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医療保険福祉審議会 第58回制度企画部会議事要旨

1.日時及び場所
平成12年12月22日(金)14:00〜16:00
共用第23会議室

2.出席した委員等
金平、井形、糸氏、大宅、塩野谷、高木、高秀、鴇田、南、若杉の各委員
岡本、平井の各専門委員
高梨、花井、片岡の各参考人

3.議題
(1) 保険者の在り方について
(2) その他

4.審議の概要
1)はじめに、糸氏、塩野谷、高木、若杉の各委員からそれぞれ提出資料について説明がなされ、また事務局から資料について説明がなされ、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下の通りである。

(高木委員)
 ○ 先ほど説明していただいた、事務局提出資料のP15、被保険者の意志の反映方法というところであるが、政管健保のところに国会とある。国会は政管健保だけでなく健康保険全体についていろいろ議論をしている場である。政管健保について社会保険庁が唯一の保険者で運営しているが、私もメンバーとなっている事業運営懇談会において年に数回議論をされているが、全国47都道府県の一千数百万人以上の感覚なり意志なりが、この場で議論されることになっているとはとても思えない。コメントをお願いしたい。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部医療保険課長)
 ○ 確かに今の話のとおり、政府管掌健康保険について給付の内容、保険料率、毎年度どのような事業を推進していくかについて法律あるいは毎年度様々なところで設定されている。ただ重要事項という点では、保険料率、給付水準、給付費、予算等々が国会で毎年度、法律や予算の形で提出後審議、承認いただくことについても、制度上そうされている。従って、社会保険庁としては、重要事項、制度的な大枠について、国会という形でご審議いただきつつ、細かな事業運営については、この政管の事業運営懇談会という場を通じて関係者の方々から幅広い意見をいただくという、大きな進め方をさせていただいている。
 ○ これを、なお一層関係者の意見が反映されるような形に変えていくかということについては、各班のレベルで検討をする必要があると考えるが、現状としては、法律予算の大きな制度的枠組みの中で、日々の運営をさせていただいているので、(資料には)このように書かせていただいた。

(若杉委員)
 ○ 事務局資料のP5、医療制度の抜本改革がどれぐらい進んでいるかというところだが、例えば3の定率1割の老人患者負担の導入とあるが、開業医の場合にはほとんど定額制を選ぶ、また病院によっては3000円、5000円という上限がある、そういった様々な制約条件の中で、あまり肩を張って言える内容ではないのではないか。
 ○ 厚生省内に推進本部をつくって精力的に検討とあるが、これはできて半年以上になると思うが、どのあたりまで検討が進んでいるのか教えていただきたい。

(事務局 柴田保険局企画課長)
 ○ 高齢者医療制度改革推進本部については、省内の内部の会議ではあるが、様々なテーマにわたり、すでに30回近く検討をしてきた。今回健保法の一部改正法案を出した際、国会での審議の中にも抜本改革をどうするのだという話があった。その中ではやはり医療保険は複雑だという指摘があり、国民の理解を得ながらでないと(改革が)前に進まないということもあるので、与野党から、今の状況をわかりやすく示し、そしてその中でどういう改革を目指していくのかという改革の視点のようなものもわかりやすく示すべきではないかという議論もかなりあった。私どもとしては高齢者医療制度改革推進本部での議論を経て、年は変わるであろうが可能な限り近いうちに、制度の現状あるいは課題、改革の視点といったものを示していきたいと考えている。こういうことで、また幅広く議論をいただきながら改革案を集約していきたいと考えている。

(高木委員)
 ○ 今日の議論ではないが、厚生省なり日本医師会、歯科医師会の対応を教えていただきたい。医者に行って「領収書をください」というと1,500円出せなどと言われる。あるいは「領収書は出したことはないからそんなものは書けない」「忙しいから書かない」と言う。サービスを受けてお金を払えば領収書は普通もらえる。私ども連合のホームページにそういう苦情が結構入ってくる。どういう指導をしているか、それから日本医師会あるいは歯科医師会ではどういう会員への答えをされているのかお聞かせいただきたい。

