00/09/26 生殖補助医療技術に関する専門委員会(第21回)議事録 厚 生 科 学 審 議 会 先 端 医 療 技 術 評 価 部 会 生 殖 補 助 医 療 技 術 に 関 す る 専 門 委 員 会 ( 第 21 回 ) 議  事  録 厚生省児童家庭局母子保健課            厚生科学審議会先端医療技術評価部会          生殖補助医療技術に関する専門委員会議事次第 日 時 平成12年9月26日(火) 10:30〜12:40 場 所 厚生省共用第10会議室(7階)  1 開 会  2 議 事   (1)日本・イギリス両国における生殖補助医療に係る諸制度や現状についての      意見交換  (2)その他  3 閉 会 〔出席委員〕   中 谷 委員長   石井(ト)委員  高 橋 委 員  辰 巳 委 員  矢内原 委 員 ○小林主査  それでは定刻になりましたので、ただいまから「第21回厚生科学審議会先端医療技術 評価部会・生殖補助医療技術に冠する専門委員会」を開催させていただきます。  本日はお忙しい中、お集まりいただきまして大変ありがとうございました。  なお、本日は石井美智子委員、田中委員、丸山委員、吉村委員、加藤委員がご欠席と いうことでございます。  それでは、議事に入りたいと思います。中谷委員長、議事進行をよろしくお願いいた します。 ○中谷委員長  おはようございます。厚生科学審議会先端医療技術評価部会・生殖補助医療技術に関 する専門委員会の委員長をしております中谷でございます。  本日の専門委員会はブリティッシュ・カウンシル主催の人工受精着床倫理セミナーで の講演をされるために来日しておられますスザンヌ・マッカーシー英国受精・胎児問題 管轄局長をお招きして、同局長と本専門委員会の委員との間でのイギリス・日本両国に おける生殖補助医療をめぐる現状、問題点等について意見交換を行うことにしておりま す。  マッカーシー局長におかれましては、本日は本専門委員会での意見交換のために大変 お忙しい中を貴重なお時間を割いていただきまして、まことにありがとうございます。  それでは議事に入りたいと思いますが、本日の専門委員会の開催に際し、初めに私の 方から、我が国における生殖補助医療の現状、本専門委員会における議論の状況等につ いて簡単にご説明申し上げたく存じます。  生殖補助医療技術の進歩に伴いまして、生殖補助医療が不妊に悩む方々の間で急速に 普及してきているところでございます。日本では1946〜1947年ごろからインセミネーシ ョンについては実際に開始されているわけでございますけれども、さらに体外受精技術 あるいは顕微受精など次々に新しい技法が開発されまして非常に進んでまいりました。 しかしその間、医師の自主規制によりまして人工受精や夫婦間の配偶子に限った体外受 精が限定的に、非常に厳しく制限的に実施されてきたところでございます。 ところが、最近になりまして、この自主規制に違反する者が出てきたこと、精子の売 買や代理懐胎の斡旋など商業主義的な行為が見られるようになってきたことなどから、 第三者の配偶子提供等による生殖補助医療に対する有効な規制制度や管理機構の必要性 が指摘されるようになりました。 こうした状況の中で、本専門委員会では、医学、看護学、法学、生命倫理学の各分野 から専門家にお集まりいただきまして、一昨年10月から生殖医療技術に関する安全面、 倫理面、法的な問題を集中的に検討しているところでございます。 それが大体2年間ということに期間が限定されておりますので、間もなく最終報告書 を出すことになるわけでございますが、現在は本年6月に本委員会のワーキンググルー プにおいて作成いたしました報告書のたたき台、これはお手元に届いていると思います が、それをもとに今年10月をめどに、生殖補助医療の実施の是非、認める場合の実施の 条件、我が国における第三者の配偶子提供等による生殖補助医療のあり方について本専 門委員会としての報告書を取りまとめるべく、鋭意議論を行っているところでありま す。 以上が我が国における生殖補助医療の現状、本専門委員会における議論の状況の概要 でございます。 次に、イギリスにおきましては、1990年11月に Human Fertilisation and Embryology Act を制定されたわけでございまして、かつ1991年にはオーソリティの機 関が設立されまして非常に十全のお仕事を続けられていることを勉強しております。同 じ1990月12月13日にはドイツで Embryonen Schutz Gesetz (胚保護法) ができましたけ れども、イギリスの法律は49条で、しかも1条に項がたくさんある大変完備した法規で あるのに対して、ドイツのものはわずかに13カ条、実施の日付、施行の規定を含めて14 カ条でございまして非常に簡単で且つ厳しい限定的なもので、あまり参考にならない。 ドイツでも1996年でしたか1998年かに、実施のためのガイドラインができましたけれど も、これも非常に簡単なものでございました。フランスには生命倫理法、1994年7月29 日の法律ができておりますが、この中にも生殖補助についての規定はありますけれど も、それほど完備したものではなく、完全匿名性その他で特色がありますけれどもあま り参考にならない。もっと前をたどれば、1985年に施行されたスウェーデンの人工授精 法、1989年の体外受精法などがありますが、その頃と現在では生殖補助医療の技術その ものが随分変わっておりますので、あまり参考にならないように思われます。 そこで私どもの委員会では、主としてイギリスの法律及び制度について勉強して参考 にしてこれまで討議を続けてきた次第でございますので、どうぞよろしくお願い申し上 げます。  それでは、イギリスにおける諸制度、現状についてご発言をいただきたいと思いま す。 ○マッカーシー局長 まず、日本に来られて非常に光栄に思います。今回、ブリティッシュ・カウンシルに 招待されまして、ここに来ることができました。それから皆様の前でお話をできる機会 を与えてくださいましたことを非常にうれしく思います。