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第3回「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」
検討委員会議事要旨

1.日時 平成12年9月18日(月)10:00-12:20
2.場所 中央合同庁舎第5号館(26階)共用第9会議室
3.出席者
委員(敬称略 50音順)
 垣添委員長、雨宮、上田、宇津木、小幡、金澤、具嶋、黒木、櫻井、平野(地神委員代理)、
 矢野(清野委員代理)、高芝、福嶋、町野、丸山、南、山口
 (欠席) 位田、笹月
オブザーバー
 作業委員会 (塚田、二見、吉田)
 厚生省 本間、中垣、野口、(前田、後、福原、安藤、岡田)
 文部省 黒崎
 通商産業省 福島、(山本)
 科学技術庁 佐伯、(郡、小郷)
  *括弧内のオブザーバーは、討議に参加せず。

4.議題

(1)「個人情報保護基本法制に関する大綱案」(素案)について
(2)「疫学的手法を用いた研究等における生命倫理問題及び個人情報保護の在り方に関する調査研究班」について
(3) 遺伝子診断等に関する学会のガイドラインについて
(4)「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」策定のためのアンケート調査の第一次集計について
(5)「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」原案のイメージについて

5. 配付資料

資料1 「個人情報保護基本法制に関する大綱案」(素案)(平成12年9月8日個人情報保護法制化専門委員会)
資料2 「疫学的手法を用いた研究等における生命倫理問題及び個人情報保護の在り方に関する調査研究研究班」ガイドライン叩き台(検討素案・未定稿)
資料3 遺伝子診断等に関する学会のガイドラインについて
資料4-1 「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)調査」ミレニアム指針研究実施状況等調査<第1次集計結果>(機関長用)
資料4-2 「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)調査」共通指針策定検討課題調査<第1次集計結果>(研究者用)
資料5 「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」原案のイメージ
資料6 今後の日程について
6. 議事内容

(委員の代理出席について)

事務局 委員の代理出席については、委員長ともご相談の上、自由にご意見は言っていただくものの、採決等があった場合にはご遠慮いただくことでよろしいでしょうか。(一同了承)

<議題:「個人情報保護基本法制に関する大綱案」(素案)について>

高芝委員より資料についての説明が行われた。

委員長 適用除外というのはどこに書いてあるか。
・ ここの資料にはついていない。9月8日段階では、別の資料で4つの方法を提示している。
・ この法制化はどこが主催して、委員を選んだのか知りたい。情報の専門家、自然科学系の専門家が入っていない。
・ 現在の個人情報保護基本法制化の委員会の前に、当時の高度情報通信社会推進本部の個人情報保護検討部会があり、その検討部会が昨年の11月に中間報告を出している。その部会にはいろいろな分野の先生方が参加されている。人選の問題については、何とも申し上げる立場ではない。
委員長 この検討委員会でこれを紹介いただくのは、遺伝子解析等を含めた自然科学に関する個人情報をどう扱うかという視点が抜け落ちてはいないかという心配だと思う。これは今月中に取りまとめ予定か。
・ そのように聞いている。
委員長 完成された段階でまたご報告いただきたいと思う。

