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第6回血液行政の在り方に関する懇談会議事録


1.日 時 平成9年5月27日(火)10時00分〜12時00分

2.場 所 厚生省 共用第6会議室

3.出席者
(委 員) 神尾友和 行天良雄 草刈 隆 清水鳩子 菅谷 忍 高久史麿 中谷瑾子 秀嶋 宏 藤田 仁 前田義章 三星 勲 湯浅晋治 渡辺俊介
(専門委員) 小室勝利 中井一士 布施 晃 宮島 剛宮村達男
(厚生省) 審議官(薬務担当)企画課長 安全課長 監視指導課長
血液事業対策室長 医薬品副作用被害対策室長
4.議事内容

1 開 会
2 議 事
(1) 今後の血液行政の在り方について(4)
(2) その他
3 閉 会

血液室長

本日はご多忙のところご出席いただきましてありがとうございました。ただいまから第6回血液行政の在り方に関する懇談会を開催いたします。
私は厚生省薬務局企画課血液事業対策室長の外口でございます。本日は井形委員、坂巻委員、曽野委員、森嶌委員が都合によりご欠席でございます。
高久座長
それでは第6回の懇談会をはじめさせていただきます。最初に資料の確認を事務局の方からお願いいたします。
血液室長
それでは本日の資料の確認と若干の説明をさせていただきます。まず資料1は本日の議事の1、今後の血液行政の在り方について(4)の資料でございます「我が国の血液行政の在り方論点整理(案)」この資料は前々回より継続して論議している資料でございます。続きまして参考資料は6点ございます。
参考資料1は全国衛生部長会より提出の「衛生行政の施策及び予算に関する要望書」の中の抜粋でございまして、2ページ目の血液事業の推進のところでは「1)血液需給体制の整備」「2)献血推進対策の強化」の中で、施策の要望項目をあげております。
次に参考資料2は「外国の血液行政の現状調査報告」であります。昨年11月に厚生省と日本赤十字社から欧米の血液行政の実情を調査する目的で調査団を派遣いたしまた。その内容につきましては「第2回血液行政の在り方に関する懇談会」でも報告いたしましたが、この度その報告書がまとまりましたので、参考資料として配付させていただきます。
参考資料3は、エホバの証人の医療機関連絡委員会東京委員会よりご提出の「無輸血治療に関する国内外の資料一覧」でございます。アメリカにおける自己血輸血の現状と将来、わが国における自己血輸血の現状と将来等、5点の資料につきまして会議の参考資料として活用していただきたいとのエホバの証人医療機関連絡委員会からの配付要望を受けておりますので、参考にしていただきたいと思います。
参考資料4は、三星委員よりご提出の「血液需給推進への1千万人献血運動協力体制について」というぺーパーでございます。各項目の内容につきましては先ほど申し上げました資料1の論点整理案の審議の中で適宜ご説明していただく予定であります。
次に参考資料5であります。この資料は大阪HIV訴訟原告団弁護団よりご提出の 「血液事業法(たたき台)」であります。第1章総則の中では目的、基本理念、定義、第2章の血液事業の責任主体の中では、国の責務責任主体、血液事業運営委員会、地方公共団体の責務、第3章血液事業の実施主体の中では、日本赤十字社の責務実施主体、製造及び供給の委託、血液事業関係者の制限、第4章その他の中では採血基準、被害拡大の防止、事故等に対する補償についての条文が記載されております。審議の参考にしていただきたいと思います。
次に参考資料6でございます。「血液製剤の安全性について(最近の事例)」を2点まとめさせていただきました。
1点目は「ウインドウ・ピリオド中の献血血液によるHIV感染について」。これは先週末にすでに報道された事例でありますが、本日午後のエイズサーベイランス委員会に報告されるものであります。概要を簡単に説明いたしますと、本年2月にある血液センターで献血された血液にHIV検査陽性を示した血液を見出し、その血液は供給から除外されました。直ちに同一献血者から採血された血液について遡及調査(ルックバック)を行い、この献血者が82日前にも血液センターで献血していたことが確認されました。その血液はHIV抗体検査陰性でしたが、そのときに保管していた検体からPCR法陽性のウインドウ・ピリオドの血液であること、またそのときに献血された血液は全血採血で一人の患者さんにだけ輸血されていたことも判明いたしました。血液センターから血液を供給した医療機関に連絡し、患者へのHIV感染の有無の確認と医療上必要な対応についてお願いされました。患者への輸血99日後の血液の検査結果はHIV抗体検査陽性であることが判りました。次の行ですが、「患者がHIV感染後」というところを「後」を消して平仮名で「〜したのは」と書き換えていただきたいと思います。患者がHIVに感染したのは、抗体検査で検出できない期間(ウインドウ・ピリオド)に献血された血液の輸血によるものと考えられる。「今後の安全対策」といたしましては、今回の例について疑うのではなく、一般論としてですが、検査を目的とする献血はウインドウ・ピリオドを引き起こす行為であることの周知。問診や献血終了後3時間以内の自己申告制の徹底による安全性の確保・献血時にPCR検査を可能とする技術の導入の検討。これらの件につきまして本日付で都道府県及び日本赤十字社宛に通知を出す予定であります。
次に2点目は「原料血漿の抗体検査について」の事例であります。概要でございますが、本年2月に米国アルファ社より血液製剤等を輸入しているミドリ十字社よりアルファ社か製造しているアルブミン製剤をイタリアに輸出しようとした際、添付された原料血漿についてHIV抗体陽性の疑いがあるとの検査結果が、検査を委託された英国の検査機関から出されました。ミドリ十字社においてはこれらの原料血漿を用いた中間原料5ロット及びアルブミン製剤1ロットを輸入していましたが、製品としては出荷されておらずこれら6ロットを現状のまま凍結したことの報告を受けました。
厚生省としては、安全性に関する十分な情報が確認されるまでの間は、確実に製造・出荷の停止が行われることが必要であると判断し、立入検査を行い、6ロットの封印を行いました。
輸入された6ロットに使用された原料血漿については、英国と米国で検査結果が分れておりますが、我が国においては万全の対応を期す立場から封印の状況を継続しております。
今後の安全対策といたましては、血漿分画製剤の原料血漿について従来の採血時の検査の義務づけに加え、確認検査の義務づけやその製剤の輸入に際し原料血漿を添付の上輸入させることについて検討を進めていく予定であります。
参考資料につきましては以上でございます。その他「第5回血液行政の在り方懇談会議事録」前回の議事録でありますが、配付しております。
高久座長
どうもありがとうございました。
本日はお手許の資料1の「我が国の血液行政の在り方論点整理(案)」の中で、すでに2ページの半ばまではご議論いただいておりますので、2ページの「2、国内自給の推進」というところからはじめさせていただきたいと思います。予定が12時までになっておりまして、できれば4ページの最後のところまでご議論願いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
最初に「国内自給の推進」ということで四つの点が上げられております。すなわち「外国から輸入される血液製剤及び原料血漿に関し、現時点では我が国の献血血液に由来するものがより安全である。」2番目が「輸入される血液製剤及び原料血漿の多くが売血による血液であるのに対して、国内のものは献血により血液が確保されていると考えるならば、国内自給率の向上に一層努めるべきである」というのは当然でありますが、「国内自給を推進するにあたって技術開発の進歩に停滞が生じるなど過度な規制による弊害は招くことのないようにすべきである」と。またそれに関しては「国際的な理解を得ながら進めていく必要がある」と書かれておりますが、これについて何かご意見がおありでしょうか。
一応皆もっともなことだと思いますけれども。
次の「献血量の確保」ということでありますけれども、ここのところがご議論いたしたいと思いますが、2ページから3ページにわたっておりますが「日本赤十字社のこれまでの取り組みに対しては国民の信頼は大きなものがあり、また、献血に関わる高い倫理性、公共性に鑑み、今後も国、地方公共団体、日本赤十字社による献血量の確保が図られることが望ましい」と。「国は、輸血に関する安全性確保や予算、事業計画などを含め、事業の健全な運営について全般的な監督責任を負うべきである」と。「国及び地方公共団体は献血量の確保を図る上で必要な措置を講じ、日本赤十字社による献血に係る事業に対して積極的に参画すべきではないか。また、日本赤十字社は事業遂行のための日本赤十字社の行う具体的な事業実施計画を策定すべきである。」「献血に係る事業に従事する者は、献血者に係る情報等業務を通じて知り得た事実を、プライバシーの保護等に十分配慮して取り扱う必要かあるのではないか。」「血液事業への信頼性の確保の観点から、献血時に発生する健康被害に対する救済制度を整備する必要がある」。この献血量の確保について5項目が上げられておりますけれども、この点についてどなたかご意見おありでしたら。草刈委員どうぞ。
草刈委員
今日の予定された議題には、ほとんどわれわれあるいは国内自給にご協力いただいておる方々が関わっておりますので、最後にもし許されればお時間いただき、まとめて申し上げたいと思います。
高久座長
どうぞ三星委員。もしご意見おありでしたら。
三星委員
個々にお話しているとバラバラになりますので、ある程度のところでお時間いただいた方が良いのではないかと。
湯浅委員
