00/11/30 第1回肝炎対策に関する有識者会議議事録    第1回肝炎対策に関する有識者会議                  議 事 録          第1回肝炎対策に関する有識者会議                議事次第 1 日時 平成12年11月30日(木) 15:00〜 2 場所 中央合同庁舎5号館7階 厚生省特別第一会議室 3 議事  (1)有識者会議開催の経緯及び主旨について  (2)肝炎に関する現状について  (3)肝炎に関する疫学的状況について  (4)今後の肝炎対策について (5)その他 4 配布資料 資料 1−1 主なウイルス性肝炎の概要 1−2 CDCーVIRAL HEPATITIS C-FACT SHEET 9/29/2000版(仮訳及び原文) 1−3 ウイルス性肝炎患者等の状況 1−4 肝がん死亡者数等の状況 資料 2−1 ウイルス性肝炎対策の経緯     2−2 血液製剤におけるウイルス性肝炎対策について 2−3 ウイルス性肝炎対策等における予算の現状     2−4 ウイルス性肝炎対策における研究の概要 参考資料 1 肝炎対策に関する有識者会議名簿  参考資料 2−1 VIRAL HEPATITIS C FREQUENTLY ASKED QUESTIONS (一部仮訳及び原文)        2−2 MMWR RECOMMENDATIONS FOR PREVENTION AND CONTROL OF HEPAT ITIS C VIRUS(HCV) INFECTION AND HCV-RELATED CHRONIC DISEASE S(仮訳及び原文) 吉澤委員提出資料 肝炎に関する疫学的状況(吉澤委員) 飯野委員提出資料 肝がん白書         (社)日本肝臓病学会            慢性肝炎診療のためのガイドライン 〃       肝がん撲滅のために          〃  ○南野管理官 定刻になりましたので、ただいまから第1回肝炎対策に関する有識者会議を開催いたし ます。 まず、会議を開催するに当たり、福島総括政務次官より御挨拶申し上げます。 ○福島総括政務次官  総括政務次官の福島豊でございます。実は、本日は3時から参議院の本会議が開催さ れることとなっておりまして、津島厚生大臣は、本日は健康保険法の改正案、そしてま た、医療法等の改正案の採決がございますので、本会議に出席することがかないません 。 したがいまして、私が代理といたしまして一言御挨拶をさせていただきたいと思ってお ります。  肝炎対策に関する有識者会議の開催に当たり、一言御挨拶申し上げます。  本日お集まりの皆様におかれましては、日頃より厚生行政の推進につきまして、格別 の御協力をいただき、この場をお借りしまして改めて御礼を申し上げます。  また、このたびは、各々の専門分野で多忙を極める御活躍をなさっておられる先生方 に本会議への参加を快くお引き受けいただきましたことに対し、厚く感謝を申し上げる 次第でございます。  さて、先般から報道されておりますC型肝炎につきましては、持続感染者、すなわち 慢性的に肝炎ウイルスに感染している方が我が国においても 100万人ないし 200万人お られると言われており、さらに、B型肝炎につきましても、同様の持続感染者が 120万 人から 140万人おられると言われております。これらの感染者の一部から、治療が奏功 しない場合、感染後数十年を経て肝硬変、さらには現在増加著しい肝がんの患者が発生 するとされており、症状のあらわれない持続感染者を放置すれば、慢性肝炎は21世紀の 国民病にもなりかねない重要な問題であると考えているところでございます。 厚生省といたしましては、これまで昭和54年に厚生省肝炎研究連絡協議会を設置した のをはじめ、研究、医療、相談、普及啓発など、さまざまな肝炎関連の対策を進めてま いりました。しかしながら、特にC型肝炎ウイルスは12年前に発見された新しいウイル スであり、治験も十分でないことから、これまで有効な対策を講じることはなかなか困 難な問題でありました。しかしながら、研究者をはじめとする関係者の方々の懸命の御 努力の結果、予防や診断、治療技術の向上や普及など、肝炎ウイルス感染者の方々に朗 報となるべき新たな道が開かれつつあり、また、諸外国でも我が国の参考となるさまざ まな対策が講じられておるとも聞いております。このような状況の変化を踏まえ、肝炎 ウイルス問題の克服に向けて、厚生省としても、これまでの対策を総点検し、より効果 的・総合的な対策を講じることが必要であると考えております。  肝炎ウイルスによる感染原因は、血液製剤による感染など、さまざまな要因が指摘を されておりますが、対策の要点は、国民にC型肝炎等に関する正しい知識を持っていた だくとともに、肝硬変、さらには肝がんへの進行を効果的に防ぐ方策や、そのために必 要な対策のあり方・方向を明確にすることであると考えております。そのため、今回の 検討に当たりましては、要因のいかんにかかわらず、広く感染者全体を視野に置いて議 論を進めるべきではないかと考えております。  このような状況のもと、省内に肝炎対策プロジェクトチームを設置し検討を開始した ところでございますが、有識者の方々の科学的・専門的な見地からの御助言が不可欠で あることから、肝炎対策のあり方について御意見を賜る場として肝炎対策に関する有識 者会議を設置し、先生方に御参加をいただくこととしたところでございます。厚生省と して早急に必要な対策に着手するため、年度内を目途に御意見をおまとめいただければ 幸いでございます。先生方には、御多忙中、恐縮とは存じますけれども、より多くの国 民の皆さんからウイルス性肝炎の御苦労を軽減するため御協力いただきますようお願い をいたしまして、私の御挨拶とさせていただきます。先生方、よろしくお願いいたしま す。 ○南野管理官  ありがとうございました。それでは、本日、御出席いただいている委員の方々を御紹 介させていただきます。私の方からお名前を申し上げますので、一言ずつ自己紹介をお 願いいたします。あいうえお順で御紹介いたします。飯野委員です。 ○飯野委員  飯野です。よろしくお願いいたします。 ○南野管理官  石井委員です。 ○石井委員  石井裕正です。慶應義塾大学医学部でございます。よろしくお願いします。 ○南野管理官  遠藤委員です。 ○遠藤委員  遠藤久夫でございます。学習院大学経済学部でございます。 ○南野管理官  岸委員です。 ○岸委員  岸でございます。読売新聞の論説委員をしております。よろしくお願いいたします。 ○南野管理官  齋藤委員です。 ○齋藤委員  齋藤でございます。名古屋大学です。よろしくお願いいたします。 ○南野管理官  島田委員です。 ○島田委員  島田でございます。今、東京専売病院におります。医科研におりました頃は感染症や エイズをやっておりました。どうぞよろしくお願いいたします。 ○南野管理官  下遠野委員です。 ○下遠野委員  下遠野と申します。京都大学ウイルス研究所に勤めております。 ○南野管理官  杉村委員です。 ○杉村委員  杉村でございます。国立がんセンターの名誉総長を務めております。 ○南野管理官  矢野委員です。 ○矢野委員  矢野でございます。国立長崎中央病院に勤務しております。よろしくお願いいたしま す。 ○南野管理官  雪下委員です。 ○雪下委員  雪下でございます。日本医師会から参りました。 ○南野管理官  吉澤委員です。 ○吉澤委員  吉澤でございます。広島大学から参りました。よろしくお願いいたします。 ○南野管理官  若林委員です。 ○若林委員  若林です。国立がんセンター研究所に勤務しております。よろしくお願いします。 ○南野管理官  ありがとうございました。なお、本日は、浦川委員、曽野委員、久道委員が御欠席と の連絡をいただいております。また、岸委員は所用によりまして途中で退席されます。  続きまして、厚生省側の出席者について、メインテーブルの着席者のみ紹介させてい ただきます。篠崎保健医療局長です。 ○篠崎保健医療局長  篠崎です。よろしくお願いいたします。 ○南野管理官  堺大臣官房審議官です。 ○堺審議官  堺でございます。 ○南野管理官  岩尾厚生科学課長です。 ○岩尾厚生科学課長  岩尾でございます。 ○南野管理官  それでは、カメラはここで退席をお願いします。                 (報道陣退室) ○南野管理官  本有識者会議の公開について御説明を申し上げます。本有識者会議での議事、配付さ れる資料等につきましては原則として公開といたしますが、個人情報等プライバシーに 関わる部分は非公開といたしたいと存じますので御了承いただきたいと思います。  それでは、会議を始めるに当たりまして、本有識者会議の座長を杉村委員にお願いし たいと存じますが、いかがでしょうか。                 ( 拍  手 ) ○南野管理官  ありがとうございます。また、副座長につきましては、座長に御指名をいただきたい と思いますが、いかがでしょうか。                 ( 拍  手 ) ○南野管理官  それでは、杉村委員、指名をよろしくお願いいたします。 ○杉村座長  それでは、いろいろ大変立派な方がおられる訳でありますけれども、御年配でもあり 、過去の御経験のこともあって、島田先生に副座長をお願いしたいと思いますけれども 、いかがでございましょうか。                 ( 拍  手 ) ○杉村座長  どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。 ○南野管理官  杉村先生、島田先生、よろしくお願いをいたします。それでは、杉村座長、恐縮でご ざいますが、座長席にお移りいただきたいと思います。              (杉村座長、座長席に着席) ○杉村座長  それでは、ただいま御指名がありましたので、座長を務めさせていただきます。いろ いろ至らないところがあると思いますけれども、副座長の島田先生はじめ、皆様の御協 力をいただきたいと存じます。  本日は第1回目でございますので、本問題に関する状況等々を詳細に知ることが一番 大切かと思いますので、早速、議事に入りたいと思いますけれども、事務局から配付資 料の御説明、皆様による御確認をお願いしたいと思います。 ○南野管理官  それでは、配付資料につきまして御確認をいただきたいと思います。  まず、資料1−1「主なウイルス性肝炎の概要」という1枚紙でございます。次に、 資料1−2といたしまして、頭に「CDC」と書いておりますCDCの米国の状況につ いてまとめた資料でございます。次が資料1−3「ウイルス性肝炎患者等の状況」とい う1枚紙、横紙でございます。それから、資料1−4、右上に「肝がん死亡者数等の状 況」と書いてある資料でございます。次に資料2−1でございますが、横紙で「ウイル ス性肝炎対策の経緯」と書かれた資料でございます。資料2−2が「血液製剤における ウイルス性肝炎対策について」。資料2−3、横の1枚紙でございますけれども、「ウ イルス性肝炎対策等における予算の現状」。それから、資料2−4が「ウイルス性肝炎 対策における研究の概要」でございます。次に、参考資料1といたしまして本有識者会 議の名簿を用意してございます。それから、参考資料2−1といたしまして、米国CD Cが作成いたしましたC型肝炎に関する質疑応答集、仮訳と原文でございますが、仮訳 は質問の部分のみ用意いたしてございます。それから、参考資料2−2でございますが 、頭に「MMWR」と書いている資料でございますけれども、これもCDC作成のC型 肝炎等の予防及びコントロールに関するリコメンデーションでございます。なお、この 資料につきましては、急遽、外部に翻訳を委託してでき上がったばかりでございます。 その関係で中身を十分チェックできていない点がございますことを前提にご覧いただき たいと思います。それから、吉澤委員から提出いただいた「肝炎に関する疫学的状況」 という資料でございますが、この資料につきましては、メインテーブルのみカラーコピ ーとなっておりますので御了承いただきたいと思います。なお、追加で2枚ほどホッチ キスでとめた資料がございます。これも併せて御確認をいただきたいと思います。次に 、飯野委員から御提出いただきました資料でございます。日本肝臓学会がおまとめにな りました「肝がん白書」、それから「慢性肝炎診療のためのガイドライン」、「肝がん 撲滅のために」という冊子でございます。  以上でございますが、不足がある場合にはお申しつけいただきたいと思います。 ○杉村座長  皆様、いかがでしょうか。資料はお手元にそろっておりますでしょうか。どなたか欠 けている方がございましたら御遠慮なく。よろしゅうございますか。  では、資料は皆様のお手元にあるということでございますので、早速、本日の議題の 第1番目であります本有識者会議を持つようになった経緯等々について御説明をいただ きます。それから、肝炎に関する現状についても続けて御説明いただいてしまいましょ うか。よろしゅうございましょうか。それでは、岩尾課長、よろしくお願いいたします 。 ○岩尾厚生科学課長  それでは、座ったままで失礼させていただきますが、私の方から御説明をさせていた だきます。  まず、この会を持つに至った経緯でございますが、実は厚生省は平成8年以来、さま ざまな健康に関する危機といいますか、問題が起きた訳でございます。例えばO-157の 問題、それからサリンの問題、はたまた和歌山のカレー事件とかいろいろありまして、 健康に被害を及ぼすということについて行政として迅速な対応をとるべしということで 、厚生省の厚生科学課に事務局を置きます危機管理会議というものを持つようになりま した。そして、2週間に一遍ずつ幹事会あるいは本会議を開きまして、その週のトピッ クスについてどのように対応していくかということを議論しております。  その中で、実は非加熱製剤によってC型肝炎にかかったという記事が出まして、この 問題をどのように取り扱うかということで、その週、早速会議が開かれた訳でございま すが、C型肝炎の問題というのは新しくて古いというか、古くて新しいというか、昔か ら存在していた訳でございまして、果してハイリスクと言われる人たちにどのような対 策をとっていくべきなのかということが結果として議論になった訳でございます。