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中央児童福祉審議会母子保健部会議事録

厚生省児童家庭局母子保健課

中央児童審議会母子保健部会会議次第

日 時 : 平成8年2月6日(木) 午後2時〜4時
場 所 : 法曹会館

議事次第

1 小児慢性特定疾患対策について
(1) 慢性疾患児及びその家族のQOLの向上
(2) 下垂体性小人症対策
2 平成7年乳幼児栄養調査について
3 その他

○事務局

ただいまから中央児童福祉審議会母子保健部会を開会いたしたいと思います。
本日は大変お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。最初に母子保健課長よりごあいさつを申し上げます。

○母子保健課長

本日は年度末に入りまして大変お忙しい中、お時間をお繰り合わせいただきましてありがとうございます。
前回に引き続きまして、きょうは、議題にございます小児慢性特定疾患対策を中心にご議論をいただこうと考えておりまして、研究班を代表されてJ先生、そして、児童について具体的にお話していただこうということで、きょうは日本児童家庭文化協会のMさん、Nさん、「がんの子供を守る会」のPさんにもおいでいただいております。いろいろと皆さん方のご意見を伺いながら、またこの場でいろいろとご審議いただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局
本日の部会には10名の委員のご出席をいただいておりまして定数に達しております。 なお、2月1日付で委員に異動がございまして、ご紹介申し上げたいと思います。日本看護協会のI委員でございます。

○I委員

よろしくお願いいたします。

○事務局

本日はご欠席でありますけれども、もうお一方、日本栄養士会のQさんが任命されております。
本日、前回の議事録を配付してございますが、大変申しわけございません。一部訂正がある予定でございます。後刻直ったものをお手元にお送りさせていただきたいと思いますので、きょうの資料は直っている前提で進めさせていただければと思います。
それでは部会長、議事進行をよろしくお願いいたします。

○部会長

皆様こんにちは。お忙しい中を、また、このところ寒さが続いております中をお出かけいただいてありがとうございます。きょうもどうぞよろしくお願いいたします。 過日1月30日に、中央児童福祉審議会の総会がございまして、主なところは、例の児童福祉法の改正に備えての準備的なお話もございましたけれど、その席上で、母子保健部会の1年間の活動状況、中間報告等を含めましてご報告をさせていただきました。どうもありがとうございました。
そのときも、慢性特定疾患の対策については今後もなお検討を続けますということでご報告をしたところでございますけれども、きょうはこの問題をまずご検討いただきまして、その後、ご報告事項あるいはそれについてのご意見を伺いたいことなどがございます。よろしくお願いをいたします。
では、議事の1の(1)でございますが、「慢性疾患児及びその家族のQOLの向上」という点につきまして資料が用意されております。事務局からご説明をお願いいたします。

○事務局

それでは資料1からご説明させていただきたいと思います。進め方は私どものほうからご説明させていただきまして、次に、文部省の方が来ておられますので、文部省のほうからご説明をいただきまして、児童家庭文化協会さんと「がんの子供を守る会」の方々が来られていますので、順次説明させていただきまして、その後質問を一括でお願いできればと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは資料の1からご説明させていただきます。1ページ、前回こちらのほうからご説明しましたが、慢性疾患対策としまして、一つは研究の充実ということと、福祉施策の充実ということと、もう一つは、いわゆる財政的な問題という三つのことでお願いしているわけでございますが、そのうちの一つの福祉施策についてご説明させていただきたいと思います。
一つ福祉施策としてやっておりますのは、そこに書いておりますように主に五つでございまして、まず療育指導事業というものと手帳の交付事業、ショートステイ事業、民間の活動への支援の二つということでございます。療育指導事業というのは、保健所のほうで平成9年の4月から、家族の方々の相談に応じるような体制をし、あるいは学校との連携をとって、学校への、なかなか親御さんが言いにくいようなことも学校と連携してもらってやる、あるいは施設と保健所と連携をとってもらって、地域の中のいわゆるネットワークをつくるというような事業を考えておりまして、平成9年4月からこの事業を開始したいと考えております。
手帳の交付事業というのは、もうすでに2年ほど前からやっておりますが、手帳を交付させていただきまして、これも先生方に内容を書いてもらう、それで学校へ行って、学校の先生方がこれをごらんになって、この子がどういうような状態にあって、どういうような注意をしなければならないのかといったような内容を書いていただくという交付事業をさせていただいております。
その次のページのショートステイでございますが、いま厚生省がやっております老人対策や障害対策の中でショートステイということで、一定期間預かってもらえるような事業でございます。7日以内でやらせていただくというようなことで、今年度から始まりまして、今年度5ヵ所ですが、来年度10ヵ所に伸ばしたいと考えております。
3ページ目ですが、これは情報提供事業と調査研究事業ということでございまして、一つは「がんの子供を守る会」さんのほうでお願いしている。情報提供や相談指導を行っていただいているものでございます。
もう一つは「愛の家運営委員会」というところでお願いしていますが、これは4年ほど前に検討会でお願いしましたマクドナルドハウスというような内容で、いわゆる宿泊施設に対しての運営のための支援を行う。親御さんがそこに泊まれるような体制ということで、研究事業という形でやらせていただいております。
4ページ目でございますが、これは後で詳しくご説明いただくと思いますので、簡単に申し上げますが、患者の方々からのご要望をいただいておりまして、一つは治療研究の推進ということで、病態の解明など積極的にやっていただいて、よく治していけるような体制にする。
もう一つは病院内での施設面の充実ということで、学習施設の充実を図っていただければ、あるいはその他、面会室の充実とか親のための宿泊施設というようなものを整備してほしい。
3点目としましては教育に対する要望ということで、養護施設それから普通学級の充実を要望されております。4点目は在宅福祉制度の充実。保健所を中心とした地域ネットワークの推進。5点目は経済的援助ということで、健保の適用などを中心としたご要望。6点目は就労に対する要望でございまして、自立できるような制度を設けていただきたいというようなご要望でございまして、後ほど詳しくご説明いただけると思っております。 5ページ目が調査結果の概要でございまして、これは平成3年にやらせていただきました調査でございまして、簡単に申し上げますと、上の表は、障害手帳を持っている方が 4.8%、療育手帳を持っている方が 2.7%いらっしゃる。
下の表ですが、入院医療機関への希望としては、相談に乗れるような専門家の配置あるいは院内学級の設置、訪問学級の実施、心理職の配置などをご希望されているということでございます。
6ページ目、介護の必要性ということでございまして、全面介助が必要な方が数%、一部介助が必要な方も同じぐらい、「介助の必要はほとんどない」と答えられている方が非常に多い。住宅の改造についても、「改造する必要はない」と答えている方が86%で、「改造している」と答えている方が4%、「改造できない」と答えている方が10%弱ということでございます。
7ページで、訪問サービス等の利用状況ですが、サービスを受けていらっしゃる方はそれほど多くないという状況であります。
「自宅療養での必要な事項」、下の表ですが、必要として希望されているのが一番多いのは緊急連絡体制の確立、2番目は「難病の親の会」を、保健所を基盤としてやっていただきたい。いろんな相談指導その他ご希望されているということでございます。
8ページ目でございますが、教育の状況は、義務教育を受けられて、義務教育の年齢に達している方は53%、それ以外、達していない方が46.9%、義務教育の状況は、普通学級が85.5、特殊学級が 2.2、養護学級が 7.4、院内学級が 2.5ということであります。
学校で気になることは、「問題なし」と答えている方が72.6%、「問題あり」と答えている方が総数27.4%で、「体育などに参加できない」というのが16.4%、「いじめられる」が 6.6%、「学校に理解がない」というのが 3.1%その他となっております。
9ページ目でございますが、両親の負担の状況ということで、負担と感じない方が、母親35%、父親44.3%、負担と感じる方は多くて、精神的な負担や身体的な負担、経済的な負担が大きい、その他の子どもの面倒が見られないといったような状況で、負担感はかなりあるというような状況でございます。
10ページ目以降は養護学校の概要でございますが、これは後ほど文部省さんのほうからご説明いただきたいと考えておりまして、「検討事項」と書いてある紙があると思うんですが、小慢の治療研究事業で、母子保健部会での検討事項ということで、一つは在宅ケア対策の推進ということで、これにつきましては、たとえば先ほど申し上げましたように、療育指導、訪問看護、関係団体との調整などについては順次制度をつくってきたということであります。地域のネットワークが必要だということですので、それのネットワークの確立をいま模索して、整備を進めている。
もう一つの入院児対策につきましては、一つは文部省さんで昨年度、一昨年度かなりご検討されていると伺っておりまして、これは文部省さんで推進されている。
下のほうの、子どもたちの病棟におけるQOLの向上で、プレールーム等の整備とか、あるいは専門職の配置とか、面会を容易にするための施設施策の推進というのが必要ではないかということで、前回、4年ほど前ですが、ご議論いただいているということでございます。
この検討事項というのは、4年前に検討会を開いたときの問題でありまして、3は民間団体による自主的な活動の支援ということで、先ほど申し上げましたように、「がんの子供を守る会」さんとか支援させていただいているというところでございます。
それから、総合的体系的な体制の確立ですが、慢性疾患を持つ子どもたちへの対策を見直す、包括的な地域ケアを提供する対策の確立に向けた検討を開始するというようなことでありまして、またここでご意見をいただいた内容をもとに施策を進めていきたいと考えております。
次のページ、本日の論点メモですが、順不同で恐縮ですけれども、まず考えているのが在宅ケア推進のあり方、考え足りない点、入院児における教育や入院のマンパワーその他設備、足りないところ、民間の方々の支援、親の方々の負担の軽減、どのようなものをやればいいかというようなことをご議論いただければと考えております。以上でございます。
○部会長
ありがとうございました。いま厚生省で現にやっておられるサービス、それからこれから検討すべき事項等お話をいただきました。
最初にお願いしましたように、ご質問、ご意見等は後でまとめて伺うことにいたしまして、引き続きまして、文部省のやっていらっしゃることなどのご説明をK調査官からお願いをしたいと思います。よろしくどうぞ。

○K調査官

文部省で病弱身体虚弱教育を担当しておりますKと申します。よろしくお願いいたします。与えられている時間が5分から10分ということでございまして、非常にアバウトなので、私もどのへんに絞ろうかと思ってちょっと困っているところでございますが、五、六分以内にと思っております。