国内と外国との安全性の差異ですが、前回、厚生省が各企業のアンケート調査いたしましたとき、エイズの事件以来欧米各国も万全の安全対策をとっているようであります。特にウイルスの不活性化やあるいは除去についてはその研究開発や、製造過程への導入など機敏に対応しているようです。また今日の報告にもございますけれども各国でも血液事業を監督指導する組織の改革が行われたり、また安全専門委員会等ができたり、責任の明確化と監督行政の確立が見られます。一方、国内においては外国よりむしろ高い感染率をもつ疾病があったり、あるいはこれからの国際交流等を考慮しますと、現時点では安全性に差異があるとは言えないと思います。「血液は人由来である」ということは血液は臓器の一部であり臓器の一部である血液を外国に依存することは倫理的にも問題があります。従ってわれわれは倫理的な面から外国に依存しないで血液製剤の国内自給をすべきだと思います。
中谷委員
この血液事業ですけれども、今まで日本赤十字社でずっとやってこられて、大変立派に事業を続けてこられたと思いますけれども、それに対して国、地方公共団体は全般的な監督責任を負うべきであるというようなところもありますけれども、WHOの事務総長の勧告によりますと「この事業は国営事業にすべきだ」というふうにありますが、その点についてはお考えにならないのかどうかということが1点。それからプライバシーの保護についてはガイドラインはあるわけでございましょう。ガイドラインが多分なければいけないと思いますし、それが守られなかった場合に対する制裁はいわゆる刑法上の秘密漏洩罪かなにかに問われるのか、それとも制裁規定が必要なのか、そういう点もご検討いただかなければいけないのではないかと考えます。
高久座長
ガイドラインはないんですね。プライバシーに関して。
草刈委員
私どもは献血者の守秘は私どもで作られた考え方に基づいて徹底的に献血者の守秘と輸血を受けた患者さんたちの秘密を守っていくつもりでございますが行政、あるいは法制的なものはございません。医師法上のものはございます。
高久座長
日本赤十字社の中にガイドラインはないのですか。
草刈委員
一般的就業規則以外には成文化したものはございません。
高久座長
これはやはりそういった点もたしかにプライバシーについてガイドラインを作る必要があるかも知れませんですね。これは日本赤十字社さんと厚生省の方で。
清水委員
今のプライバシーの問題で発言しようと思っておりましたけれども、この書き方では倫理的な表現に止まっております。キチッとした裏付けをもったプライバシー保護の在り方を論点として記述しておかないと今までと変化ないんじゃないかと思いますことが一つと。2ページ2の国内自給の推進の・が4つございますけれどもここのところに追加していただくのが良いのかどうか。国内自給を推進していくためには、成分献血のような採血にずいぶん時間がかかる。あれだけの時間をさいてあそこに献血しに行くということは困難だなということを実感して1、2の方に伺いましたら、やっぱりそんなようなご意見も伺うことができました。したがいまして、骨髄提供者となる場合には特別休暇措置というのが公務員の場合にはございますというふうに伺がっておりますけれども、成分献血の場合にも運用できないのかどうか。それから民間企業においても何かボランティア休暇のようにこういうものを積極的に進めていくという体制がとれないのかなということを入れていただきたい。それから私もこの委員会に入りましていろんなことを学習いたしましたし、知らないこともたくさんございましたことに改めて反省しております。特に医療に関わる分野につきましては一般市民のレベルにあまり学習の場がないので、そういうご専門の方が思っていらっしゃる以上に知識が不足していると思います。これは別に血液行政の場合だけではないんですけれども、小さいときからこういう血液行政とか献血とかいうことについて機会を設けて小さいときから知識を積み重ねていくことが大事なので学校の現場においてもそういう献血の意義とか、重要性についてカリキュラムの中に入れるとか、何かできないかということを痛感いたしました。
もう一つ申し上げたいのはこの前ヒヤリングで大変深刻なご意見を改めて伺がったわけですけれども、あの中で私が大変気になりましたのは「日本赤十字社は血液事業から全面撤退し〜」というご発言がございました。本当にそれが良いのかどうか。ここの論点整理の中にも書いてございますけれども、それぞれの役割分担と責任の所在を明確にしていく方がこれまでの日本赤十字社の果たしてきた役割ということを考えれば必ずしも国営一本化が良いのかというのは分からない。いま中谷先生のWHOの勧告のお話もございましたので、もう少しここの場で議論しておいた方が良いのではないかということを感じました。
高久座長
どうもありがとうございました。最後の日本赤十字社の云々という問題は最後の方に出てまいりますのでそのときまたご議論願いたいと思います。それから確かに献血者の便宜を図るということに対してはこれはどこに入れれば、入れられれば入れたいと思うんですけれども、国内自給の推進というところで何らかの便宜を図るということ、ここになりますね。最初の清水委員のおっしゃる場所におそらく入っていくのではないかと思います。
三星委員
座長さん、このへんでちょっと発言させていただきます。
この血液の問題の根本を忘れてもらっては困るのは献血者があってはじめて血液事業が成り立っているんだという一番大きな柱ですね。これだけは絶対ですね。いまなんだかんだ言っても血をいただけなければ血液事業はないわけでして、その辺を一番の柱にお話をしていただきたいと思うわけでございますけれども、今日の私の話したいことの中であちこちとぶかも知れませんけれども、血液事業法の案が出ておりましたが、この間拝見してみますと3回にわたる委員会の答申ですね。こういうことに限ってもどうしても国内献血による自給体制、これは今の薬事法とか、いろんなことでやっていただいておりますけれども、そういうものと全然別個にした血液の安全性ということを中心にした国としての血液事業としての立法措置をぜひともお願いしたい。これは今後われわれが献血にご協力申し上げる大きな柱になるかと思うわけでございますけれども、先程から何回も出てきておりますけれども、やはり献血というのは国とか地方公共団体とか、当然のことに日本赤十字社さんの役割を明確にする。これは絶対そうしないと国民がついていけないよということだと思います。
この間、湯浅先生からご提案があったような医療機関における血液製剤の取り扱う体制の確立やら責任体制を明確にしてもらいますと、血液の流れが透明化して量もうんと減ってくるだろうと思うわけでございます。献血量の確保というので、4回目の委員会のときに原料血漿確保にようする献血者数の粗い推計というのをお出しいただいているのですけれども、ちょっとこれだけですと、何かどういう形かなということで私なりに調べてみました。そうしますと毎年度100万Lを確保するときには平成8年度で約15万人増えると、その次で14万4千人ぐらい。平成10年ですと15万3千人。11年で20万7千人。おおむね10数万から20万ぐらいの方の献血が増えていけば足り得る計算にはなってございますけれども、その次に150万Lの場合はおおむねスタートは19万人でございますけれども、あとは36万人だの34万人。だいたい30万人台毎年増やしていかなければいけないということなんですね。しかし今回これはお国の方でもはっきり腹を決めておられると思いますが、こういう形で委員会が開かれ少なくとも傍聴の方もたくさんおられるのですから、やはり確固たる方法でおやりにならざるを得ないと思います。やっていかなきゃだめなわけですから、そういう意味ではマスコミの力も借りるでしょうが、盛り上がりを先にもっていく意味においても、100万Lにしたところの流れではちょっと物足りないといいますか、やはり熱いうちに打った方が良いのではなかろうかと思いますので、準備までに1年やそこらかかると思いますが、30万人以上の献血者はやり方によって増えるわけですから、そういう形で最初から少しずつやっていくんではなくて最初から目標をパッと決められてやっていただきたい。目標については日本赤十字社さんの方にもお話したんですが、日本赤十字社さんとしてははっきりした数字をお出し願えないようですから、やはり国からご指示をいただいた上で、地方公共団体、行政などとご相談の上お出しになるようでございますが、そういう形の角度から是非これだけいるんだよと。これだけすれば絶対自給ができるんだから国民の皆さんひとつ協力してくれという体制が是非とも必要だと思います。それはもたもたという形ではなくて、鉄は熱いうちに打てという原理にそってやっていただければありがたいと思うわけでございます。
それから確かにエイズの関係の皆さんの弁護団の方のお話は大変なことだと思いましてわれわれも真剣に考えないといけないなと思いました。ですからそれはそれなりに現在厚生省の方でいろいろとそれに関する対応をしておられるので、国としても十分なご支援を願えればありかたいと思っております。過去にわれわれが知っている範囲でもやり方によってはたとえばエイズの問題が発生して血友病患者への血液凝固因子製剤の国内自給ということになりましたときには国会決議がなされておりますですね。緊急の50万Lということになりますと、当然のことで国なり日本赤十字社なり皆さんがその方向に向かっていただければわれわれのボランティアの方もそれによって盛り上がりができて、国民もそれに参加していただいて、やはり短期間のうちにこの問題も解決いたした例がございます。
