00/10/17 生殖補助医療技術に関する専門委員会(第23回)議事録     厚 生 科 学 審 議 会 先 端 医 療 技 術 評 価 部 会     生 殖 補 助 医 療 技 術 に 関 す る 専 門 委 員 会                ( 第 23 回 )                 議   事   録        厚 生 省 児 童 家 庭 局 母 子 保 健 課           厚生科学審議会先端医療技術評価部会        生殖補助医療技術に関する専門委員会(第23回)議事次第 日 時 平成12年10月17日(火) 15:15〜18:35 場 所 商工会館6階G会議室  1 開 会  2 議 事   (1)第三者の配偶子提供等による生殖補助医療のあり方について   (2)その他  3 閉 会 〔出席委員〕    中 谷 委員長   石井(ト)委員  石井(美)委員  高 橋 委 員 辰 巳 委 員 田 中 委 員  丸 山 委 員  矢内原 委 員 吉 村 委 員 ○小林主査  定刻になりましたので、ただいまから「第23回厚生科学審議会先端医療技術評価部 会・生殖補助医療技術に関する専門委員会」を開催します。  本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございました。  なお、本日は加藤委員がご欠席ということでして、あと丸山委員が1時間ほど遅れる との連絡を受けております。  それでは議事に入りたいと思います。中谷委員長、議事進行の方をよろしくお願いい たします。 ○中谷委員長  ようやく涼しくなりましたけど、きょうは夕方から雨というのにもう雨が降りだして まいりまして、ご多忙の中をおいでいただきましてありがとうございました。  第21回のスザンナ・マッカーシーさんが来られたときの議事録は皆さん方のお手元に 行っているのでしょうか。 ○吉村委員  いただきましたですね。 ○石井(美)委員  2回分を送ってきたのがそうであれば、まだ見てないです。 ○中谷委員長  これをお読みいただきますとかなり参考になるんですよ。特に石井(美)委員は前に 質問表も出しておられたのですね。それのお答えもありまして、参考になりますのでぜ ひごらんいただきまして、最終的なたたき台のご参考にしていただきたいと思います。 ところどころわからないところも出てまいりますけれども、それからHFEAの職員の お名前が出てきますが、それが私どもの年次報告書によりますと、その後新しく参加さ れた方もいらっしゃってお名前がよくわかりませんので、それはどこかでご確認いただ けますか。 ○小林主査  はい。 ○中谷委員長  本日の議事に入ります前に、事務局からきょうの資料のご確認をお願いいたします。 ○小林主査  本日の資料になりますけれども、まずいつもどおり「議事次第」が1枚ございまし て、その次に事務局で今回作成させていただきました「第三者の配偶子提供等による各 生殖補助医療の是非等について(案)」を資料1ということで配付させていただいてお ります。それからあと2点、加藤先生からいただいた資料がございまして、1つは事務 局から今回提出しました案に対するご意見を資料2−1ということでお出ししておりま す。あともう一点は「自己危害の規制について(丸山委員の問いに答えて)」というこ とでご意見いただいております。参考配付として、前回お配りしましたワーキンググ ループのたたき台についてもお配りしております。  それで冒頭ですが、今回、事務局から出させていただいた案の性格と内容について簡 単にご説明申し上げたいと思います。  まず今回の性格なんですけれども、たたき台のBのうちの「(2)各生殖補助医療の 是非等」というところで挙げられていますAID、提供精子による体外受精、提供卵子 による体外受精、胚の移植、代理懐胎について、これまでの専門委員会での議論の大ま かな流れを踏まえまして、全体の論理展開の整合性というものを考えまして、その是非 とその理由を整理することを目的として事務局で作成させていただきました。  この際に、いかなる生殖補助医療を認めていくかということですが、その整理に当た って併せて整理していくことがいいのではないかと考えられますたたき台のBの1の 「(1)施術者」と「(3)の提供者等の条件」の一部についても併せて整理させてい ただきました。  たたき台の4ページの「配偶者の同意」というところ以下等については、今回、事務 局の案の方では特に書いておりませんが、これはまた後日ご議論いただいて、最終的な 報告書の段階では、また別途他の部分に盛り込ませていただきたいと思っております。  その次におのおのの案の部分についてご説明させていただきたいと思います。まず最 初1ページなんですけれども、最初の3つの丸の部分については今回の案の総論的な部 分でして、特に下の2つなんですが、これは専門委員会の中でもどの範囲について罰則 という厳しい規制の下に置いてよいのかということが少々議論があったと思いますの で、それを冒頭、総論的なものとして整理させていただきました。ここに書かせていた だいたのが1つは、営利目的の精子・卵子・胚の授受のあっせんと代理懐胎の実施のあ っせんについては罰則を伴う法律による規制を課すことが適当であるということでござ います。  その下になりますが、「(1)施術者の条件について」というところですが、これは たたき台の2ページのBの1の(1)施術者に当たる部分をほぼそのまま取り出して、 それに理由をつけさせていただいたものです。施術者のところの下の2つの中ポツの部 分については、ここでは特に挙げてないのですが、これも先ほど申し上げましたよう に、報告書の別の部分で別途書かせていただければと思っております。  次のページに参りまして、「(2)提供者等の条件について」というところですが、 まず冒頭なんですが、たたき台のこの部分は3ページ以降のBの1の「(3)提供者等 の条件について」の部分に相当するものでして、場所については、先に施術者と提供者 の両方の条件を定めて、それを踏まえて各生殖補助医療の是非を検討していった方が議 論の整理が容易になるのではないかということを考えまして、場所は前の方に移動させ ていただきました。  次の「 1提供者の条件」ということですが、これはたたき台のP4の一番上の2つに 当たるものでして、この卵子提供者の終わりにただし書きを付けさせていただいている のですが、これをご説明申し上げますと、この提供者の条件の中で、卵子提供者を子の いる者に限る理由として卵子提供によるリスクを挙げておりますので、逆に提供者が新 たなリスクを負わない場合においては、そういうものについては認められるのではない かということでたたき台にはないのですが、ここには書かせていただきました。  なお、これはご議論いただくとよろしいのかと事務局で1つ考えているところなんで すが、精子提供者の年齢についてですが、理由のところにありますとおり、加齢と精子 の異常な発生率との関係については必ずしも明確になっていないということかと思いま すので、ここはできましたら、何らの理由がつけばいいのかなと思っております。  次のページに参りまして、「 2精子・卵子・胚の提供に対する対価」というところで すが、ここはたたき台のP4の中ポツの対価に当たるところでして、文言をそのまま見 ると(案2)に近いということなのかと思いますが、内容については無償ということに しますが、胚の提供に精子・卵子も併せまして整合性をつけたということで、精子・卵 子についても原則として金銭等の対価の供与を受けること、あるいはすることを禁止す ることにしております。ただし精子・卵子については、採取に伴いまして、新たに病院 に来ていただくということがありますので、交通費等かかる場合がありますから、そう いった実費の分については支弁しても構わないということにしております。  なお、加藤先生から、この部分についてご意見が出ておるのですが、精子提供の現行 の1万円というお話があるかと思うのですが、それとの関係を若干申し上げると、1万 円というのが実費相当分に当たれば、それは当然ここの範疇に入ってくると思います が、当たらない場合にはそこからは外れるというようなこの案の性格になっておりま す。  次の「 3第三者の精子・卵子・胚の提供における匿名性の保持」というところです が、ここはたたき台のP4の対価のところの上にある(案1)、(案2)、(案3)と いうところがあると思うんですが、兄弟姉妹等からの提供のところを併せて整理したも のです。それで理由の部分なんですが、5つ目の丸までが親族の場合、すべての場合を 含む一般匿名性についての考え方、その整理を述べてまして、6つ目以降の丸が、親族 の場合にも、5つ目のところまでで整理した匿名性の原則の例外とはしないという理由 を記載しております。  なお、たたき台との関係で照らしてみれば、匿名性というところについては、(案 1)兄弟姉妹、近親者の部分については、これも(案1)をとったということになるか と思います。  次に5ページ、「(3)各生殖補助医療の是非等について」ということですが、ここ はたたき台の2ページ以降のBの1の「(2)各補助医療の是非等」に当たるところで す。5ページと6ページの頭の部分、「AID」というところの前までについてです が、この部分については、第三者の配偶子等を用いた生殖補助医療に共通する問題と思 われます親の両方又はいずれか一方の遺伝的要素を引き継いでいない子の出生という問 題に関しての整理を行った部分となっております。  次におのおのの生殖補助医療技術の是非を整理したものが6ページ以降になりますけ れども、まず、「AID」と「精子提供による体外受精」につきましては、これは基本 的にはたたき台についています結論を引き継ぎまして、それにご議論の中で出てきたと 思われます理由をつけさせていただいたものです。  次に7ページに行きまして、「 3提供卵子による体外受精」ということですが、この 部分についても、これまでの専門委員会全体での議論の大まかな流れを踏まえまして、 たたき台で言うと3ページになるでしょうか、(案1)をとったものに、ご議論の中で あったと思われる理由を付させていただいたものです。  それで四角囲みの中に※印でシェアリングの話があると思うんですが、これはなぜこ ういう形で書いたかといいますと、基本的には※印の部分については、1つ目の丸のと ころで、卵子提供による体外受精を認めるということを言っているので、ここで読める のであえて書かなくてもよかったのかもしれませんが、シェアリングについてもこの委 員会で大分ご議論いただきましたので、認められるということを確認的に、念のためな んですが、括弧付で書かせていただいたということです。  次のページに行きまして「 4余剰胚の移植」というところですが、この部分も専門委 員会でこれまでの議論の大まかな流れを踏まえさせていただきまして、たたき台の方で いきますと3ページの「4)提供胚の移植」というところだと思うのですが、これの (案2)に当たるものをとらせていただいたものに、ご議論の中で出てきた理由を付さ せていただいたものです。  最後になりますけれども、同じページ、「 5代理懐胎(代理母・借り腹)」、これに ついては専門委員会の中でも禁止ということで、概ねコンセンサスが得られていたと思 いますので、ここでも禁止ということにさせていただきまして、それにこれまで専門委 員会で出てきたと思われます理由を付させていただいたということでございます。  以上でございます。 ○中谷委員長  どうも詳細にわたってご説明いただきましてありがとうございました。この間のマッ カーシーさんに終わってからお話を伺いましたら、97年から98年にかけてでしたか、矢 内原委員、卵の提供。 ○矢内原委員  卵の提供、 900からです。 ○中谷委員長 900 ですって。 ○矢内原委員 400 ぐらいが本当のドネーション。 ○中谷委員長 日本では考えられないことではないでしょうか。大分違うんですね。随分勉強になり ましたね。それで、後で、私エレベーターで一緒になってお話しましたら、カップルと いっても、カップルでなくてもいい、シングルでもいいのだと。同性愛の場合でもいい のだということを言っておられましたね。だから、そういう点なども大分違うのだと思 いました。 兄弟姉妹というのはありましたね、提供があることがあると。そのときは匿名ではな くなるけれどもと言ってました。しかし、それ以外の場合は匿名が守られていて、出自 を知る権利についても、名前が特定できないような形での提供であるというようなこ と、これは90年法の中にも書いてありますから当然なんですけれども、ぜひ21回の議事 録をごらんください。ところどころわからないところが出てきますけれども。 ○石井(美)委員 そこに出ていたシェアリングの細かいコード・オブ・プラクティスかガイドライン か、そのようなものというのは。 ○母子保健課長 出た時点でお送りいただくことになっておりますが、まだ、いただいてないので、ま た催促はしてみますが、恐らくまだ出ていないのではないかと思っております。 ○中谷委員長 今、検討中というところもかなりある。 ○母子保健課長 もうすぐ配布するところだとおっしゃっていたのですが、出たらお送りいただくとい う確認はしてあるのですが、まだいただいておりません。また一度督促はしてみます。 ○中谷委員長 それから、イギリスの場合だとSurrogacy Arrangements Act(1985)というのがありま して、それで宣伝をしたり、あるいは大変対価を払ったりということはできないけれど も、一応それは認めているわけですよね。そういう意味で、1985年のSurrogacy Arrange ments Act、石井(美)委員お持ちですね。 ○石井(美)委員 あると思います。 ○中谷委員長 先生方、お持ちですか。 ○吉村委員 いや、持ってません。 ○中谷委員長 皆さん、見たいのではないでしょうか。ですから、この次までに、原文ですね。 ○石井(美)委員 日本語にはなってないと思います。 ○中谷委員長 そうですか。 ○中谷委員長 私、たしか人見さんがご存命中に日本語にしたものをいただいたような気がするので すけれども、私も資料の保管が甚だしく悪いものですから、どこにやってしまってわか らないんですけれども、90年法で多少の修正があるわけですけれども。 前のたたき台をもとに事務局で非常に詳細にいろいろ提示していただきまして本当に ありがとうございました。どうぞ、1ページ目からでもどこでも結構ですが、なるべく なら1ページから順次、ご意見などありましたらご発言いただきたいと思います。いか がでしょうか。 ○田中委員  精子提供者が40歳というところと関係するのですが、もし肉親の精子提供を認めるの であれば、40歳で規制することはどうかと思います。この案の中では、肉親(血縁者) は、この委員会としては認めないと書いてありますね。ということは、そういう方が圧 倒的に多いということですか。今まで聞いた限りでは逆のような気がしたんですけど、 認めるという人の方が多かったような気がします。それが1つ。次に「匿名性」という 言葉には二通り意味があると思います。一つは提供者のプライバシーを守るという意味 だと思います。このプライバシーが守れないと提供者がいなくなりますから、提供者の プライバシーを守るための匿名性の担保という意味においては、肉親者はそのことを人 や子どもに言うということはまずないと思います。ですからそういう意味においての匿 名性を担保はできると私は思います。  今度は、「匿名性」という言葉を、生まれてくる子どもに対して血縁者を使った場合 と第三者を使った場合の差がここに書いてありますけど、私としては理解できないの は、子どもがもし自分の出自を知った場合、すなわち自分の父親が実際の父親でないと わかった場合、その父親が第三者なのかそれとも血縁者なのかの差が、この血縁者を認 められない大きな原因になるのでしょうか。