○部会長

どうぞおかけになって。

○K調査官

立っているほうが緊張してやりやすいものですから。済みません。昔から立たされるのに慣れているものですから。
お手元の資料10ページをごらんいただきまして「養護学校の概要」というところがございますが、ご存じのとおり、わが国の特殊教育は盲学校、ろう学校、養護学校という大きな種類でいきますと三つの種類で構成されております。そのほかに特殊学級がございますが、養護学校というふうに一くくりになった中が、精神薄弱、肢体不自由、そして病弱養護学校という三つに分かれるわけでございます。これで盲・ろう・精・肢・病というふうに、簡単に分けますと五つの障害という形になりますが、特殊学級のほうは、それに加えまして、盲に対しては弱視、ろうに対しては難聴、精神薄弱、肢体不自由、病弱、そのほかに言語、情緒という形で7障害という形に分かれているところでございます。
きょうご説明させていただきますところは、その次のページの「養護学校の現状」というところでございますが、お手元の資料、一昨年のものでございますので、もう3月が間近い年度末なのに、この資料ではということで、きょうお配りいたしました同じような感じの「特殊教育関係資料」ということで、平成8年5月1日現在の確定値がございますので、こちらのほうをごらんいただきたいと思います。
現在、病弱の養護学校につきましては本校が82校、分校が13校ございまして、合計95校という計算でございます。 4,436人の子どもたちがそこで学んでいるということでございますが、このところ、学校数、学級数は変わっておりません。きょうはOHPも何も使いませんので、もう一枚、グラフの資料を見ていただきたいと思いますが、1枚目のグラフの上のほうの、○印で折れ線グラフになっているのが養護学校数でございます。
平成2年あたりから変わってきていないというのが病弱の養護学校でございます。
特殊学級のほうでございますが、そこにございますように、昨年5月1日のデータで 658学級ございます。 658学級の内わけをちょっと見ますと、これはまさに小学校、中学校の特殊学級で、病院の中にある、ないにかかわらず、ある学級数が 658でございまして、別なところの数字で調べていきますと、約 290くらいが病院の中にございます。
そのほかにいわゆる訪問学級として、養護学校から訪問しているという教育のところが130くらいありますので、合計合わせますと四百二、三十の病院に、何らかの形での教育機関がセットされているというのが現状であると考えているところでございます。これはわが国の小児科を標榜している病院数約 4,000ございますが、そのうちの1割強というような数字でございます。この1割強が多いのか少ないのかということについていろいろ疑義があるところでございますが、われわれといたしましては、この教育の場のセットをしなければ、子どもたちの教育がなかなかうまくいかないということを考えながら取り組んでいるところでございます。
グラフの2枚目でございますが、上のほうは、病弱教育を受けている子どもたちの推移でございます。児童生徒の減少と合わせて減少してきているところでございますが、
それにもまして、長期で入院している子どもの数が非常に減ってきているというようなことが、ちょっとわかりにくいわけですけれども、ここのところから読み取っていただければありがたいと思っております。
その下のグラフをごらんいただきたいと思いますが、ちょっと見にくいかもしれませんが、昭和42年くらいのところを見ますと、碁盤の目になっているグラフでございますが、結核が圧倒的に多かったわけです。この当時から30年弱の間に結核はほとんどいなくなり、ぜん息と心臓疾患と血液疾患と、不登校も含みます神経性の疾患みたいなものがどんどんふえてきているということで、病弱養護学校ないしは特殊学級で行われている教育の対象の子どもが大きく変わる時期にうまく当たってきておりまして、文部省といたしましては、この時期に、これからどのようにしたらいいかということを検討している最中でございますし、そのための検討委員会等も設けまして、今年度末そして来年度に向けての取り組みを行っているところでございます。
具体的なところでは、たとえばマルチプランの活用とか、あるいは先生方が病気のことについてよくわからないというような、皆さんのお手元の資料の12ページにございますが、病弱身体虚弱児童はどんな子どもなんだということが、通常の小学校、中学校の先生にはあまりわかられていないということが、大きい指導上のネックになるということから、手引きをつくったりというようなことで取り組んでいるところというのが、文部省の現在の取り組みの状況でございます。以上でございます。

○部会長

どうもありがとうございました。それでは引き続きになりますが、きょうは親の会の代表の方々にお越しをいただいております。「がんの子供を守る会」のPさん、日本児童家庭文化協会のMさん、Nさんでいらっしゃいます。
児童家庭文化協会は、いろいろな難病をお持ちの子どもさんの親の会、患者さんの会等の横の連絡をいろいろとっていらっしゃる協会で、去年の暮れ近くにも全国の集まりをして、いろいろな要望の発表会などをなさっておられましたので、そういう意味でいろいろのお話が伺えるかと思います。
それでは最初に協会のほうからお話をお願いいたします。

○M

本日はこういう席でお話をさせていただく機会をいただきまして大変ありがとうございます。親の会の皆さんで集まっていろいろな相談をしているわけですけれども、それをきょう3人で順繰りに、一応役割分担を決めてまいりまして、お話をさせていただきたいと思っております。
初めに私のほうから、そういう親の会がどんな集まりを持っていて、どんな活動を続けているのかというところをかいつまんでお話を申し上げたいと思うんですけれども、私たちは、いま部会長からご紹介いただきましたけれども、小児がんとか、お隣のNさんは腎臓病の会の事務局長をしておられるわけですけれども、ほかにも心臓病とか、およそ20ほどの団体が集まりまして、お手元にハンドブックをお配りしているかと思いますが、親の会連絡会という集まりを持っております。これは三月に1回の定期的な会合と、年1回の研修旅行と言っておりますけれども、どちらかというと親睦のほうが主な旅行を行っております。
三月に1回の勉強会では、さまざまな医療とか、ここにもありますが、障害者プランの勉強会とか、あるいは小児医療の勉強会とか、こういうことをずっと続けて、お互いの活動がより効率的にやりやすくなるような勉強会を続けていく一方で、それぞれの団体で情報交換をしておりますけれども、たとえば会議の持ち方とか、会議費をどうやって効果的に使っていったらいいだろうかというような日常的に必要な情報を交換しているわけです。 1990年から1回目の連絡会が開かれまして、これまで7年間続いてきているわけですけれども、その中で、1994年に「親たちからの提言」と題しました共同アピールを発表しました。いまの資料の中にも、患者団体の要望ということでご紹介をいただいているわけですけれども、これは後ほど詳しくご説明をさせていただきたいと思います。 みんながどういうことを願っているかということなんですが、やはりそういう病気を持った子どもさん、そういう子どもさんを抱えたご家庭というようなものがよりQOLを高く、ノーマライゼーションとかいろいろなことが言われているわけですけれども、より豊かに暮らしていくために一体どういうことをやっていったらいいだろうか、互いに日常生活とか教育とか福祉の情報を交換したり、いたわり合ったり、あるいは励まし合ったり、それから、こういうアピールを発表することによって、制度とかいろいろな法律とか、あるいは社会の人たち、そういったものへの働きかけというようなものもずっと進めていきたいということを考えているわけです。お手元のハンドブックは昨年、親の会がみんなでお金を出し合いましてつくりました。
ちょうどことし平成9年4月から、小児慢性疾患の申請窓口が保健所に全面的にかわるということがございましたものですから、全国の保健所、全国の病弱養護学校、こういったところにこの冊子を配付いたしまして、現場で、そういったお子さんやご家庭と接する機会のある学校の先生方あるいは保健婦さん、こういった皆さんに、病気や会の活動や、いろいろな注意事項というものをより多く知っていただこうという趣旨のものでございます。この中にはさまざまな活動の内容というものが記されておりますので、ごらんをいただきたいと思います。
続いてPさんのほうから、共同アピールについてご説明をさせていただきたいと思います。

○P

「がんの子供を守る会」でソーシャルワーカーをしておりますPと申します。よろしくお願いいたします。
きょうは「がんの子供を守る会」の小児がんの子どものことというよりも、二十幾つの親の会の中の代表として出席させていただくということで、でも、小児がんのことが一番よくわかるので、そういうことに基づいてご説明することが多いかと思いますが、がんの子どもだけではなく、難病の子どもや家族の代表として話をさせていただきたいと思っております。
私とNさんとで分担いたしましたので、その中の一つが小児医療のあり方と申しますか、小児病院というのは病院ですから、子どもの病気を治すということがまず主眼に置かれて、治療が最優先されるのではあるんですけれども、小児病院という、子どもを治す病院という性格上、小児の病気や入院に伴うさまざまな問題が付随してくるわけです。
そういうさまざまな問題に対する対処というか、そういうことをぜひお願いしたいと思っております。
入退院を繰り返す子どもたちにとりまして、病院は生活の場所になるわけでして、たとえば私どものような小児がんの場合にはもうちょっと生死がかかわっていたり、非常に強烈な治療をするものですから、母子入院というか、家族もともに病院で暮らしたり、家族が二重生活をしたり、即家族の生活に影響を受けるわけです。
私がいまお話し申し上げたいのは、病院内の施設に関してですけれども、一つには、子どもたちの生活の場所だと言っているにもかかわらず、ベッドの管理が必要でない子どもたちも、ベッドの上で何もかも一日の生活をしなくてはならない。学習もベッドの上、食事もベッドの上というふうに、非常に狭い生活空間でしか生活できないというふうなことがあるわけでございます。
ここには学習室と書いてあるわけですけれども、学習室というよりも生活施設というか、子どもたちが長く入院したり入退院を繰り返す場合には、子どもたちがそこで子どもらしい成長発達ができるような空間というか、そういう設備が必要だと親のほうとしては考えます。
そして、子どもたちの生活と同時に、主に母親なんですけれども、地方の病院に行きますと、家族が付き添わなくてはならないという病院がまだ数多くあります。付き添わなくてはならないわけですけれども、家族のベッドも、食事も、おふろも、顔を洗うところも何にもないところで家族が付き添わなくてはいけない。家族がちょっと休むような場所もない。長く入院をしなくてはいけない、命にかかわるような入院をしなくてはならないという子どもにとって、家族がそばにいるということは必須のことだと思われますのに、ついてもいいという許可がありましても家族の居場所がないというふうなことがあります。病院の施設についての配慮をお願いしたいと思います。
二つ目に、教育、保育に関することですけれども、先ほど横田先生のほうから詳しいご説明がありましたが、最近ここ何年かの間に、教育に対する、あるいは保育に対する親の関心も高まってまいりました。以前は病気が治ってからというふうな気持ちが多かったように思いますけれども、ベッドの上で治療を受けるだけでいいんだろうかということで、親のほうも教育を受けさせたいという希望が多くて、院内学級をとか、訪問学級をというふうな声が高まってまいっております。
ただ、それでもそれが即実現されるわけではありませんで、院内学級が、ここ何年かで本当に数がふえてきたと思っておりますが、まだまだ不十分でありまして、教育を受けさせたいけれども、病院のほうがうまくいかなかったり、市町村によってはうまくそれが動かなかったりというようなことで、どの子も差別が受けられるということではないように思います。どの子も望めば教育が受けられるというふうになればいいと考えています。 三つ目は経済的な援助についてですけれども、いま公費負担で、病院で払う医療費につきましては無料ということではあるんですけれども、たとえば小児がんの場合などでは、骨髄移植をする場合には非血縁者の骨髄移植にかかわる費用、最低55万円はかかるんですけれども、それは患者の負担になる。あるいは感染症を防ぐために個室管理とか無菌室が必要になるわけですけれども、公立の病院が無料のところはあるんですけれども、ほかのほとんどの病院は1万円から3万円の必要差額を払わなくてはいけない。これは非常に家族にとって大きな負担でありますし、間接的な医療費といいますか、二重生活をしたり、いろいろな交通費がかかったり、子どもをよそに預けたり、そういうふうな間接的な医療費が、目に見えない医療費がかかるということ。
私どもの会でも医療用費の援助をやっておりますけれども、とても家族の方たち逼迫しているというほどではありませんが、それぞれの家族のご事情によって、経済的な援助は望んでいるところであります。

