え方はマクロでは収入はかわりがないんですが、個別の企業だとか 個別のサラリーマンをとると、制度改正というか、制度を変えることによって負担が増 えるグループと負担が減るグループと当然出てくるわけです。C委員初め何人かの方は 非常に苦しい状況を御説明いただきましたけれども、恐らく違う方が仮に年金審の方に いらっしゃれば、事業主の方でもボーナス込みで総報酬にしてくれという要求は当然出 てくる話だと思うんですね。なぜなら個別の企業が置かれている状況によって、全体と して負担が減るグループと増えるグループがあるわけです。増えるグループの考はお伺 いしましたけれども、減るグループもあるわけでして、その辺を総合的に判断なさる必 要があるのではないかというふうに私は思います。 ○C委員  方向性すべてを否定する気は私はないんですが、今の時期のインパクトの大きさと、 負担が増える側が、金額の大きさも含めて納得をするかということがあります。恐らく 負担が減る、その分だけ給付も減るわけですけれども、その方がいいという方がおられ るのは当然だと思います。 そういう意味では、先ほど言われましたように、今後はいろんな流動化の問題も含めて 方向としてはこうならざるを得ない面も必ずしも私は否定いたしませんが、今の時期に この大きさのインパクトで、それで負担が増える人の納得をどこまで得られるかという ところを御理解いただきたいと思います。 ○Q委員  経営側で発言していないのは私だけですが、ボーナスがこれまで昔から社会保障の財 源になっていなかった1つの理由は、ボーナスは不安定なもので恒久的な財源としては 不適当だという考えがあったと思います。それが高度成長期にはだんだん生活給の一部 と労働組合も言うようになりまして、大体年間給与のある一定の割合がボーナスという ことになってきた。それが今日ボーナスも財源にするべきというふうな意見の原因の1 つになっていると思います。 しかし、先ほどお話があったように、最近のボーナスというのは、例えば企業の業績、 金融機関は別としまして、企業の業績によって非常に変動しますし、同じ企業の中でも 個人的な貢献度といいますか、それによって、非常に大きな差がつくという意味では、 必ずしも会社にとっても個人にとっても安定した財源ではなくなっておるわけです。そ れに最近の退職金だとかいろんなことが絡んできますと、ボーナスとは何ぞやというこ とになりそうなんですけれども、そういう一面と、今、日本の経済は大変低迷している わけですけれども、これはやはり企業の活力が非常に衰えているからでして、何といっ ても経済成長を今のゼロ成長から、ある程度のレベルまで持ち上げるためには、特に大 企業に活力を与えていかないと、この不況は続くのではないか。そういう意味で、この 際、企業の国際競争力の足を引っ張るのは1つ問題であると、こういうことは確かに言 えると思います。また、反面、ボーナスを含めないことに対する負担が不公平であると いう意見も、これは理解できるところです。 そういうことで、大変忠ならんと欲すれば孝ならずになるわけですけれども、やはり激 変緩和措置というのはどうしても必要ではないか。個人としては負担が増える分は給付 も増えるという点では、多少償なわれるところがありますけれども、企業の場合には、 完全に持ち出しだけでして、返ってくる部分はありませんので、そういう意味で、私は 仮に天下の大勢が負担が不公平であるというふうなことでいくとしても、激変緩和措置 というようなものを当然考えていくべきだと思います。そうでなくても、今大変に日本 の企業の活力が衰えておりますので、まず、その辺にも十分配慮していかないと、結局 全体としての日本の力が衰えていくのではないかと、そう思います。 ○B委員  ちょっと別の見方かもしれませんが、日本のボーナス制度というのは、今まで国際的 に非常に評判がよかったんですね。ワイツマンなんかが、日本のフレキシブルな賃金決 定が日本の経済の活力の1つの源泉になっていると、どこまで本当かどうか別として、 かなり高い評価があったことは事実なんですね。いろいろ計算してみても、月例給に比 べると、ボーナスの方が確かに企業収益に対する感応性が高いことは事実なんですね。 それが日本は雇用が非常にリジッドですから、雇用の硬直性をある程度緩和しフレキシ ビリティーを高めていたことは事実なので、これはこの審議会の結論でどうなると言わ れれば、研究のテーマになるだけかもしれないけれども、多少全体に、やっぱり日本の 主要企業の賃金決定なり雇用のシステムに間接的に影響は出るだろうと思うんですね。 ただ、それがどうなるかはにわかには判断がつきかねるので、問題が多分あるだろうな ということだけをちょっと申し上げておきます。別に反対しているわけではないです。 ○事務局  時間も大分たったんですけれども、一言補足させていただきたいと思います。なぜ、 この時期にボーナスを対象にするのかという話が先ほどからございましたけれども、こ れは段階保険料方式をとっておりますことから、当然の結果と言えば当然の結果なんで すけれども、また少子高齢化が進むという中で、どうしてもこれから負担の引上げをお 願いせざるを得ないと、こういう客観的な状況にあるわけです。