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第5回血液行政の在り方に関する懇談会 議事録


1.日 時 平成9年4月23日(水)14時00分〜16時00分
2.場 所 厚生省共用第6会議室
3.出席者 (委 員)
井形昭弘 神尾友和 行天良雄 草刈 隆 坂巻 煕 清水鳩子 菅谷 忍
曽野綾子 高久史麿 中谷瑾子 秀嶋 宏 前田義章 三星 勲 湯浅晋治
(専門委員)
中井一士 布施 晃 宮島 剛 宮村達男
(厚生省)
薬務局長 審議官(薬務担当)企画課長 安全課長 監視指導課長
血液事業対策室長 医薬品適正使用推進室長 医薬品副作用対策室長 他
4.議事内容

1 開会
2 議事
 (1)東京HIV訴訟原告団・弁護団及び東京HIV訴訟原告団・弁護団からの意見陳述
 (2)今後の血液行政の在り方について(3)
 (3)その他
3 閉会


血液室長

本日はご多忙のところご出席いただきましてありがとうございます。
只今から第5回血液行政の在り方に関する懇談会を開催いたします。私は厚生省薬務局企画課血液事業対策室長の外口でございます。
本日は藤田委員、森嶌委員、渡辺委員、小室専門委員がご都合によりご欠席でございます。中谷委員がやや遅れておられるようでございます。
また、本日は東京HIV訴訟原告団・弁護団及び大阪HIV訴訟原告団・弁護団からご意見を伺う機会を設けさせていただきました。それぞれ20分ずつお話をいただきまして、その後20分間質疑とさせていただきます。残りの60分を前回議論が途中になりました「我が国の血液行政の在り方論点整理(案)」等についてご審議をお願いしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

高久座長

それでは第5回の懇談会を始めさせていただきます。最初に事務局から本日の資料の確認をお願いします。

血液室長

それでは資料の確認をお願いいたします。お手元の資料1は、大阪HIV訴訟原告団・弁護団よりご提出いただきました意見陳述資料10点でございます。
資料2は、東京HIV訴訟原告団・弁護団よりご提出いただいた意見陳述資料で、2−1が意見書 2−2が薬害再発防止についての提言 2−3が厚生大臣に対する統一要求書 2−4が血液・血液製剤被害とその安全・救済対策 2−5が薬害エイズ過失論 2−6が東京HIV訴訟活動年表。
資料3は、湯浅委員よりご提出の「医療機関の役割と責任」
資料4は、4月3日に発表いたしました「医薬品等健康危機管理実施要領について」資料5は、前回より審議いただいております「我が国の血液行政の在り方論点整理(案)」
そして、前回の第4回血液行政の在り方に関する懇談会の議事録。
この他、3点資料がございます。
1点目が、総合研究開発機構が先日公表いたしました「薬害等再発防止システムに関する研究(中間報告)」。
2点目は、大変恐縮ですが、委員のみの配布とさせていただきましたが、日本赤十字社が最近作成いたしましたビデオ「若い命の贈り物」このビデオの内容は、戦後の供血制度の中で起こった事実の一ページをドキュメントドラマ風に再現し、現在の大きな課題であります安全性の高い輸血用血液と原料血漿の確保、少子高齢社会での若者の献血の大切さ、400ml成分献血の重要性を描いたものであります。
3点目は、同じく日本赤十字社の「よりよい献血をめざして いのち支えあう、愛のかけはし」という冊子です。この冊子は第1回の会議で配布いたしましたペンギンの絵の表紙の冊子を改訂したものであります。以上でございます。

高久座長

ありがとうございました。皆さんのお手元に資料が配布されていると思いますが、もしなければ事務局にお申し出いただきます。
それでは早速本日の議題に入らせていただきたいと思います。いま血液事業対策室長さんからお話がありましたように、最初に大阪HIV訴訟原告団・弁護団のお話をお伺いして、次に、東京HIV訴訟原告団・弁護団のお話をお伺いして、その後、 20分ほどいろいろご意見を伺いたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
それでは最初に大阪HIV訴訟原告団・弁護団の方、お願いします。

花井陳述人

大阪HIV訴訟原告団代表理事をやっています花井といいます。今日は血液製剤によるHIV感染被害者として、またいまも血液製剤のユーザーである血友病患者として発言させていただきたいと思います。
私たち薬害HIV感染被害者は血液事業改革の必要性を訴えながら志なかばで亡くなられた初代赤瀬原告代表がカマーとして提訴して以来、血液行政改革の必要性を訴え続けてきました。それはまさに日本の血液行政のあり方が常に国民を危険にさらし続けるものであると同時に、その中でもまっ先に犠牲になるのが私たち血友病患者であり、今回のHIV感染被害こそその象徴であるという認識からです。
私が18歳の春、激しい嘔吐で倒れ入院したとき、医師はB型肝炎の感染を告知しました。そして、血液製剤を使っている限り、これは仕方ないんだよ、と説明しました。さらにC型肝炎の感染を知り、本当に仕方がないのか、という疑問はぬぐいきれませんでした。そして、今度は最後にHIV感染。否、これがほんとに最後といえるのかどうか。現在の血液行政を変革しない限り、血友病の患者をはじめ、国民が未知の病原体の危険にさらされている現実には変わりありません。
いまこそ私たちは血液事業法の制定を望みます。うまみのある商品として大量に輸入、濫用される血漿分画製剤、薬価差益が生み出す営業優先の供給体制、輸入血漿に対するずさんな監視体制、エンドユーザーである患者に対して何人も責任を負うことがない無責任体質、これらを改革するために、この血液事業法においては、原料血漿の国内自給の確立、アルブミン・免疫グロブリン等の血漿分画製剤の適正使用、ユーザーである患者も参加した形の責任ある監視体制の確立、リコンビナントも含めたすべての血液製剤の供給一元化等を明文化する必要があると考えています。
この法律は、私たちにとって、いわば薬害エイズ防止法とも呼べるべきものだと考えています。昨年11月に神戸で開催した薬害エイズ国際会議でオランダ代表の血友病患者であるキース・シュミット氏は、まさに血友病患者は血液行政の中で自らの死をもってまっ先に危険を知らせるカゴの中のカナリアである、と述べました。
世界中の薬害エイズの被害者が集まったこの会議において満場一致で採択された大会宣言においても、二度と薬害エイズのような悲劇を起こさないために、血液事業に関する法整備の重要性、ユーザー試験の確立などの諸施策を世界的規模で実行する必要がある、と謳っています。加えて、C型肝炎をはじめとする血液由来の感染者の保障制度の確立についても同時に謳っています。
今回、運よくというべきか、HIV感染をまぬがれた血友病患者が新たに致命的ウイルス感染の犠牲になるということは到底容認できません。また、アルブミン、免疫グロブリンなど、国民全体が危険にさらされる状況を一刻もはやく改善する必要があります。
最後に繰り返し言いますが、いまこそ薬害エイズ予防法ともいうべき血液事業法の制定を強く望むものであります。以上です。

高久座長

どうもありがとうございました。大阪HIV訴訟原告団・弁護団の方、もうそれでいいんですか、20分という話を聞いていますが。

花井陳述人

すみません、私ども3名が話します。

高久座長

はい、わかりました。

陳述人(大阪HIV訴訟原告団理事)

