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平成9年2月25日


第7回厚生年金基金の資産運用に係る受託者責任ガイドライン研究会(議事要旨)


日 時   平成9年2月25日(火) 13時30分〜16時
場 所   全社協・灘尾ホール「第3会議室」
参加委員   ・神田委員 ・青木委員 ・渡辺委員 ・渡辺委員 ・土浪委員
・鈴木委員 ・小林(昭)委員 ・伊勢谷委員 ・柿沼委員
・霜鳥委員
・松本審議官 ・河村課長 ・坂本室長
議事録
 理事の責任として、前回は忠実義務に違反したら損害賠償責任を負うという形で書いてあるが、今回は、善管注意義務及び忠実義務に違反した場合には連帯損害賠償責任を負うという形で書いている。
 欧米におけるフィデューシャリーや、エリサに規定している受託者責任はどうかというと、現在の法律には受託者責任・受託者・フィデューシャリーという言葉はない。現在の法律上ある言葉は、民法上の善管注意義務と、厚生年金保険法にある忠実義務という概念である。
  この点について2点申し上げると、1点は、現在の法制の下でこのガイドラインを作るわけだが、立法するわけではないので、欧米におけるフィデューシャリーとか受託者という概念をそのまま持ち込むことはできない。
  第2点として、現在いろいろなところで立法論として資産運用について横断的にエリサ的なルールを設けるべきではないかという声がある。この研究会でもエリサ的な精神を最大限参考とする、という姿勢が必要ではないか。
  現在の法律の下での解釈も、若干分かれているようである。よって、エリサの精神を参考としつつ、現在の解釈論が分かれているところへは、あまり立ち入らずに、実質を書くべきである。
  アメリカやイギリスでフィデューシャリー・デューティーと呼ばれているものがあり、それは受託者義務・受託者責任ということあるが、普通は、主要な柱は4つあると言われている。その4つは「狭い意味での注意義務」「狭い意味での忠実義務」「運用を第三者に委託した場合には、その選任・監督についての責任・義務」「資産管理ないし保全の義務」ということで、この4つが全て明文で書いてある法律は、日本では信託法ぐらいしかない。信託法では、3つ目のものは自己執行義務と呼ぶが、原則は自分で運用する、ただし、信託契約に反対の定めがある場合は、第3者に出していい。その場合には、選任・監督について責任を負うという仕組みになっている。4つ目は、信託法の言葉では、分別管理義務と呼んでいる「資産の保全・管理」についての義務である。
  普通のまとめ方は3つである。即ち、2番目の「狭い意味の忠実義務」を忠実義務と呼ぶと、第一の注意義務はいわゆるプルーデンス・ルールと呼ばれている、あるいはいわゆる5・3・3・2のような規制がかかっているような場合は、中身に踏み込んだルールであることもあるし、一般にプルーデント・インベスター・ルールと呼ばれていることもある。世の流れは、中身の規制からポートフォリオ全体としてのプルーデンス基準一本に向かっている方向に徐々にではあるが、なってきている。この1番目と、3番目、4番目即ち運用受託機関に対する選任・監督と資産管理保全、これが日本の法体系の下では、広い意味で善管注意義務というものに含まれると理解される。
  狭い意味での善管注意義務は、専ら加入員の利益を重視する。あるいは、特に利益相反となる場合には、加入員の利益の方を上位におかねばならないというルールであるが、これは、狭い意味での忠実義務ということになる。
  ところが、現在の厚生年金保険法を見た場合、忠実義務の規定があり、それに違反した場合に、解釈に違いはあるが、第2項に、「その任務を怠った場合には連帯して基金に責任を負う」とされている。非常に形式的な法律論であるが、忠実義務に違反したときのみ連帯責任で、善管注意義務に違反した場合には、連帯は当然には民法からは出てこない。そこを整理しなければならないというのが一つ問題になっていた訳である。
  また、誰に対して善管注意義務や注意義務を負うのかという問題がある。とりわけ常務理事・運用執行理事その他の理事が、理事長の定めるところにより、あるいはその他の手続きを経て何らかの業務を担当する場合に、誰に対してどういう義務を負うのかを整理しなくてはならない。