(糸氏委員)
 ○ 日本医師会の方から答える。患者の領収書を出すのは当然である。
 ○ ただ、領収書の個別内容を全部書けと言われても、人手の問題等いろいろある。少なくとも2割負担あるいは1割負担の領収書を書くのは当然ということで、これは全国の医療機関に、その旨徹底するようにかねてから言っている。今のような質問を受けること自体が恥ずかしいと考えている。
 ○ 大まかには、概ね医療機関の7割以上は、すでにレセプト・コンピューターを使っているので、例えば私どものような小さい診療所でも患者さんには領収書を渡す。その領収書には再診料は幾ら、薬剤料は幾ら等自動的にその領収証の欄にインプットされて出て来るのだが、それを患者に必ず持って帰るように言っている。実際、領収書を受け取る患者は約3割から4割であり残りの6割から7割は残念なことにお持ち帰りにならない。年末調整の時に、年末に取りに来られることもあるので、これは私どもの医院でそれを保管してはいる。私のところを例にとればそういうことである。
 ○ 他の会員で、領収書を取るのに金を取るということが事実であれば申し訳ないことであり、そういうことがもしあれば是非日本医師会にお知らせいただきたい。私どもの方から厳しく問いただしたいと思う。

(平井専門委員)
 ○ 歯科医師会の方も、日本医師会と同様であり、全国の都道府県の歯科医師会にそのように指導しており、また実際に厚生省の共同指導その他でも厳しくチェックをいただいている。領収書を発行するにあたって金銭をもらうということはまずないと思うが、そのような事例があれば、挙げていただければ我々は取り組みたいと思う。

(事務局 尾嵜保険局医療課長)
 ○ 高木委員がご存じのとおり、患者の支払った金額のみが記載される領収書は、民法上の交付請求権が認められており、当然、手数料を求めることは適当でないということになる。今あった明細がわかるものについて求めた場合に手数料を求められるというケースについても、両関係団体の委員から話があったとおり、常識的にはそれほどの手間のかかる内容を書くわけではないはずであり、そのようなものに手数料を求めることは適当でないと考えている。

(高木委員)
 ○ では、後日具体的な例を届けたい。

(鴇田委員)
 ○ 保険者の在り方というテーマであり、できるだけそれに即して言いたいが、今日ほど情報の収集や処理が非常に容易になった時代はない。そういう中で、医療の世界というのは圧倒的に(情報化が)遅れていると考えている。まず基本的にはカルテが電子情報にするようにできておらず、個々のお医者さんごとにバラバラになっている。そういう点をなんとかインセンティブを与えて統一し、医療情報を蓄積していくことは、誰が考えても当然だと思う。厚生省はこの点では単に指導するだけではなく、経済的なインセンティブを与えることが必要ではないかと思うのだが、どう考えているか。

(事務局 武田健康政策局総務課企画官)
 ○ 電子カルテなどの診療情報の整理・蓄積という指摘であるが、電子カルテの推進については、カルテの記載・保存方法について電子カルテの形を認めるという通知を出すとともに、診療の内容についての高度化が必須ということであるので、現在、診察、治療内容その他医薬品、医療機器に至るまで、今年度中に統一コード化を図るということで進めている。
 ○ 経済的なインセンティブということだが、医療機関全体のシステム化について、一定の場合には補助をするような形で支援している。

(鴇田委員)
 ○ 病院の先生方に伺うと、そうしたいのは山々だが、医療機関としてはそれによるメリットが短期的にはないという話をする。国民は、そういうことで医療情報が蓄積され、日本の医学全体の向上に役に立つならば診療報酬が若干上がることについてそれほど躊躇しないだろうと思う。そういう点を、もっと本格的に考えるべきではないかと思う。

