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第7回遺伝子治療臨床研究中央評価会議議事録


厚生省大臣官房厚生科学課


○研究企画官
現在、御出席予定の先生がお1人未着でございますが、定刻となりましたので、第7回遺伝子治療臨床研究中央評価会議の開催をお願いいたしたいと思います。
なお、松原先生並びに森岡先生は、御都合により御欠席という連絡が入っております。
最初に、厚生省大臣官房伊藤審議官より御挨拶を申し上げたいと思います。
○科学技術審議官
厚生省の伊藤でございます。本日は、大変年末のお忙しい中、委員の皆様方には御出席をいただきまして、心からお礼を申し上げたいと思います。
この遺伝子治療臨床研究中央評価会議につきましては、前回が昨年の12月25日でございましたから、ちょうど1年前でございました。たしか、北海道大学の崎山先生から御報告いただくことになっておりましたが、飛行機のトラブルで遂にお見えになれませんでした。あのとき以来、約1年たった訳でございますが、その1年間の間に遺伝子治療をめぐっていろいろなことがございました。
今日は、まず北海道大学のADA欠損症の第1例目につきまして、その後の状況を御報告いただき、更に熊本大学のHIV感染症に対する作業部会の検討状況を御審議をいただき、更に今回熊本大学と東京大学医科学研究所からがんの遺伝子治療の臨床研究の申請がなされましたので、それらにつきまして、今日は十分御議論をお願いを申し上げたいと思います。
併せてこの機会に、実は昨日、平成9年度予算の政府原案の閣議決定がなされておりますので、その中で特に厚生省関係の研究費の関係につきまして、若干御紹介をさせていただきたいと思います。
科学技術基本法の成立に伴いまして、科学技術基本計画が策定されたのは御承知のとおりだと思いますが、平成9年度予算の編成に当たりましては、研究開発投資を重点施策の一つとして、私ども厚生省の関係におきましても、研究費全体が751 億円から915 億円と163 億円、21.8%と、大幅に研究費の予算が増えました。
その中でも、特に来年度以降、いわゆる厚生科学の分野といいますか、人の健康ですとか病気の分野におきまして重点的に取り組んでいく6つの課題というものを選定いたしまして、関係省庁といろいろ折衝してきた訳でございますが、その6つの課題につきましては、ほぼ満額に近い状態で認めていただきました。
具体的に申し上げますと、脳の研究、ヒトゲノム・遺伝子治療の研究、更に新興・再興感染症、エイズ、感覚器障害、それから高度先進医療技術につきまして来年度以降、他省庁と協力をしなから取り組んでいくこととしております。
一方、研究所の体制といいますか、予防衛生研究所につきましては4月以降、国立感染症研究所と名前も改めまして、薬害エイズの問題、それから地球規模の感染症の問題も更に重要になってきたということを踏まえまして、エイズ研究センターの充実ですとか、感染症情報センターの設立を、それから国立衛生試験所につきましても国立医薬品食品衛生研究所という形に改めまして、医薬品等の審査を専門にするセンターの新設でございますとか、その他、所要の体制の強化を図ります。併せまして従来、厚生省の科学技術基本政策の御審議をいただいてきました厚生科学会議という組織がございますが、これを今回9年度から正式に厚生科学審議会という形で正式の審議会にしていただくということも昨日決定した訳でございます。
そのようなことから、厚生省としましても遺伝子治療や脳に関するライフサイエンスの部門につきまして、本格的に取り組んでいく非常に節目の時期を迎えていると考えておりまして、その中で新しい、従来、対症療法がなかった幾つかの病気につきまして可能性を開く遺伝子治療の臨床研究につきましても、更に力を入れて取り組んでいきたいと考えておりますので、引き続き十分な御審議をいただくとともに、今後とも御協力をお願いをしたいと考えております。
簡単でございますが、御挨拶に代えさせていただきたいと思います。
○研究企画官
お手元には、「第7回遺伝子治療臨床研究中央評価会議議事次第」と書きました印刷物が配付してございますが、会議前にお届けしたものと基本的には同一のものでございます。今日、傍聴の方々もおられますので、両面刷りにしてハンディーにページ建てをしておりますが、内容は基本的に同一ものでございます。
それでは、4つの案件を今日お願いすることにしておりますので、高久先生には御苦労でございますが、よろしく議事進行をお願いいたします。
○高久座長
それでは、議事を始めさせていただきます。
今日も多くの傍聴される方がいらっしゃいますけれども、既に事務局の方から傍聴規定が配付されていると思いますので、恐縮ですが傍聴規定をお守り願いたいと思います。
まず、議題1の北海道大学の遺伝子治療臨床研究の中間報告について、これは北海道大学から崎山先生にお越しいただいておりますので、よろしく御説明をお願いしたいと思います。
御存じのように、平成6年2月6日の本会議で審議して、平成6年2月13日に厚生大臣が了承して、平成6年8月から開始された我が国第1例目の遺伝子治療ということでありまして今日、崎山先生から経過報告を頂きます。では、よろしくお願いいたします。
○崎山教授
それでは、スライドを用意してまいりましたので、スライドを使いまして御説明致します。今、高久先生から御紹介いただきましたように、昨年2月に厚生省と文部省の審査が終わりまして、8月1日から治療を始めておりますので、その経緯を御報告させていただきます。
このスライドには、患者さんの末梢血中のリンパ球の動きをプロットしてございます。それで下の方に年数が書いてありまして、92年から95年までなんですが、実はこの患者さんは遺伝子治療を始める前にアデノシンデアミナーゼが欠損することによって起こる重症な先天性の免疫不全症であるという診断がついておりまして、92年の4月から、患者は1歳と3か月でございましたが、PEG-ADAというグリーンの文字で書いてございますが、酵素補充療法を遺伝子治療が始まります95年の8月まで持続して受けております。病気自体は、アデノシンデアミナーゼ(ADA)が欠損することによってリンパ球が細胞死を起こしてしまう、リンパ球がどんどん体の中で死んで、免疫を担当するリンパ球が体の中から非常に少なくなってしまう、欠乏するということによって起きます免疫不全症ですので、リンパ球の数が非常に重要な意味を持ちます。
酵素補充療法を始めましてから、ごらんいただけますとおりに、93年の始めぐらいまではリンパ球の数が、治療をする前は500 個前後だったものが、だんだん上がり出しまして、これは酵素補充療法によってリンパ球が生存出来、その結果、リンパ球の数が増えてきて、ある程度の免疫機能が維持出来るという状態が得られたものです。
けれども、同じように酵素補充療法を続けていても、だんだんリンパ球が少なくなって参ります。それで、遺伝子治療を始める前の94年から95年の1年間ぐらいは、1,000 個以下がほとんどという状態でした。この間はリンパ球の数が少ないだけではなくて、リンパ球がつくります抗体も体の中でつくられません。そういう状況にありましたので、実際的には酵素補充療法とともに抗体を月1回補うという治療を受けておりまして、そのほかにリンパ球の数が安定しておりませんので、感染を予防するための抗生物質(2種類)の内服も継続して受けておりまして、日常生活は家の中と病院の行来だけで、外へ出るときはマスクをして、同じ年齢の子どもたちとの交流も一切なしという生活を、1歳3か月の酵素補充療法を始めましたときから遺伝子治療を始めます4歳半までの間、そういう生活をずっと続けていた訳です。
でも、酵素補充療法がありませんとこういう生活も出来ませんでしたので、生きていくということが、この病気の場合には免疫系が再建されませんと出来ませんので、酵素補充療法はそれなりの効果はあったんですけれども不完全でした。抗体もつくられないし、数も安定しないというような状態で計画書を提出しまして、審査を得て、昨年の8月1日から酵素補充療法に加えて遺伝子治療を始めた訳です。ですから、遺伝子治療の目的は、この少なくなっているリンパ球が何とか遺伝子治療を加えることによって2,000 あるいは正常の下限ぐらいまで増やすことが出来ないかどうかということと、それからその増えたリンパ球が一定の免疫機能、働きを体の中で持ってくれないかどうか。そういうことが、今回の遺伝子治療の目的になりました。
このスライドは、実際的なプロトコールですけれども、どういうふうにして遺伝子治療をしたかということです。この後、3枚ほど具体的なやっている状況のスライドを御紹介しますが、患者さんは病室で末梢血単核球の採取と書いてありますが、血液の中から単核球を分離するという作業を病室で受けます。その作業で得られました末梢血の単核球を試験管の中で、組換型のレトロウイルスを使いまして、正常のアデノシンデアミナーゼの遺伝子を患者さんのリンパ球の中に組み込ませるという作業をいたします。その作業は、大体最初のころは1週間で、後半は10日から11日間かけて行いました。その作業をして、一定の割合で患者さんの末梢血のアデノシンデアミナーゼに欠陥があるリンパ球に、更に正常のアデノシンデアミナーゼを組み込めたと思われる細胞を点滴で患者さんの体の中に戻すという作業をやっております。
これは実際的に最初の作業、患者さんから採血するという作業を患者さんの病室で行っている様子です。患者さんはこれまで10回同じ作業を受けておりますけれども、無麻酔で片側の手の上肢の動脈管の中に細いカテーテルが入れられまして、そこから動脈血が、左側の方に映っていますのが血球分離装置ですけれども、その装置を血液が回って、患者さんの同じ側の静脈血の方に血液が戻っていく。この機械が回っている間に、患者さんの血液の中から末梢血中の単核球だけが体の外に取り出されるという作業を受けます。
ちょっとスライドがずれてしまっていますけれども、これはお分かりいただけると思いますが、新しく遺伝子治療室が病院の一角にP2クラスの安全性を確保した形でつくられまして、そこで患者さんの単核球に遺伝子を組み込む作業をしています。ここに映っていますのが、安全性を備えたキャビネットフードで、この中ですべての作業を、無菌的な操作をするためにこのようにガウンを着て、帽子をかぶって、マスクをして、手袋をして、すべての培養を閉鎖系で行なっております。
これは、1週間から11日間ほどたった後で、既に培養して遺伝子が入ったと思われます患者さんの単核球を、点滴で患者さんに投与しているところです。患者さんが実際に受ける作業は、この点滴で投与を受けるということと、この前の前のスライドでお示しいたしました血球分離装置を使って血液から単核球が分離されることと、この2つの作業だけです。一切予防的なほかの作業は患者さんには加わっておりません。
このようにして10回、昨年の8月1日から始めまして、最初のころは大体4週間前後で反復しておりまして、後半は6週間前後になっております。この図には9回まで書いておりますけれども、先月に10回目を行いました。