私は、大阪HIV訴訟原告団理事で医療担当であり、また、大阪血友病友の会で会長となっていますので、いわゆる感染被害者だけの問題ではなく、感染の被害を受けて来なかった人たちも現在同じ問題を抱えているということ。それとC型肝炎の感染については、エイズがあまりに深刻なものですからいまは表面にたっておりませんが、私どもの会員でHIVには感染していないけれどもC型肝炎によって既に亡くなっている方があり、深刻化しているということもありますので、将来的にはC型肝炎に感染した人の支援も考えていただきたいという意味で、原告団の理事として、大阪血友病友の会会長として話をさせていただきたいと思います。
一つは、ユーザー視点の確立ということを強く述べたいと思います。私どもは血液製剤の問題において致命的な利害関係者であると考えております。血液製剤がいいものであれば自分たちの命が助かっていくでしょうし、エイズやC型肝炎やB型肝炎に冒されてきたということで、私たちはこの問題について明確に発言する権利があると思っております。
もう一つ、これは医療における変化としてとらえていただきたいのですが、情報の公開によって患者の力量というか、医師だけが医療について知る得るものであるという時代は去ったのではないかと思っております。それと、今回、エイズという新しい問題が起こったときに思いましたのは、新しい問題が起こったときには全員が素人から始まるという部分もあるのではないかということで、医療情報の公開によって、医療が根本的に変わってきたのではないかということです。
そして、疑問に思いましたのは、真の専門家とは何かということです。それについては、肩書は専門家であるけれども、この問題についての解決能力をもった専門家でない人を血液事業においても、医療においても、エイズの治療においても、私は数多く見てきました。
もう一つ、厚生省の医療政策能力が非常に落ちているのではないかと。僕はエイズの問題についても、いろんな政策提言を民間団体としてやってきた経験からも、厚生省の政策立案能力について根本的な疑義を抱いている一人であります。
また、今回の公聴会の参加にしても、患者の強い要求で実現したものであるということを申し添えたいと思います。まず、致命的な利害関係者の意見を聞くということ、基本的に審議会の姿勢としてあるべきではないかと思っております。
そして、私たち患者は、何十年も難病をやっているということは、患者のプロといったらおかしいのですが、私は38年間血友病患者を務めてきたわけでありまして、その中で蓄積された知恵を一つの専門家の領域として扱う視点が芽生えてきてもいいのではないか。また、いろいろな専門家が部分的にしかかかわれないのに比べて、患者は全体を通してその問題を見ることができる唯一の存在でもあろうかと思います。ということで、患者であることの権利の主張もいたしますが、患者としての責任もすでに発生しているものと承知してこの場に立っていることをご理解いただきたいと思います。ということからも、こういった審議会の正式な委員としての参加を基本的に求めるものであるということをご理解いただきたいのと、患者の知恵、そして実は知識も既に入っているわけですが、利用すべき時期にきているのではないか。エイズの問題にしても、真っ先に危険を察知し唱えたのは患者会であったということをご認識いただきたいと思っております。
そして、もう一つ、この会のあり方ですが、先般、3月31日から4月6日まで、血液事業関連のことで大阪のHIV訴訟の原告団・弁護団でカナダに視察旅行に行って参りました。カナダでは、現在今回の原因究明のためにクリーバー委員会といって最高裁判事がトップに立つ大規模な委員会を組織しており、24億円の費用で3年間、専門家、赤十字関係者、患者、製薬メーカー等をメンバーとして証人を呼んで審議をし、徹底的な原因究明に取り組んでいます。
これをはじめとして諸外国の取り組みも調べていますが、今回の薬害エイズを起こした根本的な原因は何であったかということと、どういうシステムが最善であるかということの追究を徹底的に行っていただきたいと私は心から思います。
私たちの犠牲はあまりにも大きすぎました。すでに1/3の患者、被害者が死んだわけですが、この反省が生かされないようであれば、非常に情けない話だと思っています。
そして、3番目に、日本赤十字社や国を含め、どこに責任があるのかわからないという無責任体制を改めていただきたいということです。私は友の会の患者として日本赤十字社の方とたち交わればたち交わるほど、日本赤十字社に任せていいのだろうかという疑問も湧いてきます。一方で、製薬メーカーに任せる気にもなりません。そういったことで、製薬メーカーが作為の責任者であったとすれば、日本赤十字社は今回の薬害エイズ問題において不作為の責任者であったのではないかとすら思えるところであります。血液事業における責任の不明確を改めていただいて、責任の所在を根本的に問い直して、責任ある血液事業を国民のために構築していただきたいと思います。以上です。ありがとうございました。

高久座長

どうもありがとうございました。もうお一人、どうぞ。

徳永陳述人

続いて、弁護団から弁護士の徳永がお話をさせていただきます。まず、いまも話があったわけですが、HIV訴訟と血液事業の改革といったものがどういうふうに結びついているのか。私たちがなぜこの場に出てきて、血液事業の改革を訴えるのかということをもう少し説明させていただきたいと思います。
1989年の5月に赤瀬さんともう一方、匿名の原告の二人を立てて裁判を始めたわけですが、そもそも感染者全員の救済と差別、偏見の撤廃、それに加えて、血液事業の改革ということを裁判の当初からの目的に掲げて戦って参りました。
今日配布しております資料1の中の7番目の資料が大阪での第1回口頭弁論期日に裁判所の前で訴えました意見の詳論です。その中で血液事業の改革を我々は目的にしているんだということを明確にしていたということをご理解いただけるかと思います。 血液事業の改革に向けた原告たちの気持ちについては、端的に赤瀬さんの言葉という形でいまに残っております。これも資料でお手元に配りましたものの第1番目の朝日新聞の昨年11月の社説に赤瀬さんの次のような言葉が取り上げてあります。
「男一匹死ぬのです。使えない金などもらってもどうしようもありません。血液行政の改革をいかに促すかに私の命を投げ出しているのです。報告書を実行しなかった厚生省、日本赤十字社、委員の先生方の責任を法廷で明らかにしたいの一念であります」と。
簡潔でありますけれども、彼の言葉はいまだに私たち原告と弁護団を突き刺してやみません。
そこで、彼が述べていますように、なぜ、薬害エイズといった悲惨な被害が生じたのかということの一つの根本的な原因は、やはりこれまでの血液事業の歪みにあったというふうに考えております。薬害エイズが問題になる前の1975年、WHOが世界に向けて、血液については、これは血液製剤も含めてですが、献血自給で賄うべきだという勧告を、具体的に理由も示して述べています。そして、それを受けて厚生省の諮問機関である血液問題研究会が献血自給で血液事業を賄っていこうという大原則を打ち立てているわけです。しかしながら、それが実行されて来なかった。そして、1978年以降、出回りました非加熱濃縮製剤によって、これはほとんどがアメリカからの売血によってつくられたものですが、これによってたちまちのうちに血友病の患者さんたちは感染していったわけです。
もう一つ、血液行政の歪みという点で指摘しておきたいのは、エイズの危険が問題になりはじめた1983年以降の議論になるかと思いますが、厚生省で対策の一つとしてクリオの増産ができないか、あるいは日本赤十字社で余っている献血を民間に製造委託して濃縮製剤がつくれないかといったことを打診したということを聞いております。いまから考えれば、そのいずれもがこの被害を回避し得る解決策になり得たと思うわけですが、それがなぜ実行されなかったか、というのはいまもって不透明なままです。いわく、そういう話は聞いていなかった。あるいは、打診したけれども断られました。あるいは、善意の献血は民間に売るようなことはできませんとか、あるいは、被害者の立場からすると、事なかれ主義とでもいうような、あるいは、ここで言うのもなんですけれども、閣僚主義的、形式的な答弁で命を救う機会を奪われたという無念さがあります。
すなわち、誰がどういう責任をもって、どういう権限をもって、どういう役割で血液事業を担っているのか、これが現在の法文上も非常に不明確なままです。果たして血液事業はどこが担うべきものなのか、ここのところから粛然と考えていただきたい。私たちの考えでいえば、これは当然、国が、厚生大臣が最終的な責任と権限をもって対処すべきものだと思います。しかし、現状、日赤の力を借りてやっていかなければならないことも事実です。であれば一旦こういう危機が起こったときに、どういう権限がそれぞれにあって、どういう役割があって、どういう責任分担になっているのか。そこのところがわからない限り、はっきりしない限りは、またこのような同じような悲劇が、同じような法律の空白の中で起こる可能性があると考えております。
いま申し上げたことは、決して空想でも絵空事でも、また遠い将来の危険でもなく、ここに並んでいる血友病の被害者の方々もそうですけれども、毎日血液製剤を使っているわけです。そして、クロイツフェルト・ヤコブとか、狂牛病とか、C型肝炎とか、あるいはエイズについても、ウインドウピリオドの問題があるということはこの懇談会の中でも話し合われているかと思いますが、そういった危険の中でいまも暮らしているわけです。ですので、これについては早急に検討していただいて、結論を出していただきたいと考えています。
そして、昨年の11月に大阪の弁護団と原告団が共催して神戸の地において世界の感染被害者の方々、あるいは薬害エイズに携わった専門家の方々をよんで、この問題の原因及び再発防止について2日間にわたって討議する機会を持ちました。その模様については、資料で配布してありますので、後でお時間のあるときに見ていただければと思いますが、資料の2の読売新聞のトレンドには「血液事業を見直そう」というタイトルで2日間の議論を簡単にまとめてあります。そして、3番目、4番目の読売新聞、ここには最終日の薬害根絶に向けて採択された国際会議の宣言文と指針を載せてあります。5番目の産経新聞、見開きになっているものですが、ここにその内容が網羅的にまとめてあります。そういったものを見ていただければ、中身についておよそのことは見当がついていただけるかと思いますが、最終的にそこでまとまった指針のいくつかをご紹介しますと、
まず、第1番目のガイドラインについては、(1)で、我々はエイズウイルス(HIV)と血液製剤に関する問題を国際的視野で完全に調査することを求めます。まだまだ調査が不十分だと思います。しかも、これは国際的に広がった世界的な血液事業の歪みが生んだものだという認識のもとでさらなる調査をしていただきたいと思います。(7)で、厚生大臣は、血液事業に関するすべての規制法を施行するにあたり、責任を負う。ということも述べてあります。あるいは(8)で、血液や血漿の供給においては、自国内での供給を基本とする、ということも書いてあります。また(18)で、血液関連の被害者に対し、補償確保のための無過失賠償保険を準備すべきだ、ということも採決されました。また(20)血液事業全般について、意思決定機関も含め消費者の代表者を置く、ということも述べられています。
おそらく、先ほど大阪の原告の両名が申し上げたことがそういった趣旨を踏まえているかと思いますけれども、我々はそういったことを踏まえて、薬害エイズ再発を防止するんだ。そういう法律なんだという位置付けのもとで血液事業法の早期の制定を訴えております。
もう一度その骨子を申し上げますと、献血自給の原則を法律において確立していただくということ。献血自給原則というのは、繰り返し繰り返しいろんなところで議論され、あるいは決議されてきましたが、いまに至るまでそれが実現されていません。これは法的にまずそのことを国家が規範としてそれを掲げていくんだということを鮮明にする必要があると思います。
2番目に、供給の一元化ということを述べていますが、これは現状においてまだ自給が達成できないということの大きな原因の一つとして、医療の現場において血液製剤が通常のお薬と同様の薬価の制度の下において、いわゆる薬価差益とか、また有効性だけを強調した売り込みといったような問題で、不必要な医療需要がつくられているのではないか、と懸念しているからであります。昨年の第4ルートの問題はまだご記憶に新しいかと思いますが、あの事件で私たちが痛感したのは、医療現場における医師の専門知識として、専門外の薬剤についての知識が私たちが思っていた以上に貧困であるといったことが大きな教訓でした。ほとんどのお医者さんはそれが血液製剤であるということすら知らずに非加熱製剤を肝臓の治療、あるいは手術の治療といったようなものに安易に使っていたわけです。それと同じようなことが現状のアルブミンだとか、FFPだとかの使用にもあるのでないか、というより、あるはずであるというふうに私たちは思っています。そういう医療現場において不要な需要がつくられているという構造をなくすためには、供給の一元化ということを考えていただきたいと思います。
3番目に、責任主体、権限、役割の明確化ということを挙げています。このことについては既に述べました。
4番目の、消費者、原告、血友病患者による監視、あるいは透明化ということについては、先ほどから出ております、この問題に致命的な利害関係を持ち続けている血友病患者、被害者の意見を聞く、あるいはその監視の下で血液事業を運営していくといったようなことをお考えいただきたいという主張です。
5番目に、感染被害者に対する補償のも問題があります。どんなに対策をとっても100%の安全性が確保できない。これが血液事業の宿命だというふうに認識しております。であるからこそ最大限安全になるように手を打つべきだというのがこれまでの主張ですけれども、不幸にして被害を受けた方々に対して、他の法的な枠組みとは別個に血液事業における被害者ということで補償の制度を整備すべきではないかと考えております。このことに関係して、資料の中で、8番目につけておりますが、いわゆる製造物責任法(PL法)が採択される際にあたって参議院の附帯決議が出ておりまして、そこでは五項と六項で、血液製剤の特殊性に鑑みて、補償の制度を別個に整備すべきだということが挙げられています。六項は、輸血用血液製剤による被害者の救済については、その特殊性にかんがみ、特別の救済機関等の設置に努めること。となっていますが、これも同じような認識に基づいていることだと思います。
我々がいう血液事業法は、そういったものも含めて、きちっとしたものをつくっていただきたいということであります。
最後に、委員の方々に対する質問と要望ということでまとめさせていただきたいんですけれども、まず第1点は、このように、血液事業法の整備、制定といったことが今後の国民と血液事業とのかかわりにおいて非常に重要になってくると我々は認識しているわけですが、そのことについて、正面きった議論なり検討がこの委員会の中で十分にされていたようには我々どうも思えません。血液事業法の制定ということについて、委員の方々はいまどのようにお考えなのかということを質疑応答の場面で聞かせていただければと思います。
2番目に、これは再三訴えていることですが、血液事業のあり方について、致命的な利害関係をもっている血友病患者あるいはHIV感染被害者といった方々の意見を反映すべきだといっているわけですが、この懇談会のあり方自体が、いままでその部分にてついて十分認識されていなかったようにも我々には思えるわけです。おそらくこの懇談会も最後のまとめにあたってはなんらかの答申なり、提言なりがまとめられることになろうかと思うわけですけれども、その際のとりまとめに当たっては是非とも私たちの意見を反映させていただきたいと考えていますが、そのことについて委員の方々のご意見をお聞かせ願えればというふうに思います。
3番目に、これは質問というより要望になりますが、血液の献血自給ということ自体は、先ほど申し上げました血液問題検討会の答申のあとも幾度も提起され、決議されているわけですが、それが実現されなかった。最初に見ました1番目の資料、朝日新聞の社説では「厚生省は30日「血液行政の在り方に関する懇談会」を発足させた。この懇談会にまたピエロを演じさせてはならない」と書いています。
同じように繰り返さないようお願いします。いまをもって血液事業を抜本的に改革し、あるいは法的な整備をする機会はないと考えています。よろしくお願いいたします。
高久座長
どうもありがとうございました。それでは引き続いて東京HIV訴訟原告団・弁護団の方のお話をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

