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NO.3

予防接種後副反応報告書

集計報告書

(平成8年4月1日〜平成9年3月31日)


予防接種後副反応・健康状況調査検討会

厚生省保健医療局結核感染症課


I 総 論

本報告書は平成6年の予防接種法の改正に伴い実施されることになった「予防接種後副反応報告書」をまとめたもので、報告の書式並びに報告基準は別紙のとおりである。
今回は、平成8年4月1日から平成9年3月31日までの間に厚生省に報告されたものにつき単純集計し、まとめたものである。

1 対象とされたワクチンは、定期接種として実施されたジフテリア・百日せき・破傷風混合(Diphtheria,Pertussis,Tetanus、DPT)、ジフテリア・破傷 風混合(Diphtheria,Tetanus、DT)、麻しん、 風しん、日本脳炎、ポリオ (急性灰白髄炎)、BCGである。

2 報告は予防接種後に健康状況の変化をきたし、接種者、主治医、本人または保護者、その他の方が報告基準を参考に報告すべき異常副反応と判断した症例である。

3 報告書の集計は、第1報が提出された日時で行い、第2報以降で症例の転帰が明確にされたものなど変更があったものについては追記した。また、既に前回集計報告(平成8年3月29日)にて集計され、今回次報として報告されているものについては集計しない。

4 期間中の都道府県別、ワクチン別の報告数を第1表(8頁参照)にまとめた。
報告された症例数(副反応件数)はDPT(DTを含む)214例(231件)、麻しん145例(184件)、風しん63例(69件)、日本脳炎85例(90件)、ポリオ7例(7件)、BCG53例(60件)で報告され た総数は、567例(641件)であった。(次頁表1参照)
副反応が重複しているものがあるので、解析については件数で示した。
(なお、DPT(DT)ワクチンは1期4回、2期1回の計5回、日本脳炎ワクチンは1期3回、2期1回、3期1回の計5回、ポリオワクチン(経口)2回の各々の総計である。)

5 報告するかどうかは報告者の判断のため、各都道府県の接種対象者人口などを考慮しても報告数にばらつきが大きく、副反応数の発生率などについてはこのデータからは分析不可能である。
ワクチン別の副反応発生頻度については本報告ではなく、平成8年度より本格的実施にはいっている予防接種後健康状況調査事業によって明らかになる。

6 まとめに使用した分類については、今回は報告基準を基本とした。報告の中で通常の副反応と思われるもの、あるいは予防接種との関連性が明らかに考えられないものは基準外報告とした。この区分についてはより明確になるようさらに検討を要するが、とりあえず集計、解説において即時型全身反応を呼吸器・循環器障害を伴うアナフィラキシー(即時型過敏反応)と全身蕁麻疹に分けた。また、その他異常反応と基準外報告についてもその内容が明確となるように努力した。


表1 ワクチン別副反応報告数 (参考)ワクチン別接種件数

ワクチン 症 例 数 副反応件数
D P T
D T
麻 し ん
風 し ん
日本脳炎
ポ リ オ
B C G
196例
18例
145例
63例
85例
7例
53例
567例
211件
20件
184件
69件
90件
7件
60件
641件
 
ワクチン 接種者数
D P T
D T
麻 し ん
風 し ん
日本脳炎
ポ リ オ
B C G
4,880,134
1,022,620
1,112,511
2,040,252
3,825,243
2,358,983
2,624,404
17,864,147
(平成8年4月〜平成9年3月)   (平成8年1月〜12月)

