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第4回 社会的な援護を要する人々に対する
社会福祉のあり方に関する検討会議事概要

平成12年9月29日(金)

10:00〜12:00
厚生省特別第1会議室

(議事概要)

○ 事務局より本日配布の資料の確認について説明の後、前回荒天で欠席された光田委員から補足報告いただき、続いて前回中途退席の委員から、前回テーマについての補足発言が行われた。その後、委員報告として加藤委員に「地域における福祉組織化の課題」、尹委員及び田内施設長に「在日韓国人の状況と取り組み(「故郷の家」の活動について)」というテーマでご報告いただき、自由討議に移った。

(光田委員からの補足報告)

○ 広島市の民生委員の活動地域は都心部、住宅部、農村部の3つに区分される。そこでの特徴としては、
(1) 都心部から農村部へ行くほど地域福祉、在宅福祉の相談が多くなる
(2) 生活保護や生活費にかかる相談は都心部へ来るほど多くなる
(3) 一人暮らしのお年寄りの友愛訪問活動は、農村部、都心部、住宅部の順で多い。
 要はドーナツ減少が起きていて、一人暮らしのお年寄りは都心部で非常に多く、住宅地は少なく、周辺農村部は多くなっている
(4) 主任児童委員の活動は住宅部で一番多く、小さい子供をもった家族が多い
 等が挙げられる。
○ 広島市における民生委員の選出は、まず10人から40人の民生委員で構成される民生委員協議会の地域ごとに推薦準備会というものがあり、この推薦準備会は社会福祉協議会、町内会、老人クラブ、PTA、青少年問題協議会、子ども会育成会、母子会または女性会、それに民生委員の代表で構成される。そこから選ばれた者が市町村の推薦会にかけられる。その際、推薦状の備考欄に過去のボランティア活動歴や、これからの活動に対する意思を載せて審査している。その審査を受け、市町村が推薦、知事がそれを推薦し、厚生大臣が委嘱している。
○ 民生委員の活動として、行旅死亡人に対してお盆前に法要を営むといったこともしている。平成9年までは年間23から最高39のご遺体があったが、平成10、11年には40数名に増加している。
○ 制度から漏れた人をサポートし、早期に発見するには、福祉的なコミュニティの確立が不可欠。これには全国に1万ある民生委員の協議会が、その最小の単位として適しているのではないかと考えられる。最近では、民生委員をサポートする福祉委員というものをおいて、さらに制度の網から漏れる人を救う体制を作る必要があると思っている。
○ 空気は通すが水は通さないといった、柔軟性をもったネットをどう作り上げるかが今後の課題である。そのために、民生委員自身の意識改革に加え、NPO、関係団体、ボランティアとの連携を強化していくことを重要課題とし、研修を進めている。

(前回中途退席委員からの補足発言)

○ 民生・児童委員には、複雑・多様化する住民ニーズに迅速・的確に対応するための地域のアンテナ役としての役割を期待している。
○ 主任児童委員制度というのは、少子化対策も含めて複雑・多様化する子供の問題に対して立ち向かう、恐らく唯一の全国的な組織だと思うので、その拡充と資質の向上を期待している。
○ 急ピッチに変わる各種の施策、制度を使うための情報提供、パイプの役割を果たすのが民生委員だと思う。そのためにも、新しい時代に対応する自主的な学習活動、行政的なてこ入れなどが必要ではないか。
○ 身体障害や知的障害に関する様々な相談員制度が縦割りにあって、専門的相談活動を行っているが、そうした各種相談員と地域とを結び付ける役割を民生委員に期待しており、民生委員の学習の意味も含めて、相互に情報交換を行う地域生活支援ネットワークを形成して欲しい。
○ 保健・医療・福祉は生活問題の中で一体不可分のものであり、一体的に立ち向かわなければ解決できない問題が多く存在しているはずなのに、介護保険制度の導入に伴い、老人福祉と介護保険、医療と福祉サービスの間に深く暗い川が作られているように感じる。その谷間を埋めるためにも、済生会の行っている無料低額医療のように、社会福祉法人が医療機関をもって問題に立ち向かう地域福祉というのは、これからの時代において新たな重要性を持っていると思う。
○ 地域には身体障害、知的障害、婦人、児童等の各種相談員がいるということだが、これらについては厚生省事務局から資料提供して欲しい。
○ 医療、保健、福祉の連携について民生委員の取組事例を紹介すれば、民生委員の地区ごとに医療、保健、福祉、施設、社会福祉協議会、それからボランティアに携わる人々を集めて定例会を実施している。そうしたところ、重複障害、自閉症、難病問題等について、関係者がうまくネットワークを組んで対応したという事例が幾つも挙がっている。
○ 前回、済生会からの報告を行った際に、済生会という全国組織を利用して現代の都市問題に取り組むべきではないかとの指摘を受けたことを受けて、済生会としてもこれは大変良い示唆であるとの認識で取り組んでいこうとの方向になり、今後行政とも相談しながら進めていきたい。

