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平成8年11月28日


第4回厚生年金基金の資産運用に係る受託者責任ガイドライン研究会(議事要旨)


日 時   平成8年11月28日(木)午前10時〜12時15分
場 所   社会保険庁第1会議室
参加委員   ・神田委員 ・伊勢谷委員 ・小林(昭)委員
・鈴木委員・角田委員・青木委員 ・遠藤委員 ・宗委員
・柿沼委員 ・土浪委員 ・渡辺委員
議事要旨
 信託銀行よりレジュメに沿って報告
  <信託銀行と基金の関係について>
 年金制度を取り巻く環境は、金融環境の変化に伴う運用の高度化、法律改正等による年金制度の多様化、規制緩和による運用手法等の選択肢の多様化が進んでいる。このような状況は、受託者にとって裁量権の拡大と、それに伴う責任の増加を意味している。ここでいう受託者とは、一義的には基金、二次的には基金の業務について再委任を受けている受託機関ということになる。
 今後、高度化・多様化する年金制度の運営において、基金が運用方針の策定や運用評価、運用機関の選定などの政策的判断に注力していかなければならない中で、受託機関としても資の判断に注力できるような協力体制の整備をさらに図ることが必要であり、受託機関がやらねばならないことの範囲も、従来以上に幅広く重いものになってきていると認識している。また、運用や財政が受ける影響をいかにわかりやすく基金に情報提供していくか、ということが受託機関に求められているのではないか。
 基金と受託機関の役割分担の明確化を図るため、今まで以上にコミュニケーションのあり方や基金が基本方針を作成する際、受託機関としても運用状況報告書のあり方を見直すなど、いろいろ工夫していかねばならない。
<基金の現状について>
 意思決定のプロセスが重要となってくるので、今後、受託機関としても、理事の意思決定プロセスに介在する年金業務の専門家として、そのノウハウや組織力を活かして理事の手助けをしていくことの重要性を再認識している。そのために、年金ALM業務や財政コンサルティング業務を充実させることも必要だ。
<基金の理事の責任意識の望ましいあり方について>
 理事は受給者や加入員の受給権保護のために裁量権を行使し、責任を負わなければならない。また、受託者たる信託銀行は、受託者兼受益者たる基金に対して責任を負っているといえる。その意味で信託銀行も間接的に受給者・加入員に対し責任を負っている。
 その理事と受託機関にとって共通の命題である受給権保護のために、理事や受託機関が責任を果たすべく行動するとき、その規範となるものは何か。信託銀行で言えば、信託法の善管注意義務、忠実義務や、民法の善管注意義務になる。結果もさることながら、プロセスを見直していくことも重要と考えている。
 日本においても、厚生年金保険法や民法に注意義務や忠実義務があり、かつ運用規制の緩和が進むと同時に自己責任原則の確立が言われる中にあっては、エリサ法の基本概念は既に存在しているといえるのではないか。ただ、判例法の英米とは異なり、制定法である我が国では、これらの規定のみでは機能しにくい風土にある、ということだと思う。
 基金については、運用に関する能力についていえば、受託機関のようなノウハウが求められているのではなく、運用機関を適切に判断できる能力が求められているのではないか。
 運用に関する知識、能力の吸収に対する姿勢についても、プルーデントマンとしての責任が問われているものと考えられる。そのため、情報源として、また最善と思われる運用のためのツールとして受託機関を活用することも一つの手段ではないか。
<マスタートラスト、総幹事制について>
 日本の企業年金においては、制度発足の当初から受託機関のうち1社が代表として窓口となる総幹事制度が採用されており、事務の効率化という観点からは、当初から基金の円滑な運用に資すべく機能してきたが、規制緩和の流れの中で見直しを図るべき時期にきていると感じている。
 総幹事制度は一度分解され、その上で米国におけるマスタートラスト的な考え方によって制度運営の効率化を図るため、基金の選択と受託機関の商品の充実を経て、再度業務の集約が図られるのではないか。
 信託銀行としては、業務委託契約だけの契約とすることや給付専用ファンドや統合レポートを検討中である。
<基金の運用体制の望ましいあり方について>
 基金に対しては、加入員や母体企業に対すディスクロのほか、受託機関へのディスクロもお願いしたい。
 また、受給権保護のために、基金の責任が明確にされていく中で、母体企業との関係も改善しなければならないと考えている。
