平成９年２月５日

第６回厚生年金基金の資産運用に係る受託者責任ガイドライン研究会（議事要旨）

• ガイドラインの対象は、この会の性質からいって基金の関係に限定したいので、裁量権の有無で判断すると、基金の関係者の中では、ほぼ理事のみが対象になるが、その旨を明確にした方がよい。
• 「１」の中では、「理事の責任」というのが表からやや強くでているようにも思える。それはいいが、ガイドラインなので、まず役割がうたわれてもいいのか、とも思う。
• このガイドラインは法律を作るものではないので、現行の法律を前提とせざるを得ない。となると、フィデユーシャリーとか受託者責任とかいう言葉はカッコ付きで使う分にはいいが、ガイドラインの中では使いにくい。
• 我が国の現在の法体型の下での言葉であれば、善管注意義務・忠実義務の概念があるが、その２本立てを柱にしつつ、精神としては、そのアメリカの受託者責任と共通する部分もなくはないので、参考にはしたい。
• ガイドライン作成に当たっての考え方の整理だが、これは、基金の方へも知らされるのか、ここだけの話しなのか。なぜ、今、ガイドラインを出すのか、という背景、主旨をはっきりしていただけると基金関係者の理解が深まると思う。
• 最終的には、法律問題は裁判所の判断である、ということをむしろ前文の方に書いておいて、かつ先ほどのは参考としてみてはどうか。
• どちらにしても、なぜ今ガイドラインを作るのか、ということは明記するようにした方がいい。
• 「管理運用業務」の定義とは、どのようなものか。資産管理と資産管理機関という言葉を使っており、「資産管理」と「管理運用業務」といった場合の管理をどう理解するのか。
• 資産の管理ということでいうと、ただ資産の保全と管理も含まれるが、資産を誰にもってもらうかというのを基金として判断するところは入っているが、そこがどうしているかは入っていない。
• 資産管理という事柄を分けておいた方が、リスクの所在を認識する、という面ではいいと思う。
• 「２」の３つ目の○にある「このガイドラインよりも厳しい禁止行為の設定等を行うことができる」というのは、裏を返すと、これより緩いやつはダメですよ、ということか。
• これより緩くしても問題はなかろうと思うが、ガイドラインを作るに当たって、緩くしてもいいですよ、とは書きにくい。
• しなければならない、というのを緩めるのは、法令違反の恐れがある。
• 網羅的・体系的、というところで、「網羅的」とは言わない方がいいのではないか。
• 運用関係者の役割分担のところで、理事というのがいて、理事長と執行理事、常務理事というのがあるが、普通、一般的には「理事」は基金の執行者であるから責任がある、との整理だが、これを見ると理事長が執行者で、理事は委任を受けたくくりで、そこまでが執行者となっているようだが、その辺はどうなっているのか。
• 「網羅的」をとってもいいとも思うが、ガイドラインをもらった方も困るので、「できる限り」との程度の言葉は入れるべきかもしれない。
• 理事の責任については、検討中のところもあるが、悪く言えば法律の不備で、よく言えば不親切、ということだと思う。しかし、今の法律の下でのガイドラインですから、法律の主旨がない部分は書けないが、法律の趣旨に添うものであれば書けるので、そこをどういう整理にするか一言で言えば、執行理事は、理事長から頼まれてやっているのか、基金から頼まれてやっているのか、ということだと思う。
• ２頁の「４.基金の資産運用関係者の役割分担」の４つ目の○にある、「助言を求めた業務」の意味については、コンサルタントが管理運用業務関して責任を持つ、と読めるが、多分そうではないと思う。
• ここで、有償・無償などと言う必要はないのか。
• 有償・無償と切れる話しでもないと思う。いろんな状況で決まるものと思うが、ガイドラインにはこれ以上細かく書くことはできないと思う。基金側としては、こういうところもガイドラインで細かく書いた方がいいのか。
• 基金としては、重要な意味合いがあると思う。
• 一般論として、投資助言というのは難しい。運用機関に運用を委託していれば、助言はそこに含まれており、そういうものは、一般的に別個にプライスイングはなされていない。しかし、助言のみを商売にするということになると、サービスも、質的にも量的にも違ってくる。よって、従来は、基準がないのではなかろうか。
• 体系的なことについて伺いたいが、ここで、善管注意義務と忠実義務というのを分けているが、確かに利益相反については、遵守すべきであり、そこを具体化すべきであるというのは、その通りと思う。あと、用語の問題として,この条文を善管注意義務の方はどちらかというと、これは、ややうまいへたのことを言っているようであり、忠実義務の方は、どちらかとというと利益相反のことを言われているようだ。実質的に違うものに善管注意義務・忠実義務という言葉を当てているが、そこは、今の日本の善管注意義務・忠実義務という言葉の使い分けが必ずしも明確ではなく、その点で、この二つの言葉に現行法を当てはめてしまうというのは、現行法の解釈としては、いかなるものか、と思う。
