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次期年金制度改正についての「論点整理」


 年金審議会では、この5月から12回にわたり、全員懇談会を開催し、平成11年に予定される次期年金制度改正に関する諸問題について、様々な角度から審議を重ねてきたが、一巡目の議論を終えたので、これまでの議論を整理するとともに、国民的議論に資するよう、論点の整理を行った。
 今後、当審議会としては、国民各層の意見を聴きながら、次期年金制度改正に向けた意見書をとりまとめていく予定である。

 

検 討 項 目

考え方

備考
1 制度改正に係る総括的事項
○ 公的年金制度は世代と世代のたすけ合いの考え方に基づくものであり、それぞれの世代が将来にわたって年金制度に対して揺るぎない信頼を有することが制度運営の基本ではないか。

○ 我が国の公的年金制度は、昭和36年の国民皆年金の達成以来、給付水準の充実、物価スライド制の導入、基礎年金の創設、支給開始年齢の引上げ等幾たびかの大きな制度改正を経て、国民の高齢期の生活の主柱として国民に広く定着し、我が国の社会保障制度の中でも極めて重要な位置づけを有するものである。今後とも、このような公的年金の意義、役割等を明確にして将来の年金制度を支える若い世代を含め広く国民の理解を求めていくことが重要ではないか。

○ 我が国社会における近年の予想を上回る少子高齢化の進展、経済の低成長、女性の社会進出など経済社会の状況の変化等に対応して、年金制度全体を見直し、年金制度が将来にわたって安定的に運営されるようにしていくことが必要になってきているのではないか。
○ この場合、高齢者をめぐる経済状況や個人の人生設計の多様化、家族や就業の形態の変化、男女共同参画社会をめざした取り組みなどを踏まえた視点に立って年金制度の見直しを行っていくことが必要となっているのではないか。


○ 世代間で給付と負担が不均衡となっており、現役世代の不満が高まってきているが、将来の給付に対する不安を払拭し、また、将来世代の負担を過重なものとしないよう、早急に世代間の公平を確保するための取り組みが必要ではないか。

○ 年金制度と他の社会保障制度等関連施策との連携をより一層図っていくことが重要となってきているのではないか。

○ 公的年金とともに、企業年金や個人年金といった私的年金も含めた公私の年金の役割分担が重要になってきているのではないか。

○ 国民各層の意見を幅広く聴きながら様々な選択肢について検討を行っていくべきではないか。 

 
2 公的年金の基本的在り方について ○ 公的年金の役割、機能についてどう考えるか。1階部分の基礎年金、2階部分の厚生年金のそれぞれについて、両者の関係も含めて役割、機能をどう考えるか。

○  公的年金は基礎年金を基本に1階建ての年金とするとともに、厚生年金は廃止し、積立方式による民間の企業年金又は個人年金に委ねるという提言があるが、どう考えるか。

○ 世代間の給付と負担の均衡をどのように図っていくか。

○  公的年金の財政方式についてどう考えるか。賦課方式か積立方式か。両者の組合せ方についてどう考えるか。


3 公的年金制度について
(1)給付と負担の水準について

 



○  給付と負担の水準を考える場合、従来にもまして給付と負担を関連づけて考えていくことが必要ではないか。

○  給付と負担において個人単位の考え方を拡大することに ついてどう考えるか。

(給付水準)
○  高齢者や現役世代の消費支出、可処分所得、貯蓄・負債等の状況からみて、現行の給付水準についてどう考えるか。























○  現行の厚生年金の標準的年金の考え方は夫が40年間平均的給与所得者で、妻が全く給与所得者としての期間がないという世帯を想定し、この世帯について、現役世代の一定割合の所得を保障するというものであるが、今後はどのようなケースを念頭において給付水準を考えるべきか。





















(負担水準)
○  負担の限界についてどう考えるか。厚生年金、国民年金のそれぞれについて、最終的な保険料負担水準は、どの程度までとすべきと考えるか。年金保険料に限らず、税や他の社会保険料の負担も念頭において、負担の限界を考えることが必要ではないか。

 

 (平成6年全国消費実態調査)

高齢者夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の消費支出(月額)内訳は、

 食料、住居、被服等  11.7万円

 保健医療        1.2万円

 交通通信        2.1万円

 教養娯楽        2.8万円

 交際費等        6.0万円

      合計    23.8万円

 収入(年額)    382.2万円

 負債         67.5万円

 貯蓄      2,098.7万円

一方、現役世帯(30代の夫婦と子ども1.9人)は、

 消費支出(月額)   29.1万円

 可処分所得(月額)  34.5万円

 負債        509.6万円

 貯蓄        643.6万円

(モデル的な年金額)

