00/09/12  第4回精神病床の設備構造等の基準に関する専門委員会 


                 第 4 回 
   精 神 病 床 の 設 備 構 造 等 の 基 準 に 関 す る 
               専 門 委 員 会 

               平成12年9月12日
           ( 精 神 保 健 福 祉 課 ) 

日 時:平成12年9月12日(火) 10時00分~12時10分

場 所:共用第17会議室

出席委員:吉川委員長 池上委員 池原委員 伊藤(哲)委員 伊藤(弘)委員 
     金子委員末安委員 竹島委員 津久江委員 西島委員 野中委員 山崎委員

議 題
 1.精神病床の設備構造等の基準
 2.その他

開 会

【重藤補佐】 
  第4回「精神病床の設備構造等の基準に関する専門委員会」を開催させていただきま
す。
 本日の委員の先生方の出席状況をご報告いたします。本日は、委員13名全員にご出席
いただけるということでございましたけれども、岡谷委員が雨のため新幹線が不通だと
いうことで本日欠席でございます。
 それでは、これより会の進行を吉川座長にお願いいたします。よろしくお願いいたし
ます。

【吉川委員長】 
  それでは、第4回「「精神病床の設備構造等の基準に関する専門委員会」を開かせて
いただきます。
 前回、皆様方にお諮りいたしました具体的な数字をはめ込みました議論のためのメモ
を中心に議論していただきましたけれども、前回の議論の踏まえまして、今回は報告書
のためのたたき台をつくらせていただきました。この報告書のたたき台をもとにいたし
まして議論を進めさせていただきたいと思います。
 精神病院の設備構造につきましては、委員の先生方からそれぞれ理想的なご意見ある
いは現実的なご意見までいろいろな形で今日までいただきましたし、理想的な側面も決
して捨て去ることができないし、また現実的な側面も捨て去ることができないというの
がこの中での議論の流れではなかったかと思います。
 そうした行ったり来たりということがありますけれども、ともあれ何らかの形でまと
めをしていかなければいけないということがございます。現実の精神科の医療がよりよ
いものになるような建設的なご意見を本日もまた賜わればありがたいと思っておりま
す。
 事務局の方から、本日まとめさせていただきました報告書のたたき台の説明をさせて
いただきますが、事前に委員の先生方から幾つかのご意見が文書としてきょうここに提
出されておりますので、そのことについて伊藤委員からご説明いただきたいと思いま
す。

【西島委員】 
  その前に確認だけなのですが、この委員会は基本的に公開されていますね。

【松本課長】 
  そうです。

【西島委員】 
  それとこの委員会と厚生大臣との関係はどうなっているかお教えいただけますか。確
認だけです。

【松本課長】 
  この委員会は公衆衛生審議会の精神保健福祉部会に設置されたものでございます。ち
なみに、公衆衛生審議会は公衆審議会令において設置が定められておりまして、厚生大
臣の諮問に応じて調査審議し、及び関係行政機関に対し意見を述べるものとされており
ます。本委員会の委員の方々につきましては、厚生大臣から委嘱して任命させていただ
いたということになっております。

【西島委員】 
  結構です。ありがとうございました。

委員からの提出文書の紹介

【吉川委員長】 
  それでは、伊藤(哲)委員から。

【伊藤(哲)委員】 
  議題からちょっと外れるのですけれども、最初に資料の訂正だけお願いしたいと思い
ます。黄色い蛍光ペンで塗った配付した資料をお配りしましたけれども、これまで3回
の専門委員会がありましたけれども、そのうち2回の専門委員会で公立病院の医療費用
のデータが出ましたけれども、それが恐らく一段見間違えたと思いますが、給与費の医
療収入に対する割合が2回出された資料では 159.8%という数字でしたけれども、実際
は 115.1%、それから医薬品費も 115.1%という数字が公表されましたけれども 7.2%
という数字ですので、恐らく一段ずれて資料が公開されたと思いますので、この資料は
訂正していただきたいと思います。それだけです。

【吉川委員長】 
  これに関しましては差し替えということで処理させていただきます。
 それでは、伊藤先生。

【伊藤(哲)委員】 
  池原先生の方が。

【吉川委員長】 
 それでは池原先生の方からどうぞ。

【池原委員】 
 お手元にお配りしました資料で、伊藤(哲)委員、岡谷委員、金子委員、末安委員、
それから私の5名で今までの議論を踏まえまして、またここに参考人として出席してい
ただいた方々の願いということも加味しながら、実現可能な案ということでどこまで現
在の精神病床のあり方を改善していけるのかということで、意見をまとめさせていただ
きました。
 内容については伊藤委員の方からかいつまんでご説明していただくことにいたします
けれども、私たちとしてはぜひこの後の議論の中で、さらに座長の方でおつくりいただ
きました報告書のたたき台と突き合わせながら議論を深められればと思っておりますの
で、よろしくお願いいたします。

【吉川委員長】 
 それでは、先にご説明いただきますか。できるだけ簡単に。時間を有効に使いたいと
思います。

【伊藤(哲)委員】 
 『時代にふさわしい精神科医療を実現するために』という資料ですが、2ページから
入りたいと思います。
 今回、「手厚い治療を必要とする精神病床」というふうに、この間の座長案では別の
基準は設けておりませんけれども、少なくとも1番~5番に挙げた急性期治療を受けて
いる患者さんの病棟、措置入院、応急入院、精神保健福祉法34条の移送による医療保護
入院の患者が入院する病棟、児童・思春期の病棟、覚醒剤の患者さんを治療する専門病
棟、5番目に一般病院の精神科病棟、これは合併症ということになりますが、この5つ
の病棟については手厚い治療を必要とする精神病床として位置づけて、人員配置基準を
決めていくべきではないかということです。
 実際にどの程度の人員配置が必要かということは下段の方に書いてありますが、医師
は入院患者16人に対して1人、看護婦は患者2人に対して1人という人員が必要ではな
いかということです。
 それから、チーム医療という観点から、これとは別に専門職、精神保健福祉士、作業
療法士等の配置についても検討する必要があるのではないかということです。
 次のページをお願いします。
 「病床面積」のところに飛びますけれども、1床当たりの居室面積は 6.4平米とすべ
きではないかということです。
 それから、「精神病床の規定について」ですが、これは第1回目の専門会議で、この
項目はいじらないというような暗黙の了解があったように思いますが、第2回の専門委
員会のときに、参考人がこの問題の重要性を指摘されました。そのことも踏まえて、医
療法施行規則第16条で、「精神病の患者さんが入院する病室については外部に対して危
害防止又は感染予防のために遮断その他の必要な方法を講ずること」とありますが、こ
れは任意入院を原則とする開放的精神科医療の推進の妨げになる規定であり、精神障害
者に対する偏見を助長する要因でもある。やはり削除すべきであろうということです。
 それから、もう一つの医療法施行規則第10条第3号ですが、「精神病者を精神病室で
ない病室に収容しないこと」とありますが、精神障害者の身体合併症治療の機会を奪う
ことにもなり、身体的合併疾患の早期治療を阻害するので、この規定の見直しも必要で
ある。参考人3人全員がこの問題を提起されましたので、改めてここに書かせていただ
きました。
 それから、医療計画についても、二次医療圏ごとの適正な病床配置が必要ですが、現
在は非常に病床偏在が著しくなっております。したがって、急激にそれを改善するのは
容易ではないと思いますが、せめて救急医療圏として定められた地域、「精神科救急ブ
ロック」という表現をここでしておりますが、それについては地域医療計画の中である
必要病床数を定めていくべきではないかということです。
 以上のような観点から、改めて専門委員会報告をつくるに当たっての提案という形で
述べさせていただきました。
 それから、もう一つ、この間、参考人が意見を述べましたが、その参考人が「緊急ア
ピール」あるいは「精神科特例の廃止は国民的課題」ということで、これは要望書でも
あり、一般の国民への呼びかけだと思いますけれども、こういうものが出されておりま
すので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
 それから、最後の資料は説明はいたしませんけれども、医療法の改正に当たっては医
療における精神障害者差別という観点からも検討していく必要ではないかということ
で、追加資料として出させていただきました。日付が21日になっていますが、12日の日
付と間違えましたので、訂正していただければと思います。以上です。

【吉川委員長】 
 ありがとうございました。
 参考人からのご意見に関しましては、私のところにももちろん来ておりまして、そし
てそれなりにご紹介をするということで私の方は考えておりました。今、伊藤先生から
お話をいただきましたけれども、伊藤先生からお話をいただくのはむしろ最初にご説明
いただきましたものであろうと思いますので、後の方は私の方からご紹介すべきことだ
と思っております。
 いずれにいたしましても、これからまだこの委員会が継続していきますし、その間に
さまざま議論していただかなければいけないことをまとめた形で文書にして今出してい
ただいたということになりますので、これからの議論の中に積極的に参加していただい
て、また趣旨を皆様方にお伝えいただければと思います。
 池原先生と伊藤(哲)先生、岡谷先生、金子先生、そして末安先生からいただきまし
た文書に関して、とりあえずご紹介ということでございます。
 それでは、精神保健福祉課の方から、本日の「報告書のまとめに関するたたき台」に
ついてご説明していただきます。

1.精神病床の設備構造等の基準

【重藤補佐】 
 事務局から説明いたします前に、本日、事務局から用意いたしました資料のご確認を
お願いいたします。
 1枚紙として、きょう本日の議題、資料の紙、それから資料として「報告書のたたき
台」、参考資料といたしまして津久江委員及び山崎委員からの提出資料ということでご
ざいます。以上が事務局から本日用意いたしました資料でございます。過不足等ござい
ましたら、事務局までお申し出いただきますようお願いいたします。
 それでは、本日の資料「報告書のたたき台」でございます。
 「精神病床の設備構造等の基準について」、これは前回の議論のためのメモを前回の
意見を踏まえまして、加筆・訂正いたしたものでございます。基本的には、前回の議論
のための中身と同一内容でございますけれども、◎にしたところが新たに加えた項目、
それから●のところは前回非常に意見が割れていて詰められていないと認識している項
目でございます。それから、アンダーラインを引いているところが、項目の中で加筆い
たした点を表示しております。以上、本日の報告書のたたき台の性格でございます。
 今から、「報告書のたたき台」につきまして読み上げさせていただきます。

 1.基本的考え方

○ 精神病院の設備構造の基準に関して、現状では精神病院以外の一般の病棟と同じ
く、病床面積が 4.3m2、廊下幅が 1.2m(両側居室 1.6m)となっているが、現在の国
民の生活水準にふさわしい療養環境という観点から病床面積や廊下幅について、入院患
者に快適な環境で医療サービスが提供されるよう見直すことが必要である。

○ 精神病院の人員配置の基準については、昭和33年の厚生省事務次官通知により、精
神病院以外の一般の病院に比べて緩やかな基準となっている。具体的には、主として精
神病の患者を入院させる病院にあっては、医師数は患者48人に1人、看護婦等の数は患
者6人に1人となっている。現在の精神医療を取りまく背景は、入院患者や国民が期待
するニーズ、また医療職種の人数などの医療資源に関して、現行の医療法上の人員配置
の基準を設定した時点のそれとは大きく変化してきており、現在の精神医療に求められ
るニーズや整備し得る医療資源の量を踏まえた人員配置の基準とすることが求められ
る。

○ 特に、旧医療法上の総合病院に設置されている精神病棟においては、精神疾患以外
の重度の身体的疾患(以下「合併症」という)を持つ入院患者に対する医療を提供する
機能や、地域において単科の精神病院との連携による一体的な精神医療の提供が求めら
れていること、また現行の医療法上、精神病院以外の一般の病床と同じ基準により人員
が整備されていることを踏まえると、大学病院や旧医療法上の総合病院の精神病棟にお
いては、少なくとも新たな医療法上の一般病床と同じ人員配置の水準を確保すべきと考
えられる。