<議題:「疫学的手法を用いた研究等における生命倫理問題及び個人情報保護の在り方に関する調査研究班」について>

丸山委員より資料についての説明が行われた。

・ 研究班の名簿を見ると、実際に研究を進めている方がそれほど入っていない。本当に疫学的手法を用いた研究がこういう形でうまく進められるかどうか心配である。先ほど、一般法と特別法、そういう形の分類をされていたが、遺伝子解析研究というのはほとんどの研究で入ってきている。将来的にも遺伝子解析が伴わない研究というのは、ほとんどといっていいほどなくなってしまのではないかと思う。この研究班の取りまとめようとしている対象をどのように想定しているのか。倫理審査委員会についていろいろ検討されているが、遺伝子解析が入っていると共通指針型の倫理審査委員会、疫学研究になるとまたこちらで規定したような倫理審査委員会、両方入っていると一体どうなるんだろうかというような心配がある。研究の現場は極めて混乱するという気がする。
・ 適用対象は、最終的には医学研究を広く対象にするということである。現在の叩き台で定義しているのは、1つが、人を対象とする健康に関する研究で、観察研究と介入研究、観察研究は疫学研究と生態学的研究、横断的研究、症例対象研究、コーホート的研究などの分析的研究を言っている。このあたりは疫学者、あるいは公衆衛生研究者がするものであるが、介入研究のほうで臨床試験、野外試験、地域研究などを挙げている。臨床試験では臨床研究、医学研究の単発の症例報告を含ませようか、含ませまいかという議論がある。それ以外の複数の症例を対象とするものはほぼ取り込む。あわせて、疾病登録あるいは病院統計のような登録統計調査事業も疫学的手法を用いるものであれば取り込もうということにしている。委員構成は、当初は疫学研究を主として人選が進められた。疫学者あるいは公衆衛生研究者が多かった。議論が進むに従い、医学研究のほとんどがカバーされてしまうということになってくると、臨床研究に携わっている方が少ないということで、2名参加いただいた。この後、叩き台を専門委員会に出すのと相前後して、メーリングリストで意見を出していただこうと思っている。外科、内科の方、合計8〜10人の臨床研究に携わっていらっしゃる方に参加いただいて、実際に研究されている方の意見を聞くことにしている。この研究班は、残りの者は、医事法をやっている者と生命倫理をやっている者で、大体半数ずつで当初出発した。疫学あるいは公衆衛生研究者が5人前後、それから、人文系の医療に関心のある者が5人前後で、途中から実際に医学研究一般に携わっている方を追加した。指針の重複の具合は、常に共通指針あるいはその前のミレニアムのガイドラインをにらんでいる。重複して矛盾がないように、もし基準が異なるときも、おおむねミレニアムのガイドラインのほうが厳しくなるということに結果的になってしまうので、医学研究をして、遺伝子解析研究が含まれる、あるいは含まれる可能性のある場合は、厳しい方のヒトゲノム基本原則及びミレニアム指針、あるいは現在つくられている共通指針にのっとれば、この指針もクリアできるような内容になっている。
・ 疫学的手法に関するガイドラインと聞いていたが、医学研究全般について検討するという姿勢でしょうか。それがこのような形で進められて、ほんとうにいいものができるかどうか大変心配だと思う。
・ もしこの研究班のタイトルが、内容的に「科学的手法に基づく医学研究等における」ということであれば、これはやはりそのように変えなければいけないと思う。ここから遺伝子のことを除くということであればおかしな話になる。資料の中では、遺伝子を除くということが書かれていない。これは極めて混乱を招く。根本的に考え直してほしいと思う。「死体」というところがあるが、遺伝子を除くとしても、「死体から収集される資料を用いなければ成り立たないと倫理審査委員会が認めた場合に限って」ということがある。病理の方々は、自分たちがやることを全部倫理委員会に出さなくちゃいけないのかという問題になる。現実問題としてかなり無理がある内容のように思う。「科学的手法を用いた医学研究等における」という形で全体を考えるならば、相当の覚悟でやらないといけないと思う。
事務局 厚生科学審議会の先端医療技術評価部会の中での議論というのは、1つには、この遺伝子解析研究について、人権保護を図りながら研究を進めていく適正な方策というのを考えている。もう一つは、全体をカバーする、例えば日本にはヘルシンキ宣言みたいなものがないので、臨床研究全般について人権保護あるいは個人情報保護の観点から議論をしていこうという、大きく分けて2つの流れがある。
 前者についてはこの検討委員会で、後者については部会の下に専門委員会を作り、その下に丸山先生の研究班が置かれている。
・ 今ご紹介あったのは、おそらく厚生科学研究費でやっている研究班の内容ということだと理解した。
 研究班であるので、いろいろな研究内容はある程度の自由性があるのだろうと思う。これが1つのガイドインとして、臨床の研究あるいは公衆衛生あるいは疫学の研究がこうなくてはならないというような国としての方針というような形に直接つながるとは考えていない。
事務局 専門委員会で疫学というのが何かという議論があった。臨床研究についての議論というのは、非常に幅の広い議論である。したがって、この研究班で議論の材料づくりをしていただいて、それを専門委員会でご議論いただき、さらに先端医療技術評価部会でご議論をいただく形にしている。