(加藤委員の報告)

○ 社会福祉というのは、共同性、共同体が崩壊をしてきたことに伴って登場してきたと思う。1次産業から2次産業、3次産業への移行に伴い、自然と人間との共存から自然破壊や公害のような人間の肉体の破壊、家族や人間の精神までの破壊が進んでいると思う。
○ かつては村・家の生活様式というものが明確にあったが、それが非常に希薄になり自立を促されたため、非常に危機的な状況になった。その中で、人間は一人では生きられないということで、共同性を求める運動が起こり、それをどう育て、支援して行政がバックアップしていくかということが課題となった。
○ 共同体を成立させていた内面的な価値観が崩壊したと思う。氏神信仰(人々は死ぬと村全体に融合して村を守る者になるといった信仰)が崩壊し、貨幣信仰、消費信仰へと移行する中で、大量生産・大量消費という使い捨ての意識が人間関係にも及び、危機的な状況となった。こうした中で、若者も障害者も友達や仲間が欲しいと感じ、人は共同性を求め始めており、それをどう作るかということが課題となった。
○ 30歳台の10年間、横浜寿町のドヤ街の中にある寿生活館で生活相談員をしていたが、そこは手紙の代筆やお金の貸し借りなど、何でも気軽に相談できる場所として機能していた。相談員は町に住んでおり、地域のことをよく知っていた。地域においては、困った時に相談に行ける場所・人がいることが大切である。
○ 寿生活館の活動としては、共通のニーズを有する人々の組織化があって、自然の成りゆきで、障害者の誕生会から友の会や店を作ったり、アルコール中毒の人などの要求がまとまって無料診療所ができたり、その他にも夜間銀行、識字学校などができて、住民の組織化が進んだ。
○ また、自然の成りゆきでは困難で、行政との協力が必要な場合には、生活館が住民の代表と行政の間に立って話し合いを重ね、解決していた。地域共同性の再生には、地域の軸となる場所・人の存在が大きいので、コミュニティーワーカーの育成が重要である。
○ 40歳台の10年間は児童相談所で仕事をしたが、児童相談所の機能としては、家に帰れない子供を無料で、一時保護できるシェルターの機能がが大切。児童福祉司は人数が少ないので、民生・児童委員、教師、PTA、ボランティアなどの地域の人々との連携がなければやっていけない。このように、地域共同性の再生には地域のネットワークの形成が必要で、そのためには相談できる場所・人が身近にいること、中でも一時保護できるシェルターが不可欠である。
○ 10年前に横浜市立大学に移ってからの経験では、精神障害や不登校といった思春期に起こりやすい問題は、精神的な支えを失って自分のアイデンティティーを持てなくなった、あるいは人間関係がとれなくなった人たちの苦悩だと思う。だから、それを支えていく、すなわち、環境破壊、肉体破壊、精神破壊が起きたときに、それをどうやって蘇らせるかということが課題となる。
○ いったん「だめな子」として貼られたレッテル、ラベリングを克服し、自分を取り戻すことがなかなかできない。将来に向かっての「希望」と「夢」を持てない、生きている実感が持てないという問題に取り組むため、精神の生活支援センターや不登校の子のための虹の会を、いずれも地域のNPO法人設立で行おうとしている。
