00/08/21 第6回健やか親子21検討会議事録         第 6 回 健 や か 親 子 21検 討 会               厚生省児童家庭局母子保健課             第6回健やか親子21検討会議事次第                             平成12年8月21日 (月)                             13時30分〜16時35分                             霞が関東京會館 1 開会 2 議事 (1)「妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援」について (2)「小児保健医療水準を維持向上させるための環境整備」について (3)中間とりまとめについて (4)計画実施方法について (5)目標(値)について (資料) 1 妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援たたき台 2 小児保健医療水準を維持向上させるための環境整備たたき台 3 健やか親子21検討会中間とりまとめ (案) 4 目標(値)の作成について (案) (参考資料) ○ 健やか親子21検討会資料集6 ○椎葉課長補佐  ただいまから第6回「健やか親子21」検討会を開催いたします。暦の上ではもう秋で ございますが、まだまだ暑い日が続いておりまして、この検討会も熱い議論が続いてい るのではないかと思っております。先生方にはお盆明けの大変お忙しい中お集まりいた だきましてありがとうございます。本日も活発な御議論をお願い致します。  それでは、以後の議事進行につきましては平山座長にお願いしたいと思います。よろ しくお願いします。 ○平山座長  先生方、こんにちは。今も御挨拶がございましたように残暑の厳しい中を、またお忙 しい中をお集まりいただいてありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日は「妊娠・出産に関する安全性と快適さへの確保と不妊への支援」の前回のたた き台にいろいろ御意見をいただいた修正版が出ておりますので、その御報告、それから 「子どものからだの健やかな発達を図るための環境整備」という命題になっておりまし た部分の議論をしていただきまして、その後、中間の取りまとめの検討を少ししていた だき、さらには目標値の作成についての御議論もいただこうという予定でございまして 少々盛りだくさんでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、まず事務局から本日の資料について確認をお願いいたします。 ○椎葉課長補佐  それでは、本日の資料ですけれども、議事次第の下の方に資料ナンバーを書いた一覧 表がございますので、御参照下さい。  まず、資料1は、健やか親子21議論たたき台「妊娠・出産、不妊への支援」の修正版 でごす。それから、資料2は、「子どものからだの健やかな発達を図るための環境整 備」ですけれども、このタイトルを変えまして、「小児保健医療水準を維持向上させる ための環境整備」ということでタイトルを変えた修正版を提出しております。それから 資料3は、「健やか親子21検討会の中間取りまとめ(案)」で、問題認識、取り組みの 方向性、具体的取り組みがまとめてあります。そして、資料4は、「目標(値)の作成 について(案)」です。  それから、資料集を用意しております。今回は、シーソーで遊ぶ子どもの絵がついた 資料集6でございます。それから、別冊の資料集6を用意しております。  また、清水先生の著書「思春期のこころ」を御提供いただきましたので、委員の先生 方にお配りしてあります。  以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。お手元にそろっておりましょうか。  清水先生、ありがとうございました。後ほどゆっくり読ませていただきます。  それでは、議題に入らせていただきます。  まず議題の1でございます。「妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への 支援」のたたき台を前回御検討いただきましたが、各委員の先生方からいろいろ御意見 をいただきましたので、本日、事務局から修正版が出ております。まず、これについて の御報告を事務局から申し上げます。よろしくお願いします。 ○椎葉課長補佐  それでは、資料1です。  今、座長から言われましたように、前回の議論でまとめられました妊娠・出産、不妊 への問題のたたき台につきましては、各先生方にいろいろ御意見をいただいたものをま とめたものでございます。事前に送付してございますのでお目通しかと思いますけれど も、簡単に説明いたします。  1ページです。問題認識ですが、今回削ったところは削った印がついておりまして、 新たに加えたところは下線を引いてございます。  まず(1)の妊娠・出産の安全性と快適さの確保についてです。最初に、産褥期とい うのを加えておりまして、妊娠・出産・産褥期の女性のいろいろなライフスタイルの変 化などにつきまして、主に戸田委員の御意見を踏まえまして修正してあります。  3つ目は、妊産婦死亡率の記述ですけれども、救急システムの問題が一部で指摘とい うことで「一部」というのを入れております。それから下の部分ですけれども、正常分 娩から緊急分娩を要する急変に対応する体制整備のところを書いております。  次は、妊産婦の意思決定のくだりです。  そして、画一的な安全性第一の分娩というところに「病院で提供される」を取りまし て、「ともすると画一的な安全第一の分娩」と書いています。  次の2ページ目です。最初は、妊娠・出産・産褥期の特別な時期にある女性のニーズ にこたえる必要があるというくだりを書いています。また、小林委員からの御指摘です けれども、慢性疾患や障害を持つ親や心理的・社会的リスクを持つ親の出産についての 支援について記載しております。  そして、不妊への支援の2番目ですけれども、「不妊治療によって生ずる多胎に関す る減数手術の是非等の倫理的な問題」というところは矢内原委員の御指摘に基づきまし て修正を加えております。  また、その次に、働く女性の不妊治療に関するいろいろな取り組み、休暇等の配慮に つきましては、神谷委員の御指摘に基づいて修正しております。  そして、取り組みの方向性でございますが、基本的な方向性の1番目は、安全性と快 適さのほどよい均衡の中に経済の観点を除いた快適さということで、中野委員の御指摘 を受けまして変更しております。それから、産科、小児科の連携を入れております。  3ページですが、「慢性疾患や障害を持つ母親や社会的リスクを持つ親についての支 援」、これも小林委員の御指摘の事項を加えてございます。  次ですけれども、利用者と医療保健関係者との信頼や協力関係、そして必要な情報の 公開、選択、利用者の声を反映できるような取り組み等と、診療報酬についても書いて おります。  そして、3番目の具体的な取り組みですけれども、医療関係者、機関というよりも 「関係者」に変更してございまして、情報提供とサービスの選択というくだりを書いて おります。  次は、安全性の確保が最も重要ということで、産科医療機関における病診連携、休 日・夜間の整備ということで、雪下先生の御意見を踏まえて修正しております。  そして、助産所での出産に関しましては、前回いろいろ御意見が出たところでござい ますが、助産所での出産の場合、正常分娩で自然な形態の分娩を希望する妊婦について は、今後サービスを提供できるよう対応することが望まれる。この場合、危機管理の責 任は選択した本人と助産婦に帰属するということと、また妊娠に関しましては事前に予 測できるリスクもなく、正常な経過をたどっていた妊娠・分娩が突然異常な事態を招く こともあるということを留意し、刻々変化する出産の特徴を踏まえた対応が必要である というくだりを書いてございます。そして、新生児に対しての異常をできるだけ早期に 発見し、合理的に対応できる体制が必須である。また、助産所と産科のみならず新生児 科との連携、そしてバースセンター方式などについても記載をしてあります。  次ですけれども、慢性疾患や障害を持つ親の出産に対する支援のことを書いています。  また、プレネイタルビジットを含む産科・小児科の連携、心のケア、そして、母乳保 育についてのくだりを書いております。  その次は、施設面の整備や医師、助産婦の増員が必要であるということと、その費用 は少子化対策としての社会の負担が求められるということを書いております。  次は、不妊治療に関する適切な情報提供と治療の選択のことでございます。  そして、5ページでは、地域保健・産業保健の取り組みということで、両親教育の指 導型よりも仲間づくりの場への変換を図る必要があるということと、産業現場における 母性健康管理指導事項連絡カードの活用や、社会的な配慮ということで妊婦バッチの普 及といったことを書いております。  そして、最後の関係者の役割の部分ですが、国民のところには、自らの責任に基づく 意思の決定を行うという観点からのくだりを入れまして、次に、ひとり親に対する支援 若年妊娠に対する支援、病気や障害を持った人への妊娠・出産に対する配慮について記 載してございます。  6ページは、国の役割につきまして調査・研究や妊娠・出産に関するシステム、施設 整備の促進、慢性疾患や障害を持つ親や社会的リスクを持つ親の出産に関する支援、ま た不妊相談センターの整備などについて記載してございます。  7ページは、専門団体の役割といたしまして児童虐待や家庭内暴力など、女性への暴 力の予防を視野に入れた対応、また家族の誕生の現場で継続した健康の提供というくだ りを書いております。  そして、産婦人科関係の団体でガイドラインの策定や分娩のQOLの向上、プレネイ タルビジッドなどについて、また助産婦専門団体に関しましては妊娠・分娩・産褥にお けるメンタルヘルスケア体制の整備ということを書いております。  8ページは、医療機関のバースプランとケアの評価というものを載せております。  以上が主な修正点のポイントでございます。 ○平山座長  ありがとうございました。  事前に送っていただいたのでお目通しいただいてあると思いますが、私もいろいろホ ットなディスカッションをいただいたり貴重な御意見をいただいた分が大変上手にまと めていただいたなという印象を持ちました。先生方から御質問あるいは御意見がござい ましたら伺いたいと思います。お願いいたします。 ○櫃本委員  平山座長が今おっしゃられたような形で随分盛り込まれているということで、基本的 には非常に了解できているのですけれども、今回この分野については戸田委員の意見が 非常に多かったと思うのですけれども、全般にもかかわるのだろうと思うのですけれど も、国民の役割のところにNPOやボランティア活動に参画するということをうたって おく必要があるのではないか。特にヘルスプロモーションをやっていく上でNPOやボ ランティアに今後、国民の責任として参画したりつくっていくということを位置づけて おくべきではないか。  それと、地方公共団体や国あるいは医療機関においてもボランティア、NPOを支援 するということを役割として入れておくべきではないか。この部分は特に戸田委員の意 見が反映されたから余計思うのですけれども、全般的にその辺の見直しをして、NPO を創設する、あるいは参画するという国民の役割と、そういうものを育成支援していく あるいは掘り起こしていく関係機関の役割を明記しておく必要があるのではないかと思 いました。  これは読んでいると皆さんもお気づきになられたと思うのですけれども、「必要があ る」とか「求められている」という言葉がやたら並んでいるのですが、この辺は確かに 状況はわかります。確かに現状の問題認識についてはわかります。「求められている」 「必要がある」というのはあるのですけれども、具体的な方向性とか役割の中に「必要 である」という言葉を残す必要があるのか、それともできれば「推進する」とか「活動 する」とか、そういうきりのいい終わり方はできないか。私も役所におりますので、お 役所がつくる場合は苦しいところがあるのかなと思いました。  基本的にはこの部分にはないのですけれども、時々、「○○られる」とか主語がわか りにくい部分があるので、これは全般的な見直しの中で「させる」とか「られる」とい う、だれかが何かにやらされたり求められるという表現は全体的に見直してもいいので はないか。これは前回、岩永委員も言われていましたけれども、少なくともヘルスプロ モーションという点からいくと「させる」という表現は除いた方がいいだろうと思いま す。  以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。また手直しするときに参考にさせていただきます。  ほかにございましょうか。 ○長井委員  前回欠席しまして意見の提出がおくれているのですけれども、産業保健の分野で健や か親子ということが逆に私たちの分野の方にもう少しインパクトをつけられるために、 文言として例えば2ページの基本的な方向性の中の地域保健サービス内容の転換等の間 にでも、産業保健における支援体制の充実あるいは母性健康管理の推進ということでも いいですので、言葉を入れておいた方がいいのではないかということを感じたこと。  あと、5ページの地域保健・産業保健の取り組み、ここでせっかく働く女性のという ことが出てきておりますので、ここでは「産業医による」と書いていますけれども、実 際は産業医がカードの活用の場面で動けることはまだまだ少ないんですね。産婦人科の 先生と事業主の間の連絡カードということですから、ここは「産業医による」という言 葉は一応省いていただいた形で、「カードの活用や」ということで、あとは続きで産業 医等の産業保健スタッフによる母性健康管理体制の整備、あるいはここまで書くとくど いかもしれないのですけれども、機会均等推進責任者。これは新しい言葉で、今までは 会社の中で母性健康管理推進者ということで言われてきたのですけれども、今回、機会 均等推進責任者という言葉に変わりましたが、要は会社の中で母性健康管理を推進して いきましょうという立場の人ですので、この方やあるいは衛生管理者に対する母性健康 管理研修の充実という言葉、あるいは産業保健スタッフと産科医療関係者との連携推進 という文言も入れてみたらどうかなと思いました。  あと、7ページの専門団体の役割の中にも、できたら産業保健専門団体ということで 職業と母性健康管理にかかわる調査研究などの項目も入れておいた方が、私たちの分野 で自分たちの問題でもあるのだなということがよりはっきりするのではないかと思って います。  そういう意味では、前回から言っていますように父親の役割をもう少しはっきり入れ ていく方が産業界への影響は大きいということで、例えば8ページの目標値の設定のと ころなどでは、親学級や両親学級への父親の参加数を入れてみたらおもしろいのではな いかと思っています。  以上です。 ○平山座長  ありがとうございます。  大変貴重な御意見をいただきました。とにかく職場における支援が大変大事なので、 この辺は事務局でもぜひ補強しておいていただきたいと思います。ありがとうございま す。  ほかにございましょうか。 ○中野委員  この間送っていただいて拝見して勝手なことを書いて、それもまた幾つか採用されて 大変感謝していますので、完成度は随分高いなと。  ただ、私は書き送りますときにも全貌を見ているという自信がないまま気づいた言葉 に対して修正したり追加したり、つまりキーワードの羅列という感じが正直いっていた しました。しかし、これはこれ以上の完成はないと思いますので、完成度は高い。今、 幾つかの御意見は当然盛り込むことにしまして、そこで一歩先を考えてみるわけです。 最後のページに目標値設定とありますが、恐らく客観指標しやすいものだけが挙がらざ るを得ない、この事情もよくわかります。そこで、幾つかの言葉を並べて積集合的な話 を、これは質問してもよろしいのでしょうか。できれば課長に質問したいのです、よろ しいですか。  私、産婦人科学会の立場といたしましては、少し前まで社会保険に関連していて生殖 補助医療の保険診療化にそれなりに努力しました。今現在は生殖補助医療の登録機関の 認定を担当していまして、月10施設ぐらい、間もなく 600を超える。世界にまれに見る ぐらいのたくさんの機関で我々は生殖補助医療をやっている国になっているのですが、 それはそれでよろしいんです。  さて、こうしてみますと、何ページかにこれに関連した言葉が出てくるのでありまし ょうか。