私の話が何かお役に立てれば 幸いに存じます。 IVF、ARTなどに関する問題というのは、決してどこか一国内だけの問題ではあ りません。皆様が私にご提出されました疑問やイギリス国内で起きている疑問などは非 常によく似ているものであります。お互いに学び合うことがあると思います。ただし覚 えておかなければならないのは、すべての社会は違うということであります。ですか ら、お互いの独自の文化に合った方法もまた見つけ出さなけれならないということで す。 私どもHFEAをモデルにして学ぼうとされていると伺いまして、そのことを非常に うれしく思います。先ほどいろいろな方法、いろいろな国についてお話しされました が、それについて1つつけ加えたいと思います。フランスでは、私どものヒトの受精と 胚研究に関する法律と似たような法律を間もなく制定しようとしているところでありま す。私はこの夏、フランスの議会に行きまして、そのことについてお話ししてまいりま した。お互いにそのことについてフランスの方たちと意見交換をしております。皆様の 方でも、フランス大使館に問い合わせると恐らく詳細な情報を得られると思います。 皆様も既にご存じかと思いますが、HFEAと似たような形の組織がオーストラリア のヴィイクトリア州にございます。カナダでも最近、カナダ全体にまたがる組織として 似たような当局をつくる法律を制定いたしました。 ○中谷委員長 カナダでは、たしか1991年11月30日に膨大な報告書が出ましたね。 ○マッカーシー局長 それ以来、また討論を重ねてきたわけです。 まず、HFEAについて10分ほどお話ししたいと思います。それから質疑応答もした いと思いますけれども、事前に皆様から質問をいただいておりますので、そちらについ ても触れたいと思います。 まず、HFEAの地位について混乱がないように明確にしたいと思います。  HFEAはまず法令によってつくられました。これは英語でノンディパートメンタ ル・パブリックボディ、つまり省庁ではない公共機関という意味なのですけれど、独立 行政機関と呼んでおります。そのため政府からは独立しております。しかし、議会でこ の分野についての質問が持ち上がったら、答えるのは保健省、保健大臣であります。そ して、HFEAとしては例えば実施要綱(Code of Practice)、年次報告書を議会に発 表する前にまず保健省の認可を必要とします。一番重要なのは予算でありますが、それ が保健省の認可を受けなければならないということです。 HFEAの構成について申し上げたいと思います。 まず、なぜHFEAがつくられたかとありますが、現在と同じように、できた当時の 国民の間には科学は一体どこまでやるつもりなのか、科学が余りにも社会の先を行き過 ぎるのではないかという懸念があったからです。  HFEAは21人のメンバーから成っておりますが、それは決して特定のグループや団 体を代表している方たちではありません。さまざまな職業、また経験を持っている方た ちが代表しております。しかし、法律で決められているのは男女共にいること、実際に は女性の方が数が多くなっております。そして21人のうち少なくとも3分の1は科学者 また医師であることが定められておりますが、その人たちが半分を超えてはならないこ とになっています。つまり、科学者がすべての話し合いを占領してしまうことを避ける ためにであります。 中には著名なクリニシャン、科学者もいらっしゃいまして、皆様の中には恐らくご存 じの方もいらっしゃるのではないかと思いますが、レーマン・マクラーレンさん、クリ スティン・ゴスデンさん、アラン・テンプル教授という方たちが名を連ねておられま す。  そして、HFEAの目的は法律の中で具体的に明記されております。私たちはまず第 一に規制当局であります。私たちが特化しなければならないのは、体外でつくられた 胚、提供された配偶子の保管、ヒトの胚の研究に関する規制を行うこと、これが私たち の主な分野でございます。 さらに、それ以外の義務も法律によって定められております。これは行動規範をつく ることでありますが、クリニックのためのガイダンス、指針となるものであります。こ の行動規範に違反した場合には何らかの罰則を課すことになります。一番大きい場合に は免許の取消もございます。 さらに私たちはIVFや、また提供された配偶子に関するデータも保管してキープし ております。これは子どもたちがその後来て、自分たちの配偶子をだれが提供したかを 知りたいということがあるからです。 さらに、私たちは国民や医療関係者に対して、この分野でどのような発展が行われて いるかを伝える義務も法律で定められています。そして、求められた場合には公聴会や 公的な審議会を開くことを保健省にアドバイスすることも行っています。このような審 議会の中でよく知られているのがクローンに関する審議会だと思います。最近終わった ばかりですが、恐らく関心が非常に高いと思われるのが着床前遺伝子診断に関するもの でした。 ここで1つ申し上げたいのは、HFEAは例えば不妊治療、不妊治療研究に関してす べて規制しているわけではないということです。例えば一般開業医が私たちの規制の下 にはない不妊処方薬を出した場合、またIVF技術を必要としない代理出産などが行わ れた場合は、私どもの規制の範囲とはなりません。代理出産を実際に規制しているのは 保健省となっています。1985年にできた代理出産取りきめ法が代理出産に関する法律と なっています。 皆様も法律について何らか考えていらっしゃるということで、私どもの法律がいかに 柔軟性に富んだものであるかということをお話ししたいと思います。 すべての法律でありますけれども、どの法律も歴史的な意味合いがございます。そし て医療分野における法律は特に歴史的な意味合いがあると思います。法律ができてから 時間がたっておりまして、特に医療分野は発展が非常に速く進んでいます。ですから、 実際に法律が制定された時よりも予期しなかったいろいろなことが起きておりまして、 実際の法律と現実に起きていることの間にはギャップがあることを私どもは認識してお ります。 