00/09/19 女性と年金検討会議事録 「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」 (略称:女性と年金検討会) 議 事 録 厚生省年金局年金課 女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会議事次第 日  時 : 平成12年9月19日 (火)    午前10時00分〜12時08分 場 所 : 厚生省 特別第一会議室 議事次第   1.開  会   2.政務次官の紹介   3.委員出席状況報告   4.議  事    (1)女性のライフスタイルの変化等の現状について    (2)個人単位化について    (3)第3号被保険者制度について   5.閉  会 ○袖井座長  それでは、定刻になりましたので、ただいまから「女性のライフスタイルの変化等に 対応した年金の在り方に関する検討会」を開催いたします。まだおいでにならない委員 の方もいらっしゃいますが、時間ですので始めさせていただきます。  本日は、大変お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。  本日は、福島政務次官に御出席いただいておりますので、御紹介いたします。よろし くお願いいたします。 ○福島政務次官  皆さん、おはようございます。厚生総括政務次官の福島豊でございます。本日は、女 性と年金検討会の第2回目の会合に出席をさせていただきました。  委員の先生方には、大変お忙しい中、この検討会で精力的に作業を進めておられます ことに心より御礼を申し上げる次第でございます。  明年から21世紀でございますけれども、女性のライフスタイルというものも大きく変 わりつつあります。先般の総理府社会保障制度審議会の意見書でも、年金制度を含めた 社会保障制度について、不断の見直しといいますか、漸進的な改革が必要であるという ことが記載されていたと思います。そういう意味で、こうしたライフスタイルの変化に 応じて年金制度をどのように見直していくのか、このことについて委員の先生方から貴 重な御意見を賜れればというふうに思っております。私もしっかり勉強させていただき ますので、よろしくお願いをいたします。ありがとうございます。 ○袖井座長 どうもありがとうございました。  次に、事務局より委員の出席状況を報告していただきます。 ○中原企画官  本日の委員の出席状況について御報告申し上げます。本日は、翁委員が所用のため欠 席されております。その他の委員は全員御出席の御予定ですが、高島委員、藤野委員に は間もなくお見えになると思います。以上でございます。 ○袖井座長  どうもありがとうございます。それでは、早速議事に入りたいと思いますが、まず前 回の検討会で各委員より要求のありました資料も含めて、女性のライフスタイルの変化 等の現状について、事務局より説明を受けたいと思います。それでは、よろしくお願い します。 ○梶尾補佐  それでは、資料に沿いまして、女性のライフスタイルの変化等の現状について御説明 申し上げます。長くなりますので、恐縮ですが、座ってやらせていただきます。  お手元の資料2でございます。前回の検討会におきまして、女性の労働力の状況です とか、あるいはパートタイム労働者の状況、あるいは年金の受給状況、そういった現状 についてのデータをベースにして議論をしていく必要があるだろうということで、いろ いろ資料のお求めがあったところでございます。そういった御要望のあったものも含め まして、この検討会における議論に有益になるような資料を含めて整理したところでご ざいます。どのような資料であるかだけ簡単に御説明を申し上げたいと思います。  全体の構成としましては、目次で見ていただきますと、就業の状況、賃金・所得の状 況、パートタイム労働者の状況、第3号被保険者関係の基礎データ、あと離職の状況、 公的年金への加入状況・受給状況、また、離婚とか婚姻、そういったことについての データを資料としてそろえているところでございます。  おめくりいただきまして、1ページは労働力人口及び労働力率ということでございま して、労働力人口、就業者プラス完全失業者・休業者につきましては、頭数としては男 女とも増えておりますが、15歳以上人口に占める労働力率につきましては、最近は横ば いということでございます。逆に言いますと、非労働力人口というのは、学生ですと か、家事従事者、あるいは高齢者といったような方々になるところでございます。表1 は労働力人口の全体数でございますけれども、2ページがその構成でございます。上が 女性、下が男性であります。▲のグラフが雇用者ということで、■が家族従業者、◆が 自営業主ということでありまして、雇用者がかなり増えてきている。ただ、女性の伸び 方の方が男性よりも伸び方としては大きいというような形になっているところでござい ます。  3ページ、4ページが年齢別の労働力率で、3ページが女性、4ページが男性となっ ております。平成元年と平成11年の比較ということでありまして、やや薄い方の線が平 成11年ということであります。3ページの女性は25〜34歳の層での下がり方がやや低下 をしているといった面、あるいは50代のあたりで5〜6ポイントほど上に上がっている というような形になっているところでございます。4ページ、男性の方は、概ねそうは 変わっていないということでございます。  5ページは、短時間雇用者数。これは、労働力調査における短時間雇用者という定義 のもとであります。グラフが混ざっておりますけれども、上の黒いラインの方が女性に 占める短時間雇用者の割合、中ほどにある■の折れ線グラフは男女合計ということで、 雇用者に占める短時間雇用者の割合のグラフを示しているところでございます。  次に6ページであります。これは総務庁の就業構造基本調査報告に基づきまして、女 子雇用者の現状をみたものでございます。実線の△のグラフは女子雇用者全体の割合、 点線がパート労働者等ということでございます。したがって、この間にありますのが、 いわゆる正規職員という形になるところでございます。したがいまして、20代につきま しては正規のウエートが非常に高い。45〜49歳のところは、パート労働者等のウエート が高い。雇用者の中でも内訳はこういう形になっているということでございます。  7ページは男子雇用者の現状ということで、これは単純な形になっているところでご ざいます。  8ページは、この後、賃金等に出てくる基礎にもなりますが、平均勤続年数はどうな っているかということで、これは時系列にみており、4本グラフがありますが、平均勤 続年数を見ますと、一般男性が一番上です。一番下のラインはパートの女性ということ で、平均勤続年数において大分差があるというようなことでございます。  次の9ページは、就業形態の多様化ということで、労働省におきまして、昨年「就業 形態の多様化に関する総合実態調査」というのを行いまして、現在は速報版ぐらいの状 況でございますけれども、就業形態が多様化しているということであります。上のグラ フは、左側の男性で85.1、女性が53というところは正社員ということですけれども、そ れ以外の部分は特に女性についてパートタイマーのウエートが高まっているということ です。これは前回、平成6年と比べますと、若干正社員が減り、非正社員が増えてい る。非正社員の中には、契約、出向、派遣、あるいは臨時的雇用、パートも長期・短期 とさまざま入っておりますけれども、そういった形で雇用者の中の多様化が進んでいる という資料でございます。  10ページ以降は賃金の関係であります。10ページは女性労働者の賃金についてという ことですけれども、男性のグラフと女性のグラフとを付けております。これは一般労働 者ということでございますけれども、下の方に一般労働者の賃金実態ということで、平 均年齢の違いですとか、平均勤続年数の違いといったことを背景にしまして、所定内給 与額については女性は男性の大体63.9%というような形になっております。そういった ことを背景にしましてこういった男女の格差はございますけれども、徐々に格差は縮小 してきているということでございます。 11ページは、女性労働者の中でのパートタイムの関係であります。ここからしばらく パートタイム労働者の関係の資料が続きますけれども、パートタイム労働者の1時間当 たり賃金額につきましては、上のグラフを見ますと、最近は男女とも概ね横ばいという ことでありまして、男女差としては若干差が縮小してきているというのが下のグラフで ございます。  12ページは、所定内給与額階級別女性労働者割合ということで、これは月額でありま すけれども、約半数の49.9%が10万〜19万9,900円ということで、ほぼ半数が月10万円 台ということでございます。後ほどこれを更に細かく見たのが別統計で出てまいるとこ ろであります。 13ページは、女性労働者(一般労働者) の年齢階級別の賃金ということでありまし て、これも男女で並べておりますけれども、見てとれますのは、年が高くなるにつれま して男女の差が出てきているということでございます。実額ベースとしては、グラフに 記載のとおりでございます。 次に、14ページは年齢階級別の所得分布ということで、いずれも女子ですけれども、 上は正規の従業員について、下はパート・アルバイトについてということで、年齢階級 別にどのような所得分布になっているかということであります。正規の職員につきまし ては、さまざまな分布が広がっておるところでありますけれども、下の方のパート・ア ルバイトにつきましては、全年齢層を通じまして50万〜99万円というところがかなりの ウエートを占めているという状況になっております。 更に別な統計、「平成7年のパートタイム労働者総合実態調査報告」でありますけれ ども、15ページであります。賃金支払いが月給制の女子パート労働者について調査をし てまとめたものでありますけれども、折れ線は累積度合いでありまして、棒グラフはそ れぞれの山であります。グラフのタイトルの下にありますけれども、年収 132万円未満 のところで折れ線でいいますと48%、約半数が 132万円未満である。ただ、その過程で の山というのは96〜 108万円のところが1つ大きな山になっているという状況になって おります。そこを過ぎますと、次は 180〜 192万円、月収15万円ぐらいのところに山が きているというところであります。 次の16ページは、実際、労働日数、所定労働時間というのはどうなっているかという ことでありまして、これを見ていただきますと、1週間の労働日数と1日の所定労働時 間ということでマトリックスになっております。表の方で網かけしてあるところが中心 になる訳でありますが、表のタイトルの下に2行ありますとおり、1週間に5日働く人 が54.3%ということで約5割以上。あと、1日の所定労働時間は5〜6と6〜7を足し たところで48.6%ですから約5割ぐらいになる。このあたりが多数であるという状況に なっております。  一方、男子のパートタイム労働者というのが17ページですけれども、これにつきまし ては、女子の場合にようにどこかに集中しているということではなくて、かなり多様化 してばらつきがあるというようなことで、パートタイムということでも働き方に大分ば らつきがあるというような状況になっているところでございます。  ここまでで言っているパートタイム労働者というのは、正規より若干短いとか、それ ぞれの調査で決めている訳ですけれども、その中で社会保険への加入との関係を調べた ものが18ページでございます。この調査でも、パートタイム労働者といいますのは、正 規以外で1週間の所定労働時間が正社員より短い労働者という定義でやっておりますけ れども、このうち、上の表を見ていただきますと、パートタイム労働者の社会保険の適 用を受けているのは35%強ということになっております。これは、男女でそれほど大き な違いはない。 なお、平均勤続年数、平均就労年数につきましては下のグラフになりますけれども、平 均勤続年数は約5年ということで、大体7年ぐらいというような実態になっておりま す。  以上がパートタイム労働者関係の資料でございます。  続きまして、19ページ以降は第3号被保険者の関係でございまして、これは本日の後 半のときにも適宜御参照いただければと思います。19ページを見ていただきますと、配 偶者のいる女性について、就業しているかどうかということですが、1番の表を見てい ただきますと、有業者というのが約6割、無業者というのが約4割ということで、配偶 者のいる女性のうち無業者は約4割。有業者6割のうち、30.5%が仕事が主、27.5%が 家事が主で、仕事が従ということになります。