もと より私どもは、全体として 100万とも 200万とも言われているC型肝炎、あるいはその 前に問題となっておりますB型肝炎のような、いわゆる肝炎対策ということを厚生省と しても適宜進めてきたつもりではございますが、結果としてなかなか根治的な治療に至 らない現状もございました。そのような中で、特に最近のゲノム科学の進歩といいます か、ウイルス学、あるいはウイルス研究に伴うさまざまなDNA解析の進歩に伴いまし て、根治的な治療法というものに曙が見えてきたのではないかという研究結果などもい ただくようになりました。先ほど政務次官の挨拶にも21世紀の国民病になるという話が ありましたが、これは、たしか昭和54年に、当時の日本医師会長の武見太郎先生がその ような発言をなさったと私は記憶しておるのですが、私どもとしても、やはり数百万人 のオーダーでこのような病気が存在し、それを治していけないというのは、医療・医学 、特に研究・診療に携わる者としては残念であり、そういう分野を積極的に支援し、20 世紀には国民病と言われたかもしれないけれども、21世紀にはこれを根治する、また 、根治できるというようなところに持っていけるのではないかというふうに考えた訳で ございます。  ですから、出発は危機管理という発想が新聞情報その他で当初考えていた訳ですが、 もう少し厚生省として根本的な肝炎対策というものを考えていくべきだろうという議論 になりまして、そのためには、行政のみならず、この分野に御関心、あるいは御研さん を積まれている先生方に、対策が立てられるようないろいろな建設的な御意見をいただ き、そして、もう再来月になりますが、そういうものを来世紀からきちんとできるよう なものにしていきたいということで、この有識者会議を持たせていただいた訳でござい ます。ですから、行政の対策と先生方の御提言を車の両輪のような形で進められればと いうことで設置させていただきました。  そのような訳で、今日は最初ということで、先生方には当然の知識になっているのか もしれませんが、共通理解を得ていただくということで、私どもの方でつくった資料、 それから本日御出席いただいた先生の方で用意していただきました資料を机の上に配付 させていただいたということでございます。とりあえず資料1と2が私どもの方でつく らせていただいたものでございますので、それについての御説明をさせていただきます。  まず、資料1−1でございますが、いわゆる肝炎には、もちろんウイルス以外に、ア ルコール性ですとか薬剤で起こるような肝炎がございますが、とりあえず、ここではウ イルス性肝炎ということで代表的な3つのものについての比較をしてございます。この ほかに、下にもありますが、D型、E型、F型はなかったのですが、G型まであるとい うような話も聞いておりますが、これは御専門の先生がおられるので、後でお話しいた だければと思います。  今問題になっておりますのは、B型、C型肝炎ということで一番右に書いてございま す。現在まで構造もすべてわかっておりまして、たしか下遠野先生が全長を解析いただ いたというふうにも聞いておりますが、C型肝炎の構造がわかっている。それから、感 染経路もそこにあるようなもので、B型肝炎と異なって母子間感染、いわゆる垂直感染 ですとか、夫婦間の性交渉による感染というのはまず起こらないというふうに言われて おります。輸血後、血液を介して起こるということでございますので、そこにございま すように、潜伏期間が2週間から16週間。症状としては、一般的な肝炎の症状を示す訳 ですのでC型肝炎と言っている訳ですが、症状から見て肝炎ウイルスと言っている訳で 、B型、C型を見ておわかりのように、DNAウイルス、RNAウイルスという、属と いいますか、種類の違うウイルスであります。現在までB型肝炎は、これは飯野先生は じめ、いろいろな先生方の御努力でワクチンもでき上がりましたが、C型肝炎について は現在、研究開発中というふうに聞いております。そういう意味で、治療方法は現在、 対症療法しかないということですが、インターフェロンの適用拡大ということもこの4 月になされまして、慢性肝炎の改善効果もあるというふうに聞いております。この辺も 後ほど臨床の先生方からお話を伺えればと思います。ただ、下に書いてございますが、 このウイルスがわかったのが昭和63年ということで、B型肝炎に比べると十数年のタイ ムラグがございます。また、検査方法が確立したのが平成元年ということでございます ので、日本は世界に先駆けてといいますか、かなり早い時期からこのような検査も入れ ておりますが、全体としてはウイルスが見つかってからまだ十数年ということでありま す。  資料1−2でございますが、このような肝炎はアメリカではどうなっているかという のが、アメリカのCDCのFact Sheetから抜粋して仮訳を付けたものでございます。現 在、アメリカではC型肝炎による方が1996年の推定値で発生率として年間3万 6,000人 出てくるということのようです。転帰としてそこに幾つかの症状がありますが、有病率 としては米国人の 1.8%ということが言われています。ハイリスクグループとして、注 射薬物、麻薬の回し打ち、その他の話もよく聞くところですが、あと透析、保健医療従 事者、性的接触者云々というようなことがあります。また、特記してございますが、1992 年7月以前の輸血のレシピエント、87年以前の凝固因子製剤のレシピエントということ も書かれております。傾向として、アメリカは、やはり薬物中毒が多いということで、 新患の多くがハイリスクの薬物中毒ということで、むしろアメリカも今後大変問題にな っていくだろうという予測がございます。検査をすべき対象としては、抗体陽性供血者 由来の血液のレシピエントということで、92年7月以前の輸血、もしくは固形臓器のレ シピエントですとか、87年以前の凝固因子製剤のレシピエントですとか、それから慢性 の血液透析患者、非合法薬物の注射をした人ですとか、そういうようなことが幾つか書 いてあります。  アメリカがこういう状況だということで、前後しますが、日本ではどうかというのが 資料1−3でございます。現在、私ども新しい感染症法による感染症の発生動向調査で 肝炎として上がってくるものが月別に報告が取れるようになっておりますが、平成11年 度、12年度を見ますと、A、B、Cそれぞれ発生がございます。最初に説明を省かせて いただきましたA型肝炎は、食中毒様の症状を起こすということで時期的にばらつきが ございますけれども、B型、C型、特にC型肝炎は昨年度が総計で 166名。今年は9月 までで75名ということで、大体その程度の数でございます。先ほど言いましたが、アメ リカと比較いたしますと、日本の発生率はアメリカより現在は新患としてははるかに少 ない訳ですが、キャリアとして、つまり過去に感染した人たちというのが 100〜 200万 人いるというような推定がございます。  この辺の細かいところは多分、吉澤先生から後でお話しいただけるかと思いますが、 資料1−4を見ていただきますと、現在の日本の状況をもう少しブレークダウンして書 いております。まず、資料1−4は肝がん、これも後から説明があるかと思いますが、 ウイルス肝炎、特にC型肝炎になりますと、後々肝がんになる確率が高いという話があ りますので、ちょっと先回りをして肝がんの資料をそこに付けてございますが、日本で 最近増えていると言われているのに肺がんと肝がんがございます。一番下の図を見てい ただくとわかりますように、昭和45年からのデータが出ておりますが、男では平成10年 に至るまでずっと右肩上がりになっております。それから、女性も右肩上がりに上がっ ておりまして、男では全がん中第3位、女性では全がん中4位というのが現在の肝がん の状況でございます。先ほどの21世紀に国民病という話の1つに、このように実は肝が んがますます増えていくのではないかということも想定されておりまして、そういう意 味では、その原因となり得るウイルス性肝炎対策も必要だということがこの資料に付け させていただいている訳でございます。  続きまして、では、そのような肝炎に対して厚生省はどういうことをしてきたのかと いうことを今度は資料2の方で御説明させていただきたいと思います。  事の起こりでよく話題になりますのが、東京オリンピックの年に、当時のライシャ ワー駐日大使が治療のために輸血を受けたところ肝炎になった。この当時はB型肝炎で ございますが、黄色い血などで売血の問題が大変トピックになりまして、真ん中にござ いますが、昭和44年、売血制度廃止というようなことになっております。一方、肝炎の 原因ということで、オーストラリア抗原(AU抗原)が43年に見つかったとか、B型肝 炎の垂直感染の報告とか幾つか書かれておりますが、こういう流れがありました。献血 血液に対してのB型肝炎のウイルス検査の導入、抗原検査が47年に行われておりますが 、私どもの研究は昭和30年代からずっと行ってきております。  1ぺージの真ん中の欄の下から2番目に厚生省肝炎連絡協議会発足ということが書い てございます。昭和54年に、省内の体制ではございますが、要するに感染症として捉え る、それから輸血後の問題として捉える、省内横断的に肝炎対策をしなければいけない ということがありまして、実はこの連絡協議会を持ったという経緯がございます。今日 まで続いておりまして、結果的にこのような会議を開くことができたのも、このテーブ ルの両側にそれぞれ関係各課がおりますが、こういう関係各課との共同で今日まで進め ているところでございます。それから、院内感染のガイドライン等々ございまして、次 のぺージにまいりますが、幾つかの手引きをつくっております。それから、B型肝炎の ワクチンができまして、昭和60年代に入りますと、インターフェロンについての適用で すとか、そういう流れになっております。  先ほどの表にもありましたが、C型肝炎がC型とわかるまで、私どもは、AでもBで もないということで、non-Anon-Bですとか、非A非B型の肝炎という言い方をしてお りました。先ほども言いましたうように、ウイルスが同定されたのが昭和63年というこ とですので、そのときまでは非A非Bの研究班ということでずっと精力的な研究をして いただいていたということがございます。ウイルスが同定されると同時に検査法の開発 ができまして、次の3ぺージになりますが、厚生省の研究班でもC型肝炎対策というこ とで積極的に始めさせていただきました。献血血液に対してのウイルス抗体の検査です とか、それから、この関連の検査に保険の適用をする話ですとか、インターフェロンに ついてもC型肝炎について保険適用できるというようなことを積極的にとっております 。  それで、平成4年に、昔のPCRですが、第2世代のHCVの抗体検査法というものを 導入しております。それから、平成11年にNAT法という方法を取り入れて献血血液の 検査をするということになりました。それで、最初に申し上げましたが、保険適用の拡 大がこの4月になされたという経緯がございます。  今お話ししたことに加えまして、特に血液の製剤についてウイルス性肝炎対策をどう したかというのをもう一遍特記したのが資料2−2でございます。重複になりますので 書いてあるところをざっとながめていただければと思いますが、B型肝炎、C型肝炎に それぞれ学問的といいますか、治験が確立してから結構早い時期に検査に取り入れまし て、結果としてどうなったかというのが次のぺージを見ていただけるとおわかりだと思 いますが、昭和30年代、1960年当時の売血時代に輸血後肝炎の発症というものを調べま すと、当時、2人に1人ぐらいの割合で肝炎になっていたのが、さまざまな制度改正、 あるいは検査方法の開発等々で輸血によってはかなり少なくなってきて、現在は輸血血 液から見つかるケースがかなり減ってきたということであります。 それから、今のはさまざまな対策ですが、もう1つ、私どもは肝炎に対して研究費も 補助しております。資料2−3にいろいろ細かいことが書いていますが、これは事業費 的なものでまとめてございます。肝炎及び肝がんに関係する経費ということで、直接、 ウイルス性肝炎及び肝がん対策に対する事業費としては、ここに平成8年から12年まで 幾つか書いてございますが、このような形の事業をしております。その他関連経費とい うことで幾つかの検診ですとか情報収集のための経費などをそこに組んでおります。  厚生科学研究費、あるいはその他の厚生省の研究費も含めて、平成8年から12年まで の研究としてどんなことをやっているかというのが、そこに8年から一覧で出ておりま す。今年の研究費で12年というところを見ていただきますと、今日、委員で来ていただ いている何人かの先生にも研究をお願いしておりますが、C型肝炎を中心として幾つか の研究を精力的にやっていただいているということでございます。これだけのことを現 在までやってきて、そして最初に申し上げました21世紀に向かって肝炎を撲滅する、省 を挙げて取り組みたいということで、これに加えて、いろいろと先生方からのお知恵を 拝借できればありがたいということでございます。  私からの説明は以上でございます。 ○杉村座長  岩尾課長、どうもありがとうございました。ただいま有識者会議の開催に至った経緯 とその主旨、続いて資料を用いて肝炎に関する現状、あるいは過去のいろいろな研究、 その支援というような御説明がありました。  続きまして、本日は、まず事実を正確に理解したいと思いますので、大変恐縮ですけ れども、疫学的な状況について吉澤委員から御説明をいただけますでしょうか。これは 、先ほど御説明がありましたような、「肝炎に関する疫学的状況」という資料がござい ますけれども、スライドに同じものが出るということでございます。では、どうぞよろ しくお願いいたします。 ○吉澤委員  御紹介いただきました吉澤でございます。(以下変更) 今、岩尾課長から御説明があった研究班の中の1つを、平成8年からお預かりさせてい ただきまして、3年前からは新興再興感染症研究の中の肝炎研究班をお預かりさせていた だいております。ここでお話するのはその総括でありまして、C型肝炎の現状がどうなっ ているか、肝がんとの関係がどうなっているのかについて見ていただきます。  先ほど御説明がありましたように、ウイルス肝炎というのは便から口へ感染するもの と、血液を介して感染するものとに大別されます。これらは、かつて伝染性肝炎と血清 肝炎と呼ばれておりましたが、今日では、このうちの血清肝炎、B型とC型肝炎が問題と なっております。これらは持続感染して終末病態としての肝がんと関係があるという特 徴があります。  