家庭内における精神的な圧力を与えるとい う反対意見もございますが、そういうことはないと思います。現に、息子さんがお父 さんに希望してお父さんが嫌だと断るケースもありますから。  もし子どもが自分の出自を知ったときに、本当の父親がおじいちゃんであったかそれ とも第三者であったか、その差がこれを禁止するのに値するということがどうしても理 解できないんです。そこのところを教えていただければと思います。私としては原則と して肉親は使わないというのはよくわかります。実際、症例としては少ないんですけ ど、やっぱりだんなの血を入れてほしいという強い願いの家族、そういう方が実際おら れる場合がありますので、できるならば、この部分を「禁止」というふうにしないで、 どこかできるような、「原則禁止」でも何ら構わないのですけれども、そういう場合は 認めてもらえるような、そういう部分をぜひ残していただきたいと思います。どうして も血縁者がだめならば、その理由を説明していただけないでしょうか。 ○石井(ト)委員  私の解釈も、ここには「禁じ」と書いてありましたけど、これ十分にディスカッショ ンして、決議はまだ至ってなかったと思うんですね。ですから今のことを踏まえて、匿 名性の問題と、もう一点は、肉親といっていますが兄弟までなのか父親まで含めるか、 そういうこともここでちゃんと議論した方がいいと思います。 ○中谷委員長  ここでの今までのご議論だと兄弟姉妹については肯定する方が多かったような気がす るし、だけど親については否認というような雰囲気だった。 ○田中委員  それは卵の場合じゃないですか、精子の場合ですか。 ○中谷委員長  ドネーションだからどっちでもです。 ○吉村委員  どっちもですね。 ○母子保健課長  若干補足ですけれども、先ほど小林から説明いたしましたが、これは今までの先生方 のご議論、前回、若干スタックした部分もございましたので、ある程度議論が本来なら 収斂している側面がもしあるならば、そういう形で整理できないだろうかということ と、これが最終報告となって対外的に発表することを想定し、論理構成上一貫性がある ように多少整理しながら書くならばどういうことになるかということに意を用いて書い てございます。  そういう意味で、多くは大体先生方のマジョリティのご意見かなと思うものが入って ございますが、あるものについては、そういう論理的な枠組みの議論を前提とするなら ばこうなるのかなという形で書かせていただいたものもございます。  この匿名性の点は実はそういうところであります。今までの議論の中で、匿名性と近 親者の問題が若干錯綜していたのかなという感じを持ちました。匿名性の原理原則を立 てた場合に、匿名性をとるということであれば、近親者の問題も含めて一義的にそこで まず整理されてしまうのではないかというのがこのように書いた理由であります。  つまり近親者は認めてもいいのではないかというのはマジョリティのご意見だったの かもしれませんが、匿名性というものを優先した場合に、まず匿名性を担保するために は近親者というのは基本的には入らなくなってくるだろうということです。それから、 今の匿名性の論理で整理したうえに、近親者が必要だという場合についても、こういう 形の、近親者ということに着目してもいろいろな問題があるのではないでしょうかとい うことを次に整理してございます。  この案はあくまでも今申し上げたような論理の問題も含めて組み立てたものですか ら、先生方が制度的には近親者は認められるべきであるという視点に立った上でこの中 身が変わっていくというのは当然にあり得ることだということです。1つの参考として ご議論願えればありがたい、こういう趣旨でございます。 ○石井(美)委員  今の議論ですが、匿名性ということは、子の出自を知る権利は認めないという、それ を前提としての匿名性ということなんですか。 ○中谷委員長  それとはまた違うんですね。 ○小林主査  この案ですと、恐らく個人を特定して会いに行くということはできなくなると思うん ですけれども、例えばその人が個人を特定できないとしても、提供者に関する情報を得 ることは、まだ幅としてとれているものだと思いますけれども、そこをまた別途、どの 幅であるかというのは匿名性のところで議論いただくところかと思います。 ○母子保健課長  もう一点、補足で申しわけありませんが、ここで言っている匿名性という意味は、完 全匿名性といいましょうか、つまりもらった側の親も提供した側も、それぞれ相手がわ からないという意味での匿名性であるというもので、最も厳格な匿名性ということで整 理しております。全体の論議の流れがどうなるのかとも関係がありますが、6つの前提 条件に反しなければ可能な限り第三者の配偶子の提供を認めていくという流れと、その 場合に被術者や提供者等の条件を厳格に設定していくという流れとを統合したときにど うなるかという形で、構成してあります。匿名性の考え方自体につきましても、今申し 上げた整理が妥当なのかどうかということは当然にご議論があるわけですので、論理的 な整合性を求めた1つの案としてそういう立場をとって構成してあるとお考えいただけ ればと思います。 ○田中委員  今、課長さんがおっしゃった匿名性の定義はよく理解できました。ただこの治療の中 で問題になるのは、提供者は知られたくない、これは非常に強い願望があると思うんで すが、この提供者のプライバシーを守るための匿名性ということだと思います。自分が 提供した精子であの子ができたことを知られたくない。もちろん自分も知りたくないけ ど、自分が提供した精子によって子どもができたことも知られたくない。もう一つは、 もらった側が、だれの精子なのかをわからなくしてほしい。この両面からの匿名性を定 義すると、肉親・近親者からの提供は不可能になると思います。もらった人はわかりま すから。 ○吉村委員  一般に匿名といった場合には、両方を含むのではないですか。 ○田中委員  そうですね、それはよくわかるんです。ただ厳密に言えばですね……。 ○中谷委員長  フランスは厳密に絶対匿名ということですからね。 ○田中委員  その定義でいくならば肉親・血縁者からの提供はできないですね、全く最初から。こ れは私の勝手な解釈で肉親はいいのだと思っていたので、矛盾が生じているんです、自 分の頭の中で。今、課長さんがおっしゃったような匿名性の解釈ならば、肉親・血縁者 は最初からだめですね。では肉親者からはどうしてだめなのか、教えてほしいと思いま す。血縁者からの精子・卵子依頼の提供は禁止しましょうという、その理由を知りたい んですよ。患者さんに聞かれたときに、こういう理由だからできませんと。正直言って 今の理由では、血縁者からの精子提供を強く希望されている患者さんを説得することは できません。 ○中谷委員長  石井(美)委員、家族法の見地からいかがですか。 ○石井(美)委員  匿名性をとるとして、私はただし書きで例外的に血縁者は認めるという方法はあり得 るとは思うんですけれどもね。 ○中谷委員長  そういう場合、例を挙げて例示していただきたい。 ○石井(美)委員  その場合にはそれだけの理由が必要だということですよね。田中先生のおっしゃるの は、匿名にしなくてはいけない理由をはっきり、それは納得されているというところが よくわからないんですけど。 ○田中委員  結婚した男女が子どもをつくる。子孫を残す。これは自然な営みです。この中で、夫 婦以外の精子、卵子、胚を用いる治療は本来不自然なものなのです。この非配偶者間の 治療を容認するという立場に立って検討した場合、治療に関わった人たちや生まれてく る子どものことを考えるならば匿名性であることは十分納得できますが、血縁者を用い た治療を禁止しなければいけないほどの根拠が果たしてどこにあるのかが納得できない のです。例えばそういうことをすると医学的に子孫に悪影響を与えるとか人類遺伝学上 問題があるとか何か説明できるような証拠が、4ページの内容ではよくわからないんで すよ。家族構成が複雑になるとか人間関係が複雑になるとか、例えばもしも出自を知る 権利が認められて、そのお子さんが、自分は……。 ○石井(美)委員  ちょっと待ってください。先生は一般論としては完全匿名性を肯定されるわけです ね。 ○田中委員  そうなればいいです、そうなってほしくないと思いますけど。 ○石井(美)委員  そうではなくて、血縁者を置いておきますよね。一般の普通の人の間では匿名原則で いくと、それは納得されるんですか。 ○田中委員  やっぱりそれがいいと思います。中にはどうしてもという方がおられるので、そうい う方は認めてほしいと。そういう人までも禁止する理由はどういうことでしょうかと聞 いているんです。 ○石井(美)委員  一般論として匿名を保たなくてはいけないということは認める。 ○田中委員  ええ。 ○石井(美)委員  その理由は血縁者の間にも該当するであろうと。 ○田中委員  私が理解していた匿名というのは、親は絶対言わないと、子どもには言わないし、だ れにも言わない。それで私は匿名性は成立すると思ったんですよ。 ○吉村委員  それは違う。 ○石井(美)委員  親は言わないという保証はないですよね。 ○田中委員  親は言わないけれども、もらった方は知ってしまうんですね。そういう意味では双方 の匿名性は成り立ってないというのはよく理解しました。 ○石井(美)委員  それをも超えて上回る利益があるかどうかですね、血縁者が。 ○田中委員  禁止する。 ○石井(美)委員  禁止するではなくて、血縁者はその匿名性を否定しても、なお、上回る利益が得られ るならば、例外的に認めましょうかという話ではないでしょうか。 ○吉村委員  そういうことです。 ○田中委員  そういうことです。 ○石井(美)委員  それだけのメリットが、ほかに提供者が得られるのであれば、特に血縁者を頼らなく てもいいのではないかということは言えるかもしれない。 ○田中委員  よくわかります。ただ、中にはどうしてもだんなの血を入れたいという強い願望の人 おられるんですよ。だんなというよりか○○家でもいいです。だんなの血が半分入れば いいのだと、やっぱり血筋ということを、これは多分理解できないかもしれませんけ ど、そういう古い世界がまだあるのは事実なんですよ。 ○矢内原委員  理解はすごくよくできます。できますけれども、もし論理という観点に今まで話が進 んできたならば、精子と卵子の違いというのは医学的にはすごく明らかですよね、その 採取に関して。だけど、同じ配偶子という論理で精子がよければ卵子だっていいじゃな いかということで、AID許されているのだからIVFの精子の提供もいいのではない か、そういう論理がここの中では先行してきているんですね。  そう考えると、今言った匿名性ということの論理を説明するためには、兄弟姉妹とい うのは匿名性が全くなくなりますから、原則というか最初にそれを打ち出さないと親・ 兄弟というのはまずだめなんですよ。それを上回る利益というふうに、石井(美)先生 は今おっしゃったのだけれども、上回る利益があったときにというのはどういうときな のかということの方が伺いたいんですけれどもね。 ○田中委員  それは私が今言ったように……。 ○矢内原委員  私は、この委員会で一番最初から言っているのは、要するに血族主義というのを加藤 先生なんかも非常に嫌いだとおっしゃるし、血縁主義なんかはというんですけれども、 夫婦が子どもを持っていくということの意味というものはどういうことなのか、自分た ちの血筋をつなげていくというのが生殖なのかどうかということを頭に入れていただき たいというのはそこだったんですよ。ですからその夫婦が、つまり○○家の血筋をつな げていくということが、正式に結婚した夫婦の子を持つ意義であるということが非常に 先行されることというのは一体どういう場合をもってするのかということがすごく…。 ○吉村委員  矢内原先生、難しい言い方されているので、もっと簡単に言えば、ここの基本理念の 一番初めは「子の福祉を優先する」と。子どもを考えた場合に、例えば親・兄弟からも らっていた方が先生はいいとおっしゃるメリットがあるのか。自分のお母さんの子ども じゃないんだよと。実はおばさんの卵子なんだよと、そういう説明する。そういうこと が子にとって本当に長い目で見た場合にメリットになりますかという。 ○田中委員  もちろんメリットになりません。こういう治療自体、第三者にもらうこと自体メリッ トにならない治療をやっているわけですから、もともとが決して喜ばれるものではない わけですから、ただ、その中でですね……。 ○中谷委員長  そうなると開き直りとしか言いようがないので。 ○田中委員  私が言いたいのは、患者のすべてにやろうというわけではないです。デメリットもも ちろん、いろんな話をして、ネガティブな話を聞いて、それでも受けたいという患者さ んにだけ行うわけですから、その中でもちろん精子をもらうということ自体、本来の生 殖行為ではないわけですから、その中で第三者の精子をもらう、認められていますね。 たくさんやっている。この中で肉親からもらうことだけを禁止。私は逆で、そのメリッ トがどこじゃなくて、禁止する理由は何ですかと聞いているんです。  メリットは患者さんが個人の、ここの一番最初に書いてありますね。「生命、自由及 び幸福の追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他 国政の上で〜」と書いてありますね。これは基本的人権だと思います。ちょっと法の解 釈間違っているかもしれませんけれども、やはり基本的に……。 ○中谷委員長  クライアントの希望もさることながら、それによって生まれる子どもの基本的な権利 の保障ということですから。 ○田中委員  第三者の精子をもらってできた場合と肉親からもらった場合、同じAIDでしょう。 その差が、禁止する差があるんですかと聞いているんです。両方、決して好ましいこと ではないのはわかっていますけど、近親者の場合にはなぜ禁止されなければいけない か、そこなんですよ。そこを教えてください。 ○中谷委員長  丸山委員。 ○丸山委員  すいません、遅れてきまして。ちょっと来る途中拝見していたんですが、第三者から 匿名のもとに提供された精子で受精して生まれる子というのは逆に利益があるのでしょ うか。母親、父親あるいは両方かもしれない。それの遺伝子的な親がわからないという ことは、ここでうたうほどの利益なのかなというのが、わからないことで……。 ○吉村委員  同じ次元の質問を同じように解しているんですよね。同じことですよね。先生がおっ しゃっていることも同じことで、私たちが先生に質問していることも同じことです。 ○丸山委員  わからないことは不利益ではないかというふうにも言えるのではないか。だから相対 的なもので匿名でやるシステムの方が子の福祉になると、子の福祉にかなうとも言い切 れないし……。 ○吉村委員  言い切れないというのはどういうことですか。 ○丸山委員  だから匿名であっても、子どもにとっては悩みの種になることがあるであろうし、逆 に顕明であってややこしい家族関係になると、それが悩みの種になることがあるであろ うし、だからどちらも子どもの福祉になる場合もあるし、ならない場合もあるのではな いかと思うんですが、匿名というのはそんなにいいことなのかなと。  一番最近の「日母医報」か医師会雑誌か何かに載っていたと思うんですが、匿名で親 がわからない子どもが受けるトラウマというのは結構大きいという記事があったような 記憶があるのですが。 ○吉村委員  でも自分のルーツはそこだったと知ることも非常なショックになることもあるかもし れませんね。それは同じレベルですよね、先生と私が今お話ししているのは。ただ、家 族関係が複雑になることは事実ですよね。こういうことは理論的に同じような意見でぶ ちあたっているわけだから、例えば先生が、おばさんから産まれた子どもであったとい った場合に、身近であるために非常に複雑になってくることはより起こりうるのではな いですか。