夫が平均的給与所得者、40年加入の場合で、

・妻が無職の場合     23.1万円

・妻が5年の平均的給与所得
者の期間がある場合   23.9万円

・妻が平均的給与所得者
で40年加入の場合   29.1万円

単身の平均的給与所得者の
場合(40年加入)  男性16.6万円

           女性12.5万円

 (注)1 すべて平成6年度価格。

    2 平均標準報酬月額は、夫34.0万円、妻20.3万円として試算。 


新人口推計に対応した試算では、2025年度(平成37年度)に厚生年金の保険料率は34.3%(本人負担はこの半分)、国民年金の保険料は2万4,300円となる。(平成6年度価格)


(2)給付の仕組みについて
 (1)スライド方式



○ 裁定後の老齢厚生年金・基礎年金については、賃金スライドを行わず、物価スライドのみとすることについてどう考えるか。



○  物価スライドについて、一定幅以下の物価変動の場合は行わないことについてどう考えるか。

○ 平成6年の前回の制度改正により可処分所得スライドが実施されたところであるが、可処分所得の範囲やその指標等についてどう考えるか。






現在は、毎年の物価上昇に対して年金額を物価スライドすることにより購買力を維持し、更に、5年に1回の財政再計算時に現役世代の賃金上昇に応じた年金額の改善措置(賃金スライド)を実施している。



可処分所得スライドは、年金額について名目的な賃金の上昇に応じた改善ではなく、現役世代の実質的な所得(手取り賃金)の上昇に応じた改善を行うもの。前回の制度改正においては、総務庁の家計調査による指標を基本としつつ、標準報酬と年金保険料による指標等を総合的に勘案した数値により可処分所得スライドが実施された。

 (2)高齢在職者、高所得者等に対する給付        ○  60歳から64歳までの在職者については、保険料を徴収し年金額と賃金額に応じて年金額の一部又は全部が支給停止されているが、65歳以上の在職者についてどう考えるか。 


○  受給者の所得等にかかわらず、年金が全額支給されているが、一定以上の収入等を有する者に対する年金の支給についてどう考えるか。例えば、国庫負担部分の支給を停止することについてどう考えるか。

○  厚生年金に所得再分配の機能をもたせ、世代内の公平を図ることについてどう考えるか。

基礎年金の導入に伴い、65歳以上の者については被保険者とせず、一律に年金を支給することとされたが、それ以前は、65歳以上の在職者についても年金が一部支給停止されていた。





 (3)支給開始年齢等 ○  年金の支給開始年齢については、平均余命の伸びを考慮して見直すべきという考え方と雇用の終了との接続を図るべきという考え方があるが、どう考えるか。

○ 支給開始年齢を65歳から更に引き上げることについてどう考えるか。






○ 平成25年度(2013年度)よりも前に65歳支給開始となるように、支給開始年齢引上げスケジュールを前倒しすることについてはどうか。

  

○ 60歳から64歳までの部分年金(厚生年金の報酬比例部分)の支給開始年齢の引上げや繰上げ減額年金についてどう考えるか。






従来、厚生年金(定額部分と報酬比例部分)は、60歳から支給されていたが、平成6年の前回の制度改正によって、定額部分については、支給開始年齢を65歳に引き上げることとし、報酬比例部分については、従来どおり、60歳支給開始とされた。

支給開始年齢の引上げは、平成13年度(2001年度)から平成25年度(2013年度)にかけて行われる。

(3)保険料負担について
   
○ 現在の保険料は動態平準保険料に比べ相当低い水準にあり、将来世代の負担を軽減し、世代間の負担の公平を図るために、保険料引上げスケジュールを早めることについてどう考えるか。








○ 国民年金の保険料免除制度の見直しについてどう考えるか。段階的な保険料免除制度を設けることについてはどうか。

現行は、厚生年金17.35%(労使折半)、国民年金1万2,800円。
動態平準保険料とは、今後、一定の保険料で制度を運営していくこととした場合の保険料のことであり、厚生年金で30.4%、国民年金で2万2,000円(平成6年度価格)である。
従来は、厚生年金の保険料率は5年ごとに2.5%、国民年金の保険料は毎年500円引き上げるスケジュールとなっている。

申請免除率(学生を除く。)

平成3年 7.5%
  4年 7.8%
  5年 8.5%
  6年 9.3%
  7年 9.9%
  8年 9.6%

(4)総報酬制について ○  現在、厚生年金は毎月支払われる給与に対して保険料を徴収しているが、世代内の負担の公平という観点から、総報酬制を導入し、保険料賦課の対象を拡大することについてどう考えるか。この場合の給付設計をどうするか。


総報酬制を導入する場合、年金額についても、ボーナスを含めた報酬を基礎に算定する方式に改めることが必要になる。
(5)基礎年金について ○  基礎年金の給付水準についてどう考えるか。




