00/09/22 第26回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 第26回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事次第 ○日  時 :平成12年9月22日 (金)  15:00〜17:00 ○場 所 :中央合同庁舎第5号館  共用第9会議室 ○出席委員 :高久史麿部会長   (委員:五十音順:敬称略)          軽部征夫 木村利人 柴田鐵治 竹田美文        (専門委員:五十音順:敬称略)          雨宮浩 小澤えい二郎※ 加藤尚武 金城清子 廣井正彦  松田一郎         ※’えい’は偏が金・旁が英 ○議  事 : <審議事項>   1.遺伝子治療臨床研究実施計画の今後の審議について   2.「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」について   3.異種移植の取り扱いについて   4.東北大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(肺がん)について <報告事項>   1.平成13年度政府予算概算要求について   2.厚生科学審議会改組について   3.岡山大学医学部附属病院からの報告 ○配付資料 1.遺伝子治療臨床研究実施計画の今後の審議について   2−1.「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」検討委員会等について 2−2.「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」のイメージ   3.異種移植の実施状況等について 4.東北大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(肺がん)について 5.平成13年度政府予算概算要求について   6.厚生科学審議会改組について   7.岡山大学医学部附属病院からの報告 ○事務局  定刻になりましたので、ただいまから第26回厚生科学審議会先端医療技術評価部会を 始めます。  本日は、入村委員、曽野委員、寺田委員から御欠席との御連絡をいただいておりま す。 委員14名のうち出席委員数が過半数を超えておりますので、会議が成立いたしますこと を御報告申し上げます。 最初に、本日の会議資料の確認と説明を申し上げます。資料の欠落等ございました ら、御指摘いただければと存じます。(資料の説明と確認)  それでは、審議に入ります前に、当課課長の岩尾より一言御挨拶を申し上げます。 ○厚生科学課  岩尾課長 お忙しいところ、御参集いただきましてありがとうございます。厚生科学 課の岩尾でございます。 厚生科学を取り巻く現状について御紹介させていただきます。今年の4月から、ミレ ニアム・プロジェクトとしてヒトゲノム解析の研究が開始されたところでございます。 更に、来年度は、現在予算要求しておりますが、ミレニアム・プロジェクトに加えまし て、成人の2大死因でございます、がんと心筋梗塞、要介護の状態となる脳卒中・痴 呆・骨折につきまして、予防と治療成績の向上を目指してメディカル・フロンティア戦 略というものを推進していくことにしております。これらの施策におきましても、厚生 科学の果たす役割はますます大きくなるものと考えております。  一方、個人情報保護につきましては、政府の方で個人情報保護の基本法の大綱につい て現在議論されております。個人情報の保護や研究に参加していただく方への説明と同 意を含めた倫理的な問題への配慮も、研究を推進する上で早急に対応していかなければ ならないものと考えております。  本日は、遺伝子治療の臨床研究、そして異種移植、ヒトゲノムの解析研究に関連した 共通の倫理指針の策定について御審議いただく予定でございます。来年の1月に省庁再 編がございまして厚生労働省となりますが、厚生科学審議会も改組が予定されておりま す。厚生科学の推進における当審議議の果たす役割も今以上に大きくなると思いますの で、専門的な見地から活発な御審議をいただければ幸いだと思っております。よろしく お願いいたします。 ○高久部会長  議事を始めさせていただきます。  本日は、4件の審議事項が予定されています。まず、審議事項1の「遺伝子解析研究 実施計画の今後の審議について」御議論をお願いします。事務局から説明をお願いしま す。 ○事務局  それでは、資料1に基づき御説明申し上げます。  遺伝子治療の臨床研究につきましては、厚生省の告示で、厚生科学審議会の答申を踏 まえ、各大学あるいは各研究機関で倫理審査委員会の審査を受けた後、厚生省に研究計 画の内容について1件ごとにチェックを求めるというシステムになっておる訳でござい ますが、昨年の5月にこの審議会の御答申でいただきました「21世紀に向けた今後の厚 生科学研究の在り方について」という答申におきましては、今後こうした研究に基づい た治療法の普及が予想されるということから、ある程度普及した遺伝子治療研究につい ては、迅速に行えるよう、国において倫理面も含めた審査準則を制定し、各研究機関に 設置されている倫理委員会の委員構成、審査事項等の共通化を図ることにより、現行の 個別審査から自主審査への充実への切り替えを図ることなどの検討が必要であるという ふうに御答申をいただいておる訳でございます。  また、 (2)でございますが、「規制緩和推進3か年計画」という当年の3月31日の閣 議決定におきまして、遺伝子治療等の新技術を、十分な情報のもと、自己責任で本人が その治療方法として選択する場合、それを制限する合理的な理由が見当たらないことを 踏まえ、新しい技術での治療を実質的に制限している状況を改善するよう検討するとい う御指摘をいただいておるところでございます。  2番としまして、内外の検討状況をお示ししている訳でございますけれども、国内に おきましては、 (1)でございますが、これまでに13件の確認の申請が厚生省あて上げら れております。本部会の御審議を経まして、11件については実施して差し支えないとい う旨の御回答をいたしておりますし、1件は取り下げられ、1件については現在審査中 でございます。この審査結果を受けまして、これまでに11人の患者に遺伝子治療が行わ れておるところでございます。  なお、米国におきましては、既に 4,000名以上の患者に遺伝子治療が行われていると いう現状がございますし、米国では、厚生科学審議会に相当するものとして、NIH (国立健康研究所)のRACという遺伝子組み換えの諮問委員会で審議がなされておる 訳でございますが、このNIH/RACが対象としておりますのは、従来、すべての遺 伝子治療の研究を対象に事前審査を行ってきたところでございますが、95年にその審査 の対象を新規性の高い計画、具体的に申し上げますと、新しいベクター、あるいは遺伝 子を導入するもの、あるいは遺伝子治療の対象研究として新しい疾患を対象とするも の、これに限定したという経緯もございます。  もちろん、アメリカにおきましては、治験に限らず、すべての臨床研究についてFD Aへの届出が義務づけられておりますので、そういった事情は異なるかと思いますが、 この2つを考えまして、事務局といたしましては、3番目でございますが、厚生科学審 議会のこの部会の下に専門委員会、仮称といたしまして「今後の遺伝子治療臨床研究に 係る検討委員会」というものを設置して、今後の臨床研究のあり方について御審議願っ たらどうだろうかというふうに考えております。もちろん、先生方、御承知のとおり、 遺伝子治療の臨床研究の審査におきましては、厚生省におきます審査とともに、大学関 係につきましては文部省における審査がございますので、そこで方針が食い違うという ことになりますと、現場あるいは患者に対する問題も多々出てこようかと考えておりま すので、私ども事務局といたしましては、既に文部省とも御相談をし、文部省と協力し て統一された方針を出すという方向で御審議をいただきたいというふうに考えておると ころでございます。  主な検討事項といたしましては、今後の審議のあり方、あるいは答申で指摘されてお ります審査委員会の審査マニュアルの検討などがあるだろうというふうに考えておりま して、今年度末を目途に結論を得るという方向でいかがなものだろうかというふうに考 えておる次第でございます。  なお、本日御欠席でございますが、寺田委員の方から、この件について、専門委員会 を設けて検討するというのは差し支えないけれども、検討に当たっては、アメリカのペ ンシルバニア大学の事例など、予期されない事態が起きた場合の対応ということを念頭 に置いて検討すべきだというような御意見をいただいております。  以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今、事務局から説明がありましたように、今後の遺 伝子治療臨床研究の実施について、今後の審議のあり方、それからIRBでの審査のマ ニュアルの検討ということを始める、そのための専門委員会をつくるということです が、この件に関しまして、どなたか御意見、御質問おありでしょうか。