00/09/04 ダイオキシン類健康影響評価特別部会議事録 平成12年度第1回生活環境審議会・食品衛生調査会ダイオキシン類健康影響評価特別 部会 平成12年9月4日 厚生省生活衛生局 企画課 生活化学安全対策室 食品保健課 平成12年度第1回 生活環境審議会・食品衛生調査会 ダイオキシン類健康影響評価特別部会 議事次第 平成12年9月4日(月) 午後2時〜3時37分 於:厚生省特別第1会議室 1.開 会 2.挨 拶 3.議 事  (1)ダイオキシン類に係る最近の動きと今後の進め方について  (2)その他 4.閉 会 ○吉田補佐  それでは定刻となりましたので、生活環境審議会・食品衛生調査会の合同によるダイ オキシン健康影響評価特別部会を開催させていただきます。委員の皆様には御多忙のと ころお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。  本日は部会委員24名中15名に御出席いただいており、過半数を超えていることから部 会として成立いたしております。よろしくお願いいたします。  では、まず初めに西本至生活衛生局長よりごあいさつを申し上げます。 ○西本生活衛生局長  生活衛生局長の西本でございます。本日は大変お忙しいところを御出席いただきまし て、委員の皆様方に改めて厚くお礼を申し上げる次第でございます。本特別部会は既に ご承知のことと思いますが、生活環境審議会及び食品衛生調査会にかかる特別部会とし てダイオキシン類にかかる安全性確保に関する事項などについて調査審議を行っていた だくという重要な役割を担っておりまして、昨年6月には「ダイオキシンの耐容一日摂 取量(TDI)について」を取りまとめをいただいたところでございます。改めて感謝 を申し上げます。  昨今のダイオキシン類にかかる対策につきましては皆様も御承知のとおり、昨年3月 にダイオキシン対策関係閣僚会議におきましてダイオキシン対策推進基本指針が取りま とめられました。また、昨年7月にはダイオキシン類対策特別措置法が公布されまし て、本年1月から施行されるというようにさまざまな対策が推進されてきているところ でございます。一方、ダイオキシン類のTDIにつきましては平成10年にまとめられま したWHOの専門家会合報告書におきまして、5年後をめどに再検討を行うこととされ ております。また、前回お取りまとめいただきました報告書あるいはダイオキシン類対 策特別措置法におきましても、我が国における今後の調査研究の進展やWHOの検討状 況を踏まえながら改めて検討していくことが適当とされているところであります。この ような状況を踏まえまして、WHOにおける再検討までの折り返し点も近づいてまいっ たということでございますので、海外における諸状況も視野に入れつつ再検討の必要性 について早目に御審議を開始していただく次第でございます。  委員の皆様方におかれましては、何かとお忙しいところをまことに恐縮ではございま すが、特別部会設置の趣旨にかんがみまして、よろしく御審議賜りますようお願いを申 し上げます。簡単でございますが、これをもちまして私のあいさつとさせていただきま す。 ○吉田補佐  ありがとうございました。  続きまして、委員の一部に異動がありましたので、簡単に御紹介いたします。  まず、林裕造委員が御退任されました。そして、新たに首藤紘一委員、広瀬雅雄委員 が新規に加入されております。首藤先生が御出席ですので、一言ごあいさつをお願いい たします。 ○首藤委員  医薬品食品衛生研究所の首藤でございます。よろしくお願いいたします。 ○吉田補佐  なお、部会長につきましては8月23日に食品衛生調査会総会におきまして引き続き寺 田雅昭委員が選出されております。したがいまして、この合同部会では引き続き寺田雅 昭委員に座長をお願いしたいと考えております。  なお、座長代理ですけれども、御退任されました林委員にかわりまして、今日は欠席 でございますけれども、寺尾委員にお願いしたいと考えております。よろしくお願いい たします。  また、次に事務局側の紹介を簡単にさせていただきます。まず初めにごあいさつされ ました西本生活衛生局長でございます。  続きまして右側ですが、松原食品保健課長でございます。  次に、左側でございますが、川原生活化学安全対策室長でございます。  私は司会進行をさせていただきます生活化学安全対策室の吉田と申します。  また、後ろにまいりまして、同じ生活化学安全対策室の高江でございます。  そして平野でございます。  次に、企画課の補佐、大森でございます。  同じく、林でございます。  以上、よろしくお願いいたします。  それでは、議事に入りたいと思いますので、座長の寺田先生、どうぞよろしくお願い いたします。 ○寺田部会長  それでは議事に入りますが、まずその前に事務局から配付資料の説明、紹介をお願い いたします。 ○吉田補佐  それでは、配付資料の紹介をさせていただきます。  まず、平成12年度第1回生活環境審議会・食品衛生調査会ダイオキシン類健康影響評 価特別部会議事次第でございます。  続いて、本日の委員の方々及び事務局等の席次表でございます。なお、この図の中で 寺尾委員と永田委員は今日欠席でございます。  続きまして、資料一覧がございます。これに沿って説明させていただきます。  まず資料1でございますが、本特別部会の委員名簿でございます。続いて、資料2と いたしましてダイオキシン類の健康影響にかかわる再評価の検討について。続きまし て、資料3「ダイオキシン2000について」。資料4−1としましてUS−EPA(米国 環境保護庁)のInformation Sheet、これは英語版でございます。資料4−2としまし て、その仮訳でございます。また、参考資料1といたしまして平成11年6月に出されま した「ダイオキシンの耐容一日摂取量(TDI)について」、参考資料2といたしまし て、その報告書の英訳版でございます。参考資料につきましては委員限りということで 配付させていただいております。資料に不手際等がございましたら、挙手をお願いいた します。よろしいでしょうか。  なお、今日は特にマスコミの方の頭撮りはございませんので、このまま進行させてい ただきます。よろしくお願いいたします。 ○寺田部会長  どうもありがとうございました。皆さん、資料はございますね。  それでは、議事に移ります。議題(1)ダイオキシン類に係る最近の動きと今後の進 め方についてですが、これにつきまして事務局からの説明をお願いいたします。 ○吉田補佐  それでは、資料2「ダイオキシン類の健康影響に係る再評価の検討について」に沿っ て説明させていただきます。資料2をごらんください。  これまで我が国で行われましたダイオキシン類の健康影響に係る評価としましては、 本部会で取りまとめていただき、平成11年6月に公表いたしました「ダイオキシンの耐 容一日摂取量(TDI)について」がございます。これは本日の参考資料1としてお配 りしたものでございます。その参考資料の24ページ、25ページをごらんいただきたいと 思います。  これはこの報告書のまとめの部分でございますが、25ページの (2)今後の対策の推進 の(2)今後の調査研究の必要性のところでございます。「今回のTDIは、ダイオキシン に関する既存の主要な科学的知見を基に算出された当面のものである。ダイオキシンの 人体影響については、未解明な部分が多く、今後とも、引き続き、毒性試験や人体への 影響調査等各種の調査研究を推進することが重要である。WHO専門家会合報告書で も、TDIについては、5年後程度を目途に再検討するとしており、我が国における今 後の調査研究の進展や、WHOの検討状況を踏まえながら、改めて検討していくことが 適当である」、このようにまとめられているわけでございます。  資料2に戻りまして、3番目でございます。最近、海外等でどういう動きがあるかと いうことですが、例えば今年8月には第20回のダイオキシン2000という国際シンポジウ ムが米国のモントレーで開催されております。ここでリスク評価の分野を含む幅広い分 野において研究発表が行われたところです。また今、米国環境保護庁においてはダイオ キシン類のリスクの再評価が進められており、今年6月にはそのドラフトが公開された ところでございます。これについては本年10月以降をめどにUS−EPAとしての再評 価結果を取りまとめることとされております。  今後もこのような各種論文や各種国際学会においてダイオキシン類の健康影響に係る 新たな科学的知見が得られることが予想されます。そこで、この部会におきましてはW HOにおける再検討までの折り返し点が近づいてきたということから、海外における状 況も視野に入れて我が国におけるTDIの再検討について、その必要性も含めて早目に 御審議を開始していただくことにしたいと考えております。  なお、本件につきましてはワーキンググループを設置して、ワーキンググループを中 心にしてダイオキシン類の健康影響に関する注目すべき事項についてできる限りの情報 を入手しながら専門的な見地からの御審議をいただきたいと考えております。ワーキン ググループのメンバーにつきましては、平成11年にTDIの報告書を取りまとめた際に 御協力いただきました委員を中心に、資料2の別添に示す6名での構成をお願いしたい と思います。すなわち江馬委員、大野委員、黒川委員、寺尾委員、廣瀬委員、安田委員 の6名でございます。このうち江馬委員、大野委員、黒川委員、安田委員の4名につき ましては平成11年の報告書を取りまとめいただいた際に御協力いただきました委員でご ざいます。今回は林委員が退任されたことに伴いまして、新たに寺尾委員に加わってい ただきまして、さらに毒性の専門家ということで廣瀬先生にも加わっていただいて、合 計6名で構成したいと思っております。  