00/12/05 内分泌かく乱化学物質健康影響検討会議事録 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会(第10回)議事録 厚生労働省 医薬局 審査管理課 化学物質安全対策室 議事次第 日 時:平成12年12月5日(火)  10:00〜12:00 場 所:中央合同庁舎第5号館別館8階共用第23会議室 1.開会 2.資料確認 3.議題   (1)内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する今後の検討課題等について   (2)その他 4.閉会 〔出席委員〕 伊 東 座 長 青 山 委 員 阿 部 委 員 井 上 委 員 岩 本 委 員 押 尾 委 員 黒 川 委 員 紫 芝 委 員 鈴木(勝)委員 鈴木(継)委員 杉 委 員 高 田 委 員 津 金 委 員 中 澤 委 員 藤 原 委 員 松 尾 委 員 山 崎 委 員 和 田 委 員 〔事務局〕 西本生活衛生局長、石井食品化学課長、喜多村企画課長、 川原企画課生活化学安全対策室長、 他課長補佐以下9名 〔オブザーバー〕 通商産業省、環境庁、農林水産省、科学技術庁、江馬室長、菅野室長 ○食品化学課長 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから第10回内分泌かく乱化学 物質の健康影響に関する検討会を開会させて頂きます。 本日は、御多忙のところをお集まり頂きまして、ありがとうございます。 検討会の委員は26名でございますが、本日は19名の先生方に御出席頂きまして開催す ることになっております。 また、本日は、後ほど資料の御説明をいたしますが、検討事項が1課題、報告事項が 2つございます。その報告事項の関係で、国立医薬品食品衛生研究所の菅野室長、江馬 室長にも御出席頂いております。よろしくお願い致します。  それではまず、開催に当たりまして、生活衛生局長から一言御挨拶を申し上げます。 ○生活衛生局長  生活衛生局長の西本でございます。おはようございます。  本日は、年末の何かと慌ただしい中、また、先生方には公私ともに御多忙のことと存 じますが、御出席を賜りまして心からお礼を申し上げます。  今回、この会も10回目を迎えるわけでございまして、先生方の御指導によりまして、 かなり多くの進展を見たと考えているわけでございます。前回の第9回の時に、平成11 年度の厚生科学研究の報告、また、諸外国の状況等にいろいろ御討議を頂き、また、把 握をして頂いたということでございます。いまさら言うまでもございませんが、この テーマは科学的に未解明の問題も多くございまして、私ども行政も、どういう形で施策 に結びつけていくかということにつきまして、なかなか頭を悩ませる問題でございま す。ただ、、遅れないように手を打っていかなければならないと考えているわけではご ざいます。はっきりとした科学的学問的裏付けの基に、よりわかりやすい具体的な行政 施策を私どもは考えてまいりたいと思っているわけでございます。  このような次第で、今回は、前回の報告を受けまして、具体的に今後どのように私ど もが取り組んでいけばよいのかというようなことを中心に、率直に御議論を賜れればと 考える次第でございます。  なお、御承知のように、来年、ちょうど1ヵ月後になりますが、中央省庁再編という ことで、私どもの局も形の上ではなくなりまして、この問題を扱う部署も少し様変わり するかと思いますが、この問題そのものにつきましては引き続き検討を重ねていく予定 に致しておりますので、先生方におかれましても、引き続きよろしく御指導のほどをお 願い申し上げます。  甚だ簡単でございますが、開会に当たりまして一言、お礼とお願いの御挨拶にかえさ せて頂きます。よろしくお願い致します。 ○食品化学課長  ありがとうございました。  それでは、議事に入りたいと思います。  本日は、先ほども申し上げましたが、検討課題が1つ、報告事項が2つございます が、これからの進行は座長の伊東先生によろしくお願いしたいと思います。  どうぞよろしくお願いします。 ○伊東座長  それでは、早速、議事に入りたいと思います。  まず、事務局から、配付資料につきまして御確認をお願い申し上げたいと思います。 ○中島補佐  本日机の上に資料を配布させて頂きましたが、中の3枚目にあります座席表の1枚紙 以外は、基本的に事前に送付させて頂いたものと同じでございます。  まず「議事次第」という表の一枚紙と「検討会委員一覧」がございます。それから、 先ほど申しました検討事項に関します資料1という数枚の資料。ちょっと厚めの資料 に、「超高速自動分析装置を用いた受容体結合レポータージーン試験について」という もの。それから、資料3として「内分泌かく乱化学物質問題低用量評価会議について (出張記録)」。本日の資料は、この資料1、資料2、資料3の3点でございます。 ○伊東座長  ありがとうございました。  それでは、議題1に入らせて頂きます。  先ほど、局長の御挨拶にもございましたように、前回の検討会では、平成11年度厚生 科学研究の研究データを主任研究者の皆様に御報告頂きました。皆様には、現在の最新 の知識を把握して頂けたと思います。本日は、それらを踏まえまして、資料1の「内分 泌かく乱化学物質問題の現状と今後の検討課題(案)」につきまして御議論を頂くこと にしております。  概要などにつきまして、事務局から説明をして頂きます。 ○中島補佐  それでは、資料1に基づきまして御説明させて頂きます。  資料1は、4つの観点からまとめております。現状、それを踏まえた課題、実際にこ の検討課題実施のための方途、その他ということでまとめさせて頂いております。前回 の御議論及びその後先生方から頂いたコメントを踏まえまして作成してございます。  まず1番と致しまして「内分泌かく乱化学物質問題の現状」でございます。これは重 要な事項でございますので簡単に読みあげさせて頂きます。  厚生省は、人への健康影響の観点から、平成10年11月にとりまとめた「内分泌かく乱 化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書(以下、中間報告書)」で示された方向 性を踏まえ、厚生科学研究費等により、内分泌かく乱化学物質の問題を解決するための 調査研究等を行ってきた。また、国際的にも、国際機関、米国等が種々の取組を行って きている。これらを総合的に判断した場合、現時点において、平成10年11月の中間報告 書による、「内分泌系への薬理作用を期待して使用されたDESのような例を除き、内 分泌かく乱化学物質が与える人への健康影響について確たる因果関係を示す報告は見ら れない。」との結論を変更すべき新たな知見は認められない。しかしながら、上記の取 組により、試験法や化学物質の毒性及び暴露情報等について多くの新たな知見が得られ た。これらを踏まえ、取り組むべき検討課題を明らかにし、総合的な対策を行う必要が ある。  という形になっております。  具体的な検討課題と致しまして、2番にまとめてございます。まず、中間報告書で示 された調査・研究の概要につきましては、5ページに「図参考」という形でまとめてご ざいます。この図参考の内容は適切であり、今後ともこれらを継続する必要がある。し かしながら、特に短期的には、以下の7点について、人への健康影響の観点から整理、 検討する必要があるということでございます。  前回の検討会で、7つの課題のうち4つにつきましては事務局で案という形で示させ て頂いたものでございます。残りの3点につきまして、前回の検討及びその後の先生方 のコメントも踏まえまして追加させて頂いております。  まず、前回事務局から提案させて頂いた4点でございますが、「逆U字効果の解明(低 用量の作用・影響の有無)」。2番目に「HTPS(超高速自動分析装置)の対象物質 の選定等」。次のページに移らせて頂きます。 3点目に「OECDスクリーニング試験法の検討」。4点目に「内分泌かく乱化学物質 同定・確認のための詳細試験方法」でございます。5点目以降につきましては、初めて こちらに記載させて頂きますので簡単な説明をさせて頂こうと思います。  5点目「サンプリング・分析方法の確立」。内分泌かく乱化学物質は、低用量におい てその作用を発現することが指摘されていることから、高感度のサンプリング・分析法 の開発が必要である。他方、フタル酸エステル類のように広範に利用されている物質に ついては、試験サンプルの十分な管理が行われていない場合、周辺環境から汚染(コン タミネーション)が起こることが常識とされている。高感度で汚染を防ぐためのサンプ リング・分析法等の確立及びその標準操作書を整備する必要があるという形になってお ります。  6番目「暴露情報等の収集、解析」でございます。暴露経路や暴露量などの暴露情報 を収集し、リスク評価に活用する。経年的な情報も過去とのリスクを比較する上で有用 であるとしております。また、中間報告書では、「内分泌かく乱化学物質が与える人へ の健康影響について確たる因果関係を示す報告が見られない。」とする一方で、内分泌 かく乱化学物質による人への影響が指摘されている具体的な疾病として、「子宮がん、 子宮内膜症等」を挙げております。これらの疾病と個別の化学物質の因果関係を明確に するためには疫学調査が有効である。疫学調査は一般に長期の調査期間が必要であるこ とから、短期的には疫学調査体制の整備を図るとしてございます。  