寺田委員の方か ら、アメリカのような事故が起こった場合の対応も含めて、この専門委員会で検討する ようにという御意見が出ておりますが、当然のことだと思います。どなたか御意見おあ りでしょうか。 ○雨宮委員  現在までは、例えば大学で遺伝子治療をやろうというふうに考えますと、施設で審査 し、文部省で審査し、そして厚生省で審査しというふうに私は理解していたのですが、 それが非常に時間がかかったということにもなろうかと思いますが、ただいま事務局の 方から御説明があったのは、厚生省と文部省とよく話し合ってということがございまし た。もしこういう審査委員会というものができたときには、これは各省庁にできるんで すか。それとも、まとまったものができるのか。事務局としてはどんなふうにレールを 敷きたいとお考えになっているのか、その辺をちょっとお聞かせ願えればと思います。 ○事務局  もう既に遺伝子治療の臨床研究の計画の実質的な審査と申しますか、この先端部会で 当初、倫理面を中心に御議論願った後、科学面を中心に作業委員会で御審議をいただい て、その作業委員会での御審議の結果をこの部会にまた報告するという形になっておる 訳でございますが、作業委員会での議論というのは、文部省のワーキンググループと共 同で開催をし、実質的な審査というのは同時に行っておるところでございます。もちろ ん、今後ともそのような方針、特に大学が出される審査につきましては、文部省と同時 に審査をすることによって、お互いの考え方、あるい時間的な問題等々に無駄がないよ う、効率的・効果的な審査が行えるよう配慮していきたいと考えております。先ほど申 し上げましたのは、臨床研究計画の審議のあり方そのものについても、もし変えるので あれば同じような変更をとるということで、その点についても文部省と一緒に作業を行 いたいというふうに提案しているところでございます。 ○高久部会長  よろしいでしょうか。ほかにどなたか。 ○木村委員  アメリカのFDAとの関連では、ペンシルバニア大のケースでは、予期せぬ結果が起 こったということで死亡事故につながった訳ですが、この場合、研究者の研究停止で事 実上の研究の推進が止まったということになっている訳ですが、今後、日本でもそうい う事故が起きた場合に、そういうことの内容を含めて、それはどこら辺が責任を持って やることになっている訳ですか。 ○事務局  責任ということから申し上げますと、それは研究責任者あるいは研究機関にあるだろ うと思います。ただ、仮に事故が起こるとすれば、その背景に何があったのか。例えば 個々における審査が悪かったのか、あるいは規制体系が悪いのか、あるいは報告体系が 悪いのかというのは、この場でもまた御議論いただくんだろう。あるいは、それで制度 を直すところがあれば制度を直していくんだろうということだと思います。 ○高久部会長  たしかアメリカの場合でも、FDAが認可をして、FDAが副作用の報告は受けてい た訳ですね。NIHのRACには情報は入っていなかった。ペンシルバニアの大学の場 合にも責任はやはり研究者だと思います。ただ、あのときには、ペンシルバニア大の遺 伝子治療臨床研究を全部ストップさせたのはFDAだと思います。  10月から始めて12年度末というのはなかなか大変だと思いますが、専門委員会をつく りまして、審査がもう少しスムーズにいくようにする、IRBの審査のマニュアルをつ くる、そういうことをいろいろ御検討願うことはよろしいでしょうか。委員名について は、厚生科学審議会の会長の豊島先生とも御相談して決めさせていただきたいと思いま すので、御一任いただければと思います。よろしくお願いします。  それでは、次の審議事項ですが、「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」に ついて。これについての検討は、既に垣添国立がんセンター院長を中心に始まっていま すが、これについて事務局から説明をお願いします。 ○事務局  資料2−1と2−2をご覧いただきたいと存じます。  資料2−1から御説明申し上げますけれども、ヒトゲノム解析研究・遺伝子解析研究 につきましては、この部会におきまして昨年の秋から御審議をいただいて、本年の春に 「ミレニアム・プロジェクトで行う遺伝子解析研究に関する指針」というものをおまと めいただいたところでございますが、その際、この部会においても御議論がございまし たように、ミレニアム・プロジェクト以外の遺伝子解析研究についても、やはりガイド ラインをつくるべきではないかというような御指摘をいただいたところでございます。 もちろん、科学技術会議におきまして、全体のヒトゲノム研究に関する原則というのが 今年の6月にまとめられておりますので原則というのはあるのですが、具体的な指針を つくらなければいけないというのは同じような状況にある訳でございます。  また、各省庁ばらばらの指針をつくるということになりますと、実際、研究を行う研 究者、あるいは協力しようとする患者さん、あるいは健康な方の戸惑いも当然ある訳で ございますので、関係する4省庁、具体的に申し上げますと、文部省、厚生省、通産 省、科学技術庁、この4省庁で相談をいたしまして、共同して1つのものをつくろうと いうことで合意をしたところでございます。  そこで、研究者や研究機関が一般に行っておるヒトゲノム解析研究・遺伝子解析研究 について共通の指針をつくるという観点から、まず検討委員会を発足させたところでご ざいまして、検討委員会は厚生科学研究補助金の特別研究事業の一環として行っておる ところでございます。そのメンバーにつきましては、2ぺージをご覧いただきたいんで すけれども、この委員会の委員でございます雨宮先生をはじめといたしまして、山口先 生までの委員に御参加いただいておりますほか、ワーキンググループとして主にメーリ ングリストを使った意見交換を三十数名の方々にお願いをして進めておるところでござ います。この検討委員会において案をつくっていただきまして、その案ができた段階で この部会にもお示しをし、審議会の中での御議論を賜っていくし、また、一般からの意 見聴取(パブリック・コメント)という形でも進めていこうというふうに考えておりま す。  最終的にできます共通指針につきましては、1ぺージ目の3番にございますように、 4省庁として、国の機関で行う遺伝子解析研究及び国の補助金が交付されるヒトゲノム 解析研究、これにつきましては遵守を義務づける。それ以外の民間で行われる研究、あ るいは大学等で独自に行われる研究につきましては、いわゆるガイドラインとして遵守 を指導していくという方向を考えております。めどといたしましては、できるだけ早く というのは言うまでもないことでございますけれども、遅くとも今年度末までに指針と して策定をしたいと考えております。  資料2−2でございますけれども、これは先日の検討委員会に出しましたイメージで ございまして、事務局で取りまとめたものでございますが、まだまだ検討委員会におい ても論議が足りないのではないかというような御意見を賜っておりますので、そういう 意味では、あくまで参考ということでお考えいただければよろしいかと思います。これ はまだまだ検討委員会の中でも合意を得たような資料とはなっておりません。よろしく お願いいたします。 ○高久部会長  そういうことですが、どなたか御質問、御意見おありでしょうか。 ○金城委員  ミレニアム・プロジェクトについての指針と、この指針は主として何か違うところが あるのでしょうか。 ○事務局  ミレニアム・プロジェクトは、当初から想定される研究の幅が限定されておる訳でご ざいます。例えば具体的に申し上げますと、幾つかのがんの生殖細胞ではない体細胞 の、スニップスと言っておりますけれども、1塩基変異を調べるという、いわゆる補助 金の対象ということでその範囲が明確に決められておる訳でございますけれども、これ を広げるということになりますと、研究の種類として多種多様なものが遺伝子解析研究 の中にもある。また、実施する側から申し上げましても、特に厚生省のミレニアム・プ ロジェクトでございますと、ナショナルセンターを中心に非常に大きな機関、人の整っ た機関でやる訳でございますが、これを一般に広げますと、例えばベンチャー企業、あ るいは大学の非常に小さな研究室等々でも行われるというところでございまして、そう いう意味から申し上げますと、基本的な精神・考え方は変わらないだろうと思いますけ れども、それを実施に移す方策としていろいろな措置を考えなければいけないのかなと いうふうに考えております。 ○高久部会長  この案ができると、この部会で検討されると思うし、厚生科学審議会でも検討される と思います。科学技術庁は科学技術庁、文部省は文部省で検討する訳です。通商産業省 でも検討する。しかし、最終的には同じものにならなければならないと思いますが、例 えば文部省、科学技術庁で検討して、厚生省と別な結論になったときにはどうするので すか。 ○事務局  部会長御指摘のとおりでございまして、案は4省庁同じだったけれども、でき上がっ てみると4省庁で齟齬が生じたということでは何のためにやっているのかわからないと いうことでございまして、一方では各省庁、例えば私どもですと厚生科学審議会の中で 御議論願う。厚生科学審議会の委員の御意見を反映するというのは当然のことだろうと 考えております。