例えばその例として、幹細胞の技術に関する調査、また研究を認可するかということ が挙げられると思います。今年の年末までに議会でこのことに関する勧告が行われるこ とになっております。しかし、そうは言うものの全体的に法律は幾つかの理由で非常に 効果的に機能しております。 まず、当局に対して決定の裁量を与えるということです。保健省でありますが、法律 で定められていますが、いろいろな分野で新たな権限をつくり出すこともできるように なっております。当局の権限の範囲を広げることができております。皆様は新しい法律 を検討されているということでありますが、もしドラフトをつくる場合にはぜひ非常に フレキシブルなものにして、これから出てくるであろう新しい変化を吸収できるような ものにすることをお勧めしたいと思います。重要なのは、当局が機能できるような大枠 をつくることです。 最後に、HFEAと実際の医療提供者との関係について一言申し上げたいと思いま す。  とても面白いと思ったのですが、日本における実際の医療関係者の規制当局に関する 考え方は、ちょうどイギリスでも同じようです。医療提供者が規制当局に対して持って いる見方は全く同じだと思い、非常に面白いと思いました。実際にイギリスでも「ぜひ 規制していただきたいと思います」とわざわざ手を上げるようなお医者さんには1人も お目にかかったことはございません。  HFEAができた当初、1991年から1995年頃ですが、医療関係者の間にはHFEAの 介入に対して非常に多くの不満がございました。とは言っても人々は慣れるものであり ます。最近は政府によるHFEAの見直しがございまして、実際の診療関係者に対して HFEAをどう思うかというインタビューをいたしました。そしてすべての診療関係者 は、もちろんHFEAがやっていることすべてを満足に思っているわけではないもの の、今やHFEAなしでは考えられないと述べています。非常にポジティブなものであ り、また尊敬の対象になり得るものであり、クリニックに来る人たちがきちんとしたス タッフ、施設があるということを認めているという安心感を与える、認められていると いう感じをあたえるというように答えています。今のことが参考になりましたら幸いで あります。  以上です。 ○中谷委員長 どうもありがとうございました。 ○矢内原委員 私、矢内原と申します。医者でこの委員会のメンバーでございます。  質問する前に、幾つかの言葉の使い方で、私たちがそちらの本を読んだときに困窮す るときがあります。したがって法律的な言葉についていけないところがあるので、幾つ か確認したいことがあります。 例えば reguration と legislation、guidlineと low、act 。最初のレギュレーショ ンとレジスレーションはどのように使い分けておりますか。 ○マッカーシー局長  まずレギュレーションといいますと二次的な法律を言っておりまして、これは政府の 省庁によって行われ、議会が認可するものであります。  この二次的法律というのはネガティブな決議と言いましてもほとんどディベートなし で認可されるものであります。しかし、そうは言うものの二次的レジスレーションの中 にはネガティブではないアファーマティブのプラスの方のものもありまして、これは上 下両院で議論されるものであります。  そして、不妊やヒトの胚という問題は非常に微妙な問題ですので、1991年の法律のも とでの規制は、アファーマティブな上下両院で議論されるタイプとなっています。例え ば省庁の権限を広げて、HFEAの中に幹細胞の研究も広げたい、治療的な研究の一環 としてそれを含めたいというように考えますと、これは上下両院で審議され、党議拘束 を受けない採決にかけられることになります。 今のがレギュレーションであり、レジスレーションといいますと、プライマリー・レ ジスレーションです。そして、これは1990年の法律のことを申し上げています。わかり ましたでしょうか。 ○母子保健課長 レジスレーションというのは国会がつくる法律で、レギュレーションはその後に省令 や政令、日本の場合でいけばそういう規則であると思っていただければと思います。た だ、イギリスの場合は……。 ○矢内原委員 通訳の方は同じようなニュアンスで訳されましたか。レギュレーションとレジスレー ションを同じようなニュアンスではなくて別の意味に……。 ○通訳 レジスレーションは「法律」と申し上げたつもりです。 ○母子保健課長 レギュレーションは「規制・規則」ですね。 ○マッカーシー局長 円が2つあって、外円と内円があるような感じです。そして、外円がプライマリーの 一次的なレジスレーションで、中の方にあるのがレギュレーション、規制の方でありま して、これは第一次的レジスレーション、法律によって大臣の方に規制権限が与えられ ております。 ○母子保健課長 要するに、一次的な法律はおいて、二次的な立法が大臣に対して与えられているわけ ですね。 日本の場合には、二次的な立法なり今言ったレギュレーションは国会の承認は要りま せん。大臣なり内閣の判断でできます。イギリスの場合、より厳しいようです。 イギリスの方が厳しいですが、日本の場合には、法律ができて……。 ○矢内原委員 レギュレーションの方が厳しいわけですね。 ○母子保健課長 レギュレーションの方が厳しいというより、レギュレーションは具体的なことです ね。法律では一般的なことを書いて、それがレギュレーションでもう少し具体的なこと を決めるわけです。 ○矢内原委員 日本語訳ではどういうふうになりますか。 ○母子保健課長 具体的には「法律、政令、省令」と言いますね。 ○矢内原委員 お伺いした理由は、外国からの問い合わせがあるときに両方の言葉が使われているこ とと、今日のお話の中でもその2つの言葉が交互に出てきて、我々はときどきこんがら ってしまうことがありますのでお伺いした次第です。どうもありがとうございました。 ○中谷委員長 全く違う種類の2つの質問をしてよろしいでしょうか。 1つは、1984年にウォーノックレポートが発表されましたね。