 意思決定に至るまでのプロセスの重要性を考えた場合、今まで以上に理事会、代議委員会を活性化させることが必要ではないか。そのために受託機関としても十分な情報提供をしていくことができるように努めていく。
〔質疑応答〕
 第一は運用と業務委託、特に資産管理との分離について、同一の信託銀行が担当する場合、何ら相反的なことはないのかという点について聞きたい。第二には、カストディー業務を一つの金融機関で行う場合、分別管理というのは当然されるが、現実にはアクシデントが起こる可能性があるが、そのような場合に、一つの機関だけに集中して資産管理を委託していることよりは、資産を複数の機関に分別管理する方がリスク分散ができ安全ではないか。
 第一については、利益相反にはならないと考えている。第二については、受託機関の経営に信頼を置くのかどうかという問題になるのではないかと思う。受託機関が不安だということであれば、複数の機関に分けた方がリスク分散になるが、現在の日本の状況に置いて、信託銀行の経営がそんなにひどいというようなことはない。そういったことがないならば、逆に分散するメリットがどこにあるのか思ってしまう。
 法律的に見ると、信託財産は保護されているので、万が一、受託者が倒産したとしても、それは受託者の固有財産には属さないので信託財産は保全される。ただ、留保点としては、現在の法律では、信託財産の種類によっては公示を求められており、とりわけ有価証券は非現実的な公示方法を要求されている。仮に、そういう公示を行わないと当事者間で約束した場合、一般債権者や破産管財人に対抗できるのかという問題がある。信託法の規定は、立法論的には運用目的の信託のような場合については改めなければならないと私は考えているが、若干その規定を巡って解釈論上の論争も法律家の間にある。信託銀行以外の法律関係の所にカストディーをした場合、今言ったような問題が有り得る。財産の保全さえしっかりと法律で決めてあれば、その受託機関の信用リスクを被らなくてすむということになる。
 信託というのは、受託者に裁量があるということであり、信託財産というのはその人を信じて任すというのが基本にある。したがって、運用については信託に相当の裁量があるのだから、責任があってしかるべきではないか。
 年金信託の場合は、指定運用ということなので、基金から大枠の指定を受けてその中で最大の努力をするのが信託の責任である。その意味では、今の話にあったように与えられた範囲において最大限の努力をしていく責任は従来どおりである。
 運用基本方針の内容自体が、我々が与えられた裁量権で運用していくことにとって非常に大きな影響を持つようになってきた。
 これからの基金と信託の関係で考えれば、役割分担が必要で、基金の裁量と信託の裁量をよく考えていかなければならない。
 信託銀行としては、今後とも運用についての責任を果たすことが重要と思う。
 信託銀行として、受託者責任を守るために、内部の規律等、どのような努力をしているのか。ガイドラインのような具体的なもので、受託者責任について明確にすることについて信託銀行としての考え方は。
 年金財産とその他の一般財産を運用しているセクションがあるが、部を細かく分けて、連携がとれないようにしているなど、いろいろなことを組織上考えたりしているが、まだまだ不十分ということは事実であり、充実していかねばならないと思う。二点目については、企業年金法が整備され、企業年金全体を網羅していけば法律上しっかりした形になるのではないか。
 受託者責任を法的な裏付けをつけて明確化することについてはどうなのか。
 法律の個別の内容そのもの、一つ一つにどのような規制がかかるのかであるが、その内容が余りにも受託機関にとって重荷であるとか、現実的でないなどのことであれば非常に困る。受給権保護などのため当然やっていかなければならないものならば、法律で縛っていくべきであると思う。
 法律的にいえば、信託については、善管注意義務や忠実義務などは法文上はっきりとしているが、生保、投資顧問についてははっきりしていない。もし、企業年金法を作るのであれば、善管注意義務や忠実義務などをはっきりさせるという意味では、信託にあわせて各機関を横断的にしていくということになるのではないか。
 アメリカの場合にもプルーデントマンルール一本であるように、法律にはあまり細かく書けないのではないかと思う。今後のことを考えれば、受託機関に全て任せるというようなもの(その場合には、受託機関が運用そのものについては責任を持ち、受託機関の選定については、運用がうまくいかないような所に出すことについて基金側の責任となる。)や運用そのものに条件を付けて出すというようないろいろな形態があってもいいのではないか。また、特定と指定の中間のような形があってもいいのではないか。