各省庁、同じような事情にあるだろうと考えておりますが、具体的に は最終的に1つのものをつくるというのが我々の希望でございますし、恐らくそれは各 先生も御納得いただけるだろう。その際に、テクニカルな面としては、例えば4省庁で 合同の審議会を開催するのか、代表選手だけが寄り集まって最後に決着をつけていただ くのか、いろいろな手法が考えられるだろうと思っておりますけれども、いまだその進 め方について、これでいこうというテクニカルな面まで詰め切っておりませんが、御了 解いただけるのであれば、最終的に1つのものになるように各省庁の審議会と連携協力 して進めるという点につきましては、あらかじめ御了承いただければありがたいという ふうに考えております。 ○高久部会長  それについては御異論がないと思いますので、最終的に同じものにしていただければ と思います。 ○松田委員  できたら、Q&Aも一緒につくっていただきたいと思うんです。どうしてかという と、すべてとは言わないですけれども、多分、パブリック・オピニオンの中にもしかし て大きなクエスチョンが出た場合にアンサーをしていただきたい。どういうことかとい うと、今、御承知のとおり、生まれてすぐの赤ちゃんの血液を採ってマススクリーニン グをやっています。年間 100万検体が採れている訳ですね。これは、アメリカでDNA バンクと称せられているし、ヨーロッパでもバイオバンクと言われて、これは名前の部 分は外して、全部エピレモロジーとして使っている訳です。例えば、あるスニップスの 疫学調査をする場合、一般のポピュレーションの中でどれぐらい頻度があるかという検 査をするときには、これは非常に大事な資料になる訳です。そのことを頭に置いてミレ ニアムを読んでみたんだけれども、それをどこに当てはめてやっていいかというのが私 にはよく見えないんです。それで、アメリカのNIHとアメリカの小児科学会が合同で マススクリーニングのレポートが今年の8月に出ましたけれども、それによっても、マ ススクリーニングで使った後の検体をどのように処理するかというレポートが出ている んですけれども、それではやはりちゃんと名前を外してエピレモロジーとして使うのが 許されている訳です。そういうふうに、この場合はこのサンプルを使いたいけれどもど うだろうかというような話が多分出てくると思うんです。だから、基本は基本として、 その基本の中のどこにそういうサンプルの扱い方を求めてオーソライズできるのかとい うような話が多分出てくると思うので、そういったことが出た場合の配慮もよろしくお 願いいたしたいと思います。以上です。 ○柴田委員  ミレニアム対象の問題を論議したときにこの議論も出たと思うんですけど、これは対 象が非常に大きい研究機関だけだから心配ないという話だった訳ですね。そのときに も、ミレニアムのような大きな対象のところでは、あの厳しさであっても問題ないだろ うと。ただ、この厳しさがすべての対象に広げられるかどうかということは別の問題だ というような形できたと思うんです。恐らくこの後の論議で、先にいわゆるミレニアム の1つの答案がもう出ている訳ですね。それに比べて、ここは緩めるという話に多分な っていきそうな気がするんです。そのことの持つ意味は、これはよほどうまくつくり上 げないと、最初の案に比べて極めて緩いものになってしまったという印象だけが広がる のは非常にまずいだろうと思うんです。だから、その点で、今のQ&Aというお話も非 常にあれだと思いますし、それから外国との比較論、外国ではどう考えるのかというよ うなことも含めて、いわゆるでき上がった後に国民に納得してもらうための努力という のは相当必要なケースになったと思うんです。4省庁で一致するところまでは多分すぐ できるだろうと思うんですけれども、そこのところによほど努力をしなくてはならない だろうと思うし、その点だけ要望したいというふうに思う訳です。具体的な問題は具体 的に出てきたところでいいと思うんですけれども、この前のミレニアムの手続的な面を 含めて大変厳しかっただけに、それと同じではとてもたまらないというのが民間やほか のところから出てくるおそれは非常にあるだろうというふうに思うんです。その辺を御 配慮いただきたい。これは意見で、まだ今の段階ではよけいな心配かもしれないですけ れども、そんな感じを持っております。 ○高久部会長  やはり外国のを参考にしていただきたいと思います。日本だけがかけ離れたことをや りますと、研究者の方から不満が出てまいります。外国と競争しなければならない面も 出てまいりますし、日本人としてのデータを出さなければならないという国際的な義務 もありますので、ぜひ検討委員会では外国のことも十分に参照していただきたいと思い ます。 ○木村委員  ヨーロッパなりアメリカでは、1960年代からの医療の事故とか、あるいは医療の中で の患者の権利の問題とか、そういう蓄積を踏まえて、極めて社会的に広がった一定の患 者の権利の保障というところを踏まえて、IRB(インスティチューション・レビュー・ ボード)とか、そういうものの蓄積がある訳ですね。日本の場合には、それが一切ない ところに、こうやって中央で行政が非常に真剣に取り組んで、いささかも人間の生命と 倫理が侵されないように、例えばそれが科学の名においてでもそういうことがなされな いようにという非常に慎重な対応をとってきたという点は、私はむしろ評価していいの ではないかというふうに思うんです。ですから、そういう点で、確かにいろいろな科学 者の間に、こういうことをやっていると国際競争に遅れるとか、あるいは諸外国でパテ ントを取られると。今朝もそういう話がございましたが、そういうことよりも、やはり 何が大事かということをいつも踏まえた問題提起並びに方針をつくっていきませんと、 技術が突出していく可能性があるのではないかというふうに思う訳です。特に先ほども 御報告がありましたが、「遺伝子治療臨床研究実施計画の今後の審議」というところで は、今までのナショナルレビューをなくして、しかし、一応ここに専門委員会をつくる ということですので、その中で検討されることになる訳ですけれども、これは大変大き い変化になると思うんです。ここで一々厳しく、細かく技術専門委員会の検討を踏まえ て審議していた訳ですので、そういう点から、ヒトゲノム解析に関する共通指針につき ましても、ただいまの部会長の御指摘も踏まえて、諸外国でなぜそれがきちんと現在ま で行われてきたのか。にもかかわらず、いろいろな侵害が起きているということを踏ま えて、日本では、やはりみだりな人権侵害その他が起こらないようなシステムをきちん と守っていくということが必要ではないかというのが私のコメントです。  関連して質問が1つございますが、それは、今も御指摘いただきましたように、アメ リカではFDA(医薬品食品局)がイニシアチブをとっていろいろやっている訳ですが、 ヒトゲノム解析研究というのは、基本的には植物や動物のゲノムの解析までつながって いるという理解でヨーロッパやアメリカでは研究が進んでいる訳です。ヒトゲノムだけ ではなくて、ゲノムという点から言いますと広がりがある訳です。ところが、この4省 庁の中に、ゲノムを含めたGMOの問題がいろいろあって、農林水産が入っていないの ですが、そこでは研究をやっていないという訳ではないと思うんです。これは特に人間 ということなんでしょうけれども、そこら辺のところは何か意味があるのでしょうか。 農林水産は一切関係ないんでしょうか。 ○事務局  この検討委員会というのは、ヒトから協力して得た試料を使うという研究のあり方に ついて指針をつくるという方向で検討いただいておりますので、そういう意味から申し 上げますと、農林水産省関係の研究機関においてはそういう研究は行っていないという ことを確認いたしておりますので、そういう観点から申し上げますと、農林水産省は入 っていないということでございます。 ○高久部会長  ほかにどなたかご質問、いかがでしょうか。これはなかなか大変な作業ではないかと 思いますが、原案が出たときには十分に御議論をお願いしたいと思います。  次に、「異種移殖の取り扱いについて」ということで、3番目の議題ですが、事務局 の方から説明いただけますか。 ○健康政策局  本間課長 研究開発振興課長でございます。お手元の資料3「異種移殖の実施状況等 について」と、あと、参考資料でこれに関連をいたしまして1、2、3、4と付いてい るかと思います。  それでは、資料3に基づきまして説明をさせていただきます。異種移殖は、ヒト以外 の動物に由来する生きた細胞・組織・臓器を、ヒトに移殖、移入又は体外灌流に用いる という形で定義づけられておりまして、その基礎研究は日本、諸外国等において実施を されております。この実施につきまして、いろいろな考え方があるということでござい まして、肝・心等の移殖でドナー不足が課題となっているヒト臓器移殖に代わる医療と しての注目、また、パーキンソン病等の神経変性疾患等の疾患、こういったものにおき まして、従来の治療法に代わるような画期的な治療法になる可能性があるといったこと で、積極的に基礎研究等を進めるべきというふうに考えられているのが一方でございま す。  他方、ブタ内在性レトロウイルスに見られますように、異種移殖によりまして、これ まで発現しなかった未知の感染症等の発現の懸念、また、そうした未知ウイルスの検 出・同定方法の確立が十分でないといったことで、臨床研究については慎重に対応すべ きという考え方もございます。  