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平成9年6月27日

救急医療体制基本問題検討会中間報告(概要)

1.はじめに

 我が国の救急医療体制については量的な整備はほぼ達成されつつある一方、一層の質的な充実と地域格差の是正が求められている。本中間報告書は、これまでの検討会における議論を踏まえ今後の救急医療体制のあり方の基本的な方向性について、中間的に意見をとりまとめた。

2.救急医療体制の基本条件

(1) 住民にも救急隊にも分かりやすく、利用しやすい救急医療体制
(2) 地域単位での救急医療体制の確保
(3) 地域性の尊重
(4) 少子高齢社会への対応
(5) 大量患者発生時への対応

3.救急医療体制のあり方

(1) 日常生活圏である二次医療圏において救急医療体制を完結することを目指し、救急医療の確保を医療計画において位置付け、初期、二次、三次救急医療機関の機能分担に基づいて、地域において効率的な体制を構築する。また、地域住民に対し、整備された救急医療体制を広く広報する。

(2) 現行の消防法に基づく救急医療体制と厚生省補助金による救急医療体制を一元化し、効果的な救急医療体制とする。

(3) 二次医療圏ごとに行政(消防機関を含む)、医師会、医療機関、地域住民等によって構成される協議会を設置し、より効果的な救急医療の提供につき検討・評価をする。

(4) 救急医療機関の診療情報が的確に救急隊に伝わり搬送業務に活用できるよう、住民にも救急隊にも利用しやすい救急医療情報システムを構築する。

(5) 大学附属病院は、二次医療圏を越えた広域をカバーする「救命救急センター」として機能すべきである。また、救急医学に関する卒前教育及び卒後臨床研修を充実すべきである。

4.行政の役割

(1) 救急医療体制の確保は、各地方自治体の重要な政策課題として位置付けられ、各自治体が地域の実情に即して主体的に関わるべき事項である。

(2) 国は、地方自治体に対する支援を行うほか、救急医療制度、救急医学教育といった救急医療体制の基盤的な事項につき、長期的な視野に立ち充実すべきである。

5.今後の検討課題
 今後は、この中間報告で示した基本的な方向性に基づき、救急医療の啓発普及、小児救急医療体制等の具体的な救急医療体制、救急医学教育等について更なる検討を行う。


平成9年6月27日

救急医療体制基本問題検討会中間報告

1.はじめに

 我が国の救急医療体制については、いつでも、どこでも、だれでも適切な救急医療を受けられるよう、昭和39年に創設された救急病院・救急診療所の告示制度に加え、昭和52年からは、初期、二次、三次の救急医療機関及び救急医療情報センターからなる救急医療体制の体系的な整備を推進してきた。また、救急現場及び医療機関への搬送途上において、傷病者に対する応急処置を充実する観点から、平成3年には救急救命士制度を創設したところである。
 このため、現在では、全国的には救急医療の量的な整備はほぼ達成されつつある。しかしながら、一方では地域格差の解消、休日・夜間の診療体制の強化といった課題も指摘されている。
 救急医療は、社会環境、疾病構造の変化等と密接に関連しており、近年ますますその重要性が高まっている。また、現在国会で審議されている医療法の改正法案では、医療計画において救急医療の確保に関する事項を必要的記載事項とするとともに、救急医療等を実施する地域医療支援病院を創設することとしており、これら救急医療を取り巻く環境が大きく変化する中で、我が国における救急医療体制の一層の質的な充実と地域格差の是正が求められている。
 本検討会では、こうした状況を踏まえ、将来の我が国における良質な救急医療の効率的な提供体制のあり方等について、平成9年2月に設置されて以来検討を行ってきた。本中間報告書は、これまでの議論を踏まえ、今後の救急医療体制のあり方の基本的な方向性について中間的に意見をとりまとめたものである。
 今後は、この中間報告で示した基本的な方向性に基づき、救急医療体制のあり方にかかる具体的な内容及びその他の項目について、本検討会において更なる検討を行うこととする。

2.基本的視点

 救急患者とは、通常の診療時間外の傷病者及び緊急的に医療を必要とする傷病者をいい、これらの救急患者に対し、医療を提供する医療機関を救急医療機関という。
救急医療は“医”の原点であり、かつ、すべての国民が生命保持の最終的な拠り所としている根元的な医療と位置付けられる。従って救急医療は地域において重要な政策課題であり、地域住民のニーズを満たすよう充実する必要がある。

[救急医療体制の基本条件]

