00/09/06 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会議事録      内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会(第9回) 議事録 厚生省生活衛生局食品化学課 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会(第9回)議事次第 日 時:平成12年9月6日(水)  9:00〜17:45 場 所:中央合同庁舎第5号館12階共用第6会議室 1.開会 2.資料確認 3.議題   (1)平成11年度 厚生科学研究成果について   (2)その他 4.閉会 〔出席委員〕 伊 東 座 長 青 山 委 員 阿 部 委 員 井 口 委 員 井 上 委 員 岩 本 委 員 押 尾 委 員 黒 川 委 員 紫 芝 委 員 鈴木(勝)委員 鈴木(継)委員 高 田 委 員 田 中 委 員 津 金 委 員 寺 田 委 員 中 澤 委 員 西 原 委 員 藤 原 委 員 眞 柄 委 員 松 尾 委 員 安 田 委 員 山 崎 委 員 和 田 委 員 〔事務局〕 西本生活衛生局長、石井食品化学課長、川原生活化学安全対策室長、他課長補佐以下1 0名 〔オブザーバー〕 通商産業省、環境庁、農林水産省、科学技術庁、食糧庁 * *********照会先********** 連絡先 厚生省 生活衛生局 食品化学課(額田) TEL:03−3503−1711(2487) ○石井食品化学課長  ただいまから第9回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会を開催させて頂 きます。  私、7月24日付けで食品化学課長を拝命致しました石井でございますが、最初、司会 をさせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します。  本日は、時間的に大変早い時間からの開催でございますけれども、お集まり頂きまし て大変ありがとうございます。  本日、検討会委員26名でございますが、23名の先生方に御出席頂く予定になっており ます。先生によって、途中で参加されるという方々もいらっしゃると聞いております。  また本日は、本問題、内分泌かく乱化学物質に係る調査研究の現状について把握して 頂くということを目的としまして、関連致します厚生科学研究の主任研究者あるいはそ の代理の方々に、それぞれの分野の研究の成果を報告頂くことになっておりまして、19 名の主任研究者あるいはその代理の方々に、順次、本検討会に参加頂くことになってお りますので、宜しくお願い致したいと思います。  まず、開催に当たりまして、生活衛生局長から一言御挨拶を申し上げます。 ○西本生活衛生局長  厚生省の生活衛生局長の西本でございます。おはようございます。  本日は、大変御多忙中にもかかわりませず、この内分泌かく乱化学物質の健康影響に 関する検討会に御出席を賜りまして、心から厚く御礼を申し上げる次第でございます。  また、諸先生方におかれましては、常日頃より御指導、御協力を賜っておりますこと に、この場をお借り致しまして、併せて厚く御礼を申し上げる次第であります。  さて、内分泌かく乱化学物質問題は科学的に未解明なところが多く、検討すべき課題 が多々ある重要な課題でございます。先生方の御協力によりまして、平成10年11月に は、本検討会におきまして中間報告書が取りまとめられておりまして、厚生省と致しま しては、中間報告書及び最近の国際的な動向を踏まえながら、この問題に対して総合的 な調査研究等を積極的に推進しているところでございます。  本日は、内分泌かく乱化学物質に関連する厚生科学研究の成果につきまして、各主任 研究者あるいはその代理の方々から御報告を頂き、その後、事務局から、最近の国際機 関の取組等についての御紹介をさせて頂くことを予定しております。  先生方からは、最近の動向も踏まえまして、厚生省が今後取り組むべき調査研究の方 向性等につきまして御意見を頂きたく、長時間の会議の予定となっておりますが、何卒 宜しくお願いを申し上げる次第でございます。 ○石井食品化学課長  続きまして、議事に入るわけでありますが、その前に、前回の検討会から、私ども事 務局、人事の異動がございました。食品化学課とともに事務局を担当しております生活 化学安全対策室長が川原に代わりましたので、挨拶をさせて頂きます。 ○川原生活化学安全対策室長  生活化学安全対策室長の川原でございます。どうぞ宜しくお願い致します。 ○石井食品化学課長  それでは議事に入りたいと思います。  座長の伊東先生に、今後、御進行をお願いしたいと思います。宜しくお願い致しま す。 ○伊東座長  それでは、早速スタート致したいと思います。  まず、事務局から配布資料につきまして確認をお願い致します。 ○坂本補佐  事務局の方から配布資料について御説明申し上げます。  本日、先生方のお手元の方に7点の資料を置かせて頂いております。まず、1枚目が 議事次第という1枚紙でございます。それから本日の座席表がございます。それから、 既に先生方のお手元の方に郵送させて頂いたおりましたが、資料1に少々差換えがござ いましたので、本日、再度資料1を配らせて頂いております。また資料2の中、資料2 −2につきましても、ちょっとタイプミスがございました関係で本日差換えの資料を配 らせて頂いております。当日配布資料、新しい資料と致しましては、資料3、資料4と いうものがございます。一番最後に、お手元の方に次回検討会の日程調整についてとい う紙を配らせて頂いております。御予定を確認の上、この紙に御記入をお願い致しま す。本日御予定が確認できない場合には、後日、事務局にこちらの方を送付頂きたく、 そのようにお願い致します。御協力の程、宜しくお願い致します。  資料につきましては以上でございます。 ○伊東座長  ありがとうございました。  それでは、議題1の「平成11年度 厚生科学研究成果について」でございます。  まず、事務局から資料などについて御説明ください。 ○坂本補佐  それでは、議題1につきまして御説明させて頂きます。  事前送付させて頂きまして、本日差換えを配らせて頂きました資料1、それから、ち ょっと大部な資料でございますが、送らせて頂いております資料2が議題1の関係の資 料でございます。  各研究課題の主任研究者の方あるいはその代理の方から、この資料の1の予定表にし たがいまして、それぞれの研究につきまして御報告を頂きます。資料2は、それぞれの 研究報告の要旨をまとめました資料でございます。  各課題につきましては、持ち時間と致しましては全体で15分、そのうち報告の時間を 12分間、質疑応答の時間を3分間ということでお願いしたいと考えております。  一応、学会と同様、ベルを用意しておりますので、10分経過の時に1回鳴らしまし て、12分と15分、それぞれベルを鳴らすことを予定しておりますので、どうぞ宜しくお 願い致します。  なお、昨年の本検討会では、そのとき発表頂きました研究が補正予算に基づく厚生科 学研究の発表であったということもございまして、研究評価のための研究発表会といっ た側面もございましたが、今回の厚生科学研究の評価は、それはそれとして別途行われ る予定もございまして、本日の検討会では、現在の内分泌かく乱化学物質の研究の概況 を把握して頂くということを目的として各研究報告をお聞き頂いた上で、その後、時間 の許す限り、今後の検討課題につきまして御意見を頂くことを予定しております。どう ぞ宜しくお願い致します。 ○伊東座長  ありがとうございました。今回の御報告頂く趣旨は、昨年度とは少し異なると。それ ぞれの研究の評価を行うというのではなくて、この分野の最新の研究状況を把握して、 その後に行う今後の検討課題の討議において、より一層検討すべき事項などについて御 意見を出して頂ければと考えております。  それでは、早速報告頂きたいと思いますが、先程も御連絡ありましたように、10分の 経過でベルが鳴ります。それから3回目のベル、15分経過のベルが鳴りましたら、ディ スカッションの途中であろうとも打ち切りますので、それ以内にやって頂くというこ と、これも担当者としては非常に重要なことではないかと考えておりますので、宜しく お願い致します。  それでは、最初の「内分泌かく乱化学物質に関する生体試料(臍帯血等)分析法の開 発とその実試料分析結果に基づくヒト健康影響についての研究」につきまして、東海大 学の牧野先生、宜しくお願い致します。 ○牧野教授(東海大学医学部産婦人科教室)  伊東先生、ありがとうございました。東海大学の牧野でございます。  早速ですが、スライドをお願い致します。  (スライド)  私どもの平成11年度の厚生科学研究の頂きましたテーマは、今、伊東先生から御紹介 頂きましたように「内分泌かく乱化学物質に関する生体試料(臍帯血等)分析法の開発 とその実試料分析結果に基づくヒト健康影響についての研究」という、前半は分析法の 開発、後半はヒト健康影響に関する研究でございます。分担研究者は、スライドにある とおりでございます。  (スライド)  したがいまして、私どもの研究は、2つに分れておりまして、前半は生体試料の分析 法の開発でございます。検討致しました物質は、ここにございます1から7まで。御承 知のように、ポリカーボネートに代表されますプラスチックの原料でございますビスフ ェノールA、それからポリ臭素化ジフェニルエーテルにつきましては、従来のPCBと同列 の物質でございまして、本邦では初めて検討されたものだと思いますが、難燃剤等に年 間約30万トンの生産があると報告されている物質でございます。  3番目は、御承知のように、化石の燃料を不完全燃焼致しますと生じますベンゾピレ ンでございます。殺虫剤と防虫剤等のクロルデン、パラベン、それから有機スズ、植物 エストロゲンについて検討致しました。  (スライド)  後半は、あくまでもヒトの健康というところに留意致しまして、用いた培養細胞レベ ルの検討は、全てヒト由来のものでございます。その上で、内分泌かく乱化学物質の解 毒、代謝、それから胎児・胎盤系への遺伝子発現の研究というふうにつなげてございま す。  (スライド)  まず最初に、ビスフェノールAでございます。  (スライド)  これは、平成10年の補正の厚生科学研究で、私どもはジエチル硫酸を誘導体化した試 薬を用いまして、0.6 ng/mL という感度で、ここにございますように、ヒトの母乳、臍 帯血、血液、腹水等についてビスフェノールAを測定致しました。その結果は、ここに ございますように、すべて検出外でございまして、検出できませんでした。このこと は、こういう試料中にビスフェノールAが含まれないのか、あるいは、より特異性、感 度のすぐれた測定方法を開発した場合には、やはりこういう試料中に含まれるのか、2 つに分かれますが、私どもは後者の考えに沿い、さらに検討致しました。  (スライド) 本年度は、このビスフェノールAをペンタフロロベンジルと結合させまして、測定の カラムの上では、夾雑物の干渉を受けないところにピークを得られる、非常に感度の鋭 敏な測定方法を開発致しまして、0.1 〜0.5 ng/mL のビスフェノールAが測定できると いう方法を、平成10年度 厚生科学研究の感度の約10倍の測定方法を開発致しまして、こ こにございますのは、その回収率でございますが、回収率もほぼ100.9% ということ で、この方法を用いまして、再び臍帯血、母乳、あるいは母体血につきまして、現在、 測定中でございます。 (スライド) 続いて、PCB と同列であります難燃剤に用いられておりますポリ臭素化ジフェニル エーテルについての検討でございます。恐らく本邦では初めての検討ではなかろうかと 思います。 (スライド) ここにございますように、難燃剤に用いられますポリ臭素化ジフェニルエーテルは、 ややステロイドと似た骨格を持っておりまして、この物質につきまして、魚類あるいは 母乳中について測定、検討致しました。 (スライド) これは瀬戸内海の魚類で、様々な天然あるいは養殖の魚類に含まれている値でござい ますが、今年度の研究で特筆すべきことは、私どもには、約20年前の母乳の保存がござ いまして、80年、 84年、86年、90年と、経時的に母乳をこの物質について測定致しま した。そうしましたところ、例えば80年に0.02、続きまして0.32、0.46ng/gと年を追っ て本物質が母乳中で増加していくというような傾向をとらえまして、今後、母乳のみな らず試料の種類を増やしまして検討し続ける所存でございます。 (スライド) 続いてベンゾピレン、ただいま申しましたように、化石石油の不燃焼によって生ずる ものでございます。 (スライド) ベンゾピレンにつきましては、御承知のように、グルクロン酸を抱合されまして、体 外に速やかに排泄されますが、私どもが初めて着目致しましたのは、その中間代謝物で モノハイドロシキンベンゾピレンは、ここにございますように骨格がステロイドと大変 似ております。 (スライド) 本物質につきまして、エストラジオールを1としたエストロゲン活性を基準にしまし て、本物質について検討致しますと、従来のビスフェノールA等は、エストラジオール の約10万分の1の活性のところにエストロゲンの活性がございますが、本物質、つまり 化石燃料の不完全燃焼によって生ずるベンゾピレンの中間代謝物のエストロゲン活性は このビスフェノールAよりも高いという結果を今年度は得ました。 (スライド) そう致しまして、実際の健常人の尿中でベンゾピレンの中間代謝物を測定致します と、1Lの尿中に3〜5ngという量で測定が可能でございまして、現在、尿のみならず 臍帯血、母乳、腹水、血液等で検討を続行中でございます。  (スライド)  クロルデン関係でございます。 (スライド) クロルデンにつきましては、諸家の報告がございますが、私どももこれは年が高齢に なるにしたがって、あるいは魚介類をたくさん摂るにしたがって、本物質が血中に高濃 度に存在するという結果を得ました。  (スライド)  パラベンでございます。従来、食品には分析されないものでございますが、本物質に つきましては、栄養剤、ドリンク剤等に含まれるということを私どもは見出しておりま して。  (スライド)  このパラベンにつきましては、従来、速やかに安息香酸に分解されて、8時間以内に 血中から速やかに代謝されて問題なかろうということになっておりましたが、私ども は、この模擬ドリンク、いわゆるパラベンを2倍量含んだようなドリンク剤を飲んでみ ますと、パラベンそのものが2時間以内に血中に高濃度に出ておりまして、このパラベ ンのエストロゲン活性を考えますと、今後、血中に代謝産物のみならず、エストロゲン 活性を持つパラベンそのものが出てくるということを見いだしまして、次年度に他の生 体試料で検討をする予定になっております。  (スライド)  有機スズでございます。  (スライド)  有機スズにつきましては、私どもはヒトの毛髪中でGC/MS とGC/ICP-MS と2法によっ てクロスチェック致しまして測定致しました。やや後者の方が感度が高いわけでありま すが、スライドにありますように、測定された値はほとんど同じでございまして、今 後、内分泌かく乱化学物質等を測定する際に、このようなダブルチェック、クロスチェ ックという方法を採用すべきではなかろうかと思います。 ちなみに、男性、女性で毛髪中の有機スズを測定致しますと、症例4、50歳の男性、症 例6、20歳の女性では、非常に高濃度に出てくるのみならず、4と6が同一家族だとい うことで、私どもはこういう観点からも今後検討し続けたいと思っております。  (スライド)  植物エストロゲンにつきましては、日本人、特に大豆等の関連で、イソフラボン等が 問題になろうと思いますが、私どもは、本物質につきましては、厚生省の国民栄養調査 食品群から1日の摂取の平均量を測定致しまして、約35mg位だろうという結果を得てお ります。これについては後半で申し上げたいと思います。  (スライド)  私どもの後半の研究でございますが、ヒト健康の影響ということで、先程申し上げま したように、ヒト由来の細胞で培養細胞レベルでの代謝、解毒、それから遺伝子発現と いうふうに検討致しました。  (スライド)  まず、これはいわゆるヒト副腎由来の細胞で、縦軸がコルチゾールでございます。コ ルチゾールの産生を様々な物質、先程申し上げましたイソフラボンの中のゲニステイ ン、ダイゼイン等で検討致しますと、コルチゾールの産生で見る限り、薬理学的なドー ズを用いない限りは、ほとんどコルチゾールの産生に影響ないという結果でございま す。 (スライド) 同様の系で、DDT 、DDE 、DDD についても同じでございます。 (スライド) 本年度は、これはヒト乳がん細胞由来の細胞でございますが、従来は、MCF-7 を用い ておりましたが、ここにお示ししますように、T47Dの細胞の方が、よりエストロゲンに ドーズレスポンスだということで、目下この細胞を用いまして、副腎由来の細胞と並列 で様々な内分泌かく乱化学物質の検討をしております。  (スライド)  続いて、解毒でございます。  (スライド)  帰結するところはヒトでございますが、私どもは、ラットで体外に還流システムを構 築しておきまして、ここに例えばビスフェノールAを用量直線的に加えます。胆汁を回 収致しまして眺めてみますと、添加したビスフェノールAに応じて、胆汁の中に抱合化 されたグルクロンビスフェノールAが直線的に分泌されてまいります。ややビスフェ ノールAそのものも分泌されますが、抱合化されるということは、肝臓の中に抱合の酵 素があるということで、私どもはラットでは3種類のビスフェノールAの酵素をクロー ニング致しまして、続きまして、本年度は酵母内でヒトのビスフェノールAの抱合酵素 を同定しつつあります。こういう方面から研究を続行しております。  (スライド)  最後のスライドは、胎児・胎盤系への遺伝子発現でございますが、胎児が母体に接す る一番重要な場所というのは胎盤でございます。 (スライド) 胎盤の中の栄養膜巨細胞は、従来から核内受容体がございまして、レチノイン酸でそ の分化が亢進致します。この系をエスタブリッシュしておきまして、私どもはこの系に ベンゾピレン等を添加致しまして、同じようにこの細胞の分化が活性化することを見出 しておりまして、このことは、従来のレセプター以外にオーファンのレセプターがこの 中に存在するということを示唆するものでありまして、内分泌かく乱化学物質は従来既 知のエストロゲンのレセプターについて云々しておりましたけれども、未知のオーファ ンのレセプターについて、ヒト健康の影響についての関連で次年度研究をし続けるつも りでございます。  時間の制限がございますので、駆け足で発表させて頂きました。御静聴どうもありが とうございました。 ○伊東座長  ありがとうございました。それでは、御質問などございましたらどうぞ。 ○鈴木(勝)委員  新しいところのいろいろある御発表ありがとうございました。先生が一番最初にお示 しになったビスフェノールAの測定でございますけれども、先生は、エチル化したGC/ MSで検出されておりますけれども、ビスフェノールAに関しましては、最近、エンザイ ムアッセイとか、ラジオイムノアッセイも開発されてきておりますけれども、それと比 較して、先生の方法の感度、特異性等について、もし情報がおありでしたらお教え頂き たいと思います。 ○牧野教授  先生御存じのように、ラジオイムノアッセイ等の測定感度には見るべきものがござい ますが、似て非なるものを引っかける可能性がございます。ガスマス試料分析等です と、肉眼的にピークがはっきり確認できるものですから、感度が0.01〜0.5ng/mL とい うと、この感度でしばらくは検討が可能なのではないかという判断でございます。先生 御指摘のように、この内分泌かく乱化学物質につきましては、ラジオイムノアッセイ等 の開発が盛んでございますが、私どもはそういう観点から、もうしばらく本法で検討し たいと思っております。 ○伊東座長  そのほか何かございませんか。  先生、臭素化ジフェニルエーテルの検討に着手されているんですけれども、これの毒 性というのは今までどのようなエビデンスがあるんですか。 ○牧野教授  これは難燃剤でございますので、従来のPCB の同列で考えますと、PCB と同じような 毒性というふうになろうかと思いますが、何分にも年間約30万トンも生産されるポリ臭 素化ジフェニルエーテルにつきましては、測定が今回初めてでございますので、先生御 指摘のように、毒性ということについても、ヒト健康というテーマでございますので、 今後検討させて頂きたいと思いますが、現在、私どもははっきりこういう毒性というと ころまでは把握してございません。 ○伊東座長  そのほか何かございませんか。  ありがとうございました。それでは、次に移らせて頂きます。  では次に、聖マリアンナ医大の岩本先生、「内分泌かく乱物質等の生活環境中の化学 物質による健康影響−日本人正常男性の生殖機能に関する総合的研究−」、宜しくお願 い致します。 ○岩本教授(聖マリアンナ医科大学泌尿器科)  私ども、内分泌かく乱化学物質の男性生殖機能への影響を検証するための基礎資料と して、日本人男性の生殖機能パラメーターをデータベース化する目的で、国際共同研究 に参加しております。  スライドをお願い致します。  (スライド)  既に終了した妊婦のパートナー、すなわち妊孕能を有する男性を対象とした川崎・横 浜地区での調査359 例の結果、並びに大学生を対象とした川崎地区での調査227 例の途 中経過を報告させて頂きます。  また、分担研究として行われました妊婦のパートナーを対象とした調査の全国4地域 における実施状況、生活習慣と男性生殖機能における疫学的調査の一部の解析結果、精 液検査の標準化と自動化に向けたコンピューター画像解析による基礎データの報告、非 配偶者間人工授精ドナーにおける過去30年間の精液所見の解析結果、Y染色体多型の分 類と精子濃度との関連についての解析結果、ビスフェノールAによる精巣内ホルモン環 境、受精能に関する研究について、今年度の報告を致します。  (スライド)  川崎・横浜地区より調査に参加した359 例について、精液所見、理学所見、血液中の 各種内分泌ホルモン値の解析を行っております。平均年齢31.8歳。理学的所見として、 精巣サイズは左右の平均で22.8ccで、国際共同研究国であるフィンランドは23cc、フラ ンスは22.5cc、スコットランド23cc、デンマーク23.5ccと報告され、各国との差を認め ていません。明らかにわかるクリニカル精索静脈瘤の頻度は7.8 %でありました。  (スライド)  精液検査のための禁欲期間は48時間以上空けるプロトコールでありましたが、平均211 時間とヨーロッパと比較して最も長期であり、フランスが157 時間、スコットランドが 156 時間、フィンランドが109 時間で、デンマークは81時間と最も短い禁欲期間であり ました。各精液パラメーターの平均値は、精液量3.3cc で、ヨーロッパでは3.8 〜4.2 ccで、若干我々より多い量でありました。精子濃度は1億2,000 万/mLでありました。  (スライド)  ヨーロッパとの生のデータを単純に比較してみますと、スライドのごとく、川崎・横 浜地区で最も精子濃度が高く、フィンランド、フランス、スコットランドの順で、最も 低いのはデンマークでありました。このデータを年齢30歳、禁欲期間を96時間、射出か ら精液検査までの時間30分として、条件を一定にしたモデルをつくりますと、精子濃度 を見てみますと我々のデータは真ん中になります。また、妊孕能の評価法の一つであり ます1回の射出精液中の総運動精子数、すなわち精液量、精子濃度、運動率を掛け合わ せた値を比較しますと、我々のデータは最も低いことになりました。このように、評価 法の違いによっても順位が変わることになり、今後どのようなパラメーターで比較する のがベターなのかを検討していかねばなりません。  (スライド)  精子運動率55.8%で、ヨーロッパの国々は56〜67%とやや高めであります。WHO基 準を下回る例が、精液量で18%、精子濃度では11.4%、精子運動率で29.5%も含まれて おりました。  (スライド)  各種内分泌ホルモンを測定しておりますが、精液所見とホルモン値の間、あるいはホ ルモン値間での相関を見ましたところ、スライドのように、インヒビンBと精子濃度と の間に正の相関が見られ、インヒビンBとFSH の間に負の相関が認められ、コペンハー ゲン大学で既に出されているインヒビンBが精子形成能のバイオマーカーとして役立つ パラメーターであるとの論文を支持する結果でありました。  また、デンマークでは、最近10年間の若年者の精子数の減少が見られ、それはインヒ ビンBの低下によっても裏付けられており、ヨーロッパ各国との比較が期待されます。 男性生殖機能の地域差を検討する目的で、妊婦のパートナーの調査を全国規模で実施す るため、大阪、福岡、金沢、札幌を拠点として調査を行っており、現在までに合わせて 約300 例程進んでおりますが、ボランティアの参加率が低く、苦戦をしております。  (スライド)  アンケート調査の質問票が数多くあり、今回、生活習慣と生殖機能との関連につい て、喫煙本数と飲酒量との相関関係を見てみますと、精子濃度とそれらとの間に明らか な関係は認められない結果でありました。今年度さらに質問票の内容について解析を進 める予定であります。  (スライド)  新たな疫学調査として、我々の川崎地区での18歳から24歳の大学生を対象とした、若 年男性の生殖機能調査を実施しております。これは、デンマーク、フィンランドとの同 一プロトコールで行っておりますが、この2国では徴兵制が敷かれており、非選択的若 年者の調査ということができますが、我が国では非選択的な若年者をリクルートするこ とは困難であります。そこで、ヨーロッパの疫学担当者と相談し、可能な限り均一な集 団として大学生を選択し、国際共同研究のブリッジングに努めました。平成11年度中に 妊孕能が不明である平均20.5歳の227 名について、若年男性の生殖機能調査を行いまし た。妊孕能を有する男性の調査と比較して年齢が10歳若く、禁欲期間が3分の1程度短 いのが特徴で、この段階での各精液パラメーターの平均値は、精液量2.8 cc、精子濃度 6,800 万/mL、精子運動率58.6%で、WHO基準を満たさない例が、精液量で29.5%、精 子運動で12.8%、運動率で24.7%でありました。  (スライド)  両者で精子濃度の分布を見てみますと、若年者は4,000 万〜6,000 万/mLあたりに多く 見られています。既に349 例の調査を終了し、全例の解析を行い、この若年者について も日本での地域差を見るべく計画中であります。  次に分担研究者の簡単な報告を致します。  (スライド)  慶応大学病院における非配偶者間人工授精のためのドナー精液の解析から、精子濃度 はここ30年で減少傾向を示しております。精子運動率においては、1970年から1989年度 群で軽度の減少傾向を示し、1990年以降では減少傾向を認めない結果でありました。平 成5年から9年に行った非配偶者間人工授精患者1,645 名へのアンケート調査を行い、 妊娠・出産についての検討を行っておりますが、回答のあった妊娠例は447 名、出産の 回答のあった146 名のうち、男女比は0.55で、男児優位の傾向を示し、今後さらに他因 子との関連の解明が期待されます。  (スライド)  兼子グループらは、疫学調査に適した客観性、再現性、そして関連のある精度の高い 精液検査を開発中で、精子濃度自動分析機による検査法が優れていると考え、この開発 の目的で従来法等を検討しております。スライドはその一例で、従来の血球計算盤を用 いた方法と精子自動分析機による結果がよく一致するようになってまいりました。今 後、精子濃度、運動率の標準品の作成をして、疫学調査に向けて開発したいと思ってお ります。  (スライド)  石島らは、精子運動性能の詳細な解析のために、高解像度のデジタルカメラと微分干 渉顕微鏡を用いて、生きたままの精子像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフトで 解析する方法を検討しております。活発なヒト精子は、長軸の周りを回転しながら前進 する傾向があり、精子の頭のみを追尾するこれまでの精子自動分析機では、精子の鞭毛 運動の影響を明らかにすることは困難であることから、さらに検討する必要がありま す。  (スライド)  精子形成に必要な遺伝子があるY染色体を構成するDNA には、ヒトごとに多様性があ ることを見出し、国際調査での妊孕能を有する男性を、Y染色体上の多型を用いて4種 類のタイプに分類し、それぞれのタイプの男性において精子数に違いがあるか、また、 無精子症になりやすい傾向を持つか否かを検討しております。  その結果、タイプにより精子濃度の分布が異なっていることが判明しました。このよ うな現象は他の地域でも見られるかどうか、また、タイプによるY染色体の構造の違い と、そこに含まれる遺伝子のコピー数の違いを明らかにする手段を検討しております。  (スライド)  小林グループは、ビスフェノールA母体経由暴露によるラット周産期の血清テストス テロン濃度、ステロイド代謝酵素、ゴナドトロピン受容体等への影響について検討して おります。ラットにビスフェノールAを妊娠第1日から出産日、妊娠第23日まで、母体 に飲水投与し、妊娠第22日、胎児の血液と出産約2時間時の血液と精巣を採取して検討 しております。  (スライド)  出産2時間時の血清テストステロン濃度は、ビスフェノールA200μg/mL投与におい て、コントロールに比べ、約30%有意な低値を示し、高用量のビスフェノールAは、脳 の性分化や生殖器系の発達・分化に重要な周産期の内分泌環境をかく乱する可能性が示 唆されました。暴露された母ラットから産まれた雄ラットの精子について、今後、体外 授精及び顕微授精による授精率を検討してまいります。  今後の展望として、疫学調査によって得られた結果から、精液所見、理学所見、血中 の各種内分泌ホルモン値、質問票の回答から成る妊孕能を有する男性の生殖機能に関す るデータベースが構築され、男性生殖機能に関する大規模なデータベースとなり、それ らの統計解析、データ比較並びに基礎研究から得られた結果との総合的検討から、内分 泌かく乱化学物質の関連における男性生殖機能の評価に役立てる意向であります。  どうもありがとうございました。 ○伊東座長  ありがとうございました。それでは、御質問、御意見ございましたらどうぞ。 ○押尾委員  今の中で、妊孕能のある方の結果が川崎地区で平均1億2,000 万/mL位で、20代の学生 の方の結果で平均で7,000 万/mL位という結果が出ていますけれども、その違いについて はどういうふうに。その数字だけを見ると、20代の人がかなり悪いような印象を受けま すけれども、それについてはどういうふうに考えておられるでしょうか。 ○岩本教授  1億2,000 万/mLという数値は、妊婦のパートナーという特定な集団の値でありまして 現在、妊孕能を有する男性がどの程度の幅の精液所見を有するかというようなことも含 めて基礎資料を作成してまいります。  若年者について、7,000 万/mLという数値が今出ておりますけれども、この若年者の集 団は平均年令20才で、99%の方がタナーの分類で5という正常男性成熟度で、精巣サイ ズも正常大で健康な男性と言えます。この若年者は当然、妊孕能は不明で、将来不妊と なる方も含まれておりますので、この7,000 万/mLという値だけで現在の若者の精子数が 低い、低くなったととらえるのは早計かと思われます。以前のデータを持っていません ので、現時点の若年者の生殖機能をきちんと残しておくことが重要と考えています。 ○伊東座長  鈴木先生どうぞ。 ○鈴木(継)委員  精子の数にせよ何にせよ、パラメーターを拝見していると物凄くばらつきが大きいで すよね。その非常に大きなばらつきを持っている出来事だというのをどう考えているの かというのが一つの質問です。  それとの関連で、同じ人を繰り返しやっていくと、高い人はいつも高くて、低い人は いつも低いというような関係があるのかないのか、それが第2の質問です。  3番目の質問は、例のY染色体多型の問題との絡みなんですが、あのデータを見てい ても、それぞれのグループでやっぱりばらつきが大きいですね。ですから、あれは全体 のばらつきを説明する要件にはどうもなってくれそうもない。そこで、こんなに大きな ばらつきを持った分布が、しかもスキルなわけですから、こういうのを一体どう扱って いくのだろうというのが最後の質問です。 ○岩本教授  1番目の質問については、不妊外来においても同一患者さんの精子数は変動を見ます ので、通常3回ほど検査を行った上で、その方の造精機能の判定をしております。した がって、このような疫学的調査で1回のみで評価していくことで良いのか我々も疑問を 持っています。採取場所、禁欲期間、検査方法等のバイアスもあり、精液検査はベスト の評価法と言えませんので、今後、新しいバイオマーカーの開発を目指さなければなら ないと思っております。2番目の質問については、前述の事から我々も現在、若年者に 対して同一人に年4回の精液検査を行って個人間の変動を見る調査を行っておりますの で、次年度御報告出来ると思います。3番目の質問については、疫学的調査の性質上、 1回の検査で多数例を集めて解析していくことになると思います。