00/09/25 第4回シックハウス問題に関する検討会議事録 第4回 シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会議事録                       厚生省生活衛生局生活化学安全対策室      第4回シックハウス (室内空気汚染) 問題に関する検討会議事次第                 日 時 平成12年9月25日(月) 13:00〜16:45                 場 所 中央合同庁舎5号館共用第6会議室 1.開会 2.前回議事録の確認 3.議題   (1) 室内空気汚染に係るガイドライン (案) について   (2) 測定法目録及び測定・相談マニュアルの基本方針案について   (3) TVOCの空気質指針の策定の考え方について   (4) 指針値の適用範囲の在り方について   (5) その他 4. その他 ○吉田補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第4回シックハウス(室内空気汚 染)問題に関する検討会を開催させていただきます。 本日は、ご多忙中のところ、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本 日は、内山委員と広瀬委員がご欠席でございますので、合計8名の先生方で進めさせて いただきたいと思います。 まず、開催に当たりまして、喜多村生活衛生局企画課長からごあいさつ申し上げま す。 ○喜多村生活衛生局企画課長 企画課長の喜多村です。今日は、5時までの4時間ということで非常に長時間であり ますが、お集まりいただきましてありがとうございます。  前回までの検討会におきまして、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの3物 質の指針値を取りまとめていただきました。また、ホルムアルデヒドを含む4物質の測 定法につきましてもご検討をいただいたわけであります。これらは中間報告ということ で公表させていただいたわけでありますが、かなりの反響を、あちこちからいただいて いるわけであります。  そういうものを踏まえながら、室内環境の改善に貢献をしていきたいということであ ります。大変恐縮でありますけれども、お手元に大量な資料がありますが、一番最後の 1枚紙、参考資料6というところを御覧下さい。この会でご検討いただいた指針値をも とにいろいろな対策が立てられていくわけでありますけれども、政府部内、各省庁にお きましてもいろいろな対策を講じつつあるところであります。平成13年度の概算要求等 ということで若干ご紹介させていただきますと、私ども厚生省では、上の方から調査研 究、あるいは指針値等の策定、さらにシックハウスに関する情報収集、相談体制、これ は全く新規の要求であります。年金局では、年金住宅融資でシックハウス対応住宅への 条件改善ということを要求しております。また、保健所の設備整備事業、あるいは国立 相模原病院での施設の整備を進めるべく要求を行っております。他省庁におきまして も、大変関心を持っていただいておりまして、農林水産省、林野庁では、2番目にあり ますような木材利用技術の開発によるシックハウス対策、あるいは低ホルムアルデヒド 合板等製造整備への支援を行うということであります。また、通産省では、建材からの ホルムアルデヒドやVOCの放散量測定方法の標準化、あるいは建築材料におけるシッ クハウス対策ということで、表中にあります要求をいただいておるわけであります。ま た、労働省では職域におけるシックハウス対策の推進。建設省では、シックハウス対策 の建築技術面での開発というのが一つでありますし、また、欄の中ほどにありますよう な換気設備の設置を行う住宅、これにつきまして、シックハウス対応ということで住宅 金融公庫予算の拡充を行うこと。さらに、シックハウスに係る改修技術の開発等を行う ということで、それぞれ右欄にあるような予算要求等を行っておるわけであります。  こういった状況にあるわけでありますが、シックハウス問題は、先ほど触れました4 物質にとどまるわけではないわけであります。いろいろ問題とされております、その他 たくさんの物質がありますし、さらには、その総量といいますか、TVOCということ でのご検討も行っていただくということであります。  各先生方のご専門や豊富なご経験に基づきまして忌憚のないご意見を検討いただきま して、室内環境、保健衛生の向上に努めたいということでございます。本日、長時間で ありますが、ひとつ、よろしくお願い申し上げたいということであいさつに代えさせて いただきます。 ○吉田補佐 ありがとうございました。次に、第3回の検討会後に事務局の人事異動がありました ので、新しく生活化学安全対策室長になられました川原よりごあいさつ申し上げます。 ○川原生活化学安全対策室長  川原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○吉田補佐 ありがとうございました。それでは、座長の林先生、よろしくお願いいたします。 ○林座長  ただいまから第4回のシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会を始めさせ ていただきます。  まず、事務局の方から本日の配布資料の確認をお願いいたします。 ○吉田補佐 それでは、配布資料の確認をさせていただきます。お配りいたしました配布資料一覧 に沿って説明させていただきます。  まず、本日の議事次第でございます。続きまして、座席表でございます。次に、資料 1といたしまして『第3回「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」議事 録』でございます。次に、資料2といたしまして「室内空気汚染に係るガイドライン (案)について」でございます。次に、資料3「測定法目録及び測定・相談マニュアル 基本方針(案)について」でございます。次に、資料4「TVOCの空気質指針の策定 の考え方」でございます。そして、資料5「指針値の適用範囲の在り方」でございま す。  そして、参考資料といたしまして、まず、参考資料1の参考文献集、これは委員限り でございます。次に、参考資料2としまして、「エチルベンゼン、スチレン、フタル酸 エステル類、クロルピリホスに付いての測定法について」でございます。参考資料3、 これは測定法の目録粗案でございます。タイトルは「室内空気中化学物質の採取法、測 定法について」というふうになっております。参考資料4ですけれども、これは英語の ドキュメントでして、欧州委員会共同研究センター環境研究所「室内空気質とヒトへの 影響−報告書・19:室内空気質の検討におけるTVOC(1997) 」でございます。参考 資料5、これも英語のドキュメントですけれども、「快適な室内空気への権利について の報告書、WHO作業班、ビルトーベン、オランダ、2000年5月15日〜17日」でござい ます。参考資料6、ただいま喜多村課長の方から説明がございました「平成13年度シッ クハウス総合対策関係概算予算要求の概要」でございます。 以上が配布資料ですけれども、不備等がございましたら挙手をお願いいたします。よ ろしいでしょうか。  なお、本日はマスコミの方の頭撮りはありませんので、このまま進めさせていただき ます。よろしくお願いします。 ○林座長  どうもありがとうございました。続いて前回議事録の確認ということですけれども、 事務局の方からご説明をお願いいたします。 ○吉田補佐 それでは、配布資料1、前回議事録をごらんください。この前回議事録につきまして は、速記録をもとにして、事前に委員の先生方々には内容を確認いただいたものでござ います。特段の問題がなければ、この内容で確定の上、公開の手続に入らせていただき たいと思いますが、いかがでしょうか。 ○林座長  委員の先生方はもうお読みになったと思いますけれども、特に問題はございますでし ょうか。もしなければ、前回の議事録としてこの内容を確定させていただきたいと思い ますけれども、よろしゅうございますか。  どうもありがとうございました。では、これで確定させていただきます。 ○吉田補佐 ありがとうございました。それでは、この議事録につきましては、この後、厚生省の ホームページ掲載など公開の手続に入らせていただきたいと思います。 ○林座長  では早速、議事に入らせていただきます。  前回の検討会では、中間取りまとめとして、トルエン、キシレン、パラジクロロベン ゼンの室内濃度指針値と、これらに代表される揮発性有機化合物及びホルムアルデヒド の標準測定法を策定いたしました。次の課題としてエチルベンゼン、スチレン、クロル ピリホス、フタル酸エステルの室内濃度指定値の策定、それから測定法目録や測定相談 マニュアルの作成、第3番目に総揮発性有機化合物(TVOC)指針値の策定方法の検 討、4番目に指針値の適用範囲の在り方の検討を示したところでございます。  本日は、その各課題について、事務局での検討結果が提出されることになっておりま す。まず、議題1の「室内空気汚染に係るガイドライン(案)について」の資料2が配 布されておりますので、内容について事務局の方からご説明をお願いいたします。 ○吉田補佐 それでは、資料2ですけれども、「室内空気汚染に係るガイドライン案について−室 内濃度に関する指針値案−」についてご説明申し上げます。資料2をごらんください。  まず1、エチルベンゼンについては、マウス及びラットにおける吸入暴露に関する知 見から、肝臓及び腎臓に影響を及ぼさないと考えられる無作用量をもとに室内濃度指針 値を3.8 mg/m3 と設定した。スチレンについては、ラットにおける吸入暴露に関する知 見から脳や肝臓に影響を及ぼすと考えられる最小毒性量をもとに、室内濃度指針値を 0.225mg/m3と設定した。クロルピリホスについては、母動物が暴露された仔ラットの発 育に関する知見から、神経発達に影響を及ぼすと考えられる最小毒性量をもとに室内濃 度指針値を0.001mg/m3と設定した。フタル酸ジ-n- ブチルについては、母動物が暴露さ れた仔ラットの発育に関する知見から、生殖器の構造異常等に影響を及ぼすと考えられ る最小毒性量をもとに室内濃度指針値を0.22mg/m3 と設定した。以上が概要でございま す。 続きまして、個別の物質のリスク評価の結果につきましてご説明申し上げます。次に ページをごらんください。  まず、1としまして、「エチルベンゼンの室内濃度指針値案の策定」でございます。  (1) 発がん性に関してマウスとラットへの各吸入暴露実験において、マウス雄の肺腺 腫発生の増加、雌マウスの肝腺腫の増加、また雄ラットにおける腎腺腫と腺がんの発生 増加が報告されている。 (2) 工場でエチルベンゼンに暴露されている可能性のある作業者を対象にした2つの 調査では、発がん率や発がんによる死亡率が特に増加したという知見は得られておら ず、適正な評価を行うには不十分とされた。 (3) 変異原性に関して、細菌、酵母、昆虫細胞では陰性であったが、培養ヒトリンパ 細胞では弱陽性であった。シリアハムスター胚細胞では陽性であったが、in vivo では 微小核を誘発しなかった。 (4) 以上のことから、エチルベンゼンの発がん性については、実験動物においては十 分な証拠が認められるものの、ヒトにおいては十分な証拠がないと評価された。そこ で、指針値の策定には、その他の毒性指標を基に、耐容1日摂取量を算出して求める方 法が適当と判断した。  (5) エチルベンゼンは、動物及びヒトの中枢神経系に対する毒性と、鼻粘膜や目に対 する刺激性を示す。これらはヒトへの単回暴露の場合、430 〜860 mg/m3 を超えた場合 に現れる。 (6)Wistar 系雌ラットにエチルベンゼン0〜680mg/kg/dayを週5日6か月間経胃チ ューブにて投与した結果、408mg/kg/dayより肝・腎重量のわずかな増加や、一部肝細胞 のわずかな膨大等の変化が認められた。 (7) ラット及びマウスに、エチルベンゼン0〜4,300mg/m3を1日6時間、週5日、13 週間、吸引暴露した結果、3,225mg/m3より、マウスの雌雄において、用量相関性のある 肝臓絶対重量の増加が見られたほか、4,300mg/m3では、雌マウスの腎臓相対重量の増加 が観察された。雄ラットにおいては、3,225mg/m3より肝臓・腎臓の絶対及び相対重量の 増加が見られた。雌ラットでは、2,150mg/m3より肝臓・腎臓の絶対重量の増加が見られ たが、相対重量の増加は観察されなかった。いずれの場合もエチルベンゼンに関係した 組織学的変化は認められなかった。他の臨床化学検査にも異常は認められず、精子や膣 細胞にも変化は見られなかった。 次のページですが、(8) ラットの妊娠7〜15日まで600 〜2,400mg/m3のエチルベンゼ ンを1日24時間吸入暴露させた結果、2,400mg/m3で骨格形成遅延、肋骨数の増加、胎児 発育率の減少が見られた。懐胎ウサギの妊娠7〜20日までの500 〜1,000mg/m3のエチル ベンゼンを継続的に吸入させた場合には、1,000mg/m3で流産による胎児数の減少が観察 された。ラット胚をエチルベンゼン下で培養した実験では、用量依存的な肺の成長阻害 が認められたものの、催奇形成は認められなかった。 (9) 職業暴露に関する多くの疫学的調査が実施されているが、これらはエチルベンゼ ンを含む溶媒混合物への暴露を調査しているため、観察された異常がエチルベンゼンに 由来するものなのかどうか特定は困難である。なお、エチルベンゼン生産工場の200 名 の作業者を対象にした20年間の健康医学調査の実施されているが、血液学的な異常は観 察されていない。この際のマンデル酸濃度から推定したエチルベンゼンの最大暴露濃度 は86mg/m3 、平均暴露濃度は8.6mg/m3であった。 (10)ヒト暴露データからは、(9) よりNOELが8.6 〜86mg/m3 の間にあると推定される が、このデータからは用量相関性が導けないため、指針値の推定に用いることは適切で はない。(7) の動物試験においては、用量相関性のある毒性発言が認められており、リ スク評価では、このデータから無作用量を決定して指針値を求めることが適当と判断し た。肝臓重量の増加は病理学組織学的変化を伴っていないので、無毒性量は4,300mg/m3 よりも高濃度に位置すると思われるが、無作用量となる2,150mg/m3を指針値の計算に用 いることとした。1日24時間及び週7日に平均化し、不確実係数100 (種差10、個体間 差10) を考慮すると、エチルベンゼンの室内濃度指針値=2,150mg/m3×6/24×5/7 ×1/ 100 =3.8mg/m3と推定された。 次のページをお願いいたします。次に、2番目といたしまして、「スチレンの室内濃 度指針値案の策定」でございます。 まず(1) スチレンは各種試験系において、代謝活性化により変異原性が認められる。 その一次代謝物7,8-オキシド体は代謝活性化なしで変異原性を有する。しかし、用量・ 効果関係については、恐らく試験系の違いによるスチレンの活性化の差異等の原因によ って、一部の限られたデータにしか観察されていないことから見出されていない。 (2) 発がん性に関して、スチレンをO20マウスに経口投与した場合、1,350mg/kg体重 で、肺腫瘍の著しい増加を誘発したことが報告されている。また7,8-オキシド体をラッ トの投与した場合は、50〜250mg/kgの投与量にて細胞腺腫が観察され、また別の実験 で、1日当たり100 〜150mg/kgを週4〜5日投与した場合、細胞腺腫と肺腫瘍が誘発さ れたことが報告されている。ラットへの経口投与では、500 〜1,350mg/kg体重で腫瘍の 増加が認められなかった。スチレン7,8-オキシド体をラットに1日100 〜150mg/kg、週 4〜5日投与した場合は、前胃細胞腺腫と肺腺腫が誘発された。 (3) 高濃度のスチレンに職業暴露された作業者の末梢血リンパ球細胞の染色体異常が 報告されているが、因果関係は不明である。また、調査によりばらつきが非常に大き く、試験結果に影響を及ぼすその他の因子が多いことから、現時点での評価は困難とさ れている。 (4) 発がん性に係る幾つかの疫学的調査では、スチレンゴムを扱う作業者のリンパ系 癌等のリスクの増大を示唆しているが、因果関係は立証するに十分なデータは今のとこ ろ得られていない。他の物質との混合暴露という事情が評価を困難にしている。 (5) このようにスチレンの発がん性については、実験動物では証拠が見られているも のの、ヒトでは十分な証拠が得られていないことから、スチレンの指針値の策定には耐 容1日摂取量を算出して求めることが適当と判断した。 (6) 急性毒性に関して、ラットの経口LD50は5〜8g/kg 体重であった。またラット に5,460 〜42,000mg/m3 スチレンを1から4時間単回吸入させた場合、鼻粘膜及び目の 刺激や中枢神経系の抑制が見られている。 (7) 亜急性及び慢性毒性に関して、ラットに1,260mg/m3のスチレンを1日6時間、週 5日、11週吸入させた場合、脳内タンパク質の変性、腎臓及び肝臓の薬物代謝酵素誘 導、肝臓の組織学的変化、肝臓等のグルタチオン量減少が認められている。420mg/m3で はグルタチオン量の大きな減少は認められていない。 (8) 雌ラットへの経口投与では、肝、腎重量の増加のみが観察れれ、NOAEL は133mg/ kgであった。ビーグル犬に200 から600mg/kgのスチレンを19か月間経口投与した試験で は、用量依存的に400mg/kgより赤血球のハインツ小体の増加が認められ、また最低用量 200mg/kgでは雌のみに散見され、NOAELは200mg/kg体重であった。 (9) 生殖発生毒性に関しても、妊娠ラットの妊娠6〜15日に180 〜300mg/kg/dayのス チレンを投与しても母体や妊娠率に変化は見られなかった。ラットの3世代試験は、2 年間スチレン入り飲料水を投与して実施されたが、スチレン暴露と関係のある異常は認 められなかった。またマウスに1,130 〜1,260 mg/m3のスチレンを1日6時間、5日間 吸入させても、精子頭の異常の頻度に差は見られなかった。 (10)スチレンのヒト暴露に関して、健常ボランティアによる複数の暴露実験が報告さ れている。これらを総合すると、0.2 〜0.34mg/m3 から臭いによる不快感、420 〜840mg /m3から鼻腔粘膜や目の刺激性及びめまい・頭痛などの中枢神経系の症状、630 〜840mg/ m3から反応時間や行動、平衡感覚への影響が起こっている。 (11)ヒト暴露データからは症状が観察されたスチレン濃度のばらつきが大きく指針値 の計算に用いることは現実的ではない。したがって、(7) のラット11週の吸入毒性デー タを用いることとした。LOAEL が1,260mg/m3として耐容1日摂取濃度を計算すると、1 日24時間及び週7日に平均化し、不確立係数を1,000 (LOAEL10、種差10、個体間差10) で計算すると、スチレンの室内濃度指針値は1,260mg/m3×6/24×5/7 ×1/1000=0.225 mg/m3と推定された。 1枚めくっていただきまして、次のページをお願いいたします。3「クロルピリホス の室内濃度指針値の策定」についてでございます。 (1) 遺伝子毒性に関して、D.melanogaster雄において、0.717mg/m3 (吸入) 、0.05 mg/kg(経口) のクロルピリホスの投与によって、染色体損失の増加が誘発されることが 認められている。またマウス経口14日間投与では、赤芽球の染色体異常を増加させたこ とが報告されている。 (2) 発がん性を示唆するデータはこれまでのところ報告されていない。ラット及び ビーグル犬にクロルピリホス3mg/kg/day を1〜2年食餌投与した試験では腫瘍の発生 の増加は認められていない。 (3))ヒトにおいて変異原性や発がん性を示唆するデータは今のところ報告されていな い。 (4) これらより、クロルピリホスの指針値の策定には、耐容1日摂取量を算出して求 めることが適当と判断した。 (5) 急性毒性に関して、マウス吸入LD50が94mg/kg 、雌ラット吸入LD50が78mg/kg 、 ラット経口LD50が82〜163mg/kgと報告されている。 (6) 亜急性及び慢性毒性に関して、Fischer344ラットに0〜0.295mg/m3のクロルピリ ホスを1日6時間、週5日、13週間鼻腔投与した試験結果が報告れているが、0.295mg/ m3の用量でも呼吸器や肝臓、腎臓、全身体重、中枢神経系、生殖器、血液学的検査及び 生化学的検査等いずれも影響は認められなかった。 (7) 経口投与では中枢神経系以外の特記すべき影響は認められていない。中枢神経系 への毒性に関しては幾つかの報告がされている。Fischer344妊娠ラットの妊娠6〜15日 に投与した場合、3及び15mg/kg/day の用量で赤芽球アセチルコリンエステラーゼ活性 の著しい減少が認められ、155mg/kg/dayでは有機リン系化合物による中毒症状 (過剰唾 液、震え等) が観察された。しかし、0.1mg/kg/dayでは異常は認められなかった。 (8) 雌CF-1マウスに1〜25 mg/kg/dayの用量で妊娠6〜15日投与した場合、1mg/ kg/day より血漿及び赤芽球コリンエステラーゼ濃度の著しい低下が認められた。