• ガイドラインを書くときにどう書いたらわかりやすいか、というのは当然あるので、それから言うと、言葉はともかく、うまいへたの話しと利益相反の話しは分けた方がいいと思う。
• ガイドラインでは、うまいへたの方が重要と思う。
• 法律との関係で言うと、一つは、現在の法律に起点がある忠実義務という中に、ここの、うまいへたが含まれると解するか、含まれなければどこに根拠があるのか、ということであり、違反した場合の連帯責任は、法律に規定がなければ、原則は連帯ではないので、これがもう一つある。
• 日本の場合、分野によって、法律の解釈が違っている。
• かつての、最高裁の大法廷での判例は、商法の取締役についての忠実義務は善管注意義務に含まれる、としており、この判例は今も生きているが、学説のほとんどは、善管注意義務と忠実義務は、分けて考えるべきとしている。商法の債権管理会社の立法主旨には、分けて書いてあり、証券投資信託法においては、善管注意義務とせず、忠実義務としている。委託者は、善管注意義務は無いが、忠実義務はある。
• ガイドラインとしては、善管注意義務としては、連帯責任にはならないのが、忠実義務としては、連帯責任になる、ということになりしっくりこないところ。
• ２頁の下「勤務形態に応じ」というところは、むしろ、「その人に与えられた役割や責任に応じて注意を払う」という形の整理がいいのではないか。 １０頁も同じ。
• ３頁の(2)の「資産等」というのは、どういうものをいっているのか。「資産」というのは、どのレベルで言っているのか明らかにしなければならない。
• 言葉だけで見れば、それは、個別の資産を意味するのではないでしょうか。 例えば、Ａ社の店頭株、Ｂ社の上場株など。
• レベルが、その場その場で違ってくるのかな、と思っており、表記の仕方が、難しい。一般勘定も１つ商品である。
• 個々の株としても、指図ができないものなので、レベルはもう少し広いのか。
• 自家運用においては、あり得ることだ。
• ３頁の「運用コストへの配慮」というのは、今の現状からすれば、手数料は統一的にされており、「理事長等」というのは、どういうことをすればいいのか、というのが、基金の方から、出てくると思われる。また、成功報酬的なものを言ってるのかと思われかねない、という点からも、どういうことをイメージして書かれているのかがわからない。 例えば、コストも考えて運用すべきだ、という程度のものか、あるいは、理事長は、手数料を下げるよう努力しなければならない、というところまで含まれるのか。もし、入っていることだとすると、単価が決まっているという観点から、なかなか動かないのではないかと思うが。
• 現実にある手数料体系のもとで、商品の特性を考えて判断すべきということであるが、今の段階では成功報酬まで念頭にあるわけではない。
• 手数料を下げるように交渉せよ、とは、理事長に対して今の段階では言えないと思う。ただ、将来、手数料が横並びでなくなれば、聞いてみることは、という程度のことは、出てくるのではないか。
• 実際の売り買いを行えば、当然コストがかかるので、リターンに見合ったものでなければならい。
• ３頁の「分散投資」のところで、自家運用についての規定についてだけ書かれているが、恐らくそれは、投資顧問や信託の場合の１０％規定については、直接、厚生省の通知などで、言及してないから書いてないのかもしれないが、一つは、自家運用だけ特定してここに書くことが、少しバランスを欠いたような印象を持つ、ということと、
• 実際に自家運用を書くとしても、債券しかしか認めてないため、どうしても社債ということになるが、より広くいえば、「同一会社の発行する債券」という書き方の方が、本来的な部分としては、相応しいのかな、と思う。
• 信託、投資顧問に対しては大蔵省の通達がある。
• 基金に対して規制している訳ではなく、信託銀行に対して規制しているものである。
• 基金に係るものであれば書かねばならないと思うが、そうでなければ書く必要はないと思う。
• この規定は善管注意義務か、忠実義務ではないのか。
• 利害関係にある会社の社債を持つ場合には、忠実義務になる。法律論的には、１０％を越えるとすると、分散投資という忠実義務に反する可能性がある、とせねばならないと思う。
• 法令と同じように、通達は引用しないのか。
