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平成9年1月9日


第3回厚生年金基金の資産運用に係る受託者責任ガイドライン研究会(議事要旨)


日 時   平成8年11月6日 午後1時30分〜3時45分
場 所   社会保険審査会審理室
参加委員   ・神田座長 ・伊勢谷委員 ・小林(廉)委員・鈴木委員 ・角田委員
・青木委員 ・遠藤委員 ・宗委員・柿沼委員 ・土浪委員 ・渡辺委員 ・霜鳥委員
議事録 本日は英国及び米国の状況についてご報告いただくこととしております。
英国の状況については日本興業銀行からお越しいただいた久保取締役証券業務部長、照井調査役より、米国の状況については遠藤委員よりご報告いただきます。
久保氏より英国の受託者責任についての概要報告。
続いて、照井氏より資料に基づき報告。
<照井氏に対して>
資料の見方についてお聞きしますが、信託法が判例法と区別してあるが、信託法は判例法ではないのか。
信託法も判例法である。なお、Pension Act 1995 (1995年年金法)については、制定法に含まれるが、新しく制定されたものなので区別した。
<照井氏に対して>
EUレベルでの年金制度の統一を図ろうという話が過去にあったが、その動きと英国における受託者責任の規定の仕方については、今後調整が必要となるというようなことはあるのか。
そういうものが実際あるかどうかについてはここで明言できない。もう一度確認をしてみる。
<照井氏に対して>
Pension Act 1995 の投資原則記述書の内容の中で、最低積立基準を満たす必要性というところがあるが、実際明らかな利益相反行為のように見てわかるような行為以外で、非常に年金運用で大事なポインは、最低積立基準を満たすということであり、そのためにリスクアセットをどのくらい持つべきかという議論だと思うが、英国は歴史的に見て少なくとも7、8割の株式組入比率をもっているという事実がある。
少なくとも90年代にこのような議論が起こるまでは、実際の年金運用ではこういう観点の厳しい評価というものがなかったと思うが、高い株式組入比率という中で、最低積立基準を守るという条件を達成しようと思えば、リスクをあまりとらずに未達成になる可能性を低めるために、運用の予定利率を予め低めに設定するというようなやり方、あるいは、実際に最低積立基準を下回るということが起こったとしても、かなり速やかに復帰するような償却を義務付けるというやり方、ファンドの中である程度余裕をとっておいて、その中で最低積立基準を下回らないように運用を行うというやり方、ただこの場合には一方で、税当局から見て拠出するということが問題点として指摘されると思うが、大体この3つくらいのやり方がありうる。英国においてはどのようにして最低積立基準を確保しようという答えをだそうとしているのか。
最低積立基準を割り込んだ場合に、その回復までには相当程度(10年程度)の余裕が与えられ、段階的に回復することになっており、いっぺんに回復させるという厳しいものではないと記憶している。
リスク資産についての話だが、英国の株式投資の時価配当利回りは日本に比べてかなり高いので、日本における株式投資の配当利回りベースの話とはかなり区別して考えないといけないという感じがする。
英国においては、最低積立基準を下回った場合、90%以内に1年以内に戻すこととしている。
<照井氏に対して>
11ページの投資原則記述書の内容について、投資の適合性につき、資格保有者に妥当な助言を書面でもらうとあるが、投資の適合性は同じページのうえにある投資内容の妥当性とどう違うのか。
また、資格保有者とは具体的にどういう人たちなのか。コンサルタントなのか、あるいは特別な資格を持った人なのか。
投資の適合性については、年金基金のファンドにより個性があるので、その個性についての投資の適合性ということだと思う。
資格保有者というのは、ファンドマネージャーを意味している。IMRO会員ということだ。
<遠藤委員に対して>
5ページのチェックリストについてであるが、どの程度のレベルの基金を対象としているのか。
内部に専門家がいる場合には、外部にアドバイスを求める義務はない。
エリサ法そのものでは、アドバイスを求めてもよいという書き方であり、しなければならないという義務ではなかったと思う。信託法のリステイトメントではしなければならないという義務であり、してもよいというように、どちらも書いてあったと思う。ファンド自体は本当の意味での専門家を外部に雇い、彼らが言っていることが虚偽りがないというようなことが判断できるようなスキルのレベルが要求される。