それからまた最近ですと阪神大震災がございましたけれども、このときも緊急だということになればチャンとした方針が決まれば国民はヨシッという形でついてくれるわけですね。そのへんのところは十分踏まえていただきたいと思います。なんといっても献血思想を普及していかなきゃいかんという中身にあっては、献血者の保護というか、最初にお話あったようなこと献血者のプライバシーの問題、それと清水先生からもご指摘があったように確かにわれわれの会社の社員なども成分献血になるとおおむね1時間会社出てから1時間半か2時間なりませんと帰ってきません。そういうことに対する事業所といいますか会社に対する配慮などもやっていただければありがたいと思うし、当然のこととして教育の現場での献血思想の普及と、これは清水先生おっしゃったとおり小さいときから何回も何回もやっていくという、これが一番必要だと思いますし、さらに少子化高齢化への対応、たまたま今月号の「厚生」にも少子化の問題がかなり少子化をめぐる環境意識ということで詳しく出ておりました。すべての流れが急激に高齢化していく流れのようでございますから、やはり早く国内自給ということをあげる以上早くそれを達成するという形にもっていっていただきたいなと思うわけでございます。なんといっても血液事業は一つの国のこれからの大きな流れでございますので、しっかりとお願いをしたいと思うわけでございます。
ある程度まとめてみますと結論としては国が十分今までのことなどから反省していただいて本気で取り組むということであればわれわれが何回も申し上げておりますとおり十分なるご協力はさせていただきたいと思っておりますし、われわれの仲間にもそのことは話ししまして、こういう方向が決まったら、いっしょに立ち上がってくれという依頼はしてございます。過去を考えますと私ども献血に立ち上がった30数年前は「なんだ献血なんかアホらしいことやるな。そんなもの成功するはずがないじゃないか」というようなことで大分あっちからこっちから批判をいただきましたけれども、30数年がんばれば参加したことが出てくるわけでございます。日本国民というのは国民の善意を信頼していただいてこの自給体制をこの際確立していたたきたいと。これでチャンとおやりにならないとむしろ国民が献血することに対して背を向ける可能性が出てくるんではないかと。こんな危惧をするわけでございますので、よろしくお願いいたします 。
高久座長
はい。どうもありがとうございました。他にどなたか。
中井専門委員
中谷委員が最初に言われた「国営」ということばなんですけれども「national blood service 」という「national」というのを「国営」というふうに訳しているんですね。じつは文意からいうと「national」を「国営」というふうに訳すのが正確なのかどうかというのはなかなか相応の日本語かなくて、nationalは国営が入ると思うんですけれども、おそらくあの決議の真意というのは国がキチンと管理をするというのが最低限度としてあると思うんですけれども国の直営でなければならないというふうに解釈して良いのかどうかはちょっと私も迷っているんですけれども。nationalの翻訳の仕方だと思うんですが。
高久座長
判りました。どうもありがとうございました。
3ページ目の「中長期の需給計画の策定」ということでこれはかなり重要な問題があると思っております。というのは高齢化の進展等を踏まえたアルブミンや免疫グロブリン製剤等の製剤毎の具体的な国内自給の見通しを示すべきではないかと。現在今まで何回か血液行政の在り方に対する委員会の報告の中で売血から献血に移ったと。それからさらに国内での血液に関しては自給ができるようになったと。それから先ほど三星委員からお話ありましたように凝固因子に関しては国内の血液でまかえるようになったという少しずつ進歩があったわけですけれども、一番問題なのは現在アルブミンと免疫グロブリン製剤の大部分、特に免疫グロブリン製剤ですけれども、外国からの輸入に頼らざるをえないということが一番大きな問題ではないかと思いますので、その意味ではアルブミンや免疫グロブリン製剤等の国内自給の見通しを示す必要があると。これは後から出てくる適正使用の問題、あるいはアルブミンの場合にはリコンビナントのものがかなり製品化しつつあるという問題などもからんでまいりますけれども、このことから重要ではないかと思います。それから免疫グロブリンこの2と3はアルブミン製剤について、それから免疫グロブリン製剤について書いてございますけれども、とくに免疫グロブリン製剤については献血量の確保と原料血漿の有効活用を一層促進すると。21世紀初頭に国内自給を達成する。この目標を出す以上はやはり使用のことについてもはっきりする必要があるのではないかと思っております。この「(2)の中長期の自給計画の策定について」何かご意見おありでしょうか。
次に今問題になりましたけれども、「3血液製剤の適正使用」ということがこれ非常に重要な問題なんですけれども、書いておりますのは「国は関係学会と連携しつつ、アルブミン製剤や新鮮凍結血漿について使用基準の見直し、再評価等の具体策を講ずるべきではないか。」「血液製剤の適正使用については教育が十分必要である。」「医療機関において保管管理や適正使用を指導するための輸血部門等を整備する。」「国・地方公共団体は医療機関と協力して適正使用のためのガイドラインの普及を図ること」これ実際に使用のガイドラインはできているわけですよね。今までね。普及していないだけで。
湯浅委員
現在のガイドラインは各分野の先生方によって約10年前にできたものです。その間、医学と医療の進歩があり、今その見直しに輸血学会が関連学会とも連携しながら取りかかっております。ただそういうものを作り都道府県などを通じて医療機関に配布しても現場のドクター一人ひとり徹底しないのが問題です。ですからそういう情報などをいかに伝達するか、医療機関まで行きさえすれば良いというのではなく、医療機関に来たいろんな安全情報や、ガイドラインをいかに現場のドクターに普及させるかが大事なわけで、それには前回申し上げましたように輸血部門や輸血療法委員会など院内の安全な輸血体制をしっかりつくって、そこで個々のドクターに適正使用等の推進を計ることが必要です。ただ作っただけではなかなか現場に浸透しません。
高久座長
これは国立大学病院ではインターネットを通じて情報が入るようになっておりますですね。国立病院が少し遅れてだんだん全部コンピューターライズしていくという形になっていますからそのシステムをうまく使えばかなり安全情報から資料まで少なくとも大きな病院に関しては伝わるようになるんじゃないかと。今の若い人はむしろ科長会からもらってきたパンフレットよりは画面みる方が手っとり早い気もするんですけれども。
湯浅委員
パンフレットが科長会から回ってきただけではいけないんで、問題は如何にそれを徹底させるかです。輸血療法委員会があれば輸血のやり方や使用をそこでチェックしたりレビューができるわけで、不適切な使用をしていればその診療科あるいは直接担当医に警告といいますか、注意を喚起することができます。
前田委員
それに関して、この前申し上げた地域格差のひどさの部分は是正する方向にならなくてはいけない。自分の周辺だけ見ての適正使用の考えですと、この血液使用の地域格差は埋まりそうもないという気がします。いつも自分の県は全国的にどういう位置にあるかという見方が必要だし、そのための情報を提供することも重要だろうと思っています。
中谷委員
確か前に千葉県で急に使用量が減ったというご報告いただきましたが、あの理由は何だったんですか。原因は。
血液室長
千葉県の場合はあとで調べてみましたところたくさん使っているというか、大きな病院でございますけれども、その病院でも適正化と申しますか適正使用についての教育研修をかなり熱心にやられたというように聞いております。
高久座長
施設の努力ということになりますかね。アルブミンに関しては私の考え間違っているか知りませんけれども、これから肝炎がだんだん減る。それから肝硬変が減りまして、肝硬変がアルブミンを使う、かなり大きな総数になっていって、それが減ってくる可能性がある。それからもうひとつはネフローゼだったんですけれどもこれも腎炎が減りまして、一方高齢者の手術などのときにアルブミンが少ないので補給するということありますけれども、外科の先生方の間にも昔はアルブミンが低いと傷の回復が遅いからアルブミンを補給するということがずいぶん行われたんですけれども、それに対する批判も少しあってアルブミンの方は、もうひとつはリコンビナントのものなどがありまして、可能性としてはだんだん使用量は減ってくる、また減らすこともできるような気がいたしまして、グロブリンの方が少し気になっているんですけれどもこの点についてはどなたかご存じの方は。湯浅先生いかがですかね。この点については。
湯浅委員
グロブリンは重症感染症のときに抗生物質との併用ということになっているけれども、適正使用のガイドラインがないので、少し長期に使われているのじゃないかと思います。再評価も行われているはずですけれども。
高久座長
グロブリンはたしかに感染症に対して使うということに批判があったのですけれども、大規模な治験をしましてやはり重症感染症に有効だというのがありましたね。それから外国でもアメリカでもそうですけれども、やはり免疫グロブリンは重症感染症に有効だというデータがずいぶん出てきているんですね。それで気になっているのが重症感染症というのがこれからまだ増える可能性があるんですね。高齢者の問題もありますし、それからいまガンの患者さんに対して強い化学療法行うというのがどうしても重症感染症が増えてくる可能性がある、それに免疫グロブリンを使うなど、有効性が明らかに証明されている場合にかなり難しい問題があって、一方免疫グロブリンのリコンビナントは大変難しくてほとんど不可能だと思いますので、免疫グロブリンの需要だけが将来突出してきてどうするんだというのがかなり深刻な問題に私はなるんではないかと。ですからこういう点は十分に厚生省の方でも調査をして将来の需給の見通しというのを考える必要があるのではないかと。免疫グロブリンの需要だけが突出したときにどうするのかという問題がかなり重要になると思いますけれども、これは将来の課題ということになると思いますが。
