98/01/20 第14回年金審議会総会議事録             第14回年金審議会総会議事録              日 時 平成10年1月20日(火)  14:00〜16:48 場 所 大阪厚生年金会館 7階 富士の間 1 開 会 の 辞  2 委員出席状況報告  3 議 事 ・ 意 見 陳 述   八 田 達 夫 氏                            向 山 平八郎 氏              真 場 成 人 氏   〔休 憩〕                                   ・意 見 交 換  4 閉 会 の 辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  国 広 委 員   久保田 委 員  神 代 委 員  坂 巻 委 員  都 村 委 員   桝 本 委 員  目 黒 委 員  山 田 委 員  山 根 委 員   吉 原 委 員  若 杉 委 員  貝 塚 委 員  船 後 委 員 ○京極会長  それでは、ただいまから、第14回年金審議会総会を開催いたします。  審議会は、昨年5月から、次の制度改正に関する審議を開始して、昨年末、論点整理 を行いました。今年は二巡目の審議に入りまして、今日は有識者の方から御意見を承る ことになっております。  委員の出席状況について、事務局から御報告をお願いします。 ○企画課長  本日は、木原委員、高山委員、富田委員、福岡委員、渡邊委員が御欠席で、そのほか の委員は御出席でございます。 ○京極会長  それでは、事務局から有識者の方々の御紹介をお願いします。 ○企画課長  それでは、御紹介をさせていただきます。  大阪大学社会経済研究所所長の八田達夫様でございます。  関西経営者協会社会保障基金制度専門委員会委員長の向山平八郎様です。  日本労働組合総連合会大阪事務局長の真場成人様でございます。 ○京極会長  本日は、まず、お招きいたしましたお三方から、お1人20分ほどを目安に、制度改正 等についての御意見をお伺いいたしまして、その後、休憩を挟みまして、審議会委員と 意見交換を行いたいと存じます。よろしくお願いいたします。  それでは、まず、八田さんからお願いいたします。 ○八田氏  途中でOHPを使わせていただきますので、ここの席からお話しさせていただきます  本日は今席にお招きくださいましてどうもありがとうございました。私は、現在の年 金制度を賦課方式から積立方式に近づけることが年金改革の基本であると思っておりま す。その線に沿って、きょうお話し申し上げたいと思います。なお、配付いたしました 資料の2ページ目に提案をまとめてございます。また、今日のお話で使います語彙の定 義を下に整理しております。  まず、年金財政が高齢化時代に危機に瀕する、積立残高がなくなってしまうのではな いかということが言われております。しかし、それ自身としては別に大した問題ではな いと思います。なぜかというと、高齢化時代に保険料を上げれば、年金の基金の残高を ゼロにしないで済むからです。保険料を上げればいいわけです。問題は、既に年金が世 代間の間で大変な不公平をつくり出していて、これ以上、将来の世代の保険料を引き上 げることができないという事態にある、それが最大の問題だと思います。  では、それがどの程度大きな問題になっているかということを図1でごらんいただき たいと思います。横軸には生まれ年をとってあります。縦には、生涯の賃金、標準報酬 月額を積み上げたものをとっています。この図の実線は、現在の各世代が、年金給付を 保険料よりどれだけ多くネットで受けるかということを示したものです。すなわち、生 涯の賃金の何割ネットで得をするかということを示しています。例えば、1935年生まれ の方は、これまでずっと納めてこられた保険料を超えて受ける給付が、生涯の賃金の大 体25%である。膨大な額を、棚からぼた餅としてネットで受けられる。  それに対して、例えば1998年生まれの人たちは、生涯の賃金の大体13%から14%ぐら いの間でネットで国に差し上げる。もっとも別に国が食べてしまうわけではないので、 要するに年寄りの人たちにみんな差し上げてしまうわけですね。したがって、世代間で 不平等がある。すなわち、若い人たちは自分たちの受け取るものよりもはるかに多く払 い、そして、私を含めて現在比較的年取った世代は得をする、そういう仕組みである。 これが現在の年金の基本的な問題です。  なぜ、こういうことになったかというと、日本の年金制度が賦課方式という原則を採 用しているからです。世代間の助け合いという原則です。すなわち、ある時代の老人が 受ける給付は、そのときの現役世代の保険料をそのまま充てる。したがって、そのとき の現役世代が支払う保険料は、積み立てないというわけです。この方式の下では、現在 のように老人の数が比較的少ないときには、勤労世代の保険料は低くて済む。将来のよ うに、勤労世代が少なく、老人が多いときには、勤労世代の保険料負担は非常に大きく なる。  世代間の助け合いということを今まで言われていたわけですが、それは、世代間で不 公平がおきて何が悪いのかという立場なんですね。そういう立場をずっととる人はそれ はそれで結構だと思う。しかし、現実には大部分の人々は世代間不公平は望ましくない と考えている。 ということは、賦課方式は、望ましくないと考えているわけです。  では、これを公平化しようと思えばどうしたらいいかというと、現在の勤労世代のよ うにたくさんいる人たちが自分たちの老後のために積み立てて、それを将来自分たちが 年取ったときに使う、そういう仕組みに改めていくべきだと思うのです。もちろん現在 のように既に賦課方式が始まっているのに、それをただちに完全積立方式に直すことは 難しいですが、そちらの方向に近づけていくことが基本的な路線であるべきだと思いま す。  ついでに図2をごらんいただきたいのですが、図2の実線は、厚生年金の積立残高の 現在価値の予測を、厚生省と同じ仮定でやったものです。厚生省の予測と大体同じです 95年のところをごらんになるとおわかりになるのですが、高齢化の直前で、今こそ積み 立てなければいけないときにほとんどフラットになっている。要するに積み立てが進め られないで、むしろ2005年ぐらい過ぎると積立て残高がどんどん下がっていく、そうい う状況でございます。  では、こういう状況のときにどうしたら積立方式に近づけられるのだろうか。一番簡 単なのは、今の保険料を高くして、そして、将来の保険料を低くすることです。保険料 率が今の18%から将来34%以上まで上がっていく予定なわけですが、保険料を将来下げ るために今高くしてしまう。実際に将来給付をもらう人は今保険料を払っている人たち なのですから、彼らに自分達が受ける給付分に近い保険料を払ってもらうわけです。こ のような料率の一律化をやって、例えば2060年時点に現在制度と同じだけの積み立てが 残るようにしたら積立て残高は、どう動くだろうかを示したのが図2の点線です。もし 保険料率を一律化すると、実は28.6%になるのですが、そうすると今たくさん積み立て をすることになります。そして、高齢化が始まると同時にそれを取り崩していく。そし て2060年には現行制度と同じだけの積み立てになる。 こういう改革をすると世代ごとの純受給はどうなるかを、図1の点線が示しています。 各世代の純受給がこういうふうに変化します。1975年以降に生まれた方たちが前の世代 に対してネットで支払う金額は大幅に減ります。ほぼ14%だったのが7.5%ぐらいまで減 ります。 したがって、かなり公平化が進むと考えられます。 この28.6%というのは、保険料としては少し高過ぎるのではないかという考えならば、 これを直すには当然給付を減らすしかない。その1つの方法は、早期退職者に対して支 払われる報酬比例部分を減額することです。現在では、60歳から報酬比例部分を受けて も、その後、65歳以降に受け取る給付額は減らないわけで、ペナルティーがないわけで す。もし、65歳以前に支給を開始してもらうならば、その分、年々に受ける額を減らし て、生涯でちょうどとんとんになるように支給を調整するわけです。すなわち支給開始 年齢は自由に選びなさい、しかし、ちょっと早めにやるとその分年々の額は減りますよ と。ただし、生涯で年金数理的に同じになるように減らしましょうというわけです。こ れを仮に支給開始年齢の弾力化というふうに申します。これでかなり給付が減ります。 それから、もう一つは、ネット賃金スライド制を一時停止することです。これは余り 長く停止しますと、将来世代の給付が減りまして、決して公平化には結びつきません。 だから今の年寄りが退職している間だけに限ってこれをやらなければいけない。余り将 来長くやってはいけない。支給開始年齢の弾力化とともに、ネット賃金スライド制の停 止を2015年まで行ったケースが、図1のマル印がついた線で示されています。こうする と将来世代の純負担は、保険料率のみを一律化した場合に比べてさらに減ります。そし て何よりいいのは、一律の保険料率がこの場合は23.5%で済むというわけです。今23.5 %まで引き上げて、これからずっと23.5%のままというわけです。  世代間の公平化を図るためには、保険料率の一律化と、現在の受給者あるいは近い将 来の受給者の給付の伸びを何らかの形で抑える工作が必要だということを、この図は示 していると思います。  ただし、今申し上げましたのは非常に便宜的な方法ですので、これを完全積立にする にはどうしたらいいだろうかというのを次に考えたい。図3をごらんいただきたいので すが、図3の実線は、先ほどお示ししました現在の制度のもとでの積み立ての動きです それに対して点線は完全基金の動きを示しています。もし仮に日本の年金制度が最初か ら積立方式でスタートし、給付に見合った保険料をとってきたとしたら、今完全な積み 立てがあるはずである。その場合には、どれだけの積み立てがあるはずだろうかという のを示しています。これは全部現在価値で示されていますから、将来のところが爆発的 に大きくならないようにちゃんと割り引いてあります。これから見ればわかるように、 完全積立の場合には、今からしばらく積み立て残高が増え、それから後、どんどん取崩 しが起きるということになります。実線と点線を比べると、完全積立と現実の積み立て の間に非常に大きなギャップがあるということがわかります。  仮に一律の保険料率を24.8%にしまして、先ほどの2つの給付の切下げの方法を同時 にやりますと、実は、2090年に完全積立が達成可能で、完全積立方式に移行することが できます。 これまで完全積立に移行することは問題だと言われてきた。それは、そういうことをす ると、移行期の人たちが自分たちの保険料を負担するだけではなくて、前の世代に対し て大盤振る舞いしたことの支払いまでしなければいけない。この二重の負担の問題のた めに完全積立への移行は現実的ではないといわれてきた。ところが実は、現在の日本の 年金制度では、既に二重の負担をやっているのです。若い世代は、自分たちがもらう受 給額よりははるかに超えた保険料を払っているわけですから、結局はその差は、前の世 代に対しての二重の負担です。 反対に上で述べた完全積立達成法の下では、将来二重の負担を幾つもの世代でもって薄 く広く分担して背負うということになります。ここで簡単化のために概算ですが二重の 負担を計算してみました。アウトラインの4のところで、保険料率が24.8%と先ほど申 し上げました数字が出ております。1975年生まれ以降の方は生涯受給率が賃金の大体 16.9%なのです。 したがって、いわゆる積立方式、すなわち自分の将来もらうものと支払うものがマッチ するような方式(これは完全積立方式とは違いますが、)にするのならば、保険料率は 16.9%でいいはずです。これが市場収益率に基づいた正当な保険料率です。現実には 24.8%将来の世代は払う。そのギャップは7.9%。これが言ってみれば、元来なら国庫が 負担すべき旧世代への移転だと考えることができます。これは大まかな概算ですが、こ ういうふうな考え方ですると、二重の負担を分散して、公平にいろんな世代に負担して もらうことが可能だということを示していると思います。現行制度の下では将来世代の 純受給率はマイナス13.8%であり、これが二重の負担です。これと比べると、改革を行 うことによって二重の負担が減少することがわかります。 ところで積立方式には、いろんな定義があります。1つの単純な定義は、自分の払う保 険料を積み立てた元利合計が年金数理的に見て給付に等しいそういう制度を積立方式と 呼ぶというものです。これを最初からやっているとすると、今完全な積み立てがあるは ずです。 その場合には「完全積立方式」と申します。すなわち、完全積立方式とは、積立方式で あるだけでなく、完全な積立て残高のあるものです。  既に賦課方式であるのに、これから積立方式にする場合には、入ってくる保険料は完 全積立方式の場合と同じで、出ていく給付も同じです。ところが一つ入ってこないもの がある。 それは完全積立からの利子が年金基金の中に入ってこない。それが足りない。それをほ っとくと、その積み立てはどんどんじり貧になってしまう。 その利子相当分を一般会計から国庫負担する必要があるのです。積立方式にした場合 には、どうしても過去の使い過ぎに対する始末を別途につけなければならない。例えば 一般会計から長い期間にわたって公平に負担しなければいけない。利子だけを負担して もいいし、一部元金を戻してもいいということです。しかし、積立方式にしただけでは 話は終わらないのです。 図3をごらんいただきたいのですが、点線の動きは完全積立の動きを示しています。 そして実線が現実の基金の動きです。この差が基金の不足分です。これを政府の「年金 純債務」と申します。「過去債務」ということもあります。この基金のギャップが生み 出したであろう利子が不足しているわけです。そこのところを何らかの形で負担しなけ ればいけないというわけです。  アウトラインの6番に移ります。年金改革の基本というのは、賦課方式に決別して積 立方式に移ることだと思います。その際に要件は2つある。1つは、年金自体は純粋な 保険にする。したがって、将来もらう給付と保険料はマッチしたものにする。