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第2回年金積立金の運用の基本方針に関する検討会専門部会議事要旨

1.日 時: 平成12年9月29日〈金〉15時〜18時
2.場 所: 合同庁舎5号館共用第18会議室
3.出席者: 浅野、鮫島、寺田、中田、三浦、米澤、若杉(五十音順、敬称略)

4.議事要旨(○は出席者、●は事務局の発言)

《基本ポートフォリオについて》

○ 名目値によるシミュレーションと実質値によるシミュレーションの差が小さく驚いている。短期資産のリスクが80年を境に大きく変化。「80〜99制約無し」の資料がないので分からないが、債券が短期資産と比較して不利となるのではないか。実質値によるシミュレーションの評価について何を尺度とすればよいのか。
 保険料も給付も実質値で決まる公的年金の運用は、実質値で考えるべきであり、インフレ率が変動した場合の影響を考えることが必要。
○ インフレ率自体にボラティリティがあるが、インフレと資産のリスクの間の相関係数が明示的に挙がっていない。ライアビリティの推定を実質化できるのか。
 財政再計算の運用利回り4%は名目値であり、実質化されておらず、整合性に欠けるのではないか。外貨建資産のヘッジについてどのように扱うか。
○ 4%は名目値だが、最後にインフレ率をオンした上で予定利率と比較しており、整合的になっている。
○ ヒストリカルデータをどのようにして取るのかは難しい問題。80年以降とすると債券は実質リターンも高くなるが、73年以降とすると債券のリスクが非常に高くなる。短期資産の場合は80年以降は実質ベースで見ると安定しており、実質ベースで考えるべきだが、これを73年以降で見るとマイナスになってしまう。資産ごとに柔軟に考えてもいいのではないか。
○ 今後の金利が上昇を想定した場合の国内債券のプレミアムについての考え方については、移行期の問題として考えるべきではないか。
○ 足下の市場は既に金利上昇を織り込んでいるのではないか。
○ 市場をどこまで信じるかが問題。市場は基本ポートフォリオが見込んでいるほどの長期までは見ていないのではないか。
○ 金利の変動でスポットではリスクプレミアムは下がるかもしれないが、その後上がるはず。下がったままということにはならないのではないか。
○ どのようなタイムスパンで考えるかという問題であり、その具体的な扱いは移行期の問題として捉えるべきではないか。
○ 債券のリターンを考えるに当たって時間の要素も取り込むのであれば、移行期の問題として扱うべきであるが、基本ポートフォリオの検討の中でもそのような要素はあるということを認識しておくべき。
○ 平常時にもリスクプレミアムがオンされていると考えてよいのではないか。
○ 過去は債券に好ましいサプライズのみ。それを前提に債券のリスクプレミアムを考えてよいのか。
○ 基本ポートフォリオでは、収益率について長期間の平均的なもので見ており、途中の過程の変動を考慮していないのではないか。
○ 移行期を考えるに当たっても基本ポートフォリオの場合と同様の考え方をすべき。過去こうだったからといって先のことは分からない。既発生のライアビリティは過去のインフレの影響を受けると考えるが、それはどのように処理するのか。
● 過去の物価上昇は財政再計算において処理されており、今後の物価上昇を考慮するだけでよい。
○ 無理にインフレ率を予想する必要はなく、給付も債務もインフレで変動することから実質値で考えればよいだけのこと。したがって運用も実質値で考えるべき。
 名目値で考えるとリスクが小さく把握されてしまう。
○ キャッシュフローを細かく考慮するべき。それを無視して平均化した数字を用いるとダイナミズムが失われてしまう。
○ ダイナミズムの考慮は重要かもしれないが、そうするとヘッジポートを持つこととなってしまい、非常に難しくなってしまう。
○ 非常に困難かもしれないが、シナリオをいくつか作って考えることはできるのはないか。金利の動き(3パターンくらい)、固定金利の債券を持つことのリスク、変動利付きだとどれくらい軽減されるのか、などの検討は可能ではないか。
 経過措置の問題があり、経済情勢も微妙な移行期間は時間を追っての変化を考えるべき。財投債を保有することとなることを考えても、必要ではないか。
○ 結局基本ポートフォリオは名目値で出すのか、実質値で出すのか。
● 今回の試算で名目値と実質値がほとんど変わらなかったことや前回研究会からの経緯も踏まえ、名目値で行い、実質値を補完的な位置づけとして考えたい。
 収支見通しを名目値で行っていることを考えると名目値で行うことが適当。
○ 24年間を同じパラメーターでシミュレーションを行うことは必ずしもよくないのではないか。財投協力のある7年間とそれ以降で接ぎ木のようなシミュレーションを行ってもよいのではないか。長期間のシミュレーションだが、月次で行うべきではないか。
○ 基本ポートフォリオの作成という観点からは、各年度独立した数字が出てくる年次シミュレーションでいいのではないか。
○ 年次シミュレーションだとあまりに平均化しすぎているのではないか。月次で、相互に影響するようなシミュレーションを行った方が内部のダイナミズムをシミュレートできるのではないか。
○ ミーンとバリアンスで考えているものにコンディションを入れるのはいかがか。
○ 統計的に系列相関はインフレの影響を受ける短期資産を除いてほとんどゼロ。
 実質で考えれば、短期資産においても相関はゼロになる。月次、年次、四半期でも有意な差はないのではないか。
○ もし追加でシミュレーションをするのであれば系列相関に目を向けるべき。
○ 基本ポートフォリオというのは、そもそも経済情勢の動きによって細かく変動させるようなものではない。
● この専門部会には長期にわたる基本方針、基本ポートフォリオの策定についての検討をお願いしている。
○ 期待リターンを1ショットで決めてしまっており、その根拠となる過去のデータでは債券のリスクプレミアムが過大評価になっていないか。
● 基本ポートフォリオという長期間を想定した指針を策定しようとするときに、一般的な方法論として足下の経済情勢をどこまで織り込むのか、それとも織り込まないのか。
○ 足下の経済情勢は織り込まないケースが殆どではないか。
○ 足下の経済情勢を考慮するためには、リスク管理の徹底が必要。
○ 市場は機能しており、市場から得られる情報をシミュレーションに活用することは可能。ただ、現状市場情報が十分でない場合もあり得るので、要は説明力も考えながら方法を選ぶということではないか。
○ 24年後に予定積立金額を下回った場合、不足金額分を保証するようなプットオプションの数値を目標にポートフォリオを組むという考え方が参考になるのではないか。