有業者6割の内訳が、仕事が主が3割、 仕事が従が3割ということですが、配偶者のいる女性雇用者の年収分布を見ますと、下 の円グラフでありますけれども、概ね半分強、52%余りが0〜 150万円の間ということ で、約半数が年収 150万円未満ということであります。 続きまして20ページからは、出典につきましては23ページにまとめて書いてございま すけれども、平成9年に「女性のパートタイム労働者等に関する調査」ということで行 った調査であります。その中で第3号被保険者である女性について、どういう現状であ るかということをまとめたものであります。この調査によりますと、円グラフでありま すが、第3号被保険者となっている方のうち、収入のある仕事をしている人が約3割、 収入のある仕事をしていないというのが約7割。この3割、 872人の人がどのぐらい働 いているかということで見ますと、下の帯グラフのような形で21〜30時間が最も多く 39.6%、11〜20時間が33%というような形になっております。 第3号被保険者 872人のうち、収入について回答のあった 829名について、21ページ の上でありますけれども、これにつきまして、年間収入階層は幾らかということを聞き ますと、これは累積比率でありますが、 103万円未満というのが88.2%、 130万円未満 が94.7%。 130万円の基準ということですので、 130万円以上が若干あるというのは問 題ですけれども、調査としてはこういう形になっていたところでございます。  第3号被保険者の中で常勤の仕事をしているというのは少ない訳でありますけれども 常勤の仕事をしていない理由は何ですかという質問につきましては、全年齢を通じます と一番上の帯グラフでありまして、育児、介護、家事が大変というのが49%。あと、職 場がないとか、税制上の優遇措置を受けるためといった数字もある訳です。年齢階層で 見ますと、若い世代、40歳未満ぐらいにつきましては育児、介護、家事が大変といった 方が多くなっておりまして、年齢が上がるにつれて、そういった構成がまた変わってき ているところでございます。  この答えの中で、税制上の優遇措置等を受けるためという答えもある訳でございま す。これは、22ページを見ていただきますと、その理由として何を挙げているかといい ますと、そういう答えをしたのが全体 2,668の回答のうち 302人、11.3%の方がそうい う回答をされた訳です。税制上の理由、社会保険の理由、配偶者手当の理由、それぞれ 30%、48%、17.9%というような、理由はどれを挙げますかということですとこういう 形になった。 実際、3号被保険者のうち働いている人について、自分は厚生年金や健康保険の適用 を受けたいかということにつきましては、全体で見ますと、今のままでよいというのが 55%、自分自身の適用希望というのが23.3%であります。これにつきましても、若い世 代と40代ぐらい、特に自分の保険・年金の適用を希望というのが40代がほかの年代に比 べて高くなっているという状況になっております。 23ページは、3号被保険者自身によりまして3号被保険者制度をどう評価しているか ということでありますけれども、公平の観点から見直すべきだというのが 5.6%。何ら かの事情があるのだからとか、あるいは出産・育児等の事情、健康保険との関係、そう いった理由で保険料をとるべきでないと答えたのが約7割というような形になっている ところでございます。  これは、3号被保険者を対象にした調査ですけれども、24ページ、25ページは経済企 画庁の調査で、3号被保険者の制度についてどう考えますかということを、年齢階層 別、あるいは世帯構成といいますか、サラリーマン世帯、あるいは自営業世帯といった ことでとったものであります。この調査におきましても、ちょっと字が小さくて恐縮で すが、24ページ中ほどのグラフでは、若い世代は現行どおりでいいんじゃないかと。中 高年層になると見直すべきがやや増えているというような形になっております。サラ リーマン世帯と自営業世帯で比べると、サラリーマン世帯の方が現行制度の支持率が高 いという状況になってございます。  25ページは、こういった年金・税制の制度には無職の主婦、収入の少ない主婦につい ての制度がある訳ですけれども、こういった措置が緩和された場合に、長時間働く女性 が増えると思うかという問いで、そうなったら増えるんじゃないかと思うと答えたのが 6割以上であったというのが中ほどのグラフでありまして、それはサラリーマン世帯で もそういう答えが多かったというようなことでございます。  なお、26ページは、3号制度について、平成10年の「年金改革に関する有識者調査」 におきましてどういう答えであったかということであります。全体の結果としまして は、現行制度維持というのが約2割、専業主婦からも保険料を徴収すべきが27%で、最 も多かったのは、将来は見直すべきだが、当面は維持というのが43.8%でございまし た。ただ、これにつきましても、下に性別あるいは年齢階層別に見ますと、年齢階層別 ですと30代以下の場合と40代、50代の場合とでは、現行制度維持と専業主婦からも保険 料を徴収すべきという意見に若干のズレが出ているところでございます。 27ページは、企業におきまして配偶者手当というものを設けている場合に、一定の支 給制限を設けているかどうか、あるいは、その際に何を使っているかということであり ます。上が、設けている場合、何を基準と考えているかということでありまして、所得 税の非課税限度額、あるいは配偶者控除の対象となる額 103万円というのを対象に考え ているのが、ここで言いますと37.9と38.5で約8割弱ということであります。 130万円 に合わせているのが15%。あと、 141万円というのも5.3%ということで、下は配偶者手 当が支給制限の対象となる配偶者の年間収入金額でみたもので、103万円のところが76.3 %という数字になっているところでございます。 28ページは、就労調整が行われているんじゃないかということで、就労調整をやって いるか、やっていないか。それと、その際に何を基準に考えているかということであり ます。上の表は所得税を意識して就労調整をやっているかどうかというのをパートタイ ム労働者について調査したものでありまして、所得税を意識して就労調整を考慮してい るというのが男女計で33%、女性でいいますと38.6%ということであります。超えるこ とはないから考えていないとか、超えても関係なく働くからというのが18.1とか26.5と いった答えになっていますが、意識しているというのが38.6%という形になっていま す。 また、所得税以外の理由で就労調整をやっていますかというのが下の表でありまし て、これも女性の方を見ていただきますと、調整をするといっているのが39.7、調整し ないといっているのが46.9。調整するといっている理由としましては、配偶者控除、あ るいは配偶者手当、社会保険、こういったところはかなり濃淡がある訳ですけれども、 理由に挙げているところでございます。 以上が第3号被保険者の関係でございます。  29ページは、雇用の流動化といいますか、女性の就業形態別離職状況の推移というこ とで、実線は一般労働者の離職率、点線はパート労働者の離職率ということで、パート が上の方を通っているというようなことでございます。  30ページは、年齢階級に離職理由は何かということでありますけれども、一番大きな シェアを占めておりますのは、個人的な理由で結婚・出産・育児・介護以外というのが 多い訳ですけれども、若い世代では、例えば25〜29歳でありますと結婚というのが 17.1、出産・育児が12.6。ここは非常に特徴的でありますけれども、ほかの世代につき ましても、さまざまな理由になっているというようなことでございます。 31ページ以降は、年金に関する加入状況、あるいは受給状況であります。31ページは 左が男性、右が女性で、グラフの内側から1号被保険者、2号被保険者、3号被保険者 ということになっておるところでございます。男女別被保険者数というので、10年度末 の実数を下に掲げております。  この方々が特にどういう形態で就業しているかというのが32ページでありまして、上 の段に男女の合計、下の段に女性だけを再掲したもので、その中でも就業者につきまし ては、パートについて更に再掲をしているということでございます。  以上が加入状況でございまして、33ページは年金の受給状況であります。上の段が国 民年金の場合の老齢年金受給状況、下の段が厚生年金の場合の老齢年金の受給状況とい うことでありまして、男性の場合は月額6〜7万円のところにかなりの大きな固まりが ある訳でございますが、女性の場合は月額3〜4万円のところが最も多い固まりになっ ているところでございます。厚生年金の方につきましても、やはり加入期間比例、ある いは報酬比例で計算されるということもございまして、男性につきましては20〜25万円 のところに最も大きな層がございまして、女性につきましては月額5〜10万円、あるい は10〜15万円といったところが多くなっているという現状でございます。  34ページは遺族年金でございます。国民年金の場合と厚生年金の場合と挙げておりま すけれども、受給権者の中で、配偶者であった女子が受給しているというケースにつき まして、特に年齢階級別に分けております。国民年金の方につきましては、これは子ど ものある間しか受給がない訳でございまして、40〜49歳といったところが最も大きな数 となっております。厚生年金の方につきましては、そういった性格ではございませんの で、御年配の方につきまして非常に多くなっている。ただ、若い世代でもそれなりに受 給をされているという状況でございます。  35ページ、36ページは、ここまでは年金を支給している側からどういう支給額になっ ているかをみたものですけれども、いろいろ制度を渡り歩きますと、いろいろな制度か ら年金を受給しているということでありまして、実際にもらっている額としてはどうい う分布になっているのか。個人の側から見たらどうかということであります。これにつ きましては、統計としてはなかなか難しい訳ですけれども、実際に公的年金、恩給をど ういう受給をしているのかということにつきまして、「国民生活基礎調査」の方で集計 をしたものがございまして、まず35ページは女性でございます。女性につきましては、 年齢階層別に分けておりますのでグラフが見にくうございますけれども、大体年額40〜 60万円というところが非常に多い訳であります。中には多くもらっていらっしゃる方も いらっしゃるということでございます。  36ページは男性についてでありますけれども、こちらにつきましても、60〜80万円と いう基礎年金層のところはそれなりに一山ある訳でございますけれども、 200万円以上 の被用者年金等による受給というのもかなりのウエートを占めているというところでご ざいます。 次の37ページは、遺族年金につきまして、遺族年金受給の際に、いわゆる配偶者の厚 生年金をベースにした遺族年金+自分の老齢年金という選択か、あるいは自分自身の老 齢年金という選択か、あるいはその組み合わせでという、下の凡例のところに3通り選 択肢がある訳ですけれども、そのどれを選んでいるかということであります。8年度、 9年度、10年度と3年分ありますけれども、65歳以上の場合の統計ですが、約8割の方 が(A)という自分の老齢基礎年金+配偶者の年金をベースとしました遺族厚生年金と いう選択をしている状況でございます。  あと、38ページは、生別・死別もある訳ですが、母子世帯と父子世帯、あるいは一般 世帯の年間収入状況ということで、若干データが古いものではありますけれども、母子 世帯と父子世帯を比べますと、生別・死別を問わず、母子世帯は収入状況が平均的な姿 としては低いということでございます。  最後になりますが、39ページ以降は離婚・婚姻の関係でありますけれども、上の折れ 線が婚姻件数、下の折れ線が離婚件数ということで、婚姻件数はやや横ばいか、やや減 少で、離婚件数はやや増えている。  この内訳が40ページでありますけれども、平成元年と平成10年の2本の折れ線を付け ておりますが、若い世代でも、あるいは中高年でも非常に離婚率が高まっているという ことでありますけれども、増え方としては中高年での離婚が倍率では増えてきていると ころであります。  これを同居期間別に見た離婚件数、構成割合というのが41ページでありまして、黒の 実線が昭和25年における構成割合で、点線が平成10年における構成割合ですけれども、 見てとれますのは、昭和25年は短い期間での離婚が多かった訳ですけれども、平成10年 ですと20年以上の割合が高まっているということでございます。  最後の42ページは、家庭裁判所での財産分与とか慰謝料の支払いといったものにつき ましてですけれども、取り決めがあったものというのが、夫が支払うが52%、妻が支払 うが5%ですけれども、夫が支払うと決めたうちの支払う額につきましては非常にばら つきがあるというような現状のグラフでございます。  