00/10/03 生殖補助医療技術に関する専門委員会(第22回)議事録 厚生科学審議会先端医療技術評価部会生殖補助医療技術に関する専門委員会                ( 第 22 回 )                議   事   録         厚生省児童家庭局母子保健課            厚生科学審議会先端医療技術評価部会        生殖補助医療技術に関する専門委員会(第22回)議事次第 日 時 平成12年10月3日(火) 15:15〜18:20 場 所 商工会館6階G会議室 1 開 会  2 議 事   (1)第三者の配偶子提供等による生殖補助医療のあり方について   (2)その他  3 閉 会 〔出席委員〕   中 谷 委員長   石井(ト)委員  石井(美)委員  加 藤 委 員  高 橋 委 員   辰 巳 委 員  田 中 委 員  丸 山 委 員  矢内原 委 員 吉 村 委 員 ○小林主査  定刻になりましたので、ただいまから「第22回厚生科学審議会先端医療技術評価部 会・生殖補助医療技術に関する専門委員会」を開催します。  本日は大変お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。  それでは議事に入りたいと思います。中谷委員長、議事進行の方をよろしくお願いい たします。 ○中谷委員長  きのうまで涼しかったのにきょうはちょっと蒸し暑くなりまして、ご多忙の中をわざ わざ遠方からもご出席いただきましてまことにありがとうございます。  前回のスザンヌ・マッカーシー、ブリティッシュ・カウンシルの局長との懇談は、既 に議事録がお手元に届いていると思いますので、ごらんいただいたと思いますが、ワー キンググループのたたき台が英訳されて向こうのお手元に届いていたわけですけれども 、そのうち丸山委員、石井(美)委員、吉村委員がご欠席だったものですから、法律の 方は私だけということになりまして、大変あいまいなといいますか、対応がうまくでき なかったと思います。内容的にはいろいろと大変参考になる内容でございましたので十 分ごらんいただきたいと思います。  私などは、まずカップルといいますか、日本ではよく、石井(美)委員がぜひ婚姻夫 婦に限定すると言われますが、シングルでもいい、未婚でもいいし同性愛の人でもいい のだと聞かされまして、ますますびっくりしたわけでございますが、そのほかにもいろ んな情報が入っておりますので、また、これからの審議にもいろいろとご参考にしてい ただけたらいいのではないかと考えております。  では、本日の議事に入ります前に事務局からきょうの資料の確認をお願いいたします 。 ○小林主査  本日の資料になりますが、まずお手元に「議事次第」が1枚ございまして、次にいつ もどおり「たたき台」、前回までのご意見いただいて修正いただいたものがございます 。 それから、事前に加藤先生から「提供卵子問題への意見」ということで紙でご意見いた だいていまして、こちらの方も資料として配付させていただいております。次へ行きま して、前回(9月26日)イギリスのマッカーシー局長がいらっしゃいまして質問、意見 交換を行ったのですが、その終了後に辰巳委員より質問事項をいただきまして、それに 対して紙で回答いただいておりますので、それを配付させていただいています。最後に 「インターネットで寄せられたご意見」を配付させていただいております。  本日の資料は以上になります。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。インターネットに寄せられた意見を伺っても、皆さ ん非常に関心もお持ちだし、よく勉強もしておられることがよくわかりますね。感心し ながら拝見いたしました。  それでは議事に入りまして、「第三者の配偶子提供等による生殖補助医療のあり方に ついて」、たたき台、資料1でございます。どうぞ、ご自由にご議論いただきたいと思 います。 ○石井(美)委員  加藤先生の意見は、もう皆さん読んでいるという前提でよろしいのですか。 ○中谷委員長  一応、加藤先生の方から。 ○加藤委員  私はきょうは出席できないと思ったので、間違って文章をつくってしまったのですが 、曜日を調べたら、きょうは水曜日ではなかったので、出席できるということがわかり ましたので、でも文章は文章としてせっかく書いたのだから、配付していただきました 。 ○辰巳委員  加藤先生のご意見に関してちょっとお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでし ょうか。 ○中谷委員長  どうぞ。 ○辰巳委員  加藤先生は、代理母・借り腹については、「母性剥奪」という面から他者危害の原則 が成立するので認めるわけではいかないはといったご論旨だと思いますが、母性剥奪と いうのが絶対的な他者危害で文句なしでいけるものか、それだったら卵子採取の方が危 険が大きいのではないか、そういうふうなことを考えます。  むしろ他人に妊娠・出産のリスクを負わせるといった肉体的な他者危害の方がうんと 大きいのではないか。その方がすっとくるのではないかと思うのですが、ここで先生が 「母性剥奪」というのを持ってこられたのは、妊娠・出産という他者危害は十分でない と考えておられるからなのでしょうか。 ○加藤委員  妊娠・出産の他者危害と母性剥奪の危害とがどれだけ程度で比較できるかという問題 は考えてないので、ただ、他者危害というのはまだ十分な確立された理論でもないし、 そういうおそれがあるという議論ですね。ただ、その結果、非常に大きな人格障害が起 こる可能性はあるわけですね。今まではそれが6カ月から48カ月の間が危険の臨界域と 言われていたけれども、6カ月からでなくて0カ月からというふうに考えた方が適切だ という意見が出ていて、そういう非常に重度の人格障害が起こる場合には因果性の証明 が十分でなくても、いわば予防的に禁止していいのではないか。それとほかのリスクと 比べて、このリスクがより高いからこちらのリスクを理由とするというのではなくて、 これだけで十分禁止の理由としていいのではないか、そういう判断を示したので、ほか のリスクを軽視したという意味ではありません。 ○辰巳委員  妊娠・出産に対すということを他人に負わせるというリスクも、それだけで十分な他 者危害の原則に当たるということはないのでしょうか。 ○加藤委員  それは私にはよくわからないですね。例えば妊娠・出産がリスクになるかならないか というのが、私の例で言えば、ともかく原則として、幸福追求の権利を認めるとすると 、100 のうち1つでもいい例があれば法律は禁止できないという立場なんですね。ただ 、事前に識別できるのであるならば、法律で認めても臨床的な判断で、これはやめなさ いというふうに助言することができる場合は法律で認めて、臨床的な判断で識別してい くと。ただ、麻薬のように一度自由化してしまうと、麻薬やっても大丈夫な人と麻薬や ったらだめになる人とは全然区別できなくなりますから、麻薬の場合には禁止してもい いという判断はあるわけですね。  妊娠の場合にそんなにわからないのでなくて、ある程度、この人は危ないとか危なく ないとかわかるのではないですか。 ○辰巳委員  予測できない事態が起こり命を落とすといったリスクもあるわけだから、妊娠・出産 という肉体的な他者危害の方が私はスムーズに入ってくるような気がします。 ○中谷委員長  看護の立場から、石井(ト)委員はいかがですか、妊娠・出産の。 ○石井(ト)委員  妊娠・出産に関しましては当然他者危害という面では相当いたします。ですから、こ れの代理母・借り腹については委員会は禁止しているわけですから、その禁止理由をき っちりと羅列しておかなければいけないということですね。母性の看護の側面からは、 身体的・母性性に危害を与えるという意味で反対。先生のお立場の医学的な側面と倫理 の側面という形で幾つか禁止事項を確認しておけばいいと思います。 ○中谷委員長  サロゲート・マザーの問題になりますと、アメリカでは一部に認めているところがあ るようですが、あとは禁止していますね。 ○加藤委員  法律の条文そのものは必ずしも理由書いてないんですね。我々が報告書としてガイド ラインを書くときには、これは公序良俗に反するから禁止であると書くのか、家族的な 観念を妨害するからいけないと言うのか、あるいは国民の支持が得られないだろうから 禁止だと言うのか、禁止の理由を明記した方がフェアな報告書になるのではないかと思 います。 ○中谷委員長  大体禁止するのが世界的な傾向ですが、イギリスはSurrogacy Arrangements Act(198 5年)がありまして、それを1990年の法律で多少修正したものが認められていて、一応有 効なんですね。ただ、それに違反した場合に「おまえは違反したから、前の契約どおり 強行せよ」とは言えない、そういうものらしいですけれども、そういうものも法的に日本 ではどうするのかということはやがて具体的に検討しなければいけないのでしょうね。  石井(美)委員は、いかがお考えですか。 ○石井(美)委員  妊娠・出産の危険性もありますが、代理出産の場合には24時間、全身全霊がそのため に使われるということになります。そのために認められないのではないか。子供を妊娠 し出産することは10ヵ月ぐらいの期間すべてを拘束されることになるということで認め られないのではないかと思います。 ○中谷委員長  ドイツなどでも1970年代ぐらいから、女性を孵卵器として扱うのはけしからん、道具 のように利用するのはだめだと非常に厳しく論じられてはいますけれども。 ○加藤委員  今の「24時間」というのはおもしろい説だと思いますね。 ○矢内原委員  私、加藤先生のを読ませていただいて、1ページの下の今の代理母、借り腹のところ の下の方なんですが、「養子制度が正当化されているので〜」があって、とても文章が 私には少し難しいのですが、だけど養子をするために子どもを産む人はいないですね。 ○加藤委員  いないと普通は考えられますけれども、でも生まれる前から養子の予約をしていて、 生まれてすぐ養子にするというケースはあるのではないですか。 ○矢内原委員  妊娠する前から、そういう契約があるかどうか、今の日本ではないように思うんです ね。 ○中谷委員長  かつてはむしろ養子ではなくて、生まれたら、そちらの方の実子として届け出ること から認めるというのはありましたよね。 ○矢内原委員  もう一つ、これは母性で、私は男だからこの辺のところはちょっとわからないのです が、「生後3年以後の引き渡し」云々というのが1ページから2ページに書いてありま すけれども、育てるという考え方が、何か飼っておくようなニュアンスがあるんですね 。 これは母性自身が育んできた、10カ月おなかに入れておいて産んで、そして3年間置い ておいて、そして、引き渡しというような条件は、絶対これは親子の間では起こり得な いことだろうと思うのです。 ○加藤委員  ただ、今までだと、生まれてすぐ赤ちゃんを引き渡すというのも合法ですよね。だけ ど、それは好ましくないという判断をしてもいいのではないか。だから生まれてすぐは 引き離さないでもらいたいという。 ○矢内原委員  3年間たったらもっと離れなくなるということが。 ○加藤委員  それはそうでしょう、実際には。ただ、理論的にはmaternal deprivationというのは 6カ月から48カ月になってますから。 ○矢内原委員  そうすると結局契約ということは成り立たないので、3年間たった後で、もう一度契 約を結び直すというような形をしないと代理母というのは成り立たないように思うんで すね。 ○石井(ト)委員  それから、もう一つ、10カ月の間に母体の環境という要因がかなりかかわるわけなん ですね。生活全般、食べ物、生活、そういう形でより子どもを健康に育てていくという ことで、もしリスクが加われば、新たな問題が生じます。 ○加藤委員  今、石井(美)先生の言った24時間拘束というのと似ているのではないか。 ○石井(ト)委員  24時間ではないです。24時間、10カ月です、拘束されるのは、着床と同時に産まれる まで。ですから、そういう意味でリスクがあった場合にどうそれを請け負うのか、その1 0カ月をどう保証するのかとか、いろんなそういう問題もありますね。私は母性性という 立場で反対なんですけど、そういうことも配慮に入れています。 ○矢内原委員  2ページの方に行ってよろしいですか、卵子提供の下の方なんですが、下から5行目 、「臓器提供が許容されている以上、卵子提供も禁止できない」ということで、臓器提 供と卵子提供も同列に並べられておられますね。これはいわゆる生殖医療という意味で は根本から違うように思うんですね。臓器提供と違って生殖医療は新しい命の誕生とい うことがあるわけで、両者だけの問題ではない。ですから子どもが根本的にそれを同格 のところに臓器として卵子を取り扱うというのはどうか。 ○加藤委員  この理論は、例えばオートバイの乗用者にヘルメットの着用を義務づけできるかどう か、そういう議論と同じで、自分で納得して危害を引き受けるというケースの場合に、 それを法律的に規制できるとしたならば、個別ごとの事例についてどれだけメリットが あるか、個別事例のメリット、例えば人を助けるためだったら認められるとか、赤ちゃ んを産むためだったら認められないとかというのではなくて、自己危害の大まかな意味 での程度によってしか法律的な規制はできない。オートバイ乗用者の場合には下手をす ると死んでしまうからヘルメットの着用を義務づけるというふうにして、それによって どれだけメリットがあるかということの個別事例の判断は個人個人がするので、大まか な意味で法的な規制の枠をはめる場合には自己危害のレベルでしか決められない、そう いうことが私がここで述べたことです。  ですから先生から見ると、不妊の場合と肝臓移植の場合と同列に扱うのはけしからん とおっしゃるかもしれないけれども、ただ、いわば個人が納得した、自分の引き受ける 危害の程度について、法律で規定できる限度は何かという問題として同列に扱わざるを 得ないということです。ですからオートバイ乗用者にヘルメットを義務づけるのも同列 に扱っているので、不妊とオートバイと一緒にするなと言われると、それは一緒にせざ るを得ないと言わざるを得ないのです。 ○石井(美)委員  規制の理由付けは、自己危害という一点だけではないですね。 ○加藤委員  だから普通は他者危害で、他者危害プラスアルファというソフト・パターナリズムぐ らいで考えているのです。ほかにも何かありますか、公序良俗でもいいんですか。 ○石井(美)委員  ええ、私はそれもあり得ると思います、社会的な価値。例えば先生は報酬を認めると いうことですけれども、私は身体の売買は認めないというのは、社会的に守るべき価値 なのではないかと思うのですね。だから卵子提供も原則無償とするという考え方をとり たい、そういうふうに思っています。 ○加藤委員  有償、無償については、私は5段階に分けて、お布施というか、相場は決まってない んだけど、一方的に謝意として渡すという程度のものであるならば、それは臓器売買と はみなさないでいいと。この私の出した例で言うと、こんな少ない謝礼ではだめだと文 句を言うようになると、それは一種の相場だとか価格という評価があるわけだけれども 、幾らでも文句は言わないというようなレベルであるならば、それはあくまで受け取っ た側の相手の協力に対する謝意の表現として認めていいのではないか。だから、それを 商業化とは言う必要はないのではないか。だから私の言う5段階で言うと、真ん中のと ころまではいいという考えなんです。 ○中谷委員長  大体そういう考えが多いですよね。 ○加藤委員  日本人の常識というのはこの辺かと思ったんですけど。 ○中谷委員長  日本人でなくてもイギリスでもそういうふうになっているようですけど、丸山委員、 先ほど手を挙げておられたので。 ○丸山委員  話が戻って恐縮なんですが、さっきのパラグラフのところの2行目で、「その結果ど ういう利益が得られるかには関係がない」というのは、自己危害の許容と本人の同意の ルールのみを適用した場合がそうなるのですが、先生は先ほど石井(美)委員の質問に 対してご回答なさった、ほかのルールの適用も加味するソフトなパターナリズムで考え ておられるわけですね。 ○加藤委員  だから石井(美)さんみたいに公序良俗ではなくても、社会的な価値観に一致しない 場合は刑法的に禁止してもいいというわけですね。 ○石井(美)委員  刑法にするかどうかは、また別の問題だと思います。 ○加藤委員  ただ、私としてみれば、一応リベラリズムを少し緩めたlibertinism (自由至上意 思)の路線ぐらいで規制の可能性を線引きしておいた方がよくて、特に生殖の問題につ いて公序良俗型の判断を導入すると、限りなく厳しく規定して一切可能性がなくなって しまう危険もあるのではないかと思いますけれどもね。 ○丸山委員 公序良俗までは私も一足飛びにはいかないんですけれども、どういう利益が得られる かというのは関係があるのではないかと思うのです。同じ移植用の肝を摘出するにして も、第三者に提供する場合、あるいは研究用に利用する場合と近親者に移植する場合は 、現在の法制度では許容度が違っているし、骨髄移植などでも近親者の場合だったら子 どもから摘出する場合でも例外的に認めましょう、だけど赤の他人には子どもからの摘 出は認めないということで、利益性も考慮されることが多いのではないかと思います。 ○加藤委員 ですから、例えば命を救う場合だったらば認めてもいいとか出産だったなら認めない とか、実際問題そういう判断枠も使われています。ただ、最大許容限度と考えると、こ のくらいのリスクだったならば、たとえ当人が納得しても禁止だという場合ですね。そ の場合の最大許容限度はどうやって決めるかとなれば、それは個別事例のメリットとは 別に最大許容限度という考え方が使われると思うんですね。 個別事例について言うと、中間があって、ケース・バイ・ケースで、個人の自己決定 に属する部分と、それから実験用だったらこの程度、生命を救う場合だったらこの程度 、子どもを産ませるのだったらこの程度というのは、それぞれのプラスマイナス、プラ スマイナスのモデルが出てくる場合、それから、大枠でもって危害の程度だけが問題に なる場合、3つの場合が本当は考えられると思うのですね。ただ、今、我々はそんな中 間の場合についていいモデルをつくれないのではないかと思って。 ○中谷委員長  田中委員いかがですか。 ○田中委員  加藤先生の話から外れるのですが、マッカーシー局長の話の内容は非常にわかりやす く、臨床に即した内容で私はよかったと思うのですけれども、今ここで私たちが2年に わたってやっているこの内容とはレベルが違うと思うんです。何か、こっちは明治維新 の前のそういう混沌とした中でやっているようで、英国では、制度ができた近代国家の 中でやっているような、そんな差を感じるんです。  それの一番強く差を感じる点は、いろいろな問題事項は、政府もしくはそれに属した 組織が管理していると書いてありますね。そういうレールの上に乗って、イギリスはい ろんな話ができている。日本はレールが全然引かれてないですね。今引かれようとして いるのだと思うのですけれども、私は第三者の配偶子の問題を含めて、将来いろんな問 題が出てくると思うので、ぜひしっかりとしたレールを引いてほしいと痛感します。  また、その中でHFEAの委員の半分以上が専門の人ではないと書いてありますね。 特に委員長と副委員長は専門職ではない。これは日本のやり方とはかなりかけ離れた、 素晴らしいことではないでしょうか。新しい治療法が必要となった時に柔軟に対処して いただけるものをぜひつくっていただきたい。そうすれば、今出たような加藤先生の案 もあればいろんな案が出てきていい結論が出ると私は思います。 ○中谷委員長  イギリスの場合には、1984年にウォーノック委員会のレポートというのが発表されて いますけど、ウォーノックさんが1980年より少し前に委員会をつくって、そのレポート に書かれたものが現在の生殖補助医療の基本になっているのです。長い時間をかけて、 ようやくそういうふうにでき上がって、法制化され活用されているわけですが、私ども はまだそこまで至ってないものですから、そこに至る産みの苦しみというか、そういう のをどうするかということでございましてね。 ○加藤委員  ウォーノック委員会というのも、私たちから見ると、よくできた仕事だったと思うの ですけれども、ただ、それがイギリスの普通の意味での庶民の意見と対話の中ででき上 がってきた意見だったかというと、そうではなくて非常に頭のいい秀才たちが集まって 、アメリカの判例や自由主義だとかいろんなことを勉強してつくったものという印象は どうしてもすると思うんですね。ウォーノックさんというのは、イギリスにいて、フラ ンスのサルトルなどの実存主義の研究をやって哲学的な業績を上げた人なんですよね。 ○中谷委員長  伯爵夫人といっても、ご主人が伯爵で、その奥さんではなくて、ご本人自身が伯爵、 珍しいあれなんですね。 ○加藤委員  日本で1つの立法化過程の中で審議会をやると、何らかの形で人々の意見、庶民とい うと悪いけど、いろんな意見が入ってきますね。ウォーノック委員会の雰囲気というの はちょっと違ったのではないかなという感じがするんですね。 ○中谷委員長  あの後、Wwhite paper(白書)が出ましたでしょう。その白書で、公衆の意見なども 聞いて、そしてやったわけですから、90年法ができるまではね。とにかくあの手この手 でやってまして、大変なものなので、私はそこに至らないで一生懸命今苦心をしている ところです。 ○矢内原委員  田中先生、あのときに、辰巳先生と私と高橋先生おられましたか、ドクターとしては 。21名いる委員の中に3人ドクターがいて、たった3人しかドクターがいないというこ とは医療の現場の声が届かないという意味においては、全くそういう構成に対してどの 医者もみんな反発していると。自分たちがこういう委員会で、こういう構成だというこ とに関しては、だれでもドクターはみんなハッピーではないよと、そういうふうに言っ てらしたから、ドクターがいないということの方が客観的に見れるのではなくて、やは りドクターの声をもう少し聞いた方がいいのではないかと、私は逆にそういうことを感 じました。 ○高橋委員  あのとき私は、OB/GYN(obstetrics and gynecology・産婦人科) のドクターは 何人いるかと質問したのです。産婦人科のドクターは3名である、そのほかに発生学者 やそのほかの科学者などのドクターの方は全部の半数を超えない範囲でいると、そうい う話だったですね。  この前、国際学会に行ったときに、ドイツの方が着床前診断を発表しました。そのデ ィスカッションの中で、着床前診断・遺伝子診断をすることについて、ドイツの委員会 は非常に強い規制をしているのでなかなか思うように研究できないというぼやきを話し てました。みんな笑っていましたが、そういうことがマッカーシーさんの話を聞いてい て、やはりイギリスでもあるのだろうかと思いました。さらに、彼女とのディスカッシ ョンの中で彼女は、完全な法律、規制というものはないのだから、あとはケース・バ イ・ケースでフレキシブルに運営したらよろしいのではないか、という話もありました 。 ○中谷委員長  ドイツはそういうための専門の国立の委員会をつくりましたから、そこで98年の12月 と99年3月と6月に報告書が出ていますね。イギリスは公的な機関できちんとやってい るというのがありますね。日本はなかなかそれはできにくいですね。 ○高橋委員  あの話を聞いて、産婦人科を専門とする医師が3名でも4名でもいいし、それはいい と思うのです。ただその方々が産婦人科の幅広い意見を代表して言ってくれるかどうか が問題で、委員の選考の仕方に問題がある、よく考えなくてはならないと思っています 。 ○中谷委員長  前はマスコミの代表もいたんですね。今はマスコミの代表はいないかと思いますけれ ども、あと教育者・教育の関係の方、小児科の方もいらっしゃるのではないですか。 ○高橋委員  患者の代表の方とか入っていました。あとはmid wife(助産婦)の方とかね。 ○丸山委員  私、このマッカーシー先生の前の回も天候で欠席したのですが、この調整案とエッ グ・シェアリング、同じような考えかと思うんですが、マッカーシーさんの専門委員会 での発言では、半分前後の卵がエッグ・シェアリングによる調達ということですので、 実現可能性は大きいように思います。ここにエッグ・シェアリングについてのガイドラ インが配布されようとしているところであると書かれているのですが、これは入手され たのですか。 ○中谷委員長  まだだと思います。 ○丸山委員  早く見たいと思いますね。 ○中谷委員長  コード・オプ・プラクティスの第5にそれが出てくるはずです。第4までしか出てい ませんので、それは既に用意されているということですから、直接聞いてみます。 ○石井(美)委員  それに関連して、15ポンドはエッグ・シェアリングのときなのかどうかが、読んでい てわからなかったのですが。 ○吉村委員  エッグ・シェアリングみたいでしたね、これだと。 ○丸山委員  そうですか。 ○吉村委員  先生、15ポンドというのは。 ○中谷委員長  今、1ポンド幾らですか。 ○母子保健課長  150 〜160 円。 ○田中委員  150 円ですか。 ○中谷委員長 そんなに安くなったんですか。 ○母子保健課長 マッカーシー局長からはそういうふうに話を伺いました。 ○中谷委員長 前は200 〜300 円でしたね。 ○矢内原委員 えらい安いなと思った。 ○吉村委員 これはだれに払うんですか。 ○石井(美)委員 提供者。 ○吉村委員 シェアリングした提供者に払う。 ○石井(美)委員 そこがよくわからない。一般的な卵子提供なのかシェアリングなのか。 ○中谷委員長 卵子提供だと思っています。 ○吉村委員 卵子提供。 ○丸山委員 シェアリングでない場合と理解しましたけど。 ○吉村委員 シェアリングでない場合。 ○石井(ト)委員 この間の話では、区別してはっきり金額言ったような気がしなかったですね。だから シェアリングの場合も普通の提供も含めて、私は大体日本円で換算して 5,000円ぐらい かなと思って、安いなと思って聞いていたんですけれども、どうだったでしょうか、聞 いていた先生方は。 ○中谷委員長  シェアリングの場合は治療費。 ○丸山委員 填補してくれる。 ○中谷委員長 填補してくれる。 ○石井(美)委員 それは書いてありました。 ○丸山委員  それだと15ポンドでは済まないでしょうね。 ○石井(美)委員 もっと高い。 ○中谷委員長 それはもちろん済まないわけですから。 ○石井(美)委員 話を戻してもよろしいでしょうか。 ○中谷委員長 はい。 ○石井(美)委員 加藤先生のペーパーは「AIDが正当化されている」ことが前提になっているように 読めたのですけれども、黙認はされているようですが、AIDについて社会として容認 すると決めたことはないと思います。 ○加藤委員 ただ、事実上容認されていると。だからAIDもこれから禁止するという形で全体の 枠組みを決めるのだとすると全部がたが来ると思うんですよ。一応AIDはそっとして おいてというか、それは正当化可能なものと見込んで組み立てていくよりしようがない のではないかと思うんですね。 ○石井(美)委員 もう一度考え直すこともできると思いますが……。 ○加藤委員 吉村さんみたいにAIDはやめろという意見の人がいれば……。 ○吉村委員 私はやめろとは言っていませんけど。 ○加藤委員 今までやったやつを全部逮捕する。 ○石井(美)委員 今行われているから当然認められる、という前提で議論してはいけないのではないかと 思ったのです。 ○加藤委員 それはそうです。ただ、AIDについては法律の手続上はいろいろ疑義があったり問 題点があったりしても、実際例としてみて、それほど大きな弊害だとかそれによって大 きなトラブルが起こったということはないので、大体社会に容認されて定着していると 評価してもいいのではないかと思ったのです。実際はそれは間違いなんですか、とんで もない話なんですか。 ○吉村委員 私はそうだと思いますけれどもね。 ○中谷委員長  フランスも生命倫理法では余りはっきりしてませんけれども、生殖補助医療に関する 法律を今度つくって、もうすぐできるそうですね。 ○加藤委員 日本で補助出産というのがAIDから始まったというのは本当にショックですよね。 男性中心主義の世界から考えれば許しがたいことではないかと思う。 ○中谷委員長 それで女性は救われたんですよね。ある意味では、「3年子なきは去る」なんて言わ れていたでしょう。それが夫の方の理由で産めなかったということがわかって。 ○吉村委員  加藤先生にもう一点お聞きしたいのですが、卵子提供の初めのパラグラフのところで 、私、よくわからないところがあったんです。初めのパラグラフでおっしゃっているこ とは、余剰胚を提供受けて子どもをつくるということは、それによって卵子提供を代用 してはならないという理解でよろしいのですか。 ○加藤委員  私自身も混乱しているかもしれないけれど、未受精卵の凍結が技術的に不可能だとい うことと、卵子の摘出の危険を関係ない人からも摘出を増大させてはいけないというこ ととは無関係だろうということです。 ○吉村委員  無関係ですね。その次の括弧で「『卵子の供給は不妊治療の目的で摘出された余剰未 受精卵に限る』という判断が導かれるのみである」。 ○加藤委員  それは別に無関係だろうと言っているので、私が誤解しているかもしれません。皆さ んの意見を。 ○中谷委員長  かつ未受精卵の凍結保存が可能になりましたからということですから。 ○加藤委員 もうなったんですか。 ○矢内原委員 この間、マッカーシーさんはなったと。 ○加藤委員 数日前から可能になったという話を聞いているんだけれども。 ○吉村委員  私はインターネットで調べても、報告は確かにありましたけど、イエンさんとかとい う人の報告ではなかったですけど。 ○中谷委員長  あのときははっきりおっしゃってましたね。 ○矢内原委員  20例。だから彼らが考えているのは非常に大きな枠で規制するのもすごく大きな枠に しなさい、余りそれを狭めてはいけませんと。その中である程度自由にやるけれども、 それでは何もルールがないのと同じだと思っていたんですけれども、そこにはそれなり にルールとオーソリティーという強さがあるんですね。ドクターたちはそれに対してあ る規制感を持って、日本の場合はその規制感があっても、破ったらニュースになるぐら いな気持ちが多少残っていて、その辺が、さっき田中先生が、明治時代の憲法を我々は つくっているのだという例えで、ああ、なるほどな。それは国民の意識も我々の意識も 低いのかなと思ったんですけど。  加藤先生、法律の立場から言うと、確かにこんなに縛ってはいけないという気持ちは すごくよくわかるんですね。だけど、法律で縛らなくても、みんなが決めたことを守ろ うという合意さえ得られれば、いくらでも法律の範囲はうんと広げておいて、罰せなく てもいいけれども、その中であるペナルティーといったらおかしいですけれども、やっ ちゃいけないよ、ではやるのはやめましょうようなことをつくるべきだと私は思うんで す。  だから、最初、この間、聞いたレジスレーションとレギュレーションとロー、ガイド ラインと、どこにどういうふうな使い分けをしているんですか、と一番最初に伺ったの はそこなんですね。 ○中谷委員長  そうでしたね。あれがなかなかでしたけれども。 ○矢内原委員  それは法律用語で当たり前だったのかもわかりませんけれども。 ○加藤委員  我々だって刑法にするのかガイドラインにするのか、それとも医師会の内規のような ものにするのか、まだ結論出してないですね。 ○中谷委員長  だから違反があっても、すぐに刑罰とか何とかではなくて、フランスはすぐ刑罰だけ れども、そうではなくて非常に重い場合は免許の剥奪というようなこと。 ○加藤委員  大体、今は刑法型の罰則を伴う規制を考えているのだというふうに思って、だから刑 法型の罰則を伴う規制をするのであるならば、いわば刑法の限界という普通の考え方が あるわけですね。それをこの委員会が勝手に刑法の限界を破れ破れと言って、もっと広 げるというふうに考えない方がいいだろうということです。 ○中谷委員長  私は刑法の専門ですけど、刑法的な対応というのは賛成しません。 ○石井(ト)委員  私、マッカーシーさんのお話聞いていて、要するに一つの法をつくって、法というの はある程度解釈可能な範囲内でやっておいてというような意味でおっしゃったと思うん です。だから決めることはしっかり決めておいて、それで、あとガイドラインなりとか そういう形で指針を細かく内容を示して、それで何か新たに問題が起きたときにその枠 の中で解釈をする。そのために先ほど委員会が何名で結成されるというのは、あれはそ この規制をつくるまでのメンバーではなくて、実際に問題があったときにそれをどう解 釈するか、運営をつかさどる人たちの今構成メンバーなのかと私は解釈したんですね。 ですから私たちの目的は、ある一定の法みたいな形で、してはいけないもの、してい いものはある程度条件つけるとか、そういう形を目指すのではないかと思っています。  そのためにイギリスはすごくいろいろと整備されておりまして、カウンセリングが絶 対条件だということをかなり強力に言っていますし、本委員会も試案として出ています けど、委員会とカウセリングも教育と認定が厳しいです。