7点目は行政としても非常に重要だと認識しておりますが、「リスクコミュニケーシ ョンの充実」です。内分泌かく乱化学物質問題は、多くの人々が関心を抱いていること に加え、科学の不確実性、多様な調査研究結果等を背景に、多くの認識の違い等が生じ てございます。リスクコミュニケーションの充実を図ることにより、できるだけ多くの 人々の認識を一致させ、問題の解決に必要な対策を冷静かつ合理的に進める必要がある としてございます。  以上の課題につきまして、3ページ以降、具体的にどういう形で解決していくのかと いう、そのための方途をお示ししてございます。こちらは5つの作業班を設置して個々 の課題を整理し、その検討結果を本検討会においてとりまとめる形が妥当ではないかと 考えてございます。また、ワーキンググループの設置に当たっては、すでに既存の厚生 科学研究班等が活動してございますので、そういった厚生科学研究班を活用するなどに より作業の効率化を図ることとしてございます。  5つの作業班でございますが、まず「低用量問題対策作業班」ということで、内分泌 かく乱化学物質問題に関して非常に重要でございます低用量の問題にかかる現在までの 科学的知見をとりまとめ、現時点で明確になっている事項及び不明確な事項を整理す る。これを踏まえ、問題解決のために必要な試験方法等を提案するという形でございま す。  2点目として「試験スキーム検討作業班」ということで、検討課題2から4までに対 応する作業班でございます。事前スクリーニング試験(検討課題2)、スクリーニング 試験(検討課題3)、詳細試験(検討課題4)の個々の課題を並行して整理する。ま た、これらの試験方法に他の要因を組み合わせた内分泌かく乱化学物質同定のための試 験スキームを構築する形になってございます。  3番目に「分析・サンプリング法検討作業班」ということで検討課題5でございま す。先程申し上げました分析・サンプリング方法につきまして、例えば精度管理等のガ イドラインを策定するということでございます。また、内分泌かく乱化学物質と疑われ ている物質が多数あるため、これらを同時に分析する手法や、エストロゲン様の物質を まとめて測定するための試験法を開発するとなってございます。  4点目に「暴露等調査作業班」として検討課題6に対応する班でございます。各化学 物質による暴露についての知見をとりまとめる。また、疫学調査体制の整備についても 検討する形になってございます。  5番目として「リスクコミュニケーション対策作業班」ということで、複雑で理解の 難しい内分泌かく乱化学物質問題の本質を多くの関係者に正しく理解してもらうための 方途を検討するという形の作業班でございます。  以上の作業班に基づきまして、中心とした今後のスケジュールとして、「その他」に スケジュール等をまとめてございます。各作業班とも来年夏を目途に報告書をまとめる こととする。なお、来年3月には、検討の中間状況を検討会に報告するものとするとい う形にしてございます。  以上で事務局からの説明を終わらせて頂きます。 ○伊東座長  ありがとうございました。  ただいまの御説明のように、内容は多岐にわたっておりますので、まず、全般に御意 見を賜り、それから各現状の問題、検討課題などについて、さらに御議論を頂きたいと 思います。  全般について何か御意見がございますか。  特にないようでございましたら、まず、この検討課題(案)の「内分泌かく乱化学物 質問題の現状」という項目について、何か御意見がございますか。  特にないようでございましたら、「検討課題」について、「1.逆U字効果の解 明」、「2.HTPS(超高速自動分析装置)の対象物質の選定等」、「3.OECD スクリーニング試験法の検討」、「4.内分泌かく乱化学物質同定・確認のための詳細 試験方法」、これは前回の提案の内容でございますが、これについて何か御意見がござ いますか。  特にないようでございましたら、「5.サンプリング・分析方法の確立」についてご ざいますか。  それでは、特にないようでございますので、新しく提案されました、「6.暴露情報 等の収集、解析」について御意見を賜りたいと思います。 ○津金委員  前回の議論を踏まえまして、人への健康影響のエビデンスを検討する課題を取り上げ て頂いたので大変うれしく思っています。やはり人のリスクアセスメントをする場合、 暴露情報の収集により社会における存在量をとらえて、次にその存在量の範囲の中で、 人への影響はどうなのか、あるいは、動物・細胞での影響はどうなのかという、ヒュー マンとノンヒューマンでのアプローチによりなされるべきと思います。また、暴露と人 の健康影響データが一つの6番の中に組み入れられていますが、さらに贅沢を言わせて 頂ければ、検討課題としては別に分けて考えて頂いた方がいいのではないかと思ってお ります。  それから、最後のところに、「これらの疾病と個別の化学物質の因果関係を明確にす るためには」と書かれていますけれども、疫学研究では確実に明確にすることは無理で あるという限界もありますので、明確にするというよりも、「検証する」とした方がい いのではないかと思います。  それから、「疫学調査」というよりも、臨床で出てくるデータとかそういうものを、 きちんとした科学的なエビデンスにするという意味も含めて、「疫学的手法を用いた調 査からの知見」という形にした方がいいのではないかなと思います。  以上です。 ○伊東座長  紫芝先生、この項に「影響のある疾病」というところに甲状腺のことが書いてないの ですが、先生は御不満ではないですか。 ○紫芝委員  先程から言われているように、甲状腺に影響することが確実だというところまではま だ行っておりません。懸念があるということはこの前から言われておりますけれども、 まだ懸念の段階でございます。ほかのものも懸念の段階のものが沢山ありますので、 「そういうところも懸念される」という言葉を入れて頂ければありがたいと思います。 ○伊東座長  甲状腺もこの中に入れるということでよろしいですか。 ○紫芝委員  また、それがもし入るのであれば、神経系もずいぶん懸念されているわけで、甲状腺 を通じて神経系に行くのか、それとも神経系独自の働きがあるのか、神経系につきまし ては、例えばカネミ油症あるいは台湾の油症のような、非常に事故的な暴露では確実で ございますけれども、環境的な暴露ではまだ問題があるというお話なので、「懸念」の 中には入れてもいいだろうという気が致します。 ○伊東座長  そのほかにどうぞ。 ○鈴木(継)委員  ここでは、個別の化学物質の因果関係を明確にすると書いてありますが、個別だけで は済まなくて、いろいろな組み合わせの場合が当然起こり得るので、その書き方をちょ っと考えないといけないなと思います。  ついこの間、水俣で、日米のメチル水銀の低用量問題に関するワークショップがあっ たのですが、メチル水銀側から胎児期の暴露問題を扱った研究、人間の疫学調査がある わけです。その研究の弱点は、例えば、今問題にしている内分泌かく乱化学物質みたい なものはちゃんと押さえていないではないかという話になるわけです。逆に、PCBに 焦点を当ててやった疫学調査に対する批判としては、メチル水銀のようなものが全然評 価されていないではないかという批判が出ています。疫学的な手法を用いて、特に、 今、津金委員がおっしゃったような暴露の問題を重視するとなると、いろいろなものを 同時に押さえなければならなくなってくるわけですから、単品の化学物質のということ は、もちろん、それがわかればそれに越したことはないわけです。それに加えてです。 ○伊東座長  複合ですね。 ○鈴木(継)委員  はい。 ○阿部委員  今、環境がどうなっているか、疑わしい物質をきちんと測定して経時的に記録するこ とが基本的に重要なのではないかと思いました。  それから、ここに書いてあることはみんなかなり具体的な疾患を表わしていますね。 紫芝先生の甲状腺というのは一体何を意味するのか、神経というのは一体何を意味する のか、余りにも漠然としすぎているので、そう書くのであれば、ある程度明確な病態を 記載しないと、広く解釈されて誤解を招くのではないかという気がします。 ○伊東座長  紫芝先生、「甲状腺」ではなくて、疾患としてちゃんと指摘しろという阿部先生の御 意見ですが。 ○紫芝委員  おっしゃることはよくわかりますけれども、要するに、まだ疾患にはなっていないか もしれない訳ですよね。問題になっているのは、胎児期に暴露を受けた新生児の神経へ の影響が甲状腺を仲立ちに起こっているか、起こっていないかという可能性が、今、し きりといろいろ問題にされているところですので、それを疾患として位置付けて良いか どうかというところもあると思います。 ○阿部委員  甲状腺機能異常でもいいと思うんですけど、神経となると、脳細胞の異常か、考え方 の異常か、何でも結び付けられていますよね。 ○紫芝委員  神経に関しても、新生児に異常があるかもしれないということはデータとしてあるわ けです。要するに、その因果関係がわからない。逆に言えば、神経が全く正常だという 言い方はできないと思うので、疾患と正常の間に落ちてくるいろいろな問題があります ので、そこのところを明確にするのは非常に難しいのではないかという気が致します。 ○津金委員  暴露の経年的変化を捉えることも重要だと思いますが、同時に、できれば、疾病のモ ニタリングというか、疾病のサーベイランスもきちんとできるような体制をとる必要が あるのではないかと思います。