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公衆衛生審議会成人病難病対策部会議事録


厚生省保健医療局疾病対策課

公衆衛生審議会成人病難病対策部会次第

日 時:平成8年6月3日(月) 14:30 〜17:05
場 所:松本楼「鶴亀の間」

議 題

1.開 会

2.議 事

1.難病対策の現況について
2.クロイツフェルト・ヤコブ病について
(1)現状の報告
(2)プリオン病について
(3)狂牛病について
(4)平成8年4月WHOの会議について
(5)平成8年5月WHOの会議について
(6)今後の調査研究計画について
3.その他

3.閉 会

○大谷部会長

皆さん、お忙しいところを御苦労様でございます。それでは定刻になりましたので、ただいまから公衆衛生審議会成人病難病対策部会を開催いたします。
委員の出席状況につきまして、事務局から御報告願います。

○荒川保健医療局疾病対策課課長補佐

御報告申し上げます。
まず、本日公衆衛生審議会長の指名により、新たに倉田委員が成人病難病対策部会の委員に加わられましたことをお伝えいたします。
19名の委員中、石井委員、石川委員、島委員、瀬佐委員、町野委員、南委員並びに日本医師会の改選に伴いまして新たに委員となられました津久江委員の7名が欠席されておりますことを御報告いたします。
なお、高久委員には少し遅れて御出席になられる旨、御連絡がございました。
また、本日の議事のため、参考人としてプリオン病等の専門家の先生をお4方お呼びいたしておりますので御紹介申し上げます。
東京大学農学部教授の小野寺先生です。
東北大学医学部教授の北本先生でございます。
国立精神・神経センター国府台病院長の佐藤先生でございます。
九州大学名誉教授の立石先生でございます。
議事に先立ちまして、松村保健医療局長よりごあいさつを申し上げます。

○松村保健医療局長

保健医療局長の松村でございます。
今日は、部会長を始め部会の先生方、更には参考人の先生方に御出席をいただきまして誠にありがとうございました。
今日は公衆衛生審議会の成人病難病対策部会ということでございますけれども、この難病の問題について最近といいましょうか、ここ1年ばかり、この研究の見直し、いわゆる研究のリストラというようなことを、御意見をちょうだいしながら大胆に進めてきております。長い歴史のある難病対策でございますけれども、難病の研究が非常に進んだということ、あるいは医療全体が進んだということもございまして、難病の問題も医療の問題から福祉の面も取り入れるというふうにかなり大きく変化をしてきておるところでございます。 私どもも、昨年の暮れに障害者プランというものがまとめられまして、これに基づいて各種の障害者の問題を新しく進めていくことになったんですけれども、この中で難病患者の皆さん方にも福祉の対応を同じようにすべきだと、こういうようなお話もいただきまして、実は今年度からそういった福祉的な施策も組み込むと、こういうふうな傾向というか、方向になっております。
そういったことを、今日いろいろお話も出るかと思うのでありますけれども、本日最もメインの問題は、先ほどお話がございましたけれども、クロイツフェルト・ヤコブ病というものに新たな光が当たってまいりまして、光というか、心配というか、懸念というか、この問題について今日は先生方からいろいろな角度から御自由に御意見をちょうだいをしたいと、こういうふうに考えてこの会を持ったところでございます。
このクロイツフェルト・ヤコブ病というのは私が申し上げるまでもないことでありますけれども、私ども難病の中で対応をしておった訳でありますが、後で小林生活衛生局長から詳しくお話があると思いますけれども、イギリスでいわゆる狂牛病という病気との関係を、これも懸念の部分だろうと思いますけれども懸念をされまして、これについてWHOを始め世界が非常に注目をしておると、こういう状況でございます。
厚生省といたしましても、対策は講じております。また、それは全体的なものは小林局長の方にお任せすることにいたしまして、私どもの方、難病の分野におきましては、ここにおいででございますが、国府台病院の佐藤先生を班長といたしまして、緊急的に我が国でこのクロイツフェルト・ヤコブ病を調査しよう。なかんずく、その中でも新型と言われるクロイツフェルト・ヤコブがあるのか、ないのか。こういったことも含めて、緊急に調査をしていこうということになっております。
そういったことで、本日御専門の参考人の先生方にもお忙しい中おいでいただいて、その問題についての御意見をちょうだいすると、こういうことでございます。
以上、本日の会の冒頭に当たりまして、非常に簡単でございますけれども、一言ごあいさつを申し上げます。どうもありがとうございます。

○荒川補佐

本日の議題といたしまして、クロイツフェルト・ヤコブ病についてということで整っておりますが、厚生省内の狂牛病連絡協議会の取りまとめ役でございます小林生活衛生局長が出席されておりますので、ごあいさつをお願いいたします。

○小林生活衛生局長

生活衛生局長の小林でございます。ちょっと風邪を引いておりましてお聞き苦しいかもしれませんが、御容赦を願いたいと思います。
この3月20日に、実は英国政府の諮問委員会がヒトの新型のクロイツフェルト・ヤコブ病、バリアントCJDと言っていますが、それにかかった10人の患者につきまして狂牛病感染症からの曝露が発病と関連している可能性が高いと、こういう発表をいただいたところでございます。飽くまでもこのときにはバリアントクロイツフェルト・ヤコブと言っておりまして、クロイツフェルト・ヤコブと言っている訳ではないのであります。
それで、この10人の患者さんは現在ではあとイギリスに1名、フランスに1名で12名にはなっておりますが、そのときは10人という発表がありました。厚生省としては、エイズ対策の問題もあり、緊急にどうするかということなんですが、このときに3月25日、それから発表の5日後にEUの常設獣医委員会というのがありまして、そこで英国産の牛肉等の輸出禁止措置等を採択をいたしました。これが、3月27日には欧州委員会で正式決定ということをEUの方で措置をとられた訳であります。
日本政府としては、実は何も情報がないというような状況下であったんですけれども、イギリスに一番近いところのEUの、それも専門家委員会が英国産の牛肉等について、その輸出を禁止するということをとられたものですから、食品衛生法の方では輸入禁止という措置は法律上とれない訳ですから、また食べたということも言っている訳ではない。ただ、狂牛病に曝露をしたと、こういう表現なものですから、食品衛生法上では法律で輸入禁止という措置はとれなかったのでありますけれども、すぐさまEUの決定を受けた形で日本国へのイギリスの牛関連商品については輸入を自粛をしていただくということをいたしましたし、それからその次の3月27日には農林省の方で牛関連の商品を、向こうは動物検疫の立場からこれを輸入禁止にしたというような措置をとった訳でございます。
そうしておいて、実は日本国内対策をこれから考えていかなければならぬということになる訳でありますけれども、私ども厚生省としては、これは健康政策局も、保健医療局も、薬務局も、それから私ども生活衛生局は食品を扱っている訳で食品と、各局にまたがる訳でありますけれども、これだけ複数の局にまたがる場合は、大臣官房でもってこれに対応するというのが普通でありますが、大臣官房の方は皆さん御案内のようにエイズでもって大変多忙を極めている。こういうことから、当面は食品の管理というのが一番大切ということから、生活衛生局の方で省内の取りまとめをし、情報連絡係をさせていただくと、こういうことにまずした訳であります。
それと同時に、政府部内でも、実は厚生省の方の食品だとか、さっき言った医療の問題等々だけではなくて、農林省も食品の輸入をやっている。それから、今回でもイギリスが最初に学校給食の中での牛肉を食べないということをやられたと同時に、日本でも文部省の給食はどうするのかという問題、それから研究に対してはどうしていくかということで科技庁の問題等々、関係省庁もたくさんありますので、国会答弁は厚生省、農林省で大体答弁をいたしておりますけれども、政府部内もどちらかと言えば健康に関係するということで、どこの省庁かはっきりしないときは積極的に厚生省が答弁をする。こんな心構えでもって政府部内も対応をしてきて、私ども生活衛生局では情報収集と、それから関係各局への情報伝達ということを中心にお世話役をやらせていただいておる次第でございます。
それで、私ども今般とりましたことは、それぞれ関係のする省、関係の局はそれぞれの省、局でお仕事をしていただく。
ただ、一番心配いたしましたのは、この狂牛病対策に対しまして関係局で意見が余りばらばらになっては困る訳であります。そういうことから、食品衛生調査会の方で狂牛病の関連6名の先生方、今日はその中で3名の方にお越しいただいていますが、6名の方を食品衛生調査会の臨時委員として直ちに発令をいたしましてお願いをいたしました。そして、食品衛生調査会で外国から入ってくる情報等を全部御披露を申し上げまして、そしてそこで一般的な御議論をいただいた上で保健医療局の所管の審議会、薬務局の審議会等へ情報が伝わる。それも、生の審議会の意見が伝わるようにという処置をとったところでございます。
そういうことですから、食品衛生調査会には今回、私ども守秘義務の掛かる国家公務員並びに審議会の委員の皆さん方は食品衛生調査会外の人も含めてどうぞ入ってきてください。一緒に聞いてくださって結構ですという、いわゆる一般公開ではないですけれども、セミオープンの形での情報公開をやりました。そして、関係審議会とも同じようなことを聞いて、そしてそれを解析して各局の施策に結び付けるというようなことを対策としてとってきた訳でございます。
そういうことで、今回はこうして保健医療局の方で難病の研究を今までやってこられた訳ですが、そこを土台にして、本来的には狂牛病対策というより、今回は狂牛病対策と言っていますけれども、本当はプリオン病に対してどうしていくのかということが大変大きな課題になる訳であります。そういう意味では、松村局長からお伺いしたところ、保健医療局の方の公衆衛生審議会でもって御議論いただけるということでございまして、今日は大谷部会長さんが出て来いということでございますので、「はい分かりました」と言って参上した次第でございます。
詳しくは、後は乳肉衛生課長が資料に基づきまして御説明をさせていただきます。私もしばらく時間がありますので聞かせていただきまして、このプリオン病対策として、また狂牛病対策として、この公衆衛生審議会の中の分野、外に触れて政府にこういうことをしてほしいというようなお話がありましたら、合わせて聞かせていただければと思う次第でございます。
どうも委員の先生方、誠に御苦労様でございます。ありがとうございます。

○大谷部会長

どうもありがとうございました。よく分かりました。
それでは、早速議事に入りたいと思いますが、その前に事務局から資料の説明をお願いします。

○荒川補佐

資料の確認をさせていただきます。
本日、ダブルクリップで止めました資料が2部お手元にわたっているかと思います。
1つ目は、一番後ろに『難病対策に関する報告集』という青表紙の本が付いております。 その前に、「難病対策について」というつづりが1部付いております。
それから、もう一つのダブルクリップの方でございますが、1番から15番まで、かなり項目数の多いものでございますが、右上のところに資料ナンバーが振ってございます。
資料1が、今年の4月6日付の『ザ・ランセット』の記事でございます。最初に原文と、後に和訳が付いてございます。
資料2が、本年4月のWHOの専門家会議のプレスリリースでございます。最初に英文の方が付いてございます。
資料3が、今年の4月のWHOの専門家会議の最終報告でございます。
資料4が「クロイツフェルト・ヤコブ病について」というつづりでございます。
資料5は、つづってございませんで1枚紙でございますが、「クロイツフェルト・ヤコブ病の研究」というものでございます。
資料6が、バリアントCJDについてというものでございます
資料7が、記者発表資料でございまして、「クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と母乳の関係について」でございます。
資料8が、記者発表資料「クロイツフェルト・ヤコブ病に関する緊急全国調査準備委員会の開催について」というものでございます。
資料9が、本年5月のWHO専門家会議の出席報告でございます。
資料10が、特定疾患調査研究事業特定疾患に関する緊急研究班クロイツフェルト・ヤコブ病等に関する緊急全国調査研究班第一次調査関連資料」でございます。一番最初に、第一次調査票の様式が載ってございます。
資料11でございますが、「牛海綿状脳症(いわゆる狂牛病)対策について」というものでございます。
資料12が、記者発表用資料「牛海綿状脳症(BSE)等に関する当面の対応についての食品衛生調査会からの意見具申について」でございます。
資料13が、記者発表資料「伝染性海綿状脳症に係ると畜場施行規則の一部改正等について」というものでございます。
資料14が「狂牛病(BSE)と食の安全性について」でございます。
最後に資料15が、「プリオン病について」ということでございます。
1から15まで、どこか抜けているものがございましたら教えていただきたいと存じます。よろしゅうございますか。
以上でございます。