どれぐらいの細胞が患者さんの体の中に戻されているかということですけれども、最初は8×108個戻されまして、9回目のときは1.8 ×1010個の細胞が戻されておりまして、全部9回までトータルしますと、大体400 億個ぐらいの細胞が患者さんの体の中に、患者さんから一度取り出されて培養して遺伝子を組み込む作業をして、そしてその後で患者さんの中に点滴で戻されております。それで、この後、戻されました細胞に一体どれぐらい正常のアデノシンデアミナーゼの遺伝子を組み込むことが出来ているのかということをお示しします。
これは半定量法で、遺伝子を増幅して組替型のレトロウイルスで正常のアデノシンデアミナーゼの遺伝子がどれくらい患者さんの細胞の中に入っているかということを調べるために、ここの欄にファーストジーンテラピーと書いてありますが、1回目、2回目、3回目までの遺伝子操作で患者さんの体の中に戻した細胞に、一体どれぐらい正常のアデノシンデアミナーゼの遺伝子を組み込めたかということを示したものです。
こちらの方に標準曲線が書いてありまして、上の太いバンドと下の薄い方のバンドとの割合で、どれくらいの細胞に遺伝子が組み込まれていたかということを判断する方法なんですが、上のバンドと下のバンドを比較していただいて、こちらの標準曲線に合わせていただきますと、1回目も、2回目も、3回目も、その後もずっとそうなんですが、ほぼここら辺、5%前後の細胞に遺伝子を組み込んで患者さんの体の中に戻すことが出来ているという結果が得られました。これはずっと一定して5%前後の細胞導入効率で患者さんの細胞に遺伝子を入れることが出来ております。
そうだとすると、それぐらいの割合で患者さんの中に細胞を戻すことが出来ると、今度は実際に患者さんの体の中でどれぐらいに正常なアデノシンデアミナーゼの遺伝子を持った細胞が生存しているのかということを見たものなんです。方法は同じ方法で、遺伝子のもともとの遺伝子、アデノシンデアミナーゼの遺伝子とベクターを使って、レトロウイルスの組換型の遺伝子との割合を見たものですけれども、4回目の終了ごろからだんだん患者さんの細胞の中の組換型の遺伝子の量が増えてきているのが、下のバンドを見ていただけるとお分かりいただけると思います。
ここに数字が0.40と書いてあります。0.40は、標準曲線で見ますと大体10と20の間になります。つまり、4回目の治療以降は、患者さんの体の中を回っている末梢血の中の単核球の10%以上の細胞が組換型のレトロウイルスによって組み込まれた正常のアデノシンデアミナーゼの遺伝子を持っています。そういう状態が4回の治療後以降は持続しておりまして、確実に少しづつではありますが、増えてきております。
実際的にこういうふうに、正常の遺伝子を持った細胞が患者さんの体の中で少しずつ増えてきて生存しているということになりますと、それは患者さんに免疫機能まで与えてくれているかということが次の問題になります。
これは、一番最初にお見せしましたスライドに、遺伝子治療を加えた後のリンパ球の動きをプロットしたものです。ここまでは先ほどの1枚目のスライドと同じで、酵素補充療法だけのときのリンパ球で、これ以降は遺伝子治療を始めてからのリンパ球の数をプロットしたものですけれども、見掛け上の1回に109とか1010オーダーの細胞を患者さんに戻していますが、ただそのうちの細胞の5%ぐらいしか正常の遺伝子は組み込まれておりません。ですから、見掛け上のリンパ球の動きはかなり高くなりますけれども、ある時間がたちますと遺伝子が入っていない細胞は死んでしまいますので、また数が下がるというふうになりまして、上下しますけれども、少しずつベースが高くなってきているということをうかがうことが出来ます。
次に、遺伝子治療が始まりました後の動きをプロットしたものが、このスライドです。そこから下の方に、遺伝子治療の回数が1回から9回まで書いてあります。明らかに末梢血の中のリンパ球は、治療を始める前が1,000 個以下でした。それが、大体治療の4回目以降ぐらいからは少しづつベースが上がってまいりまして、この間は5回目から6回目の間は操作の問題点が1つ出てきまして、治療の間隔が延びてしまって少し下がりましたけれども、6回目以降はまた少しずつ上がり出しまして、特に8回目以降は1,500 個を切っておりません。1,500 から2,000個 の間を治療の間、間でも維持することが出来ています。
これがリンパ球の動きで、下に赤いバーが出ていますけれども、これは患者さんの体の中から取りました細胞の中に組み込んだアデノシンデアミナーゼの遺伝子が発現をして酵素をどれぐらいつくっているかということを見たものなんですけれども、酵素活性もこちら側に単位が示してありますが、ここが10単位で一応マーカーになります。それで、明らかに少しずつではありますが上がってまいりまして、特に7回目の治療以降は、10単位にだんだん近づいてまいりまして、現在は10単位を超えております。
この単位数は、保因子者でありますお母さんが30単位ぐらい、正常の人ですと70単位ぐらいで、大体お母さんは正常の人の半分ぐらい、患者さんも出来ればお母さんの半分ぐらいに達すれば、恐らくほぼ正常な生活が出来ると期待されますので、正常の人の4分の1とか5分の1あれば十分だと。それで、酵素活性のレベルからいきますと、現在は既にもうその領域に達しているというふうに、私たちは考えています。
こういうふうにリンパ球の数が増えて、酵素活性もそれなりに維持出来るようになってきますと、免疫機能がどういうふうになっているかということが問題になります。これは、酵素補充療法をしている間は補充療法を余儀なくされていました抗体のレベルを見たものです。それで、下の方の三角の赤い印は、静注用のガンマグロブリン製剤といいまして、抗体を補充するのを月に1回ずつしていました、ということを示しているんですが、5回目辺りからこの抗体のレベルを患者さん自身が少しずつ作れるようになってまいりましたので、治療の間隔をあけました。上のブルーの折れ線グラフは、抗体のレベルを示しています。それで、療法の間隔をあけましても下がらなくなりましたので、実際的には8回目以降の1回の補充療法でもう中止しております。実際には、今年の7月の末に1回投与しました以降は補充療法をしておりません。
しかし、抗体、ガンマグロブリンのレベルは800 以上を維持出来ています。リンパ球の数が増えて、酵素活性があるレベルになって、抗体も自分でつくれるようになってきているということです。
それで、これは7回目が終わりました時点で北海道大学附属病院の遺伝子治療専門委員会審査委員会の方に中間報告をいたしましたときのまとめです。英語で書いてあるんですが、特異抗体のレベルをテタヌストキソイド、破傷風のトキソイドに対する抗体が上がってきているかどうか。ジフテリアのワクチンに対する抗体が上がってきているか。肺炎球菌に対する抗体が上がってきているかどうかというようなことを見たものですけれども、全体的な抗体のレベルの上がりとともに、特異的な抗体のレベルも患者さんの体の中で確実に増えてきているということを裏づけることが出来ました。
これが現在まで得られている結果で、末梢血の中のリンパ球の、反復しますが、遺伝子が組み込まれている量は10%を超えて、大体それが維持出来ているということと、リンパ球の数は1,500 個から2,000 個の間で維持出来ていて、酵素活性もお母さんの3分の1から4分の1、正常人の6分の1ぐらいを維持出来ているようになりました。免疫グロブリンも補充しなくてもよくなりました。
患者さんは実際には今年の5月から、それまで拘束していました生活を徐々に解除いたしまして、幼稚園に行って、マスクも外して普通の子どもと同じような生活をしております。世界がすっかり変わりまして、子どもらしい顔つきになりまして、言動も全く普通の子どもと変わらないようになりました。
これが現状で、少なくとも最初にお話ししましたように、今回の私たちの遺伝子治療臨床研究計画の目的はかなりのところまで達することが出来たというふうに、私どもは思っておりまして、この後、この効果をどこまで持続出来るのか。一体、治療をいつやめるのかということが大きい問題になるだろうと思っています。
これは、昨年10月の『サイエンス』という雑誌に、1990年と91年にアメリカでやはり同じ病気の子どもに同じベクターを使いまして遺伝子治療をした2例の報告です。右側の方は余り効果が思わしくなくて参考にならないんですが、左側の方を見ていただきますと、このバーが酵素活性で、上の波打っているのがリンパ球の動きですけれども、これは先ほどの私どものバーとリンパ球の動きを見ていただきますとほぼ一致しておりまして、酵素活性は恐らく私どもの患者さんの方が高いレベルに達しているんじゃないかと思います。それで、この子の例では、実際には11回の反復の治療が90年から始まりまして92年で終わりまして、その後は酵素補充療法だけでこの状態が維持出来ている訳です。ですから、私たちは現在10回目を終えたところですので、もう1、2回の反復治療を間隔をあけて行って、それで中断出来るかどうかということを判断したいというふうに考えております。
以上でございます。
○高久座長
どうもありがとうございました。
委員の皆さん方から何か御質問おありでしょうか。多田先生、どうぞ。
○多田委員
我が国で最初の遺伝子治療の例ということで、いろいろ大変な御苦労があったと思うんですが今、伺いまして、この大変な子どもの難病の治療をここまで1年半で治されたという経緯を拝聴して大変感銘を受けました。
私自身も小児科医として同じ病気を以前に受け持ったことがございますが、乳児期に重症の感染症であえなく死亡した例を経験しておりますので、感銘ひとしおでございました。ひとつお伺いしたいんですが、遺伝子治療の前後でアデノシンデアミナーゼの酵素製剤を週に1回ずっと併用しておられる訳ですね。このデータを見ますと、かなり遺伝子治療の効果がメインであるということがうかがわれるんですけれども、今後の計画として酵素補充の方を少し量を減らすとか、あるいはインターバルをあけていくというようなことで、本当に遺伝子治療の効果がメジャーであるということ、そうなれば患者さんにとっても毎週酵素の補充療法を受けるという負担がなくなる。それから、治療効果がはっきり証明できる。もし途中で少し免疫機能が落ちるような気配が出た場合には、補充療法の方はすぐ静注出来ますから、多少量を下げるとか、酵素療法の方の間隔をあけていくというような計画はございませんでしょうか。
○崎山教授
投与されている量自体は、実際的には治療を始めましたときと比べますと、体重が倍以上になりましたので、投与量は同じなんですが、体重当たりにしますと、非常に少なくなっています。
それで、今回の計画自体は酵素補充療法と遺伝子治療の併用療法というふうになっていますので、少なくとも治療をやめてある期間、観察出来るというのがまずは前提になるんだと私自身は思っているんです。ですから、治療をやめることが出来て、そしてある期間様子を見て維持出来るということがはっきりしました時点で、そうであれば酵素補充療法を減らせるのかどうかというのがその次の問題になってくるんだと思います。ですから、そのときはまた皆さんに御相談しないと、計画自体は併用療法になっておりますので、そういう時点が来たら、そのときにまた考えなきゃいけないかと思っておりますけれども、今のところ具体的な計画はつくっておりません。
○高久座長
山崎先生、どうぞ。