そのレポートがイギリ スの生殖補助医療の基本といいますか、そこから発展してきているような気がするので すが、そういう理解は間違っていますか。 ○マッカーシー局長  確かにウォーノック報告書は1990年の法律のベースとなっています。その後、政府は 幾つかの白書やいろいろな報告書を発表いたしましたが、やはりこの報告書がベースと なっています。その中には、例えばヒトの胚の研究、14日間の保存という限定、さらに HFEAを設立することも含まれていました。そして、HFEAはイギリスの中でも非 常に新しいタイプの組織でした。これまで、1つの医療の分野を法令によって規制する 当局をつくるということはイギリスでは全くなかったわけです。そういう意味で新しい 組織であったということです。例えば、ヒトの胚の研究については議会でも多くの議論 がなされましたが、HFEAをつくるかどうかについてはほとんど議論もなくすんなり いきました。  現在のメンバーのマクラーレン氏がウォーノック委員会のメンバーの1人でしたので そのときに話し合われたことと現在話し合われていることの間にはずっとつながりがあ ります。最近、政府はHFEAのような法令機関をさらに別の医療分野でもつくろう、 また導入しようと考えているところですので、我々が唯一の珍しい機関ということでは なくなってきています。 ○中谷委員長 もう一つの質問は、90年法の27条に母親とはこういうものだという親の規定がありま すね。日本では出産した者が母親というのが最高裁判所の判例で決まっています。出産 したという分娩という事実が母親を決めるというのが日本の最高裁判所の判例で、そう いう考え方はローマ法以来と言われていますが、90年法ではそういう規定にはなってお りませんね。 ○マッカーシー局長  やはり分娩をした者が母親ということですが。 ○中谷委員長 27条はそうですか。 ○マッカーシー局長  ええ、産んだ者が母親。 ○中谷委員長 妊娠した者ではないですか。 ○マッカーシー局長  いえ、出産した者が母親です。 ○中谷委員長 そうしますと、代理母が出産した場合はどうなりますか。 ○マッカーシー局長  それは、委員長と似たようなことを考えていると思います。 ○中谷委員長 代理母が出産した子どもについて裁判所に申し立てて、依頼者・カップルの嫡出子と 決定してもらうという規定がどこかにありましたね。 ○マッカーシー局長  それでは説明してよろしいですか。 ○中谷委員長 はい、どうぞお願いします。 ○マッカーシー局長  日本では代理出産を認めないと伺っていますので、この点に関するイギリスの法律に ついて申し上げたいと思います。 IVFによる代理出産が行われましたら、それはHFEAの管轄下になります。最初 に申し上げたとおりです。 ○中谷委員長 それは Surrogacy Arrengement Actによるのですか。 ○マッカーシー局長  それはこれから申し上げます。 ただし、全般的には保健省の85年の Surrogacy Arrengement Actによってすべて規制 されています。代理出産を行うこと自体は合法的ですが、代理出産を広告したり、それ によって利益を得ることは法律違反となっています。もし夫婦が出産した女性に正当な 報酬以上のものを払ったことがわかりますと、その夫婦は親権を失うことになります。 つまり、子どもは売り買いの対象ではないということが原則となっています。 そして最近、保健省はマンチェスター大学の法律学教授であるブレージャー教授を通 じてこの問題についていろいろな調査を行いました。確かに、おっしゃるとおり産んだ 人が母親であるとここに定められておりまして、それはIVFによる代理出産でも同じ です。そこで、この子が依頼した夫婦の子どもであるとするには、依頼した夫婦が法廷 へ行ってペアレンタル・オーダ (親権) をもらうことになっています。  実際にIVFを使って代理出産を行う場合には、私どもの実施要綱にある条件を満た さなければならないことになっています。特にこういう治療を行うライセンスを得てい るところは、まず第一に生まれてくる子どもの福祉を考えなければなりません。そし て、それには幾つもの要因があります。 皆様のお手元に実施要綱のコピーがいっていると思いますが、パート3の3.12から始 まっています。「子どもの福祉」というタイトルです。そして、その下に「考慮しなけ ればならない要因」と書いてあります。それが3.15ですが、ちょうどページの真ん中あ たりです。そして3.22まで続いています。 特に3.18ですが、これは提供配偶子が使われた場合が書いてあります。実際にそれを 行おうとしている夫婦はカウンセリングを行い、一体どういうことが考えられるのか、 自分たちがやろうとしているのはどういうことなのか、その評価が行われます。ですか ら、ライセンスが与えられたクリニックで代理出産のアレンジメントを行うということ は、決して患者の単純な要求ではありません。 よろしいでしょうか。 ○中谷委員長 ありがとうございました。委員の方でほかにご質問はありませんか。 ○辰巳委員 辰巳と申します。東京で不妊クリニックをしております。年間 500ぐらいの採卵をし ています。 エッグのドネーションに関して、まずエッグのドネーションに対しては、私は不妊治 療は当事者2人の間で行うべきで他人にリスクを負わせるべきではないと考えているの で……。 ○マッカーシー局長  当事者というのは夫婦のことですか。 ○辰巳委員 そうです。根本的には反対という立場をとっているのですが、そういう考 え方についてどのように思われますか。 ○マッカーシー局長  今日ご欠席された委員のお1人が質問されたことと重なりますので、この質問にお答 えいたします。 女性にとって自分の卵子をつくれないということはいろいろな理由があるかもしれま せんが、それは非常に悲劇的なことであります。そして卵子の提供は、将来は非常に珍 しいもの、余り行われないものになってくれればいいと考えています。例えばイギリス ではがんなどの治療を行っている女性が、自分の卵子を凍結して保管して後のために使 えるようにすることなどが行われているからです。 