陳述人(東京HIV訴訟原告団副代表)

東京HIV訴訟原告団・弁護団のほうでは原告、弁護団各1名、2名の意見を表明させていただきたいと考えております。今日は発言の機会をいただきましてありがとうございます。私は東京HIV訴訟原告団副代表をしております。稚拙ですが、私の薬害エイズ被害者の体験から血液行政について少しばかり意見を表明させていただきたいと思います。
私は48歳です。血友病は、皆さんご存じのように、生まれたときから血液製剤、輸血と縁が切れない病気です。私は48年の間、輸血、HG、液状クリオプレシピテート、乾燥クリオ、濃縮製剤、そういったいろいろな血液製剤の治療を受けて参りました。私の生きてきた生涯の中でHIV感染という本当に重大な深刻な、命にかかわる問題に直面させられたとき、怒りとこれからの苦悩がいっぱいです。
その被害体験から、これからの血液行政について、私たちの意見なしに進められるということはないことだろうと信じております。それを血液行政をこれから新たに推進していく中で実行していただきたい。それを前提としてお話したいと思います。
厚生省は、血液の安全性にとって不可欠であった自給自足の原則、その実行を怠りました。また、有限な献血血液の有効利用に尽して来ませんでした。そのために、血液製剤及び原料血漿の異常な量の輸入依存を引き起こし、また、それを信じられないほど放置し続けてきたわけです。
私たち、血液凝固因子製剤の補充療法を行う血友病患者は早くから自国民の献血血液から安全な凝固因子製剤を供給していただくことを望んでおりました。家族はわが子、わが夫のためにと献血に励み、そうした献血の血液が自分の子ども、夫の製剤として還元されることを期待しておりました。
実際にエイズの問題が発生するまで、私たち患者、家族の多くには、輸入血液製剤がほとんど使われていたという認識はありませんでした。献血血液からつくられているものと思っていたのです。しかし、エイズの問題が浮上したとき、私たちはその現実を知りました。ほとんどが汚染された売血、どういうものが入っているかわからない血液でつくられた製剤の輸入、また、それを原料として輸入してつくられていたという事実がわかったわけです。その時の驚愕は言葉にすることができないほど私たちの心を打ちました。
また、82年、83年に、エイズが米国由来の血液製剤を介して日本を襲ったときに、厚生省は重篤な感染症を水際で阻止することができませんでした。これは危機管理としても急務な対応であるべきはずの安全原則の徹底を怠ったのです。当時、献血行政の懈怠からエイズフリーだった献血血液を中心とする血液製剤の確保は支障を来たしておりました。また、血液事業の事業主体と実施主体がはっきりしないで、献血血液の緊急時の有効利用、乾燥クリオとか新鮮凍結血漿の有効利用、原料血漿の民間委託等の、緊急時の対応に危機管理の主体性としての責任を発揮できなかったわけです。
エイズ問題が勃発して、国内献血による安全な血液製剤の供給が急務になったにもかかわらず、日本赤十字社は献血血液による多様な凝固因子製剤の製造供給ができず、安全な製剤の供給に著しい支障を来たしておりました。ちなみに、献血による乾燥クリオが実際に供給されたのは、なんと加熱製剤の認可後でありました。中間クリオに至っては、患者の強い要請にもかかわらず、ついに供給の日の目を見なかったわけです。第9因子製剤は製造供給の試みすら見られませんでした。
この間、私たちは、厚生省、日本赤十字社に足しげく陳情、要請に通いました。この無駄はなんだったのでしょうか。その結果、米国由来の凝固因子製剤を使用し続けた血友病患者など200人ものHIV感染被害という、致死率の極めて高い感染症を血液製剤を媒介としてばらまくという未曽有の惨事をひき起こしたのです。
この事件の体験に基づき、将来の対策について少しお話ししたいと思います。
国は国内での有償採血、売血を全面禁止しました。しかし、海外の有償採血による血液製剤の輸入またその使用は依然として行われています。この矛盾は一体何なのでしょうか。海外において使用されている売買血の輸入も含めて禁止すべきです。また、リコンビナントの遺伝子合成による製剤の管理も、血液製剤の代替薬である点から、単なる合成化学薬品とは異なる安全確保が必要と考えます。国の血液事業の一環としてきちんと管理していく方向性が必要ではないかと考えます。
私たちが体験した薬害エイズ事件を踏まえて、血液行政の抜本的な改革が必要と感じております。これを前提に今後の血液行政を考える基本として、公共性の極めて高い血液事業においては、国が事業主体であることが明確でなければなりません。血液事業の実施主体は国との指導監督関係が明確であることが必須です。
薬害エイズ事件訴訟で血液行政の主体であった国は被害に対する加害責任を認め、和解したことから、血液事業法等の改革議論に被害者抜きにその方向性を進めていくことはあり得ないはずです。我々の参加を求めずに既に議論が進んでいるということは非常に遺憾なことであります。血液行政に関する意見のとりまとめとその法整備などについては、正式に被害者が参加した会議で決めていくべき問題であると思います。 それでは、どのようなところが責任をもって事業主体として、また実施主体として血液行政を担っていくのか。血液事業のような極めて高度は公益事業は事業主体として、立案から運営まですべて国が責任をもって行うべきである。例えば、国営のセンターをつくるといった形で事業主体としての責任を明確にする。また、実施主体は国の責任、指導監督下で、例えば、献血業務は日本赤十字社や国営センターの基幹センターで実施する。また、製造は国営センター及び、当面は委託の民間製造業者を一時的な活用で行う。供給は生物学的製剤を含めて国営センターで一元的に行う。国営センター付属機関として国立輸血研究所を創設し、輸血の安全性や代替薬を含めた血液製剤等の研究開発を行い、併せて危機管理等に対応するようにする。
そこで、献血業務を担っていく日本赤十字社について一言申し上げたいと思います。私たちは日本赤十字社に、薬害エイズ問題が起きたとき、被害者に対して緊急かつ適切な対応をしていただけるものと期待しておりました。また、これまで、日本赤十字社に対しては、私たち血友病患者は日本赤十字社を擁護するような形で乾燥クリオの普及、クロスエイト等の製剤の普及に手を貸し、また、自分たちの問題として、それを推進してきました。
しかし、これまでの日本赤十字社の対応は、エイズ問題では、人道的任務を達成することを目的とする日本赤十字社法の精神を発揮せず、緊急対応の実行を誤った責任は極めて重いのです。また、日本赤十字社は、日本赤十字社法により、高度の自主独立性が保証されており、国の指導監督権限が及びにくい団体であることは明確であります。極めて高度な監督指導を必要とする血液事業の実施主体としてはなじみにくいものです。日本赤十字社は薬害エイズ事件後の血液製剤の対応においても反省はなく、国と日本赤十字社の責任のなすり合いに始終し、またその後のモノクロナール製剤の安全性確保のための製剤の精製やスクリーニング法の改善努力を怠っており、今後日本赤十字社に製剤供給を任せておくことに患者は大きな不安があります。日本赤十字社は分画製剤から手を引き、国がその製造責任を負って供給するようにすべきであります。
日本赤十字社は日本の献血に貢献した実績から、当面献血の役割を担うが、いままで述べたような理由から、血液事業からは全面撤廃し、国営センターが国の責任でさらなる発展的役割を担うことが必要と考えます。
最後に、血液事業は、人体の一部である極めて貴重は血液を医療の中でそれを必要とする人々に安全かつ有効に利用されるように運営されるべきことから、その信頼が損われないよう、血液事業の姿勢と構造を国がいかに責任をもって国民に提示し、明確にしていくかが問われています。
薬害エイズ事件がこれまでの血液行政のたまりにたまった怠慢の結果から起きたことから、国民への謝罪をこめてその抜本的改革を英断をもって実行すべきであります。元輸血学会の会長でありました村上先生が、私たちの訴訟の証人として法廷に立たれたとき、やる気があればできた問題だ。これは血液行政全体の問題でそう言われました。このことを是非肝に銘じてすばらしい新たな血液行政の指針を示していただきたいと思います。ありがとうございました。