(事務局 尾嵜保険局医療課長)
 ○ ご存じのとおり、電子カルテを使っていることに対する診療報酬上の評価というものがないのが現状である。ただ、医療機関全体の経営の中での収支を見ながら診療報酬上の対応をしているが、電子カルテを使うという場合に、導入するのに費用がかかり、それが結果としてまた収支に影響を及ぼす等、調べてみなければわからないことがあると思う。
 ○ また、診療報酬については、基本的にはそういった動きがこれから加速されるというのは十分予測されるので、そういったものをどのように評価していくかというところは中医協で十分ご議論していただく必要があるという認識を持っている。

(鴇田委員)
 ○ 次にレセプトだが、こちらもまだまだ手書きのレセプトが非常に多い。これについてもこういう時代であるので、一刻も早く電算化を急ぐべきではないか。
 ○ その上で、保険者が、被保険者について、あるいは被保険者がかかった医療機関についての情報を集めるということが最も重要なことだと思う。それを使い、例えば保険者が患者に対し、この医療機関は大変な名医で非常にコストも低いしクオリティも高いので推薦するという情報を与えるということは現行の法規定の下では違法なのだろうか。

(事務局 間杉保険局保険課長)
 ○ まずレセプトの電算化についてだが、私の印象では、導入実験の段階でもあり、大病院が入れてミスなく動くようになったのは、ここ数年である。昨今では非常に病床数の多い大型の病院の参加が見られてきており、技術的に可能だということで、これからは是非計画的な普及に努めたい。
 ○ 鴇田委員の言う違法かということについて、特にそういったことを禁じるということは今の法律の中には見あたらない。ただ、レセプトの情報から名医であるかどうか等がわかるかについてはいろいろ議論があるのではないか。むしろ今健康政策局のほうで第三者評価というものも進めており、そういった評価の別途の枠組みが必要なのではないかという気持がする。

(鴇田委員)
 ○ 確かにレセプトだけから医療機関を評価するというのはかなりリスクを伴うということは重々わかっているが、それに加え、保険者が医師を専属で雇い、様々な情報を評価する、あるいは第三者機関が、なかなか進捗していないが、医療機関の単にコストだけではなくクオリティについても調査し、被保険者に対して伝えていくことが必要。被保険者はそれを一番重要な情報として考えている。これまで本来やらなければいけないことを保険者が怠ってきたということは、日本の医療のクオリティが諸外国と比べて格段に高いと言われない一つの理由ではないかと思う。
 ○ 今回は保険者論ということで、実に私は今でも不満であるが、本来ならばこの問題について高齢者医療制度とか診療報酬と同じように答申をすべきであったと考えている。まず現在の情報技術の進展ということに、医療も遅れをとらないように厚生省は是非努力をしていただきたい。

(高秀委員)
 ○ 鴇田委員の言うとおりで、今世の中の議論は錯綜している。情報を集めるという議論の中には、カルテ等について情報を集め、分析すれば医療の技術の提供に役立つということと、それとは別に、世間の人が思うように、情報をすべて集めて公開するという問題が含まれており、後者には告知の問題がある。
 ○ もう一つは、集まった資料なりデータをどの分野の人にどういうふうに公開していくかということも合わせて議論が必要だと思う。