同様の 実験を0.1 〜10 mg/kg/dayを実施したところ、無影響量は0.1mg/kg/dayがあることが確 認された。 (9) 赤芽球及び血漿コリンエステラーゼ濃度の著しい低下は、1mg/kg/day を食餌投 与したSprague-Dawley雌雄ラットのF1及びF2にも認められたが、0.1mg/kg/dayでは変化 が認められなかった。 (10)鶏を用いた反復投与試験では、1日10 mg/kgを20日間投与、4週間の回復期間を おいて観察したところ、体重、脳重量、血中アセチルコリンエステラーゼの著しい減少 が認められ、また脳のアセチルコリンエステラーゼ活性が大きく抑制された。 (11)ラットに2年間食餌投与した場合、3mg/kg/day の用量では、いずれの測定時点 でも脳内アセチルコリンエステラーゼ活性の抑制が見られ、1及び3mg/kg/day の用量 では、血漿及び赤芽球アセチルコリンエステラーゼ活性の抑制は認められたが、0.1mg/ kg/day以下の用量では影響は見られていない。ビーグル犬に2年間食餌投与した結果で も、1〜3mg/kg/day の用量で同様の所見が認められている。 (12)生殖発生抑制に関して、7においては15mg/kg/day の用量で膣出血が観察され、 また(8) においては、25mg/kg/day の用量にて、母体の毒性影響と考えられる胎児の骨 格変化が認められているが、それ以外に特記すべき影響は報告されていない。 (13)ヒトでは、クロルピリホスの誤吸入によるアセチルコリンエステラーゼ抑制に由 来する中枢神経系の各種症例が報告されている。一方、慢性暴露に関してクロルピリホ スの生産に携わる作業者群175 人と有機リン系化合物の暴露経験のないコントロール群 335 人との間で疾病の発生の比較調査が実施されているが、特記すべき差は認められて いない。 (14)ボランティア成人男性を対象に0.1mg/kg/dayを9日、0.03mg/kg/day を20日経口 投与した試験が報告されている。前者では血漿コリンエステラーゼ活性が66%抑制され たが、0.03mg/kg/day では影響が見られなかった。 (15)本年6月に米国環境保護庁から直近のデータを加味したクロルピリホスのリスク 再評価の結果が明らかにされているが、その中では次の2つの新たな知見が報告されて いる。 (16)慢性毒性に関して、イヌ経口90日及び2年間の投与試験、ラット90日及び2年間 投与試験、ラット神経発達毒性試験の5試験の結果をweight-of-evidenseの考え方に従 って評価した結果、0.22〜0.3 mg/kg/day の用量で血漿及び赤血球コリンエステラーゼ 活性の顕著な抑制が認められ、無毒性量は0.03mg/kg/day と決定された。 (17)次に、ラット神経発達毒性試験に関して、妊娠ラットにクロルピリホスを投与し た結果、1mg/kg/day 群では出生後66日の雌仔ラットにおいて、脳外皮質の減少が顕著 な用量依存性をもって認められ、また5mg/kg/day 群では、雌雄仔ラットにおいて体重 及び体重増加率の減少、食餌摂取量の減少のほか、成長抑制、発達遅延、脳重量の減 少、脳の形態学的変化が認められた。一方母胎では、0.3mg/kg/day群にて血漿及び赤血 球コリンエステラーゼ活性抑制が、1mg/kg/day にて顕著な脳内コリンエステラーゼ活 性の抑制が、また5mg/kg/day 群では、筋線維束、過呼吸、過行動、体重増加抑制の所 見が認められた。最小毒性量が0.3mg/kg/dayと決定されている。 (18)これらの試験結果から、クロルピリホスは低用量でも新生児に影響を及ぼす可能 性があること、成熟動物と幼若動物でクロルピリホスへの反応性の明確な違いがあるこ と、クロルピリホスはコリンエステラーゼ抑制作用とは関係なく、脳発達に影響を及ぼ す可能性があること、また仔動物の無毒性量がが決定できていないこと、が指摘され た。 (19)そこでUS-EPAのFQPA(Food Qualirty Protection Act) 安全係数委員会は、 クロルピリホス暴露による新生児及び小児への影響を未然防止するためには、安全係数 10を維持しなければならないと勧告し、さらにその係数は、急性・慢性暴露や居住暴露 のすべてにおいて新生児、小児及び妊娠可能な女性に適用され得ると決定している。 (20) 以上のことから、クロルピリホスの指針値の推定においては、より直近のデータ によって低濃度での影響が用量相関性をもって明らかにされている(17)神経発達毒性試 験の結果を用いて計算することが適当と判断した。すなわち、LOAEL =0.3mg/kg/dayと して耐容1日摂取量を求めた場合、不確実係数1,000(LOAEL10 、種差10、個体間差 10) 、ヒト体重50kg、ヒト呼吸量15m3/dayとして、クロルピリホスの室内濃度指針値= 0.3mg/kg/day×1/1,000 ×50kg×1/15=0.001mg/m3と推定される。 (21)また、直近のデータの加味した5種類の長期投与試験データからNOAEL が決定さ れている16の結果を考慮した場合、NOAEL は0.03mg/kg/day として耐容1日摂取量を求 めると、不確実係数100 ( 種差10、個体間差10) 、ヒト体重50kg、ヒト呼吸量15m3/day としてクロルピリホスの室内濃度指針値=0.03mg/kg/day ×1/100 ×50kg×1/15m3/day =0.01mg/m3 と推定され、(20)と同値となった。 次のページをお願いいたします。次に、「フタル酸エステル類の室内濃度指針値の策 定」について説明いたします。 ○剣持専門官  続きまして、フタル酸エステル類の室内濃度指針値の策定に関する事務局案でござい ます。  初めに2点ほどお詫びとお断りを申し上げさせていただきたいのは、まず1点ですけ れども、フタル酸エステル類、これはもちろんここに挙げておりますフタル酸ジ-n-ブチ ル以外にもあります。これらについても、もちろん検討の対象とさせていただくわけで ございますが、今回は、フタル酸ジ-n-ブチルの提示となっておりますことを、申し上げ ます。 それからもう一つですが、これから申し上げます指針値の策定に関する考え方につき ましては、レファレンスとして、主としてWHOが出しております環境保健クライテリ ア、Environmental Health Criteria, EHCの189 巻、1997年に出ているものですが、フ タル酸ジ-n-ブチルに関する環境保健クライテリアを主体として、これから申し上げます 考え方が構成されていることについて、お断りさせていただきます。 それでは、フタル酸ジ-n-ブチルに関する室内濃度指針値の策定についての考え方でご ざいます。 ごく最近までのフタル酸ジ-n-ブチルに関する毒性研究報告について調査したところ、 以下のような結論を得た。 (1) 遺伝子傷害性については、細菌における変異原性試験が行われているが、陰性の 結果が得られている。 L5178Yマウスの lymphoma assayでは、非代謝活性化条件の最高用量で変異体の発現頻 度の増加が認められたが、当該試験そのものが偽陽性の結果が出やすいという特徴があ る。 チャイニーズハムスターのCHO細胞における娘染色体交換及び染色体異常は引 き起こされなかったものの、チャイニーズハムスターの繊維芽細胞において、非代謝活 性化条件で疑陽性の結果が報告されている。 マウスを用いたin vivo の小核試験では陰性を示しており、その他の遺伝毒性試験に おいても、概ね陰性の結果が得られている。  遺伝子障害性に関し、他に注目すべき知見を示唆する最近の研究報告は、特に見いだ されていない。 (2) 発がん性については、1年間実施されたがん原性試験データが2種類存在する が、いずれも腫瘍の発生は認められていない。  また長期間の投与に基づくがん原性については、試験が行われていない。  発がん性に関し、他に注目すべき知見を示唆する最近の研究報告は、特に見いだされ ていない。 (3) これらのことから、ヒトに対してフタル酸ジ-n-ブチルが発がん性であるとは明白 ではなく、遺伝子傷害性を示さないと考えられることから、フタル酸ジ-n-ブチルの室内 濃度に関する指針値については非発がん性影響を指標とし、耐容一日摂取量 (TDI) を求める方法で算出するのが適当と判断される。  (4) 一般毒性については、マウス及びラットに対する急性毒性は低く、一般的な行動 抑制、呼吸困難、運動調和の欠如などが認められている。ヒトに対する感作性が数例報 告されているものの、動物に対しては皮膚又は眼への刺激性はほとんどない。ヒトに対 する偶発的な大量暴露では、悪心、吐き気、めまい、それに引き続き、頭痛、眼の痛み 及び刺激、流涙、羞明、結膜炎が、症状として挙げられる。尿検査においても色調、潜 血などの異常が認められる。 (5) 短期間の反復投与毒性試験において、ラットの420mg/kg/day以上の用量で、経口 投与を行ったところ、ペルオキシゾームの急増と肝腫脹が認められている。 (6) いくつかの長期毒性試験が行われており、体重増加抑制、肝相対重量の増加、ペ ルオキシゾームの急増、肝臓の壊死性変化、精巣の酵素変化や胚芽細胞の変性などが認 められている。特に精巣への影響については種差が大きく、マウス及びハムスターでは 精巣影響の発現が弱い。マウスにおける最近の亜慢性研究において、体重及び臓器重量 への影響や、代謝によるストレスを示している肝臓の病理組織学的変化が報告されてお り、NOELは350mg/kg/dayとされている。 (7) いくつかの作業環境条件下における疫学的な調査が行われており、全般的な傾向 として、勤続年数が長くなるに伴い、疼痛や知覚異常などが次第に持続的になっていく 労働者が増大していることが示唆されている。 (8) 一般毒性に関し、他に注目すべき知見を示唆する最近の研究報告は、特に見いだ されていない。 (9) 生殖発生毒性については、ラットを用いた世代試験が行われている。対照群と3 投与群(66,320,651mg/kg/day) に対し、混餌投与が行われており、第一世代において は、320mg/kg/day群で、母動物における体重の毒性的な変動は認められないものの、仔 動物における体重減少が認められており、これは発生毒性影響であると考えられる。ま た、すべての投与群において、生存仔動物数の有意な減少が認められている。 一方、第二世代における影響はより重篤であり、すべての投与群において仔動物の体 重減少が認められた。また、320mg/kg/day以上で、陰核包皮又は陰茎の奇形、精細管の 変性、精巣上体の欠如又は発育不全などの構造異常が認められており,親動物には認め られなかったにもかかわらず、651mg/kg/day群において、精子形成能への重篤な影響が 認められている。これらの結果が示唆することは、フタル酸ジ-n- ブチルの毒性影響 は、成動物に暴露されるよりも、発達及び成熟期に暴露される方がより顕著なものであ るということである。当該試験結果からは、NOELは明確にならないものの、LOAEL につ いては66mg/kg/day と考えられる。 (10)生殖への影響に関する疫学的な調査が行われており、定量的なデータには欠ける もの、フタル酸化合物に暴露される女性については、対照群と比較して妊娠頻度及び出 産頻度が減少していることが報告されている。また、月経周期の変動などの生理的変化 も観察されており、フタル酸化合物の暴露による影響であることが示唆されているが、 定量的なデータに欠ける等により、因果関係等についての明確な結論を導き出すのは困 難と考えられている。 (11)生殖発生毒性に関し、他に注目すべき知見を示唆する最近の研究報告は、特に見 いだされていない。 (12)以上の知見から、ヒトに対するフタル酸ジ-n-ブチルの毒性影響を考慮する当たっ ては、ヒトの暴露に関する研究報告がより重要なものと考えられるものの、得られてい るデータが評価に足るものではなく、他にヒトでの研究報告が見いだせないことを踏ま え、上記(9)における生殖発生毒性が認められた66mg/kg/day がラットでの最小毒性量 (LOAEL)となる。 (13)不確実係数UFについては、種差として10、個体差として10、及びNOAELの代わり にLOAELを用いたことから10となり、これらを掛けると1,000 となる。 (14)LOAELをUFで割り算することによって66÷1,000 =0.066mg/kg/dayとなる。 (15)日本人の平均体重を50kg、一日当たりの呼吸量を15m3とすると、0.066mg/kg/day ×50kg÷15m3=0.22mg/m3 =220μg/m3となる。これをppm に換算すると、1mg/m3g= 0.088ppmですので、0.019ppmとなる。 (20)よって、生殖発生に基づき、フタル酸ジ-n-ブチルの室内濃度に関する指針値は 220 μg/m3、0.019ppnm と設定することが適当とされた。 以上です。 ○林座長  どうもありがとうございました。では、1、2、3、4のエチルベンゼン、スチレ ン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチルの順にご意見をいただきたいと思います。  最初のエチルベンゼンについて、資料2の最初のページの1の文書と、その次の指針 値の策定というところになります2ページのところの文書、これについて何かご質問と か、追加、コメントございませんでしょうか。 ○安藤委員  まず、第1のエチルベンゼンについてちょっとお伺いしたいんですが、(10)で不確実 係数を100 というふうにとられていますが、その前のページの(4)では、動物実験にお いては十分な証拠が認められているものの、ヒトについては十分じゃないということか らすると、この発がん性という評価を不確実係数に入れなかった理由は何でしょうか。 あるいはこれにいくつかを入れる必要はないんでしょうかということです。 ○吉田補佐 これにつきましては、初めの方の説明がちょっと不適切な点等があると思うのです が、こちらの方で文献等を調査した結果、まずヒトへの発がん性に関しては、今の段階 のところ証明されていないという点、また動物においても、どうも変異原性等で実際得 られてるデーターが弱陽性のものか、もしくはデータが得られていないということで、 データ上、完全に陽性であるというデータが得られていないという点から、これについ ては、遺伝子の傷害性はないものというふうに判断いたしまして、それで単純に耐容1 日量の計算ということで、個体間差10、種差10という形でとらせていただいておりま す。 ○林座長  その点に関連しまして、(3) 変異原性のところを見ていただきます。これは陽性であ ったという点だけが強調され、大部分の試験系では陰性であったということが余り書か れてません。そこのところを詳しく書いていただき、ごく特殊な系に極めて弱い陽性結 果が得られたことが書いてあれば、お読みになる方は、この物質には有意な遺伝子傷害 性がないと判断していただけることになると思います。発がん試験においてみとめられ た腫瘍が自然発生のものが多いことを考慮に入れたことを含め、書き込みを少し変えて いただいた方がいいと思いますね。 ○安藤委員  私もそうしないと、そういう疑問が出てくるかなというふうに思います。 ○吉田補佐 この検討会の、この部分に関しましては、専門の先生方ともう一度相談して訂正等を したいと思っております。 ○林座長  お願いいたします。  その他に何かございませんでしょうか。 エチルベンゼンの(2) のところでは、2つの調査とも、調査の規模、方法等の理由で 適正に評価できるデータはないということを指摘していただいた方がいいかなと思いま す。 他に何かございませんでしょうか。 ○櫻井委員  エチルベンゼンの投与量0〜680mg/kg/日 とか、0〜4,300mg/m3 というふうに省略し て書いてありますが、やはりレベルは、それぞれ中間の投与量をきちっと書いておいて ほしいと思います。 ○林座長  その方がよろしいと思います。 ○吉田補佐 そのように後で訂正させていただきます。 ○林座長  櫻井先生、(9)の疫学データの方はこのままでよろしゅうございますか。 ○櫻井委員  疫学上のデータは、こういう判断に使えるようなものは、今のところまだないと思い ます。 ○林座長  他に何かございませんか。  では、このエチルベンゼンのところは、委員の先生方、あるいはお休みの委員の先生 方のご意見を入れて修文させていただいて、第1ページの1.のところの結論で、室内 濃度指針値を3.8mg/m3と設定したという、このことはよろしゅうございますか。これは よろしいですね。 ○櫻井委員  一つちょっと気になりますのが、まだ十分見ていないんですけれども、妊娠ラットに 100ppm程度の暴露で、過剰肋骨というのが発生したという報告が引用されているのを見 たことがあります。それはハーディンら、1981年というのがあるんですが、確認してい ないんですけれども、ここには引用されていないんですね。今日、書いてくださった、 ラットで100ppmというと400mg/m3ぐらいでしょうか。これは1日6時間、週5日の暴露 で過剰肋骨というんですか。 ○林座長  そうですね。 ○櫻井委員  増加が認められたというのが、もし正しいとすると、少し無作用量が、あるいは、そ れが最低毒性量(LOAEL)というようなことになってしまうと濃度の評価が変わってくる と思うんですが。ただIPCSでエチルベンゼンが1996年に評価されているので、その あたりも十分評価した上で出ているかどうか、確認する時間がなかったんですが。 ○林座長  IPCSがそれを取り入れていますか。 ○櫻井委員  じゃないかと思うんです。どうでしょうか。 ○吉田補佐 ちょっと確認したいのは、今、先生がおっしゃった試験は、(8)とは別の試験でござい ますよね。 ○櫻井委員  ええ。(8)は24時間連続吸入になっていますね。ハーディンという人は、原文を当た っていないんですけれども、私が今見ている資料ですと、24時間でなくて、1日6,7時間 反復投与と書いてあるんです。ですから、確認しないといけないなと。 ○吉田補佐 それにつきましては、テキストに反映させるのをちょっと省いてしまっているかもし れないんですが、参考資料の1でお配りしました資料の最初にエチルベンゼンのIPC SのEHCのコピーがあると思うんですが、これの62ページに該当するところ、ちょう ど資料の3枚目に該当するところなんですが、ここの7の5のReproductive toxicity, embryotoxicity and teratogenicity のところで出てきているデータのことでございま しょうか。今おっしゃったハーディンさんという方は1981年という形で引用されてござ いますが。 ○櫻井委員  ハーディンというのがありますね。このincidence of extra ribs が有意に増加し た。それで濃度が430 あるいは4,300mg/m3、1日6ないし7時間と書いてありますでし ょう。これを評価しなくていいのかどうかということなんです。 ○吉田補佐 IPCSのHCの方では、このデータは一応この形で述べられているんですけれど も、リスク評価のところではこのデータは使われておらず、ここの本文の方で示しまし た(7)の動物実験のデータをもとにして算定されております。 ○櫻井委員  そこがよくわからないんですね。 ○林座長  今の過剰肋骨というのは奇形ととるか、1つのバリエーションととるかということで 考えが違ってくると思うんですけれども、非常に弱い場合、しばしば有害影響ととらな い場合があります。IPCSの文書ではなぜそれを落としたかの記載がありましたでし ょうか。 ○吉田補佐 私の記憶では、どれについての記載はございませんでした。 ○林座長  そうですか。それは多分バリエーションとみなして評価には加えなかったのかもしれ ませんね。 ○吉田補佐 これについてはもう一度確認して、また後で先生と相談したいと思います。 ○櫻井委員  生殖毒性絡みのことについて専門家のご意見も。私はそれ以上判断できません。 ○林座長  そうしますとエチルベンゼンにつきましては、修文はかなり必要ですし、今の問題は もう一回専門の先生にチェックしていただくということでよろしゅうございますでしょ うか。 ○安藤委員  これは、いわゆるリスクアセスメントという考え方からすると、用量反応評価の段階 ということなんでしょうか。暴露評価というのはここには全然出てきていませんが、平 成9年、10年にやったデータからすると、一体どのぐらいオーバーしているものがある かとか、そういうことは考察されないのでしょうか。 ○吉田補佐 特にそういう観点からの考察はしてございません。ただ、EHCの方のまとめを見て おりますと、動物試験データから得られたリスク評価の指針値と、実際の職業暴露も含 む疫学的調査で大ざっぱに得られている暴露濃度みたいなものを比較したときに、十分 な安全計算が確保されているというふうに結論されております。ですから、今回のこち らの方で算定しました指針値と、厚生省の方で行ったデータの関連については特に考察 はしてございません。 ○安藤委員  するつもりはないということでしょうか。 ○吉田補佐 するつもりがないといいますか、ただデータ的には、こちらの記憶では、特にこの 3.8mg/m3というのは非常に高濃度だと思うんですけれども、これを超えるような事例は なかったものと記憶しております。 ○林座長  どうもありがとうございました。 ○櫻井委員  確かに3.8mg/m3 というのは高濃度でもあるわけです。先ほどのような100ppmで過剰肋 というのをどういうふうに評価するかというのは、いろいろな考え方があるとは思いま すけれども、やはり、余り軽く見てはいけないんじゃないかというふうに思います。 ○林座長  WHOではどの程度に評価されているわけですか。 ○吉田補佐 WHOの方では、実はこれよりも大きくて22mg/m3という数値だったと記憶してござい ます。ここでちょっと数値が違っているのは、使っているデータは一緒なんですけれど も、WHOの方の数値の算定の際においては、この動物試験の実験条件、すなわち1日 6時間、週5日という条件を、1日24時間で週7日の平均化の補正を行っていないとい う実情がございます。その場合は先ほど説明しましたように、実際に疫学データから得 られているデータと比較しているうちに、その補正をしなくても十分な安全値が確保さ れているということで、そういう数値が得られているものと理解しております。ただ、 ここでは、一応この動物試験データから、この総濃度指針を推計するということで、き ちんと不確実係数によって補正するという当時に、きちんと投与期間の補正というのも させていただいております。その関係でWHOの指針値とは少し低めになる値に算定さ れております。 ○林座長  WHOの大体5分の1以下となっているわけですね。  ほかにエチルベンゼンについてございますか。 ○土屋委員  先ほど安藤委員からの質問にもありましたように、今回の場合は毒性評価のみでその 数値化をされていると思うんですけれども、この場合、結構高濃度の数値が出たという ことで、これだけでガイドライン値としてそのまま評価していいかというのは、やはり 現実的な暴露評価とか、そういうものを考えた上で評価する必要があると思います。た だ、コメントです。 ○池田委員  今ごろこんなことを言うのはおかしいかもしれないんですけれども、そもそもこのガ イドラインがどういうものかということですね。知見がない限りいくらでもよくなって しまうというこの論理をもってきますと、知見がなかったらガイドライン値は100 %で もいいという話になってしまいますので、その辺のことも含めて、このガイドライン値 というのはどういう性格のものなのか。これを超えては絶対いけないものなのか、それ とも目標とするものなのかとか、その辺のことを考えてガイドライン値というのを設定 しないと、知見がないものは結構高い濃度でも、それ以上わからないんだからしょうが ないでしょうという話になってしまうのは少しまずいんじゃないか。やっておられる方 が高濃度だと思いつつも、知見がないからというのは少しまずいかと思いました。 ○林座長  事務局の方、その点はどうですか。 ○吉田補佐 まず、この指針値につきましては、最初に、3物質の指針値を決めるときに説明して いますとおり、この濃度以下であれば、通常であれば健康影響は起きないであろうとい う値を示しているものでございまして、特に法的な規制をもって、これをしなければな らないという指針値では現状のところございません。ただ、こういう指針値を示すこと によって、これ以下に確保できれば、そういった可能性のある健康影響は概ね防げるで あろうし、かつ快適な室内環境が保証できるであろうというような指針値を示している ものでございます。  あと、先ほどの暴露との関係ですけれども、基本的に、もし例えば逆にこういった得 られた指針値と実際の暴露条件を比較したときに、実際の暴露量よりも逆転している ケース、この場合は3.8mg/m3 というふうに指針値を設定して、実態調査等の結果で得ら れている数値は、これよりもはるかに下の濃度であるわけですので、まずこれを超える 数値はないであろうというふうに予測はされております。そのときの判断にもよるんで すけれども、常に実際の暴露データ等を得られて、その指針値、そのときに得られてい る健康影響等の実態、あと実際の動物の試験の結果で得られているデータ、これらから 見て、一番科学的に説明できて、かつ妥当性のある指針値の制定というものが多分望ま れるのではないかというふうに考えております。  そこで、今回の場合におきましては、確かに実際の暴露の実態からすると、これは非 常に高濃度ではあるんですけれども、少なくとも、この濃度であれば毒性学的見地から 見た場合には影響は起きておらず、かつ疫学的なデータから見ても、これは十分な安全 が確保されているということで、この数値を見積もった次第でございます。そこは適宜 こういう形で指針値の設定をこれからもしていきたいというふうに考えております。 ○林座長  いかがですか。 ○喜多村企画課長  先ほどの池田先生の質問ですけれども、補佐からもお答えいたしましたが、これは法 的な基準値ではなくて、指針値となっていることころが一つのみそであります。これで あればいいであろうということで数字をつくって行っていくわけであります。そのうち また、いろんな知見が出てくるであろう。そういたしますと、また新たな数値をつくっ て、もう少し厳しくしようではないかという合意を得ながら対策を進めていく。これが 現時点での考え方であるというふうに私どもは考えております。 ○林座長  どうもありがとうございました。土屋先生いかがですか。よろしゅうございますか。  では、次のスチレンに移らせていただきます。最初の文章とスチレンの指針値の策定 のところの文章です。これも先ほど安藤先生が言われたとおり、遺伝子傷害性について は事項を必要に応じてデータを入れるなど、少し訂正加筆していただいた方がよろしい ですね。  その他何かございませんでしょうか。 ○荒記委員  スチレンに関しましては、職場の産業中毒としては非常にたくさんのヒトのデータが あるわけです。特に最近でも注目されておりまして、特に神経系及び精神、あるいは行 動の影響、最新のオリジナルなペーパーとしても、かなり基本的なものがいくつか追加 されているわけです。今回のこの要約の中で、多少関連しているとは思われるところ は、(3) の職業暴露されたところですが、ただ、そこは染色体異常しか書いていないわ けです。それから次のページの(10)ですね。これはヒトの暴露に関しまして書いてあり ますが、ただ、これは健常ボランティアの例として書いてあるわけです。ここの読み方 なんですけれども、それぞれの数値が書いてある。例えば、鼻腔粘膜や眼の刺激性、及 びめまい・頭痛などの中枢神経系の症状、さらに反応時間や行動、平衡感覚への影響と 値が書いてあります。これは要するに健常ボランティアのデータと読めるんですが、こ の測定値の中に職場のデータ、特に神経、行動、眼の影響の文献も網羅されているんで しょうか。 ○吉田補佐 これは先ほどのエチルベンゼン同様にIPCSのエンバイロメント・ヘルス・クライ テリア(EHC)のリスク評価を参考にしてまとめたものでございます。したがって、ここで 言っている(10)につきましては、当然、今、先生がおっしゃったような職業曝露につい ての記述、あと一部の健常ボランティアに関する記述等もございまして、ここに書いて いる数値の幅は両方を総合した形というふうに理解しております。  初めの職業部分の方に戻るんですけれども、これにつきましては、先生おっしゃった ようにEHCの方でもかなり触れてございます。ただ、問題なのはスチレン単独のデー タが1個もないというのが非常に難しいところでして、必ず混合曝露のデータになって しまうというところが一つ問題であります。したがって、それに関してスチレンのデー タという形で評価することが非常にできにくいということがございまして、そこはその 旨、EHCの方にも記載された経緯がございます。そこで今回は、この程度に記載をお さめているという事情がございますことをご理解ください。 ○荒記委員  そうするとEHCの文献というのは、文献引用の何番目に当たるんですか。引用され てないんですか、されているんですか。 ○吉田補佐 これはEHCしか書いておりませんが、参考文献の1番でございます。 ○荒記委員  1番ですか。これは例のEnvironmental Heaith Criteria、IPCSのもので、これは 文献が非常に古いわけです。出たのが1983年です。ですから、このスチレンの研究はそ の後多数出ているわけでして、もっと最近のデータを入れないと、これだけではいろん なところから反論が出ると思います。 ○林座長  スチレンについて取り入れるべき最近のデータがありましたならば教えていただけま すか。 ○荒記委員  これは櫻井先生も関係しているんですが、労働省が委員会をつくりまして実態報告書 をまとめたわけです。それを参考にしていただければ、基本的な文献は網羅されている と思います。私どもも、論文を最近出しておりますし、その中に含まれております。 ○吉田補佐 ちょっと確認させていただきますと、それはスチレン単独のデータでございましょう か。 ○荒記委員  そこは疫学的な解析の難しいところなんですが、例えば、スチレンと他の物質の混合 暴露があった場合も疫学的な解析、特に産業医学や労働衛生の場合では、果してスチレ ンの影響がどの程度あるのかどうか、それはちゃんと考えながらやっています。これは 疫学的な研究の基本でございますから、混合暴露があった場合でも、そのうちの、特に スチレンの影響があると考えられるのかどうか、少なくとも原著論文に当たった場合に は明確な判断がされているわけです。その上でスチレンの影響もかなりあると、特に神 経系あるいは高次神経系にあるというデータが多数出ているわけです。 ○櫻井委員 荒記先生のご意見に全面的に同意しているんですが、最近、世界各国、私どもの日本で も、スチレンの労働環境の許容濃度が100ppmぐらいからだんだん下がってきていて、最 近20ppm ぐらいまで下がってきている。そこには1900年代のデータが使われておりま す。20ppm がNOAEL とLOAEL の中間ぐらいという感じなんです。これをLOAEL とする と、時間の補正をして大体4分の1ぐらいにすると5ppm ぐらい。それから個人差の問 題で0.5ppm、さらにLOAEL からNOAEL補正で0.05ppmぐらいというと、今示しておられる 数値と大体一致するかなとは思いますが、一応そういった文献がたくさん出ているのを 無視してこれを出すと、ちょっと問題が生ずる可能性があると思います。 ○林座長  どうもありがとうございました。指針値の値としてはほぼ一致するけれども、やはり その背景のデータについては少し補強をということですね。 ○櫻井委員  データもちゃんと使ってした方が信頼性が増すと思います。 ○吉田補佐 後で文献等を入手いたしまして反映させたいと思います。そのときはよろしくお願い いたします。 ○林座長  どうもありがとうございました。他に何かございませんでしょうか。 ○安藤委員  ヒトのデータがあれば、それに越したことはないんでしょうけれども、(11)で結論的 に、(7)のデータのLOAELを用いて云々した。(7)というのはラットですが、そうすると (8)にはNOAEL が出ているのですね。ただ、これは経口投与で、前のは経気道的な暴露と いうことにはなるんですが。このNOAELが出ている、これについては、コメントはしなく てよろしいんでしょうか。それは、経気道が優先という考え方でいくということです か。 ○林座長  いかがですか。大体普通はヒトでの暴露経路に一致したものを優先するということに なっていますけれども、これは低い値になっていますか。 ○吉田補佐 これはたしか(8)の数値を使って計算いたしますと、この0.225mg/m3 より大きくなる のではないかと思っております。その関係で(7) 番のデータを使ったという経緯がござ います。 ○安藤委員  ということがわかればいいんですが、これだけ単純に見ると、なぜ高い方を使ったか という評価にもなってしまいます。 ○林座長  他に何か。 ○土屋委員  先ほどの話で聞いていますと、どうも作業環境の濃度レベルと数値が同じぐらいだと いうお話ですけれども、これもあくまでも、こういうようなデータ上の評価から出てき た数字だと思うんですけれども、一般の室内環境として作業環境の濃度で同じだという レベルがいいかどうかというのはどうでしょう。例えば乳幼児とかも暴露されるわけで す。そういうことから考えるとどうなのかという疑問が残るんですけれども。 ○櫻井委員  作業環境で20ppmぐらいのものを0.05ppm まで下げています。つまり、その過程で、ヒ トの個人差の問題で10分の1にしていますし、それから暴露時間を1日8時間、週5日 というのを、1日24時間、週7日に換算して、しかも20ppmぐらいでも過去のデータが蓄 積するに従って許容濃度というのは下げられてくる傾向がありますから、ぎりぎりです ので、そこでまた10分の1にしちゃって、それで計算すると、これと一致するというこ とを申し上げているんです。 ○林座長  作業環境が同じだとおっしゃったのではなくて、作業環境から室内での濃度を計算し たら同じだと、そういうことですか。 ○櫻井委員  それは500 分の1になっているんですね。 ○林座長  500 分の1だったですね。他に。 ○池田委員  先ほどの安藤先生のご質問に関連するんですけれども、ここの原則は、経口投与と吸 入したのと両方のデータがあった場合、吸入の方のデータを優先するんでしょうか。そ れとも計算して少ない方を優先しているんでしょうか、どちらなんでしょうか。 ○吉田補佐 両方の原則があると理解しております。まずは基本的に得られるデータから可能性があ る数値を算出して、できるだけ低い数値をとるというのは安全サイドに立ったやり方と 理解しております。あと、吸入と経口を考えたときに、実際は室内で暴露される状況と いうのは吸入の方が中心になるとは思うんですけれども、ただ、その際に経口で得られ ているような特性が吸入と同程度に評価できるような場合、そういうケースの場合で、 かつ経口の方でより安全サイドに立った数字が算出できるというような場合には、経口 の方のデータをとるということも可能と考えております。それは得られている毒性の種 類によって多分違ってくるのではないかというふうに理解いたします。 ○林座長  他に。 ○安藤委員  これは他からの暴露は考えないんでしょうか。水道水でも監視項目に挙がっているか なと思うんですが。つまり、いろいろな寄与が考えられて、経気道的な暴露を100 %と いうふうに考えるか、あるいはそのほか経口的な暴露として、食品だとか水だとかいく つかあるわけだと思うんですが、それを考えないのかどうなのか。そうすると、寄与率 が例えば50%ならば、50%に対して何かを考えなきゃいけなくなるし、そこの考え方は どうしたらいいかということです。 ○吉田補佐 それは、環境全体を考えたときには、そういった水系、もしくは大気系、いろいろと あると思うんですが、そういった各寄与率というのも考えて、全体の数値というのを考 える必要があると思うんですが、これはあくまで室内環境ということに限って、その中 でより安全サイドに立った数値を出すという前提でやっておりますので、今回に関して はそういった寄与率等は考えておりません。一応ここに得られた数字は、全部室内空気 中からの曝露によって起こるという前提で計算しております。 ○田辺委員  今のこと関して、後ろの方にかかわるのですが、例えばフタル酸などであれば、沸点 が高く、室内で吸着しているものはかなり多いとしますと、気中濃度を測ってもかなり 低い値になるのではないかと思います。安藤先生がおっしゃるように、そういったもの が、口から入ってくることも考えられるので、食物とか水だけではなくて、室内由来の ものもかなり影響があるような気がします。そういったものに関してはどういうふうに 考えられているんでしょうか。 ○吉田補佐 今回こういった形で算出している指針値の考え方においては、ある動物の吸入なり経 口なり、こういった毒性があって、それにもとにして必要な安全係数等で補正した上 で、より安全サイドに立った数値を出しているので、得られた数値はあくまで室内濃度 に換算した値という形で出しておりますけれども、少なくとも、これについてはそうい った形での暴露も含んだ形で評価しているものというふうに理解しております。ですか ら、もしそういった室内空気中だけではなくて、接触とかそういったところからの経口 みたいな暴露の可能性がある場合には、こういった空気中濃度だけで示すのではなく て、その前の段階の、いわゆる体重当たりの用量という形のものを併記して出すのも一 つの方法ではないかと思っております。  ただ、あくまでこれは室内空気の汚染ということで指針値を出すという前提でやって おりますので、一応その前提としては室内濃度に換算した値で出しているという経緯が ございます。ただ、これはあくまで異なっているデータは、対照当たりの用量という形 で示された量をベースに計算しておりますので、その段階で今おっしゃったような暴露 は考慮されているというふうに考えております。 ○林座長  よろしゅうございますか。  他になければ、次のクロルピリホスに移らせていただきます。  濃度指針値は0.001mg/m3となっていますが、この値を導いた方法についていかがでし ょうか。 ○石川委員  ここの文の中で二、三、直しておいた方がいいかなと思うことがあるんですが、クロ ルピリホスの室内濃度指針値の策定の(3) 番ですけれども、「ヒトにおいて、変異原性 や発がん性を示唆するデータは今のところ報告されていない」、恐らくこれは参考資料 のデータの中から、そういう結果が出てきたんじゃないかと思うんですけれども、Geno toxigenicity from domestic use of organophosphate pesticidesで、JOEMの1998 年にLiebermanが、domestic use、要するにシロアリの駆除だと思うんですけれども、 DNAダメージ、それからchromatid breakage、それからchromosomeのalterationsとい う論文が出ております。これに7,8例が出ているんですが、実際に患者で何ppmふれて、 どのぐらいの反応が出たというのを正確に出す、つまり、人間ではdose dependent cur veを出すのは非常に難しいので、そういう文献があるということを書いておかれた方が いいんじゃないかと思います。 それから、もう一つは(7)でございますけれども、「経口投与では、の中枢神経系以外 の特記すべき影響は認められていない」というのがあるんですが、これは先ほどいただ いた参考資料1の44ページには、neurotoxicologcal effectがあると出ている。こうい うような、いろいろな毒性が一体人間の場合どのぐらい飲んだというdose-dependenceを はっきり出すのは自殺者位しか無理なんです。そういうわけで、ある程度類推しなが ら、今回、非常に苦労されてデータを出してきていることはよくわかっていますけれど も、やはり中枢神経の影響のうち、眼毒性についても、最近GellerがInvestigative Ophtalmologyに眼毒性を書いています。それはどういうことかというと、人間の目は生 まれたときすぐふさぐと目の軸が伸びて近眼になるんです。そのなり方の発育がクロル ピリホスをやると、眼軸の発育が抑えられてしまう。そういうデータがはっきり出てい ますので、それもぜひ引用しておいた方がいいかなと思うんです。  さっきからいろいろディスカッションがあったんですが、人間のデータというのは動 物実験と全く違いますから、何ppmやったらどういうふうになるというのがクリアカット に出ない。それは個体差もございます。症状の発現は千差万別です。最近は有機リン解 毒酵素の遺伝子分析もはっきり行われるようになってきました。パラオキソネースとい う一種の酵素の分析もかなり行われてきました。これによって3群か4群に分かれ、あ る群は非常にやられやすいし、ある群は非常にやられにくい。そういうような遺伝子分 析がつい最近湾岸兵士の分析の文献にも出ていますので、そういうことをよく考慮しな がら、ここのところは書いた方がいいかなと思っている次第です。ご存じのとおり、米 国では、非常に厳しく、このクロルピリホスに関しては登録をほとんど取り下げるとい うアクションをとっていますので、日本のデータもやはりきちんとした目途を持ってや っていただきたいと思います。 ○林座長  どうもありがとうございました。そうしますと、先ほどの遺伝子傷害とか発がん性等 の問題で、これも(1) 、(2) 、(3) のところを少し詳しく書き込んだ方がよろしいです ね。もう一つは、今、石川先生がおっしゃったヒトの発生毒性の問題、これは動物の発 生毒性の問題で後ろの(17)に出ております。  他に何かございませんか。 ○安藤委員  先ほどと同じような質問で申しわけございませんが、最後の(21)番の結論が、(16)の データを引用して云々というふうに書いてございます。つまり、これは経口暴露のデー タですね。このクロルピリホスは蒸気圧は非常に高いので、なかなか吸入実験はできな い。だからデータとしてはないということだと思うんです。ここでも2つぐらいしか吸 入暴露の実験がないということなんですが、吸入暴露の時の寄与率の問題について何ら か考えなくていいのかなという、若干の疑問があるんですが。特にアメリカなんかはク ロルピリホスについては、ある雑誌によれば毎月出ているというぐらいしつこく出てい るものですし、そのあたりの評価、経口暴露しかデータがない場合、それを経気道的な ときにどう評価したらいいんだろうか。