○ また、早期の社会復帰を目指した積極的な医療の提供が求められていること、救急
医療、児童・思春期精神医療、老年期痴呆やうつ病に対する医療などの多様なニーズに
おいて専門医療の提供が望まれていること、さらに措置入院や精神保健福祉法第34条に
基づく移送制度による医療保護入院の患者に対する政策的な医療の充実を図るべきこと
など、精神医療を取り巻く現状を踏まえると、今後、こうした医療を提供するための人
員配置の基準のあり方について検討を進めていくことが求められる。なお、措置入院な
どの政策的な医療のあり方については、公私の役割分担なども含め幅広く検討すること
が必要である。


 2.設備構造の基準

○ 具体的な設備構造の基準としては、新たな医療法上の療養病床の基準である病床面
積 6.4m2以上、廊下幅 1.8m以上(両側居室 2.7m)と同等にするべきである。

○ また、1室当たりの病床数や、病室内の病床の配置についても、現在の国民の生活
水準に照らして、入院患者のプライバシーの確保の観点から十分配慮されることが求め
られる。

○ 精神病院の設備構造に関する用語について、現行の施行規則においては「危害防止
のための」など、精神障害者の人権上の観点から不適切な使用が見られるが、新たな施
行規則に作成するに当たっては、用語の使用について十分配慮するべきである。


 3.人員配置の基準
(1)医師
○ 精神科医師数については、医師・歯科医師・薬剤師調査によれば、平成8年が1万
93人、平成10年が1万 586人であり、このうち病院に勤務している精神科医師数は平成
8年で9327人、平成10年が9783人であり、病院に勤務する精神科医師は年間約 200人が
増加している。

○ 現在の医療法の人員配置の水準を満たしていない医療機関は、平成10年度医療監視
結果によると、1193の精神病院のうち、 346病院、全体の29%となっている。また、充
足率が80%未満の病院は 247病院、全体の20.4%の現状にある。

○  現在の医療法の主として精神病の患者を入院させる精神病院の人員配置の基準であ
る患者48人に1人の基準を達成するためには、推計によれば少なくとも約 700名の医師
を新たに確保することが必要である。

○  さらに、精神病床以外の一般の病床と同等の患者16人に1人の基準を達成するため
には、推計によれば少なくとも約1万5000人の医師を新たに確保することが必要であ
り、精神科医師の年間の増加人数を踏まえると、短期間に患者16人に1人の基準を達成
することは難しいものと考えられる。

○ しかしながら、合併症を有する患者等の治療のためには、必要な病床数を確保する
とともにその病床について精神病床以外の一般の病床と同等の基準とするべきではない
か。平成8年患者調査によれば、精神疾患以外の疾病による人口10万対入院患者が合計
で約1000人であり、これから推計すると合併症に対応する病床として少なくとも3500床
確保する必要がある。

○ 一方、一定の診療科目を有する旧医療法上の総合病床の精神病床は、約2万床があ
る。

○ 旧医療法上の精神病院の精神病棟における精神科医師の配置状況については、日本
総合病院精神医学会の調査によれば、全体の54%の病院が既に精神病床以外の一般の病
院の人員配置基準である患者16人に1人の医師が充足されており、81%の病院が患者32
人に1人の医師が充足されている現状にある。

○ したがって、旧医療法上の総合病院や大学病院においては、合併症に対応する役割
も果たす施設として、精神病院以外の一般の病院と同等の水準を確保することが必要で
あると考えられる。

○ なお、今回、旧医療法上の総合病院や大学病院に患者16人に1人の医師の配置基準
を求めているが、今後は早期の社会復帰を目指した積極的な医療を提供する病床や、措
置入院患者を入院させるなどの政策的な役割を担う病床などについては、精神病床の機
能分化の実態に即して、医師の配置基準の見直しを行っていくことが求められる。


(2)看護婦等
○ 精神病床のみを有する病院の看護婦等の人数については、平成10年医療施設調査
(動態調査)・病院報告によれば、平成8年が6万9974人、平成9年が7万2062人、平
成10年が7万4132人であり、年間約2000人以上が増加している現状にある。

○ 現在の医療法上の看護婦等の人員配置の基準を満たしていない医療機関について
は、平成10年度医療監視結果によると、1193施設のうち53病院、全体の 4.4%となって
いる。また、充足率が80%未満の病院は10病院、全体の 0.8%となっている。

○ 診療報酬上の看護婦等の配置については、医療法上の基準以上の配置を定められて
おり、例えば精神科急性期治療病棟Aが適用されている病棟においては、看護婦等が患
者 2.5人に1人、精神科急性期治療病棟Bが適用される病棟においては、看護婦等が患
者3人に1人となっている。平成10年の精神保健福祉課調べによると、看護婦等の配置
状況が患者3人に1人以上となっている病院は全体の36.3%、患者4人に1人以上で
61.3%である。

○ このような実態を踏まえると、現在の主として精神病の患者を入院させる病院にお
ける患者6人に1人という看護の基準を引き上げるべきであると考えられる。

● 因みに、主として精神病の患者を入院させる病院について、患者4人に1人以上の
看護婦等を配置するため、平均的に看護婦等を配置したとすると、約7万6000人の看護
婦等が必要であるが、現在の看護婦等が約7万4000人であることを踏まえると、患者4
人に1人以上の水準を確保することは可能なものと考えられる。

○ 一方、旧医療法上の総合病院における精神病棟に関しては、日本総合病院精神医学
会の調査によれば、調査を行った病院の93%が既に患者3人に1人以上の看護体制とな
っている現状から類推すると、患者3人に1人以上の水準の確保は可能なものと考えら
れる。

○ しかしながら、人員配置の基準を満たすための看護婦確保については、看護教育の
中で実習などを通じて精神科看護の重要性や魅力を看護学生に伝えたり、就職に向けて
の説明会を積極的に開催するなど、関係者の努力が求められる。


(3)薬剤師
○ 精神病床のみを有する病院の薬剤師の人数については、平成10年医療施設調査(動
態調査)・病院報告によれば、平成8年が2万 756人、平成9年が2820人、平成10年が
2869人であり、年間約50人が増加している現状にある。

○ 現在の主として精神病の患者が入院する病院における薬剤師の人員配置の基準であ
る患者 150人に1人の基準を満たしていない医療機関は、平成10年医療監視結果によれ
ば全体の27.2%である。

○ 新たな医療法上の薬剤師の配置の基準としては、一般病床においては患者70人に1
人、医療病床においては患者 150人に1人となっている。

○  精神病床における薬剤師の配置の基準として、一般病床と同等の基準とした場合、
推計によれば少なくとも現在の2倍の数の薬剤師が必要となることから、療養病床にお
ける基準と同等とすることが適当と考えられる。

○ しかし、旧医療法上の総合病院や大学病院にあっては、合併症を有する患者に対す
る資料を提供することが多いという意味からは、他の診療科と処方の内容は同等であ
り、新たな医療法上の一般病床と同等の患者70人に1人の水準を確保することが求め
られる。

○ 将来的には、精神病院に入院する患者の高齢化による合併症への対応など、精神病
院における薬剤の種類や処方の件数が増加することが予測されるが、その一方で外来患
者に対する処方において、医薬分業が推進することにより、病院で処方する必要性が減
少することも予測されることから、今後精神医療における調剤の状況について把握して
いくことが必要である。


4.おわりに
○ この報告書は、精神病床の機能分化が未だ成熟していない状況や長期入院患者の療
養のあり方が未だ具体的に提言されていない状況の中で、精神病床の設備構造等の基準
のあり方を取りまとめたものである。

○ したがって、精神病床の機能分化のあり方を含め、21世紀の精神医療の方向性につ
いては別途検討を開始するべきである。

○ なお、今後、精神病床の機能分化の進展に即して、精神病床の設備構造等の基準を
見直していくことが必要である。
 訂正が5ページの資料3「旧医療法上の精神病院に勤務する」とありますけれども、
「総合病院」でございます。訂正をお願いいたします。以上でございます。


「1.基本的考え方」

【吉川委員長】 
 どうもありがとうございました。一気に読み上げていただきましたので、皆様方、ち
ょっとお疲れかもしれませんが、これからは項目ごとに議論していただきたいと思って
おります。
 したがいまして、ただいま読み上げていただきましたものでいきますと、1の「基本
的な考え方」というところから始めさせていただきますが、前回の議論を踏まえてこれ
は書いてございますので、「基本的な考え方」の○のついてあるところは前回の議論で
も一応お認めいただいたというべきなのか、さしたる議論がないところということにな
りますが、それでいきますと最初の3つは大体この考え方でよかろうというふうに皆様
方がお考えいただいたところということになります。
 4つ目のところに下線が引いてございますけれども、そのあたりのところが前回ご議
論いただいたものの中から、言葉として抜き出しながら、ここへはめ込めさせていただ
いたということになります。そのようにご理解いただいた上で、改めて基本的な考え方
のところでよりこの委員会として主張すべきところがあればご意見をいただきたいと思
います。
 いかがでございましょうか。竹島先生。

【竹島委員】 
 細かいことになってしまって申しわけないのですが、新たに付け加えられたアンダー
ラインを引いてあるところで、「移送制度による医療保護入院の患者に対する政策的な
医療の充実」が触れられているのですが、大変重要な論点であるということは承知して
おります。
 ところで、この「政策的な医療」という言葉が、今国立病院等のあり方の見直しの中
で「政策医療」という言葉が盛んに使われております。この「政策医療」の中身はどち
らかというと専門医療を国公立病院の中で率先して、充実整備していこうという考え方
に近いように思っております。その「政策医療」という言葉と少し性格を異にしている
ように思いますので、用語等、少し変えてはどうかというふうに考えたわけです。
 3ページのところで見ますと、同じようなことが◎のところに「政策的な役割を担う
病床」ということで触れられておりますが、この「政策的な役割を担う」という言葉を
こちらにも登場させた方が性格の違いが出せるのではないかと思いましたので。

【吉川委員長】 
 わかりました。「政策的な役割を担う医療」というような表現に、4つ目の○のとこ
ろの下線の表現に加えさせていただくということだと思います。
 皆様方、それに関しましてよろしゅうございますか。

【伊藤(哲)委員】 
 「政策的な」という意味が非常に難しいのは確かですが、例えば児童・思春期の精神
医療というのも、竹島委員のおっしゃったような意味ではこれも政策的な医療として進
めなければなかなか進まないと。今までの「やりたい方が児童・思春期の医療をやって
いく」というやり方ではもう進まないのではないかという心配もあるわけです。そんな
こともありまして、どういう書き込みをするかは別として少し検討していただきたいと
いう意見です。

【吉川委員長】 
 ここでは移送制度ということだけが取り上げられているけれども、移送制度以外にも
政策的な医療という意味合いはあるのではないかということですね。

【伊藤(哲)委員】 
 はい。

【吉川委員長】 
 何かほかにご意見を加える方がおられれば。
 なければ、ここのところの表現を少し変えさせていただいて、今、34条のところだけ
が抜き出ていますけれども、それ以外に必要な政策的な医療というニュアンスをどうい
う形でこの中に書き込むかということになります。どうぞ。

【西島委員】 
 今、おっしゃった思春期----確かに、今は話題性が非常に強いですね。精神科医とし
て取り組んできたことは間違いないことですけれども、しかしいろいろな偏見等があっ
て、患者さん等が精神科を訪れてこない、家族も敷居が高いという部分もあってこれが
進まなかったという現状もあるだろうと思うのです。
 そういう意味では、この「政策的」というのは確かに法律に決められている部分がほ
とんど進んでいないところから、「政策的」という言葉が私は使われているのだろうと
いうふうに思うので、先生がおっしゃったような「思春期」等々の部分は、別途考える
問題ではないかという気がするのです。