<照井氏に対して>
助言徴求は義務となっているが、数理についてはどうなのか。
数理、監査人は法律上の義務となっている。ファンドマネージャー、ストディアンについては義務とはなっていない。
英米ともベースは信託法で、その上に年金規制ができているということで共通であるが、両者は異なっていると感じた。米国の場合は、基本的にその人に何でもやらせてあげる。英国の場合には専門的なものはどんどん出させ、その人の責任を軽くしてやり、適性に業務が行えろようにしてあげるというような配慮があるように思う。法律の書き方でも、英国においては、投資方針書を作成しなさい、事業主にもコンサルトをしなさいというような具体的な書き方であるのに対し、米国では、抽象的にはフィデューシャリーのような人が神様のように公正にやらなければいけない。英国の場合には、受託者の中に意思のチェック機能、労働者代表がきちっと入っているという意味でかなり使い易い感じがした。忠実義務については米国では禁止取引とか例外等の規定があるが、英国ではがちがち言わないような感じがした。今からガイドラインを作っていくわけであるが、5:3:3:2のようにがちがちにしてはいけない。ある種安心して使えるような、使い易いものを作るのが親切だと思う。
<照井氏に対して>
英国の場合、トラスティーの定義の中で、個人、あるいは法人が多数決で意思決定をして連帯責任を負うとあるが、日本の場合は理事長若しくは常務理事となっており、異なっている。英国の場合、常務理事のように業務に携わる頻度が高い場合と、そうでない場合で責任に差はあるのか。
調査範囲の中では、特に差はない。
<遠藤委員に対して>
エリサ法のフィデューシャリーには、加入者の参加が義務付けられているとか、あるいは義務付けられていなくても加入者が入っていると言うようなことはあるのか。
普通入ってはいない。義務付けられてはいない。現実のコーポレーションファンドの場合、企業財務の担当役員、スタッフが兼任している場合が多い。
企業財務の役員、スタッフは誰に対して責任を負うのか。拠出者である委託者の企業か、あるいは受給者にたいして責任を負うのか。
給料については会社から出ているが、エリサ法の規定から言えば、受給者のために働かなければならない。概念的には分けられるが、現実の行動として難しいところが多い。
<遠藤委員に対して>
英米のチェックリストについてであるが、英国の場合には、資産の保全が挙げてあるが、米国については挙げられていない。米国の場合、資産の保全についてのチェックは具体的にどうなっているのか。
モダンポートフォリオセオリーに基づき、ポートフォリオ全体でリスクを管理することが基本となっており、リスク資産への投資が前提となっている。基本的に米国ではフルファンドが要求され、現実の負債に対し資産がどのくらいあるのか、あくまでも負債との関係で相対的に見る。そのレベル(アンダーフォンディング)に対しての配慮はなされるが、背後にPBGCがいて厳しくチェックされている。基金サイドが資産の保全を考えなくて良いと言うことではないが、英国より意識が希薄なことは事実である。
財政面から分別管理義務はないのか。
分別管理義務はある。
英米の両国については、受託者責任へのアプローチの仕方が違うと感じた。英国では、マックスウェル事件がなかったら法律ができなかったように、英米の場合には、いわば性悪説に立って法律が作られている。日本の場合、不十分な運用はあっても、不正はまずない。米国の場合には、法律に書くというやり方を主流としている。英国の場合、今回法律が制定されたが、監督官庁を作るという点に主眼が置かれていた。ルールについては従来からあったものを法制化している。
米国については、確定給付なのか、確定拠出なのかでだいぶ基金の受託者責任という場合、違ってくる。確定拠出であれば財政の問題がない。日本の場合、財政と運用のどちらについても非常に重要な問題である。この点で、米国の判例等を見る場合、若干の注意が必要である。
  問い合わせ先 厚生省年金局運用指導課
     担 当 伊藤(内3348)
     電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
         (直)03−3501−3450

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