新しいマーカーとし てセルトリ細胞の機能をみると言われているインヒビンBは、精子数と相関しておりま すので、Y染色体多型とインヒビンBとの関係も見てまいります。 ○伊東座長  ありがとうございました。それでは、時間でございますので、次の発表に移りたいと 思います。  次は、国立医薬品食品衛生研究所の西川先生、「食品中内分泌かく乱化学物質等の発 がん修飾作用に関する実験的研究」、宜しくお願いします。 ○西川室長(国立医薬品食品衛生研究所病理部)  御紹介頂きましてどうもありがとうございます。  では、早速スライドをお願い致します。  (スライド)  ここに示しますのが私どもの研究課題で、総勢9名の班員で研究を遂行しておりま す。 (スライド)  本研究の目的は、食品中に含まれております内分泌かく乱化学物質による内分泌器官 その他の臓器に対する発がん修飾作用を総合的に検討すること。さらに、その修飾メカ ニズムがホルモン作用に基づくものか、あるいはそれ以外の作用に基づくものかを明ら かにして、ヒト発がんへのリスク評価を行うことにあります。  したがいまして、初年度において合成のエストロゲン様作用物質でありますノニルフ ェノールと、植物エストロゲンの一つでありますゲニステインを取り上げまして、それ ぞれの臓器のモデルに同じような条件で投与することによって、その作用を比較しまし た。まだすべてのデータがそろっておりませんけれども、結果と途中経過を御報告させ て頂きます。 (スライド) まず、甲状腺に対する影響ですけれども、甲状腺の発がんモデルとしまして、DHPNを ラットに単回皮下投与して、12週後にその影響を検索するモデルがあります。それを使 いまして、DHPNを投与し、さらに 、sulfadimethoxine(SDM)、典型的な甲状腺発がん プロモーターでありますけれども、これをポジティブコントロールとし、ゲニステイン 250ppm、25ppm 、ノニルフェノールを 250ppm 、25ppm 、それからエストロゲン活性の ポジティブコントロールとして、β-エストラジオール 3-ベンゾエートを皮下埋植した 群を設けました。DHPN単独群と比較しますと、SDM 投与によって確かに甲状腺の重量は 大きく増加し、組織学的にも強い過形成ができます。それに対して、ゲニステイン 及び ノニルフェノールでは、全く臓器重量の増加はなくて、組織学的にも過形成がないこと を確認しております。 それからエストラジオール投与では、報告されておりますように、これは主としてア デノーマの発生によるものですけれども、下垂体の重量増加が見られました。にもかか わらず甲状腺の重量はごく軽度の増加にとどまっておりました。 (スライド) これはやはり甲状腺のデータでありますけれども、DHPNを投与せずに、単純にヨード 欠乏、20%大豆粉末、それからそのコンビネーションで投与しますと、ヨード欠乏で報 告されておりますように、甲状腺の重量が増加し、これは組織学的にも強い過形成がく るんですけれども、それと大豆の併用投与をしますと、顕著な甲状腺の重量を増加させ るという作用が認められます。さらに、これがヨード欠乏のみ特異性が強いというこ と、及び20%以上の高濃度しか見られないという閾値が想定されるということを既に確 認しております。 (スライド) 次に、乳腺の発がんに対するゲニステインの影響を見た結果です。SDラットにDMBAを 強制経口投与しますと、12週後位に乳腺腫瘍のある動物が出てきます。それを腫瘍のあ る群、ない群に分けて、それ以降、36週にわたってゲニステインを投与したものです。 そうしますと、腫瘍の発生頻度はゲニステインの低い用量群でコントロールに比較し、 若干高い傾向がありました。まだこれは組織学的検索は完了しておりません。 それから12週の時点で腫瘍のなかった群でも、一応用量に相関する形で腫瘍の発生が 増えておりますけれども、これもまだ組織の検索は済んでおりません。 (スライド) 次に、乳腺発がんでノニルフェノールの影響を見た実験ですけれども、DMH(大腸を ターゲットとする発がん物質)を投与し、さらに、乳腺をターゲットとするDMBAを投与 しまして、その後にノニルフェノールを餌に混ぜて投与した実験であります。これもま だ組織の結果は出ておりませんけれども、肉眼的な観察段階で、一番高い用量のノニル フェノールの群では、大腸腫瘍の発生頻度が若干落ちています。それから乳腺腫瘍の容 積がノニルフェノール投与群で若干増えていますが、これは統計学的には差はありませ んでした。組織の結果は出ておりません。 (スライド) 続いて、乳腺発がんですけれども、今度はヒトプロト型c-Ha-rasを導入したラットを 用いまして、それにDMBAを投与しますと短期間に乳腺の腫瘍の発生が増えるということ で、そういうモデルを使いまして、同じようにゲニステイン を250 ppm 、25ppm の濃度 で餌に混ぜて投与した実験です。 (スライド) そうしますと、ゲニステイン の用量に相関する形で腫瘍の発生頻度が減っています。 遺伝子を導入していないワイルドタイプでも同じような結果であるということで、先程 の通常のラットとは結果として相反するような傾向が出ております。これもまだ組織を 完全には見終わっておりません。 (スライド) 次に、子宮をターゲットとするモデルでの検索ですが、これはp53 欠損マウスにENU を投与しますと、高率に子宮内膜間質肉腫が出てきますので、ENU 投与後にゲニステイ ン、またはノニルフェノールを投与する実験を行う予定でした。それ以前のビスフェ ノールAと大豆を投与した実験でありますが、生存率とかその他に群間の差はありませ ん。 (スライド) ビスフェノールAも大豆(要するに黄粉)も投与しますと子宮重量は減ってきますけ れども、子宮内膜肉腫の発生頻度は各群に差はありません。PCNAの標識率、すなわち細 胞増殖活性にも各群間に差はありませんでした。当初の目的であるゲニステイン とノニ ルフェノールの実験をこの系で行う予定でしたが、この系統のマウスの供給がどうも順 調にいかないような按配になりまして、ICR マウスにENU を投与しますと同様に子宮の 腫瘍が出てきますので、それを用いてノニルフェノールとゲニステイン の作用を見る実 験を開始したところであります。 (スライド) これは前立腺に対する影響について、短期実験でノニルフェノールの効果だけを見た もので、結果としてほとんどのパラメーターに差はありませんでした。第1週目におい て若干テストストロンに影響があったというぐらいで、結果として全く影響はなかった ということです。  (スライド)  長期実験では、DMABという発がん物質を投与しますと前立腺のがんが出てきますの で、その後にノニルフェノール、ゲニステイン を投与する実験を既に開始して、もう 終了間際まできております。しかし、結果はまだ出ておりません。  (スライド)  これは卵巣がんに対する影響を、同様にノニルフェノール、ゲニステイン について見 た実験であります。卵巣がんのモデルというのは、いいモデルがありませんので、今回 はやむを得ないということもあって、開腹して卵巣に直接DMBAを注入するという、ちょ っと過激な方法をとっていますけれども、結果として卵巣にがんができてまいります。 DMBA単独群では35%に腫瘍の発生があるんですけれども、ノニルフェノールとかゲニス テイン を投与しますと、その発生が統計学的に一応有意に抑制されるというような結果 が出てまいりました。  (スライド)  次に、内分泌臓器以外の他臓器をまとめて検索するという目的で5種類の発がん物質 を4週間の間に投与しまして、その後にノニルフェノールとゲニステイン を同じ用量で 混餌投与した実験であります。  (スライド)  肺だけの結果をお見せします。その他の臓器にはすべて有意な影響はなかっものです から、省略させて頂きます。  肺について、腺腫と腺がんをまとめた頻度を見ますと、これはゲニステインもノニル フェノールもそうですけれども、コントロールに比べまして結果的に有意に腫瘍の発生 が増えております。特にゲニステイン は用量に相関した形ですが、ノニルフェノールは 用量に必ずしも相関していないようです。  (スライド)  以上が in vivoの実験で、あとin vitroの実験ですが、そのメカニズム……。 ○伊東座長  時間ですので、もう打ち切ってください。西川先生、こんなにたくさんのデータの細 かいやつをここでプレゼンするプレゼンテーションの仕方がだめですよ。やはりわかる ようにサマライズしてきっちり出してもらわないと、班長さんとしては恥ずかしいんじ ゃないですか。 ○西川室長  わかりました。気をつけます。 ○伊東座長  今までのところで、御発表に対する御質問がありましたらどうぞ。 ○鈴木(勝)委員  先生が最初から2つ目にお示しになりました、大豆の粉末とヨードの欠乏の効果とい うのは、アジアの文化圏は大豆文化圏ですし、そこにはヨード欠乏もたくさんあります ので、人間のモデルとして非常に大事なのでちょっと伺いますけれども、その場合に は、ゴイトリンの影響というのをかなり考えないといけないのではないかということが 一つですね。ゴイトリン、サイヨウオキサゾリドンの影響が一つあるのと、それからフ ラボノイドに関しまして、今まで甲状腺に2つの作用があることが知られておりまし て、1つは脱ヨード酵素の阻害と、もう一つはTBPAに結合するサイロキシンをディスプ レイするという作用があるものもあるんですね。それだから、同じ物質がその2つの作 用を持つのではなくて、フラボノイドの種類によっては2つの違った作用を示す場合も ありますので、そのような御検討がありましたらお教え頂きたいと思っております。 ○ 西川室長 まだそこまでは検討しておりませんけれども、先程の発表でも申し上げましたとお り、ほかのゴイトロジェニックなコンパウンドである、例えばフェノバルビタールとか との相乗効果が全くないということと、20%を超える用量でしか相乗効果は出ないとい うことがありまして、電顕的に下垂体を見ますと、大豆投与だけで形態学的な変化があ りそうな感じがしておりますので、ひょっとしてダイレクトに下垂体を介する影響も否 定できないのではないかと思っております。 ○伊東座長  そのほかございませんか。 ありがとうございました。  では次に移ります。次は、「内分泌かく乱物質の小児、成人等の汚染実態および暴露 に関する調査研究」、慶応大学の秦先生、宜しくお願い致します。 ○秦教授(慶応義塾大学医学部病理学教室)  宜しくお願い致します。スライドをお願いします。  (スライド) この調査研究の目的は、剖検例を用いまして、日本人の全身臓器における内分泌かく 乱化学物質の暴露状況を明らかにし、バックグラウンド値を明確にするとともに、各種 疾患や血液データなどの臨床情報との関連について調査検討するものであります。 研究班の組織は、スライドに示したとおりでございます。 対象は、慶応義塾大学病院において病理解剖を行われた症例135 例について、スライ ドのように、血液、胆汁、項部・腋窩・腸間膜・腹壁などの各脂肪組織、あるいは下垂 体、脳、肝、脾、腎、膵、上行結腸粘膜、乳腺、骨髄を採取致しました。 ちなみに、これらの症例は予め検索について遺族からの同意を取っております。ま た、臨床経過、臨床検査データのほか、遺族より患者本人の嗜好品あるいは食事内容に ついても簡単な聞き取りを行っており、それらをすべてデータベースとしてファイリン グしております。 本日は、この中から検索が済みました27症例につきまして、そのまとめをお示しした いと思います。腸間膜及び腹壁脂肪組織、肝、血液、胆汁の測定結果であります。測定 項目と方法はそれに示してありますが、昨年に引き続き、ダイオキシン、あるいはPC B 、農薬類、ブチルスズ、重金属などを測定致しました。 (スライド) 症例の27例の年齢と性別を示したものでありますが、21歳から89歳までで、女性が12 例、赤で示しております。男性がブルーで15例であります。 (スライド) スライドは、ダイオキシン類の肝、胆汁、血液における蓄積状況であります。 なお、同一症例で、肝、胆汁、血液のダイオキシンを測定したのはこのデータが初め てと思われます。数値は、脂肪当たりに換算したTEQ の値を示しております。 まず、一番下に書いてある血液でありますけれども、これは剖検時に心内に残留して おりました血液50ないし200 ccについて測定したものであります。今回の結果は、これ まで報告された日本人の末梢血の濃度とほぼ同様でありました。 異性体別の濃度順でありますが、下段に示してありますように、OCDDが圧倒的に多く、 次いでPCB 、 HxCBなどの順になっております。今回初めて胆汁中のダイオキシンを系統 的に測定致しましたが、その結果、胆汁中のダイオキシンは、その絶対値あるいは異性 体のパターンとも血液と同様でありました。 一方、肝臓では、血液、胆汁等の濃度の約3倍の高い値をとりましたが、異性体別で は、血液、胆汁とほぼ同様の所見でありました。  (スライド)  このスライドは、血液濃度と肝、胆汁濃度の相関を検討した結果であります。胆汁、 肝ともに血液中濃度とよく相関しております。黒が胆汁、赤が肝であります。血液を基 準にして胆汁と肝臓の量を相関しております。これまでダイオキシンの排泄経路と致し ましては、母乳について詳しく検討されておりますが、今回の結果から、胆汁に一部排 泄されている可能性が考えられました。肝臓で濃度の高いことから、どの程度能動的に 排泄されるか、あるいは腸管で再吸収の可能性があるのかということは、今後検討する 余地があると思います。  (スライド)  昨年のこの発表でも、年齢とダイオキシン、PCB の蓄積等の相関があるかどうか御質 問を頂きましたので、本年、27例の測定結果をもとに、年齢と暴露の関連について検討 しました。  その結果、スライドのように、年齢に伴って赤のダイオキシン、あるいはブルーのPC B、あるいはフランなど、いずれも年齢と相関するということが明らかになりました。 この回帰曲線から、ダイオキシン、PCB が10年間にどれぐらい蓄積するかということを 計算致しますと、グラム脂肪当たりPCDFが16.3pgTEQ 、PCDDが13.0pgTEQ 、あるいはPC B が9.0 pgTEQ が10年間に蓄積するということがわかりました。  PCDDあるいはPCDFなどは半減期が数年から12年と言われるため、長期間にわたる暴露 は健康にどのような影響を与えるかについては今後の検討課題と考えております。  (スライド)  PCB mono-orthoとdi-orthoのデータをスライドで示します。これは、腸間膜脂肪組織 の測定結果であります。スライドで示すように、IUPAC でmono-ortho118 番、左のピー クであります。それと、di-orthoの170 番、180 番、この3つがやや高い値を示してお ります。 (スライド) 同じく肝臓のPCB の値でありますけれども、これは縦軸のスケールが、先程は30万で ありましたが、これは10万で約3分の1の値でありますけれども、やはり先程の脂肪と 同じように、118 番、170 番、180 番と、この3つの物質が主であることがわかりまし た。  (スライド)  ちなみに、mono-orthoとdi-orthoのPCB の相関を検討しますと、スライドのような正 の相関を示していることがわかります。すなわち、di-orthoが高い人はmono-orthoも高 いということであります。  (スライド)  次に、農薬などを含む有機塩素系化合物の測定結果を述べたいと思います。脂肪組 織、あるいは胆汁で蓄積濃度を測定しました。これはその測定したものでありまして、D DT、HCH 、あるいはクロルデン、あるいはTCPメタンなどを測定致しました。  (スライド)  22例の脂肪組織での測定結果でありますが、これは湿重量当たりの濃度をng/gで示し ております。濃度の高い順番で上から並べてありますが、やはり圧倒的にPCB が高く、 次いでDDT 、 HCH 、あるいはCHL と示してあるクロルデンなどの順になります。この 濃度が直ちにリスク、危険な量ということではないと思われますが、低濃度ながらも多 くのこういう化合物が蓄積されているということで、人体にどのような影響を与えてく るかについてさらに検討が必要と思われます。  データは示していませんが、同じように、5例の胆汁について測定致しましたが、ほ ぼ同様の結果を得ております。  また、今回新たな内分泌かく乱化学物質と言われているTCP が脂肪組織とほぼ同程度 に胆汁に含まれていることが明らかになりました。  (スライド)  TCP は、スライドのように、TCP メタンとTCP メタノールからなりますが、TCP メタ ンはDDT の不純物でありまして、TCP メタノールが最近抗アンドロゲン作用が証明され て、新たな内分泌かく乱化学物質として認知されたということがございます。  次に、有機スズ化合物と微量元素について検索致しましたが、これについては特に問 題になるような量は含まれておりませんでした。  (スライド)  最後に、測定した剖検で興味深い症例が2例ありました。この症例は、生後直ちに脳 性麻痺に罹患した患者で21歳で亡くなった方です。人工栄養のクリニミールのみでフ ィーディングされた例であります。ちなみに、クリニミールはダイオキシン類が検出限 界以下であることが明らかになっておるのでありますが、この例のダイオキシンの血 液、肝臓中の暴露を下の条件で調べておりますが、OCDD で見ますと、21歳という年齢 を考慮しても、血液、肝臓とも、平均値の5ないし7分の1ではありますが、検出され たというようなことは、これらの物質が経口のみではなくて、あるいは経気道などから 体内に入るという可能性が考えられます。  (スライド)  次の症例は59歳の男性でありまして、膵癌の術後再発で亡くなられております。この 症例について調べました。  (スライド)  この症例は、ダイオキシンあるいはPCB 、有機塩素系の化合物、いずれも平均値の2 ないし12倍に達する高い値を示しています。有機塩素系化合物とがんとの関連について は、昨年のランセットの報告が注目されております。それによりますと、特にDDT 、あ るいはDDE 、PCB の血中濃度が高い膵がんでは、K-Rasコドンの12の変異が高頻度に見ら れるということでございますので、本症例については、現在、K-Rasの変異について検討 しております。  (スライド)  これが今回の調査のまとめであります。御静聴ありがとうございました。 ○伊東座長  ありがとうございました。  それでは、御質問ございましたらどうぞ。  秦先生、この症例は、慶応病院の剖検例ですよね。全部東京地区におられた方です か。どこか地方におられた方ですか。 ○秦教授  細かい分析は済んでおりませんが、ほとんど東京ないしは関東地区の症例です。 ○伊東座長  ライフスタイルということがやはり蓄積と関係があると思うんですね。ですから、そ ういうふうな症例についての解析が進めば非常にありがたいというふうに思うんです。 ○秦教授  今のところ27症例でございますが、多くの症例を測定することによって、それと、先 生が言われるようなバックグラウンドとの関連を明確にしたいと思っております。 ○伊東座長  瀬戸内海の方で魚をたくさん食べているところとか、例えば愛媛大学とか、広島大学 とかというふうなところ、あるいは岡山大学でも結構ですけれども、共同されると、も う少しクリアなデータになるかもわからないと思うんですが、宜しくお願いします。 ○秦教授 ぜひ検討したいと思います。 ○伊東座長  そのほか何かございませんか。 ○鈴木(継)委員  化学分析のクオリティアシュアランスが大事だと思うんですけれども、クロスチェッ クみたいなことをしていらっしゃるんですか。 ○秦教授  クロスチェックは一応PCB に関しては2か所で測って頂いておりまして、ほぼ同じよ うな結果を得ております。スライドで出てきたと思うんですが、その程度です。 ○鈴木(継)委員  もう一つは、ダイオキシンのTEQ を使うときに、検出限界に達していない測定値の扱 いというのをどういうふうになさっているわけですか。 ○秦教授  それについては、測定して頂いているところが別でございますので、申しわけござい ません、細かいことはわかりません。次回に明確にしてまいりたいと思います。 ○井上委員  伊東先生の御質問とちょっと関連があるんですけれども、病理学教室はたくさんの古 い御遺体も保存しておられますよね。そういう40年、50年位前のあれとの比較というの は、方法論的にはまずいんですか。余り意味がないですか。 ○秦教授  どうでしょうか。むしろ先生に伺いたいんですが、ホルマリンに入っているもので、 どの程度時期が経ったものだと測定に有効であるか、それは調べてみないと。 ○井上委員  お調べ戴ければと思います。 ○伊東座長  ありがとうございました。  それでは、次に移らせて頂きます。次は、「内分泌かく乱化学物質の水道水中の挙動 と対策等に関する研究」で、国包先生、宜しくお願い致します。 ○国包部長(国立公衆衛生院水道工学部)  国立公衆衛生院の国包でございます。  私どものこの研究は、ここに書いておりますように、3つのことを目的に行っており ます。1つは、水道の浄水処理でいわゆる内分泌かく乱化学物質と考えられているもの が除去できるのか、残るのか、あるいは増えるのかといったことと同時に、どういうふ うにすればよく除去できるかということを明らかにすることでございます。2番目に は、水道管等からこういったものが溶出することが明らかになっております。これは溶 出する場合とそうでない場合がございますけれども、こういった特性について明らかに しまして、あわせて防止対策についても検討することに致しております。3番目には、 水道水等についての内分泌かく乱作用の評価手法を明らかにしていこうということでご ざいます。  (OHP)  研究班の構成はこういうふうになっておりまして、私も含めて全部で9名でございま す。  (OHP)  申し遅れましたが、私どもの研究は平成11年度から3年継続という計画でございまし て、これが初年度に当たります。実は平成10年度に、このベースになるような研究をさ せて頂いておりますので、その結果に基づきまして、この研究では対象物質として、こ こに挙げておりますフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−ブチル、ビス フェノールA、ノニルフェノール、この4物質を中心に取り上げております。それから 農薬類につきましては、これまで水道の分野では必ずしも内分泌かく乱化学物質として の研究は進んでおりませんので、これもあわせて取り上げております。選定理由は下に 書いてありますとおりでございます。  (OHP)  研究内容でございますが、まず、浄水処理につきましては、東京都と大阪市のそれぞ れの水道局の浄水場の実験プラントを使わせて頂きまして、一部この4物質を添加する 実験もあわせてやっております。それから、農薬類の使用実態等についても別途調べて おります。  2番のことですが、溶出関係につきましては、水道管、これは7種類の水道管を使っ ておりますが、この4物質の溶出の特性を調べております。これにつきましては、新し い管を使って試験するというのは簡単にできるんですが、何か月、何年という単位で使 ってきた管の状況というのは、調べることはなかなか容易ではありませんので、実験的 に新しい管をつなぎまして水を流して、この3年間の間、実際は2年位ですが、どうい うふうに溶出量が変わってくるかという検討をすることに致しております。今日はその 一部を御報告致します。  もう1点、溶出に関連しまして、水道用の塗料としていろいろなものが使われており ますので、こういったものの毒性等の情報の収集整理を致しております。  それから3番目ですが、平成11年度は、ビフェニル類のエストロゲン様活性につきま して、酵母Two-Hybrid System 法を使って検討致しております。これ以外に、例えば偏 光度法ですとか、乳がん細胞を使いましたMVLNアッセイ法という方法がございます ので、こういう方法の横の比較検討も致しております。 さらに、ビスフェノールAを取り上げまして、その塩素処理でどういうふうにエスト ロゲン様活性が変わってくるかを、蛍光偏光度法を使って検討致しております。  (OHP)  まず、浄水処理実験のことですが、ちょっと細かく書いておりますけれども、東京都 の玉川浄水場の実験プラントで、注入点と書いておりますのは、4物質を添加したとこ ろでございますが、添加したケース、そうでないケースとそれぞれ別々に処理過程を追 って検討致しております。  それから、一部3番、4番という丸が上にございますが、上の方のラインは塩素が入 っております。下のラインは入っておりません。  (OHP)  これが5μg/Lのフタル酸ジ−2−エチルヘキシルを添加した場合の実験結果でござい ます。塩素が入っている方と入っていない方とごっちゃに書いてしまっておりますの で、ちょっと見にくいんですが、凝集沈殿、砂ろ過、特に砂ろ過あたりでかなりよく取 れてしまっているというのが御覧頂けると思います。  (OHP)  これは、フタル酸ジ−n−ブチルの方でございまして、砂ろ過である程度取れており ますし、その後のオゾン、それから活性炭処理、そういったところで取れております。  (OHP)  ビスフェノールAにつきましては、大分今までとは違った挙動をしておりまして、塩 素が入りますと、これは簡単に反応してしまいますので、それでなくなってしまってお ります。それから砂ろ過でかなりよく取れているというのが御覧頂けると思います。 (OHP)  ノニルフェノールにつきましても、今のビスフェノールAとほぼ同様の挙動を致して おります。  (OHP)  以上のような実験を大阪市の方でも別途致しておりまして、大阪市の方は、処理のフ ローは少し違いますので、それに合わせて結果も少し違ってきているということです。  次は、水道管を使いましての通水、溶出の実験についてですが、この下の絵にありま すようなラインを違った水道管をつなぎあわせる格好で組んでおります。2つの系統、 上のAと下のBとございまして、同じ水道管でも別のメーカーがつくっているという ケースがございますので、そういうものをペアで選びまして、並行して実験をしている ということでございます。この実験では、残留塩素がある水を常時少しずつ流しており ます。  それで、一定の時期になりましたらこれを全部取り外して試験室に持っていきまし て、右下に小さく書いておりますが、23℃で16時間水を貯めおいて溶出量を調べており ます。  (OHP)  これがその実験装置の様子でございます。大体こういうふうに100 mm以下の口径の小 さい水道管を使っております。  (OHP)  これが結果でございまして、幾つかの管から溶出が認められております。  1回目は立ち上がりの当初、2回目は1か月後にやっておりますが、フタル酸ジ−2 −エチルヘキシルだけにつきましては、1回目と2回目とを比べますと、数字がちょっ と上がっております。これはどういうわけかまだよくわかりません。  それ以外のものにつきましては、1回目よりも2回目の方が明らかに数字は小さくな っておりまして、検出されなくなった、溶出しなくなったというものもかなりございま す。  非常におもしろいのは、今後の対策を考える上で重要だと思うんですが、同じ種類の 管で別の会社でつくっているもの、その2本を比べますと、片一方で溶出が認められて も、片一方では同じものの溶出が認められないということがございます。この表のデー タは検出した例だけですが、この辺のすべての管について共通致しております。  (OHP)  次に、水道水等のエストロゲン様活性の評価方法等に関する検討でございますが、ビ フェニル類を対象として、酵母を使った試験方法で検討致しております。これで見て頂 きたいのは、ビフェニル類は、ものによってかなり高いエストロゲン様活性を示すんで すが、その中でも下の方にございますp−ヒドロキシビフェニルと、4,4’- ジヒドロ キシルビフェニル、この2つにつきましては、代謝活性化をした場合に、より高いエス トロゲン様活性が認められるという結果が得られております。  (OHP)  これは、先程の玉川浄水場の浄水処理実験プラントから取った水につきまして、酵母 Hybrid法を使ってエストロゲン様活性を調べたものでございます。原水では、これは4 物質を添加した後の水ですので、ある程度のエストロゲン様活性が認められております が、塩素が入った後の凝集沈殿水や砂ろ過水ではもう認められないという結果が得られ ております。  (OHP)  次に、こちらは塩素が入らない系でございますが、これにつきましては、凝集沈殿で はまだ残っているけれども、砂ろ過でなくなってしまっております。  (OHP)  塩素との反応につきましては、いろいろ考えているんですが、ものによって塩素との 反応で塩素化合物ができて、それがエストロゲン様活性を持つという場合もございます し、それから、17β-エストラジオールのように、塩素化されるとエストロゲン様活性が 下がるというのもございます。そういったことが全部総合されたような形で、塩素処理 前と処理後の結果が出てくるのだろうと考えております。  (OHP)  いろいろな処理段階の水を塩素処理しますと、場合によってはこのように活性が高ま るということがございます。この場合は、乳がん細胞を用いた方法で検討致しておりま す。  (OHP)  それから、特にビスフェノールAにつきまして検討しました結果でございますが、塩 素処理をしますと、そこにも書いておりますが、24倍位エストロゲン様活性が高まりま す。これは蛍光偏光度法を使った場合の結果でございます。  ただ、この場合、蛍光偏光度法が、いわゆるレセプターとの結合活性を評価している だけだということがございます。それからもう一つ、元々のビスフェノールAのエスト ロゲン様活性というのはそんなに高いものではなくて、かなり低いわけですので、塩素 処理でこのように高まるということはわかっておりますが、それ自体、特に今すぐ健康 影響上問題にしなければいけないようなことではないだろうと思っています。  水道の場合、塩素処理で消毒をしているということがございます。そういったことか らも、塩素処理の影響がどうなのかということにつきましては、このビスフェノールA についても今後さらに詳しく調べていきたいと考えています。  (OHP)  これはまだ推定の段階なんですけれども、塩素処理でこういった化合物が新たにビス フェノールAからできるというふうに推定しているものでございます。いわゆる塩素付 加反応が起きまして、幾つか塩素がついたものができてきているということが、左の方 ですが、確認されております。ただ、このうちのどれが高いエストロゲン様活性を持つ のかというのはまだよくわかりません。  (OHP)  以上をまとめますと、中間的なまとめではございますが、浄水処理によって4物質が よく除去されるということは、今までの段階で一応わかっております。それから水道管 からの溶出量は、時間の経過とともにおおむね減少するということがわかりました。塩 素との反応によってどうなるかという一般的なことにつきましては、まだよくわかって おりません。それから、ビスフェノールAの塩素処理によって……。 ○伊東座長  時間でございますので、そこで打ち切ってください。  それでは、何か御質問ございましたらどうぞ。 ○田中委員  有益な情報をありがとうございました。今の話ですと、浄水では、すべてを除去しよ うと思うと、砂ろ過だとか、あるいは生物活性炭、オゾン処理、こういうやつの組み合 わせで除去するわけですよね。あとちょっと心配されるのは、塩素消毒が活性を増加さ せるとか、あるいは浄水した後の配水管、あるいは塗料から出てくるものの対策という ことになると、蛇口での水道水がクリーンで安全だというためには、浄水器の評価も得 なくてはだめではないかなという気がするんですけれども、その辺はいかがでしょう か。 ○国包部長 一般によく蛇口なりで浄水器が使われております。今は、浄水器の試験方法もできて おりますし、それから、たしか家庭用品品質表示法で浄水器もその中に組み入れられる ようになっております。ただ、浄水器に関しては、今までは濁りを取る、残留塩素を取 る、あるいはトリハロメタンを取るというぐらいのレベルで考えられておりました。し かし、実際には活性炭が入っているものが多いですので、そういったものは先程のよう な化合物の幾つかはかなり取れるだろうと思います。今後そういった方向も考慮に入れ ながら検討を進めさせて頂きたいと思います。 ○伊東座長  はい、どうぞ。 ○中澤委員  一つお伺いしたいんですが、水道管等に使うものについては、例えば材質試験とか、 溶出試験というものは設定されているんでしょうか。 ○国包部長 水道管については基準とか規格がございまして、塗料としてはこういう塗料とかとい うようなことも決まっておりますし、試験も行われております。 ○中澤委員  今回対象にされたような化学物質の試験というのはもう決まっているわけですね。 ○国包部長 今我々が問題にしておりますようなそういう物質について直接ということでは必ずし もございませんので、その辺のことはずれがございます。 ○伊東座長  そのほかございませんか。  それでは、時間でございます。どうもありがとうございました。  ここで15分程休憩致します。45分からスタート致します。                 (休  憩) ○伊東座長  では、時間になりましたので、次の発表をお願いします。  