そういうことですから。 ○丸山委員  その複雑になることが苦悩の種になる場合もあるでしょうし、何もわからないことが 子どもにとって苦悩の種になる場合もあると思うんですね。 ○吉村委員  私は一番思うんですが、卵子提供の場合は特に問題だと思うんですけど、副作用があ るとは言っているんですけど、副作用も比較的少なく卵子提供はできるだろうと思うん ですよ。例えば2週間の毎日の通いで排卵誘発剤を打って。そうすると妹や姉にかかる 負担というのは、生体肝移植の母親にかかる負担よりは圧倒的に多いと思うんですよ ね。 ○丸山委員  大きい。 ○吉村委員  大きい。要するに、それはやらなくてはいけないという義務感というか、そういうこ とは結構起こってくるのではないかと思うんですね。それは心配するよりも少ないかも しれない。 ○丸山委員  提供に至る義務づけ、義務感ですか。それとも提供してからの段階も……。 ○吉村委員  それもありますけど、やはり姉妹に与える、あなたはどうして卵子をお姉さんにあげ ないのという心理的な圧迫というのは非常に大きなものになってくる可能性は私はある と思うんですよね。 ○丸山委員  それは生体肝移植の場合も同じではないのではないでしょうか。 ○吉村委員  生体肝移植よりはこっちの方が少ないと思うんですね。 ○丸山委員  こちらの方がリスクが大きくて、生体肝移植……。 ○吉村委員  リスクは少ない。そうすれば、もっとより心理的な圧迫が強くなるということです。 ○丸山委員  負担が少なければ、それぐらいならやってあげなさいよという……。 ○吉村委員  そういうことが非常に多くなると思う。精子に関しては、田中先生のおっしゃってい ることも非常によくわかりますけど。 ○中谷委員長  高橋先生、何か。 ○高橋委員  精子についてのみ意見を申し上げますが、血縁者からもらったから匿名が保たれない ということはないと思います。提供する人は「ほかの兄弟たちにも絶対秘密にします」 というようなことを言っていましたし、実際にはAIDをしませんでしたけれども、そ ういうような条件でしたいと言って申し込まれた経験があります。父親からもらいたい という方もいましたが、それはその子どもと父親だけの話にして、絶対ほかの子どもに は漏らさない。やはり生まれてくる子どものことを考えてそういう匿名性を保とうと、 みんな努力をしているのです。  ですから匿名は保たれにくいかもしれませんけれども、匿名でそのままいく場合もあ ると思います。特例としての血縁者からのドナーとしての提供は、認めてよいと思いま す。 ○中谷委員長  卵子の場合は別なんですか。 ○高橋委員  卵子の場合もこれに準拠してよいと思います。卵子の場合はそういう経験はないです から、どの程度かはっきり今イメージが湧きませんけれども。 ○中谷委員長  卵子の場合は母親はかなりの高齢ですから、そういう意味でだめになりますね。 ○高橋委員  それはできないですね。 ○中谷委員長  だから姉妹ですね。 ○高橋委員  それから、ドナーとして「40歳以下」には反対だったんです。50歳、場合によったら 55歳で認めてよいと思う。「40歳」とこういうように明文化されたときに、60歳の方で も55歳でも子どもを産ませている人はたくさんいるので、高齢の方の精子はいろいろ遺 伝学的に問題があるようなイメージでとられると、その人に対する差別になるのではな いかと思います。私の意見は、50歳あるいは55歳の年齢に設定した方がいい。 ○中谷委員長  出産した方もいらっしゃる。 ○高橋委員  います。 ○中谷委員長  どのくらいいらっしゃるんですか。 ○高橋委員  学会で聞いたのは、いつか話しましたが、53歳で出産した方もいましたし、数字とし て具体的に挙げることはできませんが47〜48歳の方などの話はいくらでも聞いていま す。 ○中谷委員長  健康な赤ちゃんだったんですか。 ○高橋委員  ええ。 ○辰巳委員  この点に関してですけれども、コード・オブ・プラクティスの第4版に「今のところ 55歳ですけれども、40歳に引き下げようかと思っている」と書いてましたですね。この 間、スザンナ・マッカーシーさんに質問書を出しましたら、まだ55歳のままでいこうと 思っているという返答でした。  アメリカの不妊学会のガイドラインでは40歳になっていますけれども、イギリスの方 は検討した結果、まだ55歳のままでいこうということですから、55歳でも構わないと思 います。ですので、40歳よりも55歳の方がいいかなという気も最近してきたんですけれ ども、それが1点。  もう一つ、いいでしょうか。 ○中谷委員長  55歳、成人に達するときに母親は75……。 ○石井(美)委員  父親ですよね、55歳は。 ○中谷委員長  精子ですか。 ○辰巳委員  精子です。コード・オブ・プラクティスを見ますと、 2,207人のドナーのうち、51歳 から55歳のドナーが11人いたと書いていましたですね。そのまま続けるということは余 り大きな問題が起こっていないのだろうと思いますので、55歳に引き上げてもよいかな と思います。 それから、よろしいですか、もう一つ。 ○中谷委員長 どうぞ。 ○辰巳委員 先ほどの議論ですが、課長さんもおっしゃいましたように、これは匿名とするという ことを、まず第一原則として議論を組み立てているのですけれども、これはちょっと無 理があるのではないでしょうか。そんなに大事なことでしょうか、匿名性というのは。 これはもう少し後で考えたらいいことではないか。この匿名性ということをもとに、4 ページの前半部分が組み立てられていますが、その基本的原則、匿名性というのはもう 少しフレキシブルなものであっていいと思いますので、それをすべての根本にして議論 を組み立てていくのは問題があるのではないかと思いました。 ○中谷委員長  今の辰巳委員のご意見に対して何かご異論のある方。 ○母子保健課長  その匿名性の部分についてですが、4ページの最初の5つの丸をご覧ください。これ が完全匿名性の論理の根拠であります。今までのご議論の中でこういうのが出たかなと 思うものを書いてありますが、これが不適当であったりそれほど説得力のないものであ ったり、先生方の利益考量の考えが骨子ということであれば、当然に変わってくるだろ うと思います。一応論拠として、この最初の5つのこれがあるので、匿名性ということ が先生方の議論の中で合意されてきたのかなというふうに解釈して入れたものです。  残りの丸ではそういう論理を補強するというと変ですが、そこで近親者が排除されま すので、併せて近親者の問題という別途の議論について考えてみると、こういう問題も あって積極的には近親者を認めるという立場はとれないのではないでしょうかというこ とを説明しています。今言われたようなことも含めてご議論の上、大いに変えていただ ければよろしいのではないかと思います。 ○吉村委員  AIDを何年もやってまして、これをやっていく上において匿名じゃないと……。近 親者からもらうということについては、田中先生がおっしゃったように、そうやりたい というご夫婦はおられるかもしれません。しかし、一般に受けられる方がそれが匿名じ ゃないと、どういうような状況であるかということは、今想像もつかない。 ○辰巳委員  すべてを外すのではなくて「原則匿名」、「場合により」というふうなことを残す。 ○高橋委員  基本的には匿名。 ○矢内原委員  場合とはどういうことですか。よくわかるんですよ。○○家というのはよくわかるん です。だけど、原則は匿名であって、場合によっては、その場合は一体何ですか。 ○田中委員  吉村先生が心配されている提供者のプライバシーを守る匿名性と、私が今お願いして いる匿名性は違うと思うんですよ。要するに最初から近親者の場合、普通やっているA IDとはある意味では異質なものだと思うんです。だから普通の慶應でやっているよう な提供者、だれのを使ったのかわからない。この匿名性は提供者のプライバシーを守る という匿名性ですよね。 ○吉村委員  先生はそうおっしゃるんですけど、提供者のプライバシーを守ることも匿名性の原則 ではあるけれども、そうばっかりではないですよ。それは先ほど先生がおっしゃった両 方を含んでいることですよ、匿名というのは。 ○田中委員  そういう方はそれでいいんですよ。知られたくない、知りたくない、それはいいんで す。中には、逆にだんなの血が入ったものが欲しいと、AIDを望む方が特殊な場合で す。 ○吉村委員  それは現実面としてきっといらっしゃるでしょう。 ○田中委員  そういうものは先生のところでは受けていらっしゃらないので実際にはないんですが ……。 ○中谷委員長  そうすると、夫の精子だったらAIHじゃないですか。 ○田中委員  半分、Hみたいなものですね。FatherですからAIFです。 ○吉村委員  AIFですね。 ○中谷委員長  AIFですか。 ○石井(美)委員  議論を分けませんか。匿名性の話はちょっとここに置いておいて、兄弟姉妹を認める かどうか、親を認めるかどうかという議論でまずやりませんか。それと匿名性をどうす るかというのは、また、その後で。匿名そのものについては、私も出自を知る権利の観 点でそれについては言いたいこともありますので、匿名性は置いておいて、兄弟姉妹を 認めるとして匿名ケースがどうなるかにしても、例外としてそれは認めるという形の書 き方はできると思いますから、兄弟姉妹を認めるか認めないかという議論で、その理由 として匿名性を反対論で挙げることはいいとは思うんですけど、匿名性があるから兄弟 姉妹はいかんというのではなくて、兄弟姉妹を認めるかどうかというのを……。 ○矢内原委員  どっちが先でもいいですか。匿名性の話を先に議論しておいて、後で兄弟姉妹はどっ ちかということ。 ○石井(美)委員  どちらでもいいですが。 ○矢内原委員  その方が議論しやすい。 ○中谷委員長  その方が論理的なような気がしますね。 ○吉村委員  ちょっとその前に質問したいんですけど、私わからなかったので、この前、日産婦の 倫理審議会で、「第三者」といった場合、ここに「第三者」と書いてあるんですけど、 別に法律学的には第三者は親・兄弟であってもいいんですね。 ○石井(美)委員  当事者以外は、この場合は夫婦以外は第三者です。 ○吉村委員  父親のものをもらって人工授精しても第三者ですね。という理解でいいんですね。 ○石井(美)委員  夫の父親でももちろん第三者です。 ○吉村委員  そうですよね、第三者。 ○石井(美)委員  第三者。 ○吉村委員  わかりました。 ○丸山委員  そういう言い方で割り切るのはちょっと誤解の可能性がないわけではないですね。第 三者というと赤の他人を意味することもありますね。ここでは配偶子の提供のことを言 っているので、夫婦ないしカップル以外は、我々考えているのは法律婚に限りますから 夫婦以外を第三者というという、今の石井(美)さんの言い方は決して間違ってはいな いんですけど、親・兄弟の場合と赤の他人の場合と違うと。また、先ほども問題になっ ていますように、認める、認めないの問題ありますので、それを第三者の定義がそうい うことであるからといって言い切るのもちょっと問題で、血縁者である、なしを意識し ておいた方がいいかもしれないですね。 ○石井(美)委員  第三者の中で範疇を分ければいいんじゃないですか、それは。第三者の範疇ではある んですね。 ○丸山委員  第三者だから匿名というふうなところ、第三者というとイメージとして、赤の他人が 浮かぶんですね。 ○中谷委員長  赤の他人というような感じがしますよね。 ○丸山委員  そうすると匿名でなければならないとつながっていきますよね。だから第三者の中に も、血縁者をここの議論では含めるのだということ、そういう扱いをするなら、そのこ とについてあらかじめ決めておくのが必要ですね。 ○吉村委員  私も第三者というのは他人だと思っていたんですよ。そしたら弁護士さんに聞いたら ば、第三者といったら父親・兄弟も第三者に含まれます。確かにそうですよね。 ○丸山委員  この場合の当事者は、狭くカップルに限りますので、それ以外の者が第三者なんです ね。 ○吉村委員  それは質問だけです。 ○矢内原委員  私は、生殖医療のこの委員会が始まった当初に、みんなの頭の中にあるベースという のはAIDだったと思うんですね。この歴史を踏まえて、これがいいのだからこっちも いいだろうといって次々と技術の進歩とともに進んできましたね。その頭の中にはAI Dというものが匿名性を保たれていて問題がなかったというところにすごく大きな根拠 があって、そこの議論をしないで、これは1つの既成事実として我々はスタートしてい ると思うんですね。AIDをひっくり返したら申しわけないので、確かにAIDは歴史 的なことを踏まえていいのだと。では次はということが、今まで我々の論理の基本にな っていたように思うんですね。だとしたら、その論理の筋を通しておいて例外的なもの を議論していった方が私はいいように思いますね。  ですから家系制度とか、今、NHKで『徳川三代』やっていますから、あれを見ます と、我々にはあの徳川時代の感覚というのは日本人の血が流れていますから、日本人と いう感覚が、どうしてもお家、○○家ということに関するものは動かせないことをみん なの頭や中や心の中にあると思うんですね。ですからここだけは例外にしておいた方が いいだろう、例外規定として認めてほしいという声が患者側からも出るし、施術者、つ まりドクター側からも出てくるのではないかと思うんですね。  これは社会的なものを背景にしていますから、社会的な日本の動きの中を見ていく と、だんだん欧米化していくということや、離婚率のことを考えると、精子はいいけれ ども、今度は卵子の場合にはどうかということになると、卵子と精子は完全に分けなけ れば、少なくとも夫婦同姓というものが、まだ今のところ定着してますから、これが崩 れていく、別名でもいいのだということが定着するまでの間と今の考えは違ってくると 思うんですね。そこに普遍的なものとして、何かベースを1つつくってはっきりしてお かないと、いつまでたってもこの議論は決着はつかないと思います。  それから、うんと幅広く何でもいいのだというところから狭くしていくのか、とりあ えずこれでやってみようと。例えばドネーションの問題だったら、AIDと同じような 感覚で卵子の提供やってみようではないかと。それでどうしても集まらない、いろいろ な弊害が起こったときに、その次のステップを考えよという余裕を残したものにしない と、いつまでたってもこの議論は決着がつかないように思いますね。シェアリングです から論理性ということの、例えばきょういただいた資料の匿名性の話を先にしますと、 匿名性の5つの原則ということからスタートすると、あとの兄弟姉妹というのはあくま で例外的な事項として挙がってくることであって、それはそれで余裕を残した議論をす ると。何か柱をつくっておかないと、いつまでたってもこれは進まないと思いますよ。 ○中谷委員長  考えてみますと、この間のマッカーシーさんのお話を聞いてもそうですけれども、イ ギリスの90年の法、その前の84年のウォーノックさんのウォーノックレポート、ウォー ノックレポートはレポートができるまで何年もかかってますから、1977〜1978年ごろか ら始まっているわけで、それが土台になってやってきているわけですけれども、日本は 終戦直後、飯塚先生、その前の先生は何という先生でしたか。 ○吉村委員  安藤先生。 ○中谷委員長  安藤先生などがなさったのは終戦直後ぐらいですよね。だから1946〜1947年ごろから 始められているわけですが、それはアメリカの情報に基づいて始めたんですけれども、 アメリカは途中から商業主義になって全然違った方向へ行ってしまいましたが、日本の 今までのやり方やなんか、AIH、AIDのそういう主義等について見直してやってい かなければいけないんだなと思いますね。