○ 持続してボランティア活動をしていこうと思うと、資金的な面や人の生活の保障の面で、ボランティアだけに頼るということはなかなかできない。そうするとNPOという問題は非常に重要で、この問題をてこ入れして欲しいというのが地域からの切実な課題である。
○ また、ボランティア活動を支えているのが社会福祉協議会で、横浜市金沢区の社協はボランティアセンターで、地域の福祉ニーズの把握、地域活動支援にすごく熱心に取り組んでいるが、地域の問題として、町内会の役員のなり手が少なくなっており、子供会も、そして民生委員もなり手が少ない。現在、地域の中で活動する意義や夢や可能性が見えなくなっている。地域をどう活性化するかという全体像が見えなければ、福祉活動だけが活発化するというのは難しいのではないか。
○ 阪神・淡路大震災の経験について本にまとめたが、そこでの「危機管理」という言葉には、危機に陥ってしまった時にどう対応するかという「クライシス・マネジメント」という意味と、これから起きるであろうことに対して日常的に準備しておくという「リスク・マネジメント」という意味の2つがある。日本の場合、「リスク・マネジメント」という面が弱かった。
○ 福祉とは、危機的な状況や問題が起こったときに、その問題をどう解決するかということ、その具体的な方法論を持つことが必要。単に話を聞くだけでなく、具体的な解決まで持っていく。そのプロセスの中には共感というものがあり、したがって「問題解決学」というのが福祉の基本だと思う。
○ セーフティーネットとして最も重要なことは、いつでも相談に行ける場所があるということである。そこに行けば情報がある、色々なことが相談できるという場所が地域の中では絶対に必要である。
○ スウェーデンの社会サービス法の翻訳を行って本にまとめたが、スウェーデンのコミューン革命というのは、人口2万人から3万人程度を小単位として、その中に福祉サービスに関するもの、すなわち財源、自治権、執行権を含むすべてをコミューンの中で民主主義的に選挙を経て行うということである。民生委員の選任について合議制で行うとの話があったが、地域の日常活動をやっている人として、地域の有力者でもボランティアでも構わないが、選挙をして選ぶのが適当と考えている。
○ 地域の福祉活動を起こすには、場所、人、費用が必要だが、できれば国立の大学院等を作って、コミュニティーワーカーの養成に本気で取り組んでもらいたい。現場と大学院等の交流を絶えず結び、そういう場を地方の各大学に1つぐらい明確にくまなく作っていくという事と、全国くまなく活動する民生委員制度というものが重なるように思う。
○ 民間と行政の役割分担(パートナーシップ)のあり方が今後の課題となる。例えば、金沢区にもホームレスが増えているが、相談する場はあるのだが、その行き場がない。
 今ある救護施設を内容的に幅広くして、精神障害者、知的障害者への対応をも兼ねる総合的な生活支援施設として機能させることはできないか。
○ 「保護」という言葉を使う限り、永遠に保護され続けることになってしまう。「生活保護法」ではなく、「生活支援法」と名称変更してほしい。一律にお金を渡す、住居を与えるということではなく、「夢」と「希望」を持って一人一人が何を望み、どういう生き方をしたいのかということに気付かせることが大切ではないか。

(尹委員及び田内施設長の報告)

