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厚生年金基金(以下「基金」という。)が老後の所得保障という目的を達成できるようにするためには、加入員等の受給権保護の観点から、資産の安全かつ効率的な運用を行っていくことが不可欠である。
このためには、運用規制の緩和を図るとともに、英米における「受託者責任」に関するルールのように、資産運用関係者の役割及び責任を明確化、具体化したルールの確立を図り、基金が自己責任の下で、自主的に運用を行うことができる環境を整備することが重要である。
基金の資産運用関係者の義務や責任は、厚生年金保険法等に規定されているが、これらの具体的内容は必ずしも明らかでなく、その結果、一般的には、関係者の責任意識は高いとはいえない状況にある。
現在、いわゆる「受託者責任」について、基金関係者の間で議論がなされているが、早期に関係者の責任意識の醸成と基金の運用管理体制の向上を図るためには、これを明確化、具体化するためのガイドラインを策定し、普及・定着させていくことが必要である。
本研究会では、計8回にわたり、有識者からの報告や関係者からの意見聴取を交えて議論を行い、別紙「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドライン」を策定するに至った。
本ガイドラインの策定に当たっては、次の点に留意した。
したがって、本ガイドラインは、我が国の現行法制の下で用いられている概念を使用して記述した。具体的には、エリサ法等英米の法制度における考え方や精神をできる限り参考としつつ、現行法における「善管注意義務」や「忠実義務」の概念を、基金の管理運用業務を行う場面を想定して、具体的な行動指針として示すこととした。
本ガイドラインは法令そのものではなく、どのような事項に留意すれば、理事等に求められる職務を全うできると考えられるかを示したものである。
理事等の責任に関して訴訟が起きた場合、我が国の現行法制度の下では、責任の有無は裁判所の判断に委ねられることになる。例えば、善管注意義務が遵守されたかどうかの判断については、裁判所によって一切の事情が斟酌されるため、このガイドラインを守ってさえいれば責任を免れるということではない。しかしながら、本ガイドラインは、裁判所が判断を下す際の参考とされるものと思われる。
また、本ガイドラインは、各運用受託機関・商品の性格やそれぞれの根拠法令上の規定に応じ、それらを活用する場合ごとに細かく書き分けたものではなく、資産運用に当たっての一般的な考え方を記述したものである。このため、本ガイドラインどおりに基金の理事が行動しようとすると、運用受託機関の各業法等の法令の規定に抵触する場合も考えられるが、その場合には、法令が優先される。
本ガイドラインは、以上のような考え方に基づいて作成したものであるが、本ガイドラインが基金関係者のみならず、事業主や運用受託機関等の関係者にも理解され、我が国においても、英米におけるような「受託者責任」の精神が定着するとともに、基金の運用管理体制が向上し、加入員等の受給権の保護に一層の関心が払われるようになることを期待したい。
なお、本研究会の議論を通じ、現行制度についての問題点が明らかになったので、下記のとおり、本研究会としての要望を付記することとする。今後、関係者の間で活発な議論がなされることが望まれる。
(1)本ガイドラインの目的
(2)本ガイドラインの性格
(3)本ガイドラインの対象
(1)一般的な義務
(2)基本的な留意事項
(3)運用の基本方針
(4)運用の委託
(5)資産管理の委託
(6)運用コンサルタント等の利用
(7)自己研鑽
(8)利益相反
(9)理事の責任
(1)会議録等の作成・保存
(2)代議員会への報告
(3)加入員への情報提供
(4)事業主への情報提供
(1)本ガイドラインの目的
○ 厚生年金基金(以下「基金」という。)の目的は、加入員及び加入員であった者(以下「加入員等」という。)の老齢について給付を行い、もって加入員等の生活の安定と福祉の向上を図ることにあり、基金は、加入員等の受給権を保護するため、安全かつ効率的に資産の運用を行わなければならない。
○ 本ガイドラインは、基金の資産運用関係者の役割や職務の分担及びそれに伴う責任の内容を明確化、具体化するものであるが、その目的は、これらの者の責任意識の醸成及び自主性の涵養を図ることにより、安全かつ効率的な資産運用を促進し、もって加入員等の受給権の保護を図ることにある。
(2)本ガイドラインの性格
○ 本ガイドラインは、現行の法的枠組みを前提とし、現行の厚生年金保険法等の下で、基金の資産運用を安全かつ効率的に行うためのルールをできる限り網羅的、体系的に整理したものである。
