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96/12/06 中央児童福祉審議会母子保健部会







中央児童福祉審議会母子保健部会



議 事 録
















厚生省児童家庭局母子保健課


中央児童福祉審議会母子保健部会会議次第



日  時 : 平成8年12月6日 (金) 午前10時〜12時

場  所 : 松本楼 2階花梨

議事次第
  1 小児慢性特定疾患治療研究事業について
   (a)研究事業の推進
   (b)事業の適正化対策
  2  その他



○事務局 それでは、ただいまから中央児童福祉審議会母子保健部会を開催いたします。

 初めに、児童家庭局長より御挨拶をさせていただきます。

○児童家庭局長 11月22日付で児童家庭局長を拝命いたしました。

 年末の大変お忙しい中、先生方には審議会に御出席賜りまして、まことにありがとうございます。又、母子保健あるいは児童福祉の関係では、日頃から多大な御尽力を賜っていることに対しまして心から御礼申し上げます。

恐らく来年の1月ぐらいまでには新しい人口推計が公表されるのではないかと考えておりますけれども、最近の出生率の動向等から見ますと、21世紀は人口急減型超高齢社会という社会に突入することが確実ではないかというふうに考えております。こうした意味で、来年は産業、経済、保健、児童施策、あらゆる面で子どもの問題というのが大きな問題になってくるのではないかというふうに考えているところでございます。 児童家庭局の方におきましては、去る12月3日に中央児童福祉審議会の基本問題部会におきまして、3月以来、御検討いただいてまいりました保育問題、要保護児童対策、あるいは、母子家庭対策のあり方につきまして中間報告をいただいたところでございます。私どもとしては、これらを受けまして、10年ぶりになりますが、来年の通常国会には児童福祉法等の改正案を出したいというふうに考えているところでございます。母子保健の面におきましても、こうした意味で、子どもが健やかに生み育てられるような施策の充実が一層求められるようになってくるのではないかというふうに思っているところでございます。

 一方、当部会におきましても、3月来すでに5回にわたりまして、いじめとか虐待、あるいは栄養・運動対策等について御議論をいただいてきているというふうに聞いております。私どもとしては、こうした御議論も踏まえまして、9年度要求におきましては子どもの心の健康づくり事業というような形で概算要求をいたしているところでございます。年末に向けまして予算編成も近づいておりますけれども、その実現に努力してまいりたいというふうに考えております。引き続き当部会におきまして、小児慢性疾患の問題、あるいは乳児の突然死の問題、女性の健康対策というようなことでさまざまな課題がございますが、御審議していただきまして、幅広い見地からの御提言をお願い出来ればというふうに考えております。どうかよろしくお願い申し上げます。

○事務局 児童家庭局長は、国会などの所用がございまして、これで退席をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○児童家庭局長 済みません。どうぞよろしくお願いいたします。

(児童家庭局長退席)

○事務局 それでは部会長に議事の進行をお願いいたします。よろしくお願いします。

○部会長 おはようございます。この部会は、夏をはさみましてしばらくお休みでございましたが、再び以前から問題になっておりましたことを引き続いて御審議いただくことになりましたので、よろしくお願いいたします。

 今、局長から御挨拶がありましたが、これまでいろいろ議論していただいていたことそして心の健康の問題を来年度は是非取り上げたいというお話で、期待をしているところでございます。

 なお、本日は小児慢性特定疾患のことを御審議をいただきますが、厚生省心身障害研究で小児の疾患の研究についての主任研究者をしておられますB教授に来ていただいておりますので、最初に御挨拶いただけますか。

○B教授 御紹介いただきました東大小児科のBと申します。今、部会長がおっしゃったように、私は現在、厚生省心身障害研究の「小児の心身障害・疾患の予防と治療に関する研究」の主任研究者、そしてまた、その分担研究の一つである「効果的な小児慢性特定疾患治療研究事業の推進に関する研究」を担当しております。そういう関係でこの席にお招きいただいたものと考えております。後ほど小児慢性疾患について、私たちが研究しているところを御説明させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○部会長 ありがとうございました。後ほどまた細かい今までの研究の成果や御意見を伺いたいと思います。

 では、議事に入らせていただきますが、議事次第にございますように、今日は小児慢性特定疾患治療研究事業について御検討いただきますけれども、そのうちの研究事業の推進、今までの経過、進みぐあいなどにつきまして、資料を使いながら事務局から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○事務局 それでは、御説明させていただきます。今日は資料が三つございまして、まず「中央児童福祉審議会母子保健部会検討事項」と書いてある3枚紙のものと、それから、ちょっと厚いのですが「中央児童福祉審議会母子保健部会資料−1」というものを併せてごらんいただければ幸いでございます。

 まず、「検討事項」の薄い方の一番後ろの紙、それから一緒に資料−1の1ページ目をごらんいただきたいと思います。後半はまず小児慢性特定疾患について御議論いただきたいというふうに考えておりまして、小児慢性特定疾患の今後のあり方ということでございます。論点メモとしまして3課題考えておりまして、一つは小慢疾患の研究事業の推進ということで、今まで医療費の助成という形になっておりますが、研究の意味合いを多少強めていく必要があるのではないかというような御意見を踏まえまして、研究事業の推進ということで、「治療方法の確立」と「情報の収集、解析」。それから、もう1点は医療費の適正化ということで、医療費が年々かなり増えておりまして財政を圧迫しているということでございますので、一つは「認定基準の明確化」ということで診断書を作成する。それから「その他」というのがありますが、これは「対象疾患の見直し」や「自治体格差の是正」という内容です。「対象疾患の見直し」は今回は特に取り上げる訳ではありませんが、1の「認定基準の明確化(診断書の作成)」について御議論いただきたい。それから、3番目はいわゆる福祉施策でございますが、「本人、家族のQOLの向上」ということで、在宅サービスや末期医療対策、あるいはボランティア対策ということで、福祉施策をどのようにするべきか。この3につきましては、次回の検討課題ということでございまして、本日は1と2の研究体制の強化ということと、認定基準の明確化(診断書の作成)以下を行いまして、県の方である程度チェック出来るような形をとる必要があるのではないかというような御意見がございます。それで、1と2について御議論いただければというふうに考えております。

 1ページ戻っていただきまして、「小児慢性特定疾患治療研究事業について」ということでございます。これは平成4年度の「これからの母子医療に関する検討会」というのがございまして、そのときに出た報告でございます。このような在宅ケアの推進をすべきではないか。2として入院児対策の推進をすべきではないか、3として民間団体による自主的な活動の支援をすべきではないか、4として総合的・体系的な対策の確立に向けてということでございまして、このような意見をいただいたところですが、まず小児慢性特定疾患事業そのものの御説明をさせていただいてから、前回の課題と現在まで対応状況を説明させていただきたいと思います。

 厚い方の資料−1の1ページ目をごらんいただきたいと思います。この具体的な内容につきましては、後ほどB教授の方からもいただきたいと思うのですが、簡単に説明させていただきます。

 まず、小慢事業の概要としまして、昭和43年から一部医療費の補助をしてきましたが現在、10疾患群ということでございまして、3に書いてありますように、悪性新生物や慢性腎疾患、ぜんそく、慢性心疾患、内分泌疾患、膠原病等々の、いわゆる本人の医療費の自己負担分の助成をしているということでございます。これは年齢が原則18歳で切っておりますが、二十歳まで延長しているものもありまして、入院・通院、あるいは入院だけのものというようにバラバラになっているという現状であります。これによって医療費の負担をかなり軽減しているということでございまして、名前に「研究」というふうに付いておりますが、必ずしも研究が進んでいる訳ではないというのが現状でございます。

 次の2ページ目をごらんいただきたいと思います。これは患者の数でございまして、下の方を見ていただきますと分かりますように、合計が昭和60年に7万 9,000人でしたが、平成7年度に12万人ということでございまして、かなり伸びがあるということです。そのうち、例えば上から二つ目の慢性腎疾患というものは減っておりますが、上から五つ目の内分泌疾患の特に通院の部分が、昭和60年に1万 1,000人だったものが平成7年度に3万 2,000人になるといったように、かなり内分泌疾患に押されているというのが現状でございまして、その他の疾患は減っていたり、あるいは多少増えているものもありますが、それほど影響がないということでありまして、特に内分泌疾患の適正化が求められているというのが現状でございます。

 その次のページにいっていただきます。これを見ていただきますと分かりますように先ほど申し上げましたように内分泌疾患がかなり大きいものでございまして、表1が人間の数、表2が支給額ということでありまして、内分泌疾患で5割以上支給している。しかも、その伸びが、右を見ていただきますと分かりますように、一番伸びているのが内分泌疾患ですが、こういうふうに伸びているということであります。悪性新生物が若干伸びておりまして、それから血友病も伸びておりますが、その他については若干減りつつあるということでありまして、これが圧迫しておりまして財政状況をかなり困難にしているというのが現状であります。