スライドをお願いいたします。日本の肝がんの推移を図にいたしますとこうなります 。日本の肝がん死亡(人口10万当たり)は、1975年を境にして増え始めておりまして、 現在も増え続けているという状態にあります。この中で、肝がんの原因の95%以上はB型 肝炎ウイルス、もしくはC型肝炎ウイルスの持続感染によるというのが特徴であります。 この中で、70年代にはB型の肝がんが40%、残りは非A非B型でしたが、現在、増えている のは非A非B型の肝がんであることがわかっています。C型肝炎ウイルスがみつかって、診 断ができるようになってから、非A非B型の肝がんについて調べてみますと、そのうちの 90%以上はC型肝炎ウイルスの持続感染によるものでありまして、肝がん死亡の増加には C型肝炎ウイルスの持続感染が寄与していることがわかっていまいりました。これが時間 的推移でありまして、今度は空間的な広がりを見ていただきます。  スライドをお願いいたします。70年代の、B型肝炎ウイルスの感染による肝がんが大体 4割、残りの6割を非A非B型が占めていた時代の全国の市町村別の肝がん死亡の標準化死 亡比(Bayes methodによる)を表したマップです。赤いところが肝がん死亡の多いところ でありまして、西高東低という傾向は昔から言われていたとおりであります。注意して いただきたいのは、先ほど申し上げましたとおり、B型は増えも減りもせず今日に至って おり、C型だけが増えています。C型が増えたという状態をこの図に上塗りしてみます。  スライドをお願いいたします。90年代に入りますとこうなります。多いところは九州 の北部から瀬戸内沿岸、そして大阪湾岸、そして富士の麓、このように肝がん死亡の地 域分布は70年代に比べてさらにクリアに分かれてまいります。この時点では肝がんの76 %はC型肝炎ウイルスの持続感染による訳であります。次に、肝がん死亡の地理的分布と C型肝炎ウイルスの感染率を比較してみます。  スライドをお願いいたします。これは献血者(供血者)で見たC型肝炎ウイルスの感染率 です。対象者は献血者ですから、原則として自覚症状がなく、自分が健康だと思ってい て献血をして、たまたまC型肝炎ウイルスに感染していることがわかった人たち、という ふうに御理解いただければいいと思います。全部で27万人を対象として調べてあります 。先ほどの肝がんによる死亡が多かった九州北部、瀬戸内沿岸、大阪、これらのところ では感染率が明らかに高いことがわかります。感染率が高くて、しかも現時点で肝がん 死亡が多い地区の特徴は何かといいますと、50歳以上の年齢層での感染率が高いという ことでありまして、若い年齢層ではいずれの地区でも感染率が低い。これが現在の日本 の特徴であります。これを国際比較してみます。  スライドをお願いいたします。国際比較してみますとこうなります。これが広島の血 液センターの献血者でみた年齢別の感染率です。見ていただいてわかりますように、60 ~70歳代では6%を超えております。これに対して、若い人では非常に少ない。私たちは ウクライナ共和国のキエフ市血液センターと共同研究しておりまして、これがキエフ市 での供血者の感染率の実測値です。そして、これはアメリカのCDCのリポートから引用し たものです。アメリカでは、感染のピークは大体40歳前後にあります。一方、肝がんの 発生は、大体50歳を過ぎたあたりから始まって、60〜70歳代にピークをむかえるという 特徴があります。したがって、今、日本で肝がん死亡が増えているのは、感染率の高い 年齢層が肝がんの好発年齢に到達しているということであります。アメリカは、間もな く感染率の高い年齢層が右方移動してきますから、肝がんの好発年齢と感染率の高い年 齢層が重なり始めることになります。それから10年遅れて旧ソ連邦、つまりウクライナ がそういう形になるという訳であります。ですから、アメリカでは感染率が何%で、何 人ぐらいキャリアがいる。日本では感染率が何%で、何人ぐらいキャリアがいる。だけ ど、日本の方が肝がんが多いのはおかしい、とよく言われますが、肝がんの発生という のは好発年齢と感染率の高い年齢層との重なりで決まるわけでありまして、間もなくア メリカは肝がんが増加する時期に到達し始めるということであります。  スライドをお願いいたします。日本の中で、自覚症状が全くなくてC型肝炎ウイルスに 感染している人たちの肝臓の病態を見たのがこの図であります。これは広島の血液セン ターで、献血を契機にたまたまC型肝炎ウイルスに感染していることがわかった人たち、 約900人おりますが、その人たちを肝臓の専門医のいる特定の病院に健康管理を依頼した 際に診断をしていただいた結果をまとめたものであります。見ていただいてわかります ように、慢性肝炎が65%、これは臨床診断ですが、こう診断をされております。肝がん 、肝硬変と診断されている例まであります。これを見ていただいてわかりますように、C 型肝炎の特徴は自覚症状がないことが多いということであります。なお、慢性肝炎と診 断された人たちを5年間ほど前向きに追跡してみますと、この中から新たに6例の肝がん が出てきていることが確認されております。  スライドをお願いいたします。C型肝炎ウイルスに感染した人の自然経過はどうなる か。このことは長年の懸案でありましたが、ようやくお見せできるところまでになりま した。 献血を契機に見つかったC型肝炎ウイルスのキャリアの人と、病院に通っているC型慢性 肝炎の人たち合計1,400人ですが、その人たちの1年ごとの病態の進展度合い、年次推移 を出しまして、それを数理モデルに入れて算出しました。マルコフの過程モデルと言い ます。男性と女性について、経過観察開始時点の年齢を40歳に設定しますと、大体、男 性では肝がんは50歳あたりから立ち上がって、60歳以上でこうなります。女性ですと、 男性より大体5年ぐらい後ろにズレた年齢層で立ち上がってくる。肝がん発生率を見てい ただくと、女性よりも男性の方が肝がんに到達する率そのものも高いという訳でありま す。こういうことから、40歳前後を起点として肝がん対策を立てていけば大体間に合う のではないかということを提言するに至ったわけであります。  スライドをお願いいたします。つぎに、C型肝炎ウイルスがどのようにして社会に蔓延 したかということ。これまでの調査によって得られたいくつかの事実及び傍証をもとに して組み立てた、仮説の段階ではありますが、順を追って見ていただきます。このデー タがそもそもの出発点でありまして、私たちは1992年の段階で、覚醒剤を使っている人 たちの集団について感染率をみる機会を持ちました。IVDUと書いてありますが、これは 覚醒剤依存者です。この集団内でのC型肝炎ウイルスの感染率は78.9%という驚くべき数 字であります。C型肝炎ウイルスよりも感染力が強いにもかかわらず、B型肝炎ウイルス の暴露率(感染既往率)は42%であります。どうしてこうなるかといいますと、成人が B型肝炎ウイルスに感染した場合、そのほとんどが一過性感染で治ってしまうのに対し て、C型肝炎ウイルスに感染した場合には、その半数以上、輸血で感染した場合は70〜 80%がキャリア化、つまり持続感染状態になります。つまり、C型肝炎の場合、感染を もらった人が新たな感染源として累積をしていく。ですから、感染がおこるハイリスク 行動(この場合は、注射筒、注射針を共用する覚醒剤の使用)を繰り返し繰り返しして いきますと、その集団の中に次第に感染者の累積が起こって、最終的には感染爆発が起 こるというわけです。78.9%の感染率というのは、その結果であります。  スライドをお願いいたします。これは、報道された、覚醒剤取締法違反で逮捕された 人の数の推移であります。1951年に覚醒剤、ヒロポンというものを使うことが非合法化 されたと記載されております。これ以降、ヒロポンは、少量の使用でより効果をあげる ために、それまでの経口剤から注射にきりかえられたと記載されております。そのとき に逮捕された人数が5万5,000人であります。その後逮捕者数は減りまして、再び、80年 代、90年代に増えてきたということから、この報道がなされた訳であります。当時の記 録によりますと、アビュース(依存者)というのは、逮捕された人数は5万5,000人です が、実際にはこの10倍以上いたと推測されております。先ほどの私たちの調査は、92年 の段階におけるこの人たち、つまり依存者の一部であります。ですから、50年代、60年 代に逮捕された人たち、プラス、さらに10倍ぐらいの規模でのドラッグアビュース(薬 物依存者)がいまして、その集団の中で不潔な注射器の共用というリスク行動の繰り返 しが行われた結果、感染の悪循環が起こって、社会の中に感染源となる持続感染者の集 団が形成されたと考えていいのではないか。ここまでは仮説であります。  C型肝炎ウイルスの感染が広がった時期についてのもう1つの証拠は、名古屋市立大の 溝上先生たちが90年代にC型肝炎ウイルスの遺伝子の塩基配列を調べまして、ウイルスの 遺伝子の変異の速度から、その患者さんがいつごろの時期に感染を受けたかということ を推定し、大体50年ぐらい前という結果を出しております。これらのことをもとにしま すと、大体この国の中で、どういう形でC型肝炎ウイルスの感染が広がって今日の状況を 形造ってきたかが推測できます。  スライドをお願いいたします。50年代はドラッグアビュース(薬物依存者)という人 たちがたくさん存在した時期であります。これまで御説明しましたように、C型肝炎ウイ ルスはなかなか感染しないのですが、1回感染いたしますとその多くが持続感染状態にな って、キャリア状態の人たちの累積を引き起こします。そして、そのまま気付かずにハ イリスクビヘイビア(感染の危険行為)を続けますと、その集団の中に感染の悪循環が 起こります。最近、和田先生たちが行なった全国調査の結果によれば、ドラッグアビュ ース(薬物依存者)の60%ぐらいがC型肝炎ウイルスに感染しているということがわかっ ております。もう1つの(感染源累積の)要因は、当時は売血が行われていた。売血をす る人たちとドラッグアビュースは一部重なっていたことが推測されます。当時、売血を していた人たちは、頻回に採血を繰り返すために貧血が起こり、このために血液が売れ なくなると、今度は貧血の治療のために鉄分の供給をするということで、静注をたくさ んしたというふうに記載されております。そうすると、薬物依存者の集団の中で起こっ たことと同じことが売血者集団の中で起こる。つまり、この集団の中でも感染の悪循環 が起こり、感染源としての持続感染者の累積がおこるということになります。さらに、 当時の社会は、衛生環境から何からみんな悪かったものですから、図に書いてあります 水平感染の経路、つまりすべての医療、民間療法、その中でも観血的な民間医療、それ から、入れ墨もあります。その他もろもろの水平感染のルートが社会にたくさん存在し ていた。その結果、薬物の使用や売血とは、何の関係ない一般集団にこれらの感染源か ら水平感染が起こった。そして、一般集団それ自体も余りいい衛生環境下にはなかった ことから、今度はこの一般集団それ自体の中で感染の悪循環が、薬物依存者や売血者集 団よりは緩やかな状態ではあるものの、やはり起こったというふうに考えられます。売 血が行われていた時代には、輸血後肝炎の発生は50%を超えていたという話を先ほど岩 尾課長がされましたが、当時は、感染の悪循環におちいった売血者集団の血液が全然チ ェックされることなく輸血に使われた訳でありまして、片山先生たちによる調査から見 ますと、60年代半ばまでの輸血後肝炎の発生率は全受血者の50%を超えていたという成 績が残されています。以上をまとめますと、社会全体を巻き込んだ複合要因によるC型 肝炎ウイルス感染の悪循環が50年代から60年代に起こった、こういうふうに考えられる 訳であります。なお、そのときに感染を受けた集団というのは、当時の若年層が中心で あった、と考えられます。  スライドをお願いいたします。その後、70年代に入りますと、売血から献血に切り替 えられたことから、輸血用血液の供給は売血者という特定の集団から一般集団、つまり 不特定多数の人たちから成る集団に変った訳であります。そうしますと、先ほどお話し た複合要因により感染をもらった人たちもこの一般集団の中にいる訳ですから、この不 特定の人たちが献血した血液の輸血を受けた人たちの大体17〜18%に、今日のC型輸血後 肝炎が発生するという状態に、いわば改善されたわけであります。一方、社会全体で見 ますと、だんだん経済状態も回復してきまして、水平感染が起こる頻度はだんだん減っ てまいります。そして、一般集団の中でも、感染の悪循環は緩やかながら存在していた ものの、事態は少しずつ改善に向かったと考えられます。  スライドをお願いいたします。90年代に入りますと、御承知のように一般集団内での 水平感染はほとんどなくなってきております。ここに書いてありますが、新たなキャリ アの発生は、献血者でみた場合、10万人年あたり1.8〜3.5と極めて少ない数字になって おります。ですから、水平感染のルートは社会経済状態がよくなったことによって、そ のほとんどは遮断された。しかし、感染源としてのキャリアの人たちは現時点において もまだ存在する訳であります。  特に、輸血後の肝炎については、一般集団内における感染の悪循環が少なくなって、 しかも、献血された血液を検出感度の高い方法で、また、特異性も高い方法でチェック して、危ない血液を使わないというスクリーニング体制が整えられたことによって、92 年以降は、輸血後C型肝炎の発生をほとんどゼロにまで追い込むという状態をこの国は達 成した訳であります。  さて、最後に90年代における日本の社会の一般集団とも言える、献血者からみた年齢 別の感染率を見ていただきます。これが最後のスライドです。この成績は、広島で見た ものであります。対象者は合計27万5,000人です。献血は64歳までしかできませんので、 出生年別にしてデータを整理してみますとこうなります。70歳代では、先ほど申し上げ ましたように、7%を超える感染率であるのに対して、20歳以下では感染率が非常に低く なっていることがわかります。先ほど申し上げましたように、新たな感染を止めるとい うことについては大筋のところは全うできているだろうということでありますが、今度 は、輸血による感染がなくなったことによって、それまでは輸血のせいだと考えられて きた感染の一部は、実は輸血用血液が感染源ではないということが、頻度は少ないので すが、最近少しずつわかってきております。