その資料をコピーしていただ いていますので、後で皆さんに配付したいと思います。  先生、方向づけはそうですね。ちょっと確認なんですけど、1つの○○法というよう な形で決めていって、それは処罰規定までつくるのか、義務は処罰伴うんですか。努力 義務なんですか。義務で処罰まで入るのか、そこら辺はどうするかはこれからの議論だ と思うんですけど。 ○中谷委員長  違反行為の程度や種類にもよりますから。 ○高橋委員  この加藤先生の意見を読んで、今までこういう考えを多分に基本的に持っておりまし たので、ああいい意見だなと思って賛成、そういう感じを持ったのですが、先生の文章 に難解のところがありまして、そこは飛ばし飛ばし読みながら……。 ○中谷委員長  そうですか、どこが難解ですか。 ○矢内原委員  我々にはわかりにくい。 ○高橋委員  例えば、一番最初から「他者危害を防止する目的のみが法的規制を正当化する」とい うと考えちゃいますね。 ○加藤委員  そうですか。 ○中谷委員長  そのままお読みになれば、それでよろしいような気がしますけれども。 ○加藤委員  これは何百年前からの歴史的にはキケロ以来ですから。 ○高橋委員  なるほどなと、感心しながら読みました。 ○加藤委員  それはだから刑法なんですよ。刑法だとするならば、他者危害原則が大体の刑法の限 界を決めるというのが非常に大筋の議論なんですね。だから、もし刑法的なガイドライ ンをつくるのではないとすると、おのずと緩やかでいいということになるのです。 ○高橋委員  それから母性剥奪(maternal deprivation) 、maternalというのは、我々の産婦人科 の中でも最近国際的によく使われる言葉ですね。maternal、neonatelという言葉の中に 分娩もバイオレンスも性教育もいろんなものを入れて幅広く考える方が多いですので、 そうすると分娩のいろんな障害とか何かもここの中に入れても決しておかしくない言葉 ではないか、と思いました。 ○加藤委員 サロゲートマザーや貸し腹なども禁止して、それはかなり強いレベルの禁止になると すると、それは辰巳先生のような理由でもいいし、もう少し社会心理学的な要素の入っ た理由でもいいのだけれども、その場合には古典的な意味での危害原則の適用という形 で禁止するのでないと禁止理由として不十分ではないかということです。 ○高橋委員 それから、お布施理論、一番最後の方ですが、これは何らかの形の謝礼なのか、リーズ ナブルな報酬なのか、そういうものはやはり考えた方がいいというのが私の考えですし 、この前のマッカーシー局長さんの話の中でも、安いけれどもそういったものを支払っ ていると言っていたので、私も何らかの実費に見合ったもの、プラス何かというのが必 要ではないか、そう思っています。 ○石井(美)委員 マッカーシーさんは15ポンドもなるべくやめる方向にしたいと発言されていました。 ○高橋委員 やめる方向に考えているけれどもいろいろ反対があると、だから難しいと言ってまし た。 ○中谷委員長 初めは 150ポンドも払っていたけど、それを全部廃止して無料にしようということだっ たんですよね。それが15ポンドが残ったんですね。そのかわりにシェアリングでという 話だったんですけれども。 ○田中委員 その会議にいなかったのでわからないんですけれども、15ポンドというのは 2,000円 ぐらいですか、それで自分のたくさん採れた卵の一部を少ない人に分けるということで すか。 ○吉村委員 だから先生、そうじゃないのもあるんですよ。egg donationも全くシェアリングでな くて、それも15ポンドだということらしいですよ。 ○矢内原委員 シェアリングはもっと払うわけですね。 ○田中委員 シェアリングはもっと払うんですか。 ○中谷委員長 シェアリングはもっと払うわけです。 ○石井(美)委員 払うというか実費。 ○吉村委員 シェアリングは全部払うみたいですよ、これを見ると。 ○高橋委員 凍結とか、いろいろなことでお金がかかっているから。 ○田中委員 それなら、今までのあれと変わらないような気がしたんですね。 ○加藤委員 15ポンドで引き受ける人はたくさんいるんですか。 ○吉村委員 私もそれを非常に不思議に思ったんです。だから何%の人が、これを見ていて思った のは、そうすると肉親に頼らざるを得ないですね。 ○矢内原委員 これに書いてありますよ。 ○吉村委員 そうですか。 ○矢内原委員 年間に 900人、半分ぐらいがエッグ・シェアリングだろう。 ○吉村委員 エッグ・シェアリングで。半分は。 ○矢内原委員  ドネーション。 ○吉村委員  半分はドネーションということは、全く肉親だという。 ○矢内原委員 ところがそれだけでなくて、友達を連れてきてもいいし、姉妹連れて来てもいいと、 そういう例もありますと。だけど、あくまで例外的に考える。 ○田中委員 ほとんどボランティアですね。 ○辰巳委員 400 人ぐらい。シェアリングが半分以上とおっしゃっていました。 ○中谷委員長 ボランティアですね。シェアリングの場合に支払う額はどのくらいになるんですか。 ○矢内原委員  それは、そこでIVFの値段が幾らかということで違ってきますけど、今の平均から 言うと……。 ○吉村委員  30〜40万とか、そんなものでしょうね。 ○石井(美)委員  要するに自分が体外受精を受けるとすれば、その治療費を払う。それを自分が受ける のではなく、人がかわりに治療を受ける。その治療費代を払う。 ○吉村委員  そういうことですね。 ○石井(美)委員  お金をあげるのではない。 ○丸山委員  倍払うということですか。 ○石井(美)委員  本人は採卵はしない。 ○丸山委員  採卵費は要らない。 ○石井(美)委員  その分を払う。 ○丸山委員  採卵費だけですか。 ○石井(美)委員  それだけではないと思いますが、考え方としては実費となるのではないか。 ○矢内原委員  謝礼という言い方は余り好きではない。謝礼というのは、これだけのお金を謝礼とし て払いなさいというのは謝礼と言わない、これはチャージなんですね。謝礼だったら、 今の話からエクステンドしていくと、これぐらいまでは常識的な謝礼だろうというのは ないような感じがするんですね。 ○加藤委員  それは、だから相場が決まっていて御布施じゃなくなっちゃうんですよね。今、お寺 の御布施が御布施じゃなくてチャージになっちゃっているので、それが問題なんですけ れども。 ○矢内原委員  そういう意味で、例えばegg donationも謝礼程度にしましょうということになると足 らなくなったときには謝礼金が高くなっていくという感じがしますね。ですから自由経 済の中から考えると、謝礼制度という言葉はよくないような気がしますね。 ○丸山委員  前回、これも9月12日に休みましたので様子を存じませんものでお尋ねするのですが 、今のところ(案1)、(案2)から(案4)まであるのが、ともかく意見が分かれて いるのが6つございますですね。そろそろこれをすり合わせして一本化するか、しない か決めるというのがきょうのアジェンダということになりましょうか。 ○中谷委員長  そうですね。 ○石井(美)委員  それに関連して、案を増やして申しわけないのですが、精子提供も不妊治療で精子を 用いる人からボランティアベースで提供してもらうことも考えた方がよいのではないか 、男女平等に。 ○加藤委員  特に精子を提供する、しない、関係ない人から提供してもらうのではなくて、不妊治 療で精子を使った、その精子をスペアスペルマを使えてというね。 ○吉村委員  それはどういうメリットがあるのか。エッグ・シェアリングというのはそもそもエッ グがないからシェアリングをしようという考え方ですね。 ○石井(美)委員 ええ。 ○吉村委員 精子に関してはドネーションに関して、それほど私は問題にならないと思うので、それ はどういうメリットがあるのかなと思ったんですけど。 ○石井(美)委員  お金の支払いは認めるべきではないという考え方で、全く関係ない人に提供してもら うのではなく、自分の不妊治療に用いるために採取した精子を提供してもらう。それは エッグ・シェアリングと同じく、お互いに助け合う精神で提供していただいた方がよい のではないかということです。 ○田中委員  一見よさそうに聞こえるのですが、私は難しいと思います。とにかく他人から卵をも らうということは説明などにすごく時間がかかるし、前もって決断するのに時間がかか ると思うんですね。卵の場合はソースがないですから。一方、精子は提供者が簡単にと いいますか、前もって準備できるソースがあるのでやりやすいわけです。 ○石井(美)委員  いや、それは……。 ○田中委員  その治療に入る前から頼むというわけですか。 ○加藤委員  石井さんの考えだと、自分の不妊治療でもないのに精子をはきだす男はけしからんと 言いたいわけなんでしょう。 ○石井(美)委員  けしからんとは言いませんが。 ○田中委員  精子は卵とそういう意味ではちょっと違うと思いますね。先生が言っているのは卵 子・精子が同等に聞こえるんですけど、ただ実際、現場でやってみると、今まで以上に 前もっていろいろ話して、それでいいですよと納得して提供してもらった方がやりやす いような気がしますけれどもね。 ○吉村委員  精子のシェアリングというのは余り聞いたことないですけど、それはなぜかというと 、もう40年も前から凍結ができるわけですよ。そうするとそういうものに対して困ると いうことはないので、あえてシェアリングをするという意味がどういうメリットがある のかなと。 ○石井(美)委員  凍結保存ができればこそできる。卵子は凍結保存できないから……。 ○吉村委員  だから、シェアリングをするということが、シェアリングしなくてもできるものをシ ェアリングをあえてする必要はないのではないかと。 ○矢内原委員  実際にシェアしているんじゃないの。1人の精子提供者がいますよね。3人にあげて いるということはないの、絶対に。 ○吉村委員  それはあります。 ○矢内原委員  あるでしょう、結局シェアしています。 ○吉村委員  4人か5人産んでますから確かにシェアリングしていますよね、そういう意味をシェ アリングというのだったら。 ○丸山委員  治療を受けている人同士のシェアリングはしてないですね。 ○吉村委員  そういうことですよ。 ○丸山委員  ドナーから提供されたものを分ける。 ○吉村委員  精子提供による体外受精だって5人まで産んでもいいとか10人まで産んでもいいとい うことにしましたよね、数を。それはシェアリングという意味から言えば、提供者から すればそうなっていますけど、受ける方からすればシェアリングという意識はないので はないですか。それをあえてそういうふうにして言ってないと思うんです。あなたの子 どもさんは、ここで4人まで生まれましたよということは言ってないわけですから。 ○石井(美)委員  提供されたものを何人かで分けるという意味でシェアリングを言っているのではなく て、精子についても、卵子と同様に不妊治療で採取したものを分けて使う方が無報酬で 提供されるのではないかという趣旨です。学生がアルバイトとして精子を提供するのは 望ましくない行為だと思いますので、それよりは、不妊治療で体外受精について卵をシ ェアリングするのだったら、夫婦で体外受精をしようという人、あるいは人工授精をし ようという人の一部を精子を分けてもらうことを認めてよいのではないか、ということ です。 ○吉村委員  それは余り問題にならないと思うんですね。それは別に私もいいと思います。別にあ えて、そんなことまでしなくていいのではないか。 ○中谷委員長  インフォームド・コンセントなかなか難しいですね。 ○吉村委員  インフォームド・コンセントとるのは難しい。多分、みんな「嫌です」とおっしゃる だろうと思いますけれども。 ○石井(美)委員  それもみんな「嫌です」と言うにもかかわらず、卵についてはイエスというのですね 。もっと大変なことを。 ○吉村委員  私はイエスとは言ってないですけど、もっと大変なことだからやめましょうと言って いるんです。 ○石井(美)委員  吉村先生は、シェアリングも否定。 ○吉村委員  私は実際にやるとなったら、患者さんから言われても「ほかへ行ってください」と言 いますし、だから自分としてはそういうことはできない。 ○中谷委員長  それについては、多分ドクターの間にもいろいろご意見の違いはあるだろうと思いま すけれどもね。 ○吉村委員  そうです。だから、皆さんがそういうことでいいということであるならば、シェアリ ングだったらいいのではないかという考え方を持っています。 ○中谷委員長  田中委員はいかがですか。 ○田中委員  石井(美)先生の言っているのは非常によくわかるんですね。あくまでも治療の中に 関係ない人を巻き込まないという、当事者の間だけでやりましょうということですね。 そういう意味でのシェアということで非常にわかりやすいのですが、ただ、実際問題、 今、精子を提供してもらうには原則的に凍結しなければいけないという義務があります ね。フレッシュは使わない。となると、前もってシェアする男性、治療の精子を凍結し なければいけないという問題が出てくるんですよ。そのときに、当日溶かして少し悪い 人に下さいということを言わなければいけませんよね。そうするとわざわざ凍結する必 要がある。普通は生を使う人の方が多いですから、そういうことも考えますと、精子に 関しては、提供するソースが卵ほど難しくないという現実がありますから、精子に関し ては今までどおりで私はいいのではないかと思います。 ○中谷委員長  辰巳委員はどういうご意見でしょうか。 ○辰巳委員  それでは学生とかの提供はもう禁止して、それだけにするといった意味でしょうか、 先生おっしゃるのは。 ○加藤委員  もし禁止した場合には、精子不足がひどくなるんですか。 ○辰巳委員  禁止した場合にはシェアリングみたいな形を。 ○加藤委員  それでも十分精子は足りているというのか、それとも、それでは精子不足はひどくな るということか。 ○辰巳委員  AIDを行っている施設が限られているもので、私たちは全然関係ないんですけれど も、吉村先生のところは深刻な問題が出てくるでしょうね。 ○吉村委員  それはかなり大きな問題になるでしょうね。 ○田中委員  先生が、今のAIDのやり方が一番まずいというのはお金の問題ですか。お金でなけ ればいいんですか。学生が、お金要りませんよということで。 ○石井(美)委員  はい。 ○辰巳委員  先生、例えば、院内で「ご協力お願いします」と。精子のドナーがなくて困っていま すから、こちらに通っておられる方のだんなさんで、提供しておられる方があったら、 ご協力お願いします、みたいな掲示を出しておいて、それで言ってこられる方はいらっ しゃると思いますよ。だから、そういう形でも構わないとは思いますけれども、だけど ……。 ○中谷委員長  でもそういうのは珍しいですね。どこか知らないところに自分の子どもができること を認めることになるでしょう。 ○吉村委員  ドナーをたくさん確保しておくということは、非常に難しいですね。 ○中谷委員長  難しいですね。 ○吉村委員  ドナーを、例えば一回にやるときに、それがすべての施設でできればいいんですけど 、月に1〜2例あるようなところをやったって採算が全く合わないわけです。慈善事業 でやっているわけではないですから、凍結施設もない。 ○加藤委員  1万円でもコチンと来るわけでしょう。だからできたらやめさせたいわけでしょう、 その1万円というのをね。それを人体売買につながるようなケースなので、なるべくそ れをやめる方向にもっていきたい。 ○石井(ト)委員  実費がかかるということでその程度という話だったと思うんですね。時間が提供され 、交通費が提供され、その実費ということで値段が決まったんじゃないですか。 ○加藤委員  石井さんは将来の方向としては実費もいけないというの、バス代 200円も払っちゃい けない。みんなボランティアで自分の身銭を切って提供しに来いということになるんで すか。 ○石井(美)委員 この問題だけではなく、臓器提供などもみんな無償で提供していますね。それとのバ ランスからいくと、精子・卵子についてはお金を払ってよいとすることがよいのだろう か。ことに臓器の方が欲しい人はいっぱいいる、もっと不足しているので。それに対し てお金を払ってよいということにつながらないだろうかということが一つ。もう一つは 、精子・卵子の提供から子どもが生まれます。胚になるともっとはっきりしてくると思 いますが、子どもの売買につながる可能性を持っているのではないか。そういう点では お金の支払いはなるべく認めたくない。 ○中谷委員長 よく考えてみますと臓器の提供の場合は治療ですよね。