以上、大変駆け足でございますけれども、前回お求めになった資料も含めまして、基 礎資料としてこのようなものを整理させていただきました。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。すごくたくさんあるので大変ですけれども、ただい まの説明につきまして何か御質問とか御意見ありますでしょうか。すごくたくさんある ので大変ですが。  もしなければ、私がお聞きしたいのですが、23ページの「女性のパートタイム労働者 等に関する調査」ですが、これは夫の年収別というのはとってあるのでしょうか。 ○梶尾補佐  基礎データとしてどうなっているか確認しておりませんけれども、基本的には、とっ ているデータについてはここに表をお入れしたというふうに承知しております。 ○袖井座長  よく言われるのは、3号で働かない人は夫の年収が高いからだというようなことも言 われますので、何かそういうものがあればと思うのですが、そういうのはとっていない んでしょうか。 ○梶尾補佐  この調査ではやっていないかもしれないですけれども、この調査はまさに3号被保険 者についてということでありますけれども、いわゆる配偶者のいる女性で就業していな い人の夫の所得というのは別の調査でとれる可能性があるかなというふうに思っており ます。 ○袖井座長  では、できましたらお願いします。 ○住田委員  3ページの労働力率の表ですけれども、M字型のカーブが、平成元年と平成11年で比 べて、落ち込みが今年、去年はそれほどではなくなったということですけれども、私自 身もこれまでM字型カーブについての解説本を読んだことがあるのですが、M字型の カーブの落ち込みが一番ひどい世代というのが、ちょうど私より上の1945年から1950年 の戦後生まれの方々。いわゆるベビーブーマーがこのM字型カーブの落ち込みが一番ひ どいということを聞いております。それがまた徐々にこういう形で上がってきているの だろうと思うんですけれども、M字型カーブの落ち込みの理由というのは、いうまでも なく、結婚、育児等による退職だと思うのですが、しかし、今後、将来を見通すとき に、このM字型のカーブがどういうふうな動きをしているかを、もう少し細かく戦後か ら平成11年までの動きを見せていただければと思っております。よろしいでしょうか。 ○梶尾補佐  労働力調査をベースにしまして、昔のものと並べてコーホート的にやったらというこ とでございますね。 ○袖井座長  そうですね。コーホートでとれば、本当にベビーブーマーがなっているかというのが わかると思います。  ほかにどなたかありますでしょうか。 ○堀委員  よけいなことですけれども、先ほど座長がおっしゃった質問のデータは、別の資料の 11ページの表にあるのではないですか。 ○梶尾補佐  今、堀先生からありましたのは資料1の方の11ページということかと思いますけれど も、これは実は1984年の調査をベースに使ったものでございますので、直近のもので何 かできないかというのはちょっと検討してみたいと思っております。 ○堀委員 あと2点だけ質問したいのですが、1つは、説明があった資料の15ページです。 これは女子パートの年収のグラフ、折れ線グラフでなくて棒グラフの方ですが、96〜108 万円のところに1つ高い山がある。これは例の103万円の壁のためだと思うのですが、 123〜144万円のところはむしろ低くなっていて、130万円の壁はないように思う。180〜 192万円が高いのは、何か制度的な要因があるのか。あるいは、たまたまこうなっている だけなのか。考えがあったら教えていただきたいというのが1点です。  それから2点目ですが、28ページ、下の方の「所得税以外の理由による就労調整の対 応別パートタイム労働者割合」の表の見方ですが、女性は「調整する」39.7%というこ とで、その下は内訳ですね。「社会保険の被扶養配偶者からはずれ、自分で加入しなけ ればならないから」というのが42.4%になっているのですが、これは内訳ということで すね。ですから、全体としては39.7%に42.4%を掛けた16〜17%ぐらいが社会保険のた めに調整をする、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。 ○袖井座長 堀先生、ほかにありますか。 ○堀委員 以上です。 ○梶尾補佐  まず1点目でございますけれども、 180万円のところになっているというのは、何か の制度でそういうふうな影響でというのは、すぐに想像できるものとしてはないかなと いうふうに思います。 あと、2点目の28ページの方につきましては、39.7%の中について、何を理由にして いるかというものの複数回答ですので、例えば社会保険ですと、最終的に何%のうち、 これを答えにしたのが42%あったということで、掛け算をしていただければ、全体に対 する割合ということになります。 ○中原企画官 若干補足をさせていただきますと、 180〜 192万のところに高い割合が出ていること については、厳密な数字をお示しするのはなかなか難しいかとは思いますが、大体この あたり以上の所得があれば、いわゆる就業調整を行うことなく、税制、社会保険の制度 を考慮せずに働いても、いわばペイするというか、そういうことを見込んだ就業行動の 結果ではないかと思われます。 ○袖井座長 ありがとうございました。 ○永瀬委員 前回、なるべくであれば世帯単位の中で男女別にどのぐらいの年金が受給されている かというのを知りたいということを申し上げましたが、そのデータは今のところまだ出 ていないようです。実際になかなかないのだろうとは想像はいたします。世帯単位の受 給が非常に重要だと次のもう1つの資料の方に述べられていますが、給付について理念 的なモデルでしか示されていません。実際問題、どのぐらい、どういう分布になってい るかというデータを拝見いたしたいと思います。 ○袖井座長  可能でしょうか。 ○梶尾補佐  そういったご要望もありましたので、どういうものができるかと統計データとしてい ろいろ探してみたのですけれども、個人単位での「国民生活基礎調査」におきますデー タというのがあった。実際にもらっている方について、個人個人でどこからどういう年 金をもらっているかというのは、行政庁は把握していなくて、調査としては「国民生活 基礎調査」しか使えるものがないんですけれども、その中で、世帯でどういうふうなも らい方をしているかというのはやや難しかったというところでございます。 ○永瀬委員  と申しますのが、例えば年間60〜70万円しかもらっていない女性が大変多いというグ ラフを先ほど見せてくださいましたけれども、夫と合わせた場合にどうなのか。本当に 60〜70万円で生活していかなくてはいけない人たちがどのぐらいいて、夫の年金と合わ せた場合には一体どのぐらいもらっているのか。その分布を見ませんと、ただ男女を 別々に分けた分布を見ただけでは何とも言い難いような面があるのではないかというこ とです。 ○袖井座長  それは、先ほど私がお願いした夫の年収別でとれないかということも関連していると 思うのですが、「国民生活基礎調査」の所得表は個人個人とっていますよね。あれでま とめてという集計はできないんでしょうか。そこら辺はよくわからないんですが。 ○梶尾補佐  では、どういうデータ構成になっているか、確認の上、もし可能であればまた考えた いと思います。 ○住田委員  さっきもう1つ言い忘れたんですけれども、家族構成の実態でございます。個人とか 世帯ということが問題になるときに、家族構成として今一番多いのが単身者世帯であっ て、標準家族は2割切ったというふうに言われているんですけれども、その当たりは、 細かく切ったものの実態として、夫婦・子ども2人の標準世帯がどのぐらいいるのか。 夫婦・子ども1人はどうかとか、そのあたりもひとつお願いしたいと思います。 ○袖井座長  それはありますよね。 ○梶尾補佐  これは、国勢調査なり、あるいは国民生活基礎調査なりで何かできると思います。 ○袖井座長  では、次回にでもお願いします。  ほかに何かありますか。よろしいですか。もし何かお気づきの点とか、もう少しこう いう資料が欲しいということがございましたら、後ほどでも事務局の方にお申し出くだ さい。なるべく御要望に沿うようにしていただきたいと思います。よろしいですか。  それでは、今日のメインイベントといいますか、主たるところに移りたいと思います が、前回の検討会では、この会の設置の趣旨及び年金制度全体についての事務局からの 説明があり、今回、これまで事務局で整理した「女性のライフスタイルの変化等の現状 について」の資料の説明を受けましたが、これらを踏まえて、これから女性と年金に関 して指摘されているざまざまな論点について順次検討を進めてまいりたいと思います。 年金審議会の意見書でも、個人単位化、第3号被保険者制度、遺族年金、離婚時の取り 扱い、パートタイム労働者といった論点が指摘されております。これは余り議論されな かったというような世評もありましたが、実際には非常に議論されたんだそうでござい ます。それで、論点はこれらに限定されるものではありませんが、まず、これらの論点 について順番に取り上げていきたいと思っております。年内は、今回と次回ぐらいで一 通り論点のおさらいといいますか、お勉強いたしまして、そのお勉強が済みまして議論 に移りたいと思いますが、とりあえず今回は個人単位化と第3号被保険者について事務 局から説明を受け、その後、議論を深めていただきたいと思います。大変重要な論点に 移りますので、事務局の方、よろしくお願いいたします。 ○梶尾補佐  それでは、お手元の資料1に沿いまして御説明を申し上げたいと思います。  資料の構成としましては、まず女性と年金の個々の問題に入る前の総論といいます か、基本的にどういう考えでアプローチをしていくかという理論的な部分を最初に整理 いたしまして、その後、本日予定しております論点である個人単位化、そして第3号の 問題について整理をした資料となっております。  まず前半、最初の「総論」のところでありますけれども、めくっていただきまして1 ページは、現在の年金制度が想定をしております女性のライフスタイルの姿が大分変わ ってきておりまして、真ん中の楕円形がライフスタイルの帯の下にございますけれど も、例えば単身者が増加をしているとか、あるいは晩婚化とか若年の離婚、あるいは共 働きが増えてきているとか、離婚が増えてきている。そういったことで、現在の年金の 制度につきまして、さまざまな不満とか不公平感、あるいは変更を求めるというような 意見が出てきている。そもそもこれは結婚しているモデルでありますけれども、結婚し ないというような選択も出てきているところでございます。このページの下の四角に書 いてありますとおり、こういった生活形態の変化にもっと対応できるような年金制度に すべきではないかといった意見がある訳で、この検討会のもとになる問題意識でござい ます。  2ページでありますけれども、現在の年金に対する一般の感覚といいますか、女性と 年金についての御意見の中でもよくあるのが、保険原理ということが強調されているよ うな感じがする訳であります。この丸の中の左側の「保険原理」の中に書いています が、私的保険的な部分が強く意識されている。給付と負担の間に厳密な関連性というよ うな感じがするのではないか。例えば自分が払ったものが返ってこないとか、自分で払 った保険料がほかにいく、こういったような議論も中にはあるという訳でございます。 現在の社会保険の考え方としては、必要な方に給付をするいうこと、また、能力に応じ て負担をしていく、そういう大きな原理で社会保障として構成されている制度でありま して、年金は保険だからというところに余りウエートが強く入り過ぎるとどうかという 感じがする訳でございます。最終的に、右側の全体の所得保障と組み合わせて社会保障 として考えていくことが必要というふうに考えておる訳であります。そういった中で、 下の囲みでありますけれども、今の社会保障として行っている年金の長所ということで 書いてありますが、保険集団で必要に応じて再分配していくということで、いわゆる出 したものは全部返ってくるという貯蓄とは違ってくるというようなことであります。そ れから、現在の制度というのは、比較的、女性の多様なライフスタイル(生活の変化) に対しては、また後の方でも出てきますけれども、3号の制度などでもそういった変化 に対応できているのではないだろうかというふうに考えているところでございます。も う1つのポイントとしましては、この後、具体的な説明もしますけれども、世帯単位で 見て給付と負担のバランスがとれるようにつくられているということも事実であろうか というふうに思っております。  