【吉川委員長】 
 その辺はどうですか、伊藤先生。

【伊藤(哲)委員】 
 「政策的」という意味合いの問題をどう解釈するかによって随分違ってくるのです
が、いずれにしても、今、児童精神科医が 200人程度しか実際に活動している方がいな
いという実態がありますので、この辺は精神病床のあり方とは直接関係ない部分もある
わけですが、大事な課題だというふうに認識していただければと思います。

【西島委員】 
 今、先生がおっしゃった「児童精神科医」という言葉がどういうふうにとられるかで
すね。私も児童・思春期はたくさん診ていますが、ところが児童精神医学会には加入も
していません。ですから、そういうことに全力を挙げている精神科医はもっと多いのだ
ろうと思うのです。とかく、学会員が専門医というふうに見られているだけのことでは
ないか。その数字が 200だろうというふうに思うのですが、いかがでしょう。

【伊藤(哲)委員】 
 その辺の範囲は難しいと思いますけれども、ただ全体としてまだ弱い領域なものです
から。

【吉川委員長】 
 今後の問題として、確かに精神科医療を充実させていかなければいけないということ
が恐らく政策的な課題となっていくことは確実だと思いますけれども、ここの流れの中
で書けるかどうかは別にしまして、今のご意見はどこかに生かしたいと思っています。
その辺は事務局の方でちょっと考えていただくことにします。
 どうぞ。

【池上委員】 
 単に字句の問題ですけれども、3つ目の○のところに「旧医療法上」と書いてござい
ますけれども、旧医療法というのは新医療法ということではないと思いますので、医療
法上の旧規定とか、旧条項とかいうことだと思います。これだと生活保護法のように新
旧があるというふうに誤解を招くと思います。
 もう1点は、大学病院という規定は、前回申し上げたのですけれども、必ずしも明確
ではなくて、これは特定機能病院とするか、別の規定にするのか。そこは用語の問題で
ご検討いただければと思います。

【吉川委員長】 
 わかりました。
 重藤さん、よろしいですね。旧医療法というのは、つい使ってしまうので、こういう
ような表現になったのだと思います。それから、大学病院のことに関しましては、この
前のときにもちょっとご発言いただいておりましたけれども、文章が長たらしくなると
かいろいろ意味があってそのままにさせていただきましたけれども、今のご発言をいた
だきまして、やはり正確にその辺のところを表現しておいた方がいいなと思っていま
す。どんな表現がいいでしょうか。

【池上委員】 
 単科の精神病院が大学病院のものであることはあるので、それを包含するかどうかと
いう議論がまだされていないので、これまでの議論ですと本院である特定機能病院に限
られるのかなという感じも受けたのですけれども、そこはまだ議論されていませんので
よくわかりません。

【松本課長】 
 ただいまご指摘いただいた点は、前回、池上委員からも指摘されまして、事務局とし
てもどういう表現すべきかということを検討しているのですが、なかなかこれというき
れいな表現をまだ思いつかないものですから、非常に申しわけないのですけれども、そ
のままの表現をさせていただいておりますが、ご指摘いただいた点は十分よく踏まえま
して、次のときにはもう少しきれいな表現というか、より正確な表現を心掛けたいと思
います。

【吉川委員長】 
 ありがとうございました。それでは、そういうことで。
 どうぞ。

【野中委員】 
 ここに「緊急医療、児童・思春期精神医療、老年期痴呆や」と書いてありますけれど
も、その間にもしできましたら「覚醒剤などの薬物依存」なども入れていただければど
うかしらと思ったのですが。

【吉川委員長】 
 4つ目の○の2行目あたりですね。

【野中委員】 
 はい。「多様なニーズ」の中に、今とても問題になっていますので、覚醒剤などの薬
物依存ですね。現実に、その後の幻聴や何かのとき、どこに行ったらいいかと一般にわ
かっていないようなところもありますので、もしそういう表現が出ていれば、ここでも
やっていただけるんだなというのもわかるのではないかと思っています。どうかしらと
思いますが……。

【吉川委員長】 
 それは並びに入れさせていただいてもよろしいかと思いますが、いかがでございまし
ょうか。

【伊藤(哲)委員】 
 この問題は難しいところがありまして、覚醒剤で精神病状態に限定されたものについ
ては医療でやるべきだと思いますから、多様なニーズということでよろしいのですが、
覚醒剤すべてが医療で担うべきということでもないので、なかなか難しい。

【吉川委員長】 
 それは精神保健福祉法で言う表現がありますから、それを借用させていただくという
ことでよろしいかと思います。

【伊藤(哲)委員】 
 その辺は慎重にしていただいた方がよろしいかと思います。

【吉川委員長】 
 覚醒剤を用いたからといって精神病状態になるとは限らないので、覚醒剤中毒といき
なり書かれても、確かにその問題は出てきますので、精神保健福祉法上でいうこれらの
薬物依存の問題というのは、一応の表現がありますので、その表現をうまく使わせてい
ただくということで。

【野中委員】 
 その辺はお任せします。

【吉川委員長】 
 わかりました。
 ほかに、何か。どうぞ、池原先生。

【池原委員】 
 今の基本的な考え方のところでご議論いただくのがいいかどうかちょっとよくわから
ないので、場所は座長にお任せいたしますけれども、この「基本的考え方」の○の4つ
目のところと、3ページの◎の部分、今回新たに書き加えていただいた部分ですが、こ
れはちょっと手前味噌かもしれませんが、最初に伊藤委員からご説明いただいた「手厚
い治療を必要とする病床」というところに少し焦点を当てたらいいのではないかという
意見を取り入れていただいたのかなと思っております。
 これについては「基本的な考え方」のところでは、「検討を進めていくことが求めら
れる」というところに結論が置かれていて、具体的な数値目標とかあるいは時間的なア
クションプログラムというか、いつぐらいまでにどうするのかということは、ある種、
白紙委任的な形になっているわけですけれども、その点について、多少ここでコンセン
サスを得ることは難しいのかどうか。
 ある程度、もう少し具体的な、このくらいの数値をいつぐらいまでというようなこと
がもしコンセンサスが得られるのであれば、もう少し煮詰められないかなというふうに
思っております。

【吉川委員長】 
 わかりました。いずれにいたしましても、「基本的な考え方」というところにあまり
そこまでは踏み込めないだろうということで、「基本的考え方」以外のところでそうい
うようなご意向が出てくるのではないかと私は予想しておりましたので、ここのところ
では議論をしないということで通過させていただきます。
 では、「基本的な考え方」は大体このところと、今幾つかご注文がありましたところ
は、できるだけ言葉も選択しながら組み入れさせていただくということにしたいと思い
ます。


「2.設備構造の基準」

【吉川委員長】 
 それでは、「2.設備構造の基準」についてでございます。この設備構造の基準につ
きましても、この前のときにご議論いただきました中身で、とりあえず3つのところは
そのまま残させていただいておりますので、特にこれに加えるところがあれば、あるい
はまたこれを変更した方がいいということがあれば、ここでご意見をいただきたいと思
います。
 先ほど伊藤先生からお話がありました5人の方々からのご意見の中の「精神病床の規
定について」というところにあります内容は、この中で大体網羅されていると考えてよ
ろしいですか。
 どうぞ。

【金子委員】 
 3つ目の○のところで、前回と同様に「危害防止のための」など、人権上の観点から
ふさわしくないと。それは確かにそう思うのですけれども、人権上の観点から言葉を変
えればそれでいいという問題かどうかについては、やはり5人の提案書を書いた専門委
員の中で議論になったところです。
 参考人の方々のご意見を第2回のときに伺ったときも、これはぜひなくしてほしい規
定だということでありましたし、ここで蒸し返すことはできないかもしれませんけれど
も、ぜひ今後の検討課題ということでもあげていただきたい。
 つまり、医療法上の10条の3、16条の1の6のことがここに書いてあるわけですが、
その廃止についてぜひ考えてもらいたいと思います。もう一つは、人員配置と絡むので
すけれども、看護の方は結核等他病床は一般病床と一緒の算定ができるのですね。た
だ、精神科は別になっているので、精神科だけ1単位ないと成り立たないような構造に
なっているわけです。つまり、病棟が別でないとならないということになっているわけ
ですが、看護の配置や計算方法と横並びにすることで、実質上はこの規定をうまく外せ
ると思うのですが、多方面からの観点で検討していただければと思います。

【吉川委員長】 
 ちょっと待ってください。僕が理解できないのかもしれませんけれども、削除すると
いう意味は、この「危害防止」というような表現を削除するという意味ですか、それと
もこの条項という限りでは、例えば感染症に関してのことも書いてあるわけですね。こ
の条項を外すという意味はどういう意味なのか、僕にはよく理解できないところがある
のですが。

【金子委員】 
 「危害防止」が不適当だというのは私ももっともだと思って賛成なのです。この○の
文章については異論はございません。
 ただ、一般的な病床と精神病床を全く分けなければならないという考え方について
は、今後検討が必要であるとか、そういう観点をぜひ入れていただきたいと思うのです
けれども。

【吉川委員長】 
 病床区分そのものの根本の問題を今お話しになられているということですか。話がず
れてしまったような気がしますけれども、最初に金子先生が出されたのは、人権上の問
題という表現そのものがどうかというお話の流れだったものですから。

【金子委員】 
 違うのです。「人権上の」という表現はそれでいいと思うのですが、それだけでは足
りないのではないかと。

【吉川委員長】 
 ちょっと僕には理解できない。

【池原委員】 
 私も誤解かもしれませんけれども、金子先生がおっしゃっているのは施行規則の10条
の3号のことも言及した方がいいという趣旨でおっしゃっているのですか。

【金子委員】 
 池原先生にまとめていただいて恐縮ですが、そのとおりです。

【池原委員】 
 この用語の点のところについては、施行規則の16条1項6号の用語の問題については
言及されているけれども、身体合併症を持っていらっしゃる精神障害の患者さんの問題
については言及されていないので、その点について言及していただいた方がよいのでは
ないかという趣旨だと。

【吉川委員長】 
 そういうふうにおっしゃっていただければ、それはそれでよくわかりますね。
 その点ではいかがでしょうか。そうすると、少なくとも、○の3つ目はそのままです
けれども、4つ目として、今改めて設備構造に関してご意見が出たというふうに伺いま
すが。

【西島委員】 
 今の整理がちょっとよくわからないのですが、もう少し具体的に。

【吉川委員長】 
 今、金子先生から出されたのをちょっと整理しますと、前段にお話しになられたもの
は今議論していただいている設備構造の基準の3つ目の○のところに関して話が始まっ
たのですけれども、そこはそれでよろしいということになりました。
 それで、3つ目の○の次にもう一つ○を立ててでもいいのではないかということの内
容が、先ほど池原先生の方から追加して発言していただきました「施行規則第10条の第
3号に当たるところの問題」というところだと思います。それを議論していただきたい
ということを今私は申し上げたのです。

【西島委員】 
 この件に関しては、第1回の委員会で「この部分は議論しない」ということで整理が
ついたと私は思っているのですが。

【吉川委員長】 
 西島先生がおっしゃるのは病床区分から議論するということはこの中ではしないとい
う話だったということですね。
 それについてはいかがでしょうか。

【伊藤(哲)委員】 
 どこで議論するかということですが、これはやはり医療法施行規則の方に問題がある
ということの認識は僕ら持っているわけですけれども、それは今回は病床区分という形
ではすぐには触れられないということですが、これは精神障害者の差別問題につながる
ということもありますし……。

【吉川委員長】 
 それは内容的にはどういう意味ですか。精神病床を置くこと自体が精神障害者差別に
つながるという意味ですか。

【伊藤(哲)委員】 
 その設備構造を規定するときに、危害防止とか、ほかの病床に収容にはならないと
か、これはちょっと違う医療法施行規則になりますけれども、そういう医療法施行規則
で定まっている精神障害者差別につながるような規定は見直していく方向をはっきり出
さなければならないのではないか、それもどこかで整理して触れておく必要があるので
はないかということをお話ししているわけです。