その中の1つがいわゆる院内感染。もう1つ が、透析というふうに特定してはいけないんですが、観血的処置をする医療現場での院 内感染が起こっているということが少しずつ見えてまいりました。ですから、やはりC型 肝炎ウイルスの感染予防についてもまだ手を緩める時期ではない。それから、感染源と してのキャリアは、薬物依存者以外にも主として高い年齢層の人々の中に存在する訳で す。ですから、水平感染ルートの遮断ということは今後もちゃんと見守って行かなけれ ばいけない。  最後に、すでに感染してしまっている人たちをどうするか。この集団がC型肝炎ウイル ス感染の終末像としての肝がんと密接に関係する訳ですから、この人たちに対して、最 終的に肝がんを減らす、もしくはなくすための対応策を講じることを真剣に考えなけれ ばいけない時期に来たのではないか、こういうふうに考えられる訳であります。  以上でございます。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。今、吉澤委員から疫学的な御説明が非常に明快にご ざいました。資料1及び2に関する岩尾課長の御説明、それから今の吉澤委員の御説明 、どちらにでもいろいろ御質問があると思いますので、どなたか御質問がありましたら どうぞよろしくお願いいたします。 ○矢野委員  矢野でございます。吉澤先生の今のお話は私たちはよく理解しているんですけれども 、日本とアメリカの感染者のところの先生の御説明の中で、感染のピークが日本は高齢 にあると。感染のピークというと誤解される方が非常に多いんじゃないかと思います。 感染のピークとは違って、これは集積のところですが、そこのところをもう一度御説明 をいただければと思います。 ○吉澤委員  言葉足らずで済みません。感染率が高い世代というふうに御理解いただければいいと 思います。日本の感染のことを考えますと、1950年代から60年代にかけて、主として15 〜25歳という若い年齢層を中心にして感染が広がったということが推定されています。 そして、その後新たな感染がなくなり、当時の若い世代がどんどん年をとって、高年齢 層へ、つまり右方にシフトしていきますから、最終的にこういう山になる。それが、ア メリカの場合は日本よりも遅れて、1970年代から80年代にかけて若年層を中心にして感 染が広がり、そして現時点では新たな感染はかなり下火になってきている。その結果、 現時点において最も感染率の高い世代が40歳代ということになっている。旧ソ連邦の場 合には、さらにそれから10〜15年遅れて感染が若い世代を中心にして起こり、かつ、御 承知のように今でも水平感染のルートは遮断されておりませんから、若年層にも現在進 行形で感染が広がりつつある。ですから、10歳代の若い年齢層に感染率が高い状態があ り、そして20〜30代に一番感染率の高い世代が集積している、こういうふうに御理解い ただければと思います。 ○矢野委員 今のお話では、吉澤先生の御意見としては、日本のC型肝炎の感染者はほとんど既感 染者に絞られている。新しい感染はほとんどない。対策その他も、今感染を受けてウイ ルスを持ち続けているキャリアの問題にほぼ限定されるという御説明とお聞きしてよろ しいでしょうか。 ○吉澤委員  主体をそこに置けばいい。ただし、現時点においても、数は少ないのですが、新たな 感染というのは起こっておりますので、そこのところについては、最終的に限りなくゼ ロに抑えるところまでの対策はやはり続けなければいけない。でも、重点は、すでに感 染してしまってキャリア化している人たちに対してどう対策を講じるのかというところ に重点を置いてほぼよろしいのではないかと思います。 ○杉村座長  矢野先生、よろしゅうございますか。  今、矢野先生と吉澤先生のやりとりで事態がよくおわかりいただけたかと思いますけ れども、どうぞほかにも御質問ください。 ○島田副座長  輸血ルートの感染はよくわかりましたが、非加熱の血液製剤での感染ルートについて 、たしか岩尾課長がエイズをやっておられたときに、いわゆる第4ルートの調査をされ たと思いますが、その辺について厚生省からでも御説明があればと思います。 ○岩野厚生科学課長  それでは、司々で仕事をしていますので、今のエイズ課の方から説明をさせていただ きます。 ○麦谷エイズ疾病対策課長  エイズ疾病対策課長でございます。書類をお配りさせていただきます。                 (追加資料配付) ○麦谷エイズ疾病対策課長  今、お手元に2種類の書類を配付させていただいております。タイトルは両方とも同 じでございますが、厚さが違います。厚い方は過去にやりました調査の報告書でござい ます。タイトルは「非加熱血液凝固因子製剤による非血友病HIV感染に関する調査に ついて」、この書類がお手元にいっているかと思います。簡単に御説明申し上げます。  まず厚い方ですが、これは当時、平成8年の夏に、血友病の患者さん以外にも非加熱 の血液凝固因子製剤を投与された患者がいるのではないかという御指摘がございまして 、平成8年の6月に第・因子製剤、いわゆるBでございますが、それを投与された患者 を調査いたしました。それが平成8年の6月で第1次報告でございます。それが第VIII 因子もあるのではないかと言われまして、A、B、つまり第VIII因子と第IX因子と両方 調査したのが第2次報告書でございまして、今、先生方のお手元にあるのがまさに第2 次報告の報告書でございます。  これによりますと、簡単に言いますと、6ぺージをお開きください。6ぺージが第・ 因子製剤の結果でございます。結果は、そこの一覧表でおわかりになると思いますが、 調査対象施設が 1,271、つまり非加熱製剤が納入されていた施設が 1,271。そのうち回 答がありまして、右に線をたどっていただきますと、投与したのが 291施設。人数で 2,445人ございました。そのうち、HIV検査をしたかどうか。した人の中で12人陽性 があったというのがそのときの調査結果でございます。これはIXでございますので、第 VIII因子というのは、13ぺージに全く同じ図がございます。これが第VIII因子でござい まして、調査対象施設が 1,816施設。同じように右の方に追っていっていただきますと 、投与した施設は 100施設で 218人。そのうち陽性者は1人あったというのが調査結果 でございます。  私どもは実は同じようなことを先の国会で質問されまして、このトータルの人数をお 答えしております。それは、この紙でいきますと、なかなかわかりやすい数字がないの ですが、トータルで 2,445人というのがIX因子、これが投与した人数。それから、死亡 者は、6ぺージの数字を見ていただくと一番右の方になってなっておりますが 1,767人 、このような数字をお答えさせていただいております。これはIXでございますので、第 VIII因子でも同じように 137人が死亡していますので、ここでは 1,904人でございます が、国会での答弁では 1,904人がすでに死亡しておりますという答弁をさせていただい ております。  それは第2次報告に基づく数値でございましたが、そこでもう1つお配りしてある薄 い方の紙をご覧いただきたいと思います。第2次報告というのは平成8年の7月31日で ございます。今日は平成12年の11月30日でございますので、この約4年間の間にさらに 報告を受けておりました。それをすべて総括いたしましたのがお手元の薄い「第2次報 告以降の概況」という紙でございまして、これが私どもが今把握しております非加熱製 剤投与のすべての結果でございます。  その結果につきましては、薄い資料の2ぺージをお開きください。2ぺージの表に中 身が書いてございますが、簡単に言いますと、2ぺージの下の方に*が2つございます が、その1つ目、要するに第VIII因子、第IX因子の両製剤が納入されたとして調査対象 になった医療施設の総数は 2,394という施設数でございます。ただし、当然ですが、こ れは納入ですから、投与した施設というのを確定いたしますと、*の2つ目でございま すが 408施設でございました。  それでは一体何人に投与したかということですが、もう1枚めくっていただきまして 、3ぺージに中身がいろいろ書いてございますのでゴチャゴチャしておりますが、結果 だけ申し上げますと、一番下の*に書いてございますが、その一番下の行です。投与さ れた患者さんはと 2,948例です。つまり 2,948人が非血友病で非加熱製剤を投与された 数ということになろうかと思います。そのうち、これは国会で答弁した数より増えてお りますが、死亡者は 2,133人。したがいまして、引き算をいたしますと生存者と生死不 明者は合計で 815人。これがいわゆる第4ルート、血友病以外の患者で非加熱製剤を投 与された人の数ということでございます。以上です。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。 ○島田副座長  そうしますと、C型肝炎でも、HIVと同じようなサーベイを今考えておられる訳で しょうか。 ○麦谷エイズ疾病対策課長  そのことにつきまして御議論いただくためにこの会議があるというように理解してお ります。 ○杉村座長  島田先生、よろしゅうございますか。 ○島田副座長  はい。 ○杉村座長  それでは、ほかにどなたか御質問ございませんか。 ○齋藤委員  1つ教えていただきたいんですけれども、感染源となる 100万とか 200万の方がおら れて、水平感染は非常に少ないと言われていますが、C型の場合は母子感染とか垂直感 染もないというふうに考えてよろしいんでしょうか。 ○吉澤委員 私たちは4年間かけて前向き調査をいたしました。調査は、まず、広島と愛媛の妊婦 2万7,000人から入りまして、キャリアの妊婦を探して、PCR法によりHCV RNAを検出して ちゃんとキャリアと確定したお母さんが赤ん坊を産むのを待ち構えまして、主治医にお 願いして出産直前の血清を採っていただき、ついで生まれた赤ん坊につきましては、生 直後、6か月後、12か月後に採血をお願いして経過を見せていただきました。最終的に調 査できた新生児は87人でしたがこのうち感染していたのは2人でした。つまり、母子感染 率は2.3%でした。出産は自然分娩、保育につきましては母乳での保育でも良いというこ とで特に制約を設けずに、広島と愛媛で前向きに追跡調査して得た結果がその程度でし た。御承知のように、B型肝炎ウイルスの垂直感染はHBe抗原陽性のお母さんから生まれ た子どもにつきまして、母子感染の予防を一生懸命やっても、感染してキャリア化して しまう率が大体3〜4%あります。C型肝炎ウイルスの場合は何もしなくても母子感染は 2.3%におこるにすぎないというのが私たちの得た成績でありまして、C型肝炎ウイルス の母子感染に関しては特に社会対応は必要ないのではないかという一応の結論を得た訳 です。 ○齋藤委員 今の続きで、しかし、 100万とか 200万の単位で、女性がそのうちの3割ぐらいとし ても、2%というのはかなりの新たな感染者を生むことにならないでしょうか。 ○吉澤委員  今の200万という数字は1億人という人口を分母としたHCVキャリアの全数です。母子感 染について考える場合には、出産可能年齢の女性の感染率を見る必要があります。出産 可能年齢を大体30歳半ばぐらいまでと考えますと、先ほどの献血者での感染率を見てい ただいてわかりますように、感染率が低い世代に差しかかってきております。ですから 、何もしなくていいというふうにはなかなか言えないんですが、問題は、対応の仕方で すが、B型の場合にはγグロブリンとワクチンで予防してやりますと、97%の防御率を得 ることができる。これは治療実験(治験)により得た成績ですが、この成績をもとに公 費負担による母子感染事業へ移行したという経緯があります。C型の場合には、感染予防 のための免疫グロブリンはまだできていない。ワクチンもまだできていないという状況 があります。そういうことと、感染率が低いということで、今の段階で積極的に手を加 えるということには至っていない、こういうふうに御理解いただければと思います。 ○杉村座長  今、齋藤先生と吉澤先生の御議論でまたいろいろ明らかになってまいりましたけれど も、ほかにどなたか。 ○飯野委員  今のことに関して、母子感染は確かに数としても非常に少なくなって、それからもう 1つは、われわれの研究班で調べてわかってきていることは、若いときに感染した人と いうのは非常に長い間、病変の進展がほとんどない。年をとって感染すればするほど、 その後の病変の進展速度が速いということがあります。ですから、恐らく血友病の患者 さんでC型になった方も、この場合はHIVの絡みがありますからちょっと難しいんで すけれども、子どもの頃輸血したという人で、問題になってくるのは30代、40代、実際 がんが出るにしても結構遅い年代になってくる、そういう特性がありますから、時間的 には母子感染で万一感染しても、まだ余裕があるというのがわれわれの考え方です。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。ほかにどなたか御質疑、あるいは御意見を御開陳い ただける方ございませんでしょうか。 ○矢野委員  吉澤先生のデータとほとんど一緒ですが、私たちの推計いたしますところ、アバウト に60代のキャリアというのはC型が 100万人いるといたしますと、うちでやったのは96 万人ぐらいのデータですけれども、50代になりますと、ほぼそれが半分ということにな ってまいります。それから、40代はさらに半分になってきまして、30代というとそれよ り半減に近いデータになってまいります。そうすると、出産時というのはそこに限定さ れてきますので、吉澤先生がおっしゃったような、なべてというところとは、およそ生 まれてくる垂直感染というのは少なくなってしまうんじゃないかと思います。 ○杉村座長 どうもありがとうございました。 ○吉澤委員 先ほど1つ言い落としましたが、キャリアの母親から生まれた新生児の集団を対象とし た前向き調査で、感染を確認したのは2人だったんですが、これとは別に、C型肝炎の患 者さんが産んだ赤ん坊や、その他もろもろで、合計11例の母子感染と考えられる赤ん坊 につきまして感染成立後の経過をみるための前向き調査をいたしました。