(1) 住民にも救急隊にも分かりやすく、利用しやすい救急医療体制

 救急時に患者が混乱することなく適切かつ迅速に救急医療を受けることが出来るよう、また救急隊が迅速に患者を救急医療機関に搬送できる体制であること。

(2) 地域単位での救急医療体制の確保

 救急医療機関の機能分担を明確にし、原則として日常生活圏である二次医療圏単位で、初期、二次、三次の救急医療体制を完結すること。

(3) 地域性の尊重

 地域の医療資源を効果的に活用し、地域住民が利用しやすく、地域の実情に即したものであること。

(4) 少子高齢社会への対応

 少子化、高齢化、疾病構造の変化といった大きな社会変化に伴う様々なニーズに的確に対応できる体制であること。

(5) 大量患者発生時への対応

 大量の傷病者が発生した場合にも、充分対応できる救急医療体制であること。

3.救急医療体制のあり方

 日常生活圏である二次医療圏において救急医療体制を完結することを目指し、救急医療の確保(救急隊の搬送先を含む)を医療計画において位置付け、初期、二次、三次救急医療機関の機能分担に基づいて、地域において効率的な体制を構築する。また、こうした救急医療体制を広く適切に地域住民に情報提供を行う必要がある。

(1) 救急医療機関の機能

 初期救急医療機関とは、外来診療によって救急患者の医療を担当する医療機関であり、救急医療に携わることを表明する医療機関とする。
 二次救急医療機関とは、入院治療を必要とする重症救急患者の医療を担当する医療機関とする。
 三次救急医療機関とは、複数の診療科領域にわたる重篤な救急患者に対し、高度な医療を総合的に提供する医療機関(救命救急センター)とする。

《二次救急医療機関の要件》

(1) 救急患者の診療につき、24時間体制で必要な検査、治療が出来ること(病院群輪番制病院は当番日においてその体制を有すること)。
(2) 救急患者のために優先的に使用できる専用病床を有すること。
(3) 救急患者を原則として24時間体制で受け入れ(病院群輪番制病院は当番日において24時間体制で受け入れること)、救急隊による傷病者の搬入に適した構造設備を有すること。

《三次救急医療機関の要件》

(1) 重篤な救急患者に対し、常に必ず受け入れる診療体制をとること。
(2) ICU、CCUを備え、24時間体制で重篤な患者に対し高度な治療が可能なこと。
(3) 医療従事者に対し、必要な研修を行うこと。

 初期救急医療については、在宅当番医制及び休日夜間急患センター等によって概ね整備されつつあるが、休日・夜間の診療体制をさらに強化する必要がある。また、その救急医療体制を広く地域住民に広報する必要がある。
 二次救急医療機関については、住民の利便性を第一に考慮した場合、24時間体制で、救急医療を提供する医療機関が日常生活圏に整備されることが望ましい。しかしながら、医療資源の効率的活用の見地から、病院群輪番制によって地域で24時間体制を整えることも救急医療を確保する一つの方策である。また、各医療機関の診療科の特色を生かした輪番制を組むことも推進すべきである。
 三次救急医療機関である救命救急センターについては、全国131ヶ所(平成8年度末現在)に整備され、量的には当初の目標は達成されたが、二次救急医療機関の充分なバックアップ体制とはなっていない地域もある。今後は、既存の救命救急センターを再評価し、その機能を強化するとともに、地域の必要に応じて救命救急センターを整備する必要がある。

(2) 救急医療体制の一元化

《現状と課題》

 昭和39年に創設された、いわゆる救急告示制度は、救急隊によって搬送される患者を受け入れる医療機関の確保という観点から整備され、昭和52年から開始された初期、二次、三次救急医療体制は、当初は救急告示制度を補完する性格であったが、現在では地域における救急医療体制を確立することを目的として整備されてきている。
 初期、二次、三次救急医療機関の中には、救急隊による患者の搬送先として位置付けられていないものもあり、また、告示された救急病院・診療所が担うべき役割を果たしていない場合がある。このため住民や救急隊にとって両制度が分かりづらく、利用しづらいものとなっており、一元化を図る必要がある。

《一元化の方向性》

(1)都道府県が作成する医療計画に基づき、地域の実状に応じた救急医療体制を確立する。
(2)医療計画において、救急医療機関について初期、二次、三次の機能分化を図る。
(3)住民に対し必要かつ十分な情報を提供する体制をつくる。
(4)救急隊により搬送される患者の搬送先の医療機関についても、医療計画に基づき確保する(救急隊により搬送される患者は原則として重症であることから、その搬送先は、原則として入院治療 が可能な二次又は三次救急医療機関とする)。
(5)関係者による協力体制を日常生活圏で確立する。
(6)24時間体制の救急医療体制を二次医療圏ごとに確保する。