【吉川委員長】 
 それは、今議論している基準の3つ目の○のところにあります『「現行の施行規則に
おいては、「危害防止のための」など』と書いてありますね。要するに、現行の施行規
則の中にあるこうした表現と精神障害者の人権上の観点からという、こういう文章の流
れだと私は認識していますけれども、それではいけないのでしょうか。
 要するに、「危害防止のため」という言葉を取れと言っているだけではなくて、施行
規則の中にあるこういう考え方を外せということを、僕はここで言っていると思うので
す。そんなに狭く言っているとは私は考えないのですが、それはこの前のときの議論を
踏まえて、そして広田さんのご意見などを踏まえて私は考えているつもりですが、それ
ではいけないのでしょうか。

【池原委員】 
 10条の3号については、私の認識では精神障害を持っている方が身体合併症をお持ち
になった場合に、その身体合併症の治療のチャンスが乏しくなるというところに実態と
しての問題点があるというふうに思っているのです。
 そのことが、今、座長の方でおっしゃられた「など」の中に含められて、要するに身
体的な疾患についての治療の機会も十分に精神障害の人に付与されるような観点から、
規則などについてもう少し今後考えていく必要があるのだという趣旨に理解してよろし
いのでしたら、それでよいかとは思います。

【吉川委員長】 
 具体的に、私は精神障害者の合併症に診療の機会が少なくなる云々ということを特別
にここで今取り上げているわけではないのですが、施行規則の中に盛られているような
精神障害者差別につながるような人権上の問題に関しては、施行規則そのものを見直し
てもらうという趣旨で、一番主張された「危害防止」という言葉を例にとったというこ
とで私は考えてはいるのですが、そういうふうな考え方でいかがでしょうかと申し上げ
ているわけです。

【伊藤(哲)委員】 
 どのように表現されるかということになると思いますけれども、現在の規則は、「精
神病室には外部に対して危害防止のために遮断その他に必要な方法を講ずること」とな
っておりますが、「ただし、公衆衛生局長の通知の中で、開放的な医療を行うことが適
当と認められる者のみを収容する精神病棟においては遮断設備を必要なものとして取り
扱う必要はない」というふうに、通知の方で緩めているわけです。
 これは逆でして、本来は精神病の患者さんの治療に当たっても、できるだけ開放的な
治療をするという前提があって、その後で精神病の状態によっては、遮断その他しなけ
ればならない病床というのがあるのはやむを得ないという、通知の方で狭い規定といい
ますか、厳密な規定をすべきところが、これは逆になっているわけです。入り口のとこ
ろで、まず「精神病者はすべて遮断しなければならない」みたいな記載があって、通知
の方で「開放的な医療をする場合はその限りではない」となっているわけですから、流
れとしては逆の規則になっているわけです。そこのところを見直さなければいけない。

【吉川委員長】 
 確かにそうですけれども、歴史的な経緯を見れば、これはやむを得ないことだったと
思います。

【伊藤(哲)委員】 
 歴史が今変わる時期ですから、こういう実態にふさわしい表現にした方がよろしいの
ではないかということです。

【吉川委員長】 
 「時代にふさわしい表現」といいますと? ですから見直せというふうに言えとおっ
しゃるから見直しを……。

【伊藤(哲)委員】 
 そういう書き込みをしていただければ、そういう見直しをしていただけるのであれば
よろしいのですが、ただ規則の表現だけの問題ではなくて、考え方の問題なのです。

【吉川委員長】 
 考え方はもう既に大きく変わっていますからね。

【伊藤(哲)委員】 
 でも、医療法規則では「原則として遮断する」ということになっていますから。その
上で「開放的な医療を行う場合にだけ遮断しなくていい」と、逆になっているわけで
す。通知の方で開放を先に言っているわけで、これは逆転ですから、ぜひ反対の方向に
医療規則を改めるべきではないかと。これは私がそう主張しているのですが。
 ですから、ここの書き方がどうなるか、吉川座長の意図するところがどういうところ
か、もう少しお聞きしてからと思いますけれども。

【西島委員】 
 よろしいですか。
 この議論は、もう既に一つの整理がついていると思うのです。それは、例の「開放処
遇とは」という中で、この議論は、金子委員もおいでになってされていた部分でござい
まして、現行ある設備構造上、どうしても閉鎖病棟を使わざるを得ないという部分もあ
るので、だから開放処遇とはこうこうだというふうに規定をきちんとしているわけです
ね。それは一つの経過的な問題であって、将来的には今先生がおっしゃったようなこと
も考えてもいいでしょうけれども、一応、任意入院者で、開放処遇はこういうふうにし
なさいということはもう整理がついているわけです、現行ですね。
 ですから、今、先生がおっしゃったまさしくそうであって、私どもは今後基本的には
開放処遇に限りなく近づいていかなければいけないと思うのですが、しかし開放処遇で
はやれない患者さんたちもいるわけです。これは現実です。
 では、その方々のために何床かの病棟をつくって云々というと、経済的な問題もすぐ
かかわってくるわけですからね。だけれども、吉川座長が今おっしゃったように、私ど
も精神科医の考え方は「限りなく開放に」ですから、そこに開放ではやれない患者さん
たちもいらっしゃるという面もやはり考えていかなければいけないと思うのです。

【伊藤(哲)委員】 
 西島委員と私の言っていることはそれほど違いはないのです。ただ、規則に書き込む
ときはどちらが例外で、どちらが基本かということをちゃんと明確にしておかなければ
ならないので、先生、今おっしゃったのも、できるだけ開放が原則だと。そして、やむ
を得ず隔離したり、閉鎖病棟で治療しなければならない患者さんがいるという現実があ
るわけですから、それ自体を否定しているわけではないですし、どちらを例外規定と見
るかです。

【西島委員】 
 基本的には、現行が本当であって、要はそういうふうにみんな流れが変わってきてい
るわけですから。
 要するに、この規則に書かれてしまいますと、それでものすごくいろいろなことが縛
られてくるわけです。私が言いたいのは、これは公衆衛生審議会でも申し上げましたけ
れども、周辺の環境整理が何も整っていない中で、こういうことだけが一人歩きしてい
く。こういう言葉は本当は使ってはいけないのでしょうけれども、私どもが「こういう
ふうにしてもらいたい」と思うことがつまみ食いをされて、そして食い逃げをされて、
一番基本的なものが何も変わってこなかったという歴史が、昭和61年の精神衛生法から
精神保健法に変わってからさまざまな問題があるわけです。これはみんなんが指摘して
きたことなんですが、何も変わってきていないじゃないですか。
 だから、今回はそれをきちんとやってくださいと。やった上で、21世紀の精神病院の
あり方、精神医療のあり方はどうなるのかということをきちんと議論していきましょう
というのがこの報告書の一番下の段に書いてあるのではないですか。
 ですから、あえて議論する必要性はないというのは、そういう意味で私は言っている
わけで、これがこのままでいいのだということは私は一つも申し上げておりません。で
すけれども、環境整備を進めていくためには、今、ここで議論をストップしなければい
けない部分もあるのだということを私は申し上げています。

【伊藤(哲)委員】 
 また同じことになってしまいますけれども、少なくともこの2つの規則に関しては、
時代にふさわしい規則ではないので、いずれ見直さなければならないということは明確
にどこかで……。
 西島先生がおっしゃるように、今すぐすべてを変えることはできないということはわ
かりましても、これは書き方が逆になっているということを指摘して、それについては
十分検討すべきだということを書き込むべきだと思います。

【吉川委員長】 
 伊藤先生のお考えは私なりに受け止めたつもりですけれども、私は先ほど「歴史的」
というふうに申し上げたことは、やはり精神障害者の処遇に関しては、精神保健福祉法
上では、この10年間をかけて急速に大きな変化をさせてきたことは間違いない事実で
す。そうすると、医療法上でどう決めてあろうとも、現実は確実に精神保健福祉法でも
って精神障害者処遇に関しては変えてきたことは事実なので、この事実をテコにして医
療法の施行規則まで変えろということだと私は理解しました。
 ですから、今度は医療法の問題でありまして、私たちからみれば、その希望として施
行規則にこういうことが書いてあることに関しては、精神保健福祉の関係者としてはこ
こには問題意識があるということは、私は書くことは可能だと思いますけれども、これ
を医療法上書き換えさせるということは直接私たちの専門委員会の表現ではふさわしい
とは思いません。
 これからまた事務局にお願いいたしますけれども、ここに関して、先ほど伊藤先生が
言われたような意味での施行規則を大幅に見直すことに関して、私たちの専門委員会と
しての意見というものは、私は書き込むことをこれから事務当局の方にお願いはしよう
と思いますが、精神病床というものをどう規定するかは医療法上の問題ですので、私た
ちの方から「精神保健福祉はここまで変化してきているのだから、それについて医療法
上でも適切な判断をしろ」ということくらいは私たちの方から言えるだろうと思いま
す。その範囲で、私たちの専門委員会としてはこの報告書をまとめさせていただく、そ
んなふうに考えることでいかがでございましょうか。それでよろしゅうございますか。

【伊藤(哲)委員】 
 はい。ぜひ、触れていただきたい。

【吉川委員長】 
 西島先生、そこはそれでもよろしゅうございますか。

【西島委員】 
 基本的に、私はそういう考え方を持っているわけです。それは現行は無理だから、そ
れを法に書かれるということは、それに縛られるという話を私はしているだけです。

【吉川委員長】 
 そういうことですね。わかりました。

【西島委員】 
 理想とは違うということです。

【吉川委員長】 
 そういうことで、4つ目の○をつくるかどうかは別にしまして、いずれにしまして
も、ここのところで今のご意見をできるだけ酌んだ形で文章化させていただきます。


「3.人員配置の基準」

(1)医師

【吉川委員長】 
 それでは、3番目の「人員配置の基準」に関してご意見をいただきたいと思います。
 まず、第1に医師でございますけれども、この医師のところもこの前ずっとご意見を
いただきましたことで、大体そのまま残させていただいております。そして、医師の中
の一番最後のところに、「なお」というので◎のところがございますが、ここが全く新
しく加えさせていただいたところでございますけれども、それまでのところももちろん
ご意見をいただいて結構でございますが、主として◎のところを中心にしながらご議論
いただければと思います。

【竹島委員】 
 3ページの◎のついてある2つ目の文章のところですけれども、「政策的な役割を担
う病床など」の、この“など”についてはどんな意味を持つのかということをちょっと
説明していただけたらと思います。

【重藤補佐】 
 一つの例として、「今後は」というところで「早期の社会復帰を目指した病床、それ
から措置入院患者を入院させるなどの政策的な役割を担う病床」、そのほかにもいろい
ろ機能分化というものは必要でありますので、早期退院、早期社会復帰を目指す者、措
置入院、その他先ほど言ったように、児童精神とか薬物とかいろいろそういうものもあ
りますので、などなどの機能分化という意味でございまして、例示として列挙するの
は、基本的考え方をまた列挙するのはなんですので、そこから2つだけチョイスして、
あとは“など”でつなげたという意味でございます。

【吉川委員長】 
 よろしゅうございますか。
 はい、どうぞ。

【末安委員】 
 今のところで、添付されている資料からちょっと読みにくいのですけれども、大づか
みの感じでもいいと思うのですが、これはおおむねどれくらいの規模のものを……。
「など」ですから、幾つもあるのだというふうに言えばそうなんですけれども、現在の
病床数のうちのおおむねどのくらいのものに対してそういうものを考えていくというイ
メージをお持ちなのか。もし、根拠が何かあるのだったら、細かい数字でなくていいの
ですが、どれくらいの重要なものがあって、基本的な考え方のところの「多様なニー
ズ」というのを踏まえると、どのくらいのところを強化していくというか、そういう方
向性を持っていらっしゃるのか教えてもらいたい。おおむねでいいです。