今後の予定ですけれども、この部会終了後の適当な時期に1回目のワーキンググルー プ会合を開催して、その後、必要に応じて適宜開催し、ワーキンググループでの議論が まとまった段階でこの部会に報告したいと考えております。また、事務局からの基本方 針としては、WHOでTDIを再検討する時点を目標に置いて国内での検討を慎重に進 めていくべきと考えております。その間、新しい情報が適宜各方面から入手できた場合 には、これらに対してワーキンググループを中心とする検討で速やかな対応ができるも のと考えております。  事務局からの説明は以上です。 ○寺田部会長  ありがとうございました。  ただいま事務局からワーキンググループを中心にしてTDI再検討の必要性について 早目に検討を開始することとしたいということ、そのワーキンググループの構成等につ きまして提案がありました。何か御意見がありましたらお願いいたします。 ○黒川委員  質問ですけれども、平成11年6月という参考資料1をごらんになればおわかりのよう に前回は中央環境審議会、つまり環境庁と厚生省でタイアップしてTDIを決めたので すけれども、今回に関しては中央環境審議会とはどういう関係になるわけですか。こち らだけでやるのですか、その辺をお願いします。 ○吉田補佐  どこかの時点で合同の検討の機会を設けるべきと考えております。ただ、まずその前 に厚生省の審議会として改めてワーキンググループを立ち上げて、そこでの検討を踏ま えて適当な時期を見計らって合同部会みたいな形の開催が適当なのではないかと考えて おります。その辺の進行につきましても今後、事務局とまたほかの調整もいろいろ含め まして相談させていただければと思っております。 ○寺田部会長  よろしゅうございますか。ほかには何かございませんでしょうか。  それでは、基本的に事務局からの提案について了承するということでよろしゅうござ いますね。ありがとうございました。  それでは、事務局では提案に沿ってワーキンググループの作業を進めてくださるよう お願いします。ワーキンググループのメンバーの先生方におかれましては御協力をよろ しくお願いいたします。また、他の委員におかれましてもワーキンググループへの情報 提供等がありましたら、それもよろしくお願いいたします。  それでは、続きまして最近の動きとしてダイオキシン2000という国際学会、それに米 国環境保護庁(EPA)の再評価の公表というニュースがありましたので、事務局から 説明をお願いいたします。 ○平野技官  それでは、資料3の「ダイオキシン2000について」に沿って、この国際シンポジウム の概要を説明させていただきます。  米国のカリフォルニア州モントレーにおきまして、今年(平成12年)8月14日より17 日の4日間にわたり「20th International Symposium on Halogenated Environmental Organic Pollutants and Persistent Organic Pollutants(POPs)」、通常ダイオ キシン2000と呼ばれております国際シンポジウムが開催されました。この国際シンポジ ウムは毎年開催されておりまして、題名にも示されておりますように今回が20回目でご ざいます。  当会議には、所属別に見ますと大学、公私の試験研究機関並びに企業、業界団体、ま た各国の官公庁等から、国別に見ますとアジアの諸国、ヨーロッパ諸国、アメリカ、ロ シアといった各国から、合計しますと 800名を超える参加者がございました。厚生省か らは、生活衛生局食品保健課から吉田専門官、そして企画課生活化学安全対策室より、 平野が同会議に参加いたしました。また、本会議は来年度も開催される予定になってお りまして、2001年の同会議は韓国において9月9日から14日の6日間にわたって開催され る予定でございます。  会議の題名にございますPOPsといいますのは、UN/ECE 長距離越境大気汚染 防止条約POPs議定書によりますと、毒性を持っており、残留性があって、生物濃縮 しやすく、また長距離大気移動しやすく、沈降しやすく、排出源の近く及び離れた場所 において環境及びヒトへの健康影響を起こし得る一連の有機化合物群であるとされてお ります。ダイオキシン類もこの中に入ってくるわけでございますが、特に近年、そのダ イオキシン類の毒性並びに環境中・生体内での存在が詳しく調査・解析されてきており まして、実態の一部が明らかになってきております。これらが明らかになるにつれまし て、科学的な面から、行政的な面から、そして社会的な面からも関心が高まってきてい るところであります。  今回のダイオキシン2000では、非常に幅広い分野、分子生物学的な解析から生態系が どのように汚染されているかという汚染実態、また、ダイオキシンがどのような毒性作 用を及ぼすのかという毒性学の面、またダイオキシン類のリスクをどう考えたらいいの かというリスク評価に関することまで非常に幅広い各分野にわたって発表が行われてお ります。  また、その中では発がん性、その他の毒性に加えまして、当会議において独立セッシ ョンが設けられておりましたが、内分泌かく乱化学物質としての作用があるのではない かという研究も報告されておりました。ダイオキシン類の特性の知見と申しますのは、 主に動物実験並びに事故によるヒトへの高濃度暴露といったものから得られております が、これをどのようにしてヒトの健康影響のリスク評価に用いるかということが大きな 問題となっております。  後にリストにまとめておりますように、約30の分野で発表が行われております。時間 の関係もあり、ここの場では全部をご紹介することができませんので、主にRisk Evalua tionの分野に絞って、概要を資料に沿って紹介させていただきます。  次のページになりますが、Risk Evaluationの分野に関する概要でございます。今回の リスク評価の分野では、次に紹介されますEPAのリスク再評価に関する演題を初め、 1998年の世界保健機構(WHO)のTDI見直しの対応に関するもの、またTEFの改 訂に関するもの、人体中の挙動に関するもの、また昨年ございましたベルギーにおける ダイオキシン類混入事故に関するもの、また各国の特殊事情を絡めた個別のリスク評価 など、さまざまな内容が行われました。  我が国ではすでに、先ほどご紹介のありましたTDIの報告書で考慮されております が、1997年にWHOにおきましてTEFの見直しが行われ、翌1998年にはWHO及びI PCSの専門家会合において当面のTDIが最大限4pg-TEQWHO/kg/dayとされた ところでございます。これを受けまして北欧諸国においてはWHOの再評価を検討する ための会議が昨年12月に開催されておりまして、その内容につき、今回報告がなされて おりました。会議で幾つか同意されました点として以下が挙げられておりました。  第1点は1995年の会議、これは1994年にEPAがドラフトを作成しており、これを受 けて開催されたということですが、それ以来のダイオキシン類の新たな主要発生源は特 に特定されていない、主発生源については以前と変わっていないということが1点ござ いました。また、ダイオキシン毒性の作用メカニズムとしてはAhレセプターを介する ものであると想定されるということ。また、体内負荷量を基準として使用すること、体 内負荷量(Body burden)を評価の基準として使用することは種を超えた評価の外挿を容 易にするものであるということ。一方、WHOの新TDIは単回投与試験を主な根拠に しておりまして、それを体内負荷量へ変換することは困難であるということ。また、リ スク評価は感受性の高い時期を重視して行われるべきであるので、胎児の暴露は重要で あるということ。また、さらに信頼できるリスク評価をするためには反復暴露の研究が 必要であるということ。また、TDIは一つの研究成果を基礎にすべきではなく、さら に検討を推進する必要があるということ。WHOのTEFを使用することには北欧諸国 の会議としても同意するが、さらに反復実験が必要であるということ。また、ここ20年 で暴露については減少しているが、さらにまだ減少させることが必要であること等が挙 げられておりました。  結論といたしまして、北欧諸国の会議ではかつて同会議ではTDIを5pgとすること を独自に提案しておりましたが、これは実質的には今回のWHO提案と変わりがないと いうことで、依然推奨されるものであるということでありました。また、体内負荷量を 指標とした場合にはヒトの汚染レベルと動物実験で影響が見られた負荷量の間には余り 差がなく、かなり近いところにあることが挙げられておりました。また、こういった動 物実験のデータをヒトに外挿するのに必要なファクターはまだ完全には解明されていな いため、正確な数量化は困難であるということ。しかしながら、暴露量はさらに減少さ れる必要があるものであるという結論をいたしておりました。  次のページですが、やはりWHOの再評価を受けまして、英国におきましては政策の 見直しの必要性について検討していこうという作業が進行中であるということでありま した。非常に幅広い分野において作業が行われているということですが、その一部分と いたしまして、20年来使用されてきたI−TEFをWHOのTEFへ置き換えることに よって、英国がこれまで用いてきたデータがどのように変わってくるのか、差が生じて くるのか、もしくは生じないのかということを確認する作業が一つ行われておりまし て、それが演題として発表されておりました。これを行うに当たっての問題点として指 摘されていた点が、過去の多くの暴露データ、評価データでは個別のダイオキシン類に ついてのデータがないものがかなり多く見られた。