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第6回「これからの墓地等の在り方を考える懇談会」議事要旨

日時 平成9年10月23日(木)
13:30〜15:30
場所 通産省別館905号会議室

出席者 浦川委員 長江委員
大澤委員 増田委員
甲斐委員 森 委員
金光委員
欠席者 磯部委員
塩見委員
橋本委員
藤井委員
森田委員

ゲストスピーカー

安田 睦彦 氏(葬送の自由をすすめる会)
薦田 哲 氏( 〃 )
池田 敦子 氏( 〃 )

概要

(1)「葬送の自由をすすめる会」からのヒアリング

○ 先ず前提の話として、今回はいわゆる散骨についての会の姿勢、取り組みについてお話しいただきたいという趣旨であるが、会では、いわゆる散骨については、「自然葬」と呼んでいる。私たちは、従来の墳墓では霊園開発に伴い環境破壊を起こすおそれがあると考え、環境への配慮から自然葬を推進している。
会は、1991年2月に発足し、これまでに147回280人の自然葬を行ってきた。現在全国に11の支部と約6,300人の会員がいる。
最近も、石垣島や大雪山麓で自然葬を行ったが、生前の個人の意思を尊重したものであった。
会の散骨についての見解を述べる。
焼骨は、高温で焼却されているため衛生上問題はなく、埋葬、火葬とは別の問題である。
自然葬は、埋葬、埋蔵とはまったく別の葬法であり、伝統的葬法の復活である。
遺骨遺棄罪との関係では、墓を無断で暴いて撒くと犯罪であるが、散骨するということは、故人を偲ぶ気持ちをもって行われるものであり、また、墓地、埋葬等に関する法律との関係では、法律中に散骨の規定はないが、これは散骨等自然葬が、禁止されていることではなく、想定していないということである。
以上のように法的に問題はないと考え、会を結成し、1991年第1回目の自然葬を行った。これに対する法務省の反応は、葬法の一つの方法として節度をもって行えば違法ではない、厚生省の反応は、散骨は法制定時には想定外であるとして、墓地、埋葬に関する法律は関知しないというものであった。これ以降、自然葬を行ってきたが、一度も問題になったことはない。
会では自然葬を行う場所の割合は、山が3、海が7である。山で行う場合には場所を定めて行っており、現在7カ所で行っている。海は場所を限ることはないが、養殖場は避けるなど配慮を行っている。
自然葬に対する社会的合意を得つつある過程なので、周辺に人がいる場合は、周辺住民の了解を取ることを奨めている。
焼骨の粉末化は、原則として亡くなった方を偲びながら、遺族がやるべきと考えているが、中には業者にやってもらっている人もいる。
自然葬を行っているのは、霊園の開発により、環境が破壊されている現状があるからである。
墓埋法第1条にある国民の宗教的感情とは何か。これをきちんと議論しないと、国家支配につながりかねない。異なる宗教が存在する中でそのようなものが存在するのか。こういったものは、国家が規定すべきものではない。この点についても、もっと慎重に話し合ってもらいたい。会が行っているものも、我々の宗教的感情の発露であると考えている。
個人化、少子化の流れの中で、墓の承継は難しくなっており、家の墓ではなく、個人の墓になりつつある。墓を持つことの負担感は大きい。また、霊園は、その周辺の交通問題や、墓が密集して、周囲の手入れがなされていない墓地で、蚊が大量に発生して周辺の住民が迷惑する等、小さな環境問題となっている。

(2)質疑応答

(委員)