例えば6ページ、地方公共団体の(2)の下の方に不妊相談の整備、不妊治療情報 の提供、電話相談−−結構です。それから、国の役割の(2)の一番下に不妊相談センター の整備と促進とあります。続いて7ページになりますと専門団体の役割で、2番目の 「○」で、産婦人科学会としては生殖補助医療の体制整備の協力並びにガイドラインを ともかくとして不妊相談センターに協力しなさいと。これもそのつもりでいるわけです。 5番目の民間団体でも一番下に、不妊相談カウンセリングとあります。そして8ページ に、不妊相談の電話相談というので目標値が設定されるわけですけれども、これまでの 流れを考えましたら日本医師会等々の対応を行政として厚生省がなさってきていらして 少子化問題に対する御意見がいろいろなところから出てきて、あるときは急激に学会の 対応を急がされて、とりあえず何かをさしかけているつもりでいるし、かといってそう すること自体が 600〜 700という中でどのように選定すればいいのか。コンシューマー がそれをうまく選ぶみたいな仕掛けができるのか。  私たちの立場から言いますと、その場合に学会のような任意団体がなし得る範囲は決 まってしまっているんです。売り物を陳列しながら、それを買っていただけるみたいな 協力をすることになれば可能でしょうけれども、もう一歩踏み込む手はない。一方にお いて日本が持っている医師免許証ということと保険医療の運用を考えますと、これはま たのっけから絞るという手も恐らくないであろう。こんなことが背景にずっとある中で 散りばめて書かれることがどのように整合をとりながら1つの政策にかかわっていくの だろうか。このあたりが気になってしようがないんです。  どうでしょうか。そのこと自体にお答えいただくのも、例えばARTの保険診療化の 流れだけでも若干御紹介いただきましたら、その流れから今みたいな整合のとり方を私 なりに勝手に想像しようと思いますけれども。 ○藤崎母子保健課長  大変広範な事項の御指摘と、広い意味での不妊治療の体制のあり方と今の各種制度と の整合性のお話だろうと思いますが、先生の御質問に直接ピッタリと答えられるかどう かわかりませんが、まず一義的には医療の中身に入る話ですので、医療の専門団体ある いは専門家の学識経験・技術に基づく形で、いわゆるプロフェッショナル・フリーダム に基づいてやっていただくのが原則だろうと考えております。ベースになるのはあくま でも医師免許ということになるだろうと思います。その上で各専門領域についての関係 学会、団体等の御努力がある。まずここがベースであります。  その上で、まず1点目の不妊治療施設が多いという問題はどうなのかということです けれども、これについては今、特に行政の方で数を絞るとか、そういう形のことは特段 考えてございません。これと関係する形で第三者の配偶子の提供ないしは胚に関する提 供のあり方をどうするかということにつきましては、別に厚生科学審議会の専門委員会 の方で、矢内原先生にも委員として参画いただいておりますけれども、そちらの方で第 三者の配偶子の提供を行う体外受精等にかかわる医療を提供する施設をどうするかにつ いて審議中ではございますが、ある程度絞り込んで、その施設を考えていくべきではな いかという御議論はなされております。したがって、一般的な不妊治療と第三者の配偶 子の提供等による生殖補助医療が峻別された形で現在は議論されているということであ りまして、そちらの方については今後の審議の結果、ある程度限定すべきだという結論 になれば、そういうものを踏まえながら行政的な対応を考えていくことになろうかと思 います。  もう1点の、広い意味での不妊治療の質の担保についてどうしていくのかということ につきましては先ほどのお話と関係しますが、自主的な形での学会なり専門団体の質的 な担保をするための御努力が基本だろうと考えております。それと、厚生科学研究費な どの国でそのことを支援していくという形での研究費に基づくプロジェクトの組織化、 研究推進ということが当然ございます。研究につきましては現在、この領域につきまし て既に矢内原先生を班長としてガイドラインの作成に関する研究班がスタートいたして おりまして、そちらの方でかなり具体的な御提案がいただけるだろうと思っております ので、そちらの厚生科学研究の動きと、産婦人科学会あるいは不妊治療学会等の専門学 術団体、あるいは医師会等々によります取り組みが一体となった形でこのあたりの体制 がとれてくるのかなと考えております。そういう意味では、ここにそれぞれに散りばめ られたという表現を先生はお使いになられましたが、それぞれのところは今申し上げた ようなことと整合性がとれた形で一応はなっているのではないかと考えております。そ ういう意味で、国の役割は当然ございますし、学術専門団体の役割も当然ございますし また民間団体として不妊の相談などに当たっておられるところの役割、こういうものが それぞれに重要になってくるだろうと考えております。 ○平山座長 ありがとうございました。  中野委員、とりあえずはよろしゅうございますか。またいろいろと御検討いただきた いと思います。 ○中野委員  ありがとうございました。  確認だけさせていただきたいと思います。ARTの保険採用という話は今とりあえず フリーズの状況ですね。 ○藤崎課長  保険採用につきましては、先生も御存じのように中医協で審議されるということで、 我々が要望を出す出さないでいろいろあろうかとは思いますが、現時点では特段、採用 するとか未来も採用しないとかいう形で明確な方向性が出ているとは特に認識いたして おりません。 ○平山座長  ありがとうございました。 ○熊谷委員  5ページですけれども、2つ目の「○」の部分に、実は現場で働いていますと正常な 妊娠ということを学習する場が今余りありません。ですから、そういう面で母子保健情 報の情報というイメージと学習の場をどうつくるかというところも私は大事だと思いま して、もしできましたら情報の提供のみでなく、あらゆるところで正常な妊娠の学習を 学ぶ場も欲しいなと思いました。  それと6ページですけれども、これは大したことではありませんが、2番目の「○」 の市町村保健センター等というのは、実は保健センターというのは建物だと思いますの で、5ページにありますように保健センターがないところもありますし、ぜひ市町村で 区切っていただいた方がわかりいいのではないかと思いました。  それと、妊婦に優しい環境づくりの推進という環境という定義は大変広くて、この中 に入るかと思いますが、妊婦さんが気楽に健康相談できる場は優しい環境づくりの中に 入るのかなと思いつつ、言葉というのは広い意味でのとらえ方と思いますので、もしで きましたら妊婦さんの健康相談の場を積極的にというところを、環境に入れていいのか どうかその辺はわかりませんので、また御配慮いただければと思います。  以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。  ほかにぜひという先生はおられましょうか。  それでは、「妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援」につきまし ては一応座長預かりということにさせていただいて、今日いただいた御意見、これから いただいても結構でございますけれども、事務局と御相談しながら確定版という格好で まとめる方向に持っていかせていただきたいと思います。ありがとうございました。  それでは、議題の2でございます。以前は「子どものからだの健やかな発達を図るた めの環境整備」でございましたが、たしか柳澤先生などの御意見で、表現をもう少し変 えられないかというお話がございました。要するに心を非常に大事にしたい、それに対 応するものとしてということでまとめるという意味で、修正版にございますように「小 児保健医療水準を維持向上させるための環境整備」という表現に柱の表現を変えさせて いただこうということを兼ねてここに出していただいていると思います。  その辺を含めまして、資料2に基づいて事務局から御説明をお願いいたします。 ○椎葉課長補佐  その前に資料集6についての御説明を簡単にさせていただきたいと思います。  各委員から小児医療に関しまして、いろいろな御意見をいただいております。  まず初めは、清水委員からの御提出資料が5ページからです。子どもの健やかな発達 を図るための環境整備に関しまして、先ほど座長の方から御意見がございましたけれど も、「からだの」という言葉を外しております。今回、用意したたたき台のタイトルを 「小児保健医療を維持向上させるための環境整備」と訂正しておりますけれども、こう いった御指摘を踏まえてのこととなっております。そしてこの中で清水委員からは、障 害児問題についてもいろいろと取り組む必要がある。特に6ページの下の方ですけれど も、胎生期から1歳半健診に至るまでの間の早期診断や親との間で進められるインフ ォームド・コンセントの問題、そして受け皿の問題が大事だという御指摘でございます。  今回は、御意見と資料を分けて編集しておりますけれども、99ページ以降に特に障害 児に関する問題ということで児童精神、心の問題に関する資料や、それから 128ページ ですけれども、発達障害児の早期発見や早期療育システムの構築に関する研究資料をい ただいております。そして、 136ページからは自閉症の早期発見や早期療育に関する取 り組みの資料をいただいております。 159ページからは、保育所における保母の障害児 保育技術の向上に関する資料や、 163ページでは、インフォームド・コンセントに関す る資料を御提出いただいておりまして、後ほど清水委員の方から御説明いただければと 思います。  続きまして、11ページでございます。澤委員からの御提出資料ですけれども、たたき 台への意見といたしまして、子どもの環境を考える際に周囲の人の喫煙が問題であると いうことで、喫煙に関する取り組みの御意見を出させていただいております。それから 慢性疾患児への対策につきまして、障害児への支援を充実する。早期発見や療育のプロ グラム、そしていろいろな領域間のネットワーク、親に関するコミュニティーサポート の強化などの御意見をいただいております。  そして15ページですが、戸田委員からは、特に子どもの環境の整備についての御意見 をいただいております。子どもの生活環境が大人社会にいろいろな影響を与えている、 子どもに安全な環境が欲しいということで、公園や交通安全や住宅、建築の問題なども 御指摘いただいております。研究対策等についてや次の16ページで、病気治療に関する 取り組みで学ぶ機会が大事、病気に対する理解を深めることが大事だという御意見でご ざいます。  次に櫃本委員からの御指摘で、19ページにその御指摘の事項を用意しております。問 題認識につきましては、出生前後や出生後に何らかの理由で心身の発達に問題や障害が 生じた児に対するアプローチがこれまで個々の施設や個人の努力においてなされていた ということで、本来必要な総合的な取り組みがなされていなかったという意見をいただ いております。そして、医療を中心とした早期療育については余り十分ではなかったと いうことで、今後、基本的な方向性といたしましては、母子保健においてはほとんどす べての局面で養育の問題が絡んでいるということで、そういう言葉を入れるべきである という御意見をいただいております。  そして23ページは、前川委員からご提出資料です。乳幼児健診の機会の重要さと療育 についてでございまして、これからは保健、福祉、医療、教育が同じ平面で考えられる 時代が来る、敷居がなくなるという御指摘です。  そして29ページですが、神谷委員からは資料の提出をいただいております。神谷委員 の資料の中の特に30ページですけれども、長期に入院している子どものアメニティーの 問題で病室が狭いとか、特に30ページの真ん中あたりで、病人にとっては自宅にいるよ りも確実に悪い環境である、入院環境が劣悪であるというご指摘です。加えて、31ペー ジに、職員の環境も貧弱である。33ページには、専門職に関する正しい評価がなされて いないといった御指摘がされております。  それから36ページ以降は、私どもで実施しております小児慢性特定疾患治療研究事業 の調査、特に子どもの難病の問題ですけれどもアンケート調査でいろいろやっておりま す。その中のポイントといたしましては56ページ、57ページあたりかと思います。56 ページに保護者、親の悩みと展望ということで棒グラフがありますけれども、要望とし ては医療機関に相談窓口を設置してほしい、小慢に関する情報提供が欲しいとか経済的 な支援、精神的なケアの専門家の育成、小慢に関する教育現場での知識、普及が大事だ という御指摘。57ページは行政に対する要望でございますけれども、基本的に子どもの 制度ということで、大人になっても続けてほしい、医療情報を提供してほしい。  それから次ですが、児相や保健所、病院スタッフの対応が悪いというような声もある という御指摘でございます。  先ほど前川先生のところで紹介すべきところでしたが、前川先生の御意見と資料でし て、181ページは乳幼児健診の疾病指向から健康指向への転換が必要であるということ。 189ページですけれども、21世紀の小児保健に関して特に心の健全育成が大事であること と、 190ページには育児支援ということでハイリスク児への育児支援のシステムとして いろいろな点が挙げられております。また、前川委員からは小児科臨床の本を御提出い ただいておりますので、これは後ほど回覧したいと思います。  そして 199ページからですけれども、柳澤委員からの御提出資料です。これは前回も 御説明いただきました平成9年度の厚生省心身障害研究の「我が国の小児保健医療体制 の在り方に対する研究」ということで、主任研究者が慶應大学の松尾教授の名前で出さ れたものでございます。この中に我が国の小児保健医療体制についていろいろな分析、 217ページからは諸外国との小児科医の現況に関する比較、230ページからは小児救急体 制の特に休日・夜間の診療体制の現状と問題点、また 248ページからは小児救急とそれ を担う医師の教育についての問題点、そして 263ページからは災害時の小児科医の役割 医療の御専門家と、 269ページからは地域保健の保健婦の役割の取り組み、 289ページ からは地域母子保健の栄養士の役割といったかなり幅広い観点からまとめられた資料で して、これにつきましては後ほど補足の御説明をいただければと思います。 以上が今回、小児医療に関する各先生から御提出の意見及び資料でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。 それでは、今御説明いただき、また先生方からいただいた資料をもとに、恐縮ですが 時間の都合でこちらから3名ほどの先生方を指名させていただいて補足的な御説明をい ただければと思います。お1人5分ぐらいでお願いできればと思います。  最初に神谷先生から長期療養児の療育という点でお願いしたいと思います。神谷先生 からは国立病院の院長としてよくはっきり書けたなと思う資料をいただきましたけれど それを置いておいて療育の方をお願いします。 ○神谷委員  置いておいてと言われましたけれども、これは私、平成2年に書いたもので大分前の 話ですけれども、平成2年の話がいまだに通用するというのが現状であるということだ けを一言申し上げておきます。  療育ですが、全国の国立療養所がそれぞれ結核が少なくなって医療内容を転換する中 で、小児慢性疾患をいろいろな施設で取り組みまして、頑張っております。私たちのと ころも同じような形でやってきているわけですが、そういう中で環境あるいは疾病構造 がどんどん変わってきて、それによってまた慢性疾患に入る内容が変わってきたという ことと、一番大きな変化はなるべく在宅医療をやっていこうということが中心になって きたと思います。ただし在宅医療をきちんとやるためには、緊急避難といいますか、何 か起こったときに必ず安心して手当をしていただけるところが必要だということでござ いまして、そういう意味では今の厚生省の病院に対する方針でいきますと、ベッドを空 けるな、 100%近く入れろというやり方では緊急避難ができないということになります し、そのために空けておくことが許されない現状にある。これが一番問題だろうと思い ます。  調査がございますが、この調査は小児慢性疾患はまだ小児慢性特定疾患治療研究事業 という形でずっと行われておりまして、現在このデータの元締めは平山座長のところの 愛育会の研究所でまとめていただけるような体制になっています。