(南委員)
 ○ 今の日本の医療の情報公開は非常に限られている。情報公開というのは、そもそも医療を受ける人たちの自己決定の力を強めるためにあるわけであり、そういう意味で、医者は自分たちでホームページ開くこと程度しかできないので、日本の医療機関に関する情報やそこで行われている事柄に関する情報あるいは医師とか医療職の特徴ということについて、一般的に第三者機関からそれらの情報がきちっと得られるという仕組みをもっと推進してほしい。そうでないと本当に国民が自己決定できていく仕組みづくりにはならない。
 ○ ただ情報が得られれば自己決定ができるという話ではないので、保険者の中に置くのか、医療者の中に置くのか、または第三者機関に置くのかという問題はあるが、相談ができるような機能をもう少し推進してほしい。
 ○ 私の周辺でも自分の死を自分でデザインする人たちがかなり増えてきている。例えば高齢者でがんにかかったとき、ラジカルな医療を受けるのかそれとももう少し違う生き方で医療を受けていくのか、それを決めたいのだけれども情報がないし相談するところがない、従って医師が示した方向でしか決定ができない、しかし本当は自分はもう少し違う方向へ行きたいという、そういう話はしばしば聞くが、それは自己決定の方向だと思う。そういう意味で、保険者の在り方を考える際には、情報公開相談機能の強化、国民が自己決定できる仕組み、さらに、保険者の規模が大きくなると保健婦等の雇用ができて、保健事業ができるといういわゆる健康増進の問題をもう少し強化する考え方でやっていただきたい。
 ○ 保健事業については、保険者もそうだが、例えば相談に関して診療報酬上の手当など、生活習慣病に対して多少はあるが、少し強化が必要ではないかと思う。あるいは例えばセカンドオピニオンを得るための道筋を開く、第三者機関にそういうことを置いてもいいのではないかということである。

(井形委員)
 ○ 医療費がかさむので対策を講じないといけないという点に関し、それぞれもっともな提案があったと思う。
 ○ 私は視点を変え、予防と医療の一体化ということを強く申し上げたい。というのは、今まで日本は治療医学が主であったので、病気になってから初めて医療が発動するシステムである。だから医療費をどうするかといろいろ議論をしているが、例えば脳卒中の死亡率は半減しており、従来50代でかかっていた人が、今80代で医療費を使っているのだが、それを入れて医療費と言っているのである。また、小学生の肥満児が10%であり、若い女性の喫煙率が増加しつつあることが、将来医療費増加につながることがわかっていながらみすみす放置している。よって、医療費を議論する際には、やはり流れ込んだ元と一体化して議論すべきではないか。我が国の保険は健康保険とは言うが、実は疾病保険、病気になってからの保険でしかない。もちろん今日、健康日本21も出ており、保険者機能の中に保健事業がたくさん入っているので正しい流れの事業だと思うが、もっとそれを一体化して健康度評価をして評価が高い人には保険料を安くするとか、何かそういうインセンティブを働かせるようなシステムにすることが、結局は医療費の合理化につながるのではないか。
 ○ 医療費というのは帳尻があって黒字になったから全て終わりというものではない。医学はどんどん進歩するので、医療費は原則として増加する。また、日本のGDPに関する医療費とは、パーセントが前々から言われているようにそう高いものでもない。
 ○ 長野県の平均寿命が沖縄県に代わり1位になったが、それはよく歩く習慣など生活習慣に努力したからである。それで長野県の医療費は最低なのである。様々な見方があり一概には言えないが、その病気に流れ込んでくる集団のことを考えることが医療費の削減に最も重要な視点である。そういう視点が今まではあまり多くなかった。
 ○ もう一つの問題は、今、私は尊厳死という問題に関わっている。若い人が、医療費がかかるから高齢者の医療費はストップしなさいと言えば人権問題になるが、尊厳死というのはいたずらな延命措置を拒否するという患者の自主的な宣言である。高齢者により良く生き、より良く安らかに死ぬ権利をということを掲げており、高齢者の中で急速に賛同者が増えつつある。そういう意味では、いわゆる末期医療の在り方にこういったものも大きく影響する。
 ○ もちろんカルテの公開にしても電算化にしても大賛成であり、それらが必要であるということは十分認識した上で、医療費についても、矮小化した部分だけを論ずるのでなく広い視野で議論が必要である。社会的入院という言葉があるが、ここの部分については介護保険が引き取るからというので、実際はそのとおりにならなかったが、保険者は喜んだ。しかし国民から見れば負担は同じである。枠が違うというだけであって、それを合理化したにすぎない。健康保険組合も、医療費のことだけに集中するのでなく、できれば保健・医療・福祉を全体見渡した中の大きな流れの中の一つの医療費として考えていただきたい。そうすると自ずと視野が変わってくる。