秀嶋委員
現場におりますとやはりHIVとか静脈瘤なんかのときにとかく感染症を起こし易いというような状況になったときに現場の若い医者たちはともかくファーストチョイスとして免疫グロブリンを使ってしまうというようなことがございますので、そのへんあたりをしっかり管理して菌の同定をしてからやると、そういうようなことを証明してからやらないとともかく熱が上がったらすぐ使ってしまうという安易な使い方をしているというのが現場の状況だと思いますので、そのへんあたりをなんとかしなければいけないと思います。
高久座長
そうすると教育の問題なんかがありますですね。基本的に有効だとしてもこれだけ高価でしかも手に入りにくいものを、抗生物質に比べますと、そうすると重症の感染症に本当は限定すべきなんですね。抗生物質が効きにくいような、あるいは効かなくなったような、それに限定すべきなんですけれども、そこら付近のことは保険の方の問題とか、いろいろからんできますけれども、適正使用のところでやはりアルブミンと免疫グロブリンにつきましては基準を作っていく必要が、特に免疫グロブリンが難しいですね。ガイドラインをもう一回検討していただく必要があるのではないでしょうか。感染症の専門家の方ともご相談する必要があると思うんですけれども。
秀嶋委員
もうひとつ。さきほど高久先生からお話ございましたインターネット使うと若いドクターたちが相当さわるだろうというふうなお話ございましたけれども、やはりアクティブに見ていこうという気持ちがないとどうも、それはこれからの血液製剤の教育と申しますか、一つの義務化したような教育委員会みたいなものを作っていくということが原則だと思いますし、そうやらないとクリアできないようなたとえば日本医療評価機構の中のサーベイの一つの項目にしておいても良いんじゃないかなと、そういうものもやってなければ点数が落ちるというようなことも一つしようかなと思いますので、そのへんもお考えおきいただきたいと思います。私またこれ医療評価機構に行っても話をいたしますので。
高久座長
よろしく。草刈委員どうぞ。
草刈委員
あとでも申し上げますが、これは行政の在り方懇談会ですから特にお願いしたいんですが、医薬行政の中で適正使用を推進することの限界というのをお考えいただき、医療行政と一体化しないと現場の先生方もやりにくいと思います。
清水委員
今のインターネットのことで先生は教育の範囲でおっしゃったんですが、私が伺っていて感じましたのはインフォームド・コンセントとの関係があると思うんですけれども、この間のヒヤリングのときにも患者さんを抜きにした血液行政はあり得ない。患者こそ最大のプロだというご発言がありました。私もそう思います。情報が公開されるということは一般の人の知識レベルも高くなるし、問題の在り処もよく分かります。ですから血液製剤の適正使用の状況というものを素人がアクセスできるという意味ではインターネットの果たす役割は大きいと思いました。お医者様の若い方がご覧にならないということも教育で広げていかなければいけないと思いますけれども、一般の人がアクセスできるインターネットは非常に効果が大きいと思います。
秀嶋委員
ですから患者さんと申しますか、一般市民の方は非常に興味がおありになる。医者たちはわりあいに既成概念と申しますか、そういうものが多すぎるとおれたちプロだという気持ちでポッポッと使っているというのが現状に近いのかなと私思っております。今の若い連中はわりあいに個人主張が強うございます。上から押さえつけてもますます反発するということございますので、コントロールするのは一つのしばりをつけるのが必要ではないかなとそういうふうに思っております。ですから患者さんの方がよく知ってプロの方が知らないという影響が逆に出てくるのではないかなと思っております。
高久座長
どうもありがとうございました。次の「献血血液の有効利用」ということでこれは当然のことでありますけれども「無駄なく有効に活用する必要がある」「収率の向上や分画後のペースト等の未利用の原料血漿の活用等一層の有効利用に関係者が努める必要がある」これは収率の向上とか、あるいは分画後のペーストは何か利用する方法に価値があるのでしょうか。前田先生ご存じでしょうか。
前田委員
私も詳しいことは良く知りません。
草刈委員
あります。それはまた後ほどデータで次回でも何に使われるかということを。
高久座長
判りました。やはりここに書いているように「ペースト等の未利用の原料血漿の活用等が考える必要がある」と。次にこれがかなり重要でありますが、「安定的かつ効率的な供給」ということで「血液製剤を供給する事業者は、重大な社会的責任を果たしているという自覚に立って、安定的に供給する必要がある」そこでこの供給のことに関して「輸血用血液製剤」と「血漿分画製剤」との二つに分けて議論がされております。最初の「輸血用血液製剤」については「輸血用血液製剤の製造については、従来日本赤十字社により安全性の高い輸血用血液製剤が提供されており、今後も同様に日本赤十字社により行われていくべきではないか」これは先ほどnationalということばの問題もありましたけれども、国がある程度行うべきではないかというご議論も当然出てくるかと思います。次にもう一つの「血漿分画製剤」に関しては「当然血漿分画製剤に関して不適正な使用が助長されるような事態が生ずるようなことのないようにすべきである。これまで民間事業者の製造能力、販売力を利用し国内自給を進めてきた経緯から、現行のような複数の民間事業者による競争を通じて、効率的、かつ適正な供給を図るべきなのか、あるいは血漿分画製剤の製造や販売の一元化を図るべきか。この場合に技術開発力の維持向上とか、運営の効率性の問題が当然でてくるわけであります。さらに不当な行為が事業者にあった場合に原料の提供を制限するなど適切な対応がとられるべきではないか。もうひとつ民間製造業者に対する献血由来の原料血漿の売却に関しては、配分量や価格の設定を公正かつ透明なルールの下に行っていく必要があるのではないか」こういうようなことで最初の輸血用血液製剤については従来通りに日本赤十字社によって行ってもらう。血漿分画製剤については現在いろいろ民間製造業者が販売をしているわけでありまして、外国から輸入した血漿の分画製剤などが売られていろいろな問題が起きたわけでありますけれども、この特に二つの問題についてご意見をお伺がいしたいと思います。よろしくお願いいたします 。
どうぞ。
秀嶋委員
今まで輸血用の血液につきましては、日本赤十字社がおやりになっていただくのがよろしいかと思っておりますが、血漿の分画製剤ということになりますと、今まで相当にウイルスだとか、そういうような病原体の不活性化、あるいは除去というものに関して民間企業というのは非常に研究をしたり、あるいは製剤の開発ということをやってきておりますので、そういうことから見ますと、これは今後一層の競争の原理というものを働かせて民間業者にやらせるというのが良いのかなと思いますしもしも問題があるとするならば、事後の規制ということで何かコントロールしていけば良いと言うふうに思っております。それからもう一つは販売に関しては一元化しますとどうしてもシェアが決められてきますし、そういうことになりますと新しい参入ができないとか、そういうことからいうとやはり技術開発の妨げになりますし、その結果患者さんに一番不利な状況になるということが考えられますので、やはりそのへんで一元化するよりも少しキチッとしたコントロールチェックさえ、チェック機能が働けばそれで民間業者というか企業にやらせても良いんじゃないかなとそういうふうに考えております。
高久座長
どうもありがとうございました。他にこの問題に関してご意見はおありでしょうか。この委員会、懇談会の流れといいますか、目標として血漿分画製剤の原料血漿は献血由来のものというのが目標としてあるわけでありますけれどもその売却に関しては民間業者に関しては配分量とか、価格の設定を公正かつ透明なルールの下で行うと、これは当然でありますが、この点についてはよろしいでしょうか。 次に「透明性の確保」ということで「血液事業はその公共性から、情報が幅広く国民に公開され、透明性が確保されるべきではないか」これはさきほどから清水委員等からも国民一般に広く血液事業について教育をしてもらいたいという要望がありましたので、これは非常に重要なことだと思いますが、「情報の提供を受けることによって、国民の血液事業に対する関心が高まり、事業への信頼が増すこととなり、また協力につながるのではないか」
次に「7 法制度の整備」ということで「これまでの血液事業の成果を承継しつつ提言の個々の内容を具体化し、21世紀に向けた事業の一段の飛躍を期すため、時代の要請に応えた新たな法制化が必要ではないか」と。
今日は「2 国内自給の推進」「3 血液製剤の適正使用」「4 献血血液の有効利用」「5 安定的かつ効率的な供給」「6 透明性の確保」「7 法制度の整備」ということでご議論願ったわけですが、2番から7番までどの問題でも結構ですからご自由にご意見を。どうぞ。
渡辺委員