ところが生殖補助医療は医療 と言えるのかどうか、それが根本的には問題にもなりますよね。そういう場合に提供に 対する報酬というものを決める。前は慶應では学生に2万円払っていたんですね。今は 半分。 ○矢内原委員  私たちのときは卵1つしかくれなかったですよ。 ○吉村委員  2万円までは払ったことないと思いますけれどもね。 ○中谷委員長  いや、うちの息子が学生だったころ、提供者がいたんですよ。アメリカの二世でした けどね。 ○吉村委員  1回で2万円かもしれない。一遍に払いますから、1 カ月に3回ぐらい払いますから 。 ○中谷委員長  私が聞いた範囲では2万円だった。だけど、あなたの知らないところに自分の子ども が生まれると嫌じゃない。そんなのおよしなさいと。2万円のアルバイト料は今どきな いと。だから僕はやめませんと言われてね。 ○吉村委員  それは多分1カ月だと思いますね。1カ月ごとに払いますから、一回ごとに払わない ですから、1カ月に2万円だったかもしれません。 ○矢内原委員  お金をもらおうという気持ちはなかったです。 ○丸山委員  ちょっとよくわからないんですけれども、石井(美)委員のお考えだと、このシェア リングの場合も提供する側、卵がある側の医療費を肩がわりするんですね。その点にお ける有償性というのは気にならないんですか。 ○石井(美)委員  さっきも言いましたように、本来は自分が卵を採る。そのかわりに相手が受ける治療 の費用を払う、そう考えられるのではないか。それは実費ですよね。報酬を受けるわけ ではないです、本人が。 ○丸山委員  だから全般的な負担はないんですけど……。 ○石井(美)委員  相手が払うかどうかの問題よりは。 ○丸山委員  治療費の肩がわりというのは大きいですよ、特に卵の場合は。だから精子の場合より も、実際に動く金銭は大きいのに、動かないのか、動くのか、ともかくドナー側に与え られるものは大きいのにそちらは気にされないのかなというのが。 ○石井(美)委員  それを、マッカーシーさんにも質問として、貧しい人をお金持ちの人が搾取する、そ う使われる危険はないのかということは質問事項として出したんです。反対もあるとお っしゃっていたのはそういうことを含んでいるのかと思いますが。でも、割とうまくい っているという感じの説明でしたね。 ○中谷委員長  高橋委員はいかがですか。 ○高橋委員  精子の提供について、大学にいた頃やはり学生から採ってやってましたが、その当時 でも1万円払いました。ドナーは絶えることはなかったですね。それで採ったものを、 当時は凍結しますと戻したとき活動している精子の数が少なくなるものですから、でき るだけ生というかフレッシュな状態でAIDをやったんです。1万円払うとその精子を 何人かに分けてやらないとペイしないんです。ですから排卵誘発剤やいろんな方法でコ ントロールしておきまして、3人とか4人の人たちに人工授精(AID)をしましたが 、当時はインフォームド・コンセントもなかったし、せいぜい調べるのは血液型だけだ ったです。  そういう点から言いますと、今、私が行っている病院ではどこから精子を持ってきて いるのかわからないですね。 ○中谷委員長  このごろは学生でない人でもドナーになる人はいますよね。 ○高橋委員  います。実際にAIDをやっているところは結構あると思います。大々的にやってい るのは慶應だけですけれども頼まれてやっているところは結構あるし、また、私の場合 もそうだったのですが、兄弟を連れてきてやってくれとか、親のでしてくれというのも ありました。日本の場合は、儒教思想というか血統主義が強いですから、これが現実な んですね。難しいです。言えることは、外国の事例はあくまで参考であって、日本は日 本なりの考え方でいかなくちゃならないということと、加藤先生のこういうお考えもぜ ひ答申の中に入れてもらいたいというのが私の考えです。 ○加藤委員  このお金の使い道についての分析は英語の文献からとったんです。 ○中谷委員長  私が1980何年だったと思いますけれども、ドイツに行ったときに、たまたまテレビに ドナーが出てきまして、1回40マルクだったんです。その当時1マルクがたしか八十何 円だったと思うんですよ。日本より随分お安いんだなと思いました。ただ、提供すると きは必要に応じて、要するに目の色、皮膚の色、髪の毛の色、そういうものがかなり問 題になるんだということを言っていました。  アメリカは商業主義だからスパームバンクがありますね。それにはアメリカーナとか ジャパーズとかいろいろありますよね。皮膚の色、目の色、能力、学生が多いものです から、ピアニスト、スポーツの選手、そういうものが書いてあった。それに応じて注文 するわけですから、それぞれありますけれども。 ○高橋委員  前に話したと思いますけれども、ブリスベンのメディカルセンターでAIDのスパー ムの提供についての現場を見てきたんですけれども、学生が次から次と来てそこで記入 用紙にチェックして、それと金券なんでしょうか、何か札をとって帰っていくんです。 札と交換で、1階の方でお金をもらっていく。そのとき、40ドルか50ドル、こんなにい るのかと思ったくらいたくさんの学生が並んでました。 ○中谷委員長  男子学生のアルバイトとしては割合にいいというふうな評価があるのではないでしょ うか。 ○高橋委員  ああいうような外国人の感覚は、我々にはとても受容できない感覚ですね。また、実 際にいろんな性行動なり男女のつき合い、そのほかのビヘイビアについても、日本は日 本の感覚でされていますから……。 ○中谷委員長  それは先生、何年ごろですか。 ○高橋委員  今から7〜8年ぐらい前ですね。 ○中谷委員長  だからある意味では、出自を知る権利についてかなり厳格になってくると、そういう ことはなかなかできにくくなるということは考えられますね。 ○高橋委員  そうですね。 ○丸山委員  先ほど高橋先生がおっしゃった、今、高橋先生のご関係の病院でなされているのは、 フレッシュは使わないで半年凍結させるんですか。 ○高橋委員  凍結していると思いますね。フレッシュで使うほどドナーの数は多くはないと思いま す。いろんなルートを通じて、大学関係のどうも運動部の方が来ているみたいなところ もあるんですけれども、そういうようなやり方でAIDをしているところは結構あるの ではないかと思います。 ○中谷委員長  ドネーションについて金銭的なものが動くということは絶対だめということになりま すと、ほとんどできなくなりますね。 ○矢内原委員  精子に関してはそうは思いません。 ○中谷委員長  そうですか。 ○矢内原委員  ただ、やる側の施設側が精子を保存したり検査をしたりしますね。そういう費用がか かるだけです。個人的な体験から言うと、そのころは卵1個だったんですけれども、か えってあのときに貧乏でも金持ちでもなかったですけれども、お金をもらうということ の方がドネーションという気持ちがなかったですね。当時、私はアルバイトで、今は献 血ですけど、昔は血液売買やっていましたね。そこにアルバイト行っていたんですが、 そのときの方がはるかに嫌な、自分の体の一部を売るという感覚でやっている方も嫌だ ったですし、それ以来、私はドネーションというものは、せいぜい卵1個で、これで元 気づけろという程度で学生のあれだったら十分だと思いますよ。 ○吉村委員  先生の時代はそうだったかもしれないけれども、実際にやるとなると、これは無理で しょうね。2回採血しますよね。 ○矢内原委員  当時、それはなかった。 ○吉村委員  その間、凍結しておきますけど、やるときにはちょっと無理でしょうね。わざわざ呼 び出して来てもらうわけですね。やるまでに少なくとも4回来なくてはいけないですね 。 ○高橋委員  そうですね。 ○中谷委員長  凍結したスパームを使う場合と新鮮な……。 ○吉村委員  今は全然新鮮使ってませんので。 ○中谷委員長  妊娠率はどうなんですか。 ○吉村委員  それは圧倒的に新鮮の方がいいですよ。 ○中谷委員長  でもそれは安全性の問題があるから。 ○吉村委員  安全性の問題で、厚生省からも去年出ましたし、うちはそのちょっと前の3月ぐらい から、厚生省から出たのは去年の6月か7月だったと思いますけど、それからですが、 妊娠率は圧倒的に悪いです。 ○中谷委員長  どのくらい違うんですか。 ○吉村委員  6割弱ですね。 ○矢内原委員  減。 ○吉村委員  減。だから5割ぐらいという理解でいいです。圧倒的に悪いです。 ○加藤委員  凍結するということは、凍結している間に検査をするということなんですか。 ○石井(ト)委員  HIVの検査。 ○吉村委員  HIVの検査を。 ○加藤委員  HIV以外の検査もあるんですか。 ○吉村委員  HIV、梅毒、肝炎、アトラーは最近言われたんですが、やってないんですけど、血 液型ももちろんそうですけど。 ○中谷委員長  イギリスは嚢胞性○○、あれは日本にはない。 ○加藤委員  ないんですか、よく教科書に出てきますね。 ○吉村委員  システィック・フィブローシスで遺伝子検査必要でしょうね。 ○丸山委員  今4回とおっしゃいましたけど、ドナーになったら4回という、その過程を。 ○吉村委員  まず住所とか、インタビューしなくてはいけないですね。本当にドナーになっていた だくということに対して。インタビューで「遺伝病がありますか」とか、そういうこと を聞かなくてはいけない。それはAIDのうちのコーディネーターが聞いて、その次に 「それでは私やります」と言いますね。検査に出しました。そして検査したらその結果 をお知らせしなくてはいけないですね、エイズの検査もありますので。初めにはエイズ の検査もしますよ、すべて検査しますよと言って、もう一回検査へ来てもらう。そこで オーケイだということで出してもらう。そしてもう一回、6カ月後に検査に来てもらわ なくてはいけない。そして、その検査のまた結果を説明しなくてはいけないから、5回 になるわけですかね。 ○丸山委員  最初に住所、遺伝病の人が周りにいるかを聞いて、採血して、それは1回目ですね。 ○吉村委員  インタビューの区分で1回、採血に1回ですね。 ○丸山委員  それは一緒にできないんですか。 ○吉村委員  一応、考える人もいるんですよね。私たちは1回にしないんです。書面による同意も あるし、相談する人もいるかもしれないしね。 ○丸山委員  検査用の採血は2回目に。 ○吉村委員  2回目でやって、その結果をお知らせしなければいけないですね。 ○丸山委員  それが3回目ですね。 ○吉村委員  3回目で、そのとき採精して、もう一回、採血を6カ月目にしますね。その結果をお 知らせしなくてはいけないですね。 ○加藤委員  6カ月目の採血というのは何のためにするんですか。 ○吉村委員  それはエイズの検査をダブルチェックするんですね。検査が出るまでに6週間から8 週間ポジティブになるまでにかかりますから、AIDに感染していても1回目の検査で は陰性に出てしまいますので、2回目の検査をして、2回目の検査の後、安全だったも のを6カ月前の精子を溶かして使うわけですね。 ○丸山委員  精子の提供も大変ですね。 ○吉村委員  大変です。 ○丸山委員  5回来て 7,000円ですか。 ○吉村委員 だから1回だけですと1万円ですね。そうなると、交通費だって当然かかっているわ けですし、電話も向こうからかかってくることありますし、「今から行ってもいいです か」とか、我々の連絡も、大体今は携帯で済みますからいいですけれども、携帯番号は ちゃんとしてあります。学生さんも、すべてがすべてそうでないが、お金もうけでやっ ている人も確かにいるかもしれないけれども、意外と今の学生は、ある意味では、ない 人にやってあげようじゃないかということはありますね。でも、それが本当に0円だっ たら来るかということですよね。これはやる側として見てみると、私は1万円は決して 高いお金ではないと思う。 ○丸山委員  これは今さらの確認なんですけど、1万×5回ではなくて、この5回のプロセスを… …。 ○吉村委員  1回精子を出したことに1万円ですから。 ○丸山委員  5回来院して1万円なんですか。 ○吉村委員  そのときに、例えば1回精液を提出します。そして正常で保存しておくとしますね。 それから1カ月後に来てもらったら、1万円払います。 ○石井(美)委員  2回目は1万円ということですね。 ○吉村委員  2回、3回と来ますから、それを凍結しておくわけですから、だめだったら全部廃棄 ですよ。 ○丸山委員  2回、3回と見える場合も採精するんですか。採精がなくても払う。 ○吉村委員  採精がなくても払います。 ○中谷委員長  そうすると、1回1万円ということで。 ○吉村委員  そういうことです。 ○中谷委員長  トータルにすると。 ○吉村委員  それは幾らになるか、本人が何回に来たかによって違いますね。大体1年間で、いく ら提供する人だって10回ぐらいですよね。 ○丸山委員  精子を採取するたびに1万円なんですか。 ○吉村委員  そうです。 ○丸山委員  検査あるいは検査結果の連絡のときはなし。 ○吉村委員  なしです。 ○丸山委員  当初のインタビューもなしなんですね。 ○吉村委員  なし。要するに精子1回提供していただいたごとに、だから先生がおっしゃるように 、いかにも精子を出したときにお金を払うから売買だと、そういう感覚を持たれるので はないかと思います。 ○中谷委員長  でも前に、私どもがイメージしたのと実態がちょっと違うみたいですね。○吉村委員  だから結構提供する方も大変なんですよね。例えばうちだったら、遠くからわざわざ 電車に乗ってインタビューに来てくれて、そしてまた帰って行く。その1万円というの は、それほど私は……。治験もできなくなってしまうわけですね。例えば1回来てもら うのに薬を使って、その薬がまだ安全性が確認されてないということで治験するわけで すから、欧米では確認されていても。その場合に1回来てもらうと、今、プリペート カードで1万円、うちなんかは1万 5,000円払っているんですが、それは機関によって 違うんですね。でも、そうしないと今の薬の治験も絶対できないんですよ。0円がいい とおっしゃるのは、それは理想ですけど。 ○石井(美)委員  報酬ではない、ということがはっきりしている形にする必要があると思うんです。 ○吉村委員  そうですね。 ○中谷委員長  要するに対価ではないという。 ○丸山委員  第一相ですか。 ○吉村委員  二相試験なんかもですね。それは機関によって1万円のところもあれば、うちは前は 8,000円だったんですけど、なかなか患者さんが受けてもらえないということで1万 5,0 00円になったんですけど、それは企業が払いますから。 ○中谷委員長 そうですね。前は 7,000円じゃなかったですか。 ○吉村委員 7,000 円とか機関によって 5,000円のところもありました。  加藤先生、もう一つ、細かいことで申し訳ないんですけど、「法的規定の限界」の最 後のところですが、「不妊治療が医療行為として正当化される必要条件は、不妊の原因 が身体的であるということである」と書いてありますね。 ○加藤委員 これは医療的な判断を重視するというので、例えば精子が出るのに長嶋選手のがいい とか、そういうのは認めないとか、あるいは恣意的な選択のために不妊治療の技術を使 うのは認めない、これは皆さん共通の。 ○吉村委員 ということは、加齢によるものも認めないということですね。 ○加藤委員 余り考えてないんだけど、そうです、加齢によるものも。 ○吉村委員 55歳の人が産みたいといっても、それは無理ですよと。 ○加藤委員 認めないということです。 ○吉村委員 わかりました。 ○中谷委員長 大分きょうのお話では現実面がよくわかってきて、これから報告書を書くのに参考に なったと思いますが、大変議論が進んでおりますけれども、きょうは時間が長いもので すから、この辺で10分ぐらい休憩いかがでしょうか。今、40分ですから、5時10分前か ら、再開ということにいたします。                 (休 憩)                  (再 開) ○中谷委員長  それでは再開させていただきますが、1つ、今のたたき台の3ページですが、「提供 卵子による体外受精」というのがありますが、この適用の是非について、案が分かれて いるわけですが、いかがでしょうか、適用の是非についての(案1)、(案2)ではど ちらが。 ○加藤委員  卵子についてですか。 ○中谷委員長  卵子です。「提供卵子による体外受精」、これは皆さんのご意見がちゃんとまとまっ てなかったような気がしますので。 ○母子保健課長  前回、委員長、調整案で、お示しさせていただいて、先生方にご議論いただきまして 、3名の先生方がご出席できなかったということで、7名の先生方はかなりご議論して いただきましたが、3名の先生方はその調整案を含めてどのようにお考えかということ を含めて、もう少しご議論を深めていただけるとありがたいなという感じがいたします 。 ○中谷委員長  そういう趣旨だそうですので、丸山先生と加藤先生、石井(ト)委員もご出席になれ なかったわけですね。いかがでしょうか。 ○石井(ト)委員  私はいろいろ条件を付けるということで(案1)です。 ○石井(美)委員  調整案は否定はされるということですか。 ○石井(ト)委員  調整案はどんな案ですか。 ○吉村委員  別添1ですね。 ○加藤委員  調整案というのは、結局(案1)に附帯条件を2つ付けた形なんですね。 ○丸山委員  卵子提供を認める立場からすると、調整案の手法も認めるということになりますね。 ○石井(美)委員  これに限るかどうか。 ○丸山委員  (案1)を正面から見ると、調整案に限らずボランティアの提供でなされる場合も認 める。イギリスの15ポンドに相当する実費も認めるということですね。 ○石井(ト)委員  「第三者が新たな身体的リスクを負うことなく」ということはシェアリングのことを 想定しているということですね。調整の「ただし」のところの意味がよくわからないん ですが、普通に卵子の提供はできるとなると、採取のための身体的な侵襲はどうしても 伴うんですよね。私はそれを考えているので、調整案のこれを見ますと、「新たな」と いうことですから、余った卵子をいただくことが前提ですよね。 ○石井(美)委員  限る必要はない。 ○石井(ト)委員  私はそこまで限る必要はないと思っています。 ○丸山委員  非常にうまくいった場合に、一回の採卵で幾つぐらい採れるんですか。 ○吉村委員  10個、15とか採れることはありますね。 ○石井(美)委員  そうですか。 ○辰巳委員  平均5から10個ぐらいですね。 ○吉村委員  5から10個ぐらいですね。多い場合は10個以上採れる場合もあります。 ○丸山委員  素人の算数なんですが、受精卵にして、2個から3個、一回に胚移植するということ であれば、10個採れるということが普通か、或いはそれが20も30も採れるというのが普 通か、というのでこの調整案が実際に働く可能性が違うと思うのですが、20も30も、と いうのは現実には難しいでしょうか。 ○吉村委員  採れることもありますけど、数は少ないですね。 ○石井(美)委員  5から10個で成功率を考えると余剰卵は余り出ない。 ○吉村委員  妊娠する人は3個入れてすぐ妊娠しちゃいますからね。 ○田中委員  この調整案はすべての卵子の採卵者に適用するものではないと思います。まず第一に 、自分が妊娠したいとだれでもそう思います。シェアリングの対象となるケースは、自 分が確実に妊娠する為の卵が確保され、その他にまだ余分な卵がある場合でしょう。そ うすると、数がたくさん採れる人に限ると思うんですよね。平均採卵数が10個というこ とは、10人に1人か2人の割合でシェアリングが可能になるのでは。実際にはそんなに たくさんの患者はシェアリングの対象にならないと思うんです、たくさん採れても本当 に質のいい卵がそれ程多くない場合もありますので。質のいい卵がたくさん採れた方の 中で、どうぞ私の余った分を使ってくださいという人が調整案のソースになるのではな いですか。卵の数が少ない人に、少しあげてくださいという話はまずしにくいですよね 。 ○丸山委員  その話の続きになると思うんですが、10個採るときと、例えば25個、或いは20個採る ときとでその身体の負担を比べて、20個の方が10個よりも身体的負担が大きいというよ うなことはないんですか。 ○田中委員  あります。 ○丸山委員  あるんですか。じゃあ、新たな身体的リスクというのも。 ○田中委員  ただ、この「新たな」というのは、採卵するために、関係ない人がわざわざ採卵しな いと、そういう意味の「新たな」ですから、20個の人、30個の人も採ることは一緒です からリスクは、新たな人にリスクを。 ○丸山委員  身体的リスクはゼロではないんですね。 ○石井(美)委員  20個を採ろうとして余計に排卵誘発剤を使ったり、というようなことは認めない。 ○田中委員  もちろんそういうことはないです。 ○丸山委員  だけど10個採るより20個採る方が時間も長くかかるだろうしというのはないんですか。 ○吉村委員  余り先生、それは新たなリスクを負うというほどのことはないですよ。 ○丸山委員  ほかの方がずっと。 ○吉村委員  だから、これを考えるときに、特殊な事例はあるかもしれないけれども、10個採れた Aという人がいて、Bという人が20個採れたとします。AとBで違いがありますかとい ったらば、違いがないという考え方で結構です。 ○中谷委員長  一番最後の文段ですけれども、「併せて精子の提供を受け、新たに胚をつくることは できない」、これはドクターの……。 ○加藤委員  この前、説明聞いたのでは、未受精卵の凍結が不可能だから、結果としてそうなると いう話だったですよね。しかし、法律用の文章としてできないというと、それは禁止す るという意味でとらえる可能性があるので、技術的にできるようになれば、この条件は 自然に消えちゃうわけですね。ところがこういう書き方をしているところは、法律上道 徳的にできないのだとすると、技術的に可能になってもできないということになるので 、その点ははっきりさせないといけないと思う。 ○吉村委員  これは石井先生違いますよね。そういうこと以外の意味もありますよね。 ○石井(美)委員  はい。もともとたたき台の案は、精子提供と卵子提供両方併せてすることは認めない という立場です。その場合には、余剰胚という第三者にリスクを与えずに提供を受けら れるものがあるのだから、そちらにしてくださいというのが私たちの考え方です。 ○丸山委員  ここは「許されない」と書いた方がわかりやすい。 ○石井(美)委員  そういうことですね。 ○中谷委員長 私はこれをやってもいいと思ってますから。 ○石井(美)委員  加藤先生は、認めるという立場。 ○加藤委員  よくわからないのだけれども、「精子の提供を受け、新たに胚をつくることはできな い」というのは、今、石井(美)さんの説明だと、もしそういうことがあるとすると、 これは必ず第三者から卵子を提供してもらわなければできない、そういうことなんです か。 ○石井(美)委員  これは「また、併せて」ですから、卵子提供を受けて、なおかつ精子提供も受けると いうことです。 ○吉村委員  Aという夫婦がいまして、その奥様が卵子がなかった。Bという人からもらいました 。卵子を提供受けました。ご主人の精子ちょっとだめそうだから、他人の精子をもう一 人もらおうと、それはいけませんよということなんです。 ○加藤委員  その理由は何なんですか。 ○石井(美)委員  今言いましたように、その場合には余剰胚といって採取することについて、ほかの人 を……。 ○加藤委員  だから余剰胚を使う場合には、未受精卵ではなくて受精卵だからという理由なんでし ょう。 ○石井(美)委員  第三者に対して負担をかけない。余剰の胚ですからもう既にあるわけです。それを活 用してくださいということです。 ○加藤委員  だったら、やっぱりつくることができないというのは技術的な理由ではないですか。 要するに重複じゃないですか。「第三者が新たな身体的リスク〜」……。 ○石井(美)委員  技術的ではない。 ○吉村委員  石井(美)先生がおっしゃっているのは認めないと。 ○石井(美)委員  認めないという考え。 ○加藤委員  この「第三者が新たな身体的リスクを負うことなく採取されたものでなければならな い」ということは別内容なんですね。 ○吉村委員  別内容です。 ○石井(ト)委員  毎回、私それを言っているんですけど、ここにまた胚のことが入っているんです。だ から混乱するのであって、どうしてここが入るのか。胚は改めて説明すればいい。これ はあくまでも提供卵子なんですね。 ○吉村委員  提供卵子のことについて言っているんですよ。 ○石井(ト)委員  卵子だけを言っているわけですから。 ○石井(美)委員  提供卵子を受ける人が同時に提供精子を受けちゃいけませんよと言っている。 ○吉村委員  ということを言っているんです。 ○石井(ト)委員  胚のときに入れた方がすっきりするのではないかと思ったんです。胚のことを話する ときに。 ○吉村委員  それは違うと思う。 ○中谷委員長  全然これとは関係ない、他人のつくった余剰胚でしょう。 ○石井(ト)委員  具体的にこういうこともあるが、それを禁じるという形で。やはり卵子と余剰胚を分 けて論じる必要があると思います。 ○丸山委員  既存の卵子、既存の精子、既存の胚の提供を言っているので、この最後の行は、まだ 胚はないわけですよね。精子と卵子を考えて、それを両方ともドネーションしてもらう のは、ワーキンググループの案では認められないと。 ○石井(ト)委員  それはわかりますけど。 ○吉村委員  例えば卵子提供受ける方は、卵子がない方が適用になるわけですね。こういったもの を決めた場合においては、この場合に、この人、卵子がないけど、ご主人の精子も少な そうだから、他人の精子を使って、せっかくもらったのだから精子入れちゃいましょう よということはいけませんよということを言っているわけですから。 ○中谷委員長  その場合、なぜいけないんですか。 ○吉村委員  もし、そうであるならば、初めから第三者の卵子をもらわなくてもいいのではないで すかということなんです。だから、私はこの文章は入れるべきだと思いますけれどもね 。 ○加藤委員  もし、そうであるならば、初めから卵子の提供受けるべきではないというのはどうい うことなんですか。 ○吉村委員  余剰胚をもらったらどうですかということなんですよ。 ○石井(美)委員  どうせ自分たち夫婦の精子でも卵子でもない子どもが生まれるのだから、第三者に負 担をかけない余剰胚をもらって産んでくださいということです。 ○吉村委員  そういうことなんです。 ○加藤委員  それはこの調整案の「第三者が新たな身体的リスクを負うことなく採取されたもので なければならない」という条件と全く違うケースですか。 ○吉村委員  全く違うものです。 ○石井(美)委員  卵子・精子両方を含めて「第三者が新たな身体的リスク」、加藤先生はそれだけで足 りるのではないか、ということですか。 ○加藤委員  だって、新たに胚をつくろうとだれか思ったときに、まず卵子を提供してもらわなけ ればならないでしょう、この条件だと。その卵子というのが、3行目、4行目に書いて ある条件でなければ卵子は使えないわけでしょう。 ○吉村委員  そうです。 ○加藤委員  ですから、この5行目はなくても同じじゃないですか。 ○石井(ト)委員  私もそう思っています。 ○加藤委員  だから5行目がないとあるとで、ケースでもって、これは認められる、認められない という事例の違いが出てくるんですか、適用範囲の。 ○吉村委員  出てきます。例えば、先生と石井(美)先生がご結婚されていると。先生の精子は40 0万しかないと。しかし厳密にICSIすればできる可能性あるわけですよね。でも、今 までは先生にはチャンスがなかったわけです。石井(美)先生に卵子がないから。わか りますね。そうすると、石井(美)先生は、石井(ト)先生から卵をもらいましたと。 先生たちご夫婦で胚をつくって妊娠したいと思っておられますね。先生が例えばICS Iをやろうとして先生の精子をもらいました。石井(ト)先生の卵子に入れようとした。 しかし、それは妊娠ができるかどうか心配だ、できないかもしれない。これは少ないか ら。  そのときに、辰巳先生から元気のいい精子をもらって、石井(ト)先生のを使ったの を使う、そういうことはいけませんよということを言っている。 ○加藤委員  石井(ト)さんの卵子と辰巳先生の精子で、我が美智子・尚武夫婦は子どもをつくる 、それはいけない。 ○吉村委員  それはいけない。それだったら、初めから石井(ト)先生と辰巳先生は結婚されてい るのだから、お二人でやられた卵をもらった方がいいよということです。 ○加藤委員  私の言っているのはどこが間違っているのか。私は「また、併せて精子の提供を受け 、新たに胚をつくることはできない」という条項があってもなくても、この前の3行、 4行の条項を守れば結果として同じことになるのではないかという質問をしているんで すよ。 ○中谷委員長  私もそう思う。 ○石井(美)委員  ただ、念のために書いておいた方がわかりやすいでしょう。 ○加藤委員  念のために書いてあるんですか。 ○加藤委員  「また」ではなくて、「すなわち」ですよね。「すなわち、併せて精子の提供を受け 、新たに胚をつくることはできない」というならわかりますよ。「また」というと、普 通は集合の図で書くと、この範囲のほかに、まだこういう範囲もあるという規制範囲を 拡張しているということになるんですよ。 ○中谷委員長  「すなわち」もおかしい。 ○吉村委員  「すなわち」もおかしい。 ○小林主査  2つ目の文までは提供される卵子の条件が書かれているわけで、最後の文は、その提 供された卵子をほかの人からもらった精子とかけ合わせて使ってはいけないということ を言っているということですから、違うことを言っているのだと思うんですけれども。 ○吉村委員  でも卵子による体外受精をするということについて言っているわけですから、体外受 精は精子を用いないと提供卵子においても体外受精できないわけですから、その場合に 精子を使うのは絶対的にご主人の精子を使ってくださいよということを言っているわけ です。ですから、これは「すなわち」ではなくて、全然違ったことを言っているので、 私は「また」でもいいのではないか。 ○中谷委員長  私はなくてもいい。 ○吉村委員  「また」がなくてもいいですけど、「併せて」からでもいいですけど、「すなわち」 はおかしいと思うんです。「すなわち」であるならば、ご主人の精子を用いて胚をつく りなさいという。 ○加藤委員  これは未受精卵をストックできるという条件の場合にもこのままでいいんですか。 ○吉村委員  それはいいと思います。 ○石井(美)委員  その方が望ましい。 ○吉村委員  その方が望ましい。 ○中谷委員長  「また」でも「すなわち」も、とにかく最後の一文をなくしちゃだめですか。 ○矢内原委員  別のところに置いてくださればいいですよ。 ○丸山委員  中谷先生のご提案はここの方針と違うことをお考えですから、別案ということになる と思いますね。 ○石井(ト)委員  私の案なんですけど、先生よろしいですか。ここをカットして、胚のところに、すぐ 提供胚の移植ときているんですね。そうではなくて、胚についてというところで設けて 、1つは胚をつくる場合、こういうことは許しませんということと、その形で胚をふく ませたらどうですか、「胚について」という形で。その中に入れたらすっきりします。 これはあくまでも卵子による体外受精ですから。 ○吉村委員  違うんだよね。 ○丸山委員  先ほど吉村先生がおっしゃいましたけど、第1と第2の条件が満たされるすべてのう ちの中で、第3の条件に当たる場合もあるから、それを除くという考え方でここはつく ったんですけど。確かにおっしゃるようにもとらえられるのですが、ここは卵の提供が 第1、第2の条件で認められるすべての場合から、精子をカップルの男性側から得る場 合のみに限って認めて、カップルの男性以外から提供される場合は除くという趣旨。 ○吉村委員  だから、直すとすれば、「また」をやめて、「その際、併せて精子の提供を受けて、 胚をつくってはいけない」。「すなわち」はおかしいと思うんですね。 ○加藤委員  後でゆっくり考えよう。 ○矢内原委員  これは理解するのに時間かかりましたよ。 ○中谷委員長  小林さん、何か。 ○小林主査  「その際、併せて精子の提供を受け、新たな胚をつくってはならない」とか「許され ない」とかお話がありましたが……。 ○丸山委員  「認められない」ぐらいは。 ○小林主査  「つくることは認められない」。 ○吉村委員  それで、もしこれが決まっても、今後、将来において困るということはないと思うん ですけれどもね。 ○丸山委員  未受精卵が凍結可能になると、このような調整案の必要性が低くなりますね。不妊の 治療を受けてらっしゃって、現在でしたら、すべて採取された卵子は受精させて凍結保 存しますよね。 ○吉村委員  理論的には。 ○丸山委員  机上の議論ですが。 ○吉村委員  ただ、患者さんが実際に体外受精されるときに、自分で痛い目をして卵を採ってもら い、その卵を、例えば未受精卵の凍結はこの確率ですよとお話をちゃんとして、それで 納得されればの話です。 ○丸山委員  未受精卵の凍結と受精卵の凍結と、戻したとき同じように使えるものであればですね 。 ○吉村委員  そういうことです。