ここまでは考え方ですけれども、次の3ページでございます。これは、女性はこうい うようなことで、就職したらずっと2号被保険者であるということではなくて、いろい ろ制度が変わる。そういった場合にはどういった受給になるのか。これは統計ではなか なか難しい訳ですけれども、モデル的にどんな感じになるのかということで、統計とし ては先ほどの「国民生活基礎調査」のデータがあった訳ですけれども、年金の計算とい うのはどんな形になっているのかというのをイメージとしてつくってみたものでござい ます。  算定事例ということで、事例1ということで1つの例でありますけれども、20〜29歳 は会社勤めで、これが厚生年金適用。30〜39歳は専業主婦、40〜44歳は短時間のパート 勤務で、これはまだ社会保険適用ではない。45〜54歳は常勤的なパート勤務ということ で、この期間については厚生年金適用。55〜59歳につきましては、このケースでは夫が 退職をしていますので、この人も退職をしますと、いわゆる国民年金に加入という形に なる訳でございます。ここで言っている月給というのは現在価値で仮に表示をしており ますが、こういう場合ですと、基礎年金の部分につきましては、ずっと40年間いずれか の年金制度に加入をしているということになりますので、満額×40分の40という形で満 額の計算になる。一方、厚生年金につきましては、17.5万円といいますのは、20〜29歳 の10年間が20万円、45〜54歳の10年間が15万円ですので、標準報酬月額としては平均で 17.5万円という意味合いでありますけれども、それに乗率を掛けまして20年間というこ とで、これを計算しますと厚生年金の月額が 2.5万円という形になるところでございま す。ただ、実際にこういう形で受給をしているという訳ではありませんで、昭和60年の 改正によりまして、現在の制度としてはこうなっておりますけれども、実際に今もらわ れている方について考えますと、 (注) にございますが、昭和60年度までの制度で考え ますと、この事例で言いますと30〜44歳の期間というのは、いわゆるサラリーマンの妻 ということで、任意加入はできたけれども強制加入の対象でなかったということでござ います。この間、任意加入していた方については、その分、年金が付く訳でありますけ れども、任意加入していなかった場合には、その期間分だけ年金額が少なくなるという 仕組みで、実際にもらっている方をイメージしますと満額にはならない。ただし、いわ ゆる振替加算という一定の加算がございますけれども、そういった計算方式になるとい う形でございます。厚生年金の方については、基本的に変わらないところでございま す。 次に、事例2というのは、今の事例のうち30歳以降ずっと専業主婦という形であった らどうなるかということです。これはどう違ってくるかといいますと、厚生年金の部分 というのが20〜29歳の10年分だけで計算されるという形になるということです。 事例3というのは、2年間学生で、あと38年間会社勤めであったという形のケース で、その2年間については、11年度までの制度ですと強制加入ですし、現在の制度です と、納付特例対象になって、その分納付をすると満額になるという仕組みであります。 任意加入していないという前提で考えますと40分の38で計算する。基礎年金の部分につ いては、基本的にいずれかの制度に参加しておりますとフルペンションになり得るとい うことでありますけれども、2階部分については、厚生年金であったり、あるいは公務 員であったりしている加入期間、あるいはその期間の給与に応じた形で2階部分は計算 されていくということであります。もちろん、これは基礎年金の仕組みでもこうですけ れども、60年以前の通算年金の制度であっても、各制度に入っている加入期間を通算し て、それぞれの制度から年金を受給しているということです。それで個人としては実際 に幾らになっているかというのは、先ほどの調査で世帯としてどういう工夫ができるか やってみたいというふうに思っているところでございます。  続きまして、4ページからは、総論ではなくて、以下の各論点についてということで ありまして、4ぺージから個人単位化の関係であります。4ぺージは、個人単位化につ きまして、年金審の意見の関連部分を抜粋したものでございます。  5ぺージでありますけれども、4ぺージの意見に至る過程でどういった検討をいただ いたかということです。個人単位化ということも1つの流れだという御意見もいただい た訳でありますけれども、最終的な姿を理念的に突き詰めていくとこういうことになる のではないかということで考えたのが5ぺージの資料であります。最初の四角でありま すけれども、女性が未婚であるか、既婚であるか、あるいは就労についてはフルタイム であるか、パートであるか、夫の収入が少ないとか、そういった環境条件が違います と、現在、給付や負担というのは違いがある訳ですけれども、それがないように、みん な同じにしていこうということになるのではないか。ずっと進めていきますと個人単位 での私的保険原理というものが相当濃厚に入ってくるような感じになるのではないだろ うか。そうしますと、もちろん3号の方々にも個々に負担を求めていくというふうにな る訳ですし、全部が個人としての構成ですと、世帯としての夫の収入に老後を期待する とか、あるいは生計維持者の収入がなくなった後保障するといった、遺族年金のような ものは突き詰めていくと考えられないということになるのではないか。  次に、給付水準のことで、世帯単位での給付設計見直し云々とございますけれども、 これにつきましては、ぺージをめくって6ぺージを見ていただきます。上の家の形であ りますが、1番のケースであります。今回の12年改正後のモデル年金というのは23.8万 円ということで、この3つの積み重ねという形になっている訳であります。この水準で 夫婦で老後を送っていこうと。そのために若い世代の負担というのは最高20%を限度で という形での設計がされている訳であります。これをもう一遍個人単位で見直していく ということになりますと、例えば夫婦とも厚生年金40年加入するというような暮らし方 が普通であるというのが右下の「40年程度の場合」というものになる訳です。そうしま すと、現在の給付設計では30.1万円の年金を受給できるということになる訳でありま す。現在の仕組みだとそうなる訳でありますけれども、世代間のバランスをとるという ことから、普通の暮らし方である夫婦で23.1万円というような形で給付設計を考えると なりますと、現在の給付水準というのは下げなければならない。そういったこともあり 得るというようなことが給付水準についての話でございます。 なお、この試算では、現在の受給者の平均値で男子の標準報酬月額36.7万円、女子は 22万円という形で計算をしております。先ほどの資料でもありましたけれども、男女の 標準報酬の違いというのが実績として出ているところでございます。  5ぺージに戻りまして、こういったことがある訳でありますけれども、個人単位化と いった姿を目指すのか。女性がフルタイムで男子と同等の賃金をもって働いているとい う前提に立てば、こういった仕掛けも機能すると思われる訳でありますけれども、女性 の置かれている社会実態というものを勘案すると、老後の必要に応じて所得保障を実現 していくという面が失われていくことになるのではないか。そういった現状認識といっ たことも兼ね合わせて、個人単位化ということについて今後考えていくということなの ではないかという整理をしたのが5ぺージでございます。ただ、いずれにしましても、 個人単位化ということのみで抽象的に議論できるというものでなくて、各論点について 検討する中で、個人単位化ということについても頭に置いて議論を深めていくというこ とになるのではないかと考えておるところでございます。  次、7ぺージ以降は第3号被保険者の関係でありまして、まず意見書の抜粋が7ぺー ジでございます。  8ぺージから以降はこれまで年金審議会で出した資料でございますけれども、8ぺー ジから11ぺージは、9年10月の年金審議会に提出して御議論いただいた資料でございま す。 8ぺージ、9ぺージは、3号被保険者の仕組みというのはどういう経緯でできたかとい うことでありますけれども、これは昭和60年の改正でこういう制度が導入された訳でご ざいます。最初の1の (1)に書いてありますけれども、従来の年金制度は、給付でも負 担でも世帯単位という考え方で設計がされておった訳でございます。その結果、下の (2)の○にございますけれども、例えば片働きの世帯で奥さんが国民年金に任意加入して いるといった場合に、現役世代とのバランスを考えた場合に過剰な給付が発生するとい うことですとか、老後の離婚といった場合に対しましては、年金権が保障されていない といった問題があった訳であります。任意加入につきましては、60年改正の当時、対象 者の約7割の方が任意加入をしていたということでございますけれども、残る3割はそ のままでは離婚すると無年金というような状況になっていた訳でございます。  それで、9ぺージのような改正を行った訳でありますけれども、 (3)でございます。 これで、サラリーマンの妻も3号被保険者として国民年金に強制加入ということで、給 付水準につきましては、従来の水準を維持しつつ、2階建て+妻の分も含めて3つ積み 重ねという形にしたということです。ただ、費用負担については独自の負担を求めるこ ととせずに、それぞれの被用者年金制度で対応することにしたということであります。  11ぺージをちょっとご覧いただきたいと思います。11ぺージは横長の資料で「第3号 被保険者の基礎年金の給付と負担の現状」という資料であります。それぞれの被保険者 につきまして、上の横長の四角の中に整理をしている訳でありますけれども、11ぺージ の左端の3号被保険者につきましては、これは要するにどちらかが働いている片働きの ケースでありますけれども、給付は基礎年金から受ける。負担につきましては、その配 偶者の方は御自身の標準報酬に応じました保険料を納める訳ですけれども、3号被保険 者自身の直接の負担はないということであります。第2号につきましては、共働き前は 独身あるいは片働きの働いている方になる訳ですけれども、その方は給付は基礎年金+ 報酬比例の厚生年金、負担も報酬比例の保険料の負担という形になっておるところで す。右は、第1号被保険者で基礎年金の定額給付、または定額の負担という仕組みにな っている訳です。この四角の中で2号から3号のところに斜めで「共同負担」というの が付いておりますけれども、いわゆる2号全体で3号の方々の保険料を賄っているとい うことになっておる訳でありまして、こういったところにつきましては、サラリーマン の妻は保険料を納めないで年金を受給している、共働き世帯が3号の年金負担を肩代わ りしているんじゃないだろうかというような批判につながっている面がある訳でござい ます。  それから、下の四角の絵をご覧いただきますと、ここで共働きの例をとりますと、こ れは御主人も基礎年金+厚生年金の報酬比例分を世帯で受け取る。奥さんも、自らの基 礎年金、自らの報酬比例に基づいた世帯分の厚生年金を受け取っているということにな ります。 これは、年金受給段階で考えますと、1世帯で基礎年金+厚生年金が2つというふうに 乗っているという訳でありまして、先ほど6ぺージの図のところで説明しましたけれど も、要は、専業主婦世帯における夫婦2人+厚生年金1つという標準で考えた年金額以 上の受給になっているということを、★で記述をしているところであります。ただ、金 額的に言いますと、後ほど17ぺージ以降のところで御説明いたしますけれども、共働き であるか片働きであるかを問わず、世帯単位で見ると給付と負担というのは均衡してい るということで、これは積んでいる箱の数が違うということをコメントしているところ でございます。  なお、先ほど堀先生からありましたけれども、右下の表につきましては、従来、9年 10月の年金審にこのまま出したということで付けておりますけれども、例えば世帯割合 でも、これだと専業主婦が64.7%という形になっておりますが、先ほど前半で御説明し ましたように、専業主婦は4割、仕事が主が3割、仕事が従が3割というのが最近の データであったり、そういったこともございまして、この表に掲載されている数値その もので現状どうこうというのは現時点ではなかなか難しいのかなというふうに思ってい るところでございます。  次に、12ぺージから15ぺージは、この問題を考える基礎資料的なものでありまして、 12ぺージはパートの適用があるか。したがって、2号被保険者になるのかどうか。ま た、2号にならないという場合に、 130万円以上の所得か否かで1号被保険者か3号被 保険者に分かれるということは御承知のとおりですけれども、それを図示したものでご ざいます。