さきほど最初にご報告あった参考資料6ですね。最近の事例の中のいわゆる輸血によるHIV感染の問題、これについて今までのご議論とも関連するところがあるかと思いますので、お伺がいしたいところと意見とをちょっと申し上げたいんですか、まずこの場合PCR検査、ウインドウ・ピリオドの期間を短くすることができるPCR検査、これさきほど厚生省のご説明でも技術の導入を検討するとこうなっておりますが、もう少し具体的に示さないと、たとえば私自身新聞社の例ですけれども、昨日あたり相当というとオーバーかも知れませんけれども一般の方からの問い合わせといいましょうか、不安感が寄せられていることを聞いて「これだったらはっきり言って輸血できない」というご意見もございました。多少大胆な言い方になるかも知れませんが、これは血液行政さらには輸血に対する信頼を揺るがせるものとも言えるかも知れない。そういう私自身は危惧を抱いておりますので、つまり私自身行政に対する要望としてはそういった不安感、不信感といったものを払拭するようなことをやらなくてはいけないと。ここの今後の安全対策、難しいことは技術的にも判りますけれども、たとえばPCR検査ひとつとってみましても、技術の導入の検討だけではちょっと弱いといいましょうかね。もうちょっと明確なものを示していただきたいということがひとつと。もう一点は、さきほど血液製剤の適正使用という議論がございましたけれども、血液製剤がアルブミン等どういう活用され方しているのか判りません。つまり血液製剤で私は輸血したいといったらあるわけですね。たとえば今アルブミンがどのていど使われているか私自身もちろん判りませんが、情報として私自身お聞かせいただきたいなというところもありますけれども、つまり安全な製剤を使いたいというような声があるわけですね。そういったものに対しても何か分かるデータというか、情報といったものをお示しいただきたいと思いますので、もしよろしければお答えいただきたいと思います。
高久座長
どうぞ。
血液室長
PCR検査についてでございますけれども、まずPCR検査というのはどういう検査かと申しますと、たとえばHIVの感染のときでも感染しますとまずウイルスが血液の中で増殖してその増殖のカーブがいったん下がるころになって抗体が増えてくるわけでございます。今の献血時のスクリーニング検査ではその抗体のところを計っておりまして、抗体ができるまでの期間のところがいわゆるウインドウ・ピリオドでございまして、抗体検査では計れない期間でございます。それでPCR検査はその抗体ができる前のウイルスの段階で計る検査でございまして、具体的には血液の検体の中のウイルスの遺伝子を一部取ってきたものを増幅させて、それで計る検査でございます。それでこれは研究室レベルでやるとだいたい10〜20検体を二日から三日かけてやるというのがふつうのやり方だと思います。そういうやり方ではもちろん年間600万検体、そして血小板ではとってから72時間以内しか使えませんので、そういったものの供給には物理的には無理でございます。しかしそういってもおられませんので、今献血時にPCR検査がなんとかできないかということでいわゆるマススクリーニング検査が可能なもの、たとえば1日に一度に100個、200個の検体を数時間で検査するような仕組みの開発が進んでいるところです。現状を申し上げますと、献血時のPCR検査法について開発しているグループが国内に1グループ、国外おもにアメリカですけれども、数グループございます。国内ではこれは数年前から厚生省の方も補助金を出しておりまして、現在第2次試作機まで完成しております。ただまだ技術的な課題がいくつかありまして、まだ実用化までにはもう少しかかると思います。技術的課題と申しますのは大変微量な検体を大量に一度に処理しますので、たとえば検体に試薬を入れるときに目に見えないしぶきが少しでもあればそれで検査がうまくいかないわけであります。そういったこともございますので、いくつかの課題があります。あと外国の方の進み具合でございますけれども、これもほぼ横一線ぐらいで進んでいるんではないかと思いまして、おそらく数年以内、あと2年ぐらいで実用化のめどが立つのではないかと期待しております。今申し上げられるのはそこまでであります。
高久座長
安全のことは。前に資料一度お配りしたんですけれども。
血液室長
安全な製剤についてでございますけれども、まず使用量についてでございますけれども、まずアルブミンの方はこれはだいたい20%〜25%の50ccの製剤をふつう使うんでございますけれども、これを原料血漿換算にすると280万L〜300万Lぐらいが年間の使用量になるかと思います。グロブリンの場合ですと筋注グロブリン、静注グロブリンといろいろ種類ございますけれども、原料血漿換算にすると120万Lぐらいでございます。
高久座長
アルブミンが40%でしたね。
血液室長
自給率は免疫グロブリンが直近の数字で48%、アルブミンが25%です。
高久座長
PCRともう一つコストの問題は。
血液室長
コストの面から申しますと、抗体検査よりはこれははるかにコスト増になります。それで問題点としてはコストの面とそれから短くやってもオーバーナイトぐらいの時間はかかりますので、当日の血液の供給はおそらくできなくなりますので、そのへんについてもかなり工夫が必要になるかと思います。
草刈委員
本来ならば湯浅先生がおっしゃるべきことだと思うんですが、第1回の委員会のときに森嶌先生のご質問に対して申し上げて、曽野先生が最後にコメントされたことでございますが、人間の血液は決して無菌ではなく、われわれの免疫が抑えているわけでございまして、インフルエンザウイルスが入っていても発病する人発病しない人が出るように健康に見えるわれわれの血液は何時でも無菌であるということではない、あるいは他の人の身体に入れて何の反応も起こらないということではない。たまたまABO型が発見される前は輸血をした人の半分以上が死んでしまった。100年前にランドシュタイナーという方がABO型を発見してそういうことがなくなってきて、さらにまたウイルスなどに対する知見が進んできて、今の血液は高久先生が委員長をしていただいている委員会でもご査証いただいているようにあらゆる技術をつくして安全のためにできるかぎりのことをしています。しかしながら命と引き換えで輸血はなされるべきであるという原理原則は変わりはない。そういう意味でインフォームド・コンセントというのが臨床の先生方に望まれていることでございますし、たまたま少ないとはいえ輸血にまつわるいろいろな事故が起こっております。その度ごとにわれわれは自分たちの行っていることが誤りはなかったか、また省みて何か改めることはなかったかといつも反省をしながら改良に努めております。不信、不安があるというのはむしろ輸血というものの危険、それが必要であるということの状態を知って患者さんたちも輸血を受けていただきたいなと願っております。しかしながら渡辺委員ご安心ください。最近ご退官になった国の治安の中心の方ですが、あの方は一晩に約200人分の血液が入りましたが、何の副作用もないぐらいまで輸血学の先生方、あるいは臨床の先生方のお蔭で輸血が行われたのです。われわれの免疫が完全に停止したとき、たとえば私が死んだとき、早速次の瞬間から腐敗が起きるということ、これは生物体として当たり前のことだということをぜひご理解いただきたいと思いますし、また分画製剤もたとえ不活化除去があるとはいえ、バリデーションということばを使っておりまして、10のマイナス何乗までウイルスを不活化した、あるいは感染性を減らしても危険はゼロではないのです。絶対ゼロであるとは言えないのでございます。これが再三申し上げているように「薬事法の第56条は血液や血液製剤には非常にきついんですよ」。というのは汚染の疑いがあるとか、汚染のおそれがあると言われてしまうと人間の血液はみんななんですよ。厳密にいいますと曽野綾子先生のようなことばの天才が今日おられないので、ちょっとさびしい気がしますが、そのような中での血液事業、その中での最大の努力をメーカーの方々、われわれ献血者の協力を得ながら努力してきているということをご理解いただければありがたいと思います。
渡辺委員
草刈先生のおっしゃることは判りますし、これまで一生懸命努力なさったことはよく理解していますが、安心してくださいとおっしゃっても不安感があるもんだからこの会議もやっているわけでね。不安・不信感を除去するようなベストを尽くさないと血液事業の再検討の必要もなくなるし、この委員会の意義もなくなるわけなんで、だからそういうことを。
前田委員
PCRですけど、この検査をしたら感染がなくなるということではありません。単にウインドウの期間が短縮するだけのことですので、この検査の導入によって感染症がなくなるというように誤解されても困ります。そういうことからも献血者の選択というのが非常に大事であるとされています。こういう検査がいくら進歩しても、献血者の自発的な協力がなければ安全性は保ち得ないということです。
菅谷委員
今の安全性の問題はこれはやはり意見が出ておる通りでして、したがって患者に対してのインフォームド・コンセントということが基本的に大事なことだと、必要なことだということで保険診療においてもそういうことをしっかりやりなさいということで適用したところですので、これは今後そういうものをキチンとやっていく必要があると。それから先ほど国営の問題が出ましたけれども、国営というのはこれは非効率の最たるものだということが今常識になっているわけでして、その中でこういうもの、もっとも大事な問題を国営にするということはまず考えられない。いま行われているように日本赤十字社を中心とした中でやらせるべきであり、国がそれをしっかりと管理すると、そういうシステムをしっかりするという体制を作ることが大事だと。その際にもうひとつは国がどこまで関与するかということもキッチリと見据えておく必要があると。それから使用にあたっての輸血部門の整備という話がありますがこれもそういうことができるのはごく限られた病院だけであるのが現状であろうと、中小病院においては、なかなかむずかしい。あるいはまた緊急輸血の場合にはすぐ対応できるかどうかということも非常に問題があると。したがって、そういうことの問題も含めてこれは使用の適正ということに関しての教育ということが非常に大事だとそのことをやはり行政としてはキチッと見据える必要がある。それから行政として当然やるべきことはやはり需給の見通しということをキチッと出すべきであると。こういうことをやらない限りはなかなかうまくいかないというふうに思います。