これは柳澤委員が班 長をやられました研究班の中でそういう方向でまとめていただいたわけですけれども、 これが研究事業であることのために、いつも医療費の負担が非常に不安定な状態にある。 そして、これはぜひとも研究事業から大人の特定疾患のような形に、小児慢性疾患の中 で実際に長期の療育が必要なものについては早く治療研究事業というところから法律に 基づいた特定疾患の治療費という形で補助をされるような形に変更されなければならな いと思います。この調査をやりましたときに児童家庭局母子保健課からは、現在どうい うことが必要かということについて、さらに前の調査に加えたデータをとってほしいと いうことでございまして、先ほど椎葉課長補佐からもお話がありましたような56ページ あたりのところですけれども、現状のこういう制度に対して親がどういうふうに対応し ているかという調査をいたしました。  見ていただきますとこのグラフにありますとおりで、要は家に帰ってからの支援が非 常にうまくいっておりません。私たちの研究班では今そこのところを整理しております が、ただ、制度上は保健所で保健婦が対応して、1つは相談に乗るという制度がござい ますし、民間のセンターでももし希望があれば見ていくことができるわけですけれども 残念ながら知識を十分持った保健婦、あるいは保育士というお立場の方がほとんどおら れないという問題があります。これを今後講習をやりながら(県によっては非常に深く やっておられるところもあるのですけれども)、さらに在宅医療を支援するようなバッ クアップ体制をきちんとつくっていくことが必要であります。  これは高齢者の介護の方に保健所の機能が非常に向いておりまして、そのために子ど もを担当する保健婦は各保健所で大体1人いればいい方です。そして、1人おられても その熱心な方が一度転勤すると、次に来た人は全く知らない。それがまたゼロからス タートするということで、我々が何回もいろいろ積み上げてもみんな壊れていくような 実情がありまして、小児専門担当の保健婦を保健所に置いて、その方が地域を指導して いく格好に変えない限り、安心して慢性疾患を在宅医療をやりながら取り組んでいくと いう方向は非常にできにくいと思います。  もう1点は教育の問題です。教育は今どちらかといいますと院内学級という方向へい ろいろなことが向いております。今まで自分が歩んできた道の中では、院内学級という ものは子どもにとっては決して幸せなものではない。なぜかというと非常に少数の生徒 で、しかも体操もできなければ、理科の実験もできなければ、音楽を人と歌うこともで きない。そういうことになりますので、いわゆる重症の時期には院内学級で少し子ども たちを元気づけてやるということも悪くはありませんが、早く養護学校のレベルへ移し てやることが大事でございます。これは各県には1つあるいは2つの立派な養護学校が 現在までにできておりますから、それを利用していけば良いと考えます。しかし、この 学校がだんだんに子どもの対象者が減って火が消えつつあります。そういうことについ ても今後この中にぜひ盛り込んでいただきたい。また、養護学級ということが書かれて おりましたけれども、そういう方向にいくだけが正しい方向ではないと思っております ので、その点もぜひ検討していただければありがたいと思います。  以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。  この小児慢性特定疾患の対策が始まったころのことを思い出してみますと、ちょうど 世の中の景気がまだよかったときで、いわゆる老人医療の無料化が行われた。老人医療 が無料になったのなら次は子どもの医療も無料化すべきだという議論が当然出てまいり ましたけれども、当時の母子保健課のお考えでは、風邪や下痢という病気を含めた子ど もの全部の医療費を無料にするというよりも健診のような保健事業を充実する方が先と いうことで、乳児健診の医療機関委託、1歳半健診を新しく始めるという健診の充実に 努められることにして、そのかわり若い親たちが慢性疾患を持っている子どもの医療費 は親の負担になるからということで、そういう子どもたちの医療費を何とか見ましょう というのでこの事業が始まったようないきさつがあったと記憶しております。そういう ことですが、始まって日がたってみるといろいろ矛盾点やら医療費の使い方やらに問題 がないわけではないということで、今、母子保健課で手直しをしたり、今のお話のよう に調査をなさったりしていると理解しております。  実態についてはお話しいただいたとおりですけれども、今、保健所が中心になって全 国の実態が把握できるシステムになってきたんですね。 ○神谷委員  まだそこまではいっていませんね。 ○平山座長  なりつつあるということですか。 ○神谷委員  なりつつあるというよりも、なるべきであると思っておりますが、現状ではとてもそ ういう人数が確保されていないのが実態です。 ○平山座長  ありがとうございました。  そういうことでございます。これも宿題の1つということであろうかということでお 話しいただけたと思います。ありがとうございました。  次に、障害児の療育という観点から清水委員、お願いいたします。 ○清水委員  前回どなたかから障害児問題を書き込まないのかというお話が出まして、私は意見を お届けしました。障害児、病気の子ども、慢性疾患の子ども、そういうものでない普通 に育っている子どもを区別することなく1つにまとめて、子どもという存在として考え るのでなければ、21世紀に健やか親子は存在しないのではないかというのが私の人生観 であり、当然のことながら障害児の問題をここに書き加えるべきだと考えています。  障害児対策を非常に単純に申しますと、前にも一度申し上げたと思うのですが、なる べく早く発見して、なるべく早く療育を始めるということに尽きるわけです。なるべく 早く発見するにはどうすればいいかということは 145ページ以降に厚生科学研究報告書 を付しておりますので、後でご覧いただければと思います。 全国それなりに各市町村の1歳半健診で発達障害児を発見することは行われているの ですけれども、質の差が極めて大きい。これは母子保健がすべて保健所から市町村へ移 ってしまったということと絡んで、市町村でそういうものを受け入れ可能かということ が加わって少し深刻な問題がありますが、これをどうするかということを御検討いただ ければと思います。  質の高くない早期発見をやっていらっしゃるところは、知恵遅れですよとか自閉症の 可能性がありますよということをいとも簡単にお母さんに伝え、お母さんがパニックに なっている例がしばしばあります。障害の伝え方に関連して、 162ページ以降に子ども のインフォームド・コンセントはどういうことを考える必要があるのか、資料に提出さ せていただきました。発達障害児を発見して告知する場合には、その後にきちんとした 療育を親子が提供されますよという前提がなければ、これは非常に残酷な告知になるわ けです。そこをどうするかということを十分考えなければいけない。  早期療育をどうするかということも複数回発言いたしましたが、児童精神科の病棟を 増やすことはなかなか絶望的であろうかと思います。でも、地方自治体立の療育セン ターでかなりいい自閉症の発見と療育提供が行われているところがあります。横浜市、 豊田市など幾つかございますが、そういうものを拡充していくことができないか。情短 の施設長は児童精神科医であることが児童福祉法施設基準で決められておりますが、療 育センターなどにも同様の国家補助を提供できないのかということも期待されるところ です。  それから、保健センターはすべてにあるわけではないという御発言がありましたが、 あるところでも発達障害まで十分手が届いているところは少ない。これをどうするかと いうことがとても大切であり、私どもも保健センターの質的向上を図る努力をしており ます。 128ページ以下の資料でございます。  疾病か障害か、そのほかに慢性疾患という問題が入ってきて、これをどう見ていくか ということがリハビリテーションの問題であって、WHOがリハビリテーションの判断 基準を大幅に変えるICIDH−2の策定がほぼ最終段階に入っております。それに対 する私どもの学会のコメントを 101ページ以降に載せておきました。私が児童精神科医 だから発達障害の早期発見・早期療育に特に言及するということではなく、ヒューマニ ズムという出発点もあるのですけれども、それとは別に生涯経費といいますか、ライフ タイムコストを考えますと、早期発見・早期療育を怠って後に発達障害児が重度化して 一生涯施設処遇をしなければいけないための費用と、早期発見・早期療育にかける費用 を計算しますと、多分あまり差がないのではないか。早期発見・早期療育にかける費用 が少し高くても、それはノーマライゼーション費と考えれば今の時代は社会から承認さ れることです。   128ページ以降に資料提供させていただきました三重県鈴鹿市での早期発見・早期療 育事業は、私どもは3年間で地元にお渡しするということで共同作業をしてまいりまし て、今年度から鈴鹿市が独自で行っております。それに要する予算は 100万円でしかな かった。人を増やすことはせずに、12名の鈴鹿市保健婦によって早期発見を行い、保健 センター及び公立保育所で、療育を行うシステム化に 100万円の予算でしかなかったの です。そういうことを考えますと、お金がかかるからとは言っていられない、生涯経費 と人権の両面からこの仕事は必要とこの報告の最終に書き加えていただきたいと思って おります。  以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。大変大事な点の御指摘をいただきました。  それでは、次に柳澤委員に前回の追加として小児医療の現状と地域母子保健について の御意見をいただきたいと思いますので、お願いいたします。 ○柳澤委員  平山座長から言われたテーマでお話をするには時間が幾らあってもきりがないと思い ますし、小児科の先生方がそれぞれのお立場から出ていろいろ発言していらっしゃいま すので、また私が前回、小児医療の人的資源という面についてのことを言いましたので ほかの先生方の御意見の議論となるべく重複しないようにかいつまんで申し上げたいと 思います。  総論的に現在、小児医療には非常に多くの課題があって、転換点に立っていると言っ てもよろしいかと思います。今のままでいっては早晩行き詰まる可能性があって、新し い展開が必要ではないか。そういう点から、この健やか親子21という国民運動の中に小 児医療を取り上げていただくことは小児医療に携わる者にとって大変心強いことだと思 います。  現在の状況の根底にあるのは、これも繰り返し言われているように少子化の急激な進 行、また疾病構造が変化している。また、今までの小児医療についての医療保険制度、 診療報酬上の問題ということがあると思います。小児医療を担っているのは、大ざっぱ に分けると開業の小児科の先生、あるいは内科小児科、もともと内科の先生で内科小児 科を開業しておられる先生、大中小いろいろな病院の小児科、そして大学病院、あるい は小児病院といった高度専門医療機関に分けられ、現在それぞれに問題があります。  実地医家については日本小児科医会から出ておられる古平委員から状況を伺うべきこ とだと思いますけれども、従来、内科小児科という形で開業しておられる先生が子ども のプライマリケアのかなり大きな部分を診ておられました。近年そういう先生方が子ど もさんを診察しなくなってきている傾向が全国的にあるのではないかと思います。特に 夜間、休日などの診療が行われなくなってきている。これは医療提供者側の方向の転換 と、またお母さん方が専門医指向であり、また病院小児科指向ということもあろうかと 思います。  病院小児科ですが、これが現状の小児医療としては一番大きな問題を抱えています。 「病院小児科の危機」ということが最近よく言われております。不採算のために小児科 が病院のお荷物になっている。小児病棟を縮小したり、あるいは混合病棟になったり、 また小児科医の定員が削減されたり、ところによっては小児科を廃止してしまう。その 一方で、一部の病院に特に夜間・休日、救急の患者さんが過度に集中する状況があって そういったところでは小児科医の過重労働が起こっている。これについては東京都の都 心病院小児科医の会という集まりが何年か前からあって、そこで実態調査などをして、 今申し上げたようなことをデータとして出しております。小児病棟の閉鎖あるいはまた 混合病棟化、小児科医の削減、小児科を希望する医師が減少していることによって人事 の停滞が起こっている。また、病棟では小児看護を希望する看護婦の職場が減少してい る。実習する場も減少している。そういう状況が1990年代に急激に東京23区の総合病院 の小児科で起こっているということが調査で出ております。このような状況では子ども たちが必要なときに自宅近くの病院に入院できない。また入院しても、成人の病棟で、 一般の内科の看護婦などが看護するということで、入院環境の悪化も無視できない状況 です。  そして大学病院あるいは小児病院、小児病院は 国立、県立、市立を合わせて25の小 児総合医療施設がございますけれども、こういったところでは臓器系統別に細分化した 高度専門医療が主体であって、慢性疾患の患者さん、難病の患者さん、あるいは年長あ るいは成人になったキャリーオーバーの患者さんの診療が行われていて、救急医療ある いは総合医療という形での小児医療が行われていないという点がございます。  そういう状況で立て直しを図らなければならないのは特に小児救急医療だろうという ことが先般来議論されているところです。これには今後の方向として地域が小児救急医 療を支える体制をつくることがまず重要だろうと思います。現在のように一応毎日小児 科の当直医がいる病院に、救急患者が集中して、言いかえればそこに小児救急を押しつ けてほかの医療機関は何もしないような状態では、早晩破綻するのではないかと思われ ます。地域の小児救急医療体制は、成人の救急医療体制とは別に考える必要があります。  救急というと1次、2次、3次という区別をされます。小児救急においてはその区別 をつけがたいというのも重要なポイントでもあるわけですが、それでも小児科の開業の 先生方は当番制でプライマリケア、あるいはいわゆる1次救急の患者さんを地域として ぜひ積極的に診ていただきたい。これは御自分の診療所でもよろしいし、また急患セン ターあるいは夜間・休日診療所を地域にきちんと配備する。そのための医師の確保には 地域の医師会、またそれだけでなく大学の小児科とか病院小児科の勤務医、あるいは小 児病院の勤務医というところまで協力が必要ではないかと思います。ある地域の医師会 の会長はたまたま小児科の先生ですけれども、そういうところでは小児救急医療体制が これからうまく運びそうなところもありますし、また県によっては大学小児科が、小児 急患センターを支えて非常にうまくいっているところもあります。  そして、入院を必要とするような2次救急を担当する病院小児科は輪番制をきちんと 組織する必要がある。3次については小児救急医療センター、救命救急まで含めた救急 センターを例えば人口 100万人に1カ所という形で全国的に整備していく。これは大学 病院、あるいはまた各地にある小児病院の整備によってできるのではないかと思います。 地域の医療機関を組織し、それに行政がそれを全面的にバックアップして体制を整備す ることが今後の小児救急の体制を整備していく上でぜひ必要であると思います。  それと同時に、住民に対する広報活動、啓蒙活動も大事なのではないかと思います。 SIDSの防止あるいは事故の防止などと同じように子どもの救急疾患あるいは、コモ ンディジーズについての知識の普及も大事になっていくのではないかと思います。  もう一つ、今日のたたき台の7ページの一番下の方に、国の役割の中で国立成育医療 センター(仮称)における小児医療体制の整備が挙げられております。私自身がこれか らの国立成育医療センターの設立に直接かかわっております。許されれば国立成育医療 センター(仮称)についての説明をさせていただければと思いますが、よろしいでしょ うか。 ○平山座長  まだこちらに入っていないものですから。今の方が話しやすいでしょうか。 ○柳澤委員  別に後でも構わないのですけれども。 ○平山座長  それでは、こちらに移ってからそういう時間はつくって御説明いただきましょう。 ○柳澤委員  地域母子保健、小児保健に関しては、今日配られた資料の中に地域小児保健について 保健婦の役割、また栄養士の役割、助産婦の役割の研究報告がありました。それはそれ として、それぞれのお立場の委員が出ておられますので、それらの先生方から説明して いただいた方がむしろよろしいかと思います。