《一元化への手続き》

 上記の方向性を踏まえ、以下の手続きにより一元化を図る。なお、詳細については、引き続き検討することとする。

(1)医療計画策定指針において初期、二次、三次救急医療機関の施設・機能基準を明確化し、これに基づき体制を整備する。
(2)消防法に基づく厚生省令と、医療法に基づく医療計画に関する策定指針とを改正し、両者の基準を一致させる。
(3)都道府県知事が医療計画を策定する際、救急医療体制を検討するに当たっては、地域救急医療対策協議会(衛生主管部局、消防・防災主管部局、医師会、歯科医師会、医療機関、消防機関等によって構成される)を設置することが望ましい。
(4)都道府県知事により策定された医療計画に定める救急医療機関のうち「救急隊により搬送される傷病者に関する医療を担当する医療機関」が告示される。

(3) 救急医療機関と救急隊との連携強化

 救急患者に迅速かつ適切に救急医療を提供するには、救急医療機関と救急隊との緊密な連携が必須である。前述の地域救急医療対策協議会や二次医療圏ごとの協議会(行政(消防機関を含む)、医師会、歯科医師会、医療機関、地域住民によって構成される)などの救急医療に関する恒常的な協議の場を設け、より効果的な救急医療の提供につき検討・評価をすることが望ましい。

(4) 救急医療情報の提供

 都道府県においては、救急医療情報センターが整備されつつあるが、未整備の県及び救急隊による患者搬送に有効には使用されていない地域がある。救急医療機関の診療情報が的確に救急隊に伝わり、搬送業務に活用できる体制を構築する必要がある。救急医療機関と救急隊との更なる連携のもとに、住民にも救急隊にも利用しやすいものとなるようさらに検討する必要がある。

(5) 大学附属病院における救急医療のあり方

 大学附属病院は、高度な救命救急医療機関としての機能を有し、24時間救急医療体制を組むことが可能であることから、二次医療圏を越えた広域をカバーする「救命救急センター」として機能すべきである。
 本来、大学附属病院は、救急医療を担当する医師及び歯科医師を養成する使命を有している。従って、すべての医師が基本的救命処置を行えるよう、大学医学部は救急医学講座を整備するなど、救急医学に関する卒前教育及び卒後臨床研修をさらに充実すべきである。そのためにも大学附属病院が「救命救急センター」として機能する必要がある。また、高度な救急医療である広範囲熱傷、中毒、多発外傷などの特殊救急にも対応できるよう専門医を養成していくことも大学附属病院の重要な役割である。

4.行政の役割

 救急医療体制の確保は、地域住民の最も要望の強い事項の一つであり、各自治体の重要な政策課題として位置付けられ、地方自治体が地域の実情に即して、主体的に関わるべき事項である。
 しかしながら、高度な救急医療及び専門性の高い救急医療の提供については、地域の医療資源を考慮した場合、限界があることから、国がこれらの救急医療の提供につき、効果的な支援体制を整備し、基本的には、地方自治体が二次医療圏ごとに救急医療体制を確立できるよう支援すべきである。
 また、救急医療制度、救急医学教育といった救急医療体制の基盤的な事項は、国の責務であり長期的な視野に立ち充実すべきである。
 一方、地域住民のニーズに応える救急医療体制を構築するには、地域の関係機関の密接な協力が不可欠であり、救急医療に関する広報等を充実させ、地域住民が必要かつ充分な情報を入手できる体制をつくることも重要な地域の責務である。

 以上、救急医療の基本問題について中間的に意見をとりまとめたが、今後は、下記の事項につきさらに検討し、最終報告をまとめることとする。


今後の検討課題(最終報告へ向けて)

1.救急医療の啓発普及

(1) 救急医療に関する情報提供体制について

(電話・faxサービスなど)

(2) 国民に対する普及啓発

・救急蘇生法の普及啓発について
・119番の利用法について

2.救急医療体制(続き)

(1) 小児救急医療体制

少子社会における小児救急医療体制について

(2) 特定診療科の救急医療体制

眼科、耳鼻咽喉科、精神神経科、歯科等の診療体制について

(3) 救急医療体制における公的病院と民間病院の位置付け

(4) 病院前救護体制について

・救急蘇生法の普及について
・ドクター・カーの効率的・効果的運用について
・救急救命士の資質の向上について
・救急救命士への指示体制について

(5) 広域救急患者搬送システム

・ヘリコプターによる広域救急患者搬送について

(6) へき地・離島の救急医療

・へき地医療全体の枠組みの中で検討

(7) 高齢社会に対応した救急医療体制

・各種在宅サービス事業との連携について

(8) 大量患者同時発生時の対応

・大量の患者発生を想定した対応について

3.救急医学教育

(1) 救急医療の生涯教育
(2) 医療従事者に対する教育・研修のあり方

4.救急医療の財源

(1) 国と地方の役割分担
(2) 補助金のあり方
(3) 診療報酬について


 問い合わせ先 厚生省健康政策局指導課
    担 当 土居(内線2559)、遠山(内線2550)
    電 話 (代)[現在ご利用いただけません]

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