○山崎委員
崎山先生、おめでとうございます。
今と多少関連のある質問なんですが、この委員会あるいは作業部会で議論したときに、その出発点においてどの細胞に入れるかという議論が非常に重要だったと思います。それで、今の科学のレベルの時点では、やはりCD34のような根幹細胞に入れることは無理であろうということで、せっかくの御提案でしたが、それは排除されたんです。
今の成績を見ますと、結局何回かやっているうちに、だんだんリンパ球が上がってきている訳ですね。これは、そのやり方を変えていないにもかかわらず、こういう成績が得られたということは、つまり遺伝子導入の効率がよくなったというふうに解釈するのか。その辺は将来の見通しとして非常に重要なことだと私は思うんですが、どういうふうにお考えでございましょうか。
結局、リンパ球のサイクル、ライフタイムというのは決まっている訳ですから何も変わらないはずなのに、回を重ねる度に持続がだんだん良くなっていくんですね。
○崎山教授
遺伝子を入れる効率自体は変わっていない。基本的に何も変えていませんので、ベクターも資料にありますけれども、力価はほとんど変わらないベクターで、同じ方法で作業をしておりますので、入る効率は依然として5%だと思うんです。
にもかかわらずリンパ球の数が増えてきているのは、恐らくリンパ球の寿命が、実際に増えているリンパ球はCD8が中心なんですが、CD8陽性細胞の中にもそれなりの長い寿命を持った細胞が多分少なからず割合で実際的にあって、そういう細胞に遺伝子が入って、死なないである期間生きてくれる細胞が少しずつ、少しずつたまってきている。
ですから、この治療はあるときでやめられると思うんですけれども、でもその効果の持続は恐らく有限で、数年たつとまた少しずつ寿命が限られた細胞が落ちてきますので、将来的にはある時点で、先生から今お話がありました、もっと幹になる細胞に遺伝子を入れるという作業をするか、もしくは同じ作業を反復してするかということを考えなければいけなくなってくるんだというふうに思っています。
○山崎委員
すみませんが、あれ以来1年半以上たつので、ADAの情報を私はフォローしていないんですが、アメリカとか外国の例で、この同じやり方でやめられた例というのはあるんでしょうか。
○崎山委員
それはさっき最後のスライドにお見せしましたが、同じ方法ではアメリカの2例だけで、1例しかデータはきれいではありませんので、その1例だけはやめられていて、92年から4年たっているけれども、今のところは減ってきていない。あとはありません。
○山崎委員
ありがとうございました。
○高久座長
ほかに、どなたかございますか。
どうぞ、杉田委員。
○杉田委員
まず、治療が成功したこと、おめでとうございます。
スライドにはお出しにならなかったんですが、この資料に出ていますリンパ球の中のCD8がマジョリティーを占めていまして、CD4が全然増えていない。こういうことが、患者の免疫機能か何かに影響を及ぼすという可能性があるんでしょうか。
それから、これはどうしてこうなるんだろう。その辺がもしお分かりでしたら教えてください。
○崎山教授
実際的には今、遺伝子を組み込むための作業の方法に、この結果はよっています。
といいますのは、遺伝子を入れるためにリンパ球を休止期の状態からセルサイクルといいまして、DNAを合成する状態にリンパ球を動かさないと遺伝子を中に組み込むことが出来ないんです。それで、動かすための作業をしておりまして、その動かすための作業自体がCD4よりもCD8の方を非常に優位に動かしてしまう。それ以外の方法は、今のところはないんです。
ですから、この方法でやる限りは、アメリカの例もそうなんですけれども、遺伝子が優位に入るセルサイクルの動く細胞はCD8陽性細胞で、その結果、遺伝子が入る細胞はCD8陽性で、その結果、体の中にたまってくる細胞もCD8が優位になるというふうになっていまして、アメリカの1例も全く同じ経緯をとっています。今のところは、この方法しかありません。
それで、問題は先生が今おっしゃいました、CD8が非常に生理的な状態でなく、優位になった状態で、患者さん自体の免疫的な働きにどのぐらいのネガティブな面を及ぼすのかということが問題になる訳ですけれども、それは今までこういう患者さんがそんなに多くありません。アメリカの1例目と、私たちの症例だけですから、これから実際的に見ていかないと正確なお答えは出来ないんですけれども、CD8陽性細胞というのは生理的には抗体産生には余り働かない細胞なんですね。ウイルスが感染した細胞を殺すとか、あるいは主要細胞を殺すとかということが中心で、抗体をつくるときには余り役に立たない細胞で、CD4陽性細胞が中心になるんですけれども、患者さんは実際的には抗体がきれいに上がってきているんですね。
ですから、今のところは大きい問題は少なくともないだろうというふうに思っています。CD4陽性細胞は非常に少ないんですけれども、それなりの働きをしているという可能性もありまして、今のところ余り大きい問題はないだろうと考えております。
ただ、生理的ではありませんので、注意深く様子は見ていかなければいけないというふうに思っています。
○高久座長
どうもありがとうございました。
ほかにどなたか。先生、これは毎回、白血球数が多くなっているのはリンパ球の数が増えてきたからですね。
○崎山教授
はい、そうです。
○多田委員
もうそろそろ、来年の4月には学齢期で小学校入学の年齢じゃないですか。どういう御方針ですか。
○崎山教授
学校へ行けると、少なくとも今の状態が持続する限りは学校へ上げられると思っております。
○高久座長
崎山先生、どうもありがとうございました。
また、今、御発表なされた症例に対する崎山先生を始め、北海道大学医学部の小児科の先生方の御尽力に本当に感謝したいと思います。
それからまた、今後この患者さんを注意深く見守っていただきまして、今、多田先生からもお話がありましたように、学校に行って普通の生活が送れるようにしていただくよう希望しております。どうも先生ありがとうございました。
それでは、議題2の方に移りたいと思います。まず最初に平成7年、昨年の11月9日に熊本大学からHIV感染者に対する遺伝子治療臨床研究実施計画の申請書の提出がありました。そのときに、この評価会議におきまして作業部会を設置して、その後、作業部会で、この書類を見ますと4回にわたって内容を検討していただいた訳であります。その作業部会における内容の審査の結果を、作業部会長であります山崎委員から御報告いただきたいと思います。
山崎先生、よろしくお願いします。
○山崎委員
資料2が配られていると思います。お手元の資料2をごらんください。
今、高久先生から御説明がありましたように、「HIV感染者に対する遺伝子治療の試み」ということで、平成7年11月9日に申請されたものであります。
平成7年11月9日現在の総括責任者は、熊本大学医学部第2内科の高月清教授であった訳ですが、今年の3月末で退官されました。したがって今年、平成8年3月22日付で総括責任者の交替がございました。その資料2の上の方に書いてありますように、現在は内科学第二講座非常勤診療医師の原田先生、医学部の感染防御学教授を同時にやっていらっしゃいますが、この方が今年の3月22日をもって総括責任者に交替されました。
ちょうど1年前になりますが、12月25日にこの中央評価会議で申請の概要が説明されまして、作業部会が結成されました。それが、そこの1ページ目にあります表でございます。こういう方々がメンバーで今、御説明がありましたように合計4回審議いたしました。
次のページを御覧ください。第1回目の作業部会は平成8年2月5日に行われた訳ですが、ここでは主に実施計画の概要の説明、あるいはベクターに関する資料の概要の説明がありまして、この内容が非常に膨大ですので、各委員がどういうふうに分担するかという作業分担を決定いたしました。
それで、それぞれ分担していただいたことについて内容を審議するために第2回目を開き、その実施計画の審議に入りました。作業部会の意見書を取りまとめましたが、非常にたくさんのコメントや質問が出まして、それを熊本大学の方にお返しして回答を求めた訳であります。
それで、回答がまいりまして、第3回目として意見書に対する回答の審議をやり、更にまた新しい疑問がわきまして、いろいろコメントや質問を出しまして、追加意見書をまとめ、それをまた熊本大学に戻しました。
そして、4回目にその回答と、追加意見書に対する回答も頂きましたので、また審議を行いました。このときには、大体全体的によかろうということで、先ほど申し上げました総括責任者の原田先生と、実際にこの患者に投与されます病院輸血部の松下修造先生に出席いただきまして、実施計画についての質疑応答を直接委員との間でやりまして、議論の取りまとめを行いました。
その結果が、3)というところの「作業部会における議論の整理」ということで書いてございますが、非常に簡単に書いてございます。もう1年前にこの評価会議で簡単にお話ししましたのでお忘れかと思いますので、これよりはもう少し詳しくまとめさせていただきます。
まず、この遺伝子治療の薬はマウスのレトロウイルスというウイルスを使いまして、これを人の体に打っても増えないような形に遺伝子を改変したもので、このマウスのレトロウイルスの遺伝子の中に人の免疫不全のウイルス、HIV、その中の2つの遺伝子、1つはHIVのenvと呼ばれる構造蛋白をコードする遺伝子、それからもう一つはrevといいまして、このウイルスの増えるときに機能的に働く機能遺伝子、 この2種類の遺伝子をマウスのレトロウイルスの中に組み込んだものであります。言い換えれば、このウイルスを注射するということは生ワクチンを注射することと原理的には同じであります。
しかし、なぜこの遺伝子治療の検討を作業部会でやったかといいますと、このようなレトロウイルスに組み込んだ遺伝子は、人の細胞のクロモゾームの中に組み込まれる性質を持ったベクターであるから、そういう意味で普通の病原体を投与するワクチンとは意味が違います。そういうことで、作業部会で取り上げられた訳であります。
それでこの対象は、HIVに感染していて、しかも何の症状も持たない、いわゆる無症候性キャリアと言われているもので、しかも長期間にわたってエイズを発症していない、ノンプログレッサーですね。こういう患者を対象にしています。CD4カウントで言えば、250 個/μl以上のものを対象としてやるということがまず前提となっております。
期待される作用としましては、本治験薬によって細胞傷害細胞、CTLといいますが、その活性がまず高まるであろう。それで、それが高まれば細胞性免疫の作用によってHIVに感染している細胞がやっつけられて体から排除されるであろう。それが起これば、結果として血中のウイルス量が下がるであろう。その血中のウイルス量が下がれば、免疫状態のパラメータであるCD4カウントが維持出来るであろう。その結果、エイズの発症を阻止出来るであろう。こういうすべて論理的な推定の上で、これはなされているものであります。