<議題:「遺伝子診断等に関する学会のガイドラインについて」について>

事務局より資料についての説明が行われた。

委員長 前回、診療と研究の議論のところで、既に人類遺伝学会あるいは家族性腫瘍研究会あるいは関連した6学会が、今年の末に共同のガイドラインをつくるというお考えが示され、それに関連して、本日、資料が配られたということである。
・ 人類遺伝学会の倫理ガイドラインのご説明で1つ抜けていることがあったので補足する。このガイドラインの性格付けということであるが、このガイドラインは学会が制定するガイドラインであるので、会員以外の者に規制するというようなことにはならない。「今後、関係諸学会と論議する所存であるが、国として遺伝学的検査に関して、何らかの方針を立てることを強く要望するものである。」と記載しているので、強く要望したいと思っている。

<議題:「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)調査」第1次集計結果(機関長用、研究者用)について>

事務局より資料についての説明が行われた。

・ 研究でも診療でもないという領域がある。それは検査会社が、あるいは検査試薬や機器の開発会社が検討をするという場合。その会社自身の中で検討されるようなときに使う遺伝子サンプルの扱い、そういう検討の部分というのが少し落ちているのではないかと思う。
事務局 検討と研究の違いだが、通常は、例えば検査会社あるいは医療機器会社なり製薬会社等で行われている検討というのは、研究と呼ばれているのではないかと思う。
・ それだったら結構であるが、遺伝子の研究ではなく遺伝子の検査法の研究なので、対象に入っているのかどうか、少し心配である。
・ 臨床と研究の間に属するものというのはグレーンゾーンという言い方をすれば極めて多々ある。検査会社の例は、その中の1つの項目と理解できる。作業委員会の方では、検査手法の改良とか、あるいは、それが正しく行われるかどうか、そういうことをどう取り扱うのかというのは議論になっている。結論はまだ出ていないが、基本的に、ヒトの試料、被験者の試料を使うことから考えると、研究的色彩があるのではないかと議論が進んでいる。
委員長 まだごく少数の意見ではあるが、研究者用の回答を見ると、この検討委員会とほとんど同じような形で、完全に二分するような意見が出ている。回答された研究機関、あるいは企業がそれを研究と認識していなければ、ここから外れてしまうという問題も出てくる。次回のこの検討委員会では、アンケート調査結果の取りまとめが報告される予定である。