(岡本専門委員)
 ○ 元に戻るが、情報公開あるいは電算化の問題について、医療関係は遅れているという話だったが、確かにそういう面はあるが、今後どちらも急速に進むであろうと思っており、急がねばならないということはあるにせよそれほど心配しなくていいのではないかと思っている。
 ○ また、先ほど領収書の話もあったが、薬局関係が領収書をほぼ完全に出しているというのは、このことの一つの表れであり、医科、歯科についてもこれからは自然にそういったものは急速に進んでいくのではないか、抵抗がなくなっていくのではないかと、楽観的な意見ではあるがそう思っている。

(高木委員)
 ○ 議論をすれば論点は数多くあるが、残り時間がわずかな中、議論をしても始まらない。
 ○ こういう議論はどこにどう引き継がれるのか、教えていただきたい。

(金平部会長)
 ○ その点に関しては、後ほど厚生省に伺うこととする。

(塩野谷委員)
 ○ 情報の開示と言うが、本当は情報の分析、蓄積が必要である。既にあるものを開示するのでなくて、これから知識を確立してそれを病院や医師にやってもらいたい。その点は、日本はアメリカに比べ非常に遅れていると思うが、どこに原因があるのか厚生省に聞きたい。
 ○ それから第三者評価として議論がなされる場合に、病院の質の高い医療サービスを提供しているかどうかという、大ざっぱなことでは何を評価していいかわからない。井形委員もご承知であろうが、病院や医師の分析、評価をするには、構造・成果・過程の3つのキータームがある。第三者病院機能評価というのは概ね構造についてであり、どんな看護婦が何人ついているかというようなインフラの調査だけをやっているらしい。もっと重要なのは、どういうプロセスで医療が行われるか、それからどんなアウトカムが治療について出てきているのかと、こういうことをアメリカではきちんと評価して誰も文句をいわない。どうしてこういうことが行われないのか、そういうことを聞きたい。そういう点を今後どういうふうに進める展望があるのか。

(事務局 武田健康政策局総務課企画官)
 ○ まず病院機能評価については現在、財団法人日本医療機能評価機構というものが設置されているが、実際スタートしてからまだ数年しか経っていない。アメリカの病院機能評価は数十年の歴史を持っていると聞いており、まだまだ充実強化をしていく余地、必要性は高いのだろうと思っている。
 ○ 機能評価項目についても、スタートしてから1度見直しをし、項目数が増えてきている。必ずしもご指摘の例えば看護婦数のみならず、診療体制についてそれぞれの病院が一体どう質の向上、医療の標準的なプロセスの管理などをやっているか等、体制を評価するような項目も増えてきている。ただ、個々の医療の行為についてのアウトカム評価に関しては、我が国においては手法についての研究が不十分であるという段階だと思う。
 ○ その原因については十分に分析ができていないが、まだまだ研究が不充分ということがあろうかと思うし、先ほど電子カルテのところで申したが、電子カルテの普及が進んでいなかったことも含め、国際的に通用する疾病分類が十分ではなかったということがあるかも知れない。いずれにせよ、どこに原因があるかを含め、真剣に検討していくべき大きな課題である。

(塩野谷委員)
 ○ 時間が経てば良くなるのだろうか。(笑)