しかし、 それだけでは今申し上げましたような年金純債務に対する利子の負担に耐えられません から、その部分は一般会計から補填する。これは累進的な所得税で賄う。場合によって は消費税ということも可能かもしれません。これはとにかく世代間の再分配の部分です から、それは全部一般会計で始末する。こういう分離が必要なのではないかと思います  先ほど保険料率を2分割したときに、粗っぽい計算をしたと申しました。例えば1975 年以降に生まれる人たちから、先ほど申し上げたような積立方式の保険料を取って、そ の一方で年金純債務解体のために国庫負担をするとしましょう。その際、国庫負担がG NPの一定パーセントになるようにすると、例えば、今、厚生省の想定利子率と等しい GNPの成長率の下では、初年度で見れば、大体7.8兆円ぐらい国庫負担が必要です。 そういうGNPに対する比率をずっと続けていけば、完全積立が2090年に達成可能であ るというわけです。  そういうことなのですが、現実の厚生年金に関する国庫負担は大体3兆円ぐらいです 保険料率(15.3%)は随分低くなるわけですから、3兆円と国庫負担の差はそう大した 差ではないと考えられます。  さらに言えば、最終的に完全積立にしてしまう必要もないのです。国の年金純債務は 一種の国債みたいなものですが、それとGDPの比率がこれ以上広がっていかないよう にすればいいのです。金持ちはもっと借金できるわけですから、金持ちになったときに は、そのときの所得に対して借金額がふくらまないというふうにすればいい。  そうしますと本当は、もし利子率と成長率が等しかったら何も補填しなくてもいいで す。その場合にはきちんと保険料が給付とマッチしていさえすれば、それ以上何も補填 しなくても済むということがあります。したがって、先ほどの7.8兆円というのは、国庫 負担の上限だと考えればいい。 ここで、今までの議論を整理しますと、とにもかくにも保険料率を一定にし、給付の 何らかのカットをする。そういうことをやるとかなり無理なく完全積立を達成可能であ るということになります。  8に移ります。年金の民営化がよく提案されているのですが、民営化ということは、 まさに支払う保険料と給付とがマッチするということです。しかし、そうするには過去 の年金純債務をどう始末するかということがちゃんと考えられていないといけない。し たがって、民営化をすれば、年金純債務の始末の片がつくわけではないのです。まず年 金純債務の始末をきちんとして初めて民営化ということが可能性の1つとしてあらわれ てくるというふうに言えると思います。  最後に1つだけ、このOHPを使わせていただきたいのですが、今回の発表するに当 たって厚生省の5つの選択肢というのを見せていただきました。今やったような計算を この5つの選択肢に則してやってみたのです。それが大体どういうものかということを ちょっとお話ししようと思います。 まず厚生省のA案、B案、C案というのは、代替率が62%、55%、50%です。それにマ ッチするような保険料率や給付の切下げを考える。  まず、A案は、現行通りに代替率を62%に維持するものです。この代替率は変えずに すなわち、給付の代替率は一切変えずに、保険料率だけを一律30.4%にしますと、随分 先のことですけど、2145年に完全積立が達成されます。厚生省の「動態平準化保険料 率」は30.4%ですから、その意味はこういうことだったのです。この場合の生涯受給率 は、21.7%だから、積立方式の下での保険料率は、わずか21.7%だけで、またこれと一 律の保険料率30.4%とのギャップを国庫で埋めるとすると、必要な国庫負担は、GDP の1.15%ぐらいです。それを初年度にすると大体5−6兆円です。したがって、現実の国 庫負担額3兆円に比べてそんなに多くもない。積立方式の保険料率はかなりリーズナブ ルだし、代替率も悪くない。 次はB案です。給付の伸びの抑制を先ほどのようなやり方でやってみます。ただし、賃 金スライドの停止期間を2015年までにする。そうすると保険料率は25%まで下がる。積 立方式の保険料率はわずか17%で済む。積立方式にした際に必要な国庫負担も減る。代 替率は、B案と同じ55%である。この場合にも2145年に完全積立が達成されます。さら に、2030年まで賃金スライドの停止をすると、実はこのC案と同じようなものになる。 その場合には積立方式の保険料率はわずか15%で済む。また国庫負担も非常に少なくて 済むというわけです。 こういうことですから、余り完全積立に移行することが不可能だと考えてペシミスティ ックになる必要は全くない。実はかなりフィージブルなものだということがわかります 締めくくるに当たって、レジュメの2ページ目のトップにリストした「積み立て方式に 移行することのメリット」というのを繰り返して申し上げたいと思います。 第1に、当然のことながら、将来の勤労世代の負担を軽くします。  第2に、年金自体は給付と保険料が見合ったものになりますから、保険料を取られる ことを税だとは思わなくなります。保険料は自分の貯蓄の一部だと思うわけです。払っ た保険料は、将来そのままきちんと給付されますから、貯蓄の一部だと思う。したがっ て、労働の供給意欲をそがない。  最後に、何よりも大切なことは、こういうふうに積立方式にすると、今払っている保 険料のどの部分が自分自身に戻ってくるところで、どの部分が過去債務、年金純債務の 始末のために使われているかという区分経理がきちんとできることです。そうして区分 経理が一たんできれば、過去債務、年金純債務の始末に使われている部分は、実は一般 会計で累進的な所得税で支払うことが可能になる。あるいはもちろん好みによっては保 険料でやってもいい。いずれにしても過去に対する始末をどういうふうにやればいいか ということがそこで明確に論議できるようになる。それが最大のメリットであると思い ます。  どうも御清聴ありがとうございました。 ○京極会長  どうもありがとうございました。  次に向山さんよろしくお願いいたします。 ○向山氏  最初に御紹介いただきましたように、私、関西経営者協会の基金関係を中心とする専 門委員会の委員長をいたしております。関西経営者協会1,900社、その中から20社ほどの 専門家に集まっていただきまして、この問題について、というよりも、主として企業が 持っております年金基金についてが中心になるわけでございますけれども、従来議論を してきたことを中心にお話しをさせていただきたいと思います。 現在、年金につきまして非常に厳しい状況になっているということの認識はだれもが 同じように持っているのではないか。ただ、今回、厚生省が御発表になりました5案に ついて言えば、専門委員会での一番ひどい言葉をもって言いますと、これは国民に対す る脅迫ではないか、というふうな言葉さえも出てまいりました。いたずらに将来の不安 をあおって、未納者の増加やら消費の萎縮やらを引き起こし、さらに年金財政を悪化さ せる原因にもなっているのではないか。情報開示は必要でございますけれども、その情 報開示の方向ももっと工夫をこらしてほしいなというふうな御意見が出ておりました。  仮に厚生省の5案のようなことを、民間の経営のトップが社員に対して言ったらどう なるか。ただちに総スカンであり株主総会で罷免されるでしょう。何となれば、将来、 財政的にこういうふうに苦しいんですよということの発表は当然必要だと。しかし、そ れに対して具体的に、これを改善するためにどうするのだという大前提がないのではな いか。単に計算すればこうなると。だからどっちかを選択しなさい、というのではちょ っとひどいのではないでしょうかというふうな御意見が多数出ておりました。  民間の企業の経営のトップであれば、まず、これから先の将来の財務状況は非常に厳 しいと。そうすれば、まず企業として、あるいは基金として、どういうふうな自助努力 をするのかという前提が欠けておるではないか。簡単に言えばリストラであり、これは 行財政改革によって税金を生み出して、そこから補助してもらうとか、あるいは外注・ 下請等に企業は一部の仕事をよく出しますけれども、そういったことで、コストを下げ るということによって、これだけのものは生み出しますと。しかし、それでも、なおこ れぐらい足りませんので、応分の御協力をお願いしたいというのが通常ではないか。  先ほどいたずらに不安をあおるという発言をいたしましたけれども、具体的な話で申 し上げますと、現在、年金の支給開始年齢は65歳と明示されております。ところがこの 実現は、実は15年後と計画されておるわけでございまして、15年後に60歳になる人は今 何歳かというと45歳です。45歳の人が定年60歳以下で、あなたは65歳にならないと年金 はもらえませんよ、と言われたら一体どういう気になるか。簡単に言えば、60歳から65 歳まで一体どうやって生活するのだというふうな話になってくるのではないかと思うわ けでございまして、しかし、よく考えてみますと、本当に15年先に定年60歳なのかなと 現在の少子化が続きますと、我々メーカーといたしましては、日本の労働力は必ず不足 してまいります。外国から労働力を輸入しない限り、日本の中で労働力を生み出すとす れば、だれでも目をつけるところはシルバーであり主婦でございます。シルバーの人が 現在の60歳定年を前提として、65歳支給だと言われれば、不安になって不安になって仕 方がない。だから貯蓄に回して、現在の不況を招いておるという言い方さえもできるの ではないか。  例えば、やがて日本では労働力が不足すると思われるが、主婦が働き出してドイツ並 みに共働き率が85%を超えたら一体何百万人の労働者ができるのか。それと同時に、60 歳の定年を65歳にしたら、いくらの人数が労働者として確保できるのか。そういう試算 もしながら施策を考えてまいります。労働省は労働省で「65歳定年」ということでいろ んな施策をされていますが、そういったことがいまだ実現されない段階で、そういった 考え方が流れていくものですから、いたずらに不安をあおっておるのではないかといっ た言い方をされても仕方ございません。  だから、前置きとして申し上げたいことは、要するに15年後あるいは28年後の日本の 経済、社会、そういったものがはっきりと想定できますか。定年もそう、経済情勢もそ う、昔のような、いい経済情勢の日本が本当にあるのかといったことも含めて考えます と、やはりチープ・ガバメントを中心とする倹約した財政でもって、まずその辺から穴 埋めはしますけれども、多分足らないでしょうということで、具体的にこういった点に ついて御協力いただきたいというお話をしてほしかったなという気がいたします。  それを前提にいたしまして、レジュメに従いまして、今やるべきこととということで お話し申し上げます。厚生年金制度のあり方のことでございますが、(1)「所得に応 じた給付」というふうに書いてございます。  現在の年金受給者あるいはこれから先も受給をする高齢者が必ずしも経済的な弱者で はない。これは厚生省がお出しになっている統計でもはっきりと出ておりますが、単に 収入だけではなしに、資産を含めますと、現在の40代ぐらいの人たちの年収とほとんど 変わらないという統計さえもございます。ただし、これは平均でございますので、上下 の差は非常に大きいのでございますが、経済的な弱者ではないということを前提に考え てまいりますと、“助け合い”というのは世代間だけではなしに高齢者間あるいは受給 者間にあってもいいのではないかというふうな気がいたします。 つまり若い世代に負担をかぶせるという考え方だけではなしに、年齢にかかわらず、 所得に応じて給付を減額あるいは支給停止するなどの考え方を取り入れるべきではない か。例えば70歳になられても80歳になられても、年収1,000万円以上あれば、支給停止は もちろんのこと、場合によっては拠出もしてもらってもいいのではないか。若い人たち のみに求めるのではなしに、これから先は、私どもはそういう年代でございますが、私 どももそういったことをしていっていいのではないかと思います。したがって、若い人 たちが嫌気がさして、年金に対する信頼がなくなるということではなしに、こういった 考え方も打ち出していただいてはいかがだろうかというふうに思います。 さらに、将来は65歳以上であっても、一定水準の所得のある者の拠出も当然考えられ るべきであるというふうに考えます。というのは、私自身が考えますには、これから15 年先あるいは28年先はもちろんのことでございますが、定年が60歳で固定してとまるは ずがない。弊社のことで恐縮ではございますが、5年前からシルバー社員、60歳以上の 人が一定の条件のもとに働くという制度を制度としては導入しております。ところがこ れの該当者は現在のところ非常に少ないです。しかし年金支給開始年齢が上がっていけ ば、必ず該当者が増えてまいります。といったことも考えながら、一定水準以上の所得 のある者の拠出についても年齢を超えて、もう一度考え直すべきではないかと思います  さらに現在は年金の繰下げ支給の際の倍率の問題もございます。御承知のとおり、65 歳ではなしに、66歳から支給を受けますと1.12倍、70歳から支給を受けますと1.88倍も もらえるわけでございます。この問題につきましても、その損得勘定はあると思います 私は一生懸命掛けてきたのだからもらって当たり前ではないか、しかも70歳からしかも らわないのだという人に対して、倍率が高いのはある意味ではもっともかなと思いなが ら、年金財政がこうなってきたときに、いわば恵まれた層が70歳支給をされるというこ とは、恐らくそれまでの生活にかなり余裕があったということで、70歳でもらいましょ うということにされたのでしょうから、そういった人たちに対しては、この倍率という ものはもっと大幅に引き下げるべきではないかというふうな気がいたしております。 (2)でございますが、「65歳支給の前倒し」。先ほど言いましたように、15年もか かっていてはどんなに変わるかわからない。やはりこれは2年に1歳ずつぐらいのスケ ジュールで引き上げるべきではないか。支給開始年齢の引き上げスケジュールを前倒し すべきではないかと考えます。  (3)に「支給率引き上げの抑制」でございます。賃金スライドも行われております けれども、ただちに廃止すべきではないか。