地域母子保健における小児科医の役割に ついて最後に簡単に触れておきたいと思います。  先ほど小児医療の転換点と言いましたけれども、我々小児科医も従来の子どもの病気 の診断と治療ということから、それだけではなくて子どもの健全育成、すなわち小児保 健的な活動に重点を置くというか、あるいはスタンスをシフトすることがこれから必然 的に必要になる。その場合に小児保健あるいは母子保健の活動には医師だけではなく保 健婦、栄養士あるいは助産婦、あるいはまた行政と非常に多くの人たちが加わるわけで すが、小児科の医師もネットワークにもっと積極的に入り込んで活動すべき、あるいは 核となって活動しなければならないという自覚を持つようになってきているのではない かと思います。むしろ育児支援が今後の小児科医の非常に大きな活動になる。具体的に は乳幼児健診、プレネイタルビジット、予防接種、あるいはまた園医・学校医などもあ りますけれども、そういった場合も人材の確保が非常に重要ですし、今までいろいろな 面で困難があった。そこには開業しておられる小児科の先生だけではなくて勤務医も加 わってそういうことを行うような方向にいくべきではないか。これは私の個人的な意見 であります。  もう一つ、行政との関係では健診や予防接種には、自治体の垣根ということがあって 実際にそれがいろいろな面での支障になっているということで、自治体の垣根を越えて 母子保健活動が行われるような制度的な整理もこれからぜひなされなければいけないと 思います。  以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。  ただいま小児医療、特に小児救急医療の重要性や、その手薄さから来る危機感、ある いは小児救急医療は地域が支えなければならないし、そのための人の問題、ネットワー クの問題、あるいは母子保健サービスの市町村の垣根を越えた相互乗り入れ形式の充実 そういうお話があったと思います。  もう一方、今の小児救急医療絡みで新生児医療の関係を多田委員、お願いします。 ○多田委員  ただいま柳澤委員から御指摘がありましたように、小児医療では小児の需要の変化と いいますか、患者側の家族の方からの要望に救急医療を中心としてこたえられないこと が非常に大きな問題になっております。この問題は新生児医療でもちょうど20年以上前 から大きな問題になってまいりました。  前回、ここで快適性と安全性について議論がございましたけれども、それは決して医 療機関が自分のところでお産をやれば安心だということではなくて、この両方が実際の 医療を受ける方から要望が出てきたときに、それに応えていくためには各施設がそれぞ れ安全性を確保する医療をしなければいけないということになってくると、結局、施設 がそれだけの整備を全部がやるわけにはいかないということから、むしろ安全性を確保 しながら医療をやっていくためには自分のところがというよりは各医療機関が各施設で 協力して、そして地域をシステムとして考えていかないと整備はできないだろうという ことが新生児あるいは産科の医療ではコンセンサスになってまいりました。  したがって、今のままいったら要員や施設が少なくなって、結局、自分の地域ではお 産ができなくなってしまう。非常に不便になってしまうのではないかということで、前 回御紹介いたしましたように3次、2次、1次という医療を考えて、それぞれの施設が 協力して、自分の持ち分をきっちりしていこうということで周産期の医療システムを考 えてきたわけです。その結果、人口 100万人に1つの3次医療と大体10万人から30万人 ぐらいの2次医療と、各診療施設で安全性を保ちながらそれぞれの施設の特色を生かし た快適性を生かしていこうではないかというコンセンサスが得られて、各医療機関のエ ゴを排して、そういう形で整備しようというのが新生児の医療システムになりました。 その結果、厚生省でもそういう3次の医療、先ほども指摘がございましたようにベッド を空けておくわけにはいかないということがあったら、本当に重症のときにそれを入れ ることができないのではないか。したがって、3次の施設は3次の役割を担うためには ある程度ベッドあるいは人員も余裕を持たなければいけないということで、これはその 医療を推進するために補助金を出していただく。運営補助金という形で出していただい て整備を進めたいということで厚生省がそういう事業をしてくださるようになりました。  私は、この方向というのが限られた人員と施設でその地域全体の安全を保って、しか も快適なお産をするためには必要なことだと考えておりますし、それが前回議論になり ましたのは、そのシステムの中にまだ助産院というものがどういう形でどう入るかとい うことが議論されていない。今までお産の数が余り多くなかったものですから、その部 分を除いてきた。それが一方ではそのままシステムの中に入らないままで推進されるこ とに対して非常に問題があるのではなかろうかという指摘をしたわけでございます。  今、柳澤委員から指摘がありましたような小児医療も、これと同じ問題が出てまいり ました。したがって、私が資料の 173ページに載せておりますのは、そういうことで新 生児の医療といいますか、周産期の医療を整備したのと同じような需要が今、小児救急 医療でも出てきているのではなかろうか。先ほど柳澤委員が指摘されましたいろいろな 問題点や解決方法もこれで同じような主義で整備していくことがいいのではなかろうか と思ってこの文を書かせていただきました。  その中で一番問題になりましたのは、各病院のエゴではなくて市町村のエゴでござい ます。新生児のところでも、自分のまちにセンターがなくて隣のまちにあるのはけしか らんということがかなり問題になりました。ただ、新生児の医療といいますかNICU の医療はどこでもできるわけではないものですから、幸い人口10万人から30万人ぐらい のところに例えば2次的な医療を置いて、そこに運んでいくとか協力するということで ある程度新生児の医療は今お話ししたようなシステム化に持っていくことができつつあ ります。まだできているとは言いませんが、これは産婦人科の先生方とも協力してやっ ております。小児の医療でも同じ問題が出てまいりまして、柳澤委員から指摘がありま した夜間の救急医療をやろうと思っても、例えば人口の非常に少ないところで夜間救急 のセンターをつくろうと思っても、それだけの小児科医が確保できない。そうかといっ て、幾つかの市町村が一緒になってそういうセンターをつくって運営補助金を出してく だされば非常にいいのですけれども、なかなかそうではなくて自分のところにもないと 満足できない。この問題は新生児医療でも数年前からかなり大きな問題になりましたけ れども、それでは人員的にもそれだけの人数を確保することがとてもできないというこ とで整備が進んでおります。そういう意味で小児救急医療と新生児医療は非常に近いと ころがあるだろうと考えております。  幸い周産期医療はそういう形の整備を進めるということで、僻地の医療と救急の医療 と周産期の医療というのは1つの厚生省の政策医療というのでしょうか、特別にそうい う運営補助金を出して整備するような医療になってまいりました。小児救急医療もそう いう形での整備を考えていかないと、先ほどのような市町村の自分たちのところにもと いうのは、私は1次の小児医療はそれでもいいと思いますが、2次、3次の医療はそう であってはとても整備できないのではないかと新生児医療の整備から考えております。  以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。  ただいま4人の委員から資料の説明を含めまして御意見をちょうだいいたしました。 御質問などがあるかと思いますけれども、時間の関係がございまして、資料2の「小児 保健医療水準を維持向上させるための環境整備」と表題を変えた部分のたたき台の御説 明をここでいただいて、また御議論いただきたいと思います。  椎葉課長補佐、お願いします。 ○椎葉課長補佐  それでは、資料2に基づきまして簡単に御説明いたします。  1ページは、問題認識ですけれども、保健と医療ということで「医療」をつけ加えて ございます。  心身の障害や長期療養児のQOLの問題についての取り組みについて記載しておりま す。  そして次は、小児救急医療のレベルの低下。それから、小児医療はかなり細分化され ているということで、その部分を入れております。  また、少子化に伴って母子保健サービスの必要性がむしろ高まっているという記載を 入れております。  2ページ目では、子どもを取り巻く育児環境で喫煙やアルコールの問題などについて も記載しております。  2ページの組みの方向性ですけれども、医療・保健・福祉に「療育」を加えてござい ます。  次の3ページでは、下の小児保健医療提供体制整備に対する取り組みの中の急性疾患 ですけれども、小児科医のバーンアウト等の問題というのを入れております。それから 最近の保護者の希望ということで、小児科による専門家としての診察、治療・説明を希 望していることと、夜間急患センターに小児科医がいない場合がある。保護者の小児科 当直医のいる大病院志向が強いというくだりを書いております。  そして次からが、かなり大きく変わった点ですが、対策の基本といたしまして小児救 急医療体制を都道府県の責務として明確に位置づけることと、医療計画において救急医 療体制の整備計画に特記すべき事項として記載する必要があるというところが大きな変 換、前回のたたき台との修正点でございます。  そして、具体的なところですが、次の4ページです。小児初期の救急の充実のための 小児科医師を広域的に確保した休日・夜間急患センターの整備、そして外来機能を強化 するということと、人材確保に関しては在宅当番医制の人材を登用することも考えられ る。そして、入院医療につきましては小児慢性の充実が考えられますけれども、これの みでは重症小児には対応が困難であろうということで、おおむね 100万人につき1カ所 重症の救急医療を担う小児科医師を重点的に確保いたしました小児救急センターを医療 計画において明確に位置づけて整備することが考えられる。このためのいろいろな支援 体制、そしてシステムを地域で構築させるための消防機関等の関係者を交えた小児救急 医療に特化した協議会の設置が必要であるということをうたっております。また、都道 府県の支援のための診療報酬面での改善、そして国などによる運営費等の助成が必要だ というくだりでございます。それから、小児救急ネットワークを評価し、地域住民に公 開するといった評価事業も重要であると変えさせていただいております。  5ページの小児慢性の疾患等の対策ですけれども、2つ目は、障害児への支援の充実 と障害児の早期発見のための体制整備、そして親に対するインフォームド・コンセント の実施、早期療育プログラムの策定といった地域の療育関係のネットワークの整備、療 育機能の充実、障害児と親に対するコミュニティーサポートの強化を入れております。  次ですが、その他とあったところを小児医療の整備ということで、小児医療は単に疾 病の診断や治療ばかりではなく、発育・発達の評価や育児上の問題点に関する相談や予 防接種などの予防、家庭内、学校での問題点の解決という広い範囲での活動が求められ ている。少子化が進行するにつれてこういった要望はますます強まっていくということ で、小児医療に対する社会的な要請の変化があるにもかかわらず、不採算という問題な どから小児科医希望者や病棟が減少しているということを記載いたしまして、小児医療 の特性を踏まえまして、ほかの科と比較して遜色なく小児医療を確保できるような診療 報酬の改善などを図るとともに、保健活動に関する診療報酬体制を検討をすることが必 要だとまとめさせていただいております。  そして、人材確保対策に関しましては、特に勤務が過重にならないように小児科の定 員枠の確保の問題や、次の6ページですけれども、小児科研修の指導ができるような教 育スタッフの増加を記載しております。  次の地域保健は、母子保健事業は市町村に移管され、保健所の役割も変化してきてい る。市町村は、老人保健福祉・介護保険の業務量が拡大したり、保健所は広域的機能を 有しているにもかかわらず、その機能が十分に発揮できていないように見受けられ、地 域の母子保健活動の低下が懸念されるという意味合いを入れております。  そして、関係者の役割につきましては7ページです。地域の保健医療計画における計 画の明示を新たにつけ加えております。また、国の役割に関しましては学校での教育や 障害児の早期発見、療育体制の整備ということを加えております。  9ページですけれども、目標値の設定というところに新生児の聴覚スクリーニングの 実施を入れております。  以上が主な変更点でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。  先ほど補足的に委員の先生方からいただいた御意見もある程度ないしはかなり盛り込 んでいただいてございますが、ディスカッションをしていただく前に、先ほど柳澤委員 のペンディングになっていました成育センターのお話をしてくださいますか。 ○柳澤委員  国立成育医療センター(仮称)における小児医療体制の整備を国の役割として挙げて くださっているわけですけれども、この「成育医療」という言葉は余り一般的ではない こともあって多少説明させていただければと思います。  平成13年度中に現在の国立小児病院と国立大蔵病院が統合されて新しいナショナルセ ンターとして国立成育医療センター(仮称)が発足するわけで、現在、建物は建築中で す。もちろんこれは政策医療であるわけですが、健やか親子21の中に国として取り組む 課題として取り上げることは、今後の国全体の小児医療あるいは周産母子医療体制を整 備していく上で非常に大きな力になるのではないかと思います。  この成育医療という言葉ですが、人によってイメージが違う面が現在でもあろうかと 思いますし、英語で何と言うかもまだ決まっていません。私の解釈としては、人の一生 を例えば小児期、成人、老人というライフステージで区切るのではなくて、ライフサイ クルを軸として受精卵から始まって胎児から出生を経て成熟に至るまでの医療、それに 母性・父性の医療を包括して成育医療と呼ぼうということでこのような言葉がつくられ たと思います。  もう一度具体的に言えば、母体、胎児、出生を経て新生児、小児、思春期、成人、こ れはキャリーオーバーの慢性疾患を持った成人の患者さんの医療、それから不妊医療、 そういうものを全部包括して成育医療と呼ぼうということだと思います。  今度できる国立成育医療センター(仮称)では救急医療を行うことが新聞で報道され ました。先ほど私は、従来の国立小児病院も含めて全国各地の小児病院では小児の総合 診療あるいは救急医療に対して余り熱を入れてこなかったということを言ったわけです が、成育医療センターでは救急医療を行うことが新聞で報道された。それが本当だとす れば、救急医療とか総合医療という今までの小児病院になかった形の小児総合医療施設 になると思われます。分化と統合という両方があるわけですけれども、内科と同様に非 常に専門分化が進行しております小児科をもう一度統合するという意味で、総合という ことを小児医療の中で見直していく上で非常に大きなインパクトを全国の小児医療に与 えるのではないかと思います。今後の小児医療体制を整備していく上での原動力になる のではないかと思っております。 ○平山座長  ありがとうございました。そういうものが近々できるということで、ぜひ頑張ってて いただきたいと思います。  それでは、今御説明いただいたたたき台につきまして少し御議論をいただきたいと思 います。余り十分な時間がとれそうもないのですけれども、簡単に御意見をいただけれ ば、また次までに手直しなどをしていただきたいと思いますので、どうぞお手をお挙げ ください。 ○前川委員  今回のたたき台のテーマが小児保健医療水準を維持向上させるためと書いてあるので すけれども、これを読む限りですと新生児医療と障害児医療、救急医療が主になってい て、いわゆる健康な子どもたちの小児保健の維持と向上の姿勢が余り見られないんです ね。大部分の子どもは健康ですので、もう少し健康な子どもの維持に関する文面をここ に入れた方がいいと思います。具体的には国の政策として一番の子どもの問題の健全育 成の柱が乳幼児健診ですから、地方自治体にしろ何にしろ乳幼児健診の質の向上と家庭 を含めたハイリスク児の支援のことをお入れにならないと、結局の制度が無駄になって しまうと思うんです。  と申しますのは、乳幼児健診をやることによって今いろいろ起こっている子どもの心 の問題などの早期のことがわかるわけですね。