13ぺージ、14ぺージにつきましては、被扶養配偶者という形で自らの保険料 負担はなくて、一方で保険給付が行われているというのは、いわゆる年金の3号だけで なくて、医療保険における家族ですとか、あるいは介護保険の40〜64歳の被保険者、健 康保険の場合ですが、それについても同じであるというようなことを資料として示した ものでございます。  15ぺージで、諸外国ではこういった例につきましてどういう扱いがなされているのか ということを調べたものでありますけれども、1が被用者が本人分の保険料のみ拠出し ている場合に、配偶者のために一定の給付を行う例ということで、アメリカ、イギリス はほぼ日本と同様の考えに立った制度がとられているという形であります。フランス も、保険料の納め方に若干違いはある訳ですけれども、類似的な形になっている。一 方、保険料も徴収しないということで、居住要件のみで給付を行うというスウェーデン の例。あるいは3番ですが、ドイツにおいては、逆に自らの保険料拠出のない被扶養者 には給付は行われないし、その配偶者の年金に加給が付くということもない。そういっ た制度もある訳でございます。こういったさまざまある訳でありますけれども、日本の 仕組みは別に世界でも稀な仕組みをとっている訳ではなくて、わりと一般的とも言える のではないだろうかというふうに思っているところでございます。  次の16ぺージ以降は、10年3月の年金審に提出して議論いただいた資料でありますけ れども、内容で今の9年10月のものと若干重複もありますけれども、まず16ぺージであ りますが、上の四角で、現在、被用者全体で保険料を拠出して基礎年金の受給権を確保 している。その間、出産・育児、介護等で家庭に入って無収入の時代があっても、その 間は全体で支え合って年金を確保する。こういった形がとられて、多様な生活形態にも 配慮して、無年金・低年金の発生を防止しているという訳でありますけれども、いきさ つは先ほど御説明したとおりでございます。  これにつきましては、意見としましては、現行制度に対する意見ということで書いて ございますけれども、1つは、専業主婦の保険料を専業主婦以外の世帯で全体を負担し ているというのはおかしいんじゃないか。所得がないから賦課しないとはいいながら、 学生については賦課してきたではないかと、そういった批判もある訳でございます。  したがいまして、これについてどう考えていくかということで、下の四角の中に、 1.、2.a、2.bということで3つほど並べております。現行制度を維持するという考え 方に立ちますと、ここでは負担能力がある方に負担を求める。必要性を考慮して給付を するという原則からみて、現状で問題ないという考え方が成り立つ訳でございます。  ここで17ぺージに書いてあります図をご覧いただきたいと思います。「世帯単位でみ た給付と負担の均衡」ということでありますけれども、17ぺージは単なる給付のモデル ということでありまして、こういった所得水準の世帯が一般的であるとか、平均的な姿 というような社会実態をあらわしているというのではなくて、わかりやすくするための モデルでありますので誤解なきようお願いしたい訳であります。上の四角ですが、所得 が同じであれば共働きであっても片働きであっても同じ保険料をいただいているという ことでありまして、専業主婦世帯で世帯所得50万円であっても、共働き世帯で世帯所得 50万円であっても、同じような保険料負担になっている。また一方、右側になりますけ れども、そういう世帯における給付につきましては、50万円と評価された所得に対して の年金額というのは、夫婦で合計50万円であっても、お1人で50万円でも同じになると いうのが現在の制度の考え方であるということであります。  これは現在の制度の考え方であります。16ぺージに戻りまして、今のが現行制度です けれども、現行制度の修正を求める意見ということで、16ぺージの2.でございます。 修正すべきであるという意見も大きく2つぐらいに分けられる訳で、2.aと2.bという ことを書いております。2.aというのは、要するに3号というのを廃止してもとへ戻す という形になります。やはり専業主婦も保険料を本人が納めるというふうに変えるべき だという考え方でありまして、もとの60年改正以前に戻るような考え方になる訳です。 厳密には、以前の制度は任意加入であって納めればもらえるだったのが、これにします と、強制加入とした上で、滞納者はもらえないというような逆向きにはなる訳ですけれ ども、以前のような制度になる。  これを具体的にやったらどうなるかというのが18ぺージでございます。行ったり戻っ たりで恐縮でありますけれども、18ぺージが、3号被保険者本人が定額保険料を負担す るとした場合、つまり専業主婦の方に国民年金の保険料の月額1万 3,300円を払ってい ただく。 そうしますと、その方々が払われた分につきましては、現在、2号をみんなで拠出して いるという部分が軽減される訳ですので、その差し引きがどうなるかということであり ます。 上の四角の2つ目の丸にありますけれども、3号被保険者本人 1,200万人がみんな保険 料を1万 3,300円払いますと年金制度も財政的に改善されるんじゃないかというような 主張もある訳でありますが、これは厚生年金保険料率で見ますと、1.35%ポイント分下 がるということでございまして、現在 17.35%ですのが16%で済むという形になりま す。これを大きいと見るのか小さいと見るのかというところもございます。  個別の世帯への影響はどうなるのかというので4つの家庭のモデル、これもわかりや すくするためのモデルでありますけれども、下の4つであります。左側は専業主婦世 帯、右側は共働きで、上の方は世帯所得50万円、下の方は世帯所得25万円ということで 4世帯ありますけれども、こういった世帯を見ますと、奥様が1万 3,300円を払うよう になって、その一方で厚生年金の方の保険料は1.35%分下がるということになりますの で、それで差し引きが出る訳でありますけれども、合計のプラスマイナスを見ますと、 左の下、世帯で25万円で専業主婦という世帯において1万 1,612円の負担増という形に なります。収入の高い世帯は1.35%掛けた額もそれなりに大きくなるものですから、そ れほどの増ではないというか、相対的には少ない、 9,900円の負担増ということです。 右の方の世帯は共働きですので、1.35%下がる分の影響だけですから、当然、負担は軽 くなるというような形になっている。まとめてみますと、左下にありますような所得の 低い片働き世帯の負担が高くなるというようなでき上がりになる訳でありまして、逆に 言いますと、現行制度はこういった世帯が比較的守られているというような仕組みにな っているところでございます。 なお、真ん中あたりの左側の「前提」というところの2つ目の○に書いておりますけ れども、専業主婦からも保険料を1万 3,300円いただいた上で、ほかの人は下げない。 これから保険料は上がっていく訳ですので、財政対策として下げないというやり方も選 択肢としてはあり得るということはございますけれども、このモデルでは下げる前提で やっているところでございます。 行ったり戻ったりで恐縮ですが、また16ぺージに戻っていただきますと、2.aの考え 方について、利害得失というメリット・デメリットを考えますと、任意加入の時代でも 3割の方は加入していなかった訳でありますけれども、(1)として、無年金・低年金の高 齢女性が出るということが予想される。60年頃といいますと国民年金の保険料は 6,740 円だった訳ですけれども、今は1万 3,300円。これが、今回改正での最終保険料も約2 万 5,000円余りということでありまして、60年改正当時よりも無年金・低年金の可能性 というのは高まっているのではないだろうか。あと、(2)でありますけれども、このぺー ジの一番上に書いてありますような現行の3号の仕組みの機能ということになりますと 多様な女性のライフスタイルの変化に対する配慮という面からは問題点がないとは言え ないんじゃないだろうかということがありまして、それを考慮した上でも、なおこれを やるのかということが判断ということでございます。  次なる考え方は2.bでありますけれども、専業主婦が自分で負担するのではなくて、 現在の3号という枠組みは維持しつつ、被用者の間で被扶養配偶者がいる家庭におい て、そういう方をもっている方が保険料を追加的に負担する。逆に言いますと、片働き の世帯と、そうでない世帯とで保険料に差をつけるということにしてたらどうなるのか ということであります。  これをやった試算というのが19ぺージでございます。専業主婦がいるサラリーマンの 夫の保険料に専業主婦の保険料を上乗せすることとした場合ということであります。保 険料率の変化はどうなるかといいますと、中ほどの右の点線で囲んであるところで現行 は 17.35%ということですけれども、専業主婦世帯においては19.3%にする。それ以外 の世帯については16%にする。 3.3%の差が出るということでございます。事業主負担 につきましては、本人負担分を折半としましても9.65%と8%という差が出るというこ とになります。これを適用しまして、先ほどと同じモデルで各世帯がどうなるかという のを見ますと、今度は先ほどのように左下に負担増が集中するということではない訳で ありまして、給与の多い専業主婦をもつ夫の方に負担増が動いてくるということであり ます。当然、右の世帯の方が軽くなる、こういったでき上がりであります。これは逆 に、別な観点から見ますと、上の四角の中に○で書いてありますけれども、要するに専 業主婦世帯は、同じ世帯の所得であっても、共働き世帯に比べて保険料負担は重くなる ということでありますので、同一所得であれば同一負担という原則は崩れるということ になる訳でございます。 行ったり戻ったりで恐縮ですが、16ぺージにまた戻っていただきまして、これをもう 少し評価をしてみたのが16ぺージの2.bの(1)から(5)ということでございます。このや り方についてはどうかですけれども、専業主婦のいる世帯につきましては、 1.9%保険 料が高くなる訳ですけれども、これは明快に専業主婦の年金分でありますけれども、こ こに事業主負担というのが伴ってくるべきものなのかどうかということが1つ。また、 次に専業主婦のいるサラリーマンは保険料負担が高い訳ですので、労働コストが違って くるということになる訳で、それについては雇用に影響してくる面もあるんじゃない か。(3)は、事務的な問題としましては、事業主は使用している人の配偶者が何号被保 険者に当たるのかというのを常に確認をしていなければ保険料徴収できないという仕組 みになる。あと、(4)は、今後の特に給付と負担のバランスに影響するところでありま すけれども、将来の最終的な負担は年収の2割程度に抑えるということで今回の改正が 行われた訳であります。例えば20%の限界というときに、まず 3.3%の高い人たちの方 がまず限界にぶつかってくるということになりますと、現在の 17.35%と比べますと 1. 9%ほど高い形で限界感にぶつかってくるということでありまして、そういった高い方 をベースに負担の限界感というのを考えていきますと、また給付水準の見直しにもつな がっていく面があるんじゃないか。(5)でありますけれども、なかなか難しいところで ありますけれども、結婚退職とか出産退職というような形で奥様が従来の2号から3号 に変化をするということになりますと、夫の保険料が16%から19.3%に急にはね上がる という形になる訳でありまして、そういう選択をすると、その途端に保険料が重くなる ということで、そういったことが今後の出生率ですとか少子化にどういう影響を与える かのかということも考える必要があるんじゃないだろうか。 こういったことで、現在の制度を維持する立場、あるいは改正する立場、それぞれ一 長一短ございまして、どれも全く完璧無比ということでもない訳でありますけれども、 それぞれの利害得失の中で御判断いただく必要がある。年金審でもかなり突っ込んだ議 論があった訳でありますけれども、結論には至らなかったということでございます。 最後の20ぺージは、年金審におきまして、年金の中での少子化対策ということで提出 しました資料を若干リバイスをしたものでありますけれども、育児とライフスタイルの 多様化への対応について、保険料のやり方だけでなくて、別のアプローチもあるのでは ないだろうかという御意見もございますので、参考までに諸外国におきます育児期間の 取り扱いというものについて資料を示させていただいているところでございます。 以上で資料の説明を終わります。 ○袖井座長 ありがとうございました。