したがいまして、負担 をもっと上げるということになりますと、その場合、どうしても公平性ということが、 従来にも増して非常に重要になってくるということでございまして、公平性を欠いたま まで負担を重くしていくということが、これから国民にそういうことはお願いするわけ にはいかないんじゃないかと、そういう問題認識を持っておるということです。 それから、先ほどボーナスの比重を高くして月給を低くして、保険料負担を免れている のはけしからんというような話があったんですが、私は決してそういうことをやってい る人をけしからんとは思ってないわけでございまして、むしろこういう操作可能な制 度・仕組みを放置しておる、端的に言うと厚生省・私どもの責任ではないかということ で、民間の方々がそういう対応をすることを責めるのは筋違いではないか。こういう制 度を放置してきた行政としての責任というのを、私は非常に痛感しておるわけでござい ます。 それから、もう一つは、ボーナスが非常に不安定だということでございますけれども、 これはそういう要素はございまして、これからまた競争が厳しくなる中で、そういう要 素が強まることは十分考えられるわけでございますけれども、ボーナスの支給割合が下 がった場合には、それに応じて保険料負担も下がるわけですし、それがまた給付にも反 映させると、こういうことでございます。月給は比較的安定しておるわけでございます けれども、それでも会社を変わったりとか、いろいろ業績が悪くて、給料も上がったり 下がったりするわけでございまして、それに応じて、保険料をいただいたり、給付を算 定しておるわけでございますので、ボーナスが不安定だということは、ボーナスを賦課 対象にすべきではないという論拠にはならないのではないか。今の給料と全く同じメカ ニズムではないかと、こう思うわけでございます。 ○F委員  私は賛成とか反対とかという立場で発言するんじゃないんですけれども、よくわから ないんですけれども、C委員がおっしゃっておられる10億負担増になるという計算は、 どういう形で出されたのか。というのは、例えばここで4ページをごらんいただきます と、この保険料率が現行の17.35%が13.58%に下がるわけですよね。そうすると、月例 給与に対する保険料額というのがそれだけかなり下がるわけですよね。それと賞与に 13.58が掛かった分との差引き勘定だと思うんですけれども、それでそういう数字になる わけでございますか。 ○C委員 今、ここに資料を持っておりませんが、この問題が出たときに、私どもの関係スタッ フで計算して約10億になりました。日経連加盟の主要企業において一時金の支給月数は 約5ヵ月であり、月給比で0.42(5ヵ月/12ヵ月)です。保険料率を13.58%にするのは一 時金が月給比0.3でイーブンとするものであり、0.3より一時金の比率が多いところは約 9%程負担が増えていくというふうに思います。 ○会長 議論百出でございますが、時間もかなり過ぎまして、間もなく5時半になります。 もしお差し支えなければ、今日のところはこれで、ということでいかがでしょうか。総 報酬制につきましては、皆様いろいろ御議論がございました。事務局でさらに多面的に 検討していただくようお願いします。 本日予定のありました議事は以上で終わりです。本日の資料につきましては、今までど おり、公開することでよろしゅうございましょうか。どうぞ。 ○A委員  公開に全く異議ございませんが、資料4の前回の議事要旨でございます。これは既に 印刷されてしまっているものですし、前もって申し上げなかったのは悪かったのですけ れども、前回の議論の中では、積立金の運用の問題の中で、社会政策的な観点にのっと った社会保障の制度の中における役割という意味で、大変重要な問題提起をE委員の方 からいただきまして、私はそれに対して大変感謝の気持ちも含めて賛成意見を述べたと ころでございます。具体的には現在の住宅転貸融資等のことを強く念頭に置いた議論で ございます。特にこれは何度かその問題は議論されて、共済年金の方にはもともとそう いう制度があって、そのこと自体、助かってきたことですが、今の民間労働者にとって も、これは依然として重要な頼りになる制度で、民間の労働者だけについてそれを外し てしまうようなことについては到底納得できないということも含めて申し上げたい。大 変重要な論点だったと思いますが、今回のこれで言いますと、どこにもない。あえて見 れば、2ページの一番上の「21世紀の高齢社会の全体像を若い人へ示すこと、社会保障 の役割を明らかにすることが必要ではないか」と、このことに含まれていると言われれ ば、風が吹けば桶屋風に言えば、あるいは含まれていないと否定の証明をすることは困 難ですが、少なくともその議論は明示的な形をとって報告されるべき内容だったと思い ます。 ぜひとも、きょうこの後、記者レクということになるかと思いますので、その点につい ては、口頭でぜひ補足をしていただきたい。