 次の4ページ目でございますが、これは「研究事業の推進」ということで、B教授の方にお願いしている事業でございます。一つは心身障害研究ということで、データベースの作成ということと診断基準の作成ということでありまして、後ほど詳しく御説明いただければ幸いでございます。もう一つ、特定疾患対策というのがございまして、これはいわゆる難病、例えばSLE、あるいはベーチェット病とか、そういう子どもも大人も併せた対策を別の疾病対策課というところがやっておりまして、そこの対策を書いております。そこの対策は、調査研究の推進ということで、かなり研究が進められているということであります。それから特定疾患対策の(1)、(2)、(3)というのは、うちの課ではなくて疾病対策課ですが、(2)は医療費の自己負担の解消ということで、これは小児慢性にもあります。それから、地域における保健医療福祉の充実・連携ということで、難病情報センター等々を付けておりますが、かなり充実したものになっているということでございます。

 4ページと次の5ページがB教授の研究の概要でございます。

 それから、6ページ目からが意見書でございまして、このようなものにしてはどうかという中間的な取りまとめをしていただいている最中でございます。

 それから、7ページ目が悪性新生物、慢性腎疾患というような個別の疾患。8ページ目がぜんそく、慢性心疾患。それぞれの疾患群ごとにつくっていただいております。9ページ目が内分泌疾患、膠原病。10ページ目が糖尿病、先天性代謝異常。11ページ目が血友病と神経・筋疾患ということであります。

 12ページ目からが特定疾患研究事業ということで、先ほど申し上げました疾病対策課がやっている事業でありますが、その下の図を見ていただきますと分かりますように、「特定疾患調査研究事業」というものと「特定疾患治療研究事業」というものがあります。「特定疾患治療研究事業」は37で、その外枠は48研究班であります。点線で囲まれたところが医療費を補助しているものでありまして、外側は純粋な研究をやっているものであります。小児慢性の場合は、この点線の部分だけがあって外側がないということであります。 その次の13ページを見ていただきますと、外枠のところの主な研究内容が書いてありまして、特定疾患ではいわゆる研究面での推進がなされているということであります。ここら辺に小児慢性との差異がございます。薄い方の「検討事項」の方に戻っていただきまして、概略このようなものですが、先ほど申し上げました「検討事項」の表紙の次のページで「これからの母子医療に関する検討会報告」で、まず1の「在宅ケア対策の推進」という事項に掲げられた御意見がございまして、地域における医療機関との連携、あるいはホームヘルパーのサービス、保健所の活躍や相談窓口の設置というものにつきましては、平成9年度から療育指導事業というものをやりまして、これから市町村の方に基本的な母子保健サービスが移ることに伴いまして、保健所ではいわゆる難病の子どもの地域の中核となるような機関になっていただくということで、療育指導というものを付けます。特に福祉施設や学校との連絡をしていただく、地域のコーディネーションをしていただくというような事業であります。あとは、平成6年に訪問看護の開始や、平成8年にいわゆるショートステイというような事業をつくっておりまして、在宅ケア対策については、この前の御議論から若干進んでおります。

 次の入院児対策でございますが、これは院内学級とかプレイルームの充実というような内容でございまして、特に養護学級などは文部省さんの方で推進していただいております。プレイルームや、あるいは心理の方々の配置ですが、特にプレイルームについては、国立病院の方でも採算の面からプレイルームがつぶされかけているというようなところもこの前の国立病院学会の方でちょっと伺っておりまして、どういうふうにしたらいいのかということをまた御協議いただければと思います。

 それから、「民間団体による自主的な活動の支援」ということで、いわゆる家族の会の自主的な支援をすべきではないかということで、これも福祉施策の中で次回、御議論いただければというふうに考えております。

 それから、4は総合的な体制ということでございまして、これは先ほどの1とも関係しますが、いわゆる地域の包括的なケア体制の確立と、もう一つは研究の推進ということ、医療費の適正化というような内容でございまして、このうちの一番下の研究の内容については、本日、御議論いただければというふうに考えております。

 2、3につきましては、次回、御議論いただければというふうに考えております。

 事務局からの説明は以上でございます。

○部会長 ありがとうございました。ご存じの先生方も多いと思いますが、いわゆる小児慢性特定疾患  小慢と言われております治療研究事業は、今、御説明がありましたように昭和40年代に始まっておりますが、ちょうどそのころ老人医療の無料化が実現しまして、老人医療の無料化の次は小児医療の無料化だということで、そういう要望が大分多かった時代ですが、子どもの医療を全部無料にする前に、子どもの保健についての健診等の充実をするのがまず先だろうと。その当時、3歳児健診しかありませんでしたから。それで、乳児健診の2回医療機関委託というような予算が取られたりした頃ですけれども、そうは言っても、いわゆる慢性疾患というのは非常に治療費がかかるし、親は若いし、そういう意味で医療の援助をしようということでこの事業が計画されて始まった、当時、私はそんなふうに聞いておりました。それがずっときた訳ですけれども、今、御説明のように、一部の疾患の医療費の負担がかなり嵩んでまいりまして、ほかの新しい事業を始める障害になるというようなこともあり、部会で御審議をいただこうというふうになったと理解いたしました。

 それで、今の御説明に引き続いて、B教授のところの研究班でこの問題を検討していただいておりますので、引き続いてその御説明をいただいた上で、御検討いただきたいと思います。B教授、お願いします。

○B教授 それでは、今、小児慢性特定疾患治療研究事業の概略については御説明いただいた訳ですが、それを一部補いながら、私たちの研究班の研究の概略について、途中経過ですけれども御説明いたします。

 小児慢性特定疾患は、昭和40年代に幾つかの個別の病気についての治療研究、あるいは医療の給付事業が行われていたのを、昭和49年に整理して、小児慢性特定疾患治療研究事業として策定・実施された訳で、その実施要綱に書かれている目的が、このプリントに「事業の目的」と書いてありますが、医療の確立と普及という面と、それから患者家族の医療費の負担軽減、その両方を目的としているというふうに受け取っております。

 対象疾患は、そこに表で示されておりますように、10疾患群に分かれていますが、それは後から追加されて、現在10疾患群になった訳です。それぞれの疾患群には非常に多くの病名が挙げられておりまして、それを申し上げますと、悪性新生物としては40の疾患名、慢性腎疾患は31、ぜんそくは4、慢性心疾患が88、内分泌疾患が 119、膠原病が8、糖尿病が3、先天性代謝異常は54、血友病等血液疾患は 134の病名が挙げられています。それから、神経・筋疾患が6疾患。こういうふうに10に区分けされて挙げられておりますけれども、その中には、例えば先天性胆道閉鎖とか先天性胆道拡張症というような病気が先天性代謝異常の中に含まれているとか、新生児溶血性疾患とか、あるいは今、O157 で問題になっている溶血性尿毒症症候群、それから伝染性単核症というふうな明らかに急性の疾患とか、ヘノボシエンライン紫斑病、そういったものが血友病等血友病等血液疾患に含まれるというような、分類上に多少無理があると思われるところもあります。

 しかし、それはそれとして、非常に多くの疾患名が挙げられていて、これがいわゆる特定疾患の領域で助成されるものが37であるのに対して、非常に違うところだと思います。研究期間は原則として1年ですが、それが更新していく。それから、入院・通院に分けられている。対象年齢は18歳未満の児童ですが、一部のものについては20歳まで延長出来る。公費負担は自己負担分が対象で、高額療養費制度のところに届かない範囲のものが助成される。それがこの表に書いてあります。

 そこで、従来は費用の請求というのが、治療を行った医療機関が都道府県知事、また指定都市といいますか、大都市の市長に対して行っていた訳ですが、平成7年からは本人 これは子どもですので保護者ということになりますが、本人あるいは保護者の申請によって、保健所を窓口として行われることになりました。その制度上の変更が、今現在、班研究を行っている一つのきっかけにもなっているというふうに伺っております。

 ここに予算額の推移も書いてありますが、平成4年度には81億円だったものが、平成7年度は 110億円の予算がこの事業のために用いられている。2分の1を国が補助して、残り2分の1は都道府県・大都市が負担するというふうな仕組みになっております。これは後ほどちょっと問題になりますが、この公費負担が開始されるのは個人個人の患者にとって申請を受理した日ということになります。