これもまた大変膨大で、一遍に理解するのは難しいかなと 思われますが、個人単位化とか第3号被保険者というのは非常に重要な問題で、とても 難しいので、今回とか次回だけじゃなくて、これからもまたゆっくり議論していくとい うことにしたいと思うのですが、まず、これを咀嚼するのはなかなか難しいんですが、 とりあえず今回は入口という感じで御質問とか御意見とか、自由な意見交換をしたいと 思うのですが、これはたくさんありますので、とりあえず一番最初は個人単位化という ことを中心にして御議論いただいて、その次に第3号被保険者というふうにしたいと思 うのですが、事務局の説明も非常に膨大でしたのでおわかりになりにくかったところも あると思いますので、御質問でも御意見でも結構ですので、どうぞ御自由に御発言くだ さい。 ○宮武委員  もう一度説明を願いたいのですが、5ぺージに「年金制度を『個人単位化』した場合 に予想される最終的な姿」というのが書いてございますが、その中ほどに、個人単位化 することになると遺族年金は廃止になる、それはよくわかります。3号の被保険者にも 個々に負担を求めるというのもよくわかるんですが、世帯単位での給付設計を見直すと 給付水準を引き下げるとありますね。ここをもうちょっとかみ砕いて御説明いただけま せんか。要するに、今の制度は、2ぺージに書いてあるように、社会保険方式は必要な 給付を行う制度である。言ってみれば、能力に応じて払い、ニーズに応じて受け取るの が社会保険方式の特徴であるとするならば、個人単位にしても、ニーズに応じて受け取 ればいいじゃないかという声は当然あるはずです。世帯単位でなくて、個人単位になっ たら給付水準を引き下げるというのはちょっと短絡的過ぎるので、そこの説明不足の穴 を埋めてほしいんです。 ○大谷年金課長  年金課長の大谷です。今、御指摘がありましたように、個人単位化をしたら給付設計 が変わるのか変わらないのかということで、変わらないという考え方もあると思います が、例えば6ぺージをもう一遍ご覧いただきますと、今の夫婦で老後23.8万円で暮らす というのが今のモデルで、これは専業主婦モデルであるのです。社会保障の考え方は、 必要な金額をある程度保障すればいいという考え方になりますと、将来、個人単位化し て男女それぞれが自分の負担と給付で一生を設計していくことになった場合に、30万円 必要ならば、最低23万 8,000円で暮らせるのに、個人に切り替えたら夫婦は30万円にな るのか。そういう考え方になってくると、報酬比例部分の10万 4,000円という厚みが、 今、夫婦が世帯で暮らすときに10万 4,000円ぐらいあって暮らせるという設計になって いますので、これが個人に切り替えた場合に、例えば真半分になるのか。それとも、こ れは10万 4,000円を全員に保障していくのか。あるいは、夫婦というのは共同生活経費 が鍋釜1個ですから、そうすると、共同経費部分はもっていますけれども、あと一部切 り離して、報酬比例分が7万 5,000円ぐらいになるのか、いろいろな考え方があると思 うんです。 ですから、必要に応じて受け取るという考え方に立てば、今の23.8万円を保障するとい うことであれば、ダブルインカムになったときに30万円が必要なのか。このあたりから 給付設計についてももう一回見直すことがあり得るということで、これは1つの可能性 でありますけれども、今のはやはり世帯単位で暮らすようにできた給付設計ではなかろ うかというふうに考えております。 ○袖井座長 よろしいですか。 ○宮武委員 皆さん、御意見があると思うので。 ○袖井座長 納得できるような、納得できないような・・・。引き下げなくてもいいんではないか というような考え方もできるんですが。あと、どなたかございますか。 ○下村委員 モデルの試算されたものを見ていますと、現行では整合性がとられているそれなりの 制度のように見えますけれども、そもそもが、今、課長がおっしゃられたように、鍋釜 1つの夫と妻と一緒の、要するに世帯単位ということのモデルでしか語られていません ので、私たちは個人単位の経験がありませんし、学習もしていませんので、ちょっと試 算しようがないんでしょうけれども、そもそもの前提が夫と妻というところで今はかな り整合性が保たれているというふうな言い方にしか私は受け取れないんですよね。それ で、個人単位化に向けたときに、老後の生活に必要な所得保障機能が失われることにな るという、いきなりここら辺にいく結論が私にはまだ想定できないので、どういう老後 の保障機能が失われるのか、少しお考えをお示しいただきたいと思います。 ○大谷年金課長  ここで言います老後の所得保障機能が失われることにならないかというのは、ちょっ と上に書いていますが、「女性の置かれている社会実態を勘案すると」ということで、 今、資料にもありましたように、就労期間が短いとか、その間の平均賃金が低いという 実態があるものですから、それを個人単位にそのまま切り替えていきますと、年金額と いうのは非常に低いもの、あるいは無年金が続出する。そういうことを考えると、今、 一気に置き替えると社会保障としての機能が失われることにならないかと言っている訳 でありまして、将来、雇用なり生活実態が変われば、それはそれで適用されるようにな る訳であります。これは現時点での判断を申し上げている言い方であろうかと思いま す。 ○宮武委員  私の質問と関連して申し上げますと、大谷さんがおっしゃったように、要するに給付 水準を引き下げるところの考え方というのはむしろ逆で、先ほどの2ぺージの個人単位 化した場合に、私的保険の原理が入ってくるから給付と負担の関係がより明確になって くる。そうすると、逆に言うと、個人単位化した場合は、言ってみれば、専業主婦であ った人で、3号被保険者の保険料を新たに払った人がいたとしても、その人はごくわず かしか払っていないんだから給付は低くなりますよと。逆に共働きであれば、報酬比例 部分も含めて払っている訳だから、それに見合った給付額になりますよということで、 今の状況をむしろ裏づけるという側面の方が強いんじゃないですか。 ○大谷年金課長  この資料のつくり方として理解しにい部分だと思うんですけれども、私的保険原理を 明確にしても、ちょっと専門的になりますが、今の乗率の1000分の 7.125とか、そこを 変化させることだけの問題で、それをどう考えるか、厚みをどうするかという問題だけ であって、掛けたものは自分でもらえるというところは変える訳ではないですし、そこ は原理としてもより明快に、自分が掛けたものについて生涯の平均の報酬を出して、そ れに乗率を掛けて求める訳ですから、自分が幾ら掛けて幾らもらったかはより明確にな ると思うんです。ただ、厚みをどう考えるかということについて、世帯で今つくってい るものの厚みと、個人に置き替えた場合の厚みをどう考えるかについては、現状のまま という訳にはいかないかもしれないということだと思うんです。 ○宮武委員 5ぺージの論理展開は私にはよくわからなくて、今、個人単位化を求めている方たち は、私どもは共働きで高い保険料を払っている。その一部が保険料を払っていない主婦 たちにいって損をしている。だから、ちゃんと私どもの払ったものの見返りをください と、言っている訳でしょう。みんなではないけれども、大方の意見は。裏返せば、要す るに私的保険原理を入れてくださいということですね。だから、個人単位化で私的保険 原理が入ってくると、負担に応じた給付ができ上がってくるという論理展開になる訳で すね。おっしゃっている意味はわかるんだけれども、私的な保険と社会保険とは違いま すよという対比の問題であって、こういう脈絡でいくと私は頭の中が混乱してしまうも のですから。 ○矢野年金局長  宮武先生のお尋ねを単純明快に申し上げますと、今の年金制度というのは、片働き、 専業主婦世帯でも、老後はちゃんとそれなりのまあまあの生活ができますよと、こうい う給付水準を設定している訳ですね。それがモデルで言いますと23万 8,000円と。これ だったら、奥さんがずっと専業主婦であっても老後はちゃんとやっていけますよと。と ころが、今度は、奥さんも働いて収入があることを前提にしますと、二人の年金を合わ せると今でも平均で30万円というような金額額になる訳ですね。ですから、1人で働い て23万 8,000円ですけれども、2人で働くということを考えますと、今の制度というの は片働きを前提に制度が設計されていますから、共働きは2世帯分の年金をもらえて良 すぎるんじゃないかということになる訳ですね。ですから、みんなが働いて保険料を納 めて、それに応じて年金をもらうという世の中になりますと、今の片働きでもちゃんと やっていけますよという水準はよ過ぎるんじゃないか。だから、当然、みんなが働くよ うになると今の水準を下げなければいけないということになる訳です。 ○袖井座長  そこまで読めないですね。 ○矢野年金局長  これは、一番わかりやすいのは公務員の夫婦の場合で、公務員というのは、特に学校 の先生などを田舎でやっていますと、学校の先生というのは給料も男女差別がありませ んし、加入期間も男と全く同じ60歳まで働きますから、夫婦合わせますと50万円ぐらい もらう訳ですよ。そうすると、若い人から見ると、夫婦で50万円も年金をもらってよ過 ぎるんじゃないかということで、今の給付水準は共働きの場合、高過ぎるという議論に なる訳です。ところが、同じ学校の先生でも、奥さんが専業主婦であった場合は、25万 円とか、せいぜい30万円以下で、これだったらまあまあだなと、こういうことになる訳 ですね。ですから、みんなが働いて保険料を納めるようになると、今の片働きを前提と した給付水準はどうしても高い、これを下げるべきだと、こういうことにならざるを得 ないということです。 ○袖井座長  どうですか。納得できましたか。 ○宮武委員  それは、まだどんどん論議しなければいけませんから。 ○袖井座長  納得できないようなところもありますけれども。 ○住田委員  今回の資料が今までの審議会等で使われた資料だということだそうですが、1つずつ 囲みで書いてある結論めいたところが引っかかってしまうんです。正直なところ。今ま で戦後こうやって制度等動いてきたことについて、そして、これらについていろいろ改 正された御努力に対して、私はそれはそれで評価したいと思うんですけれども、では、 これからどうなるかというようなことを含めて制度を考えなければいけないときに、共 働きとそうじゃないところでこんな差があるからという嫉妬心のような形で考えるので はなくて、やはり働いたら払って、それに対して応分のものをいただくというような私 的保険原理、それが所得保障機能と相反するものであるとして、やはりそこら辺を優位 にもっていかないとしようがないんじゃないかと思うんです。  それで、前提としては、女性が専業主婦の生活形態、「ライフスタイルにも配慮し」 という書き方をしているのですけれども、戦後の家族の実態としては、旦那さんが転勤 族や何かであれば、そして企業戦士になってしまえば家族を全然顧みない、あるいは家 族の関係に対しては全然寄与しないという状況下であれば、専業主婦になるというの は、ある程度やむを得ない選択だったと思います。私はそういう意味では専業主婦を評 価したいし、ある意味ではわかるんです。私と同じ世代ですから。ただ、これから21世 紀になり少子・高齢化の中で、専業主婦というのが今までのような数であり続けるかと いうことに対して私は多大な疑問を持っています。ですから、専業主婦がまずありき で、それに対しては、その方々に配慮して制度をちゃんといたしますよというような言 い方は、制度によって今後の性別役割分担を固定的なものとして定着させるおそれがあ るのではないかと考えています。そのような観点から私は、1回目も、短期的に考え、 かつ将来的な長期的展望も考えていただきたいということを言ったんです。  第3号の方にいってしまいますけれども、18ぺージは、こういうことにしますと、 「特に低所得の専業主婦世帯の負担が大きく増加」と書いてあるんです。これは事実な のかもしれないけれども、非常に評価的な部分として、だから困ります、かわいそうじ ゃありませんかという形で入っているんですけど、私、今、低所得であれば女性は働き たいと思っている方がほとんどだと思うんです。それをこんなふうな形で、制度として それを救済しようという発想自体が逆転しているんじゃないか。1つずつケチをつけ出 したら切りがないんですけれども、そういうことで、囲みのところにもジェンダーバイ アスがかなり入っていて、それを21世紀において固めてしまうんじゃないかというよう なおそれをちょっと感じております。済みません、ちょっと言い過ぎたかもしれま せん。 ○袖井座長  どうもありがとうございます。 ○堀岡委員  先ほど先生がおっしゃったのは、社会保障の中に私的保険原理を入れると理解しまし たが、この問題は女性のライフスタイルの変化に伴う問題ではなくて、厚生年金そのも のの制度設計のあり方の問題と考えます。