あるいは寄与率について全然考えなくていいん だろうか。経口暴露で吸収されるよりも、これは有機リン系ですから、むしろ体内の吸 収率というのはものすごく高いんじゃないかという気がするんですが、いかがでしょう か。 ○石川委員  安藤先生のおっしゃるとおりで、人間の場合を考えてみますと、空中散布というもの はクロルピリホスは余り使われないわけですけれども、畳から上がってくるとか、床か ら上がってくるとか、これは全部経口ではなくて吸入ですね。ですから、そのあたりの データはぜひ欲しいし、直接肺胞から入ってしまいますので、消化管を通るのとは大分 違うということで、ぜひそのあたりを教えていただきたいと思います。 ○吉田補佐 考え方は先ほど説明したと同じことになってしまうんですが、このクロルピリホスの 場合につきましては、一応直近のデータということで、この(17)番の試験が挙げられ て、これによって向こうのEPAの方でも、このデータをもとに再評価がされていると いう経緯がございましたので、それに従っている次第でございます。 ○林座長  これは吸入でも、経口でも、もし標的が中枢神経であるとすれば、どこの経路でもい いわけですけれども、ただ、経口から吸入での影響を類推する場合には、どうしても先 生がおっしゃった吸収率を少し考慮しなければいけないので、もしそのデータもあれば 追加していただいた方がいいと思います。 ○石川委員  もう一つ追加したいんですが、フェンチオンなどで私たち大分実験をやったんですけ れども、背筋へ注射するということをラットでやるんです。例えば、50mgをただの1回 背筋へ打つ。そうすると中毒のいろいろな現象というのは50日ぐらい続くわけです。論 文は外国、Environmental Researchに書いていますけれども、それが今度は経口で50日 やると全く反応が違って出てきて弱いんです。ですから、吸入実験でやるともっと強く 出る場合もあるし、弱い場合もあるんです。それは蒸気圧とか吸入率などいろいろな問 題があるのかもしれません。けれども、そういうルートによって生体反応は違うので、 ぜひそれも考慮していただくとありがたいなと思います。 ○林座長  先ほどの例はLOAEL からNOAEL を推定する場合および種差と個体差を補償する場合の 不確実係数の問題で、石川委員のご意見は投与ルートの問題です。この他に子どもの中 枢神経系の影響ということも問題です。脳の形態変化を伴うというような影響は非常に severityが高いということなので、今の投与ルートの違い、それから影響のseverityと いうことで、もう一つ、セーフティファクターを上げるというような、対応が必要で す。事務局の方からこの点についてもう一度ご説明いただけますか。 ○吉田補佐 これにつきましてはちょっと説明が欠けておるんですけれども、ここで示しておりま す0.001 mg/m3という数値は、NOAEL0.03mg/kg/日 もしくは、LOAEL を0.3mg/kg/日 とし て計算した値でして、これはUS−EPAの再評価における、いわゆるgeneral popula tionを対照にした場合の数値ということに該当いたします。ところが、直近のUS−E PAの再評価によりますと、このgeneral populationのほかに、いわゆる小児を対象に した数値というものが併記されてございまして、これに関しましては、一桁少ないもの というふうになっております。これは今、林先生の方でおっしゃられた影響を加味し た、さらに掛ける10で10で安全サイドに立った数値を出しているということになるので はないかと考えております。 今回の算定におきましては、これまでのほかの指針値の策定と同様に、個体差はもち ろん加味しますけれども、一応general populationの数値を出すという前提にのっとっ て一番直近のデータを用いてこのように算出しておるわけですけれども、こういった特 殊な、この動物試験の結果から特に小児への神経系の影響等、こういった影響が見られ ているような場合、こういった安全サイドに立って、さらに厳しい数値を併記して示す ということは一つのアイディアではないかというふうに考えております。その点、もし 先生方のご意見をお聞かせいただければと思います。 ○林座長  石川先生いかがでしょうか。もう一桁下にしたいと。 ○石川委員  私は有機リン眼毒性を決めるときにEPAからも随分相談を受けた経験があるんですけ れども、やはり子どもという個体が非常に難しい問題です。特に発育の問題、特に知能 発育遅れ、そういう問題が米国で随分問題になりました。ある論文をレビューしたとき に、正常な子どもは大丈夫なんだけれども、知恵遅れで施設にいるような子どもの発育 が微量の有機リン剤の接触で非常に遅れる。そういう論文をレビューしたことがあるん ですが、その論文は却下されちゃったんですけれども、子どもの問題というのも非常に 神経質であるべきです。やはり私としてはぜひ大人の値の10分の1を掛けていただくと ありがたいなと思っています。 ○安藤委員  私は子どもはその評価を絶対入れるべきだという考え方です。と申しますのは、水道 水の水質基準を決めるときに0.05というのを決めました。その前のときより厳しくした んです。現在はさらにもっと下を考えております。それは鉛の場合ですが、鉛は明らか に小児に対しての暴露量が問題になる。そのために設定を、あくまでもgeneral populat ionではなくて、小児を対象にしてやっていくという考え方に立っています。 ということからすると、この空気というものについて、室内空気についてどういうふう に考えるかというのは何回か議論が出ておりますけれども、general populationをどこ までにするか、子どもを対象にするか、あるいは老人を対象にするか。いろいろな議論 があるんでしょうけれども、子どもは絶対入れるべきじゃないかなと、私の個人的な考 え方ですけれども、そう思います。いろいろな議論の中でコンセンサスを得ていかなき ゃいけない話ですけれども、私は何となくそういうふうに思います。 ○池田委員  ちょっとお伺いしたいんですけれども、(20)番もそうなんですけれども、計算する ときに、人の体重50kgで1日15m3の空気を吸うということになっているんですが、いず れも、今の日本人の平均から考えると少ないかなという気がしたので、例えば吸う方も 20m3ぐらいは吸っているんじゃないかというふうに思ったんですが、この辺がどうなっ ているんでしょうか。 ○吉田補佐 これにつきましては、前回はパラジクロベンゼンの指針値を決めたときに引用した文献 をそのまま使ってございます。そのときに使っている文献の考え方として、体重50kg、 人の1日呼吸量15m3ということで引用されておりましたので、今回においても、この数 値をそのまま使ったという経緯がございます。 ○池田委員  ちょっと少ない気もしましたけれども、前にそうなっていたのでは、これは、その時 は気がつきませんでした。 それから、先ほど安藤先生がおっしゃったことに若干関連するんですけれども、要す るに、これは空気からとるだけの話であって、水とか食物とか、そういうものからは入 らないということが前提の上でのガイドラインだというふうに理解しておくということ でよろしいんでしょうか。例えばクロルピリホスというのは、呼吸で吸うだけだとすれ ば、この濃度0.001mg/m3までいい。ただし、その場合は水とか食物からは入らないとい うことが前提ですよということでしょうか。 ○吉田補佐 そういう前提ではなくて、全般的に許容できる数値というものを考えたときに、この 指針値を出しているという考え方でございます。ですから、それを室内空気という方に 置きかえてみたときに、こういう数値になっているということで、これは空気中からだ けというのではなくて、当然この評価の背景としては、今おっしゃったような別のルー トからの暴露による危険性も含まれているものというふうに理解しております。 ○林座長  あと共通の原則で一応耐容をきちんと出しているということですね。 ○池田委員  体重1kg当たり1日何mgまでいいということから出た数値ですね。それを換算したも のだとしたら、他のルートからも入ってくるんだとしたら、それは本来また足さなきゃ いけないという話になると、空気も換算するときは、他からはないというふうな前提が ないと、他らかいくら入ってくるんだかわからないけれども、空気中はここまでいいよ というのだと、何だか訳がわからなくなってしまうような気がするんですけれども。 ○吉田補佐 それは先ほども説明しましたが、室内空気質の指針値を出すという前提で、室内濃度 に換算したらどうなるかという前提で指針値を出しておりますので、正確には1日耐容 摂取量がどうかと言われたら、それはキログラム当たりの用量というもとになる数字が ございます。それを室内濃度に換算したらどうかということで、こういう数値を目安と して出しているという理解でございます。 ○池田委員  ちょっとすれ違っているみたいですが、大体言いたいことはわかりました。 ○安藤委員  いずれにしても、ちょっと整理をしていただかないといけないと思います。先ほど申 し上げましたように、これは飲料水でも設定されているし、その他食品でも何でも、こ ういうのは寄与率から全部決まっている話ですので、もう一度整理をしていただければ ありがたいなというふうに思います。 ○林座長  他に。 ○櫻井委員  (19)のところで、「新生児及び小児への影響を未然防止するためには、安全係数10を 維持しなければならない」というのはちょっと意味がわかりにくいんですが、これは要 するに、今、いくつかの安全係数を導入しているけれども、さらに、その上に10分の1 という意味ですね。 ○吉田補佐 そのとおりです。すみません、ちょっと説明不足なんですが、元文献の方を読んでい ただくとわかると思うんですけれども、元々US−EPAの方で、こういった特別な ケースの場合の安全承認とか、新生児に対する安全係数を考えたときに、今回得られた (17)で示しているデータから、この安全係数10を維持しなければならないというふうに 結論づけている経緯がございます。ここで言っている10というのは、いわゆる通常種差 10、個体間差10に使っている以外に、さらに10という意味でございます。 ○櫻井委員  僕の疑問は、(17)は既にダイレクトに、小児あるいは新生児への影響を見たデータで すよね。ですから、さらに10分の1の安全係数を入れる必要はないと考える人もいるか もしれない。にもかかわらず、10分の1はさらに導入した方がいいという意味なんだと 理解してよろしいんでしょうか。 ○吉田補佐 こちらもそのように理解しております。US−EPAの方の評価においては、もとも と100 というUFがあった上で、さらに、こういった特別な場合の小児もくしは新生児 の場合の係数としてそれをどうするかということで、今回(17)番でやられた試験の結果 があるので、これは注意しなければいけないというふうに結論づけられているわけで す。もともとその際に、UFを初めから100 にしているというところの背景は、こちら の方でも実はわかりませんでした。 ○櫻井委員  この場合、0.3 mg/kg/日の100 分の1でいいよということを言っているのか、1000分 の1にしたいということを言っているのか、どっちかはわからないということです。つ まり、これは新生児そのものが調べられているデータなんだから、0.3mg/kg/日 の10分 の1でいいというふうに考える人もいるかもしれないけれども、それを100 分の1にす るべきであると言っていると解釈できるわけです。さらに、その上に10分の1にしろと いう意味ではないだろう。その辺をよくお考えいただいて整理していただきたいと思い ます。 ○吉田補佐 もう一度説明いたしますと、こちらの方で出した数値で、使っているデータは同じで ございます。その際にこちらの方では、種差10、個体間差10の不確実係数100 というこ とで、個体間差10の方には、小児の影響が入っているという前提のもとで、ここで示し ている数値を算定した次第でございます。ところが、FQPAの方で示している10の考 え方というのは、UF100 を示した上で、さらにこの10を掛けるという考え方でして、 したがって、結果としてgeneral populationの場合と小児の場合の数値を両方出してお りまして、小児の場合はさらにこれよりも一桁小さくなる数値が提示されている。今回 我々が提示している数値は、このgeneral populationの数字をこれまでの経緯上出して いるということでございます。ですから、今、先生方にお聞きしたのは、こういった経 緯があるので、さらにこういった特殊なケースの場合には、小児用の数値として、さら に一桁小さいような数値を併記する必要があるのではないかということをお聞きした次 第です。ちょっと説明不足ですみません。 ○櫻井委員  わかりました。最近、小児等についての安全域をきちんととるという方向になってい ると思うんですけれども、それはこういうリスクの評価を精密化すればするほど、そう なってくる。大雑把にばっさり安全をとっている場合には、全部それを含んでいいだろ うという話だったと思うんですが、精密化すればするほど、小児は果たしてどうなのか というのを考えるという方向だと思うんです。最近、この中でもご関係の方はいらっし ゃると思いますが、農薬の暴露評価を精密化するとすれば、今度は暴露の方も小児とか 老人の暴露をちゃんと評価しなければいけない。そういう考え方からいくと、50kgで15 分の1というのが、例えば10kgで5分の1とかそうなるわけです。小児の曝露をきちん と評価しようと思えば、体重は小さい、呼吸量も小さいけれども、体重の小ささに比べ ると呼吸量が多いということで、恐らく割り算の数値はもっと小さい数字になるという 可能性も出てくると思うんです。それも1つの考え方だと思うんですが、まだそういう 考え方はどこでも導入してはいないと思いますけれども。 ○林座長  この変化が普通の小児にも、大人にも起こるという共通の現象であれば、先ほど10を 入れれば、この中で小児のことは含まれますが、ここで出ている影響というのは発生毒 性で、これは小児独特なものなんです。ですから、これはそういう意味で、さらに10を 追加するというのは、理屈に合っています。ですから、やはりもう一桁落とすというこ とは、これは科学的に見て正しいのではないかというふうに考えます。 ほかにございませんでしょうか。 そうしますと、今の場合は指針値は一桁落とすということを入れるか、あるいは併記 するということと、もう一つは、この策定のところの文章を少し追加する、加筆する、 訂正するということで、それから石川先生に、もしありましたら文献を提供していただ くというようなことで、よろしくお願いいたします。 では、次のフタル酸エステル、これに移らさせていただきます。 何か追加はありますか。 ○安藤委員  また、同じような質問で申し訳ございませんが、この根拠となるのは(9)の論文で、こ れはやはり混餌投与ですね。そうした場合、uncertain factor(UF)というものについて 考慮はしなくていいのでしょうか。同じような質問ですけれども、基本的なスタンス を、いわゆる経気道暴露について、経口投与のデータしかない場合どういう考え方にす るか、という考え方を作らなきゃいけないということを思うということです。また同時 に、化学物質によって吸収率が違うというファクターがあるので、それもどう考えるか ということです。それらを含めて、一つの考え方をつくらなきゃいけないんじゃないか ということです。非常に漠然としたお話で、答えられるようなお話ではないかもしれま せんけれども。 ○剣持専門官 先ほど来、ご説明しているようなところにまたなってしまうんですが、基本的にデー タの信頼性とか、それから実験系の正確さとか、そういったことなどもいろいろ考えた 上で、可能であれば、暴露系になるべく近いような投与経路で行われた実験系、それで 得られたデータというのが、まずは優先されるのであろうという考え方が1つありま す。そういった観点では、この場合でもやはりinhalation(吸入)に関する情報が第一と いうことになるんですけれども、inhalationデータが不十分であるというような場合に は、パラジクロロベンゼンの評価でもあったかと思うんですが、安全サイドというもの を考慮した上で、別の投与系、実際には経口投与ですとか、あるいは混餌投与、そうい ったデータを採用するということも、考慮されてよいというところになると思うので す。  もちろん、安藤先生がおっしゃるとおり、投与系が異なるような場合に、やはりbioa vailability、それが体内に取り込まれた場合に、どのぐらい吸収されて、どの程度その 生体内において、代謝なり、あるいは排泄なりに持っていかれるのかというファクター ものを考えなければいけないというところはあるとは思うんですけれども、それがunce rtain factor(不確実係数)として反映されるのかどうかについてはひとつ議論がある のかと。つまり、そこのところはbioavailabilityというものがある程度わかっていて、 その限りにおいて、bioavailabilityを考える。吸収率が、例えばinhalationでは100 % だけれども、経口で投与された場合には50%だということであれは、その場合には、そ のファクターというのを考える必要はあるだろうと思います。ただし、それはあくまで もbioavalabilityの数値、この場合ですと吸収率ということですが、この吸収率の数字 というものがある程度明らかになっているという場合に考慮できるのであって、それを 考慮できないのであれば、uncertain factor(不確実係数)という形で包括的に扱うし か、方法としては、ちょっと考えにくいのかなと思うのです。 ○林座長  このデータによるとターゲットの影響というのが生殖器系ですね。そうすると、これ は吸収率を考えなければinhalationでも、経口投与でも影響は同じで、そうすると問題 なのは吸収率がどっちが高いか低いかということで、もし経口投与で吸収率が非常に高 いということがわかっていれば、そのまま使えると思うんですけれども、そのデータが あるわけですか。経口投与で吸収がどのぐらい、90%吸収するとか。 ○剣持専門官 このものについて、今のところそういうデータはないです。 ○林座長  多分あると思うんです。これはそれほど古い物質じゃないでしょう。割合新しい物質 なら、そういうことは必ずやっていると思いますので、それをちょっと見ていただけれ ば出ているんじゃないかな。これは分析は難しいですか。 ○安藤委員  極めて難しいです。ちょっと関係することでもう一つよろしいでしょうか。先ほど田 辺先生からもお話があったように、これは経口暴露がものすごく大きいと思うんです。 そうすると先ほどの寄与率のお話にまた返ってしまって申し訳ないんですが、空気が許 容できる率というのは減るんじゃないか。つまり、100 %じゃなくて、例えば20%しか あげられないよというお話になってしまうんじゃないかということです。これもお答え にくいのは十分承知で、一つの問題提起として受けとめていただければ結構です。 ○林座長  今ここでやっている指針値というのは、経口がいくら、水からいくら、食品からいく らというような割り振りを考えているのではなくて、吸入の場合にはどういう影響がど の程度起こるかということを見ている。まずそれを出そうということなんですね。 ○安藤委員  その後に考えるということになるわけですか。 ○林座長  そういうことになりますね。それはいかがですか。 ○吉田補佐 先ほども説明申し上げましたとおり、基本的には全体で見た場合に、空気質濃度で考 えた場合にどうかというふうにこの数値を出してきているわけでございます。おっしゃ るように、その先には、全体の環境で見た場合に、それがどの程度示せるかというのは この次の課題になるかもしれませんけれども、今回この検討会といいますか、今やって いる指針値の策定におきましては、あくまで快適な室内空間を提供するという意味で、 空気質の基準を、空気質の指針値をつくって、目安を示してできるだけ汚染を軽減し て、健康影響をなくて、快適な空間を提供できるようにするということを目的にしてお りますので、その意味では全体で得られた数値を室内濃度に換算したら、この数値にな る。そういう考え方によって得られた数値を目安にすることによって、こちらの目的が 達成できるものというふうに理解しております。  そこで、その後の寄与率をどうするかという話は、多分この検討会でやっている範囲 の先の議論になると思いますので、これはまた別途別な枠組みできちんとした議論をし なければ検討できないものというふうに考えております。ただ、そういったことを一応 認識して考えていることは非常に有用だとこちらも思っておりますので、どういう枠組 みが適当かどうかはわかりませんけれども、そこはきちんと課題として認識した上で、 指針値の徹底は進めていきたいなというふうに思っております。ちょっと回答になって いないかもしれませんけれども、そういう形でご理解いただければというふうに思いま す。 ○林座長  どうもありがとうございました。 ○田辺委員  今議論されている件、しつこいですけが、4番のフタル酸エステルに関しましては、 これは室内にあるプラスチック製品等とか、ビニール壁紙ですとか、こういったものの 寄与がかなり高いのではないかと思うのです。