 次のページを見ていただきますと給付人員の推移が書いてありますが、先ほど御説明があったように、次のページのグラフを見ていただくと、その傾向がよりはっきりすると思います。内分泌疾患の増加が著しく、人員比で全体の約3分の1、支給費──金額で言うと全体の2分の1を内分泌疾患が占めている。そのほかでは悪性新生物が増加傾向、そして血友病等の血液疾患がやや増加傾向。細かい表に戻りますけれども、昭和60年と平成7年度を比べますと、18歳未満の人口が19.6%ぐらいこの間に減っていますので、そういうことを勘案しますと、人員が増加しているものについては今非常に増加している。一方、対象年齢それ自体の減少ということも考えに入れないといけないのではないかと思います。この内分泌疾患に関しては、先ほどお話があったように、その中で特に通院患者の増加が非常に大きい訳ですが、この増加はほとんど昭和60年代に急激に増えていて、その後ずっと増加が続いています。

 以上が小児慢性特定疾患治療研究事業の概要ですが、この班研究については、一番最初に申し上げましたように、厚生省心身障害研究「小児の心身障害・疾患の予防と治療に関する研究」の分担研究として、「効果的な小児慢性特定疾患治療研究事業の推進に関する研究」というのを、私が分担研究者になって22名の研究協力者と共に行っております。

 研究の概要ですけれども、リサーチクエスチョンは本研究事業による医療援助対象児の登録と集計・解析を継続的に実施するにはどのようなシステムが必要か。2番目として、本研究事業対象疾患の最新の治療法等に関する情報を提供するためにはいかにすべきかということで、これは小児慢性特定疾患に対する医療費助成が、先ほど出ましたように、本人あるいは保護者の申請によって、保健所を窓口として行われることになったのに伴って、ここに挙げられているような疾患の実態を把握・分析することによって、従来以上に適切に、又、患者さん及びその家族に親切な医療支援を行うことを目的として研究をする。このような目的を達成するために、コンピュータを利用した登録管理の方式を確立する。又、小慢疾患の最新の治療法等に関する情報を提供するために疾患の解説と治療のマニュアルを作成するということで、情報提供といいますか、このマニュアルづくりに関しては、3ヵ年の研究期間に於いて、昨年度3疾患  これは慢性腎疾患、内分泌疾患、膠原病ですが、本年度3疾患  慢性心疾患、先天性代謝異常、血友病等血液疾患、来年度は残りの4疾患、それぞれ個別に取り上げて研究をしていくというふうに予定しております。 研究の方法は、一つには小慢疾患の給付対象者の実態調査、これは集計結果報告書というのが三菱総研から出されているのですが、そういうものを一つの資料とし、又、全国の都道府県あるいは12大都市の母子保健の担当課長あてにいろいろな項目についてのアンケートをとって調査いたしました。それからまた、10疾患群別の医療意見書の試案を作成いたしました。比較的頻度の高い小慢疾患が十分に登録管理出来るように、疾患群の特性に応じた登録様式を作成するということを目指しております。

 その際に、登録管理、そして意見書の作成ということにおいて、患児のプライバシーを最大限保護する。それから、医療機関との連携ということを考慮して書式内容を決め、収集の方法を検討する。コンピュータへの入出力の方法、そして最後にデータの活用方法などをこれから検討していこうと思っております。

 結果ですが、一つには、特に昨年度の班研究で一応まとめられたこととして、従来の小慢疾患の給付といいますか、人員については、地域差が極めて大きいということが非常に大きな問題点あるいは特徴として挙げられます。その対象者数が人口の順にはなっていない。それも、病気の種類によって地域差の大きさが違いまして、悪性新生物とか糖尿病などは比較的地域差が少ない。例えば20歳未満の人口 100万人に対しての数というふうに標準化してみても、悪性新生物や糖尿病については差が少ないのですが、ぜんそく、慢性腎疾患、膠原病、特に下垂体性小人症というような病気については、20歳未満の人口 100万人に対する値が数十倍あるいは数百倍の違いが県によってあるということが明らかになっております。

 しかし、こういう人口に対する対象人員の数については、県によって医療費助成範囲が拡大しているところがあります。県によって県独自の事業として助成範囲を拡大する、例えば入院だけではなくて通院も認めるとか、そういうふうに拡大しているところがありますけれども、そういう県独自の事業としての医療費助成範囲の拡大。それから、先ほどから内分泌疾患というのが問題になっておりますが、その非常に大きな部分を占めているのがいわゆる下垂体性小人症です。それを申請するのに、ヒト成長ホルモン治療適用を成長科学協会に申請することになっている訳ですけれども、その判定書を付けることを必要とする県と不要な県、そういう違いが県によってあるのですけれども、そういったものの間にも関連はなかったということが分かっております。

 そのようなことを一つの前提として、より明確な基準に基づいた診断をした上で、小慢疾患の申請をしていただこうということを目的に、10疾患群それぞれについての意見書の作成をいたしました。それがこのプリントの後の方にそれぞれの疾患群について並べられております。

 昨年度の研究に基づく考察としては、まず登録管理の方針として、多少繰り返しになりますけれども、診断根拠を明確にして診断した上で登録管理をする。そうでないと、統計結果の意味付けが難しい。それから、プライバシーの保護に十分配慮する必要がある。そういうことから、個人氏名と個人識別番号  申請書には個人氏名はもちろん出てきますし、それに個人識別番号が付く訳ですが、その対応は保健所の管理とする。全国的な統計としてまとめる場合には、個人番号、出生月、保健所番号は入れない。

 次に保健所の機能として、難病管理といいますか、療育指導とか訪問指導等が予定されている訳ですけれども、そういうものに保健所での登録というものを十分に活用していただくようなシステムをつくる。そして、次に個人情報を全く含まない全国集計結果は情報公開を原則とする。いずれはインターネットなどを通じて世界的な規模で情報を発信するというふうにしたい。そういうことによって、関係者以外のところからのいろいろな御意見といったものが情報として寄せられる可能性もあるのではないかということです。

 現在つくっている意見書の大枠としては、そこに登録内容として書いてありますけれども、共通の項目として登録年度、都道府県都市番号、保健所番号、ICD-10をもとにした疾患コード番号。ただ、ICD-10をもとにした疾患コードに関しては、小慢疾患との対応がまだ不完全ですので、小慢疾患の方の病名について、ICD-10をもとにしたコードを今後まだ検討を要するところがあります。それから個人識別番号、男女、出生年・出生月、発病年月。それから登録、これは新規とか継続とか転入とか、そういったことです。それから、経過として治癒とか、良好な経過をとっているとか、改善、不変、悪化、そういったことを記入する。さらに入院・通院。こういう各疾患群共通のもののほかに、疾患群ごとの項目内容をコンピュータに入力しやすいような形で加えた医療意見書を各疾患群ごとにつくるということが行われました。

 その集計の方法ですが、これが保健所に提出される訳ですけれども、保健所から中央の集計場所へのデータの転送が行われる。この中央集計は年1回行えばよいであろう。全国約 400の保健所がある訳ですが、現在の小慢疾患の数から言うと、平均すると各々約 350名の小慢疾患児を各保健所ごとに管理することになる。各保健所はほぼその人数分のデータを年1回、中央に送る。その一方、保健所ごとに管理する患者さんについては、療育指導とか、あるいは訪問指導、そういった難病管理を十分にやっていただこうと。

 こういうふうなことで登録管理が行われますと、その結果として、発病率とか罹患率の全国統計が可能になります。そして、疾患群とか一つの疾患ごとの症状とか検査所見の出現頻度とか、又、転帰が明確になります。こういったことは小慢疾患の診断・治療、研究面にとって非常に有用な情報となるのではないかと思います。その一方で、逆に最新の情報を保健所経由で周知徹底することも可能になるだろうということです。

 しかし、その一方で、現在検討しております登録管理の限界として、患者発生直後の対応ということは難しい。保健所から中央にデータが来るのは年に1回という形にしようと思っていますので、そういうことから発生直後の対応ということは難しい。又、治療法別の効果の判定ということの評価も今の方式では難しい。又、診断の適否をこちらで判定するということも難しい。こんなところが現在検討している登録管理の方法の限界ではなかろうかと思います。

 これが平成7年度に検討してきたことの概要ですが、それに続いて、今年度、平成8年度は、昨年度、10疾患群ごとに制作した小慢疾患の医療意見書を、選ばれた現場−−れは具体的には三重県、岐阜県、佐賀県、宮崎県、こういった現場で試しに使ってみておりまして、その問題点とか意見を実際に記入してくれている医師などから聴取しております。現時点までで得られた研究班としての一つの提言といいますか、意見として、診断基準の明確化をしなければいけない。先ほど例として挙げましたような非常に大きな地域差があるということから、これをデータとして十分に活用するためには、診断基準の明確化が必要である。それと、診断基準の明確化のために必要なこととして、もうちょっと具体的になりますけれども、医療費の助成は現行は保健所に申請した日以降認められるということになっておりますが、これを受理日よりもさらに逆上って、初診日以降に認められるというふうにしないといけないのではないかと思っております。といいますのは、患者さんは出来るだけ早く診断書なり意見書を医師に書いてもらって、それを保健所に出したい。そうしますと、診断をする上でのデータとして、症状あるいはまた検査データとしても十分でない形で申請が出される。それぞれの疾患群について細かい意見書をつくっても、空欄が非常に多くなって、そういうものに基づいて申請されるということになりますので、出来るだけ早い方がいいのですけれども、ここに記載されているような検査を出来る範囲で行って、その結果を記入した上で申請していただくようにするためには、医療費助成が初診日以降に行われるというふうにしていただければと思っております。