似たようなことが精子提供の方でも行われています。ICSIのおかげで、精子の提 供もそれほど必要なことではなくなってきているからです。 ○中谷委員長 日本では、卵子の凍結は今のところまだできないように考えられているのですが。 ○マッカーシー局長  私どもも今年ようやく認めたばかりです。というのは、アメリカのヤン教授が実際に 凍結したものを使っているのですが、その結果、非常に健康的な赤ちゃんが生れている ということで、その安全性、効果について私たちは意を強くしました。ですから大丈夫 だろうと思いました。  もちろん、この治療によって余り多くの赤ちゃんが産まれていないということは私ど もも認識しております。そのために特に卵子の凍結、また凍結された卵子を使うことに ついて患者に対するインフォーメションをつくりました。実際にこの治療を行う前に、 認可を受けているクリニックなどでは、その情報を患者に提供しなければならないこと が条件となっています。実際に卵子を凍結保管する、あるいは凍結されたものを使う前 に、患者はきちんとした合意文書にサインをしなければならないということも決められ ています。ですから、患者は解凍した卵子を使った場合にベルトコンベアに乗ったかの ようにすぐに妊娠できるというような誤解をしないように、きちんとした情報を提供さ れるようになっています。もともとIVFの成功率は決して高くないということを知っ ています。特に凍結されたものを使うとそれがさらに低くなります。  イギリスでは毎年平均 900人ぐらいの卵子提供者がいます。その提供卵子によって生 れた赤ちゃんは1997年から1998年の間に 400人近くとなっています。1992年には 100人 でした。というのは、決して普通のこととは申し上げませんけれど、しかし現実に起き ていることではあります。そして精子の提供と違う点は、卵子の提供は身襲性が高いと いうことが挙げられると思います。好意から卵子を提供する行動は非常に危険なもので はありますが、利他的に卵子を提供していただきたいと皆様に申し上げています。 最近、ドナーに対する支払について協議、話し合いを行いましたけれど、その中で挙 がった懸念は卵子のシェアリングということでした。だれかの利益のためにクリニック が搾取することがあってはならないと思っています。確かにHFEAの中でもエッグ・ シェアリングは一切禁止するべきではないかという考えもありました。 エッグ・シェアリングはどういうものかといいますと、1人の女性は卵子を持ってい る、もう1人の女性は卵子がないという場合に、卵子がない女性が卵子を持っている女 性の治療費も払うということです。 この協議の結果、女性の側から非常に大きな反応を呼び起こしました。多くの人たち がエッグ・シェアリングは非常にいいことである、これは決してだれかの利益のためで はない、赤ちゃんを産むためなのだという反応が多く見られました。 そういうことをすべて考慮して、当局としてはエッグ・シェアリングを一切禁止して しまうことはやめました。そのかわりに非常に厳しいガイドラインをつくり、すべての クリニックはそれを遵守してもらうようにしました。そのガイドラインはクリニックに ちょうど配付されようとしているところです。これをつくったのは小さな作業部会で、 王立産科婦人科カレッジ、イギリス女性学会の代表なども入っています。そういうこと で我々は専門家も交えてこの作業に当たってきました。  この規制のコアとなる部分ですが、実際の2人の当事者には自分たちを守ってくれる 人がつくことになっています。つまり、医者が1人でどちらをも代表して守ることによ って何らかの利益上の対立が生じてしまわないように、別の人がそれぞれの当事者を守 るようになっています。実際に治療する前に、お互いがお互いに対して負っている義務 や責任についてきちんと合意することが求められています。  その支払は、長い協議の結果、私どもは15ポンドプラス実費 (例えば交通費や電話代 等) 以上であってはならないという結論に達しました。つまり提供する側にとっては非 常に小額で、これでは卵子を提供したところで利益にはならないわけです。一方、精子 提供者は大体医大の若い男性のことが多いですね。こういう場合は、提供することによ ってそこそこのお金を得ることができます。そして、当局の中でもそういうことはやめ るべきだという考えがありました。しかし医療の専門家としては、15ポンドも支払わな いということであればイギリスの中では提供する人がいなくなってしまうのではないか と懸念しました。  当局としては、いずれ15ポンドの支払いもやめる方向に動きたいと考えています。も ちろん実費は支払うべきで自腹を切るべきではないと思っていますが、いずれは15ポン ドも廃止するように動きたいと思っています。しかし、今のところは15ポンド支払われ ています。 エッグ・シェアリングに関するガイドラインは間もなく配付されることになっていま すので、もしお望みでありましたらこちらにもお届けします。 ○辰巳委員 続けてもう一つご質問します。 900のエッグ・ドネーションのうちシェアリングの占める割合はどのぐらいでしょう か。 ○マッカーシー局長  そういう分け方はしていませんけれども。 ○辰巳委員 どのようにお考えですか。 ○マッカーシー局長  少なくとも50%。実際に好意からというのは少ないのですが、例えば友人が提供者を 連れてきて匿名ベースで提供することもありますし、姉妹間やいとこ同士で行うことも ありますが、エッグ・シェアリングは非常に多いと思います。 ○辰巳委員 ドナーをシェアリングによるものだけとした場合に何か問題があるでしょうか。エッ グの提供ではなくてシェアリングのみをドナーエッグのオリジンとした場合に何か問題 になりますか。 ○マッカーシー局長  そうはならないと思います。女性の中にも本当に好意から卵子を提供したいという方 もいるからです。 ○石井 (ト) 委員 確認ですが、よろしいでしょうか。 石井と申します。