そのときに室内濃度ガイドラインが220 μg/m3というと、かなり我々の感覚でも高いし、測定してもなかなかこの気中濃度にな ることはないのではないかと思います。しかし、沸点が高いので吸着がかなりあるの で、気中濃度という定義に問題があると思います。これは寄与率という考え方もありま すし、もう一つは測定するときに、例えば付着するものを同時に調べる。これは現在I C工場等でシリコンウェハーに付着するフタル酸の問題が研究されていますので、そう いったものを転用するとか、測定の方で多少の工夫をすることで、吸着している割合を 何とか、検討することができないかと思います。他の物質はその割合は少ないと思いま すが、特に4番目のフタル酸エステルに関しては、安藤先生がおっしゃるように、何か 考えておかないといけないのではないかというふうに思います。 ○林座長  何か事務局の方でありますか。 ○吉田補佐 特にはございません。ただ、非常に貴重なご意見として考えさせていただきたいと思 います。これにつきましては、空気質基準という考え方のほかに、例えば基本的には使 われている建材であるとか、今、田辺先生がおっしゃった壁紙なり、あるいは家庭用品 のプラスチックなり、そういったものからの含有量もしくは発散量、そういった点から のアプローチというのも当然可能だと思いますので、そういった方面からの考え方と合 わせた形で議論できるのではないかというふうに私自身は考えております。そこは、今 この時点で具体的にどうしたらいいかというのは頭に浮かばないんですけれども、先生 がおっしゃった吸着率を寄与するような、きちんと確立されたような方法がもしあるの であれば、それは適宜情報として提供いただきたいというふうに思っております。 ○池田委員  ちょっとしつこいという意味では、またそういう話で申し訳ないんですが、前の村上 室長さんのときにも申し上げたんですが、これでホルムアルデヒドを加えますと、8つ の化学物質についてガイドラインが決まったわけで、これは大変結構なことだと思うん ですが、8つになってきますとそれぞれ全く独立的な話ではなくて、それぞれの相加性 の問題とか、相乗性の問題まで含んで今後考えていかなきゃいけないと思います。こう いったものに関して学術的な、科学的なデータが出るまでというような話をやっている と、これはいつ出るかわからないというのが現状だと思いますから、それまでに暫定的 な考え方として、例えば一つの基準値を1としたら現在の値がゼロポイントいくつに当 たってと、そのトータルを足したものが1を超えてはいけないというようなものをそろ そろ考えておかないと、どのガイドラインもぎりぎりいっぱいの空気というのが、それ が快適だろうかという素朴な疑問になってきますので、明らかにこの物質とこの物質は お互いに関係なく、独立的に考えていいというような科学的資料が出るまでは、出ない ものについては全部相加性でいくというようなことについても、今後ご検討いただけれ ばと思います。 ○土屋委員  多分、今まで先生方がおっしゃったとおりに、室内の環境中でのフタル酸エステル類 というのは、室内空気よりも、むしろ家具類とか、そういうところから出てくるものが 非常に多いと思います。ただし以前、東京都で室内空気中のフタル酸エステルの調査を 行った際には、フタル酸のジ-n-ブチルは、高い濃度で検出している例が結構ありますの で、ぜひ暴露評価を実施されて、状況をまず見られたらいいのではないかと思います。 ほかの物質については、多分それほど高濃度に出ることはないと思いますけれども、フ タル酸エステル類については、そういう例がいくつかありましたので、やはり暴露評価 を実施されて、もしガイドラインを設定した時に、実際に相当高いところが出てきたと きにどうするかということもあるでしょうし、そういうことを考えていただければと思 います。 ○林座長  フタル酸エステルについては、指針値の策定と並行して、エクスポージャー・アセス メントを現場でやるべきであろうという、それは先ほど安藤委員がおっしゃっていたん ですけれども、確かにそうですね。そういうお考えはいかがですか。そのデータに基づ いて、また値の見直しをする必要があるかもしれませんね。 ○櫻井委員  また別で、さっきの話題にちょっと返らせていただきますが、経口の毒性データのみ しかないときに、それから吸入の指針値を決めなけばならない場合に非常に気になるの は、経口の場合と吸入の場合の吸収率の差、あるいは経口の場合には一旦肝臓を通る。 その差がいつも非常に気になっているわけなんですが、ご参考まで申し上げますと、数 年前に農薬の空気中の濃度の指針値を決めることに関わったことがございますけれど も、その時も、そのことが話題になりまして、その場では皆さんの合意で、農薬の中で も代表的なスミチオンの場合に、経口と吸入の毒性のデータがたまたまパラレルで存在 して、吸入の方が4倍ぐらい毒性が強く出るので、ほかの農薬についても4分の1安全 係数を掛けてしまう。現実にやって指針値が出ております。そのとき、さらに尿中への 排泄等のデータ、そのAならAという農薬の尿中排泄とスミチオンの尿中排泄を比べ て、尿中の排泄から吸収量を推定するというのはかなり無理なんですけれども、それを ある程度やって、消化管の吸収量が比較的小さいのはかえって危険といいますか、要す るに消化管の吸収に比べて吸入の吸収の方が大きい可能性が強くなるから、そういう安 全率を少し掛けるというようなことをやったわけです。  ですから、そういうことはこういう場でも、もし経口のデータしかないような化学物 質について、次々と吸入の基準を考えなければならないとしたら、皆さんで合意しても いいんじゃないかなという気がします。要するに、そういう不確実、ルート・トゥ・ ルートの外挿の不確実係数、2とか4とかという数字を入れちゃったっていいんじゃな いかという気もするんです。 ○林座長  そうですね。ダイオキシンの場合には似たようなことを考えていますね。ですから、 吸入のデータがなくて経口から外挿しなきゃいけないという時に、外挿するためのデー タが余りにも不足しているという場合には、それを不確実係数で補おうということです ね。確かダイオキシンの場合には、類縁化合物についてのデータが少ないということ で、不確実係数を上げています。ここでは経路の違いの問題ですが、やはりデータが不 十分なので、不確実係数で補うというのは普通のやり方と思います。どうもありがとう ございました。  フタル酸ジ-n-ブチルについてほかに何かございませんでしょうか。  もしなければ、これで4つの化合物についてのご意見は大体出たと思いますけれど も、ここでこれらの室内濃度指針値の検討会としての結論をまとめたいと思います。事 務局から提示されました資料2につきまして、これは当然文面上の修正、または追加も 必要ですけれども、基本的な考えとしては適当と思われますが、いかがでしょうか。  もしご意見がなければ、これを認めさせていただきます。一応これを検討会の考え方 としては適当ということでご判断いただいたことにしたいと思います。ありがとうござ いました。 ○安藤委員  基本的な考え方はこういう考え方でいくというのはわかりますが、ちなみにその次の テーマになるであろうTVOCを考えると、例えばエチルベンゼンは3.8mg/m3で、ひょ っとするとTVOC目標値を超えちゃうことはないんですか。 ○林座長  この値を使うとTVOCを超えることがありはしないかということですが。 ○吉田補佐 その可能性として数値だけ見るとあると思います。ただ、要はこの数値がどういう根 拠に基づいて算定されているかということによりますので、そういった見た目でのおか しな点というのは必ず出てくるものと理解しております。 ○安藤委員  わかりました。そこが明確になっていれば、それはそれでいいのかなと思いますが。 ○林座長  では、室内濃度の今回の指針値の設定に関しては、基本的に資料2で示された考え方 を、この検討会の結論といたしたいと思います。ただ、本日、広瀬委員と内山委員が欠 席ですので、両委員にご相談の上、修正、加筆の作業を進めていただきたいと思いま す。特にこの策定に関する一連の文章が広瀬委員のご専門ですので、よろしくお願いい たします。 ○吉田補佐 わかりました。 ○林座長  では、続いて議題2に移らせていただきたいと思いますけれども、「測定法目録及び 測定・相談マニュアルの基本方針案について」、資料3が配布されておりますので、事 務局からご説明ください。 ○事務局(平野)  それでは、資料3について説明させていただきます。前回の検討会におきまして、測 定マニュアルと相談マニュアルを作成するという方針がまとまりましたが、今回はまだ 具体的な資料をご提示できませんが、どのような内容を盛り込んでこれを作成すべきか ということの基本方針案を、提示させていただきます。  まず、測定マニュアルの基本方針案を以下のようにまとめております。標準的な測定 法自体については中間報告書の方で取りまとめられおりまして、事実上確立されており ます。ただし、前回お示しした測定法については、純粋に測定の方法を記載したもので ありますので、実際に運用するに当たってどういったケースを考慮するか等の点につい ては記載がされていない部分がございます。また測定法には明確な目的が設定されてお りまして、依頼者の目的によっては、それと非常にかけ離れている場合もあるかと思わ れます。そういった場合には、非常に精密な測定を要求しておりますので、不必要な負 担をかける場合もある。また場合によっては、せっかく測っても依頼者の考えている目 的とは全く意味のないものが出てしまうという可能性もございます。そこで、依頼者の 目的を聞き取り、測定に関する十分な、どういった目的で、どういったことを得るため にこれをやるんだという理解を得る必要がございます。その際には、室内の情報の把 握、また改善のための適切なアドバイス、これを行う必要もあるものと思われます。基 本的に測定に関しては、空気の採取と測定を実際に行うところが別々であるという可能 性もございますので、測定の目的について説明する場合の詳細、また測定に関してその 場で記憶しておかなければならないこと、後ほででは確認できないこともございますの で、これなるべくチェックリスト化して、その場でこれだけは書き取っていただきたい ということをまとめる、そういういったことを盛り込む。また具体的的な記録例などを なるべく示しまして、簡単に作業が進行できるようにする。それらを目的としたいと考 えております。また相談マニュアルを別途作成することとしておりますけれども、これ については、測定マニュアルと並行して使用されるということを考慮しまして、特に現 場においてある程度の相談、アドバイス、こういったものが行えるようにポイントをこ ちらにもまとめておくべきではないかと考えております。  実験室内における操作については、先ほどの標準的測定方法について非常に詳しく書 かれておりますけれども、結果の記入様式例等はそこには盛り込まれておりませんの で、そういったものもつけ加える。また、パブリックコメントをいただいた際に、幾つ か疑義をいただいておりますので、そういったものをQ&A方式で付録として付けて紹 介する。そういった方向を考えております。  盛り込むべき情報の例としまして、標準的測定法ですが、これはどういった性格を持 っているものなのか、またどういった目的の際にこれを使用すべきなのかということが ひとつございます。また、測定に当たって聞き取るべき事項の一覧、現在の状況、どう いったことまで書くべきなのか、どういった形が必要なのか。場合によっては写真等を 撮る必要も出てくるかもしれませんので、そういった周辺の状況の記載すべき小物等を チェックリスト化することといたします。また、現場においてしかできないと思われる アドバイスのポイント、これについても併記をする。最後に疑義の紹介例ということ で、パブリックコメントで寄せられたもの、そのほかにも幾つか寄せられているものが ございますので、それをQ&Aの形にまとめたいというふうに考えております。  以上が測定マニュアルの基本方針案でございます。  この紙の裏面になりますが、こちらが相談マニュアルの基本方針(案)でございま す。  この問題に関しましては、近年何度も言われていることですけれども、住宅の高気密 化、また新建材の使用によって室内空気中に揮発性有機化合物濃度が高まっている。そ れによると考えられる健康被害の訴えも顕在化してきているという問題もありますが、 施工中とか引き渡し時に換気が不十分であったとか、化学物質の放散量の多い建材が使 用されたという建物自体が抱えている問題に加えまして、高気密・高断熱の住宅に今ま でと同じ住まい方をしているということもございます。こういった構造の変化に対応し た住まい方の対応が不十分であったということ、また、それに対する、いわゆる住まい 方のアドバイス、こういったものが不十分だったという側面もあるかと思います。現在 の住宅が抱えるこの問題に対する相談の場合、この多く場合、どこに気をつけた方がよ いのか、こういった適切なアドバイスを行うことによって、状況の改善が図れる可能性 があるものが多々見られます。また、こういった相談が寄せられる中には、適切な情報 収集によって原因が特定できれば、それを除去することによって、状態の改善を図れる 可能性があるものもあるということもございます。  断片的な情報というのが流れていますけれども、それだけではちょっと不安に思うと か、わからない面とかがありまして、質問、不安等の訴えというのが最近非常に増えて きております。こういった情報の不足、またある一面的な情報の偏り、どうしたらよい のかわからない、こういった不安感等がこの問題を増幅させている一面があるというこ とも考えられますので、相談の際に、なるべくそういった情報を的確に伝える。また適 切な相談先があれば、それを紹介する、こういったことも必要になってくるかと思われ ます。幾つか聞き取りを行いましたところ、シックハウスと呼ばれる問題に関する相談 の半数近くは、自らの健康被害に関するものであったりするわけですけれども、残りの 半分あたりは、これは一体どういうことなのかということを知りたいという、いわゆる 知見を求めるものが半数ぐらい占めているということですので、相談に際して、これを 適切に伝えるということが非常に重要な案件であると理解しております。  ですので、本相談マニュアルは、室内空気汚染問題に限定されることになりますが、 これに関する相談に関しまして、参考とできる情報、取組が進んでいる自治体において は、すでにつくられているところでございますけれども、それらと整合性を図りつつ、 最新の情報を拡充して、以下に記したような項目ごとに取りまとめたいというふうに考 えております。  基本的には、相談対応時にどういったことを聞き、どういったことをアドバイスする べきか、そういった基本的な流れがまず1つございます。あとは資料集的なものになり ますけれども、室内を汚染する可能性のある揮発性有機化合物について、その発生源と その毒性等を、ここで使っております資料等も活用しまして記載することと致します。  また、最近はホルムアルデヒドに関して様々な規格が設定されておりますので、関連 情報も伝える必要があるということで、こういった規格についても盛り込むことといた します。また、その他に必要な情報等がありましたら適宜盛り込んでいきたいと考えて おります。  以上が相談マニュアルの基本方針でございます。  では、続きまして、参考資料ですが、参考資料の2と3についても説明させていただ きたいと思います。  今回、参考としてお示ししておりますけれども、先ほど指針値の案が出されましたエ チルベンゼン並びにスチレン、フタル酸エステル、クロルピリホスの測定法の現状につ いての資料でございます。  まず、エチルベンゼンの測定法につきましては、前回提案されておりますVOCの標 準的測定法、これを用いて測定可能でありますので、以下に追記という形で加えており ます。標準物質については、エチルベンゼンの純度98%以上のJIS 規格の試薬の特級、 またこれと同等以上の用いていただきたい。また測定対象物質のマススペクトルの測定 用質量数ですけれども、測定質量数としては91、106 、この2つが利用可能だというこ とでございます。 また、注にあります標準源ガスについては、3物質混合だけではなく、それにエチル ベンゼンを含めていただいても構わないということを追記させていただいております。 スチレンについては、標準的測定法で検出と定量自体は可能でありますが、捕集管の 種別によって、捕集効率にまだ改善・検討の余地がございますので、現状ではまだ更な る検討が必要であるという状態になっております。 次に「フタル酸エステル類の測定法について」ということでございますが、ここでは 室内の空気そのもの、そこからの測定法ということで参考としてつけております。フタ ル酸エステル類の測定そのものについては原理的には可能であります。ただ、フタル酸 エステル類は塩化ビニールを初めとする、身の回りに存在する様々なプラスチック類に 可塑剤として添加されておりまして、さらには、接着剤、印刷インキ、染毛料等にも使 用されています。基本的に検査室を含めて、あらゆる環境中から試料が汚染される可能 性がありますので、試料を正確にはかるために、こういった汚染を除去する方法を工夫 しなければならないという点がございます。 以下には簡単に採取方法及び分析方法が記載されておりますが、環境からの汚染、こ れを低減させる手法については、各機関において様々取り組まれているところでありま して、現状といたしましては、それぞれの分析者の技術に頼っているという面がありま す。それをすべて網羅して測定法を提案するということは今の段階ではできないという ことでございます。「当物質群の測定にあたっては、各機関の厳密な精度管理が必要で ある」としておりますが、まだ現状としては、これは非常に難しい段階にあるというこ とであります。 簡単な試料採取方法としては以下に記すとおりでございますけれども、ろ紙もしくは 活性炭素繊維ディスク、ODSディスク等の捕集剤に空気を採取して吸着させまして、 それを溶出してGS/MSで測定するという方法であります。  最後に、試験に際して注意すべき事項として、今まで技術者の方等の経験から言われ ているところが幾つかを載せております。ただ、これではとてもすべて網羅しきれてい ない面がありまして、具体的な測定法として提案するためには、このあたり等の拡充が まだ必要でございます。これはあくまで参考という形にさせていただいております。  最後に、クロルピリホスの測定方法になりますが、これについても捕集管によって空 気を捕集し、クロルピリホスを捕集する。その後GC/MS、もしくは、ここには書い てございませんけれども、FPD等の検出器によっても分離分析ができるということが 原理的には確立されております。ただ、測定下限、これは指針値の提案と並行しなけれ ばならないんですけれども、測定の下限もしくは捕集効率、こういったことについてま だ検討の必要がありますので、現状としては、参考としてお示しするという方向にさせ ていただいております。クロルピリホスについては、MSで測定する場合には、定量用 イオンとして197 、確認用イオンとして199 、こういった数値が利用可能であるという 状況になっております。 以上が今回の4物質についての測定方法の参考資料でございます。 続いて参考資料3になりますが、前回の検討会の中間報告の中でもございましたが、 簡易な測定法、これについても検討を進めるということでございまして、今回、簡易測 定法というよりは、それらを含めた採取法・測定法についての粗案という形でここにま とめております。 前回の6月26日の第3回の検討会におきまして、トルエン、キシレン、パラジクロロ ベンゼンの室内濃度に関する指針値及び空気中の化学物質(平成9年に指針値策定しま したホルムアルデヒド、その他3物質のVOC)の標準的採取方法と測定方法について は取りまとめられております。  ここに記された測定法というのは、先ほども出てきましたが、ガイドラインの最終的 判定に用いられることを目的として作成しておりますので、厳密な測定結果を得ること が期待される反面、非常に精密な分析装置、また測定者の非常に高度な技術が必要とさ れます。また結果の判定までにはある程度の時間が必要とされます。  最近では様々な簡易測定法も検討されつつありまして、消費者、住宅生産者といった 方々の中には、目に見えない化学物質の濃度を概ねの値でよいから簡単に知りたい、こ ういった要求があるものと思われます。いわゆる化学物質濃度のスクリーニング的な測 定を行いたいといった場合には、厚生省の示している標準的測定法、これを必ずしも用 いる必要はないというのが現状です。その要求のレベルの条件に応じて、それに適した 測定法や機器を選択して利用していただければよいと考えております。  簡易な測定法と呼ばれるもには幾つかのものが知られておりますけれども、それぞれ 特徴を持っております。それらを理解した上で使用機器を選択するのが適当というふう に考えます。どのような測定法を、どのようなときに求めるかというのは、基本的には 測定依頼者の判断に任されるものでございます。それが原則ではありますが、以下のよ うな場合には標準的測定法を使用することが望ましいと考えられるのではないかと思い ます。  室内空気中の化学物質の厳密な測定、あくまでも厳密な値を知りたいという場合、ま たガイドライン値を判定してほしい。そういった場合には、標準的測定法の使用が望ま しいのではないかというふうに考えております。