続いて、生命保険会社より報告
 基金側と受託機関である生保との責任をどのように区分するかという点であるが、民法上では基金と理事の関係は、委任関係にあたり、基金の理事の業務全般に対し善管注意義務を課している。また厚生年金基金規則では民法上の規定に加えて積立金の管理運用業務に対して忠実義務、連帯損害賠償を負うこと、利益相反行為の禁止を義務づけている。従って基金の理事は、基金全体の資産構成について今言った責任と義務を負うという形になる。しかし、各基金は外部への委託運用を義務づけているので、その運用受託機関の行為についてまで理事が責任を問われることはない。理事は、各機関の選定と管理にのみ責任を負うことになると理解している。
 生保が提供する商品である一般勘定と特別勘定をどのように選択するかは基金の判断であり、それぞれの商品の契約上の義務を果たすことは生命保険会社の義務である。ただし、第二特約については、その資産構成については基金側と協議するということになっているので、その協議内容については基金、生命保険会社の双方が責任を負うということになるのではないか。
 信託が信託法により善管注意義務、あるいは忠実義務を負っているのに対し、生保については法令上明らかにされていない。生命保険契約の双務契約性及び有償契約性に基づく保険料は、保険金の支払いを受けるための対価であることから、契約者の債務として認識され、生命保険会社の固有の財産に組み入れられるというのも生命保険会社の特徴である。
 現状、各基金から生命保険会社に対し、受託者責任を契約上明記するように求められている。
 特別勘定特約については、限定的に受託者責任の導入を認めていくことが社会要請に鑑みると止むを得ないことだと考えいる。現在、生命保険会社では、基金との協定書の中に誠実運用義務を明記することについての検討を行っているところである。なお、一般勘定については、保険者の債務事項を確実にするために一般勘定において資産運用を行っていることもあり、予め設定された予定利率に対する運用リスクは生命保険会社が全て負っており、また、区分経理が導入されてもその構成は変わらないということから、当該契約には受託者責任を導入する余地はないと考えている。
 各基金に要望させていただきたい点は、基金制度において主役は基金なので、制度運営にあたっては自己責任原則を認識し、従来以上に主体性を持って臨んでいたできたい。理事の方々は、基金運営の専門家であり、フィデューシャリーについてもその責任を果たしていただきたい。また、理事の方々は数理や運用の専門家ではないので、それぞれの分野の専門家である受託機関を利用することは当然であるが、そういった点から受託機関の能力をいかに引き出すかが重要であり、長期的な視点に立ったプロセス重視の観点からその役割を果たしてもらいたいと考えている。
 受託機関としては、基金制度の当事者の一人として自らの責任を果たすのはもちろん、基金や理事がその役割を十分果たすためにより透明性のある商品提供をしていかなくてはならない。そのためには、運用のプロセスや成果についてのディスクローズをよりいっそう充実させ、また、新商品の開発や運用体制の強化を最大限努力していきたい。
〔質疑応答〕
 基金のあり方について、運用方針を策定しそれに基づいて運用を指示しても、一般勘定、第一特約の場合、基金の意向は反映されないが、このあたりについてはどう考えているのか。
 現行の第一特約については、基金側の意思が入らないという状況であるが、そういった点を生命保険会社としても改善しなければならないと考えており、商品開発を検討しているところである。第一特約を改善し、基金側の要望に沿った運用ができる商品を開発中である。この形で基金側の要望に対応していきたい。
 合同運用という形態は変わらないのだから、ここの基金の要望、リスク許容度を完全に満たすことはできないのではという問題がある。
 まだ開発中の商品であるが、一つは、各口ごとのディスクローズが、今の第一特約と比べる詳細な形になる。そういったものを参考にしてもらい、投資対象別特別勘定について、運用基本方針と照合してもらい、選択してもらうという形になる。
 第一特約と第二特約について誠実運用義務を書こうということなのか。
 そうです。
 受託者責任について、詳しく説明してほしい。
 生命保険会社の契約は、信託の委任契約と違い、契約時に保険契約者と保険者の間で、相互に合意した上で、保険事故があった場合に保険金を支払うというものである。一般勘定も特別勘定も保険契約という意味では同じである。特別勘定については、信託契約と非常に類似しており、かつ、全ての運用責任が基金サイドに係るということで、受託者責任については真摯に受け止めなければならないと考えている。特別勘定については信託銀行と同じように、協定書の中に受託者責任を盛り込むことによって明確にしていく必要があると考えている。