給付額の引き上げについて言えば、大幅な 物価の変動があった場合にはもちろん仕方ございませんけれども、賃金スライドを廃止 した場合でも、年金を引き下げるのではなしに支給率を抑制するだけなのですから、表 現そのものも、年金を下げる、下げるというのではなしに、伸びを調整するのだといっ た言い方で、その世代の了解をとっていってほしいなといった気がいたします。  さらに、(4)「別個の給付」の問題でございますが、支給開始年齢の段階的引き上 げに伴いまして、現在60歳から64歳の間については、65歳以上の年金給付には影響を及 ぼさない別個の給付を支給することになっておりますが、この年齢階層について言いま すと、国民年金と同様に繰上げ支給の考え方を取り入れまして、60歳から受給した場合 には、生涯減額されるといったことも考えられていいのではないかという気がいたしま す。  今ただちにやっていただきたいこと、考えていただきたいことを申し上げましたけれ ども、もとに戻りまして、概して厚生省の5案等の考え方は、その入るを量るといいま すか、収入を増やすといいますか、増収に力点を置いて、あのお話が成り立っているよ うな気がしてなりません。それよりも、まず出ずるを制すということ。つまり、いろん な努力をもちまして、行政改革も含めまして、出費がどの程度抑えられるのかというこ との方にも重点を置いていただければありがたいなと、このように考えております。  次に、公的年金の問題を離れまして、「厚生年金基金のあり方」についてお話しをさ せていただきたいと思います。  公的年金につきましては、最後の切り札、税金でもって補填するという最後の切り札 が残っておりますけれども、企業が持っております厚生年金基金にはそのような切り札 はございません。これは下手をするともっともっと早く社会問題化する懸念大というふ うに考えております。  すなわち平成8年3月の全国の企業が持っております厚生年金基金の43%が既に不足 金、赤字と申し上げてもいいものを抱え込んでおりまして、8年3月の決算でそうでし た。それから2年です。9年3月の数字はつまびらかではございませんし、10年3月は わかりませんけれども、ほとんどの年金基金は膨大な赤字を抱え込んだと私は推定して おります。これはどういうところに原因があるか。既に御承知のとおりでございますけ れども、公的年金における少子化が問題にされてますのと同じように、国内における従 業員数の減少でございます。受給者は増える、現在在籍の社員は減るという状況から、 労務構成の悪化による不足金が発生いたします。  さらに2番目には、現在非常に問題になっております株安の問題でございます。年金 資産というのは、生保や銀行等を通じまして、程度の差こそあれ何らかの形で金利を得 るために株にお金をかえております。ところが現在の株安でございます。このことによ って、また膨大な赤字を抱え込んだ。言うなれば、その不足金を抱え込んだというのが 現状ではないか。しかしながら、考えてみますと、第1番目の労務構成の問題、つまり 社員の減少は、例えばメーカーであれば、海外へ生産基地を移したとかいろんなことを 企業が考えてやったことです。だから、これは企業が責任を持たなければいけません。 また、株安の問題につきましても、これは個人でもそうでございますし、企業でもそう ですし、言うなれば、全体が被害を被っておるわけですから、これも企業ががまんいた しましょう。  3番目の原因でがまんできないというのが利差損の問題でございます。御承知のとお り、すべての基金は5.5%の利回りを前提に組み立てられております。ところが現在の利 回りというものがそんなに高いものが得られるか。御承知のとおりの超低金利時代でご ざいます。そういった中で、仮定の話でございますが、100億円の準備金を必要とする基 金があったといたします。2%にしか利回りが回らなかったとします。毎年 3.5%ずつ つまり3億5,000万円の利差損分赤字を抱え込んでいくわけです。3億5,000万円、3億 5,000万円、3億5,000万円、既に3年です。したがって、私が膨大な赤字があるはずだ というふうに申し上げましたのは、これだけでも10億5,000万円、その次の年は14億円 その次の年は17億5,000万円、その次の年は21億円と、6年後には100億円の基金でも21 億円の赤字を抱え込んでしまいますよと。 この問題については、私どもとしてはどうしようもないということを申し上げてもい いと思うわけでして、こういったことを考えますと、次の3点について、お考えをいた だきたいということでございます。  第1点は「免除保険料率の見直しと代行部分の返上」でございます。つまり、運用利 率が予定利率を大幅に下回る状況下においては、本来国が負担すべき代行部分にかかる 利差損を企業が負担していくことになっております。免除保険料率の算定方法をいま一 度見直していただいて、基金に残る金額をいま少し増やしていただいて、さらに代行部 分のみを返上するという方途についても至急に考えていただかないと、恐らくこの負担 で倒産する企業が出たりということによって、早期に社会問題化してくる可能性が十分 ございます。  2番目に、「年金給付水準の柔軟な見直し」の問題でございます。年金給付水準の引 き下げは、幾つかの条件を満たせば可能だというふうになっておりますが、行政による 裁量の部分が多くございまして、実質的には非常に困難でございます。例えば、その条 件に挙げられていますことは、母体企業、つまり親企業、基金の親の企業が債務超過に 陥った場合です。債務超過といったら倒産寸前ではないか。そこまでいかなければ、支 給水準を引き下げることが許されないのか。倒産になる直前までは許さないのかといっ た感じがいたしますし、およそ大抵の年金基金は大企業が中心でございますので、およ そ三十数年前にこの基金は設立されておりますが、その設立の条件に、現在では代行部 分にプラスアルファをつけなさいということがルールになっております。プラスアルフ ァはいいのですけれども、三十数年前には年金基金についてはかなり見通しが明るかっ たものですから、現在は設置の認可基準は10.1となっておりますが、その当時は、11と か13といったプラスアルファを大盤振る舞いした基金がたくさんあるわけです。この水 準を下げようとして現在なら認可される10.1まで下げようということを考えると、今言 ったようないろんな条件が付加されることによって実質的には極めて困難です。ですか ら、こういった問題については、最低限、労使合意をすれば、認可基準を上回っておれ ば、その水準までは引き下げてよろしいということにするようお願いをしたいものだと いうふうに思うわけでございます。 3番目に、「確定拠出年金制度の導入」の問題でございますが、現在の低金利が続き ますと、現行の確定給付による年金制度は破たんしかねないというより、破たんする基 金が続出する危険性があるということを考えますと、早急に確定拠出による年金設計を 可能にするとともに、労使合意など一定の条件を満たせば、既存の年金制度についても 確定拠出への移行を可能としていただきたいというふうに思うわけでございます。  最後に「将来の年金制度」、これは私はただちにはできるとは思っておりません。し かし、将来こうあるべきではないかと思っている点について、今後の検討課題というこ とで若干触れさせていただきたいと思うわけでございますが、社会保険方式で運営され ております現在の公的年金制度では、保険料徴収の問題、未納者、そういった言うなれ ば、不公平な問題が随分ございます。だから、そういったことを解消するためにも公的 年金にあっては、現在の国民年金と同じように、その水準を最低限度の生活費が賄える だけの国民一律の金額としていただきまして、その財源はまず行財政改革に求められる べきでありますが、足らない分は間接税、消費税で広く全国民から集めるべきではない か。このときには、不公平の問題は起こりませんので、ぜひ、そういった方向も将来は 考えていただきたい、このように考えております。  ちょっと時間が超過いたしました。失礼いたしました。 ○京極会長  どうもありがとうございました。  次に真場さん、よろしくお願いいたします。 ○真場氏  連合大阪の事務局長をしております真場でございます。  年金審議会には労働側からも3名の方が委員に入っておられます。私ども組織であり ますから、この年金問題については組織内議論をして、一定の政策、方向性をお互いに 確認しながら、まとまった形で対応していくというのが1つの原則になっておるわけで ございます。したがいまして、これから、まだまだ連合的には内部討議をしていくとい う段階にございますけれども、今まで出されているもの、あるいは私どもも考えておる 内容について申し上げたいと思います。  冒頭に向山さんも言われましたけれども、私たち勤労者も、12月に年金審議会に提出 をされました「年金改革・5つの選択肢」というものにつきまして、それに先立ってマ スコミでも取り上げられましたけれども、大きな波紋及び国民的な不安といいますか、 こういったことが広がったのではないかというふうに思います。  今、国の大変な財政危機、また高齢化社会を迎えてどうなるのだということで、老後 の生活不安が非常に大きな問題になっている。そこに加えて一層の不安を加速させたの ではないか、こういうようにまず思います。  老後の生活保障のあり方については、十分な論議と国民的なコンセンサスがぜひ必要 だというように思っておりまして、選択肢として出されましたけれども、聞くところに よりますと、今後、年金審では、試算例として扱うというふうに集約されたと聞いてお りまして、年金問題のこれからの論議に、この「5つの選択肢」が枠をはめることのな いことにひとつ心がけていただきたいと思っております。  以下、レジュメにも書いておりますが、もう既にいろいろ議論されておる内容もあり ますが、ごく簡単にそれらについて触れたい。したがいまして、21世紀社会の特徴なり 連合が目指しております21世紀社会、そして年金改革という大くくりに3つの点で、前 段の2点はごく簡潔に申し上げたいと思っております。  21世紀社会の特徴としては、私は確実に展望できる特徴点は既に議論されております ように、「高齢社会」、「少子社会」、「女性の社会進出」が確定的な特徴だと思いま す。経済の動向や政治や社会の動向いろいろな要素はまだ不確定要素にありますが、こ の3点はぜひこれからの論議でベースとして抑えておく必要がある、こう思います。  1つは「高齢社会」でありますが、2025年に高齢化率が26%になるとよく言われてお ります。欧米に比して非常にハイスピードだと。その基盤整備が非常におくれていると いうのが日本の現状ということであろうと思います。郵政省が先般行いました個人年金 に関する市場調査によりましても、老後の生活不安を持っている人が73.3%にのぼって おりますし、その不安の最大要因としては、公的年金、企業年金、退職金が期待どおり 受け取られるのかどうかというのがこの中でも71%を占めている。こういうふうになっ ておりまして、したがって、私どもの課題は、生活や雇用、社会保障、バリアフリーの まちづくり、多様な課題に私どもは取り組まなければいけない、こういうふうに思って おります。  「少子社会」でありますが、一番低位で抑えても、ある指標では、2020年に出生率が 1.4というような見通しも出されているような状況であります。この低下の原因がいろい ろあります。女性の晩婚化や非婚率が高いというようなこともありますが、これは総じ て諸外国にもありますが、経済成長に伴う社会現象だということでありますから、その ように受けとめながら、これからの社会のあるべきシステムを検討、深めていく必要が あるだろう。私どもは、女性のそうした特性といいますか、状況を受けて、だれもが安 心して子供を産み育てていく、そして働き続けるられる社会づくりを目指したいという ふうに思っておりまして、厚生省が出されております「エンゼルプラン」、それを一層 拡充をする、あるいは保育対策なども充実をさせていく、こういうようなことに取り組 んでみたいと思っております。  女性の社会進出でありますが、年々これは増えてきておりまして、現在2,000万人を超 えておりまして、約40%という状況でございます。昨年の6月に均等法が改正になりま した。これの一層の定着をはかる。あるいは今現在私どもは時間外、休日、深夜業の男 女共通規制、これを最大の課題に取り組んでおります。これはぜひ実現し、あるいは既 に法律として制定されました介護保険によって、これまで、特に女性に家庭介護という ものが重くのしかかっておりましたけれども、これらからの解放、そういったことで一 層21世紀社会は女性の社会進出が進むだろうというふうに思っておりまして、こういっ た社会の特徴を踏まえながらいろんな努力課題に取り組みたい、こういうふうに考えて いることを申し上げます。  それから、連合は、21世紀社会をどんな社会につくっていくのだというのがあります けれども、端的に言えば、活力ある明るい高度福祉社会を目指していこうというふうに 今政策としても持っておるわけでございまして、この中では、特に社会保障制度につい て重要視をしなければいけない。国民の福祉の充実に伴いまして、負担増というものが 避けられないわけでありますけれども、今日の水準を原則にしながら、さまざまな改革 に取り組まなければいけないというふうに思っております。国民負担の問題は後ほど具 体的な中身で申し上げたいとこういうふうに思っております。  そこで、具体的に年金改革についてであります。連合は既にこれからの討議の中身も ございますが、基本的なスタンスとしては、公的被用者年金について、現在の基礎年金 報酬比例年金から成る現行の枠組みを維持して、退職後の所得保障の柱として、公正で 長期的な安定した制度としていきたいということが骨格でございます。今アンケートを とりながら、6月に集会とか具体的政策をまとめる課題がございますが、これは前回残 された課題ということで、国庫負担率の1/3から1/2への引き上げ、パート労働者 や短期契約労働者へどのように適用していくかという条件整備、あるいは3号被保険者 の問題、さまざまな課題をこれからの討議で集約をしていくということになっておりま す。したがいまして、私どもの現在持っている認識等も出してまいりたいと思いますが これは全体的に合意になっている、あるいはある場合は政策化されておりますが、そう いったことを前提に以下申し上げたいと思います。  