それと先ほど神谷先生がおっしゃったよ うに、市町村でも保健所でも小児保健の専門の保健婦さんを固定して置いておくだけで 物すごく違うんです。ですから、そういうことの提案をぜひしていただきたいんです。 専門的な保健婦を異動させないで、あるいはかわりができるまで異動させないで置いて くれということだけでも違いますので、私たちは本当に空に向かって石を投げているよ うな感じなんです。幾らやっても、ここのところよくなったなと思うと、その人がかわ るとまた元に戻ってしまう。ですから、ぜひそういう専門職、特に小児保健に関する専 門職の育成を1行でもいいからぜひここに入れてほしいこと。  それから、せっかく乳幼児健診の制度ができているのですから、もう少しこれを活用 して、それからぜひこれと周産期のハイリスク家庭、育児機能不全の家庭を発見されて さらに虐待の防止などに結びつける提言をしていただきたいと思います。  以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。  大変大事な点で、厚生省が母子保健法の改正で市町村に健診等のサービスをお願いす る際に母子保健マニュアルを出しておられますが、あの中に疾病志向から健康志向へと いう1つの大きな方向を出しておられます。それを踏まえまして、今の点はぜひよろし くお願いいたします。 ○田中委員  今回、題名が変わって小児保健医療水準ということですけれども、医療水準と読めば あれですけれども、小児保健水準とした場合に学校保健との兼ね合いをどうするのか。 現在ここには学校保健の話はほとんど出てこないしということで、子どもたちの健康水 準を守るためにはどうしても学校保健との連携を今後推し進めていくことが必要なのか なということで、今回のこの中には余りうたわれていないようなので、現実にはなかな かうまく連携がいっていないのかなという気がするのですけれども、この辺を今後どう 考えていくかということで、21世紀に向かって考えるに当たっては学校保健との連携を どのようにしていくのかという問題点を入れてみた方がいいのかなと。今までなかなか 難しい問題があって欠落している問題だと思うのですけれども、もし大胆に取り込むの であれば学校保健との連携ということも入れたらいいのかなと思いました。 ○平山座長  ありがとうございました。  思春期問題のときは文部省の方に来ていただいておりましたし、母子保健法にも学校 保健との連携をよくとれときちんと書いてございますので、この辺もまた少し補強して いただければありがたいと思います。  ほかにございましたら。 ○熊谷委員  今日はとてもうれしく思います。、保健婦という言葉がこんなに出てくる委員会はな いのではないかと思いまして、ありがとうございました。実は保健婦が母子を担当して いる年代層を一回調査していただくとわかりますが、20代が中心で本当にひどい状況で す。先輩たちが老人の分野の方にいってしまいまして、それはどの先生方にも御心配を かけたようにそのとおりでございます。  もう一つ、私が全国の乳幼児健診の状況をみますと、乳幼児健診の対象月、いつの時 期やるかというところが違います。例えば大きいところになりますと、経済的なことも あると思いますが、4カ月から1歳半まで飛びます。そうしますと、1歳半のときの悩 みが非常に多様に出てきています。その内容をみますと、10カ月ごろにきちんと発達し なければいけなことが1歳半の悩みになってみたり、反対に1歳半でおむつが取れてい ないことが重大な悩みになったり、1歳半で子どものどもりの悩みをお母さんたちが出 していたり、発達の段階を理解できない為に生じる悩みがあります。  そういう面では、ここに乳幼児は1歳半と3歳と乳児期と書かれておりますが、先生 方にも乳幼児健診の時期ということを検討していただきたいと思います。日本のすばら しい先生方の考え方が本当に実際に必要とされるところに、そのことがどのように住民 のものになるかというところが、乳幼児健診の意義だと思います。今までの歴史的の中 で定着しているので、90%から95%が乳幼児健診を受けている地域は結構多いと思うん です。だからそういう面では、お母さんの学習の場として大切にしていかなければいけ ないということも思いましたので、ありがとうございました。 ○岡本委員  先ほど保健婦さんの中で小児の専門ということも出ておりますけれども、母子保健に つきましては助産婦も専門に勉強しておりまして、今もずっと市町村の方にも、あるい は以前でしたら保健所の方にも、母子保健で正常の分野の活動がありますのでぜひ常勤 で入れてほしいということを言っているのですけれども、いろいろな要望をしておりま すが、難しいのが現状です。実際に母子保健法が改正され、平成9年に市町村に移る時 お願いしました。今後、21世紀に向けては保健婦さんももちろん重要ですけれども、ぜ ひ助産婦も入れていただけたらと思っています。よろしくお願いします。 ○平山座長  ありがとうございました。 ○櫃本委員  よく似た話が続くのですけれども、人材の確保の話になるのですが、これからは地方 レベルで医療政策をしていく時代になってきたと思うのですが、私はたまたま医者で、 県庁の課長を10年近くさせてもらっている。でも、現状を見ると県庁に医者あるいは医 療政策をやる人間がいないというのが非常に大きなネックになっています。その中で保 健所や市町村が非常にあがいて、うちの県が恵まれている状況ではないので実はお恥ず かしいのですけれども、少なくとも私がいつも思うのは、医療政策について地方レベル で話し合える場がない。  そういう意味で人材確保の中で保健所もそうですけれども、医療政策を地方で考えら れるようなレベルアップ、国は椎葉課長補佐や藤崎課長のような方がいらっしゃるとい うことは、同じような人間を確保するのは無理にしても、そういう方々といつも接点を 持つ。実は年に1度か2度会議があるのですけれども、ほとんど事務連絡で、質問する 課長さんたちは事務職の方がほとんどで、これはいいでしょうか、あれはいいでしょう かと了解を求めるような話であって、今回、藤崎課長はこういう話をされてこういう方 針でいこうと言われたのに、実際には課長さんがどう言うかといったら、ここはこうし てもいいでしょうかみたいな方法論の話ばかりされるんです。だから、基本的には国の 政策に従って方法論として展開していくのが今の地方の限界だと思うんです。それを何 とか地方レベルで頭脳を持って企画ができるような形にしないと、この健やか親子も宙 に浮いてしまう。  特に医療政策については先ほどから柳澤委員や多田委員もいろいろ指摘されていた中 で地方の役割と。恐らく地方のドクターも、せっかく国レベルで話し合いがされている のに地方ではある意味では何ら取り組みがない。全国レベルでかかわっておられる先生 が地方にいらっしゃるにもかかわらず、地方では協力という格好でかかわっていかない と進まない。そういう意味では人材確保に小児科医ということもあるのですけれども、 医療政策を含める地方自治体の職員の育成というのは医者がいいのか、技術職がいいの かわかりませんが、この育成は国レベルで何とか確保できないかなとは期待しているの ですけれども。 ○平山座長  ありがとうございます。大変大事な点だと思います。 ○山縣委員  先ほど田中委員からも御指摘がありましたけれども、学校保健に関しては思春期のと ころで出ていたのですが、私がもう1点お願いしたいのは小児の心の問題でして、神経 のところで例えば児童精神科の育成を盛り込まれたのですが、そういうかなり専門的な 本当に精神科の領域の疾患だけではなくて、生活の中での心の問題を抱えているお子さ んたちが小児科の外来にたくさん来るということを現在、元旭川医大のオクノ先生の研 究班で、ここにもいらっしゃいます渡辺先生と一緒に調査したのですが、外来の中で一 般外来に心の問題を抱えたお子さんがたくさん見える。しかも、それが心の問題なのか どうなのかということが非常に判断つきかねて、その後のフォローアップについての問 題が出ているということで、そういう意味でここに小児科医の育成や教育の問題が出て いますが、その中に小児の心の問題に関して十分に一般の小児科の先生方が精通できる ような教育システムや研修システムを盛り込む必要があるのではないかと考えておりま す。 ○平山座長  ありがとうございました。  まだ今日のテーマの宿題がいろいろ残っているのですが、あとお1人かお2人、ござ いましょうか。 ○巷野委員  今、小児保健のお話が出ましたし、また保健婦さんのことが出ました。先ほども柳澤 委員から成育医療ということで、胎児から成人まで一貫して見るということは非常にい いことだと思うんです。同じことが保健所でも、特に小児保健ということになりますと 前川委員がおっしゃったように専門の保健婦はしっかりしたものを養成するということ だと思うんです。私も保健婦学校にしばらく行っておりましたけれども、あそこで看護 婦の資格を持っている人が保健的な知識を学ぶわけです。あと、就職するのはすぐに保 健所、行政の中に組み込まれるわけです。果たしてそれをどういうところで実際の研修 をしているのだろうか、それを聞きたいわけですが、どうしてもマニュアルどおりの指 導でお母さん方の育児がむしろ混乱される面も往々にしてございます。  要するに、お母さんに接する人の中で小児科医は一番多いわけですし、それよりも保 健婦さんがお母さんの子育てに対する自信というものに大きくかかわっていると思うの で、保健婦さんの専門的な保健指導の研修などをしっかりとやっていただきたいと思い ます。これは人口からいっても大変大きな接点でございますので、その辺を卒後の保健 婦さんの研修指導、特に心の問題を含めてこれからの時代やっていただきたいと願って おります。 ○平山座長  ありがとうございました。  もう一方ぐらいございますか。 ○渡辺委員  子どもたちや家族の現場の問題に保健婦さんや助産婦さんたちの役割の大きさなどが だんだん出てきて、日々の私たちの印象と随分近づいてきたと思うのですけれども、そ ういう流れの中でもう少し加えますと、保健婦さん、助産婦さん、そして保母さんたち が現実に今果たしている早期発見・早期療育の役割のあたりを、保母さんがどなたもい らっしゃらないようなので私が敢えて申し上げたいと思います。  発達精神病理の中では現在、周産期から大体2歳半までの急速に脳ができる時期に、 胎児や赤ちゃんが命として心地よい環境の中に置かれるかどうかで大きく意味が変わる ということが知られております。ただし複雑なのは、1人1人の胎児の持つ遺伝的な素 質、たちによって用意された環境が必ずしも合うとは限らない。ですから、1つの温か い家庭がその赤ちゃんにとってはきめが粗過ぎたり、あるいは閉鎖的過ぎて、かなり風 通しのいい開かれた家族や開かれた地域や開かれた社会をもう一度取り戻さないと幅広 いいろいろな個性を持っている赤ちゃんにとっては合わないし、次の世代を担う健やか な脳と体と心を持った子どもたちが育たないと言われています。  実際には現場で、例えば乳幼児の精神保健というグループの中で全国で保健婦さん、 保母さんや助産婦さんや小児科医や精神科医がみんな勉強しております。例えば昨日は 2日間の勉強会が東京で行われました。世界的には例えば7月25日から31日まで私はモ ントリオールの世界の精神保健学会に行ってきましたけれども、そこでは主に保母さん や保健婦さんなど足で歩いて子どもたちと触れている人たちがいかに専門的な新しい データ、新しい研究に裏づけされた臨床ができるか、その応援をするといった立体的な 学会が開かれておりまして、私がつい5年前に会った人たちは、例えば南アフリカの ケープタウンで児童精神科医だった人が5年間に黒人のスラムのスエートに入って、そ のスエートの人たちの生活に合った乳幼児の精神保健の臨床などをやっておりました。  そこで思うのですけれども、すべて出発点からだんだんボタンのかけ違いが起きてき まして、そして発達の原理というのは障害がある子どもも障害がない子どもも非常には っきりした1つの原理で展開していると思うんです。それは、脳の発達は心地よさがな ければ絶対に発達しないということがわかっています。不安や恐怖でおびえると乳幼児 期から不安や恐怖によって脳の中にどんどん異常な分泌物が増えてしまって正常なプロ グラムが展開しないために、いわゆる脳トラウマとかそういうものが脳の発達をエネル ギーの効率の非常に悪い、そして人生を防衛したり不安におびえたりする脳をつくって しまうということがわかっているから、それぞれの生活の場に一番身近にいる人たちが 安心して自分たちの療育を確認できるようなネットワークだと思うんです。  例えば乳児健診は、私は日本は大変成功していると思います。これは世界に誇れるシ ステムです。この乳児健診があるおかげで、例えば今回、世界の精神保健学会で産後抑 うつを発表している吉田敬子先生が日本の状況を話しておりまして、産後抑うつの把握 は乳児健診、4カ月健診などがあるためにすごくしやすいんですね。その辺の健診の中 にはまだ正常とか異常とか障害と言わないで、ともかく温かく地域の中で見ていこうと いうシステムがつくりやすいわけです。虐待という名前など使わずに、「お母さん、よ く頑張っているね」という一言の中で、みんなでかわいがろうね、何てかわいい子だろ うというさり気ないところで応援できるものがあるわけです。  10年前に私がパリのスラム街に行ったときには、スラムの保育園に乳幼児や幼児期の 子どもの発達心理を勉強している心理の人と保健婦さんとがコンビになって小さな車で 巡回して、自分の手持ちの担当の保育園を5つか6つ常時ぐるぐる回って、自分でもじ かに保育園の子どもたちの発達を保母さんと一緒に見ながら、お母さんと一緒に考えな がら、その保育園の機能を応援していく。あるいはお母さんがたまたまうつ状態で家に 閉じこもっている家庭の場合には、保育園がオープンになって、保健婦さんが赤ちゃん を朝お母さんからもらってきて、そして保育園の方が代理保母のようにケアしていく。 今、皆様がおっしゃっていた地域の連携が既に1つの実践として定着して、さらにもっ とどうしたらいいかというところまでいっていたんですね。  私自身は横浜市民病院で8年間、子どもの精神科の入院治療をしたときには、放って おけば大人で埋められてしまっている小児科の空きベッドを貸していただきまして、最 初の年に重度の拒食症の子どもの治療を小児科の看護婦さんやお医者さんや私たちでと もかく1例やってみようと。それがうまくできたら、次の年は2例やってみよう。そう しているうちに8年間に 100例、かなり重い自殺希望も含めたボーダーラインの子ども たちのケアを一緒にやりました。そのときに院内学級がありましたけれども、神谷先生 などのお話とも同じで、院内学級では足りなくなった人を地元あるいは病院のすぐそば の学校が応援してくれるとか、そういったその都度その都度、人間関係と信頼関係で話 し合って切り開いていくという輪が非常によくあったと思います。そういうことができ たんですね。もう10年前に既に横浜の市民病院を中心にしてできた。保健婦さんや学校 の先生たちが応援してくださって、それなら例外的にやりましょうということでやって くださった。そのために病院からも通えた。そしてそこでの給食などは親心で、そんな ものは何とでもなりますという感じでやったんです。  それから実地医科は、私が拒食症になる子どもを入院させているときには体のケアは 市民病院の精神科の先生がなさっていた。そこで心理療法は私は外部の人間になってい るのですけれども、オープン病院制を急きょとっていただいてやったということができ たんです。そういう形で私は場がないところでやったために、その場で頑張っている方 たちの機能につぶさに触れながら、その方たちと連携していくことを実践しましたら、 日本はまだまだ現場の方たちに非常に親心があって、その辺のネットワークがつくりや すいし、つくっていける装置があったと思うんです。  今回せっかくたくさんの案が出ておりまして、そこら辺で軸になっていくラインは何 かということと、どんな条件のもとに生まれた子どもやそういう方を抱えている家族が 市民として胸を張って笑いながら生きていけるようなシステムはどうかというあたりに 目を向けていただくと、保母さん、保健婦さん、幼稚園の先生たちの処遇、教育のレベ ルに私たち専門家がどうドッキングしていくかということがそこで見えてくると思いま す。 ○平山座長  ありがとうございました。  