○ 現在、在日外国人は150万人いる。その中で在日韓国人は63万人。日本への帰化者は年1万人程度だが、帰化者や子孫まで含めると100万人程度にのぼる。
○ 日本には、在日大韓民国民団と朝鮮総連がある。民団には48カ所の地方本部と310カ所の支部がある。その一つ、泉大津支部はデイサービス事業を市から委託され運営している。日本人のためにサービスできることは、共生社会の実現につながり、差別をなくすことにつながると喜んでいる。
○ 商工会も県レベルで組織され、信用組合・銀行もある。韓国系民団で2兆7,000億円、北朝鮮系総連で2兆5,000億円の預金があり、大変活発な活動が行われている。
○ 民族教育に関しては、全国に韓国系は4カ所、北朝鮮系は141カ所の学校がある。
 戦前からいる在日韓国人のための教会が全国に78カ所、韓国から派遣されているキリスト教の宣教師は、登録者数160名にのぼる。
○ 最近の在日韓国人の特色は、1世から4世までが生活していることだ。1世は本国に帰ろうかという迷いもあったが、2、3、4世になると生きる場所は日本だと考え、定住している。
○ 在日韓国人はこれまで差別と戦ってきて、かなりの部分で解決されているが、まだ高齢者の年金の問題等いろいろ残っている。それゆえ在日には、貧困の文化があり、母語さえも知らない文化の貧困がある。これをどう克服していけばいいかということも大きな課題である。
○ 「故郷の家」は、日本の高齢者の福祉施策が在日外国人にも平等に適用されるように、そして共に生きる社会を構築するという目的を持っている。韓国の言葉・食生活・習慣を生かしたまま生活できる場所として、11年前に特別養護老人ホーム「故郷の家」を設立、運営している。
○ 日本の老人福祉法にのっとった施設であるが、ハングルを使える職員がいて、韓国の床暖房であるオンドルを取り入れ、アリランが歌え、キムチと梅干しが食べられる施設である。ホームの中では南北が「統一」されており、韓国・北朝鮮の国籍に関係なく一緒に利用している。
○ 1994年には、福祉の現場から発信する映画として、日韓合作の映画「愛の黙示録」を製作。この映画は、厚生大臣賞をはじめとする各種の賞をいただいており、1998年には日本の大衆文化の韓国解禁第1号となった。
○ 施設を運営してみると、異文化を理解する専門職員の獲得に苦労があり、在日2世、3世は韓国語が不得手だったり、韓国から職員を探してくると、日本の地域社会との関わりにハンディがある。異文化を理解する専門的な技術をトレーニングする機会を施設職員の養成に取り込む必要がある。最近、資格化された社会福祉士、介護福祉士の養成にあたって、異文化福祉の知識や技能を習得できるカリキュラムや教材の開発が行われるべきである。
○ 在日外国人には、日本の福祉システムに関する情報収集の手段が少ない。そこで、介護保険の適用についても、それに対する知識がない。自己負担率の問題から利用したがらない。これらの様々な問題がある。
○ 在日韓国人に関しては、全国の310の支部、そして教会があり、学校がある。その組織が日本の社会に積極的に参画できることがとても大事だと思う。例えば、外国人相談員として地方自治体が任命する等、外国人が参画できるシステムが必要である。
○ 住宅に関して、システムの違いや、保証人の問題などに起因するトラブルが多い。
○ 医療は、緊急時にどこへ行けばいいのかということを分かるように、協力病院を指定を指定して、通訳のネットワークを作るといったシステムが必要だと思う。
○ 失業者やホームレスに、有償ボランティアとして施設で働いてもらう。そうすれば、夢や希望が持て、人間としての誇りが持てるのではないか。韓国でIMFの失業者を福祉施設に派遣し、失業者も受け入れる施設も皆が喜んだ例がある。
○ 相談体制は、例えば問題児のとらえ方をとっても、日本と韓国では違う。価値観、生活習慣の違いを考えると、外国人のための日本人相談員と外国人相談員がチームになって対応するといったシステムが望まれる。
○ 在日コリアンがいま一番望んでいるのは、マイノリティーに対する文化振興である。
 言葉を知らないとアイデンティティーの確立に影響がある。子供の頃から母語と日本語の2つを教えることが必要である。
○ そのためには、外国人総合福祉センターの様なものが県単位で整備され、そこに行けばビザから教育、医療、就業、福祉まで全部に対応できる、いわゆる「ワンストップサービスシステム」が構築されれば、外国人が利用しやすくなる。また、問題の予防にも役立つ。
○ 在日高齢者には、韓国に帰っても受け入れてもらえないと不安に思って日本に永住する人も多く、そういった人々のために、韓国人の医者、看護婦、ソーシャルワーカー等専門家が必要。両国の間で協定を結び、お互いに働く場の壁をなくすことも、これから高齢化社会に対応していく方法として検討していただきたい。

