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第5回「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」
検討委員会議事要旨

1.日時 平成12年10月26日(木)16:00-19:00
2.場所 中央合同庁舎第5号館(26階)共用第17・18会議室
3.出席者  
委員(敬称略 50音順)
 垣添委員長、雨宮、位田、上田、宇津木、小幡、金澤、具嶋、黒木、櫻井、地神、清野、高芝、東雪見(町野委員代理)、福嶋、丸山、南、山口
 (欠席) 笹月
オブザーバー
 作業委員会 (塚田、二見、吉田)
 厚生省 堺審議官、本間、中垣、野口、(福原、岡田)
 文部省 鈴木
 通商産業省 福島、(山本)
 科学技術庁 郡、(小郷)
 *括弧内のオブザーバーは、討議に参加せず。
4.議題
「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」(素案)について

5. 配付資料

 「ヒトゲノム解析研究(遺伝子解析研究等)に関する倫理指針(案)」(素案)

参考資料
 比較参考資料帳票(事務局たたき台、検討委員会・メーリングリストの主なご意見、考え方、素案、について)

6. 議事内容

委員長

「ヒトゲノム解析研究(遺伝子解析研究等)に関する倫理指針(案)」素案ということで、幾つかの固まりに分けて、事務局から説明いただき、それぞれの項目に関してご議論をいただくという形で進めたいと思う。

(表題と前文について)

事務局より資料についての説明が行われた。

・ 「遺伝子」を入れていただいてありがたいが、本文の中で「遺伝子」がずっと消えている。「ヒトゲノム解析研究」だけになっている。それぞれの文言についても「遺伝子」という言葉を入れていただきたい。「ゲノム」というのはやはり集合名詞という位置付けでとらえている研究者が非常に多く、かつ診療の場面でも「ヒトゲノム解析」と言っているが、それはジェネティックテスティングのことで、これは「ヒトゲノム解析」とは通常言わない。「ヒトゲノム解析研究」を英文に訳すときに何と訳すのか。
「ヒューマン・ジェノム・アナリシス」というと、「ヒューマン・ジェノム・プロジェクト」と同じ意味になってしまう。1つ1つの塩基を全部30億つなげるという意味になってしまう。
事務局
仮に入れるとしても、最初に括弧書きで入れて、「以下、ヒトゲノム解析研究と言う」というような形になると思う。
・ 「ヒトゲノム解析研究」を括弧で閉じて「遺伝子解析研究」を前に持っていっていただきたい。その方が多くの研究者は納得されると思う。
・ 括弧で入れて、しかも「等」がついているというのはすごくあいまいな印象を受ける。タイトルとしてはもっとすっきりとして、例えば「ヒトゲノム遺伝子解析研究」とした方がよい。
・ それでいけない理由を説明していただきたい。
事務局
作業委員の意見の中では、ゲノムという概念というのは遺伝情報の総称であるという概念に立てば、当然その中に遺伝子というのが含まれるのであって、そうなると、ゲノムと遺伝子という一部に含まれるものを並び立たせるのはおかしいのではないかというご意見があった。
・ やはり森に生えている木についている1枚1枚の葉っぱの研究をするのに、「これは森の研究です」というふうには普通は言わないと思う。「葉っぱの研究です」と言うと思う。それと、英語に訳した場合、これ、何とするのかということである。非常にわかりにくい名称だと思う。
・ 「ヒトゲノム」というのは「ヒューマン・ジーノム」と言うと思う。「ジーノム」を「遺伝子」とは訳されないと思うので、「ヒトゲノム研究」というのは「ヒューマン・ジーノム・リサーチ」と言うでしょう。「遺伝子研究」というのは「ジーン・リサーチ」と言うのではないかと思う。少なくともそういうふうに国際会議などでは使われていると理解している。中ポツで「ヒトゲノム」と「遺伝子」をつなぐと、「ヒトゲノム及び遺伝子」という、ある意味では誤解を呼ぶのではないかという感じがする。もしヒトゲノムを森とするのであれば、葉っぱは当然その中に含まれているので、括弧をつけて呼ぶ、したがって「等」というのがついているのではないかと思う。
・ 「ゲノム」という言葉は「クロモゾーム」と「ジーン」との合成語である。ヒトとしての種としての遺伝の総体が「ゲノム」、「ヒトゲノム研究」というのは、ヒトというのはどういう遺伝子を持っているか、全体を研究する学問形態である。未知のものを明らかにしていこうというのが「ヒトゲノム解析研究」ととらえている人が多い。明らかになった遺伝子の1つ1つの患者群と非患者群とで、どういう遺伝子の塩基配列の違いがあるかというのは、これは明らかに「遺伝子」になる。全体を指していることではない。個々の病気の解析を行う研究に「ゲノム解析」というのは不適切だと思う。
・ 1つだけ確認ですが、ここは病気の話だけに限定しているのでしょうか。
事務局
限定していない。
・ 遺伝子と遺伝子の間はどうなるのかという議論も出る可能性もあるので「ヒトゲノム」という言葉は何らかの形で残す方がよいと思う。
委員長
本来、この指針の検討会は「ヒトゲノム解析研究」ということでスタートしましたから、これが残ることは間違いないとは思う。そこに「遺伝子」あるいは「遺伝子解析」という言葉を絡めるか。この素案では括弧でくくっているが、これは非常にあいまいであるとか、あるいはスマートではないとか、いろいろあると思う。「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」というような形にすると、それに対して反対の方もいるようである。
・ 科学的術語として正確なのは「ゲノム」の方だと思う。倫理指針の焦点、コアは遺伝子の方にあると思う。「遺伝子」のほうがずっとわかりやすいと思うので、「遺伝子・ゲノム」でもよいと思う。
・ 「遺伝子」だけの方が非常にはっきりすると思う。
委員長
病気のことだけではないが、やはり病気も中心的な研究テーマとなると、「遺伝子」を表に出さないとこの指針としては難しいのではないかと思う。今のご議論をいろいろお聞きして、もしお許しいただければ、委員長の判断で「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」というように取りまとめさせていただきたいと思う。(一同了承)
・ 第2段落の6行目ですが、「その取扱いによっては様々な倫理的、法的、社会的問題を招くという点である」という、「すべての場合について招く」というふうに読み取れるので、「社会的問題を招く可能性があるという点である」としていただきたい。
・ 先ほどの点ですが、もし中ポツにすると、この文章中はすべてその言葉でずっと補っていくのか否かという点はいかがですか。
委員長
ご指摘の点、タイトルがそのまま本文にほんとうに数え切れなく出てくる言葉にどう生かすかという点である。1つの解決策としては、事務局からご提案のように、最初に出てきたところで説明して、以下、例えば「ヒトゲノム」という言葉で代行するというのはあるが。
・ そういう格好であれば「ヒトゲノム・遺伝子解析」としておいて、あと、以下はすべて「遺伝子解析」としたほうが実際的だと思う。
委員長
それに反対される方もあるでしょう。
事務局
先ほどの案は括弧書きをずっと続けていくというのは、やはりおかしいだろうなということで、1回省略することを申し上げたが、中ポツということでつなげるならば、少々長くなるが、全部変えて対応したい。
・ 苦情処理はここの範囲外になっているように思える。もしここから外れるとしたらどこか別のところで位置付けられるのか、そこら辺のイメージを教えていただきたい。
事務局
3ページの「すべての研究者等は、試料等提供者からの個人に関する情報の取扱いに関する苦情等に誠実に対応しなければならない」という条項がある。おそらく実務的には、例えば、病院に行くとポストみたいなものがあって、苦情があれば病院長までと、ポストに入れてくださいというような形になっているかと思うが、それと同様な形で処理されていくと考える。要するに機関としての責任の中で、それを果たしていっていただくと思う。
・ ミレニアム指針では、研究施設機関の、あるいは実施機関長の責務ということで記載をされていたが、それをここの中に入れ込むということは難しいのかどうか。
事務局
先ほどご紹介をした3ページの「すべての研究者等の基本的な責務」というのは、いわば1番で言う「基本的考え方」あるいは「基本方針」を受けた原則論をここで書いている。機関の長に位置付けた方が責任の主体がより明確になるという点があると思う。そういう方向で整理したいと思う。
・ 科学技術庁と厚生省との倫理指針との関係について、今回3つ目が出るということになって、現場の研究者から質問が出ていて、文部省の方から先日、厚生省に従ってやるようにと、遺伝子解析研究についてはそれに従ってやるようにという通達が出ていて、既に種々の大学でそれに従った規定なり動きが出てきている。そうしたときに、ミレニアムの方の厚生省に従っていればそれでいいのか、あるいは新たにこういうのが出たらこっちに従うのか、その位置付けについてご説明いただきたいと思う。
事務局
ミレニアム指針を守っていれば原則は守れるという位置関係にあると思う。ただ、ミレニアム指針を廃止して、ミレニアム・プロジェクトについてもこれを適用するかどうか、これについては検討の余地がある。ミレニアム・プロジェクトは今、走り出している。ミレニアム指針を守っていれば、この指針が当然守れるという関係になっていると思う。
・ そうしますと、文部省の方にお伺いしたい。これが出たら、前回の通達の厚生省にのっとってということではなくて、こっちにのっとってという通達がまた出るということになるのか。
事務局
文部省の通知は、今年の8月31日に通知させていただいている。今現在、この議論が行われている、各省連携のもとに年度内には結論が出るように今、開始したところであるが、一般指針が作成されるまでの間においてはミレニアムに準じた取り扱いをしていただきたい。これができたらミレニアム以外のものについてはこれでしましょうというご案内をするつもりである。
・ 私の大学でも同じような質問が出ている。同一の研究者が別々のソースのお金で研究していることだってあり得る。混乱をさけるため、やはりそれぞれの位置付けというのを明確にして欲しい。
事務局
先ほど申し上げたようにミレニアムを満足していれば、これは当然満足するだろうということはご了解いただいていると思う。廃止したときの影響が出るのか出ないのかというのは、いましばらく検討させていただきたい。また、影響が出ないということであれば、ミレニアム指針を廃止して、この指針に一本化するというのは当然可能だと考えている。
・ 基本原則そのものは大変結構だと思う。むしろこの共通指針の前文として扱いたいぐらいに立派なものだと思う。ただ、問題は、解説のほうにこの中身と少し抵触する部分がないとは言えない。かなり細かく踏み込んだ書き込みがある。解説の部分をどうするかということは後でご議論いただければと思っている。
委員長
わかりました。問題提起として受けとめておく。
・ 苦情処理窓口がどこであるかということは明確にわかった方がよろしいかと思う。自分が与えて、インフォームド・コンセントを撤回するとか、廃棄するとか、要するに自分の個人情報がもうなくなっているかとか、そういうことを確かめたい。そのような場合は苦情処理窓口のところに行けばよいとの理解でよいか。
事務局
そのとおりだと考えている。また、先ほどの解説との関係だが、考えている範囲では基本原則の解説と今回の指針に矛盾があるとは考えていない。基本原則の解説に書かれていない点に踏み込んでいる点はあると思う。