○ 基礎年金の国庫負担率の引上げについて、国の厳しい財政事情からみてどう考えるか。





○ 基礎年金の財源については、将来的にどう考えるか。

老齢基礎年金額は、20歳から60歳までが強制加入であり、全期間加入した場合、単身世帯6万5,000円、夫婦で13万円。(平成6年度価格)

国庫負担率の引上げについては、平成6年の前回の改正法の附則等において検討を加えることとされた。
国庫負担率の引上げは、現下の厳しい財政事情に鑑み財政再建目標達成後改めて検討。(平成9年6月3日閣議決定)

(6)次期財政再計算における経済的前提等について ○  将来推計人口については、平成9年1月に国立社会保障・人口問題研究所から、高位、中位及び低位の3通りの推計が示されたが、次期財政再計算においては、どのように考えるか。

○ 次期財政再計算を行うに当たっては、賃金上昇率、物価上昇率及び年金積立金の運用利回りといった経済的前提についてはどのように考えるか。

 

(7)上記以外の項目について
 (1)第3号被保険者



○  給与所得者の被扶養配偶者である第3号被保険者は自分自身の所得がないため、医療保険と同様に、個別の保険料負担は要せず、厚生年金全体で国民年金(基礎年金)の保険料を負担することとなっているが、保険料を別立てで徴収することについてどう考えるか。

                   



 (2)離婚の場合の年金権等 ○ 離婚の場合の年金権の確保や遺族年金の取扱いについてどう考えるか。
 
 (3)パート労働者等の取扱い ○  パート労働者等について厚生年金の適用を拡大することについてどう考えるか。

 
 (4)少子化への対応 ○ 年金制度において少子化への対応を考慮することについてどう考えるか。その場合の給付や負担の仕組みについてどう考えるか。  
 (5)学生への適用等 ○  学生の保険料の納付や免除の実態についてどう考えるか。納付猶予制度の導入などについてどう考えるか。


○  国民年金の被保険者の範囲は20歳から60歳までとされているが、20歳前あるいは60歳以上も被保険者とすることについてどう考えるか。






60歳から64歳までの間は、給与所得者でない場合は国民年金に任意加入できることとなっている。
 (6)障害年金 ○  障害無年金者の問題について社会保険方式の下でどう考えるか。
 
 (7)施設入所者の年金給付 ○ 施設入所者について年金給付の支給と医療、福祉給付との調整についてどう考えるか。
現行は、施設入所者についても年金は全額支給し、医療、福祉給付については自己負担を求めることとなっている。
 (8)年金制度の一元化 ○ 一元化については、共済年金制度と関連する問題であるが、本審議会としても平成8年3月の閣議決定「公的年金制度の再編成の推進について」を踏まえ検討を行っていくことが必要ではないか。 国鉄等旧公共企業体共済組合は平成9年度から厚生年金に統合されたが、国家公務員、地方公務員、農協等の職員、私立学校の教職員については、共済組合が組織されている。
(7)年金現業業務について ○ 年金事業の安定的かつ効率的な運営を図るための体制づくり等についてどう考えるか。とりわけ、国民年金の第1号被保険者の未納、未加入への対応については、どのような対策が考えられるか。 地方分権推進委員会第3次勧告(平成9年9月2日)において、地方事務官制度、国民年金の市町村事務の見直しなどが提言されており、政府として最大限尊重することが閣議決定されている。(平成9年10月21日)
4 厚生年金基金等について

(1)厚生年金基金について

 (1)代行制度







○  代行制度の在り方についてどう考えるか。

○  基金加入員の年齢構成の相違や代行給付費の予想額と実績との乖離等に関し、免除保険料率の在り方についてどう考えるか。



 (2) 拠出建て給付設計の導入 ○  確定拠出型年金の導入についてどう考えるか。

 
 (3)支払保証制度
○  支払保証制度の充実についてどう考えるか。

 
(2)企業年金に関する包括的な基本法の在り方について ○  高齢期の所得保障機能の充実という観点から、受給権保護等を目的とした法制度の整備についてどう考えるか。


 
5 年金積立金の運用について ○  年金積立金については、預託義務を廃止したうえ、保険者(厚生大臣)が年金積立金に最もふさわしい方法で自主運用する必要があるのではないか。自主運用のための仕組みについてどう考えるか。

○  運用の基本方針の在り方、被保険者の意向を運用方法に反映させることについてどう考えるか。

○ 運用リスクの負担の在り方、運用関係者の責任の在り方、運用結果の検証方法、情報公開の在り方等自主運用における責任体制の明確化についてどう考えるか。
○  運用管理機関の在り方、組織についてどう考えるか。

 

 照会先
 年金局企画課
  二川(内3364)
  大江(内3313)


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