幅の広い大事な部分なので、まだまだ御意見があると思いますが、時間の都合で申し 訳ありませんが、今日お話しいただけなかった御意見は手紙でもファックスでもいいの ですけれども、椎葉課長補佐へまた送っていただければ、この部分のたたき台を修正し て次回また御検討いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、次の資料として資料3「健やか親子21検討会中間取りまとめ(案)」がご ざいます。これを御説明いただいて、これに関係したことを二、三の先生にまた補足し ていただきたい、御説明いただきたいと思います。どうぞお願いします。 ○椎葉課長補佐  それでは中間取りまとめの件でございますけれども、今まで4つの課題につきまして 各先生方に御議論いただきまして、一応たたき台をまとめたものが資料3です。2ペー ジ目から思春期、そして4つの課題ごとにこれまで議論していただいたものをここにま とめられておりますけれども、この検討会を発足して今は大体真ん中あたりまで来たか なと思っているところですが、対外的に検討会は今どのような方向に進んでいるかとい うことを示す必要がありまして、今回用意したのが中間取りまとめ(案)です。一応、 問題認識と取り組みの方向性や具体的取り組みについてこういう形で健やか親子検討会 では中間的に取りまとめたという形で、できれば8月中にお示ししたいと考えておりま す。今、御議論いただいた3番目の小児医療についての御議論を事務局の方でまとめま して各先生方に送りまして、一応8月中に固めて思春期、妊娠・出産、あと育児不安と 子どもの心の件も全部含めまして、こういう形で出したいと思います。そのように進め させていただきたいと思いますが、それについてまず御意見がございましたら御指摘い ただければと思います。 ○平山座長  ただ、これは今日初めてで、この部分は事前にお送りしていませんね。 ○椎葉課長補佐  今までのものをそのまままとめたものです。 ○平山座長  今御説明のように、対外的に何をやっているかという説明のために問題認識、取り組 みの方向性、具体的取り組みについての中間取りまとめということでございます。4本 の柱について取りまとめたもので、これは中間ですから、これから先ほどのたたき台の 修正等がまだまだございますので変わっていくとは思いますけれども、これを8月中ぐ らいに、必要があれば外に見せてもよろしいかということですか。 ○椎葉課長補佐  中間とりまとめ(案)は、各先生方の御意見をいただき、これまでのたたき台をまと めたものでございます。そして、今日の妊娠・出産と小児医療について出していただい た意見をまとめ、それを一度先生方にお送りします。さらに、ご意見をいただいたうえ で、事務局が案をまとめたものを外に出してもよろしいかということでございます。 ○藤崎課長  今までの検討会の手順のスケジュールには入れさせていただいていたわけですけれど も、各自治体あるいは関係者の方々に推進協議会に参画いただいていく流れ等を考えま すと、少し早目にどういう方向性が基本的に見えてきているのかということをお示しす べきかと考えております。そういう意味で、この4つのたたき台、今までやった中で2 つは一応これまで御了承いただいているというか、そのままでございます。そして、妊 娠・出産について今日ほぼおまとめいただいたかなと。小児医療の3つ目の柱について はたくさん御議論いただいたところですので、これで固まったとは言えないものですの で、今日の御意見、それから追加の御意見を入れてまた修正して、それをまた先生方に ごらんいただいて、さらに平山先生にごらんいただいて、大体このぐらいで大まかな方 向としては了承されたという形にして一旦出したいというのが私どもの希望です。この 中には従来のたたき台の中での目標値の部分と関係団体の役割はつけてございません。 目標値はこれから議論いたしますし、関係団体の役割についても次回もう少し整理した もので御議論いただきたいと考えておりますので、そういうことでお許し願えるかどう か御審議いただきたいと思います。 ○平山座長  わかりました。  それでは、今までにほぼたたき台としてまとめていただいたもの、そして今日御議論 いただいて、先ほどお願いしましたようになるべく早い時期に御意見の追加をいただけ れば、御議論いただいた3番目の柱の部分、小児保健医療水準云々の部分について修正 したものを合わせて中間の整理としておこうということでございます。これを必要に応 じて予算要求等々に使ってよろしいかということでございますが、これは時期を失する と困ると思いますので、そういう趣旨でお使いいただくことは皆様も御了承いただけま すでしょうか。  ありがとうございました。では、そのようにお願いいたします。  こういうことで中間の取りまとめに向かってまいりましたけれども、一番初めに課長 からの御説明もありましたように、これは単に予算要求のための資料づくりではなくて 国民運動計画として推進していこうという大きな目標があるわけでございます。そうだ とすると、方法論として従来の限られた方法だけだとなかなか限界があるだろうという ことでございまして、新たな観点も必要になると思われます。これからそういう意味で 手法について御意見をお持ちの方から御説明というか御提案いただきたいということで ございまして、1つはソーシャルマーケティングという手法ですが、山縣委員、御説明 いただけますでしょうか。 ○山縣委員  今日の資料集6の別冊の11ページから資料を載せさせていただいております。  公共・非営利組織のマーケティングというタイトルで数ページございますが、私も医 学部出身ですので経済についてはほとんど門外漢ですが、ただ、先ほど櫃本委員からも これからは地方で実際の具体的な対策を考えて実施していかなければいけないというこ とで、私もまさにそうだと思っておりまして、いわゆる国の指針をもとにして各地域が 小さなコミュニティーのレベルでどうやって有効なサービスを提供できるかということ を考えていく。そういうときの1つの指標としてソーシャル・マーケティングというも のがあるのではないかということで御紹介させていただきたいと思います。  最初に、マーケティングについての簡単な説明がございますが、このあたりのところ は読んでおいていただいて、基本的にマーケティングはサービスや商品のコンセプトを つくるところから流通に至るまでの全体的な活動を計画的に行う戦略であるということ で、その視点は最初に消費者であり、その終点も消費者である。11ページの下の方に、 従来は例えばマーケティングのコンセプトとして生産志向、いかに生産力を向上させる か。それから販売志向、いわゆる大量のものをつくって販売するというものから、最近 はコンシューマー・オリテンティッドという消費者ニーズ、消費者にどういうふうに売 っていくか。さらに、今日お話しさせていただきます社会志向、消費者だけではなくて 社会全体への影響を考えてマーケティングを考えていくように変わってきておりまして その次のページでございます。  12ページにソーシャル・マーケティングというものでありますが、大きく分けて2つ の側面がございます。最初がソサイエタル・マーケティングという、いわゆる環境問題 に関して企業がどう考え、それに対して消費者がそれにどう同意し、マーケティングを 形成していくかということで、電気自動車をつくる企業があって、それは少々高いけれ ども、消費者がそれを買いながら環境問題を一緒に考えていくということが1つの典型 であろうと考えております。  2番目が今回の中心でございまして、いわゆる非営利組織は行政、政府、自治体、教 育機関、医療機関、組合などのことを指しまして、その活動に対してこういうマーケテ ィングを考えていく。次のページから具体的な方法が書いてあるのですが、このあたり のことを実際に図にしたものが19ページにございますので、そのあたりを見ていただい た方がいいかと思います。  マーケティング志向に基づく保健サービスの展開が19ページにございますが、従来、 住民のニーズというもので一まとめにまとめられていたものを3つの側面から考えてみ る。いわゆるニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)、それに対してどういうものを実際 に要求しているのかというデマンズの3つで将来言っていた住民のニーズを考えていく。 簡単に言いますと、後でも御紹介しようと思ったのですが、私どもは地域でこういう活 動をしておりますけれども、例えば事故に対するニーズは実際の実態調査をやってみれ ばわかるわけですが、それに対して住民がこういう事故をなくして子どもを安全な状態 に置きたいという要求がある。その要求に対してどういうふうな対策が受け入れられる かということを順次把握していくということでございます。そのときに既にある疫学的 なデータ、内部資料であり外部資料であるものをもとにする。  例えば今、厚生省の厚生科学研究の中で柳澤委員が主任研究者としておやりになって います母子保健情報の登録評価に関する研究もその中の1つの重要な既存データの把握 という意味で大切であり、それをもとにして各地域でその問題に対して実際の住民のデ マンズの把握のための実態調査を行い、それに対して施策の提言、事業の実施、サービ スの提供を行う。この場合に、例えば従来は専門家、我々も専門家と呼ばれるのでしょ うが、こういうものでいいので、これをやりなさいという施策ではなくて、いろいろな オプションに対してどの住民はどの施策なら受け入れるか、受け入れやすいかというふ うに、いわゆるマーケティングのセグメンテーションというのですが、個々に細分化し ておのおのに最も合った戦略でサービスを提供していく。その場合に提供に対して評価 していくわけですが、その評価を最初の目的である住民の満足度を一義的に考えて、住 民がどの程度満足できたかということを第一義的な評価とし、それによっていわゆる疫 学的な指標を改善していくという考え方でこういう事業を進めていく。これをおのおの にフィードバックしていきながらサービスの展開を図っていくのが1つの方法でありま す。  ですから従来との大きな違いは、1つは住民のニーズの把握の方法と、そのサービス の目的を単に受診率を上げるなどの疫学的な指標だけではなくて、そこに参加する人の 住民の満足度を一番に考えて、それによって引き続き疫学的な指標が向上していくとい う物の考え方であります。  最後に17ページと18ページは、私どもが地域で、非常に小さいな田舎の市ですが、2 万 7,000人のブドウの果樹農園のところで、私どもの教室の初代教授の日暮眞教授が始 められた行政と住民と三者で始めた母子保健の調査であります。こういうものをもとに して現在は、次の18ページを見ていただきたいのですが、12年にわたってこの調査が続 いているのですが、私どものところに活動の限界がありまして、一番下に例えば調査、 分析、サービスに関しても啓発の部分まで、例えば全体に対する事故でしたら事故はこ ういうところが危ないんですよというものを行ったり、実際に例えば浴槽は50センチ以 下の家庭でしか転落の事故はないわけですが、そういうところを中心にしてさらなる学 習会を開いたり、実際に事故を起こしたところはまた起こす可能性がありますので、そ ういう個人に対する指導を行うというところまではできているのですが、さらに今後い わゆる介入を行っていく。地域住民に対して例えば浴室のドアどめの配布や、誤飲チェ ッカーというものを最近、山中龍宏先生を中心におつくりになりましたが、そういうも のを配布することによってどの程度事故が防げたか。その前に、例えば住民の子どもた ちの事故に対する不安がどの程度解消し、満足度が上がったかということを評価してい きながら、こういう地域での取り組みを考えていくことが必要であろう。今、介入評価 を地域の保健婦さんたちと一緒に考えながら進めているところでありまして、こういう た1つの方法のコミュニティーでこれから示される指針をもとにして行政サービスを行 っていくときの1つの有効な方法ではないかと考えております。  以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。  マーケティングという物の考え方に基づいて議論していただいておりますが、保健 サービスを展開する場合の考え方なり評価の方法なりに利用していくというストラテ ジーのお話でございました。今のお話に直接の御質問はございますか。 ○中野委員  確認というか質問ですが、集団とか社会という結構なボリュームのものを測度し、そ して評定するという手法だろうと理解して、それはそれでいいのですけれども、応用の 範囲というのは結構厳格なものではないかと思うんです。そのあたりはいかがでしょう か。表現されるということに対する補償が絶対に前提になるはずなので、そういう意味 から言いましたら、これは厄介だという問題は例えばどういう例がありますか。 ○山縣委員  医療・保健の問題を考える場合に、例えば住民が考えている意識や知識のレベルと実 際の専門家が考えるレベルといいますか、実際のサイトセンターのところでのいろいろ なギャップが当然あるわけで、そのあたりがうまくいかない場合にはただ単に住民の満 足度だけで測定することには問題があろうかと思いますが、実際に世界的にこの手法で もって行われていて比較的うまくいっているのは、例えばSTDの予防に対するコン ドームの配布の方法をこういったマーケティング手法を用いて実施したところや、ある 程度小さいコミュニティーにおける全体の保健、健康予防、ヘルスプロモーションをや っていく上では比較的うまくいっているような事例が報告されております。 ○平山座長  ありがとうございました。  1つのストラテジーとして御理解いただいておくということにとりあえずはさせてい ただきたいと思います。 ○田中委員  1つの手法としていいのかなという気がするのですけれども、今回の健やか親子21と の関連性で、健やか親子21の仕事をこれでやるのかどうかということになると、1つの 手法かなという気はするのですけれども、これだけでやっていいのかなと。それだけエ ビデンスができているものなのかなという心配があって、こういう手法、考え方も使わ なければいけないのかなとは思ったのですけれども、今回ここでぽっと出ると、今回の 健やか親子21の手法はこれであるのかなとも思ったのですけれども、その辺になると少 し議論をしなければならないし、吟味しなければいけないのかなと思ったのですけれど も、その辺がいかがなものかということを考えております。  もう一つは、健やか親子21は地方の時代ということで、指針を出してその後は地方で やりなというふうにも聞こえるのですけれども、現状でこれだけの大きなものを地方に 全部投げられても、多分地方でこなし得ないのではないかということをちょっと心配し て、その辺をどうしていくのかということも考えておかなければ、これだけつくっても う大丈夫というのですべてあとは地方に、その地域に即した方法でやりなということで いいのかなということも心配します。その2点が心配だなと思いました。 ○平山座長  これで全部いこうというわけではないわけですが、従来、我々が余り考えていなかっ た1つの方法として、ストラテジーの1つとして今我々が伺っておけばいいのかなと理 解していますが、藤崎課長、お願いします。 ○藤崎課長  平山座長のおっしゃるとおりです。若干補足いたしますと、全体の進め方にもかかわ ろうかと思うのですが、この委員会で報告書を出していただいて、基本的な取り組みの 方向性なり具体的な方策、あるいは目標値、関係者の役割をおまとめいただくわけです。 それができますと、本国民運動計画の推進母体になりますのは関係団体等からなる推進 協議会ということになろうかと思っております。健やか親子21推進協議会という名前の 協議会をまず全国版でつくらせていただく。これには関係専門団体を初めとした中央の 団体あるいはボランティア団体も含めてお入りいただくことになると思います。それぞ れの団体なりの計画を策定していただいて、自分たちはこういう取組をしていくという 形で、運動が進んでいくのだろうと思います。中央レベルで毎年全国大会などを開きな がらフォローアップしていくという構想になります。  あとは、それぞれの専門団体あるいは地方自治体が役割を果たしていくときの手法が 必要なのではないかと思います。その一つが今お話しいただいたソーシャルマーケティ ングという、消費者が何を考えているのかに基づいて取組を始めるという方法論です。 この視点でなければ国民運動計画もうまくいかないだろう。それから、この次にお話し いただくヘルスプロモーションもまた地域保健での1つの方法論を主体としたものです が、地域保健に限らずさまざまな分野に応用できる方法論であろうと。