そうしますと 、観察期間は2年ぐらいだったと思いますが、途中でキャリア状態から離脱した例が3例 ほど見つかってきました。ですから、C型では、B型と違いまして、例え感染しても、赤 ん坊ではキャリア状態から離脱しやすいということもあるのではないかと考えておりま した。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。今の母子感染の問題に加えて、ほかの諸問題がござ いますけれども、どうぞ御自由に御発言ください。皆様、いろいろな違った背景を持っ ておられる御経験で、この問題の御専門の方もありますし、御専門でない方もあります し、いろいろですけれども、どうぞ御自由に。  もしなければ、先ほど島田先生と麦谷課長の間でHIVのテスト以外にCのテスト 云々ということがございましたね。それは、ここでどういうふうに意見を集約したらよ かろうかということを聞きたいということでしたか。 ○麦谷エイズ疾病対策課長  御議論いただければと思います。 ○杉村座長  そうですね。せっかくそういう問題が出ておりますし、そのことは非常に重要なこと でもありますので、どうぞ御意見をいただければありがたいと思います。 ○岸委員  麦谷課長の話と同じ趣旨ではありますけれども、ここで議論している中身は、年度内 に取りまとめということですが、これまでのいろいろなお話をお伺いしていると、少な くとも無自覚なキャリアの方がたくさんいらっしゃるという事実がわかっているならば 、ここで総合的な対策を議論する以前に、まずそういう人たちに検査を呼びかけるとか 、早急にそういうことを皆さんに知っていただくということの方がまず先だろうという 気はいたしますが、そういうこともひっくるめて、わざわざ年度内まで待つのかという のは私は非常に不自然な気がするんですけれども、いかがでしょうか。 ○杉村座長  これは座長の意見を述べろということですか。 ○岸委員  当局も含めてですけれども、岩尾さんのお気持ちも含めて、また座長の御意見もお伺 いしたいと思います。 ○杉村座長  座長は、とにかくすべて調べた方がいいという意見ですよ。それは決まっている訳で す。だけど、物事にはプライオリティーがいろいろあると思いますから、例えばHIV のテストをした方というのは今わかっていますね。そういうのは次年度の予算を待たな いですぐにするとか、それから、もう少し大きな母集団については、いろいろ予算の措 置を図るというようなことがきっとあるんじゃないかというのが何となく想像はできま すけれども、それが私の意見です。岩尾さん、どうですか。 ○岩尾厚生科学課長  御指名ですので私の個人的な考えを述べさせていただきますと、検査すればするにこ したことはないんですが、以前、第4ルートの調査を担当することになりまして、結局 、平成8年当時、ずっとこのプロジェクトにも関わったのですが、この二千何百施設に いろいろと声をかけて、あのときは、この7月31日の報告で終わって、その後、当時の 菅厚生大臣に一般への呼びかけも全部してもらった訳です。それで、結果として、この 資料にも載っていますが、あの当時、研究班で報告のあった12例、後で1つは血友病類 縁疾患ということで11例になったのですが、以前に報告された数以上にHIVは報告さ れなかったんです。それでよかったじゃないかというのであればそれは1つなんですが 、これは全く私の個人的な意見ですが、行政としてあれほどのエネルギーを費やして、 そして全国民あるいは病院にもものすごくエネルギーを使っていただきました。ある病 院には10万枚のカルテを、倉庫にしまってあるものを全部洗っていただいたんです。無 償でやっていただいているんです。そういうような作業をもう一度すべきなのかどうか 。  確かに、HIVの感染率に比べたらHCVの方が高いということはわかります。だけ ど、そういうハイリスクグループと、1992年以前に輸血を受けたかもしれない人のハイ リスクグループと、さまざまなハイリスクの人たちがいる中で、あえてこの人たちだけ にやる必要があるのか。国費のむだ遣いだとか、そういうことを言うつもりはありませ んが、少なくとも私としては、当時使った時間もあるし、役所のマンパワーもあります し、いろいろな先生方、それから医師会にはものすごく御協力いただいて、調査に協力 をしていただいた結果、見つからなかったのはよかったんですが、学会あるいは研究班 ですでに報告をいただいている、つまり先生方のルートできちんと上がってくるシステ ムがあるにもかかわらず、あえて国民にあれだけ呼びかけてやって結果がなかったとい うことをもって、行政効率とは言いませんが、行政システムとしてよかったのかという のが私の反省です。そういうことも含めて、先生方がやったらよろしいじゃないかとい うのであれば、私どもとしてもアクションを起こしますし、それは行政の判断だろうと いうのであれば、御意見を伺って、今日、両側に座っている仲間がおりますので、行政 として対策を立てたいと思っております。 ○杉村座長 今日のところは初めていろいろ伺う方もおありになる訳ですから、今日ここで別に結 論を急に出すというよりは、全体的にバランスのとれた知識、あるいは 知をみんな心 に刻んで第2回の会に臨むということだろうと思いますし、非常に緊急なことがあると すれば、それはそれでまた途中で中間報告みたいな形で意見を述べることがあっても構 わないとは思うんですけれども、岸さん、今日のところはそういうことでよろしゅうご ざいますか。 ○岸委員  はい。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。ほかにどなたか。  これは座長の不規則発言ですけれども、疫学の吉澤先生、Cというのは日本はいわば 先進国ですね。 ○吉澤委員  まさしくそのとおりです。 ○杉村座長  つまり、早くから始まってしまって、早くから対策を講じることができて、恐らく日 本のプロセスを米国並びにロシア、諸外国がフォローしているということですね。だか ら、そういう意味からいえば非常に珍しい例ですね。 ○吉澤委員  先ほどウクライナと日本とアメリカの年齢別の感染率の1枚のスライドがありました ね。あれが今から3年前の日米医学のときの最後の結論だったんです。結論というのは 私の結論だったんですが、そのときCDCの方々もC型肝炎ウイルスの感染による肝がん がアメリカで増え始めたという状況との関係を初めてつかまれたというふうに理解して います。確かに先進国というのはそのとおりでして、診断ができて対処ができるという 条件が整った国でC型に着手した本当の意味での先進国だと思いますし、この結果は遅 れてくる国々にももちろん参考になるというふうに思っております。 ○杉村座長  だから、この会議も誇りを持ってというのはおかしいけれども、自信を持ってそれを 世界に問うというような気概でいきましょうか。それから、それに伴うある程度のリー ズナブルな理由がきちんとしているというようなことでいって、模範になるような答え になるといいだろうと思っております。もちろん、そのためにはお一人お一人の方に十 分に理解していただいて、私自身も納得して進みたい。それで、こういう会が公開であ るということは非常にいいことだと思いますが、最初に次官がおっしゃった、国民がそ のことを正確に理解していくということは大変いいことだと思います。  ほかにどなたかよろしゅうございますか。 ○飯野委員  そういう意味で、日本ではキャリアの拾い出しが難しいのは、米国の場合には、ここ にCDCの資料1−2にありますように、こういう人に検査しなさいという呼びかけが 比較的具体的に示すことができるけれども、日本では、吉澤先生の話にありましたけれ ども、水平面下で広がっていったところが長年のこういう感染が伝播する状況が数十年 続いた訳ですね。そういうことで、自分がハイリスクグループに入るのかどうかがわか らない人たちがたくさんいる。ですから、一般的に50歳以上は抗体検査を受けなさいと ただ言っただけでは、恐らく、がんになった人すら献血するような感染症ですから、た だ単に呼びかけるだけではなかなか実効が上がらないだろう。そこで、どういう方策を とっていくかが問題だろうと思います。 ○杉村座長  まさに先生がおっしゃるとおりだと思っております。実は私の女房もCでポジティブ なんです。それは、いつポジティブになったかわからないんだけれども、2回のことが 考えられるんです。1回は、戦争直後に東大の血清学教室でアルバイトをしていたんで す。そのときに、ガラスが割れて血が出たと。それで、自分の指も怪我をした。そのと きは梅毒の検査の試験管を洗っていたというから、私は梅毒にもなっているのかと思っ て心配になったんだけど、それは大丈夫だった。それからもう1回は、昭和39年(1964 年) 、交通事故に遭ったんです。それで、複雑骨折で輸血をうんとしたんです。多分そ れだろうと思いますけれども、ついこの間まで全然知らなかったんです。幸いに、いろ いろな諸酵素等々が上がっていないものですから、酒は飲みませんけれども、少し注意 した生活をしておりますけれども、そういう人が本当にたくさんいると思うんです。そ の人たちに、わかれば、今うつべき手がないとはいっても、お酒は飲まないとか、そう いうことがあって、それによって少しでも、がんの予防ができる。ご存じのとおり、大 腸がんを含めて、ほかの場合もすべてそうだけど、がんというのはすぐになるんじゃな くて階段的になって時間がかかるから、それを先延ばしにするんです。先ほどの吉澤先 生の図でいえば、右方にシフトしていって寿命のところまで何とか持っていこうという ことでございますから、やはりそのためには知るということが非常に大切ですね。です から、それをどの程度までやるかということも、この有識者会議でよく御議論いただい た方がよろしいんじゃないかと思います。のっぺらぼうに全部ということではなくて、 やはり輸血をしたことを思い出す人は積極的にした方がいいとか、いろいろなことを御 専門の立場から委員の先生からお伺いできればいいと思いますけれども。 ○若林委員 吉澤先生に質問があるんですけれども、日本が先で、あとアメリカ、ウクライナと続 いているんですけれども、実際に肝炎キャリアになってから、肝炎、肝硬変、肝がんに 至っていくプロセスが、宿主側の要因ですとか、ライフスタイルに影響されるものかさ れないものかというのは、今後の日本においてのがんの予防のいろいろな対策を考える 上に非常に有益な情報になると思いますけれども、その点についてはどのぐらいまで研 究が進んでいますか。 ○吉澤委員 お答えします。生活習慣の中で一番効くのはアルコールです。キャリア、つまりウイ ルスに感染していない人がアルコールを飲んでもさほどのことはないんですが、このウ イルスに感染している人がアルコールを飲みますと、これは早いスピードで肝臓の病期 (ステージ)が進むということが臨床的状況証拠としてわかっております。ウイルス側 の要因に関しては、何ゆえに肝細胞崩壊が起こるか。それから、何ゆえに終末病態とし て肝がんまでいく人とキャリア状態のまま生涯を全うする人が共存するのか、これにつ いてはまだわからず、今後、研究を行って明きからにしていかないとわからないという ふうに思っています。 ○矢野委員  今の若林委員のお話に関連してですが長崎県全体で調べて、約 500例のC型肝炎関連 肝がんの死亡者は、男性は死亡するのが63.6歳プラスマイナス 7.5歳に集中しています 。約80%の方がこの期間に集中しています。これは、もちろん輸血した人だけです。そ うすると、輸血を感染源といたしますと、いろいろな年齢でされるにもかかわらず肝が んで死亡されるのはこの年齢に集積してしまうんです。女性でいいますと68.3歳プラス マイナス 8.2歳に集積しています。ということは、それからグループ分けしますと、20 代で輸血した人、30代で輸血した人、40代で輸血した人、みんなこの年齢にに最終段階 を迎えられるということになりますと、感染したウイルス、そして肝炎を起こすホスト のいろいろな宿主側の免疫応答の違いによりますけれども、それはエイジングファクタ ーが一番効いてきまして、亡くなる。先生のお答えに対して、ヘルシーキャリアのまま 天寿をまっとうする方もいらっしゃいますが、がんになっていくというところは、エイ ジングファクターで一つの点に集積していくというふうに理解しています。したがって 、ウイルス因子より宿主因子が強いと考えます。 ○杉村座長 大変重要な所見ですね。若林委員は、がんセンターのがん予防研究部長で、がんを予 防するためにどういう物質がいろいろあるだろうか、どういう食べ物があるだろうかと いうようなことを研究している訳です。今、矢野先生からのあるエイジに集約してくる ということは大変重要な事実でありますので、そういうものを受けとめた上で、それを 何とか延ばすようにできればと思います。 いろいろな御意見もいただきましたけれども、今日はせっかく御専門の方がおられま すので、それぞれ少しずつ御意見を御開陳いただくというふうにしてよろしいですか。 ○石井委員 飯野委員、矢野委員、吉澤委員、それと私は、日本肝臓学会の理事あるいは評議員と して今日の問題に対して努力を重ねてきましたけれども、日本肝臓学会では、例年、5 月末の週を使いまして「肝臓週間」という形で、その中心になるのは肝がんの撲滅運動 ということをスローガンとして、一般市民を対象として公開講座、あるいは医療相談、 を主に行ってまいりましたがこれらの事業に参加する人々の実際というのは、現に治療 中の肝炎、あるいは肝硬変、そして肝がん、そういう慢性の肝臓病患者で治療中の患者 さんであることが多い訳です。  また、参加者の数もある程度キャパシティによって限られているので、明年度からは 多少違った視点でこの運動を展開していこうということで現在検討を重ねておりまして 、たまたま今年の11月に朝日新聞、読売新聞をきっかけにして、社会的にもより認識が 高まったというようなこともありますけれども、いずれにいたしましても、このような 背景の中で、明年は一人でも多くの患者さんを見い出す。そして、適切な医療がより広 く行われるように、実は一般の開業医、肝臓を専門としない医師を中心に、さらに保健 婦、看護婦、そういう医療に従事した人たちを対象にして、より一層の啓蒙教育活動を 展開して、後で雪下先生の方から御意見をいただけるかと思いますけれども、日本医師 会ともタイアップしながら啓蒙教育活動を展開してまいりたいということで、実は来週 、私どもの事務局長、そして担当理事が日本医師会の方に訪れて、その辺を具体的に進 めるということを進めております。  