 信託契約と同じように理解して良いのか。
 特別勘定についてはそうである。
 一般勘定には受託者責任を導入する考えはないとのことだが、今後区分経理になれば、より運用内容が明確になるので、情報提供をすることが最低の責任になると思うが、受託者責任を導入しないのであれば、どのようにカバーしていくのか。
 今年の4月から団体年金については、内部経理ではあるが、区分経理となり一般の個人保険とは違った形で商品提供している。今年の4月の段階は、あくまで今まで一般勘定全体であったものを区分経理したということで終わったが、来年4月の段階では、今年度の動きもあることから、団体年金の区分の中で特に損益部分等についてもディスクローズし、より明確にしていきたい。そういった中で一般勘定の中の団体年金区分の資産の動きを明確にし、かつ、今後については連合会等と話し合いながら、ディスクローズをより分かり易くしていきたい。
 運用の実態については、生保は現在、総利回りと配当があるが、いわゆる総合利回り的なものは出していないが、今後それに近いようなものは出すつもりはあるのか。
 まだそこまでは検討していない。
 一般勘定で区分経理をするという話だが、経理ごとの利益相反という問題とか、たとえば区分経理ごとに違う考えがあった場合、配当にどう反映させる形をとるのか。
 一般勘定の配当については、インカムとキャピタルの還元と考えている。インカムについては毎年配当で対応、キャピタルについては会社によって異なるが、財源の実現益を出しながらどういう形で対応し契約者に返還するかということになるが、このような二つの財源を持って対応している。
 相互会社という特殊な問題はあるが、この分野は、法型式的には保険契約であるが、実質的には、特別勘定などは特に、運用委託契約である。実体と法律にかなりギャップがある。一般勘定についていえば、利率を保証しており、善管注意義務などをいってもあまり意味がない。配当の部分を考えるとやや変動部分はあるが、基金側からいえば、確定利回りである銀行預金を選んだようなものであるから、あと負うリスクは信用リスクだけである。
 保証利率は、基金制度は非常に長い制度であるので、基本的には変えるものではないと考えている。四半世紀5.5%が堅持されたという事実もある。4.5%、2.5%と引き下げたいうのがイレギュラーな事態であって、予測し得なかったという点ではご迷惑をかけたが、基本的には長期的展望にたった保証利率ということを最大限認識し、これを保証していくという考え方にたっている。それを超えた部分については配当還元を行っている。配当還元については、各社考え方が違うので一概にはいえないが、各社とも2.5%をクリアできる体制の中で進めている状況である。
 制度上認められれば、第一特約の新商品で合同運用ではなく単独運用をするのか。
 単独運用は第二特約で商品提供しているが、第一特約については、第一特約そのものが合同型になっているので、改訂するとすれば新しく商品体系を作らねばならなず、別に考えなければならない。
 保険契約なので約定した保険給付を行うということで、基金側である程度割り切らなければならないということだが、保証利率と区分勘定と配当という問題について、何か説明するなどの誠実の義務があるのではないか。
 生命保険業界では、区分経理をされた後、どういう形で配当が決められていくかなど、基金側に分かり易く説明できるものを来年度決算から提供しようと考えている。
 第一特約、第二特約については受託者責任を導入するということだが、これは、保険資産としての位置付けでするのか。一般勘定も保険資産であるが、一般勘定については確定利率付きの資産であるという考えであるが、これについても受託者責任の問題を考えなければならないと思う。保険資産と受託者責任についての考え方を聞きたい。
 他人の財産を預かる場合と自己の財産を預かる場合とでは注意義務の程度が違う。有償で他人の財産を預かる信託銀行等の場合、善管注意義務という高いレベルの注意義務がある。自己の財産についての注意義務は少し低いレベルのものである。信義誠実の原則から生命保険の特別勘定の注意義務は、他人の財産まではないにしても、自己の財産に対するものよりは高く、両者の間にあると考えている。その状態から契約書に誠実運用義務等を盛り込むことにより、善管注意義務に近いようなレベルに引き上げていこうと考えている。また、区分経理と特別勘定の違いは相対的な違いであるので、区分経理は特別勘定よりはやや低いが自己の財産よりはやや高いところで注意義務があると考えている。