  善管注意義務と忠実義務の関係であるが、厚生年金保険法が改正されたときの考え方は、その時点で、実は株式会社の取締役について、昭和45年6月24日に最高裁の大法廷判決というのがあり、八幡製鉄が、当時、自民党に政治献金をした。政治献金は会社のお金の無駄遣いだと株主が代表訴訟を起こし、取締役の責任を追及したものがあり、その中で、取締役が政党に寄付行為をするのは忠実義務違反であると原告はいっている。戦前からある「商法254条3項」は「会社と取締役との間の関係は委任に関する規定に従う」といっている。つまり、取締役は会社から委任を受けているのであり、善管注意義務はここから出てくる。
  昭和25年改正で、戦後導入された「254条の3」という規定は、アメリカ法の影響で、いわゆる忠実義務を定めたもので、条文は、「取締役は法令及び定款の定め並びに総会の決議を遵守し、会社のため忠実にその職務を遂行する義務を負う」と、会社に対する忠実義務を定めている。
  そこで、善管注意義務と忠実義務の関係がどうなるのかということであるが、今の昭和45年最高裁の大法廷判決は「忠実義務の規定は、民法644条に定める善管注意義務を敷えんし、且つ、一層明確にしたにとどまり、通常の委任関係に伴う善管注意義務とは別個の高度な義務を規定したものではない」としており、この最高裁の考え方は、会社法上の忠実義務は善管注意義務の一つである、逆をいうと善管注意義務はその他にもある、という考え方に立ったわけである。現在は、逆の説の方が多数を占めるかもしれないが、最高裁の大法廷判決がこのように言っているので、会社法上も現在はこの2つの規定は、このようにまとめられている。ただ、学説上は対立がある。
  よって、従来の案のように、善管注意義務と忠実義務を別個に並べると、忠実義務は善管注意義務とは別個の義務だと誤解を生ずる恐れがあり、この最高裁の考え方とは、一貫しないということになる。
  しかし、これは、あまり実益のある議論ではない。中身が重要であり、概念の整理だけである。
  今回の案の「注意深く運用すべき」との書き方いいかどうかという問題もあるが、中身を書こうとの主旨で、概念論争を避けようという提案である。
  連帯責任の点については、厚生年金保険法第120条の2第1項に忠実義務が書いてあり、2項に違反した場合に連帯責任と書いてあるので、連帯責任を負うのは忠実義務に違反した場合だけかというふうにも読めるが、考え方としては、忠実義務だけではなく、理事が基金に対して負っている義務に違反した場合には連帯責任、と考えるのが素直であるし、恐らく裁判所でもそういう考え方をとられるのではないかと考えられる。
  この案は、現在の法律の下での解釈は、善管注意義務を含めて、あるいはその他の義務を含めてそれに違反した場合には、連帯責任を問われる恐れがあるという形で出している。
  理事長から常務理事なり、運用執行理事なりが業務を委ねられた時に、業務執行について誰に対して責任を負うのかという問題であるが、法律的には、A・B・Cに例えて言えば、AがBに対して委任し、更にBがCに復委任したという場合、BはAに対して受任者としての義務を負い、CはBに対して受任者としての義務を負うのであり、Aに対して直接負うというのは、すぐには出てこない。これを基金に当てはめると、Aが基金、Bが理事長、Cが理事ということになる。
  会社法の考え方も確認する必要があることから、法制審議会の先生にご意見を伺ったところ、次の考え方が普通であろうとのことである。その考え方というのは、「業務執行権はなくても、各理事あるいは各取締役は、基金あるいは株式会社に対して委任関係に立っているので、善管注意義務及び忠実義務を負っている。何について負っているかというと、普段は業務執行権はないので、それ以外について負っているということになる。業務執行権が何らかの手続きで取締役ないし理事に付与された場合、何らかのというのは、厚生年金保険法でいうところの理事長の定めるところにより、ということであるが、その場合には、理事・取締役が基金ないし会社に対して立つ委任関係の内容に業務執行が入ってくる。従って、委ねられた業務執行について理事や取締役は、直接基金あるいは会社に対して委任関係に立つ。よってその業務執行についての善管注意義務ないし忠実義務というのは、直接基金ないし会社に対して負う」ということである。
 10頁(4)(1)の最初の〇に、「理事は、常勤・非常勤にかかわらず」とあるが、実態論から言えば、常勤は常務理事・運用執行理事、他の理事はどちらかと言えば理事会に出席してくるというのが実態である。そういうところからすれば、「かかわらず」というと、かなり非常勤の理事に対してプレッシャーがかかるという現実論がある。