○N

親からの提言ということで、お手元に資料が行っていると思いますけれども、それの26ページ以降の、いまPさんのほうから説明しました以外のところを私のほうからお話しします。
私、「腎炎・ネフローゼ児を守る会」といいまして、腎臓病の会の事務局をやっていますが、今回はこの提言をみんなと一緒にまとめた者の一人として発表させていただくことになりました。よろしくお願いします。
今日の論点メモを先ほどいただきまして、「慢性疾患児及びその家族のQOLの向上」ということなんですが、私どもがこれをまとめるに至った発端もまさにここにありまして、私たちが一番願っていますのは、ここは母子医療の検討会といいますか、母子保健部会なんですが、いつもそこで困りますのが、 具体的にQOLと言ったときには一生見てほしいと思っているんですね。見てほしいといいますか、一生を見ながら物事を考えていただきたいということです。
といいますのは、前の母子保健の検討会の日も、いろいろ私どものほうからお話ししましても、18歳まで以降のことはここの所管じゃないというふうな形で途切られますと、私どもが、具体的に言えば医療費の一部負担の問題なんかでも、そこから先がなかったら話しようがないといいますか、18歳までに病気が治るというふうにわかっていれば、限られているものならば我慢できるんですけれども、いつ治るかわからないことで、先のことも何も、そこはとりあえず置いておいてという話だとなかなかしにくいということがありますので、今回先生方がぜひ検討していただく場合にも、先を見通したお考えでぜひ検討していただきたいということ。これを切にお願いしたいと思います。
このことはほとんど全般に関係してきまして、たとえば治療研究で、病気の原因の究明とか治療法の確立というふうにお願いするんですが、いま小慢のほうがほとんど患者さんのほうの医療費の負担で、研究のほうにお金がいかないという話を聞きます。確かに患者からみれば、医療費の負担はぜひやっていただきたいということもありますが、本来の願いといいますのは、治療法や病気の原因をはっきりしていただいて、治療法を確立していただくことが一番の望みなんですね。
そういう面では、先生方の研究にもっと助成していただいて、研究を進めていただきたいんですが、そうはいっても、いつ治療法が確立されるかもわからない間、患者のほうも生きていかなきゃいけませんので、それが一時の我慢だったら、先ほども言いましたように我慢できるんですが、いつかわからないところまでは、生身の人間ですので、やはり医療費もちゃんとしていただかないと困るなという話です。
在宅福祉についても今回、「在宅ケアの推進はどのように行うべきか」という項目がありますが、そんな中でも、先ほどPのほうから話しました関係で、教育の問題にも絡むんですが、いま私どもの病気のほうにはあまりありませんけれども、たまに成長ホルモンの関係であるんですが、われわれ親の会連絡会で構成している難病の中の多くには、医療行為が自宅でできないということがかなりなハンディになっています。そのために学校を常に休まなきゃいけなかったりということで、どういうふうにすれば、よく聞きますと、「バクバクの会」とか、人工呼吸器を使えればいいけれども、そのために病院も行かなきゃいけないしという話で、ちょうど子どもたちですので、そのために勉強が全部中断される。それはお医者さんにやってもらえば安全なんですが、親も子どもが小さいときからやっていますので、助手としてという言い方も専門的にはおかしいと思いますけれども、手助けしながらやっていますので、ほとんど単独でもできる状況になっていても、法律上できないということで、いつもそういう学習の面も中断されるようです。このへんもどこまでを区切りをつけてというむずかしい部分はあると思いますが、ぜひ医療行為もできるように検討していただきたいということがあります。
在宅福祉の関係で、先ほどMさんのほうから出ました保健所の関係でも、もう少し難病に対するネットワークづくりといいますか、相談のほうがもっとできるようにしていただきたいと思います。この前私どものほうでいろいろアンケートをやったときもちょっとショックだったのが、あまり病気のことがわからないために、これは患者の意見なんですが、まさかこういう答えがあるとは思わなかったんですが、親に対してわりかし冷徹な目で見ている見方というのがあるんですね。小さい子どもが大人になって、それを振り返ってもらったら、親があまりにも規制しすぎた、もっと自由にさせてくれればよかったのにということがかなりありました。そういうところは親としては一生懸命やっているんですが、病気のことがわかっているようでわからないといいますか、そういう面で患者団体に入っているから全部わかるというわけじゃありませんけれども、そういうところのフォローを、最近は患者団体に入らない親御さんもいらっしゃいますので、ぜひそういう時期は、保健所とか相談事業をもっと広げてやっていただきたい。
われわれよく、学校の先生、病気のことをもっと勉強してくださいと言いますけれども、親自身ももっとやらなきゃいけないなと、自分でも反省した部分なんですが、そういうふうな啓蒙活動を保健所などでやっていただけると助かるなと思います。
就労の関係なんですが、就労のことをここで話してどうするんだということがあるかもしれませんけれども、これは先ほどの医療費の関係とも密接に結びついていまして、現在国のほうが基本的には小慢の場合は18歳まで入院費が公費負担されています。
以前に私どもの、これは腎臓のほうですが、労働省とお話し合いをしていましたときに、難病の就労実態は一体どうなっているかということで調査していただくことをお願いしましたら、やっていただきました。
ところが把握できないんですね。小慢の人が、たとえば満18歳までの、しかも国の場合は18歳まで1か月以上の入院というふうな条件がありますから、18歳を過ぎた就労年齢に達した人間は一体どこにいるのか、まずそこから把握できないんですね。だから、調査しようにも何も追跡調査できなくて、結局私たちの会とか幾つかの会でわかっている人を拾い上げて対処していたんですが、あまりにも事例が少なくて、資料として役に立つかどうかというふうなことがありました。
18歳で切れますので、しかも、小慢だからそれまで治るよという保証があればいいんですが、それまでに治らなかった人たちは就労もなかなかできないし、病院に行くとき、一々親からお金をもらわなきゃ病院にも行けない。子どもたちのQOLを考えたときには、就労して自立するというところまでをターゲットに入れていただかないと、18歳までのことを考えればいいんだじゃなくて、それから先が一番問題で、小さいときは、親としてはどんな責任でもといいますか、負担でも抱えていこうというふうな気持ちがあっても、親自身が高齢化した後、そういう子どもたちが就職もできなかったら後は一体どうなるんだというふうな不安が常にあります。そういう面で医療費も、せめて就労できない子どもには医療費ぐらいは、小慢であろうが何であろうがきちんと見てくださいというお願いがあります。
以上ですが、もし欠けていましたらお願いします。

○M

最後に31ページのまとめのところに幾つか項目が書いてあるんですけれども、みんなの願いというのは、民間団体、親の会のこういった活動というものが、民間のお互いの助け合いのものなわけですけれども、こういった団体を育成するというような方策というものを、これは母子医療検討会の報告にもあったかと思いますが、進めていただきたい。 それから寄附金の免除ということがありますが、通常、団体はいろいろな寄附をもらったりしますと、やはり税金という問題がどうしても出てまいります。最近、NPOとかいうことで、そういう税金問題はクリアされるいろいろな案が出ているようですけれども、これも海外の交流ということが中心ということでございますので、ぜひ国内にも広げていっていただきたいなと思っています。
民間団体の育成をことにもう一回話が戻るんですが、こういう民間団体、親の会というのはセルフヘルプグループと呼ばれております。アメリカとかヨーロッパではセルフヘルプクリアリングハウスというのが各都市にございまして、それは地方のいろんな自治体が運営しているわけですけれども、そこにはそこのいろいろなセルフヘルプグループが登録されているわけですね。町々、そういった自治体が民間活動を活発に進めることをむしろ推進しているわけです。そこに行きますと、そこのまちにあるいろんな会の情報とか、こういう会をつくりたいんだと言うと、つくるための指導をしたりするわけですね。 デンマークなんて狭い国には全国で78ヵ所もクリアリングハウスが全国にありますしアメリカには、コンピュータのオンラインを使ったネットワークができていると聞いております。そういうような育成というものも合わせて考えていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。長くなりまして。
○部会長
ありがとうございました。3人の親の会の方々からは、最初のPさんの話は、病院の中での子どもたちの生活の空間、あるいは家族の休まれる場所というようなことと、院内学級等教育の問題、それから経済的な援助の問題というお話をいただきましたし、Nさんの話からは、QOLは一生を見ながら考えていただきたい、あるいは治療研究にも力を入れてほしい、在宅ケア、医療行為の問題、ネットワークづくりで、保健所等の公の場でも相談事業やPR活動をやってほしい、これは一生の問題の中で、親も年をとってくると、子どもが大きくなってきて大人になっていった先が心配なので、そこまで目を向けてくださいというお話だったと思います。
そして、Mさんから最後に、民間団体の育成、これは税金問題とか団体のつくり方のノウハウの伝授等も含めたことをぜひ考えてほしいというお話がございました。
院内学級についてはご存じのように、小児科関係の3団体、小児科学会、小児科医会、小児保健協会からも、文部省と厚生省に、院内学級、養護学校等についての要望書が出ておりますし、それがだんだん院内学級がふえてきているというお話しなので、これは大変ありがたいとは思いますが、なおよろしくお願いしたいというところだと思います。
Nさんのお話の中にありました、在宅ケアで特にいま問題になっているのが、たとえば器官切開して人工呼吸器などがついていたり、器官切開がしてあったりしますと、吸引等いろいろなことをやるのに医療行為というので、親は主治医からやり方を教わってやっていれば、親はできるんだけど、養護学校の先生が全然してあげられない。そのために親がつきっぱなしでいたり、いろいろ困る点が多い。これはどこまでが医療行為で、どこまでは許されるのかというむずかしいところですけれども、養護学校によっても、学校側がかなり弾力的に考えてくれているところだと、わりあいそのへん親の負担が軽くなっているけど、型通りに考えられるとどうしようもない部分があるなんてお話も伺った記憶がございます。
そういういろいろな問題があると思いますが、厚生省、文部省のご説明、そして親の会の方々のお話、ご質問あるいはご意見等ございましたら、皆様ご自由におっしゃってください。
K調査官、いまのお話を聞いていて、補足してご説明いただくようなことなどございますか。