ここに挙げられている病気をモニターするには、人口動 態統計による、死亡・死因データだけでは済まないので、なので、個人情報保護の問題 などいろいろありますけれども、疾病のモニタリングをする体制も考えた方がいいと思 います。 ○阿部委員  私はそれを調べるなと言っているのではなくて、疾病を調べるときに、ここにいろい ろな物質を、今、過去、将来にわたってどうなっているのかという環境中の因子を調べ ることがまずあるべきではないかと申し上げました。 ○津金委員  もちろんそれを否定するわけではなくて、それに加えて疾病側のモニタリングもする 体制を整えたらどうですかということです。 ○阿部委員  当然だと思います。ですから、「甲状腺」と言われると困ってしまうんです。「神 経」と言われると、何示しているのか。  先生、その調査票をつくれますか。 ○津金委員  よく考えてみないとわかりませんけど。 ○伊東座長  そのほかにないようでございましたら、そういう問題点があるということを御記憶頂 きまして、次の「リスクコミュニケーションの充実」について、何か御意見ございませ んか。 ○和田委員  確かにここにありますように、非常に多くの人々が関心を抱いておりまして、「それ に加え」という文章が正確かどうかということがちょっとありますけれども、私もわか らないながら、一部だけでしたけれども研究をいままで伺わせて頂いたりしております と、科学の不確実性とか多様な研究結果とか、その辺りを消費者としてどう考えたらい いのか。これは、次の、実施するための法則のところにもかかってくるわけですけれど も、素人と致しましては、この辺が一番、まさに充実させて次の方策にかかっていって 頂きたいと思います。  それで、「リスクコミュニケーションの充実を図ることにより、できるだけ多くの 人々の認識を一致させ」というのは当然ですけれども、リスクコミュニケーションの充 実を図ることによって多くの人々の認識が、その結果として一致していくことを図るの は当然だと思いますけれども、「一致させ」という言葉が妥当な表現なのかどうか。そ このところは文章の問題ですけれども、どうかなと、読みながらちょっと引っかかりま した。  後は、次の具体的な検討課題7の実施のための方策にかかってくると思います。 ○藤原委員  今の点について、私も似たような感想を持っておりました。「7.リスクコミュニ ケーションの充実」の2行目、「多くの誤解が生じている」と書いてあります。先程の 御説明では「認識の不一致」という言葉でここの部分をおっしゃいました。その方が適 切だなと思いながら読んでいました。と申しますのは、これという確定した一つの答え が出ていないときに、誤解と決めつけるのはちょっと言いすぎではないか。わからない ことがいろいろたくさんあるわけですから、ここのところは、私の受けとめ方として は、「進歩等を背景に多くの認識の不一致が生じていると考えられる」と変えて、下か ら2行目の「認識を一致させ」は、「できるだけ多くの人々と情報を共有し、問題の解 決に必要な」とした方が、事態を正確に描くことになるのではないかと思いました。 ○紫芝委員  私は、まだ6番の問題についてのことが済んでいないような気が致します。  6番の2つ目のパラグラフですけれども、「内分泌かく乱化学物質による人への影響 が指摘されている具体的な疾病として」というと、「影響が指摘されている」という非 常に強い表現になりますよね。しかも「具体的な疾病」となりますと、子宮内膜症や乳 がん、精子数の低下、前立腺がん、精巣がん、尿道下裂が、人への影響が指摘されてい ると本当にアファーマティブに言ってしまっていいのかどうかという問題があると思い ます。ですから、ここは、「影響が懸念されている具体的な疾病として」として頂けれ ばいろいろなものが入ると思います。ここは、本当に影響が指摘されているところまで 行ってしまうと、本当にそうなのかということになって、前の文章と整合性に矛盾が起 こってしまうと思います。だから、ここは表現を弱めて頂く方が正しいのかなと思いま す。  それから、既にお話が7のリスクコミュニケーションに入っておりますけれども、こ れの2行目の「科学の不確実性」というのは、いろいろな意味を持っていらっしゃるの でしょうけれども、私たちはやはり科学は確実だけど、測定法その他が不確実だから困 っているのであって、科学そのものをここで不確実だと言ってしまうと、私たちの議論 のすべてが成り立たないことになりますので、特段にここを言わなくても、その後に、 「多様な調査研究結果」とか、そういう不確実性をあらわすものはあるので、ここは削 除して頂くか、あるいは、どうしても必要であれば、「測定技術の不確実性」とかにし て、科学そのものという表現は避けた方がいいように思います。 ○伊東座長  ありがとうございました。これは削除させて頂きます。  そのほかにございませんか。後でまたリターンして頂いても結構ですけれども、ほか にございませんようでしたら、「III.検討課題実施のための方途」ということで、 「1.低用量問題対策作業班(検討課題1)」の内容について、何か御意見はございま せんか。 ○杉委員  この問題はいろいろ議論の多いところでございますけれども、今までの成熟して分化 した細胞組織に対する毒性と切り離して、極めて低用量の場合は、発生途上の未分化細 胞組織に対する毒性であると、これは分けて考えた方がいいのではないかと思います。  といいますのは、最近発見されました、中胚葉誘導にはアクチビンという物質が支配 しておりますけれども、非常に低濃度で誘導を起こします。例えば胞胚期では、0.3 〜 0.5 ng/ml位で血球や体腔上皮ができてくる。もうちょっと濃度が上がりますと筋肉がで き、さらに濃度が上がると脊索ができるというように、濃度依存的にアクチビンが中胚 葉系の組織や器官誘導をするわけです。中胚葉系の組織が出来上がってしまうと、それ は元に戻らないわけですから、このような誘導物質の濃度レベルのカテゴリーに入るよ うな毒性物質の問題ではなかろうかと思います。 したがいまして、分化した細胞に対する毒性と未分化の細胞に対する毒性とを分けて 考えますと、未分化細胞に対する極めて微量なものと、いままでの毒性のカテゴリーに 入る分化した細胞に対するものとうまく合うのではないか。分化したものと未分化のも のに対する毒性を全部一緒にしてしまうと非常にむずかしくなってわけがわからなくな るということがありますので、調査・検討するときは、分化途上と分化してしまった生 体に対するものとを分けてやった方がいいと提案致します。 ○伊東座長 そのほかに何かございませんか。 ○井上委員 そのような認識で進めております。 ○伊東座長 そのほか、この「低用量問題対策作業班」についてのコメントがございますか。 特にないようでございましたら、次の「試験スキーム検討作業班(検討課題2〜 4)」の問題について、何か御意見がございましたら、どうぞ。 ○松尾委員  スキームについては、OECDとかいろいろなところでさんざん考えられていると思 います。それといかにハーモナイズさせるか。あるいは、特徴を出すということで新し いスキームをつくるということであれば別ですけれども、むしろ、そちらの方にハーモ ナイズした方がいいのではないかと考えております。 ○伊東座長  そのほかにどうぞ。  この項はよろしゅうございますか。  それでは、3番目の「分析・サンプリング法検討作業班(検討課題5)」について、 どうぞ。 ○中澤委員  御存じのように、食品衛生調査会・食品規格部会の中で、精度管理分科会という委員 会がございまして、その座長を担当しております。食品中の化学物質、残留農薬、食品 添加物等の精度管理のガイドラインを作成してまいりました。その延長上として、ダイ オキシン分析法のガイドラインを昨年発表しました。特に内分泌かく乱化学物質の場合 は、先程お話がございましたように、非常に低濃度での問題が論じられておりますの で、分析法の中でも超微量分析が要求されます。濃度が低くなりますと、御存じのよう に分析値はばらついて参りますし、特に、フタル酸エステル類やビスフェノールA等の 物質は、測定段階からコンタミネーションしてくることが明らかになっております。そ の辺のことについてとりまとめることは、これまでに論文も一部出ておりますから、方 法の妥当性を、こういった検討班で検討して頂いて、試験法のプロトコールを作成して はどうでしょうか。今一番問題になっているものについては、このタイムスケジュール からいきますと、可能な物質もあるのではないかと思っております。  他の化学物質については、まだ多くの研究者が分析法を開発し、発表しているような 状況でございます。特に生体試料に関しては、サンプリングの段階にさかのぼってまで 慎重にやりませんと、どこからその物が入ってきているかが正確に判断できません。で すから、このプロトコールの中には、そういったようなコメントを含めてまとめて頂く と、指針としては参考になるかなと思っております。 ○鈴木(継)委員  この中で、「これらを同時に分析する手法やエストロゲン様の物質をまとめて測定す る」という記述がありますが、後の方の「エストロゲン様の物質をまとめて測定する」 というのが一体何を言っているのかよくわからない。これは、活性として押さえるの か。実は、まとめて測定することは不可能です。何か勘違いしたのかと思いますけど。 ○食品化学課長  ここに書かせて頂きました作業班の内容につきまして、先生方からコメント等を頂い た内容をまとめておりますが、具体的に何をやるかという詳細につきましては、改めて 検討させて頂きたいと思います。 ○鈴木(継)委員  エストロゲン様の物質をまとめて測定するということは不可能です。できないことを 書いてあるわけです。 ○食品化学課長  その点につきましては、記載を改めてさせて頂きたいと思います。 ありがとうございました。 ○伊東座長  そのほかに何かございませんか。  特にないようでございましたら、4番目の「暴露等調査作業班(検討課題6)」につ いて、何かございませんか。 ○津金委員  先程と同じことですけれども、「暴露等」ということで、疫学調査の部分が「等」の 中に入ってしまっています。 ○伊東座長  では、「疫学」ということを入れてもらいますか。 ○津金委員  ええ。あるいは、疫学調査を別の作業班にするということも御検討頂ければと思いま す。  それから、下から3行目に「試験プロトコール」と書いてありますけれども、介入と かそういう可能性は、あるかもしれませんけれども、あまりないと思うので、「調査プ ロトコール」と表現した方がいいのではないかと思います。  それから、現実問題として、人を対象とした研究は倫理審査というものがあります が、こういう疫学調査をやるときは、多施設共同研究にならざるを得なくて、我々も、 内分泌かく乱化学物質に関係して、あるケース・コントロール・スタディのプロトコー ルを出して、国内の3つの施設とアメリカの1施設、計4つの施設の倫理審査を受けて いるだけで1年間かかってしまっているので、こういうものは計画調査的にある程度プ ロトコールを作って、プロトコールが倫理審査を通った段階で、その次の年度くらいか ら研究班として発足させるということも考える必要があるのではないかと考えておりま す。  以上です。 ○伊東座長  ありがとうございました。  それでは、次に、「リスクコミュニケーション対策作業班(検討課題7)」につい て、どうぞ。 ○阿部委員  私などは、しょっちゅう、リスクマネージメントと言われています。リスクコミュニ ケーションというのは、新しく用語としてできているのでしょうか。大体の見当はつく のですが、どういう意味でしょう。内分泌かく乱化学物質に特徴的な言葉なのか、一般 的に広く用いられているのか。 ○食品化学課長  特に食品分野を中心に、国際的にも「リスク解析」という概念が導入されておりま す。そのリスクアナリシスの概念は3つから成りまして、リスクアセスメント、リスク マネージメント、リスクコミュニケーションという3つの要素から成ると言われており ます。国際的にも定着しつつある言葉だと認識してございます。 ○阿部委員  要するに、危険を知るということですか。 ○食品化学課長  この「リスクコミュニケーション」の定義でございますが、リスクアセスメントを行 う者、あるいは、マネージメントを行う者、あるいはそれに関連する者が相互に情報伝 達を行うことによって、リスクをできるだけ低減したり、お互いの考え方を認識したり するという形で定義されているかと思います。 ○阿部委員  そうすると、これはマスコミに対する対応も含まれるわけでしょうか。 ○食品化学課長  関係者すべてがリスクコミュニケーションについては担当であるというのか、例えば コーデックス等の考え方でございます。 ○伊東座長  そのほかに何か御意見はございませんか。  それでは、総括で山崎先生からお願いします。 ○山崎委員  恐縮でございますけれども、全体を眺め終わったところで、課題と方策のそれぞれに ついては、非常に重要なことが網羅されていると思います。ただ、先程局長もおっしゃ いましたけれども、これはかなり状況が進んできて、そろそろこの検討会も総括的な段 階に入ってきていると思います。1枚目のところにも書いてございますけれども、今回 は、「人への健康影響の観点から整理、検討する必要がある」ということでございまし て、そのようなことで考えますと、これは私見ですが、大きく3つに分けられると思い ます。  1つは、一番重要な健康影響の問題。2つ目は、その影響を及ぼす物質についての分 布とか同定にかかわる問題。3つ目は、今話題になりましたリスクマネージメントの問 題というふうになるのではないかと思います。この研究課題のところを拝見して、これ は私の偏見かもしれないのですが、例えば6番と7番は後から加わったというような、 我々の中での事情がそのままこの順番に反映しているようなところがあるかなと思いま して、課題の中の化合物の分析、方法論にかかわる部分と、1番の低用量の問題と、6 番の暴露情報、これはそれぞれが健康影響に非常に密接なところでございますので、こ の2つを併せて、それから方法論を、課題で言うと、2、3、4、5になりますが、そ れを物質に関する部分とまとめて、最後にリスクコミュニケーションの部分としてまと めますと、方策のところで、1番と4番が健康影響に非常に密接にかかわる部分、2 番、3番がサンプルと物質同定の部分、5番がリスクコミュニケーションという形で理 解がしやすくなるのではないかと私なりに考えてみました。 ○伊東座長  今、山崎先生がおっしゃったことと、先程阿部先生がおっしゃったことと、クローズ アップすべき問題があるように思います。その1つは、どの物質が本当に影響している のか、過去はどれくらい、現在はどれくらい、というようなこともはっきりと我々が知 って、それを出すことがリスクコミュニケーションのためには非常に重要ではないか。 何が出てきた、何があったということが、マスコミなどに取り上げられておりますけれ ども、それは過去と比べると現在はどうであるかということ、そして、それがどのよう な動きを示しているかということなども非常に重要ではないかと、私は個人的には思っ ております。  そのほか、全体的に、いままでの一連のディスカッションで検討すべきポイントがご ざいましたら、お出し頂きたいと思います。 ○井上委員  全体にわたることと致しまして、ここには低用量問題が取り上げられているわけです けれども、人の影響に関する問題を焦点にしたときに、ここに掲げられているそれぞれ の課題はみんな関連しております。それは、どの先生方も御承知のことでありますけれ ども、特に、バイオロジカル・プロンシビリティという概念になりますけれども、環境 生物なり実験動物、人の健康影響を念頭に置いた実験動物のデータなどで、いろいろ危 惧されることもそれなりのデータとして沢山出ております。それとの関係で、米国のナ ショナル・リサーチ・カウンシルが出した結論は、人に関してはコホート以外の方法は ないと言っているくらい、10年、20年かけて、この影響がどうであるかを調べることが 大切だと言っております。つまり、人の健康影響に関しては、そういったことを調べて いく、あるいは、さかのぼっていく、そうした経時変化を見ないとわからないくらい複 雑に物それぞれが折り重なっているということであります。ナショナル・リサーチ・カ ウンシルの答申は非常に評判が悪い面もあります。しかしながら、実験の側からします と、そういう側面があることが大切だと思っております。  それから、リスクコミュニケーションについて同じことであります。例えばノースカ ロライナで低用量問題の議論がありました。ここで出たデータは全く同じです。例え ば、2世代試験をやっても何も出ない。その物質に対して、その結果に対して出てくる 考え方は、2世代試験で出ないから大丈夫なのではないかという考え方と、2世代試験 が検出する内容が、内分泌かく乱化学物質に対して十分な検査法を意味していないので はないかという考え方と、同じ結論に対して出てきているということであります。  したがって、リスクコミュニケーションの概念には舌足らずの問題が含まれておりま す。つまり、誰かを誰かが説得するというレベルの問題とは限りません。そういうこと で、結局、低用量問題についても、あるいは、暴露問題についても、長い時間が必要で あるということがあります。長い時間をかけてこの問題を解決していくということでは いろいろ困る問題が出てきます。その辺の問題を、先程座長もおっしゃったように、幾 つかの重要と思われるケミカルを取り上げて、それはそれで解決していかないと事は解 決しないのではないかという考え方があります。現実的な問題と長期的に解決していく 問題と、両方がこの問題には含まれているという認識に立って、これまでの研究が進め られているというのが私の認識でございます。 ○伊東座長  ありがとうございました。  山崎先生、井上先生から総括的なお話を頂きましたけれども、これからそういった御 意見を参考にして、今後の検討を進めていく。 ○阿部委員  井上先生がおっしゃったように、皆さんはやり方も大体おわかりだと思います。これ らの作業班がいい成績を上げて頂ければ、ずいぶん進歩するのではないか。ただ、その 時、先程紫芝先生が、「科学の不確実性」という文章を消しましたね。科学というのは 正しいものです。ですから、いろいろな作業班の中で、科学的に証明されたものと、推 論で、そういうことが考えられる、推測されるというものを明確にしていくべきではな いかと思います。今本当に、新聞紙上では、推論と科学的に証明されたものがごちゃご ちゃで、その基本に井上先生がおっしゃったようなことがあると思いますが、こういう ことが科学的に証明される、これは推論であるということで、我々としても明確におく ことが必要ではないかと思っております。 ○和田委員  2ページの「7.リスクコミュニケーションの充実」のところで質問するのを忘れま した。  