まず第一に、政治と行政がなすべきことをきちんとやることが1つは先決ではなかろ うか。その1つに、国民年金の空洞化対策というものがあろうかと思っております。現 在、国民年金の保険料について、1,900万人のうち330万人が免除をされて、そして200万 人が滞納している。未加入が推定で200万人、こういうふうに押さえられておるわけでご ざいまして、これらをどうするのかということをまずきちんと政治と行政がやるべきで はないかというふうに思っております。 具体的にどうしたらいいのかということで、連合が1つの考えを示しておりますが、 1つは未加入、未払者について、個人年金契約にかかわる保険料への生命保険料控除の 適用を外していくと。また、これは非常に難しい課題であろうと思いますが、連合が言 っておりますのは、だれしも等しく、いろいろ資格を取得していますが、一番広がって おります運転免許証の取得なり更新時に、あるいは区役所、市役所等で発行する印鑑証 明の発行時に、保険料を納めたという納付領収書の提示を義務づけるというようなこと も一考していいのではないかというような考え方を示しておるわけでございまして、要 はどうきちんとみんなが公平に払っていくか、支払い者を増やしていくか、こういった ことを怠ってはならないのではないか、こういうふうに考えておるところでございます あちこち行くようですが、2番目に高齢者の雇用対策でございます。先ほど向山さん も言われておりましたが、2013年に65歳に支給開始年齢が段階的に引き上げられるので すけれども、定年と年金支給のずれに勤労者は大きな不安を持っておるわけでございま して、こうした不安あるいは空白期間が生じないような多様な就労形態での継続雇用と いう課題が、前回決まった以降から大きな課題になっておるわけでございます。今、現 実を見まして、団塊の世代が高齢化して、2004年時点で60歳から64歳の人口が100万人増 えて860万人になると。この中で働く意欲を持つ人が500万人労働市場に参入をしてくる ということでありますから、「65歳現役社会」というものも今行政的には提起をされて おりますが、現実は雇用の面を見ますと、一部の人だけが再雇用制度あるいは雇用の延 長を利用していることになっている現状でございまして、ぜひ継続雇用、そういった雇 用の問題に早急に取り組まなければいけない。このところを重要視しなければいけない 現在60歳定年、今年4月から法的にも完全になるわけですが、これまでの現状を見ても 早期退職といいますか、60歳定年となっても、その前に退職する人たちが、リストラも 含めて非常に率的には多い現状が出てきておるわけでありまして、60歳定年とそれ以降 の65歳までの雇用対策が直近の課題だと、こういうふうに思っております。  次に女性労働者でありますが、今から申し上げますのは、連合的に完全に意思統一と いうことにはなっておらないことを前提に、特に女性労働者の中でいろんな議論がござ いますが、ほぼ一致点ということになっておりますことについて、全体に広める努力は これからの課題ですが、そういう前提で申し上げたいと思います。  先ほど女性の社会進出を述べましたけれども、現行の年金制度は、男性が社会労働の 中心であったということを前提に出発し、今日に至っているというふうに思っておりま して、これは実態に合わなくなっているのではないかということでございます。負担増 の問題がいろいろ言われておりますが、負担する人をどう増やすかという議論をぜひす るべきではないかということでございます。そして、将来的に所帯を単位とした制度か ら、個人を基本にした制度に変革をしていく、見直すことが必要なのではないかという ことでございます。  3つほどございますが、パート労働者、短期契約労働者、女性の進出部分の多いとこ ろでございますけれども、年金の適用対象にすべきではないか。  2つ目に、3号被保険者の問題がいろいろ議論がございます。単身者あるいは共働き 夫婦、自営業者との妻との間、非常に公平を欠いている。したがって、1号保険者と同 じ扱いにすべきではないかという点であります。  そして、遺族年金の問題もございますけれども、個人を基本とした年金権というもの が確立をした場合は、それもなくしてもいいのではないか、これらの考え方が、特に女 性労働者を中心に合意形成といいますか、そういったことに至っていることも申し上げ 全体化するにはいろいろな議論があろうと思いますが、そういった一端を申し上げてお きたいと思います。  あと1点だけ、レジュメにないのですが、特にこの機会に強調させていただきたいと 思っておりますのは、住宅融資制度にかかわりまして、年金福祉事業団を解体をする、 大型リゾート施設から撤退するのみではなくて、住宅融資事業もなくするというような ことが議論をされているやに聞いております。しかし、住宅融資は、私どもサラリーマ ンにとりましては欠くべからずものということになっております。公務員の共済年金に は住宅融資制度があります。厚生年金に加入する民間労働者だけが外されるというのは ここにまた労働者間に不公平が出るわけでございまして、ぜひ住宅融資制度については 継続をしていくべきである、こういうことを1点強調させていただきます。  最後になりますが、こういうふうに年金を見ますと、負担増、不安感いろいろあるの ですが、老後生活にとって、医療やさまざまな課題の改革をまず先行させて、それらに 必要な経費をできるだけ負担を軽減していくと。医療改革も不徹底に終わっております し、これからだということでございますが、それらを手がけていく。あるいは介護の問 題は、私どもほのかに、かすかな灯がともったというふうに思っておるわけです。  年金問題を論議をするわけですが、さまざまな社会のそういう改革、負担が軽減され る社会づくり、こういったことをぜひ視点に持って、年金審でも議論いただきたいし、 そのことを特にお願いをしておきたいと思います。要は老後生活を安心して、あるいは 子供が産み育てられる、生涯にわたって人間の尊厳が尊重される、こういう社会に向け てひとつ御努力をお願いをいたしまして、ちょうど時間が来ましたので、私の意見表明 にかえさせていただきます。 ○京極会長  ありがとうございました。  それでは、前に申し上げましたように、ここで一たん休憩いたします。 ○企画課長  再開は3時25分からにさせていただきたいと思います。よろしくお願いをいたします 3時25分に再開をさせていただきます。                  〔休 憩〕 ○京極会長  それでは、審議会を再開いたします。先ほど拝聴させていただきました御意見を中心 にいたしまして、審議会委員の皆様方から御質問や御意見がございましたら、御自由に 御発言いただきたいと存じますが、その前に年金局の方で準備いたしました「5つの選 択肢」という表題のついた文書につきまして、労使双方の有識者の方々から御心配の御 意見をちょうだいいたしております。その「5つの選択肢」という表題の文書をお目に かけるに至った経緯といいますか、その趣旨などについて、審議官から追加の御説明を 申し上げたいということでございますので、委員の方々のお話の前にちょっと審議官か ら御説明をお願いします。 ○審議官  今、会長からお話がありましたように、12月5日に、厚生省の責任で「年金改革・5 つの選択肢」と題する資料を公表させていただいたわけでございます。今、お二方の先 生から、国民に対する脅迫ではないか、あるいは不安をあおるものではないかという厳 しい御意見をいただいたわけでございます。  この資料の趣旨その他につきましては、既に年金審議会の先生方には、12月5日の審 議会で重々御説明をさせていただきましたし、また、ほぼ同趣旨の厳しい御意見もいた だいたところでございます。そういう意味で、審議会の先生には重ねての形になって恐 縮でございますが、本日は今そういうお話もございましたし、また公開の席ということ でございますので、若干のお時間をいただきまして、その経緯なり趣旨を御説明をさせ ていただきたいと思います。  私どもは公的年金制度といいますのは、間もなく迎えます21世紀の日本の社会を維持 していく基盤になるもので、社会全体の財産であると思っております。したがいまして 公的年金制度がどういう形であれ、安定的に維持され、運営されていくというのがこれ からの日本社会の一番の基本だろうと思っております。御承知のとおり、社会は大変流 動的でありまして、人口の要素あるいは経済の要素は、生き物のごとく大変変わってく るわけでございまして、そういう状況の中で、長期的に安定した制度をつくっていくた めに、今はどうしても11年に向けて年金制度改革は必要であろうという基本認識を持っ ております。  そういうことで、この年金審議会も昨年から御議論を始めていただいているわけでご ざいますが、今の年金制度は御承知のとおり、受給者も大変たくさんになりましたし、 また現実に強制加入の国民全体の皆年金制度でございます。現役の方々にも御負担をお 願いしているということで幅広く国民全体にかかわる制度でございます。したがいまし て、年金改革をするに当たりましては、それぞれのお立場お立場で、制度改革に向けて の関心、物の見方は大変異なってくるわけでございます。  その中でできるだけ国民的な合意、コンセンサスをどういうふうにつくっていくか、 国民的なコンセンサスの中で制度改革をやっていく、これが一番重要なことではないか というのが基本認識でございます。手順としてはそういうことをぜひ重視をしなければ ならないだろうと思っているわけであります。  そう考えますと、既に年金審議会では一巡目の御議論をいただいておりますが、大変 幅広いテーマを御議論していただいて、それなりのお答えをいただいていかなければな らないということでございます。一通り12月5日には「論点整理」ということで、大変 広範なテーを論点としてまとめていただいております。  それで、これからさらに具体的な議論の展開を、年金審議会でも、あるいは国民全体 の中で幅広くやっていただくためにも、もう一つ踏み込んだ具体的な資料が必要なので はないか。それぞれに大変重要な資料というのは必要になってくるのでしょうけれども 特に年金制度と申しますのは、中長期にわたっての「給付と負担の均衡」をどう図るか が、これがすべてではございませんけれども、基本的な大枠になることは事実でござい ます。国民的コンセンサスをつくる場合に、あるお立場からするとできるだけ給付が厚 い方がいい。あるお立場からするとできるだけ負担が少ない方がいい。そういう気持ち なのは当然なわけですが、大枠としての年金制度を維持し運営していくためにそういう 形でいくわけにも実はいかない。どういうふうにしていくかというようなことで、特に 給付と負担に関して、具体的な資料、データ、数値をまとめまして、次の段階の議論を していただくための検討の素材という意味で「年金改革・5つの選択肢」と題する資料 を提示をさせていただいたということでございます。  年金審議会の中でも、この表題のつけ方に配慮が欠けておるという御指摘もいただき ました。そのとおりかもしれませんが、趣旨はそういうことで、決して、今回の年金改 革というのは、この5つの選択肢の中で、A,B,C,D,Eがあって、その中のどれ かを選べば、事が足りるという話では全くありません。幅広い年金改革の議論をお願い したいと思いますし、特に給付と負担の大枠に関しての議論の素材という意味で、これ を提供させていただいたわけでございます。  それから、またそういう趣旨で、厚生省として、この具体的なA,B,C,D,Eの うちのどれがいいとか、あるいはこの5つの選択肢の中に議論を集約をしていってしま おうというつもりは毛頭ございません。あくまでも、これからの幅広い国民的な議論を 展開していただくための素材として提供させていただいたということでございますので ぜひ、そこのところは御理解をいただきたいと思います。  そういう趣旨で、これからも国民のコンセンサスづくりという観点から、間もなくで すけれども、「年金白書」というようなものもまとめて刊行したいと思っておりますし また、有識者調査あるいは総理府の世論調査などいろいろな方法を使いまして、国民の 方々に御議論をいただき、またその御議論をまとめ上げていくという努力をしていきた いと思っております。  また、御意見をいただくという観点からしますと、既に厚生省のインターネットで、 直接国民の方々の意見もいただけるような窓口を開いているということも併せて御報告 したいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。 ○京極会長  そういうことでございます。それでは、先ほどのお三方の御意見につきまして、審議 会の委員の皆様方、どなたからでも御自由に御質問、御意見をお述べいただきたいと存 じます。 ○神代委員  神代ですが、八田先生に2〜3お尋ねさせていただきたいのですが、先生の御議論は 積立方式にするという点では、いわゆる民営化論と共通の基盤だと思いますが、ただ、 積立方式で社会保険方式でいこうという点では、いわゆる民営化論とは少し違うのだろ うと思います。 ○八田氏  民営化の前にやることがあるというわけです。 ○神代委員  そういうことで大変興味深く拝聴させていただきましたが、少しよくわからない点が 幾つかありますので、簡単なことからまず伺いますが、先生のレジュメの3のaの、保 険料率の一律化」というのは、これは一挙に28.6%に上げるという意味ですね。 ○八田氏  そのとおりです。 ○神代委員  今、17.35 %ですか。 ○八田氏 そうです。 ○神代委員 先生のも標準報酬方式で、労使合わせて17.35%を28.6%に一挙に上げる、こういうこ とですね。 ○八田氏 そのとおりです。 ○神代委員 そうすると早くたくさん積立金を積みますから、後の方に行って、世代間の不公平が 少なくなると。 ○八田氏 しかも保険料を払える勤労世代の数が非常に多いときに上げる、そこが肝心なんです ね。 ○神代委員 そこがポイントですね。 ○八田氏 後で上げたのでは勤労世代の数が非常に少ないですから、間に合わない。 ○神代委員 そういうことが現実に政治的に可能であれば、非常にこれはすばらしい1つの選択肢 だと思うのですけれども、この間、ほんのわずか社会保険料を上げただけでも、相当マ クロ経済にマイナスの影響があったという説もありますし、仮に 17.35%から28.6%に 11%ぐらい一挙に上げた場合に、貯蓄が増え過ぎるとか、あるいは消費に物すごいマイ ナスの影響が出るとか、そういうマクロ経済へのマイナスの効果も相当大きいのではな いかと思いますし、今でもこれから自主運用で大変ですが、そんなにたくさん集めて、 どういうふうにうまく運用できるのか。運用の問題も少しひっかかるのですけれども、 運用の方は切り離してもいいですが、そこが第1ですね。要するに政治的にフィージブ ルかということと。 ○八田氏  23.5%も不可能ですか。 ○神代委員  と思います。政治的には非常に困難だと思いますが、政治的なフィージビリティーの 問題と同時に、マクロ経済的なマイナスの効果が大きくなり過ぎないかということです ね。  もう一つは、先生のは社会保険方式ですから、世代内の社会保険としての所得再分配 は維持されるということだと思いますけれども、世代間の助け合いはやめるということ ですね。 ○八田氏  私は両方ともやめたらいいと思います。 ○神代委員  両方ともですか。そうすると民営化とほとんど同じですね。 ○八田氏  そこだけお答えしましょうか。 ○神代委員  所得再分配というのを年金ではやめろということになりますか。 ○八田氏  そのとおりです。 ○神代委員  もう一つは、完全積立方式にした場合に非常に気になるのは、将来エネルギー問題そ の他で不測のインフレーションがないとは言えないと思うんですね。設計する場合にそ ういうことはやはり考えなければいけないと思うのですが、金利の変動があるから、昔 と違うから、金利の変動でカバーできるという説明が、よくそういう御主張の際には前 提になっているのですけれども、物価が上がれば、金利が上がるのは確かですけれども それでカバーできるのは、ある意味でフローの単年度の部分はそうですが、過去に積み 立てた分のインフレによる目減りはカバーできないと思うのですが、その辺はどういう ふうに考えているのでしょうか。  本当を言うと、先生の最初の方の28.6%とか23.5%という御説明は非常にわかりいい ですが、最後にお示しになった表との関係がよくわからないのですが、これは後でご本 でもよく読ませていただきたいと思います。 ○八田氏  よろしいでしょうか。 ○京極会長  どうぞ。 ○ 八田氏  大変いい質問をありがとうございました。 第1に、積立方式と民営化ということですが、民営化するという場合に、例えばオラン ダのような方式の場合には、基礎部分だけでなくて報酬比例部分についても強制加入な んですね。日本の自動車保険みたいなもので、民間のどこで運用してもらうかは選びな さい。しかし、強制加入ですよというわけです。私は、日本で民営化するにしても強制 加入させることは続けなければならないと思っています。そういう強制加入の必要性と いうのは、くわしくは申しませんが、逆選択という年金固有の問題があるからだと思っ ています。  強制加入は前提とした上で、オランダのような民営化にして自由に選びなさいよとい うふうにした方がいいのか、それとも国が一元化した方がいいのかというのは簡単では ありません。例えばMITのピーター・ダイヤモンドさんは、ごりごりの規制論者でも 何でもないのですが、年金には大変な規模の経済があると、実証的な根拠に基づいた主 張をしておられます。国民一律に同じやり方ですると非常に事務費が安くなる。宣伝費 もかからない、だから、こと年金に関しては国営の方がいいかもしれないというような 議論もある。国は、当然運用が下手なわけですね。だけど、それを補って余りあるくら いに事務費の節約があるかもしれない。したがって、これはいろんな形で議論されるべ きことだろうと思います。しかし、どちらにするにしても、民営化するにしても、そう でないにしても、強制加入は必要だし、自分が将来もらうものに見合ったものを払うと いうことが必要だというのが基本的な考え方です。  その上で、先代に対して支払うものがどれだけなのかということを我々ははっきり認 識した上で払いたいということですね。  第2に、私は、23%にすればあとの世代はかなり楽になりますと言ったわけですが、 政治的に23.5%は無理ではないかという御意見があった。しかし23.5%でも政治的に無 理だということは、将来の人には34.3%払えということです。今こういう率を決める人 たちは、ここのメンバーの方を見てもわかるように、年金から、まさに得をして、棚か らぼた餅をもらう世代の方達ばかりです。今、権力を持っている方達が23.5%でも無理 だよというのは、要するに将来の若い人たちはまだ政治力を持ってないから、そいつら に押しつければいいのだよという議論でしかない。したがって、冷静に考えれば、今つ らい選択をするしかないと私は思います。  第3に、積み立てをどうやって運用するかです。これだけ日本は国債を抱えているわ けですね。したがって、国全体で見たら、国は民間に対して大変な負債を負っている。 一部で積み立てがあるということは、まさに全体で見れば、将来の世代の国債に対する 利払いの負担を減らすことにほかならないので、決して運用が難しいなんていうことは ない。  第4に、景気に対する対策。これは5年ごとに財政再計算をやるというようなことが ありますが、何も年金を最優先する必要などない。景気対策は、大切です。余り景気が 悪ければ、1〜2年延ばすというようなことをやってもいい。もし、そういうことをや っているとわけがわからなくなるというなら、5年ごとにきちんと上げて、そのかわり 同時に減税を期間限定でやる。それは厚生省の権限を超えているけれども、それはマク ロ政策当局と一緒にやらなければいけないことだと私は思います。  第5に、再分配のことですが、私は厚生年金のようなもので再分配をするというのは よくないと思うのです。それはなぜかというと、賃金に基づいて、賃金をたくさんもら っている人から少ない人に渡すというのは変な話だからです。賃金は少ないけれども、 資産所得はたくさんもらっているという人はいっぱいいるわけですね。だから、私は再 分配というのは非常に大切だと思いますが、それは消費や所得、もっと一般的な生活水 準を示す指標に基づいて行うべきで、それは一般会計で行えばいいと思います。一方で 年金自体をなぜ持つかということは、逆選択だとか生活保護へのモラルハザードを防ぐ というような理由からです。 したがって公的年金は、年金を市場でやっていた場合の姿をまねするような形にすべき だと思います。つまり、再分配は特に必要ないと思います。  その意味では、先ほど真場さんがおっしゃったような、世帯を中心にする考え方から 個人を中心にする考え方に変えていこうというふうなことに大賛成です。  第6に、先ほど向山さんがおっしゃったことに関して言えば、年金をたくさんもらっ ている人に対してきちんと課税して、その人たちに応分の所得税を払ってもらうという ことは必要だと思います。その場合には、所得ということが基準になりますから、ある 程度公平な指標になると思います。しかし賃金が多かった人のを減額するとかというの は、ほかの資産所得やなんかのことを見てませんから、私は余りいい方法ではないと思 っています。  第7に、こういう積立方式にすると、インフレのときに不安ではないかという御意見 があった。実は、積立方式に近づけるということは、今の負担をもっと大きくして積立 を増やそうということなのです。将来インフレが心配だから、賦課方式を堅持して今の 負担を小さなままにして積立てないでおこうというのはどうも話が合わない。要するに 将来が不安であればあるほど、今きちんと積み立てておくべきで、積み立てておくとい うことは、むしろ将来に対しては非常に注意深い方策です。インフレが起きるかもしれ ないから、今一切積み立てないようにしようよという理屈は、私にはよくわからない。 しかも積み立てないというまさにそのことによって、将来の若い世代が年金というもの について信頼を失うということになったら、インフレがあろうがなかろうが、困った事 態になるのではないか。我々が払ってきた保険料に、ある程度関係を持ったような給付 がとれるという事態すら保障できなくなってしまうかもしれない。  実は、アメリカでは日本のような立派な厚生年金はありません。アメリカの年金制度 は、国民年金に毛の生えたようなものですから、一般のサラリーマンは企業年金に頼っ ているわけですが、この企業年金が今確定拠出にどんどん移動しつつある。私も大学の 教師ですから、大学の教師が入るTIAA−CREFFという企業年金に入っておりま したが、これは四半期ごとに、あなたの積立額は今幾らだよとか、そして、もし今やめ たらば、これだけ年金がもらえるよとか、今の調子で稼いで60歳で引退したらこれだけ くるよということなどがちゃんと報告が来る。それから、投資信託で運用しているわけ ですけれども、株の投資信託で運用するか、債券の投資信託で運用するか、その割合を 決めろと。私はリスク・テイカーですから、全部株ということでやっていましたけれど も、そういうことで非常に透明である。 この制度の下で、インフレがあることが心配だなんていう人は聞いたことがない。  実際カーター政権のときは利子率20%ぐらいになりましたからね。だから、これは利 子の変動によって、我々はリスクを背負わなければいけないのですが、人口の変動や少 子化、そういうことがもたらすリスクに比べたらうんと小さい。しかもちゃんと見える リスクなんですね。今の賦課制度というのは、はっきり将来、先ほどお見せしたような 受給率の格差を大きく生むものだ。インフレに関しては、自分の貯蓄と同じことなんで すから、これはもし足りなければ、そのときに保険料を増すというようなことがどうし ても必要になるだろう。 私はインフレは問題だということはないと思います。  第8に、最初にお示した28.6%とか23.5%というのは、どういうシミュレーションだ ったかと申しますと、2060年の時点で、現行方式でやった場合と同じ積み立てが残る。 そういう制約をかけて保険料率を一律化したり、給付を下げたりしたシミュレーション です。  最後の表でお見せしたものはどういうものかというと、今の23.5%とかそういうのを 少し保険料率を上げてみる。そうすると2060年には現行制度の下での積立金よりはるか に大きな積立金残高になって、最終的には、これは非常に遠い将来ですけれども、完全 積み立てが達成される。そういうやり方であります。したがって、多少保険料率は上が っているわけです。  第9に、厚生省が「5つの選択肢」というのをお出しになったことに関しては、私は 大変いいことだったと思うのです。今までは情報をずっと隠してきた。そうするとこっ ちは不安になるわけです。本当はどうなっているのだろうと思う。情報をはっきりさせ てもらって不安になるはずがない。 ところが先ほど向山さんがおっしゃったことは、確かに理解できるなという面があった というのは、情報公開がまだ不十分なのです。まず、この5つの選択肢では、具体的に どういうふうに給付を切り下げたら、こういうA案、B案、C案になるか書いてないん ですね。 大体こうやればと書いてある。そうすると何か不安になるんですね。給付の削り方は相 当残酷なことをやられるのではないかと。 ところで先ほど向山さんが御主張になったことで、私、大賛成のことが2つありまして それは繰上げ支給をしようということと、支給額引き上げの抑制をしようということの 二つです。支給額の引き上げを抑制をしろといわれるのはネットスライド制を一時停止 ということになりますし、繰上げ支給は先ほどの年金支払い開始年齢の弾力化というこ とと全く同じことです。  実は御提案になっていることだけやれば、B案が達成できるわけです。だからB案の 給付の削減の方式が書かれてないから我々は不安になる。むしろ情報が足りないことが 不安なので、情報をきちんと書いていただけたらば、ああ、何だ、こういうことかとい うことになったのではないかと私は思います。 ○神代委員  今、最後におっしゃったところは、前回の審議会で私も重ねて御質問した点だったの ですけど、給付乗率を下げて、計算上下げるだけと、そういう試算だったはずで、違っ ていたら訂正します。給付乗率のところを一律10%カットとか20%カットとか、そうい うやり方でしょう。 ○審議官  お話しが出ましたのでもう一度御説明をさせていただきますと、A案とE案を除きま して、現行の枠組みの中で、将来の負担を抑え、給付総額を抑えるというのがB案、C 案、D案というものですが、最終保険料率を抑えていく段階に応じて、2025年時点、将 来の給付費総額をB案なら1割ぐらい抑制する、C案なら2割ぐらい抑制する、D案な ら4割ぐらい抑制するということで、総額なわけですね。そこが国民の方から見ますと 大変にわかりにくいところがあります。  総額を抑制するというのはいろんな方法があるわけで、それはまさしく参考資料で、 具体的な手法ということで、これはどれをとるということではなくて、たくさんの例示 をお示しました。例えばB案で給付総額を1割抑制するといった場合には、どれとどれ を選択するかはいろんな考え方があるわけで、そこもひとつ御議論をしていただきたい ということで、あえてB案を達成するためには、これですというようなことまで示さず に、それはそれでまた手法の中でどれとどれを選ぶかというのを御検討してくださいと いう意味で、素材提供させていただいた。  ただ、それだけにしますと、大変にイメージがわからなくなりすぎるところがありま す。そういうことで、仮に年金の中で個々の年金額、すなわち給付水準そのもの、1人 1人の年金額をどうするか。給付総額を1割、2割、4割抑制するというのを1人1人 の年金額を1割、2割、4割抑制するというような手法だけで実現をするといった場合 にはどういう年金額になるだろうかというのは、それぞれB案、C案、D案の点線で囲 った参考として、23.1万円というのが20万幾らになります、あるいは18万幾らになりま す、13万幾らになりますということで、イメージとしてお示しをしたということでござ います。 ○都村委員  都村と申します。八田先生にお伺いいたします。大変明快な分析に基づいて御提案を いただきまして、とても興味深く拝聴させていただきました。