(基本的考え方について)

事務局より資料についての説明が行われた。

・ 最初の「個人の尊重」というのを、むしろ人間性の尊重とか、あるいは人間の尊厳の尊重とか、そういう種類の問題で、これはどんなに本人が承諾していて、そしてプライバシーが完全に守られたとしても、なおかつ尊重しなければならない部分があるのではないか。そういう意味で言ったので、「個人」というのはあんまり適切ではないかなという気がする。
事務局
1ページの下から4行目「本指針においては」というところで、人間性の尊重というのは、「人の尊厳及び人権の尊重」、これで読める範囲だとすれば、これを「人の尊厳及び人権の尊重と適正な研究の推進との両立を図るため」という目的規定で既に書かれている。ここの「個人の尊重」というところで書いたのは、3ページの3の(1)、「提供者個人の利益を科学的、社会的な利益に優先して配慮しなければならない」、こういうイメージでとらえて書いている。
・ それも確かに意味があることかと思うが、例えばもう少し具体的な話をすると、実はこの指針の中に入っていないが、既にいただいている検体というものを最大限に使うことによって、ある事柄についての研究が進めば、それについてもう二度と他の被験者から検体をいただく必要がなくなるというような意味で、既にいただいているものをオプティマルに利用しなければならないという規範が出てくると思っている。そういうような種類の事柄というのは、個人の問題ではなくて、細胞とかというもの自体に個人から離れても守らなければならない種類の事柄がある。これは目的に置いてもよいが、個々のルールを定める1つの基本的なプリンシプルではないかと思って、「基本」の中に入れていただくというのも意味があるのではないかと思っている。
委員長
そうしますと、1の「個人の尊重」をもう少し表現を変えるべきであると。
・ 変えたほうが、個人ということで含まれていない部分が含まれてくるのではないかと。それは人間性とか人間の尊厳とか、そういうことである。
委員長
わかりました。ご意見を事務局の方で検討させていただく。
・ 1ページの下にある5つの箇条書きは、3ページのIIの3の「すべての研究者等の基本的な責務」というところと全く同じなので、読んでいくと重複で書いてあるという印象が非常に強い。ここをとって3ページだけにしたほうがわかりやすいような気がします。
・ 1ページの下から4行目、「人の尊厳」とありますが、「人間の尊厳」の方がわかりやすいのかなと思う。
・ 既に採取されている試料を適切に使用して、最大限利用させていただくというのは、たしかMRC等々にも書かれている点と思う。「人間の尊厳の尊重」という言葉で、そこまで含めて言おうとされているのだと、わかりやすい指針を目指す立場としては、なかなか読み切れないと思う。
・ 基本原則の基本のプリンシプルというものですから、それが具体的にどういう形になるのかというのは、個々の規定の中に見ていくしかないとは思う。読み切れないというのはどういう意味でしょうか。
・ 今の言葉から一般の人が読んで想像できないのではないかと思う。もう一度考えさせていただこうと思う。
委員長
ご指摘の1から5をここの部分から取り除くというご提案に関して何かご意見があったらどうぞ。
・ 総論があって各論があると思っている。これが総論として出ているのであれば、このままでよろしいと思う。
事務局
「総論」は、「基本方針」の中の総論的な部分で、同じレベルで各論というわけではないが、研究実施に即しての留意点という別の側面から見た留意点という形で、記載してある。ただ、この「基本方針」自体という性格からして全体の総論であるとの理解である。
・ この「基本方針」から5つの項目を外して研究者の責務のほうに入れてしまうと、研究者の責務にだけ、4つないし5つのことがかかる形になってしまう。むしろこの考え方は「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」全体にかかる考え方だと思う。これはここに置かなければならないと思う。
・ やはり重複の印象が非常に強い。例えばヘルシンキ宣言の第1条の最初の部分が非常に重要なので、むしろこれが「総論」の中で強く出てもいいのではないかと思う。重複でない形をとっていただければよい。
委員長
ご指摘はよくわかりました。今のご指摘のように重複を避けるという意味で、もう少し文言その他をご検討いただければと思う。
・ ミレニアム指針が指針策定後も残るとした場合、例えば来年から企業においてはミレニアム・プロジェクトと連携して研究したり委託する場合があると思う。その場合はミレニアム指針に従った指針をつくった方がよいのか、それとも新しい指針を作った方がよいのか、どうでしょうか。
事務局
基本的に大きな違いはないと思う。それと、ミレニアム指針を廃止するかどうかという、先ほどお答えしたとおりなので、しばらくお時間をいただけるとありがたい。先ほどのご指摘のあった重複の問題と研究者だけではないのではないかという問題だが、ぜひこの場である程度ご議論願いたいと思っている。ご指摘の「研究者等」というのは、実は定義が後になっているのでわかりにくいと思う。すべてのプレーヤーが含まれた概念なので、それを「研究者等」というのがいいのかどうか。例えば「すべての研究に少しでも関与する方は」が誤解を避けるにはよいと思うが、調査する外部有識者まで含まれていることをご理解いただいた上でご議論願いたいと思う。
・ 申し上げたかったのは、この「基本方針」(総論)という形で、ここの4つないし5つに書かれているのは、この倫理指針全体の枠組みの基盤と申しますか、考え方を示している。研究者等に当然かかってくる。それ以外でもこの指針をお読みなった方はこういう考え方に基づいて指針が作られているということが理解される。その点は、まさに「総論」の2行目で「研究現場で守られ」、かつ「国民に理解されることを目的としている」ということ、これは非常に重要な点だと思う。ここで書かれるべき問題だと思う。それから、少しタイトルの書き方を変えれば印象が違うと思う。
・ 1の最後のところ、3ページの上のところですが、診療においては医師の責任において、関係学会等において作成される指針等を参考に適切な対応をということで文言を加えていただきまして、ありがとうございました。現在、福岡で日本人類遺伝学会が開催中で、遺伝医学関連の6学会の生命倫理審査委員会の委員長のシンポジウムというのが開かれました。そこでジェネティックテストについてのガイドライン、日本人類遺伝学会のをもとにして、そういう遺伝医学関連でまとめようという動きがある。ここに「関係学会等において作成される指針等を参考に」と言っても、どこを見てもわからないという方、学会員以外の方はわからないということがある。ぜひこのサプリメントとして最後に用語の解説の次に参考資料として掲載していただきたいと思う。
事務局
サプリメントとして入れるかどうかは、それが適切かどうかということを判断するという作業が入ってくる。パンフレット等に載せるということは考えていきたいと思っている。
・ 「基本方針」の1ページから2ページにかけての1から5、確かに3ページの1から5のところと意味上は重複するんですが、読む方としては、「基本方針」で書かれたところを見て簡単にわかる、3ページの方で説明をする。読む方もわかりやすいと思う。
・ 先ほどのことに関係するが、パンフレットというのは、気になって仕方がない。Webサイトとか何かそういうものを載せておいていただけると大変ありがたい。
事務局
付加的な情報ということでパンフレットと申し上げたわけで、みんなが見るところ、例えば厚生省のホームページに載せるとか、そういう場合に配慮させていただこうと思っている。
・ 「研究実施に即しての留意点」という2ページ目の(2)ですが、「本指針等を参考に」は違うと思う。「本指針等に従って」ということではないでしょうか。