(自由討議)

○ 地域福祉においては、場所、人、費用の問題が課題となるとのことだが、地域に身近な社会資源である「学校」という場の活用、その他の地域における社会資源の活用について、なにか考えはあるか。
○ 戦前の大阪の釜ヶ崎には5,000人の労働者がおり、その内1,500人が宿泊所に入っていた。今は20,000人いるので、6,000人分の宿泊施設があれば今回のようなホームレスの問題は、少なくとも大阪では起こらないと思う。北朝鮮に米の支援を行うよりは、1粒の米の支援も受けていない日本のホームレスを救済する方が先ではないか。
○ 医療と福祉を総合的に展開する済生会活動として、相談事業の実施は必要と考えていたが、今の医療や福祉の施設には、対象患者が安心できるようなシェルターという機能はまったくない。今後はそうした機能を持たせることが必要だと思う。
○ 婦人会、子供会、町内会などは、参加している大人が義務的な意識を持ち始めており、年々人数が減っている。現在、教育改革国民会議で小中校生にボランティアを義務付けよという議論が展開されているが、そもそも今の大人たちにボランティア意識があるのだろうか。
 さらに、地域のボランティア活動に対しては、なり手がいないという話もあるが、一方で、長年一部の人たちで窓を閉めており、企業サラリーマン退職者にはなりたくてもなれないという現実もあり、そこのところを今後徹底的に研究する必要がある。
○ 先日ある講演会で民生委員の人から質問を受け、本検討会の内容についてのものであった。本検討会も全国的に注目されているなと感じるとともに、ボランティア意識を民生委員にもう少し強く教育すべきではないか。
○ 民生委員の基本的性格として、自主性・奉仕性・地域性というものを打ち出しており、民生委員自らが意識改革をしている。
 現在、全国に21万人を超える民生委員がいるが、昔の残滓がないとは言えないまでも、自己改革している。奉仕活動をしようという心のある人を今、日本全国からこれだけの人数集めようとしても非常に困難だと思う。日本の民生委員制度は世界に誇れる制度だと思うので、今いる人材を有効活用することが大切だと思う。
○ 福祉は「あいあい傘」だと思う。自分は半分は濡れるけれども、半分は相手の温かみを感じることができ、相手にも温かみを感じさせることができる。自分だけがいつも傘の中に入っているという観念は捨てて、そういう考えで活動することが大事だと思う。
○ 民生委員は政治的にも宗教的にも中立でなければならず、それを徹底している。公選制にした場合、それを担保できるのかということも考えなければならない。
○ この数年、民生委員の研修というものを重要視しており、現在も、計画的な研修を進めるための方策を確立しようとしている。新しい民生委員活動を、今まさに作りつつあるということを理解してほしい。
○ やはり住むところというのが重要である。現在、東京を例に取ると、生活保護受給者116,000人に対しホームレスが5,800人と、わずか5%程度である。東京に限っていえば、救護施設なり民間の施設なりが整えばホームレスの問題は解決できると考える。
○ 加藤委員の報告では、誰でも利用できる場所、何でも相談できる場所等の確保についての話があったが、実際には今の社会の中にすべての資源があると思う。それがなぜ活用されないのかを考えるべきではないか。
○ 阪神・淡路大震災の被災者としての実体験からすると、マスコミを通じてもっと政府・行政が救助をすべきとの声が強かった。ただ、実際に不自由はあったものの、その中で助け合いのコミュニティができつつあったと実感できたし、すべての人が優しく、相談機能が専門家なしで果たせていた。それが、行政が出ることによって潰れていって、元のシステムに戻った神戸には、できつつあったコミュニティがなくなったとの実感がある。
 だから、これがない、あれ必要だというものは全てあり、何かが阻害要因になって利用できないという面が強いのではないか。