次は、「内分泌かく乱物質に対する感受性の動物種差の解明−チトクロームP450発現 を指標として−」、静岡県大の出川先生、宜しくお願い致します。 ○出川教授(静岡県立大学薬学部衛生化学教室)  出川でございます。宜しくお願い致します。  それでは、早速スライドをお願い致します。  (スライド) 本研究課題は、ここに示しましたとおりでありまして、こういったメンバーで研究組 織を構成しております。  この中身を簡単に申し上げますと、in vivo 、いわゆる動物を用いた実験とin vitro の実験とに分かれてございます。  in vivo 、動物を用いた実験というのは、文字通り、内分泌かく乱化学物質を動物に 与えたときの感受性と、それぞれのチトクロームP450の発現パターンとの関係を見てい くというものでございます。in vitroの研究は、その種差等が出た場合に、その要因を 究明する、あるいは解析するということを目的として構成してございます。  今日ここで発表させて頂きますことは、3年計画の1年目の結果で、まだ始まって間 もない実験でありますので、まずは、この研究計画に至った背景を最初に説明させて頂 き、次に、昨年度得られました研究成果を御報告させて頂きたいと思っております。  (スライド)  内分泌かく乱化学物質を含めまして、異物の生体内動態は一般にこのような生体内要 因で決まってまいります。この生体内要因の動物間の違いが、結果として毒性の表れる 型を決定づけると理解されております。  生体内要因の中でも代謝が、動物の種差とか性差とかを生む大きな要因になるという ことが既に明らかにされておりまして、今回は、この代謝を中心に種差を追求すること にしたわけであります。  この異物の代謝を担う中心的な酵素としてチトクロームP450という酵素がございま す。この酵素は、非常に多くの分子種が存在致しまして、ここに示すような代表的な分 子種があります。また、これら分子種は異物によって誘導がかかるというようなことが ございます。この誘導がかかった分子種は単に異物の代謝に関わるだけではなくて、内 分泌かく乱化学物質の代謝を変えるということもあるわけです。また、それだけではな くて、実はこういったP450分子種は、生体内のステロイドホルモンの代謝排泄というも のに関わっております。したがいまして、こういったP450の発現パターンの変動という のは、異物の生体内運命を決定するだけではなくて、ステロイドホルモンの生体内バラ ンスに影響を与える可能性も含んでいるわけであります。  (スライド)  一方、P450の中には、異物代謝に関わるP450ばかりではなくて、コレステロールやア ンドロゲン、エストロゲンといったステロイドホルモンの代謝、生合成に関わるP450分 子種も多々知られております。これはアンドロゲン生合成原性に関わるP450分子種の主 なものを示したものであります。コレステロール合成を最終的に触媒するCYP51 であり ますとか、CYP11 、17、あるいはこれは通常アロマテースとも呼ばれていますけれど も、エストロゲンが生合成されるときには、このアロマテースも関わっているわけであ ります。そこで、今回は、このアンドロゲン生合成に関わるP450に対する影響の動物種 差についてもあわせて検討したわけであります。 また、同時に、コレステロール生合成の律速酵素のHMG-CoAreductaseについてもその 発現変動を調べました。  (スライド) 今回用いました内分泌かく乱化学物質、あるいは疑われている物質として、PCB 類のCB 101、 132や硝酸鉛を用いました。今日は、PCB類の実験結果を中心にお話させて頂きま す。動物投与した場合の肝臓での異物代謝酵素の発現、あるいはホルモン産生臓器とし て精巣を今回選びましたけれども、精巣におけるアンドロゲン生合成に関わるP450への 影響を、雄性のラット及びマウスを使って、こういったP450分子種の発現の変化、違い を見たわけであります。  (スライド)  今回用いましたPCB でありますが、CB101 というのはこういう化学構造をしておりま すし、CB132 というのはこういった化学構造をしております。分担研究者の木村らによ って、これらPCB類は、この様に代謝されて、こういうメチルスルホン体に変換され、内 分泌かく乱作用を示すということが既に報告されております。また、こういった物質 は、P450誘導、特にCYP2B と言われる分子種の誘導をラットでは起こすということが知 られておりまして、こういった物質の生体での代謝量やP450への影響を調べたわけであ ります。  なお、こういったPCB 類は、第一薬科大学の原口先生より分与して頂きました。  (スライド)  CB101やCB132には酵素誘導とか、内分泌かく乱作用があるということを分担研究者の 木村らが既に見出しております。そこで、これら化合物を腹腔内に一度投与致しまし、 経時的にその活性体と考えられるメチルスルホン体の生成量を調べたわけであります。 いずれの化合物を与えた場合にも著しい種差が見えまして、マウスの方が圧倒的にメチ ルスルホン体が生成するということがわかりました。  CB132 の方で見ますと、でき方はやはりマウスが高くて、強い致死毒性が表れまし た。ラットの場合ですと、単回投与して少なくとも8日後まで生存しているわけであり ますが、マウスの場合には4日から5日の間に全例が死亡致しまして、メチルスルホン 体の生成量と致死効果との間に相関が見られました。  (スライド)  さて、CB投与後、それでは肝臓の中のP450はどういうふうに動いているかということ であります。ラット、マウスの異物代謝の代表的な酵素でありますけれども、いずれの 動物でも、CYP2B という分子種の誘導がかかるということがわかりました、その他の P450分子種については、ラット、マウスともに余り大きな影響はないということであり ます。 CYP2B について、ラットでは2B2とか2B1とかというサブクラス、分子種をそれぞれ 別々に測定できますが、マウスの場合、これら分子種が非常に似通っておりまして、 別々に測定することができませんで、一緒に見ております。ラットは別々に見ておりま すので、誘導倍率を見ると、こちらの方がちょっと低いように見えますけれども、トー タルすると恐らくラット、マウス間で余り差がないのではないかというふうに思われま す。 これらの結果からは、残念ながら2Bの発現量で、先程お示しましたメチルスルホン体 の生成量の差というもの、あるいは致死感受性の違いというものを説明できなかったわ けでありますが、ほかのP450分子種がございますので、肝におけるほかの分子種への影 響、あるいはこういったものの一連の代謝には、肝臓の代謝だけでなく、腸管での代謝 等々が関わっておりますので、そういった代謝酵素の変動も調べていかなければならな いのではないかというふうに思っている次第であります。 (スライド) 次いで、CB101 とか132 を与えたときのマウス精巣におけるテストストロン生合成系 酵素の発現変動であります。これもRT-PCRを用いてメッセンジャーレベルで測定してい るわけでありますが、コレステロールの生合成に関わる律速酵素と言われるHMG-CoAredu ctase、P450ではございませんけれども、これは投与後、発現量に影響はほとんどござい ません。CB132 は毒性がマウスで非常に強かったものでありますけれども、これを与え ますと、コレステロール生合成の最終的な代謝を触媒しますCYP51 が低下致しますし、 テストステロンの生合成に関わるこういったものも発現が低下するということがわかり ました。 一方、CB101 の場合について言いますと、この辺は余り変わらないんですが、やはり テストステロン生合成の最終的なところに関わる酵素の発現量が低下するということが わかりました。これらは、こういったノンプラナーの化合物が、直接アンドロゲンの生 合成に抑制的な作用を及ぼすということを明らかにした最初の報告であります。 (スライド) さて、今お話ししたことを含めて、その他実験を行いました結果を要約させて頂きた いと思います。 in vivo 研究として、PCB 類の代謝とP450発現については今お話ししたとおりであり ますけれども、活性体と推測されるメチルスルホン体の生成量は、マウスとラットと非 常に違う。これは代謝が非常に重要であるということを示すものでございます。 最後のところでテストステロンの生合成に関わる酵素への影響を調べたわけでありま すけれども、こういったPCBはノンプラナーな化合物で、それほど毒性が高いというふう には考えられていなかった化合物でもテストステロンの生合成を直接的に阻害して、精 巣でありますとか、血中でありますとかのテストステロン含量を低下させるような可能 性が示されたわけであります。今後、各組織、臓器のテストステロン含量等を測定する 予定でございます。 (スライド) 続きまして、in vivoの研究として、今回はデータをお示ししませんでしたが、硝酸鉛 を通した実験がございます。鉛には、神経系の細胞あるいは肝の増殖、あるいは精巣や 血中のテストステロン濃度を低下させる作用があることが既に報告されています。ラッ トに硝酸鉛を与えますと、肝の重量の増加に伴って、これまでハウスキーピングジーン として知られ、通常はその発現量が余り変動しないということが言われていたCYP51とい うコレステロールの生合成に関わる酵素が、こういった重量変化に先立って誘導される ことを見出しました。 また、精巣におけるテストストロン生合成に関わるこういった酵素遺伝子の発現量が先 程のPCB類と同じように低下するということも明らかにしております。今後マウスについ ても……。 ○伊東座長  打ち切ってください。 それでは、御発言、御質問ございましたらどうぞ。 出川先生、このベーシックな研究のデータはエクセレントだと思うんですけれども、 やはりこれは内分泌かく乱化学物質の生体に対する影響の問題ですから、そのエビデン スをしっかり出して頂かないと、ちょっと出方が遅いんじゃないですか。 ○出川教授 すみません。遅れていまして。御指摘のとおり、血中のホルモン濃度がどうなってい るとか、そういうデータが今出ておりませんで、来年度までにはしっかりと出していき たいというふうに思っております。 ○伊東座長  それから動物種差なんて当たり前のことではないですか。それはとっくの昔にわかっ ていることでしょう。ですから、内分泌かく乱化学物質での問題をきっちりと捉えて頂 かないと、少し研究費がたくさん行き過ぎているのではないかなというふうに。 ○出川教授 動物種差を実験系としてやっている狙いは、当然ヒトでどうなのかということになる わけでありまして、残念ながら内分泌かく乱化学物質についても、ヒトに外挿するとき に動物実験からどれだけ危険性があるかというのはなかなか把握できないというのが現 状であります。そのことは、例えば安全係数をどうするかというような問題にもつなが るかと思います。そういったものをある程度科学的に把握するという意味で、動物間で どれだけ違いがあるかというのをきちんと出すというのが、結果的にヒトへの安全性評 価、リスク評価をするときに非常に大事なベーシックのデータになるのではないかとい うふうに思って研究を進めているということでございます。 ○伊東座長  そればかりやってもなかなか出ないと思うんですけれども、よく考えて進めてくださ い。どうもありがとうございました。 それでは次に移ります。次は、星薬科大学の中澤先生、「高分子素材からなる生活関 連製品由来の内分泌かく乱化学物質の分析及び動態解析」、宜しくお願いします。 ○中澤教授(星薬科大学薬品分析化学教室)  中澤でございます。宜しくお願いします。それではスライドで説明させて頂きます。 (スライド) この研究テーマを立ち上げるに至りました経緯を簡単に申し上げますと、平成10年度 の補正予算で、ヒトの暴露ということで、血液、母乳のような生体試料中の内分泌かく 乱化学物質の微量分析、これをさせて頂きました。その際に経験したことが、例えばフ タル酸エステルとかビスフェノールAの場合にバックグラウンド値が非常にバラツキま して、ここに挙げましたような理由から、操作条件によって非常に影響を受けると考え られました。例えば、蒸留水あるいは試薬からの混入とか。それから、試料を採取する 段階で、注射等がプラスチックであるということ。更に試料をクリーンナップする場合 に、最近はSPMEというような固相法を用いますが、これもやはりプラスチックであると いうことです。 それから幾つかあるんですが、室内空気から、例えば試薬の蓋を開けているだけで入 ってきてしまうということがございまして、どうもこのバラツキのキーワードが高分 子、プラスチックではないかと考えたわけでございます。 (スライド) 今回、我々の身の回りにはこのような高分子製品がたくさんありますが、食品用容器 に関して、具体的な例について今日御報告させて頂きたいと思います。  それから、ソフトトイから可塑剤が出るというお話でございますので、これについて はin vitroでの溶出検査、これを開発する目的で検討しました。 それから医療用具、これは我々が血液バッグに入った血液を分析したときに、非常に 様々な化学物質が出てまいりました。血液バッグとか、あるいは先程の注射等の他に、 今日は歯科材料を含めて御報告させて頂きます。 更に、我々の室内におきまして、建材、塗料、こういったものの中から揮散してくる 物質、それが室内空気汚染となりまして、我々が暴露されるということで、室内空気の 中の可塑剤について分析致しました。 8月にアメリカのCDC に行きましたら化粧品について盛んにやっておりましたけれど も、私どもはまだここについては手をつけておりません。  (スライド) これは、75人の乳児を使いまして、1日に子供が口に物を入れる時間を測ってみました ら、約75分ということで、これを参考にしまして、ジイソノニルフタレートという可塑 剤を含んだ玩具の切片を、大人を使いましてchewing させてみました。非常に強くかん だときと弱くかんだとき、そういうときに溶出してくる推定の摂取量を求めますと、こ こに示したような数字になりました。これは既に報告されておりますカナダの値に対し ては非常に強く噛んだときに出てくる量が非常に近い値になります。それからオランダ とかアメリカで報告されている値は、しゃぶっている状態で出てくるということでござ います。  こういう数字を参考にしまして、私どもはin vitroの試験法をいろいろ検討してきた んですが、ここにあります渦巻き振とう装置を使いまして、このような条件でやります と、異なったおもちゃでありましても、ヒトがchewing した場合といい相関の得られる ことがわかってまいりました。この方法というのは、今後、in vitroの試験法として展 開できるのではないかと考えてございます。  (スライド)  食品の飲料缶あるいは缶詰の缶にエポキシ樹脂が使われておりますが、これは御存じ のように、ビスフェノールAが原材料であります。我々はビスフェノールAと、中間体 でありますビスフェノールAジグリシジルエーテル、これをBADGE と言いますが、この BADGE と、ここの部分が切れた水酸化体あるいはクロル体が飲料缶の中身、あるいは食 品の缶詰の方に移行するかを調べてみました。 (スライド) 上はLC/MSで測ったデータでありますが、紅茶あるいは日本茶には、ここにありますよ うに、ビスフェノールA、あるいは水酸化体が溶出します。加熱処理したものにはこう いったものが出てまいりますが、ジュースのようなもの、あるいはアルコールドリンク のようなものに関しては、このようにクロル体あるいは水酸化体が出てくるということ でございます。 これら72検体についてまとめてみますと、ここに示すような濃度で検出された、特に ビスフェノールAについては非常に低濃度になっています。この検体は昨年度我々が購 入したものでありますので、恐らく現在は改良缶という形になっておりまして、ビスフ ェノールAの溶出がかなり抑えられていると考えられます。 ここで特筆すべきことは、こういった水酸化体とかクロル体について私ども研究班の 仲間がエストロゲン活性を測定しましたところ、若干その活性を認めております。 それから昨年、やはり缶ビールからビスフェノールAが検出されるという報告があり まして、私どもも測ってみましたが、いずれも国内のメーカーからは出てまいりません でした。輸入缶のビールの中には、非常にトレースでありますが、一部ビスフェノール Aが出てくるということであります。 それから、これは缶詰食品ですけれども、フルーツに関しては、ビスフェノールAは ほとんど検出されてまいりませんが、野菜缶あるいは魚、肉のものについては、ある濃 度範囲において検出される割合が高いというところでございます。 (スライド) 医療用具の方でありますが、これは歯科材料で使われておりますポリカーボネート製 のブラケットについて人工唾液に12週間まで浸漬しまして、溶出してくる量を測りまし た。12週間位のところで、あるものについてはこういったようにビスフェノールAが溶 出してまいります。 これは恐らくこういった部分からエステルが切れまして、こういうフリーのビスフェ ノールAが出てくるのではないかというふうに考えておりますが、これのメカニズム、 あるいはほかの化学物質についても今後検討していきたいと考えております。 (スライド) これは、GC/MS で、血液バッグをモデルにしまして、ブタの血液を200 mL入れまし て、20日間保存した場合にどのような化学物質が溶出してくるのか調べたものです。最 初から含まれているものもあり、必ずしも内分泌かく乱化学物質ではないんですが、特 にトルエンあたりは20日間でかなり溶出してくるということであります。 それから、スチレンでありますが、発泡スチロールに血液を入れた血液バッグを20日 間保存しておきましたら、20日間後にスチレンのモノマーが移行してまいりました。こ れは恐らく発泡スチロールの方から血液バッグを通って血液の方に移行したのではない かと考えられ、ほかの異なるメーカーについてもほぼ同様の傾向でございます。  (スライド) GC/MS で特殊な方法で高感度分析をやっているグループが、この質量測定範囲で血液 バッグの溶出試験を行いました。こういった医療用具に関しての溶出試験というのは決 まっておりませんので、私どもは生理食塩水に溶出してくるものを測りますと、ビスフ ェノールAあるいは可塑剤が出てまいります。あるいはその分解産物らしきものが出て くる。今ここに番号が書いてあるような約120物質を推定しておりまして、同様にカテー テルからも出てまいります。ここに示しますように、カテーテルの中からベンゾフェノ ンのような、紫外線吸収剤を認めております。 それから、酸素マスクからは、溶出というよりも揮発であろうということで、酸素マ スクから直接ファイバーの方に抽出しまして、一気に吐き出させてGC/MSで分析した結果 でありますが、これは可塑剤の分解物だろうと思います。あるいはBHTのような物質が溶 出されています。この場合にも約120 の物質を私どもは推定しておりまして、今後これ は定量的な解析をしていきたいと考えております。  (スライド) 先程申し上げましたように、我々の環境大気、それから室内空気、特殊なケースとし て、自動車の車内空気中の可塑剤、特にフタル酸のエステル類について調べた例であり ます。これは、グラスファイバーあるいはカーボンファイバーを使って二重で補集して おります。これは目的は、このようなファイバーに補集されるかということを見ている 部分もあるんですが、上の方ですと緑の部分をトータルで見て頂ければ結構でありま す。 まず屋外ですが、これは環境分析の方で報告されておりますように、ジエチルヘキシ ルフタレート、あるいはジブチルフタレートといったものが非常に濃度が高いというこ とで、これは一般的な結果ではないかと思います。こちらは夏の部分でありまして、冬 になりますと、ほぼこれの半分以下の濃度になります。 次に、室内空気でありますが、同じように、非常にジブチルフタレートも高いのであ りますが、ジエチルヘキシルフタレートが出てまいります。これはスケールを見て頂く とおわかりのように、屋外に比べますと、かなり高濃度になってくるということを確認 しております。 自動車でありますが、これはジエチルヘキシルフタレート、あるいはジブチルフタ レートも濃度は非常に高濃度になっております。これは夏でありまして、我々の温度計 が55度までしか測れなかったものですから、その車中温度は多分もっと高いと思います ので、高濃度で自動車の空気の中にはこういった可塑剤が揮散してくると思われます。 (スライド) 今回、私どもは全部で17位の研究機関で研究を実施しておりますが、今日は時間の都 合で、培養アッセイの方をやっているグループ、特にBPAのBADGE、あるいは水酸化体と か、そういうものについての活性を追っかけているグループのデータ、あるいは酵母 Two-Hybrid法の結果につきましては、次回に発表させて頂きます。 以上申し上げましたように、このような微量分析をやるときに、高分子素材に由来す る製品を我々の測定段階でも使っておりますし、採取や保存の段階でも使用しており、 これは非常に注意を払うことが必要だろうと思っております。既に同定しております が、今後はもっと幅広い物質を測定する予定でおります。 以上でございます。 ○伊東座長  ありがとうございました。どなたか御質問、御意見ございましたらどうぞ。ございま せんか。 中澤先生、いろんなところから出てくるんですけれども、自動車の中でもたくさん出 てくるということですけれども、人に対する危険性のレベルから考えればどうなんです か。 ○中澤教授 今、私どもが試算といいますか、歯科材料とかそういうものから出てくる量というの は、BPA にしましても、フォンサールが報告しているデータから換算しますと、我々が 危険を問題視するような濃度レベルではないと思っています。 ただ、先程の車の中の濃度というのは、これはまだ試算の段階ですけれども、濃度レ ベルとしては非常に高い状況です。ただ、車を運転するときには、多分窓を開けるか、 エアコンを入れるかされておりますし、そういう意味での暴露による影響というのは、 今のところはあまりないのではないかと考えております。むしろ、今日のトップにお話 になりました牧野先生とも御一緒させて頂いておりますが、我々の血液を分析したとき に、今日お話し申し上げていないような、つまり内分泌かく乱化学物質とは直接関係し ないような化学物質で非常に濃度の高いもの、そちらの方が私はむしろ問題かなと思っ ております。 ○伊東座長  よろしゅうございますか。 ○山崎委員  特に医療用具の場合が問題だと思うんですが、血液バッグのお話がさっきあって、私 はちょっと聞き間違いかもしれないんですが、発泡スチロールの箱に保管していた時に 血液からいろいろな物質が検出されたというふうにおっしゃって、これは保管の問題な んでしょうか。 ○中澤教授 発泡スチロールは、スチレンのモノマーだけが発泡スチロールの方から多分いったと 思うんですが、ほかのものは影響を受けておりません。先生おっしゃるように、医療用 具については、私どもが今検討しておりますのは、むしろ透析等のように長期間使用 し、ポリカーボネートでできているものについて今少し追っかけております。 ○伊東座長  ありがとうございました。 それでは、次に移らせて頂きます。次は、「内分泌攪乱化学物質等、生活環境中の化 学物質による健康リスクの評価における不確実性の解析に関する研究」ということで、 国立医薬品食品衛生研究所の関沢先生、宜しくお願い致します。 ○関沢室長(国立医薬品食品衛生研究所化学物質情報部)  伊東先生どうもありがとう ございます。 最初のOHPをお願い致します。 (OHP) 私どものテーマは、「内分泌攪乱化学物質等、生活環境中の化学物質による健康リス クの評価における不確実性の解析に関する研究」というもので、このOHPにお示しした6 人の先生方で研究を進めております。  (OHP)  まず、研究の背景を御説明致します。これまで、いろんな先生方が食品や環境中での 内分泌かく乱化学物質の検出ですとか、あるいは動物試験における影響の検出というこ とが様々研究されており、これらはいずれも基礎的に大事なことですが、最終的には、 ヒトにおける健康のリスクはどうなのかということだと思います。そして、その健康リ スクの評価におきまして、OHPに記したAとBという不確実性があるというふうに言われ ております。1つは、未知の要因が介在するために不確かさを生ずる真の不確実性と呼 ばれる部分です。もう1つは、ヒトや動物及び環境要因が一様でなくて、分布を持って いるため、結果の値が一義的に決まらないという不確実性でございます。  (OHP)  私どもは、一昨年より研究を開始しておりますが、昨年度は、OHPに示した4つの点に ついて研究を進めました。  まず、メカニズムにおける不確実性の重要な要因の一つであると思われます暴露時期 の問題についてです。胎児期あるいは胚の暴露による影響の知見データを収集して解析 しております。  2番目に、これは一昨年から研究しておりますが、体外から摂取するエストロゲン物 質として日本人にとり最も影響の可能性が高いと思われる大豆エストロゲン物質につい て、若い女性での生理などの健康影響を解明しようとしております。  3番目には、ダイオキシンについて、ヒト及び動物における生殖発達影響のリスクの 定量的な不確実性分析を行っております。  4番目に、健康リスク評価における不確実性解析の国際的な動向を検討しています。  (OHP)  まず第1番目の胎児期暴露情報の解析ですが、Toxline 毒性文献データベースを用い まして、1985年から99年の文献を問題とされる内分泌かく乱化学物質について化学物質 のCAS 登録番号と4つのキーワード、fetus 、embryo、fetal exposure、reproduction を組み合わせて検索致しました。 検索でヒットした文献の原報を入手し、現在のところ、26物質119 文献、及びそのほ かにレビュー文献がございますが、それらについて化学物質情報、影響情報、文献情報 のデータベースをつくっております。 次のOHPにお示しするように、このうち代表的な物質を選びまして、胎児期、胚の時期 における暴露で見られた影響の種類と、影響濃度をその物質の全体のリスクを評価した 影響の種類および影響濃度を比較致しまして、この物質におけるトータルとしてのリス クを評価する上での胎児期暴露の持つ意味について検討を加えていきたいと思っていま す。 (OHP) このOHPは、その結果をサマライズしたものですが、データが多いためちょっと見にく くて申しわけございませんが、現在、フタル酸エステル類、有機スズ化合物、農薬、工 業化学物質、その他についてデータを入力し、影響の種類を、発達毒性、生殖毒性、免 疫毒性、分析のデータ、in vitroの試験系、メカニズムのデータというふうに分類し、 さらに詳細な分類を進めて解析を進めております。 (OHP)  2番目は、大豆エストロゲン摂取の女性の健康への影響です。一昨年度は、日本人が 摂取する大豆エストロゲン物質のゲニステインとダイゼインの量が、日本人の血中濃度 や尿中排泄量と、これらを指標と致しました乳がんリスクの疫学データ、臨床データな どを検討した結果、日本人の女性に乳がんが少ないなどにつき、これら物質の寄与の可 能性が十分ありうることを定量的にお示ししました。  ひき続き、昨年度は、大豆食による影響の検証と、健康影響を左右するほかの因子と の関係を探るために、都内の女子大学生365 名を対象に、昨年11月に日常生活や大豆製 品の摂取を中心とした食生活、健康状態についてアンケート調査を行いました。回答 は、約250 名で、結果について次にお示ししますが、生理の異常と大豆製品摂取量、食 事の規則性、喫煙、睡眠時間などの関係について解析しました。  (OHP)  このOHPはアンケート項目の一覧で、このような項目について調査しております。  (OHP)  次に結果の一部を御紹介します。これは大豆製品摂取量を、多食する人、中程度の 人、ほとんど食べない人というふうに分けてみますと、大豆製品摂取の多い人では経血 量が普通の場合が比較的多いのに比べ、経血量が異常に少ないとか異常に多い人は、大 豆製品摂取量は少ない場合に少なくとも表面的には多くなるように見られます。  (OHP)  同じく、女性の不正出血について調べますと、やはり大豆製品の摂取量と表面的に逆 相関の関係があるように見える結果が得られています。大豆製品摂取量別に不正出血の 多寡を左から多い人、中間の人、少ない人につき、かつて不正出血があったとか現在あ るという人のデータです。  (OHP)  同時に、女性の貧血との関連についても調べましたが、大豆摂取の多い方は、少ない 方に比べて貧血がないという方が多いように見えましたが、摂取量中程度の方の方が貧 血が多い結果を得ておりまして、これについてはさらに解析を進める必要があると思っ ています。  それとの関係で、次のデータをお示しします。  これは、睡眠時間が5時間以下の方と以上の方に分けた場合、貧血があるというの は、睡眠時間5時間以下の方に貧血があるという方が高く見られました。  (OHP) また煙草の喫煙との関係でも、喫煙する人がブルーですが、喫煙する人の方が貧血が 多い場合が多いです。  このように、女性の生理的な状態については、一例として経血量の多寡、不正出血、 貧血について比べた結果をお示ししたわけですが、大豆の摂食だけでなくて、煙草の喫 煙とか睡眠時間による変動が大きく寄与している可能性があり、さらに詳しい分析を進 める必要があるというふうに考えております。現在のところ、東京農業大学の渡邊教 授、また跡見女子学園大学の石渡講師と協力致しまして、更年期での女性に実際にイソ フラボンを投与したときの生理的な影響について、アンケートのほか採血、採尿なども 行っての分析を今年度は進めております。さらに、女子大生のアンケート調査をほかの 地域、例えば熊本等の協力を得まして進めるつもりでおります。  (OHP)  3番目ですが、ダイオキシンの生殖・発達影響の不確実性分析の一例と致しまして、 イタリアのセベソで見られたダイオキシンに高濃度暴露された方の出生時の性比の偏り に関して、米国環境保護庁が開発したベンチマークドーズ推計ソフトを用いて、そのよ うな事象が起こりうる確率と、母親の血中ダイオキシン濃度の関係について統計的な解 析を行いました。  並行して、我が国で耐容一日摂取量を評価する際に用いられたラットのメスで見られ ました Vaginal threadの出現の確率についても同様な解析を行いました。 最後に、ポリ塩化ジベンゾ-p-ダイオキシン、ポリ塩化ジベンゾフラン合わせて4種類 の同族体の新生児での体内半減期を胎児期の負荷量、出生後の体重、脂肪含量などを参 考に推定し、個人差によるばらつきの不確実性も検討致しました。  (OHP)  このOHPは少し見にくいかと思いますが、一般人のダイオキシン類の体内レベルを、ド イツ、米国、ベトナム、大阪についての既報値を、血液、子宮内、胎児、脂肪組織につ いて比較したもので、御存じのように、血中では約20〜40pg/g脂肪という値が出ており ます。こちらは、事故時の値ですので、今回は省きます。  (OHP)  次の表も少し見にくくて申しわけございませんが、イタリアのセベソで、ダイオキシ ンに高濃度暴露された母親から産まれた子供の性です。母親の血中ダイオキシン濃度を 上に見ていきますが、26.6pg/g脂肪から実測値がありまして、1,650 pg/gまでありま すが、比較的低い濃度、つまり 126 pg/gより下では男が産まれていますが、126pg/g 以上の血中濃度の母親からの12人の全員が女の子しか産まれなかったということです。 このデータをlog logistic modelというものに当てはめて、ベンチマークドーズを推 計しました。このようなことが10%の確率で起こる血中濃度を推定致しますと、60pg/g 以上でそのようなことが10%の割合で起こるというふうに推定されました。しかし、こ の126pg/gの母親から産まれた女の子は、50%の確率で男であった可能性もありますの で、この母親から生まれた2人の女の子のうち1人が男だったというふうに致します と、10%発現確率は120 pg/g脂肪というふうに変わります。  (OHP)  同じくダイオキシンの生殖発生の不確実性分析ですが、Kreuzerらによる死産児及び授 乳されていない早期突然死幼児の脂肪と肝臓中のダイオキシン、ジベンゾフランの同族 体の濃度の分析から半減期を推定致しました。このように、2,3,7,8-PCDD、五塩化ダイ オキシン、六塩化ダイオキシン、ジベンゾフランについて、0.28〜1.6年 、0.25〜0.89 年、0.37〜4.9年 、0.28〜4.6年 、いずれも95%信頼限界の上限と下限を示しますが比 較的短い値が推定されまして、これは乳児あるいは幼児におけるダイオキシンの影響を 考察する際において非常に重要なことであると思われます。  (OHP)  最後になりますが、健康リスク評価における不確実性分析の国際的な動向についても 調査致しました。昨年4月に欧州連合、5月に米国環境保護庁、カナダ厚生省が共催 で、健康リスク評価における不確実性係数の適用手法の検討に関するワークショップを 開いております。また、私も参加しておりますが、IPCS (国際化学物質安全性計画) で は、同じく不確実性の分析を国際的にハーモナイズする方法について検討を進めており ます。