このころ、AIDについては、ずっと医学の 学生の提供を受けてやっていたわけですけれども、卵の提供ということはありませんで したけれども。 ○丸山委員  矢内原先生のご指摘は、これまでのAIDをまず出発点として考えていこうというご 趣旨なんですね。 ○矢内原委員  そういう時点で考えてきたではありませんかというんです、我々は。ですから、その 原則をベースにした貫き方をしておいて骨子をつくらないと、今、AIDの場合が、田 中先生の意見と吉村先生の意見が違ってきていますね。それではAID・精子の提供を 認めているのだから体外受精の精子も認めろというのが1つの論理、発展できますから ね。ところがAIDがうまくいっていることの背景には匿名性というのが入ったわけで すね。そうするとIVFの体外受精による匿名性は○○家のためにといって残しておい て、AIDを残さないという手はない。AIDは今のままでいこうというのはAIDも 変えなければいけないことに当然なってきますね。  ですから、その辺のところの筋道を論理的と言ってきてますけれども、行ったり来た り行ったり来たりで決して一貫性がないということを言っている。 ○丸山委員  前半の方のご指摘はそのとおりだと思うのですが、途中からちょっと私違うことを考 えてしまいまして、AIDも慶應流のAIDのやり方、匿名で一貫するというやり方で なさってましたが、他方、これまでのここでの発言でも、高橋先生あるいは田中先生の ご発言の中に近親者の精子提供を受けてなされたAIDというやり方もあったと思うん ですね。ですから、これまでのAIDというときに、近親者から提供を受けてなされた AIDをどう評価するのかというあたりをまず議論しておいて、その上でやっぱり近親 者の精子を用いたAIDはよろしくなかったということであれば、同じことが卵子提供 についても言えるかもしれませんし、逆に近親者の精子を用いたAIDは必要である と。我が国ではそれなりの意義があるということであれば、卵についてもそれが言いう るのかなという感じがいたしますので、吉村先生のところは確かにうまく機能が動いて いると思うんですが、それだけではない、ほかのことも言えるのではないか。 ○吉村委員  そういうことではなくて、私が言っている1つの匿名性をやっている根拠といいます か、AIDの経験しかないので。4〜5歳ぐらいの子どもを持つ 200名ぐらいの父親か らとったデータを見ますと、私はAIDをしたことを生涯にわたって絶対に知らせな い、というのが90%ぐらいなんですね。9%ぐらいが、恐らく知らせないであろうと。 1%が、わからない。これが日本の現実なんですね。  この現実を踏まえると、データがアメリカと随分違うんですね。AIDをやっていた 人を見ると、当然父親の精子を使用したいという方もごく稀にはお見えになります。確 かにわからない精子をもらうのは嫌だとおっしゃる方もいますけれども、これは数とし ては少ないですね。そういう人たちはやはり匿名性を希望されて来られているのではな いかと私たちは理解しています。それから「匿名であることに対してどう思いますか」 という質問に対しても、「匿名である方がよろしい」という方の方が圧倒的に多かっ た。これは母親ではなく父親のデータです。ただ、父親の精子をもらった、いわゆる兄 弟の精子をもらったというデータがありませんのでね。 ○矢内原委員  そのときの設問の中に、近親者、つまり「親・兄弟の精子だったら、よりよかったと 思いますか」とか、そういう設問なかったですね。 ○吉村委員  そういう設問はないですね。 ○矢内原委員  誘導尋問ですね。 ○吉村委員  そういう設問はなかったんですけれども、AIDのやり方というのは、今まで比較的 問題が少なかったのは、こういう匿名性を守ってきたというのも1つの一因ではないか なと。それはわかりませんですよ、これから先やることについては。 ○丸山委員  既になされてきた近親者からのAIDをどう見るかということですね。 ○吉村委員  そうですね。そのデータないですものね。 ○矢内原委員  データないし、学会では匿名だというようなことを言ってしまったもので、なかなか 言える方もおられないし、そのデータはとりにくいでしょうね。 ○吉村委員  私たちのところでも父親もあったでしょうし、兄弟もあったと聞いております。うち でもやっていたと思います。ところが会告が出てからは、匿名でやっているという現状 ですけれどもね。だから父親からもらった、おじさんからもらったというときに、それ が本当にうまく子どもが将来的に全く問題なくいっていれば、これは別にいいのではな いかと思いますけど。 ○矢内原委員  ですか、私はこの議論を始めるときに一番うれしかったのは、基本原則の6つができ たときなんですね。これをもとに考えようじゃないかということだったら、それを中心 に考えて、本当に子どもの福祉として商業主義に走らない、そういうもののことを保た れていけるかどうかということだと思いますよ。何かバックボーンが今までなかったの を、せっかく基本原則をつくって、それをもとに考えるならば、つまりその子の幸福に とって○○家というのはそれほど重要なのか。それから結婚したときに、おまえと、つ まり女房との子どもが欲しいんだからという感覚が兄弟の、つまりほかにないから、し ようがないから兄弟とかそういうような感覚で兄弟にやるなら、まさにこれは兄弟を生 殖の道具に使っていると。これはならんということですから、兄弟は私はならないとい うこと、決してそういうことを主張してもあれはないと思いますね。  では、○○家を保つために、自分の兄弟、つまりご主人側の兄弟と親の精子はよく て、卵子はそれではなぜいけないのかというのは、精子と卵子の間に差別があるのでは ないかと、私は違うと思っていますけれども、差別があるではないかということで、同 じ配偶子を差別してはいけないというような論議できてますから、それとすごく矛盾を していきます。その整合性を保つためには、これは一貫して匿名、つまりドネーショ ン、提供されたものは匿名であるべきだし、原則として、親子・兄弟というのは、原則 というのは妥協案ですけど、親・兄弟は認めないというふうにしないと一貫性はなくな ってくる。 ○中谷委員長  田中委員。 ○田中委員  私の言っていることが間違っていれば訂正しますけれども、私は○○家ということを 言っているのではなくて、だんなの血が入っている、夫の血が入っている子どもが欲し いというのが……。 ○矢内原委員  それは○○家のことなんですよ。 ○田中委員  そういう場合もありますし、○○家……。 ○矢内原委員  だから、おじいちゃんの血が、あなたは入っているんだよ、それで生まれた子どもに 言わないという保証は何もないですよ。 ○田中委員  普通の夫婦というのは夫と奥さんの間にできますよね。それが普通の生殖行為です ね。ところが残念ながらご主人に生殖能力がない、でも子どもが欲しい。それならば夫 の血が少しでも入っている精子が欲しい、これが基本的なものです。ただ、そのいろん な中に家の問題とかある、私はそういうことを言いましたけど、基本的にはご主人のD NAといいますか、ご主人のものが入っているものを、全く入ってない第三者といいま すか、そういうものよりも望まれる。そういう方がおられるということなんです。  矢内原先生のお話はよくわかるんですが、繰り返しますけど、そういう人たちの気持 ち、希望を禁止するという理由はどこにあるかということなんですね。  それと話がもとへ戻りますけど、AIDというのは、私たち医者になって何十年もた っていますけど、はっきりとして、こういうものだということを教育をされたことは余 りないんですよ。ほとんどがAIDは慶應でやるのだというふうに実際になっておりま したし、大学の医局にいたころも、精子がない場合は慶應に送りなさいと。ただ、患者 さんがこれを使ってくれと、お父さんとか肉親を連れてきた場合にはいいんだよと、そ ういう教育を受けたことも私はあるんです。はっきり言って、絶対に匿名でなければい けないということを強くうたっているということも余りよくわからなかったのは事実あ ります。  だから今でもほかのいろんな施設で無精子でAIDをする場合に、大抵は「提供する 人いますか」と聞くんですよ。要するに身内、お父さんか兄弟、いたら連れてきなさ い。してあげると。もしいなければ慶應に送りますと、これが現状ではないかと思いま す。まだまだ一般の産婦人科医の中でも、AIDは肉親はだめなんだよと、匿名性でな ければいけないんだよということを本当によく知っておられる方はそんなにいるのかな という気がします。慶應の方はご存じだと思うんですけど、どうでしょうか、先生。 ○石井(美)委員  会告を守られてないということになる。 ○矢内原委員  知られてない。 ○田中委員  そういう意味では、ここではっきりと決めて、ルール違反とか言われるとびっくりし ますから、やっている本人は正しいと思ってやっていたのに会告と違うということを言 われるとあれですから、決めていただくのも非常に意義があると思います。 ○中谷委員長  辰巳委員。 ○辰巳委員  矢内原先生は肉親の精子を使ったAIDなどが、最初に決めた6つの原則のどれに抵 触をするとお考えでしょうか。 ○矢内原委員  まずAIDがよくなった場合に、私はすぐほかからの卵子の提供と同列に必ず議論が 進むと思っているんですね。精子と卵子の間にラインを引けないというムードになって きてますから、それが怖いんですね。つまり卵子の提供が家族の中から強要され、卵子 の提供というものが他人に負担を与えると。  精子に関しては、私は精子と卵子の間に線を本当は完全に引きたいんです。だけど、 皆さんの議論の中に、それは理屈に合わないのではないかということになりますから、 ですからそこが1つ肉親の精子を使っていけないというのは、それがよくなった場合に 次のステップで逐条主義で必ずこれは奥さんの姉妹の卵子ということにイコールにな る。 ○辰巳委員  姉妹に対して次のステップというところが一番の。 ○矢内原委員  それがいけないということです。それから、子どもの福祉ということを考えたときに は、もし卵子のところまで波及の、親族の卵子の提供ということが認められ、一般化し たときに一番おそろしいのはこれからの離婚率なんですね。夫婦というのはある意味で 他人であって、結びついているのは夫と妻だけなんですね。私の家族観はそうなんです ね。つまり妻の家族のどうのこうのというのは私の家族とは違うと思うんですね。です からアメリカみたいに、重複の結婚を入れると50%以上離婚しているという社会と、日 本のように離婚が、これからは増えていくかもわからないけれども、現状の社会とは違 うということを考えたら、本当に産まれ出た子どもが、確かに法律的に父親が扶養義務 をずっと負うようになるかもわからないし、また母親が子どもの扶養義務を負うように なるかもわからないけれども、そこに2つの○○家と○○家の結婚式、結婚式へ行くと すぐそういうふうな話になるんですけれども、ご慶事が崩れたときにはこの間は他人に なる。真ん中にいる子どもの福祉にとっては本当にいいかどうか。  それだったら、全く他人のドネーション、提供というドネーションという考え方は、 全く他人の方がはるかに子どもにとっては幸せではないかというのが私の考え方です。 ○辰巳委員  家族関係の中で、父親と子どもの関係で、父親の方が半分でも血が混じっていうこと が、子どもとの関係とかにおいて、全くない人よりもいい関係になるということは考え られないでしょうか。 ○矢内原委員  私は考えられませんね。自分の精子でない限り、父親の精子でない限り、それは自分 の子どもではないと思いますね。ですから半分、私の血が入っているんだという……。 今までのいろいろな参考の方々のご意見の中で最も感動したのは、確かに仏教の先生 の話も儒教の先生の話も弁護士会の話も非常に興味深く拝聴したんですけれども、辰巳 先生からご紹介いただいた患者さんの話なんですね。あの方が発言した中で、一番よか ったのは、私たちは私たちの子どもが欲しいんだと。それが不妊の患者さんたちの本当 の希望であると。  だけど、ドネーションというのは、2人の話し合いももちろんそうでしょうけれど も、もう一つ、何か違う要因が入ってきている。嫌な言い方すれば○○家のプレッシ ャーですよね。父親方のプレッシャー、奥さん方のプレッシャーということがすごく感 じる。  そういうドネーションということが、特殊な例に親・兄弟も認めるということを表に 出してしまうと、そのプレッシャーはより一般化されてきて、不妊カップルというもの に対する社会的な圧力というのが、また家族にも及んでくると。 ○辰巳委員  私もそれは大変賛成なんですけど、ただ、根津先生の形でやれば、そういうふうなこ とがすごく表に出て、家族に対する強要がすごく増えると思うんですけれども、実際や られた設定、それに関してカウンセリングとかそういうふうなことで、とにかく文章に した場合にも、これは議論で大変例外的なことであるけれども、それでもそういうふう な要望が非常に強い場合があるので、そういう場合は例外的に認めると。しかしその場 合にはちゃんとしたカウンセリングとか非常に大変な慎重さを要するというふうな文章 を入れてもいいのではないかというのが私の意見です。 ○矢内原委員  今、附帯条件、今、我々は根幹が欲しいんだと思うんですね。そして、匿名であると いうことをもし根幹にするならば、匿名性が崩れるのは家族なんですから、ここで言わ れているとおりだと思うんですね。家族なんですから、それをまた別個に次の段階で考 えてもいいんですよ。だけど、根幹は匿名だったら、これは家族もいかんというのが原 則なんですね。別個に考えるというのは確かにいいですけど、別個に考えるのが先に出 ては困りますと言っているんです。 ○辰巳委員  ですから根幹の横に、ちょっとそういうふうなメモを残しておくのもいいのではない かと。 ○矢内原委員  その余裕の気持ちは私は別に否定はしませんけれども。 ○辰巳委員  その根幹のところに、兄弟姉妹がぼーんと入ってくると、これは非常に困ると私も思 います。 ○矢内原委員  もう一つ、これは記録に残していいかどうかわからないんですけれども、一番怖いの は世の中の反響だと思うんですね。このときに、課長さん、きょうレクされるかどうか わかりませんけれども、必ず新聞の見出しは、どんなことを言っても見出し屋さんが出 すのは、「卵子の提供・可」ということになりますね。 ○吉村委員  「兄弟姉妹・可」ですよ。 ○矢内原委員  「兄弟姉妹・可」と。これは別に根津先生を除名したことをどうのこうの言うことで はなくて、それが先走りをするんですね。我々にとっては、あくまで例外的な事項、今 決定したところで、例外的な事項、付随したことが先走りをしていくと。それが世の中 に与える影響というのは非常に大きなことだと思っています。 ○吉村委員  結局、物のやり方、実際にやる側にとってみると、世の中というのはすべてが皆さん 新聞・マスコミで見ますよね。それが正しいかどうかは別なんですけど、「卵子提供・ 可」になってます。こういう条件が備わったら可とか、そういうことは絶対載らないん ですよ。 ○矢内原委員  読んでくれればわかりますと言うんだけどね。 ○吉村委員  一般の人にそれをわかっていただくということは、あの新聞からは不可能なんです ね。ですから「原則は禁止」とか、そういう方が絶対に発表の仕方としてはいいんです よ。そうじゃないと、例えば、もし今言ったことを、課長さんが全く正確にマスコミに 伝えられたとしても、兄弟姉妹からの提供は可になるんです。これは我々やる側にとっ ては非常に混乱を招くんですね。「原則は不可」ということは、ある場合においてはや ってもいいということなんですよね。  だから、例えば先生がおっしゃったように、今まで1万例以上もやってきて親子関係 においてその大きな問題となったことがないということは、これは匿名が守られてきた こと。家族関係において何ら問題がなかった。