○K調査官

就労に関しては確かにさまざまな問題があるということをわれわれも認識をしているんですね。ついこの間もいろいろ話をしている中で、どうも世の中の経済状態、不景気になると一番最初に、障害を持っている、しかも内部障害がある人たちについて雇われる率が低くなるということがありそうだということが、担当している者たちの実感でございまして、しかし、これはどうしたものかというところで話は終わっているんですが、文部省のほうとしましても、このへん厚生省、労働省さんとも十分な連携をとりながら対策を練っていかなければというところにおりますということをお伝えさせていただきたいと思います。
きょうお配りしました「季刊 特殊教育」、「高等部における職業教育」というのを特集で出したものでございますので、ほかの障害ではどうなっているのかということも合わせまして、お帰りになってからでもごらんいただければと思っております。
それから在学中の教育はどうなっているかということにつきましては、一般の方向けに、そして小中学校の先生方向けにつくった本でございますが、「一人一人を大切にした教育」というのもございますので、これも参考にしていただければと思います。

○部会長

ありがとうございました。F先生、学校の先生として何か、病気をお持ちの方の問題について何かお考えのことございますか。

○F委員

いま親の会からの提言ということで話を伺っておりまして、この提言が即学校現場からの提言ということが幾つかあります。
その一つは「病児にとっての病院の役割」「治しながら育てる」、いわゆる施設設備をきちんと学校のほうでできるような形にしていかなければいけないし、そうしてもらいたいということ。
もう一つは「保育と教育に関する要望」の「学びながら治す」というところ、これは本当に学校のほうで子どもたちを受け入れても、それだけの施設設備、介助、どうしても介助の方が必要になってきます。それがいま保障されておりませんので、そのあたりの問題をクリアしないと、学校のほうできちんとした形で教育ができないというあたりの問題点があります。
きょうお話を聞いておりまして、この二つについては学校現場でも同じように提言していきたいなと思っております。
具体的なお話をさせていただきますが、私の学校ではないんですけれども、同じ区内でおむつをして通学している子どもがいます。おむつの交換等についても、おしっこなんかの場合は比較的学校でもできますが、大のときに非常に困ってしまうんですね。それを取りかえるような場所がないんです。
保健室という、いわゆる子どもたちの心身の健康等についてかかわる場所がありますが、保健室というのは、すべての子どもたちが来る部屋ですので、その対応というのが、その部屋では非常にむずかしいということがありました。
もう一つ水泳なんですが、子どももお母さんたちもプールに入れてほしいということで、学校のほうでは集団で水泳指導をしますので、万が一、たとえばお漏らしをしてしまうとか、そういうことでプールの水を交換しなきゃいけないという場合に、集団の子どもたちのほうを優先するか、あるいはどうしても入りたいという子どもを優先するかというあたりのところで、現場ではいろいろディスカッションしながら子どもたちに対応しているような現状も伺っております。

○部会長

いろいろ現場でも制約はあるんでしょうが、これからどうやって乗り越えるかですね。
○F委員
そこが一番学校としては大事なところだと思います。

○部会長

一つ私からも伺いたいのは、いま学校中心のお話があったんですけれども、学校へ入る前の子どもたち、病院は別として、在宅で学齢前の子どもたちについて、どういう点にご要望があるか、ちょっと補足していただけますか。

○N

二、三日前、ちょうどそのことで手紙が来ているんですが、新潟のほうで保育園に行きたいということで、病気ですので、腎臓病を抱えていますので、保健所なり保育園に行ったら、受け入れられない、どうしても入りたいなら、隣の町に行きなさいと言われたらしいんですね。
保健所に行きましたら、保育園というのは出席日数がきちんとしていないと国からの補助が得られないと言われたらしいんですよ。だから受け入れることはできませんと言われて、きょう時間があったら、ぜひ厚生省の方にお伺いしたいなと思いながら来たんですが、結局いま、その方は病弱の子を抱えながら、隣町に行って、逆にその子の病気が悪くなるんじゃないかというふうな不安もありますし、どうしようかと思っています。
うちの子どもも4歳で発病しましたので、幼稚園に入れるときに、私立の幼稚園でしたので、そのときは毎月の学園費は払っていて、とにかく籍だけ確保しておいて、いつでも出れるときには行かせてくださいということでお願いして、毎月払いながら、結局年中のときは行ったのは数日間ですね。年長になってから合計で四、五十日は行ったんでしょうか、その程度だったんですが、それでも学園が、最後は気の毒がって、月謝の半分は返してくれるようになったんですけれども、そういうふうな幼稚園はまだ珍しいと思うんですね。払ってもいいからと言っても受け入れてくれないようなところがかなりあるようなので、ましてや小児だったらもっと多いようですので、そのへんは、いまの保育園の話が本当かどうか、国のほうが出席日数がきちんとある程度わからなきゃ援助がないから受け入れられないということが本当なのかどうか正直言ってわかりませんが、そういう手紙を実際にいただいてきまして、きょう、それも持ってきているんですが、そういうことがありますので、町では限られた幼稚園とか保育園の数なので、そこを除いてほかに行くといったら相当な距離があるんです。だから、本当に大変だと思うんですけれども。
○部会長
そのお手紙の件はよくはわかりませんが、いまの保育園の制度というのはご存じのように、保育に欠ける子を措置して入れるという措置行政の中にあるものですから、両親が共働きで子どもの面倒が見られないという状況でないと入れてくれない。つまり親がパートで、月水金だけお願いしますとか、午後だけお願いしますというのが、いままではだめだったという形があると思うんです。ただ、それはいかにもおかしいので、子ども本意で考えてほしい。
特に知的障害等も含めて障害を持っている子どもさんのために、集団保育というのがその子のために役に立つから入れてくれと言っても、保育園の条件に合わないと入れてもらえないとか、そういう話はいままで私もよく耳にしていました。
ただ、これは児童福祉法の中でしょうから、そのへんをいま法改正の作業をしておられるので、このへんの保育所の考え方とか受け入れ方なんかもこれから変わっていくんじゃないかと思います。そうすれば、いまのようなケースをもっと積極的に預かってもらうということもできるようになると思うんですが。
ということが一つと、たとえば肢体不自由という意味での子どもさんを、保育所なり幼稚園なりで受け入れるとすると、手がかかるから保母さんを、定員で決まっているよりもプラスアルファーで配置して、そういう子どもさんを受け入れますということも最近は行われ始めているんですね。
そういう形で、さっきも言いましたけれども、内部障害というか、外目に運動は不自由でないという方だと、そういう面でどうなのかなというのは私も経験がないのでわかりませんけれども、そういう意味で、たとえば腎臓の悪いお子さん、体調のいいときだけ出すというお話でしたけれども、たとえばそういう集団保育の場で、保母さんなり幼稚園の先生なりの手がもう少しあれば引き受けてもらえるのか、そのへんのことについて何か情報をお持ちですか。

○N

前にうちのほうで保育園の問題を出したときに出ましたのが、いまの先生のお話と直接は関係ないですが、一つはきょうだいの問題がありまして、先ほどは卒業生だからという話だったんですが、たとえば片方の子どもが入院しているときに、下の子がちょうど保育園に行く年齢のときにはやっぱり受け入れてくれないわけですね。共稼ぎじゃありませんから。
そういうところを何とかしていただきたいという意見とか、いまのお話で、ほかの団体から出ていたんですが、保育園に先生が何人か受け持ちがありますね。そのときに定数の関係が保育のほうもあるかどうかわかりません。たぶんあると思うんですが、その関係でもっと人手があれば受け入れられるという話は学園のほうでされるという話は聞きました。
ただ、入る人によって、かかる手間も違ってきますので一概には言えないんですが、病弱児の場合は、病状が安定しているとき行きますので、たとえば腎臓のほうですと、それほどの手間はかからないと思うんですね。ただ、その中で感染症がはやったらいち早く連絡してほしいとかというのはありますけれども。
だから一概には言えないんですけれども、病気の種類とか受け入れる患者さん自身によってかなり負担は変わってくると思いますけどね。

○部会長

ありがとうございました。僕は勝手に保育園は変わるんじゃないかと言いましたけど、このへんは間違っていたらあれですが、いかがですか。

○事務局

いまの児童福祉法の見直しの中で、先生がいまおっしゃいました措置関連がなくなるということを前提にやってきましたので、そういう意味ではそのあたりがやや緩和になるんじゃないかと思います。
先ほど先生がおっしゃったことは大体そのとおりでございまして、それをさらに具体的に言いますと、共稼ぎとか、親御さんが病気で子どもの面倒が見られないというような状態で、それが継続して、たとえば1ヵ月を単位としますと、1ヵ月のうちに15日以上、一日を例にとりますと4時間以上保育所に預かってもらいたいというような家の状態である場合に保育に欠けるというような観念でとらえておりまして、ある一日だけとか1週間だけというのが措置の対象に、いまの時点ではなっておりませんで、たぶんそれらのことを前提におっしゃったんだと思います。

○母子保健課長

隣町に行けばというのは変ですね。

○事務局

そこはちょっと変ですが、たぶんそのような考え方で言ったのだと思います。
いわゆる行政処分による措置というものに該当するのはそのレベルまでだという考えがいまでもありまして。
もう一つつけ加えさせていただきますと、たとえば難聴の子どもさんでも肢体不自由の子どもさんでも、1週間のうち二日間ぐらいは訓練のために、午後から施設に行く、あとの曜日は保育に欠ける状態であるので保育所に行きたいという様な例もあります。
それもいま両方の措置ができないということになっておりますが、それらのことも、今回の検討の中で見直しがされるんじゃないかと思うんですけれども、そういうふうな実態も確かにあると思います。

○N

難病の場合はほとんど障害手帳を持っていないんですが、いまのその話は障害手帳を持っていなくても大丈夫なんでしょうか。聴覚障害は持っていますよね。いまの話は病弱のほうも大丈夫なんでしょうか。難病の手帳を持っていなくても。

○事務局

措置というのは、障害児の訓練施設に行くということが、行政処分としての措置なんですね。病弱の方に対して訓練というものが施設でなされるニーズがあるのかどうかということがありまして、私の言っている例は、聴力に問題のある人が言語訓練に通っているという例でございます。