例えば、凍結精子に関しても、30年、40年やってますが、今の データから見るとフレッシュの方が2倍ほど成績がいいということを考えると、患者さ んはそういうことを望まれないかもしれませんね。 ○丸山委員  この先、かなりの期間、この方法によらざるを得ない。 ○吉村委員  その可能性は高い。でも、それはわかりません。 ○中谷委員長  それはわかりませんね。 ○吉村委員  ボランティアベースで、「私、いいですよ」とおっしゃる方もいるかもしれない。 ○石井(美)委員  なるべく余剰胚を利用する方が望ましいとは思います。 ○田中委員  最後の部分ですが、胚の提供は余剰胚についてはいいと思うんですけど、ただ、それ は前提として凍結の技術がちゃんとしていることが条件だと思うんですね。凍結してあ った胚が溶かしたらだめということも実際あり得るし、私としては正直言いまして各施 設によって凍結技術がすごくバラツキがあって、できないところもあるし、機械を持っ ていないところもあると思いますので、胚がないと困ると思うんです。だから、最後の ここ、卵の悪い……。 ○加藤委員  凍結技術がないとなると全部生物でやるということなんですか。 ○田中委員  そういうところもあると思います。 ○加藤委員  厚生省のガイドラインに違反しているんですね。 ○田中委員  精子は凍結簡単なんです。卵の凍結はコンピュータを使った特殊なものなので持って ない施設もあるかと思いますので、両方悪くて、卵をせっかくもらえたので、そのとき に精子ももらって胚をつくって入れられたらなというケースも出てくると思うんですね 。 ○石井(美)委員  ただ、非配偶者間の生殖補助医療を行える施設はある程度条件を課すということです から、凍結の施設を持つような施設に限るということも可能なのではないでしょうか。 ○田中委員  わかりました。それならば問題ないと思います。 ○中谷委員長  イギリスなんかはみんな分けていますからね。AIDだけの施設とかIVFだけとか 、両方とか、凍結だけの施設とかに分けていますから。 ○田中委員  技術を認可された施設だけということになりますね。それならよくわかりました。 ○石井(美)委員  たたき台はそういう趣旨だと思います。 ○丸山委員  辰巳先生が後で提出された質問に対するマッカーシー局長の回答なんですが、ICS Iによりできた胚を胚提供に使うと書いてありますね。これは同じようなことが日本で なされると、前々回、私が指摘した男性不妊の子どもがまたできるのではないかという ことで、そういうことを考えると、この3番目の条件を課すことについて私はおりよう かなという気も多少してくるのですが、卵提供プラス精子提供もあり得るのではないか という感じがしますね。余剰卵の方が、第三者に危害を与える可能性が小さいから、そ ちらを使いなさいと言い切れるのかなという感じがちょっとしてきますね。 ○田中委員  3番目のというのは。 ○石井(美)委員  「併せて、精子の提供を受け」というところ。 ○田中委員  3番目、おりられると言ったのは。 ○吉村委員  「併せて精子の提供を受け、新たに胚をつくることはできない」。 ○丸山委員  「その際、併せて精子の提供〜」ですから……。 ○中谷委員長  認められないとさっきおっしゃった。私は結論的にはこれはない方がいいと思う。 ○丸山委員   その点、先ほどちょっとおっしゃった中谷先生と同じ……。 ○中谷委員長  結論的にはね。 ○石井(美)委員  調整案に限らず、すべてのたたき台のところにということですね。 ○丸山委員  ええ。 ○吉村委員  それはせっかくいい卵をもらったのだから、乏精子症もない元気な精子で胚をつくっ てやったらどうかという考えですよね、先生のは。 ○丸山委員  こういうのが実情として、今後もし日本でも許容されるような状況になるのであれば 。 ○吉村委員  先生の考えですよ。だから、せっかくいい卵をもらったのだから、乏精子症の遺伝子 の異常があるような、無理してICSIして妊娠させるよりも……。 ○石井(美)委員  いや、それは違います。ある余剰胚を提供しましょうという話です。わざわざICS Iして、ということではない。 ○吉村委員  丸山先生の言っていることは私の考えでいいんでしょう。 ○丸山委員  そのかわりの方法として精子ももらうのであれば、その余剰胚を使いなさいというの は、余剰胚の中には男性不妊の要素をはらんだものも少なくない。あるいはないことは ないというのであれば……。 ○吉村委員  わかります、先生の言っていることは。そうなると、先生は、「併せて」とか、同時 にというか、最後の文章はなくなるわけですね。 ○丸山委員  ええ。それは皆さんの意見、方針ですから……。 ○中谷委員長  加藤委員はどうですか。 ○加藤委員  だんだんわかりかけてきた。 ○中谷委員長  それで、わかりかけて。 ○加藤委員  もうちょっと考えます。 ○石井(美)委員  制限しない立場ですね、先生のもともとのご意見は。 ○加藤委員  ええ。 ○中谷委員長  私は丸山委員の意見に賛成ですけど。 ○石井(美)委員  私は、その程度のリスクは覚悟してくださいという考えです。 ○中谷委員長  覚悟しなさいといっても、それはやっぱり。 ○石井(美)委員  自分自身がもともと不妊なんです。 ○丸山委員  男性因子も女性因子もあるんですね。 ○田中委員  両方ありますね。 ○丸山委員  そういうときは凍結の余剰胚の利用に限るということですね。 ○吉村委員  今、おっしゃったようなことは基本的なことですから、第三者の受ける人がどの程度 まで許容されるのかとか、そういうことにもかかわってきますよね。だから、そういう のがいくと、自分でこういう子どもを産みたいとかね。 ○中谷委員長  デザイナーベビー。 ○吉村委員  そういうふうになってくるんですよ。例えば、きょうも新聞に載ってましたけど、46 歳の人がアメリカで二世の人からもらって、足が長くてスタイルもいいし、私は非常に うれしいと、その不妊夫婦がおっしゃっているわけです、46歳で産んでね。日本人に比 べると足が長いと。二世からもらったんですと、卵子を。そういうことを喜んでみえる 方も実際に卵子をもらっている方にいるわけですから、そういうことを考えていくと、 実際にこういう医療が本当に起こっていいのかという考えにならざるを得ないという感 覚ないですか。それは禁止はできないだろうと思います、先生がおっしゃるように。そ れは禁止するまではないと。 ○加藤委員  選択的というのが、どこまで禁止できるかということですよね。田中先生の話だと、 元気な卵と元気でない卵は見てわかるというので、そのとき、わざわざ元気でない卵を 選ぶということはないと思うんですよね。 ○田中委員  元気な卵と元気のない、質のいい、悪いはわかりますよ。 ○吉村委員  ある程度ね。 ○加藤委員  同一人の場合でも違いますか。 ○吉村委員  それはあります。 ○加藤委員  そのとき、選択的にやっちゃいけないんで、目つむって、どっちかにしなければなら ないとかということはないと思うんですね。元気のいい卵を選ぶのは当たり前だと思う 。 ○田中委員  シェアリングでは実際そういう問題が出てくると思いますね。 ○吉村委員  非常に難しいですね。お金を払って医療を受けたけど、どちらにいい卵を返すかとい うことは医者が決めるわけですからね。 ○辰巳委員  私、本質的にはエッグのドネーション反対なんですけど、もし認められることになっ た場合、シェアリングだけということになるとすごく歪まないかなと思って心配なんで すね。 ○吉村委員  それは歪むでしょう。 ○辰巳委員  やっぱりシェアリングだけで行っちゃうと、何か変な方向に行かないかと思って、だ から認めるという方向になってしまったら、自分であげたいという人を認めてもいいの ではないか、そういうふうに思うんです。 ○田中委員  私も辰巳先生の意見はよくわかります。卵を分けるということは医者が分けるわけで すから、そのときみんな均一な粒揃いの卵が採れればいいんですけど、実際には粒不揃 いの卵の方が多いですから、分けるときにいろいろ問題は出てくると思う。 ○加藤委員  こちらはご本人様用、こちらはお客様用といって。 ○吉村委員  結構難しいですね、それは。 ○田中委員  たくさん採れればいいんですけど、かなり悩むようになるのではないかと私は予想し ますね。だからあげたいという人の方法も残していただければいいかなと、私もそう思 いますね。 ○吉村委員  この調整案は、(案1)の付記というんですか、こういうシェアリングもよいという ような感じぐらいの方がいいかもしれませんね。 ○加藤委員  例えば長期的な展望に立って、将来は全く第三者の卵子提供も認めることになるかも しれないけれども、当面ともかく不妊治療やっている人の余剰胚を使ってやってみると 、そういう考え方はどうなんですか。それでも意味があるとか、それによって、また、 いろいろ安全性の問題やいろんな問題でチェックができるとか、そういう可能性は考え なくていいんですか。 ○矢内原委員  先生、卵子の提供なし、あって? ○加藤委員  余剰胚だけに限るという考え方は、自由主義の原則からいってばかげた余計なおせっ かいなんですよ。おっせいかをしないというのが本来自由主義なんですよ。だけど、そ のおせっかいも、将来本当に自由化する前段階として、まずこれでやってみるという考 え方はどうか。 ○矢内原委員  これというのはどれですか。 ○加藤委員  つまり、「この際の提供卵子は、当該卵子の提供を行うために、第三者が新たな身体 的リスクを負うことなく採取されたものでなけれぱならない」、つまり余剰胚しか使え ないということですね、事実上は。 ○石井(美)委員  いえ、これは余剰胚ではない。 ○加藤委員  余剰胚じゃなくて。 ○石井(美)委員  シェアリングで今おっしゃっていた難しい問題があるけれども、半分か幾つか分けよ うという話。 ○田中委員  せっかく出た「余剰」という言葉は使えないかもしれませんね。本人にとっては余っ てないわけで、大事なものですね。いずれにしても問題ありますよね。全くすっきりし た解決策というのはないでしょうね、卵子の提供では。 ○吉村委員  もし、そういう意見になると、「ただし」以下が、「採取されたものも許可をする」 とか「それでもよい」とか、そういう感じになりますよね。 ○石井(美)委員  そうですね。35歳で子どもがあるという要件を除いて、この場合は認める。これはそ ういうただし書きになるということですね。 ○吉村委員  だから、「採取されたものでなければならない」というのではなくて、「採取された ものもよい」とか、そういうふうになりますね。 ○中谷委員長  「〜ものもよい」というと、恐らく付随的なものになっておかしいのではないですか 。 ○吉村委員  そうするとシェアリングはやってはいけないということなんですか。シェアリングは 難しいから……。 ○石井(美)委員  シェアリングを認めるとすればそういうことになるのではないでしょうか。 ○吉村委員  シェアリングを認めるということであるならば、シェアリングも含んだ方がいいわけ でしょう、提供卵子に。辰巳先生のご意見でもそうだけど、そうなると……。 ○石井(美)委員  辰巳先生は認めるならばですね。 ○吉村委員  認めるならば。 ○石井(美)委員  ご意見は反対なんですね。 ○吉村委員  はい。 ○石井(美)委員  吉村先生もそうなんですね。 ○吉村委員  そうです。 ○丸山委員  記憶が定かではないんですが、イギリスは「子どものいる」というのを卵の提供者の 条件には入れてなかったんですか。 ○石井(美)委員  入れてないと思います。 ○石井(ト)委員  入れてなかったですね。 ○丸山委員  それでシェアリングは問題なくできるんですね。35歳は入っていますが「子どものい る」はないですね。 ○加藤委員  だって、夫婦で不妊の原因が亭主の方にあって、卵子はピンピンしているけれども、 子どもはいないという人の卵子を提供しても問題ないのではないのではないかと思いま すけれども、子どもが既にいるかいないかというのは。 ○中谷委員長  フランスはスの場合は健康な子どもを持っている人というのが条件なんですよ。 ○矢内原委員  それはどういう理由からそうなっているんですか。返せ戻せがないから。 ○中谷委員長  提供されて、それによっておかしな子どもが生まれることがないということの保証の ためなんでしょうね。 ○中谷委員長  女性も男性も両方とも、健康な子どもがいるということです。 ○加藤委員  卵子を採取するために、間違って不妊になってしまう危険があるから、だから、既に 子どもを持っている人でなければ卵子の提供を認めない、そういうことではないんです か。 ○吉村委員  そういうことではないと思います。 ○石井(美)委員  そういう要素もあると思いますが、子どもを持つということの意味がわかっている。 そういういろんな要素を考慮して。 ○吉村委員  それは医学的には、例えばそこで10個採ったからといって、閉経が少し早くなるかど うか、そういうことはあるかもしれないけれども、それは考えなくてよいと思います。 ○石井(美)委員  でも、排 卵誘発剤で……。 ○吉村委員  それは将来的には、例えば卵巣がんの頻度が増えてくるということもある かもしれない、それはわかりませんけど。 ○田中委員  卵子の提供の一番の問題点は、肉親のを認めるか、匿名でいくのか。 ○中谷委員長  それは兄弟姉妹を認めるということで意見は大体……。 ○石井(美)委員  まだ決まってないと思います。 ○中谷委員長  違いますか。 ○加藤委員  匿名性を守れという意見の方多いんですよ。 ○矢内原委員  匿名の方が多い。 ○丸山委員  匿名性が守れる場合に限るという方の方が多いということですか。 ○加藤委員  ような気がしますけれども、私は匿名性を守れなんて、余計なおせっかいだからやめ ろと。 ○矢内原委員  比較的自由主義の立場をとって、加藤先生に説得されたみたいですけれども、ただ、 忘れてはいけないのは、いわゆる基本原則を我々決めまして、これは全員の一致ですね 。 もう一つは、ドネーションという、これは私の個人の考えになりますけれども、これは 匿名であるべきだと。それから記録の保存ということが出てきますね。記録の保存と匿 名性というのは表裏一体で同じことだと思うんです。記録を保存する限り、匿名という ことが前提で、だから記録を保存するわけですから、ですからこの3つを考えたときに 、卵の提供というものは、順番からいくと認めざるを得ないんですね、そういう方法が あるならば。  だから、これは私は大反対なんですけれども、「ただし」以下のところで、匿名であ り、新たに謝礼を払わずに、そういうボランティアの人がいたら、それからいただいて も結構ですと。だけど、それに対して謝礼は払ってはいけません。そしたら幅は広くな るわけです。原則としては認めている。現実にそういう人は起こるか起こらないかは、 シェアリングのことは別として、なければないで道は開けているわけですから、その次 に付加条件をつけていけばいいと思う。だから、その原則を私は崩さないでいただきた い。商業主義、お金がない、ただし提供は認めると。 ○石井(美)委員  私も矢内原先生の意見に賛成です。無償が原則。 ○矢内原委員  そういう許容性は認めない、それは匿名でなくなるから。 ○石井(美)委員  はい。 ○高橋委員  私は匿名は実際は難しいと思います。特に兄弟までいったら、匿名は絶対にできなく なる。 ○中谷委員長  その場合は別ですよね。 ○高橋委員  それよりも守秘義務の方をもっとしっかり義務化すべきだと思います。しばしば医療 関係者の中から漏れてくることがありますし、「ここだけの話」なんて言いながらいろ んなことが出てきますから、守秘義務の方が問題で、匿名というのは実際……。 ○中谷委員長  守秘義務の方は医療者については刑法で規定がありますから、それによればよろしい わけですけど。 ○高橋委員  匿名というのは実際はなかなか守れないと思います。まして出自を知る権利が認めら れるのであれば、匿名なんてあり得ないと思います。 ○矢内原委員  現実に精子の提供でやられているわけです。匿名で行われている。それと同じという レベルで、精子がよくて、なぜ卵子が悪いのかという論法から卵子を認めるならば、同 じような条件をつけるべきである。 ○高橋委員  私は今まで 30人程AIDをやりましたけれども、子どもを連れてきて「この子の親を 教えてください」と言ってこられたのにはまいりました。吉村先生もそういう経験はあ ると思いますけれども。 ○加藤委員  矢内原先生の匿名性という条件を守るのでなければ提供は認められないという、匿名 性を守るという理由は何ですか。 ○矢内原委員  提供の場合には提供の原則が1つドネーションであると。