2行目の「科学技術の進歩」というのは、具体的に例えばどういうことでしょうか。 ○食品化学課長  例えば、この後、資料2ということで報告がございますが、そういった技術の開発と いうことで、ここでは、ハイスループットの報告がございます。こういったものをどう 考えるかということにおいても、人によってかなりまちまちな考え方が出てくるだろう ということでございます。一例でございますが。 ○和田委員  2行目の「誤解」という文言は改められるのかもしれませんけれども、「科学技術の 進歩」での認識の不一致というものは、言葉の上ではどうかなと思いながら、さっきち ょっと読んでおりました。  それから、先生からも御指摘もありましたけれども、素人で見ていましても、調査結 果が多様な場合と、同じ調査結果をどう読むか、どう考えるか、そこのところがいろい ろな見方があって、私達としても、どう考えればいいのかなということが多いものです から、それに続いて3ページの対策になるわけですけれども、まさに難しい問題を、こ れは以前にも発言しましたが、正確に、しかも、素人にもわかりやすくという非常に難 しい注文を付けてお願いしていきたいと思います。  それと、パンフレットというものは、1回出すというものではなくて、その時々、ま さに科学技術の進歩によって、何回か新しい知見があって、これは消費者にわかりやす く情報として伝達できるということが出たら、1回だけ出して当分出さないということ ではなく、出して頂きたいと思います。そのときに、現在ではここまで確実に分かって いるという言葉がいいのかどうかわかりませんけれども、「現在のところでは」という ことで消費者にわかるような情報を提供して頂きたいということを重ねてお願いしてお きたいと思います。 ○伊東座長  今、和田委員がおっしゃったようなことは、この委員会の全部の先生がよく認識して おられると思います。  それから、前にもディスカッションがありましたように、また阿部先生の御指摘にも ありましたが、不確実なデータ、学会でちゃんと評価の得ていないデータは懸念があ る、そういうことが起こるかもわからないというようなことを安易に発表される方が依 然としていらっしゃる。そのような先生方の発表がマスコミに取り上げられて、未だに 何の対応もしていないようなディスカッションがよくありますが、そういうことではな くて、この委員会はきっちりしたデータを、ここのところまで明らかになっているとい うことで発表していく。そのスケジュールとして、来年3月くらいには検討会報告をま とめ、秋にはこれをきっちりした報告書として出していきたいと考えております。  平成10年に出してから、もうすでに3年の年月が過ぎております。それをそう何回も ださされるとこの委員会もパニックになりますので、来年秋にはちゃんとした第2回の 報告が出るように。そのときには、委員の先生方からのコメントを十分に考えながら出 していきたい。疑いがある、おそれがあるということについては、その問題については データがあるか、ないかということで対応していきたい。ですから、確実なデータをき っちりここの委員会で出すということをお忘れなく、これからの作業に取り上げて頂き たいと思います。  それから、最後の「2.国際機関、諸外国、他省庁等との協力」ということも、事務 局から御説明がありましたように、いろいろな情報交換を密にして、その内容も今度の 報告書には取り上げていきたい。我々作業班あるいは検討したデータだけではなくて、 アメリカやヨーロッパ等諸外国のデータも十分加えていく。さらに、他省庁のデータも もちろん加えていくことを忘れないようにしてやっていきたいと思っておりますが、こ れでよろしゅうございますか。  資料1に関するディスカッションは一応これで終わりたいと思います。  次に、資料2に入りたいと思います。まず、1つ目の報告事項に移らせて頂きます。 これは、先程の議論でも優先課題として取り上げられました資料2「超高速自動分析装 置を用いた受容体結合レポータージーン試験について」です。菅野室長がエキスパート でありますので、委員の人が理解できるようにわかりやすく御説明をお願いします。 ○ 食品化学課長  まず簡単に事務局からご説明いたします。この超高速自動分析装置を用いた受容体結 合レポータージーン試験でございますが、平成10年より、厚生省では非常に重要な課題 として厚生科学研究等に取り上げまして、研究を行ってきた内容でございます。この実 験でございますが、この後、実際に、ほぼ試験法の開発が終わりまして、これから具体 的に化学物質の測定が行われることになっております。そういった意味で、事前に先生 方に、本試験法の位置付けとか、どういった形で物質を選んでいるのかといったことを 御了解頂ければと思っております ○菅野室長  この計画の位置付けを、諸外国との関係からも明示しておいた方がよろしいかと思っ てこういうスライドを用意させて頂きました。 米国のEPAのEDSTACが、1998年のファイナルレポートで、Tier1、Tier2、最 終試験ないしは詳細試験という形で、ピラミッド状のストラテージを組みました。まず 何万種類というケミカルがリストアップされていますが、それの優先付けを行うという ことで、その当時、ハイスループット・スクリーニングというアイデアが出されまし た。ところが、2000年になりまして、EPAのLow dose peer review meeting、これは 私も参画させて頂きましたが、これがありました。その会合で用いられたlow doseの定 義をここにお示ししますと「“low dose effects”refer to biological changes that occurat environmentally relevant exposure levels or a doses that are lower than those typically used in EPA's standard toxicity testing paradigm 」 とい うことで、いままでの試験で用いられた影響よりも下で何かが起こるかどうかその検討 をpeer reviewの形で見ようというもので、NTPがEPAの依頼を受けて行ったもの です。これは何を意味するかというと、科学的に2世代試験の結果を見た時に、これで 十分だという意見とは裏腹に、これでは足りないのではないかという意見があって、そ の根底にLow dose issueがあることをEPAが懸念して行った形になっていると理解さ れます。ですから、松尾先生がハーモナイゼーションとおっしゃったのですが、ハーモ ナイズすべき相手のEPAの方が、科学的に見るとぐらついていると認識せざるを得な いと考えております。かたやOECDは、従来のテストガイドラインに則った動物試験 法で、内分泌かく乱化学物質に十分に対応できているかということを問題にして、子宮 肥大試験とハーシュバーガー試験及びTG407の改定作業に入ったという経緯がござい ます。この様に状況が変化する中で、我々のハイスループット・スクリーニングがどう いう位置を占めているのかを日々考えながら試験をしていたわけですが、この図の灰色 の線より上が優先順位付けの段階になるかと思われます。当初、このハイスループット ・スクリーニングは、細胞を用いたり、酵母を用いたりするというのが最上段にあった のですが、その上の段階にコンピューターによるスクリーニングをやろうというアイデ アが出てきました。その理由は、ハイスループットといえどもお金と時間がかかり、5 万種類、10万種類の化合物をいきなりin vivo試験、ここにかけるのは負担が大きいと いう理由があります。日米ともにこれをスタートさせておりますが、用いる手法に違い があります。この図ではここが私の班で受け持たせて頂いているハイスループット・ス クリーニングに当てはまり、優先順位付けの第3段として、子宮肥大試験、ハーシュ バーガー試験等が位置づけられるのではないかと考えております。そうしますと、優先 順位付けの終わった化学物質のリストが将来出来上がってきます。そのときに、俗な言 葉で言うと、疑わしき物質の店ざらし状態ができてしまうことになります。これを解決 しなければならないのですが、そのためには、最終試験ないし詳細試験が必要です。し かし、どうも上のLow dose peer review で問題になったような諸々の観点から見ます と、従来の生殖毒性試験(多世代試験を含む)には未解決の問題が沢山あると考えられ ます。多世代試験がEDCの最終試験として使えるかどうかというところが、実は完全 に研究課題として残ってしまっています。なお、cDNAマイクロアレイをこの位置に かがげておりますが、これは、我々のふだんの日常生活で言うとコンピューターみたい なものだと考えられます。それがないと仕事にならないけど、それだけでは仕事になら ないというところがあります。cDNAマイクロアレー技術は近い将来、絶対に必要に なる強力な道具になるのではないかという位置づけで考えております。さらに詳しく進 めさせて頂きますと、結果的に、お手本とすべきEPA/EDSTACがどうなったか というと、この前の繰り返しで申し訳ありませんが、OSIというベンチャービジネス に託したものが失敗し中止となり、代わってチャレンジ・プログラムというものを開始 しました。これが現在はどうなっているかよくわからないのですが、少なくとも、アメ リカは当面はコンピューターによる3D−QSARをあてにして動こうとしておりま す。