作業部会での主な論点を言いますと、こういう期待される発症予防効果というのが今、説明したような作用機序から十分説明出来るだけのデータが果たして示されているだろうかというところから始まった訳であります。それで、提出された資料及び今日のエイズの発症病理機構についての科学的な治験に照らして議論いたしました結果、確かにマウスや猿のいわゆる前臨床試験ではCTL活性の上昇が示されている。しかも、一部にウイルス量が下がるというデータも出されています。
それによって、発症予防効果が得られるという、しかし直接的な証明は動物実験では無理であります。そういうモデルはなかなかない訳ですね。人間のHIVのモデルそのものというのはない訳ですから、すべてCTL活性が上がるということとウイルス量が下がるということ、これが指標に評価されていて、論理的に有効性が期待されるということしか言えない訳であります。
これに関してかなりの時間を追加して議論したんですが、結局はやはり人に使ってみないと分からないということであります。そういう意味では、現在の遺伝子治療の臨床応用研究の定義、その対象にはなり得るものであるというふうに作業部会としては判断いたしました。
2番目の点として、他方、米国では200 例以上の臨床試験が行われているのに対して、その中間報告ではまだその有効性がはっきりと証明されていないというか、世の中に発表されていない。明白でない。こういう現状を踏まえますと、アメリカで200 症例以上やっているのに対して、日本でわずか数例を対象とするというような治験にどれだけの意味があるかという議論が当然起こります。
しかし、もしもこれが将来有効な方法であるということが分かる時点がくることも論理的には考えられることなので、そういうことを想定しますと、この熊本大の貴重な症例に対して試みないということは後に悔いを残すし、人道上の問題も残るであろうというのが作業部会の結論であります。やはり患者の利益を優先するならば、害がない限りゴーサインを出してもいいのではないかというのが作業部会の結論であります。事実、米国ではそうやって200 例以上もやっておりますが、副反応の報告もなく、安全性に関することは一応確認されているというのが現状把握ではないかと思います。これが2点目です。
3点目は今、崎山先生がお話になりましたのは、体の外へリンパ球を取り出して、そして遺伝子を入れて体に戻すとという、いわゆるex vivo遺伝子治療の最初の試みである。今度はそうではなくて、直接ベクターを患者の体に打ち込む。筋肉内に打ち込むというやり方でありまして、我が国で初めての経験でありますから、日本の遺伝子治療の将来に役立つ経験を持つことが出来るであろう。これもまた大事な観点だろうと思います。
4点目は、しかし、その提出された申請書が余りにも正直言って不備でありました。これは、前の北海道症例が1本で出てきたのに対して、今度は薬務局の審査を経なければいけない治験届が出されて、ミドリ十字の製品として出されているというところは大きな違いであります。そういうことで、初めての例ということもあったんですが、申請書が非常に不備でございました。それを、多数の不備な点を指摘して書き直しを要求して訂正されてきたという点であります。一応審議会、作業部会としましては、今までの回答でほぼ満足を得ております。
5番目の点は、出来上がった治療薬そのものについての品質、規格、安全性試験の妥当性についてはこの作業部会では審議しない。出来上がったものについての審議は今、言ったようないきさつがございますので、薬務の遺伝子治療審査委員会の審議に任せて、この委員会では物質そのものについては、出来上がったものについてはやらない。ですから、この物質の保証については後ほど平井課長から御報告があると思います。飽くまでもこの作業部会では本治療薬の科学的な妥当性、合理性についての審議に限った訳であります。しかし、今日は時間もございませんので、もし後で質問があればお答えいたしますが、審議の詳細は省かせていただきます。
6番目、これが最も重要なことでありますが、申請された平成7年以前のエイズ医療の科学的な水準はこの1年間で非常に大きく変わりました。これは、皆さん御存じのとおりであります。逆転写酵素阻害剤のほかにプロテアーゼインヒビターも含めた8種類もの抗エイズ薬が我が国でも使用される時代が到来した訳であります。これは、1年半の間に大きく変わった訳であります。それで、この遺伝子治療を試験する最中であっても、そういった投薬は続けなければいけないという事態がきた訳であります。
しかし、それをやりますと、この遺伝子治療の効果は評価出来ない。それで、投薬の前後1週間はやめる。しかし、遺伝子治療を始めて1週間後からはまた継続するということは避けられない訳であります。
そういうような状況の変化で大事なことは、患者にそのことを十分説明してもなおかつ遺伝子治療を希望されるか。ここの議論は、実は作業部会はやらないことにいたしました。これは、この中央評価会議において審議していただく重要なポイントであります。つまり、インフォームド・コンセントの中に何と何を入れたらいいか。この審議は、この中央評価会議にお任せしたいと思います。
7番目のポイントは、したがって他の有効性の分かった抗ウイルス薬を併用する限り、遺伝子治療薬の評価方法にどうしても変更を加えざるを得ない。つまり、もともと申請されたものの評価のポイントは、CD4の維持は勿論ですけれども、ウイルス量が下がるということとCTL活性が上がるという2つのことがその評価の絶対的なエンドポイントだった訳です。
しかし、御存じのように、いろいろな組み合わせの有効な抗ウイルス剤をやれば当然ウイルス量は下がる訳です。したがって、もはやこの遺伝子治療の評価にウイルス量の低下ということをエンドポイントに持っていくことは出来ない。したがって、CTL活性の上昇があるか、ないかということだけを飽くまでも指標とするということであります。 御存じのように、抗エイズ薬というのはCTL活性の上昇を期待出来るものではございません。飽くまでもウイルスの増殖の過程の段階のあるステップをブロックするのがすべての抗ウイルス薬の特徴でありますから、細胞の外に働く効果というのはない。この遺伝子治療は御存じのように、細胞へのウイルスの吸着を抑えるということが1点と、CTL活性を上げることによって感染細胞を壊すという、この2点でございますから、したがって8種類の抗ウイルス薬の作用機序とは関係がないということで、やる価値はあるんですけれども、そのエンドポイントはCTL活性の上昇に限るということになります。大変評価が難しくなったと思います。
しかし、これは時代の進歩でしようがない訳です。
最後に、8番目のポイントとして実施上の条件が付してございます。その次のページをごらんいただきたいと思います。実は、この審議をしている間にちょっと驚いたことが分かった訳です。それは、この平成7年に申請された時点での遺伝子治療薬というのは現在もう存在しない。つまり、全部ロットは使い果たしてしまった。だから、新しい製造ラインでつくり直すんだと。
そのことは、後ほど平井課長の方から御説明があると思いますけれども、新しい製造ラインで製造するベクターの正式規格は、まだFDAのバリデーションを受けていないという事実がございます。我が国としては、やはりそういうことをきちんと条件が満たされた後にこの試薬は使うべきではないかというのが作業部会の結論でありまして、「本臨床研究の開始にあたって、現在策定中の正式規格に基づき製造されるベクターを使用する場合は、中央薬事審議会における品質についての確認が終了してから実施すること」ということです。
付加的な意見がそこに書いてございます。本当はこれ以外にも幾つかありますが、大事なことは投与経路が本剤の作用機序から考えますと、その申請されております筋肉内投与よりも、むしろ皮内投与の方がより有効と考えられるのではないかというコメントがございました。それで、「将来的には、各種投与経路について、動物実験を含め、比較検討することが望まれる」というコメントが付してございます。これはとりあえず今度の申請では申請どおりやりますが、将来の問題として検討するという御回答をいただいております。 簡単ですが、以上で大体概要を申し上げましたので、もし御質問があればお受けします。
○高久座長
どうもありがとうございました。
それでは、皆さん方からの御質問を受ける前に、最後に問題として挙げられましたベクターの品質の管理、特に新しい製造ラインによって、製造されるベクターのFDAのバリデーションのことについて、平井課長さんの方から説明いただけますか。
○薬務局研究開発振興課長
薬務局研究開発振興課長をしている平井と申します。
今、山崎委員の方から報告がありましたが、今回のこの研究につきましては、熊本大学からの臨床研究ということと同時に、この製剤について新薬の開発をしているということで、株式会社ミドリ十字の新薬申請のための臨床試験という観点を持っている訳でございます。今、治験という話がございましたが、まだこのものについて治験届が出ている訳ではございませんで、今後治験届を提出した上で治験が始まる前の、その前の段階におけるチェックを薬事審議会の方でするシステムをつくった訳でございます。
現在、中央薬事審議会の中にバイオテクノロジー特別部会というものがございまして、その中に昨年、遺伝子治療医薬品調査会を設けまして、そこで遺伝子治療医薬品の品質及び安全性の確保に関する指針というものをつくりまして、その指針の中で特に品質及び安全性について、これだけの項目について十分検討すべきであるという項目を定めました。それについて、企業が試験をして確認を自分でする訳でございますが、それについて更に厚生大臣にきちんと出来ているかどうかの確認を求めるシステムというものをつくった訳でございます。
これに基づきまして昨年の11月28日に(株)ミドリ十字からこの確認を求めるという申請が厚生大臣の方に出されておりまして、これについて薬務局の方が事務局となりまして、中央薬事審議会での審議をさせていただいているということでございます。
それで、昨年の11月に品質に関する確認の資料が出た訳ですが、その時点ではまだ品質をチェックするバリデーションデータ等、重要なデータについては後日提出ということになっておりまして、すぐに審議に入れるような状態ではなかった訳でございます。そういったところにデータを追加していただきまして、今年の6月に資料が全部整いましたので、その資料に基づきまして、今年の7月に1回目の遺伝子治療の調査会をやっておる訳でございます。
ここにおきまして、指針にありますが、先ほど作業部会でやっているのと一部ダブるところがございますが、使いますベクターの設計でございますとか、あるいは原料、それから製造工程、それらを使いました毒性試験、そういったものに関するデータを出していただきまして、それについて十分な結果が得られているかどうかを審議をさせていただいた訳でございます。更に受け入れ試験のやり方、あるいはその製造工程の内容等、こういったことで第1回目の審議のときに70項目以上の質問事項あるいは訂正すべき事項の指摘を行なった訳でございます。
これは7月でございますが、その後、この8月に先ほど山崎委員の方から話がありましたように、新しい製造ラインが出来て、そちらの製品によって日本での試験が計画されているということが明らかになりまして、そのデータというものがまだ出ていなかった訳でございますので、新しい製造ラインによる試験データ、バリデーションデータと言っていますが、これを提出いただきましたのが11月29日でございまして、このデータも含めまして、一昨日でございますが、12月24日に第2回目の調査会を行っているということでございます。