2点お伺いしたいのです けれども、世代間あるいは世代内の所得再分配を緩和するというか、もっと少なくする ということについてですけれども、イギリスにおいて、所得比例年金を導入した背景に あった動機というのは、ティトマスのいうトゥ・ネーションズ・イン・オールドエイジ それをなくすことでした。  所得比例年金のメリットというのは、高齢者の、イギリスで言えば、補足給付、日本 で言えば、公的扶助への依存を最小限にすることだと思います。所得再分配があるとい うことが低所得の人に及ぼす影響はきわめて大きいと思います。  日本でも年金制度等の充実によりまして、高齢者の母数は非常に増えているのに60歳 以上の保護率は減少が非常に著しくて、昭和45年には32.10/00であったのが、平成8年 には14.60/00になっています。1,000人のうち32人の高齢者が生活保護を受けていたのが 今は14.6人ということで、17.50/00ポイントも下がっています。 世代間あるいは世代内の所得再分配を強く緩和するとか、なくすことによって現行の所 得比例年金による保障に匹敵することができるのかどうか。その点をどのようにお考え になるかということです。社会保険とか社会保障で効率性とか有効性を重視していくと いうことに対する努力を怠らないことはとても大事だと思うのですけれども、そのほか 権利性の問題や公平性の問題もあると思います。ティトマスが指摘したような、高齢者 が2つに両極化するというか、分かれる可能性はないのかどうかということがお尋ねし たい第1点です。  それから、もう一点は、現行制度の大きなフレームを前提としてお考えなのかどうかと いう点です。年金財政の支出を減少させる、あるいは収入を増やすという点では、それ に影響を及ぼす方法としてはほかの方法もあるわけですね。年金受給者を税制上どう取 り扱うかということがあると思いますし、収入を増やすという意味では、拠出ベースを 拡大するということで、高齢者や女性とかその他の人たちの就労のあり方、例えばパー ト就労のあり方をどうするかとか、あるいはできるだけ多くの人が生涯の長い期間働け るような仕組みにするとか、そのためには社会保障とか税制を就労に中立的なものにし ていく必要があるのではないかと。言いかえますと、経済の担い手としての女性とか高 齢者に対する新しい視点を導入するということや、年金制度と関連施策との総合化とか 連携というようなところについてどうお考えなのか。その2点についてお伺いしたい。 ○八田氏  2番目の課税ベースをなるべく広げるべきでないかとおっしゃることに全く賛成でし て、先ほども申し上げましたが、真場さんが御提案になった、世帯ベースから個人ベー スに変えていく、それからパートなども含めていくという御提案に全く賛成です。 第 1の世代内再分配のことですが、今おっしゃったように、年金制度が充実するに従って 日本の生活保護を受給する老人の世帯数は急激に減ったんですね。これは非常にかがや かしい成果だと思うのです。これを多少皮肉っぽく言うと、生活保護の制度を用意して いる国では国民年金制度がなければならないので、そのあたり前のことが行われただけ だといえます。 生活保護制度はある国で、もし国民年金がなかったら次のようなことが起きます。比較 的低所得の人が老後はきちんと暮らせるようにまじめに貯蓄した。そうして考えてみた ら、これから老後に月々使える金は、ちょうど生活保護と同じ額だったとしましょう。 そうなると何のために貯蓄してきたのだろうということになる。これでは退職直前に世 界一周して全部使ってしまって、それから生活保護をもらうということになってしまう これよりうんと所得が高い人ではそういうことはないですけど、ぎりぎりのところでは まあ、まともな人ならば使ってしまうわけですね。  そうするとそこで大変なモラルハザードが起きる。したがって、生活保護という制度 を用意するなら、無理やり強制貯蓄をさせる必要がある。若いときに、最低水準の老後 資金蓄積のために強制貯蓄してもらう。それが国民年金だと考えることができます。し かし、国民年金には再分配効果はないわけですね。これは、ただ生活保護を利用してし まおうという気持ちをなくさせるための年金です。したがって、そういう再分配のない システムを持っておくというのはいいことだ。  それから、報酬比例の部分については、特に生活保護とかそういうところは全然関係 ないところですから、もっと所得の高い2階建てのところの話ですから、ここでも再分 配を入れる必要は年金ではないと思います。それは先ほど申し上げたように、賃金とい うのは、所得や消費に比べて再分配の基準として劣るものだからです。 では、先ほど都村さんがおっしゃった一番所得の低い、生活保護を得るか得ないかとい うところで、本当に再分配が不必要なのだろうか。例えば国民年金のところで不必要な のだろうかということになりますと、私は課税ベースが賃金ではなくて一般的なもので あるならばいいと思います。例えば所得税を取って、それを国民年金の保険料のかわり にして、それから国民年金を支払う、それはいいと思います。そうして再分配にはなり ますが、課税のベースが所得税になります。これは消費税でやってもいいです。消費税 でもいいというのは、今はとにかく国民年金の保険料が一括税ですから、全く累進も何 もあったものではない。これ以上、逆進的にできないぐらいに逆進的にできているから 消費税でも現状よりは所得分配を改善するということです。 ただし、そういうことをして、1階建てのところを一般財政化する場合でも、そこはや はり積み立てないといけないと思います。1階のところも、例えば消費税でするならば 今、給付するのに必要な額よりももっと取らなければいけない。そうしてためておいて 後で今の若い人たちが年取ったときに、国民年金の十分な財源になるようにしなければ いけない。だから、国民年金についても積立方式の考え方というのは私は必要だと思い ます。 それから、もう一つ必要なのは、今、そういう消費税などを取って、将来の年 金の財源にするなら、今のお年寄りにはそれなりの控除を何らかの形で与えなければい けない。それは年金の支給において何らかの考慮をしなければいけない、そういうふう に思います。 ○貝塚委員  貝塚でございますが、八田さんにいろいろ質問が集中しているので、私は遠慮して、 八田さんのメッセージをまとめてみますと、厚生省は役所の枠がありますから、今まで の制度の中でどういうふうに変えたらいいかを考える。だけど、制度も少し新しい制度 を入れる。だから、民営化というのは新しい制度、極端なケースですが、しかし、八田 さんの言われたことは、高齢化社会を乗り切るために別のある制度を入れて考えてみた らどうかというのが言われた点の一番重要な点で、やはり積立方式を何らかの意味でど こかで生かした方がいいのではないかと、そういうふうに私は考えたということを申し 上げます。  あとは、向山さんに御質問したいのですが、60歳から65歳の話を言われました。私は 多少いろんなところで議論したのですが、要するに60歳定年というのは大企業ではなか なか延びないと。そこのところは割合と楽観的なことを言われたように思うのですが、 60歳から65歳の間の話はそう簡単な話ではないのではないかというふうに思いますとい うことで、その点いかがお考えですかということが1点。  もう一つは、お答えにくいかもしれませんが、予定利率というのは、今の予定利率は 要するに現実と非常に合わないわけですね。予定利率というのを、今後制度として実際 に運用する側からして、どういうふうにお考えでしょうか。要するに、今までは、平た く言えば、やや硬直的な運営になっているのですが、経済情勢がこんなに大きく変わる ときに、その辺のところは運用者としてどういうふうにお考えですか。2点お伺いしま す。 ○向山氏  まず定年延長の問題です。大企業については進めにくいというか、現在進んでないの ではないかという話ですね。これは定年と雇用延長とでは恐らくかなり違いがあるだろ うと思います。定年延長という場合には、おおむね条件が変わらず行く場合を言います けれども、再雇用あるいは雇用延長という場合には、60歳でもってびしっと賃金も退職 手当も期末一時金も、その織り目をつけるという形の定義が正しいとすれば、区切りを つけるということですが、とりあえずきちんとした定年延長は、これはおっしゃるとお り非常に難しいと思います。  ただ、お話の中で申し上げましたように、労働力がこの日本の現在の少子化現象が続 きますと必ず不足する。労働力を輸入でもすれば別です。労働力を輸入しない限り必ず 不足してくるといった事態は早晩予想される。だから倫理観のある企業も一部そういっ たことを言い出しておりますけれども、65歳を目指してという言い方であったり、事実 そういう制度的なものをつくってみたり、ただし、これは現在のところは大部分の場合 が雇用延長で、定年延長ではございません。  しかし、労働省が言われるまでもなく、やがて労働力が不足してくるから、そのとき に申し上げましたように、焦点を合わせるのはシルバー世代と主婦だと。そこにあると いうことはわかっているわけですから、やがてそういう層が出てくるから、必ず15年後 のときに見れば、定年延長65歳と私は言い切れませんけれども、少なくとも雇用延長程 度で65歳までは働くのが当たり前ではないかという時代にはなっておるのではなかろう かというふうに思います。  2番目の予定利率でございますが、現在の 5.5%という利率がはっきり申し上げて、 昔はともかく今はもう高過ぎるということだろう。だから、私どもでも、証券会社であ るとか信託銀行であるとか生保でお預けして回せる範囲は3.5%ぐらいが上限かなと。こ れは投資顧問会社も一部採用を始めておりますが、とすれば、ただ、3.5%しか回らない からといって、今もとへ戻って、積み立ての金利を全部3.5%で変えていくというふうな ことになりますと大変なことになりますから、5.5%の基準は残さざるを得ないでしょう しかし、支払うときには、支払い額、支給額というのには5.5%の利回りが含まれており ます。ですから、これを例えば3.5%で試算するというふうな考え方もありましょうし、 抜本的に見直すことも考えられます。 一番極端な意見を言えば、企業としてはこういう利差損の問題は耐えられないという ことも一部申し上げたわけですけれども、そういった点については御配慮いただかない と、企業の厚生年金基金は破たんを呼ぶ。ことに小さな基金というか、連合会組織の基 金だろうと思いますが、そういった問題が起こってくるだろうなというふうに考えてお ります。よろしゅうございましょうか、そういうことで。 ○貝塚委員 はい。 ○京極会長 よろしいですか。目黒先生、どうぞ。 ○目黒委員 まず、真場先生の御報告について、これはコメントでございますが、連合の合意では ないがという条件つきではありましたけれども、連合の女性の方たちの御意見として、 第3号被保険者についての見直しが必要であるとか、それから世帯単位から個人単位へ という意見が出ているということをこの場で公表してくださったことは、これからの私 たちの議論に意義のあることだと思いますので、大変うれしく思います。  それから、八田先生の御報告についてですが、大変すっきりしたモデルを提示してい ただきまして、こんなに効果のある方法があるのだったら何で今までこういうものが出 てこなかったのだろうなというふうに単純に感激しておりますが、ただ、いろんな条件 がありまして、例えば、この第3図にもありますように、物価の上昇率が2%とか利子 率が3.5%というような条件があるわけですね。タイムスパンが非常に長期的なものなの で、当然変動が考えられるわけです。 先ほどの意見交換に入ってからの御意見として、例えばインフレ率や利子率というの は、少子化などに比べるとそんなに大したことでないというふうにおっしゃったわけで すが、こういうふうな条件が変わっても、この図に示されたような基本的なパターンは 大幅には違わないものでしょうか。 それから、もう一つ、この計算をされた場合に、人口構成とか就労者構成、そういっ たものが組み込まれているのでしょうか。 ○八田氏 ここでは、いろいろ学者によっては凝った分析をされる方もあるけど、私は厚生省が 基本的な案を出しておられる以上、厚生省と全部同じ仮定でやりたいと思って、就業者 の数なども随分御無理願って、できるだけ数を教えていただいています。ということは 公表されている範囲のを最大限に使わせていただいている。それで、2090年までは、人 口などもデータは一応あります。その後はそれまでの傾向に従って延ばしてあります。 それから、今度一月ぐらい先に日経から出る本に論文を書きますけど、センシティビ ティー・アナライズといって、いろんな与件を変えた場合にどうなるかということをち ゃんと入れておきます。  しかし、ここで申し上げたことは、基本的には確定拠出にしていこうという話です。 もし給付が低くなりすぎて無理ならば、それに伴って、給付と保険料を同時に調整すれ ばすむということだと思うのです。詰まるところは、元来なら市場で、普通の民間の年 金でみんながやればいいことが、逆選択などの理由で市場では民間の年金が成立しにく いから、それをまねしましょうということですから、利率が低かったら、それでサフ ァーせざるを得ないのは当たり前だということですね。 ○坂巻委員  お三方からいろいろ参考になる御意見を伺って、大変ありがとうございました。 幾つか質問があるのですが、まず八田先生に伺いたいのですが、賦課方式から積立方式 ということを徹底していきますと、「世代間の助け合い」という看板をおろさざるを得 ない。自分の責任でやれという結論になりますね。  そうしますと、世代間の公平ということを考えますと、年金の場合は非常に長いスパ ン積み立てるわけですし、幾ら払ったから幾ら自分が年取ったときにもらう、それが同 じでなければいけないということは私はほとんど不可能だろうと思うのですね。貨幣価 値も違えば社会的なインフラも違う。 ○八田氏  さっきのアメリカの企業年金なんてみんなそうです。みんなでもないけど、今、そう いうふうな確定拠出にどんどん移っています。 ○坂巻委員  ただ、公的年金として、世代間の公平ということで、幾ら払ったから幾らもらうとい うようなことを持ってくるということは、私はほとんど不可能ではないかと思うのです ね。