○ 今ある資源をどう生かし、現代的に組成し直すかが課題である。地域で「学校」が日常的に開かれていれば、社会福祉の場として活用でき、密接な関係になると思う。
○ 行政の指導で関係づくりを進めてもだめで、住民、ボランティア、民生委員などの側から発言して、それを制度にのせていくことが社会福祉にとって一番重要なことだと思う。
○ 地域だけではどうしてもできない最後のよりどころは、生活保護法や公的扶助等によって国が最終的に保障することになろう。その生活保護法に何を求めるかについて、住民の意見をもっと吸い上げて、それをやらないと「どこかで作られたもの」になってしまうとの不安があり、今後の討論に期待している。
○ 一時保護機能や緊急保護機能のある場所は、都市ごとにもかなりあるが、例えば土日や夕方になると使えなくなってしまうといった阻害要因があると思う。
 地域や共同性をどう再生するかという話の中で、共生や共感というものは身近な人にはかなり及ぶが、見知らぬ人には及びにくいという限界がある。同じ被害を共有していればその時は共感が芽生えても、日常に戻れば共感が薄まるのは人間の本性。見知らぬ人にも及ぶような社会システムを作っていくというのが、セーフティーネットの意味だと思う。
○ その地域に何年住んでいるかとか、あいつは新参者だとか、地域社会にはそういった構成員の区別をつけようとする「嫌らしさ」があり、地域の持つ、オーバーステイの外国人やホームレス、生活保護施設入所者といった課題を前にして、どう克服していくかが大事。そこで課題となるのが、地域の構成員をどうとらえるのかということである。住民登録している人だけということではなく、スウェーデンの二重登録のような、もう少し柔らかい地域の発想をしないと、共生論というのは難しいと思う。
○ オリンピックの開催されたオーストラリアは、戦後かたくなに白豪主義を堅持していたものが、原住民アボリジニ出身の女性が最終聖火ランナーを務めるまでの大きな意識改革を行った。
○ 人間には、誰しも同じという面があり、それを強調し、自分に近づけ、自分に取り込んでいくというのが同化政策であった。それに対し、人は同じであると同時に全部違う個性を持った人であるという認識を持ち、その違いを取り入れていくことこそ新しい近代化であり、国際化ではないだろうか。現在、国政の場で議論されている「在日外国人の地方参政権」への反対論のひとつに、権利が欲しければ帰化すればよいとの主張があるが、これは同化政策の発想だと感じる。
○ 自分にとって異質なものを、拒否せずに受け入れることができるかどうかが問われており、それを最初に手掛けるところが地域だと思う。異なる人々がお互いにふれ合って学習し、違いを理解し、認め、受け入れ、そこから人と人との信頼を作り出していくというのが地域であり、それに対して行政が参加するというのが行政の支援である。これからは、行政に参加するのではなく、行政が地域の住民活動に参加するという姿勢に変えていかなければならないと思う。
○ スウェーデンのコミューンにおいては、外国人の地方参政権を認めたということが注目に値する。それは、国民という国家の一員という理念よりも、コミューンの一員という理念が優先したからだと理解している。そこにコミュニティという概念があり、そのコミュニティを作るのに民生委員の役割は非常に大きいというのは、皆の一致した意見だと思う。
○ 神奈川県を例にとると、廃藩置県の時に自然村が922あり、そこに神社が1,182、寺が1,836、寺子屋が946あった。これが共同体の資源であり、その資源が見事に生かされていた。それに対して、現在は実に豊富な社会資源を持っているので、それをいかに活用し、組織化し、ニードに結びつけるかということが課題ではないだろうか。
○ 異文化理解を深めながら、どうやって地域福祉を作り上げていくのか。我々は、今まさにそういう課題に直面しているのではないだろうか。


(照会先)
厚生省社会・援護局企画課 堀
 03(3595)2612(直通)


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