【重藤補佐】 
 おおむねでいきますと、まず合併症ということで、前の方に書いてありますように、
総合病院ということですれば約2万床くらいでございます。それから、措置入院患者と
いうことになると、現在約4000人から5000人の間でございます。
 34条で、移送制度によって運ばれる患者さんがどのくらいいるかというと、これはま
だ予測はつかないのですが、おおよそいって数百のレベル、3桁だと思います。それか
ら、あと薬物、児童精神といっても、それはそれぞれ状況にもよるかと思いますけれど
も、それも3桁のオーダーであろうということで、全体的にはいっても3~5万くらい
の間と。それは将来的にはどうなるか、これは推計ですけれども、そのくらいと。今、
35万床ありますので、その中の1割強程度ではないかなというふうに、どんぶり勘定で
申せば、そんな感じでございます。これは状況によってまた変化してくるかと思いま
す。

【吉川委員長】 
 末安先生、よろしいですか。
 今の数字、どんぶり勘定といいましたけれども、それぞれ今まである数字をいろいろ
な形で加工してみますと、こんなところかなというので、大体1割くらいかなというこ
とは見当として出ていますが、それくらいはとりあえず考えていかなくてはいけないと
いうこと。それから先はまたそれぞれで、機能分化ということがどのように進むかによ
って、また考え直さなければいけないことがあると思います。
 それから、精神科の医療の進展具合ということも当然それに加味されますので、これ
からの加速的な面はあるかもしれませんが、とりあえず現段階ではそのように考えてい
るということです。
 ほかに何か。どうぞ。

【池上委員】 
 今の5万床というのは、例えば措置患者というのを一人ずつ数えた場合の数であっ
て、ただこれは病棟に対する人員配置でありますので、措置患者が1人でもいる病棟に
関してはこの基準が適応されるということからしますと、もっと多い数になるのではな
いでしょうか。

【津久江委員】 
 池上先生のおっしゃるとおりで、伊藤(哲)先生がおっしゃるのと池上先生のを総合
しますと、非常にむだになる可能性があるのです。例えば、先生の病棟に措置入院の患
者さんが今何人いらっしゃいますか。

【伊藤(哲)委員】 
 措置だけいいますと、年に3人くらいです。

【津久江委員】 
 3人で1つの病棟をつくらないといけないことになるのですか。

【伊藤(哲)委員】 
 そういう意味ではないです。これは、そのほかに医療保護入院で急性期治療の患者さ
んもそこに一緒にやりますので、私どもがあげた5つのあれで、それは混合して入る病
棟がありますから。

【津久江委員】 
 それを全部混合にするわけですか。

【伊藤(哲)委員】 
 混合というのは、措置入院の入るところに救急医療で入る患者さんも入ってきますの
で、措置入院だけの病床を例えば50床を持つということは全く想定しておりません。
 要するに、手厚い医療を必要とする患者さんは、例えば覚醒剤の方も入るでしょう
し、そういう意味で病棟を一つ構成する。そのときには16対1にしなければならないだ
ろうという意味です。

【津久江委員】 
 それは現場の実際の苦労を先生ご存じないので、措置入院の患者さんであって覚醒剤
の患者さんもいらっしゃるし、それから児童・思春期で非常に難しい行為障害の患者さ
んもいらっしゃるし、それをごった混ぜの一つの病棟で治療しないといけないというこ
とになるわけでしょう。

【伊藤(哲)委員】 
 全部ごった混ぜということではない、児童は別です。これは当然のことだと思いま
す。

【津久江委員】 
 薬剤とシンナー、覚醒剤あるいは措置患者、移送患者、それは一緒にするわけです
か。

【伊藤(哲)委員】 
 多くの病棟では現実にもうそうなっているのではないでしょうか。

【津久江委員】 
 先生の特に5つの病棟をということに固執しないわけですね?

【伊藤(哲)委員】
 全部別々の専門病棟を、これは覚醒剤病棟だとか、これは応急入院患者さん専用病棟
だとか、そういうことを言っているわけではなくて、実際には手厚い医療を必要とする
患者さんがある病棟に入ってくるということですから。

【津久江委員】
 その病棟にということですね。
 そうしますと、この3ページの一番上の○にある「旧法云々の総合病院の合併症に」
という、合併症一言でこだわるのが私はおかしいと思うのです。あるいは民間病院が手
に負えない患者さんは、もちろん合併症も入りますけれども、いろいろなコウソウ病院
としての機能を持つならば16対1の医師が必要であるというふうに私は表現すべきでは
ないかと思うのですが。

【伊藤(哲)委員】
 私もその辺は津久江先生に少し賛同するところがあります。例えば16対1の総合病院
の病床をつくっても、救急指定も受けていないということであれば、確かに先生がおっ
しゃるように、「本当に手厚い医療を必要とする患者さんだけの病棟であればわかるけ
れども」というご意見だと思いますけれども、ある程度、こういう手厚い看護と医師の
配置をする以上、それに見合った医療に切り換えていかなければ、津久江先生のおっし
ゃるような問題はあると思います。

【津久江委員】
 だから、それが政策医療ですね?

【伊藤(哲)委員】
 政策、どういう言葉を使うか知りませんけれども、今、手厚い医療を必要とする患者
さんをきちんと引き受けるという前提があるのだろうと、私はこの文から……。

【津久江委員】
 そうしますと、合併症を一言で括るのは非常にラフではないかと私は思います。

【西島委員】
 よろしゅうございますか。
 ここの言葉は「合併症に対する役割も」という“も”ですから、これ一言で話してい
る話ではないと思うのです。“も”という言葉が非常に大きく生きてくると私は思いま
す。

【吉川委員長】
 どうぞ、金子先生。

【金子委員】
 論点が多少ずれるかもしれないのですけれども、確かに総合病院を評価していただく
のはありがたいですが、医師の配置基準のときに、看護婦さんは病棟ごとにちゃんとい
るかどうかというのを算定するのですけれども、医者は、病院全体で“どんぶり勘定”
しているので、一生懸命、我々は主張して、内科や外科等、他診療科と同等の配置基準
を求めているわけですが、それは我々の努力によるものであって、法的には定められて
いないのです。
 ですから、ぜひ精神科の病棟も他の診療科と同等の算定ができるような何かしらの手
当を考えていただきたい。それは今回のマターではないのかもしれませんけれども、通
知・通達等の中で考えていただければと思います。

【吉川委員長】
 手当というのは経済的な意味ということではなくて?

【金子委員】
 算定方法ということです。

【吉川委員長】
 「法的な」ということではないにしても、規定みたいなもので手当をしろということ
ですね?

【金子委員】
 そうです。

【吉川委員長】
 それはご意見として承ります。
 ほかに何かございますでしょうか。どうぞ。

【池原委員】
 先ほどの基本的な考え方のところで申し上げたこととの関連なのですが、この◎のと
ころですけれども、せっかく議論が落ちつきそうなところでまた申し上げて申しわけな
いのですが、表現として、ちょっと読みますと「総合病院や大学病院に患者16人に1人
の医師の配置基準を求めているが」というのが上の○についての言及で、この“が”と
いうのがなかなか意味の深い“が”だと思うのです(笑)。
 「求めているが~措置入院患者等の政策的な役割を担う病床などについては~見直し
を行っていくことが求められる」ということで、前置きの「求めているが」というの
は、そちらで16対1にするのだから、16対1という方向で見直しを行った方がいいので
はないかというニュアンスに読めるなというふうに思っています。そういう意味でとど
めておくのか、あるいはもう少ししっかり議論した方がいいのか、あまりご意見が出な
ければそれでもよろしいかもしれませんが。

【吉川委員長】
 ちょっと言葉の問題みたいに感じるようなご意見ではございましたが。

【池原委員】
 もうちょっと申し上げると、さっき申し上げましたように、見直しについてのもう少
し具体的なイメージといいますか、人員配置をいつぐらいまでに、どれくらいにするの
かというあたりまでは現状では難しいのか、それともできるのかということです。

【吉川委員長】
 わかりました。私の方の理解がちょっと悪かったようです。池原先生が冒頭にお話に
なられた見通しですね。アクションプログラムという表現でお話しになられましたけれ
ども、そういうものもここの中に書き込んでもいいのではないかということとしてお伺
いすればよろしいですね。
 その辺のところはどうでしょうか。何か具体性の高い数値目標みたいなものを考える
ことはできるでしょうか。

【伊藤(哲)委員】
 具体的な数値目標は、先ほど4万床とかという話が出ましたけれども、それはあまり
こういうところに公的に載せる数字としては根拠が弱いということはよくわかります。
 そこで、今、池原委員が指摘されたことですが、「今後は」のところですね。「精神
病床の大部分を占める単科精神病院についても、きちんとこういう配置基準を適正にし
ていくのだ」というふうに、総合病院はやったけれども、単科精神病床については医師
に関しては従来どおりですね。むしろ単科の方が措置とかさまざま手厚い医療を必要と
する患者さんが入っている病棟もあるわけですから、今回、それに手をつけないという
ことであれば、そこはきちんと手をつけるべきだというふうに、総合だけになりますと
大部分の精神病棟が手をつけられないという実態が残るわけですので、そこのところを
明確にわかるようにしていただいた方がいいと思うのですけど。

【吉川委員長】
 単科精神病院という表現が正当かどうか別にしまして、一般的に精神病院と言われる
ところにも、次第にこうした大きな流れが及んでいくということ、それはそれなりに理
解はしていると思います。従来どおりでいいのだというふうに精神病院側が考えるとい
うことではないことは間違いないと思います。それは明らかに時代の流れでございます
ので、そんなことを考えているとは私は信じませんし、そのとおりにいくとは私は思い
ません。
 ですから、やはりこれからは新しい考え方の中で精神病院も変わっていかなければい
けないということも明らかでございますで、そういう傾向にあることは間違いないと思
っています。
 その上で、今、お話になられたことで、「単科精神病院」という表現ではなくて、む
しろこうしたことを実現するには一体どれくらいの時間が必要なのだろうかという、期
間として何か設定すべきものがあるならば、例えば今後何年くらいの間にこれを実現し
た方がいいのではないかという、そうしたことをこの中に書き込むことが可能かどうか
というふうに考えさせていただきたいと思います。
 池原先生、そんなふうに考えていいですか。事務局の方でいかがですか。そういうよ
うな表現は、こういうものの中に書き込めることかどうか。それは、いずれにしても、
公衆衛生審議会の中でまた議論していただかなければいけないことでございますけれど
も、この専門委員会の議論としてそういうことがあるという、その辺のところはいかが
でしょうか。

【重藤補佐】
 何年という具体的な根拠なり、何年までにこういうのをするというのは、私もいろい
ろ資料等調べて、一体何床くらいやってどうするということになりますと、需給予測と
かなかなか難しいものがありますので、何年と区切るのはなかなか難しいだろうと。た
だ、何年までに達成ということではなくて、次の見直しまでに、また再度その状況を踏
まえて検討するとか、そのくらいであれば書き込めるのではないかと思いますが、何年
でプログラムして、こうするのだというのはなかなか難しい。説得力ある数値がなかな
か出てこないのではないか。
 ただ、次の見直しまでにもう一度この状況を踏まえて見直すと。要するに、見直しま
でにもう一回しっかり見てみるということではいけるのではないかと思います。