 あと、これから医療意見書をもう少し工夫していかなければといいますか、内容を検討すべきことですけれども、最低限必要な診断基準を明示した方がいいのではないか。それで、現場で判定しやすいようにしたい。例えば主要な疾患についての書き方の例示をするとか、あるいは診断についてのマニュアルをつくる。

 現在までの研究班としての検討については以上のとおりで、昨年の研究の概略を御説明し、それから今年度の研究についてはまだ全くの途中経過ですけれども、簡単にまとめてお話ししてみました。以上です。

○部会長 ありがとうございました。今、小慢対策の問題点、それから現在、研究班が検討中の問題、先にわたって提言したい内容、いろいろお話をいただきましたが、お手元の3枚綴りの「検討事項」の3枚目に、最初に事務局の説明がありましたように、本部会での検討事項の論点メモを挙げてございます。

 今のB教授のお話をこれに当てはめてちょっと復習しますと、1番の「研究事業の推進」の中の「治療方法の確立」については、3年間に手分けをして10の疾患群の最新の医療情報、治療法等の執筆をしていただいて、マニュアルといいましょうか、現在の一番新しい治療方法についての広報を医療機関にお配り出来るような、そういうものをつくりつつあるというお話でございました。

 それから、2の「情報の収集・解析」は、小慢疾患の医療費の申請が保健所が窓口に統一になりましたので、それを通して全国統一的な診断書  ここでは意見書という格好になっていますが、要するに診断書の様式を一定にして、保健所から収集出来るようにする。そういう方法で収集と解析が今後行えるようにしようというお話だったと思います。

 それから、2番の「医療費の適正な費用負担のあり方」についての1の「認定基準の明確化」というのは、今の意見書あるいは診断書の中の診断根拠の部分をある程度検査結果も書き込んでいただくようなものに、疾患群ごとに整理したものを今つくっていただいていますが、それを使えば認定基準の明確化にもつながっていくだろうということだと思います。

 そして、2「その他」のうちの「対象疾病の見直し」はこれからの問題として、(2)の「自治体格差の是正」は、自治体格差がかなりあるということで、その理由については、厚い方の資料の5ページに地域差の出る理由の推定のようなものを書いた表にまとめてございますけれども、そうした問題があるので、診断根拠あるいは診断の基準をはっきりすることによって、これらをなくしていこう。場合によっては、過剰なものがあるならば、あるいは本来この制度に乗らないものまで含まれているようなら、その辺をきちんとして医療費の節減を図ろう、そういうようなことにつながると思われます。自治体格差があったり、あるいは治療費が非常に多くを占めているという点では、さっきのお話のように、下垂体性小人症が問題になり得る。これは申し上げるまでもなく、成長ホルモンが、以前、ヒトの下垂体から抽出した薬を使っていた時代は非常に値段が高くて、モノも少なかったので非常に厳密な適応を決めていた訳ですが、今は、伺うところによると、遺伝子操作でつくれるようになった。値段がうんと安くなってよさそうなものですが、今だにかなり高い。したがって、使う方が増えると医療費が非常に増えるということがどうもありそうでございますし、それから、当初は本当の下垂体性小人症に限って使われていたものが、最近は、例えばターナー症候群のようなものにも使うと多少の効果があるということで、かなり幅広く、極端な言い方をすれば、美容的に気になるという背の低い子どもにも使うというところまであるといううわさもございまして、その辺が一つ診断基準等の問題になりそうに情報として伺っております。そんなこともあり、また、いろいろ御専門の先生からの御意見もいただきたいと思います。

 そういうことで、小慢疾患のここで問題にしていただく論点は今までの御説明でお分かりいただいたと思いますが、まず御意見というよりも、今までの御説明に対する御質問がありましたら最初に伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。もし御質問がなければ、御意見をちょうだいしたいと思いますけれども……。

○C委員 今、保健所が管轄するという形になって、今までは管轄は国だったんでしょうけれども、これからは県になるんですか、それとも国ですか。

○部会長 管轄は国と県の費用負担ですが、窓口が、以前は医療機関、つまり診察したお医者さんが診断書を出すと……。診断書の出方は……。

○C委員 どうしてそれを伺うかといいますと、私が昭和52、53年ごろ小児慢性特定疾患の実態調査をやりましたときに、大変なんです。厚生省が話してくださっても、各県によって非常に協力してやってくださるところと、東京都などはそれは全然だめで、東京都が抜けてしまうと、全国の実態調査をしようとしましても、その辺のところがかなり問題になる。それで、非常に苦労して東京都に何回も足を運んでやったということがございましたので、今度、保健所がおやりになって、それは必ず厚生省にきて、そして全部まとめたら正確になると思いますけれども、それで人数も分かるというような形に是非していただきたい。そうでないと、一方ではプライバシーという問題があって、保健所などで「こういうものはどこへも出せないんです」とか、そういうようなことになりますので……。それは、確かに個人個人に渡すことはございませんけれども、それを厚生省が全部把握するという形は大変結構だと私も思いますので、それは是非ひとつお願いをしたいと思います。確認でございますけれども、それは大丈夫ですねということが一つあると思います。

○B教授 ありがとうございます。今、先生がおっしゃった通りのことが今検討しているシステムの目的でして、プライバシーに最大限考慮した上で、情報を保健所からきちんと中央で把握して、信頼性の高い統計をつくるということを一番大きな目的としてやっております。

○I委員 御質問と両方ですけれども、先ほどの特定研究の疾患が 120と非常に多いようにお伺いしたんですが、それと公費負担との割合が1けたぐらい違っていたような感じを受けたんですが、そうでもないですか。つまり、公費負担が30疾患ぐらいですか。○B教授 それは小慢ではなくて、特定疾患、いわゆる難病の方です。

○母子保健課長 大人の難病の事業と子どもの小慢事業を分けて数字を見ていただきたいと思います。

○I委員 そうすると、小児慢性特定疾患というのは、疾患としてはどのぐらいあるのですか。

○B教授 先ほど個別に10疾患群ごとに数字を言っていきましたけれども、合計すると、 500ぐらいございます。

○I委員 ずいぶん大きな数になるんですね。

○B教授 非常に多いです。

○I委員 それで、情報収集にもつながる話ですけれども、それを例えばコンピュータ登録をしてというふうなことになりますと、書式の統一が難しいのではなかろうかと思うことが一つあるんです。これは何も診断根拠だけじゃなくて、経過とか予後ということも含めてのことになってくるのかどうかよく分かりませんけれども、そういったものを一体どういうふうにして対応なさろうとなさっているのかということが一つです。

 もう1点は、診断と治療のマニュアルをおつくりになると。今の 500疾患の中で頻度の高いものに関してそういうことをやっていくというお考えでしょうか。

○B教授 I先生の御意見、御質問に対してお答えいたしますけれども、疾患数が非常に多いというのは事実です。しかし、ぜんそくのように非常にコモンな病気の一方で、先天性代謝異常とか、あるいは血液疾患など、非常に稀で年に何人出るかというふうな病名まで挙げられておりますので、そういうことで非常に数が多くなっております。又、それを10疾患群に分けるというところに多少無理があるということも先ほどちょっと触れさせていただきました。ですから、今後の検討によっては、そういったところまで踏み込んで考えないといけないこともあるかもしれません。

 そして、集計・登録に関しては、意見書は10疾患群ごとにつくっておりまして、その疾患群の中で細かい疾病の診断の根拠がある程度把握出来るような工夫をいたしております。そして、マニュアルに関してですけれども、これは 500の疾患を全く平等な重みで全部取り上げるというふうにはしておりません。比較的頻度の高い重要な疾患について記載する。しかし、それに多少関連するような病名として挙げられているものに関しては、言葉としては一応全部取り上げるというふうにしておりますけれども、記載はもう少し整理をし直して、主要な疾患についてきちんとした情報が提供出来るようにするというふうに今考えております。

○部会長 I先生、よろしゅうございますか。

○I委員 はい、大体のことは分かりました。ただ、6ページ、7ページ、8ページにそれぞれの疾患に対する報告書みたいなものがございますね。一方の方には例えば治療見込というのが書いてございますけれども、他方には書いていない。これを統一的に評価することになった場合に、そういうものはやはり少し工夫があった方がいいのではないかという感じがしたものですから。