その間に、実は現在こちらの資料でいきますと第1次、2次、3次というふうにアメリカで臨床試験が企画されておりますが、アメリカでの当初の予定では、この新しいラインでつくりました製品について、来年の1月から第3次の大規模な臨床試験が開始される予定になっておった訳でございますが、先ほどの報告にもありましたように、第2次の臨床試験での中間報告で、有効性がどうも明らかでないということでございまして、第2次の臨床試験が全部終了するまで、第3次の臨床試験をどうするかということはペンディングになっているという状況でございます。
それから、ミドリ十字からの確認申請資料の中で70項目の指摘を行なった訳でございますが、その中ではベクター細胞の選択の仕方ということとか、あるいはデータの確認方法につきまして記載上の誤りが一部ございましたので、そういった点についての訂正も求めさせていただいた訳でございます。
それから、先ほどの新工場で製造するものについてでございますが、これはウイルスをつくる種細胞がございまして、それを5リットルのバイオリアクターの中で培養いたしまして、そこに出てくる培養液、この中から使いますベクターを生成していく訳でございますが、そのつくる方法がパイロットプラントと若干異なっております。それから、生成段階での方法がちょっと異なっておりますので、最終的に出来上がります製品に塩化ナトリウム等が添加されていますが、これの濃度が一部違うというようなことがございまして、それらの確認を行なっている訳でございます。この製剤については、FDAの方の認可を得てアメリカでの臨床試験がまだ行なわれていないという状況でございます。
そういった点も含めまして、再度全体を審議いたしましたところでございますが、記載上の誤り等もございましたが、全体として見まして、中身を修正していただければHIV−ITの安全性の評価に決定的に影響するものではないのではないかという御意見をいただきまして、このものの品質の評価というところを最後に十分検討させていただいた訳です。
ただ、特に問題ないというふうに思われる訳ですが、この新工場におきましてつくりましたバリデーションデータ、品質管理、途中での管理のデータにつきましては、現在3ロット分についてのデータが出されている訳でございます。それで、これはいわゆる生物学的な製剤でございますので、十分に安定してその力価、それから計画された中身のものは出来ているかどうかという確認につきまして、当然途中での試験あるいは最終試験で非常に多項目の試験が行われておる訳でございますけれども、もう少しよくそれを見た方がいいのではないかということが議論された訳です。
そういうことでございますが、現在このミドリ十字から予定されている治験というものが一応4例ということで、非常に小規模の治験に用いるということでもありますので、それに対して非常にたくさんのデータを更に付け足す、あるいはその製剤についての毒性を見てもどうかというような意見もあった訳ですが、それを見ても更に格段に内容が分かる訳でもないので、特にこのものにつきましては、これからこの工場におきまして日本での臨床試験に使う製品がつくられる訳でございますので、その日本で使う製品についてのバリデーションデータ、つまり途中での試験経過に関するデータ、それから最終製剤についてのデータ、あるいはこれに使います原料のチェックのデータ、こういったデータを全部提出していただいてチェックさせていただくということですね。
それから、最新に出来ました製剤でございますが、この製剤について経時安定性ですね。何か月、何年もつかということでございますが、それについてまだ十分な期間を見てございませんので、その継続的な報告をいただく。つまり、使う製品についてのバリデーションデータと経時安定性に関しての結果を更に出していただいてそれをチェックするということで、今回の品質についての確認を了承してもいいのではないかということを調査会として意見をまとめていただいた訳でございます。
中央薬事審議会の審議の手続といたしまして、この経過を次回のバイオテクノロジー特別部会に上程いたし、御審議をいただき、更にその結果について3月に予定されています常任部会の御了解をいただければ審議をすると、こういう形になる訳でございます。
品質については以上でございますが、この審議の過程で参考意見といたしまして、先ほど山崎委員からお話もありましたように、現在エイズに関しては以前よりもたくさん薬が承認されておりますので、そのほかに選べる方法があるということと、それから実際に注射をしている間、例えばAZTを投与されております患者さんですと、注射しているときに1週間の休薬を行う訳でございますが、これをワンクール3回で、それを6回くり返すということですので、都合2年間で18回、小刻みに中止をするということになる。
これについては、まだそれでほとんど影響がないのか、あるいは問題があるのか、全く分かっておりませんので、そのリスクが分からないというような中身についてと、それから繰り返し申し上げておりますが、この新工場でつくられた製品についてはまだアメリカでは人には投与されていないものでございますが、バリデーションデータを十分出した上でチェックをして、それについても患者さんにはよく説明をした上で使っていただくべきであると、こういう御意見をいただいております。
以上でございます。
○高久座長
今、平井課長さんの方から詳しく御説明がりましたが、要約するとこの新しい製造ラインでつくるものについて来年2月の特別部会、それから常任部会でそれが承認されて初めて使えるということです。そういう条件ですね。どうもありがとうございました。
○研究開発振興課長
そういうことでございます。
ただ、製造するのにはちょっと時間が掛かりますので……。
○高久座長
そういうことですね。それは工場の方でですね。
対象の患者さんに使う場合には、常任部会を通ってからということになりますね。どうもありがとうございました。
今、お2人からこの作業部会の作業の経過と、それから中央薬事審議会での審議の経過が御報告された訳でありますが、特に今、山崎委員から御報告がありましたように、この治療研究のプロトコールが最初に提出されましたときに比べまして、エイズの薬物療法が非常に進歩をした。ですから、当然対象とする患者さんに説明をするときに、この書類が出されたときの内容では非常にまずくて、現在の状況を正確に記載して、その後にインフォームド・コンセントをとるという形になると思います。
作業部会の方では、インフォームド・コンセントの内容については、この評価会議に訂正をゆだねるというお話でしたので、まず山崎委員と、それから平井課長さんに、もし御質問がおありでしたら、どうぞ御遠慮なく御質問していただきまして、その後、それに関連したこと、更に特にインフォームド・コンセントを含む倫理面について本格的に御議論をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○村松委員
大変リーズナブルなやり方で計画されていると思いましたけれども、無症候キャリアを使ってエンドポイントがCTLの上昇だけだということだと、もともとこれは放っておいても5ないし10年余り変わらない人もいっぱいいる訳で、なかなか本当にこの治療が効いたかどうかということを見るのは、少し困難ではないかという気もしないではないですね。
それで、ここにとりあえず5、6例と書いてあるのは本当に5、6例なんでしょうか。もう少したくさんやってみないと、本当に効果があるかどうかはなかなか出ないおそれがあると思うんですが、いかがでしょうか。
○山崎委員
まさにそういう議論がございましたけれども、なかなか患者の選択というのは難しゅうございます。それで今、投与をして可能と考えられるのはこの4人だという御説明だったのです。
しかし、あれから1年たっていますので、次々とそういう方が確かに現れているかもしれませんので、そういう見直しは可能であろうと私は思います。
○豊島委員
実はおととい文部省でもこういう会がございまして、そのときの議論に出たんですが、今までのワーキンググループでやってきたことは、山崎先生のおっしゃったとおりで、こういう条件でゴーサインが出たということでございます。
けれども、そのことに関して無制限の数でゴーサインが出たのではなくて、ここに5、6例と書いてあるという、その前提条件の下にゴーサインを出していて、その5、6例に関するデータが出てきたときに、そのデータに関していろいろまたこの会に御報告があると思いますが、それを見てその後、広げるか、広げないかということは改めて審議するべきであろうと、そういう議論になっております。
○高久座長
ほかにどなたかございますか。どうぞ。
○唄委員
今日、2例について、お話を伺っておりまして、遺伝子治療という同じ言葉でも何か随分違うような印象を持ちました。それに関連して、若干手続的なことでお聞きしたいのです。
中央薬事審議会の遺伝子治療用医薬品調査会が今度かかわったのは、今度の、つまり前のときにはベクターもあっち任せで済んでいる。それを今度は、別に初めて使うからということで、これはいいんですね。その意味は、今度のお話というのは全体がワクチンを使うようなものだから、それ全体が何かそちらの薬事審議会の普通の治験の手続きに乗るような話かなというふうな気もしたんですが、それはそういう意味ではなくて、あくまでベクターに関することですね。その問題が1つ。
それから関連するんですけれども、国内でやることと国際的なこととの関連ということになるんですが、先ほどのお話も出てきたんですが、アメリカで既に200 やっている。そこで日本が4つですか、6つですか、加えるということにどういう意味があるんだろうか。
この資料にもあったんですが、その返答の部分がちょうど3ページで切れていて文章が終わっていないものですから分からなかったんですが、そういうのはもうちょっと待っていて、すっかりアメリカに任せておいて、それでもうちょっと出来てから日本にいただくということと違ってこういうふうにやるというのはどういう意味かということが1つ。これが第二の質問です。
それからもう一つ、第三の質問はそのベクターをアメリカの会社でずっと開発しているとしたら、そこに直接御厄介になるということを今度はとらないで、わざわざそれを(株)ミドリ十字が輸入するんですか、どうするんですか。そうやってまたやって、そのために治験の手続が必要になっているというのはどういう必要からなのか、という点です。
大変愚問ばかりで恐縮でございますが。
○山崎委員
今の御質問の1番目と3番目は、多分平井課長の方が適切にお答えになると思います。
2番目の問題に関しましては、これはまさに先生がおっしゃるとおり、この作業部会での大きな論点だったんです。先ほど申し上げましたように、何でそんな4例ぐらいをやるんだと。
しかし、エイズに関する限り、これはほかのエイズのワクチンもそうですが、いわゆる臨床には第1相、第2相、第3相試験というのが御存じのとおりございます。第3相試験というのはいわゆるエフィカシー・トライアル、効果があるかどうかを見るものです。