<議題:「ヒトゲノム解析研究に関する共通指針(案)」原案のイメージについて>

事務局より資料についての説明が行われた。

・ これはあくまでもイメージということで、特に書式等々がこういう形になるだろうという資料と理解している。作業委員会としては、これを最終的につくり上げていくためには、大きく分けて3つの作業がこれから必要と思っている。第1点は、特にこの検討委員会において大きな方針、例えば、医療と診療のところをどうするのかという大きな方針がまだ出ていない。それから、共通指針の位置付けをどうとらえていくのかという方針を取り決めていただきたい。2番目は、この個々の項目について作業委員の担当者を決めさせていただいている。その作業委員の方々から、ミレニアム指針及び基本原則を考えて、あるいは諸外国の例も踏まえながら、それぞれの部分について案を出していただくことになっている。その作業は現在始まったばかりである。3番目は、アンケート結果は傾聴に値する意見もあると思っている。その3つを念頭に置きながら最終案に向けて、あるいは叩き台に向けて進めて行こうと考えている。
・ ミレニアム指針を頭に浮かべながら検討したときに、国立あるいは大学等の研究所は多分対応できると思うが、産業界であるとか、それから民間の研究所であるとかは、作業委員会の中でどんな意見が出ているのか。民間の場合にはいろいろな規模のものがあり、日本の産業界の育成のためにといったところまで考えてこういうものを練っていく必要があると考えている。
・ 今回の共通指針は、ミレニアムというのは非常に限られた施設を想定していて、共通指針はオールジャパンということになる。特に産業界の問題が入ってくるので、産業界の方々の意見が出てきている。
 この内容は、ミレニアム指針からは変わる大きな点ではないかと思う。
・ 結局、診断・治療とか医療の場における問題というのはここには入らないというのが基本方針となったのか。先ほどの疫学というのはかなり広くとらえられているので、そういうものをきちんと作っていくのか、あるいは、もう一つ別にそれはどういう手続で次に作ろうとしているのか示さなければならないと思う。
・ そういう誤解が大変怖かったので、事務局が注意して説明した。診断、治療の問題はまだ結論が出ていない。むしろこの場で出していただかないと、作業委員会としては作業を進められない。
委員長 アンケートの途中経過でも、意見が完全に割れるような形で出ている。これがどんどん数が増えてきても、多分同じような傾向が続くと思われる。前2回、この検討委員会で議論いただいた内容を踏まえても、診療の現場における遺伝子解析という話は、依然として解決がついていないと思っている。
・ 先回の検討委員会で研究だけではなくて診療の場面もやはり含めるべきだと申し上げたが、現場がルーティンにやっているものがある以上、それに網がかかるのは大変問題だという意見があった。後で話を聞いてみると、誤解というか、診療の場における遺伝子診断あるいは染色体診断というものを非常にやりにくくするものを作ろうとしていると誤解していた。そういうものではなく、今まで何もないところが問題であるとご理解いただいた。やはり診療の部分は含めるべきではないという意見の中に、そういう誤解に基づく部分がかなりある可能性が高いように思う。もう少し現場を理解していただきたい。
 染色体研究から白血病の病性診断その他に使うような、本当に臨床的にルーティンワークになっているものを規制するのが目的ではない。そういうものはそういうものとしてきちんと認知してあげるということが、ある意味では大事なことであって、染色体なり遺伝子なりを調べる以上は、こういうものはみんな認めているということを理解してもらうことが大事と思う。あるところで、もうそろそろ決めていただかなくてはいけないのではないかと思う。
・ 研究にかかわる診療を先ほどグレーンゾーン、あるいはオーバーラップゾーンという言い方をされていると思うが、その場面ではなくて、純粋の診療の場面を含めろという意見と考えてよいのか。
・ そのつもりで考えている。
委員長 例えば残存白血病細胞の診断を、遺伝子を使って解析する。ほとんど臨床検査の段階で、場合によったら外部の会社に委託されているようなことが日本中で行われている。その結果に基づいて白血病細胞がまだ残っていれば化学療法を追加する、そうでなければ打ち切るといった判断の根拠になるような情報を遺伝子を使った検査で得ている。「遺伝子」と名前は付くが、臨床の現場でそういうことが行われている。
事務局 3点ほどご説明したいと思う。まず第1点は、非常に行政的な割り切りであるが、科学技術会議で決められたのは遺伝子研究の原則、ミレニアム指針というのは、ミレニアムでやられる遺伝子研究の指針、逆に申し上げると、遺伝子研究の原則をもとに具体的な指針をつくろうということで始まった。その範囲を飛び越えるというのがどうだろうかというのがまず第1点。第2点は、研究というのは、提供者のことを考えて、提供者にその利益をもたらすものではなくて、同じような病気に苦しむ将来の方に利益をもたらすものである。それに比べて医療というのは、目の前にいる患者さんをどう直すかというものであって、おそらく考え方が根本から違うのであろう。3点目は、厚生省として、例えば人類遺伝学会から、6学会から要望が出ているという紹介が先ほどあった。以前、健康政策局が所管であると紹介したが、本日は健康政策局から説明申し上げる。