保田陳述人

東京HIV訴訟弁護団の保田から意見を述べさせていただきます。
今回の薬害エイズ、これはいってみれば、血液行政の失敗に起因をしています。そして、2000人に及ぶ被害者を生み出してきたわけです。裁判所の所見によれば、死に至る病という被害を血液製剤から負わせてしまったわけです。そして、薬害エイズ自身は、国が血液事業を100%自給していれば、一人の感染者も出さないで済んだ問題であります。その意味で国の血液行政の歴史的、あるいは構造的な責任は極めて重いといわざるを得ません。原因を徹底的に究明して、本当に抜本的な改革をしなければ、日本の血液行政の再生はあり得ないと確信しています。
この点で、厚生省の血液行政改革に対する姿勢は旧態依然であります。患者不在の審議、あるいは懇談会で何を決めようというのでしょうか。既に外国、FDAにおいても血友病の被害者代表をメンバーに入れております。83年、厚生省が設置した安倍研究班、この失敗からきちんと学ぶべきであります。密室で協議し、専門家の名により、ウイルス、血液事業、血友病、すベて専門家が揃った上で失敗したのであります。それは、患者たちが日常的に経験をしている治療、血友病は慢性疾患であって、日常的に輸血あるいは血漿、クリオ、あらゆる製剤で治療する可能性がある。そのことになんら気づくことなく、輸入製剤が必要か否かというスコラ論議に陥って、また安全確認も怠って起こしたのであります。
血液事業について、いわゆる専門家だけという形では新たな改革の方向は出てきません。また、血液という人体に由来するものについて、安全性だけでなく、単に科学的といわれるような一時的なものではなく、本当に人間の理念に基づいた、そして、いまの社会のニーズに応じた形で、国民全体の監視の中で進められるべきであると思っています。
薬害エイズの歴史的・構造的要因ですが、委員の先生方にはこの点を是非踏まえていただきたいと思っています。それは、戦後GHQによって民間の血液産業が雨後のたけのこのように出ました。ライシャワー事件でこの転換が図られるかと思いましたが、それは献血を主体とした全血製剤と血漿分画製剤と形での棲み分けが起こりました。そして、日本における売血を禁止しているにもかかわらず、70年代後半においては血漿の輸入に関して厚生省はなんらの規制権限すらもっていませんでした。これによって、売血による血漿分画製剤がコントロールできないような巨大な市場をつくってしまったわけであります。そして、83年には、血漿分画製剤には手をつけることができないまま、その犠牲を血友病患者たちに一身に負わせたのであります。この歴史的なゆがみを本当にたださない限り、血液事業の改革はあり得ません。
医療の需要といったことがいわれていますが、根本にあるのは、国が基本となる血液事業の理念を持っていない。ここに集約されると思いますし、全血製剤にしろ、血漿分画製剤にしろ、結局のところ国は自らその事業の主体として責任をとる体制になっていないところに根本的な欠陥がありました。
それと理念の欠如です。血液行政といいながら、いわば臓器移植といえるものですが、理念も政策もありませんでした。そして、全血製剤以外は営利事業としての薬務行政一般に流され、その供給や安全管理も放置されてきたのが実情であります。
改革の方向について簡潔に申し上げますと、血液とは何かという理念に立ち返って根本的に血液事業を基礎づけていただきたいと思います。人の臓器であります。人に由来するものであります。安全だけではだめです。モラルが必要です。そして、必要最小限の安全なものが供給されるというのが原則であります。そして、人体に由来する以上、非営利でなければなりません。そして、厳格な安全管理が必要です。薬害エイズのようなことは二度と起こしてはいけないというものでなければなりません。
具体的な改革の方向は、言い尽されてきたことですが、献血です。売血の禁止、輸入血液の禁止。ここに踏み切るべきです。そして、現在は通常の医薬品と同じように薬価で支配されています。薬価差益をめぐって、外国との差益、あるいは実際の医療機関での差益からさまざまな問題を生じてきたのであります。人体に由来するという原価主義に徹底して、きちんとした別個の体系を考えるべきであります。
また、いま遺伝子合成製剤の安全性がさまざまに議論されていますが、血液製剤を含むものについては広く血液事業の中に入れて安全管理を考えていくべきであります。私たちは、遺伝子合成製剤がはびこり、血液由来の製剤が衰退していくということについては非常に憂えています。それは血友病患者たちの未来を明るくするものだけではないと確信をしています。
患者、あるいは広く国民への情報伝達は、危険性情報も含めてオープンに公開することがどうしても必要です。
そして、血液事業は国営の事業としてきちんと確立するということです。先ほど、国立の輸血研究所の設立もいいましたが、採血、製造、供給において、国営性、国の指導性を確立する。先ほどは製造について言いましたが、血友病患者たちは、製造においてほんとに煮え湯を飲まされてきました。日本赤十字社から製造部門を取り上げるべきであります。国が血漿分画製剤の製造に関しては責任をもつ体制に踏み切っていただきたい。そうでなければ、誰が責任をもって製造するのかということが依然としてあいまいであります。なんの改革の方向もありません。もう責任をあいまいにしておくことは許されないと思います。またぬるま湯的な改革に終るとすれば、それは2000人の血友病患者たちの犠牲をなんと思っているのか。この国の厚生行政、血液行政の基本的なモラルが問われると確信をしています。
そのことを踏まえて今後の議論を進めていただきたいと思います。
最後に、C型肝炎の問題です。これは輸血も含めて、キャリアは200万人とも 300万人ともいわれています。国は輸血由来のC型肝炎対策、救済についてはっきりした方針を出すべきであります。これはかつての血液行政のツケです。これについてはなんら対策がとられていません。200万とも300万ともいわれるC型肝炎患者への救済を早急に打ち出していただきたいと考えております。ありがとうございました。

高久座長

どうもありがとうございました。はじめに20分ほど、大阪、東京の原告団、弁護団のお話に対して質疑応答をするということになっていますし、大阪の弁護団からは委員の方々にご意見を伺いたいというお話もありましたので、20分ほど皆さん方のご意見をお伺いしたいと思います。どなたかご意見おありでしょうか。
私から中谷委員にお伺いしたいのですが、血液事業法という法律をつくるということについて、法律のご専門家として何かもしお答えしていただけませんか。個人的なお考えで結構ですが。

中谷委員

いずれ制定の必要はあるだろうと思っていますし、なるべく適正な法律ができればいいだろうと思っていますが、私はいまその前にほかの法律の改定で日夜やっているものですから、こちらのほうの立法についてもいろいろ考えさせられておりますし、同時に同じようなことがドイツでもフランスでもいろいろ起こっております。その処理の仕方などが多少違うものですから、どうしてそういうふうに違ってきたのかということについて、実は今日その資料を手に入れられればと思って昨日からドイツにファックスを送っているんですが、連絡がつきませんで手に入らなかったものですから、詳しい情報を得ておりませんので、はっきりしたことは申し上げられません。申し訳ありません。