これは1つの功績といっていいかどうか わかりませんけど、50年間そういう問題がなかった。今後は起こるかもしれないと、私 は思うんです。今は家族関係が複雑になってきている。  ただ、この複雑になってきているときに、例えば親子関係でちゃんと規定をして、提 供を受けたのが本当の子どもの父親、母親となるということが決まったとしても、家族 関係がどんどん複雑になっていくときに、あえて家族関係がより複雑になるようなこと をしなくてもいいと。例えば、子どもが生まれました、この子どもが非行に走りまし た、その際に離婚されました。これは私の卵子ではない、僕の精子だったんじゃない よ、ということは、法律的には「あなたは父親です」ということは言えるかもしれない けれども、社会生活を営む上において、あえてそういった危険を、こういった新しい医 療をする場合にする必要があるのかということ。それはやはり受ける側もそういうこと を考えて、こういった厳しい中でやっていただいてもよろしいのでは。  我々はこの医療を奨励しているわけではないんですから、こういう人のために行うだ けですから、あえて、そういうことを言わずに匿名にしてもいいのではないか。 ○石井(ト)委員  よろしいですか。 ○中谷委員長  どうぞ、石井(ト)委員。 ○石井(ト)委員  先ほど石井(美)委員から提案があったんですが、匿名といいますと必ず出自を知る 権利というところとまた関連してきますので、この際ひとつ、精子に対して血縁をどう するのか、卵子についてどうするのか、それだけをきちんと決めてほしいんです。  先ほど吉村先生がおっしゃった報道のことは、これは全然無関係ですし、報道の仕方 というのは関係ないと思うんですね。それから、会告はずっと出しておりますけど、そ れは当然私たちは知ってなければいけませんが、それに縛られることもないと思うんで す。 ○吉村委員  それはそうですよ。 ○石井(ト)委員  ですからそういうことを踏まえた上で再度、精子はどうなのか、卵子はどうするの か。血縁のところが一番ひっかかっていますので、そこでもう一度精子のところをディ スカッションし、次は卵子、という順でよろしくお願いします。 ○中谷委員長  議論を進めていただくのに、大体会議というのは、私は2時間ぐらいが一番いいと。 いつもここは3時間ですので……。 ○矢内原委員  1時間経ったので休みましょう。 ○中谷委員長  ちょっと10分ほど、休憩をとっていただいた方がいいかと思います。 ○田中委員  1ついいですか。先日、12月までの予定表が送られてきたんですけど、いついつまで に限りませんか、この委員会。いついつまでに決着つけるという、あれでいくと、来年 また来そうな気がする。 ○矢内原委員  これで決めちゃいましょう。 ○田中委員  それは委員長の決断で、何月に結論を出すと、どうですかね。 ○中谷委員長  本来は2年の予定でしたから、10月12日に終わるのだと思って、私はHFEAのリー チ委員長に、こうだから、あなたが来るのは11月だから遅過ぎるんだと言って断ったん ですよね。 ○矢内原委員  今度送っていただいた案を拝見をしていくと、原則論は貫いているし、このところは 別個やらなければいけないということで、本日の議論はかなりまとまったと思って、き ょう来たんですけれどもね。 ○吉村委員  あと出自を知る権利ですよね。 ○矢内原委員  文章がちょっと難解なところがあるので、それだけ。 ○中谷委員長  法律をつくるのだったらば、割合に弾力的なものをつくれる。 ○吉村委員  私はこれだったら許容できるというか。 ○矢内原委員  私もそう思った。 ○中谷委員長  いいですか、お休みとらなくて。 ○高橋委員  休み時間ですからね。 ○吉村委員  最後に言ってください。 ○高橋委員  一部の文章を手直しすることによって、私は基本的にはこれでいいと思います。例え ば年齢の問題もありますし、血縁者からの提供を認めるような文章ですね。ただ、加藤 先生のお書きになったものを参考にするとよいのですね。 ○矢内原委員  血縁者に対しては、別途また考えましょうという。 ○高橋委員  匿名性の問題は、ここに「子どもに対して匿名性が保たれないという特殊な事情を根 拠として、有縁の人からの提供を全面的に禁止するのは不合理である」と書いています ね。非常にうまい表現を使っているなと思い、感心したんです。  有縁の方からの精子や卵子の提供は非常に稀だと思います。まず匿名性、第三者、他 人からの提供というのが普通であって、それがどうしてもないようなときに、血縁の兄 弟から提供という場合もある。  こういう問題は都会と地方では違いますし、大学という非常に大きな組織でたくさん のドナーがいるところと非常にドナーの少ないところでは違いますので、特例として、 将来出来るであろう管理機構などそういうところの審議を経た上で認めるというところ を入れていただいた方がよいと思います。  前にも申し上げましたように、国際不妊学会やFIGOなどへ行くと、こういうよう な幅の広いいろんな発表が結構されております。日本では禁止されているようなこと、 そういうレベルの発表がたくさんあります。着床前診断でも何でも。 ○中谷委員長  そういう意味で日本は特殊なんですよね。 ○高橋委員  そうです。あまり禁止して、将来のいろんな研究を縛るような規制というのはよくな いのではないか。 ○中谷委員長  血縁者からの提供を認めると、いろいろ法的には複雑な難しい問題が出てこないとも 限らないと私は思いますけれども。 ○矢内原委員  5ページの上のところは、本委員会としては認めることはしないんでしょう。だか ら、そこにただし書きをつければいいんですね。 ○高橋委員  ええ。 ○矢内原委員  例えば、今ちょっと書いてみたんですけど、「ただし、国民又は患者から要望する声 が多かったり、その必要性があったときには、将来また新たに検討をする余裕を残す」 というような、そういうことを含めておっしゃったんですね。 ○高橋委員  将来というと、日本の法律は変更が難しいので、私は将来という言葉にはあまり信用 をおいていませんので。 ○矢内原委員  あしたも将来ですから。 ○吉村委員  結論が出ませんので、ちょっと休みましょう。 ○矢内原委員  検討する措置を残すものとするとか、ここの文章化を考えてもらいましょう。 ○中谷委員長  休みましょう。                  (休 憩)                  (再 開) ○中谷委員長  それでは再開します。どうぞ、引き続きご議論ください。 ○石井(美)委員  よろしいでしょうか。 ○中谷委員長  どうぞ、石井(美)委員。 ○石井(美)委員  自己危害は別として、加藤先生流に、禁止できるのかというと大変迷うところなんで すけど、血縁者からのということについて。1つは、これがたたき台つくった人のみん なの共通と言えるかどうかわからないんですが、私の意識としては、子どもを持つとい うのは育てる子どもを持つと、その夫婦の希望をかなえてあげようというのが基本とし てある。だから、血がどうのこうのということを重視して決めたいとは思わないという ことが1つですね。  殊に我が国の場合、子どもを持つというのは、家の存続という形で、従来、今でも周 りの圧力で子どもを持つことを求められるという状況があるわけですから、そういう中 で血縁者というものを特別にするということのマイナスは十分考える必要があるだろう と思うことが2点目。  3点目は、先ほど吉村先生は非行の話をされたんですけど、やっぱり子どもに何か問 題があったとき、生まれた子どもが障害があったり、いろんな問題が起きたときに提供 者というのがわかっていると問題になりやすい。その問題になるということは子どもの 福祉を害する危険があるということをかなり考えなくてはいけないのではないか。  もう一つは逆で、今度は問題がなくていい子だったら、欲しがるということも、自分 の子という形で主張する可能性が、法的には言えなくても、養子縁組の話で、私も科学 的に調査したとかそういうことではないんですけど、いろんなトラブル、親戚とかそう いうのを聞いていても、結局我が国の場合、血縁からもらっている場合が多いものです から、いろんなトラブルがあって、実際上の奪い合いみたいな形の問題が起きている話 を聞きますから、そういう点に十分注意をする必要性があるのではないか。その点を考 えると血縁についてはかなり制限的な取り扱いという方が望ましいのかなと思ったりも するんです。  もともとのたたき台をつくったときは、私、兄弟姉妹は認める案だった。我が国の場 合、養子縁組も血縁の方が多いものですから、そういう慣行からいくと、この場合も認 めていいのではないかなという気はしていたんですけれども、子の福祉の観点からかな り慎重な取り扱いを必要とするのではないかということを今あえて言わせていただきま す。 ○中谷委員長  少しお考えが変わったというわけですね。 ○石井(ト)委員  私も思うんですけど、育てる子どもを持つ、それが大原則ということで、そうすると 血縁者も関係ないということですね。 ○石井(美)委員  はい。 ○石井(ト)委員  それから、その後の子どもの善し悪し。そういうことはカウンセリングでいかように もカバーできるのではないかと私は思っているんです。 ○中谷委員長  カウンセリングでどうして……。 ○石井(ト)委員  その前に、こういう子どもさんを実際に引き受けるときには、どうであるべきかとい うときに、母親になる責任というのも同時に話しておくということです。子どもの成長 には何があるかわかりませんから。 ○中谷委員長  それは予測であって。 ○石井(ト)委員  ですから、それも含めて話すということ。情報を提供し、しっかりわかった上で受け ると。そういう準備がなければ。 ○中谷委員長  現実が現実のものとなったときも、生殖補助医療を受けたのだから、それは受け入れ なければいけないと。 ○石井(ト)委員  それで受け入れられなかったら、ノーと、拒否すればいいわけですから、だから、そ ういう後々の問題は、私はカウンセリングでカバーできるというふうに考えています。 ○中谷委員長  カウンセリングの制度ができるのは3年かかるんでしたか。 ○石井(ト)委員  急いでつくればいいんじゃないですか。カリキュラムをつくってトレーニングすれば よろしいのではないかと思います。事前カウンセラーがないと様々な問題が起きること が予想されます。提供者の質の問題だとか、その後の子供の成長過程における問題など が考えられます。 ○中谷委員長  カウンセリングはかなり必要だということはどこでも強調されますけれども、カウン セラーというのは3年で育成できるのでしょうか。 ○吉村委員  しなくちゃいけないと思いますけど、一番難しいことではないですかね。 ○石井(ト)委員  インフォームド・コンセント、一応必要な情報ということはしっかり与えるというの が、それは絶対必要だと思うんですね。いついつから、これに則って施行するというふ うに出したときには。 ○中谷委員長  そういうカウンセラーというのは、石井(ト)委員によれば、人数はどのくらいを予 定されるんですか。 ○石井(ト)委員  今、先生方、数を算出していますよね。推定 200人ぐらいですか。 ○吉村委員 200 人ぐらいは、各県に2人としても。 ○矢内原委員  カウンセラーの話ですか。 ○石井(ト)委員  そうです。 ○矢内原委員  これはまた委員会、「健やか親子・21」なんかの動きを見てますと、国家でカウンセ リングというか、相談窓口とカウンセリングという二本立てにしますと、カウンセラー の数というのは、それを通らなければならないというような機構が変わってくると思う んですね。ドネーションの場合は、もし記録の保存ということを考えたら、プライベー トなところではできませんから、そうするとある程度各県に1つというような形でセン ター化をしていったときにはうんと少なくて済みますし、カウンセラーの数というの は、今、新しく始める体外受精の患者というのは1万ぐらいだろうと思いますね。とい うことは、その中でドネーションが必要だというのは 100ぐらいだろう。ですから各都 道府県に2人か3人いればいいんじゃないですか。だから 100人から 200人。 ○中谷委員長 今、臓器移植のコーディネーターも何十人かいますけれども、なかなかそれが難しい んですよね。本当の意味でのサポートできる人が何人かいるかという状態で難しいんで すよね。 ○石井(ト)委員 今、推定で先生はおっしゃったんですけど、施設が当然特定されますね。 ○吉村委員 そうですね。 ○石井(ト)委員 そうしましたら、その施設に何人必要かということになりますね。 ○中谷委員長 ことしの7月の時点で 503施設ですか。 ○吉村委員 そうですね、503施設。 ○矢内原委員 7月で 500施設で、9月になってから2施設ぐらい増えましたね。 ○吉村委員   503ぐらいです。このカウンセリングというのは、私は思うんですが、兄弟を許す と、これは30年、40年というカウンセリングが必要になってくると思うんですね。その 子どもが大きくなり、そして、その子どもがまた結婚をし、これは今の日本のカウンセ リング制度がないところで、こういうのをお話しするというのは机上の空論のような感 じがするんですよね。 今、石井(美)先生がおっしゃいましたが、実際に思っていると、AIDなどで子ど もが生まれると、この子は五体満足だったということが本当に、ほかの人よりうれしい んですよね。だからその感覚というのは、やっぱりこういった医療においては当然つき まとうだろうし、また兄弟姉妹からもらったとなるといろんな意味でさまざまな、子の 善し悪し、見栄えもそうですけど、今後その子どもが社会的な生活を行っていくわけで すから。 だけど、それを反対するとか、加藤先生がおっしゃるようにそれをやめるだけの理由 にはならないだろうとおっしゃれば、それですべてが終わってしまうので。だけどやる 側にしては、本当にそういったものはよく考えなさいよと言って、逆の面から私はプレ ッシャーをかけたくなりますね、その不妊夫婦に対しては。 ○中谷委員長 私はもともと家族といいますか親族関係でそういうドナーになるとかならないとかと いうことについて反対だったんですけれども、皆さんがそういうものは認めるべきだと いうので大半はご賛成になったんですよね。少なくとも兄弟姉妹については。 ○吉村委員 賛成の方の方が多いと思いますけど。 ○矢内原委員 大半じゃないです、賛成の方が多かったと記憶には残っています。 ○中谷委員長 私はだから、それは日本的な発想といいますか、皆さん方がそういう考え方をなさる ならば、それは認めなければいけないのかというふうに思いましたけれども、先ほど石 井(美)委員が、基本的な姿勢を少し考え直すというふうにおっしゃったので大変心強 く思っているんですけれども。 ○丸山委員 日英同盟でイギリスでも認められておりますので、日本だけでなくて、日英ですか ら。 ○石井(美)委員 イギリスはすべてのことについて認めている国でもある。 ○中谷委員長 あれは21回の議事録をお読みになりますととてもおもしろい。大変弾力的なんです ね。だから、法律をつくるならば、できるだけそういう意味で柔軟なものをつくった方 がいいでしょうというふうに言っておられましたけれどもね。 ○矢内原委員 大部分じゃなくて、今の話で、もし2つに割るとしたら半々ぐらいになるんじゃない ですか。賛成です。 ○中谷委員長  親族ね。 ○矢内原委員  先生が反対されれば。 ○中谷委員長  私は初めから反対なんで、後でいろんな問題が出てくるんですよ、それがね。田中委 員どうぞ。 ○田中委員  ありがとうございます。私思うんですけど、肉親をどうのこうのと言っているのは日 本的だというふうにおっしゃっていますけど、私は違うと思うんですよ。外国では肉親 も一般の方も一緒に扱っている。逆に日本人がかえって肉親のことを差別しているよう に聞こえるんですね。諸外国ではドナーは肉親であろうが誰であろうがいいというよう な気がするんですよね。