この場合、種間の外挿、個体間の変動における不確実性要因を解析し、よりデー タを重視、精密に解析するために、吸収、分布、排泄に関するデータからキネティクス に関する不確実性を、また、組織や分子の反応性、感受性データからダイナミクスに関 する不確実性の幅を定量的に推定し、これをもってより適切な不確実性係数を決めてい こうということで、リスク評価における不確実性を少なくするという研究が進められて おります。 以上、今年度は、今回発表しました結果をさらに進めまして、詳細な解析を行いたいと 思っております。ありがとうございました。 ○伊東座長  ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表に御質問などどうぞ。 ○紫芝委員  先生の最初のお話のアンケートについてちょっと伺いたいんですけれども、最近の若 い女性はいろいろなダイエットをしておりまして、体重がやせておるのも太っているの ももちろんおりますし、それから特殊なダイエットをしている人たちもかなりおります よね。そういうダイエットでありますとか喫煙とか、そういうファクターを全部ニュー トラライズした上での多変量解析をやっても、まだなお大豆製品と経血量の減少、特に 経血量の少ない、増えているというのは、やせている、やせていないということとかな り関係あることが今まで知られておりますけれども、そういうファクターのニュートラ リゼーションというのはどうなのでしょうか。 ○関沢室長 先生のおっしゃるとおりだと思います。実際に私どものデータをχ2検定にかけまし たら、5%で有意差は出ませんでした。それで、そのようないろいろなファクターによ る不確実性というか、変動の要素があると思いまして、現在、SPSSを用いて多変量解析 を進めておるところです。 ○座長  はい、どうぞ。 ○阿部委員  ちょっと聞き落としたかもしれないんですけれども、閉経期の女性にイソフラボンを 投与している、これは何を御覧になっているんでしょうか。 ○関沢室長 閉経前と後の女性が含まれている60人について、ダブルブラインドクロスオーバーの 試験でインフォームド・コンセントを得てやっております。イソフラボンを40mgを一月 間投与した場合と投与しなかった場合について、血中の女性ホルモン濃度やイソフラボ ンの代謝、また骨密度の増減などについて調査しております。データは今、解析中でご ざいます。 ○阿部委員  オステオポローゼとか、更年期障害、動脈硬化を予防するいい面もあると思うんです が、がんが増えますよね。こういうのは一体どのように御説明になってやっているんで しょうか。乳がんですね。 ○関沢室長 はい。家族の既往症、特に女性の生理に関係したがんについても記入をして頂いてお ります。現在のところ、まだ解析が進行中ですので明確なお答えはできませんが、まと めましてまた御報告させて頂きたいと思っております。 ○伊東座長  ありがとうございました。 それでは、次の演題に移ります。次は、「内分泌かく乱化学物質等、生活環境中化学 物質による人の健康影響についての試験法に関する調査研究」でありまして、食薬安全 センターの今井先生、宜しくお願いします。 ○今井副所長((財)食品薬品安全センター秦野研究所)  伊東先生、どうもありがとうございます。 OHPをお願いします。 (OHP)  これが私どものテーマでございます。 (OHP) 私どもの研究班の主な課題は、新たな試験法の開発ということでございます。その中 の重点課題としては、(1)試験管内の試験法の強化、(2)人への影響を調べるため の新しい試験法の開発、(3)今OECDなどでやられている国際協力に基づいた既存の試 験法の検証と問題点の抽出、(4)内分泌かく乱化学物質に関する情報、特に人への影 響に関する情報収集とデータベースの作成に主眼をおいております。 (OHP) そこで、この課題にのっとって、本年度は、(1)試験管内研究法の開発と検証、 (2)動物を用いた試験法の開発と検証、(3)OECD対応試験の検証、(4)内分泌か く乱化学物質の薬理・代謝に関する試験法と開発と検証、(5)内分泌かく乱化学物質 の健康影響に関する調査研究という5つのサブグループに分かれて研究を行っておりま す。 (OHP) 今年度の実績を時間の関係で要点を抽出して御説明致しますけれども、特に注目され るものについては少し詳しくデータを紹介したいと思っています。 まず、試験法の開発の検証としては、今まで核内受容体を介したシグナル伝達系のス クリーニング法が開発されていますけれども、例えば性腺刺激ホルモンの様に膜受容体 を介したシグナル伝達系のスクリーニング法がなかったものですから、その1つとして プロモーター遺伝子として、膜に存在するステロイドの受容体のファミリーの一つであ るNOR-1 を入れて、レポーターとしてルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞を開発致し まして、これで一応膜受容体を介して物質のシグナル伝達の活性化が起きるという現象 を確認しております。 それからもう一つは、酵母のTwo-Hybrid試験系の改良でありまして、今まで、代謝活 性化物質の検出がなかなかできなかったのですけれども、S9mixを導入することによって 代謝活性化が起こるような物質を検出する試験系を開発しました。また同時にE2との共 存で、エストロゲンの拮抗物質が検出できることが確認されました。 (OHP) それから動物を用いた試験系の開発の一環として、ラットの雄にのみ存在するα2u- globulin AUG変動を指標にしたスクリーニング法が開発できないかということで、検討 を加えた結果、 DESあるいはビスフェノールAが用量依存的に雄ラットのAUG レベル、 あるいは肝臓のAUG mRNAのレベルを低下させるということを確認致しました。これは後 程御説明致します。 次に、雄ラットを去勢致しますと、前立腺の上皮にアポトーシスが起こります。そこ にアンドロゲンを追加すると、アポトーシスが起こるのが抑制されますけれども、そこ に抗男性ホルモン作用を持っている物質を投与すると、用量依存性にアポトーシスが増 えるということを確認し、このアポトーシスを見ることによって男性ホルモン作用が検 出できるのではないかという可能性が示唆されました。 雄の視床下部には性分化に非常に重要な意味を持っている性的二型核と呼ばれる神経 核がございますけれども、エストロゲンを投与致しますと、この神経核の形が雌型にな りまして、その影響が成熟後の性行動、あるいは生殖能力に現れることが明らかにな り、早い時期に神経核のアポトーシスを見ることによって、一応雄の分化への影響を推 定できるのではないかというようなことが示唆されました。これもデータを実際にお目 にかけたいと思います。 (OHP) これは雄ラットの血中のα2u-globulinの変動のデータでございますけれども、非常に 強いエストロゲン作用を持っているDES を0.1 あるいは0.01mg/kgを14日間雄ラットに 投与致しまして、血中のAUG のレベルを見てみました。そうしますと、血中のAUG は用 量に依存して減ってくるということが明らかになっております。  (OHP)  一方、これは肝臓中のAUG mRNAレベルを見たものですけれども、同様に、mRNAもDESの 用量に依存して低下しており、エストロゲン作用に依存して血中AUG濃度が変化するとい うことがわかってまいりました。 (OHP) そこで、DES のほかにビスフェノールAを大量投与するとやはり用量に依存して、ビ スフェノールAによるAUG の低下が見られるということで、新しいスクリーニングとし て、これは非常に有用ではないかということが示唆されたわけです。 (OHP)  次に、先程申し上げました性的二型核に関する研究成績をお示しします。これが対照 群の雄の生後24日目の性的二型核で、はっきりした神経核がございます。それに、かな り大量でございますけれども、エストラジオールベンゾエート2mg/kg/日を生後1日か ら5日間連続投与致します。そうしますとこの神経核の発達が非常に抑えられて、その 容積が約3分の1ぐらいに減少し、ほとんど雌に近いような形になります。  さらに、こういった動物を2週間放置致しまして、成熟に達してから、性行動、ある いは生殖能力、メーティングインデックスですとか、あるいはイントロミッションの数 等を指標に性的な活動性を調べていきますと、成熟後にそれが非常に抑制されるという ことが明らかになりました。  (OHP)  それで、DES 、ノニルフェノール、あるいはタモキシフェンを用いまして、こういっ た薬剤が性的二型核にどういうふうな影響を与えるかということを調べましたが、大量 のノニルフェノール、あるいはタモキシフェンでは、用量に依存して、性的二型核のア ポトーシスが、有意に増加し、それに伴ってその容積の減少がみられるということで、 新生児の早い時期に起こった性的二型核の神経細胞のアポトーシスにより、性的二型核 のボリュームが下がる、即ち、雄が雌化するということがこれで明らかになってきたわ けです。ですから、こういった方法を使うと、非常に早い時期に性の分化への影響を検 出できるのではないかというふうに思っております。  ただ、DES については、かなり大量投与してもこういった影響は出てきていません。 なぜこういうふうなことが起こっているのか、これは今現在検討中でございます。  (OHP)  それからもう一つ、動物を用いた試験法の開発と検証ということで、フタル酸エステ ルは生殖障害について調べました。この生殖障害の機序として、特に胎児死亡に関して は、子宮、特に胎盤の発達が非常に悪いということがわかってまいりました。ですか ら、胎盤の発達の状況ということを指標にする内分泌かく乱化学物質の胎児に対する影 響のスクリーニング法ができるのではないかということで、現在少し研究を進めており ます。  それから、先程in vivo の系で性的二型核の変化をお目にかけましたけれども、同じ ようなことがin vitroでできる可能性はないかということで、エストロゲン様物質を全 胚培養胎児を用いてin vitroで接触させたときに、胎児の神経上皮細胞層にアポトーシ スが確認されましたので、もしかしたらこれが試験法として使えるのではないかという ことを考えて今研究を進めております。  発がんに関する影響ですけれども、男性あるいは雄動物に肝臓がんが多く、女性には 甲状腺腫瘍が多いというようなことで、今、実験的に使える2段階肝発がん、あるいは 甲状腺発がんモデルを使って、内因性のホルモンの影響を調べたんですけれども、現在 のところ、発がんに対する明らかな影響は見られておりません。  (OHP)  それに関連して、エストロゲンの発がんには、代謝過程で形成されるカテコールエス トロゲンが非常に重要な意味を持つと考えられていますので、ラットの尿中からカテ コールエストロゲンの代謝産物を測ろうという試みをやりまして、その方法が確立さ れ、ラット尿中のカテコールエストロゲンを分離定量することが可能になりました。  この方法を使いまして、肝臓における薬物代謝酵素を活性化した後に、カテコールエ ストロゲンがどういう変動をするかということを見ていったんですけれども、現在のと ころ、ラットにおいては、少なくとも尿中の代謝産物には影響がないということがわか ってまいりました。  (OHP)  一方、ビスフェノールAは肝臓で硫酸抱合を受けますが、人の場合には、硫酸抱合能 に非常に個体差があるということから、硫酸抱合を受けたビスフェノールAのエストロ ゲン活性はどうなるかということを調べましたけれども、硫酸抱合を受けたビスフェ ノールAは、エストロゲン活性が消失するということがわかってまいりました。  OECDの試験法の対応として、OECDで提案されている4つの子宮重量法プロトコ−ルに ついてどれがいいかという検討のためにプレバリデーションを行いまして、結局は成熟 ラットの卵巣を摘出して7日間投与することによって、エストラジオールに対する反応 が最も強いということがわかりました。  一方、現行のOECD28日間の試験の方法(TG407)では内分泌かく乱作用に関する試験項 目がほとんど考慮されていないので、新たに血中ホルモンの測定、あるいは生殖器の検 査、あるいは精子に対する影響というふうなこと等を追加した試験法(改良TG407)が提 案されていますが、この試験法を用いて、いろいろ実験を加えましたが、結論的には、 病理学的な所見、特に臓器重量も加えた病理学的な所見が内分泌作用の指標としてより 重要であるということが確認されましたものですから、この点を昨年のヨーロッパの会 議で主張致しまして、現在新たに修正が加えられた方法によりプレバリデーション試験 が行われております。  (OHP)  電算を使ってコンピューター上でエストロゲンの受容体とリガンドの立体構造をもと にその結合様式を推定しようとする試みで、フラボン・イソフラボン化合物をモデルに 電算上の三次元の結合様式を検討致しまして、エストロゲン類似の結合をする物質を42 の中から21物質選びまして、そのうち11物質にエストロゲン活性があることを確認して おります。  それからもう一つは、人への健康の影響に対するデータを集めまして、インターネッ ト上で利用できるように致しました。  (OHP)  以上、本研究班でこれまでやられた主な成果をまとめますと、三次元構造に基づいた 電算によるそれぞれの活性の検索が可能になり、膜受容体を介したシグナル伝達系へ影 響を与える化学物質の検索が出来る可能性が出てまいりました。それから血中のAUG 、 あるいは前立腺上皮のアポトーシスを使うことによって動物試験系に新たな検査法が追 加される可能性、それから性的二型核の容積、あるいはアポトーシスを測ることによっ て、性分化への影響が確認できる可能性が示唆されました。  (OHP)  そこで、今年度は、その他の各試験法、改良法の見極めを行いまして、それで新たに 開発された試験法の有用性の確認を行って、具体的にこういう試験法がいいですよとい う提案をして、どういう試験法を組み合わせることによって、より効率的な試験が組め るかというバッテリーの構築を行っていきたいと考えております。  以上です。どうもありがとうございました。 ○伊東座長  はい、どうぞ。 ○阿部委員  教えて頂きたいんですが、先生がなさっている研究は、題が「生活環境中化学物質、 内分泌かく乱化学物質に関する測定法」となっておりますね。先生のいろいろなさって いる、確かにどういうふうな生理作用があるかというのは非常に重要だと思うんですけ れども、これで本当に問題となっている物質を生活環境中で検討できるのか。むしろ私 にとっては、わからないんですが、薬理学的な効果を見ている方法であるというふうに しか思えないのですが、いかがでしょうか。 ○今井副所長  実際に今まで実験的に活性物質を非常に大量に使って研究してきていまして、それ で、その作用機序から活性の強い物質、これは今の方法でバッテリーを組み合わせるこ とによって検出可能だというふうに思っています。  それからもう一つ重要なのは人への外挿をするときに、これは作用メカニズムといい ますか、そういうことを考えていかなければなかなか外挿は難しいだろう。そういう意 味では生理的な、今おっしゃった薬理学的な手法でメカニカルな面から追求していく。 こういう試験を使って追求していくということも、人への外挿に非常に大切なことなの じゃないかということで研究を進めております。  ですから、バッテリーといいますか、8万個、今検討しなければいけない化学物質が あるわけですから、効率的にどういう組み合わせでやっていけばいいかということで、 先程申し上げました電算の方法も一つですし、あるいはそれから発生した物質を、in vivoあるいはin vitroの系で逐次絞りながら検出していくというふうに考えております けれども。 ○伊東座長  α2u-globulinが非常にいいように言われますけれども、そんなに大量でやったデータ はナンセンスですよ。非常に微量のときにポジティブに出てくるかということをやらな い限り、あれが有用であるということを言えないと思うんですけれども、いかがです か。 ○今井副所長 今のDES に関しましては、先生がおっしゃるように、今までやられてきた試験法から 比較すると、より低量でチェックができる可能性が示唆されております。 ○伊東座長  DES みたいにあんなむちゃくちゃに強く出るようなものは、そんなものはやらなくた って幾らでも出るんですよ。ですから、DES とかビスフェノールAでも大量でやったと 言われたでしょう。非常に少量のときに出るかどうかということをやらないと、あれが 有用かどうかということにはならないと思うんですけれども。 ○今井副所長  その辺はUシャープ(逆U字型曲線)といいますか、低用量の問題が出ていますの で、今後はもっと低い量で検討していきたいと思っています。 ○伊東座長  ありがとうございました。  それでは、次に入りたいと思います。「内分泌かく乱化学物質の人の生殖機能等への 影響に関する研究」、国立がんセンターの津金先生、宜しくお願い致します。 ○津金部長(国立がんセンター研究所支所臨床疫学研究部)  では、最初のスライドを宜しくお願い致します。  (スライド)  私どもは、人の健康影響に関して研究しようということで、私以外に2名の分担研究 者、それから研究協力者3名の協力を得まして研究を進めております。  (スライド)  まず、人の健康影響を疫学的に検討しようということなんですけれども、そのために 内分泌かく乱化学物質に関しましては、人の暴露状況とか、今回もいろいろ発表があり ますが、実際どの程度我々の社会に内分泌かく乱化学物質が存在するのか、あるいは 我々は摂取しているのかという情報がないので、まずそこからきちんと押さえて、それ によって疫学研究のデザインを考えていこうというふうに考えて、今年度は基礎的検討 に主に取り組みました。  エンドポイントとして、がんとか、あるいは疾病をとらえるとなかなか難しい面もあ る場合もありますので、人の健康影響評価のためのバイオマーカー、主にmRNA、酵素に 関する酵素誘導を調べるというようなことをやっておりました。  ただ、そればかりやっていると疫学研究ができませんので、ちょっと早めに昨年度か ら子宮内膜症というものが注目される疾患だろうというふうに考えまして、子宮内膜症 の症例対照研究を開始しております。  (スライド)  まず最初は、実際に我々が食品から内分泌かく乱化学物質をどの程度摂っているかと いうようなことを明らかにすること、それから経年的な変化もできれば明らかにしたい というようなことで、国民栄養調査に基づいたマーケットバスケット方式によって保存 されている食品につきまして、PCB、BHC(ヘキサクロロシクヘキサン) など、ここに書い てありますような測定項目に関しまして、ECDガスクロで測定を致しました。 (スライド) これは、PCBの1日の摂取量を示しているものですが、基本的にはPCBはほとんど魚介 類から由来するというようなことがおわかりだと思います。大体0.02〜0.6μg/日の範 囲にあることがわかりました。  ただ、ここはサンプルの関係で少し高めに出ているのかもしれませんが、全体的には 減少傾向にあるというふうに考えられます。  (スライド)  もう一つ、BHCの1日摂取量ですが、これも魚介類、野菜、海藻、肉、乳製品などから 少し検出されます。全体的には、最近では0ですが、0〜0.17μg/日でありまして、基 本的には経年変化としては減少傾向にあります。  (スライド)  これはDDTの代謝産物のDDEなんですが、これもほとんど魚介類から由来するわけなん ですが、サンプルの関係でいろいろばらつきがありますが、DDT自身よりはDDEの1日摂 取量の方が比較的多めに摂取されている。大体0.2〜2.3μg/日ということがわかりまし た。  (スライド)  ほかのものに関しましては、先程一番最初に示しました測定項目に関してはほとんど 検出されません。それから全体的にこういう物質は減少傾向にあるというようなことが わかりました。 その次は、実際、ビスフェノールAとかそういう内分泌かく乱化学物質が人の体の中に どの程度入っているのか明らかにしようというようなことで、男性14名、女性27名の協 力を得まして、平均年齢60歳ですが、48時間尿を集めさせて頂きまして、その中に含ま れているビスフェノールA、アルキルフェノールを測定致しました。ビスフェノールA はELISAで測定し、そのほかは HPLCで測定していますが、ビスフェノールAは平均大体83μgの排泄量がありました。 大事なことは、少ない人もいれば、多い人もいることがわかったというようなことが 我々疫学研究を実行するためには大事なことであります。現在、ELISAで測定しましたの で、HPLCによるクロスチェックを進めております。 (スライド) これは血清の有機塩素系の農薬類の分布を示しております。濃度的に一番高いのはDDE でありまして、平均5.76ng/mLで、もとのDDDとかDDTはほとんど検出されなくて、逆に言 えば、こういうものをターゲットとして疫学研究はなかなかしにくいということがわか ります。先程の食品でも摂取されておりますように、DDEとかBHCとか、そういうものが 人の血清中に存在するというようなことがわかりました。これはガスクロで測定してお ります。 (スライド) もう一つ、植物エストロゲン、ダイゼイン、ゲニステイン というものが日本人におい ては非常に重要な問題、疫学研究を行うに当たっても非常に交絡因子になることが考え られますので、それも測定しました。大体ダイゼインで10mg、ゲニステイン で5mg位が 排泄され、多い人も少ない人もいるということがわかりました。それから、ビスフェ ノールAに比べれば、1,000倍位のオーダーで我々は摂取しているというようなことがわ かりました。  (スライド)  次は、実際、ビスフェノールA関係の化学物質を職業的に扱っている、ある程度暴露 が高いだろうと考えられている人においてはどうなのか。実際どの程度暴露されている のか、それから内分泌系への影響はどうなのかということを明らかにするために、ある 工場でビスフェノールAジグリシジルエーテル、先程も出てきましたけれども、こうい う化学物質なんですが、体内でビスフェノールAに代謝される可能性があるというふう には考えられているんですが、それを扱っている42名と、それから年齢、喫煙本数をマ ッチした同じ工場作業者、扱っていない42名の横断研究を行いました。  ただ、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのみを暴露しているわけではなくて、 ほかにもいろいろな有機溶剤を暴露しているということも考慮に入れる必要があるとい うことであります。  (スライド)  そうすると、尿中ビスフェノールAは、暴露者もコントロールも全く差が認められま せんでした。すなわち、暴露しているビスフェノールAジグリシジルエーテルは、体の 中ではビスフェノールAとして恐らく代謝されていないだろうということが考えられま す。そのかわり、有機溶剤に関しましては、明らかに暴露者の方が統計的有意に暴露し ているというようなことがわかります。 それで、ホルモン関係のLHとFSHを測定したんですが、暴露者においてFSHが抑制され ているということがわかりました。ただ、これがビスフェノールAと関係しているの か、これは有機溶剤に関係しているのか、それともほかのものによるのかということは 今後慎重に検討を進めていく必要があるというふうに考えております。 (スライド) 実際、人の健康影響はどうなのか、内分泌かく乱化学物質を普通の人よりたくさんと っている人はより子宮内膜症になりやすいのか。子宮内膜症は、そうじゃない人に比べ て内分泌かく乱化学物質をたくさんとっているのかどうか、それを人で明らかにしよう というようなことで、断面的なデザインではありますが、症例対照研究のデザインを組 みまして、不妊症外来を受診した20歳から44歳の未経産婦を対象に、腹腔鏡検査でStage II以上と診断された75名をケースとして、コントロールは同じ腹腔鏡検査でStageI、あ るいは男性が原因で不妊であるということがわかっている人を対象にしました。この両 者の間で、いろいろな内分泌かく乱化学物質の濃度、血液、体内の量に差があるかどう か、どういう違いがあるのかということを明らかにしようという研究デザインでありま す。 (スライド) 調査項目は、血清ダイオキシン22種、血清中農薬13、血清中PCB 36、これはアメリカ のCDCのラボラトリーで測定を予定していますが、1検体1,500ドルなので、単純に計算 すると足りないので、どういうふうにしようかと今考えております。  そのほか、ビスフェノールAとかフィトエストロゲンとか、ダイオキシン類と関係す る代謝酵素の発現量、そういうものを測定する予定です。それから質問票による生活習 慣、月経歴などの調査を行い、実際、子宮内膜症の発生にこういうような内分泌かく乱 化学物質が関連しているのかどうかを検証しようというふうに考えています。 この研究は慈恵医大でやっておりまして、慈恵医大の倫理委員会に承認された後、 我々共同研究者であります国立がんセンターの倫理審査委員会、国立環境研究所の倫理 審査委員会、アメリカ CDC の倫理審査委員会に出して、それを通すのに本当に大変で したけれども、みんないろんなことを言われますので、ようやく通って、これが進んで いるという状況であります。  (スライド)  まとめに入らせて頂きます。PCB、DDE、BHCなどは、魚介類を主な暴露源として食品か ら摂取され、人の体内に個人差をもって存在しているということはわかりました。それ から摂取量は年々減少傾向にあります。そのほかの有機塩素系農薬は、食品由来の暴露 はほとんど無視できるというふうに考えられます。それからビスフェノールAは個人差 をもって人の体内に摂取されているが、植物エストロゲンがその約1,000倍のオーダーで 摂取されている。アルキルフェノール類は、現在のところ、測定の問題かと思います が、検出はされてはいません。  これで、あるということはいいんですが、それが本当に人の健康影響に及ぼしている かどうかということをちゃんと証明する必要があるので、きちんと疫学のデザインを組 んで、ケースとコントロールの差があるのかどうかということを明らかにする研究をす る手始めとして、非常に重要な問題であろうと我々は考えまして、子宮内膜症を対象に して、現在、症例対照研究を実施しております。  以上です。 ○伊東座長  ありがとうございました。ただいまの御発表に何か御質問ございませんか。 ○阿部委員  津金さん、エンドメトリオホージスとの関係は大変なことだと思うんですけど、出な かったら、ないと言えないですよね。出たときに、もっと大きな因子があるという可能 性もあるわけですよね。 ○津金部長 そうですね。 ○阿部委員  ですから、新聞なんかだと、エンドメトリオホージス、日本の不妊症は内分泌かく乱 化学物質のせいだとすぐ言ってしまうわけですよ。その点は十分に気をつけてやって頂 かないと大きな問題だと思うんですけどもね。 ○津金部長 そう思いまして、デザインなどをきちんとしまして、まず、差があるかどうかという ことをきちんと見て、差があった場合、あるいはなかった場合、そのほかの要因はどう なのかということで、そのほかの要因についてもなるべく詳しく聞こうというふうに考 えてやっております。もちろん出た結果は、慎重に専門家の意見などを聞きながらパブ リケーションにしていきたいというふうに考えています。 ○伊東座長  はい、どうぞ。 ○岩本委員  男性不妊症が原因での不妊というグループがありましたが、男性不妊の定義を先生は どういうふうに決められているんでしょうか。 ○津金部長  要するに男性の精子が原因で不妊であるというようなことが明らかになった。その人 に関しては、腹腔鏡とかそういうふうな検査はしていないんですけれども、恐らく内膜 症がない可能性が高いというようなことで一応それも入れようと。ただ、StageI以下と StageII以上というようなことで比較することが基本なんですけれども。 ○岩本委員  今日はお話しされなかったのですが、WHOの基準に準ずるとか、定義を明確にしておい て頂きたいと思います。 ○津金部長  医師が男性不妊が原因であるということを診断した。不妊外来を用いたということ は、基本的に妊娠を一度もしたことがない人だけを対象にしようということを考えたた めであります。 ○伊東座長  はい、どうぞ。 ○松尾委員  一つだけ教えて頂きたいんですけれども、ビスフェノールAジグリシジルエーテルを 使っている工場での結果ですが、尿排泄はほとんど変わらなかった、こういうお話です が、暴露は一体どのぐらいあったのかというのはわかりますか。全然吸収されないんじ ゃないですか。環境中になくて、そういうことは考えられませんか。 ○津金部長 ビスフェノールAジグリシジルエーテル自体を測定すれば、ある程度わかると思うん ですけれども、暴露量はあるとわかっています。実際にどのくらいかというのは今覚え ていないのでお答えできません。 ○伊東座長  それでは、これで午前中の研究発表会を終了致します。 午後は1時半でございますので、それまでにお戻りください。エスケープしないでく ださい。                  (休  憩) ○伊東座長 それでは、午後のセッションを始めたいと思います。  午後の最初の発表は「フタル酸エステル類及びフェノール類の食品汚染実態及び摂取 量に関する調査研究」ということで、国立医薬品食品衛生研究所大阪支所の外海先生、 宜しくお願いします。 ○外海部長(国立医薬品食品衛生研究所大阪支所食品試験部) それでは、スライドでご説明したいと思います。  (スライド)  「フタル酸エステル類及びフェノール類の食品汚染実態及び摂取量に関する調査研 究」は、平成11年度から3か年計画で始まりまして1年目であります。フタル酸グルー プとフェノールグループの分担研究及び研究協力者は、それぞれこのようになっており まして、実は平成10年度の補正予算におきます厚生科学研究から引き続いて行っており ます。  (スライド) まず、フタル酸グループの研究結果の概要でございますが、フタル酸エステル類11種 及びアジピン酸エステル1種を分析致しました。平成10年度には各機関で統一されてい なかった試験法を統一し、操作ブランク値を低減致しました。それから、病院給食、食 堂の定食、市販弁当、レトルト食品の計84検体を調査し、一部の食品で耐容1日摂取量 を超えるDEHPが含まれている事実を見出しました。混入源が調理用塩ビ製手袋であるこ とを究明し、その結果、本年6月14日に同手袋の使用自粛通知が出されました。病院給 食の調査結果から、日本人のフタル酸エステル類の1日摂取量を概算致しました。これ が要旨でございます。  (スライド) 分析法は私たちが従来の方法を改良し、GC/MS で一斉分析する方法と致しました。実 験環境中にもフタル酸エステルはたくさん存在しますので、操作ブランクをいかに低く するかということが、この分析法では一番大事な点でございまして、DBP、DEHPもこのよ うな低い値に抑えることができました。なお、この分析法を作成するに当たりまして、 クロスチェックに用いたレトルトベビーフードから6,000ppmのDEHPが検出されましたの で、製造会社に連絡して、それを改善してもらうように致しました。  (スライド) これは一般の食堂の定食を測定した結果であります。横軸はサンプル、縦軸はフタル 酸エステルの種類であります。いずれも非常に低い濃度でございました。  (スライド) 次に病院の給食について調査を致しました。新潟、愛知、大阪の各府県から1か所の 病院を選びまして、そして朝、昼、晩、1週間分ということで、それぞれ合計21食分に ついて分析を行いました。W病院については、定食と同程度に非常に低い濃度でござい ます。  (スライド)  V病院では、DEHPがかなり高い値になって、いずれの検体からも検出されておりまし た。  (スライド)  X病院におきましては、2回の給食におきまして、突出してDEHPが高い値となってお ります。それにDEHAも検出されております。この病院について後程聞き取り調査を行い ましたところ、焼肉とスパゲティ、それからオムレツにつきましては、食材が熱い状態 で塩ビ製の手袋を使って配膳をしたということが判明致しました。ほかの病院はどうか ということで聞きましたところ、V病院については塩ビ製手袋を使っている。少なかっ たW病院については使っていないというようなことがございましたので、どうも手袋か ら汚染が来ているのではないかというような推定ができました。  (スライド)  これはコンビニエンスストアで市販されておりますコンビニ弁当10社を調査致しまし た結果でございます。縦軸は先程と全く同じなんですが、非常に高いDEHP濃度が検出さ れました。DEHAも検出されております。一番高いのは8,950ng/gであります。そこでこ のレベルは非常に問題がある濃度ではないかということで、後程その原因究明を行いま した。  (スライド) 次に、摂取量を算出致しました。摂取量といいますのは、先程述べました濃度に食品 の摂取量、グラム数をかけますとμgとして摂取量が出てまいります。これは病院の結 果であります。V病院、W病院、X病院の1日分です。朝、昼、晩を足した値をここに 書いておりますけれども、突出して高かった2日分については、体重50kgの場合のTDI 2,000μg/dayを超えているということがわかります。  (スライド) これは3病院、7日間の病院給食をすべてならして平均化したものの値でございま す。