 信義誠実の原則は、善管注意義務よりは低いということなのか。
 善管注意義務という言葉は、委任等の場合の言葉なので、それを直接協定書に盛り込むということは、他の保険や業界に影響があるので、誠実運用義務というような言葉を考えている。ただ、実際にどの程度が良くてどの程度が悪いというようなところは難しい。
 忠実義務についてはどのように考えているのか。
 忠実義務と善管注意義務については、全く違う概念とは考えていない。誠実運用義務を盛り込めば、基金側が心配するようなことはなくなると考えている。
 一般勘定の受託者責任については再度検討してみる。
 忠実義務と善管注意義務が同じ概念であるということだが、企業年金の観点からいえば両者は明確に違うと考えている。
 まだ、具体的事例に当てはめて精緻な議論をやっているわけではないので、意見として今後の議論に活かしていきたい。
 特別勘定に限っての話であるが、生命保険会社として受託者責任を果たすためにどのような努力をしているのか。また、受託者責任について法律を設けるべきであるということについてはどのように考えているのか。
 勘定については組織的に分けてチャイニーズウォールを防止している。ただし、運用を行うにあたっての情報などの管理は、会社として共通の情報などもあり、情報を遮断しているわけではない。いくつかの分野の勘定があるが、勘定ごとにポートフォリオマネージャーを任命し、各勘定間の独立を保つというような組織をとっている。
 運用機関の利益と基金の利益が反する場合に基金の利益を優先させるためにどういった仕組みをとっているのか。基金相互間の利益が反する場合、公平に扱うにはどうしているのか。
 職務基準については特に定めてないが、部のポリシーとして自社のためより基金のためということで運用をしている。職務基準書とまではいっていないが、倫理観を持ってやっている。
 一般勘定を資産に入れることは不適切だといっているように聞こえる。一般勘定では、会社を選ぶにあたってのディスクロージャーの問題や価格の差があまりない。今後ディスクロージャーが進むとか、アメリカのGICのように有期のものであるような、商品性そのものが変わるというようなことがあるのか。基金が受託を選択する場合、なぜこの基金を選択したのかという合理的な理由を求められる。
 一般勘定については努力をしてきたつもりであるが、よりいっそうのディスクロージャーを進めて明確にしていかなければならないと考えている。これを材料に契約者が受託機関を判断できるようにしていく。来年の4月以降、ディスクロージャーによる明確化の速度がいっそう速まっていくというようなことになると思う。そうして、各社間の内容が区分してわかるようになると思います。
続いて、投資顧問業関係者よりレジュメに沿って報告

<投資顧問会社の役割について>
 我々の業務は、投資一任契約による運用指図であり、信託の管理は投資顧問業法、厚年法よりできない。受託者責任については、業法の21条、一任契約書の中に忠実義務がうたわれている。この部分については独立性の確保と利益相反がポイントとなるわけであるが、これについてはいくつかの項目で書かれている。また、民法の664条の善管注意義務についても適用がある。
<基金の資産運用管理の現状について>
 運用機関の選定についてであるが、利益相反に絡むということから運用能力本位の選択ということになる。投資顧問が年金資金の運用を始めて7年目になるが、運用能力の評価が出てきている。
 評価機関の活用についてであるが、何らかの形でコンサルタント契約を結んでいる基金は、受託基金の約4割に上っており、コンサルタントの利用はかなり進んでいるといえる。
 運用評価についてであるが、運用機関の見直しが活発化している。平成2年から投資顧問の利用が急速に増えてきている。
<投資顧問会社から見たいくつかの点>
 投資顧問の運用は個別運用が特色であり、小さな金額の場合、分散投資の面から効率的な運用が可能かという問題がある。これは他方面で検討されていることであるが、ディスクローズと基金のアセットミクスの選択を可能にするという配慮をしたうえで、合同運用という同じ条件で競争原理を働かせるという意味でも検討すべき課題である。
 情報開示の徹底について、我々は原則的に四半期に一度運用の状況を報告している。ここでは資料を提供するだけでなく関係者に説明を行っているが、その場に加入員を代表するような人が出席することが増えてきており、良いことだと思っている。