高久座長

どうもありがとうございました。ほかにどなたかご意見。

井形委員

只今おっしゃった中の血液事業法とか、法的整備というのは、ここでも当然話題になっていますが、いまおっしゃった事業法の内容はある程度具体案として提案していらっしゃるんですか。

徳永陳述人

こちらのほうで現在叩き台をもとに議論を重ねているところです。

井形委員

叩き台はできてるんですね。
徳永陳述人
叩き台はあります。それを踏まえていま議論をしているわけです。おそらく同じような議論もここでももっと活発にやっていただけるのではないかなと期待しておったわけですが、我々の目から見れば、その熱意はあまり感じられないような形になっておりますので、先ほどのような意見を言わせていただいたということです。もし、よろしければ、私たちが叩き台としているものであればご提示させていただきますので。

井形委員

是非知りたいですね。主な骨子はこの項目とこの項目、というようなことをいまおっしゃれるのならおっしゃっていただければ。

徳永陳述人

先ほど申し上げたと思うんですけれども、レジュメの中で項目として示してありますが、まず、献血自給原則を法で定めていただきたいということ。2番目に、供給の問題について、ここでは供給の一元化ということを提案しております。このことについてもいろいろ問題はあるかもわかりませんが、問題点も含めて徹底的に検討していただきたいと思っています。3番目は、先ほど東京のほうからも極めて厳しい意見が出ていたと思いますが、果たして事業主体はどこがするのが適切なのかという根本的な議論を含めて、責任主体、権限、それぞれの役割といったものを法的に明確にしてほしいということ。4番目として、今回の被害者になった血液ないしは血液製剤の恒常的な消費者の意見をとるようなシステムも血液事業の中に法的に内在化させてほしい。5番目には、しかしながら、不可避的に生じるだろう被害者に対する保障の問題について、法的に明確にしてほしい。この5点であります、現状では。

中谷委員

献血の一元化ということについては、この検討会でも十分に論議しておりますし、ご提案の内容のかなりの部分について論議を進めておりまして、まだちゃんとした形のものは公表されていないかもしれませんが、進めていることは確かでございますので、ご理解いただきたいと思います。

徳永陳述人

こう言うと失礼に当たらないか心配なんですが、確かに厚生省から膨大な資料が出ていることも存じ上げていますし、またそれに基づいた検討もなされておるということはわかっております。しかし、そのことを踏まえて何をなさなければならないか、何をしようとしているのかといったようなことについての議論が外から見ていますとまったく伝わって来ないような形に思われるわけです。我々、それに対して密接に利害関係を持っていますので、そのことが心配で心配でならないというのが実情でして、そのことについて議論にはなっておりますが、何を目指しているのかというのがまったく見えないというのが我々の考えでありますので、そのへんのところ、私たちの気持ちを受け止めていただきたいと思います。

坂巻委員

大変意味のあるお話を伺って、ありがとうございました。国も今度の事件でだいぶ反省していると思うんですね、確認書にもあるように、はっきりと反省の弁も出していますし。ですから我々こういう会議をつくったのもそのためだろうと思っております。その意味では皆さん方と一緒にこういう過ちを二度と繰り返さないようなシステムもつくらなきゃいけないと私個人的に思っておりますけれども、献血の自給原則というのは非常に大事なことなんですが、実際に献血を増やすためにはどうしたらいいのかというと、いくら笛を吹いても、日本赤十字社なんかを中心に運動しててもなかなか増えないという現実がございますし、法律をつくっただけで解決のつく問題ではない。国民全部の意識を変えていかなければならないという部分がございまして、そういう面でより具体的なご提案、献血を増やすためにどうしたらいいのかということを伺えれば大変参考になると思うんですが。

徳永陳述人

私どもも法律をつくればそれですべて解決する。献血自給というものは法律ができればそれに実態も合う、というようなことを簡単に考えているわけではありません。しかしながら、理念の問題、規範の問題と現実の制度の運用の問題というのは両輪の問題だと思います。少なくとも、現状では献血自給ということが繰り返し叫ばれながらも、これが日本の国の中においてどういう位置付けをするのかが誠に不明確なままでずっと血液事業が続いているわけです。ここはやはり、まず規範として献血自給を目指すんだ、やるんだということを明確にした上で進めていく必要があると思います。おそらく実際の献血を進めていく上では、地方公共団体とか、各地のボランティア団体とかの協力を仰がなければいけないとは思うんですが、仰ぐにしても法的な根拠が何もないわけです。いまは何に基づいてされておられるのか詳しくは知りませんが、そのほうがよかろうというぐらいのところでご協力願いますということで血液事業を担っておられる方々が頭を下げてやっているというのが現状だと思うんです。これについては国としてやろうということを法律で明確にして、それに応じてそういう運動も同時に力をつけてやっていけるものだと思います。
具体的な方法については私が語るよりももっと適切な方がおられると思いますので。

保田陳述人

いまの先生のご質問ですが、献血が足りないということは、足りない状況にある、あるいは増えないということが問題であるというふうには僕は認識をしておりません。日本は有数の献血国、ものすごい量の献血者がいます。問題はその献血が活かされていないことでありまして、日本は大量の善意の献血が集められているわけですが、それをどう有効に使い、医療に役立てていくのかというのが欠落しているのが問題だと思っていまして、献血を集めることが問題になっているというふうには僕は認識しておりません。

陳述人(大阪HIV訴訟原告団理事)

エイズの医療についてですが、長く診療拒否とか、いろんな医療システムが揃わないために、診療拒否によって自宅で亡くなるような患者もいたり、ひどい状態が続いて、いまも完全に克服されたわけではないんですけれども、和解後、エイズ医療をよくしていくということで、一定の問題点はあるにしても、政策順位が上げられていって、医療関係にかなりの支出や人を投入することになったり、海外の研修にたくさんの医師が行くようなシステムをやってきて、それが効果を上げはじめているということなので、不必要な使用を減らすということで目的達成の意欲がかなり出てくるだろう。いまはあまりにも差があるから、そのあたりを減らすということと、国における血液事業の政策順位が低かったのではないかと思うわけです。かつてエイズ医療は少数の患者の問題であるというところで切り捨てられてきた。和解後の変化を見ますと、血液事業が国の政策の中できちっと法的に位置付けられるというのがまず一つ大きいことだと思うんですが、政策順位が上がって、十分な費用と人が投入されれば、不必要の使用の削減とあいまって、僕はまさしく、きちっと位置付けられれば、やる気になればできると思っております。

三星委員

今日は皆様からいろんなお話を伺って大変びっくりした問題もありますし、ほんとに長い間いろんな問題で大変だったことがよくわかりました。私は実はボランティアの委員という形でこの会に参加をさせてもらっておりますから、当然として、当初から、過去の3回にわたる血液事業検討委員会が国内自給ということを打ち出しておることを知っておりますし、報告を受けておりますので、なんとかそれをお願いしようということをこの会でも何回となくお話を進めております。当然としてそういう皆さんからお話があったような形でまとまる方向で我々も努力をいたしたいと思います。なお、この会がこれだけたくさんの皆さんにオープンにしながらの会議を続けておりますので、先ほど2番目にご質問があったようなことは当然としておわかりになると思いますので、どうぞこの委員会は真剣に討議をしておりますので、そのへんのところはご理解をいただきたいと思います。我々としても血液は自給する方向に是非とももっていきたい。ただ、これが明日できる、明後日できるかといってもすぐにはできませんね。時間がかかります。しかし、今回はどうしても、その方向性を打ち出すだけではなくて、実行に踏み切ってもらうことをお願いしたいと私は思っておりますので、ひとつご理解いただいて、もう少しこの委員会の流れを見ていただきたい。こう思います。

清水委員

私も一消費者団体の者として参加しておりまして、それから訴訟についても団体としても参加をしたりいたしておりますので、この在り方懇が皆様のいまのご発言を活かさなければ私どもも参加した意味がないと、そういう気持ちでみんな参加していると思うんですね。それほどHIVの事件、事故は日本の血液行政の根本を問いかけているというふうに思って、そういう気持ちだけは私自身は持っているつもりです。
それから「血液行政の在り方の論点整理」というペーパー、もうお読みになっていらっしゃると思いますけれども、それを見ますと、大体おっしゃってるようなことは入ってるんですよね。ただ、ご心配になる向きは、この論点整理というのは論点の整理であって、じゃあどうするかという、そこまでさらに踏み込んだ記述がされておりませんので、いまおっしゃったようなご期待とか、ご心配があるのだろうと思います。それはそのとおりだと思います。それで私たち、というと、偉い先生方の前で差し出がましいけど、私はいまお話のありましたような中で、二度と再びこういう事件を起こしてはいけない。そのためにわが国の血液行政はどうあるべきかという、社会に対して発表しても恥かしくないようなことをまとめていく一員として参加したいと思うと同時に、やはり厚生省の責任というのは非常に大きいということなので、厚生省としてもきちっとした基本的な方向を明確にしなければ在り方懇そのものが社会に納得の得られるものではないと厚生省にも申しておきたいと思います。

