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第3回年金積立金の運用の基本方針に関する検討会専門部会議事要旨

1.日 時: 平成12年10月10日〈火〉15時〜18時30分
2.場 所: 合同庁舎5号館共用第18会議室
3.出席者: 浅野、鮫島、中田、三浦、米澤、若杉(五十音順、敬称略)
4.議事要旨(○は出席者、●は事務局の発言)

《基本ポートフォリオについて》

○ 資料にあるヘッジコストについて詳しく教えて欲しい。
● 外国債券については、85年以降はソロモンスミスバーニーの数字を使用。それ以前の時期は、英米独仏4カ国の現地通貨ベースの長期金利・短期金利から逆算した期待収益率から日本との金利差分を差し引いたものを基にリスク系列を作っている。外国株式については、MSCIのベンチマークから英米独仏を取り出して同様の処理を行っている。
○ 要するに為替の変動のみをヘッジしたことのようだが、資料ではフルヘッジが落とされている理由がヘッジコスト(20ベーシス)のためかどうかが不明となっている。
○ ヘッジとノンヘッジで同じ期待リターンの置き方をしているという理解でよいか。20ベーシスの妥当性は不明だが、その影響でアセットアロケーションが変動している面がある。また、ドル自体の変動が国内資産とマイナスの相関を持っているためノンヘッジが残っている。これも外国資産の量にも依存するものであり、一般的には量が多くなると為替のリスク量が大きくなってしまい、ヘッジが必要となってくる。もっともこのシミュレーションだと全て国内株式が外国株式よりもウェイトを高くするという制約条件が効いてしまうため、為替の影響が分からなくなってしまっている。
○ 外国株式と外国債券のリターンの問題は理論的にはリスクの方で処理されているのではないか。20ベーシスの点はコストとして考えればいいのではないか。
● ご指摘のとおり、制約条件が効いている。考え方として、国内債券が最も多く、それに付加価値を乗せる国内株式、それを補完するのが外国株式、外国債券は外国株式のぶれを抑えるもの、という役割分担のように考えている。そう考えれば、外国株式が国内株式を大きく超えることはいかがなものかということとなる。
○ 年金債務を実質ベースで捉え、国内株式を中心に考えると外国資産の位置づけがもっと明確になるのではないか。
○ 若杉研究会の時に比べて期待収益率の幅が狭くなっている理由は何か。
● 事務局としても幅を広げようとしたが、そうすると債券の割合が低くなってしまい、対象から外れてしまう。
○ 若杉研究会の時は、基本ポートフォリオの導出の方法の検討を行っており、今回のような具体的なポートフォリオの策定までは検討していない。実際の基本ポートフォリオは、財投改革の経過措置などもあり、その実現の時をいつに置くのかという点も議論することが必要。また、貸出期間が20年にも及ぶ財投との関係からすると、基本ポートフォリオの達成は随分先になることも考えられ、その期間中の経済情勢の変化等を踏まえれば、基本ポートフォリオもそれに伴い動かすべきなのか、という点についても検討が必要。
● 事務局としては、財投協力等の制約がある移行期を経た到達点が基本ポートフォリオというように考えている。一方でこの先の経済情勢の変化のことも考えると、到達点は柔軟に考えることも必要と考えている。したがって、基本ポートフォリオとしては移行期の最終段階の姿と考えるべきではないか、
○ 当面は経過措置もあり、図らずも国債を大量に保有することから国会答弁の内容を満たしているが、これから先ずっとこの答弁に拘束されるというのは行き過ぎではないか。答弁の趣旨は、自主運用開始に際しては安全な資産から始めるとの趣旨と理解していいのではないか。
● 答弁においては自主運用開始時に限定していないことから、定常状態を意識した趣旨である。
○ 制約条件が多く金利上昇も見込まれる移行期と、そのような移行期や金利上昇を経た後の基本ポートフォリオという分け方でいいのではないか。
○ 実質経済成長率を1%と置くとか債券6割というモデルの外からの制約は後の検討の際に問題になるのではないか。ヘッジのシミュレーションについても先の90年前後のような為替の大変動はモデルに入っていない。将来の意思決定を拘束するような仮定を置くことは問題ではないか。
○ 将来、大きく情勢が変わった場合には、それにあわせて改定することが必要。
 その時々で分かる範囲で着地点を予想することが必要。
○ 一口にヘッジといってもデリバティブ等の技術の進歩もあるし、また、政治・外交といったものも為替には影響する。このようなことは平均分散アプローチには入ってこない。だからといって解決策があるわけではないが。
○ 証券化商品の発展等による債券市場の拡大も議論することが必要ではないか。
○ 基本ポートフォリオの議論においては債券の多様化は議論すべきではなく、むしろ固定金利の証券と実績配当の証券にどれだけ配分するかを議論するべき。また、デリバティブにも限界があり原資産の特性から大きくは外れない。また、国会の答弁についても、将来の確実な年金給付のためには固定金利の証券よりも実績配当の証券の方が適当な面もあるということを説明すべきではないか。
○ 財投改革の趣旨から、国債である財投債を言うがままに引き受けることはできないということで国内債券60%ということを理由付けることになるのではないか。
○ 将来の市場の発展は先行き考慮に入れていくにしても、現実的には現在の市場における投資家の運用の実態を基準とせざるを得ないのではないか。そもそも6割、7割・8割という数字の根拠は何か。
● 引受財投債の話ではなく、若杉研究会の際に出された資産構成割合の例を念頭に答弁されたもの。また、そもそも政府資金の運用は「安全確実」が法律上規定されており、これは元本保証の意味。5:3:3:2規制が課されている年金福祉事業団においても、元本保証のある国債等を6割程度保有している、ということから6割云々の議論をしている。
○ あえて国内債券6割という条件を課さなくても期待収益率を4%程度としておけば、ホームカントリーバイアスの制約だけで債券が適当に含まれてしまうのではないか。
○ デリバティブの利用、例えば債券クーポンと株価指数のスワップにより、保有する原資産と実際のリスクリターンは全く異なってしまう。
○ 基本ポートフォリオのレベルではデリバティブのことはあまり議論する必要はないのではないか。