○B教授 おっしゃるとおり、経過にしても疾患ごとに記載の仕方がなかなか難しい面があります。経過の書き方、それを「治癒」とか「軽快」とか「改善」とか、いろいろな言葉のどれかを選ぶようになっておりますけれども、病気の性質によってどういう言葉を使ったらいいかというのがさまざまでして、余りばらばらであっては集計が難しいですし、余り細かくなり過ぎてもまとめるのがなかなか難しいということで、その辺のところはある程度中間的なところを取って、経過としてここに書いてありますように分類するといいますか、個別的なことを突き詰めて考えていくと切りがありません。一方で、そういうふうにやっていくと集計が難しくなる、コンピュータ入力が難しくなるということで、その辺のところは、あるところで割り切ってやっていかざるを得ないのではないかというふうに思っております。

○母子保健課長 この経緯は、今までどういうふうな形でこのシステムが、あるいは事業が展開されてきたかということをご存じないとなかなか難しいと思うのですが、実は今回からは患者御自身から、あるいは御家族が届けてもいいということになりましたが、今までは患者さんをごらんになった医療機関の主治医が対象となる患者を診て診断をされたら、その診断名だけを御提出いただければ、すべてこの事業でカバー出来るという形だった訳です。ですから、柳澤先生のところで、その診断根拠であったり、経緯であったり、治療状況であったりという工夫を御研究いただいている訳ですが、このような情報は一切なかったというのが今までの状況でございまして、これは画期的なことだというふうに私は考えておりますが、それを、先生がおっしゃったように、もしそういった形できちんと情報収集し、研究事業としてつなげていく、又、評価さらに治療へつなげていくというようなアウトプットを当然期待する訳ですけれども、そういったものにふさわしい内容ということで、今いろいろと御研究をしていただいているというのが現状でございます。

○I委員 前回の時に、成長ホルモンの先ほどの下垂体性小人症のことが出ましたときに私申し上げたんですけど、診断根拠が非常に不明確だから今のようなことが起こっている。だから、例えば内分泌疾患が半分を占めるというふうな非常に不自然な状態になってきている。その根拠はどこにあるかということで、今の事業を整理することは非常に大事なことだと思うんです。

 そういう意味と、もう一つは、さっきから私が申し上げているように、これからどういうふうにそれをまとめ上げていって新しい方向性をみつけるかというのは別問題なんですね。その二つの問題を含んでいるように思いますので、その辺を整理して討議した方がいいのではなかろうかという感じがいたします。

〇C委員 小児の内分泌疾患というと、私も全然関係していない訳じゃございませんし、臨床もやっていましたから、弁解する訳じゃないですけれども、多分、私は内分泌疾患に関しては全国的にかなり掘り出されているというのが一つあると思うんです。それが一つ。 それから、下垂体性小人症に関しては、成長ホルモンを使いますから、成長ホルモンを使うためには届けなければならない。以前は1バイアルが2万何千円、今は下がってそれでも1万 8,000円ぐらい。それで4国際単位で、それを2本とか3本とか、年齢、体重によって変わりますからかなりの負担になる訳ですね。したがって、これは届けなければ使えない。ですから、正確な診断さえつけば妥当な数がでましょう。それから、県によって違いますけれども、原則は私たちは成長科学協会に出して、それでオーケーされたものを添えて県に提出して最終的に承認を得ることになります。では、成長科学協会というのはどういうものかというと、これは別に厚生省がそうしろと言った訳でもないし、どうこう言った訳じゃないけれども、やはり歯止めはきちんとしておかないといけないだろうというので、鎮目先生を中心にしてやり出した。今は、あそこはコンピュータ化されていてデータは全部入っておりますし、きたものに関しては分別しまして、これはだめ、これはオーケーというのをきちんとやっていますから、もしドクターがきちんと成績を書けば、比較的正確なものが出ているだろうということは言えるんですね。 しかも、それが今度は下垂体性小人症ばかりじゃなくて、近縁疾患に治験けんが広がり今はその治験も幾つか終わって、よろしいということになって適用疾患になるものもありますが、そうでない、まだ認められていないものもございますけれども、いずれにしても幾らか広がりつつあることは確かですね。

 ですから、しっかりした診断をということで、全国的に集まる小児内分泌疾患はかなり正確です。私個人の意見になりますけれども、どの病気にしろ、診断がこれはちょっと甘いとか甘くないというのはございますね。ですから、一般に疾患の診断がはっきりしていないようなところは、やはり主治医任せというところもありますし、主治医の診察権あるいは治療権というものもございましょうから、あれこれは申せませんけれども、内分泌疾患はこの点、比較的はっきりしているんじゃないか。ですから、今度そうしたらこれ以上増えるというようなことはない。むしろ、これはさらに厳密にすれば少しは減るだろうとは思っています。

 それから、先天性の甲状腺機能低下症とかクレチン症は昔はかなりございましたけれども、今は新生児期にマススクリーニングで引っかかりますから、病気があれば全部ピックアップされるという様子にはなっていますから、比較的正しいものが見えてきているのだろう。しかし、その中に、ドクターによりますけれども、どうしても使いたいとか、患者に言われてというのかあるかもしれませんね。それは私は存じませんけれども…それから、各県によって違う。成長ホルモンの製薬会社にしてみれば、売りたいということはありましょうから、全国的分布からみると、例えば山梨県は全国平均より数が少ないというんです。でも、山梨県から東京都へ直接行って、そして申請しているのもあるだろうけれども、そういう地域差というのはどうしてもある。それから、わりあいと内分泌疾患に興味のある先生がいるところと、そうでないところでも違うようですし、全国を眺めて、ここはこの先生たちが病気を注目しているから多いんだろうと。そういうこともありましょうね。

 多分いろいろな考え方があると思いますけれども、厚生省などでは、なるべく病気は正確に診断して、そしてきちんとした治療をしろという意味では、今までないものも掘り出さなければならない。一方、やはり医療費がこう上がっては困るので、それは薬そのものの値段が高いということもございましょうけれども、これは抑え込まなくてはならないので、より正確にという観点があるんじゃないかというようには思っています。

○部会長 ありがとうございました。私も、ある学校の校医をしているときに、協会なるところから背の小さい子どもをリストアップしてくれという手紙がきてびっくりしたことがあるんです。そんな格好で掘り出されたら大変だと思ったことがございます。

 ○C委員 もしそういうぐあいにして掘り出されたとしましても、正確に検査をして 下垂体性小人症というのはクラスに1人いるかいないかですからね。

○部会長 クラスに1人なんているんですか。

○C委員 どこかに1人いるとか、あるいはいませんということですから、だから全員ではない。でも、極端に背の低い人は、下垂体性小人症でないにしても、やはり何か問題がある。それには治療の出来るものもありましょうし、出来ないものもまだまだたくさんあるんですよね、低身長などは。それが現実なので、その辺のところからピックアップしてということで、その先生はやられたんじゃないでしょうか。

○M委員 B教授の細かな御説明と母子保健課長のお話を伺って、これは是非やらなければいけないだろうと思うんです。その方向でどういう問題点があるかということを整理していく必要があろうかと思います。小慢の最大の弱点は、お金は出すけど実態は分からない。C委員から細かくいろいろございました。だけど、バックグラウンドとして、一つはこういう研究班が動いている。かつ、その中では保健所を情報のキーとしてやれば、かなり実態に近づけるデータベースも将来的には出来るだろうと思うのです。そういう中で、診断基準の問題とか、いろいろ細かな問題は是非おやりにいただくにしても、幾つかポイントがあると思います。

 将来に向けてデータベースをつくっていく、あるいは情報を集めて、きちんとした実態をつかんでいく際に、一つの問題は、情報量が多いとその管理が非常にうまくいかなくなるんですね。たまたま私、がんの子どもを守る会の小児がん登録を事務局としてかなりやってまいりました。そこでは、情報量が少ないと非常にコントロールが易しいし、全体の実態は分からなくても、パラメーターをつかえば、日本は概略この辺のところだろうと、そういう形の把握は出来ると思います。したがって、技術的には、B教授にお願いして、この辺の細かな問題と基本項目を整理していただければ、これは実行可能であると思います。

 それから、保健所が窓口ということで、私もこれは非常にいいだろうと思います。というのは、全国をカバーしておりますし、数が 800から 400に減っていろいろ機構改革の問題がありますけれども、きちんとしたそれぞれのマニュアルが出来れば、ここに書かれている基本の入力項目は可能だろうと思うのです。それは、保健所に限らず、日本の役所の事務能力は非常に高いと思いますので、それがきちんとやれるバックグラウンドをつくっていただければ、いろいろ修正しながらやれば、これだけの問題だったら可能だろうと思います。その際、一般の職員といいましょうか、公務員は民間と違ってコンピュータになかなか慣れておりませんので、細かな配慮が必要だと。それがあれば可能だろうと思います。