それから、先ほど申し上げた肝がん撲滅運動を日本肝臓学会としてより推進するとい うことで、平成13年度には、全国都道府県に責任者をもうすでに置いて、啓蒙活動の責 任者として展開し始めている訳ですけれども、全国都道府県で50人の、これは日本肝臓 学会の評議員を中心とした連絡責任者が中心になって都道府県で啓蒙運動、それから調 査、そういうことを展開していこうということで、来年度はそういう形で一層力を入れ ていこうという気運であるということをお伝えしておきます。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。最近、学会が単に学問のための学会じゃなくて、実 際にどうしたら国民に学会の知見をトランスファーして役に立つようにすることができ るかということが非常に強くなりましたね。今のお話は大変心強く承ったんですけれど も、一方では、新聞に健康に関する記事が非常に多くなった。それから、質もだんだん 高くなったと思うんです。今、岸さんが帰られてしまって残念だけど、例えば渡辺恒雄 さんが前立腺がんになって治ったら、読売は急にヘルスとかメディカルのことを機構ま で変えて強くするようにしたんです。そうすると、部数が売れるせいか、それを見て朝 日も今大変熱心なんです。私は対がん協会の会長をやっているものですから不規則発言 をして申し訳ないけれども、朝日も非常に熱心で、とくにがんの予防等々は非常に熱心 でありますので、よくこういうときにいろいろな対立が起こるじゃないですか。過大に 協調された情報とか、あるいはニュースとか、そういうことなしに、非常に正確に学会 、学者、ジャーナリズム、それから厚生省、医師会、そして国民というふうに、妥当な 線が出ると非常にいいだろうと思いますね。どうもありがとうございました。  それから、今日、基礎研究をしている方からいろいろ御発言をいただいておきましょ うか。先ほど岩尾さんからの御紹介にありましたが、下遠野委員はC型肝炎ウイルスの 全構造を初めて決めた人なんです。今、京大におられますけれども、先ほど若林委員か らも御発言があったけれども、どういうふうにサブタイプがあったりして、それによっ てどういうふうに違いがあるのかとか、抗体陽性ということと抗原陽性ということとは どういう関係があるのかとか、何でもいいんですけれども、今日すぐにお答えになれな いことがあれば次回に宿題みたいにしておいてくださって結構ですけれども、せっかく ですので今日お伺いしたいと思いますけれども、よろしいですか。 ○下遠野委員  C型肝炎ウイルスの遺伝子の発見というのは1988年に遡る訳ですけれども、その後、 私、当時、国立がんセンターに勤めておりまして、C型肝炎ウイルスの遺伝子を日本人 の慢性肝炎患者さんの血清で調べたことがあります。その結果わかりましたのは、日本 人の患者さんの血清中のC型肝炎ウイルスはどうも日本人特有の配列があるという情報 を得たこのです。初めの頃はそれを日本人型というふうに申して報告いたしましたけれ ども、今は遺伝子型が10種類ぐらいあるということがわかってきまして、その中の1b 型というふうに私どもは呼んでおりますが、それが最初に見つけた日本人に多いC型肝 炎ウイルスで、C型の慢性肝炎患者さんを見ますと、約8割ぐらいがその1b型であり ます。残念なことに、インターフェロン治療をして一番抵抗性を示すのが1b型という ことなので、遺伝子型と増殖の違い、それから遺伝子型と患者の関係がどうなのか、そ ういう重要な問題を提示しているのではないかと思います。残りの2割が2a型、ある いは2b型というもので、これはインターフェロン治療に対して比較的レスポンスしや すいというふうに言われております。  遺伝子の構造からウイルスの方を解析するという方法が発見されてしばらくの間続い た訳です。特に遺伝子のゲノムのほぼ全部の構造とか、どういうタンパク質が産生され るかという、基礎的な研究が最初に発見されてから5年ぐらいの間に盛んに行われまし た。  そういう研究成果の中から、ウイルスが複製するために必要なウイルスのタンパク質 の酵素活性というのがわかってきまして、そういう酵素活性を持っているタンパク質を 標的にして、抗ウイルス剤を開発しようという努力が世界各国で行われた訳です。具体 的に申しますと、例えばウイルスのプロテアーゼ活性をターゲットにした抗ウイルス剤 の開発とか、ウイルスのポリメラーゼ活性を標的にした抗ウイルス剤の開発、あるいは ウイルスのヘリガーゼ活性を標的にした抗ウイルス剤の開発ですがその幾つかのタンパ ク質につきましては、X線による高次構造解析までわかりました。  HIVの逆転写酵素は、高次構造の解析から薬を開発していくということが、もちろ んHIVのプロテースもそうですけれども、そういうことができた時代ですので、C型 肝炎についても同じようなストラテジーをとれば簡単に薬が見つかるのではないかとい う期待感があった訳です。しかし高次構造を解析すると、HIVのプロテースほど容易 ではないということがわかってまいりまして、高次構造が解析されてもう5年ぐらいた つと思いますけれども、その期間に臨床にもってゆけるような薬の開発にはまだ至って いない、そういう状態であります。  一方、このHCVはヒトとチンパンジーという動物にしか感染いたしません。そうすると、 抗ウイルスなどを開発するという観点から考えた場合に、アッセイする系が得にくいと いうことがあります。培養細胞などを使って、ウイルスを効率よく複製させるという方 法の開発が大変重要でありますけれども、その件に関しましても、幾つかの研究の進展 は見られておりますけれども、それを抗ウイルス剤のマススクリーニングに用いるほど 効率よいウイルスの複製系というのはまだできていないという現状であります。キャリ アに対しては病気をそれ以上進行させないということが非常に大切であります。病気の 進行にはウイルスが持続感染するということが非常に重要でありますから、その持続感 染を遮断する、それが一番直接的な方法だと思いますが、そのために抗ウイルス剤の開 発、あるいはワクチンの開発が大変重要だろうと思います。抗ウイルス剤に関する開発 は、先ほど申しましたように、なかなか進まない理由が2つありまして、結晶構造がわ かっても、なかなかうまくフィットするものがないというのと、培養細胞系がうまく稼 働していない。少しずつ進展はしておりますけれども、それをアプリケーションまで持 っていくのがちょっと遅れているという状況かと思います。  一方、ワクチンの問題もあります。本ウイルスは、ウイルス学的にはフラビウイルス のファミリーの種類でありまして、ウイルスの外側にエンベロープというウイルスタン パク質から構成される膜タンパク質があります。その膜タンパク質に対する抗体がもし 中和抗体として働けば予防ワクチンというものが可能であるというふうに考えることが できるかと思います。しかしながら、RNAウイルスである本ウイルスは遺伝的に変異 が速いということで、なかなかホストの免疫機構が追いついていけないということがご ざいます。  それから、どこが本当に中和抗体のエピトープになっているかというのは、ある程度 狭まりつつはあるのですけれども、それをきちんとアッセイする系がチンパンジーなど を使わないとできないということがありまして研究の進展が余り芳しくないということ がございます。  一方、DNAワクチンとか、治療ワクチン的な開発も可能性があるわけですけれども 、それにつきましては、例えば細胞傷害性T細胞の非常にいいターゲットの配列がどこ かということも少しずつ研究が進んでいる段階でありますけれども、クリアカットな結 果が出てきていないというのが現状です。しかしながら、徐々にではありますけれども 、ベーシックな研究は進みつつある。ただ、もう少し馬力を上げて早く薬として使える ようにするというのが基礎的な立場からの一つの課題であろうかと思います。簡単です けれども、以上です。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。どなたか御質問は。 ○飯野委員  治療のことが出てきましたので、一言、いろいろなところで非常に誤解があるだろう と。今日、厚生省でおまとめいただいた資料1−1で、C型肝炎に関して、インターフ ェロンの効果が30〜40%に有効とするものから、ほとんど効果がないというものまであ ると。これは、薬の効果というのをどう考えるか。ウイルスの持続感染を断ち切れたと いうのは、実はC型肝炎ウイルスとインターフェロンの関係をおいてほかにはないんで す。今いろいろ薬の可能性として言われているものは、いずれもHIVで考えていただ けばわかりますけれども、増殖を止める、それだけなんです。遺伝子そのものを壊す訳 じゃない。そうなりますと、ウイルスはいつでも作れますからずっと使わなければいけ ない。インターフェロンの場合は、ウイルスの遺伝子を壊してしまうのが、今、日本の 成績だと大体30%。ウイルスの遺伝子を壊さなくても、インターフェロンを使って肝炎 がおさまった人では、遺伝子があろうとなかろうと、肝炎さえおさまれば、がんが非常 にできにくいということは日本からも幾つも成績が出ていますし、外国からも同じよう なデータが出始めて、それはコンセンサスなんです。だから、肝炎さえ抑すれば、今、 先生がおっしゃった、がんにいくのを遅らせることは十分可能だというところまで学問 的にはいっているんです。だけど、どういうわけか、故意なのか故意じゃないか知りま せんけど、肝炎の治療法はないんだ、あるいはインターフェロンは効かないんだという PRが非常に行き届いていまして、そういう関係があって、まともに治療をしている感 染者が3分の1、3分の1は、C型肝炎と言われたけれども、どうせだめなんだという ことで何もしていない。それから、あと3分の1が、恐らく本人は感染していることす ら知らない。非常に大ざっぱですけど、そういう人がそれぞれ1:1:1ぐらいの割合 で日本に存在するんじゃないかというふうに思っております。  そこら辺で、本当の情報がどうして伝わるのか。われわれは厚生省の研究班の研究報 告書にもずっと前からそういう成績を書いてきていますけれども、なかなかそれが理解 してもらえないし、いろいろなところで社会的にも訴えてまいりましたけれども、イン ターフェロンは副作用が多くて効かないんだということをあるとき、ある大新聞が書き ましたので、それが強烈に全国的に広まっていまして、われわれも患者さんに治療を勧 めるのに非常に難渋しているというのは、私だけじゃなくて、肝臓をやっている医者の 悩みだろうと思います。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。確かに、これは表現方法が適切でないかもしれない けれども、これは30〜40%に有効とするものから、ほとんど効果がないというのは、報 告にそう書いてあるんですね。 ○飯野委員  全然効かないという報告は、恐らくないと思います。 ○杉村座長  効かない人もあるということはある訳ですね。 ○飯野委員  インターフェロンを使いましても、大ざっばに言えば、インターフェロンの日本で許 されている範囲内で治療すれば、30%の人はウイルスがいなくなります。感染を遮断で きる。それから、次の30%ぐらいの人が、使う前に比べれば明らかに肝炎がおとなしく なるということは、進展速度が遅くなりますから、がんが出てくる時期は遅くなる。あ と、残りの30〜40%は前と後と比べれば大した差はない。そういう場合には、そのほか で肝炎を抑えるような、昔からやられているいろいろな治療がありますから、それで肝 炎を抑えていけば、それなりにがんが出てくる時期を遅らせることができる。それも論 文として公表されて、だんだん世界的なコンセンサスになりつつあります。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。大変明らかになったと思います。  治療と予防というのは、この頃、絡み合ってしまったんですね。例えば大腸がんの場 合に、ポリープや何か、エヌセイド(ノンステロイダル・アンタイ・インフラマトリー ・薬・ドラッグ)で予防のはずだったんだけど、結構そこそこ進行しているアデノーマ ーから初期のアデノカイチノーマーのあたりは進行が戻ってときどきなくなってしまう んです。そういうようなこともありますので、予防と治療というのは、例えばがんの場 合、ときどきオーバーラップしているんじゃないかと私は思っているんだけど、きっと 肝がんの場合にも、そういうようなことがあると本当はいいと思うし、ともかく、わか っていることは実施すべきかどうか。わからないことは、さらに鋭意研究して明らかに していくということが大切ですし、今わかっていることも、過去の研究の蓄積でわかっ た訳ですから、そういうふうに考えたいと思います。若林委員、今、がんの予防という のは、確かにいろいろなものが予防しますが、例えば思わぬものが効果があることがあ りますね。少し何かコメントされますか。 ○若林委員  われわれの研究チームは、肝炎から肝硬変、そして肝がんに進行しないような予防因 子の研究をしております。特にわれわれの日常生活の中に予防因子があるのではないか ということで、それらの検索に積極的に取り組んできました。最近、食品中のいろいろ な物質について検討しましたところ、牛乳中にありますラクトフェリンという分子量が 8万ぐらいのタンパク質が有効ではないかというようなデータが得られてきました。そ れは、国立がんセンターと横浜市立大学の田中先生たちの共同研究によるものですけれ ども、ラクトフェリンを11人のC型肝炎のキャリアの方々に1日に1.8グラム又は3. 6グラムを8週間服用していただきますと、HCVRNA量と血清のGPT価が急激に下が る人たちが見つかってきたんです。効果のあった人たちを見てみますと、RNAの量と しては 100キロコピー/ML以下の人が多いことがわかりました。もう一度、がんセン ターの岡田先生が同様の効果を調べたところ、確かに効く人たちがいるという確証が得 られました。そこで、次年度から対象を 250人ぐらいに広げまして、多施設間でラクト フェリンが本当にHCVRNA量を減らすのかどうか、また、炎症を低下させるのかどう か。もしそうだとしたら、そのメカニズムはどういうことによるのかということについ て、大がかりに研究・調査をしようと今企画しているところです。