○大谷部会長

ありがとうございました。
それでは、早速議題に入りまして、難病対策の現状につきまして事務局から御説明をお願いします。

○清水保健医療局疾病対策課長

それでは、資料に基づきまして昨年の12月28日にお集まりいただきました以降から本日までの班のことを主にいたしまして、難病対策につきましてお話をさせていただきます。
疾病対策課長の清水でございます。よろしくお願いいたします。
まず、お手元の参考資料の「難病対策について」というのがございますが、それの1ページと2ページに平成8年度の難病に関します予算が書いてございます。これは特定疾患だけではございませんで、難病全般に対します対策の概要、それに基づきます予算が書いてございます。
難病対策につきましては、御承知のとおり調査研究の推進あるいは医療施設の整備、医療費の自己負担の解消、地域における保健、医療、福祉の充実連携、それからQOLの向上を目指した福祉施策の推進という5本柱で本年度からこういう対策を進めるというふうになっておりまして、総額844 億円で、前年度27億3,000 万円増というふうなことでございまして、施策を推進させていただくということになっております。
2ページ目でございますが、これの詳細が書いてございまして、私ども保健医療局のみならず児童家庭局あるいは国立病院等々の予算も含めまして書いてございます。主な増額分でございますけれども、2ページにございますが、研究のところでは心身障害研究が5,000 万円伸びておりますし、医療費の自己負担のところでは特定疾患治療研究事業、私どものところでございますが10億円増でございます。あるいは、小児慢性が6億5,000 万円の増、それから特定疾患医療従事者研修事業の下でございます。すみません。難病情報センター事業費が新規で付いております。それから、QOLの向上を目指した福祉施策の推進というふうなことで、これも新規で2億円ほどの予算が付いております。これが、8年度の難病対策関係の予算でございます。
続きまして、難病対策につきまして青本で御説明を申し上げたいと思います。青い本の9ページをご覧いただきたいと思います。これは、先生方に昨年の末、12月28日に了承いただきましたけれども、その前日の27日に公衆衛生審議会成人病・難病対策部会の難病対策専門委員会でおまとめいただきました報告書の概要でございまして、報告書はその前に付いてございますけれども、21世紀を目指しました総合的な難病対策を検討するために、平成5年7月にこの成人病難病対策部会の下に難病対策専門委員会として発足をされ、そして3年間にわたりますいろいろな御審議をいただきまして、平成6年7月には中間報告を、そして7年12月27日に最終報告をいただいた訳でございます。
そこに書いてございますが、今後の特定疾患対策の基本的な方針といたしまして、特定疾患対策の重点的かつ効率的な施策の充実と推進を図るために稀少性、原因不明、効果的な治療方法未確立、生活面への長期にわたる支障という4要素に基づいて、対象疾患の範囲の明確化が必要である。
更に難病対策につきましては、これまで調査研究の推進、医療施策の整備、医療費の自己負担の解消、地域保健医療の推進を中心に進められてきておりましたけれども、4本の柱を地域におきます保健、医療、福祉の充実連携とすることと提唱され、更に5本目の柱としてQOLの向上を目指した福祉施策の推進を加えまして、保健、医療、福祉の総合的な対策を推進していくことが適当という御報告をいただいた訳でございます。
それに基づきまして、先ほどお話をいたしましたような予算措置がとられてございますが、その詳細がこの青本の一番後ろの35、36ページに書いてございますので、概略を御説明いたします。
35ページ、36ページをご覧いただきたいと思います。「難病患者等福祉施策整備計画の概要」というのがございますが、この難病の患者等福祉施策の対象者につきましては、介護が必要な状態にある特定疾患、もっと詳しく言いますと特定疾患調査研究事業の対象疾患、大体118 疾患ほど現在ございますが、その疾患及びリウマチ患者であって、次のいずれの要件をも満たすもの、すなわち老人福祉法、身体障害者福祉法等の施策の対象とはならない方、そして在宅で療養している方でございまして、これらの方々に平成8年度からホームヘルパーさんの派遣、これはヘルパーさんとして1,000 人、それからそのヘルパーさんの研修、そして日常生活用具6品目、それからショートステイ、こういった福祉施策を平成14年度までの7か年計画で随時充実をしていくというふうなことでございまして、先ほどの2億円の予算措置がなされた訳でございます。
そのほかに、下に書いてございます保健医療福祉施策につきましては、これまでも既に行っているものでございまして、研究のほかに医療相談、訪問診療等々ございまして、最後に先ほどお話ししました新規の難病情報センターというものも創設するようになっておる訳でございます。
36ページに、その福祉施策の詳細が書いてございます。先ほどの保健医療局長のお話にもございましたように、この難病患者さんに対します福祉施策と申しますのは障害者プラン、これは昨年の12月18日に出ましたけれども、それの難病を有する者への対応というふうなことで、難病を有する者に対して関連施策としてホームヘルプサービス等、適切な介護サービスの提供を推進すると、この文言が入りまして、それに基づきまして先ほどの施策の推進をすることになった訳でございまして、この事業につきましては実施主体は市町村、補助が国2分の1、都道府県及び市町村4分の1というふうになっております。
研修は、県と指定都市でございます。
そして、平成9年の1月からの実施でございまして、8年度予算といたしまして2億1,000 万円を計上されている訳でございます。
このようにしまして、福祉施策につきましては平成8年度から新たにさまざまな事業を開始することになった訳でございます。
それと同時に、また何度も申して恐縮でございますが、白い方の「難病対策について」の3ページにお戻りいただきたいと思います。ここにございますように、本年度から難病患者リハビリテーション料というものが新設をされまして、在宅で療養に当たっている方の下の28疾患の方につきましてリハビリテーション料というものが新しく設けられることになりました。これで通常、福祉施策と申しますとホームヘルパーの派遣、ショートステイ、日常生活用具、デイケアというのが4本柱と言われますけれども、デイケアということにはなりませんでしたが、こういう難病患者リハビリテーション料というふうなことで、それに変わるような制度も出来ましたので、一応仕組みといたしましては難病の福祉施策というものが緒に就いたのではないかというふうに思う訳でございます。
それから、今度は先ほど保健医療局長の話にもございました特定疾患調査研究事業の再編成について御報告をいたしたいと思います。
まず、白い資料の4ページでございますけれども、これが7年度までの特定疾患調査研究班の班長さんと班名でございまして、44の班、14億9,000 万円の予算でこれを推進していただいた訳でございます。
5ページ目は治療研究事業、自己負担分の公費負担をやっています37疾患、今年の1月から網膜色素変性症が入りまして37疾患、今年も1疾患追加の予定でございますが、大体29万人余の方がこの施策の対象となっております。
6ページ、7ページは、平成7年度までの特定疾患対策懇談会でお世話になりました先生方と、評価をいただきます評価調整部会の委員の先生方でございます。この特定疾患懇談会の先生方と評価部会の先生方に2月28日にお集まりいただきまして、この44の研究班の評価をしていただきまして、その成果を3月11日に全班長さんにお集まりいただきまして、その評価の内容を還元をいたすと同時に、平成7年度でこれまでの特定疾患調査研究事業を一応これで班を終了するというふうなことでお話をいたしました。
そして、新たな再編成につきましては、特定疾患対策懇談会の下に昨年の11月に特定疾患対策懇談会の特定疾患調査研究事業再編成検討委員会というふうなものを設けていただきまして、そして2月22日におまとめいただきまして、2月29日に特定疾患対策懇談会に御報告をいただきました。
それが青い本の11ページからのものでございまして、これの概要につきましては26、27ページにございます。この特定疾患調査研究事業の再編成に当たりましては、最初に平成7年6月に前疾病対策課長から再編成方針案が出されまして、そして7年7月20日から8月末に掛けまして、私の方で各班長の先生方お一人お一人に2時間ずつお話をお伺いをした経緯がございます。そういうことを経まして、昨年の11月に先ほど申しましたように再編成検討委員会を設置をいたしまして、11月13日に第1回が開催され、明けて2月22日までの4回にわたりまして御議論をいただいておまとめいただいたということでございます。
その概要につきましては、26ページにございますように再編成の基本方針及び具体的方策といたしまして4つございますが、そのうちの1つが臨床調査研究グループの創設というふうなことで、これまで個々にございましたものを血液系疾患調査研究班など、14の臓器別臨床調査研究班を設置をいたし、そして各臓器別臨床調査研究班の下に分科会を設置をいたしました。
この分科会には、従来の臨床系の37の班がすべてここのどこかに入っているということになっております。分科会は、特定疾患対策懇談会の評価に基づいて適宜整理を行うことになっております。特に3年あるいは6年でひと区切りというふうなことになっております。
それから、横断的基盤研究グループを新たに設けまして、微生物、免疫、分子病体、疾病モデルの研究を行う基盤研究グループ部門を設置をいたしまして、特定疾患に関して遺伝子解析を行う特定疾患遺伝子解析プロジェクトというものを新たに設けまして、そのほかに疫学及びQOL班を社会学研究部門として設けました。
そのほかに政策的研究部門というものを設けまして、リサーチリソースバンク、それから研究課題、この特定疾患に関する緊急研究班というものを設けておりまして、ここで後で話がございます、先ほど保健医療局長からも話がございましたようなクロイツフェルト・ヤコブの調査もここの緊急研究班でやることにいたした訳でございます。
そのほかに、評価に対する研究班を設けました。研究評価体制につきましてもかなり強化をいたしておりまして、各研究班、分科会ごとに臓器別臨床研究評価委員会、それから臨床調査研究分科会小委員会あるいは基盤研究部門、各部門ごとに研究評価委員を設けまして、そして研究の評価を強化する。
そして、公募制をこの基盤研究部門に導入をいたしまして、研究期間は3年間、最大6年というふうにこの期間も定め、研究発表会も公開といたした訳でございます。
そして、更なる特徴といたしまして若手研究者の育成強化及び弾力的運用というふうなことで、難病特別研究員45歳未満の臨床系の研究者、研究費1人500 万円以上の創設、それから各研究班員は最低200 万円以上、協力者は80万円以上というのも明記されております。
それから、難病特別研究員は基盤研究部門あるいは遺伝子部門、臨床調査研究部門の分科会の研究者を兼任というふうに、両方にまたがって班に入ることになっています。
その他、研究班及び分科会は顧問、幹事等の役職を廃止しまして、班長さんと班員、それから最小限度の研究協力者というふうなことになっています。
それから、当該事業関係者の年齢に上限を設け、70歳未満というふうなことで比較評価を含めまして、この特定疾患調査研究事業に携っていただく方の年齢が70歳未満というふうになった訳でございまして、そのほか合同シンポジウムを支援というふうなこともやっております。
このようなことで再編成案がございまして、そしてこの班長さんは4月15日の第1回の新しい特定疾患懇談会、この青い本に挟まっておりますが、その名簿にございます新たな特定疾患対策懇談会の先生方によりまして、新しい研究班の班長さんと班員をお決めいただきました。
それから、31ページ、32ページ、33ページ、34ページまでございます評価委員のメンバーにつきましても延べ183 名の方、特定疾患懇談会の26人の先生を加えますと、206 名から成ります評価の先生方がお決まりになった訳でございます。
その後、4月15日にはお手元に挟んであります資料にございますけれども、特定疾患対策懇談会の下に評価基準作成部会あるいは対象疾患検討部会というものを設けまして、今後評価の基準あるいは治療研究事業に加わります対象疾患にどういう基準で定めるかというふうなことを決めていただくことになっておりまして、そのメンバーの方は3ページ、4ページにある訳でございます。
そのほか、4月に入りましてからは新しいメンバーの方の特定疾患懇談会を4月の時点でお話ししましたが、そこでクロイツフェルト・ヤコブ病の緊急全国調査についてこれを行うことが決まりました。
もう一つ、医薬品の適用外使用に関する調査研究につきましても昨年11月、新聞で報道されて以来、全班長さんに調査を行っておりまして、その調査の結果は5月に発表をした訳でございまして、この参考資料の8ページ以降に付いてございますのでごらんいただきたいと思うんですが、そういうことで今年から2次調査を行うというふうなことも決めております。
その後、クロイツフェルト・ヤコブにつきまして、先ほど来ございますように緊急全国調査をやること、それから従来のスローバイラスの遅発性ウイルスの研究班でも引き続き研究を進めるということで、この2つの研究班で今後研究を推進していくというふうなことも表明した訳でございます。
そういうことを経まして、5月14日に新たな全部の班長さんの会議を48人中45人の御出席で開いたところでございまして、今後は6月10日まで公募締切り、6月20日に班長さんから最終的な案をいただいて、7月中に新しい研究班体制を構築する予定にいたしております。
以上でございます。

○大谷部会長

どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの難病対策の現状についての御説明について、何か御質問でもございますでしょうか。