《政策的資産構成の策定に当たっての確認事項について》

○ リスク許容度は厚生年金も国民年金も同じということが前提か。ライアビリティのストラクチャーが同じということか。
● 国民年金の方が給付費の何年分、というのは小さいが安定しており、リスクは小さい。また、規模も国民年金の方がずっと小さいことから、厚生年金の特性に吸収される、という考え方。
○ 積立度合いにより取れるリスクは大きく異なるのではないか。
● 公的年金は段階保険料方式を採用しており、厚生年金基金の積立金とは意味が違う。運用のぶれが保険料に及ぼす影響は厚生年金基金よりは小さい。
○ 厚生年金基金は時間分散が働くが、公的年金の場合は働かないのではないか。
○ 前回資料6にあるように、厚生年金と国民年金で積立度合いは近づく。
○ 合同運用をする以上、基本ポートフォリオは1つになるのではないか。
○ 合同運用をした場合の厚生年金と国民年金の利益配分はどうなるのか。
● 積数方式による配分を考えている。
○ 積数方式によればリスク負担を変えることにはならず、仮に苦労して別ポートフォリオを作ってもリスク負担まで変えられないのであれば使えないことになる。

《移行期の考え方について》

○ 財投債は変動利付債は考えられないか。
○ 資金運用部からの貸付が固定金利である。変動利付債の形で財投債を出せるだろうか。
○ だからといって年金加入者のみにリスクを負わせてよいのか。
○ 検討会として検討するポートフォリオは144兆円全体で捉え、財投債や預託も考慮したものとなるのか、それとも純粋市場運用部分のポートフォリオなのか。
 また、基金のパフォーマンスはどのように測るのか。
○ 引受財投債の責任を基金が負う以上、全体のポートフォリオを検討するべきではないか。また、債券の種類(固定利付き・変動利付き)で交渉すべきではないか。
○ ベンチマークにおいて財投債がどのように評価されるのかに留意することが必要。また、英米で発行されているが、一般論として、インフレ連動債を運用対象資産として、どのように評価するか検討することが必要。通常、オプション性があり、ブレークイーブンを超えるインフレの時はヘッジ機能が働くが、英米の連動債をみると、そうではない場合は通常、利回りは低いので、そのような問題を考える必要がある。
○ 経過期間に関する検討は、財投債によりポートフォリオ全体がどれくらい制約されるのかの検証を行う作業が中心になるのではないか。。
○ 財投債の期間構成が重要となってくる。ただし、これに関する情報はない。
○ 引き受ける財投債は市場で発行される財投債と同じものか。売却は可能なのか。
 引受手数料はどうなるのか。
● 財投債は国債として発行され、引き受けるものは市場で発行されるものと同じであると承知している。また、売却も可能。引受手数料についても市中発行分における引受手数料と同様の配慮がされるのではないかと考える。
○ 変動利付債が発行される場合には、資産の分類上、独立のアセットとすべきではないか。
○ 大蔵省の事情で発行される財投債の年限構成によって、デュレーションを乱されることとなり、新たなリバランス政策が必要になる。
○ 財投債を独立のアセットとして捉え、従来のようなノムラBPIなどをベンチマークとする扱いとは異なった管理とすべきではないか。
● 財投債に関する当局との話合いはまだない。具体的なことは現段階ではわからない。
○ 「大蔵省が言っているものだとこれらくらいのリスクを年金サイドが負うことになる」という議論が重要。