(金平部会長)
 ○ 時間は若干残っており、議論は尽きないと思うが、本日の審議はこの程度とさせていただきたい。
 ○ 前回、今回と2回にわたり、保険者に関する問題を一応ご議論いただいた。保険者論については、前々からやるべきという意見があり、前回も話が出、今日も鴇田委員から不満が表明された。この2回だけでこの部会として保険者論を全てまとめることはできなかったが、今日も大変多くの委員の方が、それぞれのお立場でコメントをし、これを残してくれた。大変ありがたかったと思っている。
 ○ 今後厚生省では、今日の2回の部会の議論とか各委員の提出された資料等についても是非整理をしていただき、間もなくスピードをあげて検討されるであろう高齢者医療や基本的な医療制度の抜本的な問題等を検討する際に十分に参考にしていただきたいと強く要望したい。ただ、高木委員が少し触れたが、省庁再編に伴い今日でこの審議会が終わり、医療保険福祉審議会は社会保障審議会に統合されると聞いているが、今日の保険者論は特に十分な時間がないままに終わりにせざるを得ず、心情的には大変心残りである。これについて今後どう引き継ぐのか、厚生省から決意を伺いたい。

(事務局 柴田保険局企画課長)
 ○ 高木委員のご意見についてであるが、今まではこういう審議会の場でいろんな分野の方々のご意見を伺いながら案をまとめるという過程を経てきたのが、今後どうなるのかということではないかと思う。医療制度は国民の皆様に関わっている話であり、広く、本当に一人一人に考えていただくほどの議論が必要である、また、今の時代に皆が得をするようにするのは難しいが、医療に関わる方々のご理解とご協力なしには制度改革できないと思っている。
 ○ こういう観点から、医療制度の現実の姿や問題点あるいはこれまでの議論の整理等について、国民の皆様一人一人あるいは関係団体、関係者の方々にわかりやすくお示しし、ご意見ご提案を承ってまいりたいと考えている。
 ○ この医療保険福祉審議会は、省庁再編に伴い社会保障審議会に統合される。統合の趣旨は、政策審議を行う審議会を原則廃止をし、法令による必要的付議事項あるいは基本的な政策を審議するものについて、数を限定して存置するという各省共通の方針から行われたものである。部会の設置等ご議論があろうと思うが、1月6日の厚生労働省の発足と社会保障審議会の発足に伴いまた検討されることになる。ただ、どういう形でやるにせよ、改革案を作っていくプロセスでは関係者の皆さんのご意見を承ることは重要なことであり、関係者の方々によくご議論いただくような形で改革の案のとりまとめ等を進めていくことになろう。

(高木委員)
 ○ 日本の行政はこれまで国民を統治の客体と見る行政を続けてきた。それが今大いに反省を求められているだろうと思う。その中で、政策形成への国民の参加という視点で言えば、政策とか基準作成機能を持つものは原則として廃止と(いうことは驚きだ)。他はパブリックコメント等で補完するという論理かも知れないが。
 ○ 先ほど私は領収書のことを申したが、領収書を代表して500円払った人が、その返還請求を求めるのに行政訴訟でやるのか民事訴訟でやるのか、それとも併合でやるのか。そういったことを含め民主主義の原理は21世紀にまた違った意味で整理されていかなければいけないと思う。
 ○ 日本の行政は広すぎる裁量権を持っている。例えば厚生省もいろいろ関わっている行政不服審査制度に関する問題点を多く持っているが、これにはお役所の裁量に関わるようなことには関与させないと書いてある。基準作成機能については、全体で決まった話であってここで議論する話ではないかも知れないが、私は今日ここで初めてこのペーパーを見たので、敢えて言わせていただいている。この社会保障審議会とその6つの分科会について、抽象的に「基本的な政策は審議する」と書いてあるが、政策はいけないが基本的な政策はいいというのはどういうことであろうか。こういうアプローチをするのならば、極端に言えば今後は、一人一人の国民にとっては具体的な不合理、不当、不法、違法に対して、一つ一つ裁判で争いながら公的なルールを修正していくしかないということであろう。
 ○ 具体的にどこで決めていくかは、これから考えるということだから、我々としては拝見しているしかないと思う。