【吉川委員長】
 それだとすると、第4のところにまとめさせていただいております「今後の計画をど
う立てるか」。21世紀を見越した検討をきちんとしなければいけないということにまた
集約されるのかもしれません。
 もしそうであれば、「次の見直し」という言葉を入れるかどうかは別にして、やはり
「見直しをしていかなければいけない」という努力目標をここで書き込むことで、その
後は21世紀ということで、一番最後のところで、もう少しその辺のところを膨らませな
がら書き込むということにさせていただきます。

【池原委員】
 質問なのですけれども、専門の研究者の方も委員に含まれていますので、もしその辺
について何か参考になるデータとか研究とかされているようですから、ちょっと教えて
いただきたいと思います。

【吉川委員長】
 はい、わかりました。
 ここまでいろいろと資料を出していただいて、今も重藤さんが言われたのは、その資
料を引っ繰り返しても、期日というところまではなかなか数字の上で出てこなかったと
いう解釈だと思いますけれども、伊藤(弘)先生、何かご意見いただければ。

【伊藤(弘)委員】
 そのとおりでありまして、第1回に提出いたしました資料というのが、私の知る限
り、現在検討できる学術的な根拠ではないかというふうに考えております。ですから、
それも踏まえて、重藤補佐がそのようにおっしゃったのだと思います。

【吉川委員長】
 はい。竹島先生。

【竹島委員】
 私の方のデータで見ますと、1人の患者さんが入院して退院するまでの平均的な期間
が73日程度というような結果が出ております。それから、月間の入院患者さんが約3万
人と。そうすると、年間の入院患者数は3万掛ける12で36万。73日で退院するならば、
入院に対応する病床は36万の大体5分の1という数になります。
 ただ、これの中には比較的病状の軽い患者さんであったりする方も含まれております
し、重症の患者さんも含まれております。それと、任意入院患者であればすなわちケア
が手が薄くて済むという問題でもないというようなことがありますので、そのあたりか
らいろいろな計算をしていくことができるのではないかと考えております。
 ただ、問題はこちらに書いてありますような、「機能分化の実態に即して」という考
え方だけでいいのかという問題があります。例えば、僻地等の問題もありますし、その
ような地域において適切な医療確保をするためのそういった地域精神医療という政策を
その中にどういうふうに導入していくのか。それは、ただ区分を決め、そこに数を張り
つけるというだけの問題ではないように思います。

【吉川委員長】
 わかりました。どうぞ。

【池上委員】
 そういった計算する際にも重要になってくるのは、これは病床とか患者単位ではなく
て、あくまでも人員配置というのは、先ほど総合病院の場合は病院単位と言われました
けれども、少なくとも病棟単位に考えないと病床単位というのはあまり現実的な話では
ないので、「病床」という表現を「病棟」とした方が……。
 今後の計算や見通しを立てる上で、病床というのは2つのベッドでも3つのベッドで
もそこに医師を張りつけるというのはちょっと想像しにくい状況ですので、例えばここ
にあります「積極的な医療を提供する病棟」「措置入院患を入院させるなどの政策的な
医療を担う病棟」というふうにされて、それを根拠に今後計算されないと、措置患者な
どだけを取り出して、それを根拠に1割とか2割ということをすると、いろいろと波及
効果は適切に把握できませんし、また人員配置を考える上での基準は少なくとも病棟単
位が適切ではないかと思いますので、いかがでしょうか。

【吉川委員長】
 先ほどの津久井先生のご意見とも一部重なるところだと思いますけれども、課の方と
しては表現としてはそれでもよろしゅうございますか。

【重藤補佐】
 医療法上ということで、精神病床、結核病床という“病床”で規定していますので、
その並びで書いたのですけれども、池原先生のご趣旨もわかりますので、ちょっと書き
方を工夫させていただいて、一般的に病床の種別を言うときには病床として、計算のと
ころではそれをわかる形で、“病棟”という表現で何とか工夫してみたいと思います。

【吉川委員長】
 これは法律的にこれまで使ってきた用語ということでございまして、内容的な意味で
言っているわけではないと思いますので、そんな話になるのかもしれません。

【竹島委員】
 追加なのですが、ただ現在の数というところで勘定して考えていいのか。現実に精神
科入院治療に対するニーズがいろいろと変わってきておりますので、将来に対する予測
ということも踏まえて考えていく必要があるのではないかという気いたします。
 そういった意味では、過去のことに基づけばこういう数になるけれども、現在の新た
な入院患者さんに対する医療のニーズとか、今のところ満たされていないけれども地域
の方から求められていている分、そういったところについてはもう少し慎重な考え方を
する必要があるのではないか。
 ですから、あまりぎりぎりいっぱいのような考え方をしてしまうと、将来にマイナス
を残してしまうのではなかろうか。その点、もう少し冷静にいろいろな角度からとらえ
てみる必要があるのではないかと考えております。

【伊藤(哲)委員】
 今の◎のところの書き込みの問題なのですが、先ほど例えば病床数の設定とか時期の
設定は難しいという、それはそのとおりわかるのですが、ここに書くべきかあるいは最
後に書くべきか迷うところですが、時期を含めた目標設定をして、新しい医療需要に応
えられるような、機能分化も含めまして早急に検討を開始すべきであるということを明
確に、目標設定を明確に書き込むべきだと思うのです。しかも、ここで時期の設定がで
きないのはよくわかりますので、次の公衆衛生審議会あるいはもうちょっと別の委員会
が立ち上がるのかどうかわかりませんが、そこでは「時期を含めた目標設定をすべきで
ある」ということをはっきり書き込んでいただかなければ、いつまでたっても現状の数
字で計算していくわけですね。今は医者が不足で、10年たっても、20年たってもうまく
実現できそうがないという前提に立ちますと、これはいつまでたっても残りますので、
そうではなくてむしろ手厚い医療をする病床をつくっていくことを促進させるような、
目標設定を定めて促進させるような表現にしなければならないと思います。それをどこ
の項目を書くかはまた議論していただければと思いますけど。

【吉川委員長】
 わかりました。それでは、このところは終わらせていただきます。
 先ほど竹島先生が言われた地域精神保健福祉という、そうした地域活動の進展という
ことを精神保健福祉行政の中では進めておられるわけでございますけれども、ここで病
床そのものの問題ということになりますと、もし書き込むとすれば機能分化の実態とそ
れからこうした地域への実態の進展ということを表現として入れさせていただきなが
ら、医師の配置基準をどういうふうに決めていったらいいのかという流れにさせていた
だこうと思います。
 山崎先生、何か。

【山崎委員】
 医師の数なのですが、年間 200人増加しているというふうに書いたものがあるのです
が、公立病院と民間病院でどういうふうな数で増加しているかという実態はわからない
のでしょうか。

【重藤補佐】
 勤務の公私の別では集計はとっていないかと思います。確認してみますけれども、記
憶ではございません。

【山崎委員】
 民間病院の方では、私の感覚ではほとんど精神科医はふえていないのが現状なんです
ね。というのは、新規の大卒の精神科の先生は開業しますし、あと中堅というか、勤務
して10年くらいの先生も診療所の開業志向が強くて開業するということで、民間病院の
精神科の専門医の先生が非常に少なくなっています。
 あと、もう一つ、指定医の問題ですが、現在1万人指定医がいるという話なのです
が、そのうちの30%は60歳以上なのです。かなり精神科医自体が高齢化してきて、新規
の精神科医の参入がないわけです。そういうふうな実態で考えると、今、伊藤先生がお
っしゃったように、単科の精神病院に16対1を配置するなんていうのは、夢のまた夢の
ような話になりまして、実態に即していないので、精神科医をどういうふうにして養成
するのかという具体的なプロジェクトをつくらないと、16対1というふうな配置には今
後ずっと到達できないと思います。

【吉川委員長】
 山崎先生の一つのご意見といいますか、感想だと思いますけれども、それはそれなり
にいただきます。
 先ほどお話ししました4のところのこれから一体どうするかというところで、今のご
意見の中にありました「精神科医をどう養成するか」ということも、もし議論すること
ができるとすれば、そうしたところでまた議論していきたいと思っています。


(2)看護婦等

【吉川委員長】
 それでは、「看護婦等」についてのところに入ります。
 前回のお話でも、先ほど来お話ししていますように、○のところは一つのデータでご
ざいましてずっと並べさせていただいております。
 その上で、5つ目のところが●になっておりますが、「因みに」と書いてあります
が、ここのあたりがまだ完全に話が決着がついていないところでございます。その次の
○の下、◎のところを新たに加えさせていただいたといいますのは、この前、このとこ
ろで看護婦養成に関してのご意見をいただきまして、精神科医療に看護婦たちができる
だけ参加できるように看護教育の中で考えなければいけないということもありましたの
で、◎で中に入れさせていただいております。
 いかがでございましょうか。どうぞ、津久江先生。

【津久江委員】
 これは、第2回目に私が既に資料を提出しまして、日精協千二百十何病院のデータの
達成率をお話ししましたけれども、今回もう一度提出しております。山崎先生と同じ名
前で提出しておりますように、5対1をクリアする場合で、2割達成しておりません。
それから、病院数にすると 211病院、標欠病院が出る。4対1ですと 455病院、39%、
約4割は達成できない。それから、3対1になりますと、これはもう問題ならないわけ
で、73%達成できないという、 851病院の標欠病院が出る。
 前回も私が言いましたように、一般病院において3対1にした場合の全日病のデータ
で2割が達成できないというデータがありますけれども、それと全く同じ努力をしたと
しても、5対1が限界ではないか。つまり5対1で2割達成しないわけですから、それ
が日精協としてはぎりぎりの線ではないかということを再度主張しておきます。

【吉川委員長】
 ありがとうございました。どうぞ。

【末安委員】
 今のご意見は本当にごもっともだと思うのですけれども、先ほど竹島先生もおっしゃ
ったように、あるいは山崎先生がさっき病院の精神科の専門医の先生方の離職の問題も
お話しになりましたし、あるいは前回西島先生が看護教育との関係のこともおっしゃい
ましたけれども、看護者にとってどうやって魅力ある職場にするか。それから先ほど来
機能分化の問題も出ていますけれども、この委員会の本論ではないということですが、
単科精神病院でもその名前がふさわしいかどうかというご意見が座長からありましたけ
れども、民間の精神病院の中でも合併症医療などに相当苦戦して、精神科医の先生や看
護者が特に僻地、離島の病院がそうだと思いますけれども、孤軍奮闘しているところも
たくさんありまして、基準として人がつけばそこに人を集めることは次の努力としてあ
る。しかし、人を確保すること自体が認められない状況がある中で、どうやってその人
を確保していいケアを提供すればいいのかという議論が、私などが地方の病院などに行
っているとあります。
 ですから、現状追認というのは最も妥当な線だということを理解した上で、あえて年
次計画で1年ごとに、国の責任という問題もあるかもしれませんけれども、この委員会
として年次計画というふうに単純化できないかもしれませんけれども、日本の国の精神
障害者の人たちもしくはそのご家族、あるいはこれから病気になるかもしれない人たち
が、精神病院というのは安心してかかれる場所だということを、我々働いているものが
示せるようなものをつくっていく必要があるのではないかというふうに私には思いま
す。
 今回、委員会の間がちょっとあいたものですから、イギリスは激変しているという噂
がありましたので、国営からトラストになって病院がどういうふうに変わっているのか
というのを駆け足で見てきたのですけれども、トラストになったことで相当経営的に苦
戦しているのですね。今までイギリスは国営だから別ものだというご批判もありました
けれども、実際に現場で働いている看護者の人たちと意見交換したり、ドクターと意見
交換してまいりましたけれども、精神病が全部治らないという意味ではないのですが、
単純に治らないとか、薬の治療がなかなか困難な患者さん、あるいは痴呆の関係の患者
さんたちには人で向かうしかないと。我々の経験で到達しているところはそこだという
のが異口同音におっしゃられていた内容でして、その成果が今すぐ形にあらわれるかど
うかわからないですけれども、やはりせっかくこういう委員会が今立ち上がっているわ
けですので、この委員会が誇らしげにいったら一部批判を受けるかもしれませんけれど
も、どこに出してもおかしくない結果を出していただけるようにしていただきたい。そ
のためには最大限看護者を、我々看護の団体も日看協、日精看もあるいは厚生省看護課
にも努力していただくことになりますけれども、このあとたくさんの人が精神科で働け
るように努力していきたいと思いますし、単に努力ではなくて、具体的な目標をこの後
立てたいと思いますけれども、できるだけ多くの看護者が精神病院で働けるような方向
性をここでお出しいただきたいというふうに思います。