同じキャリアの人た ちでも、いろいろなライフスタイルによって肝炎から肝硬変にいくスピードがかなり違 うことにより、日常生活の中から積極的に肝がんの予防物質を探していくということは 、私は非常に重要な研究課題であると思っております。 ○杉村座長 どうもありがとうございました。つまり、いろいろな可能性がまだ秘められていると いうことは明らかなことだと思います。 今、基礎的なことを伺ったんですけど、医療の問題で、今、飯野委員から御発言があ りましたとおり、インターフェロンだけでいわば3分の1、3分の1、3分の1という ような御発言がございましたけれども、そのほかに医療の面から何か御意見を賜ること はありませんか。飯野先生、あるいは石井先生、あるいは矢野先生から。 ○矢野委員  飯野先生からも3分の1説があったんですけど、今のお話の中で、肝臓がんとHCV ・RNA遺伝子の直接の関係がまだ明確ではありません。RNAが炎症を引き起こし、 炎症が肝臓をこわして肝硬変になってがんになる、この事実ははっきりしているんです けど、肝炎ウイルスが肝臓がんの直接的な原因か否か不明です。  それと、インターフェロンを使って30%は治るということもわかっているんですけれ ども、治ゆ側のバックグラウンドを見ると、感染ウイルス量が繊維化などいろいろな消 長が肝がんになりにくいようなタイプを治している。本当に何%肝がんに移行をくいと どめたか明解なエビデンスはいまのところまだないんじゃないかと思います。  それから、若林先生のおっしゃったところでも、がんになってしまったときに、本当 にRNAが発がん作用を及ぼしているかどうかとお考えのときに、炎症は下げる。した がいまして、肝硬変から肝がんのルートは遮断するけど、がんになってしまったものに 対して、RNAが消えたから、再発が減るのかというところの論理というのは、まだな なか難しいと思っています。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。 ○若林委員  肝炎の炎症ですけれども、例えばCOX-IIとか、iNOSとか、炎症に関連するいろいろな ことがが最近わかってきましたが、肝炎の炎症を抑えるような物質の具体例はまだまだ 少ない。そういうものを新しい視点から探し出すということも必要だと私は思っていま す。 ○杉村座長  心筋梗塞を予防するためにアスピリンを飲んでいると、大腸がん発生が減るみたいに 、そういう炎症が一般論として少しでも抑えられると、それは長い間の蓄積だから、さ っき言った遅延ですが、すっかりなくすというんじゃないけど、とにかく延ばして寿命 と競争していくというような意味のことがいろいろあり得るんじゃないかと思うんです 。今日は一応5時というふうに予定しておりますけれども、せっかくお集まりでござい ますので、医師会の雪下先生、恐縮ですが、医師会のお立場というか、第一線のまず患 者さんに接するところで、そのお立場で何か御発言ございませんか。 ○雪下委員  私たち日本医師会の仕事、あるいはその配下の医師会の仕事としては、今日お集まり いただいた専門の先生方からいろいろな話を聞きながら、それをいかに末端の医師に情 報を提供して理解してもらうか。あるいは、国民への理解というものをどういうふうに PRしていくか。そういうことが仕事であると心得ている訳です。今日は、各専門の先 生方から大変有益な話を聞かせていただいて大変ありがたいと思います。これを有効に 活用していかなければと思います。  また、一番初めに厚生省の方からお話があったかと思いますが、21世紀は慢性肝炎が 国民病になるという、これは武見元医師会長の「国民医療非常事態宣言」というものが 昭和54年に出されておりまして、いまさらながら、声も大きな先生でしたが、将来を見 通したなかなかのセンソウカタだったなと感心しているところです。ちょっとその資料 を持ってまいりましたが、21世紀はこの病気のために全部が破綻するであろう、人類の 生存が危ぶまれるような病気だというような発言と、それで自分が全国の医師にこれを 調べろと言ったら、ある厚生大臣が、医者が金儲けのために検査するのは厳重に勧告し てやめさせろと社会党の議員に答えたと。もっと言葉にできないようなこともあります けれども、そんなことで、すでに慢性肝炎、特にC型につきましては、先ほど石井委員 からもお話がありましたように、何とかその対策をということで種々実施しているとこ ろでありますが、先ほどから聞いておりまして、今一番気になっているところが、先ほ どの対策の中で、キャリアへの対応、もちろんこれが主体だろうと思いますが、観血的 感染をゼロにするというお話があったかと思うのですが、この中で、透析については早 いうちから大変気にして、何とか医療の間での対策をということを考えていた訳ですが 、種々改善されて今は少なくなっているということは聞いておりますが、この辺につい ての正確なというか、医療側からとったアンケート調査とか、そういうのじゃなくて、 各専門の先生方から見られた流れ、改善された様子というものをひとつお伺いしたいと いうふうに思っておる訳です。  それともう一つは、針刺しとか、そういうもので現場でまだいろいろトラブルがある ようでありますが、現場の医者の気をつけていかなければならない点とか、そんなこと でアドバイスがございましたら教えていただきたいと思うのですが。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。 ○吉澤委員   まだ結論に至る前の途中の段階ではありますが、透析についてお答えいたします。去 年、加古川でB型肝炎ウイルスの感染事故があって、われわれ肝炎の研究者側が初めて透 析の専門医の方々と協同で調査する機会を得ました。それを機会に、C型肝炎ウイルスの 感染状態について、アンケート調査ではなくて、血清学的に調べてみますと、大体アン ケート調査と一致する感染率のようです。平均すると大体20%前後です。  さて、問題はインシデンス、つまり新規の感染が現在進行形で起こっているかどうか 。これは幾つかのところから、報道その他で出されておりますが、私たちが実際に調査 したところでも、それほど多くはありませんが、新規の感染は起こっているというのが 現実です。ですから、前にB型肝炎の院内感染防止のガイドラインがつくられて、一般医 療機関での院内感染はかなり抑えられたという事実はありますが、透析施設に関しまし ては、観血的な処置を行なう際の血液の量が違うということ。もう1つは、感染源として のキャリアが大体20%もいる状況下で観血的処置をするということから、感染のリスク はB型肝炎ウイルスよりもC型肝炎ウイルスの方がかえって高いと考えざるを得ないわけ です。ですから、これについても、できるだけ早くガイドラインのようなものを、実態 把握した成績に基づいてつくる必要があるというふうに思っております。  ついでに申し上げますと、断面調査を行ないますと、透析患者の方々は、抗体がなく てウイルスがいる、これは、免疫状態が落ちているから、それでそういう状態があると いうことが言われていますが、あれはどうもいわゆるウィンドウ期の状態を捉えている ようです。経時的に前向き調査をしていきますと、抗体がなくて、もしくはHCVの抗体の 力価が低くてウイルスがみつかった人を3か月ごとに追いかけていきますと、全員が最終 的に抗体の力価が高くなり、通常の感染状態に確実にたどり着きます。そういうところ までわかってきておりますので、透析施設での感染予防体制の確立はできるだけ早くし ていかなければいけないのではないかと思っております。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。透析をやっているグループの方がおられて、お手紙 をくださいました。私、この会でヒアリングを少し行った方がいいと思いますので、ま た、そういう方々のご意見を伺えたらありがたいと思います。  それから、とかく科学だから、どうしても科学は必ずしも直線で進歩する訳ではない ですね。ときどき間違いをしたり、間違いをしたおかげでかえって大きな進歩をしたり 、いろいろすることが現実にはある訳ですね。そういうことはない方がいいけど、それ は現実にはやむを得なくあるので、いろいろな意見の違いがあった方がいいと思います ので、どちらかと決めつけないで、意見が違う場合には率直に言っていただいたり、違 う情報をお持ちの方は提言していただいた方がありがたいと思います。  時間もたってまいりましたけれども、遠藤先生の御専門は経済ですね。特に医療経済 ですが、何事もすべて経済なので、日本全体が難破しそうな経済なのかもしれないけれ ども、その上で、これはタイタニックみたいな議論になっているのかもしれないけど、 先生はどういうふうにお感じになるか、率直にコメントをいただければありがたいと思 います。 ○遠藤委員  私は肝炎の専門家ではございませんで、経済学を専門にしております。ただ、今、透 析の話が出ましたけれども、たまたま私の家内が透析医をやっているものですから、同 僚でやはり針刺し事故があって、インターフェロンを打ってどういう副作用が出るかな どという話も聞いているものですから、余りかけ離れた世界の話ではないように受けと めておりました。  経済学の視点から肝炎対策の議論ですが先ほど一番最初に予算の話等々が出たかと思 いますけれども、基本的に肝炎対策というのは、キャリアの発見のための広報であると か、検査というのが1つお金のかかるところであって、その次には肝炎患者の治療費を どうするのか。それこそ、インターフェロンの保険適用云々とか、公費負担にするかど うか、その辺の議論。3つ目は、治療技術の研究開発のためにどれほど支援をするかと いう問題の3つがある訳で、それを費用対効果の視点でどうバランスをするのかという 問題。もう一つは絶対額をどうするのかという議論があると思うんです。C型肝炎の特 性からいって、もしかすると、予算額や研究費の絶対額が少なくなる可能性がないだろ うかと思う訳です。実際のところ、私自身、まだ調べていませんからわかりませんけれ ども。  といいますのは、大々的に疾病対策とか、そういうものでお金が付きやすいというか 、費用負担に国民的コンセンサスが得やすいものというのは、1つには、経済学の言葉 で言うと外部不経済がある場合です。要するに非常に感染率の高いものというのは明日 は我が身ですから、何とかせいというふうに国民は思う訳です。もう1つは、治療効果 がはっきりしているもの。例えば、たまたま透析の話が出ましたが透析は相当コストが かかっている訳ですけれども、公費負担でやっている訳ですね。あれは、腎不全患者に 対しては透析か移植しか延命する方法はないということがわかっているし、やれば、少 なくとも延命できることはわかっているということですから、費用負担の社会的コンセ ンサスが得やすい訳です。  ところが、先ほど来、C型はどうも感染はそれほどしないだろう。あるグループの人 たちだけの発病だろうという考え方。したがって、明日は我が身というような危機感は もしかすると国民の中に余りないかもしれない。それは違うかもしれませんが。  もう1つは、では、発見されたからといって、その治療効果はどうなのかというと、 先ほどもいろいろ議論がありましたけれども、その治療効果がある程度不確実な場合に は、どうしても費用対効果の議論が出てくるということで、それが社会的に過小なレベ ルに抑えられてしまうという可能性もなきにしもあらずだと。このようなことがあるた めに、もしかすると、エイズ対策とか、その他の感染症対策と比べると、本来もっと多 くてしかるべきものが、少なくなってしまう可能性がないだろうかということを考えま す。それは私は調べていませんのでわかりませんが、したがって、他の感染症対策との 整合性、バランスであるとか、諸外国の事例等々を参考にしながら、絶対額というもの がどの辺が適切なのかということを慎重に議論する必要があるんじゃないか、そんなこ とをまず1つ考えた訳であります。  もう1つが、やはり経済学者というのは費用対効果ということを非常に強く考える訳 であります。よく言われる議論で、インターフェロンの使用をどうするかというのは患 者団体等々からよく出ている議論だと思いますけれども、その辺をどう考えるかだと思 うんです。私は素人でわかりませんが、先ほどの話では、3分の1、3分の1、3分の 1で効く人と効かない人がいると。たまたま先ほど下遠野先生がおっしゃられたIb型は インターフェロンの抵抗性が高いというお話がございましたね。そういうことで説明で きることなのか、できないことなのか。できるのであるならば、その検査を保険でやっ て、抵抗性の低い人のみインターフェロンを使うということはコストベネフィットを考 えたやり方でありましょう。しかし、そういうやり方を選択する価値観もあるでしょう けれども、一方で、C型肝炎の方というのは、いつ爆発するかわからない爆弾を抱えて いる訳で非常に不安にかられていると思うんです。そういう方々の気持ちを考えれば、 希望する方には全員インターフェロンは使うべきだと効果が不確実なら患者の気持ちを 優先すべきだという考え方。たまたま3割の方に効かなくても、それは運が悪かったと いうふうに考えるべきだ。そういう価値観もある訳でありますから、そこのところは国 民的合意がどうあるのかも重要です。そう言ってしまうと、経済学者は何のために必要 なのかということになってしまいますけれども。以上のような印象を持った次第です。 以上です。 ○杉村座長  大変ありがとうございました。確かにそうなんです。結核などは、ストレプトマイシ ンができて、リファンピシンができて大体よく治るようになったんです。こうすればい いということがわかったから、結核の研究費というのは少なくなったんですよ。それは 要らないんです。だって、病気がなくなって国民が幸福になっているんだから、何も研 究者が幸福になる必要はないので、それはなくなればいいと私は思うんです。  だけど、ともかく今、Cの問題はもう少し複雑で、いまおっしゃったように、いい場 合もあるし、よくない場合もあるし、それがどういうことによるのかということだから 、やはりそれを研究しないとだめだと思うんです。そうすれば多分大丈夫じゃないです か。大丈夫じゃないかということは、C型の患者さんのためを思って一生懸命研究して いる研究者が研究ができないんじゃ、まだ完全に解明されていないんだから、結局、そ れは国民にとって迷惑ですね。