健康政策局本間課長 一般臨床現場では医師が最新医療知識に基づいて、また十分なインフォームド・コンセントに基づき、患者さんに対して最善の医療を行うということが当然であって、技術の高度化に応じ、関係学会が専門性に基づいてガイドラインを作成して、広く提供することは有意義だと考えている。学会等とも相談をしながら適切に対応したいと考えている。このガイドラインにどのように行政として関与すべきかという点については、一般臨床レベルでの診療行為は、基本的には個々の医師が自らの責任で実施することが大原則である。診療指針を厚生省がつくることは、医師の裁量権との関係もあり、慎重であるべきと考えている。
・ 病院の中のルーティーンワークでやれる検査については、この指針の対象にしないということを明言して欲しい。どうしてかと言うと、場合によっては、中央検査室でその血液をとっておくことができるからである。しかもその場合は、やろうと思えば研究に使えることができる。研究の目的に使う場合には、きちんとインフォームド・コンセントをとって、血液を残すということを明言して了解をとらなければいけないということを言って欲しい。そうでないならば、この対象にしないということをやはり明言すべきだと考える。つまり、野放しにすれば何でもできる。そこまで考えたということはきちんとしておくべきではないか。
・ 人類遺伝学会のガイドラインの位置付けは、厚生省としてはどのように考えるのか。今後、実際に医療の場で役立たせていただきたいというガイドラインを具体的に提示しているが、これはあくまでも会員にしか拘束力がないものである。厚生省として、この内容をどう吟味されて、医療の場で役立たせていただけるのか、お聞きしたい。
健康政策局本間課長 行政として対応すべき問題かどうか、内容について整理をして、必要なものがあればそれなりの対応をするということで、対応すべき問題かどうかということも含めて十分検討の上、学会とも相談をしながら対応していきたい。
・ 具体的な提案としては、広く国民の方々が心配しているのは、遺伝子の研究について心配しているのではない。遺伝子を解析するということについての不安というのが大きいと思う。特に遺伝管理体制がきちんとないとか、情報が得られないとか、そういうところでの心配が一番大きいと思う。この指針の表題は「ヒトゲノム・遺伝子解析」と「研究」をとって「遺伝子解析に関する共通指針」という形にして、遺伝子解析をする際には、研究と診療とその中間というものがあって、それぞれの場合にはこれこれこういうルールでやりますということを明言していただきたい。特に診療の場面に関しては、人類遺伝学会その他のガイドラインを十分、まだ不十分な点があると思うが、専門家で練ったものがあるので、そういうものを遵守すべきであるとか、参考にすべきであるというようなところだけを記載しておけばいいと思う。研究に関しては、今回決めるものを提示するというふうにすれば、広く応用のきくものになる。この機会に健康政策局でも、時期を置かず真剣に検討してくださるでしょうから、そういうことを提案したい。
・ 最初、研究と診断・治療が一緒に入るときは、その中にどこか非常にわかりやすい表が出ていて、遺伝子研究、ゲノム研究の分類がきちんと出ていて、そして、例えば横のほうに倫理委員会、それからインフォームド・コンセント、匿名化、そういうものがどこまで必要とするかということがきちっと分けられるようなものができれば、すべてを含めた指針というのができると思った。メーリングリストでの議論を見ると、やはりかなり難しいかなという印象である。診断・治療の中に含めるべきだと思っていたが、もしそれができないのなら、研究ということに限定して、まずどこまで含まれるかということをはっきり明示して、それを作っておいて、もう一方では、ゲノムだけではなくヒトの材料をどう使うか、例えば細胞バンクの問題もあるし、そういうのを別な方向に移したほうがかえってわかりやすいのではないかと思う。
・ グレーゾーンが非常に多いということであれば、そこは、この指針が適用されない医療・診断ということを明確に絞り込むことによってグレーゾーンをなくしたいと考える。医療・診断については早急につくっていただくということで、少し広目に研究をとらえるということは、行政的な仕切りの中でも可能ではないかと思う。