また、最近のことであると思います が、データがあっても、TEQ換算値で示されたものがWHO−TEFを用いたのか、 I−TEFを用いて評価されたのかが明記されていない例があって、再評価が難しかっ たという例が数多くあったということでありました。ただ、最近の公表データにつきま してはこういう点が非常に改善されているものが多くなってきておりまして、今後また TEFの改訂があり得るであろうことを考慮すると、データの有用性を非常に増すもの であると思われるということを述べておりました。  実際にこの中でデータの解析を行っておりまして、その結論としては全体として特に 大きな変化はなかったということでしたが、個別に見ますと大気中へのTEQを換算し た放散量は一般的に今回のTEFを用いることによって増加していた一方、汚泥やPC P(pentachlorophenol)など、塩素化の程度が高いダイオキシンを多く含んでいると思 われるもののTEQ換算値は、今回、TEFが小さくなったこともありまして顕著に減 少していたということがあったようです。結論としては特に今回、評価上の問題はない ということですが、最近の規制の多くはTEQ換算値を用いて示されていることもあっ て、軽微なTEFの変更であっても、データの解析には非常に大きなインパクトを与え 得るものであり、規制の決定、排出源の順位づけ、また汚染除去の順位づけやリスクの 評価について非常に大きな影響を与える可能性があると、当然のことですけれども、そ う結論しておりました。  TEFに関してはほかにも幾つかございまして、NDの取り扱い、いわゆる検査した ときの検出限界値以下の取り扱いについて触れられているものも幾つかございました。 このRisk Evaluationの分野ではないのですが、食品分野の方ではNDを1/2 limitとし て用いて評価するのが適当であるという発表もございましたが、こちらのRisk Evaluati onの発表の中では環境中のリスク評価をする場合に1/2 limitを用いて評価する場合、 1や 0.5といった大きいTEFを持つものがNDであった場合に、たとえ 0.001等の小 さいTEFを持つものが検出されていましても、それに比較したTEQ換算値としては 非常に大きくなり、過剰に評価される場合があり得るということを指摘しておりまし た。  そういうものの補正の一例として、土壌のサンプルを用いてOCDDの検出量平均に 対する他のものの存在平均値を用いて補正する方法を挙げておりました。今回OCDD を用いていたのは、演者らが用いた土壌サンプルすべてが検出されておりまして、比較 的存在量が多かったということでありました。これは一般的に用いることは難しいかと 思いますが、地域特性が明らかにあるものについてはこういう補正の方法によって評価 の順位づけをするべきではないかという提案でございました。  また、POPsの特徴ではありますけれども、こういったダイオキシン類のように蓄 積性が高くて、またその程度に大きな種差が見られる物質については健康影響との関連 でBody burden(体内負荷量)に着目する方法が一般的になってきております。とするの であれば、生体内におきますダイオキシン類のBioavailabilityに着目することが必要で あろうという観点から新たな係数を提案している発表もございました。体内負荷量に着 目する場合には、もし同じTEQ換算値を摂取しても物質によっては非常に早く代謝さ れてなくなり、ある物質に関しては蓄積性が非常に高いことになりますと、体内負荷量 に関して影響を及ぼす程度が違ってくるということで、新たな係数を発表されておりま した。換算の方法としてヒトによる吸収率と生体内の半減期を複合して考慮して新たな 係数を策定する方法をとっておりました。  諸外国でもほとんどそうですが、日本ではダイオキシン類のほとんどが食餌によって とられることから、消化吸収率、また、ヒトに対して用いるということでヒトの中にお けるさまざまな物質の生体内半減期を、係数の策定に当たり用いておりました。これを Yoshida-Nakanishi Factor:YNFと名づけておりまして、この係数の有効性の検証と して、食品中のダイオキシン類の存在比については調査データが出ておりますけれど も、これをもとにYNFを処理した場合としない場合の人体のダイオキシン類の推定存 在比また母乳中の存在比を比較しておりました。また、27歳の女性をモデルケースにし た場合の27年間の連続摂取に関する存在量の推定を行っておりました。いずれの場合も YNFで処理したものでないと説明がつかない存在比が存在すると指摘しておりまし て、YNFは有効である。また、TDIの算定に当たっては、TEFに加えYNFも利 用すべきではないかという提案を行っておりました。  次のページになりますが、生体の体内動態に関してPCBについての演題がございま した。体の脂肪量の総量によってPCBの人体キャパシティが異なっていて、同じよう な量を摂取させた際には、脂肪量が少ない場合には血中濃度は増えている。こういった ものは代謝されて消えてなくなっていく速度にも影響を与えることになってきますが、 血中濃度は増えているという発表がございました。また、吸収・排泄に関しては食餌と の関連で、不溶性の高分子食物繊維がダイオキシン類の吸収を阻害し、銅クロロフィリ ンという物質がダイオキシン類の排泄を促進する効果もつことが以前に報告されており ましたが、こういうものを2つつける、水溶性の高分子食物繊維の例としてキトサン、 これに銅クロロフィリンを結合させた物質をマウスに混餌投与する実験をしておりまし た。これを混餌投与することによって、混餌投与以前に投与した1,2,3,4,7,8-HxCD Dの排泄が促進されるという報告がございました。  また、これはリスク評価とは直接関係ないのですが、昨年起こりましたベルギーのダ イオキシンの汚染事故に関してベルギーより報告がございました。このそもそもの原因 はテクニカルファットと呼ばれます、スナック工場、レストラン等から回収された油を 加工しまして、これを家畜用の飼料に再利用していたものに、誤ってPCB油が混入し たものでありました。家畜飼料にダイオキシン類が混入した事故例として、ほかにも幾 つか挙げられておりまして、アメリカのアルカンサスにおけるある工場で生産された飼 料に流動性を向上させるために加えられましたベントナイトにダイオキシン類が含まれ ていたという事例。また、ブラジルで生産されたシトラスパルプ、これはオレンジの皮 やかすに石灰を加えたものですが、この石灰にしばしば副産物が用いられていたという ことでありまして、これにダイオキシン類が含まれていた例。また、ドイツ、オースト ラリア、スイスで飼料の流動性の向上のために加えられましたカオリンにダイオキシン 類が含まれていた例。こういった家畜から食料品に加工されたものにダイオキシンが混 入してしまったという事故例が挙げられておりました。  ベルギーにおいては、飼料に添加される油について含水量や遊離脂肪酸、過酸化度と いった油の質が変化しているかいないかどうかのチェックは行っておりましたが、不純 物の混入チェックはされていなかったということであります。結局、にわとりに異常が 見られたことからこの混入事故が発覚するのですが、にわとりの異常に関しての病態把 握に時間がかかりまして、原因の追及も一般的に考えられる順序、新しい餌を導入して いないか、病気にかかっていないか、ウイルスのチェックといったものを先に行ったた め、ダイオキシン類が原因であることにたどりつくまでに非常に時間を要してしまった ということを述べておりました。対策といたしましては、ダイオキシン類の飼料への混 入がいつ起こったのか、またその飼料がいつ納入されたかを調べまして、それが配布さ れた疑いのある農場、それを使用した疑いのある生産者の出荷を停止するという対応を とったということでございます。  この事故の教訓的なこととしてベルギーの報告では、この飼料に混入したダイオキシ ンが結果として食品を汚染してしまうことは恐らくどの国でも起こり得るのではないか ということを指摘しておりました。それを防ぐためには、飼料に再利用するものについ ては適切に管理することが必要であること、そういうものがどういう流通経路を通って いるのかを適切に報告することが必要であること。これは恐らく事故が発生した後に回 収等の措置をとる場合にこういったものがないと迅速な対応をとる非常に難しいという ことであるかと思います。また、こういった大汚染時の分析能力が不備であったため解 析が非常に遅れたことも報告されておりました。  また、これは各国の特殊事情の例かと思いますが、ロシアの牛乳中のダイオキシン類 に係る報告がございました。ロシアにおきましては、どこで生産された牛乳であるの か、これに加えてどういった容器包装をされて出荷されたものであるのか、これらによ って汚染の度合いが違っているという例が報告されておりました。基本的に地域の汚染 状況によって牛の汚染状況が変わってきまして、それによって生産場所によって汚染の 度合いが違うことが1つの例。もう一つ、今回は紙パックの例が挙げられておりました が、ロシアの紙パックの場合は漂白工程で塩素を使うことがあり、この段階で紙がダイ オキシン類によって汚染されることによって変わってくるのではないかという例が報告 されておりました。具体例としては、イルクーツクで生産されたミルクはアルミホイル の内張りをした紙パックに包装されておりますが、これでは0.02pg-TEQWHO/g wet -weightであったのに対しまして、アンガルスクで生産されたミルクは紙パックに入れ ておりますが、これは0.37pg-TEQWHO/g wet-weightであった。