保田陳述人

いまの清水先生のお話、先生方によろしくお願いしたいと思います。私たちが考えているのは、一つは、この前のエイズ予防法のときに、救済決議と同時に血液製剤に関する衆参両院の社会労働委員会決議がありまして、そのとき、国内自給を推進すべきだと。凝固因子製剤については当面100%自給を目指すということが決議されているわけです。それから約10年ですが、国内自給がアルブミンや免疫グロブリン等を含めて、凝固因子製剤はともかくも、少しは前進してきていますが、根本的には転換をしていないということがあるわけです。薬害エイズ事件が起こってから既に10数年経過しているわけで、そのことの重さを是非ご認識をいただきたい。 それともう一つは、先生方にお願いしたいのは、血液行政の在り方に関する内容だけではなくて、厚生省が血液事業に関する立法にしろ、政策決定にしろ、こういう懇談会の趣旨も踏まえて決めていくとは思うんですが、そのやり方、その方法、誰にどう参加をさせ、どういう形でやっていくのか。いままでも行政は意見は聞いて、意見は聞きました、ということになるんですが、もうその時代ではないですね。きちっ参加をさせる。その在り方も含めて是非先生方に意見を出していただきたい。国会で審議をするだけではなく、それ以前の政策決定の段階において、患者代表なりにきちっと参加させた上で、そしてつくっていくというのが民主主義国家における最低のルールだと思います。いわんや、これだけの惨劇を招いた厚生省がそういう発想を持たないというのは、またこういうことを起こすということですね。いくら完全だといわれてもだめなんです。いくら安全だと言われてもだめなんです。安全をみんなで追求していく。そして、いろんな点からチェックしていく。そういう監視機構が必要なわけであって、そのためにはまず政策立案のプロセスからやっていただく。そこの点の含めて是非先生方に強い問題意識をもって究明していただきたいという希望を持っております。よろしくお願いします。

高久座長

どうもありがとうございました。ちょうど20分経ちましたので、一応原告団、弁護団の方々のお話と、それについての討論を終らせていただきまして、議事を進めさせていただきたいと思います。どうもご苦労様でした。
それでは次に、資料の3について、これは「医療機関の役割と責任」ということでありますが、血液自給の場合に一番問題になっておりますのが、医療機関で適切に管理し、かつ使用してもらわなければならない。これが非常に大きな問題でありますので、この問題について資料3に基づいて湯浅委員からご説明お願いします。

湯浅委員

いま皆様方からご発言ありましたように、血液事業というのは国あるいは日本赤十字社だけの問題ではなくて、血液製剤(輸血用及び分画製剤)を使う医療機関の責任も大事だと思います。我々のひとつの反省ですが、血液製剤というと、いわゆる医薬品と混同されて、今回も薬害エイズとはいっても、これは医薬品ではなくて血液製剤によるものであるという認識を私たちは持つべきだと思います。医療機関では、我々医師も反省しなければいけないことですが、輸血用、そして分画の血液製剤も、貴重な国民の献血によるものであり、しかもそれは国内確保しなければいけない。しかし一方では最高水準の技術でも不可避的なリスクもあるので、我々はリスクとベネフィットを考えながら使わなければいけない。不適切な使用がとりもなおさずリスクにつながるわけで、我々は輸血を厳密な適応のもとに使用しなければならない。そしてまた、適正に使うことが、アルブミンやグロブリンの国内自給につながるということです。今回の血液行政の見直しということでは、医療機関でこういう認識をしっかり持って対応していくことで安全性の確保ができ、それがまた患者さんにとっての安全性につながるわけです。ですから、国と日本赤十字社だけの血液事業ではなくて、医療機関の体制と、血液製剤を使うドクターの意識改革をやらなければいけないということで、このような「医療機関の役割と責任」ということを提言しました。
ここにありますように、わが国の血液事業のお蔭で、我々は安全性の高い血液製剤を使っているわけですが、それを現実に扱う医療機関では血液の適正な保管管理、輸血前の適合性の検査、適正な使用に万全を期さなければならない。このような体制は血液製剤の国内確保にもつながるわけで、そういう認識をもつためにもいまこそ医療機関におけるシステムづくりをしなければいけないと思っているわけです。
国、日本赤十字社、そして医療機関の三者が揃ってこそ目的が達せられるわけです。 1985年には世界の2/3以上の原料血漿及び血漿製剤を輸入していたわけで、これを是正するため、「血液製剤の適正使用」のガイドラインが出て、一時は減りましたが、使用量はまだ外国に比べると高い水準を保っています。そういうことでガイドラインはできているわけですが、ガイドラインをつくって配布しても、医療機関の末端のドクターがそれをほんとに利用しているかどうかという点で問題があるわけです。
ガイドラインとか、あるいは今回の輸血後GVHDの問題もそうですが、緊急安全情報が2回も出されていますが、それが医療機関に配布されたとか、伝達されただけで満足されてては困るわけで、大事なことは、それを受けとった医療機関が如何に現場のドクターに的確、迅速に伝えるかというシステムを作ることが大事です。そこで、厚生省のガイドラインでも述べているわけですが、医療機関には輸血業務を集中、一括して行える輸血部門、これは必ずしも輸血部ということではなくてもよいわけですが、輸血業務や管理を一体化、一元化して行える輸血部門と輸血療法委員会を設置して血液製剤の適正使用を推進することです。
こういうことが謳われているわけですが、現実に輸血部門がどの程度あるかというと、昨年、血液製剤調査機構の研究班が全国調査したところでは、輸血部門があるところは2.9%で、薬剤部が管理するが70%、中央検査部門管理が20%ということでした。薬剤部で管理しているというところが70%あるわけですが、先ほど申しましたように、血液製剤は医薬品ではないと。薬剤部管理の場合には、ドクターがブドウ糖液や、抗生物質などの請求のように気安く安易なオーダーになってしまうわけで、血液製剤の特殊性、しかもそれは献血によるもので、国内確保しなければいけない。しかもリスクがあるんだという認識が薬剤部の管理ではないわけで、オーダーに対する指導、教育もできないわけです。
そういうことで、輸血部門をしっかり確立すること。そして、輸血療法委員会も設置する。2枚目に、院長の役割、輸血療法委員会の役割、輸血部門の役割が書いてありますが、病院管理者と輸血療法に携わる各職種からなる輸血療法委員会をつくって、例えば、緊急安全情報が来ればそれを輸血療法委員会に伝えて、輸血療法委員会では更に診療委員会や医局長会で説明、解説を加えて各ドクターにしっかり伝えるということです。
また、輸血部門があれば、血液の厳重な保管管理や検査が行えドクターから血液のオーダーがきたときには適正な使用かどうかのチェック、指導、そして血液センターからの安全情報等の情報を個々のドクターに伝達ができるわけです。そして、輸血には自己血輸血すなわち外科の患者では日本赤十字社の血液ではなくて、自分の血液を用いて輸血ができるということも説明できるわけです。
そういうことで、ガイドラインで既に求められているところですが、輸血部門あるいは輸血療法委員会をつくる。こういうことをここでなぜ提言するかといえば、血液製剤はすべて献血であり、国内確保とその安全性確保、適正使用など血液事業がここで議論される程重要なことなら、病院の中にもそれを理解、実行させるようなしっかりとしたシステムをつくることが大事じゃないかと考えるわけです。医療機関の中でこういうものが確立されなければ、いま皆さん方がご提案になって、こういうシステムにしろ、立法化をしろといっても、実際に血液を使う現場でドクター一人ひとりが正しく認識し、また情報を正確、迅速に伝えるためにはこういうシステムがなければいけないわけです。
ちなみに、現在の輸血療法委員会の設置状況は、国・公立、社会保険関係の医療機関で約20%、ベッド数700以上の病院では54%、ベット数400までの病院では25%となっています。
こういうことで、輸血を行う施設では、保管管理、検査体制の確立、適正使用という点からこれらのシステムづくりが必要です。

高久座長

どうもありがとうございました。いま湯浅委員から「医療機関の役割と責任」ということでご説明がありました。もっともなご意見だと思いますが、これについてご意見、ご質問がおありでしょうか。

中井専門委員

むしろご意見を伺いたいと思うんですが、いまおっしゃった話はおそらく世界共通の大きな流れだと思うんですね。例えば、僕の知っている範囲で、アメリカの場合は、AABBの協会があって、あそこの基準を満たしていないと、メディケイド、メディケアの支払いの対象にならないという仕組みのようなんですね。それから、さっきちょっとお話がありましたが、カナダのクリーバー委員会の中間報告、これは2年ぐらい前に出ているんですが、その中にもカナダもアメリカのような仕組み、即ち、保険の対象にするにはこういう要件を満たさないとだめではないか、単にガイドラインだけでは徹底されないのではないかという提言をされているんですね。だから、いま提言されたことをより実効性のあるものにするためにはどのようにすればいいのかということでご意見があればお聞かせ願いたいと思うんですが。