(井形委員)
 ○ 今後は本当に国会主導型になるのだろうと思うが、それならば国会にそれに代わるべき政策立案者のブレインを集め、しっかりと準備し、しかも国民に公開してやるシステムが確立していないと、政治家の思いつきで政策ががらがら変わってその後始末だけをこういう委員会がやるというのは、どう考えても不合理である。

(金平部会長)
 ○ これについてまた議論ということにはできないので、ご意見としてとどめたい。
 ○ 審議会の基本政策部会というのは本日で最後であるので、近藤保険局長から一言ご挨拶をお願いしたい。

(事務局 近藤保険局長)
 ○ 暮れの押し迫った中でお集まりいただき、ご議論いただき感謝している。保険者機能の問題も宿題としてずっと頭にあったが、(他にも)いろいろと事業があり、本当に押し詰まった段階でご審議ということで大変ご不快な思いをさせたことについては、私からもお詫びを申し上げたい。
 ○ この審議会も省庁再編に伴い再編成され、社会保障審議会という形で引き継がれるわけであるが、高木先生のご指摘のとおり、この再編成の趣旨は、今まで役所が隠れ蓑的に審議会を使ってきたという反省の下、審議会として意見は聞くが、内閣あるいは大臣として政治決定すべきであるということだと理解している。
 ○ 社会保障審議会の中でどのような形で団体あるいは国民の声を吸い上げていくかということについては、審議会の中で考えるべきことでもあり、私どももこの審議会だけでなく様々な場に出かけたり、あるいは個別にお集まりいただいてご意見をいただく等、私どもが独善に陥らないような方法をこれから模索する必要があるだろう。非常に曖昧な形で審議会が発足するため、まだ試行錯誤の面があろうかと思うが、個別でも結構なのでご意見、ご示唆をいただければ幸いである。
 ○ いずれにせよ、新省発足に伴い、医療保険福祉審議会は廃止になる。これまで58回にわたり熱心にご議論いただいた。提言された中身が実現できなかった面が多々あり、非常に忸怩たる思いもあるが、ここでご審議があったためにかなり今までよりは一歩でも二歩でも前に進んだという感じがする。委員の方々には大変ご苦労いただいたが、この席を借り厚く御礼を申し上げるとともに、今後ともよろしくお願い申し上たい。

(金平部会長)
 ○ 一言ご挨拶をさせていただく。
 ○ この医療保険福祉審議会は平成9年11月に設けられ、平成12年の春に医療保険の抜本的な改正をするための審議という触れ込みであった。そのような中、制度企画部会は特に精力的な審議を行った。新たな高齢者医療の在り方について、診療報酬の体系の在り方について、あるいは薬剤給付の在り方について、意見書をとりまとめることができた。今、近藤局長からもお話があったが、私どもは当初精力的に審議を行ったが、これまでの改革を見てみると、必ずしも私たちの部会が出した意見書あるいはその目指した方向、姿、形がそのままには実現できなかったということは大変残念である。しかし、形は異なるが、我々がここで一生懸命に議論したこと、そして目指した方向に、局長のお言葉を借りれば一歩でも二歩でも前進したということであり、私もそれを信じたい。
 ○ 今後ともそういった方向に歩みが進むことを願いたい。今日でこの部会は幕を閉じるが、これまで議論したことを、ペーパーにならなかったことも含め、ここに記録としては残っている。21世紀に医療保険の改革という大きな宿題が残るが、なんといっても皆が安心して良い医療をしかも効率的に安く受けられるようにということは皆の願いだろうと思う。21世紀において抜本的な改革が速やかに行われるように期待し、大変拙い部会長であったが、この会を閉じたい。
 ○ 本日まで、運営にご協力いただき、また様々なご指示いただき、あるいはご意見を活発にいただいたことを、部会長としても心から感謝を申し上げ、私の仕事を終わらせていただく。
 ○ それではこれで閉会とする。


 (了)


照会先:保険局総務課 内山(3227)


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