また、ウルソエ− シゼルスコで生産されました牛乳についてはポリエチレンでパックされておりますが、 0.13pg-TEQWHO/g wet-weightであったということがございました。  次のページになりますが、漂白工程での汚染に関しては幾つか指摘されている点がご ざいまして、US−EPAにおきましては女性用の生理用品、また乳児用の紙おむつに ついてリスク評価を行っておりました。これについては数製品について調査を行ってお りましたが、現在のダイオキシン類のアメリカにおける一日暴露量の割合から見ます と、これらの製品から暴露されるダイオキシン類の寄与は非常にごく微量なものである という評価がくだされておりました。また、個別品については先日一部新聞で報道があ りましたが、ある社のアイスクリームを分析しましたところ、GC/MSで測ったもの でありますが、0.898pptのダイオキシンが検出されたという報告がございました。新聞 紙上では 0.79pptという値を用いておられていたかと思いますが、これは演者が開発し たバイオアッセイシステムによって検出された値でございました。  また、US−EPAのリスク再評価についても複数の演題がございました。BENC HMARK DOSE APPROACHとMARGIN OF EXPOSURE (MOE)について独立した演題がこの分野で設けられておりました。BENCHMA RK DOSE APPROACHにつきましては、今回のダイオキシン類のUS−E PAのリスク再評価の中でもコメントされております。ただし、本演題ではTCDD単 品のみを用いているものでありました。これはどういったものかといいますと、種々の 動物実験のデータの中から全体の1%に影響があらわれるであろう値(ED01)をU S−EPAが開発したソフトウエアによって求めておりまして、これを紹介しておりま した。手法としては動物実験の基準投与量の決定に用いられる手法を汚染化学物質の評 価に応用しようとするものであります。このソフトウエアについては、ここに示してお りますアドレスより入手することが可能です。また、このソフトウエアを入手します と、最低4点の実験データがあればED01を求めることが可能であるということであ りました。  もう一つはMARGIN OF EXPOSURE(MOE)が挙げられておりまし たが、これも汚染物の安全もしくは耐容レベルを評価する手法の一つとして今回のダイ オキシン類のUS−EPAのリスク再評価中でもコメントされている手法でございま す。どういったものかと申しますと、動物実験等で明らかにされている毒性量が見られ た際の動物における体内負荷量を求めまして、これを現在のヒトの体内負荷量で除すこ とによって、どこまで危険レベルに近づいているかを示そうという手法であります。こ の値はEPAによりますと 100以上が望ましいと考えているようですが、現状の値を用 いて計算した場合、1以下となるような動物実験もあるということでございます。これ によりますと現在のヒトのバックグラウンド暴露、これは特定の発生源の影響を受けて いないと考えられるヒトの暴露という概念でありますが、はこれによれば最低作用量に 近いところにあることになるという報告をしておりました。  US−EPAのリスク再評価の概要につきましては、この後、別途説明がございます ので、ここでは割愛させていただきたいと思います。  演題が非常に多く、すべてを紹介し切れていない面が多々ございますが、以上で概要 の報告とさせていただきます。 ○寺田部会長  どうもありがとうございました。  ただいまのダイオキシン2000の説明につきまして、何か御意見はございますでしょう か。  次はEPAですか。それでは、お願いいたします。 ○高江係長  それでは、続きましてEPAのInformation Sheetをもとに、EPAにおきますダイオ キシンのリスク再評価について現在の状況を御説明させていただきます。  まず、EPAにおけるダイオキシンの再評価の今までの経緯でございますが、まずU S−EPAにおきましては1991年4月に最初にダイオキシン類についてリスク評価を科 学的に行うことをアナウンスしているところでございまして、その後にパブリックコメ ント、またピアレビューのワークショップを経まして、第1弾といたしまして1994年に パブリックレベルのドラフトを一度出してございます。その後、1995年にEPAにあり ますサイエンスアドバイザリーボード(SAB)のレビューを一度してございます。そ のレビューの中でEPAが出したものにつきまして何点かの指摘があったことを踏まえ て、今回新たに再評価の方にドラフトをまとめ直してレビューして出してきたという流 れになってございます。  今回EPAの方で取りまとめられております資料の全体像でございますが、大きく3 つの部分に分かれてございます。まず、パート1といたしまして“Estimating Exposure to Dioxin-like Compounds”ということで、ダイオキシンの暴露について発 生源、実際の人間の暴露、サイドスペシフィックなアセスメント等についてまとめてい る部。また、パート2といたしまして“Health Assessment for 2,3,7,8- tetrachlorodibenzo-p-dioxin and related compounds”ということで健康影響に係る 部分、毒性部分、あと健康にかかるリスクの部分についてのパート2。パート3といた しまして“Integrated Summary and Risk Characterization”という形で全体のまとめ のリスクという形で報告書自体はまとまってございます。  今回、この報告書をすべて出しますと 1,000ページとか 2,000ページという形になり ますので、Information Sheetも全部で5つあるのでございますが、その中でも特に今回 御紹介させていただくところはInformation Sheet1、ダイオキシンの再評価とInforma tion Sheet2といたしましての再評価(2000)(案)の科学的ハイライトという2つの部 分に絞って御紹介をさせていただければと思ってございます。  資料4−1といたしまして、EPAが出している原文そのものでございます。こちら と、資料4−2といたしまして事務局におきまして仮訳――これはあくまで仮訳である ことに御留意いただきたいのでございますが、仮訳として資料4−2で日本語のものを つくってございますので、この資料4−2をもとにEPAの再評価の中身について簡単 に御説明申し上げたいと思います。  まずInformation Sheet1でございますが、環境保護庁を初めとする関係省庁及び一般 の科学者たちは1991年よりダイオキシン暴露とヒトへの健康影響に関する再評価を行っ てきたところである。このInformation Sheetの位置づけは「2,3,7,8-テトラクロロジベ ンゾ-p-ダイオキシン及びその類縁化合物の暴露と人への健康影響に関する再評価」と題 しております、俗に言うEPAの再評価ドラフトを要約したものでございます。さらな る詳細については関係書「ダイオキシン:再評価(案)における科学的ハイライト」、 これは後ほど御説明いたしますInformation Sheet2のことでございますが、これを参照 されたいとしてございます。  まず第1段落目でございますが、ダイオキシンの定義について記載がございます。ダ イオキシンという単語は、ある類似の化学構造と生物学的作用機序メカニズムを共有す る化学物質の一群を指す。全部で30種類のダイオキシン様化学物質があり、ダイオキシ ン様化学物質はdioxin-like and related compoundsをすべて含んだものでございます。 それらは類似の3種類の化合物群に属している。塩素化ジベンゾ-p-ダイオキシン、塩素 化ジベンゾフラン及び一部のポリクロロビフェニル――コプラナーですけれども、その 3つに分けられる。ダイオキシンという単語はまた最もよく研究されている最も毒性の 強いダイオキシン、すなわち2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCD D)を意味することもある。CDDs及びCDFsは人為的には製造されていないが、 自然や数々の人間の活動を通じて偶発的に発生し得る。燃焼、パルプや紙類の塩素漂 白、ある種の化学物質製造・加工を初めとする工業工程はすべて少量のダイオキシン類 を発生し得る。PCBや米国内ではもはや製造されていないが、過去には電気機器の冷 却材や潤滑油として広く使用されていた。まずそういう頭置きがございまして、以下そ れぞれトピックスについて簡単な説明がございます。  まず1つ目、ダイオキシン類のリスク−毒性等量による方法でございます。ダイオキ シン類は類似の機序で毒性影響を引き起こす−共通の毒性メカニズムを共有している− とされている。その結果、EPA等は個々のダイオキシン類の毒性を足し合わせること で我々が暴露される環境中のダイオキシン類を混合物全体として評価する方法を採用し た。TEFファクターを用いてTEQ換算して評価するということでございます。それ ぞれのダイオキシン類の毒性の強さの程度は異なっているので、混合物全体としての毒 性を評価するためにはそれぞれの毒性の程度をすべて考慮する必要がある。そのため、 国際的な科学者のグループによってさまざまなダイオキシン毒性の程度を比較するため 毒性等価係数(toxicity equivalency factors)が考案された。これらの係数によって 混合物全体の毒性はそれぞれの毒性等量(TEQ)の総和、すなわち混合物に含まれる それぞれのダイオキシンの毒性の程度の総和に匹敵するTCDDの量としてあらわされ るのである。