そのためのデータベースとして、 500物質についての何らかのデータをとにかく力 ずくで、取ろうということになっております。OECDは、御存じのとおり、子宮肥大 とハーシュバーガーをとりあげております。国内は、幸い、通産省との共同でうまくい く体制ができました。EPAとのミーティングなどで情報交換をしていてわかること は、これらにも非常に関心を持ってくれているということです。OECDの方も、徐々 にですが、子宮肥大試験がうまくいきそうですけれども、用量設定をするときに、やみ くもに大量に与えても意味がありません。大量に与えなければ反応が出ない物質もある し、少量でなければ反応しない物質もあるかもしれない。その選定をするときに、ホル モン作用を見る実験ですから、今まで毒性試験のMTD(最大対応量)とか、LD50と いう全身性の毒性指標をベースにしたものとは選び方が全然違う筈です。その場合に、 ハイスループットのデータないしは、in vitroのデータを用いようとする事を考える時 期に来ております。以上のことからも、このプロジェクトで出たデータはOECDから も関心を持たれている状態です。さらに、この方法といえどもお金がかかるし、時間も ある程度かかるので、In silico(QSAR)のコンピュータ内でのものも同時に進行 したらいいのではないかということで、日米両方で進んでおります。  このような位置付けの中で動いておりますハイスループット・スクリーニングの系に ついて簡単に説明させて頂きます。これは化評研との委託事業という形で、最初からN EDOとの共同の形で動くことになっておりました。細胞株は住友化学がつくったも の、ロボットは化評研の日田研究所に設置されております。お手元のコピーにも入って おりますか、使ったのはHeLa細胞です。ヒト由来の細胞にヒト由来の受容体を入れた株 をつくっており、今完成しているのはERαです。ロボットの性能を説明いたします と、最大スピードでは、二百数十物質を3日間で測定できます。感度としては、エスト ラジオールのIC50が100pMと10pMの間くらいにきます。これはエストラジオール の用量作用曲線です。典型的な物質ではこういうカーブが描けるのですが、全く反応し なかったり、最高濃度のところで僅かに上がってくるというものが多いです。数値とし てどういうものを取り出すか。普通に言われるEC50という値は、このシグモイドカー ブが取れた場合の中点を与える濃度ということで、この濃度が薄ければエストロゲン様 作用の強い物質、濃ければ弱い物質という形で比較できます。ただし、濃いところでし か反応しないという場合には、振り切れるところまで反応が見てとれない物質があるも のですから、ここのトップ値の代わりに、同時に常に入れておきますエストラジオール の、陽性対象の最大値を 100として比較しようとしております。いままでテストした物 質が 177ありまして、いろいろな化合物をやっておりますが、この中で測定値としてP C50値が求められまして、それの順位付けができた代表的な化合物がこのような表なり ます。この表でいきますと、一番下にビスフェノールAが入っております。ノニルフェ ノール、ビスフェノールB、植物性エストロゲン、ジエチルスチルベステロール、 17α-、17β-エチニルエストラジオール、こういう順位付けができる形になります。最 後に、抗エストロゲン物質も測定できることがある程度わかってきました。これは標準 的な量の17β−エストラジオールを入れておいて、そこに被検物資を加えると信号が減 るという形で阻害効果を見るわけです。タモキシフェンの4ハイドロキシ体、ICIと いうのは抗エストロゲン物質の標準品としてよく使われる物質ですが、このようなもの がアンタゴニストとして検出できる系になっております。これは細かい点ですが、日を 変えて測定しても感度はそれほど変動しないということで、系の安定性も保たれている という事を示すデータです。以上、早口で申し訳ありませんでしたが、ハイスループッ トの現状と位置付けをお話しさせて頂きました。 ○伊東座長  ありがとうございました。  ただいまの御説明にございました試験につきまして、御質問、御意見などがございま したらどうぞ。  特にございませんか。  よろしゅうございますか。  それでは、何かございましたら、また後でどうぞお願い致します。  次に、2つ目の報告事項でございます。内分泌かく乱化学物質問題低用量評価会議に 御出張になりました方々から御報告を頂きたいと思います。  概要につきましては、事務局より御説明ください。 ○中島補佐  資料3に基づきまして、内分泌かく乱化学物質低用量評価会議、米国のNTP主催で 行われた会議ですが、この出張記録について御説明をさせて頂きます。  主催は国立毒性計画(NTP)、米国環境保護庁(米国EPA)からの依頼でござい ます。日時は、この10月10日から12日までの3日間行われてございます。米国EPA も、我々厚生省と同様に低用量問題は非常に重要な問題としておりまして、本会議の結 果、今後、わが国での調査研究を進める上でも非常に重要かと考えております。  まず「1.目的等」でございます。米国EPAは、NTPに対し、従来の生殖・発生 毒性試験ガイドラインが内分泌かく乱化学物質の検出評価に適切かどうかを検討するた め、特に内分泌かく乱化学物質の低用量作用に対する科学的な証拠等を評価するために 専門家による評価会議を開催することを依頼しました。  具体的には、1)から3)の内容が議論されてございます。1)は、ほ乳類において 内分泌かく乱化学物質による低用量作用があること、あるいはないことを示す証拠がそ れぞれどの程度存在するのか。可能であれば、試験結果の食い違いの原因となり得る試 験方法、要素等を明らかにする。2)として、低用量における用量・反応曲線について 検討する。3)としまして、今後、調査研究する方向性を提案するという3つの大きな 課題について議論を行っております。  本会議では、低用量作用、これは菅野先生からの御説明でもございましたが、まず 「低用量」の定義をしてございまして、「人の暴露濃度あるいは、EPAが使用してい る生殖発達毒性を評価するための標準的試験法で使用されている典型的な濃度以下の用 量で起こる生物学的要因」と定義してございます。また、この会議では、ダイオキシン あるいはダイオキシン様物質は検討対象から除いてございます。  具体的にこの3日間の間に4つのサブグループ、5つのサブパネルが用意されていた のですけれども、1つは事前に検討を終えたということで御報告がありました。そのほ かの4つのサブグループについて集中的に3日間にわたって議論が行われました。その 内容は2ページに簡単に要約してございます。  まずサブパネル1ということで、最もデータがあり、議論も非常に注目を集めている ということでビスフェノールAについて議論がサブパネルとしてなされてございます。 結果でございますが、低用量のBPAが特定のエンドポイントに影響を引き起こす信頼 すべき証拠があると同時に、複数の異なった試験研究機関において低用量作用を観察で きない信頼すべき証拠もあるということでございます。すなわち、影響が出るという試 験も、影響が出ないという試験も、それぞれの実験系の中で一応の信頼すべき証拠があ るという形で認めております。そして、この文章の最後でございますが、結果としてビ スフェノールAの低用量作用は再現性のある所見として一般的に受け入れられる状況に 至っていないことが認識されました。それを明らかにするためには、妥当性の一番高い 方法として、再現性の高い新たな実験法の開発が必要であると指摘されてございます。 また、観察された作用のメカニズム等につきまして、ビスフェノールAについては、今 現在、作用メカニズム等については明らかになっていないという結論でございました。  2番目に、サブパネル2ということで、ほかのエストロゲン及びエストラジオールに ついて話されました。評価できるエストロゲン様物質あるいはエストロゲンとしまし て、ゲニステイン、DES、エストラジオール、ノニルフェノール、オクチルフェノー ル、メトキシクロル等が評価されてございます。その結果、ゲニステインとエストラジ オールについては何からの低濃度作用が認められるのではないかという結果が出ており ます。一方で、ノニルフェノール、オクチルフェノール等につきましては、その作用が 明らかではないという結論になっております。  サブパネル3ということで、アンドロゲン及び抗アンドロゲン物質についても議論さ れました。しかしながら、最終的には、この点についてはデータ量がサブパネルの中で 一番少なかったということもございまして、さらに検討する必要があるとされてござい ます。  また、サブパネル4においては、生物学的因子と研究デザインについて議論されてお ります。結果に影響を与える可能性がある研究デザイン上の相違点として、例えば餌、 床敷及びケージ、飼育条件、用いる動物モデルの感受性の違い、そういった研究による デザイン上の違いが試験結果に影響を与えているのではないかということが提示されて おります。  今後の予定でございますが、EPAは最終的に2001年春にEPAの考え方を出す形に なってございます。かなり議論がございましたので、この会議には、私のほかに、アメ リカ側の招待ということで、専門家の立場から、先ほど御説明がございました菅野先生 が御招待されております。また、江馬先生もこれに関する重要な研究をやった先生とい うことで、この評価会議に呼ばれております。