○母子保健課長

いままでずっと保育制度というのは措置の中で、なされてきたので、ある条件の中で対応してきたということですけれども、ちょうど資料3にございますように、これは先ほど部会長がおっしゃっておられたように、いま中央児童福祉審議会の中で議論をしていただいているわけですけれども、その中の基本問題部会で去年、中間報告をいただいておりまして、それに基づいて現在、改正案の作成作業に入っております。今国会に予算非関連法案として提出したいと考えているわけでございますけれども、その中の「消費社会にふさわしい保育システムについて(中間報告)」というのが後ろにあると思うんですが、その2ページに、2「保育所について」の2「保育所における多様なサービスの拡充」というのがございまして、そこに「障害のある子どもへの保育サービスの提供を進めるとともに」というようなことで、措置制度ではなくて、保育所を利用してそれに変えましょうというのが大きなテーマとして、今回の議論も展開されておりますので、たぶんそういったさまざまな需要に応えられるような保育サービスに変わっていけるような改正をしたいというのが基本的な方向でございます。
ですから、いま一足飛びにというわけにはいかないと思いますが、さまざまなネックになっていたところが取っ払われて、受け皿のほうもそれなりに拡充をしていきながら需要に応えていこうというのが大きな流れというふうにお考えいただければと思います。

○部会長

ありがとうございました。ともかくいまよりも開かれた保育所として、いろいろなニーズに対応できるような制度に変わっていくと思いますし、制度が弾力的になるのと同時に、そういう障害を持った子どもさんの面倒を見ていただくのに人手がより必要な場合には、そういう人員の加給みたいなことができるようになっていくのではないかと期待をしておりますので、当部会からもそういう方向で、これからまたご議論をいただいていきたいと思います。
ほかに何かご質問でもご要望でも。

○H委員

いま保育所の問題に関連しまして、就学前の病気の子どもたちの問題を考えますと、学齢期に入りますと制度上、院内学級なり教育制度が保障するんですが、学齢前ですと、なかなか院内で扱いが保障されていない。
一つは、私は前職が国立小児病院で、そのとき院内学級を、東京都の教育委員会といろいろ議論して進めました。そのときに院内学級については、たとえば肢体不自由児の学校が母校になって、訪問学級として進めようと。それは合意できるんですが、同時に、患者さんの家族といろいろ相談して出した院内保育園あるいは院内幼稚園、公的なものですとそういう形が考えられるんじゃないか。
合わせて、病気は就学前からも非常に長期間入院している子どもたち、そういう形で保障はしてもらえないだろうかということをお願いいたしました。結果的にはだめだったんですが、やはり学校を考えれば、いま就学前の子どもたちの幼稚園に入っている率はおそらく七、八十%、もっといきますか、非常に高いと思いますので、できればそういう形の制度の併設も検討していただきたい。特に文部省にいろいろご苦労をかけるかもしれませんが、お願いしたいと思います。
それから、いまのいろいろなご要望の中で、お金がかかるとなかなか進まない点も多いかと思いますが、システムを変えることによって可能なものは意外にお金がかからないと思うんですね。その一つの根本が教育だろうと思うんです。
確かに教育の問題でいろいろ議論していますと、先ほどから地域によって違う。基本的には文部省が大どころを決めて、それぞれの都道府県の教育委員会がやるんでしょうが、その伝達というんでしょうかね、院内学級を進めようとか、いろんな形のアクションも、地方へ行くと結構落差があって、ここの県ではいいけど、あるいはここの市ではいいけど、ここはなかなかうまくいかないとか、そういう事態が出てくると思うんですね。
そういう点で、確かに自由度はある程度教育委員会が持っているんでしょうけど、もう少し文部省のほうからその点を、ちゃんと教育が受けられるように進めていただきたいという希望がございます。
就労問題で、いろんな障害の方を見て、ときにはアルバイトの方を雇って一緒に仕事をしたりしていますと、その基本は学齢期の教育にあると思うんですね。どうしても体の制限があって、同じように社会に出ていったときに、同じラインでやると勝負に負けちゃうということがあろうかと思います。
そういう際に、体にいろんな面のハンディキャップがある子どもについては、そのハンディキャップを十分考えた上の教育内容といいましょうか、あるいはこういう弱い子どもだったらこういう特殊技術を、一般教育の中である程度まで考えていただくような、学校の先生のあり方というんでしょうか、そのへんのところも非常に重要じゃないかと思います。 そういう形で、ぜひ教育整備を文部省のほうにお願いして進めていただきたいという希望がございます。

○部会長

ありがとうございます。小児科の先生方でどなたかございますか。患者さんあるいは家族のQOLの問題、何かございますか。

○A委員

先ほどのNさんのお話を伺っていて、やはり患者の一生の問題としてとらえて議論をしてほしいということはとても大切なことだと思っています。
たとえば私たちも、小さいときから見ているダウン症の患者がいますけれども、もう30歳になります。そうすると、この子のQOLというのはどうしても真摯にとらえていかなくちゃいけない。小児慢性疾患あるいは難病は確かに治らないから、いずれ本人の難病になるわけですね。やはり一生の問題だろうと思うんです。
小児科としては、いままでどこの国でも、大体15歳以下の子どもたちをみておりましたけれども、最近の複雑な社会情勢から、たとえば思春期にいろいろ問題があるんじゃないかというようなこと、それもやはり小児科医がかかわっていかなくちゃいけないんじゃないかというようなこと、それから食生活なんかの関係その他で、たとえば小児期から成人病のきざしが見られてきていることを含めまして、私たちももう少し活動しなくちゃいけないなと思っています。
ここは母子保健部会ですけれども、とらえ方としては、先ほどおっしゃったようなことが大切だと思っています。

○部会長

ありがとうございました。小児科の医者の意識も、そういう意味で大人に向けて考えていただいておりますので、制度上は、どこの部分が18歳を越えるとどういうふうにつながるか、どこがつながらなくなるのか、そのへんは、制度をこれからいろいろ整理していく上で考えていきたいと思います。
まだほかにご質問等もあろうかと思いますけれども、時間が迫ってまいりましたので、QOLの問題、親の会の方々にわざわざおいでをいただきましたが、いろいろ貴重なご意見を伺いましたので、これで皆様からのお話を一応閉じさせていただいてよろしゅうございますか。−それでは、親の会の方々にはここで退席していただきます。お三人、本当にお忙しい中をどうもありがとうございました。また何かわからないことが起きましたらお尋ねをしますので、よろしくお願いいたします。

(M、N、P氏退席)

○部会長

いろいろお話を聞いていただいたりご議論をいただいてありがとうございました。
次の議事に進めさせていただきます。小慢の問題で、2番目の「下垂体性小人症対策」について資料等があるようでございますので、まず事務局からお願いをいたします。

○事務局

資料2をごらんください。1ページ目は前回出させていただいた表でありまして、小児慢性で一番問題になっているのは、医療費が伸びすぎているので、あまり伸びすぎると自己負担を取れとか、そういうことを言い出す人がいるということが非常に問題であります。 その中で特に問題になっているのが、一番上の表で一番多い内分泌疾患で、なかんずく下垂体性小人症。表2が人員割合で、表3が金の話でありますが、人の中では32%は内分泌疾患、金では51%が内分泌疾患ということで、年間約五十数億円が下垂体性小人症に払われている。なぜこんなに伸びるのかというのはまず一つの問題であります。
2ページ目をごらんいただきたいと思いますが、下垂体性小人症は申し上げるまでもなく、昭和50年代以前は、ヒトの下垂体由来からとってきたわけでありますが、昭和60年ごろから、遺伝子の組みかえでたくさんつくれるようになってきた。それまでは患者の数もそれほど多くありませんでしたが、昭和60年ごろから急激に伸び始めているというのが見ていただけると思います。
支給人員、左から四つ目のカラムのところですが、平成7年度には3万 8,000人ということでありまして、伸び率も毎年かなり伸びてきているということであります。右から三つ目の、これは成長科学協会というところで適否を審査しているわけですけれども、そこでは1万 5,308人ということで、毎年かなり伸びているというのが問題となっております。
3ページ目が薬剤の供給ですけれども、下の医療機関から成長科学協会のほうに承認申請をしてもらって、成長科学協会という財団、薬務局所管の法人ですが、ここから承認された後に製薬会社から供給されるということになっております。しかしながら、成長科学協会の審査が適切かどうかという点についても若干疑問視されている点がございまして、もっと適正にやるべきではないかとおっしゃる方も少なくないと伺っております。
4ページ目をごらんいただきたいと思います。平成5年にうちの課から全国の母子衛生課に流したものですが、これはいわゆる成長科学協会で治療適否をやってもらったらいかがでしょうかということで、前々から医療費の問題については言われていたわけですが、こういうことを言ってきておりますが、必ずしもこのやり方が適切かどうかというのはわからないし、逆に適切ではないのではないかというご意見もございます。
5ページ目をごらんいただきたいと思います。成長科学協会につくっていただいております申請書の記入の手引きです。6ページ目に、治療を開始するときと治療を継続するときの適応基準でございますが、一応先生方にはこういう内容で見ていただいていると伺っております。8ページに総合判定基準がございますが、負荷テストとかをしまして不適応になるというようなこともございます。これは成長科学協会でやっていただいております。 一番最後の13ページをごらんいただきまして、これはちょっと古いんですが、一番新しいのはたしか平成2年か何かのだと思いますが、診断の手引きということで、このような診断基準があるということであります。やり方としては、成長科学協会さんのやり方を踏襲するのか、あるいはまた別の機関、たとえば都道府県なんかでいまやっています、審査会を使って診断基準というか、きちんとした申請書をつくって、都道府県でキチッと、この協会とは別にやったほうがいいのか、そこらへんの先生方のご意見をいただければと思います。以上でございます。

○部会長

この流れ図なんかで見ると、いまのシステムでは、この協会の判定がないと薬が買えないんですか。

○事務局

事実上やってくださいということになっているんですが、そんなことはありません。拘束力はないです。

○母子保健課長

いわゆる身長が足りないというか、問題のあるお子さん方に、この協会を通じないとお薬が届かないかということですね。ここを通らないと届かないことになっているんですか、医療の現場は。
○事務局
先生方はそう思われているんですけど、なっていません。直接来ているところがあるんです。

○母子保健課長

直接製薬会社に医療機関からアクセスして手に入れているところもあるのですか?
○事務局
それは構わないです。

○母子保健課長

ということだそうです。原則論としての制度としては、この協会を通じないとお薬が届かないという話になっているようですが、どうも一部直接、その製薬会社とアクセスしているケースもあるというようなことだそうです。一般的には、この協会が、いまのところ通過機関になっているということですね。

