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第3回「これからの墓地等の在り方を考える懇談会」議事要旨


1.会議の日時及び場所

(1)平成9年5月9日(金)午前10〜12時
(2)厚生省26階共用第9会議室

2.出席した委員の氏名(五十音順・敬称略)

出席委員 欠席委員
石井幸一
磯部力
金光克巳
浦川道太
大澤秀行
木村潔
塩見戎三
長江曜子
森謙二
甲斐麗子
橋本泰子
藤井正雄
9名 3名

3.議事となった事項

(1)ヨーロッパの葬送・墓制についての報告(森委員)
(2)マスメディアから見た最近の墓地・葬送問題についての報告(塩見委員)

(1)ヨーロッパの葬送・墓制についての報告(森委員)

問題意識
ヨーロッパの葬送・墓制を日本の参考とするためには、以下のような問 題点について整理しておく必要がある。
・日本における従来の法の枠組み
死者祭祀や墓の承継の担い手は家族を前提とし、家族がいなければ 「無縁仏」として扱われる。
核家族化、少子化、家族観の変化などに伴い、従来の法の枠組みに矛 盾が生じており、このような枠組みを再検討していく必要がある。

・「墓埋法」の枠組みのなかで何ができるか。
憲法第25条第2項との関連

単なる衛生法規としてではなく、社会福祉・社会保障の観点から も墓埋法を位置付ける。

使用者の権利

墓地使用権の有期限化や無縁墳墓の改葬手続の簡素化は、墓地経 営の観点からだけではなく、国民の埋葬に関する権利という観点 から位置づける必要がある。

葬送が多様化するなかでの規制の在り方

埋火葬義務はあるのか。墓埋法には明示規定がない。
埋火葬義務は公衆衛生上の観点からの規制だが、火葬後の焼骨の 処理はむしろ感情面の問題であり、同じレベルで規制できるのか。

ヨーロッパにおける葬送・墓制に関する法制

・埋葬強制(義務)と権利
墓地への埋葬は、義務であるとともに、権利として保障されている。
「墓地は公的な制度であり、ベルリンに住所または居所を持つ全ての 人々を埋葬する。と同時に、墓所の使用権はそれらの人々の死に基 礎づけられる。」(ベルリン市墓地法)
墓地の目的 埋葬地の確保(福祉)
公衆衛生・公共の福祉
環境問題(緑地の確保等)
文化的施設(戦没者、文化人の顕彰等)
・墓地使用権とその期間
墓地使用権と言う場合でも2つの意味が考えられる。

 墓地に埋葬する権利
 墓地の一定区域(墓所)を使用する権利

日本で言う墓地使用権は後者の意味。墓埋法にも墓地の一定区域を 示す用語(「墓所」など。)が必要。
墓地使用権は、1950年代末より公法上の権利として定着。
墓所の使用期間は短期化の傾向にある。死体の腐敗期間より短い。

・宗教と墓地
埋葬は宗教上の行為ではないが、埋葬の儀礼は宗教上の行為。
教会墓地は公法上の施設であり、公的役割を担う。→埋葬拒絶の禁止

・第二次葬(火葬後の焼骨の処理方法)
焼骨の処理については、埋葬の義務に関する規定が適用される。
焼骨処理の義務については、管轄官庁の許可により墓地以外への処理 を認めるなどの緩和策がとられているが、ドイツではほとんど利用さ れていない。

これについての質疑等は以下のとおりであった。

○ドイツで火葬が始まったのはいつ頃か。また、火葬率は何%か。

火葬への取り組みは、かなり前に始まる。1873年のウィーン万博のときに 火葬用の機械が展示されている。1988年の統計ではドイツの火葬率は20.5 %。火葬率の高いチェコで74.8%である。

○ゲルマン系の墓地は「死者の森」、ラテン系の墓地は「死者の町」と表現 され、前者は没個性的、後者は自己主張が強いという印象を受ける。
ゲルマン系は自然回帰の思想の影響が強い。ラテン系は復活思想の影響か ら遺体保存の傾向が強く、エンバーミングはその延長にあると考える。両 者は文化的な違いによるものである。

○法律問題として、埋葬の権利の主体は被埋葬者なのか、遺族なのか。

日本で墓地の使用を認める場合には、遺族に対する許可という認識が強い。
承継者がいないと墓地を取得できないところもあり、問題である。

身寄りのない者の墓地使用権を、法律上どのように構成するのか。

家族でとらえる枠組みに問題がある。社会保障的なものとして憲法第25条 第2項と関連付けて考えなければならない。家族で考えるから「無縁」と いう概念が生まれる。ヨーロッパでは「無縁」という概念はない。
身寄りのない者の権利をいかに保障するか。また現実問題としての管理方 法や費用確保の在り方について検討する必要がある。