高久座長
どうもありがとうございました。いろいろな副作用というか、感染等の問題が起こるということは非常に深刻な問題でありますが、同時にまた輸血をする方、血液製剤を含めて、受ける方も危険なものであると、したがって、これをしなければやはり、どうしてもしなければならない病気に血液なり血將分画製剤を使うんだということが両方はっきりすれば実践的に適正使用ということにもなっていくと思います。今まではやはりだんだんそういう傾向はなくなってきておりますけれども、分画製剤なども安易に使われてきた傾向がなかったわけではない。こういう危険性ということが強調されることによって、より慎重に使われるようになるということでは、そういう方向に行くべきであるし、だんだんそういうふうになることを期待をしたいと思います。他にどなたか。
草刈委員
清水先生が心配なさる評判の悪い日本赤十字社でございますけれども、アメリカの日本赤十字社と言われると私はキョトンとするんです。アメリカのは米国赤十字社と申します。各国の赤十字が世界の中の血液事業にかかわる関わり方というのは各国によって違っております。日本だけが輸血用血液100%、しかも国内自給に向けて献血者の方々のご協力をいただきながら、原料血漿の確保を努めているという状態の中で今日、行政の在り方についてとりまとめて申します。ぜひ私どものセンターにいらしていただいてセンターの中から事業を見ていただくということをこれからもお願いしたいと思います。この間のご意見の中で日本赤十字社といえば行政の制約が加わらないというのですがわれわれは製薬業という制約を受けております。病院は医療法、医師法、健康保険法等にキチッと日本赤十字社の病院といえども管理されているということをまずご了解いただいた上でお話したいと思います。今までのいろんな意見の集約の中にもございましたので、そこは省きながらお話したいと思いますが、ご存じのとおり昭和39年の閣議決定の後、国および地方公共団体による献血思想の普及、献血の組織化、日本赤十字社または地方公共団体による献血受け入れ体制の整備と推進という役割が昭和39年に示されたのです。昭和49年以降輸血用血液に関しては皆さんご存じのようにすべてを国内の善意に基づく献血により医療機関に供給しております。目標とする輸血医療の安全性向上のためには渡辺委員がご提案なさったアンケートがございましたけれども、そのアンケートに答えさせていただいた中にも盛り込んでおきましたが、国民献血者の方々および輸血を行う医療機関の理解と協力が必要です。しかし血液事業実施の上でも、先程からお話にあるように国民、国、地方自治体、医療機関、および日本赤十字社等の役割や責任などを定めたものの法律は現在までにないままであるということは事実です。血漿分画製剤は先程から議論になっておりますが、昭和63年の国会の社会労働委員会において血友病患者さんが使用する血液凝固因子製剤を献血血液により完全に供給できる体制を早急に確立する決議がなされまして、これは三星委員がおっしゃる通りですが、厚生省から平成2年通達によりまして、血漿分画製剤や原料血漿についての明確な指示がなされて、それ以来今後わが国のすべての血液製剤を献血血液で自給することを目指して、第一目標は血友病患者さんに不可欠な血液凝固因子製剤とすることとなったわけです。その方針にしたがいまして、日本赤十字社は原料等の献血の受け入れと第VIII因子製剤の製造と供給の大部分を担うことになりました。そのころ血友病の専門の先生方あるいは輸血学会の先生方は日本赤十字社ができると思っている先生方は少なかったと私は誤解か理解しておりますが、国の指導と援助を受けて外国から製造技術を導入して第VIII因子製剤の製造と供給を平成3年度から開始しました結果、平成5年には国がお示しになった国内自給の第一目標である第VIII因子製剤の自給はほぼ達成されました。現在では国内献血由来製剤の8割を日本赤十字社の製剤が占めている。ただし、リコンビナント製剤を除くわけです。確かに第一目標は達成されましたけれども、分画製剤全体については血漿確保量や国内メーカーの製造能力、分画製剤の使用量、その使用動向を見ますとまだまだ検討すべき課題は山積しております。国内自給の次なる目標の設定、役割分担、達成方法等について、やはり渡辺委員がおっしゃったように基本的な考え方をこの場で整理して改めて献血による国内自給の推進における今まで申し上げた人々日本赤十字社を含めて役割、責任を明確にしなければならない時期が今だと思っております。国の方針形成に資する意見がこの委員会でまとまることをわれわれは切望していますが、大切なことは三星委員がおっしゃったような国民、特に献血者の理解と協力が得られない献血による血液事業はあり得ないということです。国内製薬企業の設備を活用しながら国内自給を目指していく場合でも利潤追求でない血液製剤の製造供給、そして医療機関での献血者の血液であることも視点においた適切な使用について等、献血者、輸血を受ける方々、血液製剤をお使いになる先生方、それを受ける患者さんたちに対して透明な事業運営が行われるべきであると思います。
そういう硬い話はさておきまして、大胆な言い方をして実は曽野先生がいないのが残念なのですが、献血に基づく血液事業を構築することをたとえば大胆ではございますが、家を建てることにたとえてみます。改めるところがあったらご注意いただきたいと思います。この家の施工主は献血者である国民の方々です。お住まいなさる方々も輸血用血液を必要とする国民、分画製剤を必要とする国民の方々になると思います。そして建築の設計にあたる人は国、地方公共団体等になるのではないかと考えます。施工主と設計者の意向を受けて家を建ち上げる立場というのは工務店になりますが、日本赤十字社もそのうちの一つでございますが、現在では日本赤十字社があたっているのだと存じます。そして輸血や分画製剤を医療に使用なさる医師の役割は水道や電気が居住なさる人びとの生活を安全にかつ快適にする役割ライフラインにあたるんではないかと思います。これまた異論があったらおっしゃってください。実際に工事する立場というたとえから申しますと施工主や設計の方々がどのような家を求めているかを把握し実務にあたる面での意見を申し上げることが大切だと思いますので、この委員会でも特に医療やわれわれのような製剤にあたっている人びとの意見が大切だと思ってこの機会を活用して国民の方々に安心できるものを構築する上の意見をいただきたいと思っております。極端な例を施工主、ないしは設計の方々が求めている例をいいますと一番目は雨風をしのげれば良いやと言われる場合も極端な例として上げられると思います。もう一つは地球上で考えられ得るどんな災害にもたとえ悪いんですが、判り良いので言いますと原爆の直撃でも中の人間が生き残れるようにしろよという両極端があろうかと思います。真ん中へんにくるのが今の技術や知見を尽くして最高のレベルで、たとえば阪神大震災のような何千年に一度のようなものでも中の人が生き残れるようにしろよというように大胆にまとめてみます。個人的な意見でございますが、雨風を防げれば良いというのはお断りしたいと思います。2番目のどんな場合にも完全に100%安全なものというと、これは不可能です。ただし最高のレベルを尽くして努力を尽くして一生懸命やるというようにご下命いただければ努力をつくすのではないかと思います。そのような視点で具体的に提言の中を申しますと、やはり血液行政の在り方には献血に基づく血液事業を実施していく上で血液行政の在り方には立法措置を含めて国、地方公共団体等それぞれの先程申し上げた方々の責任や関与を明らかにしていただくというのが根底にございます。国は国内自給についての基本方針が段階を踏んだ、これも論点整理の中にございました将来構想を明確にして、国民の共感と賛同を得て献血思想の普及、献血者の個人情報の保護や採血時の事故に対する救済制度を図っていただきたいと思います。一方、地方自治体は国の定めた施策を踏まえて、採血計画の策定と実施を行っていただきたい。3番目になりますか、4番目になりますか、ちょっと不明確ですが、輸血用血液と血漿分画製剤の安全性を薬事法によらず特別の法体系で確保していただくようにしていただきたいというのが願いです。輸血用血液と血漿分画製剤の安全性にかかる基準等は国の設置する機関で適時に迅速に見直しが行われるようにしていただきたい。特に被害拡大防止対策につきましては、米国をはじめとした例に見られますように薬務行政だけではなくて、総合的に対策を決定ができる今日の田所副所長の資料の中にも入っておりますが、行政体制の確立をしていただきたいと思っております。最後に国および地方自治体は救命救急の医療の中で医療行政と一体化した体制で僻地離島や血液センターから遠隔地にある医療機関へ血液の供給を図るように努力をしていただきたい。これは医療機関内での保管管理や使用の適正化などを含めて医療行政と医薬行政の一体化を私は現在実際にこの仕事に携わっている立場からお願いしたいと思っております。
そんなところが。また次に申し上げるかも知れませんがわれわれお願いしたいところでございます。
高久座長
どうもありがとうございました。今の草刈委員のご意見あるいは今まで今日ご議論いただきました問題について少し時間がありますので、ご自由にご発言。どうぞ。
中井専門委員