※ 症例数は副反応が起こった人の報告人数であり、副反応件数はその人数に対する副反応の発生数(重複あり)である。

II 各 論

1 DPT・DTワクチン(表2−1〜3参照)

報告されたDPT,DTワクチン接種後の副反応件数は231件で、このうち基準外報告は71件(31%)であった。日数別に見ると231件中224件(97%)が接種後3日以内に副反応ありと報告された。年齢別に見ると1歳までが80件、2歳の53件が特に多く見られた。報告された副反応でもっとも多かったのは接種局所の異常で88件(38%)であった。接種後の副反応で入院を必要としたのは14件(6.1%)であったが、これらを含めて副反応の回復率は63%であるが、これは回復したという報告の単純計算で、報告時に追加報告のない例がみられた。報告時に未回復と回答されたのは局所反応の10件とけいれんの2件、全身発疹1件、発熱3件、その他1件の17件であったが、報告時点がそれぞれ異なるので比較は難しい。
アナフィラキシーと報告されたのは2件で、4歳のDPT、12歳のDT接種児であった。けいれんの5例はいずれも発熱をともなっていた。このうち後遺症を残したと報告されたのは2例で、このうち1例は1歳6か月の女児で、DPT第1回接種当日熱性けいれんを起こし、接種後3週目に突発性発疹でけいれんを起こしている。その後9か月の間にけいれんで数回入院している。報告によれば他の疾患の可能性は不明であり、病名はてんかんである。他の1例は8か月の女児で接種後2日目にけいれん重積を来した例である。報告によれば何らかのウイルス性脳炎が考えられる。リハビリと薬物治療を行っている。
報告例に死亡例が1件あった。これは生後6か月の男児で、DPT接種後2日目の夜半うつ伏せで頭部にふとんがかかった状態で異常を発見され死亡した例である。

2 麻しんワクチン(表3−1〜3参照)

麻しん副反応報告症例数は145症例(男86、女59)であった。報告件数は184件となった。そのうち115症例(79%)、142件(77%)が24時間以内の副反応であり、1−3日の副反応は6症例(4.1%)、7件(3.8%)、4−7日の副反応は10症例(6.9%)、16件(8.7%)、8−14日の副反応は、14症例(9.7%)、19件(10%)であった。
すべて1−4歳で、1歳118例(81%)で、152件(83%)、2歳15症例(10%)で、20件(11%)、3歳8症例(5.5%)で、8件(4.3%)、4歳4症例(2.8%)で、4件(2.2%)と1歳が最も多かった。
神経系合併症は8症例あった。そのうち、2例は、3−7日の発熱を伴ったけいれん、4例は、8−14日の発熱を伴ったけいれんであり、そのうちの1例はソトス症候群を基礎疾患として持っていた。他の1例は、1歳女児、12日目に発症したギランバレー症候群、他の1例は、1歳女児16日のけいれん、脳症、点頭てんかんの診断がついた症例である。
アナフィラキシーは23例で、すべて24時間以内に発症している。全身蕁麻疹は26例、8−14日で発症したのが1例、3−7日で発症したのが1例、残り24例はすべて24時間以内の発症であった。
発疹と局所反応の両方を認めたのは20例で、そのうち18例は24時間以内の発症(1例は発熱もあった)、2例は1−3日の発症であった。
発熱発疹を来したものは合計8例で、そのうち4例は8−14日の発症、3例は3−7日の発症、1例は24時間以内の発症であった。発疹だけを認めたのは40例あった。12例は局所反応のみの報告があった。
その他に一過性ショック1例、腋窩リンパ腺炎2例、発熱のみの報告が5例あった。

3 風しんワクチン(表4−1〜3参照)

風しんワクチン接種後の副反応件数は69件(男39、女30)で63症例が報告された。基準外報告はそのうち6件(8.7%)であった。
日数別にみると(表1)副反応のうち53件(77%)が24時間以内の発生で、その内訳はアナフィラキシー11/53件(21%)、全身蕁麻疹19/53(36%)であり、両者を合わせた即時型全身反応が57%を占めていた。その他はその他の異常反応(発疹、局所反応、その他)で21/53件(40%)となっていた。上記以外に7日以内までで11件、最大14日までで5件が報告された。
副反応の男女比は1:3で多少男児に多かった。また年齢別では1歳11件(16%)、2歳19件(28%)、3歳9件(13%)で4歳までが67%、5〜9歳18件(26%)、10〜15歳5件(7.2%)となっていた。
低年齢に多いのは接種母数によるものと思われるが、詳細は不明である。
予後別にみると16/69件(23%)が治癒、入院8件(12%)、後遺症1/69(1.4%)となっている一方、無記入が32件(46%)にみられた。報告時点が回復していない症例が7件であるがこれも詳細は不明である。
今回も風しんの自然感染にみられる脳炎、脳症をワクチンで発症した例は認めていない。
なお、平成6年10月1日〜平成9年3月31日までの累計では風しんによる副反応は252件報告されており、その内即時型反応67件(27%)、その他の異常反応(発疹、局所反応等)87件(35%)、けいれん6件(2.4%)となった。

4 日本脳炎ワクチン(表5−1〜3参照)