湯浅委員

医療機関のシステム作りはガイドラインで述べても実効性がないので法的に明文化することです。私の資料の1ページの図で、医療機関の下に学会・公的機関ということで、輸血部門に↑印がありますが、2ページの最後に、将来の課題、これは是非施行しなければいけないことですが、学会や公的機関による輸血部門の inspection and accrediation を行うことです。アメリカの病院は輸血を扱う部門は必ず連邦政府、アメリカの輸血学会(AABB)、そして州による3つ機関からのインスペクションをうけて、アクレディテーション、即ち承認されないと、輸血を行っても保険で認められないつまり輸血をすることもできないということで非常に厳重になっています。そこにはマニュアルがありまして、基準に沿って輸血部門が運営されているか、検査や試薬の品質管理のチェックまでやる。しかも、そこで適正な輸血が行われているかどうか。病院には輸血療法委員会があって適正な輸血の情報交換、ドクターの使用が適切かどうかのチェック、さらにはピュアレビューというものがあって、不適切な使用をしているドクターを呼び出して適正使用を徹底させる。日本でも公的な医療監査はありますが、血液製剤を扱う部門のチェックはない。輸血の特殊性ということをふまえ、今回の血液行政の見直の中で、医療機関の安全な輸血体制を整備するよう法的に明文化することが大事だと思います。

秀嶋委員

いま湯浅委員がおっしゃったことはまことに適切なことだと思いますが、この度の診療報酬の改定においては、輸血はインフォームド・コンセントをしなければやってはいけない。要するに点数にならないということが明記されましたので、レトロスペクティックに、どうしても輸血委員会、輸血、血液製剤の取り扱いということに関しての情報を集めなければならないというふうになってきましたので、今度は経済的にも誘導されたということで、これはよかったと思っています。

湯浅委員

非常によかったと思います。輸血に関するインフォームド・コンセントがこの4月から施行されましたが輸血について患者さんに説明すること自体、それはとりもなおさずドクターが、この輸血が本当に適切なのかどうか、輸血を行う場合に外科の患者さんだったら自己血輸血もあるということで、輸血に関して自分自身に問い質すことにもなるわけで、今回、インフォームド・コンセントが取り入れられたということは、ドクターに対しても輸血に対する意識改革を与えることで非常によかったと思っています。

高久座長

それは書面でとるのですか。

秀嶋委員

書面でとります。

行天委員

いまのお話ですけど、よその国はいずれも経済の問題をベースにしてやっておりますので、日本の場合は皆保険ですから、いまお話あったように、今年からインフォームド・コンセントが必要になったと、本来であれば当たり前ですよね。当たり前の問題をそこにいれて、診療報酬面でも組み方に対して一つのブレーキをかけているんだと思いますが、私は薬剤の処方だってなんだって全部同じだと思うんですよ。何もとりたてて輸血だけにそれを適用して、医師が意識改革をするという以前に、私は前々から、輸血というのは極めて特異なものであって臓器移植のちょっと形をかえたものというくらいの教育的なあり方のほうが大事だというふうに思っているわけです。臓器だという前提をもし持てば、どのような形であろうとも、医師は処方するに際して薬剤とは全然違った考え方を持つと思うんです。特に献血由来ということをもしもっていくとすれば、臓器移植的発想以外には、とてもその重要性とか価値あるものに対する考え方というのはなかなか持てないと思うんです。
これをどういうふうに持っていったらいいかということになると、実は話はちょっとさかのぼるんですが、PLの問題のときに、全血輸血さえもPLに入れて製造物的な発想がとられたということは、私のいまの考え方からいったら、だいぶ問題が違って逆行じゃないか。むしろ臓器移植に対して製品なんていうのはおかしいんだという考え方にいまでもいるわけでございます。
そこでさっきお話が出たように、血液製剤の問題になってくると、これは臓器移植なのか何なのかというところで相当ぼけてしまうわけです、現場の使い方、それから一般の人たちのそれに対する受け取り方も。このあたりがいつも問題を抱えながらなかなかすっきりできない一番大きな問題だろうと思っているわけですけども、医師のやっている医療行為そのものに関しては、ある種の考え方の誘導だとか、教育はできても、医療行為そのものは医師の全責任ですから、これを規制したりするのはなかなか難しいものがあると思うんですね。
献血を由来とするのであれば、国民的には臓器を提供していただくくらいに大変貴重なことであるし、また臓器なるが故に非常な危険性も持っているんだという、こういう教育を繰り返しやっていく以外にないだろうと思います。
それから、さっき保田さんのお話で、献血は十分足りているというようなニュアンスで、むしろ使われ方の問題だということでしたが、この使われ方の問題というのは、いまお話が出た医療側の利用の問題ですか、主に。

保田陳述人

ええそうです。特に血漿ですね。

行天委員

やはりその問題ですね、わかりました。ですから、三星委員がものすごく苦労されて、あれだけ一生懸命になられてもなかなか限界があるという現状は認めなければいけないと思うんですね。だから、簡単にということではなくて、あらゆうものが全部、まず集めるほうも大変、出していただくほうも大変、さて、これを使うほうに関していままで確かにちょっと欠けている面があったので、いまおっしゃったように、レトロであろうが何であろうが、やっていくということは意味があるんじゃないかと思っております。

中谷委員

先ほど輸血についてはインフォームド・コンセントがというお話がありましたが、インフォームド・コンセントはこれまたなかなか難しくて、その内容についてご検討なんでしょうか。是非それをやっていただきたいと思います。どこでもインフォームド・コンセント、私ども拝見いたしましても、問題が多すぎますので、どうぞいろいろとご検討いただきたいと思います。

曽野委員

私は申し上げるまでもなく、医療関係者でもありませんで、すべての問題は私は小説を書いている者でございますが、10年、20年でその問題をとろとろ勉強した挙げ句にやっと書けるという程度のものです。私、逆に皆様方にお伺いしたいのは、血液製剤を薬のお感じになっていらっしゃいますか、臓器とお感じになっていますか。今日はそれを一番お伺いしたいと思っております。どうぞお願い申し上げます。

花井陳述人

花井といいます。私、まだ乾燥クリオを使用していた頃に、自分で注射針を抜いたときに血液製剤を指で触ってにおいを嗅いでみたことがあります。その香りはまさに血液でした。薬剤だと私個人は思ったことありませんし、まして、先ほど東京の原告から話したとおり、国民皆さんの協力、健康の人たちの協力で貴重な血をもらって、その血のお蔭で僕ら病気を治療できているんだと、そういう認識を片時も忘れたことはありませんし、単なる普通の薬剤の同視したことは、おそらく血友病患者はみんな一度もないと思います。

秀嶋委員

私は前回の委員会のときにも申し上げましたが、血液製剤も臓器由来というふうに考えておりますので、特に注意をして使わなければならない。インフォームド・コンセントも含めてそこまで拡大しなければならないと私は考えておりますので、(社)全日本病院協会でもそういうことをきちっと末端まで知らせるべきだというふうに考えております。厚生省の保険のあり方についても、いわゆる血液製剤についてもインフォームド・コンセントを書類で交すぐらいのことにもっていったほうが厳しくなって私はかえっていいんじゃないかと思っております。

井形委員

私も院長のときに、輸血療法委員会をつくったんですけど、いまの話と関係ありますけど、輸血に関しては問題ないと思いますが、血液製剤については、治験、リコンビナント、そういうものがまったく薬剤部から独立した委員会で所管すべきものなのか、私の病院は薬剤として扱っておりましたので、そのあたりはどういうお考えでしょうか。

湯浅委員

血液製剤もヒト由来ということからいえば、輸血用血液製剤と同様輸血部門で扱うべきものじゃないかと考えます。現実に、いまアルブミンの使用が問題になっているわけですが、ドクターがアルブミンを使うとき、薬剤部ですと、自分が必要な本数だけを書いて請求する。それで看護婦がもらってくるわけです。普通の注射薬剤のようにバイアル瓶に入っているので、これが献血者からいただいた血液製剤であるという意識はなくなって、安易に使ってしまう可能性があります。これが輸血部の管理になりますと、輸血用血液製剤と同じように、どういう目的で使うか。そして、オーダーが本当に適切かどうかということもそこでチェックできるわけです。現に、輸血部門に血液製剤を移管したためにアルブミンの適正使用が行われて使用量も減った施設がございます。
血液製剤の問題を考える以上は、いま先生が申されたように、血液製剤もインフォームド・コンセントの対象にし、保管管理も輸血部管理にすべきで、さもないと、血液製剤でありながら医薬品という感じになってしまって、安易な使い方になる。実際に、クロイツフェルト・ヤコブ病の問題もあります。パルボウイルス混入の可能性もあるということが緊急安全情報でも伝えられております。ですから、そういう意識を持つことが大事で、特にアルブミンについては、適正使用で現在の使用量を30%削減するという方針を考えますと、輸血部門での管理が必要になってくるのではないかと思います。

高久座長

どうもありがとうございました。ほかにどたたか。予定した時間は4時までになっておりますので、進行上、資料4の「医薬品等健康危機管理実施要領について」事務局から簡単にご説明をお願いします。