看護学部に属していまして、マタニティナーシング等を助産婦とし て教えています。 2つの質問があるのですが、1つは確認で、 900人の卵子提供者の中にシェアリング の数が入っているということについてです。 ○マッカーシー局長  はい、入っています。 ○石井 (ト) 委員 そうしますと、好意で卵子を提供する方はどういう方か、例えば年齢、既婚か未婚か ということです。 ○マッカーシー局長  先ほどの実施要綱に触れたいのですがよろしいですか。 ○石井 (ト) 委員 年齢は入っているようですが、既婚なのか未婚なのかは触れていないですね。 ○マッカーシー局長  別に結婚していなくてもいいわけです。結婚している必要があるとは考えておりませ ん。 ただし年齢の制限はありまして、実施要綱の3.36と3.37ですが、女性は35歳以下、男 性は55歳以下。 ○矢内原委員  受ける方も50歳以下が望ましい。 ○マッカーシー局長  1990年の法律では治療を受ける女性について何らかの規定を設けるということはして おりません。その治療を受ける人の年齢を設定することは間違いであるとHFEAは考 えています。例えば、中には非常に早く閉経を迎える女性もいますし、40代あるいは50 代で子どもを産む方もおります。ただし、クリニックの多くは年齢制限を設けていま す。それはクリニックごとの決定、方針ということになります。あるクリニックが常に 高齢の女性ばかり対象にして、例えばいつも55歳の女性しか治療していないということ であれば、私たちはそこへ出向いて話を聞くことになります。というのは、果たして生 れてくる子どもの福祉をきちんと考慮しているのかと思うからです。イギリスにも50歳 から55歳の女性を治療しているクリニックがあります。しかしそれは年齢の上限であり まして、高齢の女性が妊娠するのは非常に珍しいことです。 1991年以来、IVFの治療を受けた11万人のうち、50歳以上は 110人だけであり、そ のうち実際に出産した人は35人となっています。つまり、50歳代の人でIVFを受けた 人は1000分の1ということになります。 実施要綱の3.47をご参照いただければと思いますが、クリニックにふらっと行ってそ のままドナーになれるというものではありません。心理的にも医療的にもドナーになる 条件が整っていることが必要です。提供者になる適性は次のページまで書いてありま す。 ○石井 (ト) 委員 ありがとうございます。 2つ目の質問は、最近、英国で精子でも卵子でもドナーになった方が出自を知らされ ることを非常に危惧している、それで提供者が少なくなっているということを聞きまし た。質問書の3にも関連すると思いますが、どの程度まで知らせているのかというこ と、本当に提供者がそのおそれを持っていて減っているのかどうかについてよろしくお 願いします。 ○マッカーシー局長  最後の点について、ドナーの数ですが、現時点で私の知る限りでは減ってはおりませ ん。毎年新しい精子提供者が 350人から 400人はおります。ただし、精子を必要とする 人の数が大幅に減ってきています、例えば1992年は提供された精子による治療は2万 5, 000件ありました。しかし提供精子を使った治療は、1997年から1998年にかけて50%減っ て1万 2,000件になっています。  1990年の法律に明記してあります、女性であれ男性であれ同じなのですが、子どもが HFEAに対して自分の出自について聞くときに提供者の情報を提供してはならないと いうことになっています。 それでも、これは現在活発に議論されている問題でありまして、保健省も来年にはこ の問題に関する公共の審議会を設けようとしています。実際にIVFの結果生れた子ど もは、HFEAができる前にそういう方法で生れた子どもなので年齢はある程度いって いるのですが、自分たちの遺伝上の親を知りたいという心理的な必要性があり、そこか らも圧力があります。他方でクリニック関係者の間には、提供した人たちが自分の名前 の公表を求められた場合には、後々提供する人が減るのではないかという懸念もありま す。 1つの可能性として、来年から審議されるわけですが、その後に規制を1つ設けて、 そのとき以降から提供する人たちは自分の身元を明確にすることを求めていくというこ とがあります。しかし、その前に実際に提供した人たちはこの法律の規制に則って提供 者の身元は明かさないことになります。 通常、さかのぼって適用することは余りないのですが、養子縁組に関する法律の中で さかのぼって適用されたこともありました。もともと養子法のもとでは子どもたちは産 みの親を知ることはできませんでした。しかし新しい法律ができまして、これから養子 縁組をしようとする人たちだけではなく、過去にも養子縁組をした人たちの身元をはっ きりさせようということでその法律が適用されました。 そして、配偶子の提供に関する議論でも似たような問題があるのではないか、状況は 似ているのではないかという声もあります。しかしもちろん反対派の人たちもいて、実 際に生れた子どもを養子に出すのと、精子・卵子を提供するのとは大きな違いがあると いう声もあります。ここで保健省がどういう結論を出すのか、今申し上げることはでき ません。  イギリスでは恐らく来年春の終わりごろに総選挙が行われるものと思います。そして 政治家としては非常に難しいこの問題を選挙の前には持ち出したくはないだろうと思い ます。ただし私どもの方にも時間があり、そのようにして生れた最初の子どもが私たち のところに来ていろいろなことを知りたいというのは恐らく2007年、2008年ぐらいであ ろうと考えています。 ○高橋委員 高橋と申します。産婦人科医です。 HFEAの機構について、21名の委員のうち産婦人科医の専門ドクターはどのぐらい いるのでしょうか。 この倫理規定に違反するとライセンスをとられるといいますが、そのライセンスはド クターのライセンスではなくて、IVFを行うライセンスなのでしょうか。 3つ目は、今まで違反した方はどの程度いて、どのような違反なのかを教えてくださ い。 ○マッカーシー局長  ライセンスを受けた産婦人科医は21人のうち3人、ピーター・ブロウディ教授、アラ ン・テンプルトン教授、デービッド・バロウ教授です。さらに関連分野の科学者のメン バーとなっています。クリスティン・ガーストン教授、デイマン・マクラーレンさん、 ヘンリー・リース博士、スー・レイバリーさんという胚の専門学者、一般開業医のサデ ィア・ムハメッドさん、ジョイン・デントンさんは看護婦で多胎財団の方です。ですか ら、21人のうち9人はこの分野に何らかの形でかかわっている専門家です。 そして、委員長と副委員長はこの分野の方であってはならないと法律で定められてい ます。例えば私の委員長は弁護士で、ほかにも弁護士の方はいらっしゃいます。それか らサイコセラピスト、さらにご自身で不妊を経験された方、ジャーナリスト、倫理学の 教授も司教もいらっしゃいます。 ですから、私たちは特定の分野の代表とはなっておりませんが、この分野に関してそ の経験のある患者、またクリニックなどの分野について多くの経験を持っている方たち です。 そして空白 (バキューム) もありません。例えば空白というのは、私どもはいろいろ な作業グループ、また公的・私的な審議機関もありますけれども、そこに専門家たちを 招いています。 エッグ・シェアリングのガイドラインをつくったときのことについて先ほども申し上 げましたが、エッグ・シェアリングのガイドラインをつくった経緯は私たちが活動して いるいつものやり方を一番よくあらわしていると思います。私たちは権限があるという ことは認識していますが、一番効果的に規制をするとすれば、やはり専門家を交えて行 っていくことだと思っています。 次に免許停止についておっしゃいましたが、とても難しい微妙な問題です。まず、私 たちは一人一人の医者に対してライセンスを与えるのではなく、センターやクリニック に対してライセンスを与えています。しかし、ライセンスを提供する場合にはクリニッ クで働いている人たちは要求された基準を満たしていることが要求されます。そしても ちろんすべてのクリニックにはこの分野を担当する人がいなければなりません。そのラ イセンスをもらう場合、あるいは再申請する場合、責任者となっている人がそこに働い ている人たちすべての履歴書を送ることになっています。 そして、クリニックが法律やガイドラインの規定に満たない行動をとった場合に課せ られる罰則は幾つかのタイプがあります。一番厳しいのがクリニックのライセンスを取 り上げることです。例えばライセンスに条件を課すこともできます。また、これまでの 責任者を変えて新しい責任者を任命するようにということも、免許停止にすることもで きます。そして一番厳しく取り上げてしまうこともあります。しかし、そこまでいくよ うなクリニックは実際に取り上げられる前に自分たちで行動を起こしてしまうことがあ ります。 何人がライセンスを取り上げられたかですが、例えば更新をしないということもある のですが、ライセンスにも幾つかの種類があり、ICSIなどもあります。そして、こ れを出さないということもありました。きちんとした専門知識が足りないからという考 えに基づいてです。研究のためのライセンスを更新しなかった場合もあります。という のは、法律で規定されている研究の基準を満たしていない、あるいは余りにも多くの胚 が使われ過ぎていると考えたからです。 私どもが免許を取り上げようとしていることを察知して、実際に治療をやめてしまっ たクリニックもあります。そして、クリニック全体のライセンスを取り上げてとめてし まった場合はほんの一握りです。しかし、ゼネラル・メディカル・カウンシルと緊密に 協力して一般開業医に関しても目を光らせています。そして、センターで働くべきでは ないと考えている医師のリストも持っています。ただしほかの医療行為はとめられるも のではありませんが、IVFを行うことはできません。 ○中谷委員長 それでは、最後に矢内原委員どうぞ。これが最後です。 ○マッカーシー局長  もう何時間でもお話しするのですが。 ○矢内原委員 質問をたくさん用意してきたのですが、今までの質問になかったことを2つお伺いし ます。 1つはHFEAの機構のことです。今もお話しのとおりよくわかりましたが、21人の メンバーの中でやらなければならないことは余りにもたくさんあると思うので、当然そ の中に下部組織があると思います。例えば登録や記録の保存、ライセンスの問題、調査 等々。そういうものがHFEAの下部組織としてあるのか、どこかのソサイアティーに 委託しているのか。細かい問題が起こったときにいろいろなアドバイスや、ワーキング グループをつくることはよくわかりましたので、下部組織はどういうところのだれがや っているかということです。 ○マッカーシー局長  メンバーの21人は方針やライセンスを提供するかの決定を行います。おっしゃったと おり、確かにやるべきことはたくさんございます。それに手をかすのがエグゼクティ ブ、執行メンバーです。そして、私がそのチーフエグゼクティブです。35人のフルタイ ムのスタッフと60名のパートタイムの調査官がおります。 そのエグゼクティブも幾つかの部門に分かれています。1つはライセンスを与える部 門、また政策などに関する部門、それにはコミュニケーションのディレクターも入って います。またIT部門もあります。また、いろいろなサポートをしてくれるところもあ ります。ですから、HFEAの日々の仕事、政策を実行するのは私のいるところであ り、また私のチームです。メンバーとは緊密な関係を保って協力しています。書類を準 備したり、さまざまな決定、また行うべき政策などについて日々、緊密に議論を重ねて います。 例えば私のスタッフの半分はこの分野で Ph.D.を持っている人、あるいはそれに関連 している分野の Ph.D.を持っています。私自身も法律関係を学んでいますし、ずっと政 府で働いていた上級国家公務員です。ですから、私は政府の機関はどうなっているかと いう知識も十分にあります。そして私も保健省の担当者と緊密に協力して、十分に考慮 しない結果対立することのないように話し合いを重ねています。  