中央社会福祉審議会
第21回人材確保専門分科会議事録
1 会議の日時及び場所
- (1)平成8年12月11日(水)15:00〜17:30
(2)全共連ビル新館 3階 3B会議室
2 出席した委員の氏名
(50音順・敬称略)
出 席 委 員 |
欠 席 委 員 |
阿部 實
生澤 千裕
板山 賢治
上山 保彦
江草 安彦
小笠原祐次
金子 てる
高城義太郎 |
二瓶 隆一
橋本 泰子
吉村 靫生
(正木 馨 ) |
天野 建
石井 岱三
柏木 昭
小宮山洋子
佐野 陽子
山口浩一郎 |
|
12 名 |
6 名 |
( )は委任状提出
3 議事となった事項
- (1)第20回分科会議事録の確認
(2)今後の福祉人材の養成・確保について
4 議論の概要
- (1)第20回分科会議事録の承認
事務局作成の「第20回分科会議事録」(案)につき、承認された。
(2)今後の福祉人材の養成・確保について
児童家庭局より中央児童福祉審議会基本問題部会の中間報告書について、また、介護対策本部より介護保険法案について説明がなされ、その後、今後の福祉人材の養成・確保の方向性の基礎となる資料について、事務局より簡単に説明がなされ、それぞれにつき委員から関連した発言がなされたが、その概要は以下のとおりである。
(中央児童福祉審議会基本問題部会の中間報告書について)
- ○ 福祉施設の中でも最も保守的な体質である児童施設のもとで家庭支援センター創設は難しいのではないか。
(介護保険法案について)
- ○ 「当面現金給付は行わない。家族介護は、ショートステイの利用枠の拡大等で支援」としているが選択肢を並べて、どちらでも選択できるようにしたほうがよいのではないか。
(児童ソーシャルワーク課程(仮称)の設置について)
- ○ 子育て支援、つまり、家庭、地域福祉という視点を持ちうる保母の養成については望んでいたところである。
- ○ 現行の保母養成は、1年生から課程、専攻を区別して指定するというシステムである。設置案では、1年生は一般募集となり、その段階では児童ソーシャルワーク課程の在籍者がいないことになるが、現行と矛盾するのではないか。
- ○ 履修モデルなのかコースなのか。文部省をどのようにクリアするか、というカリキュラム上の技術的問題が発生するのではないか。
- ○ 社大では、教員免許状等を交付していないため、保母と養護学校教員等の資格を同時取得できないのではないか。たいていの4年制大学では、教員の養成科目を同時に履修させることができるので、今後は、教育科目を履修モデルとして選択できるようなシステムを創設しもよいのではないか。
- ○ 家庭支援センターの活動では、単なる家庭支援だけではなく、さまざまな状況に対応するという保育課題が現実にあるので、それを前提にカリキュラムを組むことは重要であるが、この課程では、関係援助論がカリキュラムの基本になっている。この点について、議論が行われたのか疑問である。
- ○ ケースワーク、グループワーク及びコミュニティーワークに関する科目が、子どものためのものとして特化する必要があるのか。
- ○ 保母にセラピスト、ケースワーカー及びグループワーカーの資質をすべてを持たせるべき、という発想ではなく、例えばケースワーカーやセラピストと共同して業務できる資質を作るという発想をすべきではないか。
- ○ ケースワーク一般の技術があれば、対象者理解は後でもよいのではないか。むしろ、発達期にある対象者の理解に関する科目を想定する必要があるのではないか。
- ○ 選択科目を含めた児童ソーシャルワーク課程の51単位と、大学卒業に必要な124単位とをあわせて修めるのは難しいのではないか。総取得単位数は124プラス10%ぐらいが限界ではないか。
- ○ 対象者理解及び基本的援助技術は、児童ソーシャルワーク独自のものではなく、高齢者や障害者に対するソーシャルワークにも共通するものであるので、これを位置付けた上で、21世紀の児童保育政策にも対応できる人材を養成すべく、社会事業大学で児童ソーシャルワーク課程を検討しているところである。
(施設長の資格要件について)
- ○ 施設長資格要件を満たしてない場合、全社協の認定講習を受ける必要があるが、認定講習の数が少ないから、希望しても受講できない状況にあるので、早急に増やすべきではないか。
- ○ 施設長の兼務及び無資格に対する指摘度が2.3%と高い。これは、施設を新設する際、自己負担できない部分を県が負担するかわりに、施設に人材を採用させ、福祉に関係のない者を施設長としている現状があるからではないか。ある県では施設長の約8割が県のOBである。これも問題ではないか。
- ○ 施設の職員、有資格者が育てば、県のOBが職を替わればいいのだが、指定席のようになっている。
- ○ ある県の課長が参加していた指導監査の着眼点を検討する委員会で、「私どもの県では、認可の際、施設長には、できるだけ県職員を推薦している。」という発言があった。東京都の委員会で指摘したが、どう改善していくのか。行政のOBがすべて悪いと、単純に言えないが、非常に重要な課題ではないか。
- ○ 公務員が出向や退職して施設に在籍していれば、一定の水準を保てるが、個性は出ない。そういう施設では民間の力が弱いし、そういう人事では、若い職員の将来の展望もなくなる。頑張っても生活指導員どまり。職員の意欲も阻害されていく、これは悪循環であるので、改善する必要があるのではないか。
- ○ 施設が50〜100人の高齢者や障害者を預かり、地域社会、地域福祉の拠点となり、職員は皆、介護福祉士等の資格を持つようになってきた中で、施設長は、役所の者で、標準的なレベルで運営されていればよいのか。施設長資格認定講習会の内容程度で施設長になれてよいのか。
- ○ 講習会の定員より、中央福祉学院、全社協が実施する講習会の受講が施設長就任の要件になっていることに基本的問題があるのではないか。