 非常勤の理事の方は、理事会に出て、その場で、相当の注意を尽くしていれば、義務は全うしているというのが普通の考え方だと思う。
 今の関連ですが、3頁には、「その職責の内容に」とあるのに、ここには入れてない、というのは何か意味があるのか。
 特に意味があるわけではない。
 主旨は同じだが、表現の問題として、整理させて頂きたい。
 10頁の(4)(1)2つ目の○の善管注意義務ところですが、これは、一般の理事についても、意思決定については、忠実義務がかかるというふうに法律を読む、との理解でよいか。
 理事会での意思決定ということになるので、理事会のメンバーである以上そのようになる。
 「理事は、理事長を補佐して基金の業務を執行することができる」と、法第120条の3にあるが、何故意思決定でない業務の執行を、忠実義務で縛っているのか。
 ここの案文の主旨は、管理運用業務を2つに分けて、執行にかかる意思決定の部分と、実際に意思決定に基づいて行為を行う部分とに分けて書いたものである。
 理事会における意思決定には触れてないということか。
 理事会における意思決定は、(1)の「意思決定にかかる責任」の方である。
 では、両方触れているのか。
 そのとおり。
 これは、「両方負う」ということだと思う。言われた趣旨は、理事会で決まったことを執行するにも、そこでもう一段意思決定をする必要がある。つまり大枠を決めて何かをやるときに、委任された者が執行するに当たっては、決めて実行する、という行為になるから、その決めるという部分にはかかる、条文上もこれは疑いのないところだと思う。問題は、その手前である理事会において何らかの意思決定をする場合に、その意思決定に対しても忠実義務がかかるか、ということであるが、そのときはかからないという指摘だろうと思う。
  商法の条文は取締役は忠実にその職務を執行する義務を負うとあるが、この職務というのは、当然に取締役会に出て意思決定をするのは含むということになるが、厚生年金保険法には「業務」と書いてあるため、やや抵抗はあるところだと思う。しかし、考え方はそうであると言わなくてはならない。
 理事会で賛成した理事全員の連帯責任になるということですね。
 理事会で決めたことであれば、そうなる。
 2つ確認をしたいのだが、まず1つは、親会社の株を買うという行為に関して忠実義務に反するのか、ということ。実体上は基金が直接指示をして親会社の株を買うということはできないが、自社の株を買うということに関して、忠実義務に反するのかということとそれが忠実義務違反になるということを、この文章の中で、どこでどう読むのかということ。
  2つ目は、運用コンサルタントの活用に当たっての留意事項というタイトルでここだけ「等」が抜けている訳であるが、それは、何か意識しているのか、ということ。
  それと契約の内容のところで、契約時に運用コンサルタント等が守るべき義務について明確にしなければいけないというところがあるが、契約時に契約書の中で守るべき義務について何か明文化する必要があるのではないかと思う。その時に精神的な忠実義務や善管注意義務のようなことを書くのか、あるいは、もう少し違う具体的な事柄を意識して書くべきなのか、これは後で義務に違反して損害が起こった場合「義務に違反して損害が起こった場合には云々」という文章もあるので確認とご意見を頂きたい。
 自社株を買うということは、今、基金の指図により株式等の銘柄の指定は認められてないということもあり、そういうことに関しての記載はしていないが、仮にあるとすれば、忠実義務に違反するであろう。
  「等」がなぜないのかについては、特に意図があるわけではなく、もう少し中身を整理しなくてはならない。「義務」については、そこまで深く考えて書いたわけではなくで、普通たと善管注意義務だとか、その辺のレベルの話しである。
 現在、自社株についてはどのレベルで認めていないのか。
 基本的に基金は、運用機関に委託しなければならず、自分で指図できない。また、自家運用の場合は、安全確実な債券にしか運用できない。
 仮に自家運用に株式が入り、指図が可能になると、そこでルールを作ることになるかもしれない。