日本では、相続財産を葬式や埋葬(墓)の費用に充てるという制度が十分 に確立されていない。特に承継者のいない者について問題となる。

承継者がいなくても経済的に豊かな者もいる。一律に社会保障としてとら えるのではなく、本人の選択の自由を認めるべきである。

○葬送の私的行為としての側面と、墓地が公的制度であるということとの折 り合いはどうつけるのか。ヨーロッパでは個人主義が強いので、色々問題 があると思う。

○墓地使用権が有期限化されている場合、期限到来後の扱いはどうなるのか。

統計的資料はないが、半分程度は契約を更新しているものと思われる。
最終的には、墓地内の一定区画に集められる。

墓地使用権を有期限化することで、その期間内の使用者の権利を安定させ ることが重要である。
○有期限化の前提条件として、ヨーロッパでは書類の整備が進んでいる。合 葬墓で遺骨の特定ができなくても、書類を見れば誰の遺骨がどこに納めら れているのかがわかる。

(2)マスメディアから見た最近の墓地・葬送問題についての報告(塩見委員)

何が世間の関心テーマなのか

日本人は、死について語ることをタブー視しがちで、議論が不足してい る。高齢化の進展とともに議論を活性化していかなければならない。

・国民の関心事
葬祭費用 400万円程度(都の平均は381万円)
年間死亡者 90万人
→日本の葬祭産業は年間3兆6千億円(コメと同程度)
墓地・墓石 100〜150万円 霊園墓地 200〜250万円
費用が高騰するなかで、国民は安くて便利な墓を求めている。

・国民の意識変化
都の世論調査
「夫婦別々の墓でよい」 女性35%、男性31%
「友人・知人と同じ墓がよい」 女性47%、男性39%
(40代の女性で5割以上)
ライフデザイン研究所
「夫婦で墓を購入」女性4割強。「夫の実家と一緒」は2割。
家族墓より個人墓や共同墓を指向するようになってきている。

・多様化する葬いのかたち
ライフデザイン研究所
散骨 賛成42% 反対47%
賛成理由 自然への回帰。
家族に迷惑がかからない。
金がかからない。寺とのつきあいがない。
散骨は今後さらに流行するだろう。アメリカでは宇宙葬も行われた。
葬送が多様化していくなかで、どのように規制の網をかけていくのか が焦点である。

具体的課題への対応

21世紀の霊園構想
壮大な緑地を持つ明るい霊園の造成。

無縁墳墓の取扱い
個人(家族)だけに任せるのではなく社会で対応していく。
現実的には使用期限の有期限化の方向で検討する。

適正料金の設定
墓地経営の効率化、合理化の推進。

散骨についての方向性
法整備は必要。これまでにもトラブルが起きた事例がある。

報告書について

ユーザーサイドからの簡潔な報告書とすべきである。人々の注目を集め るためにも、大胆な提案を行うことが必要である。
具体的には(1)散骨対策(2)永代使用の有期限化(3)霊園構想や合葬墓・納骨 施設等の新たな墓地形態等についての提言を行う。

これについての質疑等は以下のとおりであった。

○散骨についての墓埋法の立場を確認しておきたい。

散骨は墓埋法の埋葬にも埋蔵にも当たらない。現在の墓埋法は衛生法規で あり、拡大解釈して規制するのは困難。

散骨に限らず、墓埋法には火葬後の焼骨の処理方法についての規定がなく、 自宅に焼骨を保管しておくことについても規制していない。

散骨などによるトラブルが起きたときの裁判規範となるものがない。

○「自然葬」という言葉が広がっているが、火葬した上で撒くことが本当に 自然なのか。土葬の方が自然な感じがする。「自然葬」という言葉のイメ ージにより他人への迷惑という問題を見落としてしまう。言葉にとらわれ ず公平に判断しなければならない。

○マスコミでは取り上げられないが、地方の事情にも目を向ける必要がある。
都市の墓地不足の裏には、地方における墓地の過疎化がある。都市部への 人口移動が無縁化を引き起こしている。両家墓の出現は長男と長女の結婚 が原因である。子の代ならよいが、孫以降になると姓が変わるなど、問題 が生じる。

両家墓、共同墓など、血縁や家族だけで墓制をとらえられない事例が増え ている。「無縁」を論ずる前に「承継者」の定義付けを行う必要がある。

○合葬墓、共同墓形態で、承継者不在の場合には寺が管理を行うなどの形態 のものが広まりつつある。新たな使用形態については、契約の実効性をい かに保障していくのかが今後の課題である。

○永代使用と言っても、権利関係が確立しているわけではない。
管理料が支払われる限り使用権が継続するということに過ぎない。
永代使用と永代供養の区別も曖昧であり、契約の中で明確にしておかなけ ればならない。

(3)次回の予定について

次回は、委員以外の方に講演を依頼することとした。人選については事 務局で検討することとした。


 問い合わせ先 厚生省生活衛生局企画課
    担 当 乗越(内2417)
    電 話 (代)[現在ご利用いただけません]

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