○杉村委員

この前の評価委員会で、流れは変わったらしいとは、分かったんだけれども、実際には具体的にどういうことが起こって、したがってどういうふうに改善されるよう変わったというのが実感として感じられない。
それは字面は判かったけれども、例えば去年の11月ならば11月に行われた評価委員会でどういうことが問題になったがゆえにどうなったかとか、そういうことは何かありますか。
○清水課長
9ページをごらんいただきたいと思います。ちょっとそこをはしょりましたのであれでございましたけれども、特に現行の対策というところでございます。ここは大変うまくいって成果もたくさん上がった訳でございますが、その点はむしろ書いてございますように、まず問題点につきまして現行の対策の評価というふうなことで書いてございます。
例えば、調査研究の推進でございますと、網羅的な班構成であるため班員数が多く、1人当たりの研究費が少額で掘り下げた研究が困難である。あるいは、研究手法、内容の硬直化が見られる。あるいは、治療研究事業との連携が不十分である。こういうふうな御指摘を受けまして、中間報告ではそこに書いてございますような見直しが行われまして、そして最終報告というふうな形になっております。

○大谷部会長

ありがとうございました。
先生、よろしゅうございますか。なかなかこれは複雑なあれだから、私もちょっと聞いてはいるけれども、それは喜ぶ人もあれば、腹を立てる人もいろいろある。それで、予算の総額は幾ら増えたんですか。

○清水課長

調査研究事業は前年同額でございます。

○大谷部会長

それでは工夫といっても本当に工夫が要るだけの話ですね。そういう訳で、結局余り伸びておらぬということであれなんでしょうね。
しかし、これはその一時期にぱっと変えるだけじゃなしに、やはり恒常的に普段から御意見を聞くということが大事かもしれませんね。これは、金額が増えないとすればですよ。だから、どういうふうに厚生省の研究として特色を持っていくかですね。厚生科学会議でも意見は言っているんでしょう。
○杉村委員
意見は言っているんです。つまり、研究費とその効率的利用のことです。

○大谷部会長

研究班のことです。研究費は増やせばいいんだけれども、増えないということですので。

○杉村委員

これについては、これを主に実施したことはないですね。

○清水課長

ありません。これは懇談会のところで。

○大谷部会長

だから、これはそういうことで、いろいろ意見は出るけれども、それは仕方がないので、出来るだけ私どもの希望としては時間を掛けて、既に次のあれに掛けて御検討をしていただきたい。 それでは、そういうことでクロイツフェルト・ヤコブが今日は主流でございますから、次に進めさせていただきまして、クロイツフェルト・ヤコブ病について事務局から説明をしてください。まず、行政の対応からですね。

○三浦保健医療局疾病対策課課長補佐

それでは、資料に基づきまして御説明させていただきます。
ちょっと順番がいろいろございますが、資料の11をごらんいただけますでしょうか。これは、生活衛生局の方でおつくりになった資料でございますが、「牛海綿状脳症(いわゆる狂牛病)対策について」ということでございますが、これまでの経緯を見ていただきますと、先ほど生活衛生局長の方からお話がございましたとおり、3月20日にいわゆる新型のCJD、クロイツフェルト・ヤコブ病にかかった10人の患者さんのレポート、それに対して狂牛病感染牛との関係というものが問題になった訳でございます。
それで、CJD、クロイツフェルト・ヤコブ病との関係で申し上げますと、4月2日、3日にWHOで狂牛病とCJDに関する専門家会議が開催されまして、今日お越しの倉田委員、それから厚生省の担当官がそちらに赴いたということがございます。
続いて2ページでございますが、5月15日の段階で保健医療局としてクロイツフェルト・ヤコブ病等に関する緊急全国調査を実施することを決定したという経緯がございます。 更にその下へいきますと、5月2日、この研究班の準備委員会が開かれた。
それで、その次に5月14、15、16日でございますが、WHOにおいて先ほど来話が出ておりますV−CJDと伝達性の海綿状脳症、これは狂牛病も含む、あるいはクロイツフェルト・ヤコブも含む大きな疾患群でございますが、これに関する専門家会議というのが開催されまして、厚生省からも担当官が行きましたし、今日お越しの北本参考人もその場においでいただいたというような経緯がございます。
それから、5月21日にクロイツフェルト・ヤコブ病等に関する全国研究班の第1回の班会議、正式な班会議がそこで開かれて、更に5月31日から6月1日、V−CJDに関する学術会議、これはウィーンにおいて開催されたというふうに伺っておりますが、専門家の方に現地に行っていただいた。北本先生は今日その帰りに直行していただいたというような経緯がございます。
以上が時間的な流れでございますが、資料の4を次にごらんいただけますでしょうか。これが、クロイツフェルト・ヤコブ病に関して私どもの課でまとめました全体的な記述でございます。資料4でございますが、概念というところで、中年以降に発症し、進行性の痴呆がある。あるいは、さまざまな神経症状があるということで、予後不良の脳疾患ということになっております。そこの最後のところに、異常なプリオンたん白が脳の中に証明された。これが病因と推測されることになったためにプリオン病というような総称がなされているということ。
それから、その下に疫学というところがございますが、100 万人に1人前後と言われるというような有病率、その8割は散発性の症例であるというようなことがございます。
続いて2ページでございますが、病因としまして先ほどプリオンの話が出てまいりましたけれども、宿主の持つ正常なプリオンたん白が感染型のプリオンたん白に変わる。これが蓄積し、発病するというようなことが言われている。あるいは、臨床症状として進行性の神経症状、進行性の麻痺、意識障害があり、最後に無動、無言、こういう状態になって死に至るというようなことでございます。
以後、さまざまな情報が記述されております。時間がございませんので、続いて御説明させていただきますが、資料1を次にごらんいただきたいのでございます。順番がここら辺から正常になりますが、資料1の方が『ザ・ランセット』に4月6日付で載った記事でございまして、これがイギリスにおける新しいタイプのニューバリアントというふうに書いてありますが、クロイツフェルト・ヤコブ病についての記述でございます。
後ろの方に、資料のページで言いますと6ページ以降に日本語訳がございますので、それについて簡単に御説明申し上げます。
要旨のところだけでございますが、牛の海綿状脳症の流行後にクロイツフェルト・ヤコブ病の発生に何らかの変化があったかどうかということを明らかにするために、英国にCJDの疫学調査が行われた。
以来、90年以降ずっと行われている訳でございますが、所見のところで、ここ数か月間に新たな神経病理学的特性を有するCJDの症例が英国で10人確認された。この疾患の特徴として、患者の年齢が若い。臨床的所見がCJDと異なる。更に、CJDに典型的に見られる脳波の所見、特徴を欠くというようなことが記述されている訳でございます。
しかし、その解釈というところがございますが、これらの症例は英国で特異的に発生したCJDの新たな変異種である可能性があり、このことにより、これら症例とBSEとの関連についての可能性が高まったとする一方で、今回得られた証拠だけではその関連を確証することも出来ないということで、関係があるかもしれないけれども、それを確認する必要があります。更に、資料2をごらんいただけますでしょうか。これが先ほど申し上げました4月2日、3日に開催されましたWHOにおける専門家会議のプレスリリースでございます。こちらの方の後ろの方に仮訳を付けてございます。3ページ以降でございますが、3ページのBSE、これは牛の伝達性海綿状脳症ということでございますが、86年に英国で初めて確認されたということ。
更に、その次のパラグラフで、英国においてBSEの発生は有意に減少したということ。
更に、次のパラグラフで、新種のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と書いてありますが、国際専門家グループは英国における10症例の臨床及び病理学的なデータを再検討したということでございます。
次のページを開けていただきます。4ページでございますが、国際専門家グループはBSEと新種CJDの間には明確な関係がないことを結論したが、状況証拠はBSEへの接触が最も妥当な説明であることを示唆しているということで、BSEと新種CJDとの調査を急ぐ必要があるということでございます。
それを具体的に述べているのが5ページでございまして、「新たな変種(新種)のクロイツフェルト・ヤコブ病について」ということでございます。
1番として、新たに判明した新種CJDの地理的分布、これをより明らかにする必要があるということ。
2番目に、現在のところ英国で発生した新種CJDとBSE感染源への影響との相関関係については証明されていないということで、最後に新種CJDに関するモニタリング及びサーベイランス研究が必要であるというような結論として出来ているという訳でございます。
資料3につきましては、その4月2日、3日の会議のレポートということでございまして、これは後ほど倉田委員の方から御説明があるというふうに考えてございます。
それから、資料6でございますが、その新しい「Variant−CJD(新種のクロイツフェルト・ヤコブ病)について」ということで、私どもがまとめた資料でございます。資料6でございます。こちらにバリアントのCJDが散発性CJDとは異なる点ということで、先ほど『ザ・ランセット』等の資料に記載されていることをここにまとめてみたということでございます。
それから、資料9でございますが、この5月14、15、16日の3日間、WHOで開催されました、やはりCJDあるいは海綿状脳症に関してのWHOの専門家会議ということでございます。
会議の目的については、新種クロイツフェルト・ヤコブ病と牛海綿状脳症の関連性に関する治験をレビューする。更に、WHOによるV−CJDを含むCJDのサーベイランス体制を確立する。更に、クロイツフェルト・ヤコブ病等に関する単行本を作成するというようなことが目的だということがWHOの事務局の方から御説明がございまして、以下ここでもV−CJDと牛海綿状脳症との関連性については新たな治験は得られなかったということでございます。
更にクロイツフェルト・ヤコブ病等に関する国際的サーベイランスについて、その実施が是非必要であるというようなこと、あるいはクロイツフェルト・ヤコブ病等に関する研究を一層推進するということ、そういうような関係のいろいろ具体的な議論が行われたということでございます。
それで、我が国における体制としてどういうふうになっているかということが資料5でございます。私どもの疾病対策課に設置されておりますが、厚生省特定疾患遅発性ウイルス調査研究班というものが昭和51年に発足いたしまして、以後研究を続けてきたというところでございます。これまでの研究成果として、小動物におけるCJDの伝播実験、あるいは多数の新しい形のプリオンたん白遺伝子異常を伴う病型の発見、プリオンたん白免疫染色増強のためのオートクレービング法の開発・普及、あるいはプリオンたん白遺伝子組み替えマウス実験系の確立というようなことがございます。
今後の重点研究課題として5つほど載っておりますが、この研究計画につきましては現在、北本参考人がこの研究班の班長でございますので、後ほど御説明があるのではないかというふうに考えております。
それから、資料7でございます。かなり中身的にはごついんですが、「クロイツフェルト・ヤコブ病と母乳の関係について」、先ほど申し上げましたとおり、昭和51年から設置されている研究班の中で、妊娠中にCJDと診断されて分娩後亡くなった女性の脳、母乳、胎盤等をマウスの脳に接種した。そのところ、当該マウスがCJD類似の神経症状を呈したというレポートがございまして、これがヨーロッパの放送局で一部取り上げられたというようなことがございます。研究成果ということが宣伝されたといった方がいいのかもしれません。
それで、4番でございますが、今回の報告では母乳による経口伝達については研究されていない。この上にありますように、脳内に接種したということはございますが、経口伝達については研究されていない。上記の結果をもって、直ちに母乳による経口伝達が証明されたものではないということでございます。
それから、資料8でございますが、「クロイツフェルト・ヤコブ病に関する緊急全国調査」です。先ほどの遅発性ウイルスの調査研究班と並んで、この全国調査のための研究班も平成8年度に特定疾患調査研究事業の一部として設置されている。今、私どもの課長の方から御説明したとおりでございまして、研究班員は今日おいでの佐藤参考人を班長として、そこにございますとおりのメンバーの先生方にお願いしているというところでございます。
資料10が、その調査研究班が作成された調査票でございまして、これを全国の精神科、神経科あるいは神経内科を標榜されている病院に対して送付し、6月末までに回答をいただくということで現在、調査が進行しているというふうに伺っておりますが、今日は佐藤参考人がおいでになっておりますので、後ほどお話がいただけるのではないかと思います。
以上、大変早口で恐縮でございますが、資料に基づいた御説明でございます。