【吉川委員長】
 ありがとうございました。

【津久江委員】
 追加しておきます。
 医者の数、看護婦さんの数だけで、それが多ければ多いほど平均在院数が減るのだと
いうような意見も前に出たように思うのですが、今のご意見も看護婦さんの数が多けれ
ば世界に誇れるのだという……。
 そうではなくて、今の医療はチーム医療ですから、看護婦さんでできない、あるいは
違う職種のPSWとかCPとかOTとかETとか、そういう他の職種も非常に必要にな
ってくるわけでございまして、ただ看護婦さんの数を上げればそれで事が足りるという
のは、少し私は今の考えから遅れるのではないかと思うのです。
 そういう意味で、私は5対1でいいというわけではないです、5対1しかできないで
す。それプラス、そういった他業種を加えるということで、看護婦さんの数をこれで補
うという意味では決してございませんで、社会復帰に向けて治療するならば、そういう
他の職種の人の方がもっと有効であり、有能であるということを付け加えておきます。

【吉川委員長】
 ありがとうございました。

【末安委員】
 論争するつもりはありませんので、先生のおっしゃるとおりだと私も思います。私も
地域の仕事もさせていただいておりますので、そういうことは十分理解しているつもり
ですけれども、精神病院に入院されている患者さんが最初に会うのは医師であり、看護
婦で、もちろんそこにケースワーカーがいる場合もありますけれども、一番長く付き合
うのは、人が入れ代わるにしても、医師、看護婦だと思うのです。精神病院は医師、看
護婦にとっては主戦場だというふうに私は理解していまして、さっき合併症で孤軍奮闘
している病院もたくさんあるのだということをお話ししましたけれども、本来、すぐ診
てもらえれば一番いいのですけれども、診てもらえないときも残念ながらあるのが事実
なので、そういうときに、ちょっと語弊のある言い方ですけれども、患者さんを見殺し
にしないために、医師と看護婦が充実していることが重要だと言っているので、医師と
看護婦が全部やればいいと言っているのではありません。それはまた別の問題だという
ふうに理解していますので、一応、付け加えておきます。

【吉川委員長】
 診療に直接携わっている者であれば当然のことをお互いが今主張しているということ
になります。5対1以上にはなかなか充実できないだろうという現実から出発したお考
えと、自分たちが医療を受けるという立場に立ったときに、本当にこれでいいのかと考
えながら、自分が受けられる医療をどうやって達成していくかという、そうした視点か
らご意見をいただいているわけでございまして、どちらもそれなりにご意見があると思
います。

【西島委員】
 今までの議論の中に多少かかわるのだろうと思うのですが、一番下の「関係者の努
力」という中で、私は前回「厚生省の責任」ということを申し上げたと思うのですが、
厚生省は具体的にどういうことをお考えになっているのか。

【松本課長】
 なかなかお答えするのは難しいという感じがいたしますけれども、関係者と申し上げ
ますのは、当然、厚生省もそうですし、そういう教育関係者あるいは日本看護協会、あ
るいは日精看等とも手に手をとってやるべきだと思います。
 差し当たりまして、国として何をするのかということになりますと、看護婦の養成課
程におきまして、精神科看護実習などを通して精神科の看護の重要性、あるいは重要性
はよくわかっていらっしゃるので、看護の学生さんはじめ皆様が考えている以上にもっ
と魅力的ですよということを伝えたり、あるいは就職に当たりまして精神科の医療機関
の情報を学生に十分に伝えるということ。同時に、伝えるからには精神科の病院の方か
らもそういう情報を提供していただくということがあろうかと思いますけれども、精神
科の医療機関の情報を十分提供して、看護資格をとった方が「他の内科とか外科ではな
くて、精神科に行きたい」という感じにしていただくような格好にする。あるいは就職
後のよりよい職場環境を整備することも必要でしょうし、そういうことがより魅力的な
職場づくりになるでしょうし、看護婦の離職防止ということになろうかと思います。そ
ういうようないろいろな段階で、関係者と協力しあいまして、何ができるかということ
を、すべてが同時にできるとは思いませんけれども、国としてやるべきところ、あるい
は関係者にご努力いただけるところで進めていきたいという趣旨でございます。

【西島委員】
 考え方としてはだれでも言える考え方だろうと思いますが、具体的に言いますと、例
えば今いろいろな形の奨学金というのがございますね。民間のそういうところへ何年間
か勤務すれば奨学金を免除するとか、そういうものも一つの政策的なものだろうと思う
のです。そういう具体的なものを出していかないと、いつまでたってもこれは進まない
と思うのです。
 今、現在、教育している看護学校の教員はなかなかそこまで考え方が変わらないわけ
ですから、この人たちを変える。でも、実際には恩恵を受ける学生たちを向けるために
はそういう施策も必要かなと思います。

【津久江委員】
 西島先生のは高邁な議論でございますが、私は現場の診療報酬で6つの病棟が既に精
神病院にはあるわけですね。急性期治療病棟は伊藤先生が好きですからお話ししますけ
れども、急性期治療病棟のAとBというのは、Aは看護婦さんが 2.5対1です。Bは3
対1です。そうすると、診療報酬上、Aの方がいいかというと、確かにグロスとしては
いいですけれども、人件費率は逆なのですね。そういう非常にちぐはぐな診療報酬の一
番問題点があるわけです。だから、そういった診療報酬上に評価されていないところは
非常に努力している、みんな努力しているのだけれども、それは評価されていないとい
う現実があるのです。これは医療法ですから、診療報酬とは関係ないかとも思いますけ
れども、その辺のぎくしゃくとしたところも直していただかないと信用ができない。い
くら目標値をつくっていただいても、それは今までの経過からいって信用できないとい
うことが現実としてあります。

【吉川委員長】
 ありがとうございました。それぞれいろいろな立場からのご意見でございます。山崎
先生、何か。

【山崎委員】
 きょう提出させていただいた資料なのですけれども、5対1で足りない人数が約4000
人、4対1ですと約1万2000人、3対1ですと3万1600人。看護婦の増加は、ここに書
いてあるように年間2000人しかふえないという状態ですから、ほとんど全部民間の精神
病院に勤務していただいたとしても、3対1にするには15年かかるというふうなアバウ
トな計算ができるわけです。
 それと、あと看護婦の養成というのがどれくらい行われているかというと、准看の養
成校は 411校ありまして、2万1600人養成ですね。それと高等学校の衛生看護課という
のが 131校あって、7450人です。したがって、准看の養成の合計が2万8300人、それと
高看の養成校が1036校ありまして5万2700人。8万人の看護婦さんが年間養成されてい
るわけです。8万人の看護婦さんが養成されているのに精神科には差引2000人しか入っ
てこない。 2.5%しか入っていないわけです。したがって、これが非常に大きな問題だ
と思います。
  それと、問題の一つなのですが、公私の格差というのが非常にあります。これは日精
協の平成10年の総合調査で、看護婦さんと准看護婦の給料と北海道立緑ケ丘病院の給料
を比較させていただいたのですが、若干平均値の年齢で違うのですが、道立緑ケ丘が看
護婦さんが基本給35万7066円なんです。民間の病院が21万8800円、13万8266円違いま
す。それと、ボーナスとかほかの手当を含めますと、道立緑ケ丘が59万5791円です。民
間病院が39万5900円ですから、合計で19万9841円毎月違うわけです。准看護婦さんが道
立緑ケ丘が基本給が40万2107円、民間病院が19万1700円です。21万407円違います。諸
手当込みですと、道立緑ケ丘が67万1134円で、民間病院が34万4900円です。32万6243円
違います。
 こういうふうに給与の実態が全く違うわけです。では、伊藤先生のところはどういう
ことかというと、医業総収入が12億4000万で、人件費が18億です。医業収入が12億4000
万で、人件費が18億というふうなことで累積の欠損金が72億円という大きな数字なので
すね。
 民間病院ならば、こういう病院はとっくにつぶれてしまうわけです。公立病院だった
らそういう不良債権があってもつぶれない、しかも看護婦さんが高給だということだっ
たら、どんどん民間病院の看護婦さんは公立病院の方に吸い上げられてしまうわけで
す。その結果として「民間病院の精神病院は看護婦さんが足らないぞ」というふうな言
い方をされるのですが、この辺の問題をきちんと整理して看護婦の問題を考えないとい
けないと思います。

【吉川委員長】
 ありがとうございました。深刻な問題ですけれども……。

【伊藤(哲)委員】
 これは本題から外れるのでここでは議論したくないのですが、どういうデータに基づ
いているか、ちょっとまた点検させていただきます。議論はここではしません。この問
題は本質的な問題と違うと思うからです。
 もう一つは、先ほどから看護婦の確保の問題に移行しているわけですけれども、精神
科を希望する看護婦さんが少ないのは、教育の問題はもちろんありますけれども、精神
科が働きがいのある職場になっているかどうかということが大きな問題になっているわ
けです。
 例えば、急性期治療病棟というのは非常に忙しい病棟でありましょうし、私どもの病
院は急性期治療病棟をとっていませんけれども、慢性期の患者さんが入っている病棟と
割合に回転の速い病棟があります。やはり、看護婦さんは忙しく大変だけれども、急性
期の患者さんが多く入っている病棟の方が生き生きとしてやりがいがあるということで
喜んでいただけます。
 そういう意味で、看護婦の確保の問題は、やはり治療効果がある、やりがいのある看
護配置、しかも平均在院数 400日というような病棟で看護婦さんが意欲的に働けといっ
てもなかなか難しい。やはりメリハリをつけないというところに問題が一つあるのだと
いう認識を、看護婦確保に当たっても、付け加えるべきだと思います。それが1点で
す。
 本論から少し外れてきていますので、看護婦さんの配置が本来の3対1とか、4対1
という数字が載っているわけですから、その問題に戻していただかないと議論が終わら
ないのではないかと思います。

【山崎委員】
 今のデータの出典は、『地方公営企業年鑑』の平成10年度の資料です。公民の問題
は、うちの病院などでもそうなのですが、准看とか正看とかいうのを一生懸命養成して
いるのですけれども、必ず何年かしますと、その地域の総合病院に吸い上げられていっ
ちゃうのですね。ここ10年では15人くらい正看が転職しています。
 その転職の大きな問題は、病院の環境というふうなことをおっしゃるのでしょうけれ
ども、そういうことプラス給料の問題は非常に大きいのです。したがって、給料の問題
をきちんと考えてしませんと、民間病院の方から総合病院なり、公立病院の方に看護婦
さんが移動していく実態は永久に変わらないのです。

【吉川委員長】
 ちょっと待ってください。
 議論はそういうところからも考えなくてはいけないということももちろんあるのです
けれども、この辺のところで山崎先生のご意見を打ち切らせていただきます。そして、
この議論に関しましては、ちょっと申しわけありませんが、いったんここで打ち切らせ
ていただきたいと思います。
 看護婦等のところについて、今も伊藤先生からお話が出ましたけれども、患者さんの
数と看護婦さんの比率の問題ということで、少なくともある種の決定あるいは結論を出
していかなくてはいけないという、この専門委員会の役割から考えて、そこらあたりの
ところに焦点を絞ったご意見をいただいて、あと何分もありませんので、その辺のとこ
ろを考えてご意見をいただければと思います。