こちらにフタル酸エステルの種類、計算した1日摂取量、TDIの値というものを記 しておりますけれども、問題となりますDEHPは519μgであります。2,000のTDIの26% に相当致しております。そのほかのフタル酸類はEUのTDIとの比較で1%以下という非 常に低い値でございました。  (スライド) 一方、弁当の方ですけれども、これも先程の濃度に1食当たりの重量を掛け合わせて 摂取量を調べております。これは1食当たりのDEHPの量であります。そうしますとTDIを 3検体がオーバーしております。ほかの弁当につきましても、1日2食摂るというよう なことがございますと、 2,000を超える可能性が出てくるということでございます。  (スライド) その原因がどこにあるかということを次に調べるために、弁当の製造工場へ立ち入り を行いまして、そして、いろいろ観察等を行いました。塩ビ製品が使われているのは手 袋のみでございまして、そのほかの器具とか機械には使われておりませんでした。そし て、どの段階で汚染が起こるのかということを調べるために、各調理過程における食材 を採取致しまして、その分析を行いました。ここに示しておりますのは、調理前の食材 でございます。これは調理が済んだ箱に詰める前の食材の含量、それから箱に詰めた後 の含量を示しております。これは食材の種類でありますけれども、いずれも箱に詰める 前と詰めた後で非常に濃度に差があるということで、この差は手袋をはめた手で、その 食材を箱に詰めるだけの作業でございます。ですから、手袋からフタル酸エステルが移 行して食材に移ったということが十分考えられると思います。  (スライド) 次に、そのことをもう1回確かめるために、実際に食材を手袋でつかんで、そして実 際に濃度が上がるかどうかという模擬実験を行った例でございます。食材としては米飯 とコロッケと切干大根煮を用いました。もともとの食材は非常に低い濃度であります。 ところが、手袋でつかんだ場合ですけれども、切干大根では非常に高い濃度に汚染が進 んでおります。さらに製造工場等を見ますと、消毒用のアルコールで手袋をスプレーし て、その手袋で詰めているという状態でしたので、消毒用アルコールでスプレーした手 袋でつかんでみたわけです。そうしますと、3つの食材とも非常に汚染濃度が上がって いるという結果となりました。  それと、この3つの食材の差でありますが、切干大根というのは非常に汁気が多いと いうことと油揚げ等の油気も入っているということで、そういう場合には消毒用アル コールを噴霧しなくても、非常に移行が進むということがこれからわかりました。  (スライド) 以上がフタル酸グループの結果でありますが、次にフェノール類の結果を御説明致し ます。 平成10年度にノニルフェノール等、アルキルフェノール類を調査しましたが、ビスフ ェノールAは同時分析は困難であったため、今年度はビスフェノールAの実態調査を行 ったということ。それと、一部の食品で添加回収の低い結果がありましたので、抽出前 の試料にリン酸を加えることで、改善されることを見出し試験方法を改良したというこ とでございます。  (スライド) これは分析法ですけれども、基本的にはヘプタフルオロ酪酸誘導体化してGC/MS で測 るという方法を作成致しました。  (スライド) これは検出頻度であります。222検体について検査しましたところ、缶詰については非 常に高い検出率で検出されてまいりました。一番高いのはコンビーフで 602ng/gであり ます。ほかのものはそれほど検出されておりません。  (スライド) 缶詰の中でももう少し詳しく調べてみますと、魚と肉の缶詰でかなり高い値で出てお りまして、その他のものでは非常に低いということがわかります。当然ビスフェノール Aは缶の内面塗装のエポシキ樹脂とか、塩化ビニル樹脂由来のものと考えられますの で、缶詰には非常に高頻度で検出されたということでございます。  (スライド)  以上のまとめですけれども、まずフタル酸エステル類につきましては、DEHPがEUのTDI を超えて摂取されている場合があることを見い出し、原因を究明しました。DEHPの混入 源は調理用ポリ塩化ビニル製手袋、市販弁当と病院給食ではこれが原因でした。レトル ト食品では塩化ビニル製の配管によるものと考えられました。これらは現在は解決され ております。病院給食中の濃度から推定されるDEHPの1日摂取量は519μgであり、新た に設定されたTDIとの比は26%でありました。DEHP以外のものについては1%と非常に低 い値であります。フェノール類につきましては、ビスフェノールAは調査したすべての 缶詰食品から痕跡量 602ng/gという値が検出されました。ビスフェノールAも高い濃度 で検出された缶詰においては、一缶当たりでの摂取量は、米国のレファレンスドーズの 2.4 %相当でありました。 以上でございます。 ○伊東座長 ありがとうございました。それでは、御質問、御発言お願い致します。どなたかござ いませんか。人に対する危険性ということについてはどのように考えておられるんです か。 ○外海部長 一応毒性の調べられたいろんな文献がございまして、そして本年の6月14日の食品衛 生調査会におきましてTDIが決まりましたので、それが一応の毒性の目安になるかという ふうに考えております。 ○伊東座長 先生のところで検出された例についてはどの程度なんですか。 ○外海部長 特に市販の弁当におきましては、先程言いましたように、後からですけれども、日本 で決められた値よりも高い値が検出されました。それで追跡調査としまして、本年8月 に手袋の使用自粛がされてからのものを測りましたところ、非常に低い値となっている ことを確認しております。 ○伊東座長 そのほかございませんか。  それでは、ありがとうございました。 では、次にまいります。「内分泌かく乱化学物質の発達期中枢神経系障害に関する実 験的研究」ということで、名古屋市立大学の加藤先生の代わりに、三浦先生宜しくお願 い致します。 ○三浦氏 (加藤名古屋市立大学医学部分子医学研究所生体制御部門教授代理) 私たちの研究テーマである「内分泌かく乱化学物質の発達期中枢神経系障害に関する 実験的研究」についてお話し致します。 脳の性分化には、ステロイドホルモンが重要です。内分泌かく乱化学物質が正常な脳 の性分化を障害する可能性があるので、いろいろな細胞培養系及び動物実験を使って私 たちは実験計画を立てました。その背景となる基本的なメカニズムの概略を御説明致し ます。今井先生の午前中のお話にも出てまいりましたように、私たちの性行動を決定す る重要な中枢が視床下部にございます。ラットにおいては、それを性的SDN-POAと略され る、雄に非常に発達する神経核があります。不思議なことに雄にエストロゲンによって 生存が維持されるという細胞が存在し、雌はむしろエストロゲンというものの作用を受 けない。その背景に、実は脳にはB-BB(血液・脳関門) というものがあって、物質として のエストロゲンがα−フェトプロテインと結合しているために、大量のエストロゲンは すべてブロックされる。そしてアンドロゲンは、この関門を通過して、細胞の中で芳香 化されて、エストロゲンとして遺伝子の転写調節をして雄になるというメカニズムがあ ります。このメカニズムの全体を含むような細胞培養及び動物実験の系を確立致しまし た。  (スライド) 研究に参加しました2つのグループを示します。培養系を中心としたin vitro系グ ループと動物実験グループです。  (スライド) 今お話ししました血液・脳関門、これは物質の透過性という非常に重要なファンクシ ョンをしている。それにかかわる細胞、細胞培養系を確立しました。それに関与するグ リアの動態、そして最終的にターゲットとなるニューロン、どうしてそれが生存するの か、死ぬのかといったメカニズムを培養細胞系で行う実験計画を立てました。最終的に は脳の性分化、それを個体レベルで調べていくということで実験を進めて、最終的には NOELを求め、リスク評価をするということで平成11年度から実験を開始しております。  (スライド) まず、血液・脳関門への影響で、最も重要となってくるのが脳の毛細血管内皮細胞が あります。これは末梢の血管内皮細胞と全く違う機能を担っており、形態学的に特徴も あります。ただし、培養が非常に難しい。それで、まず我々はこれを不死化して実験で きるように致しました。実際には、コラーゲンでコートした、ここにお示ししたセルに 内皮細胞を培養して、物質の透過性を今回は L-グルコースを使って検定しております。 どのような化学物質によって透過性が変化するか検定を計画しました。その実験を始め る前に、ごく低用量でエストロゲンを作用させたヒューマンの脳毛細血管内皮細胞、そ れをDNAマイクロアレイを使いまして、7,000種類以上の遺伝子の検索を行いました。結 果は、実はESTの1種類が2倍以上の変化をしたというデータがありますけれども、現在 知られているファンクショナルな遺伝子は一つも見つかってまいりません。その中でわ かった事実としては、内皮細胞に一般的なエストロゲンレセプターというものがない。 当然遺伝子の大きな変化というものは内皮細胞には出てこない。それならば、何もファ ンクションしないかというと、そうではなくて、実際には非常に短時間の30分というよ うな系で、物質の透過性に影響を与えているということがわかりました。一番右に出て いるのがエストロゲンです。エストロゲンでコントロールから比べると20%以上の減少 が見られる。今回、我々がエストロジェニックなもの、アンチエストロジェニックなも の、いろいろなものがありますけれども、この4-ノニルフェノール以外、すべてエスト ロゲンと同様に透過性を減少させるというデータが出ました。  (スライド) こういったB-BB(血液・脳関門)を担う脳毛細血管内皮細胞をサポートする形でアス トロサイトが包んでいます。そのアストロサイトへの影響を調べました。実際には、 我々がクローニングしたAquaporin-4のmRNAが、エストラジオールやそれ以外の物質で メッセージのレベルが若干上がるという傾向がありました。しかし、これもターゲット がまだわかりませんので、DNAアレイを使い、今回は1,200種類の発現解析をやりまし た。その培養系から得られたデータでオリゴデンドロサイトと関連するミネリンベーシ ックプロテインなどが非常に強く反応するということがわかりました。エストロゲンに は、B-BBのアスロサイトのみならず、神経の連絡網に重要なオリゴデンドロサイトが非 常に鋭敏に反応していることがわかりました。  (スライド) 最後のターゲットとなってくるニューロン。エストロゲンに反応するニューロンはど ういう系でもって直接反応しているのか、なぜ生存し、またはアポトーシスになるかと いう背景を検索しました。今回この実験に関しては海馬を使っておりますけれども、各 神経栄養因子、その発現量が用量依存性にどのように変わってくるかを検討しました。 神経栄養因子の遺伝子発現変化を見たら、BDNFには、10nM位の濃度から遺伝子発現が非 常に強く上がってくることがわかり、このエストロゲン作用はこういった神経栄養因子 を介している可能性が浮かび上がりました。  (スライド) 次に、実際にそういった視床下部にエストロゲンレセプターを持った細胞が存在する かどうか免疫染色を行って確認しております。神経細胞のマーカーとエストロゲンレセ プターαで二重染色しました。共染色できるニューロンが散在しているということが証 明でき、こういったエストロゲンレセプターを介してBDNFが増加するメカニズムで、生 存するニューロンが存在する仮説を裏付けることができました。EDCsによるかく乱の可 能性というものが、こういった実験系で検出できるのではないかと考えております。  (スライド) 次に、実験動物を使った系です。視床下部に発現しているメッセージが、母体に与え られたエチニルエストラジオールです。こういった非常にごく低濃度のものを与えて、 実際にgranulinの mRNAレベルが変化するということがわかってまいりました。granulin は雄型の神経回路網に関与するということがわかっている遺伝子であります。  (スライド) 今度は同じ視床下部の試料を集めるにあたって、マイクロダイセクションという方法 で性的二型核の部分を集めてきて、非常に微量なmRNAを、こういった固定法によって抽 出することができることを確認した上で、RT-PCRをかけて実際にエストロゲンレセプ ターのバインディングエレメントを持った遺伝子の変化が捉えられるかどうかというこ とを検索しました。ここに挙げました6つに関して、我々のRT-PCR法でmRNAのレベルの 変化をとらえることができました。すべて今回減少するというデータ、これはプレリミ ナリーでございますが出ております。こういったエチニルエストラジオールを母親に投 与して、そして生まれてきた子どもからRNAを抽出して、その濃度依存性変化をGABA transporterIをレポーターの代表として変化を追跡しました。そのデータから雄と雌 で、反応性が異なるということがわかりました。  (スライド) こういった化学薬品を含む食事を与え、そして生まれてきた子どもを3か月位観察し ました。その膣上皮が示す性周期を見ることによって、ごく低用量で変化を検出しまし た。性周期の変化を膣スメアをレポーターとして明瞭に検出できることがわかりまし た。 (スライド)  病理学的にそれを裏付けることができました。男性の方はほとんど用量依存性のもの が検出できませんでしたが、女性の生殖器系の病理学的な変化が、かなり高濃度のとこ ろではありますが、検出できました。 最後にまとめのスライドです。以上こういったin vitroの系、培養細胞を確立してこ ういった実験ができるようになりました。そして今年度in vitroの系でも遺伝子、マイ クロダイセクションなどを使って一つ一つの細胞のレベル、そして生まれてきて性成熟 をした時点において、こういった膣の上皮を調べるスメア法によって性周期変化を鋭敏 にとらえることができ、内分泌関連の変化に評価系として有効性を示すことができまし た。 以上であります。 ○伊東座長 ありがとうございました。 それでは、ただいまの御発表に御質問、御意見がございましたらどうぞ。  ございませんか。低用量での影響ということは、まだデータは出ていないんですか。 ○三浦氏 低用量というのはin vivo 、in vitroの方ですか。 ○伊東座長 in vivo で。 ○三浦氏 in vivo ではエチニルエストラジオールだけのデータですが、生後性成熟をした時点 での性周期への影響が、あのように変わってくるというデータが0.002ppmのレベルから 検出できております。この系を使ってほかの薬物を使って実験を進めるべきであると考 えております。 ○伊東座長 よろしゅうございますか。  どうもありがとうございました。 それでは、次に入ります。次は「内分泌かく乱化学物質の胎児、幼児への影響等に関 する研究」ということで、名古屋市立大学の白井先生、宜しくお願いします。 ○白井教授(名古屋市立大学医学部第一病理学教室) 名古屋市立大学の白井です。宜しくお願いします。 では、最初のスライドをお願いします。 私どもの班は胎児期、あるいは授乳期に暴露されたときに、どういう影響が出るかと いうことで、私を主任研究者として8名の共同研究者のもとに分担しながらやってきて おります。  (スライド) 大きく分けますとラット、あるいはマウスの胎児期、乳児期に暴露して、それによっ て生殖器、あるいは副生殖器にどういう変化が起こるか、と同時に成長した後の発がん 性に対する影響があるかということをビスフェノールAを用いて行っています。私はラ ットの前立腺、あるいは雄生殖器、前川研究員は子宮を中心に、それから福島研究員は 精巣・前立腺、それから堤研究員は甲状腺です。  2つ目はマウスを用いまして、胎児期、乳児期、暴露によって脳機能への影響、行動 異常等が起きるかどうかを検討しておりますが、これもビスフェノールAを用いて鈴木 研究員は行動異常、これは同じ暴露された動物を使っておりますけれども、船江研究員 は脳の中におけるP450誘導と、あるいはドーパミンの量を定量しておりますし、伏木研 究員はそれに関連する酵素発現を検討しております。 3番目はStyreneの肝発がんに対する影響を福島委員が、それからレファレンスであり ますファイトエストロゲンの胎児期の影響ということで池上研究員がやっております。  (スライド)  皆様御存じのように、ビスフェノールAは日本でも大体24万トン年間生産されておっ て、ポリカーボネートのエポキシ樹脂の原料を初め、酸化防止剤、それから安定剤とし て用いられております。これは弱いエストロゲン作用があるとされてますが、ラット、 マウスを用いた2年間の発がん性試験はいずれも陰性と結論されております。  (スライド) エストロゲン作用は17β-エストラジオールに比べますと大体1,000倍から1万倍の オーダーで低いというふうにin vitroの実験系では示されております。  (スライド) まず最初に、ラット前立腺に対する作用ですけれども、交尾を確認後、親に120mg、あ るいは 7.5mgのビスフェノールAを毎日1回経口投与しまして、出産から離乳までの時 間ずっとやります。その後、出産後に定期的に動物を屠殺しまして、生殖器に対する影 響、これはいろんな指標を用いて行いました。  (スライド) 妊娠出産に及ぼす影響として、例えば妊娠数、異常妊娠、出産数、生存数、出産率、 受胎率、出生率、いずれも高濃度の120mg/kgおいてもコントロール群と差はありません でした。  (スライド) それから前立腺の重量は、2日目、7日目、10週目と計測していますけど、絶対重 量、相対重量ともにコントロール群と高濃度ビスフェノール群との間でも有意差はござ いませんでした。  (スライド) それから精巣、精巣上体の重量に異常はなかったんですが、この実験では、120mg/kg の高濃度で精巣内の精子数がやや落ちている結果になりました。精子形態については、 このような分類を致しましたが、異常な形態を示す精子が増えたというデータは得られ ませんでした。  (スライド) 現在、発がん性試験に対する検討を継続しているところですが、今お話しました予備 実験と同じような実験系でビスフェノールを投与し、生後5週目から前立腺発がん物質 であります50mg/kgのDMABを10週間投与し、そして60週まで待つという実験を行っていま す。この実験系ではビスフェノールの最低量を0.6mgまで落とした4段階の用量で検討し ております。 ちなみに、この実験系で最初の予備実験をもう一度繰り返しておりますけれども、そ こでは精子数の異常は認められておりません。つい数日前に出てきたデータです。  (スライド)  この長期実験を始める前に予備実験を行い、投与する発がん物質の活性化に変化が起 きるかどうかをDNA付加体形成を指標にして免疫組織化学的に調べました。染色強度、あ るいは陽性率に異常はなく、多分高濃度のビスフェノールAを投与しても成長期におけ る発がん物質の代謝機能には変化は起きないと結論づけられました。  (スライド)  前川研究員がやっております雌のラットにおける子宮への影響です。この場合でも出 生率、あるいは出産率等に影響は見られておりません。非常に高い濃度で投与しており ますが、異常を認めておりません。  (スライド)  親動物の成長率、仔の生後の成長率にも全く異常はありませんし、膣のオープニン グ、性分化の指標ですが、妊娠期の6mg/kg、20mg/kgまでは異常を認めておりません。  (スライド)  これはマウスに対する同じような影響を見ているわけですけれども、この場合には、 0.05mg/kgから400mg/kgの幅で用量を振っております。  (スライド) この場合も妊娠、出産等に対する影響、例えば出産数、出生率等は高濃度の400mg/kg を見てもコントロール群との差は全くございませんでした。  (スライド) それから、さらに精巣重量、精巣上体、前立腺の重量、精子数にしましても、400mg/k gでも異常は出ておりません。  (スライド) それから、これは行動異常の研究ですけれども、ddy 系の雄性マウスを用いておりま す。妊娠から離乳まで親に餌で投与しております。用量は0.02mg/gから8mg/gの4用量 です。離乳後4週より実験に供しております。  (スライド) 鈴木研究員が担当致しましたが、これは自動行動能に対する影響です。これは指標と してヘッドムービング、スニッフィング、アグレッション、スタッドテール、サークリ ング、スピンディング等の動きをケージの中に入れて上から肉眼的に観察して、その強 さをスコア化しています。前もって、ビスフェノールAに暴露されておりますと、この ようにスライドに示すごとく用量依存的に異常行動と自動能が上がってくるということ が示されました。  (スライド) それから、これはメタンフェタミンという覚せい剤ですが、これを投与しますと動物 の自発運動が促進されるということなんですが、それに対してビスフェノールAはどの ように影響を与えるを見たわけです。予めビスフェノールAに暴露されているところ に、普通では誘発しない量のメタンフェタミンを投与しますと、このようにビスフェ ノールAの一番高い濃度で有意に自動運動能の促進作用が出ることがわかりました。  (スライド) それから、これは覚せい剤メタンアンフェタミンの誘発報酬効果、私、余りファミリ アでなくて、鈴木先生からいろいろ教えて頂いたのですが、つまり、こういう覚せい剤 に対する依存性を実験的に確認することができる方法だそうです。これはどういう具合 に行うかといいますと、白と黒の各々の箱の中に、まずメタンフェタミンを投与したと きには白いケージで床がざらざらのところに入れてやる。生食を打ったものは黒に入れ てやるということを何回も繰り返しまして、実験的には中央のプラットホームにネズミ を置くことによって、どちらにネズミが行きやすくなるか。つまり、白い方に行ってい る時間が長いと、これが依存性が上がるということでプラスの時間になってくるわけで すけれども、御覧のように、通常では発現しない用量でメタンフェタミンを投与しまし ても、事前にビスフェノールAに暴露されていますとビスフェノールAの0.02mg/g用量 から報酬効果が観察されてくるということで、中枢神経系に影響が出ているのではない かという結果となりました。  (スライド) これは舩江先生に行って頂いたものですけれども、脳内におけるドーパミン、ノルエ ピネフリン、セロトニン等が用量相関的に下がっているということがわかりました。  (スライド) それから、これはスチレンの実験です。これは伊東法という中期発がん性試験法で肝 発がんプロモーション作用をみておりますけれども、高濃度では抑制するデータがあり ました。  (スライド)  ビスフェノールAも肝発がんに対する影響はありませんでしたが、スチレンの濃度を どんどん下げていき、肝発がんに対する低濃度での作用を検討しましたが、抑制作用、 あるいは逆にプロモーション作用もは見いだしていません。  (スライド) それから最後になりますが、池上研究員が担当しているのは、イソフラボンを親に投 与致しまして、その胎仔に対する影響をみております。体重、出生率など全く影響が出 ておりません。  (スライド) それからゲニステイン の非常に高純度のものを0.5mg/gで投与しましたが、このケー スにおいても出生率等の影響は見られておりません。 スライドありがとうございました。以上のように、ラットにおきまして精子数の減少 が最初の予備実験で見られましたけれども、2回目の確認の実験では見られなかったと いうことで、多分実験のデザインの中での親のランダマイゼーションに少し問題があっ たのかもしれないと考えております。 それから2番目は、行動異常が設定した全用量で見られたということです、これはど うも脳のドーパミン系の異常がビスフェノールAの妊娠中、あるいは授乳中の暴露によ って起きている可能性があるということです。ただ最低用量の0.02mg/gでも高い方でご ざいますので、さらに10オーダー下げた0.005mg/gと0.05mg/g、それから0.5mg/gの用量 設定で再度実験を行い、結果の再確認とさらに低濃度での影響を現在進行中でございま す。 以上です。 ○伊東座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表に何か追加ございませんか。 高用量の場合に変化が出てくるとしても、非常に低用量では変化は絶対に出てこない んですか。 ○白井教授 それを今確認中ということです。再実験をやっております。 ○伊東座長 例えば、フォンサールなどは非常に低用量では出るということをいろいろ言っていま すね。アメリカで大々的な実験をやられても、そういう事実はないと言っているけれど も、再びやって、フォンサールのラボラトリーでないとポジティブに出ないということ は、そうかどうかということの黒白をつけてほしいと思うんです。 ○白井教授 行動異常につきましても、逆U字現象があるかどうかはわからないんですけれども、 少なくとも低濃度になれば、ドースレスポンス的に下がっていますから、理論的には ドースが下がれば、その現象は消えるだろうというふうに予想はされますので、先生が おっしゃるようなごく低量では、こういった異常行動は出てこないものと予想はしてお ります。 ○中澤委員  動物実験でビスフェノールAの場合に、先生のお使いになった餌とか、水を与える容 器なんですが、そういうものは全くビスフェノールAはフリーなんでしょうか。 ○白井教授  少なくとも、そういう特殊な飼料は使っておりません。市販の動物飼料を投与してお ります。 ○中澤委員  ちょっと気になるのが餌の中のビスフェノールAというのが、恐らく0なのかどうか というのが知りたいなと思ったんですが、それはまだチェックされていらっしゃらない んですか。 ○白井教授 しておりません。 ○伊東座長 それは中澤先生のところに送って調べてもらってください。どうもありがとうござい ました。 それでは、次にまいります。次は「内分泌かく乱物質の生殖機能と次世代への影響、 特に生殖泌尿器系・先天異常の成因に関する疫学的研究」、北大の岸先生宜しくお願い 致します。 ○岸教授 (北海道大学医学部)  早速始めさせて頂きます。スライドの前にお手元に配られていると思います資料の2 −14を御覧ください。私どもの研究は平成11年度から3年計画の初年度としてさせて頂 いておりますが、私、予防医学講座の公衆衛生分野に所属しておりまして、それと臨床 の泌尿器科、それから産婦人科との共同研究でございます。さらに、札幌市衛生研究所 とも協力して実施しております。  最初に、研究要旨のところに書いてございますのを少し説明させて頂きまして、その 後スライドに入らせて頂きます。  私ども平成11年度、初年度でございましたので、これまでの内外の特に生殖泌尿器科 の先天異常の成因に関する疫学研究をまず詳細にレビューするところから始めまして、 地域ベース並びにホスピタルベースで疫学研究を始めるための調査票の作成にとりかか りました。これまで、我が国では生殖系の先天異常、特に尿道下裂ですとか、停留精巣 につきましては、2回サーベイ的なものが行われておりますが、病因に関しましては全 く仕事がございませんでした。それで、私どもの方では、その成因に関する研究に取り かかりました。 それから、産婦人科を中心に致しまして、私どもの大学で1970年代の半ばごろからい ろいろな形で先天異常の発生動向を調べております。その辺の資料の整理を始めまし た。それから不育症、不妊症、子宮内膜症等に関する疫学調査を昨年は既存の症例に関 しまして仕事を始めました。  疫学研究で尿道下裂、停留精巣に関しましてですが、症例対象研究を準備致しまし て、患児の生殖器が分化生成する時期の、特に両親の内分泌かく乱化学物質への暴露状 況などのリスク要因を調査するのを主目的に致しました。同時に臍帯血など生体試料の 中の内分泌かく乱化学物質の濃度の測定を行う予定でサンプルの収集を始めておりま す。  結果でございますが、初年度に行った研究で若干の知見が得られております。今日そ れを少し説明致します。まず尿道下裂の症例の両親を対象とした調査を致しましたが、 それから母親の分娩時のいろいろな問題が少し出てきております。それから職業性暴露 などの特性も少し明らかになってきております。  また、尿道下裂の症例で、臨床研究と致しまして、これは泌尿器科の方で61例に対し まして、内分泌学的な検討を行いました。尿道下裂症例では、黄体形成ホルモン放出ホ ルモン(LH-RH)に対して過剰反応を示しましたが、ヒトの胎盤絨毛上皮性ゴナドトロピン (hCG)刺激に対してはテストステロンの反応は逆に落ちておりました。これらの結果か 尿、道下裂の症例では思春期前の段階から既に何らかの精巣機能障害、特にライディヒ 細胞の機能障害が存在することが示唆されました。  また、産科学的な方の研究と致しましては、不育症、不妊症、子宮内膜症等に関しま して、遺伝的な多型の検討を致しました。特に代謝酵素の遺伝子多型に関しまして、CYP 1A1、CYP17、GSTM1などについて調べましたが、中で不育症例ではグルタチオン転移酵素 M1型の遺伝子の完全欠損型の頻度が60数%と一般集団より高く見られました。また、免 疫学的なところでは、妊娠6−7週例におきまして、染色体は正常な流産との間に末梢 血のナチュラルキラーセルの高活性との関連が見られました。これも新しい知見でござ います。初年度でしたので、症例対照研究から入りましたが、今後は、population basedの疫学研究、それからメカニズム解明のための動物実験等に発展させていきたい と思っております。 残りの時間でスライドを使いまして、特に尿道下裂に関しまして、わかった知見を少 し説明させて頂きます。 (スライド)  尿道下裂は非常に頻度の高い男児外陰部の奇形でございます。アメリカのデータです が、1970年代に比べまして、90年代に1,000分の2人だった発生率が、1,000分の4人位 に増加しているのではないか。ただし、これはクエスチョンマークがついています。そ れから家族内発生が多いというデータがございます。それから胎児期の精巣機能の異常 と関連しているのではないか。特に内分泌かく乱化学物質の関連について検討が急がれ ております。  (スライド) 臨床統計でございますけれども、ほかの尿路生殖機能の合併奇形、特に停留精巣など を合併していることが多いこともわかっております。欧米のデータで家族歴との関係も 示唆されております。妊娠中の薬剤投与に関しては今回調査致しました。  (スライド) 尿道下裂の程度ですが、尿道が開口しております場所によりまして、軽症、重症、そ れから下裂を伴わない索の変形というふうに分けられます。一番上の遠位型の尿道下裂 というのは軽度でございますが、本学の泌尿器科の臨床研究として行いました61例の中 では、比較的軽症例が65.6%になっておりました。  (スライド) 合併の程度を見ますと、かなり全般に泌尿器系の奇形を合併しているのがわかりま す。例えば3列目ですが、停留精巣、無精巣症など47.2%です。それから男性膣などの 下部尿路異常も36.1%に見られております。  (スライド) 家族歴ですが、61例中4例に尿道下裂の家族歴を有するものがありました。父親は3 例になっておりますが、1例の間違いでして、兄弟で尿道下裂があった者が3例、父親 が1例ですので、すべてではないですが、数%では何らかの遺伝的な素因、あるいは兄 弟例が3例ありますので、母親の要因が共通していることも考えられます。  (スライド) 妊娠中の薬剤投与なんですが、59例中の18例に、約3割ですが、妊娠中流産防止のた めにプロゲステロン製剤の使用歴がございました。特に生殖腺が分化する時期の3か月 以内の投与例が9例ありました。4か月以降が9例です。過小陰茎、陰嚢型の比較的高 度の障害が多い、3か月以内の投与が4か月以降に比べると多い傾向がございますが、 少数ですので、有意な差ではございません。  (スライド) これから先は内分泌学的検討でございます。泌尿器科の方では、大体手術後、毎年1 年に1度位ずつフォローアップをしております。フォローアップ時で思春期になる前の フォローアップの途中で、下垂体・精巣機能を調べているんですが、LH-RH負荷試験を行 いましたものと、HCGは刺激試験を行いましたものです。  (スライド)  1部ですが、プロゲステロン製剤。要するに流産防止剤を投与されていた群が上で す。それから下はそういうことがない、しかも尿道下裂を持っていない正常の子どもで ございますが、プロゲステロン投与されているもので、LH-RHの反応が明らかに違って いるのがわかります。尿道下裂でプロゲステロン投与例と尿道下裂があって、プロゲス テロン非投与例で比較しましたが、その差はありませんでした。  (スライド) これはHCG刺激試験ですが、やはり正常例に比べまして、プロゲステロン投与例で落ち ているのがわかります。  (スライド) 考察なんですが、陰嚢内容異常の例えば停留精巣があるとか、精巣の低形成ですと か、無形成があるというような陰嚢内容そのものの異常の頻度が高くて、これは胎児期 に精巣機能の異常が既にあったことを示唆しております。 それから非常にはっきりしておりましたのが30%の症例で流産防止剤、プロゲステロ ンの投与があったということで、妊娠早期の外因性ホルモンとの関連は示唆されます。 2000年にジャーナル・オブ・ユロロジーに、植物エストロゲンとの関連、これは母がベ ジタリアンで植物性エストロゲン多量にとっている方の子どもさんですね。