《株主議決権の行使について》

○ コスト的にも基金が直接議決権を行使することはできず、かといって受託機関に任せきりというわけにもいかない。行使のルールや事後のチェックが必要になる。
○ 資料にあるコーポレートガバナンス原則では細かすぎるように思える。運用機関A・Bを参考に考えるべきではないか。
○ コーポレートガバナンスの観点からの行使、という視点が入ることが望ましい。
○ 株式価値の極大化と規定すればガイドラインは不要で、むしろ、基金が直接議決権を行使できる方策、受託機関が適切に行使しなかった場合の方策を講じておくべきではないか。
○ 適切な行使がなされない場合に、基金が直接行使するのかそれとも当該運用機関を変更することとするのか、議論が必要。ただ国が直接議決権を行使することについては様々な懸念が生じるのではないか。
○ 国が行使するのは問題であると思う。運用機関に行使をお願いするにしても、行使方針のようなものを提示し、それに反する場合には運用機関の変更も有り得ることを明確にしておくことが必要。
● 株式投資そのものについてさえ国が行うことについて議論があることを考えると、議決権の行使は国は行わないということから検討を開始することが適当ではないか。最初から議決権の直接行使を留保するのはいかがか。
○ 具体的には、基金が運用契約を締結する際に示すことになると思うが、運用の基本方針の検討の場で議論することが適当か。
● 具体的には基金で定めることとされている管理運用方針で規定することとなると考えている。

《同一企業発行銘柄への投資制限について》

● 資料には具体的な数字が入っていないが、どの程度の数字にすることが適当か御意見を伺いたい。
○ 公開会社とプライベートエクイティでは別の基準とすべきではないか。
● 投資対象として、現段階のプライベートエクイティは資産特性がはっきりしないことから独立で入ってこないのではないか。
○ 制限を加えることについては異論はないのではないか。基金において個別銘柄の保有状況を刻々把握できるのか。
● 年金福祉事業団では運用機関からの報告によることとなるため1ヶ月ほどのタイムラグはあるが、把握できる。
○ 委託資産額にばらつきがあることから、一律の規制は効率性を損なうのではないか。
● そのようなばらつきを前提に検討頂きたい。
○ 個別運用機関ごとに制限を課すことになると思うが、その際にはベンチャーなどの特殊なファンドのことも考慮した例外を認めるべきではないか。また、発行済み株式総数に対する制限については、議決権を基金に留保しないこととするのであれば各運用機関ごとに発行済み株式総数に対する制限を設けることでいいのではないか。
○ そうすると結果として基金として特定会社の株式を多量に保有し、経営に影響を及ぼすこととなってしまうのではないか。
○ 議決権行使のルールにおいて国の及ぼす影響の排除については考えるべきではないか。
○ 公的年金の規模等を考慮すると極端なアクティブ運用は考えにくく、特定銘柄に集中することは適当とは言えないのではないか。
○ 公的年金の規模を考えると、コストをかけずに東証一部の全ての銘柄を同じように保有するということも可能。そうではなく、あえてコストをかけて運用するということにするのであれば、保有制限はそれに対する規制にもなることを考慮するべきではないか。
○ ドコモのようにインデックスに占める割合が制限値を超えるような場合を考えると、運用スタイルによって例外を設けることを考えるべきではないか。
○ 基金がどこの会社の株式をどれくらい保有しているか、という情報は開示するのか。
● 今後の検討課題と考えている。
○ 現在の年金福祉事業団の投資制限はどのようになっているのか。
● 厚生年金基金連合会の例を参考に、新基金の設立に向けて検討中。
○ 一応、この場での結論としては同一企業銘柄への投資は各運用機関ごとの運用委託資産に占める5%及び発行済み株式の5%ということとし、運用スタイルによる例外も検討すべき、ということでいいのではないか。
○ 市場に占める割合等、この場で即断できないので持ち帰って検討したい。

〜以上〜


〈照会先〉年金局運用指導課
     小川 えりか
 TEL [現在ご利用いただけません](内線3348)
 夜 間 3501-3450


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