 年金資金の運用という同じ分野では、受託者責任を考える上で基本の部分で統一的なルールが必要ではないか。重要な長期的視点ということについては、基本的には銘柄分散、時間分散ということであるが、銘柄分散についてはかなり進んでいると思うが、真の投資価値が実現するには長期間かかるということを認識しなければならない。
〔質疑応答〕
 投資顧問は、母体企業との利益相反を防ぐためにいろいろなルールを決めているというのは、同じことをやっている信託・生保より進んでいると思うが、こういった業界ルールが守られているかどうかはどうやってチェックをしているのか。もう一点として、こういった点を含めて利益相反を防ぐため職員の規律等はどうしているのか。
 協会としては自主規制ルールを守らせるために監査委員会を設けている。中立の5人の委員からなり、ここで遵守状況をチェックし、規律違反に対しては除名、会員権の停止、過怠金をとるなどの処分ができるように体制は整えているが、現状では協会スタッフが少なく、実質的には機能していない状況である。その他、年1回フォローアップアンケート調査を行っており、協会全体の状況を把握し、意見、要望を会員に還元し、会員に自己チェックしてもらっている。二点目については、協会の研修計画で幹部を集めて説明その他を行うというものがある。その他、ファンドマネージャーを集めて運用技術の向上を行っている研修の中で、年に1回2〜3時間程度、受託者責任についての時間を設けている。研修後、この時間に配布するペーパーを使って各社で自社研修を行うという体制をとっている。投資顧問会社が140社ほどあるが、毎回100〜120社位がその研修に参加している。これを積み重ねることによって徹底できるのではないかと思っている。
 要望であるが、投資顧問業の要覧は、各社まかせの判断でアンケートをとっているというのが実体のようである。ファンドマネージャーの経験年数といったような基準が違うと横断的に比較することができない。このようなデータは基準を明確にして提供していただきたい。
 最低限度額が1億円に引き下げられ、小規模基金の利用が広がっているということだが、財投協力の関係もあるため実際1億での運用はできないのではないのか。
 財投協力の問題については、特に特化型の運用の場合、一度処分してから買わなければならないという問題を指摘していると思うが、実務上は差金決済が可能であり、売買での無駄なコストは回避できるので、特に迷惑をかけるものではないと考えている。
 基金の独自性と、母体企業の意向の反映についてはどのような見方をしているのか。受託者責任の問題とはどのように関係してくると見ているのか。
 最終的には母体がリスクを背負うという問題があると思う。基金の理事の役割と母体との兼ね合いをきちっと線引きするのは難しいと思うが、母体についても何らかの責任が発生するのではないかと思う。アメリカの場合は受託機関の選択等は事務局に任されている色彩が強い。どこの部分にどの責任があるかを明確化していく必要があるし、母体にも何らかの考え方が必要ではないか。
 投資顧問が基金資産に占める割合はまだそう大きくはないが、規制緩和の撤廃が現実化することについて、協会として他の業界(信託・生保)に対する意見、要望を基金のために教えてほしい。
 一つの例として、外貨建て資産の運用でグローバルカストディの問題がある。従来一般的には、ブローカー決済が多かったが、コスト的に見ればグローバルカストディ体制で現地決済を行うほうが良いということがある。規制緩和が進み、コスト面で現地決済の優位性が高まってきている。運用側と信託が一緒になってやっていくことなので、従来の慣習の踏襲よりも、新しい条件の下で新しい仕組みを考えていかなければならない時であろうと思う。資産運用管理という場合、資産運用と資産管理という側面があるが、信託・生保は両方を併せ持って受託している。我々は運用の機能のみを持っている。運用という面でいえば、信託・生保は合同運用できるが、投資顧問については全くの個別運用、個別管理である。最低限度額が1億に下がってきたという時にも、その1億を個別ファンドで全て運用していかねばならない状況に今置かれている。規模の小さなファンドなら共通な判断のもとに運用を行っていくことができれば、リスク分散の観点からもスケールメリットを享受するという観点からも基金にプラスになるのではないかと思っている。信託・生保と資産運用面での条件を同じくして、基金が本当に能力を見ながら発注していくという状況になっていくと良いと思う。

    [問い合わせ先]
     厚生省年金局運用指導課
     担当 伊藤(内3348)
     電話 (代)[現在ご利用いただけません]
        (直)03-3501-3450

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