 あと、そういうのを集めるとなると、普通、調査・統計をやるときには何か目的を持ってやって、それ以外の場合には使用出来ない。だけど、これは恐らく多面的な情報解析をやっていきますので、統計法には引っかからないと思いますけれども、目的の範囲をある程度きちんとやれば、こういうデータベースを国もしくはいろいろな関連機関で持つことが可能で、かつ、それは有効に使われるだろう。それが整備されれば、逆に今度は診断の問題とか、そちらの方の評価なり何なり、今、細かな議論がいろいろございましたけれども、そちらへフィードバックして適正に運用していくことは可能だろうと思います。

 それから、保健所の問題が少し出かかっております。最終的には情報を患者さん、家族にフィードバックするQOLの問題があります。私、保健所に勤務しておりまして、成人に関する難病は結構細かな対応をしています。親の会その他、患者さんの集団が大きいですから、適切な講演会なり、あるいは相談事業を実際に保健所で、膠原病であるとか神経難病であるとか幾つかやっておりますので、その点もある程度方向づけをすれば不可能ではない。ただし、お話の中で出たように、一つずつが頻度が少なくて、かつ病気の種類が多いということですので、これは保健所でその場で対応は難しいかもしれない。例えば、ある程度の広域を対象にして類似の患者さんが集まれる学区その他を使えば、QOLに向けても準備していくことは可能だろうと思います。

 そういうことを考えますと、今の一連のお話で問題点はいろいろ出ておりますが、特に小慢の最大の弱点はお金ですが、実態が分からないのをカバーする訳ですから、その方向で贅肉を落としてやっていただくことを私は希望いたします。

○部会長 大変貴重な御意見、ありがとうございました。あと、現実にこういう患者さんを診ておられる立場の先生にちょっとずつ御発言いただきたいのですけれども、K委員、いかがですか。

○K委員 私は小児がんが専門なものですから、人員比を見せていただくと、治るようになってきたここ10年、15年ぐらいの期間、だんだん数が増えてきているというのは当然のことだと思うのです。内分泌疾患の方に、そういうふうにして治した小児がんの子どもたちが低身長で、内分泌疾患の方にまたもう一回申請し直すというようなことがときどき起こりまして、成長ホルモンを使わせてもらうというようなことも年々増えてきています。悪性新生物で治った子どもたちが低身長ということで、二重に登録してあるような子どもたちもいるんです。ですから、内分泌疾患が増えているというのもよく分かるのですけれども、この数をどうにかして減らすということは非常に難しい

 もちろん厳密に診断をすれば少しは減ると思いますけれども、ものすごい勢いで減るということはない訳で、支給しているお金を減らすためには、やはり薬を安くしないとしようがないと思うのです。これは可能かどうかは分かりませんけれども、でも現実の問題として、お金を減らすためには、やはり厚生省がそっちの方にも働きかけて、お金を安くするしかしようがないというところもあると思います。

 血友病などでは、昔はとても高くて大変だったのが、血友病も亡くなる人がだんだん少なくなってきて、13%の人たちが6%の支給費しか使っていない。悪性新生物も、19%の人員で17%の支給費ということで、ポジティブに増えているのはやはり内分泌疾患が非常に高くなっているということは、薬の値段というのが非常に大きなファクターだと思うので、そこのところを解決しなければ早急な解決は難しいのではないかと思います。

○部会長 それは遺伝子工学的に出来るようになったのに、なぜ値段が下がらないんですか。

○C委員 これは小児のことばかりは言えないんですね。大人の内科疾患はすごい数がある訳です。ですから、厚生省のどこでそういうことをやっておられるか私は知りませんが、多分、小児の内分泌などは数がそうは多くない。しかも、開発に非常に費用がかかったというので、その辺のところはそれなりに評価をして決まっていると思うのです。大人の疾患は、この薬は何十万人が対象とか、場合によっては対象者が 100万人単位ですね。それに比べれば、小児は小さいものだという部分もあると思うのです。

 ただ、一つ一つの薬を見てみますと、この頃は昔と違って、例えばインターフェロンも最初のうちは内科でワーッと使いましたよね。それで、いろいろ規制があって、いまは3分の1ぐらいになるそうですから。そうすると、成長ホルモンなどもばかに出来ない。ですから、トータルのお金としてはかなりの部分になるということもございますから、いろいろなせめぎ合いがあるんじゃないでしょうか。

○部会長 これはお伺いする方が無理かもしれませんが……。

○B教授 今、C委員がお話になったことに関して、多少こちらで試算をしたというか、非常に大ざっぱな計算ですけれども、成長ホルモンについての薬価が高いということについて、こんな計算が出来ます。

 現在、成長ホルモンは1単位当たり約 5,200円ですが、一般的な使用料が 0.5単位週kg、これが標準的な使い方です。体重20kgの患児で年間約 271万円の医療費がかかる訳です。現在、下垂体性小人症は1万 9,730人で、この患児が標準的な体重だと仮定すると、年間約 535億円の医療費です。これは14歳以下の小児の年間医療費1兆 2,797億円の 4.2%を占める。これが適正な医療費かどうか、これは検討する必要があるだろうと思います。K委員がおっしゃったように、ともかく薬価を引き下げるということが最も重要なことだというふうに私も思います。

○部会長 ありがとうございました。では、引き続いてD委員、御意見をどうぞ。

○D委員 私は特にありませんが、ともかく今、K委員がおっしゃったように低身長の実態も分からない訳ですから、やってみれば出てくるだろうと思いますので、是非おやりいただきたいし、進めなければいけないのではないかと思います。

○部会長 ありがとうございました。天野先生、いかがでしょう。

○A委員 この事業の内容の対象になっている疾患は、ほとんど私どもの毎日の疾患ではない訳ですね。ただ、時に、例えば保健所で予防接種の予診のときに、たまたま先天性の心疾患を見つけたりということがあります。やはりこういうのは、先ほどB教授がおっしゃいましたが、診断基準をきちんとつくっていただいて、そして私たちがそれを適用していく。

 もう一つは、診断したら、どういうふうに患者さんを送るか。送院、あるいはその疾患についてはこういうシステムがあるというようなガイドラインが早く出来れば、われわれも助かるかなというふうに思います。

○部会長 E委員、いかがですか。

○E委員 成長ホルモンが大変使われたという背景はK委員がおっしゃいましたけれども、やはり親としては自分の子どもが小さい、それで検査してみたら下垂体性ではない。しかしながら、成長ホルモンを使うことによってある程度期待出来るというふうになりますと、それを診ていらっしゃる先生も、専門家ではあっても、多少その辺は境界を飛び越えてしまう。これが小児医療の実際の現場の感覚ではないかと思うのです。それは、そのお子さんにとってその後の人生というものがどれだけ期待出来るものになるかどうか。背が5cm増えただけで展望が開けるかどうかというのは疑問でございますけれども、少なくとも親にとって、あるいは注射を受けた子どもにとって、ある程度の期待というものの価値はあったのではないかと思います。そういうものまでが内分泌異常の下垂体性小人症という形で入ってくるということ自体は間違いですけれども、それ以外のものを厳然として拒絶するというのはどうなのか。その辺は何かうまい方式はないものでしょうかと思っております。

○部会長 その辺が難しいところでございますね。

○E委員 あくまでもデータは正確に必要であろうけれども、現状としては、そちらも切ってしまって、 270万円払いなさい、自費でやりなさいと言えるのかどうか。その辺が難しいのではないかと思います。

○部会長 難しいですが、しかし、本来の目的から言うといかがかということもあるし、その辺をどのように行政的に……。

○母子保健課長 だいぶ下垂体性小人症に限定した御議論が展開されておりまして、われわれも頭を悩ませているところなので非常にうれしい御議論だと思いますが、本日は、医療費削減というか、どんどん膨らんでいるので、それを抑えるためにということでお願いをしている訳では決してございません。子どもたちに必要な医療であれば、それはきちんと対応を考えていくということがわれわれ母子保健課の使命でございますので、決してそのためにお願いをした訳ではないということを御理解いただきたいということと、なぜ中でも内分泌疾患の小人症の話が話題になるかというと、事業発足以来、すべて数字を追っていくと、たまたまそこに特異的な変化が見られるという形で御紹介申し上げたと思いますけれども、本来、今日、御議論いただきたい目的といいますのは、小児慢性特定疾患治療研究事業としてスタートした当初の目的を、もう一度原点に返って、ふさわしい事業にしていきたいというのが私どもの意向でございます。