・ グレーゾーンというのは、やはりオーバーラップゾーンという言い方のほうがいいと思う。研究についてのガイドラインと診療についてのガイドライン、これは先ほど厚生省の方が、診療については、診療の自由があるからと言われたが、医師法の改正もあるし、もう昭和30年代にあったわけですし、場合によっては、少なくともガイドラインという形で規制あるいは指導を加えていくということはもちろん診療の場面でも可能で、そういうことをにらんで、診療のガイドラインと研究のガイドラインというものがあって、オーバーラップゾーンは、これは両方適用される、そういう領域だと思っている。
事務局 指針の適用の範囲を明確にするというのは必要だと考える。研究者の方々が迷わないためにも、あるいはそれを提供していただく国民の方々に明確なご説明をする上でも、その点は必要だろうと考えている。
委員長 共通指針の適用の範囲が明確化されれば、例えば、先ほど作業委員会として今後作業を進めていく上で、ここの検討委員会としての考え方が明確になったと理解してよいのですね。
・ ぜひお願いしたいと思っているのは、診療にかかわる部分に関する何らかのガイドラインが必要だということであって、共通の意見だと思うが、その保証のない限りはここで主張し続けたいと思っている。
 つまり、それができるということの保証がない限り、研究のガイドラインだけいくら作ってもだめだというのが基本的なことである。基本原則の中でも、診療に関するものは必要であるということを述べている。それをどこかでやらなければいけない。本来は診療のものが先にできているべきである。それがなく、研究だけ先に進むということに対して極めて危険を感じている。その保証がない限り、ここでやるべきだと思っている。
・ 研究者の立場に戻ると、指針だらけで、一体どれを見たらいいのかよくわからないというのが最悪の事態だと思う。自分の研究は一体どの指針に当たるのかということをまず明確にできるような形が望ましいと思っている。その上で、臨床研究に関する大きな指針というのは、ヘルシンキ宣言が基本に多分なると思っている。そういう中に臨床試験のものであるとか、遺伝子解析のものであるとか、疫学のものであるとか、あるいは全体に大きくかけて、試料採取のときのガイドラインと、その中に遺伝子解析のための指針が入ってくる、そういうふうな大枠で一応イメージはしていた。その中の一部が先に走り出しているというのが現状と思う。これは、その事態で問題になったことなので、こちらを先につくり上げることは必要なことだと思うので、今作業を進めているわけで、最終像としては、例えば医療のガイドライン、それから研究のガイドライン、遺伝子はその中のone of themという形が最も理解しやすい、守りやすい指針になるのではないかと思っている。そういうとらえ方でいいのかどうか、そのあたりの整理を一度ぜひ事務局で行っていただいて、あるいはこの委員会のご意見も踏まえて、そういう形で最終的に叩き台をまとめていきたいと思っている。
・ 診断・治療に関しても、一生懸命そっちの方もやるということができないと先に進まないのではないかと思う。それからもう一つ、「基本方針」に4項目書いてあり、この4項目を見ると、何か研究者とか医者というのは、放っておくと何するかわからない人種であるということが、潜在意識の中にあるのではないかと思う。ゲノムというのは非常に重要なポテンシャルを持っているので、そういう意識ではなく、ゲノムの有効性と、それから基本人権の重要性という、その2つだけが基本方針というふうに掲げていただきたい。
・ 臨床というのはこういうものだという定義はあったが、非常に抽象的である。こういう遺伝子解析を伴った診療をやろうと思うと、高度先端的な医療に入ってくるように思う。遺伝子解析とは何かという定義の前に診療上の遺伝子解析の範囲とは何かという非常にはっきりしたものがないと、現場はものすごく困ると思う。
・ 先ほどのアンケートの中にも、個人情報保護法制、法律を制定するのが必要であるという意見があったが、今後出てくる基本法でヒトゲノムが全部それで済むかという問題ではない。個人情報保護基本法というのは法律で、国の行政機関、それから今後大学がどうなるかわからないが、独立行政法人、そして民間事業者といった整理をする。それに対してこのヒトゲノム解析研究は、研究機関の長ということで1つの単位にするので、法律でないものを持ち得るのではないかと思う。個人識別情報については、匿名とすれば一応個人識別情報ではなくなるので、個人情報保護法には入らないが、匿名化するかどうか、しなければいけないかどうかということをやはり指針の方で書く必要があると思う。死者の情報に関しては、個人情報保護法では生存する個人に関する情報と限っているので、例えば亡くなった方の得られた個人情報をどういうふうに管理するかというのは、ここで盛り込む必要があると思う。個人情報保護法の方では、本人からのアクセス、つまり情報としてある限りは、本人からアクセスして開示を求めて、あるいは削除を要求したりとかが必要になってくる。そういうことについてこの共通指針でどのように扱うのか。もう一つ問題は、家族からのアクセスに関して共通指針の中で書く必要がある考えていただきたいと思う。