以下には代表的な測定法について、簡 単な原理とその特徴を案として紹介させていただいております。  次のページにまいりますが、まず標準的な測定方法です。簡単にまとめますと、これ は適当な捕集管にポンプを用いて強制的に室内空気を接触させて捕集する。捕集した各 物質をHPLCやGC等の高度な分析機器を用いて分離しまして、UV吸収やMS等の 適当な高度な検出器を用いて同定、定量するという方法になっております。  ポンプを用いるアクティブサンプリングですので、比較的短時間の捕集でも大量の空 気を捕集管に接触させ、捕集することができます。またHPLCやGCといったカラム クロマトグラフィーで対象物質、妨害物質を分離して測定しますので、目的以外のガ ス、これの影響を排除した正確な定量が可能である方法であります。カラムの保持時間 を比較すること、またUVスペクトルやマススペクトル、こういったもののパターンを 解析することによって、物質の正確な同定も同時に行える方法であります。この方法で は、各物質の厳密な濃度の測定が行えることが期待できます。  しかし、その反面、採取だけでもポンプや流量計等、比較的高価な大がかりな機器を 必要としますので、専門の技術や設備を有した機関でないと行うことができません。ま た、HPLCやGC等の高度な分析機器に至っては、新しく検査機関を立ち上げようと する場合には、機器だけで数千万円の設備投資が必要となる機械であります。機器の維 持管理の費用、これにも費用並びに技術が必要とされるということで、測定にかかわる 費用も大変高価なものとなってしまいます。  このように、設備と人の双方の問題から分析を行える機関というのは限られてきま す。また分析を依頼する側の時間的な負担、費用的な負担というものも非常に大きい方 法であります。  次のページになりますが、「蒸気拡散式分析法」と書いておりますけれども、いわゆ るパッシブ方式の採取法で最近よく用いられている方法であるかと思います。基本的に この方法は先ほどの標準的測定法に近いものでございますけれども、簡易測定として扱 われている例が多いものであります。空気の採取のところが違うわけでありまして、特 殊な機械を使用せずに、捕集管なりをそのまま放置して、化学物質を採集する。いわゆ るハッシブ方式の空気採取法というものであります。正式な呼び方ではありませんけれ ども、むしろ簡易な採取法というべき方法です。いろいろ形はありますが、吸着剤を室 内に静置して化学物質を吸着させて、その後、HPLC、GCのような分析機器を用い て分離・定量するものであります。吸着剤は様々販売されておりまして、形もいろいろ ございます。  この特徴としましては、採取時にポンプを使用しませんので、サンプルの採取が非常 に手軽に行えるということがあります。また採取現場で必要な機具は、捕集管等のみで すので、単にサンプルを採取するだけであれば、現在も行われておりますように、捕集 管を依頼者に郵送する。希望者にサンプルを採取してもらって、それを送り返すことに よって分析結果が送られてくるという方法を用いることができるという特徴がありま す。その反面、ほかの簡易測定法と呼ばれているものの最大の利点でありますけれど も、検査現場その場で結果を得るということができない。採取から結果を得るまでには 分析の日数等がかかりますので、数日必要であろうという方法であります。  また、サンプルの吸着が自然拡散のみに頼られますので、安定した測定結果を高感度 で得るためには、比較的長時間のサンプリングが必要であります。24時間平均値等の測 定にはある程度向きますけれども、30分程度の短時間測定にはなかなか難しい。またV OCによっては、それ以上の時間が必要とされる可能性もあるという方法でございま す。  また分析には、高度な機器を必要とするというのは標準的な方法と同じでありますの で、妨害ガスの影響というものはほぼ除去できますが、これらの機器を備えた機関でな いと分析を行うことはできません。販売会社が仲介して捕集管を郵送して分析を依頼で きるシステムになっておりますと、この場合は依頼者の負担は比較的安価な方法であり ます。  次のページになりますが、もう一つ昔から使われている方法で検知管法というのがご ざいます。検知管法というのは、一般的には特定ガスと反応して変色する検知剤、それ は様々ありますけれども、これが充填されたガラス管に試料ガス、この場合は室内空気 ですけれども、これを通気させて変色領域を読み取る。これによって特定のガスの濃度 を測定する方法であります。通気にはポンプを用いて機械的にやる方法、もしくは採取 機を用いて人力で空気を引く方法があります。そのほかには、検知管以外には特別な試 薬や機器を必要としません。また、測定現場ですぐに結果を得られるという特徴がござ います。  様々なガスについて検知管が市販されておりますので、これらを用いることによって 各種の化学物質について対応することは可能であります。ただし、検知剤の特性によっ て妨害ガス等の影響が変わってきますので、使用に際して、それらの情報を入手して考 慮しながら使用する必要があります。  以下に簡単な化学反応と原理をお示ししてありますが、ホルムアルデヒド、トルエ ン、パラジクロロベンゼン、キシレン、等について検知管が発売されております。それ ぞれ検知管の特徴で妨害されるガス等が出てきますので、そういった特徴を考慮した上 で使用しなければならないということがあります。検知管そのものは比較的安価ですの で、短時間の測定に向いている方法ですが、24時間連続平均とか、そういった長時間の 測定には余り向いていないという方法であります。 次に、吸光光度法という方法についての紹介ですが、6ページになります。吸光光度 法を利用している方法として、ホルムアルデヒドを吸光光度法を用いて検出する。これ の現場に持ち運びできるタイプというものが開発されております。定量法としてAHM T法を利用しておりまして、このタイプの観測計器ですと、空気の捕集から、捕集され たホルムアルデヒドのAHMT法による検出・定量までができるように工夫されており ます。空気を内蔵のポンプで捕集しまして、捕集管に適当な試薬を加えて発色させる。 それを比色計で数値を読み取るという形になっております。この反応に若干、といいま しても数十分程度の時間はかかりますが、現場で結果を得ることができます。また、こ れは30分等の短時間の測定に比較的向いている方法であるということであります。  反応の方法としてAHMT法を利用していますので、対象はホルムアルデヒドに限ら れますけれども、アセトアルデヒド等の他のアルデヒド類の妨害ガスの影響も受けにく いという方法であります。ただ、若干装置が大がかりになりまして、機器も1台当たり 比較的高価になります。  また、光電光度法という方式のものも市販されております。これは検出にフォトダイ オードを利用した方法でありまして、ホルムアルデヒドだけに対応になっています。基 本的には、検知管の方で出てきました、ヒドロキシアミンの硫酸塩、塩酸塩等とホルム アルデヒドの反応による酸の生成、それによるpHの指示薬の変色を利用した方法であり ます。ただし、異なっているのは、検知管の方が変色域を目で読み取るといった方法に なっているのに対しまして、この方法では、この変色の度合いを光電光度法により電気 的に読み取るという点が違っているという方法です。 以下、原理になりますけれども、発光素子の発光波長、またフォトダイオードの受光 感度、これを変色する色の波長に合わせることによって行っています。色がついて見え るということは、その色に特定のある波長の光を吸収しているということでありますの で、変色することによって、ある領域の波長は、変色した検知テープ、検知タブレット に吸収されまして、その分フォトダイオードから出力される電圧が下がる。この差を利 用して濃度の測定を行っております。 このタイプとしては、内蔵のポンプで空気を吸引しまして、装置にセットしたテー プ、タブレットといったものに空気を通過させて、一定時間後に変色を読み取るものが あります。テープ方式の場合は、ある単位時間当たりになりますけれども、これの濃度 のモニタリングを連続して行えるという点が特徴になっております。この方法ですと、 かなり長時間にわたって単位時間当たりの濃度変化を追うことができます。ただし、若 干装置は大がかりになります。タブレット方式のものについては、連続的なモニターと いうことはできませんが、機器が小型になりますので運搬しやすく、またテープ方式に 比べれば、機器に対する投資も安価で済むという方法です。  読み取り自体は電気的に行われますので、妨害ガスの影響はまず考えられませんが、 妨害ガスは、変色に関する部分において考慮する必要があります。検知管法の項と同様 に、ヒドロキシアミン類と反応して酸を生じるものや、ガス状の酸、あるいはアルカ リ、こういったpHに影響を与えるものについては、結果に影響を及ぼす可能性がありま す。 もう一つ、電気化学分析法というものを挙げてございますが、(定電位電解法)とし て括弧してあります。今までの方法というのは、物質の化学的な反応を利用したもので ありますけれども、ガス検知の方法としては電気化学的な反応を利用した方法もござい ます。この種類のものはいろいろなガスについて発売されておりますけれども、ホルム アルデヒドについても電気化学的な検出を装置が幾つか市販されております。基本的に は定電位電解法と呼ばれる方法をもちいています。  以下は物理的な説明になりますので、詳しくは省きますが、電解されるときの具体的 な原理について難しいものがあるますが、物質が電解されるときの電流の大きさ、電解 に必要な時間を測定して、物質の量を求める方法を応用した方法になっております。  具体的には、この図は非常に簡単な回路図ですが、図に示したような基本形になって おりまして、基本的にはホルムアルデヒドが電極において分解される、このときに流れ る電流を測定するということになります。電解が起こる電位というのは物質によって固 有の性質として持っておりますので、ホルムアルデヒドが電解され、そして他の妨害ガ スは電解されない、こういった電位を設定することによって、ガスの反応、特異性が得 られるように工夫されております。しかしながら、ホルムアルデヒドのみを電解する電 位というものは存在しないという点がありまして、すべてを除くことはなかなか難し く、エタノール、アセトアルデヒド等が存在しますと、値が若干加算表示される可能性 がある方法であります。また、これら以外のガスについても多量に存在した場合には、 測定結果が加算表示される可能性があるという方法であります。  センサー部の工夫がそれぞれの機器によってありますが、ホルムアルデヒドに特化す るための工夫として、ガスの取り入れ口にDNPHを付着させたフィルター、こういっ たものを使ってゼロ補正を行っている方法もございます。DNPHと反応してトラップ されたガス、これと普通の一般のガスとの差を求めるというやり方です。  基本的にこのタイプの機器というのは小型で持ち運びやすいのですが、機器自体は個 人で買うには若干高価です。また、ゼロ補正と測定が基本的に分けて行われますので、 室内の空気雰囲気が測定中に変化する、こういったことが起こりますと結果が乱れる可 能性があります。こういった特徴から30分等の短時間の測定には向いている方法です が、長時間の平均値測定には向かない方法であります。また、この場合、非常に短時間 に値を求める方法ですので、測定者自身から出るガス、こういったものが妨害対象にな り得るので、使用に際しては注意事項、環境の諸条件等を考慮して用いる必要があるの ではないかという方法です。 以上、簡単にまとめましたのが最後の表になります。まだ、これは粗案ということで ございまして、ここに測定の概要、検出の概要等がございますけれども、ここに記され た以外にもまだ幾つか方法がございます。まだ、完全に網羅しきれていないという状況 でありますが、このような特徴を表としてまとめましたので、使用に当たって参考にで きるようにしていきたいと考えております。また、利用可能な製品につきましては、別 表作成中となっておりますが、具体的なものも別表として作成しまして提示いきたいと 考えております。 以上になります。 ○林座長  どうもありがとうございました。それでは、資料3の測定マニュアルの基本方針案、 それから相談マニュアルの基本方針案、それから参考資料2、3の具体的な策定法につ きましてコメントをいただきたいんですけれども、まずご専門の安藤先生、池田先生、 田辺先生、土屋先生から一言ずつご意見をいただきたいと思います。 ○安藤委員  別にありませんというと叱られちゃいますが、エチルベンゼンは前回出した試験方法 でできるだろうということでございます。スチレンにつきましては、サンプリング手法 をちょっと工夫しないと無理だろう。つまり捕集効率が悪くなると50%ぐらいに落ちる だろうなというふうに思っておりますので、ひと工夫が必要だということです。それか らフタル酸エステルにつきましては、先ほど申し上げましたように難しい。これは明確 に言えるということです。先ほど暴露評価はどうなっているんだという林先生からのご 質問ですが、それについては今年度やっておりますので、それが出れば、それなりの データは出てくるだろうとは思っています。この試験方法については、どこまで書くの か、書けばいくらでも書かざるを得なくなる。書いてできるかというと、そういう問題 でもないというところがあって、むしろ簡単に書いた方がいいのかどうかなのか。ちょ っと考えているところでございます。 それからクロルピリホスは基本的にはできることにはなりますが、今度は捕集剤が、 今アルデヒド類とVOCがあり、スチレンを若干変えるとなり、それにフタル酸という ことになると種類がものすごく多くなってしまうということがありますので、そこも含 めてちょっと時間をいただいて考えないといけないなと思っております。 ○林座長  どうもありがとうございました。 ○池田委員  安藤先生が詳しいコメントをしていただいたので、私はないんですけれども、すべて の問題となるケースについて、サンプリングをしてGC/MSとかで測らなきゃいけな いということになると大変でございますので、そういった意味からも、簡単にスクリー ニングという意味からも、簡易測定法をまとめて充実させていくということがこれから 大事になってくるんじゃないかと思います。その点について今後やっていっていただけ ればと思います。 ○林座長  どうもありがとうございました。田辺先生何か。 ○田辺委員  個別のコメントではないんですけれども、現在、例えば測定法に関してはJIS、I SOで検討が行われていたり、あるいは住宅を建設したり、供給したりする側は、建設 省で対策が行われたりしております。先ほど参考資料の6として配られました「平成13 年度シックハウス総合対策関係概算要求等の概要」というのがありましたが、もう実施 されているのかもしれませんが、例えばここで出るような測定法やマニュアルなどは、 ほかのところと連携しなければ、必ずしもすべてがうまくいかないことがあると思われ ます。省庁ごとに方法が違うというのも、建設業者や消費者から見ると非常にわかりに くいところがあるのではないかと思います。マニュアル等に関しては自治体を初めとい たしまして、ほかのところの研究会や他省庁でもつくられつつあるものが多いと思いま すので、もし可能であれば、こういうシックハウス総合対策の関係協議会みたいなもの をつくられて、ここで無駄な努力や違う方向がないようにしていただくと、住まい手や 建設業者も含めて総合的な対策ができるのではないかと思います。多分そういうものは 内々にあるのではないかと思いますが、なければ、ぜひそういう場をつくっていただく と、日本の住宅のためには非常によいことができるのではないかと思います。  以上です。 ○吉田補佐 ご指摘ありがとうございます。ただいまの指摘につきましては、ここの参考資料の6 で示しました関係5省庁で一応省内の連絡会、これは管理職クラスの連絡会と課長補佐 クラスの幹事会の両方がございますが、連絡会を設けておりまして、そこで適宜情報交 換しながら協調して進めているところでございます。 あと、それぞれの各省庁で行っている活動等についても、例えば建設省などで行われ ている別の研究会があるんですが、そういったところでの測定法の取り組み等を含むと ころにも、この検討会の先生方の一部、あと我々ほかの省庁等も参加させていろいろ協 力させていただいておりますので、そういったところの意見交換も含めて、できるだけ 二度手間にならないように、お互いの成果を共通にするように心がけているところで す。その点は実は6月25日の中間報告書の中にも、各関係するところの成果を有効利用 するということをきちんと設けておりますので、それに従ってやっていきたいと思って おります。 ○林座長  地方自治体との調整はいかがですか。それもやっているいんですか。さっき地方の自 治体とのとありましたが。 ○川原室長 自治体との関係では、先ほど少し説明させていただきましたが、今後、相談のマニュ アルですとか、そういった関係で、それからこの参考資料の6のところに、厚生省のシ ックハウス対策の推進の中に、シックハウスに関する情報収集、普及啓発及び相談体制 の充実といったところがございますし、保健所の設備の整備といったところがございま すので、こういったところを通じまして、地方自治体の方とも情報交換ですとか、いろ んな点で協力していくことになると思います。先ほど一部のものにつきましては、土屋 先生の方から、東京都でもいろいろやっておる部分があるというお話もございましたけ れども、一部の自治体ではかなり前向きに取り組んでいるところもあるようでございま すので、そういったところからもいろいろな情報をいただきまして、協力してやってい きたいというふうに考えております。 ○林座長  どうもありがとうございました。土屋先生、ご意見をお願いします。 ○土屋委員  今、3人の先生方から大体お話が出ておりましたけれども、最初の資料3の測定のマ ニュアルの基本方針ということで、今まで出された試験方法の具体的な運用ということ で細かく作る必要性があると思います。その中で先ほどあった参考資料の3に、特に別 に測定方法というのが、多分目的は簡易試験方法についての考え方といいますか、具体 的な例を示したいということで出されたと思うんですけれども、この辺の位置づけが余 りはっきり理解できないので、できれば測定マニュアルの中に、これが入れられればど うかなということを少し感じました。 それから3番目の裏側の相談マニュアルの話ですけれども、既に皆様からお話があっ たように、結局、保健所の整備事業ということも考えられているわけですけれども、実 際に保健所がどう動いていけるかというのを、少し具体的に調べられた方がよろしいん じゃないかと思います。というのは、東京都でも実際に二、三年前から保健所に窓口を 持って、そういう相談も受けておりますけれども、厚生省自体が保健所そのものを動か すというのは非常に難しいと思うので、やはり各地方自治体との連携というのが大事じ ゃないかと思いますので、もう少し具体的に検討された方がよろしいと思います。それ から参考資料の2の試験方法、これから安藤先生の方が主体になって追試なり、試験方 法の検討が必要だと思います。特にフタル酸エステルにつきましては、コンタミネーシ ョンの問題があって非常に難しいというのは、やられている方はみんなわかっているわ けですけれども、あと一つは前処理の問題はどれがいいかとか、その辺は今後検討が必 要だと思います。 それから先ほどもちょっとお話しあったように、ISOとか、JISでも試験法の検 討を考えて、多分先々週ぐらいISOの委員会があって、室内空気中のフタル酸エステ ルという会議があったはずなので、その辺との整合といいますか、その辺も考えられた 方がいいのではないかと思います。 以上です。 ○林座長  どうもありがとうございました。 測定法マニュアルと相談マニュアルについては、これは大体基本的にはよろしゅうご ざいますか。 ○土屋委員  先ほど話ししましたように、測定マニュアルについては当然書いていただかないと。 これから実際に運用する上では必要だと思います。 ○林座長  測定のマニュアルについてはいろいろ問題がありますけれども、マニュアルの基本方 針案もかなり考えなきゃいけないということですか。 ○土屋委員  基本的にはこの内容で結構だと思います。 ○林委員  どうもありがとうございました。 他にご意見ございませんでしょうか。 ○櫻井委員  簡易測定法についてもマニュアルを作っていただけるので大変ありがたいなと思うん ですが、その場合、標準法ですと、空気の採取方法なんかもはっきり決められているわ けですけれども、簡易法の場合にみんなが手軽に測定できるということは大事なんです が、その場合、どこでサンプリングをするかについては、ちょっと丁寧にマニュアルに 書いてあるといいなと思いました。この盛り込むべき情報というところで、「測定法の 性格と選択について」というふうに書いてありますが、すぐその上には空気の採取と分 析が分かれると書いてあるので、両方含んでいるんでしょうけれども、ちょっとはっき りしないような感じがいたしました。 それから相談マニュアルの点ですが、換気量とか、換気方法の差による室内空気の挙 動の変化なんかもあった方がいいんじゃないかと思いましたので、希望でございます。 ○林委員  どうもありがとうございました。荒記先生、よろしいですか。  