 ですから、先ほど何人かの先生から御指摘いただきましたように、反省をしますと、研究事業というところにほとんど手を付けていなかった。今日、B教授にいろいろと御研究の成果を御報告していただいておりますが、この事業の一環でやっていただいている訳ではなくて、心身障害研究の中でお願いをしている話でございますので,本来なら、そういった患者さんたち一例一例の症例が積み重ねられて、それの集計、分析、評価という形で、この治療研究事業の中でそういった研究が展開し、そういった子どもたちにきちんとしたフィードバックがかかる、これが本来の目的でございますので、私どもといたしましては、出来るだけそういう形に方向を変える訳ではないのですが、強化をしていきたいというのが事務局としての意向でございますので、その辺のところは余り限定した疾患に限らなくても結構でございますので、本来のこういった趣旨に合うような事業をしていくためにはどうしたらいいのかということを是非御審議いただければというふうに思っております。

○部会長 そういう御趣旨のようですので……。今まで話題になっていた部分が、B教授班での調査で一番突出して目立って、気になった部分というのは確かでございますね。あと、ぜんそくなどは通院まで出している県があって、そこのところは患者さんの数が突出して増えているのですが、それは通院までとったからだというのが分かったので納得がいったということなどもあったように思います。

 それで、今日の議事は、研究事業の推進と事業の適正化対策と二つですが、資料の御説明をいただいていない部分がまだありましたね。

○事務局 適正化と、その他として新規の事業を併せて説明させていただいて、それで御議論いただければと思うのですが……。

○部会長 では、そちらの方の御説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、簡単に御説明させていただきます。16ページをごらんください。

 すでに先生方に御議論いただいた内容でございまして、分けて説明するのがよかったのかどうか反省しておりますが、「事業の適正化対策」でございます。現在、こういう通知を昭和63年に各都道府県に流しておりまして、協議会を設けて先生方に審査していただきたいというような内容を出しております。小慢疾患の中で関係のない疾患が入ってきているのを排除するためのものでありまして、おおむね教授の先生方とか医師会の先生方に入っていただいているようでございます。

 17ページをごらんいただきたいと思います。17ページに各都道府県ごとの委員の先生方の構成を書いておりますが、現実問題として、形式的に書いてありますが、開かれていないというのが現状のようでございます。一方、大人の難病についてはかなり具体的にやっておりまして、毎月開いているところも多いようでございます。私が新潟県に出向したときに、新潟大学の酒井先生、あるいは産婦人科の今の田中先生の前の教授の先生、あるいは内科の先生に入っていただきまして、月に1回必ず開いておった訳でございますが、小慢については開いていなかったということでございまして、結局そこの問題点は、診断書が疾病名しか書いていない。「ぜんそく」としか書いてきていないということで、それを切るかどうかの判断が出来ないというのが問題点だったというふうに考えております。

 したがいまして、適正化するためには、ある程度判断出来る診断書をつくっていただきまして、こういう協議会で先生方に審査していただくというのが必要ではないかというふうに思っておりまして、先生方の御意見を賜れればというふうに考えております。 あともう一つ、議論は別々にしていただきたいのですが、説明の関係上、一遍に説明しますが、資料−2(参考資料)をごらんいただきたいと思います。

 資料−2の1ページ目でございますが、これは先ほど局長の方からも申し上げましたように、子どもの心の健康づくり対策としまして、特に虐待・いじめ対策に少し頭出しをしていこうというものであります。特に虐待・いじめがないようなキャンペーンの実施や育児不安対策、それから、いわゆる医療機関で見つかるケースが多い訳でございますので、医療機関等においてカウンセリングなどを継続して実施していただくというような内容で、当面、大きな市で71市町村ということで考えております。総額は1億3,400万円ということで、これは概算要求でございまして、今、大蔵の方に要求しておりますが、この内示は今月の末いただけるかどうかというふうに考えておりまして、こういうふうに概算要求をしているところでございます。夏以前に先生方に御議論いただいた内容を多少踏まえた形でつくらせていただいているところでございます。これで十分かどうかというのはまだ一方議論がございますが、努力をしているというところでございます。 次の2ページ目ですが、これは「療育指導費」というものでございまして、いわゆる慢性疾患の子どもを保健所で相談あるいは指導していただくという内容であります。事業の内容は2に書いてある通りでありまして、1、2で、1の方は保健所の方に出向いていただきまして相談していただく。それから、保健所と福祉機関、あるいは学校との連携をしていただきたいという内容でございます。もう一つは、2ですが、必要に応じて家庭訪問していただいて相談に乗っていただくという内容で、特に保健所と他の機関との連携というのが非常に重要だというふうに教えていただいておりますので、こういう慢性疾患の子どもたちのコーディネーションの中核として、今後、保健所の役割を期待していきたいというふうに考えております。

 この二つが来年の新規でございまして、3ページ以降に載っておりますが、これは次回また御議論いただく内容でございまして、「患者団体からの要望」というもので、治療研究の推進や病院等施設面の整備、それから保育と教育に関する要望、在宅福祉・医療サービスの充実、経済的援助、就労に対する要望といった内容がございます。

 次の4ページ目でございますが、これは県単独事業といいまして、先ほどB教授に御説明いただきましたような、国で 500疾患以外に、県で単独で対象疾患の拡大、年齢の延長、入・通院の拡大  入院だけしかしていないものを通院にする、そういうものを伸ばすというような感じで県単独でやっているような事業がかなり多く見られておりまして、各県が努力しているということでございます。

 それから、7ページ以降が「養護学校の概要」でございまして、これは文部省から出していただいたものですが、これも次回にさせていただきたいと思います。

 それから、12ページをごらんいただきまして、これは「障害者プランの概要」ということで、これは参考の資料でございますが、障害者の方々のいわゆるノーマライゼーションという言葉でありますが、地域での支援を行っていくためこういうプランを立てたということでございます。

 それから最後の16ページ、これは別の事業ですが、結核の患者さんと感染症の方がどのぐらい発生しているかというのを取っているものであります。左側の方に保健所というのがありまして、医療機関の方から情報がきたものを保健所の方で入力していただきまして、真ん中の都道府県の方にそれを流していただく。それで、右側の方の国の統計情報部にきまして、国立予防衛生研究所、もう一つ、結核研究所というのが右下の方にありますが、そちらの方で解析していただいています。今、結核の患者数は登録患者数で20万人おりますが、小慢の患者さんは約10万人ということで約半分ということで、数的には無理ではないんじゃないかというふうに考えております。こういうのが昭和63年ぐらいから走っているということでございますので、参考までに付けさせていただきました。

 以上、事業の適正化対策とその他について御説明させていただきました。

○部会長 ありがとうございました。小慢事業の適正化については、今、資料をごらんいただいたとおりですが、協議会をつくってくださいというので、よくやっていただいているところもあるし、さっきC委員が東京都は困ったものだとおっしゃいましたが、まだ委員会はないようです。いろいろムラはございますが、これについては保健所が窓口になって、いわば情報センターの役割を医療についてもさらに持っていただくという方向でこれからやっていただけそうでございまして、M委員がさっきまとめられたように、小慢についても、是非、保健所を窓口にしながら情報を十分集めて、適正化ないしは子どもたちの健康問題にフィードバック出来る体制をというお話でございましたのでそれが一つのまとめになろうかと思います。

 あとの御説明の分は次回に持ち越しになりますので、また次回、詳しく御説明をいただいたり、あるいは文部省にお願いしている分がございます。ことに病院内の学級などについては、小児科関係の3団体から厚生省と文部省に整備方の要望書が出ておりますけれども、そういうようなことで次回に御説明あるいは御討議をいただきたいと思います。

 今の御説明について、あるいは先ほどのことも含めて結構ですが、さらに御意見がございましたらどうぞ。

○母子保健課長 ちょっと追加させていただきますと、今、資料の16、17ページで、これは都道府県ごとに協議会を設置していただくということを、当時の母子衛生課長を通じてお願いをしている訳でございますが、その実態として17ページの表がある訳ですが、開催時期というところで、月1回とほとんどやっているじゃないかという話になりますが、実はこういう形で設置はしていただいているのですけれども、実際には開催をしていないところが多いということを誤解を招くといけませんので……。私も実は埼玉県にいたことがございますが、当時、53年4月に設置はされておりましたが、ほとんど機能しておりませんでした。ということで、私は当時の健康政策局から行ってこの話がありましたので、もっと稼働するようにということでいろいろ努力をしたことを思い出しておりますけれども、そのようなことが実態だと思います。

 それから、なぜ都道府県が設置をしてもなかなかきちんと運営していかないかというのは、上がってくるものが医療機関の主治医の名前で、しかも診断名しか上がってこないということで、審査のしようがないという状況でございました。ですから、せっかく設置をしているのだったら、きちんとした運営をしていただき、きちんとした評価をしていただく。そのためには情報が必要で、先ほどの先生からお話がリンクしてきます、こういう話になるのではないかというふうに思っております。

○部会長 ありがとうございました。全くおっしゃるとおりの実態だと思いますが、意見書は各疾患群の専門家の先生方にお願いをしてつくった診断根拠の基準だと思いますので、これが使われるようになって情報がきちんと集まるようになれば、審査会のようなものも各県でやっていただけるだろうと期待をしております。