自然葬をしたいという人がいるのは分かるが、今はその人数が少ないために問題は生じていないが、それが増えてきたときに秩序を乱すような問題が生じるかもしれない。海に何千もの人が、いわゆる散骨を行うようになれば、漁場の問題もでてくる。散骨に対しては、社会秩序を守るための基準が必要であると考える。
(会)
これまで一度もトラブルを起こしたことはない。都の水道局も自然葬をさせてもらいたいという会の申し入れを受け入れてくれた。付近のイメージが悪くなるという住民の声もあるが、そこでは土葬を行っている。節度は守ってやっているので、問題ないと考える。
(会)
自然葬は新しい宗教的行為の一つであり、表現の自由、信教の自由から保護されると考える。
自然葬は、増えている状況ではない。そんなに大量に実施されるようになるとは思っていない。
増えた時点で生じる問題を議論するためには、宗教的感情とは何かという点を押さえておかなければならない。新しいから変だ、規制しなければならない、という考えは危険である。
(委員)
厚生省や法務省が散骨の合法性を公式に確認している訳ではなく、また、民事上の損害賠償の問題が生じたときにはその責任問題が生じるだろう。
墓埋法ではたしかに曖昧だが、火葬後の焼骨の処理、すなわち二次葬は制限をすべきでなく自由である、という議論はいかがなものであろうか。法律上規定がない(法律が想定していなかった)としても、散骨については国民の間でのコンセンサスが必要だろう。たしかに、散骨という葬法については国民の間で合意ができつつあるように思われるが、どんな場所にも散骨ができるというコンセンサスはできていないだろう。
(会)
国民のコンセンサスを得なければできないというのはおかしい。
墓埋法は衛生法規であるから、焼骨が衛生上問題ない物質であるなら、焼骨にした後の処理については規制の対象とするべきではない。
(委員)
焼骨を撒くとき注意が必要なのは他人への配慮である。いろいろなルールを決めているということだが、現在のルールを公的なものにする考えはあるか。散骨を行うのは、貴会の人だけではないので、他の散骨を行う人にもそのルールを当てはめないと意味がない。自宅に散骨する人もでてくるだろう。最低限のガイドラインを作る必要があるのではないか。
(会)
今の意見は、自然葬と散骨の区別ができていない。
会以外の人が行う散骨にルールを当てはめることはできるだろうか。そこには個人の自由の問題もある。
会のルールを条例等に位置付け公的なルールとすることについては、会の中で十分に議論が出来ていない。今の時点では消極的である。
(委員)
散骨のルール作りは、国民の宗教的感情に関わる問題であり、国民の宗教的感情は尊重されるべき。散骨については、焼骨という物質(が衛生上問題があるかどうか)の問題ではないので、問題がでてくる可能性がある。また、既に散骨を商売でやっている葬儀社も出てきており、散骨が商業化する不安もある。やはり貴会以外の散骨には不安がある。公的なルールが必要ではないか。
(会)
自然葬は個人が良いと思えば良いというのが本質と考える。公的ルールを作るのは時期尚早であると考える。実際に問題も起こっていないし、この状況で国が積極的に動くことは問題であろう。
統一的なルール作りについては検討中である。
(会)
商業化される際には、ルールが必要と考えるが、自分たちがルールを示した時点で、自由を自ら制限することになる。
(委員)
法律の中に枠組みとして規定される方が、権利として確立されるのではないか。
(会)
法律の定め方による。また散骨についての地域性もあるだろう。

(委員)

貴会のルールは文書の形で存在するのか。
(会)
文書で基準は示していないが、指示はしている。
現在はまだ運動体としての活動の段階である。会の外に対して、どうしろというようなことは言っていない。

(委員)

火葬率5%以下のフランスでさえ、「公道以外ならどこでも撒いてよい。」というルールがある。まして、97,5%以上という火葬率の高い日本では、きちんとしたルール作りは、必要であろうと思われる。いくら自然葬と散骨に分けて、自分たちの会と他を区別したとしても、世界的にみても葬法(一つの葬儀としての行為)としては、スキャタリング「散骨」以外の何ものでもないと言える。

以上で、質疑応答、意見交換を終了した。

次回は無縁墳墓の改葬手続を中心に討議を行う予定。


 問い合わせ先 厚生省生活衛生局企画課
    担 当 乗越(内2417)
    電 話 (代)[現在ご利用いただけません]


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