では、石川先生何かございますか。  安藤先生、何か補足するところはございますか。  大体ご意見は出たと思うんですけれども、そうしますと、この検討会として、この方 針案は文面上の修正が必要なものもあると思いますけれども、マニュアルの基本的な考 え方としては適当と思われますけれども、いかがでしょうか。よろしゅうございますで しょうか。  どうもありがとうございました。そうしますと、測定法目録と測定・相談マニュアル の作成に関しては、一応、基本的に資料3で示された考え方をここの結論とすることに いたします。事務局で鋭意作成作業を進めていただきたいと思います。  なお、今後のそれぞれの資料の取り扱い、実は前の資料1、2もそうですけれども、 一応、最後にまとめてこの取り扱いを検討させていただきたいと思います。 続きまして、議題3に移らせていただきます。議題3「TVOCの空気質指針の策定 の考え方について」ということで、資料4が配布されておりますので、事務局からご説 明ください。 ○吉田補佐 それでは、資料4「総揮発性有機化合物の空気質指針策定の考え方について」ご説明 いたします。  まず「はじめに」でございますけれども、6月26日の第3回検討会におきまして、個 別のVOCによる汚染を全体として低減させて、より快適な室内環境を実現するための 補完的指標としての導入に向けて、TVOCの指針値の策定方法を検討することが必要 というふうにされております。  事務局の方では、これを受けましてOECD加盟国29か国及び欧州委員会に対して、 TVOCの取り扱い状況の調査をいたしました。現時点で17か国から回答を得ておりま すけれども、その多くはいずれも導入について未定か、もしくは予定がないという回答 が多かったのですが、いずれも、日本における取り組みへの大きな期待というものが回 答されております。  また、その際に後でご紹介いたしますが、ECの合同研究センターのような国際機関 において、以前からTVOC策定方法の例について発表してきておりまして、今回の調 査の中でも、特にそういった予定はないけれども、こういった研究もあるという形で、 参考文献に提示されているケースというものが散見されております。  また、もう一つの留意点といたしまして、今回の調査は、いわゆる行政庁への調査で ございます。したがって、各国の民意と一致していることにはならないという点に注意 すべきというふうに判断いたしました。すなわち、例えば我が国におきましては、トル エン等の指針値を決めたときにパブリックコメントを求めているわけですが、そのとき にTVOCの導入を強く求める意見がかなり提出された経緯もございます。これらを踏 まえまして、毒性評価等に基づいたTVOCの指針値設定というものは現時点では非常 に困難ではありますが、現時点で得られる知見を最大限に活用して、暫定値とその値の 暫定的な策定方法について紹介して、目標値として提示すること。これは室内汚染を低 減して、居住者の健康を確保する上では有効ではないかというふうに判断をいたしまし た。  また、TVOCにつきましては、個別のVOCのリスク評価、あるいは混合毒性の評 価、あるいは測定法での改良というものを待たないと、指針値としては明確には定めら れないということは明らかでありまして、今後の調査研究や海外での状況を把握しなが ら、必要な見直しをするということが必要でございます。  次のページをお願いいたします。  まず、この「要旨」でございますけれども、室内空気質のTVOC暫定目標値を400 μg/m3といたします。この数値は国内家屋の汚染実態調査の結果から、ある仮定、これ は後ほど説明いたしますけれども、ある仮定に基づいて合理的な、達成可能な限り低い 値を推測したものでありまして、毒性学的知見から決定したものではございません。こ れにつきましては、今後実施される必要な調査研究によって、リスク評価に基づいた指 針の策定が必要であると考えております。また、その間は発生源や換気に注意して住宅 の構造や日常の住まい方の改善によって室内空気汚染を低減する取り組みが不可欠だと いうふうに考えております。 続いて、その詳細についてご説明いたします。次のページをお願いします。 まず、1番はOECD加盟国に対する調査結果の概要でございます。TVOCのよう な指針値、あるいはこれに類するものが設定されているかどうかということでございま す。具体的な例といたしましては、まずオーストラリアで1992年に500μg/m3という数値 が勧告されてございます。ただし、個別のVOCの指針値を勧告するにはデータが不十 分であって、TVOCが250 〜400μg/m3 のレベルで呼吸器過敏症が報告されていると いうことを指摘して、最初のデータを用いて新たな基準を設定すべきとしております。 現在、VOCに係る暴露モニタリングの研究が実施されているほか、本年10月には室内 空気質に関する報告書の最終案を取りまとめる予定という回答でございます。この回答 の方はまだこちらの方でいただいてございません。  また、ノルウェーにおきましては、90年の古い指針で、やはりTVOCを400μg/m3 というふうにしておりますが、これについては、科学的データに基づくものではなく説 得性に欠けている。したがって、有効ではないということで、99年の新しい指針では削 除されたというふうに回答されております。 また、オートスリアとドイツにおきましては、このTVOC等の指針値設定に関して 今共同研究が進められておりまして、その素案が来年の1月にはでき上がるというふう に回答を承っております。現時点では、設定方法の説明は無理というな回答でありまし た。  また、カナダですけれども、ここにおきましては、アルデヒド類と幾つかの個別のV OCの指針値を定めておりますが、TVOCに関する指針値の優先度は高くない。しか し将来の対象にはなるという回答でございます。  ハンガリーでは、今VOCの指標設定の努力がされておりますが、まだ承認には至っ ていない。  また、ポーランドにおきましては、個別の化合物について基準が設けられているけれ ども、TVOCの指針値はない。  また、米国におきましては、ガイドラインの検討はされていないが、将来の指標策定 に不可欠な健康及び暴露に関する基礎調査が行われているという回答でございます。  また、英国からの回答ですが、VOCの健康影響について検討を行ったところ、室内 空気質の指針を示すのには疫学的なデータが不十分である。しかし、平均的なTVOC の濃度(0〜ら1 mg/m3)下で何らかの影響が認められた場合は、家庭内のVOC発生 源に注意し、暴露の削減を図るべきというふうに指摘してございます。具体的なスケジ ュールは未定でありますが、今後指針の設定の検討を行うという回答でございます。  また、欧州委員会からは、欧州委員会の環境総局としての検討は正式には行われてお りませんが、先ほどご紹介いたしました共同研究センターで空気質の研究が進められて いるという回答でございました。  次のページをお願いします。そこでTVOC等に関する空気質の指針の設定もしくは 検討がされていないという回答の場合、その主たる背景を整理いたしますと、人体への 毒性影響が明確に立証されなければ指標の設定はできない、あるいは室外大気中の濃度 基準が存在するため必要ない、あるいは事業活動や職域、あるいは建材等からの排出基 準の方が重要な課題であるためというような回答がございました。  そこで2番目としまして、TVOCに関する指針を考える上で、参考にできる研究報 告や文献等もあるかということでございますけれども、いただいた回答からしますと、 ここに示します欧州委員会共同研究センター環境研究所による「室内空気質とヒトへの 影響−報告書第19:室内空気質の検討における早期発生有機化合物(TVOC)(1997 年) 」、これ以外には特に新たな知見は見出せず、現時点は、この報告書がTVOCの 指針値策定の可能性を提供する唯一の文献というふうに考えております。これにつきま しては、幾つかの紹介された文献等があったのですけれども、基本的には、この文献が 引用されているケース、あるいはこれが別の国の言葉で書かれているケース等でして、 この文献は唯一のものというふうに回答からは判断いたしております。  この報告書では、TVOCの決定方法について、今まで報告されているTVOC値は 分析方法や個別のVOCの合計方法が異なるため比較ができないというふうに説明した 上で、この次に示します実際的な手順を提案しております。  それについて具体的に説明いたしますと、まずTVOCの決定基準の考え方として、 TVOCの決定には次の3つを考慮すること。すなわち、TVOC値を構成する個別の 化合物が明確に定義されなければならない。TVOC値は採取空気中の全VOC濃度に できる限り近いものとなるべきである。TVOC値は室内空気質の評価にできる限り有 益なる方法で構築されるべきである。そのためには次の要件を満たすこと。すなわち、 採取空気中のできる限り多くの化合物を特定し、及び少なくとも検出上位10物質を特定 すること。TVOCの計算に含めるVOCの処方、すなわち測定範囲、VOCの種類、 また室内空気中のあらわれる各種VOCのうち、必要な各化学分類を代表する化合物の リスク、これらを明らかにすることということでございます。  これを受けて、この報告書の中では勧告手順ということで、TVOC値の決定には次 の手順を勧告するというふうに提案してございます。  まず空気の採取には、Tenax TA吸着体を使用し、あるいは同水準の吸着と脱着が確 保できる場合は他の吸着体を用いてよい。次に加熱脱着によって、採取したVOCを吸 着体からGCカラムに移す。分析には不活化された非極性のGCカラムを使用。分析シ ステムにはトルエン等の検出限界をそれぞれ少なくともここに示す数値まで許容しなけ ればならない。4番目、クロマトグラムではn-ヘキサンからn-ヘキサデカンまでの部分 に見つけられる化合物を考慮する。5番、個別の検出ピークに基づいて、できるだけ多 くのVOCを定量する。その際には、少なくとも別途示す必須VOCリストに含まれる 化合物及び検出上位10ピークにそれぞれ該当する化合物を定量する。特定された各化合 物の合計濃度を計算する。6番、未特定の各VOCのピークについては、トルエンの検 出量に換算して合計濃度を決定する。手順5及び6の結果、特定された合計Sidが特定 されたものと特定されていないものの合計、すなわち、Sid+Sunの3分の2に達して いればVOCの特定は許容できる水準にある。また、Sid+Sunの合計がlmg/m3未満の ときは、SidがSid+Sunの合計の2分の1に達していれば十分である。8番目、ここ で言ったSid+Sunの合計がTVOC値と定義される。9、たくさんの化合物ピークが 手順4で示したVOC範囲の外側に観察される場合は、その旨注釈を付ける必要がある ということでございます。  なお、上記の手順で決定されたTVOC値は、室内空気中の全VOCを含むわけでは ないことに留意すべきである。TVOC値には反映されない室内空気質に深くかかわる 汚染物質が存在する。特に低分子のアルデヒド類はその代表例で、通常、TVOCとは 別途、望ましくはDNPH法を用いて測定されるという説明でございます。  次のページをお願いいたします。ここに示しました物質名が、いわゆる必須VOCs リストと呼ばれているものでございます。この芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、環状 アルカン、テルペン、アルコール、グリコールまたはグリコールエーテル、アルデヒ ド、ケトン、ハロゲン化炭化水素、酸、エステル、その他という形で分類されてござい ます。 次のページをお願いいたします。この上記の報告書によりますと、VOC混合物のリ スク評価については、VOC混合物による暴露実験や疫学的な調査による幾つかの試み もなされているものの、TVOCと健康影響の首尾一貫した関係は未だ明らかにされて おらず、TVOCに係る明確な指針は存在しないとして、ALARA(as low as reas onably achievable:合理的に達成可能な限り低く) の原則を勧告しております。 そして、VOC混合物の暴露−効果関係に係るより多くの情報と注意深くデザインさ れた疫学研究の必要性を指摘し、その結果として、例えば個別のVOCの生物反応性に 基づく加重補正値を合計するような、より優れたモデルが確立される可能性を示唆して おります。  なお、この報告書の中では、これまで室内空気中のTVOCに係る指針の設定につい て、TVOCの定義と方法と異なる以下の2通りのアプローチが提案されたことがある ことを紹介しております。  1つは、1990年のMolhaveの提案による方法でして、これは空気質毒性の健康影響に 関する文献値から影響が増す順に4段階の暴露レベルを示唆しているものであります。 すなわち、0.2mg/m3よりも小さい濃度が快適レベル、0.2 〜3mg/m3 の間が多因子性暴 露レベル、3〜25mg/m3 の間が不快レベル、25を超えますと毒性レベルというふうに定 義づけられております。 次に、90年のSeifertの方法ですが、これはドイツの家屋を対象にした実地試験の経 験から、TVOCの上限値を推測したものでございます。すなわち、実施試験の平均値 である300μg/m3が容易に達成可能なレベルであるので、これを超えないものとした次第 でございます。また、TVOCを異なる化学分類に割り振る場合に、次のとおりとして おります。脂肪族炭化水素が100μg/m3、芳香族炭化水素が50μg/m3、テルペンが30μg /m3、ハロゲン化炭化水素が30μg/m3、エステル20μg/m3、アルデヒドまたはケトン類20 μg/m3、その他が50μg/m3。さらに個別のVOC濃度に関して該当する化学分類の平均 値の50%を超えているVOCが存在しないこと、及び測定されたTVOC値の10%を超 えるVOCが存在しないこととしております。これらの数値はすべて毒性学的データか ら求めたものではなく、合理的に達成可能なレベルとして判断されたものであるという ことでございます。  次のページをお願いします。2番目としまして、「TVOC指針値策定の可能性とそ の方法」ということで考えますと、現時点で得られている情報からTVOCの指針値 (暫定値)の設定のアプローチをするとした場合、少なくとも下記の手順を踏むことが 必要となります。  まず、実態調査における測定値(例えば中央値)に基づいて合理的に達成可能なレベ ルを設定すること。測定の際には、日本版の必須VOC3 リストを準備すること。リス ト化された物質については標準的な測定法が存在すること。  そこで、先ほど文献で示しました手順に沿いまして、厚生省の「居住環境内における 揮発性有機化合物の全国実態調査」の結果をもとにシミュレーションをしてみると、次 のとおりとなりました。 まず、2-1 としまして必須VOCリスト、これは先ほど紹介しましたリストの比較が できるように、こちらの厚生省の調査で対象となった物質を、下線は共通のもの、及び 斜体字は新たに追加されているもので示してございます。  次のページの2-2 ということで「Sidの計算」というサブタイトルの項目がございま す。個別の調査家屋のチャートを再解析する必要がありますが、ここでは便宜上、既に 取りまとめた物質ごとの測定データを用いて算出することといたしました。その際に使 用する数値は分布上、より真の平均に近いと考えられる中央値を用いることによって、 合理的に達成可能なレベルの値を算出するものといたしております。 ここに平成10年度の調査結果を計算いたしました例を示しますと、特定VOC濃度の 中央値の総和(Sid) は平均で153μg/m3というふうに計算されました。これは個別の 個々のケースで申しますと、新築1か月の場合には400μg/m3 から500 μg/m3の間、中 古の場合が170μg/m3 前後、夏の場合には130 μg/m3前後、冬の場合は170μg/m3 前 後、何らかの健康症状なかった場合、あった場合、これはともに150μg/m3 前後という 形になっております。  次のページ、2-3 「Sun及びSin+Sun (=TVOC)の計算」でございますけれど も、未特定のVOC量Sunについては、元のチャートを再解析しないと推測できません が、ここでは便宜上、描いているデータから、この合計値が1 mg/m3未満であるという ふうに想定いたしまして、SinがSin+Sunの2分の1量であると仮定してTVOCを 計算いたしました。そうしますと、これは単純に2倍すればいいわけですから、TVO C=306μg/m3、個々には、新築の場合であれば800 〜950μg/m3 の間、中古であれば 330 〜360μg/m3 の間、夏の場合であれば260 前後、冬の場合であれば350μg/m3 、症 状なし、ありにかかわらず300μg/m3 強という数値が得られております。ここで算出さ れた数値は200 〜400 μg/m3の間、すなわち、新築の場合には800 〜1,000 μg/m3の間 にあることから、TVOCの暫定目標値を次のとおりとする。TVOC暫定目標値はす なわち400μg/m3、ただし新築の場合は1,000 μg/m3、中古の場合は400μg/m3 という ことでございます。 今後の進め方でございますが、このTVOCの暫定目標値は限られたデータからの仮 定に基づいて算定された数値であり、その構成は採取空気の構成に近いものとは言えな いです。しかし、一定の目安を与えることは室内汚染の軽減に一役を買うものと期待し ております。すなわち、今後以下の検討を進めて、より採取空気の混成に近い必須VO C3 リストの作成、健康影響が起こり得るTVOCの数値の調査とTVOCリスク評価 に基づく指針の策定をしなければならないというふうにまとめました。  具体的には本格的TVOC実態調査の実施、これは健康影響調査も同時に行う。あわ せて必須VOC3 リストの完成(特にグリコール類、環状アルカン、フラン体、低分子 アルデヒド類、有機リン系化合物、フタル酸エステル類の追加等。またVVOC3(Very Volatile Organic Compounds)、SVOC3(Semi-volatile Organic Compounds)の区別を 含んだもの) でございます。また、健康影響が起こるTVOCの濃度域の特定とTVO Cのリスク評価。そしてTVOC指針値の策定。  また測定法につきましては、既存の標準測定法の測定範囲の特定と、その方法ではカ バーできない物質の測定法の確立。また、TVOCを化学分類に割り振った場合の生物 反応性に基づく加重の方法の調査研究。また、各化学分類の目標値と指針値の策定。さ らに、継続的なモニタリングによるTVOCの目標値/指針値の見直し。こういった検 討を行うことによって進めていくことができつつあるというふうに判断いたしました。  事務局からの説明は以上です。 ○林座長  どうもありがとうございました。2-3 の「Sin」というのは「Sid」の間違いです ね。 ○吉田補佐 はい。「Sid」の間違いです。 ○林座長  どうもありがとうございました。 では、今のご説明にご質問、コメントはございませんでしょうか。 ○池田委員  私個人的には、このようなTVOCの暫定ガイドラインが出たことは大変すばらしい ことだと思います。やはり医学的な根拠にということに余りこだわっておりますと、い つまで経ったって出るかどうかわからないということがございますので、ある意味で英 断とも言えるかとも思いますけれども、厚生省が出したのはなかなかすばらしいと思い ます。ただ1つ気になるのは先ほど安藤先生がおっしゃったことで、これと個々の指針 値との関係がどうなっていくかということを、どちらが優先するかという、その辺にく ると思うんですが、その辺について、ある程度明確な言及があった方がよかったかなと 思いました。それだけです。 ○田辺委員  田辺です。TVOCを室内の化学物質の汚れの指標として導入することに関しては大 変賛成でございます。実際、400 μg/m3、新築時1,000 μg/m3という数字がどうかとい うことに関してですが、ここで検討されている中で、先ほどの2-3 のところにかかわり ますが、測定法との絡みが非常に大きいのではないかというふうに思います。 厚生省の実態調査で行われている調査は、24時間通常の生活状態で測定されているデー タではないかと思います。ということは、ドアの開閉ですとか、窓の開閉等を許してい る測定だと思います。それに対して、今回1回目から3回目までの中間報告で出ました 測定法の新築に関する部分は、5時間以上閉鎖、24時間換気システムがないもの以外は 全閉であるという仮定をしておりますので、勢い濃度が非常に高くなる可能性がありま す。こういうものに対して1,000 μg/m3という数字を、あるいは400 μg/m3という数字 をどういうふうに考えるのか明確にしておく必要があると思います。24時間生活状態で 考えるのか、それとも、閉鎖したところでこの数字を使うのかというのはかなり大きな 影響があるのではないかと思います。例えば、総ヒノキの新築住宅を全閉の状態で測り ますと、α-ピネンだけでも1mg/m3を超えるような例がございます。私も相談を受けて いますが、こういうものが果していいのか悪いのか、自然素材がよいといって総ヒノキ でつくったんだけれども、非常にTVOCが高くなった場合はどの様に対応するのか。 どういうふうに考えたらいいのかというようなご質問をよく受けます。