  親会社の株を買うのがダメかどうかというのは難しい問題であり、従業員にも、従業員持株制度というのがある訳で、必ず利益相反か、というのは難しい。米国では監督官庁の承認を受けた場合は認めるとなっており、一律禁止が原則だが、実際は個別に例外的な承認を得てどんどんやっている。つまり、利益相反の恐れがないということ。本当はそういうふうに持っていくのが立法論としては正しいと思うが、原則はいけないが、監督官庁の承認があればよいとすると、監督官庁が対応できるかという問題もある。
  ただ、ルールの中では、要するに、必ずマイナスになるようなものは禁止できるが、プラスになることもあればマイナスになることもあるというようなものは書けない、それで一つの書き方は、ここにあるように理事会で確認すればよいというようなものは書き得るが、なかなか辛いところだ。
  親会社の株を買うのは利益相反になるというのは、典型的な例は、親会社の株が不振であるから株価を下支えしようとか、親会社が買い占めているので味方に割り振りをするとか、というのであればこれは明らかに利益相反行為であるが、そういう状況がなく、親会社も非常に業績がいい、という時に親会社の株を持つとか、必ずしも業績がいいと決まっている訳ではないが、従業員持株のような形であれば差し支えないということであり、ケースバイケースでやらざるを得ない。
 自社の株を買うことは、従業員自身のインセテイブになるから、むしろその方がいいという意見もある。
 そこのところは許可を得てやるということになると思う。どちらかというと、原則禁止といわざるを得ない。
 折角、資産を別立てで分けているのにかかわらず、会社の株式を持つということで一緒に会社のリスクをしょってしまう。
 それは注意義務の話であって、忠実義務の話ではない。
 ただ、利益相反の問題とは別に株価操作の疑いがあるため、禁止ということにすべきではないか。
 原則は禁止と言わざるを得ないと思う。インサイダーという問題もあり得ないわけではない。今、形式犯になっているので当たらないと思うが。
 運用コンサルタントと契約を締結する際には、どの範囲において運用コンサルタントに助言をしてもらうのかということと、その運用コンサルタント等がその契約上の義務を明確にし、わかった上で契約しなさいよ、と言うことであり、何も、契約上の義務を全部そこへ書くことはできないと思うので、守るべき義務というよりも、むしろ、そういう意味では「契約上の義務」という表現でもいいと思う。
 3頁の資産状況の把握というのがあり「四半期ごとに資産構成割合を把握しなければならない」とあり、6頁に「少なくとも四半期ごとに運用状況について時価で報告を求めなければならない」とあるが、3頁の方は「把握しなければならない」ではなく「望ましい」とすべきではないかと思う。というのは、平成9年度から資産状況は四半期ごとではなく、年1回の報告とする、というふうになるようであり、各基金においては、毎月、あるいは四半期ごとに把握せざるを得ない。この6頁にある(3)については、報告を求めることが望ましい」とすれば足りるのではないか。
  6頁の「株主議決権の行使状況」というのがあるが、今まで受託機関から報告を求める際に、株主の議決権という問題を、今までは考えたこともないし、そういうものをやはり織り込まなければいけない。
  「契約上の義務の違反」とあるが、どういうケースがあるのかをもっと具体的に入れて頂きたい。
  8頁にも「株主議決権の行使」というのがあるので、はたしてこの契約に際してそういう株主議決権のことまで盛り込まなければならないのか。
  3頁の資産状況のところで「少なくとも四半期ごとに、基金全体の資産構成割合を時価で把握しなければならない」と書いている趣旨は、4月から厚生省令を改正して、四半期ごとに時価で資産構成を把握してください、という規定を盛り込むことを考えており、それを踏まえたものとしている。
 厚生省に対する報告は年1回ということか。
 はい。資産構成を把握するためには四半期ごとに運用受託機関からの報告を求めなければならない。
 基金側からしてみれば、四半期ごとではなく毎月でもいわゆる時価の関係で変動するので、それは当然のこととしていく、という考えである。
 これはやはり少なくとも四半期ごとには取らなければならないとなるのではないか。
 4頁の一番上の○のオの関係ですが、「運用に関する理事長等及び運用受託機関の専門的機能の水準」とあるが、この「理事長等」というのはどのようなことなのか。「資産の特性等への配慮」についてと、どのように結びつくのか。
 この「理事長等」というのは新たな商品を購入する際、理事長等も充分これについて勉強しているかどうか、という意味で書いた。