○大谷部会長

ありがとうございました。
これについて、乳肉衛生課の方で何か付け加えられることはありますか。

○森田生活衛生局乳肉衛生課長

生活衛生局乳肉衛生課長の森田でございます。よろしく
お願いいたします。
それでは、先ほど三浦さんからお話がありましたけれども、資料11に基づいて御説明をいたします。牛の海綿状脳症につきまして、動物側からの立場で若干御説明させていただきたいと思います。
牛の海綿状脳症はここに書いてありますとおりでありますが、今、世界でどういう発生状況にあるかというのは3ページを見ていただきますと、イギリスはグレート・ブリテンと北アイルランドで分けておりますけれども、グレート・ブリテンが14万頭、これは1994年まででありますが、そのほか北アイルランド、アイルランド、フランスとありますが、丸が書いてありますのが、下には1995年にも発生のあった国となっておりますけれども、自国の牛でなっているというのがこの丸の付いている国でもある訳であります。そういう意味では、アイルランド、フランス、スイス、ポルトガルというのが原産国の牛でも発生している。
しかし、これをよく調べていくと、イギリスからえさを輸入していた。多分そのえさが原因だったろうということでありますので、現在のところやはり問題はイギリスだけだろうというふうに言われています。また、上のイギリスの発生状況、下から1988年となっていますが、徐々に1992年をピークにしてまた減ってきているというのが現状であります。
これが、また1ページに戻っていただきますと、BSEの発生国を今、御説明いたしました。また、現在イギリスから食品あるいは動物等が入っているかということでございますけれども、先ほど私どもの局長から話がありましたとおり、3月26日に厚生省は輸入を自粛すると同時に、農林水産省も家畜衛生の観点から、これはBSEの観点から輸入禁止を27日に行っておりますが、実際は先ほどのグレート・ブリテンにつきましては、牛のウイルス性感染症であります口蹄疫の関係がございまして、1951年から全面輸入禁止になっておりますので、グレート・ブリテンからは全く入ってきていないというのが現状でございます。
また、北アイルランドにつきましては口蹄疫の問題があるのでありますけれども、一定の条件に当てはまれば輸入が可能だというようなことで、現在まで牛の胃袋ですとか、舌ですとか、横隔膜、肉は入っておりませんけれども、そういうような内臓あるいは骨粉ですとか、牛の器官の粉、これは健康食品になるようでありますけれども、そういうものが入ってございますが、これにつきましても3月26日に輸入自粛ということで現在全く入っておりません。既に入っているものにつきましても、昨年から今年に掛けましてすべて輸入を追っておりまして、消費されたものはもうやむを得ないのでありますけれども、在庫のあるものにつきましては現在輸入自粛ということで押さえております。
それから、この関係であとは医薬品の関係がございます。1ページの4月10日にございますとおり、薬務局におきましては英国産牛由来物を含有する医薬品等について当分の間、製造または輸入を行わないという指導も行っております。
また、次の2ページにいっていただきますけれども、4月16日には薬務局の中央薬事審議会で先ほどと同じような見解をまとめておりますが、農林水産省におきましてもえさの方での、先ほどは家畜のいろいろな肉ですとか、生体牛についての輸入禁止でありますけれども、4月16日はえさとして入れることも反すう動物の飼料としないような指導をすると同時に、えさとしても輸入自粛を指導している訳であります。
次に資料の13を見ていただきますと、伝染性海綿状脳症に関しまして、先ほどWHOのプレスリリースにある訳でありますけれども、そこの中でサーベイランス体制をとっていない国についてはアンノーンの国になってしまうというようなこともございまして、農林水産省、厚生省で共同いたしまして、農林水産省は家畜伝染病予防法に基づきまして対象疾病に、厚生省といたしましても、と畜条項に基づく検査対象の疾病として伝染性海綿状脳症のみならず、羊のスクレーピーも含めて検査対象に入れてサーベイランス体制に入ったということでございます。 資料としてもう一つ、資料の12でございますが、これは食品衛生調査会におきまして4月11日に御検討いただき、従来どおり1つは既に輸入自粛を行っておりますけれども、これを継続するべきであるというようなこと。 2番目に、既に入っているものについては廃棄も検討した方がいいというようなこと。
3番目としては、ヒトへの伝達の可能性ですとか、肉からの病原体の検出方法について調査研究を推進するようにという意見具申をいただいておりまして、それを受けまして現在これらの研究班を組んでいるところであります。
また、資料の11でありますけれども、今後の問題といたしましては、今日、明日とECで農相理事会が現在行われておりまして、ゼラチンあるいは牛の脂肪、それから精液についてひょっとしたら解除になるかもしれないということでございますが、これらにつきましても解除する要件等を十分調査した上で、食品衛生調査会の意見を聞きながら今後対応していきたいと思っています。
いずれにいたしましても、現在のところイギリスにおきます海綿状脳症については日本に入らないような体制をとっているというところでございます。
以上でございます。

○大谷部会長

ありがとうございました。
ちょっと三浦さんに伺いますけれども、ただいまの御説明のうち、後ほど参考人の方が御説明いただくというのは何と何ですか。資料ナンバー等、もし分からなければいいんですけれども、御議論いただくにつきまして重複するようでは困るので、今の三浦さんの御説明と乳肉衛生課長の御説明とで、どこについて御議論いただくのかということです。後ほど一括してでもいいんですけれども、どうですか。

○三浦補佐

とりあえず、今後この後、参考人でおいでいただいている先生方の御発言をお聞きいただいて、取りまとめて最終的にというふうなことで進めさせていただければと思います。

○杉村委員

私は、御一人ずつから御説明いただければ、それについて、詳しくいろいろ、すぐに更に説明をいただきたいということがあるんじゃないかなと思うんですが。

○大谷部会長

時間の都合もあるけれども、それではちょっとだけただいまの御説明のうち、詳しい御質疑は全部終わってからなんだけれども、特に疑問の点がありますれば御意見をおっしゃっていただいて結構です。

○杉村委員

つまり、このごろ情報公開を求められてますから、この委員会で、何を言ったとか、問題になるからお伺いするんです。厚生省の係官というのはだれが行ったんですか。学者の方のお名前は出ているけれども、厚生省の担当官というのはだれなんですか。

○森田課長

国際会議ですが、4月2日、3日につきまして厚生省は私どもの乳肉衛生課の課長補佐の加地というものが行っております。 それから、5月14日から16日に掛けましては先ほどの三浦補佐と、私どもの乳肉衛生課の加地という担当課長補佐が行っております。

○杉村委員

どうもありがとうございました。
それからもう一つ、この自粛指導というものは効果があるんですか。

○森田課長

ここでは自粛という言葉を使っておりますけれども、食品衛生法上の法律に基づく禁止は出来ないのでありますが、この自粛は実質輸入禁止に近い効果を果たしております。現実には入れておりません。

○杉村委員

もう一ついいですか。
どこか新聞で読んだんだけれども、それはどこかで後から御説明があるんだろうと思うから、それだったらそれでいいんですけれども、いろいろな将来予測の仕方があって、これからどの位、この病気が多くなるかということが、仮定に基づいて考えられている。最小とすれば600 人、最大600 万とか何とかというのがあります。あれは、この資料には入っているんですか。

○小林局長

今日御説明しましたところは、今まで公式になっているものについての話でございまして、将来推測等々はちょっと行政サイドではいたしておりません。今、ここには入っていないんです。

○杉村委員

あれは、将来推計を学者がやったんでしょう。

○小林局長

私も細かいことは存じませんけれども、多分こちらにいらっしゃる先生方の方が……。
○杉村委員
もう一つ、オランダで狂猫病が発生して、そのときはペットフードがともかくイギリスから輸入したものであり、しかもイギリスの特定な会社から輸入したものであるということが明らかであってということがありました。それで、あれは日本ではどうなっているんですか。

○森田課長

オランダの事例につきまして、現在のところ我々が承知している範囲では、缶詰用のペットフードでどうもボツリヌスじゃないかと。ボツリヌスによる神経症状だというような報告をいただいています。

○杉村委員

どうもありがとうございました。

○小坂委員

後ほど専門の先生方に御説明いただけると思うのですけれども、母乳でも問題があるという日本の研究は非常に不思議に思うんですが、確かさはどのぐらいかということと、日本の疫学調査が行われるとしまして、患者さんの年次推移はどうなっているのか。最近、新型と言われているのは日本でも確認されているのか。

○大谷部会長

それでは、ただいまの御質問を踏まえて、参考人の方からひとつ御説明をお願いいたしたいと思います。
それでは、まず最初に立石九州大学名誉教授から、プリオン病についての御説明をお願いいたします。それでは、先生よろしくお願いします。

○立石先生

簡単に御説明いたします。
資料が、一番最後の資料15ということで2枚ほど、これは私の独断で書いてまいったものでございます。
まず、表1からいきますと、大体ヒトのプリオン病と言われるものがそういう3種類のものがあるということは皆様御存じのとおりでありまして、これが動物になると羊と最近の牛のものである。それで、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病、CJDと略しますが、その大部分の発病の原因は不明でございますが、ごく少数、医原性感染を含めて感染によると思われるケースがある。
それから、ゲルストマン・ストロイスラー・シンドローム、GSSと略しますが、これはプリオンたん白遺伝子のミューテーションによる病気で、遺伝子病であります。
それから、クールーは御存じのようにニューギニアのフォワ族の間に蔓延しました病気で、これは食人の儀式によるものであるということでございます。病原体はすべてコモン、共通のプリオンたん白の異常によるというふうに考えられて、プリオン病という名前が最近は使われております。
表2のBSEとの関連、これも全く私の独断でメインなものを書き上げてみましたが、BSEが初めてエンティティーとして認められたのは86年でございますが、それがどうも飼料に混入したたん白のせいであろうということで、混入を禁止する処理がとられて、その後、89年に牛の脳、脊髄、扁桃、脾臓などを食用に供してはならないという、この決定が非常に大きなイベントであろうかと思います。
といいますのは、脳、脊髄は圧倒的にプリオンたん白が多い場所でございますし、それに次いで扁桃、リンパ、網内系ということになりますから、これが禁止された。その後、BSEは93年まで増え続けておりますが、今は減少中で、現在までに16万頭の牛が罹患したというふうに聞いております。
それから、新型のバリアントCJDが出てきたのが今年の3月のことで、これが説明としては89年の牛の脳、そのほかの食用禁止以前の感染ではないかというふうなことが言われております。
と申しますのも、この手の病気はすべて潜伏期間が数年にわたる、あるいはニューギニアのクールーの場合は20年にわたるケースがあるということで、少しずれて起こるということが言われております。したがって、BSEが牛の病気が今、減少中で、ヒトの病気が今、始まったばかりというタイムラグを見ていきますと、まだ当分ヒトの新型の病気が増えるかもしれないという仮定でございます。
それから、その次に表3はエビデンスを持ったヒトの感染と思われるケースでありまして、有名なものが角膜移植、それから脳手術的なもの、特に脳硬膜の保存硬膜、ライオドラーを使ったケースが注目されております。
その後は、脳下垂体から抽出した成長ホルモン投与による症例でございまして、この辺りからその後ずっと数が増えておる訳であります。だから、こういう患者あるいは発病前の状態の人から取られた生体材料を使ったこういう医療行為が時に感染を引き起こすということではないかと思います。
それから、表4に症状を挙げておりまして孤発型CJD、これが最も多いタイプでありまして、我々の教室で集めた剖検例ばかりのデータでありますが、それの発病年齢を見ていただくと、平均が64歳であります。それで、症状はデメンチアとミオクローヌス、それからPSDというのが脳波の特徴であります。全経過は1年から2年で亡くなっておりますし、プリオンたん白が脳のシナプスを中心にビマン性にたまるという特徴がございます。これが遺伝子異常を持ったタイプが真ん中の行でありまして、これも15剖検例の平均発病年齢は52歳で、スポラディックなケースよりも12、13年早い発病の傾向がございまして、症状もちょっと違います。それから、経過が非常に長いという特徴がありまして、プリオンたん白は非常に大きな固まりを持って脳の中に分布するという特徴があります。
それから、今回イギリスで問題になっている変異型CJD、一番右の行に書いてございますが、この場合の発病年齢を比べてみますと、明らかに従来のものと差があります。それから、臨床症状は時に遺伝性のケースと似たものがございますし、あるいは脳波で特徴的な異常がないという点も遺伝性のケースに似た点がございますが、臨床経過はやはり1年から2年、それからもう一つは脳に大きなプリオンたん白の沈着がございます。これも、日本で従来あった形はすべて遺伝性の遺伝子異常を持ったタイプの病理と非常に類似性がございますが、この場合イギリスのものには遺伝子異常がないと。スポラディックなケースと同じであるということが一つの大きな鑑別点になります。
次のページを見ていただきますと、これがプリオンたん白の遺伝子を書いたもので、その中のミューテーションが見つかった部分と、そのミューテーションを書いております。これはもう省略させていただきますが、それに応じていろいろなタイプの症状が出てまいります。
この後、表5にその辺りを書いていますが、これも省略いたします。
それから、そういう感染症でありながら遺伝子異常と非常に密接な関係があるということを、最近は遺伝子操作によりましていろいろなマウスをつくってそれが確かめられております。
表6、これもちょっと今日は省略いたしますが、こういうプリオン病の診断には結局病的なプリオンたん白の証明が必要である。その証明法を表7に書いてございますが、まず普通の病理組織標本がありますと、免疫染色で確かめることが出来ますから、古い病理標本でも十分使用することが出来ます。新しい標本につきましては、脳材料につきましてはウェスタン・ブロッティングが有用である。あるいは、遺伝子異常を持ったケースは全体の15%から20%でございますが、そういうケースは末梢血からの遺伝子検索が可能ですから、臨床検査が可能な訳であります。
こういうプリオンたん白の不活法というのは非常に難しい問題を持っておりまして、まず焼いてしまうのが一番よろしいということですが、焼けないものについてはなるべく高温で長時間のオートクレーブ処置あるいは次亜塩素酸ナトリウムという非常に強力なものでやる以外にない。これも、完璧ではないというふうに言われております。
以上でございます。