○部会長

ほかにはあまり類のないシステムですね。

○母子保健課長

これはたぶん当初、必要なお薬が非常に手に入りにくかったというか、少なかったということもありまして、それをより優先順位の高いものに使っていこうという意図はあったように、私は昔の記憶ですが、そういうふうに記憶しておりまして、60年以降、新たに薬がたくさんつくれるようになったところで、そのへんのところが、当初つくったこの制度と実態が合わなくなってきているというか、そこの協会自体も、どういう形でその適否を決めていくかというところがだいぶ変わってきているのではないかなと思うんですけれど、むしろ私どもよりも先生方のほうがご存じなのかもわかりませんが。
○部会長
ご存じの先生もおられると思うんですが、現状がこういうことだというお話でございますけれども。
○E委員
段階的にふえていますよね。そのときの要因分析は何かなさっていらっしゃるんでしょうか。
たとえばここで診断基準が変わったとか、先ほどちょっと言われましたよね。平成2年のときには変わったとか、いま事務局が言われましたけれども。

○母子保健課長

これはさっきご説明しました資料1の最初の「給付人員の推移」という折れ線グラフがありますけれども、たまたま60年からしか書いてありませんので、その前と60年以降というのが比較できないんですけれども、実際には、この60年を境に急激な増加というのがありました。

○E委員

つまりいままでインフォメーションに行かなかったから対象が少なかったのか、あるいは診断基準が変わったからふえたのか、そういう要因分析なんです。この中のこれに、こういう支給人数が決まる前に母集団があるわけですね。その母集団の解析はどうなって、どういう対象がこうなっているかというのは把握なさっていらっしゃるんでしょうか。スクリーニングがどういう方法で行われているかということです。
つまりスクリーニングの方法が変わりますと、いままで隠れていたのが表に出てきた、これはやむを得ないですね。もう一つは、診断基準が変わってきたということになりますと、初めの対象とずいぶん違ってくるということになろうかと思うんですね。

○事務局

詳しくはわかりませんが、8ページの判定基準というのが若干変わってきたと思います。特に継続するときの年齢というか、身長制限を取っ払ったというのが途中であったと聞いておりますが、それはいつだか覚えていませんけれども。

○C委員

具体例なんですけれども、一人、低身長の子どもをある医療機関に紹介して、そこで成長ホルモンを投与しまして、まあまあ正常範囲内という判定が下っていたわけですね。 その方が、また別の医療機関に行かれましたらば、成長ホルモンの適応であるということで多少背が伸びたというような報告を受けているわけですけれども、これだけ製品が潤沢にでき上がってくると、本当の適応症から外れた適応症、エクストラのものに対する給付というものが行われてきているんじゃないか。一つの事例からそんなふうに思われるんですが。
もう1点は、費用がこれだけふえてくるということは大変おかしな話であって、成長ホルモンの合成のやつの国際規格プライス、国内の生産のやつと海外とのどのくらいの差があるか、生産量がこれだけふえてきているわけですから、当然コストが下がるべきであるのに、値段が薬価基準より下がっていない。このへんは相当追及するべき問題だろうと思います。

○B委員

この基準は正しいと思うんです。そんな変な基準じゃないと思います。まさに小児内分泌の専門の人たちが集まって検討したものですから。
これが変わってまいりましたのは、一つは、たとえば成長ホルモンの測定法がいろいろな方法に変わるわけです。そうしますと、基準になる位とかいろいろ違うものですから、それをまた専門家が検討し、その値が変わってきたというところは多いと思うんですね。ですから、そういう面でこれが間違っているんじゃないかというような話は違うと思うんですね。
一つは、いまC先生が言われたように、薬が、一番最初に比べれば遺伝子置きかえでできるようになってちょっと安くはなりましたけど、どうして薬価がとどまっているんだろうと思いますね。
一番の御大で、最初に成長科学協会を始めた鎮目先生なんかも、もう少し薬が下がってくれなくちゃというようなことをひとり言のように言われるのは、そのへんのことが一つどうしてもあるんだろうと思います。
最初のうちは小児の内分泌疾患というのは、大人の疾患のようにそう多くありませんから、それは考えてくれたわけなんだろうと思うんですよ。いろいろ開発するのに費用がかかって、その割合にしては使う人数も限られているからというようなことも計算に入れながら薬価というのが決まったんだろうと思うんです。
それがわりあいと、科学的な根拠はありませんけど、いまはもうちょっと下がってもいいんじゃないかなと思うにもかかわらず下がっていないということは一つどうしてもあると思いますね。
もう一つは、そもそもが特発性下垂体性小人症、これも完全型と不完全型が、同じ下垂体性小人症でもあります。成長ホルモンだけ分泌不全のものもあるし、ほかの下垂体のホルモンが一つ欠けてる、或いは多くのホルモンが欠けているものもあります。甲状腺刺激ホルモンが欠けているものもあれば、、副腎皮質刺激ホルモンや、性腺刺激ホルモンが欠けている、いろいろな例があるんですね。
もう一つは、客観的に見るために、成長ホルモンの分泌刺激試験をやるわけですけれども、これはあくまでも外から加えた刺激ですから、体の中で自然に行われているものとは別だということになりますね。負荷するものが十ぐらいはあるわけなんですけど、負荷しても上がりが悪いというようなものと、たとえばインスリンとグルカゴンを二重負荷をしたものはこういう値で決めましょうというような二重負荷試験もありまして、どの負荷試験で、成長ホルモンが出ないのか、それらを見るというような複雑なことがあることはあって、それはそれなりにこれらも考えてはあるんだと思うのですけれども、そういうようなことで、たとえばある先生が負荷試験をしたら正常反応と判定されたが、他の先生では、成長ホルモンの分泌が少ない、ほとんどない、ゼロに近いというようなことであれば、刺激はわりあいと軽くて反応しづらいようなものを使えば、成績が二人の先生で異なることも当然ありましょう。
検査判定には二つ以上の負荷試験をやれということにはなっていますけど、どの負荷方法でなければならないということはありませんし、それについても、いろいろな研究者によって、意見が異なるというのがありますね。
下垂体性小人症の中には完全型、やや不完全型というものもございますし、所謂エモーショナル・ディプリベーションドアフィズム(Emotional deprivation dwarfism)というような、家庭で虐待されたりしていると成長ホルモンが出ない、いい環境に置いてやれば出るという微妙なところもありますし、適応が広がっていったわけですね。そして、次に来たのがターナー症候群なんですよ。 ターナー症候群のときに、小柄でなかなか大きくならない。その中で成長ホルモンの分泌が悪いものに関しては当然下垂体性小人症という診断もプラスされますから、成長ホルモンを用いることはできるんですけれども、いろいろな低身長で検査結果がどう出るかというようなことに関しては大変むずかしい問題がございまして、いまはたとえばターナー症候群ですと使われることが多いと思われます。
だんだんふえてきたのは、下垂体性小人症にターナー症候群が加わって、これは認知されたんですね。いろんな治験の成績でも、全国的に多くの症例を集めてやりますと、使わないのに比べれば多少はいいという成績は出たんですね。その発表は臨床治験の場で二、三の先生が代表でなさったわけですけれども、それは確かにそうかもしれない。
それから正常な人でも、成長ホルモンが異常にたくさん出れば背は伸びて、巨人症とか末端肥大症とかになるわけですから、低身長の小児に大量に使うと伸びる。それを成長ホルモンが効く例と言っていいのかどうかとか、そういう問題も一緒にございまして、むずかしい問題だと思うんですけれども、示された表の最後のところは多少減っているのがございますね、例数として。大体これ以上はふえないだろうなと感ずるんですけど。
ただ、いまやっているのは、たとえば慢性の腎不全があると成長ホルモンの分泌が悪い、あるいは分泌は悪くないんだけれども反応が悪いのか、外から成長ホルモンを加えれば背は伸びる、そうでなければ小人症でいってしまうものだというのを治験でやっておりますね。
骨軟骨異栄養症の低身長でも臨床治験が行われています。骨軟骨異栄養症、あれは確かに小柄でお気の毒、どうにかならないか。一つは、骨の伸長術まで行われています。これもいま成長ホルモンを使ってはどうかというようなことで、その治験が行われているわけですよ。そういうぐあいに広がっている。それがいい悪いは申せませんけれども、そういうようなこともあって、このくらいの数まで来た。成長ホルモン治療が行われるようになって、医師や患者の関心も高まり、ほかのいろいろな疾患に比べてかなり重点的に、集中的にいろいろやったということもつながっているというのは確かだと思うんですね。 C先生がさっき言われたように、一人の先生は成長ホルモン分泌は普通と云い、もう一人の先生は検査の反応特性がよくわかっているものだから、2種類の検査で無反応と反応されたのかもしれません。それらの成績は成長科学協会に行きますが、一人ひとりをどうしようかという判定をする前に、全部コンピュータで処理しているんですね。ですから、だめなものはだめと言っている。それでどうしてもというものがあれば、成長科学協会に再度申し立てて担当の先生がいて、その先生が、本当にそうかどうかというのをみている。二重三重に網をかけているのだと思いますから、判定が甘いと云うことは必ずしも当たらない。
それからもう一つは、何も成長科学協会を通さなくてもいいじゃないかという意見の人もいる。私は、むしろ成長科学協会を通しているので歯どめにはなっているけれども、典型的な症例でないものはなるべく成長科学協会を通さないで、県の判定のみを通しているドクターが各県にいるわけですね。その人にお願いしたほうが手っとり早いんじゃないか。 だから、どちらかというと成長科学協会は抑止力になっていることは間違いないんだと思いますそし、これはどんどんふやそうというようなことはやっていないと思いますね。

○部会長

わかりました。ただ1点だけ不思議に思ったのは、私、学校医をしていたことがあるんですが、そのときに、背の小さい子どもがあったら教えてくれという依頼状が成長科学協会から来ていたことがあるんです。そういうのを拾い出すためにこの協会はあるのかって不思議に思ったことがあるんですけど、F先生のところはそんな経験はありませんか。
○F委員
2の「下垂体性小人症患者数の動向」のところで、60年から63年あたりのところで、私たちは小人症について認識をしたということなんですね。
いま部会長がおっしゃったような形の文書とかはいただきました。校医さんと相談したり、個別に子どもたちの保護者に話をしたりとか、そういうことは現場のほうで聞いております。

○B委員

成長科学協会からそういうものを小学校に出したということはないんだろうなと思いますが、少なくとも私は聞いていませんから。

○部会長

僕は受け取ったんです。

○B委員

それは個人的なものですかね。

○部会長

いや、学校あてに来ているんですよ。私、学校医だからそれを見たわけです。

○B委員

それはゆゆしき問題ですね。私はそういうのを見ていませんから、まさかそういうことをしているとは思わないです。鎮目先生に聞いてみますけれども。

○部会長

鎮目先生が出されたかどうか知りません。

○C委員

先ほどB教授のほうから、平成7年度は総支給人員がやや減少傾向にあるというふうなお話でございますけど、母集団としての子どもの出生数というものを裏にとれば、必ずしもそうではなくて、むしろだいぶ上がっているのではないかという推察もなり立つのではないか。如何でしょう。

○H委員

同じように伺いたいんですが、一般的な下垂体性小人症の発生頻度は、たとえば 1,000人に一人とか、 500人に一人とか、 2,000人に一人とか、一般的な国際的な常識がございます?