- ○ 児童福祉施設は、施設長の資格が明定されているから専任しているかどうかが問われるだけであるが、社会福祉の施設には明定されていないから、やむを得ず講習会でカバーしているというのが実態なのではないか。
- ○ 社会福祉士及び介護福祉士資格が創設された今、資格取得者に道が開けるように施設長の位置づけを考えていかないと、専門職が生きてこないのではなか。
- ○ 4年制大学の卒業者が老人ホームの職員にならないのは施設長、園長になれないからではないか。資格の有無に関係なく2世、3世が皆施設長になっている。勉強した者であればいいのだが、実態はそうではない。議論し直す必要があるのではないか。
- ○ 施設長の兼務及び無資格についての指摘件数が少ないのではないか。いま急増中の特別養護老人ホームを含む老人福祉施設の施設長は、こんな状況ではないのではないか。
(中間とりまとめの骨子案について)
- ○ 「確保した人材の定着化」について、働きやすい職場という点で、運営の仕方や人間関係の調整については、当然施設長の資質にかかってくるため、それについても書いてもよいのではないか。施設長の役割や魅力ある職場づくりと関わりがでるし、基本指針との関連も明確になるのではないか。
- ○ 保健・医療職の福祉人材への需要という点は、あまり議論されていなかった。健康政策局で検討しているということで一応は安心しているのだが、例えば、ゴールドプラン策定後のPT・OTの需要は、福祉側にあるのではないか。
- ○ PT・OTの教育に関しては、例えば実習場所は病院だけであって、特養や福祉施設での実習を認めていないが、3分の1は福祉施設で実施する、というようなことを盛り込むようにして、福祉側にも人材が流れるようにすべきではないか。
- ○ 看護婦については、福祉側に人材が流れるにはどうしたらいいかということも、この中に含めるようにしてはどうか。
- ○ 「福祉人材の養成、資質の向上の具体策」については、養成に加えて、現任研修も重要であるが、受講の機会が少ないので、機会を増やすための措置と現任研修の実施方法について具体的に触れる必要があるのではないか。
- ○ 性にとらわれない職種を考えると、表題部分に「保母」、「寮母」と書くのではなく、例えば「(保母)」とか「(寮母)」と書き、男性の目にもスッと入ってくるほうがよいのではないか。
- ○ 福祉人材の概念規定としては、3プランに計量化されてくる「人材」を言うのか。また、国民の理解を得てすそ野を広げていく意味の「人材」を言うのか。NPOについては、高齢者、子どもの健全育成に目的を絞っているので、それに関係する団体、ボランティアは貴重な福祉人材資源であるとしている。
- ○ これからの福祉施設の運営については、専門職とフルタイムとパートタイマー、それを支える市民、ボランティア、この構図がどうなっていくのかというビジョンもどこかに示していくべきではないか。全て専門職で埋めるという話にはならないので、そこも非常に重要な点ではないか。
- ○ 「取り巻く状況」では、高齢者や障害者等の学歴が高まると、要求も高まってくるので、高学歴化について触れたほうがよいのではないか。また、国際化、高度情報化社会の中でどのように福祉人材を養成・確保し、資質の向上をしていかなければならないのか、ということも触れたほうがよいのではないか。
- ○ 3プランを中心に福祉需要が増大しているが、それを支えるのは資質の高い専門職とボランティアなどを含む市民である、ということを量的な拡大と質の確保についてもふれながら書いてもよいのではないか。
- ○ 障害者や高齢者の自立支援、あるいは寝たきり防止のためのリハビリテーションも大事であるので、医療・保健とオーバーラップするリハビリテーション専門職の養成に力を注ぐ、そういう表現を入れてもよいのでは。
- ○ 「具体的に講ずべき措置」の中の「国民の理解」は1番目にすべきではないか。学童期からの福祉教育や、あるいは企業における福祉の推進は大切なことであり、そこから潜在的マンパワーが生まれてくるのではないか。
- ○ 非常勤職員の採用については、社会・援護局と老人保健福祉局においては認めているが、児童家庭局においては、認めていない。せめて、民間施設については、非常勤職員を認めるべきではないか。
- ○ 「実習のあり方」の実習施設の拡大については、施設が新設である場合、3年間の実績がないと実習施設になれないが、施設は、素人ばかりではなく、経験者も働いているから、3年も待つ必要はないのではないか。
- ○ 「福祉の分野に市場競争の原理を導入し、公的サービスを補完するとともに」とあるが、補完という形で民間のサービスを位置づけることは大きな問題ではないか。「公的サービスに厚みを増す」とかいう表現のほうが無難ではないか。
- ○ 去年、一級建築士の国家試験にバリアフリーに関する問題が出題されたが、関係各省庁の職員養成等の中に、高齢社会、ノーマライゼーション及び児童福祉の問題に関する教育、カリキュラムなどを組み込む(その結果、現実に住宅、道路等が改善されていく。)という点についても提言すべきではないか。
- ○ マンパワーの数については、3プランと、介護保険を運用していくための必要人材数、養成校で養成される専門職数、そして不足人材数、ということを算出してもよいのではないか。できれば、どこでどのくらい、どういう職種が足りないのかということを明確にしておいたほうが、対応しやすいのではないか。
最後に事務局より、次回の日程を調整させて頂く旨の連絡がなされた。
問い合わせ先
厚生省社会・援護局施設人材課
担 当 小田、岩本(内2865)
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