○大谷部会長

ありがとうございました。
それでは、引き続きまして小野寺東大教授からお願いいたします。

○小野寺先生

実は、今まで大分文章が多かったので、それに従ってスライドで話をしようかと思うんです。
(スライド)
まず、日本に結構今までスクレーピーがどのぐらいあったかというような話で、大体僕らが見ているのは60例ぐらいだろうと言われているんですけれども、これは今から10年ぐらい前の北海道の帯広の例で、極めて古典的な羊のスクレーピーで、こちらは顔の黒いサフォークという羊ですけれども、ここの部分が脱毛になっているということです。
(スライド)
これが具体的ないろいろな神経細胞の空胞変性ですけれども、こういう具合に神経細胞の中に空胞があるということです。
(スライド)
そういうところでしますと、大体北海道とか、東北地方とか、あとは宮崎にもあるんですけれども、こういうところは家畜衛生試験所に材料を送ってきたところで、そこに県の段階で材料が一応あったと報告があったのはこの辺です。
(スライド)
これは北海道の方で我々が調べたもので、羊でこれは20例ぐらいらですけれども、Sというのが先ほど言った顔の黒いサフォーク種で、Cがコイデール種、顔の白い羊です。本来、サフォーク種という顔の黒い羊で生えてきたんですけれども、それがどういう訳か、要するに顔の白い羊に移ったということになる訳です。
あとは、ここにAと書いてありますけれども、これはアロペシア、脱毛ですね。Iと書いてあるのはインコーディネーション、運動失調症、Dというのがディプレッション、要するにちょっと鬱病的なものです。Sがスティミュレーション、過敏性と。
たまたまこの場合は今から7、8年前だったので、ほとんどがみんな脱毛を起こしていたものですから、そういうものもあります。それで、これは非常にメスが多いんですけれども、やはりオスは肉として出てしまうので、結局メスの方がしばらく飼っているものですから発症します。潜伏期がこれで見て分かるように大体3年から4年、5年、6年ですね。
そんなことで、過敏症がある。そういうことで大体5歳から6歳ぐらいの羊がかかるのが普通なんです。例えば、そういう神経細胞を見ますと、普通はこういう具合に、先ほどの人間のクロイツフェルト・ヤコブと違って神経細胞の中に桑の実状に空胞が出ます。
(スライド)
これは一応神経細胞、特に延髄の場所がよく空胞が出るのが報告されています。一般に空胞が出たからといってすぐスクレーピーと言えません。よく銅の中毒とでもよく神経細胞に羊の場合は空胞が出ます。また、チアミン欠乏症という一種のビタミン欠乏症でも大脳に支障が出たりします。そんなところで、スクレーピーであるという証明はよく北本先生がやっておられる免疫パーオキダーゼ染色を行います。それで一応プリオンたん白は染めておりますけれども、そういう材料においてどの辺に空胞が多いかということで調べますと、これが空胞の多い場所です。そうすると、20例のうちの15例ぐらいが副楔状束核というんですか、あとはもう一つ孤束核、一応20例のうち15例ぐらいはそうてす。
(スライド)
そのほかの神経細胞の周りにこういう具合に、周りというか、ニューロフィルに空胞が多いところ、この場合はたまたまここに血管の周りにアミロイドがあります。
(スライド)
ニューロフィルに多いところというのは、大体18例がやはり孤束核です。そんなところです。あとは、そのほか毛様体ですか、ここにも出ます。
(スライド)
あとは、物によってはこういう具合に神経細胞のネクローシスが出るところがあります。ですから、こういうのもよくあります。
(スライド)
こういうものはどこが出るかというと、副楔状束核と、あとは割合オリーブ核によく出るんです。
(スライド)
そういうところをまとめますと、大体空胞がよく出るのが副楔状束核と、あとは孤束核で、非常に神経細胞の壊死みたいなものが出るのがあれで、あとは神経細胞のアトロフィーが出るのが大体オリーブ核と、そういうところになります。
(スライド)
そういうことで、我々はよく延髄を見ているんですけれども、この辺がよく壊死とか、あとは神経細胞萎縮が出るし、もし空胞が出るんだったらこの辺かと、あとはこの辺かということなんですが、ここで割合空胞の出る場所から言えば、やはりイギリスの牛のBSEとよく似ています。
(スライド)
そういうことで、ちょっと写真がたくさんありますけれども、これは山形県の方のスクレーピーで、余りこんな写真は普通出さないんですが、一応かゆがるものですからこういうところが脱毛します。
(スライド)
これは、かゆがるところがそういうところじゃなくて、足の先辺りもこういう具合に脱毛が出ます。
(スライド)
これは、神奈川県の妊娠した羊のスクレーピーで、この場合は胎児も一応調べてみましたけれども、胎児には何もなかったんです。あとは、胎盤はこの場合はプリオンが分離されなかったんですけれども、もう一例福島県の方から出てきたやはり妊娠した羊のスクレーピーの場合は、確かに胎盤から大量の病原体が分離されたんです。これは、わきの腹が脱毛しています。
(スライド)
これをちょっと拡大しますと、もともとこれはサフォーク種で顔が黒いというか、地肌が黒い毛が生えていますからこういう具合になっていて、それでもっとごしごしこするとこの辺まで毛がなくなってしまう。要するに、毛根からなくなる訳ではなくて、毛の途中からすり切れるという格好なんです。
(スライド)
これは、わきの下です。こういうところ、あとは乳房に近いところも脱毛が出てきます。
(スライド)
これが乳首ですけれども、乳首の周りなどというのは結構よく脱毛が出るんです。
(スライド)
そういうことで羊の写真がありまして、あとは牛の写真です。これはイギリスの農務省でドクター・ウェルスといいまして、世界で一番最初にBSEを見つけた人ですが、彼の好意で少し写真を送ってもらったんです。やはり牛も羊と同じようにかゆがるものですから、こういう具合に柱に頭をこすり付けてごしごしやっています。
(スライド)
あとは、独特の風貌ですけれども、目がちょっと落ちくぼんで、落ちくぼんでいるけれども出目になる。あとは、顔が非常に緊張するという格好になります。
(スライド)
これは、その牛の材料を別な牛、ホルスタインに打ったんですけれども、そうしますと確かにこれは若干発症期間が短いのかなと。若い牛ですけれども、やはり目が落ちくぼんで結局出目になる。あとは顔が独特の緊張になり、耳がちょっと後ろに倒れていると、そんなところです。
そういうところですから、結局日本にも去年はスクレーピーは出なかったんですけれども、おととしまではスクレーピーはあったということになっていますし、症例からいっても割合日本の場合はマウスにプリオンはよく分離されるし、そういうものが多いようです。

○大谷部会長

どうもありがとうございました。
それでは、平成8年4月のWHO会議に御出席されました倉田先生からお願いします。
○倉田委員
ここにあります文章、先ほどお話いただいておりました資料11と、それから英文の方の資料3というのがつい3日前に届きました正式な報告書なんですが、これは資料の11のプレスリリースと内容はほとんど変わっていません。それで、会議のときに話されたのはもうちょっと詳しいことがありますので、そこのポイントだけお話しします。
北本先生が後でヒトのバリアントCJDに関するお話をしてくださいますので、そこは全部省かせていただきまして、なぜこんなことが起こったかということ、それで現在何が分かっているかということだけお話しします。
なぜ4月の2日、3日と慌ただしくやったかといいますと、先ほど局長からもお話がありましたように、3月20日に私がちょうどイギリスにいるときにこの問題が新聞とテレビで大騒ぎになったんです。
それで、もう一つ大騒ぎになるかもしれないという理由で4月にやったというのは、4月6日に資料の1に出ています『ザ・ランセット』の部分が出ることになっておりました。もしこれが何の対策もやらないうちに出てしまったとなると大変なことになるということがあったと思います。そういう政治的な配慮で行われたということであって、この政治的な配慮は、この会議は1995年に牛に関してBSEに関して行われた会議から何かプログレスがあったかというと、そんなに大したプログレスはなくて、ヒトの症例に関する『ザ・ランセット』の論文そのままのドラフトの段階での発表があったというのがその前の段階からの新しいことでありまして、今お話をされた牛の海綿状脳症ですが、なぜきたかというのが資料11の4ページですね。
先ほど森田課長がちょっとお話をされたところにも出てきていますが、4ページのところにBSEがなぜなったか。そこにありますように、81年から非常に牛あるいは羊の要らない部分の肉や、必要なものを取って要らない部分を全部集めて、肉も骨も一緒くたにきれいに粉にしてしまう。それで、それをまた飼料に入れるという非常に効率的にやる機械が発明されたようなんですが、それを使い出して羊を牛に混ぜ、また殺した牛の要らない部分を全部粉にして牛の飼料に混ぜると、こういうことの繰り返しが多分こういう牛への広範な伝播をさせてしまったということではないか。それは、BSEのなぜ広がったかとうことであります。 これは、イギリスが非常にはっきり申しましておかしいと思うのは、88年に自分の国内のものだけに関してはあれを使ってはならないと言っているんですが、その間にEUに関してはどんどん輸出しているんですね。それで、EUへの輸出を禁止したのは91年、まる3年差があるんです。この辺のイギリスのやり方というのは非常に欧米というか、要するにヨーロッパのイギリス以外の国々は学者レベルも非常に怒っているところなんです。それが各国にえさを通して飛び火したとか、そういういろいろな問題が起こった原因であろうと思います。
そこで、ではそもそもそのころ、本来86年から96年ですから、牛の問題が出ましてから10年たっている訳です。ところが、イギリスでは細々とといいますか、実験が行われていた訳ですが、世界的にそんなウォーニングが出た訳でもない。そこがまたちょっと不思議なところなんですが、人には来ないからということで牛の段階でとどまっている限りはお金の話で済むというようなところもあったのではないかと思いますけれども、実験の結果で他の動物種への伝播性、羊は羊でいくだろう。牛にはどうか。牛はまた人にどうかという、かなり種を超えないというような認識があったのではないかと思いますが、実験結果として発表されたもの、これはWHOの公式記録には全く挙がってきていません。そこをちょっと簡単にお話しします。
牛の感染臓器として、先ほどから言われています脳とか脊髄、網膜に非常に大量にプリオンが蓄積する。これを使いまして経口的、経口的というのはえさの中に混ぜる訳ですね。あるいは非経口的、これは脳内あるいは腹内に注射するという方法をとっていますと、マウス、羊、ヤギ、ミンク、牛、これはほとんど全部発症する。それから非経口的、これは腹あるいは脳に入れているんですが、豚とか、予研ではリスザスにも発症してきていますが、そういうことが起こっています。
それから、感染が今のところ成立しないのは鳥だけである。
それから、いわゆる牛肉と称するものがペットフードの中に入って猫が食べて、4月の発表の段階で70匹狂って死んでいます。そのほか、BSEの関連したものとして、鹿だとか、ヒョウだとか、いろいろなものが発症して同じような脳の症状を出しております。
それから、感染の認められない臓器というのが、先ほど日本では母乳からマウスにいったという例がありますが、脾臓、腎臓、リンパ節、胎盤というのは感染が認められないと発表されています。
これに関しましては、実験のやり方に関しましてかなりドイツの研究者からクレームが付いておりました。実験のやり方があいまいであるということです。それに関して、イギリスは全く答えておりません。
それから筋肉、これは普通の日本の方々が喜んで食べるビーフステーキですが、これは経口的にしかやっていない。ほかのは全部経口、非経口をやってあるのに、この部分は経口的にしかやっていない。非経口的にはやっていないという問題が、やはりドイツの研究者から痛烈な指摘を受けております。
そのほか垂直伝播、母体内での感染ですね。それはないだろう。水平伝播に関しては、今までのところ認められないというふうに発表されております。
それから、患者発生につきましては先ほど立石さんが御説明になったこと以外のことを申しますと分布ですが、牛の濃厚、BSEの汚染、濃厚汚染地区というのはロンドン辺りを頭に描いていただいて、その真西、つまりイングランド全部で考えますと西南という地区が一番の汚染地区である。
しかし、これと患者が出た地区とは全く関係がない。要するに、スコットランドが2名、北アイルランドが1名、ほかはイングランド、ウェールズで分布していて濃厚汚染地区にどさっとあるとか、そういうことではない。10名だけですから何とも言えません。
それから、リスクですが、これは今まで言われたようなリスクとして当たるものがほとんどないということ。それで、と殺場で少し働いた経験のある人が1名いるようですが、人間の場合はっきりした関係は分からない。
それでは結論ですが、このプレスリリースの結論、それからあとでまとまってきた資料3の結論も同じなんですが、伝播の直接証拠はない。これはそのとおりでありまして、人の中で増えた異常プリオンたん白が、羊のものが増えたり、牛のものが増える訳ではありませんので、その直接証拠というのは、例えば狂犬病の犬にかまれたから私は狂犬病になったという証明の仕方は出来ないと思います。ですから、これはそう簡単ではないどころか、将来的にも直接証拠ということは難しいのではないかと思います。
それから、状況から疑わしい。これも、科学論文にしては珍しくそういう書き方をしてあります。『ザ・ランセット』の結論です。
それから、更に詳細なサーベイランスが必要と、これは先ほどの牛のサーベイランスの話と同時に人間の病気のサーベイランス、これは日本でも厚生省で直ちに始めましたが、そういうことをきちんと押さえておく必要があろうということであります。
そのほかに関しまして、人の具体的な内容に関しましては北本先生からお話いただければいいと思います。
以上です。