○ 「安全・確実な運用」という年金法の要請に答えることが必要である。
● 財投債については分からないことが非常に多い。唯一言えるのは、新基金のニューマネーが少ないということ。このような制約の下でどのような方針で臨めばよいのか、ということについて御意見を伺いたい。
○ 初年度は数兆円程度であり、基本ポートフォリオにスムーズに近づくわけではない。
○ 理論的には年金福祉事業団の承継資産を売却して基本ポートフォリオに近づけることも可能ではないか。
● 年金福祉事業団からの承継資産の無用な売却は非効率な運用となることから、避けるべきである。

【政策的資産構成割合策定のための確認事項の続き】

○ 国内債券と分類されているが、国債、財投債、社債のように分ける必要はないか、また、外貨建資産をもっと細分化するべきではないか、といった点について議論が必要ではないか。
○ 各アセットのインデックスの有無、データの制約も考慮することが必要。ヘッジの有無も大きな問題。
○ オルタナティブをどのように扱うのか。
○ 長期と短期の管理はアセットを分けることが適当。長期の場合は購買力平価が働くことから、ヘッジの有無がそれほど重要ではないのではないか。
○ 年金運用の世界的な潮流はパーシャルヘッジかフルヘッジ。
○ 外貨建資産をポートフォリオに組み込む趣旨が市場の分散、経済情勢の分散という趣旨であれば、ノンヘッジとすることが適当ではないか。
○ ヘッジをしたとしてもヘッジコストが毎年度変わることから、リスクがゼロになるわけではない。オーバーレイなども考えることが必要。
○ ホームカントリーバイアスについて、「株式」で「国内≧国外」と置くことが適当か、合理性を有するのかについて検討することが必要。
○ ライアビリティのリスク(年金の給付は物価スライドであり、ライアビリティの変動は国内経済の影響を受ける)、生産性のリスク(国内経済が好調の時にはスライドで給付額も上がる)を踏まえると、ALMの観点からは国内資産を多くするということにも合理性がある。
○ 巨額な資金であり、グローバルな投資を考えるべき。
○ バイアスという捉え方はいかがか。国民への給付である年金債務と資産サイドをマッチングさせることが必要。その場合に日本経済の抱えるリスクとマッチングしている国内資産を多めにしている、という説明でいいのではないか。その場合、日本経済とのマッチングに伴うリスクをヘッジするため外貨建資産も一定程度保有するが、経済的な関連性から国内資産を多くする、という説明になるのではないか。
○ 株式の上昇と賃金の上昇の相関係数で様子を見ることは可能か。
● 国内株式による運用でさえ、国会では大きな議論となった。バイアスなしで外貨建資産を購入することとすると、日本の資産を外国のために使うのか、という素朴な国民感情からの反感も考えられる。2年前の基本方針研究会で行った金融機関からのヒアリングで「日本は人口も減少し、経済も衰退することから、これからは外貨建資産」という見方が先方から示されたと記憶するが、そうすることには問題がある。
○ 国民感情への配慮は立派な理由。よくないのは結果ありきで適当な理由をつけてバイアスを正当化すること。

〜以上〜


〈照会先〉年金局運用指導課
     小川 えりか
 TEL [現在ご利用いただけません](内線3348)
 夜 間 3501-3450


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