適正室長

医薬品適正使用推進室長の石井でございます。資料4を使いまして、この4月3日に公表いたしました「医薬品等健康危機管理実施要領」について説明させていただきます。
この実施要領はHIV感染被害あるいはO157の食中毒問題、そういうものに対する迅速な対応という点での反省に立って、再発を防止するという観点から本年1月に厚生省全体の健康危機管理基本指針を策定して発表したところであります。さらに医薬品ほか薬事法関連物資、食中毒、感染症、飲料水の各分野別の危機管理実施要領を3月31日に定め、4月3日に公表したものであります。 ここにお示ししますのは、その中で、医薬品あるいは医療用具といったものの健康危機管理実施要領でございます。
1.目的にありますように、健康被害の発生、拡大を防止するという観点から迅速な対応ができるように、情報収集から対応まで、あるいは具体的な対策について、その流れを文書として残し、職員の心得も付記してまとめたものであります。
2.危機管理の基本的心得としては、安全情報の迅速な把握と、総合的な安全対策の立案、実施ということを常に心掛けていなければならない。2番目としては、情報が不確実な状況の下では、常に最悪の事態を想定して対処すべし、というような心得を示しております。
3.情報収集から対策の立案に至る判断の一元化、ということを規定しております。具体的には、医薬品適正使用推進室において、安全性情報の収集、評価、安全対策の立案を一元的に実施する。その立案された対策の実施はそれぞれの各課が何をするか、責任を明確にして、連携して実施する、ということを規定しております。
4.対策実施までの手順の明確化、ということで、安全性情報の収集をし、その情報について、一次評価として、緊急対応の必要性の有無の判断、健康被害の有無、その程度の判断をすること。実際の情報の評価及び対策の立案については、基本的には中央薬事審議会の意見を聞いて立案をする。ただし、緊急時は事後報告をする、としております。安全対策の実施については、それぞれ行う必要のある対策をすべて列挙し、それによりそれぞれの担当課が責任をもって対策を行う、ということを記しております。
具体的な対策としては、薬事法の場合、製造業者が必ずおるわけでありますが、そこへの指示により行うことを原則とするけれども、緊急に実施が必要な場合、あるいは業者が指示に従わない場合には、法律に基づく命令を発動する、としております。 また、具体的に対応を行った場合には、報告聴取、立入検査等により安全対策の実施状況を把握する、ということとし、最終的な確認を行うものとしております。
2枚目は、薬務局内における安全対策の体制ということで、これまでも我々はこういう気持ちでやっていたわけでありますが、具体的に文書にした内容の流れを整理するとこのようになるわけであります。
いろいろな副作用、安全性情報の入手ルートがありますが、一番多いのは企業からの報告。次に副作用モニター施設があります。このモニター施設は今年度中に全医療機関、全薬局をその対象とすることにしておりますが、施設からの直接の報告がございます。さらに、文献・研究情報が直接、あるいは企業から、あるいは他のところから入ってくることになります。他の局、試験研究機関が得た危険情報も入ってきます。また、外国規制情報ということで、外国当局から直接の情報、WHO等国際機関からの情報、企業経由の外国の規制情報があります。その他、報道関係者からの情報、あるいは都道府県からの情報、患者さんからの苦情等の情報が、一元的に安全課医薬品適正使用推進室に集められます。
集められた情報は、一次評価、中央薬事審議会の意見をお聞きしながらの本評価を経て、その安全対策の決定が行われます。対策の決定に当たっては、関係各課からなる医薬品安全対策連絡会議を適宜開催することにしております。
次に、安全対策の実施ということですが、それぞれの課の責任を明記しております。審査課は承認の関係、医療機器開発課は用具の承認関係、安全課は再評価の関係、私ども医薬品適正使用推進室は添付文書を通じての使用上の注意の喚起、緊急安全性情報の配布、情報提供の窓口としての業務、監視指導課は回収等、血液事業対策室は血液製剤の供給、日本赤十字社等との連絡調整、という形でそれぞれ役割分担を明記して対策を実施していくというものであります。
先ほどもヤコブ病の話が出ましたが、ヒト乾燥硬膜におけるヤコブ病問題という点について、この流れに沿って申し上げますと、WHOからの勧告の連絡が国際機関から入ったということで、右から2つ目のルートで入ってきております。それに伴って、緊急と私ども判断いたしましたので、中央薬事審議会には事後報告ということで医薬品安全対策連絡会議で対策を練り、関係各課で対応を決定いたしまして、直にそれぞれのところで対応を行ったわけであります。安全課医薬品適正使用推進室は緊急安全性情報の配布、監視指導課は法律に基づく緊急命令による回収、あるいは使用停止の連絡ということを行ったわけであります。
以上、簡単にご説明申し上げましたが、実際の実施要領は後ろに本文をつけておりますので、ご参照いただきたいと思います。

高久座長

どうもありがとうございました。それでは資料4についてご質問、ご意見おありでしたら、どうぞ。

曽野委員

2の(2) でございますが、情報が不確実な状況の下では、常に最悪の事態を想定して対処。と簡単にお書きでございますが、これは大変な文章でございまして、第1は、最悪なことがわからない、もし世でまったくわからない場合がひとつです。最悪なことがわからなかったら、使わないんですか、ずうっとわかるまで。こういうわからない文章をお書きになるのはいけないと思いますね。一体どういうことを思っていらっしゃるのか。書いておけば通じますけど、世間は通じません、日本語としては、ほんとに意味を追究いたしますと。そういうところをはっきりご説明いただきたいと思います。

適正室長

おっしゃっることはよく理解できるわけでありますが、これは私どもの基本的な心得といたしまして、たしかに最悪の事態というのは、なかなか難しゅうございます。ただし、私どもいろいろな不確実な情報を得たときに、例えば、それが副作用被害のときに簡単なショックと考えるのか、そのショックの結果として死に至ることがあると考えるのか、いろいろなケースがございます。そういった場合に、私どもとしては、簡単なものではないと常に考えながら、そういう心得、気持ちの下に対応していくというつもりで書いております。

企画課長

私から追加して申し上げたいと思います。もちろん最悪の事態というのはいろんなレベルであるわけですが、エイズの問題などの反省に立ちますと、楽観主義は戒めなければならないだろう。例えば、先程来お話がございますが、現状で申し上げますと、外国からの原料血漿を用いた製剤が供給されているわけです。それで、外国政府との関係である情報が入って参ります。血液製剤なり凝固因子製剤、あるいは血漿分画製剤の安全性についての基本的な手法はご案内のとおり、できるだけ原料血漿段階でチェックを行う。それから製造工程においてできるだけ厳密な管理を行うという手法があるわけです。それから、最近ではさらに、製品の出荷段階でできるだけ検査をしていこうという、そういう検査による確認の手法と、工程による確認の手法、両方を重ね合わせできるだけ安全性を高めようという形になってくるわけです。例えば、外国からの情報で、あるところについて、確定していないけれども、少し不安があるという情報が入ってきたときにどういう手段をとるかということですが、最近行っておりますのは、基本的にそれに関連する製品についてとりあえず出荷を停止する、ということをやっております。出荷停止をし、それから事態のチェックを行う。事態のチェックを行って、最終的には問題がないということがあり得るわけです。そのときの考え方として、問題がない可能性が高い場合、確認をしながら出荷を続けていくのかどうか、そのへんで、端的に申し上げて微妙な行き方の違いがございます。
先生おっしゃるように、最悪といいましても、すべての最悪を考えますと、供給もすべて行わないということになるわけで、それは先程来、特に血液の場合には臓器的な性格が非常に強いのではないかという話がありますので、最悪を考えれば使わないということになるわけですが、そういう意味での最悪ではございません。ある幅の中でできるだけリカバリーができる状態を目指してやっていくというのが当面私どもが心掛けている点でございます。表現をちょっと強くしておりますのは、そういう心構えの問題でありますので、強めのほうが組織としてはいいのではないかということでそういう表現を使わせていただいております。

高久座長

それではもう時間が来ましたので、最後にどうぞ。

草刈委員

評判の悪い日本赤十字社でいま一生懸命血液事業をやらせていただいておりますが、この問題についてお願いしたいんですが、いまの趣旨はわかりました。ただし、それがぐずぐずしていますと有効期限が切れます。あとでよかったといわれますと献血者の方々のご誠意が無駄になるということ、これをお考えいただきたいと思います。それから、今日付で出ております、企画課長さん、審査課長さん、安全課長さん、監視指導課長さん、4名の連名で、グロブリンにおけるC型肝炎の混入が疑われた例について自主規制をやっている、自主改正をやったということの通知はございましたが、当職あて連絡していただきたいという。この4者の揃い踏みは大変評価いたします、早いし。ただ、我々としては4課長に報告するんですか、ということです。やはりこれは審議官なり、局長なりの通知でいただいたほうが我々としては有難い。迅速かつ窓口を単純にしていただければ、現在血液事業に参画している我々としては大変有難いということだけ申し上げます。

高久座長

どうもありがとうございました。時間になりましたので、これで今日の委員会を終らせていただきます。大阪のHIV訴訟原告団・弁護団の方から資料を配布したいというご要望がありましたので、どうぞお配りいただきたいと思います。
一応閉会をして、いまの資料について、ご説明をしたいというご要望がありましたので、これで閉じまして、資料の説明を伺いたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

徳永陳述人

すみません、いま配布させていただいている資料は、意見陳述の中で申し上げていたこれまで繰り返し出されている血液問題検討会とか血液事業検討委員会の答申です。私たちが言いたいことは、先ほどご意見もありましたように、いままでも同じようなことが検討されて、論点整理がされてきたということなんです。問題としては、そういう論点整理にこの懇談会がとどまるのではなくて、それを活かすような制度を現実につくり上げる方向で答申をまとめていただきたい。そういうふうに感じておるわけで、その意味でこれまでにもこういったものがありますよ、ということで出させていただく次第です。どうも申し訳ありません。

高久座長

どうもありがとうございました。

血液室長

最後に事務局から委員の方々に説明させていただきます。今回は資料が大変多うございますので、委員の方々でご自宅への郵送をご希望の方は事務局の係の者にお申し付けください。以上でございます。


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