だから外国では、ドナーとしては肉親はいけないとかいう規定 が何もないです。違いますか。 ○矢内原委員  そのとおりなんです。 ○田中委員  日本人だけが、肉親がいいとか悪いとか。 ○矢内原委員  肉親のところを強めるということは、逆にマイナスの面も強まってくるという可能性 があるということです。 ○吉村委員  そういうことです。 ○田中委員  それにしたらどうですか。 ○吉村委員  だから日本は肉親とか家族とかそういうものを考えているからこそ今ここで問題にし ている、逆に。 ○石井(美)委員  特別視する風土があるから。 ○吉村委員  風土があるから。 ○田中委員  一般的にいえば、第三者といえばドナーはおじさんであろうが全然知らない人であろ うが差はない。イギリスのコードにしてもどこの国のコードにしても、ドナーには何親 等以降はだめとか、そういうのは全然ないですね。ただ、親族の場合には匿名は守れな い、とだけ付記してあります。 ○中谷委員長  正式な婚姻夫婦でなくてもいいですからね。 ○田中委員  そんなものですね。何か、却って我々は諸外国ではあまり問題にならないことを一生 懸命してきたような気もするんですね。 ○石井(美)委員  匿名原則と矛盾することになる。 ○田中委員  ただ、匿名と言っておいて、匿名だけど、その中にはドナーとしてはそれもあるけ ど、その場合は匿名は守れませんねと。それを禁止とか何とかという論議というのは外 国には余りないんじゃないですか、イギリスとか、どうでしょう。 ○石井(美)委員  多分フランスは匿名は絶対守るから。 ○中谷委員長  絶対匿名。 ○石井(美)委員  兄弟姉妹はいいとして、今度お友達を連れて来る。それはいいですか。 ○田中委員  いいんじゃないですか。 ○石井(美)委員  そうすると……。 ○田中委員  匿名というのは提供者のプライバシーを守るという意味ですよね、フランスでは。プ ライバシーの立場を守ることでしょう。要するに子の出自を知る権利を認めないという ことですね。 ○吉村委員  フランスは認めてない。 ○中谷委員長  健康な子どもを持っているということも条件になっていますよね。かつカップルの同 意を得ているとか、いろいろな条件をつけています。 ○矢内原委員  匿名じゃない国というのはありますか。アメリカですか。 ○石井(美)委員  スウェーデンは匿名ですよね、そういう意味ではね。 ○中谷委員長  はい。 ○丸山委員  アメリカは許容するんじゃないですか、ああいうものは。 ○矢内原委員  匿名じゃないですね、アメリカは。 ○吉村委員  アメリカは匿名じゃないです。 ○中谷委員長  アメリカは精子バンクなんかでみんな注文するわけですから、匿名も何もないわけで すよね。 ○石井(美)委員  でも名前は伏せてますね。 ○吉村委員  名前は伏せてますね。 ○中谷委員長  名前は伏せてありますよね。 ○石井(美)委員  それを命じているわけではないですね。名前を出してもいけない。 ○中谷委員長  商品番号ですから。 ○矢内原委員  やっぱり匿名ですね。 ○中谷委員長  そうです。 ○矢内原委員  匿名でない国はありますか。 ○吉村委員  ということは、匿名性でなければならないという国の方が少ないです。それはフラン スだけと考えていいです。イギリスだって、匿名であって、我々が言っている匿名性じ ゃないでしょう。兄弟からもいいと言っているわけですから。だから、そうじゃない国 はフランスだけですよ。この厚生省の方が書かれた案で言っているのはフランスと今度 日本になるかもしれません。 ○石井(美)委員  私、さっき休み時間のときに言ったような気がするんですけど、大原則を定めて、そ のガイドラインに違反するというか、ガイドラインの例外的に認めてもらうような手続 については、中央の委員会の承認を得て認められるみたいな、そういう形の手続をつく るというのはどうでしょうかねと思ったんですけどね。 ○田中委員  AIDも全部申請するんですか、中央施設に。 ○吉村委員  それはそうなりますね。父親でやりたいということであれば。 ○田中委員  第三者の、匿名の場合も。 ○矢内原委員  提供の場合にはそうなります。 ○田中委員  全部ですね。 ○矢内原委員  記録を残すものの場合は全部そうです。 ○石井(美)委員  いや、承認ではないですよね。 ○矢内原委員  承認はいらない。 ○吉村委員  第三者。まだ話し合ってないから、そういうところができて、機関が、先生のところ がしていいということになったらば、それは先生のところで、第三者のを集められて、 それはいいんですけど。父親からもらう場合は、今のことになると、これは父親でどう してもやりたいということを申請して許可をもらうことになりますね。 ○中谷委員長  どういう法の規定の内容になるか、法務省の方にもご相談してちゃんとしたものにし なければいけないわけですけれども、そのほかにコード・オブ・プラクティス、実施要 綱といいますか、そういうもので個別的なことを規定していくことになるのではないだ ろうかと思います。丸山委員、どうぞ。 ○丸山委員  匿名の話は一旦終わろうということで控えていましたがまだ続いているようなので、 ちょっとこういうことなのかというのを述べさせていただきたいんですが、事務局の案 の4ページの上の丸の3つなんですが、一番上のところは、匿名というのは、このクラ イアントというか親になろうとする者に対しても匿名、子どもに対しても匿名、世間に 対しても匿名ということで、プライバシーの維持ということなんですね。  2つ目に書かれている匿名というのは、これは子どもに対してだれが提供者かを秘す という意味での匿名ですね。  3つ目の方は、匿名にしないと配偶子の選別が可能ということですから、これは親と なろうとする人にとっての匿名ですね。  それから、先ほど高橋先生のおっしゃった近親者から提供する場合でも匿名が達成で きるというのは子どもに対する匿名ですね。ですから親に対する匿名、子どもに対する 匿名、世間一般に対する匿名というのをちょっと分けて考えることがひょっとしたら必 要かなと思いました。それだけです。 ○石井(美)委員  私は匿名の定義を提供の時点において、提供する側と提供される側が、だれが提供し たかということがわからないということを匿名の定義にしたいと思うんですけど。 ○丸山委員  親になる人とクライアントとの関係での匿名ですね。 ○石井(美)委員  そうですね。お医者さんもわかるわけですけれども、医療者以外はわからないという 形。 ○丸山委員  そういう定め方をすると、ちょっと恐縮なんですが、先ほど高橋先生のおっしゃった のは、匿名は達成できないということですね。 ○石井(美)委員  そういうことです。だから、血縁者はその場合は例外になるということですね。匿名 原則の例外になる。 ○丸山委員  認めるとしたら、そうなるということですね。 ○石井(美)委員  私がこだわったのは、子どもの出自を知る権利として、成人後に何らかのものが保証 されるということは匿名原則とは矛盾しないという形にするならなり得るかなというこ とを含めてなんです。提供の時点でわからないということは、選別の問題、選べないと いうことをクリアーするためにはもそうであろうし、それによる取引みたいなことが行 われないような形になるだろうし、子どもの権利は別途考えるので、今のところは親の 立場の場合ということですね。 ○丸山委員  石井(美)委員がおっしゃったような観点での匿名に絞るというのは、この委員会 で、これからはそういうことで議論していきましょうというのは、意見集約できるな ら、それでよろしいかと思うんですが。 ○高橋委員  できれば、今、石井(美)委員のおっしゃったような考えを基本にしたいと思うんで すけれども、先ほど田中委員からも意見出ましたように、地域によって、こういう精液 で子どもつくりたいとか、もっと具体的に言うと、私が精子を持ってきますので、これ でお願いしますといった例も私はありました。恐らくいろんなところでそういう経験あ ると思うんです。ですから、そういうふうな場合どうするか。AIDと一口に言います けれども、いろんなケースをはらんでますから、今、石井(美)委員のおっしゃったよ うなので縛ると、相当において、これは厳しい条件の設定になると思います。  ですから、私はお互いに匿名、守秘義務ですね、匿名というよりも。受ける方が、自 分の子どものことを考えて、あと口に出さない。そういうふうな守秘義務的な考えで守 ってくれるのであれば、子どもの不幸になるような、子どもの福祉に反するようなこと は余り起きないのではないかというのが私の考えです。もう少し幅広く認めた方がいい という考えです。 ○丸山委員  石井(美)委員からおっしゃった方がいいと思うんですが、今、石井(美)委員のお っしゃったのは、そういう血縁者の場合の提供を認めないということではなく、血縁者 の場合については匿名の要件を課さないという匿名の例外を認める形で匿名性の原則を 一般的に定めようという趣旨ですので、排除するということには必ずしもつながらない と思います。 ○中谷委員長  ほかにご意見は。 ○吉村委員  高橋先生がおっしゃったこと、こういう精子でやっていただきたいというのは、例え ばスーパーモデルの卵子があったと、この卵子でやっていただきたい、というのと全く 同次元の問題に、先生、なりませんか。私はそういうものを心配するんですよね。今、 先生がおっしゃった意味はよくわかります。このお父さんの精子でやっていただきた い。スーパーモデルからもらうということも否定できない、ということにはなりません でしょうか。 ○高橋委員  ちょっとニュアンスが違うと思いますけれども。 ○吉村委員  ニュアンスは違うと思いますけど。 ○高橋委員  もっと具体的に言うと、提供者がいないからAIDはできないんだというような説明 をしたときに、それでは私の方で持って行けばいいですかというような話になるんです ね。 ○吉村委員  非常によくわかります。 ○高橋委員  そういう話のときに、それはすべてあなたの責任で持って来ていただくのであれば、 うちは技術の提供だけします。こういうような場合もあるんです。そのことを言ってい るので。 ○中谷委員長  その場合はお父さんかなんかではなくて。 ○高橋委員  そういう場合ではありません。 ○矢内原委員  そういうときに、例えば、今、AIDで問題になっている感染症の予防を十分考慮す るとか、本当に持ってきたものが夫の希望するものであるかとか、それに対する記録の 保存とかそういうことは一切なくなってしまうわけですよ。 ○高橋委員  わかりませんね。記録はある程度まではしますけれども。AIDをやるときに今は合 意書をとっておりますから、それに基づいた1つの行為として、こちらでやるだけにな ります。 ○中谷委員長  その場合にスーパーモデルなんていうのは考えられないんですね。 ○高橋委員  考えられないですね。 ○中谷委員長  そうなると何かね。 ○高橋委員  裏ではいろいろなことを言いますし、噂もしますけど。 ○中谷委員長  デザイナーベビーとか何とかということにもつながりますので。 ○高橋委員  デザイナーベビーとかそういうことに類することは当事者間では話の種になります。 中にはそういう例もある、ということなんです。 ○矢内原委員  先生のおっしゃるのは、先生と患者さんとの間においてはいいんですね。 ○中谷委員長  信頼関係でね。 ○矢内原委員  これは根津先生と同じ理論になるんです。根津先生のやっていることは間違いだとか いいだとかというのは、我々が今決めなければならないのは、国家として一般にそれが 普及したときにどんなことが起こるかということも考えなければいけないと思うんです ね。ですから、今そこでいいんだよということになれば、何をしてもいいということと 同じことになってしまうのではないか。 ○高橋委員  私の言うのは、あまり規制規制というように規制だけを行うと、日本は法律を変える ことが非常に難しい国なので、将来の研究や追試などいろんなことまで規制されて、新 しいことができなくなる。そういうことにならないように、ある程度解釈とか運用によ って新しいことができるような条文にしてもらいたいというのが私の考えなのです。 ○中谷委員長  法律はそうでも、ガイドラインといいますか、コード・オブ・プラクティスといいま すか、そういうものだと割合に改定は容易になりますね。それで決めるようになるのだ ろうと思いますけれど。 ○高橋委員  罰則がつきますと、ガイドラインよりも罰則の方がもし優先されると、ガイドライン の改定は難しくなるのではないかなと思いますが。 ○矢内原委員  先生も田中先生も非常に共通しているところは、ここで決めるところを、決めちゃい けないと言っているものは常に罰則というふうに、法律のところに……。 ○高橋委員  罰則という言葉は初めて使ったのです。 ○矢内原委員  いや、つながるというふうな考え方なんですけれども、そういうことじゃないと思う んですよ。 ○高橋委員  もっと端的に言うと、規制はあまりすべきではないという考えです。各自の良識と言 いましょうか、そういうものを信じてやるべきで、もしその上でまた必要なら、国の公 的な審議機関、管理機関などでコントロールしてほしい。現在これは不合理だから規制 する、これは何々だから禁止とか、現在の物の考え方や状況で規制や禁止をする条文は できるだけつくらないでほしいという考えです。 ○中谷委員長  もちろん許認可機関みたいなものはつくるようになると思いますけれども、それと コード・オブ・プラクティスといいますか、実施基準といいますか、実施規範といいま すか、そういうものとはまた段階的なものになるのだろうと思いますけれども。 ○母子保健課長  よろしいですか。 ○中谷委員長  どうぞ、課長。 ○母子保健課長  若干補足させていただきます。この案の1ページ目に丸が3つあるんですが、最初の 丸が全体のバランスの原則といいますか、どう考えるかで、あとの丸2つが、前回のこ の会で加藤先生がいろいろ規制にかかる原則を言われましたが、それを踏まえた罰則の 範囲を限定的に扱う形での前提で、今言われたような部分をどう見ていくのかというこ とについて提起をしているものです。  罰則を伴う禁止といいましょうか、規制は、いわゆる刑法的な観点とこの前言われた ようなことですが、ここで提起しているのはかなり限定をしておりまして、営利目的で の精子・卵子・胚の授受、授受のあっせん、それと代理懐胎の実施のあっせんというこ とを刑法上の罰則に該当するようなものとしています。それ以外のものについては、2 つ目の丸にありますように、いろいろな規制の態様があって、これをどのレベルにする かという議論はまだ詰まっておりませんが、罰則を伴う規制以外のところでやるという 形ならば、かなりコンセンサスがとれるのではないかというのが前回の議論だったと考 えております。そういうふうに一応ここでは前提を置いた上での後の内容が展開されて おります。  ただ、これ以外に、もう少し細かく言いますと、例えば秘密の保持の問題とかそうい う部分はございますが、今の本筋の議論と若干離れますので、それについてはまた後ほ ど。 ○中谷委員長  秘密の保持につきましては、刑法典に規定がありますので、刑法の 134条にあります から、それによるわけで、これは医療者側だけですけれども。 ○母子保健課長 そういう意味で、これまでの議論になってきた、どこまでを罰則として規制するかと いうことについて限定的に扱った案となっておりますので、これを前提にした議論にな り得るかどうかということも併せて先生方でご判断いただければと思います。 ○石井(美)委員 ただ、そのところは、最後の罰則のところへ行ってから戻った方がいいかなと思って いて、文章のわかりにくさも含めまして、そう思ったんです。 ○田中委員 罰せられるということでなくて、決まったことを、例えば第三者の精子・卵子使う場 合にもしも血縁者は認めないとするというふうにここではなったとしますね。