(II 研究者等の責務 3〜6について)

事務局より資料についての説明が行われた。

・ 3ページの(3)の「すべての研究者等は」の次の段落、「すべての研究者等」はですが、「個人に関する情報の予期せぬ漏洩」、その次の「生命に重大な影響を与える遺伝情報の判明」の例示ですが、後でインフォームド・コンセントのところで本人が開示を希望している場合は原則として教える。本人が希望していない場合にも生命に重大な影響を与える場合には倫理審査委員会に図る、何かそういうふうな条項があると思うが、それとは別個にここに入れる必要性がどのくらいあるのか。「個人に関する情報の予期せぬ漏洩」と「試料等提供者の人権尊重の観点から重大な懸念」というところだけでよいと思う。
事務局
ここはいわゆる危機管理の観点であり、要は担当者が抱えていないで、何かそういう重大な事態が起きた場合には責任のある者に伝えて、組織として対応を図る、そういう観点で1つの例示である。
・ 本人にインフォームド・コンセントの範囲とか、あとは遺伝カウンセリングの問題とか本人に対してはなってくると思うが、それにプラスして研究実施機関の長に報告しなさいということを求めるということなのか。
事務局
研究を実際やっている方が責任者に、あるいは研究機関の長に報告しないことには、その次のステップ、すなわち開示を希望していたら開示するし、どうしても開示を求めないということであれば、拒否されるのであれば、それは開示しないという取り扱いは後で書いているが、そこにたどり着くまでに、個々の研究者がやるのではなくて、それは機関の長、研究責任者に上げて行うルートを示している。
・ 個人に関する情報の予期せぬ漏洩と並べるのが違和感があった。
・ 4ページ(3)の共同研究の取扱いに関する細則ですが、いろいろな施設が共同研究するに当たって、横のつながりを情報の交換をしてやっていこうという趣旨だったと思う。倫理審査委員会というのは非常に独自性がある。横の情報が流れても、1つの研究グループの中で、例えば10人が、10施設が研究を進めようと考えているときに、1つ、2つどうしても倫理審査委員会がノーと言うというようなことが起きてくる可能性がある。その時に、その研究自身、10集まっている研究自身が全く無意味だから、全体、やめてしまえということではなくて、その残りの8つで十分できるというような理解を持っている。倫理審査委員会の独自性ということを考えたときに、研究体制の確立と倫理審査委員会の独自性というものの結論と、その辺は一体どう理解していいか、問題を持っている。ノーと言われたところは除いて仕事をすればよいと考えている。
・ ここで共同研究と言っている場合、2つ含めて考えていると思う。1つは、同一の研究計画書に基づいて他施設が行う、例えば治験のようなもの。もう1つは、2つの研究機関で、やろうかというような形で進めるようなものが含まれると思う。ミレニアム指針では、2つの施設でやっても、10の施設でやってもそれぞれの研究機関の倫理審査委員会が、全体に共通する研究計画書を承認するという作業を一応求めていた。ただ、それを実際にやってみると、大変難しい、時期的な問題もある。後から加わる場合、どうするのという問題もある。それを、多施設の場合と、1対1のようなものも全部含めて、こういう文言で書いている。ここに書いてある基本は、研究計画書そのものの審査までは多分求めていなくて、必要な事項はもう1カ所の方でよく審査をする、そういう形で文言が押さえられている。
・ 10で始まったときに、2つが出発できなくても8つで出発すればよろしい、そういう理解になるが。
・ それは今広く行われているとおりで、ある研究計画書が1施設でノーと言われれば、その施設は当然できないということでよいのではないか。
・ すべての研究機関においての倫理審査委員会の審査を通らないとなると、かなりの研究者が影響を受ける。研究の主たるところというのは必ずあるわけで、主任研究者、そこの研究の主たる責任を持つ人、そこの所属機関では十分審査を行っていただく、倫理審査委員会の審査を行って、その結果を、その他の共同研究施設での倫理審査委員会には承認を求めるという形で、2段階ぐらいにしておいていただいたほうが円滑に進むと思う。
事務局
それぞれの機関にある倫理審査委員会というのは、独立して、独自にやはり審査をいただくと考える。いくらそれが共同研究計画であろうと、それは機関の責任、機関の倫理審査委員会の責任を発揮していただくためには、他が認めたから認めた、他が認めないから認めないという判断ではなくて、それぞれの機関が独自に判断いただくのが基本と考える。例えば10の機関でやるという計画をつくった際に、8つの機関しか認めないということであれば、その8つの機関で実施することが適当であるか、適当でないかというのは、研究者間の情報交換というのがあるだろうが、独自の独立した審査というのがあってしかるべきではないかと考える。
委員長
複数の研究機関が共同で作業を進める場合に、それぞれの倫理審査委員会で認められる場合と認められない場合があって当然ではないかと思う。主に研究を指導する倫理審査委員会で承認されたからといって、他の委員会がそれに従うとかというのは、あるいはそれを参考にして審議をするというのは、なかなか難しいような感じを受ける。
・ これは倫理委員の教育とか訓練とかというものにもかかわってくると思うが、倫理審査の中に、基本的に客観的な部分と、それとその施設に特殊な部分というのが、考え方としては分けて考えるべきで、前者については、基本的には、共通の審査というのがあってよいように思う。実際にどういうふうにやるかは大変難しいことだとは思う。英国では、これは5年間も大論争をやって、マルチセンターの研究については独立の機関を設けるというようなことをやっている。
委員長
複数の研究機関の真ん中に別な倫理審査委員会を設けて、それが全体を議論するという解決法を図ったということですか。
・ その共同研究の取扱いに関する細則の、そのすぐ上のところに倫理審査委員会の設置に関する細則の2というのがあるが、試料等の提供が行われる機関が小規模であること等により倫理審査委員会の設置が困難である場合は、そのほかの倫理審査委員会を活用できるというふうに書いてある。情報公開の原則というのは、一度倫理審査委員会の承認を得るということで、その全体の研究計画というのは公になる。承認を得るわけですから、それを認めていただきたい。それぞれ個々に共同研究すべてにわたって倫理審査委員会にかけなければいけないとなると、実務をやる人はほんとうに大変になる。最低限これだけは守らないといけないというのがこの指針であるならば、この研究計画は、どこかで一度は承認を得ておかなければいけない、これは確かにそうであるが、過度の負担を現場の機関に押しつけることになると思う。
・ 例えば、特に多施設共同研究がこれから多く行われると思う。各施設でそれぞれに修正を求められると、全体の研究がなかなか進まない。基本的には主任研究者がいると思うので、そこで大きな審査をしていただいて、それに基づいて、各施設が審査をするというのがよいと思う。
・ これからコンソーシアムという形で、実際に随分ミレニアム・プロジェクトでも立ち上がってきている。この指針でどう言うかがかなり影響を及ぼすので、積極的に考えていただきたい。
・ 昨日、コンソーシアムでこの問題に直面している。やはり中心となるのをつくったほうがうまく進むと思う。つまり、否定するとか何かだったら、そこを除けばよいが、ごく細かいニュアンスの違いがあったときに、それを修正するのは非常に大変だと思う。
・ 現場では主任とかいらっしゃるので、そのほうがスムーズだと思う。気になる点は、4ページ(1)のところの、研究計画に反した場合の懲戒処分になる不利益処分が担保手段としてあって、それが研究実施機関のそれぞれの長だということで、そこの連携がうまくとれるような仕組みをとれば問題はないかと思う。
・ 一律に承認してもらうというのでは、それぞれの機関の独自性というか、責任が果たせないと思うので、場合によっては、事情に応じたモディフィケーションをつけるという権利は保留したいと思う。
・ 例えば研究の主任者がいるところで、まず倫理審査委員会を通って承認をしてもらう。その承認された研究計画をもう一度各施設の倫理審査委員会におろすという形になるのか。その場合に、承認を求めるというのは、ある施設において、いや、これでは承認できないと言われたら、その施設は参加できない、もしくは修正が求められたら、そこの部分は修正するという、そういうことも含んで承認を求めるのか。
・ 具体的なイメージを深く考えているわけではない。議論の中心というのは、ほとんど同じだろうと思う。そのポイントにつては、あちらの倫理審査委員会でどういう審議が行われて、こうこうこうだから認められたんだというようなところを別の倫理審査委員会にも参考にしていただく、そうすると、非常に円滑に進むのではないかという意見である。