まだそういう面があるんだろうと私は思いますけど、先 生の御心配は大変ありがとうございました。  また、これだけの人数で国のすべてのことを決めている。われわれは内閣をやってい るわけでもないから。ただ、専門家として、いろいろな方のご意見を賜って、それを報 告書にまとめて、それをどう煮るか焼くかというのは、われわれが選挙した人々がやる ことです。この頃特にちょっと頼りないけど、そういうふうに考えますので、先生、ど うぞ経済学的な立場から、あるいは、今日は御欠席ですけれども、法的な立場からいろ いろ御議論をいただくことも大切かと思います。  どなたか御発言をどうぞ。 ○飯野委員  先ほど効く効かないという話をしましたけれども、今のC型肝炎で日本でやることが できる治療をまともにやれば、ほかの慢性疾患、動脈硬化でも糖尿病でも何でも治療さ れていますけれども、それ以上の効果が得られることは確かなんです。ほかのいろいろ な慢性疾患の治療をお考えになるといいですが、やっていても本当に効いているか効い ていないかわからない病気は幾らでもある。そういうのが許されていて、C型肝炎に関 しては保険審査がえらく厳しいんです。今おっしゃったC型肝炎というのは、実際には 非常に根が深いけれども、表面に出てくるものが今まで少なかったがために過小に評価 されている。大事なことは、もう感染して何十年という時間がたっていて、同じ慢性肝 炎でも結構進んでいる人たちがたくさんいる。それがやがて肝硬変になり、肝がんにな る。そういう予備軍がたくさんいるということです。  ある意味で私が非常に緊急だと思うのは、そういうことを知らずに、無知のために治 療していない人、あるいは自分が感染していることを全然知らない人たちを早く見つけ 出して、そこに医療が及ぶようにしなければいけない。今、肝炎対策というのは、新し いC型肝炎を起こす人は非常に少ないので、それは吉澤先生もいろいろ方法があると思 うので、それは比較的達成しやすいと思うんです。だけど、何よりも大事なことは、患 者対策が一番大事で、がん予防ということからすれば、肝がんほど予防しやすいものは ない。ハイリスクは特定されていますし、いかがでしょう。 ○杉村座長  私に、いかがでしょうということですか。 ○飯野委員  国の方に、いかがでしょうと。 ○堺審議官  いかがでしょうと言われても、なかなかうまい答えはない訳ですが、それより話を少 し戻させていただいて、岸委員の方からは、このグループのことについてどうするのと いう問いかけがございました。最初、岩尾課長の方から全般的な対策としてどうするん だということで、石井委員からも、吉澤委員からも、矢野委員からも、いろいろなお立 場で出ているというのは十分認識しているのですが、もう少しカチッとしたものをいろ いろ御議論いただければというふうな気がしております。 ○杉村座長  座長がカチッとしていないものだから、カチッとしませんでどうも済みません。今日 はいろいろな方がおられますから。それから、いろいろな対策についても講演などもあ りますね。私が薄っすら聞いたところでは、アメリカでやっているものとか、そういう ものもいろいろあるでしょうから、そういうものも含めて、これは次回、年の暮れでお 忙しいんですけれども、12月の半ばに第2回目をやりたい。その前に、事務局の方で、 若干の絞りをかけまして、堺さんがカチッとしてくれれば私もカチッとしますから。そ ういうふうにしたいと思います。  そろそろおしまいにいたしますけれども、齋藤先生、あるいは島田先生、あるいは下 遠野先生でもどうぞ。 ○下遠野委員  飯野先生がお話しされたインターフェロン治療について、3割はウイルスをエラディ ケーションできるという話は、現状においては大変希望が持てる治療方法の1つかと思 います。しかし、よく考えてみますと、どういうメカニズムで効いているのかとか、や はり3割しか効いていないというのは深刻に考えてみるべきだと私は思うんです。その メカニズムがもう少しはっきりすれば、もう少しいい治療の方法が開発できるかもしれ ない。そういう観点から、もっと前向きにそういう方面での研究を推し進める。それは、 インターフェロンの治療は大変お金がかかるとか、あるいは副作用を起こすとか、そう いうこともありますので、そういう状況を考えると、ぜひ治療効果を上げるような治療 の方法は何かというのをきちんとするのが大切じゃないかと思います。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。まことにそのとおりです。 ○矢野委員  この問題は、大きく分けて4つの問題があるんじゃないかと思います。  まず、1番は新規感染です。ほとんどないけど、これからこれをどうしたらよいだろ うかということですけど、これに対しては、すでにかなりの努力が払われてきていまし て、輸血後感染もほとんどなくなってきて、先ほど世界的に先進的なと言われていると おりです。これに対しては、あと残されたところをどうするかという詰めになると思い ます。  2番目はヘルシーキャリアの問題です。先ほど 100〜 150万と言われましたがこの認 知度がどうあるかがまず1つ大事だと思います。すでにインターフェロン治療は延べ数 として30万人以上行われているかもしれません。そうすると、 120万人程度と仮定した 場合に、半分ぐらいの人はもう認知しているのだろうかということですね。さっき座長 が言われたように、ほとんど認知していなくてポロッと陽性が判明する人が何%、何人 ぐらい日本に存在するのかということはぜひ明確にしないと、全国民的なスクリーニン グをするといっても、これは対費用効果も難しいところになってくるのではないだろう かと思います。すでに成人病検診でやられたり、老健に組み込まれ、例えば佐賀県など は全県域でやられていますので、そういうモデルは実際に存在する訳です。 それと、3番目に活動性肝炎、活動性肝硬変など、いまの治療を中心とする肝炎・肝 硬変の対策で、これをこれからどんなふうにまとめながら、あるいはサポートをして公 費負担を増やすか減らすかというところが3番目の問題。  4番目は、すでにがんになった人をどう効率よく治療するか又治療の開発とか、現在 ある新しい治療法の保険適用など精力的に促進するような方向づけを立ててその治療法 を確立していく。  私は、大きく分けてこの4つの段階をどういうふうに踏んでいくかというのがリコメ ンデーションにつながるのではないだろうかと考えいます。 ○杉村座長  矢野先生、どうもありがとうございました。 ○石井委員  私、少し別の立場からコメントさせていただきたいと思います。先ほど若林委員の方 から、ライフスタイルの中に、がんの予防というようなことで総論的なお話、あとラク トフェリンの話があったんですけれども、吉澤委員もちょっとコメントされましたが、 ライフスイタル、いわゆる生活習慣の中で、喫煙とか、飲酒とか、いろいろありますけ ど、HCV感染に関して、飲酒というものは非常に重要な、ポストポーメントではなく て、アクセラレーションといいますか、それが非常に重要で、これは日本でいち早く10 年以上前にHCVのインフェクションを持っている個体で、習慣性飲酒者の場合に、慢 性肝炎から肝硬変、それから肝硬変から肝がんへの移行のステージの速度が速まるとい うことはかなり前から明らかになっておりまして、それがようやく最近、HCVの問題 がアメリカで、あるいは欧米で、より一層関心が高まるにつれて、もともと欧米におい ては肝硬変の中でアルコール性の占める比率はものすごく多い訳ですから、そういうと ころにHCVの問題が絡んで、HCVプラスアルコールによって起こってくる肝障害の 進展の速さが、1998年ぐらいからアメリカの肝臓学会の機関誌である「ヘパトロジー」 などを中心として、ようやく向こうからのペーパーが出始めました。われわれの方はも っと早くからデータを持っているということでありますから、その辺は昨年いろいろ問 題になりました厚生省の「健康日本21」の中で2010年を目標としたいろいろなライフス タイルの中におけるターゲットの中でのアルコールの問題で3目標というのも出ました し、特にHCV感染者に関しては、アルコールとの問題はもっといろいろな立場から啓 蒙していく必要があるのではないかというふうに強く思います。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。当然のことですけれども、今日のこれは全部記録に なっていますね。 ○堺審議官  はい。 ○杉村座長  ほかにどなたか。 ○島田副座長  ブラッドバンクなどの御尽力で血液からの感染ルートはほぼ遮断されたのですが、将 来起こるとするならドラッグですね。これはエイズのアンダーグラウンドの情報では、 日本の若者も結構外国に行って経験していると。厚生省の統計では、感染者でドラッグ というのはまだ上がってきていないですか。HIVの感染者で、原因がセクシャルコン タクトでなくて、ドラッグというのはまだそれほど上がってきていないですか。 ○麦谷エイズ疾病対策課長  エイズサーベイランスではほとんど上がってきておりません。 ○島田副座長  それと、普通の人ですと肝がんの死亡が大体60何歳ですが、血友病でHIVをもって いる人は20年ぐらい早いですね。ですから、今、エイズの治療が進んで、エイズでは死 ななくなったのですが、血友病で感染している人はC型肝炎対策が臨床的な大問題であ って、数はそれほど多くないんですが、この点については肝臓の専門家の御協力をこれ からぜひお願いいたします。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。今後いろいろ御相談いただいて、またこれに反映す るような御意見だと思いますけれども。齋藤先生、何かございますか。 ○齋藤委員  1つだけ、今日、勉強したことで確認したいのですが、そうすると、C型肝炎は日常 生活では感染の危険はないというような認識でよろしいでしょうか。観血的な処置とか 、そういう医療以外では。やはりこれだけたくさんの人が感染していると、本人も心配 ですし、周りも心配だと思うんです。その点だけちょっと確認したいのですが。 ○吉澤委員  通常の日常生活をしている限りにおいて、感染はゼロとは言いませんが、ほとんどな いと考えてよろしいと思います。先ほどお見せした献血者集団以外でも幾つかの集団に ついて見ておりますが、私たちが前向き調査した限りでは新たな感染はなかったという 結果を得ております。それから、夫婦間の感染に関しても、あるということをおっしゃ る方々がいますが、相互に因果関係があるかどうかをジェノム(ウイルスの遺伝子)レ ベルで調べてみますと、別のルートから別々に感染したというのが大半を占めておりま して、夫婦間の感染については、B型のように心配することはないというのが今の状態 だと思います。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。私は普通のライフスタイルをしているんだけれども 、別に女房と別居している訳じゃないんだけれども、私は陰性ですよ。よけいなことを 申しまして申し訳ありません。  それでは、5時半になりましたので、本日は、いろいろ不消化のようなお感じをお持 ちになった方もおありかと思いますけれども、皆さん、違った角度からいろいろいただ きました。これで閉じさせていただいて、次回を12月の半ばにやります。また、透析の 方、あるいは患者の方のヒアリングというようなことも考えていきたいと思っておりま す。日取りについては、いずれまた事務局の方から皆様の御都合を伺って設定するとい うことでよろしゅうございますか。 ○南野管理官  それでは、事務局からお話しさせていただきたいと思います。  まず、長時間にわりまして貴重な御意見をいただきまして、先生方、非常にありがと うございます。第2回の開催につきましては、座長からもお話しございましたように、 12月の中旬頃の開催を考えております。第2回におきましては、事務局としては、主と して患者団体その他の関連の方々からのヒアリングをできれば行ないたいというふうに 考えてございます。なお、ヒアリングの対象者につきましては、座長と御相談して決定 をしていきたいというふうに考えております。2回目以降の開催日等につきましては、 事務局で調整いたしまして後日御案内をさせていただきたいと思いますが、お手元に日 程調整表があると思います。大変恐縮でございますけれども、できましたらこれに記入 をして明日までに事務局あてファックスなどで御連絡等をいただければ幸いに思ってお ります。以上でございます。 ○杉村座長  どうもありがとうございました。とかく、いきなりファックスとかの連絡もお困りに なると思いますが、これはしようがないですね。皆さん、いろいろな御用事もあるし、 厚生省も・・・。大体、公務員の数が多過ぎるというのがおかしいんですよね。今、多 過ぎないんですよ。本当は用事はものすごく増えてしまったので、いろいろ御都合があ ると思いますけれども、どうか能率よく運びたいと思います。  審議官、何か御意見ありませんか。 ○堺審議官  特にございませんが、私も感染症対策を以前やっておりまして、ちょうどその頃、肝 臓週間を決めさせていただいたというような、ちょうどそんな時期でございました。実 は、それ以前に学生時代に外国へ行ってA型肝炎に感染しまして、そのときに入院して 治療したのが吉利内科で、織田先生が助教授の頃で、その頃から飯野先生とか矢野先生 とお付き合いということでありますが、また、今年の冬といいますか、春といいますか 、たまたま吉澤先生と飛行機が一緒になって、そのときに話題に出たのがC型肝炎の話 で、一番多い広島である地区があるのですが、実は私の家内の出身がその隣の町でして 、やはりC型肝炎に感染しております。普通の生活をしておりますが、私は感染してお りませんが・・・。そんなこんなの御縁でございまして、今後ともひとつ私どもにぜひ お力をお貸しいただけたら幸いでございます。ありがとうございました。 ○杉村座長  それでは、今日は大変お忙しいところ、どうもありがとうございました。また、傍聴 の方々、熱心に傍聴いただきまして、どうもありがとうございました。これで会を閉じ させていただきます。 照会先 大臣官房厚生科学課  磯貝 石田 電話(代表)03−5253−1111   (内線)3807(磯貝)3815(石田)