また、井上先生も会議も御出席されてい るということがございますので、もし、先生方、追加事項がございましたら追加して頂 ければと思います。 ○伊東座長  ありがとうございました。  それでは、井上先生、何かございませんか。 ○井上委員  先程の発言の中でも、このノースカロライナのミーティングのお話を致しました。実 際には、このミーティングのオフィシャルな、どういう討議がなされたかのサマリーが 出ておりません。ことほどさように、同じ討議に皆さんが出席していてどういうことが 議論されたのかがまとめられないほど錯綜したという事実があったことだけ申し上げて おきます。 ○伊東座長  それでは、菅野先生、お願いします。 ○菅野室長  私は、ビスフェノールAのサブパネルに呼ばれまして、確かに大変なサブパネルでし た。最大の争点となっている仕事から先に御確認させて頂きます。Vom Saalという研究 者たちが見たという低用量のデータを確認させて頂きます。ここにCD−1と書いてあ りますが、CF−1というマウスも使っております。胎生期の14日から18日目のマウス の母親に、ビスフェノールAですと10μgから20μg、エチニルエストラジオールです と 0.1μg/kg、DESですと 0.1μg/kgを投与して、Day of Birthに子供を観察する と、尿道が長い、あるいは、前立腺が大きいオスというのが見られました。最初は天秤 計りで測定していたため誤差が大きいなど評判が悪かったので、彼らも工夫してコンピ ューターで3次元構築したデータを出して来ました。これで信憑性が上がったというこ となのですが、図に示す上段が無処置対象群、下が処置群です。緑色のところが前立腺 腹側葉になっています。彼らいわく、緑色のところのこれは、胎児期から生まれた直後 に前立腺という腺が芽をふくわけですが、その芽の数がビスフェノールAを与えると多 くなって、なおかつ大きい。これをコンピューター上で計測するとこういうグラフにな るということで、プロスタティックバッドとありますのは、芽の数です。これに対し て、同じ実験を追試したグループと、ビスフェノールAについて同じような用量で多世 代試験を行ったというグループの陰性データが出されました。両方とも論文を審査し て、なおかつ統計学者が生データを取り寄せてその数字に誤りがないかも確認していま すので、よほど変なことがない限りデータが信頼できないとは言えない立場にあったこ とは事実です。ただ、内容を審査していくと、対立点は2つありました。Vom Saal実験 対大型試験、特に多世代試験、もう一つは同一プロトコールの再現データです。前者に 対しては、特に投与方法が全然違います。多世代試験というのは、生まれる前の親にず っと投与して、妊娠中もずっと投与して、なおかつ生まれた後もずっと継続的に投与す るということです。それに対してVom Saalのデータは、14日目から18日目という決まっ た期間に与えただけで、その前後には与えていないということです。ずっと暴露すると 何らか違うことが体の中に反応として起きるのではないかということを考えれば、これ は両方が正しい可能性があります。ただ、後者の対立点の方はどう考えたらいいかとい うと、少し難しくなります。いろいろな変動要因があるであろうということでは、それ を詰めなければなりません。いずれにせよ、両方正しいけれども、見ているものが違う という可能性があります。今度は、これが本当に悪さをしていたのかどうかという問題 になっていくわけですが、それを調べる研究は現在進行中であるといえます。詰めるべ き点は多々あって、同じプロトコールを追試しても、例えば10ヵ所が追試したら、多 分、また五分五分で結果が分かれてしまうであろうから、別の方策を考えるべきではな いかという話が出ました。  以上です。 ○伊東座長  ありがとうございました。  江馬先生、お願い致します。 ○江馬室長  私の方は、平成10年の厚生科学研究で行いましたビスフェノールAの、ラットを用い ました2世代繁殖試験の結果について発表してまいりました。先生方には昨年夏に途中 経過ということで御報告しておりまして、その最終結果であります。  実験の方法は、いま菅野先生がおっしゃいましたように、Vom Saalが用いました用量 前後に低い方、高い方、もう一つずつDoseを増やしまして、ラットの2世代繁殖試験を 行い、主にF−1、F−2、子供、孫の世代の生殖系の発生、行動等について検討致し ましたところ、影響はなかったという結果です。  同時に、発表が行われましたLow dose peer reviewでは、我々と同じラットを用いま した1世代試験、3世代試験、これは用量をかなり高いところから低いところまで振っ ておりまして、我々のところよりも規模が大きい実験でありましたが、いずれも結果は 陰性ということが報告されておりました。  以上です。 ○伊東座長  ありがとうございました。  それでは、御質問、御意見がございましたらどうぞ。 ○松尾委員  菅野先生の、プロフェッサー・Vom Saalの結果を御紹介されたのですけれども、オス の胎児の母体内での位置は、メスとメスに挟まれているのか、オスとオスが並んでいる のか。例えば、メスとメスの間に挟まれているとメス化するということをボンサールは 御自身でおっしゃっているわけですが、その辺の位置関係と今の結果と、その辺の解明 は何かありましたか。 ○菅野室長  それは、ないと言っていたと思います。 ○松尾委員  あるという論文を出されているわけです。 ○菅野室長  「ネイチャー」の論文は、メスで挟まれたメスは、膣開口から性周期が開始する時期 がずれるということですが、どうでしょうか、それに関しては。 ○松尾委員  同じ理屈を言っているわけです。  そういう開示はされなかったですか。 ○菅野室長  それはしていないです。 ○松尾委員  依然として疑問は残るわけです。 ○菅野室長  パネルの中ででも、子宮内位置と言って、オス胎児に挟まれたメス胎児がどうなるか という論議が出まして、メカニズムをどう考えればいいかということが話題になりまし たが、結局はまだよくわからないということになっています。細かいことを言います と、沢山論議が出るのですが、現在進行中の課題であると認識しております。 ○青山委員  菅野先生に御質問です。今の江馬先生のお話も含めて伺いますと、Vom Saalを含め て、先程御紹介頂いた中では、マウスではポジティブのデータが比較的出ていて、もち ろん大型実験と非常に絞った実験との違いがありますが、ラットを使った実験では陰性 結果が比較的出ているという印象も感じます。種差ということがとりたててあるという ことはいかがでしょうか。 ○江馬室長  今、青山先生がおっしゃられたとおり、ポジティブな結果は多分マウスでしか出てい ないと思います。ラットではポジティブな報告はないだろうと、私自身はそのように認 識しております。  ラットでも、ビスフェノールAについて、フィッシャーラットとSDラットでは差が ある。フィッシャーの方が鋭敏だということがどうも言われています。だけど、これは Doseがかなり高いところでの話です。フィッシャーは多分、繁殖試験には用いにくい系 統だと思いますので、こういう実験には難しいかなと考えております。 ○菅野室長  ラットは、いまおっしゃったとおり、SDは鈍感だというデータが、ベン・ジョナサ ンのところからはっきり出ておりまして、フィッシャーがいいというのが彼女の結論で すが、今おっしゃったとおり、フィッシャーは使いづらい、どうしようかというところ で止まっていると思います。  マウスの方は、CD−1、CF−1という系がターゲットになっていて、Vom Saalの 問題点の一つは、CF−1が彼のクローズドコロニーで、なおかつ、そのコロニーは絶 えてしまったことにあります。それを追試したアシビューらイギリスの研究者たちは、 同じCF−1を用いましたが別の会社から買ったマウスです。その点が一つの問題。  もう1点は、マウス同士で比べると、追試した試験では、DESをポジティブコント ロールに置いてはいるのですが、DESも陰性、ビスフェノールAも陰性という結果ば かりです。つまり、両方とも陰性です。Vom Saalの方は、DESで陽性、ビスフェノー ルAで陽性。口の悪い人は、ポジティブコントロールが陰性だから、その実験は聞くに 値しないと言うわけです。もうちょっと紳士的に言えば、追試するのであれば、同じC F−1でも買ったところが違うのだから、DESでちゃんと、その系で感受性のあるポ ジティブコントロールを見つけてからやるべきだったという論議になるかと思います。 要するに、ポジティブコントロールも出なかったというところが一つ問題になっていま す。 ○杉委員  今のマウスのストレインの問題は非常に大きいと思います。DESシンドロームの感 受性を調べたことがありますが、A系とC3H系とC57ブラック系とRIII系とやって みますと、A系統の10分の1でRIII系統はDESシンドロームが起こるんです。したが って、マウスは系統によって感受性の差が大きいと思います。 ○伊東座長  そのほかに何かございませんか。  私は、要するに、マウスであれ、ラットであれ、人に対する危険性ということが本当 に言えるのか言えないのかということだと思います。それについてはいかがでしょう か。 ○菅野室長  この会では、その問題を取り上げると論議が止まるということで、その件に言及する ことは一切なしで進みました。