再評価における結論の多くはTEQという重要な仮定に基づいているので あるという形で、今回、1994年のドラフトの段階から先ほど申し上げましたパート2、 2つ目に9章まであるのでございますが、その中の1つに“toxicity equivalency fac tors for dioxin and related compounds”という章がchapter9にございまして、今回 はその章を全面的に改訂したということがございまして、TEQの考え方について新た に示しているところでございます。  続きましてダイオキシンの毒性でございますが、再評価ではあらゆる情報に基づき、 ダイオキシン類が強力な動物毒であると同時に、ヒトに幅広い種類の毒性影響を引き起 こす可能性があることがわかった。ダイオキシン類は細胞の根本的な成長と細胞の発達 を変えてしまうが、その作用はさまざまな影響を引き起こす可能性があるとしておりま す。例えば生殖・発生への悪影響、免疫系への抑制、塩素挫傷――アクネ、クロロアク ネ、そしてがん。EPAにおきましては動物及びヒトに関するデータの「weight of evi dence」に基づきまして、TCDDをヒト発がん性物質(human carcinogen)、その他の ダイオキシン類をヒト発がんが疑われる物質(likely human carcinogen)と2つ定義を してございます。  ダイオキシンの暴露でございますが、再評価の報告書におきましてはダイオキシン類 の大部分は直接的な大気中への放出や、間接的に環境中にダイオキシン類の大気中への 再飛散の後、大気からの沈着によって環境中の食物連鎖系に侵入する、2つのパターン があるとしてございます。一たん環境中に広がりますと、ダイオキシン類は非常に濃縮 性が高く、動物の組織に濃縮し得る。EPAの推測によればダイオキシン暴露の大部分 は食物を通じて起こり、標準的な人間のダイオキシン暴露の95%以上は動物性脂肪を食 事として摂取することにより起こる。超微量の粒子状または気体状のダイオキシンを含 有する空気を吸うことによって、またダイオキシンを含有する土壌から偶然に巻き上げ を摂取することによって、さらにはほんのわずかな量のダイオキシンを含有する大気、 土壌、水からの皮膚吸収を通じて少量のダイオキシン暴露が起こり得る。これらのプロ セスは一般的な人々に広域な低濃度レベルの暴露を引き起こすものであります。  環境中のダイオキシン濃度はEPAの行政的な規制及び業界の努力により1970年代か ら著しく減少している。適正な定量が可能なダイオキシンの排出源からの排出量のEP A推定(Best estimate)によれば、米国におけるダイオキシン排出は1987年から1995年 の間に約80%減少した。これは主として一般及び医療用のごみ焼却所からの大気への排 出の減少によるものであり、その後のさらなる減少についても引き続き記録、検証がな されている。食物を通じたダイオキシン摂取もまた減少しているようであるとされてお ります。  人へのダイオキシンの影響。動物実験データ及び高濃度暴露のヒトデータに基づい て、一般的な人々の組織中に検出されるダイオキシン量、いわゆる体内負荷量(Body burden)は毒性影響が生じることが予想される量にかなり近づいている。係数が10以内 とEPAは推定している。潜在的なリスクはさておき、一般的な人々の間にダイオキシ ン様化合物に起因する疾病増加が見られるという明らかな指摘は現在のところない。こ れはむしろ現在のデータ及び科学的手法の限界によるものであって、ダイオキシン暴露 が毒性影響を引き起こしていないことを指摘しているものではない。がんに関して言え ば、EPAは一般的な人々におけるダイオキシン暴露によるがんのリスクはどんなに高 く見積もっても 1,000人に1人から 100人に1人の間にあると推定している。実際のリ スクはこの値を超えることはまずなく、実際にはこれより少ないであろう。がんのリス クがこの範囲にあるということはEPAの再評価報告書の1994年版ドラフトにおける推 定より約10倍高い値である。  次に子供及びその他の集団についてでございますが、胎児、新生児及び子供は成長や 発育が早いので、ダイオキシン暴露に対してもっと感受性が高いかもしれない。しかし ながら、子供のリスクに関するデータは少なく、一般的な子供たちがダイオキシンの毒 性影響を受けるかどうかについてはわかっていない。授乳中の新生児にとって母乳はダ イオキシン暴露の主なルートであるようだが、膨大な一連の証拠によりダイオキシンの 混入があったとしても、母乳育児による健康的なメリットが支持されている。世界的に 見れば、労働環境、工業事故、またダイオキシン含有量が高い魚類、肉類または乳製品 を通常以上に摂取することによる食物の汚染によりダイオキシン暴露が高い人口集団も ある。ベトナム戦争中にダイオキシンを含む除草剤「Agent Orange」に米国空軍兵が暴 露したというような、ダイオキシン暴露が健康影響に結びついてしまったケースもある とされてございまして、これがInformation Sheet1といたしましてのダイオキシン再評 価の要旨として出されているものでございます。  なお、申し遅れましたが、今回のEPAの再評価におきましては先ほど申し上げまし たパート2のchapter9“Toxicity Equivalency factors for Dioxin and Related Com pounds”の部分と同じくパート2のchapter8“Dose Response Modeling for 2,3,7,8- TCDD”、パート3といたしましての“Integrated Summary and Risk Characteriza tion”の部分が主に改訂されたことになってございます。  続きましてInformation Sheet2でございますが、基本的にはInformation Sheet1を より詳しく、内容もある程度含めた書いたものでございますので、重複もかなりござい ますので、主立った部分だけ簡単に仮訳をもとに御説明をさせていただければと思いま す。  Information Sheet2、再評価(2000)(案)の科学的ハイライトでございます。まず第 1段落でございますが、一番下の方の「今回は」という部分でございます。その再評価 (案)の改訂、科学的ハイライト部分についてまとめている。「用量作用関係」の章 (第2部第8章)、新「TEF」の章(第2部第9章)については最新情報に改め改訂 が行われている。また、「要約及びリスクキャラクタライゼーション」の章(第3部) は最新情報に改め改訂し、さらに様式を改めたということで、この部分が1994年に出し ていたものと今回かなり変わった部分でございます。この部分については現在、パブリ ックコメントとピアレビューが行われていることになってございます。  次の段落でございますが、今回の再評価報告書におきましてTEF、TEQの手法の 不確実さだけではなくて、その長所、短所をきちんと考えた上でTEQの手法を採用す ることは広く受け入れられている。また、ダイオキシン類の混合物として常に自然界中 に存在するものはTEQの手法を使うことが評価の基本であって、TEQアプローチの 採用そのものが非常に重要な仮定として今回取り上げられているということでございま す。  1ページ目の一番下のところでございますが、今回の再評価報告書においてはダイオ キシン及びその類縁化合物の暴露により、ヒトが幅広い種類の影響を受ける可能性が疑 われることについて、ヒトのデータ、動物実験データ及び補助的な実験データを含むす べての情報に基づいて十分な証拠があるとされてございます。  2ページ目を簡単に申し上げますと、実験系によってTCDDによって影響を受ける ことが示されていて、片やその他のTCDD様化合物に関するデータ、エンドポイント を同じにしたものでその他のデータがないわけではございますが、ヒトの高濃度暴露に おいてわずかに観測された例がある。それ以外の影響についてはTCDD様化合物その ものに関する十分計画された研究はないとされてございますが、一般的には高濃度にお いて観察可能な毒性影響の発現に対し動物やヒトの極めて低濃度の暴露において見られ る生物化学的及び細胞学的な変化のメカニズムの関係を示すことは不確かで、かなり議 論が残るところではある。ただ、さまざまなデータをもとにそういうことがTCDDに よって引き起こされるものをTCDD様化合物に当てはめて考えることは適切ではない かという結論を出してございます。  3ページ目の一番上の段落でございますが、感受性に関してもどんなダイオキシン影 響に関しても個々の動物種における感受性は異なっていることがよく知られているとし た上で、ヒトの感受性は個々の影響に関する動物の感受性の範囲の両極端のどちらかと いうよりは真ん中ぐらいに位置することが示されている。ヒトの感受性が極端に高いわ けでも低いわけでもないとされてございます。  次の段落でございますが、「Ahレセプター」の結合の話でございまして、「Ahレ セプター」の結合がダイオキシン類の影響を発現するために十分ではないけれども、そ の後、何らかのカスケード反応が起こるというさらなる段階が必要であるという仮定の もと、本質的に必要であるとしてございます。TCDD暴露により発現する影響は類似 の構造を持ち、「Ahレセプター」に結合する特性を持つ他の化学物質にも共通して見 られる。したがって、生物学的システムが単一のダイオキシン様化合物への暴露よりも 他のダイオキシン様化合物への累積暴露に対して反応すると仮定することは妥当として ございます。  