○ 本ガイドラインは現行法制の下で、遵守しなければ義務違反を生じる可能性があると考えられるルールについては、「しなければならない」行為として記述し、遵守しなかった場合に直ちに義務違反を生じるとまでは言えないが、現行法の精神から判断して遵守することが望ましいと考えられるルールについては、「望ましい」行為として記述した。
(3)本ガイドラインの対象
○ 本ガイドラインの対象者は、主として基金の積立金の管理及び運用に関する基金の業務(以下「管理運用業務」という。)の執行に係る意思決定とその執行を職務とする理事であるが、管理運用業務に関与するその他の関係者(代議員、監事)及び資産運用委員会についても、その対象とすることとする。
なお、本ガイドラインでは、管理運用業務とは、運用の基本方針や資産構成の決定、運用受託機関、資産管理機関又は運用コンサルタント(以下「運用受託機関等」という。)の選任、管理等をいい、運用受託機関等が行う業務を含まない。
○ 本ガイドラインは、事業主、運用受託機関等の基金の外部の者を直接対象とするものではないが、これらの者は、本ガイドラインを尊重して行動することが求められる。
2.基金の資産運用関係者の役割分担
(基金と理事の関係)
(外部の機関との関係)
3.理事
(1)一般的な義務
(1) 法令上の義務
(忠実義務)
(2)基本的な留意事項
(分散投資義務)
(資産構成の重視)
(資産の特性等への配慮)
(資産状況の把握)
(3)運用の基本方針
(策定)
(内容)
(策定の手続き)
(見直し)
(4)運用の委託
(1) 運用受託機関の選任・契約締結
(定量評価の基準)
(定性評価の基準)
(義務の明確化)
(契約締結の手続き)
(運用ガイドラインの提示)
(報告の請求)
(契約上の義務の違反)
(運用評価の基準)
(掛金の払込割合の変更等)
(変更等の手続き)
(5) 資産管理の委託
(1) 資産の保全
(2) 資産管理機関の選任・契約締結等
(義務の明確化)
(契約締結の手続き)
(契約上の義務の違反)
(6)運用コンサルタント等の利用
(運用コンサルタント等の利用)
(契約内容の明確化)
(契約締結の手続き)
(契約上の義務の違反)
(7)自己研鑽
(8)利益相反
(1) 法令上の禁止行為等
(特別な利益の提供)
(利害関係のある者)
(公務に従事する者としての行為)
(2) 忠実義務違反のおそれがある行為
(3) 事業主への注意喚起
(9)理事の責任
(1) 管理運用に係る意思決定に関する理事の責任
(理事の責任)
(2) 管理運用業務の執行に関する理事の責任
(管理運用業務を執行する理事の義務)
(理事長等の責任)
(3) 義務履行の評価
(状況に応じた評価)
4.代議員
(議決に当たっての留意事項)
(理事の業務執行の確認)
(監査の請求)
(理事の交代の議決)
5.監事
(監査の実施)
(監査に関する責任)
(代表権の行使に関する責任)
(2) 一般的基準
特に、管理運用業務を執行する理事(理事長、管理運用業務を行う常務理事及び運用執行理事等。以下「理事長等」という。)は、管理運用業務に精通している者が、通常用いるであろう程度の注意を払って業務を執行しなければならない。
イ 当該資産等への運用が資産全体のリスクとリターンに与える影響
ウ 当該資産等の流動性
エ 当該資産等への運用及び当該資産等の管理に必要な費用
オ 当該資産等への運用に関する運用受託機関の専門的能力の水準
(2) 運用受託機関の管理
なお、資産の管理も行う運用受託機関の選任については、資産管理の委託に当たっての留意事項((5)を参照)も遵守しなければならない。
(3) 運用実績の評価及び掛金の払込割合の変更等
(注)合同運用の生命保険契約については、運用の基本方針を提示する必要はない。
(注)情報の内容によっては、資産管理機関に対し報告を求めることが適当な場合がある。
(注)生命保険一般勘定契約の場合には、当該契約に係る責任準備金に関する報告で差し支えない。
イ 資産の売買に伴う受渡し・決済が確実に行われているか。
ウ 資産の管理に第三者を用いている場合、当該第三者の選任・管理を適切に行っているか。
エ 資産の管理が保護預かりにより行われている場合、当該資産の管理状況を確認しているか。
オ 資産の管理を行う部署と運用を行う部署との間に隔壁が設けられて いるか。
なお、自家運用を行う基金の運用執行理事は、積立金の運用すべてを外部の機関に委託している基金の運用執行理事に比べ、運用に関する高い水準の専門的能力が求められる。
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