そういうことが ともすると従来の医療的なアプローチの面ですと、臨床的なアプローチの面ですと、な かなか見えてこないうらみがございますので、今回あえて唐突かもしれませんが、そう いうことを方法論の1つとして提示いたしまして、この推進方策の中に加えて、最終報 告の中にも書き込んでいただければと考えております。 ○平山座長  ありがとうございました。 ○中野委員  私が確認いたしましたように、向かない領域があるということだけもう1回だけ確認 させてください。向く領域もあるというお答えだったかと思いますので、課長のお話で 強化されましたので。 ○藤崎課長  おっしゃるとおりだと思います。それは個々に御判断いただいて、1つの方法論とし て参考にしていただければと思います。 ○平山座長  ありがとうございました。  それでは、課長が言われましたように、マーケティングと並ぶ手法というわけではな いとは思うのですけれども、WHOが1986年にオタワで会議をしたときにヘルスプロ モーションという考え方を打ち出しております。これはストラテジーであるという表現 だったと思うのですけれども、ヘルスプロモーションについての考え方、あるいはそれ を地域の中で実行するとすればどういうことなのかというあたりについて、藤内委員と 櫃本委員から御説明いただきたいと思います。  それでは、藤内委員からお願いします。 ○藤内委員  今日の資料集6の 335ページをお開きいただきたいと思いますが、先ほど平山座長か らも御説明がありましたようにヘルスプロモーションというWHOの1つの戦略にのっ とって、それを具体的に展開する手法であります PRECEDE-PROCEED Modelについて、こ の資料に沿って説明させていただきます。  ヘルスプロモーションについては簡単に紹介させていただきたいと思います。 335 ページの上から3行目ぐらいにありますが、新たな公衆衛生の戦略として提唱された戦 略でして、従来の健康教育を中心とした働きかけに環境への働きかけを組み合わせて展 開しようというものです。また、従来の健康教育が健康を最終的な目標にしていたのに 対して、このヘルスプロモーションではQOLの向上を究極の目標に据え、健康を資源 の1つとして位置づけていることも特徴だと思います。  下の図をごらんいただきたいのですが、これをお示しすると先生方からおしかりを受 けそうですが、従来の母子保健を私も自身の反省を込めて考えてみると、正しい子育て あるいは安全な妊娠・出産を目指して母親に手取り足取り、ああしなさい、こうしなさ いというふうに指導していたのかなと。それに対して下のヘルスプロモーションの図が 示しますように親子が妊娠・出産、育児を通じて人間として成長しながら豊かな人生を 送れるよう、個々の親子を支援するとともに、後押しを何人もしていますが、育児サー クルのような仲間で一緒に押せるよう支援し、そして坂道の傾斜を緩くと書いてありま すが、これを緩やかにすることによってだれもが健康で豊かな人生を送りやすい地域づ くりをしていこう。健康を支援する環境づくりと言えますが、こういう絵で言えば戦略 ということになります。  今まで健やか親子21の検討会の中でもQOLに関する部分から実際に基盤整備に関す る部分まで幅広く議論されてきましたが、まさに母子保健領域においてQOLの達成と いいますか、QOLの向上を目指すためには幅広い論点でいろいろな課題の克服が必要 になってまいります。そうしたときに 336ページにありますが、これから健やか親子21 の中の指標あるいは地方での計画づくりにおいてどういう指標を設定するのかといった 場合に、究極の目標であるQOLに関する部分から今申し上げた坂道の勾配に当たるよ うな健康を支援する環境に至るまで幅広い指標の設定が必要になります。しかし、これ らがばらばらな形で設定されておりましても効果的に機能いたしません。すなわちこれ らの広範にわたる指標が構造化といいますか、こういう基盤整備がこういう住民の生活 習慣や保健行動につながり、これがこういう健康指標を改善させ、そしてQOLの向上 につながるんだという構造が明確になっていることが必要です。これが明確になること により、実際に効果的な施策とか政策の決定が用意になりますし、実際に目標が達成で きなかった場合にはどこがまずかったのかという見直しも容易になるからです。こうい う指標の構造化といいますか、そういう1つの方法、理論的な枠組みとしてPRECEDE-PR OCEED Modelを今回皆さんに御紹介したいと思います。  このモデルは、健やか親子21の親計画と言ってもいいのでしょうか、健康日本21の食 生活、栄養の領域にも適用されておりまして、欧米ではこういうヘルスプロモーション の企画から評価に至るスタンダードな枠組みになっております。 336ページに絵を示し てありますが、上の方の右から左に矢印がいっております PRECEDE 部分が第1段階の 社会診断に始まり、第5段階の運営診断に至るまでの5つの診断プロセス、あるいは事 前評価といいますか、アセスメントのプロセス。下の方に移りまして、PRECEDE 部分が 実施から経過評価、影響評価、結果評価と言われる実施から評価に至るプロセスという 大きく2つに分けられます。 このモデルの大きな特徴は、実は前半の診断部分と広範の実施から評価に至る部分が 全く対称になっております。どういうことかと申しますと、事前評価 (アセスメント) のために用いられる指標が即効果を判定する事後評価の評価指標になるということです。 つまり、今回、健やか親子21で設定する指標はそれぞれ地域で見る場合には地域を見る 1つの診断の指標、アセスメントの指標になろうかと思います。と同時に、それらに問 題がある、欠けているということがわかった場合には、それを満たすための取り組みを し、そしてその結果、それらの指標が改善されたかということが評価の指標になるわけ です。  ごく簡単に第1段階からプロセスを紹介します。 337ページですが、第1段階の社会 診断は事業や施策の対象になる人々が一体だれなのか、そして彼らにとってのQOLは 何なのかを明らかにするプロセスです。つまり、これらの母子保健事業が目指すものは 親子のQOLの改善ということにするならば、いったい親子にとってのQOLとは何な のか。それを当事者、できたら思春期であれば思春期の子どもたち、その親、そういう 当事者あるいは関係者からこういうことを抽出といいますか、ヒアリング等で引き出す ことが必要であろうかと思います。  そして疫学診断では、このように設定されたQOLに影響を及ぼしている健康問題は 何なのか、今までの議論の中で数多くの健康問題が指摘されたわけですが、それはまさ にQOLに影響を及ぼす健康問題ということになろうかと思います。実際は複数の健康 問題が抽出されますから、どれを優先するかというための優先順位の決定も必要になっ てまいります。  第3段階の行動・環境診断では、これらのQOLや健康指標に影響を及ぼしている保 健行動とか生活習慣、環境因子を明らかにし、これらを示す各指標を設定します。これ も通常は複数設定、抽出されます。そのどれに取り組むかという意味で優先順位の決定 が必要になります。この場合、EBMという形で因果関係の強さとか実際に介入によっ て改善される可能性の高さといったエビデンスに基づいて優先順位を決定することが重 要であります。ただし、育児不安とか母子保健が扱う領域のかなりの部分はそういうE BMだけではなかなかクリアに説明できない部分もございますので、余りEBMを強調 して優先順位をつけられるものにだけ限ってしまうと少し難しいのかなと感じておりま す。  教育・組織診断は第3段階で選ばれた生活習慣や保健行動、あるいは環境因子に影響 を及ぼす準備因子や強化因子、実現因子と呼ばれるものを抽出いたします。これらにつ いて簡単に紹介しますが、準備因子というのは本人がある行為を実践しようと決意する ために必要な条件で、健康問題についての情報、知識、あるいは信念や態度、価値観な どが挙げられます。強化因子というのは、いざそれをやってみたときにそれを継続する ことを支援するための条件で、実際にやってみてとてもよかったという肯定的な感想、 心地よさとか体調が改善したとか、周囲がとてもいい反応を示してくれたという情緒的 な支援であったり、サポートといいますか、ここでは手段的支援も含めますが、そうい うサポートも強化因子に考えられると思います。  実現因子は、当該の行為の実践を促進したり環境因子の改善を促進する条件で、具体 的には当事者や家族がその行為を実践するために必要な技術、その行為を促進する保健 福祉、医療サービス、あるいは保健施設、医療施設への近接性、その行為の実践に伴う 経済的な負担を軽減する制度などが考えられます。  これらの準備因子と実現因子の中の技能というのは健康教育において達成される目標 ですので、通常は学習目標と呼ばれます。あるいは、周囲のサポートであるという強化 因子や、実現因子の中でも社会資源とか環境という部分は組織資源目標と呼ばれます。  第5段階の運営・政策診断は、実際に第4段階で指摘された準備因子や強化因子を満 たすために今までの健康教育がきちんと機能していたのかどうかを検証します。場合に よって望ましい健康教育プログラムを実行するためにどんな予算が必要か、人的資源が 必要かを検討します。あるいは現在、利用可能な資源の査定を行ったり、プログラム実 行のために解決すべき手法について検討します。また、健康教育の実施に関連する下部 組織の方針とか取り組みについても分析いたします。  政策診断では、健康教育のみでは改善できない実現因子への介入を、どういう施策が 要るかという形で診断する部分です。実はこの部分がこういう保健計画を策定する部分 にほかならないと思います。こういう計画策定のプロセスを経て、実際は実施、そして 第7段階の経過評価、影響評価、第9段階の結果評価という3段階の評価を経て、実際 にプログラムの効果を評価します。経過評価というのはプログラムの経過が実際はどう なのか、事業の実施経過に伴って利用状況や利用者・関係者の反応といいますか、そう したものをもとに軌道修正をする中間段階の経過評価ということになります。  影響評価は、実際にそういう事業によって住民の意識や態度が変わったのか、あるい は行動が改善したのか、あるいは環境要因が変わったのかという行動目標、環境目標、 先ほど説明した学習目標とか組織資源が達成されたかどうかを評価するのが影響評価と いうことになります。  最終的な結果評価は究極の目標であるQOLが改善されたのか、あるいはそのQOL に影響を及ぼしている健康指標が改善されたのかということになります。実際に5年後 10年後にこれらの結果評価の指標を見るわけですが、実際に5年たたないと効果が出た かがわからないということでは目標の達成はおぼつかない。経年的にこれらの究極の指 標である健康指標なりQOLの指標がどう改善されているのかということを把握するこ とが必要であろうかと思います。  以上、簡単に説明しましたが、これらを全部やっていくととても時間もかかりますし 複雑になります。実際は健康日本21におきましても、これらの段階を少し簡略化いたし まして、今説明した 336ページの絵を見ていただきながら聞いていただけるとありがた いのですが、 336ページのQOLと健康の指標を1つのものとして設定するとやりやす いかと思います。と申しますのは、例えば朝食がおいしいということは健康の指標であ ると同時にQOLの指標ですし、育児や妊娠・出産においてもQOLなのか健康指標な のか非常に線引きが難しい指標も多く含まれてまいります。それをどちらに分けるとい う議論は無意味ですので、健康とQOLの指標を1つの指標として設定するといいかな と思います。  2つ目の指標が保健行動と生活習慣の指標と左上に準備因子と書いてありますけれど も、先ほど学習目標と申しましたが、実際に住民がどういう知識や態度を持っているか そしてそれがどう行動につながっているかという行動と学習の指標を2つ目の指標とし て設定できるかと思います。  そして、残った環境、強化因子、実現因子と呼ばれるものをどう改善していくか。組 織、資源、環境に関するこれらのものを、3段階といいますか3つ目のレベルの指標と して設定すればと思います。  そういう意味でQOLや健康、行動というものについては、一番左側にあります健康 教育やいろいろな組織や政策によって最終的に達成されるものです。これらの目標値は ある程度目標値が示されるわけですが、これがノルマであったり国民に対してこの値を 押しつけるものであってはまずいのだろうと思います。喫煙率が健康日本21のときにす ごく問題になりましたが、喫煙率を半減するということを目標値として押しつけるのは 確かにいろいろな問題があろうかと思います。しかし、いろいろな健康教育の結果、そ うした喫煙率であり、あるいは健康指標がどう改善されたかをきちんと見ていくモニ ターとしての指標として重要であろうと思います。  一方、3番目に紹介した組織、資源、環境の指標については直接健康教育やいろいろ な施策によって改善され得る指標ですので、むしろこれらが行政にとってはノルマに当 たるような指標として設定されるのではないかと思います。実際に地域において指標を 設定する場合に一つ間違うと、本当に住民にそういうものを押しつけるような形になっ てもまずいですので、その辺のところはきちんとこういう形で整理して考えることが必 要であろうかと思います。  以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。  資料集でその次のページに資料をいただいておりますので、櫃本先生、お願いします。 ○櫃本委員  時間も余りありませんので要点をお話ししたいと思います。今、藤内委員がヘルスプ ロモーションの話をされましたけれども、PPモデルになると1つの方法論、先ほどの マーケティングも基本的には方法論ですけれども、ヘルスプロモーションは方法論とは ちょっと違って基本的な考え方だと私は思っています。その考え方というのは、要する に我々のこれまでの反省といったら何ですけれども、行政にお金があったり、いろいろ な意味で専門家誘導が通じた時代。つまり情報も余りなく、専門家にお任せ時代、特に 日本人は非常に頼りやすいといいますか、いろいろなことをアウトソーシングしてきた 民族ですので、そういう中で限界が生じているというのが現状だろうと思います。これ は金銭的にもそうでしょうし、サービス的にもそうだろうと思います。それを先ほどほ かの委員もお話しされて、いろいろなところでいろいろな事例が出ましたけれども、こ れは既にヘルスプロモーションが展開されている。どういうことかというと、それぞれ の限界をみんな知ってきた。そういう意味でマーケティングやPPという中で要するに 住民のニーズをしっかり押さえていくことが大事になってきたということだろうと思い ます。  そのニーズを押さえる方法としてどうするかということになるのですけれども、今、 例えば老人保健事業一つをとっても昭和58年から始まっていますけれども、新採の保健 婦さんは明日から仕事をすることがあるわけです。もう決まっているわけです。あれか もしれませんが、行ったら、「あなたはこれに行きなさい」、そこに行ったら、「はい 高血圧さん、はい、貧血さん」と行くことで、地域のことを何も知らなくても高血圧さ んでやっていくわけです。これが地方の技術行政をどんどん下げていってしまう。それ までの保健婦さん、あるいはいろいろな技術スタッフは地域の実情を自分たちの目で把 握して、どうすればいいかということを少ない予算で組み立てながら対応していたのに それが老人保健事業なり何とか事業ということが、マニュアルがハウツーつきで出てき た途端に地方の技術行政が吹っ飛んでしまって、結局、住民にやらせる、受けさせる、 受診率を上げる何とかで、とにかく信じる者は救われるということで、肺がん検診も受 けたら肺がんで死ぬことはないよなどと言いながらどんどんやらせていった世界が実は あるわけです。  それを今、我々は非常に強く反省している。つまり、住民に情報を提供する前にサー ビスを提供して教え込んで導いてきた世界がある。これは既に医療の世界ではインフ ォームド・コンセントということで随分改善はされてきているのですけれども、実は行 政の世界ではまだまだおくれていまして、やらせるということが基本にある。進んだ医 療ではそれはなくなってきて、それは個人の選択をいろいろしてきているわけですけれ ども、その前に行政等あるいは一部の医療機関もまだまだ地域の必要な情報提供よりは 医療として専門家として行政としての国全体の情報提供にほとんどいってしまっていて 本当にその人に必要な情報提供はされていない。  