今出てまいりましたブタ内在性レトロウイルス、参考資料1をご覧を賜りたいと思い ます。後ろには関連する英文を付けておりますけれども、表紙で説明をさせていただき たいと思います。英語の頭文字だけを取ってPERVというふうに言っておりますけれ ども、これはブタの染色体に組み込まれているレトロウイルス(RNAウイルス)とい うことで、これまでに7〜8株、これは文献によって若干違う訳ですけれども同定をさ れております。  これのヒトへの影響に関する文献を3のところに一部出させていただいておりまし て、3つございました。まず1つは、1997年に「Nature Medicine 」の方に出ておりま すブタの腎がん細胞株と、ヒトの肺・腎等の細胞との共培養で、細胞にPERVを産生 したという報告がございます。  2つ目は、昨年の「 Science」に載っておるものでございますけれども、ブタ組織移 殖等を受けた 160人の患者さんに、DNA・RNAウイルス及びウイルス抗体の検査を 実施しましたら、治療後4〜7年経過しても新たなウイルスは検出が出ていないという 手記もございます。このときの 160名の内訳につきましては、体外循環のもの、それか らブタの皮膚、膵臓のラ島細胞、こういった大きく体外循環ものと移殖ものと2つに分 かれたものが解析の対象になっております。  3つ目としましては、今年の「Nature」でございますけれども、ブタの膵臓のラ島細 胞をヒトの腎上皮細胞由来の株と共培養しましたところ、PERVが産生をされたとい うこと。また、その下にありますように、非肥満性の糖尿病をもった重症免疫不全マウ スの腎被膜下の移殖でPERVが産生されているのが細胞の中に確認をされたというこ とでございます。  もとの資料3の方にお戻りください。しからば、日本での異種移殖の現況はどうなの かということで、全部網羅しているかどうか自信ありませんけれども、私どもが把握す る中で見ましたときに2件ございました。1件は、岡山大学が検討しているものでござ いまして、概要のところに書いてありますが、パーキンソン病の患者さんに対しまして ドパミン細胞産生のラットの培養細胞が入りました半透膜カプセルを移殖するというこ とで、このカプセルにつきましては、分子量が5万以上の物質は通過をしないというカ プセルの構造になっております。これを実施するに当たって、これは倫理審査委員会を 通っている訳ですけれども、ドパミン細胞産生ラット培養細胞は、前もって細菌等によ る感染がないことを確認するということは当然前提でございまして、経過としては、安 全性の観点から1年間でカプセルを除去するということ。次に、追跡会を設けて定期的 に検査を実施するということで、昨年の3月に倫理委員会で承認を受けたということで ございます。条件の問題もあって、現在のところはなかなか進行していないというふう に伺っております。  2つ目は、九州大学でございまして、これはブタの肝細胞の球状細胞を組み込みまし た体外循環人工肝臓補助システムについての研究でございます。急性肝不全等の患者さ んに対しまして今申し上げましたシステムを使うということでございまして、ブタの肝 細胞、これは通常2〜3日で機能を失うけれども、球状組織体を形成したブタ肝細胞に ついては1か月以上その機能を保つことができる。長期にわたり肝機能を代替すること が可能になるということで、申請をされているということでございます。これについて も中で審議をされていることで、まだ通っていないということで、その中身の精査につ いてはかなり時間がかかるのではないかというふうに伺っております。  これが現段階での臨床を目標にしましたものでございますけれども、ガイドライン等 につきましては、日本移殖学会が、参考資料2に付けてございますけれども、平成11年 2月に異種移殖ガイドライン検討作業部会をこの学会の中に設けられておられる訳です けれども、ここで試案を作成されて、まだ学会全体としてのオーソライズは受けていな いというものでございます。  参考資料2をご覧いただきますと、事務局で概要ということでまとめてみましたけれ ども、そこに書いてあります6名の代表者によって作成をされておりまして、ガイドラ インそのもののもとは、1996年8月に米国保健福祉省が作成をいたしました「異種移殖 における感染症に関するガイドライン」を参考ということで、骨格はそれがもとになっ ているということでございます。内容につきましては、以下に(1)から(8)まで列記をし てございますけれども、そういう中身になっております。  もとの資料にお戻りください。日本の状況は先ほど申し上げましたけれども、海外の 状況を3にまとめてございます。海外の移殖の臨床研究の実施状況ということで、1963 年にHitchcockより報告されておりますヒヒの腎臓移殖以来47例ということで、これは参 考資料3に文献から引用しておりますが、1993年のブタの肝臓異種移殖以降、実施され ていないということだそうです。  その実施状況は、参考資料3をご覧いただきますと、腎臓の部分、それから下に書い てありますけれども、OHT(同所性心移殖)、HHT(異所性心移殖)ということ で、あと、OLT(同所性肝移殖)ということでお読みを賜れればというふうに思って おります。1963年よりもう少し前の事例もそこに書いてありますけれども、93年までの 事例ということで分析をされております。  次に、雑誌「 Science」の論文で、これも参考資料1に付けてございますけれども、 159例の移殖患者に対しまして、ウイルスの、あるいは抗体の検査を実施したところ、新 たなウイルスは検出されなかった。先ほど申し述べたことと重複をいたしております が、そういう状況になっております。 一方、ガイドライン等の定めにつきましては、アメリカFDAが今年の5月にガイド ラインの草稿を作成をしておりまして、内容については、参考資料4の方に載せられて おります。その他、イギリス等でもガイドライン等が設けられているというふうに聞い ておりますけれども、すべてはまだ調べているところでございます。わかっている部分 だけそこに記載をさせていただいております。  なお、参考資料4の部分でございますけれども、事務局が拙い訳でつくりましたけれ ども、簡単に中身の御説明をさせていただければというふうに思っております。  1枚目は全体の目次構成になっておりますけれども、2枚目以降にその概要をまとめ てございます。まず1つ目は、異種移殖チームの構成と機能ということで、どういう チーム構成であるといいのかということでございます。それから、2番目が公衆衛生上 の問題に関連をした場合の対応ということで、アからエまで掲げられておりまして、実 施施設の基準のようなものがアに書いておりますし、また、イには安全管理という面か ら見たときには、未知又は新規に確認された病原体を分離・同定する能力を有する研究 室の積極的な参加が不可欠ということでございます。  それから、3つ目でございますけれども、これは感染の可能性を最小限にする移殖前 に行う動物源のスクリーニングのプロセスの枠組みというものが規定をされておりまし て、アからエまでの項目が掲げられております。  次のぺージをお開きいただきますと、移殖後のサーベイの枠組みというものの重要性 もそこに指摘をされておりまして、その内容、こうあったらいいのではないかというこ とを記載されているということでございます。  あと、(5)から(9)まで、院内感染の枠組み、また標準操作の手順、健康記録の保管、 生体試料保管の枠組み等についての規定が盛り込まれている中身となっております。  簡単ですが、以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今の説明に何か御質問おありでしょうか。 ○雨宮委員  今、異種移殖というお話がございましたが、私の専門分野に大変近い、あるいは専門 分野そのものと言っていいかと思いますが、こういうことに関しまして、厚生省の担当 局で関心を持っていただけたのは大変ありがたいことであると思います。なぜありがた いかということですが、まだ遠い話のように聞こえるのですが、実際問題、かなり身近 な話になってきております。1つは、やはり畜産のフィールドで、従来、動物工場とい う考え方を持っておったのですが、動物工場と申しますと、お乳の中に凝固因子がたく さん出るような、そういう遺伝子改変動物をつくろうというのがもともとだったんです が、どうも最近の形勢を見ますと、遺伝子改変した動物の組織とか臓器そのものを臨床 に応用しようというような、非常に大きな意味での動物コウジョウ的な発想というのが だんだん広がってきているというふうに思います。  それから、こういうふうにブタの組織を使った人工臓器というのが、私どもはハイブ リッド型の人工臓器、あるいはバイオ人工臓器と申しますが、既にアメリカで製品にな っているというふうに聞いております。そうすると、これが製品になっていますと、当 然、日本でも買い込めば使えるだろうということがありますが、そういう現実もある。  