・ 大きな研究計画の中心的な部分を、研究主任者がおられるところで一応承認をいただいて、その結果が、各それぞれ、研究分担をしている施設に送られて、そこでも、もう一回倫理審査委員会は通るわけです。その場合に、中心的な部分については、その主任の研究者かおられるところで承認されましたという情報は確実に流れ、これがその趣旨だと理解している。各研究施設で、分担研究施設でもう一度倫理審査委員会をやって、その分担研究施設に関連する部分については、やはり研究計画の是非は判断する、場合によっては修正を求める、これは留保されている必要があると思う。
・ 実際にやってみますと、中心的な実務をする委員会が先にやるとは限らない。日程調整をして、早く決まったほうが早く行ってしまう。小さいところの日程が早く、そこがプライオリティーをとってしまう可能性があると思う。非常に難しい問題が出てくると思う。
・ ここに「原則であり」と書いてあるが、原則でなくてもよいと読んでよいのか。
事務局
ここで原則とあるのは、研究実施機関の長は、倫理審査委員会を自分のところに設置しなければいけないというのが、その3番目のところの原則である。2のところで、困難な場合には共同研究機関によって設置された委員会を活用することができることがあるので、自分のところに、設置が困難で設置されてなくて、その場合に共同研究機関の倫理審査委員会の審査によることができると、そういう場面があるので、こういう言い方をしている。倫理審査委員会がそれぞれありながら、そこの審査をしないで、他のところが審査すればよいという意味では考えてはいない。
・ この文章でどこが具体的に悪いかよくわからない。
・ 研究計画というのは、一度通ればよいのではないか。それぞれの研究機関での特殊な事情はもちろん審議しなければいけないが、研究の目的ですとか、研究の方法、おおよそのところは、一度審査を受けていれば、それは倫理的に認められるのではないかということである。それぞれ同じような審議を各医療機関で、10施設なら10施設でやらなければいけないというのは、これは現場に過度の負担をかけることになると思っている。
・ 全く独立してやるべきだと、ここに全然書いてなくて、承認を得るべきだと書いてある。どこかの倫理審査委員会の議論は、その次のところに入っていますから、完璧独立してということはあり得ないように思う。この承認という言葉が、もしそう読めないのであれば、何か別な言葉に変えればよいと思う。最終的に個々の施設の倫理審査委員会は独立してあるべきだと思う。
委員長
「承認を得るのが原則である」の部分が、わかりにくいということなのでしょうか。
事務局
最終的に個々の審査委員会というのは、やはり独自の審査という立場を貫いているということから言うと、あまり他の審査の情報を新しくやるところに入れるまでが精いっぱい、参考になるということだろうと思う。その倫理審査委員会を束縛することはできないと考えている。
委員長
各施設における倫理審査委員会は独立のもので、ただ、主な倫理審査委員会で承認された内容を情報として伝えるという程度にとどめる。それぞれの施設で細かな修正、その他はあり得る。
・ 1つの研究計画についてのコアの部分はどこかの研究機関の倫理審査委員会でやればいいと、そこはわからないではないが、共同研究の場合であっても、共同研究に参加される研究者というのは、分担研究機関のうちの一部である可能性が大きい。そこの分担研究機関の倫理審査委員会では、この研究については認めないという可能性もあり得る。これは共同研究でなくても、中身はほとんど同じような研究である、もしくは、ターゲットにしている遺伝子がほとんどみんな同じ研究であると、研究の仕方もよく似ていると、その場合に共同研究でなくて、個別に研究をする場合に、各研究機関で倫理審査委員会を通らないといけない。だから、ある研究機関の倫理審査委員会はゴーサインを出したけれども、こちらでは出さないということも大いにあり得る。それはもう仕方がない。そういう形で倫理審査委員会の独立性が保たれて、もちろんできれば統一したほうが将来的にはよいと思うが、そこは透明性を確保するということで、どちらの審査委員会の審査の結果の方がより合理的、もしくはより妥当であったかという判断が一般的に広まっていくという形にしかならないと思う。そこまで、どこか1カ所でやってしまえばいいという形にまとめてしまうのは、やはり倫理審査委員会の存在そのものの意義が少なくなると思う。
・ 主任研究者の所属する機関の審査委員会が重要と思う。その研究全体に対する責任がある。そこを中心に決め、しっかり調べるということは、絶対大事なことだと思う。
・ 時期的に問題であるから、そのことを明文で入れてみたらどうかと思う。機関の審査がほんとうにしたのかなと思うほど雑な審査をしているということもある。そういうことを明記すると、責任者のいる機関の倫理審査というのが、ほかの倫理審査委員会でもう一回レビューされるんだというようなことにもなってくるかと思うので、もとの機関がきちんとした倫理審査をしてくれることになると思う。そういうのを明文で入れるのはどうだろうか。
・ 研究者という現場のほうの立場から、国の研究費が来るのは遅く、課題が決まるのもすごく遅い。それで、年度計画でやらなければならない。それで、2つの倫理審査委員会を直列にやろうと思ったら、多分その年度内には研究はスタートしないということになりかねない。そういう現実も考えていただいて、何かうまい妥協案をいただけると、現場は大変ありがたいと思う。
・ 後の方に出てくるが、迅速審査手続という項目がある。今のご意見を踏まえて、主任研究者のいる施設で必ずやる、基本的なところはしっかり見る、そのメーンのところの議論、どういう問題があってどうなったかということを、その分担研究者のところに返して、そういうことを迅速審査手続でもやれるというような形にすると、時間的な問題はかなりクリアできると思う。それが承認という独自性という問題とどうかかわり合ってくるかという点は、少し議論が要ると思う。今回の指針では、その迅速審査手続の範囲をミレニアムのようには厳しくはとってないという面がある。
・ この迅速審査手続によることのできるものというのは、8ページの真ん中からちょっと下にありますけれど、その中に、研究計画の軽微な変更、2番目が、既に承認されている研究計画に準じて類型化されるということ。3番目に、他施設の倫理審査委員会で認められた研究というのを加えていただけると大変ありがたい。
・ 迅速審査は、例えば試料の利用については迅速審査は認めないというものがあったと思う。共同研究の場合に、主任研究者のいるところで承認されれば、迅速審査というのは1名の委員の審査で承認ということが可能であったと思う。主任研究者のところで承認を得られればというのは、もう少し慎重にお考えいただきたいと思う。
委員長
多施設共同研究の場合には、主任研究者の施設で倫理審査が行われて、個々の倫理審査委員会は独立のものであるけれども、それぞれの施設で細かな修正とか、その他が加えられる可能性はある。否定された場合には、その施設はその研究には加わらないというような整理で、ご議論のありました迅速審査は後ほど議論が出てくると思いますので、ここはそこまでの整理にさせていただきたいと思う。
・ 個人識別情報管理者と、それから匿名化の話になりますが、この個人識別情報管理者が匿名化をするという、その表現がよく理解できない。匿名化というのは、概念的にはおわかりかと思いますが、実際上は、サンプルをおそらく新しいラベル、番号をつけた試験管に移すことも含めて匿名化だと思われる。そうでないと、本来は匿名化にならないわけである。その場合に、どういうサンプルを選ぶかというのは、やはり研究者でないと選べるはずがないわけで、ある条件を満たすサンプルをとるわけですから、確かにそれを後で連結可能なような匿名化の場合に、その対応表を自分で研究者が持っているということは、今の時代、あり得ないことになっている。だれかが管理していただくのは結構だと思う。そういう意味で、この個人識別情報管理者が適切だろうと思う。ただ、その方がこの最後の用語の説明の中に、この方が匿名化をするというのがよくわからない。研究者が実際の患者さんの名前と、付けた番号、それを対応させた表を、それをさらに別な番号をつけるということも含めて匿名化だという意見もあったように記憶しているが、これはとんでもないのではないかと思う。なぜかといいますと、匿名化をする理屈の1つは、確かに個人情報をわからないようにするということはあるが、もう1つは、研究の成果、結果をバリッドなものにするということが一方である。つまり、ブラインドで調べて、きちんとした結果が出れば、こんな強いものはない。サンプルのバリディティーを落とすことは明らかなわけで、もう一度数字を入れかえるということは、こういう遺伝子の検索の場合に、特に個人との連結が可能な場合は、いずれまたどこかで連結がされるわけですから、誤りということは許されないと思う。間違いを起こさないということは、これは診療の場面では当然ですが、どうも個人識別情報管理者を置くということはいいんですけれども、その方が匿名化をするということに関して納得できない。
委員長
一番の危惧は、間違いがそこに加わってくる可能性があるからということですね。
・ それでは、だれが匿名化するのが最もよろしいとお考えか。
・ 匿名化は研究者が自分の責任においてやって、その対応表を第三者に預けて封印しておくことである。