○B委員

たぶん正確なものはないんだと思います。何となれば、病気が明らかで、痛いとかかゆいとか、死ぬとか生きるとかというような話になりますとそれはほとんど出てくるのでございましょうけれども、下垂体性小人症に関してはそれは出てまいりませんものですから、われわれは第一に拾い出すのは、背が極端に低いなという人で見るわけですから。昔はほとんど放ってあったわけですから。治療法もありませんでしたし。

○H委員

その数字に拝見しますと、10年間で倍以上になっていますね。15歳未満の子どもを推定しますと、1億 5,000万人のたぶん15%ぐらいだと思います。そうすると 2,000万人ぐらいになりましょうか。
それに比べますと、ここで4万人ということだと、 500に一つぐらい……。

○B委員

それは内分泌疾患全体の数ですから、下垂体性小人症だけではありません。

○H委員

でも、下垂体性小人症に一貫して適応になっている。

○B委員

そうじゃなくて、4万 5,000の数で言っているのは内分泌疾患ですから、ほかの疾患も全部入っている。
○事務局
下垂体性小人症の人は2万です。

○H委員

そうすると 1,000に一つ、大体そういうところが……。

○事務局

この数字では。

○B委員

何も私が弁解することではないんですけど、10年前といまとがという話になれば、そのころは下垂体性小人症とはいかなるものかというのは小児科医も知りませんでしたから、本当にわずかの、われわれが下垂体性小人症に注目をして臨床や研究をやっていたわけですから。それからもう一つは治療法がなかったわけですから、見つけ出して、「あなたは下垂体性小人症です」ということは限られた専門医のみで、一般の医師は興味を示さなかったわけですよ。

○H委員

もし急激にふえてということになると、診断基準の問題が最大の問題で上がってくるんじゃないでしょうかね。だから、少なくともその点は手がかりとして検討する必要はあるんじゃないかと思います。

○部会長

これはこの場で議論しても結論が出ないと思うんですけれども、基本的には、薬が十分に手に入る、欲しければいくらでも手に入るから、背が低いより高くなりたいのでと、この間ちょっと議論が出ましたけど、美容も含めた人生観の問題で、大きくなりたいという人が使ってみるということがあっても、副作用さえなければそれはご自由だと思うんですけれども、ただ問題は、小児慢性特定疾患として、医療費を国がみているという実態からいえば、このへんが本当に適正に使われているのか、それとも多少とも、本当の意味での、この施策が決まった時点で決められている範ちゅうの中で使われているのかどうかというのは、全費用の半分を内分泌、しかもその中の半分がさらに小人症ということになると、先々小慢制度そのものにリスクがかかってきそうな気がしてちょっと心配でございますので、このへんは厚生省でも薬務で、この協会ないしはメーカーを押さえていらっしゃるんでしょうから、さっき武田先生でしたかお話が出た、製造の量とか値段の推移とか、そんなあたりについての資料も含めて、必要なら、もうちょっと集めていただいた上でもう一回議論していただきましょうか。
あるいは、この場が小慢の適応の基準を決める場ではないですから、もし何か気になることがあれば、専門家、学会なりにお願いしてご意見を伺う等々あると思いますし、柳澤教授の研究班もありますので、そちらのほうに議論をしていただきながら、この席、つまり母子保健部会としては、小慢の全体の今後のあり方、特にどうやってこの制度をやったために、子どもたち、患者さんにいいことがあったかとか、効果がどれだけ上がったとか、そういうようなことをこれからさらに検討できるようなシステムを考えるという方向で、またさらに必要なら話を進めていただきたいと思いますが、そんな方向でいかがでしょうか。

○E委員

やはり年次的な発症の数、トレンドが非常に重要だろうと思うんですね。これに限らず、小慢の代表疾患のトレンドを教えていただくと、これが特異的なのかどうかというのがもっと明確になると思うんですよね。それもこの部会としての判断資料だろうと思いますので。

○部会長

J先生、済みませんが、先生の班で小慢全体を、各専門家の方にお願いをして、手引きづくりまで含めてやっていただきつつあるので、いまの小慢疾患の患者数のトレンドというようなことも含めて……。

○J委員

患者数の推移といった場合に、現在の集計のシステムといいますか、やりでは、こういう疾患群別の年次別の数、それは都道府県別でもわかりますけど、それしかわからないわけで、その中のどういう病気がどうだということはわかりません。それをわかるようにするために、どういうシステムを構築すべきかということを研究班としてやっているわけで、その中で、重疾患群別に分けて見た場合には、60年から平成7年まで、こういうグラフのような推移だというのは、これはこれで、このグラフから逆にいろんなことがわかるわけで、内分泌疾患が非常に急激にふえている。その中で約半数が下垂体性小人症だと。 そのほかの悪性腫瘍もふえていますけれども、実際の発症率はどうなんでしょうか。むしろ、たとえば白血病にしても、そのほかの悪性腫瘍にしても亡くなる方が少なくなった。病気を持って長く何年にわたって治療するということの増加がかなり反映している。血液疾患もそういう面があると思います。そのほかのものに関しては、グラフで見るように少しずつ減少傾向にあるわけで、これは子ども全体の数の減少とも、厳密に言ってどう並行しているかというのはちょっとあれですけど、 と関係しているのであって、有病率に関してはそれほど大きく変動していないという解釈をしていいんじゃないかなと思いますけど。

○B委員

ここで下垂体性小人症を取り上げておやりになるんだったら、ぜひ成長科学協会に深く関与というか、データをまとめたりしている、国立小児病院の田中先生か日比先生か、県立神奈川医療センターの諏訪先生、この先生方にはぜひ意見を聞いておいていただかないと、ここで何か決まったときに、私がいてなぜ説明しないのだという話になりかねませんからね。
それから、ここは、もっと高所大所から議論するんだというのなら、それをもっと突っ込む別の会で専門的にやって、それを受け取っていただきたい。
J先生のところでおやりいただいてもちろん結構なんですけど、そのときはそういうこともご配慮いただきながら専門的に分析していただきたいと思います。

○J委員

いま私がやらせていただいている研究班は、これが小慢の疾患として適切かどうか、小慢疾患として取り上げるべき病気かどうかということは検討の課題には入っていないと思っていますし……。

○部会長

ただ、たとえば都道府県別とか、いろんな資料は集めつつおありだから、そういう中でどうなのか、そんなところの資料がありましたら……。

○J委員

非常に特異的な動きをしている病気について考察を加えるということはやっております。
○部会長
この場は、いまB先生が言われたように、小慢疾患のそれぞれの疾患の基準を決めたり、適否を決めたりする場ではございません。ただ小慢が、いままで保健所窓口になった機会に、全国の情勢が把握できて、その結果が、これから先の小慢の事業にいい方向に反映できるようなシステムを考えていくのが母子保健課の仕事なので、それの側面をわれわれは援助して、いい方向へ持っていこうというのがこの部会の役割だと思いますので、その点は皆様お含みおきの上、ただ、気になることをそのままにしておくのも何ですから、もし何か資料がありましたら、またご説明いただければありがたいと思います。 いただいた時間がなくなってきてしまいまして申しわけないんですが、最後にもう一つ、きょう先生方にご報告して、ご意見があれば伺いたいということがございます。それが次第の2にあります「平成7年乳幼児栄養調査について」ということでございまして、「公表前取扱注意」という赤い判こが押してある資料がございます。これをごらんいただいて、内容のご説明をお願いいたします。

