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第7回「これからの墓地等の在り方を考える懇談会」議事要旨


日時:平成9年12月5日(金)

場所:通産省別館第825会議室

出席者 欠席者
磯部委員
浦川委員
大澤委員
甲斐委員
金光委員
塩見委員
長江委員
藤井委員
増田委員
森 委員
森田委員
橋本委員

議題

1、散骨に関する行政法的見地からの意見

2、無縁墳墓の改葬手続について


議事内容

1について

○ 現行法の解釈

法律に規定がないことの場合の解釈は一義的ではない。

1) その行為につき法的な関与を一切すべきではない。(規定を廃止した 場合)
2) 立法当時関心の対象とならなかった。
3) 地域の実情に委ねる。
4) その行為と当該法律は別次元のもの。
 散骨と墓地、埋葬等に関する法律(以下、「墓埋法」という。)の関係は 2)を前提に合理的な解釈をすることになる。
 散骨に対する現行解釈は、墓埋法は関知しないということであるが、それは散骨について全く自由ということではなく、衛生上または国民の宗教的感情上の問題を生じるような方法で散骨が行われる場合には、墓地埋葬行政として当然規制を成し得る。

○ 立法政策的検討

(1)憲法上の自由との関係

 葬送の自由は憲法第13条の幸福追求権に含まれるであろう。しかしそれが公衆衛生上問題を生じたり、又は国民の宗教的感情を損なう形で行われるのであれば、当然に公共の福祉による制限を受ける。これは人権の内在的制約であり、規制は十分可能である。

(2)立法形式

 散骨を規制するには法律によるか条例によるかという問題。葬送の自由が国民の習俗に関する事項とすると、議会制定法規事項(法形式という意味。条例を含む)であろう。行政指導で対応するのは好ましくない。

(3)法目的

 葬送方法まで規制するのは好ましくないという考え方あるが、墓埋法が古典的に警察的取締行政から複合的な目的を持つようになってもおかしくない(例、風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律)。
 ただし、規制の最小限の要請は必要であろう。他方、墓地に係る都市計画や環境行政などとの総合行政展開を重視するなら、国よりも自治体に任せるのが合目的的。厚生省は制度の枠組み作りに徹することが望ましい。
 散骨は条例で規制できると考えるが、法律で確認規定をおいて条例制定権を明確化することが考えられる。葬送については強い地域性があると考えられるので地方自治、条例に任せるのが合理的である。
 また、墓地行政に福祉の観点を入れるのは現在の福祉行政の体系を見ても 困難であると考える。

(4)規制事項

・定義
・場所
・許可制にするか
・処罰


質疑応答

○ 散骨を行う際、周囲に迷惑のかからないように焼骨を細かくすることが求められるだろうが、粉砕はどこで行うのか。

→ 散骨をされる方が自ら行っていると聞いている。

○ 現行法は、葬法を火葬と埋葬に限定しているのではないか。また散骨については地域差より個人差が大きいと考えられるから、条例よりも法律で一般的に規制することが必要であろう。

→ 火葬と埋葬を規定することで法制定時は立法目的を十分達成できると考えていた。しかしその後新しい葬法が出てきた場合、それに対して法律で規定するまでは全く自由というわけではなく、墓埋法の法目的から規制をすることは可能であろう。

→ 個人差が大きいからただちに法律事項ということにはならないのではないか。例えば、青少年保護条例は個人の自由に関する問題と考えられるが、条 例で定められている。地域差だけでなく住民の協力の必要性も考えられる。

○ 問題が生じれば法律で規制する必要はあるだろうが、散骨は本来的には自由であると考える。

○ 散骨は大きく分けて、1)墓を持ち、一部の遺骨を散骨する形で行う場合、2)すべての遺骨を散骨して墓を設けない場合とがある。後者の場合、遺骨処理機能が優先され、骨灰そのものの宗教性を欠く場合もでてくると考えられる。

○ アメリカではすでに散骨を行った不動産の売買をめぐって係争問題が生じている。いったん自宅の庭に散骨してしまうと、後の土地売買の際に問題が生じてくることが予測される。「他者に迷惑をかけない」という民主主義の原則からすれば、墓埋法にいう墓地の中に散骨の場を設ける道を開くことも必要となろう。

○ 火葬後の残骨は廃棄物にあたり、勝手に撒くことはできないのではないか。

→ 定義については焼骨は廃棄物とは区別されるもの。大事にされるべき遺骨であるという認識があってはじめて、散骨といえる。つまり残骨の処分と散骨は同一ではない。


2 改葬をめぐる問題点

(事務局から資料に沿って説明)

(墓地使用者の権利保護)

○ ある墓地の統計では、墓地使用者が死亡したときの墓地管理者への届出がされていない区画が約40%。使用権者を確定できないことはかなり多いのではないか。村落共有型墓地では村から出ていくことが権利の消滅であろう。
 このような墓地では改葬は実際には簡単に行われている。
 それよりも問題なのは、都市型墓地であり、3年間管理料を払わなかったら改葬するという契約があるが、これでは墓地使用者の権利が守られていないのではないか。現在は無縁改葬に様々な手続きを求めているため実質的には守られているが、契約の面では守られていない。墓埋法施行規則(以下、「規則」という。)第3条の改葬手続きの簡素化は必要だが、墓地使用者の権利を守ることも必要。