測定法に戻っ て、どういう測定法でこの値を適用するかというのを議論する必要があるのではないか と思います。  それから、一番最後のところにTVOCのリスク評価のことを検討すべきと書いてあ りますが、TVOCが一番最初にメルハーブから提案されたときには、デンマークのア パートを測定しまして、ここで出てきた典型的なVOCをVOCのカクテルと呼んでい ますけれども、TVOCカクテルというのをつくりまして、デンマークとEPAでチー ムスタディという研究があって、実際に暴露評価をしております。その暴露評価を行っ た結果で先ほどのようなTVOCと健康との関係値が出てきているのです。しかし、その 後、他のところで測ったVOCが非常に組成が違うので、ティームスタディで行った結 果が適用できないのではないかという批判があります。最近、TVOCの健康影響との 関係をそのままとらえることができないのではないかという批判がありますので、少な くとも同じ轍は踏まないように、前の経緯だけは調べて当たった方がよいのではないか と思います。その中の指摘に、これはスウェーデンのヤン・サンデルがTVOCのレベ ルが同じような住宅でも、片方は健康被害が起こっているけれども、片方は起こってい ないという報告しております。その原因等について化学物質の反応があるのではと原因 を指摘しております。どうしてヨーロッパやアメリカがTVOCを言わなくなってきた かというのを調べてから、再考すると日本独自に色々対策ができるのではないかという ふうに思います。  以上です。 ○林座長  どうもありがとうございました。他にご意見ございませんでしょうか。 ○安藤委員  今、田辺先生がおっしゃったことはもっともだと思います。それからもう一つは、T VOCというのはトータル的なことをやるべきだということから必要だろうというふう に私は思っていまして、この委員会の前身の委員会のときにまとめた報告でも、ちょっ とニュアンスが違いますけれども、例えば水ですと、トータル的な汚れという指標で、 BODだCODだというのがある。それならば、室内空気でもそういう指標があってい いじゃないかという考え方で結んだというふうに記憶しております。  そういうことからすると、具体的に動き出すとなると今の田辺先生のおっしゃったよ うな問題がいくつか出てくるということだろうと思います。ここで健康影響というのを どこまで追求するのかというお話になりますし、それを追求すれば結論は出ないんだろ うなというふうになってしまう。とは言いながら、汚れという指標はどこかで考えてお くべきだろうということからすると、私はこういう考え方は導入した方がいいんじゃな いかというふうに思っております。しかし、同じことになりますが、多少日本的な考え 方を作ってもいいんだろう。つまり、その測定法もそうですし、あるいはサンプリング の方法もそうですし、一つの考え方というのは作っていっていいんじゃないか。そんな ふうに思っています。 ○林座長  ありがとうございました。他に何かございませんでしょうか。  一つお伺いしたいんですけれども、VOCというのは毒性学知見から決めています が、一方TVOCは毒性学知見から決定したものではない値です。しかし、多くの方は TVOCも毒性学的な立場で決められたのではないかというふうに理解されていると思 います。逆に、人の健康への影響が明確でないTVOCというのはどういう意味である かということについても疑問がもたれます。その意味で、医学的な、あるいは毒性学的 な立場でないTVOC暫定目標値というのをつくるのは大事だと思うんですけれども、 それの意義、これがあればどう役に立つのか、どういう有用性があるのかという意味を はっきり書いておいた方が誤解を招かないと思います。 ○川原室長  そこの部分につきましては、この資料4の「はじめ」のところで下の方に書いてござ いますけれども、いわゆる科学的根拠に基づいたTVOC指針値設定、ここの指針値と 暫定目標値という言葉の使い分けもご理解いただかなくてはいけないと思っておりま す。TVOCの指針値の設定は、現時点では困難であるけれども、現時点で得られる科 学的知見を最大限活用し、この暫定目標値と暫定策定方法について、先ほど説明したよ うな形で試算等を行いまして、我々としては暫定目標値として提示すること。これが室 内汚染を低減し、居住者の健康を確保する上で有効であるというふうに判断をしたとい うことでございます。  ここに、「なお書き」、以下として書いてございまして、指針値として明確には定め られないということも書いてあるわけでございますけれども、この辺をもう少し書き込 んでという趣旨であればよくわかります。 ○林座長  そういう事項は一番最初の部分に書かないとわかりませんので、ここのところをもう 少し書き込んでいただきたいなと、これは希望です。  他に何かございませんでしょうか。 ○田辺委員  一番最初に質問した測定のところですが、暫定目標値といたしましても、ここで出た ものは日本の住宅に関してはものすごく影響力があります。1年間に約120 万戸の住宅 が新築で供給されておりますので、真面目にやっていらっしゃる方は多分その方々がこ れを守って供給しようということを、考えると思います。その時に、新築であるから全 閉鎖をして最大濃度が出るようなところで、これを守ろうというふうに暫定値を考える のか、それとも、24時間居住してからの暴露で考えるのかというのは、かなり大きな差 があります。そのあたりのお考え、今後の方針をどうすべきかというのも少し議論して おく必要があるのではないかと思うんです。 ○吉田補佐 これはちょっと半分私見もありますけれども、今、田辺先生がされた指摘につきまし ては、もしきちんとしたリスク評価に基づいた指針値が定められるということであれ ば、今おっしゃったような閉め切って化学物質の濃度が最大になる状態での比較という ものは可能になるというふうに考えております。ただ、現時点では、実際に厚生省の実 態調査をシミュレーションした数値でありますので、これは先生がおっしゃるように開 閉状態で採取していた空気質の実態ということになっております。その意味では、これ については通常住んでいる条件で測定してみたときに、TVOCの汚染の程度としては この程度であるという解釈だと理解しております。  ただ、今後の進め方ということで、TVOCの本当のリスク評価というのを進めるた めの方法をこれから詰めていかなければいけないのですが、そういったところをきちん と研究して、ある程度リスク評価に基づいた指針値が示せるということなのであれば、 今、先生がおっしゃったような、実際に新築で閉め切った場合の数値との正確な比較と いうものができるものと理解しております。ただ、その場合でも、これは全く適用され ないんだというような話は別でして、そこはできるだけTVOC値としても低くなるよ うな努力はしていただくという趣旨で考えておりますので、シミュレーションの方法の ところに、こういった条件をきちんと明記することによって、この数値が得られた背景 に誤解がないようにしたいというふうに思っております。 ○林座長  他に何かご意見ございませんですか。  もしなければ、ただいま事務局から提示されました資料4につきまして、文面上の修 正は必要だと思いますけれども、現時点でのTVOCの空気質指針の策定の基本的な考 え方としては適当と思われますが、いかがでございましょうか。  よろしいですか。どうもありがとうございました。では、TVOCの空気質指針の策 定の考え方に関しては、資料4に示された考え方をこの検討会の結論といたしたいと思 います。  この資料の取り扱いにつきましては、前と同様に、最後にまとめた段階で検討させて いただきたいと思います。  続いて議題の4に移らせていただきます。これは「指針値の適用範囲の在り方につい て」ということで、資料5が配付されておりますので、事務局の方からご説明くださ い。 ○吉田補佐 それでは資料5「指針値の適用範囲の在り方について」説明を申し上げます。  まず「はじめに」ということで、6月26日の第3回の検討会におきましては、その中 間報告書の中で、指針値の適用範囲の在り方について次のように報告しております。 「原則として全ての室内空間を対象とする。住宅以外の空間への適用の在り方につい ては、本検討会にて引き続き検討していくこととするが、オフィスビル、病院・医療機 関、福祉施設、学校・教育施設、役所、車両等、比較的長時間にわたって居する可能性 がある空間への適用も考慮することが望まれる。なお工場その他の特殊な化学物質発生 源である室内空間は、別途検討されることが必要である」。  そこで、事務局の方でいろいろ考え方を検討いたしまして、ここに示します1番と次 のページの2番についての2つの見地からの考え方を提示したいと思っております。 まず1番ですが、「保健及び公衆衛生上の見地からの考え方」ということでございま す。現代社会に住む人々は、その多くの時間を室内空間で過ごすわけであるから、そこ での生活の質が保証されていないければならない。そのためには、すべての人々が社会 的及び経済的に生産的な生活を送ることができる健康レベルに達しているべきである。 汚染物質への暴露は、居住者の健康や機能、快適さの質を損なうことになるので望まし くない。したがって、保健及び公衆衛生上の見地からは、その空間はどこであろうと、 汚染物質へのヒト暴露を低減する必要がある。本検討会で策定される指針値は、生産的 な生活に必須な特殊な発生源がない限り、下記に示すあらゆる室内空間に適用されるべ きであるということで、ここに可能性のあるすべての室内空間を可能な限り列記いたし ました。 次のページをお願いいたします。2番目としまして、「供給側と居住者/消費者の責 任関係の見地からの考え方」でございます。快適で汚染のない室内空間を提供すること と同時に、室内空気の汚染に関して知り得た化学物質を明らかにして情報開示すること は、その空間の供給側の責任である。一方、その情報は消費者の知る権利であることと 同時に、消費者自身はその空間を選択する責任と自分自身の住まい方によって起こる汚 染に対する責任が起こる。ただし、小児の場合は弱者であって、日常生活において周囲 や他人に物事の判断を委ねることが余儀なくされることが多く、自身を汚染から守る責 任には限界がある。したがって、小児への有害な暴露を未然に防ぐよう、事業者、消費 者及び行政を含む当事者全員が徹底した空気質管理を心がけなければならない。したが って、特に小児が暴露される可能性の高い空間(住居、病院、幼稚園、学校等)におい ては、積極的な空気質管理が求められる。このことは他の弱者(高齢者、妊婦、病人 等)が暴露される可能性が高い空間の場合にも当てはまることである。この空気質管理 の効果を高めるために、継続的なモニタリングが必要であるということでございます。  まとめとしまして、本検討会で策定される指針値は生産的な生活に必須な特殊な発生 源がない限り、あらゆる室内空間に適用されるべきである。特に弱者、小児、高齢者、 妊婦、病人などが暴露される可能性の高い空間においては、積極的な空気質管理が求め られ、当事者による継続的なモニタリングによって、その効果を高めていくべきである ということでございます。  なお、この報告書をまとめるに当たりまして、下記に示しますWHOのワーキンググ ループで、今年の5月にまとられております快適な空気環境に対する権利に対する報告 書の案が出されておりますので、これを参考にしたことを申し添えます。  以上です。 ○林座長  ただいまの説明についてコメント、ご質問ございませんでしょうか。 ○田辺委員  何度もすみません。1つは、現在の住宅であれば、VOC等の定義は比較的楽だと思 うんですが、この中の施設で、例えば喫煙等がされるような空間というのはいくつかあ りますが、こういったものをどういうふうに考えるかというのはかなり大きな問題では ないかというふうに思います。  それから後ろの方に、「車両」というのが入っておりますけれども、これも外気から 入ってくるものも考える必要があると思います。また、新しい車等は化学物質の濃度は 非常に高くて、私どもの測定例でも100 mg/m3近くあるものもあったり、かなり抜本的な 対策が必要ではないかと思います。いくつか、ここのガイドラインをそのまま当てはめ るにはなかなか無理があるものもあると思いますが、そういったものに関してはどうい うふうにお考えになっているか、お伺いしたいんですが。 ○吉田補佐 基本的には、保健及び公衆衛生上の見地からは、空間がどこであろうと原則的にはど こにも適用されるというスタンスをとったものでございます。ただ、先ほど説明しまし たように、「生産的な生活に必須な特殊な発生源がない限り」というふうに条件をつけ てございまして、これをどういうふうに解釈するということだというふうに考えており ます。例えば、これが職域であれば、工場みたいな特殊な発生源という見方になります し、あるいは車両等であれば、実際そういった構造を維持するに当たって、品質の保証 された設備というものは当然必要でありますので、そういったものは、場合によっては ここに入ってくるものと理解しております。  喫煙につきましては、これは生産的な生活という言い方は変かもしれませんけれど も、そういった外的要因という意味で、防げ得ないものというのが上限として入ってく ると思いますので、その辺は誤解のないように追記できればというふうに思っておりま す。 ○林座長  他に何かございませんか。  一つ教えて下さい。1の「保健及び公衆衛生上の見地からの考え方」の2行目の終わ りですけれども、「そのためには、全ての人々が、社会的及び経済的に生産的な生活を 送ることができる健康レベルに達しているべきである」という文章はおかしいので、 「そのためには、全ての人々に社会的及び経済的に生産的な生活を送ることができる生 活環境を確保すべきである」とか、あるいは「保証すべきである」と訂正した方がよろ しいんじゃないかと思うんですけれども。 ○川原室長 承知いたしました。 ○林座長  他に何かございませんでしょうか。まとめも、これでよろしゅうございますか。 ○土屋委員  1つだけ、この中に幼稚園とか、保育園とか、それから学校、特に教育機関の施設と いうのは、結構今でも問題になっているところが多いんですけれども、その中で、文部 省の方の関係というのが、例えば参考資料6の方では出ておりませんけれども、その辺 との接触というのはどういうふうになっているのかちょっとお聞きしたいと思います。 ○吉田補佐 これとそもそも各省間、関係する省庁間での連絡が始まった経緯が、まず厚生省と建 設省と通産省と農林水産省(林野庁)、この4省で始まって、その後労働省が加わった という経緯がございます。文部省の方につきましては、その後、いわゆる学校に関して どうしたらいいかということで指摘がございまして、現在こちらが把握した限りでは、 文部省の方でも検討を開始したというふうに把握しております。まだ、正式にこちらの 方の連絡会という形のメンバーという感じではないんですけれども、一応接触を図って おりまして、最終的には、将来的には関係するところが共同してできれば理想的である というふうに思っているところです。 ○林座長  他に何かございませんでしょうか。 ○池田委員  細かいことなんですけれども、地下街というのが入っていないように思うんですけれ ども、これは何か意味があるんでしょうか。地下がたまたま抜けただけなんでしょう か。 ○吉田補佐 ちょっと意識しておりませんでしたが、必要であれば入れたいと思います。 ○池田委員  地下街というのは、ビル管理法でもどこに入るのかがいつも難しい場所でして、日本 独特かもしれないので。 ○林座長  他に何か。  概ねご意見は出尽くしたということでございますので、ここで指針値の適用範囲の在 り方について、検討会としての結論をまとめたいと思います。事務局から提示されまし た資料につきまして、文面上の修正があると思いますけれども、指針値の適用範囲につ いての基本的な考え方としては、適当と思われます。いかがでございましょうか。  よろしいですか。どうもありがとうございました。では、指針値適用範囲の在り方に 関しては、基本的に資料5で示された考え方を、この検討会の結論とすることにいたし ます。事務局では文面上の修正を進めてください。 そこで資料2、3、4、5に関して、修正作業とその後の取り扱いについてですけれ ども、事務局の方で何かお考えございますか。 ○吉田補佐 まず、非常に長時間にわたるご審議ありがとうございました。今後の資料の取り扱い につきましては、事務局から次のような提案をさせていただきたいと思います。まず、 2〜5の一連の資料につきましては、今日いただいた先生方のご指摘を踏まえまして、 座長の林先生と事務局で必要な修正を行って、特にこの資料2の指針値案につきまして は、さらに今日ご欠席の広瀬先生と内山先生にも相談の上、修正を行いまして、その後 全委員に回覧したいと思っております。そこで全委員に回覧しまして、多少の修正が入 ると思いますけれども、了承が得られた段階で、資料2につきましてはパブリックコメ ントの手続に入りたいと思っております。これにつきましては、前回トルエン等の指針 値を決めたときと同様に大体1か月間を予定して、順調に作業が進んだとすれば、12月 前半ぐらいに次回の検討会を開催して、そこで寄せられたコメントの紹介と最終化をし たいというふうに思っております。  また、資料3の測定法目録及び相談マニュアルに関してですけれども、これは今日承 知いただいた方針に従いまして、事務局の方で作成作業を進めたいと思っております。 また、その際に提示いたしました測定法目録の案、参考資料の3に該当するものですけ れども、これにつきましては、全製品の市場調査を実施して、利用可能な測定値リスト というものを策定して検討したいと思っております。そのリストは、その後定期的に更 新あるいは充実させて各方面に情報として周知していくという形で考えたいというふう に思っております。それにつきましても、次回の検討会ではそれらの進捗状況について 紹介したいというふうに思います。 資料4のTVOCの前提目標値の考え方及び資料5指針値の適用範囲の考え方につき ましても、資料2の指針値案と同様に、この後必要な修正を行いパブリックコメントを 収集して、次回の検討会でその結果を紹介して考え方の再確認を行いたいというふうに 思っております。差し支えなければ、今後の作業を今説明したとおり行っていただきた いと考えておりますが、いかがでございましょうか。 ○林座長  どうもありがとうございました。ただいま事務局から、今後の作業の進め方について ご提案をいただきましたけれども、何かご質問、ご意見ございませんでしょうか。 ○安藤委員  その場合、測定方法というのは提示するんでしょうか。 ○吉田補佐 測定方法につきましては、今回あくまで参考という形で、要するに一般化できないけ れども、一応参考として示したということですので、今回の検討会、これは公開で行っ ておりますので、この資料もこの検討会の資料ということで公開したというふうに判断 しております。パブリックコメントにつきましては、当然、先生の方にご協力いただき たいんですけれども、今後一般化できるような方法を作成して案として検討会で提示し た上で、また改めてパブリックコメントにかけたいというふうに思っております。た だ、指針値を出して測定法が決まっていない間の期間をできるだけ短くしなければいけ ませんので、そこはできるだけ事務局と測定の先生方と協力して進めていきたいという ふうに思っております。よろしくお願いします。 ○安藤委員  よろしくお願いされても、これは非常に難しい話だということを、まず申し上げてお かないと、今まで難しかったわけですから、なかなか苦しい面があるなというところで あります。それを一応今から申し上げておきます。 ○林座長  どうもありがとうございました。他にございませんか。  今後の作業のつきましては、一応、事務局のご提案に従って進めさせていただきたい と思います。文章の修正につきましても、責任をもって預からせていただきまして、事 務局との作業が終了した時点で、先生方にお諮りしたいと思いますので、よろしくお願 いいたします。  次の議題の「その他」ですけれども、事務局で何かございますでしょうか。 ○吉田補佐 特にございませんが、一応最後に川原室長より一言ごあいさつ申し上げます。 ○川原室長  先生方には、大変長時間、ご審議をいただきましてありがとうございました。また、 いろいろなご指摘、ご意見をいただきまして感謝申し上げます。本日、事務局の方から 提出いたしましたいろいろな考え方でございますとか、案につきまして、基本線のとこ ろはご了解をいただいたということでございますが、最終的なペーパーにしていくため には、また先生方のご協力をいただきまして、きちんとしたものにしていかないといけ ませんが、手直しをしなければいけない個所は多いようでございますので、今後とも何 とぞよろしくご協力のほどをお願いいたしたいと思います。本日はどうもありがとうご ざいました。 ○吉田補佐 事務局の方からは以上でございます。 ○林座長  どうもありがとうございました。  それでは、本日の検討会はこれで閉会させていただきます。ご多忙のところ、ご出席 いただきましてありがとうございました。                                     (了) 照会先:厚生省生活衛生局企画課     生活化学安全対策室     剣持(内2423)平野(内2424)