しかし、そこはものすごいたくさん患者が出るところでしか行われない。例えば、タイとか、アフリカとかというところに持っていかない限り、エイズのこういう医薬品の第3相試験は出来ない訳です。ですから、どこの国でもやれるのは第2相までです。そういう意味では、1人でも2人でも3人でも、これは対象になり得るんです。ですから、世界的規模でこの治療薬を評価するならば、確かに200 例の中の4人というのはほとんど意味がないかもしれませんが、我が国で我が国の患者さんを対象にやるという第1相試験の中の一つとしては、これは認められるのではないかというふうに思われると私は思います。
ただ、先生がおっしゃったことは、まさに議論を何度もやりましたけれども、さっき言いましたように、後になって少しでも効果があるんだったら、なぜこの熊本の例をちゃんとやらなかったんだ。この患者さんが不幸にして最後に死んでしまった場合、やらなかったことが問われるんじゃないかと、皆さんそうおっしゃったんです。ですから、この作業部会としてはゴーサインを出すべきだという判断だった訳です。
○高久座長
それでは、先ほどの1番目と3番目の問題についてお願いします。
○研究開発振興課長
これにつきましては、先ほど言いましたように、今回のこの研究自体が熊本大学の臨床研究ということと、株式会社ミドリ十字がカイロンバイアジン社から輸入をして、それを治験という形でやる。ですから、臨床研究と治験が同時に行われる。これは、そういう研究計画というものが組まれているので、必然的にそういうことになっていると理解しております。
それで、将来的には、例えばアメリカの場合にはカイロンバイアジン社が承認をとるためのINDをやっておる訳ですが、日本においてはうまくいけば将来(株)ミドリ十字が輸入承認申請をとって商品化したいということで、その最初の段階としてきているという整理になっております。
ですから、そういった日本で商業化する意図が全くなくて、単なる臨床試験だけを是非やりたいということであれば、熊本大学と外国の会社とが相談をして計画を立てるべきことだと、こういうことになっております。
○高久座長
よろしいでしょうか。
○科学技術審議官
北海道大学の例はまさに主治医の責任でやったから、そこの手続はない訳です。
○唄委員
そうすると、たまたま今度そういう形になってきたから、それにふさわしい対応をしているということで、どの治療にはどういう形でなければならないというふうなことではない訳ですか。
○科学技術審議官
それは、計画を申請する方のやり方にかかっている訳でございます。
○高久座長
そのとおりだと思います。北大の場合には、研究者から直接ベクターが供給されましたので、作業部会ではベクターについての検討もしたのですが、今度の場合には商品化というような話があるものですから、ベクターについては中央薬事審議会の方で審査をした。ですから、これ以後もベクターの供給のされ方によって変わってくるので、遺伝子治療の内容によって変わるということはないと思います。
ほかにどなたか、御質問、御意見ございますでしょうか。
山崎先生、インフォームド・コンセントのことについてはかなり大幅に変えていただかなければならないと思うのですが、121 ページの下の方に「HIV−1感染症の現在の治療方法について」というのがございますね。ここのところを大幅に変えるということになりますか。
○山崎委員
そうだと思います。
○高久座長
そうすると、この内容についてはどういたしましょうか。変えていただくという条件ですけれども、変えていただいたものをまたどこかで審査をしなきゃならないのですかね。あるいは、ここで大体どういうふうに変えていただこうということを言っていただいて、その結果を熊本大学の方にお知らせして、あとは事務的にそのとおりに変えているかどうかということをチェックをすると、それがいいでしょうね。
○山崎委員
作業部会では、このテーマこそこの中央評価会議でやっていただきたいということです。
○高久座長
先ほどからもお話がありましたように、このインフォームド・コンセント中にプロテアーゼ・インヒビターのことも一応は書いていますね。
ただ、三者併用がかなり有効であるというようなことが余り書いていないのですね。
○山崎委員
そうですね。そこが変わってきたところですね。
しかし、さっき申し上げたように、作用機序が違うんですよということをいかに上手に説明するかということで、「抗HIV薬では期待されない別な作用がありますよ。それがCTL活性が上がるということですよ」と、それでコンセンサスをとっていただければと思います。
○高久座長
ほかに、このインフォームド・コンセントフォームの中でお気づきなところはおありでしょうか。どうぞ。
○寺田委員
124 ページの、今さっきお話が出ました外国での状況につきましては随分状況が変わっていますし、今おっしゃったのでは余り有効性がはっきりしないということでありましたが、そのようにきちんと書かれた方がいいと思います。
○高久座長
これは、外国ではまだフェイズ3をやっていないから分からないのですね。これからフェイズ3をやるのですね。フェイズ1、2ですから分からない訳ですね。分からないというふうに書く必要があると思います。どうぞ
○黒田委員
確かに、大幅に書き直していただかなくちゃいけないということでいいと思うんですけれども、ほかのインフォームド・コンセントと比べてみると、例えば120ページで「私たちは、あなたにこの臨床研究へ参加なさることをお勧めします」とばんと出てくるという書き方ですね。ほかのインフォームド・コンセントでは、そういう書き方は出てきていない訳で、何かこの文章がすごく強烈な印象を受けるんですね。
それでよく聞いてみると、特にこの書類にはほかの普通の薬では効かないということが書いてあるからそうなのかなと思うと、実際には確かに3種混合型などの投与で、発症しているのに症状がすごくよくなったという例が報告されている訳ですから、全然症状が出ていない人に対してこういう治療をするというのがこの目的なのに、「お勧めします」などとこんなにポジティブに言えるのでしょうか、というのが非常に大きな疑問の一つでございます。
それで、患者さんというか、治験をされる方のクオリティー・オブ・ライフというのがどうなるのか。併用であって全く違う機構に対する治療だからいいと言っても、発症していない人に対して、それもこの場合、発症するには5年から10年ぐらい掛かるので、その間は普通の生活が出来る訳ですから、そのときにクオリティー・オブ・ライフが悪くならないのかどうかというようなことに対する説明があるのか。もう少しあってもいいのかなということが2点目です。
それから3点目は120 ページで、これはきっとテクニカルな問題で私が分からないだけなんだと思いますが、遺伝子治療臨床研究の依頼者が株式会社ミドリ十字というふうに書かれていて、治験を受ける患者さんはどういうふうにしてこれを読むのか、私もちょっとよく分からないんです。これは、熊本大学が臨床研究の依頼者じゃないんでしょうか。
○高久座長
依頼者ではないのです。熊本大学は実施者です。
○黒田委員
そうすると、臨床研究を依頼するのは、(株)ミドリ十字ということでよろしいんですね。
○高久座長
会社が関係した場合には、臨床研究はすべて会社が依頼者になるのですね。臨床治療研究、治験というのは……。
○黒田委員
新薬の治験はそうですね。そうすると、これもそれに準じて。
○高久座長
そういうことになると思いました。そのために薬務局を通っているのだと。
○黒田委員
それはベクターだけのことだと私は思っていましたので、そうではないんですね。
○高久座長
依頼者はほかにはあり得ない訳です。
○黒田委員
分かりました。治験の依頼者ですね。その辺は本当にテクニカルで、素人が質問しているので納得させていただければ結構だと思います。
○唄委員
さっきの私の質問とも関連するんですけれども、飽くまでもベクターに使う薬品の治験が(株)ミドリ十字から出て中央薬事審議会にいくのであって、これ全体はここの評価システムの中の問題だから、個々に遺伝子治療臨床研究の依頼者(株)ミドリ十字と書いてあるのは、非常にミスリーディングではないでしょうか。
○研究開発振興課長
臨床試験が行われることについては、これは普通の新薬の臨床試験と同じことが行われる訳です。それで、治験の前に中央薬事審議会が成分について直接確認をするというのは普通の医薬品では行なっておらない訳ですけれども、遺伝子治療のものにつきましては先端技術に非常に特殊性がありますので、現在事前にチェックする制度をつくって今回から動かすようにしているということです。
○高久座長
唄先生、薬の場合でも、依頼者はメーカーさんで、その場合に単に薬を提供するだけではなくて、薬の治験のプロトコールもつくる訳ですから、それと同じことになると私は思います。
○研究開発振興課長
これは、要するに治験のルールに従ってやっていただきまして、このデータがうまく出れば、将来あるであろう承認申請のデータとして使われるようになる。そのためにきちんとしているということです。
○唄委員
でも、この説明ですと、同意書はその治験だけのことではなくて、今回の遺伝子治療全体の書式でしょう。
○高久座長
この遺伝子治療がフェイズ1の治験としても行われているということになりますね。
○研究開発振興課長
要するに、新薬治験の同意書としては不足分があるんじゃないかということですか。
○唄委員
さっき私が第1問として聞いたことが、そうするとまた出てくるんですけれども、ベクターだけの問題ではなくて、これ全体が薬事審議会の治験にかかるというんですか。そうじゃないですよね。
○研究開発振興課長
ここで使われるベクターを含んだ製剤がある訳ですね。この製剤が将来、薬事法上の医薬品になるべく計画されているということです。
○高久座長
ですから、ほかの薬の場合には、こういうふうに使う前に薬事審議会には掛けない訳です。これは遺伝子治療という特殊な新しい治療だから、念を入れてと言ったらおかしいのですが、薬事審議会でベクターの安全性を確認をしているということです。
○山崎委員
黒田先生のことについてお答えしていないんですが、1点、私の答える範囲というのはクオリティー・オブ・ライフのことだと思うんです。
これは、今の抗エイズ薬というのは始めると毎日注射するんです。つまり、患者は薬漬けになるんです。
しかし、これは先ほど御説明がありましたように、2年間に18回注射するんです。年間に9回しか注射しないんです。そういう意味で、患者に対するバードンは比較にならないということと、作用機序が違うということと、先ほど申し上げた中で一番大事なのは、アメリカで200 例やったけれどもクオリティー・オブ・ライフが落ちたという報告は1例もない。 そういう意味で、余り我々としてはそれを理由にやめるという理由はないであろうと、こういう結論でございます。
○高久座長
上田委員、どうぞ。
○上田委員
このインフォームド・コンセントの書き方ですが、治験としてみた場合に、これを治験として読むかどうかということも問題ですけれども、極めて形式上の書き方ですが、中央薬事審議会の常任部会が3月13日ですから、その後に治験されると4月1日以降で、GCPが変わる時期に当たる訳ですね。この治験は、新しいGCPの下に行われると考えられます。そういう目で見ますと、このインフォームド・コンセントの書き方というのは非常に不備だと思うんですね。