・ 私どもの施設のことをご紹介申し上げたいんですが、匿名化のためのソフトができ上がってきまして、これを使おうかという段階に来ている。個人情報管理者というのはだれかというと、私どもの副委員長がやるということになっている。その副委員長がすべての匿名化操作ができるかというと、なかなか難しい面が実際にある。実際にやってみますと、やはり管理者というのは管理をするというところに重点がいってしまう。その匿名化の作業自身は、採血した主治医がその操作をせざるを得ないと考えている。個人情報管理者の補助者を置くという旨が出てきますが、その補助者は研究者であってはまずいのか。
事務局
研究者は想定していない。派遣職員であるとか、非常勤の職員であるとか、あるいは事務作業員であるとかいう方々が実質上、匿名化作業をやるというのを考えている。
・ 匿名化の中に2種類ある。連結可能型と非連結可能型と2つある。連結可能型の場合は、主治医がやるのがよいと考えている。これはもちろん監督されなくてはいけない。連結不可能型の匿名化は、監督者自身がやらざるを得ないと考えている。
・ 連結不可能の場合も問題でして、ストックがたくさんある、2,000、3,000あるサンプルの中からどれを選んで匿名化をして、連結不可能の匿名化をして、そのサンプルとするかという選定というのがある。それは研究者でなければできない。それともう1つ、第三者をそこに複数加えていくということは、どんどん個人情報が漏れていくということである。個人の名前のついた情報を他の方々にどんどん見せていくということになるわけで、それにかかわった方々は思慮もあるだろうとは思うが、少なくとも管理者にきちんと管理していただければ、何の問題があるのかよくわからない。
・ 私どもの場合には、研究者が匿名化をするのではなくて、その患者さんを受け持った、あるいは実際に採血したり何かする現場の主治医が匿名化をする責任を持つ。研究者は匿名化されたものをもらうということなので、私どもは研究所の人間でありますので、臨床と研究というのは非常にはっきり分けられるのでそういうふうに考えている。主治医と研究者が一体化した場合では、少し違うと思う。
・ これは共通指針ですから、なるべく広い範囲の方々に適用できなければいけないと思う。研究と診療とがはっきり分かれているところばかりでないわけでして、私どものところは両方やっている。そういうところも対象にして考えていただかないとならないので、管理者が匿名化をするという表現だけは何とかしていただきたい。
・ 研究を行うときは匿名化して行う。個人識別情報がある部分は個人識別情報管理者が明確に管理するということだけが守られれば、研究者が匿名化して個人識別情報を預けるという形になる。個人識別情報管理者あるいは研究機関の長が、明確にそこに個人識別情報が残っていないかどうか、つまり、匿名化作業が明確に行われているかどうかを監督する必要はあるとは思う。この文章は確かに、個人識別情報管理者が必ず匿名化しなければいけないというのがきついのかもしれない。
・ 企業においては、個人識別情報管理者を置くと思いますが、実際やるのは、現実的にはシステム管理者とか、そういう担当者がやる可能性がある。そういう点で、先ほど言われた補助みたいなシステム管理者も入れていただけるかどうか。
委員長
管理者の下に補助をする人を想定されているわけですね。
事務局
今回、分担管理者という概念を打ち立てている。
事務局
それでは、例えば7ページの6(1)を、研究責任者からの依頼に基づき匿名化しなければならないと、また、研究者を匿名化した場合にあっては、その匿名化状況が適正に行われたことを確認しなければならないというような形にする方向で考えてよいか。
・ この2行は残るのか。
事務局
1つの考え方として、これを基本軸にしておいて、ケース分けをして、研究者が匿名化をする場合にあっては、識別情報管理者はその匿名化の状況を管理チェックしなければならないとかいうようなケース分けをするというのが1つの考え方としてある。
・ 基本的に結構だと思う。
・ 5ページの5の(2)、ここだけ「研究計画書は」という主語で始まっていて、他は「研究責任者は」と書いてある。研究計画書は多分研究責任者がつくることになっていると思うので、ここも「研究責任者は」ということだと思う。
・ 6ページ一番下の(8)の部分も、先ほどの例に沿ってちょっと表現を考えていただきたい。
・ 4ページの下から9行目のところで、研究実施機関の長の責務として、実地調査を行うことなど実施状況の把握がある。2ページ先の6ページのところに、研究責任者の責務の(4)「研究責任者は、研究の実施状況について研究実施機関の長に定期的に報告をしなければならない」とある。ミレニアム指針では、この両者はまとまって規定されていた。この共通指針では分かれている。両方とも、承認された研究が実施に移されて、その実施が適正であるかどうかを監視するための仕組みだろうと思う。その両者の関係をわかりやすくするにはまとめておいた方がよいと思う。それから、「定期的に」というのが両方ともある。やはり1年に1回というぐらいの明確さが必要と思う。6ページの4番の研究責任者が実施機関の長に定期的に報告するという報告事項ですが、細則の方で、この1が試料等の数、それから2が外部への提供、3がヒトゲノム解析研究が行われた試料等の数と。1番目と3番目が、どのように理解するのかわからない。それから、4番目が問題発生の有無、これがあるなら、逆に研究で得られた成果もあってよいと思う。最後が匿名化を行った試料の数で、順番を少しお考えいただきたい。一番上のものと3番目のものがまとめて記載できると考える。匿名化がその次に来るのではないかと思う。あるいは、成果が来て、4番目にある問題状況の発生があって、最後に外部機関への資料の提供があるのか、それとも、外部機関への資料の提供がルールとして想定されているのであれば、今言った順序とは違うのかと考える。研究の実際の流れに照らして順序を整理していただきたい。その次の5ですが、これは新たな規定で、先ほど説明していただいたところですが、個人識別情報管理者というのは実施機関に置かれますので、個人識別情報管理者にその資料を渡すのは、研究責任者ではなくて、実施機関の長というのが組織のあるべき姿であると思う。研究責任者が実施機関の長に報告等を出し、実施機関の長がその写しを個人識別情報管理者に送付するということになると思う。
事務局
基本的に再整理をさせていただきたいと思う。最初の外部者調査の件は、長の方がそういうことをしなければいけない責務として整理しているものだが、わかりにくい面もあるので、整理したいと思う。最初の試料等の数というのは、提供された試料等の数の意味でして、その中でどれだけ研究が行われたかということである。わかりにくく、再整理をさせていただく。5番目の研究実施機関の長の件だが、研究責任者が長に出すので、長でまとめてやるよりは、研究責任者が先に出したほうが時間的に早いと考えたものだが、指摘のとおり修文したい。
・ 個人識別情報管理者のところで、研究者であれ主治医であれ、採血し、研究者が匿名化した場合に、それを解析するという状況が次に生まれると思う。解析をする人は、自分が特に患者の氏名、だれの検体を分析しているということはわからないという想定であるか。
・ わからないようにしている。
・ その検体、試料の数が少ないときに、それは事実上わかってしまうという危惧はないのか。
・ 各研究施設の状況によると思う。
事務局
「定期報告」あるいは「有識者のチェック」というのを「定期的」と変えておりますのは、機関の長、あるいは倫理審査委員会の意向等を踏まえて各施設自立的に決めていただいてよろしいのではないかと考えたから。先程、少なくとも1年に1回という話が出ていた。それでよいか。
・ 「定期的に」でよいのではないかと思う。
・ 定期的な報告については、研究成果とは関係がないと思う。4ページの(4)の定期的な実地調査についても、研究成果がどうなっているかということが重要なのか。実地調査であれば、どれほど研究成果が出ているかどうかという問題がどの程度重みを持っているのか。
・ 例えば大学では色々な研究が走っている。外部の人に、それに応じた人数を頼まなければならない。
・ 委員が固定して数名任命されるというイメージではないかと思う。定期的な報告の方は、年に1回、お願いしたいと思う。最近は内部評価、外部評価で、年に1回、あるいはもう少し頻度は落ちるかもしれませんが、報告書を出すようになりつつあると思う。
・ 数名とおっしゃいましたけれども、少なくとも1名、とてもこういう役割を数名やる機関が確保できるとは思えない。
・ 私どもの施設の経験ですが、これは内部委員でやっているので違うが、年に1回ぐらいだったら何とかできる。内容は在庫調べである。いただいた血液が目的に従って何cc使われて、何cc残っているかというような台帳が全部そろっていて、それを審査する。そして、冷蔵庫をあけて、実際にそのものがそこにあるかないかを調べる。その程度であれば、どこの会社でも、上半期、下半期にそれぞれ在庫調べ位行っている。結構大変であるが、きちんと使われているということがよくわかる。
委員長
今のご議論を聞いていると、定期的ということ位でくくっておいて、少し膨らみを持たせるということでいかがでしょうか。