それからもう1つは、日本でもこの研究は大分進んでいるのですが、先ほど九州大 学、私の知っているところですと京都大学もそうかなと思うんですが、そういうところ でブタを使った人工肝臓をつくって、倫理委員会にかかって、何が一番議論になるかと いうと、やはりブタから思わぬ感染症がくるんじゃないか、これが一番議題になって、 なかなか結論が得られないということのようであります。ただ、先ほど御紹介がありま した参考資料4にアメリカの指針があったんですが、英文の方を見ますと、「Draft − Not for Inplementation」となっておりまして、これでやりなさい、これだけやればい いんですよということではないようです。ですから、この分野におきましては、日本ば かりじゃなくて、どうも国際的な動きが流動的に存在するというようなことを見ます と、日本としましては、やはり国際的な視野に立ってこの辺をどう扱っていくかという 検討が持続的に行われている必要がどうもあるんじゃないか、こんなふうに思っており ます。しかし、バイオ人工肝臓等を含めまして、医療にとって非常に役に立つ有用性の あるものではないかというふうに考えておりますので、それの安全性という意味から、 ぜひ検討を続けていただけるように祈ってやまないところでございます。以上でありま す。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。ほかにどなたか。 ○木村委員 日本の現状の場合も、経過のところで倫理委員会が承認ということで、最初の方が承 認して、後は申請中ということですが、国際的なジャーナルに出す場合に、今、IRB なり倫理委員会なりが一応審査をしたということでないと論文を受け付けないことにな っている訳で、こういう形でどうしても出てくると思うのですが、厚生省側としては、 例えば岡山大学のこういう機関で倫理委員会のどういう構成メンバーがあってというよ うな、全国の倫理委員会のリスト並びに構成員の名簿みたいなものを入手して、それを フォローしていらっしゃるかどうか。例えば、NIHにはOHRPという研究における 被験者保護のために担当の部局があって、一応、民間機関を含めていろいろな情報をモ ニターしている訳ですが、現在、厚生省ではその点についてはどういうふうになってい るのでしょうか。 ○事務局  NIH同様、この審査におきましては、先生御指摘のとおり、倫理審査委員会のメン バー、あるいはその職績等についてリストを付けていただいておりますけれども、そう いう点から申し上げますと、たまたま岡山大学は遺伝子治療と倫理審査を同じところで やっておりますので、そういう意味で資料を持っておりますけれども、一般的な意味 で、各大学、あるいはいろいろな研究機関等にある審査委員会についての資料というの は持ち合わせておりません。 ○高久部会長 全国の医科大学の倫理審査委員会の会合があり、1年に1回集まっていました。私は 委員ではなかったのですが、2回ぐらい出たことがありました。以前、京都におられた 星野先生が中心になっておられ、名簿もできていたのですが、あの会がまだ継続して毎 年集まっているかどうか私は知りません。厚生省にはあるかどうかわかりませんが、名 簿はできていました。それは医科大学に関してです。 ○木村委員  基本的には、やはり創薬関係で治験コーディネーターというようなことで、いろいろ 具体的に厚生省が研修その他のプログラムにも取り組んでいるというお話があった訳で すが、今後、基本的には、こういう新しい分野の研究・実験の中で、致命的な生命の侵 害、人権侵害がないような形で情報を把握しておきませんと、対応が非常に困難になる かと思うんです。ご存じのように、医療事故が毎日毎日起きているような状況で、一体 病院の中でそういう安全危険管理がどうなっているのかということで、いろいろな研究 をおやりになっているというお話が厚生省当局の方からあった訳ですが、そういうこと を含めて、やはり積極的にいろいろな情報をぜひ入手していただいて、そして、これは 特に国立大学並びに国立のいろいろな研究機関の倫理委員会その他についての情報はぜ ひ入手して、内容について直ちに対応できるようなシステムをこれからご検討いただけ ればというふうに考えている訳です。 ○高久部会長  これは国立大学だけではだめで、医科大学でも半分は私立ですから、全部の施設にし ないとまずいのではないかと思います。 ○木村委員  同感です。 ○高久部会長  そのほか御意見は。 ○松田委員  雨宮先生のおっしゃるように、これから大変進んでいく可能性が高いと思うんですけ ど、そうなってくると、一番心配なのは社会的なコンセンサスだと思うんです。日本の 国というのはベネフィットリスクの計算が余り上手じゃなくて、ちょっとリスクがある とすぐやめようとか、やめなさいという非常に強い反応が出てきますので、その前に移 殖学会の方が情報を流して、一般の人たちに、将来こういうことがあり得るとか、こう いうことがあるとか、もちろんいい意味も全部含めてですけど、何度もエデュケーショ ンした上でもっていかないと、倫理委員会ができて、通ってやって、だから、我々は問 題ないんだという話ではちょっと難しいだろうと思いますよ。やっていただきたいこと は、まずそういうエデュケーションから始まっていただくというのが一番大事だと私は 思います。 ○高久部会長 私も、この岡山大学の研究はちょっと驚いたのですが、雨宮先生、いかがでしょう か。学内倫理委員会で承認するのは少し早過ぎるのではないか。個人的にはそう思いま す。 ○雨宮委員  いろいろな御意見があろうかと思うんですが、倫理委員会が持ち得る責任の範囲とい うのはやはりあるように思うんです。岡山の場合にはちゃんと審査が済んで通ったとい うことでしょうけれども、ほかの九大にしても、京大もそうだと思うんですが、そこで 引っかかって結論が出ないだろうと思うんです。ですから、松田委員がおっしゃったよ うに、こういう医療があり得て非常に役に立つんだよという宣伝と申しますか、それは 学会がやる仕事だと思うんですが、同時に、それに対して公的な立場にあります厚生省 なり何なりが目を光らせているというような構図がどうしても必要なのかなと、そんな ふうに思います。ただ、今のところ、それは全くございませんので。それで、今日こう いうお話が出たので、私はすごくいいことだなというふうに思いました。 ○松田委員  ここに専門の生命倫理の先生がいらっしゃいますけど、いわゆるソーシャルというの はまさにそこだと思うんです。エシィカル、リーガル、ソーシャルのソーシャルの面と いうのは、かなり気をつけていないと、せっかくいいことをしても足元をすくわれるの で。  全然話は飛ぶんですけど、去年からニューヨークではマススクリーニングの検査を使 って、強制的にHIVのスクリーニングを始めていて、患者さんの数がかなり落ちてき た。結局、10年ぐらい前から、マスコミと連絡してエデュケーションして、非常にボラ ンタリーでやって、そういう成果のもとに、今度初めて強制的に踏み切っているんです よね。だから、日本の国はそういう地ならしが下手くそなんじゃないか、しなければい けないことをしていないんじゃないか、手抜きしているんじゃないかという気がするん です。 ○小澤委員  結局、今までも国際関係の議論が出ていましたけれども、すべて最終的に社会の成り 立ちの違いということが相当大きな要因であって、これは絶対的に人権侵害である、絶 対的に侵害じゃないというような議論というのは、極端な例は別としまして、ボーダー ラインになってくると全くわからなくなってくるということになってきますと、結局は 社会の人たちが大体どう考えているかというようなことで、いわば平均値であって、そ ういう人たちの意見が本当に倫理委員会の中に入ってこなければいけないんですけど、 そういうことはほとんど望めないのが普通じゃないか。これから先はわかりませんけ ど。先ほど松田先生がおっしゃったように、やはりそういう意味からも、異種移殖が本 当に必要なんだよという実例を伴ったようなエデュケーションを学会の方がはっきりし て、それに対して社会がどういうふうに考えているかということを吸い取るというこ と、そういう時期、あるいは時間といいますか、そういうものがなければいけないんじ ゃないかと思いますし、そういう意味で、こういうことを積極的に進めようとされる方 の中心にいらっしゃる方々は、そういうことに関して大きな関心を払っていただきたい と思います。さっきの松田先生の御意見そのものだと思うんです。 ○木村委員  そういう意味では、こういうところでせっかく話題になったことにつきまして、担当 して実際に現場でやっていらっしゃる研究者の方においで頂ければと思います。例えば 以前には、自治医科大学の小澤先生に来ていただいたり、具体的な担当者の方々に来て いただいて、スライドを交えていろいろ御報告をいただいた訳ですが、そういう機会も 今後ダイナミックにこの部会でつくるようなことも将来構想として御検討いただければ と思います。文献を読んで御説明いただいただけじゃなくて、実際にどういう観点で倫 理委員会でレビューして、実際にこうなっているというようなことを我々としても目の 当たりにする必要があるんじゃないかということで、今後の計画の1つとして提案させ ていただきたいと思います。 ○高久部会長  ほかにどなたか。  「Science」に 160人の症例が出ています。