• この報告書を受けて、ガイドラインそのもが通達となるので、既存の通知と重なる部分をどうするかは、厚生省で考える。
• ２頁の上から２行目、「その他の関係者」の中に「資産運用委員会」というのがあるが、これは、大体理事と代議員で構成されているものであり、理事等を書いておけば、資産運用委員会と書く必要はないのではないか。
• 更に、１３頁にも資産運用委員会の「設置が望ましい」と、位置づけがあるが、これは、むしろ前段の方で一つ入っていれば、用が足りるのではないのか。資産運用委員会の中には、理事もいれば、代議員もいる。
• １３頁にもあるが、単連の基金には、必ずしも、理事や代議員ではない、母体のセクションのメンバーが入っており、ここで規定しておく必要がある。
• 専門委員等外部の人も責任を持って対応していただく必要があるので、資産運用委員会の項目は必要ではないか。
• 「その他の関係者」というというところに、代議員・監事と並べて委員会があるから、今ご指摘のようなことになるのか。厳密に関係者といえば、生身の人間として書くなら、理事・代議員・監事。そして、資産運用委員会については、構成員を個々の人間として書くのではなく、資産運用委員会として書く。これも、書き方を工夫してみたい。
• ６頁に、「運用状況の把握」とあるが、基金が分散投資の把握をしろ、ということと思うが、入る場所としては、ここで妥当なのか、それとも、先ほどの全体の「分散投資」の中へ持っていった方がいいのか。
• ここは、受託機関との留意事項ということなので、ここへ入れてあるが、本来の主旨は、より基本的なところでいえば、おっしゃるとおり。
• 報告を求めるものは、その前に書いている。運用状況の把握は、基金サイドの問題と思うので、少し違うのかな、と思う。
• これを書いた主旨が、制度改正を先取りしたような形になっているが、４月からは時価で５・３・３・２規制を適用するということになるので、四半期ごとに資産構成をチェックしなさい、ということだ。
• 今の点は、置き場所を検討すべき。
• ４月から、時価ということだが、生保会社の一般勘定についても、時価で報告を求める、ということになるのか。
• 時価については、生保会社の一般勘定については、払い込んだ保険料そのもので、第一特約・第二特約は基準価格だ。
• 基本方針の運用機関への提示については、基金全体の目的など基本方針のすべての項目を運用受託機関に示さなければならないとは思わない。
• 私は、そのままでもいいと思うが、どうか。やはり、基本方針は示してもらわないと、困るんではないか。
• 基本方針については全てを示す必要は無いと思っている。
• シェア変更に当たっても運用の評価のみならず、基金にて定めたアセットを維持するために、例えば、株式の占めるウエイトが高くなりすぎて株式を主として運用している受託機関のシェアを下げることもある訳だから、こういったことも触れておく必要が有ると思う。
• シェア変更については、運用の評価のみにより行うという意味で書いている訳ではない。
• ほとんどの基金は、バランス運用を行っており、基金個々のガイドラインを示すことは行っていない。
• 無理ではないか。やれるところも有るかはしれないが。ガイドラインを示さなければならないとは書けないでしょう。
• 基金の運用管理体制がしっかりしている基金には、ガイドラインを示せるが問題は、中小基金である。そういうところが背景にあり、現状をご理解いただきたい。
• 現実は、渡辺委員のいうとおり、と感じるところもある。恐らく大きい基金は大丈夫でしょう。小さい基金は、うまくやっていかないとならない。その上で、基本方針は、基金で責任を持つものと思う。
• 「ガイドライン」との言葉自体もこのガイドラインと誤解するので考えなければならない。個別運用機関と基金の間のものが、ガイドラインである。
• 運用の基本方針の示すべき項目については、全てでもいいし、要は、項目だけでも入っているのが大事である。
• 受託機関へガイドラインを全部渡しては、きりがない。運用方法の部分だけでも、いいのではないか、と思う。
• 統合レポートにより、信託銀行は、３業務を持つこととなる。利益相反については、当該運用業務はダメで、コンサルテイングのみとするなら問題ないと考える。コンサルテイングを独立したイメージにするか否かだと思う。
• コンサルテイングの場合、利益相反の防止については、求める方が間違いで、兼業で有れば常にそうなる。
• 客観的にコンサルタントの公平性などは、担保されねばならない。
• ６頁のシェア変更の理由を明らかにするのは、理事会のみか、対外的にも、示すのが望ましいか。
• 理事会を考えている。

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