・ この共通指針をつくられる中に1項だけ国際的な問題の扱いを入れていただきたいと思う。それは、現にアルツハイマー病の検体というのは、今、海外からしか手に入らないような状況になっている。そういう場合、あるいはこういう問題、倫理の問題がうるさいから、海外からサンプル、民族のサンプルを集めてくるとかいう研究を現にやっている。ヒューマン・サイエンス・プログラムのような国際研究もある。こういう場合、ミレニアム指針では、厳しいほうを採用するというようなことは書いてあったと思うが、もう少し具体的に、サンプルとかあるいは人種の扱いとかいうことに関する視点を少し入れていただきたい。
・ 今年末に指針が出て、これを遵守・運営する場合に、やはりその後のバックアップ体制が必要ではないかと考える。アンケート調査にあったように、全国的なIRBを作るとか、それからヨーロッパで試みられている地域ごとのIRB、そういうのを作って、やはり小さな企業、研究機関がやっていけるようなバックアップ体制が、国としても企業の団体でも必要と思う。この指針を作成すると並行して、そういう将来の出た後の運用施策についてもぜひ考えていただきたい。国としてそういう点も考えられているのかお聞きしたい。
事務局 例えば業界団体で何かやるとか、あるいは学会あるいは地域ごとに何かを運営していくというような方向性は、当然考えられる方向性の1つと考えている。実務的に、例えばミレニアム指針を基本と考えた場合に、対応できないから緩和することというのは、なかなか世の中の理解を得られにくいのではないか。何かの理屈、論理的な理屈があって、あるいはミレニアム指針が目指している方法、精神というのは、こういう形でもカバーできるから、こういう方法もあり得る、というようなことは考えられる。
 ただ単に規模が小さいからとか、産業界だからとかいうようなことで議論する方向というのは、なかなか世の中の理解という面では難しい点が残るのかなと考えている。ただ、いろいろな方向性、いろいろな代替措置を考えるというのは当然ではある。積極的なご議論をお願いしたい。医学研究の畑においては、ヘルシンキ宣言という非常に立派な宣言が数十年前からあって、厚生省はそれを何かの形でまとめる努力をしてきたのかということになると見当たらない。ミレニアム・プロジェクトが始まるということで、遺伝子解析研究の指針だけ先行させたわけで、大枠が決まっていないところで遺伝子解析研究だけ進めていったというところがある。そういう観点から、ヒトにご協力を得て行う医学的な研究、あるいはヒトの組織を用いる医学的な研究、このあたりに対する大枠をまずセットしないと、中の特殊なところだけのご議論というのは、なかなか難しいのではないかというご意見である。事務局としても、同じ問題意識を持って先端医療技術評価部会にご相談をし、そういう大枠を決めるという意味で、部会でのご議論を賜っている。一方では、遺伝子解析研究という特殊なところに目を当てたこの検討委員会でご議論を願っているということで、大枠が決まっていないから、それを同時並行で進めているから混乱しているような印象を与えていると考えている。いずれにしても、そういう形で先端医療技術評価部会を中心に議論を進めていきたいと考えている。
・ 共通指針のまとめ方について、何本か柱があるだろうと思う。1つは、将来の研究の推進のためにやはり保存しておかなければいけない部分がある。そのことに関してご協力をいただくということもまた大事なことだと思う。将来の発展性があるということを国民の方々にも理解していただくということが1つ、柱の中には抜けているように思う。まずは柱を立てていただいて、それを少し補強する形で、学会のガイドラインに少し毛の生えた程度にまとめていただくのが多分良いのではないか。つまり、前のミレニアムは、はしの上げおろしまで少し云々するような部分があって、大枠をまず作っておいて、そして漏れた部分については、現場で困ったことが当然出てくると思う。それを処理する、判断する場所をどこか作っておくというのが、多分現実的ではないのかなと思っている。だれでもわかるように、一目でわかるようなものにしていただければと思っている。
委員長 この共通指針の適用範囲を明確化するということは、この検討委員会の皆さん、ご了解いただけると思う。その方向でまとめるということにして、この第3回の検討委員会は一応これで閉じさせていただきたい。
・ この指針は、あくまで個別の研究機関を対象としているので、横断的な形ではなかなか難しいものであるというのは理解をしている。具体的な相談窓口等の検討をお願いしたい。

6.今後の日程

検討委員会開催日程

 第4回 平成12年10月12日(木) 16:00-18:00 中央合同庁舎第5号館(26階)共用第9会議室
 第5回 平成12年10月26日(木) 16:00-18:00 中央合同庁舎第5号館(26階)共用第17・18会議室

以上

照会先
厚生省大臣官房厚生科学課
課長補佐 野口尚
電話 [現在ご利用いただけません](内線:3804)

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