○K委員 先ほど私、お金のことばかり申し上げてしまったのですけれども、研究事業ということから言いますと、一つだけお願いしておきたいことがあります。今、小児がん学会というのをやっておりまして、昨日、M委員が疫学的なことで発表なさって、昨日の午後に神経芽腫のマススクリーニングのことに関してのシンポジウムが午後いっぱい使ってあったのですけれども、その中で実際に生まれている子どもたちの中でどのぐらい神経芽腫が起こっているかということを評価するときに、分からないんですね。結局、出生場所と診断書が出る場所が別だったりするということがあって、どういうふうに人口が動いているかというのは非常に分かりにくい。それで、マススクリーニングをしたら神経芽腫がたくさん見つかってきてしまって、結局、治ってしまう神経芽腫もどきを見つけて治療しているのだろうというようなことが今議論になってきていて、治療しないでオブザベーションした方がいいのではないかという方針をとっている先生方もいらっしゃったりしているんです。

 そういう中で一番困るのは、実際に生まれた子どもたちの中のどのぐらいのその病気が起こるのかということを評価するときに、この診断書が余り役に立たないというようなことがありまして、実際きちんとした数をはっきりさせるためには、保健所が関わるのでしたら、先ほどC委員が御発言なさったように、保健所同士のつながりとか、動いたときの人口の移動に対してどういうふうに関わるかというあたりのことをやっていただくと、特に少ない病気で  小児がんなどは診断の根拠が非常にはっきりした病気ですから、疫学的な調査も非常にしやすくなるのではないかというふうに思います。

○部会長 ありがとうございました。それは全くおっしゃるとおりですが、多分、今の日本では大変難しい部分で、移動した人をフォローしていくというのがプライバシー絡みでとかく問題にされがちなのと、これから地方分権が進むと国でまとめて何かやるというのが多分やりにくくなると思うのですが、どうすれば研究という面で可能なのかですね。 ○K委員 出生場所を診断書に書いていただくというか、出生した県を書いていただくだけでもずいぶん違うのではないかと思うのですが……。

○部会長 では、その辺は柳澤先生のところの班でまた御検討いただけるとありがたいと思います。

○B委員 小慢疾患の対象の患者さんの移動に関して、それをどうやってきちんと把握するかというのは、研究班の中の議論でも非常に難しいポイントで、今、K委員がおっしゃったように、少なくとも出生した県を把握するというのは一つの大事な提言だと思いますので、検討させていただきます。

○部会長 これからの宿題ですが、よろしくお願いいたします。ほかに御意見、御質問は……。

○H委員 少し視点の違った発言をさせていただければと思います。今、小児慢性疾患の事業で研究事業と医療費の給付事業と、多分これから在宅療養の指導とか支援のサービス事業と、大体三つぐらいに整理できると思います。この場合に、保健所を窓口にして情報も集まるという形は、とてもいいシステムになっていくだろうと思いますけれども、それぞれ少しずつ性格が違うような印象を受けるのです。例えば保護者というか、本人が保健所に申請するという形がスタートであるとしますと、すなわち医療費給付事業を受けるためには申請がスタートするとしますと、申請をしなかった場合には研究対象から外れてしまうのか。あるいは、申請しない場合には在宅療養等の指導・支援サービスが受けられなくなるのかとか、少しずつ性格が違うものをどのような形で取り組めるのか。あるいは、このような問題はほとんど起こらなくて、基本的にはほとんど対象となる診断が確定した子どもが住所地の保健所に申請するという形ですと、発生率を見る場合でも、今度はより正確な情報が得られると思うのです。少ない疾患であればあるほど、この辺の状況ということも今後検討して、サービスを受ける場合のものと研究的な場合のものとどんなふうな連携をとりながら、構造は同じに動くのかどうかということも課題かなという印象を受けました。

○部会長 ありがとうございました。

○事務局 今のことは、まず福祉サービスの対象は小慢に限っていないというのがうちの原則ですが、ただ、どういうふうに発見出来るかというのが事実上の問題だと思います。ですから、アトピーなどの子どもは小慢に入っていないのですが、そういう人たちが把握出来ないので、結局、保健所としても相談出来ないし、家庭訪問も出来ないということで、事実上、小慢の対象者に限られてきてしまうのではないかという気がします。 ただ、保健所の方で、こういうときに相談します、広く来てくださいというようなことを言っていただければ恐らく大丈夫かと思いますが、積極的、能動的に働きかけられるのは限られてくるのではないかという気がいたします。

○部会長 ありがとうございます。小慢に関して言えば、保健所が窓口ということは、申請が出れば把握出来ますから、必要があれば地域の中へ出ていっての指導とかアドバイスが可能になってきていると思いますが、その辺はまた柳澤先生の方で、在宅ケアの部分もどうすればいいか  プライバシーが絡みますので、余り押しかけて行く訳にもいかないという部分が難しいかもしれませんけれども、よろしくお願いをいたします。

 L委員、何かございますか。

○L委員 今までお話を伺っていまして、やはりこういう疾患に関しては認定とレジストレーションが必要だろうと思うんです。認定に関しては軽重があって難しいというお話もありましたけれども、これは少し極端になりますが、例えば心身障害者の場合に手帳が交付されるということで、重症の1級、2級というふうなクラス分けもあるので、これは認定の段階でその人に対しては慢性特定疾患の対象者であるという、ある程度の経済的なメリットを持った意味での手帳の交付とか、そういったことまでお考えになってもいいのではないかという気がいたしました。

○部会長 ありがとうございました。今の件で手帳は……。

○事務局 小慢の子どもだけでございます。

○部会長 一応出てはおりますが、まだ十分には活用されていないんですね。

○母子保健課長 まだスタートしたばかりですので、十分御活用いただけていないというのが、持っている方も、あるいは周りの方もそういった状況が十分PRされていないというのが実態だと思います。

○部会長 その手帳の内容ないしは活用などについても、また御検討をいただきたいと思います。一応モノはあるようでございますけれども……。

○L委員 そうすると、疫学的な把握というのは、ある程度そちらからは可能な訳ですね。

○部会長 これからはそう思います。よろしくお願いします。

J委員、何かございますか。学校の問題等はこの次にまた御検討いただきますが……。

○J委員 先ほど自治体の格差が非常に大きいというようなお話がありまして、今、懸案になっている意見書の基準の明確化は確かに必要かなと思います。

 あと、K委員の方で、情報のデータの内容といいますか、それについて一つ、出生場所というお話がありましたが、私もこの案を見せていただいて、項目については出来るだけきちんとした検討をしていただいて、プライバシーの ことについて是非御配慮いただいてやっていかなければいけないかなと。これは学校でも共通する問題ですので、お願いしたいと思います。

○部会長 ありがとうございました。司会の不手際で十分な御討議がまだ届いていないうちに時間がきてしまいましたけれども、次回また引き続いて、先ほど御説明のあったような在宅の問題、学校での問題等々についていろいろ御審議をいただくことになろうと思います。次回を2月の初めごろというふうに事務局の方で御希望でございますが、出来れば御都合をちょうだいしたいと思いますが、時間帯は……。

○事務局 先生方の都合のつく時間帯で、午前・午後いつでも結構でございます。

( 日程調整 )
○部会長 ありがとうございました。それでは、2月6日、木曜日の午後、時間帯は2時から4時。場所はまたお考えいただいて……。

 それから、後ろにいていただく関係の方は、先生方、母子保健課の皆さんはご存じだと思いますが、今、文部省から学校健康教育課に出向していらっしゃいますGドクター、この次にいろいろ御説明いただくかもしれませんので、よろしくお願いします。そのお隣は。

○教科書調査官(文部省) 文部省の特殊教育課の教科書調査官をしております。よろしくお願いいたします。

○部会長 次回にまた問題が残るということで、よろしくお願いします。

 それでは、恐縮ですが、これで中央児童福祉審議会の議事を終わらせていただいて、課長から御挨拶をお願いいたします。

○母子保健課長 年末のお忙しい時期にお時間をお繰り合わせいただき、また、大変御活発な御議論をいただきましてありがとうございました。

 先ほど来、いろいろと御指摘をいただいておりますように、私どももいろいろな事業を展開はしてきているのですけれども、十分当初の目的に沿って展開されているかというと、大分反省をしなければならないところが多々あるようでございまして、その辺の部分を強化をしていただくための御議論を展開していただいたというふうに考えております。次回も引き続き小慢対策について御議論いただく訳でございますが、出来るだけ具体的な方向性をお示しいただくよう、次回の御議論をお願いしたいと存じます。本日は、どうもありがとうございました。

○部会長 どうもありがとうございました。

  問い合わせ先 厚生省児童家庭局母子保健課
     担 当 為石(内3174)
     電 話 (代)[現在ご利用いただけません]

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