そこのところで「世代間の助け合い」というような理念を入れなければ、私は公的 年金は全国民を対象にしたものに成り立たないのではないかというのがまず第1点伺い たいことです。  それから、向山さんに伺いたいのは、所得に応じて年金の給付を制限しろという御意 見でございましたけれども、そうしますと、年取っても一生懸命働いていて、高い収入 をもらう人は年金をやらないよということになりますと、勤労意欲の問題もかかわって まいりますし、さらに高い所得があれば、所得税も取られるわけですね。ですから、む しろ年金の給付ではなく、税制できっちりと高額所得者は対応すべきであって、年金給 付に制限をつけるということになりますと、これは自由主義経済のもとでのシステムで はないのではないかと思いますのですが、その点について御意見を伺いたいところです  それから、真場さんに伺いたいのは、個人単位ということと、女性の年金、3号被保 険者の問題について大変はっきりおっしゃいましたけど、今そこのところが、3号被保 険者から保険料を取るということになりますと、恐らくかなり世論の反発が出てくると 思うのですけれども、連合として、そういう場合に労働者の立場として、それをサポー トできるようなお覚悟があるのかどうか、その辺をちょっと伺いたい。 ○八田氏  先ほど世代間の助け合いでないと公的には難しいのではないかとおっしゃったのです が、世代間の助け合いだから、年金が破たんしつつあるのだと思うのです。要するに後 に押しつけているのです。我々の世代はいいんです。我々は年金で大変なボーナスが出 て大喜びなんですけれども、後でこれのツケを全部払わされる世代がいるわけです、世 代間の助け合いのために。その人たちは世代間の助け合いなんて、いつおれは賛成した んだというわけですよ。だから、これが年金を危機におとしめているのだから、自分の ことは自分でやるシステムに変えましょうということになる。  このようなシステムは、現実に年金制度として動いている。先ほど申し上げたように 私の実体験でもTIAA−CREFFなんて非常にうまくいっている。しかも年金の運 用の実績が本当にいろんなところでほめられています。大変に運用実績がいい。  では公的な年金として見たらどうかというと、年金局の方がエキスパートですから、 もっと御存じでしょうけれども、私の知っている範囲では、例えばオランダ、フィンラ ンド、スイスは、結構2階建てのところは、言ってみれば民営みたいなものですね。強 制加入で自由にやらせている。これはまさに確定拠出で市場収益でやっているわけです から運営可能だと思います。  ただし、1階建てのところまで、積立方式をきちんと意識してやっているところはな いと思います。しかし理屈の上で考えたならば、元来そうすべきだと思うのですが、ほ かの国はそうしなくても済んだ。それは、日本ほどの急激な人口変動がないから、なあ なあにしておいてもやれたのだと思います。日本は急激な人口変動があるのですから、 やはり1階建てのところも一般会計で、消費税なり何なりでやるとしたら、ちゃんと今 余分に取っておかないといけないと思いますね。それを全部使ってはだめだというふう に思います。 ○向山氏  年収で高齢者は掛金を掛けておるのにもらえないということについては反対なり不公 平なりという考え方があるではないか。しかし、それをさらに延長して考えますと、現 在世代間の不公平というふうなことは同じ世代でない。言うなれば、かなり離れた世代 が押しかぶせられておるわけですね。同じ年代に生きた人たちで、しかも、年金という のは、やはり老後の生活が安定するように、比較的に裕福にといえばおかしいですけど 安楽に暮らせるようにという趣旨からでき上がっておるものだと思いますけれども、そ ういうものだとすれば、80になっても90になっても1,000万円の収入がある人は極めて恵 まれた人ではないかと。そういう人はむしろ喜捨してもいいではないかというぐらいの だから、これは年金理論からいうと大変におかしいかもしれませんが、極めて恵まれた 人たちは、そういった事柄についても遠慮して、若い世代の負担を少しでも楽にしてあ げるというぐらいの気持ちがあってもいいのではないかというふうな話でございます。 それから、2点目の税金云々という話がございました。これは年金に限らず、例えば 介護保険などの問題で、介護の恩恵を100%受けてほとんど支出は要らないというふうな 仮に介護保険制度ができたとします。寝たきり老人で、そのうち負担は1割ですという ふうなことになった場合に、これは具体的な金額が出ておりませんからわかりませんが まあせいぜい衣食住のうち、それぞれ払っても、寝たきり老人ですから他に使う道はあ りませんね。お金が残るだけというふうな人たちについての支給制限はどうすべきだと いうふうなものと、言うなれば同じようなもので、極めて乱暴な言い方をすれば、そう いった恵まれた人たちには、例えば介護保険を受けている人は、恵まれているというと 言い過ぎかもしれませんが、生活経費の面ではそんなに出費が出ていかない。というふ うな人たちについても遠慮してもらう。言うなれば、経済的に恵まれた人たちについて は、自分の掛けたものだけれども年金を返してもらいたい。これは積立方式から大変矛 盾するのだけれども、そういった助け合いの気持ちがあってもいいのではないかという ふうな気がするということでございます。ちょっとわかりにくいですが。 ○坂巻委員  所得は税金できちんと対応すれば済むことであって、高い給料もらっている人には年 金もやらない、金持ちはもう自分でやれ、それは返上しろという考え方は、ボランタ リーに出せ、寄付しろとかというのならいいけれども、システムとして導入したならば 制度そのものが成り立たないのではないかと思うのですがね。 ○向山氏  年金的にいうのはおかしいのかもしれませんが、例えば税金の問題で、所得税はきち んと払っているではないか、あるいは累進課税でたくさんの収入がある人はたくさん税 金を払っているではないかということがあるかもしれませんけれども、年金の世代間負 担あるいは高齢者同士の負担というものには、何か日本的な温かい思いやりがあっても いいのではないか。これはそういった意味で言うと、理屈の上で年金を議論する場合に はおかしいのかもしれません。一部そういっためぐまれた人たちについての遠慮論とい うのは、専門委員会でもかなり強く出ました。  これは情緒的な面で、年金の専門家から言わせればおかしいということになるかもし れませんが、そういったこともあってもいいのではないかな。 ○坂巻委員  なるほどね。 ○真場氏  質問がございましたので申し上げますが、最初に、これは私事になるのですけれども 84年に基礎年金の制度が今の形になりまして、私は共働きではないんですけれども、妻 が20歳から結婚してずっと国民年金を払っておったのですね。その当時、私は余り年金 の議論を知らなかったので、84年時点に妻自身が保険料を払う必要がもうないと、こう なって、何でかなというような感覚が1つあったんですね。実際そういう国民年金制度 にみんなが理解を示して、現実に掛けている人たちはそこで変化があったわけですよね だから出発点として、私はベースに、今の3号被保険者がまた1号と同じように掛ける ということに合意づくりがどこまでいくかと言われていますけれども、ベースとしては そういうのがあるのではないかなというふうに思っています。  それから、もう一点は、私は21世紀社会のことを展望する場合に、女性の積極的な社 会進出、これは大いに歓迎しながら、今までのいわゆる配偶者というような考え方から の脱却をやっていく社会ではないか。そういう展望の中で3号被保険者がもし仮に、こ れは全員が全員全部社会へ進出するということにならないわけですが、大多数がそうい う社会の到来という中で1号並みに払うと、こういう展望の中で言っておりますので、 これから連合内のいろんな議論、中央の方も来ておられますけれども、大阪的な女性の 仲間の議論としては、おおよそそういった段階に到達していると、こういうことでござ います。 ○貝塚委員  先ほどちょっと論争がありましたので申し上げます。今、御意見がいろいろありまし たが、やはり税制上年金をどういうふうに扱うかが非常に重要な問題で、ですから税金 をかけるときに、年金を所得に入れて勘定して、どこまでで課税最低限を決めるかとい う税制の問題がこれから非常に大きくなって、年金も昔と違う話があって、そうなれば それなりにうまく処理できるだろうということを申し上げたかった。 ○桝本委員  桝本でございます。本日はお3人の方々、それぞれ大変明快なお話をいただきまして 大変ありがとうございました。私も素人なものですから、幾つか基本的なところで間違 えているのかもしれないのですが、2〜3御質問をさせていただきたいと思います。1 つ、八田先生のお話、実は何度か伺っていて、だんだんだんだん私は理解を深めてきた のではないかとこのように思っておりますが、私どもはかなり今教条主義的に賦課方式 を維持すべきだと考えております。  2つありまして、1つは、先ほど神代先生からもお話がありましたような、インフレ に対する懸念でございます。このインフレに対する懸念と申しますのは、単に将来に対 する漠然とした不安ではなくて、これまでの過去に対する一定の教訓を踏まえたつもり でございます。 つまり我が国の場合、1つは現在の厚生年金の原型の出発点は昭和17年でございますが 17年に出発した我が国の公的年金は積立方式であり、スライド制度がもちろんない。そ れが戦後インフレでいわば吹き飛んでしまったわけですね。このことはそもそも年金の 出発点が戦費調達を目的にしていたとかいないとかという議論も含めて、我が国の戦後 の公的年金に対する非常に深い不信をなしたと、このことはやはり忘れてはいけないよ うに思います。  ですから、国民年金の導入当時に、国民年金は取られっぱなしだから入るなといった ような運動すらあった。そして、昭和29年から再出発した公的年金は細々たる水準から きて、昭和48年のいわゆる「福祉元年」と言われたときに水準を引き上げた、これは引 き上げ過ぎだった分を調整するのはいいと思うのですが、そのときにスライド制を導入 したのは歴史的な功績です。このスライド制を導入していなかったとすれば、実はその 半年後に起こった第3次中東戦争とその後の狂乱インフレで、再び我が国の公的年金制 度は破たんしていたのではないか。  ですから先生の、先ほどのメモの中に、GNPの成長率と利子率が等しいという仮定 を置いていらっしゃる。これは安定期では確かにこの仮定では多少単年度ごとのフラク チュエーションがあっても成り立つ、少なくとも相関性はかなり高いのだと思いますが 問題はそういう例えば戦後インフレであるとか石油危機のインフレであるとか、恐らく 事前に予想不可能な、こういう安定性がそこの場で一挙に変わってしまうものが少なく とも過去半世紀のうちに二度、三度我々は体験しているわけで、これからはそういう経 済メカニズムの変動が小さなものになっていくという予想よりは、いよいよ激動の21世 紀なんて言われているわけですから、そういうことを考えますと、将来の年金制度を長 期スパンで考えなければいけないということからいうと、そういうような意味での経済 の安定性のいわばレールが外れるようなものが起こらないという保証はないのではない か。とすれば、それに対する安全装置を組み込んでおくことが年金制度の信頼性を高め る必要な条件ではないだろうか。そうだとすれば、それはやはり賦課方式という財政方 式をとらざるを得ないのではなかろうかというふうに考えるというのが1点でございま す。  つまり、完全積立方式を想定すれば、完全積立方式という方が不完全かもしれないの ですが、それではインフレスライドというのは、そこの中にちゃんと内蔵できないので はないかというのが疑問の1点でございます。  もう一つ、いわゆる給付と負担の不公平という問題については、払った保険料額と受 給する年金額とがイーブンであるということが公平だという考え方は、むしろ公的年金 よりは私的年金の考え方をベースにされているのかなというふうにちょっと思いました 社会保障としての年金の問題は、先ほどの高額所得者に対する給付制限の問題も含めて もそうですが、そこが1対1では実は対応しないで、あるバランスを構成する、こうい う機能なのではあるまいかというふうに私どもは教わってきたわけでございます。  そういうことから考えますと、単に年金の後年世代が支払い込む保険料が先行世代の 年金支払いの原資になるという、そちらの所得移動と並行して、先行世代がつくったス トックが後年世代に継承される、この問題を併せて考えないと本当の意味で公平か不公 平かということは言えないような気がいたします。というのは、これは年金審の資料で も出たものですが、現在の70代の人たちは年金を一応もらっている人が多いですね。し かし、その人達の親御さんの世代は公的年金がありませんから、これは私的に扶養して いたわけで、そうするとこの人たちは自分の払った保険料は非常に安くて、受け取って いる年金額はまあそこそこのものかもしれませんが、そのほかに現役のときに大変両親 の負担という意味では私的な負担を負っておられた。  今の50代の我々は親の年代の年金は既にありますから、親の私的な扶養義務というこ とからかなり解放されていますが、他方で大変な物価高、インフレの時代で、住宅スト ックを形成するということについては非常に大きな私的な負担を背負ってきた年代であ ります。  それに続く現在の30代について言えば、親の扶養の私的義務も解除されている。また 住宅ストックも大体親の世代で形成をされていて、多くの場合にはそれをいわば相続で きる。 その意味では、2世代上の親たちが持ったよりも2段階低い、私的な負担の面で言えば 低いし、また社会的に言えば、教育水準の上昇等々も含めて、社会的な面からのストッ クの享受もしてきた。それが年金だけを取り上げて負担が高まっても、それは全体とし ては合理的な範囲で考えうるのではないだろうか。  そういう考え方というのは、議論として不純な議論なのかどうか。あるところで不純 だと言われたのですが、私の名前は大変純粋な名前でございますが、よろしくお願いし ます。 ○八田氏  今、桝本さんから賦課方式と積立方式に関するかなり根本的な問題を指摘されたと思 います。