○大谷部会長

ありがとうございました。
それでは、北本先生お願い出来ますでしょうか。

○北本先生

第2回のWHOの会議と割と同じようなことが繰り返されたんですが、少し整理して、まず人のクロイツフェルト・ヤコブ病の日本のタイプを説明したいと思います。
これが、典型的なクロイツフェルト・ヤコブ病の患者さんの日本のコースなんですが、大体発症年齢は50から60歳ぐらいが一番多うございます。 それで、痴呆なんですが非常に早い。例えば1月に物忘れで発症したら、3月にはもう寝たきりになってしまうというふうに非常に早い形の痴呆である。ミオクローヌス、錘体路障害、錘体外路障害というのが非常に多うございます。
(スライド)
先ほどから問題になってまいりました脳波で、これは典型的な脳波なんですが、これは心電図であると言ってもいいかなと思うぐらいの脳波が出ます。つまり、もうバックグラウンドアクティビティーが全くなくて、周期性、同期性にディスチャージが出る。まるで本当に僕らは心電図化と言っているんですが、エーカーゲーと言ったらだれも文句は言わないものなんですが、こういうふうな脳波が非常に特徴的であると考えられています。
(スライド)
患者さんは、3か月後にはこういうふうな寝たきりになってしまうというラピッドリー・プログレッシブ・デメンシアというのが普通の形であります。
(スライド)
それで、そのラピッドリー・プログレッシブの一つとして、ちょっと古い写真で恐縮なんですが、これは56歳ですから典型的な人でありまして、発症1か月、4か月、この辺りはそう進んでいる……。
臨床的にはものすごく進んでいる訳ですが、この時点で寝たきりになります。そして、その寝たきりになってからの脳の萎縮の進み具合がものすごく早い。これは、わずか7か月でこういう形になってしまうというぐらいのものでありまして、非常に早い進行をたどるというのがこの病気の特徴です。
(スライド)
免疫染色の話が出ましたが、結局異常なプリオンたん白が普通の場合どこにたまるかといいますと、これは小脳なんですが、小脳の皮質全部にたまる訳です。それで、典型的な形でいえばシナプスにたまってしまう。決して細胞外にたまるタイプではなくてシナプスそのものを侵すので、恐らくあんなに早い臨床経過、3か月でもう寝たきりになってしまう。神経機能が廃絶してしまうのはこれじゃないかなというふうに世界的にも認められています。
(スライド)
ちょっと強拡大なんですが、これは小脳の異常なプリオンたん白の分布なんですが、これは全くシナプトフィジン、シナプスを染めるのと全く同じように染まる訳です。それで、小脳のこういうところは、非常に大きなシナプスがありましてそのシナプスと一致している。
(スライド)
ところが、もう一つタイプがありまして、シナプスを全く侵さずに細胞外にアミロイド斑というふうな形で沈着するタイプがあるんです。これは、先ほど立石先生の方から説明がありましたように、大体遺伝子異常を伴うものです。
(スライド)
それで、まとめますと、これが我々がまとめたもので、結局プリオン病には今のところプラークタイプとシナプスタイプがある。それで、プラークタイプというのは大体コドンの変異を伴うものだ。それで、シナプスタイプというのは実はワイルドと一番上に書いてあるんですが、野生型であります。
それで、特に注目していただきたいのはコドンの129 がメチオニン/メチオニンのタイプで、これは実は日本人に一番多いんですね。この辺りが今後キーポイントになってくるんですが、ヨーロッパ人に多いのはワイルドタイプでコドンの129 がバリンなんです。ヨーロッパ人の大体半数はこれを持っています。これは、実は細胞外にプラークをつくるんです。それで、シナプスにたまるのはメチオニン/メチオニン、日本人のタイプなんです。
(スライド)
それで、インフェクション・プリオン・ディジーズと書いてありますが、今まで感染が明らかに認められた。しかも、数十人、数百人、数千人にわたって感染が認められたプリオン病と言われているものはこういう特徴があります。
1つは食人の傾向、脳を食べる訳です。これはニューギニアのフォワ族でクールーという病気です。これはカンニバリズムで確実に脳を食べています。
2番目、これは大体70人ぐらい世界で見つかっていますが、ヒトの成長ホルモン製剤を下垂体から取っている。それで、だんだん問題となってくるであろう先ほど言いましたライオデュラ、ヒトの硬膜を取って単に凍結乾燥させただけのもの、これらは全部脳に関係があるんです。どこにも筋肉とか、勿論そんなものは関係ないんです。血液も、今までそういう意味では報告がありません。数がある程度そろった臓器というのは、すべて脳に関係するところであるというのをまず御注目ください。
(スライド)
さて、今回のBSEの騒ぎなんですが、ここにグレート・ブリテンでどのぐらいの頭数がきたかというのを書いていますが、一番注目していただきたいのは1988年に牛、羊同士でのフードリサイクリングをやめた。ボーンミールを使うのをやめた。そうすると、確実にだんだん減ってきている。だから、やはりボーンミールがかなり確実……。
勿論、デフィニットなことは言えませんが、かなりのものであろうということは言えます。
それと、今度は1989年、この赤で書いたところなんですが、これがヒトへのフードリサイクリング、リサイクリングという言葉はよくないですが、ヒトに脳を食べるのを禁止した。ということは、これ以前は食べていたと、逆に考えるならば思って当然の話であります。だから、ヒトからヒトの場合、今まで脳というのがキーワードだったんですが、実はひょっとするとBSEからヒトというのも脳というものがキーワードになるかもしれない。これが、イギリスでの状況です。(スライド)
それで、先ほど私が強調しました129 番目のことをお話しします。これは、ユナイテッド・キングダムのノーマル・ポピュレーションでこれぐらいの割合だと。つまり、シナプスにたまるメチオニン/メチオニンタイプは37%なんです。それで、恐らくプラークになるだろうとしているのは60%なんです。それで、実際にクロイツフェルト・ヤコブ病が起こっているのは実はこのメチオニン/メチオニンのタイプなんです。日本は、残念ながらこのメチオニン/メチオニンが90%以上いるんです。だから、もし日本に入ってくるとすればものすごくかかりやすい。このスライドは、スポラディックCJDのケースです。
(スライド)
このコドンの129 のポリモルフィズムは、実はメチオニン/メチオニンであればシナプスにたまる。プラーク型にはならないというのはイギリスでも一致しています。この2例は非常にまれで、しかも少量しかプラークがないと言っているんです。
実は、今度のウィーンの会でドイツのデータを足しますと30例、それはプラークなしなんです。やはりシナプスにしかたまらない。それで、こちらのバリンタイプになりますとプラークもたまってくる。これはドイツも一致しています。
(スライド)
そこで問題になってくる今回のニューバリアントなんですが、まず1つは年齢が若い。発症年齢が若い。これは、皆さんも認められることだと思います。
(スライド)
そして、もう一つの特徴である脳波所見が全くないんです。これはゼロです。10例中10例がゼロです。本当は12例中12例がゼロです。
(スライド)
そして、一番問題のコドンの129 メチオニン/メチオニンという日本人に最も多いシナプスにたまるタイプであるにもかかわらず、10例が10例プラークになっている訳です。細胞外にアミロイド斑としてたまっている訳です。こんなことは普通のスポラディックのCJDでは考えられないというので問題になった訳です。
(スライド)
先ほどから、猫はどうだというふうなお話がございましたので、少し加えさせていただきました。実は、今FSE、フェーライン・スポンジフォーム・エンスファロパチーといいまして普通の猫、これはドメスティック・キャットと言っていますが、今71例ございます。それで、1990年から発症しています。これは確実です。もう異常なプリオンたん白も証明されています。ピューマ、チーター、オセロット、これはロンドン動物園なんですね。それで、やはりBSEのものを飼料としていたというのがあります。つまり、これは自然発症例です。
(スライド)
次に、実験的には、ではそのBSEの脳を食べさせたり、それから脳内に入れたらどうかということで、この黄色で書きましたピッグ、マンモーセットというのが倉田先生もおっしゃったみたいに実は脳内に入れているんです。脳内というか、エンテラールじゃないんです。IVないしICなんです。そして、このマウス、キャトル、シープ、ゴート、ミンクというのは全部経口でうつっている。脳を食べさせてうつっている。マウス、キャトル、シープ、ゴート、ミンクです。それで、経口でもうつるし、勿論非経口でもうつります。そういうことで、つまり確実にBSEのブレインは少なくともインフェクシャスである。
問題は、筋肉なんかじゃないとみんな思っているんです。やはり、そのブレインがというのがキーワードにこれからなっていくような気がします。
以上です。

○大谷部会長

どうもありがとうございました。
北本先生、遅発性ウイルス感染分科会の方もちょっと御説明いただけますか。

○北本先生

よろしいですか。
では、最後のスライドなんですが、実はこれから遅発性ウイルス研究班の研究目標として、やはり社会情勢にも対応しなきゃいけないということがありますし、最も大事な緊急課題というのはこれだろうと思います。結局、異常なプリオンたん白を出来るだけ微量で測りたい。そうすれば、かなりのことが言えるんじゃないか。 例えば、先ほど言いました脳と筋肉を比べてみてどれぐらい違うのかというと今、脳は簡単に検出出来るんですが、筋肉は検出感度以下なんですね。今後、その感度を上げていっても検出出来ないぐらい少ないのかもしれません。つまり、微量な定量法の開発というのはやはり大事になってこよう。今のところ、イミュノアッセイ法を応用していこうというふうな動きで考えております。
だけど、最も大事なことはバイオアッセイ法の確立なんです。我々は今まで立石先生を中心に、マウスへのトランスミッションという、世界的にも非常にうつりやすいものだと。うつりやすいといいますのは、マウスはかなり感受性のある動物であるというのは認められております。もっと感受性を増やしたい。それで、ヒト化マウスをつくりたい。
それともう一つは羊化マウス、牛化マウスというもの、つまり遺伝子をモディファイして、日本で例えばBSEがない訳ですから、そのBSEからヒトなどというのはもともと日本では出来る訳がない訳です。だけど、日本には羊のスクレーピーがいるんです。そうすれば、その羊のスクレーピーは当然羊化マウスにかかりやすい訳ですから、これをもって牛化マウスが感染するかどうか、実際の実験が出来てしまう。
そうして、その牛化マウスで異常になったものは本当にヒトにとって安全なのかというのをすべてマウスの系でやってしまえ。つまり、我々の安全性をマウスで確かめてもらおうというふうなことを考えて、まずこれの作成に取り掛かっています。実は、もうかなりの部分出来つつあります。
それと、何よりも大事なのは、結局のところプリオンと言っていますが、では何が分かっているんだと。正常型と異常型でどういうふうにして異常型になるのかというもっと基礎的な研究というのは、実は最終的には臨床に役立つんだろうと僕は思いたいので、プリオンたん白異常化の本当にベーシックな分子機構の解明こそが予防につながるんだろうと思っておりますので、最後の3番目は絶対外せなくて、緊急課題としては1番が緊急課題かというふうに思って、遅発性ウイルス研究班を3年間頑張っていきたいなと思っています。