3ページ目の一番下の段落は酵素誘導、ホルモンレベルの変化、細胞機能の変化のイ ンディケーターなど、一部の一般的な人々が暴露しているレベル、非常に低いレベル、 またその近辺での暴露量に相当する体内負荷量程度で観察されてくるような影響につい てのことが記載されてございます。  その他高濃度暴露した人々においてのみ観察され、低濃度暴露した人々の間で起こる かもしれないし、起こらないかもしれない影響もあるということで、ダイオキシンの影 響に関しては高濃度で起こって見られる事象のほかに、非常に低濃度で見られるような 酵素誘導、ホルモンレベルの変化、細胞機能の変化のインディケーターなどの影響もあ るということを述べてございます。  4ページ目の2段落目、真ん中ですけれども、ここは主に発生源について書いてござ います。段落の真ん中ぐらいでございますが、アメリカで特定される環境中への排出源 は5種類に分けられるとして、燃焼及び廃棄物焼却;金属精錬、精製及び加工、化学物 質製造/加工;環境媒体等への蓄積分;生物学的及び光化学反応プロセスの5つのカテ ゴリーが挙げられてございます。先ほどInformation Sheet1で申し上げましたように19 87年から1995年までの間にダイオキシンの排出量は8割程度減少しているということで ございます。  4ページ目の一番下の段落でございますが、これはヒトの暴露経路と米国におけるヒ トの摂取量についての段落でございます。ヒトの暴露経路は主なものといたしましてダ イオキシン様化合物を微量に含有する食物の摂取である。このことから、ダイオキシン 様化合物は幅広い一般人に対して暴露されることになる。ただ、一日摂取量は1970年代 以降減少しているようである。  続いて5ページの一番上ですけれども、2行目あたり、アメリカにおきましては現在 の米国の推定摂取レベルは西ヨーロッパやカナダで報告されたレベルと同等であり、ダ イオキシン暴露が増加しているのは工業化に関連するものであるという結論を支持して いる。他の先進国と米国におけるレベルが同等であるということは米国のレベルに関す るデータが限られていることを考慮しても、米国における推定が妥当なものであるとい う形で結論づけてございます。  次に、再評価の報告書はダイオキシン様化合物が環境中の食物連鎖系やヒトの食物に 侵入する主なメカニズムは大気からの沈着を通じたものであるという仮説を提示してお りまして、その内容について記載してございます。沈着は土壌や植物の表面で直接的に 起こり得るものでございますが、主に現在のダイオキシン及びその類縁化合物のすべて の発生源からの寄与によるものなのか、既に環境中に蓄積しており循環している過去の 排出に起因するものなのかは明らかではない。ただ、これに関する関係を理解すること が排出削減対策の効率性を評価するためには重要であるとしております。  次の段落におきましては「バックグラウンド暴露」という定義を挙げてございまして ダイオキシン様化合物の特定の点源からの暴露を受けていない一般的な人々の暴露を記 述するために今回は使っているということでございます。ヒトの組織中レベルに関する データは、体内負荷量は先進国の間ではほぼ同様であるということが示唆されてござい ます。体内負荷量を導くために1980年代末の平均的なバックグラウンド暴露レベルはす べてのダイオキシン類、フラン類、ダイオキシン様PCBを対象とした場合、30から80 pgTEQ/g脂肪(30〜80ppt)相当であり、中間値はおよそ55pgTEQ/g脂肪であった。 一般的な人々の体内負荷量の最高推定量(一般的な人々の高い方からおよそ1%)は血 中データ及びダイオキシン摂取の指標である脂肪摂取量の評価に基づくと、それより3 倍以上高い。つまり、一般の人々の間でもダイオキシンの暴露量は3倍程度の開きがあ るということであるとしております。米国の一般的な大人のCDD/CDF/PCB組 織レベルの平均は減少しているようであり、最近の(1990年代末)の体内負荷量の平均 値は25ppt(TEQDEPWHO98、脂肪あたり)であるとされてございます。  次のページでございますが、6ページの一番上の部分につきましては一般的な人々の 暴露に加えて職業暴露、また個別発生源からの暴露、乳児の母乳経由の暴露等々により まして一般の人々よりも高暴露されている方がいるというお話でございますが、最後に 平均体内負荷量の差は一日摂取量の差よりもずっと低いと予想されるという形で結論づ けられてございます。また、食事構成の健康へのメリットについては、いわゆるトータ ルのリスク評価という中で評価されるべきものであるとしてございます。  次でございますが、上記で述べたように、先ほど申し述べました酵素誘導や細胞機能 の変化、他の潜在的な毒性影響のような生物化学的及び物理的な微妙な変化は限られた 数の研究成果においてダイオキシンに暴露した人々に認められている。動物実験で得ら れた知見とあわせ、これらの知見はヒトの代謝系、生物の発育または/及び生殖に係る こと、そして恐らくその他にも現在の人の暴露レベルの範囲で毒性的な影響を引き起こ す可能性があることを示唆している。TEQ摂取量は相対的なTCDD暴露量であると いう仮定を考えてみれば、平均のバックグラウンドのTEQ摂取または体内負荷量レベ ルの10倍以内の範囲でこれらの毒性影響の幾つかが起こっているかもしれない。この範 囲内またはそれ以上に体内負荷量が増加すると、ヒトの非発がん性影響の種類だけでな く、発生頻度も増加する可能性が高いだろう。ダイオキシン及びその類縁化合物が作用 する実際の生物学的レベル及びダイオキシン体内負荷量に対する「下流」の反応の潜在 的な多様性のために、どのくらいの量でどのようにヒトの集団の個々が反応するのか明 らかに言明することは現在では不可能であるとしております。最近データにより明らか になったように、バックグラウンドレベルの暴露に相対する体内負荷量とヒトで影響が 認められるレベルに基づき計算されたMOE(Margin Of Exposure;非がん性影響の評 価に用いられる指標。LOAELあるいはNOAELといった毒性の指標になる用量を 暴露量で割った値。MOEが通常は 100から 1,000の範囲にあることが一般的に望まし いと考えられている。)は体内負荷量TEQの点では以前の推定よりもかなり低くなっ ており、1またはそれ未満になる場合すらあるかもしれない。微妙な行動影響を含む、 ある種の毒性影響についてはNOAELはまだ確立されていないと記載されてございま す。  続きまして7ページの2段落目でございますが、ヒトはダイオキシン様化合物への暴 露により非発がん性の影響も示す可能性が高いという今までの推論でございますが、こ れらの化合物が細胞レギュレーションに影響を与える濃度と毒性的な反応を示すことが 証明されている生物種が幅広く多岐にわたっていることに基づいているという形で、以 下その内容についての説明がされてございます。  7ページの一番下の段落でございますが、発がん性に関しては「Weight of evidenc e」の評価により、TCDDは「Human carcinogen」として、その他のダイオキシン様化 合物は「likly Human carcinogen」として提案された。疫学的データそれだけではTC DDを「Human carcinogen」と特定するには不十分である。しかしながら、動物実験の 明らかな証拠とメカニズムデータに引き出された推論を疫学的研究から得られた整合性 のある示唆的な証拠とつき合わせることによりダイオキシン及びその類縁化合物の混合 物が発がん性物質である可能性が高いと結論づけることは支持されるとしてございま す。特定の環境中混合物に関する記載の信頼度は異性体に関する情報の程度によって高 められる。発がんのハザードに関するこの記載と発がんのリスク−評価は区別すること が重要であるとしてございます。主要な不確実性がまだ残っているが、本再評価におい ては発がん性の評価のためにより多くのデータを集める努力により、ダイオキシンの傾 き係数といたしまして1pgTEQ/kgBW/day当たり5×10−3から5×10−4の範囲 にあると推定されてございます。これらの傾き係数はslope factorでリスクをY軸、用 量(暴露量)をX軸にとったときの傾き、すなわち単位暴露量当たりのリスクの増加量 を結論としたリスクに関する推定用量から作用が観察された用量範囲及び最小作用観察 濃度(ED01)、これは1%のヒトにリスクがある場合に最小の傾きを求めたときの観 察濃度でございますが、このヒト及び動物データに基づいたリスク評価の現実的にあり 得るであろう最高の値を示しているものでございます。これらの値はデータが今より少 なかった当時の評価(1985年及び1994年)よりも3から30倍ほど高くなってございま す。これらの傾き係数は現在の摂取レベルを考慮すると、一般の人々のリスクの最高推 定値は10−3から10−2の間になる。「実際」のリスクはこの値を超えることはまずあ り得ないし、それよりも低いはずである。リスクがゼロである人々だっているかもしれ ない。がんのリスクの程度は暴露経路と暴露レベル、総体内負荷量、標的臓器への用 量、個人の感受性、ホルモン状態等さまざまなファクターによって決まってくる。一般 の人々についての最高推定リスク値の範囲はEPAの以前の再評価(案)(1994年版)に 基づいたバックグラウンドの暴露レベルで発現するリスクの値より1けた高い値である と発がん性については結論してございます。  最近のデータによれば受容体結合と酵素誘導といった最も初期の生物化学的反応の両 方が低用量レベルの線形性を説明している可能性が高いらしい。発がんの複雑なプロセ スとこれらの初期の反応の関係を確立しようという試みがされているところである。