応分の負担能力がある人が負担をして、ニー ズのある方に給付をするというのが社会保障だと思っております。 私的保険原理とは、個人が払った保険料において、負担と給付がイコールという考え方 だと思います。前回も申しましたように、年金というのは私的年金と公的年金と企業年 金があります。私的年金は自分の老後のための貯蓄だと思いますが、ベースとなる厚生 年金が国の社会保障だと思います。その社会保障をベースに、自助努力があり、加えて いろいろと企業のサポートがあります。私的年金はまさに保険原理で幾ら掛けて幾らも らえるか、というものだと思います。それから企業年金は、ほとんどの企業が退職金を 原資に年金化している制度で、その制度設計を労使でつくっていくものです。国の年金 は、いわゆるニーズのある方に給付をする、ベースとなる年金というものが設計の基に なっていると思います。 そういう考えからすると、私的保険原理を公的年金の部分に導入するのはどうかなとい う感じがします。女性の生活形態が多様化しているから現行の年金制度に問題があると いうことではないと考えます。むしろ今の公的年金制度の役割が何で、目的が何だとい うことから、もともと給付設計があり、給付設計を明確にする中で財政をどうするのか という、厚生年金そのものの課題があると思っているのですが、少し議論がごっちゃに なっているような感じがしています。 ○中田委員  私も、私的な保険原理を導入するというのはある程度はできると思うのですが、公的 年金は国の年金ですので、完全に導入するのは無理だと思うんです。例えば、女性と男 性を比べた場合、女性の方が長生きな訳です。長生きだということは、同じ給付を払お うと思ったら、たくさん保険料を払わなければいけない訳です。今は同じ保険料を払っ て、同じ給付をしている訳です。私的保険の原理を完全に徹底的に導入しようとすれ ば、女性は男性よりも高い保険料を払わないとまずい訳です。これは、社会保障として の年金からみていいかどうかということを考えれば、やはりそれは好ましくないという ふうに私は思うわけです。そうすると、私的保険原理を導入するといっても、ある程度 限界があって、その限界の中でしかできないんじゃないかというふうに思います。 ○永瀬委員  話がちょっと前に戻るんですけれども、私、個人単位化というのが5ぺージのような ことだということは知りませんで、これだったらちょっとというふうに思われる方が非 常に多いと思うんです。私自身は、今までの枠組みの中で、ただ第3号のこっちに付け る、こっちに付けると、それで考えるのではなくて、より広い枠組みで考える必要があ る、もっと新しい選択肢を含めて考える必要があるんじゃないかと思うんです。去年の 「国民生活白書」に載っていたんですけれども、2020年になると65歳以上人口に対して 19〜64歳人口が2対1になるんですね。それはほんの20年後で、今20歳の人が40歳にな ったときには、65歳以上の年金受給者というのがもう2対1になっている訳です。今生 まれた0歳の人が20歳になったときにそういう状況になっていることが見込まれて、20 歳以上で比較していますから、今から子供が生まれても追いつきません。  2対1の2のうちの 0.5ぐらいが専業主婦のままですと 1.5で1を支えること になる。果してそんな将来が描けるのかということです。3ぺージのところに「女性の 年金額の算定事例」というのが出ています。ちょっと見るともっともなようですが、よ くよく見ると、例えば常勤的なパートとして45〜54歳の間、10年間勤務しても、毎年年 金が1.5万円乗るだけです。つまり専業主婦で過ごしたとしても 6.7万円。パートで月額 15万円取るというのは賃金水準が高くないので、大体フルタイムに働いているというこ とです。フルタイムに朝から晩まで働いて15万円持って返る。 ○袖井座長 1.5万円というのは月じゃないですか。 ○永瀬委員 月です。だから、15万円月給をもらって、それに対して保険料を10年間納めたこと が、1.5万円の厚生年金のプラスになってはね返ってくるという設計になっている。そ れに対して、働かず、保険料を納めなくても年金は 1.5万円の差しか出ないというよう な、そういう制度をつくっておいて果して人口構成の変化の中で維持可能かということ が1つあるんじゃないか。  そして、資料2の21ぺージのところを見ますと、30代までは育児や介護というのが働 けない主な事由ですけれども、40歳以上になると、「常勤で働ける職場がない」、もし くは「税制等の優遇措置を受けるため」という理由が大きくなり、この両方を合わせる と40%ぐらいになります。常勤の職場がない。職場がないというのは、例えば短期的な パート勤務で月給10万円ですと企業も社会保険料を払わなくていい訳です。ところが、 15万円になると企業は急に社会保険料を払わなくちゃいけない訳ですから、そういう意 味では、なるべく常勤的な職場を減らす方向に現行の制度は働くかもしれない。その上 に、どうせがんばって保険料を納めても大して年金は増えないのに、保険料は払わなく ちゃいけないんだったら就業調整しようかなと、そういう誘引が育児が終わった中年期 には非常に働く制度になっている。今後の20年後の大きな人口構成の変化の中で、この 状況を持続させておくことは難しいですし、それに、制度を変化させるとしたら、年金 というのは大体20年ぐらいかかると思うのです。今から考えないと、20年後に考えても とても遅いだろうと思います。  それから、別の点としては、私自身は年金制度というのは出産抑制的では決していけ ないというふうに思っております。というのは、今現在、非常に賦課方式の色彩が強く て、つまり若い世代が国の規模で高齢者世代を助けているという実情がある訳です。と いうことは、子どもを育てたということは、保険料とは別に年金会計に時間あるいはお 金として出資しているという見方も十分可能だというふうに私自身は思うのです。子育 て負担の有無を全く勘案せず一律に第3号はずるいというのはどういう話なのか、よく わからない気もするんです。実際のところ現在では働こうと思っても、都会でしたら生 まれてくる子の1割ぐらいしか保育園の低年齢児枠もない訳です。働こうにも働けない 状況がある中で、第3号に負担を重くするというのは、社会保障として難しいというの はとてもよくわかります。母親が出産によって離職する世帯も多いのは事実だと思うん です。しかし、将来このままで維持可能かというと、とても維持可能ではありませんで しょう。しかし、書いてある検討の資料というのは、まさしく今の枠組みで、ただ負担 をこちらからこちらに振り替えたらこうなりますよという姿しか書かれていません。代 替案は私はもっといろいろ言われていると思いますが、非常に数少ない案しか書かれて いない。  例えば、社会保険料の扶養控除の話ですとか、あるいは育児期間を社会保険料支払い 期間と見なすとか、もちろん消費税という話もあるかもしれませんし、さまざまな可能 性があるように思うんです。それを示さず1つの代替案しか示さないとすると、ずいぶ ん話が違うんじゃないか。  それから、専業主婦も一律に扱われていますけれども、ここで言っている専業主婦と いうのは 130万円未満のパートも全部専業主婦と呼んでいますから、それは違うんじゃ ないだろうか。パートで働いている人と専業主婦と、それから、パートであっても社会 保険に加入して働いている人というので区別して扱う必要があって、そのそれぞれにつ いて議論する必要があるんじゃないかという気がいたします。ちょっと長くなって失礼 しました。 ○袖井座長 大演説、ありがとうございました。確かに、これは過去をベースにして現状を語って いるというところがあるんですね。ですから、今、永瀬さんのお話でちょっと思いつい たのですが、やはり将来予測的なものもデータとして必要ですよね。将来の労働力需要 がどうなるか。それから意識調査などで、確かにいわゆる括弧付きの専業主婦というの が半数以上いるけど、そのうちの多分半分以上が働きたいと思っている。だから、もう 少し将来図的なデータも見ないと、確かに今まで厚生省でつくったのは過去のトレンド に乗ってこうなるというところで、それはそれなりに整合性がとれていると思われます が、いろいろ問題はあるでしょうね。 それからもう1つ、座長が言ってはいけないかもしれないけれども、年金の世界だけ では整合性がとれているけれども、ほかにいろいろあるんですよね。フリンジ・ベネフ ィットというか、いわゆる夫に扶養控除があるとか、企業の福利厚生があるとか。です から、年金の世界だけでつじつまが合っているからいいんじゃないかとは言えないんじ ゃないかと思います。 ○大島委員  まだ具体的なところまでは言えないんですけれども、第3号被保険者当事者として感 じたことがありますので、ちょっと言わせていただきます。  1つは、制度と時代の流れというようなことですけれども、8ぺージにありました第 3号被保険者がつくられた理由というところで、世帯としての過剰給付が発生する、そ れから任意加入しない妻の無年金化。その他、厚生年金と国民年金の財政調整のための 副産物というようなのも本で呼んだんですけれども、要するに、今までの制度の問題点 を解消するために第3号被保険者は制度の要請でつくられたというふうに感じました。 それで、1985年につくられている訳ですけれども、私、1982年に「主婦からの自立」と いうのをテーマにして学習グループをつくったことがありまして、そのときに30代の主 婦たちが参加して、自立に向けての学習というのを始めていたんです。1985年の婦人週 間のスローガンというのは、「あらゆる分野への男女の共同参画」というのが出ていた 時代ですので、その点はどうだったのかなと。そういうのが出てきているところに専業 主婦というのを非常に優遇してつくったというところは1つ疑問に思います。  今回は、女性のライフスタイルの変化に対応するためということで、時代の流れ、あ るいは社会的状況によって、改正していく必要があるということが今度は言われている 訳ですよね。ですから、主婦が自立に向かって、70%の人が国民保険も任意で払ってい たというようなときに、「専業主婦の方、居心地のよい場所を用意したので、ここにお 入りください」というふうに囲まれてしまって、そして15年たちましたら「その場所に 無料でいるのは困るんですけど」というように言われているのはちょっと心外な気もす る訳です。資料に、非常に多くの専業主婦が今の制度を支持しているというのがある訳 ですけれども、それはこの辺のものがモヤモヤあって、みんな支持していると思いま す。私自身は、先ほどもありましたように、やはり周りの専業主婦の人を見ていまして も、パート労働とか、いわゆる社会的労働というような市民活動的なことをしたりして いる人もいますし、変わってきていますので、今後、今の制度は見直していく必要はあ るだろうなと思っています。ただ、そこの中で、完全個人化というのは、専業主婦をや ってきて今の自分の立場を考えますと、やはり無理かなと。理念としては男女共同参画 社会に向けてというのがありますが、実際、専業主婦、あるいは子育てをしている、息 子・娘、家族を見ていますと、考えとしては揺れていますので、うまく調和したところ が考えられていくといいなと。具体性のないことですけれども、今感じていることをち ょっと言わせていただきました。 ○袖井座長  ありがとうございます。揺れ動く専業主婦の心情を吐露していただきました。 ○堀委員  世帯単位から個人単位へということがよく言われているのですが、その意味は何かと いうことがよくわからない。資料の5ぺージの上では、ちょっとわかりにくいことが書 いてあるのですが、先ほど座長がおっしゃったように、世帯単位から個人単位へという のは、年金制度だけなのか、あるいは社会保障制度も含めてか、あるいは租税とか、会 社の配偶者手当も含めてなのか、そこを考える必要があるのではないか。例えば社会保 障全体を考えてみると、実際の生活は世帯単位で生活をしているため、それを考慮して 社会保障の給付を行う制度がある。例えば生活保護は世帯単位でやっているのですが、 同一世帯では鍋釜一緒ということで、人数が増えれば共通経費が節約できるので、その 分生活保護費を減らしている。それが世帯単位の原則なんですが、それまで変えていく のか。それを個人単位にすると、例えば10人世帯では生活保護費が最低生活費を大幅に 上回ってしまう。本当にそれでいいのかどうか。  それから2つ目としては、これは女性の問題だけなのか。例えば被扶養者として子ど ももいる訳で、子どもについても個人単位にするのか。子どもについても保険料を払っ た場合にしか給付を行わないという形にするのか、それとも女性だけ個人単位にするの か。女性も子どもと同じように被扶養者である場合が実際にはたくさんある訳です。