それだけの内容のある議論だったと思いま す。 ○I委員  もし、その議論をするのであれば、もう少し詰めた議論をしなければならん性格だと 思うんですね。というのは、これだけ財源が厳しくなっているわけですから、やっぱり 財源論に徹すべきだという議論もあるわけで、いろんな今までやってきた福祉事業はむ しろ撤退すべきだと。例えば住宅なら住宅で、日本の住宅施策をあるところに1カ所に 集めていいじゃないかという議論もあるわけです。今の厳しい議論の中で、やっぱりそ こで基本的にやるべきことは、年金の原資なり年金のお金というものは、やっぱりまず は年金に特化すべきではないかという議論が、一番最初の、例えば年福の整理の問題な んかのところであったはずなんで、そこのところの議論の絡みをひとつ頭に置いて、も し記者レクなさるなら記者レクをやっていただきたい、こういうことはちょっと申し上 げておきたい。 ○A委員  さっきというより、要旨としては前回の議論の中で、かなりウエートが高かったとい うことです。 ○D委員  お送りいただいて、意見をファックスでお送りしようかなと思ったんですけど、今言 われた2ページの一番上のようなことも申し上げたので、そこの部分で書かれたのかな と思って控えたんですけれども、可能であれば、明示的に示して、住宅に限らず、子育 て援助とか介護援助のいろんな基盤整備ということもありますので、かなり広い意味で 次の世代に対する支援を考えるという視点もあるので、そのようなことを追加していた だければというふうに思います。 ○事務局  ただいまのは口頭で補足をさせていただきます。とりあえず申しわけございませんが あらかじめ各委員にはお送りいたしておりますので、今回につきましては、口頭で補足 をすることでお許しをいただけませんでしょうか。 ○会長  口頭の内容についてはお任せする、ということでよろしゅうございますか。 ○A委員  はい、結構です。 ○会長  それではそのようにさせていただきます。なお、今後の日程について資料が出ていま すが、事務局から御説明をお願いします。 ○事務局  それでは、お手元に今後のスケジュール、テーマにつきまして、前回審議会におきま して、あらかじめ明らかにすべきということでございましたので、各委員と御相談させ ていただきまして一応のものをつくってみました。 次回は3月18日午前10時からでございます。給付と負担の1、女性と年金ということで ございます。 次の18回でございますが、4月7日3時からということで、これは既に御案内をさせて いただいたと思います。給付と負担の2、基礎年金、現業業務の関係。 4月23日でございますが、前回、3時からということで御案内しておったのでございま すが、給付と負担3、少子化、一元化ということでございまして、テーマ的に盛りだく さんでございまして、恐縮でございますが、1時間早めまして、2時からということで お願いをしたいと思います。 20回、21回でございますが、20回が、委員の日程を伺いましたところ、5月15日の午前 10時からということにさせていただきたいと思います。給付と負担の4。そして、前回 御相談させていただきました有識者調査の結果がこのころになりますとまとまるかと思 っておりますので、有識者調査の結果。 第21回でございますが、社会保険業務センター等視察ということで、これを5月29日の 午後にお願いをさせていただきたいと思っています。なお、時間につきましては、また 追って御相談をさせていただきたいと思いますが、高井戸の方にお出かけいただくこと になります。「等」と書いておりますのは、前回、京都の社会保険事務所の御視察をい ただいたわけでございますが、委員の中で、まだ御視察いただいてない方もいらっしゃ いますので、あわせて社会保険事務所の御視察を御案内させていただこうかと思ってお りまして、そういうことで、社会保険事務所の方の御視察はオプションにさせていただ こうかと思いますけれども、社会保険事務所と高井戸の社会保険業務センターの御視察 をお願いをしたいと考えております。 以降、6月、7月ということで、東京での公聴会、残されました検討項目を御検討いた だきたいと思っております。 それから、第26回8月第4週ということで、書類に書かせていただいておりますが、そ の後、各委員の御感触といたしまして、1泊2日程度なら可能かという感じもあるよう でございますので、恐縮でございますが、非常に先の話ではございますが、できますれ ば、8月末、31日あたりの日程をあらかじめお願いできないだろうかという感じを持っ ております。 会場もございまして、ただちに決定はできませんけれども、できますれば、1泊2日で 集中審議をお願いをできたらというふうな希望を持っております。 以上でございます。 ○会長  本日はこれで閉会したいと存じます。長時間どうもありがとうございました。                                          年金局 企画課                                須田(3316)