も しこれらの知見が開発中の生物学的な発がんモデルにおいて低用量での線形性を示唆す れば、がんのリスクの確立は低用量のTCDD暴露においても線形な関係を示すであろ うとしてございます。初期の細胞反応と生物学的な発がんモデルにおけるパラメータの メカニズム的な関係がより理解されるようになるまで、毒性影響が観察される用量範囲 以下におけるがんについての用量反応グラフの形は不確実性に基づいた推論でしかな い。ダイオキシン暴露とある種のがんとの関係は平均TCDD体内負荷量が一般のそれ の1けたから3けた高い労働者集団において観察されてきた。総TEQとしてのこれら の労働者集団における平均体内負荷量のレベルは一般のそれの1けたから2けた以内に ある。したがって、一般のリスクの最高推定値を求めるために、あるいはバックグラウ ンドレベルを超えた増加分の暴露の影響を評価するために広範囲の低用量範囲への外挿 は必要ない。言うまでもなく、一般の人々のリスクの計算とこれらの人々のがんによる 死亡率の明らかな増加の関係は全く不確かである。  一番最後はこれまでの議論をまとめたところでございますが、本再評価報告の中でレ ビューされたすべてのデータに基づき、TCDD及びその類縁化合物が広範囲の影響を 引き起こす可能性がある潜在的な動物毒性物質であるという絵が浮かび上がってきた。 これらの影響の中には非常に低い用量でヒトに発現しているかもしれないものもあれば ヒトの健康に毒性的な影響を引き起こすものもあるかもしれない。これらの化合物が生 物システムに作用する潜在的な根本的な水準は幾つかのよく研究されたホルモンに類似 している。ダイオキシン及びその類縁化合物はヒトや動物におけるさまざまな反応を起 こす潜在能力とともに、生物科学的な及び生物学的な反応カスケードを開始することに より成長のパターンを変化させ、多くの細胞標的を分化させることができる。この能力 を除くと、ダイオキシン暴露とさまざまな影響の増加を関連づける疫学的証拠は限られ ており、ダイオキシン様化合物に起因する一般的な人々での疾病の増加について明らか に示唆するものはない。一般の人々における疾病を明らかに示唆するものがないという ことは、ダイオキシン様化合物の暴露の影響がないという確固たる証拠として考えるべ きではない。むしろ疾病を明らかに示唆するものがないということは、我々の現在の データ、科学的な手法がヒトでのこれらのレベルのダイオキシン及びその類縁化合物の 暴露とその影響を直接的に関連づけるにはまだまだ不十分であるということを結論づけ ている可能性が高い。現在のバックグラウンドレベルまたはその近辺でもヒトへのこれ らの化学物質の影響をさらに評価していく必要性を示唆している部分もある。すなわち 暴露と影響に関する「weight of evidence」、非がん性影響に関する明確に低いMO E、一般の人々の中に著しいリスクにある人々がいるということ、バックグラウンドレ ベルを超えた暴露の増加があった場合に発がん性を引き起こすバックグラウンド暴露の 原因となっているプロセスの相加性がそのような必要性を示唆しているのであるという 形で全体がまとめられてございます。  先ほどお話の中でこの報告書につきましてのピアレビューを行っているということが ございましたが、先週の金曜日に8月24日のファイナルレポートとしてのEPAのピア レビューがEPAのホームページに掲載されてございます。その中で簡単に概要だけか いつまんで申し上げますと、ピアレビューした結果、“Ambient and population Expo sures”と“toxicity equivalency factors”と“inventory of sources”の3つにつ いてはピアレビューの委員から大筋の合意を得た。ただ、次に挙げますものについては さまざまな意見が出て、中には非常に批判的なものもあった。その分野はcancer chara cterizationとselection of a dose metricとThe Risk characterization summary st atement、リスクに関する部分についてはまだ意見がかなり分かれているという形で、ま たトピックを出して分量が非常に多い報告書でございますが、こちらの方でまとめるな りして今後ワーキンググループの中でいろいろと御指摘をいただければと思ってござい ます。  ピアレビューも終わって、その後の予定といたしましては9月にSABにリバイスさ れたドラフトを出して、10月から11月にSABレビューのミーティングで最終的な報告 書をまとめるというのがEPAが6月に出した時点での基本的な考え方でございます。  まとまりがなくなって恐縮でございますが、以上でございます。 ○寺田部会長  どうもありがとうございました。ただいまのEPAの報告書の要旨と、その前のダイ オキシン2000に関しましても何か御質問あるいはコメントがございましたらお願いいた します。 ○渡辺委員  私もダイオキシン2000に出席してきたのですが、主としてhuman exposureとepidemio logyのところを聞いてきました。米国は従来、産業暴露の集団での発がん性を対象にし ていたのでありますが、ベトナムの退役軍人の追跡調査が法律で決められまして、2003 年まで20年間、完璧なフォローアップをすることになっているそうであります。15年目 の結果がぼつぼつ出てきておりましたが、がんのみではなくて、いろいろ検討したけれ ども、明らかに関係ありというのは糖尿病が挙げられておりました。がんに関しまして は、オーストラリアのベトナムに従軍した退役軍人のフォローアップ調査も発表されて おりまして、やはりリンフォーマとか、この場合は前立腺がん等のリスクが挙がってい るということであります。  米国もEPAとNIEHSとUSエアフォースと何か微妙な差は感じられましたが、 どうも軍の方はNIEHSとペアで、今度はタイの住民の調査もやるという話でありま した。ベトナムでは1979年に戦争が終わっておりますが、1980年以降に生まれた子供も 血中濃度がかなり高いということでありまして、どこかの汚染とか生物濃縮が循環して いるのではないか、その部分を明らかにしたいというプロジェクトが動き出すようであ ります。 ○寺田部会長  どうもありがとうございました。私も質問のところで2000のところのepidemiologyは どういう結果が出ているのかと思って聞こうと思ったんですが、今言われました20年間 というのは、ベトナム戦争が終わってからの枯れ葉剤の従軍兵士をずっと経過観察をし ているのですか。それはダイオキシンの濃度が高いんですか。 ○渡辺委員  枯葉剤の場合はほとんどピュアに2,3,7,8-TCDDなんですね。暴露時の濃度は測定 できないわけでありまして、事件が起きてから測っているわけですけれども、さかのぼ って暴露時の濃度を推定しますと、TCDDで大体 100から数百pgTEQというところ だそうであります。 ○寺田部会長  それからNIEHSと軍とでフォローアップするという、例えば前立腺がん、リンフ ォーマ、糖尿病のリスクが高いというのは、数字的にはどのぐらい高い話ですか。 ○渡辺委員  これはコホート調査でありますので、レトロスペクティブコホートといってさかのぼ ってつくったコホート集団ですけれども、がんは2倍まではいっていなかったと思いま す。糖尿病は 1.5倍くらいということでありました。 ○寺田部会長  どうもありがとうございました。  何か質問はございますか。  これはアブストラクトとか何か書き物では出るわけですか。 ○渡辺委員  アブストラクトはありますので、利用可能だと思います。 ○寺田部会長  ほかにございますでしょうか。  ここに出ておりませんし、多分これは危険性とかソースのことだと思うんですけれど も、高濃度に暴露された方に対する特別な治療法とか何かということに関しましては200 0年の会のとき、あるいはEPAでは報告の中にございませんでしたでしょうか。 ○渡辺委員  昨年のダイオキシンの国際会議で144,000 pg-TEQ/g脂肪という非常に高濃度の急性中 毒になった患者さんが2人いまして、ミラノ大学で治療しているそうでありますが、プ ラズマフェレーシスを30回ほどやって、一時的には下がるけれども、すぐまた元に戻る ので、努力の割に余り有効でないということであります。オレストラを入れたポテトチ ップスが米国で販売されておりますが、同じ患者さんにそれを食べさせ続けて、144,000 pg-TEQ/g脂肪が1年間で37,000 pg-TEQ/g脂肪まで下がったという話がありました。食 事の方が有効であろうというのが主治医の意見のようであります。 ○寺田部会長  どうもありがとうございました。 ○伊東委員  PCBなどのときはアクネが出ますね。そういったことは非常に高い人には出てくる のですか。 ○渡辺委員  全身がエレファントマンみたいな感じになっているようです。 ○寺田部会長  ちなみに先ほど例えばがんでリスクファクターが2というのはepidemiologyをやる方 は余りいらっしゃないので、先生はそういうことが御専門ですが、例えばたばこを1パ ック吸うというのは普通一般的には日本ではどのぐらいに考えていますか。 ○渡辺委員  全体で低めに見て5ぐらいです。高めに見て10ぐらいの範囲にあります。 ○寺田部会長  先ほどと同じような計算で大体2ぐらいだという感じですか。 ○渡辺委員  はい。 ○寺田部会長  わかりました。  ほかにございませんでしょうか。 ○伊東委員  渡辺先生にお聞きしたいのですが、これをTCDDはHuman carcinogenである。ほか のものはlikely carcinogenである、Human carcinogenであるということですね。