そ れを、子どもと女性とを違わせる根拠は果して何だろうか、そういうふうに考える訳で す。  問題は、所得のない者がいることですね。社会保険のシステムというのは、基本的に 保険料を払って給付を行う。所得のない人に対してどうしているかというと、保険料免 除とか、そういうものはあるのですが、基本的にはサラリーマンの保険では被扶養者と いう概念をつくって、扶養している者が応能負担で保険料を払って、被扶養者に対して も給付を行うというシステムにしている。これは、医療保険でも、例えば子供が10人い ようと給料の額が同じであれば保険料は子どもがいない家庭と同じ額です。負担能力に 応じて拠出し、ニーズに応じて、子どもが10人いれば10人分の医療給付を行っている。 問題は、被扶養配偶者をどうするかということですが、かなりの数がいる。 1,200万人 いる。これらの人々にどういった形で社会保険の給付を行うかという場合に、2つの方 法がある。1つは、今やっているような共同負担ですね。これは健康保険でもそうです し、今度の介護保険の第2号被保険者も同じです。要するに、負担能力のない人につい ては、サラリーマングループ全体で負担能力に応じて負担しましょうという考え。それ からもう1つは、自営業者の第1号被保険者のような考え方です。要するに、自分が払 ったものが自分に戻ってくるというシステム、これは個人年金の考え方だと思うのです が、そのどちらを選択するのか。  いずれにしても、専業主婦というのは所得がない訳ですから、誰かが保険料を払わざ るを得ない。今のような共同負担にするのか、それとも扶養している夫が払うのか。前 者の現在のシステムをやめるとなると、専業主婦の年金あるいは医療の保障をするため には、やはり夫から払ってもらうという選択しか残らない。そうすると、これはまさに 世帯単位ではないか。要するに、個人単位にするといいながら、結局は世帯単位になっ ていくのではないか。それだけじゃなくて、年金分割というのも、夫の年金を妻に分割 する訳ですから、これも世帯単位の考え方ですね。さっきも言ったように、社会保障全 体を個人単位にはできない。それから、子どものことを考えると、それも個人単位は無 理だ。それで、年金制度において、あるいは社会保障制度において、世帯単位から個人 単位へという余り大上段の議論をするのではなくて、第3号なら第3号、遺族年金なら 遺族年金、あるいはパートの問題、そういう個々別々の問題について議論していく方が 良いのではないか。世帯単位から個人単位ということで議論すると袋小路に入るし、ま た、矛盾も起きてくるのではないかと思います。それが1つ。  それから、将来のことを考えて年金制度をつくるという発言がありましたが、これは もっともです。ただし、やはり現実に 1,200万人の扶養されている配偶者がいる。それ に対する年金の保障をどうするかということも現在必要な訳ですね。将来に向かって年 金制度を改正することは必要ですけれども、やはり現在のことも考える必要はあると思 います。 ○今井委員 私、ここでお話しするべきかちょっと迷ったんですが、専業主婦の方から御意見があ りましたので、私は農業者として、自営業者としてお話させていただきたいと思いま す。第3号被保険者のお話だけが今飛び交っていますが、保険料を納める所得がないの で納めなくていいというような考え方はとてもうらやましいです。農業者の女性もパー トナーとして専従者給与をもらっているという形が確かに増えてはきていますが、申告 上、数字に上げているというだけの人がまだまだ多いですし、育児休暇もとくにありま せん。その上最近は、農産物の輸入が大分増えてきていまして、農業自体をやめていく 人が増えてきています。必死に経営を支えている状態なのに、それでも年金の掛け金を 掛けているというのが現状です。その辺のところを解っていただきたいと思います。 それから、資料の件ですが専業農家と兼業農家の割合の解る表がありましたらいただき たいと思います。 ○袖井座長  自営業関係のデータというのはありますでしょうか。もしありましたら、よろしくお 願いします。 ○駒村委員  先ほどからありましたように、個人単位化イコール私的保険化という話ではないと思 うんです。保険上の公平性という議論じゃなくて、やはり被用者保険における応益性の 原理をどのぐらい強めるかという議論だと思います。それで、そのときに、堀先生がお っしゃったように、ほかの医療保険とか介護保険も同様ですが、その辺との整合性をど う考えていくのか。必要なのかどうなのかということも議論していく必要があると思い ます。  それからもう1つ、これは事務局の方にもしデータがあれば、データがなければ多分 計算できないと思いますので教えてもらいたいのですが、18ぺージ、19ぺージの数値は 初めて見て、これは1つの試案としては非常に大事な数字ではないかと思います。11 ぺージにも書いてありますように、共同負担されているというところで、まず、3号被 保険者制度は、1号の自営業者の人たちには財政上、全く迷惑をかけていないというの は、共同負担という仕組みからわかる訳でして、問題は、この1案は1万 3,300円を乗 せた場合、保険料率が下がるということですが、2つ目のB案の方は専業主婦グループ だけで分担するという計算になる訳ですね。必要な財源を専業主婦をもつ夫だけで負担 しているということなのか、そこをちょっと教えてもらいたいと思います。  関連して、できましたら1.35とか 3.3は初めて見た数字なので、特別会計の中におけ る財政のやりとりのデータも含めて見せてもらえればと思っております。 ○高島委員 中身の話ではなくて、私は資料の話をしたいんですが、1つは、8ぺージのところに 3号被保険者ができた60年改正のことが書いてありますが、確かにこのときにこういう 制度が入ったのでここから始まっているんでしょうけど、ぜひ次でも、その次でもいい んですが、日本における年金制度の歴史、変遷をまとめてほしいと思います。昭和40年 だったか、例えば厚生年金は女子に対しては脱退一時金を払う制度がありました。それ を、私たちは無くす運動をして、ようやく昭和50年頃に廃止になりました。そういうふ うに、年金における女子の位置づけはどういうものだったのかということを中心にしな がら年金制度の変遷を示してほしいと思います。  それからもう1つは、諸外国における制度が15ぺージに書いてありますが、今、私た ちが議論していることは別に日本だけの問題ではありませんので、女子の労働力率の高 まりとともに、どこの国においてもこの問題はありますから、1つはスウェーデンの例 がいいのかな。それから、1つはドイツの例がいいのかな。年金分割のことを考えると カナダがいいのかなという感じがしますけれども、そういう国における年金制度の変遷 と女子の扱いについてわかるようなものを示してほしいと思います。 ○袖井座長  お願いできますでしょうか。大変な宿題ですが。 ○梶尾補佐  可能な範囲で用意させていただきます。 ○袖井座長  そろそろ時間もまいりましたが、ほかに。3号についてでも、個人化についてでも何 か御意見ありますでしょうか。 ○宮武委員  今の御注文のところで気がついたんですが、スウェーデンは、資料で小さく「基礎年 金を支給」と書いてありますけれども、来年から始まる改革の中で、基礎年金を廃止し て報酬比例の賦課年金だけにする。遺族、障害年金は全く国庫負担で独立の制度になっ てきますね。そうしますと、今までの被扶養配偶者といっても、あそこの国はほとんど 働いているから、9割まで働いているからごくわずかですけれども、その人たちの基礎 年金はどうなるのかということを教えていただけませんか。次回で結構です。 ○袖井座長  ほかに何かありますか。よろしいですか。  時間がちょうど12時になりましたので、特にないようでしたら質疑はここまでにさせ ていただきたいと思いますが、本当にたくさんいろいろな問題が出てきてしまいまし て、やはり女性の年金だけで考えられないということがこれではっきりしてきたと思う んです。 まず1つは、先ほど堀委員からも御指摘がありましたけれども、健康保険も含めて、や はり社会保障制度自体の中の整合性も考えないといけないんじゃないかということと、 もう1つ私が気になっているのは、ニーズに応じて払うと言っていますけれども、実際 に現在のような財政状態とか、そういうことを考えると、年金だけで生活ができるの か。あるいは、生活できるだけの年金が今の日本国の財政状態でできるのかというあた りも考えないと、こんなことを言ってはいけないのかもしれないけれども、本当にニー ズに応じて払えるのかどうかというようなこともあると思うんです。ですから、先ほど からいろいろな資料の要求、財政との関連ということもありますが、その辺も考えてい かないといけないんじゃないかということですね。  それから、第3号専業主婦という非常に悩ましい問題ですが、確かに公平性というこ とう考えると、自営業で働いている、非常に少ない収入の中から払っていらっしゃる方 もあるので、その辺のところもあるし、それからもう1つ、専業主婦は収入がないとい うふうに言いますが、それは現金収入はないけれども、いわゆるアンペイドワーク、育 児、家事、そういうものをどう評価するか。今、全体に北京会議以来、アンペイドワー クをどう評価するということが問題になっていますが、専業主婦をもつ夫というのは、 それだけアンペイドワークで貢献してもらっているんですから、それに対する支払いと いう考え方もできるのではないかというようなことも考えられるんじゃないかと思うん です。  それから、先ほど永瀬委員からも御指摘がありましたけれども、将来の労働需要の逼 迫とか、そういうことを考えた場合に、専業主婦というのはどこまでいられるのかと か、そういうようなことも考えて、やはりもう少し縦横に広げて考えた方がいいかな と。余り拡散してしまうとまとめが難しくなるのですが、やはり年金だけとか、第3号 だけということでは難しいのかなと思います。  それから、個人か世帯か、これも非常に悩ましい問題で、確かに余り大上段に構えな い方がいいという堀委員の御指摘も、そうだという気もするんです。それは、全部に絡 まって、いわゆる年金だけの話ではなくて、税もあるし、それから日常生活のあり方も あるし、実際に私は家族社会学専門ですけれども、世帯の個人化、家族の個人化という ことがずっと前から言われておりまして、世帯としての生活行動というのがだんだんな くなってきているというような事情もございますので、やはり実態をどういうふうに捉 えるか。そして、それを年金の上でどう生かすかということも重要な課題ではないかと いう気がします。  それで、資料で私も非常に気になっているのは、この資料全体のつくり方として、何 となく現行制度がいいというふうに誘導しているんじゃないか。その辺のところはどう なんでしょう。例えば5ぺージの資料もそうでしたし、それから16ぺージで、現行制度 を維持する考え方についてはちょっとしか反論がなくて、現行制度の修正を求める意見 に対してはこんなにたくさん反論が書いてあって、これもちょっと意図的なので、現行 制度を維持する考え方に対するマイナス点ももうちょっとあるんじゃないかと個人的に 思ったりするのですが、私は資料にちょっと問題があるんじゃないかというふうに考え ております。これは私の個人的な意見でございます。  ちょっとお時間も過ぎましたが、政務次官、何か御意見ありますか。 ○福島政務次官  結構です。 ○袖井座長  それでは、次回の開催につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。 ○中原企画官  次回は、女性と年金に関して指摘されております主な課題のうち、本日取り上げた論 点以外の遺族年金、離婚時の取り扱い、パートタイム労働者の問題を議題とさせていた だきたいと考えております。また、お求めのあった資料につきましては、次回にできる だけ提出したいと思っております。開催は11月を予定しておりますが、前回と同様に、 先ほどお配りいたしました日程調整票をお帰りの際に回収させていただき、皆さんの御 予定をこれから調整させていただきたいと思っております。なお、本日、予定がはっき りされない方は、後ほど予定を確認していただいて、ファクシミリで御送信いただきた いと存じております。後日、第3回検討会の日時を御連絡させていただきますので、よ ろしくお願いいたします。  なお、委員の皆様方にはお食事の用意をさせていただいておりますので、御案内を申 し上げます。以上でございます。 ○袖井座長  ありがとうございました。それでは、本日の検討会はこれで終了いたします。 お忙しい中、どうもありがとうございました。 照会先 厚生省年金局年金課   企画法令第3係     三浦 弘美 電 話:03-3503-1711(内3335)