○事務局

乳幼児栄養調査は昭和60年に第1回目の調査を行いまして、10年ごとに実施ということで、平成7年に第2回目の調査をしたものでございます。この調査に当たりまして、特に部会長を委員長といたします検討委員会を設置させていただきまして、中間報告、それから集計につきましてもご検討をいただきました。
「調査の概要」の1ページ目でございますけれども、目的はそこにございますように、全国の乳幼児の栄養方法、食事の状況等を調査して、母乳育児の推進、栄養改善に役立てるというようなことであります。客体といたしましては、国民生活基礎調査からの設定によります 2,000単位区内の乳幼児及びその母親ということで、ここに書いてございます 3,758人が集計の対象ということになっております。
流れといたしまして、そこに概略が書いてございます。実質的には保健所の母子保健関係の方が調査員ということで、平成7年9月6日に各世帯を訪問していただいて面接、聞き取りの上、調査票を作成するというような流れでございます。
2ページ目、結果の概要でございますけれども、まず乳汁栄養法ということで、いわゆる母乳、人工乳あるいは混合乳というようなところの活用状況でございますけれども、そこに書いてございますように、おおむね母乳栄養というのが少なくなっているようでございますけれども、むしろ混合栄養というのが増加いたしまして、トータルといいましょうか、何らかの形で母乳を飲ませておられるお母さんの数はほとんど変わっていないというような状況が見えるのではないかと考えております。
5ページの次が1ページになっておりますが、「参考」という形で図あるいは表を掲げております。こちらのほうには、昭和35年から乳幼児身体発育調査というのがございまして、これも10年に一度の調査でございますけれども、乳幼児身体発育調査と乳幼児栄養調査が10年ごとですが、5年5年に入るような形になっておりまして、その状況を合わせてお示ししたということでございます。この流れを見ましても母乳プラス混合栄養、母乳の使用ということで見ますと、トータル的には増加の傾向にあるのかなということでございます。
今回の調査の集計における一つのポイントとして、昨今における女性の社会進出等もございますので、産後におけますお母さんの就業の有無別状況ということにポイントを当てて見てみました。表2にも見られますけれども、働いていた者と働いていない者で若干母乳栄養に差がありますけれども、母乳と混合と合わせるとそう大差はないというような状況がここでも見られるということでございます。
同じように働いているお母さん、冷凍母乳というのをかなり活用されているのかなという想定のもとに質問をさせていただきました。働いているお母さんが25%ということで、おおむねある程度予想されているような数字ですが、一方の働いていないお母さんも約20%近く冷凍母乳を使っておられるということで、働いていないお母さんも意外と冷凍母乳等を活用されているなというような感じを持っております。
3ページで、離乳開始の時期、完了の時期を掲げてみました。離乳開始の時期につきましては5ヵ月というものを中心といたしまして、その前後1ヵ月の4ヵ月から6ヵ月の間で約9割の方が離乳開始をされているようでございます。一方、離乳の完了につきましては12ヵ月が6割を占めているということでございますけれども、平成7年の12月に「改定離乳の基本」を出しまして、このときに完了の時期が若干ずれ込んでいるような形ですけれども、それまでは離乳の完了は大体1歳というようなことで指導しておりましたので、その影響がかなり出ているのかなと思っております。「改定離乳の基本」というのは、この調査の後に出したものですので、まだそこらへんの影響は見られないかなあというような状況でございます。
昨今いろいろな形でベビーフードが使われてきております。その中で見られますように、「よく使用した」「ときどき使用した」というものが全体の3人に2人程度ということになっております。かなり利用が進んでいる。また、これは就業の有無別にはあまり差は見られないということでございます。
ベビーフードにつきましては肯定派、あるいは手づくりのほうがいいというような若干否定派的な考えが幾つかあるわけですが、その状況別に見ましたのが表6でございます。当然と言えば当然なんですが、肯定派的な人、その表の上から三つぐらいだと思いますけど、「便利である」「薄味でよい」「衛生面からみても安心」など、「よく使用した」が2割、「ときどき使用した」を合わせますと8割ぐらいの方が使用されている。
一方、手づくりのほうがいいんじゃないかというような方につきましては「よく使用した」は数%ということで、「ほとんど使用しなかった」が大体5割近くに達しているということで、明らかな差が見られる状況でございます。
3番が食事状況についてということでございます。食事のかみ方、昨今軟食化といいましょうか、食事がだんだんやわらかくなって、あまりよくかまない、かめない子どもがふえているということでございましたので、ちょっと細かいんですけれども並べてみました。特に1歳の前半あるいは後半、早期の時期で「よくかんで食べる」割合がちょっと少なくなっている、「よくかまず丸のみにする」パーセンテージもちょっとふえているかなという状況が見られます。
子どもの食事で困っていること、表8でございますけれども、60年の前回と比べまして数ポイント増加している。特に「遊び食い」「むら食い」「偏食する」等の割合で、困っておられるお母さんがふえているのかなという状況でございます。
5ページでございますけれども、大人につきまして一日30食品ということを、栄養素の摂取バランス等の関連等からも推奨しております。そういった関係で子どもについても見てみまして、1歳、2歳、3歳と、年齢がふえると若干ふえてきております。
大人と内容は若干異なるものがありますけど、食品の数から見ますと、大人においてもこの程度、二十二、三食品ぐらいですので、むしろ子どものほうが、食品の数的には多少多くとっているのかなというような状況でございます。お母さんが働いている、いないについての差はほとんど見られない。むしろ働いていたほうのお母さんが若干多いということで、就労の有無による食事への影響というのはかなり埋められているのかなというような状況が感じられます。
就寝時刻でございますけれども、22時以降就寝する人が全体の4割強というようなことで、年齢別、通園別に並べてみました。
特に年齢別につきましては、後ろの3ページの図5でございますけれども、これは部会長等が調査されました幼児健康度調査というもので、55年、平成2年に調査したものでございますが、それに今回の平成7年のデータをかぶせました。5年ごとに5ポイントずつぐらいの割合で就寝時刻が遅くなっているということで、夜型パターンというのが進行しているのかなということが見られるようでございます。
これも当然と言えば当然でございますが、通園別に見ますと、通っていないお子さんの場合にはちょっと就寝時刻が遅いというようなことが見られております。
最後におやつの状況について、同じく通園状況別に見てみたものが表11でございます。こちらも通っていないお子さんの場合には、子どもの欲しがるときに与えるというような自由な状況がうかがわれるようでございます。
非常にはしょった説明でございますけれども、以上概略を説明させていただきました。
なお、このことにつきまして、まだはっきりしておりませんが、来週の13日か14日ごろを目途に記者レクをし、その後公表したいと考えております。その後におきましてはよろしくご活用、ご啓発をお願いしたいと思います。
大変簡単でございますが、以上でございます。

○部会長

ありがとうございました。いま専門官からご説明のように、10年ごとに行われている乳幼児の栄養調査が、全国の大人の栄養調査とは無関係にやっていただいているようなんですが、このほかに、発育曲線をつくるための調査が10年ごとに行われ、その期間に幼児健康度調査という、学校へ入る前の子どもたちの生活状況の調査が行われてまいりました。ちょうどこの調査、両方重ねると5年ごとの調査にも当たるんですけれども、こんなことで調査をなさった結果が取りまとまったということでございます。
何かご質問ございますか。

○G委員

生まれてくる場合の出生体重が、最近の人口動態統計なんかを見ますと、毎年毎年少しずつ平均的に減ってきているということなんですね。
いまご退席になっちゃいましたC先生が、国民の栄養摂取量というものと並行して、母親のエネルギー摂取が落ちてきているのが、同じように子どもの体重に変化があるんじゃないかという論文も発表されているんですけれども、私もそうじゃないかと思うんですが、そういう食生活のパターンというものが出生体重を減らすと同時に、生まれてきてから後の子どもの栄養ということについても、昔と比べて変わってきているんじゃないか、相当影響があるんじゃないかと思ったんですけれども、実際パターンそのものは、いま拝見していますと心配な面が、母乳栄養の割合が減ったとか、特に人工栄養がふえたとか、そういうことはないわけですよね。乳児の発育ということと栄養ということも結びつけてご検討いただくと、またおもしろいデータが出るかもしれないと思います。

○部会長

ありがとうございます。体重、身長なんかの伸びは平成2年に行われていますので、今度は12年になるでしょうか、そのときの動きと重ね合わせて、いろいろ貴重なデータが出ると思います。

○E委員

1ヵ月後に母乳を与えていないというところ、平成7年で育児休業をどのぐらいおとりになっているか、この調査の範囲内でわかるでしょうかね。むしろ減っているんですね。3ポイントばかり、その前の調査と比べると、1ヵ月の母乳保育が減っていますでしょう。もう少しふえているかなと思って期待していたんですけれども、そのへんの解析ができるようでしたら。次回でも結構でございますけれども。

○事務局

何ヵ月から働き出したかという調査がございますので、そちらのほうと合わせますと解析ができるかと思います。

○D委員

この調査とは直接に関係ありませんけれども、1ヵ月で人工栄養が約8%、9%、3ヵ月で約30%近くあるんですが、日本の母乳保育の症例といいますか、指導の中で、人工栄養の扱いというのはどういうふうにお考えなんでしょうか。
と申しますのが、昨年、ことしもそうなんですが、フィリピンへフードモデルを持ってまいりましたときに、哺乳びんと、乳首のあるのは全部空港で取り上げられてしまいました。これは国に入れないでいただきたいと。ユニセフの指導とWHOの指導で、インドネシアもそうですが、フィリピンもそうなんですけど、一切人工乳は口にさせない。
「じゃ、母親に異常があって飲めない場合はどうするんですか」と聞きましたら、スプーンで飲ませるということまで厚生省の人が言っておられまして、「日本でまだこういうことをやっているんですか」って、逆に非常に批判的な目で見られたんですが、どういうふうに対応すればよろしいのでしょうか。
たとえば外国からそういうふうに聞かれたときに、日本ではまだ人工栄養を奨励しているとか、あるいは飲んでいてもいいというような指導をしているんですかと聞かれた場合にどう対応したら……。

○事務局

49年のWHOで母乳保育、その翌年の50年から日本でも母乳推進ということでやっております。これはいろいろな施設、保育所のようなところにもお願いしまして、母乳を原則的に推進する。そういった中では当然なんですけれども、いろんな産科、いろんな病院の中であまり安易に人工乳というのを、たとえばメーカーの方が持ってこられると、それにつられて人工乳に走るお母さんもいるわけですので、安易に人工乳というものをそういうところで配るようなことはなるべくやめてくださいといったようなお願いはしております。 そういったことで、原則的に母乳が一番いいですよ、そういったことを中心に進めていきましょうということで、また幾つかのスローガン、たとえば「 1.5ヵ月までは母乳を飲んでがんばりましょう」といったようなスローガン等も掲げ、そういったものも幾つかの病院等にもポスターみたいなものが貼ってあるんじゃないかと思いますけれどもそういったようなことで、できるだけ母乳栄養を勧めるようなことは厚生省のほうでも推進しているという状況でございます。

○D委員

そうすると、答えとしては、母乳保育を奨励はしておりますが、つまりボトルフィーディングについては禁止はしておりませんというふうなことでよろしいでしょうか。
○事務局
そこまで明確にはやっておりませんが……。

○E委員

デボラディングカントリーとデボラカントリーとはだいぶ条件が違うんですね。先ほど調乳の話は出なかったですけれども、アフリカとかああいうところへ粉乳を持ってまいりまして調乳しますと、それによる弊害が大きい。だから、WHOは非常に強く母乳を勧めています。
日本でも産科施設で人工乳を勧めるということはありません。母乳を必ず勧めています。それは原則なので、日本も全く同じことでやっているんですが、いまのような衛生管理の面から言いますと、もう一つは乳児アレルギーの発症にしましても、最初の1週間前後の補乳でずいぶん違ってくるとか、むしろ日本での研究のほうがよっぽど進んでいて、それがむしろ反映されているというふうに理解していいんじゃないかと思うほどです。
○D委員
わかりました。

○部会長

母乳栄養は非常に熱心に推進していますというふうに……。

○D委員

それはよくわかりますが、フィリピンで、ボトルを全部空港で捨てられたときには、高いお金を出して政府が提供するものであるにもかかわらず……。

○I委員

これまでに途上国で、まずミルクを正確な倍率で薄められないとか、清潔な水がないとか、そういう問題があって、下痢でかえって子どもの命が失われるという結果が生じます。母乳は与えなくなると出なくなりますから、そこのところが問題なんですね。
私も助産婦の国際団体の役員をしておりまして、国際団体でも、ミルクのメーカーからは一切寄附を受け取るなというようなことを厳しく言いまして、途上国へ人工乳周辺用品を持ち込んだらば途上国の子どもを殺すことになるという認識が非常に強いからだと思います。それはやっぱり武田先生がおっしゃるとおりに、国の事情によって、まだフィリピンもインドネシアも、そのへんのところが非常に神経質に扱われているんじゃないかと思います。ですから、善意でも持ち込んでもらいたくないということが非常に強く言われます。

○部会長

事情もおいおい変わるとは思いますけれども。
予定の時間を越えてしまいまして、司会の不手際で申しわけございませんが、きょうはこれで終わらせていただきまして、次回の日程の調整だけさせていただきたいと思います。
(日程調整)

○部会長

3月27日、木曜日の午後2時から4時で母子保健部会を開かせていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○母子保健課長

大変熱心なご議論をいただきましてありがとうございました。引き続きたくさんの宿題も出ておりますし、できるものからご紹介をしながら、あるいはまたお願いをすべきことはして、少しずつでも前進するように事務局として努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

○部会長

どうもありがとうございました。なお念のため、最後に説明のありました乳幼児の栄養調査、来週の半ばぐらいまではあまり表に出さないでおいてください。

−了−

 問い合わせ先 厚生省児童家庭局母子保健課
    担 当 今村(内3174)
    電 話 (代)[現在ご利用いただけません]

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