それに対 して罰則がないにしても、決まった以上、私たちは会員はそれを守らなければならない と思うんですね。だから、罰則がないにしても、決まったことを破っているという、そ ういうことで仕事したくない、患者さんにも。だから、どうせやるなら気持ちよくやり たいし、患者さんにもやりましょうということでやりたいので、そういう部分も完全に なくさないでほしいと思います。 さっきから言っていますように、第三者にもらうこと自体がいいことではないわけで すから、その中でいろんなリスクを負いながら、患者さんにいろんなリスクをかけなが らやるわけですから、やっぱり規則には従いたい。我々の拠り所はガイドラインなんで すよ。自分がやっていることが正しいと、自分が悩んだり何か困ったときに、やってい ることは間違ってないんだという拠り所はガイドラインですから、そのガイドラインに 少し抵触するようなことはしたくない。ですから、さっきも言ったように、中央機関に 上申すれば認められる場合もある、としていただきたい。 ○中谷委員長 同じ法違反でも、ガイドラインでも何でも、違反した場合でも、刑罰をもって臨むの か、それとも許認可機関の免許の剥奪とか取り消しとか、そういう形にするのかという ようなことは、これから具体的には論じていかなければならないことだろうと考えてお ります。 ○石井(美)委員 多分、私たちとしては、これだけは法律で決めてください、あるいは、これだけは刑 罰を科してくださいという注文があれば、それを報告書に盛り込むということではない んですか。あとは立法技術であり、最終的な実施機関が調整して必要な手続にしていく のではないのでしょうか。 ○中谷委員長 ほかにいかがでしょうか。 ○丸山委員 石井(美)委員のおっしゃった、第三者に提供は限るのか血縁者も認めるのかという のは、多少議論が進みましたか。 ○石井(美)委員 私はさっきの案にしたいんですけど。 ○丸山委員 特例として、特別の厳格な審査を経て認めるというやり方なんですか。 ○石井(美)委員 審査というよりは、審査もあるけれども、それだけトラブルの原因になるから特別な 手続が必要なのではないか。普通の一般第三者と同じ手続で認めることは、なかなか子 の福祉上問題があるのでないか。認めるとしてもという趣旨です。 ○丸山委員 先ほどおっしゃったのは、それを中央の審査機関にかけるということなんですね。 ○石井(美)委員 1つの案です。 ○丸山委員 その病院の倫理委員会とか地方の倫理委員会というのは難しいのでしょうか。そうい うのではなくて中央の……。 ○石井(美)委員 かなり数が少なくなるから中央で管理、もともと 100とか言っている中で、年に1〜 2例であれば、中央で審査することも可能なんじゃないかと思うし、判断基準がまちま ちになるよりは、先ほどの地方ではかなり血縁重視、地方でそれを認めるという形とい うのも望ましくないのではないかと思いますけれども。 ○丸山委員  多様性よりも一貫性の方が重要ということですね。 ○石井(ト)委員  確認ですが、そうすると中央審議会で柔軟的に対応する、そういうシステムは大賛成 です。親族に関しても、そっちに預けるということですか。今、それを言っているわけ ですね。 ○石井(美)委員  はい。 ○石井(ト)委員  わかりました。 ○矢内原委員  そうすると、5ページの上の3行目のところに、「原則として」とかそういうことを 入れるんですか。 ○石井(美)委員  原則としてというよりは、多分最後のところにガイドライン……。 ○矢内原委員  「例外として認めることはしないこととしたものである」と書いてありますね。かな り強いです。 ○石井(美)委員  これは除かなくてはいけないんじゃないですか。 ○中谷委員長  これはだめですね。 ○矢内原委員  これは当然聞かれるというか、一番具体的な例として、親族はどうなんですかと言わ れますね。 ○丸山委員  中央の審議会にかけて、認める場合もあるとしても、見出しはやっぱり許容というふ うに出るでしょうね。 ○矢内原委員  原則ね……。 ○中谷委員長  認めることはあるとするんですか。 ○丸山委員  見出しはそうならざるを得ない。もうちょっと記事の内容を読んでいただければ、そ れは極めて狭い範囲でしか認められないということはわかるでしょうけれど。 ○矢内原委員  そうするとそこを読んでもいいんだということになりますからね。 ○辰巳委員  でも原則として認めないで、「ただし」でしょう。だから、それを認めるというふう に出しますかね。 ○矢内原委員  「原則」という言葉をここに入れていただけるならばね。 ○丸山委員  そこあたりはしようがないんですかね。 ○矢内原委員  どうなんですか。 ○辰巳委員  でも原則として認めないと書いて、認めるって出しますかね。「ただし」、それぐら い書けばいいのではないか。 ○高橋委員  そうですね。私も辰巳委員のお考えに。 ○石井(美)委員  そこまでも書くかどうかですね。一般論としてガイドラインを定めた、その例外的な 措置についてはという例外の1つであるという形をとるかですね。 ○矢内原委員  ここはこのまま「認めることはしないこととする」というふうに出していいんです か。 ○石井(美)委員  「認めることはしないこととする」まで書かないわけです、何も。 ○石井(ト)委員  精子も卵子も全部含めてですか、今言っているのは。 ○石井(美)委員  精子も卵子も。 ○石井(ト)委員  含めて言っているんですか。 ○中谷委員長  精子・卵子・胚の提供。 ○石井(ト)委員  胚はもう大丈夫ですか、この余剰胚で。 ○丸山委員  余剰胚に限りということであれば。 ○石井(美)委員  余剰胚になれば近親者という問題は起こらないんじゃないですか。 ○石井(ト)委員  これは解決だと私は思っていたんです。しかし精子と卵子はまた全然違いますので、 だから両方含めて、そんな大雑把ではなく。 ○石井(美)委員  精子と卵子は分けなくては。 ○石井(ト)委員  ちょっと分けてもらいたいんですね。 ○石井(美)委員  1つずつ、やっぱり先ほど石井トク先生がおっしゃったように。 ○矢内原委員  先ほどの話だとだめだということの方が強いということに理解したんですけれども ね。 ○石井(美)委員  原則はだめだということですね。 ○矢内原委員  やっぱりだめなんですね。 ○石井(美)委員  本来的に、なぜだめだと、加藤先生がまた言いそうです。 ○石井(ト)委員  今まで歴史的にはどうなんですか。精子の場合は、かなりの確率で行ってきた。 ○吉村委員  かなりの確率ではないです、非常に少ないですよ。それは、わかりませんけど、 100 人に1人もいるかいないかです。自分のものを使ってくれというのは、最近は特に少な くなってきているんじゃないですか。 ○高橋委員  親や兄弟から提出される、或いは第三者からのを持ってきてくれとかそういうのは、 今、吉村委員のおっしゃったように 100人に1人など非常に少ないです。私は原則禁止 と言って、原則禁止だから、原則でない場合もあり得るというような解釈の仕方でいい と思います。  それから、先ほど石井トク委員がおっしゃったように、ジャーナリズムの方がどう書 くかまで気にするか、これはもちろん考える必要ありますよ。立場上といいましょう か、私たちの立場上で考えなくてはというのはわかりますけれども、そこまでは何と も……。 ○吉村委員  ただ、先生、これは例えばこういうふうに伝わるということが、一般の生殖医療をや っている医療従事者も非常に誤解をしてとられるわけですよ。私たちはこうやって一患 者を診て治療しているわけで、社会的な医療を行っているわけですから、やはりマスコ ミの言うことについても、私はそういうこととは関係ないんだよ、ということは。対ク ライアントがいる以上、これというので出ますと、次の日は3人ぐらい患者が来ます よ。先生、卵子の提供は大丈夫なんですかと。これはいちいち、わざわざ説明をしなく てはいけない。これは物凄く大きなことなんですよ。例えば兄弟となると、だから「原 則禁止とする」でいいんじゃないですか。 ○中谷委員長  原則禁止だけど、例外もあるよということが前段に含まれてますからね。○吉村委員  そういうことですね。 ○矢内原委員  例外もあり得るんですかというふうにしたら、それは審議会が新しくできたときに、 その運用面では考えるというような答えをしていただくよりしようがないですね。表向 きはきちんと。 ○高橋委員  吉村委員のおっしゃることはわかるんですけれども、例えば学会の倫理委員会で中間 報告が出ましたね。あのときに「減数手術容認」というような見出しで出た新聞もある んですよ。学会においてもあれは中間報告で、しかし実際はそこまでいかないような議 論だったんですけど、もう「容認」と大きく出たでしょう。日母も決定したわけではな いのですけど、日母も「容認」となってしまいました。  そうすると関係者には、私がそういうように漏らしたのではないかとか、或いは新家 さんが漏らしたのではないかなどと言われ、あのときは困りました。 ○中谷委員長  日母はたしか一番反対でしたよね、あのとき。 ○高橋委員  そうです、非常に困りました。ですが、こういうところに出ている立場上日母の原案 を先生方に配りましたから、言われても仕方がないなと思いました。 ○矢内原委員  一番最初のときですね。先生に、この資料は配ってよろしいんですかと申し上げまし たでしょう。 ○高橋委員  はい、そうです。 ○矢内原委員  それはああいう誤解を招くんですよ。 ○高橋委員  新聞の誤解されるような報道の仕方、それは新聞社の方々からみれば自由ですから、 ここまでは……。 ○中谷委員長  私は取材に来たときに、原稿を書いてもらって見せてもらうんです。それでそれを補 正するんです。それをなさるといいと思いますよ。 ○矢内原委員  だけど、見出しは別なんです。 ○吉村委員  見出しは、先生。 ○高橋委員  坂元先生もそういうことをおっしゃっていました。 ○中谷委員長  見出しは別の人がつけますからね。 ○吉村委員  そういう見出しのトップ記事、一面に載るような記事は、我々なんかに絶対見せませ んし、小さな科学欄かなにかはあれかもしれませんけど。 ○高橋委員  これは仕方ないと思っています。 ○矢内原委員  でも、仕方ないといっても、なるたけ、それを一般的な社会へ影響ということを意識 した報道にしてほしいわけでしょう。 ○高橋委員  ええ、もちろんです。 ○丸山委員  原則として血縁者からの3つのドネーションは禁止なんですが、その根拠なんです ね、さっきの話。血縁主義はよくないとかいいとかいうのは理念的な問題で、余り説得 力がないというか、ここにもお書きの、血縁主義的な考えについて、重視するか否かは 専ら個人の判断に委ねられるというのが当たっているかなと思うんですね。だから挙げ るとしたら、子どもの福祉、子どもの方が説得力があるじゃないですか。 ○吉村委員  私、この4ページの下2つぐらいで書いてあることで非常にいいのではないかと思う んですけど、先生どうですか。「しかしながら」以降ですね。下から丸ポチ2つ目の 「人間関係が複雑になりやすく子の福祉の観点から適当でない事態が数多く発生するこ とが考えられる」。私、ここに、育てる子どもを持つということであって子どもの善し 悪しは関係ないんだということも含まれているし、石井先生のおっしゃったこともここ に含まれるのではないかと思うんですね。 ○中谷委員長  そうですね。 ○吉村委員  それから、父母が、胚の提供を強要されるような事態も招きかねないと、ここに書い てありますから、私はこれで結構うまくできているのではないかと思うんです。そこで 最後の結論で、胚の提供は原則として認めない。ただし、兄弟姉妹、父母ですか、父母 はどうか、私はまだわかりませんけれども、得られる場合には、中央の委員会に申請し て……。 ○石井(美)委員  ここでは「特別な手続において例外として認めることもあり得る」程度に書いておけ ばいいのではないですか。 ○吉村委員  あり得るぐらいでいいんじゃないかと思うんですね。 ○田中委員  原則として、例えば「第三者に限る」というふうにしていただいて、「原則として禁 止」という言葉は余り使ってほしくないんですよ。 ○石井(美)委員  禁止と書くんですか。 ○田中委員  原則としてこっちに限るとか、そういうふうにしてもらいたいんですね。 ○石井(美)委員  「第三者が精子・卵子・胚を提供する場合には匿名とする」という大原則が書いてあ るわけですから。そこの例外としてしかあり得ないわけですから。 ○田中委員  だから「原則として第三者に限る」。「禁止」と書くと……。 ○石井(美)委員  「禁止する」ではないんですね。 ○矢内原委員  認めることはしない。同じことだけどね。 ○中谷委員長  石井(美)委員の言われたとおりでいいのではないですか。匿名性の保持の例外的、 手続によって認めることがあるで。 ○丸山委員  また、匿名性とからませるんですか。 ○石井(美)委員  ここの原則の中の書いているんですよ、これは。 ○丸山委員  だけど、今の根拠として、最後の4ページの下2つが、ドナーを第三者に限る根拠と していいというご指摘だったですね。ですから匿名性とは直接結びつけなくても。 ○吉村委員  私はそれが匿名性につながっていくと思っているんですけど。 ○石井(美)委員  匿名性はそもそもそうなんじゃないですか。一般的な匿名性においても、そういう点 が考えられていて。 ○吉村委員  私はそう思います。 ○中谷委員長  匿名性の原因というか理由ですからね。 ○吉村委員  理由ですね。 ○石井(美)委員  原則がなぜ必要かということ。 ○中谷委員長  理由ですから、それでいいと思いますけど、ほかのご意見おありでしょうか。もうそ ろそろ時間になってまいりますが。 ○小林主査  よろしいですか。 ○中谷委員長  どうぞ。 ○小林主査  今の話ですと、5ページの一番最後ところ、「例外として認めることは原則としてし ない」というふうに書いて。 ○中谷委員長  例外として手続によって……。 ○小林主査  例外として認めることは原則としてはしないということとして、その次に、「ただ し」ということでくるかと思うんですが、その際に、1つはどういう場合には例外とし て認めるかということと、どういう場合というときにはどういう理由でそれは認められ るのかということを言わないと、理屈をちゃんとつけていくという意味ではなかなか難 しいのではないかと思うのですが、そこまで言っていただけると。 ○田中委員  先ほど言われたように、カウンセラーだとかインフォームド・コンセントだとかいろ んな話をして、それでも受けたいのだと、そういうことでしたね。カウンセリングやイ ンフォームド・コンセントをしっかりとって、それでも……。 ○石井(ト)委員  事務局の言っていることはもっと違ったレベルのことを言っていると思うんですね。 当然、私の言ったカウンセリングやインフォームド・コンセント、これはマイナス要因 からすべて含めた形での話は絶対必要なんでね。  今、質問されたことはそのレベルではないですね。もっと具体的な例を出してほしい ということでしたね。 ○小林主査  例外として認めるとしても、どういう場合について例外として認めるか。 ○石井(美)委員  言葉のとり方が違うんだと思う。兄弟姉妹は原則として認めないではないんですよ。 「兄弟姉妹を匿名性原則の例外として認める場合があり得る」と。 ○小林主査  その場合に、どういう場合が例外として認められる場合に当たるのかというのと、そ れがどうして、その前にある兄弟姉妹を認めないという理由を覆すぐらいの理由がある のかを言っていただけるとよいかと思います。 ○石井(美)委員  兄弟姉妹を認めないというのではなくなるんです。匿名性の例外として兄弟姉妹が例 外として認められる場合がある。だから例外は兄弟姉妹なんです。なぜ認められるかと いうと、そういう希望があるんだけれども、なぜ、兄弟姉妹は認められるのか。