前の赤い羽根の話で先生に 笑われましたが、匿名であるということのあれは、もらう精子・卵子というのは遺伝的 につながったときに、生まれた子どもも提供した者もお互いにある意味の三角関係にな ってしまうんですね。もらった人、子ども、提供者。そうするとそこの間のどこが切れ てもつながってしまうわけです。特別な感情や特別な関係ができる可能性がある。だか らもらうものに関しては一切匿名である。そしたら一本で済みますから。 ○加藤委員  つまり特別な関係が生まれる可能性があると。 ○矢内原委員  感情的にある。 ○加藤委員  例えば、自分の弟の子どもをお兄さんが養子にもらったという場合、それは……。 ○矢内原委員  養子の場合には、これは意味が違うと思うんです。 ○加藤委員  先生の理由だったら、養子だって、そういう感情的なトラベルだとか確執、遺産相続 の場合に、本当の子どもはあれなんだから、向こうに余計やってくれよとかいろいろト ラブル起こり得るじゃないですか。 ○矢内原委員  生まれてきたものとこれから生まれて存在しないものをつくろうというのとでは意味 が違うと私は思うんですね。 ○中谷委員長  相続でも違うんですよ。養子ならば、実親からの相続もできるし、養親からの相続も できますしね。 ○矢内原委員  養子の場合には養子縁組も外すこともできますよね。 ○中谷委員長  離縁というのがありますからね。 ○矢内原委員  いろんな人と結婚したわけじゃないので一人しかしたことないのでわかりませんけど いつも、自分だったらどうしようかということをよく思うんですが、夫婦というのはあ る意味で他人だと思うんです。その他人の卵を姉妹からもらいますね。そのときにこの 夫婦の縁が切れたときに、その他人との縁が一体どうなるかということがわからない。 当然それは切れるわけです。  それから、生まれた子どもはまだ形も何もありませんから養子とは意味が違いますね 。 どんな子が生まれるかわからない。そのときに「私の産んだ子だから」という母親はた くさんいますから、それは卵が自分の卵だという、おれの子どもだからといって、自分 の精子という自信を持っていると。それと同じように、産まれ出た子どもが初めからわ かっていたら、その提供した卵子の人も精子の人も親族であればあるほど、それに対す る特別な感情絶対生まれると思う。  それから、その間に夫婦が一番醜い争いをしたときに、それに巻き添えを食うのは提 供者であるし子どもであるわけです。夫婦げんかの夫婦の別れというのは、夫婦だけの 問題ならばいいですけれども、そこに子どもがい、提供者がいたときにはもっとややこ しい関係ができてしまう。これをすっきりするためには、1つ、ある程度そういうもの を外してしまうと。自由思想に反しますか。 ○加藤委員  それは禁止にするにしては余りにもデリケート過ぎるという感じがしますね。そうい う可能性が起こるから、だから禁止するというのは、例えば普通の結婚だって、あんな 結婚したら大変なことになりますよという結婚はうじゃうじゃあるんですよ。だけど、 はたの人間は黙って見ているよりしようがないですからね。 ○矢内原委員  結婚は2人だけだから。 ○吉村委員  結婚は2人だからいいんですよ。生まれてくる子どもというのは全然何も知らないで 生まれてくるわけですよね。生まれたものと、これからつくろうとするというのは厳密 に違うと思いますね。そういう姿勢でつくるのかどうかということですよ。だから兄弟 姉妹に頼るというのは実利的に兄弟姉妹の方がやりやすいからですよ。商業主義も排除 できて、犠牲的精神があり、心を打つわけですよ。 ○加藤委員  姉妹の卵子を使った場合、実際に矢内原先生のようなトラブルが起こる割合というの はどのくらいでしょう。 ○吉村委員  それはわかりません。 ○矢内原委員  日本の離婚率とか外国とそこは全然社会情勢違ってくると思う。日本はどうなってく るかわからない。それはアメリカみたいに50%以上の離婚率になるかもわからない。日 本みたいにもうちょっと少ないかもわからない。ですからそこの道は広げています。広 げていますけれども、一番最悪の事態ということは想定しておかなければいけないと思 うんですね。ここは禁止する。 ○丸山委員  離婚した場合に、その子どもが自分のかつての連れ合いの配偶子を使っておらず、か つての連れ合いの同胞の配偶子を使っているということで、子どもが受けるドローマは 大きくなりますか。 ○矢内原委員  当然知ってしまうわけですから、自分の産みの母親と遺伝的な母を選ぶかという…… 。 ○吉村委員  それは出自を知る権利をなぜ知りたがるのというのと同じではないですか。 ○矢内原委員  そうするとすぐ目の前にいるんですよ。それが一族郎党全部手を取り合ってというこ とは……。 ○吉村委員  朝日新聞にも書いてあったんですが、妹からもらったわけですよ。妹が悩むというん ですから。その現実がちゃんとあるわけですよ。もらった方は全然悩んでないんですよ 。子どもができてよかったよかった、と喜んでいるんです。 ○丸山委員  提供した方が悩む。 ○吉村委員  提供した方が悩むわけですよ。そういうカウンセリングというのは、今の日本の社会 において、30年たってもこれから先できないかもしれないですよ。だから、そういうカ ウンセリングが、今のことだけを考えて、それを法律に、それを禁止するほどのことで はないと言っていても、これは将来起こり、妹が実際に悩んでいるわけですから。 ○丸山委員  でも、それは1つの……。 ○吉村委員  だから1つの事象ですけど、それはそうですよ。だけど、今日本では私は行われてな いと思っていますから。 ○加藤委員  そういうふうにしてトラブルが起こって、非常に子ども自身がいろんな不幸な目だと か、あるいは取り扱われてはならないような扱いを受ける可能性があるという場合は確 かに想像できますよね。だけど、全く問題がなくて、別に何もよそからちょっかい出す ことないじゃないか、そういう可能性も十分あるわけですよね。パーセントでいってど っちが多いかわからないけれども、私の理屈から言えば、 100人のうち1人でも幸福な パーセントの例があるならば、それは禁止できない。極論を言えばそうなんだけれども 、実際問題としてトラブルが起こって不幸になる方がはるかに少なくて、30%以下だと 思うんですね。だとすると、これはとても禁止の理由にしては大げさ過ぎると。 ○矢内原委員  30%不幸な人と1%幸福な人だったら1%を選ぶんですか。 ○加藤委員  だから法律で禁止するというときには、幸福追求権ということを考えると、1つでも いい例があればもう禁止できないというふうに考えたいんですね。 ○矢内原委員  法律といえば道路交通法ぐらいしか知らないんですけれども、私のうちの前の通りは 40キロなんですね。なぜ40キロといったら、夜中の2時に走っている人なんかだれもい ないわけです。私はたまたま65キロで走ったんですね。捕まったんです。ところがその ときに、あと数日間で10年のゴールドメダルがもらえるところを捕まった。そのときに すごく腹を立てたんですけれども、よく考えてみたら、なぜ、ここは40キロといったら 、40キロだったら、みんな安全だから40キロなんですよ。それを60キロにしてしまった ら、混んだときにはだめなんです。  だから幅はうんと厳しくて、それを守る、守らないは、一番安全なところ。だから、 根津さんのところは根津さんはおれのところは問題ないと言っているからやっていて、 本当にあそこは問題ないかもわからない。だけど、それを一般に認めてしまったら、問 題が起こったときに、それに対して、みんな根津さんと同じに対処ができるかどうかと いったら、私は疑問だと思いますね。  そういう意味で、生殖医療をやっている我々にとっては、産まれる子ども、お産が終 わって、できたら将来まで見たいんですけれども、終わってしまってまで非常に心配に なると同じなんですね。子どもができたといってご夫婦が喜んでも、まだ喜んじゃだめ ですと、これからなんです、あなたは。生まれたら生まれてだ、男の子が生まれました 。 ああ、そう、よかったですねと。だけど、お母さんこれからだよ、子どもの受験がある よということですよ。ですから、法律のあれとちょっと意味が違うように私は思う。 ○中谷委員長  なかなか難しいですね。やっぱり国によっても違いますし、私は兄弟姉妹からの提供 でもいいという案には初めはとても反対だったんですよね。だけど、どっちかというと ……。 ○矢内原委員  心情的にはわかります。加藤先生は一番最初のときに、おれに似ない子どもなんて気 持ち悪いとおっしゃったことがすごく印象的なんですね。ですからそれはそのとおりで す。自分の家庭を持ちたい、結婚して子どもを産んでいく1つの過程である。だけど、 子どもができない夫婦もこれも1つの宿命で、それなりの生きる権利があるわけですね 。 ○中谷委員長  そういうことの情報をよく患者さんに提供してくださる方がいるといいと思うんです けれども、なかなかそうもいかないようで。それともう一つ、イギリスの制度で随分学 ぶべきものが多いと思いますが、イギリスでは父親の精子の問題で生殖補助医療によっ て生まれた場合には爵位の継承ができないんですよね。 ○加藤委員  爵位については厳密な遺伝子主義を採用しているんですね。 ○中谷委員長  そういうこと。 ○加藤委員  血統主義なんですね。 ○中谷委員長  血統主義なんです。 ○加藤委員  普通外国人に爵位を与えたり、あるいは大っぴらのところもあるのにね。 ○矢内原委員  本来、生殖というのは自分の遺伝子を伝えていくことが生殖だと思っていますね。 ○中谷委員長  そうですね。 ○矢内原委員  やっぱりAIDは悪いのかな。 ○吉村委員  どうですかね。私は卵子提供に関しては余り賛成ではありませんが、今、矢内原先生 がおっしゃったように、匿名であって……。 ○矢内原委員  無償。 ○吉村委員  無償が理想ですね。シェアリングもやむを得ない。もし認めるならば、匿名、無償、 シェアリングも可、姉妹はなし。 ○中谷委員長  丸山委員はいかがですか、今の吉村委員の意見に対して。 ○丸山委員  その前の矢内原先生の、生殖とは遺伝子を伝えることというのは確かにそうだと思う んです。だから問題は、本来の生殖でないものを認めるかどうかかなと思って……。 ○矢内原委員  それは個人個人の考えですから……。 ○加藤委員  そんなこと言ったら、歩くとは自分の足で歩くことで、義足なんかの治療なんて考え てはいけないという議論だって成り立つじゃないですか。 ○丸山委員  成り立ちます。ですから本来の姿でないものも制度的に認めるというのが許されてい いのではないかというので、また、もとの私の緩い案に戻るんですけれども、どうやっ てすり合わせるんでしょうね、この後。 ○中谷委員長  すり合わせは難しいですね。 ○加藤委員  例えば、矢内原先生のおっしゃっているような心配は、例えばカウンセリングの制度 がしっかり確立されるとか方法がうまくいく場合であるならば、それは十分配慮できる ことなのであって……。 ○吉村委員  それは可能ですね。 ○加藤委員  十分かどうかわからないけれども、かなりの程度配慮できることなのであって、あら かじめ法律みたいなものか、あるいは厳しいガイドラインかなんかで網かけて、もうそ の可能性そのものを排除してしまうとなると、ごく少数の例かもしれないけれども、せ っかく自分がそれでもって幸福になれるのにという人を、その可能性から排除すること になる。トライすることもできなくなるんですね。それは法律的な規制としては行き過 ぎであると私は言いたいわけですね。 ○矢内原委員  先生は、最初、ここに出てくるのを法律というふうにお考えになりますが、私は法律 を言っているのではないんです。法律は、例えば毎年5年ごとに見直す法律というのは 難しいんでしょう。 ○加藤委員  難しくないですよ。 ○矢内原委員 難しくないですか。 ○加藤委員  臓器移植法もできてから何年間で見直しになっていますし。 ○矢内原委員  つまりフレキシブルにして幅は広くしておくけど、法律で今やってはいけないという ことに関してはうんと狭くすると。だけど、みんなこのガイドラインを守りましょうと いうガイドラインを今考えればいいのではないか。 ○加藤委員  ガイドラインとしては狭くということで、法律としてはもっと幅広くということです か。 ○矢内原委員  そうです。 ○加藤委員  わかりました。 ○中谷委員長  ガイドラインをどういうレベルでつくるんですか。 ○矢内原委員  私は、ここではむしろガイドラインの作成はそれなりのワーキンググ ループができてくるのではないかと思うんですね。私は実はそのワーキンググループが やっていると思っていたんですけれども、今は法律の枠とガイドラインと一体どこに々 は位置づけられてきたのかななんて、こんがらがってきてしまったもので。 ○中谷委員長  課長いかがですか、今の矢内原委員の。 ○母子保健課長  ワーキンググループのご議論のときに、基本的に規制をする場合にある程度罰則を持 ってやらないと実効性が上がらないだろうというお立場で、そこを原則論として書かれ たわけだと思います。個々のケースにどのぐらいの罰則の重さが適当なのか、あるいは すべてが罰則なのかということを含めてはもう少し具体的に、仮にこれを最終的にご報 告いただいた場合には、我々の方で実務的にどうかということは考えなければいけない だろうと理解はしておりました。  ただ、今おっしゃられたように、議論の中でかなり本質的な部分として、つまり法で 罰則をもって規定するのにはなじまないけれどもガイドラインならばそれはいいかもし れないという形で、先生方の間である程度コンセンサスがとれるのであれば、それはま た1つ先生方のご判断だろうと思います。必要があれば事務局で、これは罰則を伴う法 規制、これはガイドライン、というようにこの検討委員会に案としてお出しすることは 可能かと思います。つまりここで記されたたたき台に沿って、ある程度先生方の規制に 対する方向が決まれば案として提示することは可能だろうということです。 ○加藤委員  場合によっては、項目ごとにこれは刑法対象、これはガイドライン型、これは申し合 わせ事項とか、それぞれ規制のレベルが違っていてもいいわけですね。 ○丸山委員  そのたたき台の5ページの規制方法として「罰則を伴う法的規制を行う」として、 「『第三者の配偶子提供等による各種生殖補助医療の是非等について』において認めら れていない生殖補助医療を行った者」というのは少し踏み込み過ぎた書き方ということ になりますかね。ガイドラインをつくっているつもりだったのに、刑法的な規制まで念 頭に置いてしまったということは。 ○石井(美)委員  刑法はともかく、法的な枠組みである程度まで示されるのではないかとは思っていま した。 ○丸山委員  罰則付なんですね。刑罰をもって許さないと……。 ○石井(美)委員  罰則まで含めます。 ○丸山委員  罰金まで。 ○石井(美)委員  ええ。 ○丸山委員  それも刑罰は刑罰で、許さないぞというのを。 ○矢内原委員  お医者さんに対してですね。 ○石井(美)委員  刑罰とは限らないかもしれません。 ○加藤委員  絶対に禁止する場合と多少違反者が出ても、罰金をつけておけば、ある程度コント ロールできるだろう、そういう違いはありますよね。例えばクローン人間なんていうの は多分絶対禁止にしようというので、罰金にしても大きくするとか、場合によったら自 由刑法にするとか、可能性はあるかもしれないですね。 ○中谷委員長  規制方法については、それぞれについて、刑法に規定があるものもあれば……。 ○加藤委員  常に刑法の対象となり得るような。 ○中谷委員長  そうであるものもあるし、そうではないものもあるわけですから、そうでないものに ついてどういうふうにやるか。 ○加藤委員  大体同意なしに○○してはならないなんていうのはよく倫理規定で書いてあるけど、 同意なしにやってたらほとんど刑法にひっかかっちゃうようなケースが多いんですよね 。 ○中谷委員長  答申をするときの最終的な案というのは難しいですね。 ○高橋委員  罰金とか刑法とか出ましたけど、罰金は昔でいう前科何犯に入るんでしょう。 ○中谷委員長  いや。 ○高橋委員  入らないんですか。 ○矢内原委員  有罪だったら入りますよ。あるでしょう。 ○吉村委員  お聞きした方がいいですね。 ○加藤委員  交通、先生が払った罰金なんていうのは前科に入らないでしょう。 ○高橋委員  あれは軽犯罪法。 ○中谷委員長  そういうので前科というのと、そういうあれがあったということと……。 ○高橋委員  軽く罰金というけど、同じスピード違反だって、何キロ以上は……。 ○加藤委員  前科というのは刑事上の、民事だったら前科と言わないでしょう。 ○中谷委員長  民事法の中にも罰則の中には実質的に刑罰法規に当たるものがありますから。 ○加藤委員  そうなんですか。 ○中谷委員長  はい。 ○加藤委員  どんな例なんですか。 ○矢内原委員  法務省の方に聞きますか。 ○中谷委員長  何かご説明くださいますか。 ○法務省  特別申し上げることはないんですが、少なくとも医師の方が罰金刑に処せられた場合 は医業の停止の可能性があるという意味ではかなり影響がある。 ○中谷委員長  医道審議会にかけられる。 ○高橋委員  医道審議会にかけられて、そこで医業停止何カ月とか……。 ○中谷委員長  罰金は医道審議会にかけられないでしょう。 ○法務省  医師法は厚生省所管の法律ですので、厚生省の方にご説明いただければいいんですけ れども。 ○中谷委員長  自由刑の言渡しがあったときは医道審議会でやられるんです。 ○吉村委員  保険医は取り上げられますね。 ○矢内原委員  医道審議会でしょう、保険の違反は。 ○石井(ト)委員  ちょっと確認なんですけど、免許持っている方は審議会にかけられますけど、学生の 場合は多分国家試験も受験できないという規定がたしかありますよね。学生の場合、罰 金刑以上に処せられた場合は国家試験も受けられない。 ○加藤委員  試験についての法律上の規定ですか。 ○石井(ト)委員  何かそれに抵触した場合は。 ○加藤委員  実際には大学で、学生が例えば交通事故を起こした場合に受けさせないというのはあ りますね。あるいは除籍にしちゃう学校もありますね。 ○石井(ト)委員  ではなくて、法で決まっているような感じです。 ○中谷委員長  司法修習生で40キロの制限、スピードの道路で、80キロから90キロぐらい出して、そ れで修習を一時停止された人がいましたけれども、大分前。 ○加藤委員  また、もとに戻ったんですか、身分は、もう永久に戻らない。 ○中谷委員長  だから、初めからやり直しかなんかやって、試験はいいんですけど。  これの最終答申はいつまでですか。 ○母子保健課長  事務局は十分に議論していただこうと思っておりますのでせっついてはいけないと考 えておりますが、可能であれば、年内中には何とかお願いをしたいと思います。 ○加藤委員  今の論争状況だと両論併記型でないと答申案が出ないみたいな感じですね。 ○石井(ト)委員  確認なんですけど、親族は提供卵子の場合、禁じるといったときに、それをどのよう に根拠を説明しますか。 ○加藤委員  だから矢内原先生の言うように、何かトラブルが起こったとき収拾がつかなくなって 子どもに迷惑がかかるから……。 ○石井(美)委員  いや、違うんです。どうやって手続的に確保するかということです。 ○石井(ト)委員  ある程度禁ずるということであるならば、それなりの理論的な裏付けが必要ですね。 ですからそこはまだ十分ディスカッションしてないと思います。 ○吉村委員  多分そういう意味では少数案じゃないですか。辰巳先生はわからないですけど、私と 矢内原先生だけで、あとはみんな兄弟姉妹はいいとおっしゃっているんじゃないですか 。少数意見です。 ○中谷委員長  私もそれはだめだと思っていましたけど、多数の方がそれはいいんだとおっしゃった から、そうすると日本的にはそれでもいいのかなというふうに思って……。 ○丸山委員  日英。 ○中谷委員長  日英。 ○丸山委員  イギリスもいいということですから。 ○矢内原委員  いいという方は匿名性はないんですね。 ○丸山委員  その場合、匿名性はないということになる。 ○石井(美)委員  それに限って。 ○矢内原委員  AIDも提供も匿名はないんですね。 ○吉村委員  AIDもいい、兄弟からもらってもいい、ということですね。 ○石井(美)委員  そうですね。 ○辰巳委員  どのレベルのものを決めるのかが決まらないとなかなか進まないですね。 ○石井(美)委員  まず、提供卵子を認めるのかどうか。 ○辰巳委員  それをどのレベルで認めるのか、加藤先生のレベルで認めるのだったら、 私もそれはしようがないかなと思うんですけど、それがひとり歩きして、何でもオーケ イみたいになっちゃうと物すごく困っちゃいますし。 ○石井(ト)委員  だから条件を付けるときのレベルですね。まさに認めるかです。 ○石井(美)委員  加藤先生のレベルでいいんですか。 ○加藤委員  随分違うと思います。 ○石井(ト)委員  違います。 ○辰巳委員  加藤先生のおっしゃるのは、技術をすべて法律で罰則をもって禁止するほどのことで ないと言われれば、それはそうだなと思って、それはそれでいいと思うんですけれども ……。 ○吉村委員  辰巳先生と私は同じかどうかわかりませんけれども、加藤先生のご意見には私は賛成 できないんですよ。できないんですけど、先生のおっしゃっていることは理論的なんで すよ。筋が一本通っている。 ○加藤委員  私は大体これはかなり刑法的な体質の強いガイドラインになるだろうと。ですから刑 法というのは大体この辺までしか規制してはいけないというのは自由主義の大原則なん で、その原則から考えると、刑法的な規制をするのであれば、ここは無理という判断を 出しているだけです。 ○吉村委員  そうです。 ○辰巳委員  そういう意味であればそれなりに私たちも納得します。でも、それがひとり歩きして しまい何でもオーケイということになってしまうとむちゃくちゃ混乱してしまうと思い ますし、だからどのレベルで話をまとめるのかというのをまず決めないと具体的な話は 進まない。 ○矢内原委員  自由でないということというのはどういうことなんですか。 ○加藤委員  自由でないというのは、大体法律やお役人が個人の生活に対して余計なおせっかいを するということですよ。 ○吉村委員  そういうことですね。 ○石井(美)委員  ガイドラインも同じですか。 ○加藤委員  ガイドラインだって同じことになりますけど、ただ、ガイドラインの場合にはそれに 違反しても、必ずしも社会的な親は名誉を失墜するというわけではないでしょう。だけ ど、懲役3カ月といったらやっぱり。 ○石井(美)委員  ガイドラインは、違反したら社会的に名誉失墜するようなものでなくては困るのです 。 ○加藤委員  でも程度が違うんじゃないですか。 ○石井(美)委員  議論は逆にした方がよいと思います。何が認められて何が認められないかをはっきり させて、それを何によって規制するかを後で論じた方がよいと思います。刑罰にするか ガイドラインにするか。 ○中谷委員長  当然そうじゃないですか。 ○石井(ト)委員  臓器移植法のときのガイドラインはかなり厳しい意味があるということを聞いたこと があります。ガイドラインはほとんど法に等しいと。どうなのでしょうか。 ○中谷委員長  むしろ臓器移植法の場合は、省令か政令かそっちの方に行ったわけですよね、ガイド ラインというのは。 ○丸山委員  ガイドラインは通知にすぎないでしょう。ですけど、移植については、医師の先生方 は厚生省が定めたことを守られますので、非常に規範性の強いものになってしまったと いうことなんです。 ○矢内原委員  縛ったおかげであまりできなくなってしまったんですね。 ○丸山委員  先ほど石井(美)委員のおっしゃった、実体的なルールを決めてから、ガイドライン で定めるのか刑法的なルールで定めるのかいずれにするかを論じればよいというのはそ うかなという気もしますけど、例えば同じことを定めても、それが罰則の担保付で定め られるのと勧告というかたちで定められるのとでは、罰則付のルールが一方で他方は単 なる勧告・助言にすぎないというふうになるとやっぱり違うような気がします。どうい う性格のルールとして定めるのかによって、ルールの中で述べられる実体的な要件、効 果も違ってくるのではないですか。相対的なものではないですか。 ○中谷委員長  そういうときに、公的な機関で許認可機関をつくって、許認可の条件に違反した場合 は……。 ○高橋委員  免許の取り消しですね。 ○中谷委員長  免許の停止や許可の取り消しとか、そういう形になりますので。 ○丸山委員  それは真ん中あたりということなんでしょうけれども。 ○高橋委員  今の中谷委員長のお話、すぐ罰するという方式ではなしに、この間のマッカーシー局 長さんの話のように、段階的にペナルティーを科して、最後はライセンスを取り上げる 。なおかつそれでも行っているような場合は刑罰を科されても仕方ないでしょうけれど も、それでいいと思います。  それから、今、日本で申請されている施設は6月30日でたしか 501と言いましたです ね。 ○矢内原委員  501 。 ○高橋委員  その中で実際にやっているのはもっと少ない。ましてや国がこういうような管理をし て、それで更に条件をつければ実施施設数は少なくなると思います。 ○吉村委員  少なくなります。 ○高橋委員  なおかつ卵の提供といって、ボランティアで、しかも無償で提供してくれるというの は年間に何例あるかというぐらい少数だと思います。 ○吉村委員  そうですね。 ○高橋委員  すぐ刑罰とか何かというような対象ではなしに、この間のマッカーシーさんのお話の ような、段階的な、最初は警告、注意。 ○加藤委員  イエローカード。 ○高橋委員  イエローカードみたいな。 ○加藤委員  オレンジカード、レッドカードつくって。 ○高橋委員  彼女のお話では4段階ありましたね。そういうようにやってよろしいのではないかと 思います。 ○矢内原委員  問題はそういうオーソリティ的なものを日本の国家の中につくれるかつくれないかだ と思うんです。あれはオーソリティといって、局長さんはまさに政府の役人ですね。と ころが実際に政府のお役人なのに生殖医療団体からの一回幾らかのお金で経営費の一部 をまかなっているわけでしょう。そういう組織が一体日本にできるかどうか。 ○高橋委員  だからつくるんです。 ○矢内原委員  全く新しいものになろうと思うんですね。 ○中谷委員長  オーソリティもやっぱり国家からのお金をぁ ○矢内原委員  もちろんもらっている。だけど、民間、各施設からもらってますでしょう。 ○中谷委員長  その収支決算みたいなものは最近の報告書にはそれが出るようになったんです。前は そういうものがなかったんですけどね。 ○矢内原委員  そういう組織が日本の中にできて、かつ権威を持てるかどうかということ。 ○中谷委員長  課長、いかがお考えですか、そういう公的な機関というのは。 ○母子保健課長  最終的にそういうHFEA的なものをつくるということのご提案になれば、関係団体 を含めた広い形での調整が医療界を含めてどうなるかという話になっていくでしょうし また当然その場合には法的な裏付けも要るでしょうから、国会での審議がどうなるかと いうことになるだろうと思います。そこが通るのかどうかという問題がありますが、そ の前段として、これまで議論いただいたような公的機関が要ると。いわゆる審議機関と 管理運営機関というのが要るというお話があったわけです。  前者については、ある程度、厚生科学審議会のような場にそういうものを常設してお いて適宜開くという形が割合現実的かと。もう一つは、成育医療センターのようなナシ ョナルセンターができて、その一部門に管理運営的な機能を持たせるというのが割合現 実的ではなかろうかという感じをもっております。  ただしその場合は、今おっしゃった規制のレベルを含めてどのぐらいの管理運営業務 を行うかで、成育医療センターの一部でおさまるのか、もっと大きな組織が必要になる か、このあたりがかなり左右されてくるだろうと思います。 ○丸山委員  少し戻って、先ほど高橋先生がおっしゃったような制裁を備えたルールであれば、加 藤先生のご意見でも、もう少しルールの中で、踏み込んだ自由主義をかなり優先すると いうルールよりも、少しパターナリスティックな要素、少しかかなりか、盛り込んだ ルールにしてもよいというふうにお考えになりますか。 ○加藤委員  段階的なものがうまくつくれればね。先ほどの能力だけでは無理かなという感じがす るけど。 ○中谷委員長  まだまだ議論は尽きないようでございますが、時計を見ましたら、もう5分前でござ いますので、続きは次回ということにしたいと思いますが。 ○吉村委員  まだ全然進んでない感じですね。 ○中谷委員長  次回は10月17日(火曜日)の15時15分から18時15分、きょうと同じ時間帯で、場所は きょうと同じこの会館となります。 ○母子保健課長  きょうは大分ご議論いただいて進んだような、また、あれのようないろいろあるんで すが、今後の進め方として、私どもとしては先生方に十分に議論を尽くしていただきた いという姿勢は変わらないのですが、もし、前回の調整案をお出ししたように、きょう のお話を踏まえて、今の規制の方法なども含めて、どこまでできるか全く自信はないの ですが先生方のお考えを集約するとこんな感じかというものを、お気に召すかどうかわ かりませんがこちらで準備いたしましょうか。それともこの議論をお続けいただくなら それでも結構ですし、先生方の。 ○中谷委員長  なかなか集約できません。丸山委員、何か。 ○丸山委員  討論すべきというか、(案3)、(案4)まであるものがあるのですが、実質的な背 景というか根拠を示さないと、ちょっとこの併記だけでは発表できないですね。ですか ら根拠のところを詳しく書いていただくと……。 ○中谷委員長  書いていただくのではなくて、ワーキンググループの方でご用意いただければ。 ○丸山委員  背景なり根拠を挙げていくと、両論併記でも社会に出して、検討の結果と して許されるのかなという気がいたしますね。 ○吉村委員  それは具体的には卵子提供と書いていくとかそういうことですか。 ○丸山委員  そうですね。卵子提供の場合の(案1)に至る根拠、(案2)に至る根拠、匿名性も 出自も同じですね。根拠を示さないと、この結論だけでは。 ○吉村委員  それは反対する人が反対の根拠を示すわけですか。 ○丸山委員  反対する人はご自身の説の根拠を示すわけですね。 ○矢内原委員  6項目の基本方針というのは全員一致でいいんですか。6項目ありましたね。優生思 想に基づく場合は身体とか、これはいいんですね。 ○石井(美)委員  匿名性は入ってない。 ○矢内原委員  そうすると加藤先生、代理母で幸せになる人はいますよね。実際やっている人いるん だから。先生はなぜ基本原則に代理母は禁止するということに賛成されたんですか。 ○加藤委員  細かい例を言うと、確かに代理母だってうまくいっている例あるのではないかという ケースあると思うんですね。でも、まだどんな危険があるかということについて十分な 証拠は出てないと思うんですよ。何年観察したらわかるかというと、ちょっと見当つか ない。 ○矢内原委員  今はやめておこうと。 ○加藤委員  ともかくいろんな人がやめた方がいいんじゃないかと言っているのは、いろんな危険 をみんなが考えて、想定して模索している段階だと思うんですね。 ○母子保健課長  次回に向けてある程度のものをということであれば、我々で準備させていただきます 。 両論併記あるいは反論併記の列で集約するのはもうちょっと後で、まとまらないという ことで、そのときにはそれぞれの理由を書いていただくのかなという気がいたします。 一応精子と卵子・胚・代理懐胎、これを1つに貫くような論理というのでしょうか、わ かりませんが、矢内原先生がおっしゃったような基本原則を踏まえた上で、幾つかある のでしょうが、そういうものを、今までの議論を統合するとこんなものを考え得るのか というものを、もしよろしければおつくりして次回お示しをすると。  その際に、きょうのご議論でありましたようないわゆる罰則規定というのを、かなり 緩やかに考えながら幾つかのパターンでやっていくということを含めて考えていくとい う前提を置いた上で、規範的なものを入れていくにあたっての考え方を可能な限り統一 的に説明できるような形でご提示をすると。それをまたご自由にもんでいただくという ことでよろしければ、次回までにそういうものを準備して、あらかじめまた先生方に事 前にお配りしてごらんいただくというふうにしたいと思いますが、よろしいでしょうか 。 ○石井(美)委員  新聞で、調整案を軸に動いていくというように報道されてしまうと誤解を招くと思い ますので、その辺は注意していただきたいと思います。 ○母子保健課長  記者レクにおいて調整案の性格について説明をし、3人の先生はお見えになっていな いということを何度も説明した上で議論の様子を客観的に述べ、次回の議論の結果まと まるか否かはわからないと申し上げた上での各社の新聞による報道があのようになった ものです。実際にはきょうのご議論の様子では、この調整案が軸になりそうにはありま せんので、結果的にはフライングしたことになるのだろうと思います。きょうの議論も 可能な限り客観的に伝えたいと思いますので、よろしくお願いします。 照会先:雇用均等・児童家庭局母子保健課 03−5253−1111(代) 椎葉(内線:7933) 小林(内線:7940)