報告された日本脳炎ワクチン接種後の副反応は症例数85例(副反応90件)である。
最も多い副反応は39℃以上の高熱29件(32%)で、多くは24時間以内、少なくとも3日以内に発症しそれ以後の発症は2例にすぎない。
本ワクチンの重篤な副反応である即時性全身反応は23件(26%)あり、そのうち14件はアナフィラキシー、9件は全身蕁麻疹で、大部分は24時間以内、数件は1〜3日以内に発症した。さらに神経系副反応はけいれんの1件、運動障害の1件で、前者は接種後翌日に発生、発熱を伴い、後者は接種後翌日発熱、4日後歩行障害をおこし入院した。
異常局所反応、全身の発疹、その他の異常反応は総計14件(16%)報告され、多くは24時間以内、遅くとも3日以内に発症した。
22件(24%)は基準外報告で軽度の発赤、腫脹などの局所反応や微熱などの全身反応、その他であった。
年齢別にみると1歳台の接種が3件みられ、アナフィラキシー1件、39℃の発熱2件の報告があったが、副反応の多くは3〜9歳の接種年齢層に多く、副反応の種類も年齢的特異性を示す所見はなかった。男女差もみられなかった。
予後別にみると、いずれの副反応もその詳細については無記入ないしその他の項目が多かったが、重症例や死亡報告例はなかった。後遺症報告は歩行障害の1件であったが第一報であり、報告時は回復しておらずその詳細は不明である。 即時性全身反応やけいれん、歩行障害、高度の異常局所反応、高熱を来したものは入院加療を要したと報告されている。

5 ポリオワクチン(表6−1〜3参照)

報告されたポリオワクチン後の副反応は7件(男2件、女5件)であった。
報告症例数も7例である。
すべて基準外報告で麻痺例は認めていない。7件中4件は24時間以内、1〜3日2件、4〜7日1件であった。報告の時点で回復していない症例が1件あったが、その後の追加報告はされていない。
平成6年10月からの累計では、総報告件数20件で、基準外報告は13件、その他の異常反応は7件であった。

6 BCGワクチン(表7−1〜3参照)

報告されたBCGワクチン接種後の副反応件数は60件(基準外報告7件を含む)であった。性別では男37件、女23件と男児が多かった。
年齢別には0歳23件(38%)、1〜2歳21件(35%)、5〜9歳10件(17%)、10〜15歳6件(10%)と乳幼児の被接種者が多かった。
副反応の種別では、腋窩リンパ節腫脹29件(48%)が最も多く、次いで接種局所の膿瘍11件(18%)であり、その他の異常反応としては腋窩以外のリンパ節腫脹7件(12%)、急性の局所反応2件(3%)みられた他、皮膚結核様病変、骨炎・骨髄炎、それに全身性播種性BCG感染症が各1件みられた。
腋窩リンパ節腫脹29件の大半(28件)が乳幼児で、特に0歳児が16件(55%)を占めていた。他では5〜9歳が1件で10〜15歳では皆無であった。その発生時期は8日〜1ヶ月が5件(17%)、〜2ヶ月で累計26件(90%)と大半がこの時期までに発生していた。遅い者では〜4ヶ月が2件あった。報告時点までの回復状況が知られた20件のうち「回復している」が13件、「未回復」が7件であった。経過中に入院した者が3件報告された。
腋窩以外のリンパ節腫脹は1歳6件で0歳(1件)と比して多く、経過中入院した者が4件と比較的多い点が腋窩リンパ節とやや異なる。
接種局所の膿瘍は11件中5件(45%)は0〜1歳児、他の6件(55%)が5〜9歳で、発生時期は接種後24時間以内という者が1件あったが、他は8日〜1ヶ月(5件)から〜4ヶ月(2件)の間に分布している。回復状況の知られた6件のうちは「回復している」が2件、「未回復」が4件であった。
全身性播種性BCG感染症の1件は先天性免疫不全症候群と考えられる0歳男児に起こったもので、接種後2ヶ月後に発生した。骨炎・骨髄炎の1件は0歳女児に接種後6ヶ月以上経過してから発見されたものである。皮膚結核様病変の1件は1歳女児に接種後1〜3日という早期に発生したと報告されている。


 照会先 厚生省保健医療局結核感染症課
 担当者 課長補佐 猿田(内2375)
 予防接種係長 丹後(内2383)
 TEL [現在ご利用いただけません](代表)
 FAX 03(3595)2263(ダイヤルイン)


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