それで、GCPが決まっていませんから、それに沿ってということはなかなか言えないんですけれども、趣旨としては、先ほど治験依頼者のお話が出ましたけれども、治験依頼者の記載のところは活字のポイントを下げて書いているのはやはりおかしいです。例えば125 ページに、副作用が生じた場合に熊本大学医学部はこういうことをいたしますとあって、臨床研究依頼者が負担するというところは活字のポイントが下がっていますね。こういうことは、非常におかしいんですね。
だから、形式的には3月十何日以降に行われるんですけれども、4月1日からの日本のGCPの改定もにらんだ形の計画書にしていただきたいという希望を申し上げたい。やはり唄先生がおっしゃいましたように、治験依頼者というのが出てきますから、そこをもう少しはっきりして、治験依頼者の責任がどこにあるかを書く必要があります。補償を行いませんというところのみに治験依頼者が出てくるのは、ちょっと変じゃないかということになります。大学を主体に書いてありますけれども、治験依頼者が並行して出てきますので、もう一度御検討を賜りたいと思います。
以上です。
○高久座長
どうもありがとうございました。
ほかにどなたか、どうぞ。
○中谷委員
インフォームド・コンセントの内容その他につきましては、本件だけではなくて、あとから出てきますのも大変問題が多いので、そのインフォームド・コンセントに関する作業部会というか、何かそういうものがあった方が、検討する機会があった方がいいのではないかと、私は資料を拝見して感じました。
○高久座長
作業部会でインフォームド・コンセントも全部やりますと、ここでやることがなくなるという、これは冗談ですけれども、北海道大学のときにはインフォームド・コンセントも大分作業部会で検討しましたね。勿論、この中央評価会議でも随分議論をいたしました。ですから、両方でやるのがいいのではないか。ですから、作業部会の委員の方々は非常に御苦労ですけれども、サイエンティフィックな面とインフォームド・コンセントを両方御検討してくださった方が良いと思います。多くの人数でインフォームド・コンセントを詳しく議論をして直すということはなかなか難しい点がある。
ただ、今日はまだ時間もありますので、どうぞ御自由にインフォームド・コンセントについて御意見いただきたいと思います。
○唄委員
今の120 ページの、ちょっと問題になっていた黒田さんのおっしゃった「参加なされることをお勧めします」という文章は、やはりちょっと断りにくい感じがするかもしれないので、「参加していただければありがたく存じます」ぐらいでいいんじゃないでしょうか。
○高久座長
それでいいでしょう。効果は分からない訳ですから勧める訳にはいかないですね。参加をお願いをするとか、あるいは参加をしてみてはいかがですかということしか言えないと思います。アメリカでもしフェイズ3が終わって有効だと言えば、「お勧めします」ということも出来ますが。
それから山崎先生、患者さんはときどき抗ウイルス剤の使用を受けているのですね。ですから、患者さんは全くアシンプトマティックではなくてリンパ球が下がったり、また上がったりしている。
○山崎委員
もう危ないところへきているんです。本当にスタートしないと、多分使えなくなるんじゃないかと。
○高久座長
どうぞ。
○豊島委員
私も作業部会の方に所属していた一員としてなんですが、インフォームド・コンセントも全くやっていなかった訳ではなくて、ここでやっていただかないと、作業部会の人間がやったのでは、本当に直したことにならないだろう。というのは、こういう文章に感覚的に慣れ過ぎているものですから、それはだめだろうということが一番大きな問題だったんです。
それで、例えばの話ですけれども今、問題になっております120 ページの後で、下から5、6行目のところで、例えば「長期間の観察の途中であるため、感染したHIV−1ウイルス量を減少させて病気が回復した例は未だみられません」とか、こういうところはちゃんと入れてくださいというふうな意見が出て、こういうのを入れたというふうな経緯がありますので、全く見ていない訳ではございません。
それから、これは文部省の中央会議でも意見が出たので、これも御検討いただければというふうに思うんですが、最後の方に説明者の氏名がありますが、やはりこれは説明者もだれが説明したというサイン、印鑑があった方がいいだろうということが1つです。 それから、そのときの立会人氏名及び患者との続柄というのが書いてありますが、これはだれがどういうふうにしてこの立会者を決めるのかというところが問題なので、例えば患者さんが一番望んだ人を立ち会わせるとか、そういうふうなことがこのインフォームド・コンセントのどこかに入っていた方がいいだろうと、そういうふうな意見が出ておりました。
以上でございます。
○高久座長
どうもありがとうございました。
ほかにどなたか御意見おありでしょうか。どうぞ、上田委員。
○上田委員
後で直していただけるのでしたら、ついでに申し上げておきたいと思います。極めて形式的なことなんですが、126 ページにプライバシーの保護というのがありまして、これには妥当なことが書いてあります。「臨床研究の内容は外部には判らないようになっていますので、あなたのプライバシーは十分に守られます」と書いてありますけれども、実際にはこの研究内容が発表されることがあり得るので、臨床研究の内容を発表する場合にはどうするということの記載が要るだろうと思います。これは発表をしないというふうに書いてありますけれども、学会などで発表されることはあり得るので、発表しますけれども、その場合にあなた個人のプライバシーは出ないというふうな表現の方が私はよろしいのではないかと思います。
○高久座長
そうですね。これはおかしいですね。
○上田委員
それから、分担研究者の中に(株)ミドリ十字の部長さんが入っているんですね。役割りは、情報提供とだけ書いてありますから、カルテを見られるのかどうかは分からないのですけれども、共同研究者が見る場合もあるとすれば、カルテを見ていいのが医師と厚生省の査察官だけになっていますけれども、いわゆる治験依頼者のモニターに当たる人ですね。そういう人が見るのかどうか。見せないというのであれば、これはやむを得ないですけれども、4月以降はそういう訳にはいかないと思うんですね。ですから、そこのところをもう一度お考えをいただきたいと思います。
それから、先ほどの125 ページで、治験依頼者の補償を行いませんということで、私はこれはどうかなと思ったんですが、下の方には「患者さんの権利と検査への協力のお願い」の4番目に医療訴訟の権利は阻害されませんと書いてありますから、ここと上の記載との整合性を保っていただく必要があるだろうと思います。そうでないと分かりにくいと思います。
以上であります。
○高久座長
どうぞ。
○唄委員
今、言おうと思ったことを上田先生から御発言がありましたが、これは多分このケースだけですぐに解決出来ない問題だと思いますけれども、補償の問題はちょっとこの会と別のどこかで一度、今度の新しいGCPも含めてちゃんと考えないといけないところへきているんじゃないかという気がいたします。特に、今度GCPが変わると補償の規定が入ると、これにも恐らく入れざるを得ないから、今のようなごまかしのままで、前回の北大のときにも私は発言をしたつもりですが、もう一回リマインドして、これで直ちにではなくてもいいけれども、どこかできっちり国としての態度を決めておく必要があると思います。
○高久座長
どうもありがとうございました。
ほかにどなたか御意見おありでしょうか。
○曽野委員
大したことではないのですが、こういうものが与えられて私が患者といたしまして、そしてサインするまでの時間というのは現実にどうなっているんでしょうか。
○崎山教授
私たちのときは3年近く掛かっていますので、酵素補充療法を始めまして治療効果が思わしくない時点からずっと何度も何度も話をしております。正式なフォームが出来てからは半年ぐらいですけれども、多分臨床的には何度も何度も、この場合も多分何度も何度も繰り返し行われているんだと思います。1回だけぱっと見せて、それで終わりというやり方では決してないと思います。
○高久座長
そうですね。よろしいでしょうか。
今日は、このインフォームド・コンセントについていろいろ御意見が出ました。事務局の方でチェックをしていると思いますが、皆さん方の御意見をお伺いいたしまして、私も座長として最終的にチェックをさせていただいて、熊本大学の方にこういうインフォームド・コンセントをとるようにというふうにしたいと思います。それを皆様がご覧になってお気づきの点があれば厚生科学課の方に、こういう点をやはり直したらどうかという御意見を是非お寄せいただきたいと思います。
それで、先ほどからベクター、特に新しい生産ラインでのベクターの問題が議論になっておりましたが、平井課長さんからもお話がありましたように、昨日の中央薬事審議会の調査会は通って、あとは特別部会、常任部会をクリア出来ればベクターとして使って差し支えないということになると思います。それから、作業部会の方でサイエンティフィックな面とインフォームド・コンセントとを検討されて、その結果として行ってもいいというふうな結論が得られたと思います。
それから、先ほど豊島委員の方からお話が出ましたが、文部省の学術審議会のバイオサイエンス部会でも今日と同じような条件がベクターについて付いた訳であります。もし御意見、御議論がなければ先ほどのベクターの条件と、それから今日皆さんからいろいろお話がありましたインフォームド・コンセントについての修正をし、そのインフォームド・コンセントがとられたならば、患者さんの状態の問題もありますので、ベクターが利用出来る時点で臨床研究を始めることを、皆さん方に御異論がなければ承認したいと思いますが、いかがなものでしょうか。
それでは、そういう条件付きで始めさせていただきたいと思います。
次の議題に入りたいと思いますが、どうぞ。
○科学技術審議官
その辺りはちょっとはっきりしておいていただいた方がいいと思います。中央薬事審議会の方はさっきおっしゃったようなことでいいと思いますが、ベクターの条件ですね。それからインフォームド・コンセントにつきましては、今日たくさん意見をいただきましたので、更に追加の御意見があれば出していただいて、それを全部項目としてどういう意見があったか整理をしまして、申請者の方に事務局からそれを書き直してくれということで再度出しますので、その書き直していただいたインフォームド・コンセントの内容につきまして、もう一度各委員の先生方に全部ファックスなり郵送で送らせていただきますから、それで最終的な確認をこの評価会議としてやっていただいて、そういう手続を踏むということをはっきりさせておいていただいております。
○高久座長
分かりました。
それでは確認させていただきますけれども、ベクターが特別部会、常任部会を通って供給されるようになるという条件が1つございます。