今まであんまり議論されていない問題の一つに献血者の団体について献血を推進していくためにはそういう団体が必要ではないかというふうに思うんですけれども、私のわずかな知識の中では、献血率の高い国というのはそれぞれ立派な組織を持っておるように理解しているんですが、去年だったんですが、フランスに機会があって行った際に、そこの献血者の団体の皆さんと会ってきたんです。そのとき「こういう献血者の団体、世界連盟があるんですけれども、ぜひ日本にも参加するように働きかけてくれ」というような話があって、「必要ならいつでも日本に行きますよ」というような話もあったんですけれども、献血者の団体について現状はどうなっているか私よく分からないんですけれども、もし何かこういうことをやれば推進できるのではないかというご意見等々あれば教えていただければと思うんですが。
高久座長
どなたか今の中井専門委員の。どうぞ。
行天委員
今の専門委員のお答えになるかどうか分からないんですが、今までの全体のでよろしゅうございますか。
私いま裁判そのものが進行しているわけですけれども、血液行政に対する責任とかいろんな問題というのは細かい点がいっぱい入っているし、使う方、出す方一切合切で非常に広いんですけれども、とりあえず問題になっているのは行政の判断と執行の責任が具体的には問われていくというのが裁判だと思うんですけれども、その他に関しては今回の論点整理や何かに関して直していただきたいところ、あるいはつめていただきたいというところは全部出尽くしている感じがします。ただし、基本の問題は私やっぱり繰り返しますけれども、血液というのは臓器なんだと、この考え方をやはり国民が徹底して理解するということがまず第一で、臓器である以上は絶対というのはあり得ない。非常に危険を多く抱えているんだということは十二分に両者ともに徹底すべきではないかと思っているんです。何か薬と同じように考えられて非常に安易な気持ちで扱われているというところにたまたま不幸な今回の事件も起こるべくして起こった一面もあったわけですけれども、私は基本的に臓器であるかぎり人間そのものが分からないことをいっぱい抱えているわけですけれども、HIVの訴訟の方たちに指摘されていますけれども、専門家と称する方があまりにもオールマイティみたいなものを期待しすぎた。分からないものが多すぎるものに絶対的な専門性みたいなものを期待したところに問題があったのではないかというふうに感じております。先程「命との引き換え」と草刈委員がおっしゃったんですが、そこまで切羽詰まらないでもうちょっと割合使い易いというとおかしいんですけれども、日常性の方まで持っていって良いと思うんですけれども、この在り方の問題だの例のエイズ関連で今いろいろ問題が出てまいりますとすべて作り方、使い方その他の問題ばっかりなんですけれども、私献血者に対する保護という問題と献血者をどうやって確保するかというのをもう一度原点で見直していただくのが一番大事なんじゃないかと思うんです。特に具体的にというと今専門委員のご指摘もあったんですけれども、私は介護とこの献血の問題というのは国民運動で展開する以外には簡単な教育だとか、簡単な問題だけでは解決できないというふうに思っているんです。そもそも献血中心型に切り換えられたのも国民運動できっかけをつくったわけですけれども、いつの間にかそれが崩れてしまった。具体的にどうしたら良いのかといったら、今介護の問題も文部省その他一般世論が企業でも言いだしているように、特に医療関係に従事する人たちは献血をするのは当然であると、それから介護の実習をするのは当然であるというふうにまず魁から始めていただいて、国民にこれを浸透し徹底していく。はじめて使い方の問題だとか、それを使った国民自身、患者さん自身がいかにたくさんの人びとの善意の中でこれがここに来ているんだということが十二分に本当に心の底から理解していただくところにはじめて臓器としての利用価値とか、意味が出てくるんではないかと思っているんで、非常に大きな問題になっちゃうかも知れないんですけれども、先程三星委員がおっしゃったようにまさに国民運動として展開するのにちょっと悪い例ではあったんですけれども、絶好のチャンスなんで、これをつかまえてぜひ行政の方も思い切った方式を取っていただきたい。それにつけてちょっと派生になりますけれども、私は前から何度も申し上げているようにこの臓器をPLの対象にしているということだけはぜひもう一遍根本的に考えていただきたい。医薬品というけれども、売買をすべき責任を問うべきものではないんであって、人の善意で臓器がいろんな形を変えながらも動いているんだという国民に対する強い認識だけはぜひ再検討していただきたい。私がどうという立場で軽重を申し上げるんではないんですけれども、どうもいつでも問題になってくるときには献血者がどっかにとんでしまって出しているのが当たり前だみたいな論議というのは非常に私は疑問に思っているわけです。
高久座長
どうもありがとうございました。確かに血液は臓器であるということは間違いないと私も思います。そういう意味で2ページの最初のところで「国内自給の推進」というところで先程ご意見がありましたけれども、外国よりは日本の方が安全だからという議論ではなくて、輸血というのは基本的には臓器の供給であるから、自分の国民の間でやるべきである。心臓、肝臓等ではそういっていないようでありますけれども、基本的にはそういう倫理観から国内自給を推進するという論点の方が正しいと思っております。これは余計な議論でありますけれども、私は血液製剤のPLには反対をしたんですけれども、あのときに確か国によって違ってアメリカはPLになっていないんですね。ヨーロッパはなっているんですね。逆ですか。
中井専門委員
私答えて良いですか。アメリカはPLということばは使っておりませんけれども判例の中で最初厳格責任を問うという大きな流れになったんですね。そしてその際に輸血後肝炎の問題が1960年代の後半だったと思うんですけれども、その関係で全部責任を取らされるということになると血液事業は成り立たない。当時の肝炎の状況を前提にすればそういうことであろうと思うんですけれども、その伝統がずっと今も来ている。一方、ヨーロッパの場合には血液についてはこれはヨーロッパの基準でいう製造物責任法の対象にして運用している、どうしてヨーロッパとアメリカでは違うのかということなんですけれども、おそらく裁判の仕組みとか訴訟がものすごく多発するとか、そういう社会的要因が一つとしては大きな理由になっているのではなかいというふうに一つの見方として可能であると思っております。
高久座長
先程の中井専門委員のご意見について三星委員何かご意見おありですか。
三星委員
確かに献血ボランティアの各団体、これは日本赤十字社さんがいま完璧なリードをしてくれて、学生団体であるとか、一般の街の団体に始まってライオンズももちろん日本的な全国的な組織ですか、そういうことを全部ちゃんとやってくれていますので、その中でさっきの話のようなこともまとまっていくんじゃないでしょうかね。要するにちゃんとした、また日本赤十字社さんは遠慮深い方たちばっかりのようでして国または地方行政のあれがないとできないとおっしゃっていますので、ぜひ国なり地方行政ががっちりしてそして日本赤十字社の方にご指示いただければ、日本赤十字社というのは完全にやってくれるんだと今までの実績を踏まえて考えても大丈夫だと思います。
草刈委員
日本の製造物責任法の論議のときに非常に残念だったのは献血者に対する意向打診が全然なかったということです。献血者の方々一番最初に私たちおそれたのですが「自分の血液が製造物ととられることはいやだ」というふうにおっしゃる方が多くて私たちはむしろそっちの方を心配いたしました。国会の論議の中でキチンと論議を尽くしていただきたいということだけをやったわけで、製造物責任をいれることは二つの審議会がございまして、中央薬事審議会と首相の審議会がございましたね。両方で分画製剤は入れるべきだと輸血用血液は入れるべきではないという論議はなされたというふうに聞いておるところがあったので、輸血学会といっしょになって3月にわれわれ仰天したというのが本当のところです。
高久座長
どなたか他にご意見ないでしょうか。せっかくの機会ですから。
宮村専門委員
参考資料の例のウインドウ・ピリオドのHIVの感染のことで少し専門委員として補足をさせていただきます。HIVとか、C型肝炎ウイルスの感染の大きな特徴の一つが抗体の存在が感染性のウイルスとほぼ対応して存在するということです。いま我々が調べているこの抗体は一般の感染防御抗体とは異なっている。感染してから抗体が上昇するまでのウインドウ・ピリオドというのは普通の急性感染症よりははるかに短いのですがこういうケースがセオリカルにはありえます。このことは昔から指摘されていましたが今回のケースは逆にそれ程頻発するものではないことを示しているといえます。もうひとつは、PCRという方法でウイルスの遺伝子を非常に鋭敏に検出することができますが、これは発想が抗体の検査とまったく別のものでありますからウインドウ・ピリオドの期間を少し短縮することができますけれども、さりとて、この検査がオールマイティでは決してないということであります。本当に感染性のあるウイルスを検出するためには複数の感度の良い方法を組み合わせるということが必要です。であればこそこのPCRを効率的に大量に簡便にできる方法というのが世界中で、(特に日本でも先鞭を切って)開発が進んでいると、そういうことであります。それよりこの参考資料6に記載されている中で非常に重大なことが一つあると思います。それはこれがHIVの抗体が陽性でありそうだということが分かったときに日本赤十字社で保管していた実際に使われた血液にすぐルックバックして検査ができたということであります。そこで草刈委員に伺がいたいんですが、日本赤十字社ではルーティンにすべての血液の一部がこういう形できちんと保管されて何かあったときに逆のぼって検査をすることが可能になっていますか。今回のようにこれがどのような人に輸血されていたかということが分かれば対応が遅ればせですけれども、できるだけのことはでき得るとそういうことになっているんでしょうか。