【津久江委員】
 私は先ほど5対1というふうに言ったのですが、5対1も付け加えておいていただき
たいと思います。これは3対1と4対1しか出ていないので。

【吉川委員長】
 5対1の何ですか。

【津久江委員】
 5対1の場合は何%なのかというデータを付け加えておいていただきたい。

【吉川委員長】
 データをちゃんとこの中に出しておいてほしいということですか。わかりました。
 どうぞ。

【池上委員】
 新たに加わったところですね。「因みに」というところで、これは2行目に「平均的
に看護婦等を配置したとすると」という、この下りですけれども、これは見方によって
は「平均的に配置するべきである」ともとれる表現であって、これまでたびたび出てき
た機能分化ということに逆行することを前提とした計算になるのではないかと思います
ので、この「因みに」という新たに加えられた、これそのものが適切かどうかという気
がいたしまして、これは今後全体にふやす必要はあるのですけれども、メリハリがある
ふやし方が必要ですし、また医療スタッフの中における看護スタッフの比重が病棟の性
格によって違ってくると思いますから、それを「平均的に配置したとすると」というこ
とで、金太郎アメみたいな病棟を前提とした将来見通しということをここで触れるのが
適切かどうかと。

【吉川委員長】
 決してそういう意味ではなかったと私は思いますけれども、なるほどそういうふうに
読めるということであれば、文章は少し練らしていただきます。

【西島委員】
 もう一つだけよろしゅうございますか。
 今、看護婦の基準等の話が出ているわけでございますけれども、やはり議論が診療報
酬上の配置基準と医療法上の配置基準があるところではミックスされたりしていると思
うのです。
 現実的に、急性期治療病棟とか精神療養A、Bとか、こういうのを見てみますと非常
にとりにくい。本来であれば機能分化したいのだけれども、非常にとりにくい部分もあ
ると思うのです。そういう意味では、健康保健法の大臣告示を見直して、やはりそうい
うような専門的なといいますか、そういう病棟がいろいろな病院がとりやすいような、
そういう環境もつくっていく必要性があるだろう。そういう意味では、健康保健上の大
臣告示の見直しも必要かなと。
 そうしますと、先ほどからの議論の中で機能分化がかなり進んでいくのではないかと
いうふうに思います。

【吉川委員長】
 ありがとうございました。それは、ここに直接記入するかどうかということではなく
て、ご意見としてまた考えさせていただきたいと思います。
 それでは、これでいったん終わらせていただきます。薬剤師のところに進ませていた
だきます。


(3)薬剤師

【吉川委員長】
 薬剤師の方は、前回のご意見のままといっていいと思いますが、そのままにしてござ
いますが、特別ご意見がなければ、これは通過させていただきますが、よろしゅうござ
いますでしょうか。


「4.おわりに」

【吉川委員長】
 それでは、薬剤師のところは終わらせていただきまして、最後の「おわりに」と書い
てあるところでまずご意見をいただいて、その上でまた最終的にご意見をいただきま
す。
 「おわりに」というところでいかがでございましょうか。どうぞ。

【竹島委員】
 先ほど基本的な考え方のところで、児童・思春期の精神病床のお話がございましたけ
れども、私は児童・思春期の精神病床だけを一定量整備すれば、それですべてが解決す
るというものではないと思います。やはり一般精神医療との連携とか分担協力というこ
とを同時に考えていかなければならない。それは、結局、地域精神科医療のシステムの
問題に入ってまいりますので、「したがって」の文章に、何らかの形で「システム」と
いった文言を入れていただけたらと考えております。

【吉川委員長】
 できるだけ具体的にお話をください。どこにどういう文章を入れるかというような。

【竹島委員】
 「精神病床の機能分化のあり方と地域精神科医療におけるシステムについて」という
ような形でいかがでしょうか。

【吉川委員長】
 さっき私が別のところでまとめたような形ですね。

【竹島委員】
 そのような形です。

【吉川委員長】
 わかりました。
 当然のことながら、精神病床の問題というのは、病床だけにとどまらず、先ほどから
お話している機能分化というものを今後考えなければいけないし、その機能分化だけ
で、すなわち精神病院だけで何かをやるということではないことはもうはっきりしてい
るわけで、地域システムとどう連動するかということで、その辺のところにいきます
と、これまでの精神保健福祉行政というのは、こちらの方に大きく傾いてやってきたこ
とでございますので、これらは当然そこのところで考えられなければいけないと私は考
えています。
 ただ、ここではまだ精神病床の問題ということなので、精神病床の方にウエートを置
いた形で議論していただいています。
 いかがでございましょうか。どうぞ。

【池原委員】
 しつこいようで申しわけありませんけれども、最後の◎のところですが、先ほど事務
局の重藤さんの方からも少しご意見というか、アクションプログラム的なものに近づけ
る意味でということで、次回の見直しまでの間に一度見直しを行うというようなことを
伺っていますので、もう少し具体的なことを書き込んでいただくということでよろしい
ですか。

【吉川委員長】
 それも先ほどちょっとお話が出ました。次回という表現が先ほど特別ありませんでし
たけれども、恐らく前回だったと思いますが、私の方から申し上げましたが、今までも
法律その他は大体5年後くらいで見直しをする、そうした傾向にありますので、その辺
のところは次回に全部変わるという意味ではありませんで、次回までにまた検討して、
次回の見直しのときには内容的にまた再検討する、修正することができるようにという
意味だと思います。池原先生がおっしゃるのはそのままお受けしたいと思います。

【竹島委員】
 先ほどの看護体制の4対1、5対1とかいう話に含まれるのですが、結局、長入院患
者の療養のあり方という問題が、そこに一緒に引き込まれて議論になっていってしまう
ような気がいたします。そういう意味では、「したがって」といった前の文のところ
に、この「長期入院患者の療養のあり方の問題の議論の促進」といったことがやはり必
要なのではないか。そのことを入れていただけたらと思います。

【吉川委員長】
 今、「おわりに」というところで、今後の問題としていろいろとどういうことを考え
ていったらいいかということを含めてお話をいただいています。「おわりに」というと
ころは少しぶっきらぼうな文章が並んでおりますけれども、その辺のところを内容的に
膨らませながら考えていきたいと思います。
 それは、今後の問題として非常に重要だというのは前回のときも私がお話し申し上げ
たようなわけでございますので、この専門委員会の結論といいますか、今後の方向とし
てこういうことをということを公衆衛生審議会に言うべき内容としてまとめておきたい
と思っています。ほかに何か、どうぞ。

【金子委員】
 今ほどの竹島先生の意見と同じなのですけれども、2つ目の○の「21世紀」という言
葉ですが、来年から21世紀なわけですから、早急にということですね。5年というめど
が提示されましたが、なるべく早めに検討を開始すべきだと思いますし、もう一つは、
この「おわりに」という部分はこの報告書のまとめですから、非常に大事な部分だと思
いますので、ぜひ「良質な精神科医療を提供するために」というような目的をきちんと
入れていただきたい。そのための設備構造、人員配置ということを検討していくのだと
いうことが必要だと思います。

【吉川委員長】
 いかがでございましょうか。

【伊藤(哲)委員】
 よろしいですか。
 次回どういう形になるかということとも関係するのですが、全体の流れから見まし
て、私は例えば医師はなかなか難しい問題があって、早急には16対1にはすぐにはなら
ない、総合病院は別としましてということですから 看護婦さんについてはせめてきち
んと配置すべきだという主張をずっとしているわけです。今回、看護婦さんについても
池上委員がおっしゃったように、メリハリがないからこういう薄められた形になってい
るわけですから、この問題についてはきちんと専門委員会で、やはり手厚い看護を要す
る患者さんは確かにおりますし、一般の病床よりも精神病床は人は大切だという観点か
らも、一般病床よりも低い人員配置にしてしまうことはどうしても納得できない。これ
はメリハリがないからだと思いますけれども、その点については、ぜひきちんと次に生
きるように、これは本当に問題な報告書になってしまう、私の委員としての立場から言
えば、その点はぜひきちんと整理させていただきたいと思っています。

【吉川委員長】
 わかりました。
 ほかにご意見ございますでしょうか。全体的な点で。
 今、伊藤先生が言われたこと、先ほど私がちょっと議論を打ち切らせていただくよう
な形で看護婦等のところを終わらせていただきましたけれども、それに関して恐らく伊
藤先生、今お話を出されたのだと思います。
 これは決して議論を打ち切ったわけではございませんで、いずれにしてもこの時間の
中ではもう検討が不可能だと私は判断したので、ここはご意見をいただいた形のままで
終わらせていただいたというわけで、あとは薬剤師の問題と今の「おわりに」のところ
で、時間がぎりぎりということだというふうに判断させていただきました。
 いずれにいたしましても、まだこのところで最終的に決着はついていないものは幾つ
もございます。すべての項目にわたりまして、全委員のコンセンサスを得られるという
ことは実際問題として、このことについてはまずほとんど不可能だと私は考えていま
す。したがって、いろいろなご意見はいただきながら、しかしある程度、まとまったと
ころだけはやはり公衆衛生審議会精神保健福祉部会の方にご報告せざるを得ませんの
で、こうした意味での結論は出したいと考えております。
 こうした意見の収斂はございませんけれども、特に中でも今も話が出ましたように、
「看護婦さんの人員配置」ということに関しましては、全くまだ決着は見ていないわけ
でございます。そのことを十分認識した上で、今後の検討の進め方を考えさせていただ
きたいと思います。「看護婦さんの人員配置」に関しましては、今、伊藤委員の方から
もお話が出ましたように、このところにはかなり重要な要素があるようでございますの
で、これらにつきましては事務局を含めましていろいろな先生方からまたご意見をいた
だきながら、できるだけすり合わせていきたいと思っています。
 いわば意見調整をさせていただくということでございますが、そうした上でまた次の
委員会を開かせていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、そのような形で今後進めさせていただきますけれども、これ以降の日程に
つきまして、事務局の方で何かお考えがあるようでございましたら、ご説明いただけま
すでしょうか。最初は9月いっぱいにはというお話でございましたけれども、その辺の
ところはどういうふうになりますでしょうか。

【重藤補佐】
 9月いっぱいにというようなことでお願いしておりましたけれども、まとまらないと
いうことではまた困りますので、そこのところは委員の先生方の意見を聞く期間を十分
とって、日程が延びるということはやむを得ないというふうに考えております。国会の
日程ですけれども、9月21日から始まって12月1日までということですから、その間に
医療法も審議されるということですので、そうした医療法審議もにらみながら先生方の
意見もすり合わせて、何とか一つにと思っております。
 次回の日程でございますけれども、吉川座長が先ほど「委員の先生方とも意見のすり
合わせて」ということでございますので、この場で意見をたたかわせるとまた平行線に
なることも予想されますので、そこら辺を吉川座長と相談しながら、先生方とのいろい
ろ調整も含めて、日程等今後お諮りさせていただきたいと思います。

【吉川委員長】
 よろしゅうございますか。きょうは本当に全員お集まりいただけるというほどのこの
問題に関して関心をかけていただきましてありがたいと思っています。今、お話が出ま
したように、今後の問題に関しましては、それぞれの先生方ご意見がおありになると思
いますし、こういう場で必ずしも十分にご意見をいただくということができないものも
あると思いますので、個別にもまたお伺いいたしながら、お話を進めさせていただい
て、その上で次回の報告書の案を出させていただきたいと思っております。
 ご意見はいつでも私のところにメールでいただいても結構でございますし、また私の
方からも出向いて先生方のところにお話を伺いにまいりたいと思っておりますので、そ
の節はよろしくお願いしたいと思います。

閉 会

【吉川委員長】
 どうも本日はありがとうございました。

                                                                          -了


照会先
  厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課
               (森 内3056)