○大谷部会長

ありがとうございました。
大変興味あるお話なんですが、時間の関係もありまして、佐藤先生から引き続いて御説明をお願いします。

○佐藤先生

それでは、ヤコブ病の緊急全国疫学調査班の進行状況について御報告いたします。
今年の4月の下旬に、先ほどお話がありましたように、全国の緊急調査の案が厚生省内で挙がりまして、内々に依頼を受けまして、5月2日に第1回の調査のための打合せ会を開いております。この席には、北本先生や柳川先生のそれぞれの専門家に御出席いただいて、第1次調査の案を作成し、実際には5月21日に約40名の方に全国各10ブロックに分けまして2次調査の際の実際の症例調査を予想しまして、ブロックごとに代表者を神経、内科系、精神科系を決めさせていただいて第1回の班会議を行っております。その班会議の席上、相談しましたことは資料10にございます。
まず、第1次調査票の項目と、それからそこに添附するヤコブ病の診断の手引きあるいは依頼状等について相談しました。この内容の非常に重要なことは、患者さんの生年月日と発症月日、それから診断は中央にありますがクロイツフェルト・ヤコブ病、GSS、それから視床変性症、今回のイギリスのようなバリアントフォームが存在するかどうか。それから、診断の確実性について設問しました。 次に、右の方に移りますが海外居住歴、それから先ほど北本先生のお話の中にもありましたが、手術歴で角膜移植あるいは硬膜の使用手術の有無についても調査をいたしました。全国の神経内科、精神科、それから神経科の標榜病院3,918 施設について5月25日から発送を始めまして先週の金曜日、5月30日に全1次調査票を発送いたしました。既に先週の金曜日までに220 施設から回答がまいっておりまして、そのうち29例はクロイツフェルト・ヤコブ病あるいはGSSに臨床的あるいは病理的に確実なところに丸が付いたものが返ってきております。
調査期間はほぼ10年間でございまして、この調査票の回答の中にはイギリスの症例に該当する症例は見当たりませんでしたが、問題は手術歴、治療歴の中に硬膜使用手術がございます。これについては、これからの1次調査のアンケート結果を更に待ちまして、もう少し詳細な調査が必要かと考えております。
以上でございます。
それから、先ほどの、今まで日本での年次推移はどうであるかという質問でございます。これは幾つかの疫学調査がございますが、最近では北大の公衆衛生の近藤先生がなさった3年前だったと思いますが、死亡票を用いての死亡診断書でクロイツフェルト・ヤコブ病と挙がってきたものについての調査でございまして、人口100 万当たり1人から、この近年1.2 人と、数字上は大きい推移はございませんが、この調査方法ですと問題は疑わしい症例や、あるいはその発症年齢等、非常に詳細なデータを伺うことが出来ませんので、やはり今回の調査のように出来るだけしらみつぶしに調べる必要があろうかと思っております。 2点目は、日本で若年齢の報告があるかどうか。これは文献的にまだ十分ではございませんが、十数例拾い集めまして文献上考察をいたしましたが、大半は立石先生、北本先生が調べておられますGSSの症例あるいは家族的な症例で、現在のところ文献的にはイギリスのバリアントフォームと言われるものに該当する症例はまだ見つかっておりません。
簡単でございますが、調査結果は以上でございます。

○大谷部会長

ありがとうございました。
時間のないところを駆け足で御説明いただきまして、本当に興味あるお話をありがとうございました。
せっかくの機会でございますし、厚生省の関係の両局長も御出席になっておりますし、ひとつ皆さん方御自由に御質問なり、御意見なり、この機会にお願いしたいと思います。時間は来ておりますけれども、延長を若干いたしまして御意見を伺いたいと思います。

○宮本委員

小野寺先生にちょっと御質問を申し上げたいんですが、頭の黒い羊にプリオンの陽性の例があるというお話でございました。北海道であるとか、一部の本州でですが、その羊というのはイギリスから輸入した羊でございますか。それとも、日本で生まれて日本で育った羊なんでしょうか。

○小野寺先生

最初は、1974年ですから今からもう20年以上前にカナダから北海道に輸入された羊だと言われています。それからもう20年以上たっていますから、当然その羊の子どもか、何代かの子孫祖になる訳です。スクレイピー病原体は恐らくかなり濃厚汚染ですから、胎盤及び胎盤の周りの牧草が汚染して、それを経口で食べた小羊がかかってという形で病原体がつながっていったんだと思います。当然イギリスとカナダの関係ですから、50年前にイギリスのサフォーク種がスクレイピー病原体とともにカナダへ輸出されて、それからカナダのものが日本へきてと、そういう格好だと思います。

○杉村委員

立石先生と御一緒の仕事だったか、がん研の野田君がノックアウトマウスをやっていて、それであれはホモにない場合でしたか、生まれて2年ぐらい何の症状もなくて、それからプルキネ細胞の消失が起こるものがありますよね。あれは『ネーチャー』に出ていました。だから、本来の正常なものは必要たん白なんだろうと了解していいんですか。

○北本先生

その議題は、実はWHOの場でもナチュラル・ファンクションということで問題になりました。それで、世界で初めてノックアウトマウスをプリオンでつくったチャーリー・ワイスマンというスイスのチューリッヒの教授なんですが、彼が来ていて、実は今、世界で彼が把握しているのは3種類です。それで、私が把握しているのは4種類のノックアウトマウスがございます。それで、すべてのノックアウトマウスに共通しているタイプは、そのマウスはスクレーピー並びにプリオン病と言われるものに抵抗性になる。これは一致しています。
それと、日本で報告したいわゆるセレベラーアタキシア、プルキネ細胞が落ちるのは、日本の野田先生のつくられたマウスの系だけです。ほかではありません。日本でもう1か所つくられていますが、そこでもありません。
ただ、最近睡眠障害が実はダイアナルリズムを決定しているんじゃないかというのがイギリスのグループから出ました。それで、これは実はトランスジェニックでレスキューで来ていますので、かなり確かそうなんですが、それもチャーリー・ワイスマンは首をかしげています。
もう一つは、長期記憶に関係するんじゃないか。ロングターム・ポテンシエーションに影響するんじゃないかというのが実は2種施設から出ています。実は、これも全く同じノックアウトマウスを使って、否定的なデータもございます。だから、かなりこのタイプに関してはばらついていると思います。

○杉村委員

まだまだということですか。

○北本先生

と思います。

○杉村委員

だから、僕はやはり基礎的な研究がおっしゃったように非常に大切だと思いますね。特に 128番のメチオニンのところの問題などもあるから、基礎的研究をうんとしておいた方がいいんじゃないかと思います。
それからもう一つは、さっきボツリヌスだとか言って猫の話はもういいんだとかというお話を厚生省の方でなさいませんでしたか。

○森田課長

オランダのケースだけです。

○杉村委員

オランダのケースに関しては、あれはボツリヌスだ。だけど、猫がやはり何か入った場合には危ない。それで、特にペットフードというのはどういったレギュレーションになっているのか全然知らないけれども、すごくいろいろな内臓や何かがわっと入っているんでしょう。何十トンか何十万トンか知らないけれども日本に来て、それでペットフード等もつくる訳でしょう。だから、気を付けた方がいいんじゃないかとちょっと思います。
それから、一つ変なことに気が付いたんだけれども、メラトニンが今、日本にうんと入っているんです。それで、あれはみんな自分で買ってくるんですよ。日本では薬局で売っていないんだけれども、米国に行くと売っている。ハワイのアラモアナ・ショッピングセンターに行くとメラトニンがよく売れている。日本人もみんな外国旅行に行って買ってくるんです。私も買ってきたんです。それで、いざ飲まんと思って見たら、それは1錠についてメラトニン3ミリを含んでいると書いてある。そこまではいいんだけれども、それはエクストラクテッド・フロム・ピネアルグラウンド(松果体)と書いてある。それは何のピネアルグラウンドか。牛だか人だか分からないけれども、ちょっとあれは危ないんじゃないかなと思ったんです。
それで、アメリカではそんなことはどうなっているんだかよく分からないけれども、アメリカはちゃんとやっていなくても日本はちゃんとしていた方がいいでしょうから、ちょっと御注意を払っておかれた方がいいかもしれません。もし錠剤の瓶を御覧になりたければ、私が買ってきたのがありますからさしあげます。

○大谷部会長

いろいろ心配し出したら世の中あれですが、今、先生が言われたようにたん白の基礎研究みたいなものは、何も遅発性ウイルス感染症分科会の研究費だけでということでなくたっていい訳だから、別にお考えにはなっていると思いますけれども、やはり関係の研究費等も考えて、今ちょうど杉村先生がおっしゃったように、そういうのを少し考えられた方がいいかもしれないですね。
それと、山口先生にもお意見を伺いますが、感染症分科会とか、それから調査研究班、勿論これは新聞記者発表しておられるんでしょうね。やはり、これは情報公開ということは大事だと思うんです。どういう研究をやっているかということですね。私も今日これを伺って、厚生省にしては手早くやっておられるなということで非常に感銘しております。
しかし、こういうのは一般の方々は、私も初めて聞いた訳なので、一般の方々もこういうことを一生懸命やっているということを聞くと、世の中は感心もされるし、安心もされる訳ですから、ひとつ分かりやすくコメントをされるといいと思います。
山口先生、お願いします。

○山口委員

私は小児科医ですので北本先生にお伺いしたいんですけれども、先ほど小坂先生がちょっと質問されたんですが、今日配られた資料で、母乳が動物に発症させるとか。それは接種して発症したので、例えば子どもが飲んだときに発症するかどうかというのは非常に大きな問題だと思います。先ほど脳がキーポイントとおっしゃったんですけれども、そこのところはどうなんでしょうか。
○北本先生
これはマウスの実験系でやられたんですが、実験の説明からさせていただきたいと思います。
まず、初乳を取りました。初乳を取られて、それをマウスの脳内に植えた訳です。つまり、IC投与した訳です。それは、大体脳はどこに入るかということはちょっと分かりにくいんですが、初代のマウスは発症していません。初代のマウスは発症していなくて、臨床的にクエスチョナブルだと。だけど、実際のところ異常なプリオンたん白も出ていません。
では、そのマウスはよかった。それで、その初代のマウスをすりつぶしてもう一回トランスミットした訳ですね。だから、そこで何らかのオーギュメンテーションといいますか、増幅効果があって2代目が発症したというふうになっています。それで、2代目は発症しています。異常なプリオンたん白もありますので。 問題は、初代で発症せずに2代目で発症したときに一番問題となるのは、実はプリオンたん白は賦活化しにくいということなんです。つまり、マウスの実験をルーチンにされているところであれば、ひょっと変なところからちょっとでも感染したマウスの脳でなくても、ごくちょっとの微量なものが含まれていたら、2代目に発症するかもしれない。ラボラトリー・コンタミネーションと私は呼んでいるんですが、この危険性が非常に高いというふうな気がして、まだ遅発性ウイルス研究班でもそこは詰めていかなければいけないというふうには思っています。 それで、少し安心されると思うんですが、実はクールーという病気が先ほどありまして、これは千何百人というふうに罹患しているんですが、実はこれは兵士の脳を食べるんですね。つまり、戦いで亡くなった夫の脳を妻が食べる権利があるという非常にセレモニカルな風習なんですけれども、そのときは若い女の人が感染する訳です。多分、厚生省にこのビデオはいっぱいあると思うのでコピー出来ると思うんですが、このビデオはクールーに関するビデオなんです。それで、是非ごらんになったらいいと思うのは、何と何と若い乳飲み子を持ったお母さんたちが発症しているんです。それはあくまでもエピデミオロジカルなものなんですが、つまり感染した人の母乳を飲んで育った人たちはカンニバリズムをやめた途端にまずは発症していないんです。
そういう意味からも、非常に疫学的な調査なんですが、一応ないというふうに言って私はいいんじゃないかなと思っております。
ただ、それは疫学と実験なので、それぞれウィークポイントがございます。

○山口委員

ありがとうございました。

○杉村委員

この間、ヨーロッパを旅行していたら、豚だったか、羊だったか、ちょうど日本でマグロだとか、カツオだとか、タイとかのかぶと煮というのがあるでしょう。あれみたいに顔があるんです。それで、食べるか、とてもうまいと言うんですが、今は危ないから、遠慮したんです。

○大谷部会長

脳は入っているんですか。

○杉村委員

脳は入っていないけれども、ひどく近いですよね。それで、脳から神経も出て、神経はずっと筋の中を走っている訳でしょう。だから、やはり量の問題であって、脳だけは絶対に真空パックみたいに入っていてほかにはないというふうに考えるのは間違いだと思いますよ。量の問題だと思うんです。
だから、チャンスで、おっしゃったように、そのたん白だけ生きてしまえば、微量だけれども増えちゃっているというような状況は起こるんじゃないか。だから、リスクのある方にかけておいた方がいいと思います。

○小坂委員

ちょっと教えていただきたいんですけれども、発病してから死に至るまでの経過は確かに早いような気がしますけれども、潜伏期が長いかもしれない。それで、動物でもいいんですけれども、感染実験ですね。異常プリオンたん白を入れて感染実験をして、その後、脳などでそれがどのような過程を経て発病するか、そういう研究はあるんでしょうか。
それからもう一つ、人間でクロイツフェルト・ヤコブ病という診断はついていない症例の脳を調べたら今、問題のたん白が証明された症例はあるんでしょうか。これは、日本でもイギリスでもどこでもいいんですけれども。

○立石先生

まず最初の御質問ですが、動物に植えて感染させた場合、スクレーピーではまず脾臓に一番最初に感染性が出てきて、脾臓、リンパ系、それから遅れて脳に感染性は出てくるというふうに言われています。人ではそこまでやっていません。
それで、動物で見る限り、かなり発症する時期は、マウスでは一斉に発症してきますが、1、2週間のうちに大体全部発症して、それから1、2週間たって死ぬというような経過をとります。
それから、あとの御質問ですが、それはかなりあります。ほかの病気と診断されておったケースもあります。