(II 研究者等の責務 7「倫理審査委員会の責務及び構成」について)

事務局より資料についての説明が行われた。

・ 8ページ(3)の細則のところですが、「市民の立場の者」というのがあるが、これをつくられた方はどういうイメージで書かれたのか。
事務局
「市民の立場」という表現がいいのかどうかわからないし、「常識人」というと、また常識人をどう判定するのかと言われると思うが、一般的な考え方を有している普通の人というのをこれであらわしている。
・ 有識者は「市民の立場の者」にはならないのか。
事務局
人文・社会科学面の有識者と自然科学面の有識者と市民の立場という3つの構成者を考えている。半数以上置くことが望ましいというのは外部委員でくくっている。また外部委員の半数以上は人文・社会科学面の有識者または市民の立場という形で区切っている。3つの立場を想定していることをご了解いただきたい。
・ 外部委員を半数置くことが望ましいのかどうか、あるいはそれ以上でなければならないかという問題です。遺伝子の情報というのは非常に大事で、個人を傷つける場合もあるということは事実であるけれども、現場では、例えば治験委員会、薬にかかわる委員会、あるいは新しい医療の開発にかかわる、場合によってはほんとうに検査の対象になった方々が命を落とすかもしれないような、そんな重要なことの判断をしなければいけない委員会は複数の外部委員で構成されている。そういう状況の中で、この委員会だけが半数以上外部委員にしなければいけないということが納得できない。なぜ複数以上であってはいけないで、半数以上いなければいけないのかは疑問に思っている。
事務局
ミレニアム指針を議論したときのことを考えると、1つには、運営方法で、多数決でいくのか、それとも全員一致でいくのかということがまず議論されて、全員一致というのはおかしいのではなかろうか。必ずしもそこを一律的に、例えば指針の中で、全員一致と書くのはおかしいのではないだろうかというような議論があった。あまりに比率が少ないと、外部の方々は実質上、発言できない雰囲気というのが実態としてあると聞いている。それらのことを考え、ミレニアム指針のとき、半数というのを考えたわけである。前回出したたたき台では、「半数原則」ということで、「少なくとも複数」という整理で出したが、「原則」、「少なくとも」という整理というのが現状に合わないところもあって、今回、「望ましい」、「少なくとも」という整理にしたわけである。
・ 大体わかりました。この中から3つ選べと言われたら真ん中を選ぶが、つまり、外部委員を半数以上置くことが望ましいが、その確保が云々ということにせざるを得ない。むしろ複数の外部の委員の方々から貴重なご意見をいただいたときに、それを多数決でではなくて、疑問なんですから、それは出されたご意見は解決しなければ、それが通らないような形を本来の姿だとすべきだと私は思っている。
委員長
ご指摘されたことは、こういう倫理審査委員会の本質の問題だと思う。
・ 外部の委員が十分その委員会の中に参加していないと、科学者の考える非常に狭いというか、熱心な意見と社会一般が考える考え方のディスクレパンシーというのはそこに出てこないと思う。真ん中の複数名というのも結構だと思うが、できるだけ半数以上の方が外部から来ていただくことが必要であると思う。 倫理審査委員会というのがそこの施設長の諮問機関という格好になっている。そうじゃないところも多分日本中にはあるのかもしれないけれども、そういうところも大変多い。そういうことになると、やはり外部の方の意見を十分に入れられるようなシステムというのは絶対的に必要ではないかと考える。
・ ミレニアム指針には、倫理審査委員会をその規則にのっとるような形でリバイズしていいと。ですから、別の下部組織をつくって、外部委員が過半数になるような小委員会をつくってもいいということがあったと思う。文部省からの通達があってから各国立大学でそういう動きがあって、私のいる大学でも強く要望して、下部の遺伝子解析専門倫理審査委員会というのをつくった。ここで見ますと、何もそんなものをつくらなくたって、2名、外部委員がいるのだから、今のままでよかったのにというふうに言われかねないので、できるだけ外部の人を半数いるような形を尊重すべきであるというような文言を入れていただけるとありがたい。
・ ミレニアム指針には、前にいたスタッフ、職員である人は、やめて5年以内にはというのとか、外部の規制がかなり厳しく書いてあったが、これは外されていると考えてよいのか。それから、同じ大学でも、例えば法学部は外部とみなしているのか。
事務局
外部のことだが、基本的には、我々としては、5年ぐらいが1つのめどになるんだろうと考えている。これは今回の指針の中でも、委員の所属だとか、氏名を公表することになっているのである面において社会的批判にさらすということである。それは各機関の判断だろうと考える。1つのめどというのは5年であると考えている。また、医学部と法学部の関係をどう考えるのかというであるが、外部ということで考えている。医薬品のGCPの中でもそういう整理になっている。半数が望ましいというのは、ここの検討会の意見としては、望ましいということで表現させていただいている。
・ この倫理審査委員会の委員の方も、場合によっては個人の情報に接すると思う。その漏洩の担保という制度的な仕組みというのは、規定の中にどこかに入っているのか。
事務局
3ページの3番、II、3「すべての研究者等の基本的な責務」の中に、(3)で読もうと考えているが、確かに読みづらいというのがあるので、もう1つ工夫させていただこうと思う。
・ 同じ(3)の最初の細則で、3種類のグループの中から1人ずつを選んで、その方々から構成されなければならないと書いてある。ここで3人いないといけないということになりますか。2番目の少なくとも複数名というのはちょっと合わなくなる。
事務局
非常に小さな構成で考えれば、外部委員については2人ということ。ですから、外部委員が仮に3者のどれかに当たれば3人のうち2人。
委員長
それでは、いろいろご議論いただきましたけれども、「望ましい」が「少なくとも」ということでよろしいでしょうか。
・ 誤解を生むところかと思うが、7(2)議事の公開の部分ですが、「組織に関する細則」、「運営規則に関する細則」、その後で「議事内容の公開に関する細則」となっている。そうすると、組織及び運営規則で何を公開するかというのは、細則では必ずしもはっきりしないように思う。これは統一された方がよい。
事務局
整理させていただく。
・ 例えばB群試料、C群試料を改めて再同意をとることなく研究に利用する場合、特にB群、C群にそういう場合に定められた要件が満たされていることが倫理審査委員会で確認される、あるいは承認されるということが必要なっている。倫理審査委員会の特別の承認、すべて研究は倫理審査委員会の承認を得なければないのですが、特別の事項について、改めて承認が必要とされているような事項を含む研究計画は迅速審査手続にはなじまないのではないかという意見、これは作業委員会のメーリングリストにもあったんですけれども、それを含めていただきたいと思う。迅速審査手続によることができる研究について、もう少し幅を広げてもよいと思う。危険度の極めて小さい研究であれば1名ないし数名の委員で審査をして、オーケーを出して、あと全体の倫理審査委員会に報告をして、そこで異論が出なければ研究計画を実施に移してもいいと考える。
・ 危険度が少ないというのはどういう主旨か。
・ 難しいですが、遺伝子解析研究の場合、身体的危険はあまり大きくないということで、社会的な危険、感情的な不利益というのが考えられると思う。あるいは差別の可能性。しかし、日常的な病気であれば、その病気の原因となる遺伝子変異をある人が持っているということがわかっても、差別あるいは不利益が本人あるいは血縁者に及ばないという場合があり得る。遺伝子解析研究は影響の大きいものだから、危険が小さいというのはないのかもしれないとも思うが、その余地は認めておく方がよいと考える。
・ 社会的危険度が高いかどうかというのをどこが判断するかという問題がある。仮にありふれた病気であっても、その人がその病気の遺伝子を持っているということがわかることによって、一般的にはそういう差別はないと思われていても、現実にはあり得る可能性が少しでもあるとすれば、それはやはり危険があると考える。その危険度があるかないかというのも、迅速審査で例えば1名の審査委員に任せてしまうことが妥当かというのは疑問に思う。
・ 審査自体は当初、1名の審査委員で任せるのが迅速審査で、おっしゃるとおりですが、その後、報告を書面で全委員に回すという体制がとられると思う。その限度が最小限でないというふうに考える委員がいれば、改めて全体会に持ってくる。その基本的な枠組みというのは、最初、迅速審査に回すかどうかは倫理審査委員会の委員長の判断ということになると思う。委員長の執権にかかるということで、その委員長の判断にどこまでゆだねるかの政策の問題だろうと思う。
委員長
危険性ということを議論され始めますと難しい問題になる。ここに書いてありますように、研究計画の軽微な変更と既に承認されている研究計画といった計画されている研究計画の承認という、この2つに限定しておいたほうがよいと思う。先程の多施設共同研究における主任研究者のいる研究機関で決定した内容を各分担研究機関での倫理審査委員会で採用する場合の細かな修正その他をここで審査するという、その3つにするということでよろしいでしょうか。
・ この迅速、下部組織に委託するというのを、権限を明示しておいた方がよいと思う。
事務局
ここの考え方は、迅速審査手続をどうするかということを委員会で決める。その決めた決定というのは文章の中に、例えば委員長が見て決めるとか、そんなような中身を、そのことを含めて委員会で決めたらどうかというイメージである。
事務局
先程のこれはだめということを書くというのはいかがでしょうか。
・ やはりこれは絶対だめといって置いてしまうと、他のはよいという話にどうしても読まれがちになる。原則として通常の倫理審査委員会の審査を通るということを貫いた方がよいと思う。
・ これは絶対だめよも迅速審査にかかる、その可能性が残る。それをこの場所でしておくことが、今のようなインプリケーションを伴うのであればどこかに書いておく。例えば先ほど言いましたB群試料、C群試料を合意なく、再同意を取得することなくとる場合に、再同意なく研究に利用することが認められるという個々の規定のところに、それは迅速審査ではだめというふうに個別的に挙げておくというのも1つのあり方かと思う。
委員長
ご検討ください。