それで示唆 される論文がございました。ですから、薬剤とか、何らかの外因性のホルモンの疾患、 これらと奇形との関連が示唆されます。私どももこの辺のところをもう少し詰めたいと 思っております。  (スライド) 尿道下裂の症例で思春期になる前に下垂体・精巣機能の異常を調べておりますが、こ れらの異常に関しましては、原因すなわち、こういう尿道下裂を起こす原因と、このよ うなことが共通しているのか。それとも、単に現時点での機能異常を示しているのか。 これにつきましては今のデータからは何も申すことはできません。もう少し調べていく 必要があると思います。  (スライド)  これは症例対照研究の形で今始めているものですが、大体過去15年間の症例をすべて あらっております。今のところ、北海道に在住している人120 例について症例が集まっ ておりますが、北海道全体にわたっているのがわかると思います。尿道下裂というのは 2回手術するのが必要とされていたんですが、私どもの泌尿器科の方で1度で済むよう な、ある意味では画期的な手術法を開発致しましたので、北海道に関しては、全例が北 海道大学で手術されております。本州からもかなりの数が手術に来ておられますが、そ のうち、これだけ分布しておりますので、対照研究でもっていくやり方を考えていると ころです。欧米ですと登録ベースの研究が、主流です。例え症例対照研究でも登録ベー スでやっておりますので、登録が終わった時点で既にコントロールを取っているわけで すが、日本ではそういう制度でございませんので、なかなか難しいところです。  (スライド) 私どもの方で、このような母親の要因、それから父親の要因、環境要因を相当詳しく 20ページ程度でございますが、調べております。  (スライド) 合併奇形は、やはり症例対照研究でも15年間遡って、やはり泌尿器科の臨床研究と同 じく停留精巣、そけいヘルニア等の合併、それからそのほかの口蓋裂等の先天奇形も合 併している症例が見られました。  (スライド) 非常にこれもはっきりしているんですが、出生時体重が2,500g以下の症例が38.8% で、これはコントロールと比較しておりませんが、明らかに低体重の方に患者さんが多 いのがわかると思います。  (スライド) 父親の職業性の暴露を聞いておりますが、有機溶剤暴露が11例、金属が4例、殺虫剤 等が5例、4番目の石油製品が10例ございましたが、これはケースコントロールでリス クをきちんと比較しませんと何とも言えません。多いも少ないも申せませんが、このよ うな分布をしておりました。  (スライド)  母親の職業性暴露につきましては、母親が有機溶剤に11例暴露しておりました。殺虫 剤、除草剤、殺菌剤などに1例、それからごみ焼却炉などで働いていた人が1例、その 他の化学物質が2例という分布でございます。  (スライド) 農薬の使用状況につきましても、欧米ではいろいろ調べられておりますので調べてみ ました。農業従事者は2例しかおりませんでした。ただし、非農業従事者で家庭菜園で 農薬を使用している例が7例、そのうち母が農薬を散布している例が4例ございまし た。  (スライド) 今後でございますが、やはり先天奇形は予防が一番でございますので、尿道下裂を発 生させる因子の解明、特に遺伝素因と環境要因の関係、それから今回示されたような妊 娠中の薬剤の問題、それから胎児期の内分泌環境について調べていくことが重要だと思 います。 ○伊東座長 ありがとうございました。 それでは、何か御意見ございますか。 ○安田委員  大変興味深く聞かせて頂きました。要旨の方では「症例対照研究」という言葉で書い てございますけれども、今の先生のお話を伺いますと、まだ対照の方はきちんとやられ ていないという理解でよろしいんでしょうか。 ○岸教授 対照につきまして非常に苦慮しているところです。と申しますのは、発表の中でも申 しましたが、日本以外の研究がほとんどすべてがレジストレーションベースですので、 生まれたときに既にコントロールをとっているわけなのですが、私の方といいますか、 日本で今やるとしますと、3年以内にそんなにたくさんの症例が集まらないんです。そ れで、どういうふうにしたら症例と情報バイアスがない、思い出しバイアスがないしっ かりしたコントロールをつかむかということで今苦慮しているところです。 ○安田委員  もちろん、先生、御専門でいらっしゃいますので、いいコントロールをとって頂くよ うにお願いをしたいと思いますが、もう一つ、暴露の確認、特に妊娠中の薬剤投与に関 しまして、今伺ったところでは質問票だけのように伺いましたんですが、何かそれを、 さらに処方箋とか、そういう点はいかがでございましょうか。 ○岸教授 臨床研究の方は薬剤、プロゲステロン製剤ということを確認しておりますが、症例研 究については、現時点ではクエンチョナーベースです。やはり確認した方がいいと思っ ております。 ○井上委員  動物実験の方からのコメントですけれども、尿道下裂にしても、ほかの病気もそうな んですけれども、投与時期が非常にクリティカルに効いてまいりますので、用量よりも そっちの方が効いてくることがしばしばしありますので、症例が少ないので解析が難し いかもしれませんけれども、ぜひクリティカルな時期をお調べ頂ければと思います。 ○岸教授 その点、もう少し検討したいと思います。ありがとうございます。 ○伊東座長 ありがとうございました。 それでは、次にまいります。次は「内分泌かく乱化学物質のヒトへの影響評価を指向 した試験系の開発」ということで、国立医薬品食品衛生研究所の中澤先生、宜しくお願 い致します。 ○中澤室長 (国立医薬品食品衛生研究所大野薬理部長代理)  私たちの研究テーマは「内分泌かく乱物質のヒトへの影響評価を指向した試験系の開 発」ということです。 内分泌かく乱化学物質のヒトへの影響を扱いやすい系でより正確に評価するためには どうしたらよいかということを検討することを目的としています。 本日は、主任研究者の大野に代わり分担研究者である中澤が発表させて頂きます。  (スライド) 内分泌かく乱化学物質の生体への影響の評価は、過去において魚類のような下等な動 物の観察結果や、あるいは高等動物であっても、もっぱらばらばらにした細胞を用いて の実験結果に基づいて行われておりました。しかし、ヒトを初めとする高等生物では、 器官、組織が下等動物とは比較にならないほど複雑に発達しています。また、たんぱく 質一つとりましても、ヒト特有の性質を示す場合があります。これらの高等動物、ある いはヒト特有の性質というものを考慮して、私たちはここに示す2つの試験系を考案し ました。 1つは、脳機能維持標本を用いた悪影響評価の研究です。これは高等動物で最も高度 に発達した器官である脳への影響をできるだけ機能を維持した状態で観察しようとする 試みです。もちろん、ヒトの脳を切り出してきて使うわけにはいきませんので、ラット の脳を切り出してきて、その切片を培養して内分泌かく乱化学物質の影響を検討するこ とにしました。 2つ目は、分子生物学的手法によるヒト型エストロゲン受容体の異種細胞発現系に関 する研究です。これはヒト型のエストロゲン状態を他の動物の細胞に強制的に発現させ て、これに対する内分泌かく乱化学物質の影響を検討し、人体での悪影響を推定すると いう試みです。これら2つの試験系について初年度の成果を以下紹介させて頂きます。  (スライド) まず、脳機能維持標本を用いた研究の成果です。この図は複雑な脳内の様子を極めて 簡略化して模式的に示したものです。この図におきまして、神経Aというのが、このよ うに並列に並んでおりまして、いわば興奮を伝導させるという主経路を形成していると みなされます。それに対して、神経Bというのは別の種類の神経でして、このAに横か ら絡まるようにして、Aの伝導に調節を与えている。さらに脳の中には、これらの神経 だけではなくてグリア細胞と呼ばれるものが存在していまして、脳の機能の保護、ある いは維持のような役割をしていると言われています。よって脳の影響を調べるために は、ばらばらにした神経細胞についての影響を調べるのではなく、このような形態及び 機能を維持した標本が望まれるということになります。そこで、私達は神経細胞の配 置、連絡が保たれた脳機能維持標本である培養スライス標本を利用した系の確立を試み ました。  (スライド)  これは実験に用いた海馬スライスの作製及び培養方法です。海馬というのは大脳旧皮 質にあって、記憶に関与すると言われている部分です。生後9日のラットより海馬を摘 出します。このとき切り出した海馬を多孔質膜状におき、血清培地で培養します。今回 の実験では内在性エストロゲンの影響を除外するため、去勢馬血清を利用しました。切 り出されたスライスには、このようにループ型の規則正しい神経の走行が認められま す。神経の走行は、この歯状回(dentate gyrus)、以下DGと呼びますが、このDGを初 めとして、CA3さらにCA1へと連絡しています。まず、この連絡が果して機能的に保た れているかどうかということを確認するため、膜電位感受性色素RAH155を用いてDGを電 気処置したもの、神経の興奮伝導を観察しました。  (スライド)  この上段が何も処置していない状態での神経興奮の様子です。DG、この部分ですが、 この部分は15セカンド5までの像を連続的に並べてあります。おわかり頂きますよう に、DGで発生した興奮が次第にCA3に回り、CA1リジョンまでに到達しているということ が見て頂だけると思います。  真ん中のこれは最近、細胞膜から働くということが報告されているATPを10μM 投与し た場合の結果ですけれども、注意深く見て頂くとわかるんですが、どの部分でも信号が 弱くなっております。このような抑制作用というのは細胞レベルでは報告されておりま したが、今回こういったスライスを用いた場合でも、ちゃんと確認がなされました。こ れらの結果、及び今日は示しませんが、ほかの試験より、私たちはこの培養海馬切片が 構造機能のいろんな面において生理的性質を保っていると判断して、以下この標本をエ ストロゲン様物質の影響の検討に用いることにしました。  (スライド)  グルタミン酸というのは、脳内の興奮性の神経伝達物質ですけれども、これを高濃度 あるいは比較的長時間処置を行うことにより、海馬切片の神経細胞に対して毒性を発揮 するそことが知られています。右の図では損傷を受けた細胞をプロピジウム・アイオダ イドで染色して共焦点顕微鏡で観察した図です。1mM以上のグルタメイトを15分間投与 した場合、25時間までに顕著な細胞、神経毒性、このような緑より赤い色で見えている 部分ですけれども、このような細胞毒性が観察されました。  (スライド) これはグルタミン酸毒性に対するβ−エストラジオール及びビスフェノールAの影響 を調べたものです。右の図に示しますように、グルタミン酸に誘発された、この神経細 胞毒性はβ−エストラジオール により増悪しました。その増悪はCA3のところで最も顕 著でありまして、この図でいきますと、緑が多かった部分は真っ赤になっているという ふうに観察されます。左は脳依存性ですが、β−エストラジオール の場合、ピンクか、 紫のカラムですが、1pM では影響がなく、1nM で増悪、1μM でも増悪、ただ100μM まで上げてしまうと、逆に増悪作用が減弱してしまうというベル型の様相を示しまし た。似たような作用はビスフェノールAにも認められて、1nMのみでこのような増悪が 見られる。これもやはりベル型に近い濃度依存性が見出されました。この増悪作用につ いては現在さらに検討を進めております。以上が、脳高次機能維持標本を用いた研究の 初年度の成果です。 次に、分子生物学的手法を用いたエストロゲン受容体の発現系についての成果につい て報告させて頂きます。  (スライド) ヒトあるいは他の脊椎動物の機能たんぱく質は、そのcDNAを用いることにより、卵あ るいは培養神経クローン等に発現させることが可能です。ここに示したのは、アフリカ ツメガエルの卵母細胞の発現系の例です。機能たんぱく質のcDNAのプラスミドについて 大腸菌を形質転換させて、これを増殖しプラスミドを単離して、最初のこのプラスミド の量を増やします。このプラスミドを直鎖化してやりまして、その後、これを試験内で 人工的に転写を行います。でき上がってきたRNAをアフリカツメガエルの卵母細胞に注入 してやって、18℃で2ないし5日間インキュベーションしてやりますと、このRNAをもと にしてたんぱく質が合成されてきます。その合成されてきたたんぱく質の活性をここで は電気生理的な方法で示してありますけれども、膜電流測定等の方法により調べるとい うのが一般的な方法です。  (スライド) これはアフリカツメガエルの系を使って、私たちの研究室で行っている実験の一例で すけれども、これはエストロゲンとは関係ありませんが、古典的な神経伝達物質である アセチルコリンの受容体での結果です。アセチルコリン受容体のニコチン型というイオ ン・チャネルを形成することが知られておりまして、RNAを卵に注入してやると、その 後、発現した卵にアセチルコリンをかけますと、このように下向きの電流、普通内向き 電流と呼びますが、こういったものが観察されます。これはアセチルコリンによって開 くチャネルが機能的に発現しているということを示しています。その場合は、同じ実験 をセロトニンですけれども、セロトニン存在下で行ったものですが、このようにアセチ ルコリンによって融和され電流が小さくなります。すなわち、セロトニンと言われる、 これは脳内の伝達物質ですけれども、これはアセチルコリンによって開くイオン・チャ ネルを抑制することを示しております。これをヒト型のアセチルコリン受容体チャネル とラット型のアセチルコリン受容体チャネルで低くしたのがこの2つなんですけれど も、セロトニンの抑制作用というのは、アセチルコリン受容体チャネルを構成するサブ ユニット、αとβですけれども、その組み合わせによって影響を受けます。α3とβ2 を組み合わせた場合には、ラット型ではヒト型に比べてセロトニンに対する感受性が弱 いということがわかります。つまり、こういったラットとヒトでは、たんぱく質レベル でもやはり感受性の差というものが見られるということでありまして、逆に言います と、こういった系を用いるとヒトへの影響をより正確に見られるのではないかという可 能性を示唆しております。  (スライド) 似たような方法で今度はアセチルコリンではなくて、エストロゲン受容体を発現させ るにはどうしたらよいかということになりますけれども、エストロゲン受容体は御存じ のように、別にイオン・チャネルを形成するわけではありませんから、電気生理学的な 方法でその活性を見出すことはできません。cDNAを鋳型として、RNAをin vitroにして、 それを打ってやれば多分発現はしてくるだろう。ただ、その発現量はどのように測った らよいか、あるいは発現してきた受容体に対して、エストラジオール、あるいは類似物 質の作用があるのかどうかを判断するにはどうしたらいいかということを考えますと、 そのエストロゲン受容体を見出せる形で測ってやらなければいけません。エストロゲン 受容体は核内状態で、転写を開始あるいは促進することが知られておりますので、エス トロゲン受容体の結合部位の下流にイオン・チャネルのようなもののcDNAをくっつけて やれば、ここにエストロゲンが発現する受容体がくっついて、この部分が転写を受け て、このイオン・チャネルを介する電流を測定すれば、二次的にこのエストロゲンの受 容体の量、あるいは活性を測れるのではないかということを思いました。いわゆるレ ポーターですけれども、こういったレポーター発生系を構築することを目的として以下 の実験を行いました。  (スライド) と言いましても、まだここから先はトライアルエラーの段階でして、例えば、これは 失敗例の一つなんですけれども、これは阪大の西川先生から頂いたSV40プロモーターの 前に、EREエストロゲン結合部位を持ったベクターを頂きまして、もともとルシフェラー ゼの遺伝子、P2X2受容体、 ATPによってイオン・チャネルを入れかえてあげたんですけ れども、これはエストロゲン受容体を考慮したRNAと一緒にアフリカツメガエルの卵に注 入した場合、エストラジオールがあってもなくても、ATPによって電流が流れてしまう。 つまり、EREによって調節があるかどうか測れないということになりまして、これを使え なかったという1例なんですけれども、過去において、こういったことをやったグルー プはないかといいますと、これは割と古くから酵母の系でやってい人たちがいまして、 イオン・チャネルがありませんけれども、シャンボンさんたちの文献を細かく当たって みますと、彼はどうしたかというと、SV40のプロモーターをだんだん短くしていって、 どこまで短くしていったらRERによってオン・オフがかけられるかということを研究し たわけです。 結論から言いますと、このSV40プロモーターのTATAボックスと呼ばれる転写開始部位 ですね。そこの部分だけ残しておけば大丈夫で。 ○伊東座長 時間ですので、結構です。そんな実験のことだけではなくて、本当に内分泌かく乱へ の影響をそれでやるということについては一言も触れなかったけれども、どういうこと ですか。 ○中澤室長 失礼しました。私、今回このような研究会で報告するのは初めてでありまして。 ○伊東座長 それはちゃんと聞いてこないとだめですよ。 質問があればどうぞ。  では結構です。これからはちゃんと聞いて出てきてください。ここは学会発表じゃな いんですから。 では、これから3時まで休憩致します。3時にはお戻りください。                  (休  憩) ○伊東座長 それでは、次の「内分泌かく乱物質等、生活環境中の化学物質による健康影響及び安 全性の確保等に関する研究」、日本大学の片瀬先生、宜しくお願い致します。 ○片瀬教授(日本大学生産資源科学部)  片瀬でございます。宜しくお願いします。  (OHP)  生活環境、とりわけ日常生活の中にあります化合物につきまして、本研究対象物質に 何を選ぶべきかというところから始めまして、最後に安全性の確保につきましては、そ の研究の過程で出てきた幾つかのことにつきまして報告させて頂きます。  (OHP)  最初に私どもがdiethylstilbestrolから切り込んでいったということは、当然こうい うようなことがあったということですけれども、私にとりましては、私はピュアなケミ ストなんですけれども、ケミストは新しいものをつくるということに思いがありまし て、いろいろつくりました。最初に天然にある化合物を試験官の中でつくったのは1828 年位でありますけれども、それから100年の間にほとんど今日使われている化合物とい うのはつくられたように感じられます。当時、ただ残っていたのは、エストロゲン作用 を持つ化合物でありまして、それはエストロゲン作用の程度を標準化することがなかな か難しかったわけで、この問題に挑戦したのは Doddsでありまして、 Doddsは、スメア テストという当時使われていた方法ではありますけれども、このスメア法を標準化致し まして、約60種類の化合物について10年位かけてエストロゲン活性を検索致しました。 その結果40種類の化合物についてエストロゲン作用があるということを示し、その最大 効果のあるのがdiethylstilbestrolであったわけです。  (OHP)  これは平成10年度の報告でも使ったもので、再びお示しするのは恐縮ですけれども、 そこで、この Doddsがやった仕事というのを化学物質の構造と活性についてまず整理を しておきました。  (OHP) 60種類位の化合物について、先程検討したと言いましたが、その中で40種類の化合物 がこんなふうにしまして、活性があるということを示して、その頂点にdiethylstilbes trolがあるわけです。  (OHP)  今のは多くの化合物が記載されていてほとんど見えなかったというふうに思いますの で、一番頂点にあるグループと一番下にあるグループを再びここに示しました。その間 には20万から25万倍のエストロゲン性活性の差異があるということでございます。  (OHP) これを化学構造に基づきまして、一体どういうところに作用があるのかということを 60年位前の論文をもう一度紐解いたわけです。これは天然のエストロゲンですけれど も、それを仮想的に分解しますと、こういうようなものになって、実際に diethylstilbestrolを見つけたわけなんですけれども、 Dodds自身もこの中間産物プロ ペニルフェノールを初めはエストロンゲンの一番強い化合物としていました。どうや ら、この化合物がそのキーポイントになるような気がしたわけです。  (OHP)  これはアノールと呼ばれているもので、このRがCH3の場合にはアノールという化合 物です。もし Doddsらが行った検討の結果で一番活性の低いビスフェノールAだとか、 アルキルフェノール、当時はノニルフェノールを行っていませんでしたけれども、アル キルフェノールにそういうものがあるとすれば、日常生活には、天然にも意図的にエス トロゲンとして用いていない、こういうような化合物もありますし、それから人為的に 合成し、これまでに使ったいろいろな化合物がごまんとあるわけです。こういうような 化合物があることをきちんと整理していく必要があるというところから始まったわけで す。  (OHP)  我々は厚生省からお金を頂きまして、まずそういうことに関連するものを片っ端から こういうふうにしてやっています。大体50種類をやりますが、トリプリケートでやりま すので、かなりの時間がかかるわけです。  (OHP)  私どもは一応 Doddsから出発しましたので、こういうような化合物の中から、 (1)Dodds関連物質、Dodds関連物質の中にプラスチックの化合物が2つあったわけで す。アルキルフェノールとビスフェノールAであります。(2)プラスチック関連物質、 よく構造式を見てみますと、(3)天然成分でもDodds関連化合物があるわけです。ですか ら、これを射程に入れまして、diethylstilbestrolが使われました、(4)医薬品の成分 と、対象といいますか、(5)天然のエストロジェニックな化合物を加えて5つカテゴラ イズしまして、幾つか代表選手を選びました。  (OHP)  最初のグループの代表選手はdienestirol です。diethylstilbestrolは余りにも有名 でありまして、今さらやっても論文になりませんので、dienestirol をやりました。こ れはマクラクランなどがアメリカで結構やっています。ビスフェノールAを一つ選んで おきました。それからプラスチック関連物質としてはノニルフェノール、それから予め の検索の結果、benzyl n-butylphthalateが有力な候補生であるということです。天然の 成分につきましては、これもほかの人たちがやっているようなものをやってもおもしろ くありませんので、resveratrol を選びました。これは天然のブドウの皮や種の中に入 っているもので、1970年代には抗酸化剤や抗発がん作用があるというようなことで表現 化されていたわけですけれども、2年位前の分析化学会で、私の前の演者がたまたまブ ドウの成分の発表をしていまして、化学構造式をみますとdiethylstilbestrolに似てい る部分がありましたので、これをやってみました。 それからferulic acid で選んだのは、これは天然のケイ皮酸化合物でありまして、高 等植物体の中に万遍なくどこにでもあるようなものです。リグニンの出発物質でありま して、この化合物を選んだのは、今から30年位前に私が大学院の学生のときに、カシン ベック病の病因物質の一つに内分泌耳下腺に影響を与える物質だということで病理学者 が指摘した物質であります。私も化学分析という点でこの物質については非常に興味を 持っていましたので、天然物質の代表選手としてこの2つを入れました。薬品は、御承 知のように、ethynylestradiolとmestranol 、ピルの成分として使われているからであ ります。  (OHP)  一応そういうような基準で化合物を選びまして、生物影響と致しましては、スクリー ニング系としてヒトエストロゲン組換え酵母とヒト乳がん細胞を使いました。それから 哺乳動物としてはラットを使いました。今回の報告は、魚類とヒト免疫というのは、ち ょっとほかのところの仕事に関係がありますが、今回は1と3について報告します。  もう組換え酵母のことはよく知っていらっしゃると思いますので、入手先だけ申し上 げます。これはブルーネル大学のサンプター博士から直接送って頂いた株を使いまし た。  (OHP)  これはミシガンキャンサーファンデーションで、これはアメリカのタフツ大学のソ トーのところにいました坂部先生から頂きました。  (OHP)  今更、ラット・スメアテストなんてとお思いになるかもしれませんけれども、私ども の思いは Doddsのやった仕事、その延長に持っていこうというような気持ちがありまし たので、このラット・スメア法をやってみました。  (OHP) まず最初にラット・スメア法の結果について示します。これは彼らがやった方法とほぼ 同じようにしまして、3日連日投与をします。その量は100 mg/rat で投与しています。 Doddsもそういうふうなやり方でやっています。ただし、Doddsらがやって、既に活性の 高いと言われているもの、あるいはピルの成分などは100分の1の量から始めています。 この結果、そうしますと天然でこういう順番で、結果の説明をしないといけないんです が、この長い棒はその効果があるというふうに現段階では読み取って頂きたいというふ うに思います。そうしますと、benzyl n-butylphthalate(BBP)も若干ではありますけ れども、こういうふうにして活性があるということがわかります。BBPにエストロゲン性 が示された最初の仕事と思います。  (OHP)  以上のことを、今は哺乳動物系ということでこんなふうにして整理しましたが、組換 え酵母の結果と乳がん細胞の結果をこんなふうに整理しました。哺乳動物系でまだ順位 だけしか書いてありません。これはまだ1回の投与しかしていませんので、100分の1を さらに10分の1、もっと量を下げていって、ノンエフェクティブな量が最小の活性量と いうことになるわけです。今回はとりあえず順位だけをこんなふうにしてつけておきま した。 乳がん細胞の方も、酵母に比べまして、結構時間がかかるところがありまして、これ はまだプリミティブな結果ですが、順位はこんなふうにつけました。この結果から言え ることは、予め強いと言われたものは万遍なく強い。それからビスフェノールAや BPA 、ノニルフェノール はこういうオーダーにある。大体活性強度の低いオーダーに あるということは言っていいだろうということです。 (OHP) 活性が低いのでは、今後検討しなくていいかということなんですけれども、そうでは ないと考えています。レセプターを介する化合物であれば、それはどういうような化合 物でもいいということで、相加作用があるということになります。0は幾ら足しも0で すけれども、検出限界以下ということは、場合によって数が多くなければその量によっ て十分な影響量になり得るわけです。加えて、安全性を考えることは、効果がないこと にさらに安全ファクターをかけます。化合物の数をこうやって考えますとあながち無視 し得ない。研究に値するものであると、そんなふうに思っております。  (OHP)  以下、化合物の結果について説明していきます。余り時間がありませんので、ポイン トだけ説明致します。  3種類のラップについてやりました。その中の成分は違いますということ、それから 手袋についてやりました。手袋の種類によって成分が違うということです。  (OHP)  これは活性の結果です。こんなふうにしまして、化合物の種類も違いますように、活 性の度合いも違うということがわかります。  (OHP)  同定された化合物について活性を調べますと、BBPは明らかに活性がある。しかし、 DEHPやDEHAはないということです。先程フタル酸エステルについての報告がありまし て、DEHPにつきましては、TDI を超えているという意味で検討に値する化合物だろうと いうふうに思いますが、エストロジェニックな化合物としては、やはりBBPを注意して いくべきだろうし、DEHPを使うことを中止することよってBBPを使われたのでは意味が なかろうと、こんなふうに思います。  (OHP) もう一つは、ノニルフェノールの結果です。純品のノニルフェノールというのは活性 が弱いです。しかし混合物は強いということです。  (OHP) 私ども、この化学分析をしまして、どこの部分が強いのか分画してみました。一番下 のクロマトグラムはノニルフェノールのm/z 220イオンで検索したもので、この化合物が ノニルフェノールに対応しているということはわかります。  (OHP)  こんなふうに分けて、その活性を調べています。  (OHP)  その結果、これはプリミティブですけれども、1番は直鎖ノニルフェノール、2番は 枝分かれした市販のもので、混合物です。3以下は、この2を分けた成分です。こんな ふうにして違うわけです。  (OHP)  あとは、ここから先は、多少安全性の確保に関することについてのコメントが必要か というふうに思いますので、2点程指摘しておきます。 1つは、工業生産活動ということで、コメントいたします。これまでプラスチックのラ ップの可塑剤ということで、adipatesを調べました。私どもの検討結果からは、純品の adipatesを使いますとそうでもないんですけれども、それを混ぜたものは何か違った作 用をします。それからプラスチックの手袋につきましても、フタレートと一般的にいい ますが、その中には、エストロジェニックな作用がないものと、あるものとがありま す。そこをきちんと区別していくべきです。 第2の点については、プラスチックから移行する化学物質の管理の問題です。この件に ついては、後日、もし機会があれば説明させていただきます。  以上です。 ○伊東座長  ありがとうございます。それでは、何か御質問ございませんか。  どうもありがとうございました。  それでは、次の演題に移ります。次は「内分泌撹乱物質の免疫機能に及ぼす影響に関 する研究」ということで、国立公衆衛生院の山崎先生、宜しくお願い致します。 ○山崎主任研究官(国立公衆衛生院栄養生化学部)  宜しくお願いします。最初のスライドをお願いします。  (スライド)  生体内では、内分泌系のほかに免疫系、神経系が存在しており、それぞれが密接に関 連を持っています。1980年代から性ホルモンは免疫機能に影響を及ぼすという報告がな されてきました。また、免疫機能の低下により死亡した野生生物の体内から多量の内分 泌かく乱化学物質(以後EDCと略しますが)、EDCが検出されたと報告がありました。よ って本研究では、EDCの免疫機能に及ぼす影響について調べました。  (スライド) EDCの免疫機能に及ぼす影響に関する報告としましては、まずTCDDに関して胸腺重量の 減少、マイトージェンに対するBリンパ球、Tリンパ球の反応性の低下などが報告され ています。さらにトリブチルスズに関しても胸腺重量の減少などが報告されています。 さらに、DDTに関してリンパ球のマイトージェンに対する反応性の低下が報告されていま す。  (スライド) 本研究においては、ノニルフェノール 、NP、ビスフェノールA、DDE、5種類のフタ ル酸エステル類について研究を行いました。  (スライド)  平成10年度の報告におきまして、Bセルのマイトージェン刺激に対する反応性をDEP以 外のすべてのEDCが低下させるということを報告しました。そこで、Bリンパ球系細胞株 であります Rajiを用い、反応性について検討を行いました。やはりDEP以外のすべて のEDCにおいてマイトージェン刺激による反応性が低下することがわかりました。これは そのうちの4,4'-DDEの結果です。スティミュレーションインデックスは、どのぐらい活 性化されるかを示す指標です。この白いのはコントロールで、Raji細胞はマイトージェ ン刺激により2倍程度活性化されることがわかります。10−6M の4,4'-DDEで反応性が 約50%低下し、また10−4濃度では全く活性化は起こりませんでした。さらにDDEとマイ トージェンを同時に加えた場合でも、8時間後にマイトージェンを加えた場合でも同じ ように低下が見られました。これはほかのEDCすべてにおいても同様な結果が得られまし た。よってこれらEDCは、リンパ球細胞内に瞬時にシグナルを伝達しているものと考えら れます。  (スライド) Bリンパ球とRajiの反応性におけるIC50の比較です。相関係数は0.46と余りよくあり ませんでしたが、ノニルフェノール、DDEはBリンパ球系の細胞において強く反応性を低 下させることがわかりました。  (スライド) 次に、細胞障害性を示しますLDH活性について測定しました。これはRajiの結果です が、先程反応性の低下を強く起こしましたノニルフェノール、DDEについてはLDH活性が 高く、また、作用の弱いBBP、DBP、DHPではLDH活性が低く、作用の低下とLDH活性には 相関が見られました。  (スライド) これらの作業がエストロゲンレセプターを介しているものかどうか調べる目的で、B リンパ球のマイトージェン刺激に対する反応性に及ぼすEDCの影響に対するエストロゲ ンレセプターアンタゴニストであるICI182,780の効果について調べました。EDCが黄色い バーです。