とは言いましても、先ほども申し上げたようにHFEAは独立した機関であり、必ず しも保健省とすべてが一致するわけではありません。もちろん意見が合わないときもあ りますし、そのように公に申し上げています。 ○矢内原委員  細かいことになりますが、ドネーションについて根本的なお考えをお伺いします。ド ネーションは未報酬、コマーシャリズムのないものであるし、匿名であることがドネー ションの1つの基本的な考え方であると私個人は考えております。ところが、特にエッ グ・ドネーションに関してもスパーム・ドネーションに関しても匿名性が保たれている のかいないのか、どちらがベースになっているかのお話がなかったので、例えば親戚を 連れてきてもいいというと匿名性がなくなるわけです。 ○マッカーシー局長  確かに提供者の名前がはっきりわかっている場合もありますが、それは非常に珍しい ケースです。クリニックが例えば兄弟間・姉妹間での提供をしようということであれ ば、確かにそこで身元がはっきりするわけで、そういう可能性もあります。ただし、ほ とんどの場合は匿名ベースで行われています。例外のあるときだけ身元がはっきりして いる場合があるのですが、現実にはすべて匿名ベースで行われています。 ○矢内原委員  匿名の場合の記録の保管期間の設定はありますか。 ○マッカーシー局長  データは50年間です。しまうところがなくなっているので現在マイクロフィルムにお さめているところです。 ○矢内原委員 最後に、時間がないのでこれは宿題として後でお答えいただきたいのですが、委員会 のメンバー、ワーキンググループとして、我々のベーシックの規約をつくるときの基本 的な概念を決めました。お渡ししている資料の中にもあると思いますが、例えば子ども の福祉を考えるなど6つぐらいの基本的な概念があります。これから一つ一つを決めて いかなければならないので議論中ですが、それに合わない例外的なことが起こってきて います。例えば謝礼の問題、匿名性でないことや親族の問題、日本の国民性としてでき るだけ血縁を望むなど、例えばこういうことが我々の基本概念の中で問題になるのでは ないかというご指摘を後日いただければありがたいと思います。 ○マッカーシー局長  一番最初に申し上げたことにちょうどぐるっと戻ってきたような感じですけれども、 どんなに優れた委員会であっても必ず何か目こぼしがあるところはあるんですね。だか ら、何もかも網羅しようとするのはやめた方がいいと思います。というのは不可能だか らです。 ○中谷委員長 最も適切なご指摘です。 ○マッカーシー局長  一番必要なのは、法律の中に何らかの裁量を盛り込むことだと思います。それによっ て、今後起きてくる出来事に対応できるように法律も発展していくことのできる形にし ておくことが望ましいと思います。重要なのは、たたき台を書くのに優れている人を選 び出すことです。そして、何らかの裁量がきくような形の言葉遣いをしてもらうという ことです。それによって、全く考えてもいなかったことが持ち上がったとしてもそれを 受け入れられる柔軟性が持てると思います。私どもも多くのことを経験しておりますの で、最後に1つだけご紹介したいと思います。 例えば、この法律の中では配偶子のことを定義付けてはいません。いつもこういうこ とが持ち上がるのは金曜日の夕方5時なのですが、あるクリニックから電話がかかって きました。2歳の男の子ががんにかかっていて、その男の子の睾丸の細胞を保管してい いかどうかと聞いてきたわけです。この法律のもとでは代理による同意は認めていませ ん。男の子はそういうことに同意するには余りにも小さ過ぎるので、両親が代わりにな ることはできないわけです。 しかし、HFEAは配偶子の定義を変えて…… ○通訳 皆様の方がおわかりなので教えていただければと思うのですが。 ○マッカーシー局長  HFEAは配偶子を未成熟の配偶子、つまりプレ・タナー・ステージ2。 ○通訳 タナーというのは人の名前だということですが。 ○マッカーシー局長  タナー前の段階の配偶子であると定義しました。 つまり、それによって親の同意だけがあれば十分ということになり、この法律があっ たとしてもこの法律によって保管することを阻止するものではありませんでした。思い がけないことが持ち上がってきましたが、このように対処しました。恐らく皆様も同じ ような目に遭われるものと思います。 ○中谷委員長 議論は尽きないところだと思います。現に石井 (ト) 委員からのぜひという質問もあ るようですけれども、時間がもう来てしまいました。 マッカーシー局長におかれましては、長時間にわたり大変貴重なお話をいただいてま ことにありがとうございました。イギリスにおける生殖補助医療に関する統一的な法規 制や管理機構についてご説明をいただきましたし、またイギリス・日本両国における生 殖補助医療をめぐる現状、問題点等について活発なご議論をいただきまして、有意義な 意見交換を行うことができました。 先ほどお話しさせていただいたとおり、この委員会では今年10月をめどに報告書を取 りまとめるべく鋭意議論を行っているところでございますが、本日の意見交換で非常に いいアドバイスを得まして、報告書の作成に当たって大いに参考にさせていただけるも のが多いことを感謝いたします。 最後に、本専門委員会での意見交換のために貴重なお時間をいただきましたマッカー シー局長に心から御礼申し上げて閉会とさせていただきます。ありがとうございまし た。 ○マッカーシー局長  ご参考になれば幸いに存じます。皆様のお仕事がうまくいかれますことを心より祈っ ております。 ○小林主査 本日は昼食を用意しておりますので、この場でしばらくお待ちいただければと思いま す。 次回の日程ですが、10月3日 (火) 午後3時15分から、場所が変わりまして商工会館 になりますので、よろしくお願いいたします。 照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課 03−5253−1111(代) 椎葉(内線:7933) 小林(内線:7940)