○ 村落共有墓地について、入会権と同様の権利であるとして、村落から出ていったことをもって 権利が当然に消滅していると扱ってよいものか。

○ 東京都では墓地使用者が死亡した場合、縁故者に承継者を定めることを求める。その後の改葬、墓石のことを考えると、実際は管理料未納による取消はほとんど行っていない。

(都市型墓地の改葬問題)

○ 規則第3条は、3年間管理料未納であれば改葬するという使用規則を持つ現代型の霊園を想定していない。村落共有墓地や寺院墓地を想定しており、これらは半永久的、準物権的な権利であり、ほとんど消滅するようなことはなかった。墓地使用権が地上権類似のものと考えると、墓地使用権の主体がいなくなれば所有権に吸収される。そうなると所有権者が改葬しなくてはならない。
 この手続を無縁墳墓の改葬手続きとして定めたのではないか。墓地使用権の終了と改葬とを同時に処理する一種の便宜的なもの。民法の観点から言えば、墓地使用権は承継されるが、改葬されれば結局主体がいなくなっていることが確認されるので他物権が、所有権に吸収されてしまって、そこは所有者が自由に使用できることになる。
 問題となるのは、管理料の未納により墓地使用権は消滅したものの、縁故者がいる場合は、論理的には、任意で規則第2条による改葬が行われるケースであるが、縁故者が改葬を行わなければ、この場合無縁でないため、規則 第3条による改葬は行えないということになる。

○ これは民事訴訟上の問題ではないか。制度的に解決する問題かもしれないが、無縁墳墓の問題とは別の問題である。

○ 管理料未納者に出ていってもらうための論理がない。

今後問題となるのは、

・無縁墳墓の改葬のための2紙3回の新聞公告は妥当か。
・管理料未払い等により墓地使用権消滅後、墓地使用者が現に存在しているときの改葬はどうするか。
・管理料未払いで、墓地使用者・承継者が不明の場合、墓地使用権をどう消滅させるか。
という3つの問題。

○ 管理料を支払わなかった場合の改葬をどうするか。1)承継者がいる場合は使用権が消滅しても無縁にならないため改葬ができない。2)承継者がいない場合であって、使用権の消滅が公に確認できないときは改葬できない。

○ 1)については民事訴訟の問題。改葬まで含めた契約を設定することを定めたモデル的な墓地契約約款を作成して適切な契約の普及を図ることで対応できるのではないか。

○ 墓地使用権者が確定できない場合、家裁の審判により墓地管理者を墳墓承継者として定めることもできる。

○ それは第2条の改葬を行うための便法か。通常は墓籍で確認できなかったから公告を行うのではないか。

○ 改葬は行政法の規制として行われている。それを墓埋法の手続きを踏まないで契約で行うことは可能であろうか。ここはもう一度話し合う必要がある。

(新聞公告の意味)

○ 墓地は財産性を持っているから、墓地使用者が亡くなれば民法の祭祀承継者を定める必要があり、その確認の必要から新聞公告を行っているのではないか。

○ 家裁の調査で祭祀承継者の不存在が確認された後、祭祀承継者がいなくても、改葬を行う縁故者がいるとしたらその人に改葬してもらおうということから新聞公告を求めている。

○ 家裁は祭祀承継者がいないことを確認することはできないのではないか。戸籍で探しても 誰も見つからないという場合に、新聞公告を行うのではないか。

○ 墓地使用権は、墓地の使用規則で法律上は消滅する。規則第3条は使用権消滅後においても、改葬の際に縁故者の確認を求めているが、これは墓石や遺骨の承継者を確認するための手続きではないか。これは焼骨や墓石が祭祀財産であり、普通の財産と異なるからである。

(具体的な手続きについて)

○ 規則第3条は墓地使用権の消滅を前提とした手続。権利の消滅を確認する行為を行っているならば墓籍を追っている過程で、公示送達のような公告手続や、家庭裁判所での詳細な調査が行われるのであるから、その後で新聞公告を行うのは過重な手続きであろう。

○ 親戚を捜すために数百万円かかるのは過重な手続。費用対効果を考えなければならない。また、世論調査によると87%の人が新聞公告を見たことがないという事実を考えるべき。

○ 縁故者はどこまで探すものなのか。

○ 6親等は広い。

○ 使用料の支払いのチェックも必要だが、墓地使用者をチェックすることが必要ではないか。使用権の期限を切り、更新の際その都度承継者を確認していくことが必要である。そうすることによって有縁で改葬を行えるだろう。

○ 公告手続の簡素化は認めるという方向だが、改葬手続きがルーズにならないように縁故者を探したという努力をしたという証拠が必要である。

○ 縁故者に対して、改葬前後で墓地に掲示板を立てたり、市町村役場の掲示場での掲示等を行うなどの十分な周知方法がなされるならば新聞公告を求めなくてもよいであろう。また改葬に際しての祭祀財産の取扱いについても、国民の宗教的感情に適合した取扱いが求められる。改葬についての記録事項、記録の保存期間等の基準を示すことも必要であろう。

○ 市町村単位では狭い。都道府県単位での掲示が必要であろう。

○ 縁故者は広域的に移動していることが考えられるので、国レベルでの周知の必要性もある。例えば、指定法人に改葬を行うことを登録することにより新聞公告にかえるという方法はどうか。

○ 改葬の記録には写真を添付してはどうか。

○ 墓地の掲示は、建築基準法の掲示が参考になるのではないか。


今後の日程について

○ 1月から3月まで3回行い、3月でまとめの議論を行う。次回テーマについては、座長と相談。


 照会先
 厚生省生活衛生局企画課 乗越(内線2417)


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