 「資産の特性等への配慮」については、ちょっとここでコメントがいるような気がする。
 ガイドラインができた暁には解説も作らなければならない。
 株主議決権については、絶対に入れなくてはならないということではない。   6頁の「基金の資産に損害が生じた場合」については、個別に考えて記述した訳ではないので、抽象的に善管注意義務違反とか忠実義務違反とかいうことを書いており、具体的な事例まで念頭に置いて書いた訳ではない。例えば、対象資産を具体的に明記しているにもかかわらず、他の資産で運用した結果、損害が生じたとかいったものが考えられる。
 例えば、店頭株をやってはいけないとされているのに、リターンが悪いので少しリターンをよくしようとして、そういうふうにしたというのはこれに入るのではないか。
 リターンがよくなっても当然問題である。
 訴訟まで起こさなければいけないと必ずしも書いてあるわけではないので、訴訟まで起こすかどうかはいろんな事情を知らなければいけない。場合によっては訴訟を起こさなければいけないこともあるかもしれないが、それは非常に例外的な問題の場合である。
 「議決権の行使」の状況については、基金としては、是非入れておいていただきたい。
 株主議決権の行使は、入れた方がいいのではないかと思う。
  実は、投資顧問業については、投資顧問業者の業務運営についてという大蔵省証券局長より通達があり、その一番最後に「厚生年金基等の資産運用に係わる投資一任契約に関する業務における議決権の行使」というのがあり、第2項で「議決権等の行使の指図を行うに当たっては、顧客からの指図は一切受けない」という明文がある。ただ、個人的には株主権の行使というのは基金の利益のためとの観点からするとおっしゃるとおりと思う。この項は非常に難しい。
  また、8頁の(8)に「基金の利益のみを考慮して」とあるが、先程の証券局長通達では「自己または顧客以外の第三者の利益を」と、「自己」が入っており、それとの整合性をどう考えるかという問題が投資顧問業務の場合にはある。
 今後、重要な意味合いを含んでいると思うので、やはり入れておいて頂きたい。
 この分野は混乱していて、整理がついていない分野だ。一つは、非常に法律に依存しているところがあり、例えば、信託という形を取る場合と生命保険会社という場合では違って、信託を取る場合は、普通の考え方は、いわゆる特金のようなものであれば委託者は指図する、という考え方も出るが、そうでない場合には、名義も含めて株は信託銀行の名義になるから、信託銀行は自分の裁量で運用をする。投資信託は法律を書いたときに、本来投資信託というのは、運用を指図するのは投信委託会社というのがあるが、やはり忠実義務の規定を立法したときに議決権の行使が含むか、含まれないかで独禁法の議論までして、最終的には、「解釈として含まれるが、明文の規定をおく」とされた。「委託会社は、受益者のために忠実に議決権の行使を指図しなくてはいけない」とされている。実態は何もしてないが、だから法律違反だということではなく、法律の仕組みがそうなっている。
  今の投資顧問の「指図を受けない」という意味は、信託銀行に対する指図などは、専ら顧問業者の判断するが、だけどその指図は当然基金の利益を考えて指図しなければならないということだ。
  ただ、法令の全体として整理されていないため、ここの(8)も「生命保険契約である場合を除き」と書いてあるが、こういう文章をガイドラインに入れるのがいいのかどうか、という問題もある。つまり、ガイドラインは精神だけを書く方がよいのではないか。そういう意味で、個々のものはここからは落として整理する。
  基本的な考え方は、基金のお金を運用している訳だから、当然、その議決権行使について少なくとも、「状況を報告していただく」ということは当然あった方がいいと思うが、その先自ら何か行うかというところは、書きにくい。従って、ここでは、(8)の様に、やや出来るところを書いてみたり、何か表現は工夫する余地はあるものの、項目はいるような気がする。
 7頁のところで、前回も議論があったかもしれないが、(6)の2つ目の○のウですが、これは日本の信託銀行が、現地で現地のカストデイアンを使っているという想定なのか、 また、海外では預り証方式というものがあり、これはベアリングその他で問題になった訳だ。5頁の「(4)運用受託機関の管理に当たっての留意事項」のところにも、預り証の問題は一項入れておいた方がいいのではないか。