EDCとしましては一部反応性を低下する濃度のものを用いました。ピンクが EDCにICIを加えた場合ですが、これらの結果からICIによっても反応性の低下が回復せず むしろビスフェノールA以外は低下することがわかりました。  (スライド) Rajiの反応性に及ぼすEDCの影響に対するICI182,780の効果についても同様に調べま したが、同様にICIによっても反応性の低下は回復しませんでした。  (スライド) 次に、T細胞に対する影響について調べました。まずT細胞受容体を介したシグナル 伝達系の図ですが、Tセルレセプターが活性化されますと、ホスホライペースCが活性 化され、さらにPKCを介する系、さらにイノシトール三リン酸、細胞内カルシウムイオン を介する系を活性化し、最終的にシグナルが核に伝わってIL-2などの遺伝子が活性化さ れます。  (スライド)  マイトージェン刺激によりましても、今のシグナル伝達系が同じように活性化されま す。平成 10年度の報告におきまして、Tリンパ球のマイトージェン刺激に対する反応性 がDEP以外のすべてのEDCにおいて低下することを報告しました。そこで、同じくTリン パ球系細胞株であります Jurkat細胞を用いて反応性に関して解析を行いました。やはり DEP以外のすべてのEDCにおきまして、Jurkat細胞のマイトージェン刺激による反応性を 低下させることが明らかになりました。ここでは、DEHPの結果を示します。10−6M の DEHPで反応性が約50%以上低下することがわかります。先程と同様に、DEHPとマイトー ジェンを同時に加えた場合でも、8時間後に加えた場合でも同じように低下が見られ、 これはすべてのEDCに関しまして同じような結果が見られました。よってこれらEDCによ り瞬時にJurkat細胞内にシグナルが伝達しているものと考えられます。  (スライド)  次は、Jurkat細胞のLDH活性ですが、こちらを見て頂ければおわかりのように、余り変 化が見られませんでした。ノニルフェノール、DEHPで10%以下の上昇が見られていま す。先程のRajiと違いまして、LDH活性と反応性の低下には相関が見られませんでした。  (スライド) Tリンパ球とJurkatの反応性におけるIC50の相関です。これは相関係数0.65とまずま ずの相関が得られました。ノニルフェノール、DEHP、DCHPがTリンパ球系の細胞に対し 反応性を低下する作用が強いことがわかりました。  (スライド)  次に、Tリンパ球とBリンパ球の反応性におけるIC50の相関です。これは相関が全く ありませんでした。よってEDCによるBリンパ球への作用とTリンパ球への作用は異なる ものと考えられます。  (スライド)  先程同様に、今度はTリンパ球の反応性に及ぼすEDCの影響に対するICI182,780の効果 について調べました。先程結果と同様にICIを用いましても、反応性の低下は回復しませ んでした。  (スライド) Jurkatに関しても同様の研究を行いましたが、やはりICIによっても反応性の低下は回 復しませんでした。  (スライド) 次に、これらの作業がエストロゲンレセプターを介しているものかどうか調べる目的 でエストロゲンレセプターのRT-PCRを行いました。少し見づらくて申し訳ありません が、エストロゲンレセプターαはRaji男性のヒトリンパ球、女性のヒトリンパ球におい て発現が見られましたが、 Jurkatには発現が見られませんでした。こちらがエストロ ゲンレセプターβですが、こちらはヒト男性リンパ球、女性のヒトリンパ球、Raji、 Jurkatのすべてにおいて発現が見られました。こちらは内部コントロールです。このよ うにリンパ球系の細胞にはエストロゲンレセプターが発現していることが明らかになり ましたが、このエストロゲンレセプターを介してEDCが作用しているかどうかについて はさらに詳細なメカニズムの検討が必要であると思われます。  (スライド) 先程Tセルレセプターを介したシグナル伝達の中に出てきました細胞内カルシウムイ オン濃度、これに対するEDCの影響について調べました。これはビスフェノールAです が、10−4M のビスフェノールAを加えますと瞬時に細胞内カルシウムイオン濃度が上 昇することがわかりました。これはDEPを除くすべてのEDCについて観察されました。よ ってEDCのリンパ球に対する作用には、エストロゲンレセプターを介した系以外の系も 使っているものと考えられます。  (スライド) 先程の図にありましたIL-2なんですが、Tリンパ球のマイトージェン刺激をした際に 産生されますサイトカイン産生に対するEDCの影響について見ました。まずIL-2ですが、 白いところがコントロールと変化が見られないものです。黄色で示したのですが、少し 見づらいんですけれども、高濃度のEDCを用いますと、IL-2産生が抑制されることがわか りました。 さらに赤字で示したところなんですが、低濃度のEDCでは、ビスフェノールA、DDE、 DDPでは、逆にIL-2産生が上昇することがわかりました。  (スライド)  次に、インターフェロンγです。先程と同様の色分けをしているのですが、白いとこ ろがコントロールと変わらない値を示しています。やはり高濃度のEDCを用いますとイン ターフェロンγの産生が抑制されることがわかりました。逆に、ビスフェノールA、 DDE、BBP、DBPでは、低濃度の場合にかえってインターフェロンγの産生が増大するこ とがわかりました。  スライドありがとうございます。  以上in vitroの系を用いまして、EDCが免疫機能に影響を及ぼすことを明らかにしまし た。さらに、そのメカニズムについて詳細な検討を行っていく必要があると考え、今研 究を進めています。さらに、in vivoの系としまして、マウスに対するEDCの影響につい て検討を進めているところです。ありがとうございました。 ○伊東座長 ありがとうございました。それでは、何か御質問ございましたらどうぞ。 ○井上委員 丁寧にお調べ頂いたので、ちょっとコメントなんですけれども、エストロゲンレセプ ターのα、βを介するもの以外の影響ということを念頭に置いているというお話でした けれども、そういうものを含めて聞いている方たちみんなそう思ったと思うんです。そ れで、詳細にお調べ頂く前に、ぜひアンタゴニストでどの程度まで効いているのか、そ れで、その後、ほかのレセプターなんかについて御検討頂ければ大変有益なのではない かと思います。 ○山崎主任研究官 ありがとうございます。今の先生のコメントに対してなんですけれども、今回ICI 182,780を用いたデータをお示ししたのですけれども、最初にタモキシフェンについて検 討しました。しかし、タモキシフェンは単独で10−7M でも反応性を低下させてしまい まして、今回用いたICI182,780は10−6M までは反応性に関して全然影響を及ぼさなか ったので用いてみました。 ○伊東座長 そのほか何か。 ないようでしたら、ありがとうございました。 次、井上先生、「内分泌かく乱化学物質の人の健康への影響のメカニズム等に関する 調査研究」ということで、宜しくお願い致します。 ○井上部長(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター毒性部)  御紹介ありがとうございます。スライドをお願い致します。  (スライド)  人の内分泌かく乱問題につきましては、様々な暴露の研究であるとか、試験法の研究 などと並行して、受容体の問題などで新しい知見が出てくると、また別のやり方を考え なければならないという必要性が出てきて、しかもup-to-dateなことは、さしあたり考 慮しないでもよいというふうに安閑と見ていられないというような状況がありまして、 当初の移替え研究のころからこの研究がスタートしております。本研究課題は、それを ずっと引き継いだものであります。  (スライド)  トキシコロジーでは、ハザードアイデンティフィケーション、それから用量相関、暴 露の評価というようなことが中心課題になっていくわけですけれども、実際問題として は、暴露の方はともかく、ハザートアイデンティフィケーションも、用量相関も、これ までの議論でおわかりのとおり単純ではないということがあります。  (スライド)  それで、ここでは生体影響が直接パッと作用して、パッと反応が出るというような実 験系よりも、複雑な系でもって、今問題になっている主として高次反応系の生物系の問 題を中心に課題として設定することになりました。  (スライド)  それで、まず高次系の生殖系でありますけれども、障害の臨界期を決めるということ で、実験が行われました。実際には生後7日あたりにあります。それから臨界量は、 0.003μg/kg程度。それから胎仔移行がある。次に、胎生期と新生仔期について検討。 新生仔期については、ここの臨界期を外せば何も出ないというような問題であるとか、 胎仔移行がありますので、卵のような系も一つの検討の対象になるということが、明ら かになっています。 (スライド) こちらは新生仔期の方ですけれども、親に投与すると、ここにありますように、DESの ような強いものでも、こういうふうな釣鐘状の変化をするし、ビスフェノールAは比較 的高用量になりますけれども、有意差がここのところで出る。それからあとは、膣上皮 の多層化が卵巣を割拠してやると出る。つまり卵巣インディペンドな形でもってそうい う変化が出る。  (スライド) それからあとは、新生仔期に投与すると、これは通常は余り出ないんですけれども、 それでも 150μgのオーダーで生後5日間投与すると40日目でもって膣の多層化が出 る。これはもうちょっと少用量のものがその後行われていますが、それでも出るという ような状況です。  (スライド) それで、卵黄で見たわけですけれども、これらは鈴木先生のデータですけれども、そ うするとここが5ngのところまでいくと出る。50pg、500pgのあたりでは出ないというこ とで、これはmRNAのExpressionを見ていますけれども、エストロゲンレセプターを見て いますけれども、これを介するものかどうかは正確にはまだわかっていない。  (スライド)  それから免疫系ですけれども、免疫系については、in vivo投与が行われています。そ れで比較的リファランスとして高用量と、それからあと低用量にまで移行している。3 か月間でトータル 10μg、1日μg以下ですけれども、そんな用量で脾臓のT細胞が増 加したりいろいろに動きます。  それから東大の松島先生の方では、ケモカインの系を使って動く系、これはかなりき れいに動くんですけれども、その動くのを利用して3万個のタグをつけた円形配列を同 定した。その中の wispという遺伝子が見つかった。エンドクラインレセプターと反応 させると、これのExpressionが用量反応性に動くと、そういうところまで見ています。  (スライド)  これは免疫系の方の広川さんのデータですけれども、TセルもBセルも前の方がお示 しになったように、胸腺細胞の方でもみんな受容体のExpressionがある。したがって当 然動く。老若いろいろ組み合わせて様々に見ていますけれども、CD48+ などについて も動くし、動き方もオス、メス、年齢層によって違う。  (スライド) それからこれは松島先生がとった3万個の遺伝子の上位30種類です。サージ法を用い ています。  (スライド) 見えなかったかもしれませんけれども、1.7 倍位まで出るのが数個あった程度なんで すが、それに対しまして、この方法でもって実際にクローニングして、それでちゃんと Expressionを見ると16倍出るものからいろいろあります。その中でウィント遺伝子でも ってExpressionを見るとエストラジオールに対してこういった変化を示すと、それから あとは、それに対してノニルフェノールだとか、ビスフェノールAだとか、それに対し て抑制剤を投与するとその変化が消えるとか、逆にExpressionが出るとか、そういった ところが調べられるようになった。  (スライド) こういった系ができたのは多分初めてだと思います。あと神経系ですけれども、これ は我々はバリアントのExpressionの神経分化のところを見ようということでもって若い 人たちにやってもらっているんですけれども、さんざん苦労しました。やっと定量性と 定性性のある系が樹立されたというところで、これは遅くなりましたけれども、それ自 体は画期的だと思います。それからステロイド系については、あとで図版を使って見て 頂きます。  (スライド) それで、13日から、これは胎生期の解剖をするわけですけれども、最終的には14日目 をとりました。  (スライド) 14日目の脳細胞をとって、アストロサイトに分化する、ニューロンに分化する、ステ ムセルを染め分けて培養条件の中でこういうふうに変わっていく。こういったことでも って定性的に見ることができるし、PCR の条件でもってバリアントそれぞれについてこ ういった定量的な形できちんと定量できるところまでやっときたと、こういうところで あります。  (スライド) それからこれは笹野教授の仕事で、これはかなり新しい発見でありますけれども、胎 仔のエストラジオールとの関係では、バインディングプロテインとの関係での説明が多 かったわけですけれども、それももろん重要なんですけれども、ここで17β-ハイドロキ システロイドダイハイドロオキシレスの2というのがあります。これがエストロゲンか らエストロンに変換して胎仔に移行させる。胎盤にこの酵素が非常にたくさんあるとい うことを彼が発見しました。胎仔にもそれがたくさんあって、いついかなるときにエス トロゲンが入ってきても、それをたちまちのうちできるだけ消去してしまうおうという 機構が働いているんだということがわかってきました。この酵素がエンドクラインレセ プターに働くとはとても思えませんので、この辺は一つのキーになるわけですけれど も、これがちょうど今年の分として研究がなされております。なお、これは、ヒトの系 と全く同じではないので、今後の検討が必要です。  (スライド)  核内レセプターとシグナル系ですけれども、これについては、それぞれ個々に説明致 します。  (スライド)  まずP72という、これはコファクターです。エストロゲンレスポンシブエレメントの ところにエストロゲンのα受容体が、例えばバインドするときくっつくコファクターで す。このコファクターはP68と、去年、加藤先生がクローニングしたものと同じファミ リーなんですけれども、これはTwo-Hybrid法でとられました。例えば組織特異性の発現 を制御するということがわかっております。これはRNAヘリケースでして、これのExpre ssionによってエストロゲンαの活性が動きますので、そうすると仮にα-受容体にバイ ンドするようなエンドクラインレセプターを投与しても、その反応性がガタガタ動くと いうことで、今の焦点は、この72がどういうふうに制御されているかということでし て、その後の研究を待っているところです。  (スライド) それから今のはエストロゲンリスポンシブエレメント(ERE)の問題なんですけれども、 ちょっと大きな問題は、エストロゲンリスポンシブエレメント以外のところにERである とか、PPRγであるとかRARが、しかもトランスクリプションファクターを介してコファ クターとブリッジのような形でもってバインドする可能性というものを実験的にそうい うデータが出てまいました。垣塚さんの方の仕事です。  (スライド) ところが、同じ班の班員の藤本さんがこれと全く同じことを去年の末に発見しまし た。つまり AP1の領域にこのエストロゲンのレセプターがコファクターを使ってcJUNで あるとか、そういったものを使って結合する。ここにエストロゲンが結合するというよ うな形で、エストロゲンのバインドがAP1オーバーということがわかりますし、それ以 外のものについても、こういったことがあるということを彼が見つけ出しました。  (スライド) そうしますと、今までの系のEREを介するシグナルでは、エストロゲンのレセプターの αとβではほとんどパターンの違いがないのがおわかりだと思いますけれども、ここの αとβでもって、このAP1 のシグナル系を見ますと、これは見にくいと思いますけれど も、これがエストロゲンでエストロゲンに対する反応性が違いますし、タモキシフェン に対する反応性はこちらの方がむしろ高いというようなことが出てくる。こういうこと が見つかりました。  (スライド) したがいまして、EREだけ見ていても不十分であるということで、このAP1に対する反 応系をつくりましたら、ビスフェノールAやゲニスタインやメトキシクロールなんかに 対する反応性がβとαで非常に違うということがわかりました。  (スライド)  そういうことで、高次系とシグナルクロストークと低反応性、低用量反応性というの はリンクさせてみなければならないということが示唆されております。  (スライド)  ちなみに、これはビンクローゾリンに関するものですけれども、こういったアール・ グレー氏のデータですけれども、ここのところのデータは下がっているというデータが ないという、そういった状態でして、一方、ビンクローゾリンのNOELはこういう高濃度 のところにぽんぽんデータがあります。つまり、ここの間で一つ切れているわけであり ます。この辺の問題が、用量問題で、この10月にEPAの討議でもって話題になるテーマで す。  (スライド) 今のことを、漫画的にかくと、General Toxicologyでもって出ているデータの外にDES 投与などでスパイク状に上がって時間が物すごく厳密な、24時間から48時間位のところ にクリティカルポイントがあるというデータが出てくるし、あるいはちょっと反応する といった変化が見られるという問題があります。  (スライド) それでEPAでは、ペニー・フェニクリスプさんがこういうふうに新しいものがどんどん 発見されるごとにいろいろ変わっていったのではたまらないので、cDNAマイクロアレイ をやるということでもって、先々週位にサイエンスにその提案を出しましたけれども、 我々も1年程前からこういう準備をしておりました。  (スライド)  神経について若い人たちが見てくれまして、DESでもってほかのやつについてもデータ が逐次くるところですけれども、どういう変化が出ているのか。これを見ますと、重要 なのは、ハンチンティングインタラクティングプロテイン2という遺伝子の変化が見ら れます。これは神経の発生のところ出てくる遺伝子発現であります。  (スライド)  それで、これはペニーさんの先々週のサイエンスのペーパーです。  (スライド)  全体をまとめますと、高次系について、シグナルクロストークと低用量問題をリンク させて仕事をしていく。  その中でも、わけても、赤で示したところが、プラクティカルに重要であろうと。そ れ以外のところもメカニスティックスに明らかにしていく上では、それなりに重要かも しれない。それからあとは、cDNAマイクロアレイの方を、これは個人でできる研究であ りませんので、大きな規模でもってスタートすることが大事なのではないかと考えてい ます。 以上であります。 ○伊東座長  ありがとうございました。どなたか御質問ございますか。  井上先生、続々といい方法で新しいのが見つかって、これは世界の最初の発見だと。 インターナショナルなエバリエーションはどうなんですか。先生のところでおやりにな ったのは、インターナショナルには、この方法はベストということになっているんです か。 ○井上部長  試験系のあれは、今井班の方が中心にやっていますので、私どもでは、こういう目配 りした方法が必要なんだというのを、会議のときに我々が見出したものをお示しして、 それでみんな考えて頂くというような形をもっぱらやっておりますけれども、私どもの 班で出たデータの中では、もちろん加藤さんみたいなアウトスタンディングな方がいま すから、ネイチャーなんかにももちろん入っていますけれども、あと行政的にもそうい う会議の中では取り上げられております。 ○伊東座長  いいですか。  では、どうもありがとうございました。  それでは次に、「内分泌かく乱化学物質の作用機構に焦点を当てた新しいハイ・ス ルー・プットスクリーニング法の開発」ということで、これも同じところの菅野先生、 宜しくお願い致します。 ○菅野室長(国立医薬品衛生研究所安全性生物試験研究センター毒性部)  ありがとうございます。では、早速説明させて頂きます。  (OHP)  この班は、新しいハイ・スルー・プットスクリーニング法の解析というテーマで中身 は二本立てになっております。(1)に示しますように、ハイ・スルー・プットスクリーニ ングを利用した高速分析法の検証に関する研究、これは培養細胞を用いたReporter Gene Assay をロボット化してハイ・スルー・プット化するという試みです。  2番目は、表面プラズモン共鳴による新規無細胞系高速分析です。これは細胞系を使 わないで、エストロゲンレセプターにまつわる反応をハイ・スルー・プットスクリーニ ングに応用できないかということで始めたものであります。この班は平成9年度の補正 予算からスタートしたものでありまして、背景と致しましては、米国EPAのEDSTAC(Endoc rine Disruptor Screening and Testing Advisory Committee ) のストラテジーが あります。すなわち何万種類もあるケミカルのうちから、どういうものをチェックした らいいかというtierスクリーニングのストラテジーが出されまして、そのときに、in vi voの試験系がたくさん提案されました。しかし、それらを一気にやるためには、対象化 学物質の数が多過ぎて百年かかっても終わらないということで、どのケミカルから優先 的にやるかを決める必要があろう。そのためにハイ・スルー・プットスクリーニングを 用いるということが提案されたのがきっかけであります。  この日本版としまして、平成9年ごろからスタートしたわけでありますが、日本とし ても独自に必要であろうという当時の理由は、例えば日本でしか使われていないケミカ ルもあるであろうし、日本で独自の判断もしなければならないだろうということであり ました。  (OHP)  では、その現状はどうなっているかという調査研究もそれ以来継続しております。そ の本家本元でのHTPSの開発は、OSIファーマシューティカルに委託されたわけですが、結 論からいいますと失敗し、これは中止になっております。その代わりに、HTPSチャレン ジプログラムというのが動いていまして、一言で言うと、「民間等の皆様方、自分の得 意な方法をお持ち寄りくださいと、その中からいいのを選びましょう」というもので す。 3D-QSAR、これはFDAの研究所でありますNCTRで走っていCoMFAという方法を核にしたも のですが、それを拠り所にしているという形になっております。一方OECDの方でin vivo 試験系のバリエーションが進んでおりますが、これにおきましても、被検物質をどうい う風にセレクションしようかということを考えたとき、やはりin vitroのデータが必要 になろうということで、ハイ・スルー・プットスクリーニングの情報が欲しいという要 望が出つつあるという段階です。国内では、幸いにもこの班でやっております系が動き まして、それをEPAに紹介したところ強い関心を示していて、日米共同の作業が模索され つつある現状であります。 他方こういう系を動かしている傍ら、新しい無細胞系のものも必要ではないかという 考えが出てまいりまして、これについては後程また説明させて頂きます。  (OHP) Reporter Gene Assay をロボットに適応することによるHITPSは、化学物質評価研究機 構に対する委託事業として現在すすめておりますが、この背景は、先程申し上げたEPAの EDSTACにあり、これは当初より通産省、NEDOとの共同研究として展開してきておりま す。アメリカがMCF-7など自らレセプターを発現している細胞系を使おうとしたのに対 しまして、こちらでは早々とそれらに見切りをつけまして、Hela細胞に必要な遺伝子を すべて導入する系でスタートしました。細胞は住友化学がつくりまして、ロボット自体 は九州の日田にあります化評研の研究施設に設置されております。優先づけを早急に行 うということを最終目的に系を立ち上げております。  (OHP) 細胞にはこのように2種の遺伝子を入れまして、ヒト型のERαをつくらせて、ルシフ ェラーゼで応答するという細胞を樹立しました。計画ではヒトのERα・β、AR、TRα・ β、この5本をやることになっております。  (OHP)  現在はERαの系が動いていまして、これがそのロボットの現状であります。原理的に は手でやれることですが、これを自動化してスピードを非常に早くしたというものであ ります。  (OHP) これが17β-エストラジオールの結果の一例ですが、最低濃度を1pgに置いて濃度を振 っております。大体1pgが無反応量、反応のピークが100pgにきまして、IC50がちょうど その間にくるような系に出来上がっております。  (OHP) 100pgのエストラジオールを100%として、被検物質の用量反応シグモイドカーブの上 で、その50%にきたところの濃度をPC50と呼ぶことにしました。シグモイドカーブの得 られ方によってはそれ自体の最高点を100%としてEC50も求まるときは求まるのですが、 現在のところはPC50を用いて、より厳しく判定しております。またthreshold(閾値)とい う定義もしておりますが、これについては、本日は割愛致します。  (OHP) ここに示しますのが現在までに2種類の細胞株で測定の終わっている177物質のリスト であります。細か過ぎて申しわけありませんが、この中でPC50が求まっていて反応性が あるというものの、上位のもののリストを次にお示しします。  (OHP) ちなみに、このリストはEPAが数年前に出しました候補物質のリストから入手可能なも のを優先的にとりあげております。これが上位のものでして、17β-エストラジオール とエチニールエストラジオール、ゼラノール、DES、ずっと下にきまして、エストロン、 ビスフェノールB、ノルゲステロール、テストステロンがちょうど10−6M位のところに きまして、その下にノニルフェノールなど、そして最後にビスフェノールAがおさまっ たと、こういう結果が得られております。  (OHP) アンタゴニストも抽出できるということを確認しております。これは100pMのエスト ラジオールの作用に対してそれを阻害するところをタモキシフェンや、ICI化合物につい て見ております。また、細胞系がtransientではなく、stableな系でありまして、それが どのくらい本当にstableかということを見ております。これは100pMのところでの陽性 対照値を陰性対照値で割った比率で見てみますが、大体10倍から14倍の間を推移してお りました。  (OHP) 実は2種類の細胞株と申しましたのは、一方のERαの遺伝子にはミューテーションが 入って、390番目と578番目のアミノ酸が変異しております。390番目というのはリガンド バイディングドメインのアミノ酸ですが、ポケットには面していない位置にあります。 これがどう結合能に影響を及ぼすか興味のあるところで、並行して進んでいる3D-QSARの 研究とも絡ませております。このグラフは縦・横に変異株と野生株の反応を、種々の化 合物についてプロットしたもので、対角線上に乗っているのは両株で同じ反応をした化 合物であるのに対し、片方にしか反応しない化合物があります。これについては現在解 析中ですが、フラボン類やタモキシフェンなどが含まれており、3D-QSARの検討のための 非常に興味深いデータとなるのではないかと考えております。  (OHP)  さて、次に、細胞を用いないハイスループット系について説明します。これは、受容 体に関連した分子間相互作用を、直接的に観測しようとするものです。これは細胞を用 いた系によって得られる結果に対し、そのメカニズム面からの補強をすること、更に、 学問の進展に伴って提示される新しい分子間相互作用をいち早く取り入れることのでき る系を用意すること、という2つの意味を持っています。  (OHP)  これは、ちょうどいい機械がある、ということで採用した解析機器でありますが、商 品名はビアコアです。簡単に言うと、金の薄膜に接している液体の屈折率が変わると、 それを検出します。屈折率は分子量と比例するということでありまして、この膜に分子 が結合する、離れるという過程がリアルタイムで観察されます。  (OHP)  この系について2通りの研究をすすめております。金薄膜のチップの表面に、エスト ロゲン応答配列(ERE)をくっつけまして、そこにレセプターが結合するスピードがリガ ンド依存性に変わる。ですから、ビスフェノールAのときと、エストラジオールのとき でEREに結合する仕方が変わるところをみる。もう一つの方法として、チップの上にDNA ではなく、共役因子のLxxLLのモチーフを含んだポリペプチドを結合しますと、レセプ ターと共役因子がリガンド依存的に結合するところが純粋なin vitro系で観測出来るの ではないかということを考えた系です。これらを最終的にロボティクスに展開出来たと きに、受容体作用を総合的に判断できるいい系になるのではないかというふうに目論ん でおります。  (OHP)  簡単に例をお示しします。これはEREへの結合がリガンドの種類によって変わるという ことであります。  (OHP)  これはリアルタイムですので、結合のスピードと離れるスピードの両方が求まりま す。その比をとると、被検物質固有の値がとれるのではないかということで現在検討し ている段階であります。  (OHP)  これは共役因子アミノ酸配列をターゲットとした方の例です。おもしろい結果として は、抗エストロゲン物質の反応性があります。EREの糸ではバインディングが認められま す。それはバインディングアッセイと似たような結果になります。ところがこのLxxLLに 対しては結合性を示さず、クリアカットにagonist/antagonistがon/off反応として観測 されたと言うことであり、これも一つの強力な武器になるのではないかと期待しており ます。  (OHP) もうひとつの項目として、ビアコア本社への委託事業があります。  (OHP) こちらでは高速ロボット化するための条件設定を主に検討しております。  (OHP) 一番プラクティカルに問題になるのはバッファーの調整と、チップを再利用するとき の再生法であります。こういう条件であれば、こうなるというアルゴリズムを用いた検 討が終わっております。  (OHP) 最終的には、これらの系を、既に存在している抗原抗体反応検出用の8回路高速マ シーンに移し替えられるように、アプリケーション改良を含む種々の検討を開始してお ります。 以上の様に、細胞系及び無細胞系の2本立てで進めております。国際的にもEDSTAC、 あるいは OECDともタイアップした形で、種々の作用を持った物質に柔軟に対応できる系 を構築するという目的で研究を進めております。以上です。 ○伊東座長  ありがとうございました。それでは、どなたか御質問ございませんか。  松尾さん、何か意見ないですか。 ○松尾委員  3D-QSARはどこまで進んでいますか。 ○菅野室長 この研究班と違う研究班なのですが、お答えしてよろしいでしょうか。一応アメリカ の方がCoMFAという系を主体にした系をもう走らせています。CoMFAというのは統計処理 をベースとした手法です。当方は同じシステムをダブらせてもつまらないということ以 外に、今申し上げたようにコファクターとか、DNAバインディングとか、レセプター分子 の構造変化まで予測する可能性を含めたQSARはないかということで検討したところ、そ の可能性を持ったプログラムがあるということを聞きつけまして、現在そちらとタイア ップしてやっております。もちろん、計算は非常に複雑なものですから、色々と改良す る余地はあるのですが、計算だけはできる状況でありまして、ポジティブのものを拾う ということはある程度できるような段階です。 ○松尾委員 今質問しましたのは、コムファあたりは、アゴニスト、アンタゴニスト、これを区別 するのに非常に難しいんです。例のテンプレートというのを持ってきまして、それを変 えないといかんという問題がありまして、ここは実際出てくるデータは全部バインディ ングなんです。それをどうより分けるかと、こういうことで結構問題があるんですね。 そういうことでちょっとお聞きしたんですけれども、ありがとうございました。 ○伊東座長 そのほかないですか。 それでは、大体追いつきましたので、4時15分まで休憩致します。                  (休  憩) ○伊東座長  それでは、ぼつぼつ時間でございますので、これから議題2「その他」について論議 に入りたいと思いますので、事務局から御説明願いたいと思います。 ○中島補佐 資料3及びと資料4に基づきまして、御説明をさせて頂きたいと思います。  まず資料3でございます。内分泌かく乱化学物質問題に関する取組の現状ということ を、我が国及び国際機関、この問題は、先程からお話が出ていますが、かなり率先した 取組を行っております米国という3つの観点から取りまとめております。  まず我が国でございます。こちらの方は、1枚目につきましては、既に前回の中間報 告書で御報告をさせて頂いておりますので、割愛をさせて頂きます。  2ページを御覧ください。2ページで、1998年11月に中間報告書が取りまとめられて 以来、関係省庁ともにこういった努力をしてきているというところでございます。