草刈委員
まず首都圏では数年前からすべての検体を保管しております。それは輸血後の調査をしたという研究でやったのですが、全国的に開始したのは去年の9月からです。遅ればせとはおっしゃいましたが、日本赤十字社ができるようになっております。非常に残念な例ではございますが患者さんには最善の治療とその人と家族の守秘だけは絶対に守ることがわれわれの責務だと思っております。
行天委員
草刈委員に伺がいたいんですが、先程の話の追加も伺がいたいんですが、さっき渡辺委員おっしゃったようなこの参考資料6番の事柄、これをちょっと理解するためにどういうことが具体的に行われていたらこのようなことが起こらなかったのでしょうか。それともどんなことをしていてもしようがない。打つ手の可能性どんな細かいことでも、たとえばあのときにもう少し問診の時間をキチッとやっておけば良かったとか、問診の優れた人が聞いていてうまく聞けたらとかですね。あるいはその方のリスクというものについてもうちょっと調べたらとか、全部死んだ子の歳を数えるようなものですけれども、可能性として純医学の問題としては限界であるとしたらそこで何をどうやったらというのは、これがないと「しようがない運が悪かった」ということだけでいくらやったってどうしようもないわけですから。もう少し前向きに考えられ得るあらゆること、お金とか何かは一切無視しましても一体あるのかないのか。
草刈委員
前田委員に助けていただかなくてはならない部分があると思いますが、年間600万人の献血者の中から抗体陽性の方が40数人出ます。以前問診票をお配りしてございますが、問診票にそういうおそれがないというふうに答えてくださった方で、しかも最後にはHIVについてのご質問を理解していただきましたねといってサインまでしていただいております。現場の人たちはプライバシーを重んじながら一つひとつ100人200人の方に繰り返して、時には怒られることもございます。怒って帰っていかれる献血者の方がおられると聞いております。それでも行天委員がおっしゃったようにわれわれは問診で現場では食い止めねばということで努力しております。しかし40数人の方々が陽性という結果が出て来て、その方の責めに帰するわけではございませんで、少なくとも今回はわれわれは行天委員のおっしゃったようにこういう事態はぜひ再発しないように現場では心をいたしながら献血者の方のご理解を得てやっていかなければならんことだと思っております。採血の場合はそうです。PCRその他についてはいま行天委員がその方が良いよとおっしゃったことで、前田委員、あと何かございますか。
高久座長
前田委員何かございますか。
前田委員
検査に関しては専門委員がおられますので、PCRの有用性なり限界というものはお話いただくと思います。我々の仕事は、献血される方の善意に関わって、はっきり申し上げますと、虚偽の申告はなさらないという前提でしか成立し得ない仕事です。申告については問診票にのっとって、その通りにやりましたというところから、これから先何が出来るかという話になってきますと、インタービュアーということも考えられます。医療全般にわたることでしょうが、患者さんについて色々なことを尋ねるプロの人がいますよね。血液事業においてもそういう人を今後養成することを考えるのか。問診の際の環境ですが、外国みたいに個室に一人、一人入れて行うことは難しくて、日本的な風土に合わないのではないか。やはり日本では風土に合ったインタービューを新しく入れる時期ではないかとも思います。現在お医者さんであれはインタビューが出来るんだという、ハズでやっている部分が問題になるかもしれません。医学、医療自体がどんどん変わっていますので、こういう問診についてもそれなりのプロも別に教育しないと、問診票通りさらりと進めていいのか。世界各国が個室を用意して問診を厳格にやっていますので、我が国も何か取り入れることが求められている時期ではないかと、現場の者として個人的に考えています。
高久座長
問診票に関してどこかの高等学校の教組ですか、クレームがついてこういうことを聞くのはけしからんということで変えたんですか。変えざるを得なかったんですか。
草刈委員
問診は実施はいたしますが、たしか売買春という表現は変えました。
高久座長
ほかにどなたか。どうぞ。中谷委員。
中谷委員
私はやっぱりこういうような事態が発生することを皆無にすることはほとんど無理じゃないかと思うんてすね。そうしますとその場合に要するに被害にあった方といいますか、そういう方に対する救済とか、補償とか、そういうことと、行政、あるいはいろんな関係業者の責任というものをどうするかということを考えなければならないんだと思いますが、その点については例の外国の立法の去年の11月号に各国の対応のあれが出ていますので、それをご参考になさったら良いんじゃないかというふうに考えております。
行天委員
いや、話は先程に戻るんですが、前田委員のお話で私そこまで申し上げなかったんですけれども、何か具体的な方法を一つでも打てるとすれば、技術的な問題の方は一応相当な線でレベルアップがあって、そこに限界点があると。そうすると後は日本の場合は献血というものをベースに考えていけば、そこでのインタビューというのはものすごく重大になってくると思うんです。特に600万人を対象にしたときには、だれがどのような環境でインタビューをされたかということは個人責任ではなくて、非常にはっきり出てくると思うんですよ。たとえば大阪の献血センターでどうだったということではなくて、大阪のセンターのどなたがチェックをなさったのかと。これはその方を責めるとか何とかではなくて、当然40数人あるいはもっと出てくる問題に関しては偏りがあると思うんです。そうするとやはり前田委員がおっしゃったみたいにですね。優れたインタビュアーというものをもっと高く評価してそういった方たちの指導を受けるということは今後絶無に限りなく近づける唯一の方法ではないかというふうに思っているんです。これは結局さっきおっしゃったドクター全体のインフォームド・コンセントにもつながる問題であって、言えば良いじゃないか、聞けば良いじゃないかという問題ではとてもないし、まして非常に複雑な人間の気持ちの問題をいかにうまく出すかというのは高度な技術だと思うので、是非起こってしまって仕方がないのではなくて、もう一遍スクリーニングし直してどこでだれがやったときにどのような問題があったのか、こっちの人の場合はゼロに近いというくらいの数字を出していただいたらという気がいたします。
中井専門委員
ちょっと余計なことかも知れませんが、問診についてレギュレーションの上でキチンとしているのは私はオーストラリアだと思っているんですが、その例を一つ紹介をしますと、問診の際に本人の署名はこれは日本も同じなんですけれども、インタビュアーのサインを問診にすることになっておりますね。そして最終的にジャッジする人とインタビュアーはイコールではないようです。たとえばインタビュアーというのは何もドクターではなくて、前田委員が言われたようにインタビュアーの専門職みたいな人。どうですか、それに比べて日本の場合にはおそらく問診票にインタビュアーのサインがないんだろうと思います。
草刈委員
そんなことないですよ。ちゃんと押していますよ。
中井専門委員
最終的な合否の判断はドクターがされますけれども、インタビューの事実関係についてはどうなさっているんですか。
草刈委員
調査機構の専門委員がそういうご質問をすると大変悲しくなるんですね。現場にいらしていただければありがたいと思っております。是非ご案内いたします。問診をしてまたドクターが再度チェックするんです。
中井専門委員
インタビュアーの人はサインをされるんですか。
前田委員
問診票の記入事項がちゃんと記入されているかどうかを確認することはドクターもやりますし、ドクター以外の人もやっています。そこで書き直し、訂正の必要がある場合は献血者本人にサインをして貰います。ここは自分の意志で訂正しましたというサインも含めて、最終の判定の責任を持つのはドクターです。今のところはインタービュアーに相当する職務の人はいないというのも事実です。ただ検診医のお手伝いとしてやっている部分はあります。
中井専門委員
インタビュアーは操作しないということで良いわけですね。
草刈委員
そうだったら問診が成り立たないという大変なことになりますよ。
前田委員
日本の場合、インタービュアーという制度が無いところで、どこまでやるのかという論議が今の話ですし、今後の問題であろうと考えます。
高久座長
その問題は後でお話いただきたいと思いますが、もしご意見があまりないようでしたら、そろそろ時間がきましたのでこのへんで終わらせていただきたいと思います。
次回の第7回の開催日でございますけれども、すでにご案内いっていると思いますけれども、6月25日、水曜日になりますけれども、午前中で恐縮ですが、10時から12時にしていただきたいと思います。場所につきましてはまた委員の先生方にご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします 。本日はいろいろ貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。これで終わらせていただきます。


 問い合わせ先 医薬安全局血液対策課
    担 当 菊池(内2903)
    電 話 (代)[現在ご利用いただけません]

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