  「外貨建資産の運用に関し、資産の保全方法について適切に認識しているか」というような、つまり、預り証方式がコストの関係で悪い訳ではないが、そういう預り証方式なのか、あるいは、現地カストデイアン方式なのか、ということは基金の方でも理解しておいて、危機管理というか、何らかの場合に備えた方がいいのではないかと思う。
  投資顧問が、信託銀行とは無関係に、多分日本の証券会社に発注して、その証券会社が海外に、ということになって、証券会社も預り証のことを基金へ伝えない場合もあり、基金はそれを知らないままに、後で問題になる可能性もある。
 おっしゃる点は、出来れば盛り込みたいと思う。
 善管注意義務で、ビジネス・ジャッジメントの問題。規制の緩和がどんどん進んできて、基金の理事長等の裁量権が大きくなってきたときに、日本でも裁量権との関係も踏まえて、一層、注意義務が求められてくるのではないかと思われる。
 資産の運用というか、基金の運用であっても、善管注意義務の中にビジネス・ジャジメントは含まれる。例えば、なぜAという信託銀行ではなく、Bという信託銀行を選ぶのかとか、なぜ1行でいいのが7行も選ぶのかとか言うのが、全部ビジネス・ジャジメントですよね。その結果、何かまずいことになっても、責任を問われることはない。
  問題は、基準の書き方であり、フルーデンスというのは、「合理的」ということであるが、ラショナル、リーズナブルという言葉があり、普通の基準はリーズナブルな基準と呼ばれているが、ここで言う「合理的」という言葉を最終的に使うとすると、やはりリーズナブルネスということであり、リーズナブルパースンということであり、基準として法令あるいはガイドラインに使う概念としてはちょっとどうかと思う。
 13頁の「(1)記録の作成・保存」のところに理事会と代議員会の会議録があり、理事会の会議録におきましては「つとめて詳細に記録し、整理保存すること」、代議員会の会議録には「詳細に記録し、後日これを代議員に配布すること」となっており、若干表現が変わっている。それで、詳細に決定事項・状況は整理・保存し、反対意見がでれば議事録としてとるのは、当然のことであるが、代議員会については「後日代議員会に配布」をしなければならないとなっている。
  13頁の「(2)理事から代議員会への報告」であるが、報告の内容として、14頁にある「ウ 理事会の会議録」も代議員会へ出さなくてはいけないのか。これは、実際の業務運営上非常に波乱がでてくる問題であると思っている。
  「(3)理事から加入員への情報提供」の問題であるが、2つ目の〇で、「なお、理事会の会議録、代議員会の会議録その他の情報についても(中略)あらかじめ知らせておくことが望ましい」となっているが、この点も、例えば、総合型の場合いろんな問題が起きており、情報開示としては当然の考え方であるが、その点が若干ある。
  「(4)理事から事業主への情報提供」だが、「管理運用業務に関する情報を提供しなければならない」とあるが、「ならない」ではなく、むしろ「望ましい」という表現に変えていただきたい。例えば、加入員に対して、5万人、あるいは10万人に対して、いつでも情報を提供しますよ、ということを案内することによって、それを見せない・教えないということではないが、非常な混乱を生じることが考えられる。それと、総合型の場合、事業主が1人ではなく、場合によっては事業主の数が1,000又は2,000というような基金もある。それで、現在の状況からいうと、例えば、新聞報道で基金の危機感をあおっており、そういう誤った報道を受けて、問い合わせも多く来ているという状況がある。このため、この点が義務づけられると、余計に混乱を起こすということ。それから、財政状態の危機感から、任意脱退をしたいという傾向が続出している訳であり、その点は「こういう姿が望ましい」という程度に止めて頂ければ、というのが率直な気持ちである。
 理事会の会議録を、「つとめて詳細に記録し整理保存すること」と、代議員会の会議録を「後日代議員にこれを配布する」というところは、実は、すでに通知が出ているところであり、それを書いているだけだ。
  (3)の2つ目の〇は、出来るだけ情報提供をした方がいいと考えたためである。また、最初から全部提供するのは大変だろうから、見たい、という人には提供する点を、お知らせしておいた方がいいのではという主旨で、書いたところである。