(III 試料提供者に対する基本姿勢 8〜10について)
事務局より資料についての説明が行われた。

・ 未成年者16歳、これはよくわかったが、16歳以上のどこまでを未成年者というのかというのは、この前、ご議論があったと思うが、それは何歳ですか。18歳ですか、20歳ですか。
事務局
通常20歳と思う。
・ 20歳と書いておいていただいた方がわかりいいというのは、参政権は20歳だったですか。だけど、18歳でどうとかというのもたしかあったような気もする。だから、子供を扱っている場合には、その2年というのは大変大きいので、どっちかにしておいていただいた方がありがたい。
事務局
定義で書かせていただくことは可能かと思う。
・ 11ページの (2)遺伝情報の非開示に関する細則の中で、そのような事態が発生したときに、十分な説明を行った上で開示に踏み切ろうということだと思う。十分な説明自身が、それこそ開示になってしまうのではないかと、これを読んで思った。それだったら、こういう検査をもう一遍やり直そうと言った方がすっきりしてよいと思う。
事務局
ご指摘のとおり、現場は苦労すると思いつつ、開示を希望しない人には、開示しないという主旨を貫くために、こういう形になっている。その一環として、検査しましょうか、いや、検査はいいですということも当然あるんだろうとは思う。
・ 本人に対する開示の件ですが、最初に開示をしていただかなくて結構だと本人が言ったと。それで研究が始まった。研究者は、開示をしない前提で研究が行われて、しかし、途中で開示してほしいと本人が言われたときに、原則は開示することになっているのですが、最初の提供のときには開示をしないという条件で提供が行われている。その条件を途中で変更することによって、研究に何らかの支障が出るということはありますか。なければ、いつ開示を求めてもいいという形になるとは思う。医療契約ではないが、研究契約に近いような考え方である。
・ ご指摘のとおりかなり混乱すると思う。結局、問題なのは、最初の原則では匿名化して行うと記載しておきながら、ここで開示を求められたときには開示するという、これは矛盾です。問題となるのは、連結不可能匿名化の場合には、これは開示できないので適用にはならない。連結可能匿名化の場合に個々の資料等の遺伝情報が明らかとなるものに入るかどうか。入るかなと思うが、そうすると、かなり現場は混乱すると思う。遺伝情報、あなたはATGCでしたと、それだけ開示すれば、ほんとうに研究者の役割が果たせるかどうかということである。医学的な意味がない、そういう遺伝情報を開示するということにどれだけの意味があるかと思うので、それはやはり、評価の定まっていない情報を伝えるということほど無責任なことはないと思っている。
・ 後のほうの問題は、遺伝情報は本人のものなので、本人に役に立つか立たないかにかかわらず、意味があるかないかは本人が判断をする、それが原則だと思う。
・ 研究者の努力があって明らかになった情報です。両方のものだと思っている。会社に投資をするときにも、お金を預けてもうけますよね、会社が。配当金というのはもらうけれども、全部をもらうわけではない。投資をした人が元手を出したんだから、もうけも全部よこせとは言わない。遺伝情報の開示についても、全部提供者のものとは思わない。法律的にはどうなのかわからない。そういう考えは成り立たないか。
・ 遺伝性疾患についてですが、例えば10ページの下から3分の1ぐらいのところに、遺伝性疾患等の場合に関する細則というのがありまして、12ページにも、カウンセリングについて、重篤な遺伝性疾患等に関する細則、12ページの例文、これはどこかで少しまとめられないか。
事務局
10ページ、これは9ページの (7)を受けており、9ページの (7)で、必要に応じて遺伝カウンセリングを実施しなければならないということになっている。この「必要に応じて」の解釈の問題、その解釈の手がかりになるのが、先ほどの重篤な遺伝性疾患のところは、実施しなければならないとなっている。この重篤な疾患に関しては実施しなければいけないが、それ以外でもしなければいけないのがあるのではないかという意味で、より広くなっているところである。
事務局
10ページの真ん中にある遺伝性疾患というのは要らないのではないか。「必要に応じて」のところを定義しているわけでも何でもないから、要らないのではないかというのが1つ。それからもう一つは、括弧書きになっているけれども、12ページの重篤な遺伝性疾患のところの、治療または予防法が確立していない遺伝性疾患というところが、確かに遺伝性疾患で治療法も予防法もないけれども、元気にしている遺伝性疾患があると聞いている。そういう意味から言うと、要らないのではないか。遺伝性疾患で治療法も予防法もないが、健康を維持する上では害がないという疾患があるやに聞いているのでいかがなものか。
・ 遺伝性疾患という言葉の問題だと思う。かなり体質に近いようなものまで含めて考えると、こういうものがたくさんあると思う。一番上に致死的な遺伝性疾患とあるが、この項目と3番目の括弧で入っているものは、多分合体できるのではないかと考える。
・ 3番目の括弧に入っているものこそ、ここに入れていただきたい。「重篤な」と言ったつもりはないが、その範囲で考えなければいけないが、大人で発病してどんどん悪くなっていく変成疾患というのは、大体こうなわけである。治療または予防法が確立しておりませんから、そういう方々に、カウンセリングなしで診断をつけるためにとか言って、どんどん採血をしたり、「研究に協力してください」と言って、医者の側からアプローチしていくことを考え直してほしいから、申し上げた。この最後の、括弧を外してほしいと言いたかった。
・ 遺伝カウンセリングというのは、人類遺伝学をやっている者としては、これは医療であると。遺伝的な問題で負担を持っている人に対して、適切な医療的な情報を伝えて、心理的にも支えていくという医療であると位置づけている。ところが、これですと、研究を行うためのサービス、研究を行っていくために遺伝カウンセリングをやる。ですから、資料提供者に対しては、こういう遺伝カウンセリングという医療サービスを施さなければいけないというふうに読み取れてしまう。そうすると、遺伝カウンセリングというのは、クライアントの方たちの自発的な要望によってスタートする新たな医療である。ここで「業務」と書かれると、研究を進めるためには、要望があったときには、医療ではなくて、保健サービスをしなければいけないというふうに読み取れてしまう。