日本的 伝統やら何やらで兄弟姉妹というものを特別に望む人がいるという現実。だから、その 現実と希望と生まれてくる障害というものを十分に特別な手続で考量して、なおかつこ の場合には認めていいと、どこかが認めるということですよね。というような例外的な 手続が必要。 ○石井(ト)委員  私は感じたのは、さっき田中先生がおっしゃったように、原則として、ドナーは第三 者による。それで例外、原則ですからね。その例外の、例えばが血縁なんですね。 ○石井(美)委員  そうそう。 ○石井(ト)委員  それの血縁の中に兄弟と父というのがありますね。そこをどう線引きするのかという のがまだ課題として残っているんです。その例外というのが、これは明らかで血縁なん です。ですから、原則は第三者によるという形の方がむしろ話の発展はスムースにいく かなという気がしますけど、それで例外の1つの例として血縁。 ○矢内原委員  有縁はどうなの。 ○石井(ト)委員  身内。 ○小林主査  今の話を聞いていて、石井(美)先生のおっしゃる形でするとすれば、4ページの6 個目までのところまでは同じで、7個目のものを、逆にその下の2つよりも下に持って いって、まず近親者から提供受けた場合、こういう問題点があるのだけれども、ただ し、希望があるのだという7番目のものを持ってきて、そういうのがあるので、ちゃん とカウンセリングをしてインフォームド・コンセントを受けた場合については原則とし て認めることもあっていいのではないかということかと思ったのですが。 ○石井(美)委員  例外として。 ○小林主査  親族者であっても、例外として認めてもいいのではないかという論理展開になるので はないかと、それでよろしいのでしょうか。 ○石井(美)委員  これは言ってもいいと思うんですよ。この順番でも、考えられる。だけど、こういう 問題があるということで、だからこそ特別な手続が必要なんだと、そういう趣旨です。 ○丸山委員  望ましくは下2つの丸については、その恐れが極めて小さいというふうに認定できる 場合には認めることもあり得ると。ですけど、残念なことにというか、一番下の5ペー ジにかかる丸のところはカウンセリングを尽くすなり審査をするなりで、このケースに ついては、心理的な圧力で、提供が強要されていないというのが確認できると思うんで すけど、その上の方の、子どもにとって、将来どういう人間関係が出てくるかの懸念と いうのはなかなか排除しにくいですね。 ○吉村委員  しにくいです。 ○丸山委員  ですから、やっぱり認められないのではないかというふうに考えられるこの書き方で すと、厳しく審査しても難しいかなという感じなんですね。 ○吉村委員  普通はそうなるんです、先生、理論的には。 ○中谷委員長  原文のとおりということですね。 ○田中委員  先生のおっしゃっていることはそのとおりなんですけど、そうすると私が最初に質問 したのは、要するにAIDは夫以外の精子であれば同じAIDでしょう、夫のものでは ない精子を用いて産んでいる子ですから。出自を知る権利、子どもがもし自分の父親が 違うとわかった場合に、血縁関係者とそうでない人の差ですよね。子どもが受ける、な いしはその後の精神的圧力を受けるいろんな問題が、血縁関係者の場合に禁止に値する 根拠があるのか。これは医学的に証明されるならば、禁止でいいと思います。 ○吉村委員  医学的に証明することはそういう例がないからできませんが、今の先生の話は、健康 な、普通に学校へ行っている子どもであることが前提なんです。例えば、その子が奇形 で生まれた、それから学校へ行って非行をした。そういった場合に、子どもの福祉とい うことを総合的に考えると問題が起こってくるのではないかということです。 ○田中委員  ですから、先生、よくわかるんですけど、同じAIDで生まれた子どもとして、ある 意味では私はイーブンだと思うんですよ。だんなじゃない精子でできた子どもだという 意味で、自分のお父さんはほかだと。その場合に、全く知らない、逆に言うと自分の ルーツがわからない子どもと、逆に半分わかっている場合と、そういうことを相殺して でも禁止する、肉親ゆえに禁止するというのがあるのかなというのが私はまだ理解でき ないんですよ。ここがわからないんです。場合によっては、自分のルーツがわかってい る方がいいかもしれない。わからない方が、かえって子どもにとってつらいことかもし れない、いろいろあると思うんですね。  だから、それをあえて、ルーツがわかっている肉親だから禁止だというふうにするこ とが本来の親子関係に似わないことはわかっているんですよ。ただし、禁止するほどの ものかなということが、私は正直言って釈然としないんですよ。 ○石井(美)委員  だから例外として認める場合もあり得ると言っているんですけどね。 ○田中委員  丸山先生が禁止だなとおっしゃったので、例外として……。 ○石井(美)委員  この点は禁止の場合も運用としてはあり得るんじゃないかとは思うんですよね。実際 上は普通の提供によるものが行われていて、AIDの場合はずっと行われている実績が あるから、それを見て大丈夫だということに考えられるかもしれませんけれども、普通 の状態をやっていって、それでうまくいって、それを見た結果、どこかで審査するとこ ろが認める、認めないという形に広げていく。それはまさしく運用の仕方なんじゃない かと思うんです。 ○矢内原委員  具体的に、私、最近年を取ってきたので、その気持ちわかるようになってきたんです けど、おじいさんから仮に精子の提供受けて子どもが育ちますね。育って、確かにその 家の血筋を引いているのだということで半分身元も確かということでいいですよね。と ころが年を取ってきたときに、今度おじいさんが、もし孤立をしたときに、孫は実際わ しの子なんだから、おまえ、子どもとしておれの面倒を見ろよというような事態も、そ ういう社会になっていくかもわからない。それだったら、全くわからないで、あれは孫 なんだというふうな育ち方を子どもにしてほしいと思いますね。  だから、今の時代と、これからこの制度がスタートした20年後とで、社会の、また家 庭のあり方が違ってくる可能性がすごく大きいと思うんですね。 ○田中委員  そこは私は決してお父さんの精子を勧めているわけではないんですよ。だから、そう いうことも全部話すんです。お父さん、もし、あなた息子さんに精子提供したら、生ま れてきたのはあなたの息子ですよと。自分と同じ子どもが孫になるんですよと。そうい うことを話して、嫌な人はやめます、もうやめた。逆に、お父さん、嫌だと、提供しな いという人もいるんですよ。でも、そういう話をして、それでも2人そろって、4人、 おじいちゃん、おばあちゃんとご本人が残って、少ないです、非常に。でも、どうして も受けたいという方に対して禁止というのは、私はそこを言っているんです。 ○吉村委員  そこにおいては、受ける不妊夫婦の先生は立場でお考えなんです。そこにおいては、 子どもということの考えはないんです。 ○田中委員  そうですね。やっぱり夫婦の考えですね。 ○吉村委員  子どもという考えはないんです。 ○田中委員  いや、ないことはないです。 ○吉村委員  不妊夫婦の子の悩みとか、私も非常にわかるんです、先生。私もそういうことを考え ますから。7〜8割はそれを考えて、最近ようやく2〜3割が子どものことを考えられ るようになってきた。逆に言えばですよ、やはり子どものことを考えてあげるというこ とは、起こりうるあらゆる可能性、その可能性の少ない方がいいんじゃないですか。だ から子どもにとっても、出自を知る権利もあるだろうし、出自を知られたくない、知り たくないという権利もあるかもしれないです。だから、そんなことは言ってほしくなか ったと思われるかもしれないし、余計なことを、私はおまえの父親なんだということが わかってしまったら嫌だと思うかもしれない。そういうようなことも考えることが必要 だと。だから、あえてそんな父親とか兄弟とか、そういった危険性を侵す必要は私はな いんじゃないかと思うんです。 ○田中委員  よくわかります。だから私は決してこの第三者の精子を使った治療をたくさんやろう と思ってないんです。勘違いしないでください。だから、私はあえて患者さんには、い ろんなあきらめるようなことをたくさん言うんですよ。こういうことがあるんだよと。 ただ、その中で夫婦を見ていて、この夫婦は子どもをしっかり大事に育ててくれるとい うのがわかるんですよ。この夫婦なら任されるというか、育ててくれる。だから私は決 して子どものことは考えないわけではないんです。この夫婦なら、いい子どもができて 育ててくれるという確信があるから、この話を勧める場合もあるんです。 ○吉村委員  私は先生に対して反対しているわけではないけれども、私たちの論理というのは必ず そういう論理なんですよ。私は、例えば患者さんをこういう思いで診てやって、患者さ んとこういうリレーションシップができて、こういう医療をして、お互いにわかってく れると。私たちと患者さんにおいては、そのリレーションシップは成り立つんですよ。 ところが子どもとのリレーションシップというのは成り立たないんですよ。だから子ど もがちゃんと育ってくれるかどうかということに対して、我々は何の保証もないわけで す。根津先生も先生も非常にいい医療をされていると思いますよ、ある意味では。患者 さんのことを思い、だけど、それは子どものことを考えると、私たちはそれだけの責任 を持てないですよ。そうしたら、そういった医療というのは、ある程度ここまででやめ ておきましょうという医療になってもしようがないんじゃないですか、医療する側とし て。 ○田中委員  先生、そこを私が聞いているのは、肉親を使った場合と第三者のを使った場合にそれ だけの差がありますかと。 ○吉村委員  可能性はありますよ。 ○田中委員  私はそう思わないんですよ。肉親の方がかえっていい場合もあるし、だから……。 ○中谷委員長  非常に複雑な関係になる場合も結構多いと思いますよね。 ○田中委員  限るでいいんですよ。匿名性でいいです。ただし、そういう場合には認められる場合 もあり得るということを明記してほしいんですよ。 ○矢内原委員  それは明記することに今なっていますから。 ○中谷委員長  なりましたよね、原則禁止という。 ○田中委員  認められる場合もある。 ○矢内原委員  原則、表に出すのは禁止であると。 ○田中委員  はい、結構です。 ○中谷委員長  そういうことです。 ○高橋委員  原則禁止ですか。 ○石井(美)委員  禁止とは言わないです。 ○高橋委員  私は原則認めないの方でいいと思います。 ○吉村委員  原則は認めない。 ○中谷委員長  原則は認めないという。 ○石井(美)委員  認めることもあり得るということ。 ○中谷委員長  そうそう。 ○石井(美)委員  あるじゃない、あり得るんです。 ○中谷委員長  それでは、ちょうど時間となりましたので。 ○吉村委員  こういったものを決めるときに「あり得る」ということがあると認めるということに なるんですよ。だから「原則認めない」と、そうしてほしいんですよね。 ○高橋委員  原則認めない。 ○吉村委員  原則認めない。 ○丸山委員  「限る」ではいかんですか、言葉として。 ○吉村委員  えっ? ○丸山委員  認める、認めない、禁止、許容じゃなくて「限る」、ドナーは。 ○矢内原委員  第三者に限る。 ○吉村委員  それは強いような感じしますけど。 ○丸山委員  見方によりますけど、「禁止」という言葉よりもいろんなとり方ができるような感じ がしますけど。 ○吉村委員  そうですか。それでよければ、「限る」。 ○丸山委員  「原則として○○に限る」。 ○吉村委員  それだったら。 ○中谷委員長  このまんまでもいいんじゃないですか。 ○吉村委員  私もそう思いますけれどもね。 ○中谷委員長  例外として認めることはしない。 ○丸山委員  それと1つ確認なんですが、先ほど石井(美)委員が出自を知る権利はあるのだから とおっしゃったので、今の田中先生のご発言聞いていてちょっと感じたのですが、近親 者からドネーションを受けた場合、匿名性は維持できない場合が多いでしょうから、子 どもは自分はだれの子かわかるとともに、赤の他人の第三者から匿名のもとに与えられ た配偶子を用いて生まれた子も出自を知る権利を行使して、いずれは自分の遺伝学的な ルーツがわかるという、その点では、いずれはということまで考え合わせると変わらな いということですか。自分の遺伝学的なルーツが近親者の中にあるのか第三者にあるの か、その違いだけということですか。 ○石井(美)委員  そうですね。 ○丸山委員  やっぱりルーツはわかるわけですね、知ろうと思えば、子どもは。 ○石井(美)委員  私の考えはね。方がいいのではないかと思っていますが。 ○田中委員  出自の部分に関してはここに触れてないですよね。 ○石井(美)委員  それはまだ圏外ですよね。 ○田中委員  圏外。 ○石井(美)委員  ここの作文の。 ○吉村委員  作文の外。 ○母子保健課長  独立して議論がしうる領域というのは、これはこれで完結した上で、出自は、記録は とってあるわけですから、どこまでを出自を知るように設定するかは、独立して議論が できると。 ○丸山委員  ですから先ほどの、だれの観点からの匿名性かということを慎重に考えていくと、ち ょっと総合的な判断になってきますね。 ○母子保健課長  匿名性については、先ほどの完全匿名ということで、提供した時点で、両方とも一切 わからないという形をとる匿名という……。 ○吉村委員  それでいいと思います。 ○母子保健課長  それのまた例外をお認めになろうという話ですから、そこは例外なんでしょうけれど も、どういうふうな例外を決めるかは次回またご議論いただくのでしょうが、ある程度 例外のパターンというか、あるいは逆に言えば、例外として近親者は認めるとしてどこ まで絞り込むのか、そこの議論は少ししていただかないと、報告をいただいた後の対応 がなかなか難しいかなと思います。次回、引き続きそこのところをもう少しご議論いた だかざるを得ないかなと思います。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。大変議論がますます核心に入ってまいりまして、定 刻を既にオーバーしてしまいました。では次回は引き続き行われますけれども、何かほ かに。 ○母子保健課長  次回以降の考え方ですが、きょう、匿名のところにほぼ議論が集中したわけですが、 これを引き続き、さっきの部分をお詰めいただくということをお願いしたいわけです が、全体として、本日お示しした案がある程度ベースでご議論いただくというのはよろ しいのでしょうか。                (「はい」の声あり) ○母子保健課長  それはよろしいでしょうか。 ○中谷委員長  非常によく要約しておられますので。 ○母子保健課長  アグレマンが出るとはまだ思っておりませんが、一応これをベースにご議論いただく と。きょうのところは匿名性を中心に議論をして、まだ結論は出ていないという形だと いうことで。  それから、あとプラス、この前後の部分で、出自の問題とかいろいろありますが、 我々もこれから作業をしてまいりますが、これをベースに議論いただいたのを修正しつ つ、あと残りの部分もこんな形で加えて案としてお示ししながら進めていくような形で よろしければ。             (「はい、結構です」の声あり) ○中谷委員長  次回は11月1日。 ○石井(美)委員  水曜日ですね。例外的に1日ですから。                (次々回日程調整) ○母子保健課長  とりあえず次々回12日を押さえていただいて、10時半から16時ということでお願いい たします。  ありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課 03−5253−1111(代) 椎葉(内線:7933) 小林(内線:7940)