例えば乳幼児健診一つを取り上げても、この地域ではどうか、あなたはどうかではな くて、一般論としてこうだという情報提供はしている。つまり、健診の位置づけがサー ビスの提供であって、そこで情報を収集して、その情報を還元する場として位置づけら れていない。つまり、来てもらって何かサービスを提供して、「はい、次」と。その人 がもし貧血だとして、レバーを食べていなかったらレバーを食べなさいと言って、もし 本人がレバーを食べていると言ったら、「はい、次」と説明もなくいってしまう。極端 に言えばそういう表現の中で進められてきた。これは非常に極論ですけれども、その部 分をいかに反省するかという中でヘルスプロモーションという言葉が非常に新鮮に聞こ えてきたわけです。これは日本よりもはるかに人権という問題、自己選択力が進んでい る欧米においては自然に受け入れられているのですけれども、日本の国民にはそれがな かなか受け入れられてこなかった。  それを今、我々行政あるいは医療も専門家と言われる人たちが見直す必要が来ている ということの中で国民運動があるのだと。それが健康日本21であり、健やか親子だけれ ども、どうも健康日本21はまだ疫学者の強い力が働いてEBMが余りにも強くて、表現 としては導く方向が随分ある。その中で今度、健やか親子にはできるだけそういう表現 がなくて、我々がすることは何かというと情報提供と、そして受け皿整備であろう。そ の提供は地域レベルで情報収集したものを提供する。環境も地域の特性に応じたものを 提供する。それが先ほど言った地方の部分。それと田中委員が言われていましたけれど も、地方では賄えない部分を国としてどうしていくかという協力の中で情報や受け皿を 整備する。あとは健診を受けようが受けまいが、それは本人の判断。ただし、情報を知 らない人が判断できないようでは困るから、そこでNPOやボランティアがどう参画し ていくか、その人たちとどれだけ連携していくか。  先ほど中野委員がおっしゃっていました。要するに、適用できないものがたくさんあ る。それは情報がない人たちには結果的にはわがままとしかはね返ってこないわけで、 本当に正しい情報を知っていれば、その人たちは正しい反応をしてくるはずです。だか ら、情報提供が行われれば、すべての分野でヘルスプロモーションは可能だろうなと思 っています。  もう1点強調したいことは、今は我々を含めてほとんどの者が手段に振り回されてい ます。事業がとにかくやるということに振り回されている。つまり、目的が見えなくな ってきているということです。それをPPモデルなりマーケティング調査なりで本来住 民の求めているものを改善していくことを目的に置くということ。それは健康水準だけ ではなくてQOLという点もそうです。これをみんなのコンセンサスにしない限りは、 結局は手段の完成によって評価していくことになる。これは我々専門家や行政が常に陥 りやすい問題だと思います。ここで言えば、そんなことは当たり前だ、若造が何を言っ ているのだと言われるかもしれないけれども、現にいろいろなところでみんな手段でぶ つかっている。それは目的にいつも帰らなければならないということを健やか親子の中 にきっちり盛り込まれる上でヘルスプロモーションというコンセンサスを、我々地域保 健にいる立場から、各界の専門家の方々ばかりで偉そうなことですけれども、共通認識 として入らないだろうかということで当初ホットなことを言ったのは、実はそういう観 点が申し上げたかったんです。  時間の関係で以上で終わらせていただきます。 ○平山座長  ありがとうございました。 ヘルスプロモーションの方は委員の先生方もお耳なじみというか、よく御存じの部分 かと思いますので、御質問は時間の関係で省略させていただきまして、残り時間が少な くなってしまったのですけれども、今のマーケティングを参考にするなりヘルスプロ モーションを土台にするなりということで、目標値を決めなければいけないという宿題 をこの検討会は持っております。今まで後回し後回しで来たのですが、余り後回しにで きない段階にまいりましたので、目標値の作成についての案といいましょうか、考え方 といいましょうか、方向といいましょうか、この辺は資料を出していただいていますの で、簡単に御説明いただきたいと思います。これは今日決めるわけにはとてもいきませ んから、お持ち帰りいただいて、また次回、検討、議論させていただきたいと思います けれども、よろしくお願いいたします。 ○椎葉課長補佐  それでは、資料4「目標(値)の作成について(案)」でございます。  目標値の考え方につきまして、ヘルスプロモーションの考え方を念頭に置きまして事 務局の方でまとめた資料です。3つのレベルの指標を設定したい。1つ目が保健水準の 指標で、球を押す距離の指標ということです。2番目が住民みずからの行動の指標でし て、要は個々人の球を押す力の指標ということです。3つ目が行政・関係機関の取り組 みの指標でして、球を押すための段取り、坂道の緩急の指標ということでして、基本的 に先ほど藤内先生から御指摘いただいた項目を名前を呼びかえて保健水準の指標、住民 みずからが行動を行う指標、あと行政・機関機関の取り組みの指標と設定したいと考え ております。  そして、事務局の案の作成のプロセスです。(1)として、平成8年に市町村母子保健計 画が作成されておりますけれども、 3,300自治体(市町村)がございますけれども、こ のうち 2,362自治体の母子保健計画を藤内先生のところの研究班で検討されています。 QOL・健康、保健水準の指標を設定している 212自治体の母子保健計画に盛り込まれ た指標を抽出してございます。これは住民の視点から検討したものと言えると思います。  (2)ですが、これまでの健やか親子21検討会の議論から指標を抽出しております。これ は専門家から御指摘の視点です。  そして、(3)ですけれども、以上の作業によって抽出した項目を思春期から始まる4つ の課題に分類して、約 191項目ございました。これを振り分けております。そして、(4) ですが、研究班の中で優先順位を絞り込みました。その優先順位の設定ですけれども、 その指標自体がはっきりしたものであるのか、公衆衛生学的に需要があるのか、そもそ もそういう情報収集ができるのか、バイアスがないかという観点から絞り込みまして、 最終的に(5)として、事務局の母子保健課の方で作成したのが次のページからの案でござ います。  最初に1ページから御説明しますけれども、今後の予定といたしましては、この事務 局案を検討していただきまして、目標値、指標とすべきものの項目を決定していただき たい。そして、ベースラインと10年後の目標値を決定していただく。その際、目標値設 定の理由や根拠、その目標値がどういう意味合いを持つものであるのか。例えば努力目 標であるのか、それとも世界で最高の水準を目指すからこういう値を設定したとか、こ れまでの実績をそのまま伸ばすとこういうふうになるという1つ1つの目標値に理由を 考えていただくということを考えております。そして、そういうベースライン、目標値 を設定する際には必要な調査等についても明らかにしていただきたいというのが事務局 のお願いです。今後の作業の手順はこうありたいということでございます。  続けて、この案を御説明してもよろしゅうございますか。  概要だけ簡単に御説明します。  2ページですけれども、思春期保健対策につきましては保健水準の指標で各種の数字 で設定できる項目を挙げております。それから、住民みずから行動の指標で避妊法やS TDについての知識、そして行政・関係機関の取り組みで学校における取り組みや思春 期相談を行っている保健所や病院の数、性をもてあそぶマスコミへの指標といったもの を考えております。  次のページですけれども、妊娠・出産でございます。保健水準に関しましては妊産婦 死亡率や早産児の割合、そして満足度。住民みずからの行動につきましては妊娠の届け 出や妊娠中の飲酒、喫煙のぐあい、そして関係機関の取り組みに関しましては周産期の 母子医療ネットワークの整備、これは新エンゼルプランで4年後に数字が設定されてい るものはそれを載せております。母子同室や家族滞在型の分娩施設、11、12が産業保健 分野での取り組み、そして不妊に関する相談、カウンセリング体制、それから産褥期の ホームヘルプサービス、各種ガイドラインの作成ということでございます。「※」がつ いている項目は10年置きにやっておりますけれども、今年9月に実施される乳幼児身体 発育調査で把握できる指標です。ちょうど10年置きにやっておりますので、10年後に結 果が出るものでございます。  3番目が小児医療水準です。各種の死亡率、乳児、SIDS、不慮の事故。それから 医療機関の長期入院の満足度、小児救急の安心感といった指標。次の住民の行動の指標 はかかりつけ医や家族で事故防止対策をやっているか、それから喫煙、仰向け寝といっ たものと予防接種に関する事項です。そして、次が医療計画に小児救急ネットワークを 盛り込む都道府県や実際の整備に有する都道府県の役割、また長期慢性疾患児の宿泊施 設や保育士のいる医療機関数、またエンゼルプラン絡みで一時預かりを実施している市 町村数、事故防止のプログラム、それから大学の小児科の新規入局者数と各分野や新生 児科・児童精神科医といった項目です。それから、事故防止の観点から溺死予防のため の風呂場のドアのノブを15センチ上げた割合と、かなり具体的なものが入っております。  続きまして、育児不安の解消と子どもの心の安らかな成長に関しましては、子育てに 自信を持っている母親の割合や虐待していると思う親の役割。それから虐待に関する法 律ができましたので、法に基づいて報告のある虐待児の数が拾えるということで挙げて おります。そして、住民みずからの行動の指標に関しましては育児サークルへの参加や ゆっくり過ごせる母親の割合、相談相手がいるか否か、1カ月の母乳保育の割合という ことで、これらの項目はすべて乳幼児の調査で拾える値でございます。 そして、行政機関の取り組みですけれども、周産期医療施設から退院した児のフォ ロー体制が確立している二次医療圏、プレネイタルビジットの数、乳幼児健診で育児支 援に重点を置いたことをやっている自治体の割合、そして児童精神科医のいに児童相談 所や情短施設ということを考えております。  次のページ以降はいろいろな項目を設定するに当たって用いた各種の資料、指標でご ざいます。  以上、簡単ではございますけれども、事務局としてこういうものが考えられるのでは ないかという、いわば目標のたたき台です。  以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。 実際にこの数字を埋めてくるのが資料集めなども含めまして大変だと思いますけれど も、今日は時間がなくなってしまいまして、目標値についての御議論は次回に持ち越し させていただきたいと存じます。この中間取りまとめももう一息でできそうでございま すし、この検討会の先々も少し見えてきたかなという感じでございますが、先生方、本 当にありがとうございました。  そういうことで今日は御議論し足りなかった部分もたくさん残してしまったと思いま すが、先ほどもお願いしましたように、当面たたき台の手直し文についてはなるべく早 い時期に事務局へ御意見をお寄せいただきたい。それによって修正したものを次回また 御検討いただきたいと存じます。  それでは時間がちょうどまいりますので、これで私の司会を終わらせていただきます。 どうもありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。 ○雪下委員  資料6の別冊に新家委員からの報告がございます。これについて今日、新家委員は見 えていないようですが、前々回だと思いますけれども、日本の産婦人科技術についての 手厳しい御指摘があったわけで、それに対する日母の考え方ということで新家委員の回 答が出ております。そのとき私が申し上げましたように、マスコミの方もたくさん来て おられるので、それに対する日本の今の正しい現状と対応について御説明いただきたい ということを申し上げ、その場では時間がなくて説明されなかったのですが、ここに明 快な回答が出ておりますので、これは委員の先生方を初めマスコミの方にぜひ読んでい ただければと思います。新家委員がお休みになっているようで、資料の中に入っており ますので、つけ加えさせていただきます。  以上です。 ○平山座長  どうもありがとうございました。  それでは、事務局の方からお願いします。 ○椎葉課長補佐  最後になりましたけれども、実は資料集の別冊につきまして、新家先生から御提出い ただいた資料とともに、こちらの方で用意した資料もございますので簡単に御紹介いた します。  別冊の21ページですけれども、「思春期の性と健康に関するハンドブックの作成につ いて」ということで、先週、私どもから各地方自治体にお送りしたものでございまして 思春期の性と健康に関するどのように進めたらいいのかということで参考までにお出し しております。これにつきまして32ページに検討委員会の名簿が載っておりまして、座 長を安達先生にしていただきまして、こういった形で出してございますので、参考まで に御紹介しておきます。  それから33ページですけれども、第4回の検討委員会のときに北村委員から国連特別 総会「女性2000年会議」についての御指摘がございました。特に33ページの2と3でご ざいますけれども、思春期の若者を巻き込んだ施策や、障害者の意見を聞いた上でのプ ログラム作成の必要性、思春期の妊婦や母親に対する社会的なサービスのサポートとい うことについて御指摘がございましたので、こちらに紹介してございます。  最後ですけれども、資料集6の 320ページに岩永委員からの御提出資料がございまし たので、簡単にご紹介しておきますと、我が国におけるヘルスプロモーション活動の実 践と課題ということで、地域づくり型保健活動についての詳細な資料でございまして、 これも今後の検討を進める際に御参照いただければと思います。  以上でございます。 ○平山座長  それでは、次回の予定も含めましてお話しいただいて、最後に課長から御挨拶いただ きたいと思います。 ○椎葉課長補佐  次回でございますけれども、9月21日(木)、1時半からでございます。この会場で 開催する予定でございますので、よろしくお願いいたします。 ○藤崎課長  最後に一言お礼を申し上げます。本日も熱心な御議論、ありがとうございました。  本日は先生方より健やか親子21が21世紀の母子保健ビジョンであるならば、あるいは 国民運動計画であるならばという視点からの御意見をいただきましたことを私どもは大 変ありがたく存じております。私どもがこの検討会をつくったねらいがまさにそういう ことでございますが、先生方からそういう視点でこういう面が足りない、こういうもの を加えるべきではないかという非常に建設的な御意見をいただきました。  特に今日の第3の柱の小児保健医療水準を維持向上させるための環境整備につきまし ては、私どもなりに先生方の御意見をいただきながら主要なポイントを入れたつもりで したが、それよりもさらに幅広い視点での貴重な御意見をいただきまして、これを加え ていくことによってより包括的な意味のあるビジョンになっていくのではないかという 感じがいたしております。そういう意味では御議論の時間が非常に短くて申し訳なく存 じておりますけれども、またぜひ御意見をいただいて修正版を早々におつくりしてまと めてまいりたいと考えております。  また、本日は目標(値)の検討にいよいよ入りました。中身の御意見をいただくまで には至りませんでしたが、今後これを何としても、まとめていただきたいと思います。 指標についての考え方はるる提示していただきましたが、これをどのようにまとめてい くかということが1つの大きな課題ではないかと考えております。次回までに私どもで なるべく数値も入れて考え方も入れたものをお示ししたいと思いますが、先生方からも 今日の議論を踏まえてさらに加えるべきもの、あるいは必要ないから落とせというもの あるいは数値を入れる際の考え方、活用の仕方等々についてもぜひ忌憚のない御意見を いただいて次回の準備に加えさせていただきたいと考えております。どうかよろしくお 願い申し上げます。  本日はまことにありがとうございました。 ○平山座長  どうもありがとうございました。                                       (了) ┌─────────────────────────┐ │照会先:児童家庭局母子保健課 椎葉(内線3173)│ └─────────────────────────┘