要するに、まず生物学的に影響が見られるか見られない か、それも、いままでの試験系のNOELといいますか、これ以下では影響は見られな いとされていたDoseよりも下で見られたかどうかということに集中したので、その会議 ではテーマにはなっておりません。私の意見を述べさせて頂きますと、それは仰せのと おりわからないです。この点に関する解決の一つの手段は、バイオロジカルプロージビ リティの問題になります。  一つ、常に頭の中にこびりついているのは、ヒトゲノムが進み、マウスゲノムが進め ば、ゲノム上での情報をマッチアップすれば、いままで以上に外挿は確実になるであろ うということです。今までですと、大した外挿はやっていないですよね。セーフティフ ァクターをかけたりで終わっています。しかし、それが中身で、この遺伝子がマウスで 動いたということは、あの遺伝子が人間で動いたのと同じであるということが回路図と してわかれば、マウスでわかったことが人間で起こり得るかということが、今以上には るかに正確に予測できる様になると思います。  ですから、そういう意味での基礎データ取りが、毒性試験全体としてまだ未熟である という以外に座長にお返しする言葉はないです。  以上です。 ○伊東座長  いろいろな動物実験の会議に出ますと、常に同じようなディスカッションが行われる わけです。ですけれども、遺伝子レベルでの解析が進んだからといって、依然として人 間と動物の間には大きな種差があるわけですよね。ですから、一旦、ポジティブだとす るデータが出ると、それを否定することは非常に難しい。そのためポジティブという データが一人歩きしますから、ポジティブのデータがあるから危険だ、その懸念がある ということをどんどん発表することが問題だと思うわけです。その時点で、我々が考え なければならないのは、そういうデータがあるのならそれをなるべく少なくするような 努力をすることが絶対に必要だと思います。  例えば、今日はディスカッションの中に入っていませんけれども、ダイオキシンでも そうですよね。ダイオキシンが危険だ、それは人に対する発がん性があるから危険だと 言いますけれども、人に対する発がん性があるというなら、タバコの中の発がん物質の 方がよほど強い。ですけれども、人々はみんな、ダイオキシンには発がん性があって猛 毒だから危険だと言います。危険性と安全性の両方を評価するときに、人に対する発が ん性があるから危険だと言う方は非常に勇ましいし、格好がいい。しかし、それほど心 配ないですよと言うことは、企業寄りでありけしからんと言われるのですけれども、私 は、危険なものを少なくする努力こそが絶対に欠かすことができない。それは、地球環 境を守る上からも絶対に必要です。それを忘れてはならないと思うのですけれども、ア ジテートするようなことを言って、一般の人に混乱を与えるようなことをすれば、それ を明らかにしていくためには、どれほどの研究費なり、人力が損なわれるかということ も十分に考えて科学者は対応していくべきであると、私はいつも思っています。  ですから、菅野先生が言うことがいいとか悪いとかいうことではなくて、こういうよ うな環境問題をディスカッションするときには、少なくする努力に対しては幾らお金を 使ってもいいから努力していこう、地球というかけがえのない宇宙船に我々人類はみん な乗っているわけですから、それを守ることは大事です。ですけれども、アジテートし て、いたずらに危険性をあおるということには慎重に対応しなければならないと、私は いつも思っています。動物実験も同じだと思います。 ○菅野室長  まさしくそのとおりですけれども、多分、内分泌かく乱化学物質で、これだけ科学が 防衛側に回れなかった最大の理由は、メカニズムがわかっていないからだと思います。  実は、ここに、ほかのパネルのアンドロゲンのところで出されたデータのオーバーヘ ッドがあるのですが、いままでのNOELより低いところでいろいろな反応が出ている 図です。グラフだけを見ると、原点に向かって直線的に落ちて、閾値がない様なグラフ が書けています。閾値があるかどうかを見るというのは、科学的にここまで濃度を落と せば大丈夫だということを非常に言いやすくなるのですけれども、そこのところがまだ あやふやだということが、防御側に回りにくい立場を作っていると考えます。 ○伊東座長  防御する必要はないと思います。サイエンティックに明らかにしていくことが非常に 大事で、そのデータを基に、この委員会で、人に対する危険性というのは、ここまでは 言えるけど、ここから先は学問的にはわからないということを明らかにしていくのが、 この委員会の一番大きなポイントだろうと思います。  皆さん、どうぞ。 ○杉委員  伊東先生がおっしゃることはよくわかるのですけれども、そうすると、動物と人とは まるで違いますから、動物実験で出た結果は、結局、人に出るか出ないかわからないと いうことになるように思います。そうしますと、事故か何かで人に出ない限りは、動物 実験で結果が出ても待っているという感じになってしまいます。やはり動物実験という のは、信号で言えば、黄信号ではないかと思います。ですから、青と赤しかない信号で すと、青だと思っていると突然赤になるということになりますので、黄信号が動物実験 だと思います。だから、やはり動物実験の結果は黄信号として捉えて用心しないと、人 にも出てくる可能性がある。  先生がおっしゃるとおり、ネズミと人間はまるきり違います。ただし、遺伝子はほん のちょっとしか違わないのですから、やはり人にも出る可能性があることくらいは考え ないといけない。それがDESシンドロームでございまして、あれは、もし動物実験を もうちょっと慎重に考えておけば、数年早く禁止できたと思います。ですから、人で事 故が起こってしまうまでは、あるいは、疫学調査ではっきり出るまでは何もしないとい うことではまずいのではないかと思います。  以上です。 ○伊東座長  私も沢山の動物実験をずっとやってきましたから、動物実験を幾らやっても人のこと はわからないということは思っておりません。沢山の情報を動物実験から人に対する危 険性を指摘した。それは学問の進歩で、かつてはそういうこともわからなかったけれど も、それから後できっちり実験をやる。サリドマイドの問題でも、DESの問題でもそ うですけれども、後で、そういう危険性があったことを見過ごしたから新しい毒性学が 進んできたわけですからね。今の遺伝子レベルの解析が進めば、やがてもっと詳しい種 の差がわかってくるだろうと思います。ですから、決して、私は、そんなものがナンセ ンスだと思っておりません。もっともっと研究すべきだということですけれども、安易 にアジテートするようなサイエンティストは、この際ちゃんと考えてきっちり、これは はっきりわかっていることだ、これはわからないことだと言うことが大事だと思ってい ます。  私も沢山の発がん物質を触って実験してきましたから、杉先生と一緒の研究班でも 研究したこともございますし、よく存じあげておりますので、今おっしゃることも私は 十分に理解しているつもりでおります。  私ばかりしゃべりましたけれども、そろそろ決められた時間に近づいてまいりました ので、何かおっしゃりたいことがありましたら、どうぞおっしゃってください。  事務局から何かありますか。 ○食品化学課長  今日はどうもありがとうございました。  今日いろいろ頂いた御意見を踏まえまして、もう一度、ペーパーなり、これからのま とめというか、中間的なまとめのパート2みたいなものを我々は漠として描いているの ですが、そういうときの表現ぶりなり、そういうもののときによく注意して使い分けを していきたいと思っております。  具体的には、作業班という形で、どなたに入ってもらうとかはまだ決めておりません で、いずれにしても厚生科学研究費の中でやって頂いたところの御関係の深い部分につ いては、研究班に参加して頂いた先生を中心に作業班をお願いします。特に、リスクコ ミュニケーションについては、私ども、どういう方に入ってもらうか、考え方をまだ全 くまとめておりませんので、今日御参加の先生方にも御意見を伺うチャンスがあるかと 思いますが、そのときにはぜひよろしく御協力を頂ければありがたいと思っておりま す。そういった作業班を構築しまして、いろいろと検討を進め、春ごろに中間的な報告 会、また、夏、あるいは、座長はさっき秋とおっしゃいましたが、そういうときに、今 のデータをもう少し積み上げて整理したペーパーを、作業班の報告書を頂いた上でまと め上げるようなこれからのスケジュールかなと思っておりますので、よろしくお願いし たいと思います。 ○生活科学安全対策室長  それから、本日の議事録でございますけれども、議事録が出来次第、各委員の先生方 に送付致しますので、内容を御確認の上、事務局に返送の程をお願い致したいと思いま す。  次回につきましては、先程もお話が出ておりましたが、来年3月を目処に開催致した いと思っておりまして、各作業班の先生方から検討の途中経過を報告頂くことを考えて おります。  以上でございます。 ○伊東座長  ありがとうございました。  それでは、本日の会議はこれで終わります。御協力、ありがとうございました。                                     (了) 照会先  厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室   担当:平野    TEL:03−5253−1111(2427)