  (4)の方で、「提供しなければならない」というのは、やはり事業主というのは、最終的にリスクを負う者であり、出来るだけ情報提供する必要があるのではないか、という考え方で「しなければならない」というようにした。確かに、事業主全部には負担になることから、何か他にいい方法があれば、変えてもよいと思うが、ある程度事業主へも情報を提供した方がいいと思っている。
 この(2)は難問であり、利益が対立する場合は加入員の方の利益を重視しろ、事業主には報告せよということであり、それ自体は善管注意義務などからすぐ出てくるという性質のものではない。では「望ましい」とすれば、しなくてもいいのか、というと、やはりして頂かなくては困るのではないか、というのがあり、「求めに応じてやる」というのでもいいのかもしれないが、ここでは、「定期的に、または、求めに応じて」しなければならない、というところで何とか読めないかと思うが。
  代議員にも報告を「渡す」ということではなく、報告として、例えば次のようなものが考えられる、というようなものなので、別に、渡さなければならないと書いてある訳では必ずしもない。通知はともかく「法令上」は、会議録の規定はあるのか。
 法令上は、ない。
 作成義務もないのか。
 作成義務もない。
 普通、「議事録」と呼ぶが、後でそれこそ万が一訴訟にでもなった場合などに、異議をとどめておいて、後で証明しなくてはならないので、その点では実名入りにすべきと思う。
  そのものを代議員会に報告したり、加入員に提供しなくてはいけないというのはちょっと、恐らく行き過ぎのような感じもする。
 「詳細に」とは、どの程度までを求められるのか。場合によっては、速記者を置き、それなりの対応を考えなければならない、というのが出てくると思う。
  そこは、基金の判断ということになるが、このガイドラインに示されると、それを忠実に守ろうとの気持ちが当然に出てくるし、その議事録をどういう形でどのように作ればよいか、という事が、次の問題として出てくる。そういう点まで含めたものを、ある程度、客観的にお示し頂ければ、多少、理解がつく。
 現在、資産運用委員会の議事録については、何か書いてあるのか。
 ない。
 通知にもないのか。
 ない。
 そうすると、理事会でどういうことが決まったかということを聞かれたら、少なくとも、正確に答えなければならない、ということだと思う。理事会の議事録を渡すまでの必要はないということでいいと思う。代議員会の議事録は、当然に、代議員までは配布するということまではよくて、理事会の議事録は、これは、参加したメンバーには配布し、いつでも見られる状態にしておく、ここまではいいと思う。
 現実には、そこまではやっていない。
 議事録を作っていないのか。
 議事録は作る、後日、出席者、本来は欠席者にどのような会議であったかを送るべきでしょうが。
 でも、理事がみれる状態にはあるのか。
 それは、そうだ。
 それであればいい。
 しかし、それを必ず送らなければならないとなると。
 必ず送らなければならないという訳ではない。
 通知が出てるのか。
 「事業運営通知」というのに出ている。
 しかし、やっていない。
 必ず配布しなければいけないかどうかは、やや検討の余地があると思う。ただ、作っておかなければならないということは、これは間違いない。
  資産運用委員会については、これは「望ましい」という程度だろう。
  その理事会・代議員会のメンバーは当然いつでも見ることが出来るわけですが、問題は、その他の(3)でいう加入員への情報提供だが、加入員へも閲覧請求権を認めるというのは1つの考え方だとは思う。また、むしろ理事会・代議員会でどういう議論が行われたかを説明するような事でそのもの自体を見せなくてもいい、という考え方もあり得ると思う。
  通知も「会議録」を「議事録」という名前に改めた方がいいかもしれない。普通の法令用語は「議事録」だと思う。
 ある程度、機関誌などで情報は出しているが、更にそれが細分化されていつでも見られるとなると、これは相当の反響があるだろう。対応ができなくなる。開示をしないということではないが、実務上の問題において、非常に混乱をきたすと思う。
 理論だけを言うと、善管注意義務とか忠実義務を負っているのは基金に対してであって、加入者でも事業主でもない。議事録そのものを見せろというところまでは現在の法律を前提とすると、出てこないと思う。
  事業主との関係では、議事録はいいが、今ある管理運用業務に関する情報と書いてあるが、むしろ、求めがあれば管理運用の状況を説明するとかいうぐらいなら「求めがあれば応じなければならない」でもいいと思う。