まずインフレに関しては、インフレでつぶれたのは公的な保険だけでなくて、 民間の保険も戦後つぶれたのですね。戦前、貯蓄のうちだなんていって、かなり民間の 保険に入る人が多かったのですが、全部つぶれた。したがって、これは公的な問題だけ ではなくて、私的な問題としてもインフレに対してどう対処したらいいかという問題で す。これは1つにかかって、金利の自由化なんですね。金利の自由化というのは、実に 最近行われたことなんで、それ以前の状態とまるきり変わってしまった。  先ほどカーターのときにアメリカの年金制度は全く積立方式に基づいているものは揺 らぎなかったと申しましたが、カーターのときは、1970年代の後半ですか、大体インフ レ率が20%前後でした。それが2〜3年続きましたか、まさに狂乱物価的なことがあっ たのですが、利子がちゃんとキャッチアップした。そのときの前に既にアメリカは金利 の自由化を済ませていたわけです。それで、私は金利の自由化ということが根本的な解 決法だと思います。  それから、いつもこれを言うのですけれども、インフレが怖いから安全な装置をつく るのならば積立方式にすべきで、賦課方式のままにしろというのはおかしいのですよ。 賦課方式を続けるというのは今保険料を低いままにして積立てないでおこうということ ですが、積立方式にするというのは、保険料をがんと上げて積立を増やそうということ ですから。 ○桝本委員  それは切りかえるからですよ。 ○八田氏  いや、切りかえるというか、今のは老人が少ないから保険料は少なく済んでいるわけ ですね。高齢化時代は、老人が多いから保険料を高くするわけですね。それをそうでは なくて、自分の世代で賄おうとすると、保険料をみんな均等にする必要がある。だから 保険料率を今上げるわけです。実はこの積立方式にするというのは、まさに安全装置を つくろうという話なんですね。  要するに高齢時代の老人が減っている時期ならば、それは桝本さんがおっしゃるよう に、むしろ賦課方式の方が安全かもしれないけど、増えるときには積立方式の方がはる かに安全である。  それから、初代の問題をどう考えるかについて一言申し上げます。例えば年金制度が 始まったときに、戦争で財産を失った世代がいた。その人たちの老後をどうやったらい いか。あるいは昔は本当にみんな若死にしたんですね。だから生き残った子供が支えて くれたというけど、大体自分で支えた人が多いし、子供に支えてもらうにしても期間は 短かった。ところが寿命が急に延びちゃったので、どうしたらいいんだろうということ なんです。  そういう予期せぬことがある場合には、そのときには若い世代が負担するよりしよう がないのでしょう。しかしだからといって、予期せぬときだけではなくて、いかなる場 合にも若い人に老後は面倒を見てもらおうという議論にはならない。原則としては自分 で自分の面倒を見て、かつ予期しない戦争とかそういうことがあったら、そのときに補 充する部分を若い人にお願いしようというのはわかる。しかし、そういう予期しないこ とがあるから、一切積み立てしないで、最初から全部若い人におんぶしましょうという ことにすると、人口変化の気まぐれによる世代間の不公平が必然になってしまう。だか ら、ある緊急な事態に、元来積み立てたものに加えて助けてもらうということはあって いい。それは、そのときの政治的な判断だと思います。 ○山根委員  きょうお三方からいろいろお話を聞きましたが、そのことについて、私の方から発言 したいと思います。先ほど出ました高額所得者への年金の問題についてですが、私は別 の審議会の場でも申し上げたのですが、これは税の問題としてどういうように考えるか だと思います。先ほど貝塚先生がおっしゃいましたけれども、私はその方が妥当なので はないかと考えます。何かやっかみ半分で、所得の高い人からはぎ取るというのは、年 金文化みたいなものを壊す大変、ゆゆしき問題ではないかという認識に立っているとい うことを申し上げておきたい。  それから、3号被保険者の問題が先ほど真場さんから出ましたけれども、私は連合運 動にかかわっているひとりとして、この問題については女性の組合員の中からも、働い ている女性の中からも声が出ていて、女性のなかでバランスを欠いているという問題が 大きくクローズアップされています。にもかかわらず、男中心の労働組合になっていま して、そこに目をつむっていることが根本的に社会に大きな影響をもたらしているわけ です。年金制度にも大きな問題をもたらしているというように思っています。連合運動 も痛みを伴う取り組みをぜひこの際やって、抜本的な改革をめざして進むべきだという ように思っているということを申し上げておきたいと思います。  それから、向山さんから定年延長と雇用延長にかかわる話がございましたけれども、 これは連合運動だけの問題ではありません。労使が協調して、先ほどからいろんな方の 御意見の中にちらちら出てまいりましたけれども、年金の財源をいかにたくさん確保す るかということを念頭に置いて、対処すべきです。そうは言っても65歳に例えば雇用延 長したとしても定年延長したにしても、そこまで働けるかどうかということもあり、選 択肢を持って対応すべきです。軸足は65歳に置いておいて、前倒しもよし、さらに先で 年金受給されるもよし、そういう選択肢をたくさん用意した上で、できるだけ多くの財 源が確保できるような社会の仕組みを企業内レベルでも産業レベルでもきちんとつくっ て、年金制度を補完するシステムをどのようにつくっていくのかというのは大変重要な ことではないかと思っています。そういう認識に立って、今後展開していくという意味 では、大変貴重な御意見をいただいたのではないかと思っております。  それから、財政の問題の八田先生のお話はNHKのテレビのBS討論でもお聞きをし たのですが、きょうもそういう基調でお話いただいたというように思っているのですが 私は先ほど先生が金利の自由化というふうなことをおっしゃいましたけれども、日本の 金融システムを含めましてさまざまに、今まで年金の財源が手かせ足かせ大蔵省からや られていたものを、今後はある程度自由度を持っていろんなことをやれるというような 客観的な要件が、ようやく先ほどから話題に出てますように、グローバルスタンダード の方に少しずつ近づいていっているのかなというような気がいたします。従って全くお かしいというような思いは持っておりませんけれども、当面いわゆる賦課方式で走りつ つ、この貴重な御意見もいただきながら、今回の改革との関係ではもう少し考えても十 分時間はあるのではないかというような気持ちを持ちながら聞かせていただいたという ことだけ申し上げておきたいと思います。 以上でございます。 ○山田委員  真場先生から、国民年金の空洞化のお話があり、1号被保険者の滞納や未加入者の問 題について言及がありまして、その方策といいますか、対策として大変興味深く受けと らせてもらったわけです。そういう対策と合わせまして、その一方で、公的年金制度へ の信頼の確保ということ、また今議論になっています3号被保険者部分にかかわる全体 としての保険料の軽減とも関連して、やはりどうしても国庫負担率の問題について視野 に入れざるを得ないのではないかという思いがあるわけです。  御案内のとおり、財政構造改革の推進のもとで、国庫負担率の引き上げについて一定 の制約がつけられざるを得ないということは、それはそれとして理解をするわけであり ますが、それにしましても、平成6年の法改正のときの付帯決議にもかかわらず、今回 財政構造改革の目標を達成するまでは、国庫負担率の引き上げは現に行わないみたいな ことが出てくるということになりますと、果たして、これでいいのかと言わざるを得ま せん。八田先生もこういう新しい方式を提案される中でも、国庫負担増を念頭に置いて 考えておられるわけでありますが、国庫負担率の引き上げ問題を前提としないで、枠組 み全体について考えるのか、それとも国庫負担率引き上げもあり得るということを視野 に置いて、この枠組み全体を考えていくのか、それなりに大きい問題ではないかなとい うふうに考えている次第であります。この点、真場さんはどんなふうにお考えなのかな ということをお聞きしたいと思います。 ○真場氏  私は基本的に前回の論議で付帯決議もされて、そういう経過があるだけに、連合とし ては、ぜひ1/3から1/2への国庫負担率の引き上げというのは重要視しなければい けない、こういう立場であります。 ○船後委員  簡単に申し上げますが、八田先生に、まず図3なんですが、1つは、図3の見出しの ところに、(実質物価上昇率)とありますが、これは実質賃金上昇率あるいは物価上昇 率、どっちですか。 ○八田氏  ごめんなさい。物価ではないです、賃金です。 ○船後委員  実質賃金の方ですか。 ○八田氏  はい、そのとおりです。 ○船後委員  それから、この完全基金の計算方法なんですけれども、各時点における給付費の見積 もりから、保険料の見積もりを引いて、残った部分が利息に期待すべき部分ですから、 それは割引率で割られたものが各時点の完全基金の額ではないかと思うんですが、そう いうふうに理解してよろしゅうございますか。 ○八田氏  そういうことになると思いますが、要するに各世代の将来の給付の現在価値を求めて そして……。 ○船後委員  拠出の現在価値を引いておられるでしょう。 ○八田氏  そのとおりです。拠出した分は引いてあります。 ○船後委員  割引率はどれをお使いになりましたか。 ○八田氏  割引率はいろんな場合を計算していますけれども、この図3は3.5%です。 ○船後委員 実質の3.5%でおやりになった。 ○八田氏 そのとおりです。 ○京極会長 よろしゅうございますか。予定の時刻が4時半ということになっておりまして、かな り時間も超過してまいりました。ほかにこの機会にぜひという方。 ○企業年金国民年金基金課長  先ほど向山様の方からお話がありました点で、将来の話は将来の話としてお伺いする ということで、ただ、現に動いている実務の問題で少しお話がございましたので、その 点につきまして事務局から御説明申し上げます。向山様のレジュメの(2)の「年金給 付水準の柔軟な見直し」という点でございますが、現在給付の引き下げが認められたに もかかわらず、実質的にはなかなか困難だというお話がございましたが、本審議会で、 昨年のちょうど今ごろ、給付引き下げにつきまして御審議いただきまして、昨年4月か らそういうことは実際可能になっております。条件といたしましては、労働協約あるい は退職金規程が変更になった場合に基金規約を変える。あるいは先ほどちょっとお話に ございました債務超過になった場合、あるいは掛金負担が大変困難だと、こういった状 況、どれか1つですけれども、あるいは2つ、3つあるかもしれませんが、そのうち、 どれか1つを満たした場合には、一定の手続きを経て給付の引き下げができるというこ とになっております。先ほどの話ではなかなか大変そうだというお話がございましたが まだ件数も実際には5件ほどしかございませんで、まだ地方庁の方も窓口の方がなかな か慣れていないという点がございまして、もし、私ども実務上の指導で何か足りない点 があれば、我々としてもきちんと指導していきたいと、かように存じております。 ○向山氏  ありがとうございました。ぜひ、そういったことで、問題があるという指摘がありま したら、本庁の方へも問い合わせてくれというふうなお話をさせていただきたいと思い ます。 ○国広委員  短く言わせていただきます。年金制度というのは、どなたの意見でも、つまりこのま まではどうにもならない、だれかが痛みをどんな形かで引き受けていかざるを得ないと いうことだと思うんですね。今まで年金審議会の審議では、自分ではない、だれかとい う形に先送りしたり、いろんな形で、その人たちは引き受けないだろうというような議 論だったと思うんです。  ところがきょうお三方のお話を伺って、たくさんもらっている人は払ってもいいので はないかというのは、恐らく向山さんはたくさんもらっている方ではないかと思うんで すけれども、それから連合は幹部の中でも男性が多いわけですよね。その中で、今まで の議論では、働いている女性は、第3号をなくしてほしい、あるいは第3号も払ってほ しいという意見が強いですけれども、第3号と結婚している男性は、負担が増えるので はないかということもあって、そうしない方向に議論が進みそうであるという懸念が審 議会でも出ていたと思うんですね。でも連合は、全員の意見ではないけれども、その方 向でやりたいとおっしゃっている。  それから、特に現役の世代、団塊の世代を中心とする、今の働いている人たちが、 28.6%が可能かどうかわかりませんけれども、今の自分の世代で解決しようということ を提案なさったのではないかと思うんですね。八田さんはその世代でいらっしゃるので はないかと思うんです。  第3号の問題、女性の問題にしましても、負担が増えるのは嫌だろうという前提で今 話が進んでいるかと思うのですが、もう私たちは戦後50年経まして、民主主義といいま すか、市民として責任を持って21世紀を迎えようという中では、たとえ負担が増えても この制度を何とかしていこうという人たちも育っているかと思うのです。ですから何ら かの形で負担をしつつ、よい年金というか、老後をみんなで迎えていこうよという方向 に向けての論議が私は進んだような気がして、きょうは非常にうれしく思いました。 ○京極会長  ほかに、大変貴重な機会ですから、御発言の方ございませんでしょうか。大体この辺 で時間も少し超過いたしておりますし、本日の意見交換を終わりにしてもよろしゅうご ざいますか。              (「異議なし」と声あり) では、本日は今後の審議に大変参考になる貴重な御意見をお三方から拝聴させていただ きましてありがとうございました。また、その後の意見交換でもいろいろお教えいただ きましてありがとうございました。今後とも次の制度改正に向けて、私どもの議論を深 めてまいりたいと存じております。 本日はこれで閉会させていただきます。御出席くださいました有識者の皆様、それから 傍聴の皆様長い時間御清聴ありがとうございました。                                年金局 企画課                                須田(3316)