それからもう一つ、今日いろいろ御意見がありましたので、その御意見に基づいてインフォームド・コンセントを直しまして、それから委員の皆さん方にそれをファックスあるいは郵送でお送りいたしまして、それで委員の皆さん方の御意見をまた集約させていただきまして、それを熊本大学に送って、その条件でインフォームドコンセントをとってもらうというふうにしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、次の議題に入りたいと思います。本年の12月2日に東京大学医科学研究所(資料4)と岡山大学(資料5)から、がんの遺伝子治療臨床研究実施計画書が提出されております。それで、今後、今までの遺伝子治療研究と同じように作業部会を設置して審査を行う訳でありますが、作業部会の構成について、「がん遺伝子治療臨床研究作業部会委員構成(案)」というのを今、お配りしております。今回のがんの遺伝子治療の対象になっておりますのが、腎がんと肺がんですので、臨床の方から、腎がんについて2名程度、肺がんについて2名程度、それから、もしも必要ならばがん全体に共通する臨床の専門家に入っていただく。基礎につきましては、従来もベクターに関する研究者に入っていただいておりましたが、それにがんと、それから免疫の専門家、といいますのは、特に東京大学医科学研究所から出ておりますのは免疫の問題が絡んでおりますので、免疫の方に作業部会に入っていただいてはというふうに考えております。これについて、何か御意見おありでしょうか。
○山崎委員
質問ですが、そうするとこれは腎がんと肺がんを別々に作業部会に分けないで、同時に進行して並行でやるということですか。
○高久座長
どうですか。
○研究企画官
本来であれば、各申請ごとに1作業部会を設け、すなわち2申請でありますので2作業部会を設けるべきところでありますが、たまたま時期的にも同じ日に申請をされておるということ、それから期待される機序等は異なっておりますし、臓器も異なっておりますが、がんに対する治療という点では共通の点が多うございますので、事実上、多数の委員が重複するであろうということが予想されます。したがいまして、進捗状況によりますけれども、可能である限り、この2つの案件について、2つの作業部会を合同した形で進行させることが出来ればありがたいと、事務局の方では考えております。
○高久座長
そういうことです。どうしても何回も集まることになりますので、能率ということを考えますと、研究企画官からお話がありましたように、一緒にやった方がいいんじゃないかと思います。どうぞ。
○豊島委員
先ほど御提案のありましたインフォームド・コンセントの問題ですけれども、お集まりいただくということまでは無理かもしれませんが、インフォームド・コンセントもこれと並行で一応あらかじめ見ておいて、コメントを作業部会の方ならば作業部会の方へ返していただく。それにしたがって一応直した段階で、次の手入れに入るというふうなことをした方が有効じゃないかと思うんですが、その点について何か。
○高久座長
そうですね。作業部会はどうしても、この表にありますようにサイエンティストが中心です。この評価会議にはいろいろな分野の方がいらっしゃいますので、インフォームド・コンセントに関しては作業部会というよりも事務局の方に意見を言っていただければ、事務局の方から作業部会の方に皆さん方の御意見を伝えるということにいたしまして、それを参考にして作業部会でやっていただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。
ほかに何か御意見ございますか。それでは、今までもこの作業部会は文部省の学術審議会のバイオサイエンス部会の遺伝子治療臨床研究専門委員会とこの中央評価会議とで合同でというか、両方でメンバーを出し合って1つの作業部会として作業をすることになっておりますので、文部省の委員会の方と相談をして、具体的にどういう方に作業部会員になっていただくかということを決定したいと思います。それで、決定をした上で御通知申し上げたいと思います。恐らく事務局の方からまた委員の先生方にいろいろ御意見もお伺いすることになると思いますし、またここにいらっしゃる豊島先生は文部省の方の遺伝子治療研究専門委員会の主査をされておられますので、十分にこのメンバーについては意見の交換、更に適切な方を作業部会員としてお願いすることが出来ると思っておりますので、よろしく御了承をお願いしたいと思います。
今後のスケジュールについてですが、これはそちらでお願い出来ますか。
○研究企画官
今後のスケジュールでございますが、可能であれば月1回程度のペースで作業部会の開催をお願いいたしまして、論点整理が終わりました段階で再度この中央評価会議に御参集いただきたいというふうに考えております。
お手元の資料に、一応申請者からまいりました概要と、それからインフォームド・コンセントを入れております。この中では特に今までの初例目、2例目と同じように、実は東京大学医科学研究所の方は医師が自ら行う臨床研究を主体としておりまして、米国の企業を活用いたしますが、中央薬事審議会の方は経由いたしません。これに対しまして、岡山大学で企画しておりますのはRPRジェンセル社、ローヌ・プーラン・ローラー社の日本の子会社でございますが、こちらが医薬品の申請を企図いたしまして、医薬品の臨床治験としても申請を別途出すということでございます。すなわち、今回のHIV患者を対象といたしました(株)ミドリ十字のものと同様になっております。そこら辺で多少類似した計画ではございますが、事例の違いがございます。そこら辺も含めまして、インフォームド・コンセントにつきましては、御意見を事務局の方にいただければ非常にありがたいかと思います。
一応、以上でございます。
○高久座長
どうもありがとうございました。
そういうことで、東京大学医科学研究所の場合には北海道大学タイプで、岡山大学の方は熊本大学タイプですので、どうぞその点、御了解していただきたいと思います。
今日、御相談申し上げますことは大体これで終わりますが、最後に事務局の方から何か連絡事項がありますでしょうか。
○研究企画官
実は、前回にもお願いをいたしまして御協力いただいておるところでございますが、審議会の議事録の公開については本来、御参加いただきました各委員の御了解を得てからということでございますが、次回を待ちましては1年後あるいは新年の後半ともなりかねませんので、原則として1か月以内に公表ということがルールになっております。
事務局としても早々に取りまとめまして、草稿をお送りするようにいたしたいと思いますので、各委員におかれましても年始、お忙しいことと存じますが、よろしく御協力のほどをお願い申し上げたいと思います。
以上でございます。
○高久座長
では、送っていただいたのを表現などを直していい訳ですね。
○唄委員
これもすぐのことではないんですが、前回にも申し上げて重ねてまたお願いしたいんですが、平成6年の遺伝子治療臨床研究に関する指針では、ベクターに関することは恐らくこの第5に入っているという理解で極めて抽象的、簡単なんですが、こういうふうにだんだん言わば一種の判例法が形成されてきておりますので、それらを織り込んだ、何かこれそのものを変えなくても、第5の細則のようなものを徐々につくっていくという心構えでいていただければと思います。
○高久座長
そうですね。少し説明を、付け加えていただいた方が、分かり易いと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。どうぞ。
○黒田委員
最後に全部に通じてなんですけれども、この分野の研究というのは今、ものすごく活発に行われているので、新しい成果がどんどん出てくると思うんですね。それで今、一生懸命になって一字一句でインフォームド・コンセントの是非を考えていても、この会で承認された後で状況が変わってくるということが非常に見込める訳です。肺がんに対しても新しい研究成果が論文にどんどん出てきています。
ですから、そういう状況にどういうふうに対処するのか。例えば、一端インフォームド・コンセントを取った後で状況が変わった場合に患者さんにどういうふうに説明をするのか、しないのか。あるいは、そのインフォメーションをどういうふうに整理するのかというようなことも、少し一般論としてお考えいただいた方がいいのかなという気がちょっといたしておりますけれども、いかがでございましょうか。これは本当に状況がすごく変わってきていて、最初にこうだと思ってまた違う結果が出てくるというふうに、動きが非常に早い研究分野ではないかというふうに感じております。
○高久座長
どうぞ、審議官、何かございますか。
○科学技術審議官
今の問題はおっしゃるとおりだと思いまして、何例か経験を積んだ場合に、一番最初にスタートするときにガイドラインそのものを、もう少し、例えば緩くといいますか、もっと実務的な観点から大丈夫だとか、そういう実績といいますか、経験をやはりガイドラインの運用に反映させていくことが必要だと思います。
したがいまして、冒頭の御挨拶でも申し上げましたが、ガイドライン自体は厚生科学会議でいろいろ御審議をいただいた結果、つくらせていただいたものでございますが、この中央評価会議の経験を踏まえて、これはまた御相談させていただきたいと思いますが、4月から設置されます厚生科学会議にお諮りしながら、厚生科学審議会にお諮りをしながら、ガイドラインの見直しも含めて検討していくということが必要ではないかと思っております。
○高久座長
そうですね。それから、実際には熊本の場合は例外でして、普通評価会議を通って、それからインフォームド・コンセントを取ってすぐスタート出来るのですが、熊本の場合は初めだというので少し早目にインフォームドコンセントを取った経緯があります。確かに黒田委員がおっしゃったように、1年も2年も掛かっているうちに情勢が随分変わってくると思いま。そのことについてここでゴーサインを出したら研究者の良心に待たざるを得ないのではないでしょうか。途中で情勢が変わったから、またここで評価会議を開いてインフォームド・コンセントをつくり直してというのは、現実的ではないと思いますが、いかがなものでしょうか。
○豊島委員
この場合でも、間隔はあきますけれども薬剤併用になっていますね。ですから、そういう場合にはやはりその時点でお互いに悪い影響がない限りベストのものをセレクトするとか、そういうふうな条件をこれから十分に検討しなければいけないだろうというふうに思います。今回も、やはりそういう条件を付けるとか、あるいは非常にその情勢が変わった場合には、それに関してもう一度インフォームド・コンセントを取り直すとか、そういう条件を付けた方がいいかという気がいたします。
○中谷委員
岡山大学のインフォームド・コンセントは大変詳細で行き届いたもので感心致しましたが、一部、ぎょっとするような部分があったり、字句の修正が望ましい箇所が若干あるように思いますので具体的に事務局の方に申し上げますので、是非御検討いただきたいと思っております。
○高久座長
分かりました。
ほかに、どなたか御意見おありでしょうか。
御意見がないようでしたら、第7回遺伝子治療臨床研究中央評価会議はこれで終わらせていただきます。
本日は、長い時間にわたって御討議いただきまして、どうもありがとうございました。

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