 9頁の「利益相反のある行為」というのは、投資顧問会社が親会社との資本関係、取引関係、人的関係がある場合に、利益相反のおそれはなく、信託銀行又は生命保険会社の基金は、母体の信託銀行や生命保険会社と管理運用をやると利益相反のおそれがあるというように読める。
  次は、基金が母体企業との間で資本関係や取引のある信託銀行・生命保険会社等と契約を結ぶ場合、投資顧問会社にはそういう関係が直接なくても、その親会社と関係がある場合には、このイのところで読めるのか。そうだとすると、一部の外資系の投資顧問会社を除いて日本中の運用機関と各基金は全て利益相反の関係に、現状だと、なってしまうのではないか。
  ただ、留意する必要があるのであれば、それはそれでかまわないが。
 9頁の「利益相反の恐れある行為」というのは、現在の法令との関係ではどうなっているのか。
 法令上は一切書いてない。
 通知とかもないのか。
 ない。
 ということは、今回、全く新たに書いてみたということか。
 そうだ。
 これは例として書かれているが難しい。まあ、こういうのも全部ダメと書いておいて、外せればアメリカ流にやれるのだが、外せないような感じで書いてあるのが気になる。
 総合基金の場合には、全部、何らかの形で利益相反の関係にある。
 総合基金のような場合は、もうそれ自体分散基金というか、分散母体企業ですから母体企業の株を買っても影響力は小さいと思う。単体の方は、というのも一つのルール作りの考え方ですが、難しい。
 例えば一つの方法としては、単に関係というだけでなくて、「親密な関係」がある、というようなことを入れることも考えられると思う。
 そうすると、親密かどうかというのは、客観的とはいえ基金が判断しなければいけない。役所が承認する形だと簡単なんだが。ガイドラインでは、そういう曖昧なというか、実質基準で動くのだろうか。50%基準のようなものはどうか。
 何%というふうに基準を書くことも考えられるが、おそれのあるという程度の話なのでそこまで厳密に書くのはなじまないのではないか。
 だから、形式的には全部ダメ、だけれども外すというアメリカ式がある。しかし、そうではなくて、ダメな場合だけ書こうとすると、形式基準を実際に書いたら、そこの判断を誤るようなリスクは誰が負うのかということになる。
 基金の立場では入れていかなければならないと思う。
 このア、イ、ウ、エは何かを参考にして書いたのか。
 特に参考にしたものはない。こういうのが想定されるのではないかという事柄だ。
 「あらかじめ理事会で承認を得ておくものとする」とすれば利益相反には、特段こだわることもないのではないかと思う。
 確認を得ておけば利益相反ではないということではない。利益相反のおそれは客観的にあるわけだから。アメリカはマーケットレートのものは外している。むしろ、その辺の考え方は厳しい。
 金融機関については、やはり自行の投資顧問会社をある程度使うということだろう。これを他社へ持っていくということは考えられない。
 選択基準、考え方について合理的に説明がなされていればいい、ということにはならないのか。
 10頁のア、イ、ウを理事会で確認してやれば、法律論としてはおそれはあるけれども利益相反ではない。
  ただ、それがやや手続き的に思われると困る。理事会の確認さえとっておけばそれでセーフということではなく、客観的にこうだと理事会が確認できなければだめだ。
 12頁の監事についてですが、このようなことが必要だというのは分かるが、事実上、基金のことを知らない人がなっている場合もある。
 法制度とすれば必要である。
  ガイドラインができれは、現在ある通知がどれだけこれに統合されるのか確認する必要がある。
 最終的には、報告書は、前文と重複はしますけれども、資料1と資料2がこの研究会の報告書ということになるということでよいか。
 皆さんからのご要望等がございましたら、中に書き込む事も考えられる。
 このガイドラインを単に守るということよりも、その制度の主旨を、どういうふうに理解して、自らの基金として運営していくかということが大事だと思う。前置きが必要ではないかと言った背景もそこにある。
    [問い合わせ先]
     厚生省年金局運用指導課
     担当 伊藤(内3348)
     電話 (代)[現在ご利用いただけません]
                (直)03-3501-3450


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