○小坂委員

それは、振り返ってヤコブと診断すべきであったのでしょうか。

○立石先生

スポラディックなケースは割合典型的な臨床症状及び病理所見ですから、これはまず普通の神経内科のお医者さんの診断がほぼ的中しておりますが、特に遺伝子異常を持つタイプで若く発症する、あるいは非常に小脳症状が中心になって小脳変性症的な症状を出すケース、そういうものは非常に誤診されております。むしろそういうケースは剖検でも誤診されています。剖検でも診断がつきませんので、そうなるとプリオンたん白の染色で決まります。
そのメリットの一つは、古いケースでもそういう疑問のケースがあれば、もし病理のブロックが残っておれば今でも確定診断出来る訳ですし、むしろ今、問題のバリアントタイプCJDはそれで簡単に鑑別出来る訳ですから、これは是非この際、洗ってすべて明らかにする必要があると思います。

○小坂委員

杉村先生が基礎的な研究とおっしゃいました。私も非常にそう思うんですけれども、今の日本の実態調査をもっと踏み込んでやっていただけると、将来の対策などの場合にもいい資料になるんじゃないかと思うんですけれども。

○北本先生

今のことに関連して、イギリスの現状をちょっと御説明したいんです。
実は、イギリスでサーベイランスが始まったのは1990年からなんです。それで、BSEがかなり多くなってからの話であります。これは人のクロイツフェルト・ヤコブ病のサーベイです。それで、かなりしっかりやっています。
それで、ではデス・サーティフィケートといいますか、いわゆる死亡統計でクロイツフェルト・ヤコブ病の頻度を求めたのと、実際に彼らがサーベイランスを始めてからクロイツフェルト・ヤコブ病、デフィニットか、プローバブルかというところぐらいまではやっていますが、かなり差があります。
つまり、死亡統計ではもはや語れない。だから、日本の場合、残念ながら今までそういうふうな統計というのは、全国調査というのはないんです。それで、死亡統計だけに頼っていればとんでもないデータになると思うというのが1つです。 それと、先ほど非常に分かりにくい症例があるということで、実はこのニューバリアントそのものがそうだったんです。それで、何か分からない。だけど、続くからバイオプシーをしてみればスポンジフォームがあったというのがかなりの部分を占めています。それで、各国の人がこんな臨床症状を示しているのになぜCJDだと踏み切ってバイオプシーしたのかという質問が出るぐらい、つまり若い人ですから、CJDだともう死んでしまいますけれども、生き延びる可能性もあるのになぜバイオプシーをしたのかという質問が出るぐらいの変な症例の中でバリアントが見つかっていった訳です。

○高石委員

今の北本先生のお話に関連するんですが、イギリスでかなり突っ込んだことをやっていらっしゃるということですけれども、資料15にあります成長ホルモン投与の例等についてもかなり分析は進んでいるんでしょうか。 ○北本先生 成長ホルモンに関しては、ちょっと御説明しなきゃいけないと思います。
まず、勿論これは脳下垂体から取ったものですので小児科領域で使われているんですが、よく知っておられる方もかなりの方が誤解されています。実は、これは製薬会社等で成長ホルモン製剤というのはかなりつくられて日本でも出回っています。世界的にも出回っています。これで1人もクロイツフェルト・ヤコブ病にはなっていないんです。それで、なったのはイギリス、アメリカ、フランスの政府関係の研究機関でつくったロットに問題があるんです。
それで、一番ひどいといいますか、一番多人数を出したのはフランスのパスツール研でつくったグロスホルモンでありまして、これは実はピューリフィケーションのステップをちょっと省いている。例えば、尿素で処理するようなステップがありますが、それを省いているとかというのがかなり1992年に問題になりました。だから、これに関してはもうイアトロジェニックCJDということで統計からは除外されています。
勿論、統計の中にはイアトロジェニックCJDとして入っていますけれども、だから一般的に日本に出回っていたようなものじゃないと。

○高石委員

大分出回っていて、その辺について心配なさる方が随分小児科領域ではいらっしゃるんじゃないかと思って。

○杉村委員

その場合、みんなリコンビナントです。

○北本先生

今はもうリコンビナントです。
それで、実はこれは成長ホルモンをされたシズメ先生から御依頼を受けまして、92年の12月だったと思いますが、フランスでこの会がありましたので行ったときにはこういうお話でした。

○高石委員

ありがとうございました。

○杉村委員

この青本の27ページにある、いわゆる特定疾患に関する研究班というのは、今の諸先生はこういうことが問題になる前から、しこしこと余り世にも認められずおやりになって立派な業績を上げられた訳でしょう。だから、こういうグループにたくさん研究費を出すべきですね。
それで、たくさん研究費を出してから、あとから寄ってくる人はだめなんです。今までずっとやっておられた方を励ました方が私はいいと思う。厚生省が研究費を出すと慌ててそういう寄ってくる雑魚にばらまいてもだめですよ。

○清水課長

補足させていただきますと、私どもは先ほどお話ししましたように遅発性ウイルス感染症、これは昭和50年の初めから立石先生を始め北本先生にもずっとこの問題をやってきていただいております。この調査が緊急でございます。 それからもう一つ、科学技術庁に別に研究班がございまして、そこでもここにおられます小野寺先生、北本先生、立石先生、倉田先生、皆さんお入りになってプリオン、それから海綿状脳症の方も研究をやられております。

○太田委員

資料4に、CJDの原因として角膜移植というのがあるんですね。角膜はどうなんですか。目の一部が出っ張ってきて出来たものですが、眼球それ自体を取ってきて角膜をあとで取って、それで移植していると思いますけれども、やはり目などというのはどの程度危険なものであるのかということはどうなんでしょうか。脳の一部であるという考え方でいくと、視神経からずっときていると。○立石先生 そういうことですね。

○太田委員

そこのところをちょっと調べて、この危険性といいますか、症例はどのぐらいあるんですか。
○北本先生
角膜移植に関しては、世界でものすごく少ないんです。

○太田委員

受けた人の頻度が低いということもあるとは思いますけれども。

○立石先生

実は、公式に認められているのは、最初の古いケースがありますが、ごく最近、日本で1例証明されたんですけれども、そのケース辺りは正式のルートを通っていない角膜移植をしていらっしゃるので、ドナーについてもいま一つはっきりしないです。そういうケースがあり得るということを、むしろ我々は心配しております。

○大谷部会長

三浦さん、何かありますか。

○太田委員

この角膜はスリランカからですか。
○三浦補佐
今お話がございましたけれども、私どもが承知している限りでは、立石先生の資料15にもございましたが、1例だけペーパーになっている角膜移植と関連したクロイツフェルト・ヤコブの発症というのはございますが、それと同時に、立石先生が続けておっしゃった日本での最近の例ということについてはレポートを私ども見ておりますが、ドナーの方がCJDであったかどうか分からない。
ただ、角膜移植後にCJDが出たという時系列的な流れで、CJDと角膜移植について論じられたペーパーというふうに理解しております。

○大谷部会長

最近ようやく移植法の機運が高まってきまして、あちこちで移植を受けて、アメリカやカナダで受けて帰ってきた方が報告されて、やはり一般に非常な感動を呼んでいまして、だんだん厚生省の言っておられるように移植法も軌道に乗ろうとしているときですから、なるべくならばCJDで水を掛けないようにしないと、こういうのは一緒になっちゃって全部サボタージュの方向になってしまいますから、これは本当に議論はちょっと難しいですね。
角膜も今、インドから相当入っているでしょう。どれぐらい入ってきていますか。

○三浦補佐

スリランカが主な外国での供給源ということになっておりますが、ちなみに、私どもの部屋から移植関係の団体あるいはその病院関係、あるいは都道府県に対しまして、移植を介してCJDが感染するということがないように、改めてドナーのヒストリーをしっかり取っていただいて、そういうことはなるべく減らしてほしいというような旨の通知を出しているところでございます。

○杉村委員

カナダで輸血でそういう報告がありますよね。新聞記事にありましたが、輸血も臓器移植だから、カナダだったでしょう。ニューヨークタイム紙か何かに出ていましたが、記事を探してあったらお送りします。

○北本先生

あれは、輸血のドナーがクロイツフェルト・ヤコブになって、それでアルブミン製剤を回収してという話だと思うんですが、あれは何か所かあると思うんです。
ただ、そこからの発症はないはずです。

○大谷部会長

数年前に痴呆の厚生省の専門家会議をやっていましたときにある医局で、名前を言ってもいいんですけれども、クロイツフェルト・ヤコブの患者さんを若い医師が受け持つのを拒否するという話が出たんです。これは今、実際問題としてはいかがですか。これは佐藤先生の調査でも出てくると思いますが。
○佐藤先生
実際問題としては、受け持ち医が拒否するということは絶対ないんですが、ただ、病院によっては非常にオーバーに考えておられて、自分の病院では入院が難しいから、私どもの国立病院に預かってくれないかという依頼を受けたことはありますが、問題は病理解剖のときに非常に危険が多いというペーパーが出ましてから、病理を実際にやられる技術者と、それから標本をつくる人が非常にナーバスになっておりまして、解剖を行わないという施設が幾つかありますし、それからようやく行っても今度は標本をつくることについては断わるということが多くて、実際問題として非常に困っております。

○大谷部会長

このお話を伺っていくと、昔の肝炎問題などの試行錯誤で、オーストラリア抗原のころは本当に暗中模索でいろいろやったんですが、鈴木先生どうですか。昔の成功、失敗にかんがみて何か。

○鈴木委員

私が伺っていて今、一番重要なのは、そういう病理解剖の所見がきちんと出てこないと本当のことが出てこないのではないかという意味では、そういうところをどういうふうに啓蒙していくかというのが一番重要だと私は思います。

○立石先生

その危険性は確かにあるんですが、今までの報告例では、病理解剖医あるいは病理関係者に特にCJDが多発したという報告はありません。たまたまの発病と、一般人口での発病率と区別がつかないという程度でございます。それは医療関係者全体について言われておることで、やはり単なる接触感染などは起こり得ないであろうと。
その一つの証拠は、夫婦間の発病がないということも挙げられております。ですから、肝炎ほど、あるいは肝炎程度の注意義務をしておけば、私はいいんじゃないかというふうに考えております。
○大谷部会長
出来るだけ早い機会に、肝炎のマニュアルも随分オーストラリア抗原でやかましく言ってから十何年たって東京都が厚生省に先立って西岡さんがつくったのが最初ぐらいだったんじゃないでしょうか。随分時間が掛かっているんですよね。

○鈴木委員

今、先生がおっしゃるのはそうだと思うんですね。
ところが、実際は病理の先生は非常に過敏反応するんですね。今でも病院などではHIVとか、そういうのは大体看護婦さんが嫌がるとか、要するに過敏反応が出ているというところが問題なので、私どもからすれば、やはり医者になる人の教育からきちんとやらなきゃいけないんじゃないかと思います。

○大谷部会長

ですから、そういうもののマニュアルをきちんと研究班でつくってもらっておく必要があるんじゃないですか。

○大谷部会長

肝炎のときもマニュアルをつくるのが非常に遅れましたよね。十何年かかって、実はつくっていなかったんですよね。だから、今度の場合はもうちょっと早くつくる必要があるんじゃないかと思うんです。一般のお医者さんとか、看護婦にそういう誤解が割にある訳ですよね。過敏反応もあれば、また無視する人もいるということで。

○鈴木委員

それは、ちょうど部会長が生物製剤課長のときだと思います。やはり、物の道理を考えるとなかなか難しいんですね。だから、オーストラリア抗原が見つかって、これがウイルスと関係あるという話になってから非常にスムーズにいきましたけれども、血液でうつるという話は前からあった訳ですが、なかなか具体的にはいかなかったんじゃないかと思います。それで、今回の場合はもうはっきりしている訳ですから、そういう意味ではきちんといくと思います。

○大谷部会長

そういうことで、専門的な御研究と一緒に、一般のお医者さんや病院が簡単に物差しのようなものも研究班で出来ればきちんとしておいていただいた方が、無用の摩擦を招かないでいいんじゃないか。
前の痴呆の会議のときはそういう意見が出ましたけれども、結局本当に危険なのかどうなのかというのは余りよく分からないからということでそのままうやむやになったんですが、今お話をいろいろ伺っておりますと、素人よりも半玄人、医者とか看護婦ですね。そういう人は余り勉強もしない割にそういう過剰反応もするから、きちんとそういうのも研究班でやっていただけると非常によろしいんじゃないかと思います。
この公衆衛生審議会は議事録を公開するということになっておりますので、御承知おき願いたいと思います。
それでは、本日の成人病難病対策部会はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 問い合わせ先 厚生省保健医療局疾病対策課
    担 当 塚原(内2353)、平山(内2356)
    電 話 (代)[現在ご利用いただけません]

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