この 件につきましては、もう既に先生方、各省庁の検討会等に入っておられまして種々御存 じかと思いますので、説明を省略させて頂こうと思います。  2番目「国際機関における主な取組」、3ページでございますが、こちらについては 少し時間をかけて御説明をさせて頂きたというふうに思っております。  国際機関、この取り組みを行っているのが2つの機関がございます。1つは、IPCS (国際化学物質安全性計画)でございます。こちらの方はWHOとUNEP(国連環境計画)、 それからILO(国際労働機関)、この3つの合同計画でございまして、このIPCSが今2つ のプロジェクトを主に進めております。 1つは、データベースづくりということで、研究プロジェクトをデータベース化し て、各国にその情報を提供し、重複する試験等を調査することによってこの問題を少し でも早く進めるということで、現在22か国を超える地域にネットワークが広がり、そこ に登録される研究プロジェクトも700を超えるという状況になってきております。 それからもう1点でございます。こちらの方でございますが、2000年9月、それから 12月に内分泌かく乱化学物質問題における科学的な観点からの評価を行おうという計画 がございます。そして2001年春でございます。具体的に3月頃を予定していると聞いて おりますが、私どもが先程お話しさせて頂きました中間報告書、これと同じようなもの を国際機関版、世界版という形での報告書をつくろうということで計画されておるとい うことでございます。現在まで6章のパートからなって野生生物、人への影響、そうい ったものについて取りまとめるということで作業が行われておるものでございます。 もう一つにつきましては、OECDにおける取り組みでございます。先程先生方の方から 御説明がございましたが、OECDの方では3つのスクリーニング試験法の開発が進められ ております。1つは子宮肥大反応試験、もう一つは去勢雄ラット反応試験、もう一つは 改良28日間反復投与毒性試験でございます。こちらの方につきましては、スクリーニン グ試験法として世界各国がただいま注目をしておりまして、我が国も特に子宮肥大反応 試験等におきまして、中心的な役目を果たしておるというところでございます。そのス ケジュール的な部分につきましても、今年度2000年中を目途に各国での評価が終わり、 OECDでのレビューを行うという計画になっておるということで、 IPCS及びOECDにおい ても、この問題のある一定の取りまとめがこの秋、あるいは冬、そういった時点で行わ れるというところでございます。  それから次のページをめくって頂きたいんですが、「3.米国における主な取組」とい うところでございます。米国におきましても、最近かなり動きがございます。1998年の 8月に、先程菅野先生から御紹介を頂きましたEDSTACという委員会の報告書が出て以 来、その報告書にしたがいまして各種の活動が行われてきております。  2番目につきましては、スクリーニング計画の優先順位付けのためのワークショップ ということで、優先順位付けデータベースを開発してスクリーニング試験を優先的に実 施すべき化学物質を検討するということで、ただいままで2回にわたってワークショッ プが開催され、今後スクリーニング試験を優先的に実施すべき化学物質を検討している 最中であるというふうに聞いております。  それから3番目も、先程から何度もお話に出ております会議でございます。この10月 に内分泌かく乱化学物質の低用量問題についての今までの知見を集めて評価をしようと いうことで、米国だけでなく、各国のこの分野の科学者が米国に招待されて、科学的な 根拠をもとに評価をする。具体的に言えば、低用量問題の無作用、あるいは影響の有 無、もし作用があるというのであれば、そのメカニズムはどうなんだということについ ての議論をしたいということを考えているようでございます。また調査研究も、先程述 べましたOECD及び米国独自の方針に基づき調査研究を推進ということでございます。こ の情報は米EPAの方から厚生省の方で正式に入手したものでございます。 こういった状況を把握頂いて、次に資料4でございますが、1枚紙でございます。資 料4「今後の検討課題について(案)」というペーパーを御覧頂ければと思います。先 程から厚生科学研究の主任研究者の方々から、現在の科学的な知見というものを御紹介 頂いてきております。また、先程簡単ではございましたが、国際的な動向というものを 説明させて頂いてきております。先生方の御知見も踏まえまして、厚生省と致しまして は、これから調査・検討をする上で、特に人への健康影響の観点から早期に整理、検討 する必要がある事項を再度見直しをして、その事項について集中的に検討をしていきた いというふうに思っております。  このペーパーで4つほど具体的な内容を挙げさせて頂いております。これは私どもの 案、たたき台という形で挙げさせて頂いております。ただ、私どもとしては、この4つ について非常に重要な仕事だというふうに認識をしております。  まず1点目でございますが、先程菅野先生から御説明があった超高速自動分析装置の 対象物質の選定ということでございます。今までの厚生科学研究等の結果によりまし て、試験法の開発は、我々としては少なくとも今年度中には終了するのではないかとい うふうに認識をしております。今後、順次化学物質をこの超高速自動分析装置により分 析することとなり、この試験を行うための物質の選定、それからこの超高速自動分析装 置によって出てきた試験結果の解析・評価・判定する手続等について検討が必要という ふうに認識をしております。 なお、1点このペーパーで修正をお願いしたいのですが、1行目から2行目にかけま して、「受容体結合実験」というところがございます。ここを「受容体結合レポーター 実験」という形で修正をお願い致します。HTPSの対照物質の設定と試験結果の解析・評 価という部分について議論をお願いしたいというふうに思っております。 2点目が0ECDのスクリーニングの試験法の検討でございます。先程も申し上げました とおり、今年11月までに各国で行われているOECDの3つのスクリーニング試験法、この 検討結果をOECDに報告することとなっております。また、来年3月までにOECDはその結 果の解析を行うということにしております。我が国としましても、OECDにおける検討状 況を踏まえ、本スクリーニング試験の妥当性、適用限界及び先程HTPSと同様でございま すが、この試験の結果をどう解析・評価、あるいは判定するのかという部分についての 検討が必要というふうに認識をしております。 それから3点目でございます。内分泌かく乱化学物質同定・確認のための詳細試験方 法ということでございます。1、2という形で各種のスクリーニング試験のものは出そ ろってきておりますが、現在のところ、本当に内分泌かく乱化学物質がどういうものな のか、その同定の、あるいは確認のための詳細試験法というのはどういったものなのか という部分については試験方法として明確にされておりません。スクリーニング試験法 後の試験結果が出てきた際の内分泌かく乱化学物質の同定・確認を行うための詳細試験 について、最新の知見を踏まえ、適切な詳細試験方法について検討を行うことが必要と いう認識をしております。 それから4番でございます。これも先程から先生方何度も議論をされている点でござ います。逆U字効果の解明(低容量の作用・影響の有無)ということでございます。中 間報告書にもございますとおり、逆U字効果の存否の確認とともに、仮にその効果が存 在する場合には、それに関する作用メカニズムの解明を急ぐ必要があるということにな っております。10月に米国において、低用量における作用に関する評価会議も開催され るということでございますので、そういった動向を踏まえつつ、我が国においても科学 的な見地からの検討が必要ということを考えております。 以上簡単でございますが、御説明を終わらせて頂きます。 ○伊東座長  ありがとうございました。ただいま事務局から御説明頂きましたけれども、内分泌か く乱化学物質問題についての取組の現状、今後の検討課題ということで御意見を皆様方 から頂きたいということでございます。どうぞ活発な御意見を賜りたいと思います。 黒川先生どうぞ。 ○黒川委員 資料4の「今後の検討課題について(案)」というのを特に1、2、3とまとめられ たんですけれども、伊東先生の前ですけれども、これを拝見していて、20年前程に変異 原性試験と発がん性試験の関係といいますか、その流れそのものではないかというふう な感じが致しました。つまり、1番のHTPSなんかが変異原性とすれば、2番の現段階の OECDスクリーニングをやっている問題は、発がん性においてはin vivoでのニュータジェ ネスティテスティングとか、ショートタイムの2ステージモデルとか、そういうもので あって、それから3番目のEDCの同定・確認というのは、発がん性の方で言えば、当然な がらエンドポイントは腫瘍発生、特に悪性腫瘍の発生ということで明らかなのですけれ ども、このEDCの場合においては、3番で一体同定・確認といいますけれども、どういう エンドポイントでもって内分泌かく乱化学物質と言うべきかというのが、なるべく早く 結論を出さないとその発がん性試験の初期におけるように変異原性があれば、発がん物 質だというふうに一般にとらえるとか、そういう非常に面倒くさいことになるもので、 特に理想的には3番の試験をもっともっと早く行って、その試験方法を開発するべきだ というふうに思っております。 ○伊東座長  ありがとうございました。非常に貴重な、しかも率直な御意見でございますが、その ほか、鈴木先生どうぞ。 ○鈴木(継)委員  健康影響というのが主題のはずなんですけれども、ここでは健康影響をどうつかまえ るのかということに関する検討課題が提起されていない。化学物質の側から問題が提起 されているような感じがします。例えば実際にサーベイランスをどうやるか、健康影響 のサーベイランスをどうやるか、あるいは思ってもいない異変が起こってきたときに、 その問題をどうつかまえるのか。これは厚生行政全体にかかわってしまう問題で、この 問題だけではないんですが、化学物質絡みでいけば、その問題をどうするか。あるいは 疫学研究というのは物凄く時間がかかって、これまでの研究体制では非常にやりにくい 領域なわけで、今回も何人かの方が疫学の話をされましたけれども、まだまだ大変な部 分で、そこのところの体制づくりをどうするか。これは厚生省がリーダーシップをとっ てやって頂かないといけない領域ではないかと思います。そこのところをどう考える か、今後の検討課題の中でぜひ議論してほしい。  それからこれはつけ足しなんですけれども、実際化学物質の問題を扱うときに、ミク スチャーの問題からいろんな異性体がたくさんある問題、インペリティの問題等々面倒 くさい話が年中ついて回ります。どこかにこの化学物質といったときに、これはどうや ったら、どこからどんな純度のものがきちんとどう手に入るのかみたいなことを確実に しておかないと、同じ化学物質のつもりでやっていると、例えばノニルフェノール とい うのですらミクスチャーだったり何だったり面倒くさいことになるわけでありまして、 その辺の体制が整っていないといけないわけで、研究者はみんな苦労していろんなメー カーさんに注文するけれども、なかなかこれというのが手に入らなかったりするわけで す。その体制づくりもどこかでいるのだろうけれども、これは検討課題としてはつけた りの話であります。 ○伊東座長  はい、どうぞ。 ○阿部委員  いずれも、1、2、3と非常に重要なことだと思うんですが、私、4.逆U字効果の 解明(低用量の作用・影響の有無)というのも非常に重要だと思うんです。本当にこれ があるのかないのか。今日の研究でも余りそういうのはなかった。ここは非常にクリテ ィカルなポイントなものですから、しかし、どなたもやりたがらない。恐らく明らかな 効果が出ないとお考えになっているのかもしれませんけれども、しかし、国際会議もあ るのであれば、日本としてのデータも必要でしょうし、これこそ国立のどこかできちん とやって、あの試験が本当に再現性があるのかないのか。これは非常にクリティカルな ポイントだと思うので、やればできるものだからこそ、やる必要があるのではないかと 思うんですけれども。 ○伊東座長  ありがとうございました。そのほか何かございませんか。  寺田先生どうぞ。 ○寺田委員  反復みたいになりますが、疫学調査、やはり健康ということで時間はかかっても、疫 学というのが大事だと思うんです。それで、体制がなかなか難しいことと、その上、個 人情報保護法などというので、疫学の研究はほとんどできないような状態になる可能性 があります。どうしても動物実験も大事ですけれども、その次のところでは人の疫学は 必要だというところも、検討課題の中に一つ入れて頂ければ、有り難いと思います。そ れは3年、4年でなくて、10年とか20年のスタンスでぜひ入れて頂ければと思います。 ○伊東座長  どうぞ。 ○津金委員 疫学のことを言って頂きましたので、私もこれを見たときに、人というか、片仮名で 書いた「ヒト」への健康影響という意味ではあるのかもしれないけれども、漢字で書い た「人間」社会における健康影響という面においては十分ではないんではないかという ふうに思っていたんですが、鈴木先生のおっしゃるとおりで、そこら辺のところをあえ て掲げた方がいいのではないかというふうに考えております。  疫学研究をやるのに、どうしても非常に時間がかかってしまって、インフォームド・ コンセントとか、倫理委員会とか、そういうようなことをやると準備だけで1年かかっ て、症例を集めるのに1年、2年というふうにかかってしまいます。150人の人達を15万 円とかで分析すると、あっと言う間にお金がかかるということもあります。健康政策が 厚生行政において必要な人の情報を得ようというのであれば、きちんとしたプロトコー ルに基づいた疫学研究であれば、それを支援して頂く体制をつくって頂きたい。 それから、今内分泌かく乱化学物質というのは最近問題になったわけなんですけれど も、例えばこれからがんをエンドポイントにすると、がんになった人の血液とか、そう いう資料を得るのは簡単なんですけれども、やはり因果関係ということを考えると、が んになる人のがんになる前の血液が必要なわけです。そうするとこれから始めますと、 10万人の人を10年追いかけないと、がんをエンドポイントとした資料を得られないわけ です。一方で、別の研究の目的のために集めた保存試料というものがあって、内分泌か く乱化学物質が我々日本人の健康に重要な問題だというときに、それを倫理審査委員会 を経て利用できれば効率的なわけです。目的外利用は何でもだめだという論調もある が、本当に必要なものであれば、目的外であろうが、保存試料に基づいた研究ができる という社会的な支援も必要なのではないかというふうに考えています。 ○阿部委員 おっしゃるように疫学は非常に重要だと思うんです。だけれども、科学的な疫学でな ければいかんのではないかと思うんです。スペキュレーションからくるような疫学とい うのは困ると思うんです。内分泌かく乱化学物質が今のいじめの原因だなんて、あんな 疫学はありっこないですよね。むしろ必要なことは、我々に今いろんなデータがあると 思うんです。5年前、10年前はあるかどうか知りませんが、その重要ないろんなファク ターを、少なくとも今増えているのか減っているのか、そういうのを明らかにしていく ことが、むしろ疫学的に非常に必要なことではないかというふうに思うんです。新聞を 読むと、どんどん世の中が汚くなって大変なことになっていると思うんですが、私が知 っている限り、結構今いい世の中になっていると思うんです。いろんな調べたデータ を、そういうものの上に立って物事を考えるということが必要なのではないか。それが 一番疫学的には必要だと思っているんですけれども、宜しくお願いしたいと思います。 ○津金委員 科学的なデザインがきちんとした、倫理的にもきちんとした疫学研究をやっていくと いうことが大事だと思います。岸先生があえて臨床統計と最初されていた。要するに症 例の頻度を出している、あれはあくまでも臨床統計です。それは簡単に幾らでもできる わけなんです。それが疫学だと思っていらっしゃる方がたくさんいるんですけれども、 そうじゃない。あえて、岸先生は疫学ではなくて統計とされました。疫学は、例えば尿 道下裂の方のお母さんが、そうじゃない人に比べて本当に血液の濃度が高いのかどうか というようなことを、いろんなコンファンディングファクターを考えながらデザインし ていくというようなことが大事だと思います。だから、安易な疫学研究は当然排除し て、きちんとした疫学研究がちゃんと計画されて実行されることを望みます。 ○伊東座長  はい、どうぞ。 ○藤原委員 私はサイエンスの世界にはいませんで、ここでたった一人、恐らく門外の人間として 座っているんだと思いながら朝方から伺っておりました。非常に先端的な緻密な研究の 過程を伺ったんですが、先程来お話が出ておりますように、健康影響という視点をどの ように入れるかということについては、若干軸足が今の化学物質の方に移っているかな という感じが致しまして、やはり両方を入れていかなきゃいけないのではないかと思っ ております。とりわけ、今グローバルな課題として、女性の側から提起されているの は、リプロダクティブ・ヘルスということでございまして、そういうことは断片的に今 までの研究レポートの中にも出てまいりましたけれども、そういった視点で我々の子孫 がどのような生活の安全を保障されるかというようなことが絶えず視野に入っていなき ゃいけないのではないか。これはどうやってここに入れられるかというのは大変難しい なと思いながら伺っておりましたけれども、そのような御意見をお持ちの委員の方もい らっしゃるようなので、私もそれに便乗して一言リプロダクティブ・ヘルス/ライツと いうことをどこかにおいて頂きたいと思います。 以上でございます。 ○伊東座長 そのほかどうぞ。安田先生、何か言いたいでしょう。 ○安田委員  先程来、化学物質の方に検討課題が重きを置き過ぎるのではないかというふうなコメ ントがございましたけれども、例えば1番などに関しましては、通産省との関係という のはどんなふうに今進行中なのか、これは質問になりますが。 ○中島補佐 こちらの1番事業については、当初から通産省との共同実験という形で行ってきてお ります。これからも通産省とは共同で実験をしていきたいというふうに考えています。 ○安田委員  つまり、この課題に関しましては、この場だけではなくてというふうに理解してよろ しいわけですね。 ○中島補佐 私ども、ただいまたたき台ということで出させて頂いております。この検討会の中で 先生方の方から、人の健康を守る観点から、こういった仕事を今後やっていけばいいの ではないかという部分がございましたらお話を頂いて、そのやり方についても、関係 者、関係省庁も含めて様々なところがあろうかと思いますが、できる限りのことをした いというふうに考えております。 ○安田委員  わかりました。 ○西原委員 先程化学物質の場合に不純物とかという問題もありましたけれども、実際、我々が食 品としてとっている場合は、純物質じゃないんです。ミクスチャーなんです。一時期問 題になって、今立ち消えになっていますけれども、相乗効果というのがありました。相 殺効果もあると思うんです。それは今後メカニズムの検討というのが非常に大事だと思 っているんですが、メカニズムの違う物質が2つ集まった場合にどうなるのかというの が、クロストークという話もありますし、僕は相乗効果がないとは言えないのではない かと思うんです。そういう意味で、最後に低用量の作用機構というようなことを書いて いましたけれども、相乗というか、2つ以上の混合物の評価や作用機構というか、それ も一つ加えた方がいいのではないかと思います。 以上です。 ○寺田委員 先程安田先生が言われたことに関係するんですけれども、内分泌かく乱化学物質問題 関係省庁課長会議というのが省庁でありますね。それはどういうふうに動いておるんで すか。 ○石井食品化学課長 私も来たばかりなので過去のことはわかりませんが、聞いている限りにおいては、も ちろん、そういう会議はございます。ただし、この数か月の間においてはまだ行われて はおりませんで、今後、私どもこういうふうな問題提起をさせて頂いて、検討課題をお 出ししているわけであります。それに対してこういうふうなことをやれ、ああいうこと をやった方がいいという御意見を今日実は頂きたかったし、頂いております。また今後 ともそういうことを頂きながら、こちらの方としても、できることとできないことが出 てくるんだろうと思います。そういうものを御専門の先生方とまた御議論をさせて頂い て、例えば、次回もう少し検討課題に肉付けをしたようなものをお示しし、まさに今日 頂いた意見を加えてやりたいと思っております。そういう中で必要に応じて、私ども関 係省庁の関係課長会議なり、そういうもので私どもから提唱してもいいと思いますし、 今まで多分動きがあまりなかったのは、どこからも提唱がお互いになかったというとこ ろがあるのかもしれないという感じがしております。ただ、私も1か月ちょっとであり ますから無責任なことを言えないわけでありますが、今日こういったことで1年ぶりに 厚生省としての検討会を再スタートしたわけでありますので、そういう中で、こういう ところから出てくる意見を踏まえて、必要に応じてそれぞれの省庁での意見を頂きなが ら進めたいというふうに考えております。ただし、今日の検討会についても関係省庁に は声はかけてございまして、御関心のあるところにつきましては、今日も意見を聞いて 頂きますので、今後そういう点での連携は密にしてやっていきたいというふうに考えて おります。 ○寺田委員 これは平成10年の中間報告のときに、5省庁だったか一緒になって、課長レベルで、 お役所レベルで連絡を密にしてやりますというふうに話があったかと思っています。こ こに出てきているのは厚生省の得意とする分野をやっているという風に理解していま す。それでは、全体像はどうなっているのか、日本全体で内分泌かく乱化学物質に関し てアプローチをしているのか。どこかに統合本部があるわけですか。 ○中島補佐 9省庁連絡会議というのがあって、9省庁には得意分野がございます。それぞれの担 当分野として、厚生省はもちろん人の健康の観点から積極的に各省庁をリードしていく という立場でございます。今回の検討会におきまして、先生方からの御意見を反映させ て、私ども調査研究を進めていくわけでございますけれども、もし人の健康という観点 から各関係省庁にお願いしなくちゃいけないということがあれば、できる範囲のことは していきたいというふうに考えております。全体のシステム自身について、先程課長か ら説明致しましたけれども、現在、先程の資料3で関係各省庁とも一定の段階、いわゆ る中間報告書の取りまとめをして、今後調査研究をしていくという方針を打ち出してい るところでございます。そういった関係で、調査、研究の状況を見つつ、ある程度の段 階で、また関係省庁の正式な課長会議等を開くということになろうかと思います。 ○寺田委員 宜しくお願い致します。 ○眞柄委員 先程の健康影響サーベイランスにしろ、疫学にしろ、基本的に重要なもう一つの情報 というのは、やはり暴露量だと思うんですが、取り組みの中で、11年度は食品等の暴露 に関する研究調査というのが入っていて、今後のところにはなくなっているわけです。 これについて、いわゆる暴露量調査を厚生省としてどうするか。今何人かの先生から生 活環境からの暴露の報告がありましたけれども、内分泌かく乱化学物質だけに限らず、 化学物質全体について暴露量調査を国としてどうするかというプロトコールも決まって いませんし、あるいは制度的に先程の保存資料のこともありますけれども、要するに、 我々の生活環境の中で、暴露というのを国として今後どう把握していくかということは 非常に重要な課題だと思いますので、それも厚生省だけでできるわけじゃなくて、まさ に関係省庁とも関係することだと思いますので、その辺のことも、ぜひ今後の検討課題 に加えて頂きたいと思います。 ○石井食品化学課長 検討会の方向性というものを、単にいろんな研究結果を聞くだけで終わるということ ではなくて、できるだけある程度方向性を示した上で検討を進めたいというのが、実は 今回の大きな私どもの目的でありました。そういう点で今回ペーパーをこういうふうに 書いたことは、あくまでもこれは一つの例としてお示しし、先程担当官も、これは案で すと、これがすべてではありませんというふうに申し上げているのはそういうことであ ります。したがって、そういう点については、ここに書いていないからやらないという ことではなくて、それはまだ研究レベルとして、いろんな厚生科学研究費の中で研究す ることがなくなるわけではございませんで、私どもはいろんな厚生科学研究としての研 究費をお出しし、そういう中でいろんな観点から、先程の疫学的な検討もあるでしょう し、いろんなところの検討もあるだろうと思っております。それをやめるということを 申し上げているわけではなくて、今取り急ぎ何が検討するのに重要なのかということを 考えますと、化学物質という観点だけに絞られているという点があるかもしれません が、これは私どもの分野とすると、まずこういうところが非常に気になるということ で、これを掲げてあります。したがって、検討課題の中にさらに中期的な課題として挙 げろとおっしゃられれば、どういうふうに書くかはまた検討させて頂きますけれども、 それは挙げたいと思います。  ただし、この中で、今スクリーニングがかなり進んでいるということも今日の研究班 の中で出てまいります。出てまいりました結果として、いろんなものが無造作に行われ るということで研究結果が出たときに、それがどういうふうに評価されるか。我々は黙 っていれば、先程の発がん性と変異原性の二十何年前の議論等を想起されると黒川委員 がおっしゃいましたけれども、よけいな不安を国民に与える、消費者に与える、これも また違うのではないか。私どもはできるだけ科学に立脚した方向での慎重な落ち着いた 検討をすべきではないか。しかし、そうはいっても、やはり不安というものは存在する わけでありますので、それをどのように科学的な落ち着いた議論といいますか、そうい うことをしたいなと思っておりまして、これからスクリーニングが、どうもすぐになさ れそうな状況になってきているので、そこのところについてはどう考えるのかとか、ど ういう方法論でやるのかということをまずは考えておかなければいけないのではない か。  そういう中でまた別な方法として詳細試験、詳細試験とは言いながらも、それじゃ一 体何をどうやるんだということもあります。それはまさに健康影響というものと絡んで 議論しなくてはいけないと思っております。そういう点では詳細試験をどうやるんだと いうこと、これは方法論としては本当はもっと早く議論をするなり、知見を集めるなり して結論が出ていればよかったのですが、しかし、そうはまだなっていないという状況 にありますので、こういうところは、まさに物質の評価という意味で急ぎ検討すべき事 項だと思って掲げました。  それから、逆U字効果の低用量の話も、この秋にはアメリカでいろんな議論がまたな されそうであります。この問題というのは今までの科学的な考え方からすると非常に考 えにくいところであります。そういうところについては、考えにくいならにくいとして きちんと議論をすべきであるし、それに対して我々も、いろんなアメリカの状況の情報 とかそういうものをここでお示しし、また、いろいろな観点から御議論を頂こう。そう いう中でその向こうにある実際のエンドポイントかもしれません健康影響、特に藤原委 員がおっしゃるような、次のリプロダクションへの影響というようなものが、その次の 方向として真のエンドポイントとしてあるはずであって、我々はそれを忘れているわけ ではありません。ただし、急ぎで何か検討しなきゃならないというものとして掲げると すれば、こういうものから入るものではないのかなという案でございます。  もう一度今日の御議論を受けまして、私どもの方で、どのようにこれから検討をすべ きものとして文書でまとめられるかはまた考えてみたいと思います。 ○伊東座長  ありがとうございました。 ○伊東座長  今、課長がおっしゃったのが本当のところなんです。今まで内分泌かく乱化学物質の 検討会としてずっとやってきましたね。中間報告を出すところまでは一生懸命やったん ですけれども、それからしばらく時間が経っている。第2回の中間報告を出そうじゃな いかということが食品化学課にあるんだろうと思うんです。したがって、それをまとめ るためにどういうことをフォーカスして、少しデータを出して頂いてやるのがいいのか ということのたたき台として、この1、2、3、4というものを出して頂いたんです ね。それについては、今、各委員の先生から非常に的確な御指摘があったと私は思って いるんです。私も多少関係したというよりも、今までずっとこれをやってきましたし、 発がん実験もずっとやってきましたので、今、先生方のお話を聞いておりまして感じま すのは、この会はやはり人の健康影響ということが中心にコアとしてあるんだというこ とでございます。これは厚生省のスタッフとしての食品化学課の一番根本的なものであ ることには間違いございません。ただ、西原先生も、2つの物質の複合の問題とおっし ゃったんですけれども、2つではないと思っているんです。もっとたくさんの複合があ る。私は随分前に、40種類の複合の発がんへの影響とか、我が国で非常によく使われて おる農薬、肝臓を標的とする発がん物質、 20種類の複合の影響というのを実験的にや りまして、ADI レベルに換算してやってみると何の影響もない。すなわち、ADIという のはWHOのすばらしいディシジョンであるということを実験的に証明したことがござい ましたけれども、それだけではなくて、今や複合の問題は体の中で複合する新しい化合 物ができるということだってあるわけですから、そういったことも将来ここで検討して 評価して頂くということについても研究が必要であろうと思います。 疫学が重要であるということは、阿部先生もおっしゃいましたし、津金先生は自分が 疫学者として、ここで一大キャンペーンをやっておかないといかんと思って言われたん だろうと思いますけれども、そんなにたくさんいい疫学者がいるのかなということを、 それも私はいつも思っているところであります。ですけれども、疫学的なものは10年、 20年という長いスパンでコーホートスタディを含めてこれからもやって頂きたいし、疫 学者も養成して頂きたいと思っておるわけであります。 それから、ここで出されておるU字効果というか、逆U字効果というのは、実は発が ん物質の非常に低用量のところで、逆U字的な変化が出るというのが最近出ているんで すけれども、それは人に対する影響が出るほどの量ではなくて、逆U字がかすかに出て くるというデータは実際あるんです。したがって、阿部先生がおっしゃったんですけれ ども、第4番目の問題は非常に重要である。これもこのテーマとして取り上げて頂きた いというふうに思っているんです。ですから、今日賜りました貴重な御意見というの は、これは食品化学課の方で検討して頂いて、また、このような会を持って御議論を頂 くということになろうと思いますけれども、私がお願いしたいのは、朝の9時から夕方 の5時までという会議はなるべくやめて頂きたい。もう少し短い時間でやって頂きたい なということを考えております。  それから人の健康、人に対する影響、それからどれくらい我々の環境中に暴露されて いるのかというディスカッションは非常に重要でございますので、こういったことをこ れから考えて頂きまして、第2次検討課題というものをつくって頂いて、さらに、皆様 に提示して御議論頂くということで今日はぼつぼつ終わりにしたいと。  それから松尾委員から、何かありましたら、お聞きして終わりにしたいと思います が。 ○松尾委員 せっかくサマリーをおっしゃいましたので、何も言うことはございません。 ○伊東座長  これで終わりますけれども、これは非常に重要でございますので、なるべく早い時期 に検討する必要があると思っております。事務局の方に、もしもまだ言い足りなかった ということがあればぜひ送って頂きたい。これからまだ30分もやると言われたら腰が抜 けますので、このあたりで終わりにしたいと思います。どうも長い間御協力ありがとう ございました。 ○川原生活化学室長 どうもありがとうございました。連絡事項だけ2点させて頂きます。今、伊東先生か らお話がございましたが、先生方でこの資料4について追加の御意見がある場合には、 9月20日位までに事務局の方まで御連絡を頂きたいと思います。 それから、本日の議事録でございますけれども、議事録ができ次第、各研究班の先生 及び委員の先生方に送付致しますので、内容を御確認の上、事務局に返送の程お願い致 します。 それから、次回の検討会でございますけれども、日程調整の紙をお手元にお配りして おります。それに記入してお残し頂ければと思いますが、一応11月頃を予定致しており ますので、御協力の程を宜しくお願い致します。 以上でございます。 ○石井食品化学課長 どうも今日は長時間にわたってありがとうございました。                                   (了) * *********照会先********** 連絡先 厚生省 生活衛生局 食品化学課(額田) TEL:03−3503−1711(2487)