ですけ れども、アルコールと比べるとHuman carcinogenとしてのエビデンスはどのくらいの程 度ですか。先生、あの会に出ておられたでしょう。 ○渡辺委員  エビデンスは1979年の会のときは産業暴露集団を全部束ねてメタアナリシスがなされ ておりまして、dose dependencyがはっきりしている。特にドイツのBASFのデータは 血中濃度が割に正確に事故直後にはかられておりまして、一番上の分画でリスクが 2.0 ぐらいです。メタアナリシスの結果、オーバーオールのオッズ比が 1.4で有意な増加で あるということで、ヒトでもcarcinogenであろうということでありました。  農薬製造にかかわる暴露の場合は枯れ葉剤もそうでありますが、ダイオキシンのほと んどが2,3,7,8-TCDDであります。それ以外のコプラナーも含めたジベンゾフランの 暴露はカネミ油症と台湾油症の2つだけでありまして、カネミ油症の場合は疫学グルー プが随分追いかけておりまして、肝がんのリスクが高まっていると思います。  台湾油症の場合は肝がんのリスクは上がっておりませんが、肝疾患の死亡が高かった という結果であります。おそらく多田先生に追加していただけると思いますが、台湾油 症の場合は2代目の子供の成育への影響がフォローアップ調査されておりまして、成長 が少し悪いとか精神発達機能が悪いとか、そんな結果だったと思います。発がん性に関 しまして私たちもわからないのは、TEFが本当に発がん性の基準としてすべて足し込 んで判断できるのか。EPAの今度のレビューもそのあたりが論議の的になっていると 思います。  日本ですと2,3,7,8-TCDDよりもジベンゾフランの暴露でTEQが高くなる例が非 常に多いものですから、それが発がん性に直接つながるかどうかというのは今後のフォ ローアップの問題だと思います。 ○多田委員  私も今度聞かせていただきました。私はhuman exposureを主に聞いてまいりまして、 大体世界的に下がっているのが、日本の母乳のデータと同じような形で欧米各国とも下 がっているという報告が多かったようでございます。  今、渡辺先生がおっしゃいましたような意味での子供に対する影響も新しく幾つか出 てくるかと思ったのですが余りなかったように、今回は子供に直接の影響としての報告 は多くなかったように思いました。 ○寺田部会長  ありがとうございました。 ○松浦委員  私も初めて出席させていただきましたけれども、台湾油症の後の生理の発現とかイギ ョウ脳とか、いろいろな点で外国の人たちも加わってかなりフォローアップされている ようですけれども、渡辺先生が言われように大きな影響は余りなさそうで、日本の場合 にはカネミ油症の場合のフォローは非常に難しいのだそうですけれども、台湾油症はそ ういう意味では非常に長期にわたって子供たちに世代を追跡して報告があったようで す。 ○寺田部会長  ほかにございませんでしょうか。  それでは、もう一つベルギーの飼料の問題のことですけれども、これは日本の場合は どういうふうにモニターとか、そういうことは起きてしまってからここに書いてあると おり逆に入っていって、これが原因だとわかったわけですね。そのメカニズムとして最 初からどこかでチェックする方法は不可能に近いわけですか。そういうチェック方法が 何かあるのか、あるいはベルギーのこういう事故が起きてから何か、これは厚生省の管 轄ではないかもわからないですけれども、そういうチェック機構が働いているのか、あ るいは気分を引き締めて見守っているという感じなのか、どうですか。 ○川原生活化学安全対策室長  飼料の方は恐らく農水省の所管になるかと思いますが、こういうものを踏まえて何ら かの対応をとっているかどうか聞いておりませんので、聞いた上でまた必要があれば御 報告とさせていただければと思います。 ○寺田部会長  ありがとうございます。  もう一つはnatural formation of dioxinというものが発表分野の中であって、突拍子 もないことを聞きますけれども、火山とかああいうところの灰の中にダイオキシンはな いわけですか。これも環境庁だな。 ○渡辺委員  少しはあるということだと思います。 ○寺田部会長  熱と塩素があって有機物が何かあればという感じがしますもので、どうかなと思って います。 ○伊東委員  寺田先生、私もそれは非常に関心があるんですけれども、ベンツピレンがたくさんあ るのではないですか。常識的にはそうでしょうね。 ○大井委員  今の御質問に関連して火山活動というのはいろいろなところでありまして、これがダ イオキシンや何かということについて関連をつけてある種の解釈があったと思いますが 基本的な生理学的な意味においての大きな影響あるいは毒性学的な意味においての影響 があったという資料は私は存じません。  ベルギーの事件の場合には、私はベルギーのそのときに事件に関与した医者の話を聞 いたのですが、あの場合にはカネミ油症と違いまして、カネミ油症は御存じのとおり直 接人間が食べる食用油の中に入ったわけですが、あの場合にはひよこの餌が汚染され、 チッキン・エデーマ・ディジーズという形で現れました。ひよこはダイオキシンやジベ ンゾフランに対して敏感な反応を起こすのですが、その事故に関連して獣医がきちんと 調べるシステムがあることはあった。ところが、その獣医はそのことについて正確な意 義を認めなくて、莫大な数のひよこが斃死した。後になって事故を起こした餌会社との 利益関係があったという経緯が明らかになりましたが、そういうことで雛の方に影響が 出て、それがそのまま人間の口に入ることは比較的少なかったと思われます。ただし、 人間の場合には全く追跡調査がされていないということであります。 ○寺田部会長  どうもありがとうございました。  どなたかほかにコメントはございませんでしょうか。 ○安田委員  私も出席しました1人で、私はtoxicology mechanismというところを中心に聞いてま いりました。ダイオキシンの毒性に関しては非常に種差、系統差が大きいということが 言われておりますけれども、ヒトの中でも感受性の高い人がいるのではないかという問 題がございます。ヒトでもぼつぼつとAhRに関するpolymorphism、遺伝的な多形を調 べたというデータが発表されておりましたけれども、現在のところ、その機能的意義は わからない、つまり非常に感受性の高い人がいるとか、あるいは鈍い人がいるというと ころまではいっていないのが現在の状況のようでございました。 ○寺田部会長  ここでは全体的な最近の情報を委員の先生方にシェアしていただければありがたいと 思って今の報告をお聞きしているのですが、何かほかにございませんでしょうか。  具体的な見直しに関しましては先ほど事務局からお話がありましたようにワーキング グループをつくってもらって、これまでのEPAの話とかダイオキシン2000年の発表の 内容を参考にしていろいろ御検討願おうと思うのですけれど、何か御意見はございます でしょうか。  それでは、報告いただいたこれらの情報をこれからのワーキンググループでの検討材 料の一つになるのは先ほど申し上げましたようにそのとおりでありますので、事務局と ワーキンググループのメンバーの先生方には今後の動向を含めて詳細なフォローアップ をお願いいたします。  以上で本日の議事は終わりますが、事務局からそのほか何かございますでしょうか。 ○吉田補佐  特にございませんが、連絡事項を何点かお伝えいたします。  まず、本日の議事記録の取り扱いですが、速記録ができた時点で欠席の委員の方も含 めて各委員に回覧いたします。修正の後、最終化して、その後、公開の手続に入らせて いただきますので、よろしく御留意ください。  また、ワーキンググループの開催につきましては追って日程調整の連絡を事務局の方 から関係の委員にさせていただきますので、同じくよろしくお願いいたします。  また、先ほど質問が出ました点につきましては追ってまた事務局の方で調べまして報 告させていただきます。 ○寺田部会長  念のためとは申しますけれども、危険要因とかいろいろな数字も出ました。これは実 際に書類になって字で見ないとはっきりしたことがわかりませんので、それがひとり歩 きして外に出てああだこうだとはならないようにして頂きたいと思います。ここで聞い ておられる方も公開ですから数字はきちっとしたデータに基づくように御注意をお願い いたします。それは秘密だとかそういう意味では当然なくて、きちんとした数字が出な いと、それがひとり歩きしてソフトなデータを基に危険だとか安全だとかというふうに 議論されるのではないかと恐れます。それはどういうデータに基づいたものであるかと いうこともちゃんと数字で文書の形になったものを参考にしていろいろな議論をこれか らも続けていきたいということです。今日は全体の状態を知りたいということでいろい ろ御質問を申し上げたというように解釈していただきたいと思います。  それでは、最後に川原室長から何かコメントください。 ○川原室長  本日は先生方にはお忙しい中いろいろと御議論いただきまして、ありがとうございま した。ただいまも寺田先生からおまとめがございましたけれども、本日の議論等を踏ま えましてワーキンググループでフォローしていただきまして、またしかるべき時期にこ の部会で改めて報告させていただきたいと考えております。  今後とも何とぞよろしくお願い申し上げます。 ○寺田部会長  どうもありがとうございました。  それでは、これをもちまして本日の部会を閉会いたします。どうもありがとうござい ました。 (了) (照会先) 厚生省生活衛生局企画課生活化学安全対策室   吉田(内線2423)   高江(内線2424) 代表 03ー3503ー1711