事務局
(1)を目的にかえて、本文を、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における遺伝カウンセリングは、みたいにすることが1つと思う。
・ 患者さんもしくは家族にとっては非常に大きな問題になりますので、何か言葉の工夫をするとか何かで、やはり遺伝カウンセリングを受けることが保障されるというような、そういった配慮が必要ではないかと思う。それとあわせて、遺伝カウンセリングに習熟した医師、医療従事者等が協力して実施されなければならないというふうに、簡単に言ってはいるが、現場としてはかなり大変なことなのではないかなという気がする。実際には主治医とか、遺伝に習熟した医師以外の人も含まれるのかもしれないんですけど、その辺、この遺伝カウンセリングを十分に行うということについて、現場に混乱がないようにできるのかどうかということを、現場の先生に伺いたいと思う。それから、ここで16歳というふうに決めたときに、特に例外事項とか設けていませんけれども、その辺はどういう印象をお持ちかということも伺いたい。
・ 16歳と決めれば、それでよろしいかなと思う。
事務局
なかなか難しいというのはご指摘のとおり。人が足りないというのもご指摘のとおりと思う。そのため、厚生省では別の研究班とか、いろいろ打ち上げているところである。
・ 遺伝カウンセリングを行っている医師ではない方という人はいないはずである。
事務局
ここではその問題を議論する場ではないと思う。
・ 遺伝カウンセリングのことですが、大人で発症するような遺伝性疾患の場合は、例えば主治医であるとか、実際に患者さんを見ている人が、はるかに病気の予後、治療方針、患者さんの生活を知っている。そういった場合には、遺伝カウンセリングと言っても、いわゆる人類遺伝学会が認定した遺伝カウンセラーよりも、むしろその病気に専門で、患者さんを実際に見ている方のほうが、カウンセリングできるのではないかと私は思う。
・ 11ページの遺伝情報の開示に関する細則、11ページ一番上の細則1の部分ですが、2行目で「当該資料と提供者の開示の希望にかかわらず」というのは、これは事後に希望した場合には、ということだと思うので、ここははっきり書いておいた方がよいと思う。その裏側としては、原則に戻って、以下の場合以外は開示をするというのが原則だと理解してよいか。
事務局
おっしゃるとおりである。
・ 12ページの血縁者に対する開示の場合ですが、提供者が開示を希望していない場合のことが決められていて、提供者は開示を希望していないけれども、倫理審査委員会の判断で開示をするケースがあり得ると。その場合に、開示について希望を、これは「血縁者の意向を確認し」ということになっている。提供者の意思がここでは完全に無視されてしまうので、基本原則の解説の中には、できるだけ提供者に、血縁者にこの情報を開示したほうがいいですよという趣旨のことを、強制にならないように、ほのめかすというか、血縁者への情報開示を、できるだけ本人の同意を得て進められるように努力をしなさいという解説をつけている。これだとそういう努力なしで、血縁者がオーケーすれば、本人が嫌だと言っていても、倫理審査委員会がオーケーすれば、すぐに知らせられる。これについては、血縁者に知らせることさえ、かなり大きな反対が、基本原則をつくるときにはありましたので、こう書かれると、あまりも直裁的になってしまうのではないかと思う。
事務局
本人が、血縁者への開示を同意している場合には、全く問題がない。開示を拒否した場合の取り扱いなのだろうと思う。現場が果たして回るのかなという心配が1つと、文章化はなかなかできないので、ぜひ参加していただいて文章化したいと思う。
・ 今の点は、実は人類遺伝学会のガイドラインをつくるときにも全く同じ議論がありまして、実は激論をした覚えがある。それは、同じポイントではあろうかと思いますが、最初に採血をさせていただく、あるいは試料をいただくところの状況が、本人は、どういう結果であっても、ほかの人に知らせてほしくないという意思を確実に表明している場合は、それが覆されない限りは、やはりかなり生きているだろうと思っていた。理由はともかく、どういう理由であろうとも。ところが、治療可能な病気の場合はということで議論がありまして、それは絶対に開示しなくてはいけないのだという発想が実はベースにあって、激論になった。これはあまり細かく書かないほうがよいと私は思う。
・ 人類遺伝学会のシンポジウムでも、この遺伝カウンセリングということが、読んでいる人、あるいは考えている人、それぞれにみんな違うようであるということで、混乱を来すという、ほとんど医療コンセプトと同じように思っている人もいるという、そういう話がありまして、例えばここの業務のところ、10の1ですが、業務で、患者及びその家族に正確な情報を提供し、これが、正確な情報を、例えば主治医であっても、伝えられるのかどうかいうことが難しいわけである。だから、しったかぶりの先生がやるというのも、ひょっとしたら遺伝カウンセリングになってしまう可能性があるわけです。だから、これを、その次の実施方法のところで、「重篤な場合」というのでグレードをつけておられるので、いいのかどうかと思う。
委員長
本日は、IIIまでご議論いただきましたので、次回までに、きょうご議論いただいたところは文を修文して準備していただく。あと大事な次のIVの資料の取り扱い、特に既提供試料の取り扱いとか、それから、用語の定義の中に、前回からずっと議論が引き続いております体細胞遺伝子解析を、この指針の対象に含めるか含めないかといった問題がある。議論できなかった後半部に関しては、それぞれ資料をお持ち帰りいただいて、ご意見を事務局の方に、できましたら文書でお願いしたいと思う。それをもとにして、次回、もう一回、この検討会を開かせていただいて、後半部の議論を中心にしてご議論いただくという運びにしたいと思う。

6.今後の日程

検討委員会開催日程
第6回検討委員会の日程調整を事務局にて行う。

以上


照会先
厚生省大臣官房厚生科学課
課長補佐 野口尚
電話 [現在ご利用いただけません](内線:3804)


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