思い出したのですが、一昨年の12月にアメ リカの血液学会で、スウェーデンの研究者がパーキンソン病の患者さんの脳内にブタの 胎児の脳の細胞を移殖した複数の症例を報告されていました。もちろん効いたという報 告です。そんなにドラマティックに効いた訳ではないのですが。その時ブタの内在性の ウイルスの問題についての報告もありました。ですから、「 Science」の報告以外にも 外国ではかなりやられている可能性がある。ただ、その研究がどういう経緯でIRBを 通ったのか、スウェーデンの人達がその研究をどう見ているかということについては知 りません。日本では、脳の中に入れるというようなことについての審査はIRBでも困 ると思います。ただ、九州大学の急性肝不全のときの対応は、かなりメリットがある。 木村委員がおっしゃったように、この問題について1度、九州大学の関係の方にお話を お伺いしてもよいと思います。個人的な意見ですが、岡山大学のは問題かなと思います が、九州大学のは確かにメリットがあると思います。今後、事務局とも相談したいと思 います。  ほかにどなたか御意見おありでしょうか。  それでは、次の議題に移らさせていただきます。「東北大学医学部附属病院の遺伝子 治療臨床研究実施計画(肺がん)について」、これは事務局の方から説明をよろしくお 願いします。 ○事務局  それでは、資料4に基づいて御説明申し上げます。  1ぺージでございますけれども、東北大学医学部附属病院から遺伝子治療臨床研究計 画の実施計画が9月21日付で申請がなされておりまして、本日、厚生科学審議会に対し て諮問をさせていただいたところでございます。  この内容は、8ぺージの備考の欄をご覧いただきたいんでございますけれども、実は この臨床研究計画というのは、備考の2)にございますとおり、平成10年11月11日から 11年の5月7日まで、東北大学の加齢医学研究所附属病院遺伝子治療臨床研究審査委員 会で既に審査が行われ、その審査結果に基づいて、11年の5月、厚生大臣あて意見がま とめられたところでございまして、この先端医療部会での御審議を踏まえて、12年の1 月に実施して差し支えないというような意見を述べた研究計画と全く同じものでござい ます。  では、なぜ全く同じものがまた申請されたかということでございますけれども、3) のところを見ていただきますと、東北大学の加齢医学研究所附属病院というのは9月30 日付で廃止され、10月1日に東北大学医学部附属病院に統合されるという事情がござい まして、医療機関としての申請というのが遺伝子治療計画上、義務づけられております ので、従来、加齢医学研究所附属病院として申請をし、これが統廃合を受けるというこ とで、今回新たに、全く同じ研究内容について東北大学医学部附属病院から申請が上が ったものでございます。  内容といたしましては、肺がんを対象に、p53遺伝子をアデノウイルスベクターを使 って入れようというものでございまして、現在1例に、遺伝子導入が開始されておると ころでございます。したがいまして、まず、既に承認を与えた加齢医学研究所附属病院 の総括責任者と、今回の医学部附属病院の総括責任者は同一である。また、先ほど御説 明したように、加齢病院そのものが医学部附属病院に統合される。3番目といたしまし ては、実施計画の中身は、既に承認を与えた加齢医学研究所附属病院のものと全く同一 であるということから、この審議会における審査というのは実質的に省略しても差し支 えないのではないかと事務局としては考えているところでございますが、よろしく御審 議のほどお願い申し上げます。 ○高久部会長  今、事務局から説明がありましたように、東北大学には、加齢医学研究所の臨床部門 があり、その中に呼吸器の内科がありましたが、その部分が病院の方に移ることになり ました。実質的には同じ教授が加齢医学研究所から東北大学医学部附属病院の方に移る ということでして、行われる内容その他については全く同じものです。 ○木村委員  今、部会長からの御説明にございましたように、内容的には全く前の継続のような印 象を受けまして、我々はこれを審議した覚えがありますので、よろしいのではないかと いうふうに思います。  ただ、この書類の 101ぺージをちょっとご覧いただきますと、12というところに「臨 床試験に参加する患者さんの権利と義務について」、これも以前提出していただいた文 書に基づいて討議したのですが、そこの2行目の「法的規範によって保護されていま す」というところに*の1というのがありまして、その次に3行ばかり小さい字で「日 本では倫理的規範であるヘルシンキ宣言に基づいた『医薬品の臨床試験の実施の基準に 関する省令』が施行されています」と。ここのところが、この当時討議されて、現在も これは有効なんですが、実は、ご存じのように、ヘルシンキ宣言の修正と改訂が今、世 界医師会の方で進んでおりまして、これは見方によると、内容的に問題のある改訂であ るという見方もできる訳です。その点につきまして、厚生省当局としては、世界医師会 にどなたかおいでになって、例えば我々WHO憲章改正の議題提案に関連しての「健康 の定義」をめぐって討議をこの部会でした訳ですが、ヘルシンキ宣言の改訂の内容につ いて具体的にそれがどこの場所をどういうふうに直そうとしているかというような情 報、並びに、今度の世界医師会は日本からどなたが御参加されて、これは厚生省からも 御参加されるかもしれませんが、日本医師会がメンバーですので参加することになると 思いますが、そういうような情報を含めて、こういうのは日進月歩でいろいろ変わって いきますものですから、その点の内容につきまして一言御説明いただければというふう に思いますが、いかがでございましょうか。 ○事務局  ヘルシンキ宣言の改訂が進んでおるというのは、先生が今お話しいただいたとおりで ございます。その内容につきましても実は既に入手いたしておりますが、先日の新聞報 道によりますと、世界医師会として、インターネットのホームぺージを通じて意見の募 集をしておるところというふうに聞いております。  また、その中身で申し上げますと、今手元に資料がございませんので、間違っていた らはなはだ恐縮ですけれども、医学的な研究というのを、従来、臨床研究と非臨床研究 と分けていたものを一本化するような方向であったというふうに覚えております。これ について、あくまで世界医師会としての宣言でございますから、厚生省としてどうする というようなものではないのではないかというふうに考えておりますが、今、先生に御 指摘いただきました東北大学の 101ぺージの*の1というのは、そういう意味から申し 上げますと、「ヘルシンキ宣言に基づいた『医薬品の…省令』」という表現は正確では ない。逆に申し上げますと、「ヘルシンキ宣言も参考とした」だったらよろしいだろう と思いますけれども、後日、東北大学へはそういう意見を述べたいと思います。 ○高久部会長  余談ですが、日本医師会の会長が世界医師会長に来月早々就任されるようです。それ から、私の誤解かもしれませんが、今問題になっている事の1つに、アフリカなどでエ イズのワクチンの治験が行われていて、それが倫理的に問題になった。そういうふうに 聞いておりますが、これは間違いかもしれません。 ○木村委員  エイズのことにつきましても、先生がおっしゃったように、まさにそのとおりなんで すが、ただ、今までベイスト・メディシンが存在している場合には、それを基本的に使 うということが原則になっていたのを、必ずしもそうでないような実験、その土地、文 化、国情に合わせた先進諸国による低開発国での実験が比較的しやすくなるような形で の改訂が行われているという点で、私の友人のロバート・ルバインという人が改訂の担 当でやっている訳ですけれども、私は彼の見解に真っ向から反対した訳です。そういう 点で、これはよほど注意しませんと、ヘルシンキ宣言ということで日本ではしばしば引 用され、具体的内容についても翻訳その他を含めて検討されてきた訳ですが、それが修 正されるとなりますと、医学研究者にとって現実には、例えばインフォームド・コンセ ントの書類が絶対なくてはいけないというのを、取れない場合には取れないなりにやれ るような方策を考えているのではないかと思われるような条文が、確かにホームぺージ に今1項ずつ「あなたの御意見はどうですか。エイスですか、ノーですか」というのを 書き込むようになっていますので、私も書き込んだりしていますけれども、そういう点 で、厚生省としても、極めて重要なヘルシンキ宣言の内容につきましては、これは世界 医師会、日本医師会のことであるので、特に関係ないというのではなくて、これは世界 の医学臨床試験の基本的な宣言としていわば援用され、適用されてきたということを踏 まえて、非常に正確な資料をお取りいただいて、今後、我々の部会としても、この内容 については、例えば10月の世界医師会でもし決まった場合には、日本としてはどう対応 するかということをやはり真剣に考えていかなくてはいけないんじゃないかというふう に思いましたので、一言言わせていただきました。 ○高久部会長  ほかにどなたか。  それでは、次の報告事項ですが、「平成13年度の政府予算要求について」、事務局の 方から。 ○事務局  1つだけ確認させていただきたいのですが、この東北大学医学部附属病院の申請につ いてはお認めいただいたということでよろしゅうございますか。 ○高久部会長  よろしいでしょうか。                (「はい」の声あり) ○高久部会長  どうも失礼しました。それでは、報告事項をお願いします。 ○事務局  資料5に基づきまして御報告をさせていただきたいと思います。平成13年度厚生省科 学技術関係予算を8月31日、大蔵省に対して提出いたしましたので、その内容を御報告 いたします。  まず、科学技術振興費全体といたしましては、対前年度44億 8,200万円増の 892億 9,900万円ということでございます。中身といたしましては、競争的な資金でございます 厚生科学研究費を 331億 7,500万円要求させていただいております。この中で※がござ いますものについては、一番下の注) に書いてありますけれども、日本新生特別枠とい う森総理の御提唱で「日本新生プラン」というものがある訳でございますけれども、そ れについて予算の特別枠を設けるということになっておりまして、その中に要求させて いただいておるところでございます。まず、政策科学推進研究という政策科学・社会科 学的な研究が1つ。  もう1つは、2の(1)にございます21世紀型医療開拓推進研究というものでございます が、より効果的な保健医療技術の確立のための臨床研究の推進というところでございま す。更に、昨年に引き続き、ミレニアム・プロジェクトのヒトゲノム・再生医療等研究 について40億 7,500万円の要求となっております。  また、3番でございますが、感覚器障害及び免疫アレルギー研究については1億5,000 万円の増ということで要求をいたしております。 4番目の医療技術評価総合研究並びに医薬安全総合研究というのは、先ほど来、医療 事故が頻発しているという御指摘をいただいておる訳でございますが、それぞれ人の 面、あるいは物の面、それぞれから医療事故対策を研究するための経費として、合わせ て2億円の増を要求いたしております。 また、その他の項でございますが、保健医療分野における基礎研究出資金等というこ とで、この経費は医薬品、医療用具の開発のための基礎研究の推進というものでござい まして、特別認可法人でございます医薬品機構を通じて研究費を流しておる訳でござい ますが、これを46億 2,800万円増で要求いたしております。この中身といたしまして は、今年度から始まりましたヒトゲノムのミレニアム・プロジェクトの関係が61億円、 更に、ここに日本新生特別枠として書いております、たんぱく質科学、あるいは医用工 学というものの研究が55億 4,300万円でございます。 これらを合わせまして、総トータル科学技術関係予算といたしましては 1,227億円。 対前年度約 103億円増で要求いたしております。 2ぺージが、その特別枠を解説したものでございまして、特別枠としては 123億円で ございます。この中身は、先ほど申し上げました3本柱からなっておりまして、1つに は、より効果的な保健医療技術確立のための臨床研究と、併せて社会科学的な調査研究 の推進ということで55億円。たんぱく質科学・医用工学研究、あるいは治験のネット ワーク、コーディネーター養成で58億円。基盤整備ということで、画期的な医薬品等の 開発に関する基盤技術の拠点的研究機関並びにがん予防研究センター、最後が保健医療 情報の収集・提供のための基盤整備ということで約9億円を要求したところでございま す。  先ほどからメディカル・フロンティア戦略というのがちらついておる訳でございます けれども、8ぺージをご覧いただきますと、これも総理の「日本新生プラン」の1つの 柱として、メディカル・フロンティア戦略の推進というのがうたわれておる訳でござい ますが、その内容といたしましては、働き盛り、具体的に申し上げますと、40歳とか50 歳とか60歳というのを考えている訳でございますが、そこの2大死因でございます、が んと心筋梗塞並びに要介護の大きな原因となっております脳卒中、痴呆、骨折、この5 つを取り上げて、数値目標を掲げた上で総合的な取り組みを行おうというものでござい ます。死因という観点から見ますと、既に先生方ご存じのとおり、がん、心筋梗塞、脳 卒中、この3つで50%を超えますし、また、要介護の状態と寝たきりの原因という観点 から申し上げますと、脳卒中、痴呆、骨折で50%を超えるというような状況にある訳で ございまして、そういう観点からこの5つの疾患が選ばれた訳でございます。  具体的な目標というのは、一番下に書いておりますように、がんの場合ですと5年生 存率を20%改善したい。更に、心筋梗塞、脳卒中でございますと死亡率を25%、年間5 万人に当たる訳でございますけれども、5万以上減らしたい。また、寝たきりという点 から申し上げますと、自立している高齢者の割合を5年後に90%程度まで高めて、それ によって支援が必要となる高齢者の増加を70万人程度減らす。この3点を目標として掲 げておる訳でございます。  具体的には予算要求上は4本の柱からなっておりまして、まず(1)でございますけれど も、研究の推進というのが 236億円。(2)でございますが、心筋梗塞とか脳卒中の原因と なります糖尿病、高血圧に代表される生活習慣病の改善という点から申し上げますと、 予防、健康づくりの対策というものが2番目の柱でございます。3番目の柱といたしま しては、個別疾患ごとに、例えば、がんでございますと質の高いレベルの医療を全都道 府県に拠点病院を確保して均てんを図っていくという戦略。また、脳卒中、心筋梗塞で すと、いわゆるゴールデンタイムと言われる短時間のうちに専門医の整ったところに運 び込み、そこで専門的な治療を行う。そのために専門医を24時間体制で救急救命セン ターに張りつける。あるいは、救急救命センターにSCU(ストロークケア・ユニット )やCCUを整備する、あるいはまた、ドクターヘリを全国的に展開をするというよう な救急救命体制の整備を1つの柱にしております。(4)でございますが、痴呆について は、まだまだ原因・病態がわかりませんので、研究の推進ということ。介護あるいはケ アの改善というのを考えております。また、骨折につきましては、骨折から寝たきりに 至るまでのプロセスについて研究を推進していくということを考えておるところでござ います。  なお、このメディカル・フロンティア戦略というのは、先ほど申し上げましたよう に、総理のプランという形になっておりますので、厚生省単独という訳ではございませ んで、経済産業省、すなわち現在の通産省におかれては、高度先端医療機器の開発を厚 生省とともに図るという旨の要求がこの戦略の中で提示されているところでございま す。  以上でございます。 ○高久部会長  今日の午前中の厚生科学審議会並びに審議会の研究企画部会に出られた方はもう説明 をお聞きになったと思いますが、何か御意見、あるいは御質問おありでしょうか。 ○金城委員  この金額を一瞥させていただきまして、1番、3番ぐらいは非常に高額なんですけれ ども、疾病予防・健康づくり対策の推進は非常に金額が少ないですよね。でも、やはり 予防とか健康づくりというのがこれから一番大切になるんじゃないかと思いますので、 やはりここら辺も今後力を入れていっていただきたいと思います。 ○事務局  先生、既に御承知のとおり、「健康日本21」という戦略というか、考え方というか、 推進しておるところでございまして、もちろん、ここに入っていないもの、例えば従来 から保健所を中心とした普及でございますとか、あるいは老人保健事業の中の一環とし ての個別相談でございますとか、そういうものはかなりの経費をかけてやっておる訳で ございまして、一応仕切りとしまして、その中の新しい部分がここに出てきておるとい うことで御了承いただければと思います。 ○木村委員  2ぺージところですが、ただいまも御説明がありましたけれども、2ぺージの最初の ところ、「より効果的な医療技術」とやると非常に幅が狭くなるので、「より効果的な 保健医療確立のための」で全然構わないのではないかということが1つと、重ねて意見 を述べさせていただきますが、したがって、その次の行も「保健医療技術の普及」じゃ なくて「保健医療の普及」。それは当然、技術を含む訳ですから、基礎臨床その他を含 めて、そういうことで「技術」という言葉が特にここに入る意味がどういうことである のか、ちょっと私には不明である訳です。  それで、今の金城委員の発言にも関係しますが、テクノロジーの面でのいろいろな対 応だけではなくて、非常に幅広い広がりを持った、例えば高齢者の心理的あるいは社会 的な能力の調査とか、あるいは住宅にしろ、コミュニティにしろ、高齢者のニーズの問 題とか、そういういわば人間を対象にした、特にこれは総理の特別枠ということですけ れども、長寿社会を踏まえての展開になる訳ですので、そういう倫理的、法的、社会科 学的な調査研究というので、特にそういう点も含めて、ここに新しい言葉を入れて、新 しいことをやるということを前面に打ち出して、厚生省としては単なる技術だけではな くて、あるいは病気の治療、具体的な医療工学その他の研究だけじゃなくて、社会的な 広がりを持った研究をこれからやるのだということを前向きに、今、「健康日本21」の 問題も御指摘いただきましたが、含めて、その他いろいろあるんですね。そういうこと をはっきりと打ち出す方がいいのではないかというふうに私の見解をここで述べておき ます。 ○高久部会長  ほかにどなたか。  それでは、次の報告の「厚生科学審議会改組について」、これも既に午前中の審議に もありましたが、一応説明していただけますか。 ○事務局  資料6に基づいて御説明申し上げます。審議会の整理・合理化というのを来年の1 月、省庁再編に合わせて行うということで御説明申し上げます。  厚生科学審議会というのはちょうど真ん中の枠にあるわけでございますけれども、そ れ以外の公衆衛生審議会、あるいは生活環境審議会、中央環境衛生適正化審議会ととも に、新しい形の厚生科学審議会になる。すなわち、現在の厚生科学審議会というのは一 旦廃止して、新しい形で厚生科学審議会になるということでございます。  その理由、あるいはスタイルにつきましては、2ぺージ以下で御説明申し上げますけ れども、2ページの中ほどにございますように、昨年の4月に中央省庁等改革推進本部 決定がございまして、審議会の整理・合理化について述べられておる訳でございまし て、厚生省としては22の審議会を8つに整理・合理化する。  そのうち、厚生科学審議会の位置づけといたしましては、2の「厚生省関係の審議会 について」の(1)にございますように、基本的な政策を審議する審議会を2つ設けて、1 つが社会保障畑、もう1つが公衆衛生を中心とした科学技術畑である厚生科学審議会と いうところで整理がされておる訳でございます。  具体的な業務としましては、4ぺージをご覧いただきたいんですが、設置法の第8条 に厚生科学審議会というのがございまして、ここに書いてございますとおり、従来の科 学技術に関する重要事項以外に、例えば公衆衛生に関する重要事項でございますとか、 保健婦・助産婦の学校の指定・認定、あるいは感染症予防法、検疫法、そういうものの 関係する事項というのが入ってくる訳でございます。  具体的には、5ぺージでございますが、審議会としては委員30名以内、議決権のある 臨時委員、議決権のない専門委員、この3つから構成されることになりますし、分科 会、あるいはその中に部会という形で整理がされる訳でございます。スキームといたし ましては、最後の8ぺージでございますが、先ほど申し上げましたように、感染症の関 係、あるいは生活衛生適正化の関係がございますので、感染症の関係は1つ分科会をつ くる。更に、生活衛生適正化の関係は分科会をつくるということでございまして、そう いう意味から申し上げますと、従来から厚生科学審議会で行ってきたものというのは一 番右の部会という形で今後また御審議をいただくんだろうというふうに考えております が、先ほど申し上げましたとおり、形式的に申し上げますと、厚生科学審議会というの は来年の1月5日で一旦廃止になって、新しい審議会に生まれ変わるということを御報 告させていただきたいと思います。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。何か御質問おありでしょうか。 もしないようでしたら、最後の「岡山大学医学部附属病院からの報告について」、こ れも事務局からよろしく御説明をお願いします。 ○事務局  遺伝子治療の関係で1点、御報告をさせていただきます。  岡山大学医学部附属病院から報告があったものでございまして、岡山大学医学部附属 病院におきましては、肺がんを対象にp53遺伝子をアデノウイルスを使って導入をする という遺伝子治療について、平成10年10月23日にこの審議会での御議論を踏まえて承認 したところでございますけれども、この研究内容については、先ほどご覧いただきまし た東北大のものと全く同一、すなわち共同研究でございます。 今回報告がございましたのは、今年の6月29日に遺伝子治療の研究に御参加いただい ていた患者さんが死亡なさったということでございます。岡山大学におきましては、既 に7例研究が実施されておりまして、今回の死亡例は3例目に当たる訳でございます。  まず1例目が、11年の9月25日にお亡くなりになられておりまして、この関係につき ましては、既に11年の9月27日の先端医療部会で御報告をしたところでございますし、 2例目につきましては、12年5月7日にお亡くなりになられて、6月19日の部会に報告 したところでございます。今回、6月29日にお亡くなりになられた事例については、6 月30日に岡山大学の方から報告を受けて、その当日、作業委員会の先生方にはファック スを申し上げ、正式な報告が7月10日に上がってきて、それも作業委員会の先生方には 当日御報告したところでございまして、今回、部会の方にも御報告させていただくとい うことでございますけれども、見解といたしましては、がんの進行による死亡というふ うに考えられて、治験薬の最終投与から4か月も経過しているということから考えて も、治験薬投与との因果関係はないというふうな見解でございます。  以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。これにつきまして何か。 ○木村委員  2行目を見ますと、抗腫瘍効果が認められたということですが、これは3月の話でご ざいますね。このことに関連して、その後の学会での報告とか、あるいは論文などによ る公の刊行物が出ているのかどうかということについてお伺いしたいのですが。 ○事務局  確認いたしておりません。申し訳ございません。いずれにいたしましても、何らかの 形で外に出るものだろうと思いますし、それが報告された段階でまた御報告したいと思 います。 ○柴田委員  今の話とも関連しているんですけど、病理解剖されなかったのは、遺族が拒否したと か、何か特別なことがあったんですか。 ○高久部会長  恐らく御遺族の方が承認されなかったのではないか。亡くなられた病院が岡山大学で はないと思いました。恐らくお願いはしたと思うのですが、よその病院で亡くなられる となかなか難しいですね。  ほかにどなたか。 ○廣井委員  先ほどと関連しているんですけど、「明らかな抗腫瘍効果が認められた」という表現 が、具体的にはこのように亡くなっている訳ですけれども、効果がなかったんじゃない かという感じもしない訳じゃないので、何をもって明らかに抗腫瘍効果があったかとい うことをもう少し詳細に報告していただけないかと思います。 ○事務局  今回の報告は死亡原因についての報告ということでございまして、その効果に対する 報告ではないということから、恐らく先生御指摘のような点があるんだろうと思います けれども、以後気をつけるように伝えておきたいと思います。恐らくは、腫瘍サイズが 縮小したとか、そういうものを考えているのだろうとは思いますけれども、これも推測 でございますので、いずれにいたしましても、今後正確な表現を使うように伝えたいと 思います。 ○高久部会長  ほかにどなたか。  先の異種移殖のことで皆さん方に御了承を得たいと思っています。岡山大学のIRB で承認をしたという例などもありますので、この部会として、アメリカのPHSのガイ ドラインなどを参照して、異種移殖についてのIRBの審査に際して、しばらく慎重に 対応するという勧告を出したいと思っています。文面については事務局の方と相談をし てと考えていますが、いかがなものでしょうか。 ○木村委員  賛成です。 ○高久部会長  もし差し支えなければ、私自身も岡山大学の研究はちょっと意外だったものですか ら、注意をしたいと思っています。  ほかにどなたか。もしなければ、次回のことにつきまして、事務局の方から説明して いただけますか。 ○事務局  次回のこの部会の開催に対しましては、先ほど御説明申し上げましたヒトゲノム解析 研究に関する共通指針の審議を中心に、この11月に開催をさせていただきたいというふ うに考えております。開催の日時につきましては、あらかじめ先生方の御予定をお伺い するために、机上配付させていただいておりますので、それをもとに調整し、部会長と 御相談をし、予定日時が決まり次第お知らせしたいと思います。  なお、資料3の先ほどおまとめいただきました異種移殖の関係で、資料に訂正がござ いますので、その点よろしくお願いしたいと思いますが、資料3の1ぺージ目をごらん いただきますと、下から5行目「50,000以下の物質は通過できない」となっております が、これは「50,000以上の」です。単純なワープロミスでございますので、申し訳ござ いませんが御訂正いただきますようお願いいたします。ありがとうございます。 ○雨宮委員 今、異種移殖について当部会として慎重にやろうという御発言をいただいた訳で、大 変結構だと思います。ただ、そうであるということは、部会においても、この件につい て引き続き考えていこうということであろうかと思いますが。 ○高久部会長 すぐに可能かどうか、先方の都合もありますが、先ほど木村委員からも御提案があり ましたように、実際にやっておられる方からもお話を聞くとか、そういう形で少し検討 を続けていきたい、そういうふうに考えています。 それでは、これをもちまして、本日の部会を終わらせていただきます。どうもありが とうございました。 (了) 問い合わせ先 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担 当 野口(内線3804) 電 話 (代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171